第3回環境省独立行政法人評価委員会会議録 その3

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【松野委員長】 どうもありがとうございました。
 それでは、定足数成立の中で決めなければいけないのは……。

【松井環境研究技術室長】 特に決めるということではございませんが、一遍、続きまして資料10でございますが、これはこういう形で進めたいということで御了解をいただければと思っております。23ページでございますが、次回でございますが、3月年度末か、場合によっては、年度があけて5月でございますけれども、本日、御議論いただきました業務実績の評価基準を次回にお決めいただくということで、その御議論をお願いしたいと考えております。場合によっては、その他の議題をつけ加えたいと考えております。第5回、その次でございますが、これは3カ月以内ということで6月を予定しておりますけれども、平成13、14年度における業務の実績の評価、その他、残余金を剰余金の使途に充てることの承認、財務諸表の承認等々を議題にしたいと考えております。そして、1年後になりますが、また10月ごろに、平成14年度の業務の中間報告と。今後はこのような予定で進めさせていただきたいと考えております。

【松野委員長】 どうでしょうか、このスケジュールに関して何か特に意見とか何かがありましたら。よろしいでしょうか。
 では、こういうつもりで今後やっていただきたいと思います。
 では、さっきの関係で、今、ここで理事とか理事長に関してはこういう話でしたけれども、この独立行政法人になって、研究員というか、普通の方の給与もフレキシブルに、今までの国家公務員と違って、評価によって変えられるということになったと思うんですが、これの式典のときに近藤先生が開口一番、月給は上がりましたかと言われたのが非常に印象的だったんですけれども、我々、地球フロンティアというのも割とフレキシブルなシステムというのを売り物にして始めて、しかしながら、なかなか難しくて、その評価をどうやるかとか、一人一人の研究員の、大分苦労して、最近、やっと何とか成案を見てやっていたもので大変興味があるんですが、したがって、今度の評価委員会には、そういう運営にかかわることで当然御報告があると思いますが、どういうやり方をしてどうだということを聞かせていただきたいなというふうに思いました。今さっきも、そういうことも何か御意見が出ていたように思いましたので、どうかよろしくお願いします。
 それでは、また戻りまして、先ほど、西岡理事の方から全体のお話がありましたので、引き続き、いろいろなプロジェクトとか、そういうことについての御説明をお願いしたいと思います。

【西岡国環研理事】 それでは、先ほど右手のパンチの強い重点項目でございますが、重点特別研究プロジェクトについての話題を、5つございますけれども、それから、すみません、後でまたおくれてきますので、入れ違いになってしまいますが、7つございますので、それについて順次お話をしていきたいと思います。7分しかございませんので、ちょっと忙しいですけれども、御理解願いたいと思いますが。

【森田リーダー】 では、地球温暖化のプロジェクトの概要について御説明します。プロジェクトリーダーをやっております森田でございます。
 実は、地球温暖化研究は、この研究所で本格的に始まったのは1990年からでございまして、もう実に11年経過しております。その間、いろいろな形で、例えばIPCCとか、あるいは政府の政策決定に対して、いろいろな情報を提供してまいりましたのですけれども、ここに来まして、もっと本質的で重要な政策問いが投げかけられております。それは、長期的にどこまで温暖化対策をすればいいのか、要するに温暖化対策によってどんなよいことがあるのか、かなりの経済的リスクにさらされながら温暖化対策をやる意味はどこにあるかという問い。また、ではその温暖化対策をやるのであれば、アジアの途上国も含めて、地域の持続可能な発展と温暖化対策をどう両立させるのか、あるいはそういった長期を見渡した場合に、2020年とか2030年に我々はどうしたらいいか、そういった本質的な問いかけでございます。こういうものに答えるためには、今までの研究蓄積をより統合して、もっと政策評価に使えるようなものにしていかなければならない。それから、その中で整合性の高い気候モデルを開発したり、あるいはその気候モデルのアウトプットから、温暖化した場合に人類にどういうダメージを及ぼすかということを、より詳細に検討しなければならない。さらに、100年をかけたいろいろなシナリオを書いていかなければいけない。まだ残された科学的不確実性がありますので、それに対して世界の研究のネットワークをうまく活用しながら、徹底的に解明していかなければならない。さらに、効果の高い対策オプションというものは、アジアの途上国と一緒に総合的に評価しなければいけない。さらに、アジアの温暖化対策を持続的な発展と統合していかなければいけない。こういうようなことが必要になっくるわけでございます。この研究の全体の枠組みを説明します。今後100年を対象にしますから、我々人類の発展のシナリオによってかなり状況は変わってきます。それで、その発展のシナリオを幾つか描きまして、それに基づいて二酸化炭素とか冷却効果を持つようなSO2 の排出シナリオを予測しまして、その二酸化炭素については特に炭素循環がいろいろな不確実性を持っておりますので、炭素循環をきちっと把握しながら、また、その吸収危険対策についても評価して、それを気候変動のシナリオを、それをもとに描きまして、さらに影響適応の評価をやり、対策をやるときにどのぐらいの費用がかかるかということを計算して、それを持続可能な、特にアジアの発展途上国をどう日本がサポートできるかということも検討するということです。
 この一連の研究を大きく2つに分けて、1つは炭素循環及び吸収源、ここを徹底的にやっていこうということで、地球センターの総括研究管理官の井上さんが中心となって、この研究を進めるとともに、もう1つは全体をつなぐ大きなモデルをつくって、そのモデルのシミュレーションをもとにいろいろなシナリオを描いてみる研究を私が担当しています。モデルの研究でございますけれども、この特徴というのは、実は我々、この10年間ぐらいで、きょう配布した環境儀という資料に紹介されておりますけれども、AIMという大きな計算機モデルをつくりました。それとともに、東京大学と共同で開発した、大循環モデルと呼ばれる気候モデル、この2つの大きなコンピューターモデルを統合して使うことで、何とか全体像を描けないだろうかと考えております。環境儀の中にも書いてございますように、アジアパシフィック統合モデル(AIM)というモデルでは、経済モデルを初めとして、いろいろなモデルを既に開発してきております。これを改良して用いるとともに、これを気候モデルをつなぎまして、世界及びアジアのシナリオを書いていこうということでございます。一つの研究機関で、こういう政策に直結するような統合評価モデルと大循環気候モデルの双方を持っているというのは、今のところ世界でも非常にまれでございますので、この研究所の大きな過去の財産を組み合わせて成果を出そうと考えています。
 もう一つは炭素循環のサブテーマでございますけれども、炭素循環のメカニズムを解明するためには、まだデータがしっかりしていませんので、いろいろな観測をしていかなければいけない。空間的に10キロからグローバル、時間的に1時間からセンチュリーまでいろいろなレベルの観測があります。例えばチャンバーではかっていくもの、あるいはフラックスのタワーを使ってはかっていくもの。それから、対流圏の、もう少し、100キロメートルぐらいのオーダーではかるもの。それから、バックグランドモニタリングといわれるもの。それから、衛星、これらを総合的に使って、炭素循環の基礎的なデータを収集して、それによって炭素循環の気候を解明しようと。これが2つ目のサブテーマの大きなポイントでございます。
 今年度の主たる研究は、まずモデル開発の方針を決めて、新しく改良しなければいけないモデル、あるいは改良すべき点を明らかにしまして、モデルを開発する。実は、これはもう11年の成果がございますので、効率的に進めることができます。それで、今までのシナリオに基づくシミュレーションですとか、新しいシナリオの準備を始めました。それから、いろいろな炭素循環の計測の準備が整いまして、既に日本では観測データをもとに解析を始めております。幾つか御紹介いたします。
 1つは、排出シナリオのしっかりしたものをつくっていくということで、今までは中国、インド、韓国、インドネシア、この4カ国と共同研究をやってきたんですけれども、その他の国も自分たちのモデルを欲しいとおっしゃるものですから、実はアジアの太平洋地域には42カ国があるわけでございますけれども、その全部を今つくっています。これはそれぞれの国と協働してやっております。また、アメリカが京都議定書から離脱するというようなことに対して、離脱したときに日本はどのぐらいの経済的ダメージを受けるか、国際競争において日本がどの程度不利になるか、さらにはこれらのダメージをどう総和するか、こういう経済問題を計算することは、もう今までの財産がありますから、結構できます。
 また、もっと長期的なシナリオとしては、ここの研究所が中心となりまして、世界の9つの研究機関をコーディネートして、300年先までの二酸化炭素の排出シナリオとか、いろいろな発展のパターンを仮定しながら、こういうものを描きまして、今、それを世界の気候モデル、大循環モデルのインプット条件に使って、それでいろいろな対策の効果を、世界で共通の条件で計算してもらおうとしております。
 それから、今までのいろいろなシナリオをもとに、それぞれ社会の発展の経路が違うと、どのぐらいの温度の上昇の仕方になってくるか、あるいは、そこで、例えば550ppmを450ppmとか、そういうふうに対策をやるとどういうふうな温度の変化になるか。あるいは、例えばこれはインドですけれども、それぞれ対策をやった場合に、農業生産というのはどういうふうに変わるか、あるいは、それぞれの社会の発展の方向と、どのぐらいまでのレベルで気候を安定化させるかによって、経済的ロスがどのぐらいになってくるかと、こういうような計算を徐々に始めております。
 一方、炭素循環の方につきましては、いろいろな新しい試みを既に始めておりまして、例えば飛行機からレーザーを使いまして、こういった森林のボリュームをはかりまして、それでどのぐらい炭素が固定されているかということを調べたり、あるいは、各森林について、いろいろなデータを蓄積することによって、光合成の活性度はどのくらいかということを調べたり、あるいは、あるスポットを中心に、例えば森林の葉っぱの緑と、下の方の緑と区別するような形で、光合成の活性度をより正確にはかるというような試みをやっております。
 それからもう一つ、海洋と陸域の吸収でございますけれども、これも今までのバックグランド濃度の計測結果から、大気中の二酸化炭素と酸素の量の変化を見ることによって、この陸域の生物圏にどのぐらい炭素が吸収されているかの推計を試みています。二酸化炭素の濃度が上がっていきますと、酸素の濃度は下がってくるわけですけれども、同じようなスピードで変化するのではなくて、酸素濃度の下がり方は少し緩やかになってくる。この緩やかになっているというのは、陸域植物圏でそれだけ吸収力があるからだということで、陸域でどのぐらいの二酸化炭素を吸収しているかを推計しようと試みているところでございます。
 5年間の達成目標ですけれども、立ち上がりは早いんですけれども、これから長期的な温暖化対策のシナリオをいろいろな形で提示していって、対策効果を定量化して、それからアジアの持続的な発展との統合方法を見つけなければなりません。それから基礎的観測における国際的評価も獲得していかなければならない。また、次期のIPCCへの貢献とか、各種政策ニーズに対応するためには、やはり5年間、かなりタフな研究活動が待っておるということでございます。
 以上が概要説明でございます。

【西岡国環研理事】 どうもありがとうございます。
 何か御質問がございましょうか。二、三分の時間をとってございますけれども。
 大体うちの温暖化に関する研究、あるいは温暖化を中心にこれから持続可能な発展の研究に行くと思いますけれども、その辺は大体この中に含まれているようです。あと、残っているものとしては、例えば温暖化をめぐる国際情勢の分析だとかというのも個別にはやっています。

【松野委員長】 炭素循環、随分広範な範囲が入っておりましたけれども、国環研でやっていることと、いろいろな共同研究とか、その辺はどういうふうに考えているでしょうか。

【井上研究員】 陸域の部分がかなり多いんですけれども、もともと推進とか、そういうのと組んでやるという仕組みが非常にうまくできておりまして、森林総研とか、あるいは農業環境研究所とか、航空の関係の研究、そういうところと共同でやっているので、何とかいろいろな課題をやっておりますけれども、一応進んでいると、こういうふうに思っております。

【松野委員長】 酸素は……。

【西岡国環研理事】 遠嶋主任研究員がやっております。
 それでは、何か。

【加藤委員】 大変すばらしい研究で、非常にかねがね敬意を表しております。ぜひこれからも頑張っていただきたいと思いますが。
 1つだけ、私が1、2年、気になっているのが、適応といいますか、アダプテーションに関する研究が非常に重要じゃないかと。もう既に温暖化の影響が出始めていますし、ますます深刻になると。いろいろな意味で、適応の、これはいろいろなレベルの適応の問題がありますけれども、それは当研究所なんでしょうか、それともほかでやるんでしょうか。それとも時間の関係でその話が出なかったのでしょうか。それだけちょっと。

【森田リーダー】 アダプテーションというのは、影響の研究では、これから中心になってくるだろうと思っております。例えば農業影響が出たときに、GDPのロスが各国別にかなり大きくなっている。特に途上国のGDPの損失が物すごく大きくなっている。これを救うためにどうするかということで、実は途上国というのは、今から、アダプテーション投資することは難しいのですが、例えば通常の堤防への投資とか、そういう水のインフラ整備を少し早めると、将来100年後に大変大きな効果を持つ可能性があります。短期のそういった投資と、それから長期の投資を何とかインテグレートして、今の洪水対策になるだけでなく、将来の温暖化適応対策になるという、そこの短期と長期をうまくインテグレートする方策を検討しています。中国で今ケーススタディをはじめました。中国は一番水の影響が出そうなものですから、中国の政策担当者も、このようなケーススタディに興味を持ちます。温暖化へのアダプテーションの投資を今からやれと言っても、なかなか難しい。ですから、そこをうまく時間的にインテグレートしていきたいというのが今の我々の研究の一番の関心になっています。

【西岡国環研理事】 ここ5年ぐらいの間ですけれども、我々は2つ別な推進のプロジェクトで、温暖化の日本への影響というのを2回まとめました。今度新しく総合開発会議の温暖化イニシアチブというところで、またきちんとした、もう一度やり直してくださいというお金が出ますので、それについては日本を中心にやっていきたいというぐあいに考えています。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 それでは次に移りまして、次は成層圏オゾンの問題ですけれども、これはリーダーの笹野の方から。

【笹野リーダー】 笹野でございます。よろしくお願いいたします。
 早速ですが、もう十分ご存じなことだとは思いますが、オゾン層の破壊問題というのがございます。成層圏オゾン層というのは、人体や生物に有害な太陽紫外線を吸収して、地上へ到達するのを阻止しているわけで、そういう意味で非常に有益な働きをしているわけですが、いわゆるフロン等による人工物質によりまして、オゾン層が破壊される。その結果、紫外線がふえて、地上での人間や生態系に悪影響を与えるというような問題であるわけです。
 南極オゾンホールというのはよくご存じだと思いますが、いまだにオゾンホールの面積というのは毎年発現しますと、増大の一途をたどっておりますし、あるいは日本付近を見ましても、オゾンはこのところ減少傾向にあると。もちろん毎年毎年いろいろな条件を反映しまして増減はありますけれども、全体的に見れば、減少傾向にあるという、また、世界的に見ましても、オゾン層の問題というのはまだ回復の途上へは至っていないというわけであります。南極オゾンホールの問題、あるいは北半球でもオゾンの低濃度があらわれる。あるいは、今見ていただきましたように、中緯度でもオゾンの減少のトレンドがあるという、そういう状況であります。
 しかしながら、いわゆるフロン等の化学物質については、いわゆるモントリオール議定書ですとか、あるいはオゾン層保護法ですとか、いろいろな形での取り組みが実現しておりまして、そのオゾン層破壊物質の濃度というのはそろそろピークに達して、これから減少に向かっていく時期に入ってくるわけです。したがって、我々としては、オゾン層というのは、これから破壊というのは回復の方向に向かっていくだろうと考えるわけですけれども、実際にどのように回復していくのだろうかという1つの疑問があるわけです。同時に、今も話がありましたが、温暖化問題に関連しまして、温室効果気体が増加いたしますと、実は成層圏というのは低温化をしていくわけなんですけれども、その影響、オゾン層破壊に対するその影響というのはどうだろうかと。あるいは、先ほど見ていただきましたように、毎年、毎年、いろいろな条件を反映しまして、オゾンの濃度というのは変動するわけですが、そういう気象状態との相関はどういったものであろうかという、そういう幾つかの科学的な疑問も残るわけであります。
 ということで、いろいろな要因の影響をもっとも顕著における領域であります極域とか、高緯度域の成層圏オゾン層に着目いたしまして、この研究プロジェクトを進めていこうとしております。特にその中で、サイエンス的な意味で研究課題として残っておりますのが、詳しくは申しませんが、ここにありますような幾つかの問題であります。こういったものをこれからお話しします3つの取り組みの中で解決していきたいと考えているわけです。
 このプロジェクトなんですが、1つには、環境省が進めております人工衛星搭載のオゾン層センサーによりますオゾン層の観測というのを柱に据えまして、さらにこの研究所で進めております地上設置のリモートセンシングによるオゾン層の観測のデータ、あるいはそういったものを総合的に活用しましてのデータ解析、あるいはモデル、シミュレーションですね、数値モデル研究、そういったものに取り組んでいこうとしているわけです。そういったもので、この視点からいろいろな貢献をしていきたいと考えるわけであります。
 今申しましたように、衛星観測といたしましては、1つ、ILASと呼んでおりますセンサーが5年ほど前に上がりまして、それについてはいろいろな成果が上がってきておるので、それについては後で少しお話をいたしますが、来年の2月に、その2号機であります「ILAS-II」というのが上がります。これに関するそのデータ処理運用というのをこの環境研究所でやることになっておりまして、そこら辺を今、整備をしておりまして、来年の打ち上げに備えておる状況です。
 それから、地上のリモートセンシングに関しましては、ミリ波のオゾン計算と呼ぶものですとか、あるいはオゾンライダーというのがこの国立環境研究所に設置してありまして、そういったものを使ってのモニタリング的な観測を行います。こういったものを総合しまして、あるいは世界各国で得られておりますいろいろなデータ、あるいは衛星のデータも含めて、総合的に活用しましてデータ解析、あるいは数値モデリングといったものをやっていきたいということであります。
 そのILASという、5年ほど前に上がりましたセンサーについてお話をしたいと思うんですが、日本の宇宙開発事業団の衛星「アデオス」と呼ばれる衛星に乗せられましたILASセンサーなんですが、成層圏のオゾン層のオゾンだとか、オゾン層破壊に関連する化学物質、あるいはオゾン層化学に関係するいろいろな化学成分を測定することができます。2、3の例をお示ししたいと思うんですが、このILASのデータから得られました、例えば成層圏中の硝酸の濃度の減少についてのデータであります。その成層圏中で硝酸が減りますとオゾンの破壊を促進するわけですけれども、例えばこのグラフにありますように、冬から春にかけての早い時期に関しましては、例えば硝酸の濃度というのはこれぐらいあるわけですけれども、それが2月の中旬以降になりますと、ここに示しますように、非常に減るというようなのがILASのデータから得られているわけでございます。こういったものがオゾン層の破壊にとって非常に重要な情報でありまして、この来年上がりますILAS-IIというのは、こういった情報をさらにつけ加えてとっていくことになると考えております。あるいは、成層圏オゾン層の破壊にとっては、極成層圏雲と呼ばれる氷の雲、あるいは硝酸の液滴のような雲なんですけれども、そういったものが非常に重要な役割を果たすんですけれども、やはりILASの観測データから、ある種の気温と雲の量みたいなものなんですが、そういったものの実測データが得られておりまして、それと、今、実験室内で得られた理論的なカーブと比べてみますと、例えばこのケースでいえば、ここに着目いたしますと、硫酸と硝酸と、水から成る液滴の粒子が生成されていたであろうというようなことがこのILASのデータから得られるわけであります。あるいは、ILASはオゾンの濃度そのものを連続的に計っているんですけれども、そのILASのデータから、1997年2月・3月期のオゾンの破壊量というのを見積もってみますと、例えば大体高度19キロ、20キロぐらいのところで、この2月の中旬以降、あるいは3月の上旬にかけて、非常にオゾンの破壊が進んでいるというようなことが評価されます。例えば2月・3月をトータルしてみますと、1.何ppmというようなオゾン濃度がこの高度20キロぐらいのところで減少しておりまして、この1.数ppmというのは2月初めのオゾンの濃度に比べますと約50%にも達するという、そういうことがこの環境省が出しましたILASのデータからわかっておるわけであります。それは、ILAS-IIが来年上がりますので、今申し上げたような、例えばの例でお示ししましたが、そういった観測解析を進めていくことにしております。
 もう一つは地上からのリモートセンシングなんですが、ミリ波の分光計の観測装置、この写真は北海道にあります陸別の成層圏オゾン総合観測室に設置しているものでありますけれども、こういう装置でもって、地上から上を見まして、オゾンの濃度の時間変化といいますか、日変化あるいは季節変化、年変化といったものをとらえていくことにしております。これらは地上からのリモートセンシングはミリ波だけではなくて、オゾンライダー、オゾンレーザーレーダーと呼ばれる遠隔計測ですが、そういったものもあわせて使いまして、モニタリングをしていくことにしております。
 それから、そういったデータを使っての解析あるいはモデリングについての一例をお示ししたいと思うんですが、これはN2O、亜酸化窒素の分布に関して、化学輸送モデルと、三次元的な気象データを取り込んでの輸送といいますか、分布状態の時間変化を再現するようなモデルなんですけれども、それで再現した、例えば97年なら5月1日、13日、21日、29日という、大気はぐるぐる回っているわけですけれども、そういった中での亜酸化窒素の分布状態を示しているわけです。これに関して、やはりILASで得られました観測データと比較してみますと、例えばここでの低濃度の部分があるわけですが、そこがきちんと対応して観測されておる、あるいは逆に言えば、その観測をきちんと再現するような形でシミュレートされている。あるいは5月の末に関しても、ここに非常に狭い領域として薄い濃度のところがあるわけですけれども、それがこのILASの観測データから非常に薄い領域として観測されておるというようなことが示されておりまして、こういったものも、ILASあるいは地上のモニタリングデータ、それと数学的な数値モデルと組み合わせて、物事の理解を深めていこうという、そういう一例であります。
 さて、そういった衛星観測、地上からのリモートセンシング、そして、そういったものを使っての解析、モデリングといったものを今後5年間の中でやっていこうとしているわけですけれども、ILAS-IIに関しましては、来年の2月の打ち上げが予定されておりまして、既にそのデータ処理のシステムに関しましては、これまでに開発を進めてきておりますので、それを用いての運用、あるいはシステムそのものの改定といったことを今後進めていくと同時に、データの処理解析をいたしまして、サイエンスチームといっておりますけれども、この研究者へデータを提供していく、あるいはそこでいろいろな確認ができましたら一般に公開をしていくということで、国内外の研究者の方々にも広く使っていただくような形でいきたいと考えています。
 それから、詳しく申しませんでしたけれども、ILAS-IIの、さらにその先のセンサーとして、今、「SOFIS」と呼んでおるのを環境省の方で開発を始めたわけですが、それに関しましても、国立環境研究所の方でデータ処理・運用システムの開発を担当することになっておりまして、今年度中には基本設計を完了して、その後、システムづくりに入っていくということでございます。これに関しましては、平成17年あるいは18年ごろに打ち上げが想定されておりますので、この5年間の中では、このシステムの開発を終えるところまで持っていきたいと考えております。
 それから地上のリモートセンシング、これにつきましても従来からやってきておるわけですけれども、引き続き陸別それからこのつくばにおきましてオゾン層のモニタリングをやってまいります。これに対しましても、データを我々が扱うだけではなくて、きちんと提供できる形に加工いたしまして一般に公開していくことを考えております。こういったデータ、さらには、我々が取得したもの以外のいろいろなデータがあるわけですが、そういったものをあわせて解析モデリングといったものをやってまいります。
 5年間の達成目標、ちょっと文字が多くて恐縮なんですが、1つは、今言いましたILAS-IIに関しまして、そのデータをきちんと使える形にして、データプロダクトとして国内外に向けて提供するということ。それと同時に、その次のセンサーに関するデータ処理システムを開発してまいります。
 それから、地上からのモニタリングですけれども、これに関しましても、きちんとデータを検証した上で、国際的なネットワークでありますNDSC、これはネットワーク・ディテクション・オブ・ストラトスフェリック・チェンジ、つまり成層圏変化の検出のネットワークというところなんですが、そこのデータベースに提供をしてまいりますし、国内外に向けてデータを提供していきます。
 それから、そういったデータを用いましての極域のオゾン層、あるいは高緯度域のオゾン層、あるいは中緯度域のオゾン層、そういったものの変動に関する物理化学的に重要なプロセスを解明する研究、あるいはそういったもののオゾン層変動に対する寄与を調べてまいります。
 さらにモデルの研究の1つといたしまして、これまでのフロン等に対する対策の根拠とりました、従来、過去のオゾン層変動予測でありますとか、あるいは最新の知見に基づいた将来のオゾン層変動予測に関しての検証をそのプロジェクトの中で行ってまいりたいと思っておりますし、さらに、そのオゾン層対策の有効性評価に関する知見を提供していきたいと考えております。
 先ほども少し触れましたが、国内外へデータ提供ということで、いろいろな国際的な機関との共同研究、あるいは国内外の研究者の参加協力を得ております。先ほど言いました、これはネットワークであります。それから、大学の方々とも、その推進費等の研究プロジェクトを通して、あるいはこの衛星観測プロジェクトへの参加を通して、共同研究を多々進めておりまして、きょうお見せしました幾つかのサンプルの中にも、大学の研究者の方々の成果が出ております。今後も、我々自身、どちらかといいますとデータをきちんととって提供するというところに我々の時間をとられがちでありますので、我々自身、解析モデリングのところにも力を注ぎますけれども、同時に、所内外の研究者の参画をこれからも期待して共同研究を進めたいと考えております。
 以上です。

【西岡国環研理事】 いかがでしょうか。オゾンの件ですけれども、よろしゅうございますか。
 では、時間が押しておりますので、次に生物の多様性につきまして、これはリーダーの渡辺さんが、今総合科学会議の方へ出向しておりまして、かわりましてサブリーダーの椿の方から報告があります。

【椿サブリーダー】 椿と申します。
 生物多様性に関しては、1992年に生物多様性条約が結ばれて、地球的な規模で生物多様性を保全すべきだということがうたわれました。それ以後、その生物多様性そのものに関しての理解は、残念ながら余り進んでいない。その理由といいますか、一般の理解は、生物多様性というのは地球上に何種類の生物がいるんだというような、そういう問題が生物多様性だというふうに受け取られがちなんですけれども、普通は生物多様性の重要さというのは、生物の広がりといいますか、違う場所に違う生物がいるということ、それから、生物間の物質的なつながり、これはよくいわれる生態系のファンクションなどに結びつく問題です。それから、時間的なつながり、これは生物の系統の問題なんですけれども、そういうつながり全体を生物多様性と考えるべきです。このプロジェクトで重点を置いてやろうとしている問題が、最初の、生物の空間的広がりが生物多様性の意味として重要なのであることを示そうとするのがこのプロジェクトの統一的なテーマということになります。広がりということに関連するのは、生息地の破壊や生態系の単純化などによって起きる絶滅の問題がありますし、新しい問題として、侵入生物や遺伝子組換え生物の問題が関係してきます。
 ここではサブテーマとして、5つとりあげます。1番目が、地域スケールにおける生物多様性の動態、2番目に流域ランドスケープにおける生物多様性の維持機構、3番目、生物群集における生物多様性減少機構の解析、4番目に侵入生物の問題、5番目が遺伝子組換え生物の生体系影響、こういうふうに5つのテーマを掲げております。
 それぞれの目標なんですが、保全すべき生物多様性として、遺伝子レベル、種レベル、生態系レベル、幾つかのレベルがありますけれども、1番目のサブテーマはその生物多様性の広がりと時間的変化を把握するということを目標にします。1つの例として、例えば生態系レベルで、生物多様性の観点から生態系の種構成から生態系評価モデルを開発して、保全すべき生態系の策定をするというようなことを考えております。例えば、これは日本に産するチョウの種類数、どこにたくさんの種類が多いかということを地図化したわけですけれども、種類数で多いということを単純に考えて、ここが保全すべき場所だというふうに考えてしまいますと、例えば長野県あたりだけが保全対象地域というふうになってしまうんですが、これを種構成を考えまして、なるべく多くの種類の生物、この場合はチョウを効率的に保全する場所を決めてやるというふうなやり方をしますと、例えばこんな結果になります。いろいろな場所がそれぞれ選ばれるわけですが、それをグループ分けするための線を引いてみますと、動物の地理区の境界をあらわす線とよく似たところが出てきます。つまり、動物地理区を単位として、保全すべき場所を選定すべきだということが、ここから伺えるわけです。これは非常に粗い分析なんですけれども、精密化して、例えば日本の現状の保全地域の見直しをやるというような提言ができるかと思われます。
 それから、2番目のサブテーマは、流域ランドスケープにおける生物多様性の維持機構ということですが、これは流域というのは川もありますが、川のまわりの陸域を含んだ概念です。ため池なども流域の中に存在する1つの単位生態系です。そこが人為的に改変されたり、あるいはブラックバスみたいなものが入ってきたときにどういうふうに種構成が変わるかというようなことを分析してみますと、例えばバスがいる池とバスがいない池とで、緑のところと赤なんですが、そこに分布している生物の種類層ががらっと変わってしまう。つまりバスがいると、ほとんどいなくなる生物と、ちゃんと共存できる生物というのが分かれてしまいます。こういう攪乱要因が入ると種構成が単純化するというようなことが言えます。
 それから3番目は、群集及び生物多様性減少機構の解析です。野外実験的には非常に種間関係の解析が難しいですから、個体ベースモデルを用いたシミュレーション実験を中心にして解析を行います。決定論的な要因がいろいろあったり、あるいは確率的な要因がありえますが、それぞれの要因が種の絶滅、あるいは群集構成にどういうインパクトがあるかということを検出しようというのが目的です。例えば、応用の例としては、温暖化が進みますと、植生の分布帯が変わると思われます。これは温度が変わると、即、変わるわけではなくて、北にいる植物と南にいる植物との競合関係でじわじわと変わっていくというふうに予想されます。この速度の評価などが、これでできるのではなかろうかというふうに考えています。
 それから4番目が侵入生物の問題です。これは在来生物に対する影響評価ということですが、そのほかにも寄生虫や病気を伴って侵入生物が入ってくる可能性があります。そこら辺の実態把握をして、データベース化しようというのが目標になります。
 それから最後の遺伝子組換え生物なんですが、これは農林水産省などが考えています食品安全性評価とは違った、環境の視点で見た安全性評価手法の開発が必要だろうというふうに考えております。例えば遺伝子組換え大豆から、在来の野生種である近縁のツルマメ、これに組換えた遺伝子が伝播する可能性があるかどうかというような実験を考えているわけです。そのほかにも、例えば遺伝子を組換えたことによって、ほかの遺伝子の遺伝子発現にどういう影響があるか1つの遺伝子を変えたことで、予想しなかったような性質が生物にあらわれるというようなところを検出していこうというふうに考えています。
 これは所内で計画している部分ですが、このほかにも、大学やほかの研究機関との研究も伴って研究推進を遂行していこうというふうに考えています。
 以上です。

【西岡国環研理事】 生物多様性の話でございました。また、このほかにも、領域の方でも多くの研究がなされているんですけれども、このプロジェクトの方ではこのようなプロセスでやっております。
 何かございますでしょうか。

【加藤委員】 すみません、たびたび恐縮です。
 生物多様性について、たくさんの問題がもちろんあるし、興味がある問題がたくさんあると思うんですが、私のような人間から見ると、もし地球の今世紀における温暖化が、IPCCが言うように、6度近くまで上がっていくとなると、一応1.4から5.8と、こうなっていますね、6度じゃなくても、3度、4度、5度なんていう勢いで進行していったら、これはもうほとんど破滅的な影響が出てくるんじゃないかというふうに素人ながら思っているわけなんですけれども、先ほどちょっと温暖化に少し触れられたんですけれども、そういう問題というのは、温暖化がどういう影響か、それは影響の問題として、生物多様性としては余り関心が薄いというふうに理解していいんでしょうか。

【椿サブリーダー】 薄いということではないんですが、これまではほとんどやって来なかった。ここで開始しようとしている、例えば地域スケールの生物多様性の動態、ここでいろいろな種類の生物の分布をモデル化するというようなことが可能です。そのときに使うパラメーターとして温度指数なども使用します。種類によってはどういう生物の移動があるか、あるいは高山地帯にいる、温度が変化することによって分布域がなくなるとかというような推定は不可能ではないです。直接、今言った問題をやろうというところまでは、今のところは考えていませんけれども、そのベースになるような仕事にはなると考えています。

【加藤委員】 生物多様性自体で大変な問題があるから、もちろんそれはそれで結構だと思うんですが、一方で、もしIPCCがいうような、あのスピードで温度上昇が起こるとすると、非常に破滅的な影響になるんじゃないかと、いろいろな他の要素よりも卓越した要素になりはせんかというのを素人ながら心配しているんですが。

【椿サブリーダー】 特に冬場の問題が上がるということで、越冬できる生物が多分南からたくさん入ってくるという影響と、それから、植物の移動が温暖化にキャッチアップできないという問題があって、それがどのぐらいおくれるのかというのが、生物の絶滅にきいてくるんだろうと思われますけれども。

【山田審議官】 ちょっと教えてください。温暖化、従来は緯度を横に動いていって対応していくという、ところが、来年、国際山岳年だとか、きのう来られた人が、山とか何かの高低差で植物が対応していくという研究が世界的にないんだという話を聞いたんですが、それはどういうふうにお考えになるか。

【椿サブリーダー】 多分、今、山岳地帯の上の方に取り残されている生物にとっては非常に重要な問題だろうと思いますね。それと、熱帯地域というのは逃げ場がないですよね。植物自体の分布情報というのがなかなかなくて、群落単位では地図ができているんですが、種類ごとの分布というのが、細かい地図がないというのがひとつ研究としてはやりにくい点ではないかと。

【西岡国環研理事】 おっしゃるように、高く上に上っていくという適応のスタイルがありまして、理論的にはいろいろ言われているんですが、案外データが余りないということでございます。現実に、もう既にスイスのあたりで1メートル植生が上がっているとか、そういう報告がなされているんですけれども、果たしてそれが一般的・普遍的な話なのか、どうやってそれが適応しているのかということについてはまだ十分ではないという状況にあります。

【椿サブリーダー】 今のところは100メートルに0.6度ずつ温度が上がるというような法則を使って、その区域に適用するぐらいの方法しかないんじゃないかと思うんですが。

【西岡国環研理事】 では、よろしゅうございますか。

【森下委員】 多様性というものを温暖化と結びつけて研究をするというのはすごく難しいことだと思うんです。多様性が何かというのが余りはっきり検討されないうちに、即温暖化みたいな雰囲気みたいなものを持っている、そのものでやっていくということと、それから、植物が持っているものと動物が適応していくものは基本的に違いますから、種間の生物層の解析ができないうちに温暖化問題というのは無理かな、それからもう一つは、多様性の減少というようなことをされるときには、多様性の減少の機構を決めるときには、多様性の増加という、上の方に行くものと、こっちに減少していくものとがあって、何が平均的なものかというのを導き出してきて機能というのがはっきりするのではないかなというのがあるので、プロジェクトの名前が刺激的過ぎるので……。

【西岡国環研理事】 私も温暖化のことをやっているんですけれども、具体的に温暖化の影響はどうなるかという話に今まで来たんですけれども、ちょっと違うんじゃないかという兆候がだんだん出てきまして、むしろ今、椿さんがやっているように、ある地域をとりまして、温暖化だろうと何だろうと、一体この条件はどうなっているんだ、それは温暖化もきくかもしれない。だけど、ほかのことだって人間がやることだろうと。いろいろな影響について考えていこうという方向にちょっとずつ変わりつつあると私は思っています。

【森下委員】 そうですね。それから、ため池の研究をして、それが即沿岸帯の環境の評価につながっていくというのも、これもぎょっとするようなことですね。何かもう少しテーマと研究の課題というのを整理しないといけないんじゃないかな。

【西岡国環研理事】 今の御意見はあれでしょうか。今の、彼のあれでしょうか。それとも……。

【森下委員】 そうではなくて、このプロジェクトのテーマの、それから中間報告するまでの間に少し整理をしないといけないことがちょっと多いんじゃないかな。何しろでっかいことをこれだけで。

【西岡国環研理事】 そうなんですけれども、多様性のテーマは非常に絞り方が難しいものですから、これまで何年もやってきて、あっち行ったりこっち行ったりしているのに、だんだんと成長していると思います。また後ほどディスカッションしたく存じます。
 それでは、次へ進みたいと思っておりますが。次は、若松の方からPM2.5等々の研究について。

【若松リーダー】 若松と申します。課題名は、大変長いんですけれども、略称「PM2.5・DEP研究プロジェクト」ということで、今年度から開始したプロジェクトであります。
 研究の背景等なんですけれども、特に粒子状物質の中でも微小粒子というのは健康影響が大きいということが言われておりまして、米国などでは、環境基準が新しく追加されたという背景があります。日本におきましても、特に沿道大気汚染関係でSPMの問題が大変重要視されておりまして、中でも特に大型ディーゼル車から出るディーゼル・エクゾウスト・パーティクルス、DEPというものの対策というものが迫られているといった背景にあります。
 特にディーゼル車から出る微小粒子は大変小さな粒径に分布しておりまして、数十ナノメートルぐらいの範囲で発生するわけですが、これが環境中で成長するわけです。こういった粒子状物質は、発生源から直接排出されるものだけではなくて、ガス状物質が環境大気中で反応プロセスによって微小粒子となるという過程もあるわけであります。特に微小粒子に関しての研究というのは大変重要だということが前から指摘されていたわけですが、なかなか学問的にも難しいということで、私たち、当研究所でも、過去20年ぐらい、例えば光化学大気汚染とか、NOxについての研究というのはある程度成果をおさめてきたんですけれども、なかなかSPMの段階まで達していなかったという事情があります。特に二次生成粒子状物質につきましては、炭化水素の影響も大きいわけでして、その辺の研究が昨年度で一応終了いたしまして、研究所としても、SPMにとりかかるステップになっているという、そういった状態にあります。実際、SPMの研究をするためには、発生源の状態でありますとか、あるいは環境中でどう変化するかという、そういった一連のプロセスの理解が必要なわけでありまして、それを理解するためにも測定法ということも大きなテーマになっているわけです。ですから、この研究におきましては、こういう発生源の把握、環境中の動態把握、測定法の開発の部分が1つの大きな研究のまとまりとなっております。これと同時に、SPMというのは、人への健康影響が大きいということなわけですけれども、形態や粒径によって影響の程度が違うわけであります。横軸がマイクロメートルで書きました粒径ですけれども、特に10ミクロンより大きい粒子というものは、鼻とかのどでとらえられて、体内に入る率は少ないんですけれども、ずっと小さな粒径になりますと、肺とか器官に奥深くまで到達して、その健康影響を及ぼすという、そういったことがあるわけであります。
 こういったことから、いわゆる環境調査の動態ばかりではなくて、人の健康リスクの評価というものもまた同時に実施する必要があるわけであります。ですから、この研究におきましては、いわゆる物理化学的な研究と、人へのリスクの、健康影響の、両方をにらみながら、発生から影響までを含めて、一連の研究をするということで今年度からスタートしております。
 この研究を進めるに当たりましては、研究所の内部での物理化学系の研究スタッフと、健康系の研究スタッフが一緒になってやっていこうという、そういったある意味では、ボトムアップ的な研究スタイルをとっております。
 1つ、例ですけれども、これは疫学調査グループの研究スタイルなんですけれども、例えばPMとかDEPがそれぞれ健康にどう影響を及ぼすかということを調べるために、できるだけ正確なPMとかDEPの分布情報を把握することをやります。分布情報の把握に関しましては、物理系のグループがデータを提供いたしまして、日本全国のメッシュデータをつくるという、そういったデータを疫学のグループに渡し、疫学のグループがそれを使って、その曝露評価をするという研究を考えております。
 また一方、この研究グループにはお医者さんも入っていまして、いわゆる人間そのものをとらえた研究、いわゆる診療疫学的な分野の研究、それから、動物実験のグループも入っておりまして、実際、動物にディーゼル排ガスを曝露して、どうそれが影響を及ぼすかという、そういった研究を総合するというスタイルもとっております。
 具体的には5つの研究テーマをサブテーマとして設定しておりまして、1つは発生源の把握、2番目が環境動態の関連、解析、3番目が測定、4番目が疫学、5番目が毒性という分野ですけれども、5年間の最終的なアウトプットといたしましては、特に業界とかが、実際の対策を実施するに当たって役に立つデータを、役立つ具体的な知見を提供するということを1つの大きな目標にしております。
 それからまた、行政サイドに対しては、政策を策定するために必要なシナリオやデータを提供するということをアウトプットの目標として研究を開始しております。
 具体的な課題の配置ですけれども、いわゆる発生源の把握、動態解明、疫学、毒性測定法とあるわけですが、ここにありますような、これまでのところ、例えば日本全国の道路情報などをもとにして、幹線道路からどういったDEPが排出されるかというメッシュデータの作成は現在のところは一定段階まで進んでおります。
 もう一つ、具体的に、特にDEPに関しては、車の発生源が主要なわけですけれども、どういった発生源がとけのように出ているかということを調べるための方法として幾つかの方法をこの中では提案しています。1つは、実際の車からの排ガスのテストを、我々の研究所でもやっとおくればせながら始めました。今年度、シャーシダイナモシステムというものが導入されまして、そのシャーシダイナモを使って、車の排ガスから出る粒子状物質を把握する研究を開始しております。これまでもシャーシダイナモの研究というのは、東京都さんとか各業界で結構やっているわけですけれども、これまでにやられていなかったいろいろなテスト、例えば環境条件が大きく変化したときとか、車の種類が変わったときとか、燃料組成の変化とか、これまでになかったデータ収集をこれからやっていこうというふうに考えています。
 一応5年間のプロジェクトの研究フローなわけですけれども、2つの大きな固まりで考えていまして、1つは発生源の動態解明と影響評価という部分、それからもう一つは、疫学・毒性のグループのインパクトアセスメント的な話、それを並行しながらやっていくということを考えています。今年度は全く最初の年度ですので、特にこれまでの研究を総合的にレビューして、実際何をターゲットとして具体的に進めていくべきかということをやるということをまず現在進行しておりまして、それと並行して、実際、至急進めるべき実験システムとか観測システムの構築ということを行っております。
 あと、3年間かけて具体的なデータの蓄積とか解析評価を行って、最終年度には、さっき申しましたような、役に立つ成果が出るような研究をしたいというふうに思っております。
 具体的な研究内容ですけれども、研究手法としては、実験室的な研究と、あとはフィールド観測的な調査・研究、それから解析評価の研究に分かれております。大きな固まりとしては、そのシャーシダイナモ実験でありますとか、風洞実験のような室内でやる実験、それから、測定法の開発、とくに粒子状物質に関しては、炭素成分の分別測定というのは大変重要になっていまして、その辺のシステム構築をこれからやろうと思っています。室内実験とあわせて、いわゆるフィールドにおきましてリアルワールドなエミッションを把握するということで、トンネル調査でありますとか沿道調査を実施します。またこれとあわせまして、シミュレーションモデル、これにつきましては、これまでガス状物質に関しましては、かなり経験とこれまでの成果があるわけで、それをベースにして、それにさらにSPM、PM2.5・DEPの発生源の情報を入れてモデルを構築するという仕組みになっています。これとあわせまして、疫学調査、動物実験のデータを併用しながら、全体的なPM2.5・DEPの実態把握と曝露評価をしたいということであります。
 この全体の流れの中で、共通するツールとしては、例えばエミッションファクターの問題、どういった車からどういったDEPが出るかとか、それがどう分布しているかという、GISを使ったデータベースを各グループの共通のツールとして開発して、それをお互いに使う予定にしております。
 今年度の研究目標ですけれども、さっき申しました、繰り返しになりますが、予備的な観測とか基礎実験を今行っております。具体的なテーマとしては、5つのサブテーマごとに研究計画をつくっておりまして、特に発生源のグループでは、できるだけ正確に発生量を把握するということを重視しております。
 それから、環境動態の把握に関しましては、これはフィールドが実際の日本の各地域になるわけでして、できるだけ地方自治体の研究所等の連携を図っていきたいということであります。
 それから、4番目、5番目に関しましては、さっき申しました、GISシステムでありますとか、今、実際、今年度まで継続しております毒性評価の特別研究の知見をまとめるということを今年度の目標にしております。
 ちょっと字が小さいんですけれども、これまで何をしてきたかということを簡単にまとめてあります。今の中で、大体12項目ぐらい研究の課題がありまして、それが今どうなっているかという話ですけれども、シャーシダイナモ実験施設に関しましては、一応基礎的な装置の完成がことしの春、終了しまして、今も基礎的な実験をしているという段階であります。これはきょう、見学のときにぜひごらんいただきたいと思います。
 それから2番目から6番目に関しましては、昨年度終了いたしましたVOC特別研究というのがあります。これは炭化水素関係の特別研究ですけれども、それを最終年度、昨年度の後半あたりから、このPM2.5の研究に若干切りかえまして、その流れの中で実際のトンネル調査でありますとか、モデル開発、風洞実験等を進行させております。
 それから7番目にありますような地方自治体との共同研究、これはC型共同研究という名前をつけておりますが、共同で実態の解析を進めております。
 それから、あと測定機器の開発につきましては、若干、今進行がおくれているんですけれども、やっと基礎的な機器の導入が終わって、基礎実験をしているという段階であります。
 それから、10番目、11番目の疫学関係に関しましては、これは環境省でかなり大がかりな疫学調査をやっておりまして、そこに我々のスタッフも主要なメンバーとして入っておりますので、環境省との共同研究という形でデータを活用していきたいと思っています。
 12番目に関しましては、今、進行しております毒性評価の特別研究の最終年度に当たりますので、それをまとめて、ディーゼル排気から出る物質の、呼吸器・循環器系の影響を明らかにしていくという仕事のまとめの段階に入っております。
 1つは、これから見ていただく施設の概要ですけれども、ここにありますようなシャーシダイナモ装置では、一般の環境条件、普通の車のテストでは25℃、50%という環境条件で、ある定められたモードで走った車の排気ガスの分析をしているわけですが、この装置では、環境条件を大きく変えるような仕組みを持っていまして、例えば寒い朝のスタートと暑い夏とではどう違うとか、そういったかなりきめ細かな発生源の調査をこれではすることになっています。
 それから、車のテールパイプだけの測定ではなくて、テールパイプから出た汚染物が環境中に広がったときに、どういった挙動をするかという実験もできるような装置もつけておりまして、この辺につきましては、今年度の後半あたりからデータが出る予定になっております。
 基本的には、今年度は公金5,000万円ということでスタートさせてもらっているんですけれども、だんだん予算をとる努力もしていまして、下の方に書いてありますけれども、環境省の競争的資金であります環境技術開発推進費などをいただくことになりまして、この予算では、実際の車に車載型の排ガスのモニタリング装置を乗せまして、実際の市街地で走ったときにどういった発生があるかという研究をすることになっています。こういった課題が新しく今年度追加されました。来年度以降、実際のフィールドの測定も含めて研究していくということを考えています。
 こういった環境研究所独自の研究だけではなくて、来年度から地域密着型研究というのが川崎市と共同で実施できることになりまして、実際の現場に対応したいわゆる自動車問題についても、このプロジェクトの中で位置づけて実施していこうというふうに思っています。
 以上です。

【西岡国環研理事】 PM2.5のお話でございました。

【坂本委員】 一番基本的なことは測定の部分になってくると思うんですね。今回やられているのは、リアルワールドと自動車排ガスを結びつける。それからまた、今度影響の部分という話で、これはまさに一番やっていただきたいところになるわけですけれども、その場合に、従来やられている、今の希釈トンネルをやったとしても、非常に高濃度のものを希釈する条件で、従来のCVSでは全くできないから、その排ガスチャンバーという、それをどういう形のものをやられるのか、私、今、わからないんですが、最近非常に、一部を取り出して、相当大きく希釈して粒子をはかるとか、そういったものも組み込んでおられるのか。
 あともう一つ、今までの環境庁の調査でやっている疫学調査というのは、SPMのデータを使って解析をしていて、PM2.5にどこまでそれができるか。一部PM2.5も測定をしていますけれども、その辺のところをちゃんと見ていくのと、それからもう一つは、先ほどのディーゼルの60から70ナノぐらいにピークがあるとおっしゃっていましたけれども、その下のウルトラファインまでのところまで、この5年のどこかで組み込んで、切った形の見方をしていかないと、政策を今、現実にわかっているものだけの政策対応では、先を見た対応のところへするためには、PM2.5の先を、5年の間でどこかにウルトラファインを組み込んでほしいなという気がします。

【若松リーダー】 希釈に関しましては、幾つかの希釈トンネルのほかに、直接排ガスをある大きな部屋に直接出して、その中で粒子の成長を見ることを考えていまして、より現実に近い条件でエアロゾル成長の時間変化を見たいと思っています。
 それからPM2.5、一般環境調査の部分についてなんですけれども、環境省でPM2.5についての、うちの疫学のグループが結構関わっています。疫学調査というのは独自にやるのがなかなか難しいので、できるだけ今あるデータを生かしてやっていくという方向で考えているんですけれども、坂本先生は委員のお一人ですので、ぜひこのプロジェクトにもお力添えを。

【坂本委員】 今、チャンバーのところは、ずっとガスが流れていて、ごく一部を取り出して、それを取り出して、それを希釈して粒径分布をはかるような小型の装置がサンプリングのところのができて、それを恐らく使われて粒径分布なんかも同時に見ているような事を考えたら、このチャンバーと、もう一つ別の、対にやられた方がいいかなという気がします。

【若松リーダー】 幾つかのオプションができるように、実験装置はかなり研究的につくっていますので、そこはぜひ御指導いただいて。

【坂本委員】 今日は途中で行ってしまうので、また後で見せていただきたいと。

【西岡国環研理事】 後でまた見ていただくことにいたします。
 よろしゅうございますか。
 それでは先に進ませていただきますが、次の点の重点特別プロジェクト、もう一つが東アジアの流域圏における生態系機能ということで、渡辺リーダーから説明いたします。

【渡辺リーダー】 水・土壌圏環境領域長の渡辺でございます。
 東アジアの流域圏における生態系機能のモデル化と持続可能な環境管理プロジェクトということで、4つの課題をサブプロジェクトを立てさせていただいております。
 1つは、衛星データを利用したアジア・太平洋地域の総合的モニタリングです。2番目が、長江・黄河流域における水循環変化による自然資源劣化予測とその影響評価。3番目が、東シナ海における長江経由の汚染・汚濁物質の動態と生態系影響評価。4番目が、沿岸域環境総合管理という4つのプロジェクト、これは従来、特別研究であるとか、重点共同研究といった研究で独法化前まではそれぞれ走っていたものを、今回の組織改革とともに、新たな切り口でもってそれをまとめた形のものがこの姿でございます。このまとめるに当たって2つのキーワードがございます。1つは流域圏という言葉でもって、1つの単位を限って、その中で詳細に検討していこうという考え方、かつその中で、見る切り口としては、生態系機能という言葉をここではあえて使っておりますけれども、これはもう少しかみ砕いて申し上げると、生物圏を通しての水の循環機能であるとか、物質の循環機能であるとか、浄化機能も含めて、水循環機能であるとか、それからもう少し人間社会に関係のある生物生産、農業生産といった方がよろしいでしょうか、そういったものも含めたマクロストピックな生態系機能というものを、流域圏のレベルで評価していこうというのが、このプロジェクトのコンセプトでございます。
 この全体の4つのプロジェクトを最終的にどういう形のフレームワークでまとめていって、5年後のアートパームに持っていくかということで、現在、私どもが考えておりますのは、2つのフレームワークを考えております。1つは、中国を中心といたしますアジアの流域圏の環境管理という形のプロジェクトでありまして、長江を中心といたします陸域から海域まで含めた、沿岸域を含めた持続可能な環境管理のための基礎的な技術整備を確立したいということで、現在環境省が行っておりますアジア・太平洋環境イノベーションプロジェクトというものに直接リンクする形で、この流域圏の環境管理というプロジェクトを立ち上げております。このアジア・太平洋環境イノベーションプロジェクトというのは、先日、2週間前に東京で行われました「エコアジア2001」というところで提案をされまして、このプロジェクト自身が各国のエンドースをいただいているものであります。
 かつこういった長江流域を中心とした水物質循環機能というものの評価というものは、現在、国際的に2001年からスタートしました、UNEP等が中心となって行っております、4年間で世界のこういった生態系機能を評価しようという、いわゆるミレニアム・エコシステム・アセスメント、MAというもののプロジェクトが現在動こうとしておりまして、その中で5つのサブグローバルプロジェクトが現在提案されておりますが、その1つが中国を対象としたサブグローバルプロジェクトで、その中で、中国科学院と、私ども国立環境研究所が共同提案をして行っておりますのが、中国西部開発を対象とした流域レベルでの統合エコシステム・アセスメントということを、現在MAに提案をしているところでありまして、こういったところを通じて、アジアの流域圏の環境管理に貢献していきたいというのが1点であります。
 それからもう一つは、国内の問題につきましては、現在内閣府の総合科学技術会議が主導しております自然共生型流域圏・都市再生イニシアチブというプロジェクトが来年からスタートしようというところでございますけれども、日本の流域圏の環境管理というものは、やはりアジアと少しまた色合いが違うわけでありますけれども、基本となります、例えば流域を水の循環であるとか、物質循環のモデルを確立するとか、それから沿岸域でのいろいろな機能を見ていくといった学問的なレベルでのフレームワークは、私どもは基本的には同じであるという考え方で、ただ、それはスケールが違うということと、もう一つは、日本の流域圏の場合に、強く都市再生のイニシアチブから要求されていることが、都市とのかかわりをどうするかという点が非常に重要であるという指摘がありまして、その点がアジアも今後も重要になってくる観点があるわけですが、そういったものを含めた統合的な環境管理といったものの手法を2つのフレームから導き出して、5年後にはこういった環境管理に貢献できるような手法を出していきたいというふうに考えております。
 具体的にいいますと、例を挙げて御説明いたしますけれども、まず1番目のアジア・太平洋地域における統合モニタリングというのは、具体的にはどうするかということでありますが、これは現在NASAが運用いたしております、約1年になりますけれども、MODISと呼ばれる新しい衛星がございます。これは1キロメッシュの、一番細かいところは250メートルの分解のがあるわけですが、こういったセンサーを用いまして、特にこのモーディスのセンサーの特色といたしましては、植生からクロロフィルAを含む植物の増加プロセスを計測することができるという、そういう多用な機能を持った衛星センサーでありまして、これを現在NASAが運用しているわけでありますが、いよいよそれぞれの地域レベルでこういったネットワークシステムを組んでいって、より詳細に、またより頻繁に地域レベルでこれらのデータを解析していこうということが現在世界的に行われつつありまして、その一端として、我々、国立環境研究所が中国科学院と共同して現在運用しているものであります。国環研は現在ウルムチに、この4月にこのプロジェクトはスタートしたわけでありますけれども、現在ウルムチにほぼ、この衛星受信局を完成しつつありまして、来月からそのテスト運用が始まる予定になっております。一方、中国科学院は、北京に現在、4月に既にステーションを完成しておりまして、この2つのステーションを共同でマージすることによって、より広い、ほぼ東アジア全域を1日に2回の頻度で観測することができるというシステムが現在できつつあると。現在、私どもの予定では、12月には完成するだろうというふうに考えております。
 一方、この中国だけではなくて、現在、シンガポールのステーションとも交渉に入っておりまして、こういったネットワークを将来的にはアジア全体、または太平洋域、オーストラリアを含めればそうなりますでしょうが、一応そういったところを対象にネットワークを組んでいこうということで、非常に順調に現在進んでおります。
 また、それぞれの異なった生態系における地上のバリベーションというものと、そこでの水物質循環というもののバリデーションをやる必要がございまして、現在、5つの生態系ステーションというものを中国と共同で運用をしておりまして、この12月にそのワークショップを開く予定になっておりますけれども、1つは、現在既にスタートしております、これがハイアティテュードの装置、これが設置されているタワーと、現在得られているデータの一例です。現在、来月の初めに設置を予定しておりますのが、今度は畑地でありまして、禹城(イーチュン)というところに設置する予定でありまして、ここは麦とトウモロコシの畑が予定されております。
 一方、この長江の流域の武漢近くに水田地帯がございまして、ここのシチュエーションを1つ設置する予定。それから、ここが森林で、あと、ここが半乾燥地の生態系になっておりまして、こういったところでの詳細なリアルタイムデータをもとに、まずは中国を対象として、特に長江の流域、黄河の流域といったところを対象とした、水循環・物質循環を中心とする生態系機能というものの評価手法を開発していきたいと考えております。現在までに得られております、例えばこの禹城のステーションがこの黄河のすぐ近くにあるわけですが、ここで得られている、中国側のステーションの結果をもとにした、例えば植生指数であるとか、それから、葉っぱの面積をあらわす葉面積指数であるとか、光合成有効放射、反射率、地表面の温度といったような、こういった情報が断片的に得られるような状況になってきておりまして、本格的な稼働が行われますと、こういったもののデータが、雲がなければ毎日出てくるということで、例えば温度だけではなくて、我々が最終的なアウトプットとして考えておりますのは、土壌水分量というものがそれぞれの物理的なパラメータからどう推定することができるかということで、このステーションにおいて土壌水分計と、その推定されるモデルからの値等を計算しようと考えております。
 あと、2番目のテーマといたしまして、長江の流域そのもののマクロスポピックな水及び物質の予測モデルを我々としては開発する必要があるということで、過去、既にこの活動をやってきておりまして、例えば非常に詳細な流域での土地利用データというものが得られております。それから、標高データといったものもございます。そういったものを含めて、それぞれの土地利用形態ごとにモデルを組み立てた物質モデルといったものが、現在観測されるフィールドデータとモデルとの検証を行っているところでありまして、それぞれの観測点において、非常によい結果が得られるようになってきております。
 なお、この精度というのは大気側からの降雨量の精度にかかっているということで、我々としては、観測値及び衛星のデータを使ったより詳細な降雨データの取得に努めているところであります。
 第3番目が河口域の問題でありますが、長江の流域というのは、中国でも約半分のGNPを生産するということが知られておりまして、かつ、その経済開発というものが今後、21世紀の大変大きな課題であるというふうに言われております。また、温暖化を初めとする、気候変動といったものも、この長江及び黄河における流域の水及び物質循環に非常に大きな影響を現在、もう既に及びつつあって、例えば黄河では、これは完全にクライベートの影響だけはなくて、人為的な影響が非常に大きいのですが、夏の3カ月あたりは、もう水が全く下流域には流れないという断水というような問題も起こっておりますし、また、長江においては大洪水が頻発するようになっているということで、非常に大きな水及び物質の変動がここで既に経験されているわけであります。
 また、近年のグローバルな窒素循環といったような推定からまいりますと、世界の陸域から排出される窒素の約4分の1ぐらいはこの長江を中心とする中国の沿岸域から海に排出されるというような実態のデータも出てきております。したがって、こういったものを、これは中国側との共同研究になるわけですが、生態系機能といったものの解明評価をやろうということであります。
 第4番目の最後でありますが、これは現在立案及び、海の部分については既に進んでいるわけでありますが、日本のフィールドにおいて、いかに自然を再生させ、都市との共存が図れるような自然の姿というものを出せるかということで、都市及び流域圏のイニシアチブといったところに対して、特に海を中心として、その保全計画をどうやってつくっていくかといったようなことを、海域の研究を中心として、かつ都市及び流域圏とドッキングさせた形で現在進めようとしているところであります。
 以上が、かいつまんだ御紹介であります。

【西岡国環研理事】 どうもいつも時間が何か少々足りなくなってしまった申しわけありません。よろしゅうございますか。
 ちょっと先へ急がしてもらいまして、次は環境ホルモン内分泌かく乱化学物質の関係が、リーダーの森田の方から説明があります。重点特別研究プロジェクトというのは6つございますが、これが最後です。

【森田リーダー】 少し順番が入れかわりましたが、「内分泌かく乱化学物質及びダイオキシン類のリスク評価と管理」という、そういうタイトルの重点特別研究であります。
 やっています研究の全体のスキームはこんな状況になっておりまして、一番左側の方に測定手法の開発、それから、ここには単に化学的な計測だけではなくて、評価方法を含めた生物学的評価法といったものも入ってきます。それから影響の解明、実際にどんなことが起こっているかということについての解明であります。第3にいわゆる環境ホルモン物質によって汚染されていると考えられる環境の状況というものを把握しようとしているということがここにあります。それらを合わせまして、対策技術や手法の開発に展開しようという4つの柱を立てて進めているところであります。
 具体的にここに、これから少し急いでお話をさせていただきますが、化学物質と計測方法というところで、主として現在使っておりますのは、GC-MS法、LC-MSの方法ですけれども、そのほかに負イオン化法、負イオン科学イオン化手法、あるいは液体クロマトグラフ磁器分析法などを展開しつつあるという状況でありまして、ここに関東地域のエストロジェントという女性ホルモンそのものの測定数の例が、ここでは載せられております。
 それから、インビトロな手法、これはいろいろな化学物質が現在生産されております。ケンカブストラクト上に載っておりますのは、もう3,000万種を超えておりますが、地上に出ております10万種の化学物質が存在して、それらのものがそのような作用を持つかどうかというのを簡便にアッセイをして、スクリーニングをかけていこうというのがこのアプローチであります。酵素免疫測定法、あるいは組換え遺伝子を用いた検出法などを展開して、メソッドの開発、それからその応用に広がりつつあるという状況です。
 淡水生物では、特に魚の雌化などがよく話題になっていますが、それに及ぼす化学物質の影響を評価するような評価法、そしてまた、現在の世界の状況はどうなっているかというのを調べようとしているところがこのテーマであります。
 それから、環境ホルモンの海産生物への影響という、特に巻き貝につきましては、従来より少しずつ研究の蓄積が出てきておりまして、イボニシに始まりまして、いろいろな巻き貝、そして現在ではアワビのような貝におきましても、卵精巣というか、雌であるにもかかわらず、精巣が発達してくるような、そういう現象が見出されようとしております。
 なお、あわせて、海の魚にも徐々に展開しているところであります。
 それから、実際の環境中での環境ホルモンの影響の調査といたしまして、2つのフィールドで実行しております。1つが、霞ヶ浦を中心とした野外の調査でありまして、ここに出ておりますように、主にヒメタニシと呼ばれる貝を中心にして、今、調査を広げているというところであります。一部の魚についても、その雌雄の状況を把握する作業もやっております。
 もう1つは、東京湾を初めとする、閉鎖性な海域につきましても、特定の魚、例えばコノシロのようなものに着目しながら、状況の把握を始めたところであります。
 環境ホルモンの影響というのは、生殖系だけではありませんで、免疫系あるいは脳神経系の影響が危惧されております。ここでは、後で環境ホルモン棟で見ていただくことになると思いますが、脳神経系への影響といったものを、かなり大きな環境の柱に育てようとしているところであります。まだ歩み出したばかりでありますけれども、MRIを使った脳のイメージング、これは機能レベルで把握するということを目指して、装置の立ち上げを現在やっているところであります。
 環境汚染レベルや生物影響の情報を地図情報に載せて、そして汚染の状況を理解し、かつまた、その対策へ役立てるために、このような情報システムの開発を、今まで少しずつ積み重ねてきております。それをまた拡充しようとしております。ここであらわれておりますのは、エストラジオールと呼ばれる女性ホルモンがどこから河川や湖に流入し、そして、海域水域にどのように存在しているかというものを描き出したところであります。
 ダイオキシンも環境ホルモンの仲間の1つというふうに考えることもできます。ダイオキシン特別措置法という法律ができて、そこで対策が打たれようとしていますが、環境ホルモンの研究の中でプログラムを動かしております。ダイオキシンについては主に2つの領域に力が注がれておりまして、1つは、簡易に迅速にはかるような計測方法を確立することによって、未然防止に役立てたいということであります。これはダイオキシン類の測定の概念図がここに出ておりますけれども、このような高分解の質量分析計を使った、極めて高精度、かつ非常に微量のダイオキシンの分析法の利用を進めつつ、一方では、例えば排ガス中のダイオキシンをその場で高感度ではかるようなメソッドの開発についても開始しているところであります。
 最後に、ダイオキシン類の健康に与える影響といたしまして、次世代の影響を中心に研究を進めております。ここにありますように、妊娠したラットに非常に微量なダイオキシンを与えて、その胎児期に受けたダイオキシンの影響が、成熟した後にどのように出てくるかを調べようとしております。例えば性器肛門間距離が女性ホルモンの影響、あるいは性ホルモンのレベルによって、それが変わってくるということが少しわかってきておりますけれども、こういった生殖器への影響みたいなものが極めて低いレベルのダイオキシンで起こると。57マイクログラム/キログラムという体内負荷量で起こるということもわかってまいりました。このような結果というのは、ダイオキシンのTDIといった基準値の設定になる基本的な情報に対しましても、今後役立てていきたいというふうに考えております。
 以上、非常にスピーディーにお話をさせていただきましたけれども、最初に述べましたように、いろいろな化学物質の、しかも非常に微小な量曝露の影響がホルモン系を介在してどのようなことが起こるか、そして、それが実際にどのように起こっているかということを明らかにしつつ、人類と野生生物の次の世代、あるいはもっと先の生命の生存基盤に関するような、そういう情報を、今、手に入れようとしていると。同時に、環境ホルモン研究というものについて、国内の取りまとめをやれるような、そういう情報発信基地として私たちの研究を位置づけたいというふうに現在活動しているところであります。
 以上です。

【西岡国環研理事】 環境ホルモン関係でございました。
 今、大体重点特別研究プロジェクトという6つのものが終わったんですが、あと2つ、お疲れでしょうけれども、おつき合い願いたいんですが。これは両方とも政策対応型研究といわれているもので、1つはごみ、いわゆる循環型社会等の話でございます。まず、センター長であります酒井の方から御報告いたします。

【酒井センター長】 それでは、循環廃棄物に関します研究・成果を紹介させていただきます。
 今御紹介がありました政策対応型調査研究の1つでございますが、その中で物質循環ごみ問題を主に扱っている分野です。昨年度、この循環型社会形成促進基本法が設置されましたが、ここで定義されております循環型社会、これをイメージしつつ、次の課題を見据えて研究をするということがこの中期計画の中での目標でございます。ここに示してございますとおり、循環型社会の定義という意味で、まず廃棄物等になることが抑制される規制社会、それから、循環的な利用が行われることが促進される社会、そして、適正な処分が確保されること。この3つ、これが3条件でもって、この天然資源の消費を抑制し、かつ環境負荷が少ないということ、これが循環型社会のイメージとして基本法で定められている定義でございます。
 その形成のために必要な課題ということで、私どもの認識を大きく3点に整理してございまして、そもそもこの循環型社会というのは、具体的にどのような社会で、かつそれはどのような尺度ではかられるのか、いわゆる指標に関する研究が必要なのではないかというのが1つ目の問題意識でございます。
 2つ目は、この循環型の社会の中での必要な技術、あるいは技術ができたとして、その技術とか処理・処分を行うシステムと、そのつなぎの部分で必要なハード、あるいはハードを含めたシステムの研究が必要なのではないかという、これが2つ目の認識でございます。
 それから3つ目で、この循環型社会でかえっていろいろな意味でのリスクはふえることはないのか。これはヒトへのリスクということもございましょうし、地球環境という意味でのリスクという、そういうような点を視野に入れていきながらということでございますが、主には化学物質によるリスク、これを考えると。それをモニタリングしようとする手法は一体どんなものを用意しなければならないか。こういった大きく3つの問題認識を持ってございまして、それに向けて、それぞれ循環型社会の評価軸、それを支える技術、そしてモニタリング手法、これを研究しようというのが、この中期計画の目標でございます。
 まず1つ目でございますが、具体的にはどのような社会か、そしてどのような尺度かというところでございますが、ここに向けては、1つの、今の共通理解としては、この一次資源の利用が少ない。そして、エネルギーの消費が少ない。それでかつ環境負荷が少ない。こういう1つの尺度が与えられているわけですけれども、さらに、その循環型社会が形成する、そのステージ、ステージでどのように評価をしていくかという意味での手法開発、それと合わせて、これは地域をイメージしてございますが、地域の基盤システム整備、このあたりの研究を中心に進めるサブテーマを1つ設定してございます。具体的には、この産業連関表と連動したようなマテリアルフロー勘定に関します研究、あるいはライフサイクル的な視点でもっての評価方法、そして、地域の適応性の判断手法、診断手法と、それからリサイクル製品の安全評価手法、こういったような手法に関する研究の部分でございます。
 技術の部分でございますが、ここはそういう意味で、今の評価尺度を頭に置いた循環処理処分技術というのはどういうものかというところで、上の3点は、いわゆる処理とか処分、もともと廃棄物をベースに研究を進めてきております。その最後のエンドオブパイプでの的確な環境管理という、そういう側面の技術が主体でございますが、そのあたりのものと、それからもう一つは、この有機性の廃棄物の資源化、ここには力を入れて展開をしようということにしています。
 3点目、モニタリング手法の部分でございますが、これは今のところ化学物質のもたらすリスクは、主にはこのダイオキシン、フランといったような残留性の有機汚染物質、あるいはこの重金属といったような保存性の物質を念頭に置いています。そのモニタリング手法、化学分析の手法という意味で、特に力を入れようとしておりますのが、このGC-MSの系統的な分析と液体クロマトグラフの分析の系統的な分析と、包括的に指標化したいということでのバランス、この2つをインテグレイトしていきます。あと、対象といたしましては、当面力を注ぐ予定でおりますのが、この有機臭素系の化合物、特に難燃材成分等に含まれる臭素に関連するような廃家電製品でありますとか、それから自動車の関係といったような、この辺には力を注ぐ予定でございます。それと、残留性の物質の中でのこのダイオキシン類を含みます廃棄物等の分解技術、これに向けても取り組みをしたいと思っております。
 こういったことで、大きく3点を御説明させていただいたわけですが、もう一つ、従来より、この国立環境研究所で、水循環に関連します研究が推進されております。その関連で、バイオ・エコ・エンジニアリング研究施設というのが今年度立ち上がりますが、そこで進められている研究の接点を意識した研究ということで、この液状廃棄物をちょっと頭に置いたような研究も1つ、この柱の中に据えさせていただいております。
 途中経過、ちょうど私どものセンター、この4月に発足をさせていただいたばかりでございますので、十分な成果、今のところ御報告はできませんが、見通しをお話しさせていただきます。
 まず1つ目の評価手法、手法開発の部分でございますけれども、ここの部分は、いわゆるマテリアルフロー環状というので、国レベルとしての物質フローがどのように把握され、それがどう現時点でどうなっているかというところの解析結果、このあたりを兼ねており、この研究をまとめていただいております森口室長の方で成果を出していただいています。その成果は、ことし初めて「循環型社会白書」が出ましたけれども、その中でデータを使っていただいてという状況がございます。さらに、そこの中での正値化、主にこの排気フロー部分でございますが、この循環資源関連部門の物質フローの細分化、主にはこの産廃の業種別、種類別の細分化等を行っていく中で、次の白書の中で貢献できることに持っていけないかと。まさに政策対応の部分で努力をしたい部分でございます。
 あと、この研究に関しましては、全体が国際的なネットワークの中で、国際共同研究ということで進められておりますので、また、生い茂る中でのリサイクルワーキンググループの中で、手法開発にも貢献いただいているところでございます。
 それから、技術の部分でございますが、このあたり、どうしても処理・処分が、やはり技術の高度化ということを出していかなければならない状況に依然ございます。そういった中での暫定的な結果でございますが、これはある埋立地のメタンフラックスと、それとそのサーモグラフによりますホットスポットのスクリーニング、こういう技術でもって早く、ある手法でもって、このメタンフラックを把握できないかということで取り組んでございます。これは実際の埋め立て場でのメタンのフラックスと、それと、その総体との関係というものを把握する取り組みで、フィールドの中である一定の相関が見え始めているというところの結果でございます。
 それから、3点目のモニタリングのところでございますが、ここで展開しようとしておりますのは、どうしてもごみ焼却という意味でのダイオキシンの問題がついてまいりますので、今後ここの臭素、塩素体といったような、両方を含むようなダイオキシン、それからPCB、これは意図的に生産してきたものの処理に向かわなければならないんですが、このPCB、そして、ポリブロモジフェニルエーラルといったところを頭に置きながら、従来、主に取り組まれておりますこのGC升での化学分析を少し拡張していきたいということと、それと、こういった物質を包括的に把握できるようなバイオアッセイ、バイオの目を使った研究展開をしたいと思っております。
 最後の水循環との設定の部分でございますが、水循環、ほかのグループでも十分取り組まれているテーマでもございますので、若干この物質循環とリンクするようなところで、例えばリンにまつわります問題、ここをちょっとシステム的にとらえる研究というものも始めていただいております。主にこの水処理過程でのリン資源の回収ができないかということで、あるリンを選択的に吸着できるような担体の開発、そして、その精度、純度をもう少し上げていくようなプロセス、そういったことで、全量を輸入に頼っているわけでございますが、このリン資源というものも少し循環型に持っていけないか、こういったところの研究も始めていただいております。そういったことで、基本的な物の流れが、生産・消費・廃棄ということで、非常に大きな流れを、こういうイメージの循環型社会に変えていきたい。そして、今のところの研究成果は、まずは技術の高度化とかモニタリング手法ということで、主には貢献することになろうかと思いますが、あわせて、社会制度的な意味での法制度、経済的な手法、そして情報化システムといったような、そういったソフト手法とリンクすることでもって成果を見せてまいりたいというように考えているような次第でございます。
 以上でございます。

【西岡国環研理事】 どうもありがとうございました。
 物質循環の関連ですけれども、御意見がございましょうか。

【高月委員】 これからのことになると思いますけれども、かなり循環型社会というのは、まさに理系だけではなくて、社会システムといいますか、文系的な側面があると思います。その辺は、この研究所として、研究所内ですべて完結するというのは難しいと思いますので、外とのリンクという面で何かございます。

【酒井センター長】 今のところ、人的な面でも、主たる専門ということで参りますと、工学系と、化学系と、それと一部の経済学、そういったところで構成された態勢でございます。今、先生の方からおっしゃっていただきましたのは、社会科学なり、あるいは心理学的な要素の部分かと思いますけれども、そういうところは所外と研究機関との共同研究等を含めて模索をしていきながら、ぜひ社会性のあるところについても一定の覚悟で臨んでまいりたいというようには認識しております。態勢づくりに励みたいと思っております。

【西岡国環研理事】 それでは、次、最後になりますが、化学物質環境リスクに関する調査・研究というのがございまして、中杉が説明いたします。

【中杉センター長】 化学物質環境リスク研究センターの中杉です。
 私どものセンターは、先ほどの酒井センター長が御説明になりましたセンターと2つ、政策対応型研究センターということでございまして、かなり政策支援型の研究でございます。そういう意味で、センターの経緯は環境省になりまして、化審法の審査を環境省が所管するということと、それから、PRTRが発効するということが、2つが大きな要素としてございまして、それに対する支援ということが1つの趣旨でございます。そういう意味で、私どものセンターでは、この研究業務のほかに、政策支援業務ということで、化学物質の審査のお手伝いをするとか、PRTR関連情報、これは来年になるわけですけれども、それをいかにわかりやすく提示していくかというようなことをお手伝いしていこうというようなことが1つでございます。そうは言いながら、研究所でございますので、研究センターとしては、効率的な化学物質管理のための高精度リスク評価手法の開発という名前をつけておりますけれども、研究プロジェクトを始めております。
 基本的な考え方は、化学物質環境リスクを高度化する。高度化するということでございますけれども、問題点の1つとしましては、環境リスクに要するコストがどんどん増大をしてきていることがあります。これはお金があれば幾らでも低レベルまでリスクを下げられるわけですけれども、どうしてもお金の制限がございますので、そこら辺をどうするかというのが1つの大きな課題になってまいります。
 そしてもう1つは、まだ未把握の管理できていないリスクというのはまだまだ残ってございます。そういうものをどうしていくかという問題がございます。そういう問題に対応していくために、かなりオムニバス的にでございますけれども、ここにありますような6つの課題を考えています。この研究センターは、先ほど酒井センター長と同じように4月から始めたところでございまして、まだ成果が上がっていませんので、研究の考え方というようなことだけしか御説明できませんけれども、6つ、順次説明をしていきたいと思います。
 最初は、変動を考慮した曝露評価手法の開発でございます。これは未把握のといいますか、リスクの評価の考え方を高度化しようということでございまして、どういうバックグランドかといいますと、ダイオキシンのように曝露量がどんどん変動して下がってきてしまう、これをどういうふうに将来的に考えるか。それから、内分泌かく乱物質の場合には、特定時期の曝露が問題になる。こういうふうに、今の化学物質リスク評価のときには、一生涯、同じ濃度で曝露されるということを前提としてリスク評価をしておりますが、こういう変動したときにどうなるのかということを考えていかなければいけないだろうというのが1つでございます。そういう意味では、全体への影響がどうなるかという部分ももう1つ重要なポイントでございますけれども、残念ながら、今、私どものスタッフでそこをこなせる人間がございませんので、今回のテーマの中では曝露の方だけ、一応こういう変動、人間活動から環境濃度、生物の体内濃度がどう変動するかと、この辺のところのモデルを開発しようというのが1番目のテーマでございます。
 2つ目は、これは化審法の審査の問題でございます。今の審査の状況というのは、化審法は毒性の試験のほかに、曝露と、完全に曝露と決めるわけではございませんけれども、分解性と蓄積性から曝露の可能性を一応考えています。これを毒性とあわせてリスクを評価するというようなことになっています。ここは少し分解性、濃縮性だけで曝露は評価できるのかという問題がございまして、実際には環境濃度を予測できればいいわけですが、なかなかそれができません。そういう意味では、届出情報、化審法の届け出が出ているような限られた情報の中から環境の濃度をなかなか予測できる手法がないということを少し考えたいというふうに考えております。基本的には分解性の情報とか、蓄積性の情報というのはありますし、そのほか、若干の物質情報が入っています。それからほかの物質を予測するなりして、環境濃度を予測しようということで、モデル開発を行いたいというふうに考えております。
 それから3つ目が、これが健康リスクの評価の高度化ということでございます。これは少し、今お話ししたものよりは、もう少し基礎的なところに入っている問題でございますけれども、化学物質の感受性というのは人によって非常に違うだろうと考えられます。そこで、リスクの感受性の高い要因を解明して、それを将来的にはその解明に基づいた、解明したことを参考にして健康リスクを評価する手法を開発していきたいということで、その要因の解明ぐらいまで、それを検出する方法というような研究をしていきたいというふうに考えています。
 それから4番目がバイオアッセイでございます。ほかの部局でのバイオアッセイは随分やっているわけでございますけれども、私どものところは、バイオアッセイを実際に管理する場合に使うということを考えたいというふうに考えております。基本的には、リスク管理の課題として、管理をコストの抑制と未把握のリスクの回避の両方の問題がございます。それぞれに、例えばバイオアッセイでいいますと、モニタリングの効率化、あるいは包括的なリスク評価手法として用いるというふうな考え方がございます。それぞれに用いる場合に、どういう要件が必要かということの整理をして、既存の、これまで非常に多くのバイオアッセイ手法が提案をされています。それらについて、この特性から、要件から見て評価をしていくことを考えています。いいものがあれば、それを実際に使えるような形に持っていきたいというふうに考えています。
 もう1つ、この研究では、バイオアッセイの手法というのは、あるものが測られるわけですけれども、それが実際にどういう意味を持っているかということが非常に問題になります。そこら辺のところも少し研究をしていきたいというふうに考えてございます。
 それから4つ目は、生態影響の問題でございます。日本はまだ他の国に遅れており、生態影響の観点からのリスク評価というのは全く行われて、全くというと語弊があるんですけれども、行われておりません。そこら辺をどう取り組むかということで、きょうも午前中、化審法に生態影響の評価の観点を検討する委員会があって、東京へ出かけていたわけですけれども、そういうときにどうするかということ、もう一つ、水の環境基準の設定をするときに生態影響の評価を入れるというふうな観点がございます。こんなことをやっていくときに、例えば課題として、我々が考えておりますのは試験生物の妥当性をどう評価するか。生物によって化学物質の影響というのは非常に違ってくるのではないかということで、ある生物について試験した結果、それが生態系の評価として、今のところ試験生物の試験結果で全体を評価しなければなりませんので、それが適当であるかどうかというのを判断するための、少し試験生物と化学物質の関連を分析したいと考えています。これはかなり定性的な話になって、定量的な、いわゆるQSARみたいなところまでは到底行かないと思いますけれども、そういう情報を整理したいということを考えています。
 それからあとは、水の方ではモデルをつくって、化学物質の流れ、動き、広がりを把握していきたいというふうなことを考えてございます。
 6つ目は、やはり化学物質でリスクの管理のコストを下げるのは、社会の合意をどううまくとっていくかということでございまして、そのためには、リスクコミュニケーションが必要であるということは、もうだれもが言っていることでございまして、そのための手法ということでいろいろなことを考えてございます。
 1つは、ここで上げていますのは、データベースを我々も一応公開してございます。このデータベースは、単に数字が乗っかっているだけというたぐいのものでございますので、一般の市民の方が見られるということになりますと、全く評価がわからないと考えられます。ただ数字をながめるだけというようなものになっているわけです。そういうものをもう少し市民の方が理解をしていただけるような形に改良していこうということを考えておりまして、一応公開して、それに対しての意見をいただいて、さらに改良していくという、循環型でデータベースをよりよいものにしていきたいというようなことを少し考えています。
 以上のほかに、政策支援型の研究センターでございますので、その場その場に応じていろいろな形で、環境省から課題が飛び込んでまいりまして、それに応じて研究を進めていかなければいけないというようなことがございます。

【西岡国環研理事】 どうもありがとうございました。
 以上、私ども、重点と政策対応型研究に対する発表は終わったわけでございますが、そのほか、各領域では、他の研究もやっておりますし、また、割と細かい、きめ細かな研究なども進めております。
 それから、ひとつお願いがあるんですが、これは今、5カ年計画でもって設置したものでございますけれども、先ほど高月委員の方からも御指摘がありましたように、5年の間にどんどんと対象は変わってくるかと思いますので、その辺もどんどん入れて、新しい研究・開発を常にローリングしていきたいというぐあいに考えている次第です。
 以上でございます。

【松野委員長】 どうもありがとうございました。
 今のは、随分個別の研究、短い時間に大変大量のいろいろなことがわかって大変ありがたかったと思いますが。
 さて、その間、配っていただいた、これはさっき話題になった外部評価の、これは最終資料ですか。さらに対処方針まで書いてありますね。対処方針と書いてあるのは、これはこちら側で評価の概要が。

【高木国環研主任研究企画官】 対処方針というのは、研究所側でこういう御意見を受けてこう対応するということです。

【松野委員長】 評価の概要と書いてありますが、これは対処方針はここでつくられたんでしょうけれども、評価委員会のレポートというのは。それはどこまでですか。

【高木国環研主任研究企画官】 評価の結果の概要のところが評価委員会の評価です。

【松野委員長】 評価委員会はこのとおりがそのまま書いてあるわけ。

【高木国環研主任研究企画官】 はい。あと、個別の事後評価についてはA、B、Cとか、評価はあるんですが、それは個別の研究者に還元しまして、このベースで公表させていただいているということでございます。

【松野委員長】 わかりました。
 どうしましょうか。これは先ほど来年の5月か何か、そのころ、我々は、いわゆるさっきの評価を本格的にやるときに、ベースになるものとしてこれが一番頼りになるんじゃないかという話になったんですが、もしこの外部評価委員会にリクエストするとして、どんなものでしょうか。普通の研究の評価としてはかなり、内容、計画もちゃんと書いてありますが、先ほどのように大所高所というか、国民の立場でとか、そういうふうになったときに、先ほど何をねらっているのか、そのあたりのところはこれだけでわかるかとか、そういう問題はあるかと思います。何かそういった点で、今すぐにはなかなか行きそうにないかもしれませんが。1つはいろいろなあれですね、また、これは多分そういうときには別個出していただけるんだと思いますが、どのぐらい人がそれぞれに携わっているかとか、予算は書いてありますが。最初のころにちょっと研究所の名前が書いてあるけれども、それ以外にももちろんいらっしゃるわけではないんですか。

【高木国環研主任研究企画官】 プロジェクトですので、多くの方が関係しております。

【松野委員長】 よく最近、この研究の評価の議論のときに、研究評価でも、研究者の個人の評価と、それから研究のプロジェクトの評価と、それから機関評価という言葉を使って、我々は機関評価になるわけですね。すると、どういうプロジェクト、これを取り上げているのはここの研究所で適切かとか、どのぐらいのマンパワーとか、お金とか、リソースの配分が適切かとか、何かそんなことをやることになるんじゃないかと思うんですが、それをやるのに必要なのが、これで足りるかというと、ちょっとまたもうちょっとそういうデータというか。

【斉藤国環研総務部長】 報告書をつくりまして対応したいと思います。

【松野委員長】 ほかに何か。あるいはここにありました重点プロジェクト、政策対応型プロジェクトについての。
 ちょっとお話ししたいんですが、中国の流域の、非常にユニークな、生態機能というのは、これは今、使うんですか。こういういろいろな、とにかくあらゆる生態機能と書いてあるけれども、環境機能みたいなものでしょうかね。総合的な。

【渡辺研究員】 先ほど説明いたしましたけれども、主に今回、いろいろな多様な機能がありましたけれども、いわゆる水の循環機能ですとか、物質の循環機能、特に浄化機能みたいなものを中心にしながら、まずは取り組んでいきたいと考えております。

【松野委員長】 非常に総合的というか、大変なプロジェクトだと思います。

【渡辺研究員】 いえいえ、これは3つか4つぐらいの機能に限定して考えていきたいと。

【松野委員長】 かつ、中国の長江から黄河の方へ水を流すというような、そういうことに対してのアセスメントとか、そういうこともねらっていらっしゃるということで。

【渡辺研究員】 これは中国側からの協働の希望がございましたので、具体的な計画が進みつつある中で。

【松野委員長】 これはUNEPの何とかの中の一環でもあると。

【渡辺研究員】 そうですね。ミレニアム・エコシステムアセスメントの一環としてもそれは入れていきたいというふうに現在提案をしようとしているところです。かなり国際的な問題がかかってくるので、表に出てくる表現としてはできるだけトラブルが起こらないような形にしたいというふうに思っておりますので。それは多分、ミレニアムアセスメントという形では、その部分は多分入ってこないだろうと思います。

【松野委員長】 中国から、三峡ダムのときも大変大問題だったと思いますが、もっと大きな大規模な環境アセスメントになるわけですよね。それをいわば依頼されたというような感じになるんですか。

【渡辺研究員】 ではなくて、これは中国自身がアセスメントに、今までのコラボレーションの一環として参加するという、7つばかりのサブテーマを向こうが組んでおりまして、そのうちの1つのサブテーマが我々が分担して、協働してやるという、そういう……。

【加藤委員】 それにしても信頼がなかったら依頼はないわけですからね。大変大事な仕事だと思いますね。

【松野委員長】 ほかに何か。

【高月委員】 評価する前に、先ほどお話がありましたマンパワーと予算と、もう一つカードといいますか、スペースといいますか、あるいはまた、どんな機器がそれに対して備わっているかとか、その辺の情報もちょっと整理していただいた方が評価しやすいかと思うんですが。

【松野委員長】 それでは、あとはどうですか、評価結果の概要、すごく短いのがありましたよね。何かこっちがわかるようなレビューを書いていただくとありがたいですね。この問題はどんなふうに大事でとか、そういうのが、それを注文していいのかどうかわからないんですけれども。これはもう大分長くやっていらっしゃるんですか、この外部評価というのは。

【高木国環研主任研究企画官】 まだ2年ぐらいの歴史だと思います。まだ試行錯誤の最中ではあります。

【松井環境研究技術室長】 もう時間がかなりオーバーしておりますので。

【松野委員長】 どうも失礼しました。非常に充実した発表をしていただいて、大変よかったと思いますが、時間が予定の時間を過ぎておりまして、今、さっきの、次回は3月から5月の間でしたか。そのときには、今度の基準を決めるということになりますので、さっきの件、どうしたらいいんでしょうかね。そのときにうまくできるようにしておくためには、また事前に、たくさん出た意見を送っていただくということで、それからまたいろいろな御意見がありましたら、それを事務局の方に送っていだたいて、次回はとにかく決められるようにしなければいけないと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

【佐野委員】 私は半年後だと多分忘れてしまうと思うので、事前にメールでも入れてもらってやっておくといいと思うんですけれども。

【松野委員長】 それでは、そういうことで、今日はこの後、まだ施設見学が予定されていらっしゃる方はそれがあると思いますので、特になければ、これでもって終わりにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、どうも今日はありがとうございました。


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