中央環境審議会動物愛護部会動物愛護管理のあり方検討小委員会(第13回)議事録

1.日時

平成23年3月2日(水)午後2時00分~午後4時22分

2.場所

環境省第一会議室

3.出席者

林委員長、青木委員、磯部委員、井本委員、臼井委員、打越委員、
浦野委員、太田委員、小方委員、加隈委員、斉藤委員、渋谷委員、
永村委員、野上委員、水越委員、山口委員、山崎委員、渡辺委員、
渡邉自然環境局長、森本審議官、田中総務課長、西山動物愛護管理室長 ほか

4.議題

  1. (1)関係者ヒアリング(地方自治体)
  2. (2)その他

5.配付資料

資料1
動物愛護管理法における取扱業規制の推移
資料2
ヒアリング調査の実施について
資料3
「動物取扱業の適正化」におけるこれまでの主な意見(追記版)
太田委員提出資料
動物愛護に関するペット業界の動き
家庭動物販売士テキスト2級用、同3級用(委員限り)

6.議事

【事務局】 定刻となりましたので、第13回動物愛護管理のあり方検討小委員会を始めたいと思います。まず、本日の委員の皆様のご出欠について、ご報告申し上げます。
 本日は、18名の委員の方々に出席していただいております。規定により小委員会は成立しております。
 なお、本日はヒアリングで自治体の皆様においでいただいておりますので、ご紹介申し上げます。皆様の方に向かいまして右から、北海道環境生活部環境局自然環境課・荒島智恵様、名古屋市健康福祉局健康部食品衛生課・古澤昌士様、大阪府環境農林部動物愛護畜産課・長濱伸也様、香川県健康福祉部生活衛生課・中村宗様、宮崎県福祉保健部衛生管理課・内山直哉様でございます。
 配付資料は資料1から資料3まで。その後に太田委員の提出資料を添付しています。委員限りの資料として家庭動物販売士のテキスト2級用と3級用です。
 委員限りの資料以外の資料及び議事録につきましては、後日、環境省のホームページにおいて公表されることを申し添えます。
 それでは、林委員長、よろしくお願いいたします

【林委員長】 ただいまから、第13回動物愛護管理のあり方検討小委員会を開催いたします。議事に先立ちまして、渡邉局長よりごあいさついただきます。

【渡邉自然環境局長】 環境省の渡邉でございます。本日の小委員会、大変お忙しい中ご出席いただきまして、ありがとうございました。これまで12回にわたって、動物取扱業の適正化に関して多岐にわたる課題について議論を重ねてきていただきました。最近の3回の小委員会の中で、中間とりまとめに向けた議論がほぼ一巡したところです。
 現在、全国106の都道府県、政令市、中核市の現場で動物愛護管理法の執行を担っていただいていますが、本日はその中から五つの自治体の職員の皆さまにご参加をいただきました。これまでの議論も受けまして、現場における課題あるいは実効性の面といった点について、ヒアリングを行えればというふうに考えております。自治体の皆さまにおかれましては、忙しい中、小委員会にご参加いただきましてありがとうございます。ぜひ、実際の現場の様子やご苦労を踏まえた忌憚のないご意見を頂戴できればと思います。
 本日のヒアリングを通じた意見交換も受けて、今後の中間とりまとめの議論につなげていければと思っております。委員の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。

【林委員長】 ありがとうございました。それでは議事に入りますが、その前に、太田委員にご提出いただいた資料について、説明があれば簡潔にお願いしたいと思います。

【太田委員】 前回の委員会で、年一回の講習会が自治体の大きな負担になっているというお話がありました。この件について前回も発言しましたが、提案かたがた、こういう考え方もあるということを補足させていただきます。
 ここに2、3級の教科書がありますが、これは私どもの会が行っている家庭動物販売士の教科書です。業界のレベルの向上を目的とした制度なのですが、先月も全国の11カ所の会場で約800名の方が受講されました。現在、資格取得者は全国で約5000名を越えており、皆さん、現場の第一線でご活躍中です。この教科書は、3級は動物取扱業の職業倫理、2級は動物取扱業の社会的責任ということで、私たちの一番大きな問題をテーマとなっています。今後、少しずつでも、その成果が出ればと期待しているところです。
 動物取扱業の講習は全員業者が対象ですので、この教科書は、この講習会にも利用できるかなと思います。現在、当会では20名の専門講師にご協力いただいております。同じような資格制度は、臼井先生の愛玩動物協会による愛玩動物飼養管理士、JKCによる動物飼養管理士制度などいろいろありますので、もちろん先生方のご承諾をいただいてからになりますけれども、これらの講師にお願いしまして、動物取扱業の教育の機関をつくっていただき、ここから全国の自治体に講師派遣のシステムができれば自治体も助かるでしょうし、質のよい講習会が毎年継続できると思います。業界のレベルアップには、年一度の講習会はぜひ続けてほしいと思っています。
 また、どんな業界にも、教育について同じ悩みがあると思います。他の業界でよい教育システムがあれば参考になると思いますので、教えていただければ幸いです。
 次に、殺処分減少のための業界内の活動を、一部紹介させていただきます。
 1番目。今話題になっている熊本市ですが、市の動物愛護推進協議会の中で動物取扱業者が活躍しております。当会の理事がPIACK(同協議会動物取扱部会)のリーダーとなり、100名近い仲間と一緒になって店内で里親捜しを行い、熊本市でも高い評価を受けております。前回の法改正により各地方自治体は動物愛護推進計画を策定することとなっていますが、全自治体が早く立ち上げていただき、各自治体の動物愛護推進協議会の中で動物取扱業者が一緒に活動できることを私たちは願っています。2番目。ペットショップの店内での里親捜しを始めたニュースです。このお店は全国で117店舗ありますが、この制度が全店に広がることを期待しております。3番目。あるオークションがトレーサビリティの機能強化とブリーダーの里親制度を組み合わせた新しい試みを始めました。うまく機能してほかのオークションにも広がればと願っています。4番目。フードメーカーによる里親を支援するキャンペーンです。当会でも店頭でペット愛護募金を行っていますが、これからはこの募金を殺処分減少の支援活動に使うことも検討しています。
 私たちの会も発足して10年になります。今までは会の旗印としてインターネット・移動・深夜販売禁止を掲げてきましたが、お陰様で一段落つきそうです。今後は殺処分減少を目標とすることも検討しています。今回の法改正の議論の中で、業界の中から殺処分を減らすための具体的な運動が広がったことは喜ばしい限りです。私たち動物取扱業は、毎日動物と飼い主とも接しています。動物愛護の啓蒙には私たち業者が、その一翼を担っているという自覚を持って、今後とも仕事に取り組みたいと思っております。以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。ただいまの太田委員からのご説明に対し、何かご質問やご意見はありますか。これから議事に入りますが、本日の小委員会はこれまで論議していない課題が一つありますので、それをまず論議してから自治体の皆様からのヒアリングを行いたいと思います。登録制の検討について事務局から簡単にご説明いただいた後、議事を進めてまいりたいと思います。それでは、お願いいたします。

【事務局】 まだ議論されていない案件として、委員長がおっしゃった登録制の検討がございます。「登録制から許可制に強化する必要性の検討」という副題がついていますが、考えることが2点ございます。
 1点目は、今の登録制を許可制に引き上げるかどうか。もともと課題として取り上げておりましたが、深夜販売、移動販売、インターネット販売、幼齢動物販売、繁殖制限、登録の取消し強化など幾つかの課題などをある程度議論した上で、さらにこの登録制全体を許可制に移行する必要があるかどうかということです。
 もう1点は、登録制だけではなくて、その下に届出制、その上に許可制、つまり届出、登録、許可といったグラデーションをつける必要があるかどうかということです。
 ここでいう届出制の話は、必ずしも積極的にということではありません。今回いろいろ強化するに当たって、都道府県の実施主体に実行可能性があるかどうかを考えたときに、新しく入れるような規定で問題がないのであれば、届出制を導入する必要があるかもしれないということです。一部の業態については、より強い規定の許可制を導入する必要があるかどうかということなのですが、本日お配りいただいた資料1をご覧ください。
 動物愛護管理法は昭和48年に施行されて平成11年と17年に改正されていますが、それを詳しくした動物取扱業規制の関係条文の抜粋が資料1にあります。平成11年と17年の改正で登録制になったとき、登録の拒否あるいは更新制、取消しという要件もあわせて導入し、平成11年の届出のときに、登録拒否という話は特に規定していません。基準遵守義務は届出制でつくっております。平成17年に登録制にしたときに基準遵守義務があり、動物取扱責任者の選任義務、研修会を受けるという義務も、ここには書いてませんがございます。
 さらにその下を見ていただくと、基準遵守のための勧告、命令、罰則がございます。これは、届出制と登録制の両方があります。立入の検査の権限も両方ともございます。さらにその下、販売業者の説明の責務も、届出制、登録制がございます。こうやって見比べますと、確かに届出制から登録制になっているのですが、やっている仕組み自体は、そこまで大きくは変わらないというのが今の改正の流れです。
 これを踏まえて考えると、現在の登録制に届出制を入れる場合に、その届出制をどこまで規定するかという問題になります。一つには、単なる業者把握だけできればいいかという議論があるかもしれません。その場合、今の法律を新たに規定する中で単に業者把握だけすればいいかというと、法律をつくる側からすると難しいのではないかと事務局では考えています。つまり11年の改正の届出制のように、ある程度は勧告、命令や罰則、基準遵守義務などを設けないと法律上は入れるのが難しい。そこまで入れる届出制であれば、現行の登録制と実はあまり変わらないということです。許可というと原則禁止なので、そこは大きく変わりますが、おそらく許可制になってもやること自体はそんなに変わりません。そういうものを届出制、登録制、許可制に並列して入れるのは、法律のつくり方として難しいという感じがします。
 今は動物取扱業の細目一本で全業者さんがやっておられますが、例えばペットショップなどが遵守する規定を別に設ける、あるいは移動販売される方の規定を別に設ける。それからオークション市場をされる方を別に設けるとか、それぞれ基準遵守義務を別々につくるようにする。結果的に登録制は一本ですが、基準遵守義務を守るためには別々にしなければいけないという規定もあり得るかと思っております。そういった観点でご議論いただければと考えております。以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。それでは、早速、議論を始めたいと思いますが、ご質問でもご意見でも結構です。磯部委員、お願いします。

【磯部委員】 確かに結論的に言うと、一つの法律の中に届出と登録と許可が併存するような立法例はまずないと思いますし、それは混乱の種だろうと思います。法学部の講義で必ずやることですけれども、条文上にどういう言葉が使われているかということと、それがどういう法的性質の概念かということは分けないといけないわけです。届出制か許可制かというような議論は、普通は理論上の概念としての許可制か届出制かを議論しているわけで、条文上にどんな言葉が使われているかとは無関係ということです。
 その上で理論上の届出制というのは、あくまでも営業の自由が前提なのですが、しかしまったく野放しにするわけではなくて、開業するなら一応届けてください、どんな人が営業しているのかを行政として把握しておきますよという、規制手法としてはいわば最小限のタイプということになります。これに対して許可制というのは、本質的には営業の自由があることはその通りなのですが、本当に自由にやってよいということにすると、事故が起きたりしていろいろ弊害が出てしまうので、いったん相対的に禁止しておいて、特定の有資格者については、その禁止を解除してあげるという仕組みです。禁止が解除されるのですから、もとの自由が回復するということになります。さらにこれとも違って、そもそも営業の自由が前提にならない公益事業など、特別の特権的な営業形態に関しては、別途理論上の概念としては特許企業という類型もあります。そういうふうに、行政的規制の介入の強度に応じた理論的な整理ができます。
 以上のことは、あくまでも理論的な整理であって、それに対して具体的な条文上で届出という言葉を使うか、許可という言葉を使うか、これはさまざまです。
 例えば自動車の運転免許を例に引けば、免許とは何かというと、さきほどの説明によると典型的な許可なのです。自動車の運転は本来、誰もが自由にできるはずのものなのですけれども、もしそうしたら事故が多発して大変なことになるから、いったん禁止しておいて、ちゃんと運転技術があるとか交通法令がわかっているというようなことを確認した上で、禁止の解除をしたという証明が運転免許です。そのような仕組みで、条文上の名称や規制のしくみをトータルに考えた上で、これは許可なのか届出なのかと解釈をしなければならないということです。
 動物愛護管理法における登録についてですが、理論上の概念として「登録」という特別のカテゴリーがあるわけではなく、許可に近い登録もあり得るし、届出に近い登録もあり得ることだろうと思います。
 この動物愛護管理法においては、最初は純然たる届出制であったものを17年改正法で、名称を登録に変更したときに、それまでは実質的に届出であったものが、ほぼ理論上の許可になったと理解してよいのだろうと思います。ですからこそ逆に、今回はもっと軽い段階の規制である、本来の届出に相当するものも設けてよいのではないかという議論が別途生じてきたわけです。ここから先は一種の法的な技術の問題ですから、登録に二種類あるというふうに考えてもいいかもしれないし、登録という言葉はあきらめて、届出と許可にするようにしたらいいのだと思います。そこのところを、届出と許可の中間に、登録という制度がありうると考えると、ごちゃごちゃしてわからなくなるだろうと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょう。青木委員、どうぞ。

【青木委員】 今、磯部委員がおっしゃったことと関連して、補足的に質問をいたします。学問上の許可制と条文上の登録制が全く違うものであるかどうかはわからないということは、前から私も思っておりまして、この法律の言っている登録制は、行政法学上は許可制だろうと私自身は理解をしていました。ただ、これまで何度かこの会議で出た言葉遣いや、最初の事務局の言葉遣いでは、登録制を超えてさらに許可制にするかという使われ方が何度かすでにされています。今の磯部委員のお話から考えると、結局は許可制の中にもいろいろサンクションの強さにグラデーションがあるから、理論上の性質は同じ許可制であってもどれだけ強いサンクションをつくるかと、こういう議論なのだと思います。
 仮に、先ほどの事務局の説明にあったように、今の登録制以上に強いものにするときに何があり得るのかをイメージして事務局が具体的にお考えになっていらしたら、可能性をお聞きしたい。そうなるべきだと考えているかということを伺っているわけではなく、事務局として理論上の可能性、あるいは立法上、技術上の可能性として、どんなものをイメージして許可制ということを語られたのか。もしお考えがあれば、お教えいただきたいと思います。

【林委員長】 これは先にお答えいただきましょうか。

【事務局】 今の登録制も、確かに青木委員、磯部委員がおっしゃられたように、非常に許可制に近いと我々も考えておりますので、許可制にするにしても、これにプラスアルファするというよりは、単に言葉上なのかもしれないですけれどもこのまま許可制にする。今のイメージではそういう感じで考えております。

【林委員長】 打越委員、どうぞ。

【打越委員】 法的な議論に関しては、磯部先生、青木先生と全く同感で、すでに登録取消しという概念がある限り、そういうことをやってはいけないという結論が出得るという点では、許可制に近いものだというふうに思っています。
 たぶん、許可制の導入を求める人たちというのは、言葉の問題よりも、こんなレベルの業者が営業しているのを認めてほしくないと思っていらっしゃるのでしょう。例えば衛生面の管理とか、その動物の繁殖の方法とか、動物を飼養しているケージの大きさとか、通風とか気温とか、そういう観点から見て、何か数値の基準を設けて、それ以下の者には営業を許可してほしくないというふうな意味で許可制を導入してほしいという議論があるのだと思います。
 そういう意味では、登録制にするか許可制にするか、言葉のニュアンスの差で法律改正のときに若干厳しい風当たりを覚悟するか否かという差があるだけではなくて、許可制にするときに、その基準をどうするのかというのがセットでないとあまり意味がないのかなと思います。基準をうんと低くして許可制ですというふうにすれば、少し表現が悪いですが、結局今の登録制と何も変わらない。
 ですので、登録か許可かという言葉以上に、その基準をどうするのかというのが問題になるのだと思います。第10回以来、飼養環境、飼養設備の数値基準を導入するか否かという話が出ていると思いますが、そこを煮詰めるか否かによって、意味が変わってくるのかなと思います。

【林委員長】 野上委員、どうぞ。

【野上委員】 私も今の打越さんの意見に賛成でして、劣悪な動物業者が、どうして営業停止にならないのか、もっと規制を強化して、こういう業者を排除してほしいというのが、許可制にしてほしいという要望の大きな根拠だと思います。ですので、登録制の中で基準を細かく分け、かつ具体的に入れていって、より業者を規制しやすくなるということであれば実質許可制になるだろうと思います。
 現在でも、登録をしていない業者は違法な業者で、つまり登録をしなければ営業できないわけですから許可制に近い状態であるわけです。しかし今回、新たな業を入れるという議論をしているときに、例えば実際にもうそこに生きた動物がいないペットの葬送業者のような業者まで、動物の法律の中で厳しくやる必要があるのかという問題意識があったので、より緩い規制があってもいいのではないかという話になっていたかと思うのです。
 逆に言えば、登録一本でも、その中でいろいろな規制のあり方を基準レベルで変えていって同様の効果が出るのであれば、それでもいいのではないかというふうに思います。

【林委員長】 浦野委員、どうぞ。

【浦野委員】 これは質問なのですが、資料1は届出制が真ん中、右側が登録制というように理解していいのですよね。この場合、届出制を見ると、上から2段目の「動物の管理の方法等に関する基準遵守義務」というのは、それぞれの動物ごとに定められた飼養保管基準のことを指すわけですね。その遵守義務があって、さらに勧告、命令、罰則があるとなると、登録制との具体的な違いは何でしょうか。その勧告、命令、罰則を受けながらさらに営業を続けると言ったら認められるのが届出制でしょうか。何が違うのでしょうか。

【事務局】 事務局から補足です。資料1表の平成11年の届出制のところ、二つ目の基準遵守義務と隣の登録制の基準遵守義務ですが、ここで言う遵守義務は、今の現法でいうと動物愛護管理法第21条に関わるもので、基準遵守義務です。
 幾つか告示がありますが、例えば家庭動物の基準とか産業動物の基準がございます。現行法の第7条を受けてつくっているものです。ここで言う基準遵守義務は第21条の規定を受けてつくっていますので、施行規則でいうと第8条で定めている動物取扱業の守るべき細目を、告示で一本だけ出しているということになります。以上でございます。

【林委員長】 よろしいですか。西山室長、どうぞ。

【西山動物愛護管理室長】 11年のときの届出と17年改正のときの登録の違いは、遵守義務とか勧告命令を受けてというところは同じですが、届出の場合は、基本的には書類上不備がなければ受理しなくてはならず、期間も特にありません。登録にしたときに基準を満たしていなければ登録の拒否ができるようになり、期間も定めて更新制になっています。また、登録の取消しもし得るというところが一番大きな違いだと思います。

【林委員長】 磯部委員、どうぞ。

【磯部委員】 わかりにくいのは当然だろうと思うのですが、今言われたとおりで、基本的なしくみとしては規制基準の遵守義務があり、違反者に対しては勧告、命令ができるのみならず、あるいは罰則の適用もあるという点では、その罰則が何に関わるかというところに微妙な違いがあるかもしれませんが、基本的には変わっていません。
 ところで先ほどの打越委員や野上委員のお言葉を聞くと、単なる処罰では足りないという感じでした。その者がもはやその業を営めないように廃業させる、登録、更新は拒否する、有効期間中でも資格を失わせる、営業を停止させる、言うことを聞かなければ本当にシャットアウトしてしまう。罰金を払わせるだけではなく、本当に直接的な強制執行というふうに言っておられましたが、規制の実効性を確保する仕組みを整備せよということなのですね。
 そうだとすると、常識的にはやはりきちんとした許可制にすることがいちばんわかりやすい。もっともここから先は日本の行政法制の全体にわたる問題であって、決してこの分野に限らないのですが、相手がそれでも居座った場合、居直って義務違反を続けた場合に、断固として強制的に法を執行する仕組みというのは非常に不備であって、少なくとも体系的、網羅的ではないわけですね。あまり行政は強くない方がいいという戦後の法思想の表れだとも言えるわけです。
 不備があるのはこの問題に限りませんが、今日のヒアリングなども伺った上で、実際にどういう規定が必要かというところをよく考える必要はあるのかなと思います。
 許可制まで行かずに、いわゆる届出制の場合ですと、確かにそういう実効的な規制は効かないというのが常識です。ただし、この前、一言申したかもしれませんが、同じ届出制という名前を使っていますが、性風俗関連営業に関しては「届出制」でありながら、けしからん違反行為をしていたらその店は廃業させるという、きわめて強い仕組みの立法例が、例外的ではありますが、例がないわけではない。それはもともと性風俗関連営業などはなくてもいい業種なので、いきなり廃業させてもいいというのがその説明になっています。そういう点で、性風俗営業と動物愛護営業とでは、とても一緒にはならないのはもちろんですが、いずれにせよ理論的にすっきりした体系的な説明はしにくいところなのです。

【林委員長】 浦野委員、どうぞ。

【浦野委員】 法律の施行規則の第8条が、ここに書いてある基準遵守のというところに当たるということになると、それを遵守していたかどうかによって勧告、命令、罰則を下すというふうな仕組みになっていますね。その場合、例えば第8条を見ると、飼養又は保管に適した飼養施設の構図及び規模というような表現にとどまっています。具体的にどれをクリアしなかったら勧告、命令、罰則になるか。各都道府県がそれぞれもう少し詳しい判断基準を設けて、クリアしなかったら勧告、命令、罰則を下すというような仕組みになっているのでしょうか。要は、今言った質問を、どこにしたらいいのかよくわかりません。

【林委員長】 打越委員、どうぞ。

【打越委員】 関連して、浦野委員のご質問に一部お答えになるかもしれませんし、かつ私から磯部委員に勉強させていただきたいという意味での意見になります。
 営業の取消し、登録の取消しというものがあるのであれば、許可制とした方が本来、用語の定義上すっきりするのはそのとおりだなと思っています。そこで、その条文のところで参照しながら伺いたいので、環境省の方で用意してくださっている法律の条文の方を見ていただきたいと思います。
 ファイルの一番最後に法律の条文が出ております。これは前に青木委員もご指摘になって、渋谷委員と少し打ち合わせしたことがあったような記憶がございます。7ページの第19条に、もともと登録の取消し等というのが入っており、何がしかの基準に反したら廃業させるという制度で、条文の中に明記されています。そのうちの第19条の5、「この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこの法律に基づく処分に違反したとき」というところで、若しくは、とか、又は、というのが前にも問題になったと思います。
 いずれにせよ、この法律に基づくということでファイル8ページの第23条、勧告及び命令で、「動物取扱業者に改善の勧告をし、必要な措置をとるように命令をする」とある。これに反した場合に改善すべきだという命令が出るにもかかわらず期限を定めているので、命令が出されて守らなかった場合には、第19条の5によって登録の取消しが今の状態でも実質的にできる状況になっています。
 許可制にすでになっていて、名前だけが登録制になっているとみなすのか、それとも登録は基本的に廃業には持っていかないものとして事実上今まで使われていて、営業取消しのようなものをやる場合には、許可制と名前を変えた方がむしろ行政法学上スムーズなのか。そういうことを磯部委員に教わりたいなと思って意見しました。

【林委員長】 磯部委員、どうぞ。

【磯部委員】 もし間違ったことを言ったら、事務局の方でチェックしてほしいと思います。最初の浦野先生のご意見にあったように、法律よりもさらに細かい基準を都道府県で定めていくのかどうか。実務はどうされているかわからないのですけれども、仮に一段細かく定めたとしても、結局定め切れない部分が残るということで、最後はかなり不確定な文言で、「その他必要な措置」などと、そういう書き方をせざるを得ない。つまりその分、行政の判断余地が残るわけです。これは行政の裁量というふうに申しますけれども、一概に否定すべきではない。もちろん客観的な数値で書いた方がいいところは何週間とか何メートルとか、書けるなら書いたらいいのですが、それに頼り切ることはできないわけで、常に行政の裁量判断の余地は残るわけです。それをいかに合理的に行使するかが問題で、そういうときにたまたま形式的に基準違反だから、いきなり勧告や命令をかけてやるのがいい行政なのかということもあるわけです。
 同じような違反状況にあるA業者とB業者がいて、Aに対しては重い制裁処分をくわえたが、同じ状況のはずのB業者に対しては全然規制しなかったとすれば、これは裁量の行使であっても正当化できないということになっていて、そういう意味では、いろいろな裁量統制の法理があります。例えば1の程度の悪質のものに対して1の規制をするのはいいのですが、1の程度の悪質さに対して5の規制をするのは、法律上は一見正当なようでも違法と考えなければいけない。この種の事柄に関する膨大な法理論があり、判例の蓄積もあって、およそ規制権限の行使に関する相場というものが決まっているのが実務だということです。
 また規制に関する判断基準は、秘密にはしないで、そういう基準はなるべくつくって公表するようにということが、行政手続法という法律に書いてあり、それにのっとって運用されているのだろうと思います。
 それから現行の登録制が許可制に相当するか否かという問題についてですが、「この現行登録法制度は、登録制という名称なのだからあくまでも登録制なのであって、実質を考えても許可制とは言えない」という答案が出てきたら、恐らく赤点になってしまうだろうと思います。名称にかかわらず、十分に許可制であると思います。ですからあとは言葉も許可制に変えたほうがいいというご判断があるなら、それはあり得るかもしれませんが、逆に、実質が変わらないものを、例えば法制局などにどうやって説明するのかな、という気がしないでもないです。

【林委員長】 一般的に法改正の場合、現状で許可制の内容を持っているのであれば、それはそれでとくに名称だけを変えなくてもいいではないかという判断も当然あり得ると思います。内容が同じでも、名称を変えるならばそれ相当の根拠が必要になってくるということですね。

【磯部委員】 当然、たとえば規制対象業種が増えるとか、あるいは規制の程度の差が、強弱2段階ぐらい必要になってくる、だから制度を見直すということであるならば、その際に言葉を変えてラベルをつける必要があるというのは、それは一つの説明になろうかと思いますけれども、実質同じものを、なぜラベルだけ張り替えるのかというと、説明しにくいかもしれません。その辺のところは、行政の方がよくご存じのことかと思います。

【林委員長】 動物取扱業が一体何なのかというのが、実は定義されていないわけです。一般の飼い主が家庭で動物を繁殖させるということはよくあることで、今後ともあるだろうと思います。繁殖することも飼育することも、一般の飼い主がやっていることだからです。日本で、例えば犬猫だけに限ってみても、2500万世帯ぐらいはそういう動物取扱業とほぼ似たような行為を行っている可能性があり得るわけです。その場合、この取り締まりの対象として登録させなければいけないとか、対象とする際はどういうふうに定義していくのかということがなされないままいくと、やはり問題があるのではないかと思います。それはなくても、許可とか登録とかというようなことの対象では、はっきり定義されていない場合もあり得るわけでしょうか。

【磯部委員】 前回か前々回に少しその話もあったと思うのですけれども、「業として」やるという言い方が茫漠としてあいまいなので、年に何回やれば業になるのかとかいう話がありました。しかし、「業として」という表現自体は法制実務上は割とよく使われている概念であるわけで、それほど曖昧な概念ということでもないと思います。例えば家庭で子どもを育てるというのは、普通のお母さんが当たり前にやっていることですが、業としてお金を取ってよそのお子さんを預かるとしたら、勝手にやっていいのかということで規制対象になったりします。お隣さんの子どもを3時間預かってあげたところ、御礼をもらってしまったというのは「業として」行ったわけではないということは、経験的に、社会常識的に決まってくることであるというふうに考えてよろしいと思います。
 具体的には「業として」にあたると行政が判断して、その判断につき争いが生じたとしたら、最終的に決めるのは裁判所になりますけれども、例えば、ネットオークションで古物を売買するのを年に数回以上やったら業としてやったことになるかというような事例に関する判例も参考にはなるわけで、そこはそれほどご心配にならなくてもよろしいかと思います。もちろん裁量判断の実務的基準として、大体何回くらいという程度の内規的なものはつくられることになろうかと思いますけれども、いったん例えば年に10回というような数値基準をつくってしまったとしたら、かえって年に9回までならお咎めなしだと考えて、脱法行為をしようとする人間が出てくるので、かえって柔軟な解釈の余地を残しておいた方が、より公正な判断ができるのだろうと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。打越委員、どうぞ。

【打越委員】 後で議論すべきところかもしれないので、その場合には座長にとめていただきたいのですけれども、多分、許可制にするか登録制にするかというのが問題で、その業の定義で一番問題になるのは、動物愛護団体をどうするのかということです。検討項目の10番で出てきて、動物愛護団体でも悪質なものがあるからきちんと行政で把握して登録制にしましょうという議論が出ていたと思います。
 ここを許可制にしてきっちり基準をつくろうとすると、繁殖のブリーダー以上に猫を保護してしまったとか、何度かやっているうちに5、6匹になってしまったとか、友達と一緒に一時預かりしていたとか、そこのあたりが動物取扱業に動物愛護団体を含めるときに、最も難しくなるのかなと思います。
 前回の委員で水越委員から、10頭以上飼っていたら個人でも登録させていいではないかというようなご意見がありました。実際に、例えば県の条例などで10頭以上飼育する場合には、必ず行政側に届出ることという条例を通しているところもあります。
 そういう意味では、飼育して繁殖してしまうところのグレーゾーンはどうとでもできますが、愛護団体を業に含めるのであれば、登録か許可かで、基準をどうするかが難しくなってくるのではないかなと思います。ですので、10番を後で議論するときに、もう一回検討してもいいのではないかと思いました。

【林委員長】 ありがとうございました。大体ご意見が出たようですが、登録制のことについては、この程度でよろしいでしょうか。現状の登録制は、内容的に見てかなり許可制に近いものだということもよくわかりましたし、これをどのようにしていくかということについてのご意見もいただいたようです。渋谷委員、どうぞ。

【渋谷委員】 以前に配付していただいた第9回目の資料で、勧告の回数や命令の回数が載っている一覧表がありました。資料2の添付2の表です。平成18年から平成20年までの3年間の統計ですが、勧告の件数が18年に6件、19年に8件、20年はゼロでした。命令の件数は、18年に1件だけという表がありますので、統計が正しいとすれば、これが現状だということを踏まえて、この後、また意見を聞きたいと思っております。

【林委員長】 ありがとうございました。本日は、先ほどご紹介したように実際の現場で動物取扱業者への指導、監督を行っておられる自治体の方々、職員の方々にお越しいただいていますので、動物取扱業の適正化についてのヒアリングを行いたいと思います。委員の皆様から自由にお聞きいただくことにしますけれども、その前に簡単に北海道から順番に短くおっしゃっていただいて、それから質問を受けていただくような形にしましょうか。
 この小委員会で、いろいろな自治体でお困りになっているのではないかという質問あるいは意見が出たのですが、業務が大変増えて、ほとんどこなし切れないのではないかという心配もあります。実際にはこうやっているということもあるでしょうし、摘発したいけれども数値的なものがないので指導しにくいということもあるでしょう。ぜひ、実際に現場でやっておられる中で特に問題だということを教えていただきたい。規制強化だけではなく、動物取扱業の緩和についても何かございますか。簡単に、今一番問題と思っていらっしゃることについて、お話を順番にいただければと思います。

【北海道】 北海道の荒島と申します。この法改正の議論と結びつくかどうかというところもありますが、一番懸念されるのはブリーダーのことで、経済状況が悪くなったり、歳をとってきて人数の少ない中でされているところもあります。社会全体的に経済が落ち込んでいる中で、一生懸命やってはいるのでしょうけれども、もう少し管理、衛生的にもきちんとやってほしいということで強化が必要になるところがある。そうすると、廃業したときに残される犬がいて、保護できる状況にない中で、言葉は変ですがブリーダーを追い込んでいく。ブリーダーに限らず一般の飼養者もそうですが、生活保護を受けているようなどこにも逃げ場がないような方の場合は、指導するにしても、命あるものを最後どうするのかというところがない中では、いきなり罰則を強化していくというのは難しい。
 そういう場合、すごく長い時間をかけながら話はしていくのですけれども、最後に行き詰まって、結局、民間の方などの手を借りながらやっているのが現状で、今、一番困っているのはそういうことです。

【林委員長】 ありがとうございました。では、名古屋からいらした古澤さん、どうぞ。

【名古屋市】 名古屋市の古澤です。よろしくお願いします。
 動物取扱業の規制強化などいろいろある中で、数値の基準を設定するという話も出ているようですが、実際に現場で長時間の展示や販売日齢のようなところを指導するに当たっては、数値がもちろんあると話がしやすいなと思います。ただ、業種の追加ということについては、もちろんその分の監視指導の立ち入る回数、件数を増やさなければいけないということも出てきて、負担になるかなというところもあります。
 死体の火葬業のような業種については、名古屋市の場合は愛知県の条例で動物処理場に関する条例というのがあり、動物を火葬するに当たっては条例で市長の許可をとらなければいけません。規制が既にあるものについては、その排気による環境への影響などをかんがみた条例ですが、そのあたりと、動物愛護管理法に死体の火葬業を入れたときの監視について、考え方の兼ね合いが難しいかなと、そこを考えなければいけない点だと思っております。

【林委員長】 ありがとうございました。それでは大阪府から、長濱さんどうぞ。

【大阪府】 長濱でございます。近畿を代表しているわけではございませんが、近畿の中でも、係長会議とか全国動物管理関係事業所協議会の近畿ブロックというのがございます。そんな中で皆さま方から意見を持ち寄ったのですが、現実的にはなかなかまとまらなかったというのが実態です。なぜまとまらないか、いろいろ分析をしていかなければならないのですが、個人的には集まっている自治体の大きさが違うのかなと思います。
 例えば都道府県であったり、政令指定都市であったり、中核市であったり、規模が違う。この動物愛護管理法でも、動物取扱業の適正化というような議論の中で、動物取扱業の事務は法律では政令指定都市までなのです。ただ、近畿の中では県条例の特例で中核市まで落としているところもあります。これが、おりているところとおりていないところがある。このような温度差もあって意見が違ってきたのかなと思います。
 規制の前段の深夜営業とか、販売時間、移動販売、インターネット販売、この辺の規制強化については全体的にはそういうところは必要かなという意見が結構多かったです。あとは具体的なことが決まったときに、自治体としてそれを受けとめて実際にできるのかどうか、ちゃんと整理していく必要があるのかなと思います。
 実は今、大阪府でも議会中でして、動物取扱業の適正化、後で議論される動物虐待の防止というところがあります。その一つのこまとして司法警察権の付与、そういう自治体職員がいる中で質問が出たのですけれども、動物虐待の防止だけではなくて動物取扱業の適正化を進めていく上でも、行政だけではなくてもう少し強い力を持ってやることが有効ではないかというふうな議論も出てきました。
 実態としては私ども行政職員に司法警察権を与えていただいたとしても、なかなか実効性は伴わないのではないかということがあります。例えば、鳥獣保護法でも、そういうふうに制度はあるのですけれども、実際使われていない。そうすると、今、廃棄物行政などでなされているような警察職員、警察官を派遣をしていただいて、例えばその中で警察官との強い連携の上で、動物取扱業の適正化を進めたり、動物虐待の防止に努めていく。私どもが府独自でできるかどうかわからないのですけれども、そういう策も必要ではないかなというふうには感じております。
 もともと、そのような議論の中でいろいろなカテゴリーの動物があり、それぞれ行政は対応しているわけなのですが、動物愛護管理行政がどの部分を対応するのがいいのか。例えば都道府県、政令市、中核市、一般市。国もそうですが、本来行政対応としての一番住民に近い基礎自治体などが、いわゆる犬猫の飼い方のトラブルみたいなところを担当するとかいうのが、私ども本来ではないのかなと思います。そういうところの観点も持って、法律の改正を考えていただければなというふうには考えております。以上でございます。

【林委員長】 ありがとうございました。それでは、香川県からいらした中村さん。

【香川県】 香川県の中村です。よろしくお願いします。
 香川県としましては、取扱業の適正化ということで、現行の取扱業に対する規制の強化という面で考えてみれば、何度かお話にもありましたように、悪質な業者を排除するという観点から、おおむね賛成できるところではあるかなという部分もあります。
 一方で、北海道さんのお話にもありましたように、業者さん自体の適正なシェアができていないという部分もあるのですが、経済的な事情などでどんどん事業の継続が困難になっています。全国動物管理関係事業所協議会の中四国ブロック会議で、昨年、徳島県さんが実際に業の取消しを行ったということで事例のお話を伺ったのですけれども、その取消しに関しても、業者さん自体がわざと悪いことをしようということでやったわけではない。もう、にっちもさっちも行かなくなって、だんだん積み重なってきたもので、取消しをするときに動物のことも考えなければいけないということでした。そのあたりを考えると、何でもかんでも規制を強くしていくというのが本当に動物の愛護という観点でいいかという部分は、多少あるかと思います。
 それともう一つ、私どもの香川県の実態でお話をさせていただきますと、実は香川県の方では、動物愛護行政については保健所の方が実施しておりまして、大体が保健所の職員ですので、動物愛護だけではなくて他の食品衛生などと兼務していることがほとんどです。人事異動等もあり、実際にその地域、地域の保健所にいろいろ問題があったり、それぞれの特性があるのですけれども、専門的にわかってきだしたころにまた人事異動というような状況になり、今の状態でそれぞれが対応するのが手一杯の部分もあります。さらに、魚類とか両生類が加わりますと、職員は基本的には動物愛護を担当しているのが獣医師なのですが、犬猫専門とかいわゆるほ乳類に関しては何とか勉強できていても、それ以上になると、職員自体の方の専門知識もさらに指導する側としては必須になります。それを考えますとさらなる業務負担となり、今の人員体制や保健所が担っている状態から考えると、新規追加というのは、かなり苦しい状況ではないかなというふうに考えております。

【林委員長】 ありがとうございました。それでは、最後になりますが、宮崎県から来られた内山さん、どうぞ。

【宮崎県】 宮崎県の内山と申します。今、香川県さんからもありましたが、宮崎県における現場での動物愛護担当は、すべてみんな兼務でやっております。また、今回の法改正によって新たに動物の死体の火葬、埋葬などの業務が入ってきますと、実際、自治体におりてきたときにすぐ対応ができるのかといいますと、なかなか難しいのではないかと考えております。以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。それでは、ここから委員の皆様からご質問、ご意見をいただきたいと思います。打越委員、どうぞ。

【打越委員】 今の5人の方のお話を、いずれも大変興味深く拝聴させていただきました。例えば、都道府県、政令市、中核市では規模が違う。また、都道府県の方がどちらかというと田舎の守旧的なエリアを扱っていて、政令市、中核市は都市的な部分を持っていますので、課題も違う。それから人員数とかノウハウの蓄積も違うという中で、自治体によって立場がさまざまだというのも、そのとおりだと思います。
 実は5年前に都道府県、政令市、中核市は調査をさせていただいたときのアンケートの結果を各自治体には全部お返ししたのですけれども、そのときにも、その結果がくっきり浮かび上がっていたのを思い出しました。場合によっては、参考資料として委員に提出したいと思います。
 さて、そこで幾つか質問をさせていただきたいのですが、繁殖業者が経済的な悪化や高齢化によって立ち行かなくなってきた場合にどう対応するか、それが難しいというようなお話が何人かの方から出ました。この議論は、徳島県の方がこちらの委員会に来てくださったときにも話が出ました、そのときに議論になったことをお伝えした上で5人の方に伺いたいと思います。
 ただ立入に行って行政指導をして相談に乗るだけではなくて、少し厳しいですが積極的に勧告、命令を出すことによって、きっちりと廃業させることができないであろうかというふうに考えて私が意見をしたときに、長野県の職員である斉藤委員の方から、「そうはいっても実際には現場の信頼関係が必要で、その所有権を放棄させてそれを相手に決意させるためにはゆっくりと説得していかなければならないし、そもそも犬や猫をどうするのかという問題が出てくるので、業者だけをきりきりと追い詰めることもなかなかできない」というようなお話で、議論がそのままになっていたと思います。
 そのことは現場の状況からして非常に想像ができて、本当に現場の職員さんたちが頑張っていらっしゃるのだろうなというのがわかるのですけれど、その上で、いつも考えることがございます。廃業したとき、例えば100頭とか200頭とか置かれている犬や猫をどう保護するのか。動物愛護団体の方からお叱りを受ける意見かもしれませんし、語弊があるかもしれませんが、いきなり廃業にできないという話が出たときに、劣悪な環境で置かれている犬や猫を、毅然として引き取って致死処分することはあり得ないのでしょうか。
 といいますのは、本当に糞尿まみれでものすごく狭いケージで毛玉がどろどろ、足も炎症を起こしているというような犬や猫が置かれているとすると、それは保護すべき対象というか、既に虐待を受けているというふうに定義を考えることができるのですね。今、虐待されている犬や猫がそこにいる。その虐待状況を続けることと、それから保健所で引き取って致死処分をすることと、どちらが残酷なのだろうかということについて、私はいつも自分でも結論が出ないのです。
 実際、保健所では、無責任な飼い主や悪質な繁殖業者が持ち込んできた犬や猫を、説得したり普及啓発をするにせよ、持ち込んできた場合には引き取って致死処分している。職員さんたちは心を痛めつつも、現状として致死処分をしているという事実がすでにある中で、劣悪な環境に置かれている犬や猫の新しい飼い主、シェルターを見つけられないという理由で放置するぐらいならば、早目に手を打って致死処分をするということの方が残酷なのか、残酷でないのか。もちろん、そういう犬や猫にも新しい飼い主を捜し、里親募集をして新しい一生を与えてあげられるならばそれがベストではあるのですが。
 悪質ブリーダー崩壊のとき、その犬や猫を引き取って全部殺したというと、保健所は何をやっているのだ、冷たい、という批判が来る中でなかなかすぐにそういう判断もできないと思うのですが、例えば3カ月、4カ月、半年、1年かけて放置するぐらいならば、引き取って致死処分する方がむしろ残酷ではないというふうに考え方を変えるのであれば、逆に勧告とか命令措置というのはスムーズに出せるのかなということです。
 つまり、実際の現場が非常にデリケートで難しいのはわかっているのですが、その背景として、悪質な業者がいたときにどうすればいいのかが「これが正解である」というラインが定まってない。それも人によって、愛護団体によって、業者によって、世論によって違うからこそ、そこに時間がかかっているのかもしれないなと思い、そのあたりのことを聞いてみたいと、ずっと思ってまいりました。以上です。ちょっと長くなりました。

【林委員長】 これはちょっと答えにくいご質問なので、特に答えていただく必要はないのですが、お答えになられる方がおられたら、どうぞ。日本人、欧米人に対してのいろいろなアンケートもありますけれども、耐え切れない苦痛にいるときでも殺処分はできないという日本の傾向は長い間続いてきている中での話です。しかも今の話は、向こうが手放したいと思っていないときに処分を下すわけですから、余計話がややこしくなるのですが、現場におられて、こういう事例というのは結構あるかもしれません。今の現場で皆さんとお話をされたり、あるいは個人的な判断で今までやってきていらっしゃることだと思いますが、何か私どもに参考になるようなことをお話しいただけますか。どうぞ、長濱さん。

【大阪府】 大阪府です。現実的には、大阪府でもそれに近いような例がございまして、平成19年の犬のブルセラ事件のときにも、そういったことがございました。私は担当していなかったのですが、犬の所有権を業者が放棄をして大阪府のものにしていました。所有してから後の対応が困りました。福祉協会さんやいろいろな関係のところにお世話になり、公衆衛生上の問題ということでブルセラ感染犬は全頭を致死処分にいたしました。検査で陰性の分については譲渡の道をつくったということなのですが、やはり、かなり行政コストがかかっているわけです。
 だから林委員長がおっしゃったように、動物のクオリティ・オブ・ライフは下がっているのだから致死処分しましょうというような、白人的な、いわゆる共通認識があればたやすくできるのかなと思うのですが、今の日本の動物の命の感覚というのは、かなり個人差が強い。特に動物に対して強い愛情を持っておられる方と、全く関心を持っておられない方で全然違います。行政ですから、府民の皆さま方に納得していただける方法を探っていくと、なかなかそこは難しい。個別判断で、場面場面で苦労しているということです。
 おっしゃるように、虐待とか、かなりコンディションが悪いことを承知しながら勧告も命令もかけないでずっと長引かせていくということであれば、もう少し早く何らかの形で行政対応すべきだというふうには思うのですけれども、それが本当にそういう状態かどうかというと、そこの判断もかなり難しいのかなと思います。そうなるとかなり動物愛護担当職員の経験値も必要になっていきますし、先ほど香川県さんがおっしゃったように、大体、公務員は3年に1回ぐらい転勤していくわけなので、対応職員の質などの問題もバックグラウンドとしてあるのかなというふうに思います。

【林委員長】 ありがとうございました。永村委員、どうぞ。

【永村委員】 今、自治体の方々がそれぞれ手短におっしゃいましたけれども、非常にご苦労されているということを強く感じました。この間、私どものこの議論の最初の委員会である委員の方から、そもそもなぜ法改正をするかということをしっかり詰めた上でやるべきであろうというご意見がありました。例えば、法律施行上うまくいっていないところはどこか。行政側のマンパワー不足か、執行体制の問題か、あるいは条文の書き振りが悪くてうまく適用できないということなのか、という例示がございました。
 この小委員会ではその手の議論がほとんどなされていません。規制強化に関する意見はかなりたくさん出ておりますが、自治体の実態に関する分析、実際業務に携わっておられる方々の分析というのはございません。これはある意味で議論の大きな問題ではないかと思います。いろいろな規制を強化するのであれば、自治体の担当職員を増やす予算措置の裏づけが当然あるべきだという意見を私も申し上げたので記録されていると思いますが。 実は昨日ですが野上さんのところの刊行物に、大変喜ばしいニュースが出ておりました。平成21年度の殺処分が犬、猫あわせて23万9000頭で、約4万7000頭減少したという記事が出ており、これは過去10年で最高の減少率だということです。このトレンドでいけばという前提ですが、犬は5年、猫は10年で殺処分ゼロになることが期待されるという記事でした。いずれにしても、私が自治体の方々にお聞きしたいのは、殺処分が減っていない自治体もあるしかなり減った自治体もあると思いますが、今の法律でもこれだけの減少ができるという実態を見て、かなり減少している自治体の方々がもしこの中におられれば、なにが奏功したのか、効果を上げたのかということを手短にコメントしていただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いします。

【林委員長】 このことについて、どなたかお答えいただける方はおられますか。

【香川県】 香川県です。今のお話は21年度なのでちょっと時期がずれるのですけれど、実は香川県の方もいわゆる飼い主さんからの引き取り依頼を、前は保健所の方でずっと受け付けておりましたので、一応引き取りに関しては県全体で方向性を決めようということでガイドラインを作成しまして、基本的には、飼い主さんがまず終生飼養してくださいということをまず指導していくようにしました。それから、できたら今の飼い主さん自身で何らかの手だてをもって新しい飼い主さんを探してくださいと言う。そのために例えば新聞記事に載せたり、動物愛護推進員に相談してもらったり、インターネットの掲示板を見てもらったりという手だてをいろいろしていただいて、それでもどうしてもだめなときに関しては引き取らなければいけない規定です。
 実際これを今年度4月から実施してきたのですが、飼い主さんからの引き取りは目に見えて減ってはおります。少し恥ずかしい話ですが、地域によっては保健所に犬を持っていくのが当たり前な地域と、保健所で殺処分するなんてあり得ない、そんなことをしては絶対認めないという地域差がございます。田舎の方ほど昔から保健所での殺処分が当たり前のようなところがあり、今はそうではないですよ、こういう考えをしていかなければいけないですよということを指導すると、納得していただける方は何人かいらっしゃる。
 そういう面で考えれば、今の制度でもどんどん一般の方に普及啓発をしていくことが何より重要なのかなというところで、今年度ガイドラインをつくってみて、結果がまだ終わってはいないので統計上のデータとしてしっかり出せているわけではないのですが、確実に今年も減ったなということを実感しております。

【林委員長】 ありがとうございました。ほかの方はよろしいですか。野上委員、どうぞ。

【野上委員】 法改正の根拠ということなのですが、当会では10年以上、全国の自治体に毎年アンケート調査をしておりまして、動物取扱業に関する質問も行っているところです。もうすぐ、平成21年度版ができますので、皆さまに配付したいと思っております。その中で、幾つかピックアップした事例を申し上げます。
 平成21年に動物行政に寄せられた動物に関する延べ苦情総数は、30万8971件ありました。過去にもずっと同じくらい、毎年30万件程度の動物に関する苦情が行政に寄せられています。
 その中で、動物取扱業に関する苦情は、動物取扱業を所管する95自治体のうち77自治体で、集計していない自治体もあったので77自治体なのですが、総数は6205件ありました。そのうち、実際に行政が改善指導した対象事業者の総数は1552件でした。延べ指導総数については、2545件ありました。ということは、同じ業者に繰り返し指導しているということがわかります。苦情の非常に多い自治体と少ない自治がもちろんありますが、やはり大きな自治体ほど当然多くなっているわけで、大阪府についてもかなり苦情が多い自治体だというふうに思います。
 大阪府の苦情の内容については、前回の小委員会で苦情の内容を表にしたものを配付させていただいたところです。しかし、直接動物行政に行く苦情のみならず、市町村とかもっと違うところに行っている苦情もたくさんあるわけです。さらに、販売トラブル等で消費者センターに行く苦情も、国民生活センターには毎年千数百件の苦情が寄せられています。こういうふうに見ますと、やはり動物取扱業に関する苦情は全然減っていないということで、ここは改善しなければいけない部分であるし、そのために今回この動物取扱業についていろいろな議論をしているのではないかというふうに思います。
 それで、このような苦情をまず減らすための方法を考える必要があるわけです。自治体に対してお願いしたいことは、やはり苦情というのは地域住民の非常に切実なニーズを反映しているものですので、きちんと分類をして、統計をとり、対処の方法をきちんとシステム化していただきたいと思います。今回、幾つかの自治体に対して、動物取扱業者に対する苦情相談の受付表あるいは対応表というものを情報開示請求しまして、大量に入手しました。その結果、各地で実にいろいろな苦情が発生しているということがわかったわけですが、それに対する自治体の対応の仕方に問題がある点も幾つかあるので、そういう対応の仕方を制度化して、適切な対応ができるようにしていくということが必要ではないかと思います。
 さらに法改正によって基準が厳しくなり、動物取扱業に対して指導がしやすくなるようになれば、この苦情件数は減っていくわけです。減っていけば当然、自治体の仕事も減っていくので楽になると思います。現状が苦しいからこれ以上困るということではなく、苦情をいかに減らしていくかという方向で考えていく必要があると思います。さらに観賞魚や両生類の取扱業者や火葬業については、社会的ニーズとして多くの人たちが望んでいることなので、行政はそれを受けとめていただかなければいけないというふうに思います。以上です。

【林委員長】 ご意見でした。それでは、山崎委員どうぞ。

【山崎委員】 意見と、それから何か方策を考えるに当たって、ここをどうお考えになるかということをちょっとお聞きしたいのですけれど、まず一つは、先ほどのブリーダーとか多頭飼育者の崩壊の中での問題点です。北海道の方の、動物の行き場は難しい云々というご意見ですが、これはいろいろな自治体から出ております。打越委員がおっしゃったような、そこに置いておくという虐待をどう考えるか、毅然として処分ができないのかという問題を私も常に考えていたのですが、もう一つだけ加えなければいけないのは、多頭飼育者とか多頭飼育に等しいような例です。高齢で、ケージの中にマルチーズを108匹飼っているというような状況でも続けているというのは、ある意味、現状認識がすでに低下しているという病理の表れなのです。
 多頭飼育者に関しては、すでに心理学会等でこれはOCDの一種、強迫症の一種であるという診断が下っている場合もありますし、強迫症で収集癖がついた場合には、大体予後がすこぶる悪く、再犯率100%とも言われています。そうしますと、これは動物行政に押しつける問題ではないわけです。説得はとても大変だという斉藤委員のお話も以前ありましたし、ほかの行政の方も当然それを抱えていると思うのですが、これは人間のソーシャルサービスの勉強をした人間でなければ説得はできないわけですから、ソーシャルワーカーや保健師さんによる対応となる。精神保健福祉士のような方々は保健所の同じ屋根の下におられるわけですから、そのような方々との連携をする。クロストレーニングと英語では言うのですが、そういうことをやっていかないとこの問題は片づきません。つまり、単純にたくさん動物がいて大変だね、飼っちゃった人を説得しようね、どうして所有権を渡してくれないのかというころに関して、そういう人間に対応できる人間を投じないといつまでたっても空回りする問題で、連携をどうするかということです。
 ただ、マルチディシプリナリー(多職種にわたる専門家が治療を行う)とか学際的という言葉は、実は社会福祉の学問の現場では非常に嫌われます。社会福祉の学問は、申し訳ないですがかなり旧石器時代の考え方で、そういったところに自分たちが入ることに関して、「いや、人間で精一杯だから犬猫はね」という方はたくさんおられます。そうではなくて、彼らが入らないと片づかないという情報をどこの誰に出していくかは、現場の方々のお仕事を多分楽にするために一番重要なステップだと思っています。それが可能かどうか、どうやればいいか、省間でやるものなのか、保健所という単体でやるものなのか。
 もう一つは、処分に関してです。実際に生かしておけばいいという考え方に関しては、実は今日本がとても不健全な方向に進んでいると思います。ある自治体のゼロ処分運動というのが非常に旗振り的にメディアなどでも取り上げられていますが、その裏では、安易に渡してしまった犬が咬みつき事故を起こして隣の県で処分された事例とか、実は隣の自治体で捕獲件数が増えた事例とか、その自治体の周りにはたくさん問題が起こっています。
 ゼロ処分がいいと言っているのは一体誰なのか。ゼロ処分はあり得ないわけです。例えばこれから闘犬の問題なども語るわけですけれども、そういった傾向の犬が例えば保健所に入ってきたとして、それをかわいいと言っている人に安易に渡すことができるかといったら、これは銃を持たせて返すようなものです。犬は凶器になります。20キロぐらい超えた動物でしたら、私よりも水越先生の方がご存じだと思いますけれど、顎力としては一発で成人男性を倒すだけの力を持っております。
 行動学的に収容施設などから出せる子はどう選別するのかとか、出せない子はどうするのかはっきりと言うこととか、要するに社会復帰ができないから安楽死するということに対する基準を誰が持つのか。これは行政に押しつけることではないと思います。
 例えば欧米のAVMAは、獣医師会が安楽死に関するきちっとしたマニュアルと委員会を持ち、5年ごとに安楽死の方法を見直すというような作業を常時続けているわけです。すなわち弁慶がいるわけです。弁慶なしに戦えというのは非常に苦しい戦いであり、行政の方々が、じゃあ仕方がない、もうこれは切り捨てなければいけないというときに、誰が弁慶になり得るかということ。行政一人で考える問題ではなくて、その弁慶というのはこういう委員会なのか、環境省なのか、はたまた日本獣医師会なのか、そのあたりを考えていかないと、処分という問題は一筋縄ではいかないと思います。

【林委員長】 ありがとうございました。これまでもそうだったのですが、この委員会では動物愛護管理法の改正のほか、施行規則や基準や指針をもう少し変えた方がいいのではないかという論議だけではなくて、動物と人との関わりの中で今起きている問題について話が出てきていますので、整理が難しいところです。今の話も獣医師会さんに頑張ってもらうという話になれば、ここの話ではないわけですが、いろいろな問題との絡みでいえば、こちらで対応していくべき問題もあるというようなご意見だろうと思います。
 もう少し法律の改正と絡んだ、あるいは指針でこのようにした方がいいのではないかという話をいただけますでしょうか。では臼井委員、どうぞ。

【臼井委員】 法律のことは専門家ではないのでわからないのですけれども、動物取扱業者が廃業するときには、速やかに所有権を放棄するというような文言をどこかに盛り込むことはできるのでしょうか。
 それともう一点。さきほどから届出制と許可制のことを大変細かく議論されていて、今ごろ何だと言われるかもわかりませんが、私のように法律に関して勉強していない者は、届出制と許可制の中に大変大きな開きを言葉から受けます。登録制の中に、現行では許可制と一緒だというようなことが盛り込まれたかと思うのですが、それならば許可制とした方が、素人が受けるニュアンスとしては非常にクリアなような気がします。

【林委員長】 非常に重要なポイントですが、磯部委員か青木委員に伺いたいと思います。許可制は基本的にやってもらいたくないことでしょうか?そこが非常に気にかかるところです。私は動物取扱業は日本の社会には存在すべきだと思っていますが、登録制でいろいろな問題が起きているのは、法律の名前ではなくてほかのことが問題だとすれば、あえて許可制という名前に変える必要もないくらいだと個人的には思います。許可制という意味合いは、何か原則禁止だという感じがあるように映るのですが、どうなのでしょうか。

【磯部委員】 理論的に言うと、一般的には禁止が前提で、その禁止を個別の場合に解除するのが許可だということです。先ほどは自動車運転免許の例を言いましたけど、日本では銃砲、ピストルなどを所持することは一般的に禁止されていて、例外的に許可される。あれも、本来持っている必要はないという意識が日本社会においては普通ですけれど、アメリカ社会ではそうではないというようなことがあります。そもそもあっていいものなのか、よくないものなのかという価値判断までは、許可制という一つの法技術の概念の中には入っていないわけです。
 普通、営業規制の場合は、営業の自由というものが前提になっていて、勝手にやったら公の利益に反するから総体的に禁止して、それを特定の場合に解除するという説明になります。それに対し、そもそも人が自由にできないことを特別に誰かにやらせるというのは、許可ではなくて、先ほど少し言いましたが特許制度の問題です。例えば公益的な事業、発電、電力、ガスなどの公益事業とか、放送事業、通信事業のようなものが特許だというふうに説明されています。しかし、この差も相対的になりつつあります。

【林委員長】 ありがとうございました。打越委員どうぞ。

【打越委員】 せっかく行政職員さんが来ていらっしゃるので、具体的な質問を2点したいと思います。今日配られている資料3の20ページからスタートするところの7番、飼養施設(犬猫のケージの大きさ等の具体的数値規制の検討)について伺いたいと思います。
 この委員会の中で、犬や猫のケージの大きさ、飼養施設などに関して数値の基準をつくるべきか否かというのが大分議論になりました。こういうのが良好だ、というふうに定性的な表現では既に施行規則の中に基準がありますが、ここに数値を入れるべきか否かというのが議論になりました。先ほど古澤さんの方から、数値があったらやりやすいのではないかという話があったと思います。とはいえ、この委員の中でも、例えば犬の種類によって大きさが全然違うとか、数値の基準をつくることに科学的な根拠がないかあるかという形で、議論が非常に割れたところであります。
 古澤さん以外の方にも伺いたいのですが、数値基準をつくれるとしたらどういったものでしょうか。気温とか通風とか日照何時間とか、こういう基準が一本あったらやりやすいというものは何でしょうか。私が以前に発言したのは臭気です。アンモニア臭はいろいろな意味で象徴になるのではないか、臭気だったら例えば基準としてチェックして使いやすいのではないかということも申し上げたのですが、実際こういう数値基準があったらいいとか、そういう数値基準はつくられると対応が難しいというようなものがあったら教えていただきたいと思います。ふだん現場でいろいろなところに回っていらっしゃるからこそ、この基準だったらいいなというのがあったら教わりたいというのが1点です。
 もう1点は、資料3の40ぺージの[3]、動物取扱責任者に対しての研修に関することです。これも実務家の皆さんに伺いたいのですが、動物取扱責任者に対して年1回の研修を義務づけていますが、結構大変ではないでしょうか。なかなか集まってくれなかったり、テーマが難しいという話があり、自治体の担当者の負担をどう考えるか、回数を減らすべきだという意見もあれば、我々が積極的に研修講師として現場に出ていくべきではないかなど、いろいろな議論がありました。
 偉い先生を呼んできて話を聞くというような研修だと頭に入らないかもしれませんが、一般の飼い主とか、保護活動をしているような人たちを招いたりするワークショップのような形で話し合いをするような研修であれば、知識を得る場とは違うかもしれないけれど、立場の違う人の悩みや課題を共感できる。そういった研修は可能なのでしょうか。
 実は来週浜松市に招かれ、ワークショップ形式で研修をしてほしいというふうに言われています。そういう工夫をすれば年1回はさほどの負担にならないのかどうか、そういった研修の負担について伺いたいと思います。以上です。

【林委員長】 最初に、行政指導といいますか立ち入って検査されたときに、こういう基準があればもっと対応しやすくなるというものがございますか。どうぞ、中村さん。

【香川県】 別の自治体の話になってしまうのですが、最初にも少しお話しした全日本動物管理関係事業所協議会の中四国ブロックの方で、実際に指導するときに、鳴き声の大きさの数値を示して指導したらどうだというので、実際にやられた自治体があります。本当に一つの事例ですし、地形的にも少し特殊で多頭飼育の家があり、離れに1軒しか家がないというところだったのでできた部分もあるのですが、苦情を言ってきている相手にも数値がこれだけ下がりましたよということも言えるし、飼養者にも見せられるので、ある程度の効果は持てたというようなお話だと聞いています。
 一つがその鳴き声で、誰もがわかる部分ですが、人によっては受け取り方が違う部分というので難しいですが、ある意味一番つくりやすい部分ではあるかなと考えています。
 もう一つは臭いで、これは少し動物愛護とは別の観点になりますが、特にアンモニア臭など。専門でないので単位はわかりませんが、数値で基準をつくるとすれば計測器でどのくらいかになると思うのですが、実際にこの間、食品関係の方から聞いたところによると、計測器で全くゼロと出でも、人間は臭いを感じて不快に感じる人もいるということでした。そういうことを考えると、やはり臭いは数値があると確かにわかりやすい。ここは確かに苦情としても大きい部分ですが、では実際に基準をつくるときにどうするかという部分を考えるとちょっと難しいのかなと、個人的には思ってはおります。

【林委員長】 ありがとうございました。臭い、鳴き声、音は苦情でも最も多い項目に当たっていますが、そのことについてお話いただきました。ほかの方で何かこういう基準があった方がいいというのはございますか。

【永村委員】 打越委員のご質問とやや観点が違うかもしれませんけれど、この小委員会では数字をめぐり、いろいろと議論されております。その一つが子犬を8週齢未満で販売してはいけないということで、数字を導入すべきだという意見がかなり出ています。
 しかし、先ほど磯部委員もおっしゃいましたけれども、具体的に数値をつけると脱法行為が起きかねない。例えば現場におられる方々が個別にペットショップに行って、いろいろな品種の子犬が8週齢を超えているかどうかの判断ができるものかどうか。むしろこの8週齢というような数字を決めることによって、生年月日の改ざんなどが起こる可能性が非常に高いと考えているのですが、皆さん方のご意見を聞かせていただければ幸いです。

【林委員長】 質問がもう一つ増えましたが、最初の質問は研修回数の緩和についてです。こういうやり方だともっと研修の意義があるのではないかというようなことも含め、ご経験などから何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。大阪府の長濱さんから、どうぞ。

【大阪府】 動物取扱責任者研修については、行政としての負担は3点あるのではないかなと考えております。まず1点目は、開催するに当たっての事務量がかなり多いこと。ちなみに大阪府には千六百数十件の動物取扱業者がいて、年間7回やっているわけです。7回やっても来られない。その7回に来られない人のために、もう2回やっているのです。なおかつフォローとして、例えば大阪市とか堺市の政令市で大阪府の業者を受け入れてくれるところがあれば、そこへまたお願いするというような事務量が大変です。
 2点目が、先ほど少しお話がありましたが、研修会の内容をいかにやるかということ。環境省さんの方が主催して1週間ぐらい職員研修をやっていただいている内容を、その研修会に反映するという手法も当然考えるのですが、なかなかそこは難しい。大阪府は農林部局でこの関係をやっていますが、野生動物の問題も同じ課の中で担当しています。ペットショップなどでは動物薬の販売があるので、こういう薬を使ったり販売するときは薬事法の許可などが必要ですよというような研修会も盛り込んでおります。ではそうではない自治体はどうされているのか、毎年のことなので内容について苦慮しているのでしょうか。
 もう1点目が、受講率がどれくらいかということ。義務化されているので当然100%でなければならないわけですが、しかしながら受講率は100%ではないので、ここについては行政的な対応が必要になってくるわけです。近々5年目の更新が迫ってきているので、この更新のときに未受講者の対応をどうするかというのも問題です。近畿でいろいろな議論をしているところです。
 この三つが行政、自治体として、この動物取扱責任者研修について少し負担になっているところかと思います。ではこれに代わる方法としてどうするか。例えば試験を導入して、ある程度の合格者は毎年ではなくてもいいから間隔を伸ばしていくなど、何らかの手法をできたらいいなとは考えております。以上です。

【林委員長】 ありがとうございました。ほかの方でこのことについてはよろしいですか。
 最後の質問に関しては、動物に関しては今も法律の中に定性的なことは書かれていると思いますが、見るからに幼弱個体でこれはどのくらいかと年齢を質問されたり、どう見ても今の法律に違反しているのではないかという事例も含め、これまでどんなものがあったか。その場合、何週齢というのは現場でどう見分けるかという、そういうご質問ですね。

【大阪府】 犬を見て8週齢かどうかがわかるかどうかというご質問ですが、これはなかなか難しいと思います。今の法律の中で、例えばトレーサビリティなどと言われている議論の中で、繁殖したのがいつだとか、買ってきたのが何月何日でという台帳確認に頼らざるを得ないのが、行政としての立入検査時の確認の方法かなと思います。

【林委員長】 よろしいですね。では、水越委員お願いします。

【水越委員】 先ほど北海道の方から、残される犬の保護をする場所がないという意見がございました。実際に保管場所がない自治体はかなり多く、特に政令指定都市や中核市には本当にないので、そのために譲渡もなかなか行うことができないというお話を、職員の方から聞くこともあります。
 これが現実的な質問かどうかはわかりませんが、各自治体は動物の保管場所を持たなければいけないということで、例えば今までの勧告命令などを出しやすくなるのか、それとも保管場所があったとしても、なかなか命令とか取消しまで行くのは困難なのか、保管場所はどれぐらい重要なのかというような質問をしたいと思います。
 知り合いで中核市の保健所に勤める獣医職の人がいるのですが、その方が、保健所でやっているので全く保管場所がないと言っていました。譲渡もしたいし指導もしたいのだけれど、犬を置くところがないのでそういうことができない。もし保管場所を持ちなさいというような決まりがあれば、予算もつくしやりやすくなるだろうなというような意見が、個人的な話をしたとき出たので、少しお聞きしたいと思いました。

【林委員長】 保管場所を持っておられないところも、今日おいでいただいているところであるかと思いますが、いかがですか、今のご質問についてどうぞ。

【北海道】 先ほどのお話ですが、こちらも話し方が悪かったのかもしれないですが、そもそも本来なら行政がそれを保管すべきではないというのが大前提だと思います。やはり飼っている人が一義的にというか、一番責任があることです。この2、3年の話しか私もわからないのですが、全部対処できたのはボランティアの方などで、行政は表立ってはしない。全然名前が出ない形で、こういう人がいるということでお伝えしたり、若干のつなぎ役はやった部分もありますが、行政がやったとなると、じゃあ行政でやってくれるんだと思われることの心配が一番大きいのです。社会的な話題になったときは別かもしれませんが、そこが一番問題かなと思っています。保管場所があるかないかの前に、クリアしなければならない問題があるかなと思っています。
 それから、北海道の場合は全国の20%ぐらいの面積で広いわけです。保管場所があっても1カ所に集めるという話にはどうやってもならないので、ほかの県とはちょっと事情が違うかなとは思っています。

【林委員長】 ありがとうございました。では、野上委員どうぞ。

【野上委員】 先ほどお話しした自治体へのアンケートで調べたところ、動物取扱業者からの犬猫の引き取り依頼について、「動物業者であることを確認していますか」という質問で、「確認しています」という自治体が66ありましたが、「確認していない」という自治体もありました。「確認した上で動物業者から引き取っている」という自治体は36あり、「業者から引き取らない」としている自治体が32、「原則引き取らない、場合によっては引き取る」という自治体が39というふうに分かれています。
 ですので、かなりの自治体は実際に動物取扱業者から引き取っており、それを実際に殺処分しているわけです。助けられるものは助けたいという気持ちは皆さんがお持ちなので、地元に動物愛護団体がいたり、何らかの形で問題化して、私たちがやりましょうというような動きがあれば助けられるのですが、現実的には相当数の動物が動物業者から持ち込まれて処分されているというのが実態だと思います。
 例えば業者からは引き取らないと言っている自治体があるのですが、これは恐らく自治体の裁量でやっていると思います。これをみな同じように業者からは引き取らない方にした方がいいのかどうかについて、ご意見を伺いたいと思います。

【林委員長】 非常に難しい問題ですがいかがでしょうか。業者から引き取っている実態があるのは確かです。先ほどの北海道の様子をお伝えいただきましたが、北海道は「引き取らない」ということを前提にしてきちっと通しておられるわけですね。

【北海道】 基本は引き取らないですけれど、個人的に誰かが持ってきて、わからない部分も入っているのかなとは思います。
 あとは話があったときに、「自分で獣医さんなどに相談するべきじゃないのか」ということを言うこともあります。自分の手で、と言ったら変ですけど、どうするべきかということをお伝えします。ただ見逃している部分は若干あるかなとは思っております。

【林委員長】 ほかの方でいかがでしょうか。今、野上委員がおっしゃったのは、かなり大量の頭数を業者から引き取っているようなことがあり、それは動物の幸せを考えた場合、やむを得ず引き取ったほうがいいというご判断もあるのかどうかということですね。それに対するご意見は何かありますか。特にないですね。それでは、加隈委員どうぞ。

【加隈委員】 質問を2点させていただきたいのですけれど、これまでの議論でも取扱業の緩和ということで、動物園、水族館から要望が出てきております。また今後の議論の中では、実験動物の施設などについても議論がされますが、多くの自治体は、動物愛護管理推進計画の中で法律に入ったということもあって、3Rの推進ということを書かれていると思います。実験動物に関しては、特にそれ以上のものがないという現状の中で、都道府県等がどのように対応を考えられているのでしょうか。要は、動物園、水族館とか、動物実験をやっている施設などに関して、現状で登録になっていることによる問題点や、今後こういうふうにしてもらえたらいいなとかということがあれば伺いたいと思います。

【林委員長】 動物園、水族館、実験動物をやっているところについて、何かこのように今やっている、あるいはこうした方がいいというようなことはありますか。緩和の中で話が出ているわけですが、動物園、水族館のように、かなり動物に対する専門家がいるところは、動物取扱業の登録の中から外していいのではないかという意見と、そうでないという意見と両方あると思います。
 動物実験をやるところは、特別立ち入りなどは今でも法律上は必要ないことになっていますから、おそらくやっておられないと思うのですが、動物園、水族館について問題点などありましたらお願いします。

【大阪府】 動物園、水族館についての規制緩和といいますか、登録の免除ですが、オーソリティがいるから特段それを免除するというのは、馴染まないのかなと考えております。
 実験動物につきましては、近畿の中ではたしか兵庫県が条例の中で届出制度のような形をとっていますが、今議論の中にテーマとして入っているのが、実験動物の製造業者の規制です。例えば厚生労働省や農林水産省や文科省は、実験動物の飼養、使い方とか飼い方についての基準のようなものが出されている中で、そこの部分についてはこれでいいのかということです。ただ、製造については、この実験動物の製造と、いわゆる畜産動物の製造をきっちり整理をする必要があるのかということで、3Rの推進は当然だと思います。

【林委員長】 よろしいですか。では関係している話で、水越委員どうぞ。

【水越委員】 今の動物園に関連した質問です。例えば都道府県とか市町村がそのまま市立動物園をやっていることがあると思うのですが、そうすると行政が同じところの行政の動物園を監視するというところも、馴染まないかなと思います。
 だから個人的にはそういう動物園に関してすべて、あるいは行政が管理する動物園に関しては、環境省とか国が監視をする方が馴染みやすいように個人的には考えています。これはちょっと質問ですけど、どのように感じられるでしょうか。

【大阪府】 現実的には大阪府は持っていませんが、近畿の中では政令市で動物園を持っているところが何市かあり、実際そこで登録しているわけです。そういったことは結構行政の中ではたくさんありまして、同じ知事が知事に許可をするとか届出を出すということについては、特段問題はないような気がします。

【林委員長】 明快ですね。山口委員どうぞ。

【山口委員】 先ほど委員長が、今の登録のための基準、定性的には随分きちんと書いてあるというふうにおっしゃったんですが、それでもとても当てはめにくいというふうに、もし自治体が思っていらっしゃるのであれば、どのように書けば、今の基準でも当てはめやすくなるのでしょうか。先ほど犬は大きさが違うから数量を入れてもなかなかうまくいかないのではないかというお話がありましたので、この定性的をどのように変えれば当てはめやすくなるのかということをお聞きしたいと思います。

【林委員長】 皆さんのお手元にはないかもしれませんけれども、委員のお手元にあります資料、30ページの最後の「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」は、内容的にすばらしくよくできていると思います。
 「ケージは、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がり、横たわる、羽ばたくという日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとする」とか、「幼弱な犬猫等の社会化(その種特有の社会行動様式を身につけ、家庭動物、あるいは展示動物として周囲の生活環境に適応した行動がとられるようになることを言う)を必要とするような動物については、その健全な育成及び社会化を推進するために、適切な期間、親、兄弟、姉妹等ともに飼養または保管すること」とか、すばらしいことが書いてあります。実際にこの細目で具体的な指導をされたことが実際あるかどうかということ等も含めて、どうしたらしやすくなるかとかいうことで、何か日ごろ感じておられることがあったらおっしゃっていただければというご質問です。
 さきほどの動物の鳴き声については、第2条の4に「動物の鳴き声、臭気、動物の毛等により周囲の生活環境を著しく損なわないよう、飼育施設の開口部を適切に管理する」などいろいろと書いてあるのですが、定性的な書き方としてはこれ以上の書き方はないのではないかと思うぐらいよくできています。この小委員会でかなり時間を費やして論議したのは、本当に動物取扱業が遵守しているかどうかということ。多くの方はされていても、中にはけしからん人がいるのではないかという論議で、ではどうしたらよいのかという話をしていたのですが、実際に現場で取り締まりに携わられるようなときに、ここの細目全般にわたってでも何かご意見があればお聞かせいただきたいのですが、いかがでしょうか。

【大阪府】 確かにおっしゃるように、内容的には十分満足されるような数値目標、数値設定です。この内容については、その現場の個別判断になっていくわけですが、そこも職員の合議制にしていくのか、あるいは組織内だけで内規的なものを決めていくのか、結果的にはそういうことになるのかなと思うのですが、かなり難しい話かと思います。当然、科学的な根拠が必要になってくるでしょうし、行政の裁量権がかなり方向によって右へ行ったり左へ行ったりする中で、かなりしんどい部分かなというふうに思っております。

【林委員長】 この中で1カ所だけ数値があります。1日1回以上巡回を行い、保守点検を行うことという項目が一つあります。これは数値が入っていますが、こんな状況では1日1回点検していないのではないでしょうか。動物を飼育している業者に対して。そういう指導というのは実際にやられたことはありますか。

【大阪府】 1日1回というのは清掃のところも入っていると思います。明らかにやっていないなというのがあればよくわかりますが、1回というのがどれぐらいのレベルで1回以下なのか以上なのかは、何か経験的なものが必要になってくるのかもしれません。そうすると、いわゆる動物愛護団体と職員の資質向上みたいなところも必要になってくるのかなというふうに思います。

【林委員長】 ほかにございますか。では臼井委員どうぞ。

【臼井委員】 先ほど日齢はよくわからないというお話を伺ったのですが、例えば臨床をやっている開業の獣医師の方でしたらベテランですからよくわかっていると思うのですが、そういう方の知識などを応用するというようなことは現場で可能なのですか?例えば8週齢のようなものが導入された場合のことですが。

【大阪府】 これは法律上書かれてしまいますと、白か黒かはっきりする必要が出てくるのかなと思います。そうしたときに、今の獣医学的な週齢判断というのはどれぐらいの可能性で的確な週齢が確認できるのかなというところが、私にはわかりません。

【臼井委員】 現行の法律では、きちんとお誕生日などの日にちを書きなさいとなっていますよね。

【大阪府】 ですから先ほど申し上げましたとおり、現実的には台帳確認のようになるのかと思います。立入検査時に、台帳確認によるトレーサビリティを行うという方法かなと。例えば犬を見てこれが8週齢かどうかと判断しなさいと言われると、なかなか難しいのかなというふうには考えております。

【臼井委員】 明らかにちょっと怪しいのではないか思ったときに、現場の担当者の方だと難しいというお話がさっきありました。そういうときに臨床の先生のヘルプをいただくようなことはできるのでしょうか。

【大阪府】 成犬というのは誰でもわかる話だと思うのですが、ボーダーが8週齢だとすると、ボーダーの内か外かというジャッジが現実的に獣医学的に可能なのかどうかというのは、私の知っている限りでは難しい。臨床家でも難しいのかなと思うんですけど、その辺はちょっとわかりません。

【林委員長】 そのジャッジは私の知る限り、獣医学的というか、生物学的にできないですね。どうぞ、山崎委員。

【山崎委員】 今、臼井先生がおっしゃったことと関連していますが、例えば週齢を見分けるのは非常に難しいかもしれないけれど、今、林委員長がお読みになったさまざまな基準の中には、例えば十分に羽を広げられるというようなことがあります。明らかに羽を広げられないケージに入っている鳥などを、私もペットショップでしょっちゅう見ていますが、例えば動物の体が伸びた大きさの中で飼養するに十分かどうか、その判断というのは、当然皆様方も獣医師の資格をお持ちなのでできると思います。いわゆるエキスパートオピニオンとして、それを告発するなり法的な措置をとるときには、今、臼井委員がおっしゃったように、地元の先生方の証言を得るというような形でやっていくことが、今の手続上できるのか、必要なのか、有効なのかをお聞きしたいと思います。
 もう一つは、では何をしたらいいのかというところが、いま一つ見えてこないことです。
 ZPKで、業者さんをなるべくお互いに自主規制をしようという教育をやっていらっしゃるのは、私も太田委員とよくお話をさせていただいていますが、ZPKそのものの手が入れない問題業者さんが実はたくさんいます。場合によっては、ZPKの関係者の方が脅されたりするような業者さんもいるわけですから、そうなると、団体の自主規制が及ばないところは、やはり法律で切り込んでいくしかない。法律で切り込んでいくためには、今、何が必要か、何を書けば一番できるのか。ここに書いてあるので十分だけれど予算も人もいないから無理だとおっしゃるのか、その辺を本当に明確にしていただきたいと思います。

【林委員長】 今のはご質問になるのでしょうか。立派なことが書かれていても、なかなかできないというようなことはありますか。

【大阪府】 今の山崎委員のお話はよくわかります。例えば羽を広げてとか、これは別に特殊な資格を持っていなくても、客観的な判断は複数の人間が判断すれば可能かなと、臨床家でなくても可能かなというふうに思います。
 もう1点、今の問題に対して、じゃあどんな取り組みが行政として、自治体としてできるのかなということです。冒頭、私がお話しした仕組みのようなことを検討する。動物虐待にしても、動物取扱業の適正化にしても、もう少し行政よりも強い力を何らか利用するために、具体的には警察官の方に出向していただくという対応の仕組みも可能かなというふうに思っております。

【林委員長】 そろそろ時間が過ぎていますが、野上委員と加隈委員、どうぞ。

【野上委員】 今の話に関連して、人員と予算のことです。鳥獣保護法の改正の時にも司法警察員についてやはり同じような議論がありまして、行政の職員がすぐに異動になってしまうので、なかなか専門的知識が身につかないということでした。たしか政令で少なくとも3年はそこの部署にいる、同じ職員を鳥獣保護担当職員に充てるという規定が何年か前の改正でできたかと思います。動物愛護担当職員も、専門的知識を持った職員を充てるというふうに法律上なっているわけですが、その方がすぐ交代してしまうと継続性がありませんよね。ですので、この任期を一定期間に定めることは望ましいことなのかどうなのか。 それから司法警察権を付与されることは、伝家の宝刀ではないですが、使いこなせなくてもいざというときには使えるのではないか。鳥獣保護担当職員もいざというときは使っている場合もあるわけですから、ないよりはあった方がいいのではないかと思います。
 もう一つは予算の問題です。地方自治体の予算がだんだんと狭められてきているのですが、この動物愛護行政については、こういういろいろな法律が改正されて強化されていけば、当然それを執行する人員や予算も必要になってくると思うんですけれども、現状としては財政的にはどうなのかということをお尋ねしたいです。

【林委員長】 財政は大変厳しいと思うんですが、何かここでおっしゃっていただけることはありますか。それから司法警察権の問題にしても、何かご意見はありますか。

【大阪府】 野上委員がおっしゃった鳥獣保護ですね。そこの部分について、当然私どもの隣の係にもいるのですが、例えば警察官のように調書を書いたり裁判所に令状をとったりするということまで及ばないのです。鳥獣保護などの担当は普通の事務官とか林業職の人などがやっているのですが、なかなかそこまで及ばないのです。例えば冒頭にも申し上げましたように産業廃棄物の部署に現役警察官が来てやる。この方が実効性があるのかなというふうに私は考えています。
 あと冒頭、もう一つ在職年数が長い方がいいのかどうかというのは、私は長い方がいいとは思います。これも全体的な人事の中で考えていく話で、例えば都道府県の多くは、いわゆる厚生労働省のラインの部署で動物愛護管理行政をやっているわけなんですけれども、そこの中では、保健所で食品衛生とか環境衛生とか食肉衛生とか、いろいろなことをやっているわけです。その中で獣医師職員を回している。獣医師職員がこういう仕事をやっている中で、今、獣医師職員の公務員採用はかなり難しい。特に東京とか名古屋とか大阪は募集してもまだ獣医師採用はできますが、地方になると、なかなか獣医師の応募が少ない。
 北海道では衛生関係だけの獣医師など、三十何人か欠員のまま動いているんです。なおかつ、そういう状況の中で、一つの行政でもそういった獣医師さんの採用が少なければ、獣医師の持っていくところがもう当然決まってくるわけです。獣医師でなければならない職域というのは、食肉衛生などですが、そういうところへみんなまず獣医師を持っていく。狂犬病のところもそうですが、それ以外の職員を配置していくなど人事の問題がいろいろございますので、おっしゃるようにそれはエキスパートとして育てていくというのも一つのアイデアかなというふうには思います。
 予算は、多分どこの自治体もかなり厳しいのかなというふうに思います。

【林委員長】 そうですね、ありがとうございました。では、加隈委員。

【加隈委員】 先ほど細目のところですばらしいことがたくさん書いてあるけれど、その多分解釈とか判断が難しいとおっしゃっていました。法令に馴染むかわからないですが、これはしてはだめと書いてあればやりやすいというふうなことは、あるでしょうか。

【林委員長】 先ほどの細目に関係するような項目に関してですか。

【加隈委員】 つまり、具体的にこれというのではなく、基準として、今は理想的なことを概念的に書いてあると思うのですけれども、逆にここはこれ以下だったらもう即だめですよというふうな全体的な書き方のものがあると、より現場では使いやすいでしょうか。

【林委員長】 今の書き方も、十分な母親とか兄弟との関係を問いなさいと言っているわけですが、問わなかったらだめよと言っているんです。同じことを言っているのですが。すべて書き方の問題というか、内容的に言えばそういう理想的な形でないといけませんよと言っているわけです。そろそろ終わりにしたいと思いますが、太田委員、どうぞ。

【太田委員】 今回で小委員会は13回ですが、今日は小委員会を進めてきて中間とりまとめということでした。次の15日は中央環境審議会動物愛護部会の案について出すということです。今まで審議した中で、とりまとめというよりも意見がたくさん出て、結論らしい結論はもちろんなくていいのかもしれませんが、今後どういう形で中間とりまとめをしていくのか、委員長と環境省の方でもってまとめるのか、お伺しいたいのですが。

【林委員長】 それは非常に重要なポイントで、皆さんがおおむね合意されていることもかなりあったと思います。しかしまったく合意されていないというか、ある意味では二つの違う意見が出ている場合は、やはり両論併記でいかざるを得ないだろうと思います。その場合、どちらかの意見の方に強い重みがあるのかどうかとか、どういう書きぶりになるのかというのは、事務局と相談させていただきたいというふうに思っています。
 この検討会というのは、実はここで結論を出す委員会ではないんです。この上の委員会に部会があるわけですけど、そこでも結論を出すわけではありません。
 最近は政治主導とおっしゃっていますので、我々が論議したことと無関係なことをやられたら困るのですけども、そこは尊重していただくように事務局からは環境省としてきちんとした働きかけをし、そういう方向に持っていっていただくというふうに私は理解しています。いずれにしてもここで採決して、15対3のような話ではまずないだろうと思うのですが、この辺を説明いただけますか。局長からお願いします。

【渡邉自然環境局長】 前回も最後に私から少しお話ししたのですが、今、林先生からお話しいただいたように、項目によって一つの方向にまとまってきているものもあれば、距離の違う意見が両論的にある項目もあります。部会で小委員会を設置するときに、部会の皆さんからも小委員会に議論を委ねるが、要所、要所で部会でも報告をして、部会の意見も聞きながらやっていってほしいというご要請もありましたので、15日には今までの議論の様子を部会にご説明し、中間とりまとめ案の議論というよりは、今まで小委員会でこういう項目についてこんな議論があった、こんなふうに論点が整理できると思いますと報告し、それについて部会の意見も聞いてみたいなと考えています。
 今まで3月、4月には一旦この取扱業の適正化について中間とりまとめをしていきたいということでお願いをしてきたわけですけれども、こういった形で項目によっていろいろ様子が違うもののとりまとめをどんな形でやるかというのも、相談しながら考えていかなければいけないなと思っています。最終とりまとめに向けてこの春の中間とりまとめをどんな形でやるか。そこのところはもう少し悩ませていただいて、委員長ともご相談させていただきながら、委員会での議論に持っていけたらなと思います。
 それから法律を改正するという部分は、国会での審議になるということで、この審議会で最終的に何らかの答申をいただくわけですけれども、審議会での答申をベースに、政治のレベルで最後は法案審議ということになりますので、この審議会での議論を生かした法案審議につないでいくことになります。政党の方でも大変これは関心の高いテーマで、勉強会が並行して進んでいます。その政治のレベルでの議論と、こちらの審議会のレベルでの議論というところでも、情報の共有もしながら今後の検討を進めていくことができたらなというふうに考えています。

【林委員長】 ありがとうございました。今、局長からおっしゃっていただいた内容で進めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【山口委員】 お願いがあるのですけれど、前々回でしたか、ここで話し合った項目は全部入るかどうかわからない、優先順位があるというふうにおっしゃられました。優先順位があるのであれば、生きている動物についての項目を優先させていただきたいと思います。

【林委員長】 承知しました。今日は不手際で20分弱オーバーしてしまいました。そろそろこれで終わりたいと思いますが、その他事務局から何かありますか。

【事務局】 それでは、次回の議論は動物愛護部会となります。次回の動物愛護部会、第27回動物愛護部会は、3月15日火曜日10時から、ここ環境省第一会議室の開催となります。その次がまた再度この小委員会の開催となりますが、第14回小委員会が、3月24日木曜日14時から、ここ環境省第一会議室の開催となります。

【林委員長】 それでは、私の方はこれで議事をお返しいたします。

【事務局】 本日は、ヒアリングでお越しいただきました自治体の皆様、ありがとうございました。林委員長を初め委員の皆様方、ご熱心なご討議をありがとうございました。
 これをもちまして、本日の動物愛護管理のあり方小委員会を閉じさせていただきます。ありがとうございました。