中央環境審議会動物愛護部会第37回議事録

1.日時

平成25年3月28日(木)午後2時00分~午後4時28分

2.場所

三番町共用会議所 大会議室 (東京都千代田区九段南2-1-5)

3.出席者

浅野部会長、青木委員、臼井委員、太田(勝)委員、太田(光)委員、北島委員、北村委員、木村委員、齊藤委員、佐良委員、
星野審議官、上河原総務課長、田邉動物愛護管理室長他

4.議題

(1)
基本指針見直しにかかる関係者ヒアリング[2]
(2)
その他

5.配付資料

資料1-1
動物愛護管理基本指針の点検結果[2]
資料1-2
動物愛護管理基本指針の点検結果 図表資料[2]
資料1-3
「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」に関する状況等について
資料2
動物愛護管理基本指針の改正に向けて(第36回部会資料3)
資料3
ヒアリング対象団体一覧
資料4
農林水産省配布資料
資料5
公益財団法人実験動物中央研究所理事 鍵山氏配布資料
資料6
「東日本大震災における被災動物対応記録集」及び「被災動物の救護対策ガイドライン」について
資料7
緊急災害時動物救援本部配布資料
資料8
岩手県環境生活部県民くらしの安全課配付資料
資料9
公益社団法人日本獣医師会配布資料
参考資料1
動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布及びそれに対する意見公募(パブリックコメント)の結果について(お知らせ)

6.議事

【事務局】中央環境審議会第37回動物愛護部会を開催します。
 しばらくの間、進行は事務局のほうで務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。本日の各委員の御出欠について、御報告します。
 本日は、田畑委員と山﨑委員の欠席の御連絡をいただいております。委員12名中10名出席で、規定に基づきまして、本部会は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 続きまして、本日は、基本指針の見直しに当たりまして、関係者の御出席をいただいております。御紹介させていただきます。
 まず、農林水産省から農林水産省生産局畜産部畜産振興課の菊地令様。同じく、畜産振興課の歌丸恵理様、農林水産省消費・安全局消費・安全政策課の安宅倭様です。
 続きまして、公益財団法人実験動物中央研究所の鍵山直子様です。
 続きまして、緊急災害時動物救援本部から、公益社団法人日本愛玩動物協会常務理事の佐々木勲様、公益財団法人日本動物愛護協会事務局長の内山晶様です。
 続きまして、岩手県環境生活部県民くらしの安全課の岩井賀寿彦様でいらっしゃいます。
 続きまして、福島県保健福祉部健康安全総室食品生活衛生課の平野井浩様です。
 最後に、公益社団法人日本獣医師会から、専務理事の矢ヶ崎忠夫様、理事の細井戸大成様の両名でございます。なお、細井戸様は遅れてくるとの御連絡をいただいております。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。お手持ちの資料に不備がございました場合は、事務局までお申しつけください。
 最後になりますけれども、本日の部会の資料、並びに議事録につきましては、環境省のホームページで公表されますことを申し添えます。また、カメラ撮りは、議事が始まりましたら御遠慮いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 今後の議事の進行につきましては、浅野部会長にお願いします。

【浅野部会長】 それでは、ただいまから第37回の動物愛護部会を開催いたします。
 本日のヒアリング対象となります項目について、点検結果、改正に向けての論点、これを事務局からまず説明いただきます。

【事務局】 前回同様、点検につきましては、次回以降で詳細に行うということで、簡単に説明させていただきます。
 資料1-1を1ページめくって御覧いただきますと、本日、関係者にヒアリングでお越しいただいておりますけれども、(6)実験動物の適正な取扱いの推進ということで、実験動物の飼養につきましては、環境省の告示、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月28日環境省告示第88号)に基づきまして、自主管理を基本として適正化を図る仕組みとなっております。
 文部科学省、厚生労働省、農林水産省では、所管する研究機関に対して統一的な基本指針を策定して、その指針に基づいて動物実験等の適正な実施を図っているところでございます。
 この自主管理の状況につきまして、国は定期的な実態把握を行うこととされておりますので、環境省と文部科学省でアンケート調査を実施しております。
 資料1-2の5ページ目までが環境省が実施したアンケート結果でございます。こちらは動物実験施設を有する可能性がある団体を対象としましてアンケートを実施しておりますけれども、その団体の選定に当たっては、厚生労働省や農林水産省など、関係省庁からの御協力を得ましてアンケートを実施しております。
 実験動物取扱施設のうち、91%が基準の内容を知っていて、76%の施設で基準内容に即した指針や要綱を作成しているという結果が出ております。
 また、資料1-3につきましては、文部科学省によるアンケート結果になっております。文部科学省所管の、いわゆる大学につきましては、こちらによって自主管理の状況が把握されているというところでございます。文部科学省所管の1,656機関を対象に調査を実施しまして、平成24年3月末までに動物実験等を実施していると回答した全ての機関より、基本指針に基づく全ての対応を行っているとの報告を受けたと記載されてございます。
 続きまして、産業動物に関連するものとしましては、環境省で一般市民を対象としたアンケートを行っておりまして、それは資料1-2の一番最後の6ページ目にございます。まだ、産業動物のアニマルウェルフェアに関する認知度というものは低いという状況になっております。
 この後、ヒアリングの中で、農林水産省からアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針について御説明いただくことになっております。
 続きまして、論点ですが、こちら資料2ということで、御用意させていただきましたけれども、これは前回出したものと全く同じものでございます。資料2の裏に[6]、[7]ということで実験動物、産業動物それぞれ論点を記載してございます。
 実験動物につきましては、実験動物の飼養保管等基準の遵守状況について、実態把握の継続、また附帯決議の7番目を受けまして、国際的な規制の動向や科学的知見に関する情報の収集、災害時の取扱い、産業動物につきましては、国際的な動向や科学的知見に関する情報の収集を踏まえ、産業動物の飼養等のあり方を検討、附帯決議の10番目を踏まえまして、災害時の取扱いということで、論点として記載させていただいております。
 以上です。

【浅野部会長】 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見がございましたらお出しください。いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
 特にございませんようでしたら、説明をお聞きいたしということにいたします。
 それでは、ヒアリングを始めます。
 本日のヒアリングの進め方でございますが、1団体について、前回同様でございます、概ね20分程度ということで進めさせていただきます。
 まず、御説明を10分間いただきまして、その後、私ども委員から御質問を差し上げ、お答えをいただく、それを10分程度と考えております。
 質問でございますけれども、一問一答の形ですと、少々時間がかかってしまいますので、最初に委員からまとめて質問を差し上げることにしたいと思っております。前回はあまり質問がありませんでしたので結果的に一問一答になってしまったのですが、原則として最初に、質問をまとめてお出ししますので、恐縮でございますかメモをとっておいていただいて、お答えをいただければと存じます。
 それでは最初に、農林水産省から、生産局畜産部畜産振興課畜産技術室長の菊地令さん、課長補佐の歌丸恵理さん。それから、消費・安全局消費・安全政策課国際基準専門官の安宅倭さん。以上の3名の方から御説明をいただきたいと思います。
 恐縮でございますが、前の席にお座りいただけますでしょうか。
 ではどうぞ、よろしくお願いいたします。

【菊地氏】 ただいま御紹介いただきました農林水産省畜産部畜産振興課畜産技術室長の菊地でございます。
 本日は、産業動物関係のヒアリングということで、資料4に、家畜のアニマルウェルフェアについて資料を準備させていただきました。この資料に基づきまして、概要を説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず1ページを御覧いただきたいと思います。
 上段の黄色い箱の中の1ポツ目にアニマルウェルフェアとは何かということで、家畜へのストレスや疾病を減らし、家畜の健康によりもたらされる安全・安心な畜産物生産や家畜の治療費軽減などによる生産性の向上に寄与するものと位置づけております。
 また、2ポツ目にありますように、アニマルウェルフェアにつきましては、欧米を中心に取組が進んでおりまして、パリに本部がある国際獣疫事務局(OIE)におきましても基準が検討されるなど、国際的にも関心が高まっている状況でございます。
 一番下の参考のところに5つの自由ということで記載させていただいておりますけども、EUのほうでは、1960年代に、密飼いといったことの畜産のあり方につきまして動物愛護団体などから問題提起が行われ、社会問題化する中で、イギリスで1970年代に5つの自由という原則が確立されまして、現在では、この5つの自由がアニマルウェルフェアの概念といたしまして国際的にも知られたものになっているということでございます。
 そうしたことも背景といたしまして、箱の中の3ポツ目ですけれども、我が国におきましても、平成19年から22年度におきまして乳牛、肉牛、豚、ブロイラー、採卵鶏、馬というように、各畜種別に検討会を設けまして、アニマルウェルフェアを家畜の快適性に配慮した飼養管理と定義づけをした上で、各畜種ごとに飼養管理指針を作成いたしまして、現在は普及啓発を図っているという状況でございます。
 また、資料の中段の左のほうに、アニマルウェルフェアの実行というところから、下に矢印がひかれておりまして、施設や機器整備によるコストの上昇というところにバツ印がつけてありますけども、これは検討の際に議論になったことでございますが、生産者の方々の受け止め方といたしましては、アニマルウェルフェアといいますと過大な投資を要求されるのではないかというような危惧を持つ方が非常に多いということがありまして、むしろ、施設とか機器整備等、そういったものが必ずしも必要ということではなくて、日常の飼養管理の改善の中で、それぞれ快適性の確保が重要であるというようなことを基本的な方向としたところでございます。
 具体的には、右のほうに1、2、3と番号が振ってありますけれども、日々の家畜の観察や記録ですとか、あるいは丁寧な家畜の取扱い、あるいは良質な飼料や水の給与、このような基本的な飼養管理の励行が非常に重要ということでございます。
 こうしたことを通じまして、左下「なぜ必要なの?」とございますが、そうした快適性に配慮いたしました家畜の飼養管理を行うことによりまして、安全・安心な畜産物の生産につなげるということだけではなくて、家畜の能力を最大限引き出しまして、治療費といったようなコスト低減にもつながりますし、ひいては、生産性の向上にもつながっていくんだというようなことを強調しているということでございます。
 次に、2ページをお開きいただけますでしょうか。
 先ほども申しましたように、各畜種ごとの飼養管理指針というものを作成したわけですが、その検討会の概要についてお示しさせていただいております。
 各畜種別に、生産者の方々、学識経験者の方々からなります有識者の方々を参集いたしまして、下段にありますように分科会というものを開催いたしました。また、分科会で検討するに当たりまして、右の下段のほうにありますように、科学的知見分析グループというところで、内外の科学的知見に関する情報収集ですとか分析あるいは必要な調査・研究を行っていただくということで、そうした客観的な関連の情報提供もいただきながら、検討を進めていただいたということでございます。
 さらには、中段にございますように、学識経験者、生産者、消費者、動物愛護団体の方々からなります関係各界の方に参集いただきました推進委員会というものを開催いたしまして、各畜種間の調整もとっていただきながら最終案を取りまとめていただいたというようなことでございます。
 次に、3ページを見ていただけますでしょうか。
 これはアニマルウェルフェアをめぐるOIEの動きについてまとめたものでございます。
 OIEでは、箱の1ポツ目にもありますように、動物の健康とウェルフェアの間には重大な関連性がある、あるいは家畜のウェルフェアの改善は、生産性と食の安全を改善する可能性があり、従って経済的な利益を生み出すことが可能であるというような考え方、観点から、アニマルウェルフェアについての基準を作成しているということでございます。
 左側の箱にありますように、2002年にアニマルウェルフェアにつきまして作業部会が設置されまして、これまで策定された基準といたしまして、輸送ですとか、あるいはと畜、そういったものに関わる基準がつくられているという状況でございます。
 そうしたことも受けまして、現在は畜種ごとの畜舎、飼養管理に関する基準というものについて検討されているところでありまして、ブロイラーにつきましては、昨年9月に第3次案が提示されました。また、肉用牛につきましては、昨年5月の総会で可決された後に、一部改正案が提示されまして、それぞれ各加盟国の間で意見照会がなされているという状況でございます。
 続きまして、4ページを見ていただけますでしょうか。
 これはブロイラーのOIEの基準案と我が国の指針を比較したものでございます。
 OIEでは、各加盟国におけます柔軟性ですとか、あるいは実行可能性、そういったことにも配慮いたしまして詳細な数字は記載しない方向で検討が進められております。それぞれ飼養スペース、栄養、鶏舎の環境、管理方法といった項目別に、それぞれのポイントを記載させていただいておりますけれども、OIEの基準と我が国の飼養管理指針につきましては、ほぼ同様な内容になっているということでございます。
 1ページめくっていただけますでしょうか。
 同様に肉用牛の基準案と我が国の指針を比較したものでございます。
 OIEの基準案では、管理方法の中で断尾ですとか電気による保定についての規定がございますけれども、我が国におきましては、そういった断尾ですとか、あるいは電気による保定ということがほとんど行われていない実態にあるものですから、我が国の指針の中では、そうした断尾ですとか保定に関係する基準はございません。
 また、栄養のところでございますけれども、日本では、筋肉中の脂肪交雑、さしとか、マーブリングとか言っておりますが、そういったものを高めるために、肥育の途中、中期段階で、例えばビタミンAの給与量を抑制するというような飼養方法がしばしば実施されておりまして、そうしたビタミンAが欠乏した場合には、食欲不振ですとか視覚障害とか、そのような悪影響があることもあるものですから、ビタミンAの制御時期とその給与量には十分注意する旨の内容を記載しております。
 そのほかにつきましては、OIEの基準案と我が国の飼養管理指針の内容というのは、ほぼ同様な内容になっているところでございます。
 以上が産業動物に関わる関係のところでございます。よろしくお願いいたします。

【浅野部会長】 御説明は以上ということでよろしゅうございますか。

【菊地氏】 はい。

【浅野部会長】 ではどうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの農林水産省からの御説明につきまして、御質問などございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、太田委員からどうぞ。

【太田(光)委員】 2ページのところに、分科会の中に畜種というのがあって、そこに馬というのが入っているんですけど、この場合の馬は肉用としての馬のことですか。

【浅野部会長】 青木委員どうぞ。

【青木委員】 私の質問は、3ページの、OIEの基本的な考え方の第1点で、動物の健康とウェルフェアの間には重大な関連性があるという記述がございますが、常識的に考えて、健康であることは、ウェルフェアの非常に基本的な中心的なことだと思うので、これをあえて記述することの具体的な意味がちょっとわかりづらくて、どういう趣旨なのか、もし敷衍(ふえん)できたら教えていただきたい。
 以上です。

【浅野部会長】 ほかに御質問ございませんでしょうか。
 それでは、ただ今の2つの御質問にまずお答えいただけますか。

【菊地氏】 馬につきましては、主に乗用馬と食用馬について整備してございます。

【浅野部会長】 青木委員の御質問についてはいかがですか。

【安宅氏】 青木委員の御質問ですが、おっしゃるとおり、当然のことであると思いますが、当然のことであるからこそ書いておくという観点で恐らく書かれたものだろうと理解しております。

【浅野部会長】 太田委員、何か追加のおたずねがおありでしょうか。

【太田(光)委員】 競走馬も入っているんですか。

【菊地氏】 主に乗用馬と食用馬です。

【太田(光)委員】 はい、わかりました。

【浅野部会長】 ほかに御質問がございますか。
 では、私から、まず1点ですが、今のお話で普及啓発を行っているというお話でしたが、どのような形で、どのような団体とのタイアップの中で普及啓発が行われているのか。
 それから、もう1点は、九州などでは結構温暖化が進んでいまして、適応の研究なども既に各省に御協力いただいて、九州地方環境事務所で始めているのですが、やはり家畜の畜舎などが温暖化の影響を結構受けて大変だという話があります。そういう観点は、この議論の中では、どのように取り入れられているのでしょうか。

【菊地氏】 まず、飼養管理指針の普及についてでございますが、畜産関係の団体などが、それぞれ研修会ですとか、検討会ということをいろいろな場面で開催することがあるものですから、今回の推進委員会の中に入っていただいた委員の方の御協力もいただきながら、そういった場に出ていって丁寧に説明をさせていただくというようなことで普及啓発を図ってございます。

【浅野部会長】 気になるのは、その先がどのように流れていくか。最初の流れ、第1段階の入り口まではちゃんといくのでしょうけれども、そこから次の現場にどんなふうに流れていっているんだろう、それが気になって御質問したのですが。

【菊地氏】 もう少し言うと、団体によって取組状況も、必ずしも同じではないのですが、団体の内部で自主的なガイドラインをつくろうというような動きもございますし、あるいは養鶏関係の会社の中で、そういったガイドラインをつくろうという動きもございまして、一気にというわけにはいきませんけれども、徐々には浸透しつつあるということで、我々もかなり頭にそこら辺は入れて取り組んでいるつもりでございます。
 暑熱の関係は、日常やられているような飼養管理の中の対応ということで、平均的に行われているようなことを確認の意味も含めまして書いております。
 あと、ここ数年、暑熱の関係で随分悪影響がございまして、農林水産省といたしまして、そういう暑熱対策をどうとっていくかとかいうようなことを技術指針としてまとめて、生産者の方々、団体に対して周知徹底しているということはやっております。

【浅野部会長】 木村委員どうぞ。

【木村委員】 先ほど環境省から、アニマルウェルフェアの認知度に関しての調査結果報告がございました。アニマルウェルフェアを生産者の方がよく知っているという割合は、0.9%という低い数値報告でした。生産現場でアニマルウェルフェアにそった飼育管理が行われるようにするためにどのような施策を行っているのでしょうか。また、生産者がアニマルウェルフェアの認識を改善する数値目標や年度目標などはございますか。

【菊地氏】 飼養管理指針が遵守されていくための措置的な御質問かと思いますけれども、指針を作成する際に、それぞれ実態調査も行っておりまして、この指針自体は、現在の畜産農家の飼養管理の実態の最大公約数的なものではないかなと思っております。快適性に配慮をした飼養管理を行うことが、結果的に生産性の向上に結びつくということでありまして、逆に家畜の快適性を無視した飼養管理を行えば、生産性も低下して、そうした生産者が結果的には淘汰されていくというようなことになろうかなと思っております。
 そういったことで、先ほど申し上げましたように、団体なり、生産者、消費者の方々に周知をするということで、いろんな場を通じて普及啓発を図っているところです。それを第一には進めているというような段階でございます。

【浅野部会長】 ほかに御質問がございませんか。いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 農林水産省の方は、所用のためにこの後、退出されますので、追加の御質問ができないのですが、よろしゅうございますか。もし何か後でまた御質問がありましたら、書面でお尋ねをしてということになるかもしれません。よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
 では、次に、公益財団法人実験動物中央研究所の鍵山直子さんから御説明をいただきたいと思います。
 鍵山さん、本日はお忙しいところを、どうもありがとうございました。

【鍵山氏】 実験動物中央研究所、鍵山でございます。よろしくお願いいたします。
 実験動物の適正な取扱いの推進につきまして、いただきました論点が三つございます。その三つの論点に沿いまして、実験動物関係者のこれまでの取組、そして指針改正に関する要望でしょうか、そういったことについて御説明させていただきます。
 論点1でございます。実験動物の飼養保管等基準の遵守状況について、実態把握の継続ということをいただいております。
 実験動物関係団体、関係者によるところの実態把握といたしましては、当時文部省所管の日本実験動物学会と農林省所管の日本実験動物協会、略して日動協と呼んでおりますが、それぞれが昭和31年と昭和60年以来、大体3年ごとに実験動物の飼養数あるいは販売数に焦点を合わせて、基準の遵守状況の実態把握を行ってまいりました。
 その結果を、動物の種別、種別といいますのは、マウスとか、ラットとか、イヌとかそういうことでございます、そして、業態別、これは大学と、それから製薬会社あるいは生産者、こういったことでございますが、そのようにくくりまして、集計値を会誌に、最近ではウエブのほうに公表してまいりましたし、今後も継続する予定でございます。
 基準の実効性の担保はどうしているかということなんですが、平成16年以降、基準の実効性に関する外部検証が三つの団体によって実施されておりまして、特に基準ということで考えますと、実験動物生産施設が重要でございますが、それらを対象とする基準が2006年に改定されましたので、その内容を踏まえまして、チェックシートを見直して、より網羅的な調査、評価ができるようにということでいたしておりますし、来年度からは、調査、評価だけではなく、認証のシステムに移行することを予定し、このような変更を公表しております。
 あと、行政による実態把握に対する協力といたしましては、御紹介がありましたように、環境省と文部科学省がそれぞれ実験動物の適切な取扱い、または動物実験に係る体制整備のアンケート調査が実施されました。大学等におきましては、御紹介がありましたように100%回答したということでございますけれども、中には回答率がちょっと不安定な部分もあるという指摘もありまして、このことは、私どもから見まして自主管理の網羅性とか透明性、これに影響を及ぼすと考えますので、実験動物関係団体が連携して行政当局の調査に協力するということをお互いに合意しているところでございます。
 論点の2であります、国際的な規制の動向や科学的知見に関する情報の収集。これは昨年8月の衆参の環境委員会によるところの附帯決議の一部ではないかと思いますが、その中に確かにこういうこと書かれていました。
 それで、すでにやっておるわけなのですが、情報収集先といたしましては、下にポツで示しておりますような団体、こういったところから科学的知見、それから規制の動向も収集をしておりまして、実験動物関係者がそういう対応をとっております。ただ収集するだけではなくて、会誌等を通じまして共有するということを頑張ってやっております。
 これらの団体は、科学者集団だけではなくて、普遍性とか、客観性という観点から、適切と判断された愛護団体ともパイプを有しております。ということで、科学と福祉にバランスのとれた相手先を選んでの情報収集をしております。
 情報収集の内容でありますけれども、法規制、ハードローといいますか、ヨーロッパで主にやられている法規制、厳格な法規制と合わせまして、アメリカ等の自主管理を担保するための法的な枠組み、すなわちソフトローという、石井紫郎先生の御本にソフトローの御説明がありましたが、そういう法的枠組みに関しても情報収集の対象と考えて実施しております。
 国際実験動物学会議(ICLAS)などの国際的な組織、それから、特に獣医に特化したような組織、あるいは国それぞれということでアメリカのほう、それからヨーロッパに関しましては、EUとか、あるいはもう少し大きな組織であります欧州評議会、こういったところから情報を収集しているところでございます。
 資料の裏側にまいりまして、論点の3、災害時の取扱いというものを頂戴しているわけなんですが、これは直近の出来事を例にして説明したほうがわかりやすいのではないかと思いました。
 東日本大震災に見舞われました実験動物の生産施設とか動物実験施設は、主に東北の方にあるのですが、実際のところ、不明の動物とか、逸走動物は認められておりません。
 それというのは、その前に起きました阪神淡路大震災を教訓にして、危機管理に関する手順書あるいはマニュアル、そういうものを各施設が自主的に作成して、毎日の飼養数というのを常日ごろから正確に把握していたということで、失われたかどうかをチェックすることができた、それが功を奏したと考えております。
 もう一つ大事なのは、実験動物のライフラインの確保でありますけれども、餌・水・床敷といったものは、国公私立大学の施設協議会がありますが、そういうところでありますとか、最初に出てまいりました日動協がいち早く行動をとりました。そして、お互い連携する、それからお互いに分け合うというか、融通し合って、災害を乗り切ることができた。
 外部からの野鼠といった小動物の侵入によるところの施設のクリーン度の低下、汚染、感染症の発生、そういうことも全く確認されておりません。これは、自主管理の責任者であります機関長による自主管理の利点が発揮された結果だと考えます。非常に素早い対応がとれました。
復旧後でありますが、実験動物関係者がシンポジウムとか印刷物とか、そういったもので、限られた情報ではあったけれども、それを共有化するということで、努力をいたしました。それから、その内容は、昨年、実はバンコクで国際会議が開かれたのですが、その場でも報告されまして、東南アジアといいますと、津波のリスクを共有してございますから、そういうところからも大変に感謝されました。
 このように、動物愛護の観点から、施設ごとに実効性のある体制というのが構築されてはおりますが、飼養保管基準に書かれているように、災害時の実験動物の取扱いにつきましては、関係行政機関との連携のもとで、とるべき措置をこれからも計画し、実行してまいりたいと考えております。
 以上をまとめまして、要望といいますか、お願いといいますか、これをその次にお話ししたいと思うのですが。
 まず、実験動物関係者は、動物の愛護管理の基本的な考え方を踏まえまして、動物の利用や殺処分、これを大変厳粛に受け止めておりまして、毎年の動物慰霊祭をほとんどのところが実施している。「ありがとう、君の手柄だよ」と言えるような動物の取扱いに努力しています。
 それから、実験動物の飼養は、飼養保管基準に基づき自主管理を基本としてと書いてありますので、そのように、自主管理を基本として適正化を図っておるわけでございます。その基準の周知を図るということが重要だと思うのですが、改定前の基準では解説書がありましたが、しかし、平成18年の改訂におきましては解説書ができておりませんので、そういうものをつくって普及させるということがとても有効じゃないかと考えています。
 もし、お役所のほうでそのようなことを計画されるのならば、私ども専門家といたしまして、編集に喜んで協力していきたいと考えております。
 それから、実態調査でありますけれども、いろいろと実態調査が役所に限らず動いておるわけで、私が紹介しました学会、協会などもそれに含まれるわけでございますが、動物の愛護及び管理の基本的な考え方、これを前提にしたところの実態調査であれば、もちろん協力するということをここで明言しておきたいと思います。
 それから、実態調査、情報収集をするに当たっては、関係省庁とか実験動物関連団体の連携のもとで実施されて、共有化される、こういう落としどころというものが非常に重要でないかと思いますので、そのことを望みます。
 それから、適正な実験動物の利用は、使うほうの立場からすると自由闊達で創造性豊かな生命科学研究を発展させるものだと、不可欠なものだというように考えますので、適正な取扱いというものが、我が国のライフサイエンスとか、イノベーションの発展をもたらして、結果的に、国際的な競争力を強化する、そして国益をもたらすというように実験動物関係者は考えております。
 基本指針の冒頭にうたわれております動物愛護の基本的な考え方がありますけれども、それは、私は世界に類を見ないほど格調の高いものだと考えております。そして、今申しましたような理由から、実験動物の適正な取扱いに係る部分の指針、指針の中のその部分に関しては、私どもは、見直しは必要ない。ますますこれを継続し、発展させることが、非常にリーズナブルであり、私どもも協力できる、頑張っていけると考えております。
 以上ございます。ありがとうございました。

【浅野部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの鍵山さんの御説明、御意見に対して御質問がございましたら、どうぞお出しください。
 青木委員、どうぞ。

【青木委員】 どうもありがとうございました。
 鍵山先生の最終的な結論としては、見直しの必要はなしという御結論であるというように伺いましたが、平成18年につくりました基本指針の実験動物の適正な取扱いの推進ところには、「現状と課題」という項目と、「講ずべき施策」という項目がございまして、「現状と課題」の中の事実認識として、「自主管理を基本として、その適正化を図る仕組みとなっているが、本基準の遵守、指導等を円滑に行うための体制整備が十分にされていない施設が一部にある」と、こういうことが述べられておりまして、ここも含めて見直し不要ということだと理解しました。そうだとすると、まだ残る一部が不十分だという現状があるわけですが、それをなくすところまで将来持っていくために、どのような施策を展開するのが有効であるとお考えかということを伺いたいと思います。
 以上です。

【浅野部会長】 今の御質問、御意見は、現実に、まだ体制が不十分であると、平成18年のガイドラインの改訂時にはそのような記載があったということですね。

【青木委員】 そうですね。

【浅野部会長】 それで、今の御質問は、現在もそういう状態が続いているはずだが、それを克服するための手だてはどうかと、こういう御質問ですか。

【青木委員】 基本指針の見直しが不要であるという御結論だったので、つまり、現状認識で課題になっている部分についてはどうかという質問です。

【浅野部会長】 そこで指摘された問題点は克服されているかどうかということでもあるわけですか。

【青木委員】 すでに克服されているという答えであれば、それでも結構なのですが、文字どおり受け取ると見直しは不要だという御意見でしたから、そうだとすると、現状の問題として残った部分はどうしたらいいか御意見を伺いたい。こういう趣旨です。

【浅野部会長】 よろしゅうございますか。御質問の趣旨はおわかりいただけましたでしょうか。

【鍵山氏】 平成18年の御指摘は、事実、私どもも同意をいたしますが、それから、18年から5年以上、6年、7年ぐらいたっておりますかね。その間に、自主管理をベースとしたような改善の策というものをずっととってきているわけです。5、6年でありますから、100点まで行きましたかと言われるとちょっと困るんですが、着実に動いているので、この自主管理を基本とするこのやり方をそのまま続けていけば、未来永劫100にだんだん近づくであろうということで、そういった意味では、この指針ですか、これを今大きく変える必要はないであろうというように、むしろ私どもの問題として、これを引き取るという意味で申し上げました。

【青木委員】 ありがとうございます。

【浅野部会長】 ほかにございますか。
 木村委員どうぞ。

【木村委員】 少々教えてほしいのですが、安楽死のガイドラインという記載がございました。日本での安楽死のガイドラインは恐らく策定されていると思うのですがいかがでしょうか。

【鍵山氏】 されております。

【木村委員】 質問は、安楽死ガイドラインはどのようなものでしょうかというのが1点と、もう1点は、論点3の災害時の報告で、今回の震災で逸走動物や不明動物などがいなかったと報告がございました。これは非常にすばらしいことだと思います。今回の震災時に安楽死などは行われなかったと解釈してよろしいのでしょうか。

【鍵山氏】 安楽死に関する二つの御質問であったと思うんですが、日本にも安楽死に関する指針はございまして、これは環境省の告示ということでお示しいただいております。
 ですが、日本の指針の場合は割と骨格的なことが書いておりますので、具体的にどういう薬物あるいはどういう物理的な方法を使って、さらに、こういうことに関して十分注意をして、といった具体的な方法に関する情報は、むしろ海外の、アメリカの安楽死のガイドライン等から情報をいただくと、より完璧なものになると考えております。
 それから、災害時に安楽死させた動物はいないかと。それは、おります。行方不明とか、逸走の動物はいなかったけれども、ライフラインが完璧になるまでに、一部の動物は、だらだら生きるか、生かすか、生かさないか、有用度ということの判断なしに、そのまま飼育することなく、どのぐらいの飼料、どのぐらいの水が残っているか、そして餌、水、床敷が来るということの情報が入りますから、これは研究者と相談した上での判断でございますが、一部の動物に関しては苦しみを与えることなく安楽死させたという事実はございます。
 そういったことは、この私のペーパーの2ページ目の中ほどに、特集「3.11東日本大震災」と、こういう論文でありますけれども、その中でもって特集を組みまして、全て公開しているという状況でございます。

【浅野部会長】 ありがとうございました。
 ほかに御質問がございますでしょうか。
 災害時の御説明をいただきまして、よくわかったのですが、全国どこでも同じような災害が起こる可能性があるので、この手順書というのは、かなり徹底して、全国の施設でつくられているという理解をしてよろしゅうございましょうか。

【鍵山氏】 結構でございます。施設によりまして飼っている動物種とか、そもそも建物の立地条件等が異なったりしますので、各論部分はみんな違いますけれども、一番の原則は全て共有して作成されております。

【浅野部会長】 ありがとうございました。
 阪神淡路大震災のときには、ある大学で実験動物が逃げ出して3年間かけての実験が全部だめになってしまった、動物がまじりあってしまってどうにもならなかったという話をお聞きしました。

【鍵山氏】 それが教訓でございました。

【浅野部会長】 その教訓は非常に大きいと思うので、多分そういう経験で、あちらこちらでちゃんとやられるようになったのだろうと思います。
 それから、もう一つ、これもある医学部の先生に聞いたのですが、アメリカに論文を出したらリジェクトされてしまった。実験動物の殺し方が残酷過ぎるといって怒られて載らなかったという話を聞いて、結構そういう意味での外国論文に論文を出したりするときのチェックは、そこまであるんだというのを聞きましたから、日本の研究者もよくわかってきているのだろうという気はするわけです。

【鍵山氏】 はい、そのとおりでございます。
 あとアメリカとヨーロッパでは安楽死の判断が微妙に異なり、この方法はアクセプタブルだ、これは条件つきだ、これはあかんよという線引きが少し違うものですから、その辺も影響したのではないかと考えております。

【浅野部会長】 よろしゅうございますか。ほかにいらっしゃいますか。
 それでは、どうもありがとうございました。

【鍵山氏】 ありがとうございました。

【浅野部会長】 では、災害時対策についてのお話を伺いたいと思いますが、その前に、各自治体が災害対策を御検討いただく上での参考になるようにということで、今年度環境省が被災動物の救護対策ガイドラインを取りまとめているということでございます。まず、この取組について、環境省から説明をお聞きして、その後、ヒアリングを続けたいと思います。
 環境省の説明をお願いいたします。

【事務局】 それでは、環境省から御説明させていただきます。
 資料6になります。
 東日本大震災による被災動物の対応状況につきましては、この部会におきましても、特に福島県の警戒区域の中に取り残された動物の対応につきまして、節目、節目で御報告させていただいているところです。
 そうした直接的な活動と合わせまして、環境省では今回の被災の記録、どういったことが実際にあったのかということをまとめていく、また、それを今後の対策に生かしていくということで、今年度の事業として、今、部会長からお話のございました、今回の東日本大震災における対応の記録集を取りまとめているところです。
 また、あわせまして、自治体でも地域防災計画の見直しや動物愛護管理法の中の基本指針を踏まえて、各都道府県が作る動物愛護管理推進計画の中に災害の項目を設けるという改定が行われましたので、そうした各自治体の取組の検討の参考に資するため、国においてガイドラインを作成しているところです。
 平成24年度の事業でございますが、取りまとめの最中で来年度早々には各自治体に、印刷物を御発送したいと考えています。
 記録集、ガイドラインの内容について御紹介させていただきます。作成に当たっては、環境省から、被災がありました自治体、また地方獣医師会など関係団体に大変御協力いただき、アンケート調査という形で情報を収集させていただきました。
 また、一部の自治体には、直接現地調査で、対面でヒアリング、意見をお聞かせいただいて、情報収集しました。そして特に被災のありました自治体の方、また関係団体の方に集まっていただきまして、委員会という形で今取りまとめているところです。
記録集と、ガイドラインの内容構成案については資料としてつけさせていただきました。記録集につきましては、今回の東日本大震災におけるペットに関する状況の全体概要を示した上で、各論という形で、各自治体でどういった被災ペット対応が行われたかを取りまとめています。また、その中でも福島では特に原発の事故にかかる対応をされていますので、別に記載をしています。
 また、自治体だけではなくて、関係者、特に動物園、水族館や産業動物、特定動物の取扱いについてもまとめています。そういった自治体の活動に側方支援いただきました緊急時動物災害救援本部の活動についてもあわせて記載しています。また、この記録集では、自治体が行った対応でよかったこと、悪かったことも取りまとめて、以後の参考にしてもらいたいと考えています。
 そうした記録集を踏まえ、環境省として自治体の皆様が実際に動物救護活動をするための何か目安になるものということでガイドラインをつくっているところです。
 ガイドラインの概要を御報告させていただきます。
 基本的にペットは飼い主責任ということで、今回の東日本大震災では、ペットを置いたまま避難されてきてしまったということがありましたので、原則として飼い主とペットが同行避難を行っていただくという基本的な考えのもとにガイドラインをまとめています。こうした個人の飼い主の取組を補足するために、各自治体、各団体が、どういった仕事、役割をするかということも取りまとめています。
 特にその対策としましては、平常時に何をするか、また、発災したときに、具体的に何をするかというような観点から取りまとめ、2番の(2)にありますように、発災の前におきましても、自治体は、同行避難ということを周知する。また、そのために、同行避難するときに必要となります避難用品の準備や避難所、仮設住宅に入ったときにでもペットと同居できるような必要なしつけを行うことなどを平常時から備えていくべきではないかとしています。
 また、自治体も、そうしたペットを同行された被災者の方が避難所、仮設住宅に避難された場合の受入れ体制、こうしたものも事前に備えておく必要があるのではないか。また日ごろから、動物の救護のためにすぐ立ち上げる動物救護本部の設置、また、協定やそれをどのように結べばいいのか。また、各市町村や、各地域で設置していただく避難所に、動物を受け入れていくためどのような配慮が必要なのか、一緒に住まいを持ったほうがいいのか、別々に分けた法がいいのかなど発災の前に十分検討しておくべきこともまとめています。
 また、発災時も、ペットと同行避難された方がスムーズに生活できるとともに、被災された方の心の安心ということも踏まえ、どういった支援ができるか、避難所や、仮設住宅で、どういった支援ができるのか、それは自治体だけなのか、関係団体、獣医さんを含めた関係団体がどのように行っていくかということも、発災後の対策として心がけてもらいたいことも記載したいと考えています。
 また、不幸にも飼い主が亡くなられたり、飼い主と離ればなれになった被災動物たちを自治体は収容するようになってくると思いますが、そうした動物を飼い主に返還するため、また、新しい飼い主に譲り渡すためにはどうすればいいのか、また、既存の施設で収容が困難なときには動物救護施設の運営管理をどうしたらいいのかなどを取りまとめていきたいと思っています。
 最終的には、このガイドラインが各自治体の皆さん方の災害対策に関する計画に反映される、また、動物愛護管理法の基本指針に基づいて設定していただきます動物愛護管理推進計画にも反映されるような取組につながっていければ幸いかと思っております。
 本日は、もう少し資料を御提出できればよかったのですが、取りまとめ中ということで、進捗について御報告させていただきました。
 以上でございます。

【浅野部会長】 ただいまの御報告について本格的に議論を始めると、多分これだけで2時間ぐらい議論したくなるような内容だと思いましたが、とりあえず、特に何か御発言がございますか。
 斎藤委員、どうぞ。

【齊藤委員】 ガイドラインの関係ですが、国それから県、市町村があるわけですが、都道府県の広域的なというお話が前回にもあったと思いますが、都道府県同士の広域的な連携のようなことも、このガイドラインの中には記載されるのでしょうか。

【浅野部会長】 今の点はいかがですか。

【事務局】 広域的な連携については、具体的な方法など詳細には記載していません。

【浅野部会長】 ヒアリングをお聞きした後、また関連する質問、意見が出てくる可能性はあると思うのですが、私も説明を聞いていて気になりましたのは、災害の種類はいろいろあるでしょう。それらを同じように議論していいのでしょうか。
 特に、現実に被害が起こってしまって避難する場合はともかく、未然防止のために避難してくださいというような場合には、すぐ帰れると思って出られる方が結構多いわけでしょう。なかなか帰れないということがはっきりわかっている場合と、いろいろなタイプがあるのではないのですか。それを一色にして、同行避難だと言われて、これは、自治体は恐らく困ってしまうのではないかと思ったりもします。
 いずれにせよ、本日の御説明は概要ということですから、これだけでは何とも言いようがないので、また本体が出てきたらゆっくり議論させていただきたいものだと思います。
 それでは、緊急災害時動物救援本部をおつくりくださいました、日本愛玩動物協会常務理事の佐々木勲さん、それから、日本動物愛護協会事務局長の内山晶さんのお二方から御説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【佐々木氏】 ただいま御紹介いただきました、東日本大震災緊急災害時動物救援本部の佐々木でございます。よろしくお願いいたします。
 まずは、緊急災害時動物救援本部とは何かということの概要を申し述べたいと思います。
 平成7年に発生しました阪神淡路大震災における動物救援活動の実績を引き継ぐ組織として、平成8年に、当時の動物愛護管理行政の主務官庁でありました総理府が関与しまして、動物愛護に関わる、ここに書いてあります広域法人4団体を構成団体として誕生いたしました。
 現在は、公益財団法人日本動物愛護協会、公益社団法人日本動物福祉協会、公益社団法人日本愛玩動物協会、公益社団法人日本獣医師会、この4団体が環境省と連携しながら一緒に活動を実施いたしております。
 救援本部の存在意義といいますのは、災害が発生いたしまして、被災地の行政組織が被害を受けて公的な救援活動が機能できないという状況にありましたときに、被災自治体の要請を受けまして、民間団体である救援本部が、人材の派遣、物資の援助、資金の供与、こういったことを緊急に後方支援、そういったことで動物救援の初期対応を担っております。
 特に、今回の東日本大震災は、その激甚性、広域性かつ原発事故による放射能被害も加わりまして、従来の経験とノウハウをはるかに超えた対応が求められるという未曾有の災害でありました。
 なお、平成8年に救援本部ができまして以来、北海道の有珠山噴火災害、東京都の三宅島噴火災害、また、新潟県中越地震等の震災に、支援と協力をしてまいりました。
 資料7-2ですが、東北3県の動物救護本部、岩手県、宮城県、宮城県には仙台市、石巻市が同時に救護対策本部を設置しております。また、福島県は、後でまた説明があろうかと思いますけれども、当初、福島県の食品生活衛生課に救護本部を設置いたしまして約1年後の平成24年3月、今度は福島県獣医師会に福島県の救護本部を移管いたしました。福島県にはシェルターが、ここに書いてありますように、救護本部が運営したのが飯野シェルター、それから三春シェルター、環境省シェルター等々がございます。現在、なお継続中でありますのは、三春町の同じ敷地内にあります三春シェルター、環境省シェルターです。ここでは現在犬58頭、猫236頭、合計294頭の犬猫を保護収容しております。また、少ないんではありますが、いわき市のペット保護センター、ここでは犬13頭、猫8頭、合計21頭を保護収容しております。
 また、緊急災害時動物救援本部が独自に、同じ三春町に福島シェルターを設置いたしましたが、平成24年1月に閉所しております。
 次に、緊急災害時動物救援本部の活動実績なんですが、東北3県、岩手・宮城・福島県の現地本部が保護収容した犬と猫の頭数は合計で3,698頭であります。
 それから、ボランティア登録数です。裏のページに参りますけれども、動物の一時預かり、それから動物保護シェルター、動物や物資の輸送等々に、延べ4,068人のボランティアが登録されました。
 実績といたしまして、人による支援活動なんですが、福島原発の中継基地の支援、救援本部のシェルター、都内支援物資集荷所、これは2カ所ございます。特に、1カ所は環境省さんの御配慮でもって新宿御苑に設置いたしまして、そのお手伝いした延べ人数が1,676人でございます。
 また、4番目、地方獣医師会と都道府県とのいわゆる通称防災協定です。これを締結した状況なんですが、平成24年1月現在、協定締結に至りましたのが、26獣医師会、すなわち19都府県と7政令市でございます。それから、協定締結予定または検討中は13獣医師会、12道県と1政令市です。現時点で未定なところは16獣医師会、16県であります。
 次に、義援金の募集なんですが、これはホームページ、それから4団体の機関紙。ホームページというのは、緊急時災害動物救援本部のホームページ、または4団体のホームページ。それから、機関紙、ポスター等々で義援金の募集を行いました。
 その執行実績は、預かり義援金件数3万176件。これは同一人が二度も三度も寄附していただいたんですが、その延べの件数でございます。金額にして、100万円単位で恐縮なんですが、6億9,100万円。支出金額は4億9,000万円、そのうち特に大きいものは、いろんな地方自治体、獣医師会あるいはNPО、NGO等、また一般の民間団体等に配分交付した実績が、3次にわたって延べ116件、4億600万円であります。残りの8,400万円は、ここに書いてありますように、救援運搬費、福島本部シェルター中継基地の経費、支援物資保管諸経費、救援本部事務局経費、それから救援活動諸経費等が含まれております。
 現在、この直近の残額ですが、平成25年2月28日現在の預かり義援金残高は2億100万円でありまして、これを今後どうするかということは、救援本部として検討中でございます。
 このような救援本部を運営してまいりまして、いろいろな問題点が指摘されました。その主な今後の検討課題を申し上げますと、研修会の開催やボランティアリーダー、いわゆる人材の養成等を、平時からの活動としてマニュアル化してやる必要があるだろうと。次に、いろいろ多々批判がございました救援本部の組織のあり方、この経験を踏まえまして、それを生かした形で、本部の組織の見直しをしていきたいと、このように考えております。
 また、同行避難や所有者明示措置、いわゆるマイクロチップの装着率の向上です。これに関する普及啓発活動も行いたいと考えます。
 それから、救護したペット、引取り手が不明なものの所有権の法的な整理をどうするかということも検討に値しようと思います。
 また、いろいろ御意見、御批判がたくさんございました義援金の配分、交付の効果的・効率的な仕組みを考える必要があろうかと思います。
 次に、寄附金でありますが、所得税等に関する寄附金控除制度の検討です。これは今、4団体はいずれも公益法人ですから、4団体が寄附を受けて、それを執行すれば寄附者に対しましては、税制上の優遇措置が対応できるのですが、いかんせん、この緊急災害時動物救援本部というのは任意団体なんです。4団体が寄附を受けて、それを全額救援本部に一元管理したわけですが、そういう任意団体を経ますと税制上の恩恵が得られないというデメリットがございましたので、この辺も制度設計を見直ししたいと考えております。
 それから、最後になりましたが、救護の対象とすべき動物の範囲、私どものホームページあるいはポスター等は、「家庭動物」というように明示したつもりなのですが、やはり、いろいろな希望がございました。畜産動物、特に牛、これをどうするか、あるいは野生動物、これも同じ動物じゃないかという御指摘もありました。特に身近な問題として非常に悩ましかったのは、野外繁殖した第2世代以降の猫の問題です。第2世代、第3世代の猫等があるわけです。それから、所有者の判明しない動物です。こういったことが問題点として上がってまいりました。
 こういった活動、それから義援金の執行を踏まえまして、救援本部といたしましては外部有識者による評価委員会を設置いたしました。救援活動のレビュー、いわゆる評価を実施いたしました。この3月でもって、まだ福島県は収束いたしておりませんが、とりあえず中間報告という形で、ごく最近まとめができ上がった次第です。
 以上です。

【浅野部会長】 はい、ありがとうございました。
 この後、岩手県からも同じように災害時の救援についてお話を伺うことになっておりますが、とりあえず、ここまでのところで、佐々木さん、内山さんからのお話を伺っての御質問がありましたらお出しいただければと思います。

【太田(光)委員】 私も、阪神淡路大震災のときに動物の救護に関わって、あのときも3億円から4億円近い義援金が集まって、その一部が、先ほどおっしゃいました平成8年の緊急災害時動物救援本部の設立の資金のような形で、7,000万から8,000万円ぐらい残ったと思うのですが、それが先ほどのさまざまなその後の災害に役立ったということで、そのときに、多少といいますか、義援金を出した方から、それはそのとき、神戸なら神戸の動物を救ってほしいがためにお金を出したんだと、それを残すのはどういうことかという批判があったのですが、今回も2億円近いお金が残っていますよね。そのような、ある種の問合わせなり、要望なり、批判なりはありませんでしたか。

【佐々木氏】 まず、二つあろうかと思うんですが、一つは、阪神淡路大震災、これは2億8,000万が集まりました。残った金額が、丸めて言いますと約8,000万円。これを、兵庫県の救援本部は、新しく平成8年にできました緊急災害時動物救援本部で有効に活用していただきたいということで、これを承継いたしまして、今まで三宅島噴火災害とか、あるいは有珠山噴火災害とか、新潟中越地震、こういったところに使いまして、残金が残ればもちろん救援本部にまたお返しいただいて、現在の残高は7,700~800万ございます。それから、もう1点、約2億円残っていてどうするんだということにつきましては、福島県を中心に、またこれはまだ収束の目処がたっておりませんので、具体的にはまだ決定いたしておりませんが、救援本部として何らかの意志を固めていきたいということで、今はまだ検討中でございます。

【浅野部会長】 よろしいですか。

【太田(光)委員】 そういうことも含めた最後のほうに書いてありますが、報告書というものをできるだけ早く公にしてほしいと思います。公開してほしいと思います。それが私の要望でございます。

【佐々木氏】 中間報告書は、実は一昨日、環境省さんに救援本部長がお届けいたしましたので、速やかに公開したいと思います。

【浅野部会長】 ほかに御意見、御質問がございますか。
 齊藤委員どうぞ。

【齊藤委員】 今回の災害も大変大きかったので、救援本部として活動も大変だったろうなと思います。そのことを踏まえて、今のこの指針の中でも、地方自治体とか、いろんな団体との連携を平素から構築して進めることが必要ですが、今回の経験で、どういうところがうまくいかなかったのか、うまくいったのか、そういう課題みたいなものがもう少し明確であれば教えていただければと思います。

【佐々木氏】 二つあろうかと思うんですが、一つは組織構成ですね。
 走りながら考えるという状況だったものですから、4団体の事務局長クラスでの検討会とか、それから意思決定のための本部会議、これは各団体の役員クラスで構成している訳です。それから、そういった救援活動のノウハウを持っております各団体の助成軍、獣医師さんを含めた実行部隊。これはノウハウとそれからいろいろなボランティアの指導。こういった三つの組織を立ち上げたんでありますけれども、いかんせん、毎日、毎日もう追われまして、暗中模索で走ったという感じがありますので、非常に反省点はございます。
 それから、もう一つは、義援金の交付なんですが、よかれと思って公平・公正・公明性をもって当たろうとしましたのですが、かなり多くの民間団体から給付の依頼が来ました。これは顔も見えない、実態もよくわからないということで悩ましかったのですが、こういった団体をまた育成するのも一つの方法かということで、公平を期する意味で、減額したりはしたのですが、なかなか顔の見えない団体に寄附を実施したというのは、いろいろな意味で反省点でありまして、今後は各地方自治体に、あるいは獣医師会さんに移管するというのも一つの手かなという反省をしております。

【浅野部会長】 齊藤委員いかがですか。

【齊藤委員】 活動の中で、それぞれの都道府県と連携をとりながら救護本部としての活動を進めてきたかと思います。今回の場合には、各県によって実情、内容が違うので難しかったんではないかと思いますが、自治体との連携の中で何か難しかった点はあるでしょうか。

【佐々木氏】 岩手、宮城、福島、それぞれ実態が違いますので、岩手県はここに書いてありますように平成23年8月に閉所しておりますし、宮城県も24年3月にシェルターを閉所しているということは、もう一応、役割は終わった。やはり一番難しいのは福島県です。まだ継続中でありますから。当初は、なかなか義援金も集まらない、運転資金がないというのが、非常に当初、1年近くは苦労した記憶がございます。

【浅野部会長】 齊藤委員がお尋ねになりたかった点は、「実際に活動されてみて、自治体がこんなふうに動いてくれたらよかったのにな」といったようなことはないでしょうかと、多分そういう趣旨の御質問だと思うんです。今のお話を聞いていると、何かうまくいったのかなという印象を受けてしまうんですが、いかがでしょうか。

【佐々木氏】 一つだけ、後ろに福島県の方がいらして大変恐縮なのですが、福島県の食品生活衛生課、いわゆる人の食品、それ以外にもいろいろな仕事があって、詳しくは、三つ四つちょっとど忘れしましたけれども、その中の一つに動物愛護はあるわけです。いろいろな仕事がある中で、優先度を選びながら、大変少ない人数で御苦労されたという印象がございます。

【浅野部会長】 今後、災害に備えての計画の中に、動物の救護についても、きちっと全ての自治体が組み込んでおいてくださるといいということになるんでしょうし、経験がうまく生かされて今後につながっていくということが必要だろうと思います。
 それでは、岩手県の環境生活部県民くらしの安全課、食の安全安心課長、岩井賀寿彦さんにいらしていただいていますが、岩手県についての御報告をいただいて、また、さらに続けていきたいと思いますので、次に岩手県の御説明をお願いいたします。

【岩井氏】 岩手県環境生活部県民くらしの安全課の岩井と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、東日本大震災発生時の岩手県における動物救護活動につきまして、御報告させていただきたいと思います。
 資料番号は8になります。
 東日本大震災では、本県でも多くの人と動物の命が失われました。本県では、動物救護に関しまして、県と獣医師会、そして災害時の動物救護に係る協定を締結している県内の動物愛護団体等とともに、「岩手県災害時動物救護本部」を設置いたしまして、被災した動物の救護活動を実施いたしました。
 本日は、救護本部を構成した団体等からの意見をもとに今回の東日本大震災における岩手県災害時動物救護本部の対応について検証を行いましたので、その概要について御報告をさせていただきたいと思います。
 まず、救護本部の概要でございますが、県獣医師会、動物愛護団体等10団体及び岩手県の12の団体、組織で構成をしまして、事務局は社団法人岩手県獣医師会に置いております。
 本部の下に、地域支部としまして、津波で被災した沿岸地域を保健所単位で四つの支部に分けまして、各支部に被災動物保護班、被災動物医療班、被災動物支援班の三つの班を設け、活動に当たりました。各班の役割分担については資料に記載のとおりでございます。
 活動期間ですけれども、3月22日の本部立ち上げから8月21日までの5カ月間といたしました。
 動物の保護等の実績につきましては、表のとおりでございます。表は救護本部を解散した平成23年8月21日現在の実績でございますが、その後も返還・譲渡が行われまして、現在残っている犬猫はほとんどいない状態でございます。
 次に、今回の活動の検証結果についてご説明させていただきます。
 初めに、救護本部の運営についてでございますが、救護本部設置の手続において、本来、救護本部は当課と県獣医師会が協議して速やかに設置することとされておりましたが、当課が、岩手県災害対策本部規定により、被災者への食料等の生活関連物資の調達業務を全面的に担当することとなり、その業務に忙殺されまして、救援本部が設置されたのが震災発生から11日後の3月22日となりました。
 救護本部の事務局については、人への支援を最優先する必要があった行政の立場からしますと、動物救護に全面的に取り組むことができる県獣医師会に事務局を置いたことが、結果的には活動を円滑にしたのではないかと思っております。
 事業実施に係る基金の管理につきましては、被災動物に対する応急治療等の獣医療に要する費用、動物の保護等に関する経費の考え方等についての規定などがなかったことから、学識経験者等を含む委員会を組織いたしまして、救護本部構成団体の合意のもとに支援金を活用いたしました。
 活動をともにする動物愛護団体に係る基本情報の把握についてですけれども、団体が対応可能な活動地域や動物保管頭数など、動物救護に係る基本的な情報を事前に十分に把握していなかったということがございまして、県救護本部の対応を検討する段階になって、各団体に係るこれらの情報について改めて調査を行うこととなりました。
 救護本部の解散手続は、被災者向けの全ての仮設住宅が完成し、避難所の閉鎖の目処が立った時点の8月21日といたしました。救護本部内には、被災動物救護活動のさらなる継続を求める声もございました。
 次に、被災地での活動についてですが、被災動物に関する情報収集につきましては、被災地を管轄する保健所が中心となり、避難所を巡回して動物の飼養状況の確認に努めました。しかしながら、被害が甚大かつ広範囲であったために、保健所では十分な巡回ができず、また、避難所を巡回しても飼い主から話を聞くことができないことも多々ありまして、被災動物の実態把握は困難をきわめました。
 避難所に救護本部の支援のポスターを掲示し、被災した飼い主からの情報を待つことも試みましたが、被災動物の実態把握には十分な効果は得られませんでした。
 ペット関連物資の調達・管理・提供等については、救護本部事務局において物資に関する被災地のニーズ把握が十分できなかったことなどから、支援物資の適切な供給が行われないこともありました。また、支援物資の一時保管場所等についても事前に検討されていなかったため、一部の動物病院等に負担が集中するような状況がございました。
 被災地における情報の把握と被災動物救護活動に係る情報の共有についてですが、避難所等において各団体が実施する動物救護及び支援物資配付活動等について、関係団体間での情報の共有が不十分であり、同じ時間帯に同じ地域において活動が実施される等、活動地域に偏りが生じた場合がございました。
 次に、保護動物についてですが、保護等した被災動物の飼養管理につきましては、救護本部では飼い主不明の動物の保護、被災した飼い主からの一時預かり及び引取りの三つのカテゴリーに分類して動物の飼養保管等を行いました。保管の期間につきましては、県有施設及び動物病院においては概ね2週間、動物愛護団体においては概ね3カ月を目安として設定いたしました。
 保護等した被災動物の情報公開については、救護本部のホームページにより情報を公開しましたが、より多くの被災者に情報を伝えるために、避難所や仮設住宅へ保護動物の情報を掲示することなどについての意見もございました。
 その他といたしまして、一つには、被災地への交通手段についての問題がございました。発災直後、緊急車両以外の車両の通行が制限されたこと、及び車両燃料が入手困難であったことから、被災直後の現地での支援が極めて困難であり、そのことを踏まえ、今、緊急車両等への優先的な給油について、県防災計画に係るマニュアルの見直し作業を行っているところでございます。
 また、他県等から被災地入りした動物愛護団体についての問題もございました。他県から現地入りした動物愛護団体は、それぞれ独立した活動を行うことが多かったということで、救護本部の活動について十分な説明等を行い、可能な限り連携した対応ができるように配慮すべきであったというような意見も出ております。
 全体の考察といたしまして、今回の震災では救護本部が設置され、これまでお話ししたような幾つかの課題はありましたが、活動は概ね円滑に行われたと考えております。
 その背景には、一つとして、県の防災計画に愛玩動物の救護対策について明記していたこと、二つ目には、災害時の動物救護に係る協定を県獣医師会及び県内動物愛護団体等と事前に締結していたこと、三つ目として、災害時の動物救護本部の設置について要綱等を整備済みであったこと、四つ目として、救護本部の構成団体が岩手県動物愛護推進協議会の構成団体であり、平時から関係者による意見交換等による信頼関係が構築されていたことなどが挙げられると思います。これらの前提条件がなければ、そもそも被災動物救護のための組織の設置及び運営は困難であったろうと考えております。
 そのことを踏まえまして、今回の被災動物救護活動について振り返ってみますと、まず、動物救護本部事務局の運営の主体についてですが、今回の救護本部活動が円滑に行われた最大の理由は、未曾有の災害の中で動物救護対策に注力した県獣医師会の功績によるところが非常に大きく、行政は災害発生時に動物救護活動を円滑に進められるような体制を整備し、県と協定を締結する団体の被災動物救護に係る基本的な情報を収集しておくとともに、救護本部における被災動物救護の考え方及び支援金の活用方法について一定の考え方を定めておく必要があるというように考えられました。
 2点目として、広範囲に及ぶ災害の中、今回、岩手県では最大で399カ所の避難所が設置されました。被災地の動物救護に係るニーズの把握等のため、救護本部の担当が全ての避難所を確認、巡回することは実質的に不可能であり、被災者からの被災動物に係るニーズの連絡を待って、救護本部が対応することも困難な状況でございました。
 被災地のニーズの把握方法及び物資の一時保管場所等を含む搬送方法について、事前に検討しておく必要があると思われます。
 避難所での動物の取扱いについては、避難所ごとに避難者間で一定のルールを定めて、無用なトラブルの発生を防止する等、行政や動物愛護団体等だけに依存しない自主的な取組が強く望まれますので、飼い主には同行避難するための心構えと備えについて、また、同行避難者を受け入れる側には同行避難への理解について、平常時から広く県民に対し周知を図っておくことが必要と考えております。
 保護等をした被災動物の管理につきましては、今回救援本部としてのシェルター等は設置せず、主に県内の動物愛護団体等、または同団体に所属する個人などに動物の保管を依頼することにより行った結果、被災動物の飼養管理について、きめ細かい対応が可能であった一方で、特定の個人に対する責任や負担の増加等の問題もありましたので、基本的な対応方針を定めた上で、最終的には、さまざまな要素を考慮して臨機応変に対応することが必要であると思われました。
 被災地への交通手段の確保については、被災動物救護関係だけにとどまらない非常に大きな課題であることから、地域防災計画の全体的な見直しの中で動物救護対策の位置づけ等についても、あわせて検討する必要があると考えております。
 被災動物救護活動において動物愛護団体等との連携は欠かせませんが、各団体が通常時にどのような活動を行っているか十分に把握していませんと機能的な連携は望めませんので、ふだんから動物愛護団体に係る基本的情報の把握に努めるとともに、救護本部の実施すべき活動方針等を関係者で共有しておくことが非常に重要であると考えられました。
 災害の発生は、多くの場合、予測できませんので、ふだんから体制の整備と関係者間の連携に努めることにより、迅速かつ適切、そして柔軟な対応が可能となるものと思われます。
 同時に、災害時におきましても、動物の命も可能な限り保護しようとする地域の気風と、災害に備えた体制づくりのための施策の推進が必要であろうと考えております。
 終わりに、今回の震災に際しまして、全国の皆様方から多大な支援と心温まる激励をいただきましたことに対し、感謝申し上げ、私からの報告を終わらせていただきます。
 以上です。

【浅野部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、先ほどとの関連もございますが、今の岩井さんの御説明に対して、御意見、御質問がございますでしょうか。大変率直にいろいろな問題点についてもお話をくださったので、かなり状況がよくわかったと思います。いかがでございましょうか。
 齊藤委員どうぞ。

【齊藤委員】 大変わかりやすく課題も説明していただきまして、ありがとうございます。
 お話の中で、関係団体との連携で、いろんな団体があって難しかったというお話もあったかと思いますが、関係団体との連携を、どんな団体があるとか、どんな内容なのかとか、情報を事前に共有していくこと、それから、何かあったときに、どう行動するかということを共有することが大事だというお話ではないかと思います。その辺をもう少し具体的に、事前にどんなことをこの関係団体と連携をとって行っていくことが必要なのか、教えていただきたいと思います。

【浅野部会長】 ついでにといいますが、岩井さんの、災害時における協定を締結している団体は2団体と理解してよろしいんですね。
 そういう連携というのは、今回の災害の起こる前に、当然締結されていたと思うのですが、どういういきさつで、このような団体との協定ができていたのか、今のお話との関連ですが。

【岩井氏】 1点目ですけれども、県内の動物愛護団体の10団体、今回、災害対策本部を構成した10団体とは、非常に連携もスムーズにいっております。
 今日の説明の中で、団体との関係がうまくいかなかったというのは、他県から直接現地入りしている団体がございまして、その方々に本部の活動を理解していただくということが、なかなか連携していく上でうまくいかなかったということでございます。
 それから、岩手県では、県内の動物愛護団体と、平成20年4月に災害時における動物の救護活動に関する協定書というのを結んでおります。これは、やはり阪神淡路大震災等の経験を踏まえまして、本県でもこういった協定を災害が起きる前に結んでおく必要があるんだろうということで締結したものでございます。
 締結している団体につきましては、当時県内にある動物愛護団体全ての動物愛護団体で、イコール動物愛護推進協議会の委員もお願いしている団体でございます。

【浅野部会長】 前から団体とのつながりがちゃんとできていたという理解をすることができるわけですね。

【岩井氏】 そうですね。動物愛護推進協議会のメンバーでございますので、毎年、協議会を開催して、さまざまな意見交換等も行っているということで、非常に連携はとれているのかなと思います。

【浅野部会長】 わかりました。ありがとうございます。
 よそから来た団体との関係というのは、多分やはり全般的に、災害の後のさまざまな取組に共通していることでしょうから、なかなか難しいのかもしれませんね。特にこの問題だけでというわけではないんだろうと思うし、各地域が孤立してしまっていて、なかなか県として全体を取りまとめることが難しい状況の中だったと思うんですけれども、そうなりますと、むしろ全国的なネットワークをしっかりつくっておくことが、もっと大事だということになるのかもしれません。
 この辺は、災害時の動物救援本部の活動をなさった佐々木さん、内山さんにおたずねしたいのですが、災害時にはあちらこちらの地域からボランティアが被災地に支援に出向くということがあるわけですけれども、平素から、何かそういう団体のネットワーク化をはかっているということが行われているのでしょうか。現在はいつ災害が起こってもおかしくない状況にあるわけですが。

【内山氏】 その辺のところが、今回、割と後手後手に回ってしまったということがありまして、本部としての最大の課題の一つと捉えております。ですから、現状でそういったことができていなかったということは、残念ながらあります。

【浅野部会長】 では福島県からもお話をいただきます。福島県はまた大分状況が違うと思います。まだ進行中ということです。
 では、福島県保健福祉部健康衛生総室、食品生活衛生課の専門獣医技師、平野井浩様がいらしています。どうぞお話をお聞かせください。

【平野井氏】 ただいま御紹介にあずかりました福島県の平野井と申します。
 まだ、現在進行形ということで、皆様方のお手元に資料等はございません。私のほうからは、被災動物救護におけます福島県のあゆみ、それと対策への思い等々について御説明させていただきます。
 皆さんも御存じのとおり、福島県では、地震や津波による被害だけではなく、これらの影響で福島第一原子力発電所の事故が起こりました。原子力事故発災以降、短時間で福島第一原子力発電所から半径3キロ、10キロ、20キロという避難指示区域が拡大する中で、住民は一次避難、二次避難と避難先を移動せざるを得ない 状況にありましたので、住民は、十分な準備もできないまま避難し、結果としてペットを置いて来ざるを得ない状況となりました。
 この、いわゆる20キロ圏内は、内閣総理大臣から原子力災害対策特別措置法に基づく避難指示が出された地域のため、住民のみならず、福島県や国も一律に立ち入りが禁止されました。
 このため、福島県では、当初、福島第一原子力発電所から半径20キロから30キロの屋内退避地域のペットの保護を行っておりましたが、その一方で、半径20キロ圏内の区域が警戒区域に設定され、立入りがさらに厳しく禁止されることになりました。また、この区域から持ち出せる物についても制限が課され、食品、家畜、ペットについては、その持ち出しが禁止されました。
 この措置に伴い、警戒区域内に取り残されたペットの救出を求める世論が高まり、ペットの持ち出しについては、環境省と福島県がその担当を担うこととなりました。
 福島県は、警戒区域に取り残されたペットの救出を要望する多くの国民の声に対応するため、警戒区域内におけるペットの放置状況の実態調査及びその保護を平成23年4月28日から5月2日までの5日間、先行的に行いました。
 一方、環境省は、警戒区域からペットの持ち出しが早期に実現できるよう検討を進め、その結果、被災者の警戒区域への一時立ち入りに合わせて被災飼い主の方と行政が一緒にペットを救出するオペレーションが導入され、福島県が主体となって保護活動を実施してきました。
 このほか、他の自治体の協力を得ながらの一斉保護も行い、平成25年3月1日までに、犬453頭、猫541頭の計994頭を警戒区域から保護しています。このうち、犬152頭、猫142頭の計294頭が飼い主の元へ戻り、また、犬217頭、猫88頭の計305頭が新しい飼い主の元で生活を始めています。
 以上が、これまでの保護活動の全体的な流れですが、この震災以前には、福島県として災害に向けてどのような準備をしていたか、また、この災害を機にどのように変わったか、また、今般の災害対策でどういった点で苦労したかなどについても、あわせて御説明したいと思います。
 まず、災害に向けた準備についてですが、福島県では、平成16年に発生した新潟中越地震の状況を踏まえ、県内で災害が起こったときに備え、被災動物及びその飼い主を支援するために、フードやゲージなどの被災者支援物資及び被災動物の救護に必要な動物用医薬品を平成18年に整備し、各保健所に分散して備蓄していました。さらに、災害の規模にもよりますが、長期化した場合の恒久的な利用施設として小学校、中学校、高校などの廃校もリスト化していました。また、災害時における対応方針や平常時の対策を定めた「災害時における動物の救護対策マニュアル」を平成19年5月に策定しておりました。
 しかしながら、災害区域の町村が全て他の地域に避難する。さらには、助けるべく動物がいる区域に入れないといった、我が国を襲った未曾有の原子力事故災害時の対策までは想定しておりませんでしたので、対策には困難を期しました。
 特に苦慮した点といたしましては、原子力災害により長期化することが予想される動物保護対策を維持していくための資金の調達、また、県内のあらゆる施設が避難所となりましたので、多くの被災動物を収容するための施設の確保には苦慮いたしました。
 一方、効果を上げることができた対策といたしましては、環境省が進めた、住民の一時立ち入りに連動した被災ペットの保護のオペレーションです。これにより、多くの人の目で放置ペットを確認でき、また、飼い主による保護というオペレーションにより、被災ペットに過剰なストレスを与えることなく、多くの被災ペットを保護することができました。
 その保護の成果は、平成23年5月10日から8月26日までに行われた住民の一時立ち入り1巡目の間で、犬300頭、猫191頭の計491頭と、本年3月1日までの保護数の約半数を占めます。
 福島県の被災ペット対策は、原子力事故という他に類を見ない災害でありますので、これまでに起きた災害対策と比較することはできません。また、現実的に可能であったかについても疑問は残りますが、被災ペットの総数をいかに減らすかという観点から言えば、我々、動物愛護を所掌する部署は、やはり同行避難を普及させる必要があると感じております。
 このため、福島県におきましては、福島県地域防災計画の中の動物対策の中に、ペットとの同行避難のための支援や避難所におけるペットの保護施設の整備、避難順位の中にペットを盛り込むなどの修正意見を提案し、修正意見については、昨年11月29日に開催された福島県防災会議で承認され、既に12月の段階で内閣総理大臣に報告しております。
 今後は、今般の災害を踏まえ、平常時から災害時におけるペットとの同行避難や行政が確保している動物用備蓄用品の保管状況についても、広く県民に対して周知していく必要があると考えております。
 雑駁な御説明ですが、以上でございます。

【浅野部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいままでの3団体からのお話をもとに、どこでも構いませんが、災害時の問題ということで、御質問がございましたらお出しいただけませんでしょうか。
 佐良委員どうぞ。

【佐良委員】 避難所のことなんですけれども、大体、学校に避難するということが非常に多かったと思います。
 そこの学校に、動物と一緒に避難できるかどうか、それを決めるのは校長先生あるいは教頭先生で、動物嫌いの先生の学校では、動物連れは拒否されたというように聞いております。
 そういうこともありますので、また何かきっと起こるんだと思いますけれども、その前に、どんな場合、どんな学校でも、動物を好きであろうと、嫌いであろうと、とにかく家族の一員なのだから、必ず場所を動物連れで避難する場所の確保を今のうちから是非お願いしたいと思います。

【浅野部会長】 はい、どうぞ。

【太田(勝)委員】 先ほど、寄附金控除の制度の検討という話しがありましたが、今回、多額の寄附金が、こちら緊急災害時動物救援本部ではなく、日本赤十字のほうに回ってしまったという話を聞いています。
 あるペットフードメーカーが、2,100万円の寄附を、本来はこちらに寄附したかったが、寄附金控除団体ではなかったからとのことでした。災害が起きてから組織をつくろうと思ってもできないと思いますので、今から寄附控除団体の準備を進めていただきたいと思います。当会でも今回1,000万円以上の寄付が集まりましたので、緊急災害時救援本部に寄付金控除の相談をしました。
震災の後、この年の3月末までにこの4団体の一部が公益法人になるから、そちらから領収書を出そうかという話もありましたが、最初出さなくて後から出すというのは、問題があるかもという事で実りませんでした。
 同じ寄付ですから、もちろん日本赤十字社もけっこうですが、できれば緊急災害時動物救援本部のほうに回していただいた方が動物のためにもなります。

【浅野部会長】 今のお二方の御発言は、どちらかというと御意見という感じですが、いかがでございますか。寄附金控除について。

【内山氏】 その辺も非常に検討しているところでございまして、何とかそういったことが受けられるように、まだ、どんな形になるかというのは、今、検討中で、申し上げる段階にはないのですが、せっかく税制で優遇されるということがありますので、その実現を、できるだけ早い機会にそういうような組織立ても含めまして進めていこうという話は、今、本部会議でも出ております。

【浅野部会長】 学校の避難場所の問題ですね、先ほど佐良委員がおっしゃった。
 この辺は、岩手県でははどうだったんでしょうか。

【岩井氏】 岩手県の場合は、避難所につきましては市町村の管理となっていまして、全ての避難所において動物の受入れは可ということを言っていただいております。対策本部長名で、そういった同行避難の動物を受け入れていただけるような要請文も発出しております。

【浅野部会長】 福島県ではいかがでしょう。

【平野井氏】 先ほど、平成17年に災害が長期化した場合に利用する施設として、廃校をリスト化していたという話をいたしました。51校ほど挙げておりました。今般の災害において、この中の施設を動物収容施設として活用するために、管轄する市町村の災害対策課に話を持ちかけましたが、避難所として利用されることから動物収容施設には活用できなかったのが現状でした。避難所等における動物受入れについては、市町村に受入依頼をいたしましたが、被災ペットの受入れについては思うように運びませんでした。
 当時、県内には298カ所の避難所がありましたが、そのほとんどがそういった状況でした。福島県は未曾有の事故災害のため、動物との同行避難が進まず、298カ所の避難所に避難したペットの数は、373頭と少ない数でした。この数からも住民が命からがら避難したのが御理解いただけると思います。
 また、避難指示区域等をかかえる相馬双葉保健福祉事務所に、3月31日までに寄せられたペットの捜索依頼も23件と少ない件数でした。このことからも住民の状況が御理解いただけると思います。

【浅野部会長】 ありがとうございました。
 ほかに、この災害時の問題について、何かございますか。
 太田委員どうぞ。

【太田(光)委員】 緊急災害時動物救援本部にお尋ねしたいのですが。
 今回被災した動物の推定数というのは把握されていますか。大変広範にわたるんですけど。先ほど、福島県のほうはそれなりの数字が出ていたんですが、岩手か、宮城か、その辺の数字です。

【佐々木氏】 当初申し上げました、手前どもが把握できたのは、犬1,581頭の猫2,117頭、合計3,698頭なんですが、その範囲につきましては、あまり明確にはわからないんです。申しわけないのですが。

【太田(光)委員】 これは保護した頭数ですよね。

【佐々木氏】 そうですね。

【太田(光)委員】 それではなくて、それは先ほど申しましたように、阪神淡路大震災のときは推定値を出しているんですよね。どのぐらいの動物が被災を受けたかというので。もちろん推定値しか出ないのですけれども、是非トライしていただきたいと思います。

【浅野部会長】 よろしゅうございますか。
 佐良委員どうぞ。

【佐良委員】 私の知り合いのNPO法人が、福島から相当数の犬猫を保護してきておりました。私のところの近くにシェルターがありましたので時々見に行きましたけれども、その人が言っていることには、福島から保護してきた犬は90%以上、95%はフィラリアがいると言っていました。そこのシェルターで、フィラリアで亡くなった子も5、6頭はおりました。
 最後まで非常にかわいがって、いいケアをしていたと、私にはそのように見えましたけれども、その人の言っていることには、何しろ、もう本当に(飼い主の)意識が低い。災害のときで、こういうことだから(フィラリアにかかっていることが)わかったけれども、そうではなく、ふだんから少なくともフィラリアの駆除薬ぐらいやるという基本的なケアをもっともっと飼い主さんに教育をしていただかないとだめなんじゃないかということでした。
 是非、災害をいいきっかけとして、飼い主教育ということにもっと力を入れていただければと、切にお願い申し上げます。

【浅野部会長】 ほかに御発言がございますか。よろしゅうございますか。
 齊藤委員どうぞ。

【齊藤委員】 一つは、同行避難について、飼い主の皆さんに啓発することは、今後、私たちの県でもやっていかなくてはいけないと思います。その場合には、避難所を管理する市町村の対応ですが動物を受けて、どの場所でどう管理するか、市町村レベルで明確にしていかなくてはいけない思っています。県の防災計画の中にあっても、市町村のレベルまで広がっていかない部分が少しあると思っていますが、市町村と連携の中で、いい方法があるかお伺いしたいと思います。

【浅野部会長】 この点は、岩手県ではどうなさいましたか。
 受入れということを前から決めておられたとお聞きしました。

【岩井委員】 要請いたしました。

【浅野部会長】 同じ場所に一緒に動物を入れてしまうと、私は猫アレルギーだとかトラブルが起こると思うので、当然どこかにちゃんとスペースがあってという理解でよろしいわけですね。

【岩井委員】 区画をしたり、あるいは外の軒下で面倒を見てもらったりとか、その辺は、いろいろと犬猫が嫌いな方等も当然いらっしゃいますので、きちっとした区分けをして、後は飼い方の支援等も、愛護団体と保健所が連携しながらやっております。

【浅野部会長】 そういったような経験、ノウハウというようなものが、きちっと伝わっていくことによって、先ほどの佐良委員のおっしゃったように、校長先生が動物嫌いだとだめみたいな話が克服できていけばいいのだろうと思います。マニュアルの話は、またゆっくり議論させていただくとして、もう数日しかないので、今さら直せといっても間に合わないかもしれませんけれども、今日のこの話は結構重要なテーマであったと思いますし、それから、ヒントになるお話がいろいろあったと思います。
 岩手県からは特に丁寧にレポートをまとめていただきましたので、これと、それから緊急災害時動物救援本部のお話と両方合わせると、かなりいろいろなことがわかったと思います。
 福島県につきましてはまだ事態が進行中でありますし、お話を伺えば伺うほど心が痛む思いでございますが、今後ともどうぞ頑張っていただきたいと思います。
 それでは、最後になりました。
 公益社団法人日本獣医師会から専務理事の矢ヶ崎忠夫さん、理事の細井戸大成さん。お二方にいらしていただいております。
 災害時の対策についてもお話が若干ございますが、それ以外のことも含めて、日本獣医師会としての御意見を承りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【矢ヶ崎氏】 日本獣医師会でございます。動物愛護管理基本指針の見直しに当たりまして、要望等の聴取をいただく機会をいただきましたこと、厚く御礼を申し上げる次第であります。
 私どもは、動物愛護関係の改正に当たりまして、種々の要望を出してきたところでありますけれども、かなりのことが盛り込まれたということでございまして、厚く御礼を申し上げる次第であります。
 本日、この基本指針の見直しに当たりまして、2、3点御要望を申し上げたいということでございます。
 一つは、所有者明示の措置の推進についてでございます。所有者責任の原則を担保する上において、所有者明示措置は極めて有効な手段であります。ただ、その個体識別措置が軽々に取り外せるとか、離脱できるというような方法では、所有者の都合によって外されてしまうということもありますので、この離脱が非常に困難なマイクロチップによる個体識別というのが非常に有効であるということで、前々から私どものほうは、これの法的な採用についてお願いしてきたところでありますが、今回、所有者明示の措置が義務化に向けて、附則ではありますけれども採用されたということで、一歩前進したということを大変評価しているところであります。
 この関連におきまして、従来から、この基本指針の中に、所有者明示の措置について推進策が規定されているところでありますが、さらに、都道府県が定めます動物愛護管理推進計画の中にもこのようなことが取り込まれるように、一つ措置をいただければということであります。
 1点は、譲渡動物の所有明示措置の推進についてでありまして、都道府県等の行政機関で行う犬猫等の譲渡に際しまして、新たな飼い主への所有者責任を担保するために、譲渡動物に対して、所有者明示措置としてのマイクロチップの装着ということについて、強く御指導いただくようなことができないのかどうかという点であります。
 また、2点目でありますが、このマイクロチップにつきましては、マイクロチップの情報管理が極めて重要であります。このマイクロチップの情報管理については、公的な性格を有する団体による管理ということが、基本指針及び告示の中に盛り込まれているわけでありますが、残念ながら、公益認定団体以外のところも、このマイクロチップの装着について手がけているというようなことで、迷い犬等の検索におきましても情報のない問合せがあるというようなことで、マイクロチップの信頼性あるいは迅速性等に支障を来すということであります。これらの一層の確保について、この基本指針の中で、さらに強化していただきたいということであります。
 恐らく、マイクロチップの装着については、ペット業界の中で独自に行われているというように推察しているわけでありますが、私どももよくわからない部分がありますので、できればお教えいただければということでございます。
 2点目は、先ほどから、出ております災害対策についてであります。
 今回、災害対策を動物愛護管理推進計画の中に盛り込むことが法的に規定されたということで、大変な評価をしているところであります。
 災害対策については、私どもも獣医療の提供という観点で、基本的に支援に入るということにしているところであります。支援を円滑にするために、地方獣医師会がマニュアルを作成するときに必要な項目等について、日本獣医師会として策定のためのガイドラインを策定しているところであります。
 この策定の現状につきましては、55の地方獣医師会があるわけでありますが、そのうち、現在、策定されているというのは14獣医師会しかないということであります。ただ、マニュアルがなくても都道府県等との協定の中で救護活動が円滑に行われるようにということで進めているところでありますが、55獣医師会のうち26の獣医師会において、都道府県と協定を結んで、災害時における円滑な救護活動に入れるような体制整備に努めているところであります。
 ただ、今回の災害につきましては、1自治体だけでは、なかなか救護できないような大がかりな災害でありました。私どものガイドラインも想定外の災害規模であったということで、現在、私どものガイドラインも見直しをしておりまして、いわゆる広域災害への対策をどうするのか、広域災害のときに、私ども獣医師会がどう対応すべきかということについてのガイドラインを検討中でございます。
 この災害時の動物救護活動の連携確保という観点で、これまでは地域防災計画の中に、動物救護活動が規定されておりますので、これに基づいての都道府県との協定ということを行ってきたわけでありますが、今後、動物愛護管理推進計画の中に、この災害時動物救護活動が盛り込まれるということでありますので、この地域防災計画、それから災害時動物愛護管理推進計画、これらとの整合性を図りつつ、一体的な活動ができるような共同体制の構築をする必要があろうと思いますので、その点について、推進計画の中に盛り込んでいただくようにお願いしたいということであります。
 また、先ほど申しました協定の締結でありますが、先ほどから、話がありますように、平常時においての活動がなければ、災害時において、円滑な救護というのはなかなか難しいということであります。
 今回の災害におきましては、救援本部の立ち上げもままならないというような状況の中で、獣医師は、自分の診療施設の中に一時預かりというような形で救護するという形でありましたが、救護本部が即座に立ち上がれるように、常日ごろ、その協定と、訓練など平常時の活動についての役割分担も詰めておく必要があるということであります。
 それから、3点目、獣医師による通報でありますが、新たに法の第41条2項で、動物の虐待等に関しまして、獣医師に通報に関する努力義務が課せられたということであります。通常は、届出とかあるいは通報とかが法的に義務化された場合には、通報の手続的なことが書いてあるわけでありますが、今回、どこの窓口に通報するのかもよくわからないということでありますので、この基本指針の中で、通報がどのような形でされるのかということも明示していただければスムーズな通報ができるのではないかということであります。
 死体の検案とか、あるいは異常な傷病については、獣医師のほうは容易に診断できるとは思いますが、これが虐待なのかどうなのかは、通常の場合には、なかなか診断できない場合もあり得るということで、例えば、極度な怖がりをしているとか、あるいは極度にやせているとか、これが虐待によるものなのか、あるいは通常の疾病によるものなのか、あるいは、そのほかの要因によるものか、なかなか診断もできない場合が多々あるわけであります。
 したがって、どの時点で通報すればよろしいのかどうかということもなかなか難しいところがあるわけでありますが、通報体制がしっかりしていれば窓口との相談というようなことも可能でありますので、そういう面で窓口の設置についてよろしくお願いしたいということと、それから、通報システムにおいて、どうしても警察の手をかりなければ虐待の防止につながらない場合も多々ありますので、それとの連携の確保についても、この施策の中で、よろしくお願い申し上げたいという点であります。
 以上であります。

【浅野部会長】 どうもありがとうございました。
 ただいま日本獣医師会からの御要望を承りましたが、何か御意見、御質問がございましたら、どうぞ。

【太田(勝)委員】 先週もこの会議の中で、地方自治体から、マイクロチップは打ってあるが番号は登録されていないのが一部見られるようになったという話がありました。
 今、矢ヶ崎専務から、現場はどうなっているんだという話がありましたので、私も調べてみましたところ、ある大手のペットショップが、マイクロチップは打ってあるが、登録は社内でしているとのことです。ということは、AIPOやJKCの、マイクロチップ登録団体には登録されていないということになります。
 その数は約3万から4万件くらいと推測しています。現在、マイクロチップは法律では義務化されておりませんので、法で縛るというのは難しさもあるのかもしれませんが、これを放置しますと、将来マイクロチップの法制化というときに大きな障害になるものと予想されます。
 アメリカでもマイクロチップの登録団体が20社ほどあるために個体識別が十分に行われていないという話を伺いました。日本でもそのようなことが起きないように、どこかでこれをしっかりと、法制化する前に指導しなくてはいけないと思います。
 実際に、どこがこの問題に対して検討をするのか。できればこの場でここがやりなさいというようなものが具体的に出ますと、対応はすぐできると思います。
 以上です。

【浅野部会長】 ありがとうございました。
 この点は附則にもあって、検討しなくてはいけないということでありますから、できるだけ急いで、どうすればいいかということを事務局にも考えていただいて、ここで議論しなければいけないだろうと私も思いますので、方法なども含めて議論を進めていくように準備していただきたいと思います。
 獣医師会として、ただ今の御発言について、コメントがございますでしょうか。

【矢ヶ崎氏】 情報をいただきまして誠にありがとうございます。
 私どもの登録の数字から見ましても、やはり前年から見ますと3万から4万減っているということでありますので、恐らく、そちらに回っているのかなということは感じておりました。ありがとうございました。

【浅野部会長】 ほかに御質問はございますでしょうか。
 齊藤委員どうぞ。

【齊藤委員】 災害対応のことでお伺いしたいと思います。
 各地方の獣医師会で、今回の災害に対する多くの協力をいただいたと聞いていますが、先ほど、4団体の救護本部の今後の課題の中で、組織の見直しも検討していくというお話がありました。日本獣医師会の役割というのは今までも大きかったと思っていますが、今後も大きな役割を果たしていただくことが必要と思っています。その辺の救護本部の組織の中で、獣医師会として今後どんな対応をされていくのか、お伺いしたいと思います。

【矢ヶ崎氏】 私どもは、先ほど申しましたように、ガイドラインの見直しも検討しているところであります。獣医師会自体は全国に組織があるということで、空白地帯がないということですので、どこで災害が起こるかわからないという状況の中では、やはり中心的に災害の救援についてはやる必要がある組織であろうというように感じているわけであります。
 平常時からどうするか、緊急時にどうするか、それも含めて検討中であります。

【浅野部会長】 協定をきちっと全ての自治体との間で締結できるようにすることと、その中で、今お話がありましたような災害本部ができたときのタイアップをどうするかというようなことが、マニュアルの中でもしっかり書かれるといいと思います。よろしくお願いします。
 ほかにございますでしょうか。
 私は、大学で法医学の講義のマネージメントを、しているのですが、子供などについては結構、虐待に関する症例が積み重なってきて、臨床の先生方が御判断いただけるようなマニュアル的なものが法医学の領域で整えられているというようなことを講義で学生に説明されていることをお聞きしております。恐らく、動物虐待という問題は、まだまだ大きな関心事になってから時間がないものですから、十分な症例が蓄積されていないんでしょうけど、いずれ多分、人間もそうだったら動物もきちっとした症例が蓄積されていって、こういう症例から虐待が推測できるというような知見が固まっていくんだろうと思います。獣医師会の内部の勉強会などでは、そういうようなことが話題になっているんでしょうか。まだこれからということでしょうか。

【矢ヶ崎氏】 現状、その話は出ておりませんけれども、先ほど申しましたように、通報の制度が新たに出てきましたので、獣医師会としても対応する必要があるのかなという感じはしております。

【浅野部会長】 いずれどこかで、学会のシンポジウムのテーマぐらいになるんだろうと思ったりもいたします。
 ほかにございますか。

【木村委員】 意見として発言させていただきます。
 処分される不幸な動物や、不適切な飼育管理をされる動物をつくらないためにも、マイクロチップでの管理は、やはり避けて通れない問題だと思います。
 マイクロチップの挿入は、大きなチップが入るので動物にとってはかわいそうではありますが、動物の譲渡、一般家庭での動物飼育、災害時の対応を考えても、マイクロチップでの管理は必要と思います。
 先ほど、複数の団体によるマイクロチップの管理では、マイクロチップによる個体の同定が難しくなってきているという報告がございました。
 日本においてマイクロチップを義務化する道筋ができたことは非常に喜ばしいことですが、マイクロチップによる個体管理は複数団体でなく一元化されたものでなければなりません。さらに、マイクロチップの挿入は獣医療行為である必要があります。
 的確にマイクロチップ挿入した獣医師が必ず登録の責任を負うというような形式を確立することで、マイクロチップが確認できましたが所有者が誰だかわからないというような管理状態を作らないようにする施策が必要と思います。

【浅野部会長】 どうもありがとうございました。
 ただいまの御発言も御意見ということで伺っておきます。
 では、ほかに特に御質問がございませんようでしたら、矢ヶ崎さん、細井戸さんには、どうもありがとうございます。
 それでは、本日予定されたヒアリングは、以上でございます。
 続いて、議事の2、その他がございますが、これについて、事務局から説明があればお願いいたします。

【事務局】 それでは、事務局のほうから2点ほど、御報告並びに御連絡を申し上げます。
 1点目は、本日お配りしました資料の関係です。一番最後に、参考資料1というものを添付させていただきました。この御説明になります。
 動物愛護管理法は、昨年の9月に改正法が公布されました。それに伴いまして、この部会におきましても、法律に伴います省令、告示の改正について、御議論いただいているところでございますけれども、昨年来、御議論いただきました省令の部分、特に第一種動物取扱業者の中の、特に犬猫の販売業者の範囲をどうするか、第二種動物取扱業の範囲をどうするかなどを議論していただいたところでございますが、その改正省令の公布を、一昨日、3月26日に行いましたので、その内容についての資料です。
 あわせまして、昨年行いましたパブリックコメントの資料もつけています。意見募集しましたものにつきまして、意見結果についての回答も載せてございますので、御参照いただければと思っております。
 今回、改正しました、公布されました省令につきましては、改正法の施行日でございます9月1日に施行いたします。
 2点目は、次回の動物愛護管理部会のスケジュール、日程でございます。
 4月17日水曜日でございます。時間は2時から4時半までを予定しています。場所については、決まり次第、また御連絡をさせていただきます。

【浅野部会長】 それでは、ほかに何か特に御発言ございますか。
 はい。北村委員どうぞ。

【北村委員】 今御説明いただいた参考資料1に関してなんですが、これは、ちょっと教えてくださればと思います。
 1枚目の裏側に、(4)のところで、虐待を受けるおそれのある事態についてというところがございまして、これは省令の改正内容かとは思うのですが、最初のところ、リード文のところに、都道府県知事の勧告・命令を可能とするという言い方がございますよね。
 命令の場合は当然、根拠が要りますので、この命令の根拠はどこになってございますか。

【浅野部会長】 法の本体、25条の3項ですか。

【北村委員】 本則のことを、ここにお書きになっていらっしゃるということですね。

【事務局】 はい、そうです。

【北村委員】 はい。わかりました。すみません。

【浅野部会長】 よろしいですか。

【北村委員】 はい。

【浅野部会長】 それでは、ほかに何かございませんようでしたら、本日の部会はこれで終了いたします。
 どうもありがとうございました。