中央環境審議会動物愛護部会(第20回)議事録

1.日時

平成19年8月3日(金)午後1時00分~午後2時35分

2.場所

環境省第一会議室(中央合同庁舎5号館22階)

3.出席者

林部会長、青木委員、伊藤委員、今泉委員、太田委員、大矢委員、奥澤委員、藏内委員、佐良委員、菅谷委員、信國委員、兵藤委員、前島委員、松下委員、丸山委員
桜井自然環境局長、黒田審議官、植田動物愛護管理室長、猪島鳥獣保護業務室長ほか

4.議題

(1)
動物の愛護及び管理に関する法律に基づく諸基準の改定について
・家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(案)
・動物の処分方法に関する指針(案)
(2)

その他

5.配付資料

資料1 動物愛護部会名簿
資料2 中央環境審議会の関係法令等
資料3 動物の愛護及び管理に関する法律に基づく諸基準の改定について(諮問)
資料4 家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(案)
資料5 動物の処分方法に関する指針(案)
資料6 審議スケジュール(案)
参考資料1 動物の愛護及び管理に関する法律の概要
参考資料2 動物の愛護及び管理に関する法令等一覧
参考資料3 動物の愛護及び管理に関する法律
参考資料4 動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針
参考資料5 条例の制定・運用状況について
参考資料6 犬を用いた鳥獣被害対策の実施状況について
参考資料7 動物取扱業の登録状況(速報値)

6.議事

【事務局】それでは定刻となりましたので、中央環境審議会動物愛護部会を始めたいと思います。まず、本日の委員の皆様のご出欠について報告いたします。本日、委員15名全員出席されておりますので、規定により部会は成立いたします。それでは林部会長、よろしくお願いいたします。

【林部会長】15名全員出席ですか。すごいですね。皆さんお忙しい中をお集まりいただくということは、動物愛護部会に関して大変にご理解をいただいているということで、ありがとうございます。それでは、議事に入る前にごあいさつをいただきたいと思います。今日は自然環境局長が見えておられますので、局長からごあいさついただき、その後事務局の方から、委員をご紹介いただければと思います。それでは局長お願いいたします。

【自然環境局長】先月7月10日付けで自然環境局長を拝命いたしました桜井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。動物愛護部会の委員の皆様におかれましては、日ごろから動物愛護管理行政の推進につきまして多大なご協力をいただきまして、また、本日ご多忙のところを全員のご出席を賜りまして、深く感謝申し上げるところでございます。前回の動物愛護部会は、昨年10月に開催しておりますが、その間、環境省ないしは、環境行政にとりましても、様々な展開がございました。近くは、先々月の6月に、「21世紀環境立国戦略」ということで、わが国が環境の分野で世界をリードしていくためには何が必要か、あるいは、世界にどういったことを発信していくかというようなことを閣議決定したわけでございまして、その中でも、生物多様性の保全というような形で、動物愛護行政の位置付けも、大きな役割があるというふうに考えております。また、自然環境行政の分野でも、最近の展開といたしまして、生物多様性の保全に関して2010年開催予定の第10回生物多様性条約締約会議「COP10」と称しておりますが、わが国でその会議を開催するということで、名古屋市がその開催地候補となっております。これは生物多様性分野における国際会議として、非常に規模の大きなものでございますし、また、今後の世界的な生物多様性の保全に関する方向性を議論するという重要な場でもございます。わが国としても、それに向けて、様々な取り組みを進めていきたいと考えているところでございます。自然環境行政の分野で身近なものとしては、例えば、6月には渋谷で温泉施設の爆発事故がございました。私ども自然環境行政の中で、温泉法を所管しておりまして、安全対策という意味で、国民の皆様方の安心・安全のためにきちっとした対応をしていかなければいけないということで、現在、その対策についての検討を進めているところでございます。さて、動物愛護管理行政の分野では、動物愛護管理法が昨年6月1日に施行されまして、経過措置の期間を経て、本年6月1日から全面的に施行されました。動物取扱業の登録制ですとか、あるいは特定動物の飼養許可制度というようなことが本格的に実施されたところでございます。また、昨年10月には、本部会でもご議論いただきました「動物愛護管理基本指針」を定めまして、動物愛護の精神に沿った、様々な飼養の基本的な考え方というものを示したところでございます。今後、これに基づいて、必要な行政の推進に努めてまいりたいと考えております。その他、本日記者発表したところでございますが、最近、アメリカなどで中国産の原料を使ったペットフードで犬や猫が死亡するというような事故が生じております。そういった観点から、ペットフードの安全性についても、きちっと検討すべではないかということで、農林水産省と共同でペットフードの安全性について検討を開始したところでございます。このような最近の展開がございますけれども、引き続き、本部会の先生方に、色々なご指導をいただきながら進めてまいりたいと思います。本日は、法律に基づきます、基準の一部の改正ということを議題としておりますので、また忌憚のないご意見をいただき、活発なご議論をいただければと思います。以上、簡単でございますが、冒頭のあいさつにかえさせていただきます。どうもありがとうございました。

【林部会長】それでは、委員の皆様のご紹介をいただいて、その後、資料の確認をいただきたいと思います。

【事務局】それでは、委員のご紹介をさせていただきます。テーブルの配置順で、青木委員、伊藤委員、今泉委員、太田委員、大矢委員、奥澤委員、藏内委員、佐良委員、菅谷委員、信國委員、兵藤委員、前島委員、松下委員、丸山委員でございます。次に、資料の確認をさせていただきます。配付資料としまして、資料1「部会の部会名簿」、資料2「中央環境審議会の関係法令」、資料3「動物の愛護及び管理に関する法律に基づく諸基準の改定」、資料4「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(案)」、資料5「動物の処分方法に関する指針(案)」、資料6「審議スケジュール(案)」でございます。また参考資料としまして、動物愛護管理法関係で参考資料1・2・3、それから参考資料4は「基本指針」、参考資料5「条例の改正・運用状況」、参考資料6「犬を用いた鳥獣被害対策の実施状況」、参考資料7「動物取扱業の登録状況(速報値)」でございます。もし資料の不備がございましたら事務局までお申しつけ下さい。

【林部会長】ありがとうございました。今回から、資料1にありますように、新たに、伊藤委員、太田委員、そして佐良委員が加わりました。どうぞよろしくお願いいたします。それでは議事に入りたいと思いますが、今回の部会は大きな方針をご検討いただくというよりも、昨年から施行されております動物愛護管理法に基づく基準の改正について論議いただきたいということで、資料を用意していただいております。まず、事務局の方からご説明いただいて、議題1を進めてまいりたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

【動物愛護管理室長】7月に動物愛護管理室長を拝命しました植田と申します。よろしくお願い申し上げます。それでは、具体的な議事の前に、初めての委員の方もおられますので、少しだけ、この審議会、そして法律の内容をご説明させていただければと思います。資料2をご覧ください。中央環境審議会の関係法令をお示ししております。この中央環境審議会は、環境基本法の中で規定されておりまして、色々な法律の一つに動物の愛護及び管理に関する法律があげられており、その権限に属した事項を処理することが明記されております。2ページの第6条に部会を設ける、そして部会に部会長を置き、会長の指名する委員がこれに当たるということが決められております。本年1月に、審議会が開催されておりまして、すでに林部会長が動物愛護部会の部会長として選任されております。この部会の審議の範囲は5ページに表がございますとおり、動物の愛護及び管理に係る重要な事項に関することでございます。法律で基準や指針の策定など、審議会に聞いて決めることとされているものが色々とございます。そういったものを逐次部会にお諮りをしてご意見をいただくという形で進めさせていただく仕組みになっております。法律の概要でありますけれども、参考資料の1をご覧いただければと思います。継続してお願いしております委員の皆さんは、もう何度もこの資料をご覧になっていると思いますが、簡単にポイントだけ申し上げますと、「動物の愛護及び管理に関する法律」ということで、1番最近の改正が平成17年で、改正法が18年6月1日に施行され、19年6月1日から1年間の猶予期間を経て本格的に施行されております。大きな法律の枠組みとしましては、3つぐらいの柱がございまして、そのうちの1番目が、動物取扱業者の規制がございます。これは今回の法改正で、その対象範囲を広げるとともに、従前の届出制から登録制となっております。2番目に大きなところとして、特定動物、いわゆる危険な動物の飼養規制というのがあります。これも今回の法律改正で、それまでは都道府県の条例でばらばらであったものが、国全体で統一して許可制になっております。3番目に大きなところとして、犬及び猫の引取りがございまして、犬・猫を都道府県や市町村で引取り業務を行っております。これ以外にも普及啓発など重要なところが色々とございますが、大きなところだとこの3つになるかと思います。また、この法律にはいくつも基準がございます。参考資料2にありますとおり、法律に基づき施行令、施行規則だけでなく、昨年策定しました基本指針、それからその下に各種基準や細目が制定されております。こうした中、今回はそのうちの2つについて諮問をさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

【林部会長】室長の方から、これまでの経緯を含めて、ご説明に入る前の段階のところについてご説明いただきましたが、何かご質問やご意見ありますか。それでは引き続いて本日の内容についてのご説明をお願いいたします。

【事務局】続きまして、資料3・4・5・6、そして参考資料をご説明いたします。まず資料3でございますが、これは諮問書でございまして、7月31日付けで基準の改定について、環境大臣から審議会会長あてに諮問書が出され、同日付けで本部会の方に付議書が出されております。今回の諮問の内容でございますが、現状と異なるもの、また文言が誤解を招くおそれがある二つの告示の改正を諮問するものでございます。それでは、資料4「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」でございます。これは平成14年に策定されておりまして、18年1月に一部を改正しております。この基準は、動物の所有者又は占有者の責務等に関する規定である法第7条を受けております。第7条第4項に「環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる」とあり、それに基づいて策定されております。その中の第4の1で、犬の所有者は、原則放し飼いは禁止でございます。柵などで囲まれた自己の所有地、屋内その他人の生命、身体、財産に危害を加え、並びに人に迷惑を及ぼすことのない場合を除き、犬の放し飼いを行えないこととなっております。一方、警察犬、狩猟犬のように、多くのしつけと訓練がされている有益な犬が活躍しているという現状がありますが、現在の告示の中ではこれらの適用除外が明確になっておりません。さらに、参考資料の中でご説明いたしますが、最近多くの自治体でサル、クマなどによる農作物への被害が社会的な問題となっています。そうした中、犬を活用した被害対策が実施され、効果が上がってきているところでございます。ただし、どんな犬でもよいということではなく、前提として、十分な訓練が必要ということを規定し、その後に様々な条件を示しております。次に参考資料5に移らせていただきます。「条例の制定・運用の状況について」ということで、平成18年に基礎調査をいたしまして、本年の7月に再度、実態について、環境省から各自治体に調査をかけたものでございます。まず1番でございますが、これは条例の状況について調査したものでございます。平成19年7月現在、犬の放し飼いの禁止を規定した条例の有無を調査いたしました。先ほど申しました国の基準については、努力規定ということでございますが、多くの自治体において罰則がつく禁止規定がございました。99自治体、これは47都道府県、17政令市、保健所を有する中核市ということで、所管はそれぞれの動物愛護行政機関ということでございます。そのうち63自治体において、犬の放し飼い禁止の条例がございました。引いた36自治体についてはないということでございます。しかしながら、政令市、中核市で犬の放し飼いの禁止規定を策定した条例がない場合には、都道府県の条例を適用するということがございます。一方、都道府県47自治体を見たところ、42自治体において条例は存在しております。存在しない5自治体については、県の条例はなくても管内の全市町村において条例を制定してございます。結局のところ、全国ですでに犬の放し飼い等の禁止を規定した条例を有していることが、この資料からお分かりになるかと思います。2番でございますが、県の条例の中で、犬の放し飼い禁止の条例を有する42自治体のうち、警察犬、狩猟犬などについての除外規定及び運用の有無があるかどうかに関してですが、41自治体で適用の除外を設けております。1自治体は適用の除外規定は設けておりませんが、運用として認めているという実態がございます。3番でございますが、放し飼い禁止の条例を有する自治体のうち、追い払いについては2自治体が除外規定を条例の中に明記しております。その例といたしまして、参考資料5の4ページでございますが、福島県の例によると、施行規則の中で、「山間へき地等において人、家畜、耕作物等を野獣の被害から守るために飼犬を使用するとき」ということを明記しておりまして、実際このように運用しております。3の表でございますが、16自治体においては、除外規定はないが運用で一部認めているということでございます。よって、4割の自治体では追い払いを条例で認めているということが、この表から分かります。適用除外規定の例というところで、3ページに東京都の規定を出しております。東京都の場合は、飼養保管の適用除外はございますけども、追い払いの適用除外はなく、現状では想定はしていないということでございます。4ページにまいりまして、これは長野県の例でございます。「長野県飼犬管理条例」です。これは後ほど説明がございますけども、大町市でうまくいった事例がございますが、県の条例の中では、狩猟犬で追い払いを読むということになっております。このように、地域の特性はございますが、多くの条例で使役犬、追い払い犬に関する適用除外を認めているということでございます。最後に再び資料4に戻らせていただきます。前提条件として、適正なしつけ・訓練がなされているということを規定いたしまして、その後に、人の生命、財産等に危害を加えない、人に迷惑を及ぼさない、自然環境保全上問題の生じる恐れがないという3つを受けて、その後に3つの除外規定を明記いたします。1つは、警察犬、狩猟犬のように、社会的にも目的が明確であって、犬と一緒に行動する人間からの制御が強いようなもの、例えば、介助犬のようなものを含めて記載いたしました。次に、追い払いのように、犬に対して人が命令をして、「行け」と言えば、何時間か、目的を遂行するまで放されるということで、かなり犬の方に自由度が高いものというように整理しております。次に、資料6ですが、今後のスケジュールとして、本日ご意見をいただきまして、今後パブリックコメントを募集し、次回の審議会で答申をいただければと考えております。続きまして、資料5でございます。先に参考資料4を見ていただきたいのですが、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」ということで、昨年の部会のときにご審議をいただきまして、平成18年10月31日に告示しております。現在、これに基づき、道府県の方で基本計画を策定中でございます。この中の6ページでございますが、犬猫の殺処分等についての記述がございます。上から5行目でございますけれども、「都道府県、指定都市及び中核市における犬及び猫の引き取り数が減少したが、その絶対数は年間約42万匹であり、その約94%が殺処分されている。」また、その講ずべき施策としまして、殺処分率の減少図るというようなことを記載しております。次に根拠となる法律の条文でございますが、法40条で「動物を殺さなければならない場合には、できるだけその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」というようになっております。2項として環境大臣が必要な事項を定めておりまして、それに基づき、動物の処分方法に関する指針というものが定められております。実際、この指針の中では「処分」という言葉を使っていながら、先ほどご説明しました基本指針の中では「殺処分」という言葉を使っているということで、今回文言を整理したものでございます。特に内容等について変えているものではありません。これについても、スケジュールは資料6のとおり考えております。

【林部会長】ありがとうございました。家庭動物等の飼養及び保管に関する基準の改定及び動物の処分方法に関する指針でございます。処分指針に関しては、これまでは「処分」の前に「殺」がなかったわけですが、処分と言っても色々な処分があり、この指針はその中でも殺処分を示したものでございますので、表現を明確にするとともに、合わせて内容も一部変えるということであります。本日は鳥獣保護業務室からもいらっしゃっていますので、追い払い犬についてご説明をいただきたいと思います。

【鳥獣保護業務室】先ほど追い払い犬について話がありましたが、鳥獣被害対策に犬を用いた実施状況について参考資料6でご説明させていただきたいと思います。7月に各都道府県の鳥獣保護部局にアンケートを実施いたしました。犬を用いて鳥獣被害対策を実際に実施している県は8県16市町村。また、今、犬を訓練中であるとか、試験をしているとか、検討をしているところが10県ございます。また、実施している8県の中で、放し飼いをして、被害を与える鳥獣に向かっていくようにするようなことで被害対策をしているというところが10市町村ございました。後ろに表をつけているのですが、例えば、軽井沢ではクマによる人身被害を防ぐために、犬と人間はリードでつながっているのですが、カレリアドッグという特別な犬を使ってクマを追い払っています。そういうようなものも含めて6市町村ございます。また16市町村のすべてで、野生鳥獣の行動経路や移動経路が変わったなどの効果があるという報告を受けています。それから2ページ目に、今申しました実際に犬を用いた鳥獣被害対策を一覧表にしております。見ていただいたらお分かりのように長野県がかなり多くなっております。この中で、特に先進的に犬を用いたニホンザルの農作物被害を対象とした対策を実施している長野県大町市の自衛策について、次のページでご説明いたします。大町市では、現在、サルが600頭ぐらいいるのですが、被害を与える群れの行動範囲がこの赤で示しているものでございます。まだ完全に犬だけで被害対策をしているわけではございませんが、このように黄色の丸が12個あると思うのですが、犬を用いてニホンザルの追い払い対策をしているということでございます。線路の左の真ん中あたりに黒丸に×をしたところがございますが、実際にその例といたしまして、ニホンザルの追い払い犬、通称「モンキードッグ」というふうに呼んでいるわけですが、モンキードッグ導入後のサルの移動経路の変化ということで、茶色の移動経路と赤の移動経路で、犬を入れると赤い線のように山側を迂回して農作物被害が減っています。当然このサルによる追い払い以外にも電気柵、それから林と畑の間の森林を刈り払って見晴らしをよくするとか、色々な対策は進めておりますが、そういう対策の中でも有効な鳥獣被害対策の一つであるということで、先ほどの一覧表のように、色々なところで導入及び導入の検討が始まっているというところでございます。

【林部会長】ありがとうございました。今のご説明も含めて、どうぞご自由にご意見・ご質問いただきたいと思います。

【藏内委員】資料4の家庭動物等の飼養及び保管に関する基準に、「警察犬、狩猟犬等」と明記されていますが、先ほどの説明で「介助犬等を含む」というご説明でありましたが、ここに「補助犬」という名称を、ぜひ明記をしていただきたい。正式名称では「身体障害者補助犬」で長い名称になるわけですが、私は補助犬でも構わないと思います。なぜかといいますと、せっかくいい法律がつくられたわけですが、なかなか社会に補助犬が受け入れられていないという現状をよく耳にしますし、つい最近の新聞でも、そのことで身体障害者の方が非常に不便を感じておられるという記事も載っておりました。ですから、こういった動物愛護あるいは動物が人間の役に立っていることを基本とする法律の基準に、こういった名称を載せるということに意義があると思いますので、そのような配慮をいただければと思います。

【林部会長】事務局でまとめて最後にお答えいただけますか。それではほかにご意見は。

【青木委員】藏内委員のご発言に関連して、私はやや違う印象を持ちましたので申し上げます。「身体障害者補助犬法」そのものの中に、私も今条文を持っていないのではっきり分からないのですけれども、「きちんとハンドラーがリードにつないでいること」など、適切に管理しているということを、当然要請していたと思うので、そういった、いわば、放し飼いにしていない犬と一緒に社会を自由に歩き回れるというのが身体障害者補助犬法の趣旨だったと思います。この除外規定は「放し飼いにすること」という除外規定ですので、放し飼いにしないと非常に困っているケースがあるということならば、藏内委員のおっしゃったことを検討する根拠といいましょうか、理由が非常に強くあると思うのですが、慎重な考慮を要するのではないかというふうに思います。

【藏内委員】確かに青木委員のおっしゃるように、審議の段階でそういったことが話し合われていたことは承知しております。ところが実際、介助犬等で介護を頼りにされている方は、家の外まで新聞をとりにやるとか、実際家の中だけでは飼っておけない。それでは、役に立たないことになってしまいますので、あえて申し上げたところでございます。

【林部会長】ほかにどうぞ。

【佐良委員】災害救助犬も入るのではないかと思います。日本ではまだあまりおりませんが、リードから放して犬を動かすのは災害救助犬が一番多いのではないかと思います。また、警察犬がトップに出ておりますが、現在、警察犬というのは、警察が保有している犬か、あるいは誰かに飼われている犬が警察犬としての訓練を受けて、何か事件があるときに借りてきて、警察関係の方がハンドリングをするという場合があるかと思います。そういった犬は、人がちゃんとついて、ある程度指示をして動かしているので、「放し飼い」という表現は適当ではないと思います。

【林部会長】それはこの条文を見ていただきたいのですが、「警察犬、狩猟犬等を、その目的のために使役する場合」という、そういう場合に特定しているのです。追い払い犬も「追い払いに使役する場合」となっています。だから、普通に家の近くで遊んでいるときに放し飼いにしてもいいということにはならないと思います。ここでは、その場合だけしか放し飼いを許可していないということです。ほかにご意見どうですか。

【奥澤委員】参考資料6について補足して聞きたいのですが、今度の基準案の中のただし書きの中で、しつけや訓練で、被害を与えるおそれがないというのが条件で付いているわけですが、実際に10市町村のところで、いわゆる放し飼いということで自由度の高い飼養方法をされているようですが、具体的にどんなしつけを行っているか、あるいは実際に飼うときの配慮について、何か情報があれば教えていただければと思います。

【鳥獣保護業務室】ご説明しましたように、大町市のモンキードッグは、「モンキードッグ事業」ということで、市の方でやっております。まず、追い払いの犬として使いたいということを広報で募集し、その後、長野県警察犬訓練所で、専門の人が適正を判断した上で、適正のある犬をそこで4カ月間訓練する。場合によっては、もう少し長くなる場合もあるということです。それが終わったら実地に入ります。普段は農家の軒先につないであり、サルが群れで来たら声がしますので、犬を放します。そうすると、かなり山の奥まで追っていって戻ってきます。サルが先ほど見ていただいたように、地図の山側を通って迂回すれば、通常どおり鎖でつないでいるというようなことで行っていると聞いております。

【今泉委員】これは犬種が特に何か決まっているとか、あるいは、そのまま帰ってこない犬がいるとか、そういったことはないですか。

【鳥獣保護業務室】犬種につきましては、大町市の場合は、今11・12頭いるうち、雑種が確か半分ぐらい、それ以外は、例えば、ジャーマンシェパードとか、血統種つきの犬だと聞いていますが、広報によって飼い主から応募するというシステムなので、特に犬種を限っているということではございません。それから、帰ってこない犬は、今のところないとお聞きしています。

【今泉委員】GPSとか、そんなのをつけていないということですか。

【鳥獣保護業務室】そういうものはつけておりません。追い払うといいましても、要するに農家から何百m山際に追い払って、畑に出てこないようにすればいいわけなので、何キロも何十キロもずっと追っていくということではございませんので、そういう発信機などはつけていないということです。

【今泉委員】そうすると、隣村の畑にサルが行くということですよね。

【鳥獣保護業務室】サルはできるだけ奥山に戻るように広域に配置されています。また犬だけでサルの被害対策をしているわけではなく、電気柵や、緩衝地帯づくり、林の見通しをよくするとか、当然ニホンザルの有害捕獲もやっております。これらの総合的な被害対策の一環として犬も利用しているということです。

【伊藤委員】しつけや訓練が十分に行われた犬というところは、現場の実情から考えまして慎重に議論をしていくべきところだと思います。実際に宮城県では、平成17年度に訓練された神奈川県のNPOの公認救助犬を使って、サルの追い払いを13回実施しました。その結果、サルを追わない犬がいたり、1時間ぐらい帰ってこない犬がいたりしたという実例があります。従いまして、たとえ規定の訓練が十分になされた犬の場合でも、やはり人や家畜等、他の動物への被害の発生が心配されます。それから目的とする鳥獣以外の野生動物に危害を加えて、自然環境に影響を与えないか、サルが別の畑に行って、他所の田畑を荒らさないか、野犬化してしまわないかという心配もあります。そういうこともありますので、追い払い犬の定義であるとか、適用除外の定義であるとか、そういったものをきちんと議論する必要があるのではないかと思います。

【松下委員】犬がよく訓練されているといいましても、放し飼いにするのか、鎖を放すのかというのは、人間が判断することなのですが、追い払い犬として訓練するときに、飼い主も一緒にトレーニングを受けるのですか。

【鳥獣保護業務室】大町市では、人に危害を加えない。サルを見つけたら追う、終了後呼んだら帰ってくるという訓練をするので、最初の2週間は、飼い主の家族は訓練に行かないが、犬が訓練に慣れてきたら、1週間に1回程度家族で訓練所に行って、一緒に訓練を見たり、指導を受けたりしているとお聞きしています。また、大町市では、第三者への被害を考慮して、年間2,000円で、補償額最大1億円という保険に加入しているとお聞きしています。

【兵藤委員】マイクロチップや標識など、何か個体識別できるものをつけているのでしょうか。

【事務局】特にはないと聞いています。

【兵藤委員】マイクロチップを入れたり、所有者をきちっと明記するようなことはぜひしっかりやっていただきたいと思います。それから、サルにしても、山に帰っても生活できないから里に出てきているので、単に追い払うだけでなく、根本的な問題として、ちゃんとした住処を考えておいてあげてほしいと思います。

【菅谷委員】法律上の文章の読み方を教えてほしいのですが、「ただし、次の場合であって、適正な」と書いてありますが、「次の場合であって」というのは、「警察犬、狩猟犬等を、その目的のために使役する場合であって、さらには」というふうに読むのでしょうか。それと、「犬の放し飼いを行わないこと、ただし」となっていますが、「警察犬、狩猟犬等を、その目的のために使役する場合」は犬の放し飼いには該当しないと書いてありますが、そもそもその目的で主張するこの事例が放し飼いと言えるような場合なのか、佐良委員と全く同じ意見ですが、私も疑問に思っているので教えてください。

【林部会長】放し飼いの定義ですね。ほかにございますか。それではいただいたご意見等について、まとめて事務局の方からお答えいただけますか。

【動物愛護管理室長】ありがとうございます。こちらでも検討しておりました課題についてご意見をいただきました。最初に、補助犬あるいは介助犬、盲導犬あたりを、警察犬、狩猟犬の後に続けて載せてはどうかというご意見については、やはり警察犬や狩猟犬と異なりまして、補助犬や盲導犬は、基本的につながれて活動している場合が多い、もちろん放れて活動をする場合もありますが、それは特別な場合であろうということで、その多くを放れていないと目的を遂行できないような犬を例として挙げるという考え方でございます。ですので、もちろん介助犬等は入っていないという訳ではなく、この「等」の中に入っているというように考えております。また、ご指摘のあった災害救助犬については、幾つも例を出すわけにはいきませんので、たまたま出しませんでしたが、もちろん放れないと仕事にならないものもありますから、放していくという認識はしております。それから、追い払い犬について、きちんとした訓練がなされていないと心配ではないかというご指摘があろうかと思います。もちろん我々もすべて追い払い犬という名のもとで、いわゆる、放し飼いのようなものを推奨する気持ちは毛頭ありません。もちろん、人への危害のおそれですとか、咬傷事故などは、これまでと同様考えていかなければならない課題だと思っておりますので、そういったものとの総合的な判断で決めていくのだろうと思っております。一方、今までは放し飼いが原則禁止でしたので、先ほどのような鳥獣被害に対する場合に、どうしても行政側が一歩踏み出す際の足かせになっているようなところもありました。成功している例もあれば、もちろん試行錯誤のところもあり、これから勉強しながらではありますが、こういった追い払い犬の場合には、放し飼いを認めてもいいということを、国のよるべき基準として出そうじゃないかというのが今回の趣旨でございます。もちろんこれをもとに、各都道府県が条例でどういう扱いするかについては、各地域の状況に応じて判断されるものと思っておりますので、先ほど菅谷委員の方からもありましたけれども、その場合の条件はただし書きで書いております。法令的な表現にならざるを得ませんので、分かりにくいところもあるかもしれませんが、しつけ・訓練がきちんとなされていること、人の生命、身体、財産に危害を加えたり、人に迷惑を及ぼすというようなことがないこと、自然環境保全上の問題を生じさせるおそれがないこと、こういうことをしっかり担保した場合であれば、警察犬などを認めるという考え方であります。自治体の方ともっと議論しながら、もう少し具体的に検討して、事務局としてはもう少し下の段階で、基準の下の基準といいますか、そういったもので分かりやすくお示しできればと考えております。

【林部会長】ありがとうございました。私の方で1つ補足させていただきますと、実は、私、今年の4月から兵庫県にできました森林動物研究センターの所長をしておりまして、毎日のよう私のところへその関係のメールが入ってきます。兵庫県には研究員が6名、専門員が5名おりまして、あっちこっちで追い払いをやっているんですが、基本的に追い払い犬の役割は狩猟犬と異なりまして、狩猟犬はイノシシ、シカの類ですが、追い払い犬は、サル、そしてクマといった、本気で狩猟したら絶滅してしまうかもしれない野生動物が基本的に対象であると私は理解しております。これは大町市の場合でもそうですが、ほとんどの地域で何頭のサルがいるかということは把握されています。特に、兵庫県ではクマにしろ、サルにしろ、先ほど今泉委員のご質問のあったGPSは、サル・クマ側についていますので、それらが近づいてきたときに追わせても、それらはほとんどコントロール下にありますから、犬にGPSをつける必要はないんです。確か、先ほど帰ってこなかった犬がいたかどうかというご質問がありましたが、これまでの例で言いますと、私の知っている限りでは1頭いました。それは確か大町市で、熱心にサルを追い払うあまり、川で水死して帰ってこなかった。後から見つかりましたが、かわいそうなことをしました。そういう犬もいましたが、ほとんどの犬はかなりきちんとした訓練をしていました。ただ、先ほど室長のお話でもありましたように、人に迷惑を及ぼさない、それから、特に自然環境保全上の問題がないということ、こういったことは、今後、もう少し資料を蓄積しながら、よりよい方向に持っていく必要はありますが、こういうことを今回指針の中に加えていただくことによって、市町村の動きを加速させることは間違いないと思いますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。野生動物をほとんど殺してしまえということではなくて、こう言ったら語弊があるかもしれませんが、シカ・イノシシは捕殺せざるを得ないぐらい増えているところが多いのですが、サルとクマに関して言えば、あまり狩猟で対応しますと絶滅してしまうおそれがありますので、そういった野生動物に対しては、特にこの追い払いは有効であるということです。隣の村に追いやっているだけじゃないかという意見があるかもしれませんが、里ではなくて奥山に追い払っている。京都では奥山に餌場までつくろうとしている。本来もっと広葉樹が必要だったのに、広葉樹を切ってしまったから下りてきているという話もありますから、奥山の方に広葉樹林をつくろうという計画を進めています。そういう全体的な話は、もう少し実績が出てくると、どんどんここに書かれてくることが実態化してくると思いますが、そういう意味では、こういう細かい見直しをしていただくのは非常にありがたいと思っています。

【大矢委員】すみません。事務局で再検討していただくのはいいのですが、犬の放し飼いというと、個人所有の犬をその辺に放すという意味合いが強いと思います。ですから、この「ただし」以降と、前段とを分けて考えればよいのではないでしょうか。使役に使う犬と個人が所有して庭で散歩させる犬を分けてご検討いただいたら、もう少しすっきりするのではないかと思います。

【佐良委員】個人的な偏見になってしまうかもしれませんが、狩猟期の最後にはたくさんの猟犬が山に置いていかれています。狩猟犬も犬としては、もちろん一生懸命お仕事をやっているわけですが、今の日本で狩猟をしないと生きていけない人はまずいない。つまり狩猟犬は趣味のお手伝いなんです。警察犬と並んで狩猟犬が出てきますが、補助犬とか、その他一生懸命お仕事をしている犬たちをもう少し重要視していただいて、反感があるかもしれませんが、犬ではなく、使う人のことをもう少し考えて、犬のお仕事の内容で決めていただければと思います。

【林部会長】これも私の方から申し上げますけれども、狩猟犬は確かにゲームハンティングのお手伝いをしているという面もありますが、狩猟犬あるいはハンターの役割というのはそれだけではなく、日本では鳥獣による農作物への被害が極限まで大きくなっているわけで、有害鳥獣駆除という形で、かなり大切な役割を担っていると思います。ですから、狩猟犬が警察犬と比べてそんなに劣るものなのかなという感じはします。

【佐良委員】すみません。猟犬が劣るという意味ではありません。

【林部会長】犬だけではなく、ハンターの人たちも有害駆除のときには、本当は仕事がありながらも、その仕事を休んででも有害駆除に出動されているという状況があります。

【佐良委員】そういう方もいらっしゃるのでしょうが、喜んで大義名分を背負って行く方も多いのではないでしょうか。

【今泉委員】今の話とは少し変わりますが、私は犬を放すことには大賛成です。ただ、伊藤委員がおっしゃられたように、きちっとやらないと大変なことになります。最近クマが出てきて問題になることがありますが、野犬がいなくなったことも影響していると思います。人間の周りから犬がいなくなって、安心して鳥獣が出てくる。こういった放し飼いをうまくやれれば、クマやサルの害も相当減ってくると思います。

【佐良委員】クマが民家に出てくるのは、人間の方がクマのテリトリーに侵入しているのではないかなとテレビのニュースを見て思っています。これは今の議論とは直接関係ないですが、人間がこれ以上動物たちのテリトリーに侵入してはいけないというような規制もお考えになっているのでしょうか。

【鳥獣保護業務室長】クマにつきまして、昨年度国内で5,000頭近くが捕獲されております。昨今、どういう現象が起こっているかといいますと、山村地域において人口の減少または高齢化等が進んできて、加えてクマの食料が凶作で山になかったりしたため、クマが人里に出てきたという現象が平成16年に出てきております。こういったものに対しては、今年3月にクマの研究をされている専門家にご意見をお伺いし、クマに備えた対策、クマが出てこないような環境整備、クマに出会ったときの対応などをマニュアルにまとめて、周知しているところでございます。

【林部会長】ほかにいかがでしょうか。それでは、この後パブリックコメントがありますので、今日いただいたご意見に対しても、まだ議論の出る可能性がありますが、また、それはもちろん大歓迎なことでありまして、処理される事務局は大変だと思いますけども、パブリックコメントに入らせていただきたいと思いますがよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、もう一つの殺処分の件に関して、まだあまりご意見をいただいておりませので、もう少し論議させていただきたいと思います。先ほど資料5でご説明いただいたところです。この指針がつくられた当時は、「殺処分」 を「処分」と呼んでいたわけですが、現在は「処分」にも色々な意味が含まれるということで、ここでは、きちんと、「殺処分」と明確にした方がいいだろうという趣旨です。ただ、この「殺」という字は、なかなか目にしても美しい字ではないものですから、皆さん色々なお考えがあるかと思いますが。

【前島委員】少し昔の話ですが、平成7年にこの指針をつくったとき、私も委員の1人で、ほとんどの委員がこの「処分」は「殺処分」だという認識でいました。ただ、「殺処分」という言葉はイメージが悪い、あまりにも生々しいということで、また法制局から「処分」でいいという話もあって、「殺」をとったというように聞いておりました。私はむしろ「殺処分」とした方がすっきりすると思っております。

【兵藤委員】「処分」という言葉は、オブラートに包んでいますが、実際にやっていることは「殺処分」ですので、私たちはこれまでもはっきり「殺処分」を使ってほしいと言っていました。「殺処分」には、法律の文言にもありますが、人間の都合によって途中で殺されていく動物たちに尊厳を持ったり、なるべく苦痛を最小限に抑えることが必要ですが、その責任は途中で手放した人とか、無責任に捨てた人たちにあります。そして、その後始末を、実際に殺処分しないといけない人たちがいるわけです。これから犬ねこの殺処分が指定管理者制度になってきますと、民間の団体がそれを受け持つようになりますが、この殺処分については、誰が、どうしてこうなるということをきちっと調査して、国民の前に出していただきたい。もう一つ、今日は獣医師会の代表の方もいらっしゃいますが、私は動物病院を持っていて、殺処分もしておりますが、その殺処分をする薬剤の安定的な供給が実はありません。殺処分する方法については、非常に柔らかい言葉で、抽象的な言葉で書いてあるだけで、各現場の獣医あるいはそれに携わっている人たちの判断に委ねられているところがあるので、もう少し明確にしていただきたい。アメリカなどの諸外国では、安楽死用の非常に苦痛の少ない薬剤があります。現場にきちっとこうした薬剤が供給されることが、この問題を解決していくことだと思います。とにかくどこの省庁でもいいですし、どこの団体でもいいですから、なるべく早く私たち現場に届けてほしいというのが切実な願いです。

【大矢委員】今の兵藤委員の意見に賛成です。法第40条には、はっきりと「殺す場合」と明記されているわけです。それなのに指針だけが、曖昧に「処分」というふうにオブラートに包んだ形になっています。部会長がおっしゃったように、処分とは色々な方法があり、ここでは、はっきり「殺処分」とした方がいいと思います。

【林部会長】先ほどから賛成のご意見が多いようですが。

【前島委員】今、兵藤先生が言われましたが、解説書には、誰が殺処分を決定するか、誰の責任か、また、どういう薬を使っていいかあるいは使ってはいけないかということも書いてあります。ただ、兵藤先生が言われたように、一番の問題は、動物用としてどういった薬がよいかよく分かっていなかった。環境省と農水省、一部厚労省も関係するかもしれませんが、協力してこの問題を解決する方向に持っていくことがよいと思います。

【林部会長】先ほど局長もおっしゃいましたが、今、ペットフードで農林水産省と環境省が一緒にやっているわけです。この問題は、動物への苦痛を最小限にするという観点からも、前島委員がおっしゃった内容を生かす形で、一緒にご検討いただいたらいいのではないかと思います。

【青木委員】動物の愛護及び管理に関する法律の第41条第3項、資料の8ページです。ここにも出ていますが、「動物が科学上の利用に供された後において回復の見込みのない状態に陥っている場合には、その科学上の利用に供した者は、直ちに、できる限り苦痛を与えない方法によって、その動物を処分しなければならない。」そういう条項があります。今日の話と直接つながる話ではないですが、少なくとも法律が「処分」としているということは、そのときに社会的な影響があったのではないかと推測をします。私はそのときいなかったので、前島先生のご記憶の方が正しいだろうと思いますが、そういう趣旨が入っている可能性があります。ここは法律の文言を検証する場ではないので、どうしようもないことですが、本来的には、法律から基準レベルまで、同じ言葉を使うべきだと思います。それから、「処分」という言葉の定義を見ますと、「処分とは致死させること」だと、明確に「殺処分」であることが書かれているように思いますが、問題を隠蔽しているというふうに、殺処分を正面から見据えろという兵藤先生が何度もおっしゃっている説もいいと思います。ただ、「殺」をあえて加えることによって、いわば殺すことを奨励しているかのような誤解を受けることだけは避けなければいけないので、丁寧な説明といったものが必要になるかと思います。

【林部会長】ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。大体ご意見をいただいたように思います。これもパブリックコメントにかけるわけですね。今日お配りいただいた資料6に、今後の審議のスケジュールがあります。今日が終われば、なるべく早い時期から9月上旬までパブリックコメントにかけていただくことになります。そして、10月に開催されます次回の動物愛護部会で答申を作成することとなっております。そういう流れでありますが、ほかにこの議題1についてご意見ありますでしょうか。なければ、事務局の方で他に何かありますか。

【事務局】参考資料7で動物取扱業の登録状況についてご報告させていただきます。平成17年6月に動物愛護管理法が改正され、その際に、ペットショップ等の動物愛護取扱業者は届出制から登録制に移行しております。改正法は平成18年6月から施行されておりましたが、1年間ほど経過措置期間がございまして、本年6月から本格運用されております。本年5月31日現在の登録状況が速報値として上がってきましたので、ご報告させていただきます。動物取扱業には、販売業、保管業、貸出し業、訓練業、展示業の5つの種別がございます。平成18年3月31日現在の届出状況を取りまとめたものが5業種トータルで2万9,446件、平成19年5月31日現在の登録状況が3万3,587件ということで、プラス4,000件ぐらいというふうになっております。このほか、申請中のものが1万1,000件ほどございますので、トータルで考えますと登録制に移行して1万5,000件ぐらい増加したことになります。1点補足ですが、貸出し業だけ登録件数が減少しております。これは、今回の登録制への移行に合わせて、従前の届出制の際には貸出し業としておったものが、展示業や保管業に区分が変わったことに伴うものです。

【林部会長】ありがとうございました。平成19年5月31日現在でこれだけの登録状況だということであります。何かこれについてコメント等ありますか。

【太田委員】平成18年3月から19年5月の14カ月間で6,000件ほど増えておりますが、申請の未処理が1万1,000件ということで、私の予想より一桁多いように感じました。私たち動物取扱業者は、登録が済まないと本年6月1日から営業できないと言われておりましたので、早く登録を済ませるよう、業界を上げて啓発を行っているところでございます。登録に関しては、各地方自治体によって、当然ある程度は差が出てくるとは思いますが、申請してから登録まで半年のところもあれば、10日ぐらいのところもあり、相当差が出ています。現在の犬・猫の流通の大きな流れとしては、ブリーダーがオークションに持ってきて、それを業者が選んで買うというシステムになっています。その中で、オークションの会員については、今年6月1日までに登録を済ませることになっておりまして、登録が済んでいない人は名簿から外すというところまでやっています。業者にとっては、死活問題となりますので、書類がそろって、設備が整っているのであれば、申請から登録まであまり長い期間かからないようにお願いしたいと思います。

【林部会長】ありがとうございました。一生懸命頑張っていただいていることに対しては、やはり地方自治体の窓口がきっちり対応しなければいけないと思います。残念ながら、10日間から半年間ぐらいの差は、私が知る限り、地方自治体の事務処理能力の違いとしてあるような気がいたします。事務処理能力だけじゃなくて、動物愛護に対する考え方も、それぐらいの差があるように思います。今度の法律も、そういった地方自治体による差をなくすために、全体の基本指針を環境大臣が定め、それに基づいて地方自治体が実施計画をきちんと作るということになっていますので、今おっしゃっていることは少しずつよくなっていくのではないかと期待しています。

【大矢委員】この場で申し上げるべきことではないかもしれないですが、運用の部分でお願いがあります。私は横浜市から、販売、貸出し、展示の許可をいただいております。しかし、他府県で展示を行おうとする場合は、また新たにその自治体で登録をしなければいけないことになっておりまして、横浜市が出した登録許可が、横浜市を離れてしまったら、意味がないということになっております。例えば、横浜市で許可をとったものが他府県で営業を行う場合には、その番号をつけて届け出ればよいといった方法も検討いただけないでしょうか。

【林部会長】事務局いかがでしょうか。

【動物愛護管理室長】改正法の経過措置期間がようやく終わったところですので、これから、そのような課題を整理して、自治体と相談しながら検討してまいりたいと思います。

【林部会長】ほかに何かございますか。

【大矢委員】特定動物の基準について、見直しをお願いしたいということを以前から申し上げているのですが、事務局の方にご意見をお伺いしたい。

【動物愛護管理室長】特定動物の見直しについては、基本指針でも、あるいは審議会でも、宿題になっているということはよく認識をしております。現在、特定動物のどういったところが問題かといった点を、有識者にヒアリングしている最中であります。次回には中間報告ができればと考えております。

【林部会長】特定動物に関しては、前回の法改正の際に、残念ながらこの審議会であまり議論することができませんでした。今、どのような有識者にお伺いしているか分かりませんが、実際に現場で動物をご覧になっている方でないと分からないところもたくさんあるかと思いますので、しっかり検討していただきたいと思います。特定動物の問題と幼齢動物の問題は、ここできちんと話しするという約束になっておりますので、もし中間的な報告ができれば、次回にお示しいただければと思います。それでは、少し時間が早いですが、私の方から事務局にお返しいたします。

【事務局】どうもありがとうございました。林部会長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、長い時間にわたりご審議いただきまして、どうもありがとうございました。次回の日程でございますが、10月中を予定しております。詳細につきましては追って連絡したいと思っております。それでは、本日の動物愛護部会を閉会いたします。どうもありがとうございました。