中央環境審議会動物愛護部会(第5回)議事録

日 時

  

平成15年2月26日(水)午前10時~12時

場 所

  

環境省第1会議室

出席者

竹内 啓 部会長  
今泉 忠明 委員  菅谷 博 委員
杉山 公宏 委員  関 哲夫 委員
中川 志郎 委員  中川 李枝子 委員
兵藤 哲夫 委員  前島 一淑 委員
丸山 務 委員  山下 喜弘 委員
岩尾 自然環境局長   小野寺 審議官
神田 動物愛護管理室長   岡部 室長補佐
河本 野生生物課長補佐   
  

議 題

(1)
動物愛護部会の所掌等について(説明事項)
(2)
動物愛護管理法に基づく動物の飼養及び保管に関する基準の見直しについて

(審議事項)

(3)
移入種問題を巡る環境省の取組について(報告事項)
(4)
平成15年度動物愛護管理関係予算(案)の概要(報告事項)
 

配布資料

動物愛護部会名簿

資料1 中央環境審査議会関係法令等
資料2 動物の飼養及び保管に関する基準の見直しについて
資料3 移入種対策について
資料4平成15年度動物愛護管理関係予算(案)の概要について
参考資料1 動物の愛護及び管理に関する法律
参考資料2 新・生物多様性国家戦略
 

議 事

【神田動物愛護管理室長】 それでは、定刻となりましたので、中央環境審議会動物愛護部会の開催をお願いいたしたいと思います。
 その前に本日の委員の皆様の出欠についてご報告をいたします。委員総数15名中、ただいまのところ10名ご出席いただいておりまして、委員総数の過半数を上回っておりますので、本日の会議は成立いたします。中川委員につきましては、到着が遅れているようですが、ご出席の予定でございます。
 次に、去る1月7日に中央環境審議会総会が開催されまして、森嶌会長が引き続き選任された後に、中央環境審議会令第6条第2項の規定によりまして、1月8日付で動物愛護部会の部会長に、竹内啓委員が引き続き指名されましたことをご報告申し上げます。
 それでは、竹内部会長、よろしくお願いいたします。

【竹内部会長】 それでは、これから動物愛護部会を開催させていただきます。
 ただいまご指名をいただきました竹内でございます。どうぞよろしくお願いいたします。議事に先立ちまして、本日は岩尾自然環境局長がお見えでいらっしゃいますので、ごあいさつをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

【岩尾自然環境局長】 ご紹介いただきました自然環境局長の岩尾でございます。お忙しいところ先生方にお集まりいただきましてありがとうございました。
 環境省になりましてからこの動物愛護管理行政を所管して、丸2年を過ぎたところでございます。環境省としても積極的に飼養動物についても考えていかなければいけないと思っておりますが、特に最近は社会的にこの飼養動物のみならず、野生動物なども保護、愛護に関する国民の要請というのが高まっているところでございます。もちろんそれとの反対の事象としての人の生命、財産への被害ですとか迷惑、あるいは感染症などの問題もありまして、私ども野生生物から飼養動物まで一元的に所掌する環境省にとっての大きな課題という認識をしております。
 きょうは特に動物の飼養及び保管に関する基準の見直しの今後の進め方ということで、議論していただくところでございますけれども、それに加えまして移入種の問題についても最近の取り組みをご説明したいと考えております。委員の先生方には何とぞご忌憚のないご意見をいただきたいと思って、あいさつにかえさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【竹内部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、私からも簡単に一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。
 ご承知のように新しい動物愛護管理法が施行されましてからしばらくたちましたけれども、おかげさまでそのもとで例えば協議会であるとか、動物愛護推進員であるとか、これらも各地方でだんだんと具体化して動き出しています。皆様とご一緒にお喜びしたいと思います。
 中でも、その新しい愛護法の冒頭に書かれております動物を、命あるものとして考えるとか、あるいは人との共生を考えるという部分は、新しい法律の大変重要な部分であるわけですが、この中でもこの「共生」という言葉が、皆様ご承知のように大変広く使われるようになっておりまして、いろいろなところで聞かれたり、見られたりいたします。これは恐らく愛護の思想というものが世の中にどんどんと広がっているということを示す証拠であろうと思って大変うれしく感じております。
 ただ、動物愛護という言葉は、あるいは動物愛護というのは、それだけで独立してあるものではないことはご承知のとおりです。これは、基本的には動物と人間がいろいろな形で接触をする、あるいは接点を持つわけですが、そのすべてのところに愛護というものがかかってくるのが当然だろうと思います。ちょうど物があるときの影のように、動物と人の接点があるところには、必ずその影として動物愛護がつきまとっている。そういうものでなければいけないと思いますし、その影が見えない暗黒の中での動物と人間の接点というものだけは避けるべきだという理解ではないかと思います。
 そういうものを実行するためにあるのがご承知のように、ただいまの局長のごあいさつにもありました動物の飼養と保管に関する基準でございます。これこそ人と動物の接し方がいろいろ違う、それに応じていろいろな基準ができているわけでございまして、この基準が法律が変わってから5年間の間に見直されるということになっているわけです。したがって、それに沿いまして、ご承知のように既に犬及びねこの飼養及び保管に関する基準に関しましては見直しをいたしました。その結果として、対象動物を広げて家庭動物の飼養と保管に関する基準というものがこの動物愛護部会でも審議されまして、既に告示されていることはご承知のとおりです。今後もそれ以外の基準に関しましても、できるだけ早く見直しをしなければいけないわけですが、本日はその問題を中心に多分ご討議いただくことになろうと思います。どうぞ限られた時間ではございますけれども、プロダクティブな方向に話が進みますようにご協力をお願いして、簡単でございますが、ごあいさつにかえさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、座らせていただきまして、事務局から動物愛護部会の新任の委員並びに環境省の幹部職員のご紹介をお願いしたいと思います。

【神田動物愛護管理室長】 それでは、先回部会開催時から所属委員に異動がございましたので、ご紹介申し上げたいと思います。
 お手元の動物愛護部会委員名簿をごらんくさい。先回まで委員としてご就任いただいておりました池田委員におかれましては、1月6日付でご退任されまして、そのことに伴いまして1月10日付で社団法人日本動物園水族館協会副会長、上野動物園の園長でいらっしゃいます菅谷博委員がご就任されましたのでご紹介申し上げます。

【菅谷委員】 菅谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【神田動物愛護管理室長】 次に先回の部会以降、先ほどご案内のように当方の幹部職員等の異動がございましたので、改めて紹介させていただきます。
 岩尾自然環境局長、先ほどごあいさつを申し上げたとおりでございます。
 それから、小野寺審議官でございます。
 それから、福井自然環境局総務課長、出席予定でございますが、はずせない用事で今現在おりませんけれども、後で追って参る予定でございます。
以上でございます。どうぞよろしくお願いします。

【竹内部会長】 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思いますが、その前に配付いたしました資料の確認をお願いしたいと思います。
 事務局からどうぞお願いします。

【岡部室長補佐】 それではお手元の資料をごらん願います。
 1枚目は中央環境審議会第5回動物愛護部会と表題がついております議事次第、配付資料の記載をしております。2枚目が先ほども触れました動物愛護部会委員名簿となっております。次が資料1となっておりまして、関係法令等、あと最後に中央環境審議会委員名簿が掲載されておりまして、1ページから9ページまでございます。資料2が動物の飼養及び保管に関する基準の見直しについてでございまして、各種飼養保管基準も添付しておりまして、1ページから13ページまでとなっております。資料3は、移入種検討会報告「移入種(外来種)の対応方針について」の概要でございまして、1ページから6ページまでとなっております。資料4は、平成15年度動物愛護管理関係予算(案)の概要についてでございまして、1ページから3ページまでとなっております。次に参考資料1としまして、動物の愛護及び管理に関する法律の全文を載せておりまして、これは1ページから6ページまでございます。最後に参考資料2といたしまして、新・生物多様性国家戦略の概要について1ページから5ページまで載せております。そのほか委員の皆様方には、移入種、外来種の対応方針と新・生物多様性国家戦略の冊子を配付しております。
 もし資料に不備がございましたら、事務局までお申しつけ願います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。現時点で何か足りないというようなご意見ございますか。
 とりあえずないようでございますから、進めさせていただきます。
 それでは、早速議事に入りたいと思いますが、まず議事の1番目、動物愛護部会の所掌等についてということで、事務局からこれはご報告だと思いますが、お願いいたします。

【神田動物愛護管理室長】 それではご説明します。座って説明させていただきます。
 資料1に中央環境審議会に関します所掌、組織、運営などを規定している法令などをお示しさせていただいておりますけれども、委員の皆様方には新任の菅谷委員を除きまして引き続きということでございます。このため今回は審議に直接関係する運営に関する事項に限りましてご説明することとさせていただきたいと思います。
 資料1の7ページをごらんください。ここでは審議会の運営方法について説明をしたいと思っております。ここでは記載のとおり、会議の公開、出席者等について決められているところでございます。総会は必ず公開ということ、それから部会については、原則として公開する。ただし、特別な事情がある場合には非公開とすることができるというような定めがございます。それから公開する場合でございますけれども、会長または部会長が会議の公開に当たり、会議の円滑かつ静穏な進行を確保する観点から入室人数の制限その他の必要な措置を課することができるというようなことの定めもございます。
 それから、会議録及び議事要旨の公開ということがその次にあるわけでございます。公開した会議の会議録は公開するというのが原則でございます。また、非公開とした会議の会議録であっても、部会が認めたときにはこれを公開するものと定めがございます。それから次に、総会及びすべての部会の会議については、議事要旨を公開するという定めがございます。非公開の部会等であっても、この議事要旨につきましては公開するということになってございます。その公開の仕方でございますけれども、これにつきましてはホームページへの掲載、あるいは閲覧窓口への備えつけという方法によるということが書いてございます。
 その後は一般的な意見の反映の方法ですとか、その他の事項が重ねられておりまして、一番最後でございます。これらに規定するもののほかに総会、部会、小委員会、専門委員会の公開、その他議事の運営に関して必要な事項につきましては、ここに定めのない事項につきまして、会長または部会長が定めるという内容になってございます。
 以上、大変簡単でございますけれども、審議に当たって直接関係する運営に関することについてのみ説明をさせていただきました。

【竹内部会長】 ありがとうございました。今ご説明がございましたように、この資料に従いまして会議の運営が行われるわけでございますが、最後におっしゃいましたように、この中にないようなことにつきましては必要に応じまして皆様方とお諮りをしながら会長の決定で進めさせていただきたいと存じておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは続きまして、議事の2番目に入ります。動物愛護管理法に基づく動物の飼養及び保管に関する基準の見直しについての審議でございます。まず、事務局からご説明をお願いいたします。

【神田動物愛護管理室長】 それではお手元の資料2をごらんください。まずは動物の飼養及び保管に関する基準の概要について、ご説明させていただきたいと思います。
 資料2の1ページにございますように、動物愛護管理法におきましてはその5条で、動物の適正な飼養及び管理を確保するため動物の所有者、占有者の責務を定めております。さらに環境大臣は、動物の飼養及び保管に関し所有者等がよるべき基準を定めることができるとされております。この規定につきましては、旧法、動物保護管理法でございますけれども、そのときから規定されている内容でございまして、旧動物保護管理法のもとに、記載のあります4つの基準が定められてきたところでございます。これらの基準につきましては、所有者、占有者に課せられた責務、具体的に申し上げますと、動物の健康と安全を保持する。あるいは人への危害、迷惑を防止をするという責務を果たすため、確保すべき適正な飼育の規範というものとなるものでございまして、また、施策の上では飼い主に対する普及啓発ですとか、指導の基本となり、さらには動物飼育に関する社会共通の目標とされることが期待されるわけでございます。本基準につきましては、これに反する場合の罰則など法的な強制力があるわけではございませんけれども、適正な飼育のガイドラインとして重要な役割を持つものと私どもとしては考えているところでございます。
 基準が制定された後、動物愛護管理法が平成11年に改正、12年に施行されたことはご案内のとおりでございまして、その点を踏まえまして、また各基準とも制定後年月を経ているということから、まず先ほど部会長からお話がありましたように、犬の及びねこの飼養及び保管に関する基準の見直しを含めまして、ペット動物全般の基準の策定を本部会にご審議いただいて、平成14年5月28日付で家庭動物等の基準として告示させていただいたという経緯でございます。その経緯はそのページの下の方に書いてございます。基準の本体につきましては、同じ資料の4ページ以降に添付させていただいているところでございます。
 次に3ページをごらんいただきたいと思います。各基準制定後の関連する主な動向、そのポイントを簡単にまとめたものでございます。図のとおり昭和50年に制定され、昨年改定いたしました犬及びねこに関する基準に次ぎまして、順次右の方に整理して各基準の関係を並べて記載したものでございます。右の方に昭和51年に制定されました展示動物に関する基準、次に昭和55年に制定いたしました実験動物の基準、次に昭和62年に制定しました産業動物の基準関係を記載しております。それぞれ制定後27年から16年経過しているということでございます。これらの基準制定後の関連する動き、基準レベルの動きというものを見てまいります。まず展示動物の飼養及び保管に関する基準についてでございます。展示動物の飼養保管基準が昭和51年にできまして、それに対応するといいますか、それに呼応するような形で、63年に社団法人日本動物園水族館協会の倫理要綱が制定されているということを承知しています。
 それから海外に目を転じてみますと、平成11年には動物園に関するEUの指令、これはEUの決めごとでございますけれども、指令が出され、あるいは世界動物園水族館協会の倫理コードがまとめられているということがございます。そのようなことを受ける形で平成12年には既につくられておりましたイギリスの動物園免許法の基準に当たります「Standerds of Modern Zoo Practice」が出されています。このように、ここ近年になりまして幾つかの新たな動きが見られるというふうなことを承知しております。
 一方国内的に見ますと、先ほどのご説明のとおり動物愛護管理法改正がございまして、この中の大きな柱でございます展示業を含む動物取扱業の規制が導入されました。これに伴いまして、平成12年には動物取扱業者の遵守すべき施設の構造及び動物の管理方法に関する基準というのが制定されるという動きもございました。このように展示動物に関しては、国内外ともに最近関連する動きがあるわけです。
 次に実験動物関係でございます。基準制定後、ほぼ時期を同じくしまして、そこに記載のとおり、同じく昭和55年に日本学術会議が動物実験ガイドラインの策定についての勧告を行っているということがございます。その後、それを受ける形で昭和62年には当時の文部省が大学等における動物実験についての通知を行っています。これら実験動物に関する飼養保管基準と動物実験に関する勧告、通知を受ける形で、昭和62年から最近まで動物実験をする側であります関係学会などにおきまして、そこに記載の例示のとおり、指針の作成が進んできているところでございます。それが現在まで継続してきていると理解してございます。
 最後でございます。最も制定が新しい産業動物の関係でございますけれども、これにつきましては、制定後記載のように特にEUにおきまして、関連する指令というものが出されております。directiveといっているものでございますけれども、ここではその一部を記載していますが、EU諸国において取り組みが行われていることが特徴的であろうというふうに承知しているところでございます。
 以上、飼養保管基準制定後の基準関連の動向の概観ということでお話をさせていただきました。これらのそれぞれの基準の見直しにつきましては、ご案内のとおりでございますが、一昨年、平成13年3月19日に開催されました第1回動物愛護部会におきまして本部会における今後の検討事項ということとして、その中で最も古い犬及びねこに基準につきましては、先ほど来お話がありますようにまずそれを見直すということで了承いただいた上で策定作業を終えたところです。事務局といたしましては次の見直しの対象基準を決定いたしまして、当部会の審議をいただく必要があるというふうに考えているわけでございます。そこで、その対象といたしましては犬及びねこの基準の次に制定されておりまして、実質的に最も古いもの、展示動物の基準を次の見直しの対象とすることを考えているというところでございます。設定時期として最も古いということとともに、関連する国内または国外の動きもありますことから、それらを参考にする、あるいは勘案するには、タイミングとして適切ではないかというふうなところを考えているわけでございます。
 繰り返しになりますけれども、本日は次なる基準の見直しの対象を、展示動物の基準として、今後この部会でご審議いただくことでよろしいかどうか、ご意見を賜ればと考えている次第でございます。また、今後の検討に当たってのご示唆をいただければ幸いでございます。
 検討の進め方でございますけれども、私どもといたしましては、これも前回の家庭動物の基準策定の際にとらせていただきましたことと同様に、まず事務局におきまして関係の専門家などからのご意見をいただく、情報を収集するというようなことを行うなど、基準の見直しに関する準備検討を始めさせていただき、これらを経た上で事務局として考え方をまとめ、当部会にお諮りさせていただくというような方法を考えているところでございます。
 以上、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。ただいまご説明がございましたような事情を勘案いたしまして、平成14年度から着手することでいいのですか。それとも今、14年度ですが、15年度事業ですか。

【神田動物愛護管理室長】 まず手順の話と絡んでしまいますので、その準備に関してはご了解いただければ即座に、すぐに着手をいたしたいというふうに考えてございます。

【竹内部会長】 早いのは大変結構だと思います。従って、今日ご決定いただければ、早速にそれに着手したいというご方針のようですが、まだあと3つ基準が残っているわけですが、古いもの順ということもありますし、今お話になったような事情もあります。あるいはご説明の中にもありましたけれども、動物取扱業の規制の導入というようなものもございました。そういう影響も受けている。さらにはこの前に告示を出していただきました家庭動物の基準をつくりますときに、やはりこの展示動物はある程度影響を受けております。そういうところを整理するという意味もあるかもしれませんが、展示動物の飼養並びに保管の基準というものから着手をしたいというのがご提案でございますが、いかがでございましょうか。どうぞご自由にご発言をいただきたいと思います。
 関連する事項についてのご質問でも結構かとは思いますが。この展示動物というのは、いろんな動物が入ってくるわけですが、その1つに動物園の動物がございますが、この問題についてはいかがでしょうか。ご新任早々で恐縮ですが、菅谷委員何かお考えございましたらお願いしたいと思いますが。

【菅谷委員】 新任早々でどうも発言しにくいのですが、ご案内のとおり最近のマスコミ等では閉園する動物園の動物の行方を追い「リストラ動物」というようなことで多く報道されております。また長引く経済不況等の枝今日を受け、公私立共に苦しい経営が迫られており施設整備も思うようにいかず、動物愛護団体等より厳しくその改善を求められている動物園もございます。このため私どもの協会でも改善指導等を行っておりますが、なんら権限もないことから有効な手だてもなく、また行政側でも実際の現場では同様の状況にあるとお聞き致しております。
 この審議会においては、これら状況を十分に把握され、現状の問題に十分対応が図れる見直し案が纏まることを期待し、参加させていただきました。

【竹内部会長】 ありがとうございました。ついては細かい点については、作業の中でまたご意見をいただこうかと思いますけれども、大ざっぱな線でご忠告というか、ご意見というか、何かご示唆はありませんでしょうか。

【菅谷委員】 直ぐにはお答えできかねますので、私どもの業界にも精通されております、中川志郎委員にお答えをお願いいたします。

【竹内部会長】 それではベテランでいらっしゃる中川委員、その辺いかがでございますか。

【中川(志)委員】 そうですね、今事務局がご提案あったとおりだと思うのですけれども、古い方の展示動物の飼養及び保管に関する基準も51年2月に告示されていますけれども、やはり家庭動物、あのころは犬とねこと言いましたけれども、その飼養保管基準に次いで古いわけですね。
 それからもう1つ、今度の家庭動物の中で、展示動物の飼養及び保管に関する基準の中にあったものが家庭動物の方に若干移行しているということで幅が非常に広くなったというふうに思っています。そういう関連からすると、2番目にこの展示動物を取り上げるのは順番もさることながら、前とのコネクションの中でも非常に時宜を得たものではないかなと、そういうふうに思っています。
 それから今、菅谷さんがおっしゃったように、最近は展示動物も移入種の問題と絡んだりしまして、野生動物との非常に大きなかかわりというのも出てきてますので、そういう意味でも今回取り上げるのはまことに意義があるのではないかなと、そういうふうに思っております。

【竹内部会長】 ありがとうございました。いかがでございましょうか、動物園というのは動物の関係者だけではなくて、だれもが関心を持っていることでございますので、ほかの委員の先生方ご意見がございましたら、どうぞお願いします。

【兵籐委員】 動物園関連のところは動物園のプロの人たちがおりますが、庶民の目からまたご意見をしたいと思っているのですけれども、移動動物園というのがやっぱり社会の中で私たち、あるいは子供の目から見ることが多いのです。さらに世界の犬展とか、ねこ展覧会だとかというのがありまして、これを見た人たちからの意見も出ております。展示に休憩の場所をあげたいとか、照明のために大変光量の強い光を当てているだとか、いろいろなところで批判を聞くことがありますので、この展示動物等につきましてはすぐにやはり基準づくりに入っていただくことを望んでおります。
 以上です。

【竹内部会長】 ありがとうございました。大変心強いご意見で、これは大いに検討する価値があるなと思いますが、ほかの委員の方々は、いかがでございましょうか。

【今泉委員】 私、上野動物園で何年か解説員をやっていたのですが、やはり動物愛護という観点が非常に強くなっていまして、解説員をやっているころに北極グマを上野動物園でああいうふうに飼うのは残酷じゃないかと、食ってかかられたことがありました。日本の動物園は割合動物愛護という面からはちょっと離れていると、スペインかどこかの国際機関が日本の動物園を調べに来たのです。そしてランクづけをしていましたけれども、いいところはなかったような記憶があるのですが、そういう愛護の面がこれから強くなってくるかなという気がしております。
 以上です。

【竹内部会長】 ありがとうございました。なればこそこの基準をつくる意味もあろうかということになると思いますが、そのほかにはいかがでございますか。はい、どうぞお願いします。

【中川(李)委員】 私は動物園が好きで、よく行くのですけれども、その土地土地によって大事にされる動物とそうでないのがあるらしく、暖かい地方に行くと寒い国の動物がとても大事にされて、寒い地方に行くと暖かい国の動物が珍しいからか大事にされる。差別と言ったらおかしいのですけれども、スターばかり大事にするのはやめていただきたいと思うのです。

【竹内部会長】 動物にも公平にという、そういうご意見だと思いますが。そのほかはいかがでございますか。どうぞ、どなたにも関係のある問題かと思いますが、いかがでしょう。

【杉山委員】 たびたび申しておりますが、法律基準の作成見直し、大変重要と思います。そこで、これをいかにして周知させるか、普及啓発、これをもっともっと徹底していただきたいと思います。推進員と協議会につきましては、先ほど話がありましたようにこの実現が大分進行しておるようですけれども、さらにこれらの設置・活動について努力していく必要があると思います。

【竹内部会長】 これは言うなれば、この基準ができた後の実効が上がるようにという、環境行政に対してのお願いというか、要望というか、そういうことでよろしゅうございますか。ありがとうございました。そのほかはいかがでございますか。

【前島委員】 ちょっと見方を変えたいのですが、この展示動物の基準をつくるときに、その前に野生動物といいますか、ポピュレーションを守るためというのと、それから個々の個体を守るのとかなり違う見方があると思うので、野生動物の保護とは違いますが、やはりこの展示動物の飼養検討のときに、そのところをもう一度十分ご検討いただきたいと私は思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。この点についてはご承知のように動物園関係では「Zoo Stock計画」というものもございまして、単に展示だけではないほかの目的も持っていらっしゃるわけですが、この辺の観点から今のご質問について再三ですみませんが、菅谷委員ご感想なり、何かございましたらお願いします。

【菅谷委員】 大変重要な視点からのご意見と思います。しかしながらそれを今回の見直しされる基準の中にどう盛り込むかは技術的な面で難しいのかなと感じます。前島委員のご発言の通り、種の保存、環境教育の推進等、動物園では多くの課題がございます。また国際化の進展、愛護団体等からのご批判というものにも十分念頭に置き、それらについても応えられる飼養基準を目指せればと思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。これはご案内のとおりあくまでも動物愛護の観点からの基準でございますから、当然この動物園動物の全貌を押さえるようなものではないわけですね。したがって、その愛護の基準の観点から今ご提案があったような両方のこともにらみながら、基準をつくっていきたいということだろうと思います。どうぞ。

【丸山委員】 危害の防止ということに関して、皆さんご承知のように昨年来新聞をにぎわせたような、そういう動物から来る病気の問題というのが結構大きな関心を呼んだと思います。以前の旧の展示動物のこの規定にはそういうところが余りはっきりしていないというところがあるのではないかと思いますので、今後の問題として新しいところにはぜひその感染症の防止、そのあたりをしっかりと捉えるようにしていただきたいというふうに思っております。

【竹内部会長】 ありがとうございました。丸山委員、ちょっとお伺いしますけれども、そういう意味で動物園の動物から人に来るような感染症、子ども動物園などは別として、あとは余り触れないわけですけれども、そういうものとしてはどんなものが今話題になっているというか、重要視されているのでしょうか。

【丸山委員】 直接触れなくても、飛沫感染というようなことでいけば、鳥類からのオウム病というようなこともありますし、それからほかにも飛沫感染を起こすようなものというのはかなりあると思うのです。これからだんだん私たち人間の方の抵抗力が弱ってくると、今までは出なかったようなものが出てくるという心配もある。それからもう1つは、これは動物園の中での話なのでしょうけれども、やはり野生動物が入ってくると、その野生動物から動物園、あるいは飼育者の健康に害がでるということも十分考えていただきたい。余りそういうのは動物園から外に話が出ていかないし、データも出ないのですけれども、実際にあるんじゃないかなというふうに思うので、そのあたりもぜひ視野に入れていただきたいなというふうに思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。今のお話は両面を持っていてなかなか難しい話だと思います。動物園に行くと危ないよという話になってしまうと大変です。やはり人間に対しては安全だという措置がとられてこそ、安心して動物園のよさ、あるいは展示動物のいいところを享受できるということになろうかと思いますので、もちろんその部分というのはどうしても考えなければいけないことかもしれません。ただ、どこまで神経質になるかとかいろいろな問題がありまして、実際にどういう基準にするかという点になりますと、少し悩ましいかなという気がしないでもないですね。そのほかはいかがでございますか。

【中川(志)委員】 先ほどの前島先生のお話ですけれども、これは非常に難しい問題を含んでいるなというふうに思いました。それで従来動物愛護法、昔の動管法ですけれども、それをつくるときに非常に問題になったのは動管法の方はどちらかというと、個々の動物を対象にしていかにそれを愛護していくかという、あるいは動物園で飼っているゾウの花子さんなら花子さんという、そういう個々のことを中心にすると、家庭で飼っている動物でもうちのこれというようなことで個を対象にすることは非常に多かったわけですね。野生生物の方はそれと違って、種というものを対象にして保護するということがあって、トキの金ちゃんではなくて、トキという種類全体、それからトキを残すためにはその生態系全体も保護もしなければいけないという考えが強くでます。動物愛護の法の目的というのは、両方とも救うということなのですけれども、それでもどこかで線が引かれていると、何となく理解していたと思うのです。
 ところがここ数年来、そういう区別ができなくなったと思うのです。この間もちょっと環境省の方も一緒に行かれたのですけれども、沖縄のヤンバルクイナを守るためにどうするかという、そういう運動の現場を見てきたのですけれども、そのヤンバルクイナを危機に追い込んでいるのが、マングースとノネコだというのです。そのノネコというのは人間が飼っていた家庭のねこで野生化してクイナを食っているという、そういう現状があって、野生動物と家畜というのが1つの線を引いてですね、別々に考えるということはだんだん難しくなってきている。特に輸入動物がペットとして飼われるようになってくると、ますます区分というのはできなくなってくると思うのです。そういう意味では昔のように動物愛護が総理府で、野生生物の保護は環境省というふうに分かれていた時代はそれが非常に難しかったけれども、今は非常に幸いなことに環境省で両方とも所管をするという時代になりましたので、これは今日野生生物課の方も出ておられるので非常に心強く思ったのですけれども、そういう意味ではこの問題を考えるときに、個の問題と先ほど前島先生がご指摘になったように種の問題と両方頭の中に入れておいて基準をつくるような、そういう取り組みが必要かなというふうに思いました。

【竹内部会長】 ありがとうございました。そのほか何かご意見、コメントございますか。

【関委員】 ちょっと確認なのですけれども、この展示動物の飼養及び保管に関する基準、先ほどの事務局のご説明で罰則もないというふうなこともございましたが、この基準は動愛法の委任を受けて環境省が告示するというふうに法的な根拠もあり、また罰則がなくても告示ということで、法令の一形式であるというふうに考えてよろしいわけでしょうね。また地方公共団体の条例でこれと同じに定められますが、条例の上位の、規範であるというふうに考えていいのでしょうか。それが1つです。
 それからもう1つ、動物の素人しての意見なのですけれども、ここの基準の中でちょっと触れておりました従来一部の動物園等で、子供さん何かにスキンシップといいますか、動物と遊ばせるというふうなこともやっているかに聞いているのですが、これについてです。そのことは非常に意味のあることと思いますけれども、この基準にも出ていますようにいろいろな病気ですとか、健康上の問題とか、あるいはどんなおとなしい動物でも危険は若干あると思うのです。それをどういうふうに防止するかというようなことで、今の基準は割合抽象的に書いてありますけれども、この辺をもうちょっと具体的に書けないかなというふうな感じがいたします。
 以上2点で。

【竹内部会長】 今ご質問が2点ありましたが、いかがですか。

【神田動物愛護管理室長】 1点目の委員からございました法令的な位置づけのお話なのですが、十分な答えであるかどうか自信ございませんけれども、ご指摘のとおりこの基準につきましては告示される、環境大臣が告示するということでございますので、そういう意味の重みはあるというふうに考えております。かつ法律上で動物の所有者、占有者の責務というものを具体的に実現するための基準でございますので、責務自体も法律で定められた責務でございますので、そういう意味では罰則がないものの、従うべきということは法律的にしっかりしているものであるというふうに考えております。
 それから条例に対しての上位、下位というのも、これは上位とかいう言い方が適当かどうかはなかなかうまく言葉を選べませんけれども、これについては少なくともある目的で動物を飼養、保管する場合の客観的なガイドラインと、こういう審議会のご意見をいただいて決めるガイドラインということでございますので、これは普遍性があるだろうというふうに考えます。ですから、これに関するいろいろな規範を自治体でおつくりになるときに、当然その普遍的なここで定められたものに関しては勘案されるべきものになるのではないかというふうに、考えられるのではないかというふうに思います。(基準ができた場合にこれに反した条例がつくれるかというのは、なかなか客観的に恐らく説明ができないのではないかなというふうに考えますので、)結果的に普遍的であるべき、この基準の枠内に条例などそれぞれの規範がおさまるであろうと、もちろんそれぞれの自治体における事情等によりまして詳細化は進むかと思います。作られた基準に反するというようなことは現実あり得ないのではないかなというふうに考えております。

【竹内部会長】 もう1つの点については如何ですか。

【神田動物愛護管理室長】 触れ合いのものにつきましては、ご指摘がありましたものについては私どもとして今考えている1つのポイントというふうに考えております。これは51年の基準には先ほどご指摘のようにあまり記述がございません。恐らくその51年当時に比べて現在では、見るだけではなくて、より近づく、触れ合うというところがふえてきているのではないかなと思います。したがってそれに伴う配慮事項というのは特に重要になってきているのではないかと考えておりますので、その辺は特に重点的に取りあげていきたいと考えております。

【竹内部会長】 ありがとうございました。よろしゅうございますか。はい、どうぞ。

【関委員】 大体わかったのですけれども、まず法令の解釈の点ですね、要するにこの基準というものは法的拘束力があるというご説明で、これはよくわかりました。ただ、条例との関係ですね、ちょっとわからないのはご承知のように先年の地方分権一括法で国の機関委任事務というものが廃止されて、一般的には国と地方公共団体は上下の関係ではないということになったわけですけれども、法律で定めればもちろんそれと別意のことも規定できるわけで、そこでそういう観点で見るとこの動愛法の5条の4項と7条との関係、ちょっとはっきりしないのです。どういうふうな意味なのか。つまりこの環境省の基準というものが国民を拘束するが、地方公共団体が別意の定めを条例で設けることができるという趣旨なのかどうかちょっとはっきりしないので、その辺何か機会がありましたらその法制の責任のある見解というのをお聞かせいただければありがたいと思います。

【竹内部会長】 ただいまコメントございますか。

【神田動物愛護管理室長】 勉強させていただきまして、ご説明申し上げたいと思います。

【竹内部会長】 ありがとうございました。基準に関してただいまの話と少し関係することとしては、基準で決めた事項について違反したら罰則をつくるべきだとかというお話が、実は家庭動物等の飼養及び保管に関する基準のパブリックコメントのときに随分寄せられたのです。結局それはできないということがあるのですが、恐らく皆さん非常に熱心でそういうご意見が出てくる。今回も恐らくまたパブリックコメントでそういうご意見が出てくるのかなというふうに思いますけれども、どうしても法令の枠の中でしか作業はできないということがございます。しかし、それはそれで今ご説明があったように地方へも十分影響力があるのではないかと期待はしておりますが、この辺また少しクリアにしていずれご説明いただけたらというふうに思います。ありがとうございました。そのほかはいかがでございますか。
 ご異存がないようでございましたら、大体のご意見はこの展示動物を取り上げるということにご賛成であるというか、非常に積極的にご賛成であるというふうに承りましたので、それではこの動物の飼養及び保管に関する基準のうち、「展示動物の飼養及び保管に関する基準」を次の見直しの対象とする、そして、作業を進めるということにしたいと存じます。
 その進め方につきましては、先ほどもご説明がありましたように家庭動物の基準の制定の際とほとんど同じでございますが、事務局の方で現在の展示動物の飼養と保管に関する基準の制定当時の状況と現在の状況、この辺の変化を検討していただくというのが第1だと思います。その上で見直しが必要であると考えられる事項につきましては、専門家、あるいは有識者のご意見を伺いながら事務局で勉強し、問題点を整理して、次回の部会でご報告をいただきながらご協議をいただくというふうにしたいと思います。以上でよろしゅうございますか。
(異議なし)

【竹内部会長】 ありがとうございました。
 それでは、次に議事の3番目に入ります。移入種問題を巡る環境省の取組についてということで事務局からご説明がございます。
 では自己紹介をしていただけますか。

【河本課長補佐】 野生生物課で移入種関係を担当しております課長補佐の河本と申します。どうぞよろしくお願いをいたします。
 きょうは私の方から移入種問題を巡る環境省の取組につきましてご報告を申し上げたいと思います。座ってご説明をさせていただきます。
 先ほどから審議の中にも移入種の話、幾つか出てまいりましたけれども、移入種といいますのは国の外から、あるいはその国内であってもほかの地域から人為的に移される、その意図的、あるいは非意図的という場合と、両方あろうかと思いますが、そういう形で導入をされた種について移入種という呼び方をさせていただいております。例でいいますと、先ほど中川先生の話がございましたが、沖縄のヤンバル地方でマングースというのはもともとハブ退治ということで導入されたわけですが、それがヤンバルクイナという希少種を食べてしまっているという問題が起こっておりますし、最近全国的にアライグマですとか、よくちまたで言われていますのはブラックバスとかブルーギルとか、そういった外来魚問題もございます。そういった問題についてどういう形で対応していけばいいかと、そういうことについて現在検討しているというところでございます。
 正面にスクリーンがございますけれども、こちらの方を使いましてご説明を申し上げたいと思います。
 この移入種問題につきまして、国内外から現在いろいろな観点から指摘、あるいはその対策の必要性などが言われているところでございます。3つほどちょっとご紹介を申し上げたいと思いますが、1つは国際面でということで生物多様性条約という条約がございます。これは1992年に採択をされまして、翌93年から効力発効している条約でございまして、日本もこの条約の中に加盟をしているわけでございますが、この中で幾つか条項がございます。この多様性条約の中で第8条というものがございまして、その中で外来種のことが取り上げられております。aからずっとあって、hというところに出てきますが、生態系生息地もしくは種を脅かす外来種の導入を防止し、またはそのような外来種を制御し、もしくは撲滅することと、直訳で撲滅という言葉が出ておりますけれども、そういう中身の条文が出てまいります。
 この条文に沿った形で動いておるわけですが、締約国会議、これとそれから条約の補助機関会合というのがございまして、その中ではこの外来種対策についてどうすればいいかということが議論をされております。2000年5月に第5回の締約国会議がございました。ここのところで外来種に関する決議がございまして、ここでは中間的な指針原則についてということで決議がされたわけでございます。昨年4月でございますが、第6回の締約国会議がございまして、そこのところで生態系生息地、種を脅かす外来種の予防、導入、それから影響の緩和に対する指針原則と、こういうものが採択をされております。これの中身について後ほどごく簡単にまたご説明をさせていただこうと思っております。
 それから2つ目の動向でございますけれども、これは国内の話でございますが、規制改革の推進に関する一次答申というものが平成13年12月に出ております。これは経済の活性化の実現とそれに向けまして重点6分野を決めまして、そこについて規制改革の方策を示したものでございますけれども、その6分野の1つとして環境というのが出てまいります。その中の具体的施策といたしまして、人と自然との共生を図る観点から外来種の在り方にかかる検討を行うと、こういうことについて記述がなされております。
 外来種につきまして、その生物多様性への影響を回避するために必要な対策として4点ほど掲げられております。1つが外来種導入に関するリスク評価及びそれに基づく制限を行うということ。それから2点目が外来種の管理を適正に行うための対策をとっていくということ。それから3点目が外来種の駆除、制御に関する対策ということが言われております。それから4点目でございますけれども、在来種の産業利用、これを促進すべきであろうということが明記をされております。
 それから3点目の動向でございますが、新生物多様性国家戦略、これが昨年の3月に策定をされております。これの中で生物多様性への現状という中で3つの危機について取り上げられておりまして、1つ目の危機が人間活動に伴うインパクト、これは普通人間の開発行為に伴ってインパクトが与えられるということでございます。それから第2の危機として掲げてありますのが、人間活動の縮小に伴うインパクトということで、ちょっと直接的にわかりにくいところがありますが、従来の棚田ですとか、雑木林ですとか、そういうところについては人の手が入ることによって一定の自然環境が保たれていたという状況がございますけれども、最近過疎化ですとか、農地からだんだん人の手が離れていくとか、そういった話がございまして、人間活動自体が縮小することで逆に自然環境が変わってきていると、そういう危機が言われているわけでございます。それから第3の危機として言われていますのが移入種等によるインパクトということでございまして、最近非常に全国的に事例がふえているということでございます。
 今申し上げました3つの観点を踏まえまして、移入種対策というものを考えているわけですけれども、これを踏まえまして環境省の方でも検討会を設置いたしまして、専門家の方々からいろいろな意見をいただいてきたところでございます。昨年の8月でございますが、移入種(外来種)への対応方針についてと、こういうものを取りまとめをいたしまして、移入種対策についての基本的な考え方を整理をさせていただいたというところであります。
 今後この方針、それから元になっております3つの一次答申、そして指針原則、多様性国家戦略、こういったものを踏まえまして、これから移入種対策について具体的に施策を展開していきたいというふうに考えております。
 この中でまずは指針原則、先ほど簡単に紹介だけいたしましたけれども、これの中身についてちょっと見てみたいと思います。全体をここに掲げておりますように、はじめにというところから始まりまして、それから総論という部分、それから予防という部分です。それから種の導入というところ、それから影響緩和と、こういった構成で定められておりまして、それぞれ原則ということで1から15までの記述がなされております。一番重要と思われますのが総論のところに書かれておりまして、原則1の予防的アプローチ、それから原則2の3段階のアプローチ、それから原則3のエコシステムアプローチ、ここのところに基本的な考え方が盛り込まれております。
 ここのところについてちょっと詳しく見てみたいと思いますが、まず予防的なアプローチでございます。ここでは科学的な確実性が欠けていると、それを理由として移入種の防除ですとか、封じ込め、それから関係する対策としての措置、そういったことを先延ばしにすべきではないということについて述べております。
 原則2のところでございますけれども、まず予防をしましょうと。予防をする方が実際に広がった後から処置をするよりも経済的にも非常に安く上がるということもありますし、環境に及ぼす措置も少なくて済むと、そういう観点からまず予防をしましょうということになっています。それからもし入り込んでしまった場合にどうするかということで、定着を防止しましょうということであります。これはできる限り早い段階で措置をとっていくことでその影響を軽い段階で押さえようと、そういう趣旨であります。
 それから完全に移入種が入り込んでしまって、その影響を完全に除去してしまうことができないという場合には、この封じ込めという観点で一定のエリアの中にそれを押さえ込んでしまうと、そういう3段階で移入種には対応をとっていくべきであるということが述べられております。
 原則3というところにございますのが、エコシステムアプローチと書いてございますが、これは生態系自体が非常に複雑で絶えず変化し続けているものであることを前提として対処をとっていくべきであると述べているものでございます。
 それで先ほど3つの要素を踏まえて昨年8月に移入種、外来種の対応方針についてというのを取りまとめたということで申し上げたのですが、その対応方針の中身につきまして若干ご説明を申し上げたいと思います。
 まず構成でございますけれども、移入種の現状についてまず整理をさせていただいております。この中で我が国での影響、主として生物多様性の影響ということですが、それの自衛としてどういうものがあるのかということを表にして取りまとめをしております。
 それともう1つが、我が国に生物がいろいろな形で持ち込まれていると、それは意図的導入であったり、勝手に付随的にくっついてくるという、非意図的な導入であったりするわけですが、そういった実態についても整理をさせていただいております。
 それからその次に対応の基本原則ということで考え方を述べているわけでございますが、これは先ほどご説明申し上げました3段階のアプローチについて予防、それから定着の防止、封じ込めということで3つの段階について説明をしております。それからその次、予防ということについて述べておりますが、ここでは意図的導入に関すること、意図的導入については、これは影響評価、先ほど生物多様性条約の関係ではリスク評価というふうな言い方をしておりましたが、こういうことを事前にとることで対処をしていく。それから非意図的導入につきましては、入ってくる経路を特定することによって対策の措置をとっていくということについて述べております。
 それから4番目に掲げられておりますのが調査研究、モニタリングと早期対応ということでございます。ここにつきましては一定の地点、期間で監視する一般的なモニタリングと、それから要注意地域、特定の地域、そこに着目したモニタリングがあるだろうということで2種類のモニタリングを掲げていますが、それに応じた早期対応をとっていくということであります。この要注意地域といいますのは、後ほどまたご説明を申し上げます。生物多様性の観点から特に注意を払うべき地域と、そういう趣旨でございます。
 それから導入されたものの管理、既に入ってしまった移入種についての管理ということでございます。これについてはまずその管理目標といたしまして、影響を減少させる目標、それから捕獲数、そういったものの目標をまず設定をすると。それから利害関係者の方々の意見も聞きながら管理計画というものを策定すると、それに沿って対処していくという考え方を示しております。
 それから普及啓発ということについても触れておりますし、最後に資料が実際幾つか載っておりまして、その中で我が国の移入種のリストというものを掲載させていただいております。これがその対応方針についての大体の構成及び中身の概要でございます。
 それで移入種による影響につきまして、この対応方針の中ではどのようにまとめているかということでございますが、大きく言って3つの影響に整理をしております。1つが生物多様性への影響、これは中身といたしまして生態系の攪乱、捕食、競合・駆逐、土壌関係等への攪乱という3つ、それに加えて遺伝的な攪乱というものを1つの項目として挙げております。これが生物多様性への影響。それともう1つは人の財産と書いていますが、これは主に農林水産業、こちらへの影響でございます。農作物被害等が全国各地から情報として寄せられております。それについてのことでございます。それからもう1つは人の健康への影響ということで、これは例えばアライグマであればアライグマ回虫を持っているではないかというふうな話もございますし、あと健康という観点からもしかしたらずれるかもしれませんけれども、カミツキガメであるとか、セアカゴケグモのような毒グモが入ってきていると、そういった話も含めて人の健康への影響ということで分類をしております。
 主にその生物多様性への影響というところでまとめた4つのものにつきまして、代表的な事例をちょっとご紹介をさせていただきたいと思います。
 まず在来種の捕食をしてしまうという影響であります。写真が出ていますのはマングースとオオクチバス、ブラックバスです。マングースにつきましては沖縄あるいは奄美大島などに現在導入されておりまして、主にバブの退治とか、ネズミの退治ということを目的にして、東南アジア方面からどうも持ってこられたようでございます。ですが、実際は余りハブを食べず、その在来のネズミですとか、それから先ほど沖縄やんばる地域のヤンバルクイナという話もございました。沖縄、あるいは奄美地域は比較的固有種、希少種が多い場所でございまして、そういう希少動物を食べられてしまうという問題が生じています。それからオオクチバスの方はもともとは食用ということで北米から持ってこられたものですけれども、もっぱら釣りの対象に好ましいということで現在ほとんど全国に分布をするに至っているというものでございます。ほかにもこの表にございますようなものが在来種の捕食をしているということで指摘をされております。
 それから2つ目の影響でございますが、在来種との競合・駆逐ということでございます。写真にありますのがホテイアオイでございますけれども、これは非常に成長速度が早いということと、栄養状態によっては非常に大きな個体になってしまうということで、一気に水面をぱっと覆ってしまうような状況が見られます。それによって下の方に、水の中の方に光が届かなくなって在来種が駆逐されると、あるいはハスのようなものを押しのけて成長してしまうと、そういった影響がございます。ほかにもタイワンリスとか、アライグマ、チョウセンイタチと、例えばそのチョウセンイタチで言えばもともと日本にいるイタチの場所をとってしまうという状況が指摘をされております。
 それから3つ目が土壌環境等の攪乱ということで、写真が出ていますのはノヤギでございます。もともと家畜ということで島に放たれたものでございますけれども、ヤギの場合は非常に繁殖力が強いということと、割と貧弱な植生でも手当たり次第に食べてしまって、要するに地面を覆ってしまう植物が何もなくなってしまうような状態にまでなってしまうと、それからさらに個体数がふえていって、踏みつけによって土が荒れてしまうということで、写真にございますようにこれは小笠原の写真ですが、地面が露出して、雨でその土が流れ込んで海の方の汚染につながると、そういった影響が報告されております。
 それから最後に遺伝的な攪乱ということでございますけれども、掲げておりますのがセイヨウオオマルハナバチということで、これは温室の中のトマトの受粉を促進させるということで導入されたものですが、温室から外の方へ出ていきまして、在来のクロマルハナバチ等と交雑をして雑種をつくってしまうということが指摘をされております。また表の方にございますタイワンザルにつきましては、和歌山県の方でもかなり問題になりましたが、ニホンザルと交雑をして純系のニホンザルがなくなってしまうのではないかというふうな危険性が指摘をされております。こういった事例についてまとめさせていただいております。
 対応方針の中で、それではこれからどうしていくのかということで対応についても述べておるわけでございますが、まずその移入種というものについてカテゴリー分けをしております。IからIVまでここに書いてございますけれども、Iが在来種なのですが、II、III、IVについてを移入種、IIについては既に日本に入ってきて定着をしてしまっている移入種、IIIが日本に導入をされたと、日本に入ってきたことは確認をされていますが、定着しているかどうかまでわからない種、それからIVについては導入されていない種ということですので、まだ日本には入ってはきていない種ということでございます。
 それで、それぞれII、III、IVのところには下のところで赤い線、赤い色で塗ったところがございまして、それぞれaというのが書いてございますが、ここはそれぞれのカテゴリーの中で我が国の生物多様性に影響を及ぼしている、あるいはその影響を及ぼす恐れがあるという種についてそれぞれのカテゴリーでaというマークをつけて区分をしております。これらについてどういうふうな対策をとっていくかということを考えていかなければいけないということでございます。
 それで、それともう1つの考え方として要注意地域というものを考えております。これは生物多様性の保全の観点から特に注意を要する地域について要注意地域という言い方をしておるのですが、どういったものかといいますと国内の希少野生動植物として指定をされた種、こういったものの生息生育地となっている場所。それからレッドデータブック、絶滅の恐れがあるという観点から今2,300種余りリストアップされておりますけれども、これが集中的に分布しているような地域、それからさらに移入種による影響を特に受けやすい地域、これは生態系の構造等から考えて影響を受けやすいと判断される地域でございますけれども、こういうところを要注意地域ということで特に注意をする場所と、そういう位置づけをしております。先ほどのII-a、III-a、IV-aというカテゴリーに対応してこれから取り組みを考えようということで、対応の措置として1つは予防、それからモニタリング早期対応、それから導入されたものの管理と、この3つの段階に沿ってそれぞれどうすべきかということを整理をしています。
 予防についてですが、意図的導入については環境放出利用に際しての事前の影響評価、これを行ってそれに基づいて確認をしていくという対応でございます。それから非意図的導入については、基本的にその侵入の早期発見という形で対処をしていく。それからモニタリング早期対応というところにつきましては、拡散の防止ということで対応していく。それから導入されたものの管理についていいますと、未定着地域、あるいはその未発見の地域について、その侵入の早期発見に心がけていくという形で対処すべきであろうというふうにまとめております。
 先ほど意図的導入の予防については、影響評価を行いましょうということであったのですが、では実際にどういう形で影響評価をしていくかということで、動物で考えられるものについて例を載せております。1つは定着の可能性があるかどうかということですが、これはこれまでの定着実績ですとか、そこの場所への環境にどのように適応するのか、それから動物についていいますと、両性生殖か、あるいは単為生殖かでも繁殖できるのかというふうな話がございますので、そういった能力について判断をしていくということが必要というふうにしております。
 それから定着の可能性に続いて、今度は影響を与えるかどうかという可能性がございますので、生態系への影響があるかどうかということについてはその上位捕食者としての影響であるとか、植生などへの影響があるかどうか、それから競合・駆逐、交雑という先ほどご紹介をしたような影響についての可能性、それから在来生物への病気とか寄生虫の媒介とならないかどうかと、そういった影響についての観点を盛り込んでおりますし、人への影響ということでは先ほどの農林水産業への影響、それから健康への影響と、その2点で項目を挙げさせていただいております。
 今後でございますけれども、移入種対策をこれからどうやっていくかということなのですが、ただいまご紹介しました対応方針を踏まえて具体的な対応をとっていくということで、課題を大きく4つほど挙げております。1つは国内へ導入するに当たりまして、その影響評価をどういうふうに行っていくかという、影響評価の在り方についてであります。それから2つ目がその移入種の侵入状況をモニタリングをしていかなければいけないというわけですが、そのモニタリングの仕組みをどのように組み立てていくかということ。それから3点目が既に定着をしている移入種、これについてどのように対処をしていくのかということです。それから4点目が要注意地域におけるその移入種対策ということで、この4つの課題を順次クリアをしていきまして、最終的に移入種からこの生物多様性の保全ということを図っていきたいと、こういうふうに考えているところでございます。
 パワーポイントの方は以上でございますけれども、お手元の方に資料の3といたしまして、先ほどご紹介をいたしました対応方針の概要についてお配りをさせていただいております。先ほど影響の事例等もご紹介をいたしましたが、それらについてもお配りをした資料の中に一覧表として載せておりますので後ほどご覧いただければというふうに考えております。
 中央環境審議会の中に野生生物部会がございますけれども、1月24日に野生生物部会を開きまして、その中でこの移入種対策については小委員会をつくって対応していくということで、その小委員会の設置について現在認めていただいたという段階でございます。事務局の側といたしましては、できれば今年の秋ぐらいまでには答申をいただいて、それを踏まえて移入種について具体的に制度化ということを図っていきたい、そういうふうに考えているところでございます。先ほど来、話にございましたけれども、動物愛護という観点もこの移入種対策を考える上で非常に大きな要素であるというふうに考えておりますので、またそういった面もよく皆さん方の意見も伺いながらまた考えていきたいというふうに考えております。
 私からは以上でございます。

【竹内部会長】 どうもありがとうございました。ただいまのご説明、大変わかりやすく説明してくださいましたけれども、何かご質問がございましたらこの際ですから。どうぞ。

【今泉委員】 ちょっと質問ですが、4つの対策と言っていましたが、環境省としては最終的にどうしたいというか、どういう方向でいくのか。例えばオーストラリアのように頭から輸入禁止というふうに最後には持っていく予定なのか、その辺が決まらないと、もう入ってしまったものはしようがないけれども、最終的に外国の動物をどうしたいというのが必要だと思いますけれども。

【河本課長補佐】 例えばニュージーランドみたいなところで非常に進んだ移入種対策をとっているところがございますけれども、突き詰めればホワイトリスト方式なのか、ブラックリスト方式なのかということに行き着くかと思います。要するにブラックリストというのは影響があるものを特定してしまって、それについて輸入を押さえる、あるいはその対策をとっていくというやり方。ホワイトリスト方式というのは逆で、影響がないものについてリッストアップをして、それについては入れてもいいですよ。移動させてもいいですよと、そういうやり方をするという方法ですけれども。これはどちらもかなり課題を抱えているものでございますし、特に輸入に関することといいますと日本国内だけで整理をするわけにはいかなくて、かなり国際的な例えば貿易の関係の、そういった観点を踏まえて対処していかなければいけないということもございまして、ではどちらにするかということを簡単にはちょっと答えは出せないかなと思っております。そこら辺についても小委員会ができましたので、そちらの方で議論をいただきながらどうすべきかということを考えていきたいと思っております。

【竹内部会長】 よろしゅうございますか。そのほかいかがでございましょうか。

【前島委員】 ちょっと教えてください。私、農水省で直接ではないのですけれども、この辺に関連して、要するに遺伝子導入したいわゆる家畜、植物や昆虫も含めて、そういうものへの影響はどう評価してどうするかという委員会に関係しているのですけれども、伺いたいのはもしこれで、例を挙げれば遺伝子導入した豚が逃げ出して、外にいるイノシシと交雑して、何か今までなかったような動物が、イノシシか豚かどっちかわかりませんが、山の中に生息する状況になったときに生物多様性の保全という立場からすると、やはりタイワンザルと同じように駆除ということが一番実際的な方法だろうと思うのですけれども、そのとき法律的にはこの生物多様性ということが優先されるのか、それとも今ここに我々が関係している動物愛護管理法の方が優先されるのか、そのことについて野生生物の関係ではどちらを取られるのでしょうか。

【竹内部会長】 局長がご発言くださいますか。

【岩尾自然環境局長】 ちょっと話が大きいので、私なりの考えを申し上げたいと思いますが。実は今度の国会に遺伝子導入をされた生物が日本に入ってくる際の法律をつくろうと、規制法をつくろうということで今鋭意やっております。そんな関係でちょっと課長その他、外に出ておりますが、生物といっても非常に幅が広いものですから、とりあえずは先ほどの生物多様性条約の中にあるカルタヘナ議定書、遺伝子導入された生物についてまず国内法を整備しようということを今やっておりまして、先生方の中には既に大学等で使うバイオについてのガイドラインですとか、これは文部省が出しておりますし、それから企業でも旧通産省のガイドラインですとか農水のガイドライン、それぞれありますが、それらを包括する法律として今回提出しようとしております。
 したがいまして、人工的に改変された生物については各省庁横断的な法律を環境省で出そうということをしております。当然そうなりますとその次、人工的ではない自然の動物が入ってきて既存の生態系に悪影響を及ぼすもの、まさにこの移入種の問題ですが、こういうものをどうしようかというのが次の話なのかなと思っております。それで、遺伝子組換えというのはそれなりに人工物だと皆さんご理解いただけますが、自然の中で品種改良をしてきたものというのが多種多様あるわけで、また人為的に持ってきた、外国にしかないカブトムシが日本で繁殖をしてくるというまさに移入種の問題などがあるときに、そのいわゆる既存の法体系の中で例えば植物検疫、動物検疫の問題、それから最初に出ました感染症の問題、それから貿易管理法の問題、各省庁に広くまたがる話なのです。ですから今考えておりますのは、この移入種の話をやろうという前に、まず一般的にご理解いただける人工的につくられたバイオでできた生物についてのルール化というのを各省庁で合同でやろうということで合意をして、法律を出そうという、ルールができますので、この国会審議を見ながら、こういうことであれば各省庁でルール化できるというのがわかれば、この移入種対策についても何か共通のそれぞれ政府として一体となって合意のできるようなものができるのではないかというふうに考えております。したがって、環境省だけで何か取り締まれるようなものができるのか、それから全く外来種は全部排除しろといっても、現実にそこに定着して、ある程度のシェアを占めているようなものを、いわゆる多様性というものを乱すといって殺すというのは、これは動物愛護という考え方からいってもそうそう許されるものではないのだろうというふうに思いますし、端的な例で今小笠原のヤギがふえているから、全部殺せという話は簡単ですけれども、動物愛護の考え方からいってそんなことできるのかという話になりますから。そこの一連の議論を見ながら、やっぱり考えていかなければいけないのかなと思っています。
 そういうことでお答えになっているかどうかわかりませんけれども、今提出しようとしているこの人為的な遺伝子組換え生物についての国会議論を見ながらこの移入種についてもちょっと考えていきたいというのが現状でございます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。よろしゅうございますか。
 確かに人間が勝手にといいますか、勝手でない場合もありますが、持ち込んだ動物によって在来種がいろいろ迷惑をこうむっているという、その問題を解決しようということと、もう一方持ち込まれた動物も生きている動物ですから、やはり動物愛護上の配慮をしなければならないという、この2つはなかなか共存できない部分もあろうと思います。またその仕分けというのはなかなか難しいというか、大変悩ましい問題だと思いますが、どうしてもこれは無視するわけにはいかないことだと思います。
 したがいまして、只今ご説明がありましたように、これから生物多様性の国家戦略についていろいろな施策をお考えになると思いますが、最初のごあいさつでも申しましたように、動物愛護というのは主役ではなくても恐らくその中で必ずついて回る問題ですので、ぜひこの動物愛護部会とも連絡をとっていただいて、そういう意味で国民が納得してくれるような施策の設立にお役に立てば大変幸いではないかなと思っております。
 そのほか何かございますか。よろしゅうございましょうか。ないようですから、小さいことですが、私個人的に1つだけ質問させていただきたいのですが、先ほどの対策のスライドの中で私の見間違いでしょうか、在来動物の産業利用とございました。ちょっと具体的にピンとこなかったのですけれども、在来動物もいろいろあるわけですけれども、それを産業利用することによって、移入種が押さえられるというつながりが、ちょっと私には理解できなかったのですが。

【河本課長補佐】 先ほどご紹介申し上げた事例の中でオオマルハナバチというものがございましたけれども、あれはご紹介したとおりトマトの受粉を進めるということで海外から輸入をしているものでございます。ただ、もしかしたら在来種の昆虫の中でオオマルハナバチよりも優れた受粉の能力を持っているものがあるかもしれない。であれば、そちらを使っていただいた方が生物多様性への影響を与えなくても済むのではないだろうかと、そういった趣旨です。それは例として今申し上げましたけれども、例えば道路緑化の話であっても、外来の牧草を吹きつけで使ったりしておりますけれども、それ以外にその在来の種子で使った方がもしかしたらいい効果があるかもしれないではないかとか、あるいは技術的にある程度カバーすることで在来種を使えるようになるとか、そういった技術開発について努めていただきたいと、そういう趣旨でございます。

【竹内部会長】 わかりました。それからもう1つ、これはご説明の中でも移入種(外来種)と使ってらっしゃいますが、この「移入種」という言葉と「外来種」という言葉の使い分けというのは何かもう既に方針ができていらっしゃるのであれば、我々も勉強のために伺いたいのですが。

【河本課長補佐】 これは実は「移入種」とするか、「外来種」とするか、専門の生態系、あるいは動植物の先生方の間で意見が分かれておりましたものですから、こういう括弧書きにしておりますけれども、基本的にはどちらでも意味は同じでございます。ただ、外来種といいますと外国から日本に来るものだけを意味するイメージをしてしまうということで、ここでは例えば先ほどノヤギの写真を見ていただきましたけれども、あれは日本国内である地域から小笠原に持っていったとか、同じ日本国内であってもやはり移入種として問題意識を持たなければいけないものがあるということで、そうであれば外来種という言葉よりは移入種の方がわかりやすいのではなかろうかということで使っているものでございます。

【竹内部会長】 基本的には移入種を主体に使っていくと、ただ特別外来種と言わなければならない場合もありますよね。ですから、そういうような考え方なんでしょうかね。別に言葉にこだわるわけではないのですが、同じような言葉をお互いに使った方が意思の疎通がうまくいくのではないかと思いまして伺いました。ありがとうございました。
 そのほか特にないようでございましたらこの問題は終わらせていただきたいと思います。
 それでは4番目の議事に入りたいと思います。平成15年度動物愛護管理関係の予算(案)の概要について事務局からご説明をお願いいたします。

【神田動物愛護室長】 それではお手元の資料4をごらんください。これに基づきまして動物愛護関係予算(案)の概要について簡単にご説明をいたします。
 記載のとおりでございまして、動物愛護管理関係予算総額は5,260万円余りでございます。継続事業のうち調査連絡事業費、これは基礎的な経費でございます。普及啓発ですとか、連絡調整の経費でございますが、これにつきましては来年度、今年度と引き続きまして家庭動物の基準の普及、これは大変重要だということをこの委員会でもご指摘いただいておりますので、この普及徹底に力を入れたいというふうな分野でございます。
 それから動物愛護週間事業費、これまさに動物愛護週間のための経費でございます。これにつきましては、本年度14年度でございますけれども、これまでと新たな試みとしまして一般に広く参加者を募ったシンポジウムを、移入種問題をテーマに開催いたしました。中川委員にはコーディネーターをお願いしたわけでございますが、これは新しい試みでございました。来年度も動物愛護管理法等に基づく普及啓発の中心的な行事として一層の充実を図るという考えでございます。
 それから動物の適正飼養推進事業費でございます。このうちでは特に今年度から新たに着手いたしました動物販売業者の責務となっております購入者に対する適切な説明確保というものを図るためのマニュアル作成を引き続き推進していくということとしております。これは動物愛護管理法改正で新たに規定されました販売業者の責務を徹底するための経費でございます。
 それから新規事業でございます。飼養動物との共生推進総合モデル事業という長い名前の事業を新規事業として計上させていただいているところでございます。これは動物の不適正な飼養によって、希少な動物に絶滅の危機が生じているような地域において地方公共団体、民間団体等の連携でその対策、つまり動物愛護管理法でいう適正飼養の周知徹底を図るということのモデル事業を考えているわけでございます。具体的には先ほどからちょっとお話に出ておりましたノネコによってヤンバルクイナなどの固有の希少種が捕食されているような事態が発生して、それも深刻化している沖縄県のヤンバル地域をモデルといたしまして、家庭動物の基準などに基づきます普及啓発であるとか、所有者の明示措置、繁殖制限措置等に総合的に取り組むモデル事業を沖縄県関係団体と連携して実施するということを考えているところでございます。
 以上、大変簡単でございますけれども、平成15年度の予算案の概要についてご説明いたしました。

【竹内部会長】 ありがとうございました。ただいまの予算案につきまして、何かご質問がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特段ないようでございますが。
 それではちょっと伺いますが、動物愛護協議会及び推進員のモデル事業を始めましたですよね。あれは2年間ではなかったのですか。これは一番最初のこの項目の中に入っているのでしたか。

【神田動物愛護管理室長】 モデル協議会の事業のお話かと存じますけれども、これにつきましては平成13年度、14年度事業ということでございまして、今年度で終了いたします。

【竹内部会長】 平成13年、14年でしたか。

【神田動物愛護管理室長】 はい、終期でございます。それでなかなか予算的にはモデル事業という形の予算ですので長く実施はできないのです。2県にお願いをしてモデル的な協議会を設置、それから動物愛護推進員の委嘱というのをやっていただいておりますので、その成果を踏まえて今後報告書を取りまとめて、それに沿って各自治体で動物愛護推進員活動の展開を図っていただきたいというふうに考えております。
 今回の予算につきましては、今度次の段階ということで、飼養動物との共生推進総合モデル事業というのは、そういった推進委員の活動等を前提としまして、その推進委員が行う具体的な総合的な取り組みのモデルとなるものをやってみようと、それを国が実施するということでございます。もう1つ大きなテーマでございます飼養動物による移入種問題というものの解決にもつながるような予算を考えているということでございます。

【竹内部会長】 ありがとうございました。というようなお考えでの予算案でございますが、いかがでございましょうか。

【丸山委員】 移入種対策というのは先ほどからご説明をいただいたのですが、この今のご説明の予算の中にはそういうものがないのですか。これはまた別の枠組みなのでございましょうか。例えばリスク評価や何かというのは、やはり大事な問題だし、お金もかかるのだろうと思うのですが、その点についてはいかがなのでしょうか。

【竹内部会長】 それでは、これは自然環境局としての動きだと思いますが、先ほど神田室長からご説明があったのは、動物愛護そのものの予算案でございますので、それでは課が違いますけれども、どうぞご説明お願いします。

【河本課長補佐】 今お話がございましたリスク評価の関係ですけれども、移入種関係でそのリスク評価のあり方をどうするかということと、それから移入種についてデータベースをつくろうということになっております。というのは、いいか悪いか判断するに当たって情報がないと判断できないので、その移入種の生態的な特性とか、あるいは分布地域であるとか、そういうものについてデータを集めてデータベースをつくりましょうと、そういう2つについて15年度で新たに予算をとることとしております。これは先ほどの説明のあった動物愛護の分とはまた別に確保をしております。

【竹内部会長】 丸山委員、今日はしたがいまして動物愛護室だけではなくて、野生動物課の方々にも来ていただいているものですから、ちょっと話を広げて討議しておりますけれども、予算はどうも別枠に分かれているのだと思います。そのほかはいかがでございますか。
 では、ないようでございますので、ご了承いただいたということにしたいと思います。
 そのほか何かご発言がございますか、関連事項でも特にございませんか。
 それではどうもありがとうございました。長時間にわたりまして大変ご熱心なご討議をいただきましてまことにありがとうございました。これで先ほどお決めいただきましたように、展示動物の飼養及び保管に関する基準の見直しについての作業がこれから始まることになりました。
 本日はまた委員に加えまして各関係省庁の方々にも大勢おいでいただきましてありがとうございました。お礼を申し上げながら今後の相変わらぬご協力をお願いして閉会にしたいと思います。
 それではこれで閉会させていただきます。