中央環境審議会動物愛護部会 第53回議事録

1.日時

 令和元年11月25日(月)13:30~16:30

2.場所

 環境省 第1会議室

(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 22階)

3.出席者

 新美 育文  中央環境審議会動物愛護部会長

 松本 吉郎  委員      浅野 明子  臨時委員

 打越 綾子  臨時委員    太田 光明  臨時委員    

 近藤 寛伸  臨時委員    佐伯  潤  臨時委員

 武内 ゆかり 臨時委員    永井  清  臨時委員

 西村 亮平  臨時委員    藤井 立哉  臨時委員 

 水越 美奈  臨時委員    山口 千津子 臨時委員

 山﨑 恵子  臨時委員    脇田 亮治  臨時委員

 

4.議題

 (1)動物愛護管理基本指針の点検について

 (2)基本指針の見直しに係る関係者ヒアリング

 (3)その他

5.配付資料

資料1   動物愛護管理基本指針の点検結果

資料2   関係者ヒアリング関連資料

資料3-1 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令の概要について

資料3-2 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令の概要について

資料3-3 「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」等の閣議決定及び意見募集(パブリックコメント)の結果について

資料3-4 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令

資料3-5 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令

参考資料1  動物愛護管理基本指針の改正に向けて(第52回部会資料3)

参考資料2  動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針

6.議事

【事務局】 それでは定刻となりましたので、これより第53回中央環境審議会動物愛護部会を開催させていただきます。着座にて説明させていただきます。

 本日は、当該部会の委員、臨時委員17名のうち15名のご出席をいただいております。欠席は、佐藤友美子委員、稲垣清文臨時委員のお二方でございます。過半数の定足数を満たしておりますので、本会は成立しております。

 また、本日、基本指針の見直しに当たりまして、ヒアリングをお願いしております関係者の皆様にもご出席をいただいております。ご紹介については、時間の制約もございますので、お配りしております、資料2をご覧いただくことで、ご紹介にかえさせていただきたいと思います。

 自然環境局長の鳥居は所用のため、途中から出席いたしますので、開会に当たり、大臣官房審議官の白石より挨拶を申し上げます。

【白石大臣官房審議官】 皆様、本日はご多忙の中、中央環境審議会の動物愛護部会にご出席いただきまして、ありがとうございます。感謝申し上げます。

 本日は、動物愛護管理指針の見直しに絡みまして、日ごろより動物愛護管理行政の推進にいろいろご意見、ご協力をいただいております皆様方に、ヒアリングということで、ご意見をお伺いする時間をたくさん設けてございます。皆様におかれましては、日ごろから動物愛護管理行政の推進に格別のご支援とご協力をいただいておりまして、あらかじめ、前もって厚く御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 前回の部会では、改正動物愛護管理法を踏まえた省令の改正、それから、本日の主な議題であります動物愛護管理指針の改正の方向性について、ご議論いただいたというところでございます。本日、この指針の見直しに向けて、点検結果をご説明するとともに、ヒアリングの時間を設けたいと思っております。限られた時間でございますけれども、有意義な場になればと思いますので、忌憚のないご意見、活発なご議論をお願い申し上げます。

 ということで、ご挨拶とさせていただきます。どうもよろしくお願いします。

【事務局】 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。

 お手元にお配りしてございます、クリップ止めの資料のうち、議事次第の裏面、配付資料一覧をご覧ください。委員名簿、それから座席表、資料1といたしまして基本指針の点検等々でございます。資料に関しましては、こちらの一覧にある全てを配っております。そして、関係者ヒアリングの資料に関しましては、資料2としまして、クリップ止めで一式配付してございます。こちら、欠落、抜け等がありましたらご発言いただけないでしょうか。

 委員の皆様におかれましては、このほかに参照資料として、直近の部会議事録、関係法令の資料など、青い冊子で配付してございます。

 また、本部会の資料及び議事録は、後日、環境省ホームページにて公表されますことを申し添えます。

 それでは、この後の議事進行につきましては、新美部会長にお願いいたします。

 なお、部会開催の報道発表でご案内しておりますが、カメラ撮りにつきましては、この会議の冒頭のみ、ここまでということで、これからのカメラ撮りはご遠慮ください。

 では、新美部会長、よろしくお願いいたします。

【新美部会長】 ただいまから議事進行役を務めさせていただきます。

 先ほど審議官からもご案内がございましたが、今日、本日の議論は動物愛護管理基本指針のいわば改正法の肉づけのためのご議論をいただくということになろうかと思います。この基本指針の点検について、まず、事務局から資料に基づいて、ご説明をよろしくお願いします。 

【長田動物愛護管理室長】 それでは、横長の資料1に基づきまして、動物愛護管理基本指針の点検結果について、ご説明をさせていただきます。座って説明させていただきます。

 まず、1枚おめくりいただきまして、この資料の構造でございますけれども、左側が現行の平成25年に策定をされた基本指針でございます。右側に現行の基本指針が策定された後、これまでの間の主な取組について、まとめておりますので、この右側のほうを中心にご説明をしてまいりたいと思います。施策別の取組という項目が(1)から順にずっとございまして、(10)調査研究の推進まで、10項目ございます。この項目ごとにご説明をしてまいりたいと思います。

 まず1ページ目、普及啓発でございます。9月の動物愛護週間を中心に、全国で普及啓発イベントを実施しております。また、パンフレット、動画等の資料の作成、講演会やシンポジウムの開催等を行ってきておりますが、主に終生飼養や適切な繁殖制限措置を講ずることの必要性について軸足を置いて、広報を強化してきたところでございます。

 また、四つ目の白丸でございますけども、平成25年度から、「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」に取り組んできております。四つの重点テーマのうちの一つが普及啓発、教育活動ということでございまして、モデル事業として取組を進めていただいた自治体におきまして、小学校でのふれあい教室、子ども向けテキストの作成等を行ってきたところでございます。このほか、エコライフフェアでの出店、動物感謝デーでのブース出展やステージイベント等を行ってきたところでございます。

 飼い主の所有者の責務に関する認知度でございますけれども、1ページのところから2ページにかけて、表がございます。例えば、動物愛護管理法自体の認知度は52.5%から76.6%に上がっている。あるいは、危害防止の問題等についても、いずれも数値が上がってきておりまして、飼い主責任等に関する認知が一定程度広がってきているのではないかというふうに考えているところでございますけれども、所有明示の必要性等については、相対的にはまだ認知度が十分とは言えないというところもございますので、引き続き関係団体と連携して、効果的な広報を進めていくことが重要と考えているところでございます。

 (2)に参りまして、適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保ということでございます。

 自治体の職員や動物愛護管理推進員さん等を中心に、適正飼養の講習会、適正譲渡の講習会等を継続的に開催してきたところでございます。このほかに、DVDの作成・配布、それから、先ほどと同様に、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトにおきましては、所有者不明の犬猫への不妊去勢の取組や広域譲渡の推進等のモデル事業も実施していただいてきたところでございます。

 3ページに参りまして、実際の犬猫の引取り数、殺処分数でございますが、25年度が17万6,000頭の引き取りから29年度は10万1,000頭ということで、平成16年度比の75パーセント減となる、概ね10万頭を目指すとしていました基本指針の目標の達成が目前に来ているというような状況でございます。虐待や遺棄につきましては、遺棄の考え方を整理し、通知を発出する。あるいは、とらばさみの不適正な使用の防止についての通知文書を発出するといった取組を進めてきたところでございます。実際の動物愛護管理法の違反人員数については、検察統計年報から引いたものを表に記載しております。平成25年、通知が49件、起訴10件、不起訴32件というところから、平成30年は、通知144件、起訴31件、不起訴110件ということで、不適正な行為が増えている可能性もございますし、対策の取組が強化されてきたという面もあるかと思いますけれども、いずれにしても、いずれも数字が増えているというところでございます。引き続き、不妊去勢や終生飼養の徹底、それから、引取り数のさらなる減少を目指し、また、適正な返還・譲渡を進めていくことで、殺処分のさらなる減少を目指していきたいというふうに考えているところでございます。

 (3)に参りまして、動物による危害や迷惑防止の問題でございます。関係団体と連携をした地域猫活動や猫の不妊去勢・譲渡等をモデル事業の中でも実施してきたところでございます。現時点で、不妊去勢手術に対する助成がある自治体の数については、その都道府県や市町村、いろいろまざっておりますけれども、これだけ多くの件数の自治体でさまざまな実情に応じた助成制度が措置されているということでございます。また、社会福祉施策と連携した多頭飼育対策につきましては、打越委員を座長とする検討会を運営しておりまして、ガイドラインの策定に向け、検討中でございます。

 それから、危害防止という観点では、危険動物、特定動物についてもさまざまな取組を行っておりまして、4ページにございますようなサファリパーク、それから、5ページにございますような動物園等の特定動物を飼育しようとしている施設、こういったところで残念ながら事故等がございます。安全確保の観点から、対策マニュアルの作成等の対策を徹底する旨の通知を発出してきたところでございます。自治体による立入検査の件数については、表に記載されているとおりでございまして、現時点での飼養保管状況については、30年4月の時点で、1,652カ所で4万5,000頭余りの特定動物が飼養されているという状況でございます。

 今後とも、動物による危害や迷惑防止の必要性について、周知徹底を行っていく必要があると考えております。

 (4)、6ページに参りまして、所有明示でございます。

 こちらについても、モデル事業等で、さまざまな取組を行ってきたところでございます。犬猫販売業者のマイクロチップ装着状況につきましては、二つ目の白丸ですが、犬については571業者中76業者、猫については667業者中220業者が装着をしていると回答しております。割合として、非常に低いんですけれども、大手の事業者が比較的マイクロチップを装着しているところが多いと。規模の小さな事業者は、まだ装着していないところが多いということで、事業者数の割合ですと、これぐらいの数字のところしかまだ装着が進んでいないということがわかります。

 四つ目の白丸に、個人の方々ですけれども、首輪等も含めて、何らかの所有明示をしていない所有者の割合が犬26.9%、猫50%ということで、さらなる普及啓発が必要というふうに考えております。マイクロチップ自体の登録数につきましては、表にございますけれども、平成25年度、90万6,767から、令和元年度212万7,951と、獣医師会さんの調査の数字ですけれども、倍増しているという状況ではございますが、今回、マイクロチップの装着や犬猫の販売等については義務化されたということも受けまして、体制の整備等について、さらなる検討が必要と考えております。

 (5)、動物取扱業の適正化ということで、監督・指導の徹底や立入検査に関する通知等をこれまで発出してきているところでございます。事業所の数については、表に記載のとおりでございますけれども、例えば、販売の際の18項目の対面説明に事業者がかける時間というところについては8ページの表にございますけれども、30分以上説明に時間をかける事業者の数が大幅に増えているというような状況も確認ができます。

 このほかに営業の適正化に向けたさまざまな研修会の開催、自治体の担当課長会議の開催、映像作成等によって、徹底を図ろうとしてきたところでございます。

 9ページに参りまして、さらに、動物取扱業については、飼養管理基準の具体化を図るための検討会、武内委員に座長をやっていただいておりますけれども、検討会の実施。そのほか、民間の取組としましては、犬猫適正飼養推進協議会さんにおける適正飼養指針、あるいは、全国ペット協会さんの購入者向けのDVD作成等の取組がございます。

 引き続き、自治体による監視・指導を進めていくとともに、業界の自主的取組を促していくというような形で、全体が適正な取扱いに向かって進んでいくように図ってまいりたいと思っております。

 (6)、実験動物でございます。

 実験動物につきましては、研究機関等を多く所管する文部科学省、厚生労働省、農林水産省さん等では、統一的な基本指針を策定し、動物実験の適正な実施を図っているところでございます。環境省におきましては、平成29年10月、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説書を作成し、周知を図ってきたところでございます。

 引き続き、3Rの原則、飼養保管基準の周知・遵守等を徹底していくために、関係省庁等との連携を図ってまいりたいと考えているところでございます。

 (7)に参りまして、産業動物の適正な取扱いの推進でございます。

 現在、定期的な関係省庁との打ち合わせ等を実施しまして、連携を強化しているところでございます。また、OIEの指針等も踏まえまして、家畜飼養管理の基本的な考え方については、農林水産省から通知を発出しているところでございます。

 個々の動物の取扱いについては、11ページでございますが、乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏等の動物の種別ごとにアニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針等が畜産技術協会さん等によって策定をされておりまして、こういったものも踏まえて、引き続き関係省庁が連携しながら、対策を強化していくということが必要と考えております。

 災害時対策でございます。11ページから12ページにかけてでございますが、現在、11ページの一番下の行のところにございますが、国の防災基本計画の改定を踏まえて、全ての都道府県の地域防災計画の中には、災害時の家庭動物への対応についての記載が完了したところでございます。

 12ページ目の二つ目の白丸のように、広域支援・受援体制に関するモデル図上訓練というのを環境省では全国8ブロックで実施をしているところでございます。災害対策のガイドラインについては、下から三つ目の丸ですが、「人とペットの災害対策ガイドライン」として、30年3月に改定を行いまして、30年9月には一般の飼い主の方々向けのパンフレットを作成、31年3月には、救護施設の運営の手引き等も作成をしてきたところでございまして、引き続き取組が必要と思っているところでございます。

 13ページに参りまして、今後の課題としましては、飼い主責任による同行避難という考え方がある程度普及してきたものの、まだペット等の同行避難、避難所、応急仮設住宅でのペット受け入れ等に当たっては、課題が残るというふうに考えております。

 (9)、人材育成でございます。

 動物愛護管理研修という研修を自治体職員を対象に、環境省として継続的に実施をしているところでございます。また、自治体職員や動物愛護管理推進員さんを対象とした適正飼養講習会、適正譲渡講習会を開催してきたところでございます。また、民間による研修会等にも、講師として、職員が参画して支援をするといった取組もやってきたところでございます。また、動物福祉につきましては、イギリスの王立動物虐待防止協会の方々を招聘しまして、自治体職員を対象とした研修を実施するなどの取組を行ってきたところです。このほか、虐待防止の研修会等も開催をしてきたところでございます。

 動物愛護推進協議会につきましては、設置自治体数が少しずつではありますが、増えてきているという状況でございます。動物愛護推進員についても増えておりますが、今回、法改正で動物愛護推進員の委嘱が、できる規定から努力義務規定に変わったというようなことも踏まえて、さらに増加していくものというふうに考えているところでございます。

 最後に、調査研究の推進でございますけれども、「犬猫幼齢個体を親兄弟から引き離す理想的な時期に関する調査」等を行ってきたところでございます。このほか、先ほど申しました海外からの専門家派遣による研修、環境省職員自らのドイツ、イギリス、フランス等の調査の実施、飼養管理の検討会、今後は、虐待事例等の集積も行いながら、取組を進めていく必要があるというふうに考えているところでございます。

 最後に、図表がついておりますけれども、後ろの3ページは、この夏に行った世論調査の結果になっております。

 21ページのところに、ペットが人に与える影響についての世論調査の結果が出ております。生活に潤いや安らぎが生まれる、お年寄りの慰めになるといったポジティブな観点からの評価もございますけれども、人に迷惑をかけるといった課題に対する認識も引き続き大きいというところがございます。殺処分に対する意識につきましても、いずれについても過半数を超えている回答がないということで、国民が多様な考え方を持っているということが伺える結果になっております。

 こういったことも踏まえて、今後の人と動物が共生する社会のあり方を検討する必要があるというふうに考えております。

 以上でございます。

【新美部会長】 はい。ありがとうございます。

 それでは、ただいまの室長からの説明について、ご質問がございましたら、よろしくご発言、打越委員。

【打越臨時委員】 ありがとうございました。

 基本指針については、現行の構成のものをなるべく踏襲するということで、混乱がなくて、それでよいとは思うんですが、この基本指針の項目立てというのは、そもそも前回の法改正ではなくて、もう一つ前、約15年前の法改正のときの基本指針をそのまま踏襲したものだと思うので、例えば、すごく課題が大きくなってきたものと、大分、課題が収束してきたものと、中括弧の割り振りがちょっと微妙になってきているのかなと感じています。

 そうした中で、まず(4)の所有者明示なんですけれども、適正飼養の推進とか迷惑・危害の防止と並んで、所有者明示だけを(4)に挙げるべきなのかが少し微妙かなと思っていまして、むしろ(1)の普及啓発とか、(2)の適正飼養の飼い主責任のところに入れるのでも済むぐらいの話題かなと。マイクロチップの推進という話は、今回、法律で出ましたけれども、それであれば、虐待罪等もありますので、この(4)をまず(4)として残すのかどうかが微妙であるのと、もしそれぐらいであるならば、例えば、人獣共通感染症対策に関して、各自治体、国も含めて、検討していくべきという新たな課題が出てきていると思います。

 また、(3)の危害・迷惑の話題も、飼い方が下手で、しつけが上手にできなくて、何となく無責任に飼っていて、近隣トラブルが起きるという問題と、それから、いわゆる社会的孤立と判断力の欠落による、多頭飼育問題がその典型ですけれども、そういった問題とは単に危害・迷惑と言ってよいのだろうかと思います。判断力の低下と社会的孤立による飼い方を危害だ、迷惑だ、近隣トラブルだというところに入れておいていいのか。せっかく厚生労働省と組んでいて、社会的福祉という観点から議論していることを思うと、(3)の中に、全部束ねてしまっていいのかと感じます。

 もう一つだけ具体的な話で、(3)なんですけれども、クレームがあった場合の対応方法を今後、基本指針で入れていくべきだと思うんですが、せっかく法改正で一般市町村の関わりが大切と言われてきている中で、特に鳴き声がうるさいとか、悪臭がどうだという、いわゆる典型7公害と言われるような騒音、振動、悪臭等に関しては、行政法における議論を反映できないかと思います。苦情・紛争処理というのは、最初の窓口は市町村で、それがうまくいかないときに都道府県に行くというベクトルになっていますので、ペットの近隣トラブルに関しても、いわゆる普通のほえ声がうるさいとか、ちょっと悪臭がというような近隣トラブルに関しては、最初の窓口は本来、市町村であるというような方向性を入れていってもいいんじゃないかなと感じています。

 とりあえず以上です。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 何か今の点について、ございますでしょうか。

【長田動物愛護管理室長】 記載項目の項目立てについては、前回、審議会でもご説明をいただいて、概ねご理解をいただいていたと思っておりましたけれども。具体的に、書き下していく中で、必要なことが今の構成でおさまりが悪いということになれば、ちょっと改めて検討をいたしたいと思いますけれども、現時点で考えておりますのは、普及啓発という項目を普及啓発・多様な主体との相互理解の醸成にする。それから、適正飼養の推進による動物の健康及び安全の確保を健康及び安全の確保並びに返還・譲渡の促進としていく。災害時対策は災害対策として、もっと包括的なことを変えていくということでした。

 先生からご指摘のありました、例えば、人獣共通感染症対策、それから、福祉との連携というのは、極めて重要なテーマだという認識は持っておりますけれども、動物愛護管理法そのものの目的は、動物の適正な飼養管理による動物の健康と安全の確保、それから、動物の適正な管理による生活環境被害等の防止ということになりますので、それと、ほかの法益ですね、他法令等で一義的には所管をしている、ほかの法令の達成すべき目的等を横並びに書くということについては、動物愛護管理基本指針という指針の性格上は、ちょっと慎重に検討したほうがいいのではないかと思う部分もございまして、いずれにしましても、ご指摘いただいたようなことを、どこにどのように書き込むべきか。また、書き込んだときに、おさまりがいいかどうかということを考えながら、ちょっと検討させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

【新美部会長】 はい、わかりました。

 今の打越委員の指摘した問題というのは非常に重要ではありますけども、室長から説明があったように、管理指針の中でどう書くかというのは非常に難しいと思いますので、出すとしたら芽を出して、リエゾンの必要性ということをちょこっとというと語弊がありますけども、指摘しておいていただくというようなのが、基本指針としては限界というか、できる範囲のことかなと思います。また、それは、じっくりと検討していただきたいということにしたいと思います。

 ほかにご質問ございましたら、よろしくお願いします。よろしいでしょうか。

 それじゃあ、ただいまのご指摘を踏まえた上で、さらにこれを深めてまいりたいと思います。

 それでは、続きまして、議事2にございます、基本指針の見直しに係る関係者ヒアリングを始めたいと存じます。

 ヒアリングの進め方といたしましては、資料2にお示しした順番に沿って、各団体からそれぞれ15分ずつご説明をいただきます。そして、3団体の説明が終わった段階で、20分ほどまとめた質疑の時間をとりたいというふうに思っておりますので、各団体が終わったら、質問をしたいということがございますかと思いますけれども、3団体終わってからまとめて質疑をしていただきたいと思います。

 それでは、全国動物管理関係事業所協議会の会長、近藤様からまずはご説明よろしくお願いします。

【近藤氏】 では、全国動物管理関係事業所協議会の会長をさせていただいております、東京都動物愛護相談センター所長の近藤です。よろしくお願いいたします。

 まず、この協議会の位置づけを誤解なさっている方もいるかと思いますので、成り立ちを説明をさせていただきたいと思います。

 当協議会は、昭和49年に全国犬関係事業所長会ということで始まったところがもとになります。途中、昭和57年に全国動物管理関係事業所長会となり、地方自治体の事業所が同じ業務を行う上で、情報共有であるとか、業務遂行上の問題を話し合う場ということで、設けられております。それが平成2年に今の全国動物管理関係事業所協議会という形になりました。

 当協議会は、何かを決定する機関ではありません。あくまでも加盟している地方自治体の事業所がお互いの事業を行っていく上での問題解決をするようなヒントを見つけたり、職員の技量の向上ということで、調査研究発表会を行っております。

 現在、加盟している機関は126になっております。今のところ、地方自治体の動物関係事業所として横の連絡をとり合っているのは、この協議会だけということになっております。

 本日は、協議会を代表してということで呼ばれたわけですが、協議会で何かを決定したり、要望を出したりとか、そういったのとはちょっと違うので、あくまでも私のこれからお話しする内容が、全ての加盟事業所の総意でないことを、ご理解いただきたいと思います。あと、御存じのとおり、各地方自治体は、それぞれの地域の特性に合わせて、事業を展開しておりますので、多少違うかもしれませんが、とりあえず現時点で、今日呼ばれた内容に対して、幾つかお話しさせていただきたいと思います。環境省、国にお話ししていると思いますので、おさらいみたいな部分があるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

 資料3のところがお手元にありますか。

 繰り返しになりますが、今後の実際の運用に当たっての細かいところに関しては、いろいろと各事業所ごとにお話があります。

 この段階で指針についての意見はないですが、ただ、改めてこの場を設けていただいており、確認の意味で、お話しさせていただきたいと思います。

 今、事務局の方から参考資料が皆さんのお手元にあるということで、それを見ていただいていると思うんですが、同じ順番でお話しさせていただきます。

 施策別の取組ということで、①普及啓発・多様な主体との相互理解の醸成という項目があるかと思うんですが、ここで、我々事業所として懸念しているのは、ここに書いてある社会規範となる、最後のほうですね、国民の動物に対する考え方は多様であることを前提にという書き出しで、社会規範となる動物の愛護と管理の考え方の形成を一般の国民の方が、それを運営している我々事業所のほうに押し付けるということですね。我々は、法令に基づいて執行しているだけですので、それを逸脱する行為はできないわけですから、その辺を求める方が結構いて、業務にいろいろ支障を来していると、そういうことはご理解いただきたい、形成の主体は行政でないということを、国民の方にもわかっていただきたいと思っております。

 続いて、②適正飼養の推進による動物の健康及び安全の確保並びに返還・譲渡の促進、2番目の項目ですが、二つ目の丸のところの削減目標の設定というのが書いてあると思いますが、これも繰り返しになりますが、地域特性がありますので、幸い、大都市部ではこの目標の達成、さらに一歩進んだ達成というのは可能かと思いますが、人口が少なくて、どちらかというと自然の力が強い地域の自治体においては、都市部の人間に慣れた、または、ついこの間まで人間に飼われていた犬と接しているわけではございませんので、同じ犬だといっても、やはり状況が違うことも踏まえた上で、この削減目標を考えておいていただきたいと思っております。

 それと、同じ段ですが獣医師による虐待の通報の義務化なんですが、ここではざっくりと書いてありますが、我々自治体としては、じゃあ、実際運用する上で、この辺は今までやってきていないルートですので、国として獣医師の先生がまず窓口としてはどこにお話をし、それがどういう形で関係機関に回り、それを受理した関係機関がどういうふうに対応するか、この辺、環境省の所管していない部局と現場ではやりとりすることになりますので、今後、明確にしておいていただきたい。

 それに踏まえて、警察も動物に対する虐待行為に関して、結構、力を入れていただいているのが現状ですが、実態として、不起訴になっているのを見ていただくとわかるとおり、動物愛護管理法に基づく虐待を上げるのと、それを司法的に虐待として取り上げるかどうかは、やはり温度差があるかと現場の人間は考えておりますので、その辺については、国として、警察庁ともう少し話し合いを続けていただきたい。

 それと、施設整備の推進ですが、ただお金をつけるんではなくて、シェルターメディスン的な考え方をもう少し施設整備の中に言っていただきたいと思っております。

 続いて、③動物による危害や迷惑問題の防止に関しては、地方公共団体の福祉部局等との連携強化について、いろいろと手探りでやっている現状から言うと、もう少し国のレベルで音頭を取って、進めていただきたい。

 ページをめくっていただいて、④は特にありません。

 ⑤のほうについても特にありません。

 ⑥、⑦、ありません。

 ⑧、⑨についても特にないです。

 最後、⑩調査研究の推進のところで、アニマルウェルフェアの考え方と書いてあるんですが、これはほかの自治体の方も同じかどうかわからないところでありますが、東京都としては、今までいろいろ単語が出てくる中、同行避難であるとか、動物福祉とか、いろいろあると思うんですが、言葉がひとり歩きをしないことを祈っているというところですね。国民の方が一人一人、考え方とかイメージとか思いというのがそれぞれ、ばらばらな日本の中で、行政機関がアニマルウェルフェアの単語を使い出して、その意味が正確に伝わらないことは多分あるかもしれないので、これについては、国のほうで丁寧に国民に説明していっていただきたい。

 雑駁ですが、全国動物管理関係事業所協議会からは以上です。

【新美部会長】 はい、ありがとうございました。

 それでは、続きまして、公益社団法人日本獣医師会副会長兼専務理事の境様、よろしくお願いします。

【境氏】 ご紹介いただきました、日本獣医師会で副会長兼専務理事を務めております境でございます。

 本日は、この基本方針の検討に際しまして、意見を述べさせていただく機会を頂戴し、誠にありがとうございます。私のほうからは、1-1から4ページ目の2枚紙がありますので、それに基づきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。

 資料に括弧書きで番号が振ってありますが、基本方針の案の番号、項目に従って記載しておりますので、飛んでいるところは意見がないということでございます。

 まず、(1)の普及啓発・多様な主体との相互理解の醸成でございます。これについては、学校飼育動物の適正飼養、この項目を上げさせていただいております。子どもの情操の涵養という観点からは、動物との触れ合い、この経験が重要であるということでございます。現在の基本方針にも記載をしていただいております。この動物の適正な飼養につきましては、やはり専門家である獣医師の関与が不可欠というふうに考えております。したがいまして、学校飼育動物につきましては、地方自治体が積極的に獣医師会を中心とする支援組織の構築を検討し、子どもに適正な動物の飼養経験の機会確保が図られるようにお願いをしたいというふうに考えております。

 (2)適正飼養の推進による動物の健康及び安全の確保並びに返還・譲渡の促進でございます。今回の法改正で、動物虐待につきまして、獣医師による通報義務が規定をされております。従いまして、通報連絡の受理体制の整備をお願いしたいというふうに考えております。具体的には、通報先となる都道府県、あるいは警察等ということになると思いますが、その窓口を整備していただく。それから、都道府県の動物愛護管理行政、警察、獣医師会等で情報共有する連絡体制を構築していただきたいというふうに考えております。

 ②ですけれども、臨床獣医師を対象とした動物虐待に関する研修会の開催をお願いしたいと考えております。現在、自治体職員に対しましては研修会が実施されておりますので、臨床獣医師に対しましても、研修会を開催しますとともに、教材のご提供をお願いしたいと考えております。

 (4)の所有明示(個体識別)の推進でございます。冒頭、長田室長からも日本獣医師会、現在、210万頭以上の登録実績があるわけですけれども、まずは、この①登録証明書の電磁的発行を可能とするということを記載させていただいております。

 次のページですけれども、登録証明書の発行におきまして、やはり業界の利便性の観点からも即時性が求められるというふうに考えておりまして、そのためには、電磁的手段が不可欠ということですので、電子書面での発行を可能としていただきたいと考えております。

 それから、②の標準事務処理期間の設定でございます。登録の申請を行う犬猫販売業者等への事務処理に係る期間への理解を深めることが重要ですので、そのためにも、複数の指定登録機関がある場合の事務の平準化という観点からも、登録証明書が発行されるまでに必要な期間についての標準事務処理期間を設定していただきたいと考えております。

 それから、③ですが、指定登録機関の要件でございます。これは日本獣医師会、現に業務をやっておりまして、たくさん書かせていただいております。現在、平成18年度環境省告示23号で、この関係が示されておりますが、少なくともその規定については要件としていただきたいということで、三つ書いてございます。一つは公的な性格を有する団体等であること。それから、登録関係事務処理体制が全国規模で整備されていること。それから、所有情報の検索が全国規模で効率的かつ迅速に行われることという、これらは、ぜひとも継続して規定を要件としていただきたいというふうに考えております。

 これらのほか、今回の法律の改正の趣旨、あるいは登録情報提供の一元化といったことが主張されておりますので、それを踏まえますと、ここに書いているような要件も必要ではないかと、検討をお願いしたいと考えております。まず、同一の犬猫の個体につきましては、新規登録、変更届出、変更登録等、一連の登録関係事務が常時かつ全て実施可能であるようにしていただきたい。それから、業者としては、犬猫の繁殖業者、ペットショップ、動物愛護団体、一般所有者等全てからの登録申請等に対して、対応できるようにしていただきたい。それから、こういった関係業者全てからの照会・相談等に対して、全国的かつ常時対応可能な体制が構築されていること。それから、今回、犬猫販売業者が対象になったわけですので、やはり指定団体は、犬または猫の単独ではなくて、犬猫両者の登録事務が実施可能であり、将来的には犬猫以外の家庭動物等の登録事務も実施可能であることというものでございます。それから、現行の告示に基づきまして、所有情報を管理し、情報提供を行う、できれば実績を有する者であるということを要件にご検討いただきたいと思います。最後に、今回、個人情報を扱うわけでございますので、登録の迅速性や正確性、安全性を保つために、検索システムのWEB仕様、あるいはサーバーの容量及び構成、セキュリティー仕様、それから、首都直下型地震とかが起こりますので、防災対策、そういった地震等、災害が起こっても対応できる体制を組めるということを要件にしていただきたいと考えております。

 それから、④ですけれども、指定登録機関同士の連携という規定が法律にございます。複数の登録機関が指定されるという、当然、一定のセキュリティー、あるいは個人情報の保守管理が必要なわけですので、高度な情報共有システムを設計するなど、連携につきましては、環境省に指導をお願いしたいと考えております。

 ⑤ですけれども、動物病院によるデータベースの検索を可能とするこということで、法案ご検討の際もなかなかこれは難しいんじゃないかというご指摘もございました。ただ、現在、飼育者の情報につきましては、動物愛護管理センターあるいは警察、保健所、こういったところばかりでなくて、IDを取得した動物病院にも提供をしております。動物病院はマイクロチップの装着・登録、迷子検索等に重要な役割を担っておりますので、動物病院に対しても犬猫の所有者情報を提供できるようにしていただきたいというふうに考えております。

 ⑥犬及び猫の所有権等の整理でございます。現状の登録システムでは、登録されている者に登録の権利がありまして、変更を行う権利も有しておりますけれども、法改正では、新しく飼育する者が変更登録を行うことが義務づけられております。既に登録されている者が登録の権利を主張した場合の対応方法について、ご検討をお願いしたいと思います。

 ⑦既存の登録者の取扱いについてということで、今、210万頭分の登録情報があるわけですけれども、改正法施行時におきましても、同法に基づく登録として円滑に移行できるように措置していただきたいと考えております。

 ⑧狂犬病予防法の特例を全ての飼い主が享受できることということでございます。今回の改正で、狂犬病予防法の特例として、犬に装着されているマイクロチップを市町村長から交付された鑑札とみなすとなっております。基本的に全ての市町村が指定登録機関に対して登録情報を求める方向で調整をしていただき、その情報の通報につきましては、市町村がデータベースにアクセスして、当該情報をダウンロードする方法を採用していただきたいというふうに考えております。

 それから、大きな(5)の動物取扱業の適正化でございます。第一種動物取扱業による適正飼養の促進のための遵守基準の設定がなされるわけですけれども、やはりその際には、関係業界の実態を考慮していただいて、業界が対応可能なものとなるようにご配慮をお願いしたいと思います。

 最後に、(8)災害対策でございます。被災地における円滑な支援・受援体制の再整備でございます。災害が多数発生しておりますので、そのたびに支援対応を行っております。環境省では、「人とペットの災害対策ガイドライン」を定められておりますが、その中では、現地動物救護対策本部の傘下で、被災動物救護活動等を実施する体制になっております。一方で、公益認定法に基づきまして、公益社団法人日本獣医師会、あるいは55の地方獣医師会のうちの55は公益社団法人なんですけれども、任意団体である現地本部には、公益目的事業として人・物・金を含めた支援ができないということに解釈、運用がなされております。したがいまして、公益社団法人日本獣医師会としましては、現地動物救護本部ではなく、会員である公益社団法人の地方獣医師会に対して支援を行う。あるいは、一般社団法人に対しては、業務委託を行うということで、今、調整を進めております。

 従いまして、環境省側のご指導につきましての動物救護活動等の支援・受援体制につきましても、見直して再整備していただく必要があるのではないかというふうに考えるところでございます。地方獣医師会が地方自治体の傘下で行う被災動物救護活動等が円滑に実施できるよう、支援・受援体制の再整備を行うことをお願いしたいと思います。

 以上で、ヒアリングに当たりましてのご要望を述べさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

【新美部会長】 はい。どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、動物との共生を考える連絡会代表の青木様、山﨑様、よろしくお願いいたします。

【青木氏】 動物との共生を考える連絡会の自己紹介を最初にというリクエストがございまして、そこから入りたいと思います。

 総理府が主管していた動物保護管理法が1999年12月に初めて改正され、そのときに、動物愛護管理法と名称が変更されました。そのとき、当時の活動母体であった動物の法律を考える連絡会がそのときに解散し、動物との共生を考える連絡会と名称を改めて再スタートしたものです。この連絡会には、多くの団体が参加し、動物にとってよりよい法律を目指して議論をしています。過去4回の法律改正の全てに中央環境審議会動物愛護部会に委員として参加し、意見を述べさせていただいております。隣におります山﨑さんもその一人でございます。我が国の立法のあり方や議員立法の難しさなど、法律改正の困難さ、そして、行政管理などを含めて、いろいろと勉強させていただきました。そういったことを生かして、次の法律改正に向けて提言をさせていただき、今までも繰り返し提言させていただいております。

 そこで、今回、実は、先週の18日にここで発言するようにと求められました。あまりにも短い日にちなものですから、言いたいこと全てがここの資料の中に書かれていませんので、追加発言をさせていただくことをお許しください。

 それでは、意見として申し上げさせていただきます。

 まず1番目としては、基本的な考え方の中に、人が飼養管理する全ての動物を守り、救護できる、実際に救護できる法律にするべきでしょう。動物愛護管理法は、ペットを中心の考え方が偏っておりますので、ペット法と言われている現状から脱却していただきたい。

 それから、動物に対する国民の考え方は、先ほどの意見もあるように、多様性があるということは承知しておりますが、法律は人が主体なので、人のものであり、客体である動物のためのものではない。また、この法律は、理念法であり、風紀法なので、動物を守ることができないとの意見があった。これは、一国民としては非常に許しがたい言葉だなと思っております。我が国は、G7に名を連ねる先進国であるということから、このことは最も恥ずかしいことであり、絶対に容認できません。動物問題の後進国であってはなりません。先進国では、動物を守るための法律があり、違反者を罰していることは周知のとおりです。最近の先進諸国では、福祉は弱者を守り、手助けするものであり、人に対するものだけでなく、動物にも適用するOne Welfareの理解が広がってきております。動物愛護管理法の実効性があまり認められない現状を変え、実効性を高めるため、この法律を情緒的に動物愛護管理法から科学的側面と倫理的側面の両方をあわせ持っている動物福祉法に変えることを望んでおります。これができないんであるならば、一番最初の保護という言葉に変えていただくのも一つかと思います。ただ、動物福祉という言葉は、我が国の動物界の中では十分認識されている言葉です。アニマルウェルフェアではなく、できれば、動物福祉という言葉を掲げていただければと思います。

 人と動物の共生する社会の実現に向けて、児童虐待を防止するなど、人に対するハラスメントをなくすことは当たり前のことですが、そのほかに、動物愛護管理法に「5つの自由」全てが記載され、動物の適正な飼養管理基準のもと、動物への虐待を防止し、動物を保護し守れる法律にする必要があります。動物に関係する法律はさまざまあり、複数の省庁が主管しています。その法律間の中での整合性がちょっと混乱しているのではないかなという感じがあります。そこで、この動物愛護管理法が動物関連の基本法になるよう、目指していただければなと思います。

 次に、施策展開の方向性として基本的な視点として、国民に動物の福祉と0ne welfareの理解を推進するための施策を展開する。ほかの者への命への共感や思いやりを育む教育、できれば動物介在教育、AAEというものを活用していただければなと思います。これらを学校や社会それぞれの場で継続的に行うと。既に動物愛護管理法の中にあります動物愛護推進協議会を活用して、官民協働で行うとともに関係者の協働関係を構築する。そのほか、問題の整理として、ここは追加させていただきますが、基本法のもと、業態ごとに整理して、新しい法律を考えるなど、検討を行っていただきたい。

 それから、普及啓発ですが、国、地方公共団体、獣医師会、業界団体、動物福祉団体、学術調査研究団体等が連携・協力して、さまざまな機会を捉えて普及啓発活動を行っていただきたい。それから、安定的な良質な動物愛護推進協議会と動物愛護推進員を活用する。ここには、多分、それらの教育のためのプレゼンテーションが必要だろうと思いますが、次に、折に触れて、一般社会に向けての啓蒙・啓発教育、広報活動をTV、新聞、雑誌などのほかに、ソーシャルネットワークサービスを利用して行う。そのための予算を獲得して、実行していただきたい。

 3番、適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保。動物種ごとに生理・生態・習性に即した適正な飼養管理基準を作成し、動物の飼養管理者にその内容の理解と確実な実行を求めること。②、この動物飼養管理基準には、国際的な動物福祉の共通原則となっている「5つの自由」が記載されていなければなりません。第一種動物取扱業、第二種動物扱業、そして一般飼い主を含む全ての飼養管理者は、動物の飼養管理基準に基づいて飼養管理をしなければならない。動物の飼養管理基準に数値規制をという意見がございますが、場合によっては、種によっては個体差がかなり多くあり、ともすると、狭小スペースに押し込められる心配があるので、全てに同意はできないかもしれません。しかし、飼養頭数に対しての飼養管理者の人数の規制はあってもいいでしょう。

 それから、動物に対する虐待の判断、今までの事例の中で判断ができないということで、不起訴になっている場合がかなり多く見られます。そこで、確実にできるようにするために、環境省、警察庁、厚生労働省、農林水産省などの関係省庁及び法曹関係者、ここに獣医師をつけ加えていただきたいと思いますが、獣医師と学術調査研究者、動物福祉関係者などが虐待かどうかを判断するチームをつくっていただいて、その事例ごとに判断し、その結果を公表していただきたい。終生飼養や殺処分反対などで、不適切な飼養管理のもとで悲惨な状況下に置かれております動物や、それから、虐待されている動物を救うための仕組みを講じていただきたい。緊急救護が必要な場合は、裁判所による当該飼養管理者の飼育禁止命令あるいは所有権の停止・剥奪が必要となるでしょう。

 新たに追加させていただきたいのは、⑦番目として、殺処分ゼロを目指すために、動物の引取りを依頼されたときに、第二種動物取扱業者の動物保護(あるいは、譲渡団体等)への引取りの丸投げを慎んでいただきたい。⑧番、動物を飼養管理している施設には、適切に飼養管理しているかの定期的に立入調査をしていただきたい。ということです。

 あと、これからは、隣の山﨑さんにお願いいたします。

【山﨑氏】 動物取扱業の適正化に関しまして、ちょっと時間も押しておりますので、若干要点だけはしょってお話を申し上げますけれども、動物愛護管理法、先ほど青木代表がおっしゃいましたとおり、ペット法に偏りが非常に強いので、実験動物、産業動物、展示動物の福祉に関連したさまざまな条項をいかに扱っていくかということが大きな課題であると感じております。また、数値基準という話も先ほど青木代表からございましたけれども、数値基準を設定するというプレッシャーが愛護団体や各種議員などから非常に強いと聞いておりますが、数値基準を設定するのであれば、それは一律にあらゆる動物の占有者に当てはめるものでなければならないと思っております。第一種動物取扱業のみならずということです。ちなみに第一種動物取扱業のみといっても、その占有者はペットショップ、ブリーダーのみではなくて、展示業、それから、預かり業、これは預かり業をしております動物病院を含めますが、次いで、それから、各種動物を飼っております専門学校、補助犬施設、警察犬訓練所等々、全ての施設におきまして、同じ数値基準を業者として強いられるということが非常にフェアなやり方だと思います。

 また、展示業という言葉が使われておりますけれども、展示業は、日本全国、展示業全体で約3,200ほどございますが、公益社団法人日本動物園水族館協会に登録しているところはわずか150でございます。そういう意味では、動物園というものは一体何か、動物園という言葉に対して、法的定義がないということが非常に大きな課題であろうかと思います。確かに動物園は博物館法のもとで、環境省のもとに管轄されている箇所ではございませんけれども、しからば、展示業というものと、それから動物園というものをどのようにこれから照らし合わせて考えていくのか。別法として動物園法があり、かつ展示業に動物園と名乗る場合には、その動物園法にのっとったさまざまな基準をクリアするということが必要なのではないかと考えております。少なくともそういった展示業と、その他の業者に関しましては、触れ合いなどが野放しになっている状態でございますので、何らかの許可制にするべきであろうかと連絡会では考えております。

 それから、産業動物の適正な取扱いに関しましては、当然のことながら、ここに詳しく書いておりますが、過密飼養管理の禁止、すなわち集約的な農業、ファクトリーファームの禁止というものを今後、我々は追及していくべきであろうと思います。これは、各国の政策だけではなくて、OIEを含め、全世界的に今や産業動物の福祉、そして、産業動物の飼養の適正化というものが大きな課題となって、さまざまな活動が展開されている中、我が国が乗り遅れないようにしなければならないと考えております。

 1番目の安心・安全ということに関しましては、現在、米国の議会では、こういった過密飼養管理の中で必要とされる抗生物質の投与に関しまして、非常に大きな問題提議がされております。抗生物質の農業使用に関しましては、規制をかけるような法案が米議会ではたくさん提出されてきております。現在は、世界各国の抗生物質の使用全量を見ますと、6割以上が農業生産に使われているという意味で、人間の病気の管理に使われているもののほうが少ないという現状です。人間が食べるものに関連して考えれば、産業動物の人間にとっての食の安全・安心を確保するためには、今後、過密飼育体制というものをどのように改善していくかということは、絶対に考えなければいけない課題でございます。これは、もう完全に福祉を離れて、0ne welfare、One Healthのところにも入っていく課題であろうかと考えております。特に、世界のマーケットに向けて、畜産物は動物福祉を考慮した飼養管理でなければ、既にEUなどでは販売することができないという状況でございますので、そういった意味での我が国の業界の今後のあり方にどれだけ動物愛護管理法が関わっていくかということは、なかなかこの時点では言えませんけれども、少なくとも動物愛護管理法の中で、積み残しにされる動物としては、今後、大きな課題として検討する必要があると思います。

 また、実験動物に関しまして、ちょっと飛ばしてしまいました。申し訳ございません。5番に戻ります。実験動物の適正な取扱いの推進に関しましては、実は、3Rが我々の動物愛護管理法の中には入っておりますけれども、現場に第三者の立入調査を実施し、それの実施状況を把握する必要があると思います。今年は、Russell&Burchが3Rを推奨して60周年でございます。その60周年の年でRussell&Burchが何を提唱したかを立ち戻って考えてみると、3Rの中で代替法に最も心血を注ぐべき、代替できないものは数を減らし、数を減らせない場合には実験方法を改善しましょうという順列がつけられておりますので、その辺りを義務化として、代替法が研究機関で実際に使えるような予算を確保するべきだと思います。

 災害対策に関しましては、今日、朝日新聞で出ておりました記事でございますが、同行避難という言葉がこれだけひとり歩きしているにもかかわらず、今回の災害の中では、いわゆる底辺での避難所での動物の連れ込みが禁止されたという事例が多々ございますので、上で決めたものが下の末端の防災委員会等にどうやってきちんと適正に流れていくかということは、再度検討する必要があるかと思います。

【青木氏】 いわゆる災害の対策の中で、いろんな災害死した動物たちがいるので、この辺については、農林水産省、自治体、獣医師会、動物愛護推進員の対応を、対策方を検討していただければなと思います。

 それと、8番目として、人材育成というのがありますが、今回、動物愛護担当職員を置くということがリークされましたので、ぜひ、この人たちのためにも、あるいは、こういった人材が増えてきてくれないことには、実際の業務がうまくいかなくなるんじゃないかということで、ぜひ人員増加に対する予算の拡充を求めたいと思っております。

 それから、前回の8週齢規制について、成立というか明記されましたが、この部分については、犬や猫の出生月日が改ざんできないような仕組み、どうしてもごまかされてしまうようなおそれがありますので、この辺のところも、十分考えていただければなと思います。

 以上で、連絡会の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【新美部会長】 はい。どうもありがとうございました。

 それでは、これまでの三つの団体から説明をいただきましたが、それにつきまして、ご質問などございましたら、ご発言をよろしくお願いします。

 じゃあ、打越委員、どうぞ。

【打越臨時委員】 日本獣医師会さんからのご意見について、少し確認させていただきたいと思います。

 公益社団法人日本獣医師会さんというのは、犬や猫の動物病院、開業医の利益団体ではなくて、獣医学を修めた方々の専門家団体だというふうに認知しております。ですので、日本獣医師会には、例えば、動物実験に関わっている大学の研究者や、あるいは、大動物の臨床や、あるいは、公衆衛生の行政職員であっても、みんな獣医師会に入っているんじゃないかと思うんですが、もしそうであるならば、動物実験のあり方(6)についても、何もご意見がなく、大動物に関する(7)のところもまたご意見がなく、そして、できれば、行政獣医師職員を増加させなければならないというご時世、公衆衛生の問題について、動物愛護担当職員の資質のことについても、ご意見をいただきたかったなと思うんです。けれども、拝見すると、やはり開業医の立場としての要望が多いような気がいたします。日本獣医師会内で、大動物臨床、それから、動物実験関係者、そして公衆衛生の自治体獣医師職員等との意見交換やこの基本指針に向けた要望を集めるなどの議論などは十分なされたのでしょうか。

【新美部会長】 どうぞ、よろしくお願いします。

【境氏】 はい。日本獣医師会は、先ほどちょっと申し上げましたが、全国55の地方獣医師会が会員という団体会員制になっております。47都道府県の地方獣医師会と8政令市の獣医師会が会員でございます。その各地方会の下に、それぞれの個々の獣医師が会員となって入っているということで、日本獣医師会から見ますと、会員構成獣医師というふうに呼んでおります。

 おっしゃるとおり、日本獣医師会の会員構成獣医師は、小動物臨床ばかりじゃなくて、産業動物、あるいは公務員、それから、いろいろな研究者や大学とか、あらゆるところに所属されておりますから、そういった意味では、いろんなところの検討をすべき団体でございます。現に、各地区の選出の出身の理事ばかりでなくて、各職域選出の理事もおりまして、その理事が委員長となって、各職域ごとに各時代の課題について、検討をしております。

 今回は、動物愛護管理法、おっしゃるとおり、ペットばかりじゃなくて、いろいろな動物を対象としておりますけれども、やはり今回の大きな改正としてターゲットを当てておりますのは、やはり犬猫等のところの内容が主でありましたので、そこを中心にご要望させていただいたということでございます。もちろん動物の適正な取り扱いとか、そういったものについても、当然、当方で検討すべき課題でありますが、先ほどの環境省のご説明がありましたように、例えば、畜産技術協会、公益社団法人がございます。そちらのほうでは、アニマルウェルフェアの考え方に基づいたいろいろな検討をし、私どもも委員を出して、そちらで検討しておりますから、全て日本獣医師会がリードしてやっているということではないという点についても、ご理解をいただきたいと思います。

 いずれにしても、ご指摘のとおり、日本獣医師会としては、全て対象として検討は進めて、対応していくという考えでございます。

【新美部会長】 はい、どうぞ。

【打越臨時委員】 今のお答えをいただいて安心いたしましたので、ぜひ、全く触れられていない(6)と(7)と(9)の人材育成、まさに大動物と動物実験等、行政職員の人材育成のところでありますが、日本獣医師会さん、先ほどお伝えしたとおり、獣医学を修めた専門家の団体であって、利益団体ではないと認知しておりますので、そういった研究や取組を進めていっていただきたいと考えております。

【新美部会長】 ちょっと今のところで、僕は人の厚生労働省のもとでの医師会と獣医師会との組織の対応を確認したいんですが、日本医師会の場合には、開業医を中心とした医師で、勤務医なんかは入っていない。組織でいうと、そんなに高くないんですが。獣医師会の場合には、そういった開業獣医師が中心なのか、全員が必ず入ることになっているのか、ちょっとお知らせください。

【境氏】 日本医師会のほうは、私の記憶では、市町村レベルの医師会、それから、都道府県別の医師会、それから日本医師会があって、それぞれ加入することができる。日本医師会も団体が組織しているわけですけども、個人の医師、お医者さんも会員になることができるという直接会員制をとっておられる。ダブって入っておられるというふうに聞いております。

 日本獣医師会は、申し上げましたように、個人の会員は賛助会員以外認めておりませんで、基本的には55の団体会員制をとっているという違いがございます。

【新美部会長】 どうもありがとうございます。

 同じような感覚で捉えていると、やっぱり組織のあり方が違うので、ちょっと確認させていただきました。

 ほかに、ご質問、ご意見ございましたら。

 じゃあ、太田委員のほうから、まず。その後、山口委員。

【太田臨時委員】 基本指針の点検の結果にありましたけど、アニマルウェルフェアという言葉と、先ほどの連絡会のほうで動物福祉というのがあったんですけど、この違いをちゃんと説明できる人がいたら、その三つの団体にお願いしたいと思います。

【山﨑氏】 連絡会としては全く同じと捉えております。アニマルウェルフェアは英単語であって、動物福祉は日本語の単語であるという違いしかないと思います。

【太田臨時委員】 それは大丈夫。

【山﨑氏】 連絡会の正式見解です。ただ、アニマルウェルフェアという言葉が横行している一つの理由は、一部の方々から福祉というのは人間の言葉であって、動物は使うべきではないと。人間の福祉、それと動物の福祉というものはそぐわないというようなご議論が出ていることは承知しておりますが、これはいろいろなところで、例えば里親という言葉も人間のほうの言葉であるから、里親探しというのは動物に使われるのは心外だというようなご反対意見もございますので、言葉選びをどの程度していくかというのは、これからの課題ではないかなと考えております。

【太田臨時委員】 日本獣医師会、どうですか。

【境氏】 日本獣医師会も両方使っておりまして、例えば、最近は、日本獣医師会の理事ですけれども、動物福祉・愛護職域の担当理事ということで、動物福祉という言葉を使っております。

 ただ、今、検討の場では、アニマルウェルフェアという言葉が中心に使われているというふうに考えておりますが、今、山﨑委員がおっしゃったように、同義語というふうに理解しております。

【太田臨時委員】 例えば、アニマルウェルフェアを動物福祉というように統一して、何か矛盾はありますか。

【境氏】 先ほど言いましたように、動物福祉もアニマルウェルフェアも、あえて統一する必要はないのではないかというふうに思っておりまして、どちらも国民の中にはそれで定着しておりますので、今回も特に固有名詞であれば、動物福祉・愛護という言葉を使っておりますが、いろんな検討の過程では、アニマルウェルフェアという言葉も普通に使わせていただいております。

【山﨑氏】 連絡会としては、むしろ農林水産省にどうしてアニマルウェルフェアという言葉にこだわっておられるのかということを正式に伺いたいというふうに、常日ごろから思っております。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。ほかに何か。

 じゃあ、それじゃあ、山口委員、どうぞ。

【山口臨時委員】 私も獣医師会の境先生にご質問があるんですけれども、私も本当はほんの少しの期間しかお手伝いができませんでしたけれども、獣医師会のメンバーとして、熊本の地震のときには、お手伝いさせていただいたんですが、確かに日本獣医師会は、災害時、とても一生懸命されておられますし、災害獣医療の研修もされておられるんですが、起こったときもそうなんですけれども、その前に、先ほど山﨑委員が同行避難という言葉が一般的になっているにもかかわらず、避難所で断られたということ、それはこの前の委員会でもお話ししたんですけれども、同行避難を受け入れるべき避難所を運営設置隊の方々が、もしも咬傷事故が起こったらどうしようとか、どんな動物が来るかわからないとか、いろんな心配事で頭が膨れ上がってしまいますので、そういうことに対して、学校では、避難所というのは学校が多いということもありますから、学校飼育動物は減ってはいてもまだいるわけですから、そこに獣医師が関与しているということもありますので、ぜひ、その地域の獣医師の先生方が中心になって、学校指定避難所での動物の受け入れについて、運営設置体の方々と普段から協議をして、起こった場合はどういう受け入れをして、危険のないようにということも、獣医師は動物を扱う専門ですので、いろんなことを前もって注意できると思いますので。ぜひ、平時の災害対策にも、日本獣医師会のほうで、地域、地元の足元からの災害対策にお力をいただければなと思うんですが、いかがでしょう。

【境氏】 山口委員のご指摘はごもっともでございまして、日本獣医師会も昨年度、地方獣医師会がメインとなって、災害対応を行う場合の地域活動のガイドラインを改めて改正して定めました。また、日本獣医師会そのものもどう対応するかということで、日本獣医師会の対応マニュアルもつくり上げましたので、これに基づいて、しっかり仕事をしていきたいと思っております。学校飼育動物、これも長年、取り組んでおりますけど、なかなか学校あるいは教育委員会等のご理解が得られていなくて、広まっていない現状にございます。やはり、そこを打開するためには、各地域の獣医師が身をもって学校に話しかけに行き、ご協力しますよという申し出をしていく。安全な動物の飼い方とか、獣医師の魅力も伝えながら、子どもたちと接していくことが必要だろうと思っておりますし、災害対応もやはり常日ごろからそういった意思疎通を行う、連携をとるという体制の構築が必要だというふうに考えているところでございますので、ぜひ、今後とも、そういう対応を進めていきたいと考えております。

 私ども、この災害対策、実は日本獣医師会は公益法人でありますが、内閣府のまだ公益目的認定事業になっていません。というのは、いろんなお金も支援金を扱うという、その取扱いとか、先ほど申し上げました公益認定法上の制限もありますので、こういったところをどうやってクリアするかというところで、今、苦労しているところでございますが、今年度中か、近いうちには、公益認定を取れるという方向で、今、進めているということについても、ご理解をいただければと思います。

 以上になります。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。

 ほかにご意見、ご質問。はい、どうぞ。

【西村臨時委員】 普及啓発というところで、ちょっとお考えを聞きたいんですが。それと、環境省もどういうふうに考えているかというのもお答えを教えていただければと思います。

 この普及啓発というところは、愛護と管理という側面と、共生社会といいますかね、人と動物が幸せに暮らす社会という、その二つの側面があると思うんですが、前者に関しては、いろいろ法律を厳しくするとか、そういうことで割とレギュレーションをかけやすいと思います。一方後者は、それとも相反するところがあるかもしれませんけど、なかなか実際はうまくいっていませんが、これからどういうことをやったらいいと考えられているのか、あるいは、実際、どういうことをやっているのかと。そういうことを教えていただければと思いますし。それから、環境省としてのそれらを具体的にどういうふうに実現していこうと考えているかというのも、教えていただければと思います。

【新美部会長】 3団体それぞれと、それから環境省ですか。

 それじゃあ、どうぞ、よろしくお願いします。順番によろしくお願いします。

【近藤氏】 普及啓発ですが、地方自治体が行っている普及啓発というのは、市民の方の考え方いろいろな中で、本当に最低限のところは押さえているような感じです。物によっては抽象的な普及啓発も行っていますし、動物に接するとか、そういう実務な面も含めて、小学校における命の教室をやる自治体もあり、東京都もやっていますし、ほかの自治体でも今、取り組んでいます。あとは、この普及啓発の中には、当然、人に迷惑をかけないように飼ってくださいというような、そういう飼い方の普及啓発も入っていますし、とにかく幅広く行っております。

【境氏】 日本獣医師会は当然、獣医師の団体ですので、獣医療をベースにいろいろな社会貢献をしていく必要があると考えております。例えば人の視点であれば今、One Healthが話題になっておりますように、感染症対策とか薬剤耐性対策とか、そういった直接、獣医療に関係する部分、それから、やはり例えば、今、お年寄りがどういうふうに犬猫を飼育できるのか。何かあった場合に、どう支援していくのかという。あるいは、地域コミュニティーの中で、そういった支援体制を組めないかという検討を開始しております。また、医療分野では、当然、動物介在医療、それについてどう支援をしていくか、普及していくかという、やはり国民の生活に近い部分のそういった地域に密着した取組といったものを具体化していくということが、これから重要になってくるというふうに考えておりますので、ぜひ、委員の先生方からもいろいろご指導を賜ればというふうに考えております。

【新美部会長】 はい。ありがとうございます。

 じゃあ、続いて、よろしくお願いします。

【青木氏】 私どもは、直接、連絡会として講演会とか何かというのをやれているのは、あまりないんです。ただ、来年の1月26日にちょっとやりますが、それ以外に、所属している団体、特に公益社団法人日本動物福祉協会は、今度の12月7、8日でしたっけか。適正な譲渡に向けてのシンポジウムを2日間にわたってやったりします。所属している団体がそれぞれでやってくださっていますが、私から見ると、いわゆる聞いてくださっている方の数が残念ながら少ないなという認識なので、これで広報ができたかということになると、ちょっと疑問ではあるんですが、そういった形ではやっております。

【山﨑氏】 もっともっとベーシックなことを申し上げると、大体、動物関連の講演会をすると、あなたは聞かなくてもいいでしょう、もう大丈夫でしょうという人しか集まらないので、末端の人たちにどうやって聞かせるかということだと思います。私は、基本的には、動物一般教養、アニマルリテラシーが全国民に広がるような教育改革が必要だと思っております。そのスタートはどこかというと、恐らく動物看護師、獣医師、訓練士等、動物専門職の人たちのカリキュラムの中だと思います。ただただ自分がトレーニングするとか、グルーミングするとか、あるいは、切ったり張ったりするとか、技術的なそういった勉強は必要なのですが、技術勉強のほかに、自分がやはり対象とする動物に対する一般教養として、展示に関わらなくても展示業の現状とか、自然保護の現状とか、それから、屠畜場の現状とか、そういったことを全て幅広く教える、いわゆる一般教養カリキュラムというものが絶対的に必要になってくると思います。

 動物福祉の問題というのは、非常につながっているのです。環境問題と同じように、リテラシーがないと対応できないのです。プラごみの問題だけでも、じゃあ、プラスチックのごみを減らしましょうで、地球環境がよくなるかというと決してそうではないので。例えば、環境問題と動物問題をつなげる一つの非常に大きな流れを見る事例として、ヤシ油がエコであると言われていますが、それがどんどん売れていく、ところが、ヤシ油が売れていけば売れていくほど、アジア最大の霊長類であるオラウータンの数が生息地を奪われるために減っていくんですね。オラウータンの数が減っていくと、実は、彼らは種まき人ですから、熱帯雨林も絶対的な繁殖力を失っていくわけですよね。

 ですから、それを全部つなげて、点と点を、点だけを教えるのではなくて、点と点をつなげて、動物を一つの一般教養課題として、好き嫌い関係なく入れていくというところが非常に必要であると思いますが、いきなり一般の初等教育に入れろといっても無理があると思いますので、少なくとも動物関連の学部やそういった教育をしている教育機関においては、ピンポイントのその職種だけの教育をする前に、ベーシックなアニマルリテラシーという一般教養の課題というものをどんどん入れていく必要があると思いますが、それをするためには、そのリテラシーを教えられる教員育成というのが必要になってくると思います。かなり壮大なことと思います。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 それじゃあ、環境省のほうから一言お願いします。

【長田動物愛護管理室長】 大変重要で難しいご指摘だというふうに思っております。

 12月に審議会で取りまとめていただきました論点整理の中では、平成29年の2月に行われましたシンポジウム、「動物の愛護と管理と科学の関わり」というのがございましたけども、そういったところでの議論も踏まえて、今後、科学ですとか、それから道徳、倫理、動物観、さらには法律、そして生活、経済、こういった四つの視点から、人と動物の関わりというのを、諸外国と日本の違いも含めて検討していくことが必要だというようなことで、まとめていただいていますけれども。

 今日、ご紹介しました点検の資料の中でも、例えば、殺処分についての世論調査では、けがや病気になって回復の見込みがない場合でも、動物について殺処分が許容できると答えた方は40%しかいなかったと。これは欧米の動物福祉の考え方からすると、これは殺処分しなきゃいけないということになると思うんですね。こういった国民の動物に関する価値認識をよいものとして是認するのか、間違っているものとして否定をするのか。これを議論の足がかりとして、今後、国民的な議論を展開していくのかというような観点から、非常にこういう一つ一つの国民の価値観ですとか、動物に対する認識や振る舞い方というのを踏まえて、議論を活性化させていくことが必要だと思っているんですけれども。今のこのような状況の中で、人と動物が共生する社会というのはこういう社会像なんだというのを国が先んじて国民に示すということは困難だし、適切でもないのだというふうに思っております。

 こういった観点から、さまざまな場ではいろいろな関係者の方々に人と動物が共生する社会のあり方というものについての議論を活性化させていきましょうという呼びかけをさせていただいておりますし、そういう場があれば、私どももお邪魔して、政策的な観点や法制的な観点からご説明をすることも全くいといませんという話は申し上げてきているんですけれども。今回、基本指針の改定に当たっても、残念ながら、共生社会がこんな社会ですというところを示すというよりは、共生社会の国民の共通認識の形成に向けて、どんな取組が必要かということを書いていくことにとどめざるを得ないのではないかと思っております。ただ、ここは非常に重要なテーマだと思っておりますので、本日、また、今後の審議の中でも重点的にご意見をいただきたいと思っております。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。

 ほかにご質問。

 はい。じゃあ、どうぞ、打越委員。

【打越臨時委員】 日本獣医師会さんにより具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 虐待の場合の通報義務のところのご提案についての質問なんですけれども、動物愛護管理法の中に、虐待があった場合には臨床獣医師さん等が自治体等に通報するというような条文が入っているので、そのための基準が欲しいという話ですね。先ほど近藤氏からもそのルートを整理したほうがいいというお話があったんですが。実際、痛めつける意味での虐待なり、あるいは、ネグレクトという形での虐待なり、そういう形の動物が動物病院に連れてこられることって、実際にはどのくらいあるのだろうと。ネグレクトであれば、お金もかかるのに連れてこないんじゃないか。ましてや、自分が痛めつけるようなことをした人が動物病院に連れてくるとは限らないなと思うのです。虐待の判断は、獣医師でないとできない、法獣医学等が必要と言われている一方で、実際に動物病院にこれは虐待なんじゃないかなというふうに、自治体などに相談したくなるような件数というのが多いのか。実際、どのぐらい、薄々とでも動物病院で虐待の可能性を感知しているのかというのを伺いたいと思うんです。

 それは、多頭飼育の検討会で、多頭飼育の問題があるときには、もっと獣医師が指導しなきゃだめなんだという意見が出たんですが、実際に多頭飼育者が動物を動物病院に連れてくることってなかなかないんじゃないかなと思うと、この通報義務のあり方というのは、どんなふうに考えておられるか、どのぐらい情報を把握しておるのか、お聞きしたいと思います。

【新美部会長】 それでは、どうぞよろしくお願いします。

【境氏】 申し訳ありません。私は実は農林水産省のOBですので、小動物臨床における虐待の実態を把握しているわけではありません。

 ただ、今回、この動物愛護管理法で虐待についての通報義務が獣医師に課されたということは、獣医師の専門性を考慮していただいて、そういった規制になったのかというふうに考えております。当然のことながら、獣医師は正常な動物なのか、疾病なのか、あるいは疾病以外の何かそういった虐待等があるのかという、その判断はつけるという、つく能力を持っているということを信頼していただいて、こういう規制になっているということだと思います。

 実はこの規定案が出たときに、虐待について基準を作ってほしいという要望があったんですけれども、私が内部で止めました。というのは、先ほども言ったように、獣医師は専門家なんだから、それの基準を作って、またそれでそれに従って判断するという立場ではないのではないかという、事例ごとに判断をするというのが我々の役目というふうに考えております。

 ただ、やはりいろんな前例はあると思いますので、ぜひ、この要望書の研修の中で、そういった前例等もお示しいただければ、獣医師が判断する有効な材料になるというふうに考えまして、この要望をさせてもらったということであります。

 委員の先生方に実際診療をやっておられる先生もおられますので、もしよろしければ、そちらから具体的なご説明をいただければと思います。

【新美部会長】 じゃあ、よろしくお願いします。

【佐伯臨時委員】 獣医師会の一員でありますし、先ほど来のご質問等にもちょっと地方獣医師会、大阪府獣医師会の会長という立場でもございますので、それも含めて、ご説明というかお答えしたいと。

 まず、今、打越委員からご説明いただいた犬猫の臨床現場で虐待が疑われる例があるかというと、確かに多くはないとは思います。ただ、これは、アメリカなどで症例報告なども出ておりますが、もう既に鑑別診断といいまして、ある病気やけがを診たときに、どのような疾病を疑っていくかという鑑別診断の中には必ず入れていくべきだというふうにアメリカ獣医師会のほうなどではなっていますし、私たちも、そういう頭になってきているというのが現状です。また、そういう方が来院されるかといいますと、これは多頭飼育者も含めて、実はあるんですね。だから、いろいろと特徴はあります。複数の病院にまたがって繰り返し、繰り返しいろんな動物を入れかわり立ちかわり連れてくるであるとか、逆に、ある種の精神疾患と言われている面もありますけれども、自ら動物を病気にさせたり、けがをさせることで、それは病気の治療を積極的に受けさせることで自分の欲求を満足させるような、ある種の問題というのもあります。また、故意の虐待とは限らなくて、例えば動物にプロレスわざをかけるとか、そういうことでけがをさせてしまう例もあるんですね。ですので、そういった方に関しては、故意ではないところもありますので、当然、来られるということもあります。ですので、自ら悪いことをしている認識があってという方は確かに来ない場合もありますけれども、そういう幅広い点から言いますと、臨床獣医師がそういったものを見ていくということはあり得ます。

 ただ、それを通報するということになりますと、ここが今回の義務化のところでもちょっと懸念しているところなんですが、私たちが通報するということに関しては、患者さんの守秘義務というものもありますし、それから、私たちにとっては、それをちゃんと受け止めてくださればいいですけれども、ある意味、自分の患者さんを通報するということにもなりますので、それを無視というか曖昧に処理されてしまうと、私たちは勇気を持って通報したのに、どうなるんだろうという問題もあるかと思いますので、ここは、環境省さんについては、きちっと、それを受け止めた場合、どう考えて対応していくかというのはきっちり具体的に考えていただかないと、形骸化してしまうというような懸念を持っています。

 ですので、多くはないと思いますけれども、ないわけではないだろうと思います。現実、見逃しているところもあると思いますので、それは今後、こういう点に注意して鑑別診断を行ってくださいとか、鑑別診断の中に動物虐待を入れていくということは、今後、獣医学教育も含めて、あるいは臨床教育も含めて考えていく問題だと思います。

 あと、その前にいただいた内容についても、また地方獣医師会という、より市民の方に密接したところで啓発というところもしております。避難所等、学校の問題も先ほどご質問いただいていましたけれども、ついこの前の日曜日も、うちの会員が府内の市町村の避難訓練、防災訓練に、VMATという組織を大阪府はつくっておりますので、その制服等を着て啓発のために避難訓練に参加したりしております。というところで、実際に市民の方の目に触れるところで啓発をしております。

 あと、学校飼育動物についても……。

【新美部会長】 簡潔にお願いします。

【佐伯臨時委員】 すみません、委員会がありますので、そちらのほうで対応しておりますので、かなり市民目線のところではやっております。

 以上です。

【新美部会長】 どうもありがとうございます。

 それじゃあ、ちょっと時間、長丁場になっていますので、休憩を入れろということで事務局から来ましたので、今から10分ほど休憩を入れたいと思いますので、再開は15時15分ということにさせていただきます。

休憩 15時05分

再開 15時14分

【新美部会長】 では、10分の休憩をとっていただきましたが、ただいまから審議を再開いたします。

 ヒアリングの続きということになりますが、後半部分の最初、トップバッターとして、犬猫適正飼養推進協議会、会長の石山様からご説明よろしくお願いします。

【石山氏】 ありがとうございます。犬猫適正飼養推進協議会の会長を務めております石山でございます。この度は、基本指針の見直しに係る関係者ヒアリングにお招きいただきまして、心から御礼申し上げたいと思います。

 最初に、組織についてちょっとお話をしたいと思います。それとともに、どういう目的でこの組織がつくられたかということも一緒にご説明申し上げたいと思います。

 この犬猫適正飼養推進協議会というのは、2016年にペット関連業界8団体と、ペット関連学校2団体並びに8社の民間企業により組織しました。我々の主たる目的は、犬猫が快適に暮らせる社会の実現であります。その目的を達成するための組織活動方針はパワーポイントに記載したとおりです。

 現在、我々がやってきたことといることをまず説明します。それから過去に二度ほど大きな法改正がございましたが、それが業界に対してどういうインパクトを与えたかというお話も一緒にさせていただきます。

 実は、動物愛護管理法の改正のたびに海外のいろんな情報が飛び交い、それも完全な形で皆さんに情報を流されませんでしたので、海外の犬あるいは猫の飼育状態、あるいは飼育ガイドラインというものが大いに混乱をして伝えられています。最初にやったことは、海外及び国内の情報収集です。かなり膨大な資料を検索して、多くの資料を翻訳しました。ガイドラインをつくるに当たって、これらの資料を細かに読み込み、実際に日本ではどうあるべきだろうというようなことを検討してきました。

 海外の資料といたしましては、イギリスに非常に細かく書いたガイドラインが存在します。2013年から16年にわたり4回、ガイドラインが発行されました。それぞれのタイトルは、ここにあるとおりでございますが、全部で165ページぐらいございます。非常に包括的に述べてあります。

 イギリス以外のヨーロッパではどうだろうということで、これも我々は調べてまいりました。2015年、欧州委員会が発行した84ページにわたる詳細なものがあります。これはEU12ヶ国の商業流通における犬猫の福祉に関する実態調査であります。

そのほか、諸外国における犬ブリーダーの規制状況というのが2017年日本獣医師会誌に記載されております。さらにアメリカの状況も、ある程度、知る必要があり、アメリカの調査をいたしました。アメリカは連邦法と州法がございまして、州法では必ずしもAという州とBという州が同じではございません。これも知る必要がありますので、ミシガン州立大学の法学部がまとめ上げた資料を使用しました。

 諸外国のことは、これであらかたわかったのでございますけれども、国内の事情がわかりませんので、2016年6月に大規模な犬猫飼養調査をいたしました。これはブリーダー、ペットショップ、約2,200の実態調査です。ある地域でブリーダーが本当に適正にいろんな管理をしているかどうかという自己点検調査も行いました。2005年から2012年の間に法改正が2回ございましたけれども、その折に日本のブリーダーのポピュレーションが72%減って、そのうちホビー・ブリーダーというのは、さらに減少がすごくて80%も減ってしまいました。この原因を我々は調査する必要があるということで、実際には、ある地域で追跡調査をさせていただきました。

 海外の資料からある程度状況はわかりますが、実際に、そこに飼われている犬、あるいは管理している人たち、あるいは文化とか社会通念とか歴史とか宗教のようなことはなかなかわかりにくいので、2017年イギリス王立動物虐待防止協会の方に来ていただき、日本で講演会開催をいたしました。今後、多分問題になるであろうと思われる犬猫の遺伝子のシンポジウムも、これもアメリカから2人、日本から1人の犬猫の遺伝子の権威者を招聘しまして勉強会を開催いたしました。それから、いつも法改正のときドイツとかイギリスのことが話題になりますので、ドイツの動物保護法成立のプロセスと管理のあり方につきまして、TVTの前会長でありハノーファー大学トーマス・ブラハ教授を招聘し、教えを請いました。

 それでガイドラインの作成に入り、ガイドライン作業原案を2018年ウエブサイトに掲載いたしました。最終的には来年の春、一番右にあります第一種動物取扱業者の飼育のガイド、約108ページにたるものを刊行します。これは犬のブリーダー、猫のブリーダー、それからペットショップの犬猫の飼養管理につきまして、法にのっとって、どうあるべきかを述べたものです。我々が一番参考にしたのはイギリスの環境衛生研究所のガイドラインで、動物に関わる全てのステークホルダーが関わってガイドラインをつくり上げており、内容は非常に整っております。

 我々がこの会を立ち上げた時、どういう理由で会を立ち上げたかといいますと、もちろん適正飼養ということが主たる目的でありますけれども、前回、2005年と2012年法改正の後に、ブリーダーのポピュレーションの崩壊が起こりました。この図はなにかと申しますと、この赤のところの線が2005年の法改正の前のブリーダーの数と年間に繁殖している犬の分布図でございます。そして、2012年に法改正がありましたので2014年に同じようなデータを分析したら、この2回の法改正によって何が起こったかといいますと、ホビー・ブリーダーがほとんどいなくなってしまったということであります。一応、10頭以下をホビー・ブリーダーと定義をしておりますけれども、これはヨーロッパでも、それからアメリカの書類でも年間大体10頭ぐらいを繁殖しているブリーダーをホビー・ブリーダーと定義しておりますので、便宜的にホビー・ブリーダーは、10頭以下、10頭以上はプロということでブリーダーの定義とします。

 これがどういう理由で起こったかといいますと、実は、地方自治体のウエブサイトには、必ず書いてあるのがブリーダー「業」の定義です。「業」の定義とは、年2回あるいは2頭以上を繁殖した場合は登録が必要であるということが書いてあります。私どもが13の地方自治体のサイトを調べてみましたが、全部に記載されております。今日は掲載させていただきます。

 この年2頭ないし2回というのが本当にグローバルスタンダードかどうかということも検討する必要があったので、さらに調査をいたしました。これが、今、地球上に現存する犬の種類の大きさのバリエーションでございます。チワワと右側の犬(グレードデン)の間には約100倍の体重差がございますけれども、これも同じ種で、地球上に存在する動物では、これだけの体重差があるものは存在しません。

 それでは、このような状況を、西洋ではどのように解決しているのか?先ほど2頭ないし2回というのがございましたけれども、これを調べていくと、実は、世界中で少なくとも我々が調べた範囲では、ブリーダーの定義では出産する子犬の数で定義している国はないということがこの調査でわかりました。これは、2017年の獣医師会誌に発表されたものを一覧にしたものでございますけれども、日本は一番厳しい国で、年間に2回子犬を繁殖すると、届け出をし、許可をとらないといけないことになっています。

 2回といっても、実は、先ほどの大きな犬、グレートデンは1回に10頭ぐらい産みますので、子犬を年20頭ぐらい繁殖しても海外では登録の義務がありません。昨年の暮れイギリスでは法律が変更されましたけれども、イギリスでは、それ以前は5胎以上が登録する義務がありますが、40頭ぐらい犬が産まれても別に登録する必要はないということです。

 その次に問題になるのが、多分、今回の法改正で行われる遵守基準の中にあります飼養面積というのがどういうふうになっているのかということだろうと思いますけれども、これは今後、相当いろいろな議論を呼ぶと思いますが、これもやはり2017年の獣医師会誌の中に記載されております。それをわかりやすいようにビジュアル化したのがこのチャートでありまして、上と下では横軸の定義が違っておりますが、上の段にありますオランダ、スウェーデン、ドイツというのが、底辺のところが体高になっておりまして、体高に対して、どのくらいの面積が必要であるかということでありますが、縦軸が面積であります。

 オランダは、体高が20センチ以下の犬については1平米と、ドイツは、そんなに小さいところから始まらずに、体高が50センチ以下は6平米ということです。この図を見る限りにおいてはあまり科学的な根拠はないのではないかということで、9月にドイツからいらっしゃいましたハノーファー大学ブラハ教授に聞いたところ、科学的根拠はないと言うことです。どうやって決めるかという話になったのですが、彼の話では、これはブリーダーと社会の合意形成によってこのサイズが決まるということでありました。ケージの大きさについても科学的根拠はないかと我々も探してみましたが、見つからないのが現状であります。

 それでは、なぜヨーロッパでは大きなスペースを必要とするか、どうしてそういうことが可能であるかといいますと、ヨーロッパでは繁殖する子犬の75%がホビー・ブリーダーによって繁殖されておりまして、これが日本ではわずか7%しかいないということです。ヨーロッパのように、少数の犬を家庭内あるいは庭で飼っている分においては、別にスペースに困ることはないということであります。日本とヨーロッパでは飼育の方法が全く違います。前回の法改正によってホビー・ブリーダーが日本からほとんどいなくなってしまった現在では、家庭内での繁殖というのはほとんど無理です。

 では、実際に今回の法改正で、2021年の7月から5年間にわたって全てのブリーダーがライセンスを更新しなければいけないのでしょうけれども、毎年20%しか更新できなかったと仮定して、5年で更新が完了するわけですが、20%が事業継承ができたとすると、2040年には僅か56万頭しか残りません。これをドイツの基準に当てますと、日本ではドイツの基準に合っているブリーダーはほとんどおりませんので、この56万が19万頭になってしまいます。ブルーのラインは、過去犬の飼育頭数の傾向を時間の関数にして、犬のポピュレーションの変化をそのまま将来に延長したものですが、勿論このほかにいろいろ社会的要因がありますので、必ずしも、これが永遠に続くとは思いませんが、これくらいのインパクトがあります。

 我々はどうしたらいいかということですが、我々が調べた国の中で唯一、イギリスだけが寝るところと生活するところという区別をしております。ドイツでは6平米が全て生活するスペースとて定義されています。

【新美部会長】 時間があれですので、できるだけ簡潔にお願いします。

【石山氏】 何が適当かということであるかということですが、体高とバリケンの面積を示したものですがあります。体高と面積が公にされているのが国際航空輸送協会のチャートであります。このチャートには何が書いてあるかといいますと、犬の種類とそれに必要な面積です。これは輸送用だろうという話はありますけれども、十数時間のフライトもありますので、寝る分には特に困らないのではないかと思っております。そういう意味で、今の基準が、もしドイツのようになれば、日本からほとんど犬が消えてしまいます。もし日本がヨーロッパのようなやり方をしたいのであれば、やはり法律の枠組みを変えていく必要があるであろうということです。

【新美部会長】 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、公益社団法人日本実験動物学会、理事長の浦野様から、ご説明、よろしくお願いします。

【浦野氏】 ヒアリングをいただいてから、あまり時間がない中でまとめたので、不十分な部分が多々ありますがお含みおきください。スライドは使わず、お手持ちの資料で説明いたします。

 最初に論点1ですが、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(6)実験動物の適正な取扱いの推進」についての取組状況を説明します。論点2に現在の機関管理体制、及び最後にまとめと意見がそれぞれ示されていますが、それは最後に後ほど説明します。

 まず、講ずべき施策に関して、実験動物の適正な取扱いの推進は以下のとおりです。これについての取組状況の1ですが、3Rの原則や実験動物の飼養保管等基準の周知という点について以下に述べます。

 まず、機関ごとに実施している主な周知活動としては、1.〇〇大学(研究所)・動物実験教育訓練講習会があげられます。これは、各機関で定めている機関内規程の中の教育訓練の条項に従い動物実験委員会が周知しています。

 2.〇〇大学(研究所)・実技講習会に示すように、一部の機関では、動物の保定、採血、注射、麻酔等の技術に関する講習を実施しています。

 次は、種々の組織が実施している主な周知活動について説明いたします。

 まず、1.日本実験動物学会が実施している主な周知活動を説明します。(1)に実験動物管理者等研修会を示しました。この研修会は、主催が日本実験動物学会、後援が環境省、厚生労働省、農林水産省、文部科学省です。研修会の対象は、実験動物の管理、飼養、保管を担当する実験動物管理者、飼養者等であります。研修内容及びプログラムですが、動物実験関連法案については環境省に講師をお願いしています。2)飼育施設の環境と動物への影響、それ以下の衛生管理、飼育管理、危機管理、各種実験動物の特性、人畜共通感染症とバイオセーフティ、麻酔等、安楽死、それから遺伝子組みかえ動物と感染実験の規制については、実験動物領域の専門家が講義をしています。

 (2)ですが、外部検証促進のための人材育成プログラム教育講習会を実施しています。この講習会では、座学として以下の講義の1から9、及び模擬調査の実施と検証結果報告書作成を行います。さらに、随行員として外部検証に参加して実地教育がなされ、最終的に行われる認定試験に合格した者に対して、日本実験動物学会から、外部検証事業に関する専門員の資格が付与されます。主催は日本実験動物学会、事業主はAMED、後援は文部科学省です。対象は、外部検証を実際に行う実験動物と動物実験の専門家です。

 講義1で、動物愛護管理法における外部検証については環境省に講義をお願いしています。講義2の外部検証の意義については、文部科学省にお願いしています。講義3の外部検証に対する評価の期待ということについては、公益社団法人日本愛玩動物協会の方にお願いしています。講義4、評価概論、評価者倫理については、公共価値創造研究所の方にお願いしています。講義5、外部検証プログラムの理念、目的、概要、これ以下の講義については実験動物領域の専門家により行われています。

 (3)ですが、実験動物の外部検証等適正な動物実験の実施に関する説明会、個別相談会について実施しています。これの主催は日本実験動物学会、後援は文部科学省です。講演1ですが、これは文部科学省の方に、講演2以下については、実験動物領域の専門家により行われています。

 「2」にはNPO法人動物実験関係者連絡協議会が実施している主な周知活動を示しました。(1)に、科学的・倫理的に適切な実験動物の飼養保管と動物実験のCDの作成・提供を示しました。

 (2)に、「明日の幸せは健康から、実験動物に感謝を込めて」の冊子の作成・提供を示しました。

 さらに(3)に示すように、環境省パンフレット「実験動物の適正な飼養保管等を推進するために」の原案を作成しています。

 その他の組織として、日本実験動物協会、国立大学法人動物実験施設協議会、公私立大学実験動物施設協議会、あるいは日本実験動物技術者協会等が、それぞれごとに周知活動を実施しています。

 次に、取組状況2.飼養保管基準の解説書の作成について説明します。2015年に「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」の解説書の作成を検討し始め、研究会が環境省に設置され、2017年に完成しました。執筆者としては、実験動物領域の専門家10名、有識者7名、さらに文部科学省、厚生労働省、農林水産省がオブザーバーとなり、環境省編集で出版されました。出版と同時に、全文が環境省のホームページに掲載されています。

 取組状況3、国際的な規制の動向や科学的知見に関する情報収集について説明します。表に示しましたように、実験動物の取扱いに関する各国の制度について、環境省が最終的には2017年に作成しました。イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、カナダ、日本、そして、それぞれの国ごとの法令・所管等、あるいは行政基準・指針等々について、それぞれの国の状況を一つの表にまとめました。

 取組状況4、飼養保管等基準の遵守状況について、緊急時に対応するための計画作成状況も含め、定期的に実態把握状況を説明します。1.緊急時対応マニュアル策定のための手引を作成しました。これは、緊急時に対応するための計画作成の一助とするために、地震等に対する緊急時対応マニュアルの一例、緊急時対応マニュアル策定のための手引2018年版を作成し、国立大学法人動物実験施設協議会と公私立大学実験動物施設協議会のホームページにアップしました。本マニュアルは、阪神淡路大震災、東日本大震災、そして熊本地震から得た教訓に基づき作成いたしました。1から8まで、それぞれの項目ごとに詳細に手引は作られています。

 2.の外部検証で、2-1に実施組織について説明します。定期的な実態把握の一助として、各機関は自己点検評価を定期的に行い、それについて以下のように外部検証を実施し、その結果を可能な限り情報公開しました。外部検証の方法及び受証機関名は日本実験動物学会、日本実験動物協会、ヒューマンサイエンス振興財団のホームページ、そして各機関の外部検証の結果は受証機関のホームページに掲載されております。日本の一部の大学では④に示したAAALAC Internationalの認証を受けているところもあります。

 2-2の項目についてです。日本実験動物学会で実施している動物実験に関する外部検証は、以下の①の規定及び体制等の整備状況、及び②の実施状況についての自己点検評価について、その妥当性、改善に向けた意見を検証しています。

 2-3に仕組みを示しました。日本実験動物学会による動物実験の外部検証プロジェクトの仕組みについて、実験動物、動物実験及び外部検証等の研修を受けた専門員のピアレビューによる外部検証を行い、外部検証の報告書を親委員会が最終判断して、その結果を各機関がホームページ等で公表する仕組みです。親委員会に当たる外部検証委員会の構成は、次の①から⑤に書いたとおりです。このうちの③の評価の有識者、④の動物福祉有識者、⑤の獣医は、実験動物領域以外の方々に外部委員になっていただいています。

 2-4の外部検証を行う専門員に対する人材育成事業については、既に述べた取組状況1に示しました。

 次に、3.の情報公開です。定期的な実態把握の一助として、各機関は情報公開を行いました。情報公開を推進する施策の一つとして、ミニマム項目の設定を行い、文部科学省、国立大学法人動物実験施設協議会、公私立大学実験動物施設協議会、全国医学部長病院長会議により各機関に周知・徹底いたしました。

 4.に定期的な実態把握について記載しました。実験動物の飼養保管等の遵守状況については、各省庁からの問い合わせに対し適宜、機関ごとに回答いたしました。機関名、機関内規程の策定、動物実験委員会の設置等の主な調査結果は、以下の要領で各省庁のホームページに公表されております。このことにより、国は我が国の実験動物に関して、機関名も含む飼養保管等の遵守状況を把握しています。

 論点2、現在の機関管理体制について述べます。

 取組状況の1ですが、実験動物と動物実験に関連した規制制定の歴史的経緯の中での取組をまずお話しします。1987年、大学等における動物実験について、当時の文部科学省学術国際局長から通知され、我が国の動物実験は、当時は自主管理、今で言う機関管理の道を歩み始めました。2006年には動物愛護管理法に3R原則がうたい込まれ、この時期に合わせて文部科学省、厚生労働省、農林水産省から動物実験に関する基本指針、さらに日本学術会議からガイドライン、環境省から実験動物飼養保管等基準がそれぞれ示され、本格的な機関管理体制が構築されました。その後、動物愛護管理法を初めとする各種規制の見直しを踏まえて修正された機関管理体制により、動物実験の適正化と3Rの推進が現在も実施されております。

 取組状況2、機関管理とその中での3R原則の推進の取組について説明します。機関管理体制ですが、動物実験の倫理原則である3Rを実践するために、動物愛護管理法、実験動物飼養保管等基準、及び各省による基本指針と動物実験ガイドラインによる規制の枠組みのもとに、動物の殺処分方法に関する指針等の実験動物と動物実験に関連した法令に従い、研究機関ごとに機関管理を実施しています。これらを踏まえて、各研究機関は機関ごとに機関内規程を策定し、機関の長のもとに動物実験委員会を設置して動物実験を推進しています。

 取組状況3の機関内規程策定と動物実験委員会設置による3Rの遵守の取組について説明します。我が国における実験動物を用いた動物実験については、機関ごとに機関内規程を策定し、機関の長のもとに動物実験委員会を設置しています。国立大学法人動物実験施設協議会では、規程や関連書式のひな形をホームページで提案しています。各機関は、このひな形を参考にするなどして機関内規程を策定しております。

 3-1に機関内規程について、具体的な規程の内容を(1)から(9)に示してあります。

 次に、3-2、動物実験計画書と動物実験等の施設及び設備等の申請書について説明します。動物実験計画書に記載する内容としては、1)から9)まで順次示していますが、特に5)の3Rの遵守については、①の代替法、②の使用数削減、③の苦痛軽減について具体的に示しました。

 飼養保管施設設置承認申請書に記載する内容としては、飼養保管施設の名称、管理体制、概略(建物の構造、空調設備、逸走防止対策等)、特記事項があります。

 3-3に機関管理に関する自己点検・評価、外部検証、情報公開について示しましたが、これについては既に前述しました。

 最後にまとめと意見を述べます。これまでの歴史的な経緯の中で、動物愛護管理法、実験動物飼養保管等基準、各省の基本指針、動物実験ガイドラインによる規制の枠組みのもとに、動物の殺処分方法に関する指針等の関連法令を踏まえて機関管理体制を構築、推進してきました。機関管理体制のもとに、3R原則や飼養保管基準の周知、それから飼養保管基準の解説書の作成、国際的な規制の動向や科学的知見の情報収集、緊急時の対応策も含めた実態把握に取り組んできました。科学的観点と動物愛護の観点からの適正な実験動物の取扱い、及び適切な動物実験の実施は機関管理体制のもとに行われ、その結果、我が国のライフサイエンス研究の発展をもたらし、国際的な競争力の強化に貢献してきました。今後も、現在の各種規制のもとで機関管理体制をさらに発展・充実させていくべきと考えています。

 以上です。

【新美部会長】 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、ヒトと動物の関係学会、事務局長の花園様、どうぞよろしくお願いいたします。

【花園氏】 ヒトと動物の関係学会の事務局長を拝命しております花園と申します。

 まず、最初に幾つか写真の紹介いたします。11月25日、今朝の写真です。実は、今日のヒアリング話をいただいたときに、小学校でのふれあい教室と日程がバッティングしていて、当初、行けないとと言っていました。しかし、よくよく聞いたら午後の会議でということだったので、午前中に小学校で一仕事片づけて、そしてこの会議に出席することにいたしました。この写真に示すような感じで1校時から、小学生相手の動物を使った教室をやってきました。小学校1年生の生活科の授業なので、生課の生活科の授業として請け負っております。初等教育の中で動物を使った授業を実施しているということです。動物介在教育の実践です。

 さて、ヒトと動物の関係学会についての説明です。学会の活動開始は1995年で、学会の課題は、「ヒトと動物の現実的課題を解釈し対策を講じる」、それから「ヒトと動物の特性に関する知識を豊かにする」、そして「ヒトと動物の新しい文化を創造する」という三つです。学会員は、自然科学系、社会科学系、人文科学系、それから芸術系と、多方面の分野からいろんな人が参加していて、多方面にわたり議論を戦わせているという、そういう学会です。

 さて、それと動物観研究会について紹介します。動物観研究会というのは、ヒトと動物の関係学会に先立つこと4年前に活動を開始しています。「人の動物に対する意識や態度を明らかにする」ということが研究会の課題です。日本人の動物観を知ることは「諸外国の異文化圏の人人との思想・文化の相違を理解する上で重要である」ということで、その研究成果については「野生動物や飼育動物の管理指針にかなうであろう」という、そういう趣旨の研究会です。この動物観研究は、ヒトと動物の関係学会として非常に重要な課題であるということで、2006年よりヒトと動物の関係学会の分科会に位置づけられています。

 日本の動物観について簡単にご説明申し上げます。まず動物観の12態度類型について示します。スチーブン・ケラートという海外の研究者がさらに詳細に研究を進めています。例えば、犬をあげますと、犬を室内で飼いたいのであるならば家族的態度、犬も何かに役立たせたいのであれば犬に対して実用的態度、犬の命も人と同等であるというようなことを主張するのであれば、それは倫理的な態度という具合に分類されるます。

 この動物観の態度類型とその変容については、ヒトと動物の関係学会の前会長であった石田がかなり大規模な調査をいたしました。そして1990年代前半から2000年代前半にかけて、日本人の動物観は、より「家族的に」と変容したと総括いたしました。どういうことかというと、犬がその典型で、かつて屋外に鎖でつないで飼っておくという飼い方が一般的だったものが、室内で飼うようになったという飼い方の違いに顕著に表れています。すなわち、「イヌ・ネコ」は家族の一員であって、生活空間をともにする存在であると考えるようになりました。

 このような動物観というものは日本人の中に定着したと考えてよいのだろうと考えられ始めたときに、東日本大震災が勃発しました。私は、ヒトと動物の関係に関心があったので、そこに飼われていたはずのペットはいったいどうなったのかと気になりました。しかし全然、新聞の記事に載ってきません。これが初めての記事で、3月23日になってからです。「今、伝えたい被災者の声」という連載記事こペットのことが掲載されていました。その記事を読んでみると、「犬がいるので避難所では迷惑になると思い、がれきの残る自宅で過ごしている、大変だ」とありました。これは特異な事例ではなく、どうもあちらこちらで同様のことがあったらしい。4月4日に「犬のももちゃんがいるので避難所に行けない」という記事も掲載されました。そして、避難所に入れないペットの問題が明らかになりました。

 一緒に暮らす犬を避難所に持ち込むわけにいかないからと避難所に入らず、孤立した生活を選択する人すらいたことから読めるのは、どうも、ペットは避難所に持ち込めないというのが今の日本人が共有するコンセンサスのようであるということです。すまわち日本の動物観というのがここに露呈したというわけです。そして、環境省が「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」ということで同行避難を示しました。こういう具合に強制力でも働かさなきゃだめだろうということです。

 そして、2016年4月16日の午前1時25分、熊本地震がありました。また、避難所に入れないペット問題は再燃しました。避難所に一緒に逃げるのだけれども一緒に入らないという事態が発生しました。

 つい最近では、2019年10月12、13日、台風19号がきたときに、避難所でペット同伴を断られたという事例を幾つも聞きました。この日本の動物観を読み解く鍵は、二つある結論しております。一つは「ウチ」と「ソト」という、生活空間を水平的に2分割しているという世界観です。そして状況主義的な「郷においては郷に従う」と、自分の主義主張はさておき、「よそに行けばそこのルールに従う」という、そういう空気が支配的であるということです。

 この日本人が生活空間の分化、「ウチ」と「ソト」に2分割しているという世界観は海外の研究者が指摘です。日本人の思考様式の中に「ウチ」と「ソト」の対立概念がります。それは、行動様式にも表れています。例えば、建物から外出するときに必ず内履きから外履きに履きかえます。そして外に出かけて家に帰ってきたときに、靴を脱ぎ、手を洗います。要するに、「ソト」は汚い、「ウチ」はきれいとかという、そういう世界観があるというわけです。それは、日本人であるならば、必ず例外なく徹底的にしつけられています。

 そして、自分がいるところを中心に、きれいなところ、汚いところという同心円構造をしていると考えるのが、日本人の世界観です。そして、動物は、この世界観の中のどこかに位置づけられているということです。

 もう一つ、「郷においては郷に従う」という状況主義的な考え方があります。本音と建て前という言い方もしますけれども、全体主義的に周りのルールに従うというところが非常に強く働くということです。これは日本人の美徳でもあります。

 例えば、それは日本語の一人称に表れています。英語、ドイツ語、フランス語は、どんな状況でも普遍の自己で一人称は一つです。しかし日本語は実にいろんな一人称があります。それを状況によって使い分けています。一人称にも状況主義が現れています。

 なので、日本の動物観に作用する力である状況主義を考えると、「家族的に」と変容したのは、あくまで「日本人個人の動物観」であって、日本全体の動物観は、そういうふうにまだ至っていないと、整理されます。

 私はこの日本の動物観を「すみ分けの動物観」という表現しております。まず、「ウチ」と「ソト」の空間弁別が徹底しています。動物は、そのどこかに位置づけられています。その場に存在する主体は、能動的にというよりは、どこにいるかということで受動的に特性が決定されます。そして、動物に対しては、「すみ分けるべきである」という強い意識があります。

 そして、この日本の動物観には地方変異があると考えています。アンケート調査をもとに主成分分析という手法を使って分析した結果です。野生のクマ、野生のキツネ、野生のイルカと平面座標に分布しています。赤が本州で青の四角が北海道です。同じ動物に対しても、微妙に違っています。

 これを整理いたしますと、まず、「ウチ」と「ソト」の軸上では、ペットは「ウチ」の動物として位置しています。その対局の「ソト」にいるのは、床下のネズミです。床下のネズミに近いところに、肉食のブタ・ウシ、そして、野良イヌなどが位置づけられています。

 概念的に整理して導いた「すみ分け動物観」ですが主成分分析という方法でも同様の結果を得られたということで、間違いなく日本人の動物観の中には「ウチ」と「ソト」という枠組みがあると考えています。

 そして、「ウチ」と「ソト」のX軸に直行するY軸を見ると、一番上側に野生のクマ、一番下側に肉用のウシ、肉用のヒツジ、食用のブタと並んでいます。これを総括するとY軸は、「自由」「不自由」軸と解釈されます。要するに、日本人の中は、動物については「ウチ」の世界にいるもの、「ソト」の世界にいるものと分けた上で、それぞれの場所でその動物が「自由」なのか「不自由」なのかという、そういう捉え方をしていると解釈できます。なので、ヒトと動物の関係とかということを考えて理想的な共生を目指すならば、例えば、日本人の意識の中で不自由な存在だと思われている動物を、自由な存在であるようにすることだと考えます。

 さて、この動物観というものは、なかなか変わらないというお話をしました。しかし、やりようによっては変わることを説明します。ある子どもによる犬の絵です。犬が怒っている絵です。明らかに犬に対して嫌な思い出があったと読めます。もう1枚の犬の絵です。犬が笑顔で、その脇に描かれた子どもも笑顔です。これ、実は、同じ子どもが描いた犬の絵です。

 この2枚の犬の絵の間に何がったかというと、小学校の授業の中での「犬とのふれあい体験」です。たった1回の授業の体験で、劇的に動物観が変わったということが端的に表れている絵です。このときに大事なのはその授業体験の場にいる大人です。教育者としてその場でふるまう大人の動物観です。そして大事なことは、「ことば」を過信しないことです。「いのちある対象」とこどもを二人称の視点で向き合わせることが大切です。そしてその状況をどう演出するかという、教育法の問題です。教育的なメッセージを発する送り手からの十全なコミュニケーション、言い換えると嘘がないことが大事です。子どもは嘘に敏感です。嘘がなければ、そこに確かな教育効果が生まれます。この瞬間、時間の量ではなく質の問題です。この瞬間に、動物に対する印象が刷新するということです。

 動物にふれあう体験の効果については様々な観点から検証しています。これまでに動物に触れることで動物に対するイメージが「好転する」・「具体的になる」・「記憶に長く残る」ということを明らかにしています。この動物介在教育は、初等教育課程に導入できます。生活科の学習指導要領の中の目標に、「具体的な活動や体験を通して自然との関わりに関心を持ち、自律の基礎を養う」とあります。その内容には「動物を飼って変化や成長の様子に関心を持ち、それらは生命を持っていることや成長していることに気づき」と、生き物への親しみを持ち大切にすることができるようにするということが書いてあります。

 これは、動物愛護教育そのものであると読めます。それが学習指導要領の中に記載されているので、学習指導要領を順守するだけで動物愛護教育はできると思います。実際に生活科の教科書を見ると、「生き物と仲よし」という文言とともにウサギの写真が掲載されています。そして、「もっと仲よしになれるかな」とモルモットの飼育をしましょうという単元が設けられています。

 ただ、問題は教育現場の先生たちの動物観です。先生たちは必ずしも、動物のことをよく理解していません。ときにあからさまに動物に対して否定的な態度の先生もいます。そうすると、先生の影響は絶大なので、子どもは素直に先生に同調して「先生が怖いというんだったら怖いのかな」、「先生がだめと言ったらだめなのかな」と影響されてしまいます。だけど、学習指導要領に「動物を飼って」と書かれているので、そのような先生でも動物を扱わなければならない場面が発生します。そこが問題です。そのような実情なので動物介在教育の出前授業に対する要請が非常に多いのが現状です。その要請に応えているうちに、社会が必要としている人材というのは、動物と触れ合いのできる先生と保育士だということに気付かされました。

 そういうことで、私の勤める大学では、動物と触れ合いのできる職員の養成を始めました。

 ただ、教員養成システムの問題として、教員の質の均質化ということが枷となり教員養成課程の科目に「動物介在教育」の配置は認められていません。教職課程設置のときに許可されましたが、その後の実地視察で「動物介在教育」の配置は認めないと通達をうけました。しかし、依然として支援件数は多いのが現状です。

 支援件数を例示するとこんな具合です。私は、大学の教員ですが、完全に在野の人間と化しています。毎日のように教育現場に出かけ、子どもに対して動物介在教育を実施しています。11月だけで、これだけの件数、10月もこれだけの件数がありました。小学生たちの前でこれだけの件数の動物ふれあい教室を実施しています。これが毎年です。それだけ動物介在教育は世の中に求められています。そして、教育で動物観は変わるということを強調しておきます。皆さんには「害虫」の概念があると思います。この「害虫」という概念が日本に定着したのは、明治維新後です。作物に被害をもたらす昆虫類を「害虫」とみなすようになったのは、初等教育の成果であるという史実があります。 動物介在教育を初等教育に導入するために必要なことは、ハードルが高い順に言うと、「教職に関する科目群の中に動物介在教育の配置を認可する」、「シラバスの中に『動物の活用法を含める』という一文を入れる」です。最近になって文部科学省は「ICTの活用法を含めること」ということを現行の教科教育法の全てに入れるように指示しています。それと同列に「動物の活用法を含める」と指示するのは容易いことなのではと考えます。

 また、現行の生活科、道徳、理科、国語の教科書を見てみると、さまざまな単元で動物が教材として扱われています。そこで、動物の愛護・福祉の概念定着と動物の共生実現をねらいとした学習指導案モデルを作成して、先生たちに授業をしてもらう方法も考えられます。学習指導案があれば先生たちは授業ができるはずです、このように、動物愛護・福祉概念の定着と動物との共生社会の実現を目指して環境省と文部科学省の共同ができれば良いのではと思っているところです。

 最後に、今日のふれあい教室をやったときに子どもが書いた作文を紹介します。誤字がありますが、そのままを紹介します。「犬のことを最初は怖いなと思っていたけど、餌を上げたりしたから仲よくなれてうれしかったです。また犬と遊びたいです」。これが子どもの感想です。

 ご清聴ありがとうございました。

【新美部会長】 どうもありがとうございました。

 それでは、後半、三つの団体から説明をいただきましたが、これに対しましてご質問などありましたらご発言をお願いします。

 浅野委員、よろしくお願いします。

【浅野臨時委員】 浦野先生にご質問です。動物愛護管理法の観点から言いますと、実験動物が適正飼養を確保されているかという、それが問題になってくるわけですけれども、そのときの手続保障として先生のご説明の中に、第三者委員会的なものとしてだと思うんですけど、外部検証という仕組み。それから、実際に動物を扱っている技術者ということになるのかと思うんですけれども、そういう方に対しての実験動物管理者研修とか、そういうことがあるというのは、今回、ご紹介いただいてわかりました。

 その手続的な保障は非常に大事だと思うんですけれども、実際に自主基準じゃなくて機関基準になったといっても、動物取扱業には入っていないので動物愛護管理法上は動物取扱責任者もいない状態なので、実質、機関の中での自主基準という形だと思うんですけれども、そういう中で外部の仕組みと技術者というのが100%、例えば動物を扱う人はその技術協会に入っているとか研修を受けて一定の認定の免状を持っているとか、そういうことがあるのかどうか。全体の実験動物をやっている中で、どれぐらいの割合が外部の検証をやっていたり、あるいは技術者を担保している仕組みがあるのかということが一つ、お聞きしたい。

 それから、もし、最後に検証をしたときに、当然、ミスとか守られていない場合、あるいは逆に、良い、進んでいる取組をしている場合というのがあると思うんですけど、守られていない場合のペナルティーと再発防止策というのが情報公開というところが最後にあったんですけれども、そういうところの中で再発防止策やミスの事例なども公表されているのかどうかという辺りもお聞きしたいんですけど、よろしいでしょうか。

【新美部会長】 じゃあ、よろしくお願いします。

【浦野氏】 まず、適正な飼養という、何をもって適正な飼養と判断するのかというのが非常に重要なところです。ただ、適正な飼養に関しては、専門的な知識がないと判断し難いため、ピアレビューで実施することが重要と考えています。そこで我々は実験動物学に関する専門的な教育訓練を受けたピアレビューの体制をつくり上げて実施しているという状況があります。

【浅野臨時委員】 その方たちが扱っているというのは、先生が把握している動物実験施設の中では、100%、何か研修を受けないと動物を扱えないということになっているんですか。

【浦野氏】 飼育管理を行う技術については、国家資格ではありませんが、日本実験動物協会が2級、1級という専門性の高い資格制度を構築・実施しています。この資格制度に基づいて教育訓練及び試験を実施して2級、あるいは、もう一つ上のランクの1級を授与するという資格認定を実施しています。

【浅野臨時委員】 取得率の把握などは、先生のほうの会ではやっているんですか。

【浦野氏】 2級、1級ですか。

【浅野臨時委員】 そうですね、はい。

【浦野氏】 本日は手元に資料が無いので詳細は分かりませんが、かなり高い割合で2級技術者を取得していると思います。1級技術者についてはさらに上のレベルになりますのでさらに低い率になるかと思います。

【浅野臨時委員】 そうすると、日本においての動物実験の施設の中では、ほぼみんな取っているという理解で、国民としては、よろしいのでしょうか。

【浦野氏】 それもさまざまな施設があって、大学を中心にして話をしますと、我々のような実験動物の専門家がいる大学もあれば、例えば、動物実験の定義に教育ということが入っているので、教育する時にしか実験動物を取り扱っていない大学もあり、その場合にはなかなか専門家を雇用できるような状況ではないということもあります。そのため、動物実験施設で飼育管理に係る人は全て資格を有しているかと言うと、ちょっと難しいというのが現実かと思います。

【浅野臨時委員】 じゃあ、第三者委員会的な外部検証というところは、どれぐらいの取得率なんでしょうか。

【浦野氏】 外部検証は、大学等を中心にした機関数でみると、大規模に動物実験を実施している大学はほとんど受けていると思います。

 しかし、例えば、教育の時にしか動物実験を実施していないような小規模の場合も、機関数としてはひとつの機関であるため、文部科学省の調べで我が国の大学等の動物実験を実施しているのが400から420ぐらいの間であるとの報告から考えると、現時点で60%くらいが外部検証を受けたのではないかと思います。 ただ、最初に言ったように、大規模に動物実験を実施している大学の全ては外部検証を受証済みで、あとは、小規模に実施している大学が残っていると判断されます。そこで、全ての大学が外部検証を受証することをめざして、文部科学省後援による、実験動物の外部検証等適正な動物実験の実施に関する説明会と個別相談会を実施している状況です。

【浅野臨時委員】 すみません。最後の情報公開なんですけれども、ここは何かミスがあったときの再発防止策とかペナルティーの情報公開はしていらっしゃるんですか。

【浦野氏】 情報公開は、100%の機関が実施していると思います。ただ、情報公開の内容にばらつきが生じないようにするために、先ほど説明しました情報公開のミニマム項目の設定項目の設定を行い、種々の組織により周知徹底が図られています。

 情報公開をしていない場合にペナルティーを課すかという点については、明文化はされていません。ただ、我が国は実験動物と動物実験については、情報公開や自己点検評価等を含めて機関管理体制という仕組みで推進してきているので、その仕組みが守られていない場合には、例えば、文部科学省等だったら科研費等の支給が受け難くなる事態につながる可能性もあります。これは研究者にとってかなり大きな問題で、一般の方はちょっと理解しにくいかもしれませんが、仮に研究費が得られないような事態が起これば、結果的に研究者としては研究の遅延につながるダメージとなり、ある意味でのペナルティーになるかと思います。なお、情報公開をしていない機関については、その実施を図るために、外部検証を実施した際に情報公開をすることを指摘、あるいは文部科学省後援による説明会と個別相談会において指導助言をしています。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。ほかに、どうぞ。

【水越臨時委員】 犬猫適正飼養推進協議会の石山さんに質問いたします。今回のヒアリングの中では、数値基準に関してのご意見が中心でしたが、今回の法改正での8週齢規制についてのご意見等はなかったのでしょうか?特に、現在、生年月日に関しては、JKCでは性善説によるブリーダーの申告により、申告された生年月日が血統証につけられると聞いております。今回、休憩前の共生を考える連絡会のほうでも、改ざんの懸念についての発言もありましたけれども、それの防止などについてのご意見等がありましたらお聞きしたいというふうに思います。

【石山氏】 我々のやっている中では、生年月日の改ざんについてのことはほとんど今のところ触れていないんですけども、少なくとも今、JKCの血統証の発行においては、生年月日がちゃんと記載されていないといけないということでありますので、JKCさんのやり方をとりあえず、我々は信用してやるしかないということであります。

 JKCのですね、やっていることを我々が変えるわけにはいきませんので、とりあえずJKCのほうでその辺は明確にしていただくというふうなことしか今のところはできないと思います。

【水越臨時委員】 協議会のほうで、JKCに対してそういうお願いをするなどといったこともないということですか。

【石山氏】 今のところはやっておりませんけれども、いずれやらなければいけないというふうには考えております。

 じゃあ、どういうふうにしてそれを担保するかというのはこれからの協議事項であるし、また、マイクロチップなんかは、どんどん導入されてくるとですね、トレーシングの問題というのは、前よりも一段と厳しくなりますので、その点を考えると前のようなやり方ではひょっとしたらだめなんではないかというふうに思います。

 それから、台帳の記入をもきちんとしないと、整合性が取れなくなったりしますので、その辺のことも踏まえてですね、今後はやはり対策を練っていかないといけないんではないかと。しかしながら、JKCでは性善説はというふうに聞いております。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。あと、ほかに。

 それじゃあ、太田委員。

【太田臨時委員】 ホビー・ブリーダーが2005年の法改正、2012年の法改正によって、減ったように見えるんですけど、それは環境省は知っていますか。

【石山氏】 かつて2度ほど環境省の方は否定されましたけれども、我々は追跡調査までやりました。実際に何が原因だったということを無記名で記入していただいて、追跡調査の結果では、一番の原因はやはり帳表類を全部埋めなきゃいけないと、それで、ブリーダーの方の平均年齢は65歳ぐらいなんで、その方々に一気にこれだけの帳票類をまとめろということになりますと、ホビー・ブリーダー方はですね、それならやめたほうがいいというのが圧倒的な意見でございます。

【太田臨時委員】 わかりました。それと、この3-13の犬の飼育頭数の将来予測の中で、犬がどんどん減っていきますよね。これの原因はブリーダーが減ったこともあるんですか。

【石山氏】 いや、ここではちょっと述べておりませんけれども、これはサプライサイドの問題を討議したもので、実際にはデマンドサイドの話もしないと全体の絵が見えないんですが、デマンドサイドはですね、ある意味人口動態が相当影響しまして、今55から65の人たちが一番たくさん犬とか猫を飼っておりますけれども、70歳台になりますと60代の75%、それから80歳台になりますと、これは我々が直接調査したわけではないんですけども、コーホートの研究のデータを見ますと、さらに70%ぐらいになっている。

 ですから、徐々に高年齢化が進むと飼育頭数は少なくなっていくのと同時に、60代から地方自治体では犬とか猫を飼うことを奨励しませんので、この辺も影響をしていると思います。

 ですから、全体のピクチャーを見るにはデマンドとサプライの両方の要因を明確にしないとなかなか予測はできないと。ただ、これは単に便宜上、時間の関数で線を引いただけで、本当はこういうふうになるかどうかは、20年先は私はわかりませんけれども、便宜的にこういうふうに図をつくっただけであります。しかしながら、日本で、一番ヨーロッパで緩いオランダの基準をクリアできる人たちというのも86%以下なので、オランダの基準が導入されてもブリーダーの数はものすごい勢いで減っていくと思います。値段も現在、2015年から上がり始めて、2010年あたりの価格に比べると3倍になっておりますので、当然需要は減ると思います。

【新美部会長】 ほかに、ご質問がございましたら、どうぞ。

 それじゃあ、どうぞ。山﨑委員。

【山崎臨時委員】 あの、浦野先生に伺いたいのですが、この動物実験計画書に記載する内容というところで、5番目ですけれども、3Rを守るための計画書への記入ということになっておりますけど、3Rというのは実際に動物愛護管理法の中に何年か前に入りました。それで、一応動物実験の中では守られるべき事柄として、一応周知徹底されていると思います。

 ただ、先ほど私が申し上げましたように、今年その3Rの提唱者のRussell&Burchの60周年記念であるというところにかんがみて、3Rの順列をもう少し国民に徹底して、理解していただく必要があると思うのです。Russell&Burchが言っていたことの中では、まず、代替法の開発に最も投資、研究を進めていくべきであるというところが3Rの一番最初の土台にあったと思います。それから、数を減少させる。そして、最終的にそれが不可能であれば、実質的にはやり方の福祉を考えていくという。

 それで、今まで連絡会でもちょっと触れてまいりましたのは、代替法というのはそんなに何千、何万もあるわけではございませんので、少なくてもOECDレベルのガイドラインに載っている代替法だけでもかなり簡単に把握できると思います。これを義務化するということに関しては、先生いかがでしょうか。

 たしかに、研究者の方は徹底して自分の実験に代替法があるかどうかを調べられていると思うのですが、それも先ほどのブリーダーの話じゃないですけれど、性善説的なところがあるような気がします。本当に代替法があるかどうかというところを徹底してチェックしなければいけないという、その義務を法的に課すことに関しては先生、どう思われますでしょうか。

【浦野氏】 代替法の開発に関する予算配分については、これはアカデミアの問題ではなく国の問題と思います。

 代替法の義務化については現在、各研究機関等は代替法を含めた3Rに関してその全てを遵守するという方向で進んでいます。ただし、こ動物愛護管理法の中で代替法を義務化して規制することの是非は、法律学者も含めてきちっと議論していただきたいと思います。

 実験動物領域に所属する立場での個人的な考えですが、動物愛護管理法はもともと動物への虐待防止に関する理念法として規定していると伺っています。そこで実験動物への虐待防止については、3Rのうちの苦痛の軽減という点についてのみ規制していると思います。これに従い、苦痛の軽減を具体的に規制するために、実験動物飼養保管基準が制定されていると判断します。このような法体系に基づいて考えると、残りの2Rについては虐待防止というよりも、限りなく動物実験の適正化に関して規制している内容なので、動物愛護管理法の中で義務化をするべきではないと思います。そこで、実験動物の適正な利用については、動物愛護管理法とは別の枠組みの中で規制する体制、すなわち機関管理体制を構築して、残りの2R及び苦痛軽減も含めて、文部科学省、厚生労働省、農林水産省の3省から告示されている基本指針、及び日本学術会議から示されている動物実験ガイドラインによって規制しています。このような枠組みで規制している機関管理体制の中で、3Rを適切に推進しているのが現状です。

 以上のことから、動物愛護管理法の中で代替法を義務化することについては、私自身は大いに疑問を感じます。さらに、日本の科学技術の発展のために長い年月をかけて機関管理体制を構築し、適正な実験動物を利用して適正な動物実験を実施して多くの成果をあげてきた実績からしても、しっかりと検討して判断していただきたいと思います。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。

 今の関係で、代替法があるかどうかということを義務づけろと言われたら、法律家としてはかなり逡巡します。代替が可能かどうかの判断は非常に難しいと思うんですね。言わんとしますと、全部、代替可能だと言うし、こういうことを実験するのにはこういう代替可能性があるというふうに的を絞りますと、本当に代替可能かどうかというのはかなり判断が難しくなりますので、義務化というのは法律家で考えると、本当にできるかなというのがちょっと心配になります。いいか悪いかはではなくて、技術屋としてそういうためらいを感じます。

【山崎臨時委員】 ソフトな話でなくて、既にOECDガイドラインに載っているものと、それから、日本の厚生労働省のJaCVAM、いわゆる代替法検証センターそのものがかかわって世に出しているものもございます。これは、アバウトな話ではなくて、特定のものに関してはこういう方法で代替できるということが確立されているものが多少はあるという話です。それは明らかに世界的に認められているものでございますので、私としてはその限られた中であるからこそ、今義務化ができるのではないかと思ったわけです。限られているからこそできるのではと考えます。そのリストが膨大なものであれば確かに大変かもしれませんけれども、リストそのものがさほど膨大なものではありません。今だと、この実験に関しては、あるいはこの結果に関してはこういった代替法があるということを基本的には科学者の方々は皆さん承知しておられると思いますので、そこに関しての義務化というのは素人考えではございますが、私としてはさほど難しいテクニカルな意味で難しいことではないと思います。少なくとも、厚生労働省の国立医薬品食品衛生研究所の中のデスクがあるJaCVAMの中においては、そういった専門的な情報というのは日本でも先進国として相当蓄えているということは事実であります。私自身、JaCVAMの顧問委員会に座っておりますので把握しております。

【浦野氏】 先ほども申し上げたように、日本は管理体制という仕組みの中で動物実験を実施しています。

 機関管理体制の中で重要なことの一つとして、各研究者から提出される動物実験計画書の内容の適否について、各機関で規定している機関内規程に従って、各機関で設置されている動物実験委員会が審査し、その結果の最終的な判断を機関の長が行うという仕組みがあります。この審査に偏りがあっては不適当という観点から、動物実験委員会の構成メンバーとして、動物実験に関して優れた識見を有する者、実験動物に関して優れた識見を有する者、その他学識経験を有する者の三者で構成されており、一つの動物実験計画書に対して異なる立場の異なる観点からの審査を実施しています。

 その中で、代替法を含めた3Rについても、それぞれの委員が、それぞれで培った識見に従って判断しています。さらに、これらの一連の行為に問題が無かった否かについて、外部検証という仕組みでピアレビューしています。

【新美部会長】 これはまだ、議論を始めますとまだまだ深くなると思いますので、これくらいにしておきましょう。

 ほかにご質問等、はい、どうぞ。

【武内臨時委員】 環境省に質問なんですけど、一つは畜産技術協会みたいなところが今回、入っていないのはなんでかというのが1点と、あと、ちょっと虐待の通報義務に関してなんですけども、もし、これは本当にそういうふうにしていくとすると、やっぱり環境省のほうで虐待としつけの違いみたいなものを扱っていかなくちゃいけないような気がするんですけど、そういう覚悟でいくつもりなのかどうかをお聞きしたいと思いますが。

【長田動物愛護管理室長】 まず畜産ですけれども、ヒアリングの対象に今回、畜産の方を入れなかったというのは端的に申し上げますと、今回、ヒアリングでお声がけをしましたので、昨年の12月に審議会でおまとめていただいた論点整理の中で、重点的なテーマとされてきたこと、それから、今回の動物愛護管理法の改正の中で大きな変更があったもので基本指針等の関係が深いものを限られた時間の中でできるだけ多くの方に意見を伺おうということで、このようにさせていただいたということでございますので、当然、その産業動物の取り扱いについても基本指針の中では取り上げていくつもりでございます。

 それから、虐待については大変難しい問題があると思っておりまして、具体的な行為とやはり目的と、結果としてどういう事象が生じたかとかいう中で、最近ご指摘のように、飼い主の方はしつけだといっているけれども、周りの方が虐待だというふうに受けとめるというケースがたくさんあるという認識は持っています。また、その中にも、一般個人の飼養から訓練のあり方まで、非常に幅広い事例があると思っていまして、虐待に当たるか当たらないかについては、あまり安易にしっかり整理しますと申し上げにくいところがありまして、と申しますのは、まさに刑事罰として最終的な判断というのは司法でなされる部分がありますので、当然所管省庁として一定の解釈は示していかないといけないという認識はあるんですが、やはり個々のケースを蓄積していく中で、法の第44条に定める虐待に当たるか当たらないかということは判断をしていかざるを得ないというふうに思っております。そういった観点からはまずは、その個々の判例の蓄積等をしっかりやっていくということが重要だと思っていますし、あわせて獣医師会さん等には科学的な観点からの診断というものを研修もやって自治体職員にもそういった臨床の経験も含めて、さまざまな知見を伝えるようにはしていますけれども、最後のところは判断が非常に難しいというところで、まずはその情報集積を進めたいというふうに考えております。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。

 時間もまいりましたので、とりあえずここまで質疑、応答は終わりたいと思います。今後、今日出たようなご意見を踏まえて基本指針の見直しを進めていただきたいというふうに思います。

 それでは、残り議事(3)のその他というのがございますので、事務局からよろしくお願いします。

【事務局】 事務局でございます。その他についてなんですけど簡単にご説明したいと思います。

 資料3-1から5までが該当する資料でございます。今月11月7日に二つの政令を公布させていただきましたことをご報告いたします。

 1点目は、資料3-1、施行期日政令でございますけれども、これは今回の改正の動愛法、3段階、施行となっておりますが、その第1段施行として来年の令和2年の6月1日を1段階目の施行日とするということを規定したものでございます。

 続きまして、資料3-2でございますが、もう一つの政令でございます。

 こちらは関係政令の整理及び経過措置に関する政令というふうに銘打ってございますが、主な内容としましては、2点ございます。

 1点目は、今回の改正動物愛護管理法によって政令委任されていたところで、動物の帳簿の備えつけの取り扱い、こちらも政令で規定することとなっています。

 この1点目のご説明について補足的に説明したものが1枚おめくりいただいた別添1、横紙になっている表でございます。

 今回、改正後、義務としてかかる範囲は、この別添1の赤枠のエリアでございますけれども、今回、公布した政令によって黄色で塗っております、政令で定める取り扱いとして譲受飼養業、こちらは例えば、老犬老猫ホームのような形でございますけれども、こちらを政令で規定したというところでございます。

 この政令のもう1点の改正事項は、特定動物、今回、交雑種が新たに規制をされるとともに、愛玩目的での使用が禁止されたところでございますが、こちらは補足する資料としては別添2のところで、こちらも横紙で表が2段掲載されておりますが、上の段は改正法の附則で経過措置が規定されているもので、下の段、今回、その交雑種が新たに規制されたことによって、今、現に交雑種というものを飼っている人たちが、その法律の施行日、先ほど申し上げた令和2年6月1日ですけれども、こちらの施行日が来た後も継続的に飼養ができるような形で経過措置は置くという意味で、このピンク色に塗っております施行後のところで事前の申請を可能にして、都道府県も事前に許可を可能とする、こういった手当をしたところでございます。この特定動物のこの経過措置に係る部分は令和2年の3月2日から施行させる予定でございます。

 資料3-3以降は、詳細な説明は省略をさせていただきますが、この政令の意見募集、パブリックコメントを行ったその結果を掲載しております。意見提出者数は676名、意見の述べ件数は1,814件となっておりまして、該当する意見については、それ以降に回答を掲載し、その他意見についても参考までに一覧にしてまとめておりますので、ご参照ください。

 報告事項については以上でございます。

【新美部会長】 はい、ありがとうございます。

 報告でございますので、格別の質問等があればいただきますが、そうでなければこれで終わらせたいと思いますがよろしいでしょうか。

 はい、じゃあどうぞ。

【浅野臨時委員】 今のことじゃないんですけど、すみません。施行日が迫っているので、1点だけご意見をいたします。

 前回の参考資料2の愛玩動物看護師法に基づく指定試験機関に関する省令案というのをいただいているんですけど、そこで私も前回ぱっと見て、そこまでは見落としてしまったんですけども。具体的には試験委員と科目で、愛護が抜けているので。愛玩動物看護師の役割というのは、さっきアニマルリテラシーとか一般教養課程に入れるという話もありましたけれども、その共生社会、その一般の飼い主に対する指導、助言というものも入っているので、人と動物の関係学とか、動愛法にかかる部分というのが科目として当然必要なんですけれども、これが試験委員の要件という(7)というところで抜けている。愛玩動物の看護とその適正飼養科目だけなので、ここは動物愛護管理法令関連とか、人と動物の関係学というのはちょっと視点を入れていただきたいということを1点だけ、追加で言わせていただきます。

【新美部会長】 ご要望ということでご検討をいただければというふうに思います。

 それでは、私の進行すべき議事は本日全て終了いたしましたので、皆さんのご協力を感謝いたしますとともに以後の進行は事務局にお返しします。

【事務局】 委員の皆様におかれましてはご多忙のところ長時間にわたりご議論いただきましてありがとうございました。また、ヒアリングをいただいた関係者の皆様、ご説明、質疑応答ありがとうございました。

 次回の部会でございますが、12月6日、金曜日の13時30分から、この環境省第一会議室で開催する予定でございます。

 今回、ヒアリングをさせていただき、ご意見をいただきました基本指針の骨子案、また、改正動物愛護法にかかわる改正省令等の考案についての議題を予定しておりますので引き続きよろしくお願いいたします。

 以上をもちまして、本日の部会は閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。