中央環境審議会動物愛護部会 第48回議事録

1.日時

 平成30年7月4日(水)10:00~12:00

2.場所

 三田共用会議所1階 講堂

(東京都港区三田2-1-8)

3.出席者

 新美 育文  中央環境審議会動物愛護部会長

 松本 吉郎  委員      浅野 明子  臨時委員

 打越 綾子  臨時委員    太田 光明  臨時委員

 金谷 和明  臨時委員    木村 芳之  臨時委員

 田畑 直樹  臨時委員    西村 亮平  臨時委員

 藤井 立哉  臨時委員    山口 千津子 臨時委員

 山﨑 恵子  臨時委員    

4.議題

(1)動物愛護管理をめぐる主な課題への対応について

(2)その他

5.配付資料

資料1   動物愛護管理をめぐる主な課題検討スケジュール(予定)について
資料2   動物愛護管理をめぐる主な課題への対応について

参考資料  第47回中央環境審議会動物愛護部会(資料3-1)

資料3  「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」の一部改正に伴う動物愛護管理法の改正について

6.議事

【事務局】 定刻となりましたので、第48回中央環境審議会動物愛護部会を開催させていただきます。

 本日、当該部会の委員、臨時委員17名のうち、現在、松本委員がまだ遅れておりますが、現時点で11名のご出席をいただいておりますので、規定の定足数を満たしておりまして、本会は成立しております。

 続いて、お手元にあります配付資料の確認をさせていただきたいと思います。2枚目の裏面に配付資料一覧というのがございます。まず、本日の議事の1、資料1、1枚紙のスケジュールについてという1枚。それから、資料2として、ホチキスどめの動物愛護管理をめぐる主な課題への対応。そして、あわせてホチキスどめで参考資料として、前回、部会における資料3-1を示してございます。これが議事のセットとしてあります。

 それから、最後にホチキスどめ資料3として、動物愛護管理法の改正に関する資料がございます。それからお手元に、動物愛護管理法の法令基準を示した青い冊子と前回、第47回の部会の議事録を参考資料としてお手元にあります。

 ご確認いただき、資料に不備等がございましたら、事務局にお申し出いただければと思いますがいかがでしょうか。

 なお、本部会の資料、それから議事録については、後日、環境省のホームページにおいて公表されますことを申し添えます。

 それでは、開会に当たり、自然環境局長の亀澤より、ご挨拶を申し上げます。なお、亀澤は別件公務のため途中退席を予定しておりますが、あらかじめご了承願えればと思います。

【亀澤自然環境局長】 皆様、おはようございます。本日は大変お忙しい中、動物愛護部会にご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

  本日、議題として、動物愛護管理をめぐる主な課題への対応についてというのを用意しております。前回までにご議論いただいた内容等を踏まえまして論点を再度整理いたしましたので、用意いたしました事務局案をもとに、課題ごとの論点の整理をさらに深められればというふうに考えております。

 なお、この主な課題につきましては、今後、法に基づく基本指針を改正する際に活用していきたいというふうに考えておりますので、本日は、細かいところも含めましてお気づきの点等についてご助言・アドバイス等をいただければ幸いでございます。

 本日も限られた時間ではございますけども、忌憚のないご意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局】 それでは、この後の議事進行につきましては、新美部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【新美部会長】 皆さん、おはようございます。

 それでは、早速、これから議事に入らせていただきたいと思います。本日の議事でございますが、先ほど局長からも少し触れられましたけれども、議事次第にありますように、動物愛護管理をめぐる主な課題への対応についてを審議事項としております。これまでの第44回から第47回の部会を通じまして、検討・議論していただきました結果やご指摘を踏まえまして、今後の動物愛護管理基本方針の改定作業に反映していくことなどを念頭に置きまして、今後、9月までに3回の部会を用意しまして、この大きなテーマごとに、集中的に論点整理や対応の基本的な考え方について、皆様方にご議論いただくことを予定しております。本日は、その第1回目という位置づけでございますので、よろしくお願い申し上げます。

 なお、本日は、そのほかに報告案件1件がございます。

 それでは最初に、議事であります動物愛護管理をめぐる主な課題への対応についてから、そのうちの動物愛護管理をめぐる主な検討課題スケジュールにつきまして、事務局からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【事務局】 それでは、資料1をご覧ください。主な課題のスケジュール(予定)について、記載しております。

 本日は、前回までの主な課題、五つのテーマでやっていただいたうちの1番と3番について、行政が果たすべき役割と飼い主責任のあり方について、資料1に書いてある項目についてご議論いただきたいと思っております。

 次回、7月18日につきましては、残り、今回のテーマの中でも災害時対応と学校飼育動物、ちょっと時間の関係で次回に回させていただきました。それ以外に、三つのテーマ、動物取扱業、動物愛護と管理の考え方と人と動物が共生する社会について、ご議論いただきたいと思っております。

 それを踏まえまして、8月に、まだ方法等は固まっていませんが、自治体の方々に深く関わることがたくさん入っておりますので、意見聴取の場を設けたいと思っております。

 9月に、もしくは8月になるかもしれませんが、次の動物愛護部会において、ご議論を踏まえた論点整理をさせていただいて、基本指針の改正等に反映していきたいと考えております。

 以上です。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 ただいまご説明のありました今後のスケジュールや本日の議事の進め方につきまして、あるいはテーマにつきまして、ご質問あるいはご確認したい事項がございましたら、どうぞご発言をお願いいたします。

 よろしいでしょうか。また議事を進めていく中で、ご質問とかご確認をしていくこともあり得るかと思いますので、とりあえずこのスケジュールに従って今後、議論を進めていくということと、本日のテーマ、二つ大きなテーマがございますが、それをご議論いただくということで、審議を進めていきたいと思います。

 それでは、本日の議題のうちのはじめにとテーマ1、行政機関が果たすべき役割、行政機関と民間との連携のあり方につきまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【則久動物愛護管理室長】 では、動物愛護管理室長の則久でございます。よろしくお願いいたします。

 お手元の資料2のほうでご説明をさせていただきたいと思います。まず、めくっていただきますと、最初に目次がついておりますが、今日はローマ数字のⅠの行政機関が果たすべき役割、行政機関と民間との連携のあり方、それから裏のページの飼い主責任のあり方、これはローマ数字のⅡになっておりますけれども、こちらについて、幾つかピックアップしたものについてご説明したいと思っております。

 1ページをご覧ください。はじめにと書いておりますけども、冒頭、局長のご挨拶にもありましたけども、今年度が目途ということにはなりますけども、動物愛護管理基本指針の見直しを行う年になっております。この前段階といたしまして、課題と対応の方向性について、可能な範囲で整理を試みたいと考えております。

 これらの整理の結果は基本指針の見直し、これは正式に見直す際は、この審議会に諮問させていただく形になりますけども、その諮問のタイミングは、実は大もとの法律の改正がどういうスケジュールになるかも見極めながらの判断になってまいりますので、今のところ、まだはっきりしておりませんが、基本指針を短期間で議論するのにいろいろあらかじめ準備しておかないといけないということで、先行してこの議論をさせていただいている形になっております。

 それから、その結果は、関連する政省令、通知、ガイドライン等にもいろいろ活用していくということにしており、これについて本日はご説明をしたいと思います。

 また、前回、概観というのもお示ししました。最後に参考資料としてつけておりますけれども、これもこれから二、三回の議論で固まった段階でもう一回整理し直したものをお示ししたいと思っています。

 では、中身の説明に入りたいと思います。2ページをお開きください。こちらからの30ページまでが行政機関が果たすべき役割、それから行政機関と民間との連携のあり方になります。一応、30ページで非常に文字ばっかり多いものを実は15分ぐらいで説明しろということですので、1ページ、30秒計算になりますけども、ご容赦ください。

 2ページは、まず自治体の大きな業務になっている犬猫の引取りの関係でございます。(1)番、所有者からの引取りの関係で、論点①。これは前回、水越委員のご指摘だったと思いますが、終生飼養の考え方を少し整理してはどうかということがございました。終生飼養は、飼い主さんが亡くなるまでずっと飼わなきゃいけないというような、そういうニュアンスのご発言がございましたけども、法律上は、所有する動物が命を終えるまでということになっておりますので、その飼い主が適切に飼えないのであれば、飼い主が変わってもいいのではないかと。ですから、終生飼養の趣旨から引取りを拒否ということもございますが、その飼い主が適切に飼えないということであれば、むしろ引き取って譲渡に出すということも考え方としてあるのではないかというようなご指摘だったと思います。

 それから、論点の②番のほうは、所有者からの引取りの相談への対応ということで、各自治体の現場のほうで非常に熱心に説得をしていただいておりますけども、こういった部分をどうしていくのかというのが論点の②という形で捉えております。

 論点③のほうは、所有者からの引取りの拒否でございますけども、これは引取りの拒否はできる規定が入ってきておりますが、実は施行規則の中では、例えば業者からの引取りを求められた場合とか、繰り返し引取りを求められた場合などであっても、生活環境の保全上の支障を防止するため必要な場合は、ただし書きが適用される。つまり、引取り拒否ができることになっているけど、それのまた例外ということで、結局、引取らなければいけないということになっておりますので、生活環境への影響がある場合はしっかり引き取りましょうという形になっております。

 そういった論点に対する対応の方向性というのを、下のほうの枠の外に書いてあります。3ページの下をご覧ください。論点①ですと、できる限りその動物が命を終えるまで適切に飼養することの努力義務についてということで、これは終生飼養をする努力を求めるものであり、現在の飼い主が最後まで責任を持って飼育することの重要性を前提とはしますけども、所有者の変更を認めないものではないというふうに考えていいのではないかと。現在の飼い主が適切に飼養管理できない場合は、譲渡等により新しい飼い主が適切に飼養することも終生飼養の趣旨には適合するものであると。実際は、引取りを求めた飼い主が家庭動物としての目的で適切な飼養管理を継続できない状況にあると考えられる場合においては、飼い主から犬猫を引き取ることは、法第7条第4項の規定の趣旨に照らしても否定されるものではないというふうに捉えたほうがいいのではないかと考えております。

 こういうふうに、論点に対して答えとして対応案というのを記しております。これはまだ案でございますので、今日のご意見を踏まえて、どんどん修正を加えていきますし、また先ほど申し上げましたように、8月に自治体に意見を聞く場を設けようと思っておりますので、そうした自治体の意見も踏まえて、また修正したものを秋にお示しができればと思っております。

 論点②の場合は、所有者からの引取りへの相談への対応ということがございますが、これにつきましては、論点②、4ページの中ほどに書いております。実際に引取りの相談が来た段階でいろいろやってもなかなか大変なので、それ以前に早い段階で広く適正飼養等の普及啓発しておくということの重要性を強調しつつ、実際、適切に自治体の方が事前相談に応じられるように、コミュニケーションツールの整備ですとか職員のスキル向上を図っていくための研修等を各自治体において行っていただくことが必要であろうというふうに考えております。

 論点③のところでございます。所有者からの引取り拒否の問題でございますが、これについても、生活環境の保全で必要がある場合には引き取らなければいけないので、これは個々のケースごとにきめ細かに判断していく必要があろうかと思っております。ここの部分につきましては、どういう場合が生活環境保全上必要と認められるのか否か、あるいは、引取り拒否の場合に当たるのかどうかについては地域の実情等を踏まえて、各自治体において判断されるべきものというふうに捉えております。

という形で、駆け足になりますが、ポイントをご説明していきたいと思っております。

 5ページは、今度、所有者不明の犬猫の引取りについてです。論点①は、所有者不明の犬猫の引取り拒否の問題ということで、これは法律においては、所有者からの引取りについては引取りを拒否することができる規定がございますが、実は、所有者不明の犬猫については拒否できる規定がございません。ただし、前回改正時の国会の附帯決議の趣旨などを踏まえて、実際に引取りを行っていない自治体がたくさんいらっしゃるという状況になってきております。

 この所有者不明の犬猫の引取りを義務化しているのは、交通事故死とか病気になるなど、不遇に陥る犬猫を減らす意味合いもありますけども、本来は野良犬や野良猫、あるいは飼い主からはぐれた犬猫を放置しておくと、野外で繁殖等を行い、動物による人の生命や身体、財産や生活環境に被害が生じるおそれがあるためでもあり、主として動物の管理の趣旨からのものでございます。所有者不明の猫の引取りを拒否する一方、当該所有者不明の猫による被害を防止する措置が講じられていない場合は、地域住民の生活環境保全上の必要性が出てきてしまいますので、そういった部分につきましても対応していく必要があるということで、事務局のほうから書かせていただいております。

 6ページの中程をご覧ください。かなり文字量が多いのではしょっていきますけども、所有者不明の犬猫に飼い主がいる蓋然性が高いということで引取りを拒否している実態もございますけども、これは基本的に引き取った上で返還の努力をするということではないかと考えております。

 論点②の場合は、都道府県警との連携のことを書いておりますけども、遺失物法の関係でも前回、ご意見がございました。ただ、今、実際のところは、自治体が警察から遺失物法の適用に関わらず、警察からの引取りを拒否しているケースもございまして、こういった部分を整理していく必要があろうかと思っております。

 論点の中身を詳しくご説明すると、時間がどんどんたちますので、対応案のほうを少し駆け足で行きたいと思いますが、8ページ、9ページをご覧ください。

 8ページのほうでございますが、論点①への対応案といたしましては、都道府県に引取り義務があることは再度周知をしたいというふうに考えております。この附帯決議8につきましては、要するに、駆除目的での捕獲された猫の引取りは、動物愛護の観点から原則として認められないが、やむを得ず引き取る際には、猫の所有者または占有者を確認しつつ、関係者の意向も踏まえた上で、引取り後に譲渡の機会を得られるよう最大限に務めるというふうに記されております。ということでいきますと、引き取った上で譲渡の努力をするということが、まずは訴求ポイントではないか。

 それから、所有者不明の犬猫につきましては、当然、飼い主がいる可能性があるものもあるのですが、引き取った上でちゃんと返還の努力をするということも少し明確にしていく必要があろうかと思っております。

 論点②のほうでございますが、遺失物法の関係につきましては、動物の取扱いの適正の観点から、動物愛護管理法による引取りの対象となる動物については、遺失物法の適用を除外して、動物愛護管理法を優先適用することとされております。これは平成18年の改正によっておりますが、これは専門的な保管施設・知識を有する職員の存在に鑑み、警察署よりも犬猫の取扱いになれた自治体において引取り・保管を実施することが犬猫そのものの健康安全保持に資するものだと。所有者の利益の観点からも好ましいということで、そういう整理になっております。

 所有者不明の犬猫につきましては、警察に持ち込みがあった場合においても、動物愛護管理法を優先適用すること、それから警察が一時保管を行っている場合も、自治体は速やかに引取りを行うこと等の徹底を図るため、警察庁とも連携しながら取組みを検討していきたいと考えております。

 内容が非常に多岐にわたりますけれども、11ページをご覧ください。続いての殺処分と譲渡の考え方でございます。論点①は、殺処分をなくしていくための取組みということでございます。この殺処分ゼロという言葉によって、殺さないために譲渡を進めるということが推奨されておりますし、このことは環境省で牧原政務官のときに始めました「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」にも書いておりますけども、これは委員の方のご指摘にありますように、まず飼い主責任の徹底による遺棄とか逸走とかみだりな繁殖を防止するのだ、それによって引取り数を減らすと。その結果として、数が減ってきたものに対して返還・譲渡の努力をするということで、致死数を減らしていくのが大事ではないかというご指摘をいただいております。

 また、論点②のほうが、収容した動物の返還・適正な譲渡の推進と殺処分の考え方とございます。これにつきましては、従前、申し上げましたけども、殺処分を一律にゼロを目指すのではなくて、その内訳を分けていく必要があるのではないかというのが対応案として答えをご用意させていただいておりますが、12ページをご覧ください。

 論点①の対応案といたしましては、殺処分をなくしていくためには、まず飼い主責任等の普及啓発の徹底による意識向上を図る。それが遺棄・逸走・みだりな繁殖の防止等を通じて、飼い主からの引取り数自体を減らしていく。その上で、返還とか適切な譲渡の取組みを推進していくということで、図を示しておりますが、STEP1、飼い主責任等による普及啓発を徹底し、飼い主の意識向上を図る。STEP2が、飼い主等からの引取り数を減らすと。このときに、無責任な餌やりの防止等も含みます。STEP3は、その上で引き取った犬猫の飼い主への返還や希望者への譲渡数を増やしていく。殺処分を減らし、将来的にはゼロとするということは、殺処分ゼロというのは対策の結果、どちらかというとアウトカム的なものでございまして、STEP1、STEP2、STEP3の一番上のほうからしっかりやっていくことが大事だというふうに考えております。

 また、野犬の生息数が多過ぎて、子犬収容数が非常に多いような地域におきましては、中長期的に見た引取り数とか殺処分数を大きく減少させるためには、一時的には成犬をたくさん捕獲しなければいけない場合もございます。こういった部分についても、適切な普及啓発を行って、理解を得ていくことが必要と考えております。

 論点②の対応案でございますが、殺処分につきましては、環境省の動物愛護管理行政事務提要という調査で集計しております。これにつきましては、先般、報道もあっていろいろ問い合わせをたくさんいただいているところでございますけども、従来、殺処分として一律の統計にあったものを、譲渡することが適切ではない、例えば治癒の見込みがない病気とか攻撃性がある個体、それからそれ以外で処分したもの、それから引取り後に自然に死亡したものというのが、従来、一緒になって統計として「殺処分」となっておりましたが、ここをきめ細かに分けていって、丁寧に対策を考えていくこととしております。

 この(1)、(2)、(3)の内訳がちょっと見づらいですけども、13ページの中ほどに記しておりますのでご参照ください。これにつきましては(2)ですね。(2)といいますのは、つまり、健康で譲渡適性もあるのだけども、殺処分せざるを得なかったものというもので、これをまず優先的にゼロにしていこうということを考えていくわけですが、これらを区別することで(1)と(3)については統計をとらなくなるのではないかと誤解が生じているようですが、これもしっかりとデータはとって毎年公表していこうと思っておりますので、(1)、(2)、(3)の内訳について、今後も整理をしてまいります。

 13ページのほうで、対策の取組みのあり方も書いておりますが、(1)、病気が重いものとか攻撃性があるものにつきましては、これは譲渡のみで殺処分を少なくしようとするのは困難と考えております。これにつきましては、先ほどのSTEP1、STEP2の段階を通じて、入ってくること自体を減らしていくというのが一番大事であろうというふうに考えております。

 それから、(2)につきましては、STEP1、STEP2で、引取り数を減らすということも大事なのですが、STEP3の譲渡の促進というのをさらに進めていくと。場合によっては広域譲渡というのもあろうかと思います。

 (3)の収容後の死亡につきましては、収容後に自然死する個体でございますので、これも(1)と同様に、STEP1、STEP2の段階で入ってくることを少なくする、そういう不幸という言い方がいいかどうかわかりませんけど、そういった動物がたくさん出てくる状況をなくしていくということが、この(3)をなくしていく上で大事だろうというふうに考えております。

 この動物の殺処分を減らしていくためには、自治体に取り組んでいただく必要があるのですけども、自治体のほうは、ご承知のように人員が限られてきております。特に、大都市部などでは野良犬がほとんどいない。また猫についてもたくさんの団体さんに協力していただいて、地域猫の管理もできている。こういう地域の自治体の取組みと、そうではない温暖でたくさん犬猫が繁殖しやすくて、協力していただける団体さんもいないという地域もございますので、これは各地域、地域の取扱いの状況は、地域の実情に応じて自治体のほうで判断していただく必要があろうかなと思っております。

 15ページが、殺処分と譲渡の考え方のうちのいわゆる安楽殺の方法として、炭酸ガスは妥当なのかどうかでございます。今日はご欠席でございますが、水越委員からも前回ご指摘がございました。安楽殺の手法については真剣に考えていく必要がありますよということと、それから単に悪と考えている炭酸ガスの安楽殺についても、科学的・技術的な情報を提示することが必要ではないかということで、動物の状態によっては、無理やり押さえつけて注射を打つということ自体が非常に恐怖であったりしますので、どちらがいいのかはよく考えなきゃいけないというご指摘だったと思います。

 これに対しての対応案でございますが、炭酸ガス自体は、適切な使用がなされるのであれば、現状でも安楽殺の手段として認められている方法でございます。これにつきましては、一律に使用が否定されるものではありませんけれども、自治体施設における炭酸ガスの利用については、業務に当たる職員の安全性の確保や捕獲・保定を含めた安楽殺プロセス全体における動物の苦痛の軽減などを総合的に勘案して、各自治体において適切な方法が採用されるべきものと考えられます。

 なお、近年の自治体の施設における方法でございますが、16ページをめくっていきますと関連データを載せておりますけども、真ん中に表が載っております。全国115の自治体のうち、自前では行っていなくて県に委託している中核市などもあるのでこういう数字なのですが、炭酸ガスのみだというところでは、犬では11自治体、猫では13自治体で、多くのところでは、薬剤・麻酔薬の併用が行われている。あるいはもう麻酔薬のみという形になっているということで、実は炭酸ガスだけに依存しているほうが非常に少数派という形になってきております。

 真ん中の併用するという場合は、動物の状態によってどちらが使えるかというところで判断していただいておりますが、各自治体のご判断として、流れとしてはだんだん炭酸ガスは少なくなってきている傾向はあろうかと思います。これは注視していきたいと思います。

 それから、動物愛護管理法の第40条では、できるだけ苦痛を与えない殺処分の方法についてというのが定められておりまして、それに関連する告示はございますが、これは犬猫だけではなくて実験動物、産業動物全ての安楽殺の方法を規定しておりますので、これにつきましても今後、時代背景とか社会認識の変化や具体的な技術の進歩等によって、そのあり方を整理することが求められているという認識を持っておりますので、基本的な考え方とか具体的な手法につきましては、中長期的に整理していきたいと考えております。

 続いて、駆け足になりますけれども、18ページをご覧ください。これは譲渡の促進の観点でございます。論点①は、譲渡適性を考慮した譲渡の促進ということでございまして、殺処分を避けるあまり、譲渡適性がないものを無理して譲渡しているのではないかと。それによって、咬傷事故ですとか、あるいは第二種動物取扱業の動物愛護団体のシェルターが非常に過密飼育状態になっているのではないかとか、そういうご指摘も寄せられているところでございます。ここは一つの論点。

 それから論点の②につきましては、自治体からの譲渡に際しての不妊去勢措置を徹底したほうがいいのではないかというところで、ご指摘をいただいております。欧米では譲渡前の不妊去勢手術は一般的でありますよということで、これを義務づけか何かできないのかというご指摘だったと思います。

 論点③のほうは、譲渡後の所有権に関連するトラブルということで、自治体が保護して譲渡したのはいいのですが、もとの飼い主が出てきた場合にどうしようかというようなご指摘でございました。これは先ほどの遺失物法ですとか所有権の取扱いにも関わってくる問題となります。

 19ページの下のほうをご覧ください。論点①、譲渡適性を考慮した譲渡の促進につきましては、これは既に「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」という告示が出ておりますが、この中で、家庭動物としての譲渡適性を判断した上で、適性があるものについて譲渡を行うというふうに規定をされております。ここをもう一回明確にしていくことが必要となろうかと思います。

 また、各自治体によって譲渡をしていただいておりますが、現在では、広域で動物が動きますので、自らの自治体だけではなくて、ほかの遠くの自治体に行くということも想定してご検討いただくことが必要なのではないかと思います。

 それから論点②のほうの対応案でございますが、自治体に対して、犬猫の譲渡に当たっては、原則として不妊去勢手術の確実な実施を行うことを勧奨できないかということで、不妊去勢手術は譲渡前に自治体が実施しておくこととしつつ、例外的に、実際にそういった体制とか設備がない場合には、譲り受けた人、譲り受けした方について一定期間内に確実に不妊去勢手術をやっていただくようなことを担保するということが展開していけないのかなと考えております。

 現在、自治体が譲渡する場合は、手数料を徴収していないケースが多いのですが、不妊去勢手術の推進に当たりましては、手数料を場合によっては徴収するということも考えられていいのかもしれません。

 論点③におきましては、先ほどの遺失物法にも関わってまいりますけども、確かに遺失物法の中では動物愛護管理法の適用が優先されているという形になっておりますが、平成18年の遺失物法の改正時には、当該改正以前においても動物愛護管理法において、もともと所有者不明の犬猫の引取りに関する規定が設けられていて、所有者の所有権を制限したものと考えられていることから、遺失物法の適用は除外する結果となりました。動物愛護管理法により自治体が引き取った犬猫に関しては、公告等の手続は実施されないこととなっていても、所有者の所有権を不当に侵害するものではないと当時は考えられていたのですが、動物愛護の気風の変化ですとか、いろいろ所有権をめぐるトラブルも実際あるのだとすれば、自治体が譲渡の促進をする努力義務を負っている観点からも、一層の譲渡促進に向けて、実際に引き取った犬猫について、所有権の所在に関する疑義が生じないよう何らかの措置が今後、必要になってくるのではないかと考えております。

 先を急がせていただきます。25ページをご覧ください。これは前回、打越委員からご指摘もあったところでございます。環境省の役割と動物愛護団体の役割が書いていないとご指摘があったと思いますが、こちらの地域の実情を踏まえた自治体の施行体制のあり方の中に、国と自治体の役割分担の話、それから、行政機関とボランティアとか民間団体の連携と役割分担のこと、二つほど書いております。

 論点①は、自治体に対する国の関与のあり方としては、どこまで国は自治体の業務の基準を定めるべきかというところで、こちらもご指摘をいただいております。たくさんご意見をここに記させていただいておりますが、めくって26ページのほうをご覧ください。動物愛護管理法の仕組みですとか国の役割、自治体の役割については、法制面とか実務面も含めた実態があまり認知されていないのかなというふうに感じております。

 環境省は、動物愛護管理行政における国、自治体双方の事務の役割分担についてわかりやすく説明するよう周知を図っていこうということで、動物の愛護と管理をめぐる課題は地域によって大きく異なる上、投入できる行政リソースも自治体によって大きく異なることから、法遵守のためのナショナルミニマムとして最低限、全国統一的に措置する必要がある事項を政省令・ガイドライン等で示すことが国の役割というふうに考えています。

 実際の法令の運用は、自治体の自治事務でありますので、地域の実情や住民ニーズを踏まえた数多の課題に優先順位をつけながら、取り組むものであることを再認識をするべきと考えています。

 そういった意味でいくと、ナショナルミニマムとして新たに全国統一的に国で定めておくべき事項があれば、それについては優先順位をつけながら作成をしていきたい、検討していきたいと思いますし、むしろ現行制度の中に地域の実情に照らした対応が困難なものがあるのであれば、それは自治体の自主性を高められるように必要な措置を検討するということになろうかなと考えております。

 それから、28ページは、今度、行政とボランティア・民間団体の役割となっております。論点①が、動物愛護団体の役割、活動に対する留意点ということでございます。論点②のほうは、動物愛護団体・民間団体の調整役としての環境省等の役割となります。論点①につきましては、動物愛護のボランティア活動についてもう少し取り上げていってもいいのではないかというようなご指摘がございました。その中では、動物愛護団体の方々が、もう少し感情論とか精神論を乗り越えて、知識を得るべく勉強する必要があることを明示すべきだと。うまく連携していくにはそういうことが必要だというご指摘だったかと思います。

 また、論点②のほうは、非常に多岐にわたる団体がありますので、環境省なりそういった団体が、関係者を一堂に会しての情報交換といいますか、ステークホルダーミーティングのようなものを開いてはどうかというようなご提案でございました。

 これらについての対応案としましては、論点①の対応案といたしまして、基本指針というのは、改訂に向けた議論が今の場でございますけども、これは国の施策推進に関する基本的な方向ですとか都道府県の推進計画に盛り込むべき事項について記載するものというふうに捉えておりましたが、今後、民間の動物愛護団体の方々等の役割が大きくなっていくということを想定いたしますと、行政だけではなくて民間団体が主体になって果たしていくべき役割も大きいので、そのあり方とか支援のあり方についても幅広く検討対象として、この基本指針に盛り込んでいっていいのではないかと考えております。

 論点②への対応策につきましては、自治体のレベルが法律39条の動物愛護の協議会の場などを通じまして、地域の自治体が束ね役となっているというケースが見られます。これにつきましては、自治体が実際にうまくコーディネートしていただいているケースが見られますので、そういったものを参考としつつということになりますけども、全国レベルでのこういった場の設定につきましては、どういうところが代表していらっしゃるのかということも課題と考えておりますので、必要性とか位置付け・枠組み・役割、想定される効果など共通認識に向けた整理が必要で、時機を見極めつつ今後、検討していきたいというところで、すみません、国で一元的にやろうというのはまだちょっと及び腰な回答になっております。

 かなり端折ってここで駆け足でご説明したので、いきなりこれをご覧になった方はちょっとよくわからないということかもしれませんけども、今日はどちらかというと今日、この中身について意見を全て出し切っていただくということではなくて、今日お寄せいただいたものをまた2週間後のときにご指摘いただいても構いませんし、あるいは7月中ぐらいにまたメールなり文書なりで事務局のほうに各委員のご指摘の点、ご意見をお聞かせいただければ、それを踏まえて、夏の終わりに開くこの会議の場には、それを反映したものをお出しをしていきたいと思っておりますので、今日はまず、お気づきのところについてご意見をいただければと思っております。

 すみません、時間がちょっと何分かオーバーいたしました。失礼いたしました。

【新美部会長】 ご説明ありがとうございます。

 それでは、ただいま説明のありました二つの論点につきまして、ご質問、ご意見がございましたら、よろしくお願いいたします。

 打越委員、どうぞ。

【打越委員】 例によってたくさんあるので、少しずつ発言させていただきます。

 まず、5ページから9ページ辺りの、行政側の所有者不明の犬猫の引取りの責務のところなんですけれども、殺処分ゼロを達成しようとするあまりに、自治体が動物の引取りを拒む事案があること、またその殺処分ゼロを達成するために、団体譲渡先のボランティアの良心に甘えて多頭飼育状態を放置するというのは、やはり好ましいことではないと思うんですね。

 そういう意味では、自治体には、所有者不明の犬や猫を引き取る責務というのがあるんじゃないかというふうに思っています。犬はもともと、狂犬病予防法の義務がありますけれども、猫について、多くのボランティアさんが心配する引取りの義務があるというと、またたくさん持ってくるんじゃないかって心配されますけれども、クレームとかがあるからといって、行政が現場まで行ってどんどん捕まえにいくわけではありませんし、また昔に比べると、飼い主がもう無責任な、ただ飼い始めて保健所に持ってくるという数もうんと減っています。

 また、誰かが善意で保護したときに、その拾得者が責任を持って飼い主を探してくださいというふうに自治体側に言われてしまうと、だったら負担だから、逆に保護しないということにもなりかねないし、あるいは、無責任に庭で餌やりして繁殖している人がどんどん持ってきたとして、それはもちろん厳しく指導しなきゃいけないんですけど、それを放置してまた庭にそのまま置いておいてくださいというわけにもいきませんし、ましてや猫が嫌いで、おりをしかけて、うちの地区から猫なんか要らないといって保健所に持ってくるような人がいた場合には、それこそそれを追い返せばどんな虐待を受けるかわかりません。ですので、そういう意味では、わざわざ持ってくる、猫なり犬なりを持ってきた人とか、そういう人を拒むよりは、むしろ行政が保護するという意味で、私は引き取るというのも大事じゃないかというふうに思います。

 ただ、環境省の事務局案にもし足せるのであれば、明らかに迷い犬とか迷い猫で、近所にいれば飼い主が見つかりそうな場合というのも、実務においては結構多いようです。なので、そういう場合には、自治体の担当者の経験とか、あるいは地域住民の特性で、結構すぐ首輪が外れちゃうんだよねなんというような地域はきっちり指導することと引き換えに、数日、近所で預かってもらうとか、地元の交番、派出所で預かってもらうなんていう、自治体の担当者の経験に応じた柔軟な判断というのは大事なんじゃないかと思います。所有者不明の犬猫の引取りは義務であると言うと、ちょっとショッキングな表現で皆も反応あるかもしれないんですけれども、むしろ行政のほうで保護して、譲渡すると。

 ただし、迷い犬、迷い猫の可能性もあるので、現場の担当者の経験を尊重するような書きぶりにできればいいんじゃないかなと思いました。まず1点目はそこです。

【新美部会長】 今の点に、何かコメントでもあれば。ご意見がありましたら、どうぞ。

【金谷委員】 自治体の立場でも、所有者不明の犬はともかく、猫に関して引き取らなければならないというのは、確かに条文としてはそのとおりかとは思うのですけれども、東京都の場合は条例に基づいて、どうしても引き取らなければならない理由について確認した上で引取り等を行っているんですけれども、その一方で、地域の実情に合わせた対策というのも非常に重要かと思います。

 例えば、地域での飼い主のいない猫対策というのが各区市町村で今、非常に普及してきておりまして、それによって東京都全体で見ると、負傷猫の引取りですとか、それから子猫が生まれて母猫がどこかにいなくなってしまって、それを引き取らなければいけないというような数自体もかなり減ってきているというのもありますので、まさに地域の実情に合わせた対策が必要ということであれば、必ずしも引き取らなければならないというのは、条文の話もありますけれども、さまざまな活動、地域の飼い主のいない猫対策に関わっているような活動も認めて、そちらもあわせて記載していただくということも必要かと思います。

【新美部会長】 自治体における実際の取組みのご紹介をいただきましたが、ほかにご意見ございましたら。

 自治体の方に伺いたいのですが、所有者不明というのは認定が非常に難しいんですけども、どう認定されているんでしょうかね。実務では。

【金谷委員】 実際に、いきなり所有者不明の猫を捕まえた方が持ってくるということは、まず実際にはないです。事実上、引取り等を求められる場合も、いろいろと事前に電話で相談をするというようなことがありますので、所有者不明の猫に関しては、例えば当然、身元表示があれば当然所有者はあるんでしょうけれども、実態としては、一般的には所有者不明、いわゆる野良猫に関しては、なかなかそういう事実上、持ち込まれるというようなケースもそんなに多くはないというのが実情だと思います。

【新美部会長】 わかりました。

 あとほかにご質問、ご意見、ございましたら、よろしくお願いします。

 はい、どうぞ。

【打越委員】 今、東京都でそんなにないというお話だったと思うんですけれども、場所によっては、まだ自治体によっては野良猫が多くて、庭先で産んじゃったので持ってきてという自治体はまだまだあるんじゃないかと思います。思いますというか、自治体のたくさんの職員とつき合っていて、そういう話をやっぱりまだ聞くところですし、それと実は、負傷猫がいるとか、元気がなくて庭先のところで座り込んでいる猫がいるという通報を自治体の職員が受けることがすごく多いです。その結果、心配だから保健所の人、助けに来てあげてと言われて、結局、担当者としてみれば、そのまま様子を見てくださいというか、ちょっと負傷猫なら保護しなければいけないかと、これは法律にありますので、見に行くと、本当に息絶え絶えの場合とご飯をあげれば元気になるのといますので、そういう意味では、保健所に持ち込まれる動物もバリエーションさまざまかなと思います。

【新美部会長】 はい、どうぞ。

【金谷委員】 今のお話にもありましたように、東京都におきましても、例えば車にひかれたとか、それから衰弱して保護されていると、そういう猫や犬も含めてですけれども、情報が寄せられれば、そういうものにつきましては、動物愛護相談センターでそちらを引き取って、必要な治療をし、所有者がいるかもしれませんので、ホームページ、それから引き取られた地域の区市町村等で公示を行って、まずはもとの飼い主を探します。飼い主が期限内に現れれば、当然、お返しをしますけれども、そちらが現れない場合は譲渡をすると。

 そういう負傷した犬や猫等の引取り等につきましては、当然、対応しているところです。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 はい、どうぞ。

【則久動物愛護管理室長】 すみません。8ページ、9ページのところで私、説明を飛ばしてしまったかもしれませんが、8ページの一番下から9ページに書いております、現状としては法令上、上記の整理となるということで、法律の条文だけを読むと、やっぱり引き取らなきゃいけないと。ただし、今、そういう状態で、引き取られない状態でいたとしても、特に問題がないんですよというケースであれば、何らかの措置ができないか検討というふうに書いておりますように、そういうことを本当に規定できるのであれば、今の条文の状況でいいのかどうかは検討課題かなというところで、これを書いております。

【新美部会長】 はい。ほかにご意見ございましたら、どうぞ。

 太田委員、お願いします。

【太田委員】 16ページの殺処分の方法なんですけど、ここを読んでみると、真ん中辺ですけど、115自治体のうち、犬が50、猫が52というのは、この表があって、11と39を足したこれが50、この傾向なんですけど、私の記憶では、言い方はともかく、昔は炭酸ガスが圧倒的に多かったと。ところが、最近は薬剤をやる方法が増えている。そういうことですか。そこを知りたいんですけど。

【新美部会長】 その辺のご説明をお願いします。

【則久動物愛護管理室長】 過去には炭酸ガスで一律に処分というケースが多かったと認識しておりますが、だんだん、だんだんそれを使わなくなってきている傾向があります。例えば、殺処分ゼロを達成している自治体であっても、炭酸ガス装置は万が一の狂犬病の発生時に備えてメンテナンスをしていますと。ただし、実際は使っていませんと。どうしても安楽殺が必要だったら、それは注射でやりますというところが増えてきているとは思います。

 ただ、数がまだまだたくさんあるところかと設備が古いところなどはまだあると思いますので、恐らくは自治体の設備の更新とかいろいろな機会に、そこは少しずつ切りかえられていく、特に併用が増えていくという形なのかなと思っております。

【太田委員】 費用についてはどうなんですか。

【則久動物愛護管理室長】 費用は多分、引取り数とか処分数が大きく減少してきているので、その分、そういう薬剤でやるほうがコスト的には高いと思うんですが、賄えるようになってきているのではないかなと。

 それから、一般の市民の方々の関心事とか、まさに住民ニーズに照らして、自治体のほうでそういうご判断をされているということだと思いますので、費用についてどれだけかかっているか調べてはいませんけども、そこは、自治体のほうで吸収できているんだと思います。

【太田委員】 常識的に、場所によって殺処分の方法が違うというのは、本来よくないと思うんですけど。そうですよね。場所によって、犬や猫の殺し方が違うというのはよくないですよね。それはどう考えていますか。

【則久動物愛護管理室長】 炭酸ガスによる方法自体も否定はされていません。安楽殺の方法として認められているのが前提になった上で、その上で、さらに地域の方のいろんな心情ですとかいろんなものをおもんばかって、より苦痛のない方法ということで、麻酔が採用されているということではないかと思うんです。

 地域によって、まだまだ野犬とかの収容がたくさんある地域もありますし、置かれている状況が違うので、一律に一番いい方法にそろえなさいと言えるのかどうかというのは少し慎重であるべきかなと考えます。

【太田委員】 少なくとも一番いい方法というのはわかっていないわけですよね。これが一番いい方法だというのは。でも、それはうんとお金がかかるので、できないというのとか、いろんな理由はあるんでしょうけど、一番いい方法ってわかっていないですよね。

【則久動物愛護管理室長】 前回の水越委員のご指摘もそこだったと思うんですね。ずっと野良でいた動物たちが無理やり保定されて注射をされることの苦痛と、ガスによる麻酔効果による苦痛とどっちがあるかって一律に決められないということなので、それはやっぱり場所、場合、ケース・バイ・ケースで、一番その個体にとって相対的に一番苦痛が少ない方法は何かというのは、きめ細かにみると分かれてくるんじゃないかなという気はします。

【太田委員】 だから、どのみち、どのみちという言い方は変ですけど、犬や猫を殺すわけですから、一番いい方法を用いるべきだと私は思うんですよね。そのときに、一番いい方法ってそれなりにわかっていると思うんですけど、少なくとも日本はともかく、諸外国はわかっているはずなんで、そういうことの調査も含めて、一番いい方法は何かということの検討をしてほしいというのが私の希望です。

 以上です。

【新美部会長】 ありがとうございます。殺処分の実施方法についてということでのコメントだと思いますので。ほかにどうぞ、山﨑委員。

【山﨑委員】 先ほどちょっと山口委員と私で始まる前にここの部分の話をしていたんですけれど、今、まさに太田委員がおっしゃった一番いい方法とは何かということに関して、これは恐らく、環境省にお願いする課題ではないと思います。最後の17ページに、AVMAのガイドラインのことが書かれておりますけれど、これは実は、このガイドライン、科学は日進月歩ですから、何年かごとに見直しをされて書き換えをされています。つまり、唯一安楽死ができる職能団体として、獣医師会が一番いい方法をいつも切磋琢磨して考えているあらゆる動物に関してのガイドラインを出しているということです。その責任をやはり誰が負うべきかといったら、やはりAVMAに匹敵するJVMAが負うべきであろうというふうに私は思っております。

【太田委員】 私も賛成です。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。

 ほかに。はい、どうぞ。

【打越委員】 科学的に見て、一番苦痛の少ない殺処分の方法というのは、まさに獣医師会の研究に委ねるところだと思うのですけれども、行政の活動として殺処分する場合には、そこに必ずコストや効率性など、動物を愛する人から見ればそんなに大事なのかと思われるような条件も必ず乗っかって、そこが課題になってくると思います。

 ですので、科学的に一番苦痛の少ない方法は一本であるはずだというのが太田委員のご意見であるとともに、行政的に見て一番ベストというのが難しいので、そこは行政と獣医師会の連携が私は大事ではないかと思っています。

 ただ、一つ気になるのは、環境省の資料の15ページで、保定するのが動物にとって負担になるということや狂犬病発生の場合のリスクのことを考えると、静脈内注射だけでいいのかというところなんですけれども、もし、本当に狂犬病が発生した場合には、炭酸ガス室に、移動させる際に逸走する可能性のほうが危険であったり、おりの中で規定された日程、ずっと飼い続けるほうが危険という可能性もあると私は思いますので、むしろ、例えば麻酔銃で少し鎮静化させて、その後、直接、素手ではない形で静脈内注射をするほうが逸走危険性は少ないのかもしれない。そういう意味では、麻酔銃、野生鳥獣なんかの場合には使われることがあると思いますけれども、そういう形で鎮静化させる方が良くて、炭酸ガス室まで送る際の逸走のリスクもあるということ、あるいは飼育し続けるリスクを考える必要もあると思います。ここはむしろ、危機管理という観点から議論が必要ではないかと思います。

【新美部会長】 ほかにご意見ございましたら。山口委員、お願いします。

【山口委員】 少し戻るんですが、13ページの殺処分数の試行的分類というところで、自然死という言葉が出てくるんですけれども、自然死というのはどういう死のことを含めているんでしょう。

【則久動物愛護管理室長】 すみません、ちょっと自然死って、自然って余計だったかもしれませんが、引取り後に死亡したものということで、ここに書いています病気とか老衰により死亡したものとか、事故により死亡したとか、幼齢のため、多分、特に乳飲み子の子猫とかで、ミルクボランティアさんとかを手当できない場合、栄養がとれずに死んでしまうというケースもあるということで、そういったものが入ってきていると思います。

【山口委員】 それをまとめて自然死というと……。

【則久動物愛護管理室長】 そうですね。自然死という言葉は誤解を与えますので、使わないようにします。

【山口委員】 自然死でまとめられますと、例えば、引取り後の死亡事例の例示の中の、事故による死亡で、例えば闘争等ということで、飼育管理している間に犬同士が闘争してかみ殺されたというと、明らかに飼育管理が悪く、不適切ということにつながってしまいますので、やはり自然死と括るのではなくて、それぞれどういう理由で死亡したかということは、ちゃんと統計に乗せるということで、その施設での飼養管理がどういう状況かというのも表れてくると思うんですね。

 やはりそこはあんまり自然死という曖昧な何かよくわからない言葉で括られると、実際のところが出てこないかなというふうに思います。

【新美部会長】 今の点は、自然死という概念をどういうところで使っているかということですが、人の場合の自然死というのは明確な定義があります。死のプロセスに人為的な介入がないというのが自然死。その概念で使っているとするならば、ここで自然死という言葉を使っても、要するに、咬傷によって死んだとしても、死ぬプロセスにおいて人為的な介入がなければ自然死になります。人の場合の定義の仕方をしていけば。それをどういうふうに使っているかの問題になろうかと思います。

【則久動物愛護管理室長】 今回、ここでやろうとしているのは、いわゆる、殺処分ゼロということもありますけど、内訳をきめ細かに見ていって、原因とか対策を分けていこうということで、だから、全部、譲渡しようということじゃなくて、譲渡に適しているのはこの(2)のところだと思いますし、(1)と(3)を減らそうとすると、またそれは違う要因の取組みが必要だと思います。

 今、おっしゃったように、飼育管理の仕方が悪くてこの(3)が多いんだとしたら、それはその設備とか管理方法を見直すべきだということにつながってきますし、きめ細かにそこを見ていきましょう、その対策は譲渡一辺倒じゃないですよという、そこを示そう、考えようということからこれを分けようという形です。

【新美部会長】 よろしいでしょうか。

 西村委員、お願いします。

【西村委員】 炭酸ガスによる殺処分というのは、実際にどういう問題があるのでしょうか。実際やったことがないのでわからないのですけど、炭酸ガスには麻酔効果があるということは教科書には書いてありますが、どういう問題が実際あるのでしょうか。

【則久動物愛護管理室長】 以前、獣医師会さんが出されている解説を見ますと、やっぱり炭酸ガスは空気が重いので充満した密閉ケージ内では、背の高い動物とか上に登る動物は、効果発現が遅れるとか、あるいは子犬・子猫のような若い個体とかハムスターのように冬眠する動物は、死亡まで時間がかかるとか、それから、酸素の量が少ないと、麻酔効果が現れる前に酸素が足りなくなって口をぱくぱくさせて苦しんでいるように見えるとあるんですが、恐らくいろいろ批判を受けているケースを聞きますと、大小さまざまな動物とか犬猫を一緒に放り込んでいて、その中で、いきなり暗い密室みたいなところに入ったところで、動物がパニックになってしまっているようなケースをご覧になって、いろいろ批判もあるんだと思うんですね。

 ですから、炭酸ガスそのものというよりは、多分、そこに至る取扱いとか全体を見てでのこの評価といいますか、それから、ガス室のイメージ、窒息死というイメージがあるということではあるんですけども、最終的に、死に至る過程の中で、炭酸ガスにも麻酔効果があるんですよというところがあまり知られていなくて、そこで批判もあるということもある。

 ただ、使い方を間違ったりしていると、やっぱりそれは苦しんで死ぬこともあるということなので、そこは使い方とのセットの議論かなと思っています。

【西村委員】 そういう点で言えば、例えば全身麻酔薬を静脈内投与して安楽殺するときも、麻酔薬を射ったから死ぬわけじゃないんですよね。呼吸が止まって窒息して死ぬというプロセスがあるので、すごく時間がかかります。

 これがよくて、なぜ炭酸ガスがだめなのかということを言うと、非常に難しい問題があるかなと思います。また注射をする側の人の問題、意識のある動物に注射を射って動物を殺すという作業は、物すごい心理的ストレスがあると思うのですよ。でも、炭酸ガスだったら、意識はなくなってくれて、意識がなくなる動物を処分するというのは、意識のある動物に注射を射つよりはストレスが少ないのではないのかなという気がします。そういうところも含めて考えたほうがいいと思うので、炭酸ガスはだめ、だから注射という単純な問題じゃないと思います。動物の安楽殺の問題は、AVMAが相当ディスカッションしていますので、こういう専門家の意見を取り入れる、世界がどういうふうに考えているのかというところをスタンダードに従うというのを基本にしたほうが、世界的な批判にも耐えられるんじゃないかなと思います。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 ほかにご質問。どうぞ。

【金谷委員】 今、処分の方法についていろいろとご意見いただきましたが、これまでもありましたけれども、やはり処置を行う職員の安全を守ると、それから心理的なストレス、そういうものからも守るということも非常に大事なことであると思います。あと、狂犬病とまでは言いませんが、実際にかみつき癖のある凶暴な犬とか、猫などもありますので、そういうものに麻酔薬を直接注射するというのは、人にとっても、そして動物にとっても大変なストレスがあるということもありますので、ぜひ、そちらの実態なども踏まえた上で、こちらには記載をしていただければと思います。

【新美部会長】 今の点は、非常に大事なポイントだと思いますので、今後の議論の中に入れていきたいと思います。

 実は、これもまた人の場合なのですけども、人の安楽死で、医師による補助で自殺をするというのについて大議論があったのですけども、その中で出てきたのは、やっぱり医療者のストレスというのも考えなければいけないということは非常に強調されましたので、同じようなことが今のご発言であったと思います。そういった点も踏まえて、どういう方法をとるのかというのは、もう少し議論を深めていったほうがいいという気がします。

 ほかにご意見、ご質問ございましたら、どうぞ。

【打越委員】 ずっと重苦しいテーマが続いていたので、むしろ譲渡のお話をしたいと思います。先ほど保健所の引取りの責務に賛同するとお伝えしましたけれども、保健所に犬や猫を持っていけば問題解決で、後は野となれ山となれというような時代には絶対に戻ってはいけないと思います。だからこそ、新しい飼い主探し、譲渡というのが大事になってくる。かといって、民間シェルターを多頭飼育にさせてはいけないという中では、やはり保護犬・保護猫を飼いましょうという、その活動をしている人たちへの正当性を行政としてもっと後押ししてあげてもいいんじゃないかと。そんなことをすると、ペットの生態を用いてビジネスをしているブリーダーやペットショップの営業妨害になるんじゃないかなんていう声も聞こえてきそうですけれども、そうではないと。プロが扱うなら、プロは特別にすぐれた血統の動物を扱っているのだということで差別化していけばいいのであって、普通に譲渡適性をきちんと見極めた犬や猫であれば、その保護犬や保護猫を飼うことがすごくよいことなのだということを、むしろ環境省や各自治体が、もっと正々堂々とバックアップしてあげてもいいんじゃないか、そういう活動をしているボランティア団体さんやタレントさんの活動もありますので、そこは評価してあげるべきじゃないかと思います。

 ただ、そのときに、保護犬・保護猫は飼いにくいというような噂が流れてしまうと、本当に元も子もありませんので、そういう意味では譲渡適性の見極めというのは大事であり、短期的に見れば、その犬や猫に格差を生むことになります。譲渡適性のある子は幸せになれるようにと、譲渡適性のない子は殺処分だとなれば、その格差のあるような扱いに、またボランティアの皆さんは心を痛めるとは思うんです。でも、短期的に、やはりそういうことは場合によっては必要で、むしろ保護犬・保護猫への悪評を立てない、保護犬・保護猫もきちんと見極めた上で、うちには本当に5匹とも全部保護猫ですけれども、大切に飼えばすばらしい家族になるということを伝えていくために、底上げしていく必要があると思います。

 というわけで、保健所の側で、先ほど引取りの責務があるとお伝えしましたが、それと新しい飼い主探しをするということ、それに行政が正当性を与えるということと、そして適正な譲渡基準の見極めというのは、これは3点セットで非常に大事なことで、そういう形でいい形で好循環を持っていくために全力を尽くすべきだと思います。

【新美部会長】 ほかにご質問、ご意見。

 質問ですけども、所有者がわかっているときに引取り要求したときに、飼養の費用はどうなんですか、税金で払うんですか。

 引き取ったら飼うわけですよね、その費用はどういう負担ですか。

【金谷委員】 東京都の場合は、その所有者から引き取るときについては、手数料をいただいています。

【新美部会長】 手数料を取る。それはどれぐらいの額ですか。

【金谷委員】 50キロ以上あるような大きな犬の場合は1頭につき5,800円、それより小さい犬や猫だと3,000円、子犬、子猫は600円です。

【新美部会長】 私はなぜそういうことを言ったかというと、引き取るというのは、かわって飼養をするという意味でもあるわけですので、5,000円やそこらじゃ費用倒れになるんです。ある意味で税金の使い方としては、極めて不公平になるという気もします。ですから、引取りを考えるときに、費用をどうするかということを少し考えていったほうがいいのではないでしょうか。この中でそういう議論があまりないものですから、少しそういったことをきちんと位置づけていったほうが、自治体としてもやりやすいのかなという気もいたします。

 所有者不明の場合にどうするかというのは、それに足並みをそろえて、後で所有者がわかったら、ちゃんと費用の償還請求をするとか、そういうようなことを少しきちんと議論しておいたほうがいいのではないかなという気がします。ましてや取扱業者から引取り請求が出てきてから、産業廃棄物のときだって金を取っているわけですから、しっかりと完全に費用の支払いを要求するということもあってもいいのではないかなと思いまして、ちょっとあまり金目の話をするのは品がないと思われるかもしれませんけど、やっぱり大事なポイントだと思います。どういう費用がどれぐらいかかってどういうふうに請求するかというのは、少し視野に入れておいたほうがいいんじゃないかというふうに思います。

 あと、ほかにご意見、どうぞ。

【山﨑委員】 今、新美部会長がおっしゃったこと、そのとおりだと思うのですけれど、実はこの考え方を両側から見ると、費用を高くすることというのはもろ刃の剣になってしまうんです。

 海外は、特にイギリス、アメリカ、ヨーロッパなどは、やはり民間の引取りの保護施設のほうがはるかに行政のところより大きくて、かなり大規模な動物愛護団体がたくさんそういった事業をしております。引取り料を高くするということに関して、私は罰則の意味でもう飼えないといった不届き者からは幾らでも取ってしまえという考え方だったのですが、あるとき英国の団体の方とお話をしているときに、あなた、それは動物の側に立ってものを考えてないわねと言われたんです。

 私たちは相手を罰することよりも、この人が飼えなくなって、どうなってしまうかわからない動物を引き取って救うために仕事をしているわけだから、本当にお金はご寄附をお願いしますというような言い方で、どうしても飼えないんだったら置いていきなさいと言うのです。動物のためにあえてそれをやっているというふうに言われて、少し考え方が変わったという、そういう経験をしておりますので、確かに費用は取るべきだと思いつつも、やはりもっともっともとを取るぐらい取らなければいけないというところで、実はもしかしたら野山に放たれてしまうとか、あるいは庭の北側に1メートルの鎖につながれっ放しで、座敷牢的に飼われてしまうような子が増える可能性というのも、そこには実はあるというふうに考えております。

【新美部会長】 おっしゃるとおりです。特にNPOなんかの場合には、やっぱりドネーションをたくさんもらって、それでカバーしていくというやり方で、引取り料をあまりとらないんですが、これを私が問題視したのは、自治体の義務とした場合に、本当にそれでいいのかと。自治体は、寄附を募ることは基本的にはできます。ふるさと納税でもやればともかくですけれども。なかなか寄附を集めることはできませんので、税金の使い方という観点からいくと少し考えなきゃいけない。逆にもっと、今、山﨑委員からお話があったように、NPOのほうの、ある意味でボランタリーな活動のほうにもう少し肩入れをしていくと。そちらに活動の主体を担っていただくということも考えなきゃいけないなという気はいたします。おっしゃるとおりの問題は、いろんなところで議論されていますので、引き取りを、高く金を取るというのも、ある意味で規制の一つですから、入り口を狭くすることにはなる。それをどういうふうに考えていくかというのは、大変な重要な問題だというふうには考えております。

 あと、ほかにどうぞ。

 西村委員。

【西村委員】 終生飼養のことなのですが、今の日本の社会の流れとしては、一人の人がずっと飼わないと絶対だめよみたいな風潮だと思うんですけど、いつごろからそういう流れになったのでしょうか。なおかつ、シェルターなどあまり必要なくなるわけです。動物を持っていくこと自体がだめだという話になるので。

 それを、そうじゃないよというふうに、その子が幸せに暮らせれば、途中で飼い主さんがかわってもいいのじゃないというほうに持っていくことに何か問題があるのでしょうか。またそのような流れに持っていくためにはどういうことをすればいいのか、またどういうふうに考えていったらいいのかという点も議論が必要と思います。

【新美部会長】 これも非常に悩ましい問題を提起していただいたと思います。

 ほかになければ、次のテーマのほうに時間を振り分けたいと思います。特になければ、次のテーマに移りたいと思います。

 テーマの2の飼い主責任のあり方についてということで、事務局からご説明、よろしくお願いします。

【則久動物愛護管理室長】 では、31ページをご覧ください。まずは、適正飼養と不適正飼養と書いておりますが、実はこの中の論点①、今、西村委員がおっしゃった終生飼養のことを、概念の適正な理解という表現で書かせていただいております。飼い主の方が亡くなるまでちゃんと飼いなさいというような捉え方もありますが、基本的にその動物が生を終えるまでと法律の条文上はなっていますけども、やっぱりキャンペーンとしては、同じ飼い主がずっと飼い続けなさいというふうにはなってきておりました。ここのところが、その方がちゃんと飼えなくなっているのに何が何でも飼い続けなさいというのかというと、そこは、より適切に飼える方に譲渡していただいたほうがいいんだろうと考えるべきかなというところで、ここの考え方は少し整理が必要と思っております。この論点①は、その終生飼養の概念の適正な理解というのが1点目。

 論点②のところで、適正飼養の判断基準、あるいは不適正な飼養管理の具体的な例示ということで、これも第44回ぐらいからずっと毎回続いている議論ですけども、何らかの形でその適正飼養、あるいは不適切な飼養というのを、しっかり明示していったほうがいいんじゃないかというようなご議論が論点の②でございます。

 論点③のほうは、その不適切な飼い方に関しての対策の強化というところで、何らかの義務を設けるなり、自治体が措置ができるようにするなり、あるいはその飼育頭数を制限するとか、いろんなご意見をいただいておりますけども、そういった不適切な飼い方に対して何らかの規制的なものができないのかというのが、論点③です。

 論点の④は、これは特定の飼い主がいないんですけど、いわゆる餌やりさんの問題。これはやっぱり自治体の場でお聞きしますと、不幸な命の再生産につながるという部分と生活環境被害という部分で、やっぱり結構大きな問題ですよということであるんですが、一方で一律禁止というのもなかなか好ましくないと。かえって実態把握が困難になるということで、否定的なご見解が多いです。そこはやっぱり説得して、理解をしていただくというアプローチになるようでございますので、こういったところも、これは特定の飼い主がいるわけではないんですけども、所有者、占有者とはまた違う、何かそういう管理者みたいな概念で提唱していくのかどうかわかりませんけども、ここも論点として挙げさせていただきました。

 対応の方向性を33ページに書いております。①の終生飼養のところは、これは先ほどからご議論いただいているんで、あえてまた申し上げませんけども、基本的に動物が生を終えるまでしっかり飼ってあげましょうということです。

 ちょっと二つ目にポツを書いておりますが、やっぱり治癒の見込みがない病気などの場合においては、安楽殺するということも、これは否定はしないということでいいのではないかと思っております。

 それから、論点②のほうです、適正飼養、もしくは不適正飼養のほうの基準なり何なりについてということですけども、これ以前に、たしか打越委員からもご指摘がありましたが、適正飼養については、もう民間で市販のいい本がいっぱい出ているので、そこを国が作ることはないよということでご指摘いただきました。

 多分やっぱり我々がやるとすると、本当に法の遵守に不可欠な必要最小限、これを下回るともう虐待だよとか、そういったひどい部分をしっかり示していくということだと思いますので、ここについては、できるだけそういったものを具体的な例とともにガイドライン等で示していくということを、今後検討していく必要があるかなと思っております。

 それから、論点の③のほうでございます。不適正な飼養に対する対策の強化ということでございますが、一般の飼い主が不適切な飼養管理を行うことをどのように確認するのか、確保するのかということについては、政策としての必要性、手段としての合理性の観点から、これはちょっと慎重に検討が必要かなというところもございます。

 一方で、自治体が行政指導の際に指導しやすいように、具体的なガイドラインをたくさん出してあげる、使えるようなものを出してお示しするというのは大事だと思っておりますので、例えば、過去に「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」というのを出しておりますが、こういったものを改訂して、バージョンアップしていくということなども考えていっていいんではないかなと思っております。

 論点④の、要するに餌やりの問題につきましては、これは直ちに禁止とか規制というよりは、地域の実情に応じてはそういった条例を作っていらっしゃるところもありますけども、より好ましい方向に誘導していくということで、これは普及啓発がまず大事なのかなと思っております。

 駆け足で行きますと、36ページは虐待の関係でございます。実は、過去の議論におきましても、虐待については、ちょっとストレートにこの審議会の中でもご意見をいただいてなかったので、事務局のほうで論点を二つ起こしておりますが、動物虐待とか遺棄に当たる行為をもうちょっと明確にしていくということがあっていいんではないかと。虐待と遺棄、それぞれ通知とかで出しているものがありますけども、それをもう少しはっきりわかりやすく示していこうというのが論点の①です。

 論点の②は、これは昨年度ぐらいから始めております。たしか公益社団法人日本動物福祉協会さんも独自にされていると思うんですけども、動物虐待を科学的に評価をするといいますか、客観的に評価をできる、人間の場合ですと法医学というものがありますけども、法獣医学といいますか、その動物の状態を見て、それは虐待を受けたということの証明を科学的にできるような、そういった知見の集積も必要じゃないかということで、そういった点についての論点が、この2番でございます。

 この2つの論点につきましては、①の明確化、例示のほうはできるだけもっと示していくことをやっていきましょう、それを検討していこうということが対応案となっております。

 論点②のほうにつきましては、これは昨年度から、自治体の獣医師職員が動物虐待を見極めるための能力を向上させるという観点から研修会を行っておりますので、こういったものを今後も継続していくという部分とか、それから、今年度からは、さらによりデータも集めていこうということで、いろいろご相談しておりますので、これは田中亜紀先生にご協力いただこうと思っておりますけども、こういった部分で知見の集積をやっていきたいと思っております。

 39ページをご覧ください。多頭飼育の問題でございます。これも中身はちょっと細かくはご説明いたしませんが、過去の審議会でかなりたくさんご意見をいただいているものでございます。

 で、その多頭飼育対策を進めていくための考え方の整理というのを、論点の①としております。どうしても、かわいそうな犬猫がたくさんいるとどうしてもそちらに目が向かってしまうんですが、それを引き起こす人間の側のケアがまず必要な問題だということから行きますと、そういった社会福祉的なアプローチも含めて、トータルなチームを作ってやっていくべきだというようなご意見をたくさんいただいたかと思いますが、そういった考え方をしっかり整理してやっていきましょう、いくべきではないかというのが、①。

 それから、その②が、勧告指導を今でも自治体が出せる規定はあるんですけども、実際発動している件数が非常に少ないということで、これをもう少し出しやすくしてあげられるような環境整備が何かあるんではないかというのが、論点の②です。

 論点の①につきましては、まず考え方については、今年度から、この事例収集とかケーススタディをしっかり自治体と一緒に行いまして、関係省庁の意見も聞いて、基本的な考え方を整理していきたいと考えています。最終的には、そのガイドラインの策定に向けて取り組んでいくということを予定しております。

 論点②につきましては、これは自治体にもいろいろお話を伺いながら、多頭飼育の状態に対して、勧告・命令がもうちょっと出しやすくするためには何が必要かというのはしっかり把握しまして、その判断しやすいような判断材料を示していってあげるということかなと思っております。

 42ページをご覧ください。これは飼育禁止命令とか動物の没収の関係の規定でございます。これも、そういうことができないかということで、これもよく各委員からご指摘を受けておりますが、ただ、一定期間の飼育を禁止すること、それから所有権の剝奪、没収は、これはともに財産権などの個人の権利の大きな制約になるということを考えますと、やっぱり慎重な検討が必要であろうということで、これはたしか、以前、何回か前の会議の場におきまして、たしか打越委員からだと思いましたが、行政法の専門の先生方も交えた形で、じっくりと考えていく必要があるんじゃないかということでご指摘いただいておりますので、これはそういった意味で、やっぱり中長期的な課題というふうに、位置づけさせていただきたいなと思っております。

 43ページは特定動物の関係で、どうしてもここのところ犬猫の殺処分とか、そちらのほうにどうしても社会的な関心が高まっていたので、なかなか動物愛護管理室として、こちらは手薄になっていたところもあるんですが、特定動物に対してもうちょっといろいろ見直しをしていく必要があると。

 論点①は、特定動物同士の交雑種、あるいは特定動物と非特定動物の交雑種についても指定するようにしたほうがいいんではないかという論点があろうかと思います。特定外来生物の場合は、交雑種も指定できるように法律改正がなされているんですが、こちらは今、運用に任される形なんですが、そこを少し明確にする必要があるかどうか。

 論点②は、特定動物の許可の基準とか飼育の基準をどうするのか。特に、最近大規模災害の備えというのが関心が高まっていますので、その災害にも持ちこたえられるかどうかという部分なんかも含めてどうしていこうかというのが、論点②。

 論点③は、そういたしますと、大規模災害時のことを考えると、やっぱりそもそも人の生命、身体に害をなすようなものを、個人の方が愛玩目的で飼っていていいのかというようなご議論もあろうかと思います。

 こういった部分が論点の三つでございまして、これに対する対応案として、44ページに書いておりますが、交雑種につきましては、特定動物の交雑種の指定に向けて検討を進めていきたいというふうに考えております。これは、まず特定動物同士の交雑種については、これは以前検討会を環境省で行っておりまして、指定していこうとなったのですが、実は措置をしていない。我々がさぼっているところもあるのですが、一方で特定動物と非特定動物の交雑種をどうするかという部分になりますと、そのリスク評価をどうするかという辺りで、少し慎重な検討も必要かなと思っております。

 論点②のほうの許可基準・飼養管理基準につきましては、先ほどの交雑種の指定の検討に合わせて、やっぱり飼養基準のほうもじっくり情報収集をして、必要な検討をしていくことが必要かなと考えております。

 論点③で、目的、今、愛玩目的でも特定動物が飼えているという現状で、一方、特定外来生物について外来生物法のほうでは、愛玩目的では特定外来生物は飼育禁止になっております。ですから、公益性があるとかそういった場合じゃないと許可がおりないんですが、ともに人間の生命、身体とかに害がなす動物でありながら、片一方は許可がおりる、片一方はおりないというようになっておりますので、この辺りの考え方は整理をしてやっていく必要があろうかなというふうに考えております。

 最後が46ページで、これはたしか木村委員からだと思いますけど、2回ほど猟犬などの遺棄された動物の話がご指摘をされましたが、実はよくよく考えますと、猟犬に限らず危険犬と言われるものに対してどうしていくのかというのは、やっぱり動物管理上一つ大きな課題かと思います。ただ、これを登録制とか許可制にしましょうと言ってしまうと、またこれは自治体の事務が非常に増えてしまう話になりますので、躊躇するところもあるんですが、一方で、以前ご指摘があった猟犬で遺棄されたと思われるもの、もしくは、狩猟者の方に聞くと、犬って本当に高価というか大事なものなので、そんなことはしないと皆さんおっしゃるんですけども、猟犬として育成をし損ねたものが、ひょっとしたら業者の方からということもあるのかもしれませんけども、そこは実態把握をしっかりして、それに対しての対応が必要かなというところで、この論点を二つ書かせていただいております。危険犬については、ひとたび咬傷事故とか起こると、人の生命、身体に侵害の危険性が高い犬の管理については、自治体の条例の措置状況とか海外の規制の状況について、情報収集を行っていくと、我が国に適した危険犬の管理のあり方について検討していくことが必要かなと考えております。当然、これは引取りとか譲渡のときにも、特別に配慮が必要になろうかと思います。

 それから、論点②のほうでございますが、この猟犬がいろいろ遺棄されてというところに対しては、その証拠をばしっと押さえたものがございませんので、やっぱり事実関係で本当に狩猟者が遺棄しているのかどうかも含めて実態把握を行うとともに、その実態を踏まえて猟犬に適切な飼養管理を確保する観点から、本当に狩猟者が原因なのであれば、狩猟者団体に対してまず呼びかけをしていくと。こういったような取組みが必要かなと考えております。

 すみません、以上が飼い主責任のほうで過去に出てきたものを幾つかピックアップして、ご説明させていただきました。

【新美部会長】 説明、どうもありがとうございます。それでは、ただいまの説明、飼い主責任のあり方というテーマについてのご質問、あるいはご意見、感想がございましたら、どうぞよろしくお願いします。

 どうぞ、山﨑委員。

【山﨑委員】 一番最後の点に関して、ちょっと一言申し上げたいと思います。これは以前の法改正のときの検討会でも出てきた課題ではございますけれど、ご存じのとおり、危険犬種法を世界に先駆けてつくったのは英国ですが、いまだに英国では天下の悪法を言われております。

 というのは、これはあくまでも犬種差別です。先ほど、大きな犬は人間をかみついたら、とても危険であるというようなご指摘がありましたけれど、実質的に犬の顎力を考えると、もう五、六キロを超えるビーグル犬、柴犬等でも、成人の骨をかみ砕くだけの顎力を持っております、スピードも持っております。ですから、1.5キロのチワワは無理として、中程度の犬でも殺傷力を持っているとすれば、飼い方を間違えば人を殺します。

 ということで、じゃあロットワイラーだからだめとか、土佐犬だからだめということではなくて、飼い主の要するに飼育目的です。特にピットブルとか土佐犬なんかは、特定の目的で飼われている方々がたくさんおられる。むしろそういった形で犬を育てるというやり方そのものが、恐らくこの法律に反しているのではないかと思いますから、そちらのほうを、もう少し攻めていくということをお勧め申し上げます。

 あともう一つは、猟犬対策ですが、これも私も、私の周りの人間も猟期が終わって、山から迷い出てきたポインター等の猟犬をとか飼育をした経験、多々ございます。例えば猟友会のようなところとともに、いわゆるまずは啓蒙、それからある程度の倫理規定などを設けながら、ハンター、犬を使うハンターそのものに対して、直接働きかけ、ピアエデュケーションですかをするためのシステムを、少し緩やかにつくっていくというところのほうが、むしろ効果があるのではないかなというふうに考えております。

【新美部会長】 どうもありがとうございます。

 それでは、田畑委員、お願いします。

【田畑委員】 特定動物のことですけど、まず雑種の問題ですけれども、これは、当然特定動物同士の雑種というのは指定すべきだろうというふうに思います。

 それから、特定動物と非特定動物の雑種ですけど、これはやっぱり私の考え方で言えば、非常に個体差があるのではないかと考えています。個体の性質としてどう表れてくるか。特定動物を規定するものがあるわけで、その個体がどういうような性質を持っているかというのは当然あるわけで、その辺を少し加味したほうがいいのではないかなというふうに考えています。

 それから、特定動物の基準みたいなものですけど、動物園もピンからキリまであって、いろいろ問題も起こしているようなところもあるわけですけれども、これは、やっぱりそれなりにきちっとした飼養基準みたいなのは、私は当然つくるべきだろうと思います。個人的に言うなら、個人がそういう愛玩動物的に飼うことには、非常に疑問を持っています。

 以上。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 どうぞ、浅野委員、お願いします。

【浅野委員】 二つあります。猟犬のところは、例えば今現状ですと、家庭動物基準で追い払い犬とか、そういう場合ノーリードができることになっていますけれども、そこをもうちょっと規制を厳しくして、訓練士さんとか、ノーリードにする犬というのは猟犬に限らないと思います。そういう犬を使う場合には、飼い主を許可制としてまでいいのかわからないんですけど、一定の例えば講習を受けさせるとかいうことと、それから飼い犬は必ずマイクロチップを、例えば入れることを義務化する、そして登録する。つまり使う側と飼い犬を一緒にセットで何らかの把握ができるようにしておくことで、猟犬が徘回したときにも、それが責任者は誰になるのかということもわかりやすくなるかなと思います。逆に、ハンティングしたり、訓練したり、災害救助に使うときに、大手を振ってノーリードにできるということにもなるんじゃないかと思います。

 それから、もう1点、虐待と遺棄のところなんですけど。これは私も非常に悩ましいと思って、結論が出ているわけではなくて問題提起になるんですけど。愛護動物を遺棄した者は100万円以下の罰金で、これは当然犯罪行為です。これを警察が使ってくれれば、遺棄したというのは、つまり所有権を放棄したということで、その後、例えば動物愛護センターなどが里親、次の人を探して持っていっていただいても、譲渡処分で構わないんですけれども。今の場合というのは、なかなか警察は遺棄で使いたがらない。明らかに遺棄だろうという場合で、ようやく遺失物法を使うんです。ところが、遺失物法も、先ほど事務局からの説明もありましたけど、問題としては、警察は動物を扱いづらいということで改正されて、動物愛護センターのほうに持っていくように誘導されると、動物愛護センターに持ってくる。

 そして以前は、昔は殺処分がほとんどだったと思うんです。そうすると、物権はそこで消滅しますので、所有権の問題は起きないんですけれども。今は処分といってもほとんど譲渡処分を推進することになっていますので、そうすると、新しい飼い主さんがそれをインスタグラムとかにアップすると、なぜかもとの飼い主さんが、捨てたとしても、私のところは実際そういう事件を持ち込まれるんですけれども、名乗り出る。名乗り出て、引き渡し請求をされると、やはりもとの飼い主さんに所有権があるということになってしまうというトラブルが多いです。

 そういうこともあり、動物愛護センターのほうでは譲渡処分する権限はあるけれど、別に所有権を取得しているわけではないので、そういう問題が残ってしまう。本来は、法の予定しているのは、遺棄として警察がきちんと扱うことなんですけど、そこを強く言うことがいいのか、それともそんなに警察が使いづらいなら、いっそこの遺棄というのをやめて、2項の虐待のところに入れて放つという、場所的離隔を伴う場合は放つとして。それから、場所的離隔を占有者と伴わないのであれば、例えば不保護という形で、例示で加え、それで使いやすいようにし、なおかつ所有権の問題はちょっと残るので、遺失物法をもうちょっと使いやすいように、何か遺失物法のほうを、政令を例えばいじって、直していただいて、その売却等のその他の処分のところで何か所有権の問題をクリアできるか、あるいは、民法240条をクリアしないとだめなのかというのは、研究が必要なんですけど。そういう、ちょっと整理をしていってもいいのかなと。

 ちょっとまだ考えが私自身まとまっていなくて申し訳ないのですけど、そういう問題提起をしたいと思います。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 ほかにご意見。

 どうぞ、松本委員お願いします。

【松本委員】 特定動物のところが、43ページから44ページに書いてございますけども、基本的には論点③の対応案に書いてあるとおりで、やはり平時、あるいは災害時にかかわらず、特に災害時の影響を考えると、やはりこの論点の対応策のように、飼育目的によってきちんと切り分けて、愛玩目的飼育等の規制については、やはりきちんとした対応をしていかなければならないと日本医師会としても考えております。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 ほかにご意見。

 じゃあ、どうぞ、打越委員、お願いします。

【打越委員】 動物虐待のところですけれども、動物虐待があった場合に、犯人を検挙するのが非常に難しい、証拠が見つかりにくいということで、なかなか警察が本気になってくれないという嘆きの声を聞くことがあるんですけれども、その犯人を例えば検挙できなくても、実は動物虐待は非常に危険な信号だと。ここのところ、矢継ぎ早に刃物を使った殺傷事件が起きているような状況で、だから動物虐待のようなことが起きている、例えば毒入りの餌が置いてあったとか、もちろん動物の死体が置かれていたとか、そういうことがあったら、検挙できなくてもその情報を挙げることが非常に重要だということを、警察には認識を持っていってもらいたいと思います。

 38ページの資料を見ますと、警察庁も全国の都道府県警にいろんな周知徹底を図っているんだなというのがわかるんですけれども、私、実は大事なのは地域の見守りというか、見張りの目、これは全ての犯罪でそうだと思うんですけれども、警察から地域の町内会長や自治会長さんへの周知、子どもたちの通学路の安全を守るのと同じように、警察からの回覧板配付をしてもらうということが、実は非常に効果的ではないかと。回覧板って市町村とか警察とか行政機関からのものを回していて、今、町内会への加入率が落ちていると言われますけれども、それでもそこに警察からの回覧板というふうに回すと、自治会長さん、町内会長さん、正義感のある方結構多いですので、動物虐待があったら、この次、例えば人間にとっても危険なことなんだなというふうに地域の草の根にそういう認識を持ってもらえますし、そうすると、組長さん、班長さんを通じて地域の雰囲気が変わってくる。あるいは、そういうチラシが回ってくると、ここは警察が見張っている地域だということで、その犯罪行動の抑止にもつながると思うんです。

 そういう意味では、警察官が意識しているというだけではなくて、本当に田舎で地域の中で暮らしていると、町内会、自治会の、要は動物が好きな人であれ嫌いな人であれ、そういう人たちの地域の目というのはすごく大きな役割を果たしますので、そこを巻き込んでいくのが大事なんじゃないかと思います。

 先ほど、猟友会、猟犬のお話がありましたけれども、猟友会の多分上層部のほうに連携を申し入れてもなかなか話は動かなくて、というのは、猟友会のおじちゃんたちというのは、私も知り合いたくさんいますけれども、地域の中では結構個性的な頼りになる部分と、やっぱりご自分の強いプライドを持っている方々でありまして、そこに頭ごなしに何か周知しても、絶対に動いてくれない。だからこそ、例えばもしも猟犬を捨てているんじゃないか、あそこの猟犬の飼い方はひどいんじゃないかというのがあったときには、地域の人たちの目から情報を得るというのが、私は非常に重要だと思います。

 それは都会であっても大事なことだと思いますので、今後、町内会、自治会を巻き込むために、どうすればその町内会、自治会のおじちゃん、おばちゃんに納得してもらえるかというレトリックを考える必要があると思います。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 どうぞ、山口委員。

【山口委員】 動物虐待までいかずとも、動物虐待で訴えられる時点では、もう既に動物はかなり衰弱していたりということになりますので。できるだけそれを未然に防ぎたいという意味でも、虐待の明確な項目をずっとわかりやすいように挙げていただくのはもちろんありがたい。それ以前に、適切な飼育管理を、私たちからしたらそんなの当たり前と思うようなことでもされていないこともありますので、そういうことも含めて適切な飼育管理をずっと細かく挙げていただければ、虐待に至る手前でその動物の飼育管理の改善を促すことで、特に多頭飼育のときはそうなんですけれども、動物の苦しみが未然に少しでも防ぐことができるのではないかなというふうに思います。

 虐待までいってしまえば、やはり予後不良なんてことも結構ありますので、できるだけ未然に虐待を防ぐという意味でも、この法律が虐待を未然に防ぐことができるように、そして自治体の職員の方が、それを使いやすいように、早期発見、早期介入というのがやっぱり基本だと思います。

 そして、もう一つは、そのためには、多分各自治体、環境省もそうだと思いますけど、もう少し予算がないとやりにくいのではないかと思います。しっかりやっていただくには、それだけのものが必要かなというふうには思います。

【新美部会長】 ありがとうございます。ほかに。

 どうぞ、浅野委員、お願いします。

【浅野委員】 今の山口委員の件で言うと、今、25条で多数動物を飼っている場合には、期限を定めて必要な措置をとるべきことを勧告できるということで、ここで使えるのかなと思うんですけども。ですので、多数動物に限らないということを、ここをちょっと変えるというのも一つあるかなと思います。この場合は、周辺の生活環境が損なわれている事態だけなので、それ以外の44条2項の動物虐待に近づいている、不適切飼育の場合の改善もできるようなものを、ちょっとここに加える。

【則久動物愛護管理室長】 3項で。

【浅野委員】 すみません。そうですね、3項で、今ご指摘いただきました。25条3項で虐待の場合がありますので、そういう意味ではここも多数になっているので、私の意見としては、多数じゃなくてもいいような形にしてはどうかというふうに思います。

【山口委員】 多頭飼育も含めてという。

【浅野委員】 そうですね。25条3項だと、衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態としてというのがあるので、そこをもうちょっと使っていけばいいのかなというふうに思います。

【新美部会長】 ほかにご意見ありますか。

 藤井委員、お願いします。

【藤井委員】 則久室長のご説明の中で、32ページの飼い主のいない野良犬・野良猫への餌やり行為というところで、ご説明の中では所有者、占有者以外に管理者的なものというご説明だったと思うんですけども、その管理者が今どういうものかというのはちょっとわからないんですけれども、非常に興味深い概念かなというふうには思いました。

 というのは、犬の場合には登録制度がありますので、所有者が誰かということは、比較的わかりやすいんですけども、その他の家庭飼育動物の場合というのは、その辺が非常に特定が難しいという場合も往々にしてあると思います。ただ、いずれにしろ一般家庭で犬や猫を飼われている方というのは、その所有をしていることが目的ではなくて、その動物と暮らしをすることで得られるいろんな経験ということを楽しみに飼っているわけです。

 一方では、この野良猫に餌やりをする人も所有者、占有者ではないかもしれないけれども、そこで動物と接している時間というのを、この人たちは楽しみにしている部分はあると思うんです。

 そういう意味でいうと、これはちょっと違う例になりますけれども、今、世の中にあるいろんなものというのが、所有者だけに全ての責任というわけにはいかないふうになっていると思うんです。例えば車なんかでも、昔は免許を取って、車を持って、持つこともステータスだったかもしれませんが、今では都会で車を持つことも難しくなって、大きな荷物を運ぶときだけ、それから家族とちょっと遠出をするときだけに車を利用すると。利用して、そこで得られる生活に対して車が役に立っているという状態になります。ですので、カーシェアリングみたいなものが世の中に出てきて、車のメンテナンス等に関しては所有者に責任がある。ただ、車を運転するときは、その利用者に対して責任があるというようなことで、世の中のサービスができている部分もありますので、例えば、今出ていた管理者的なもので、今管理者はどうあるべきかとか、どう責任があるかと決めることは難しいんですけれども、この法律が求めている、動物と暮らすことによって世の中は豊かになるということで、いろんな人がどう責任をとるかということで、この管理者の概念というのは考えるのはいいのかなというふうに思いました。

【新美部会長】 ありがとうございます。ほかに。

 則久室長。

【則久動物愛護管理室長】 ありがとうございます。適正飼養という言葉も先ほど出てきておりますけども、実は飼養という言葉が法律で使われているけども、実はその定義は何だということを、ある法学者の方が言われたこともあります。じゃあ、外にいる所有者不明の猫たちに餌をあげる行為は飼養していることなのかどうかとかという問いかけもあって、ちょっとそこはまだはっきりしてないところもあるんですけども。

 今回この作業をしていて、ずっとやっていて我々のほうで考えたのは、海外で例えば飼育禁止命令が出せるとか、没収できるとかいろんなことがあるって、動物のことを、日本人の場合対等だと思うんですけど、欧米ではちゃんと管理をする対象だというのがまず前提にあって、その上で管理、すなわち動物を飼うということは、それなりの責任と義務を生じているので、それをちゃんと果たせない人のものは取り上げることもできるし、危ないものは規制もするしという、何かそういうような概念がしっかりあるような感じがするんです。

 そうすると、野良猫に餌をあげている方も、当然何らかの管理の責任を本来負うはずなんですけども、日本は動物に対して管理をするものだという意識がすごく弱い中で、現に所有している人の、逆にそこの財産権のほうが強過ぎたりとか、ちゃんと管理してないのに、その人の財産権が障害になって保護できないということが起こってしまうということもありますので、そこは、何かちょっとこれも動物愛護管理法とかというレベルじゃなくて、もうちょっと大きなレベルの議論ではあると思うんですけども、そこが共通の、実は根底にあるテーマとしてあるのかなというのは、感じておりましたので、今の藤井委員のお話を受けて、ご紹介といいますか、感想を述べさせていただきました。

【新美部会長】 今のお話は、実は則久室長がおっしゃったように、ヨーロッパの先進の動物愛護の国と日本とで決定的に違うところだと思います。日本で、後でコメントを出そうと思ったんですけど、先ほど警察にということが出ましたけれども、動物の虐待が犯罪になるかという問題です。自分の飼育する動物を虐待する場合、誰かを害しているのかという問題があります。自己の所有物の毀滅は他人を有形的に害するものではありません。動物が物であるならば、動物虐待を犯罪とすることは、道徳あるいは倫理を刑罰によって強制することに他ならず、自由主義社会からいえば極めて問題でしょう。J.Sミルの自由論からすると、道徳の強制は自由主義に反することになります。人の虐待は、その人を害するものであり、犯罪として処遇しても自由主義には反しない。

 そうすると、警察が動物の虐待に手を出せるのかというと、明確に他者を害するとはいえない場合、そう簡単ではない。ここで虐待を書いてあるというのも、基本的には生活環境に支障を来すということが枠にある。他者に迷惑をかけるから、いわゆる規制をかけられるという話がベースにあるんです。ですから、よきことをやるというときに規制がかけられるかは疑問です。

 そこで、動物は物ではなく、生き物として尊重されなければいけないと憲法などに規定して、いろんな規制なりを考えている。それでも、問題はないわけではない。これに対して、日本の場合にはそれがないものですから、他者に規制をかけるというときの根拠が必ずしも明確ではない。憲法問題になったときに、本当にディフェンドできるのか、公共の福祉で制限できるものですと言えるのかどうか。いいことをやるから規制をかけられるという話には必ずしもならないので、注意をしておく必要があるんじゃないかと思います。

【則久動物愛護管理室長】 今、部会長がおっしゃったのは、動物虐待の保護法益が動物を愛護する気風という公序良俗、社会のいい気風を守りましょうという観点から、動物を虐げる行為とか遺棄する行為を禁止をしているということのご指摘だと思うんですが。

 ですから、世の中の気風を乱さないために虐待を禁止しているのであって、その動物そのものに何らかの人権か何かがあって守られているわけではないというところが、ヨーロッパとは違うということなんだと思います。

 動物愛護管理法の保護法益について、あまり気風、気風と言い過ぎるのはよくないというご指摘もあるんですが、基本的に動物愛護の気風という、その公序良俗を守るために虐待を規制するし、動物取扱業者も適正に扱ってもらうことを義務づけるという組立てになっていますし、一方で、動物による人の生命、身体、財産の被害とか生活環境被害と、これは非常に明快なんですけども、そこのスキームというのは、日本ではやっぱり動物に権利の主体性はなくて、あくまでも物であるというところから出てきている保護法益みたいになっていますので、その辺り、どこまでの規制ができるかというのは、これは実は次回の動物取扱業の議論にもつながると思うんですけども、根源的な、そして日々迷うところのある大きな論点かなと思っております。

【新美部会長】 それでは、打越委員。

【打越委員】 保護法益は愛護の気風というのは、そのとおりだと思いますけれども、みだりに殺傷すれば刑事罰の対象になるのは、動物愛護管理法に明確に定められていますので、動物虐待をすれば刑法犯だと思います。

 ただ、保護法益がというのは、室長のおっしゃるとおりで、新美部会長の意図がそういうことであるならば、私もそのとおりだなと思うんですけれども、実は、愛護の気風、動物そのものを守ってあげたいという気持ちもあるだけではなくて、実は多頭飼育の問題をずっと考えていて、愛護の気風というのをあまり大事にし過ぎると、私はこの犬や猫を助けてあげたくて、愛護の気持ちで一生懸命飼っているのに、その気持ちを否定するのかと多頭飼育者に抗弁を与えかねない、そういうリスクもあるなと思いまして、から愛護の気風というものが一番大事というだけ言っていると、今度は多頭飼育者さえも尊重することになってしまうということを考えると、きちんと動物を守るというのがどういうことかを議論していく必要はあると思います。

 そういう意味では、42ページに、その飼育禁止命令や動物の没収については慎重な検討が求められるというのは本当にそのとおりだと思いますが、考え方の整理を行っていくのも重要だと書かれたのは、これは大きな進歩だと思います。環境省の事務局として、当然慎重な検討をしていただかないと、感情論でこんなものをつくられたら困りますけれども、その整理を行っていくのが重要ということを環境省の文書が書いたというのは、これはものすごく大きな進歩だと、私はそう思っています。

【新美部会長】 どうぞ。

【山﨑委員】 二つほどございます。一つは、先ほどの適正飼養管理に関しましては、環境省もRSPCAの研修で、随分とファイブフリーダムに基づいたチェックリストの活用方法というものなど、自治体の方々と研修をお受けになっておられると思いますので、非常に単純なチェックリストで、ややこしい基準をつくらずとも、水とご飯をあげているか、病気じゃないか、けがしてないか云々というようなチェックリストをつくって、飼養管理が適正かどうかをチェックするのは、極めて簡単なことであろうと思います。

 もう一つは、今の新美部会長がおっしゃったことに関してですけれど、私も先ほど打越委員がおっしゃった通り、動物をみだりに傷つけたりすることに対する罰則があるということで、実際に罰を受けるという根拠のある法律であるというふうな理解でございましたので、ちょっと驚愕いたしました。

 というのは、世界では今動物と人間の関係に関しましては、WHOが何年も前にワンヘルスという考え方を出しましたが、今やそれが進化して、社会的な識者のレベルでは、ワンウェルフェアという言葉が使われております。つまり福祉は一つということは、人間の福祉と動物の福祉が連動しているという考え方でございます。それに乗っかることができないということでしょうか。これは人間の福祉、そして人間の社会のための法律であるという、本当に狭い範囲での考え方であれば、日本においてはG7の中でまた2020年のオリンピックを迎える国としては、動物を守る法律はないよと世界に対して言わなければいけない、非常に危うい立場に陥ってしまうなというふうに、私はちょっと危機感を感じました。

 それから、もう一つは、では、たとえそうであったとしても、では人間社会をどう守るかという点に目を向けても動物を無視することはできません。それに関しましては、先ほどの暴力のお話、動物の虐待が人間社会の暴力と連動しているということに関しては、国際的に社会的にリンクというネットワークもございます。そして世界各国でかなり心理、医療、そして人間の社会福祉、及び動物専門家がリンクというネットワークに参加しながら、いろいろな条例や国の動向とかの情報のシェアリングをしております。私がつくりました一般社団法人も、リンクのメンバーになっております。

 それから、多頭飼育に関しましては、HARCというホーディング・オブ・アニマルズ・リサーチ・コンソーシアムという、これもまた専門家、識者が集まって、多頭飼育の人間側の問題点、社会福祉的問題点など、精神医学的問題点などを追及して、これを総合的に多角的に解決しようというリサーチグループもございます。

 それから、実際の人間の福祉を考えたときに、先ほど藤井委員がおっしゃった餌やりに関しましても、本当にいわゆるこのコミュニティーキャットとして、地域猫として責任を持っておられる方もおられますが、同時にそれこそ本当に自分で全財産をなげうって、ご飯を買ってあげてまわる、それが生きがいになってしまっている方もおられます。人間の生活の中で発せられるSOS的な行動になっているという、そこの部分が恐らく社会に対して問題を提起している一群だと思うんです。

 ですから、アニマルホールディング、それから餌やり、それからリンク、暴力の連動性、これ全部人間の問題でございますので、動物愛護管理法の範疇を超えるかもしれませんけれど、じゃあ動物愛護管理法が公序良俗のための法律であるとすれば、実際には環境省、厚生労働省等々が集まって、人間の社会問題の中における動物の位置づけという、きちっとした対策をとるための施策を練っていけなければいけないというふうに、私は思っております。

【新美部会長】 どうもありがとうございます。ほかにご議論ありますか。

 どうぞ、浅野委員。

【浅野委員】 本法律が社会風紀が目的ということは否定しないんですけれども、ただ、そこも刑法学者の先生たちでもいろいろ争いはあって、44条1項の愛護動物をみだりに殺し、傷つけた場合というのは、もちろん飼い主であっても処罰対象になるということと、公共の場に限定していないということがありますので、社会風俗だけを保護しているということは、もうこの法律では言えないということは、そこはもう、争いはないのかなというふうに思っています。

 また、1条の見方として、先ほど動物愛護をする気風を抽象的に過大評価すると、多頭飼育者の方に抗弁を与えるというようなご意見もありましたけれども、この文言を見ていても、保護と管理なんですけども、保護のほうとしては、動物の虐待、遺棄の防止と適正取扱いという事項を定めた結果が国民の間に動物愛護する気風を招来するので、その適正な扱いをすることでの動物愛護の気風招来ですから、不適正な扱いをしている人が、私の個人的な動物愛護をする気風を守ってというような法律ではないので、その辺もきちんとこの法律自体は、まず1点は動物の適正飼養について定めるんだと。それによって動物を保護するんだということは、問題ない、間違いないことだと思います。

 法律は、当然人が作って、人のための社会で使われるわけですけど、ただ、その中ではいろんな個別法は、動物を保護する法律があったり、子どもを保護する法律があったり、個別で労働者だけを保護する法律があったりということですので、動物を保護することが、例えば憲法で人権がないからできないということではない。この法律自体は、例えばですけど、動物を保護する法律だと、明らかにそれが法益だということに明確になったとしても、全てのそれ以外の法律全部あわせて、結局は法律というものは最終的には基本的人権とか、生態系保護という概念に集約されていくということで問題ないと思いますので、この個別法だけで動物保護法というふうに考えること自体がおかしいという議論は、ちょっと違うんじゃないかというふうに思います。

 以上です。

【新美部会長】 ほかに、ご議論ございましたら。

 まだこれは第一段階ということですので、ご議論はほかにもあろうかと思いますが、とりあえずこの第2のテーマについては、ご議論をここで一応締め切らせていただいて、次に、全体にわたってご質問、ご意見ございましたら。第1のテーマについて言い忘れたことがあるというようなことがあろうかと思いますので、全体にわたって何かご意見ございましたら、どうぞ。

【打越委員】 短くします。自治体と環境省の役割分担のところ、触れそびれましたけれども、地方自治の研究者として、地域の多様性に配慮した書きぶりになっていると思いますので、異存ありません。

【新美部会長】 ほかにございましたら。よろしいでしょうか。特にございませんか。まだ若干時間がありますので、ご意見ございましたら、どうぞ。

 はい、どうぞ。

【金谷委員】 11ページの中ほどのところで、殺処分のあり方について、人口が多く協力者の多い東京都の取組みを全国に模範にすることは困難とか、そのほかにも似たような表現が幾つかあったんですけれども、東京都の現状、いきなり昔からこういうような殺処分数がすごく少ないとか、そういうことではなく、長年の取組みによってここまでやってくることができましたので、例えば全国の他の県でも、模範とまではもちろん言いませんけれども、東京都がやっているいろんな取組みなども、ぜひ地域の実情にあわせて参考にしていっていただければというふうに思いますので、この辺の表現はちょっと工夫をしていただければと思います

【新美部会長】 ほかにご意見ございましたら。

 どうぞ。

【打越委員】 その発言をしたのは私ですので、あのときは勢いで発言しましたけれども、確かに東京都さんの中から、ほかの自治体に波及できるものは生かしていくということを否定しているものではありません。

 それから、一つ、多頭飼育の話なんですけれども、福祉や保健分野との連携が大事という話がありましたが、これ、現場の動物愛護管理行政の担当者だけに任せてほかの福祉と連携しろと言われても、福祉事務所は都道府県と市町村と分かれていたり部局の系列も違いますので、そういう意味では、例えば各都道府県の保健衛生、福祉部局を束ねるリーダーの積極的なトップダウンの支援が必要ではないかと思います。

 また、そのためには、環境省と厚労省の連携を探るということも大切だと思いますので、いきなり現場の担当に連携しろというよりも、そういう世論をしっかりつくっていくことが大事ではないかと思っています。

【新美部会長】 ほかにございませんでしょうか。

 はい、山口委員。

【山口委員】 譲渡のところです。結構、団体譲渡ということで、民間との共同ということがかなりの自治体で行われているんですけれども、団体譲渡でも、団体への負担及び団体によっては、不妊去勢手術をよしとしないところもあることを考えれば、最低限自治体から出るときには、不妊去勢手術をしてから出すということはやっていただかないと、そこから逃げ出したとき等、また野犬等を増やしてしまうという問題も既に出てきていますので。やはり自治体における不妊去勢手術というのは、とても重要だなというふうには思うんです。

 譲渡のときにやってくださいねという約束で出すと、確かにやっていただける方もいらっしゃいますけれども、調査するとやっていないという方々もやはりあるんです。ですから、せめて自治体から出すときには、不妊去勢手術。早期不妊手術している自治体も既に幾つも出てきていますので、ぜひそれを実施していただけたらなと、それを環境省から推進していただけたらなというふうに思います。

 その早期不妊は、自治体自身でやる場合、あるいは獣医師会との連携でやる場合、両方あるとは思いますけれども、そこは自治体に合わせてやっていただければと思います。

【新美部会長】 ほかにございますでしょうか。

 特になければ、今日のご議論を尽くしていただいたということで扱いたいと思います。

 それでは、最後のその他の報告事項について、事務局からご説明よろしくお願いします。

【事務局】 資料3をご覧ください。種の保存法が改正されて、ニュースでも象牙が登録制になるとか、流れたと思いますが、その中の一つとして、国際希少野生動植物の流通の管理の観点から、今も国際希少野生動植物種でもあっても、適法に輸入されたものや日本国内で繁殖した個体などはペットショップ等でも売ることは可能ですけれども、その際の管理を徹底するために、個体識別措置、マイクロチップなどでしっかりやってほしいということが、今回入れられております。

 それに伴いまして、そういった規定に違反した方について、第一種動物取扱業の登録の拒否要件に追加するということが、今回6月1日から導入されております。法律の文言等は資料をご覧いただければと思います。

【新美部会長】 ありがとうございます。

 ただいまのご報告についてご質問等ありましたら、どうぞご発言ください。よろしいでしょうか。

 それでは、以上をもちまして本日の議事は終了とさせていただきたいと思います。どうも、ご協力ありがとうございました。

 それでは、議事進行を事務局のほうにお返しします。

【事務局】 委員の皆様におかれましては、ご多忙のところ長時間にわたりご議論いただき、ありがとうございました。

 なお、本日、大変駆け足でのご議論でございましたので、冒頭から何度か説明させていただきましたが、後日改めてお気づきの点等ございましたら、適宜、7月中を目途に、事務局のほうまでメールなり何らかの方法でご意見を賜れれば幸いです。

 以上をもちまして、本日の部会は閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。