遺伝子組換え生物等専門委員会(平成28年度 第3回)議事要旨

1.日時

 平成28年8月3日(水)10:00~12:00

2.場所

 経済産業省別館11階 1115会議室

3.出席者

(委員長) 磯崎博司

(臨時委員)大塚 直、五箇公一、柴田明穂

(専門委員)明石博臣、穴澤秀治、大澤 良、鎌形洋一、佐藤 忍、山口照英

(関係省庁)外務省高畠課長補佐、財務省米澤専門官、文部科学省伊藤専門官、

厚生労働省下位調整官、石川主査、農林水産省大島課長補佐、

農林水産省鈴木室長、吉尾課長補佐、経済産業省小林課長補佐

(環境省) 亀澤自然環境局長、植田野生生物課長、清家課長補佐

曽宮外来生物対策室長、立田室長補佐、平山移入生物対策係長

4.議事

議題1 バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書(以下「補足議定書」という。)に対応した国内措置のあり方について

議題2 その他(報告事項:カルタヘナ法の施行状況の検討について)

5.議事要旨

議題1 バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書に対応した国内措置のあり方について

◇事務局から【資料1】~【資料4】について説明

◆委員意見

■基本的な方向性について

○補足議定書を担保するに当たっては、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(以下「カルタヘナ法」という。)を中心に担保することで問題ないが、一部については他法令で担保されるという点を指摘しておく。例えば、補足議定書第12条は民事責任を規定しているが、日本では民法で担保していると説明する必要がある。また、補足議定書第5条第4項及び第5項は管理者が対応措置を執ることができない場合における国の権利等について規定しているが、日本では行政代執行法で担保していると説明する必要がある。

■「損害」について

○対応措置の対象として具体的に想定しているものはあるのか。

(事務局)これまで損害が起こったことがないため、あくまで仮定の話となるが、資料3の「2-1.遺伝子組換え生物による生物多様性に係る影響の例」を想定の上、「3.想定される「対応措置」(復元、緩和)の例」としてお示しした。

○「著しい」悪影響の「著しい」という概念をどう考えるのか。

(事務局)補足議定書第2条3項に規定されている基準がひとつのメルクマールになると考える。

○損害を生物多様性の観点から重要な地域や種への影響を著しい悪影響と定義しても、補足議定書の担保上、問題がないかということがポイントになる。結論からいえば、問題はないと考える。理由の1つ目は、補足議定書第3条第6項に規定において認められているため。この条文はEUが強くこだわって入った条文であるが、その際にEUは、損害を受ける前のベースラインが分かっていなければ復元はできないと合理的な説明をしていた。理由の2つ目は、第2条第3項において「著しい」悪影響の判断基準があげられているが、英文でみるとそれらの判断基準は「such as」として例示されているだけであり、記載の基準以外も考慮してよいことになっているため。

○国内起源の遺伝子組換え生物等も対象とすべきかについては、補足議定書の議論とは別の議論となるが、WTO協定など他の国際約束との関係上も、国外起源の遺伝子組換え生物等と同等に扱うべきである。

○現行カルタヘナ法では生物の多様性が損なわれるおそれがある場合に対応措置を執ることになる。補足議定書では、実際に損なわれた場合に復元するということだが、中止、回収だけで復元される場合もあるはずである。今回のカルタヘナ法の改正では復元のために中止、回収もできるかたちで担保されると考えてよいか。

(事務局)御指摘の点を考慮しつつ具体の条文を検討したい。

■「対応措置」の対象者及び内容について

○違法な使用者のみを措置命令の対象にするということでよいと考えるが、適法な場合には政府が対応するということを明確に示す必要がある。

○適法な場合と違法な場合という区別は国内法的な考え方である。補足議定書では適法、違法を区別していない。遺伝子組換え生物等による損害があった場合には何らかの合理的な対応措置を執らなければならない。したがって、適法な場合にも担保が必要である。一方で、国が承認したものについては補足議定書第6条第2項において免責できるという規定がある。最終的には政策判断であるが、適法な場合には、①補足議定書第6条2項により対応措置を執らない(補足議定書の担保とは離れて対応措置を執ることは問題ない)、もしくは、②事業者負担にはしないが国が責任を負う、ということになると考える。

○補足議定書は、汚染者負担原則を念頭に置きつつ、カルタヘナ議定書の締約国に途上国が多く、政府が危機管理を行う能力が不足していることを考慮して、汚染者に負担させる方向で議論されてきた。この点、日本において適法な場合には政府が責任を負うとなると、補足議定書の理念からは少しずれるが、補足議定書の担保上問題があるわけではない。

○資料4の※5にある二種使用等に関する記載について、適法な場合には「拡散防止措置改善措置命令等」である一方、違法な場合には「拡散防止措置命令等」となっており、一見すると適法な場合の方が追加的な措置を講じる必要があるようにみえるが、どういうことか。

(事務局)違法な第二種使用等における措置命令とは、拡散防止措置を執らずに第二種使用等をした場合に執る措置であり、適法な第二種使用等への措置命令とは、新たな科学的知見の充実により既に一度確認等をした拡散防止措置を改善させるということである。適法な場合の措置命令はあくまで例外的な措置である。

◇事務局から【答申素案】について説明

◆委員意見

■答申素案について

○P5の「1.基本的な方向性」の3パラ目に「「対応措置」のうちの「防止」「回避」「最小限」「限定」「緩和」に係る行為は当該規定に基づいて命ずることが可能である」との記載があるが、今回のカルタヘナ法の改正により、損害が発生した場合にも同様の措置命令ができるようにする必要があるため、「「対応措置」」の前に「損害が発生した場合にも」との文言を追記すべき。

○P4の(エ)及びP5の(オ)についても、行政には、管理者に代わって対応措置を執ることとその求償を求める権限が付与されていることを説明する必要があるため、P6の「1.基本的な方向性」の4パラ目の「(カ)に関しては、~」との記載の次に、「補足議定書第5条4項及び5項については、行政不服審査法、行政事件訴訟法及び国家賠償法で担保している」といった記載を追記すべき。

○P6の「2.「損害」について」の1パラ目に「~管理者は復元措置を命じられる可能性があるという負担を負うこととなる」との記載があるが、これは生物多様性影響と損害が異なることに起因することを明確にするため、「管理者は」の前に「生物多様性影響とは異なり、」といった文言を追記すべき。

○P6の「2.「損害」について」の1パラ目に「「損害」の範囲はある程度予測可能で明確なものとすべきである」との記載があるが、誰にとって予測可能で明確なものとすべきかが不明確であるため、「ある程度」の前に「管理者にとって」との文言を追記すべき。

○P7の「3.措置命令の対象者について」の3パラ目に「~必要に応じて、政府が自ら復元措置を講ずること等を検討すべきである」との記載があるが、「必要に応じて」を削除した上で、「~政府が自ら合理的な復元措置を講ずるべきである」と修文すべきではないか。また、合わせて、補足議定書第6条第2項の免責規定の活用についても検討してもらいたい。

議題2 その他(報告事項:カルタヘナ法の施行状況の検討について)

◇事務局から【資料5】及び【資料6】について報告

◆委員意見

○特になし

【取りまとめ事項】

◇答申素案について、①本日の意見を踏まえ委員長と事務局で修正案を検討し、委員に照会をかけ、事務的に調整した上で、答申案を確定すること、②確定した答申案をパブリックコメントに付すこと、③パブリックコメントにおいて新たに重要な論点や指摘がなかった場合には、答申案に係る専門委員会を開催せずにその後の手続きに進むこと、について委員の了承を得た。

以上