野生生物小委員会(令和3年度 第27回) 議事録

日時

令和3年12月23日(木)10:00~12:07

場所

WEB会議システムにより開催

出席者

(委員長) 石井  実
(委員) 山極 壽一  勢一 智子
(臨時委員) 石井 信夫  尾崎 清明 小泉  透
白山 義久  高橋  徹 宮本 旬子
広田 純一  佐藤 哲也 五箇 公一
(専門委員) 磯崎 博司  イルカ(神部としえ)

桜井 泰憲

高橋 佳孝  マリ・クリスティーヌ
(環境省)

奥田自然環境局長

松本審議官
関谷総務課長
則久野生生物課長
山本希少種保全推進室長
東岡鳥獣保護管理室長
大林外来生物対策室長
立田野生生物課課長補佐
村上鳥獣保護管理室室長補佐
水﨑外来生物対策室室長補佐
谷垣外来生物対策室室長補佐
川瀨希少種保全推進室室長補佐
遠矢鳥獣保護管理室室長補佐
安西野生生物課課長補佐
前田外来生物対策室専門官
堀江外来生物対策室係長

早瀬希少種保全推進室係長

(農林水産省) 三浦環境バイオマス政策課地球環境対策室課長補佐
森環境バイオマス政策課地球環境対策室係長

議事

【事務局】 本日はお忙しい中、ご出席を賜り誠にありがとうございます。定刻となりましたので、中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会を開会します。

 本日は全委員17名中17名、うち委員・臨時委員12名中12名がご出席され、定足数を満たしていますので、本委員会の成立を確認しました。

 それでは、開会に先立ち、連絡事項を申し上げます。

 本会議はウェブ会議システムにより開催し、その様子をYouTubeにてライブ配信することをご了承ください。委員の皆様は全員、カメラをオンにしてください。石井実委員長以外の皆様は、発言時を除き、マイクをミュートに設定してください。ご発言の意思を示す際は、画面右手の氏名の右横にある挙手ボタンをクリックして、色を変えてください。委員長からご指名を受けましたら、マイクのミュートを解除し、その都度、お名前を述べて、ご発言ください。発言が終わりましたら、挙手アイコンをクリックし、色を変えて元に戻してください。

 資料はあらかじめ委員の皆様へ電子データを送付しております。また、環境省ウェブサイトの野生生物小委員会のページにアップロードしております。

 本日は大詰めの審議案件もございますので、終了時刻は予定の12時を少し過ぎる可能性があることをあらかじめご了承ください。

 それでは、自然環境局長の奥田より、ご挨拶を申し上げます。

【奥田自然環境局長】 皆さん、おはようございます。自然環境局長の奥田でございます。本日はご多用中のところ、本委員会にご出席を賜りまして厚く御礼申し上げたいと思います。

 また、委員の皆様におかれましては、日頃より自然環境行政にご理解、ご協力をいただいておりますことを、改めて御礼申し上げます。

 本日の会議は、これまでどおりウェブを活用した形式で委員会を開催させていただきます。またご不便をおかけしますけども、ご容赦いただければと思います。

 最初に、昨今の自然環境行政の動向について、簡単にご紹介させていただきます。

 ご承知のとおり、生物多様性条約の第15回締約国会議、コロナの関係で延期されてきたわけですけども、第一部は10月に開催ということで、愛知目標に代わる新たな世界目標を決定する第二部、これについての準備が進められているところでございます。しかし、1月のジュネーブ会合、これがオミクロン株の影響により延期されたということで、本日、先ほど3月になったということで報告を受けましたけれども、実際、3月から4月末から5月に開催される予定の第二部、これが本当に予定どおり開催されるかどうかはやや不透明になっているという状況でございます。

 いずれにせよ、世界目標を決定した後、速やかに我が国の国内目標、これを策定できるように、野生生物関連も含めて、生物多様性国家戦略の改定作業を並行して進めていきたいというふうに考えております。

 この次期国家戦略では、今申し上げたとおり、本日ご審議いただく外来生物対策、この強化なども大きな論点になろうかと思います。そのほか、2050年のカーボンニュートラルに向けた各種の施策とともに、生物多様性の分野においても取組を強化していかなければいけないというふうに考えております。

 さて、本日の議題でございますけれども、審議案件1件、諮問案件1件、その他の報告事項がございます。

 一つ目の審議案件は、外来生物法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置についてのご審議でございます。前回の10月の小委員会でご審議いただきまして、その後、パブリックコメントを行っております。パブリックコメントで寄せられたご意見を踏まえて取りまとめていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、二つ目の諮問案件は、ハカタスジシマドジョウ保護増殖事業計画の策定について、お諮りするものです。

 限られた時間ではございますけれども、本日も忌憚のないご意見を賜りたく、よろしくお願い申し上げて、私からの最初のご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【事務局】 それでは、これよりの議事進行につきましては、石井実委員長にお願いすることとします。石井委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

【石井委員長】 皆さん、おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 本日ですけれども、やはりオンラインの会議となってしまいました。そのメリットか、全委員のご出席ということではあるのですけれども、その反面で通信上のトラブルも想定されます。その場合には、いつものようにチャット機能を使ってお知らせいただければというふうに思います。

 本日の委員会でございますけども、これもいつものようにYouTubeチャンネルにおいてライブ配信しております。報道関係者、あるいは一般の方もご覧になっていますので、この点、希少種のピンポイント情報等を言わないようにというようなご配慮をお願いしたいと思います。

 議事録でございますけれども、後ほど事務局が作成し、本日ご出席の委員のご確認を受けた後、私、委員長が了承した上で公開するということをあらかじめご了承いただければと思います。

 また、会議資料につきましても公開となります。よろしくお願いします。

 それでは、今日は時間がなかなかタイトそうですので、早速、議事に入りたいと思います。最初の議題でございます。「外来生物法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について」、まずは事務局からご説明をお願いいたします。

【説明者】 外来生物対策室の水﨑と申します。資料1について、ご説明させていただきます。資料共有いたしますので、少々お待ちください。

 先ほど局長からもありましたとおり、10月5日の前回の野生生物小委員会で1度ご審議いただきまして、10月15日から1か月間、パブリックコメントを実施いたしました。本日については、パブリックコメントを踏まえた対応について、ご審議いただければと考えております。

 本小委員会における答申取りまとめの最後のご審議の場となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、資料1-1でパブリックコメントの結果の概要について、ご説明させていただきます。

 全体で、無効となるものを除いて、58の個人、団体の方から、延べ132件のご意見を頂いております。

 全般的に多くあったご意見としては、アメリカザリガニですとかアカミミガメの規制に関するご意見、また殺処分に関するご意見、オオクチバスに関するご意見などがございました。

 一つ目のアメリカザリガニやアカミミガメの規制につきましては、資料1-1の(2)の部分で19件ございます。また、(1)は、この箇所についての意見ですということでパブリックコメントに書いていただいたもので、(2)はそういった記載がなかったものになるんですけれども、こちらのアカミミガメ、アメリカザリガニについては、特定外来生物の指定に関する意見のところ、ここでもご意見を頂いてございます。

 全般的には規制に賛成の方が多かったという印象を持っておりますけれども、繁殖ですとか飼い切れなくなった個体の譲り渡しですとか販売、そういった個別の行為に対する規制の賛成、反対といったご意見もございました。また、一部、餌販売による野外個体の採取が減るんじゃないかといった懸念があるということで、規制に反対というようなご意見もございました。

 続きまして、殺処分についてのご意見ですけれども、獣医師による殺処分方法に限定すべきですとか、殺処分はなくすべきといった趣旨のご意見がございました。一方で、一般の方が受ける感情をきちんと受け止めた上で、殺処分が必要となる現実を直視してもらうような説明が必要だというようなご意見も頂いております。

 また、多かった意見の3点目、オオクチバスに関しましては、現在の外来生物対策の強化、あるいは規制の強化を求めるようなご意見と、逆に規制の緩和ですとか利用促進を求めるご意見が概ね半々といったようなことでございました。

 そのほか、目次の対応のところで見ますと、2の(4)とか3の(4)、国内に定着している外来種の防除に関するところ、件数が少し多くなっていますが、先ほどの殺処分のご意見ですとか、あるいは防除について、きちんと評価して改善していくような仕組みが必要といったようなご指摘を頂いております。

 また、3の(1)指定のところも20件と、比較的多くありますが、こちらは先ほどのアカミミガメ、アメリカザリガニに関するご意見がかなり多かったというところでございます。

 資料1-2につきましては、No.1から132まで、頂いたご意見の一つ一つについて、ご意見と対応案について、記載してございます。

 個別のご紹介は割愛させていただきまして、最後、資料1-3が実際の答申案でございますけれども、パブリックコメントのご意見を踏まえて修正を加えた箇所について、ご説明させていただきます。

 目次構成は、大きくは1.「はじめに」というところと、2.現状と課題、3.現状と課題を踏まえて講ずべき措置という形になってございます。

  まず、1点目は、1.「はじめに」の外来種問題の地方認識というところでございます。外来種による問題のいろんな課題を列記しているところで、パブリックコメント、資料1-2のNo.2のご意見になりますけれども、在来種への感染症の媒介、こういった視点が抜けているのではないかということで、こちらを追記してございます。

 続きまして、2.現状と課題のところに移りまして、(4)国内に定着している特定外来生物の防除対策の現状と課題というところに関して、修正を加えてございます。

 1点目は、いろんな、アライグマですとかセイヨウマルハナバチの分布拡大の情報を書いているところにつきまして、房総半島のアカゲザルや交雑個体の記載が必要ではないかということで、こちらについて、記載を追加してございます。

 また、その後に続きます殺処分の記載についてですけれども、同じ言葉が少し繰り返されている部分があるということで、こちらについても修正を加えております。

 続きまして、先ほどの2.現状と課題の(6)各主体の協力と参画、普及啓発の現状と課題に関するところ、こちらは事前に石井信夫委員から、少し一文が長いのではということで、単純に箇条書きにして分かりやすい表現に直すという修正をしてございます。

 2.現状と課題の修正点は以上でございまして、続きまして3.講ずべき措置の修正点になります。

 (1)特定外来生物の指定の部分でございますけども、交雑種について、きちんと適切に規制できるようにする必要があるというような書き方が少し課題のような書き方だというご指摘がございましたので、よりはっきりした表現に変えてございます。

 また、2点目、現行の枠組み下での特定外来生物の迅速な指定などを進めるに当たって、海外の知見で新たに被害がある場合は迅速に指定すべきだと、国内で被害が出る前にきちんと指定すべきだというご指摘を頂きまして、もともとそういうつもりで書いてはいたんですが、海外における知見も含めてという形で趣旨を明確化してございます。

 続きまして、(4)定着している特定外来生物の防除ということでございますけれども、こちらも幾つか、防除の効果をきちんと評価して改善点をフィードバックする仕組みが必要ではないかということで、こういった部分についてもきちんと情報を整理して発信していくという趣旨を追記させていただいております。

 また、こちらにつきましては適切な薬剤を防除に使えるようにという中で、検討という言葉をもう少し強めてもいいのではないかということで、構築という形に直しておりますのと、この点が中身の面としては一番大きな修正だったかなと思うんですけれども、もともとは公的資金だけでなくクラウドファンディングなどのいろんな形ということでしたが、ただ、そもそも公的資金をしっかり確保すべきだといったようなご指摘を何点か頂きましたので、そうしたことを記載させていただいております。

 続いて、(5)特定外来生物以外の外来種対策の推進ということでございまして、

国内由来の外来種対策の強化が必要だというようなご指摘を頂いております。こちらにつきましては、(5)そのものが国内由来の外来種を含めた記載になりますので、その点を明確化してございます。

 また、外来種リストですとか行動計画と外来生物法をひもづけるという点については、少し表現が分かりづらいというご意見がございましたので、表現の修正を行っております。

  こちらが最後の修正点になりますが、調査研究の推進ということで、調査研究の結果をきちんと運用に活用されるようにしてほしいというご意見がございましたので、実用化を念頭にという記載を追記させていただいております。

 以上が、パブリックコメントのご意見を踏まえて修正した箇所になります。

 もう1点、最後、資料1-4がございますけども、こちらについては概要版のほうについて、先ほどの本体の修正に合わせて、この辺りも少し修正を加えているところでございます。

 説明は以上となります。ご審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

【石井委員長】 はい、どうもご説明ありがとうございました。水﨑補佐のほうからご説明いただきました。

 それでは、本件につきまして、本日は多数のパブリックコメントを頂きましたので、コメントを踏まえた修正について、ご質問、ご意見を頂きたいというふうに思います。資料1-3をご覧になっていただいて、これについて審議していきたいと思っています。かなり長いですので、三つぐらいのパートに分けようかなと考えていまして、一つ目、1.「はじめに」、それから2.現状と課題、それから3.今後講ずべき必要な措置、このようにしたいと思います。それぞれにつきまして、今回はまとめてご意見を伺うというより、一問一答のような形で確認しながら進めたいというふうに思ってございます。

 「はじめに」につきましては、先ほどご案内があったように、右下にある参加者ボタンを押して、右のほうに参加者リストを出していただきます。ご自分のお名前の右の、手のひらボタンを押すという形で、意思表示をお願いしたいというふうに思います。

 それでは、まず最初は、「はじめに」の部分でございます。この部分につきまして、事務局のほうから先ほど修正案を示していただきましたけれども、これでよろしいかどうか、パブリックコメントのご意見も踏まえて修正すべき事項があるかどうか、この点について、ご発言ください。それぞれのテキストの部分には行番号を通しでつけておりますので、ご発言の際には行番号をおっしゃっていただければというふうに思います。

 それでは、ご発言のある委員の皆様、手のひらボタンで示してください。お願いします。

 「はじめに」の部分を少し流していただけますでしょうか。ここから始まります。ずっと流していっていただけますでしょうか。

【事務局】 委員長、マリ委員が。

【石井委員長】 そうですね。それではクリスティーヌ委員、挙手されていますので、よろしくお願いします。

【マリ委員】 すみません。もちろん大きな変更とか、そういうことではないので、ここで発言すべきかどうか分からないんですけど、introduced speciesという、外来から来ている、例えば章の中で海のものとか陸のものとか、例えば動物も含めて、微生物とかに分かれていなくて、少し、何といいますか、検索して探したいと思うときに、海に対して興味がある方と、大変なことになっていたりとか、例えばアメリカの場合は今、大きな問題になっている外来種のカラスガイ、ゼブラカラスガイというのがあるんですけど、それが藻にくっついて繁殖するので、アメリカから排除というか、いてほしくないということの中で、そういうものを廃棄処分するときに、藻は絶対に海に捨てるなとか、きちんとした形で廃棄処分しましょうと。それは海のことになるわけですね。今度、陸の上での虫とか昆虫類とか、あとは家畜を含めて、家畜だけじゃないんですけど、野生動物とか、そういうところのすみ分けがあまり見えないので、むしろ全部が一緒くたになっているところがあって、問題になっている場所はちゃんとやっていらっしゃると思うんですけれども、もう少し見えやすい、検索しようと思ったときに分かりやすくしていただけるといいかなという感じがしました、章立てのところで。

【石井委員長】 はい、分かりました。

 では、事務局のほう、ご回答あったらお願いいたします。

【説明者】 外来室、水﨑です。ご指摘どうもありがとうございます。

 章立てについては、今回は課題ごとに整理させていただいているんですけれども、ご指摘の、ほかの法律も含めて、利用者目線で見たときに分かりやすい情報発信になっていないというようなことが根っこのご指摘かなと思いますので、普及啓発、アメリカザリガニとかはしっかりやっていきますし、ほかの普及啓発の場面もこれからございますので、ご指摘のことを踏まえて、利用者の方から見たときに分かりやすい情報にたどり着けるようにということをきちんと意識してやっていけたらと考えております。

【石井委員長】 クリスティーヌ委員、よろしいですか。ありがとうございます。

 ほかの委員の皆さん、「はじめに」の部分ですけれども、何かご意見ございますでしょうか。

 ないようでしたら、次のパートに移りたいと思います。外来種対策をめぐる現状と課題というところでございます。行番号が156から始まるところですね。

 マリ委員、挙手を下してください。すみません。

 委員の皆さん、この部分でご意見、ご質問等あったら、お願いします。委員の皆さんにはたくさんのパブリックコメントを頂いたので、あらかじめ資料1-2についてはお送りしていると思います。あらかじめ全部を読んでいただいているという前提で進めさせていただいております。

 では、2の部分もよろしいでしょうか。後でもう一回、バックします。

 そうしましたら、3のところです。外来生物法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置というところです。529行目から始まるところでございます。必要な修正はした形でお示ししております。

 3の部分につきまして、委員の皆様からご意見、ご質問があったらお願いいたします。ご発言はないでしょうか。

 石井信夫委員、お願いします。

【石井(信)委員】 石井です。ありがとうございます。

 あらかじめというか、事前に何回かコメントする機会があったので、修文の提案はありません。

 幾つかコメントしたいと思うんですけども、今回の文章で一番重要なのはやっぱり今後講ずべき必要な措置というところに何が書いてあるかということだと思うんですね。多分、540行にある(1)のところで言うと、アカミミガメ、アメリカザリガニの指定とか効果的対策につながる仕組みをどう考えるかというのが一番重いことだと思いますけれども、そのほかに、(4)から始まる、既に定着している特定外来生物の対策の件なんですけど、二つ目のアライグマなどというのから始まるところですけれども、対策が十分な効果を上げていないということについて、現状を整理分析して実施上の課題を明確化して対策の実現に結び付けるというふうに書いてありまして、これはとても重要なことなんですが、今回のこの文章では、そういう作業を具体的にどうやるのかということが明確には書かれていません。

 同様に、(5)になりますけれども、特定以外の外来生物のところですね。

 その前に、596行のところで、資金の問題がありまして、より多くの公的資金を確保するのが必要だという、ここを明確に書いていただいたというのはとても重要な変更点だと思いますので、非常に重要な指摘で、今後にいろいろ影響が、いい影響が及ぶ変更だと思いました。

 それで、すみません、(5)のところに移りますけれども、特定以外のことについて、最初の丸かな、生態系被害防止外来種リストや行動計画と外来生物法をどう結び付けていくのか、これについてもとても重要なことだと思います。侵略性が非常に高い外来種、例えばノネコとかノヤギというのが前段に出てきますけれども、外来生物法で特定外来生物に指定するのは難しいんですけれども、リストとか計画では対策が必要であるというふうに書かれていますので、具体的な対策をどう法律と関連づけて実行していくかというところはとても重要だと思いますが、これについても具体的にどうするかということは、この文章では明示されていません。

 それから、(6)の普及啓発ですけれども、これも630行だったかな、外来種問題について国民の理解が十分進んでいないとありますよね。普及啓発が重要であるというふうに書かれていて、もうちょっと具体的な問題で言うと、例えば殺処分をどう考えるかというのもパブコメの意見にいろいろ出てきましたけれども、ではどうやって、殺処分が必要な場合、大抵は必要なことが多くなるんですが、それをどう説明するかということについても、これから、今までもいろんな説明はされていますけれども、もう少し一般に分かりやすい形で説明を整理していくという作業が必要になると思います。

 というふうに、とても重要なことが必要な措置のところに書かれていますが、具体的にどういう整理をして作業を進めていくかということは今後に残されているわけですね、というところを指摘しておきたいのです。

 あと、今回の文章を踏まえて、いろいろな法的な仕組みの検討も必要だし、課題がいっぱい出ているわけですけれども、大体どんなスケジュールで今後進めていくかというところで、もし今ある程度はっきりしているようなことがあれば、それを教えていただきたいと思います。

 ちょっと長くなりましたけれども、以上です。最後のスケジュールですね、今後の進め方みたいなことでもし何かあれば説明をいただきたいと思います。以上です。

【石井委員長】 はい、どうもありがとうございました。

 それではコメント、それからご質問を頂いております。環境省のほうからお答えをお願いします。

【説明者】 外来生物対策室、水﨑です。石井信夫委員、ご指摘ありがとうございます。

 今後のスケジュールについてですけども、法的なという言葉が幾つか書いてございますが、法律の改正をするかどうかという点は現時点ではまだ明確になっていないような状態になります。なので、一般論としてですが、仮に次の通常国会で法律の改正にチャレンジするということになった場合のスケジュールですと、来年度の春ぐらいにそういった改正法の審議がなされて、改正法の成立が仮にうまく通って、されたとなりますと、実際に法律が成立してから効力を発する施行まで大体1年ぐらいのケースが多いという意味では、来年の春頃に改正法が成立して、さらに1年後の令和5年の春に法律が効力を発すると。法律が効力を発するまでの1年間、来年度1年間の中で、また審議会で基本方針、法律に基づく基本方針のご審議をいただいたりですとか、我々事務方のほうで政令ですとか省令をつくり直すような、そういったような作業は来年度やっていくということが想定されます。あくまで想定のスケジュールになりますが、そのようになります。

 前半でご指摘いただいた具体的にという部分は、まさにそういった基本方針などを具体に検討を進める中で詰めていければと思っております。ご指摘ありがとうございます。

【石井委員長】 石井信夫委員、よろしいですか。

【石井(信)委員】 はい。法改正ということも考えると、すごく忙しくて大変だなと思いますけれども、必要なことはいろいろあるので、よろしくお願いします。

 以上です。

【石井委員長】 分かりました。

 それでは、勢一委員、お願いします。

【勢一委員】 はい、ありがとうございます。西南学院大学の勢一です。

 今回はかなり多くパブリックコメントに意見が寄せられたということで、非常にありがたいと思っています。行政がパブリックコメントをしても、ほとんど意見が来ない例がむしろ多い中で、社会の関心が非常に高いということを改めて感じた次第です。

 私からは大きく2点、コメントさせていただければと思います。具体的な修文というよりは、コメントと、若干質問ということになろうかと思います。

 1点目ですけれども、これは先ほどご意見も出ましたけれども、予算不足、資金の問題のところです。596行のところですね。ここの部分、私も非常に大事な点だと思っています。ただ、この文章ですと、誰が公的資金を確保するのかは特に書かれていないので、国なのか自治体なのか、あるいは両方なのかというところは、今後の具体化の段階で気になると感じています。

 やはり自治体の側も、問題意識は持っていても、予算不足がかなり深刻で、今後さらに深刻になっていくだろうと思います。特に人口減少、高齢化が進む中で税収は減りますし、他方で福祉分野のニーズはかなり大きくなっていく。そうすると、自治体側で打開策があるのかという問題があろうかと思います。クラウドファンディングなどもいい方法ですけれども、やはりアドホックな対応では持続可能な体制はとれませんので、この辺りを国としてどのように今後お考えいただけるのかは非常に重要だと思います。今の段階で何らかのお考えがあるのであれば、教えていただきたいと思います。以上が1点目です。

 もう1点目は、各主体の協力と参画ということで、624行のところになります。確かに社会全体で多様な主体が連携して取り組むというのは非常に大事ですし、それを実現するために各主体が行うべき取組を法的に明確化する、そして都道府県と市町村に求められる役割の違いを踏まえつつ、それを進めていくというご指摘で、総論的にはそのとおりだと思っています。ただ、こちらについても具体的な部分が実は書かれていないところが気になっている点です。

 役割分担は必要だと思いますし、これから具体的に責任を持って取組をしていくためには、役割が重ならないようにきちんと整理することも大事だと思います。それを行うために、例えば国と都道府県と市町村の間でどのように適正な役割分担をしていくか。その場合には地方自治であるとか地方分権の原則を踏まえつつ、さらに応能的な視点からも、つまり能力としてそれを担うことができるのかという視点からも調整することが必要だと思っています。そのため、具体化はこれからだと思っておりますけれども、可能であれば制度設計のかなり早い段階で関係府省としっかり協議していって、どのような法改正にしていくのかを詰めていただけないかと思っています。条文がほぼ出来上がった段階で協議しても、なかなかそこから変更することは難しいと思いますので、特に自治体にも大きな影響を与えるような法改正につきましては、早い段階でご検討いただくことが大事だと思いますので、ぜひお願いできればと思います。

 以上です。

【石井委員長】 はい、ありがとうございました。

 それでは、勢一委員のただいまのご意見、ご質問ですけれども、環境省のほうからお答えがあったらお願いします。

【説明者】 外来室、水﨑です。勢一委員、ご指摘ありがとうございます。

 1点目、2点目は関連してまいりますけれども、資金のところ、公的な資金という意味ではもちろん国、自治体、両方を含み得ると思いますが、国はもちろん自ら確保していくという部分があると思いますし、自治体のほうにつきましては、ご指摘いただいたような、そもそも全体の税収の課題もある中で難しい面もあるとは思いますが、2点目のご指摘の役割をきちんと分かりやすく整理するという中で、予算の確保ですとか国からの財政支援、そういったところも何らかできないかなということを考えてございます。

 持続的にという点につきましても、やはり特定外来生物の全てにこのまま何でもやるというのは現実的には難しい面があると思いますので、どういったところに力点を置いていくべきかといった優先順位、こういったところもきちんと示していく必要があるかなと考えているところでございます。

 2点目の分担の具体化のところの議論につきましては、ご指摘のとおり、都道府県や市町村の能力的な部分、現実の部分もきちんとご相談しながら、関係省庁、総務省を初めとした関係省庁とも早目にご相談をしながら詰めてまいりたいと考えております。ご指摘どうもありがとうございます。

【石井委員長】 勢一委員、よろしいでしょうか。

【勢一委員】 はい、結構です。ありがとうございました。

【石井委員長】 はい、ありがとうございます。

 それでは、ほかの委員の皆さん、よろしいですか。1から3までのところを全て通して、言い忘れたところも含めてですけれども。

 マリ委員、挙手されましたか。お願いします。

【マリ委員】 すみません。今、勢一さんが話されたことは本当にすごく大事なことだと思うので、ぜひ私もそこに便乗させていただきたいんですね。やはり環境省だけではできない、とても大きな課題だと思うので、欧米の話しか、私は、何というか、できないんですけど、アメリカの場合はこういう外来種というものに対しては非常に強く関わっているのは、アメリカの農林水産省の中でやっているわけなんです。日本の場合、環境省は非常に強い省でもあるわけですので、もっとほかの省庁も組み込んでいかないと、本来だったら農業にとって影響しているだけに、やっぱり農林水産省からも予算をもらうなり、一緒になって取り組んでいかないと難しいでしょうし。

 海外から入ってくる、それこそミシシッピアカミミガメですと、縁日で売られていたものじゃないですか。そういうものが日本に入ってきたときに、それこそ500%の税金をつけるとか。そうすると、税務署とか、何というんですか、輸入するところとも関わっていかなければいけないでしょうし。

 あとは、一般市民に対して、なぜこういうものが日本に存在することが困るのかということも、もっともっと一般市民にきちんとした形で、メディアと一緒になって伝えることがとても大事なのと。

 私たちも小さな水族館というか、小さなアクアリウムを家に置いたりしていると思うんですけど、水を捨てるときに、例えば庭に、ぼーんと捨てるのではないし、近くに川があると川に捨てる人もいるわけなんですね。そうすると、そういうところで問題が起きますし、最近はアウトドアがすごくはやっているわけですから、アウトドアの中で舟に乗った後に、一回戻ってきたら、ちゃんと後ろ側に何かくっついているかどうかを見ましょうとか。ふだんの私たちのスポーツのところも含めて、いろんなレクリエーションとか、あとは漁をしている人たち、みんながそういう意識を共有できるように、きちんと書いていくことによって、もっともっと認識が高くなってくるのではないかと思うので。

 ただただ外来種はよくないよね、そうだね、それで終わってしまうので、なぜいけないのか、それに対して自分がどういう行動をすればいいのかということも、そこにぜひつけてほしいと思うので。

 やっぱりお金がすごくかかることではあると思いますので、さっき委員が話されたように、どこから財源を引っ張ってくるか。関わっている省庁みんなから集めてこないと、やはり環境省だけでは難しいのではないかなという感じがいたします。すみません。話がちょっと伸びたかもしれないのですが。

【石井委員長】 はい、分かりました。

 それでは環境省のほう、お答えがあったらお願いします。

【説明者】 はい、ご指摘どうもありがとうございます。

 おっしゃるとおり、他省庁とも関連の深い分野になりますので、もちろん外来生物法を共管しております農林水産省は一緒にやってきておりますし、先ほど石井信夫委員からご指摘のあった外来種被害防止行動計画などは環境省、農林水産省、国土交通省、3省でつくったりというような経緯もございます。また、ヒアリのところはさらに幅広く、物流とか港湾とかを含めて、幅広い、より広い省庁と連携しながらやってきております。ただ、これで十分だというふうには考えておりませんので、ご指摘を踏まえて、さらにこういった連携を深めていきたいというふうに考えております。

 先ほどの一般市民向けのご指摘を含めて、いずれにしても、そういった一般市民目線で見たときにきちんと情報が伝わっているか、対策が十分なのか、そういう趣旨のご指摘かなと思いましたので、施策を進める上できちんと踏まえてやっていければと考えてございます。ありがとうございます。

【石井委員長】 よろしいでしょうか。

 そうしましたら、高橋委員、お願いします。

【高橋(佳)委員】 ありがとうございます。聞こえますでしょうか。

【石井委員長】 はい、聞こえています。

【高橋(佳)委員】 すみません。今のお二人の委員とも完全に重複してしまうのですけれども、感想をちょっと述べさせていただきます。

 種そのものに責任があるわけじゃないというのは、よく言われる文言ですよね。要は、私たち一人一人が問題の深刻さを理解できるかどうかに全てがかかっているというのが外来種問題の特徴かなと思っているのですが、その点、例えば643行目かな、この辺りに学校教育のことが出ています。特に今、若い人たちの外来種に対する関心が非常に低いというのはいろんなデータからも出ているわけですけれども、まさしく学校教育の中でどのように位置づけて強化していくかというのは非常に大きな問題だろうと。一方で、私たちの世代を考えたときに果たしてどうなのかなと思うのは、私どもの世代は外来種の問題というのにほとんど触れずに育ってきた年代じゃないかなと思うのです。最近、随分と大きく取り上げられた情報、後から出てくる情報なのですけど、それが十分に正しく理解されているかどうかというのは別問題なので、例えば餌やりをしてしまうとか、そういう行動は意外と高齢者に多いわけですから、その意味では社会的な広報というのは非常に重要だろうと。そういう意味でも、先ほどの委員のお話と同時に、マスメディアとか自治体、あるいは農林水産省、産業省なりがそれを広報していくことも一方で重要ではないか。幅広い一般市民というか、当事者への関与というのをぜひやらなきゃいけない。これは植物園とか動物園とか、その辺だけに関わる問題ではないのじゃないかという気がしました。

 それからもう一つ大事というか、私自身、関心があるのはやっぱり研究のところです。個別研究、種ごとの研究だとかリスク管理の問題とかも重要ですけれど、例えば農林従事者があまり外来種のことを知らないと、その結果、目に見える社会コストだけではなくて、例えば花粉症を生じたりとか、シカの害を助長したりとか、非常に大きな社会コストが生じてくるわけで、社会コストがどれぐらいなのかというのをしっかり研究のほうから出していくべきじゃないか。そういう意味から考えると、やっぱり学会に物すごく強く、もっと要請してもいいのじゃないかというのが一つ。

 それと、先ほどお話ししたように、それぞれの省庁の中で、そういうものをきちんと整理していくという、それを誘導するようなイニシアチブを環境省にしっかり取っていただけたらありがたいなと思っています。

 この2点でございます。

【石井委員長】 はい、ありがとうございます。

 では、環境省のほうからお願いします。

【説明者】 高橋委員、ご指摘ありがとうございます。

 1点目の教育ですとか普及啓発の面、今回のパブリックコメントでも多くご指摘いただいていますけれども、非常に身近なアメリカザリガニですとかミドリガメについての制度的な議論があるというのは大きな普及啓発のチャンスでもあると考えておりますので、今は分かりやすいイラスト、漫画でのSNSの発信なども既にやりつつありますが、ご指摘のあった、いろんな世代に対してどういうふうに発信していくか、伝えていくかというところ、まだしばらく注目いただける期間があるかと思いますので、うまく活用してやっていければと思っております。

 教育面でも、そういった教育で使える素材なんかも検討しておりますので、そういったところをしっかり進めていければと考えてございます。

 学会など、調査研究のところにつきましては、やはり外来種の個別の影響だけではなくて、生態系サービスとか、そういった面についての影響研究も必要だというようなことを今回の答申にも記載させていただいておりますけれども、学会との連携、今回こういった答申を作るに当たってのやりとりもありましたけれども、そういったところをしっかり今後も継続強化していければというふうに考えております。ご指摘どうもありがとうございます。

【石井委員長】 はい、よろしいでしょうか。

 それでは、磯崎委員、お願いします。

【磯崎委員】 はい、ありがとうございます。磯崎です。聞こえていますでしょうか。

【石井委員長】 はい、聞こえています。

【磯崎委員】 これまでに指摘された事柄に私も同感です。

 特に一般市民の方々の協力が、(3)の場合も、(4)そして(5)の場合も必要であることは既に言われているので、重複しないところで(3)に触れます。(3)で特に重要だと思うのが非意図的な導入ということです。この動植物を導入したいというのではなくて、一般的な商業活動や人の往来にくっついて一緒に入ってきてしまうような、それについての指摘がここでされていて、その場合、直接その事業に携わる人たちのほか、一般の人たちが、早期発見という点でも非常に重要になってくると思います。

 普及啓発を通じてというのは、当たり前のことですが、普及啓発した場合、恐らく一般の人たちから出てくる疑問として、見つけたけどどうしたらいいか。見つけた時点で何に注意しておけば、例えばスマホで写真を撮るとか、周りの状況をメモするとか、一体何をどこまで、どうすればいいか。それから、それをどこへ知らせればいいかという点で、迷ってしまうようなことが起きないようにする必要があると思います。

 今回、法制度としては、そこまで踏み込んでいないんですけれども、そうした協力を受け取ることができるような受皿整備、そうした受皿に対する支援というのも普及啓発の一環として、あるいは具体化する中で、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 具体的な例としては、情報を受け取るインターネット上のサイト、知らせてほしい項目とか情報のリストが明記されていて、それらを添えて、そのサイトへ通報するというようなシステム。それだけではなく、従来方式の電話とか、そのほかのやり方での通報も含めてです。その場合、環境省、農水省とかの国の組織だけではなくて、民間や学術団体などがそうした情報を受け取るセンターになるということも考えられますので、それらを含めた、幅の広い情報が集まりやすい、見つけたらそこというのが分かりやすい、そのような枠組みについても進めていく必要があると思います。

 以上です。

【石井委員長】 ありがとうございました。

 環境省のほう、いかがでしょう。

【説明者】 外来室、水﨑です。磯崎委員、どうもご指摘ありがとうございます。

 一般の方からの情報をどういうふうに受け取るかという点につきまして、ありがとうございます。こちらに書いてありますように、ヒアリに関しましてはかなり今、危機的な状態ということで、いろんな面で集中的に対策を行っておりまして、ヒアリ対応のコールセンターのようなものを作っていたりということもございます。ただ、ヒアリに関しても、まだ一般の方の認識、普及が十分かというと、そういうわけでもないと思いますので、そういったところは引き続き強化しながら、緊急性の高いヒアリについてやりながら、ほかにも意図せずに入ってくる外来種はたくさんありますので、そういったところへの対応にどういうふうに応用していくかということを考えていくのは必要かなと考えてございます。

 システム的な面では、こちらも答申に一部書いてありますが、特定外来生物の分布情報をもう少しきちんと整理して発信していくということを書いておりますけれども、例えば生物多様性センターの「いきものログ」ですとか、そういったいろんなシステムを使いながら、まずは確度の高い市町村ですとか県とか、そういった公的なところからの情報集約かなと思いますけれども、そういった中で市民の方ですとか民間企業のほうが持っているような情報をどういうふうに使えるかというところも、その後の展開としては考えていけたらいいのかなというふうに考えてございます。ありがとうございます。

【石井委員長】 よろしいでしょうか。

 それでは、宮本委員、お願いします。

【宮本委員】 はい。鹿児島大学の宮本でございます。

 今回のこちらの答申案につきましては、特にコメントはございません。全く異論はございませんが、一言だけ、ちょっとコメントとして付け加えていただきたいんですけれども、外来種であるということを認識するというのは非常に、一般の方にとっては難しい、私のような専門家でも、植物は分かるけれども昆虫は分からないというようなことが往々にして起こります。殺処分というのはやはり、特に動物の場合は非常に抵抗感があるというのは理解できますし、それをしないためには早期発見で早期対応することが不可欠かと思います。

 外来種であることを認識しにくいということに対しては、在来種で構成された自然環境というのを原風景として刷り込んでいくというような活動が非常に重要なのではないかということを、私自身、教育現場にいて、ひしひしと感じているところです。そういう在来種で構成された自然環境というのが存在するのは、国立公園とか世界遺産地域でありますとか、自然保護区が典型的なものかと思いますので、ちょっと迂遠なようですけれども、そのような自然保護区を環境省として最大限活用していただいて、普及啓発活動とか若い世代への教育をやっていただくというのが、回り道のようであって、実は外来生物の防除に役立つことではないかと思いますので、その点よろしくお願いしたいというふうに思います。

 以上でございます。

【石井委員長】 はい、ありがとうございます。

 それではコメントですけれども、環境省、いかがでしょう。

【説明者】 外来室、水﨑です。宮本委員、ご指摘ありがとうございます。

 私がどこまでお答えしていいかというのは若干あるんですが、国立公園満喫プロジェクトという形で、保護しながら、きちんと利用を進めていくというところを進めておりますので、その点は引き続きしっかりやっていくのかなというふうに思います。

 また、在来生態系の認識という意味では、まさに今回のザリガニも、私が子供の頃もザリガニがいるのがむしろ普通の状態になってしまっていたようなところもありますので、やはり本来はこうだったんだというのをきちんと伝えていくというところは、今回、身近な水辺という意味ですけれども、そういったところでもしっかり進めていければというふうに考えております。ありがとうございます。

【石井委員長】 はい、ありがとうございます。よろしいですか。

 それでは、これで委員のほうからの挙手がなくなりました。ただいま事務局のほうからお示しいただいた修正案でございますけれども、本部会の答申案です。これについて、お諮りしたいと思います。

 特に今までのご発言の中で反対意見というのはなかったというふうに思います、コメントが多かった、それからこの先のことについての発言が多かったのかなというふうに思います。

 それでは、事務局、すみませんけど、画面の共有を止めて、皆さんのお顔が見えるようにできますでしょうか。

 それでは、採決という形になるんですけれども、皆さんにお諮りいたします。

 では、事務局からのご提案、本件につきまして、事務局案を適当と認めてよろしいでしょうか。また手で丸をつくってお願いしたいと思います。

(異議なし)

 よろしいですか。はい。皆さん、賛同いただいたと思います。適当と認めるということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、時間もかなり押してまいりました。続きまして、次の議題です。「ハカタスジシマドジョウ保護増殖事業計画の策定について」ということで、これは諮問案件ですね。事務局から、まずご説明ください。これは川瀬補佐でよろしいですね、お願いします。

【説明者】 環境省希少種保全推進室の川瀬でございます。

 それでは、資料2のシリーズになりますが、ハカタスジシマドジョウ保護増殖事業計画の策定について、説明させていただきます。

 資料のほうが2-1から2-4までございまして、2-1は諮問の資料、2-3が概要、2-4が計画本体となっておりますけれども、今日は資料2-2に基づいて説明をさせていただきます。

 資料の2-2の2ページ目、種の保存法に基づく保護増殖事業計画ということで、国内希少種、現在395種ございます。その中で、種の指定を受けますと、捕獲、流通等の規制を受けるということになりますが、さらに保護の必要があるものについては、保護区の指定、あるいは積極的に保護増殖の事業を図っていくということで、今回のような保護増殖事業計画を策定していくという種がございます。

 計画については、この審議会の意見を聞いて定めるということ、計画の中には目標、区域、内容等について定めるということになってございまして、その対象種としましては、下段にございますように、国内希少種のその個体の繁殖の促進、生息地等の整備等の事業を推進する必要があるものということで規定をされております。

 4ページ目になります。保護増殖事業計画の策定状況でございます。これまで68種を対象に55の計画が策定をされております。今回、ハカタスジシマドジョウについては魚類では5種目となります。

 ハカタスジシマドジョウの前に一つ、スジシマドジョウ類ということでご紹介をさせていただきます。ここの5ページ目にございますように、ドジョウの中で一つのグループをつくっておりますスジシマドジョウ類、写真にもございますが、また左側に名前も並べてございます、種名も並べてございます。かなり細かく分かれておりまして、かつてはスジシマドジョウというのが1種で記載されておりましたけれども、様々な研究により、未記載種という形で多く認識されるようになり、現在ではいずれも日本固有の11種・亜種として整理をされているという状況でございます。

 この中で、左側に種名と、それからレッドリストのランクを並べてございますが、CRが4種ございまして、そのうちハカタスジシマドジョウとタンゴスジシマドジョウについては星マークがついておりますが、国内希少種に2019年に指定をされたという状況でございます。

 写真を見ていただいて分かるように、ドジョウの中ではかなりきれいというか、見栄えもするということで、スジシマドジョウ類についてはネット販売等もされておりますし、過去にはハカタスジシマドジョウでも販売されていたという実態がございました。

 分布については、これは研究者、中島先生の論文から引用させていただいておりますけれども、各地で細かく種分化をしております。ドジョウというのは移動能力が低い、山等で分断をされるとすぐに種分化をしていくということで、分類としてはかなり細かくなっていくという傾向がございます。その中で、ハカタスジシマドジョウについては、この赤丸で囲っております博多湾に流入する河川のみで生息が確認されているということでございます。

 種の概要でございます。2019年に国内希少種に指定をされております。オスで五、六センチ、メスで6から8センチ。分布としましては、福岡県の博多湾流入河川のみということで、現在では2河川ですね。これはいずれも二級河川ということで県管理になりますけれども、確認されております。いずれも福岡市を中心とする都市圏と重複するような形での部分での河川で生息が確認されておりまして、河川の中下流域の流れが緩やかな場所に生息をしております。特に岸際の植生が豊富な砂泥底の場所を好む種です。

 影響要因としましては、やはり河川の改修、開発、それから河川内の湿地の減少。それから水路、圃場も含めて、圃場整備に伴う水路の改変等が指摘をされているところでございますが、生活史としては不明な部分がかなり多いという状況でございます。

 今回の計画は、本体は2-4に載せてございますが、概要としてはこの8ページ目にございますように、策定省庁としましては国土交通省と環境省の2省庁となってございます。

 今回、生息地に一級河川を含みませんので、国土交通省による直接的な事業はないというふうに認識しておりますが、ほかの絶滅危惧種等でも保全事業に取り組んでいただいている関係で、技術的な助言がし得るということで、今回、共同策定に入っていただいています。

 目標については、自然状態、これは二次的自然環境を含めて、安定的に存続できるという状態とするということで規定をしておりまして、事業の区域としては福岡県における分布域、それから飼育下繁殖を行う区域となってございます。

 計画の中身については、9ページ目以降、概略を載せてございます。まず一つ目は、モニタリングをきちんとしていくということ。それから生息環境ですね。どういった水域、流路形態、底質、植生、水質、餌生物等含めて、どういった環境を好むのかというところの基礎的な調査を含めて、調査をしていくと。それから、各個体群の動態であるとか遺伝的特性についても把握をしていくということで考えております。

 それから、事業計画の概要2、生息地における生息環境の維持及び改善ということでございます。こちら、どういった環境を好むかというところを踏まえながら、どういった河川の維持あるいは改修があり得るかというところも含めて、また河川内の環境、水際植生の確保であるとか底質環境の確保、それから外来種の影響がどれぐらいあるかというところも含めて、まだ知見が十分に集まっていない部分もございますので、把握をしていく内容としています。

 1件、既に実施されている取組としましては、福岡県のほうで、もう15年以上前から、河川の改修を行う際に、この種の生息、この種を含めた全体のこの地に生息する絶滅危惧種全体を考慮しながら、その生息環境に配慮した浚渫を、専門家に意見を聞きながら実施をしていただいているということがございます。この11ページ目にございますように、これはあくまでも治水事業の中での作業として行う土砂の浚渫でございますけれども、その際に特に九州大学の先生方に意見を聞きながら、こういった形で浚渫をすれば希少種にもよりよい環境になるということを、意見を踏まえながら実施していただいていると。

 Aが実施前、Bが実施直後、Cがしばらくたってからで、Dが3年後という形になっておりますが、一本調子の河川であったところで、ほかは陸地化していたところを、治水事業の中で、流路断面の中で一定の流水量を確保するというところをきちんと守りながら、むしろ陸地化しているところを掘り下げていくと。で、最終的にはこういった形、Dのような形で、多様な流れや水際植生、それから水たまりになるような部分、多様な深さの深み、流れの速さ等を確保するというような形で生息地を、むしろ浚渫事業をうまく使いながらつくり出していく、維持をしていくということで事業が展開されております。こういったことの効果測定と、それから横展開というものを含めながら実施していくということを考えてございます。実際にはこの事業の結果、Dのような環境の中で、ハカタスジシマドジョウも生息が確認されているということでございます。

 生息域内については、以上のような県の河川における取組というのが大きな部分を占めるかと思います。

 それから、飼育下繁殖の実施ということで、こちらは、ここに載せてございますが、環境省とそれから日本動物園水族館協会さんとの協定、平成26年に協定を結んでおりますが、その中で特に魚類部門、水族館部門で取り組む種として、このハカタスジシマドジョウを取り上げていただきまして、現在、滋賀県立琵琶湖博物館、それからマリンワールド海の中道さんのほうで、飼育下繁殖に関する技術開発を実施していただいているところでございます。

 ドジョウに関しては、人工授精の技術も確立されつつありますので、それも活用しながら累代飼育をしていくと。そういった形で飼育下で増やしたものについては、野生復帰というものを念頭に事業計画を今後立てていくということも考えてございます。

 どちらかというと、長期的に域外保全、保険個体群を維持ししていくというよりは、現在2河川しかいない中で、過去にいた河川も把握できておりますので、そういったところで必要な環境条件を整えた上で、なるべく短いスパン・サイクルで、野生復帰をして、生息地そのものを再生していくということができないかということを現地では議論をしているところでございます。

 最後のスライドになりますが、生息地における違法な捕獲の防止の取組です。同定自体がかなり難しい種でございますので、どれだけ違法な捕獲があるのかというところはありますけども、過去にはそういったケースもあったというふうに聞いておりますので、地域も含めて違法な捕獲の防止をしていくと。

 それから、最後は事業計画を効果的に推進するために、普及啓発、それから、今回、河川整備における配慮というのが非常に重要になってきますので、当然ながら地域の方々にもその治水上の効果というのは確保、担保しながら、ただ、本亜種への配慮という部分も理解を頂きながら実施していくと。そしてその技術開発についても、きちんと共有、確立をしていくことで考えてございます。

 以上のような中身になっておりまして、今回この計画を策定されましたら、具体的な、さらにどういったことをやっていけるかというのを、現地の九州地方環境事務所が主体的に取りまとめながら、県等との連携をしながら実施していくということで考えてございます。

 計画の説明については以上になります。審議のほどよろしくお願いいたします。

【石井委員長】 はい。どうもご説明ありがとうございました。

 それでは、本諮問について、委員の皆さんのご意見、ご質問をお願いいたします。本体の計画は資料の2-4になっております。このハカタスジシマドジョウについての説明が2-3になるということで、こちらのほうもご覧いただければと思います。

 では、委員の皆さん、いかがでしょうか。

 桜井委員、挙手されましたね。お願いいたします。桜井委員、どうぞ。

【桜井委員】 ごめんなさい。ありがとうございます。スジシマドジョウの系としては、結局かなり固有種が多いということ、河川ごとに多いということなんですけども、これ、今回初めてですけども、今後こういった種の指定というのは、まだあり得るということでしょうか。

【石井委員長】 はい。環境省、いかがでしょうか。

【川瀨希少種保全推進室長補佐】 はい。この分類自体がかなり最近分かってきた中で、2019年に先行してハカタスジシマドジョウと、それからタンゴスジシマドジョウですね、この2種が指定をされています。これについては比較的分布域は限られているということと、個体数も極めて少ないということが分かっておりましたので、当時指定をしたところということでございます。

 ほかの種については、具体的に状況が分かっていない種も含まれております中で、実はCRについて2種ございますが、サンヨウコガタとヨドコガタですね。ヨドコガタのほうは実はもう20年近く個体が確認されていないという状況でございまして、絶滅した可能性も指摘をされておりますので、こちらはその状況を推移を見守る必要があります。ほかのCRの種もございますので、これらの種については引き続き情報収集をして、指定の必要性があれば指定をしていくということになるかと思いますが、いずれにしても情報が不足しているので、今後、情報収集に努めるということでございますので、指定の可能性としては、将来的な可能性も含めてあり得るということで考えてございます。

【桜井委員】 ありがとうございます。

【石井委員長】 よろしいですか。ありがとうございます。

 では、白山委員、お願いします。

【白山委員】 はい。ありがとうございます。白山でございます。

 今回の件、非常に河川改修を適切に行うというようなことが重要な項目かと思うのですが、このハカタスジシマドジョウのためだけというよりは、やはり河川を生物の多様性の豊かな状態として保全するのだという、そういう視点で、まあ、ハカタスジシマドジョウは一つの象徴的な種かもしれませんけれども、その種のためだけにやるというよりは、もう少し総合的な環境の保全というような視点を強調されたほうがよろしいかと思うので、その点も忘れずに追加というか、入れていただけるとありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【石井委員長】 はい。ありがとうございます。

 川瀬補佐、いかがでしょう。

【川瀨希少種保全推進室長補佐】 はい。ご指摘ありがとうございます。まさにそのように考えております。今回、保護増殖事業としては、法体系上ハカタスジシマドジョウの種の保存、保護増殖という形で文章を書きつづられておりますけれども、現地のほうではこの浚渫作業を含めて、実際にほかの種、ほかの魚類も増えているというようなことを確認しながら進めています。ハカタスジシマドジョウは先ほど説明しましたように、かなり環境変化に敏感で、センサーになり得るような種、指標種になり得る種ということで現地でも捉えていただいておりまして、まずはその生息環境をよくすることによって、全体の生物多様性が豊かになるという視点は、まさにおっしゃるとおり、ご指摘のとおりかと思いますので、現地の地域住民の普及啓発等の際にも、そういった点も含めて計画づくりをしていきたいというふうに考えております。ご指摘ありがとうございます。

【石井委員長】 はい。ありがとうございます。

 ほかの委員の皆さん、よろしいでしょうか。

 では、特にないようでしたら、この件、諮問案件でございますので、お諮りしたいと思います。すみません。画面共有、また外してください。

 それでは、また委員の皆様からのご意見を伺いたいと思います。本諮問案件でございますけれども、事務局案のとおり適当と認めてよろしいでしょうか。よろしい場合は丸でまたお示しください。よろしいですね。ありがとうございます。

 それでは、あ、ご意見がございますね。ちょっと待ってくださいよ。決を採った後ですが。

【マリ委員】 いや、意見じゃないんです。質問だけだったんです。ごめんなさい。

【石井委員長】 そうですか。

 イルカ委員もそういう趣旨ですか。特に修正とかでないですね。

【イルカ委員】 ええ。私、イルカ委員でございます。地域の皆様の反応はいかがなのかなということをお聞きしたかったんですが、今、もうお答えの中に、地域の皆様にこれからもアピールをしていきたいというようなことがございましたので、あ、それであればということで、それは大丈夫でございます。ありがとうございました。

【石井委員長】 それでは、特にこの原案についての意見というわけでは。

【イルカ委員】 そうですね。ですから、オーケーはオーケーなんですけれども、質問がちょっとあったのを、お答えをもう既に先に頂いたという形になりましたので、ダブりましたので、ありがとうございました。

【石井委員長】 はい。ありがとうございます。

 クリスティーヌ委員のほうはいかがですか。

【マリ委員】 聞きたかったのが、リストの中にホトケドジョウと出ていなかったんですけど、ホトケドジョウはあんまり、あれですか、絶滅というか、保護の対象ではそんなに高いところにいないんですか。海上の森にはホトケドジョウが絶滅危惧種ということでいるんですけども。

【石井委員長】 事務局のほう、今のご質問、いかがですか。

【川瀨希少種保全推進室長補佐】 はい。ホトケドジョウについては、今現在、国内希少種には指定をされていないということでございます。今ちょっとレッドリスト上のカテゴリーを調べているところで。

【マリ委員】 いや、大丈夫です。

【川瀨希少種保全推進室長補佐】 恐らく絶滅危惧種にはなっているのかと思いますが、国内希少種の指定は受けていないということですので。絶滅危惧ENですね。ⅠB類ですので、カテゴリー上は少し下になるということになるかと思います。

【マリ委員】 そうですか。分かりました。ありがとうございます。

【石井委員長】 はい。よろしいですね。

 それでは、イルカ委員とクリスティーヌ委員から追加のご意見がありましたけれども、先ほどの採決に影響があるものではないというふうに判断させていただきたいと思います。皆さんどうもありがとうございました。本諮問案件について適当と認めさせていただきます。

 では、次は報告事項3件ですけれども、一件一件、重要ですのでやらせていただきたいと思います。

 一つ目が、オガサワラシジミ生息域外個体群の繁殖途絶に係る検証についてということでございます。これも川瀬補佐のほうからご説明をお願いいたします。

【川瀨希少種保全推進室長補佐】 はい。引き続きまして、報告事項の一つ目、オガサワラシジミの生息域外個体群の繁殖途絶に関する検証ということで、報告をさせていただきます。この資料については、資料3のシリーズですね。3-1から3-5がございますが、時間も限られてございますので、主に3-2を用いて説明させていただきます。

 3-1が概要になっておりまして、3-3が別紙1ということで、昨年8月、オガサワラシジミの生息域外個体群が途絶をしたということで、リリースを出させていただきました。この委員会でも、報告、それからコメントも頂きました。かなり社会的にも興味だとか関心が高く示されたものでございまして、その際に、当初の報道発表の中で、これまでのそのオガサワラシジミに関する保護増殖事業の内容について、有識者を交えて科学的に検証して、域外個体群が途絶えた原因について分析を実施するということとしていました。また、あくまでも種が絶滅したわけではなくて、飼育下にいた個体群が絶滅をしたということでございましたので、野外では引き続き3年以上、公的機関による調査では個体が確認されていないんですけれども、引き続き希望を捨てずにモニタリングに努めていくということ。それから、また、今回その保護増殖事業の策定、実施については、早期に実施していくということの重要性が再認識されたことを踏まえて、ほかの絶滅危惧種についても今回の件を教訓として、関係機関と連携しながら保全対策に取り組んでいくということを記載させていただきました。今回、検証、ここの部分の科学的な検証ということと、教訓の部分をどう生かしていくかという部分について、改めて作業しまして、この場でまとめたものを報告させていただく次第でございます。

 この資料3-2というものがその検証、それから教訓の本体ということになりまして、クレジットは野生生物課ということで、本日付で公表という形になってございます。

 オガサワラシジミについては、チョウの一種で小笠原諸島固有種になりますけれども、環境省及び東京都が飼育下繁殖の実施を進めてきておりました。ただ、2020年8月、昨年8月下旬に飼育下にいる全ての個体が死亡して、繁殖が途絶えたということでございます。種の保存法に基づく保護増殖事業として実施している域外個体群が途絶えたのは初めてでございました。

 現在、唯一の生息地とされている小笠原諸島母島においても、公的機関による調査では2018年6月を最後に個体が確認されていないという状況で、種の存続が深く憂慮される状況が続いております。今般この原因について科学的に分析をして、教訓について考察をいたしました。ただ、オガサワラシジミに関して取られた施策、その時点においてかなり喧々諤々の議論と、それから背景を踏まえて判断されたものでございますので、その点に関しては、オガサワラシジミの保全に多く尽力されてきた地域の方々や多摩動物公園、専門家も含めて敬意を表する次第でございます。

 本報告については、批評をするということではなくて、得られた教訓をほかの種にも生かしていくために、前向きなものとしてまとめたいと考えてございます。

 本体の2ページ目ですが、遺伝的多様性の損失ということで、当時の報道にあったように、近交弱勢が疑われるということで記載をしておりました。今回、専門家の方々にもご協力を頂きまして、まず一つ目のデータとしましては、図1になりますけれども、精子数が減っていたということでございます。ちょっと見にくいんですが、有核精子と無核精子ということで、受精能力がある有核精子、無核精子というのは有核精子を助けるような何らかの働きがあると言われておりますけれども、無精卵を産んだペアというのがグレーのバー、斜線になっているのが有精卵を産んだペア、要するに無精卵を産んだ、うまく繁殖ができなかったペアの雄というのは、有意に精子数が減っていたということの結果でございます。どこが原因かというところは最終的には分からないですけども、少なくとも精子数が雄のほうで減っていたために、そこが影響したんではないかということが推測されるという結果でございます。

 それからもう一つ、図2になりますけれども、こちら、少し見にくくはございますが、横軸が年代ですね、2001年から2015年までの野外から持ってこられたファウンダー、始祖個体ですね、飼育下に入れようとした個体の1世代目、2世代目が含まれています。それから右側が、Tというのが多摩動物公園で飼育されていた世代数で、T1世代目からT19世代目。Gというのが新宿御苑のGですけれども、0から3世代目ということで、右側に行くと世代が進んでいくと。縦軸はヘテロ接合度、要するに遺伝的多様性の指標になるものということで、今回、中濱先生、井鷺先生ほかのご協力を頂きまして、ヘテロ接合度を計測したところ、このような形で、世代を経るごとに遺伝的多様性が失われていった様子が見られたということでございます。

 ただ、補足しますと、このT1の世代で始まった時点で、野外の個体の減少が進んでくるところでございまして、実は域外保全が始まったのはメス2個体から採卵された卵でございますので、もともとの遺伝的多様性が少なかったと。さらにその後ファウンダー導入の計画はされていたんですが、なかなか実施できなかった。域内の状況の厳しさもあって実施できなかったということもございまして、このように遺伝的多様性が失われていってしまったということでございます。

 さらに形質上の孵化率というものと相関を見たところ、ヘテロ接合度、つまり遺伝的多様性と孵化率に相関関係が見られたということで、やはり結果としましては、生息域外個体群においては近親交配が進んで、遺伝的多様性の損失が確実に進行して、有害な遺伝子の蓄積、近交弱勢になって、繁殖途絶に至ったということが推定されました。

 今回、この結果を踏まえて、教訓とすべきものについて環境省のほうで議論をしました。その中では、オガサワラシジミ保護増殖事業を所管する関東地方環境事務所のほうで、過去にも保全に携わっていただいた関係者の方々、専門家等へのヒアリングを実施し、その経緯や要因を分析し記録する作業を行っております。これについては別紙2に少し細かくまとめてございますので、また時間があるときにご覧いただければと思います。

 今回は、そのオガサワラシジミの保護増殖事業での事例を踏まえて、絶滅危惧種全体に活かすべき教訓ということでまとめてございます。まず域外保全に生かすべき点としては、この五つのポイントですね。いずれも従来から認識されていたポイントかと思います。早期に生息域外保全、これは技術開発、体制の確立を含むものでございますが、着手をしていく必要があると。それから域外保全に取り組むと決めた場合には、適切にファウンダーの確保・導入をしていくことをあらかじめ計画しておく必要がある、十分な遺伝的多様性を維持していくということが重要であるということでございます。それから、リスク回避のための計画的な分散飼育体制の早期の確立ということで、新宿御苑での分散飼育については、必ずしも早く、早期に実施できなかったという部分もございましたので、計画的に分散飼育体制は確立していく必要があるということ。

 それから、最後、オガサワラシジミに関しては、最後の幼虫等、凍結保存を実施しておりますけれども、その凍結保存の在り方、考え方、それから、やる時期、最後じゃかなり厳しいということもございますので、できるだけ早めに、やるのであれば実施していく必要がありますし、その方策、体制についての強化が必要であるということで考えてございます。

 それから域内と域外の連携という意味では、種によってはここが分断されて、域外だけが先行して走っているような状況もございますので、きちんと保全戦略上も、域内保全の補完としての生息域外保全というものを明確にうたっておりますので、ここの部分については、生息域内個体群の再構築を見据えた生息域外保全というものを位置づけて、戦略的に実施していくという必要があるかなと思います。

 これが域外保全に関する教訓とすべき点でございます。

 そしてさらに4番としまして、種の保全全般に活かすべき教訓ということでまとめてございます。今回、域外保全の個体群の途絶ではございましたが、種の保全先般を考えたときに、やはり域外保全だけというよりは、種の保全全体で戦略的に実施していく上では、まず一つ目としては、やはり域内保全の重要性を強く再認識する必要があろうということで考えました。ここに書いてございますが、域外保全が種の絶滅リスクが高まった場合に取り組まれる場合が多いんですけれども、やはり限界があると思っております。ここは体制とか遺伝的な部分もございます。技術的な部分もございますし、リソースの部分もございます。そうであるがゆえに保全の関係者は域内保全がやはり重要であるということを強く再認識していこうということで、記載をしています。

 特に今回のオガサワラシジミのように、個体群サイズとか分布域が限定される離島や高山帯の個体群は外来種や気候変動等の影響に対して脆弱であるということを踏まえて、またその多化性ですね、オガサワラシジミは年に3回以上世代を繰り返す、世代を経るんですけれども、こういった多化性のチョウなどの個体数変動の大きい種については、急激な個体数の減少があり得るということで、定期的なモニタリング、影響への把握と、それに対する重点的かつ迅速な対応策が求められるということで記載をしております。

 その際、域内保全に投入できるリソースにも限りがあるということも念頭に、やはり幾つか対策メニューの中でも、やはりどういった要因が種の絶滅の回避、また個体数、分布域等の回復に真につながるのかということをきちんと見極めながら、優先的に、めり張りをつけて取り組んでいく必要があるのと考えてございます。

 二つ目が効果的な生息域外保全のあり方・手法について整理をするということでございます。今回の事例も踏まえまして、適切なファウンダーの確保・導入でありますとか、分散飼育体制の整備、十分な遺伝的多様性を確保するということが重要となります。その際に、その域外保全の必要性・有効性をきちんと整理をした上で、域内保全と域外保全両方に関わる全ての関係者に十分な説明をして、理解を得つつ意思決定を行う必要があること。さらに、近い将来に生息域内個体群の補強・再生を図る計画をあらかじめ策定するなど、域内保全のための域外保全個体群の活用、それから維持、そういった目的を明確にしていく必要があろうと思います。

 さらに、ここにもリソースの話を書いてございますが、域外保全と一言で言っても、かなり飼育員の方々の苦労、それから技術的な壁、それから人員、予算、スペース含めて、必要になるということもあります。効果的に絶滅危惧種の保全を進めるための生息域外保全をきちんと推進するためには、遺伝的多様性や行動様式等を維持するための飼育方法、それから個体の飼育繁殖に取り組むのか、あるいは植物の場合であれば種子、動物の場合であれば生殖細胞の保存の活用も含めて、その判断の考え方、それから域外保全に取り組む必要がそもそもあるかどうかといったところも含めて、各種手法との優先度の付け方を含めて、分類群ごとに状況も異なりますので、議論していく必要があるのではないかということで記載をしてございます。

 最後に3ポツ目、以上の内容はかなり保全の教科書的には当たり前の部分を、またさらに再認識するということで記載をしております。ただ、それが実施できなかった部分があるんではないかということが今回の一つの大きな教訓でもございました。そういった意味では、当然のことではありますけれども、改めて保護増殖事業の目標の設定と共有、それから具体的な事業計画の策定と柔軟な見直し、体制整備の重要性を再認識するということが重要であるということを考えてございます。また、定量的な目標設定と、それを踏まえた事業の構築・実施、関係者間の連携体制の確立・強化が必要であるということ。

 また、繰り返しになりますが、離島の個体群とか高山帯の個体群、それから世代交代の早い種については、事業の立ち上げの段階で危機的な状況に既になっていて、そこで必要性に駆られて、緊急避難とか技術開発としての飼育下繁殖に取り組まれるケースが多いということで認識しております。そういった場合も重々ございますので、事業を取り巻く状況をきちんと見極めながら、その後の変化も踏まえて、取組の優先度付け、取捨選択も含めて、合意形成と科学的な判断に基づく迅速な政策決定、計画の見直し、体制整備に取り組む必要があるということを書いてございます。

 最後に、同時に絶滅危惧種、今後、国内希少種の指定種が増加をしていくということも予想されます。そういった中でリソースの拡充にも努めていきたいということで考えてございます。ただ、なかなか、先ほどの外来種の対策の中でも議論がございましたが、リソースが十分に伸びるかというところについては、不十分なところもあるかと思いますので、その新たなリソースの確保に当たっては、やはり今やっている保護増殖事業のさらなる効率化、それから保護増殖事業が始まって四半世紀たつわけですけれども、一つも目標達成をして完了した事例がないということもございますので、そういったものをきちんと目標達成をして、事業としてきちんと終わらせて、複数の事業をサイクルとして回していく必要があるというふうに考えてございます。また、長期的にはこれを支える保全に関わる専門的人材を育成し、確保する観点が重要になるということで記載をしております。

 本文については以上になりまして、別表1が個別の論点ごとの意見を細かく書かせていただいております。

 別表2のほうには、保全全般に関してヒアリングの中で得られた意見も少し記載をしております。例えばこの別表2の、最後のページになりますけれども、例えば最後のほうで3ポツ目でございますが、情緒的な思いというものが、時には希少種行政の中では関わってくるわけですけれども、そういった情緒的な思いに反する形での選択をせざるを得ないことについて、理解を求める必要もあるのではないかというような意見。

 それから、今回の検証については、標本、サンプルの保管というものがきちんとなされたがゆえに検証がされたということがございまして、この標本、生体サンプルが有する遺伝情報をきちんと保管することの、保全上の重要性を認識したという意見も頂いております。

 それから今回、小笠原諸島の話でございました。外来種の影響が強く出る小笠原諸島、一度も大陸とつながっていない海洋島でございますので、必然的に外来種の影響が強くなるわけでございますけれども、かなり危機的な状況であると認識しております。オガサワラシジミの場合はグリーンアノールというものが大きく影響してございました。アノールだけでなくネズミとか、古くはノヤギ、それからさらにプラナリアですね、ニューギニアヤリガタリクウズムシ等のプラナリア等の影響も含めて、危機的な状況に陥っていますので、遺産価値の壊滅的な損失の前に、こういった離島、島嶼個体群の生態系の保全策を抜本的に評価する必要があるのではないかということ。こういった島嶼地域というのはやはり脆弱でもありますので、その島嶼地域の保全の強化が求められるというようなことでご意見を頂いているという状況でございます。

 このようにまとめさせていただいた上で、今日をもって公表させていただきました。3-1の概要に、今後についてということで一番下にも書いてございますが、ホームページで公表した上で、現地事務所にも周知し、また保全の関係者にもきちんと周知、共有をしていきたいと思っております。絶滅危惧種全体に生かすべき教訓ということで、今後これを生かしていきたいと考えています。

 以上、報告させていただきます。

【石井委員長】 はい。ご説明ありがとうございました。

 それでは、報告事項ではございますけれども、委員の皆様からのご質問、ご意見をお受けしたいと思います。

 尾崎委員、お願いします。

【尾崎委員】 はい。ありがとうございます。大変貴重な報告ありがとうございました。

 1年前に飼育下で絶滅したというのを聞いたときも非常にショックだったんですが、今日のお話でも近交弱勢が明確であったということを聞いて、保全、飼育下保全に関わっている者として非常に重く受け止めるべきことだと思います。

 その上で、気になったことがあるんですが、こうした近交弱勢というのは予見できたことですが、もし何年か前にこの状況がもっとはっきり分かっていれば、防げた部分があるのでしょうか。

 図2を見ると、T6からT11、つまりこれは多分2017年だと思うんですけども、この頃から急激に減っています。ですから、4年ぐらい前には何らかの兆候があったということは結果論として明確だったわけですけども、この時点でもし分かっていれば、何か手だてがあったかということです。

 それからもう1点、最後のほうの全体の保護増に関わることでご意見があって、いずれももっともだと思いましたけれども、10ページですか、やはり保護増全体の予算を増やしていかないと、どうしようもないことだということがはっきりしていますし、さらに人員を増加するということも重要だということは書いてあって、そのとおりだと思います。

 例えば、私も幾つか保護増の検討会に出ていますけども、そうした検討会の委員の委嘱というのが単年度なんですね。つまり責任は1年しか負わないという、受ける側としては楽なんですけど、もう少し長期間、最低でも数年、複数年の委員の委嘱は、すぐにでもできるんじゃないかなと思っていますので、これはぜひ環境省でご検討いただきたいでます。

 それから、今回のこの結果、非常に重要なことだと思いますので、今日をもって公表ということですので、ぜひマスコミで大きく取り上げていただけるような、何かそういう仕掛けをしていただくのはいいかと思います。本当に大切なことだと思いました。ありがとうございました。

【石井委員長】 はい。ありがとうございました。

 これについては、一括してご質問を受けましょうか。

 それでは、宮本委員、お願いします。

【宮本委員】 はい。質問というよりは意見になるかと思うんですけれど、今回、遺伝的な多様性について、あるいは生体の凍結保存などということが行われたことは、非常にすばらしいことかと思います。

 一つ要望なんですけれども、将来的にこういう同じような事例が起こる可能性がある場合に、ぜひ全ゲノムの情報を解析しておいていただきたいと思います。特に残っている個体の数が十分なうちに、例えば全ゲノムDNAの塩基配列でありますとか、今かなり次世代シークエンサーが開発されて、経費がかからなくなってきておりますので、その情報をぜひ取っておいていただきたいということを要望したいと思います。

 理由は非常に簡単で、このような積極的な保護・保全というのは重要かと思うんですけれども、長い地球の歴史の中で見れば、進化に介入するということになりますので、人が介入したことによって野生生物に何が起こっているのか、何を起こしてしまっているのかということはきちんと記録しておくべきで、そのためには遺伝情報というのがどう変わったのか、例えば個体群の再発見、再導入、あるいはひょっとして是非があるかもしれませんが、将来その絶滅してしまった種の再生をするというようなことがもし議論される場合に、重要になるかと思いますので、その点ぜひご検討いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【石井委員長】 はい。ありがとうございます。

 それでは、クリスティーヌ委員、お願いします。

【マリ委員】 すみません。今本当に宮本さんがおっしゃったように、そうやって人間がどれだけそういう進化の中に私たちは立ち入ればいいかということ、すごく大きな一つの哲学的な課題もあると思うんですけれども、さっきの離島についてなんですけれども、例えばもう少し厳しく、例えば私たちが島に出かけていくときには、必ず入り口のところでは体の、身体検査じゃないですけれども、そこでなるべく、ほかのところから持ち込んでしまうかもしれない微生物とか、そういうものをきちっと取り払ってからでなければ入れないような、何かそういうチェックとか仕組みとか、靴の後ろについているような土とか、そういうものを全部洗い落としてから入るとかという、全部は管理することはできないんですけれども、少なくてもそういう生態系がきちっとしているところに入っていくときには、きちっとやるべきですし、今ちょうどコロナウイルスで、物すごくレクリエーションとか外に出かけていく方々が多くなってきているわけなんですね。ですので、そういう意味では、今、情報として外に出すことがとてもタイミングとしていいと思うんですね。

 やっぱり人々の移動によって、いろんなものがいろんなところに移り動いているわけですので、例えば、細かいことではあるんですけれども、キャンピングしたときに、まきを買って持っていくときには、買ったその場所以外では、なるべく持ち運びしないようにということまでも欧米ではやっていますので、そういう細かいことに対して日本はすごく律儀になさるわけですので、そういうことでのいろんなルールを、何というんでしょうか、ちゃんと守っていただけるように。ただ、ルールを守れということではなく、なぜこのルールを守らなければいけないかということ、生態系に対して私たちが一番大きな影響を及ぼしているということを伝えることが重要じゃないかと思うので、ぜひこのように自然環境にみんなが今目覚め始めている、そういうような状況があるので、そういうことを利用して、もっとメディアに出していただけるといいと思います。

【石井委員長】 はい。ありがとうございます。

 五箇委員、お願いします。

【五箇委員】 はい。国立環境研究所の五箇です。

 私自身は節足動物メインで研究している立場ですので、特にこの問題について、そういった視点からコメントすれば、意外なことに昆虫類のほうが近交弱勢というのは出やすいんですね。僕自身は今の研究所に来る前までは殺虫剤メーカーで、言ってみれば試験用の害虫の飼育というのも担当していましたけど、鱗翅目の、いわゆるチョウ目と言われる累代飼育というのは大変難しいんですね。やっぱりすぐに近交弱勢が出てしまうという。要は種によって、分類群によって、こういった近交弱勢の出る、出にくい、あるいは近交弱勢を乗り越える、そういうポテンシャルがあるかないかというのは非常に関わってくるという意味では、端的に言えば、鱗翅目は要注意の分類群であるということは、こういった事例からも学んだ上で、今後、離島なんか、もういわゆる限られたエリアにしか生息しないような希少種に関しては、もうあらかじめそういった保全策というのは、もうプランとして立てておかなきゃならない。もうすぐにあっという間に、何というか、遺伝的なダウンを起こして転んでしまうというリスクが絡んでいるというものを、いかに早く予見して早く手を打っておくかということを、今回の事例に関してよく学んでおく必要があるだろうと思いますね。

 そういった中では、日本は幸い昆虫マニアもたくさんいますから、いろんな方々のそういった技術、そういったものをやっぱり収集して、私は個人的に殺虫剤メーカーはすごくそういうノウハウをいっぱい持っていますから、そういったメーカーさんからもヒアリングするというのも手かなと思いますし、何というか、ちょっと視野を広げて、より広い形でプランを立てていただきたいということ。

 あと、基礎研究としては、こういった近交弱勢のメカニズムといったものや、必要とされる有効集団サイズというのが、そういった分類群によって、どういう遺伝的な基盤があれば、どれだけのサイズが必要かといったことも、やっぱり今後研究は重点化するべきでしょうし、先ほど指摘があったようにDNA情報、こういったものはできるだけ広く収集して、うちの研究所自体、もうタイムカプセル棟というものを持っていて、今、哺乳類や鳥類中心ですが、絶滅危惧種のDNA、全ゲノムサンプル、そういったものを全部凍結保存してデータベース化していると。その目的は、やっぱりなぜその種が絶滅に至るプロセスを経ているかといったものを、そういった遺伝情報ベースから分析するということは非常に重要になってくるということで、そういったものを知見として蓄積していくので、今回のこのオガサワラシジミについても、そういった形で、ホールゲノムといったものは分析しておくべきだろうと思います。

 あと外来種対策という観点で、グリーンアノールですね、これが主にメインに捕食者として(シジミチョウの)数を減らしていたというのは明確で、今、小笠原に関しては、全ての昆虫がこのグリーンアノールの犠牲になりつつあるということがもうはっきりしているということは、これをいかに早く早急に対応策を立てるというのは重要になってきます。

 一方で、今回特に対策が出遅れた背景には、これは学者サイドのほうにも、責任というか、何というか、視点が抜け落ちていたのが、当初このグリーンアノールが小笠原に侵入したときに、生態学会を中心にこの種によるリスク評価の対象としたのは、いわゆる生態ニッチがよく似ているということで、オガサワラトカゲですね、同じ爬虫類を対象に生態リスク研究が行われていて、捕食者として、プレデターとしてのその捕食範囲というのは、あまり評価されていなかったんですね、当初。そこがちょっと出だしが遅れてしまったということで、やっぱり今回は、非常に不幸な事例ですが、ここから得た教訓から、外来種のリスク評価というのはどういう形で進めるべきか。あと絶滅、捕食され絶滅されるリスクがあるといった種を、どのように早く選定して、早く手を打つかということと、それに対してどういった基礎情報を収集するかといったことをやはり整理して、しっかりと、研究基盤を固めていくということが、今後、環境省に求められることだろうと思います。

 その点は、非常に不幸な事例ではあったけど、得るべき知見は多いんじゃないかというふうに思っております。

 以上です。

【石井委員長】 はい。ありがとうございます。

 そうしましたら、ご意見、ご要望もあったと思いますけども、委員のほうからありました。環境省のほう、少し、少しどころじゃないですね、かなり押していますので、よろしくお願いします。

【川瀨希少種保全推進室長補佐】 はい。希少室の川瀬でございます。幾つかご指摘を頂きました。

 まず尾崎先生から、なぜ途中でこの近交弱勢の回避ができなかったのかという点ですが、資料3-3の4枚目の年表にございますように、2016年から累代飼育の成功したわけですけれども、それまでは技術開発に時間を要したというところもございましたが、なかなか累代飼育が難しい種でもございまして、技術開発ができて累代飼育ができるようになった段階で、ファウンダーの追加導入も実は計画をされておったんですけれども、実はこのちょうど2016年からアノールの影響で個体数が減っていたところに、さらに大型台風が来たりとか、あるいは渇水ですね、40年ぶりの大規模な渇水が起きたり、あるいは幼虫の餌植物の開花不良などが重なって、域内の個体群が壊滅的な状況を受けてしまって、新たなファウンダーが追加導入できなかったという、かなり不幸な状況に陥ったというのが今回のケースでございました。

 実際にファウンダーの計画は当然ながら計画されていたんですけれども、それが実施できなかった、域内の状況の厳しさがあったというのが事情かと思います。

 という意味も含めますと、域外保全個体群がこのような形で近交弱勢が起きてしまったというのは、必然的と言ったらあれなんですが、なかなか回避しづらかった部分もあるのかなというふうな気がしますので、教訓では、やはりその手前での域内保全をきちんと考えていこうということで、今回まとめさせていただきました。

 それから、委員の方々の委嘱に関しての複数年の契約を含む委嘱の仕方については、少し事務的な部分での整理も含めて、またこちらの中でも検討させていただければと思います。

 また、この結果について、マスコミも含めてということでございます。どういった形で今後使っていくかというところも含めて、室内で検討させていただければと思います。

 それから宮本委員からも頂きました全ゲノムの解析、データの収集、それから五箇先生の中にもございました、こういった分野の凍結保存をした細胞とか生殖細胞等を含めた活用という部分も含めて、まさにこれから研究分野としては進んでいく部分もあるかと思います。個体の再生のみならず遺伝的多様性の補充をするとか、あるいは感染症へのリスクを細胞を使って評価するとか、いろんな使われ方があるかと思いますので、そういった活用の仕方も含めて、遺伝子レベル、あるいは凍結保存した細胞の細胞レベルでの保存、活用の方策については、今回のケースを踏まえて整理をしていきたいというふうに考えてございます。

 あと、マリ委員からもございました離島での新たな外来種の侵入のチェックということでございます。こちらについては、個別に離島の状況にもよりますが、島民の方々にも呼びかけ、マットでありますとか、靴底の洗浄とか等は呼びかけてはいるところでございます。また重要な離島、属島に移るような場合は、関係者含めて、きちんと靴底の洗浄と殺菌等も行っているところでございます。こういった部分は、引き続きその島のリスクに応じて、島ごとに対策をきちんと整理をしていくということで考えてございます。

 それから、五箇先生からもございました昆虫類、特に鱗翅目ではこういった近交弱勢が進みやすいということ、今回のケースでも我々強く認識をしたところでございます。また、離島ではボトルネックを受けているので、比較的近交弱勢に強いんだというようなことも当時言われていたんですが、そうとも限らないということも今回教訓として学びましたので、そういった部分では、そういった脆弱な個体群については、できるだけ先手先手で保全対策を考えていくということで考えてございます。

 また、捕食者のアノール等の対策も引き続き強化していく必要があるかと思いますし、それぞれのそのリスク評価ですね、そういった部分は、小笠原では既に検討会等でも実施をしてきたところでございます。そういった部分を対策にきちんとつなげていくということと、さらには、やはり一回外来生物が入ってしまうと、その対策にかなり膨大なリソースが必要になってしまうということがございますので、新たな侵入というものにもきちんと、そこにもめり張りをつけて対策を打っていく必要があるんだろうということも考えてございます。

 以上になります。

【石井委員長】 はい。ありがとうございました。全てお答えいただいているかと思います。

 それでは、次の案件に移らせていただいてよろしいでしょうか。実はかなり押していまして、冒頭でご案内がありましたように、今日は重要案件が多いですので、ご理解いただきたいと思います。少し12時を超える見込みでございます。

 では、次は、令和3年度国内希少野生動植物種の指定についてということで、これは早瀬係長、お願いします。

【早瀬希少種保全推進室係長】 はい。希少種保全推進室の早瀬です。

 では、資料4-1、令和3年度の国内希少野生動植物種の指定について、ご説明をさせていただきます。国内希少野生動植物種の指定については、種の保存法に基づき、希少野生動植物種専門家科学委員会という別の委員会で意見聴取をすることとされておりまして、今年度の指定については12月8日にこちらの科学委員会を開催して方向性が決まりましたので、本日ご報告をさせていただきます。

 まず、国内希少野生動植物の指定状況についてですけれども、環境省では、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づいて、絶滅のおそれのある種の調査等を行い、国内希少野生動植物種の指定の検討を進めてきているところでございます。現在395種が国内希少野生動植物種として指定されております。

 環境省で策定をしております絶滅のおそれのある野生動植物種の保全戦略では、2020年までに国内希少野生動植物種を300種追加指定するという目標を掲げておりまして、2020年までに309種を追加指定したところでございます。そして、現在395種になっているという状況です。

 2017年の種の保存法の改正の際には、附帯決議の中で、国内希少種の指定については科学的知見を最大限に尊重して実施し、2030年度までに700種を指定することを目指し、候補種の選定について検討することが求められているところでございます。

 続きまして、今年度の指定の候補種についてです。今年度の指定については、現地調査や専門家のヒアリングなどの調査で必要な情報を得た上で、今月の12月8日に希少野生動植物種専門家科学委員会を開催しまして、アブサンショウウオ等32種について、今年度の候補種とすることを了承いただいたところでございます。

 この候補種については、次のページの表で示しております。全部で32種、動物が28種、植物が4種という内訳になっております。この中で特定第二種国内希少野生動植物種という区分がございまして、国内希少種の中でも、販売、頒布を目的とした捕獲や譲渡しのみを規制するという区分になっているんですけれども、こちらの特定第二種にサンショウウオ23種とカワシンジュガイ類2種の計25種を指定することとしております。

 今回、サンショウウオ類の候補種が非常に多くなっているんですけれども、今回の指定をもって、日本国内に生息している絶滅危惧種のサンショウウオ類については、全部で35種おり、それら35種に種の保存法や県条例なども含めまして、何らかの捕獲などの規制がかかり、流通ができなくなるという状況になります。

 また、この希少種の指定については、国民提案という制度もございまして、国民提案を受けた種については、その指定をするかどうかということを検討することになっており、今年度についてはカワシンジュガイ、コガタカワシンジュガイ、カドハリイという3種について国民提案を受けて検討し、今回指定に至ったという経緯になってございます。

 今後の指定についてですけれども、今月、科学委員会を開催しまして、翌日からパブリックコメントも実施をいたしました。現在、パブリックコメントで頂いたご意見をまとめているところです。この後、できるだけ速やかに政令改正の閣議決定、また公布の手続を踏まえまして、この後、指定また規制がかかる施行を進めるということにしております。

 報告は以上です。

【石井委員長】 はい。ご説明ありがとうございました。

 では、ただいまのご説明ですけれども、ご意見、ご質問があったらお受けしたいと思います。いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。

 では、ちょっと押していることもあるので、先へ進ませていただきます。3件目の報告です。狩猟鳥獣の見直しについてということで、遠矢補佐、お願いします。

【遠矢鳥獣保護管理室長補佐】 鳥獣保護管理室の遠矢と申します。私から、議事のほうの報告事項についてご説明させていただきます。

 資料5-1でございます。鳥獣保護管理法に基づく狩猟鳥獣の見直しということで、これからこういった見直し作業を進めるということで、ご報告をさせていただければと思います。

 見直しの経緯でございますけれども、鳥獣保護管理法に基づく基本指針というものを5年ごとに見直しておりまして、こちらにおいて、その見直す際に、鳥獣保護管理法に基づく規制の対象となる鳥獣の見直しを行うこととされているところでございます。先般、今年10月に基本指針の見直しを行いましたことを受けまして、今回、狩猟鳥獣の見直しを行いたいと考えております。また、本見直しと併せまして、狩猟鳥獣の保護の見地から行っております捕獲等の制限についても見直しを行いたいと思っております。

 見直しに関する考え方は、以下にあるとおり、基本指針に示しておりますけれども、狩猟鳥獣というものに関しましては、狩猟という行為が可能な鳥獣種を指定するということでございまして、狩猟ということが、かつてはなりわいとして行われてきたこともございますし、現行においても、その捕獲した物を食べるであるとか利用するといった目的だったり、あとは自衛目的で、鳥獣被害を受けている農家さんだったりとかが捕ることができるような鳥獣として、期間と場所と、それから鳥獣種といったようなものを定めて、自由に捕獲ができるものとして定めているものになります。このように、捕獲可能な鳥獣を狩猟鳥獣に指定し、それらについてそれぞれルールが定められていたりしますので、これらについて見直しを行うというのが今回の経緯でございます。

 スケジュールとしまして、は、狩猟関係について、都道府県が非常に重要な役割を担っていただいておりますので、都道府県だったり、あとは関係団体ということで、自然関係の団体だったり、あと狩猟者団体の皆様だったりとか、あとは農業団体の方々、こういった関係団体の方々に意見照会を今進めているところでございます。本日、こういった進め方を報告させていただいた上で、来年、年明けに、この見直し検討会というようなものを開催させていただいて、今後の狩猟鳥獣の見直しについてポイントを整理したいと思っております。その上で、パブリックコメント、公聴会、そして法定協議等の法令に基づく手続を進めてまいりまして、年度明けになると思いますけれども、また野生生物小委員会のほうで諮問・答申を頂けるように進めていきたいと考えているところでございます。

 今回資料については、詳細な説明は割愛させていただきますけども、参考資料のほうで、狩猟鳥獣の定義であるとか、あとは現行の狩猟鳥獣として指定されている48種の鳥獣種だったり規制だったりとかというものも資料としておつけしておりますので、またお目通しをいただきまして、今後の諮問・答申のときにご意見を賜れればと考えているところでございます。

 私のほうからは説明、以上となります。

【石井委員長】 はい。ご説明ありがとうございました。

 では、ただいまのご説明ですけれども、委員の皆さん、ご意見、ご質問があったらお願いいたします。いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、ほかにないようでしたら、本日予定した議題はこれまででございます。

 事務局のほう、ほかに何かありましたですか。特に、よろしいですね。

【大林外来生物対策室長】 特にありません。大丈夫です。

【石井委員長】 分かりました。

 それでは、委員の皆さんもよろしいでしょうか。

 では、ないようでしたら、進行がまずくて申し訳ありません。少し遅れてしまいました。全ての議題を終了しましたので、進行を事務局にお返ししたいと思います。

【事務局】 石井委員長、議事進行、誠にありがとうございました。

 委員の皆様におかれましては、長時間にわたりご審議くださり、誠にありがとうございます。

 以上をもちまして、第27回野生生物小委員会を終会といたします。皆様ありがとうございました。