中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会(第2回)議事録

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)オブザーバーよりの報告聴取及び質疑

      • ・「国立・国定公園における蝶類の生息状況と保護対策について」

        大阪府立大学大学院教授 石井 実 氏

      • ・「米国国立公園のバックカントリー利用の状況と日本の国立公園制度への提言」

        横浜国立大学教授 加藤 峰夫 氏

      • ・「知床国立公園の今後のあり方」

        斜里町長 午来 昌 氏

      • ・「里山など身近な自然の保全にかかるNGOの役割と課題」

        財団法人日本自然保護協会常務理事 吉田 正人 氏



    2. (2)中間答申骨子案及び自然公園法の一部改正事項について



  3. 閉会

自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会委員名簿

委員長 渡辺 修 (財)休暇村協会理事長
安達 瞳子 花道家
磯部 力 東京都立大学法学部教授
岩槻 邦男 放送大学教授
大沢 雅彦 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
岡島 成行 青森大学大学院環境教育学教授
奥山 文雄 (社)港湾荷役機械化協会会長
川名 英子 (財)生協総合研究所客員研究員
熊谷 洋一 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
瀬田 信哉 (財)国立公園協会理事長
立花 直美 武蔵野美術大学造形学部建築学科教授
服部 明世 大阪芸術大学環境計画学科教授
藤原 一繪 横浜国立大学大学院環境情報研究員教授
三澤 毅 (社)日本林業技術協会顧問
和里田 義雄 (財)河川環境管理財団理事長

会議録

午後 1時03分開会

国立公園課長  予定の時刻を少々過ぎております。本日は15名の委員のうち、12名の方がご出席の予定でございますけれども、現在8名ということで定足数に足りておりますので、小委員会、成立しております。
 それでは始めさせていただきますので、渡辺委員長、進行方よろしくお願いいたします。
渡辺委員長  では、これから自然公園のあり方小委員会を開催いたします。
 昨年12月の自然環境部会においてこの小委員会が設置されまして、川口環境大臣より中央環境審議会に諮問されました今後の自然公園のあり方について、今日が2回目の審議となります。
 先般の部会でも事務局から説明がありましたが、自然公園法の次期通常国会での一部改正を念頭に、まずは生物多様性等の保全の観点から緊急に対応すべき問題について検討いたしまして、中間答申を出してほしいと、こういう事務局からのご要請でございました。本日は、緊急に取り組むべき事項に関連いたしまして、オブザーバーの方々4名お見えでいらっしゃいますけれども、この方々からご報告をいただいてヒアリングを行いますとともに、その後、事務局から中間答申の骨子案が配付されておりますので、その審議も行いたいと思います。大変今日は盛りだくさんでございます。そういうことでお願いをいたします。
 審議に入ります前に、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
国立公園課長  お手元の資料でございますけれども、一番上に配付資料一覧がございまして、次に議事次第、配席表。その次に、これからご報告をいただく方々からの資料が3部入っております。その後に、後ほど議論いただきます中間答申骨子案でございます。最後に参考資料といたしまして、「自然公園法の改正について」というものが入っております。もし不足がございましたら、事務局の方へお申し出いただきたいと思います。よろしくお願いします。
渡辺委員長  それでは審議に入りたいと思います。オブザーバーの方々に順次ご報告をお願いいたします。なお、ご報告の時間は、質疑応答を含めまして、お1人30分を予定しております。よろしくご協力のほどお願いいたします。
 まず最初に、大阪府立大学大学院教授で、昆虫学がご専門の石井様から「国立国定公園における蝶類の生息状況と保護対策について」ご報告をお願いいたします。
石井オブザーバー  大阪府立大学の石井でございます。よろしくお願いいたします。
 きょうはチョウのお話をさせていただきます。
 お手元の資料に、左上に「自然公園のあり方検討小委員会資料」と書きました、ホチキスでとじた資料があります。ごらんください。A4用紙1枚とその後ろに、レッドリストに載っておりますチョウ類全種につきまして、この委員会で役に立つかなと思い、資料をまとめてみました。これだけで1週間かかりました。それはどうでもよろしいのですが、この話について順次説明いたします。
 着席させていただきます。
 説明はA4資料からですけれども、内容は後ろのA3の資料を参照しながらごらんください。
 まず最初に、日本のチョウについてです。世界でチョウというのは2万種おりまして、そのうち日本で土着種と言われているのは 240種です。1番の項目に書いてありますけれども、今のところ絶滅種はおりません。しかし、2000年版の環境省のレッドリストで、私がチョウの部の選定人をやっておりますが、63種78タクサが登録されています。これは1991年のレッドリストに比べますと20種31タクサが増加しておりまして、チョウから見ますと、日本の自然環境というのは悪化しているのではないかというのが言えると思います。タクサというのは、種の下まで含まれている分類の単位のことをいいまして、具体的に言いますと「亜種を含めた数」ということです。だから63と78の差というのは、1種の中に幾つかの亜種が含まれているということです。
 次に、このレッド種の分布ですが、今述べました78レッドタクサのうち、1番目に55タクサ、71%が日本固有です。日本の固有の種であったり亜種であったりする。要するに日本にしかいないということです。それから2番目ですけれども、78のうち14タクサ、18%が南西諸島、小笠原諸島、あるいは対馬などの島しょ部のみに分布しております。この島しょ部にいる14タクサのうちの13タクサ、ほとんどが日本の固有ということであります。3番目ですけれども、標高で分類してみますと、低地には大体55タクサで71%、高地部分には35タクサで、さらに上の高山帯に分布するのは17タクサということになります。
 今回の国立公園・国定公園というお話になりますと、高山・亜高山に分布している17タクサ、表の中で標高というところの分類を見ていただきますと、ここに黒丸を打ったところがそうなんですが、これは日本の中核をなす山地にすんでいるということを示します。ほとんどが国立公園・国定公園に入ります。それから南西諸島の一部、小笠原、対馬などの国定公園・国立公園が入っておりますので、この島しょ部にいるものについても国立公園・国定公園に関係するということになります。
 せっかくチョウの話ですから、文字だけでなくきれいな写真を出せというご注文がありまして、つくってまいりました。この3番から先の話はそれを使ってやらせていただきたいと思います。では、前の方をごらんください。 (OHP) 日本のチョウの中で、どういう環境にすんでいるチョウが危ないかということですけれども、まず最初に一番危ないのが草地性のチョウですね。例えば典型的なのが、このオオルリシジミというチョウです。こういうチョウは日本全国のうち東北北部、中部地域、それから九州の阿蘇地域だけに分布があります。このうちの白塗りの丸が打ってあるところは、過去にいましたけれども今はいないということで、絶滅してしまったということです。つまり東北北部はもういません。それから、中部についてはほとんど絶滅状態で、一部人為個体群が残ったりしております。安曇野なんかもそうです。健全なのは阿蘇地域ですね。これは阿蘇の国立公園のエリア内におります。
 どういう生活をしているかというと、このチョウは明るい芝草地に生息しております。食草はマメ科のクララという植物です。例えば青森の岩木山のふもとなんかの場合には、馬とか牛を飼うための採草が行われておりましす。そのときに、このクララというのはまずいので、牛や馬が食べないということで刈り残します。そんなことで岩木山の山ろくにはたくさんクララがあって、このチョウがたくさんいたんですけれども、いつの間にかいなくなってしまったということですね。要するに牛馬というのが必要なくなったというのもありますし、草の価値が下がったということがあるのかなと思います。その後は、草地が開発されていくというパターンですね。
 同じようなパターンをとったのが、このオオウラギンヒョウモンというチョウです。大変大型のきれいなチョウです。このチョウは、世界のチョウ保護の教科書にも引用されているのですけれども、南西諸島と北海道を除いて日本全国にたくさんいたわけです。ところが、表に白抜きの丸が打ってありますが、これは全部絶滅したところでして、今残っているのは秋吉台のところと、それから九州の一部ですね。それから隠岐にもいるかいないかというくらいだと思います。
 このチョウはどんな生活をしているかといいますと、やはりシバ草地にすんでおります。それで幼虫はスミレを食べます。これは何も前につかないスミレですね。要するに陽地性のスミレです。高い丈の草が生えてしまいますと埋もれて枯れてしまいますので、こういうのが生える環境というのは、草刈りが常になされているというところでなければなりません。それで、先ほどのオオルリシジミもこのオオウラギヒョウモンも、実は今残っている九州エリアは、何と自衛隊の基地の中なのですね。基地というか演習地の中です。演習をするために草刈りが頻繁になされますし、砲弾の落ちたところに湿地ができたりしますから、そこに花が咲いたりするというので残っているわけです。秋吉台は、観光のためだと思いますけれども、草焼き、野焼きなんかをやるわけですね。そのために生き残ったりしております。
 このような形で、シバ型草地のチョウが大変危なくなっているということです。
 それから、もう一つ、草原性のチョウで重要なのは湿原のチョウです。例えばヒョウモンモドキというチョウがそうなんですけれども、これは広島県の世羅台地で撮ったものです。食草はキセルアザミという植物です。このキセルアザミ、マアザミともいいますけれども、この植物は湿地に生えます。それで、水田のへりなんかにもいますし、それから遊水湿地なんかに多く生えているわけです。そこに生息しております。
 実は、このチョウ、かなり広域の分布を持っていたチョウなのですけれども、今確実に残っているのは、山梨県と広島県しかありません。ほかのところでは全部だめになったということですね。湿地というのが開発の対象になりやすいということと、それから、やはり湿地でも採草が行われてきておりまして、それが中断すると草丈が伸びてきて、このキセルアザミが埋もれてしまうということがあるようです。
 というわけで、草地性のチョウは、シバ型の草地と、それから湿原の種が危ないということですね。
 その次に日本のチョウでは危ないと思われるのが、森林のチョウです。森林というと、原生林、それからあと二次林になりますけれども、原生林で危ない種というのは、実はそれほど多くないですね。
 例えば、1つはゴイシツバメシジミというチョウです。このチョウは絶滅危惧種で一番トップに挙がっているわけですが、日本では2カ所しかおりません。九州山地と紀伊山地です。紀伊山地は私がモニタリングをやっていますけれども、もう絶滅したのではないかというふうに思っています。いつ絶滅宣言をするかというタイミングの問題になりつつあります。ここのところ全然姿を認められていません。
 このチョウは、ちょっとややこしい生活が好きでして、幼虫が、コケむしたツクバネガシとかカシなどの木の樹皮のところに生えていますイワタバコ科のシシンランという植物、しかもこれの花とつぼみしか食べないのですね。ですから、このチョウが生きるためには、大木のカシの林ができ、原生林ができた上、それがコケむしていて、そこにイワタバコ科のシシンランが生え、その花が咲かなきゃいけないという、ややこしいことになるわけですね。そういうわけで、九州山地でも危ないですし、紀伊山地でもかなり危ないですね。原生林のチョウの代表的なものだと思います。
 それから、もう一つはルーミスシジミというチョウです。これはちょっと分布は出しませんけれども、関東地方では南房総の清澄山なんかにおります。関西地域では伊勢神宮とか春日山、それから紀伊半島の南端、古座川町なんかにいるわけですけれども、あとは四国、九州、それから山口県なんかにもおります。点々として分布しているわけですけれども、このチョウもイチイガシがたくさんあるような原生林のチョウです。
 例えばこのチョウは、関西では、先ほど言いましたように春日山におりますけれども、後でも言いますように、春日山では早くからこのチョウを天然記念物にしました。このチョウがすんでいる春日山の原生林自身も天然記念物にしたわけです。ところが、指定してすぐに、このチョウがほとんど絶滅状態になってしまいました。これがよくわからないのですけれども、天然記念物指定がいいかどうかという問題とも絡んでいるかなと思います。
 原生林以外でというか、原生林より森林性のチョウで危ないのは、いわゆる里山のチョウです。代表的なのはギフチョウというチョウだと思いますけれども、環境省では絶滅危惧に入れていますね。私のすむ大阪府でもII類になっていますけれども、このチョウは日本の特産種です。本州エリアだけにすんでいますけれども、このチョウは、いわゆる里山、棚田がずっと上がっていきまして、その上に薪炭林があるという、その辺のへりぐらいのところを早春飛ぶわけですね。このチョウが利用している植物はカンアオイという植物です。この植物自体が、里山のような春にだけ日が差すような環境でなければだめということがありまして、里山と一体化したチョウということができます。
 このチョウを初めとしまして、皆さんがご存じのものでは、オオムラサキなんかが里山の代表だと思います。75円切手で使ってもらっていますけれども、日本の国蝶ということです。このチョウも代表的な里山のチョウです。準絶滅危惧ということになっております。
 それから、3番目に、今日のお話と絡むので1つ挙げておきますが、高山性のチョウでは、例えばタカネヒカゲというチョウがかなり危機的な状態です。今回の選定ではII群に挙げていますけれども、北アルプスと、それから八ヶ岳では、今危機度が違うのですね。北アルプスはまだいますけれども、ひょっとしたら八ヶ岳は、もう絶滅宣言してもいいかなというぎりぎりのところまで来ております。だから、もう1ランク上げてもいいのかなとも思ったりしています。このチョウは、中部地方の 2,500メートル以上のハイマツ帯の岩れき地に生息しております。こういうところに生えているカヤツリグサ科のイワスゲとかヒメスゲなんかを食べております。大変厳しい環境の中にすんでいるわけですけれども、そのせいで、このチョウは生活史を1世代3年かけてやるわけですね。
 何が危機要因になっているかといいますと、登山客がふえることによって、高山帯の植物を踏みつけます。記念写真を撮るためとか、ケルンを積むためとか、いろいろなことでその辺を踏み荒らします。そうすると、こういう幼虫がいるような、あるいは蜜源植物になっているような植生を破壊していくということになってしまったと思います。
 もう一回資料に戻って締めくくりたいと思います。
 今、3番のお話をさせていただきました。ざっと復習すると、レッド種に載っているもののうち、森林性というのが39%、草原性が54%ですけれども、絶滅危惧種、I類とII類に限ると草原性の方がはるかに多いのだと、これが1番目ですね。
 3の[2]ですけれども、草原性では、シバ草地に生息する種、それから湿原に生息する種というのが危ない。
 森林性におきましては、ゴイシツバメとかルーミスシジミのような照葉樹林の種というのもいるのですけれども、特に里山の落葉樹林に生息する種というのがかなり危なくなっております。
 絶滅危惧種に限りますと、高山帯より亜高山帯の方が実は危ないのですね。先ほどのタカネヒカゲも高山帯ですが、補足しますと、別荘地とか、そういうキャンプ場開発みたいな形の観光開発によって、亜高山帯の方が危なくなっております。
 それから4番目、レッド種の危機要因ですが、これも復習になりますが、一番危機要因として重要なのが生息地の破壊・開発です。
 続いて遷移です。これは下にも書いてありますけれども、旧来の農業が営んできた草地管理、それから里山管理というのが中断したことによって植生が遷移していくというのが重要だと思います。
 それから、捕獲というのがあります。これはいわゆる密猟みたいなものも含めてですね。かなり悪化した個体群に対して徹底的な採取が行われると、大変危ないことになるということです。
 外来種につきましては、チョウで大きな影響はないですが、外来植物が繁茂することで生息環境が変わるという例が知られております。これがかなり重要かと思います。
 最後に、希少チョウの保護の対策のあり方ですけれども、3つ挙げました。
 1つは、単なる採取規制というのは、チョウを保護するのにはちょっと難しいんじゃないかと思います。例えば先ほど言ったルーミスシジミの例などでして、天然記念物指定などで規制しますと、とれたというような情報がなくなってしまいまして、いつの間にかいなくなってしまうということがあります。それから自治体や国の方も、規制した後、そこの生息地の管理をしないということも重要かもしれません。
 それで2番目ですけれども、最も重要なのは、言うまでもなく生息場所の確保と適切な植生管理ではないかと思います。
 3番目に、生息場所において継続的なモニタリング調査というのが必要かなというふうに思います。チョウのトランセクト調査といいますが、ルートを歩いてセンサスする方法は、イギリスやアメリカ、ヨーロッパなどで行われておりますけれども、これで自然の環境を適当に管理する、適切に管理するということがなされております。チョウの保護ばかりでなくて、植生の適正な管理という意味でも、この3番目のモニタリングというのは必要かもしれません。
 そういうことで、私の話題提供にさせていただきます。
渡辺委員長  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご報告につきまして、ご質問、あるいはご意見等がありましたらどうぞ。
 どうぞ、藤原委員。
藤原委員  ありがとうございます。身近なお話で大変興味がありまして、私たちが特に照葉樹林とか、そういうところを歩いていましても、実際に余り出会ったことがないのです。九州で残っているというのですが、危機に瀕しているといいます、コケむすような照葉樹林の原生林みたいなところは、大部分の場合は、そういう地域としての保全がなされていますよね。それでもなくなってきているのでしょうか。確かにこの着生のシシンランみたいなものは少なくなっております。それが1点です。
 それからもう一つは、もし管理を続ければ残されるのかどうか。といいますのは、神奈川県ではギフチョウを一応保護対象にしまして、地域を保全地域として管理を続けましたら、ギフチョウが非常にふえました。ところが、ギフチョウの場合はローカリティーがあって、それが非常に貴重なのです。雑種というか、交配種ができた場合は、そこの地域の形態がなくなるので貴重ではなくなってしまいます。ここ7年ぐらいになりますか、モニタリングをずっと続けていまして、3年続けて「何とか大丈夫だ」ということになった途端に、どなたかが他から持ってきたものをまた放しました。これはふやすという意味で放したのだという話がありますけれども、そうしますと、また少し違ったものが出てきた。じゃ、地域として本来のローカリティーがあるのかどうかというのが、今問題になりました。もっとオリジナル型がなきゃいけない。このように、重要なものがたくさんありますけれども、そういうローカリティーや交配種というものが一体どうなっていくのか。これは今後の回復に向けても問題になっていくと思いますので、この3点についてお尋ねしたいと思います。
石井オブザーバー  まず1点目です。コケむすようなという話は、先ほどのゴイシツバメシジミの例でしたけれども、このチョウに関しては、本当に日本では狭域分布でして、九州山地、それも3カ所ぐらいしかないと思います。それから、紀伊山地では実は大台ケ原のふもとだけなんですけれども、そういう狭い地域にしかもともといない。その理由はなぜかというのを言われたら難しいですけね。
 藤原先生は、森は本当になくなっているのかということですが、実際に現地に行ってみますと、日本の森林はほとんど植林に置きかわっていますよね。その植林化することで、実際にチョウがすんでいる部分の本当の意味での原生林は減ってしまっているということです。それから、開発が行われると、例えば林道ができますと乾燥化していきまして、コケむすようなということがだめになる。それから、砂防ダムなどのダムができますと、川自身が伏流化しまして、それで水蒸気が上がらなくなってくるなんていうことで、森のできるいい環境が失われているのではないかと思います。
 それから、管理されれば大丈夫かということですが、これは、保証はできませんけれども、しないよりましだろうとしか言いようがありません。例えば里山の場合には、もちろん何もしなければ、関東地方や関西では、本来の潜在植生である照葉樹林になっていってしまいます。そういう意味ではやらなければならないですけれども、管理すれば絶対ということは多分ないでしょう。先ほど言いましたように、モニタリングと抱き合わせでなければならないというふうに思います。
 3点目の、各チョウの個体群の遺伝的な固有性の話なのですけれども、例えばギフチョウの場合には、藤原先生もご存じのように、カンアオイ自身が地域ごとに違いますね。谷ごとというのは言い過ぎですけれども、種も違いますし、亜種も違っております。ギフチョウの方も、長い進化の過程で、ある地域のギフチョウは、このカンアオイは食べられるけれども、こいつはだめだよとかいうのがかなり厳しいということと、それから、その地域でのカンアオイの芽吹き、それからギフチョウの親が蜜を吸うための植物の開花時期ですね。開葉・開花時期というのが違うわけですけれども、ギフチョウのサナギで、冬を越してきますけれども、それを幾つか置いておいても、地域ごとにチョウになるタイミングが違うのですよね。そういうぐあいにかなり遺伝的に違っておりまして、やたらに他地域のチョウを放すという方法がいいかどうかというのは難しいかなというふうに思っております。
渡辺委員長  よろしいですか。ほかにどうぞ。
 大沢委員。
大沢委員  1991年版と比べて31タクサ増加したというお話でしたけれども、それは特定のハビテットを好むような種が増加したとか、そういう傾向はあるのでしょうか。
石井オブザーバー  ご質問ですけれども、A3の紙の一番右側に「91ランク」というのが書いてあります。これが当時の環境庁の第1版のレッドリストを書いてあります。「希少」と書いてあるのが希少種というランクですね。このうち「なし」と書いてあるのが、前回は平幕であったといいますか、何もランクを持っていませんでした。ごらんになってわかるように、この「なし」と書いてある部分がかなり上の方に食い込んでおりますね。この傾向を見ておりますと何がわかるかというと、実はやはり広い意味での里山、採草地とか水田環境、それから薪炭林、こういうのを含めた環境のチョウというのがいきなりトップに上がってきてしまっているという感じがいたします。ですから、今のご質問に対しましては、チョウというのは、徐々に危機度が上がっていくというものではなくて、この10年間の話について言えば、やはり里山環境の植生管理状態が変わったことによるランクアップが多かったのではないかというふうに思います。
瀬田委員  これは環境省にお伺いしたいことなのですが、なぜ自然公園、国立公園・国定公園とチョウなのでしょうか。要するに、後での法律改正のときに、そういうものをとるということに対する禁止といいますか、そういうことなのか。あるいは、生息地というものをどうするということが今回の法律改正と関係しているからなんでしょうか。
国立公園課長  今回の法律改正の中で、特別地域の中で現在規制がされていない動物の捕獲の項目を追加して規制していくという部分が1つございまして、その中の代表的な例といたしましてチョウを挙げさせていただいております。チョウのほかにも、サンショウウオなどの両生類とか、そういったものを考えているわけでございますけれども、ただ、今のお話のように、捕獲を禁止するだけでは十分対応はとれないのではないかというところも、我々も十分認識しているところでございまして、捕獲の禁止とともに、一方で、先ほどからお話の出ております二次的な自然地域、そういったところについても新しい手だてをとっていきたいということでの協定制度でありますとか、管理団体の指定制度でありますとか、そういったものをまた考えていきたいところでございます。そういった部分とあわせて、生息地の保全を図るとともに捕獲も規制していくという合わせ技で対応していく必要があるなというところは考えております。ただ、一方で、高山チョウ等の部分につきましては、捕獲による圧力といったものも、これは非常に重要な要素ではないかと思いますので、今回の規制の中に追加ということで入れていくところでございます。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 ほかにないようですね。
 石井先生、ありがとうございました。
 続きまして、横浜国立大学経済学部教授で、環境法がご専門の加藤様から「米国国立公園におけるバックカントリー利用の状況と日本の国立公園制度への提言について」、お話を伺いたいと思います。
加藤オブザーバー  加藤でございます。
 コンピューターの方でスライドをつくりましたので、それを使いながら報告させていただきます。内容は皆様のお手元にもお配りしております。後で質疑のときには、そちらの方を参照していただければよいかと思います。
 では、座って始めさせていただきます。 (OHP) 今回、私がここでご報告するということで、課題としていただきましたのは、原生的な自然地域の利用状況について、北米の国立公園管理では一体どういうことになっているかということですが、これはもう、ここにおられる皆さん方、既にいろいろなところに足を運ばれて状況はご存じだと思います。それにつきまして、制度というのはどうなっているのかということを今回少しお話ししようと思っております。
 今回報告させていただきますのは、特にアメリカで、若干カナダも入りますが、自然地域の国立公園の中でも、特に自然環境の保全を強く要求されるようなところを利用調整するというのはどういうことかという話と、その利用における調整というのは一体何のことかということです。それから、ナショナルパーク、アメリカの国立公園という言葉の原語でございますが、ここでバックカントリー、この言葉はなかなか日本語に訳しにくいので「奥山」というふうに訳される方もいますが、要するに自然豊かな、しかも車では簡単には入っていけない、そういう場所の管理について。それからもう一つ、実はアメリカの方にはWilderness、非常にワイルドである原始性が強い地域、それを保護するという制度がありまして、そこの環境は一体どうなっておるのか。そこのところも、これはいろいろなところで若干混乱があるみたいですので、少し整理をしていこうと思っております。
 それから、利用調整の場合には、一体どのぐらいまで人が入ったらいいのかという話をしなければならないのでしょうが、それは一体どう考えるのか。あるいはアメリカではどう考えているのか。それから、日本では、国立公園・国定公園等の自然公園に、今回環境省の方々がお考えのような新しい制度というものをもし導入するとしたら、どんな問題があるのか。そして最後に、これは全く私の勝手な、せっかくこういう機会ですからということですが、こんな場所だったらできるのではないか、やった方がいいんではないかというところをお話しさせていただきたいと思っております。
 自然地域の利用調整というのは一体どんな話か。日本でももう盛んにやっている話がいっぱいあるわけでして、何も国立公園制度の発祥の地、アメリカは特に変わったことをやっているわけではない。場合によっては日本の方がはるかに進んだことをやっている。例えば、自家用車から公園が指定するシャトルバス等、特定交通機関に乗りかえる。これも自家用車の利用を規制する、調整するということでございますし、それから、公園に来る人たちに「どこそこは今、熊が出ているから危ないよ」とか、「あそこの地域は雪が溶けたばかりで高山植物がいっぱい出始めたところだから、なるべく行かないようにしてください」とか、いろいろな情報を提供する。それから、キャンプをしていい場所、キャンプをするときにはどういうことに気をつけなければいけないか。あるいは、尾籠な話で申しわけございませんが、トイレ等の設備がないところで用を足すときには、どういうことに注意しなければいけないか。そういうルールをきちんと理解してもらおう。
 それから、日本でちょっと見たことがないと思われる方もおられるかもしれませんが、余り大人数で、例えば30人とか、50人とかいうような集団登山というのは、2人のパーティーが10、20入るよりも、はるかに環境に影響を与えてしまう。だとすると、グループはせいぜい6人とか12人までにしてくださいとか、あるいは、この地域では弱い植物などがいっぱいあるので、スノーモービルとか、あるいはATB、いわゆるマウンテンバイク、all-terrain bicycle ですが、そういったものは使わないように。ここら辺までは日本でも全部やっていることだと思います。
 まだ日本でやっていなくて、今回多分環境省の方々の提案の中でいろいろと問題がありそうだ、どんなふうにやればいいのかというのが、きっとこの利用者数の割り当てでしょう。この上に書かれておりますような幾つかの利用調整では、とてもちょっと対応できない。あるいは、それとはちょっと質の違う対応が必要だというときに、ある地域に入る人の数を制限する、割り当てるというのがQuota Systemというもので、これももう既にアメリカ及び一部カナダではかなり広く採用されておりまして、ニュージーランド、オーストラリア等でもこの例は盛んにあります。ではそれは一体どうなるのだという話について、これから少しご説明しようと思います。
 これは、ある山、川、海、何でもいいんですが、自然地域の中に入るときに、Backcountry Permits 、あるいはWilderness Permitsという許可証を申請し、許可証を持っている人、要するに許可を受けた人だけが入る。その場合、どこからが入っていい場所で、どこまではだれでも行けるけれども、どこからはその許可証を持っていなければ入ってはいけないとか。これは多くの場合は登山道、遊歩道等の入り口で、1日に何名と。これは 100人とか、 200人とかということではなくて、大体10人とか、あるいは数人というのが多いです。10人、20人程度で考える。
 あるいは、キャンプをしていい場所を割り当てる。これもキャンプ場がきちんとセットされているところでは、あなたは山の中の何番のキャンプ場という割り当てをするところもありますし、また、アメリカでもアラスカのような広大な場所になりますと、1人1人に非常に広大な面積の地域を割り当てて、どこでキャンプしてもいいけれども、この地図でかかれた何平方キロというふうな非常に広いところからよそではキャンプはしてはいけない。そういうような考え方をやっているところもあります。1日に何人以内、あるいは場所によっては、1日にというよりシーズンをならして何人以内。あるいは1つの地域に1つのグループ、こんなようなことを実際は許可の対象として検討しております。
 それでは、例えばある登山道、ある山に1日につき20人入れるという場合に、その20人というのはどうやって割り当てるのか。20人であれば、半分の10人は二、三カ月前からの先着順の予約。あとの半数が、当日遊歩道、登山道に行った人から早い者勝ち。大体これがずっと行われておりまして、どうも一番公平と考えられておるようでございます。
 そのときに費用などはどうなっているのか。アメリカやカナダの国立公園というのは、そもそも国立公園に入るときに入園料というのを取られます。これはどんどん値上がりしておりますが、大体1回であれば 1,000円前後、それからシーズン券が四、五千円前後というふうにイメージしていただければいいんですが、それが公園の中に入るときに支払わなければいけない費用です。それでは、その公園の中で、1日に10人とか、20人とか制限されている湖のほとりとか山に行くときには、さらに特別のお金が必要なのか。ここら辺が各国の政策なのでしょうが、アメリカは予約等々の手続料のみということで数百円程度。カナダの方ですと、最近国立公園でも、できるだけ利用者にお金を払ってもらおうというふうに動いております結果ですが、「山の中で1泊するにつき千数百円ぐらい払ってください。2泊であれば倍ですよ」と、そんなような形で、自然地域が豊かな中に入っていく場合特別のお金をカナダでは最近取っております。
 では、Quota System、割り当てというようなものは一体どうして考えられたのか。基本は、やはり自然環境の保全。それから、よく忘れられることですが、その自然環境の中で、来られたお客さんにできるだけいい体験をしてもらう。その2つです。どちらがより重要ということではなくて、この2つが同じように、あるいは相互に関係し合って、ともに重要なのです。アメリカ国立公園局は、最近の十数年ですが、それをはっきりと打ち出しています。頭文字を取ってVERPというのですが、Visitor Experience Resources Protection 、利用者の体験と、自然資源のResources、この両方を保護することが大切なのだという立場で、一生懸命研究及びその研究を具体的な管理に移す対応を進めております。
 別の言い方をしますと、調整というのは決して規制ではない。一見規制のように見えるかもしれませんし、利用を不自由にするように見えるかもしれませんが、しかし、アメリカの国立公園局の政策といいますか、はっきりとした表現は、訪問者に対して、自然の中での最大限の自由と、それから最大限の体験を提供する手段ということになっておりますし、また、これにうそがあるとは余り多くの人は見ていない。多くの方々も、この利用調整の結果、自分たちはよりいい体験ができる。その公園の中でより楽しい体験ができるというふうにとらえているようでございます。
 アメリカのやはり代表的な、カリフォルニア州にありますセコイア・キングスキャニオン国立公園、有名なヨセミテ国立公園のすぐ横にあります、より大きな自然地域を持っている公園でございますが、そこではビジターセンターにこういう言葉が書かれております。「この利用調整は、皆さんがバックカントリーに入った後の規制を最小限にするためのものです」。
 公園に入るときに確かに順番待ちをしなければいけない、予約等々で許可を受けなければいけないということはある。そのかわり、入った後は余りうるさい規則はない。変なところでごみを捨てないでくださいねという、それぐらいのことさえ意識していけば、あとは本当にこの大きな自然が、皆さんに普通の生活では味わえない体験を与えてくれるのですよという考えだと思います。
 それでは、アメリカ国立公園というのはどうしてそういうことを盛んにやっておるのかということでございます。実はここには制度上の問題がありまして、国立公園制度だけではなく、アメリカにはWilderness Act(原始地域法)、昔は「荒れ地法」と訳された方もいますが、多分原始地域法の方がいいのでしょうけれども、そういう法律がございます。これは1964年にできました、アメリカの自然保護制度の中ではかなり新しい法律の1つです。
 この法律は、原始的な自然環境が残されている連邦所有地、国立公園とか、国有林とか、あるいは陸軍工兵隊が持っておるような土地とか、そういった土地をどのお役所が持っているかということを問わないで指定をし、そして、そのお役所に対して強力な保護管理を求めるということになっております。そして、現在国立公園や国有林野を中心に、多くのWilderness Area というのが国立公園の中に指定されております。この原始地域法、Wilderness Actは、日本の自然環境保全地域制度のもとになったといいますか、参考になった制度でございますが、日本の場合は、よくご存じのように、自然公園の外に自然公園とは別個の制度として自然環境保全地域、原生自然環境保全地域が指定されるわけですが、このアメリカの方の制度は、国立公園の中にWilderness Area が指定される。さらに、国立公園や国有林野では、そのWilderness Area に準じる地域をバックカントリーとして環境保全を重視した管理を実施しております。この利用調整というのは、Wilderness Area 及びそれに準じるバックカントリーを、できるだけ環境を保全する、しかもその自然というのは多くの皆さんに味わってもらうために必要な対策というふうに位置づけられております。
 ちょっと文章だけではわかりにくいかと思いますので、簡単な概念図をつくってみました。ある国立公園がある。(図示)この灰色の部分というのが、車で入れるような場所だと思っていただければいいんですが、その中に、当然ながら大きな自然地域がある。こういったものを一般的に奥地の山、歩いてしか入っていけない山、バックカントリーというふうに言葉の上でイメージしてもらえばよろしいです。制度としては、その中で、さらに自然環境が豊かに残されており、さらにそれはきちんと守っていくべき場所というのでWilderness Area というものが指定されます。このWilderness Area の中では、ずっともつような建物、しっかりした建物は建ててはいけない。機械を持ち込んで遊ぶというようなことはいけないという管理をきちんとしなさいということが制度上はっきりと要求されております。国立公園という枠の中でです。ですから、国立公園を管理するお役所、国立公園局は、Wildernessについては、通常の国立公園管理よりもよりしっかりした管理をしなければいけない。それが1964年以降の制度ですので、もう40年たつ制度ですから、どこの国立公園でも大体考え方は根づいておりまして、Wilderness及びそれを包む、制度上このWilderness Area に指定はされていないけれどもそれに準じるような地域、それを大切な自然環境として残しておこうということです。
 しかし、これは国立公園の中ですから、当然利用はある。そもそもWilderness Act(原始地域法)自体が、何のために手つかずの自然を残すのだというと、その中ではっきりとレクリエーションというのを挙げております。ただ、そのレクリエーションというのは、例えばスノーモービルをぶっ飛ばしてとか、あるいはスキーであってもリフトを使って、というようなものではなくて、そこに行ったら、もうあなただけで、周りにはだれもいませんよ。周りにあるのは自然だけです。そういう場所をアメリカに残し、そしてそこでレクリエーションを楽しむという考え方です。
 それで、実際に、そのWilderness及びそれを包むバックカントリーに対し利用調整をしていくというときに、まず何をしなきゃいかんかというと、じゃ、その地域にどれだけの人が入っていいんだということを考えなければいけない。これも、そこの地域の生態系、かたい言葉ですが一般的に言えば、自然はどれぐらいの人まで受け入れても大丈夫かということと、それから、自然環境はたくさんの人を受け入れてももつかもしれないけれども、でも、そこに、その山や海の環境を楽しみに来る人が、周りに余り人がいたら、これはおもしろくないと思うのではないかという利用体験、こちらを両方から検討していく。この生態系的観点、利用体験等々から検討される適正収容力というのも、制度上ですが、アメリカの国立公園管理では、基本的にはそれを前提としなさいということが、国立公園局の組織法の中にこれも組み込まれております。
 さらに最近は、そこの自然は、どの程度まで人を受け入れても耐えられるか、そこに来るお客さんは、どの程度まで周りがザワザワしていても「まあいいな」と思うかという観点からではなくなってきています。より進んだ観点で、公園を管理する側が、この山は、この海は、この草原はどういうふうに使ってほしいかということを考え、それではどれぐらいの人を受け入れて、そこではどんな活動をしてもらおうというふうに考えます。ある意味では、変な言い方ですが、ディズニーランドのようなサービスということをすごく意識した、あるいは自然保護をより強く意識したものです。どっちでも一緒のことなのですが、そういう考え方に変わってきております。この新しい考え方を適用して収容力を決めているところというのは、まだまだそうそう出てきていていないのですが、概念的には、もうそういうふうに移るべきだ。戦略的アセスというような考え方ですけれども、そっちの方へ移っているようでございます。
 では、その利用調整というのをやると、一体どんな利点があるのか。当然ながら自然環境の保全、自然体験の質の向上、それから、あれっと思われるかもしれませんが、これはさっき言ったとおり規制ではないわけです。一見規制のように見えるかもしれませんが、利用体験を向上させるとともに、何の規則もなしに人がどんどん入っていくのであれば、とても自然保護のために入ってもらえないような場所も、ある一定のルールのもとで利用してもらうならば、自然を残しながらそこを楽しんでもらうこともできる。そういう意味では、新たな自然体験の機会の提供ということになるわけです。
 それから、先ほどの山の中にどんなチョウがいて、どういう状況かというようなことについても、今の日本の国立公園・自然公園制度ですといろいろな問題があるというお話もありましたが、どこでどういうような生物がいるから、どんなふうな活動はしないでくださいというような情報提供というのを、これは許可証を渡すわけですから、面と向かって利用者に対していろいろな情報を提供することができる。公園利用について、安全について、知識について。それから、もしそういうことが必要なのであれば、お金を取るというときにも、これは非常にいいインターフェースということになる。もちろん危険管理という面でも、これは情報提供とかなり重なる話ですけれども、より進んだ危険管理ができる。あるいはどこの川に、どこの山にどういう人たちが入っていて、いつおりるつもりか。そういうのを全部捕捉するといいますか、情報をきちんと集めておくことができる。
 それから、ここから後は特に日本の制度、地域制に立つ日本の自然公園制度について、特に問題といいますか、大きな利点になることですが、公園利用者との関係で、地権者、土地所有者、あるいは権限に基づいて土地を使っている人たちとの間の利用者との関係での権利義務の調整、整理、明確化というのができる。日本の場合は、この地権者と公園利用者との間の権利、義務というのが不明確なままで今まで来ております。ここがやはりかなり整理される。あるいはこれを整理しないことには、日本の場合利用調整はできませんので、日本で利用調整を動かすということになりますと、公園利用者との関係で、地権者の権利、義務というのがきちんと整理、明確化できる。
 それから、日本の場合、どこから国立公園、どこから国定公園というのがようやく少しずつわかるようになってきましたけれども、まだまだわかりにくい状況で来ておりますのが、ここからは国立公園、あるいは国立公園の中でも特に自然を守るべき場所だということがはっきりと認識されるようになる。
 しかし、これを具体化するためには、やはりいろいろな課題が当然ながらあるわけでございます。まず、どこの国であっても、アメリカのような形の国立公園であっても問題になるのが、人と費用をどうやって確保するのか。これは公園管理に当たるお役人の方々、レンジャーだけではまずできる話ではない。そうすると、有力なNGOの方々に協力をお願いしなければ、大体適正収容力、しかも自然環境がどれだけの人によってどう変わっているか、あるいはそこに来た人たちがどれだけ満足して帰ったか、こういったものをきちんとチェックするというのは、これは本当に手間暇がかかることですので、意欲的なNGOがいなければとてもできません。
 それから、各公園における調査能力、管理能力。これがなければ、制度はつくったけれども実際には動かないという話になってしまいます。各公園だけではとても無理だというのであれば、それをサポートする全国的組織というのがなければ、やはり動かない。
 それから、ここから後は特に日本ですが、地域制ですので、そこには地権者、土地所有者がいる。国立公園の4分の1は民有地ですので、その地権者の同意と協力がなければ、そもそも絵にかいたもちで、動かない。
 それから、地権者さえ納得すればいいというものではなくて、特に有名な国立公園・国定公園等々がある場所は、観光産業の経済的比重が大きい場所が多いでしょうから、特に観光産業関係従事者の方々を中心に、そこの地域の方々、地域社会、もちろん行政の方々も積極的に協力してくださるというのでなければ、やはり環境省さんだけが幾らがんばってもできる話ではない。
 もう一つ、ここは環境省さんにがんばってもらわなければできないことなのですが、今まで日本の自然公園は何十年間、はっきりと表明されてはいませんが、自由利用、だれでもいつでもどこでも使えるというものでした。「そうではないのだ、そうではなくなるのだ」ということをはっきり言わないと、無用の混乱がいっぱい出てくるということではないかと思います。
 じゃ、そこまで結構大変なことをやる意義は日本ではあるのか。ここからは非常に個人的な考え方ですが、やはりやってみる必要はあるし、やったらできるのではないのか。やれば、さっき述べた利点がかなりあるのではないかという場所は、私はわずかしか知りませんが、ないわけではない。
 例えば北の方からいきますと、雪のないときの知床国立公園。スノーモービルは別として、雪があれば余り人は入っていきません。
 大雪山国立公園でも、多くの人が入っていて、それなりに管理が行われていると思っておられる方が多いと思いますが、いわゆる十勝地域と大雪地域を結ぶ、最近有名になりつつある縦走路は、入る人はふえているのに管理が追いつかない。しかもそこは非常に日本には余りないような雰囲気の自然が楽しめるような場所だ。そこはもう少しきれいなルールで人間が楽しんだ方がいいんではないか。
 それから、これもまた北海道ですが、日高山脈襟裳国定公園。ここなどはきちんとした管理に基づいて、そしてどんな体験ができ、遭難救助体制や安全性はどうかという情報の提供とか、それをきちんとやっておけば、日本の中でかなりトップクラスの山岳レクリエーションを提供するような場所になり得る。
 上高地では何をするのか。夏の上高地を挙げているわけではありません。冬の上高地です。今、冬の上高地は、昔は入る人などほとんどいなかったでしょうが、非常にたくさん人が入れる状況になっております。大体あの地域はそんなに雪がない。今は釜トンネル、上高地に入る道路上のトンネルですが、その前のところまできちんと除雪がなされ、冬まで道があくようになりました。実際に冬に行ってみますと、道路脇にいっぱい車が泊まっていて、日帰り、あるいは1泊、2泊ということで多くの方々が入っています。それは非常にいいことだと思いますが、しかし、冬にかなり厳しいぎりぎりの状況の中で生活している野生生物への影響ということを考えると、やはりルールが必要でしょうし、上高地の場合は冬はできる。やった場合には、これは入る人の数もある程度限定されてしまうでしょうが、しかし、入った人たちに対しては、やはりすばらしい体験ができるだろうということ。
 それから、日本の場合、原生自然環境保全地域の制度がアメリカと違いますので難しいところですが、本州に1つしかない原生自然環境保全地域、そこを中心とした南アルプスの大井川源流。これは国立公園と原生自然環境保全地域をうまくミックスさせて管理させるという例としても、なかなかおもしろいことができるのではないか。
 それから、四季を通じては西表国立公園。
 やはりこうやって見ていきますと、28の国立公園、55の国定公園、さらに国立公園・国定公園、都道府県立自然公園も我が国にはありますので、やってみるとかなりおもしろいといいますか、レベルの高い自然保護と、レベルの高い自然体験が提供できるような場所がある。ポイントは、よりよい管理、よりすばらしい体験ということで、これは日本なのですけれども、こんなような場所が日本にもいっぱいある。きれいな自然、その中でのすばらしい体験ができるようなきちんとした管理ということができればと思っております。
 どうもありがとうございました。
渡辺委員長  どうもありがとうございました。
 それでは、ご質問などありましたらどうぞ。
 三澤委員。
三澤委員  教えていただきたいのは、自然公園への入園料についてです。これを取った場合に、いわゆる管理者としての管理責任ですね。例えば歩道で、少し転石があったためにけがをしたとか、あるいは落石があったとかというような管理責任に対する公園管理者というのような問題が、アメリカの場合にはないのでしょうかということが1つ。
 それから、もう一つは、適正収容力をNGOが決定すると、こういうお話のようですけれども、私ども、ちょっと考えますと、非常に適正収容力というのは幅がある話になっているのではないかと思うのです。万人が納得するような適正収容力というのをどのようにしてきちんと出せるのであろうかという、こういう素朴な質問でございます。
 以上、2点でございます。
加藤オブザーバー  1つは、私の説明が悪かったので、後の方から答えさせていただきます。
 適正収容力の方は、NGOが決定するのではなくて、決定はあくまでもお役所の方、国立公園管理当局がやるわけですが、どれだけ人が入ったから、どこの地域の山がどう荒れているというような情報モニタリングですね。そういう情報は、例えばNGO等々の方々が積極的に協力して集めてくる。それから、利用者の方々に「どうでしたか」と聞くという、いわゆる利用体験です。これはアンケートでやるというのがどうしても基本的なことになるのですが、小まめにアンケートをとってくる。そういうような活動についても、やはりNGOがサポートしていき、情報を出していく。しかし、この収容力というのは法律上公園管理に要求されているものですので、これは公園管理当局がやるべきものですし、またやっている。
 ただ、今度は収容力が決定されて、この道は1日につき20人です。では半分までの10人は予約です。その予約の受付はだれがやるか。アメリカの場合は、やはりこれもNGOがやっている。業務を委託している。そういうような形になっております。それでは許可証を持たずに山に入った人を捕まえて「はい、罰金だよ」というのはだれがやるかというと、これは当然管理当局、お役所の方でやるということになります。
 次に、最初の方のご質問です。管理責任ですけれども、これは、お金を取る、取らないにかかわらず、管理責任はやはり強く求められる。確かにアメリカの方の国立公園でも、いろいろな事故が起き、あるいは熊がたくさんいるところで熊に襲われてというような事故というのも、一時かなり裁判になっております。そういう場合に、公園管理当局がきちんとしたポリシーを公表していく。「例えばここは熊がいる公園なのだ。だからみんな自分の態度、例えばごみの管理とか、それから自分の持っているお弁当の管理とか、それはきちんとしなさい。そこでいいかげんなことをしていて熊に襲われたら、あなたに責任があるのですよ」ということをはっきりと情報を提供し、みんなにどんどん、利用者だけではなく社会に呼びかけていく。情報提供が前提となって、そして特にこのバックカントリー、あるいはWildernessというところでは、最近よく出る自己責任、自分自身の責任というのは、十分な情報提供があった上で成り立つ言葉です。そういうことで、今でもまだいろいろな問題はありますけれども、そういう対応が大事。
 では、お金を取られない日本の国立公園では、管理責任はどうなるかといいますと、これだって裁判はいっぱいあるわけですし、今はまた、かなり微妙な問題というのも起こっているというふうに聞いております。ですから、お金を取られるかどうかということは、必ずしも管理ではない。ただ、お金を取るような管理であれば、よりきちんとしたことは求められるという、その点はあるとは思いますが。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 そのほかにいかがでしょうか。
 どうぞ、岡島委員。
岡島委員  最初のVERPですかね、きょうは多分こちらの調整のことでのお話が中心だったのですけれども、これは後ほど吉田さんからのお話にもあるかと思いますけれども、エクスペリエンスの利用の方ですね、こちらの方が日本に対する提供というところで若干漏れていたような気もするのです。自然体験の質の向上と新たな自然体験機会の提供というご提言があって、その下に費用の確保ということがありますけれども、これについては試算のようなものはありますかね。アメリカでは、例えばこれだけのビジターがいて、それに対してこれだけの手当てができてきて、日本なら、本来であればこれぐらいの人数と費用が必要ではないかという具体的な試算があるかどうか。あれば教えていただきたい。
加藤オブザーバー  お答えになるかどうかわかりませんけれども、試算といいますか、かなりそこを詰めて研究している例というのは、日本では1つ2つの公園であるみたいでございます。1つは知床、1つは日光国立公園の尾瀬地域。知床国立公園につきましては、後で環境省の方、あるいは斜里町の町長さんも来ておられますので、お話が若干あるかもしれません。
 人数的なことを申します。日本で一番大きな国立公園が大雪山国立公園で、私が今住んでおります神奈川県と一緒の広さでございます。この大雪山国立公園は、日本では珍しくレンジャーが多い場所でございまして、長い間3人でした。最近ふえて6人とか8人になられたようですが、その3人で一体何をやっていたのだろうと。多分現実的な自然地域の管理というのは何もできなくて、そこで変な開発が起きないように抑えるということで一生懸命だったのだと思います。アメリカの有名なイエローストーン国立公園は、大雪山国立公園の4倍あります。夏の間、ここのいわゆるお役所系のレンジャーだけで、ちょっと一昔前の数字で申しわけないのですが、二百数十人ぐらいおります。そのレンジャーを支えるいろいろなNGO等々もおりますので、数百人から一千数百人ぐらいです。アメリカのカリフォルニア州にありますヨセミテ国立公園、アメリカでは一番利用者が多い国立公園の一つで人気があるところですが、夏の間は、いわゆる広い意味での管理等々に携わる方々は一千数百人ぐらい、冬場で六、七百人ぐらい。日本のレンジャー全部合わせても 200人いったかいかないかですね。これはもうレベルが全然違う。
 日本の話に戻りますが、大雪山国立公園は、基本的に全部国有林です。その国有林で管理している人の数を数えますと、イエローストーン等々よりもはるかに管理者の密度は高い。ですから、うまい協力体制をとっていけば、人の面では何とかなるかなということを考えています。
岡島委員  わかりました。私の聞いているのは、その管理も1つなのですけれども、今後特にVisitor Experienceですね。こっちの方の人材についてちょっとお聞きしたのです。そちらの方のデータがあれば、そういうのを出していただいた方がいいんではないかと思いまして。
加藤オブザーバー  わかりました。そういうのもできるだけ私どもで調べてやっていきますが、実はこのVERP管理、これの方は、各国立公園ごとに公園管理当局は大枠をつくり、そこに関係のNGOの方々に理解と協力を求めてやっていくということで、そのように対応しているようでございます。それからVisitor Experienceというのも、これも実際問題、来る人来る人みんなにアンケートをとっていくというのは大変な話です。現実にどういうふうにやっているかといいますと、その自然公園の中の著名な地域の写真をコンピューターの中にデジタル化しまして、その周りに人を張りつけたような写真をつくりまして、あなたの周りに20人いればこんな感じです、 100人いればこんな感じですというのをお客さんやら、それからそれこそボランティアに見せて、いろいろと最適といいますか、より望ましい体験を提供できる数を割り出すとか、そういったことをやっておるようでございます。
岡島委員  わかりました。私の言った質問は、Visitor Experienceというようなことを国立公園の思想中の重要な部分に入れておいて、そして、それに対してこういう形で人材とお金を入れていく。そこをちょっと聞きたかったのですけれども、そのうちまた教えていただければ。
 それからもう一点、最初の絵。私、逆ではないかと思うのですが。これからいろいろお見せするときに、ヨセミテの絵が裏返しではないかと。細かいことで恐縮だけれども。
加藤オブザーバー  おっしゃるとおりで裏返しになっておりまして、大変申しわけございません。実は、写真を入れていないバージョンを昨日つくりまして、今日、やはり写真を入れてきた方がいいかなと思って写真を入れた結果こうなってしまいました。
岡島委員  これ、実際は逆ですよね。ハーフドームの位置も、切れているのが反対側だと思うのです。
加藤オブザーバー  申しわけありません。これは確かに数字も逆になっておりまして、実は入れかえるときに逆になってしまったのです。どうもご指摘ありがとうございました。
渡辺委員長  どうもありがとうございました。
 ほかにどうぞ。瀬田委員。
瀬田委員   先生の3ページのところで、黒丸と二重丸の違いが何かというのがあります。その二重丸になったところで、公園利用者との関係で、地権者の権利義務の整理とその明確化ができるということだと思うのですけれども、ここをもう少し詳しくご説明いただきたい。
加藤オブザーバー  紙の方で黒丸と二重丸を分けておりましたのは、特に3ページですが、黒丸は、どこの国のどんな国立公園・自然公園制度であっても、まず当てはまる話である。二重丸は日本の地域制に立つ自然公園制度で、特に重要だ。あるいはそこに当てはまるということだと思います。
 3ページの「利用調整によって生じる利点」というところで、公園利用者との関係での、地権者の権利義務の整理とその明確化ということを書いております。これはどんな話か。具体例を出されると、ひょっとしたら、余りいい顔をされない方もおられるかもしれませんが、去年、首都圏に近い秩父多摩甲斐国立公園で、両神山という、これも日本百名山の1つですが、有名な山の登山道が通っている土地を持っておられる地主の方が、そこの登山道を閉鎖するというようなことが起こりました。そのときになって初めて、多くの方々は、「日本の国立公園ってそういうことになっているのか。そういう問題が起こる可能性があるのだ」ということに気づかれたかもしれません。日本の国立公園制度が書かれております自然公園法を見てみますと、公園に指定された中で土地を持ち、あるいはその土地を利用しているような経済活動をしておられる方に対して、確かに開発規制はかかっている。それは風景と自然環境を守るための規制である。しかし、国立公園ですから、自然公園法第1条によれば、そこに多くの人々が行くのが当然。行くとやはりいろいろなトラブルが起こりかねない。では、その利用者が来た場合に、地権者、土地所有者は、その人たちが自分の土地に入ってくるのを、これは登山道があれば認めなければいけないのか。しかも登山道、遊歩道もきちんと、これは公園のために使いますと、公園事業として位置づけられていればまた別でしょうが、そうではないようないろいろな土地だっていっぱいある。
 では、そこの利用者との関係での地権者の権利、義務って一体どうなっているのだ。ここのところは確かになかなか詰められていない。それから、いろいろな現場でお伺いしてみましても「制度はそうなっていると言っても、私のところにはお話はなかった」というような答えが返ってくる方もいれば、逆に、もちろんきれいに自然公園法をうまく使って、地権者の同意をきちんと得てという場所もいっぱいあるのは確かです。今回の、例えばある地域を限って利用調整というようなことをやる場合には、どれだけの人が入ってどういう活動をするのか。その場合に土地の利用者等々はどういうことに協力するのかということをはっきりと、例えば日本の制度でいいますと合意といいますか、契約のような形で書いていく必要がある。その中では、先ほどのご質問ですが、事故が起こった場合にはだれが責任を持つのかというようなこともきちんと書かれていく必要があるだろうし、書かれていかなければ、地権者は多分こういう、より営造物的な公園管理に納得しないだろう。
 逆に言いますと、この利用調整を日本のような地域制のところで動かすということになりますと、その地域の方々の間で自然保護のためだけの規制等々、権利義務関係だけではなく、利用者がいっぱい来る、利用者がふえること、あるいはふえなくてもいいんですが、利用に伴って生じるトラブル等との関係での責任は一体だれがどう持つのか。そこもきちんと整理されざるを得ないだろうということです。
渡辺委員長  
 ありがとうございました。
 それでは、3人目の北海道斜里町長、午来様から「知床国立公園の今後のあり方について」、ご報告をお願いいたします。
午来オブザーバー  それでは申し上げます。端的に言って、知床国立公園をもっともっとグレードアップしたいし、グレードアップするために、今環境省が基本構想を打ち立てて、地域と議論をしながら、最終的なまとめに入っている段階であります。グレードの高い、自然度の高い国立公園というのは、それぞれ全国各地28の中で、西表と知床は比較的歴史が浅い。こういう中にあって、知床の場合、目梨郡と斜里郡に分かれているものですから、公園は1つですが、行政的には2つに分かれているという、こういった関係も長く続きまして、ようやく最近になって、知床国立公園一体となって今後の利用、保全、管理に対して協調してやっていこうと、こういうような形になりました。
 したがって、小委員会でもそれぞれ資料をもとに検討していただいていると思いますが、いずれにせよ、具体的に何点か例を申し上げますと、質の高い国立公園の利用と保護、管理をやっていくとすれば、圧倒的に環境省の現場の職員が少な過ぎる。これを今後どうするかということで、グリーンワーカー制度等を活用した民間団体の協力を得て、そういった分野を具体的に対応していこうと、こういうことですから、これは早く決定をして具体的に行動に移ってほしい。
 もう一つは知床の場合、一般利用エリアと、それから原生的な自然環境の保たれている特別保護地域、これらの利用区分がどうも明確でなかった。特に知床半島部分とルシャ地域というのは、一度民有地だった関係で、伐採がされた後、30年ちょっと過ぎた今の時点では、非常に自然が順調に回復されている、このルシャエリアでありますが、今回環境省が、このエリアを鳥獣保護の面から一定の枠をはめて今後の保全をやっていこうということですから、これは1つ前進かなと思います。
 ただ、半島地区の特別保護地域なのですが、ここはふだん17条、18条等々、それから罰則の関係の22条ですか。こういったものをきちんと対応して、立ち入り制限もきちんとしなきゃだめだと。そして現地には指導員なり監視員をきちんと配置をして、無断で入ってきた者をどのような形で排除をするか。こういったことは早く手を打たなければいけない。これは39年、知床国立公園になって間もなくからずっと、当時の環境庁の皆さん方にもお話を通しながら、何とかしようやということで今日まで来ているというのが実態であります。
 ですから、これは全国的に、今、そういうことも議論の中に入っているようですが、規制の問題はあいまいではだめだ。加藤先生がさっきおっしゃったように、悪いことをしたら、きちんと処罰をする。やはりそういう厳格な規制のもとに公園利用というものを考えるべきである。ですから、私は、環境省の現場のレンジャーには警察権を持たせろと。カナダ、アメリカのようにピストルまで持たせろとは言わないけれども、少なくともそれだけの権限を与えて、公園の利用と保護、管理というものを明確にするような権限もやはり与えながら、地域とどのような連携を深めて公園の利用と維持、保全をやっていくか。このことをずっと前から話を実はしてまいりまして、ようやく今に来て、この法的な対応をしようと、こういうことです。
 どうかひとつ委員の皆さん、国立公園は現場から見ていろいろな問題を抱えています。各市町村が金を出しながら保全と管理を協調して、同時に監視員とか調査研究をきちんとやりながら、環境省と連携をとりながら対応してきた今までの経過から見ても、今までやはり話題に上がりながら、何かあいまいな形で両方が成り立つようなことをやってきた。それじゃだめだと思うのですね。やはり立ち入り制限は制限として、そのエリアはきちんと設けて、よほど学術的な調査研究だとか、そういうものでない限りは、そこにはもう入っちゃだめだ。1日人数を決めてガイドをつけてやるのも結構です。しかし、それは地域によって違うわけですから、やはり全体の生態系を守っていくとすれば、厳しいそういう地区指定も設けながら、そこにはきちんとした管理人を常駐させる。そういったこと。
 それから、オープンなエリアは、不足している遊歩道の整備だとか、山岳トイレの問題だとか、きめ細かなソフト面の整備は迅速にやっていかなきゃならない。このための人員が不足だとすれば、恐らく今後とも環境省では、これ以上人間はふえないのだろうとすれば、グリーンワーカーの制度の予算を活用した地域の皆さんの力を。小委員会のレジュメの中にも、そういった構想が出ていますから、こういった課題は速やかに連携を深めていただいて、すぐ実行できるように。ことしは予算が余りつかなかったようですから、来年から具体的な作業に入れるような、そういう形をぜひとれるように、早く決定をして、生かされる形を望みたいと思います。
 知床というのは非常に特殊な地帯です。河川の流域面積も小さいし、半島部分から羅臼町、斜里町含めて約4万ヘクタール、ほとんどが国有林であります。知床国立公園、 200ヘクタールの民有地がまだ残っていますが、これは何とか北海道ともいろいろ協議をして買い上げをしていきたい。羅臼町側についてもほとんどが町有林でありますから、これはほかの地域と違って、余り民間の意向というものを重視しなくても、ある程度地域の皆さんの理解が得られれば理想的な仕組みというものができるエリアでもあります。したがって、あの狭いエリアに全体の生態系が凝縮されているということは、科学的な分野から見ても非常に貴重なエリアであると思います。ですから、そういうことを十分ひとつ議論をされて、やはり北海道の中でも特異な公園である。大雪山は23万ヘクタール、確かに広さはありますが、そこに生息している動植物、その他の状況から見ても、知床はわずか4万ヘクタールですが、そこに負けないだけの全体の生態系が1つは凝縮されているということ。
 それから、できれば、海岸線の保全についても、こういった地区に選定していただければと。北海道は6つの国立公園がありますが、海中公園は一つもありません。こういった課題なんかも、やはり海域と陸域がうまくバランスがとれているような、そういう仕組みづくりというのも、ぜひ知床らしさを維持していくために絶対必要だ。したがって、海域の分野を今後はどのようにお考えいただけるか。海域の一部が全体として組み込まれていけば、もっと有意義な価値というものが1つ生まれ出てくる要素も多分にある。そうしないと、プレジャーボート、それから遊覧船の関係が無許可でどこへでも船をつけて、自分のお金もうけのために手段を選ばず利用しているというのが実態でありますから、これらの課題の整理をするためにも、いろいろと海域の部分も利用のあり方があるべきかと、こういうことも踏まえて検討していっていただければと。
 以上申し上げましたが、そういうような背景をできるだけ現実のものにするために、我々地元としても、今後できるだけ未来に悔いを残さない、乱開発から知床を守りながら、自然との共生を人間がどのように図られるか。動物の共生ではなくて、人間と自然の共生がどのように図られるか。この辺を視点にして今後とも対応していきたいと思います。
 以上です。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご報告につきまして、ご質問等ありましたら。どうぞ、大沢委員。
大沢委員  今、指導員や監視員が非常に不足しているというお話がありましたけれども、利用者にとって、指導員などがたくさんいると、具体的にどういうよいことがあるのでしょうか。ちょっと教えてください。
午来オブザーバー  少ないと言ったのは環境省自体のレンジャーですね。北海道6つの国立公園の中を見ても、職員の数が圧倒的に少ない。それをフォローしているのはやはり各種団体ですね。公園指導員もいれば、林野巡視員もいれば、それから北海道が委嘱しているそれぞれのエリアの監視業務もある。このごろは、やはりアウトドアライフといいますか、自然体験型のグループが非常に最近ふえてきた。それにはやはり専門のパークレンジャーなり、うちの町はボランティアのレンジャーを抱えているわけでありますが、そういった方々、それから民間の団体の皆さんもそれなりに前向きに対応していただいています。
 しかし、それは正直、例えば環境省があって、道があって、市町村がある。こういう中での民間との連携軸がまだまだ不足しているのかなと思います。私はかつて、国立公園の指導員やら、巡視員やら、三日にあけず知床の山を駆け回っていた一人ですから、そういう体験の中から考えますと、やはり横の連携をどうやってうまく調整できるか。それが町なのか、環境省の出先の事務所なのか、はたまた北海道庁の出先の機関なのか。この辺は連絡会議を年に1回2回やっているわけですが、話は出ても、なかなか実態となるとすすみません。どのグループにだれがつけるか、急に飛び込んできた人たちにどのような対応ができるのか、これはうちの管理財団もある話で、知床財団でそれはやっていますが、全体の流れとしてはまだまだそれは不足している。そのリードをする核がどこなのかということが、やはりまだはっきりしません。僕は、環境省の出先の事務所がありますから、こういった方々が中心になって、民間と公共との核になった1つのコントロール機関としての役割をぜひ果たしてもらえれば、そういったことがある程度解決できるのかなと。ぜひそのような形に私の町ではしていきたいと、このように思っています。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 どうぞ、田部課長。
国立公園課長  今、町長からもお話がありましたけれども、知床国立公園というのは非常に原始性の高い国立公園ということでございまして、環境省のレンジャーは、今現在、実は3名ということでございます。ウトロに2名、そして羅臼の方に1名です。町長のお話には先ほどは出ませんでしたけれども、町の方では、町の関係の財団、自然トピア財団が、ビジターセンター的な公園施設の管理、あわせて周辺地域、非常に熊の密度が高いということで、熊と利用者の人との遭遇を防止するためのパトロールでありますとか情報提供でありますとか、そういうところに非常に力を入れていただいているということでございます。
 従来、この公園というのは、環境省の所管地がないということで、環境省が直接整備をするということが行われてきておりませんでした。かわりに道が環境省の補助金を受けてやっている。あるいは町の方で独自に施設をつくられているといったようなことでございます。今後、モデル的な原生的な公園として、環境省も力を入れたいということで、現在環境省、北海道、斜里町、羅臼町、それと地元の方々も入って検討会をつくり、知床国立公園のあり方というのを検討している状況がございます。
 ちょっと追加的にご説明いたしました。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 ほかに。瀬田委員。
瀬田委員  午来さん、遠いところからおいでになりましたので、せっかくですからお聞きしておきたいと思います。今、午来町長がおっしゃったことが、この答申なり法令の改正のどこに結びつくのかというふうに参考資料を見ながら考えてみますと、利用調整地区ということが1つだと思いますね。右下の公園管理団体というのがNGOとしての意味を知床は持っているというふうに、環境省はそういう道筋をつけようとしていらっしゃるのかどうかということなのです。
 私は、一番上のところの自然公園における生物多様性の保全の要請と、こういうふうなところから全部が流れてくると、少なくとも加藤先生は、もう一つの方の利用環境ということをおっしゃったから若干違うのですが、午来町長に伺いたいのは、サケをどうするのという聞き方なのですね。生物の多様性で、それぞれのサケをみんな孵化場で捕まえて、そして人工増殖して、そのまままた海に戻すというようなことが生物多様性なのかというふうになってくると、実はこれ、どういうふうに川の魚を考えるのかということ。
 それから、もう一つは、多分利用規制するというときに2つのパターンがありますね。1つはシーカヤックのようなもので自由に入るということがある。もう一つは、やはり漁船が番屋のところまで連れていっているということの事実。このことの方が圧倒的に数としては多いわけですけれども、そういったものの調整をどういうふうにするのかというのがある。私は生物多様性ということにこだわっているから、そのことをちょっと伺うのですけれども、漁との関係といいますか、あるいはサケがみんな同じものの単一の子孫になっているということを、ここのテッパンベツ川でもルシャ川でもいいんですが、こういう原始河川の中でどういうふうに考えるのかというふうに、これは、環境省の道筋の中で、ちょっと伺いたいなと思います。
渡辺委員長  環境省への質問ですか。
瀬田委員  環境省に確認して、それから午来さんに聞こうと思っていたのですが。
自然環境局長  シャケのお話につきましては、シャケの多様性といいますか、あるいは川に上ってくる魚としてシャケしかいないとかいうような部分もあるかもしれないですけれども、この辺は若干漁業との問題もございまして、私どもの方でなかなか強く言いにくいところはあるのではないかなと思っております。
渡辺委員長  町長さん、何か。
午来オブザーバー  瀬田委員さんから専門的な課題だと思うのですが、私は現場にいて、地元にいて、やはり法改正をまず検討することが大事だと。今まであいまいな条文があったから明確にしろと、そういう中に、昔から漁業者の皆さんは、ルシャ地域なり、半島地域なり、羅臼町は昆布の番屋がたくさんあって、そういった環境の中で生活をしてきたという、この経過的なもの。そして今後ともそれは続くと。しかし、それは背面の環境がきちんと守られて初めて、この河川の健康状況も、それから海の環境もきちんと守られていて、その恵みによってささやかな暮らしの糧が、やはり知床半島全体として、羅臼町 8,000人、斜里町1万 4,000人の皆さんが陰に陽に影響を受けて、今日まで暮らしが成り立ってきている。
 その河川利用の中で、やはり砂防ダムをどんどん建ててきた、つくってきた、林野庁の責務もちょっとあるなということで、いろいろな反対運動も今日までやってきました。ルシャも低床ダムの計画があったわけですが、3基ずつ15群の計画が当時ありまして、これはもう絶対反対だと。しかし、メンツがあるので、3本だけつくらせてくれ。ケーソンの遡上には影響ないようにするからと、こういうような経過をたどって、反対があったけれども、当時3群だけようやく認めた経過があります。しかし、今振り返ってみますと、この砂防ダムなるものが、本当に林業振興や河川環境や海域の資源の保護に役立ったのかということになると、全く正反対でありまして、今になって漁民の皆さんは、失敗した。泥水を防ぐのに、当時営林署は砂防ダムをつくって防ぐ。それは河川に影響がないという言い方をして、我々は返事したけれども、今振り返ってみたらとんでもない返事をしてしまったと。今、壊せという意見も一部に出ています。
 そういうエリアの中で、生産と暮らしがうまく背面の自然環境の影響で成り立ってきたという、この現実だけはやはり今後も続くのであろうし、それ以上のことを求めないし、今の状況でこれ以上知床が荒れないように、羅臼町、斜里町ともやはり連携を密にしながら、現場の生産、それから多くの観光客利用という面で考えれば、こういった適正な利用というものを図っていくことが今後知床に問われている、また全国の公園所在地に問われているいろいろな課題なのだろう。それをあいまいにしてしまうとだめですから、私たちは、自分たちの町が成り立っていくためにも、やはり厳しい規制というエリアと、それから、ある程度規制があっても利用可能な地域というものを明確に分けた上で対応していきたいというのが私の町としての希望であり、思いであります。そういう面で、活用という面でサケの孵化の関係が出ましたが、私はそういったものは、やはり自然の恵みの一環としてある程度認めながら、やはりそこに生活の糧を求めている漁民という方々の立場を考えるのであれば、最小限の利用というのは認めていかざるを得ないだろうと、このように思っている次第です。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 局長。
自然環境局長  シーカヤックのような話も出ていましたけれども、いずれにしましても、後でまた法改正の方向を少しご説明させていただきます。我々が今考えていますのは、今、午来町長から要望があったようなことすべてを、自然公園はこれで全部解決できるというふうにも必ずしも考えていません。法律でもって利用調整なり生態系保護、自然環境保全のそういう生物多様性の観点からの保全の手段として持っていない部分を持つ。その上で法的に措置できることと、それから、地域住民との協力の中で話し合いとか、土地所有者との協力関係を結ぶ中でやっていくようなこと、そんなようなことが実際の行政の中では複合的にされていくのかなというふうに思っています。
 ですから、シーカヤックとか漁船で人を運んできているじゃないかというようなことも、法的には上陸した時点で、立ち入り調整地区に入った時点、そこでもって規制はできるけれども、実際そういうことのないような話し合いをするとか、ルール化をするということもあります。漁業権の問題で、今すぐ直ちにサケの問題について何かどうこうと言いにくいのですけれども、例えば、環境省でルシャやテッパンベツという川の流域の土地を買ったりした場所があります。そういうところでは天然遡上のサケをというような気持ちはありますけれども、今直ちに漁業権の調整がどうなるかわからないし、知床を利用調整地区にするというふうに決めているわけでもありませんので、とにかく制度的に手段を持って、具体的な地域保全に対応していければというようなことで、今回法律改正まで念頭に置いているという状況でございます。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 よろしゅうございますか。
 どうぞ、藤原委員。
藤原委員  済みません。せっかく遠くからいらっしゃっていただきましたし、また今、課長の方から自然トピア財団の補足説明があったのですけれども、私はせっかくいらしていただいて、地元としまして、斜里町として、また道や国、環境省との国立公園におけるそれぞれの関係というのはどういう形になっているのか。それから、自然トピア財団との関連、それがこの国立公園内における保全管理に対してどういう位置づけにあるのか。特に町としてはどんな位置づけにあるのかを、管理、保護、保全に関してお聞きしたいのですけれども、具体的にいかがでしょうか。
午来オブザーバー  1つは、昭和39年6月に国立公園に指定されて以来、いろいろな紆余曲折がありました。しかし、我々は一貫して知床を守っていきたいと、こんな思いを根っこに持ちながら、当時、環境省の出先の事務所というのは羅臼地方にしかありませんでした。川湯に事務所がありまして、そこの所長さんが知床も抱えて、いろいろ苦慮してやってまいりました。
 その中で、先ほど田部課長さんからもお話がありましたように、やはり知床国立公園の入り込みの実態を見ても、圧倒的に斜里側から入る方が多い。そのために、例えば知床五湖というエリアがあるわけですが、こういったエリアに余りにも人が入り過ぎる。何とかこれを分散した利用のあり方はないのかと、こういうようなことを含めて、昭和60年ごろからいろいろと、もっと利用のあり方の中で、とにかく国がなかなかやっていただけないものですから、斜里町でビジターセンターにかわる斜里町立の自然センターなるものをつくって、62年からそういった事業を始めました。その中に知床の管理財団的なものとして自然トピア財団をつくりまして、ここでヒグマの問題、エゾシカの問題、シマフクロウ、オジロワシ、その他野生鳥獣の調査研究もやろう。それから、先ほど言ったように、非常に自然志向型のそれぞれの各地から訪れる方々も徐々にふえてきている。こういったものに対する地元としての対策のあり方等々、当然この過程の中には、当時、出先の環境庁の皆さんとも連絡をとり、また支庁と北海道庁とも連携をとりながら、斜里町がやろうとしている、そういった目標に向かってはお互いに理解をしていただきながらできたことでありますが、しかし、毎年 3,500万程度のお金をかけて、ヒグマの追跡調査から、エゾシカその他の生態系の分野においても、町が職員を雇って張りつけて対応してきたというのが実態なわけですね。
 そういった計画の中でそれができたというのも、やはりそれだけ関係する皆さん方が知床をお互いに大事にしようという共通の理解があって初めてできたことであります。ですから、民間団体の皆さんも、これらにつきましてはいろいろな分野で理解をしてくれてできたことです。議論はありましたが、やはり斜里町独自でやってきたことが、今回のこういった会議の遡上にも上げていただいて、今後本当の意味でのグレードの高い公園に仕上げていこうということまでこぎ着けてこられたというのは、やはりその背景には地元の北海道の出先機関、北海道庁、それから関係の地元の皆さん、本町の皆さん方のやはり連携があって、初めてこういったことができるということをしみじみと今感じています。
 ですから、そのことを大事にしながらも、先ほどきついことでしたが、審議会の皆さんは、やはり現場の現地でいろいろと悩んでいる問題、この法律がもっと強ければ、もっと確かなことができる。それから、もっとやはり軽くしてくれれば、もっと地域的にはオープンにできる。こういうもののすみ分けをやはり明確にしていただきたい。こんな思いがあるものですから、ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、先ほど言ったような形ですので、どうぞご理解を賜りたいと思います。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 それでは、4人目のオブザーバーの方に進ませていただきます。
 財団法人日本自然保護協会常務理事の吉田様から「里山など身近な自然の保全にかかるNGOの役割の重要性や課題」ということで、ご報告をお願いいたします。
吉田オブザーバー  日本自然保護協会の吉田でございます。よろしくお願いいたします。
 日本自然保護協会は、1949年に尾瀬ヶ原の保護をスタートとして、尾瀬保存期成同盟として生まれまして、その後、北海道の雌阿寒岳の硫黄採掘問題ですとか、あるいは和歌山県の北山峡の問題ですとか、全国的な国立公園の中にあっても開発が進むという問題がございましたので、名前を1951年に日本自然保護協会と変えまして、昨年で50年を迎えました。そして、一昨年、尾瀬保存期成同盟50年を迎えたところで、以前は日本自然保護協会が出す意見書と言えば、最初の方の10年ぐらいほとんど国立公園内の保護問題だったのですけれども、今は、国立公園外の諫早問題とか、そういったものも随分やっております。もう一度原点に立ち戻って国立公園のあり方というものを検討してみようというので、水野憲一理事が座長になりまして、ここにいらっしゃる加藤先生、それから斜里町の山中さん、それから岩手県立大の幸丸先生、それから白馬自然の会の今井さんというような方々に委員になっていただきまして、国立公園制度検討小委員会というのをつくりました。その報告書は皆様の方に既に環境省の方でお配りしていただいている、この「豊かな自然・深いふれあい・パートナーシップ」という報告書です。今日はその中の、6章の部分のコピーが入っておりますけれども、提言部分を中心にお話ししたいと思います。
 きょういただいたお題が「里山等の身近な自然の保全にかかるNGOの役割と課題」というので、私が書いてきたものは「自然公園を生物多様性の保全を目的としたものに」ということで、お題が違うじゃないかということもあるかもしれませんけれども、実はこれ、両方とも、この検討小委員会の提言の中に入っております。おおまかに言いますと、提言1としては、自然公園を生態系と生物多様性の保全の場とする。2番目として、自然公園を深い自然体験の場・環境教育の場とする。そして3番目に、自然公園におけるパートナーシップを推進する。この3つを中心にお話ししたいと思います。そして、それを実現するには人とお金が重要ですので、人材配置の話、それから適切な費用負担の話というのがそれに付随して、全部で5つという提言であるわけです。 (OHP) それではまず、提言1の「自然公園を生態系と生物多様性の保全の場とする」ということなのですけれども、まず、自然公園というのは、1931年に国立公園法ができましてから、日本を代表する風景の保護ということを中心にやってまいりました。もちろんそういった中で、特別地域、特別保護地区を中心として、生態系の保護というものも結果として図られてきたわけです。現在、92年に開かれた地球サミットで採択された生物多様性条約、そういったものを実現していくということが非常に重要でございまして、その場としては、日本の14%を覆っている自然公園というのは非常に重要な意味を持つわけでございます。ですから、自然環境保全地域のように、その外側に別の目的を持ったものをつくるというよりは、既存の非常に広い面積を持った制度の中に、この生物多様性という観点をもう少し、具体的に書き込んでいくということも非常に大事ではないかと思います。
 そして、例えば28の国立公園すべてが生物多様性中心かといいますと、生物多様性の保全が非常に重要であるところもございますでしょうし、それから、風景の保護を中心とするところもあると思います。ですけれども、非常に生物多様性保全上重要なところが、そういった扱いが常時できていないということも多いんではないかと思うのですね。そういった意味で、自然公園の特性に合わせて、その自然環境保全に関する目標や利用の内容と質に関する目標、そういったものを明確化する。そして生態系の保全とか自然体験の提供という面から見たゾーニングが必要だと、そういったことでございます。
 それでは、具体的な例として1つ、小笠原国立公園の事例を申し上げたいと思います。
 今、ゾーニングのお話をいたしましたが、小笠原国立公園の場合、最初、兄島というところに空港の予定地が計画されました。ちょっと地図が何か下がネガになってしまっていますが、上の方に兄島と書いてあるところに赤い線でかいてあるのが最初の空港の予定地だったのですね。どうしてこういったところに設定されたかというと、兄島につきましては、風景上重要な地域というのは海岸部分、今ちょっと海岸部分が上の写真で見えておりますけれども、そこが特別地域になっております。ですけれども、中央部分についてはのっぺりとした低い矮性の低木林で、風景の保護という観点からは低く評価されていたわけです。しかし、この空港問題をきっかけに実際調べてみますと、その風景は特別すごいというわけではないのですけれども、そこに、世界中でここにしかいないという固有の陸生貝類がたくさん生息している。海洋島ということで、今まで大陸と一度もつながっていない、そういった場所には非常に固有の生物が多いわけですけれども、特に陸生貝類ではたくさん固有種が出ました。
 こういった観点の場所を特別地域にするということは、今まではなかなか難しかったと思うのですけれども、こういった生物多様性という観点からすると、入れられなかったような場所を特別地域にしていくと、そういうことも必要なのではないかと思います。そういった面で、目的の中に生物多様性の保全ということを入れていくことも非常に重要だと思います。
 それから、2番目に、この小笠原、父島、それから母島などに行くと、今、固有の生物が多いと申し上げましたけれども、絶滅のおそれのあるアカガシラカラスバトとか、そういった生物がすんでおります。環境省の方では、残念ながらここにはレンジャーの方がいませんので、東京都が中心になってその対策をとり始めましたけれども、もう気がついたときには絶滅寸前状態。平成12年からその対策をとっておりますけれども、捕獲して東京で繁殖させて戻すということをやらなきゃいけないんじゃないかという状態までいきなり来てしまいました。本来であれば、こういう種類については、種の保存法という別の法律もありますので、そういった計画が立てられてしかるべきですけれども、全国にいるような生物はそうですけれども、この公園のここにしかいないというものについては、公園計画の中で野生生物の保全、回復というような、そういう計画が立てられるべきではないかと思います。絶滅が迫ってから対策をとるようでは遅いんではないかと思います。
 次に、写真で今、下に南島の写真が出ましたけれども、南島という島は、父島の南西側にある小さな島です。ここは、かつてはヤギ等が放されていたところ。今は、ヤギは捕獲してありますけれども、そういった歩いた跡を中心に、そこに船で訪れる人たちが、そういったところを歩き回るということで裸地化が進むということがございます。そこは東京から訪れた人の半日観光とかでちょうどよく使われる場所なのですね。そして裸地化したところに外来植物のクリノイガとか、それから、どうやって入ったんだかわからないんですが、例えばこのカツオドリなどが繁殖をいたしますけれども、そういったものを脅かすノネコとかクマネズミなども入ってしまっている。そういう対策が後手に回っているということで、こういった外来種対策というのは、東京都の方でもやろうということではありますけれども、地元でもNPOでこういったものをとるというような活動をしようという団体が出ています。後でパートナーシップのところでもお話ししたいと思いますが、こういった団体も自然公園管理団体として認定して、協力を得るということも非常に大事ではないかと思います。
 そして、何よりもこういった生物多様性の地域区分を環境省もしておりますけれども、小笠原は唯一、その地域区分で単独の地域区分を持っているわけですね。そこに1つの国立公園がある。そういった、非常に生物多様性、この辺は重要な地域でもあるのですけれども、環境省の事務所というのは、箱根にある南関東地区の自然保護事務所。箱根からでは余りにも遠過ぎるということで、やはり現地に環境省の自然保護官を置く必要があると思います。これは地元からも非常に強い希望が出ています。
 こういった提言1のところですね。具体的に法改正に結びつけていただきたいなという部分だけ提言として申し上げますと、先ほどもお話をいたしましたけれども、ゾーニングを生物多様性、保全という視点からもう一度見直すべきではないか。それから、必要に応じて利用者の立ち入りを制限するということができるような法改正も必要ではないか。今まで立ち入り制限という面では、車両の制限ということでマイカー規制というのが行われてきました。でも、これは自然公園法上で行っているのではなくて、道路交通法とか、そういった根拠で行っているわけですね。ですから、道路交通法をこの小笠原の国立公園に持ってきてもだめなので、やはりもっと歩いて入るとか、それから先ほど上高地のお話が加藤先生からありましたけれども、冬季スキーで入るとか、スノーシューで入るとか、そういったものについても季節を限定して立ち入り制限をするとか、そういうこともできるような自然公園法が必要です。あるいは早池峰の国定公園などでは、少人数で、自分たちが踏み荒らさないように歩けばいいんですけれども、集団登山、高校総体とかでワッと競うように行きますと、道をどんどん踏み外して、だんだん道が広がっていってしまう。そういった問題もございます。だから大量人数のグループは遠慮していただくとか、そういった細かな制限。私が申し上げているのは、一切立入禁止ということを申し上げているのではなくて、非常にその地域の特性に合わせた制限の仕方というものができるような項目を入れる必要があるのではないかと思います。
 そして、先ほどアカガシラカラスバトのお話をいたしましたけれども、その公園を代表するような動植物を指定して、生息地の回復計画をつくる、義務づけるということもできるようにすべきではないか。これは種の保存法で本来やるべきではないか。どっちがいいかはわかりませんけれども、でも、物によっては、もうこの国立公園にしかいないのだから、自然公園法側でやるということも大事ではないかと思うのですね。
 それから、動物の捕獲・採集について、特別地域での捕獲についての対策をとるということが、今、この自然公園法の改正案の中で出ておりますけれども、捕獲・採集を禁止するだけではなくて、先ほど外来種のお話をしましたけれども、外来種を野外へ放逐するとか植栽する、こういったことも禁止するということができるような条文にすべきではないかと思います。外来種だけではなくてペットもそうですね。
 先日、乗鞍岳の問題で、乗鞍スカイラインが無料化というか、今までは有料道路だったのですけれども、償還が終わって普通になると。ですから地元では、あの高山まで、今までつくってしまった道路、これをもとに戻して、シャトルバスで行くような形にしよう。しかも、例えばライチョウなどにも影響が出ますので、ペットは持ち込まないようにしようとペットの預かり所までつくって、そこから先は持ち込まないようにしようというような、そういうことも地元の村長さんなどは考えていらっしゃいます。そういった意味で、じゃ、何の根拠があってそういうことができるかといったときに、自然公園法のこういう根拠で、ライチョウがいるような、そういう地域だから持ち込まないようにすべきなのですと言うことができるようにすべきではないかなと思います。
 2番目に「自然公園を深い自然体験・環境教育の場とする」という部分ですけれども、自然公園の公園計画の中には、保護計画、利用計画というのがあるわけです。そして、利用計画は施設整備計画と利用規制計画、マイカー規制のような計画、それから施設整備計画はビジターセンターを建てるとか、そういう計画なのですけれども、そういったものとは別に、あるいは利用計画をもうちょっと手直しして、教育サービス計画というのをもっと積極的にレンジャーの人、あるいは自然解説員の人を置いて、どういうすばらしい体験を提供していくかと、そういう計画を積極的に書いていくことも必要なのではないかと思います。
 それから、今まではオーバーユース問題というのは、マイカー規制のような、かなり高密度での規制を考えていました。ですけれども、今やもうそういう時期は去ったのではないか。むしろ、もうちょっとすばらしい自然体験ができる密度に保つという、そういう方法を何か考える時期に来ているのではないかと思います。
 これは、昨年の7月20日に日光国立公園の尾瀬地区、至仏山の山頂ですけれども、私が夏休みに入った最初の休みの日ですね。海の日に行ってみました。そうすると、最初歩き始めたときは、70年代から比べたら随分人は少ないなと思っていたのですけれども、やはり山頂に行きますと、50人ぐらい超えるという状態。100人を超えると、小至仏の方まで全部お弁当を広げる人がいっぱいで、もう道を外れてハイマツの間でお弁当を食べているというような状況になっています。
 次の写真。実は尾瀬は年間50万人、96年のときが65万人という年間の入山者数でしたから、今は30万人ぐらい減っているのですね。だんだん減ってくる傾向にあります。ですから、以前の非常に混んでいる尾瀬をご存じの方からすれば、今はすごくすいているという感じはすると思います。ただし、ごらんになっているように、ある一定の時期、それから一定の場所、特定の場所では非常に混んでいるというのは相変わらずなんですね。やはりミズバショウのシーズンでは1日で2万人とか、そういった数がございます。
 入山者の適正化委員会というのができまして、そこで1日1万人以上を超える日はピークカットをするというような、そういう方針が出されたのですけれども、もう随分少なくなってきてしまったので、そういう規制はやらなくていいのではないかとか、あるいは、今まで尾瀬の中でふろなしデーというのをやっておりました。実際上、これは排水施設ができましたので、人によっては、温かい水は流し続けた方がその施設にとってはいいんだと言う人もいます。ですけれども、ラマダンではないですけれども、こんな山の中でそういうぜいたくなおふろに入れるなんていうのはできない日があって、「なるほど、ここは山の中だな」と感じる日が月に1回ぐらいあったっていいと思うのですよね。でも、そういうものもやめる方向になってきております。
 これからのことなのですけれども、多分2つの方向性が考えられると思うのですね。1つは、人も減ってきたし高齢化してきたので、その利用者に合わせてなるべく便利にしていくと、そういう方向性。それからもう一つは、この機会にもっとすばらしい自然体験ができるような、そこで例えば今は尾瀬財団というところが自然解説員を、山の鼻と、それから尾瀬沼のビジターセンターに置いて自然解説活動をしていますけれども、山小屋でも例えばそういうサービス、そういったところが生き残っていく。そういう道もあると思うのです。ですから、今、非常にいい時期に来ておりまして、何とか地元では、どこでも観光客をふやそうと思っていると思います。そのときに、すごくすばらしい便利な、都会と同じようなものを提供してふやそうというのか、それとも都会では味わえないすばらしい体験を提供してふやそうというのか、そこの岐路に立っていると思うのですね。そういう意味で、私は、後者の方をやっていく。それには環境省がリーダーシップをとって、次の具体的な提言とありますけれども、利用計画の中に教育サービスを中心とした計画を入れていただきたい。
 それから、人が非常に大事ですので、自然公園内の教育サービス活動を中心とした新たな雇用の機会をふやしていくということが非常に重要です。
 それから、先ほどちょっとお話をしましたけれども、例えば上高地なんかだったら、車が多過ぎて、駐車場に入るのに6時間も待つとか、これはもう人間の我慢の限界を超えているレベルを何とかしていたのが今までの状況ですね。でも、それを乗り越えると、今度は便利になってしまうので、どんどんまた入ってしまうのですね。それでいいのか。そうじゃなくて、もう少し素晴らしい自然体験ができるような低密度の規制と言うか、誘導と言うか、そういうことを考える時期に来ているのではないかと思います。
 そして、3番目として「自然公園におけるパートナーシップを推進する」。ここは、私は一番時間をとって話さなきゃいけないんですけれども、随分時間がたってしまいました。日本の自然公園は、アメリカの営造物の公園と違って地域制の公園だというので、私も実は日本自然保護協会の職員になりましたときに、5年間、高尾山の山頂で国定公園のビジターセンターの自然解説員をしていたのですけれども、たくさんボランティアの方が来られます。アメリカだったらお客さんという立場で来るようなたくさんの方が、ここでは私たちも主役だと。そういった自然公園管理、あるいは自然観察指導などにかかわっていくという、そういう中に求められているものは、非常に大事な日本の自然公園の特性かと思うのです。そういった中で、日本の自然公園としては、今パブリック・コメントを求めるようになってきておりますけれども、例えば公園計画とか管理計画、こういったものを少しずつ国民の参加によって決めていくような方向性に持っていく。
 それから、次に、自然公園の将来ビジョンとか、それから、新たな発想、自然を残す形での地域経済システム、こういったものについて、公園内の住民との合意形成を求めていくということも大事だと思います。
 それでパートナーシップ団体のことなのですけれども、最初1980年に、環境省の管理官、レンジャーの方を助けて自然解説活動とかごみ清掃活動などを行うサブレンジャーを派遣することをやりまして、85年ぐらいからは自然体験活動推進事業というので、環境省自体がそういう養成を行って、パークボランティアというシステムが出てきました。今、 2,000人ぐらいの方が活動していると思うのですけれども、さらにもっといろいろな団体が、実は自然公園にはかかわっています。
 これは1つの例として。早池峰国定公園の山頂に山小屋がありまして、そこにトイレがあるのです。トイレに穴があいていまして、尿が流れ出していると思うのですけれども、下の方で大腸菌が検出された。さてどうしようか。県としては、最初は、そこはもう都会と同じような立派なトイレにしようと思っていたのですけれども、そういうふうにしてしまえば、周り中高山植物ですから、自然破壊の問題もありますし、便利になればなったで、それに合わせた人数が登ってしまう。踏みつけの問題もあるというので、随分地元の自然保護団体の人たちも交えた懇談会、早池峰保全懇談会というのをつくりまして昨年まで検討してきました。その結果として、とりあえず10年はそういったものをつくるのは延期して、その間に対策を立てていく。その間、トイレの持ち帰りですね。ごみが持ち帰れるのだから、自分がしたものも持ち帰ろうというので、最初、トイレをふもとでなるべく済ませるということ。それから携帯用のトイレも随分普及しました。そういったことで、なるべく大規模回収でないようにしよう。そして、さらにどうしても残っている部分については、一生懸命このボランティアの方たちがし尿を担ぎおろし作業をしました。私も参加しました。上にしょっているのは食料ではなくて、あの缶の中に、実はトイレからくみ出したものが入っているのです。そういった活動をしてまで何とか守ろうという人がたくさんいるわけですね。ですから、こういった団体。
 あと、そのほかには、例えば中部山岳国立公園の八方尾根などですと、白馬自然の会の人たちがモニタリングを行っています。そこはスキー場ではないのですけれども、そこをスキーで滑降するということについての影響を調査するという、そういう活動をしていらっしゃいます。それから小笠原では、先ほど申し上げましたような野生生物研究会の方たちが移入種の駆除、それから、南島のオーバーユースの調査をするとか、それから阿蘇くじゅう国立公園では、大分県の自然観察指導員の方たちが火入れをして草地を管理する。それから、サクラソウの時期には、盗まれないように監視をするとか、そういう活動をしている人たちがたくさんいらっしゃるわけです。こういった団体の人たちとのパートナーシップというのが非常に大事だと思いますので、私は次に、環境省からも具体的に出ております、自然公園内において生物多様性保全、景観保全に協力する地権者への優遇制度、これも大賛成ですし、それからもう一つ、自然公園内においてNPO活動、教育活動とか調査活動、清掃、景観維持、それから外来種対策、こういったいろいろな幅広い活動を自然公園の管理団体として認定して認知をすると、こういうことも非常に大事なことだと思います。私は、これは大賛成でございます。、
 最後に2つだけ、こういったものをバックアップするには、どうしても人と金というのが大事ですので、提言4としては人材配置。環境省の職員もふやして、大事なところにはもっとふやすということも非常に大事だと思います。それと同時に、環境省の職員以外にも、例えば知床でしたらヒグマの問題がありますので、ヒグマの専門家の方がいらっしゃるわけですね。そういった専門性を持った職員が配置されることが非常に大事です。
 それから、サービス活動だと、そこまで専門性はなくても非常に熱意を持った若者。やっぱり若者がこういった場で働ける、そういう世の中というのは非常に明るい方向性だと思うのですけれども、今、若者がみんなフリーターとか、職場がなかなかないというような、そういう状態で暗い世の中を、何か自然公園を使ってもっと明るくすべきではないか。
 それから最後に、「とはいってもお金がかかるじゃないか。」それをどうしたらいいのかということになります。それに対しては、先ほど受益者負担というお話もありました。加藤先生のおっしゃったような何千円というお金でなくても、数百円ずついただいても、そういった予算に充てられるという事例がございます。午来町長さんはおっしゃらなかったのですけれども、斜里町の山中さんの試算だと、今、斜里町で 7,000万円ぐらい管理費用を出しているそうですね。それから環境省と北海道で 1,000万ぐらいで、 8,000万ぐらい。それから、さらに、それをもっとレベルアップしようとしたら、職員を倍ぐらいにして、それから道路の管理費まで全部入れたとしても3億 8,000万。4億円ぐらいあれば1年間賄える。そうすると、 200万人の方がいらっしゃるということなので、1人 200円いただけば、それはもうできるんだそうですね。そういうような試算もあります。そういったものを実現するのはなかなか簡単ではないかもしれませんけれども、国民の理解を得ながら、そういった方向性も考えていく必要がある。
 そして、先ほどヨセミテの話も出ましたけれども、私、ヨセミテも行きました。ヨセミテは自然史協会とか、その公園ごとに財団がございます。知床だったら自然トピア知床財団、それから尾瀬だったら尾瀬財団というような、そういうものができていますので、そういった地域の財団がそういう教育活動をしていく。それに対して、参加者が費用負担したものが国に行ってしまうのではなくて、その地域の団体に行くということが非常に重要だと思いますし、ヨセミテは、例えばデルモンテとか、ああいう地域の会社が寄附するというような、そういうのも随分多いのですね。そういったことが受け皿となるようなシステムをつくっていくというようなことも非常に大事ではないかなと思います。
 済みません。時間が大分超過してしまいまして失礼いたしました。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 大分時間が過ぎておりますけれども、ご質問などありましたら、ひとつ手短にお願いをいたします。
 岡島委員。
岡島委員  吉田さんの意見は全面的に賛成なのですけれども、特に教育サービス計画などはぜひやっていただきたいと思います。後ほど、あとこちらの方での議論もあろうかと思いますけれども、その中で1点だけ、吉田さんの文章の中に深い自然教育とありましたね。この「深い」というのは、何か意味があるのでしょうかということなのですけれども。
吉田オブザーバー  環境省とかではというか、環境基本計画とかでは「人と自然との豊かなふれあい」というので使われているので、同じ意味と思っていただいてもいいと思うのです。自然体験の中には、比較的自然環境に影響の大きなものもあります。その人はいい自然体験だと思っていても、例えばジェットスキーだとか、そういったもので野生生物なのかに大きな影響が出るとか、そういったものも自然体験と思っていらっしゃる方もあるので、自然に影響の少ない、かつほかでは得られないような体験、これを一応深い自然体験と、そういうふうに言っております。
岡島委員  わかりました。
渡辺委員長  いかがでしょうか。
 これで4人のオブザーバーの方からのご報告の時間を終えたいと思います。
 ここで10分ほど休憩をとって、25分から審議会の再開をしたいと思います。よろしくお願いをいたします。
 4人の皆さん、大変ありがとうございました。

午後 3時14分休憩
午後 3時25分再開

渡辺委員長  委員の皆様、会議を再開したいと思いますので、お席にお着きをいただきたいと思います。
 それでは、先ほどのヒアリングに続きまして、小委員会を再開いたします。
 まず、お手元に配付されております自然公園のあり方検討会、私どもの検討会の中間答申骨子案につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。
国立公園課長  本日、2回目の小委員会ということでございますけれども、昨年の12月10日に部会を開催し、小委員会を設置させていただいて、12月18日に小委員会で第1回目の検討をいただいたところでございます。
 今回、第2回目の小委員会というところでございまして、先ほどからヒアリングを聞いていただいたところでございますが、この後、早速もう中間答申案の検討ということで、大変急いだ日程で恐縮でございますけれども、次回、1月29日の小委員会で最終的な答申案の審議をいただいて、それがまとまりましたら、自然環境部会に諮っていただき、部会として決定をいただくと、そういうスケジュールを考えているところでございます。
 そういうことで、前回の小委員会と本日のヒアリングの内容を踏まえまして、事務局の方で中間答申案の骨子を準備しておりますので、それにつきましてご審議をいただきたいというところでございます。
 説明につきましては、渋谷室長の方からさせていただきます。
自然ふれあい
推進室長
 ただいまご紹介がありました、自然公園法の改正準備室におります渋谷と申します。よろしくお願いいたします。座って説明させていただきます。
 お手元の骨子案をごらんいただきたいと思いますけれども、これまでの部会及び小委員会におきまして、自然公園のあり方について、現在自然公園の中で問題になっており、早期に対応を図る必要がある事項などにつきまして、慎重なご審議をいただいているところでございます。これまでのご審議の内容などを取りまとめまして、中間答申の骨子案を事務局として作成してみました。
 全体の構成といたしましては、1「はじめに」、2「生物多様性等の保全の観点から検討した自然公園の課題」、3として「生物多様性保全等の観点から緊急に措置すべき事項」、4といたしまして「総合的に検討すべき課題」という4部構成としてみました。
 まず、1の「はじめに」では、これまでの検討経緯、背景を記述することとし、2の「多様性の保全の観点から検討した自然公園の課題」につきましては、風景の保護の観点に加えまして、生物多様性等の保全の観点から、おおむね3つの分野に課題を整理し、それぞれ盛り込むべき内容を記述してみております。3の「生物多様性等の保全の観点から緊急に措置すべき事項」につきましては、2の課題の中から特に緊急に対応すべき事項について取りまとめております。次に、4の「総合的に検討すべき課題」につきましては、これまでのご審議の中で、今後さらに検討すべき事項に関するご意見が多々出されておりますので、こういったご意見を踏まえまして、今後の総合的に検討すべき自然公園のあり方についての課題を記述するという構成にしております。
 それでは、まず1の「はじめに」についてご説明いたします。
 「はじめに」は、いわゆる前文に当たる部分でございますけれども、まず初めのフレーズといたしまして、平成13年11月16日に環境大臣から諮問のあった「自然公園のあり方」につきましては、中央環境審議会の自然環境部会の中に平成13年12月10日、自然公園のあり方小委員会を設置して、鋭意審議を重ねているところであるというところでございます。
 次に、自然公園は、昭和9年に国立公園が指定されて以来、日本のすぐれた自然風景の保護と利用の推進に大きな役割を果たしてきた制度ではございますけれども、近年の国民の自然に対する意識の変化等に伴って、個々の概念は、従来からの見た目の風景の保護に加えまして、生態系の保全、あるいは野生生物の保護、生物多様性の保全といった分野へと拡大しつつあること、この文章ではこれらを含めて、これから「生物多様性等の保全」というふうに書かせていただきたいと思っております。また、利用についても、単なる行楽的なものから、より深い自然とのふれあいを要求するものへと変化しつつあること。これらに伴いまして、国民の自然公園に対する期待も膨らみ、より重層的なものとなっていることから、自然公園の担うべき役割はますます広がりつつあることなど記述したらどうかと思います。
 これらの動きを反映いたしまして、平成13年12月11日には、政府の総合規制改革会議によりまして「規制改革の推進に関する第1次答申」が行われ、平成13年度中に「新生物多様性国家戦略」を策定すること。さらに、自然公園を生物多様性保全の屋台骨として積極的に活用するために、生態系の保全と野生生物保護の機能を自然公園法に位置づけるべきとされたこと。また、13年度末を目途として「新生物多様性国家戦略」を策定するために、現在生物多様性国家戦略小委員会が開催されておりますが、このご審議の中でも、自然公園について従来からの風景の視点に加えまして、生物多様性等の視点からの役割が期待されているということなどを記述いたしたいと考えております。
 次に、「小委員会においては」のフレーズでございますが、まず、自然公園の制度につきまして、これまでに過去の自然環境保全審議会におきましてご審議いただいてきた内容等について概観いたしたいと思います。具体的には、平成元年に自然公園の利用のあり方、平成7年に自然公園等における自然とのふれあいの確保の方策についてなど、主に利用の側面から自然公園のあり方についてご審議いただき、ご答申をいただいてまいりましたけれども、保護と利用全般にわたる検討につきましては、昭和40年の自然公園制度の基本的方策に関する答申まで遡るといったことを記述したいというふうに考えております。
 次に、今般、これまでの自然公園のあり方小委員会におけるご審議の中で、自然公園の現況を概観し、現在自然公園が抱える課題の大要を把握していただいてきたところでございますけれども、自然公園の多岐にわたる課題を報告し、長期的視野に立った今後の自然公園のあり方を示すためには、今後の国民生活、あるいは社会経済状況、自然環境などの多元的な指標をもとに自然公園のあるべき姿を描くとともに、具体的な提案をする必要があり、そのためには、さらに十分な議論を尽くす必要があるなどを記述してはどうかと考えております。
 このように、自然公園のあり方につきましては多くの課題があって、さらに十分な議論を尽くす必要があるということではございますけれども、一方で、自然公園内におきましては、利用志向の変化や、先ほどもお話がありましたシーカヤックといった新しい道具類の導入などによりまして、これまで利用されてこなかった原生的な自然地域の利用が行われるようになり、また、これらの地域における原生的な雰囲気の喪失、あるいは自然環境への影響が顕在化しつつあるという状況があります。また一方、自然公園などの二次草原、あるいは二次林などの人為的な維持管理を必要とする自然風景地、以下、この文章におきましては、これらを総称しまして「二次的自然風景地」と呼ばせていただきたいと思っておりますけれども、これらの二次的自然風景地が社会経済状況の変化や、老齢化といった農山村の人口構造の変化、さまざまな要因によりまして、従前から行われてきた二次管理が困難となってきた。それに伴って自然環境が変質しつつあることによりまして、先ほど石井先生からもお話がありましたけれども、草原性の草花の減少、それに伴って草原性のチョウ類が減少するといった生物多様性の保全に支障を来す問題が発生しており、近々に対処することが必要となっている。
 これらのことから、審議会といたしまして、自然公園のあり方について引き続き総合的な検討を進めることとしていただきますけれども、自然公園における生物多様性保全等の観点から、当面の措置すべき事項も多々あるために、これら緊急に措置すべき事項について、中間答申として取りまとめていただくという旨を記述していただきたいと考えています。
 次に、「生物多様性等の保全の観点から検討した自然公園の課題」についてでございます。
 これまで小委員会でご審議いただきました、現在自然公園で発生している課題につきまして、自然公園の保護及び利用の推進といった自然公園法上の目的、あるいは生物多様性等の保全の観点から、自然公園の保護管理機能の強化、自然公園の適正利用の推進、多様な主体のパートナーシップによる管理推進の、おおむね3つの分野に整理いたしまして、それらについて課題の内容を記述してはどうかと考えております。
 まず、1の「自然公園の保護管理機能の強化の面」でございます。自然公園は、脊梁山脈を中心といたしまして、標高の高い奥山の自然植生や、シカ、クマ、サルといった大型哺乳類の分布域、あるいは高山チョウなど、山岳部に特有の動植物の分布域をよくカバーしております。これらの自然公園の核心とも言うべき地域におきましては、国土における生物多様性の骨格的な部分及びいわば屋台骨としての役割が期待されております。しかしながら、近年、国民の自然志向の変化などによりまして、例えば知床岬など、従来ほとんど利用者が立ち入ることのなかった原生的な自然風景地を訪れる利用者が増加しつつあって、そのような場所における原生的な雰囲気が失われつつあるほか、植物の踏み荒らしなどによる風致景観上の支障、あるいはヒグマなど野生生物の生息環境への影響など、生物多様性等の保全上の支障が生じている。このために、これらの地域における原生的な雰囲気の維持、あるいは利用圧の高まりによる動植物への影響など、生物多様性等の保全に支障を与えないような適正な利用を推進するために、利用者の人数を調整するなどの利用調整を行うことが必要となっていること。
 次に、自然公園全般にわたる問題といたしまして、国立・国定公園の特別地域では、従前から工作物の新築、あるいは土地の形状変更、木竹の伐採、あるいは高山植物などの採取の規制が行われておりまして、風致景観上の保護を図ることによりまして、野生生物の生息環境などについても一定の役割を果たしてきたところであります。しかしながら、近年、自然公園の特別地域内で、先ほど石井先生からもお話がありましたけれども、減少傾向にある高山チョウなどについて規制の手段がないということで、捕獲によって危険な状態にあるといった生物多様性の保全上の影響が及びつつある。
 また、自然公園は人里から離れているところが多くて、人目につきにくい場所が多いといったことから、やはり現在特別地域内で規制手段がない廃土石とか、廃車とか、あるいはごみの投棄、野積みなどが行われることが多く、風致景観上の支障が生じているほか、これらによって直接的に動植物生息地が失われたり分断したりといった、生物多様性などの保全上の問題が懸念されるということもあります。さらに、湿原とか高山帯のお花畑などの極めて脆弱な自然環境につきましては、人が立ち入ることによって植生などが直接的に破壊されるといった問題が生じております。これらの問題に適切に対応するとともに、今後、新たに生物多様性等に対して影響を及ぼすような行為、生じた際にも迅速に対応できるような現行制度の改定を図る必要があるのではないかという旨を記述いたしたいと思います。
 一方で、自然公園内の二次的自然風景地につきましては、従来からの風景の保護に加えまして、先ほどチョウのお話もありましたけれども、生物多様性等の保全の観点からの重要性が増大している。これらの二次的自然風景地につきましては、これまで採草とか火入れなどを含めた農林業など、人為的な営みによって維持されてきてまいりましたことから、自然公園の中でも第3種特別地域、普通地域といった比較的規制の緩い地域であること。また、繰り返しになりますけれども、これらの二次的自然風景地の保全は、人為による管理が行われることが前提となっておりますけれども、近年の社会状況の変化、農山村の人口変化などによって適切な維持管理が行われなくなったことによって、良好な自然風景地として、また、草原性のチョウの生息環境などとして、十分な維持を図ることが困難になりつつあるということであります。
 自然公園は、従来、許認可などによる規制の手法による管理が行われておりますけれども、こうした二次的自然風景地を維持管理して保全するためには、これまでのような規制手法ではもはや限界があって、基本的な管理を継続して行うために、新たな制度の創設が必要ではないかといったことを記述したらどうかと思っております。
 次に、自然再生事業のところですけれども、全国各地には、さまざまな理由によって自然が大きく改変され、本来の自然生態系ではなくなっている場所が存在いたします。これらの自然生態系を蘇らせるために、順応的な自然生態系管理の手法を取り入れて、積極的に自然を再生する公共事業、すなわち自然再生型公共事業を推進することが必要であるといった提言が、環の国会議によりまして平成13年7月10日に報告されております。自然公園におきましても、既に他の土地利用などの要請によりまして、やむなく自然改変が行われた場所が存在しておりますことから、風致景観や生物多様性等の保全上重要な場所については、これらの環の国会議の提言などに基づきまして、順応的管理手法を取り入れた積極的な自然の復元、再生を進める必要があるということを記述してはどうかと思っております。
 次に、自然公園における保護管理機能の実効性の確保でございますけれども、その基盤となる生物多様性の保全、管理のために必要な気象、あるいは先ほどチョウのところ、あるいは米国の公園のお話でもありましたけれども、動植物の生態等に関する科学的情報の収集とか観測体制の整備、あるいは調査研究の推進、研究者等との連携を図ること、あるいは保護管理体制の強化、拡充を図る必要があるということを記述してはどうかというふうに考えております。
 次に、2の自然公園の適正利用の推進でございます。
 最初のフレーズですが、近年、国民の利用志向の高まりやシーカヤックなど道具類の導入によって、これまで立ち入らなかったようなところに比較的容易に達することができるようになったということで、これらの地域への利用の圧力が増大しつつあります。こうした地域の利用は、適切なルール、あるいはコントロールのもとに行われなければ、例えば原生的な雰囲気が失われるといったことや、生物多様性の保全上に支障を及ぼすおそれがありますことから、適切な利用のルールの徹底、あるいは管理者によるコントロールによる自然公園にふさわしい利用の推進が必要となります。これらの利用のコントロールは、利用者に対し、より深い自然とのふれあい体験を提供するということとともに、前の方で述べましたように、従来利用者が原生的な地域などへの利用圧の高まりによる動植物への影響といったさまざまな自然環境への影響を回避するといった利用の面、あるいは生物多様性等の保全の面からも有効であることといったことを記述したいと思います。
 施設整備のところでございますが、山岳地において、中高年を中心とする登山利用が増大しつつある。自然とのふれあいの観点からは非常に望ましいことではありますけれども、百名山など多くの山岳地では、過剰な利用によりまして登山道の荒廃、あるいはトイレの整備の遅れなどから生ずる自然環境への影響が発生しているということで、これらの登山道や山岳トイレの整備促進が必要になっております。
 一方で、これらの登山道、あるいは公衆便所をはじめとする自然公園の施設整備には、主に公共事業でございますけれども、自然公園等事業を通して行われておりますが、自然への影響が最小になるような整備方法、あるいは方向が十分に確立されていないといったことがあるために、利用施設の整備を行うことによって、かえって自然を損ねてしまうといった状況も一部で生じておりますことから、生物多様性の保全に十分配慮した、自然公園にふさわしい施設の整備方法などを早急に検討する必要があるのではないかといったことを記述してはどうかと考えております。
 次に、3の多様な主体のパートナーシップによる管理の推進でございます。
 先ほど斜里町長さんからもお話がございましたけれども、我が国の自然公園は、ご承知のとおり、地域制の自然公園制度をとっておりますことから、その管理に当たりましては、国の関係機関、都道府県、市町村、土地所有者、公園事業者、NGO、住民の方々など、さまざまな主体の適正な役割分担と協力、連携が必要となっております。また、国民の自然公園へのさまざまな期待とか要請の高まりに対応いたしました自然風景地の保護管理と適正な利用の両面から、より充実した細かい管理が必要となっております。このようなことから、多様な主体の協力、あるいは連携のもとで、法的規制だけではなくて、施設の充実とか、生物多様性の保全上重要な役割を果たしている自然風景地の再生、維持管理、あるいは野生生物の保護管理、情報提供といった多様な分野での管理を展開していく必要があるという状況があります。
 これらの1つの試みといたしまして、今年度から国立公園におきまして、自然や地域の社会状況などに熟知した地域の住民の方々などを雇用いたしまして、海岸とか海中などの清掃、あるいは二次的草原の管理、登山道の維持管理などを実施することによって公園管理の充実を図るグリーンワーカー事業などを実施しつつあることを加えさせていただければと思っております。
 ただ、しかしながら、現状において、全体として見たとき、法的規制以外の自然公園の管理の分野で、各主体の担うべき役割について必ずしも明確ではないということ。また、自然公園の管理に参加を促す仕組みが不十分であることなどから、これらの多様な主体の間での有機的な連携が必ずしも十分に図られていないという状況にあり、これら、各主体の連携のあり方について早急に検討する必要があるのではないかということ。
 また、先ほど吉田さんの方からもお話がありましたけれども、自然公園の公園計画、あるいは施設整備計画の策定に当たって、地元住民のみならず国民のすべてがその情報を容易に入手でき、広く意見を述べることができる仕組みなど、参加型の公園づくりをさらに進める必要があるのではないかということを述べまして、これらの課題につきましては、その多くが公園の管理全体にかかわる課題で、今後さらに検討が必要であることを記述してはどうかと考えております。
 次に、特に早急に対策を講ずるべき事項としてでございますが、急速に変貌しつつある二次的自然風景地の保全対策について述べることとします。近年、生物多様性の保全の観点からも二次的自然風景地の重要性がクローズアップされてきておりますが、先ほど述べましたように、これらの二次的自然風景地を所有する民間の土地所有者の方々は、高齢化とか過疎化の進展、あるいは農林業の構造変化などによりまして、従来からの土地の管理を十分に行うことができなくなってきている。その結果として、二次的自然風景地が急速に変貌しつつあるため、早急に保全対策を実施する必要がある。その一方、先ほど吉田さんからもお話がありましたけれども、都市近郊周辺を中心として、そのような二次的自然風景地の保全を図ろうというようなNGOなどの気運の高まりが見られます。
 こうした状況に対応いたしまして、自然公園内の二次的自然風景地の維持管理を行うためには、民間の土地所有者の方々に自然風景地の保護に積極的に協力していただくということと、保全に対する意欲のあるNGOなどの連携を図っていくことが、土地所有者だけでは困難な二次的自然風景地の保全管理の推進に有効であると考えられますことから、これらの連携を推進する仕組みづくりを行うことが必要であるといったこと。また、二次的自然風景地における保全管理活動を推進するためには、土地の管理者、所有者が安心して管理を任せることができる団体が必要になりますけれども、このために、国などが、これらの団体が保全管理を十分に行うことができる能力を持っているというような団体であることを認める仕組みをあわせて整備することによって促進を図るといったことを記述してはどうかというふうに考えております。
 以上、3つの課題を整理いたしましたけれども、その中で、特に自然公園におきまして生物多様性等の保全上の支障を来している問題が現に存在する、また一刻も早く手当てが必要だということもございます。このため、総合的なあり方についての課題の検討につきましては、今後ともさらに進めるということにしていただきますけれども、当面、次のような事項につきまして、緊急に措置すべき事項として提案をしていただきたいというふうに思っております。
 初めに(1)でございますが、これまで利用者がほとんど立ち入らなかった原生的な自然風景地の利用による、原生的雰囲気、あるいは動植物への影響などを回避する方策として、現時点でも、場所によっては土地所有者を含む地域の申し合わせなどによりまして立ち入りを制限している例もございますけれども、法的規制がないことから実効性等に問題が生じております。また、国立公園の趣旨にかんがみたときに、国立公園の最もすぐれた自然風景地を全く利用に供しないということは適当ではないということで、一定のルールとコントロールのもとに持続的な利用を図ることが適当であると考えられます。このため、当該地の生物多様性等の保全への支障を回避するといったことから、利用者数の調整などによる利用の調整を行える地区を設ける制度を自然公園に規定する必要があるのではないかということを記述していただきたい。
 (2)といたしまして、高山チョウなど、減少傾向にあるチョウなど、重要な動物が特別地域内におきまして捕獲されることによりまして、風致景観とか、あるいは生物の多様性等に影響を及ぼしている現状があるということがありますので、特別地域内において特定の重要種について捕獲を規制できる制度を自然公園法に規定する。また、廃土石、廃棄物などによる物の集積、貯蔵、あるいは湿原や高山植物群落への立ち入りによって、野生生物の生息地の喪失、あるいは植生の破壊など、生物多様性等の保全上支障が生じないようにこれらの行為を規制する制度。また、今後新たに生物多様性等に対して影響を及ぼす行為が生じた際に、迅速に対応できるような制度を自然公園法の中に規定する必要があるということ。
 (3)といたしまして、二次的自然風景地の保全を図るために、土地所有者が自然風景地の保護に協力していただくとともに、自然風景地の保全に意欲あるNGOとの連携によりまして、保全管理を推進することが有効であると考えられますことから、これらを推進するための仕組みづくりを行うことが必要であること。このために、土地所有者と国、地方自治体、NGOなどの間で協定を結びまして、維持管理等を行う仕組みを自然公園法に規定することが必要である。
 また、さらに、これらの自然風景地の保全に意欲のあるNGOの活動を推進するため、NGOの持っております自然公園の管理業務に係る能力などを明確にして、土地所有者などの理解が得やすくなるような仕組み、あるいは規定をあわせて設けることが必要であるといったことを記述していただきたい。
 また、これらの仕組みづくりを促進するために、二次的自然風景地の保全管理を行うという観点で、土地所有者等の負担を軽減するための税制上の特例措置、あるいは二次的自然風景地の保全管理を行うNGOなどを支援するためのグリーンワーカー制度の拡充、こういったものを図る必要があるのではないかといったことを記述していただければと思います。
 (4)につきましては、自然再生事業ですけれども、かつて何らかの目的で改変された土地であって、生態系、生物多様性等の保全上重要であって、社会経済上の変化によって復元とか再生が可能となっている場所について、公共事業により湿原の復元などを図るなど、自然を復元、再生するための事業を積極的に実施することができるよう、自然再生事業を公園事業として位置づける必要があるのではないかという旨を記述していただきたい。
 (5)につきましては、自然公園内において多様性の保全の観点等を踏まえました公園の管理の充実を図るために、これまで以上に科学的、客観的自然環境情報が不可欠になります。そのために、基礎的、客観的な自然環境情報の収集、あるいは提供を行うための施設を全国の自然公園に設置することが必要であって、これらの施設を公園事業として位置づける必要がある旨を記述していただきたいと思います。
 (6)番の施設整備についてですが、山岳地における過剰利用による登山道の荒廃、あるいはトイレ整備のおくれなどから発生する生物多様性等の保全への支障を防止するために、登山道、あるいは山岳トイレの整備促進を図る必要があるということで、これらのための補助金等による助成措置の拡充を図る必要がある。また一方で、登山道などの自然公園の施設によりまして生物多様性などの保全に支障が生ずることのないように、自然公園にふさわしい施設のあり方、あるいは整備方法を早急に検討する必要があることを記述していただきたいと思います。
 最後になりますけれども、「総合的に検討すべき課題」ということで、今後の自然公園のあり方の検討に当たりましては、自然公園の持つ機能など、基本的な考え方を初めといたしまして、自然公園の保護、適正な利用のあり方、生物多様性等への対応、あるいは環境教育、研究者との連携のあり方など、自然公園に係る課題は多く、今後とも引き続きこれらの課題について十分審議する必要があることなどを記述してはと考えております。
 以上が中間答申の骨子と、その肉づけの部分を若干加えさせていただきました。
 なお、ちょっとお時間が長くなりますけれども、関連いたしますので、若干のお時間をいただきまして、現在事務局で検討を進めております自然公園法の一部改正案につきましてご説明させていただければと思います。
 お手元の資料、参考資料をごらんいただきたいと思います。「自然公園法の改正について」という1枚目の資料でございますが、これは改正の全体像を簡単に概略で示したものでございます。
 従来からの自然公園の風景保護の観点に加えまして、生物多様性の保全を図るという要請の観点から自然公園の現状を見た場合に、利用の増大によります影響、野生動物の採取などの問題ということが1つ。もう一つは、二次的自然の衰退、あるいは施設管理の管理面からの問題というのを挙げております。これらの課題に対しまして、枠組みを大きく4つに分けておりますけれども、利用調整地区の制度、あるいは、いわゆる生態系の保全対策の充実として、動物の捕獲、あるいは土石・廃棄物の集積等の規制の内容、もう一つは、風景地保護協定と申しておりますけれども、NPOと土地所有者の間で結ぶ協定を風景地保護協定と呼んでおりますけれども、こういった制度。もう一つ、それを支える公園管理団体を指定するといったことが書かれております。
 詳しくは2ページ目からでございます。2ページをごらんいただきたいと思います。
 まず、利用調整地区の設置についてでございます。これは、これまでもお話ししておりますけれども、利用者の人数を調整いたしまして、将来にわたって自然景観などを維持し、持続的な利用を推進するために利用調整地区を設置しようとするものでございます。さまざまなご意見がございますけれども、現時点では、利用圧が高まって原生的な雰囲気が失われたり、生物の多様性等の維持が困難になりそうな場所を指定しようというふうに考えております。この具体的な仕組みといたしましては、審議会でご意見を伺った上で、公園計画に基づいて利用調整地区を指定しまして、利用者は、認定基準というものになりますけれども、人数とか期間を定めた認定基準に適合する人は認定を受けて立ち入ることができるような仕組みになります。また、現在のところ、その認定基準につきましては、大体この地区には1日何人ぐらい入れるといった人数、あるいは1日、あるいは何時間とかいった滞在日数、時間、こういった期間を定めることとしておりますけれども、その他、地区に応じて必要な事項が定められればいいのではないかなというふうに考えております。
 次に、3ページでございます。
 特別地域内の、行為規制の項目の拡充ということで、先ほど来何度も申し上げている内容でございますけれども、まず1つが土石等の物の集積ということで、土石、廃車、廃タイヤといったものが集積、あるいは貯蔵されることによりまして風致上の支障が生じていることを規制したいということでございます。
 もう一つは、指定動物の捕獲ということで、先ほどもお話がありましたけれども、高山チョウなどの捕獲規制などを想定しております。
 また、もう一つ、湿原その他への立ち入りというのがありまして、これはいわゆる高層湿原とかお花畑など、人の踏み込みによって回復不可能なダメージを与える極めて脆弱な自然環境などにつきまして、利用の調整ということでは対応できませんので、踏み込みそのものを規制するという枠組みを考えております。
 もう一つが、その他政令で定めるものというものがございます。これは、現時点では想定できない行為が発生した場合に、機動的に対応するようなことができないかということで考えていることでございまして、今考えられるのは、例えば特定の場所で特定の植物などを植栽とか播種したりするというようなこと。例えば高山で、本来そこにはない、生育していなかったコマクサなどを植えてしまうというようなことがこれに当たるのかなというようなことを想定しております。
 次、4ページをごらんいただきたいと思います。
 風景地保護協定の制度でございますが、これは、自然公園内の里山とか二次草原の保護を図るために、環境大臣、あるいは都道府県知事によって指定された団体と土地所有者が協定を結びまして、公園管理団体によって、土地所有者ではできなくなっている自然風景地の管理を行えないかという仕組みでございます。管理面、あるいは公園法上の特例措置、あるいは税制上の優遇措置などを加えまして、土地所有者の負担の軽減とか、あるいは管理する団体への何らかの支援というものができないかというふうに考えております。
 5ページが、この風景地保護協定を1つ支える制度でありますけれども、公園管理団体というもので、風景地保護協定の円滑な実施を図るとともに、これだけではなくて、公園管理施設の充実などもこの団体によって行われるような仕組みなのですけれども、こういった団体を指定することによって風景地保護協定とか管理が充実されるということを念頭に置いて団体制度をつくりたいというふうに考えております。
 以上、簡単ではございますけれども、資料の説明を終わらせていただきます。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 それでは、ご意見をちょうだいしたいのですが、初めに、この中間答申骨子の全体構成、ご説明で4部構成。「はじめに」というのは、私ども小委員会が設置をされた経緯なり、私どもが置かれている今の立場が書かれております。2番目は、私どもが検討しました自然公園の課題を幅広く記述をしよう。その中から緊急に措置すべき事項として拾い出すものを第3部に掲げる。残りはまた2月以降じっくり検討しましょうと、こういう構成になっているわけですが、この構成自身について何かご意見ございますでしょうか。
 岩槻委員。
岩槻委員  構成といいますか、全体の流れは、私はこれで非常に上手にまとめていただいていると思うのですけれども、やはりこういう流れになりますと、例えば今日、ヒアリングで意見を表明してくださった4人の方は、多少生ぬるいなんていう感じを持たれるのではないかと思うのですよね。それにもかかわらず、その人たちも、この手のことというのは一歩前進というのが大切なのだから、これでということで合意を得られると思うのです。
 それはやはりなぜかというと、一番後のところで、むしろこれから議論すべきことだというので環境教育だとか研究というようなことが書かれているのですけれども、こういうのは中間答申の形にはなじまないのでしょうかね。外国の国際会議では、しばしばリゾリューションで何々を考慮しとか、何々に配慮しとかいうのをまず頭に置いて、それからこういうことをリゾルートすると書きますよね。だから、初めのところに、例えば生物多様性の問題で正確な規格を立てようと思ったって、今は立てられるほどの知見がないのだということだとか、それから、例えば自然に対する楽しみ方というのは、これはやはり国民的な合意を得るためには、例えば自然を観賞しに行っておふろに入っているというのは、僕なんかはナンセンスな話だと思うのですけれども、そういうことを言ったって、やはり国民的な合意は得られないと思うのです。その意味では環境教育というのが、これは学校教育ではなしに、むしろ社会教育、生涯教育だと思うのですけれども、そういうことがまず必要だということを前提にしてこういうことを考えているということがあるので、むしろ初めのところに、そういうことにちょっと触れるような構成になった方が、皆さんの合意も得やすい。それから、ここで本当に考えていることも正確に反映することではないかと思うのですけれども、そういう構成ができないかどうかというのを、ちょっとご検討いただけたらと思うのですけれども。
渡辺委員長  ありがとうございました。
岩槻委員  余り変えると大変なことになりますから。例えば一番後のところにそういうコンシダリングですか、そういうことがちょっと入れば。
自然ふれあい
推進室長
 「はじめに」の1つは、これまでのご審議がまだ十分ではないので、できていないのかなというのが1つあったのがあるのですが、方法としては、最後の部分に、「このことから、総合的に」というフレーズのところに加えるようなことは検討すればよいかと思いますが。
渡辺委員長  そうですね。そこは非常に大きな抜本的な課題といいますか、解決すべき課題というか、それを少し丁寧に書き加える。
 ご指摘いただいたことは大変基本的なことですから、書き加えると。
 ほかの委員の方で、この「はじめに」のところに何か書き加えるべきことがありますでしょうか。大沢委員。
大沢委員  今のに関連して、やはり例えば林業基本法が森林林業基本法に改定されたというのも、同じように生物多様性の保全というようなことを林野庁が念頭に置いてやっていることですし、恐らく環境省のこれに関しても、そういう意味で、生物多様性という機能を新たに加えるという意味で、非常にこの時期に適切なアプローチではあると思うのですが、やはり環境省としてのこういう問題についての取り組み方というのをもうちょっと明確に書くべきではないかと思うのですね。いろいろな規制によって守ろうという意図はわかるのですが、そのときに守るべき対象は何なのかというのをきちんと把握するようなシステムが、今はやはり不完全だと思うのですよね。だから、いろいろな対策が大体後手後手になる。例えばマングースにしても、あそこまで例えばヤンバルに広がってしまった段階でそれを駆除するというのは大変な作業だと思うのですけれども、そういう問題にしても、やはり適切なモニタリングというか、生態系についての把握がある程度確保されていれば、そういう自然界で起こりつつある変動というのをきちんと把握できるわけですよね。
 例えば環境省では原生自然環境保全地域というのを、小林局長が若いころに大分頑張られて、継続的に10年ごとに調査をするというようなシステムをつくられ、そういうものについてはきちんとしているわけですが、ほかの、例えば林野庁の森林生態系保護地域とか、文化庁の天然記念物なのかについても、それ自体独自の調査のシステムというのは持っていないわけですよね。ここで新たに自然公園そのものに生物多様性保全という視点を盛り込むとすると、やはり自然公園でどういうことが問題になっているのか。人の利用によって問題が生じているというのですけれども、先ほどのいろいろな4人の方のご意見などを伺うと初めて具体的に見えてくるのです。そういうことについての環境省としての情報収集体制という、それが1の最後のあたりには入っているのですけれども、それがやはりもうちょっと中心にあって、その後で、例えば自然再生型事業の導入なんていうのもありえる。ただ、再生させるといったって、再生すべき自然というのは何なのかということが明確に把握されていなかったら、やはりある種の公共事業みたいになって、結局再生させようとしていながら、実際壊しているみたいなことも起こりかねない。そういう意味で、緑の国勢調査のようなああいうシステムと何かドッキングさせたような基礎的調査の必要性と、それを自然公園管理にも適用していくといったような、生物多様性というものについてのソフト面でのとらえ方というか、そういうものをもうちょっと明確にした上で、具体的にそういう規制が必要なのだと。利用圧が高まって、その結果として生物多様性がどういうふうに危機に瀕している。だから規制が必要なのだという、そういう筋道がやはり見えた方がいいんではないかなという印象を持っています。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 とりあえず、この4部構成で、私が整理したのは、1は経緯、2番目は、どういう課題があるかを大きな課題で抜けがないようにご議論をいただいたらどうか。3番目は、その中から急いでやるべきものを抜き出す。その整理についてのご意見をまずお伺いしたいのです。岩槻委員のお話も、「はじめに」のところに書くのがいいのか、この2番目の自然公園が抱えている課題を整理する中で書くのがいいのか、その点も含めてご意見をちょうだいしたいのです。今おっしゃられたことは、多分課題をどう書くか。これは骨子ですから、答申案はまたこれに肉がつきますね。事務局にそのときの参考にしていただいたらよろしいのでは。
 川名委員でしたか、手を挙げられたのは。
川名委員  ちょっと委員長の言われたのと違うかもしれません。やはり普通、私たち素人が考えるに、自然公園のあり方というのは、これを見ていますと、まず規制をしろというように感じられて、ちょっと抵抗があるのです。やはり自然公園というのは、自然を楽しむのがそのあり方ではないかということを、たとえ審議していなくても、それを最初に入れておいてくれないとちょっと反発があるので、入れておいてほしいというような気がします。
渡辺委員長  今おっしゃっていただいていることが審議そのものですから、どうぞおっしゃってください。
川名委員  そういうふうに思います。ですから、岩槻先生の言われた教育のことも、と最初思ったのですけれども、それがどこに入れるかというよりも、最初に自然公園のあり方、自然公園というのは自然を楽しむためのものだというようなことを大前提に入れていただかないと、素人にはちょっと近寄りがたいと思うのです。
 それからもう一つは、もしかすると構成ではないかもしれませんけれども、「はじめに」のところにいくつかポツポツがありますが、最後から2つ目のところ「一方で」というのは、これはどうもちょっと理解しにくい。前のことと同じことを言っていて、つまり具体的にはということではないかというような気がするのです。何か読んでいて、ここの「はじめに」がすっきり頭に入ってこないのは、つまり、この後の方の検討すべき課題だとか緊急にやることなんていうのは、全部この「一方で」に対応していることなのですよね。前のこととどういう関係なのか、私は……
渡辺委員長  済みません。途中ですが、ここは、その「一方で」のすぐ前に、十分審議を尽くすことの必要な課題があると。その次の「一方で」のポツは結びが大事なのではないでしょうか。
川名委員  「具体的には」とか、そんな感じですよね。何かこれがちょっと座りが悪くて、この「はじめに」がちょっと頭に入りにくい気がしました。
渡辺委員長  言い方が悪いかもしれませんが、十分に審議している暇のない、緊急に対応すべきことというのをどういう接続詞で結ぶかということだと思うのですね。
 どうぞ、皆さん。ほかに全体的なこと。
岡島委員  岩槻先生とほとんど同じなのですけれども、やはりあり方の検討会なので、初めに経過が入ってくるのはしようがないのかも知れないけれども、あるべき姿の一端ぐらいは出してもらわないとね。あるべき基本的スタンスですよね。環境省が考える、あるべき姿の基本的なことはちょっと出してもらって、そこでは私も利用とか、今、川名先生が言ったような楽しみとか、それから環境教育とか、そういったような部分もバッと書いてもらって。2行でも1行でもいいですけれども、そういう中で今回、この生物多様性の部分の、緊急性のものをまとめたと書いてもらわないとわかりにくいということが、川名さんのおっしゃっていることではないかと思うのですね。
 ですから、本来あり方検討会で審議中だから、そんなことは書けないというのは1つの議論かもしれないけれども、今まである条文というか、何のために国立公園をつくったのかというのを今まで書いてずっとやってきているわけだから、そこをもう一回なぞるというか、そのもっと前の段階でもいいけれども、何かきちんと書いておかないと、あり方検討会ではなくて、これは何か国家戦略のあれがあるから慌ててここだけ直すという印象を与えるので、やはりそこのところを岩槻先生もおっしゃったのではないかと思って、私もそういう感じがちょっとします。
渡辺委員長  それでは、自然公園、あるいは自然公園制度の目的とか持つべき機能とか大きな話を、今まで大体皆さん、コンセンサスが得られていることを「はじめに」の中に入れるという方向で、事務局でまとめていただけますか。
 それでは、2番目の、もう少し具体的な課題、非常に大事な課題で、ここから抜けているようなものがあればご指摘をいただきたいし、ここに掲げられていることで、これはちょっと違うのではないかというのがあれば、ご指摘をいただきたいと思います。
 立花委員。
立花委員  全体の話になるのか、「はじめに」というところであらかじめ断っておくことに入るのか、ちょっとわからないままに発言させていただきます。
 自然公園にしろ国立公園にしろ、ある地域に限られているわけですが、多分生物多様性という点から各種生物の関係を見ていきますときに、とても大事なのは、山間部から海までの間をつないでいる河川の問題というのはとても大きいと思うのです。恐らく自然公園という枠組みの中からは外れた部分での問題というのは、そこにたくさんあると思います。多分それは今回のこの自然公園のあり方という点からは外れるでしょうけれども、生物多様性の保全というような流れとの関係で、ここでいう自然公園のあり方と、その生物多様性の国家戦略を進めていく上での問題の中に、そういう枠組みの中から外れた地域でつながっている、連続していることについて、どういう扱いになっているかということは、どこかでやはり触れておく必要がないのでしょうかという質問です。
渡辺委員長  どうぞ。
自然環境計画課長  生物多様性を担当しております、計画課長の小野寺です。
 大沢委員の発言も立花委員の発言も、生物多様性の審議会、つまり具体的国家戦略の策定作業が同時並行で来ているものですからそのあたりからのものだと思います。その中では全体の生物多様性、日本国土における自然環境保全の話は、相当詳細に書くつもりでおります。それも、基本的な部分、各所の施策を除いた部分は、恐らく今晩ぐらいにはもう原案ができるというスケジュールになっています。お示しするのはちょっと後になると思いますが、国立公園課とも丁寧に議論をして、役割分担をはっきりわかるような形で、この審議会にも、次回の29日にお諮りできると思います。
 その中で、大沢委員のご指摘があったソフトの、特に基本的なデータをとるなり、研究なりをするという部分については、例えばモニタリングサイトを、今5カ所くらいをやっているにすぎないことを飛躍的にふやす方向で、具体的な数もできれば書き込みたいと今考えております。
 それから、立花委員の河川その他、都市域も含めた問題についても、単に書きおくということだけではなくて、多様性の保全にとってどういう意味があるかということを、具体的に書きたいと考えております。また国土交通省の河川局にとっての、多様性を背景にした具体的事業と関連させる。彼らもやる。考え方の根拠を示すということを、河川に限らず、関係するあらゆるものについては話をしながら、できるだけその中身を持つように、つまり関係しているところが一緒に多様性の保全という軸でやれるように書くべく、今最後の調整をしているところでございますので、もうしばらくお待ちください。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 生物多様性国家戦略の作業との線引きですね。余りダブらないように、こちらも与えられた課題になるべく忠実に沿っていった方が、二度手間にならないかなという気がいたします。
 ほかにいかがですか。何か自然公園が抱えている課題で、ここに抜けているようなものがありませんか。それから、書いてあるけれども、どうも少し方向性が違うというようなことがあれば、ご指摘をいただきたい。
 大沢委員。
大沢委員  私が先ほど申し上げたのは、一般的な意味での生物多様性の調査が大事だという意味ではなくて、自然公園の中に利用調整地区とか、それから、例えば自然再生型事業等を自然公園の中に導入していこうというようなときに、やはりそれぞれの自然公園を単位とした調査体制といいますか、そういうものが個別具体的に必要なのではないかという意味ですが、ちょっと余り一般的な生物多様性とはっきり区別していなかったかもしれません。
 それからもう一つ、「はじめに」のところに「自然風景地」という言葉が出てくるのですが、これは、当初の、自然公園の定義のところで、もともとそういう言葉があるのでしょうかね。それと「二次的自然風景地」という言葉があって、それの保全を図るということでいろいろな脈絡が出てきているように思うのですが、ちょっとその「自然風景地」というのが逆戻りした言葉のような感じがします。
渡辺委員長  事務局、お願いします。
自然ふれあい
推進室長
 大沢先生の、まず最初の調査の話です。ちょっとわかりにくいのですが、2ページ目の2.の上の数行で「保護管理機能の強化の実効性」というところに、基盤となる自然環境の科学的な情報の収集とか観測体制の整備ということで、こういったものが自然公園の管理のために必要だということで述べております。それに対応しまして、緊急に対応すべき事項ということで、3ページの方に言葉では述べたのですけれども、(5)ですね。自然環境情報の収集、あるいは提供をするための施設。こういったものを自然公園内に整備をし、基礎的な情報、例えば山岳部分の本当の基本的な情報すら今はないというような状況がございますので、こういったものを何らかの形で整備、あるいは観測施設のようなものをつくったり、こういったものを集めて国民に広く提供するようなシステム、こういったものを念頭に置いたものを位置づけていきたいということを加えているわけでございます。確かに不足しているというのは認識しているという前提に立ってですね。
 もう一つ、自然風景地の話ですが、まず自然公園法の目的の一番初めに「この法律は、すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図る」という言葉がありまして、まず全体として、すぐれた自然の風景地を保護するということが自然公園の主目的になっております。その中で、たまたま今回、二次的自然環境というのが課題になっているのですけれども、その自然公園の中で人為的な管理を必要とする二次的な自然環境のことを、ここでは二次的自然風景地と言わせていただきたいと、こういうことでございます。要するに、自然公園内における二次的な草原とか、あるいは里山、二次林、こういったもの、人手を加えて管理していくものをひっくるめまして二次的自然風景地と言わせていただきたい、こういう意味でございます。全体としては、大きな風景地というのがあって、その中にふもとの部分とか、そういったものの部分が二次的自然風景地というふうな位置づけになるのかなというふうに考えております。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。
 どうぞ、和里田委員。
和里田委員  ちょっと私の読み方が足らないのかもしれないのですが、これの構成、II番というのは自然公園の課題というのがあって、そのうちIII番が当面の緊急措置で、あと残ったものは総合というふうにご説明があったように思うのですが、私の読んでいる限りでは、このII番とIII番というのは、繰り返して同じものが出てきているようにしか見えないのですが。IIの中に盛りだくさん、総合的な検討にゆだねるようなものも網羅して入っていると見えないのですけれども、どの部分がそうなんでしょうか。
自然ふれあい
推進室長
 大きな課題の中には、すべてIIIに網羅しているようなもっと広い、例えばパートナーシップのところで申し上げますと、すぐにはできない公園計画への国民の参加のお話とか、このうちで緊急に対応できるのは二次的自然の分野ぐらいではないかなというふうに考えています。ですから、IIの部分というのは、見えづらいのですけれども割と広く書いているつもりで、この中でピックアップした緊急度の高いものがIIIに該当しているということで、包含関係からいうとIIの方が大きいのです。ちょっとわかりにくいかもしれません。
渡辺委員長  確かにそうですね。IVで、これからさらにゆっくり検討しようというところに掲げてある、大きなテーマをIIに突っ込むのも1つのやり方ですし、あるいは和里田委員のおっしゃったように、IIとIIIは一体のものとして整理するのも1つの方法だと思いますね。どうでしょうかね。
和里田委員  盛りだくさんにとれるね。
藤原委員  今までの検討の中でも、緊急性があるものと、後からゆっくりするものということでいろいろな課題が出ていましたね。実際に委員長が言われました、自然公園の課題としてこれだけ挙げるのであれば、今この小委員会で最初に問題にしまして、これはぜひ検討してほしいって出されたものは、ここに入れた方がよろしいと思うのです。その上で、3番目の緊急に措置すべき事項や総合的に検討すべき課題として残ったものをここに入れればよろしいので、総合的に検討すべき課題に挙げられたものの一部は、もう完全にぜひやってほしいと、たしか第1回、第2回で出ておりますので、これはII番の方にぜひ課題として述べていただく。その中で緊急にできるものというのは、今回出されているような課題、章の方でぜひ法制化として入れたいという課題をここに述べられたらよろしいんではないかと思います。そうしないと、ほかのものが総合的に後回しにするだけで緊急性はないのかという問題提起が小委員会としましてできないのではないのでしょうか。ぜひお願いしたいと思うのですが。
渡辺委員長  ほかにいかがですか。IIをもう少し広く、IVに挙げてあるような大きな問題を含めて、IIを幅広い課題の整理に充てて、IIIで受けるようなところを少し丁寧に書いておくというのもあるかと思いますけれども、何かほかの委員の方々。
 瀬田委員。
瀬田委員   その方がいいと思います。IIのところの生物多様性等の「等」というのは、上のところに幾つか例示が書いてありますね。風景の保護、生態系の保全、野生生物の保護、生物の多様性、これらを「等」というふうに読んでいるんだろうと思うのですね。
 きょう、加藤先生のお話の中にあった、自然環境の保全の目的というのは、ある意味で生物多様性とあわせてもいいけれども、良質な自然体験の提供はどこでも読めないけれども、いや、ひょっとすると、この見た目の風景の保護というのをそういうことに位置づけているのかなとも思いながら、少し無理があるなという気がします。したがって、この「等」というだけなのか、ここでは自然公園の課題をもう少し広げておいて、緊急の生物多様性のものはもう少し絞るというのが、その次にあるのではないかなという気がするのですけれども、いかがでしょうか。
国立公園課長  原案といたしましては、このIIの表題にありますように、生物多様性等の保全の観点から検討した自然公園の課題ということで、あくまでも生物多様性等の野生動植物の保全、生態系の保全、生物多様性の保全を含めて、生物多様性等の保全という言い方をしております。今回の中間答申においては、その部分について重点的にご議論をしていただいているという観点です。自然公園内の生物多様性等の保全以外の分野での課題の検討というのは、まだ十分に行っていないというような整理で、現在の構成を考えております。ですから、先ほどの自然公園における調査研究でございますとか、そういったものはまさに生物多様性等に非常に関係していますので、既に課題の中に含まれています。そういったことを推進することが重要であるということも含まれているのですけれども、自然保護教育的な部分については、生物多様性のところとうまく結びつけば、この中にも入れてもいいだろうしということで、単なる風景の保護でありますとか、ちょっと生物から離れた部分については、現在のIIの中に入れていないという整理でございます。
渡辺委員長  岡島委員、それから藤原委員。
岡島委員  今、藤原さんのことなので、ちょっと先に言わせていただきますけれども、今の説明というのは、役所の都合の説明を聞いているみたいなんですね。だから、一般の人が見ると、そういうふうには解釈できないところがあるから、それは書きようだと思うのですけれども、やはり正論を言えば、自然公園の課題がいっぱいあって、その中で、国家戦略のこういうものに関係する緊急な課題だからこれだ、というふうに書くのが筋ですよね。だけれども、役所としては、今国家戦略のことで急にこれをいろいろやっているみたいなところがあるのでしょうから、言っていることはわかるんですけれどもね。対外的に発表するときに、これだと役所の気持ちが先に出過ぎてしまっていてということではないか。
 こちらで言っていることは、僕は常識論だと思うのですよね。それを役所の方の都合でいくと、このII番を生物多様性の中に突っ込んでいきたいという気持ちはわかるんだけれども、世間的に見たらなかなか通用しないんじゃないかというのが皆さんのお考えで、それから、生物多様性だって、いろいろなことをやっていくためにも環境教育は基礎として必要なんだから、関係がある、なしなんていう話じゃなくて、関係があるに決まっているわけであって、なるべく多くの方々に自然体験をしていただいたり楽しんでもらったり、そういうような活動というのは国家戦略の基礎にあるわけだから、正論を言い出したらそうなってしまうわけだから、そういうところを少し何か整理する必要があるかなと。ですから、岩槻先生がおっしゃった、最初の「はじめに」のところも、それにやはり関連してくるのではないかと思います。
渡辺委員長  それじゃ、関連しているそうですから、藤原委員。
藤原委員  今、岡島委員が言われたそのとおりで、環境教育をしないと、生物多様性の意味が、ここにいらっしゃる方々、公園に来られる方々はわからないのですね。その環境教育をするレンジャー自身も少ないわけですよね。ただレンジャーは取り締まるだけじゃなくて、一緒に現場を歩いて教える。そういう方々がNGOからも来られる。それ、すべて生物多様性にかかわってきますし、風景というのは、もともとは生物一つ一つではなくて、本来は、全部をトータルに一緒にしたものが風景になって出てくると思うのですよ。今はそれを含めたものとして出てきておりますので、生物多様性が一つ一つの種が大事なのではなくて、そういう自然の中にある生き物の対象が総量的にあるもの、一つ一つの個体、すべてかかわってくる。そういう意味では、この自然公園のあり方の課題の中にもすべてかかわってきますので、入れた方がいいというふうに思います。余り小さなことだけにこだわらずに、大局的に見ていただければと思います。その上で直接関係するものは緊急課題としてお出しになればいいと思います。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 私、改めて川口環境大臣からの諮問文を今見ているんですけれども、生物多様性の観点から、自然公園のあり方、各種保護地域制度の見直しが必要であるとか、あるいは、自然公園に関して、かねて生態系保全、生物多様性保全を考慮した規制の強化が課題になっているとかいうことはありますが、結びは、自然公園の今後のあり方について審議会の意見を求めるということですから、生物多様性保全の観点から、事務局サイドとして、余りそれほど深くないかもしれない、深くないと思っていらっしゃるかもしれない、この総合的に検討すべき課題の自然公園の持つ機能などの基本的な考え方とか、自然公園の保護、適正な利用のあり方とか、環境教育とか研究者との連携、こういったことも項目として入れて、そして扱い方の精粗を分けたらいいんではないのでしょうか。十分議論していないのは項目だけさらりと触れていただくということで、第II部は自然公園の一応考えられる課題を拾った。そして、主として議論をした部分は、ここに書いてあるような3つの点について議論をし、そこから具体的な措置事項をIIIで拾う。だから、そう大きく変えなくてもいいんではないかなと。IIに少し大きな、ここから漏れているIVで書いてあるようなことをちょっと触れていただくというようなことでどうでしょうか。ほかの委員の皆さん方、ご意見があれば。そう大きな作業はされなくてもと思います。
 どうぞ、三澤委員。
三澤委員  私もよくわからないのですけれども、要すれば、先ほど委員長がおっしゃるように、今後の自然公園のあり方ということで、いかに世の中に対して説得力のある答申書を書くかと、こういうことだと思っております。そういう意味で、かなりご意見がいろいろ出ているので、それらを委員長並びに事務当局でよく咀嚼してもらったらいいんではないかと思います。私もこういうものを見た場合に、幾つもの人が見ると、必ず幾つもの意見がございまして、恐らくこれは何時間やっていても収集がつかないと、このように僕は思っています。
 次回29日に予定されているわけですよね。その時まで具体的に、ある意味で骨子だけで、いわゆるスケルトンですか、そういうものが書かれているんだろうと思うので、そういうものについて、今みたいなような意見をいろいろ取り入れたものが今度の29日で答申文という形になるんだろうと僕は思っています。そういう形で出してもらえば、多少十人十色の意見がいろいろ集約してくるのではないかと、まことに僣越ながらそう思います。
渡辺委員長  ありがとうございました。
 29日はきょうのような議論はできないと思うのですね。ですから、きょうの各委員の皆さん方の意見を取り入れて、むしろ1週間ぐらいで何か案をつくっていただいて、各委員にファックスなり、郵送なりしていただいたらどうでしょうか。
 ぜひ、これは私から各委員にお願いなのですが、事務局には事務局の、2月の上旬に法案を出さなければいけないという事情があるわけですから、それが実現できるように、29日の午前中にはこの小委員会の中間答申を出させていただくという前提で、きょうの皆さん方のご意見をできるだけ採用して、取り入れて案をつくっていただくということでよろしいでしょうか。
 それじゃ、そういうことにぜひご協力をいただくということで、どうか事務局ではそのように、少なくとも項目は広く拾っていただく。それから、きょうの骨子に肉をつけていただくわけですから、各委員のご意見を参酌して、どうかいい案をつくって、事前に配付してください。お願いします。
国立公園課長  どうもありがとうございました。今おっしゃられたような形で、また委員長ともよくご相談をさせていただきながら、肉をつけさせていただくということでございます。また早目に、案につきましてファックス等でお知らせして、ご意見を出していただいて、いいものをつくり上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
渡辺委員長  では、きょうはこれで閉じさせていただきます。
 どうもご協力ありがとうございました。

午後 4時45分閉会