中央環境審議会 自然環境部会 自然公園等小委員会(第33回)議事要旨

1.開催日時

平成28年12月26日(月)10:30~12:50

2.開催場所

三田共用会議所 第四特別会議室

3.議題

(1)国立公園及び国定公園の公園区域及び公園計画の変更について【審議】

・瀬戸内海国立公園(広島県地域・山口県地域)

・若狭湾国定公園(福井県地域)

(2)阿寒国立公園における生態系維持回復事業計画の策定について【審議】

・阿寒生態系維持回復事業計画の策定について

・オンネトー湯の滝生態系維持回復事業計画の策定について

(3)国立公園事業の決定、廃止及び変更について【審議】

・大雪山国立公園     ・阿寒国立公園    ・三陸復興国立公園

・秩父多摩甲斐国立公園  ・中部山岳国立公園  ・白山国立公園

・大山隠岐国立公園    ・やんばる国立公園  ・西表石垣国立公園

(4)その他

4.議事経過

 諮問事項について審議がなされ、適当であるとの結論に至った。なお、主要な発言は以下のとおりである。

(1)国立公園及び国定公園の公園区域及び公園計画の変更について【審議】

<全体について>

○委員:瀬戸内海国立公園の説明では「景観の保護」、若狭湾国定公園の説明では「風景の保護」となっているが、あえて使い分けているのか。

⇒事務局:今回の説明では同じ意味合いで使わせていただいたが、自然公園法では「風景」と「景観」という言葉を使い分けている。風景地という形での風景というのが自然公園の全体の考え方ではあるが、その中でも特別保護地区など、核心的な場所については景観という言葉を使っている。このほか、第1種から第3種特別地域の自然を表現する際には風致という言葉を使っている。今後は誤解のないよう使い分けていきたい。

○委員:瀬戸内海国立公園と若狭湾国定公園の自然海岸率は異なる中で、どちらも埋立て地を公園区域から削除するという現状追認の形をとっており、これはそれぞれの公園の管理方針を変更するということになると思うが、方針を変更するにあたって、海中部分や陸域部分、また遠方から見る景観などをどのように判定して変更(区域の拡張や削除)しているのか。また、その際、自然環境調査の基礎データをどのように使い判定しているのか。

○委員:区域を拡張または削除するにあたっての一般的な基準はあるのか。

⇒事務局:海域を有する公園における区域の拡張や削除に関する一般的な方針があるわけではなく、個々の公園ごとに調査を行い、各公園それぞれの風景形式や景観要素を捉えたうえで評価し、拡張や削除を行っている。

 例えば、瀬戸内海国立公園は多島海景観が特徴の公園なので、眺望点から見た際に多島海の要素になるかどうか、また、眺望の対象になるかどうか、こうした観点から判断している。

○委員:海域の普通地域が埋め立てられ、景観上好ましくないから区域から削除ということでは、普通地域では海岸景観を守ることができないのではないか。

⇒事務局:海域の普通地域は届け出で埋立てをすることができるが、景観上必要な地域については緑地帯を確保すること等の措置命令を出すことにしている。ただし、埋立てについては公益的な機能もあるため、その中での調整にはなってしまうが、自然環境に与える影響が大きいものであれば、措置命令をかけることにより守ることが可能だと考えている。

○委員:聞く側としては、完全なクライテリアが分からなかったとしても、ここはこういう考え方でこうなりましたという経緯的なものを踏まえて説明していただいた方が、いきなり数字だけを言われるよりは理解が増すと思う。

⇒事務局:案件が多く説明を少し省略する形になってしまったが、今後は細かく点検を進めていくことで、経緯や背景について十分に説明できるようにしたい。

<瀬戸内海国立公園について>

○委員:景観資源としても、また、自然環境上も特に重要なエリアではないから黒髪島の21haを公園区域から削除するとのことであるが、重要な植物群落のバッファーとする、あるいは一体的な利用のために残すという考えもあると思う。

⇒事務局:削除する区域は開発が行われているほか、財産権との関係もあり、開発が進んだ島の西部は削除し、景観資源として、また、自然環境としても重要な島の南部を保全するとなったものである。

○委員:太華山園地からの眺望上重要な場所であるため、黒髪島の南部を公園区域に含めるとのことだが、何か太華山園地での事業が計画されているのか。

⇒事務局:新たな事業計画はないが、周南市が策定した景観計画において、太華山園地からの眺望景観が評価されていることを踏まえ、新たに公園区域に含めたものである。

○委員:一度に二百数十カ所が公園区域から外されることは、一般の方にとっては相当ショッキングなことだと思う。瀬戸内海は公園区域が広く、また、長年見直しを行ってこなかったことにより、今回まとめて削除することになったという事情はわかるが、いつどういう時期に見直しを行うかということを今後考えていくべきだと思う。

⇒事務局:一般的に見直しは概ね5年毎に行うこととしているが、様々な調整が必要になるため、順調にできていない状況である。今後は定期的に見直しを行い、きめ細やかな点検を進めていければと思っている。

<若狭湾国定公園について>

○委員:利用施設計画の変更について、現状追認的な理由しか記載がないが、こういった利用のために必要である、あるいは不用であるという理由が欲しい。

⇒事務局:再検討から長年が経過し、高速道路が開通するなど利用動線も変化しているので、現在の利用状況を踏まえて見直しを行い、現状追認という形にはなっているが、公園全体の利用を考えて利用施設計画を位置付けたものである。

○委員:三方五湖を周回できるように歩道のルート変更を行うとのことだが、実際にどのような整備を行うのか。

⇒事務局:新たに何かを整備するという事業計画はないが、三方五湖は自然再生に取り組んでいる地域であるほか、「年縞」の博物展示施設では自然体験プログラムが予定されている。変更後の歩道は自転車利用も可能であり、より多くの利用者に楽しんでいただくとともに三方五湖での取り組みをPRするため、五湖を周回できるよう歩道計画の変更を行うものである。

○委員:三方五湖に新たに「年縞」に関する博物展示施設を整備するとのことだが、既存施設で既に「年縞」に関する展示・説明を行っているはずである。何故、さらに展示施設が必要なのか。

⇒事務局:既存施設は若狭町の縄文博物館のことだと思う。ここでは一部、「年縞」に関する展示も行っているが、この施設は鳥浜貝塚の展示が主である。

 展示内容については設計中であるが、若狭町と協議していきながら、しっかりとすみ分けを行っていきたい。

○委員:「年縞」を見れば日本の7万年間の環境の変化が分かるはずであり、研究の面からも非常に重要である。「年縞」のような地質は国内に他になく、水月湖だけに唯一残っているものなので、こうしたことを一般の方にも分かるように展示してほしい。

(2)阿寒国立公園における生態系維持回復事業計画の策定について【審議】 

○委員:個体数や個体数密度の推定のための基礎調査をこれから次の事業計画の中で重点的に行うということだが、最初の段階でこうした目標は設定していなかったのか。

○委員:計画期間は「目標が達成されるまで」となっており、オンネトーについては外来種を根絶するということで、ある程度目標がはっきりしているが、阿寒のシカについては極めて曖昧で、「本公園の生態系の維持及び回復を図ること」、これが目標だと言われるとよくわからない。例えば、森林の被害をこのぐらいに抑える、または個体群の密度をこのぐらいまで落とすといったものがないと、達成したという議論ができなくなってしまうと思う。

⇒事務局:シカについての達成度の評価や達成目標については、御指摘のとおり曖昧な部分がある。曖昧となっている理由は、個体数の推定等が困難で目標が立てにくいためである。

 一方で、明確な目標をたてなければならないとも考えており、まずは精度の高い個体数推定が必要であり、個体群動態モデルの活用も考えられる。シカが毎年何頭子どもを産むから、このぐらい増えますということを明らかにすることである。また、個体数を低減させるために必要な捕獲圧を明確にする必要があるとも考えており、これらは次年度から取り組んでいきたいと考えている。

○委員:シカの個体数についてPVAを回さないとわからないという議論もあってもいいが、それはどちらかというと研究者的なロジックである。

 ドイツの話を聞くと、植物や樹木の被害をある程度下げるということを決定し、アダプティブにモニタリングしながら遂行していくというような議論がある。全てがわからないと何もアクションを起こさないということはナンセンスだと思うので、そういった違う手法も含めて考えたら良いと思う。

○委員:阿寒に関して、1984年からシカが増加しているということだが、それ以降、公園内において食害等で消滅した植物種というものはあるのか。

⇒事務局:確認して後日回答させていただきたい。

(環境省で把握している限り、シカの食害によって絶滅した植物は確認されなかった。ただし、全定量的かつ定期的なインベントリー調査は十分ではなく、また、一般論として、局所的なものも含め、絶滅や消失の確認は非常に困難なことから、単に状況把握ができていない可能性もある。(後日確認済))

○委員:オンネトーに関して、総合対策外来種の定義と、どういうところでどういうものが指定されているのか教えていただきたい。

⇒事務局:外来生物対策の施策の中で外来種をカテゴリー分けし、対策方針を示した中で示された概念である。これについて正確にご説明することができないので、確認して後日回答させていただきたい。

(平成26年3月に農林水産省と共同で公表した「生態系被害防止外来種リスト」に基づくカテゴリー。定着が確認されているものを「総合対策外来種」と位置付けており、オンネトーではナイルティラピアとグッピーが該当する。(後日確認済))

○委員:希少だけれどもアピール力が弱い種では、こうした貴重な生物多様性が守られているということを一般の人に伝えていくのは難しいと思うが、費用対効果分析とあわせて、費用便益分析的な考え方はあるのかどうか教えていただきたい。  

 特にナイルティラピアについて、外来種の対策はなかなか難しいが、これは非常に成果が上がっており貴重な事例になると思う。しかし、いたずら心で放流する悪意のある人たちもいたりするので、どのようにこうした成果をアピールしていくべきか何か考えているのか。

⇒事務局:重要な課題であると認識しているが、費用対効果分析までの話しには至っていない。

 放流されないよう普及啓発を進めているところで、地元の自然保護官が中心となって、絶対に入れないでくださいといったことをきちんと皆さんに知らしめているという状況である。

○委員:お金と時間をかけてナイルティラピアを捕獲しても、誰かがまた放流すれば同じ様なことが起こりかねないが、「放流してはいけない」という普及啓発だけでは抑止力が弱いと考えられる。地域の方々と共同で取り組んだほうが効果があると思うが、どのように考えているのか。

⇒事務局:ここでの対策は足寄町教育委員会が中心となって進めてきたものであり、これに環境省が関わるようになり、さらに山岳団体なども巻き込んで、ボランティアによる釣りなどを行っている。ここで何々をしてはいけないという法律的な担保は難しいが、しっかりと教育や普及啓発をしていくということで進めていきたいと考えている。

(説明者により、外来魚を放つことを規制する法律的な担保は難しい旨の答弁が行われたが、当該地が特別保護地区ではなく特別地域という誤った認識に基づき答弁したもので、実際には、ナイルティラピアの生息する湯の滝は自然公園法に基づく特別保護地区として動物を放つことは規制されている。委員に対しこの事実誤認と法律に基づく規制も踏まえて普及啓発を行っていくことを説明(後日説明済))

○委員:オンネトーについて、温泉水を抜き取り冷水を引き込むことが非常に効果的であったとのことだが、この場所の固有の生態系に対する影響という観点からは絶滅危惧種のザリガニのことしか書いていないが、もっと調べる必要があるのではないか。

⇒事務局:冷水の引き込みを行う前に専門家を含む検討会を開催しているほか、周辺の動物の調査も行い、希少種としてはニホンザリガニがいたが、それ以外は特筆すべきものがあまりいなかった。面積が非常に限られていることのほか、既に改変されている地域ということもあり、固有の生態系への影響は極めて限定的であろうと考えられる。

○委員:目標達成までの段階を予め決めておく必要があると思う。こういうステップを達成したら次のステップに上がっていくというような段階を設けているのであれば教えていただきたい。

⇒事務局:個体数推定や個体数を低減させるために必要な捕獲圧を明確にするなど、段階を決めるための作業をまずはやっていきたい。

○委員:資料に保全地域における戦略的な捕獲という言葉が使われているが、戦略的な捕獲という場合に表裏一体で必要なのは実施体制である。この実施体制について説明をお願いしたい。

⇒事務局:林道の除雪といった捕獲支援も非常に重要であるため、各関係機関との連携をさらに深めていきたい。

○委員:戦略的な捕獲を考えるうえ必要なのは捕獲を支援することではなく、どういう捕獲をしたら良いかということ、イニシアチブをとって進めていくという態度が必要だと思う。

○委員:資料に「ディアライン」とあるが、最近は「ブラウジングライン」という言葉が使われているので、この点を配慮していただきたい。

○委員:阿寒のシカ問題についてであるが、既に知床と釧路で同様の政策を取り入れているということであれば、ポジティブな結果も出ているので、そこでの成果を取り入れることはできないのか。

⇒事務局:釧路湿原や知床等でも対策を進めており、今すぐ他に応用できるわけではないが、様々な手法を試している。例えば航空機センサスなどで非常に成果が上がっている状況なので、阿寒でも取り入れていきたいと考えている。あるいは、赤外線の装置を搭載したドローンを飛ばして個体数を調べるといったアイディアも現場で検討しているので、こうした知見を取り入れながら進めていきたい。

(3)国立公園事業の決定、廃止及び変更について【審議】

<阿寒国立公園について>

○委員:阿寒湖畔の駐車場整備について、国立公園満喫プロジェクトの関係で様々な施設整備を行うようだが、温泉の宿泊客のための駐車場であれば、温泉旅館側が駐車場を整備するというのが本来のやり方だと思う。

 また、駐車場整備は公園利用に対しての影響が大きいので、駐車場についてどのようなプロセスや判断基準で認めているのか教えていただきたい。

⇒事務局:温泉旅館側が整備すべきというご意見について、もちろん温泉旅館側の駐車場もあるが、この場所は集団施設地区であり、国立公園の集団施設地区を利用するうえでの駐車場は、公園事業の中で管理していこうという考え方がある。

 プロセスについては、ホテルが廃業し、ではそこをどのように活用していくかについて、地元レベルでの検討が始まったのが最初である。そして、利用者の視点を含め地元と一緒に考えた結果が、新たに駐車場を整備するというものである。

○委員:今後駐車場の扱いを考える時に重要なので、国立公園における駐車場整備の基本的な考えを教えて欲しい。

⇒事務局:国立公園満喫プロジェクトの地元協議会の中で様々議論していただいた結果となっている。

○委員:国立公園満喫プロジェクトにおける議論の結果ということであれば、単なる駐車場としての説明ではなく、ビジターセンターなどと連携した付加価値の高い駐車場という説明であればブレイクスルーと一致すると思うので、環境省として説明の仕方をしっかりと考えていただきたい。

<大雪山国立公園について>

○委員:松仙園の歩道整備について、個人的には賛成であるが、配慮していただきたい点が二点ある。

 一つは、この場所はアクセスが良いにも関わらず原生的な景観が残っている素晴らしいところであるが、誰でも歩けるという視点で整備をしてしまうと過剰整備の問題が出てくると思うので、この点を配慮していただきたい。

 もう一つは、大雪山国立公園の中には施設整備についてあまり良くない事例が散見されるので、整備にあたっては、この地域を良く知る専門家の意見を十分に取り入れて検討していただきたい。

⇒事務局:松仙園について自然環境上、重要な場所であるということは我々も認識しており、地元でも過剰利用により自然環境が損なわれてしまうことを危惧している。そうしたことがないよう、地元の方々のほか専門家の方と一緒に、どのような利用、整備にしたほうがよいかの検討を既に進めている。本日いただいたご意見も現場に伝え、今後の整備に上手く反映できればと考えている。

<中部山岳国立公園について>

○委員:乗鞍の魔王岳・恵比須岳線道路の整備について、国有林のどこをどのように借りるのか、ある程度明確にしたうえで整備を進めないと、既存歩道からも分かるように、歩道が拡がってしまう、あるいは周りの植生を痛めてしまうといった事態を招いてしまう。

 今回の件について、林野庁から国有林を借りる契約の内容が分かれば教えていただきたい。

⇒事務局:事業決定の段階では歩道の幅員まで決めないので、どのような契約になるか、具体的な内容については高山市が執行する段階で決めていくことになる。

 自然環境を傷めることのないような整備というのは当然なので、実際に国有林を借りる際にはそういった観点からも当然検討されるものだと考えている。

(4)その他

<国立公園満喫プロジェクトについて>

○委員:世界水準のナショナルパークに向けたブレイクスルーの部分で、自然の質を向上させるための新たな仕組みの導入とあったが、十和田八幡平国立公園の現場では既に外国人の対応に追われているなど、外国人利用者の数が増えるスピードは非常に速いので、人材づくりや人材集めまでを視野に入れていただき、なるべく早く、力点を置いて進めていただきたい。

5.問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(代表03-5521-8279)

課長   岡本 光之(内線6440)

課長補佐 河野 通治(内線6650)

専門官  小林 誠 (内線6694)

係長   松木 崇司(内線6447)

係員   秋山 祐貴(内線6691)