中央環境審議会 自然環境部会 自然公園等小委員会(第32回)議事要旨

1.開催日時

平成28年7月6日(水)10:00~12:00

2.開催場所

環境省 第一会議室(22階)

3.議題

(1)国立公園事業の決定、廃止及び変更について【諮問】

・十和田八幡平国立公園  ・三陸復興国立公園   ・尾瀬国立公園

・秩父多摩甲斐国立公園  ・富士箱根伊豆国立公園 ・吉野熊野国立公園

・大山隠岐国立公園    ・足摺宇和海国立公園  ・やんばる国立公園  

・西表石垣国立公園 

(2)その他

・国立公園満喫プロジェクトについて

4.議事経過

 諮問事項について審議がなされ、適当であるとの結論に至った。なお、主要な発言は以下のとおりである。

(1)国立公園事業の決定、廃止及び変更について

<十和田八幡平国立公園について>

○委員:藤七温泉は1日の利用者が100人に対し、平成25年の年間利用者数は54万人となっている。一方で松川温泉は、1日の利用者数が500人であるのに平成25年の年間利用者数は約5万人と藤七温泉よりはるかに小さいが、理由は何か。

⇒事務局:1日の利用者数は宿舎の規模に関わる値であり、収容力をもとに決めている。

○委員:集団施設地区を単独施設に振り替えることは、町の今後のビジョンにも関わると思う。このことについて地域はどのように考えているのか。

⇒事務局:当初、そこに施設がある程度集中しているという理由で、集団施設地区に決定されたというのが実情である。しかし、その後人口は増えず、施設もむしろ減っていき、今後も集団施設地区として整備が進められる見込みがないだろうということで今回廃止している。

○委員:公園事業制度上の「決定」とはどのような意味か。

⇒事務局: 計画の段階ではおおよその位置や規模が決まっているだけなので、小委員会では、公園計画に位置付けられた道路について、具体的に幅員をどうするか、また、避難小屋の規模は何人にするかといったことを決めていただくものである。

○委員:管理者である環境省に、事業が廃止された場所が原状復帰されていることを確認する義務はないのか。

⇒事務局:当然、公園管理者として確認する。本件については廃止された時代が古いため、現状として自然の状態に戻っている状態である。

○委員:廃止案件について、随分前に使われなくなっているが、現状はどのような状態になっているのか。問題なく自然の状態に回復しているのか。

 「廃止」の案件については、廃止後、その場所がどのような形で自然の状態に戻るのかということを説明して欲しい。廃止されたものが現状に戻っているというエビデンスをしっかり示してくれないと議論はできないと思うので、その点を今後考慮していただきたい。

⇒事務局:今回の廃止案件の多くは、当時整備予定であったが、結局整備されなかったものである。

 また、施設があったものについても、かなり昔に施設が無くなっており、現場は自然が回復している状況である。

 廃止案件については今後そのような形で対応させていただきたい。

○委員:焼走り線道路について、溶岩の中を突っ切る道路を現状追認として、今回決定するという説明であるが、こうしたものは、大体、雨水によって土壌がひどくなり、どんどんえぐれていく。現状追認で決定してもいいが、将来的には付け替えを考えるべきである。

○委員:道路の複数路線の分割整理については、昔から利用されていた道路を優先したものではなく、利用者数によって優先道路を決めて、重複などを無くしていったということか。

⇒事務局:利用者数を反映したものではなく、管理の視点から路線の区間などを決めているのが現状である。管理者が決まっているものについて事業決定していくことになる。

○委員:松川給水施設の区域面積は35ヘクタールとなっているが、これは建物とその周辺ではなく、取水面積を表しているのか。

⇒事務局:給水管が通っている区域全体を含むもので、最外郭を囲ったものである。

○委員:ユーザー側からすると、無人で無料のものが避難小屋で、有料で管理人がいるものが宿舎と思っていたが、国立公園事業上は、避難小屋と宿舎はそれぞれどのように定義されているのか。

⇒事務局:宿舎は、公園利用者の宿泊の用に供される施設と定義されており、避難小屋については、公園利用者が山岳等において一時難を避けるために設けられる施設と定義されている。避難小屋については、基本的には無人小屋である。

 当初、営業を伴う山小屋を想定して宿舎計画を立てていたが、経営が成り立つかどうかを勘案したところ、営業を伴う山小屋の建設は困難と判断し、公共事業として、一時的に避難をする小屋を建てたという経緯がある。

○委員:現状として道路があり、それを現状追認するのはやむを得ないと思うが、本来の計画のあり方からすれば、望ましい姿を関係者で議論して決め、それにあわせて公園事業の決定や廃止、変更をすべきであると思うので、進め方自身も少し考えるべきである。

○委員:前回の部会や小委員会において公園計画が変更されており、その変更に基づき、今回公園事業の廃止や変更を決め、ここでそれを認めるということであれば、計画を変更した際の部会または小委員会と今回の小委員会がうまく連動するように、どのような背景で公園計画が変更され、その変更が今回の公園事業の廃止や変更にどのように繋がっているかということを説明していただきたい。この説明がないため何を基準に判断したらよいかわからない。

⇒事務局:本地域については長い期間見直しがされていなかったということもあり、現状追認という形で整理させていただいたが、今後は数年毎に見直しを行い、そこでは単に追認ということではなく、見直し方針や整備方針をお示ししたうえでご議論いただきたいと考えている。

<尾瀬国立公園について>

○委員:燧ヶ岳登山線道路について、土石流が発生し、被害を受けた道路を付け替えるということだが、公園の道路は個別に災害復旧をせずに、今回のように時間が経った後、他の整備事業と一緒に災害復旧として実施するものなのか。あるいは災害復旧という仕組みがないのか。

 これと関連して、経年的な劣化とともに災害により被害を受けたものも含めて、維持管理をどのように考えてきたのか。

⇒事務局:災害による被害が生じた場合は、その都度対応しているのが現状である。何とか歩けるように崩れた場所を応急処置して対応するのが大体のケースであるが、今回のように1.7キロにわたって崩壊してしまうと、動線を変えて工事を行い、維持していくことが必要になる。

 維持管理については、事業執行者としては安全確保のため、その都度壊れた部分については応急的に使えるようにしつつも、線形に関わるということを踏まえて、公園事業として把握し直すという手続となっている。

<吉野熊野国立公園について>

○委員:夏山園地について、広場をかさ上げして観賞路を作るとのことだが、他の公園では過剰整備も見られる。整備すること自体は悪いわけではないが、その場所の価値を高めるような整備をする必要がある。

<大山隠岐国立公園について>

○委員:大山寺スキー場について、利用者がアクセスを改善してくれと言っているとの根拠は平成27年度の利用者アンケートと書いてあるが、年間の利用者19万人から100人を抜き取ったアンケートというのは少し違和感がある。また、55人がアクセス改善を求めたということは、45人は気にしていないのではないかという見方もできる。事業者側がアクセスの不備に気がついており、確認のために実施したアンケートということであれば理解ができるが、これはどのようなアンケートであって、意見の中でどのような改善を望んでいるのか。

⇒事務局:アンケートの詳細は不明であるが、事業者の言い分だけで変更を行うのではなく、利用者側もアクセスの改善を望んでいるのかを確かめるためのアンケートと捉えている。アンケートの詳細については後日回答させていただきたい。

(アンケートについては、鳥取県が今後の大山スキー場の活性化を図る基礎資料を得るために実施。ランダムサンプリングでスキー利用に関する詳細な対面アンケートを行う中で、半数以上がアクセス改善を望んでいたもの。(後日確認、回答済))

○委員:大山寺スキー場の区域拡張について、指定済みの公園区域の中で公園事業を行う区域を拡大したのか、または連絡通路と組み合わせて国立公園の区域でない場所を新たに公園区域に編入し、なおかつ事業区域として設定したのか。

⇒事務局:国立公園の区域からはみ出すものではなくて、公園区域内、集団施設地区内での面積が増えるという意味での拡張である。

<足摺宇和海国立公園について>

○委員:竜串野営場・園地について、宿泊棟は既存施設と考えてよいか。また、追加になるのは野営場であり、駐車場から野営場への振替ということか。

⇒事務局:敷地については既設という意味であり、コテージ等は新設するものである。

<やんばる国立公園について>

○委員:東海岸線道路の決定理由について、「道路から自然海岸等の国立公園の景観資源を眺望できる」となっているが、道路の大部分が海岸線上を走っており、環境省の視点からすると、海岸線に並行して道路が走っている場合は自然海岸と考えていないはずなので、理由としては適切ではないと思う。現地の状況を教えていただきたい。

⇒事務局:この道路は海岸沿いを通っているが、護岸整備をされた、いわゆる改良された海岸が続いているわけではなく、砂浜や崖のような海岸があり、これらを道路の合間から見ることができる状況である。

 

○委員:エコツアーについて、近年の利用者数の動向を教えていただきたい。また、エコツアーは地元の方々が実施しているのか。あるいは、東京から来た方々、または地元の方々と東京から来た方々が一緒に実施しているような状況はあるか。

 外国人の観光客が増えていると思うが、その対応で何か主立ったことがあれば教えていただきたい。

⇒事務局:慶佐次園地については、東村のNPO法人など、地元の団体がエコツアーを実施している。

 利用者については、慶佐次だけの利用者数は把握していないが、沖縄県としては観光客の利用者が増加傾向にあり、やんばる地域を訪れている人も増えている傾向にあるので、慶佐次の利用者も増えてきていると認識している。

○委員:看板の多言語表記について、地域で観光の視点から統一されている表記と、環境省で表記されるものが違う場合がある。国の統一性と、地域の中での統一性のルールが違ってくる場合があり、それをどのように調整するかは難しいところではあると思うが、できるだけ同じ表記になるようにお願いしたい。

⇒事務局:国立公園におけるインバウンド対応は重要なことと認識しており、看板等の表記も重要な問題だと思っている。環境省の地方事務所も含め、地元で相談していただき、より分かりやすい表現となるよう工夫していく必要があると考えている。

○委員:林道は公園施設としては位置付けないとのことだが、入れてしまえば、人が入ってくるのが普通だと思う。林道の管理はどのように考えているのか。

⇒事務局:林道のあり方については地元で検討しているところである。まだ方針は決まっていないが、通行を許可制にすることやエコツアーの利用者だけを通行させるといった意見が出ている。

 今後利用者が増加すると、ロードキルをはじめ様々な問題が発生することは地元でも考えており、利用方法については検討中となっている。

○委員:地元での合意形成に自然保護や利用促進の観点から環境省が関わる術はあるのか。

⇒事務局:国立公園には環境省の自然保護官がおり、やんばる地域についても自然保護官2名が常駐している。地元で開催される会議に参加するほか、そうした仕事だけでなく、地域に溶け込んで、その中で一緒に考えさせていただいている。

<西表石垣国立公園について>

○委員:平久保園地について、サガリバナは夜中から明け方にかけて咲くので、観察しようとするとオーバーナイトになるが、ここでは野営場としての利用はされているか。また、夜間照明は動植物への影響が懸念されるが、夜間照明の状況はどのようになっているのか。

⇒事務局:地元の方が作った歩道があるだけで、そこでキャンプをして泊まるという野営場としての利用はされていない。

 夜間照明については把握できていないため、後ほど回答させていただきたい。

(平久保のサガリバナでは夜間のライトアップは実施していない。(後日確認、回答済))

(2)その他

<国立公園満喫プロジェクトについて>

○委員:国立公園を5箇所選定する件だが、日本の狭いエリアに国立公園や世界遺産、ジオパークがそれぞれたくさんあり過ぎ、わからないという意見がある。そのため、地域ごとにグループ分けして発信していくことが大変重要であると思っているので、公園単位で選ぶのか、あるいは、グループ分けをして発信をしていくのか十分検討していただきたい。

⇒事務局:「明日の日本を支える観光ビジョン」において、広域観光圏ルートとの連携や、政府全体での連携をしっかり図ることとされているので、そうした視点からも、ある程度広域な範囲をまとめて打ち出していくべきというのは御指摘のとおりかと思う。

 選定した5ヵ所の公園だけを対象に行うということではなく、そこでの先導的な取組を最終的には全国の国立公園に拡げていくことが目的である。

※平成28年7月25日に開催した「第3回国立公園満喫プロジェクト有識者会議」での議論を踏まえ、8カ所の公園を候補地として選定。

○委員:日本と北米の国立公園を比較しているが、同じ地域性で、民有地を多く抱える国立公園があるのはヨーロッパであり、日本がお手本にすべき非常にすばらしいマネジメントも行っているので、ヨーロッパの国立公園と比較すべきだと思う。

○委員:保護すべき区域と観光に活用する区域の明確化は重要だと思うので、ゾーニングは意識して取り組んでいただきたい。

⇒事務局:今後の参考とさせていただきたい。

<その他について>

○委員:自治体では29年度予算に対する国への様々な要望をしているが、財政規律をしっかり堅持するという政府の姿勢が浸透しており、非常に厳しい状況である。即ち、環境省においても予算を確保するということが最も大事で、そのための政府及び財務省に対する働きかけをもう少し組織的に行っていただきたい。

5.問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(03-5521-8279)

課長   岡本 光之(内線6440)

課長補佐 河野 通治(内線6650)

専門官  小林  誠(内線6694)

係長   松木 崇司(内線6447)