中央環境審議会自然環境部会自然公園小委員会議事要旨(第14回)

開催日時

平成19年12月4日(火)10:30~12:10

開催場所

環境省第1会議室

議事

(1)国立公園の公園計画等の変更について
(2)国定公園の公園計画等の変更について
(3)国立公園事業の決定、変更及び廃止について

議事経過

諮問事項すべてについて審議がなされ、それぞれ適当であるとの結論に至った。
なお、主要な発言は以下のとおりである。

[1] 国立公園の公園計画等の変更について

○日光国立公園(那須甲子・塩原地域)(一部変更)

委員  宮内庁所管から環境省所管に変わると何が変わるのか。この先どのような管理を行うのか。
事務局  これまでは御用邸用地であり、国民への開放はされていなかったが、環境省に所管換になり、かつ集団施設地区に編入することになると、国民の利用を前提とすることになる。80年ほど一般的な利用がされていない土地なので、その自然を維持することを大前提に、豊かな自然の体験や学習を主体とした利用を行っていく予定。慎重な気配りをしながらプラニングをしていきたい。
委員  今回拡張する区域がなぜ今まで公園区域に入っていなかったのか。
事務局  記録が十分にないが、線引きの技術上の問題か宮内庁との調整の結果ではないか。今回再評価した結果、国立公園の資質があると判断したので、拡張する案としたもの。

○秩父多摩甲斐国立公園(点検)

委員  白井差から両神山への登山道の現状を教えてほしい。
事務局  従来は白井差両神山線が主要な登山道だったが、現在、この登山道は地権者の意向により、協力金を徴収し少人数の登山のみを許可している状況。このため現在、ほとんどの利用者は埼玉県が執行している集人両神山線を利用している。今回の公園計画の変更はこのような近年の利用の変化を受けたもの。
委員  計画上の単独施設や車道の削除により、実際にこれらの施設の閉鎖措置が執られるのか。奥秩父・奥多摩の鍾乳洞地域は環境教育目的の利用などが進んでいるため、通れなくなってしまうのは問題。
事務局  公園利用上の必要性が乏しくなったため計画から削除する施設については、そこを閉鎖することはないが、環境省として公園管理の観点から積極的に整備・活用していくことはなくなる。
委員  今回の変更は、首都に最も近い本国立公園の利用の必要性が乏しくなって利用施設の削除をするとのことだが、自然とのふれあい活動の推進という観点の取り組みは行われているのか?
事務局  今回の変更は、公園利用が全体的に大きく変化したことに伴う公園計画の変更ではなく、局所的な変化に伴うもの。自然ふれあい活動の推進やイベントの開催は、環境省自ら、また自治体、NPOと協力して実施してきており、引き続き取り組んでいく。

[2] 国定公園の公園計画等の変更について

○下北半島国定公園(再検討)

委員  特別地域から普通地域に変更される区域での大型建造物等への規制は何に基づいて行われることになるのか。
事務局  自然公園法に基づいて行われる。普通地域においても、一定規模以上の工作物の新改増築や広告物の掲出等の行為については事前届出が必要であり、この時点で、風景の保護上の必要があれば、禁止や制限等を行うことができる。

○丹沢大山国定公園(一部変更)

委員  三ノ塔の自然再生施設の位置は、山頂だけではなく、かなり下の方まで含む必要があると思う。具体的な事業の内容と期間はどれくらいか。
事務局  山頂を中心とした計画としているが、実施区域については、今後神奈川県が事業決定を行う際に、必要であれば下の方まで含めて決定することになる。
 事業内容は、シカの食害から守るために山頂を植生保護柵で囲むことと、土壌流出防止措置として土留め工を行うことを計画している。期間は自然環境の復元が図られるまでだが、いずれも事業決定の段階で詳細を検討することになる。
委員  丹沢におけるシカの採食圧のすごさは痛感している。シカを自然のままに放置していくのか、それとも頭数調整をより強力に行うことも含めて植生の保護を図っていくのか。
事務局  今回追加される自然再生施設は、神奈川県策定の全体的な自然再生計画のうち、国定公園の区域内中で、かつ公園計画の施設になじむものを追加するもの。シカ対策としては、鳥獣保護法に基づく特定鳥獣保護管理計画などに基づいて、必要な頭数調整等も行うこととしている。また、今回追加する自然再生施設のほか、人工林を手入れし林床植生の回復を図ることにより、植生に影響が出ているところからシカを離していくことを計画している。
委員  砂防堰堤にサンショウウオの移動ための施設を設置するという計画だが、もともと堰堤の作り方に問題があるのではないか。
事務局  こういった河川横断工作物の許認可にあたっては、保全対象やその保全水準等を考えて行っているところだが、今後も許認可の際には、横断工作物による影響回避、影響軽減といったことも含めて、十分検討していきたい。
委員  丹沢の自然環境に起こっている問題の原因の相当部分はシカの増加にある。各地の公園でも同様の問題があるかと思う。公園の自然環境の維持とシカ問題について、環境省の基本的な対応策や考え方を聞きたい。
事務局  国立公園の保全に対するシカの圧力は各地で発生している。高山植物帯にまで食害が及んでいるようなものについては、緊急対策として植生保護柵の設置等を行っているが、ご指摘のとおり根本的な対策としてシカの個体数管理が必要である。そのためには、都道府県主体で行っている特定鳥獣保護管理計画との連携が必要であるため、都道府県と十分連絡調整しながら、全体的に効果が上がるように取り組んでいく必要があると考えている。
委員  丹沢の檜洞丸山頂のブナの立ち枯れについては、環境省として積極的な対策等は考えているのか。
事務局  ブナの枯死の原因はシカの他にもいくつかあり、今回、植生保護柵の設置という形で、公園の施設として一つの対策を打つことになる。全体については、自然再生事業の中で行っていくことになる。
委員  茅場は、小動物のすみかの保護に役立つが、シカのえさ場にもなる。食害防止のために稜線からシカを誘導するには、えさ場として茅場のような場所を相当な面積で増やす必要があると考えるが、どのように計画しているか。
事務局  自然再生施設として再生する茅場は植生保護柵で囲むため、シカは入ることはできない。小動物やそれを捕食する猛禽類のえさ場とすることを目的としている。シカのえさ場としては、人工林の手入れを進め、林床植生の回復を図る計画となっている。

[3] 国立公園事業の決定、変更及び廃止について

委員  日光国立公園において、事業廃止を行うものについては、施設をなくしてしまうということか。また、事業廃止した場合、事業跡地はどのような取扱いとなるのか。
事務局  今回の事業廃止は、那須高原集団施設地区が拡大し既存の事業が集団施設地区内に含まれることから事業の名称が形式的に変更するだけで、施設がなくなるものではない。
 また、一般的な事業廃止については、[1]公園事業としての位置付けを失うが別の用途として施設は残るもの[2]公園事業の役割を終えるとともに、施設としての機能もなくなるもの など幾つかパターンがある。  [1]の場合は公園事業とは別の役割として施設は存続するが、[2]の場合は基本的に事業施設について撤去していただくことになる。撤去に際しては行政命令として撤去させることもできる。
委員  日光国立公園における区域の拡大については、環境省が主体的に管理等を行う土地であることから、単に風景利用だけでなく、生物多様性や環境教育、エコツアー、施設のデザイン統一など、日本の国立公園のモデルとして国民に理解されるような事業を行っていただきたい。
事務局  今回、環境省が所管することとなる土地については、いろいろな意味で可能性があると考えている。是非、新しいモデルとなるような事業を考えていきたい。
委員  歩道について休憩や風景鑑賞する場所がないところがあるので、歩道整備にあたってはそのようなことも考えて設計していただきたい。
委員  事業施設の管理についても、これからは、民間活力を利用するように考えたほうが良いと思う。
事務局  今後整備の具体化にあたって、十分に考慮していきたい。

問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(代表03-3581-3351)

課長 神田 修二(内線6440)
課長補佐 則久 雅司(内線6442)
課長補佐 伊藤 淳一(内線6443)
専門官 守分 紀子(内線6445) <公園計画関係>
事業係長 坂口 隆 (内線6447) <公園事業関係>