中央環境審議会 自然環境部会(第29回)議事録

日時 

平成28年2月23日(火) 10:00~12:30

場所 

三田共用会議所 第四特別会議室

出席者

石井  実  部会長

佐藤 友美子 委員          

磯部 雅彦  臨時委員 

江﨑 貴久  臨時委員   

岡  敏弘  臨時委員

小泉 武栄  臨時委員  

小泉  透  臨時委員 

小菅 正夫  臨時委員    

佐々木 洋平 臨時委員

柴田 明穂  臨時委員

下村 彰男  臨時委員    

中静  透  臨時委員

中村 太士  臨時委員

深町 加津枝 臨時委員

三浦 愼悟  臨時委員

宮本 旬子  臨時委員

涌井 史郎  臨時委員               

議事

午前10時00分 開会

○司会:お待たせいたしました。定刻となりましたので、只今より、中央環境審議会自然環境部会を開催いたします。

 開議に先立ちまして、本日の出席委員数をご報告いたします。本日は、所属の委員及び臨時委員24名のうち17名のご出席をいただいております。したがいまして、本部会は成立しておりますことをご報告申し上げます。

 次に、本日、お手元にお配りしております資料でございますけれども、議事次第、裏面の資料配付一覧のとおりとなっておりますが、ここで簡単に確認をさせていただきたいと思います。一番上にありますのが議事次第でございます。その裏面に配付資料一覧がございます。その下にありますのが、自然環境部会の委員名簿一覧でございます。

 続きまして、資料1-1としまして、西表石垣国立公園の公園区域及び公園計画の変更についての諮問の1枚紙。資料1-1の別添としまして、冊子を置かせていただいております。もう一度、資料の山に戻っていただきまして、資料1-2が変更案の概要ということで、ホチキス止めをしております。その資料の下が資料1-3でございます。こちらは、西表石垣国立公園のカラーでの解説になっております。続きまして、その下でございますが、参考資料の1-1、こちらはパブリックコメントの実施結果についての資料をホチキス止めしております。

 続きまして、議事2でございますが、資料2-1といたしまして京都丹波高原国定公園の指定及び公園計画の決定についての諮問の1枚紙。この諮問につきましても、別冊で冊子になっておりますけれども、別添ということで公園計画書を配付させていただいております。また資料の山に戻っていただきまして、資料2-2といたしまして公園計画の決定(案)の概要というものが1枚紙でございます。その下の資料が資料2-3でございまして、京都丹波高原国定公園のカラーの解説でございます。その下が参考資料の2-1といたしまして、パブリックコメントの実施結果についてのホチキス止めの資料となっております。

 続きまして、その下が議事3の関係でございますが、えりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画の策定スケジュール(案)、これが1枚紙で資料3-1でございます。その次が資料3-2といたしまして、鳥獣管理計画の概要でございます。続きまして、資料3-3といたしまして管理計画の答申(案)、こちらがちょっと厚めの資料でホチキス止めしてございます。それから、その下が資料3-4で、意見の募集結果についてということでホチキス止め資料がございます。それから、次は参考資料ですけれども、参考資料3-1、これまでの取組の経緯の1枚紙、その下が参考資料3-2で、科学委員会の名簿でございます。その下が参考資料3-3で、管理事業実施計画の項目案が1枚紙でございます。

 次に議事4の関係でございますが、第四次環境基本計画の第4回点検に係る重点検討項目(案)の資料が1枚紙でございます。その下は参考資料でございます。参考資料4-1で、第四次環境基本計画の第4回点検(平成28年度)の進め方についてのホチキス止めの資料がございます。続きまして、参考資料4-2、こちらは生物多様性国家戦略2012-2020の達成に向けた一層の加速についての1枚紙でございます。その下が参考資料4-3、生物多様性国家戦略2012-2020における国別目標の評価が1枚紙でございます。その下が参考資料4-4で、平成27年度版環境白書から抜粋いたしました数値目標の達成状況でございます。

 それから、次のその下の資料でございますが、資料番号を振っておらず恐縮でございますが、議事5の関係で、生態系を活用した防災・減災に関する考え方の取りまとめについてという資料がホチキス止めでございます。こちらが、資料5-1に相当いたします。

 そして、最後でございますが、議事6の関係で資料6-1、こちらは生物多様性及び生態系サービスの総合評価報告書の取りまとめについてというホチキス止めの資料がございます。

資料は以上でございます。配付漏れ、落丁等ございましたら、事務局にお申し出いただければと存じます。

 次に、平成27年12月1日付で委員の交代がございましたので、ご報告させていただきます。一般社団法人大日本猟友会の高橋委員が退任されまして、後任に同じく一般社団法人大日本猟友会会長の佐々木委員が就任されておりますので、ご紹介させていただきます。

○佐々木委員:大日本猟友会の佐々木と申します。よろしくお願いいたします。

○司会:ありがとうございました。それでは、自然環境局長の奥主よりご挨拶を申し上げます。

○自然環境局長:自然環境局長の奥主でございます。

 本日は、お忙しい中、中央環境審議会自然環境部会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日の自然環境部会でございますが、四つの議題についてご審議いただきたいと考えております。

 議題の一つ目は、西表石垣国立公園の公園区域及び公園計画の変更についてでございます。本公園は平成24年3月に海域の大規模拡張を行っておりますが、今回、石垣島のサガリバナ群落や西表島の全島を公園区域とする内容の変更を考えております。

 議題の二つ目は、仮称ではございますが、京都丹波高原国定公園の指定及び公園計画の決定についてです。国定公園の新規指定は昨年3月に指定されました甑島国定公園に続くものであり、指定されると全国で57番目の国定公園となります。

 平成22年に公表されました国立・国定公園総点検事業におきまして、西表島は大規模拡張候補地、由良川及び桂川上中流域は国定公園の新規指定候補地に選定されております。今回、こうした評価も踏まえつつ、国立公園の大規模拡張及び国定公園の新規指定について、それぞれ諮問させていただいたものでございます。

 議題の三つ目でございますが、えりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画についてです。本計画案は、11月に当部会に諮問の後、12月に野生生物小委員会においてご審議いただきました。本日は、小委員会で取りまとめた案をパブリックコメントにかけ、その結果を反映させた答申案についてご審議いただきたいと考えております。

 議題の四つ目は、第四次環境基本計画の進捗状況の点検についてです。次年度にかけまして、環境基本計画の生物多様性分野に関する取組の点検の審議を行っていただきますが、今回、その重点検討項目についてご審議いただきたいと考えております。このほか、生態系を活用した防災・減災に関する考え方の取りまとめ、生物多様性及び生態系サービスの総合評価報告書の取りまとめについて、ご報告させていただきます。

 限られた時間ではございますけれども、本日は忌憚のないご意見をよろしくお願い申し上げます。

○司会:それでは、報道関係の皆様方、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。

 なお、委員の皆様方のお席にございますマイクでございますけれども、ご発言の際にはマイクスタンド中央のボタンを押していただきまして、ご発言が終わりましたらボタンを押して電源を切っていただくということでお願いいたします。

 それでは、これからの議事進行につきましては石井部会長にお願いしたいと存じます。石井部会長、よろしくお願いいたします。

○石井部会長:皆さん、おはようございます。部会長の石井でございます。今日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事次第に従い、進めさせていただきます。

 本日の部会は公開で行いますので、報道関係者や傍聴の方も同席しておられます。また、会議録は、後ほど事務局で作成し、本日、ご出席の委員の了承をいただいた上で公開することとなりますので、よろしくお願いいたします。なお、議事要旨につきましては、事務局で作成したものを私、部会長が了承した上で公開することをご了承いただきたいと思います。また、会議資料につきましても公開でございます。

 それでは、最初の議題ですが、諮問案件です。西表石垣国立公園の公園区域及び公園計画の変更についてということで、まず事務局からご説明をお願いいたします。

○国立公園課:環境省国立公園課の小林です。よろしくお願いいたします。

 一つ目の議題ですが、お手元の資料1-3をご覧いただければと思います。こちらは前面のスクリーンのほうにも投影しておりますので、そちらもあわせてご覧いただければと思います。

 一つ目の案件、西表石垣国立公園の公園区域及び公園計画の変更についてです。

 西表石垣国立公園は、沖縄本島から約430キロメートルほど南西に位置する、日本の国立公園としては最南端に位置しております。西表島や石垣島とその周辺の島々、それから石西礁湖を初めとするサンゴ群集から成る国立公園です。この公園のテーマ、主題というのは、「原生的な亜熱帯林とサンゴ礁の海」となっております。

 次に、この公園を代表する風景地の写真を幾つかご紹介させていただきたいと思います。テーマにもございますように、まずサンゴ礁の海、写真ですと左上のものになります。それから原生的な亜熱帯林ということで、ここは西表島の仲間川付近の亜熱帯照葉樹林やマングローブ林、それから河川や滝が映っております。また、西表島にはイリオモテヤマネコをはじめとする固有種など、多様な生き物が生息している、このような場所です。

 こちらは主に石垣島の自然の風景地になりますが、川平湾でしたり湿地の名蔵アンパル、それから、この米原と西表の2カ所の合計3カ所にしか群落がないというヤエヤマヤシ、またカンムリワシなどの生き物ですとか、そうした自然環境が見られるような国立公園となっております。

 このような西表石垣国立公園ですが、指定は昭和47年に西表国立公園として指定されております。その後、平成15年に全般的な見直し(再検討)を実施しまして、それまで未設定であった保護規制計画の地種区分の設定を行っております。平成19年には第1次点検ということで石垣地域を編入し、名称を西表石垣国立公園へ変更しております。平成24年には第2次点検を行いまして、鳩間島、波照間島を含める周辺の海域の編入というものを行っております。今回の変更は、第3次点検になります。変更内容については後ほどご説明させていただきますが、今回の変更案では、西表石垣国立公園全体としては面積が約1.3倍の12万ヘクタールほど、陸域が1.8倍、海域が1.1倍ほどの拡張案となっております。

 それでは、初めに、まず区域と保護規制計画についてご説明いたします。

 まず、西表島からです。西表島の今回の区域の背景です。現在、西表島は、島の中央と西側の辺り、島の大体3分の1が国立公園の区域になっております。この島に住む生き物の代表の一つとしてイリオモテヤマネコがあります。右下の図を見ていただけると、これがイリオモテヤマネコの確認地点になりますが、どうしても人が生活しているところとかで確認しているものが多いので道路沿いとかが多くはなっておりますが、島全体で確認されています。こういったことも含めまして、イリオモテヤマネコの生息密度としては内陸の山地部と沿岸低地部が同程度と推定され、島全体が生息環境と考えられております。そういった意味でも、西表島全域でのイリオモテヤマネコの生息環境の保護の強化という観点も必要かと考えております。

 また、西表島は森林が9割程を占めるような自然性が高い島でありまして、亜熱帯照葉樹林やマングローブ林、それから浦内川、仲間川をはじめとする大小の様々な自然度の高い河川や干潟、サンゴ礁、そういった多様な生態系が連続して全島的に見られ、そこに固有種をはじめとした多くの生き物が生きる、生物多様性の高い特徴的な自然環境が見られます。これは現在の公園区域と公園区域外を比べましても差はなく、そうした観点からも全島の保護強化というのが必要ではないかと考えております。

 また、平成25年には石垣島のほうに新石垣空港が開港されまして、それに伴い西表島の利用者も近年増加傾向になっております。今後も、こうした傾向は続く可能性がありますので、過剰利用への危惧もございます。こういう観点からも、保護の強化は必要ではないかと考えております。

 こうした背景を踏まえ、今回、西表島の陸域の保護の強化ということで、左上の図、こちらが現在の公園区域になりますが、島の中央部とやや西側の辺りが公園区域になっております。これを全島国立公園化することによって、公園区域の面積は約3倍の2万9,000ヘクタールになります。現在の景観を厳重に維持するため、オレンジ色の部分になりますが、特別保護地区は1,800ヘクタールを約2.5倍の4,600ヘクタールに拡張しています。また、極力、現在の景観を維持することが必要な第1種特別地域、現在の西表島にはございませんが、これを島の半分ほどの1万4,600ヘクタールまで拡張し、陸域の保全の強化を考えております。人々が住む集落地などは、大規模開発を防ぐことができる普通地域に設定することを予定しております。

 続きまして、次のスライドになりますが、西表島の陸域の幾つかの保護の強化についてのご説明です。先ほどありました、例えば特別保護地区、こういったところは、古見岳周辺の西表島でも亜熱帯照葉樹林が原生的な状態で残存していて、まさしく景観のコアとなっているような地域であり、イリオモテヤマネコをはじめとする希少な野生動植物の生息地ともなっております。また、この特別保護地区の周りの地域は、亜熱帯照葉樹林やマングローブ林、そういった多様な生態系のほか、貴重な野生動植物の生息地ともなっておりますので、極力、景観を維持するために第1種特別地域に予定しております。ここまでが西表島の陸域の保全の強化の説明です。

 続きまして、海域の保全強化についてです。

 今回、海域については、サンゴ群集がある場所、それから干潟など多様な生き物、底生生物が生息していてイリオモテヤマネコの餌場となっているような場所、そういった場所を新たに3カ所、新規に海域公園地区に設定します。また、既存の海域公園地区2カ所を拡張することを予定しております。新規が外離島、そのほか北側にある2カ所、小さいところですけど、大見謝とユツンというところです。それから、拡張するところが左上と右側のところです。これにより海域公園地区の面積は約1万6,000ヘクタールとなり、海域公園地区の数としては23カ所、これは日本の国立公園の中では最大の規模となります。こうした形で周辺の海域も、今回、保全の強化を図っていきたいと考えております。これが西表島と、その周辺の海域の保護のご説明になります。

 続きまして、石垣島の説明に移りたいと思います。次のスライドになります。

 石垣島の今回の変更ポイントとしては、サガリバナになります。サガリバナは常緑の木で、日本では南西諸島以南に自生していると確認されております。この花の特徴は、夜に花が咲いて朝には落ちることです。花言葉が「幸福に導く」とありますが、こういった神秘的な花でもあることから観光客に人気で、地元でもサガリバナは観光資源としてかなり注目されております。

 次のスライドの地図にありますが、赤い場所がサガリバナ群落になります。サガリバナの群落がある程度まとまって自生しているのが確認されているのは西表島と石垣島のごく限られた部分だけでありますが、石垣島の北側の平久保半島と呼ばれるところで、平成22年の調査において群落が発見されております。ここの特徴は、比較的アクセスがしやすくて見やすい場所にあるということです。平成22年の調査の際に既に発見されていたため調査対象となっておりませんが、地図のこの上の辺りにも、もう1カ所群落がございます。それについては、次のスライドでご説明いたします。

 石垣島の平久保半島で2カ所ほど群落が見つかっておりまして、今回この2カ所を公園に指定しようと考えております。1カ所目が平久保川沿い、こちらは第3種特別地域を予定しております。こちらは、地域の方が農作業中に偶然、サガリバナを発見いたしまして、それから、ここで地域の方々と保存会を結成し、自生しているサガリバナの群落を植樹したりなどして、現在、1,000本程度までに群落をつくり上げて保全しているというような場所です。そういったところを今回、公園区域に編入しまして、第3種特別地域に指定を予定しております。

 下側のほうは嘉良川流域、こちらは第1種特別地域に指定を予定しております。こちらは先ほど平成22年の調査で新たに見つかったような大群落でして、こちらは数が数万本程度もあるような、他には類を見ないような、かなりの規模の面積でサガリバナの群落が自生しておりますので、ここは極力、現在の景観を維持するために第1種特別地域に指定を予定しております。

 ここまでが公園区域と保護規制計画の説明になります。

 続きまして、事業計画です。

 こちらは、後ほど具体的な例示を用いてそれぞれの事業の分類ごとにご説明いたしますので、ここではこの図の見方だけご説明いたします。丸く黒で囲まれているのが、今回、新たに追加するものです。線についてですが、赤色の線は車道ですけれども、今回、新たに追加するものです。黄色の線が歩道で、こちらも、今回新たに追加するものになっております。こうした見方になっております。これは、また後ほどご説明いたしますので、先に進ませていただきます。

 まず、保護施設計画、事業の中でも保護の施設ですけれども、今回、自然再生施設が追加で2カ所、それから動物繁殖施設を1カ所追加することを予定しています。ここでは例示として、既に計画がある石西礁湖の自然再生施設でどのようなことをやっているかご紹介します。西表石垣国立公園ではサンゴ礁の景観も非常に重要な要素の一つですので、こういった生態系の保全再生をするために、自然再生の全体構想に基づきまして必要なモニタリング調査や、ここにありますような着床具を使ってサンゴを増やしていく、こうした再生事業を行っております。今回追加する2カ所につきましても、具体的な再生方法、そういったものについては、今後、必要な時に地域の方々や関係者と検討を行っていきますが、必要があった時にすぐに実行できるように、今回、あらかじめ計画に位置付けようと考えております。

 続きまして、単独施設、運輸施設とありますが、主に公園の自然探勝のために必要な計画となっております。今回、園地事業を追加で12カ所、野営場を追加で2カ所、削除は水泳場1カ所となっております。主に、西表島は今回、公園区域を拡張しますので、その拡張区域に対する計画が多いですが、ここの例示としては、先ほどご説明したサガリバナがあった平久保園地の追加について一つ例示として挙げております。

 先ほどご説明した平久保川のサガリバナ群落というのは、地域の方々が熱心に保全活動をしており、ここの写真にありますように地域の方が自ら石を運んで園路を整備して、ここを訪れるお客さんに見てもらおうと、そうしたおもてなしも行っているような場所でございます。これから国立公園になって、さらに保全と利用のバランスを図りながら進めていくために、今回、公園の計画にも位置づけようと考えております。

 その下、運輸施設、今回、追加で係留施設を13カ所ほど予定しております。係留施設というと、一般的に国立公園の中ですと船をとめる桟橋、そういったものが施設として計画されますが、ここでは海域公園地区内において、ここにあるような係留ブイという船を海上に止めるようなブイの設定を考えております。海域公園地区はサンゴ礁がかなりきれいに分布していますので、当然、ダイビングなどでも人気があります。そういったときに、船のアンカーで無秩序にサンゴ群集が破壊されないように、こういう船を止める場所というのを設定できるように、あらかじめ計画に位置づけておくものでございます。具体的な場所などは、今後、地域の方々やダイビング関係の方々と調整して決めていくことになりますが、あらかじめ、そういったときにすぐ対応ができるように、今回、計画に13カ所ほど、海域公園地区に位置づけておくことを予定しております。

 続きまして、道路計画についてです。今回、車道としては追加4路線です。こちらは、既存の道路を今回の公園区域の拡張に伴って、また、それ以外の理由もございますが、名蔵アンパルとかがそうですけれども、既存の道路を今回、公園計画に位置付けようと考えております。そして、歩道については追加3路線、こちらは、いずれも西表島の今回の公園区域の拡張に伴うもので、現在、エコツアーなどで使われているような路線について、今回、公園計画にも位置づけようということでございます。変更は公園区域の拡張に伴うものなどがございまして、削除は、現在利用がほとんどされておらず、今後も利用の見込みがないものを一つ削除しております。

 例示としては、これは西表島の車道ですけれども、白浜南風見線と呼びますが、県道215号線のことです。西表島の東側と西側を結ぶ幹線道路となっておりまして、当然、国立公園の探勝の観点からも非常に重要な場所ですが、残念ながらイリオモテヤマネコが車にひかれるなどの交通事故が起きてしまっております。そういったことから、イリオモテヤマネコの交通事故対策のため、ハード面では、モデル区間を設定し、注意喚起の看板の設置や、道路の下をヤマネコが通れるアンダーパスを設置しています。ソフト面では交通安全運動、そういったことを実施しながら利用と保全のバランスを図るような、そういった道路になっております。これを、今回の公園区域の拡張に伴って、公園計画にも位置付けようと予定しております。

 今、ご説明した道路は、この赤いところです。これが、白浜南風見線道路です。このように、西表島の半分を回るような形になっております。水色の丸というのが係留施設の部分です。こちらは、石垣島、先ほど説明した平久保の園地事業というのは、一番上のところになっております。黒枠で塗っているところが単独施設で追加するところでございます。

 ここまでが公園事業の計画についての説明です。

 最後にパブリックコメントの実施結果について、ご説明いたします。今回、ご意見としては35通ほどいただきまして、整理した意見数としては36件です。主な意見としましては、先ほどもありましたように、石垣島の嘉良川の第1種特別地域に指定するサガリバナ群落について、公園区域に含めることに賛成する意見と、含めることに反対するような意見が二分するような形でございました。これについては、地域の方々と再度調整し、石垣市のご意向も踏まえまして、今回は石垣市の公有地、市有地のみを第1種特別地域として指定することにしております。

 意見の内容については参考資料1-1に載せておりまして、今、申し上げましたサガリバナの話も参考資料1-1の別紙のところに図面もつけておりますので、あわせてご確認いただければと思います。

 時間の関係上、駆け足になってしまいましたが、以上で西表石垣国立公園の変更案についてのご説明を終わりにいたします。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。

○石井部会長:ありがとうございました。

 西表石垣国立公園の公園区域及び公園計画の変更について、事務局からご説明いただきました。それでは、ただいまのご説明についてご意見、ご質問を受けたいと思います。それでは、江﨑委員お願いします。

○江﨑委員:西表は視察に行かせていただきまして、それによって良く理解することができました。ありがとうございました。その際には気づかなかったのですが、係留施設ですけれども、1カ所というのは一つのブイのことを1カ所と言うのでしょうか。1カ所で一つのブイですと、多分1隻しかとめられないと思うので、今後のブイの利用の計画などについて地元の方とお話をされているのかどうか教えていただきたいなと思っております。

○石井部会長:ほかは、いかがでしょうか。それでは、中村委員、お願いします。

○中村委員:最後のパブリックコメントの結果を見ると、反対される方も随分おられて、結果的に、参考資料1-1の最後のページに書いてある別添の領域に変更したということですよね。それで、ちょっと気になるのは、これ、私有地なのでやむを得ないのかもしれませんが、川の上流域の部分が指定区域から外されており、そこで何らかの土地利用がなされると、第1種特別地域がきちんと保全されるのかどうなのかが若干心配なのですが、その辺についての状況を教えてください。

○石井部会長:深町委員、お願いします。

○深町委員:西表の歴史に関連することなのですが、観光等のサービス業関係の方が増えたのは1990年代以降ということで、もともと西表は第1次産業が中心であり、本来、それに携わる人々がここでずっと暮らし、農地や山の利用があったりした中で貴重な自然環境が保たれてきたというような、そういう位置付けだと思っています。里地里山の価値というのは環境省でも十分言っておられますし、そういう観点から見たときの島の評価というものや、あるいは管理のやり方など、本当の原生の自然環境だけではない部分について、どのような視点を持っておられるのかということについて教えてください。

 また、昔から第1次産業で暮らしてきた方と、観光やエコツアーというような形で外から移り住んだ方との、大ざっぱに言って二分されるようなところがあるというふうに聞いているのですが、そういうところの連携や繋がりの今後の見通しについて教えていただきたいと思います。

○石井部会長:磯部委員、お願いします。

○磯部委員:西表島について、全島公園化することは非常にいいことだと思いますし、それに加えて海域も広げるというのが非常に大事で、私の専門分野からいっても、特に海域は地形変化が激しいところですので、指定後は、是非モニタリングをしっかりと行っていただきたいというお願いです。言うに及ばず、干潟もありますし、それからサンゴ礫でできた島、バラス島と呼ばれているような島など、貴重な地形が様々あると思いますので、それらのモニタリングをしながら保全をしていくということを是非お願いしたいと思います。

○石井部会長:ありがとうございます。小泉(透)委員、お願いします。

○小泉(透)委員:私も、モニタリングについて意見を述べさせていただきたいと思います。まず、西表に関しましては、地元の皆さんと、それから環境省の皆さんの努力の賜物だというふうに高く評価させていただきたいと思います。特に、事業計画を見ますと、特別保護地区が第1種特別地域によって囲まれています。いわゆるオーソドックスな保護区の設定、そのとおりになっていまして、このような構成になるというのは日本では大変珍しいことで、この効果というのをこれからきちんと測定して、例えば奄美・琉球の地域にも適用していくというふうにしていただきたいと思います。

 それに比べますと、ちょっと事業計画の特別保護地区等に関する歩道の整備の状況があまり十分でないように思います。人が通るというだけではなくて、モニタリング調査、その他で使うために道路のネットワークが必要だというふうに思いますので、この点、ご検討いただければと思います。

 それから、パブリックコメントの22番に監視用のカメラを設置してはどうかという意見がありましたけれども、私の考えはちょっと違うのですが、こういった特別保護地区とか、そうしたところにもっとICTを導入して、自然環境の情報を無人で、かつ自動的に収集して取りまとめて評価するというようなことがあっていいのではないかというふうに思います。インフラ整備もありますので、すぐにはできないと思いますけど、こうしたことも少しご検討いただければと思います。以上です。

○石井部会長:ほかは、よろしいでしょうか。それでは幾つかご質問もありましたし、最後のほうはモニタリングも含めてご意見もございました。事務局のほうから、ご回答いただければと思います。よろしくお願いします。

○国立公園課:ご質問、ご意見、どうもありがとうございました。

 私から簡単にご説明、ご回答できることはご回答させていただき、詳細については後ほど、本日、現地の自然保護官が来ておりますので、状況については自然保護官からご説明させていただければと思います。

 まず、江﨑先生からいただきました係留施設の関係ですが、今回、公園計画としては海域公園地区に1カ所のような形になっておりますが、そこでブイが1個という限定はしておりません。今後、事業決定などの際に、どんな位置にどういった数、そういったことを考えていくことになっておりますので、そこは、おっしゃるとおり、今後の検討の状況で変わってくるということになっております。

 中村先生からいただいたサガリバナの上流域のお話については、調整の結果、公園外になってしまったところはあるのですけれども、区域から外れたところは、今後、絶対に区域にできないというわけではなくて、今回は時間の関係上、調整が整わなかった部分もありますので、地域の方々と引き続き調整していきたいというふうには考えております。そこの状況は、また後ほどご説明させていただきます。

 深町先生からいただいた里地里山の保全の関係でございますが、確かに今回、特別保護地区や第1種特別地域など、自然度が高いところがどうしてもクローズアップされているところがありますが、当然、周辺の普通地域であったり、それから第1種特別地域に予定しているところでも、イノシシ猟だったり地域の産業というのは今も行われているとは聞いておりますので、こうした方々の生業、そうしたものには配慮しながら今回の保護規制計画を考えてはおります。この件につきましても、後ほど、自然保護官よりご説明させていただきます。

 磯部先生、小泉(透)先生からモニタリングに関する御意見をいただいております。指定してそのまま放っておくというわけではなくて、現地には当然、自然保護官もおりますし、関連する自治体の方、それから保全団体や利用する観光業界の方々など、多くの方がいらっしゃいます。予算的なもの、人員的なものでなかなか難しい部分はありますが、ご懸念のようなことがないように引き続き状況を見続けて参ります。ICTの導入のご提案もいただきましたが、今はそういう時代にも来ていますので、今後、そういったことができないかどうかというのは検討の一つとして考えていきたいと思っております。

 それでは続きまして、自然保護官より、現地の状況について詳細をご説明いたします。

○自然保護官:石垣自然保護官事務所の若松です。

 12月には現地調査をいたしまして、石井部会長をはじめ、お越しいただきました委員の皆様、どうもありがとうございました。私のほうから簡単に、小林係長からの説明に補足させていただきます。

 まずは、江﨑先生からお話がありました係留施設ですけれども、実際、一つのブイで何隻かは係留できるようになっております。ただ、場所によっては船がたくさん集まるところも結構ございますので、数的な制限も考えながら、今後、何個ブイが必要なのか、地域でそういったことも調整しながら進めていきたいなというふうに考えております。

 続きまして、中村先生から上流域の保全が心配だということでお話をいただきましたけれども、こちらについては、実は、上流域もほぼ同じような環境になっておりまして、北部のほうの集落は入植してから大体60年くらい経っておりますが、ほとんど開発されていなかったところ、つまり田んぼや畑なんかだと結構厳しい土地条件、水利条件ということがございます。

 今、実際、ここで十数年前にゴルフ場計画がございまして、開発許可までこぎつけて、建設できるということになったのですが、業者のほうの資金繰りが悪化してしまい、できなくなってしまったということがございまして、そのままずっと今は止まっている状況です。地域の方からすると、一生懸命、開発許可も取ったので、何とかその可能性をまだ潰したくないという思いがございまして、そことの最終的な調整を、もうちょっと時間をかけてやる必要があるのかなという判断で、石垣市と今回は公有地のみの指定というふうに調整させていただきました。

 ただ、下のほうを第1種特別地域で押さえておりますし、おそらく、アセスの関係などでも、下流域が国立公園になっておりますので、なかなかゴルフ場というのも実際の土地状況を見ても難しいのかなというふうに考えておりまして、まず国立公園に指定する部分を含めて、エコツアーとか別の地域振興策というものを示して、地域の方のご理解というのを徐々に得られていければいいなというふうに考えております。

 続きまして、深町先生からのご意見です。1次産業と第3次産業の融合というか連携という部分ですけれども、石垣のほうでは、まさに農家さんがサガリバナ群落を発見して、そこが実は北部地域で、その部分について、何とか地域を生かすためには、こういったものができるんじゃないかというので始めたのが10年前からです。今、園路整備などもしておりまして、そういったような動きになっております。

 また、西表のほうでも、水田の復元をしながらヤマネコが住める環境をつくっていって、そういったところで西表の自然を体験してもらうというような考え方の方も何人かいらっしゃいまして、そういった動きも出てきていて、だんだん1次産業と第3次産業というのも融合しつつあるのかなというふうに思っております。今回、公園拡張ができた暁には、環境省も中間に立って何とか進めていきたいというふうに考えております。

 それから、磯部先生からありましたバラス島のモニタリングです。こちらは移動する島ということで、ただ、上陸できるところでもあるので、ダイビングやスノーケリングで重宝されている場所でございます。島のモニタリングについては、過剰利用が最近ひどくなってきているので、ダイビング業者でもそういったことについて自分たちも何かやらなきゃいけないという話が出ていますので、一緒に連携しながらやっていきたいというふうに考えております。

 最後、小泉(透)先生からのモニタリングの部分です。モニタリング自身は、環境省だけではなくて、林野庁さんもカメラを設置しておられますし、トラ・ゾウ保護基金とか民間団体のほうでも色々な調査をされています。また、琉球大学も一生懸命、いろんなところで調査をされていますので、現在、そうしたものの調査結果をまとめているところです。先生のアイデアはすごくおもしろいなと思っておりまして、ちょっと予算の関係もあるので、どこまでできるのかわからないですが、いろんなものを検討していきたいというふうに考えています。あと、モニタリングサイト1000もございますので、そういったものも、これから変えていきながら、最新の知見が効率的に把握できるような方法を考えていきたいなというふうに思っております。

 私からは以上でございます。

○石井部会長:ありがとうございました。事務局よりご説明いただきましたが、ほかはございませんでしょうか。

(なし)

○石井部会長:他にないようですので、お諮りいたします。西表石垣国立公園の公園区域及び公園計画の変更につきまして、諮問に添付された変更書のとおりとさせていただいてよろしいでしょうか。

(異議なし)

○石井部会長:異議なしと認めたいと思います。

 それでは、本件については適当と認めることとさせていただきます。ありがとうございました。

続きまして、2番目の諮問案件でございます。(仮称)京都丹波高原国定公園の指定及び公園計画の決定についてということで、まず事務局からご説明をお願いいたします。

○国立公園課:続きまして、お手元の資料2-3をご覧いただければと思います。こちらについても、前面のスクリーンに投影いたしますので、そちらもあわせてご覧いただければと思います。

 仮称でございますが、京都丹波高原国定公園の新規の指定及び公園計画の決定の案について、ご説明いたします。

 今回、指定を予定している国定公園の位置ですが、京都府のほぼ中央部に位置する場所でして、丹波高原と呼ばれるような山間地になっております。関係する地方公共団体としては、京都市、綾部市、南丹市、京丹波町の3市1町になっております。

 今回、指定を予定している区域の幾つか代表的な自然景観について、写真でご紹介します。こちらは芦生地域の写真で、こちらが八丁平湿原の写真ですけれども、比較的原生的自然度が高いような自然景観が見られる地域がある一方で、こちらの地域のように伝統的なかやぶき屋根の集落と、そのうちの植林地がマッチしているような景観でしたり、文化的な景観、それから河川沿いの集落や農地、里地里山的な人の手が入って利用されていくことで形成されてきた自然の風景地というのが一体となっているというのが、この地域の一つの大きな特徴となっております。

 次のスライドですけれども、今回、指定に至った背景でございますが、平成13年の京都府の広域緑地計画において、由良川・桂川上中流域になりますが、ここが自然公園の指定検討箇所として選定されたことが、まずきっかけになっております。その後、京都府を中心に調査や検討を行いながら、昨年、平成27年の9月に環境省に対して申し出が行われまして、その後、手続を進め、今回のご審議の場に至るという流れとなっております。

 続きまして、今回、指定を予定している地域の概要です。先ほどありましたように、由良川・桂川上中流域ということで、この二つの河川の上中流域に関連する地域です。由良川は、京都、滋賀、福井の3県の境界の辺りを源として、このように延びて日本海に注ぐ川ですけれども、延長が146キロメートル、流域面積が1,880平方キロメートルと、京都府面積の約40%を占めるような河川となっております。桂川は、京都市左京区の北方山地を源とする延長114キロメートル、流域面積が1,100平方キロメートル、淀川に注ぐ河川となっております。ここの真ん中が分水嶺になっております。

 このような河川のところには、オオサンショウウオといった両生類でしたり、オヤニラミ、アジメドジョウといった魚類、そういった生き物が生息し、また、ここの地図でもわかるように蛇行する箇所が多い場所でして、自然景観としての自然の河川の状態というのを保っているような河川の地域となっております。

 次に、植生の観点からこの地域を見ていきたいと思います。濃い緑色のところがブナクラス域、冷温帯の落葉広葉樹林ですけれども、それらの自然植生になっており、黄緑色がその代償植生、芦生や八丁平、それから頭巾山や長老ヶ岳、こういったところを囲むような形で、それらの自然植生、代償植生があり、真ん中あたり、こういったところが植林地やヤブツバキクラスの代償植生になっております。このように、地域全体で見ると植林地が多いというのも特徴になっております。

 もう一つ、この地域、次のスライドですけれども、人々の生活、それから文化・歴史というのが、ここにある自然環境とかなり関わりを持ちながら自然の風景地ができ上がってきたというのが特徴だということを先ほども申し上げましたが、実際、ここは京の都の生活・文化を支えてきた地域でございまして、そういったことからも、伝統的な行事、松上げでしたり、それから古屋の集落で有名ですけれども、トチの木の大木が何百本もありまして、先祖代々からの知恵と伝承を受け継ぎながらつくっているトチ餅や、最近の地域振興と関係もあると思いますが、トチの実おかき、ちまきザサを用いた厄よけちまきなどの伝統ある特産品、それから林業が盛んな地域でもありましたので北山杉と言った、そういう地域の自然環境と一体となった生活・歴史文化があります。

 それから、先ほどの写真でもあったような伝統的なかやぶき屋根を残すような集落が点在しています。ここの写真ではかやぶきの里を取り上げておりますが、それ以外の地域にもこういった集落が点在しているというのが特徴です。また、京の都を支えてきたという地域ですので、物流の拠点であったというような場所でもあります。このような人々の生活や歴史文化、そういったものを踏まえて形成されてきた自然環境の地域というのを、今回、一つのまとまりとして国定公園に指定することを予定しております。

 風景形式としては、スギやブナなどの原生的な自然林、芦生などがそうですけれども、それに隣接するような比較的自然度の高い二次林により形成される森林生態系、それから由良川、桂川をはじめとした河川、こういう河川生態系など多様な生態系がある中に一体となった文化的景観、そうしたものが相まって一つの傑出した自然の風景地を形成していると考えております。

 公園面積は、こちらにありますように約6万8,000ヘクタールほどで、特徴は私有地が98%ほどを占めるということです。関連する地方公共団体のそれぞれの面積内訳は、左下のとおりとなっております。テーマとしましては「森の京都~森・川・里に守り継ぐ自然と文化~」ということで、この地域の特色である、歴史、それから生活から成り立ってきた自然の風景地というのを今後も守り継いでいく、そういったテーマの国定公園と考えております。これが公園区域です。

 続きまして、保護規制計画についてご説明いたします。次のスライドですけれども、こちらをご覧いただきますと、紫色が第1種特別地域で、優れた自然環境を維持し、現在の景観を極力保護するような場所です。大部分を占めている、薄緑色の部分、ここが第3種特別地域で、自然資源の利用を通じて形成された連続した森林景観を引き続き維持するような場所です。林業が行われているような、そういった場所でもございます。こういった第3種特別地域が、かなり大部分を占めているというのも特徴的です。

 また、線上に、糸状になっている青いところ、網目状になっているのが普通地域です。ここは河川沿いですけれども、なぜ普通地域かというと、ここが人々の集落地、農地、そういった生活の場となっているからでございます。この地域は、繰り返しになりますが、人々の生活によって形成された地域というのも特徴の一つでございますので、そういった人々の生活が引き続き支障がないように行われていくということが非常に重要なポイントとなっておりますので、普通地域に指定することを予定しております。

 続きまして、幾つか保護規制計画の代表的な場所について、ご紹介させていただきます。今回、第1種特別地域に指定を予定している場所は、人々の生活が入るような場所でも、比較的原生的な自然環境が残っているような森林地域や高層湿原など、今後も極力自然の景観を保護していく場所でございます。代表的な例として、芦生地域がございます。こちらは由良川源流部に位置する比較的自然度が高い地域でありまして、冷温帯に属する自然林としては西日本屈指の規模で分布しております。また、ニッコウキスゲなど氷河期の遺存種、そういった多くの希少種が生息しているような場所でございます。この一帯は芦生研究林ということで、京都大学が地上権を持って管理している場所です。

 今回、この芦生研究林、保護規制計画を考える上では、当然、研究林としての活動、そういったものもありますので、研究林としての活動との調整を踏まえながら、第1種、第2種、第3種、そういった地種区分を考えております。一方で、芦生研究林、京都大学の管理となっておりまして、入林には管理者である京都大学の許可が必要となっておりますので、第1種から第3種を含めまして、許可が必要というのは、国定公園に指定されたとしても、指定以降も取り扱いが変わることはなく、今回、自然公園法の法的な規制の強化も図られて、さらに保全が強化されるものと考えております。

 続きまして、八丁平湿原のほうですけれども、こちらは京都市と滋賀県の境に位置する、約3万年前の最終氷期最盛期から形成されてきたと考えられる高層湿原です。日本の重要湿地500にも選ばれている場所であり、ハッチョウトンボをはじめとした希少な昆虫類も生息しておりますので、ここについても現在の景観を極力維持するために第1種特別地域に指定して保全を図っていこうと考えております。

 先ほどの保護規制計画全体の図でもご覧いただいたように、第3種特別地域であったり、普通地域、また第2種特別地域、こういった人々と自然との関わりの中で形成されてきたような場所、写真で幾つか載せておりますが、こういったところについては、引き続き人々が生活を行ううえで、また管理を行ううえで支障がなく、そして大規模開発など、そういったものは規制がかかるような、きめ細やかな地種区分を設定して管理していこうというところでございます。

 ここまでが保護規制計画のご説明です。

 続きまして、事業計画です。ここにありますように、今回、赤いところが車道、緑色が歩道、黄色が園地になっております。車道は、既に整備されている道の中で、今回の国定公園の探勝の観点から考えた際に、アクセスの良さや到達のしやすさ、そういったものを考えながら設定して、必要なものを公園計画にも位置付けようと考えております。また、歩道については、近畿自然歩道をはじめとして既にたくさんの登山道や歩道、そういったものが存在しておりますので、その中で今回の国定公園の探勝に必要な場所、そういったところを地域の方々と調整しながら選定しているというところでございます。また、それぞれ歩道沿いや車道沿いをメインに黄色い記号がありますが、それぞれの探勝ポイント、既に施設があるような場所が多ございますが、そういったところに園地計画を位置付け、公園利用の探勝のポイントとして活用していきたいと考えております。

 続きまして、名称についてです。現在、仮称ということで、京都丹波高原国定公園とさせていただいております。地元調整時の際には、対案として京都丹波美山国定公園という案もございました。名称は当然、その公園を表す重要なものでございますので、どういった名称がよいかについては、京都府さんが中心となって地元の市や町等も含めまして調整を進めていき、四角い枠で囲ってあるような観点から、最終的には京都丹波高原国定公園がよいのではないかということで申し出を受けております。環境省としても京都府さんのそういった思いを尊重しまして、これを仮称としておりますが、実際、これが適切かどうかということにつきましても、今回、ご審議いただければと思っております。

 最後に、パブリックコメントの実施結果についてご説明いたします。今回、意見としては合計で21通、整理した意見としては42件ございます。参考資料は2-1のとおりとなっております。主な意見としては、名称に関する意見というのが9件ほどありましたが、それについては先ほどご説明しましたとおり調整して、現時点では仮称として京都丹波高原国定公園がよいのではないかという形でさせていただいているところです。

 また、ご意見として多かったのが、芦生地域や八丁平など、第1種特別地域を予定している地域について、今も比較的原生的な自然環境が残っておりますが、今後、過剰利用などにより失われるのではないかといったご心配をされるご意見、それから施設整備に関して、過剰な施設整備がされて、それが、さらに自然の環境の悪化につながるのではないかというようなご心配をされる意見や、今後の管理のあり方に関してご意見をいただいております。

 当然、守るべきところは今回も引き続き守っていきたいと考えておりますし、大部分を占める人々の生活で成り立ってきたところというのは、人々の生活で今後も引き続き維持していく必要があると考えており、めり張りのある管理というのは引き続き必要になってくると思っております。

 また、施設整備についても、今後、過剰な施設整備というのを予定しているというふうには聞いておりませんので、自然環境に十分配慮しながら、過剰・不要な施設整備は行わずに、必要最小限でバランスをとりながら、様々な声を聞きながら今後の管理について検討していくものと聞いております。

 いろいろ意見をいただきましたので、今後の公園の管理など、そういったものにも参考にさせていただきたいというふうに考えております。

 こちらも駆け足になりましたが、以上で説明を終わりにいたします。よろしくお願いいたします。

○石井部会長:ご説明ありがとうございました。

ただいまご説明がありました(仮称)京都丹波高原国定公園の指定及び公園計画の決定について、現在は仮称のようですけれども、名称についてもご意見を伺えればということでございます。

それでは、ご意見、ご質問がございましたらお願いいたします。佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員:地元猟友会から聞いたのですが、指定予定の公園内は、だいぶシカによる食害が出ているということを言っておられました。状況はどうなのか。今後、どういう方向でこの対策に取り組もうとしているのか。私も現地へ行っていないのでわからないのですが、是非早めに手を打ってもらいたいなという思いで質問いたしました。よろしくお願いします。

○石井部会長:中静委員、お願いします。

○中静委員:一つは、佐々木委員がおっしゃったことと同じで、二十年ぐらい前からシカの害がかなり顕著になってきている場所だと思うのですが、それに対して、特別地域で何か対策をお考えなのかどうかということが1点です。

 それと、もう一つは、芦生の特別地域ですが、第1種特別地域になるのが演習林の中がかなり多いと先ほどご説明がありましたけれど、研究用の実験の計画も多分あると思うのですが、それは考慮されて区分けをきちんとされているのかどうなのか、もう少し詳しくご説明いただければというふうに思いました。以上です。

○石井部会長:深町委員、お願いします。

○深町委員:私のほうは、研究のフィールドということで、長年この地域には関わってきておりましたので、こういった暮らしとか生業が中心となった地域を広域に、文化や自然の価値をしっかりと踏まえて指定していただくというのは、とても意義のあることだと考えております。

 一方で、非常に広域であり、地域ごとに非常に状況が違うので、大きなところからは把握していただいているのですが、本当に地域の深くに入らないとわからない情報だとか現状というのがありますので、引き続き、しっかりとした調査や地域の関係者の方と連携をとった形での運営というか、そういう部分が大事だと思うのですが、その辺について、どのようなことを具体的に考えておられるかということです。

 また、道とか川のつながりというのが、京都や若狭などではとても大事なので、色々今までも歩道でつないでというのはあったのですが、なかなか管理だとか適正な利用というところが大きな課題になっていると思うので、その部分をどういった形で対処していくかというところも、あわせてお伺いしたいと思います。

○石井部会長:では、下村委員、お願いします。

○下村委員:今日の審議とは少しずれるのですが、今回の国定公園、二次的な自然環境と人の営みとの関係のすばらしさというようなことがかなり大きなテーマになっているということと、それから、パブリックコメントを見せていただくと、公園計画について、かなりいろんなご質問、ご意見が多いです。

 それで、利用の計画などもそうですが、おそらく、これから地域と協働で管理をしていくということや、それからソフトの側面、プログラムですね、そういった面が非常に重要になってくると思うのですが、そのあたりのところは公園計画の中では非常に反映することが難しくて、国立公園に関しても、一昨年、協働型運営管理のあり方の報告書にもありましたけれども、管理計画の中でそういった点をカバーしていく必要があると思うのですが、国定公園の管理計画、おそらく京都府が中心になられるんじゃないかと思うのですけれども、どういう位置付けで、環境省はどのように関与をされ得るのかというか、あるいは、関与されようとされているかというあたりについて、お伺いをしておきたいというふうに思います。

 もし、あまり口を出せないとすると、ここでコメントするのが最後になるのかもしれませんので、しっかり管理計画を立てていただきたいというあたりは議事録に載せていただいたほうがよろしいかというふうに思います。以上です。

○石井部会長:それでは、江﨑委員、お願いします。

○江﨑委員:今年度、こちらの地域では全国エコツーリズム大会が行われまして、私もちょっとお邪魔させていただきましたが。残念ながら、このエリアをたくさん見ているわけではないのですが。そんな中で、芦生の森などでも研究のうえでほぼ自然なまま手をつけず、倒木があっても、そのままで、そういう自然のままというふうにされている中で、安全上の問題などもあるでしょうけれども、少しエコツアーをやっていただいたりとか、そういう地域資源としての活用も考えておられるのかなと地域のほうで思いました。皆さんが地域振興を考えられていると思いますし、保護をするからこそ地域振興にもつながると思います。深町先生のことにも関連すると思いますが、本当に人口も減ってきているという部分もあるので、この機会を地域振興につなげていただけるように、よろしくお願いいたします。

○石井部会長:ありがとうございます。中村委員、お願いします。

○中村委員:里地里山的なものを国定公園として考えていくという新たな試みですし、将来的には日本のランドスケープを守るためにはすごく重要だと思うので、よい方向性だと私は思います。

ただし、新しいことに取り組むということで、幾つか懸念があり、皆さんが言っておられたことと大分重なるところもあるのですが、例えば、芦生の演習林について、研究林として維持してきた京都大学が、様々なすばらしい研究をされている。そうした研究があるからこそ、そこの自然の営みがわかってきたというのも事実だと思いますし、また、それが知識として、もしくは、その場所の知恵として受け継がれてきたと思いますので、さっき中静委員がおっしゃられたような、今まで研究でやってきたことがきちんと担保されていくのか、この指定によってどのぐらい制限を受けてしまうかというのは、京都大学のメンバー、もしくは、そこを使っている他大学のメンバーも非常に気にされていると思います。その辺がどうなのかということと、さらに過剰に人が入ってしまうことによって、演習林の運営がとても大変なことになるということも逆に考えられるので、そういった部分がうまく調整できるのか。これからなのかもしれませんが、できれば、そうした調整をする組織というか、そういう話し合いの場が1回だけでなく常に持たれ、問題が発生したら常に議論できる場があればよいと感じました。

 あとは、先ほどおっしゃられたように、人口減少でランドスケープが変わっていく可能性もあると私も思っています。シカの問題も含めてですけれども、そうした時に、どのように国定公園を保全していくかということについて、地域の自治体も含めて、環境省が何らかの形で応援していかなければならないと思います。そういう意味では、ガバナンスの問題も含めて、どうやって国定公園を将来に向かって管理していくかということ、そういう議論が必要だと思います。もし、その辺で何か考え方があれば教えてください。以上です。

○石井部会長:それでは、三浦委員、お願いします。

○三浦委員:私も多くの意見に重ねたいと思いますけれども、一つは、随分前から既にシカのインパクトが非常に生態系全体に対してひどい地域で、国定公園の指定、特に特別地域の場所と、それから京都府が策定している第2種特定鳥獣の管理計画との重ね具合はどうなっているのか。果たして、全体として、この生態系をどういう方向に持っていくのかということとの整合性があるかどうかというところが一つです。

 それから、もう一つは、これも研究林としてこれまで続けてきた場所を、国定公園ですから主要な管理は県になっていくわけですけれども、そういうところに環境省の国立公園を含めた管理姿勢というか方向性をどう重ねることができるのかという、この2点について、ちょっと確認をお願いしたいなというふうに思います。ありがとうございます。

○石井部会長:それでは、涌井委員、お願いいたします。

○涌井委員:里地里山を含む国定公園の指定とか、あるいは公園計画の端緒を開いたというのは非常に意味があると思います。ですが、従前の国立公園や国定公園のような保護にウェイトを置くだけでなくて、それを維持するための社会システムをどうやって活力ある形に維持していくのかということが非常に重要で、そのあたりの計画論、これをどうやって関係諸官庁ないしは公共団体ときちっと詰めながらやっていくのかということが、実は、これを指定した意義を将来損ねてしまう可能性もあるので、そのあたりに留意をしてほしいというお願いです。

○石井部会長:ありがとうございます。それでは、小泉武栄委員、お願いいたします。

○小泉(武)委員:ここが国定公園になるのは、とても良いことで、高く評価したいと思います。問題は一つ、里地里山的なところと、研究林の芦生の森との間に段差があり過ぎることです。芦生の森の管理は、今まで京都大学がやってきたのですが、京都大学の研究林のほうからずっと上がっていくと朽木谷のほうに出ます。すると、そこには観光客や登山者がたくさん入ってきています。京都大学の人にあれはどうなっているのですかと聞いたら、みんな勝手に入ってくるので、これは仕方がないと言われました。

 その辺だけだったら問題は少ないのですが、国定公園化に伴って観光客がどんどん研究林の中まで入ってくると、研究上の問題も出てきますし、盗掘など自然保護上の問題も出てきます。もう一つ私が危惧しているのは安全の問題です。研究林の中は地形が複雑で迷いやすいし、危険な場所も多いです。全体としては谷が険しいところと平らなところが交互に出てきますが、結構危ないところもあるので、要注意です。人がどんどん入ってくれればいいとはとても言えません。

 以上のように自然保護や安全上のことを考えると、登山道や標識の整備のほかに、どこかで何らかの入林規制をしていかないと、将来、問題が生じるのではないかと思います。その辺をご検討いただきたいです。

○石井部会長:では、佐藤委員、お願いいたします。

○佐藤委員:関西に住んでおりますので、この辺りのことは何となくわかっていて、いろんなところに行ったこともあります。今回の指定は大変すばらしいことだと思います。

 名前ですけれども、美山を入れたほうがいいとか入れないほうがいいとか、いろいろ多分ご意見があると思いますが、美山というのは、もうかなり知られた、一種、観光地的なところがあって、かなり人も増えています。そういう意味では、自然そのものというよりは観光スポットとして、関西ではよく行かれるような場所になっていますので、逆に、ここが入ってしまうと、そこのイメージにすごく引っ張られてしまうんじゃないかなと思います。逆に、1200年の都、京都の生活・文化を支えてきた全体としての地域という意味では、今回のネーミングのほうが、より広くて、逆にいろんなものをイメージできるのではないかなと思います。その中に美山が入っていることは、とてもすばらしいことだと思いますけど。そういう意味で、こういう逆に大きな名前になったことによって、今回の国定公園の意味が、より明確になったのではないかというふうに思います。

○石井部会長:たくさんのご意見をいただきました。それでは、事務局、よろしくお願いいたします。

○国立公園課長:国立公園課長の岡本でございます。

 ご審議、ありがとうございます。総論部分について、私のほうからお答えさせていただきまして、細かい点については、今日、京都府さんがいらっしゃっておりますので、今後の管理、それからシカの現状等について、お答えいただければというふうに思っております。

 お一人お一人ですと少し時間がかかってしまいますので、私のほうは幾つか、今、ご意見をいただいた中で、特にシカの被害と公園計画との関係でございますけれども、ご意見もいただきましたように、京都府さんのほうで長年、特定管理計画、シカの計画を他府県に先んじて調整をされて、モデルとなってきているところだと思っております。

 今回、第1種特別地域等の指定もしていきますけれども、シカの捕獲と公園の規制につきましては矛盾をするものはないというふうに考えております。特に今回、人の暮らしがあってこそという国定公園でございますので、シカの影響、芦生については生態系への影響が過剰に出ないように、シカの捕獲等も積極的に行っていくということで、そこは公園の計画とは特に矛盾なく進めていっていただけるというふうに考えております。

 また、地元との連携、それから新しいタイプの国定公園ということで、今後、どういうふうにそれを考えていくかといったご意見でございます。私どもも一つの実験的な取組というふうに思っておりまして、先ほどの西表国立公園のように非常に原生的な国立公園、それから人の関わりによって生まれてきた景観や、そういう中で育まれた自然。この二つ目のほうは、里地里山問題でも非常に難しい問題がございますけれども、特に今回、京都府さんが国定公園にしたいというふうに思われた一つのきっかけは、まさにそこにあるというふうに思っております。

 国定公園ということでその光を当てて、地域の今までのいろんな産業や文化ということにもう一回光を当て直して、その外の人たちとの協働であったり、部分的には、先ほど深町委員からもお話がありましたけれども、そういった取組が集落で行われてきつつありますが、それを国定公園のそれぞれの地域の実情に合わせて光を当てていけないか。そのために、例えばエコツーリズムであったり、文化に対してもう一度光を当てる。あるいは林業に対して新しい考え方での都市との関わりを考えていく、そういうような一つの実験場ともなれないかというふうに考えております。

 この点につきましては、今後、京都府さんとも、またいろんな情報をいただきながら、管理のほうは京都府さんの自治事務ということになりますけれども、全国の一つのモデルということでもあると思いますので、連携をとっていきたいというふうに考えております。

 それと、研究林との関係でございます。大学の演習林・研究林が丸ごとその自然公園に入るというのは、あまり例が今までなかったかというふうに思います。今回、後ほど京都府さんからもお話があるかと思いますが、京都府さんが非常に念入りに京都大学のほうと調整を図られまして、お互いにメリットがあるということで同意をいただいております。

 先ほど西表のほうでもご意見をいただきましたが、モニタリングの関係も非常に大事だと思っていますけれども、特に今回は自然公園、国立・国定公園とその大学の研究ということをうまく今後どうマッチさせていくか。お互いにいい影響を与えていけることができるかということの、一つのモデルともなっていくのではないかと思っております。

 そういった点に大変期待をしておりますし、中村委員からもご意見をいただきましたように、そのためには日頃からのお互いの情報交換・意見交換というのが必要になってくると思います。ほかの公園でも、大学との連携というのは図らせていただいているところはございますけれども、そういう中でも、大学の管理・所有される演習林という、新たな観点で連携をさらに図っていければというふうに思っております。私からは、以上でございます。

○京都府環境部:京都府環境部の森田でございます。

 若干、補足説明をさせていただきます。何点かございましたのを、まとめてご説明したいと思います。

 まず、京都大学との問題でございます。ご指摘がございましたように、研究との関係がどうなるんだということでありますけれども、この研究林には、未届け、入林届けを出さずに入られて来られる方が後を絶たない状況になっておりまして、京都府側からも入っていらっしゃいますし、当然、滋賀県域からも多くの方が入って、あるいは遭難とか、そういったことがございます。実は、京都大学では、こういうところにかなり手をとられておりまして、研究に時間を割けないといったような課題があるとお聞きしております。

 このような中で、今回、国定公園に指定いただくに当たりまして、2年ほど前から、京都大学、それから地元の土地の財産区の管理役員会、あるいは芦生山の家の関係者、さらには国定公園の区域ではございませんが、滋賀県側の関係者と一緒に、協議会形式でここをどうしていくかということを十分議論いたしまして、我々は地域のプラットホームというふうに呼んでおりますけれども、引き続きこういう枠組みを維持しながら、賢い利用の仕方、ワイズユースというような形で、研究林の研究とその適正な利用が両立できるような形を地域の皆様とつくっていこうということで、現在も話を進めております。この部分につきましては、京都府の単独事業としてソフト予算も計上いたしまして、引き続きやっていきたいなというふうに考えております。

 二つ目が、地域の管理をどうしていくんだという、ガバナンスを含めた問題でございますけれども、この地域は、例に漏れず過疎化・高齢化が相当厳しいところでございます。そういった中で、自然との関わりが希薄化したことによる自然の劣化というのも一方で見られるわけでございまして、今回、国定公園の指定を契機に、自然とのつながりをもう一度見直していこうということを考えております。

 特に、私たちが大きな宝といたしたいのは、京都大学の研究があるということでございます。シカ狩りにいたしましても、現在、京都大学で、シカの進入を完全に防御した形のところとそれ以外のところという対照区をつくりまして、防御したところについて、どのように植生が回復するのかといった研究もされております。

 こういう研究値、学術値と地元の方が昔からやってこられた経験値を合わせて、自然の管理をどうしていけばいいかということを、先ほどのプラットホームを中心に検討していきたいなというふうに思っております。

 昨年の秋、石井部会長をはじめ、委員の皆様に現地をご覧いただきました際、残念ながら川のところを十分ご覧いただけなかったのですが、この地域の川沿いに農地が広がっておりまして、既に圃場整備がされております。通常、圃場整備をいたしますと、農地面積を最大化いたしますので、川沿いというのは小さな畦畔といいますか、畦道のようなものしかつけないのですけれども、この地域の方は川との関わりをしっかりつくっていこうということで、農地を減らして管理道をつけられております。川とのつながりをきっちり持っていくんだということで、そのような公共工事のやり方も含めて既にやられておりまして、やはりこの地域の方々のこういった知恵をもう一度、我々も公共事業を執行する側としてもきちんと受け止めて、管理のシステムをつくっていきたいなというふうに思っております。

 三つ目が、地域振興の関係で、当然、エコツーリズムといった観光面の取組も、地域の方は期待しておられるわけでありますけれども、これが過剰になりますと、やはりデメリットがございます。そういう意味では、ワイズユース、どういった形でご利用いただけるのか、あるいはどういった形でこの地域の自然を理解いただくのかということが重要かと思っておりまして、こういったことにつきましても、今後、国定公園になりましたら、京都大学さんの研究なんかとも十分連携しながら、日本のモデルとなるような形で、管理を含めて進めていきたいというふうに思っております。以上でございます。

○石井部会長:ありがとうございました。

 ほかにはございませんでしょうか。たくさんの意見をいただきました。その中でも、特にシカの問題、それから里地としての今後の活用・利用の問題ですね。それから、芦生の原生的な自然の保護に関すること等がございました。このような意見を踏まえまして、進めていただきますようお願いしたいと思います。

 また、名称につきましても、1点だけ佐藤先生のほうからご意見がありまして、この名称でよいのではないかということでした。特に、ほかの委員からはございませんでしたので、この名称で良いかと思います。

 大きな修正はなかったと思いますので、お諮りしたいと思います。

 ご提案の(仮称)京都丹波高原国定公園の指定及び公園計画の決定について、諮問に添付された指定書及び計画書のとおりとすることでご異議ございませんでしょうか。

(異議なし)

○石井部会長:ご異議ないということで、よろしいですね。では、本件につきまして、適当と認めることとさせていただきます。

 では、続きまして、審議事項が2件となります。1件目が、えりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画についてということでございます。事務局から、まずご説明をお願いいたします。

○野生生物課:野生生物課鳥獣保護管理室の根上と申します。座って、失礼させていただきます。

 お手元の資料をもとに、ご説明をさせていただきたいと思います。まず、資料の3-1をご覧ください。

 本計画案は、昨年の11月11日に中央環境審議会に諮問し、本部会に付議されまして、12月17日に野生小委員会においてご審議をいただきました。11月の部会において、もう一度部会で説明させていただきまして、その了承をもって、答申という形にさせていただく流れになっております。

 参考資料の3-1のほうをまずご覧いただき、簡単にこれまでの取組の経緯をご説明させていただきます。

 平成27年度までは、特定鳥獣保護管理計画に準ずる計画としまして、環境省えりも地域ゼニガタアザラシ保護管理計画を検討会や地元の調整を経て策定しまして、被害防除対策とゼニガタアザラシの存続可能性の評価を実施いたしました。また、環境研究総合推進費ですとか、えりも自然保護官事務所の設置などによりまして、行政、研究者、地元と連携しながら、アザラシやその被害防除の知見を集積できる体制が整ってまいりました。

 平成27年5月に改正鳥獣法が施行されまして、法定計画が策定できるようになりまして、特定希少鳥獣管理計画の策定を科学委員会と保護管理協議会で行ってまいりました。

科学委員会と保護管理協議会の構成につきまして、参考資料の3-2をご覧ください。この構成については、前回の部会で小泉委員からもご質問をいただきましたが、科学委員会はこちらの記載の研究者で構成しております。

 一方、保護管理協議会のほうは、行政機関、えりも漁協などの漁業団体、また商工会や観光協会等の関係団体で構成しております。前回の部会の際、江﨑委員にも、観光活用の部分でご助言をいただきました。それに関しても、保護管理協議会で検討していければと考えております。

 資料の3-1に戻っていただきまして、この計画案を利害関係人の意見聴取と関係地方公共団体と協議を行いまして、野生小委員会でご審議いただき、その後パブリックコメントを経まして、本日当部会への答申となりました。

 また、後でご説明します法定計画ではないんですけれども、この管理計画に基づき定める事業実施計画に関しましても、並行で地元と専門家と調整しておりまして、本計画策定後に、4月に保護管理協議会で決定したいと考えております。

 それでは、計画案についてご説明させていただきます。計画案本体は資料3-3になりますけれども、資料の3-2の概要をもとにご説明させていただきたいと思います。

 まず、計画策定の背景ですけれども、これまでご説明しました経緯から計画策定に至っております。

 次に、計画の目的ですけれども、この部分は科学委員会や地元から、絶滅危惧種に逆戻りさせない、また漁業の存続も視野にというご意見等から、このように記載しております。

計画の期間に関しましては、将来の見直しも視野に、3年間で設定しております。

 次に、管理の目標ですけれども、まず(1)ですが、これまでの定置網の改良は一定の効果を得ておりますが、個体数の増加ですとか、分布域の拡大によりまして、タコ漁などの他の漁業被害が深刻になっていることがわかってまいりましたので、漁業被害を軽減するために捕獲を実施することとしております。

 ただし、個体群の存続可能性を保証すべく、絶滅危惧種の一つの基準であります、100年以内に絶滅する確率が10%未満となるよう留意することとしております。ここが最低ラインとなります。

 この部分は、前回の岡委員からもご質問をいただいた部分ですけれども、現時点では具体的に何頭が適正であるかということを言えるだけの十分なデータがそろっておりませんので、将来の適正な個体群管理に向けまして、必要な情報を収集し、計画を見直すこととしております。

 当面は、絶滅危惧種の基準に抵触しない範囲で捕獲上限数を設定いたしまして、その範囲内で(2)の被害防除と組み合わせて対応していきたいと考えております。取組を進めながら、データをとって見直しを行っていきたいと考えております。

 また、本計画内では、具体的数値等を記載しておりませんが、本計画では大きな方針のみを記載させていただきまして、この方針に基づき策定する事業実施計画の中で捕獲上限数等を含めまして、毎年度実施する具体的な取組について記載する予定です。それを毎年見直しまして、順応的管理を行っていきたいと考えております。

 また(2)では、被害防除手法の改良により漁業被害の軽減を図ることとしております。

 次に、管理のための方策に関する事項ですけれども、サケ定置網の被害というのは、網にアザラシが入りましてサケを食べるというものですけれども、混獲される個体の多くは経験が浅く、サケを食べない幼獣個体となっております。

 一方で、サケを食べている亜成獣以上の個体は、うまく網から抜け出せるよう学習しております。そのため、これらの常習個体を選択的に捕獲する手法を確立することによりまして、むやみに捕獲するのではなく、被害を軽減できる効果が高いと考えております。

 次に、被害防除対策に関する事項ですけれども、こちらは漁網と音波忌避装置の改良を記載しております。これらは以前から行っておりまして、計画本体の参考資料にこれまで検討結果を記載しております。

 次に、その他必要な事項ですけれども、(1)では、生息環境や海洋資源、また地域社会との関わりから、ゼニガタアザラシがこの地域で存続するための環境について検討することとしております。

 次に、(2)のモニタリングに関する事項を定めておりまして、管理の効果を検証しまして、順応的管理を行うためにモニタリング項目を決めまして、継続的な調査を実施することとしております。

 さらに(3)としまして、毎年度の事業実施計画を定めて事業を実施しまして、その結果を次年度の計画に反映することとしております。

 参考の資料の3-3をご覧いただきたいのですが、こちらは、平成28年度の事業実施計画の(項目案)となっております。今後、専門家や地元と調整しながら、被害防除対策、個体群管理、モニタリング等の具体的手法等について詰めていきたいと考えております。

 また、資料3-2に戻りまして、最後の計画の実施体制に関する事項に関しましては、主に関係機関との連携、情報交換について記載しております。

 次に、資料の3-4をご覧いただきたいのですが、こちらはパブリックコメントの結果になります。意見提出者数は4件になりまして、意見の要約とその回答について資料3-4の別表に記載しております。

 ご意見を反映した箇所を、資料3-3の計画案本体に赤字で記載しております。誤字等の修正のほか、別表の№3の対策やモニタリングを継続的に行う仕組みづくりを計画に加えるというご意見に関しましては、資料3-3の9ページの29行目に「本計画終了後も、長期継続的な取組とその体制を構築・維持していくことが重要」との文言を追記しております。

 次に、別表の№16の「何のために希少鳥獣の管理を行うのかを明記すべき」とのご意見についても、既に計画の背景の部分に記載しているんですけれども、さらに根本的な部分としまして、3ページの35行目からの文章に、基本指針に基づきまして「生物多様性の確保等」の文言を追記しています。

 また、別表№20の希少種管理の意義等に関し、国民の理解を深めるよう努めるべきとのご意見については、引き続き、科学委員会やシンポジウム等を通じて、国民の理解を得るよう努めてまいりますので、資料3-3の10ページの1行目にその文言を追記いたしました。

 その他細かいご指摘部分に関しましては、事業実施計画作成時の参考とさせていただくこととしております。以上になります。

○石井部会長:ご説明ありがとうございました。

 では、ただいまのえりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画について、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。

 それでは、岡委員、お願いします。

○岡委員:管理計画の7の方策に関する事項を読むと、定置網に執着している亜成獣以上の個体を選択的に捕獲するとなっています。これは技術を開発するということだけなのかもしれませんが、これだけを読むと、選択的でない捕獲というのは、つまり個体数を減らすための、必ずしも選択的でない捕獲というのはやるのかやらないのか、ちょっと不明確というか、わかりにくくなっているように思いますが、そこはどうなんでしょうか。

○石井部会長:ありがとうございます。それでは、引き続き、小泉(透)委員、お願いします。

○小泉(透)委員:今の岡委員の指摘に、若干関連いたします。科学委員会の機能について、教えていただきたいと思います。

 今ご説明いただいたところですと、科学委員会は種の存続を評価するということが主な仕事になっているように思いますが、本件の場合、数を減らすための捕獲を行うということもオプションとして入っているわけで、この点についても、科学委員会では、捕獲の原則、いわゆる安全な捕獲、確実な捕獲、効率的な捕獲、効果的な捕獲といったような視点について、きちんと捕獲の進め方についても検討していただきたいと思います。

 資料3-3の38ページ、最後のページを見ますと、幼獣1頭を捕獲することに成功したというふうに書いてありまして、これはその前に説明されている捕獲の方針と比べて、成功という言葉を使っていいのかというふうに思いますので、この点、科学委員会できちんと捕獲の進め方について議論をいただきたいと思います。

○石井部会長:それでは、三浦委員、お願いします。

○三浦委員:三つほどあります。前の小委員会でも発言したのですが、同じことを確認したいと思います。特定希少鳥獣について、今回の法律改正でこれを管理計画としているということで、一方ではその管理という概念を、個体数を減らすというところに特化しているということで、これを特定希少鳥獣管理計画と名づけるというのが、やはり少し問題ではないかなというふうに思います。

 もう一つは、答申案の計画の中の存続可能性について述べている箇所があって、5ページですが、存続可能な最小個体数といったような概念なのか、存続可能性の分析といったような概念なのか、ちょっとよくわかりませんけれども。いずれにしても、100年以内に絶滅する確率が10%未満になるように留意するということですよね。

 それで、ここから出てくる個体数というのは、これ以下にしてはならない数なのであって、ここにする数ではないわけですよね。だから管理目標としては、これは最低限というところで判断していくということは重要なのだろうなというふうに思います。

 その視点で、現在何頭ぐらいいるのかというところの推定値がありまして、これが29ページになりますか、北海道全体でのこの種の個体数が800頭~1000頭、少し下がっているようですね。そのぐらいの個体群サイズであるということですね。

 この個体数は、一般的に存続可能性ということで大型哺乳類を見ていくと、やはりそれほど多い数というわけでは決していないというレベルであるということですね。したがって、捕獲を行うにしても、最低限このぐらいの個体群サイズは維持していくぎりぎりであるということだというふうに考えます。

 その点で、もう一つ重要なのは、今、小泉(透)委員も指摘しましたけれども、防除の施策をいかに展開していくのか。特に定置網でどのように行っていくのか、捕獲の技術も含めて、あと音波忌避装置といったようなものが導入されていますけれども、こういう試験を繰り返しやっていくということが非常に重要だと思いますが、この効果が追視されていないということ。

 また、多分これは最初はびっくりする反応を全ての動物は行いますので、特異的な光だとか、臭いだとか、音には、どんな動物でも最初は非常に敏感によく反応いたします。しかしながら、この刺激に対してネガティブなものを与えていかないと、刺激を強化していかないと、こういう防除法というのは成功しないということですから、それも含めて、防除の装置については、今後とも十分に取り組んでいただきたいという要望が3点目になります。ありがとうございます。

○石井部会長:岡委員、小泉(透)委員、それから三浦委員からご意見をいただきました。事務局からご回答があったらお願いいたします。

○野生生物課:ありがとうございます。

 まず、岡委員からのご質問ですけれども、亜成獣以上の個体を選択的に捕獲するというふうに書いておりますが、そのほかの選択的捕獲のみしかしないのか、明確でないというようなご質問だったかと思いますが、こちらのほうは、やはり今まで被害を及ぼさない幼獣個体が混獲されてしまうケースが多くございましたので、今やっております定置網の網の改良に関しても、その網の中にアザラシが入らないようにする改良もしておりまして、その中で幼獣がかからないような形に変えていきたいと思っています。

 また、選択的捕獲に関しましても、これも定置網の改良になりますが、定置網自体を、逆に入ったら出られないような形にして、その中で生きた状態で捕獲しまして、例えば幼獣の場合ですと発信機や標識をつけて放す、成獣以上の個体はデータをとるために捕獲するというようなことを考えております。

 次に、小泉(透)委員のご質問に関してなんですけれども、捕獲の進め方に関しましても、科学委員の機能に関してということだと思いますけれども、種の存続の評価を科学委員で行いますが、こちらの科学委員会では、捕獲手法についても検討することにしておりまして、計画の中でも、致死させるような場合にはできるだけ苦痛を与えない方法で行うですとか、捕獲手法の検討に関しても、こちらの科学委員会のほうで検討していきたいと考えております。また、地元の漁業者の協力も必要ですので、研究者と地元の漁業者と行政と連携して、その手法を確立していきたいと考えております。

 三浦委員のご質問についてですが、管理計画という名称に関して、こちらのほうは、確かに現在被害を減らすために個体数、捕獲するということを中心に考えてはおりますが、そのほかのゼニガタアザラシの生態に関しての情報ですとか、環境との関わりに関しての調査も今後行ってまいりまして、漁業被害というだけではなくて、この場所にどのぐらいの数が適正なのかという環境収容力等の情報もこれから得ていきまして、そこを総合的に考えていきたいと考えております。

 あと、2番目のご質問でありました、存続可能性についてですが、こちらのほうも、先ほど少しご説明させていただきましたが、これは三浦委員がおっしゃったように、100年間に絶滅する確率を10%未満というのは、ここは最低の基準でありまして、ここに持っていこうとするわけではなくて、一つの今ある基準になっておりますので、ここの範囲内、それを上限値として定めて、その範囲内で捕獲を検討することとしております。

それについては、今やっております被害防除、実質的な被害防除のほうと組み合わせながら考えていきたいと思っていますので、ぎりぎりまで減らすということは考えておりません。

 また、3番目のご質問、被害防除の手法ですけれども、こちらのほうも、おっしゃるように、音波忌避装置などは前々から検討されておりまして、だんだん使ってくると慣れが生じてくるというのが問題点でした。あと、効果がどのぐらいあるのかというのがわかりませんでしたので、生け寶を設置して、その中にアザラシを入れて、音波忌避装置の効果を試してみるとか、アザラシの行動を調査するとか、あと水中カメラを設置して、また、アザラシの行動を見るなど、より詳しく効果・検証をするように、今、研究者と調査を進めております。

 また、資料の3-3の37ページのところに、今後、既存の音波忌避装置がありますけれども、それですと効果があまりないということで、東京農大の先生ですとか、あと北海道立工業技術センターなどと提携しまして、より効果の高い方法を検討していくことを考えております。

 また、漁網の改良に関してもある一定の効果を得ておりますが、より現場で使いやすい方法ですとか、アザラシは入りにくいけれども、サケは入りやすい網目を改良するとか、そういう細かい調整を今も続けておりますので、徐々に改善されてくると期待しております。以上です。

○鳥獣保護管理企画官:すみません、1点、管理計画について、少し補足をさせていただければと思います。

改正鳥獣法におきまして、管理という定義につきましては、生物多様性の確保、生活環境の保全、農林水産業の健全な発展を図る観点から、その生息数を適正な水準に減少させ、生息域、生息地を適正な範囲に縮小させるというのが管理に関する一般的な定義になります。これは第二種特定鳥獣管理計画、全国で増えているものについて、適正な数に減らしていくというときに使われます。

 今回については希少鳥獣ということで、局地的に生息数が著しく増加または生息地の範囲が拡大して、農林水産業や生態系等に深刻な被害を及ぼしている鳥獣について、その地域個体群の安定的な維持を図りながら、計画的な管理を図ると。局地的に増えてきたものについて、その地域個体群の維持を図りながら、適正な数、適正な範囲に縮小させるということで、同じく管理という言葉を使わせていただいております。若干補足をさせていただきました。

○石井部会長:それから、もう1点、小泉(透)委員からですけれども、38ページの19行目、成功という言葉についてご質問がございましたが、これについてはいかがでしょうか。

○野生生物課:その部分について回答をしそびれてしまいました。

 38ページの成功したという表現ですけれども、こちらのほうは、先ほども少しお話ししましたが、捕獲自体は幼獣でも成獣でも行っておりまして、幼獣に関しては、捕獲した場合には、発信機ですとか標識をつけて放すということをしておりまして、そういう意味から、捕獲に成功したというふうな記載にさせていただいておりますが、これが誤解を生むような懸念があるというご質問でしょうか。

○石井部会長:小泉(透)委員、これは、表現の問題ですよね。

○小泉(透)委員:すみません、言葉尻を捉えるつもりは全くありません。私が、ちょっと説明不足で申し訳ありませんでした。私が指摘したかったのは、資料3-2の管理のための方策というところに書かれている部分に、管理計画の38ページの幼獣を獲ったということは、これは方策に合致していないのではないですかという指摘をさせていただきました。合致するように進める仕事というのは、科学委員会の仕事ではないでしょうかというふうに指摘させていただきました。

○野生生物課:そうですね、こちらのほうの捕獲に関する38ページの記述に関しましては、科学委員会のほうでも見ていただきまして、このような記載にさせていただいているんですけれども、こちらの管理のための方策に関しましては、幼獣死亡個体を減らすというような形で、網にひっかかって幼獣が死んでしまうというものを減らすということを考えておりまして、それは定置網についてですけれども、アザラシ捕獲用わなの調査の結果に関しましては、こちらは幼獣を捕獲しているのですが、この後、放しているということですので、特に科学委員会のほうから指摘等はなかった部分ではあります。

○石井部会長:東岡さん、補足がございますでしょうか。

○鳥獣保護管理企画官:今回、ご指摘をいただいた38ページの参考資料は、この計画をつくるに当たって、平成26、27年度に被害防除策の検討ということで、今回、幼獣を殺さずに捕獲できる手法についての検討ということで、幼獣1頭を捕獲することで、成功という記載をし、過去の検討においてそういった記載をさせていただいております。

 今後こういった計画、この新たな特定希少鳥獣管理計画を立てたうえで、こういった管理のための方策についてはどういうやり方がいいのかというのは、また科学委員会でしっかりご議論をいただいて、どのような捕獲を進めていく、どのような個体群管理のための捕獲を進めていくのかというのはしっかり議論をしていきたいと思っております。

○石井部会長:よろしいでしょうか。

 それでは、もう大分時間も押してきて申し訳ないですけれども、本件についてお諮りしたいと思います。

 只今のえりも地域ゼニガタアザラシ特定希少鳥獣管理計画についてですが、いろいろご意見はございましたが、適当と認めるということで特にご異議ございませんでしょうか。

(異議なし)

○石井部会長:どうもありがとうございます。

 進行の手際が悪くて延びております。おそらく30分までは行かないと思いますけれども、時間を超過する可能性がございます。この辺、ご理解いただけますようお願いいたします。

 それでは、続きまして次の審議案件でございますが、第四次環境基本計画の進捗状況の点検についてということで、事務局からご説明ください。少しコンパクトにお願いできればと思います。よろしくお願いします。

○生物多様性地球戦略企画室:それでは、議事の4についてご説明をさせていただきます。

 生物多様性地球戦略企画室の岡野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、資料の4-1に基づきましてご説明をさせていただきます。

 第四次環境基本計画の第4回点検に係る重点検討項目の(案)でございます。現行の環境基本計画につきましては、年度ごとに分野を変えて点検をさせていただいております。生物多様性分野につきまして、前回は、第2回平成26年の点検の際に、この部会でもご議論をいただいております。

 今回の点検につきましては、生物多様性国家戦略、現行の国家戦略の中間的な評価も踏まえて行うということで進めさせていただきたいというふうに考えておりまして、これにつきましては、参考資料の4-2をご覧いただければと思います。

 前回の審議会におきまして、生物多様性国家戦略2012-2020の達成に向けた、一層の加速についてご議論をいただきまして、了承をいただいております。これにつきましては、国家戦略につきまして、中間評価を踏まえて、必要に応じて見直しを実施するという記載があった関係で、これについての対応方針についてご議論をいただきました。

 国家戦略の見直しにつきましては、行わないこととするということでご了承をいただいておりまして、一方で、愛知目標の着実な実施に向けて、関係省庁が取り組む具体的な施策をしっかりとりまとめて公表するという方針について、ご了解をいただいていたところです。

 このご了承を踏まえまして、これまで関係省庁連絡会議におきまして、関連指標群の評価を行ってまいりました。その結果をまとめましたのが、資料4-3でございます。このバックデータとしまして、資料4-4で、国家戦略に定められております指標について、一通りの評価を行ってまいったところでございます。こういった評価を踏まえまして、今回の重点検討項目(案)というものを作成させていただいております。

 それでは、資料4-1に戻ってご説明をさせていただきます。

 重点検討項目は、3項目選定いたしております。一つ目が、生物多様性の主流化に向けた取組の強化。二つ目が、生物多様性保全と持続可能な利用の観点から見た国土の保全管理と生態系サービスの利用でございます。この①と②につきましては、前回点検と同様の内容で定めております。これにつきましては、基本計画の点検の進め方におきましても、前回の点検について引き続き点検するということが定められておりますので、同じ内容としております。

 先ほど、資料の4-3でご説明しました、国別目標の評価におきましては、主流化に向けた取組につきましては、生物多様性の言葉の認知度が向上していないという評価、それから今度メキシコで行われますCOP13におきまして、農林水産業分野や観光分野での生物多様性の主流化というのが課題になるということでございますので、引き続き重点検討項目とさせていただきたいというふうに考えております。

 二つ目でございますけれども、こちらの検討項目につきましては、これまでの評価におきまして、自然生息地の損失速度や劣化のといったものが減少しつつあるという状況でございますけれども、脆弱な生態系であるサンゴ礁の平均被度が減少している、あるいは海域のほうが十分でないといったような評価がございましたので、こちらにつきましても、引き続き重点検討項目としたいと思っております。

 また、後ほどご説明させていただきますが、生態系を有する防災・減災機能の活用など、生物多様性の生態系サービスを積極的に今後活用していくという観点からも、引き続き重点検討項目とさせていただきたいと思っております。

資 料4-1、裏面でございます。今回新たに重点検討項目として追加させていただきましたのが、野生生物の保護管理と外来種対策の加速でございます。

 こちらについては、今回の部会でもさまざまな議論になっておりますけれども、ニホンジカやイノシシなどの一部の鳥獣について、急速に生息数が増加して、生息域が拡大するという課題がございます。

 また、外来種につきましても、さまざまな対策は進んでおりますけれども、依然としてその脅威があるということでございますので、今回新たに野生生物の保護管理と外来種対策の加速というものを重点検討項目に追加をさせていただきまして、今回点検をさせていただきたいというふうに考えております。

 この3点につきましてご了承がいただけますれば、今後、各省に対して自主的な点検をお願いいたしまして、資料の作成をした後、概ね7月までに2回ほど審議会、この部会を開催させていただいて、皆様にご議論をいただきたいと考えております。

 また、その結果を総合政策部会に報告いたしまして、11月には最終的なとりまとめを行い、さらにそれを踏まえまして、関係省庁の連絡会議におきまして、今後2020年までに取り組むべき施策をまとめて公表していきたいというふうに考えております。

 以上、早口になりましたが、説明は以上にさせていただきます。

○石井部会長:どうもありがとうございました。

 第四次環境基本計画の進捗状況の点検について、ご提案がございました。

 それでは、委員の皆さんからご意見を賜りたいと思います。いかがでしょうか。

 2項目と新たな項目を一つ加えるというご提案でございました。

 下村委員、お願いいたします。

○下村委員:重点検討項目②に関連しての質問ですが、これは継続だということなので、新しい視点がなかなか入りにくいのかもしれません。

 先ほど、京都の丹波高原の国定公園の話の中でも出てきましたとおり、結局、持続的な保全という面で、利用の問題がとても重要で、それを循環的に回す仕組みの検討が重要なんだという話が出てきましたが、ここの重点項目の②の表題に関しては、そういった内容も含まれると思うのですが、実際の検討内容の詳細というところには、そうした観点があまり入っておりませんが、何かこの辺りは、さっき涌井委員からも、むしろ計画論的な課題だという話もありましたし、新しい多様性を持続的に保全する上では重要だと思うのですが、何か入らないのか、既に入っているのかというような点について、ちょっとお伺いしたいなと思います。

○石井部会長:ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。それでは、宮本委員、お願いいたします。

○宮本委員:資料4-1の重点点検分野名の中の①番の、例えば4行目とか、広報・教育・普及啓発というのがございます。それから、重点検討項目②の、やはり4行目に自然環境の再生というのがあり、重点検討項目③のところに外来種の対応などが書いてあります。このようないろいろな活動において、民間資金の導入や、それから人手の確保などについて、方法が適切かどうか検討されるのかということについて、お聞きしたいと思います。

 補足いたしますと、例えば参考資料4-1の3ページ目ですけれども、ここの二つ目の黒丸の四つ目、民間資金や多国間資金の積極的活用というのがございます。それから、その次の黒丸の3行目ですが、国民全体による管理や、多様な主体の参画というのがございます。県とか市町村レベルの委員会等で、寄附とかボランティアを活用するということがいろいろな施策の事業計画等に出てまいりますが、本当に十分確保できるのか検討されないままに、十分な達成ができないというような報告も目にしておりますので、若干気になった次第です。どういうことが基準になっているのか、あるいは検討の対象になっているのかご教示いただきたいと思います。

○石井部会長:ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。

(なし)

○石井部会長:では、下村委員と宮本委員から二つほどご質問がございました。事務局のほうからご回答をお願いいたします。

○生物多様性地球戦略企画室:ご質問ありがとうございます。

 まず下村委員からのご指摘でございますけれども、持続的な保全管理ということで、特に里地里山的なところへの対応ということだというふうに理解をしておりますけれども。

 ご指摘のように、重点検討項目の②番のほうで、生物多様性に配慮した農林水産業等の振興等生態系サービスの持続的利用ということで書かせていただいておりまして、こちらの中でその部分を含めて点検することになってございます。

 前回のところでも、そうした農林水産業が発達、生物多様性の保全機能ということはありますけれども、それを持続的に進めていくことが課題であるということで、課題に位置付けられておりまして、その点も踏まえて、今回、資料は作成をしてまいりたいというふうに考えております。

 もう1点、宮本先生からのご指摘の民間資金の関係でございます。今、生物多様性保全に関わらず、いろんな活動でさまざまな資金をどうやって確保するかというようなことが課題になっております。

 この項目の中では、そういった仕組みの部分は、重点検討項目の①番の経済的手法を含めた主流化というところで、これまでも国家戦略の中で生態系サービスへの支払いであるとか、あるいは認証制度であるとか、そういったような民間との経済的なところも含めて、そうした活動資金を集めるようなことについて書かせていただいております。

 こちらについては、さまざま、環境省内でも別途議論はしているところでございまして、まだ十分な体制というところではございません。その点を含めて、今回、検討項目の中でしっかり点検をしてまいりたいというふうに考えております。

○石井部会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは、下村委員お願いいたします。

○下村委員:私がお話しした意図は、第一次産業との絡みの話が中心になります。むしろ宮本委員とちょっと重なったようなところもありまして、観光ですとか、空間的な利用だとか何かが経済的にある程度サポート支援をして、そういったものが持続的につながっていくような仕組みなどを検討していくことが重要だと思うのですが、そういったものも含まれているのかどうかというようなことです。

○生物多様性地球戦略企画室:今ご指摘の点につきまして、先ほど、資金の関係でもございます。現在、環境省で進めています「つなげよう、支えよう森里川海」といったプロジェクトの中でも、そういった資金を含めて、地域が自立的に生物多様性や生態系サービスの保全管理ができるような仕組みというものの検討を、今進めているところでございます。

 その点も含めて、今回の点検の中で触れてまいりたいと思っておりますし、今後進めていくべき課題というふうに認識をしております。

○石井部会長:では、特にないようでしたら、ただいまの件についてお諮りしたいと思います。

 第四次環境基本計画の進捗状況の点検について、適当と認めるということでご異議ございませんでしょうか。

(異議なし)

○石井部会長:どうもありがとうございます。本件について、適当と認めることといたします。

 それでは、報告案件が2件ありますので、これもコンパクトに続けてお願いしたいと思います。「生態系を活用した防災・減災に関する考え方」のとりまとめについて、及び生物多様性及び生態系サービスの総合評価報告書の取りまとめについてということで、よろしくお願いします。

○生物多様性地球戦略企画室:では、引き続きご説明をさせていただきます。

 資料の5-1でございます。「生態系を活用した防災・減災に関する考え方」のとりまとめについてでございます。

 ご存じのように、生態系につきましては、森林が表土流出を防止したり、防風の役目を果たしたり、あるいはサンゴ礁や砂浜が高潮の影響を抑えたり、湿原が洪水を一時的に受け止めるといったような、さまざまな機能を有してございます。

 現在、こうした生態系が持つ機能を積極的に活用していこうということについて国際的に注目が高まっておりまして、環境省といたしましても、国家戦略の中で、東日本大震災の経験を踏まえて、人と自然との関係を今一度見つめ直すということで、検討を進めているところでございます。

 また、こういった自然環境が有する多様な機能の活用につきましては、国土強靭化計画のほか、国土形成計画などにも取り上げられておりまして、今後積極的に推進していきたいというふうに考えているところでございます。

 そういった中で、考え方についてとりまとめ、地域の様々な検討の場の選択肢として提案できるようなことを考えたいということで、今般考え方のとりまとめを行っております。

 2にお示ししておりますように、こういった先生方に検討委員を務めていただいておりまして、本日ご出席いただいております涌井委員に座長を務めていただき、とりまとめにご尽力をいただきました。

 1ページめくっていただきまして、現在とりまとめております考え方のポイントを簡単に説明させていただきます。

 まず、自然災害と生態系の関係でございますけれども、わが国は活動性の高い国土でございますので、多くの災害がございますけれども、同時に、これは多様な景観と生息環境を生み出し、豊かな生物多様性を育んできたベースともなっております。

 こういった災害をもたらすような危険な自然現象は起こるということを前提にしまして、そういったところから、人命・財産がさらされている状態を回避する、これを暴露の回避と呼んでおりますけれども、あわせて、そういった危険な自然現象からの影響の受けやすさを低減させる、脆弱性を低下させるということが重要だという認識に立ち、生態系をベースとして、その両方に備えていくということをこの考え方の基本として入れております。

 暴露を避けるという意味では、そもそも脆弱な土地の生態系は開発を避ける、あるいは過去にそういった場所でありながら、既に利用されている場所については、その土地の利用を見直すといったことが考えられますし、また、健全な生態系を管理することで、そういった災害を弱めてくれる、あるいは食料やいろんな燃料の、そういった「材」の提供なども含めて、社会の脆弱性を低下させる、そういった役割があるだろうということで、暴露と脆弱性の二つの観点から、災害を捉え、生態系を活用するという考え方を提言しております。

 2番目としまして、なぜこれからの日本に生態系を活用した防災・減災が必要かということでございますけれども、いろいろな災害のリスクが高まっております。気候変動によって雨の降り方も大きく変わってきております。そういった中で、人口減少や、あるいはインフラの老朽化といった社会的な課題もありまして、これに対応していくために、生態系の機能を賢く利用していくことが重要ではないかということでございます。

 続いて3番目、概念としてとりまとめておりますけれども、防災・減災対策の実施を検討する際に、地域の特性を踏まえて、地域住民をはじめとした多様なステークホルダーの参画によりまして、生態系の保全と再生、持続的な管理を行うことを通じて、その災害の暴露を低減するとともに、社会の脆弱性を低減する、こういうことをもって、地域の防災・減災機能の強化、生物多様性と生態系サービスの確保を図り、持続的で安全で豊かな自然共生型社会の構築に寄与する、ということを書かせていただいております。

 生態系を活用する一番の特徴は、生物多様性の保全ということはもちろんでございますけれども、さまざまな生態系サービスを発揮できる空間を維持・創出できるというところが最大の利点でございます。そういった場所は、第一次産業の場所でしたり、あるいは景観として観光等も利用できるということで、地域振興にもつながるような、そういった観点で重要だということでございます。

 一方で、生態系については、外力に対する防御機能といったものの評価が難しいということもございますので、人工構造物の防災対策と相反するものではなくて、地域特性に応じて最適に組み合わせて用いるということが重要であるというふうに書かせていただいております。

 組み合わせにつきましては、実際に人工構造物と生態系を融合させていく考え方と、あるいは多重防御という考え方で補完的に備えて用いると、そういった考え方もございますので、そういったものとあわせて使っていくということがまずは重要であるということで、考え方をまとめさせていただいております。

 生態系を活用した防災・減災の利点は八つほど挙げておりまして、一つ目が、災害発生時のみならず、事前の災害リスクの低減や、あるいは復興に際しても効果が発揮できる。

 それから、さまざまな災害に効果が発揮できる。また、生態系は自立的に回復をいたしますので、そういった回復力、あるいはそれによって生産性、例えば東日本大震災の後も干潟等の生産力が回復しておりまして、そういったものが地域の産業を支える復興にも貢献できると。それから、低コストで整備・維持管理ができる場合があると。それから、平時に多様な生態系サービスが発揮できる。また、こういったことを考えることによって、災害に強い地域コミュニティが形成される。

 それから、先ほども申しましたように、景観や一次産業が維持されるということから、地域活性化にも寄与できる。

 それから、気候変動対策への貢献としまして、もちろん災害に対する適応の意味もありますけれども、吸収源としての緩和の意味もあるということでございます。

 こういった生態系を使っていくときの基本的な視点というのを、4にまとめさせていただいております。

 一つ目が、総合的な視点で検討するということでございます。個別の場ごとの防災・減災を検討するのではなくて、地域全体で災害に対する強靭性をどのように確保していくかということが重要である。

 そして、人々の暮らし、環境、景観、産業、まちづくりなどの多面的な観点から地域の将来像を描く中で防災・減災も位置づけて、どのような取り組みをするのか、総合的に検討することが必要だということを1点目に位置づけております。

 2点目としまして、地域で合意形成を図るということでございます。

 3番目としまして、地域本来の生態系と、災害履歴・伝統的知識をしっかり活用していくということでございます。

 先ほど申し述べるのを忘れましたけれども、こういった生態系を使っていくということは、何も新しい概念ではなくて、我が国では伝統的に使われてきたものでございますので、そういったものに学んでいくということでございます。

 四つ目が、維持管理の仕組みをしっかり構築するということで、こういった防災・減災のような機能は、広域的に人々は恩恵を受けております。それを地域の住民の方々が継続的に管理体制をしていくためには、そういった周辺の支えも含めて、体制を構築していることが必要だということを述べさせていただいております。

 最後のページでございますが、防災・減災に生態系を活用する具体的な手法といたしまして3点書かせていただいておりまして、まずは、空間計画としてしっかり検討をしていくということでございます。エコロジカル・ネットワークの視点も入れながら、そういった空間のまとまりで検討をしていく。

 また、個々の場所で適切に使っていくということで、4タイプあると思いますけれども、今ある生態系を保全・管理していくもの。劣化した生態系を再生していくもの。それから、新たな生態系の造成、これは海岸の防災林といったようなものが当たるかと思いますけれども、そういったものを造成。それから、人工構造物と生態系をうまく組み合わせて用いるもの。こういったものを場所にあわせて使い分けていくということでございます。

 三つ目でございますけれども、こういったことを地域の中でよく議論していただくときに、定量的・経済的評価をうまく使っていくということでございます。

 トータルとして、地域でどういった形が一番よいのかということを考えていただくための材料を提案するということでございます。

 6番目に、今後の取組の方向性ということで、こういった考え方の一般的な理解や地域計画への反映、調査研究や工法・維持管理の手法の開発等を記載しております。

 この考え方は、今、最終的な調整を行っておりますが、3月中旬には公表を予定しております。地域の方々にも利用していただけるように、ハンドブック等を作成しまして、今後、地域でいろんな地域の将来像を考える中で、一つの選択肢として考慮していただけるような取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

 続きまして、二つ目のご報告でございます。資料6-1をご覧ください。生物多様性及び生態系サービスの総合評価報告書の取りまとめでございます。

 生物多様性の総合評価につきましては、2010年の5月に生物多様性総合評価(JBO)という形で公表させていただいております。こちらにつきましては、過去50年間の生物多様性の変化について取りまとめたものでございます。

 今回は、生物多様性に加えまして、生態系サービスの評価というものも行っております。検討項目の3番でございますけれども、検討事項としまして、生物多様性に比べて生態系サービスの変化や傾向、そしてそれが人間の福利にもたらす効果の把握、そして愛知目標の達成状況に関する科学的な参考情報の整理といったことを取りまとめてきております。

 検討委員につきましては、この資料に記載されている皆様にお願いをいたしておりまして、中静委員に座長を務めていただき、取りまとめにご尽力をいただきました。

 5番の評価結果の概要でございます。今回生物多様性につきましては、116項目で評価を行っております。概ね、前回行いましたJBOの評価をそのまま継続しておりまして、結果につきましても、基本的には大きな変化はないということで、生物多様性の状態は長期的には悪化しているという状況でございます。

 今回「気候変動による生物多様性の変化や生態系への影響」につきましては、色々と研究の知見が集まってきているということでございまして、起きている確度は高いということで評価を改めております。また、今後も気候変動が拡大することが予想されており、現在、影響が進む傾向にあるというように書かせていただいております。これが2番でございます。

 3番目以降が、今回新たに評価した生態系サービスに関する結論でございます。生態系サービスについては、66項目について評価を行っております。全体的には、過去と比較して減少又は横ばいに推移しているという結果でございます。

 4番~6番が、供給サービスについての評価でございます。4番でございますけれども、国内の供給サービスの多くは過去と比較して減少しております。とりわけ、農産物や水産物、木材等の中には過去と比較して大きく減少しているものがございます。また、林業で生産される樹種の多様性も低下しており、供給サービスの質も変化しているという評価でございます。

 5番でございますけれども、供給サービスの減少には、供給側と需要側の二つの要因が考えられるという結論でございます。前者としては過剰利用や生息地の破壊等による資源状態の劣化、後者としましては、食生活の変化や食材・資源の海外からの輸入の増加による資源の過小利用が挙げられるとしております。

 アンダーユースの背景には、食料・資源の海外依存の程度が国際的に見ても高いことがあるということで、こうした海外依存によって、主に農産物、林産物についてアンダーユースの傾向があるということでございます。

 オーバーユースは主に漁業になります。水産物について、その資源状態が低位であるという状況が続いていることや、あるいは沿岸域に依存する魚種の漁獲量が減っているということで、その資源が劣化しているという状態にあると評価をしております。

 こういったアンダーユースの原因になっている海外依存というものについては、海外の生物多様性に影響を与えているというだけでなく、輸送に伴う二酸化炭素の排出量も増加させているおそれがあるという結果にしております。

 こういった中で、地域の農林水産業の従事者が減少し、また、伝統的な工芸品などの生産量も減少しておりまして、自然から恵みを引き出すための知識及び技術も失われつつあるという結論を示させていただいております。

 また、7番もアンダーユースに関するものでございますけれども、手入れ不足等によって調整サービスが低下している、あるいは野生動物の軋礫が生じたり、クマ等による負傷等のディスサービスが増加しているという状況が示されております。

 8番目としまして、地域間の食の多様性が低下しているという報告が評価されました。こういった地域に根差した地域毎の彩り、文化的サービスも失われつつあるということが示唆されております。

 9番目でございます。こちらは、自然と健康との関わりでございますけれども、精神的・身体的にも自然との関わりが健康にいいというようなデータがございますが、現在、日常的には自然との触れあいが減少しております。その一方で、多くの人が自然に対する関心を抱いておりまして、近年ではエコツーリズムなど、新たな形で自然や農山村との繋がりを取り戻す動きも出てきているというような結果でございます。

 以上、9つの結論を取りまとめさせていただいております。

 こうした評価をしておりますけれども、特に文化的サービスや調整サービスなど、評価が難しい項目もございまして、こういったことが今後の課題として示されております。

 今回の取りまとめにつきましては、今後の政策の基礎材料にし、次回の国家戦略の策定に向けて、さまざまな議論の材料にしてまいりたいというふうに考えております。

 以上、報告とさせていただきます。

○石井部会長:ありがとうございました。

 いずれも大切なご報告ですが、時間の関係で二つの案件を続けて説明していただきました。

 ただいまのご報告について、ご意見、ご質問がございましたらお受けします。小泉(武)委員、お願いします。

○小泉(武)委員:一言だけ申し上げたいのですが、生態系サービスや防災に関して、検討委員の方々を見ていますと、農学や林学をご専門とされている方がとても多いです。しかし地形・地質、土壌、水文などの分野の人もこの生態系サービスや防災などを検討するうえでは不可欠だと思います。ですが、そうした分野の人がほとんど入っていません。いささか生物系に偏り過ぎているような感じがします。委員を決めるときに、もう少しその辺を広く見ていただけるとありがたく思います。今後ご検討をお願いします。

○石井部会長:下村委員、お願いします。

○下村委員:私だけかもしれませんけれども、生態系というと、どうしても生物の系を思い出してしまうのですが、防災について言えば、地形を活用はしていくことは必要だと思います。例えばこの図で緩衝帯になっている辺りのイメージも生物が中心で、もう少し地形を活用するなど、そうしたニュアンスが入ったほうがよく伝わると思います。生態系の捉え方は、印象的には狭くなってしまいがちなので、表現に注意していただきたいということが一つ目になります。

 もう一つ、資料6に関してお伺いしたいのは、特にサービスの評価についてですが、供給サービスは割と評価されており、あるいは指摘の中では、先ほどの評価結果の概要で4番以降というのは、循環性というのが重要なファクターになっていると思います。これを上手に評価している指標というのがないのか、あるいは入っているのか。例えばTPPじゃないですけれども、国内で生産したものが海外市場へ強制的に出ていくのではなく、しっかりと国内で使われているなど、生態系サービスの場合はその中での循環というのがとても重要だと思いますが、循環の評価は入っているのでしょうか。もし入っていないのであれば、入れていただいたほうが良いと思います。

○石井部会長:ほかはよろしいですか。涌井委員と中静委員、何かコメントがございましたらお願いいたします。

○涌井委員:委員の方々から様々ご示唆をいただきましたが、とりわけ、地形との関係については、もう少し知見を高め、そうした論点で切り込んでいく必要があるということを、今改めて、なるほどというふうに思いました。今後はそうした方向で詰めていきたいと思います。

○石井部会長:ありがとうございます。中静委員はいかがでしょうか。

○中静委員:知見については、涌井先生がおっしゃるとおりだと思います。

 循環的な観点から言いますと、例えばここには明示的には書いてありませんが、フットプリント的な分析も入っておりまして、国内で供給されるサービスがどれぐらい受給できているかという観点からも少しは分析しています。しかし、海外依存と日本の中で循環していく部分についての指標というのは、統計として良いものが今のところあまりないというのが現状ですので、今後検討していくことが重要だと思います。以上です。

○石井部会長:どうもありがとうございました。報告案件はこの2件ということですが、その他のところで委員の先生方から何かございます

(なし)

○石井部会長:進行の要領が悪く、30分ほど遅れてしまいました。申し訳ございません。

 特にないようでしたら、議論を終わらせていただきたいと思います。

 本日予定しておりました案件の審議は以上になります。ご協力どうもありがとうございました。それでは、事務局にお返しいたします。

○司会:ありがとうございました。それでは、最後に大臣官房審議官の亀澤よりご挨拶を申し上げます。

○大臣官房審議官:本日は、たくさんの審議事項、報告事項につきまして、幅広くご意見をいただきまして、ありがとうございました。

 西表石垣国立公園の大規模拡張、並びに京都丹波高原国定公園の新規指定につきましては、本日いただきましたご意見も踏まえて、今後、管理あるいはモニタリングをしっかり行ってまいりたいと思います。

 特に西表島につきましては、新たな世界自然遺産登録を目指す四つの島の一つでありまして、今回の拡張により、登録の前提条件が整うことになります。残る三つの島、奄美大島、徳之島、沖縄島につきましても、最終段階に差しかかっておりますので、西表島の後に続けるよう、引き続き地元調整を進めてまいりたいと考えております。

 ゼニガタアザラシにつきましては、本日管理計画をご了承いただきましたが、今後地元や科学委員会のご意見を聞きながら、毎年度の実施計画を策定し、漁業等との共存が図れるよう順応的に対応してまいりたいと考えております。

 なお、環境基本計画の提言につきましては、来年度また点検を進める過程で具体的なご意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は長時間にわたりましてご審議をいただき、大変ありがとうございました。

○司会:ありがとうございました。

 それでは、本日配付の資料でございますけれども、冊子等の大部なものもございますので、郵送をご希望の場合は、お手元の用紙にご記入いただきまして、机にそのまま置いていただければ、後日事務局より郵送させていただきます。

 以上で終了でございます。本日は誠にありがとうございました。

午後0時30分 閉会