中央環境審議会 自然環境部会議事要旨(第27回)

1.開催日時

平成27年8月24日(月)13:00~15:00

2.開催場所

三田共用会議所 大会議室

3.議事

(1)小委員会の廃止及び専門委員会の設置について(審議)

(2)国立公園の公園区域及び公園計画の変更について(諮問)
   ・吉野熊野国立公園(和歌山県海岸地域)

(3)「エコツーリズム推進に関する検討会」について(報告)

(4)生物多様性分野における気候変動への適応の基本的考え方について(報告)

(5)「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクト中間とりまとめについて(報告)

4.議事経過

 審議、諮問事項である議事(1)及び(2)について審議がなされ、それぞれ適当であるとの結論に至った。そのほかの議事については事務局説明に基づき、議論がなされた。なお、主要な発言は以下のとおりです。

(1)小委員会の廃止及び専門委員会の設置について(審議)

委員:小委員会と専門委員会の位置付けの違いは何か。

事務局:現在の(外来生物対策のあり方検討小委員会)委員の中に遺伝子組換えに関することを本来のご専門とされている方がほとんどいないため、新たに専門の委員会(遺伝子組換え生物等専門委員会)の設置をお願いするもの。諮問事項については委員会での審議だけでなく、部会にも諮り、そこで改めて審議していただくという違いがある。

部会長:小委員会の廃止及び専門委員会の設置を認めることとする。また、専門委員会の委員と委員長の選任については部会長が指名することでよろしいか。

委員:異議なし。

(2)国立公園の公園区域及び公園計画の変更について(諮問)

委員:地元からはどのような意見があったか、また、拡張に伴い環境省では管理体制をどのように考えているのか。

事務局:今回の指定(吉野熊野国立公園和歌山県海岸地域の公園区域)については地元も大変期待しており、賛成していただいている。特に要望が大きかったのは、オオカワリギンチャクが生息するショウガセというエリアの規制をしっかり図って欲しいということで、今回、20メートルより深いエリアを新しく海域公園地区として指定している。

また、現地の管理体制については、新たに田辺市に自然保護官事務所を設置しているので、今後はより地元と一緒になって管理できる体制を構築していきたいと考えている。

委員:「吉野熊野」という現在の名称に、拡張される地域の名称を追加する可能性はないか。

事務局:地元の御意見を聞く中で、「吉野熊野」という名前について特に大きな反対はなかったと聞いているので、地元としては特段問題なかったものと考えている。

委員:県立公園から国立公園に変わることで、メリットは多いと思うが、デメリットはあるのか。

事務局:強いて言えば、家や別荘などを建てる際、県立自然公園であれば県の機関に許可申請をすれば良いが、国立公園になると申請先は環境省になり、慣れていないと地元の方々は申請しづらいというのはあるかもしれない。しかし、今年4月から田辺市にレンジャーを配置し、そうしたデメリットがないよう努めている。

委員:海域公園は英語で「マリンパーク」と表記されるようであるが、陸側の観光施設などが建ち並ぶ場所も総称で「マリンパーク」と呼ばれている場合があり、海外の方々に日本の自然の大事さやその素晴らしさを伝えていく際に、そういうもののイメージが被ってきてしまうので、英語表記については、どんな場面でどのように利用されるかということを考えながら検討していただきたい。

事務局:海域公園が英語でどのように表記されるかを後ほど確認したうえで、現状に合った英語表記を検討させていただきたい。

事務局:陸域では、一番規制の厳しい特別保護地区を「Special Protection Area」、次に規制が厳しい特別地域を「Protection Area」という言い方をしており、海域でも区域を示す際に「Protection Area」という表記を使うとどういうエリアなのか趣旨が伝わりやすいと思うので、こうしたことを含め、検討させていただきたい。

委員:防災の観点からは防潮堤を作りたい、一方で自然公園としては自然海岸を残したいということになるが、この調和について環境省ではどのように考えているのか。

事務局:今回の点検で宅地化を理由に公園計画から外した地域があるが、そうしたエリアに高台移転していくべきというところで調整してきた経緯がある。エリア全体としての方針はまだ示し切れていないが、地元の方々と一緒になって公園計画を修正していくという形で対応している状況である。

委員:三陸復興国立公園は仮設住宅の建設場所として重用された。こうした実績が実際にあるので、国立公園の機能の一つとして防災・減災ということを打ち出してもよいのではないか。その辺も視野に入れて進めていただきたい。

事務局:三陸復興国立公園では、一時的に使っていただいた場所について、整備をし直す際にはキャンプ場の防災機能を高める形で整備している。国立公園区域内の高台が避難場所などとして役に立つ場面は多々あると思うので、今後も検討していきたい。

部会長:諮問に添付された指定書および変更書について異議なしでよろしいか。

委員:異議なし。

(3)「エコツーリズム推進に関する検討会」について(報告)

(質問・意見なし)

(4)生物多様性分野における気候変動への適応の基本的考え方について(報告)

委員:(本件検討会の座長として一言。)自然の動きを止めることは難しいというのが基本。自然の動きを重視し、その中でどうしてもやらなければいけないものを慎重に検討していこうということなので、細かいことも幾つか検討させていただき、資料4-1を基本に、色々な適応策をまとめさせていただいた。

委員:生物全体の適応計画は、生物多様性分野以外に何分野あるのか。また、各分野で報告書は出来上がっているのか。

事務局:農業、林業、水産業、水の災害や水資源といった分野毎に影響評価を行っており、その適応についても分野毎に方策を考えていくことになっている。現時点で、国土交通省及び農林水産省では分野毎の適応計画の取りまとめが概ね済んでいる状況である。

(5)「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクト中間とりまとめについて(報告)

委員:資金や労力の確保について、各県で既に導入されている水源税や森林環境税などに考え方は非常に近いし、また、生態系に対する支払いというPESの考え方の中で色々な問題点が指摘されていると思うので、今後具体化する中で、そうした問題点を良く考えて取り組んでいただきたい。

事務局:現在、35の県において条例に基づいた森林環境税が設けられているが、私共では県域を越えた大きな流域というものを念頭に置きながら取り組んでいるので、そこは今までと違うと考えているが、今後はそうした条例を設けている県などと十分に議論していただくとともに、PESについても、関係者や関係自治体と協議をしながら、数年、じっくり時間をかけて取り組んでいかなければならないと考えている。

委員:何らかの指標を考えていただき、政策評価ができる形で実施していただきたい。

事務局:制度の仕組みを考える際には、併せてその指標も設定しなければならないと考えているので、色々な専門家の方の御意見も聞きながら検討を進めて参りたい。

委員:地球温暖化により海面上昇が起こるとほとんどの砂浜が消滅してしまう。これを防ぐのは不可能に近いくらい難しい問題である。そうであるとすれば、この森里川海のつながりという視点から、ここは絶対に守らなければならないという重要な砂浜や干潟を明らかにしていくことが必要。

国立公園についても、せっかく国立公園に編入したということであれば、その砂浜を保全していくということも大事な活動であるので、海域公園の保全も従前どおりにやっていただきたい。

事務局:海域の保全は非常に重要だと認識しており、どのような形で進められるかは今後の検討であるが、十分にそうしたことを踏まえて取り組んで行きたい。

委員:森里川海の連環というか、本来、大きなエリアでシステムとして考えていかなければならないが、国土交通省が作成する国土形成計画では内容が薄く、本当に考えられているのか疑問に感じる。こうした考え方というのも国土形成計画に必要なことだと思うので、記載してもらえるようアプローチすべきである。

事務局:先般、国土形成計画が決定されたほか、水循環基本法が制定され、今後は水循環の基本計画なども作成されるが、こうした関係する計画との整合というものをしっかりと考えていきたい。

国土形成計画の中でも「生態系ネットワーク」という言葉が謳われているので、それをいかに現場に落とし込んでいくかについて、国土交通省や関係者と連携していきたいと考えている。

委員:様々な協議会があるが、地域の末端を見ると自然再生やエコツーリズムに携わる人はすごく限られている。こうしたなかで、協議会の立ち上げまではできると思うが、運営するとなった際、それを継続的・効果的に行うための工夫や連携について何か考えがあればお聞きしたい。

事務局:登場人物が非常に似通っているということもあって、現場では協議会疲れという話もある。既存の協議会を上手く活用する仕組みづくりをしっかりと考えていきたい。

委員:協議会という従来型の枠組みだけで考えるのではなく、例えば、若い人達は地域再生などでFacebookを活用して新しいネットワークを作っており、成果も出ている。森里川海でも、プラットホームさえできれば興味を持っている人が動くということはあると思う。今風の繋ぎ方で、みんなが楽しみながら盛り上がっていく仕掛けに取り組んでいただきたい。

事務局:従来のやり方に縛られない新しいやり方も是非模索していきたい。

委員:エコツーリズムについて堅苦しく捉えている方もいるが、本来ツーリズムというのは非常に楽しいもので、また経済効果も非常に大きい分野である。

オーバーユースの問題には配慮しなければならないが、まずは皆さんに知っていただき、参加してみたいと思っていただくことが第一歩なので、もっと一般の旅行者などを対象にフランクに取り組んでいただきたい。

事務局:エコツーリズム推進法の中にも「楽しく」という理念があり、楽しいから来ていただくという、その好循環を生み出す視点も出てきているので、そこについて支援できればと考えている。

(6)その他

委員:他の部会では資料の事前送付があるので、当部会においても資料の事前送付をお願いしたい。

事務局:資料の事前送付については鋭意検討する。

5.問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(代表03-3581-3351 直通03-5521-8279)
課 長   岡本 光之(内線6440)
課長補佐  河野 通治(内線6650)
専門官   浪花 伸和(内線6694)
計画係長  小林  誠(内線6691)