中央環境審議会自然環境部会議事要旨 (第18回)

開催日時

平成25年3月26日(火)15:30~17:10

開催場所

環境省第一会議室

議事

  1. (1)小委員会の廃止及び設置について(審議)
  2. (2)絶滅のおそれのある野生生物の保全につき今後講ずべき措置について(答申)
  3. (3)絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略について(審議)
  4. (4)「鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置について」 の審議方法について(報告)
  5. (5)三陸復興国立公園の創設を核としたグリーン復興プロジェクトの進捗状況について(報告)
  6. (6)三陸復興国立公園の指定について(諮問・答申)

議事経過

議事(1)について審議され適当であるとの結論に至った。また諮問事項である議事(2)及び(6)について審議がなされ、それぞれ適当であるとの結論に至った。その他の議事については事務局説明に基づき、議論がなされた。
 なお、主要な発言は以下のとおりである。

(1)小委員会の廃止及び設置について(審議)

意見、質問なし。

(2)絶滅のおそれのある野生生物の保全につき今後講ずべき措置について(答申)

委員:昨年度に実施した「絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する点検」に関わった立場で発言すると、パブコメにおいて、登録制度を精緻化して違法行為を排除すべきという意見が多くあったが、どうしても抜け道が出来て限界がある。むしろ罰則の強化で対応する方が、抑制効果を期待できる。また、登録制度は運用上、直す点はあるので、資料2-3の1(1)の2段落目で、「整理」を「整理・改善」に、「適当である」を「必要である」という表現に修正しているのは良い。

(3)絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略について(審議)

意見、質問なし。

(4)「鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置について」 の審議方法について
(報告)

意見、質問なし。

(5)三陸復興国立公園の創設を核としたグリーン復興プロジェクトの進捗状況について
(報告)及び(6)三陸復興国立公園の指定について(諮問・答申)

委員:エコツーリズムは多くの観光事業者が参加してくる可能性があるため、事業者の参入を規制すること、ガイドの認証制度、利用者数の制限、観光税の導入等をあらかじめ十分検討しておくべき。
エコツーリズムが始まってから導入することは困難である。

事務局:エコツーリズムについては、自然環境の保全と利用のバランスが重要なのは承知しているが、多くの観光客に来ていただきたい側面もある。まずは、最初の段階から地域の自然環境の保全と活用について、地域の方々と話し合い、仕組みづくりを行ってまいりたい。その延長線上に、そうした仕組みが規制になるのか、取組の中でできることなのかについて地域の特性に応じてモデル事業の中で出しながら、成果を他の地域にも広げてまいりたい。

委員:国立公園の運営には、人材育成と、その人材が持続的に雇用されるだけの資金が必要。これについてどのような見通しや考えを持っているのか。

事務局:国立公園の管理予算には地域の方々を持続的に雇用するようなものはない。そのため、国立公園の観光資源を活用して地域が観光業で食べていくこと、さらに関連する一次産業が元気になることを通じて、実現していきたい。

委員:海域の公園区域については、どの場所が増えたのか。また、三陸復興国立公園の英訳はどのようになるのか。

事務局:新たに国立公園に指定する海域の区域は、種差海岸階上岳県立自然公園に指定されていた沿岸から1kmの海域の部分である。三陸復興国立公園の英訳はSanriku-Fukko (Reconstruction) National Parkとしている。この英訳については、アジア国立公園会議の開催について各国に説明する機会に、あわせて説明しているところであるが、特段異論を聞くことはなかったので、この英訳を使わせていただきたいと考えている。

委員:この国立公園に震災で亡くなった方の慰霊をする場が既に設けられているのか、又は地元からそのような場を設けたいという要望があるか教えて欲しい。

事務局:現時点では、環境省に対して、国立公園の施設の中に慰霊をする場所を設けて欲しいというような要望は特に受けていない。

委員:海域の公園区域は海岸から1kmとなっているが、これが国立公園の公園区域指定にあたって通常のルールなのか。また、自然環境保全上重要な湾が公園区域に指定されていないが、国立公園を拡張していくにあたって、海域についても適切に指定されるように配慮して欲しい。

事務局:海域の公園区域については、通知において沿岸から1kmの海域を公園区域に指定する旨が記載されている。また、リアス海岸の湾奥については公園区域からはずれている場合が多いが、これは人々の生活区域となっているため。ただし、近年湾奥部についても、アマモ場や干潟が存在することから、重要な場所について国立公園区域に含めることができないかという相談はして参りたい。

委員:海域の公園区域は1kmの範囲とのことであるが、海鳥の採餌海域は陸から5~10km沖合にあり、特に三陸沿岸はアホウドリやオオミズナギドリの採餌海域として重要であり、保全することが重要。

事務局:1kmの範囲とは通知に規定されているが、海域の風景に対する評価が高まっていることを踏まえて、規定内容の見直しを検討して参りたい。

委員:新たに国立公園が拡張したことに伴い、管理する人員の配置についてどのように考えているのか。

事務局:現在、仙台にある東北地方環境事務所長の指揮のもと、大船渡及び宮古に自然保護官を配置している。また、震災後に八戸市に自然保護官事務所を設置して、国立公園指定に向けた調整にあたってきた。今後条件が整い次第、石巻にも自然保護官を配置したい。さらに、自然保護官を補佐するアクティブ・レンジャーも宮古に配置している。国立公園は現地で直接地域の人々と関わりを持ちながら管理をしていくことが重要と考えるので、今後も充実を図ってまいりたい。

委員:トレイルは景色が良い場所であるほどアップダウンが激しく、健脚な方でないと利用が難しい場合がある。みちのく潮風トレイルについては、景色の良さと歩きにくさとの関係について、現状はどのようになっているのか。

事務局:確かにアップダウンが激しい場所もあるが、仙台湾のように平坦地が続く場所もある。地域ごとの地形や風景の特色をより深く理解できるようなトレイルしていきたい。ルート中には厳しい自然環境に立ち向かうエリアが魅力として捉えられることにもなると考えるので、路線の決定は地域と相談しながら行うものであるが、できれば厳しい自然環境を有する場所も含めていきたい。

委員:グリーンワーカー事業による外来植物の除去とあるが、対象とする外来植物は何か。除去する植物に依存する昆虫類等への影響はないのか。
展望地の修景伐採について具体的な内容を教えて欲しい。また、修景伐採を行うのであれば、生物多様性への配慮をして欲しい。

事務局:除去の対象は、今回はオオハンゴンソウを考えている。一般的に国立公園内での外来種防除は、特定外来生物以外の帰化植物等も含み、事業の実施にあっては専門家の意見を汲み入れながら進める体制をもっている地域もある。また、修景伐採については、現地のレンジャーが現地で立ち会って切る木を決める等きめ細やかに対応している。

委員:国立公園の名称に「復興」を冠するのであれば、従来のように行為を規制することを重視した国立公園行政から、一歩踏み出し、アクションプランを持って取り組んで欲しい。集団施設地区をしっかりと整備した上で、公園外のコミュニティーも含め、連携して新たな取組を進めてもらいたい。

事務局:既存の国立公園の区域の中では、実際にできることは限られている。しかし、協働型運営を念頭において、国立公園内外の連携を進めることが重要であると考えており、三陸復興国立公園においてモデル的に行い、その成果を全国に活用して参りたい。

委員:現在、三陸地域では防潮堤等の構造物の建設が進み、森・里・川・海のつながりが遮断されつつある。国立公園を早急に指定することにより防潮堤等の建設の動きを食い止めることができるのか。

事務局:防潮堤については、地域の人々に対して生態系や地形等の自然環境に関する情報を提供していきたい。これを基に地域の自然環境をどのようにしていくのか、場合によっては我々も地域に入って議論を深めていくとともに、これをさらに他の地域に広げていければと考えている。

委員:みちのく潮風トレイルは設定しても適切に利用なされなければ問題である。利用しやすいような仕組みを考えて欲しい。

事務局:トレイルの拠点となる場所についてはエコツーリズムや自然再生的な要素を入れながら、協働型の管理運営を行い、観光振興に資する取組も進めて参りたい。

委員:グリーン復興プロジェクトには森・里・川・海のつながりの再生が掲げられているが、この部分の取組が弱いと考える。将来的に国立公園の区域を見直す中で「森・里・川・海のつながりの再生」を実現しうる公園指定やアクションプランを作成していただきたい。

事務局:区域の指定に関しては、今後、南三陸金華山国定公園の編入を考えており、さらにその先として、隣接する県立自然公園についても可能な区域、ふさわしい区域を編入したいと考えている。

委員:森・里・川・海のつながりの再生は一番の柱。それは、森・里・川・海に住む人の暮らしをベースとするエリアを国立公園として捉えて、そこで行われている漁業、農業、林業等の暮らし―一次産業を復興していくことに他ならない。そのようなアクションプランの中で、それを支えるエコツーリズムは単なる自然体験ではなく、生活の体験や町の復興等も含むものを進めて欲しい。

事務局:森・里・川・海の再生については、地域の理解を得ながら進める協働型の管理運営やエコツーリズムのモデル事業を実施していく中で、自然の再生も含めた取組を実施できるかどうか、考えて参りたい。

委員:グリーン復興プロジェクトは、現行の国立公園制度の中で最大限踏み出そうとしている取組と考える。すなわち、国立公園の利用をベースとして地域の社会的な復興を目指すこと、森・里・川・海の自然環境の再生等、自然公園の新たなフェーズに踏み出していくことと評価できる。協働型管理運営等新たな国立公園の動きを活用しつつ、精力的に取組を進めてほしい。

委員:種差海岸集団施設地区における利用施設のエネルギー源として、再生可能エネルギーの利用を考えている旨の説明があったが、これがもし風力発電施設の設置を考えているのであれば、渡り鳥への影響を慎重に検討し、十分配慮すべき。

事務局:景観や鳥類への影響を考慮し、風力発電施設を整備することは考えておらず、太陽光やバイオマスを利用したエネルギーを考えている。

部会長:三陸復興国立公園は、今回諮問された区域に限らず、もう少し幅広い区域の指定を目指している。今回は今後の自然公園の再編成に向けた第一段の役割としてご理解いただきたい。
また、三陸復興国立公園の名称については、委員からは特段の御意見は無かったが、いくつかの自治体からは、復興が固定化されるのではないか等の御懸念をいただいた。このような御懸念を十分に承知した上で、しかしながら、復興という名称が入らなければ予算面でのメリットも得られなかっただろうこと、また、復興の目途が立った時にその名称を変更して更なる宣伝の機会とできること等を考えると、「三陸復興国立公園」とした方がよいと考える。なお、名称変更については、国連生物多様性の10年のクロージングイベントと関連して次の名称変更を行うことも考えられる。
なお、防潮堤の整備が進む中で国立公園の指定を進めることは地域の資産、自然資本を大切にし、守ることにつながると考える。今回の諮問は第一弾であり、今後は、森・里・川・海の連環を念頭においた指定区域の拡大について、委員の皆様に審議にご協力をいただければと考えている。

問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(代表03-5521-8278)
  課長   桂川 裕樹(内線6440)
  課長補佐 堀上 勝(内線6642)
  課長補佐 田村 省二(内線6441)
  専門官  佐々木真二郎(内線6494)