中央環境審議会自然環境部会(第13回)議事録
開催日時
平成23年7月11日(月)14:00~16:00
開催場所
経済産業省別館 1028会議室
出席委員
(21委員)
磯部 力 | 臨時委員 |
---|---|
磯部 雅彦 | 臨時委員 |
小泉 武栄 | 臨時委員 |
桜井 泰憲 | 臨時委員 |
佐藤 友美子 | 委員 |
敷田 麻実 | 臨時委員 |
篠原 修 | 臨時委員 |
下村 彰男 | 臨時委員 |
白幡 洋三郎 | 臨時委員 |
白山 義久 | 臨時委員 |
高村 典子 | 臨時委員 |
武内 和彦 | 部会長 |
田中 正 | 臨時委員 |
中静 透 | 臨時委員 |
西岡 秀三 | 臨時委員 |
浜本 奈鼓 | 臨時委員 |
速水 亨 | 臨時委員 |
堀内 康男 | 臨時委員 |
マリ・クリスティーヌ | 臨時委員 |
宮本 旬子 | 臨時委員 |
涌井 史郎 | 臨時委員 |
あん・まくどなるど | 特別委員 |
議事
- 開会
- 議事(諮問案件)
(1)釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更について(点検) - 報告
- (1)東日本大震災について
- (2)最近の温泉行政について
- (3)地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する
法律について - (4)海洋生物多様性保全戦略の策定について
- (5)小笠原諸島の世界自然遺産登録について
- 閉会
配付資料
○議事関係
- 資1-1 釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更案の概要
- 資料1-2 釧路湿原国立公園 指定書及び公園計画書(案)
- 資料1-3 釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更案に関する説明資料
- 参考資料 釧路湿原国立公園の保護規制計画変更図(全体図)
- 釧路湿原国立公園の利用施設計画変更図(全体図)
○報告関係
- 資料2 東日本大震災について
- 資料3 最近の温泉行政について
- 資料4 生物多様性保全活動促進法について
- 資料5 海洋生物多様性保全戦略の策定について
- 資料6 小笠原諸島世界自然遺産について
議事録
午後2時5分 開会
○国立公園課長補佐 大変お待たせいたしました。若干時刻が遅れましたが、ただいまより中央環境審議会自然環境部会を始めたいと思います。
開会に先立ちまして、本日の出席委員のご報告をいたします。本日は、所属委員34名のうち21名の委員の先生方にご出席をいただいておりますので、本会は成立いたしております。
また、お手元にお配りしております配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
まず、議事次第、めくっていただきまして配付資料一覧、座席表、委員名簿、小委員会名簿、温泉小委員会名簿となっております。
それから、A4、2枚の自然公園法についてという簡単な説明文と「日本の国立公園」というパンフレットです。
続きまして、資料1-1、釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更案の概要。資料1-2、釧路湿原国立公園指定書及び公園計画書(案)。資料1-3、釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更案に関する説明資料。参考資料、釧路湿原国立公園の保護規制計画変更図(全体図)及び利用施設計画変更図(全体図)です。
続きまして、報告関係になります。
資料2、東日本大震災について。資料3、最近の温泉行政について。資料4、生物多様性保全活動促進法について。資料5、海洋生物多様性保全戦略の策定について。資料6、小笠原諸島世界自然遺産についてです。
もし配付漏れ等がございましたら、事務局にお申し出ください。
それでは、初めに自然環境局長、渡邉よりごあいさつ申し上げます。よろしくお願いします。
○自然環境局長 自然環境局長の渡邉でございます。
本日は大変お忙しい中、また、とても暑い中、中央環境審議会自然環境部会にご出席いただきまして本当にありがとうございます。
昨年10月に愛知、名古屋でCOP10が開催されまして、新しい世界目標であります愛知目標、また条約ができてからずっと対立した議論が続いてきた遺伝資源に関する名古屋議定書といった大変重要な決定や、ほかにも多数の重要な決定を生み出すことができました。
COP10に向けて、自然環境部会の皆さんからも貴重なご意見、ご提案をいただいてきたところであります。ありがとうございました。本日配付した資料の中に、COP10の成果を冊子にまとめたものをお配りさせていただきました。
また、3月11日に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生から、今日でちょうど4カ月がたちました。生活の再建や復興に向けた動きが始まっているところですけれども、現在、なお多くの被災者が困難を強いられています。被災者の方々が、それぞれの地域の暮らしを取り戻すことができますように願いますとともに、環境省も全力で被災地の支援に当たっていきたいと考えております。
今回、被災された地域には、陸中海岸国立公園を始めとして、多くの自然公園が沿岸域に指定されていて、地震あるいは津波によって多くの利用拠点が被害を受けますと同時に、自然環境も大きな影響を受けたところです。
こうした事態を受けて、環境省では三陸の復興に寄与する新しい国立公園づくりを進めていきたいと考えております。
具体的には、仮称ではありますけれども、三陸復興国立公園の創設ということも構想していきたいと思っています。これは、陸中海岸国立公園を、青森側、宮城側の北、南、そして両側に広げて、自然公園を再編成して地域の再生につなげていこうというものでございます。
また、三陸沿岸南北約350キロにわたる長距離歩道、三陸海岸トレイルというようなものを整備して、防災避難路としても活用できると同時に、自然、文化、産業というのを有機的に連携させて、環境振興、水産業振興に寄与できるようなものをつくり出していけないかということを考えているところです。
こういった取組については、今後、地域の方々と相談しながら、また地域と連携しながら進めていきたいと考えています。詳しくは、諮問事項の審議の後に報告させていただければと思っています。
本日の自然環境部会の諮問事項は、釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更でございます。
釧路湿原国立公園は昭和62年に指定されました。今回、この公園指定以後、初めての本格的、全般的な点検、見直しを行うというものです。現在指定されている国立公園の区域の周りに残されている湿原や河畔林、あるいは湿原を涵養する湧水池が国立公園に含まれるように公園区域を拡張して、保全の強化を図っていくことが今回の見直しの大きなねらいとなっております。
そのほか、報告事項として、先ほど申し上げました三陸復興国立公園のほかに、以前この部会からご意見をいただいた小笠原の世界自然遺産登録の状況も含めて、最近の自然環境行政の動きを報告事項として幾つかお伝えしていきたいと思っています。
さまざまな観点から活発なご審議をいただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○国立公園課長補佐 では、本日は、委員会改選後、初めて行われます部会でございます。事務局で、本日のご出席の先生方をご紹介させていただきたいと思います。僭越ですが、私のほうでお名前を読み上げさせていただきますので、申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
まず、委員側中央席ですが、武内部会長でございます。
続きまして、磯部力委員でございます。
そのお隣、磯部雅彦委員でございます。
そのお隣、小泉委員でございます。
そのお隣、桜井委員でございます。
お隣、佐藤委員でございます。
お隣、敷田委員でございます。
お隣、篠原委員でございます。
部会長を挟みまして、下村委員でございます。
お隣、白幡委員でございます。
お隣、白山委員でございます。
お隣、高村委員でございます。
お隣、田中委員でございます。
お隣、中静委員でございます。
お隣、西岡委員でございます。
お隣、浜本委員でございます。
テーブルを回りまして、速水委員でございます。
お隣、堀内委員でございます。
お隣、マリ・クリスティーヌ委員でございます。
お隣、宮本委員でございます。
お隣、涌井委員でございます。
最後になりましたが、あん・まくどなるど委員でございます。
皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
なお、この自然環境部会の下には、国立・国定公園に関する比較的規模の小さい案件を審議していただくために、平成13年3月から自然公園小委員会が設置されております。また、温泉に関する喫緊の課題の検討を行うため、平成16年10月から温泉小委員会が設置されております。
今回の改選によりまして、それぞれの小委員会に所属する委員につきましても変更がございますので、先ほど添付いたしました各小委員会の名簿をもってご紹介とかえさせていただきたいと思います。
それでは、これよりの議事進行につきまして、武内部会長にお願いいたします。
部会長、よろしくお願いいたします。
○武内部会長 今期から部会長を仰せつかっております武内でございます。
今日は、割と普段からいつも顔を合わせておられる方、それから、初めて今日ここでお顔を拝見する方と並んで、随分久しぶりにお会いする方が多いので、びっくりしました。
私もそうですけれども、篠原先生を初め、皆さん、それ相応に年をとられて、ともにいろいろと歩んできたなというようなことを、今、感慨深く思っております。
先ほど、渡邉自然環境局長からお話がありましたように、昨年は日本の自然環境行政にとってはとても重要な年だったと思います。自然環境行政というのは、これまでは、どちらかというと、環境行政の中では国内行政が中心だったと思うのです。それに対して、COP10では、自然環境行政を、ただ世界に広げるだけではなくて、日本発の概念、あるいは日本発の方法論として展開できたという点で大変意義があったのではないかと思います。
愛知目標が設定されましたが、その長期目標が「自然と共生する世界」という、これは人間と自然が不可分の関係にあるとする、いわば日本的あるいは東洋的な自然観、これについて、世界の人が、それを共通の目標にするということを皆さんに認めていただいたということです。
私などは、とりわけ途上国、アフリカ諸国のような人たちが、こういう考え方こそが、これから生物資源を持続的に利用していく際の非常に大事な考え方だということで共感していただいたということは大変大きかったと思います。里山イニシアティブというのも、その流れの中で評価されたことではないかと思っております。
それと、最近思いますのは、今日は震災から4カ月がちょうどたったということでございますけれども、改めて、自然とつき合うということはどういうことなのかということを、我々は深く考えさせられているということではないかと思うのです。
これまで、我々は「自然共生社会」という言葉を使って、いろいろな取組をしてきたのですけれども、何となく我々が今まで使ってきた自然共生社会というのは、自然は弱いもので、そして、その弱いものを守って、うまくつき合っていくというイメージだったと思うのですが、今回の震災では、まさに自然の驚異を前に、私たちの生活基盤そのものが奪われる事態に直面しました。これもまた自然です。そういう自然とどうやってつき合っていくのかということを考えていくことが必要なのではないかと、私自身は今考えているのです。
したがって、自然の驚異と恵みをともに視野に入れながら、どうやって自然共生社会を実現していくのかということを、もっと深いところで考えていくことが非常に大事なのではないかと思っております。
それと、これも先ほど局長からお話がございましたけれども、東北の復興、もちろん東北だけではなくて東日本全体の復興ということ、あるいは日本社会の復興ということでもあるわけですけれども、その中で自然環境行政はどういう貢献ができるかということで、今現在、三陸復興国立公園という、そういう概念を考え始めているわけですけれども、ここに込められた願いというのは、私は二つあると思っております。一つは、海岸は海岸、それから里山は里山と分けて考えるのではなくて、里山から里海までを一種の連環系としてとらえていくこと。そのため、「海岸」という名称を取って、もう少し広い考え方をとっていくということが自然というもののとらえ方の中で非常に重要だと考えます。それから、もう一つは言うまでもないのですが、「国立公園」というと、ややもすると、どちらかというと自然の保護とレクリエーションというものが中心だったわけですけれども、むしろ、それを、もう少し幅を広げて人間生活の豊かさを支える基盤としての国立公園というもの、そういうものに発展していくということが必要ではないか、そこに「復興」という言葉を入れるということの意味があるのではないかと、そんなふうに考えております。
新しい部会が、たまたま東日本大震災の後に出発をするという、こういうめぐり合わせのもとに、私は、そのことも踏まえながら、この部会での議論を皆さん方と一緒にやっていきたいというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、本日の委員会は公開で行いますので、報道関係者や傍聴の方も同席しています。会議録は、後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員の了承をいただいた上で公開することとなります。
なお、議事要旨につきましては、事務局で作成したものを、私、部会長が了承した上で公開することを、あらかじめご了承いただきたいと思います。また、会議資料につきましても公開ということになります。
本日の諮問案件は、釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更に関するものですが、審議に入る前に、事務局から自然公園法と本部会との関係について説明をお願いいたします。
○国立公園課長補佐 それでは、私、国立公園課の総括補佐をしております中山でございます。ご説明させていただきます。
お手元に印刷したスライドも用意してございますので、それをご覧になるか前をご覧になっていただければと思います。
自然公園法について、ご説明します。
この自然公園法という法律は、今回ご諮問させていただきます国立公園のバックボーンになっている法律でございます。法律の目的としましては、すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図るという、「保護」と「利用」の二つの目的を持っております。この二つの目的を達成することにより、もって国民の保健、休養及び教化に資するということと、それから、もう一つが生物多様性の確保に寄与するという、いわばオーバーゴールを持っておりまして、それを達成するという法律の目的になっております。
自然公園法における幾つかの言葉の定義についてご説明させていただきますが、自然公園法の中には、国立公園、国定公園、そして都道府県立自然公園の三つの自然公園を規定しております。
今日のお話は国立公園でございます。
これは、我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地ということで、本当に日本を代表するような自然を守りながら、活用していこうというものでございます。これは、環境大臣が指定をして環境大臣が管理をする。
それから、国定公園につきましては、国立公園に準ずる、すぐれた資源の風景地を保護し活用するものです。これは環境大臣が指定しますが、都道府県が管理することになっておりまして、管理者である都道府県の申し出によって指定するという形になっております。
それから、自然公園法のもとに各都道府県が自然公園条例を定めまして、都道府県立自然公園を置くことができるようになっています。これは、それぞれの県において、すぐれた自然の風景地を保護する、そして活用するというものでございます。
国立・国定公園の指定及び区域の変更についてご説明させていただきます。今日の諮問自体は、これに関わるものということです。
国立公園は、環境大臣が関係都道府県及び中央環境審議会の意見を聞き、区域を定めて指定ということが法に定められております。また、国定公園は環境大臣が関係都道府県の申し出により中央環境審議会の意見を聞き、区域を定めて指定することになっております。
それぞれ国立も国定も、中環審の委員の皆様にご議論いただいて、そのご意見を踏まえて決定させていただくようなスタイルになっております。
次に、何を決めるかというお話でございます。
7条、8条というものでございますが、国立公園も国定公園も、公園計画というものを定めることになっております。その決定・変更についてでございます。これは、公園計画の枠組みというものがございまして、その中に、大ざっぱに言いますと、規制に関する計画と事業に関する計画がございます。
規制に関する計画というのは、国立公園をゾーニングし、例えば、特別保護地区や特別地域を決めまして、それぞれの行為を規制するというものでございます。
あと、利用規制というのが定められることになっておりまして、マイカー規制等が定められることにはなっております。また、保護規制と同じように、ゾーンを定めて利用調整地区というものを設けられる制度になっております。
それから、事業に関する計画は、最も多いのは利用施設というものでございます。利用施設というのは、具体的には園地事業であるとか、キャンプ場、野営場事業でございますが、それから宿泊施設、宿舎事業、スキー場等々、利用のための施設を国立公園内に立地することを定める計画でございます。
それの左側になりますけれども、もう一つ保護施設というのがございまして、これは、例えば、今日の釧路にもございます自然再生のための施設を設けるようなものや植生復元の施設、動物繁殖施設等の施設を設けるものについて決めることになっております。
それから、小委員会で諮問させていただくことになっていますが、国立公園の中の生態系を維持し、回復するための事業というのもございます。
先ほどのゾーニングにつきまして、概念図をお示しさせていただいております。
自然公園の概念図と書きまして、大きな楕円がありますが、これ全体が国立公園の区域だと思っていただければいいかと思います。全体の中に卵の黄身のような形でピンク色の枠がございます。これが、先ほど話をした特別地域というものでございます。国立公園全体の中に特別地域を定めることになっておりまして、さらに、その中にオレンジ色の範囲でございますが特別保護地区を定めます。
特別地域と特別保護地区については、そこで何かの行為を行おうとされる場合は、国であれ、都道府県であれ、民間であれ、市町村であれ、すべての方々が環境大臣に対して、国定公園の場合は都道府県知事に対して許可申請をしていただいて、許可を受けた上でものができるという仕組みになっております。特別地域につきましては、第1種、第2種、第3種に細区分されるようになっております。
それから、海域公園地区というのがございます。海では陸域とは違いますが、基本的に大事なところについては海域公園地区を指定して、そこでも許可制度を採用しているということでございます。
その他の地域については普通地域と称しておりまして、そこでは届け出制になっております。
今日は自然環境部会でございますけれども、この後に自然公園小委員会が行われることになっております。小委員会と部会の役割分担ですが、まず、イでございますが、1,000ヘクタールを超えないものについては自然公園小委員会でご議論をいただくことになっておりまして、すなわち部会では1,000ヘクタールを超えるものに関してご議論いただきます。
それからロでございますが、公園計画の変更、規模の小さな変更については委員会でできる。それから、公園事業というのが先ほどの利用施設、保護施設の詳細を決定する手続でございますが、これについては、事業決定の手続というのは小委員会で行うことになっておりまして、規模の大きなものについてのみを部会でご議論いただくことになっております。
今日ご参加いただいている先生の中には小委員会にもご出席される先生がいらっしゃるので、小委員会のことも若干説明させていただきます。先ほど、「小委員会でご議論いただく」と言った公園事業の決定の手続でございます。
これは、公園計画のさらに下で、個別事業ごとに事業計画に従って事業を実施するときの大枠を定める手続でございます。例えば、道路ですと幅員が何メートルまでとか、そういったものを定める手続でございます。これは、公園計画に従いまして第9条で事業決定の手続というのが定められておりまして、その下で、それぞれが実施する。国立公園の事業については原則として国が執行いたしますが、公共団体、民間団体は同意や認可を受けてできるという規定でございます。
以上でございます。
○武内部会長 どうもありがとうございました。
今の件について、ご質問はございますか。よろしいですか。
(なし)
○武内部会長 それでは、議事に入りたいと思いますが、釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更について、審議させていただきたいと思います。
諮問書の朗読は省略させていただきます。
事務局から説明をお願いいたします。
○事務局(佐々木) 国立公園課の公園計画専門官をしております佐々木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、釧路湿原の公園計画の点検につきまして説明させていただきます。
本日、説明する際に使用する資料として、お手元の資料1-3が、これから映し出すスライドの中身となっております。
また、資料1-3では公園の全体の位置関係などがわかりにくいので、参考資料としまして公園全体の中で変更のある場所がどこなのかというのを示したものがA3で2枚ございますので、そちらもあわせてご確認いただきますとありがたいです。
それでは、説明に移らせていただきます。
釧路湿原の国立公園ですが、昭和62年に指定されております。こちらの公園は、その前の1980年の段階でラムサールにも日本第1号として登録されております。日本一広い湿原ということで、低層湿原の広大な水平景観と貴重な野生生物が分布していることを理由に、生態系の保全を重視する地域として指定されております。
日本最大の湿原と先ほど申しましたが、特に平野部では湿原の多くが失われてしまっております。そんな中で、釧路湿原は原生的な下流部の自然環境がよく保存されている場所です。貴重な野生生物としてタンチョウやオジロワシ、それからキタサンショウウオですとかトンボ類など、非常に数多くの動物が生息していることでも知られております。
国立公園の利用形態ですが、主には展望台から釧路湿原の景観を眺望したり、湿原の中や周辺の丘陵地を歩いて散策する、キャンプをしながら利用する、釧路川をカヌーで下る利用、それから乗馬の利用、冬はクロスカントリーの利用や、通年を通して釣りの利用もございます。平成21年度は32万人がこちらの公園を利用しております。
釧路湿原国立公園の、これまでの公園計画などの変更の経緯ですが、62年に指定されまして、それ以来、一部変更としまして、少しずつ変更しておりましたが、今回初めて公園全体を対象とした大規模な見直しを行います。公園の指定以来、さまざまな科学的な調査を実施してきておりまして、特に、平成15年に施行されました自然再生推進法に基づき釧路湿原自然再生協議会が設立されまして、自然再生に向けた取組が行われている公園です。その中で多くの科学的な知見が集まっておりまして、それを受けて、今回、点検をかけるということになります。
まず、今回の変更案の概要をお知らせいたします。
今回の変更で、特にポイントとなるのは、湿原を潤していくために非常に重要になってくる湧水地を保全するということが挙げられます。湧水地は湿原と接する丘陵地との境目のところに多く分布しておりまして、公園指定後のさまざまな調査や自然再生事業を進める中で、特に重要な湧水地の場所などが明らかとなってきております。これらの湧水地は国立公園の外にも多く分布しておりましたので、今回は湧水地と、その背後にある丘陵地も含めて公園区域として拡張して保護を図っていくこととしたいと考えております。
また、これらの湿原や、湿原に入り込んでくる小規模な河川は、タンチョウやキタサンショウウオ、ニホンザリガニといった湿原を特徴づける希少な野生生物の生息地としても重要です。なので、これらの河川や周辺にある河畔林につきましても公園区域に取り込んだり、保護の強化を図っていくということを考えております。
また、風景地として展望されるような湿原、それから湿原の背後にある広葉樹林、釧路湿原は、ほとんどヨシが生えている低層湿原ですが、中にはミズゴケが生えている高層湿原も若干ありますので、そういった高層湿原の保護、公園利用上、重要な場所などについても公園区域を拡張したり、保護の強化を図っていきたいと思っております。
今回、区域拡張する地域は、NPO法人などがナショナルトラストの土地として取得した土地なども含まれているのが特徴です。また、公園利用に関する計画の変更としては、長距離自然歩道の北海道自然歩道をより魅力的なものに変更することにあわせて、公園区域の路線も変更するというものや、カヌーの利用に関する変更、それから国立公園の一大利用拠点である塘路湖の湖畔にある施設を集団施設地区として取りまとめるということも考えております。
それでは、これから先、個別の地域の説明に移らせていただきます。
まず、スライドの10番、11番、A3の紙では温根内川流域や下幌呂という地域になります。こちらは非常にたくさんの湧水地が分布しておりまして、湿原を涵養する湧水地として重要です、また、トラスト地も含んでおりまして、タンチョウの営巣地も確認されております。
それから、スライドの15番、16番、A3の紙だと温根内南というところの2カ所ですが、こちらは環境省が整備した温根内ビジターセンターに隣接する地域になっております。この地域は、湿原を探勝するための木道も整備されておりまして、ヨシの低層湿原のほか、ミズゴケの高層湿原も分布しておりまして、釧路湿原の特徴を理解するために非常に重要な場所となっております。
キタサンショウウオやニホンザリガニ、タンチョウなどの生息も確認しておりまして、これらの地域について、保護の規制を3特から1特に、それから第2種特別地域から第1種特別地域に格上げすることで、より保護の対策を強化しようというというものになっております。
それから、12番と17番のところですが、A3の資料では右岸堤防南というところになります。こちらは湧水地も多く分布しておりますし、釧路市の湿原展望台や、南部のところから車道が走っているのですが、その車道から見た際にも非常に湿原を見る上で重要な場所となっております。こちらにつきましても、保護の規制を強化していくものとなっております。
それから、飛び地になっておりますが、2番で北斗という地域ですが、こちらには環境省で整備した釧路湿原野生生物保護センターがあります。そして、西側から公園にアクセスする際の入り口にも位置しておりますので、こちらを公園区域に拡張しまして、釧路湿原野生生物保護センターを公園利用のための施設として位置づけまして、公園のエントランスでの情報発信をより強化していくということを考えております。
続きまして、釧路湿原の東にある広里という地区の説明に移らせていただきます。広里というところと、あと別保原野というところが対象になっております。こちらは低層湿原が広がっておりまして、キタサンショウウオやタンチョウなどの営巣地にもなっております。これらの場所を公園区域として拡張したり、法の規制を強化するものとなっております。この地域は自然再生事業を実施している場所でして、これまでに湿原に土を盛って農地にしたようなところを、いかに湿原に戻していくのかというテーマや、湿原の中で拡大を続けているハンノキ林が一体どういう理由で拡大しているのかなど、さまざまな原因究明や制御方法といったものの試行錯誤を続けてきた場所でして、技術的に一定の知見が得られております。
これら自然再生事業の実施地としても、非常に重要な場所となっております。
続きまして、今度は湿原の、南北で言いますと真ん中辺りの宮島岬とキラコタン岬というところになります。こちらは湿原に突き出すように出てきた岬状の地形になっておりまして、湿原を広く展望することができる視点場として非常に重要な場所です。当然、突き出しておりますので湿原の周りにある展望台からもよく見ることができるような場所になっております。また、岬の湿原と接する部分は湧水がたくさんわいている場所にもなっております。それらのことから保護の規制を強化するものとなっております。
続きまして、塘路湖の湖畔の計画となっております。
まず、21番の二本松というところの説明ですが、こちらは小高い丘陵地となっておりまして、湿原を挟んでちょうど西側のコッタロ展望台というところから見られたり、またカヌーを利用する釧路川からも展望される場所になっております。周りは湧水が豊富になっておりまして、この場所からも歩道が整備されておりまして、湿原を見ることができるような場所となっております。
また、9番の塘路湖の湖畔の部分ですが、こちらも良好な低層湿原や高層湿原が分布している地域でございます。こちらにつきましても公園区域に含めていくことを考えています。また、塘路湖の一番西側、9番の部分ですが、そちらは集団施設地区として公園の利用拠点としての整備を進めていくことを考えている場所で、後ほど利用計画の変更のところで詳細をご説明させていただきます。また、一番東側のオモシロンベツ川流域というところも低層湿原や河畔林がすぐれている地域なので、公園区域として拡張することを考えております。
続きまして、達古武湖の周りの説明をさせていただきます。
まず、資料の3番の達古武川流域と18番夢ヶ丘というところの説明をさせていただきます。こちらは達古武湖の集水域、達古武湖に流れ込む水が集まるような場所の丘陵地でして、湧水地も豊富にある場所で、良好な河畔林が広がっております。達古武湖の湖畔など、利用をする上で重要な場所からも、よく見ることができる場所となっています。湧水地にはニホンザリガニなどの希少な野生生物が分布しておりますし、夢ヶ丘にはトラスト地も含まれております。
達古武湖の北部の18番の夢ヶ丘の場所ですが、こちらはカラマツを植林した場所ですが、自然再生事業を実施しておりまして、カラマツの林をもとの広葉樹林の森に戻すということを今までやってきております。
それから、19番の細岡というところですが、こちらは細岡展望台という湿原を見渡すことができる展望台がありまして、利用上も非常に重要な場所となっております。湧水地が多くて、良好なミズナラ、シラカバなどの自然林が成立しています。この細岡は、ちょうど湿原を挟んで西側の反対側の釧路市の展望台などからも見ることができる重要な場所です。
それから、達古武湖の南にある中の沢流域というところですが、こちらは湧水が豊富な丘陵地で河畔林もすぐれていることから、国立公園に区域として編入することを考えております。
続きまして、次のページへ行きまして、コッタロ川とオソツベツ、それからシラルトロエトロ川の概要です。
まず、7番、8番のコッタロ川の流域のところですが、こちらは湧水地として非常にすぐれているほか、大型のサケ科魚類で希少野生生物であるイトウが生息している川としても知られております。
また、資料の5番、6番、それから20番のオソツベツの地域ですが、こちらも湧水地と低層湿原が広がっております。こちらでは、以前、蛇行している河川を直線化した場所ですが、自然再生事業として、もとの蛇行した川に戻すという取組をやっております。この直線化した部分は埋め戻しが行われております。今は、もう既にもとの蛇行した河川に戻しまして、植生の変化などをモニタリングしている状況となっております。再蛇行した部分は2.4キロとなっております。
それから、シラルトロエトロのところですが、こちらも湧水地が豊富にあって良好な河畔林と湿原が広がっているので、公園区域として拡張したいと考えております。
続きまして、これ以降は利用の施設の変更の話をさせていただきます。
まず、北斗の博物展示施設ですが、こちらは先ほど申し上げたとおり、釧路湿原野生生物保護センターが既に整備されております。こちらを公園計画に基づく施設として位置づけまして、こちらのセンターでも釧路湿原の情報提供を積極的に行っていくことで、より釧路湿原のことの理解が進むように進めていきたいと考えております。
それから、9番の北斗遠矢線車道につきましては、公園区域の拡張に伴い路線を変更し、公園計画に位置づけます。
それから、4番の釧路川右岸堤防線歩道ですが、こちらは全長16キロの歩道で、河川の管理用道路として整備されたものですが、一般の自動車は通行できない状態となっています。現在は自転車の車道として使用する計画が公園計画に位置づけられていますが、こちらは、さらに歩行者の利用も推進していきたいと考えておりまして、歩道計画として追加いたします。路線からは湿原と周辺の丘陵地がよく展望されまして、湿原の中を歩くものとしては非常にすぐれている道路だと考えております。
それから、3番の北海道自然歩道の変更ですが、こちらは、北海道自然歩道の路線の計画を見直したことに伴って、国立公園の計画でも整合をとって見直すものです。こちらの地域では、縄文時代の遺跡である北斗遺跡という場所を今回通過するように路線変更しまして、昔の人たちが湿原の周辺の環境をどのように使っていたのかということを理解しながら歩いていただくことができるような路線計画とするようにしております。
続きまして、キラコタン岬と宮島岬の車道の計画の変更です。こちらは、これまでも車道の計画が位置づけられていたところですが、現行の車道と路線がずれていたために、現在ある車道に線形を合わせるという形の変更になります。また、宮島岬の宿舎ですが、かつては宿舎の整備を予定していたのですが、社会状況の変化もありまして、また宿舎の整備も行われませんで、今後の整備の予定も立っていませんので、今回計画から削除いたします。
続きまして、キラコタン岬、宮島岬の利用施設計画の変更で、今度は歩道の計画の見直しです。こちらも、北海道自然歩道の路線計画の変更にあわせて変更するものです。これまで北海道自然歩道では釧路湿原の周辺の路線を整備してまいりましたが、湿原を見渡すことができる展望台が路線の中で3カ所しかありませんでした。なので、今回の路線計画の変更で、こちらの宮島岬とキラコタン岬、それから後ほどご説明いたします夢ヶ丘というところの3カ所を展望台がある路線として追加しまして、一層の魅力の向上を図っていきたいと考えております。特に、これらの宮島岬やキラコタン岬、夢ヶ丘の展望台は、釧路川とか、その周りにあるチルワツナイ川などの河川が蛇行している景観を臨むことができる場所となっております。
続きまして、塘路湖の周辺の利用施設の計画の変更です。まず、スガワラの舟遊場です。舟遊場というのはカヌーを乗りおりするときの発着場のことです。釧路川のカヌー利用は、平成16年に自然再生協議会で取りまとめた「釧路川の保全と利用のカヌーガイドライン」の中で、タンチョウの繁殖期における利用の配慮などをしながら安全にカヌーを利用してもらうための事項が定められているガイドラインとなっています。
このガイドラインの中で、カヌーの発着する場所については、ここと、ここと、ここにしましょうということで場所を決めておりまして、より周辺の自然環境を破壊しないように誘導するためのものです。
今回は、このスガワラのほか、後ほど出てきます細岡、岩保木の3カ所のガイドラインに位置づけられているカヌーの発着場を公園計画としても位置づけるものとなっております。
それから、サルボ園地ですが、こちらは国道わきに位置する展望台でして、多くの利用者が釧路湿原や塘路湖など湖沼の眺めを楽しみに来る場所です。
また、塘路の集団施設地区のところですが、これまで博物展示施設、ビジターセンター、それから園地や舟遊場などがございましたが、ばらばらに整備されてきた感がございましたので、これらの連携を図るために、集団施設地区として取りまとめることを考えております。
塘路湖の集団施設地区の概要ですが、まず、集団施設地区というものは、国立公園の利用拠点として地区全体の整備計画を取りまとめて、より利用を増進していく、利用者に快適な利用環境を提供していこうという趣旨で定めるものです。
塘路湖には、これまで、先ほども申し上げましたとおり、幾つかの施設が公園事業として執行されてまいりましたが、これらの連携がやや不足していた感もございました。なので、今年度、この地区の全体計画、整備計画を策定する予定で考えております。
釧路湿原最大の湖である塘路湖、それから湖畔の林、湿原などに加えまして、かつての竪穴式住居の遺跡とか、かつて、この周辺にアイヌの集落であるコタンがあり、アイヌの文化が息づいているところでもございます。これらの資源を活用しまして、エコツーリズムや環境教育の活動を一層推進するための利用拠点として歩道を整備し、ガイドするプログラムの開発をするなど、ハード、ソフト両面を含めた整備計画をつくっていきたいと考えています。整備計画の検討に当たっては、地元の関係者との意見交換会を開催するなどして、地域と協働して進めていきたいと考えております。
それから、塘路湖の利用施設計画の変更のもう一つとして、北海道自然歩道の路線計画の変更がございます。こちらも北海道自然歩道の路線計画が変更されたことに伴う変更で、湿原が間近で観察できる場所など、それから丘陵地の中の森を散策することができる路線として若干の路線の変更を考えているものです。
それから、達古武の利用施設計画の変更のうち、細岡、岩保木の舟遊場施設については、先ほど説明させていただいたとおりですので省略させていただきます。細岡岩保木線の車道については、公園区域の拡張に伴い路線を追加するものです。削除区間につきましては、現行では砂利の道路が整備されているところですが、利用頻度が低く、公園利用上の必要性も薄れてしまったことから、今回、計画から削除したいと考えております。
それから、達古武の利用施設の変更ですが、細岡岩保木線の歩道につきましては、現在、整備がされていなくて、道がない状態となっています。必要性も乏しくて、今後も整備する予定がございません。近くには北海道自然歩道も整備されていることから、今回、公園計画から削除したいと考えているものです。
また、北海道自然歩道は公園区域の拡張に伴う路線の追加と、達古武湖の北の部分につきましては北海道自然歩道の路線計画の変更に伴う変更でして、夢ヶ丘の展望台を見に行く路線と達古武湖の湖畔のキャンプ場をつなぐ路線として、追加を行うものとなっております。
以上で、駆け足ではありますが、釧路湿原の公園計画の点検につきまして説明させていただきました。審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○武内部会長 それでは、本件について、ご質問、ご意見がございましたら承りたいと思います。
質問あるいはご意見のおありになる方は、札を立てていただいて、そして私から指名をさせていただきたいと思います。若干配席が横長でございますので、遠い方は、私も識別が難しいものですから、私が見えるように札を立てていただければ大変幸いでございます。
それから、ご質問、ご意見に対する事務局からの回答については、まとめてということにさせていただきたいと思いますので、事務局ではメモをきちんととっていただければと思います。
それでは、どうぞ。
○速水委員 ありがとうございます。私は偶然、釧路湿原の一部のトラストをサポートする資金を出すNPOの関係者ですが、かなり、釧路湿原の場合は、一部の地域で以前の原野商法等で森林が伐採されて、そこから土砂流出が見られて湿原の乾燥が端っこで始まっていると聞いておりますが、今回の国立公園の拡大等で、そういう部分の再生というプランは具体的に進むのでしょうか。そういうことでございます。
○武内部会長 ありがとうございます。ほかに。
○下村委員 今の速水委員の意見と少しダブるところがあるのですけれども、公園面積2万7,000ヘクタールのうち、拡張が2,000ヘクタールぐらいで、変更が5,600ということで、かなり大幅ですけれども、保護関係の問題と利用関係の問題で、この変更に伴って、どういう効果があるかに関する説明があまりなかったように思思います。
変更のポイントということで、具体的には言っていただいたのですが、例えば、自然再生事業なども進んでいる中で、今回拡張された部分によって、どういう自然再生事業に効果があるかとか、湿原のある種の進行をどうとめられるかとか、あるいは利用計画に関しても、施設関係がかなり変更されたようですけれども、従来の利用を増加させる方向で変えられたのか、それとも、異なった形の利用を誘発したいとか、概ねこういう方向で利用を誘導する目的で変更されたのかというところを説明していただくと、それぞれの変更にどういう意味があるかに関して理解が進むのではないかと思います。
○武内部会長 ありがとうございました。
○高村委員 釧路湿原の湖を調査させていただいているのですが、環境の富栄養化が進んでおりまして、生物多様性の減少が非常に悩ましい状況でございます。
それで、公園内の利用施設、宿泊施設ですとか、こういうビジターセンターも含めまして、キャンプ場もたくさんありますが、人が利用することに伴って、こういう公園の中では、排水とかの処理とかは、現状として、どういう制約を課すことができるのかということを教えていただきたいということと、できましたら、そういう制約を非常に強くしていただかないと、流域の影響を非常に大きく受けて、湖は景観を守って、近場の地区を守っていただいても、なかなか生物多様性の保全が実現しにくいので、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。
○武内部会長 ありがとうございました。ほかに。
○篠原委員 質問と意見があるのですけど。
質問は、緑色で書いてある線が歩道で、赤の線が車道ですよね。それはわかりました。緑の線は歩行者専用だと思うのですけど、一体全体、標準的な幅員についてどういうことを考えておられるのか。それから、自転車は通行可なのでしょうかということです。
それから、塘路湖の利用施設が、今までは野営場があったり、いろいろなものがあったのだけど、それがばらばらだったので集団施設地区に統合しますという話ですが、それはそれでいいことだと思ったのですけど、具体的な検討は自然公園小委員会でやるのでしょうかという話です。以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。ほかに。
○マリ・クリスティーヌ委員 先ほど、ナショナルトラストの部分も今度は関わってくるということだったのですけれども、NPOで、民間と国との関係が、どういう状況になるのか教えていただきたいです。
○武内部会長 ほかに。
(なし)
○武内部会長 よろしいですか。
それでは、今までいただいたご質問、ご意見に対して、事務局のほうから。特に、公園計画の変更に関する哲学と効果、そこのところを中心に、いろいろといただいたご質問、ご意見に対してお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○事務局(佐々木) それでは、今いただきましたご質問等に回答させていただきます。
まず最初に、速水委員がおっしゃいました、森林伐採、土砂流出などがあって乾燥化が懸念されるが、自然再生のプロジェクトは今後どう進んでいくのかというご質問に対してですが、今回、公園区域の変更などをいたしまして、特に丘陵地の部分などは、保護の規制がかかることによって、森林の伐採など、ある程度規制を強化したことによる効果が見込まれると思います。また、湧水地につきましても土地の形状変更などを防止したりすることで保護の効果は上がるものと考えています。
釧路の自然再生の今後ですが、今まで5年間ほど事業を実施してきておりまして、一部の区域を限定した試行錯誤による技術の開発ですとか、知見の収集、データの収集などを行ってまいりました。その成果として、例えば、達古武湖のところで植林地をもとの広葉樹林に戻していく取組が、もう既に事業ベースでスタートしておりますし、直線化した河川を蛇行化させるなどの効果が出ております。
今後、これを釧路湿原全域、特に自然再生の構想では流域全部ということで、25万ヘクタールぐらいの非常に広い集水域全体をとらえて、今後どのように扱っていくのかという検討を既に開始しております。これらの自然再生の検討の中で、では、流入する河川はどうしたらいいのか、周囲の牧場とかそういったところはどういう配慮を求めていくのがいいのか、総合的なプランをこれから策定してまいりたいと考えているところです。
下村委員の質問にもございました部分に一部回答させていただきましたが、保護の規制を強化することで、そういった湿原を守るという効果が見込まれます。
また、利用の関係ですが、北海道自然歩道の変更などは、より北海道の長距離自然歩道の魅力を向上させるために、新たな魅力を利用者の方々に知っていただきたいために、資源がある場所に路線を追加しまして、より深く湿原を楽しんでもらおうという配慮で変更したものです。
また、塘路湖などにつきましては、これまでばらばらだった利用施設を統一して、集団施設地区としてのコンセプトというものを取りまとめていくことによって、自然環境、それから自然環境とおつき合いをしてきた先人の文化とか、そういったものも含めた、より質の深い体験ができるような利用に誘導していきたいと考えているものです。もちろん、中には現行の歩道を追従するような形のものもございます。
それから、高村委員の質問で、富栄養化が進んでいる湖について、排水のほうがどうなっているのかということですが、こちらは後ほど、現地の保護官も来ておりますので、そちらから少し説明させていただきますが、湖の中で、達古武湖などにつきましては富栄養化が進んでいることなどから、特に自然再生の観点で、これをどういうふうに扱っていったらいいのかという試行錯誤を今しているところです。
かつてアオコが富栄養化で非常に繁茂しまして、現在はヒシがたくさん繁茂する状態に変わっていると聞いております。ヒシにつきまして、除去すれば一定の効果は見られるのですが、そもそも根本的に富栄養化の原因となっている場所が、何が原因なのか、そういったものを現在調査しているところです。公園区域外も含めて集水域のところ、どういった栄養の流入源があるのかといったことを把握しまして、把握できたところで、そこの対策を考えていくということが考えられます。
もちろん、湿原全体の富栄養化の問題につきましても、先ほど申し上げました自然再生の協議会で、公園区域外のエリアも含めた対策を考えておりますので、その中で方策を考えていきたいと思っております。
また、篠原委員からありました公園の利用の歩道の幅員などの規格の話、それから自転車が通行できるのかどうかといった話ですが、自然公園の歩道、釧路湿原の歩道につきましては、さまざまな規格がございます。現行として、人しか歩かないような場所というものは、それこそ幅員1メートルぐらいとか、そういった感じの道も結構多いと思うのですが、自然公園の歩道につきましては、現行の砂利道とか、場合によっては、路線をつなげる関係上から、車道として使っている場所も歩道として位置づけるということをやることもございます。ですから、その場所、場所に応じて幅員などが変わってきたり、整備の仕方も変わってくるというのが現状となっています。
今回、特に釧路湿原の右岸堤防の歩道につきましては、もともとが河川の管理用道路として位置づけられたので、車が通ることも可能となっておりますが、現状として一般の車両は入らない状態になっておりまして、こういったところは自転車の利用も、歩道としての利用も両方認めていくという計画になっております。
それから、マリ委員からありました、トラスト地での、今後の国と民間のNPOなどのおつき合いの仕方、関係がどうなっていくのかということですが、私たち国立公園の管理では現地に自然保護官が駐在しておりまして、地元のNPOの方々とも普段からおつき合いさせていただいて、コミュニケーションをとりながら対策を進めています。そういった中で、重要な場所がトラスト地になっていたりしているということもあると思います。
今回、トラスト地を公園区域に拡張したりしますが、これまでも、どういった管理が望ましいのか、手を入れるべきか、入れないべきかも含めて、自然保護官が協議しながら進めてきておりまして、公園区域になることで、より一層、特に公園の手続なども発生することから、コミュニケーションはより深まっていくものと考えております。
○事務局(竹中) 釧路湿原自然保護官事務所を現場で管理しております竹中です。よろしくお願いいたします。
高村委員からの質問があった、排水について、どのような制約があるかというところですけれども、現場のほうから話させていただきます。
今回、公園区域になったところは自然公園法の規制の中で規制していくというところかと思うのですけれども、また、周りの、公園になっていないところも含めて、今は当然、自然再生協議会の中では、釧路湿原だけではなくて、特に流域というところの考え方でやっております。地元の農家さんとか、いろいろなところとお話をさせてもらって、釧路湿原再生事業の目的も、地域の産業の活性化と自然環境の保全というのを両立させていくというところが考え方としてありますので、意見交換をさせてもらいながら自然環境の保全についても進めていきたいと思っております。以上です。
○武内部会長 どうもありがとうございました。
○事務局(佐々木) 一つ、ご回答し忘れていたものがございました。失礼いたしました。
塘路湖の集団施設地区について、これから整備計画などを小委員会で諮るのかということですが、こちらは、小委員会では事業決定のほうでいろいろな、もう少し細かいところの中身をご報告させていただいて、決定規模などを審議していただくということを考えております。
○篠原委員 今度は、釧路湿原とは直接関係ありませんけど、一時期、支笏湖のところで公共工作物の色彩の議論をしたことがありまして、それは環境省の方にも入っていただいて議論をしたのですが、大体、色彩の指導は茶褐色でということが原則になっているのです。
だけど、あれは内地の植生が基準になって決まっているもので、北海道には合わないと思ったので。環境省の人にもつき合ってもらって、違う色にしました。要するに、北海道らしい色にしたのです。
僕がここで聞きたかったのは、ここの資料を見ると、ホテルとか資料館とか、要するに、デザインのコントロールというか、それをどこがちゃんとやってくれるのかなと思ったのが心配になったのでお聞きしたのです。
○武内部会長 では、その点について、どうぞ。
○事務局(中山) 色彩の話やデザインのコントロールをどうするかというお話なのですが、公園計画のレベルではなくて、さらに公園計画をつくって、いろいろなものを管理していく上で、許認可の細かい基準とか、それから、その地域でどういう方向性を持たせていこうかというのは、国立公園の塊ごとに管理計画というのをつくっております。
管理計画をつくる際には地元の方々や専門家を含めて検討会を設けることになっておりまして、地域の方々皆さんにお集まりいただいたり、有識者の方に入っていただいた上で議論をして、例えば色の問題とか、そういったものについては個別、個別に、地域ごとに定めることになっています。
大ざっぱに申し上げると、先生の言われたとおり、こげ茶か、あとグレー系のものが中心になっておりますが、地区ごとに、そこについては配慮できるような仕組みになっております。以上でございます。
○武内部会長 それでは、今いただいたいろいろなご意見については、今後参考にさせていただくということですが、私の理解では、計画区域の変更及び計画自体の変更については、特段のご異議がなかったように思いますので、釧路湿原国立公園の公園区域及び公園計画の変更は適当と認めたいと思いますが、これについて、ご異議ございませんでしょうか。
(異議なし)
○武内部会長 それでは、本件については適当と認めることにさせていただきます。
以上で、本日の諮問事項についての審議は終了いたしました。審議へのご協力、どうもありがとうございました。
引き続いて、報告事項に参ります。時間が押していますので、事務局の説明は簡単明瞭にお願いいたします。
去る3月11日に発生しました東日本大震災に対する環境省の取組について、最初にご報告をお願いいたします。
○事務局(佐々木) 続きまして、大震災の取組についてご報告させていただきます。資料2を使いましてご説明させていただきます。
まず、環境省の体制ですが、緊急対策本部などを立ち上げまして取り組んでまいりました。
公式な発表としましては、3月16日にペット関係の基本方針、それから5月18日に三陸復興国立公園の基本方針をお示ししたところです。
これまでに陸中海岸国立公園の公園事業施設の被災状況の確認、それから立ち入りが危ないような場所の立入禁止措置などを実施しているほか、自然公園の景観、地形、植生、ごみなどに関する緊急的な調査の実施と、エコツーリズムなどの体験利用に関する調査、資料2を1枚めくりまして、ペットの関係の取組を民間の団体の方と連携しながら実施していること、それから国指定鳥獣保護区での調査などを実施しております。
それでは、東北地方沿岸の自然公園の状況ですが、こちらのスライドにお示ししたとおり、東北沿岸は非常に多くの自然公園が指定されておりまして、多くの方がこれまで利用している状況でした。
まず、陸中海岸国立公園の被災状況ですが、北山崎など海食崖の地形といったものはほとんど被害が見られない状態でした。一方で、津波をかぶったような松原、海浜植生などの場所は大きく影響を受けていまして、地形も変化している状態です。
利用施設も同様でして、高台にあるのは大丈夫だったのですが、低いところにある波をかぶったような場所では全壊するようなものも多く見られまして、被害が出ております。約半分ぐらいの自然公園の事業施設が被害を受けておりました。
それから、海中の状況ですが、おそらく砂質の海底の地形の場所などは変化が大きいものと予想されておりますが、岩盤がそのまま出ているような海域については、それほど変化が少ないのではないかと。これまで何カ所かでいろいろな方が調査されていますが、そういった情報を見ても、そういった状況ではないかと予想しております。
今後、海の中についても調査をしっかりと入れていきたいと考えております。
まず、陸中海岸の北から順番に状況をご報告いたしますと、北山崎、こちらは高台にございますので、施設についてはほとんど影響がありませんでした。
それから、浄土ヶ浜ですが、こちらも浄土ヶ岩など地形的なものはそれほど影響がなかったのですが、レストハウスですとか舟遊場、そういった低いところにある施設は大きく被害を受けました。
それから、碁石海岸ですが、こちらの海岸は、碁石そのものは流されていなかったのですが、ここの浜の特徴である黒い碁石状の礫は残っているのですが、これは地盤が沈降したせいか、波で持っていかれたせいか、よくわからないのですが、幾分、浜が狭くなったということが報告されています。また、ごみや擁壁なども散乱している状況です。
高田松原も国立公園の区域でしたが、皆さんご存じのとおり、この地区は非常に壊滅的な状況となっております。
こちらが震災前と後で、空中写真で比較した状態です。松が波で洗われて、1本を残してなくなってしまったというだけでなく、地形そのものが大きく改変されて、水没してしまったような状態も見られます。
こちらは5月28日に国土地理院で空中から撮影した画像もあるのですが、それでも、ほとんど4月1日の地形と変わらない状況でした。
それから、続きまして鳥獣保護区の状況ですが、3カ所の国指定鳥獣保護区がございます。
三貫島と日出島はミズナキドリとかウミツバメといった希少な海鳥の繁殖地になっております。こちらは、局所的に波をかぶった、それから一部崩落した場所などが狭い範囲で見られますが、繁殖地そのものや植生への影響というのは、ほとんど見られない状況です。
今年度になって震災後に調査を入れておりますが、今のところ繁殖状況は例年と同規模ということで観察されております。今後も定期的に調査を入れて、海鳥の挙動がどうなっていくのか追跡してまいりたいと思っております。
それから、仙台の東にございます仙台海浜、蒲生干潟があるところです。こちらは干潟が津波の影響を受けて大きく変化しております。ただ、シギチドリ、カモ類といった渡り鳥の渡来地として指定されているところですが、シギチドリ、カモ類の渡来する数、それから種数につきましては、それほど震災前と変わらないというような観察結果もございまして、今後も慎重に、定期的に渡来状況、地形の変化をモニタリングしてまいりたいと思います。
こちらが仙台海浜の蒲生干潟の震災前後の写真です。砂浜が前にございまして、すぐ後ろのところに昔、川だった干潟の部分、潟湖だったところがございます。こちらの潟湖が土砂で埋まりまして、砂浜が大きくえぐられた状態となっております。
これが震災直後の3月12日ですが、現在も地形は大きく変わってきておりまして、斜め写真で見にくいのですが、5月18日の撮影では潟湖だった部分のところに水がまたたまり始めて干潟が形成されつつあります。また、砂浜のところも砂がつき始めまして、砂浜の幅が拡大傾向であること、こちらの川とつながっているところも干潟と川がつながりまして、水が行き来するような状況が観察されております。
続きまして、三陸の国立公園について、これから環境省がどのように進めようとしているのかという構想をご説明させていただきます。
こちらは、まだ構想段階のものでして、これから岩手県、宮城県、そういった地域の方々とよく話をしながら中身を具体的に詰めていきたいと考えているものです。
まず、こちらの三陸沿岸は自然公園が多く指定されておりますので、これらを国立公園として再編成して、これまでは、どちらかといいますと自然景観、地形・地質や海岸美といったものが中心に指定されてきたのですが、生物多様性と森・里・海のつながりといったものをテーマとして意識したり、特に、農林水産業の中でも漁業と連携をとりまして、水産振興にも役立つ形で里海型の三陸復興国立公園として再編成してまいりたいと考えています。これらの沿岸を長距離自然歩道でつなぎまして、より自然や文化、そういったものと深く関われるような公園と歩道の連携といったものを考えております。また、シンボルとなるような森づくりを進めたりすることで地域の方々と一体的に進めていくことを考えています。
それから、被災の状況、非常に自然環境も大きく変わりましたし、地域の方々の生活も大きく変わりましたので、それをしっかり記録して、継承していくための学びの場になるような場所をしっかり確保していくこと。それから、変化の状況をちゃんとモニタリングしていくようなことも重要な取組だと考えています。
そのほか、防災との連携、もちろん公園施設を整備していく上で防災の観点は欠かせないものとなりますし、この地域、特に岩手県で世界の地形・地質の遺産的なものの枠組みがございますが、世界ジオパークに向けた取組も連携してまいりたいと思っています。
これらの取組を合わせまして、観光振興、特にエコツーリズム、それから地元雇用などを通して新しい公園、新しい歩道というものをつくっていきたいと考えています。
生物多様性と森・里・海のつながりですが、この地域は、特に気仙沼、唐桑半島のところで「森は海の恋人」活動をやられている団体がございますが、豊かな森が形成されることによって河川や里地を通じて海も豊かになっていく、そういった活動を今後、三陸沿岸に広めていきたいというようなことを考えております。
また、海岸の長距離歩道も三陸沿岸、それから、今のところは福島まで絵では示してありますが、これら沿岸の自然と生活、産業、文化をつないで、より深く、この地域を歩いて利用することで地域の状況を理解することができるような歩道を目指したいと思っています。
これらの歩道は、いざ災害というときになれば住民や観光客の方々の防災避難路としても活用できるような形を目指したいと考えています。これらで訪れた集落、それから高台から集落を俯瞰した際に津波の経験を地域の方々から聞いて勉強することができるような利用のあり方といったものも検討してまいりたいです。
それから、展望の丘です。自然公園の施設は海岸沿いに立地するものが多いので、これらを復旧していく際には、避難路や避難広場といったものを確保していくことが大事になってきます。これらの避難路、避難広場というものを公園利用施設の整備の際にあわせて整備しまして、可能であれば、分別して安全になったリサイクル材料、コンクリートがらなどを利用して丘をつくったりするなどして、それから、そういった場所に地域の方々と森を戻していくような活動をしながら、公園の利用施設といったものの整備ができればと考えております。
また、学びの場として、まず、これらの場所を被災の記録としまして、自然環境、今回はあまり津波石がないというのも特徴だったのですが、被災に耐えた自然物、そういったもの、それから被災者の体験などの声、地震、津波の映像などを多く集めまして、それを活用しまして学びの場として自然公園の施設、展望台、ソフトプログラムの開発、学校教育での活用などを進めてまいりたいと考えております。
以上、震災の取組について説明させていただきました。よろしくお願いいたします。
○武内部会長 どうもありがとうございました。
本来ならば、ここで一度切って質疑・応答に入りたいのですが、時間がもう30分ぐらいしかありませんので、恐縮ですけれども、そのほかの報告についてはまとめて報告して、それから皆さんのご質問、ご意見をお受けしたいと思います。
それでは、最近の温泉行政についてということで、ご説明をお願いいたします。
○自然環境整備担当参事官 温泉施設整備を担当しております参事官の大庭でございます。手短にご説明申し上げたいと思います。
資料3-1がございます。右下に小さくページを打ってございますが、2ページ、温泉法の概要ということでございます。
温泉法は先のほうでもご説明申し上げますが、最近の状況にかんがみて、近年、そこに書いてありますが、平成19年に改正が行われております。目的は大きく三つです。
温泉の保護等、温泉の採取に伴う災害の防止、温泉の利用という大きな三つの柱で成り立っているところであります。
次のページをおめくりください。3ページです。
温泉の保護に関しまして近年の状況を申しますと、全体の総湧出量は、動力が入ることもあって増えておりますけれども、自噴する温泉の湧出量が減少傾向にあるということ、大深度の掘削温泉が増加しているということ、それから掘削に係る許可、これは都道府県知事の許可でありますけれども、科学的審査のあり方が問われているということ、また温泉資源の枯渇のおそれが増大しているというようなことの指摘があったりというような状況にございます。
さらにページを繰っていただきまして、7ページでございます。
保護に関して環境省における取組ということですが、(1)温泉資源の保護に関するガイドラインの策定と書いてございます。温泉の掘削に関して、保護に関するガイドラインを21年3月31日付で一度つくりました。このガイドラインのねらいは、当然のことながら温泉の掘削等の不許可の事由について、その判断基準を一定の考え方のもと示そうというものでございます。
一方では、隣のページ、9ページですが、地熱開発のための土地の掘削等の許可の判断基準の考え方の検討ということが求められてございます。地図に示してございますけれども、現在、国内で地熱発電所が稼働しているのでありますが、さらに、先ほど来、お話のある震災の中での電力不足もあって、再生可能エネルギーとして着目を集めているところであります。
また、環境省においては、その下10ページ、中長期ロードマップというもの、それから、その中で、次のページを見ていただきますと、11ページですが、地熱発電について、今現在は全国で53万キロワットの発電量でありますが、これを、およそ3倍の171万キロワットにしようという目標をロードマップで立てました。
その後、下の12ページに行っていただきますと、規制・制度改革に係る対処方針、それから、[2]新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策という中で、温泉に関しても掘削許可の判断基準をちゃんと示してくださいということで閣議決定が行われ、13ページに行きますが、ガイドラインを示すことにいたしました。
先ほど申しました大深度掘削泉に関するものも含めて、既存温泉への影響、周辺環境への影響の検討を今進めているところでございます。
二つ目が、先ほど申しました安全対策でございます。これは、過年、温泉に含有する天然ガスによる爆発事故等々がありまして、これを期に温泉法の改正が行われたというものでございます。
次のページ、15ページに、簡単に改正の必要性等が書いてございますけれども、事故を受けまして可燃性天然ガスによる災害の防止というのを温泉法に新たに加えたというのが大きな改正の内容でございます。
その後のページは、るる改正内容をつづってございますが、飛ばしていただきまして、22ページ、3番目の柱であります温泉の適正利用であります。最近では温泉の利用者のニーズが、昔と違い、だんだん変化してきている。また、日帰り利用も増えている。一方で、温泉に関する情報提供について、国民の関心が非常に高くなっている。また、近隣諸国でも温泉ブームが起きているという傾向がございます。
25ページを見ていただきますと、そのような中で、温泉法、これは温泉成分に関する表示でございますけれども、表示につきましても分析と表示の義務づけを温泉法で行いました。従前は、一度分析するとそのままであったのでございますが、改正後は10年に一度、きっちり分析をしましょうということで改正をしてございます。
次のページにございます(2)温泉の禁忌症、浴用または飲用上の注意決定基準等の検討。これは、ある一定期間ごとに検討しているところでございますけれども、中段にございますように、今現在、新たな医学的な知見であるとか全国温泉療法医の意見をもとに見直しの検討を進めているところでございます。将来、また温泉小委員会にご意見を諮りたいと考えております。
それから、もう一つは鉱泉分析法指針の検討でございます。これも、温泉成分の分析を義務づけたこともございまして、見直しは、かねてより、過去にも行っておりますけれども、直近の改訂は、そこにありますとおり平成14年3月ということで、現在、改訂に向けた検討を図っているところでございます。
4番目が温泉の公共的利用の増進に向けた取組ということでございまして、これは、温泉法の中にありますが、環境大臣が国民保養温泉地を選定して指定をするという制度でございます。この国民保養温泉地選定標準についても、活性化に向けて現在あり方の検討を行いまして、本日夕刻に予定されております温泉小委員会のほうにご意見を諮りたいと考えております。
それから、30ページは温泉エネルギー普及加速化事業ということで、これは実際に環境省が取り組んでいる事業でありますが、補助事業を21年から、[2]から[4]のヒートポンプとガス・コージェネレーション、それから23年度に新たに温泉発電設備に対する補助金等も設けて取組を始めてございます。
最後のページは、温泉熱利用と温泉附随ガス利用についての簡単なポンチ絵でございます。
大変駆け足で恐縮ですが、温泉行政については以上でございます。
○武内部会長 どうもありがとうございました。
それでは、引き続いて、生物多様性保全活動促進法、海洋生物多様性保全戦略の策定について、小笠原諸島の世界自然遺産登録についてということで、あわせて自然環境計画課長から説明をお願いいたします。
○自然環境計画課長 自然環境計画課長の塚本でございます。
お手元の資料4をご覧ください。
生物多様性保全活動促進法ですけれども、昨年の12月10日、環境、農水、国交の3省庁の共管で成立いたしました。ただいま基本方針の検討を進めておりまして、パブリックコメントがおおよそ済んでおります。8月上旬に基本方針の検討を経まして、今年の10月1日からの実施に向けて準備を進めているところでございます。
次は、資料5でございます。
海洋生物多様性保全戦略でございますけれども、COP10での議論あるいは国家戦略での議論を踏まえまして、海洋の生物多様性の保全及び持続可能な利用について、基本的な考え方を各省連携で検討いたしまして、今年の3月29日に作成したところでございます。
これにつきましては、次をめくっていただきたいのですけれども、政府にあります総合海洋政策本部会合におきまして大臣から報告いたしまして、了承をいただきました。海の海洋保護区につきましての定義が定められましたので、これに基づいて各種の政策をこれから進めてまいりたいと考えております。
小笠原でございます。資料6をご覧ください。
小笠原がようやく世界遺産に登録されまして、資料6-2になりますけれども、6月24日、第35回世界遺産委員会におきまして審議を受けまして、推薦していたものが了解をいただきました。6月29日に、晴れて世界一覧表に記載をされました。今後は、確実な管理をしていくことが課題だと考えております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○武内部会長 どうもありがとうございました。
それでは、少し異なる内容を持つ案件を全部説明していただいたわけですけれども、これらについて、ご質問あるいはご意見を承りたいと思います。
どのテーマについてでも結構です。事務局からの回答は、それぞれのテーマごとに回答していただくということにしたいと思います。
○国立公園課長 すみません。1点だけ、事務局から、先によろしいですか。
今日ご欠席の岡島委員から、実は、三陸国立公園について、欠席ということで書面で意見が出されております。机の上に用意をさせていただきましたので、ご紹介させていただきます。以上です。
○武内部会長 どうもありがとうございました。
○中静委員 三陸復興公園に関して、非常に意欲的に取り組んでいただいてありがたいと思っていますけれども、海岸線の地形が変わるぐらい大きな変化をしたということで、失われた干潟ですとか、藻場ですとか、そういうところもたくさんあるのですが、一方では、地盤沈下をして復旧ができるかどうかという問題になっているようなところも出てきておりますし、地形が変化したことで、新しい藻場ですとか干潟がどこにできるかというのが予想できない場合があると思うのです。
そういうことを考えると、新しく復興計画の中で、鳥獣保護地域なり、重要な干潟、重要な湿地というものの線引きも、柔軟に考えていただいて、私権の問題は、多分大きな問題として残るとは思いますが、より、そういう地域を拡大していただくような方向で考えていただければと思います。
○武内部会長 ありがとうございました。
○磯部(雅)委員 テーマは同じで、東日本大震災です。
蒲生干潟の地形変化が非常に激しいというご説明があったのですが、私も、確かにそのとおりだというふうに思っていますが、3月から5月にかけての変化とか、細かいことを見るときには、潮位の影響というのが非常に大きいので、「何月何日」だけではなくて何時何分に撮った航空写真かということを明確にして、それで、そのときの潮位をチェックするということをぜひやっていただきたいと思っています。
もう1点。避難場所をつくるというお話がありましたけれども、今回、津波がやってきて、「想定外」という言葉があったりもしていますので、そのときには、ぜひ、ここまでの高台というふうに決めてしまわないで、時間があるときには、さらに上に行けるような、そういう避難路のつくり方というのをぜひ考えていただきたいと思います。以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。
○敷田委員 同じ三陸復興国立公園に関して、個別のことではなしに全体のことです。
先ほどご説明いただいた自然公園法の目的の内容からすると、利用より保護とか、希少種への配慮という説明ですが、新しい復興国立公園のメニューは保護より利用の面に非常にウエートが置かれているように理解ができます。これは、従来の自然公園法の管理のフレームワークで進められるのか、それとも新しい管理を想定されているのかという全体の話をお願いします。
○篠原委員 質問が一つと意見が一つです。
質問は、海岸長距離歩道を避難路に位置づけたらどうかみたいな話になっていますが、新聞報道その他で、旧道、古い道、林道も含めて、これが結構、復興のときの物資運搬に役に立ったという話を聞いたので、これは歩道だけなのか、軽車両ぐらいまで通れるような規格にするのかというのは結構重要なことではないかと思います。ですから、それはどちらなのでしょうという質問です。
それから、もう一つは意見ですが、復興のことを考えて国立公園をいかにつくるかというのはなかなか難しい問題だと思いますけど、割と長期的な予想によると、震災があろうがなかろうが、三、四十年後には大体、あの辺の人口は6割か7割ぐらいになるという予測でした。今度の震災で、もっと減るのではないかと思います。
そのときに、遊水地をつくったり公園をつくったりと、いろいろな話が出ていると思いますけど、専らフィジカルな防災の話ばかりで、環境省が得意としている生物多様性の問題という観点があまり入っていないような気がするのです。人口が減るのだから、もっと自然豊かになるはずです。
だから、僕に言わせれば、どちらかというと国交省型の提案ではなくて、環境省型の生物とか、その辺に強いところで提案なさると非常に有効ではないかというふうに思います。
○白山委員 ありがとうございます。2点。一つは震災関係ですけれども、先ほどの篠原委員のご意見に少し追加で、今のプランというのは環境省が一人で全部やるような感じに聞こえるのですけれども、これだけの大きな問題になりますと、政府全体というのでしょうか、そういう感じがするのでございます。その中で、いかに環境省らしい政策をその中に反映させるかというような感じが非常に重要かと思いますので、そういう意味からいうと、パブリックアウトリーチに大いに力を入れていただいて、国民からの支持に基づいた施策につなげていただけるとよろしいのではないかということを感じております。
それから、もう1点は小笠原関係でございますけれども、小笠原の指定されている地域は、どちらかというと、あまり人が行きそうもないようなところが多くて、利用という観点からいうと、これから、かなり適切な利用と保護とのバランスをとる、しっかりとした計画を策定していただく必要があると思いますので、ぜひ、日本の国内の専門家の方々の英知を集結して、しっかりとした計画を立てていただきたいと思います。ぜひ、よろしくお願いいたします。以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。
○佐藤委員 三陸の新しい公園ということなのですけど、ここで大事なのは、三陸は、今回の津波だけではなくて、過去にも大きな津波があった。それを忘れていた部分があると思うのです。部会長のお話にもありましたけれども、自然のよさというのもありますけど、脅威の部分もありますので、そこをきっちり、ここでは学べるようなことが必要ではないか。
そういう意味では、今回の被災のということだけではなくて、もう少し自然というものの脅威全体がわかるようなことを考えていただければいいなというのと、多分、地域には、それにどう関わってきたかというような歴史もあると思いますので、そういうものも掘り起こして、今回の公園の中に入れていただけると、より深みがあるのではないかと思います。
○武内部会長 ありがとうございました。
○浜本委員 何人かの委員の方もおっしゃっているのですが、例えば、生物多様性、森・里・海のつながりのところなどの「森は海の恋人」の活動をモデルにということは、農林水産省も生物多様性の側で同じような復興モデルみたいなものをきちんと発表しておりますし、遊歩道を含む長距離の歩道だけではなくて、これが車道の側になりますと国交省も似たようなことを言っております。
それぞれの国の省庁が、それぞれ「復興」という名前のもとにさまざまな施策を出しているのが、かぶっていることがすごく多いのです。それは多分、そのやり方が一番、そこの地域に向いているということが了承されているということだと思うのですが、環境省ならではの施策、こういうふうにすれば地域の復興と、地域の生物多様性と、これからの日本全体もしくはアジアとかに向けた日本の国の環境施策というものがここの中で実現できますよというようなものを、国立公園の中でも、もちろん沿岸部の人々の生活の中でも出していっていただけるといいのではないかなと思います。
○武内部会長 ありがとうございました。
○西岡委員 地熱発電に関連しまして、再生エネルギーに関する問題ですけれども。
午前中、地球環境部会がございまして、やはりロードマップの続き、これを2013年以降の枠組みに向けてきちんとやっていくという話になりました。
また、私は地球環境部会気候変動に関する国際戦略専門委員会の委員長を務めておりますが、特に、国立公園内におけるさまざまな再生エネルギーの利用についての問題といいましょうか、これまで個別に風力等々で対応していただいていると思うのですけれども、かなりいろいろな面での期待が高まっているというところもございまして。さらに、将来は海上における風力の問題、多分、国立公園域内とも関連してくる、あるいは波力の問題とか、将来を考えるといろいろとあるわけでございますけれども、それに対するガイドラインを、どういう具合に、どういう手順でお考えかというようなことについて質問させていただきます。
○武内部会長 ありがとうございました。
○涌井委員 陸中海岸の、とりわけ松林の被害状況というのはひどいものがあるわけですけれども、COP10でも里山イニシアティブという一つの日本の提案というものが了解されたわけでありますが、委員の先生方もご案内のとおり、実は、海岸部の松林というのは、里海の里山なのです。その観点というのを、もう少し強調すべきではないだろうかと思います。
それから、あわせて、経団連の自然保護協議会等々で、実は、企業のCSR活動の一環として森林造成に関する企業の関心というのが非常に強いということが、過日のシンポジウムでも示されました。あわせて、環境省としても、民間参画パートナーシップの一環として、そういう一つの勢力をきちんとコーディネートしていくという、位置づける戦略をするべきなのではないだろうか。
以上、2点の意見を申し上げます。
○武内部会長 ありがとうございました。
○小泉委員 三陸のことで、ジオパークと一緒にやってくださるという話が出ているのですけれども、ちょうど被害を受けたばかりですから、住民も、例えばああいうものを残すということに対して非常に抵抗感がまだあると思うのです。
ただ、長い目で見ていくと、例えば、浅間山の鬼押出しですとか、桜島ですとか、あるいは磐梯山にしてもそうですが、非常にすごい災害が起こった後は、何十年かすると大事な観光地になったり、あるいは過去の災害を記録してくれる非常に大事なものになっていくと思うのです。
ですから、ジオパークなどでも、例えば、舟が建物の上に乗ってしまったようなケースもあります。あれは危ないというので撤去してしまったのですが、ああいうものも、今度の震災では、防災の観点だとか災害教育だとか、それから防災教育だとか、いろいろな点で少し残しておいたほうがいいというのがあると思うのです。
まだ、すごく、そういうものに対しては反発が多いかもしれないですけれども、全部を復興させるだけではなくて、一部は、ひどい形のものをちゃんと残すというのも、ある意味では大事なことのような気がするのです。
どこが担当するかわからないのですけれども、一番大きく関わるのは環境省ではないかと思うのですけれども、その辺、コメントをいただければありがたいのですが。
○武内部会長 ありがとうございました。
○桜井委員 ご存じのように、三陸というのは漁業も非常に重要なところでして、特に、沿岸については持続型漁業というのが非常に長く続いております。これが非常に大きな被害を受けておりますけれども、国立公園の考え方の中で私が重要だと思うのは、海洋保護区の概念をどうやってこれに組み込んでいくか。
特に、海岸線の再生についても、まず、自然の力でおそらく変わっていく場所もあると思います。そういうことを十分踏まえながら、陸と海とのつながりの部分も考慮して、特にリアス式海岸の中の漁業のあり方というのは、海洋保護区の概念を取り込むべきだろうと。そうすると、国立公園を海にどのようにかぶせていくかということが、むしろ非常に重要なことだなと思っています。
地域、地域で、一つずつ細かく見るというやり方もありますけれども、一番大きなくくりでかぶせておいて、次は地域ごとに、そこをどう環境省が保全していくのかということをつくるような協議会。これは知床でも経験していますけれども、そういった、トップダウンだけではなくてボトムアップも考慮した形で、この三陸の美しい海をどうやって保全して、持続的に使っていくのかという観点から言えば、環境省からも少し、他の省庁に働きかける力があると思いますので、よろしくお願いします。
○武内部会長 ありがとうございました。ほかに、ございませんでしょうか。
(なし)
○武内部会長 それでは、主に新しい国立公園の構想についてですが、それ以外にも小笠原、それから地熱の問題について、ご意見、ご質問があったように思いますので、最初に復興国立公園の関係で。
○国立公園課長 国立公園課長の上杉です。
たくさんいただきましたので、すべてに答えきれるかどうかわかりませんが、これは、まず政府として復興構想会議という会議で既に提言が出されております。
その中でも、これは観光面で国立公園というのも活用していこうということが位置づけられています。環境省としては、国立公園、既にある陸中海岸の部分だけではなくて、周辺も含めてということを考えているわけですけれども、一つ重要な点だと思っておりますのは、被害の状況が地域によって大分違いますので、スピード感というのがなかなか全部一緒にというのは簡単にいかないかもしれません。
そういう意味で、地域の方々とよく相談をしてと思っているのですけれども、片方で復興を目指すということでいえば、国立公園の再編成自体を大変遅くしていいということでもないという、この両方を考えたいと思っておりまして、今、考えていますのは、そういう意味で、まずは、今ある県立自然公園まで含めた、いろいろな自然公園の区域をベースに、とにかく早く新たな復興国立公園の姿を地元の方に見せていきたいということを考えておりまして、それをベースに、まず指定について、ある程度、完全な、最終的ないい姿というものではなくても、早目に示していくことが重要かなと考えています。
その際に、先ほどいろいろご意見があった中で、各省庁とのつながりですとか、あるいは生物多様性の観点をどう入れていくか。いただいたご意見はまさにそのとおりだと我々も思っておりまして、そういう環境省らしい部分について、できるだけ地域の方の意見も聞いて、入れていけるような形を考えていきたいと思っています。
特に、ここは漁業の大変盛んな地域ということでありますので、漁業関係者と、いかに連携をしていくかというのは大変重要なポイントだと思っておりますけれども、桜井委員からありましたような、海の保護区をどのように考えるかについていえば、これは漁業の復興が今後どういうふうに果たされていくのかと大変関係がある部分だと思いますので、若干時間をかけることになるかもしれませんけれども、我々は地域の漁業者と、ぜひいろいろな形での連携ができるように、地域のほうにも話をしていきたいと思っています。
これは、県でいえば岩手県、宮城県、青森県ということになるのですけれども、それぞれの3県とも大変関心を持っていただいていまして、県がつくっている復興計画案の中でも、三陸復興国立公園構想との連携を図りつつ進めたいということも、既に位置づけられつつあります。
そういう意味で、まず宮城県と岩手県には、もう既に構想の話をしながら、特に、市町村なり、あるいは地域で具体的に国立公園に関わるような活動をされている方の、さまざまなご意見が聞けるような体制づくりをぜひお願いしたいということで、これから、そういう方々の意見を聞いて、まずビジョンづくりをしっかりしていくことが重要ではないかと思っております。
今の我々のつもりでは、そういうビジョンづくりを、できれば今年度内にやり、来年度中ぐらいには新たな復興国立公園の姿が見えるようにしていくというふうな作業ができればいいのではないかなと思っています。
それで、例えば、利用にウエートがあるのではないかというお話がありましたけれども、これについても、一つの軸の考え方として歩道を取り上げておりますけれども、これは従来、海岸線に沿って、地元岩手県などは若干整備をもう既にしているところもあるのですけれども、それを大きく縦につないでいくということを考えていければと思っておりまして、従来のフレームの部分もあれば、それだけではなくて、例えば、篠原委員からもお話がありましたけれども、旧道をうまく活用する。それをつなげていくようなこともあると思いますし、ただし、つなげる部分に必要性があれば、新たな部分の整備も出てくるだろうと、そういうことをうまくつなぎ合わせていく。
あるいは、場合によると、ここでは既にさっぱ船という小さな舟を使ったエコツアーもやられておりますけれども、そういう海のつなげる部分といいましょうか、そういうことも組み合わせていく、さまざまな形で歩道のつなぎ方を考えていきたいというふうに思っております。
それから、モニタリングについても若干ご指摘があったと思うのですけれども、まだまだよくわかっていない部分、特に海の中については、これから少し、ある程度、調べないといけない部分があると思っていますけれども、今の段階で考えておりますのは、例えば、地域の海に詳しい漁業者の方などにも、ぜひ現場に出ていただく。これを我々として一緒にやっていけるような体制づくりができないかなと思っておりまして、そういうデータを得て、保護区域の線引きについても、将来的にはそういうことが反映できているようなことを考えていけるといいのではないかと思っております。
雑駁な全体的なお答えになってしまって、個別のところに答え切れていないかもしれませんけれども、大まかな話として、三陸復興国立公園に関しては以上のような感じです。
地熱などの再生エネルギーと国立公園との関係についてのお話でございますけれども、これにつきましては、今年度、我々でも委員会を立ち上げまして、特に、これは斜め掘りによる地熱資源、国立公園内の熱資源の利用については、国立公園の風致景観を阻害しないような形も十分考え得るだろうということで、そういう形の地熱の利用について、どのような観点で取組ができるかということについては、今ちょうど検討を始めたところでございます。そういう中で、これは、今年度内には何らかの形でガイドラインなりを示していきたいというふうに思っております。
風力については、景観に対する審査の基準の考え方について、ガイドラインは既に3月に出しているところでございますけれども、そのほかの中小水力なども含めて、自然公園サイドと再生エネルギーの中で、うまく再生エネルギーが進められる観点で、自然公園としてどういうことを対処しなくてはいけないのかという観点から、十分検討を進めていきたいと考えているところでございます。
それから、小笠原の保護と利用の観点のお話がございました。
これについて、当然バランスを考えながらやるということでございますけれども、これは地元にも、世界遺産の管理という観点になりますけれども、科学委員会と地域連絡会議がございまして、そういう中で、データを生かしながら管理のあり方についても検討する体制をつくっております。そういう中で十分に検討を進めながら、バランスがとれるようなあり方について進めていきたいと考えております。
それから、ジオパークのご指摘もございました。
ジオパークを推進されている委員会の先生方とも、本件、三陸復興国立公園に関しても意見交換を既に行っているところでございまして、特に人工物の遺構をどう残すかということに関しては、なかなか環境省が直接出ていくことは難しいかなという感じがしておりますけれども、既に一部、地元の市町村と話している中では、例えば壊れた防潮堤を残すような取組みたいなことを考えたいとか、いろいろな話がありまして、それが国立公園の景観との観点でうまくいくのかどうかということについて、我々としても積極的に取り組んでいきたいと思っております。
被災の経験を伝えていくという話もございました。特に、国立公園でいえば、現場に来る人に、現場でそういう経験を伝える、非常にいい場所であるということで、さまざまな形でとった記録を、来た人に伝えていくような仕組み、例えば、ソフトでガイドを育ててということもあると思いますし、さまざまな展示物等で示してということもあると思うのですけれども、そういう学びの場としての国立公園の役割ということについても取組をしっかり進められるようにしていきたいと思っております。
大体、以上でよろしいでしょうか。
○武内部会長 どうもありがとうございました。
特に、復興国立公園のことについては、制度的な問題だとか省庁の連携も含めて、少しまた議論したほうがいいと思います。この場で尽くせないこともあったと思いますので、別途、また部会をセットしていただいて、本格的にこのことを議論したほうが私はいいように思いますので、そのようにご検討いただきたいと思います。
何となく、もう固まっているのはここで、最後の諮問の答えだけが部会というのでは、これは部会としての実質的な意味がありませんので、そういうところから、ここできちんと議論をして、それを実際の公園計画に反映していくということが何よりも私は重要だと思いますので、ぜひ、そのような方向でお考えいただきたいというのが部会長としての意見でございます。
それでは、恐縮でございますけれども、これで議事を終了させていただきたいと思います。
事務局にお返ししますので、連絡事項等よろしくお願いします。
○国立公園課長補佐 どうもありがとうございました。
長時間にわたりご審議いただきまして、ありがとうございました。
本日の会議資料の取り扱いについてですが、これは公開でございますので、よろしくお願いいたします。
次に、本日配付いたしました資料につきまして、郵送をご希望される委員の先生方がいらっしゃいましたら、お手元にこういった用紙がございますので、記入の上、机の上に置いていただければ、事務局から後日、郵送させていただきます。
本日は、どうも長い間、ありがとうございました。
午後4時7分 閉会
問い合わせ先
環境省自然環境局国立公園課(代表03-3581-3351)
- 課長
- 上杉 哲郎(内線6440)
- 課長補佐
- 田村 省二(内線6443)
- 専門官
- 佐々木真二郎(内線6445)
- 担当
- 桝 厚生(内線6449)