中央環境審議会自然環境部会議事要旨(第12回)

開催日時

平成21年7月9日(木)11:20~12:20

開催場所

都市センターホテル 3階 コスモスホール

議題

小笠原国立公園の公園区域及び公園計画の変更について(再検討)

議事経過

 諮問事項すべてについて審議がなされ、それぞれ適当であるとの結論に至った。
 なお、主要な発言は以下のとおりである。

委員:
世界自然遺産の管理計画と今回の国立公園の海域拡張との関係はどのようになっているのか。
事務局:
世界自然遺産の管理計画の範囲は、拡張後の国立公園普通地域の海域に合わせて設定したい。
委員:
パブリックコメントにおいて、海中公園地区の指定を進めるべきという意見があったと説明を受けたが、今回新規に指定等を検討している海中公園地区の指定根拠はどのようになっているのか。
事務局:
今回の海中公園地区の候補地の選定には、長年調査をしてきた専門家やダイビングショップのオーナーにヒアリングをし、その結果をもとに大まかな区域の絞り込みを行い、実際に調査を実施したうえで、指定候補地としている。パブリックコメントで指定を進めるべきと意見があった海域は優先順位が低かったために調査をしていない。法改正により海域公園地区制度になった際には、次の指定候補地について検討を進めていきたい。
委員:
どの程度保護のエリアを設定すればいいのかについては、科学的な評価に基づくことが必要と考える。
委員:
小笠原はミクロネシアとのかかわりの深い地域で、日本魚類学会が調査を進めているところ。ミクロネシアとの種関係なども明らかにしていかないと、世界自然遺産登録の際に苦労することになるのでは。
事務局:
今回については、まず大きく海域の公園区域を拡大したい。今後、法改正を踏まえて、十分に調査し評価を進めていきたい。
委員:
世界自然遺産になると観光客が増えると思うが、どの程度の観光客を受け入れていく考えなのか。
事務局:
現在は年1万8~9千人程度観光客が来島する。小笠原は船でしか行けず、6日間拘束されるため、ダイビングやホエールウォッチングなどのツアーが盛ん。まずは、こうした1万9千人程度の観光客に対応する必要がある。また、都において空港建設を検討しており、その点も考慮しなくてはならないが、父島の南島や母島の石門、父島の一部の森林などでは人数制限をするなど、既に利用のコントロールが実施されている場所がある。これらの手法を用いて適正な利用を促進するとともに、観光客の満足度を高めていきたい。
委員:
硫黄島は環境省の中ではどのような扱いになっているのか。植生の回復などを検討することはないのか。
事務局:
沖縄には戦跡をテーマにした国定公園があるが、基本は自然環境であると考えている。硫黄島は激戦地だが、南方の鳥など珍しいものもいると聞いている。一方で自衛隊もいるので、自然公園法で担保するのは難しいと考えている。モニタリングサイト1000には選定されていないが、今後モニタリングするかについて検討したい。
委員:
小笠原の自然環境のモニタリング、インベントリ情報の把握をしっかりする必要があるのではないか。十分に情報があると言えるのか。また、調査研究の体制についても検討する必要があると考える。世界自然遺産に登録されれば、利用形態が変わることが懸念される。
事務局:
科学的な調査等の体制は、世界自然遺産の管理について科学委員会を設けていて、連携して進めていくものと考えている。今回の公園計画の変更は、世界自然遺産の指定の先回りをして準備しているものと考えている。今後も引き続き科学的なデータ収集体制について考えていきたい。
委員:
今回の公園計画の変更は大幅に保護体制が強化されていて、国立公園、世界自然遺産双方にとって良いことと評価している。小笠原は民有地が多いが、今後どのように調整していくのか。海域の公園面積を国立公園の面積として算定していないが、昨今の海域の保護に対する関心の高まりを踏まえると、今後は算定して、積極的に評価していく必要がある。また、海域の保護については、法改正を踏まえて、たとえばボニナイトが存在する海域など、海底の地形地質についても着目して積極的に指定を進めてほしい。
事務局:
小笠原は父島、母島以外の属島は法的に人が住んではいけない地域となっている。属島については調査を実施し、所有者を把握している。属島は公有地も多く、また民有地も所在不明の人が多い。父島、母島については民有地も多いが、東京都が以前から買い上げを進めている。
委員:
特別保護地区が広がったことはとても良いことと考える。外来種対策の今後の見通しはどのようになっているのか。
事務局:
世界自然遺産の管理計画の付帯資料として作成しているアクションプランでは、外来種に関する向こう数年間の方針を定めている。できるものについてはできるところから進めていくという内容になっている。
委員:
小笠原は島毎に生態系が多様である。だが、なぜ多様であるかという理由が必ずしもすべて明らかになっているわけではない。科学的データの収集、調査計画をどのように考えているのか。
事務局:
島毎にインベントリを整理し、GISデータも作成して分析している。また、世界自然遺産の管理方針では、島毎に管理の方針を定めている。
委員:
公園区域の海域5kmまで広げるということだが、水深がわからない。国立公園の計画変更図には等深線を入れてほしい。
事務局:
今後は提示するようにしたい。
委員:
小笠原国立公園の諮問については、事務局案のとおりで進めるということで答申しても問題ないか。(異議なしの声)それでは、事務局案のとおり進めるものと答申する。

問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(代表03-3581-3351)

課長
上杉 哲郎(内線6440)
課長補佐
中山 隆治(内線6443)
係長
青柳 信太(内線6449)