中央環境審議会自然環境部会(第9回)議事録

開催日時

平成19年6月29日(金)13:00~15:40

開催場所

三田共用会議所 大会議室 Room D・E (東京都港区三田2-1-8)

出席委員

(26委員)

石坂 匡身  臨時委員
磯部 雅彦  臨時委員
岩熊 敏夫  臨時委員
岡島 成行  臨時委員
熊谷 洋一  部会長
小泉 武栄  専門委員
近 勝  臨時委員
鹿野 久男  臨時委員
白幡 洋三郎  臨時委員
仙田 満  臨時委員
高橋 佳孝  臨時委員
田中 正  臨時委員
田部井 淳子  委員
土屋 誠  臨時委員
中川 浩明  臨時委員
中静 透  臨時委員
中道 宏  臨時委員
浜本 奈鼓  臨時委員
速水 亨  臨時委員
原 重一  臨時委員
原田 純孝  臨時委員
廣瀬 敏通  専門委員
森戸 哲  臨時委員
矢原 徹一  臨時委員
鷲谷 いづみ  委員
和里田 義雄  臨時委員

議題

  1. 開会
  2. 議事(諮問案件)
  3.  国立公園・国定公園の公園区域及び公園計画の変更等について(諮問案件)
    (1)西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更について
    (2)丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の決定について
    (3)若狭湾国定公園(京都府地域)の公園区域及び公園計画の変更について

  4. 報告
  5. (1)「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」について
    (2)尾瀬国立公園(仮称)の指定等について
    (3)その他

  6. その他
  7. 閉会

配付資料

資料1   自然公園制度の概要及び中央環境審議会自然環境部会の審議案件について
資料2-1 西表国立公園の指定書及び公園計画書(案)
資料2-2 西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更に伴う名称変更について
資料2-3 西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更案説明資料
資料3-1 丹後天橋立大江山国定公園の指定書及び公園計画書(案)
資料3-2 丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の決定案説明資料
資料4-1 若狭湾国定公園(京都府地域)の指定書及び公園計画書(案)
資料4-2 若狭湾国定公園(京都府地域)の公園区域及び公園計画の変更案説明資料
資料5    国立・国定公園の公園区域及び公園計画の変更等に関する
      パブリック・コメントの実施結果について
参考資料1 「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」の概要
参考資料2  国立公園の指定及び公園計画の決定等に関する意見の募集について
      (尾瀬国立公園(仮称)及び日光国立公園に係るもの)
参考資料3  那須御用邸用地の北側地区等を国民の利用に供することについてについて

議事録

午後1時01分 開会

○国立公園課長補佐 ただいまより中央環境審議会自然環境部会を始めます。
 開催に先立ちまして、本日の出席委員数のご報告をいたします。
 本日は、所属委員42名のうち現時点におきまして22名の方にご出席をいただいております。また、中央環境審議会令第7条の規定により、本部会の開催並びに議決に際しましては委員及び臨時委員の過半数の出席が必要とされております。本日は委員及び臨時委員40名のうち21名の方にご出席をいただいておりますので、本部会は成立いたしております。
 なお、富岡自然環境局長は都合により少し遅れて本部会に出席する予定でございますので、ご了承をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります前に、黒田審議官よりご挨拶申し上げます。

○大臣官房審議官 審議官の黒田でございます。今日はお忙しいところ自然環境部会にお集まりいただきましてありがとうございます。
 今、司会からお話がありましたが、局長は遅れてこちらにお邪魔しますので、私からご挨拶を申し上げます。
 先生方には日ごろから自然環境行政にいろいろとご協力、ご助言をいただきまして、誠にありがとうございます。
 環境問題につきましては、地球温暖化問題を中心として地球規模の、人類共通の最大の課題ということであり、例えば、今年ドイツで開催されましたG8でも一番大きな話題とされたところでございます。私どもが担当しております生物多様性につきましても、地球温暖化との関係は非常に大きく、今年のサミットの首脳会談の結論の中にも「生物多様性」という項目が地球温暖化の中に盛り込まれるという経過があります。
 生物多様性に関して我が国では、生物多様性条約に基づく国家戦略というものをつくりました。平成14年につくりましたので少し時間はたっていますが、現在、新戦略に従っていろいろな施策を進めているところでございます。各省あるいは地方自治体も非常に熱心に進めてくれていますので、少しずつではありますが前進しているとの手応えを感じているところでございます。
 この国家戦略の中に幾つかのプロジェクトの提案があり、その中に、国土の生態系のネットワークをつくっていこうというものがございます。国立・国定公園は、このようなネットワークの屋台骨になるところであり、確実な自然の保護、管理を目標に進めてきているところでございます。この国家戦略は、5年たったら見直すということで、現在、合同部会でもご説明もしておりますし、小委員会では具体的な検討に入っていただいており、事務局の方ではいろいろな見直し案を検討しているところでございます。今、申し上げました生態系ネットワークというのは、国土形成計画でも同じような考え方が盛り込まれるなど、いろいろな計画で軌を一にしてきちんと国土の自然環境、生物多様性を保全していこうという方向を、今年いろいろな形で出していくことになろうかと思っています。
 そのような中、国立・国定公園について、一つ一つ着実に指定なり管理を進めていくことと併せて、全体をどうするかということについて、昨年度から私どもの方で検討会を設けて、国立・国定公園全体の指定のあり方あるいは保護管理のあり方、管理運営のあり方といった方向について検討し始めているところでございます。
 これにつきましては、後ほど報告の中で概略をご説明させていただきますが、今年度から、国立・国定公園の総点検と銘打ちまして、全体がどうあるべきか、特に風景ということでスタートした国立・国定公園、自然公園について、いろいろな役割が期待されていることも踏まえてどうするか。それから、今年は国立公園ができて70年、自然公園法になって50年という記念の年ですが、その50年の間に社会情勢も変わりましたし、科学的な知見も非常に大きな集積を得てきたところでございます。これをうまく活用し、日本の自然の特徴をどう発揮していくか、取組を一生懸命進めているところでございます。
 さて、本日は、西表国立公園、丹後天橋立大江山国定公園、若狭湾国定公園の公園区域あるいは公園計画の変更等についてご審議をいただきます。
 それぞれ後ほど詳しくご説明いたしますが、西表国立公園につきましては、現在の公園の区域は、西表島と、西表と石垣の間の石西礁湖が中心で、石垣島の陸域は国立公園になっておりませんでしたが、今回石垣島を国立公園に編入しようというものでございます。石垣島は国内有数の優れたサンゴ礁に囲まれた自然豊かな島でございます。八重山諸島の玄関口として、公園の利用という面からも大変重要かと見ておるところでございます。
 それから、丹後天橋立大江山国定公園では、人とのかかわりが非常に深い、しかしながら豊かな自然環境がある丹後半島と大江山、あるいは天橋立に代表されるような景勝地、こういう所を新しい形で国定公園に指定していこうという、新規の国定公園の指定を考えております。
 そして若狭湾国定公園は、新しい国定公園の指定に伴う変更だけでなく、現在、公園に指定されている海岸線と一体の景観として重要な山林を公園区域に編入するという内容も含んでおりますので、是非いろいろな角度からご意見を賜りたいと思います。
 こういった今回の案件が、先ほど申し上げました国立・国定公園の総点検あるいは全体としての生態系ネットワークの形成に大きく繋がっていくことを期待しておりますので、是非ともいろいろな角度、お立場からご意見をいただきたいと思います。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

○国立公園課長補佐 これより先の議事進行につきましては、熊谷部会長にお願いいたします。
 熊谷部会長、どうぞよろしくお願いいたします。

○熊谷部会長 それでは、ただいまから中央環境審議会自然環境部会を開催いたします。
 本日の部会は公開で行いますので、報道関係者や傍聴の方も同席しておられます。
 会議録は後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員の了承をいただいた上で公開することとなっております。
 なお、議事要旨につきましては、事務局で作成したものを私、部会長が了承した上で公開することをご了承いただきたいと思います。
 本年、中央環境審議会の委員が改選されまして、現在の委員による当部会での自然公園関係の審議は初めてでございますので、審議に入る前に、自然公園制度の概要と自然環境部会との関わりについて、事務局より説明をお願いいたします。

○国立公園課長 国立公園課長の神田でございます。
 自然公園制度の概要と自然環境部会との関わり合いについて、ご説明させていただきます。
 資料1をご覧ください。
 まず、公園の指定でございます。国立公園、国定公園につきましては、その優れた自然の風景地を保護すること、そして自然との触れ合いなど公園の利用を推進するといった目的で指定いたします。国立公園につきましては、我が国の風景を代表するに足る傑出した風景地を環境大臣が中央環境審議会の意見を聞いて指定することになっております。また、国定公園につきましては、都道府県の申し出によって、同じく環境大臣が当審議会の意見を聞いて決定することになっております。なお、自然公園は都道府県の条例によるものですから、当審議会の関与はございません。
 次に、管理でございます。
 国立公園等の保護、管理あるいは整備といったものにつきましては、公園計画という制度に基づいて行われます。環境大臣が公園ごとに定められる公園計画を定める場合には、中央環境審議会の意見を聞くこととされているところでございます。
 公園計画には規制に関する計画と施設に関する計画がございまして、それについて、それぞれ保護と利用に関するものがございます。そのうち行為の規制の基本となる保護規制計画は、公園区域内に特別保護地区、第1種・第2種・第3種特別地域、海中公園地区を、環境大臣が審議会の意見を聞いて指定することになってございます。これらに基づきまして、工作物の新・増改築、土石の採取等々、法規制がなされることになってございます。
 公園計画のうち施設計画につきましては、公園の保護または利用に必要な施設の配置、計画に関するものでございまして、同計画に基づいて公園事業として、例えばビジターセンターや登山道などは公共事業で、旅館、ホテルなどの営業施設は民間が、環境大臣の同意、認可を受けて行う仕組みになっております。
 公園事業の整備に先立ちまして、その事業の区域や規模の概要、事業の大枠を定める自然公園法の手続がございます。これを事業決定と申しまして、国立公園に関する事業計画は、当審議会の意見を伺うこととされております。
 5ページをお開きください。
 これまでご説明いたしました審議会にお諮りする案件を、表で整理したものでございます。なお、中央環境審議会議事運営規則に基づき、必要に応じ小委員会を設置できることとされており、自然環境部会には自然公園小委員会が設置してあります。5ページの表では、その部会と小委員会の審議案件の区分も示しております。小委員会では、部会に委ねられた審議案件のうち1,000ヘクタール以下の区域の変更、公園計画の変更、それから国立公園の公園事業の事業決定等について調査・審議を行うように分担されております。
 小委員会設置の根拠になる規定等につきましては、資料1の6ページ以降に掲げさせていただいております。
 本規定に基づきまして、部会長の指名により小委員会の委員を定めさせていただいたところでございまして、お手元の委員名簿にその小委員会の名簿をつけてございます。
 以上で私からの説明は終わらせていただきます。

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、審議に入りたいと思います。
 本日の審議事項は、諮問第215号の西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更について、諮問第216号の丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の決定について、並びに諮問第217号の若狭湾国定公園の公園区域及び公園計画の変更についての3件でございます。
 諮問書の朗読は省略させていただきます。
 まず、諮問第215号の西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更について、審議を行いたいと思います。
 それでは、事務局から内容の説明をお願いいたします。

○事務局(千田) 環境省自然環境局国立公園課の公園計画専門官をしております千田と申します。
 西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更についてご説明します。
 これからスクリーンに映します内容は、資料2-3としてお手元にも配付いたしております。
 西表国立公園は、日本の最南西端の八重山諸島のうち、西表島、石垣島と西表島との間にある石西礁湖と呼ばれるサンゴ礁の海域、その海域に点在する竹富島、小浜島、黒島、新城島、さらに西表島の南西に位置する仲の神島から成ります。
 本公園の指定は昭和47年5月15日ですが、これは同年4月18日に琉球政府により西表島政府立公園として指定されたものが、日本復帰と同時に国立公園に移行したものです。
 陸域の面積は1万3,547ヘクタールで、スダジイやウラジロガシなどを中心とした常緑広葉樹林が広がり、ヤエヤマヤシ、サキシマスオウノキ、ヒカゲヘゴなどの亜熱帯性植物が生育し、河口部にはマングローブ林が発達しています。イリオモテヤマネコやカンムリワシ、セマルハコガメなどの希少な動物も多く生息しています。
 それでは、今回の変更案についてご説明いたします。
 この変更案は、石垣島の陸域及び周辺海域の一部を西表国立公園の区域に編入しようとするもので、既に国立公園に指定されている区域の変更は、今回は含みません。
 石垣島は沖縄本島の南西約410キロメートルに位置し、西表島を初め八重山諸島の各島へは石垣島を経由して船などで渡ることになるので、八重山諸島の玄関口とも言える島です。島の全域が沖縄県石垣市に属しており、人口は約4万8,000人です。産業としては、優れた自然環境を生かした観光業が盛んであり、第三次産業が全体の約7割を占めています。亜熱帯海洋性気候であり、年平均気温が24度、年間降水量は2,000ミリ以上という高温多雨の地域です。
 石垣島の中心部にはイタジイ、イスノキなどから成る亜熱帯地域の代表的な森林がまとまって見られ、カンムリワシを初めとする希少な野生生物が生息しているほか、沿岸には多様な造礁サンゴ類や魚類などが見られるサンゴ礁が発達し、河口部ではマングローブ林が形成されるなど、海域から陸域につながる亜熱帯地域の優れた自然環境が残されています。
 これらの自然環境は、我が国を代表する傑出した自然の風景地を構成しているものであることから、国立公園区域に編入しようとするものです。
 具体的な公園区域としましては、島の中央部にある沖縄県最高峰の於茂登岳周辺から北東方向に伸びる平久保半島にかけての標高200から400メートルの山地や、河口のマングローブ林などです。これらの亜熱帯地域の優れた自然環境が残されている地域である7,022ヘクタール、これは石垣島の約3分の1に当たる面積ですが、これを新たに国立公園の区域に編入しようとするものです。
 海域については、東側沿岸は汀線から約2キロメートル、西側沿岸は汀線から約1キロメートルの範囲で発達したサンゴ礁が形成されていることから、石垣港や伊原間港などの一部の区域を除く石垣島周辺のサンゴ礁海域を、新たに国立公園の区域に指定しようとするものです。
 次に、公園計画のうち、保護規制計画の変更についてご説明いたします。
 まず、特別保護地区の指定です。
 石垣島の中央部に位置する於茂登岳には、イタジイやイスノキなどから成る亜熱帯地域の代表的な森林が見られます。於茂登岳の東側及び北東側には極層林が発達しているほか、八重山諸島の固有種でやるヤエヤマヤシの群落も分布しています。また、アサヒナキマダラセセリなどの貴重な動物の生息地ともなっています。これらのことから、特別保護地区に指定し、厳正な保護を図ろうとするものです。
 こちらが於茂登岳です。
 次に、第1種特別地域の指定をご説明します。
 大地離は、石垣島の北端である平久保崎の北、約400メートルに位置する断崖に囲まれた無人島です。ベニアジサシやエリグロアジサシなどの海鳥の繁殖地ともなっています。
 吹通川一帯は、マングローブ林の石垣島における代表的な分布域です。環境省レッドデータブックにおいて準絶滅危惧種とされているミナミオニヌマエビなどの生息地ともなっています。
 川平小島は、川平湾の湾口に位置する緑鮮やかな小島であり、潮汐や、気象条件によって刻々と変化する内湾の水面と相まって、石垣島を代表する景勝地となっています。
 於茂登岳の特別保護地区に隣接する区域は、特別保護地区内と同様の亜熱帯性の森林が見られます。名蔵アンパルは、石垣島西側の名蔵湾に面した、名蔵川河口に広がるマングローブ林や、干潟、海岸林から成る地域です。渡り鳥の中継地、森林性鳥類の生息地として国際的にも重要であり、平成17年にラムサール条約の登録湿地となりました。
 以上の地域を第1種特別地域として、厳正な保護を図ろうとするものです。
 次に、第2種特別地域の指定を説明します。
 平久保半島の山地部には、ヤエヤマシタンなど本地域を特徴づける植生が多く見られます。また、野底岳は山頂に円筒状の岩が突き出た特異な形状をしており、眺望の対象としても重要です。
 前嵩は川平湾の西側に位置し、その山頂付近には自然植生が見られ、川平湾や崎枝湾と一体となった景観を形成しています。
 米原海岸は、多様な地形と自然度の高い植生が連続しています。また、米原海岸と連続する山原川一帯においても、自然度の高い植生が連続しています。
 屋良部半島は石垣島の西の端に位置し、常に強い潮風が当たる北西側の海岸部には特徴的な風衝草原が発達し、南側の海岸線には、テリハボク等の海岸植生を主体とした自然海岸が維持されています。大マンゲー及び小マンゲーは、約5,500万年から6,500万年前に海底の地層が隆起してできた丘であり、学術的な重要度の高い地形、地質を有しています。
 白水川流域は、ケナガエサカキ-スダジイ群落が大半を占め、良好な渓流景観を呈しています。
 名蔵アンパル沿岸域は、南北2キロメートルに渡る砂州が形成され、第1種特別地域と一体となった景観を形成しています。
 白保海岸は、グンバイヒルガオ-クロイワザサ群落から成る海浜植生が見られ、砂丘が形成されています。
 以上の地域を第2種特別地域に指定し、利用と調整を図りながら良好な風致を維持しようとするものです。
 次に、第3種特別地域の指定をご説明します。
 平久保半島の海岸線から山地部に至る斜面は、牛や馬の放牧場として利用され、芝の草原の中にソテツが点在する独特な景観が見られます。
 野底岳周辺、川平湾周辺及び於茂登岳山麓は、ケナガエサカキ-スダジイ群落の中にリュウキュウマツ等の植林地が点在し、林業が行われています。
 屋良部半島中央部には風衝性の常緑広葉樹林内にイヌマキ等の植林地が点在し、林業が行われています。
 以上の地域については、通常の農林業活動は風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ないことから、第3種特別地域とするものです。
 次に、海中公園地区についてご説明します。
 平久保は、枝状ミドリイシ類を主体とした被度の高いサンゴ礁が形成されており、周辺海域へのサンゴの幼生の供給源になっているとも考えられる、保全の必要性が高い海域です。
 川平石崎は、枝状やテーブル状のミドリイシやユビエダハマサンゴなどが優占する、被度が高く非常に良好なサンゴ群集が確認されているほか、オニイトマキエイが頻繁に目撃され、ダイビングスポットとしても有名です。
 米原は、ミドリイシ類、シコロサンゴ類、ハマサンゴ類など多くの種が浅い場所に高い被度で広がっており、スノーケル等による観察が手軽に楽しめる場所として利用上の価値も高い所です。
 白保は、北半球では最大規模のものとされているアオサンゴの大群落が分布するなど、学術的な価値も高く、グラスボート等による観光利用も増加しています。
 このような海中景観を保護するため、海中公園地区に指定しようとするものです。
 以上が保護規制計画です。
 次に、利用施設計画の変更についてご説明します。
 本利用施設計画の基本的な考え方としては、亜熱帯地域の森林、海域の自然探勝や海域から陸域につながる優れた景観を展望するなどの利用を適正に推進することです。
 具体的には、これらの園地及び野営場を計画しております。
 既に石垣市によって施設の整備がなされているのは、玉取崎園地、底地園地、米原野営場、米原園地、御神崎園地です。また、名蔵アンパル園地については干潟やマングローブ林などを探勝するための園地として、明石園地や川平園地については平久保半島の眺望を楽しむ展望園地として、白保園地については白保海岸での自然探勝のための園地として、それぞれ整備する方針です。
 こちらが各場所の様子です。
 道路については、公園区域内の既存の2つの車道及び2つの歩道を公園計画に位置づけます。
 こちらが道路の様子です。
 以上が西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更案です。
 続きまして、パブリック・コメントの概要についてご説明します。
 今回の案件に関するパブリック・コメントに関しては、資料5として配付しておりますので、参考にご覧ください。
 本年3月から4月にかけての1カ月間、意見を募集したところ、西表国立公園に関しては19通24件の意見をいただきました。意見の概要としましては、現在の環境省案には含まれていない区域についても国立公園にすべきという趣旨の意見が14件、産業、農林水産業、リゾート開発等に支障となる国立公園の指定には反対という趣旨の意見が6件、石垣島の国立公園指定を急いでほしいというものが1件、米原野営場の維持管理体制の確立を求める意見が1件、名称は「西表国立公園」のままでよいとする意見が1件、石垣市の住民への説明が不十分とする意見が1件というものでした。
 これらに対し、対応方針として示した主なものは、公園区域に含めるべきと判断するに十分な情報がないことから公園区域に含めておらず、今後の公園区域の見直しの際に検討していくこと、基準に適合した行為は可能であり、かつ第3種特別地域内での農林水産業は引き続き実施可能であること、米原野営場の設置者である石垣市と協力して公園管理に取り組むこと、国立公園指定に関する説明会は、石垣市と共催で開催してきたことなどを回答しました。
 以上がパブリック・コメントの結果です。

○熊谷部会長 それでは、本諮問の関連事項として、名称の変更に関して事務局から説明をお願いいたします。

○事務局(千田) 引き続きまして、名称の変更につきましては審議会の諮問事項とはなっておりませんが、変更についてご意見をお聞きしたく、ご説明いたします。
 配付資料2-2をご覧ください。
 現在の「西表国立公園」の名称は、昭和47年の指定以来、30年以上にわたって使用されてきた公園名称ですが、先ほどご説明しましたとおり石垣島にかかる区域が西表国立公園に編入されますと、本公園に占める石垣島の陸域の割合は34%となり、海中公園地区に関しては81%もの割合を占めることとなります。このような公園区域の指定の実態と照らすと、「西表国立公園」という名称では石垣島及びその周辺海域が同公園に含まれていることが認識されず、適切に表現されているとは言い難いと考えております。
 これまで相当面積の区域の拡張が行われた国立公園については、資料にお示ししたとおり、その拡張区域を代表する名称が付されております。また、その際には拡張区域を示す名称が当初の名称の後につけ加えられています。
 以上のことから、「西表国立公園」に石垣島にかかる区域を加えるという今回の区域変更に伴い、公園の名称を「西表石垣国立公園」に変更することが適当であると考えております。
 なお、公園名称について、関係地元市町である石垣市からは、石垣島の名称を含めるべきとの考えから「石垣島国立公園」とすること、また、竹富町からは、これまでの歴史や公園の中心は西表島であるとの考えから「西表国立公園」のままにすることを要請する意見がありました。
 しかしながら、先に述べました理由から、市及び町の要請内容を踏まえ判断しても、「西表石垣国立公園」とすることが適当であると考えているところです。
 環境省のこの案につきましては、沖縄県を含め石垣市、竹富町にご説明し、概ねのご理解をいただいていると考えています。
 公園名称の変更案に係る説明は、以上です。

○熊谷部会長 それでは、諮問第215号及び公園名称の変更にかかわるご質問なりご意見をお願いしたいと思います。
 大変大勢の委員がいらっしゃいますので、ご発言のある方は、例によってネームプレートをお名前がわかるようにお立ていただければと思いますので、よろしくご協力をお願いします。
 それでは、ご質問、ご意見を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○矢原委員 石垣島の於茂登岳と、その北東の桴海於茂登岳の周辺区域というのは絶滅危惧植物等が集中しておりまして、環境省のレッドリストを見直す過程でも特別に重要な地域だと認識されております。その地域の指定に関して、特別保護地区と1種、2種、3種と4種類に区分けをされた根拠なりについて、もう少しご説明いただけないかというのが1点。
 もう一つは説明資料の指定書とか公園計画書の方に植生等の記述がありますけれども、せっかく環境省の方でレッドリストなど作っているのに絶滅危惧種に関する記述が全然ないので、その辺に対してもう少し配慮していただけないかということが2点目です。
 以上、お願いします。

○事務局(千田) まず、於茂登岳における地種区分については、植生に加え、例えば特別保護地区では動物の捕獲に規制がかかりますので、昆虫類の生息状況も考慮しています。また、植林地等が含まれる場合については、ある程度利用との調整を図るという観点から、第2種や第3種という指定になっています。
 希少種につきましては、極力計画書に記載、含めるよう考えているところですが、不十分な点について、今後さらに情報等をきちんと整理いたしまして、計画書にもしっかり盛り込めるよう努力したいと思います。

○国立公園課長 後段の部分、先生ご指摘の点については、国立公園に指定されたのであるからそこに生育している希少生物についてしっかりと広報すべきだといったご趣旨だとご理解させていただきますと、今後、指定により規制がかかる国立公園区域の重要性等をしっかり広報していきたいと私ども考えております。その資料の中では、ご指摘の点も十分踏まえて対応していきたいと考えております。

○岡島委員 全体については、私も石垣島が入ったことはいいことだと思っております。その中で、誰もが知っている白保が、いろいろな地種区分がある中でなぜ3種なのかという点を教えていただきたい。これは他の地域と比べて圧倒的に注目の集まる所だと思うので、そこを説明していただきたい。
 第2点は意見ですけれども、石垣島のような観光でたくさんの人々が来るところを新しく国立公園に編入されるということは、一般の人々に対して国立公園というものを理解していただいて、特別保護地区や第1種特別地域があって、それはどういう事情でこうなっているのか、観光業者も観光客もみんながそれをある程度理解した上で利用する、そういうことを伝えるのに非常にいいチャンスだと思います。ですから、通り一遍のパンフレットを配るというようなことではなく、何らかの形で「こういう意味があってここを特別保護地区にしたんですよ」といったことを、例えばインタープリターとか観光業者等に集まってもらって説明していただくなど、環境教育的な意味で非常にいいチャンスではないかと思います。特に、その点に留意して力を入れていただきたいと思っております。
 名称については、そういう意味でも、また特に石垣島の方々にも自覚を持って自然を守っていただくという意味でも、2つの名称を入れた方がいいと思っております。

○国立公園課長 白保地域は委員ご指摘のとおり、自然が優れた地域として非常に著名な場所でございます。その理由の一番大きなところは、北半球で最大のアオサンゴを中心としたサンゴ群集がみられることだと思います。この点を踏まえ、白保の海域は海中公園地区とし、陸域で言えば特別保護地区と言えるような地域設定にしています。
 陸域については、先ほど3種とのご指摘がありましたが、2種としております。非常に貴重なサンゴがある周辺の陸域は、やはり一体的に保全を図っていかなければいけないと考え、特別地域としております。陸域だけを評価すると、特別保護地区にはし得ないところですが、海中公園地区と一体的に保全を図るという意味で、第2種特別地域とする案になっております。
 それと後段の方についてお答えします。今回は本当に大きな拡張です。面積で言えば、20年前に釧路湿原を国立公園に指定して以来最大の面積の拡張であり、国立公園をご理解いただくチャンスですので、ご指摘も踏まえて、しっかり当該公園だけではなく国立公園全体のPRに努めていきたいと考えております。

○廣瀬委員 名称につきましては、西表島に入る観光客のほとんどすべてが石垣島を経由して行きます石垣島が非常にすぐれた自然の地域であるとはあまり認識されておらず、西表へ行く方も多いと現地で伺っています。石垣島がどんどん観光リゾート地化していく中で、「保護されるような原生自然の残る所は西表」といった認識を持つ方も多いのですが、石垣島の本来ある優れた生態系の保全に資する地域については、国立公園であるという認識を観光客及び地元の住民の皆さんにもきちんと持っていただくという意味で、「西表石垣国立公園」という名称にすることに賛成いたします。
 次は質問ですが、岡島委員のご意見に近いのですけれども、この公園地域の指定につきまして、農林漁業の利用についての規制は法律上、きちんと明記されているところですが、昨今、エコツーリズムなどを含めて観光利用が非常に盛んになってくる中で、それらについての明確な線引きあるいは利用の促進等が曖昧な状態であると思っております。
 西表島では、沖縄県では初めての保全利用協定が1件、現在、仲間川で締結されています。公園に指定されることについて、農林漁業関係者の方が非常に懸念するケースがこれまでにあるわけですが、観光関係の方にも、このパブリック・コメントにあるようにリゾート開発がしにくくなると懸念する方が、やはり沖縄県本島の山原などでも同じように見られるわけです。それに対して、むしろ公園の指定によって今後の適正な観光の振興が図れるということを強く理解していただくような働きかけをする必要があるのではないかと思っています。
 また、観光関係者の方にも、むしろ公園指定を一緒になって進めていただけるような方向、あるいは保全利用協定などを軸に、一緒にこの地域の保護と利用について参画していくというようなスタンスを求めていくことを、公園指定と併せてやっていただくことが必要ではないかと思います。

○国立公園課長 委員ご指摘の点、私どもも非常に大事なことだと認識しています。国立公園区域に指定されたことによって、例えば観光が阻害されるものでは決してないということについては、これまでに行った地元説明会の中でも強く説明してまいりました。リゾートができないのではなくて、「石垣らしいリゾートをつくることができる基盤になり得るものだと考えています」というご説明をしてきたところです。言うだけではなくて、実際にそれを実現しなくてはいけませんので、今後、できるだけ早くその地域の様々な活動、特に石垣の場合は観光といいますか、そういった活動がうまくリンクして伸びていくためにはどうしたらいいか、国立公園の関係者はもちろん、その他の関係者、関係機関も含めて考える場づくりから始めて、その実現に向けて、公園指定を機にしっかりやっていきたいと考えております。

○速水委員 西表と石垣島の両方の現地を拝見して思ったのですが、石垣島というのは開発の歴史が長いだけあって、やはり陸域の部分は随分厳しい状況にある所も目立つと思いました。1つは農業が、例えばパイナップルだとかサトウキビだとか、あるいは牧畜だとか、メインと考えられる3つの農業が、今の時代、貿易問題の中で非常に微妙な立場にある産業だと私は理解しています。ある限られたエリアの中で、非常に限られた農産業がある場合では、ちょっとした経済的な要因で生産物がガラッと変わる可能性があると考えています。
 ああいう陸域と海域が近いようなエリアの中では、そのようなことが起きたとき、非常にリスキーだろうと考えます。特に、農地からの土壌の流亡が様々な点で海域に影響を与えていると言われている中で、よほどその辺をしっかりと、地域の人たちと共通の意識を持ちながら考えていかないと、この石垣の国立公園の状況の維持は生半可なものではないだろうと、私は現地を見ながら感じてきました。農業というものが非常に厳しい時代に、石垣島の農業はどれも厳しいという気がしておりますので、よほど腹を括って地域との密着が大事であろうと思っております。
 同じように、多分国立公園化を望んだ人たち、地域の人たちの中では、やはり開発に対する抵抗力としての国立公園という望み方もあれば、観光開発の起爆剤としての国立公園化を望んだ人もいる。これは相反することでありますが、実は両方とも国立公園に期待することといえます。その辺のバランスも、よほどしっかりとした地域との連携と今後の利用計画、つまり、この国立公園は今後の計画が、あるいは今後の地域との相談が勝負なのだろうという気が強くしておりまして、リスキーではあるのですが、多分ここをうまく成功させていくと他の国立公園もうまくいくという気がしました。
 回答はなかなか出せないことなので、質問というより意見として述べさせていただきました。

○熊谷部会長 ありがとうございました。貴重なコメントとしてお伺いしたいと思います。
 たまたま速水委員には現地を見ていただいたのですが、次にご質問を予定されている鹿野委員、土屋委員、原委員、皆さん現地を見ていただいていますので、続いてご質問、ご意見を頂戴したいと思います。

○鹿野委員 私も現地を見た印象から申し上げたいと思います。
 石垣で一番いいなと思ったのは、やはり海中、特にサンゴです。これは1つお願いなのですが、今現在、世界中でサンゴはいろいろ危機に陥っています。国内のサンゴも、やはり石西礁湖など、かなり劣化してきている。そのような中にあって、石垣周辺のサンゴはかなり健全だという感じがしましたので、ぜひこれはそういう観点からモニタリングなどしっかりやって、保全に万全を期していただきたいというお願いです。
 特に海中などが優れていると思いますと、今回「西表石垣」という名称変更も、私は賛成です。やはり多くの人たちに、どこが国立公園になっているのか認識していただく、そういう観点からも、名称の変更については賛成です。
 次に、1点質問です。
 先ほど矢原委員から植物の話も出ていましたけれども、これだけの面積、特に南西諸島で西表から今度、石垣が入ったとなると、植物も動物もそうですが、当然のこととして指定植物、指定動物というものを今回の公園区域拡張に合わせて見直していかなければいけないと思いますので、その辺について質問したいと思います。

○国立公園課長 委員ご指摘のとおり、区域も広がりましたし、まずしっかりと調査をした上で、指定植物については見直していくということで、現在、作業に着手したところです。できるだけ早くその成果を出したいと考えております。

○土屋委員 名称につきましては、「石垣」という言葉が入ったことで大変わかりやすくなりました。地元のメンバーも恐らく喜んでいると思います。
 全般的に今までの先生方のご意見に賛成ですが、二十数年間沖縄で研究、教育を続けておりまして、感じていることがあります。
 石垣島周辺のサンゴ礁というのは、私たちはもっと早くから国立公園に指定すべきだと訴えてきました。それは国内でも、国立公園の定義にある「風景」という意味では非常に雄大な景観を外から眺めることができ、これ以上すばらしいものはないといつも感じていたからです。
 ただ、海中に入りますと、必ずしもいつも美しい景観が見られるわけではありませんでした。二十数年前のサンゴ礁は墓場のようでした。オニヒトデに食べられてしまっていたからです。それが20年ほど経過して、かなりいい形で復元してきたところに白化が起こりまして、かなり全滅をしました。そこから10年ほどたちまして回復の兆しがあるところを、前回、視察に来られた先生方に見ていただいたという状況で、現在でも必ずしもいいサンゴ礁が残っている所だけではないということは認識しなければいけません。ただ、これをどのように回復させていくかにつきましては、環境省あるいは地元に住んでおります私たちにも大きな責任があると感じておりますので、いろいろ努力をしてまいりたいと思います。
 地元にいる私たちは、今回、西表石垣国立公園が指定されるだろうということになったときに、大きな責任が生じていると思っております。数万人の方たちが石垣島に住んでおりますので、その人たちとうまく連携を保ちながら、自然との共存を確実なものにし、さらに西表・石垣島の自然のすばらしさを後世に伝えていく大きな義務が生じております。
 陸上につきましては、雄大な風景とはなかなか言い難いかもしれませんけれども、固有種の多さ、あるいは生活特性のおもしろさなどを考えますと非常に特徴がありますので、国立公園に指定し、保存すべき十分な価値があると思っております。また、地元の人たちも多くの関心を寄せておりますので、私どもも環境省と協力しながら、いい国立公園になるように努力してまいりたいと思います。

○国立公園課長 今、ご指摘をいただいた中で、やはり石垣島周辺の区域の拡張の目玉の1つが海域だろうと思います。海域については、引き続き環境省も自然再生事業等を推進して、モニタリングとともに、その再生のための方策についても力を入れてやっていきたいと考えております。

○原委員 私も現場を見せていただきましたけれども、もう少し前に、海洋博覧会の後に石垣市や竹富町の観光基本計画をつくった経緯があります。今度、国立公園に指定されたというのは、八重山地域全体にとって明るい話題になると感じています。廣瀬委員や岡島委員からもご指摘がございましたけれども、リゾートを含めた観光利用が先々、地域振興の中である一定の役割を果たさなければいけないという意味から言うと、いろいろな利用の仕方が考えられます。
 一方で、国立公園の観光利用は、国立公園の区域の中だけでは解決できませんし、環境省だけで国立公園の観光利用というのを解決できないということからすると、どうしてもこの島の観光振興計画とか観光基本計画を、この国立公園に指定されたことを一つの出発点として、地域の自治体としてどういうふうに保護し、活用し、利用していくか、観光も含めた地域の振興策として、これは速水さんが言われた農業もそうですけれども、環境省が働きかけて、ぜひ県なり市町村にこれから10年ぐらいの地域の共通の目標になるような、観光的な土地利用と観光的な交通計画を含めた全体の振興計画を、ぜひこの機会に策定していただきたい。そして、それを目標にして地域の振興を図っていくことが国立公園にとっても夢のあることではないかということを強くお願いしておきたいと思っております。

○熊谷部会長 大変貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。

○磯部委員 先ほども出ましたけれども、今、指定しようとしている部分は、現状でベストという状況ではないと思います。例えば川平湾を見ても、そのサンゴの状態が前に比べて今、ちょっと劣化しているといったことも見られるので、指定して終わりということではなくて、ぜひモニタリングをしていただきたい。そのときに、サンゴそのものだけではなく、水温であるとか、あるいはSSであるとか栄養塩であるとか、いわゆる無機的、物理科学的なところも含めてモニタリングしながら、どうしたらサンゴがより豊かになっていくのか、積極的に改善していくような取り組みが必要なのだろうと思います。下水処理とかそういった問題が幾つか出てくるのだと思います。
 そういう意味で、ぜひモニタリングをしっかりすることと、それに対して積極的に環境を改善させるようなやり方があるのならば、そういうこともぜひやっていっていただきたいと思っています。

○熊谷部会長 これもまた大変貴重なご意見ですので、承っておきたいと思います。
 ほかに、よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、諮問第215号 西表国立公園の公園区域及び公園計画の変更については、適当と認めることにご異議ございませんでしょうか。

(異議なし)

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 なお、西表国立公園の名称については、西表石垣国立公園とすることを答申の附帯意見としたいと思いますが、これについてもご異議ございませんでしょうか。

(異議なし)

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、本件については適当と認めることといたします。
 次に、諮問第216号 丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の決定についてと、本件と関連する諮問第217号 若狭湾国定公園(京都府地域)の公園区域及び公園計画の変更について、ご審議をいただきたいと思います。
 それでは、事務局から内容の説明をお願いいたします。

○事務局(千田) 丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の決定について、ご説明いたします。
 これからスクリーンに映します内容は、資料3-2としてお手元に配付しております。
 本件は、京都府の丹後半島と大江山を中心とした地域に新たな国定公園を指定しようとするものです。
 日本海に突き出た丹後半島は、その北端が経ヶ岬で、半島の付け根付近には天橋立があります。海岸には海食崖や砂浜などの優れた海岸景観が、内陸部には落葉広葉樹の森林が広がっています。また、丹後半島の南部には大江山連峰が接しており、優れた自然環境や稜線からの眺望を楽しむための登山利用が多くあります。道路や鉄道も整備されてアクセスも容易になってきたことから、関西方面からを中心に、年間約600万人が訪れています。
 産業の約6割を第三次産業が占めています。
 本地域に関係する市及び町は、福知山市、舞鶴市、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町の4市2町です。
 それでは、公園区域の指定案についてご説明いたします。
 本区域は、景観の特徴から3つの景観区に分けて捉えることができます。
 1つ目は、丹後半島の山地部をなす世屋高原地区で、依遅ヶ尾山、太鼓山、金剛童子山など標高600メートル程度の山々に囲まれた、世屋高原を中心とする地域です。近畿地方では有数の規模のクリ、ミズナラなどの落葉広葉樹林や、湿地、渓谷、滝などが見られます。また、山頂からは日本海を見下ろす半島ならではの眺望が得られます。
 2つ目は、丹後半島海岸地区で、東は由良川から西は山陰海岸国立公園に隣接する琴引浜周辺までの、丹後半島の海岸に面する地区です。こちらは現在、若狭湾国定公園に指定されており、天橋立に代表される砂州を初め、海食崖、海岸段丘、砂浜など、優れた海岸景観を呈しています。
 3つ目は大江山連峰地区で、丹後半島の南に位置する833メートルの大江山を最高峰に、赤岩山、鍋塚、赤石ヶ岳といった標高600メートルから800メートルの山々が東西に連なっている山地です。ミズナラ、リョウブなどの落葉広葉樹林や、稜線からの360度遮るもののない眺望など、多様な景観を楽しむことができます。
 また、これらの地区には棚田などの農地を含む山村や、社寺といった歴史・文化的景観も含まれています。
 丹後半島の中核をなす世屋高原地区とその南に広がる大江山地区は、現在、若狭湾国定公園に指定されている海岸部と一体となることによって、山地から海岸に至る景観の連続性や利用の一体性を持った公園を構成できると考えております。そのような観点から、これらの3つの景観区を1つの公園区域とすることが適当と考えています。
 本国定公園の構成としましては、丹後半島内陸部の世屋高原地区に若狭湾国定公園として指定されている海岸部を加えた半島部の地域、日本を代表する砂州、潟湖地形が日本三景の景観を形成している天橋立地域、そして今回、新たに国定公園区域に含められる大江山地域の3つの地域が1つの公園をなしています。このため、公園の名称は、これらの要素が含まれて一体となっている公園のイメージを示すことができるものとして、丹後半島地域、天橋立地域、大江山地域それぞれの地域をあらわした「丹後天橋立大江山」としました。この名称は、本国定公園の範囲を認識していただく上で適切な名称と考えています。
 それでは、公園計画について地区ごとにご説明いたします。
 世屋高原地区及び大江山連峰地区は、全域が今回、新たに自然公園に指定するものです。保護規制計画の基本的な考えとしては、自然性の高い森林については厳正な保護を図るため第1種特別地域とし、これに接する地域のうち、利用との調整を図りながら風致の維持を図るものを第2種特別地域に、植林地などを含んでおり、通常の農林業活動は風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ないものを第3種特別地域とするものです。
 また、利用施設計画の基本的な考えとしては、森林における自然探勝などの利用を適正に推進することです。
 まず、世屋高原地区についてご説明します。
 本地区をさらに3つのエリアに分けて、公園計画案をご説明します。
 最初に、世屋高原地区の北部の保護規制計画です。
 依遅ヶ尾山は、山頂部が台地状になっているという特徴的な山容であることから、地域のランドマークとなっており、山頂部付近には自然性の高いミズナラ等の落葉広葉樹林が広がっています。
 こちらが依遅ヶ尾山と依遅ヶ尾山からの展望です。
 また、宇川蛇行部は、花崗岩類を深く刻む穿入蛇行により急斜面の谷となっており、落葉広葉樹林や常緑広葉樹林が広がっています。ハルユキノシタなどの貴重な植物も生育しています。
 これらの地域を第1種特別地域とし、厳正な保護を図ろうとするものです。
 また、この第1種特別地域に隣接する良好な自然環境を有する地域及び碇高原については、利用との調整を図りながら良好な風致を維持するため、第2種特別地域とします。
 これらを囲むまたは隣接する森林については、植林地等も含まれていますが、一体的な森林景観を構成しているものであることから、第3種特別地域とするものです。
 利用施設計画については、依遅ヶ尾山や碇高原における展望や自然探勝のための園地、野営場を計画に位置づけます。また、世屋高原を南北に縦断して利用拠点をつなぐ車道の宇川-味土野線、依遅ヶ尾山や権現山への登山道を計画に位置づけるものです。
 次に、世屋高原地区の中央部についてご説明します。
 太鼓山には山頂付近にブナ林が分布し、エビネなどの貴重な植物が生育しています。ブナ林に隣接するカモ池周辺にはアベサンショウウオの生息も確認されています。
 須川周辺は深い谷地形になっており、自然性の高い落葉広葉樹林が広がっています。トキワイカリソウなどの貴重な植物も生育しています。
 これらの地域を第1種特別地域とし、厳正な保護を図ろうとするものです。
 また、この第1種特別地域に隣接する良好な自然環境を有する地域及び日ヶ谷や小金山については、利用と調整を図りながら良好な風致を維持するため、第2種特別地域とします。
 これらを囲むまたは隣接する森林については、植林地等も含まれていますが、一体的な森林景観を構成しているものであることから、第3種特別地域とするものです。
 利用施設計画については、太鼓山の自然との触れ合いを推進するため、園地、宿舎、野営場、スキー場を、小金山や須川の自然探勝のための園地、世屋高原地区の利用拠点等を連絡する車道、小金山の登山道を、それぞれ計画に位置づけるものです。
 次に、世屋高原地区の南部についてご説明します。
 味土野は、急峻な渓谷地形に自然性の高い落葉広葉樹林が広がる地区です。
 また、大フケ湿原は標高540メートルに位置する高層湿原で、サワオグルマ等の湿地性の植物や、ハッチョウトンボなどの貴重な昆虫も生息しています。環境省の「日本の重要湿地500」にも選定されています。
 これらの地域を第1種特別地域とし、厳正な保護を図ろうとするものです。
 また、この第1種特別地域に隣接する良好な自然環境を有する地域や、周辺の森林と一体となった優れた農村景観を有している上世屋高原地区などについては、利用と調整を図りながら良好な風致を維持するため、第2種特別地域とします。
 これらを囲むまたは隣接する森林については、植林地等も含まれていますが、一体的な森林景観を構成しているものであることから、第3種特別地域とするものです。
 利用施設計画については、大フケ湿原、上世屋などにおける自然探勝のための園地及び野営場、汐霧山、鼓ヶ岳における展望のための園地、大フケ湿原や内山ブナ林などの探勝路、金剛童子山の登山道をそれぞれ計画に位置づけるものです。
 次に、丹後半島海岸地区についてですが、こちらは全て、現在、若狭湾国定公園に含まれている地区です。本地区の特徴的な景観としては、丹後松島やかまや海岸などの海食崖及び海岸段丘、鳴き砂で知られる琴引浜などの砂浜、日本三景とも言われる天橋立の砂州が挙げられます。
 本地区については、現在の若狭湾国定公園の公園計画を踏襲することで風致、景観の保護及び適正な利用の推進を図ろうとするものです。
 次に、大江山連峰地区についてご説明します。
 本地区も、全域が今回、新たに自然公園に指定するものです。
 まず、東部についてご説明します。
 普甲峠には、江戸時代の街道の面影を残す重要な古道が残されているなど、自然との触れ合いのための利用拠点となっています。
 利用と調整を図りながら良好な風致を維持するため、第2種特別地域とします。
 これらを囲むまたは隣接する森林については、植林地等も含まれていますが、一体的な森林景観を構成しているものであることから、第3種特別地域とするものです。
 利用施設計画については、由良ヶ岳や普甲峠における展望や自然探勝のための園地、野営場を計画に位置づけます。また、利用拠点をつなぐ車道、赤岩山、由良ヶ岳、杉山への登山道を計画に位置づけるものです。
 次に、大江山連峰地区の西部についてご説明します。
 大江山連峰の稜線部では、自然性の高い植生とともに優れた眺望を楽しむことができます。
 また、鬼嶽稲荷神社の周辺にはブナやトチノキなどの大木が多く、大江山連峰とともに雲海の名所ともなっています。
 これらの地域を第1種特別地域とし、厳正な保護を図ろうとするものです。
 この第1種特別地域に隣接する良好な自然環境を有する地域や権現山などについては、利用と調整を図りながら良好な風致を維持するため、第2種特別地域とします。
 これらを囲むまたは隣接する森林については、植林地等も含まれていますが、一体的な森林景観を構成するものであることから、第3種特別地域とするものです。
 利用施設計画については、大江山連峰などにおける展望や自然探勝のための園地、宿舎を計画に位置づけます。また、利用拠点をつなぐ車道、大江山などへの登山道を計画に位置づけるものです。
 次に、大江山連峰地区の南部についてご説明します。
 二瀬川渓谷は、川の激しい流れの浸食作用によって形成された優れた渓谷景観を楽しむことができます。
 こちらが二瀬川渓谷の様子です。
 また、元伊勢内宮・城山は、常緑広葉樹の自然林やヨウラクランなどの貴重な植物も見られます。
 これらの地域を第1種特別地域とし、厳正な保護を図ろうとするものです。
 この第1種特別地域に隣接する良好な自然環境を有する地域や、大江山登山の利用拠点となっている佛性寺、周辺の森林と一体となった優れた農村景観を有している毛原地区、天ヶ峰や三岳山などについては、利用と調整を図りながら良好な風致を維持するため、第2種特別地域とします。
 これらを囲むまたは隣接する森林については、植林地等も含まれていますが、一体的な森林景観を構成しているものであることから、第3種特別地域とするものです。
 利用施設計画については、佛性寺や三岳山における自然探勝のための園地、宿舎、野営場を計画に位置づけます。また、利用拠点などをつなぐ車道、大江山などへの登山道を計画に位置づけるものです。
 なお、地区全体の連絡道路として丹後半島縦貫線車道と近畿自然歩道を計画に位置づけます。
 以上が丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の案です。
 続きまして、パブリック・コメントの概要についてご説明します。
 丹後天橋立大江山国定公園に関しては、13通14件の意見をいただきました。意見の概要としては、本国定公園の指定により環境保全や歴史的・文化的景観の保全に期待する意見が4件、指定に賛成するという意見が2件、指定後の管理について住民や行政機関の協力を期待する意見が2件、指定を契機に地域の活性化を期待する意見が2件、現在の環境省案には含まれていない区域についても国定公園にすべきという趣旨の意見が2件、宮津市民への説明が不十分とする意見が1件、丹後縦貫林道の拡幅工事は今後も継続が許可されるかと問うものが1件ありました。
 これらに対し対応方針として示した主なものは、指定後の管理等については、京都府において関係者と協力し、地域の自然環境の保全と利用を推進していくものと考えていること、公園区域に含めるべきと判断するに十分な情報がないことから公園区域に含めておらず、今後の公園区域の見直しの際に検討していくこと、公園の指定案等については関係市町村や京都府から説明を行ってきていること、個別の行為については自然公園法の基準に照らして適否が判断されることなどを回答しました。
 以上がパブリック・コメントの結果です。
 なお、本日は京都府の森田土木建築部長にご出席いただいております。
 森田部長には、指定後の管理・運営につきましてご説明をお願いしております。どうぞよろしくお願いいたします。

○京都府(森田) 今、ご紹介をいただきました京都府土木建築部長の森田でございます。
 本日は、丹後天橋立大江山国定公園の新規指定並びに若狭湾国定公園の区域変更についてご審議をいただくことになります。誠にありがとうございます。
 パブリック・コメントについて、今、ご説明をいただきましたけれども、新規の国定公園の指定につきまして、地元では非常に大きな期待があります。私ども京都府といたしましても、北部地域の自然環境あるいはその景観は、全国に誇ることのできる大変素晴らしいものであると認識しております。本日、十分なご審議をいただきまして、指定をいただきますようよろしくお願いしたいと思います。
 丹後天橋立大江山国定公園と、関係する若狭湾国定公園の管理・運営について、京都府の考え方をご説明させていただきます。
 まず、一番基本となるところは、地域を中心に府民みんなで素晴らしい自然を守り育てていくという機運を盛り上げていこうということを、まず基本的な考えとしております。具体的には、既にこの地域では自治会あるいはNPO、それから大学生などによって天橋立の松並木の保全であるとか棚田、里山の保全活動が大変活発に行われております。さらに、今年度からは「京都モデルフォレスト事業」という名前で、府内の企業を中心にいろいろご協力もいただきながら、森を守り、森を生かす取り組みもスタートしております。
 このような民間活動、それからもちろん地元の市町とも連携しながら、世屋高原とか、リアス式海岸の優れた景観を有する丹後半島地区、それから内陸部の大江山連峰地区、それから若狭湾国定公園のある大浦半島地区、この3つの地区それぞれについて、管理・運営のための推進団体をつくりたいと考えております。
 さらに、この3地域の推進団体を総括して府民ぐるみで地域の自然を守り育てる推進団体をも構築し、共通のビジョンのもとで情報発進等にも取り組んでいきたいと考えております。
 私どもの知事のポリシーとして、現地現場主義というのがあります。対応する府の組織としては、それぞれ丹後と舞鶴にある2つの広域振興局が中心になります。この広域振興局の中には、私ども土木建築部のセクションもありますけれども、そのほかに観光セクションも含んでおりますし、農林セクションもありますので、例えばその地域の観光活動と連携したモデルコースの選定であるとか、あるいは農林業の振興とタイアップした地域整備、このようなことにも総合的に取り組んで、新しい国定公園の魅力を京都から全国に発進して、楽しんでもらえるような国定公園にしていきたいと考えております。
 こういう取り組みを通じて、京都府の北部地域の振興につなげていきたいと考えております。
 それから、予算面でも、府の単独事業として地域力再生プロジェクト事業というのを今年度から新しくスタートさせました。市民に多くのアイデアを募って、その中から地域力の再生に資するものを取り上げていこうという取り組みです。こういう府の独自の取り組み、それから国の交付金事業なども活用して、その国定公園内での活動あるいはその整備を府民共同で積極的に推進していきたいと考えております。
 京都府の管理運営に対する基本的な考え方を述べさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○熊谷部会長 引き続いて、諮問第217号の若狭湾国定公園について説明をお願いいたします。

○事務局(千田) 若狭湾国定公園の公園区域及び公園計画の変更について、ご説明いたします。
 これからスクリーンに映す内容は、資料4-2としてお手元に配付しております。
 公園区域の変更案は、先にご説明いたしました丹後天橋立大江山国定公園の指定に伴い、由良川から西の丹後半島の海岸部にかかる区域を削除するとともに、現在、公園区域となっている海岸線と一体的な風景を構成し、眺望の対象となる海岸の後背地である区域を新たに公園区域に編入するものです。
 こちらに赤く表示しております区域について、公園区域を拡張します。
 次に、公園計画の変更についてご説明します。
 まず、保護規制計画ですが、冠島及び沓島は若狭湾の島嶼景観を構成している島々であり、オオミズナギドリやヒメクロウミツバメなどの繁殖地ともなっています。原生的な自然環境を有しており、野生動物の生息地、繁殖地として重要な地域であることから、厳正にその保護を図るため、第1種特別地域から特別保護地区へ変更します。
 また、現在の公園区域である海岸の後背地、山地部の空山・三浜及び瀬崎については、海岸部と一体となった景観を構成している森林であることから、風致の維持を図るため、第2種特別地域とするものです。
 この第2種特別地域に隣接する地域のうちスギ、ヒノキなどの植林地などが植生の中心である地域は、通常の農林業活動は風致の維持に影響を及ぼす影響が少ないことから、第3種特別地域とするものです。
 また、千歳に関しては、土地形状の変更に伴い、第2種特別地域と普通地域の境界が不明確となっていたことから、境界線の明確化を図った結果、普通地域に変更するものです。
 その他の3カ所については、後背地の山地部を公園区域に編入したことに伴い、海域の普通地域との間に位置する集落地を普通地域として公園区域に含めたものです。
 次に、利用施設計画です。
 海岸部の自然探勝のために成生園地を、若狭湾などを展望するために空山園地の計画を、それぞれ追加するものです。また、車道については公園区域の拡張に伴い路線を延長あるいは追加するとともに、利用の実態に合わせてルートを変更するものです。
 また、公園利用上の必要性が乏しく、今後、整備の見込みのない運輸施設計画を削除するものです。
 以上が若狭湾国定公園の公園区域及び公園計画の変更案です。
 続いて、パブリック・コメントの概要についてご説明します。
 若狭湾国定公園に関しては、1通1件のご意見をいただきました。意見の概要としては、福井県の中池見湿地を指定区域に入れるべきであるというものでしたが、今回の公園区域等の見直しは京都府地域について行うものであるため、福井県の中池見湿地については検討対象とはなっていない旨、お答えしました。
 以上がパブリック・コメントの結果です。
 丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の決定並びに若狭湾国定公園の公園区域及び公園計画の変更案に関する説明は、以上です。

○熊谷部会長 それでは、諮問第216号及び第217号にかかわるご質問、ご意見をお願いいたします。

○速水委員 私は現地の視察に行っていないのでわからないのですが、何年か前にこの辺の地域の森林だとか地域環境を見てくれということで行った覚えがあります。そのころから既にナラ類、ブナ科のミズナラだとかコナラなどを中心に、カシノナガキクイムシというなかなかやっかいな害虫が南の方からずっと上ってきていまして、あの辺でかなり被害が出ていました。最近はどういう状態なのかわからないですが、少なくとも私が行った何年か前には出ていますから、それなりに被害が広がっているだろうと考えています。
 あれはかなり鬱陶しい害虫で、その害虫被害の現状は掴んでいらして、どういうことをしていこうかと、あるいは公園との関係はどうなっていくのかというお話を聞かせていただきたいと思います。
 それから、その当時、人工林関係でも見てくれということで拝見しましたが、他の地域と比べても、かなり手遅れな、いろいろな問題がある林分があの地域には多いのではないか。スギの林地におきましても、もともと植えた樹種とか品種の選定等の間違いもあって、なかなかお金になりにくいスギの林が延々と続いているという状況もあります。第3種とはいえ国定公園の中に入ってしまう人工林の中で、普通地域も含めて、県として少々きっちりとした管理計画、人工林の計画といったものを立てているのかということも含めて、2点質問します。

○国立公園課長 1点目の、ナラ類に被害を及ぼすキクイムシの関係ですが、近畿圏内では非常に重要な広葉樹林があり、それをまさに指定の要件としてございますので、いい対策があるのかどうか十分に承知していないので正確なお答えはできませんが、何らかの調査や対策が確立しているのであれば、指定する立場で言うと、今後その管理に大いに期待したいと考えております。
 それから、人工林の部分については、先ほどの京都府からの説明にありましたように、人工林の管理をしていく一つのインセンティブとして、国定公園の指定というものを生かしていこうというお考えのようですので、地域の方々、それだけではなくて周辺地域の方々、もっと広域の方々の協力によって、人工林の手入れも含めた環境保全対策をしていくこともご予定いただいておると聞いております。国定公園指定を機に、大いに期待ができるのではないかと考えています。

○速水委員 カシノナガキクイムシの被害は結構まとまって出ます。私が伺いたいのは、環境省として、エリアの中ではそういうことは起きていないか、入ってしまっているかという状況の押さえはどこかでされているのかという質問です。
 これはかなり大きな問題としてあちこちで取り上げられているので、環境省がそれをわかっているのか、わかっていないのかという質問です。対策をどう打っていくのかというのは今後いろいろ問題があるにしても、わかっているならわかっている、わかっていないならわかっていないというところをお願いします。

○国立公園課長 そのような被害が国立・国定公園内を含めて起こっているという事実は承知していますが、ただ、それがどのくらいの範囲にわたってどうなっているか、十分な把握は現在できておりません。

○速水委員 よろしくお願いします。

○原委員 私は、ここも現場を見せていただきましたが、天橋立以外の地域には生まれて初めて行きました。日本は広いなと思いました。
 今の部長のお話で、現地現場主義で解決しようというのは大変結構なことで、ぜひ推進していただきたいと思いますが、観光利用の面から私がここで申し上げたいことが3つぐらいあります。1つは、今、600万人の方がお見えになっているというお話でしたけれども、これをもう少し丁寧に分析して、国定公園をどういう形で利用されている人がどのぐらいいるかをきちっと踏まえた上で、これからの対応といいますか、国定公園、自然公園のありようと利用を考えていくことが非常に大事だと思います。
 2つ目は、90%以上は車の利用だと思うのですが、ご承知のように、車で来た人たちにどこで車を捨てて自分の足で歩いて楽しんでもらうかという、その起終点をどこにセッティングするかということと、そこをどういうふうに整備するか、必ず車の所へ帰ってこなければなりませんから、そういうことも含めて国定公園の利用のされ方を、丁寧に現場で対応策をお考えになることをぜひお進めいただきたい。
 そのことを踏まえて申し上げると、石垣などの場合ですと、1国立公園1自治体になっていますから、比較的いろいろなことを進めるのに市長の判断といいますか、「市長のもとで」ということが可能だと思いますが、こういう数市町村が国定公園をということになると、協議会の役割が非常に大事になってくると思います。観光利用は、行政界に関係なく動きますから、そこで協議会が全体の利用の構想を、車利用を念頭に置いてこの際、きちっと計画、目標をつくっておくことがここでも必要ではないかということを、こういう場を借りて強く申し上げておきたいと思います。

○京都府(森田) 大変貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございます。
 我々も、特にこの公園は自然も景観も大変豊かですけれども、併せて京阪神の都市圏の大都市に比較的近いということもあるので、ぜひ多くの皆さんに快適に利用していただくことも重要とと思いますので、今、ご指摘の件を十分に踏まえて、これから対応していきたいと思います。
 とりあえず現在、考えておりますのは、例えば指定記念登山みたいなイベントを大江山を念頭に考えておりまして、そういうケースでは、最寄りの北近畿タンゴ鉄道の駅と大江山を結ぶシャトルバスみたいなものを用意して、できる限り皆さんに多く来ていただきたいということを考えています。
 ただ、恒常的にそういうサービスができるかというと、まだそこまで至っておりませんので、そういうイベント以降の対応について、先ほどもお話ししたとおり、NPOとか多くの皆さんに参加していただいているので、そういう方々と連携をとりながら、それから現地にロッジ等の宿泊機能も幾つかありますので、そんなところとも連携をとりながら、できる限りソフト面も含めて、使いやすい公園になるような工夫、検討をぜひさせていただきたいと思います。

○白幡委員 かつての若狭湾国定公園というのは、その区域に天橋立まで入っているとイメージしにくかったんですね。今回、新たに丹後天橋立大江山国定公園にしていただくと、この国定公園は「大江山 生野の道の遠ければ まだふみもみず天橋立」という歌を思い出させ、日本の古典文化の景観のイメージをくっきりと浮かび上がらせてくれるのではないか。若狭湾と今回の指定区域をはっきり分けられたのは非常によかったなというのが私の印象です。
 もう一つ、説明を聞いていると、棚田あるいは白砂青松、それから天橋立の松ですね、これの保護運動などはものすごくやられているようですが、もう少しその背景にある、この日本における風景を守るということは一体何かというような原点の説明を、折に触れこれからされるといいのではないかと思います。随分人の手が入った二次林的な自然が多いことは確かですが、最も古い歴史を持っている、つまり近畿圏の古墳文化あたりから非常に人が住むようになった地域でありながら、これだけ海岸線であるとか植生だとかが守られている、つまり自然に対するインパクトがあったのに残っているという点は、やはり歴史・文化のことを言わないとわからないと思います。自然公園ということで、自然、自然、自然という形でなくて、この地域の指定ということを考えるなら、むしろ風景という初期の国立公園、国定公園の指定の原点のところをうまく出せるような説明を、今後、できるだけそこを考えてやっていただきたいと思います。説明の中で、やはり文化的なところが少ないのではないかという印象を持ちました。

○熊谷部会長 大変貴重なご意見でございますので、今後とも十分に参考にさせていただけると思いますが、事務局から何かありますか。

○国立公園課長 白幡委員ご指摘の点、国定公園にとっては非常に重要なポイントだと思います。指定区域にはたくさんの、そういった一つのかかわり合いのある自然、風景が重要な要素として入っております。ご指摘どおり、人と自然が共生してきている場所であり、人の生業がまさに風景をつくっているという典型だと思いますので、ここの保全をしっかり図っていくことで、風景というものの重要性、そういう面からの風景の重要性、それを支える人の活動のあり方が考えられるような地域にしていければと考えております。

○鹿野委員 私は、今度の国定公園は我が国の国定公園の指定の中でもかなりユニークで、新しいタイプの国定公園だなという感じを受けております。
 丹後半島の海岸部は、海岸風景を中心とする、従来の国定公園と同じタイプですが、今回、新たに拡張された丹後半島の中央部と大江山地区は、二次林や人工林、所々にある自然林を中心として、しかもそこに棚田やかつての集落、今も何とか頑張っている集落などがありまして、先ほどの白幡委員の言い方でいうと、懐かしい風景なんですね。里地、里山の風景というのでしょうか、まさに懐かしい風景が維持されているわけです。
 こういうものを風景の構成要素として、しかもそのような里地、里山、棚田などの保全活動までも公園利用としてとらえようとしている国定公園だと思います。
 そういう意味で、これまでのタイプからするとすごく新しいタイプの国定公園がここで誕生するのかなと感じています。
 そのような点から考えると、今後のこの公園の管理・運営についても、新しい試みをいろいろしていかなければいけないと思いますし、そこで先ほど来の京都府のお話にありました、今後の公園づくり、公園の管理運営に大いに期待するところです。
 もう一点、先ほど原委員もおっしゃっておりましたが、この地域の利用のアプローチとしては、どうしてもマイカーに頼らざるを得ないと思います。そういった中で、例えば、私どもも現地調査のときに行きました大江山連峰などは、本格的登山ではないし、ハイキングよりもうちょっと重い山登り、そういう利用にすごく適したところだと思います。そのような所ですと、やはりマイカー利用でのアプローチというと、周遊ルートをどう設定するだとか、いろいろ難しい面が出てこようかと思います。
 そういう点で、ぜひ今後の管理運営に当たっては、いろいろな施設整備、ハードの面だけでなくて、先ほども話に出てきましたバスの運行のような、そういうソフト面にもわたって、管理運営の中でぜひ適正な利用、快適な利用にも十分ご配慮願いたいと。

○熊谷部会長 大変貴重なコメントをいただきまして、ありがとうございました。

○高橋委員 先ほど鹿野委員がおっしゃったように、非常に特徴的なのは里地的な環境を取り込んでいるところだとと思いますが、逆の言い方をすると、果たしてこれまで人々が培ってきたこういう国定公園としての資質を維持していけるのかどうかも大きな問題かなと思います。
 私、丹後半島は何度か行ったことがありまして、こういう公園管理とか風景という目で見てはいないですが、いろいろお話をしていると、やはり限界集落に近い所もかなりあるなと感じました。例えば鳥獣被害が深刻になっていたり、林業の従事者がいなくなって山が荒れてきていたり、かなりそういう色を濃くしているなという印象があるので、二次的な里山的な今の環境状態を維持していくのは非常に大変なことだろうと思います。京都府の方ではかなり積極的におやりになるということですけれども、広域振興局を中心とした推進団体の構成員やそのあり方が相当重要になってくるだろうと思います。
 もちろん農林水産業も大きな柱になります。今から管理していく上で派生的に生じるような生産物や、そういう活動を消費の方に向ける仕組み等も考えていかなければいけないだろうと思いますが、そういう立場でどうお考えなのか、まだ具体的にお聞きしていないので、もしわかるのであればお聞きしたい。
 それから、農林水産業云々ということになれば、例えば中山間地域の直接支払い制度であるとか、今年から始まる農地・水・環境保全向上対策という、環境支払いの入門書みたいなものがありますが、そういうものにこの地域自体はどういうふうに取り組んでいるか、あるいは京都府としてそういうものを積極的に活用していくお考えがあるのかどうか。
 わからなければ結構ですので、わかる範囲でお聞きできたらと思います。

○京都府(森田) 今、委員ご指摘のように、確かに現状は、いわゆる限界集落的な側面も相当あります。それは事実であります。
 そういう中で、しかし地域によっていろいろ事情も違うかと思いますので、個別的な事例のご紹介ということになりますけれども、例えば棚田で皆さんがお米をつくる、それはNPOがみんなでつくるわけですが、そのつくったお米を引き取って、それを食用酢にする、そういう一つのサイクルをいろいろ工夫してやっているNPO活動もあります。地域によっていろいろなケースがあるのだろうと思いますが、そういう持続できるNPO活動の一つのモデルケースとしては、大変わかりやすい内容かと思いますので、そういったものをできれば広げていきたいと思います。
 それから、先ほどのモデルフォレスト事業は、木を植え、植えた以降の間伐や除伐についてまで民間の企業の皆さんのご支援もいただきながらやっていこうという事業です。もちろんそれには、実際の作業部隊としては山の持ち主だったり、あるいは森林組合だったり、それもまたいろいろな組織が参画するわけですけれども、そういうことをいろいろ取り組んでいきながら、もちろん中山間地の農村のあり方について、農政全般の中での取り組みはいろいろあると思いますけれども、ともかくありとあらゆる手法を使いながら、できる限り持続可能な一つの生活を何とか維持していきたいと考えています。

○中静委員 私も上世屋には1度伺ったことがあって、つい最近まで昔の里山のやり方が本当によく残っていたなと感動した覚えがあります。そういう意味では、こういう所が国定公園になるのはとても画期的だという鹿野委員のご指摘どおりだと思います。
 それをどうやって景観として残していくかということが、やはり重要になるのではないかと思います。ですので、利用施設計画なども、例えば園地ですとか道路といった従来型の施設計画にとどまらずに、もう少し、そういう景観を積極的に維持するような利用施設計画を立てるとか、それから2種、3種の規制の中も、今まではどちらかというと何かをつくってはいけないとか、やってはいけないという考え方だったと思いますけれども、それをもう少し積極的に、景観を保つためにどうしたらいいかといった規制あるいはやり方を考えていくという考え方に立ってやっていただけるといいなという、これは要望でございます。

○中川委員 私は、今回の丹後天橋立大江山国定公園の指定及び若狭湾国定公園の変更について異存はございませんが、今後の参考のために、1点お聞きしておきたいと思います。
 今回の丹後天橋立大江山の公園指定は、若狭湾国定公園の分離・独立の性格を持つ部分がありますが、まず、このような事例が過去にあったのかどうかを参考までにお聞かせいただきたい。また、分離して独立させる際に何らかの基準があるのかどうか。3月の検討会の検討結果にもかかわるのかもしれませんが、国立公園においても国定公園においても、区域の面積が広大なものとか、あるいは飛び地などの性格を持つような地域も多くありますので、これから分離の問題は当然出てくるだろうと思っております。今回の事例がその先例になるのかどうかも含めて、その基準についてどのようにお考えなのかお聞かせいただきたい。

○国立公園課長 まず、こういった国立・国定公園の分離・独立の例は、承知しておりません。今回初めてになろうかと思います。
 それから、分離・独立に関しての基準如何ということですが、「国立・国定公園の指定及び管理運営のあり方に関する提言」というものがあります。
 その中で、分離や独立なども検討すべきという方向性が示されているのも事実です。ただ、そのための何らかの基準が提示された、もしくは私どもでそれを受けて現時点でつくり上げたということはありません。
 それでは今回、なぜこのような形にするのかといいますと、まず1つ、今ある基準の中に、一定規模以上のものが国立公園であり、もう少し小さくても国定公園になれるという規模要件というのがあります。それと、やはり景観の一体性あるいは利用の一体性というような観点で、今回の丹後天橋立大江山というのは、それらを勘案して分離が適当であると考えたということです。
 丹後半島の中心地域の山地部分、それから大江山部分の指定を考えた場合に、それに景観的に一体となっている、あるいは利用で一体となっている海岸部を含めることが妥当であろうというようなことを検討したその結果、その部分は若狭湾国定公園に入れておくよりも新国定公園の側にくっつけた方がいいだろうと判断したところであります。
 つまり、幾つかの要素、規模の要件、それから景観の一体性、利用の一体性というような視点を持って判断させていただいたところでありまして、もう一歩踏み込んだ数字的な基準などは現時点ではありませんし、これで何か明確な新しい基準ができた訳でもありません。ただし、提言を受けていますので、その方向性についてはいつも私ども頭に置いて、わかりやすい国立・国定公園、それから管理しやすい、国民に理解していただきやすい国立・国定公園にすることをいつも頭に置いて、現在ある基準、3点の要件を加味して勘案させていただいたということです。

○中川委員 今後、現地のより詳しい内容についてご検討いただくことが必要ではないかと思います。

○熊谷部会長 ありがとうございました。今後、十分検討させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○浜本委員 全く違う観点ですが、今回、若狭湾内の2つの島が第1種特別地域から特別保護地区に変更になっておりますが、この2つの島、特に沓島は100%、冠島の方も4分の3ほどが私有になっております。位置的に見て、人がすごく入り込みやすい所とか、そういったようには見えないのですが、クロウミツバメであるとかオオミズナギドリの繁殖地として現在もたくさんの鳥たちがいる、こういう島の私有地になっている場所を特別保護地区にした場合、どのような保護の基準を設けて保護していくのか。
 実は国内でも、特にこのような小さな島が私有地になっていて、保護区になってしまった後から問題が発生している地域を幾つか私も知っているものですから、この場合、ただ単に特別保護地区の原生状態を維持するだけではなく、この場合には特に保護活動を推進していかなければいけないだろうと思われますが、そのあたりを京都府としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

○京都府(森田) すみません、今ちょっとお答えする材料を持っておりませんけれども、私有地といっても、たしかもともと人が住んでいるという状態ではなかったと思います。以上のことしかご説明できません。大変恐縮でございます。

○国立公園課長 すべてについてお答えする形にはならないかもしれませんけれども、第1種特別地域から特別保護地区になりますと、動物の捕獲等に対する規制がかかります。第1種、第2種、第3種特別地域の場合は、動物に関しては規制がかかりませんのが、特別保護地区になると法的な規制効果がかかります。
 それ以外については、基本的に保全活動に対して直接的に、第1種であるからできて特別保護地区だからできないというようなことにはならないものですから、その部分のご心配の点はないかと思います。

○廣瀬委員 私からは、車道及び歩道についてお尋ねしたいと思います。
 今現在も我が国は車道が津々浦々つくり続けられて、ご承知のように、車も人も全く通らない車道がかなり多いという問題もあります。
 「何のためにつくった林道なんだ」といったこともよく言われたりするわけですが、それ以外にも、汗をかいて歩こうとする所を車が通って危なくて歩けない、あるいは排気ガスをかぶってしまうという問題もあって、車道をつくるについて、やはり国立公園、国定公園内においては、極めてシビアにその辺の許認可を含めた評価をすべきではないかと考えています。
 その上で、京都府の方で進めておられる丹後縦貫林道が現在、建設中ということですが、これについて見直しの可能性はあるのかどうか。
 次に、歩道ですが、自然歩道は環境省が進めている事業ですけれども、実際に自然歩道がつくられた後のメンテナンスが、特に日本の湿潤な自然条件の中では難しく、道が途絶えてしまっている、消えてしまっているような所も数多くあります。そういう場所をつくるなということではなくて、私は、自然歩道はどんどんつくってほしいと思いますが、肝心なことは、そこをメンテナンスする仕組みなんですね。これは地元の住民が中心となって、その歩道を管理し、利用し、そこを使ってさまざまな産業につなげていくようなことを促していくことが必要ではないか。したがいまして、例えば地元としての京都府では、こういう自然歩道の建設計画などについて、併せて利用及びメンテナンスについての地域の取り組みなどがあるのかどうか、それも伺いたいと思います。

○京都府(森田) 第1点目の、丹後半島の縦貫林道の件ですが、丹後半島は海に突き出た大変大きな半島ですが、道路の整備としては海岸線沿いに国道が1本あるだけで、なかなか内陸に入る道路はありません。そういう状況の中で、スイス村であるとか碇高原であるとか、やはり豊かな自然、それから大規模な農業の開発が内部で大分進行していますので、丹後半島を縦貫する農林業のための道路も必要かなと思います。
 現在、北半分はできて、今、南半分をつくっているところだと思いますが、段階的に逐次整備をしている状況です。
 この縦貫林道の整備の是非については、京都府の中にも事業評価委員会がありまして、新規に事業化するとき、それから着工10年だったと思いますけれども、まだ完成していない場合には、改めてその時点で立ち止まって本当に必要か考える、そういうチェックをする場があるわけです。その中でも議論されて、農林業のため、もう一つは地域の観光のため、それから災害時の代替道路としてという大きく3つの性格から、引き続き整備をする必要があるとはされたところです。
 ただ、いずれにせよ、それのために貴重な自然が壊れては元も子もないので、できる限り切り盛りを少なくするとか、事業段階、設計段階で十分に工夫すべしという条件もついていますので、そういうことを十分に考慮しながらやっていくことになると思います。
 それから、歩道のメンテは確かに重要なことなので、皆さんに楽しく歩いていただけるように引き続き頑張っていきたいと思います。

○仙田委員 私の専門は建築ですけれども、今日は国定公園の管理について、京都府の土木建築の方が来られているということで、少しご質問させていただきたいと思います。
 先ほど中静委員もご質問されていたかと思いますが、先ほどの説明のスライドなどでも、私はいつも「ああ、ひどい建築デザインだな」とか「ひどい建築の景観だな」という側面で見ていまして、やはり日本の美しい自然環境をかなり汚している部分として、建築というのは非常に大きい側面であると思います。この部分について、やはり景観管理という点において、1つには規制だろうと思いますが、もう一つには、奨励というような部分もあるかと思います。
 例えば京都の若狭スタイルとか、そういうスタイルを決めて、そこに沿うものについては設計費の補助をするとか、そういういろいろなことが考えられると思うのですが、京都府については現在、具体的に何かアイデアをお持ちでしょうか。

○京都府(森田) 景観については大変重要なテーマだと我々も思います。
 今年4月から新しく、京都府は独自に景観条例をつくりました。それに基づいていろいろ行っていこうとしていますが、その中で、今回の公園との関係でお話をすると、天橋立地区について景観計画をつくろうと、今、動いております。それはまだ具体の案には至っておりませんけれども、地元の皆さんと私たちがいろいろ検討している中では、建物の色であるとか高さであるとか、場合によってはそういったものまで規制してもいいのではないかというところまで踏み込んで議論されています。
 それと、エリアで景観計画をつくって長い目で何とか誘導していこうというやり方と、もう一つ、景観条例の中では景観アドバイザーというのを府が委任させてもらって、そういう人たちが、地元でこれから景観をよくしていこうという人たちの講師みたいな役目を持って指導なり交流する中で、それぞれ地域の景観に対する意識を高めていこうといった取り組みなども、今年から始めようとしています。
 そういういろいろな取り組みをする中で、京都府全体の景観をよくしていきたいと思っています。
 繰り返しですが、特に天橋立は、景観計画のトップバッターとして今、動いております。今回の新しい国定公園の指定も併せて、それから今の景観条例の制定も併せて、できる限りいい景観をつくっていきたいと思っています。

○原田委員 私、自然公園制度のことは詳しくないのですが、今日お話をお伺いしておりまして、このように見ていいのかということと、そうした場合に、多少気になることがあるので発言させていただきます。
 今回の丹後天橋立大江山国定公園の場合ですが、中身として、従来と違う新しい風景、里地、里山、照葉樹というようなところを取り込んで、そして国定公園として指定したという点が一つの特徴としてあるのかなと。そのことが、恐らく若狭湾と切り離してもいいのではないかということもあったのかなという印象を受けております。そして、恐らくそういう新しい風景地の評価の基準から国定公園を指定するというのは、平成19年3月に出された提言を受けてのことであろうと了解いたしました。
 私自身は、こういう里地、里山、あるいは昔懐かしい照葉樹林が保存されていくというのは非常にいいことだと思っておりまして、また、この指定についても、特に異存があるわけではありません。ただ、いずれにしろ、そうしますと、自然の風景地の中身の評価が変わると同時に、人手の入った自然が対象として捉えられていくことになります。他方で、それが今なお残っているということは、先ほど限界集落というお話もありましたが、やはりそこでは生活しにくい、また開発の対象にもなりにくかった地域であるということが1つはあるわけです。
 他方で人が住んでいたわけで、今このデータを拝見しましても、ほとんどが私有地ですね。先ほどの石垣島の場合には公有地が圧倒的ですけれども、こちらはほとんどが私有地です。そして、そこでの生活が難しいから、そういう状況が残ってきている。これはある意味で、もしそこで生活条件を変えようとして何かをしようとすれば、その環境を壊しかねない。他方で保存したい、しかし、その状況を維持したままでは生活が難しい。このジレンマを持った地域を取り込むことになると思いますので、そういう点について、農水の方の施策やその他の施策もあるのでしょうが、こういう公園制度の中でも一定の、そこでの人々の生活が維持されつつ、かつ景観も保存される、そういう両方の要請を、しかも私有地の上で実現する、そういう問題が出てくるのではないかと思うので、その辺に関して何かお考えがあるかどうかお伺いしたいということでございます。

○国立公園課長 今、ご指摘の点は、国立・国定公園に限らず、我が国の里地、里山を考えるときに解決しなければいけないポイントだと考えております。それに対して決定打として、まだそれらしいものがあるわけではなく、いろいろなモデル事業を支援したりという形で今、模索しているところです。
 いずれにしても、そういったものが景観をつくり、それが評価されているという現実がございますので、国立・国定公園のサイドからも、そういった観点で両立が図れるような検討を進めてまいりたいと思います。

○熊谷部会長 京都府の方から今のご質問に対して、特に指定に関していろいろ地元の方と協議を重ねておられると思いますので、例えば地元の方からの了解といいますか、同意が非常にうまくいっているとか、あるいはこういうところで問題があったといったことをご披露いただければ参考になろうかと思いますので、今おわかりの範囲で結構ですので、ひとつよろしくお願いいたします。

○京都府(森田) 指定するについてどういう規制がかかるのかということについては、事前に関係の集落の皆さんにはご説明させていただきまして、それ了解をいただきました。
 もう一つ、一般論になってしまって大変恐縮ですが、先ほどの景観条例をつくったというお話をしました。その景観条例の一つのコンセプトとして、地域の皆さんが自分たちの住んでいるエリアの魅力に気づくということをすごく重要視しています。どんな魅力なのかということは、それはそれぞれ地域ごとにあるのだろうと思いますが、いずれにせよ、地域の魅力に気づいて、その地域を特徴づける景観なり町並みなり、そういったものを自分たちの特徴として守っていこう、そういう動きを育てたいと思ってつくった条例です。
 ですから、今回のエリアでいけば、やはり京都市内ではない、丹後あるいは大江山の地域で何が魅力的なのかということをみんなで考える中で、「そういう特徴があるのだったら自分たちの生活スタイルと調整をとりながら暮らしていこう」そういうふうに何とか持っていきたいなと考えていまして、だからこそ、管理についてもNPOとか地元の皆さんと一緒になってやっていきたいと考えているところです。

○速水委員 先ほど丹後半島縦断林道の話が出ましたが、縦断林道はどこの事業ですか。

○京都府(森田) 京都府の事業です。国から補助はいただいていますが、事業主体は京都府です。

○速水委員 非常に細かい話ですけれども、私は林業関係者なので、国立公園だとか国定公園の周辺だとか、地域を通る林道が非常に大事であることはわかっていますが、いつも公園に対する配慮が設計段階でほとんどなされないままつくられていくことが、林道をつけてほしい者にとっては逆に悲しいのですね。
 「もう少し配慮してつけろよ」という感じが常にあります。
 例えばのり面緑化などの植物を、その地域の在来種をしっかり使っていくとか、そういう計画はお立てになっていらっしゃるのでしょうか。

○京都府(森田) そういう計画はつくっています。全体としては、「和の公共事業」と言っておりまして、できる限り在来種を使おう、切り盛りを少なくしよう、そういった事柄について、具体的な技術基準というところまではいっていませんが、それぞれにそういうチェック項目みたいなシートがあって、そのとおりやっているかチェックしながら進めております。

○速水委員 林道というのは常に反対意見が厳しく出て、でき上がった後にも批判をされることが多いので、やはり設計段階からしっかりした計画をつくっていただければ大変ありがたいと思います。

○矢原委員 この地域が縄文以来、人間がずっとかかわってきた自然で、そういうものを指定したところに大きな意義があるというのは、もう皆さんご指摘のとおりですが、最後にぜひ、もっと前の自然と縄文以来の人間のかかわりというのを一体のものとして捉えて、今後、この国定公園の整備を進めていっていただきたいと思います。
 というのは、2万年ぐらいまでは氷期で、もっと寒かった時代で、鹿児島県までブナがあったのですが、恐らくその当時、この若狭湾一帯の地域は比較的温暖で、スギを象徴とする温帯の植物がかなり残った地域です。その後、この若狭湾一帯から温帯の植物が南に分布を広げていったという歴史があって、当然氷期に朝鮮半島と日本がつながっていたために人間の移動もあったし、そのころから既に人間のかかわりが始まっていて、その後、だんだん暖かくなってくる過程で人間のかかわりがどんどん大きくなってきた。
 そういう若狭湾地域のもともとの自然が持っていた特質が、例えばタンゴグミという固有種を残してきたことにもつながっているわけなので、ぜひそういう自然から人間がかかわってきた歴史を一体のものとして捉えてほしいというのが私のお願いです。
 もう一つ言うなら、この地域はたくさん湿地を持っていますので、湿地の花粉等を研究することで、2万年から今に至る人間のかかわりの歴史がかなり具体的にわかる、そういう資源も持っていることにぜひご配慮いただければと思います。

○熊谷部会長 ありがとうございました。大変貴重なご意見として賜っておきたいと思っております。
 他にいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、諮問第216号 丹後天橋立大江山国定公園の指定及び公園計画の決定について、諮問第217号 若狭湾国定公園の公園区域及び公園計画の変更については、適当と認めることにご異議ございませんでしょうか。

(異議なし)

○熊谷部会長 ありがとうございました。
 それでは、本件については適当と認めさせていただくことにいたします。
 以上で本日の諮問事項についての審議は終了いたしました。
 続いて、事務局から報告事項についてお願いいたします。

○国立公園課長 それでは、ご報告申し上げます。
 参考資料1をご覧ください。
 「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」に関してです。
 これについては前回の自然環境部会でも着手に当たってのご紹介を申し上げましたが、国立・国定公園については、これまで一定の役割を果たしてきましたけれども、自然の質に対する価値観や社会情勢が大きく変化したということで、制度の見直しを含めて検討を進めてきたものです。
 その結果については、参考資料1の2枚目の方に一覧としてご提示申し上げます。大ざっぱにかいつまめば、優れた自然の風景地の評価の多様化に対応した指定を考えていく、それから、国民の視点に立った公園指定を考えていく、管理運営に関しましては、地域の多様な主体の参画による管理運営を進める。これについて、将来に向けて十全に発揮するための提言という形でまとめていただいたものです。
 これを受けまして、2ページ目にございますような国立・国定公園の総点検事業、あるいは広範な関係者の参加による管理運営を推進する事業などを進めていく考えです。
 次に、参考資料2をご覧下さい。
 国立公園の指定及び公園計画の決定等に関する意見の募集ということで、尾瀬の国立公園を分離指定することにつきまして、前回の自然環境部会でも、その方向性について着手するとご報告申し上げたところでございます。その後、調整が進み環境省原案ができたということで、今、パブリック・コメントに付しております。今後そのパブリック・コメントも踏まえ、また関係省庁との協議も進めまして、次回の自然環境部会においてご審議いただくべく、今、準備を進めているところでございます。
 次回、7月25日を予定させていただいておりますけれども、その会で、この尾瀬国立公園の指定についてご審議いただく予定でございます。
 もう一つ参考資料をつけてございます。那須御用邸用地の北側地区等を国民の利用に供することについてです。
 これは6月19日に宮内庁と合同で発表した内容でございますが、これまで宮内庁が管理する皇室用地でありました那須の御用邸の一部、570ヘクタールほどありますが、その大半が国立公園に入っているため、環境省に所管換えをして、今後、環境省において国立公園等の整備を進めることとしたものです。
 これについては、当該用地の豊かな自然を維持しつつ、国民が自然に触れ合う場としてはどうかといった天皇陛下のお考えを踏まえて宮内庁でご検討され、その実施を担う者として、環境省が適当だろうと合意されたものです。当省としましては、今年度中を目途に所管換えをいたしまして、今後、自然体験、自然学習の場としての整備、あるいはモニタリングの場としての整備を考えていく予定でございまして、今年度中にそのための構想策定を進めていくことを考えてございます。
 以上、報告事項でございます。

○熊谷部会長 ただいまの報告について、ご質問ございますでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして本日の中央環境審議会自然環境部会を閉会いたします。ご協力ありがとうございました。
 それでは、事務局にお返ししますので、連絡事項等あればお願いいたします。

○国立公園課長補佐 本日は長時間にわたりご審議いただきまして、ありがとうございました。
 本日の会議資料の取り扱いにつきましては、公開でございます。
 次回の部会でございますが、先ほど国立公園課長から案内がございましたとおり、7月25日水曜日に予定してございます。会場は本日と同様、この会議室でございますので、ご出席いただきますようお願いいたします。
 本日はどうもありがとうございました。

午後3時38分 閉会