自然環境部会生物多様性国家戦略小委員会(第2回)議事録

日時

令和3年12月17日(金)13:30~17:00

場所

WEB会議システムにより開催

出席者

中静 透     委員長

石井 実    委員

勢一 智子   委員

髙村 典子   委員

藤田 香    委員

愛甲 哲也   臨時委員

大沼 あゆみ  臨時委員

亀山 康子   臨時委員

五箇 公一   臨時委員

白山 義久   臨時委員

中村 太士   臨時委員

深町 加津枝  臨時委員

二宮 雅也   臨時委員

山野 博哉   臨時委員

広井 良典   専門委員

森本 淳子   専門委員

吉田 丈人   専門委員

議事録

午後1時37分 開会

○司会 大変お待たせいたしました。ただいまから、中央環境審議会自然環境部会第2回生物多様性国家戦略小委員会を開催いたします。

 本日は、お忙しい中、ご出席いただきありがとうございます。

 本日の小委員会には、17名の委員にご出席いただいております。

 本日の会議運営につきまして、ご説明いたします。

 傍聴につきましては、会場での傍聴は行わず、YouTube配信にて、どなたでも傍聴できるようにしておりますので、ご承知おきください。

 ウェブ会議の開催に当たりまして、委員の皆様、そして本日ご説明いただける各団体の説明者の皆様におかれましては、マイク、ビデオは各自ご発言の際のみ、オンとするようにお願いいたします。

 なお、ご発言の際はチャット欄に書き込みいただき、ご発言の旨をお知らせください。

 委員長からのご指名後、マイクのミュートを解除していただき、議事録の円滑な記録のため、お名前をおっしゃってからご発言いただきますよう、お願いいたします。

 なお、挙手ボタンは気がつかないこともございますので、挙手ボタンは使用せず、チャット欄をご活用いただければ幸いです。

 本日ご説明いただく資料につきましては、委員の皆様には事前に電子データにて送付しております。本日は、事務局及び各団体の説明者が画面上に資料を掲載し、進行をさせていただきますので、ご案内の資料は必要に応じ、お手元でご参照いただきますようお願いいたします。

 傍聴されている方におかれましては、本日の資料を環境省ホームページにアップロードしておりますので、そちらをご覧ください。

 また、本日の会議については、議事録を作成し、ご出席の委員の了承を取った上で公開することになりますので、ご了承ください。

 それでは、奥田自然環境局長よりご挨拶申し上げます。

○奥田自然環境局長 どうも、皆さん、こんにちは。

 委員の先生方、また、本日ヒアリングにご参加いただく皆様方には、本当にお忙しい中ご出席いただいたことを厚く御礼申し上げたいと思います。

 今回も、新型コロナウイルス感染防止対策ということでウェブを活用しています。ご不便をおかけしますけども、ご容赦いただけたらと思います。

 次期生物多様性国家戦略研究会への提言、及び前回のこの委員会でも、貴重なご意見をいただきました。こうしたご意見を進めていくためには、やはり民間団体、ですとか産業関連の団体、企業、そして自治体も含む様々なステークホルダーが、それぞれ主体的に関与していただいて、進めていくことが重要だと考えております。このため、今回は、民間活動団体ですとか産業関連の活動団体、そして、環境教育団体の15団体お願いしておりますけれども、施策の実施状況ですとか、次の国家戦略に向けた提言等についてヒアリングを行うことで、それを基に議論をお願いする次第であります。

 また、地方自治体は、今回はお呼びしていませんけれども、来年1月に、地域バランスを考慮して、幾つかの市町村の首長さんたちにお集まりをいただく予定にしています。地域の社会課題の解決に向けた生物多様性の活用事例ですとか、次期生物多様性国家戦略への要望等をお聞きする機会にしたいと思いますので、また、詳細が決定次第、先生方にもご案内を差し上げたいと思います。

 今日は17時までの長い時間でございますが、一つ一つのヒアリング、それは限られた時間になってしまいますけれども、どうぞ密度の濃い議論をお願いすることをご期待申し上げて、私からの最初のご挨拶とさせていただきます。

 よろしくお願いいたします。

○司会 どうもありがとうございました。

 それでは、これよりの議事進行につきましては、中静委員長にお願いいたします。

○中静委員長 中静です。

○中静委員長 今日は大変たくさんの関係団体の方からヒアリングを予定しています。17時までというすごく長い時間になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 小委員会のメンバーは学術関係の委員が多いので、今日は民間活動団体、それから産業関連の活動団体、環境教育の関係の団体といったメンバーを中心にヒアリングをお願いしています。今回のヒアリングでは、各団体の皆様から、次期生物多様性国家戦略に組み込むべき提言というような形でお話をいただいて、それを受けて、委員の皆様には組み込むべき要素についてご検討いただければというふうに思います。

 早速、ヒアリングに入りたいと思いますが、まず、最初に七つの民間活動団体の方からお願いしたいと思っています。

 今日はちょっと数が多いものですから、各団体の説明時間の終了に、事務局のほうで、時間が来ましたらベルを鳴らさせていただきますので、時間を厳守してお話しいただくようにお願いしたいと思います。

 では、まず最初に、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン、生物多様性グループ、グループ長、パブリックセクター・パートナーシップグループ長の松田様よりご説明をお願いいたします。

○WWFジャパン(松田グループ長) WWFジャパン、生物多様性グループ、並びにパブリックセクター・パートナーシップのグループ長を担当しております松田と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、始めさせていただきます。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。WWFジャパンは、世界100か国にオフィスを持つ自然保護団体です。本日は、時間が非常に限られているということもありまして、先日、金曜日にWWFジャパンから環境大臣宛てにお送りしている次期生物多様性国家戦略の提言書(その2)を基にコメントさせていただこうかと思っております。ただ、時間が限られておりますので、詳細については、ぜひ皆様のほうでお手元の資料1-1をご覧いただければと思っております。

 今回の提言書に関しましては、細かい施策というよりは、どちらかというと生物多様性全般の取組にかかることで、根本的なところを幾つか述べさせていただきました。冒頭のほうに、生物多様性の今後の方向性として最も重要なのが、私たちの考えるところは、ネイチャーポジティブを目指すところであると認識しております。

 日本政府としまして、ネイチャーポジティブについては、これまで複数回にわたって国際的な場でプレッジしていただいております。例えばですが、Leaders Pledge for Nature、リーダーによる自然への誓約ですとか、G7カービスベイ首脳コミュニケ、それから、2030年自然協約、それから、G20のローマ首脳宣言等、様々な場面で、既にネイチャーポジティブを含む宣言に賛同していただきまして、日本の立場を明確に、ネイチャーポジティブを目指すよというところを明確に示していただいているということを認識しております。

 また、直近のことなのですけれども、気候変動枠組条約が先日ありましたが、そのCOP26の会期中には、森林破壊停止宣言についても、政府のほうで積極的に賛同いただいておりまして、本件、非常に心強く思っております。

 私ごとなんですけれども、過去に気候変動対策に携わってきたこともありまして、今回のその気候変動枠組条約、COP26の決定文の中で、自然の重要性がうたわれていること、非常に印象的に思っておりました。気候変動と生物多様性の取組というのは、本当に非常に近いところで行われていると思います。ただ、IPBESとIPCCの合同ワークショップレポートで示されているように、気候変動をやっていれば生物多様性が守られているということではないのではないかと思います。

 日本においては、どうしてもやっぱり気候変動対策が先行している一方で、生物多様性対策については、まだまだ脆弱であると感じざるを得ません。最近ですけれども、気候変動と生物多様性というのは表裏一体な関係であるという風に表現をされることが多いかと思います。けれども、もしそれが本当なのであればですが、生物多様性(保全の)対策が失敗してしまったら、気候変動対策も失敗するのではないでしょうか。なので、ぜひいま一度、「ネイチャーポジティブ」には何が必要なのか、また、何を変えていかなければいけないのかということを真摯に考えていくときではないかと思っております。

 そういったことを背景にしまして、提言1から4をまとめました。

 提言1では、次期生物多様性国家戦略の2030年に向けた取組の柱や、国内目標として、政府から三つ柱が挙げられておりました。唯一、その数値目標としては、30by30が挙げられていますけれども、その30by30でカバーできるのは、恐らく柱1だけではないかと思っております。したがいまして、できれば柱2と柱3の両方、2と3についても具体的な数値目標を掲げていただき、「ネイチャーポジティブ」を実現していただければと思っております。

 また、提言2では、国内ガバナンスの整備と強化について示しております。これまで、生物多様性の取組が脆弱であったということもちょっと関係するかと思うのですけれども、既存の法律では、生物多様性の保全が担保されていないところが結構あるように思います。前回も、また、それに加えて前回の小委員会でも、複数の先生方から声が上がったように、省庁間の調整が、今、まだちょっと足りないのかなと思っておりますので、その点も、ぜひ考慮いただければと思います。

 生物多様性の問題は省庁間の連携の強化に象徴されますように、既に環境行政の域を超えて、30by30という保全活動だけにとどまらず、提言3で示したようなビジネスの連携や、提言4で示しましたような環境教育、それから企業や消費者の行動変容など、様々な利害関係者を最初に洗い出して、この利害関係者を巻き込んで主流化を図っていただくことが重要なのではないかと思っております。

 以上となります。どうもありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 先ほど言い忘れたんですけれども、関係団体の方に一通りご説明していただいた後に、まとめて質疑という形にさせていただければと思います。

 次に、公益財団法人日本自然保護協会保護部主任の若松様よりご説明をお願いします。

○日本自然保護協会(若松主任) よろしくお願いします。若松です。少々お待ちください。

 このたび、このような機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。日本自然保護協会の若松です。

 本日は二つお話をしたいと思っています。赤谷プロジェクトによる生物多様性の保全と地域づくりへの貢献ということと、気候変動と生物多様性の危機、特に、豊かな自然環境での大規模な再エネ開発の課題というところをお話しさせていただきたいと思います。

 まず、日本自然保護協会について紹介させていただきたいと思います。全国2万5千人の会員やサポーターに、企業に支えられている環境NGOです。尾瀬保存期成同盟から改組し、誕生してから今年がちょうど70周年という形になります。くらしを支える日本の自然の豊かさを守り、その価値を広め、自然とともにある社会をつくることを目指し、活動しております。

 全国規模の自然保護問題の解決と支援、それから、自然保護を通じた社会課題の解決、ふれあいの場と機会、導き手を増やす、この三つの大きな柱をベースにして、調べる、広める、守る、こういった活動を行っています。今回は、このうち2番目にある活動の紹介と、1番目の中で懸念していることを述べさせていただきたいと思います。

 まず、紹介したいのが、群馬県の最北部のみなかみ町新治地区で行われている赤谷プロジェクトについてです。この場所では、1990年代前半、大規模なダムとスキー場の計画がありました。そのことに対して、代々大切にしてきた水源の森を失うわけにはいかないと考えた方たちが立ち上がって、保護活動が始まりました。地道なイヌワシやクマタカの調査、それから関係者との度重なる交渉などの結果、10年以上の年月をかけて計画は白紙に戻りました。

 その後、森をめぐって対立状態にあった地元の人たち、国有林管理者、そして日本自然保護協会ですね、開発計画がなくなった森で、生物多様性の復元と持続的な地域づくりを目指した、ともに活動するということを始めたという形になります。約1万haの国有林である赤谷の森は、地元住民で組織する赤谷プロジェクト地域協議会、こちらで管理がされているという形になります。ここには、先ほど言った赤谷プロジェクトの地域協議会と、それから林野庁の関東森林管理局、それから日本自然保護協会、この3者が協定を結んで共同で管理を行っています。科学的な根拠に基づく生物多様性の保全や修復を進めるために、多分野の専門家からなるモニタリング会議と、テーマ別の検討チームを編制しているという形になります。

 この赤谷の森は、増やし過ぎた人工林を自然林へと復元する方針ということを取っております。人工林では、イヌワシやクマタカ、そういったような猛禽類が、ハンティングをしにくい状態にあるという形で、結果として、繁殖成功率の低下を招いているという形になります。この問題は、全国的に起きている問題かと思います。これを改善するために、人工林を計画的に伐採して、エリア内に、順次ハンティングできる場所を創造していく、そういった形で自然林へと徐々に戻していくという形になります。その結果、徐々にイヌワシが獲物を探す行動が多く確認できるようになってきているということになります。

 この伐採によって出た木材は、地域内で積極的に活用したり、応援企業と組んで商品化するなどして産業化することで、自然保護につながる森の恵みを地域産業活性につなげて、産業関連表で見える化をしていくという形になります。

 赤谷プロジェクトは複数のステークホルダーによる協働管理により、地道なモニタリング調査をベースにした地域づくりと環境教育を行っています。これにより、企業の協力や関与がある点は特筆する点です。このような取組がベースになって、2017年にみなかみ町全域がユネスコエコパークに登録をされたという形になります。生物多様性の保全をベースにした地域づくりは、徐々に過疎高齢化が進んで、進行していた地域の方々の誇りをもたらすだけでなく、移住者の増加とか、ブランド化による新たな産業化にもつながっています。また、世界最大級のメガバンクであるHSBCが、この赤谷の森の保全・復元に貢献するという方針を示しているという形になります。紹介したこの赤谷プロジェクトは、まさに、NbSのモデル地域であり、このような取組が新たな生物多様性国家戦略によって、各地で行われるということを期待しています。

 そして二つ目ですね、1番目の自然保護上の懸念についてという形で述べたものです。先ほど、WWFさんがご指摘したように、気候変動により生物多様性の喪失は大きな問題となっています。温暖化対策を行うためには、再生可能エネルギーの推進を、よりスピードをもって図っていくべきだというふうに考えています。しかし、一方で日本国内では、生物多様性を直接的に創出するような再生可能エネルギー施設の建設が急速に進んでいます。こちらの表は、全国の植生自然度の割合を示したものです。原生的な自然度の高い、自然度9の自然林の割合というのは減少傾向にあって、今から約20年前の地点で、もう既に18%ほどになっています。このような自然度の高い森林は奥山に広く分布していますが、このような場所で風力発電施設建設が急速に進行しています。

 例として3か所示していますけれども、こちらは、この緑の部分は自然度9の森林の場所ですけれども、それに覆いかぶさるような形で風力発電の建設が計画されているという形になります。このような地域は国立公園などの自然公園外であるという地域も多くて、土地所有者の個人や入会地であると、これを回避するという手だては今のところないということになります。

 具体的な例として、福井県美浜町で建設予定されている、最大出力105,000kWの風力発電事業の現場を紹介したいと思います。計画予定地は、滋賀県境に近い福井県の南部の野坂山地です。樹齢が300年以上で、胸高直径が1m以上のブナからなる自然林で、林床にはヒメアオキとかヒメモチといったような日本海性の植物とともに、暖地性のツクバネガシなどのカシ類、それからハゼノキとか、そういったものが見られる。この本地域を北限とする植物も林床に多数見られるというような状態です。

 現在、環境影響評価の方法書の縦覧が終了した段階ですが、既にアクセス道路の整備や風況施設の工事、そういったことによってブナ林の伐採が進行しています。写真の風況施設設置のために切られた年輪を計測すると250年生のブナです。人里から離れているということもあって、住環境面でも懸念が少ないということから、地元自治体などはこれに賛成しているという形になります。当地をよく歩かれている滋賀県の山岳会がこれに反対の署名をしているというような段階になります。

 再生可能エネルギー施設は、地元の同意が重要という形で言われていますけれども、このように地元の同意が得られた地点は、重要な自然が喪失されるような再生可能エネルギー計画が進行しているのが現状かなと思いますし、ここ数年、一気に進むかなというふうに考えています。

 このような再生可能エネルギー施設の建設は、生物多様性を直接的に脅かすということから、リゾート開発などの他の大規模開発と同じように考えても差し支えないというようなものが多く存在します。温暖化対策の名の下に、それが促進されるのは本末転倒ではないかと考えています。

 最後に、日本自然保護協会からの提案という形でまとめさせていただきたいと思います。

 世界目標である30by30の日本での実現に向けて、保護地域の拡充とOECMの制度構築が進められていることに期待しています。そのために、さらに下記のことが重要と考えています。

 一つは、生物多様性国家戦略が、地域を巻き込んだような赤谷プロジェクトのようなNbSを主導するものに生まれ変わるということを期待しています。

 それから、再エネの地域合意形成だけでなく、全国レベルの生物多様性の喪失を回避するうえでも、ゾーニングによる誘導をきちんと行うということが、今後数年間、非常に重要であると考えています。生物多様性国家戦略によって、その仕組みを整えるということによって、温暖化対策と生物多様性保全の両立を図れるようなものになればと期待しております。

 以上になります。どうもありがとうございます。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、次に、公益財団法人日本野鳥の会、自然保護室長、田尻様よりご説明をお願いします。

○日本野鳥の会(田尻室長) 日本野鳥の会、自然保護室の田尻と申します。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。今から、私ども日本野鳥の会からの提案ということでお話をさせていただきたいと思います。

 私どもからは、保護地域とOECMで30by30を達成していくというために、こんなことが有効ではないかということで2点ほどお話しさせていただきたいと考えておりまして、一つ目が、OECMに該当する地域の所有者等への優遇措置があったらいいかなというのと、もう一つが、OECMを認定する際の基準としてKBA、Key Biodiversity Areasを採用していただくといいのではないかと考えております。

 最初に、私ども日本野鳥の会の紹介になりますけれど、野鳥をシンボルに、生物多様性保全に取り組む自然保護団体として活動させていただいておりまして、本日の提案に関する活動内容といたしましてはIBAですね、重要野鳥生息地の選定、それから野鳥保護区の設置というのをやっておりますので、これも含めて紹介させていただきたいと思っております。

 まず、野鳥保護区についてなのですが、こちらが根室市に設置させていただいておりますタンチョウの野鳥保護区の渡邊野鳥保護区フレシマというところで、こういった環境を守っております。

 この野鳥保護区についてなんですけれど、今のところ、タンチョウやシマフクロウなどの貴重な野鳥の生息地を保全するために、自然公園ですとか、鳥獣保護区ですとか、そういったものに指定されていない土地について、私どもが買い取り、もしくは所有者との協定を締結することで、永続的に保全するというような場所として設定しております。

 こちらのこれまでの歴史なのですけど、1986年から設置を始めまして、1987年には、タンチョウの営巣地が競売に出されていたということから、開発を阻止するために緊急的に対応して購入を行ったというのが始まりになります。その後、鳥獣保護区化が難しいような小規模な湿地を主な対象として、野鳥保護区の設置を進めてまいりまして、現在、北海道の東部を中心に、およそ3,600haの野鳥保護区を設置しております。

 このような分布になります。

 野鳥保護区とOECMの関係なのですが、OECMについては改めて説明する必要はないかと思いますけれど、保護地域以外の部分というところで関係があるのかなと考えております。

 私どもが設置している野鳥保護区の種類といたしましては、企業との協定・覚書の締結によって設置しているもの、それから、個人の方との協定の締結によって設置しているもの、それから、ご寄付を原資に土地の買取によって設置しているものがございます。これらはOECMによく合致するものと考えておりまして、30by30達成のために、このような取り組みに参加する個人や法人に優遇措置があるといいのかなと考えています。

 考えられる優遇措置といたしましては、税制の優遇というようなことも考えられるかなと思っておりまして、私どもが野鳥保護区を設置する際に、主にかかってくる税金といたしましては、譲渡所得税ですとか、不動産取得税ですとか、固定資産税ですとか、こういったものがかかってまいります。こういったものに対して優遇措置を得られると、参加する人にとって有効なのではないかなと考えております。

 特に、譲渡所得税につきましては、額、パーセンテージも結構大きいですし、寄贈する場合でも見なし所得税がかかるということがございます。ただ、減免措置というのもございますけれど、その要件として、文言として挙げられているのが、教育、科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他ということになっていますけど、ここに自然環境の保全ですとか、生物多様性の保全ですとか、そういった文言が入ってくると、より多くの方が考える材料になってくるのではないかなと考えております。

 こういった形で優遇措置をぜひ設定していただきたいなと思っているのですけれど、このOECMの認定を行う際には、ぜひKBAを採用していただけたらいいのかなと思っております。

 KBAというのは、こちらも今さら説明するまでもないのかなというところはございますけれど、日本国内では、私どもが設定いたしましたIBAに、CIさんがほかの生物種群も加えて設定していただいたものになっておりまして、全国に広く分布しております。

 こちらのKBAと自然公園、もしくは国立公園などを合わせますと、ピンクの部分がKBAに当たりますけれど、必ずしもKBA全部が自然公園に含まれているわけではないということで、こういったところを入れていけるといいのかなと考えております。

 私どもの野鳥保護区は、こちらのKBAに入っているところで、なおかつ国立公園等に入っていないところに設定しておりますので、KBAからのOECMというところの考え方に合致しているのかなと考えておりまして、こういったものをより広く進めていくために、私どもからのご提案というところで、多様な主体の参画を促すために優遇措置があったらいいかなというところと、KBAを国内で、国によって、できれば選定していただいて、それを認定基準として採用していただくのがよいのかなと考えております。

 以上になります。超過、失礼いたしました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、次に、公益財団法人日本生態系協会事務局長の中安様からご説明をお願いいたします。

○日本生態系協会(中安事務局長) 日本生態系協会の中安です。

 まず、簡単な取組紹介ですけれども、私たちの協会は、この左の図にあるような、土台となる自然生態系をしっかり守って、その上に成り立つ持続可能な社会・経済というものを目指して活動していまして、その考え方を、こうした会報誌、また首長向けのニュースレターなどで広く発信をしています。

 ナショナル・トラスト活動も実践していまして、日本ナショナル・トラスト協会と連携して、当協会は4か所、11haの土地を所有して、生き物の生息地を守っています。

 また、学校ビオトープ、園庭ビオトープの普及については、子供たちの身近な場所に自然と触れ合える場所を造っていこうということで、ここにあるコンクールというイベントを目玉としながら、進めているところです。

 それから、自然の中に眠り森を育てる森の墓苑の事業では、この写真にあるような土砂採掘の開発で失われた森を再び豊かな自然の森に戻すお墓の事業を千葉県内で運営しています。開苑から6年たっていますが、この墓石の代わりに在来の木を植えていて、このように森や草原が再生されてきています。

 人材育成については、ビオトープ管理士、また、こども環境管理士といった資格制度を運営して、人材の育成を図っています。

 それから、企業を対象としたものでは、JHEP(ジェイヘップ)認証をやっておりまして、ここにある工場とか社屋、マンションといった企業の所有地での生物多様性への貢献度を定量的に評価・認証をしています。

 以上のような取組を踏まえて、当協会からの要望は、この6点になります。

 まず、1点目ですが、使わなくなった山林や農地等をグリーンインフラとして、行政所有の下で永続的に管理、自然に還す仕組みづくりです。今年4月に、相続土地国庫帰属法が成立しています。相続で、望まずして山林を所有することになったものの、手放したいと考える人が増えている中で、国として、一定の要件を満たすものであれば、それを引き取るという制度です。これについて、既存の行政財産とも普通財産ともあるいは異なる、国としての新たな永続的土地保有の在り方、グリーンインフラとしての保有の検討を開始していただければと思います。

 2点目は、開発事業への代償の義務づけ(ノー・ネット・ロス)です。環境影響評価制度がありますけれど、自然が減ることに基本変わりはありません。例えば、まず、国の開発事業について、ノー・ネット・ロスを目指すとする検討を開始していただければと思います。

 3点目は、防災・減災対策に当たって、自然を活用した解決策(NbS)の適用可能性を「まず最初に」検討する仕組みづくりです。災害の激甚化、頻発化が予想されています。防災・減災をはじめ、様々な機能を有するNbSの適用が重要で、効果の定量的評価の研究を進め、各種公共事業の費用便益分析マニュアルに反映する必要があります。併せて、様々な対策手法が考えられる中で、NbSの適用可能性を、まず最初に検討する仕組みの検討を開始していただきたいと思います。

 それから、4番目、危険な場所には住まないようにし、自然に還すという点です。ハザードマップを参考に、危険な場所に、できるだけ新たに人が住まないようにしたり、少なくなるようにしたりするため、地方自治体が行う災害危険区域の指定、それから、立地適正化計画の活用を支援していく必要があります。また、川沿いの農地等は、行政がしっかり補償して、自然豊かな遊水地とするなど、防災・減災をも目的として自然に還す取組を進めていただければと思います。

 それから、5点目は、ナショナル・トラスト、学校・園庭ビオトープ、JHEP認証など、民間の取組への応援です。例えば、ナショナル・トラストについては税制面での応援、JHEP認証については、生物多様性国家戦略の進捗に関する関連指標の一つに引き続き含めていただくなど、民間が行う生物多様性確保に係る取組を応援していただければと思います。

 最後、6点目になりますが、エコロジカル・ネットワークの形成推進です。生物多様性を回復の軌道に乗せるために、森・里・川・海、流域-広域圏-全国-東アジア等、様々な現場とか空間単位で、エコロジカル・ネットワークの形成を推進していく必要があると思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

○中静委員長 どうもありがとうございました。

 では、次に、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパン代表理事の日比様よりご説明をお願いします。

 ○コンサベーション・インターナショナル・ジャパン(日比代表理事) コンサベーション・インターナショナルの日比でございます。

 私ども、1987年にアメリカで設立されました環境NGOでございます。70か国以上で活動しておりまして、この右の図にありますように、生物多様性に支えられた健全な生態系というものがあって初めて、いわゆるHuman Well-beingですね、こちらが実現できると。それを目指していくということで取り組んでいる団体でございます。

 大きく、自然を活用した気候危機対策、それから規模感のある海洋の保全、それから、それらを実現するプラネット・ポジティブ経済への転換ということに取り組んでおりまして、主に、科学的な知見に基づく戦略と実践、それから、革新的なファイナンスのモデル、資金は重要ですから、そういったファイナンスのモデルを作ると。そして、地域のコミュニティや先住民族、もちろん政府、企業とのパートナーシップでそれらを取り組んでいくということで、これまでに様々な成果が出せてきているのかなと思っております。

 今日の、こちらの特に次期NBSAPへの提言としては、色々あるのですが、特に1点に集中させてお話をさせていただければと思います。

 それは、やはり日本が原材料の多くを海外に依存しているという、そういう、ある意味宿命にある国、経済社会の在り方であると。それらの原材料というのが、やはり多くが自然の恵み、いわゆる生態系サービスでございますし、また、自然資源でなくても、天然資源の採掘時に多くの影響を自然に与えるということから、やはり、この地球全体で、この生物多様性を守っていく必要があると。それは国内だけでなく、海外の生態系から得られる様々な恵み、すなわちそれを生み出す生物多様性を保全するということが、正に日本の国益に資するという視点を明確に持つべきではないかなと考えております。

 この地球規模での生物多様性の保全、それから再生も非常に重要になってきておりますけれども、この辺には日本がやはりこれまでも、例えばGEFですとか、CEPFですね、それからGCFのような国際基金なんかにも、主要なドナーとして参加していただいていますけれども、引き続き、そういったところへのご支援を続けていただくというのが一つ重要かなと。

 それから、気候変動問題に加えて、その他の地球規模の、特に社会課題ですね、貧困であったりとか、先住民族の権利とか、こういった国際社会の課題と生物多様性の問題というのは、非常に密接に関係してございます。さきのグラスゴーでの気候変動のCOPなんかでも、政府や金融機関などが森林破壊ゼロを宣言しました。そういった、例えば森林破壊ゼロをサプライチェーンの中で実現していくということは、森林だけでなくて、もちろん生物多様性にも貢献しますけれども、気候変動、それから社会課題と、非常に重要な課題に同時に貢献できるものでございますので、こういったところを明確に打ち出していくというのは、文字どおり日本のサプライチェーンを持続可能にしていくために非常に重要なポイントになってくるのではないかなと思います。

 そのためには、当然、経済、特にビジネスセクターにも主流化し、一緒にやっていく必要があるわけですけれども、これまで、生物多様性の主流化というのは、どちらかといえば広報とか、あるいは啓発に主流が置かれてきたと思うのですけれども、もっと、仕組み自体を変えていくところに踏み込んでいく必要があるだろうと、例えば、自然資本の評価、自然資本勘定というものを仕組みの中に入れていく、あるいは、エコシステム・アプローチというような考え方を幅広い政策の中にも取り入れていくということが挙げられるかと思います。

 また、海外でのサプライチェーンの持続化、サステナビリティを高めるというのは、それは強いて言えば国内の、特に一次産業の育成強化にもつながることになってくることにもなります。例えば違法だったり、サステナブルでない財は、コスト的には安くなっているでしょうから、逆に、少しコストがかかっても、海外からは確実にサステナブルなものだけを入れるということが、結果的には国内の産業の育成にもつながっていくだろうと。そういった観点からも国際的に高い野心とリーダーシップを発揮していくべきかなと考えております。

 あと、当然、民間企業、金融セクターの協力も必要ですけれども、特に留意すべきなのは、いわゆる移行リスクと呼ばれる、これから海外での生物多様性に係る規制強化が非常に進んでいくことは、もう分かっているわけですけれども、そこに早く対応できるような体制というものを、官民で力を合わせて取り組んでいかなければ、日本の産業や経済にとっての大きなリスクになると考えております。

 私のほうからは以上になります。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、生物多様性わかものネットワークの代表、稲場様と、それから一般社団法人のChange Our Next Decade理事をされています芝崎様から、お二方まとめてご説明をお願いいたします。

○生物多様性わかものネットワーク(稲場代表) 本日は、このような機会をいただき、ありがとうございます。

 私からは、これまでの活動を通じて見えてきた課題に着目しつつ、お話しさせていただきたいと思います。

 私たちが活動を通じて感じた一番の課題は主流化でした。近代日本では、身近に感じられる自然環境が大幅に減少しました。その影響で、若者の自然体験が減少し、社会全体の関心が低下するという負の連鎖が起こっています。この連鎖を食い止めるために、私たちは矢印で示した2点に手を打つ必要があると考えています。

 まず、五感で感じられる身近な自然環境に対するアプローチとして、減っている自然環境を創り、増やすことと、少ない自然の中でも自然を感じることのできる感性を養うことが必要であると考えています。具体的には、生物多様性に配慮した都市公園やビオトープの設置、誰もが最低3回は訪れる博物館での環境教育の活用などが挙げられます。

 次に、社会全体へのアプローチとして、分野を超えた連携や当事者と繋がる活動の促進が挙げられます。より多くの人に、自分事として捉えていただくために、誰もが当事者となり得る分野との連携が効果的であると考えています。また、自然環境と密接に関わる人とつながることで、自分事化しやすくなると考えられます。

 突然ですが、皆様、この五字熟語の意味を一言で説明できますでしょうか。難しいと思いませんか。こちら、今年の流行語です。どれも語呂がよく、意味は単純で分かりやすいものばかりです。一方、生物多様性は五字熟語で専門用語であり、流行語とはほど遠い言葉です。

 そこで、私たちは、主流化を達成するために一般の方に理解してほしいラインを明確にし、賛同することを示す簡単なアクションを一つ作り、意思表示ができる仕組みを作る必要があると考えています。そして、そのアクションを拡散するために、語呂のよいネーミングをすることが有効であると考えています。簡単なアクションに語呂の良さを加えることで、簡単な意味と語呂の良さを持ち合わせる流行語と同じ構成となり、大きな波及効果が期待できます。

 以上のことを踏まえて、次期国家戦略の策定をお願いしたいと思っております。

 以上です。

 芝崎さん、お願いします。

○Change Our Next Decade(芝崎理事) 続いて、一般社団法人Change Our Next Decadeより提言をいたします。

 私たちは、こちらの3点を軸に提言をさせていただきます。

 まず、1点目は、世代間衡平の重視および若者の意思決定への参画確保です。

 「持続可能な発展とは、将来世代がそのニーズを満たす能力を損なうことなく、現代世代のニーズを満たす発展である」と定義されていますが、気候変動や生物多様性の損失により、今のままでは、将来世代が現代世代と同じ権利や暮らしを享受することは望めません。

 この現状を改善するために、次の4点を提言いたします。政策策定時に世代間衡平の視点を必ず組み込むこと。全ての政策/制度/行動が「全ての世代の共通だが差異ある責任」に対応し潜在的な悪影響を回避又は最小化するための目標設定を行うこと。現在の世代のための安全で、清潔で、持続可能な環境に対する権利の尊重・保護等が、将来世代も同等の権利を享受できる戦略とすること。若者を重要なステークホルダーの一つと位置づけ、重要な政策決定の場に公平に参画できる制度や仕組みを整えることです。

 次に、生態系の連結性を意識した保全の実施を求めます。

 ポスト2020枠組みには、より野心的な保護区の拡大目標が検討されていますが、生態系の健全な回復を行っていくためには、保護区の周辺域も含めた広範囲での保全が求められます。また、既に30by30達成に向けたロードマップの作成が進められていることは評価できますが、前回の国家戦略の反省を踏まえ、目標を確実に達成できるようなその後の体制構築も必要となります。

 これらの現状と課題を踏まえ、生態系の連結を担保した保護区の設置、ランドスケープ・アプローチに基づく保全政策の推進により、地域住民の自然利用と生態系保全を両立すること、森林生態系やブルーカーボン生態系をはじめとする生態系保全の促進を通じた気候変動対策の強化、最後に、30by30の確実な達成に向けた実施体制の構築を提言いたします。

 最後に、多様な生態系の中でも、特に海洋生態系保全の重視を求めます。

 海洋生態系の劣化は甚大ですが、陸域と比較して、調査が十分に行われていません。また、2011年に策定された「海洋生物多様性保全戦略」は、制定後、一度も見直しが行われていないなど、様々な課題があります。

 これらの現状と課題を踏まえた上で、海洋生態系の現状を把握し、適切な保全を行っていくための基礎的知見の集積の強化、次期生物多様性国家戦略の策定に合わせた海洋生物多様性保全戦略の見直しと改定、生態系保全を目的とする保護区の設置や、現在より短期間での海洋保護区や管理方法の見直し、最後に、海洋生態系に配慮しない形での、洋上風力発電の設置や深海採鉱を伴う経済活動の禁止を提言いたします。

 次期生物多様性国家戦略が、全ての自然や、全ての自然環境や全ての世代において望ましいもので、自然共生社会の実現に向けたものとなるよう検討をお願いいたします。

 ユースからの提言は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、民間活動団体からのヒアリングは以上になりますが、これについて、発表内容に対する質問とかコメントでも結構ですし、次期国家戦略に組み込むべき提言の、ここがいいとかいうような話でも結構ですので、委員の皆様からご意見、ご質問いただきたいと思います。チャットにその旨書き込んでいただければ、私のほうからご指名いたします。いかがでしょうか。

 吉田さん、お願いします。

○吉田委員 吉田です、ありがとうございます。

 すみません、途中でちょっとネットが落ちてしまって、一部聞けなかったのですが、資料を事前に送っていただいたので、拝見していました。

 どなたにという質問ではないですけど、これまでJBO3とか、生物多様性国家戦略の研究会などの議論を通して、国際的にもそうですけれども、その生物多様性の問題、損失というのは、なかなか歯止めがかからないと、どんどん失われていると、ペースは落ちているかもしれないです、場所によっては落ちているかもしれませんけど、失われる一方だと。それに対して、これまでの対策だけでは十分ではないという評価が、一定の評価が、国際的にも国内的にもあると思うのですけれども、その直接要因というか、その生物保全の取組が、どうしてネイチャー・ポジティブな、つまり生物多様性の損失を止めて、それを回復させるまでに至らないのかということを、どのように分析しておられるのかということを、率直なところを、もしよかったらお聞かせいただければなと。

 つまり、その直接要因に働きかけるだけではもう駄目なのか、それとも、間接要因が大事だというのか、それとも直接要因への働きかけはもっとできるのか、その辺りをどなたかお答えいただけたらありがたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○中静委員長 どうでしょうか。特にここから聞きたいとかいうのはありますか。

○吉田委員 いいえ、例えば生態系協会さんとか、そうでなくても、それぞれ幾つかの団体の方が日本のいろんなところで活動されているので、見ておられる所で感じておられることを教えていただければなと思ったのですけど、いかがでしょうか。

○中静委員長 いかがでしょうか、団体の方。じゃあ、ちょっと考えておいていただいて、かなりたくさん発言を希望されている方がいらっしゃるので、少しまとめて、お答えをいただきたいと思います。吉田さんの質問についても、後で他の発言の機会にしていただくということも可能かと思います。次に藤田さん、コメントをお願いします。

○藤田委員 ありがとうございます。日経ESGの藤田です。

 私は、団体の意見を聞いて、団体に対してというよりも国家戦略への視点として幾つかコメントできたらと思います。

 まず、WWFとかNACS-Jから、温暖化対策と生物多様性の両立、これ、非常に今、カーボンニュートラルとネイチャー・ポジティブという両輪で進めようというのが国際潮流になってきて、非常にいい動きだと思っています。一方で、二つの団体からも指摘があったように、トレード・オフというのが必ずこれから出てくるので、ここの基準づくりみたいな、どういったものがカーボンニュートラルとネイチャー・ポジティブ、こういう基準だったら両立できますよみたいなところを明確に、ある程度決めたり、こういうケースだったらこうだというのを、事例なども入れて決めていただけると、企業なんかも取り組んだりするときにやりやすいのではないかと思っています。

 それから、二つ目は、前回の第1回目のときにも指摘しましたけれども、CIの日比さんからもありましたが、やはり国内で30by30に集中してしまうと、自給率が低い、そもそも持続可能な調達の上流のところがおろそかにならないかというのもあって、ここは必ず、その自給率が低いことを意識して、両方やっていくんだという姿勢を示してほしいし、あと、取り組んでいらっしゃる企業や自治体なども、両方やっているということをしっかり示すような開示をしてもらいたいというような指針を入れてほしいと思っています。

 それから、三つ目は、人権関係もぜひ何か入れてもらえるといいなと思っています。生物多様性には、やっぱり農林水産関係だと海外でも人権問題いろいろありますし、国内でも実習生とかで人権があるので、そういった問題もぜひ包括していただければと思います。

 最後、4点目は、わかものネットなどからご指摘があった、よい単語があるといいねというご指摘、いい話だと思います。ちょっと私の単なる思いつきですけど、例えば「ナチュ活」とかはどうですかね、自然関係の活動でナチュ活とか何か、単なる思いつきですけども、何か、こういうワードをぜひ作っていただければと思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。私も、若い人からの新しい言葉の提案を、是非していただけたらと思っていました。ご意見・コメントということで、これからの議論に反映させていただくということにしたいと思います。

 では広井さん、お願いします。

○広井委員 ありがとうございます。京都大学、広井です。

 主にWWFの方への質問ですが、ご説明いただいた資料の最初のところで、コロナについての言及があったと思います。コロナのパンデミックの背景に生態系の破壊があるということで、やはり、この点は非常に重要で、いわゆる人獣共通感染症、人と動物に共通の感染症ということで、生態系の破壊が人間の健康にまで及んでいるという、これは前回も言いましたけど、生物多様性の重要性をアピールするに当たっては非常に重要な点ではないかと思うのですが。

 質問はOne Healthですね、人間と動物、生物の健康を一体的に捉えるOne Healthのアプローチについて、どういうふうにお考えかという点です。分野の縦割り、医療領域と環境とかの縦割りもあって、なかなかうまく進んでいない面があるかと思うのですけど、個人的には、WWFのような環境系の団体の方に、One Healthとかの積極的なプッシュをお願いできればと思ったりもしているのですが、その点の御見解を伺えればと思います。

 ありがとうございました。

○中静委員長 というような質問ですが、いかがでしょうか。

○WWFジャパン(松田グループ長) WWFの指名があったので、私のほうからお答えいたします。

 One Healthについては、生物多様性グループ、私のグループのほうで積極的に取り組んでおります。今回は、先ほど細かいところについては説明する時間がなかったので取り上げなかったですが、One Healthについては非常に積極的に、国内と国外、海外の二つで、今、取り組みを進めています。国内においては、ペットの取引が非常に問題になっておりますので、そこを中心的にやっておりますし、海外については、もう今、広井先生のほうからおっしゃっていただいたように、人獣共通感染症というのは本当に、もう本当にそこに根源がありますので、やっぱりウェットマーケットだとか、そこら辺で野生生物が普通に売られているところだとか、そういったところを取り締まるとか、そういったところを中心に、今、東南アジアを中心にやっています。

 あと、東南アジア、私が直接的ではなくても、そのアフリカのほうでは、ランドスケープ・アプローチの方面からのOne Healthを見るという、要は野生生物だけに捉われずに、生態系全体からを俯瞰しながら、One Healthを進めるというようなこともやっております。

 以上です。

○広井委員 ありがとうございました。

○中静委員長 では、石井さん、お願いします。

○石井委員 ありがとうございます。本当に皆さん、ありがとうございました。本当に勉強になりました。

 私はずばり、生物多様性わかものネットワークの吉川さんにお聞きしたいのですが、先ほど藤田さんからもご質問というかご意見がありましたように、やはり若者に浸透する、よい言葉があるといいというのは、多分、生物多様性に関わっている方、皆さんが考えているのではないかと思うんですね。地球サミットのときに、気候変動枠組条約と生物多様性条約の双子の条約で始まったはずなのに、随分、気候変動枠組条約のほうに水をあけられているのは、やっぱりキーワードの差ではないかと思います。地球温暖化とか、脱炭素とか、カーボンニュートラルとか、しかも、そちらのほうには二酸化炭素の排出量の削減のような数値目標まであるということで、なかなか生物多様性のほうは、それに足元にも及んでないような気がするんですね。

 主流化という部分も社会への浸透、本当にできていません。生物多様性という言葉がむしろ壁ではないかと思っている、私なんかはそんなふうに思ったりするぐらいなんですけど。藤田さんが、「ナチュ活」とか言っていましたけれど、私としては、ずばり、どういうふうな言葉をお考えか、吉川さんにお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。

○中静委員長 いかがでしょうか。

○生物多様性わかものネットワーク(吉川氏) ご指名ありがとうございます。生物多様性わかものネットワークの吉川より、お答えいたします。

生物多様性という言葉は気候変動という言葉と比較しました限り、気候変動というのは気候が変動するというのを、我々がかなり身近に感じていることでして、一般に浸透しやすい言葉でありますけれども、その一方で、生物多様性というのは漠然とした状態ですし、定義も複雑で、なかなか一言で、その全てを言い表す、気候変動と違って、一言で全てを言い表すことができないことが、かつ我々の身近ではないというところが課題なのではないかなと、伝わらない原因なのではないかなと思っています。

 また、その分野に関連したワードとして生態系サービスという言葉もありますけれども、それも、じゃあ一体生態系が何をしてくれるのかというのは、我々のもう生活の基盤になっていて、当たり前であるからこそ、なかなか気づけない、かつ、専門用語であるために分かりづらいということが挙げられると思います。

 我々の団体内で話してみたのですけれども、「自然の恵み」という言葉が、生態系サービスだったりとか、そういうものの代わりに、元来使われている言葉としてもあって、自然が私たちに何をしているのかという、その自然の恵みという言葉を使うと、生態系だったりとか生物多様性がもたらす、その再生保全がもたらすものがかなり伝わるのではないかなと思っております。

 また、具体的なアクションの名前なのですけれども、藤田さんにご提案いただいて、弊団体もうれしく思っておりますけれども、そのような、まだ、我々としても、まだそこは検討できていないところがありまして、何か具体的で分かりやすい活動を、アクションの名前を提示できたら、皆さんと考えていけたらいいなと思っております。

 以上となります。大丈夫でしょうか。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、愛甲さん、お願いいたします。

○愛甲委員 北海道大学の愛甲です。私のはコメントとして受け取っていただければと思いますが、ほとんどの皆さんが気候変動と生物多様性の関係について述べられていたのが、やはり印象に残っていまして、そこで、やはりトレードオフで、その再生エネルギーの関係の話を、自然保護協会、それから野鳥の会の方がご指摘されていました。野鳥の会の方はOECMのそのインセンティブについて述べられていたところもあって、そのOECMの基準、認証の基準などが現在議論されているとは思うのですけど、やはり、そういったところに、今日ご指摘いただいたようなインセンティブの話、それから再生エネルギーとの関係ということも、OECMでも十分起こり得る話ですので、そういったことを反映させていく必要があるのではないかという認識をしました。

 それから、わかものネットワークさんのご提言が、非常に私にとっても興味深く聞かせていただきました。特に、私が関心を持ちましたのが、お話の中にあった自然体験の減少ですね。それについて、具体的にそういう場を、五感で感じられる自然環境の場をつくることが大事だという話もありました。

 ただ、一方で場をつくるだけでいいのか、それをいかに、その体験につなげていってもらって、関心の低下を防ぐのかといったようなつながりを、この絵を出していただきましたけど、といったようなことが大事だなということを再認識しました。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございます。

では、コメントとして今後の議論に生かさせていただきたいと思います。

 では、亀山さん、お願いします。

○亀山委員 亀山でございます。

 本日は、各団体から貴重なお話をいただきまして、誠にありがとうございます。私のコメントも、今までの委員の方がおっしゃったこととかなり重なることがありますので、短く終わらせたいと思います。

 やはり、生物多様性と気候変動との関連性がとても強いことが再認識されたということでございます。再エネとのトレードオフ、もう既に何人かの先生がおっしゃっていました。要は、やっぱり生物多様性のこの国家戦略の中に、今日は、この場は生物多様性の話をする場なのですけれども、ここに盛り込むだけではなくて、やはり環境省の中で、ぜひ温暖化関係の方と密に組んでいただいて、温暖化対策を担当されている方にも、十分、その再生可能エネルギーを今後普及させていくときに、十分生物多様性にも配慮するようなルール作りをしてもらえるような連携を作っていただくことが重要であるということを再確認いたしました。

 同様なことは人工林のお話のところでも言えるなというふうに思っていまして、今、国内にある人工林を切って、それを自然林に戻していくというような活動、ご紹介がありました。それも、温暖化対策でやっぱり似たようなことを話していまして、やはり、国産材をうまく活用することによって脱炭素を進めていくという取組がなされております。その辺りも、ぜひ温暖化対策と生物多様性保全策を連動させるような形で進めていただけるとありがたいというふうに思います。環境省様への要望となります。

 ありがとうございます。

○中静委員長 ありがとうございました。コメントとしてお聞きします。

 勢一さん、お願いします。

○勢一委員 ありがとうございます。私からも重複しますけれども、簡単に3点、コメントをさせてください。

 貴重なご提言をいただきまして、ありがとうございます。大変勉強になりました。

 まず、1点目ですけれども、脱炭素と生物多様性の関係です。やはり、トレードオフにしてはいけないと思います。本来は相乗効果があるはずの施策だと思いますので、これをしっかり担保していくことが課題であることを再認識いたしました。組織体制の連携は、前回も申し上げましたし、大変重要だと思うのですけれども、それに加えて、法制度間の連携を、脱炭素と生物多様性としっかりとっていただくことが重要だと思います。

 例えば、現在、議論が進んできました改正温対法の地方公共団体の実行計画・区域施策編ですけれども、これを活用して、再エネ促進区域の抽出にゾーニング、いわゆるSEAのような要素を組み込むという法改正が行われております。こういう場でしっかり両者の相乗効果を狙えるような仕組みを、制度的に担保していただくことが大事だと思います。その際には、法令に根拠のない保護区域の配慮が生物多様性の観点からは課題になろうかと思いますので、ぜひ、今日ご説明いただいた団体の皆様、地方自治体でいろいろご協力、ご助言をいただけましたらと思います。

 次に、2点目ですけれども、世代間公平の観点のご指摘、非常に重要だと思いました。これは、脱炭素と共通でございまして、やはり世代間公平を考えて、それぞれ目標実現まで時間がかなりかかりますので、それを踏まえて、しっかり、今、何をすべきかを考えることは大事だろうと思いました。

 最後、3点目ですけれども、海洋生物の多様性の保全、これも非常に重要だと思っています。特に、データが不足している状況の中で、今後どうやって考えていくか。洋上風力の導入促進という要請があります。海域再エネ利用法には環境アセスメントの仕組みが組み込まれておりませんので、こういう点を踏まえますと、既存の制度において、生物多様性の主流化を組み込んでいく、そういう方向の改善が必要であろうと考えました。

 以上です。よろしくお願いします。

○中静委員長 ありがとうございました。今後の議論に生かさせていただきます。

 では、深町さん、お願いします。

○深町委員 ありがとうございます。私のほうは、自然保護協会や関連するところにお聞きしたいのですけれども、地域に入って、赤谷プロジェクトのような、実践的に生物多様性に関わるような活動を続けていくというのはとても大事なことだとは思っております。地域のいろんな枠組みを作るときに、新しく自然の観点から協議会だとかという形を作って、そこに地域の方々が参加するというのはよくあると思うのですが、既に地域にある自治会だとか、いろんな地域に根差したような仕組みの中に、生物多様性だとかいろんなことをうまく入れながらやっていく事例について、何かいい実践例があったら教えていただきたいです。また、いろいろ活動されるときに、自然の面だけではなくて、歴史や文化の観点をどういうふうに組み込みながら活動を展開されているのか具体的なやり方などについても教えていただければと思います。

○中静委員長 自然保護協会さんは何かありますか。

○日本自然保護協会(若松主任) 分かりました。やっぱり、深町先生のおっしゃるとおりに、もう既に、ある程度何か、もう組織がきちっとしているところで、生物多様性の考え方を浸透させていくというのは、かなり難しいというのは実際のところなんですけれども、その中で一番、我々が携わっていて、これが浸透しやすいなと思ったのはユネスコエコパークですね。これはみなかみもそうですけども、綾であるとか、そういったところは、もともとそういったような活動がある中で登録された場所なんですけれども、そうでないユネスコエコパークの場所も、そういったような生物多様性を守るということは、自分たちの生活に直結することですよということが、国際的にきちんと評価をされていくというところで、徐々に浸透していくというのを各地で見ている状態です。全てまだ浸透してないんですけども、そういった形で、国際的な認証というのが、生物多様性の中で浸透していく一つのきっかけにはなっているかなというふうには考えていますけれども、このような感じでよろしいですかね。

○中静委員長 よろしいでしょうか。

 では、白山さん、お願いします。

○白山委員 白山です。ご指名ありがとうございます。

 私、バックグラウンドが海洋生物学ですので、ちょっとその立場から二つほど、コメントとご質問をさせていただきたいと思います。

 本日、非常に貴重なご意見を、いろいろな団体から伺いましてありがとうございました。大変参考になりました。

 一つは、野鳥の会の方が、そのOECMと税制の関係というようなお話をされていたのですが、これは、どう考えても陸上のKBAに関わるお話かと思います。一方、野鳥の会の方、あるいは国際的にも、海鳥の保全のために採餌場になる場所というのが非常に重要視されていて、特に海洋のEBSAを設定するときに重要な情報になっているんですけれども、野鳥の会のほうで、そちらに関するOECMに対して、何かお考えがあればお聞かせいただけるとありがたいなと思いました。

 それから、二つ目は、Change Our Next Decadeの方が、非常に海洋のことに関して積極的にご発言いただきまして、誠にありがとうございました。時間も限られているということもあって、また、この場がご意見を述べる場だったということもありまして、要望に終始してしまっているのですが、若者の皆さん、やっぱり行動力があって、いろんな活動をされていると思うのですけれども、今日の海洋の生態系に関わることでは、Change Our Next Decadeの方々、どんな活動をしようと考えていらっしゃるのでしょうか。そういう活動をエンドースするようなものが、国家戦略の中で書き込めるといいなと思いますので、少しお考えを聞かせていただけるとありがたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、野鳥の会さん、今のコメントに対するお答えはありますか。

○日本野鳥の会(田尻室長) 日本野鳥の会の田尻です。ご質問ありがとうございます。

 海洋につきましては、今、私どものほうでは、何か保護区の設定とか、そういったものはできていないのはいないのですけれど、マリーンIBAですとか、それでは海鳥の行動圏を網羅しております。また、KBAに関しても、海域も含まれておりますので、その辺をまた採用していただくと、何か新たな取組ができるのかなというのがございます。

 もう一つ、OECMという視点に立つと、漁業権を何かうまく使って、漁業者の皆さんと一緒に取り組むという方法が、もしかしたらあるのではないかなと、まだ、ちょっと詳しくは考えていないんですけれども、そういったところを今、考えているところです。

 よろしいでしょうか。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、Change Our Next Decadeさん、お願いします。

○Change Our Next Decade(芝崎理事) ご質問ありがとうございます。CONDの芝崎と申します。

 私たちの団体のほうでは、海洋に関するプロジェクトを主に三つほど行っていまして、まず、一つ目が、今のような政策提言ですね。ただ単に団体内のメンバーから意見を集めるだけではなくて、イベントなどを開催して、ほかの全国の所属とか、団体に所属してない高校生だったりとか大学生なんかを集めて、そういった活発に意見交換などをしながら、その意見を基に、実際に意見書を提出したりというふうなことをしています。

 二つ目が、昨年、モーリシャスのユースと共同のプロジェクトをずっと実施しておりまして、昨年度のモーリシャス沖での石油のタンカーの事故を受けて、日本とモーリシャスのユースが、それぞれ何かできないかということで、そういった事故だったりとかを風化させないだとか、あとは、また同じようなことが起こったときに何ができるのかというところで、オンラインでのイベントを開催したりだとか、シンポジウムの開催というところを普及啓発で行っております。

 3点目が地域での活動でして、昨年度から全国のユースが、それぞれの地域で課題なんかを決めて、生物多様性ユースアンバサダープログラムというのを実施してまいりました。その中で、例えば、奄美大島で活動してきたチームは、奄美大島の人たちが、昔から、どういった伝統、知識だったりとか、どういった海の使い方をしているのかだったりとか、自然とどういう文化のつながりがあるのかというところをテーマに、聞き取りなどを行いまして、実際に、こういうところを伝統文化として、こういうふうな知識が根づいていますとかというのを発信したりというような活動を行っております。

 以上となります。

○中静委員長 ありがとうございました。

○白山委員 ありがとうございました。

○中静委員長 発言を希望されている方は以上なのですけど、最初の吉田さんの質問に対して、どなたか活動団体の方でお答えいただける方はいませんか。よろしいでしょうか。

○中静委員長 もし、後ほどでも、もしコメントがあれば、団体のほうからでもいただくということにさせていただいてよいでしょうか。

○吉田委員 ありがとうございます。後日でも結構ですので、お願いします。

○中静委員長 では、時間も限られていますので、引き続いて、産業関連団体からのヒアリングに移らせていただきたいと思います。

 まず、農林水産業分野の三つの団体からヒアリングをさせていただきます。説明時間は各10分で、実施状況などについて、順に説明いただくのですが、3団体に発表いただきまして、その後、質疑という形にさせていただきます。少し時間も遅れぎみですので、説明におかれましては、時間を厳守していただくようにお願いいたします。

 では、まず、株式会社金沢大地代表取締役の井村様、お願いいたします。

○金沢大地(井村代表取締役) 皆さん、こんにちは。

農林水産業の中の農業のほうの代表ということになるんだと思いますけれども、簡単に、私がやってきた生業のことをご説明しようと思います。

 まず、私ですけども、農林水産省の農業・農村審議会の地球環境小委員会というところの委員を10年間させていただきまして、今現在、農林水産省の生物多様性戦略検討会などに参加しています。農業の中では、少し環境面を意識した農家であります。

 そして、私は、1997年に脱サラをしまして、就農については五代目の農家で、180haの面積で有機農業をしながら、その農産物を原料にして加工品、6次産業化ということになると思うんですけど、進めて、今、味噌だとか、醤油だとか、お豆腐だとか、そういったオーガニックのものを全国、場合によっては全世界に輸出したりしています。

 私が農業をしているところは河北潟干拓地と言いまして、石川県金沢市にある人工的な農地でして、前は、うちの父親の代までは半農半漁で、川魚なんかを採りながらお米を作っていました。大変野鳥の多いところで、大豆の収穫なんかをしているとミミズクだとかが来たりとか、あとは、水田にはセイタカシギだとか野鳥がたくさん、本当に重要な湿地帯だと思っていまして、水鳥の数では、ラムサール条約の基準も満たしているというレポートもあります。

 これが私が生まれる5年ぐらい前ですから、60年ぐらい前の私たちの地域の風景です。これを見せても、皆さん、信じてもらえないですね。60年前には、こういう豊かな湿地帯がありまして、ここで漁業をやっていましたが国の開発によって人工的な農地ができたということです。私は、小さい頃、こういう環境で育ちました。今、57歳であります。汽水湖で、海ともつながっていますので、大変豊かな生物多様性がありまして、私は、子供の頃、こういう魚とふれあいながら育ってきました。ハッタミミズという本当に珍しい、長いミミズなんかもいまして、最近は激減しております。

 私たちの経営理念は、24年前に「1000年産業を目指して」という理念を立てました。これは、農業こそが環境に優しく、環境と親和性のある生産活動でなければいけないということで、24年前に立てた私の理念です。私たちの理念は、一つは「持続可能性」(Sustainability)ということと「生物文化多様性」(Biocultural Diversity)ですね、この二つを理念として、有機農業とその加工などをやっております。

 同時にミッションがありまして、耕作放棄地を耕すだとか、食料自給率を上げるだとか、雇用を創出するだとか、いろんな意識を持ってやっております。

 これは、24年前に私が描いた農業分野でのビジョンで、ここからはみ出している輸出への取り組みもありますし、再生可能エネルギーなんかも取り組んでいます。都市との関わりとして、修学旅行生の民泊の受け入れだとか、いろんなことをやっております。

 ということで、24年間やりまして、このような金沢大地のブランドで商品を展開して、有機農業を何とか続けて行けるように頑張っています。

 これは、民間稲作研究所の稲葉先生という方、本年お亡くなりになったのですけれども、一緒にずっと有機農業の活動をやってきました。その先生が作ってくれた日本の農薬の出荷額のグラフです。私が生まれたのが、グラフの一番左側の1964年ですから、この辺りから農薬が急速に普及していきまして、それを子ども目線で、田畑、遊び場で環境が激変していくところを見て育ちました。この経験が、私が今現在、有機農業をしているルーツといいますか、根源であります。

 石川県は、世界農業遺産に、佐渡と一緒に認定されまして、トキの放鳥であるとかが評価されてました。この二つのシンボリックな鳥が絶滅したのが、私の小学校の高学年の頃だと思います。

 こんな中で、私が24年間有機農業をしていまして、2年ぐらい前から、私たちの農場にコウノトリがやってくるようになりました。これは私が植えているインディカ米、インディカ米を植えている有機ほ場です。大変たくさんの餌がありますので、餌を食べに飛んでくるコウノトリです。これは、豊岡のほうから飛んできたつがいです。年に何回も観察することができる、本当に私が24年間有機農業をした結果、このようなことが起こっています。

 これもコウノトリが歩いているところですね。

 一方、能登のほうに行きますと、私が2006年に能登の耕作放棄地に行ったときには、イノシシはいなかったんですけれども、今、これは実際にほ場から帰り道にいたイノシシです。こんな状態です。ある年は、大豆が全て食べられまして、1,000万円ぐらい被害が出ました。18頭ぐらいの群れだった。これは夏ですね。これはお母さんが子どもを、うり坊ですね。こういったものが能登に行くと観察されまして、すごいスピードで自然環境が変化してきているということが現場のレポートとしてお伝えできると思います。

 私たちのところは湿地帯で、毎年コハクチョウが渡ってきます。これも1週間ぐらい前の映像なんですけども、何百羽ぐらいかの群れだと思います。こういうコハクチョウがまだ来る、そういう自然環境は残っています。ただ、何年後もこれが来るとは限らない、そのように言います。

 コウノトリの巣塔も立ちまして、ひなが生まれることがあれば、すごくうれしいななんて思ってやっております。

 金沢大地は、石川県金沢市の干拓地、今見ていただいた干拓地から能登のほうに、2006年に進出しまして、耕作放棄地を耕して、おそばを植えたりとか、これが耕作放棄地です。あとは大豆を植えたりですね、これが有機大豆ですね。こういったことをやっています。能登のプロジェクトとして、能登の産品を商品化して、こういったこともやっております。

 あと、能登の赤土で作ったジャガイモをブランド化したりとかして、何をやっているかといいますと、地域、里山里海の資本・資源を再発見して、評価、活用して、そういった要請に資するような生業、こういったものを好循環させていく。それと、食品はメディアですので、この食品を通じて、都市との関係人口をしっかり増やしていきながら、都市の人たちが農村の環境に興味を持ってもらう、こういったことが大事だと思っています。

 太陽光発電などをして私募債という形で消費者に活用してもらって、その配当を農産物で返す、こういったこともやっています。そういうことによって、都市の人たちが農村に興味を持つ。興味を持って、都市から農村に遊びに来てもらう、関係性を持ってもらう。これが、今、私たち農村が一番求めていることであります。

 これは能登の山是清というところの農舎の上に立ったFITを利用したものです。

 先ほど農薬の話をしましたけれども、もう一つは化学肥料の問題がありまして、この化学肥料も使わないために、自分たちで循環型の農業といったことで、こういうコンポストを作って、畑にまく、こういう活動をしております。

 農林水産省では、みどりの食料システム戦略、皆さまご存じだと思いますけど、みどりの食料システム戦略というのを作りまして、来年、法制化を目指していると聞いております。その中で、大きく三つのKPIを作っていまして、このKPIの一つが、2050年までに有機農業の面積を25%までに持っていく。現在、0.5%しかない有機農業の面積を25%にするという野心的な目標を立てました。有機農業だけではなくて、一般の農業も化学合成農薬を50%減らす。あと、化学肥料を30%減らす、こういうKPIを作りました。これをやるために、環境省、関係省庁、農林水産省との連携をして、ぜひ、このKPIが実現できるようなご協力が頂ければと思っております。

 ご清聴ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、次に、日生町漁業協同組合の専務理事をされております天倉様より、ご説明をお願いします。

○日生漁協(天倉専務理事) 天倉です。初めまして、よろしくお願いします。

日生町漁協の天倉と申します。

 まずは、当漁協の構成であるとか、アマモの再生活動について発表したいと思います。

 まず、備前市日生町なのですけれども、岡山県の南東部に位置しておりまして、ちょうど兵庫県との県境に位置しております。そして、本土と13の日生諸島からなりまして、昔から「日生千軒漁師町」というふうに漁業が盛んな地域です。

 次、お願いします。当漁協の構成なのですけれども、組合員数が、正組合員71名、準組合員52名ということで、うちの場合は1軒が1組合員ということなので、まさに利用世帯数ということになっております。主要な漁業としまして、漁船漁業では、壷網、それから小型底曳網、流し網、養殖漁業ではかき養殖。そして、五味の市ということで、底曳の漁業者が獲った魚を直接一般の方に販売するということで、究極の流通システムと呼ばれまして、新鮮で安くにお客さんに提供できるということで、県内はもとより、京阪神より年間約40万人の方が利用されておるということです。

 次、お願いします。当漁協の水揚げの構成なのですけれども、何といってもかき養殖が盛んということで、1年間で、むき身換算で約1,400万t、これは令和元年度の水揚げ状況なのですけども、岡山県でも有数のかきの生産地ということです。

 次、お願いします。まず、アマモなんですけども、和名をリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシといいまして、竜宮の乙姫さんが髪を結った後の切り外しが、海岸に漂着したものを見て、そういった名前になっております。北半球の温帯から亜寒帯にかけて、水深1mから数mの沿岸の砂泥地に自生する海草の一種です。

 次、お願いします。アマモ場の機能なのですけども、魚介類の産卵場所であるとか、小魚の餌場、そして水質の浄化、それから栄養分の再配分といったような。

 次、お願いします。海にとっては、「海のゆりかご」と言われまして、海の環境にとっても重要な役割を果たす植物ということです。

 次、お願いします。アマモのライフサイクルですけれども、栄養株といいまして、地下茎でどんどん増えていく、こういったものが普通ですけれども、海水温の上昇に伴いまして、この辺りの海域では、海水温が夏場は30℃を超えるような状況になりますので、どうしても衰退して、栄養株の一部に花枝をつけて、種をつける。種で増えていく1年草、これがこの辺りのアマモ場の主流となっております。

 次、お願いします。アマモの再生活動ですけども、5月下旬から6月に花枝の採取を行いまして、保管いかだ、かきいかだを利用しました保管いかだに吊るしておきます。そして、9月から10月に、それを引き上げまして、種を選別して、増やしたい場所、増殖したい場所に種をまいています。

 次、お願いします。これは選別したアマモの種です。うちの海域ででは、アマモの種が非常に効率的にできるということで、たくさんの種が採れます。

 次、お願いします。日生地先におけるアマモ場の面積なのですけど、1945年頃は590haあったものが、1985年にはわずか12haにまで減少したということで、これは高度経済成長期に全国的に垂直護岸が形成され、アマモが生息する浅場がなくなったということと、生活排水が、瀬戸内海の場合、垂れ流し状態であったということで、沿岸域の環境が悪化して、アマモ場が減少したと言われています。

 次、お願いします。アマモの再生活動の取組なのですけども、一番衰退期、1985年に、沿岸域を中心に営みます小型定置網(壷網)の漁業者が、魚が獲れなくなったと、何が原因かと気がついたところ、一時期は航行の妨げになり、邪魔者扱いされていたアマモが、姿を消していたということで、まず、アマモ場を増やそうと、魚を増やすためにアマモ場が必要だというような思いで、当時の壷網の代表者で元組合長の本田和士さんが壷網漁業者を束ねて、それから若手の青年部もひっくるめて、アマモの再生活動が始まったということです。アマモというのは食べるものでも何でもない、そういったものに、お金にならないようなものに、こういったものを活動にする、どういうことかというような非難も浴びながらも、毎年、コツコツと活動を続けたということです。

 次、お願いします。これは壷網なのですけが、ちょっと見にくいかも分かりませんけども、赤い丸で囲んだのが、上空から見た壷網の形なのですが、うっすらと周りにはアマモが繁茂しているのが分かると思います。

 次、お願いします。最初の1歩ということで、幸いなことに、一番沖合にある大多府島に、まだアマモの、天然のアマモが自生していたということもありまして、そこのアマモの種を採って、3か所にまきました。

 次、お願いします。これは当時の活動風景ですね。

 次、お願いします。意気込んで活動を始めたのですが、なかなか成果が表れなかった。種をまいたら、少しは生えるのですが、思ったような成果にならなかったということで、原因を調査したところ、海底に問題があるということで、いろいろ底質改善を試みまして、かき殻が有効であったということで、かき殻を敷設しまして、アマモの種をまいた。そうすることによって、順調にアマモが拡がり始めたということです。

 次、お願いします。見ていただいて分かりますように、底質の調査をしたところ、完全にもうヘドロ化している、波がすると、海はもうどろどろの海になっていたというような状況です。

 次、お願いします。そして、かき殻を使って、これ、かき殻なのですが、うちの、当漁協はかきの産地でもあるということで、かき殻はたくさんあります。

 次、お願いします。見ていただいたら分かるように、かき殻をまいたところ、ポールがあるところが試験区なのですが、ここだけがくっきりとアマモが繁茂したということです。

 次、お願いします。壷網の、中心的に活動を行っていました壷網の漁業者が、高齢化によりまして減少することによりまして、活動を維持するという目的で、2009年より、若手の漁業者とそれから後継者で活動組織を結成しました。日生藻場造成推進協議会を結成しまして、水産庁の様々な補助メニューを活用しながら活動しております。いろんな方に、応援団ということで協力していただいております。

 次、お願いします。これが活動発足当初の藻場造成推進協議会のメンバーです。そして、アマモクラブということで紹介しております。

 次、お願いします。2012年より、各々の役割に応じて連携しまして、アマモ場造成活動を行いまして、瀬戸内海の環境保全を進めるということで、消費者団体のおかやまコープさん、NPO法人里海づくり研究会議、それから岡山県、当漁協で4者協定を締結しまして、DVD「海のゆりかごアマモの恵み」を作成しまして、県内の小学校に配布させていただきました。また、コープの組合員さんのほうは活動に参加していただいております。

 次、お願いします。これがコープの皆さんの活動の状況です。

 次、お願いします。2013年より、課題解決への取り組みということで、順調にアマモが拡がり始めまして、昔のように再生したアマモの花枝がちぎれて、最繁茂期には切れて流れて、流れ藻になっておると、航行の妨げにもなっている上に、自分たちが増やしたい場所じゃない港湾区域にアマモが拡がっておるということで、一般の住民の皆さんに迷惑をかけておるというような話もお聞きしまして、地元の中学校さんに声かけをしまして、流れ藻を集めてアマモを増やそうという取り組みを行い始めました。

 次、お願いします。これは、中学校の活動風景です。

 次、お願いします。また、中学校は体験だけではなくて、聞き書きという手法を使いまして、漁業者であるとか研究者、そういった方に、いろんなアマモの話であるとか、海の漁業の話であるとかを聞きながら、取りまとめて学習にしております。

 次、お願いします。そういった活動が増えまして、30年間で何と1億200万粒のアマモの種をまいたということになっております。

 次、お願いします。そういうことで、2020年では、250ha以上まで回復したということです。

 次、お願いします。そんな活動の中、2016年、全国アマモサミット2016in備前を開催しました。3日間で2000人の皆さんに参加していただいております。

 次、お願いします。そのアマモサミットを契機に、里海づくりをブランド化しよう、あるいは、次の世代につないでいこうということで協議会を立ち上げました。

 次、お願いします。これが協議会の写真です。専門部会を作りまして、いろいろ話をしていくということです。

 次、お願いします。そして、その中のテーマの一つとしまして、次の世代につなげていくということで、中学校だけじゃなくて、地元の小学生も巻き込んで、アマモの再生活動、体験学習をしております。

 次、お願いします。併せまして高校生、小・中・高ということで、地元の学芸館高校の高校生にも参加していただいて、日生の海を知ってもらうと同時に、環境の大切さも体験していただいております。

 次、お願いします。これがかきの種つけを行っておりますけれども、これも学芸館の皆さんです。

 次、お願いします。そういった活動の中、日本財団さんのお力添えもありまして、本年度、渚の交番、海洋教育の拠点である「ひなせうみラボ」が設立されました。そんな中で、一般の方であるとか、ほかの県外の学生さんなんかも海洋教育、海の体験をしてもらうような取組を、今、企画して進めております。

 次、お願いします。最後になりますけれども、目指せ持続可能な里海づくりということで、30年以上の年月をかけ、地道にアマモ場再生活動を継続し、何とか成果が見えるようになりました。これまでご指導、ご協力いただいた大勢の日生応援団の皆さんに深く感謝いたします。

 また、里海の理念からも人が自然に少しずつ恩返しをしていけば、循環可能な漁業が実現できそうな気がします。活動を持続するためにも、海の守人である漁業者が中心となり、次世代へつなげていくことが大切だと思います。

 ご清聴ありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、次に橋本林業の橋本様よりご説明をお願いいたします。

○橋本林業(橋本氏) 徳島県那賀郡那賀町、東西に流れる那賀川の中流で山づくりをしております橋本でございます。

 それでは、継続する森林業について、お話を進めてまいりたいと思います。

 山づくりの全施業を家族で行っております。いわゆる自伐でございます。自伐の「自」は自由、自由自在、自立、こういう取組や考え方が、豊かな森づくりにつながっているのではないかなと思っております。

 持ち山は110haでして、人工林は大体8割、天然林が2割。その持ち山に作業道の総延長30kmを入れております。昭和58年より、大阪府指導林家の大橋慶三郎氏に、壊れにくい道づくりを師事しまして、行っております。また、たくさんの賞を頂きまして、本当に励みになっておりますとともに、皆様に知恵をお返しできればとそう願っております。

 経営理念ですが、妨げとなるものを取り除く、調和を図る、変わらぬものを求める、仕組みを変える、自然に学び自然の力を借りるということでございます。

 経営方針といたしましては、針広混交林の山づくり、それから、長伐期の優良大径材、そして、持続可能な林業経営、これには高密路網と、身の丈に合った機械化、それと合理化でございます。そして、人と人とのつながりを大切に、理解を得られる林業経営を考えております。

 これが全山でございまして、平成9年に広域林道が開通いたしまして、飛び地も全部つながったような状態でございます。

 それで、私たちの目指す山は美しい山。では、どういうものかと申しますと、経済性と環境性が高い、生命力が強い、いやしを感じる、心がいやされ、ほっとする場所、そんな場所を作りたいと思っております。それには、傲慢、力まかせは自然を壊しかねない。感謝と謙虚の念を忘れないという、そういうふうに心に念じております。

 それでは、その山づくりをするには、美しい山をつくるにはどういう山づくりをすればいいかということですけれども、やはり環境ですね。そして、経営計画をたてながら、間伐率は低く、1.5割~2割ということでございます。そういうことをするには、どういうふうなことかと観察力を身につける、そして、変化に気づき、変化を観察する。そして、自然の力をかりるということです。そういうことを、何十年か積み重ねておりますと、林内で起きていることは人・社会にも通じるのではないかなということにうっすらと気づきました。

 その林内にはどういうものがあるかといいますと、鳥とか獣とか、草とか木とか、キノコなどがございまして、分かる範囲で地図に記入をいたしております。そして、徳島大学の松尾氏による調査によりますと、252種の生物が生育しているという状況です。これは、徳島環境レッドリストにも10種ほど載せられているということです。

 これは皆伐を止めて、道を入れて択伐した山でございます。

 次々と映像を送っていきますが、高樹齢の林、それから混交林、複層林、それから、20年をかけて花を咲かせた山でございます。これは多種多様な草木が生えているというところでございます。この軽トラックの上には、以前には松の木が、この木の上にございました。松くい虫も発生しておりましたので、その木を切りまして、後に残った林がこれでございますが、その当時の松の値段は、スギ・ヒノキよりもよかったということでございます。

 これは混交林ですね。これもそうです。次もそうですね。これは高樹齢の林であって、自分的には少し幽玄な世界かなとか思っております。

 その林の中に降った雨はどういうことかと申しますと、20%は遮断蒸発と、そして、残った雨は地表におりてくるのですけれども、流れにくい、そういう草木によって遅延が起こっているということでございます。

 これは、左側は、そういう下草のない植林地、そして真ん中は私ども、そして右は、左のほう、林地を、植生を、下草が生えることによって右になるという、これは徳島大学の先生たちの研究でございます。

 その林の中に、じゃあ少人数でするにはどういうふうにしたらいいかということですが、これが、壊れにくい作業道をつくると。そして、これは小規模林業にとって最も重要なところでございまして、どこに道を入れるかが重要で、そして、いろんなことの情報を集めまして、踏査をいたしまして、観察をし、考えることを身につけるということでございます。こういうことは教育にもつながるのではないかなと思いますが、そして、環境に配慮した道作り、木を傷つけないとか、カニ、ミミズは殺さないで移してやるとか、移植するとか、石を落とさないとか、そういうことでございます。

 これは全山に、その作業道を入れた図ですけれども、これが大体30km入っております。右の図は、枝葉、枝が伸びておりまして、直接、先ほどにもご説明させていただきましたように、遮断蒸発等がありまして、作業道には直接雨が落ちなくて、壊れにくいかなと思っております。

 次は高密路網に入った山なのですが、航空写真には写らないと。

 次もそうですね。

 これは本当に2m30前後の幅員でございまして、あまり切り過ぎると大変なことが起こりますので、木と木の間を縫っていくような状態でございます。

 その樹冠を見ますと、適当に空間が空いていると、そういう状態です。

 これも、この上に何線か道が入っているのですが、切り取り高が低いので、あまり写真には写らないと。

 そして、次が、これはつくったばっかりの道なのですが、あまり違和感がない、山と調和のとれた道じゃないかなと思っております。

 そして、これは、のり面のところに草が生えていませんが、少したつと、次の写真のように草木が生えてまいります。これがそうですね。

 次は、これは車が通れるだけの道幅でよいのではないかと、あまり広いのは要りませんと。

 これは作業風景でございます。少人数でやれるということですね。

 これは搬出をしているところです。

 これは4回ほど間伐を繰り返した林でして、下にはいろんな広葉樹が生えているという状況でございます。

 では、そういう橋本林業の林地はどうなのかということと、まとめとして、材の蓄積量が大きく、経済性が高いと。生物多様性も高いと。壊れず、壊れにくく、災害にも強いであろうと。降雨の流出を遅らせて洪水調節に役立っているのではないかと。そして、平成8年、9年ぐらいから視察の方もたくさん見えております。そして、そのような山を散策したり、お昼寝をしたり、読書もすることができまして、ストレスも軽減されるのではないかと、そういうのも、やはり健康にもよろしいのではないかと思っております。

 これを支えるのは、やはり1.5割~2割の低い間伐率ですね。それと、混交林を基本とした森づくり、それと壊れにくい作業道ではないかと思っております。

 終わりに、長伐期的な自然で山づくりを行うことが重要であって、自らで計画を立て、実行する熱意ある人を育てていくと、UターンとかIターンの人を受け入れる場もあればいいかなと思っております。山を大切に、持続可能にできる仕組みづくりもお願いできたらなと思います。そして、小規模林業の森づくりを支援する施策もお願いできればと思っております。

 本当に今日は、こういう機会を設けていただきましたことに心より感謝申し上げます。走り、端切りではございますが、発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、今のお三方のお話を踏まえて、委員の方からコメント、ご意見、いただければと思いますが、いかがでしょうか。

 では、吉田さん、お願いします。

○吉田委員 事務局というか環境省の皆さんに質問が一つと、今、お話しいただいた方々に質問が一つなんですけど、産業関連の活動団体という形で、農林水産業に関わるお三方にお話しいただきました、これまでの議論の中でも出てきた、JBO3でも、その生物多様性国家戦略の研究会でもそうなのですが、やっぱり間接要因とか、あるいは、その社会転換を考えたときに、生産だけじゃなくて消費のことがすごく大事だという話があったと思うのですね。今日、時間のない中で、もう仕方がないのかもしれませんけど、消費者側とか、あるいは流通に関わるような方たちがどなたもおられないというのは、やっぱり、ちょっとバランスに欠けるかなと思うのですが、そういう方たちへのヒアリングを、ぜひ今後、こういう場所じゃなくても構わないと思うんですけど、していただける可能性があるかどうかというのを、環境省の皆さんにお聞きしたいというのが一つの質問です。

 もう一つの質問が、今、お話しいただいたお三方への質問なのですが、お三方ともそうだと思うのですが、リーダー的なというか、本当にモデルになるようなケースだと思います。でも、一方で農林水産業、いろいろ広く見てみると、皆さんがやられているようなやり方ではなかなか難しくてできない。生物多様性の保全が、もちろん大事だと分かっているんだけど、なかなかそこに手が伸ばせないという方たちもたくさんおられると思います。

 何がその違いなのかとか、すごく成功したお話を三つ聞かせてもらったと思うのですが、何がその成功の一番大きな鍵だったのかというところを、ぜひ一言ずつお伺いできれば、大変ありがたいなと思います。つまり、その生物多様性の保全もしながら、経済的な産業としてというか、農林水産業として成り立っている、成り立たせているというところですね。よろしくお願いします。

○中静委員長 では、環境省、まずコメントはありますか。

○事務局(中澤) 吉田先生からのご指摘をいただきまして、全体的な日程の中で、どこに当てはまるか、または、そういった資料をいただいて、また追加させていただくということができるか、事務局の中で検討させていただければと思います。

○吉田委員 お願いします。

○中静委員長 ありがとうございました。

 じゃあ、後半のことなのですが、井村さん、それから天倉さん、それから橋本さんの順に一言ずつ、何かあればお願いしたいのですが、井村さん、いかがでしょうか。

○金沢大地(井村代表取締役) 成功例というふうにおっしゃっていただきました。ありがとうございます。

 ただ、決して成功例とは思っていませんで、やはり大変な生業であります。やっているのは、やっぱり理念先行型でやっているということで、やはり外部経済ということをしっかり捉えてやっているということです。ですから、これが外部経済でなくなるということが大事であって、それに一つのヒントは、先ほど、環境省さんへの質問でご指摘があったように消費と流通、特に消費ですね、消費者の意識改革というのがないと、これは産業として、生業として成り立っていかないわけですね。ということであるならば、やはり教育、子どもたちへの教育でありますとか、あと、消費者に対する共感といいますとか、そういったものを、ぜひ情報発信、啓蒙活動をしていただいて、消費者の選択として、そういうエシカルな消費、農産物が選ばれるというところにいけば、必然と消費者もこちらのほうに行くのではないかというのが私の考えです。

 どうもありがとうございます。

○吉田委員 どうもありがとうございます。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、天倉さんもいかがでしょうか。

○日生漁協(天倉専務理事) うちのほうは、やっぱり漁業者、最初に紹介しました元組合長の本田さんの求心力というのもあったのですが、まず、漁業者の立場としては、自分たちのためだという意識と、過渡期になったのは2012年でしたか、夏、高水温になって、通常、かき養殖がうちは盛んなのですが、高水温が続くと、かきのへい死が起きて、減少につながるケースが多々あるのですが、ところが、その年が非常に、逆に豊作な年になりました。振り返ってみると、やっぱりかき、アマモが繁茂しとるおかげで、海中に溶存酸素を供給してくれるということで、かきもしのげる状況になったのではないのかなということで、かき養殖業者も、そういった実感も受けながら、活動組織が結成されたということです。

 それと、もう一つは、またアマモがたくさん増えて、流れ藻になったときも、この地域、日生町自体が、まあ過疎地に近い状況でありまして、ぜひ子どもたちに、我々が子どもの頃に味わったような海のすばらしさを知ってもらうということ、そして、その子たちが大きくなったら、また地元の応援団になってもらう、そういった思いで声がけしたところ、快く地元の中学校の先生方が協力してくれたということが私は成功の鍵になったのではないかなというふうに考えております。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、橋本さんもいかがでしょうか。

○橋本林業(橋本氏) 農業が農道と機械化になったように、山にも道と機械化ということが一つ。それと、あまり捉われないということが一つですね。そして、主人は、あかん、できんかったら、できるように考えればいいじゃないかという、そういう発想の転換かなと思っております。それで、今、その人づくりにいろんなところへ出かけまして、作業道作り、それから人づくりに頑張っているところでございます。

○中静委員長 ありがとうございました。

では、森本さん、発言をお願いします。

○森本委員 橋本林業の橋本さんにご質問があるんですけれどもよろしいですか。

○橋本林業(橋本氏) はい。

○森本委員 生物多様性保全がなりわいにつながるすばらしい経営理念を実践されていて感銘を受けました。

 お伺いしたいのですが、混交林を基本とした森づくりをされているということだったのですが、具体的にどのようなことをされているのかなというのが気になりました。1~2割間伐となると、そんなに林床が明るくならないようにも思うのですが、その中でどうやって混交林を維持されているのかなというのが一つ伺いたかったことです。

 もう一つが、災害に強いというお話がありましたけれど、実際に台風が来たり、大雨が来たりしても、小規模な災害も起こらなかったのか、もし、起こっていたとしたら、どのように対処されたのかというのを伺いたいです。よろしくお願いいたします。

○橋本林業(橋本氏) 混交林施業なのですが、以前より、祖母の時代より大切にしているのですが、その地に合ったマツとか、それとかモミとか、いろんな、それからシイ、カシがありますね。そういうふうなのを林の中で全部切るというのではなくて、次にご質問いただいた災害に強い、それにも通じるのですが、林の中の尾根、畝筋をやはりそういうマツとかモミ、そういうものを残して風対策をしているということですね。それでよろしいでしょうか。

○森本委員 よく分かりました。自然の立地に即したものを残して、無理な林業をしないというようなイメージですかね。適したところでスギ、ヒノキを維持されているというような感じですか。

○橋本林業(橋本氏) そうですね。だから、もうスギ、ヒノキだけを残すのではなくて、いろんな樹種を、サクラもそうですけど、マツもそうですけれども、これを残すことによって災害に強いような工夫になるように仕立てております。

○森本委員 よく分かりました。ありがとうございます。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、勢一さん、お願いします。

○勢一委員 ありがとうございます。勢一です。

 貴重なお話、ありがとうございました。私も橋本林業の橋本さんに質問があるのですけれども、私、実は那賀町に出向いたことがございまして、町の林業ビジネスセンターがあったりとか、町役場に林業振興課があるというのはかなり珍しい地域で、そういう意味では、橋本林業さんの取組を合わせて、全国的にも成功例を生み出最先端の地域ではないかと感じております。

 全国各地で持続可能な林業経営を目指すということが生物多様性の保全には大切であろうと思っているのですが、やはりそのために行政の役割、国や自治体が何をすべきかということが非常に大事だと思っています。

 そこで教えていただきたいのですけれども、那賀町のやっておられる施策について、全国的に何か参考になるようなものは、林業経営の観点から何かお気づきの点がございましたら教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○橋本林業(橋本氏) 那賀町は、私どもとちょっと違いまして、高性能林業機械、架線集材でございまして、今はちょっと皆伐に向かっているかなということでございます。そやけど、いろんな気象条件とか、そういうふうなのを踏まえますと、一度に切るというよりも、なかなか、今、獣害も多いですし、その中でやっぱり間伐、択伐をしながら施業をしていったほうが、私たちはいいのではないかなという考えでございます。

なかなか、そういうことを言うと叱られるかもしれませんが、なかなか受け入れてもらえないというようなところがございますが、でもやはり木も切って植えるというのではなくて、その下の中低木をどういうふうに育てていって一つの森にするかということも私は大事じゃないかなと思っております。

よろしいでしょうか。

○勢一委員 分かりました。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

じゃあ大沼さん、お願いします。

○大沼委員 ありがとうございます。井村さんと橋本さんに質問させてください。農業や林業というのは生物多様性と関わっていて、とても自然というものを質の高いものに維持していく上で重要な産業だと思いますけれども、一方で、非常に高齢化が進んでいると伺っています。特に環境保全型の農業や林業というものは、恐らく観光的な農林業よりも手間がかかって、そういう意味で非常に労力というものが必要になるのではないかと思います。

その上で、こうした形の形態の農林業というものを若い人に継承させていくためには、どうすればいいのかということをやっぱり考えていかなければならないのではないかと思うのですが、まず、ご体験として若い人にとってどういう魅力が、お二人がされてきたことというのが魅力として感じてもらっておられるかということと、あるいは、どういったことがあれば、若い人がそうした産業に入ってきてもらえるのかといったようなことをご自身の何か体験の中から教えていただければと思います。

 以上です。

○中静委員長 では、井村さん、いかがでしょうか。

○金沢大地(井村代表取締役) 今、新規就農者の3割ぐらいの人が有機農業をやりたいとか、環境保全型の農業をやりたいという人はもっといると感じています。

 そんな中で、若い方は、こういう環境に優しい農業に対しては魅力というのは持っていると思います。ただ、それで食べていけるかということでやはり所得としてそれをやることによって成り立つのかということで、そうなると、今までですと有機農業の技術というのは全く国もどこも研究してこなかったということがありますので、これから、イノベーションを起こしていって、生産性も上がって、場合によっては手間も省けるような、そういった形になれば、若い方も参入してくるチャンスもあるだろうとし、ぜひそうなってほしいと思っています。

○中静委員長 ありがとうございます。橋本さん、いかがでしょう。

○橋本林業(橋本氏) 生物多様性の環境保全型にするにはどういうふうにということですけれども、やはり観察力、そして、その観察をすることによってやっぱり作業道とか壊れにくい山につくっていくということで、やはりその場に合ったものをつくると。生かすということと、それと、若い人に林業に入ってこられるかということですけれども、なかなかIターンの方なんかは山を持っていないのでちょっと厳しいかなと思いますけれども、それをやはり公的なところから、民間も含めてなんですけれども、山を維持してもらえるような、そういう委託のできるような環境づくりですね。そういうふうなのと、今、全国で出てきておりますが、複合経営が一番強いのではないかなと。林業だけだとなかなか厳しい、農業だけだと厳しいというところでも、この時期にはこういう作業をして、この時期にはこういう作業をしてという複合経営ということも考えられるのではないかなと。

そして、山の中にいろんな植物でも低い木でもありますので、それをやはりいろんな形で皆さん、ちょっと今、実験的にこういうふうなのがいいのではないかな、ああいうふうなのがいいんじゃないかなというふうな実験といったら失礼なんですけれども、これは使えるねというふうなことも、今、その中でどうぞ、使えるものがあったらどうぞというふうに私たちは提供しておるようなところです。

全部お答えできなくて申し訳ないんですが、ちょっとそんなことを感じております。

○中静委員長 ありがとうございました。

 時間も限られていますので、申し訳ないんですけれども、ここまでということにさせていただければと思います。

 農林水産業分野のヒアリングは以上ということで、5分間だけ休憩を取りたいと思います。3時55分、7分ぐらいありますかね。55分から再開ということでお願いできればと思います。よろしくお願いします。

(休憩)

○中静委員長 では、再開させていただきます。

 引き続き、産業関連の3団体からのヒアリングをさせていただきたいと思います。

 これも説明時間10分ずつで、3団体からの発表の後に30分ぐらい質疑応答をさせていただければというふうに思います。

 まず、一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブの理事、事務局長であられる足立様からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○企業と生物多様性イニシアティブ(足立事務局長) よろしくお願いいたします。

 これ、あれですか、そちらの資料でそろっているんですね。今映していただいておりますけれども。

 では、説明させていただきます。企業と生物多様性イニシアティブ、JBIBの足立ございます。では、次のスライドをお願いいたします。

 まず、私たちの法人についてですけれども、2008年に当初14社でスタートして、現在49社の会員から成っております。

 主にやっておりますことは、企業として、生物多様性にどういうふうに関係していったらいいかということで、様々な国内外の情報を一緒に研究しそれを共有するということですね。さらに実際どう活動を進めたらいいかということをワーキンググループという形で毎月集まって議論をしたり、一緒に活動をしております。ただ、コロナ禍ですので、この2年間はずっとオンラインの開催でございます。

 あとは、様々なステークホルダーの方々、行政、NGOも含めですけれども、対応させていただいたりとか、もう一つ特徴的なのは、会員企業の経営層の方々が年数回ですが集まってというようなこともしております。次のスライドをお願いいたします。

 運営は全て企業だけでやっており、今はこのような会員企業の方々に理事になっていただき、さらにその下に運営委員というのがございますけれども、その委員と理事によって、企業によって運営されています。次、お願いいたします。

 どういう企業さんが集まっているかですが、会員制度が、2種類がございまして、正会員というのが今31社です。ご覧いただければお分かりのように、様々な業種が集まっています。比較的いわゆる大企業が多いのですが、建設系であったり、電気メーカーさんもいらっしゃいますし、流通、食品と本当にいろいろな分野の企業さんにお集まりいただいております。

 次のスライドにネットワークの会員と書いてございますけれども、こちらと正会員との違いは、正会員は先ほど言いましたワーキンググループということで研究活動を自分たちで行う会員になりますが、ネットワーク会員というのは、まだそのワーキンググループには入らずに情報収集を中心になさっているという、そういった仕分けになっております。次、お願いします。

 そのワーキンググループですけれども、今、七つございます。言ってみれば、これが企業の方々が生物多様性に関して関心を持っている部分なのかなと思います。まず一つはESG、投資に関することです。生物多様性に関する情報開示も求められておりますので、それについて研究をするというグループが一つ目です。

 それから企業が持っている緑地、その価値をどう高めていくのか、あるいは、それをどう発信していくのかというようなコミュニケーションの研究をしているところが二つ目。

 三つ目は、ここが非常に比重が高いのですけれども。サプライチェーンです。企業活動の場合、調達において負荷が非常に大きいということが分かっておりますので、そのサプライチェーンをどういう形でより負荷を低く管理していくのかというようなことを研究しているところです。

 4番目がSDGs街づくりです。建物単位での、あるいは建物の外構での生物多様性への配慮も進んでおりますけれども、さらにはそれを街全体で配慮し価値にしていくということを今研究しています。それが4番目です。

 あと、5番目は海洋プラスチックということです。海洋生態系への影響を取り扱うワーキンググループです。

 6番目、7番目が今年になってつくられたワーキンググループなのですけれども、一つが新しい国際枠組み研究というふうになっています。今、国際的には生物多様性を企業がどう管理していくかということで極めて多くの研究、あるいはイニシアティブ等が次々に立ち上がっています。そういったものにきちっとキャッチアップしていこうということで、その全体像を調べていこうという、そういうワーキングでございます。

 7番目、これはOECMに関しても、既に土地利用などの部分で様々な活動をしているのですが、さらにそれをOECMの文脈できちんと管理していこうということで、今年からOECMの実践ワーキングというのもできております。

 その次の6枚目、7枚目のスライドには以上を文章で書いてございますが、これまでの説明と重なりますので、ここは割愛いたします。

 次の8ページ目に進んでいただくと、これまで、13年、14年ほどの活動成果なのですが、URLも書いてございますけれども、様々な企業向けのツールを開発してございます。これらは後ほどのスライドで、具体的にどういうものがあるかをご紹介したいと思います。

 その中で特に代表的なもの、よく使われているのが、事業所の土地を生物多様性、生き物と共生するためにどういう形で管理したらいいのかと、そういうガイドラインをつくっております。これは当初はガイドラインという形で、それを自主的に企業は使ってくださいねということでスタートいたしましたが、認証制度、ABINC認証というふうに呼んでおりますけれども、そういう制度に発展しております。今、ABINCというのは別団体になってございますけれども、そちらがこのガイドラインに従って管理された土地がガイドラインの基準に適合しているかどうかを調べて認証することをやっております。既に全国で100か所以上の場所で、このガイドラインに沿った管理がされているということが認証され、そういう形でこのガイドラインが活用されています。

 あとは2011年~2020年にかけての10年間、「チャレンジ2020」ということで、主に主流化に関して会員企業に取り組んでいただいたり、あるいは、最近は「森林破壊ゼロ」を企業が進めていくことを支援するというようなことをしております。

 それ以外にも様々な小さなプロジェクトがございますし、また、国内外の様々なイニシアティブとの相互のネットワークを持つということで、今ここに書いてあるような団体のパートナーや会員等にもなっております。次、お願いいたします。

 先ほど申しました、私どものほうで開発しましたツールということで、今ここに挙げているようなものがございます。先ほどの土地に関するものだけでなくて、水をどういうふうに管理したらいいのか、あるいは、企業が社会貢献的に森づくりをするようなことがございますけれども、そういうときのガイドラインだったり、原材料調達に関してのガイダンスのようなもの、そういったような具体的な日々の活動で使えるようなガイドというものも開発してございます。

 なかなか日本語ではこういう資料はないものですから、これを会員の企業さんもそうですけれども、会員の企業さん以外の一般の企業様にも公開して活用していただいております。次、お願いいたします。

 あと、先ほど申しました2011年から20年までの10年間で企業経営の中で生物多様性を主流化していこうということで、2010年からスタートしているんですけれども、ちょうどCOP10が愛知で開かれたときですけれども、この12項目ですね。12項目をきっちりやっていこうということでスタートしています。

 2010年度のこれをスタートした段階で、会員においては、それなりの割合できているという企業が多かったのですが、やはりこの10年間で見てみますと、一番右側に変化のプラス・マイナスのポイントが書いてございますけれども、かなり上がったということがお分かりいただけるのではないかと思います。12の項目のほぼ全てで9割ないし9割以上の会員企業が社内で行うになっておりますので、かなり主流化ができたのではないかなというふうに考えております。次、お願いいたします。

 最近やっておりますのは、3年ほど前からなのですが、サプライチェーンにおいて森林破壊には一切加担しないということです。「森林破壊ゼロ」を企業が、最近、国際的に企業が宣言するようになっておりますけれども、それを一つ一つの企業ができるように、JBIBの会員企業もそうなのですが、非会員企業にも進めていただけるように、JBIBとしては支援をしようということを2018年からスタートしております。

 これは今年の春に会員企業に対してアンケートをした結果なのですけれども、例えば「森林破壊ゼロにコミットしていますか」ということに関して、コミットしている企業は今のところ22.9%で、昨年よりはプラス9.6ポイントでございます。コミットしていなくても実質的には、その支持を表明していたり、あるいは、自主的に取り組んでいるというところを含めると、実に、今、83%の会員が、この「森林破壊ゼロ」に自主的に取り組んでいるということで、かなりこの「森林破壊ゼロ」というのが少なくとも私どもの会員の中では浸透しているのかなというふうに考えております。

 当然、こういうのは担当部署、多くの企業様が環境部ですとか、最近ですとサステナビリティ推進部さんなんかが旗を振っているわけですけれども、それだけではなくて、JBIBの企業においては8割の企業において経営層もこうした活動の必要性、あるいは重要性を理解しているということで、かなり浸透していると考えております。もちろん、さらにこれを浸透させていこうと思っています。次、お願いいたします。

 あと、この後はJBIBそのものとして、今どうこうというより、こうした活動の中から少し私ども事務局が課題に感じていること、あるいは、しなくてはいけないと感じていることを2ページほどでご紹介したいと思います。来年、COP15の第二部ではGBFが採択される予定なわけですけれども、その21項目の中に少なくとも6項目ぐらいはかなり企業にとっても関係性が深いものかなと思っております。

 このいずれも、私ども企業として貢献が必要であるし、また、十分貢献可能だと考えております。ただ、よくJBIBの中で出ます意見が、こういったことを私たちがするのはもちろん全くやぶさかではないのですけれども、やはりそれには当然コストがかかります。そのコストを払う、担っていくというのも当然必要なことなのですが、制度がないと、よかれと思って先行的にやるところだけがコストを負担するということになります。ですので、そういったところをむしろきちんとルール化をして、これはもう全ての会社がやるんだと、そういうことが必要になってくるのではないかと考えます。

これらが、GBFとして採択されると、当然、日本も締約国の一つとして国内制度等を整備することが必要になって来るでしょう。国家戦略そのものなのか、あるいは、もっと個別の法律なのか分かりませんけれども、そういったことを考えていただく必要があるのかなというふうに考えております。

 あともう一つ、次のページですけれども、そうした中、では企業、特に日本企業は今どのようなことを課題に感じているかということを大きく2項目に整理してみました。下のほうから申し上げたいと思うのですけれども、国際的な課題と国内で課題にされることに少しギャップがあるのではないかなと感じております。今、JBIBの活動についてご紹介いたしましたけれども、これを見ていただきますと、やはり生物多様性と一言で言いましても、企業、特にJBIBに参加しているような大企業、国際的な活動もしている、企業が関心ある部分、あるいは期待されている部分と、現状の国家戦略の中に書かれていることにはかなり乖離があるといっていいのではないかと思います。

というのは、やはり海外の生物多様性に関してどういう貢献をするのか、あるいは海外においては、日本国内とは違う期待がステークホルダーからあるわけで、これには投資家なども含まれるわけですけれども、ここの部分を含めた政策ないし制度というものが必要なのかなと思っております。もちろん、国内においても事業者が国内の生物多様性に与える影響というのは大きいわけですし、それを当然変えていかなくてはいけないわけですけれども、それだけですと企業の力を十分に生かすことができないのではないかなと思っております。

 上のほうに戻りますけれども、海外とのギャップという意味では、日本企業も頑張っているのですが、今、国際的にリードとしているのはやはり海外の企業、特に欧州の企業なのかなという印象を持っております。その理由としては、やはり国内外で様々なギャップがあることが原因かと思っております。

 一つは、まず情報ギャップです。情報にギャップがあれば、当然、意識にもギャップが出てまいります。となりますと、こうした情報や意識のギャップを埋めていくように、例えば情報を提供していくというような、そういうこともやはりこの国家戦略の中で、あるいは今後の施策の中であると非常にうれしいなと思っています。

 もう一つは、情報あるいは意識だけではなくて、制度そのものがかなり国内外で違うのではないかなと考えているところがございます。例えば、農林水産業の慣行そのものも、本日は先ほど非常に先進的な企業様から事例をご紹介いただいてすばらしいと思いましたけれども、逆に言うとああいった例は、先ほどもご指摘がありましたけれども非常に少数で、大多数の農林水産業では生物多様性という視点はあまり入っていない、旧来のやり方で続いているのかなと。それに対して、国際的には今その部分が非常に進化していると。それは恐らく、各国においては制度的にも支えている部分があるのかなと思います。

 あるいは最近、生態系をもう一度取り戻していこうというRestoreとか、あるいはRegenerateということが言われるわけですけれども、それをしようにも、そもそも日本国内においては制度アセスはあまり強力な強制力にはなっていないように思いますし、生物多様性オフセットなどはそもそも制度としてないとかですね。海外の場合には、そうした制度があるということが前提で、それが発展する形でよりRestoreとかRegenerateということが語られる、あるいは、実行できるようになっているのだと思います。

 さらには、海外との貿易、輸出入に関しましては、海外から輸入するcommodityに関して、森林破壊を行っていないかということで、そのDue Diligenceの義務がある国も多くあるわけですけれども、日本もクリーンウッド法のようなものがございますけれども、それが完全な義務にはなっていない、ボランタリーなものになっているところということで、やはりどうしてもその辺が制度がないがゆえに、そこを徹底してやろうというふうなモーメンタムにはなっていません。同時に、じゃあそういったことをきちんとするためのイノベーションも起きていません。あるいは、そこにお金も十分に来ていないということで、その辺の体制がやはりどうしても日本の企業が、あるいは日本が、国際的にも貢献していく、高い評判を維持していくという意味では欠けているのではないかなということを感じざるを得ないわけです。

 ですので、そういった海外を見据えた制度的な部分の拡充というのをぜひ国家戦略の中で含めていただくといいのかなと思います。

 以上でございます。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、次に、経団連自然保護協議会の事務局長をされております長谷川様よりご説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○経団連自然保護協議会(長谷川事務局長) 経団連自然保護協議会で事務局長を務めております長谷川でございます。

 本日は、私どもの意見を申し述べる機会をいただきまして誠にありがとうございます。次期生物多様性国家戦略に対する経済界の期待ということでご説明申し上げたいと思います。

 最初に、経団連自然保護協議会がどういう組織かということをご説明を申し上げたいと思います。この協議会は、1992年にリオの地球サミットが開催された年に設立されております。経団連は1991年に「地球環境憲章」を策定しておりまして、その憲章の考えを自然保護分野で実践する組織としてできたものでございます。

 会員企業数は、経団連会員企業全1,460社のうちの100社強でございます。

 主な活動は、第一に「経済界を中心に啓発活動」をさせていただいているということ、第二に「公益信託経団連自然保護基金を通じたNGOの自然保護活動の支援」をさせていただいていること。第三に、「経済界が生物多様性保全に取り組みやすい環境の整備」に取り組んでいることでございます。

 具体的にどういった活動をしているかは、次のスライド「経済界を中心とした啓発活動」をご覧いただければと思います。啓発活動の中では、「経団連生物多様性宣言」が大きな柱になってございます。これは、経団連と経団連自然保護協議会が連携して、生物多様性を経営に入れ込んでいくためにつくったものです。この宣言に賛同していただける経団連会員企業を募り、賛同企業の具体的な取組方針や活動事例について「経団連生物多様性宣言イニチアチブ」という形で冊子とWebサイトにまとめております。これらの取組を日本企業の好事例集として参照、活用していただきたく、国内外へPRしています。

 好事例集、PRというような関係では、環境省さんと一緒に「生物多様性ビジネス貢献プロジェクト」という取り組みをさせていただいております。現在国際交渉が行われております次期国際枠組のドラフトに盛り込まれている21の目標の達成に貢献できる技術を中心とした事例を集めて、動画とともにWebサイトで公開しているということでございます。

 啓発活動の一環として、ムレマCBD事務局長との懇談会でありますとか、オンライン勉強会というのを開催しております。オンライン勉強会の第1回では、本日、委員として参加されている大沼先生にもダスグプタ・レビューについてご説明いただいています。

 国際的なPRとしては、4年ごとに開催されるIUCNの総会にミッションを派遣しています。経団連自然保護協議会は、経済団体として世界で初めてIUCNのメンバーになった団体でございまして、総会にはミッションを派遣して参加してきました。今年は残念ながらオンライン開催となりましたけれども、二宮会長にビデオメッセージを発信していただいています。

 加えて、ダスグプタ先生との懇談会も開催しております。会合には、奥田自然環境局長にご参加いただくとともに、大沼先生にファシリテーターをお願いし、大変深い有意義な議論ができたと考えております。

 次のスライドからは「経済界が生物多様性に取組みやすい環境整備」について記しています。現在、三つのことを行っております。一つは「ポスト2020生物多様性枠組」に日本経済界の意見を取り入れていただけるようにワーキンググループを設置して議論しているということ。

二つ目は、情報開示への対応としてTNFDの取組に日本経済界の考えを発信し、反映させようということで、TNFDフォーラムにも参加したところでございます。

三つ目は、「生物多様性民間参画ガイドライン」の改定への対応です。現在、環境省さんが改定の検討をしていただいていますが、より使い勝手のよい内容になるよう、お願いしているところでございます。

 次のスライドからは、「次期生物多様性国家戦略に対する期待」について2枚にまとめております。1枚目が総論ということでございます。1点目、「ポスト2020生物多様性国際枠組への貢献」については、言うまでもないことですが、ポスト2020生物多様性国際枠組にしっかり貢献できるようなものにしていただきたいということでございます。

 2点目は、「生物多様性保全の地域性への対応」です。生物多様性については地域性がございます。わが国の生物多様性の実情、あるいは、わが国を取り巻く経済社会の状況をしっかり踏まえた形でつくっていただきたいということでございます。

 3点目は、「政府全体での取組」です。まさに日本政府全体で取り組んでいただきたいということでございまして、環境省だけの施策でありますとか、あるいは、関係省庁の施策がばらばらになっているというようなことではよくないと思っております。全体をコーディネートした形でやっていただきたいと考えております。

4点目は、これまでの議論でも出ておりますけれども「気候変動との統合的な取組」が重要だと考えております。

 資源循環も大きなテーマとして関心が高まっておりますので、これも併せて検討していただければと考えております。

 5点目は、「国民各主体の行動変容の促進」国民の行動変容につながっていくような国家戦略にしていただきたいと考えております。そのために必要なことといたしまして四つ書いております。一つは、あらゆるステークホルダーから見て、取り組むべきものが何かというのがしっかり分かるような形のものにしていただきたいということでございます。

 二つめとして目標は定量的な目標、定性的な目標の両方が恐らく議論されると思うのですが、これが適切であること、かつ、具体的であることということが重要だと考えておりますのでお願いできればと思います。

三つめとして、策定過程においてステークホルダー、特に取組の主体となる人たちの意見をよく聞いていただき、実態に応じて納得感がある形のものをしっかりつくっていただきたいと考えております。

四つめでございますが、今までお話がありましたように、国民各主体は、これまでも主体的な取組をしているわけでございまして、これをしっかり後押ししていただく、そういった形の国家戦略にしていただきたいと考えております。

次のスライドからは各論ということで、前回のこの小委員会に出されている資料なども拝見しながら、こういった形にしていただければと思うものを書いております。

 一つめは、ガイドラインや好事例集の活用ということでございます。今まさに環境省さんが、新しい国際枠組に合わせて改定作業をしている「民間参画ガイドライン」、あるいは好事例集の活用は極めて有効と考えております。本当に企業の参考になるような具体的な取組、取組に対して適切な目標設定の手法、あるいは、国際社会の動向ですね、そういったものを事業者のニーズも聞きながら盛り込んでいっていただきたいと考えております。

 特に海外の事例、あるいは、ほかの事業者の事例につきまして、内外の動きが非常に早いので、冊子という形でのハードコピーだけではなくて、できれば機動的に情報を盛り込んでいただけるようなWeb版を作成して充実させていただきたいと思っております。

 二つめは「ESG金融」です。ESG金融機能を活用して生物多様性保全を図っていくという視点は極めて重要と考えております。その中で、生物多様性への事業者の取組が適切に評価されて、グローバルなイコールフッティングの観点からも適切に評価される必要があると考えております。これにつきましては、TNFDの場も活用いたしまして、わが国の事業者に適切に資金が供給されるように取り組んでいただきたいと考えております。

三つめは「消費者への啓発」です。これまでの議論でも出ておりますけれども、国民、あるいは消費者への啓発ということが重要だと考えております。「次期生物多様性国家戦略研究会報告書」にありますような「ビジネスと生物多様性の好循環とライフスタイルへの反映」を実現するためには、生物多様性の重要性について、しっかりと国民全体、とりわけ消費者に浸透させていくことが重要ではないかと思っているところでございます。

四つめは、「30by30、OECM認定」です。30by30については、自主性を尊重するとともに、認定に当たっては、柔軟な対応を行っていただきたいということで、事業者にとって取り組みやすい仕組みとすることをお願いしたいということでございます。

また、実際に社有林を持っていない事業者にも取り組みやすい形とすることをお願いしたいと考えております。

加えて、取り組んだ企業が社会や金融機関からしっかりと評価されるような形でお願いしたいということ。さらに、難しいかもしれませんけれども、具体的なインセンティブというものの検討もお願いしたいということでございます。

生物多様性の新しい枠組みにつきまして、経済界としてもしっかり貢献してまいりたいと考えておりますので、引き続き、ご指導、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 そうしましたら、次に、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社、総合企画部部長をされております、さらにサステナビリティ推進室長もされております沖様よりご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○MS&ADインシュアランスグループホールディングス(沖サステナビリティ推進室長) ご紹介いただきましてありがとうございます。声は聞こえておりますでしょうか。

○中静委員長 聞こえています。

○MS&ADインシュアランスグループホールディングス(沖サステナビリティ推進室長) ありがとうございます。

 今、ご紹介いただきましたMS&ADインシュアランスグループホールディングス総合企画部のサステナビリティ推進室長をしております沖と申します。

本日は、弊社グループの取組につきまして説明する機会をいただきましてありがとうございます。では、次のスライドをお願いします。

まず、弊社グループ、簡単にご説明させていただきます。この五つの事業領域に分かれておりまして、国内損保、それから国内生保、海外事業、それから投融資をやっています金融サービス事業、それからリスク関連サービスということで、ここに生物多様性関連ですね、コンサルティングをやっておりますインターリスクもこちらにございます。次のスライドをお願いいたします。

これが、弊社の会社の規模ということでございまして、左上に正味収入保険料3兆5,000億円ぐらいと、これが通常の企業様の売上げ相当に相当するものだと思っていただければと思います。

それから、右下にESGのいろいろな様々な評価機関ですとかインデックス、そのあたりのご評価をこういう形でいただいております。次のスライドをお願いします。

こちらが弊社グループの目指す姿ということで、ミッション、ビジョン、バリューということで、もともとの基本的な考え方ですね。会社の考え方のミッションであります、この中に「地球の健やかな未来を支えます」ということで、環境に関わる気候変動、自然資本、こういった形の保全に関わるというのを2010年にグループができましたときに策定をしております。次のスライドをお願いいたします。

こちらは、弊社グループにおけますサステナビリティの取組ということでご紹介しているスライドになります。現在の中期経営計画が2018年にできておりまして、4年目を迎えております。

そのときに、目指す姿、目指す社会像ということで、レジリエントでサステナブルな社会と。その実現に向けて、右側の中ほどにあります社会との共通価値を創造と、いわゆるCSVの取組ということで七つの重要課題、マテリアリティを設定しております。

この中に、自然資本の持続可能性向上に取り組むということを掲げておりまして、ほか気候変動、人権と、この自然資本、この三つをさらに優先的に取り組む課題という位置づけとして、今、このいわゆる経営の中に、このESGの要素を組み込む、ESGインテグレーションとして、我々の経営戦略の中枢という形で進めている重要な戦略の一つに自然資本が位置づけられていると、こういうことになります。次のスライドをお願いします。

こちらが、そのレジリエントでサステナブルな社会を目指すために我々が取り組むべき考え方ということで、価値創造ストーリーというものを掲げております。保険会社ですから、まずリスクを見つけてお伝えすると。そのリスクの発現を防ぐ、または、その影響を小さくしていく。さらに、経済的な負担を小さくしていくと、このサイクルによってレジリエントでサステナブルな社会を目指していこうと、こういう考えに基づいております。次のスライドをお願いいたします。

こちらは、先ほどもお話ししましたCSVの社会との共通価値の創造ということで、企業、それからお客様との間のこういった双方向で持続性のある社会との共通価値の創造を目指していきましょうというのが考え方の根本にございまして、社員が実践するべき考え方の基本という位置づけで、日々、社員はこれを念頭に活動を行っております。次のスライドをお願いいたします。

こちらが、ここから具体的な取組につきましてお話ししていきたいと思っています。

まず、ESG投融資の取組ということで、弊社グループは2015年6月にPRIに署名しておりまして、ESG課題に配慮した投融資を推進しています。先ほどご説明しました優先的に取り組む課題として、気候変動、自然資本、人権、この三つを掲げておりますが、これは保険サービス、投融資を通じて全ての活動を優先していくという考え方になります。

特に自然資本の領域につきましては、森林と水、このあたりの要素を特に考慮していくというふうにしておりまして、今、私がいます持ち株のほうでは、財務企画室というのが同じ部にあるのですが、そこが各事業会社、実際に投融資を行っていくところですけれども、その人たちと日々連携しながら、こういったものを取り組んでいるということになります。次のスライドをお願いいたします。

ここからが、MS&ADグループの生物多様性への取組の簡単な年表を今示しております。約20年ぐらい前からいろいろな研究を、生物多様性、自然資本の研究をやっているのですけれども、具体的な事業としましては、2005年にインドネシアで熱帯林の再生プロジェクトを始めております。これ、現在も行っておりまして、これは、当時、紙をやはり保険会社としましては大量に使用する業種だということで、その紙をつくり出している森林を保全していこうと、こういう考え方からもともと始まったプロジェクトということで、ここを起点にそれ以降、様々な取組というのをやっておりまして、後ほど、これ以降の取組につきましてはご説明させていただきます。次のスライドをお願いいたします。

まず、商品サービスの事例ということで一つ目になります。これは、本当、最近発売した商品でございまして、食品事業者様向けに、要は、食品ロスをいかに削減していくか、ここに貢献したいということで、クラダシ様と提携した商品になります。保険商品自体、リコール保険ということになりまして、例えば食品事業者の方、お客様が消費期限の誤表示等で食品をリコールしなければなくなったと。この場合、通常、廃棄するんですけれども、これをクラダシさんが品質に問題がなければ買い取ることによって、当然、廃棄コスト等が削減してまいりますので、当社としましては、リコール保険料の10%割引を適用するというようなことで入りやすい、ご加入いただきやすい保険商品の設計にしている事例でございます。次、お願いいたします。

こちらは、リスクコンサルティングに係るサービスということになります。先ほどご説明しましたグループのインターリスク総研のほうがやっております生物多様性関連の商品サービスということになりまして、我々の考え方としましては、企業の事業活動と自然資本の持続可能な関係構築の支援は、我々の社会課題の解決につながるというようなことで、インターリスク総研のほうから、こういったメニューの提供を今行っております。次のスライドをお願いいたします。

ここからは、様々な外部の機関、産官学の連携取組ということで幾つか事例をご説明します。グリーンレジリエンスと今書かれておりますけれども、これは、概念としまして自然資本を活用して、防災・減災を進めながら、住みやすい街づくりを行って、その地域におけます地方創生ですね。これを同時に実現していこうという取組になります。先ほど申し上げました優先的に取り組む課題の自然資本の中の具体的な取組の柱の一つとして掲げております。

各自治体の皆様と弊社の各地域の支店が、例えばSDGsに係る包括連携協定ですとか、こういったことを締結させていただいて、それに基づきまして様々な防災・減災、それから地域の企業の支援、こういったことを保険の商品サービスを通じて行っていくということになります。次、お願いいたします。

こちらは、大学のほうとの研究ということで、生態系を活用したEco-DRRですね。つまり、防災・減災、こういったことの研究というのを行っておりまして、こういうことで蓄積されたノウハウを商品サービスにつなげていくということでやっております。次、お願いします。

こちらは、これ、球磨川流域の治水プロジェクトということで、OECMの話が先ほどございましたけれども、我々、今年から熊本県立大学さんが進めておられます「緑の流域治水」のプロジェクトに参画いたしました。これも一つのグリーンレジリエンスの一環の取組ということで今やっております。地元の方々は非常に、ご存じのとおり、ここは非常に洪水ですとか、そういった被害が非常に多い地域なのですけれども、流域治水を活用して安心・安全に、緩やかな自然を活用して安心・安全に住み続けられる生活、それから地域の発展に貢献していくというプロジェクトになります。次、お願いします。

こちらは、先ほど足立さんのほうからご説明ありましたですけれども、JBIBの中で行っているワーキングということでOECMというのも取り組んでおります。次、お願いいたします。

それから、こちらからは普及啓発活動ということで、まず一つ目は「企業が語るいきものがたり」ということ、これはもともと、実はJBIBができる発端になったものなのですが、来年、また2月10日に15回目がございますので、ぜひ、もしお時間おありの方がいらっしゃいましたら、ご視聴いただければと思います。

それから、その下にあるような、こういった取組をやっております。次、お願いいたします。

それから、こちら、イニシアティブ等の取組ということで、下の特にTNFDの話をというふうなこともございましたので、少し補足させていただきます。このTNFDのいろんなご紹介は、様々なところからも来ております。今日も来所しておりますけれども、弊社のほうから原口がタスクフォースのメンバーとして参画しまして、MS&ADグループとしましては、フォーラムメンバーということで参画しています。

テーマは、これ、自然資本じゃなくて自然なんですね。つまり、自然資本に限らず、例えば気候変動との連関性ですとか、こういったことも踏まえておりますので、非常にカバーする領域が広いと。今の参画メンバーを見ておりますと、5大陸から満遍なく選定されていまして、そういった地域ですとか世界のエリア、こういったものも自然特性なんかもちゃんと考えながら、どういった開示をしていけばいいのかというガイドラインの作成に今携わっていると聞いています。

今のこの現段階なんですけれども、非常に概念的な今段階でございまして、Nature related risks、自然に関わるリスクとは何ぞやということ、この辺の話が中心に、今、進んでおりまして、来年の3月にはベータ版と言われますガイドラインが出される予定になっておりますので、それに向けてこれからより細かい議論というのが進んでいくと聞いております。次、お願いいたします。

ここから、こちらでも社会貢献的な活動の一部ということになりますので、簡単にご説明しますと、インドネシアの熱帯林の再生プロジェクト、これ、2005年からやっております。

それから、北海道の美幌でも今やっております。

2014年から、インドネシアにつきましては社員ツアーで実施しておりまして、約140名ぐらいの社員が実際に現場に行って体験をしたりということで自然に触れて、自然資本の大切さ、こういったものも学んでおります。次、お願いいたします。

こちらは、三井住友海上の本社ビルの緑化取組ということで、非常にこういった首都圏における企業緑地の中で、ちょうど不忍池と皇居の間に位置するものですから、様々な野鳥が飛来する休憩場所になっていたりですとか、あるいは、これ、実はビルの地下は大量の雨水を蓄えられるタンクがございまして、今年の8月に千代田区で起きた豪雨につきましては、約3,000トンの貯水をいたしまして、下水に一気に流れ出る水の負荷を軽減したり、そういったことにも役に立っている今建物ということになっております。次、お願いいたします。

こういった社員によるボランティア活動ですね。ラムサール条約の湿地帯の活動ですとかもやっております。次、お願いいたします。

こちらは、小学生を対象にしました出張授業と、今はちょっとコロナ禍でオンライン授業という形になっておりますけれども、こういう子どもたちの世代から自然の大切さ、こういったものを我々としてもバックアップしていこうというふうなことでやっております。

私からは以上になります。ご清聴、どうもありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 これから質問をお受けしますが、ちょっと時間も押していることですので、皆さん、質問、お答えともコンパクトでお願いできればありがたいです。

 質問、コメントがある方はチャットに書き込んでください。

 中村さん、じゃあお願いします。

○中村委員 すみません、ありがとうございます。

 じゃあ簡単に。足立さんのほうにまず質問したかったんですけど、JBIBのほうです。

日本の国家戦略、やや内向きだというような感想を持たれていたと感じたのですが、その理由が、多分、海外情報が不足していて、国際的な評価を得るためにもいまひとつであるというような印象を持ったのですが、聞きたいのは、制度的に例えばどんなことを日本の国家戦略に書き込んでいけば、言わば、そういった企業の方々にとってもよりよい戦略になっていくのかという、どこが特に国際的な視点から抜け落ちているのかを教えていただきたいというのが足立さんに対してです。

 もう一個、すみません。足立さんに対してもう一つは、制度の問題として生物多様性のルールづくりみたいな、保全のルールづくりみたいなものがうまくいっていないというような印象、ご意見を伺ったように思うのですが、例えば生物多様性オフセットみたいなものなんですけど、そういった制度が日本の中でうまく定着できていない理由は、足立さんから見てどんなところに問題があるのか、もしご意見があれば教えていただきたいということです。

 それから、沖さん。今、お話ししていただいた沖さんがグリーンレジリエンスについて書かれていて、流域を通じた森とか農村とか海までの、そんな図があって、そこで具体的にどんなことをやられるのかなというのがちょっと見えづらくて、保険制度的なことをおっしゃられていたような気がするのですが、もう少しその辺、教えていただけるなら教えていただきたいと思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。では、足立さん、お願いします。

○企業と生物多様性イニシアティブ(足立事務局長) ご質問ありがとうございます。

 まず最初に少しだけ訂正というか補足をさせていただくと、私が申し述べました日本と海外でギャップがあるんじゃないかということ、今の国家戦略がやや内向きなんじゃないかというのは、国家戦略はそもそも基本的には国内のことを考えているための戦略であると思いますので、そうなるのは当然だと思うんですね。なので、日本の国土、日本の自然をどうするのかというところが最優先であるということは、私も全く異論ございません。

ただこういう時代ですし、今回、改訂の方針にも海外への貢献を強めていくというようなことがあったかと思いますけれども、そこが単純にODAでということではなくて、やはり企業活動を通じての海外との結びつきが一番大きいと思いますので、そこを支援するような、あるいはそこを刺激するようなものであるといいのかなと考えております。

 では具体的に、どういう制度、どういう点で遅れている、あるいはギャップがあるのかと申しますと、企業活動においては二つ大きな接点があると思います。一つはサプライチェーンです。つまりどういう物質を海外から日本に持ってきているかということがまず第一。あともう一つは、開発の部分です。

まず最初の外から持ってくるサプライチェーン、物質を輸入するという部分に関しては、日本は割とそこを企業と輸出国の間の問題に、そこに任せちゃっている部分があるんじゃないかなと思います。一方で、例えばイギリスのような国は、そこをきちんとルール化することで、イギリスの国内市場に持ってくるときには、国に入る段階のところで海外で森林破壊をしたようなものはもう許さないよというような、そういう法制度を今準備なさったりしています。そういうちょっと、国が一歩踏み出すようなことがむしろ必要になってくるんじゃないかなというのが一つです。

 開発に関しては、今もご指摘もいただきましたけれども、やはりオフセットの制度がない。あるいは、生態系を回復させて、それをきちんと評価するという部分がやはりまだ弱いんじゃないかなと思っております。そこができると随分違ってくるのかなと思います。これはもちろん陸域だけではなくて、水域についても同様だと思います。

 では、なぜそのような状況になってしまっているのかというのに関して、これは非常に難しいと思いますけれども、私は一つ端的に言えるのは、企業活動と保全あるいは保護というものが、やはりまだ二項対立の構造、意識というのが日本は割と強いのではないかなというふうに思います。もちろんもはやそういう時代ではなくて、自然を破壊してしまったら企業活動も続かないということに多くの企業がもう気づき始めていますので、二項対立ではなくて共通の目標のために、持続可能な生物多様性・自然を達成するため、維持するために一緒に協力していくというように、視点を変えるということが必要になっていくんじゃないかなとに感じております。

 以上でお答えになりましたでしょうか。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、沖さん、お願いします。

○MS&ADインシュアランスグループホールディングス(沖サステナビリティ推進室長) ご質問、ありがとうございます。グリーンレジリエンスにつきましてご説明します。

 まず、洪水による、いわゆる被害というのは、我々の本業であります火災保険の収支にまず非常に大きな影響を与えるということですね。気候変動の中とも関係するんですけれども、非常に大きな課題として解決していかなければいけないと。

そういう意味では、防災・減災の取組というのは必要になってくるわけなんですけれども、それと、我々が推進している地方創生を組み合わせて、これを推進していきたいと考えているんですけれども、例えば、今、球磨川流域の流域治水のプロジェクトに参加していますのは、そこに参画することによって、いろんな災害といいますか、それを防ぐためのメカニズムですとか、例えば自治体と連携しています包括連携協定の中で、我々が防災・減災の知恵も引き出しますというようなことで、熊本で例えば参画することによっていろんなノウハウを蓄積しまして、例えばほかの地域に同じような形で波及できないのかというようなことも考えていたりとか、あるいは、実はこれはJBIBのワーキングとしても参加しようとしているんですけれども、参画している企業の皆様が、もっと自分たちのもう少し小さなエリアですかね、こういう大きな流域だけではなくて、工場があるような敷地の近くの例えば洪水をどうやって防止していけばいいのかとか、そういったノウハウを蓄積することによりまして、まず、防災・減災につながっていくということで、長い目で見れば、我々にとっては火災保険の収支も安定してきますし、それによって住みやすいまちづくりというのにもつながってきますので、地方創生にも貢献できると。それによってそれぞれ各地域で、我々、お店も構えておりますので、そこで様々な地域の企業の方との関係もできてきて本業にもつながっていくというような、こういった中長期の視点ではありますけれども、そういう観点から今取組をやっていると、そういうことでございますけど、答えになっておりますでしょうか。

○中村委員 大丈夫です。お二人ともありがとうございました。

○中静委員長 では、藤田さん、お願いします。

○藤田委員 ありがとうございます。

まず、JBIBの足立さんとMS&ADの沖さんの両方にお聞きしたいんですけれども、JBIBではずっと前から関係性マップづくりとかをつくったりして、生物多様性と企業の関わりを調べてくるような活動をずっとされてきたと思います。

今、TNFDに備えて、例えば加盟企業さんにどんな指標で自然への依存度とか影響をはかるようにというのは、アドバイス、既にされたりとか、アドバイスをされていると思うんですけれども、どんな感じの指標を使って、皆さんに進めてもらうということをされているのかということを足立さんに伺いたいのと、あと、MS&ADさんには、機関投資家というか、保険会社としてどんな指標で開示してもらえると金融機関として把握しやすいのかということをお伺いできればと思います。

 もう一点は、これは経団連の長谷川さんも含めてなんですが、非常に進んでいる、TNFDまで勉強したりして進んでいる企業さんと、やっぱり生物多様性って何みたいな、まだこれからの二番手、三番手企業さんとの差がどんどん今開いていっているような気がするんですけれども、こういうようにまだ中小企業だったり上場もしていない企業さんにESG投資といっても、別に上場していないから関係ないというふうに思われるところもあるかもしれませんし、そういう企業さんに取組をプッシュするためにどんなことをしたらよいと思われているかを教えてください。

 以上です。

○中静委員長 じゃあ足立さんから、3番目の質問に対しての答えも一緒にお願いします。

○企業と生物多様性イニシアティブ(足立事務局長) 分かりました。

 まず、どういった指標をお勧めしているかなんですけど、特に私どもとして統一的にこういう指標、こういう測定方法がいいんじゃないかとしているものはございません。というのは、まだ国際的にも一つに収れんしているわけではないからです。

ただそうは言いながらも、幾つかのやり方として、TNFD以前の部分で注目しているのは一つはSBT for Natureですね。というのは、TNFDは開示のためのフレームワークなわけですけれども、SBT for Natureのほうは、それに対して企業としてどう準備をしていくか、あるいは、活動していくかというガイドラインになっていますので、こういうのが役に立つのかなと思います。

 あるいは、最近、IUCNもCDP向けにそうしたガイドライン的なものも出していますので、こういったものも今後企業は参照していくのかなと思います。

 一方で私が懸念する、あるいはJBIBの中でもよく話題になりますのが、そういった多くのガイドライン、フレームワーク、あるいはインデックスというのが、全て海外でつくられているということです。残念ながら日本国内でそれを統一的につくろうという動きはありません。もちろんこれをつくろうと思うとかなりのリソースも必要になってまいりますので、そこを日本全体で、オールジャパンで準備していくということが必要になっていくんじゃないかなというふうに感じております。これがまず1点目ですね。

 あと、すみません、二つ目、三つ目は何でしたか。

○中静委員長 先進的な企業とそうでないところ。

○企業と生物多様性イニシアティブ(足立事務局長) そうですね。

 先進的な企業とそうでないところに関しては、私は、まず、先進的な企業にどんどんやっていただいて、そこで経験をしていただくと。その事例を他に共有していただくということが非常に重要なんじゃないかなと思っているんですね。

というのは、例えばRSPOなんかもそうですけれども、やはり最初は認証制度を使える大きな農場が中心になってやっていきますけれども、それが広がっていくと、結局は中小のところも使えるようになってくるし、あるいは最近であれば、スモールホルダーなんかもサポートするような体制ができていくんですね。それを最初から全ての組織が、全てのサイズの組織が同じようなことをするというのはやはり非現実的だと思いますので、まずはできるところがやっていくということだと思います。

 最後の、ではそれが国内だけの企業には関係ないのかというと、それは決してそんなことなくて、やはりサプライチェーンという意味では海外とつながっていますし、必ずそこは影響を受けるようになると思いますので、そういう意味での啓発は必要で、国内のより小さな規模の事業者、あるいは生産者の方とも提携するというのは、やはり常に意識していかなくてはいけないなというふうには感じております。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、沖さん、お願いします。

○MS&ADインシュアランスグループホールディングス(沖サステナビリティ推進室長) ご質問、ありがとうございます。

 どういう指標で開示をしてもらえば、機関投資家としてはというご質問だったかと思います。

 今、TNFDの中身の検討というのが、TCFDをベースにいろいろ検討をされているというふうに聞いているんですけれども、特にその中でリスクと機会、TCFDの中にもありますけれども、リスクは、当然いろんな財務インパクトを含めたリスクの開示は当然されていくと思うんですけれども、やはり我々としては機会の部分をどういうふうに開示されているのかということは非常に重要だというふうに考えていまして、つまり、ネイチャーポジティブに移行していくために、それにおけるいろんなビジネスが絡んで機会をもって、そのビジネスの中から移行を促進していくというふうな流れをやっぱりつくっていく必要があるかと思いますので、このような機会の、opportunityの開示についての枠組みというのを我々としてもきっちりつくっていただきたいという期待が非常にありますので、特にその中では、開示の中でいくとリスクと機会、両方のきっちり開示ができればなというふうに考えています。

○藤田香委員 ありがとうございました。

○中静委員長 長谷川さん、何かございますでしょうか。

○経団連自然保護協議会(長谷川事務局長) 藤田先生、ありがとうございます。日頃よりお世話になっております。

 進んでいるところと二番手の企業との差の解消をどのように進めるかという話だと思いますけれども、三つございまして、まず1点目は、今まさに国家戦略の中でも議論されているガイドラインについてしっかりと分かりやすいものをつくっていただいて、それを使っていくということだと思います。

 2点目は、ステークホルダーとの関係でということでESGの話と、あと、消費者というのが重要かなというふうに思っております。ESG投資の中でも金融の機能を活用して後押ししていくという話と、消費者がより企業をしっかり選べるということが重要だと思っております。

 その文脈で、先ほど足立さんもおっしゃいましたけれども、重要だと思っているのがメジャーメント、指標だと思っております。皆がしっかり納得できるような、この指標だったら生物多様性に貢献している企業だというふうに言えるというようなものをつくっていくことが重要だと思っています。その中でちょっと若干、日本はそういうところ、弱いところがありますので、日本の地域性も踏まえた中でオールジャパンでしっかり知見を蓄積して、そういったものをつくる。なかなか我々だけでは難しいと思いますけれども、日本全体で、それこそ学者の先生方のご知見をいただきながら、つくっていただくことが重要かなと思っております。

 3点目は、事業活動というわけではないかもしれませんけれども、もし30by30、あるいはOECMで貢献したいという企業があるのであれば、例えばその取組にかかった費用について税制上の優遇をするとか、そういったインセンティブというのはあり得るのかなと思っております。

 以上でございます。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、吉田さん、質問をお願いします。

○吉田丈人委員 ありがとうございます。

 足立さんと長谷川さんに質問なのですが、生物多様性国家戦略、様々な指標、モニタリング指標、ターゲットとかマイルストーンとかを入れるような形で研究会の報告書にも出ているんですが、今日お話しいただいた中で、足立さんのお話の中で、企業による経済活動については、自主性任せだとなかなか流れを変えることは難しいと、もしかすると規制的な手法みたいなものも必要なんじゃないかというお話なんじゃないかと思ってお聞きしていました。

 一方で、長谷川さんのお話では、規制というものではなくて、自主性任せというか、ボランタリーな活動を積み上げていくということが大事だというふうにも聞こえたんですが、その生物多様性国家戦略の中でモニタリング指標をどういうふうに捉えていくか、どういうふうなものを企業の経済活動に関してどういうモニタリング指標を取り込んでいくべきなのかということについて、そのお二人のお考えを少しお聞かせいただければなと思いました。お願いします。

○中静委員長 足立さん、いかがでしょう。

○企業と生物多様性イニシアティブ(足立事務局長) モニタリング指標を何にするのかというのはなかなか難しいんですけれども、一つ間違いないのは、今、30by30なんかもありますけれども、単純に面積だけで見るのではなく、質をどういうふうに高めていくかということがあります。ですので、質をある程度簡便に指標化することができるんであれば、ある一定の質の生態系をどれだけ守ったのか、あるいは回復させることができるかみたいな指標というのがあれば、非常に役に立つと思っています。

 一方、企業などでよく使える指標としては、先ほどのサプライチェーンでいいますと、きちんとサプライチェーンに配慮した原材料を100%使うようにする、そうしたものに切り替えるようにするというようなものが考えられます。

 そういったような指標について、やはり私は必要なものはきちんと、これが必要なんだよと言い切ってしまうことが重要なんではないかと思います。もちろんすぐに切り替えられないのは当然ですし、そのための助けは必要だと思いますけれども、最終的には、じゃあ2030年までにはここまでやっていくことが持続可能な、あるいは生物多様性を保全するために必要なんだよということをきちんと示していただくということが必要かと思います。

 そういう意味で、少しだけ規制の話をいたしますと、規制もその理由が明確なもの、ここは目指す必要があるんだという規制は、当然必要になってくると思います。ただ、その必要性がきちんと説明されていなかったり、その規制を満たすためのサポートがないと多くの事業者はついていくことはできないと思いますので、そういった支援も含めた上で、良い規制制度というものは、必要であればあってもいいのではないかなと考えております。

○中静委員長 では、長谷川さん、いかがでしょう。

○経団連自然保護協議会(長谷川事務局長) 吉田先生、ご質問、ありがとうございます。

規制というか、政策手法という大きな枠組みで考えたいと思っています。その中でどのような類型があるかというと、第一は、これ、まさに規制ですけど、特定の行為を禁止しますという、行為規制ですね。それが一つあり得ます。第二は、開示させる規制、情報開示させることによって企業行動をモチベートしていくような形の規制です。もう一つは、政策手法として先ほどちょっとタックスインセンティブを申し上げましたけれども、インセンティブを与えていくということ。その三つが概念的には考えられると思っています。その中で、行為規制については、これ、絶対的に悪いものというのはもう既に規制されているというふうに思っていますけれども、他方で、生物多様性は多様なものですから、何をどう規制したらいいかというのはなかなか難しい問題があって、コンセンサスを取るのが難しいかなと思っております。

 開示規制については、先ほどのTNFDの話もありますけれども、どのような開示のあり方が望ましいかについて、現在、みんなで知恵を出して一生懸命追求し、みんなが納得できるようなものを開発している段階だと思っております。そういった作業については、事業を担う者としてしっかり貢献してまいりたいと思っているところでございます。

 最後のインセンティブというのは、実はこれ、生物多様性保全の取組は多様とはいいながら、取り組むためにかかるコストは結構一律で考えられます。補助金の場合は取組の手法まで特定しないといけませんが、税制優遇は多様な取組手法に対するインセンティブとなり得るので、政策誘導としては有効なのかなと思っているところです。

 以上でございます。

○吉田丈人委員 ありがとうございます。

○中静委員長 ありがとうございました。

 ちょっとまだ少し議題が残っていますので、企業の方に関してはここまでとさせていただきたいと思います。

 最後、環境教育団体からのヒアリングというのが残っておりまして、これについて時間が残り僅かなのですが、お願いしたいと思います。

 特定非営利活動法人持続可能な開発のための教育推進会議の理事をされております、鈴木様からご説明をお願いしたいと思います。

○持続可能な開発のための教育推進会議(鈴木理事) ありがとうございます。ご紹介にあずかりました特定非営利活動法人持続可能な開発のための教育推進会議の鈴木と申します。 

本日はお招きいただきまして大変ありがとうございます。ちょっと違った視点、教育界のほうからのお話をさせていただきたいと思います。

 ESD-Jは、公益社団法人日本環境教育フォーラムJEEFとともに昨年11月に人づくりという観点から生物多様性国家戦略への提言を環境省に提出させていただきました。

環境問題の解決には様々なものが必要とされますけれども、最も重要な要素の一つが、人々の価値観とか行動の変容をもたらすような人材の育成であるといった認識に立って、11の提言をさせていただいております。

まず、生物多様性に係る学校教育の現場が抱えている問題点について話をさせていただきたいと思います。気候変動問題、生物多様性といった日進月歩であるような環境科学の最新の知見といったものが、教育の世界、特に学校教員に対して適切に伝えられるような仕組みがないことが大きな問題だと思っています。

そのために、気候変動とか生物多様性について、一体、今、私たちは何をすべきかといった認識というのは、特に学校教員の世界に必ずしも十分に醸成されていないことが課題になっていると思います。

また、自然体験の実践方法を含めて、生物多様性に係る基礎知識といったものが教員養成課程に適切に組み込まれていないということがあります。そのために多くの教員が生物多様性に係る教育をうまく行えないといった問題があります。

他方で、学校教育の世界においては、生き物の成育とか自然体験といった生き物に関する様々な教育というものがなされていますけれども、それらが生物多様性と結びつけられていないということが問題ではないかと思っています。

生物多様性の概念というものが、小・中学校でうまく導入されないと、生物多様性について知らずに社会人になってしまうような若者が多く生まれてくるのが今の実態ではないだろうかと考えています。

11の提言については、これまで本日も様々な方からお話をいただいたものとかなり重複するので、ごく簡単に説明させていただきたいと思います。

まず、生物多様性国家戦略では、生物多様性という視点だけではなくて、持続可能な社会づくり全体を鳥瞰的に眺めるような視点が必要と思います。

2点目として、この生物多様性について分かりやすく説明できるような言葉遣いといったものが必要だろうと考えます。

3番目として、市民の意識と理解を深めるために、一般の市民の参加による自然環境等の調査といったものなどを深めることが重要でしょう。

国家戦略の検討に際しては自然科学の専門家だけでなく、広く一般市民とか、特に教育関係者が参加することが重要だろうと考えています。

また、周知啓発を、今まで以上に大規模に多数のアクターが参加して行うような仕組みを考えるべきではないでしょうか。

学校教育の世界においては、生物多様性をより広範に普及するためには、幼稚園から大学までを含めた現在の生物多様性に係る教育体系の大幅な改善強化が必要ではないかと思っています。特に小学校・中学校における生物多様性教育というものを拡充する必要があると考えています。そのような改善というのはなかなか一朝一夕にはできませんけれども、まず第一歩として、教育関係者と対話を進めるための場づくりというものが重要ではないかと認識をしています。

また、子どもの頃の自然体験というものが特に重要であるために、専門家とかサポーター、インストラクターたちによる支援体制の強化を行うことが重要ではないかと考えます。

映像とかゲームとか、新しい手法を用いた教材の開発を一層進めることが重要でしょう。

学校と社会教育施設とのさらなる連携強化が必要ではないだろうかといった提言もさせていただきました。これらは、本日も様々な方々から既に言われていることかと思います。

一方、地球規模の環境問題に係る教育界の動向についてですけれども、ESD for 2030という新しいESD推進の枠組みが2020年から開始されています。今年の5月にはESD世界会議が開かれましたが、その中でも特に気候変動、生物多様性という地球規模の環境問題への取組の重要性が強調されています。

これを受けて、UNESCOやOECDをはじめとして気候変動教育への取組が世界的にも国内的にも強化されつつあります。

他方で、生物多様性についての話というのはなかなか教育の世界で進んでいないのですけれども、気候変動問題、生物多様性問題ともに、社会の仕組みの変革を必要とするという点では共通であると考えています。科学の世界では気候変動問題と生物多様性問題のつながりが強調されています。本日もそういった議論がなされていましたが、教育の世界ではまだ両者の関係、つながりというものは十分に認識されていないような状況にあります。

そのような認識を踏まえ、今年の7月に公表された「次期生物多様性国家戦略研究会報告書」では、私どもの提言というものの多くが反映されていることをこの場をかりて深く感謝をさせていただきたいと思います。

ただ、今後さらに議論を深めることが重要と思っています。特に重要なポイントというのは、教育とか人づくりが各種のレバレッジ・ポイントの中でも最重要であるとの認識を共有することかと思います。今後社会人になるような人たちが、生物多様性とか気候変動についてどのように認識するかが、今後の社会変革の成否を握る鍵となると考えています。

最後に、多くの学校で生き物に関する教育というものが行われています。にもかかわらず、生物多様性問題というのは教育の世界、特に学校教育の世界で十分に浸透しているとは言いがたい状況にあります。そのために、以下の施策を検討していただけたらと思います。

まず、生物多様性に関する最新の科学的知見を学校教員等と共有するための仕組みをつくっていただきたいと思います。

2番目に、学校教育における生物多様性に係る発達段階に応じた教育の在り方の見直しが必要と考えています。特に小・中学校での生物多様性教育というのを強化する必要があると思います。現状では、生物多様性に関する認識がないままに社会に出ていく者が多数存在するような状況が起こっています。

自然体験授業の実践を含めて、教員養成課程での生物多様性科目の充実といったものが必要になっていると思います。

最後に、気候変動教育と生物多様性教育との連携を強化することが必要だと思いますが、教育の世界ではまだそういった取組になっていないので、そこを改善していくことが非常に重要ではないかと思います。

どうもご清聴ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

先ほど、私、言い忘れたのですが、公益社団法人日本環境教育フォーラムの事務局長をされておられます加藤様にもお出でいただいているようですので、質疑応答の中ではご対応をいただければというふうに思います。

 もし委員の方で、質問、それからご意見がある方はチャットのほうに書き込んでいただけますでしょうか。いかがでしょう。

 私からちょっと質問させていただいてもいいですかね。

 例えば、最近、環境教育としての生物多様性だったり気候変動だったりのほかに、例えば生物の豊かなところで教育を受けたりとかということが、精神発達ですとか健康にもいいというようなデータが世界中でたくさん今出始めていると思っているのですけれど、そういう側面というのはこれから強調していくべきじゃないかなというふうに思っているんですが、いかがですか。

○持続可能な開発のための教育推進会議(鈴木理事) ご指摘のとおりだと思います。特に自然教育、自然体験教育みたいなものが非常に重要ということは、国内的にも例えば国立青少年教育振興機構などの研究でも明らかにされています。

そういった側面を含めて、恐らく生物多様性を自然科学的な側面というだけではなくて、より幅広く持続可能な社会づくり、私たちの、さっきOne Healthの話がありましたけれども、そういったことを含めて、より幅広く捉えていくことが必要になってくるのだろうと思います。

○中静委員長 ありがとうございます。

 じゃあ、吉田さん、お願いします。

○吉田委員 ありがとうございます。本当に小・中・高校の先生方というのはものすごく労力をかけて残業も非常に多いですし、そういう中で、例えば小・中学校ぐらいだと環境学習というのは総合的な学習の時間の中で多くが取り扱われていて、それで、先生任せになっているという非常に厳しい現状があると思うんですね。

 私は、やはり学習指導要領の中にきちんとこの生物多様性の問題とか環境の問題をちゃんと位置づけていくことが大事なんじゃないかと思っているんですけど、その議論がどういうふうにされているのかということを少し教えていただけませんでしょうか。生物多様性というと、高校レベルになると、生物の教科書にしか載ってこないんですね。そうではなくて、もっと広く学べる環境というか、学習指導要領が必要なんじゃないかなと思うんですが、そのあたり、どのようにお考えでしょうか。

○持続可能な開発のための教育推進会議(鈴木理事) 学習指導要領が2017年、18年に改訂をされています。その中で持続可能な社会づくりの担い手を育成することが重要ということは明確に書かれました。では、生物多様性についてどうかというと、小学校の学習指導要領の中でも生き物についての話というのはされています。様々な形で入っています。中学でももちろん、そういったものはあります。ただし、生物多様性という言葉が学習指導要領の中で明示的に示されているのは高校の教科書です。

 したがって、先ほど申しましたように、やっぱり今、一部の先進的な学校においては、生物多様性教育というのがいろんな専門家の方々の支援を得て、とてもすばらしいものが行われていますが、今、日本の初等・中等教育の学校は5万以上あります。その中の何%がやっているのかというと、やっぱりほんの僅かな先進的な事例にとどまっています。これを特に、小学校の段階でしっかり生物多様性についての考え方、これは多分、低学年、中学年では難しいだろうから高学年ぐらいになってくるのだろうと思うんですけれども、やはり生物多様性についての基本的な考え方というのをその段階ぐらいで認識するように学習指導要領を変えていかないと、丁寧に普及していくことは難しいのではないだろうかというふうに思っています。学習指導要領というのは、10年に1回改訂するものなので、今すぐには改訂できませんけれども、そのための副読本みたいな形とかを使って、学校教育、特に小・中学校の教育の中に生物多様性教育というのをしっかり取り込んでいくことが必要だろうと思います。毎年、100万人の子どもたちが卒業していくわけなので、絶大な影響力というのが実はあるということをご認識いただけるとすごく良いのかなと思っています。

○吉田委員 ありがとうございます。

○中静委員長 では、愛甲さん、お願いします。

○愛甲委員 コメントと質問とをさせてください。

 今、学習指導要領の話がありましたけど、都市計画学会のほうで去年ぐらいから、地理総合が必修になったことで、持続可能な地域づくりというので都市計画関係のことが高校生全員が学ぶことになるというので学会のほうでワーキンググループをつくって、その対応を検討するなんていうことも行われていて、やはりそういうような、今おっしゃっていたように、生物多様性についても、できるだけ多くの子どもたちが学べるような機会をつくることが大事なのかなと思って伺っていました。

 あともう一つ、最近、北海道なんかでも結構多いんですけど、修学旅行でSDGsに関する研修とか、そういうものを取り組まれている学校なんかが、修学旅行の中で研修をされたりということがあって、私も幾つかの修学旅行の今年、お相手をしたりしたんですけど、そういうSDGsなんかに取り組まれている中に生物多様性というのをうまく折り込んでいって、総合的にいろいろ学んでもらうという方法もあるのかなと思ったりしたんですけど、その辺についてはどうお考えでしょうか。

○持続可能な開発のための教育推進会議(鈴木理事) 修学旅行でSDGsを一つのテーマにするという形は、最近流行みたいな形でかなり進んできています。旅行業界のほうもそれを一つの売りとしてやっていこうということがあって、その中では、ほかの地域の学校、例えば宮城の学校が兵庫のほうに行っていろいろ学ぶとかということがありますが、例えば長野のほうで修学旅行生を誘致するということを目的として、その中でやっぱり自然体験をしてもらうような話といったことも行われていて、できるだけ、そういった修学旅行もSDGsに役に立つような、従来みたいな観光というだけではなくて、自分たちのまちづくりにどうほかの地域のまちづくりが役に立つのか、あるいは、自然体験みたいなものが自分たちにとってどう役に立つのか、もう一度それによって自分たちのまちの生物多様性の良さ、自然の良さというものを見直していくようなチャンスになっていく機会が増えていくと良いなと私どもは思っています。

○吉田委員 ありがとうございます。

○中静委員長 せっかくですので、日本環境教育フォーラムの加藤さんにも一言お願いできればと思うんですが、いかがでしょうか。

○日本環境教育フォーラム(加藤事務局長) 皆さん、こんにちは。日本環境教育フォーラムの加藤と申します。今回、このような機会にお招きいただきありがとうございます。

 鈴木さんからのお話にもあったとおり、今回、人づくりのテーマで提言をさせていただきました。環境問題を解決するためには、規制とか技術革新とか意識改革、必要だと言われているんですが、この意識改革の部分ってなかなか効果が見えづらくて、皆さん大切だと思われているんですが、なかなか効果が見えづらくて広まりにくいというところもあります。

 一方で、意識改革があるからこそ、新たな法律ができたり、新たな技術革新にもつながってくるところもありますので、環境問題解決に向けてのベースになるというところをぜひお伝えしたいなと考えておりました。

 恐らく、今回参加されている皆さんの中にも原体験として自然体験活動があるからこそ、この自然を守りたい、残したいという気持ちで活動されている方が多いと思いますので、そういうような活動を子どもたち、そして大人たちにも多く提供できる機会を、この次期生物多様性国家戦略の中でもつくっていけるようなふうに進めていけると、私自身としてはとてもうれしいなと思っております。

 以上となります。

○中静委員長 ありがとうございました。私の不手際もあってかなり時間をオーバーしてしまいましたが、ちょっともう限界ですので、この辺で質疑は打ち切らせていただきたいと思います。

 あと、その他ということで事務局からお願いします。

○事務局(中澤) ありがとうございます。中静先生、長時間にわたって、また、委員の皆様もありがとうございました。

当初、公開のところで不手際がございまして10分間遅れたことをお詫び申し上げます。

 事務的な連絡を短くお話しします。

まず、第1回の小委委員会で宿題になっておりました内閣府・内閣官房、外務省からの追加資料を配付しておりますので、ご覧いただければと思います。

 また、第1回にもう一つ、白山先生から経産省に対して質問があったものに対して、これは委員の皆様にはお答えしていますけれども、経産省についてACMについての遺伝資源に関わる問題や、バイオの微生物の遺伝資源について取り扱っているかということについて、経済産業省からはACMに加盟する機関においては、領海や公海由来の微生物も寄託されているといった回答がございました。

 それから、これもまた別途、ご案内させていただきますが、今回の意見交換の中で地方自治体関係がございませんでしたが、1月12日に幾つかの地方自治体の首長様に集まっていただきまして意見交換をする機会、中静委員長を含めて予定しています。委員の皆様にもご案内いたしますので、時間があればぜひご視聴いただければと思います。公開で行う予定でございます。

 最後でございますが、ポスト2020生物多様性枠組み、国際的な議論の状況なのですが、1月に予定をしておりました補助機関会合はオミクロンの影響を受けて延期になるとのことです。その影響が国家戦略にどの程度あるか、まだ把握できていないのですが、情報が入り次第、委員の皆さんにも共有させていただきたいと思います。

 事務局からは以上でございます。

○中静委員長 ありがとうございました。ということですが、委員の皆さんのほうから何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 多分、皆さんもっと質問をたくさんされたいことが残っているのではないかなとは思っているので、もしあったら、事務局にメールか何かでお寄せいただいて、それでフォローしていただけるようなことがあればよいかなというふうに思いますが、事務局、いかがですか。

○事務局(中澤) ぜひまたご連絡をいただければと思います。オンラインの特性も活かしながら対応させていただきたいと思います。ありがとうございます。

○中静委員長 ありがとうございます。もしそのほか、委員の方からなければ、これで議事を終了させていただきたいと思います。

 どうも今日は長い時間、さらにオーバーもしてしまいましてどうもすみませんでした。

 皆さん、お疲れさまでした。どうもありがとうございました。

○司会 最後、次回のご案内などさせてもらって閉会にさせていただければと思います。本日は、中静委員長、議事進行、ありがとうございました。また委員の皆様も活発にご議論いただきましてありがとうございました。

 次回の小委員会でございますが、1月19日の水曜日、13時半から開催を予定してございます。第1回、第2回のヒアリング等の結果、それを踏まえた骨子案の検討について議論をさせていただきたいというふうに考えてございます。

 本日は、長時間にわたり、どうもありがとうございました。これにて委員会を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

午後5時20分 閉会