自然環境部会生物多様性国家戦略小委員会(第1回)議事録

日時

令和3年11月26日(金)13:30~16:40

場所

WEB会議システムにより開催

出席者

中静 透     委員長

石井 実    委員

勢一 智子   委員

髙村 典子   委員

藤田 香    委員

愛甲 哲也   臨時委員

大沼 あゆみ  臨時委員

亀山 康子   臨時委員

五箇 公一   臨時委員

白山 義久   臨時委員

中村 太士   臨時委員

深町 加津枝  臨時委員

二宮 雅也   臨時委員

橋本 禅    専門委員

広井 良典   専門委員

森本 淳子   専門委員

議事録

午後1時33分 開会

○司会 大変お待たせいたしました。それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会自然環境部会第1回生物多様性国家戦略小委員会を開催いたします。

 本日は、お忙しい中ご出席いただき、ありがとうございます。

 本小委員会につきましては、中央環境審議会自然環境部会長からご指名いただきました18名の方にお願いしております。

 本委員会の委員長につきましては、中央環境審議会議事運営規則第8条第3項に基づき、当部会長よりご指名いただきました中静委員にお願いしております。

 また、本日の小委員会では、16名の委員にご出席いただいております。

 なお、深町委員につきましては遅れてのご参加、藤田委員におかれましては途中退席されるとご連絡をいただいております。

 本日の会議運営につきまして、ご説明いたします。

 傍聴につきましては、会場での傍聴は行わず、YouTube配信にてどなたでも傍聴いただけるようにしておりますので、ご承知おきください。

 ウェブ会議の開催に当たりまして、委員の皆様におかれましてはマイク、ビデオは各自ご発言の際のみ、オンとするようにお願いいたします。

 なお、ご発言の際はチャット欄に書き込みいただき、ご発言する旨をお知らせください。

 委員長からのご指名後、マイクのミュートを解除していただき、議事録の円滑な記録のため、お名前をおっしゃってからご発言いただきますよう、お願いいたします。

 なお、挙手ボタンは気がつかないこともございますので、挙手ボタンは使用せず、チャット欄をご活用いただければ幸いです。

 本日ご説明する資料につきましては、委員の皆様には事前に電子データにてご送付しております。本日は、事務局が画面上に資料を掲載し、リンクを張っていただきますので、ご案内の資料は必要に応じ、お手元でご参照いただけますようお願いいたします。

 傍聴されている方におかれましては、本日の資料を環境省ホームページにアップロードしておりますので、そちらをご覧ください。

 また、本日の会議については、議事録を作成し、ご出席の委員の了承を取った上で公開することになりますので、ご了承ください。

 それでは、奥田自然環境局長よりご挨拶申し上げます。

○奥田自然環境局長 皆さん、こんにちは。自然環境局長の奥田でございます。

 委員の先生方の皆様には、日頃より自然環境行政にご協力、ご支援いただいていることを厚く御礼申し上げます。また、本日もご多用中のところ、本委員会にご参加をいただきまして、心より御礼申し上げたいと思います。

 本日は、去る8月27日の中央環境審議会の自然環境部会で設置することが決定しました、生物多様性国家戦略小委員会、この第1回目の開催となります。

 個人的には私自身、10年前、ちょうど前の戦略のときの小委員会を立ち上げるときに室長として関わらせていただきまして、今回も多くの先生、そのときお世話になった先生方が今回もご参加いただいていることに非常に感慨深く思っております。

 ご承知のとおり今はちょうど愛知目標に変わる次の世界目標、生物多様性の世界目標であるポスト2020生物多様性枠組、これが国際的に検討されているところでございます。

 この決定は来年の5月になりますけれども、それを待つことなく次の国家戦略、この検討を進めていきたいと考えております。これは新しい世界目標を決定して、速やかにその実施を図ること、これを視野に入れたということでございます。

 COP15に先立って、本年6月11日から13日には、G7のイギリスでのコーンウォール・サミット、ここでも2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという目標を掲げるG7・2030年自然協約、こういったものも採択されました。また、今月開催された気候変動枠組条約のCOP26においても、成果文書であるグラスゴー気候合意、この中で、自然生態系の保護、保全の回復の重要性が指摘されているところでございます。さらに、2030年までに森林減少を食い止めるとした、森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言、これにも我が国を含めた100か国以上が署名をしております。

 私が担当していた10年前に比べると、はるかに生物多様性というのが世界的にも気候変動と並んで注目されていると感じている次第でございます。

 また、近年では、新型コロナウイルスの感染拡大や顕在化する気候変動の影響を受けて、暮らしの在り方そのものを見つめ直すこととなりました。これまでの、自然に対する関わり方を大きく転換し、自然共生社会を実現していくためのロードマップとしての役割、これが生物多様性国家戦略に与えられたものと考えております。

 私自身、前回の戦略を担当しましたけれども、今回はできる限りコンサイスに、今後10年、2030年までの間に何を本当にすべきかということに的を絞って、非常に分かりやすい戦略をつくっていきたいと思っておりますので、ぜひ新しい、これまでも関わってきた先生方も新しい気持ちで、ぜひ新たな現在の視点で、いろいろなご意見をいただければありがたいというふうに思っているところでございます。

 この委員会は新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮して、ウェブを活用した形式で実施させていただいております。委員の皆様にはご不便をおかけする点も多々あろうかと思います。

 ただ、一方で、多くのステークホルダーの皆様にご覧になっていただけるという利点もありますので、何とぞこのご不便についてはご容赦をいただけましたらありがたく存じます。

 また、本日は所用で、私自身、途中中座させていただきますけれども、また戻ってまいりたいと思います。委員の皆様にはこの長い、長時間にわたる会議で、限られた時間ではありますが、密度の濃い議論をしていただきますようお願いを申し上げて、私からの最初のご挨拶とさせていただきます。

 何とぞよろしくお願い申し上げます。

○司会 どうもありがとうございました。

 それでは、これよりの議事進行につきましては、中静委員長にお願いいたします。

○中静委員長 中静です。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 今、奥田さんからご説明があったように、新しい戦略をしっかりした形で作っていくというのがこの委員会の使命ですので、どうぞよろしくお願いします。

 この委員会に先立って、JBO3をまとめさせていただきまして、さらに国家戦略の研究会ということで、今回委員になっていただいている何人かの方にはもう既に大分一緒に議論をさせていただきました。

 その間、GBO5が出たりとか、それからIPBESのグローバルレポートが出たりということで、今回の新しいそのフレームワークの中ででも、間接要因の重要性ですとか、レバレッジポイントが重要というような議論もありましたし、OECMとか、それから金融業をどういうふうに取り込むかとか、NbSというような新しい試みなんかも新しいフレームの中で議論になっていると思います。

 こういうものを取り込みながらも、先ほど奥田さんが言われたように、分かりやすい戦略をつくるということで努力してまいりたいと思いますので、皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は最初にこの委員会の進め方ということを説明していただいた後に、環境省からの方針の説明と、それから各省庁からの説明をお聞きいただければというふうに思います。

 では、事務局からこの委員会の進め方についてのご説明をお願いいたします。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 生物多様性戦略推進室長の中澤でございますが、私のほうから資料1に基づきましてご説明をさせていただきたいと思います。

 資料1は、資料1-1から資料1-4まであります。それから参考資料等もございますが、順を追ってご説明させていただきます。

 まず、生物多様性国家戦略についてでございますがご承知のとおり、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国の基本的な計画として、生物多様性条約に基づいて策定するものでございます。

 平成5年12月に生物多様性条約が発効いたしまして、平成7年に最初の生物多様性国家戦略が策定されました。

 その後、平成14年に新しい生物多様性国家戦略が策定され、生物多様性基本法が平成20年6月に施行されて以降は、この基本法に基づく法定計画としての位置づけもございまして、現在、5つ目の国家戦略が動いています。

 今回ご検討いただくのは、6回目の国家戦略ということになります。

 次のページ、参ります。

 2ページでございますが、先ほど、中静委員長からもご指摘がありました、これまで次期国家戦略の策定に向けて、どういった取組を進めてきたかということでございます。

 四つ挙げさせていただきますが、一つ目に環境研究総合推進費を通じて、自然資本・生態系サービスの自然的・社会経済的価値の予測評価というものがございます。これは武内自然環境部会長を研究リーダーとして、また今回お集まりの先生方からもご参加をいただきまして、進めてきたものでございます。

 2番目は現行戦略の最終評価になります。

 それから3番目、4番目が先ほど中静委員長からご紹介のあった、JBO3、生物多様性及び生態系サービスの総合評価、それから、次期国家戦略のいわゆる方向性、それから課題の抽出を行うための研究会による報告書がまとめられています。

 こういったものを基に、次の国家戦略を検討していきたいと思っています。

 次のページ、4ページ目でございますが、先ほど冒頭にもありましたが、小委員会を設置して進めていただくということで、18名の委員の方にご参画をいただいて、中静委員長の下でご審議をよろしくお願いしたいと思っております。

 以上が1-1になります。

 次のページ、お願いします。4ページ、今後のスケジュールでございますが、この大きな目標としては来年の秋頃にまとめていきたいと思っております。そのために、今後のスケジュールを順番に組んでおります。

 この間、来年の4月26日から、生物多様性条約COP15第二部で次の世界目標が決まる予定です。その世界目標を踏まえながらご審議を進めていただければと考えております。

 以上が、資料1-1でございます。

 続きまして、資料1-2でございます。

 現行の生物多様性国家戦略の概要、それから点検結果の概要につきまして、ポイントを絞ってご説明したいと思います。

 資料の1-2の2ページ目、それから3ページ目は、冒頭に簡単にご説明させていただきましたので省略させていただきます。4ページ目にありますのが、現行の戦略の大きな構成でございます。

 見ていただいているとおり、第1部、第2部、第3部という3部構成になっていまして、第1部はいわゆる戦略と言われている部分になります。この中に重要性、それから理念といったもの、それから4つの危機や、5つの課題、基本的な考え方などを示した上で、長期目標、短期目標、それから自然共生社会におけるグランドデザイン、それを踏まえて5つの基本戦略を示しています。

 第2部では、愛知目標の達成に向けたロードマップということで、世界目標をこの国家戦略に初めて取り込んでおります。

 それから第3部がそれらを実施するための行動計画ということで、各省の約700の具体的施策をこの中に取り込んであるものが、現行戦略でございます。

 5ページ以降が、この現行戦略の評価に関するものでございますが、この5ページにあるように、左から見ていただくとお分かりかと思いますが、愛知目標は20の個別目標がございます。

 これを国内に置き換えて実施していく上では、5つの戦略目標というものを設置した上で、13の国別目標を設置し、これを48の主要行動目標に分割して、81の指標で評価をすると、そういったような大きな構造になっております。

 その指標等に基づいて評価した結果が、6ページ以降に。

 6ページを見ていただきますと、上の四角に書いてありますが、これは今年の1月に公表するものでございますけども、第1部の戦略につきましては、自然共生社会の実現に向けて新たな取組の開始ですとか、国家戦略の改善、構造等の改善等が必要であるといったことが主張されました。

 特に、その国家戦略全体の評価結果ということで、その下のほうは右側につけてございますけども、長期目標、これに関しましては、社会・経済的な要因やその根底にある価値観と行動に変化を引き起こすため新たな取組、国家戦略の構造等の改善が望まれるということ。それから、短期目標につきましては、様々な行動が実施されたけれども、全ての目標が達成したとは言えず、さらなる努力が必要であるということ。

 それから、第1部で先ほど申しました基本戦略の五つございますが、その基本戦略について、この左側にありますように、④、⑤の二つにつきましては概ね達成している。他方で、外来生物に対する防除対策など、さらなる取組の強化ですとか、生態系を活用した防災・減災など、新たな取組の開始が必要といった議論もなされています。

 7ページ目が、今度は少しそれをブレークダウンしたものになりますけども、愛知目標の達成に向けたロードマップ、13の国別目標のうち、明確に達成した目標というのは五つといった評価、ただし全体的には着実に進捗していると、こういった評価をしています。

 第3部「行動計画」につきましては、多くの施策で着実に進捗しています。ただし、その目標達成に至った施策は限られた状況といった評価となっています。

 こういった評価を踏まえまして、8ページ目にございますが、第1部の「基本戦略」の点検結果として、次期生物多様性国家戦略に向けた課題として、特に達成が不十分であった基本戦略の①から③、生物多様性を社会に浸透させる、地域における人と自然の関係を見直し再構築する、さらに森・里・川・海のつながりを確保していく、こういったものについては新たな取組が必要という評価なっています。

 詳細につきましては、参考資料をご覧いただければと思います。

 少し駆け足でございますが、今ほど申し上げましたのが、現行の戦略の評価でございます。

 それからその次、資料1-3に参りたいと思います。

 資料1-3でございますが、これが冒頭、中静委員長からご発言いただきました次期生物多様性国家戦略の研究会の報告書の概要でございます。

 この報告書につきましては、本年7月にまとめられ、既に公表しているところでございます。9回の研究会を開催しまして、およそ1年半以上も審議時間を取っております。

 自然を活用した解決策の考え方を取り入れて、生物多様性の保全、持続可能な利用、それから主流化の観点から、2050年の目指すべき自然共生社会を描いて、2030年までに取り組むべき施策を整理したというものでございます。

 この中で、直にその2030年までに取り組むべきポイントというものが、この真ん中のところ、①、②、③とございます。

 生態系の保全・再生の強化、特に30by30は後ほどご説明しますが、2030年までに陸域及び海域の30%の保全を目指すと、そういった目標でございます。このその達成に向けて従前の取組以外の場所での保全の強化を進めていくということ。

 それから2番目として、②として、幅広い社会的課題への対処におけるNature-based Solutions、これの積極的な活用をしていくということ。

 それから3番目、③として、ビジネスと生物多様性の好循環とライフスタイルへの反映。特に最近ビジネス、それから金融、そういった経済活動と生物多様性をつなぐ大きい動きが非常に活発になっている。これはIPBES地球規模アセスに基づく、いわゆる生物多様性に影響を与える間接要因、そういったものも含めて取り組んでいくべきであるというので、この研究会の報告書では、この三つのポイントを大きな方向性としてお示しいただいたと認識しております。

 以上が、資料1-3に基づきまして、現行の研究会報告書の概要を報告、説明させていただきました。

 それからその次に、資料1-4に参ります。

 これが前回、環境省のほうから次の生物多様性国家戦略の策定に向けた基本的な考え方、論点として、事務方としてお示しさせていただくものでございます。

 まず、次期生物多様性国家戦略の策定方針、その基本的な考え方、全体的な話でございますけども、1ポツ目、先ほどまで申し上げてきたとおり、生物多様性の損失というのは気候変動とも並ぶ地球規模での重要課題であると認識しています。

 気候変動対策を含む様々な社会課題の解決に自然を活用した解決策、Nature-based Solutionsが重視されると、こういった背景からも、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることへの要求が高まっています。

 これらへの対応に必要とされている、本日まで様々な自然保護としての努力を進めてきたわけでございますけども、そういったものに加えまして、社会経済活動への生物多様性の主流化に関する行動を示していく必要があるということです。

 次期生物多様性国家戦略の基本的な性格として、三つを整理させていただきました。

 一つが、世界的な状況への対応ということで、ポスト2020生物多様性枠組への対応をしていくということです。

 それからもう一つが、世界と日本のつながりの中にある課題への対応になります。例えば、世界目標の中でも、そのビジネスによる生物多様性の負荷の軽減とかというのがございますが、日本で申し上げると、やはり圧倒的に海外からいろいろな資源を輸入しています。そういったその依存している資源の持続可能性の確保、サプライサイドというよりは、むしろコンシューマーサイドとして、世界と日本のつながりの中にある課題への対応をする必要があるのではないか。

 次、これは国内の状況でございます。日本の生物多様性の状況やその背景にある社会経済状況への対応をきちんとしていく。

 それから、こういったものに対応するために、2050年「自然との共生」からのバックキャスティングで、2030年までに取り組む目標や行動を示していく。

 目標の達成に向けて必要な行動、これまでの自然保護のみならず、気候変動とか循環経済との連携・貢献といった、社会経済活動への働きかけを含む。

 こういったものにつきまして、分かりやすく提示していくために、指標をきちんと設定していきたいということ。さらには、構造と分量を見直す必要があるのではないかということ。

 もう一つのポイントとして、この目標達成に向けても、達成状況を中間段階で評価をして、その結果を踏まえた努力量の追加を行っていく。そういったPDCAサイクルもやはり重要であって、そういった基本的な考え方として進めていきたいと考えています。

 検討の進め方でございますが、これも先ほどからの繰り返しになりますけれども、次期生物多様性国家戦略の研究会報告書、これを基礎に検討を進めていただきたいと考えています。

 2番目が、次期生物多様性国家戦略の策定に向けた主な論点ということで、構造的な部分も含めて整理をさせていただきました。

 まず、この次期生物多様性国家戦略の策定に向けた背景で、現行の戦略は愛知目標の採択と東日本震災に対して、これを背景として策定しておりますが、次の国家戦略につきましては、次の生物多様性世界目標であるポスト2020生物多様性枠組や、SDGs、COVID-19、気候変動、人口減少、こういったものがあげられるのではないかと考えておりますが、その他にも取り上げる事項はあるかどうかということです。

 それから次のページに参りまして、生物多様性の現状と課題ということで、この次の生物多様性国家戦略の基礎となる現状と課題を抽出する情報源として、国際的な情報としてはIPBESによる報告書、その他ここに報告書を示しましたが、これら以外にもあるか。

 国内情報としても基礎調査やJBO3などを掲げさせていただきましたが、これに加えて何かほかに追加すべきものがあるか。

 それから、国家戦略の中で、二次戦略から生物多様性の危機を示してきました。現在、4つの危機を提示しているところでございますが、これらに加えるべき危機の要素はあるかでございます。

 3番目として、本戦略の目指す姿・長期/短期目標でございますが、現状の国家戦略の策定後、約10年間の自然、それから社会状況の変化を踏まえまして、目指すべき自然共生社会の要素として、加えるべき要素があるかどうかです。

 特に、長期目標、短期目標につきましては、長期目標は、2002年の国家戦略で「自然との共生」を掲げております。こういったものを引き続き続けるということでよいか。短期目標につきましては、G7の2030自然協約に示され、ポスト枠組、次の世界目標の案の中にも含まれている、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる、でよろしいかどうか。付け加えるべき要素はあるか。そういうことが論点になると思っています。

 それから、2030年に向けた取組の柱や国内目標につきましては、先ほど申しました国家戦略の研究会の報告書の中で三つのポイントを示していただきました。この三つのポイントにつきまして、またその変更、追加すべき事項はあるかどうか。

 さらに、国家戦略では、20の愛知目標を13の国別目標に整理している。そういった、国際目標と国内での目標の関係も、国際目標について国内の状況を踏まえて、アダプティブというか、状況に合わせた対応を進めていくことでよろしいかということです。

 それから、(5)でございますが、本戦略の効果的な実施に向けた方策や仕組みということで、先ほどより、何回か繰り返させていただいています、PDCA、モニタリング・評価、それから、これらを踏まえた努力量の強化、こういったものについて、次の世界目標の中ではPDCAが非常に重視されているという、そういった検討過程でございます。次期国家戦略の中でも、こういったPDCAについて特に留意すべき事項はあるかどうか。

 それから、研究会報告書では、三つのポイントを支える実施体制等といたしまして、七つの項目、構造の明確化等を示させていただいています。これらについて、変更または追加するべき事項があるかどうか。

 それから、国家戦略の点検結果からは、この国家戦略の構造の明確化というものも指摘されております。先ほどの繰り返しになりますが、現行の国家戦略が3部構成でございますが、構造の明確化という観点から、次の国家戦略では目標から行動までのつながりを分かりやすくするということで、例えば、第1部に長期目標ですとか、戦略部分を書いた上で、第2部にその施策について挙げていくと、そういった構造も考えられるのではないかということでございます。

 さらにその次のページ、行動計画でございますが、この施策、約700の施策があると申し上げましたが、この施策と目標を直接的につなげていくことが必要ではないかと。現行の戦略ですと、そういった施策の目標と施策の間に三つに分類して示させていただいています。

 目標とその施策を直接的につなげていく観点から、2030年に向けた取組の柱や国内目標の下に施策を位置づけることが考えられるのではないかと書いているところでございます。

 以上が次期生物多様性国家戦略の検討の論点として整理させていただいた中身でございます。

 5ページに参りまして、30by30ロードマップについて示させていただきました。これも、冒頭で少し触れさせていただきましたが、30by30というのは2030年までに陸域、それから海域の30%の保全を目指すという目標でございまして、世界目標の検討の中でも議論されており、また、日本も参加しているG7では、既にこれを進めていくことに約束しているところでございます。

 この30by30については、こういった背景を踏まえまして、国内ではきちんと実施していく。それは次の国家戦略の大きな柱の一つになるということで、30by30の実現方針、その実現に向けた考え方及び進めていくためのロードマップを策定していくことを、検討しています。

 この基本的なコンセプトというものは、今年の8月に既に公表させていただきました。これは、この小委員会が設置された第44回の中央環境審議会自然環境部会と同日に公表したものでございまして、当日の自然環境部会でもご説明させていただいたと思います。

 この基本的なコンセプトを踏まえまして、ロードマップをCOP15の第二部、来年の4月から5月に開催される予定でございますが、そこでも発信していきたいということでございます。

 こういったロードマップについて、保護地域のさらなる拡充や管理、さらには、保護地域以外の場所での生物多様性保全に貢献する場所、OECMというものがございます。後ほど、これは、環境省の施策の中でご説明させていただきたいと思いますが、そういったもの、さらには、地域、企業、一人一人の取組、それから情報基盤、そういった要素をこのロードマップに組み込みたいと考えております。

 このロードマップが、次期生物多様性国家戦略の重要な要素として組み込まれまして、2030年に向けた取組の柱ともなるべきと考えています。

 このロードマップでございますが、7ページでございますけれども、今後の検討の進め方でございますが、政府内部で検討を進めまして、その状況を本委員会にも報告させていただきながら、またご意見を賜りながら、検討を進めていきたいと考えています。

 スケジュールは、この②に示させていただいたとおりでございますが、基本的には、政府内部で検討するところに、この小委員会の中でもいろいろとご意見をいただいてまとめていくと、そういった大きなスケジュールで考えているところでございます。

 以上、非常に長くなりましたが、生物多様性国家戦略の検討に関する基本的な考え方としてご説明させていただきました。

 ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 今この委員会での議論の進め方という点と、特に最後のほうで論点ということで、どういう点をこれからの論点としていくということについての事務局からの整理していただいた中身をお話しいただきました。

 これについて、皆さんのほうからご意見あるいはご質問ありましたら、お願いいたします。

 ご質問の方は、申し訳ありませんが、チャットに書いていただければ私のほうで指名させていただきます。よろしくお願いします。

 いかがでしょう。

 じゃあ、中村さん、どうぞ。

○中村委員 ありがとうございます。

 一つは、多分書き込まれてはいるんでしょうけども、そのカーボンニュートラル2050に対して、この生物多様性国家戦略がどんな形で貢献できるのか。

 それと、危機とまでは言わないんですけど、やっぱり再生エネルギーが北海道も含めて非常にたくさんできるようになってきて、その点もしっかり捉えていく必要があるのかなというふうに思いました。

 それから、OECM、30by30を進めるのが、今のこのロードマップだと来年の1月に素案ができるということで、そうなると、OECMがどんな形で定められていくのか、しかもその管理指針的なものが具体的に示されてこないと、なかなかどんな土地がOECMになるのかが見えてこなくて、このロードマップがつくりづらいんじゃないかなと思うんですけど、その辺についてはどうなのか教えてください。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 事務局からどうでしょう。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 まずその1点目、気候変動につきましては、資料1-4にございますけれども、この1の(4)に、2030年に向けた取組の柱や国内目標ということで、人口減少社会、それから気候変動等に対応する自然を活用した社会的課題解決、そういったNature-based Solutionsの考え方も含めまして、再生エネルギーの関係、それからその気候危機に対する対応というものも、当然この中に対応していきたいと思っております。

 そういった中身ございますので、これ、冒頭にも書かせていただきましたが、1(1)の4ポツ目、目標達成に向けて必要な行動、従前の自然保護のみならず気候変動、それから循環型経済との連携、それから貢献、そういったものにも分かりやすく示していきたいと考えているところでございます。

○堀上自然環境計画課長 自然環境計画課長の堀上です。

 今のご質問ありましたOECMのスケジュールですけれども、資料の中では、資料1-4の1ページのところに少し書いてありますが、昨年度から検討会をやっておりまして、今年度はOECMの検討会を3回やる予定でございます。

 その中で、OECMについてのその、特に民間の活動をしているところについての認定の基準を定める予定です。それは、その次の第2回検討会が12月8日ですので、そこで基準の案をお示しする予定です。

 ですから、今並行してその検討が進められておりますので、ロードマップをつくるに当たっては、その基準の検討を基に、OECMをどういうふうに進めていくのかというところをロードマップに示していきたい。

 なおかつ、その来年度については、OECM認定の試行を進める予定でして、そういう試行を進めながらやっていくことについてもロードマップの中にも入れていきたい。そう考えております。

○中静委員長 中村さん、よろしいですか。

○中村委員 はい。大体分かりました。

 最初のところについては、2050という目標がもうできてしまったので、気候変動に対してどう適応していくかという議論だけではなくて、2050年カーボンニュートラルにするという目標に対して、様々な再生エネルギーの設置が国土の中で行われていると思うんです。

 これからの予定もたくさんあると思うので、それと生物多様性の保全がうまく調和的になるように、そこだけを強くお願いしたいと思います。もしくは戦略に書いていきたいなというふうに思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、広井さん、お願いします。

○広井委員 ありがとうございます。

 私のほうからは、基本的な認識に関わることで、やはり新型コロナに関することはかなり重視してよいのではないかというふうに思うんですね。言葉としては入っていたと思いますが、やはりコロナ、世界を一変させたことは言うまでもないわけですが、要するに、その生態系の問題あるいは生物多様性の危機がいよいよその人間の健康にまで影響を及ぼすようになってきたと。

 これは生物多様性ということが重要であるというのを、これまでそれほど関心のなかった人に実感として認識してもらう意味でも、非常に重要ではないかと思うんですね。

 様々な研究がいろいろ出始めていると思うんですが、要するに、私も決して専門ではないのですが、森林の減少のためにその生物多様性が損なわれる結果、そのウイルスを保有するその動物の密度が濃縮されるといいますか、そういう中で人獣共通感染症が非常に発生しやすくなって、現に多発しているという、そのあたりの点。まさにその生態系の問題が人間の健康にも影響を及ぼしていると。

 たまたま先日WWFのLiving Planet Reportですか、ちょっと目にする機会があったんですけども、そこでもやはり生態系の問題がいよいよヒューマンヘルス、ウェルビーイングにまで影響を及ぼすようになってきているというようなことで、割とコロナの問題、重視していまして、そのあたりをひとつ、重要な論点として考えていくのが先ほども言いましたように一般の人々にこのテーマの重要性や今起こっている構造的な変化を認識してもらうためにも重要ではないかというふうに思います。

 以上です。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございます。

 事務局から何かありますか。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 これも先ほど1-4の2番目の次期生物多様性国家戦略の策定に向けた主要な論点の背景の部分で、COVID-19というものは、次の国家戦略の背景となると認識しております。

 ご指摘も踏まえまして、様々なご意見を賜ってまとめてまいりたいと思います。よろしくお願いします。

○中静委員長 では、ニノミヤさん、お願いします。

○二宮委員 二宮です。

○中静委員長 ああ、二宮さん、どうも失礼しました。

○二宮委員 ありがとうございました。いえ、とんでもありません。

 そもそも今回の戦略の策定に当たって必要なことというのは、やはり国民、マルチステークホルダーに対して分かりやすいものであること、そして正しく認識をして、行動変容、社会変容を起こすことであるというふうに思います。

 そもそも、生物多様性国家戦略の位置づけなんですけれども、私はSociety5.0第5期科学技術基本計画で閣議決定され、第6期にも引き継がれ再提示されているわけですけれども、これが2030年に向けて我が国が目指す未来社会、いわゆる国家戦略という位置づけであって、SDGs等も軌を一にしているということから、経団連は政府と一体となってこのSociety5.0、最重要戦略として進めているわけです。

 それで、SDGsの根幹にあるのも、やはり気候変動と生物多様性、これが土台になっていて、地球規模の課題が上に乗っかっているというそういう図からすると、やはりSociety5.0のその一部、部分を担う戦略なのかなというふうに理解しています。

 それで、背景についてなんですけれども、これは、私、第五期の環境基本計画、これ、とってもよく、分かりやすくできていると思っていまして、第1章の持続可能な社会の潮流からそのパラダイムシフト、そして地球環境の危機、地球の限界、プラネタリー・バウンダリーに言及をして、図やグラフを使って、いわゆる現実、地球の真実と今ある現実をしっかりと示していると。そして、この中で、やはり先ほど申し上げたような正しい認識をして、行動を取るような、そういった啓蒙になっていると思うんですね。

 ですから、そういう分かりやすさ、段取りというものがこういったものには必要なんであって、生物多様性ということで、まず最初から入っていくと、なかなか国民には分かりづらいんではないかというふうに思っています。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。

 事務局から何かありますか、今の。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 その必要とされる背景というところからきちんと説明していくことの重要性と認識いたしました。

 Society5.0、それからSDGs、こういったものに対して、生物多様性が貢献できるという観点も当然、この中に加味していくものと考えています。

 今後とも意見をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○二宮委員 ありがとうございます。

○中静委員長 Society5.0はウェルビーイングというようなことも入れているので、これは重要な視点だと思いますね。

 では、藤田さん、お願いします。

○藤田委員 藤田です。

 質問じゃなくて、もう個々の話に入ってよろしいんでしょうかね。

 まず、ちょっとこの次期国家戦略の(1)背景のところなんですが、ほかに取り上げるべき事項はあるか。ぜひ自給率なんかも入れてもらえるとよいです。これ、日本国内の国家戦略であれば、やはり資源の自給率、食料自給率、例えば食料なんかは4割であり、その食糧問題が森林とか気候変動、いろいろ絡んでいます。また、木材自給率も4割ですよね。だからこそ持続可能な調達、ほかの国の生態系に影響を与えないような調達が必要なんだということをぜひその背景の一つには入れるべきではないかと思います。

 最近、大学等で教えたりしていると、学生によっては、なぜ日本は森の国なのに木材をそんなに輸入しているのだと。それは安いからだろうとか、意外とそういうことを理解していない学生も多いです。なので、ぜひそういう視点は入れていただきたいなというのが1点です。

 それから次、(2)のちょっとスクロールしていってほしいんですけど、国際的な情報で他に何か見るべきものはありますかというところは、例えばやっぱりG7の自然協約も入れていただきたい。ネイチャー・ポジティブという書き方もしてありますし、世界経済フォーラムの報告書もネイチャー・ポジティブと言っていますよね。こうした報告書も入れてもらいたいなというのが(2)です。

 それから(3)の基本戦略の目指す姿、長期、短期目標、ここにぜひネイチャー・ポジティブという言葉を使ったらどうだろうと思います。明確に、G7でもネイチャー・ポジティブと言っていますし、世界経済フォーラムでもネイチャー・ポジティブの経済を目指すべきと書いてあるので、もう(3)もネイチャー・ポジティブというものを明確に打ち出して、その目標のところに、入れたほうがいいんではないかというふうに思っています。

 それから(4)の、今度は2030年に向けた取組の柱や国内目標のところで、最初に申し上げたこととちょっと似ていますけども、こと国内に関しては自給率を上げながら生物多様性の保全と持続可能な利用を目指す。というように、やはり自給率マターみたいなのはぜひ入れてもらうと、若い世代にも、なぜ自分たちが海外の資源を使って、こういう生活をしているのかということが分かりやすいんではないかと思います。

 あと、もうちょっとだけ。(5)に下りていってください。今後は具体的な方策や仕組みのところで、例えば今後、持続可能な調達に関する目標値の設定とか、例えば方針を策定するとか、その持続可能な調達に関する具体的な目標もぜひあったほうがいいなと思うのと、あと、これから恐らく重要になってくるのは、TNFDなんかが今後10年重要になってくると思うので、TNFDに賛同する企業の数とか、SBTNを進める企業の数とか、そんなことも何か、方策や仕組みの中に盛り込んでいくといいと思っています。

 最後(6)です。(6)のところで、具体的な行動計画。やはり国民が何をすべきかということが、これまでもありましたけども、700目標あると、国民はどれをどうやっていいか分からないというのもありますし、もちろんコンパクトな目標もこれまでもあったんですが、何か具体的な例示をもっと分かりやすくしていただきたいというのが一つです。もう1点は、ぜひSDGsとのリンクを明確化してもらえるといいかなと思います。今どんな企業もあるいはどんな学生も国民も、SDGsという言葉、人口に膾炙していますので、これをやることが、SDGsの何番に貢献して、どの程度貢献するのかということを明確化することで、生物多様性国家戦略として進めるときに、人を巻き込めるんではないかというふうに思っています。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 大変具体的なところまでご指摘いただいて、ありがとうございます。

 ご意見として伺うのでもいいんですけど、事務局から何か特にありますか。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 特にその持続可能な調達のところでは、1(1)の2ポツ目の二つ目では、世界と日本のつながりの中にある課題への対応ということで、海外に依存する資源の持続可能性の確保と、生態系サービスも持続可能な形で享受するという観点、自然の恵みを持続可能な形で次世代につなげていくという観点で、この持続可能な調達、生物多様性の観点からどうやって書き込めるか、またいろいろとご指導いただきながら書いていきたいと思っています。

 その他、ネイチャー・ポジティブ等、様々なご意見いただきました。そういったものも参考にして検討を進めさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、橋本さん、お願いします。

○橋本委員 ありがとうございます。

 まず(2)の新たに加えるべき危機の要素ですが、私、常々思っているのがこの4つの危機の分類で良いのか悩んでいます。例えばJBOの作業や国家戦略の研究会では、この4つの危機と、IPBESの直接要因との関係の翻訳作業が必要になりました。国内の危機の分類を、国際的な枠組みにある程度整合させていくほうが効率的ではないかと考えています。この危機の分類自体が国内でも定着しているので、この危機に新たな項目を追加するという視点での議論にしかならないかもしれないのですが、もう少し一般的に知られる直接要因の分類と合わせていくという書き方はないかなということです。

 次が(5)で、構造の明確化の部分です。今ポスト2020のGBFの議論でやっているように、goals、milestones、targetsの関係を、構造の明確化に持ち込めないものでしょうか。そうすると、後々国家戦略とそのグローバルな目標との整合性の確保や、進捗管理がやりやすくなるでしょう。ポスト2020のGBFにおけるgoals、milestones、targetsの整理は、theory of changeという枠組みで作られていて、理論的にもしっかりとしているので参考にしても良いのではないでしょうか。

 三つ目は、ロードマップに関係するコメントです。基本コンセプトのスライドにある期待される効果に防災を入れてはどうでしょうか。国内ではEco-DRRやグリーンインフラ、流域治水だと今言っているわけですから。国際的に広まりつつあるNbSでも災害面での活用が考慮されていることを考え見ても防災がキーワードとして記載されていても良いと思いますがいかがでしょうか。

 また少し別な話になりますが、OECMについては内容の具体化を進め、関係省庁との協議を急いだほうが、より具体的なそのロードマップの策定につながっていくと思いますのでご考慮いただきたいと思いました。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。

 すみません。ちょっと時間もなくなってきたので、委員の方からコンパクトにご質問を先にいただいて、もし事務局からコメントがあればという形にさせていただければと思います。

 じゃあ森本さん、お願いします。

○森本委員 こんにちは。

 次期生物多様性国家戦略の策定に向けた論点を整理していただいていましたが、(4)2030年に向けた取組の柱や国内目標について留意すべきことはあるかという点について、意見です。今の生物多様性国家戦略の実施状況の点検結果を整理して示していただきましたが、それをどう生かしていくのかという視点がちょっと見えませんでした。例えば、基本戦略五つの目標のうち二つが達成できなかった、愛知目標については13のうち五つだけ達成したがその他できなかった。

 できた理由、できなかった理由の分析を恐らくされていると思うので、その反省に基づいて新しい目標を設定するという仕組み、考え方が大事ではないでしょうか。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、勢一さんもお願いします。

○勢一委員 ありがとうございます。勢一です。

 私からは3点ほど申し上げたいと思います。

 一つが、目標の考え方です。長期、短期と書いてありますけれども、中期という発想は入れなくてよろしいのでしょうかという点です。カーボンニュートラルの議論では、海外では一般的ですけれども、ロードマップのような形で、あるいはマイルストーンでしょうか、目標を見据えて先送りしないような形で進めていくためには、もう少し細やかな設定も考える必要があるのではないかと感じたところです。

 2点目は、組織体制に関して、ある程度書く必要がないかという点です。恐らく、領域横断的な体制で実施せざる得ない形になろうかと思います。現場で、例えば自治体や民間事業者、NPOなどが動くためには、やはり各国の各省庁の施策が調和的につくられていないと、現場で各主体がそれぞれ対応するというのは非常に難しいと思いますので、横断的な組織体制の確保という点をご検討いただく必要があるのかなと思いました。

 最後3点目ですけれども、やはり人口減少の時代になりますので、専門人材が不足するということがあろうと思います。人材の育成のことは書いてあったと思うのですが、それ以外でもデジタル化、DXであるとか、最近はドローンもよく使われていますけれども、技術で超えられるような部分を伸ばしていく、技術で対応していくということも必要ではないかと感じました。

 取りあえず、以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、愛甲さん、お願いします。

○愛甲委員 愛甲です。よろしくお願いします。

 私から三つ、発言させてください。

 一つは、今回の戦略はできるだけ分かりやすくというようなお話がありましたけど、現戦略とかを見たときに、あの評価の中にもそういう話ありましたけど、構造的なものもそうですが、この戦略が国としていろいろ持っている、先ほどから話が出ているSDGsとかカーボンニュートラルというような様々な計画とか戦略というものに対して、どういう関係で生物多様性の国家戦略が位置づけられているのかというのが少し分かりにくいんではないかという、その関係性をきちんと示したほうがいいんではないかという意見がまず一つです。

 それから、分かりやすくというところで、これは適切な指標を設定するとか、構造と分量を見直すとかというのが提示されていますけど、ここ、もう一つはやはり誰に向けてこの指標を設定するにしても、誰が行動すればいいのかというところがちょっと現戦略では分かりにくかったんではないかという印象を持っていまして、その辺をきちんと検討する必要があるかなというふうに思っています。

 もう一つは、30by30のロードマップについて、これは質問に近いんですけど、保護地域になっているところと、それからOECMとして先ほど例示されていたところは、どちらかというと民間の取組で守られているところということになりますけど、その中間的なもの、条例だったりほかの法律だったりというので保護地域的な役割を果たしているものについては、議論されているのかということと、ロードマップを示すときに、今日の資料でOECMのこと、中心的に書かれていましたけど、もちろん既存の保護地域についてもそのロードマップの中で触れるんですよねというのをちょっと確認したかったという、その3点です。

 よろしくお願いします。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、石井さん、お願いします。

○石井委員 ありがとうございます。石井でございます。

 私は(2)の生物多様性の現状と課題の中にある二つ目のポツ、先ほど橋本委員からもご指摘ありましたけど、第1から第4の危機のところです。

 私は橋本委員と違いましてこれを愛用していますので、これを壊してほしくはないんですけれど、昨今の生物多様性の劣化を見ていると、その要因の中に野生獣、特にニホンジカなどの増加による植生の破壊、あるいは植生の変化というのがあるんですね。これが、実はこのどこに当たるかというのがなかなか難しいんですね。多分、里山問題という形で第2の危機に入れるのが一般的なのかもしれませんが、一般市民にはとても分かりにくいと思います。

 なので、一つのアイデアとして、第2の危機の書き方を少し変えて、里地・里山・里海に関わる危機というふうな書き方にするか、あるいはもう一つ増やして、野生獣の増加による危機のような要因を明確にするというのはありなのかなと考えたりしています。ご検討いただければと思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 というわけ、今ご質問を希望されている方の発言が終わったんですけど、事務局から、全部でなくても結構ですので、かなり前向き、有益なご意見がいっぱいあったと思いますけど、コメントできるところがあればお願いします。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 まず、構造に関するご意見、これにつきましては今後の検討の中で様々なご意見をいただきながら検討してまいりたいと思います。特に危機の構造につきましても、いただきました意見、我々としても今の四つの危機に加えて、まだあるのか、それとも今の危機の中身を変えるのか、そういったところも十分議論を詰めていきたいと思っています。

 それから、ご質問の中でございました、各省庁横断的な仕組みということでございますが、国家戦略の関係省庁連絡会議というのがございまして、これが政府全体の横断的な枠組みとしてございます。これ以外にも、例えばマルチステークホルダーでこれを進めていくというもので、UNDB-Jがあって、今ポストUNDB-Jというものが動きつつありますけども、そういったものもひとつ、分野横断的な取組の一つになっております。

 それから、ご質問の中で、30by30、OECMということでございましたが、この他の施策との関係、これは基本的に保護地域の中に組み込まれている条例とか法律に基づく施策、そういったものの充実についても考えているところでございます。

 その他、非常に有益なご示唆をいただきましたので、国家戦略の点検を踏まえて、それをどうやって生かしていくのかという観点も踏まえながら、今後の検討を進めさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございます。

 次の議題が環境省の施策紹介と質疑ということなので、この中でも今のご質問なんかに応えられるようなところもあるのかなというふうに思いますので、時間もありますから、先にちょっと進ませていただきたいと思います。

 二つ目の議題ということで、環境省の施策紹介ということで、事務局からのご説明をお願いします。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 それでは、資料2に基づきまして、各省施策のトップバッターとして、環境省の施策について、ポイントを絞ってご説明をさせていただきたいと思います。

 生物多様性に関する施策、非常に多岐にわたるものに取り組んでおりますので、先にお詫びさせていただきますが、若干駆け足的なご説明になると思います。

 表紙のところに書いてございますが、環境省に限らず、先ほどご説明させていただきました国家戦略研究会の報告にある三つのポイントに沿いまして、どんな施策を進めてきたか、三つのポイントの中で、何が、どんなところが求められていたかを中心に書いてございます。

 もう一つ、この書き方のポイントとしては、過去10年間、要するに現行の国家戦略の中で特に取り組んできた中身を中心に書かせていただいております。

 ということで、中身に入らせていただきますが、3ページ目を開けていただければと思います。

 三つのポイントで整理しておりますが、自然共生社会構築の基盤としての生態系の健全性の回復、これはいわゆるこれまで伝統的にと申しますか、環境省が自然保護の施策の中心として取り組んできたものについてでございます。

 それから、2番目の人口減少社会・気候変動等に対応する自然を活用した社会的課題の解決というのは、こういった、守ってきた自然環境というものをきちんと持続可能な形で利用していこうと。そういった施策を中心に書かせていただいております。

 3番目が、新たな取組というか、ビジネスと経済との関係、気候変動ではいろいろと先進的な取組をされていると認識しています。こういったものについて、生物多様性でもいろいろな要求があるという背景で、どういったものに取り組んでいるかということを中心に、この中で触れさせていただいているところでございます。

 では、中身に入ってまいります。

 まず、一つ目のポイントの、いわゆるその健全性の回復、基盤づくりというところでございます。5ページです。

 全体、20枚ございます。1枚を1分で説明しても20分はかかってしまいますので、ポイントを絞ってご説明させていただきたいと思います。

 まず、求められる施策、これの上の四角でございますが、ここは繰り返しになりますが、次期国家戦略の研究会報告書の中で、どういったことが必要だということが書かれていたか。そういうことを書いております。

 その下の現在の状況ですが、ここのところは、個別の説明の中では触れないで、現在の状況について、どんな進展があったか、どんな取組をしているかというところを中心にご説明をさせていただきます。

 まず、現在の状況でございますが、特に保護地域、5ページ目は保護地域を中心にした保全管理、特に陸域のところでございます。陸域それから内陸水域につきましては、20.5%を保護地域により保全・管理して、愛知目標の下での国別目標を達成しております。

 また、現場でございますが、自然保護官、それから国立公園管理事務所増設により、管理体制も強化しているということでございます。

 個別の施策でございますが、国立・国定公園の指定・拡張の状況ですとか、国立公園の管理体制の拡充、そういったようなもの、さらに新たに世界自然遺産になった奄美大島、それから徳之島、沖縄島北部及び西表島、そういった状況についても書かせていただいています。

次、6ページに参ります。海域につきましても、重要海域の抽出、それから法改正、これは自然環境保全法でございますが、こういった改正を通じまして、沖合域を含め保護地域を大幅に指定・拡張することで、愛知目標の下での国別目標を達成し、今、我が国の海域の13.3%が保全・管理されていると。さらには、瀬戸内海環境保全特別措置法の改正により、沿岸域における生態系の保全・利用を推進しているところでございます。

以下には、海域の保護地域の拡張の状況ですとか、瀬戸内法の改正の取組、そういったものに触れているところでございます。

次、7ページ目になります。今度は、いわゆる希少種と言われているものへの取組でございます。これは種の保存法に基づく国内希少野生動植物種の指定を83種から395種まで増やしているとか、64種を対象に保護増殖事業を進めています。さらには、2017年の法改正以降、新たに二次的自然に生息する種の積極的な保全等ということで、いわゆる特定第二種につきましても取組を進めているほか、レッドリストの検討対象、これを海に広げていくとかいった取組を進めているところでございます。

今ご説明したような関係をこの下のところに書いているところでございます。

次は8ページ目になります。8ページ目は、外来種、それから鳥獣の課題でございます。侵略的外来種につきましては、防除対象とする種の優先順位づけ、それから希少種が分布する地域における防除事業というものを重点的に進めました。その成果として、奄美大島など一部地域では、根絶も視野に入りました。加えまして、広域分布種とか非意図的に導入された外来種、これはヒアリに代表されるものでございますが、そういったものの対策についても拡充をしているところでございます。

それから、鳥獣ですが、いわゆる半減目標と言われているものでございますね。この半減目標に向けて、鳥獣の捕獲を重点的に進めました。例えば、ニホンジカの個体数につきましては、2014年以降、減少傾向であることが成果として得られているところでございます。外来種対策の推進、それから鳥獣保護管理、こういったものにつきましては、以下のところに個別の施策の成果等が書かせていただいているところでございます。

それから、9ページが自然再生等ということで、重要地域の選定等も含めてのご説明をさせていただきます。自然再生事業、それから生態系維持回復事業に関する施策によりまして、保護地域内外において、保全・再生・持続可能な利用等の取組を促進しました。また、いわゆる保護地域内外含めまして、里山、海域、湿地における重要地域の選定を進めまして、国土において優先すべき、保全すべき地域を示しております。

以下、自然再生の取組が進められているところの事例、さらには、保全上重要な地域の選定ということで、重要里地里山、それから重要海域、重要湿地、それぞれの選定状況を説明させていただきます。

次、10ページに参ります。先ほど幾つかご質問もいただきましたOECMでございます。これは、昨年度から、我が国におけるOECMの考え方、役割等について検討を開始しております。本年度中にOECMを認定する基準・仕組みを検討しまして、2022年度から試行的な認定を開始する予定でございます。2023年には少なくとも100地域以上の認定を目指したいと考えているところでございます。先ほどのご質問にもございましたが、国土全体、下にある右側の図でございますが、国土全体の中で生物多様性の保全に資する土地の管理がなされた地域で保護地域の外である場所、OECMを進めていきたいと考えております。その中では、既存の保全管理が継続される、そういったものを促進するとか、企業やNGO等の価値を向上させる、こういったことも併せてやっていきたいとい考えているところでございます。

次、11ページ目でございます。自然情報の収集・評価と提供ということで、施策を進めていく上で非常に重要となる基礎的な情報の整備でございます。基礎調査は、生物多様性に関する全国的な調査を継続的に行いまして、結果を公表する中で、長年来、課題になっていました現存植生図、こういったものの全国整備も完了間近となっているということでございます。

さらには、開発事業において配慮すべき自然環境に関する情報提供なども行っているということで、下の方の説明は、左の方がいわゆる基礎調査に関連するもの、一番下の方には公共用水域における水生生物に係る水質基準等の設定・水質の常時監視も含めまして、ここに記載させていただいています。右側の方には、環境アセスメントデータベースということで、開発事業に必要な配慮すべき自然環境に関する情報に触れさせていただきます。

12ページに参ります。自然情報の収集・評価と提供として、国内の生物多様性や生態系サービスに関する総合評価に関連するものでございます。気候変動につきましては、2020年に気候変動適応法に基づきまして、最新の科学的知見を踏まえた気候変動影響評価報告書を公表しております。また、冒頭にご説明しましたが、次期国家戦略をつくる上での基礎資料とするということも踏まえまして、生物多様性や生態系サービスの総合評価を継続的にしておりまして、今回の国家戦略、次期国家戦略の検討につきましても、JBOの3回目をもとにして、基礎的な情報として検討を進めさせていただければと考えているところでございます。

以上がポイントの1でございます。

13ページ以降が人口減少社会・気候変動等に対応する自然を活用した社会的課題解決についてどんな取組を進めるべきかということを説明させていただきます。

14ページ目、これは先ほど橋本先生からもあった、Eco-DRRでございますが、Nature-based Solutionsのうち、特にEco-DRRにつきましては、先行していろいろな取組を進めてまいりました。これについてのご説明でございます。Nature-based Solutionsの考え方ですとかEco-DRR等の取組を組み込んだ気候変動適応計画、こういうものを本年の10月に改定しています。また、2016年、それから2019年にはEco-DRRの基本的な考え方を整理した手引き、事例集を作成しております。さらには、生態系の機能を可視化するマップの作成を4地域において進めておりまして、Eco-DRRを進めていくための実装を支援していく取組をしているところでございます。

次は15ページになりますが、これも冒頭でご指摘があった、野生鳥獣に関する感染症対策についてです。これは対応技術マニュアルの作成とか野鳥における鳥インフルエンザへの対応に加えまして、野生鳥獣に関する感染症についての情報を広く収集して、人間社会や希少種等への感染症リスクの低減を図るためのリスク評価等を進めております。この中に、野生鳥獣に関する感染症への対応ということで、野鳥の高病原性鳥インフルエンザに関する監視活動や、野生鳥獣に関する感染症対策基盤事業で、実態把握、リスク評価、野生鳥獣の管理手法等の検討を行いまして。また、さらには獣医学、生態学、公衆衛生学とも連携した取組も進めているところでございます。

次は16ページになります。ここでは国立公園等における保護と利用の好循環、これもいわゆる自然資源の利活用の一環、重要な保護と利用の環ということになると思います。国内外からの誘客を目指した「国立公園満喫プロジェクト」ということで、自然体験活動を促進する計画制度の創設等に係る自然公園法の改正ですとか、国立公園と国有林の連携による国立公園等における保護と利用の好循環の形成、こういったものに取り組んでまいりました。さらには、東日本大震災からのグリーン復興といったものの取組として、みちのく潮風トレイルの設定などを進めてきているところでございます。

次は17ページになりますが、地域づくりへの貢献ということで、都市と農山漁村のつながりでございます。これは地域循環共生圏に代表されるように、この実現に向けまして、幅広い主体に対して先進事例・手引き・企業や人材等についての情報提供やモデル地域での事業、65地域で行っていると。そういったことを進めているほか、里海の考え方を取り入れた沿岸域の保全・再生等に関する取組、それから伝統知、地域知の継承についての情報収集等も進めているところでございます。

18ページに参ります。これは自然資本の持続可能な利用で、里地里山の自然資源の循環利用等でございます。この里地里山につきましては、これを保全するための考え方の整理、それから情報提供を行ってまいりました。さらには、地域における活動を支援するほか、バイオマスを利用した地域の循環産業に関する支援等も行っています。

里地里山保全のための情報提供・活動支援として、この下に三つございますが、保全活用行動計画や重要里地里山の選定、さらには、これは2021年度から開始しているものでございますが、里山未来拠点形成支援事業といったものも始めております。

バイオマス関連は、この下の右側にありますが、バイオマス産業都市構想ですとか、化石由来資源を代替するバイオプラスチック等への転換・社会実装化実証事業にも取り組んでいるところでございます。

19ページに参りますが、自然資本の持続可能な利用で、今度は気候変動対策によるトレードオフへの対応、冒頭のご質問の中でもございましたが、再エネの導入と自然環境保全の両立に向けて、再エネ施設設置における適切な事業立地の選択や、それから生物多様性保全のための配慮、これを示すガイドラインの作成とかセンシティビティマップ等の提供、そういったものを実施しております。

環境に配慮した地域と共生した再エネの促進については、下の左側、それから、再エネ導入促進と自然環境保全の両立に向けた影響評価等については、この右側に書いております

20ページ以降は、柱の三つ目、ビジネスと生物多様性との好循環、そしてライフスタイルへの反映ということ、それにつきまして取り組んでいる中身でございます。

21ページ目にございますが、社会経済活動への生物多様性の配慮の組み込み、それから生産と消費ということで、ESG金融ですとか情報開示の支援等でございます。環境に係る企業の情報開示を促進するためのガイドラインを作成しているほか、ESG金融の推進のための情報発信、それから、生物多様性分野に、特に冒頭にもございましたが、TNFDなど国際的な取組も進んでおります。こういったものの情報収集、それから発信等を行ってございます。企業の情報開示の促進につきましては、環境報告ガイドライン、これを初版は1997年でございましたが、2018年に見直しており、最新の情報にアップデートしているほか、右側はESG金融の推進に関する取組を載せさせていただいています。

22ページ目に参りますと、企業の認識・取組の支援でございます。ガイドラインを示すことによって、取組の指針とか優良事例提供しているほか、そういったものを発信しています。こうしたことによって、国内企業の取組を支援しています。

生物多様性民間参画ガイドライン、これにつきましては、2017年に作成していまして、それを2022年に改訂するべく作業を進めているところでございます。さらには、グッドプラクティス集のまとめ等を進めている様々な情報というものを収集して国内で提供するということと同時に、右側の下ですけれども、生物多様性ビジネス貢献プロジェクトということで、日本が持っている様々な技術を生物多様性の保全にも役立てていただこうと経団連と環境省で2020年11月から、海外発信も含めて、取組も進めているところでございます。

23ページ目が消費者の選択支援、消費・廃棄削減、資源循環でございます。IPBES報告書に示された間接要因に対応しているものですけども、環境負荷の少ない需要への転換を図るため、国等によるグリーン購入を推進するとともに、消費者の選択を支援する情報提供、そういったものも進めています。食ロスですとか海洋プラスチックに関して、関係省庁と連携して幅広い主体への情報提供、特に廃棄物関連は、生物多様性との関連性で申しますと、ダスクプタレビューでいろいろと指摘されておりました。これにつきまして、グリーン購入ですとか資源循環促進のための取組として、以下に書かせていただいたような取組を進めているところでございます。

24ページに参りますが、生物多様性に配慮した行動変容の促進でございます。ローカルSDGsをキーワードに森里川海プロジェクト、こういったものによりまして、生物多様性への負荷の少ない豊かなライフスタイルシフトを提案するということ。それから、経済界、地方自治体、NGO等多様な主体と連携して企業や国民の具体的な行動変容を促す取組、これを2030生物多様性枠組実現日本会議、これはポストUNDB-Jと言われているものでございますが、こういったものについての議論・検討を進めているところでございます。

以下、森里川海プロジェクト、UNDB-Jについてのマルチステークホルダーのプラットフォームの横断的な取組としての施策をご紹介させていただいています。

25ページ目が教育・自然体験でございます。環境教育の観点から自然体験の機会の場の提供を促してきました。さらには、自然地域につきましても、エコツーリズム推進全体構想の認定等によりまして、地域の関係者による利用者へのエコツアー等の提供を促進しているところでございます。

26ページに参りまして、個別の施策の最後でございますが、生物多様性に配慮した農林水産業、特にGBO5ですとか、生物多様性と食品生産との関係、非常に重視されています。地域において生物多様性と環境保全型農業を組み合わせた地域活性化が見られております。生物多様性地域戦略の中にも、こういった取組というのは非常に多く位置づけられています。また、農薬につきましては、関係省庁と連携して、登録審査における動植物に対する影響評価、こういったものの充実を進めております。

生物多様性保全と環境保全型農業を組み合わせた地域の取組で、いわゆる朱鷺米とか、農薬に関する動植物に対する影響評価の充実、についても取組を進めているところをご紹介させていただきます。

今後の展望について28ページに載せています。まず三つのポイントにつきまして、自然共生社会の基盤としての生態系の健全性の回復で、今ほど申しましたような取組をさらに拡充していくということ。従前の保護施策をさらに強化していくと同時に、新たな取組として、その柱になるのがOECMではないかと。様々な保全利用の施策と統合していくことが重要であると考えております。それを進めていく上でのデータの提供等を進めていくと。こういった基礎的な部分をまず進めていくと。さらに、それを使った自然を活用した社会的課題の解決といったものを進めていくということが重要か考えております。Eco-DRRですとか、野生鳥獣との適度な距離を保つための里地里山の管理、さらには、地域づくりにNature-based Solutionsを取り込んでいくとか、地域循環共生圏の下で都市と農山漁村のつながり確保を図っていく。里地里山の資源の循環利用をエネルギーの観点からも進めていくことで、再生可能エネルギーと生物多様性保全の両立に向けた適地誘導やガイドライン等を整備していくということ。健全な生態系と、それを持続可能な形で利用しているところが1番と2番のポイントになるかと思います。

社会全体に関するものとしては、効果的、広範な改善が見込める介入点への注力ということで、ビジネスのグローバルアセスでも指摘されていた社会変革に関する中身としては、企業の事業活動に生物多様性を組み込むことで、ESG金融、そういった情報開示等をガイドラインなどによって支援していくとか、サプライチェーン・バリューチェーンまでも視野に入れた取組を支援していく。さらには、教育、自然体験活動の充実、その中には価値観の醸成ですとかナッジの活用、こういったものも含まれる。関係行政と連携した生物多様性と農林水産、そういったものの関係との強化というものについても進めていく必要があるのではないかと考えているところでございます。

以上が環境省の施策の紹介でございました。長くなりました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 これについてご質問をいただくわけですけど、特に、この10年間で評価できるようなところとか、それから、今後新しい国家戦略の中で特に伸ばしていくべきようなところ、あるいは欠けているようなところというようなことでご意見をいただければというふうに思います。いかがでしょうか。

 では、五箇さん、お願いします。

○五箇委員 国立環境研究所の五箇です。

 改めてこの施策、生物多様性国家戦略というものに対する環境省の施策というのをざっと概観させていただいて、私自身、水・大気環境局と、こちらの自然環境局を股にかける形で委員会等に出させてもらっていますが。結構、国際的に非常に話題となっていて、今、特にレギュレーションという部分にフォーカスが当たっているネオニコチノイド農薬という部分に関しては、実は、この自然局の中で一切触れられていないのだなというのを今改めて、初めてといったら失礼なのですけども、改めて感じたところで。実際問題、国際的な目標としても、今後、農薬のリスクを低減するために使用量を減らすということが一つ目標値に入っていると思うのですけども。これ気をつけないと、トリッキーなところが肝腎のネオニコチノイド農薬というのは、単位重量当たりの防除効果、非常に高いのですね。言うなれば、低薬量で効果を発揮する薬剤だから、量だけで減らすなら、全部ネオニコに置き換えてしまったほうが実は低薬量になってしまうというところもあって、農薬使用量の低減には、むしろ貢献し得るという薬剤になってしまうと。

要は、従来のDDT等の有機塩素剤や有機リン剤のリスクというのは、大量使用で非常に莫大な広いスペックでの生態影響というのが問題になっていたというところだけど、ネオニコの場合は、非常に少量で特異的な生態影響をもたらすという点で、リスクの構造が全然違ってくると。だけど、従来の環境毒性学的な評価というのがずっと今までも国内で行われており、こちら、今回水・大気環境局も出席されていますけど、そこでのリスク評価という部分においては、ぶっちゃけ生態系とか生物多様性とか、生物進化系統といったような概念はほぼ欠落した状態で、ビーカーの中での毒性実験のみでリスク評価をしてきているということで、こういったネオニコのような問題というのは見落としてきたというところもあるわけですね。言い方悪いですけど、こういったミスマッチというところから見ても、環境省内においてすら、生物多様性の主流化やコモンセンス化というのは、実はまだ全然至っていないのだということを改めて今回この資料を見ていても、その部分は全くフォーカスされていないのだなというのがちょっと驚きというか、そういったところがありました。

 あと、もう一点、野生生物感染症のほうについても、私もこの2年間、このコロナ禍で随分関わらせてもらっているところなのですけども。やはり、ざっと見ていて、何度も自然局のほうと議論していても、野生生物感染症という対応にとどまっていて、要は野生動物由来の感染症対策としてのワンヘルスの概念にはまだ全然至っていないという実感があります。つまり、人健康という部分も視野に入れ、まさに人間社会と生物多様性のインターフェイスとして、実はこの新興感染症とか再興感染症があるのだということで、言ってみれば、農水省のみならず厚生労働省とのコミットメントが非常に必須であるという中でも、今のところ、まだそういったしっかりとしたコミットメントはできていないというところがあるので、今後、そういった部分についてのパラダイム普及と重点化は非常に重要になってくるのではないかなというふうに思っています。

取りあえず、私も獣医でもないのに、ただのダニ者がこの2年間で、随分コロナの論客として、あちらこちらでいろいろ語らせていただいているのですけど、それ自体、いいのか悪いのか分かりませんが、そういった視点から見ても、もうちょっとこの部分に関しては、広い視点で、あるいは分野横断としてやっていく必要があると。セクショナリズムがいまだついて回っているということは、少なくとも、このコロナ対策を見ていても思うところです。

以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 先ほどと同じように、一通り委員の方のご意見を聞いたあとに、事務局からのコメントをいただきたいと思います。

 では、石井さん、お願いします。

○石井委員 ありがとうございます。石井です。

 11ページに頭出しがあって、最後のシートで今後の展望にも出てくる内容なのですけれど。私、モニタリングサイト1000の里地調査に関わっています。もう15年以上経過して、膨大な情報が集まっているのですね。それは、もう本当に宝の山で、それを解析することによって日本の自然の変化、里地里山の変化が分かるというようなものなのですけれど、膨大過ぎて解析がたいへんな状態なのですね。28ページの今後の展望の考え方というところが、ちょっと不満なのですけれど。1の自然共生社会云々の見出しの3つめに情報収集・評価と提供という項目がありますが、右側の「様々な取組に活用できるデータの提供」に、いわゆるDXという考え方はあるのでしょうか。例えば、環境省が情報提供する場合PDFのものが多いのですけれど、実際には、ユーザーの側としてはデジタルデータがないと解析できないのではないかなと思うのですね。なので、検討していただきたいのは、まず一つは、情報は環境省の施策を考える上でもとても重要なはずなので、情報収集・評価と提供で終わらずに、提供と活用というところまで入れていただいたらいいのではないかということです。それから、右側のデータの提供に関しても、これからは、やはりDXを意識してデジタルデータを提供するということを検討していただけないかと思います。よろしくお願いします。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、広井さん、お願いします。

○広井委員 ありがとうございます。

 私のほうからは、OECMのところで社寺林が出ていたと思うのですが、これは私は、研究会のときも似たようなことを申しましたけど、日本の独自性という意味でも、あるいは文化との関係という意味でも非常に重要ではないかと思っています。私、理事をしている社叢学会、社叢学会というのは神社、お寺のまさに森に関する学会で、これは植物生態学とか理系の方から、歴史とか宗教とか文系まで含む文理融合的なNPOで、いろいろな調査もしていますので、また連携とかできればということも思いますし、この社寺林というのが、実は境内の中というイメージではなくて、日本の場合、山そのものとかが神様、例えば秩父神社の場合は、武甲山という山そのものが御神体というようなことで、かなり広範な自然を含むものでもあります。また日本の伝統的な自然観、前も似たようなこと言いましたけど、いわゆる八百万の神様といった発想は、言うならば、まさに生物多様性ということそのもので、一般の方に生物多様性の重要性を理解していただくという意味でも、非常に入りやすいアプローチ、身近なものではないかと思いますので、このあたりは、一つ意識していただければありがたく思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、二宮さん、お願いします。

○二宮委員 ありがとうございます。

 さっき質問したほうがよかったのかもしれないのですけれども、1点確認をさせていただきたいと思います。この国家戦略の目標達成に向けてPDCAサイクルをしっかり回していくこと、そして、指標を設定して測定評価モニタリング、これは極めて重要なことだと思うのですけれども、この機能を担うのは各省ごとにあるのか、もしくは国家戦略として各省の施策を横断で見る司令塔機能のようなものを、例えば環境省が担うのかどうかという点でございます。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、勢一さん、お願いします。

○勢一委員 ありがとうございます。勢一です。

 2点ほど申し上げたいと思います。

 1点目は、生物多様性の主流化のところで、先ほどご意見がありましたけれども、やはり既存の体制のセクショナリズムが弊害になっている可能性がまだ残っているのではないかと思っています。国家戦略ですので、当然、横断的に取り組んでいただけるはずなのですけれども、ほかの計画との関係性というところ、調整が非常に重要であろうと思います。もちろん他省庁ともそうなのですけれども、生物多様性の内容に関して、関連する計画の内容を例えば共通化してやってくれるのかとか、関連する計画の計画期間をそろえて対応してくれるのかというのが、実施の段階では非常に重要になろうと思います。具体的には、例えば環境省では、気候変動適応と生物多様性の保全は密接に関連していると思うのですが、それぞれ計画や戦略があります。これらがどのような形で統合できるのか。それぞれ地方自治体が計画や戦略をつくるという努力義務など負っていますけれども、例えば、両方の国の計画の内容や計画期間がそろっていないと、地方のほうでは、別々に対応することになりかねないというような課題もあろうかと思います。組織全体としての調整あるいは政策の融合など、これは先ほど申し上げましたけれども、他省庁との関係でも重要かと思います。

 以上が1点目です。

 もう一点ですけれども、かなり幅広い分野にわたる多様な施策を実施する形で、今示されています。具体的に誰がやるのかというところを考えますと、環境省が直轄でというのは、極めて限られることになりますので、民間、NPO、地方公共団体にしっかり担っていただくことが必要です。そのために環境省が環境整備としてどのようなことを進めていけるのかは重要であろうと思います。ナッジのような考え方、これが環境行政に入ってきたというのは、私は画期的だと思っていまして、いろいろな主体がそういう活動をしたくなる、自発的にやりたくなる、あるいは取り組みたくなるような環境整備の工夫は課題かと思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。

 あと何人も発言をご希望されているので、なるべく発言をコンパクトにお願いしたいと思います。

 橋本さん、お願いします。

○橋本委員 ありがとうございます。橋本です。

 五箇委員、勢一委員、二宮委員のこれまでのご発言とも近いのですけれど、やはり省庁間連携を強化していく必要があるだろうと思います。冒頭で中静先生からもおっしゃられましたが、生物多様性保全では、直接要因以上に間接要因の重要性が認識されつつあります。直接要因は、従来の保護区だとか、あるいは希少種の保全、あるいは今回議論してOECMである程度対応できる部分も多々ある、あるいは気候変動対策等で対応できるところもある。つまり、環境省の内部で対応できるものが多い。けれど、その上流部の間接要因の話になると、他省庁との連携がとても重要な役割を果たしてくると思います。この省庁間連携をこの国家戦略の中にどのように位置づけていくのかが大きな課題になってくると思います。それは施策の項に書くのか、戦略の実施体制の項に書くのかというところは、また議論があると思うのですけど。恐らく、これはOECMの話でもとても重要になってくるでしょう。先ほど社寺林の話が出ましたけど、他方で里地里山の話が出ているわけですよね。そうなると、農林水産省あるいは林野庁との管轄の調整というのが出てくるわけです。他方で農林水産省見てみると、みどりの戦略あるいは、農林水産省の生物多様性戦略をつくるなど、かなりこの分野、積極的に今力を入れておられるとので、2030年までに何がどういう形で連携できるのかというのを、この戦略を具体化する中で検討していただければと思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 この件に関しては、後ほど各省庁からのご説明もあると思いますので、そこでもご意見をいただければと思います。

 では、藤田さん、お願いします。

○藤田委員 ありがとうございます。藤田です。

 私からは2点あります。

 1点目は、OECM、大変私も期待しているところです。民間の生物多様性に配慮した緑化がカウントされるということで。そのときに、これ国家戦略だからいいのかもしれませんけれども、よく昔から議論があった、「国内の緑化で頑張っているのだから、サプライチェーン上流の調達現場での海外の森林のことは放っておいて、国内だけ主張してもいいのかと、よく国際的に言われるところですので、ある企業がOECMでコントリビュートした場合に、やはり調達も含めて、企業はバリューチェーン全体で見たらどうなのかということを併せてぜひ発信をしていってもらいたいと。国内で頑張っているけど、海外はちょっと無視よ、みたいに取られかねないような取組ではなくて、ちゃんと環境省としても、そこは併せて指導していっていただければというのが1点目です。

 もう一点は、ESG金融に向けての重要な情報開示のガイドラインで支援という言葉がありますけれども、これ大変重要だとは思うのですが、一方で日本の金融機関は、生物多様性の取組とか情報の教育がまだなされていません。欧米の投資家さんは、生物多様性のことをすごく聞いてきますけど、日本の投資家さん、まだそこまで、生物多様性って何みたいなレベルで、企業が幾ら一生懸命頑張って開示しても、日本の金融機関がまだついていっていないと。ですので、ぜひ企業を支援するときに、金融機関も、これ金融庁のテリトリーなのかもしれませんが、ぜひ環境省、金融庁と連携して、金融機関が生物多様性の情報をどう読み解くかとか、その啓発教育というものもぜひやってもらいたいですし、金融機関が、例えば生物多様性の商品、リンク・ボンドとかインパクト投資ファンドとかを組成していけるような、そういう教育をぜひ進めていただきたいなというふうに思っています。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、森本さん、お願いします。

○森本委員 ありがとうございました。

 「Ⅲ今後の展望の考え方」について、追加拡張してはと思う点が一つあります。三つのポイントは、勉強会を踏まえて大変よく整理していただいていますが、主に今ある自然や生態系をどう扱うかといった観点での施策が中心です。今後、気候変動で多発する自然災害で新しく出現した自然や生態系をどう扱うのか、それらをできるだけ生物多様性保全につなげるような施策があってもいいのではないかと考えています。東日本大震災で、これまであった生態系が大きく変化、住宅であったところは湿地・干潟に変わるということを私たちは経験しています。そういうことが起こったときに、新しくできた自然や生態系を地域の生物多様性をより向上するチャンスだと逆に捉えて、例えばOECMの枠組の中に入れてあげるとか、そういった施策を今後展開してもいいのではないかと考えています。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、深町さん、お願いします。

○深町委員 私のほうは、最後のところで里山の資源の循環利用と、それから再生可能エネルギーに関連してなのですけれども。

 まず再生可能エネルギーで、いろいろいいこともあると思うのですけれども、風力発電とか、身近な地域で地域が主体というよりは、どんどん事業が先に決まって、そのあと、地域の行政とかも追いつくのも難しくて、いろいろなガイドラインとかが決まってはきていると思うのですけれども。なかなか本当に地域の中で地域が主体となって資源をうまく使っていくというようなことをどうするかというところでは、本当に緊急に何らかの対策がないと、もう地方自治体任せで、力量があるところは何とかできるけれども、そうではないところは、もう地元の方の意見も言う場所もないというような状況で進んでいるというようなことがありますので、その部分、ご承知だとは思うのですけれども、緊急性のあることにどういうふうに対処できるのかということを考えていっていただくのがすごくお願いしたいことだなということと。

 もう一つは、いろいろな里山の資源を使うということなのですが、どうしても間伐だとか人工林の管理の中でどううまく使うかというところがまだまだ主体で、身近にある、いわゆる広葉樹林だとかアカマツの枯れてしまったようなところとか、そういうところを持続的に。さらには、いろいろな資源をうまく森林文化に結びつけながら回していくというようなところで、いい事例がなかなか出てこないような状況もあるので、そういったところをさらに進めるにはどうしたらいいかというところを具体的に考えていけるといいかなと思いますので、生物多様性との関係というところで、その辺を重点的なものの一つとして位置づけていただけるとありがたいなと思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、亀山さん、お願いします。

○亀山委員 亀山でございます。ありがとうございます。

 気候変動、地球温暖化の観点から、今出ているスライドについて、2点意見させていただきたいと思います。

 一つは、2.のところで、Eco-DRRですとか、再生可能エネルギーと生物多様性保全との両立、このあたり非常に重要なポイントだと思っていまして、ぜひ今後の10年の展望の中で議論していただきたいというふうに思っております。

 これに加えて、やはり最近、気候変動影響がますます顕著になっておりまして、気候変動そのものが日本の生物多様性に及ぼす影響というものも、前回、計画策定していただいた時期と、また全然状況違っていると思いますので、来年、間に合うかどうか分かりませんが、IPCCの第2ワーキンググループの第6次評価報告書がもし間に合うようであれば、そのあたりにも言及しつつ、気候変動の影響が日本の生物多様性にどのような影響を及ぼし得るのかということが何か盛り込めればすばらしいというふうに思います。

 それから、先ほどほかの委員からもご発言ありましたけれども、日本の林業との関わりであります。どうしても、これから脱炭素に向かうというときに、日本はアンモニアとかメタンだとかエネルギー関連技術の話にひもづけがちなのですけれども、海外では、やはりネットゼロにしようと思ったら、どうしても排出してしまう部分については、何らかの形で吸収しなければいけないということで、植林に対する注目がもう一回集まりつつあります。日本においては、既に育ち切った木材をうまく国内で活用して、もう一回そこに木を植え直すといったようなことがビジネスとして育成されるような、そういった観点もこちらで盛り込んでいただきたいというふうに考えております。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、大沼さん、お願いします。

○大沼委員 ありがとうございます。

 私からは、個別の問題というよりも全体を通じた中で、一つこうした観点があってもいいかなということをお話しさせていただきます。先ほどご説明いただいた中で、いろいろな形でトレードオフという言葉が出てきます。例えば、再生可能エネルギーを利用するときの自然環境とのトレードオフとか、それから、例えば現在、水質を改善するという中で、栄養塩をもう少し増やしていって漁業の生産量というのを上げたらいいのではないかという形での、例えば、貧栄養化というものを解決する上での自然環境とのトレードオフとか、いろいろな形で生物多様性というものを考えていく上で、経済社会との間のトレードオフがいろいろなレベルで、あるいはいろいろなケースで出てくると思うのですね。そういうときに、トレードオフのどこにソリューションを求めるかということというのは、非常に重要なことになってくるわけですけれども、生物多様性の場合は、いろいろな個々のケースに応じて様々なソリューションがあると思います。そういうときに、どういった形で保全と利用の両立を図っていくかということの基本原則をきちんと出していただけると、大変ありがたいと思うのですね。例えば、自然環境に希少種がいたらどうなるかとか、あるいは、利用によって便益を受ける人は社会にどれぐらいいるのかとか、いろいろな観点で基本原則というものをお示ししていただけると、生物多様性と人間社会との共生というものを図る上で非常に有益なのではないかなと思います。以上、コメントとさせていただきます。

 以上です。ありがとうございます。

○中静委員長 ありがとうございます。

 では、愛甲さん、お願いします。

○愛甲委員 愛甲です。

 私からは、今映っている最後の、この28枚目の部分で、下のほうにある行動変容の促進のところについて、ちょっと一つコメントをさせてください。ここでは教育や自然体験の充実というところが太字になっていて、価値観の醸成、ナッジの活用を含めた無関心層への発信なども必要となっているのですが、実際は教育や自然体験の充実というのは、これまでもかなり行われてきていますし、国立公園の満喫プロジェクトのところでも説明ありましたように、自然との触れ合い活動というのは、様々なことが実際行われていますが、それが行動変容につながっていないとか、生物多様性の認識にはつながっていないというところはあると思うのですね。ただ単に無関心層とくくってしまうと、生物多様性そのものに無関心なのか、それとも、これまで受けたそういう教育とか自然体験が行動変容に結びついていない人たちのことを言っているのかというところが分かりにくくなっていて、どちらに働きかければいいかというと、効率的に少しでも行動変容を促すのを、少しでもそういう方を増やすには、そのつながりが欠けている部分に働きかけるのがいいということにもなりますので、少しその辺は、ちょっと検討が必要かなと思って発言させていただきました。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 大変有益な意見、たくさんいただいたと思います。質問も幾つかあったと思うのですけど、事務局で質問にもしお答えできるようなところがあれば、それを中心にコメントをいただければと思いますが、いかがでしょう。

○中澤戦略推進室長 様々な視点から大変示唆に富むご意見、ご質問いただきまして、ありがとうございました。全般的に多かったのは、やはり組織体制の話。それはほかの計画とか時間軸との関係の話。それから、気候変動との関係についても、適応それから緩和、それぞれ推進、それから、そこから影響を受ける生物多様性施策の関係の重要性。また、経済との関係ですとかデジタル情報の発信、そういった多岐にわたる論点からご示唆いただきまして、とても参考になります。これらを踏まえて検討させていただきたいと思います。

 その中で、特に質問でいただきました、二宮委員からの評価の話でございますが、これは勢一委員からも他省庁との関係ということでご質問いただいたと認識しておりますけども、基本的に国家戦略は、推進それから評価含めて、国家戦略の関係省庁連絡会議を中心に進めております。定期的にこの会議を開催して、この枠組の中で国家戦略の中身の調整ですとか、閣議決定に至る情報整理とか調整、さらには、その評価に関しても、関係省庁会議の中で役割分担等をしながら進めていくので、ご質問に対するお答えとしては、関係省庁連絡会議が中心になって動いているということでございます。

 明確なご質問は以上で、あとは、基本的には様々なご意見をいただいたと思っておりますので、今後の検討の中で、こういったご質問いただいたものに対して、私どものほうでも検討しながら作業を進めたいと思っております。

 以上でございます。

○中静委員長 ありがとうございました。

 皆さん、たくさん意見をいただいて、ちょっと時間も押しぎみですので先に進みたいところなのですけど。一応、ここで5分間だけ休憩を取らせていただきたいと思います。ちょっと半端な数字で申し訳ないのですけど、3時33分まで休憩ということで、5分間休憩させてください。どうぞよろしくお願いいたします。

(休 憩)

○中静委員長 皆さん、戻っていただけたでしょうか。

 では、時間になりましたので、議事を再開させていただければと思います。

 次の議題は、各関係省庁からの施策とヒアリングということなのですけれども、今日は外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の5省の担当の方が来ていただきまして、ヒアリングを行わせていただきます。

 なお、厚生労働省は、ご都合が合わなくて今日はおいでいただけなかったのですけれども、資料を資料3-6として提供いただいていますので、それをご覧になるようにお願いいたします。

 ヒアリング、各省から10分ずつということで、取組を順にご説明いただいて、残りの時間で

まとめて委員の皆さんからのご質問、ご意見をいただければというふうに思います。

 では、外務省からお願いいたします。

○森下地球環境課長 それでは、外務省より、生物多様性に係る外務省の取組につきまして、ご説明を申し上げたいと思います。私、外務省地球環境課長の森下と申します。本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、資料の3-1に即しまして、順次ご説明を申し上げたいと思います。

 まず、生物多様性条約を取り巻く国際的な環境の主な変化でございます。ご覧ください。

 まず持続可能な開発目標、いわゆるSDGsが広く広まり、定着してございます。これは2015年9月の国連サミットにて全会一致で採択されたものでございまして、誰一人取り残さないという理念の下で持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の国際目標、そして、その下に169のターゲット、232の指標が決められているといったところでございます。このSDGsの各ゴールでございますけども、愛知目標と密接に関係がございまして、特に、SDGsでいう12の生産・消費だとか13の気候変動、それから14の海洋資源、それから15の陸上資源といったところについては、特に深い関係を持っているものでございます。

 次をご覧ください。主な変化の2番目としまして、気候変動との関係が大変重要になってきているといったことが挙げられております。11月にイギリス、グラスゴーで行われましたCOP26でございますけども、そこでの成果文書におきまして、生物多様性との関連性の重要性が明記されております。気候変動に対処する際には生物多様性も保護されることが重要である。気候変動の危機と生物多様性の喪失の関連を深く認識をするところであって、生態系保全が気候変動対処にも利益をもたらす。それから、気候変動に関する長期的な目標達成のためにも、生物多様性の保全が重要であるといったことが明記をされているところでございます。

 次をご覧ください。気候変動問題との関連でございますけども、科学的な記述も行われております。IPBES-IPCCの合同ワークショップからの見解では、気候と生物多様性には複雑な相互作用がある。それから、気候変動への適応に大きく寄与するものである。政策立案に当たっては気候と生物多様性を一体的に取り扱うことが重要である。そのほか、関連する各条約におきましても、様々な対応が行われているといったところでございまして、例えばラムサール条約におきましては、気候変動緩和対策としての湿地管理にも力を入れられている。それから、国際熱帯木材機関、いわゆるITTOでございますけども、戦略計画の中に気候変動への寄与を明確に位置づけるといったことが行われているとして、関連する諸条約においても対応は行われているといったところでございます。

 それから、次をご覧ください。2020年に発生しました新型コロナウイルスを契機といたしまして、生物多様性の損失と人獣共通感染症とのつながりが改めて注目されているところでございます。人、動物、環境の衛生に関する分野横断的な課題に対し、その解決に向けて統合的に取り組むワンヘルスアプローチが再認識をされているといったところでございます。例えば、下の段に書いてございますように、IPBESによるワークショップの実施あるいは報告書作成が行われている。あるいは、WHO、OIE、FAO、UNEPによるワンヘルスハイレベル専門家パネルといったものが今年の5月に設置される。それから、ワシントン条約におきましても、人獣共通感染症リスクに関する作業部会が今年の4月に設置をされているところでございまして、今後の議論がなされることとなっております。

 次でございます。生物多様性条約の実施状況でございます。

 9ページ目、ご覧ください。生物多様性の10年の歩みでございます。ご案内のとおりでございますが、2010年に締約国会議が開催されまして、そこで愛知目標が採択され、名古屋議定書が採択された。2012年に国家戦略が閣議決定をされた。それから、2014年にCOP12、韓国・ピョンチャンで開かれまして、愛知目標の中間評価が行われたところでございます。そして、2018年でございますけども、新たな目標、ポスト2020枠組に向けた検討プロセスを採択したといったところでございます。そして、本来であれば、2020年にポスト2020の枠組について採択・決定が行われるところでございましたけども、コロナの影響によりまして、2020の開催予定が2021に延期され、さらに昨今のコロナ状況を踏まえまして、2段階に分けてCOP15が開催されるといったことになっております。その第一部が今年の10月に開催されまして、ポスト2020の枠組の採択に向けた取組が必要であるといったことが再確認されております。来年4月の第二部に向けまして、そこでポスト2020の枠組の採択が行われますよう、今順次、鋭意検討が行われているといった段階でございます。

 次のページをご覧ください。2014年に行われた中間評価でございます。全体としては進展があるものの目標達成には不十分であるといったことだとか、あと愛知目標達成においては、SDGsなど地球規模の優先課題にも貢献するものである。それから、気候変動関連目標だとかリオ3条約とともに、2050年ビジョン「人と自然の共生する社会」を達成するには社会変革が必要であるといったような指摘がなされるとともに、成果的な行動として優先行動リストの提示も行われたといったところでございます。それから、2019年にはIPBESの地球規模評価報告書が行われて提示されております。そこでの報告書のポイントでございますけども、自然がもたらすものは世界的に劣化し、過去50年間に加速をしている。このままでは生物多様性保全と持続可能な利用に関する目標は達成できず、目標達成に向けては横断的な社会変革、transformative changeが必要であるといったことも提供されています。

 次のページをご覧ください。GBO5でございますけども、ほとんどの愛知目標については、かなりの進捗が見られたものの、20の個別目標では、完全に達成できたものはないといったこと。それから、2050年ビジョン「自然との共生」の達成には、「今までどおり(business as usual)」というところから脱却をして、社会変革が必要であるといったことが指摘をされております。

 次のページをご覧ください。GBO5におきまして、生物多様性の損失を低減あるいは回復させるための行動としまして、やはり社会変革が必要であるといったこと。それから、2050年ビジョン達成に向けては、移行(transition)が必要な8分野としまして、土地・森林、持続可能な淡水、持続可能な漁業・海洋をはじめ8分野が指定をされたといったところでございます。

 次をご覧ください。最近の生物多様性をめぐる国際的な動き、これが広がりを見せ、かつ加速化をしております。

まず、今年のG7でございます。首脳コミュニケにおきまして、2030年までに生物多様性の損失を止めて、そして、かつ反転をさせることを目指すべきだということ。それから、G7の首脳文書の附属文書といたしまして、G7自然協約というのが採択をされております。その協約に基づきまして、2030年までにG7各国の陸地及び海洋の少なくとも30%を保全または保護すること。あるいは、海洋プラスチックについての取組強化などについてコミットされているところでございます。

G7の自然協約の概要としましては、四つの柱が紹介されておりまして、自然資源の持続可能な合法的な利用への移行を主導する。それから二つ目、自然に投資し、ネイチャーポジティブな経済を促進する。それから3番目、野心的な世界目標等を通じて、自然保護、保全を回復させる。それから四つ目といたしまして、自然に対する説明責任、それからコミットメントの実施を優先するといったことが柱として掲げられています。

次のページをご覧ください。今年のG20でございます。G20、ローマ首脳宣言が採択をされておりまして、ここにおきましても、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転をさせなければならない、行動を強化しなければならないといったこと。それから、生物多様性CBD締約国に対し、第15回締約国会議(COP15)におけるポスト2020の採択を呼びかける。それから、4ポツ目でございますけども、2030年までに陸地・海洋それぞれ30%保全または保護されるよう、必要な取組をしなければならないといったことがコミットされております。

それから、併せて生物に関する様々な国際的な動き、イニシアティブが動いております。2021年1月、ワンプラネットサミット、フランスがホスト国として主導したものでございますけども、この国際会議におきまして、陸と海、それぞれ少なくとも30%を2030年までに保護しなければならないといったことについて確認をしたこと。それから、右側でございますけども、ちょっと遡りますけども、2020年9月に国連生物多様性サミットの際に、首脳レベルでイニシアティブが行われておりまして、我が国も参加している。そこでも生物多様性の減少を食い止めるために、回復させるために必要な取組をやっていこうといったことが確認をされております。

それから、次のページ、ご覧ください。持続可能な海洋経済構築に向けたハイレベルパネルといった国際会議が設けられております。これは3年前、ノルウェー主導で立ち上げられた、15の海洋国家の首脳からなる国際会議でございまして、当初は安倍総理が参加いたしまして、その後、菅総理、そして、今は岸田総理が参加をしているといったことでございます。

下段に書いてございますけども、昨年の12月に、このハイレベルパネルが一定の成果をまとめた首脳文書を発表いたしまして、そこでもポスト2020に向けた動きを加速化しよう。それから、30by30についても取り組んでいこうといったことが確認されております。

それから、最後でございます。ポスト2020枠組に向けた検討でございます。先ほど申し上げましたように、当初予定されておりましたCOP15でございますけども、コロナにより2021年に延期をされ、さらに今年と、それから来年の春、2段階にわたって実施をされる。そこで目標採択に向けて検討が行われているという段階でございます。現行、検討が鋭意行われているところでございますけども、ここに書かれてございますように、第1次ドラフトといったものが提示をされておりまして、2050年ビジョン、それを支えるための2050年ゴール、2030年ミッション、それを支える2030年ターゲットといった建てつけで、数値目標を含め、野心の高いものも含め提示をされているといったところでございます。このドラフトを基に、これをたたき台にしまして、今議論が行われているところでございまして、今後、議論は深められていくと思っております。日本政府といたしましても、環境省をはじめ関係省庁とよく連携をしながら適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

外務省からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、文部科学省様、お願いします。

○佐々木大臣官房政策課専門官 文部科学省でございます。よろしいでしょうか。

○中静委員長 よろしくお願いします。

○佐々木大臣官房政策課専門官 文部科学省大臣官房政策課の佐々木と申します。

 資料の3-2をご覧ください。本日、別途配付されております資料1-2別紙では、国家戦略実施状況の点検結果の第1部に記載された「次期国家戦略に向けた課題」というものがありましたけれども、その中で、生物多様性に関する教育・学習・体験の充実、地域の自然との触れ合いや地域の文化・伝統についての理解、地域固有の野生生物保全、海洋域の保全・再生、地球温暖化の緩和策などが触れられておりましたが、文部科学省でも、こうした事項に資する取組を行っております。その主な取組を資料3-2に従って説明したいと思います。

 まず、1ページでございますが、主に学校教育や社会教育の場を通じて推進している環境教育の取組を記載しております。環境教育は、生物多様性にも波及するものだと考えております。左側の緑色の部分が学校教育関係でありまして、例えば学習指導要領の記載の充実や、教員等をはじめとする環境教育・学習教育の指導者への研修、学校施設自体を環境教育の教材として活用するエコスクールなどを支援しております。

右側の上のオレンジの部分は、環境に関する青少年の体験活動の推進となっておりますが、例えば、体験活動を通じた青少年自立支援プロジェクト、子供の体験活動の場の整備、国立青少年教育施設、これは全国に28か所ございますけれども、ここにある青少年交流の家や自然の家、こういったところで指導者の育成や体験活動の機会の場の提供を行っておるところでございます。

 右下のちょっと濃い青のところは、持続可能な開発のための教育、Education for Sustainable Development、略してESDとも呼ばれておりますが、これを推進する取組になってございます。例えば、ユネスコの活動拠点のネットワークの整備事業や、ESD教育のカリキュラムや教材開発、教育の実践、こういった事業を行っております。

 続きまして、2ページ、そして3ページもですが、文化の分野で生物多様性に関わる取組をご紹介させていただきたいと思います。

 まず2ページでございますけれども、自然環境を構成要素とする天然記念物や名勝、文化的景観を指定し、保護する取組を進めております。具体的には、学術的価値の高い動植物等である天然記念物の生態・分布の調査や生育・育成環境の維持・復元、食害対策、また、芸術または鑑賞上価値の高い庭園等の名勝に関する調査など、こういったものに対する補助を行っております。

 3ページでございますけれども、地域の文化や人々の生活と生業に根差した景観地である文化的景観について、文化的景観保護推進事業をやっておりまして、重要文化的景観に選定された地域について、修理などを行う整備事業や普及啓発の取組、こういったものに対する補助を行っております。このような取組は、里山の保全活用や地域に伝わる自然との共生や知恵、文化・伝統についての理解を深めることにも資するものと考えております。

 続きまして、科学技術の分野での取組を紹介したいと思います。

 4ページでございますけれども、生物の保全に関係するものでございます。ナショナルバイオリソースプロジェクトという事業でございますけれども、ライフサイエンスの研究に必要な動物や植物などの重要なバイオリソースについて体系的に収集、保存もしくは提供体制を整備し、大学や研究機関に提供している事業でございます。

 5ページの事業、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラムですが、国際協力において科学技術イノベーションを進める、こういった事業でございます。こちらの事業は、開発途上国のニーズに基づいて地球規模の課題の解決や将来的な社会実装に向けた国際共同研究を推進するものとなっております。例えば、一番左下の部分でございますけれども、これまでの成果というところですが、この事業は生物資源分野の課題も対象になっておりまして、ベトナムの作物品種の開発の例が載せられておりますけれども、こういった取組を行っております。

 6ページでは、海洋・極域分野における生物多様性への貢献をまとめております。

 まず上の方、これまでの取組・既存の取組とありますが、例えば、生物多様性の関係も含めた海洋情報把握技術の高度化や、南極地域観測事業など他にも幾つかありますが、ここに書かれているような事業などを行っているところです。

 下の方のオレンジの部分になりますが、今年度から開始の取組・事業として、例えば、海洋生物多様性ビッグデータを汎用化することや、環境変動によって海洋生態系がどのような影響を受けるかなど、生物ビッグデータの活用の取組も進めていきたいと思っております。

 7ページは、カーボンニュートラルの実現に貢献する研究開発をまとめております。資料にあるとおり、非常にたくさんの取組をやっているのですけれども、例えば、革新的な脱炭素技術の研究開発であったり、下の方になりますが、気候変動対策の基盤となる高精度な気候変動予測データの創出と利活用の強化、こういったことをやっております。これによって地球温暖化や気候変動の影響を緩和するということになりますけれども、このこと自体が生物多様性の観点からも重要だと考えております。

 以上で、文部科学省の説明を終わりたいと思います。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

では、農林水産省からお願いいたします。

○久保地球環境対策室長 お時間いただきありがとうございます。農林水産省地球環境対策室長の久保と申します。よろしくお願いします。

資料の共有のほうお願いします。1ページ目を投影していただけますでしょうか。ありがとうございます。1ページ目、お願いします。

まず、農林水産業における生物多様性ということで、全ての産業の中でも、とりわけ農林水産業というものは自然に密着した産業でございます。同時に、農業を通じて風景や文化を創り出して、生物の生息や生育環境を提供しているという産業でもございます。他方で、JBO3の概要を見てみますと、農林水産分野では、里地里山の管理・利用の縮小等による生物多様性の損失が指摘されているという現状認識をしております。

 次のページをお願いします。……

○中静委員長 ちょっと音声が悪いようですけど、何とかなりますか。皆さん、マイクとビデオをオフにしていただくぐらいにしたほうがいいかもしれません。

○中澤戦略推進室長 事務局でございます。恐らく農水省さんの通信状況が今悪いようですので、差し支えなければ、先に経済産業省さんのご説明に行ってもよろしいでしょうか。

○中静委員長 では、すみませんが、経済産業省のほうから先にお願いいたします。

○諏訪部生物多様性・生物兵器対策室長 了解いたしました。音声のほう、聞こえていますでしょうか。

○中静委員長 聞こえています。

○諏訪部生物多様性・生物兵器対策室長 ありがとうございます。私、経済産業省生物化学産業課の諏訪部と申します。

 念のため、ちょっとビデオのほうはなしでご説明させていただきたいと思います。

 本日は、経済産業省所管の独立行政法人である製品評価技術基盤機構と経済産業省が実施している生物多様性条約関連の取組について、お話をさせていただきます。これ以降、製品評価技術基盤機構はNITEと呼んで、本日はご説明をいたします。ありがとうございます。

 スライドをご覧ください。海外の多様な環境に生息している微生物は、産業上有用な機能を有する可能性が高く、利用価値が高いと考えられています。しかし、生物多様性条約の発効により、海外の微生物については原産国政府の了解を得なければ取得することができなくなりました。そこで、NITEが我が国の企業等が容易に海外の微生物を利用することができるよう、海外微生物資源へのアクセスルートを確保し提供する体制を、アジア地域を中心に構築しております。具体的には、海外の政府機関とMOUあるいはPA、共同研究契約に基づく共同事業を実施することにより、我が国の企業等が海外微生物資源にアクセスできる機会を確保するとともに、アジア・コンソーシアムの事務局として我が国のプレゼンスを高めることにより、アジア地域における強固な信頼関係を構築しています。また、名古屋議定書の発効前より、域内手続のルール化で先行しているヨーロッパとの協力関係を構築しつつ、ヨーロッパとアジア地域のかけ橋として、日本国内企業が海外微生物資源を利用しやすいよう、支援できる体制を構築しております。

 次のスライド、お願いします。現在、NITEは、この表の記載のアジア諸国、地域と連携し、探索事業により取得した微生物の移転・利用を通じ利益配分を実施し、また、BRCと呼ばれる生物遺伝資源保存機関の間での微生物の移転や情報交換などを実施しております。2002年のインドネシアに始まり、ベトナム、ミャンマー、タイ、モンゴル、中国、韓国、台湾と、一部では中断の地域もありながら、順次拡大を続けていることが分かります。こちらに記載されている海外探索とRD株と呼称するリサーチ・アンド・ディベロップメント用の株については次のページで、また、相互プロモーションについては後半で説明をいたします。

 スライド、ありがとうございます。このスライドでは、共同事業によるアクセスと利益配分の仕組みについてご説明をいたします。NITEが原産国の政府機関とMOUを締結し、また、実施機関とPAを締結し、PAの下で遺伝資源を提供できる二つの体制を整えています。一つは、NITEが原産国と共同で取得したリサーチ・アンド・ディベロップメント用の株を国内企業等へ提供し、利用してもらうRD株の提供と、もう一つは、国内企業等がNITEと合同で行った探索活動によって、直接原産国で探索し、自身で分離した株を帰国後に利用してもらう海外探索であります。共に金銭的または非金銭的な利益配分の仕組みが入っております。現在では、微生物の産官合同探索を実施し、収集したベトナム、ミャンマー、モンゴルの微生物資源について、日本の企業や大学にスクリーニング用材料として菌株が提供され、利用をされています。

 次のスライド、お願いします。2004年にNITE主導の下、アジア地域の12か国の政府機関、生物資源保存機関と共にACMを設立しました。ACMの正式名称については、タイトルのほうに記載のとおりでございます。また、活動目的としましては、微生物研究の促進に資する国際協力枠組の構築、あるいは各国の微生物が有する特徴の調査と特定、微生物資源の学術利用及び産業利用を促進するメカニズムの構築などとなっています。現在、15か国、地域から28機関が加盟をしており、日本からは、NITEのBRCであるNBRC、理研のJCM、それから国立環境研究所の3機関が加盟をしております。NITEは、ACMの事務局として活動を牽引しており、2004年の設立以来、毎年、年次会合を行っております。コロナ禍の昨年度であっても、日本が主体となり、オンラインで初めて開催をしております。年次会合を通じ、アジア地域における微生物を中心とする生物遺伝資源の研究者や研究開発政策担当機関の代表者と意見交換を行っています。このような交流の緊密化、活発化を通じて、各国関係者間の理解を深め、CBDの枠組の中でアジアを中心とした生物遺伝資源の保存とその有効利用を図ることを目的に活動をしています。

 次のスライド、お願いします。先ほど述べました目的を達成するために、メンバー報告、タスクフォース活動、それから総会の3本の柱を通して、ACMは活動をしています。メンバー報告では、各参加機関から年次活動報告と各国の国内情勢などの情報共有が行われ、NITEの貴重な情報源となっています。タスクフォースは、現在五つのタスクフォースが設置され、年間を通して活動しているところです。総会の意思決定は、コンセンサスベースで新規メンバーの加盟の可否など、ACM全体の意思決定を行う場として機能しています。

 次のスライド、お願いします。次に、アジア諸国地域連携のところでお話をしました相互プロモーションについて、ご説明をいたします。2014年10月に名古屋議定書が発効されてから、資源提供国において遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する法制度が急速に整備されております。このため、日本企業等の利用者が、それら資源提供国政府と直接交渉して、菌株を含む遺伝資源を入手し利用することは、より困難になりつつあります。このため、各国のBRCと連携することにより、その国の法令上必要な手続など、菌株入手手続等を各BRCのホームページで相互に公開をしています。日本のユーザーは、NITEのホームページを通して海外の菌株入手に関する情報を確認でき、迅速な入手が可能となります。現在、このスライドに示しております3機関と相互のプロモーションを実施しています。

 次のスライドをお願いいたします。続いて、ABS指針に基づく書類の発給業務についてご説明をいたします。NITEは、経済産業大臣から認定を受けた遺伝資源国内取得書の発給機関であり、経済産業省所管の鉱工業利用に使用する場合は、申請を受けて国内取得書を発給します。日本の遺伝資源を海外で利用しようとしたときに、利用国において名古屋議定書の遵守状況を確認する機関から、日本で取得されたものなのかを示す書類を求められる可能性があります。国内取得書がない場合は、遺伝資源の取得時の状況が分かる記録や契約書等を準備する必要があるので、膨大な時間がかかる可能性があります。一方で、国内取得書があれば、取得書自体が国の制度に基づいたものなので信頼性がありますし、様々な書類を準備する手間を省くことができ、利用国における確認がスムーズに行われます。この業務は2017年度から開始しており、PICや許可証と異なり、過去に取得した遺伝資源が対象であることが特徴であります。

 次のスライド、お願いします。最後に、経済産業省で実施しているABS及びカルタヘナ法に関する国内企業等への情報提供について、ご説明をいたします。先ほど申し上げたとおり、遺伝資源へのアクセスと利益配分に関しては、各国が生物多様性条約及び名古屋議定書に基づいて、自国遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する法令等の整備を進めています。そのため、当省では、国内企業等が適切に他国の法令等を遵守して円滑に遺伝資源にアクセスし利用できるよう、各国の法令等を調査して整理をし、助言や情報提供を実施しています。また、カルタヘナ法の規制に関する説明会を開催し、遺伝子組換え生物等の利用者に対して周知を行っています。具体的な内容としましては、こちらに記載している内容のとおりとなります。事業者が法令を遵守して遺伝資源へのアクセスや生物多様性への影響を防ぎながら遺伝子組換え生物の利用が可能な環境づくりに努めています。

 以上が生物多様性条約に関するNITE及び当省の取組となります。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 農林水産省、何とかなりますでしょうか。

○久保地球環境対策室長 こちら大丈夫です。恐らく2ページ目で切れたのではないかなと思うので、2ページ目を表示していただいていいですか。ありがとうございます。

 皆様ご承知のとおり、プラネタリー・バウンダリーの中で人間社会を環境と調和させていくということが大事だということで、まさに左上の赤い部分、絶滅の速度、そして、あとは窒素、リン、こういったものは、かなり農林水産業とも密接に関わるところですので、注意していく必要があると我々認識しておりますし、SDGsの17のゴールの中でも自然資本が他のゴールの土台となるということで、まさに農林水産業、非常に密接に関わっているので、しっかりとこれを持続可能なものにしていくことが強い社会的要請にもなっていると認識しております。

 3ページ目をお願いします。ありがとうございます。皆様ご承知のとおり、GBO5で愛知目標に関しては、完全に達成できた目標はないということですので、先ほど外務省のお話にもありましたとおり、transformative changeが必要だということで、私ども農林水産分野についても、そのように認識をしております。

そして、4ページ目をご覧ください。このような社会の状況と、それから来年の5月に向けたCBD-COP15第2部といったような国際的なルールメーキングの流れ、そして、アメリカとEUの国旗が左下に書いてありますが、各国でも食料や農林水産業と持続可能性に係る戦略がつくられております。こういったところで、我が国としても、しっかりと軸をもって対応していかなければいけないという認識でございます。また、左上にございますとおり、現状と今後の課題として、足元の農林水産分野を見ますと、生産者の減少や高齢化があります。人がいなくなると、里地里山の管理も不十分になるということもございますし、また、生産現場は温暖化や大規模自然災害、それらの影響を非常に今受けています。それから、コロナで人や物の交流の制限が行われた結果、今、商品とか部品調達の遅延とかで様々、いろいろな産業で減産という話もあります。足元の農林水産分野を見ますと、国内生産を支えている化石燃料だとか、それから化学肥料もそのほとんどの原料を輸入に依存していますので、こういったサプライチェーンをしっかりと強靭なものにしていくことも、やはり産業の持続性という観点からは必要であろうと捉えております。

こういった国内の足元と国際ルールメーキング、こうした流れも踏まえまして、今年の5月に、このみどりの食料システム戦略というものをつくりました。その過程におきましては、本日ご参加の広井先生、橋本先生、藤田先生にもいろいろご知見をお借りしながらつくったところでございますけれども、私ども、右のところ、2050年までに目指す姿として、個別には今日は申し上げませんが、持続可能な食料システムの構築に向けて、食料・農林水産業の生産力の向上と持続性の両立をイノベーションで達成・実現しようという戦略でございます。

持続性ということで、2050年までに目指す姿、一つには農林水産業のCO2ゼロミッション化でございます。それから、先ほど先生のほうからお話もありましたけれども、農薬につきましては、化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減していこうということ。それから、化学肥料についても、やはり輸入原料に頼っているというところでございます。そういったものを勘案すると、化学肥料の使用量も30%低減させていこうではないかと。さらには、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%、100万ヘクタールにしていこうということ。

それから、2030年までに食品企業における持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現を目指そうということ。こういったKPIを掲げまして、これらに向けた取組を確固たるものにするため、この戦略を法制化する検討も含めて、まさに今行っております。

これを実現することで、下のほうに記載している、期待される効果ということでございますが、経済面から言うと、輸入に頼っていたものを国内生産に転換していくほか、日本の農林水産物、それを持続可能なものにすることで輸出促進の後押しにもなる。それから、社会的に見れば、やはり化学肥料も輸入に原料を依存していたものから、例えば地域の産業副産物を活用するといったようなところに転換することで、地域資源を生かした地域経済循環にも資する形にもなろうと思っておりますし、何よりも次の世代にしっかりとした環境を残していく、こういった効果があるものと考えておりまして、これを私ども、欧米とは気候風土の異なるアジアモンスーン地域の持続可能な食料システムのモデルとして、しっかりと国際的に打ち出していきたいと考えております。

 次のページ、お願いします。この戦略の推進に当たっては、右上の生産だけではなくて、やはり原料調達、地域の農業だけではない、いろいろな工場から出る排熱の利用だとか、そういったものも含めて調達、そして生産、加工、流通、消費、最終的には消費が響かないと、なかなか生産だけではできませんので、各段階の行動変容、そして、今ある技術の横展開、その技術だけでは足らざるところはしっかりと技術開発をして、2050年、世界に誇れる食料システムをつくっていきたいと思っております。

 次のページは、先ほどのKPIをブレークダウンしたものですので、あとでご覧いただければと思いますので、7ページ目をお願いします。今申し上げた、みどりの食料システム戦略というのは、人手不足だとかサプライチェーンの強化、そして温室効果ガス、さらには生物多様性の保全など、幅広い観点からの中長期の政策方針として掲げたものであるのに対して、特に生物多様性に注目して掘り下げ、2030年に向けた戦略として、現在、農林水産省生物多様性戦略というものを、息長く検討を続けているところでございます。現在、表の上のほうにありますが、10月の第5回検討会まで終わっていますので、次回が一応2月8日を今想定しているのですけれども、第6回の検討会で戦略本文の概定を行うというスケジュールで考えております。その後、COP15、ポスト2020枠組の決定を踏まえて、さらに精査していって、最終的には次期国家戦略にしっかりと反映させていただきたいと考えておるところでございます。その委員につきましては、本日ご参加の橋本先生にも副座長に入っていただいて検討しているところでございます。委員名簿は8ページでございます。

内容ですが、まず9ページ、お願いします。まず農林水産省生物多様性戦略の見直しのポイントが左下にございます。1点目は、やはりサプライチェーン全体で取り組むというポイント。そして、2点目はみどりの食料システム戦略、こういったものを踏まえたものとしていくこと。それから、3点目は農林水産業や農山漁村、これが生物多様性に正と負、両面の影響があるということで、しっかりこれに触れて、最終的には生産現場を支える方々、事業者の方々の理解を促すものとしていきたいということ。そして4点目は、先ほども申し上げましたけれども、消費者の方々、この行動変容と申しますか、そういったところの理解ということも促していくものとしたい。そして5点目が、企業さんの観点、金融の観点も入れまして、ESG投融資、こういったものにも触れていきたいと思っております。そして最後、6点目ですが、先ほど外務省のプレゼンにもありましたが、COP26でも取り上げられた気候変動と生物多様性の対策、これにはシナジーとトレードオフがありますので、これをしっかりと地球環境という観点で捉えて取り組むことを目指したいと、こういうふうな形で見直しのポイントとして掲げております。

10ページ目をご覧ください。これが主な構成ですが、まず2030ビジョンというものを掲げました。これは農山漁村が育む自然の恵みを生かし、環境と経済が共に循環・向上する社会、これを目指そうというものをビジョンとして真ん中に掲げて、それも踏まえて基本方針というものを1から6まで掲げております。一つ目は、農山漁村における生物多様性と生態系サービスを保全・再生する。二つ目は、サプライチェーン全体で取り組む。三つ目が、生物多様性への理解と行動変容を促進する。四つ目は、政策手法、私どもの話ですけれども、こういったものもグリーン化していく。そして、5番目が農林水産業を通じて地球環境の保全に貢献していく。そして6番目、農水省だけでは駄目、環境省だけでは駄目、やはり地方も含めて連携して、実施体制を強化していこう。こういったものを書かせていただいております。

11ページ目以降は、簡単に紹介だけさせてください。サプライチェーン全体で生物多様性を主流化するというところで、農業分野の取組でございます。まず、生物多様性保全をより重視した農業生産を推進していこうではないかということ。そして、右が天敵防除だとか防虫ネットの写真もありますけれども、農薬使用の前に病害虫発生を予防していこうということで、生物多様性保全をより重視した農業生産技術、こういったものを開発・普及していこうということです。

12ページ目、これが森林・林業分野でございますけれども、森林の例えば長伐期化とか針広混交林化など多様な森林づくりを推進する。こういった森林の整備・保全を通じた生物多様性の保全だとか、それから、右側にありますとおり、天然林や希少野生生物への対応など、森林・林業基本計画を踏まえて、しっかりと森林整備を推進していこうということを書かせていただこうと思っております。

次のページ、お願いします。水産業でございますけれども、まずは左側、写真もありますウニの駆除など藻場の保全だとか干潟の保全など、こういった漁場環境の保全・再生を行っていく。それから、海洋プラスチックごみ、これ問題になっておりますので、こういったものの対策もしっかりと進めたいと思っております。右側でございますが、水産資源管理、これも新たな資源管理システム、こういったものを推進するなど、一層、水産資源の管理を進めていこうということを書きたいと思っています。

14ページ目、お願いします。サプライチェーン全体の取組でございますが、一番左、農林水産業・食品産業におけるプラスチックの資源循環ということも取り組んでいこうということ。それから、真ん中でございます。消費者とどういうふうにつなぐかということであれば、一つの手がかりは認証ラベルということで、森林認証制度の普及や水産エコラベルなどの認証ということも活用していこう。その下、食品ロス、こういったものも資源の無駄遣いになりますので、このロス対策ということをしっかり進めていこうと。それから、右側でございます。持続可能な生産消費の促進ということは非常に重要でございますので、私ども行っている「あふの環2030プロジェクト」をプラットフォームとして、企業様方のお力も借りながら、持続可能性重視の消費へ価値観と行動変容を促していきたいというふうに考えておるところでございます。

次のページ、これが最後になりますけれども、農林水産分野における地球環境保全の貢献といたしましては、先ほど申し上げたとおり、一番左側、複数の地球環境課題の同時解決を目指していこうではないかということ。これをしっかり掲げたいと思いますし、真ん中、特に、その中でも気候変動と生物多様性、特に農林水産施策においても、シナジーとトレードオフがあるということをしっかり認識して一体的に取り組んでいこうということ。それから3番目、国内だけではなくて、世界の森林生態系保全・再生への貢献ということで、調達のほかにもITTOなど国際機関、こういったところとも連携して、世界規模での森林保全にも貢献してまいりたい。こういったものを新たな戦略にも書いていこうということで、今準備をしております。どうぞよろしくお願いします。

ご清聴ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 では、国土交通省、お願いいたします。

○松家国土交通省環境政策課長 国土交通省環境政策課長の松家でございます。○松家環境政策課長 国土交通省の取組について、資料3-5でご説明させていただきます。

 1枚目をお願いします。国土交通省では、今年の7月に「国土交通グリーンチャレンジ」といたしまして、グリーン社会の実現に向けた重点プロジェクトを取りまとめました。この中では、カーボンニュートラル・脱炭素、気候変動への適応のみならず、生物多様性、自然共生の対策も含めて重点施策を政策パッケージとして取りまとめています。

 2ページ目をお願いします。生物多様性に関する取組でございますけれども、今日の委員会でもご議論があった、今後の生物多様性に関わる中心的なテーマでございますNBSの取組、あるいは30by30の取組に対しても、国交省としてしっかり貢献をしていきたいと考えています。具体的には、グリーンインフラの社会実装の推進、健全な水循環の確保、海の保全・再生、こうした分野で取組を推進・強化していきたいと考えてございます。

3ページ目をお願いいたします。グリーンインフラの社会実装でございます。グリーンインフラといいますのは、自然環境が有する多様な機能を活用して、インフラ整備あるいは土地利用と組み合わせながら、持続可能で魅力ある地域づくりを進める取組です。緑や水などの自然環境が持つ雨水貯留浸透をはじめとする防災・減災の機能、あるいは都市空間、生活空間における緑豊かな地域づくりの中での、カーボンニュートラル、脱炭素吸収源としての効果や生態系保全の効果、さらには地域活性化、地域価値の向上、住民の健康増進など、こうした多面的な機能を地域課題解決に生かしていく取組を社会に実装していきたいと考えてございます。このため国土交通省では、昨年の3月に「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」といたしまして、産学官の多様な関係者の方々にご協力いただいて、それぞれが有するノウハウ、技術等を共有する場、プラットフォームを立ち上げさせていただいてございます。この立ち上げあるいは運営に当たりましては、経団連自然保護協議会会長の二宮委員にも大変なご尽力をいただいているところでございます。この活動の中で、グリーンインフラの取組に関する事例集の作成、情報発信、様々な関係主体の取組のマッチングを進めるパートナーシップの構築、あるいは先進的な事例の表彰などを行っています。さらには、グリーンインフラに活用し得る技術の効果・評価の検討、あるいは、そうしたものを実装するための民間資金活用の促進方策、こうした様々な観点からの皆さん方の学び、あるいは、実装に向けた取組の加速につながるよう、活動を進めさせていただいてございます。お陰さまで会員も1,200を超えて、民間事業者、自治体、学識者の方々、この委員会の多くの先生にもご協力いただいて活動を進めているところでございます。また、地域で実際に活動をする取組を財政的にも支援していくということで、昨年度から国土交通省では、様々な支援メニューも強化してございます。グリーンインフラの構想・立ち上げをハンズオン支援するためのモデル事業、あるいは、自治体や民間でのグリーンインフラを活用したハード整備の支援も強化をさせていただいているところでございます。

 次のページをお願いします。その具体的な取組、いろいろな分野で進めてございますけれども、都市の緑化、貴重な都市に残る自然環境の保全の制度の活用、公園の整備、また、民間も含めた屋上緑化、こうしたものはオフィスのCO2対策、省エネにも資するものとして、推進しています。さらに、まちなかウォーカブルの推進ということで、都市部、まちなかの空間形成に当たって、居心地がよく歩きたくなるような空間の形成も、緑、自然環境を活用しながら進めているところでございます。

 次のページをお願いします。魅力ある水辺空間の創出でございます。例えば、宮崎県延岡市では五ヶ瀬川の「鮎やな」が地域資源としても有名でございますけれども、その保全と商業施設が連携した水辺空間の創出、あるいは生態系を育むような環境、自然の川づくり、河川環境の保全・整備といったことも進めてまいります。

 次のページをお願いします。広域的な生態系ネットワークの形成でございます。例えば兵庫県豊岡市の円山川、この河川域内での湿地の再生の取組、こうしたところが拠点となって、コウノトリの飛来が広がっています。こうした地域の資源を活用して、コウノトリと共生するようなお米、お酒がブランド商品として地域経済の活性化にもつながっています。この取組は、先ほどのグリーンインフラの国土交通大臣賞として昨年度、表彰させていただいたところでございます。また、国土の管理構想の推進、人口減少、過疎化が進む地域の中で、いかに国土、土地を持続可能な形で管理をしていくかは大きな課題になってございます。今後、国土形成計画、国土利用計画の改定も検討を始めている中で、こうした課題、地域の様々な主体が地域の国土管理をどのような戦略・方策・方法でやっていくかをしっかり検討していただくことが大事だと思ってございます。貴重な棚田の維持をどうしていくか、人手がない中で手のかからない管理手法をどういうふうに考えていくのか、あるいは、一部の地域については、人手をかけないような地域の在り方ということも含めて、こうした構想の策定・推進ということも取り組んでいきたいと考えてございます。

 次のページをお願いします。砂浜の保全・回復等でございます。砂浜等の海岸保全の取組、あるいは、海岸侵食の対策でございます。右側、ブルーカーボン生態系と書いてございます。炭素固定の効果が期待される藻場・干潟の海洋生態系を創出し、脱炭素、カーボンニュートラルの取組にもしっかり生かしていく必要があると考えてございます。こうした藻場・干潟の保全・再生、あるいは、ブルーカーボンの機能を活用したオフセット・クレジット制度、こうしたものの地域での試行ということも推進をさせていただいているところでございます。

 次のページをお願いします。健全な水循環の確保でございます。河川であるとか湖沼の環境整備・改善、あるいは、下水道における高度処理の導入といったことで、水域の水質改善を推進していくということを進めてございます。

 次のページ、最後に海の再生・保全ですが、海域環境の保全、あるいは、海岸の漂流・漂着ごみの対策など、海の領域での保全・再生の取組にも取り組んでいきたいと考えてございます。

 以上でございます。ありがとうございました。

○中静委員長 ありがとうございました。

 大変時間も残り少なくなってきましたけれども、改めてたくさんの取組をされていたのだというのがよく分かったと思います。前の戦略の段階でも700ということなのですけれども、改めて考えますと、各省庁間の協働といいますか、そこが本当に大事だなというふうにも思います。

 委員の皆さんから、そういうことも含めまして、ご意見あればお願いします。

 今日聞いていて気になったのですけども、内閣府も例えば国土強靭化ですとか、それからSociety5.0とかで、結構関係する面があるのではないかなというふうには思うのですけど、この辺はどうなのでしょうね。これは環境省の方にお伺いしたほうがいいかもしれません。

○中澤戦略推進室長 中静先生、よろしいですか。今のご質問ですけども、内閣府の中でも、部署が分かれてやっておりますので、こちらのほうで情報を整理して、また提供するようなことを考えたいと思います。

○中静委員長 どうぞよろしくお願いします。委員の皆さんのほうから、ご意見、ご質問いかがですか。

 橋本さん、どうぞ。

○橋本委員 ありがとうございます。橋本です。

 先ほど申し上げたことと関連してというか、同じような発言になるのですけれど。今、中静座長がおっしゃられたように、協働体制をどうやって国家戦略の中に位置づけていって、ちゃんと実効性をもたせていくのかというのがとても重要だということを、もう一度発言しておきたいです。

あとは、今国家戦略の改定・見直しのために、政策のレビューをしてここでご報告いただいているのですが、多分このような調整業務みたいなものが頻繁にできるような体制があるとより良いと考えます。例えば、頻繁な情報共有、調整ができると、先ほどから議論になっているOECMをどのように実際に実現するか、あるいは、国土交通省でやっているグリーンインフラ施策が国家戦略の中にどう位置づけられるのかのような議論ができるでしょう。また、新しい例えばCBDのポスト2020枠組みの議論で出てきたようなNBSのような新たな政策概念が出てきた際に、それを実際、日本国内でどのように行政的に対応できるのかということが日常的に議論できると、次の改定作業も効果的になるように思うのです。今は、OEWGのポスト2020の枠組の議論で、「こういうことが議論されている」、「新しい言葉が出た、どうしよう」という形で個別に対応しているところがありますが、もう少し普段からの政策調整というのが円滑にできていくと、より良い対応というのができるのかなと期待しています。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございました。

 ご意見としてお聞きするということで、これは、これからいろいろ検討していかなければいけない問題としてお受けしたいと思います。

 白山さん、いかがですか。

○白山委員 白山です。

 一つ質問と一つコメントなのですが。コメントのほうは、海洋政策本部というもの、これは首相の直轄だと思うのですね。一応、内閣府所管かと思いますけれども、非常に生物多様性に関わることも多いので、こちらについても、少し連絡を密にしていただけるとありがたいということです。

 それから、もう一つは、経産省のご報告の中にACMというのがありまして、この遺伝資源に関わる問題が海洋の微生物の遺伝資源も取り扱っていらっしゃるかどうか、もし分かれば教えていただけるとありがたいなと。それはなぜかというと、今後、生物多様性の保全、地球規模で考えたときには、公海上の生物の遺伝資源というものの保全も非常に重要になってくるので、その辺り、少し教えていただけるとありがたいなと思います。よろしくお願いします。

○中静委員長 ありがとうございます。

 経産省の方、いかがでしょうか。

○諏訪部生物多様性・生物兵器対策室長 経済産業省、諏訪部でございます。

 ご質問ありがとうございます。ちょっと申し訳ございません。ACMの中で海洋、特に公海とかの微生物も扱っているかどうかということにつきましては、ちょっと今、手元にデータというか知見がございませんので、また後ほど、会議終わりましてからでも先生のほうに情報提供させていただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○中静委員長 はい。よろしくお願いいたします。

○白山委員 よろしくお願いします。

○諏訪部生物多様性・生物兵器対策室長 ありがとうございます。失礼いたします。

○中静委員長 そのほかの委員の方から。

 高村さん、どうぞ。

○高村委員 ありがとうございます。

 各省庁の取組で、生物多様性にかなり配慮した取組を各省庁がやってくださっているなというのが、すごくありがたく感じました。連携ということは、橋本さんが言われたように、それをしていただきたいのですが、全体として、生物多様性の現状評価、状況がどうなっているかというのは、環境省がしっかりとモニタリングをして、評価をしっかりとして今回の国家戦略にも盛り込んでいただきたいですし、生物多様性の保全・再生に関わる科学や研究の推進をしっかりと書き込んで、研究者層を厚くしていく、例えば、推進費の戦略研究Iは、生物多様性分野は一課題しか、走っていないのですけれども、やはり二つぐらいは走らせ、科学を推進して、日本の生物多様性の状況を好転させることをしっかりとやっていっていただければなと思います。

 あと、30 by 30に関して、陸水域は陸域の中でカウントされ、注意を向けていただけない傾向にあります。生きものというのは、それぞれの場に特異的なので、川は川で30%、湿地は湿地で30%、湖沼は湖沼で30%と、そういうふうな形で陸水域の保全というのをしっかりと入れ込んでいただければ大変ありがたいと思います。特に国交省の方には、河川のほうで30%、保全区をしっかりと意識して河川整備をしていただければ非常にありがたいと思います。

 以上です。

○中静委員長 ありがとうございます。

 国交省の方、何かコメントございますでしょうか。

○松家環境政策課長 ありがとうございます。

 先生のご意見を踏まえて、この戦略の策定あるいはその実行を含めて、関係省庁と連携しながら取り組んでいきたいと考えてございますし、ご指摘の具体的な取組については、河川環境の保全、あるいは、いろいろな自然共生の取組をしっかり進めていきたいと考えてございます。30%の目標設定の在り方等々については、いろいろな省庁とも相談させていただきながら検討させていただければというふうに考えています。

○中静委員長 あと、これは環境省の方にお聞きしたほうがいいのかもしれませんけど、先ほど橋本さんがあった、省庁間の協働をどう実現するかとか、環境省がモニタリングしっかりやらなければいけないという高村さんのご意見に関して、何かコメントがございますでしょうか。

○中澤戦略推進室長 ありがとうございます。

 例えば、JBOというのは、環境省中心にして進めております。ただ、データというところでありますと、例えば海に関しては水産庁ですとか国交省さんですとか、河川ですと国交省さんとか、そういったそれぞれの得意分野の情報というのはあると思いますので、そういったものを統合化して、JBOみたいなところで全体的な評価をするというような活動というのは、今後とも進めていく必要があるというふうに思っています。それ以外にも、またいろいろな方法があると思いますので、この戦略の検討会の中で、いろいろとご示唆をいただければありがたいと思います。

○中静委員長 連携については、何かアイデアとかお考えありますか。

○中澤戦略推進室長 繰り返しなのですけども、基本的には国家戦略の関係省庁連絡会議を活用しながらということ。あと、個別には、例えばポスト2020の枠組については、それぞれの交渉のステージで意見のすり合わせも行われています。

○中静委員長 ありがとうございました。

 委員の方から、ほかにご質問、ご意見ありませんでしょうか。よろしいですか。

 今日は第1回ということで、皆さんのいろいろなご意見を、施策についてもご紹介いただきましたし、ご意見もいろいろいただいたところなのだと思うのですけれど。最初、時間がなくて困るかなと思ったのですけど、ちょうど時間ぐらいのところでご意見切れましたが。今日、十分時間がなくてお答えとかがいただけなかった点もあるとは思うのですけど、今後の議論の中で、そういう点についても詰めていければというふうに思っておりますので、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

 そうしましたら、これから引き続き、問題点といいますかご意見とかあれば事務局のほうへお寄せいただいて、今後の議論に生かしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、一応、今日の議論はこれで終了ということで、進行を事務局にお返ししたいと思います。どうも皆さん、ご協力ありがとうございました。

○司会 中静委員長、議事進行ありがとうございました。また、委員の皆様は、活発なご議論をありがとうございました。

 閉会に当たりまして、自然環境計画課長の堀上よりご挨拶申し上げます。

○堀上自然環境計画課長 本日は、長時間にわたりご議論いただきまして、ありがとうございました。特に中静先生、進行についてお手数おかけいたしました。途中、ちょっとトラブルありましたけれども、皆様、ご協力ありがとうございました。

第1回ということもありまして、大分こちらからの説明が多かったかなと思います。そういう意味で、今後、全体としては6回にわたってこれから進めていくことになりますけれども、ぜひ次回以降も忌憚なくご意見をいただければと思います。特に国家戦略に関しては、いただいたご意見を踏まえて整理をしていきたいと思いますけれども、今検討しているほかの個別の施策につきましても、例えば30by30のロードマップですとか、あるいはOECMについても、いただいたご意見を反映しながら進めたいと思っておりますので、今後も小委員会ごとにいただいたご意見を反映していければと思っております。

そういうことで、次回もぜひ、どうぞよろしくお願いいたしまして閉会の挨拶といたします。今日は、どうもありがとうございました。

○中静委員長 どうもお疲れさまでした。

○司会 次回は、12月17日金曜日の13時30分から17時に開催を予定しております。自然保護団体や経済団体、事業者等の関係団体からのヒアリングを実施したいと考えております。

 本日は、長時間にわたり、どうもありがとうございました。

午後4時44分 閉会