自然環境部会自然公園等小委員会(第52回)議事録

開催日時

令和7年1月9日(木) 13:0014:51

議事次第

(1)磐梯朝日国立公園(磐梯吾妻・猪苗代地域)の公園区域及び公園計画の変更(点検)
   並びに国立公園事業の決定・変更について(諮問)
(2)阿蘇くじゅう国立公園の公園区域及び公園計画の変更(点検)
   並びに国立公園事業の決定・変更について(諮問)
(3)中部山岳国立公園及び男鹿国定公園の公園計画の変更(一部変更)(諮問)
(4)国立公園事業の決定及び変更について(諮問)
   ・上信越高原国立公園、中部山岳国立公園、富士箱根伊豆国立公園、瀬戸内海国立公園

(5)その他
   ・国立公園オフィシャルパートナーによる取組(報告)

 

議事録

午後1時00分 開会

○事務局(山本) それでは、定刻となりましたので、ただいまより中央環境審議会自然環境部会自然公園等小委員会を開会いたします。
 本日はお忙しい中、本審議会にご出席いただき、ありがとうございます。
 会議に先立ちまして、出席委員数のご報告をさせていただきます。本日は所属の委員及び臨時委員11名のうち、WEBも含め10名の方にご出席をいただいておりますので、本委員会は成立しておりますことをご報告いたします。なお、本中央環境審議会においては、WEB会議システムによる参加についても出席とみなすこととなっておりますので、ご理解、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議運営につきましてご説明いたします。
 傍聴につきましては、会場での傍聴は行わず、傍聴用のWEB会議システムを用意して傍聴できるようにしております。本日は報道機関関係者を含め、15名程度の方がWEB会議システムにて会議を傍聴されておりますので、ご承知おきください。
 また、本日ご説明する資料につきましては、会場にお集まりの委員についてはお手元のタブレット資料をご参照いただき、リモート参加の委員に対しては事前にメールにて送付させていただいたものをご参照ください。なお、リモート参加の委員におかれましては、差し支えない範囲で結構ですので、常時ビデオボタンはオンにし、お顔が見られる状態にしておいていただけますと幸いです。
 また、議事中、マイク機能は委員長及び発言者以外はミュートに設定していただきますようお願いいたします。ご発言の際は、挙手アイコンをクリックしてお知らせください。委員長からのご指名を受け、マイクのミュートを解除してからご発言いただきますようお願いいたします。ご発言後は挙手アイコンを忘れずにクリックし、手を下げていただきますようお願いいたします。
 議事運営については以上でございます。
 それでは、自然環境局長の植田からご挨拶申し上げます。
○植田自然環境局長 皆様、明けましておめでとうございます。直接お越しをいただいた中村委員長をはじめ多くの委員の皆様方、それからオンラインでのご参加をいただいております委員の皆様方、大変多くの方に出席をいただき、ありがとうございます。
 この委員会で扱うテーマは、自然公園関係がメインでありますけれども、ちょうど昨年、生物多様性の関係の法律が新たに成立をいたしました。通称、地域生物多様性増進法と呼んでおります。成立当初は『生物多様性増進活動推進法』と呼んでいたので、ちょっと変わったかなと思われたかもしれませんが、どちらも正しいんですけれども、少し長かったというのと、地域という言葉を入れるということで、2文字ほど減りまして、これからは『地域生物多様性増進法』と打っていきたいと考えております。
 その中の目玉は、ご承知のとおり、自然共生サイトを認定していくということであります。この4月から独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)が認定業務を担う形で、新たに法認定をスタートする準備を進めているところであります。
 30by30の目標達成に向けては、この自然共生サイトは生物多様性の保全ということで進んでおりますが、自然公園等の優れた自然の部分をきちんと保全していくというのは当然であって、やはり忘れてはならないと我々は認識をしております。また、国立公園の区域もそうですけれども、国立公園満喫プロジェクトやオーバーツーリズム対策で、きちんと公園のエリアの質を高めていくというところもきちんとやっていきたいと思っております。
 今回も例会どおり、国立公園の区域や計画、事業といった多くの諮問案件をお願いしているところでありますが、今回からはこれまでの漫然とした説明を変えて、めり張りをつけて、焦点を絞った形でご説明を申し上げる予定にしております。特に、今回の重点案件は阿蘇くじゅうの国立公園の拡張であることから、こういったところに重点を絞っていますので、ぜひどのぐらい変わったかを確認いただければと思います。
 短い時間でありますが、忌憚のないご意見をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
○事務局(山本) それでは、議事に移らせていただきます。ここからの議事進行は、中村委員長にお願いいたします。中村委員長、よろしくお願いいたします。
○中村小委員長 年の初めにたくさん集まっていただきまして、ありがとうございます。今しがた局長もおっしゃったとおり、2時間ですが、様々な案件がありますので、早速、始めさせていただきます。
 議事次第に沿っていきますが、会議資料については公開となります。また、議事録は後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員の了承をいただいた上で公開することとなります。
 今回の議事としては、この議事次第にあるとおり、議事1が磐梯朝日国立公園の公園区域及び公園計画の変更並びに国立公園事業の決定・変更、議事2が阿蘇くじゅう国立公園の公園区域及び公園計画の変更並びに国立公園事業の決定・変更、議事3が中部山岳国立公園及び男鹿国定公園の公園計画の変更、議事4が国立公園事業の決定及び変更についてとなっています。
 まず、議事1と2、それと議事3と4をそれぞれ、ひとまとまりにして事務局から説明していただいた後に、ご質問やご意見を伺う流れにしたいと思います。また、最後に報告事項として、議事5国立公園オフィシャルパートナーによる取組があります。
 それでは、議事1と2について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局(仲原) それでは、議事1磐梯朝日国立公園(磐梯吾妻・猪苗代地域)の公園区域及び公園計画の変更(点検)並びに国立公園事業の決定・変更についてご説明いたします。こちらについては、資料1-1が説明資料となっております。
 ご説明の流れについては、公園の概要について、公園計画の変更内容、パブリックコメントの対応について、公園事業の決定・変更についてという順番でご説明させていただきます。
 まず、磐梯朝日国立公園の概要についてです。本国立公園のテーマは「古の姿を守り続ける遼遠の花々、変わらずにはいられない火山の大地」です。
 スライド4に移ります。磐梯朝日国立公園は山形県、新潟県、福島県にまたがり、高山帯及び亜高山帯の自然林生態系でつながる、非火山性群峰の雪触地形と成層火山の連峰を持つ公園となっております。この公園は、羽黒山、月山、湯殿山から成る出羽三山から朝日連峰にかけての地域と、飯豊連峰を中心とした地域、そして今回変更の対象となる磐梯山、猪苗代湖から成る磐梯吾妻・猪苗代地域の3地域から成っております。昭和25年に国立公園とされ、その後、昭和53年と63年に公園計画の再検討が行われ、平成31年までの間に磐梯吾妻・猪苗代地域では計6回の公園計画の点検が行われております。
 続いて、今回の変更内容についてご説明いたします。
 スライド6ページ目に移ります。まず、今回の点検においては、公園区域を2か所で合計219ヘクタールを特別地域として拡張いたします。どちらも特別保護地区が公園外と接している箇所でございまして、今後、一体として風致の維持を図るために公園区域に編入いたしました。そのうち、安達太良山の西側にある福島県猪苗代町の186ヘクタールについては、硫黄鉱山の跡地で、温泉が滝となって流れ出る独特な経過を含むエリアを周囲の森林景観と併せて保全を行うため、第2種特別地域として拡張します。そのほか、地域内の区域線・地種区分線を網羅的に点検しており、区域線66か所と地種区分線42か所にて実施を行いました。
 スライド7ページ目に移ります。事業計画の変更についてご説明いたします。今回、事業計画に関しては大きく3つのポイントから見直しを実施しました。
 まず、1つ目は、スキー場のグリーンシーズンにおける利用促進の観点です。磐梯朝日国立公園(磐梯吾妻・猪苗代地域)では、国立公園満喫プロジェクトの実施計画であるステップアッププログラム2025を令和4年3月に定めており、その中の重点的取組事項として、潜在的な魅力を持っている自然資源の活用が挙げられ、スキー場のグリーンシーズンの適切な利活用により、質の高い体験の提供を進めることとなりました。この方針に基づき、今回は既にスキー場が整備されている安達太良山の西側にある沼尻と磐梯山の南麓にある赤埴山の2か所において野営場の計画を位置づけ、既存のゲレンデ敷を活用した夏場の宿泊滞在拠点として利用を促進いたします。
 続いて、2つ目の観点といたしましては、猪苗代湖畔の野営場の整理を行うため、計画の見直しを行いました。本公園の南部に位置する猪苗代湖は、ロケーションや気候のよさ、アウトドア志向の高まりから、夏場に非常に多くの利用者が訪れている場所であり、既に多数のキャンプ場が湖畔に存在している状況でございます。これにより、湖畔周辺では無秩序な野営が行われており、猪苗代湖の風致景観上の支障が生じております。今回の公園計画の変更では、これらの既存の野営場の把握を行い、公園事業として事業範囲を決定し、野営場を集約することで、猪苗代湖畔の景観保全を図るためのものとなります。
 最後のポイントは、令和4年の法改正を踏まえた公園計画の見直しとなります。令和4年の法改正により、自然体験活動計画というものを新たに公園計画に位置づけられるようになりました。従来の公園計画では利用施設などのハード整備の計画が主となっていましたが、自然体験、アクティビティなどのソフト面についても促進すべき内容や指針を公園計画に示すことで、国立公園として質の高い自然体験活動を示せるようになりました。
 磐梯朝日国立公園(磐梯吾妻・猪苗代地域)では、地域とのこれまでの議論を踏まえて、この地域における質の高い自然体験活動の方向性を取りまとめており、それを公園計画に位置づけるものとなります。また、この計画を踏まえて、今後、地域において、より具体的な実施内容が定められた自然体験活動促進計画が提出され、地域の取組が運用されるものとなっております。
 以上が今回の公園計画の見直しに係る大きなポイントとなります。
 さらに、そのほかにも細かな事業計画の変更を行っており、単独施設、歩道事業、運輸施設については利用実態に合わせた整理を行っております。また、裏磐梯集団施設地区については、既存の休暇村裏磐梯を中心とした宿泊・滞在型の裏磐梯整備計画に加えて、裏磐梯ビジターセンターや休憩所などの複数の公園施設が集中して既に整備されている五色沼東地区について、五色沼東整備計画区として位置づけます。
 最後に、パブリックコメントの対応となります。今年の10月において21日間で実施し、2件のご意見をいただきました。内容は、文言の修正に係るものと保護規制計画の見直しに係る意見でした。詳細については資料1-4をご参照ください。
 続いて、国立公園事業の決定・変更について説明いたします。
○事務局(山下) 国立公園課の山下でございます。よろしくお願いいたします。ここからは私のほうから説明をさせていただきます。
 今回、この磐梯朝日国立公園に関しては、全部で5件の国立公園事業の決定・変更の諮問をさせていただきたいと考えております。
 まず1点目の沼尻野営場については、先ほど公園計画の変更で話があったものとなります。こちらについては、区域面積5.2ヘクタール、最大宿泊者数460人で、執行予定者は民間ということで事業決定したいと考えております。
 スライド12枚目の下の四角の説明ですけれども、この場所は安達太良山西麓の沼尻高原に位置しておりまして、周辺にはスキー場、温泉、ゴルフ場などがあります。ほかに、登山基地としての利用、温泉利用、隣接スキー場ゲレンデでの夏季イベントなど、特に滞在拠点としての夏季の宿泊ニーズがございます。今回、計画変更でも説明させていただきましたとおり、スキー場のグリーンシーズン利用の一環として野営場事業を実施するものでございます。
 ゲレンデ脇に既に宿舎事業が営まれておりまして、この事業者によって一体的な運営が予定をされております。既存のゲレンデ内の主に平たん地を活用して、新しい造成は伴わない形で、既存の施設も利用しながら、公衆トイレや炊事棟を整備して事業を進めてまいりたいと考えております。
 続きまして2件目、赤埴山南麓野営場も新しく決定をしたいと考えております。区域面積は9.5ヘクタール、最大宿泊者数は720人、執行予定者は民間になります。この場所ですけれども、猪苗代湖の北側にあります磐梯山一角の赤埴山の南麓に位置しております。夏は登山基地としての利用が多く、既存の夏山リフトやBBQデッキ等の利用も増加傾向にあります。また、新しい索道整備も進んでおりまして、磐梯山登山の当該地からのアプローチが高まることも予想されるということで、同じくスキー場のグリーンシーズン利用の一環として野営場に位置づけたいというものでございます。
 中身も先ほどの沼尻野営場と重複しますけれども、事業執行予定者としてはスキー場事業者による事業を予定されており、同じく既存ゲレンデ内の平たん地を活用して、既存施設を活用しながら、公衆トイレや炊事棟を整備するという想定でございます。
 続きまして、猪苗代湖の南部にあります秋山浜野営場と舟津浜野営場を2件まとめてご説明させていただきます。スライド16ページ目左側の秋山浜野営場につきましては新しく決定するもので、区域面積は4ヘクタール、最大宿泊者数は200人、執行予定者は郡山市を予定しております。右側の舟津浜野営場につきましては、既に野営場事業として決定しているものを変更するもので、区域面積を2から5.9ヘクタールに拡大、最大宿泊者数を400から650人に増加させ、執行者は現在の執行者でもある郡山市を予定しております。
 この場所は、猪苗代湖畔の南岸の湖南七浜と言われる浜の一つになります。夏は湖水浴やデイキャンプ、SUP等のウォーターアクティビティが充実しているほか、冬場はバードウォッチングなども利用されている状況で、既にトイレや炊事棟などがあり、キャンプ利用されておりまして、舟津公園では野営場事業を執行しているという状況になっております。
 まず、秋山浜野営場ですが、スライド17ページの左下の写真を見ていただければよくお分かりになりますが、整備された平たん地のアカマツ林内で既にキャンプ利用されている場所を新しく位置づけるものですので、造成や伐採は基本的に想定されていません。トイレや炊事棟等の既存施設も活用しつつ、キャンプ場としての機能を充実させるために、管理棟やトイレ、炊事棟の整備を予定しておりまして、管理棟は利用ルールの徹底や啓発活動等の拠点としても運用されていく想定であると伺っております。
 続きまして、舟津浜野営場になります。スライド18ページの下2つの航空写真を見ていただければと思いますが、左側の青で囲っている部分が既に野営場事業として執行されている範囲になります。この左側については、青枠を赤枠の範囲に変更するもので、青枠のうち、一部には畑や民家が含まれており、野営場事業の実現性がないところを実態に合わせた形に変更するというものです。スライドの右上の写真がこの場所の状況になっております。それから、スライド右側については、新しく赤枠の範囲を決定するものですが、いずれにつきましても既にキャンプ利用されている平たん地のアカマツ林内を活用するものです。こちらも同様に既存施設をうまく使いながら、新しく管理棟、トイレ、炊事棟等を整備する想定になっております。
 最後の5件目になりますスライド19ページの勢至平線道路(歩道)の変更は、路線距離を6.5キロから8.5キロに延ばすもので、執行者は福島県と二本松市を予定しております。先ほどご説明しました、沼尻野営場の安達太良山の反対側、東側に位置している場所で、麓のあだたら高原スキー場から安達太良山の縦走路までに至る登山道及び探勝路で、道中には温泉の噴出するくろがね小屋がございます。この道路(歩道)では、縦走登山や登山口付近のあだたら渓谷自然遊歩道の散策、くろがね小屋での宿泊、冬季のスノーシューハイクなど様々な利用がなされている現状にあります。
 スライド20ページの地図の青線が現在の事業決定されている路線になりますが、地図右側の赤線と重なっていない青線部分は、歩道としての実態がなく、利用もされていないという現状にあります。これを現状の利用実態に合わせた現道に事業決定の路線を変更しまして、一部の旧道を計画上削除するものでございます。特に、あだたら渓谷自然遊歩道という、地図の一番右側の部分は、令和4年度に豪雨災害で被災し、現在は通行止めになっております。一方で、この場所は渓流沿いを散策できる歩道として四季を通じて利用者が多く、復旧を望む声が非常に大きいこともありまして、今後復旧工事を予定していることから、今回、事業決定の路線を変更する場所にて復旧工事をするため、諮問をしております。復旧工事の内容は主には既存施設の更新で、被災した木道や木橋等を再整備する予定でございます。
 ご説明は以上になります。
○事務局(仲原) 続いて、議事2の阿蘇くじゅう国立公園の公園区域及び公園計画の変更の説明に移ります。こちらは、資料2-1が説明資料となっております。説明の流れは先ほどと同様となります。
 阿蘇くじゅう国立公園の概要について、まずご説明いたします。本国立公園のテーマは「草原のかほり、火山の呼吸。風が遊ぶ感動の大地。」です。
 スライド5ページ目に移ります。阿蘇くじゅう国立公園は熊本県と大分県にまたがり、昭和9年に指定されました。世界最大級の阿蘇カルデラと、その中央にそびえる中央火口丘、九州本島最高峰の中岳や久住山を中心とするくじゅう連山などから成る景観を持つ国立公園となっております。指定後は、昭和54年と56年に公園計画の再検討が行われ、令和2年までに5回の公園計画の点検が実施されております。
 続きまして、今回の変更内容についてご説明させていただきます。今回の点検においては、公園区域の大幅な拡張と保護規制の強化を行っております。阿蘇くじゅう国立公園の周辺の草原については、令和4年6月に公表されました国立・国定公園総点検事業フォローアップ結果において、現在の国立公園区域と同等の資質を有する広大な二次草原が周辺まで広がっていると評価されました。
 また、平成28年から取り組んでいる国立公園満喫プロジェクトの阿蘇くじゅう国立公園ステップアッププログラムにおいては、阿蘇の草原景観の保全強化と、主要の展望地や利用動線からの眺望確保を推進することとしています。
 そのため、今回の見直しにおいては、既存の公園周辺に広がる公園と同等な自然景観を持つエリアを公園区域に編入するとともに、公園内の主要な展望地からの良好な眺望を確保するべき区域を抽出し、景観保全の強化を行います。
 スライド7ページ目に移ります。まず、公園区域の拡張として、阿蘇地域の14か所で計3,331ヘクタールの編入を行います。例えば阿蘇くじゅう国立公園の北側に位置する南小国町の満願寺や菊池市の原においては、既存の国立公園と連続的に広がる景観の一体的な保全を図るために、普通地域への拡張を行っております。さらに、国立公園と連続的に広がる景観の中でも、特に南小国町の赤馬場周辺においては、主要な展望地から可視領域を評価の上で、景観保全を図るため、1,450ヘクタールを公園区域に編入し、第3種特別地域に指定しております。
 続いて、公園区域の保護規制計画の変更についてご説明いたします。今回、阿蘇市の一の宮町坂梨の周辺については、4,621ヘクタールを普通地域から第3種特別地域に規制強化をしております。ここは阿蘇北外輪山線の沿線の草原風景が特徴的な場所であり、特に景観保全が重要であることから、規制強化を行います。加えて、公園内の地種区分線の明確化も10か所にて実施しております。
 スライド9ページ目に移ります。こちらは施設計画の変更についてです。まず、阿蘇地域において公園区域を拡張したエリアについて、公園の利用拠点や事業として必要な施設を把握し、整理をしております。また、同様に、拡張した草原においては自然再生施設事業の追加を行っております。加えて、くじゅう地域において、草原風景を生かした宿泊利用の促進として宿舎事業の計画を1件追加したほか、歩道事業や運輸施設の追加、削除も併せて行っております。
 最後に、パブリックコメントの対応についてですが、今年10月において21日間で実施し、2件のご意見をいただきました。内容は文言の修正に係るものと保護区域の拡張の進め方に関するものでした。詳細は資料2-4をご参照ください。
 続いて、国立公園事業の決定・変更についてご説明いたします。
○事務局(山下) それでは、引き続いてご説明をさせていただきます。
 今回、阿蘇くじゅう国立公園に関しましては、2件の事業の諮問をさせていただきたいと思います。
 まず、スライド13ページの1件目は阿蘇草原自然再生施設で、既にある事業の変更で、区域面積を2,000ヘクタールほど拡大するものになります。阿蘇草原というのは本国立公園を代表する景観で、採草放牧と野焼き等の地域の生業によって維持されているものです。従前から、この事業では、草原及びその周辺を事業決定範囲としまして、その範囲内において自然再生施設を整備し、自然再生を推進してきております。
 スライド14ページの左側地図の、現状で青線の部分を、今回、国立公園の区域に拡大する範囲の草原を新たに追加して、赤線の部分にしようというものになっております。
 この事業における課題として、担い手の減少によって草原面積の減少が予測されております。今後10年以上野焼き等の維持管理作業が継続可能と答えた地元の牧野組合が、面積比で言うと約4割にしかすぎないというようなアンケート結果もございます。阿蘇草原再生協議会という牧野組合等、約260から構成される大きな協議会がありますが、そこで全体構想をつくって30年後の目標を設定しておりまして、今と変わらない規模の阿蘇の草原を残すということが目標として掲げられております。また、その方策の一つとして、環境省や市町村による野焼き維持に資する恒久防火帯整備等の推進が挙げられております。今回、公園区域に編入される範囲を含めて、草原維持への支援を強化するために、本事業の決定範囲を拡張するものになります。
 スライド15ページの変更後に予定されている事業の概要ですけれども、本事業では、従前より恒久防火帯というスライド中の写真のようなものを、通常、毎年草刈り機で草を刈って、野焼きの火が森林のほうに延焼しないようにするのですが、そこを砂利敷きにしたりですとか、場所によっては鉄鋼スラグを敷くことで、毎年草刈りをしなくても済むように、恒久防火帯や管理道の整備、あるいは、右の写真のような小規模樹林帯を伐採することで、防火帯切りの延長を削減するという事業を進めてきております。こういった地元による草原維持を支援することで、草原景観の保全草原の有する公益的機能の維持を図ってまいりたいと考えています。また、これらは決定範囲全てで行っているのではなく、決定範囲の一部で行われる施設整備の事業によって、決定範囲を面として草原維持をしようとするものでございます。
 恒久防火帯や作業道の整備予定箇所では事前に植生調査を行って、希少種が確認された場合には生育環境を迂回したり、移植等の措置も検討・実施するという配慮もなされておりますし、小規模樹林帯の伐採というのは、写真でもあるような、主に人工林が対象となっておりますので、生態系への影響は限定的であると考えております。
 スライド16ページの最後1件が大分県側になりますけれども、久住山南登山口宿舎で、新しく事業決定するものです。区域面積が34ヘクタール、最大宿泊者数が160人で、民間による執行を予定しております。
 この地域ですが、くじゅう連山南側の竹田市久住高原中心部に位置しまして、土地所有者、地元の組合による野焼き等によって草原環境が維持されている広大な草地になっております。周辺の主な利用形態は、くじゅう連山の登山、赤川温泉などの温泉利用があるほか、眺望を対象とした園地とか野営場の利用が多くございます。
 スライド17ページの当該地における課題とその対応ですが、地元の組合による野焼きの草原管理が大分県側でも高齢化によって難しくなっております。今回、この宿舎事業者の土地利用の条件として事業執行者の野焼き維持への協力というのが想定されており、草原としての土地利用をやめて宿にするということではなく、草原をうまく維持しながら宿舎事業も営んでいこうというものになっております。また、本事業の決定により、草原風景そのものの魅力をはじめとして、周辺の施設や体験の拠点となる宿泊利用によって、滞在体験の魅力向上、あるいは地域活性化への貢献というのも推進してまいりたいと考えております。
 決定後に予定されている事業の概要でございます。まだ詳細は煮詰まっておりませんが、上質でゆとりのある土地空間を有する高付加価値な宿舎をコンセプトとして進めてまいりたいと考えております。あまり大きくない規模の宿泊施設、食堂棟、温泉施設等を整備して、施設整備は必要最小限に、広大な敷地は草原として維持しつつ、眺望の対象、あるいはアクティビティの場としても利用していければと考えております。
 スライド18ページの右下の写真にありますとおり、この場所は草地改良された場所ですので、希少種等は生育していないということと、なるべく土地改変のないような形で事業を進めていければと考えております。
 議事2のご説明については以上です。
○中村小委員長 ありがとうございました。
 それでは、今説明いただいた議事1、2について、皆さんからご質問やご意見を承りたいと思うんですが、いつものとおり、会場にお集まりの委員の皆様におかれましては名札を立ててください。また、リモート参加の委員の皆様におかれましては、WEB画面上で参加者リストのご自身の名前の横に表示されている挙手ボタンにて挙手の表示をお願いします。なお、発言する際には、最初に名前を述べてから意見、質問をお願いいたします。また、時間が限られていますので、質問、ご意見は簡潔にお願いしたいと思います。3人程度まず質問していただいて、まとめて事務局から回答をお願いしたいと思います。
 それでは、まず、深町さんからお願いします。
○深町委員 深町です。
 今回は利用に関連する部分が主だと思われますが、利用をする上での植生管理や、自然そのものをどうするかというところとのバランスなど、そのような観点からご質問したいと思います。
 1つ目は、最初の磐梯朝日国立公園のスキー場における野営場とアカマツ林が対象となった野営場等の整備について、まず、スキー場周辺の草地になっている部分の草地そのものの価値や管理が、どのように行われていて、それを利用する際の配慮事項がどうなっているかという点です。
 2つ目は、全国的にアカマツは松枯れでどんどん枯れており、更新が問題になっているように思われますけれども、今もすごく立派なアカマツがありますが、この部分の更新や松枯れ対策がどうなっているかということをお聞きしたいです。
 最後は阿蘇くじゅう国立公園ですが、小国地域や南阿蘇村等に行くと、混牧林と呼ばれる草地にクヌギが点在していて、畜産と林業をうまく両立させた歴史的な背景があります。経営的にはなかなかそれが難しいかもしれませんが、景観や文化としてはすごく大事で、そういう部分の位置づけみたいなところが今回の資料ではあまり読み取れない気がします。その部分に対しては計画の中でどういうふうに捉えているのでしょうか。また、人工林を少し伐る程度という説明がありましたけども、実際に野焼きをする側の方々のお話を聞くと、人工林がすごく近くにあることによって、野焼きするときに非常に大変な作業になってしまっている問題も聞いたりするので、森林と草地の適正配置やそういったところの課題に対する今後の対応も含めてお聞きできればと思います。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。
 続いて、会場のほうから先に聞きますね。加藤委員、お願いいたします。
○加藤委員 ありがとうございます。和歌山大学の加藤でございます。
 2つのご質問ですが、1点目は今のコメントと関連して、磐梯朝日国立公園というよりも全体な観点からキャンプについてで、私が、国立公園ならではの宿泊ガイドラインの策定に関わらせていただいていることもあり、キャンプや野営についての正しい利用の仕方や観光者の方に向けてのガイドライン的なものは設けてあるのかということをお聞きしたいです。
 2点目が阿蘇くじゅう国立公園で、担い手の減少もあり、滞在体験型の宿ができるという説明でしたが、そこでの草原の維持管理について協力金の徴取等の計画が将来的にあるのか、教えていただきたいと思いました。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。続いて、広田委員、お願いします。
○広田委員 質問2点とコメント1点ですが、質問1つ目は磐梯朝日国立公園の猪苗代地域のキャンプ場の件ですけれども、キャンプ場が多数乱立していて混乱もあるということなんですが、ここの所有者がどうなっているのかという点と、所有者が収入のためにキャンプ利用を容認している場合等の様々なパターンがあるかと思われますが、問題の状況を具体的に説明していただきたいというのが1つです。
 それから2つ目の質問が、阿蘇くじゅう国立公園について、先ほどの深町委員から灌木が野焼きの支障になるという指摘もありましたが、実際に現地に行くと景観的に、特に眺望を売りにしているビュースポットから灌木的なものが眺望を阻害しているようなところもあり、草原の中の灌木の評価と扱いについての方針を整理されると良いと思いました。
 最後に、パブコメの回答の仕方が雑ではないかなという印象がありまして、「ご意見は今後の施策の参考とさせていただきます」という書き方で終始しているところがあり、かなり詳しくコメントされている方もいたので、どういう施策に、どう参考にさせていただくか等は書けるだろうと思います。
 私もいろんな委員会の中で、パブコメに対して、こう書いたほうが良いというような意見も言ったことがありますし、自分自身でもパブコメで意見したことがあるんですが、非常に丁寧に回答される場合もあり、今回は簡単過ぎるかなという気がしています。これもコミュニケーションですから、もう少し考えられたほうがいいかなという意見です。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。ひとまずこの辺で回答をお願いいたします。
○事務局(山下) ご意見をありがとうございました。それでは、順に回答させていただきます。
 まず、深町委員が最初にお話しされていた、スキー場の草地そのものはどうなっているかというところで、詳細な樹種と植生の把握はしていないですが、スキー場として開発された場所で、改良された草地だと考えております。ただ、どこにどういう整備をするのかという点は、この事業決定後の、認可の審査の中で調整してまいりますので、今回いただいたご指摘を踏まえて、ゲレンデだからどこでもいいということではなく、植生も慎重に見ていきながら、配置というのは調整してまいりたいと思います。
 それから、続いてアカマツ林について、現地は松枯れしているような樹木もあり、そういうものは管理者によって対処されていると認識しております。今回のキャンプ利用とアカマツ林の管理をどうつなげていくのかという点は、これからの運用の中で検討していく部分だと思いますが、利用者目線で言うと、例えば松枯れの木が急に倒れてきて利用者に支障がないようにだとか、あるいはみだりにテントを張って更新を妨げないか、といった視点を持ってこちらも運用していければと考えております。
 それから、深町委員の3点目のご意見と広田委員もおっしゃっていた草原の灌木の評価についてですが、クヌギ林というものは国立公園の草原の中の景観資源の一つのとして大事なものとして捉えておりますし、管理運営計画でもそのような記載をしております。誤解がないようにお伝えしますが、クヌギ林自体は野焼きをしても燃えないので、クヌギ林がある分には野焼きの支障にはならず、むしろ先ほどご質問いただいた人工林が野焼きの支障になっているという状況にあります。例えば、草原の中にぽつんとある島状のような人工林は、それがあることで周りをぐるっと草刈りをしなければならないため、その島状の人工林がなくなれば、そこは草刈りをしなくて済むということになるので、そのような対応を事業の中で進めてまいりたいと思います。
 それから、加藤委員のご意見ですけれども、国立公園における野営場のガイドラインという全国的なものはありません。宿舎事業においてようやく整理され始め、野営場ではどうするかというのは今後の課題になると思っておりますが、今回の磐梯朝日国立公園については、公園計画の中の公園事業として野営場をきちっと整理しようという取組になりますので、それによってどのような効果が得られるか等も注視しながら、必要があれば他公園にも波及させられるような形で物事を考えていきたいと思っております。
 それから、加藤委員の2点目の質問で、宿舎による草原への協力に関してですけれども、今のところの調整状況では、地元の組合と新しく入る宿舎事業者とで、土地を使う代わりに野焼きに協力するというような取り交わしを想定されているようで、そこに利用者の負担も流れていくものだと思われます。また、ご承知の方も多いかもしれませんが、阿蘇は草原再生協議会で草原再生募金を持っており、10年で1億5,000万円ぐらいの寄附を集めています。それをさらにうまく推進しつつ、草原全体の保全にも利用者負担の取組をより進めていきたいと思っております。
 それから続いて、広田委員からの猪苗代湖のキャンプ場の土地所有者の質問ですが、浜に近い場所は、公有水面や公有地になっておりまして、それよりも陸側の林等に関しては、それぞれの財産組合等が土地を持っていると伺っております。特に、関係行政機関からは、いろんな場所でテントが張られてしまって、そこを何とか管理していきたいという思いもあると聞いていまして、それに同調するような形で、国立公園の管理としても野営場が必要な場所を把握する取組と考えております。
○事務局(仲原) 最後、ご意見いただきましたパブコメの回答についてですが、ご指摘のとおり今回のパブコメは、公園計画の内容に直接関わるものだけを対応しており、具体的な対応策や施策にどう生かすかといった内容は書き切れていなかったことは反省点ですので、いただいたご意見を踏まえて今後対応してまいりたいと思っております。
○中村小委員長 ありがとうございます。まだあるかもしれませんが、一通り手を挙げておられる皆さんのご意見を聞いて、また最後に足りない点を聞いていただくことにします。それでは、会場のほうから山本委員と町田委員にお願いいたします。
○山本委員 ありがとうございます。東京大学の山本です。
 質問が3点ありますが、1点目は広田委員の質問に重なっておりまして、磐梯朝日国立公園のスライド7で野営場が乱立している説明があり、その土地所有についての質問がありましたが、スライド18でも、青線から赤線に変更するにあたり、既存の線の中には畑が入っていたため、実態に合わせるというようなことが説明されました。
 ただ、歴史的な経緯もあるでしょうけれども、公園計画の変更のときに、どうしてこういうことが起きるのかという原因は、知っておく必要があると思っており、その観点から、なぜ当初に場所を決定した後に、畑があるという状態が生じたのかという点は気になるところです。
 それから、2点目は簡単な質問ですが、磐梯朝日国立公園のスライド20に、豪雨災害で被災した歩道を復旧する要望の多いことが書かれておりましたけども、リスクを削減するような工夫がされているのか、聞かせていただきたいと思います。
 3点目は阿蘇くじゅう国立公園についてです。草原の維持が特に大きな課題だと思いますが、今回の説明資料の中にも、今と変わらない規模の草原を残したいと地域は考えている一方で、実際にはなかなか難しそうだということも記載がありました。さらに、その改善提案や解決策の1つとして、恒久防火帯が述べられていますが、恒久防火帯をどのように整備していくのかという点が、手当てとしてかなり重要ではないかと思います。というのも、例えば農業であれば、実は水田管理のための草刈りが労働の大きな負担になっていて、草原管理においても、恐らく防火帯の管理が大きな負担になっているのだろうと想像します。例えば、急峻な場所からやるのか、どこに防火帯を設けるのか等の優先順位の決定方法が、地域の手当てにとって大変重要だと考えますので、その辺りの方法論について考えていただけるとありがたいと思います。以上です。ありがとうございました。
○中村小委員長 ありがとうございます。町田委員、お願いします。
○町田委員 ありがとうございます。東京農業大学の町田です。私からは2点あります。
 1つ目は磐梯朝日国立公園の野営場の事業決定で、最大宿泊数がそれぞれ決められていると思われますが、この人数設定をどのようにご算出されたのかという点です。
 2点目が阿蘇くじゅう国立公園で、阿蘇の草原の最大の魅力は、やはり広い地形と一体化して広々としているところなので、この連続性を評価して国立公園の区域を拡張したことは、私としては嬉しく思います。また、沿道も草原らしさがでる景観体系の大事なところなので、逆に言えば、沿道で問題になっている場所をどうしていくのかという点も議論の1つだと思います。あと、他の先生方からも出ている恒久防火帯については、草原の維持管理で一番大事なところで、阿蘇の皆さんがこのままでは維持できないという気持ちになっているところに対して、こういったところを支援していただくと、国立公園として広げて守りますよというメッセージになり、地域やボランティアの方が励まされると思いました。2つ目はコメントです。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、オンラインから中静委員にお願いいたします。
○中静委員 中静です。ありがとうございます。
 皆さんの質問とやや重なりますが、阿蘇くじゅう国立公園の地種区分と、草原の火入れや草刈り等の管理方法はリンクしているものでしょうかと。というのは、例えば普通地域から第3種特別地域に格上げになったときに、管理方法が変わる可能性があるのかどうかをお聞きしたいです。それから、特に新しく公園区域になったところでは、事業者に管理を期待するような表現があったので、公園の区域や地種区分が変わることによって、管理の方針に変更があるのかどうかということをご説明いただければと思います。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、事務局から回答をお願いいたします。
○事務局(山下) では、回答いたします。
 まず、山本委員からのご質問ですが、磐梯朝日国立公園のキャンプ場で現状の決定範囲に畑が入っている過去の経緯は、申し訳ありませんが承知しておりません。点検の機会を契機として、このような古い時代ものを見直していくことが大事だと考えております。
 それから、豪雨災害が頻発化している時代でもありますので、それらリスクに対してどう対処するのかという工夫は、今回は環境省交付金を使ってやられる事業でもありますので、自治体ともしっかりと連携をしながら努めてまいりたいと思います。
 それから、3点目のご質問で、町田委員のご質問とも重複する部分ですけれども、環境省の防火帯整備をどういうふうに決めていっているのかという部分は、大きく2つのプロセスで牧野を選定していきます。1つはGISデータを活用しておりまして、防火帯の傾斜や過去の延焼事故の有無、その牧野が現状1人当たりどのぐらいの距離の草刈りをしているのか等の客観的データを基に、優先度の高い場所をピックアップしています。あと1つは、それぞれの市町村の農政部局に照会をかけて、普段から組合が各自治体に相談を持っていきますので、その2つを統合して、対象とする牧野を抽出しております。その上で、整備する場所は環境省が勝手に決めるわけではなく、計画づくりの中で地元の組合と一緒に現場を歩きながら、どの場所でやってほしいか等のリクエストを聞いて進めております。環境省としても、この事業は草原維持の骨幹に係る部分だと思っておりますので、丁寧に進めていきたいと考えております。
 それから、町田委員からご質問いただいたキャンプ場の最大宿泊者数の考え方ですけれども、基本的にはテントサイトを30平米で1人とカウントするという考え方が内規で定められております。それを基本としつつ、中には区画で既に設定されている場所もありますので、設定されている数も使いながら、数を決めています。
 最後に、中静委員から地種区分と草原の管理方法がリンクしているのかという点ですが、地種区分が普通地域であっても特別地域であっても、基本的に生業は可能となっております。これは自然公園法の規制にも関係していますが、特別地域であっても第一次産業や地域の生業には配慮された法規制になっておりますので、地元がこれまで続けてきた草原管理は変わらずに、普通地域であっても特別地域であってもやれるということを申し上げます。以上になります。
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、オンラインのほうから、永山委員、苅谷委員、愛甲委員の順番にお願いいたします。まず、永山委員、お願いいたします。
○永山委員 ご説明をありがとうございました。永山です。阿蘇くじゅう国立公園に関して2点を伺えればと思います。
 今回、かなり大きな範囲の拡大になっていますが、阿蘇地域の景観をめぐりましては、再エネ施設との共存というところで、最近いろいろな課題が指摘されていると思いますが、今回の拡大では再エネ関係の施設との関連性は考慮されているのか、また、今後の景観維持という観点で、そういった問題とどう折り合いをつけていこうとされているのかを伺えればと思いました。
 2点目については、他の先生方もご質問されていますが、草原維持の野焼き等の手間を省くための恒久防火帯の整備が挙がっていますが、それ以外に、今後30年間という長いスパンで草原維持を考えたときの取り組まねばならない課題について、環境省の考えと、それら課題に対する環境省の支援を伺えればと思いました。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、苅谷委員、お願いします。
○苅谷委員 ご説明をありがとうございました。
 まず、私から質問が1点です。先ほど山本委員からも出ましたが、安達太良山の自然遊歩道の復旧工事等について、安達太良山はご存じのように活火山の一つであり、また、常時観測火山ということでも、やはり火山災害のことに留意する必要があると思います。その点では、火山防災や、あるいは土砂流出といったところは環境省が負うものではないのかもしれませんけれども、他省庁や地元との連携を図って、その利用の促進をうたうのであれば、利用者の安全にも配慮するといったところを、もう少し前面に出す説明があってもよいと思いました。この点について、どのようにお考えか伺いたいと思います。
 それから、ご説明のあった順に3点をコメントしますが、1つ目は、説明スライドのいくつか、特に磐梯朝日国立公園ですが、地理院地図の空中写真とは別の空中写真、衛星画像が使われているものがあるように見受けられます。何か事情があったのかと思いますが、この点は原則、国土交通省の国土地理院のものを使うのがよいと思います。
 それから2つ目に、以前の会議でもコメントしたことがありますが、阿蘇を世界最大級のカルデラと呼ぶのには違和感があります。というのは、阿蘇のカルデラの大きさは直径が24キロメートルと18キロメートルという差し渡しで、それより大きなカルデラとして100×30キロメートルの広がりを持つインドネシアのトバなどがあります。それに比べると、世界最大級というのはミスリードをする可能性があるので、省庁の説明文としてはどうなのだろうかという点がコメントです。
 それから3つ目に久住南登山口宿舎ですが、ここはもともと火山の山麓で、火山灰を母材とするような赤土が広がっているところだと思います。整備は必要最小限にするという言葉がありましたけれども、そうはいっても、この草地の中に駐車場や宿泊棟、温泉施設を整備するに当たっては、この土の掘り返し等もあると思いますので、赤土の流出等には十分配慮いただきたいと思いました。以上になります。
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、愛甲委員、お願いします。
○愛甲委員 ありがとうございます。私からは1点、磐梯朝日国立公園の安達太良山の登山道の勢至平線道路についてです。これ、整備されて、路線の変更をして、歩道の実態がないところを削除して、この赤い線のほうに変更するということだったんですけど、この地形図の下にも見えているように、その赤いところのつづら折れになっている下にも路線があって、登山地図などを見るとそちらも使われているような実態があります。この辺の路線を整備するときに、利用実態とか、あと要は今後の、この被災したということも考えると、周辺の環境との関係とか、要は登山道としての安定性なども考えた上で、この新しい路線というか、こちらの馬車道になっている路線のほうを採用するようにしたのか、どういう判断をされたのかというのをちょっと伺いたいというのと、あと、ここの事業執行が現状どういうふうになって管理されているかというのも教えていただければと思います。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、事務局、お願いいたします。
○事務局(仲原) まず、永山委員からご質問のありました、阿蘇くじゅう国立公園の拡張区域と再エネとの関係なんですが、今回の公園区域を拡張したエリアは、令和4年6月に公表されました総点検事業フォローアップの中で評価されたということを踏まえて公園区域の拡張を行ってきた経緯で、かつ、地元からも草原景観を残していくために国立公園の拡張の要望の声もあったということを受け止めての対応となっております。また、今後において大規模な再エネ開発とどう折り合いをつけていくかという点でございますが、国立・国定公園においては、規制を適正に運用することを通じて、自然草原などのこの重要な自然景観を保全しながら、自然環境と調和した再生可能エネルギーの導入を進めていきたいと考えております。
○事務局(山下) 続いて、永山委員からご意見いただいた阿蘇の草原における防火帯整備以外の課題と対策についてですが、阿蘇の草原を維持していくためには、突き詰めると、維持するための労力と、その財源の確保が、重要かなと思っております。
 労力の部分は、野焼きボランティアというボランティア組織がかなり充実をしております。ただ、ボランティアの中でも高齢化の問題もあり、若いボランティアをどう育成していくか、あるいは地元の火つけの後継者や、その後継者をどう育成していくかも力を入れてまいりたいといいますか、既に力を入れて推進しているところです。
 それから、財源については、募金というのは先ほどお話をさせていただきましたが、ネイチャーポジティブという時代の流れの中で、草原の持つ公益的機能は様々あることも見えてきましたので、企業とタイアップし、新しい財源の確保ができないか、そういったことにも今取り組んでいるところです。環境省だけではなく、熊本県、関係市町村と連携しながらになりますが、こういうものを推進して草原を維持していきたいと思います。そして一番重要なのは、やはり畜産で維持されるという、本来あるべき姿をどう再生するかというところで、なかなか環境省の手の届かないところではあるのですが、農政部局とも連携しながらそういうところも推進しているところです。
 続きまして、苅谷委員から安達太良山の復旧工事について、火山防災の観点でご指摘をいただきました。資料にその部分が反映できなかったため、今後は気をつけたいと思います。また、環境省でできることとして、登山口での周知や情報発信等で、できる部分はあると思いますので、工事の中でも自治体と調整をしていければと思っております。
 それから、地理院地図以外の航空写真のご指摘については、今後気をつけたいと思います。
○事務局(仲原) 阿蘇くじゅう国立公園の世界最大級のカルデラという言葉の使い方についてでは、今後の説明の中で、実態を踏まえた表現にしていけますように注意したいと思います。
○西村国立公園課長 国立公園課長の西村でございます。国立公園と再エネの関係のコメントがありましたので、私から一言申し上げさせていただきます。
 近年、再生可能エネルギーの導入の拡大に伴いまして、自然環境への影響に関して地元の方々からいろいろ声が届いているということは承知しております。公園サイドといたしましては、自然環境の保全上、重要な資質を守っていくということが原点ですので、今回も阿蘇の草原景観をどういうふうに守っていくかという観点から公園区域の拡張をしております。その上で開発規制を行い、適切な規制を今後も進めてまいりたいと思います。
 再エネの導入に当たっては、地域の皆様とのコミュニケーション、それから環境保全ということは何よりも重要ですので、公園計画の拡張に当たっても地元の声を聞かせていただきながら、守るべきところは守るという考え方で対応してまいりたいと思っています。以上です。
○中村小委員長 愛甲委員の質問についても回答をお願いします。
○事務局(山下) お答えさせていただきます。愛甲委員からのご意見、ご指摘ですが、地図の点線部分をどういう判断で入れなかったかという正確な内容は把握しかねておりますので、そこは確認いたします。いずれにせよ、今回は最も主要に利用されている部分を公園事業道路として位置づけるという趣旨になっております。その上で、ご質問いただきました事業執行の状況ですが、今回、復旧工事を行うあだたら渓谷自然遊歩道は、二本松市に工事と併せて事業執行をしていただく予定で、それ以外の部分は福島県が既に事業執行しているという状況になります。
 最後に1つ残っておりました苅谷委員からの久住宿舎の土の流出については、ご指摘のとおりだと思いますので、認可の調整の際に留意していきます。以上になります。
○中村小委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
○事務局(山下) 愛甲委員からのご指摘の部分について、現地事務所がオンラインに入っており、補足できるとのことですので、裏磐梯事務所の黒江からお願いいたします。
○裏磐梯自然保護官事務所(黒江) 裏磐梯自然保護官事務所の黒江です。よろしくお願いします。勢至平線道路(歩道)のあだたら渓谷自然遊歩道の路線でご質問いただいた部分ですが、利用実態としては、スライド20ページの、赤線のところがもともと馬車道として登山道になっており、青線は、30~40年前に既に廃道になっていったという状況がありましたので、今回、実態に合わせて、赤線のところを路線として位置づけるものになっております。
 それから、赤線の馬車道と呼んでいるところの横脇に、点線が通っている部分がありますけれども、こちらはショートカットのルートが一部あり、こちらも旧道として過去に使われていたところです。こちらの道については現在も使っている人はいますが、傾斜がかなり急で、雨で濡れると、とても滑りやすくなっておりまして、公園計画の公園事業道路としては、赤線の馬車道を使っていくことを予定しています。現地からは以上になります。
○中村小委員長 ありがとうございました。今、小泉委員から手が挙がっていますが、全体を通して、他にもおられますか。では、深町委員と小泉委員の順にお願いいたします。
○深町委員 先ほどのクヌギの話に関して簡単な補足ですが、草原にクヌギが点在している景観というのも代表的な文化的景観で、それは畜産業と林業の両方が、ほだぎの生産等があることによって成り立っているものです。どうしても草原のほうに目が行くんですけれども、クヌギが点在する景観、産業をどうするかという取り組みが、もう少しあると良いのでは、大事ではないかという趣旨で発言いたしました。一方で、広田先生もおっしゃっていたように、草原管理をしなくなることによって樹林地化が進むということは別問題で、歴史的・文化的な景観と、手入れが足らないことによって樹林化していくとことを分けて捉えるべきであり、人工林の配置も含めて全体的に考えながら、全体像を見ながら、それぞれに力を入れていくことが大事だという趣旨でした。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございました。小泉委員、どうぞ。
○小泉委員 ありがとうございます。小泉です。今回の諮問事項には含まれませんが、現地ともオンラインでつながっているということで、磐梯朝日国立公園で心配している点がありますので、教えていただければと思います。
 磐梯山西側の雄国沼の南の方に雄国沼湿原がありまして、かなり規模の大きいニッコウキスゲの群落がありますが、ご存じのように、福島県内もシカの分布が拡大しており、生息密度も上昇しております。この雄国沼湿原も完全にシカの分布域に含まれていることが大変心配をしております。尾瀬の二の舞にならないように、早急な対策が必要だと感じておりますが、既に現地で防護柵を設置しているのか、さらに、設置する事業計画があるのか、分かりましたら教えていただきたいと思います。
○中村小委員長 深町委員の発言はコメントとして受け取ってください。では、現地のほうからの説明をお願いいたします。
○裏磐梯自然保護官事務所(黒江) 裏磐梯自然保護官事務所の黒江です。よろしくお願いします。雄国沼湿原のシカ問題に関して、一昨年の8月に環境省で木道工事を行っており、その工事業者がシカの個体を目撃しまして、それが初確認だったのですが、シカの影響がかなり心配されている状況になっております。昨年度から環境省でセンサーカメラを設置して、生息状況の把握や、今年度からは植生調査とセンサーカメラを増設して調査を行っております。それから、現地では、地域の関係者・関係機関・関係団体の方々が集まり、現地状況の共有認識を図ることと、今後の対策やこの目標をどこで据えるかというようなことの協議を始めているところになります。まだ、生態系維持回復計画の策定には至ってはおりませんが、近々に対応していこうと考えております。現状については以上です。
○小泉委員 ありがとうございます。防護柵がまだ設置されていないということを大変心配しておりますので、本課の方でも事業予算にご配慮いただきますよう、よろしくお願いします。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございました。時間の関係で、この辺でご意見をある程度打ち切らせていただきます。様々なサジェスションをいただいて、それらについてはいろんな形で対応していただくことになると思いますが、この議事1の磐梯朝日国立公園、それから議事2の阿蘇くじゅう国立公園の案件について、諮問に添付されたとおりとして、ご異議ございませんでしょうか。
 (異議なし)
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、本件については適当と認めて答申したいと思います。続きまして、議事3、4について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局(仲原) それでは、議事3、中部山岳国立公園及び男鹿国定公園の公園計画の一部変更に移ります。資料3-1が説明資料となっております。こちらについては同じ一部変更の内容で、軽微なものとなりますので、合同で説明させていただきます。
 まずは、中部山岳国立公園の概要についてです。スライド4ページ目をご覧ください。中部山岳国立公園は新潟県、長野県、富山県、岐阜県にまたがり、北アルプス一帯を占める我が国を代表する山岳公園で、昭和9年に誕生した国立公園の一つです。大規模に切り立った岩壁や深く険しい渓谷、高山帯のお花畑やライチョウなど多彩な山岳景観を呈しております。国立公園として指定された後は、昭和59年に再検討が行われ、平成4年に第1次点検、平成18年に第2次点検が実施されております。
 続きまして、今回の変更内容についてご説明させていただきます。スライド6ページ目をご覧ください。中部山岳国立公園の中央部には、富山県立山地区と長野県扇沢地区の間を結ぶ立山黒部アルペンルートというケーブルカーやロープウェイ、バスから成る山岳観光路線が位置しております。室堂や剱岳などの自然景観へのアクセスルートとして年間70万人を超える利用があります。その立山黒部アルペンルートの中で、大観峰と室堂を結ぶ立山トンネルトロリーバスは、法律上は鉄道事業法に基づく無軌条電車でありまして、現在、国内で唯一運行している状況であります。そのため、保守部品の調達や安全装置の設置が義務づけられ、その対応が難しくなっていることから、今後は電気バスに転換される予定となっております。したがって、今回、トロリーバスが道路運送法に基づく電気バスに変更されることから、公園計画の扱いにおいても鉄道運送施設から自動車運送施設に、事業種の変更のための一部変更を行うものとなっております。
 続いて、男鹿国定公園の変更についてご説明いたします。スライド8ページ目をご覧ください。男鹿国定公園は秋田県男鹿市の男鹿半島の先端部に位置し、海底から隆起した島が砂州により本陸と結ばれた珍しい地形となっています。延長17キロメートルに及ぶ海食段丘や火山群、盾状円錐型火山など、複雑な地形が魅力的な景観を呈しております。国定公園として昭和48年に指定された後、昭和56年に再検討、平成9年に第1次点検を実施しております。
 続いて、変更の内容です。スライド10ページ目をご覧ください。男鹿国定公園の中央北部に位置する八望台地域には、一ノ目潟と二ノ目潟という爆裂火口に水がたまって形成された湖が存在しており、その自然景観に親しみ滞在型的に利用するために、休憩所が公園計画上に位置づけられております。しかし、現在はこの公園計画に基づき整備された食堂・売店が既に営業終了しており、建物は撤去されて更地の状態となっております。今回、新たな整備見込みのない休憩所事業については削除し、目潟への眺望や周辺の自然景観を堪能できる小規模な宿舎事業の計画を追加することで、本地域の自然的価値を守り高める上質な滞在型利用が図られるように、公園計画の一部変更を行うものとなります。
 パブリックコメントの対応についてですが、スライド12ページ目でございまして、本2件の公園計画の変更については、昨年9月から10月にかけて1か月実施しましたが、意見の提出はありませんでした。以上が議事3となります。
○事務局(山下) それでは、引き続いて議事4のご説明をさせていただきます。資料4-1をご覧ください。
 国立公園事業の決定等についてということで、今回は6公園、12事業を諮問させていただいております。そのうち磐梯朝日国立公園と阿蘇くじゅう国立公園につきましては、先ほどの議事で諮問をさせていただきましたので、残り4公園の事業をここではご説明させていただきます。
 まず、スライド3ページの1つ目は上信越高原国立公園の志賀高原休憩所の新しい事業の決定になります。区域面積は1ヘクタール、執行予定者は民間を予定しております。この場所はスキーや自然散策の利用を中心とした集団施設地区で、地区内には50以上の宿泊施設が営業中ですが、スキー場利用者の減少や経営者の高齢化等から、近年では営業を休止する施設や廃屋化している施設も散見されております。
 今回、事業決定によって、宿舎の廃屋撤去跡地の再整備及び休止施設の再活用を予定しております。上質化事業により、既に廃屋撤去を3件しております。それから、公園計画の方針を踏まえて、休止施設等を活用しまして、同地区の今後の利活用について地域の関係者・有識者と協議をした上で、このエリアで不足する飲食等の利用施設の新設・改修を予定しております。まだイメージですが、右下のような整備イメージで飲食施設あるいは日帰り入浴施設等の整備を予定しております。
 続きまして、中部山岳国立公園平湯駐車場になります。こちらは事業決定の変更ということで、区域面積は変更ありませんが、その範囲を変更するというものです。既に岐阜県と高山市が事業執行中でございます。この場所は岐阜県と長野県を結ぶ安房トンネルの岐阜県側の玄関口に位置しておりまして、高山、上高地、乗鞍、新穂高方面とを結ぶ交通結節点になっております。特に乗鞍岳や上高地を訪れる登山・観光、スキー場の利用や、雪景色を求めて国内外から来訪する観光客の拠点としてにぎわっている場所でございます。
 この事業における課題とその対応ですけれども、スライド6ページの下にイラスト絵を掲載しておりますが、この場所は上高地へのマイカー規制の起点になっており、西から来られる方々はマイカーでこの場所まで来て、ここからシャトルバスまたはタクシーに乗り換えて上高地に向かっていただくというための拠点になっております。これが、駐車場不足による交通渋滞が多発をしておりまして、右の写真の注釈で説明をつけておりますが、最大4時間の渋滞が年10日間ほど発生するほか、7月から10月末の間は大小の渋滞が発生している現状にございます。また、近接する新穂高地区という地区が北に20キロぐらい行ったところにございますが、登山利用者向けの駐車場不足も課題になっておりまして、平湯地区からの公共交通を利用したパークアンドライド方式による課題解決も検討されているところです。さらに平湯地区自身も通過型から滞在型の利用促進が課題で、地区内の再整備も進んでいる状況でございます。今回、駐車場を拡充することでこれらの課題への対応を図るものでございます。
 スライド7ページの予定されている事業の概要ですけれども、この場所は平たん地が少ないところではあるものの、その中でも過去に国の施設やごみ集積場があった跡地等の開発された場所というのをなるべく選んでおります。その結果、左下の地図で、現状は青の長四角で囲ってあるの事業決定範囲から、ひょうたん型に赤で囲ってある形に変更するというもので、変更して既存駐車場の隣接地に駐車場を整備するということで、新しく整備する駐車場は0.9ヘクタール、250台程度の駐車場確保を想定しております。
 続きまして、スライド8ページの中部山岳国立公園の鍋平園地についてですが、これも既にある事業の区域面積を1.5ヘクタール拡大するもので、現在執行している民間事業者に引き続いて執行してもらうというものになります。先ほどご説明しました平湯地区から北に20キロほどある場所になりますが、槍・穂高連峰の西麓に位置しまして、利用形態は登山、自然探勝、温泉入浴などがございます。
 地図中の青で囲ってある部分が現在の事業決定範囲ですが、そこから少しはみ出ている薄い水色で塗った部分を新しく含んで、赤枠の範囲に変更するものです。この薄い水色で囲ってある部分が旧スキー場敷の広場でありまして、既にある園路や老朽化施設を再整備したり、新しい眺望スポットを整備して、隣接するロープウェイ関連施設のリニューアルと合わせて利用施設の上質化を図るものでございます。
 続いて、4件目で、スライド9ページ目の富士箱根伊豆国立公園紅葉ヶ丘宿舎の変更になります。区域面積は変更がなく、これも範囲を少し変更して最大宿泊者数を現状に合わせるというものになっております。この場所はススキ草原で有名な仙石原から箱根湯本のほうに少し下った場所にありますが、20年以上営業が停止されていた施設を、令和4年度に譲渡継承の認可を受けた現在の事業執行者が建て替えの設計を既に進めておりまして、その中での調整過程にございます。
 変更後に予定されている事業としては、スライド10ページの赤線部分のとおり、利用動線上の必要性や、極力植生を保存するために事業決定範囲を修正するもの、あるいはこの範囲で配置可能な施設規模に合わせて事業決定規模を縮小する等ということを考えております。一例として、右下に写真を載せておりますが、新しく範囲に位置づける場所は、建物跡地のような、植生への影響がなるべくないような場所というのを選定しています。
 最後のスライド11ページが、瀬戸内海国立公園の宮島ロープウェイ線索道運送施設の変更になります。これも路線距離は変更せずに、輸送量を拡大するものです。背景としましては、右の写真にあるとおり、ロープウェイ待ちの混雑がかなり多発をしており、令和5年度は年間147日間、30分以上の待ち時間が発生し、快適な利用に支障が生じている状況です。
 こちらのロープウェイは途中で一度中継するような形になっており、下の路線ではスピードを向上、上の路線では客車を60センチ大きいものに拡大して輸送効率の向上を図るというもので、支柱や駅舎等を建て替えるような計画ではありません。山頂には十分なスペースもありますので、輸送量の拡大に伴い同時滞在人数が増えても、保護・利用両面での支障は小さいと考えております。議事4のご説明については以上です。
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、今説明いただいた議事3、4について、先ほど同様にご意見、ご質問を承りたいと思います。いかがでしょうか。それでは、まず加藤委員、山本委員の順番でお願いいたします。
○加藤委員 岡山大学、加藤でございます。ご説明をありがとうございます。
 1点目は男鹿国定公園の宿泊計画の追加について、この宿泊施設の規模がどれくらいなのかと、その規模が適当であるという判断基準がどういうふうに整理されているのかを教えていただきたいです。
 また、国立公園の宿泊のガイドラインは、今後このような新しい宿泊施設の追加に対しても推奨されたり、課されたり、条件となったりするものなのか、その計画はあるのかを教えていただきたいです。
 2点目は瀬戸内海国立公園の宮島のロープウェイですが、こちらはフェリーとは全く別々の運営だとは思われますが、フェリーでは訪問税を導入しており、キャリングキャパシティーや来訪人数を踏まえて、2つの輸送の移動手段の間で、何らかの連携や連動等があるのかというところを、分かれば教えていただきたいです。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、山本委員、お願いします。
○山本委員 山本です。私からは2つの国立公園についてです。
 1つは中部山岳国立公園で、スライド6ページのマイカー規制の概要図について説明がありましたけれども、観光バスがそのまま目的地に到達できてしまうということが、観光バスの優先策になっているんではないかと見受けられ、その点は今までも時々指摘をされてきたところです。先ほど加藤委員からもご指摘がありましたけども、マイカー規制の仕組みを考えることは、オーバーツーリズム対策や待ち行列をコントロールする上で重要で、ここをよく考えておくことが必要ではないかと思います。
 あと1つは、瀬戸内海国立公園の宮島についても、スライド11ページの説明では、ロープウェイを速くする、そして客車を拡大することによって収容力をアップさせるという提案になっていましたが、宮島は日帰りの観光客がかなり多く、もう既にオーバーツーリズムではないかと言われている状況です。もちろん快適に人が移動できることは国立公園で求められていますが、同時にオーバーツーリズム対策も進める必要があって、この点は指摘をしておきたいと思います。全体的な計画は今のところないのではないと思われますので、コメントといたします。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、オンライン参加の広井委員、お願いいたします。
○広井委員 ありがとうございます。
 男鹿国定公園に関してですが、男鹿というと、一般的にはユネスコ無形文化遺産にも登録されたなまはげを想像します。私自身も、鎮守の森プロジェクトという研究プロジェクトをやっている関係で、その地域は最近も何度か訪問する機会があったのですが、今回の場所の近くにも真山神社やなまはげ館がありまして、今回は専ら自然的な話ということで、そことは切り離して考えてもよいかとは思いますが、文化性という点も視野に入れることで、人口減少も進んでいる秋田をアピールするという意味では意義があるのではないかと思いました。これはコメントです。ありがとうございました。
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、お願いいたします。
○事務局(仲原) まず、加藤委員からご質問いただきました男鹿国定公園の宿舎事業についてなんですけども、今回、公園計画に計画を位置づける段階では、具体的な事業規模というものは想定はしておらず、この後に行われる事業決定という段階で規模が決まることになります。また、今の段階で聞いている想定では、既に改変された土地の中で事業が行われると聞いておりますので、大きな自然環境の改変はないと認識しております。
 また、国定公園の中で計画される宿泊施設において、国立公園で策定された宿泊施設ガイドラインが今後適用されていくかについてなんですけども、こちらについては代わって説明いたします。
○西村国立公園課長 加藤委員から宿泊施設ガイドラインの質問が出ましたので、私のほうからお話しさせていただきます。委員もご承知のとおり、現在、モデル事業という形で5か所の宿舎事業者とともに、望ましい公園事業としての宿舎事業がどうあるべきかということを検討しており、具体的な事業をやってみて、ガイドラインをさらに更新していくという形になっております。当然、望ましい公園事業の形をガイドラインで示すものですから、今回のように新たに国立公園に参入する公園事業者に対しても、推奨したいと思っております。基準としてそれを位置づけるかどうかという議論はまだこれからですけれども、まさしく望ましい姿を示した上で、それに則った事業執行をしていただきたいと考えているところでございます。
○事務局(山下) それから、加藤委員からのご意見で、宮島のフェリーの入島税との連携については、ただ今、情報を持ち合わせておりませんので、お答えは差し控えさせていただきます。山本委員からもご指摘いただいたオーバーツーリズムに関しては、今回の事業決定では喫緊の課題にひとまず対応させていただきたいということで、諮問はさせていただいておりますが、オーバーツーリズム対策というのも国立公園全体で1つのキーワードになっていますので、今回いただいたご助言も活用させていただきます。
○西村国立公園課長 オーバーツーリズム対策に関して、重要なご指摘だと認識しております。実は、国立公園内でもオーバーツーリズムに対する検討調査をやっていくこととしておりまして、まずは富士山のオーバーツーリズム対策、それから上高地のオーバーツーリズム対策、その2つについて今後調査を行いたいと考えております。また、単独の県ではなくて、広域にまたがるオーバーツーリズム対策になりますので、環境省としてもしっかりと関与しながら対策を検討していくということでございます。
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、オンライン参加の江﨑委員、牧野委員、苅谷委員の順にお願いいたします。まずは、江﨑委員、お願いいたします。
○江﨑委員 ありがとうございます。今、オーバーツーリズムのお話がありましたが、それに関連しまして、宮島においてもロープウェイで移動できる人数が増えるということは、ゴミの拡大等にもつながると思いますし、その辺に対しては住民の方々も結構気にしているかと思います。たまたま私自身、昨日まで宮島へ行っていたのですが、オーバーツーリズムが発生している地域では、地域の具体的な課題があると思いますし、今後対策をされていくのであれば、ゴミに関しても気にしていただくようにお願いしたいです。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、牧野委員、お願いします。
○牧野委員 ありがとうございます。確認ですが、今共有されているスライド10ページの男鹿国定公園ですけれども、凡例に海域公園地区が出ています。事前に頂いていた資料3-4には海域公園地区は出ておらず、私の知る限りでは男鹿国定公園には海域公園地区はないと思います。ここで、この施設を造ることによって海域公園に影響が出るとは思いませんが、このスライドに何故急に海域公園地区が出てきたのか、確認させてください。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、苅谷委員、お願いいたします。
○苅谷委員 ありがとうございます。
 私も今の男鹿国定公園に続いたコメントですが、火山地形である一ノ目潟や二ノ目潟の上からの眺望について触れられておりますが、一方でこの場所の西側には湾がありまして、ここを訪れる人がどの程度いるのかは、私は承知しておりませんが、この湾の低い側から見上げた場合に、ちょうどスカイラインの上に建物ができると眺望の妨げになるのではないかと懸念されます。さらに、この二ノ目潟、一ノ目潟の南には寒風山という男鹿半島を代表する美しい山もありますので、先ほど、これから建物の規模等は計画するという説明がありましたけれども、この下からの眺望も忘れずに配慮いただきたいということが、コメントと要望になります。以上です。
○中村小委員長 ありがとうございます。それでは、お願いいたします。
○事務局(山下) では、まず江﨑委員からいただいたご意見についてですが、先ほど課長の西村から申し上げましたとおり、オーバーツーリズム対策を検討している中で、今日いただいたご指摘も踏まえていきたいと思っております。ありがとうございます。
○事務局(仲原) 男鹿国定公園について、牧野委員からいただきました海域公園地区の指摘については、現状で男鹿国定公園には海域公園地区はありません。こちらについては凡例が誤って入っており、表記上のミスということになります。続いて、苅谷委員からコメントをいただきました、今後の計画において下からの眺望にも設計の段階で気をつけていただきたいということについては、意見として受け止めました。
○中村小委員長 以上ですかね。それでは、広田委員からお願いいたします。
○広田委員 中部山岳国立公園の平湯駐車場と鍋平園地に関わることですが、スライド6ページで新穂高地区の話が出ていて、駐車場不足問題は登山者の中では非常に有名な問題で、その改善が必要ということは私も感じています。一方で、駐車場へのアクセスが悪いことで、新穂高地区から入ることができる有名な山では、オーバーツーリズムとまでは言いませんが、ある程度の登山者が制限されている側面もあると思います。また、他方では、コロナ以降、山小屋はどこも大変で、もう少し登山者が欲しいという面もあると思います。
 そこで、質問とコメントですけれども、槍・穂高連峰の西部や北西部の地域の登山、レクリエーションの在り方等について、議論はされているのかということを教えてください。例えば、こういう山岳地域にしたいからアクセスはこう改善しようとか、そのような話になると思うので、利便性だけの観点から改善を図ってしまうと、どんどん開発側に寄って、結果として様々なところで小規模なオーバーツーリズムが生じてしまうと思います。
 槍・穂高連峰の山域は、非常に重要な山域だと思うので、関係者間でビジョンを共有する場は必要ですし、場合によっては、駐車場の問題だけでなく、登山道や山越えの問題も等もあると思われ、それらの対策を関係者でどうしていくかということを、まさに多様な主体による国立公園の管理の問題になりますが、こういう辺りのことが、既に検討されているのかも含めて状況をご質問させていただきたいと思います。
○中村小委員長 他はよろしいでしょうか。それでは、お願いします。
○事務局(山下) お答えいたします。詳細な登山道の在り方の議論は、今どのような状況か把握しておりませんが、この中部山岳国立公園一体ではトレイルプログラムを進めていこうとしていく段階で、各地で入山協力金を徴収して、登山道を管理していこうという機運があると理解しています。ご指摘のとおり、単にこの問題だけを解消すればいいということではなくて、パークアンドライド方式を導入するにあたり、どのぐらいの人を輸送するのか、登山道に対して利用圧や管理体制をどうするのか等、総合的に判断して適正な数を定めていく必要があると思いますので、今日いただいたご助言を踏まえて現地でも検討を進めてまいりたいと思います。
○西村国立公園課長 補足で説明させていただきます。山岳環境の保全というのは大変重要な課題でありまして、様々な関係者がそこにいらっしゃるということなので、来年度以降には、それら関係者とビジョンを共有するための人材を張りつけて、その職員が中心となって関係者と議論をしていくということを考えています。大変重要なご指摘ですので、しっかりとビジョンを共有できるように進めてまいりたいと思っております。
○中村小委員長 ありがとうございました。オーバーツーリズムの問題であったり、インバウンド需要の問題もたくさんそれに関連していると思います。
 いろんな形でサジェスチョンをいただき、まだ議論は尽きないかもしれませんが、時間と会場の関係もあり、先ほどの議事1、2と同様に、議事3の中部山岳国立公園及び男鹿国定公園の公園計画の変更、議事4の国立公園事業の決定と変更について、特に大きな異議というものは認められなかったと思います。この諮問に添付されたとおりとすることでよろしいでしょうか。
 (異議なし)
○中村小委員長 ありがとうございました。それでは、本件については適当と認め、答申したいと思います。
 最後に報告ですが、諮問内容としてはひとまずここまでということで、一旦事務局に議事をお返しして、その中で報告をしていただければと思います。よろしくお願いします。
○佐々木国立公園利用推進室長 それでは、国立公園利用推進室のほうから報告のほうをさせていただきます。資料5-1になります。
 国立公園のオフィシャルパートナーシッププログラムというものを2016年からやっていて、様々な企業や団体の方々と連携して、国立公園の魅力発信や、国立公園の保護と利用の好循環の実現を進めているところです。こちらがその概要の説明の資料になっています。
 次のスライドでは、12月19日に開催した第13回目締結式のご説明です。最近だと、締結式を年に1回開催しており、こちらにある9社が新たに加わりました。出版関係やアウトドアの小売、E-バイクを作っているメーカー、企業版ふるさと納税の仲介をやっている会社等、多様な会社が今回も参加をしてくださいました。
 次のスライドでは、最近の動きで特徴的なものをご紹介させていただきます。こちらはイオンリテール株式会社がやっていることで、国立公園WAONという電子マネーを発行して、その売上げの一部を国立公園の保全に活用するために寄附をするという取組を、今年度から開始しているところです。寄付は自然公園財団の基金に入れるということで、イオンがご指定されて、回していくと聞いております。
 それから、次スライドの事例2で、National Park Solutionsという会社がやっているPARKS PROJECTについてのご紹介で、国立公園のTシャツを作って販売をし、その売上げの一部を各地域の協議会などに対して寄附を入れるという仕組みになっています。さらに、そういった取組の他にも、ボランティア活動として、近自然工法で登山道を整備したり、外来種駆除のイベントを開催するというようなことをやっております。こちらの団体は比較的若い年齢層の方々の巻き込みができているところで、若い世代の方々に国立公園の保全現場に来ていただく、参加していただくということが実現できております。
 最後のスライドで、事例3はGREEN JOURNEYという日産と日本旅行が中心となり、多様な団体と連携してサステナブルなツアーを造成しているものです。カーボンオフセットや、宿泊においても環境配慮をしている宿を選んだり、地域のアクティビティも配慮型のものを選ぶ、EVを活用する等の取組をされているところです。現在、阿蘇と伊勢志摩で展開をしているところですが、これからいろんな地域に広がっていくといいなと思っているところです。報告は以上です。
○事務局(山本) それでは、中村委員長、委員の皆様、長時間にわたりましてご審議をいただき、誠にありがとうございました。
 本委員会は、以上をもちまして閉会となります。本日は誠にありがとうございました。

午後2時51分 閉会