中央環境審議会 自然環境部会(第49回)議事録
開催日時
令和6年5月22日(水)15:00~17:11
開催場所
日比谷国際ビルコンファレンススクエア 8D室
(東京都千代田区内幸町2丁目2-3 日比谷国際ビル8階)
※ WEB会議システムを併用して開催。
(東京都千代田区内幸町2丁目2-3 日比谷国際ビル8階)
※ WEB会議システムを併用して開催。
出席者
武内 和彦 部会長
小泉 透 委員
勢一 智子 委員
中村 太士 委員
藤田 香 委員
愛甲 哲也 臨時委員
石井 実 臨時委員
江﨑 貴久 臨時委員
大沼 あゆみ 臨時委員
坂田 宏志 臨時委員
関 智子 臨時委員
広井 良典 臨時委員
広田 純一 臨時委員
深町 加津枝 臨時委員
水田 拓 臨時委員
山野 博哉 臨時委員
山本 清龍 臨時委員
湯本 貴和 臨時委員
小泉 透 委員
勢一 智子 委員
中村 太士 委員
藤田 香 委員
愛甲 哲也 臨時委員
石井 実 臨時委員
江﨑 貴久 臨時委員
大沼 あゆみ 臨時委員
坂田 宏志 臨時委員
関 智子 臨時委員
広井 良典 臨時委員
広田 純一 臨時委員
深町 加津枝 臨時委員
水田 拓 臨時委員
山野 博哉 臨時委員
山本 清龍 臨時委員
湯本 貴和 臨時委員
議事録
午後3時00分 開会
○司会 それでは、定刻となりましたので、ただいまより中央環境審議会自然環境部会を開会いたします。
本日は、お忙しい中、本部会にご出席いただきまして、ありがとうございます。
会議に先立ちまして、本日の出席委員数をご報告いたします。本日は、所属の委員・臨時委員26名のうち、ウェブ会議での参加を含め、16名のご出席をいただいておりますので、本部会は成立いたしております。
続いて、本日の会議運営についてご説明いたします。本部会は公開で行います。会場へお越しの報道機関の皆様のほか、YouTubeチャンネルのライブ配信により傍聴可能となっておりますこと、ご了承ください。
本日、こちらの会場でご参加の委員の皆様におかれましては、ご発言の際は、名札を机の上に立てていただき、部会長からのご指名の後、マイクをオンにしてご発言ください。発言終了後のマイクオフもお忘れないようお願いいたします。
次に、オンラインでご参加の委員の皆様にお願いです。差し支えない範囲で結構ですので、常時ビデオボタンをオンにし、お顔が見える状態にしてください。また、マイク機能は常時ミュートに設定いただき、各自ご発言の際、オンにしてください。なお、ご発言の際は、ウェブ画面上で参加者リストのご自身のお名前の横に表示されている挙手ボタンをクリックしてお知らせください。部会長からのご指名の後、マイクのミュートを解除の上、お名前をおっしゃってからご発言をお願いいたします。議事記録のため、どうぞご協力をお願いいたします。
本日の資料は、事前に委員の皆様へお送りしておりますが、事務局が画面上に資料を投影しながら進行いたしますので、お送りした資料は、必要に応じお手元でご参照ください。
最後になりますが、本日の資料を環境省ホームページ、自然環境部会のページに掲載しております。傍聴されている方は、どうぞそちらをご確認ください。
それでは、自然環境局長の白石からご挨拶申し上げます。
○自然環境局長 自然環境局長の白石でございます。
本日は、お忙しい中、中央環境審議会の自然環境部会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
初めに、大変残念なお知らせがございます。本部会所属の佐藤哲也委員が3月6日にご逝去をされたと伺いました。佐藤委員におかれましては、令和3年6月より本部会にご参画いただきまして、野生生物保護に関する深いご見識と保護活動の実践を踏まえた幅広いご経験を踏まえて、ご意見を頂戴してまいりました。
これまでのご貢献に深く感謝申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈りいたします。
さて、本日の議題といたしましては、審議事項が1つ、諮問事項が3つ、報告事項が3つございます。
まず、南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置についてご審議をいただきます。次に、国立公園関係の議題といたしまして、日高山脈襟裳十勝国立公園(仮称)の指定及び公園計画の決定についてと、それから、その国立公園の指定に伴いまして、日高山脈襟裳国定公園への指定の解除及び公園計画の廃止についてお諮りさせていただくほか、上信越高原国立公園苗場地域の公園計画の変更(再検討)についても諮問させていただきます。
さらに、報告事項といたしまして、ネイチャーポジティブ経済移行戦略の策定について、クマ類による被害防止に向けた対策について、及び、国立公園における滞在体験の魅力向上事業についてのご報告を関係課室より行わせていただきます。
また、新たな国立公園の指定の審議の際には、関係自治体の首長の皆様にお声がけをしておりまして、本日は、平取町の遠藤町長、芽室町の手島町長、中札内村の森田村長に会場にお越しいただいております。ご多忙のところありがとうございます。
限られた時間でございますけれども、本日は忌憚のないご意見を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
○司会 報道関係者の方へのお願いです。撮影はここまでとさせていただきます。
ここからの議事進行につきましては、武内部会長にお願いいたします。武内部会長、どうぞよろしくお願いいたします。
○武内部会長 それでは、私のほうで議事進行を務めさせていただきたいと思います。冒頭に先ほど局長からもご挨拶がございましたとおり、2年にわたり本部会の臨時委員をお務めいただいた佐藤委員が今年3月にお亡くなりになりました。本部会を代表いたしまして、生前のご厚情に深く感謝いたしますとともに、ご逝去を悼み、心よりお悔やみを申し上げます。
さて、本日の審議会でございますけれども、前回の審議会での議論の中心であった、日高山脈襟裳十勝国立公園(仮称)の最終的な諮問を含めて4つの議題がございます。前回、覚えておられるとは思いますけれども、多数の名称候補について、異例にも皆さん方一人一人のご意見を伺い、その結果を取りまとめをいたしたところでございます。私のほうからは、特に十勝を入れるということについて、もう少し突っ込んだ理由づけを事務局にお願いしたいと申し上げておりまして、本日、その結果が報告されるということになっておりますので、皆様方には、その点をご確認いただければと思います。
今日は大変たくさんの方がオンラインでご参加でございますので、事務局のサポートを得て、予定の時間内に終了させられるよう、どうぞご協力をよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事の進行に移ります。
本日の部会は、YouTubeチャンネルにおいてライブ配信しておりますので、報道関係者や一般の方もご覧になっておられます。会議録は、後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員の皆様のご了承をいただいた上で公開をすることになります。
議事要旨につきましては、事務局で作成したものを、私、部会長が了承した上で公開することになっておりますので、何卒ご了承をいただきたくお願い申し上げます。また、会議資料につきましても公開となっております。
なお、本日は審議時間が限られていることから、時間内にご発言いただけなかった質問等につきましては、後日、文書での質問・回答とさせていただく場合がございますことをあらかじめご了承ください。
それでは、早速、最初の議事、南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局(自然環境計画課) 自然環境計画課長の則久でございます。
議事の1番目、南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置について、資料1-1から1-4を用いてご説明したいと思います。
資料1-1で、今年5月17日に環境大臣から中央環境審議会に対して、環境保護に関する南極条約議定書附属書Ⅵの締結に向けた担保措置について(諮問)がなされております。この附属書Ⅵ、合計6つあるんですが、そのうちⅠからⅤまでは、もう既に締結済みということになりますけども、このⅥについてどういう措置が必要かということについての諮問でございます。
これを行うために資料1-2で付議がされまして、1-3で今回新たにこの自然環境部会の下に、南極地域の環境の保護に関する小委員会の設置についてお諮りをしたいと思っております。この小委員会におきましては、1番から4番までの規定でご決定いただければと思っております。人選等につきましては、決定された後に部会長とご相談の上で、こちら小委員会の委員のほうを人選させていただければと思っております。
ちなみに、この附属書Ⅵでございますが、何かといいますと、環境上の緊急事態から生じる責任ということに対しての内容でございまして、これにつきましては、課長補佐の石川から資料1-4に基づいてご説明をしたいと思います。
○事務局(自然環境計画課) それでは、資料1-4についてご説明いたします。
2ページ目をご覧ください。
まず、南極条約でございますけれども、1959年に日本を含む12か国によって採択をされまして、1961年に発効がなされております。現在の締約国は56、日本は原署名国というふうになっております。
2ポツ目でございますけれども、南極地域の平和的目的の利用ですとか、科学的調査の自由と国際協力の促進、そういったところを内容に掲げておりまして、特に締約国の中でも、南極に基地を設けるなど積極的に科学的調査に活動を実施してきている(29か国)は、南極条約協議国というふうに称されまして、定期的に、基本的に年に1回でございますけれども、南極条約協議国会議が開催されております。
下のほうでございますけれども、その議定書というものが同じく採択、発効されておりまして、日本は1997年に締結をしております。その国内の担保法として、いわゆる南極環境保護法、環境省の所管でございますけれども、が制定をされております。この法において、特定の活動を除いて、南極での全ての活動について環境大臣に確認を受けることなどが義務づけられております。
先ほど則久からも説明がありましたけれども、六つの附属書というものが採択をされておりまして、一番下の附属書Ⅵのみが未発効になっているという状況でございます。
3ページ目をご覧ください。南極条約協議国会議でございます。先ほど申し上げたとおり、1年に1回、協議国が持ち回りで開催をしておりまして、3ポツ目を見ていただきますと、最近の主な論点としては、近年活発になっている観光活動への対応ですとか、気候変動が南極地域に与える影響などが議論をされております。ちょうど今、第46回の協議国会議が、今週からインドで開催をされておりまして、環境省からも担当官が参加をしております。
そして一番下のところですけれども、2026年、2年後ですけれども、第48回の会議は日本で、広島で開催することが決定しているという状況でございます。
4ページ目をご覧ください。今回の小委員会でご審議いただく附属書Ⅵの概要でございますけれども、上から3ポツ目を見ていただきますと、南極条約地域、南緯60度以南の地域でございますけれども、ここにおける環境上の緊急事態に対応するために必要な措置を定めるということでございます。先ほど申し上げたとおり、近年、観光利用が活発になってきておりますので、そういったことに対応するための措置を定めるということでございます。
締結の必要性のところで、観光客の数を整理しておりますけれども、1960年代頃までは大体6,000人から7,000人ぐらいだったんですけれども、だんだん上昇傾向にありまして、コロナ前の2019年辺りは5万人を超えたと。一旦コロナで減少しましたが、また回復の兆しがあるということで、今後も増加傾向にあるだろうということでございます。
そして、日本は、この附属書Ⅵの締結に当たって、南極保護法の改正で国内担保をする方向で検討を進めてきているという状況でございます。
5ページ目をご覧ください。附属書Ⅵの概要の2番目でございますけれども、ポイントのみご説明差し上げます。上から3番目の環境上の緊急事態の範囲の想定ということで、どういったことかというと、例えば観光船からの油、要は観光船が事故を起こしてしまってそこから油が流出するとか、そういったところを基本的には想定をしておりまして、そのために必要な「予防的な取組の方法」ですとか、「緊急時の計画の作成」、そういったものを義務付けるということにしております。
それから、対応措置をとらない南極地域活動の主宰者の責任とありますけれども、主宰者、要は実施主体が緊急事態を引き起こしたんですけれども、その者が対応措置をとれない場合に日本はどうするのか、世界のそのほかの締約国が対応してくれた場合に、その実施主体はどうするべきか、そういった責任的なところをいろいろと措置を講ずるということが定められているという状況でございます。
一番最後の保険については、何かを起こしてしまったときに、保険で何らかのものが担保されるという仕組みが必要じゃないかということが義務づけられると、そういった内容のものでございます。
6ページ目をご覧ください。附属書Ⅵの締結に向けた検討経緯ということで、採択前、採択後も、検討を実施してきたんですけれども、しばらくは日本の法体系になかなか馴染まないのではないかといった声もあって、困難な状況が続いていました。契機となったのが、日本と同じ法体系のドイツが法的な担保をしたということで、そこから少し検討が具体的に進んできたと。2021年度から検討会を再開しまして、3年間の検討を経て、昨年度、国内担保の方向性についてある程度とりまとめを行ったと。検討会のメンバーの先生方のお名前を記載しておりますけれども、これらの先生方にお知恵をいただいて、とりまとめを行ったということでございます。座長は中環審の会長の高村先生でございます。
7ページ目、最後でございます。これはもう参考ですけれども、昨年度の検討会において取りまとめていただいた内容をベースに、南極法の改正も含めて、新たな小委員会において、附属書Ⅵの担保措置をご審議いただきたいというふうに考えております。
私からの説明は以上でございます。
○武内部会長 はい、ありがとうございました。
それでは、このご説明に対して、ご意見、ご質問のある方はお願いしたいと思います。会場にお集まりの委員の皆様におかれましては、名札を立ててご発言いただきたいと思います。また、リモート参加の委員の皆様におかれましては、挙手ボタンにて挙手の表示をお願いしたいと思います。それではいかがでしょうか。
オンラインでご参加の山本委員どうぞ。
○山本委員 はい、ありがとうございます。どのように責任を取るのか、細かいところはこれから詰めると思いますけども、私の質問は1点ありまして、簡単な質問です。
それは、観光とそれ以外の利用の区別ができるのか、峻別できるのかということです。南極調査に関わったことがないので知らないことばかりですけども、例えば海外に行くときには渡航申請し、その時に把握できると思いますが、この件ではどのように区別ができるのか教えてください。よろしくお願いします。
○武内部会長 それでは、事務局からご回答をお願いいたします。
○自然環境計画課課長補佐 はい、お答えいたします。ご質問ありがとうございます。
基本的には、環境省で南極保護法に基づいて南極エリアに立ち入る場合に届出というものを出していただくことになっておりまして、例えばですけれども、令和5年度も449件、観光で南極に入りますという日本人の方からの届出を頂いています。実際は、日本の旅行会社が南極のツアーを企画しているということはなく、基本的には海外のツアー会社が実施するツアーに日本人の方が参加する形態がほとんどなんですけれども、それでも各日本人に対して、南極に入る場合は、その目的も含めて届出をしていただいているということで、環境省として実態は把握できているという状況になります。
○武内部会長 よろしいですか。
○山本委員 はい、ありがとうございます。
○武内部会長 ほかにございますでしょうか。
それでは、質疑応答は以上とさせていただきまして、お諮りをさせていただきたいと思います。
南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置について、案のとおり、自然環境部会として決定することについてご異議はございませんでしょうか。
(異議なし)
○武内部会長 どうも、ありがとうございました。
それでは、本件については、適当と認めることにいたしたいと思います。
次に進めさせていただきます。議事(2)日高山脈襟裳十勝国立公園(仮称)の指定及び公園計画の決定について及び議事(3)日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止についてでございます。この2つはお互いに関連しておりますので、2つまとめてご審議いただきたいと思います。
また、本議題は、前回の自然環境部会において事務局から中間報告を行っていただき、その際に新たな国立公園の名称の決を採って、日高山脈襟裳十勝国立公園が賛成多数の意見となりました。一方で、十勝を入れた名称とすることの理由の追加的説明を私から事務局に求めておりましたことから、今回は、新たな国立公園の概要と合わせてご説明をしていただきたいと思います。
それでは、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局(国立公園課) はい。国立公園課の藤井です。
議題(2)及び(3)につきまして、資料2-2に沿ってご説明をさせていただきます。
本議題につきましては、前回2月の第48回自然環境部会を実質的な審議の場としてご議論をいただき、本日が正式な諮問の場となっております。前回の部会で指定に至る経緯、自然環境の概要、区域(案)及び公園計画案の詳細についてご説明をさせていただきました。前回提示した指定書及び公園計画書からの大きな変更はございませんので、本公園の区域(案)や計画案については要点を絞った説明にとどめさせていただき、次に、前回部会において委員よりいただいたご意見とそれに対する対応方針、最後に、国立公園指定後の取組の進め方の順でご説明をさせていただきます。
まず、国立公園の位置になります。国立公園指定の対象となる日高山脈は、北海道中央南部に位置しており、南北におよそ140キロ、東西30キロの大起伏山地となっております。稜線部にはカール、ホルン、アレートといった氷食地形と高山植物や氷雪とが織りなす山岳景観が見られます。
スライドの左側の図においては水色、右下の図ではオレンジ色で着色した範囲が今回の指定の対象となっている範囲です。このようにちょうど山脈が中央に走っておりまして、山脈の東側が十勝側、西側が日高側となっております。
関係市町村は、こちらに記載をしておりますとおり、十勝側が6市町村、日高側が7町で、合わせて13市町村にまたがっております。
続きまして、国立公園の指定理由です。本国立公園は、地殻変動を受けて形成された非火山性連峰を基盤に、山地を核として育まれた深く原生的な自然林生態系が広がる風景を風景型式としております。当該風景型式の中でも、日本列島の形成過程を反映した山脈が内陸部から海まで延々と連なる雄大さと、その山脈が原生性を有する自然状態のまま我が国最大規模のまとまりを持って存在する点において我が国を代表するに足りる傑出した自然の風景地であると考えております。
続きまして、公園区域案のご説明になります。スライド中の図で色をつけて表示をしている範囲が国立公園の区域案となります。赤線で表示をしているのが現在の国定公園の区域となっております。今回、区域面積は、陸域が24万5,668ha、海域が6,510haとなります。これは、国定公園の面積からは2.24倍になり、我が国の陸域最大の国立公園が誕生することとなります。
国定公園区域と比較しますと、山麓の良好な森林地域について大幅に拡張をしております。拡張により日高側北部ではリビラ山や於曽牛山などの山系と接続をし、南部地域は国定公園の区域では飛び位置となっており、連続していなかったアポイ岳地域、襟裳岬地域と連続した区域となっており、山脈から海までのつながりを確保しております。
保護規制計画について、日高山脈の主稜線やその周辺地域が指定されていた国定公園の区域は、ほぼ特別保護地区と第一種特別地域となり、特別保護地区の面積は、国定公園の3.78倍となっております。
続きまして、利用面の計画になります。本国立公園の利用に関する基本方針につきまして、山脈の核心部では、主に経験者を想定した当該地域の原生的な自然環境の中での登山体験の機会を提供しつつ、山麓部では、豊かな自然を活かした学びや体験の場をより広い利用者層に向けて提供することにより、来訪者の満足感の向上を目指してまいります。また、本公園は広大な面積を有することから、公園区域の周辺地域や観光施設との連携を通じて、その価値や質の高い自然体験活動を発信し、滞在型の周遊観光につながるよう広域連携を図ります。
利用施設計画につきましては、車道については、既に現在利用がなされており、登山口などの利用地点に到達するための道路など10路線を計画しております。歩道については、18路線中15路線は経験と技術、体力と装備を有する公園利用者を想定し、自然環境の保全と適正利用の観点からの必要最小限の整備を実施する登山道として計画をしております。単独施設は20施設を計画しており、避難小屋6か所や北日高、札内川、アポイ岳、襟裳岬といった山麓部の利用拠点について、各施設を計画しております。今回、計画をしている単独施設については、いずれも既存施設があり、指定後も現在の施設設置者が維持管理を行っていく予定です。
続きまして、2月22日に開催されました前回の第48回自然環境部会において、委員よりいただきましたご意見とその対応方針についてご説明をさせていただきます。
前回、部会でご回答した内容から一部追記をしているものがございます。
まず1点目、総点検事業による候補地はより広いが、今後、拡張を考える余地があるか。こちらの対応としましては、指定後の公園計画の点検の際に引き続き検討をしてまいります。また、平成22年の総点検事業において、日高山脈とあわせて候補地となっていた夕張山地につきましては、資源調査の結果、両地域間の関係性が低いと認められる検討課題があったことから、今回の指定作業の対象区域には含めておりません。現在夕張山地は富良野芦別道立公園に位置していることから、今後の方針については北海道とも調整してまいります。
続きまして、登山利用について、具体的にどのような整備を考えているか。歩道が計画されている場所というのも、どういった考えで今回設定されているのか。こちらにつきましては、今後設置をする総合型協議会の中で登山者団体等のご意見もいただきながら、どのような整備をしていくのかというところを検討してまいります。整備に当たっては、日高山脈の原生性が失われることがないよう配慮する必要があると認識しております。また、計画の考え方につきましては、公園計画作成要領に基づいて、事業執行の見込みがありうる歩道を選定しております。
続きまして、協議会と、そこでの管理運営計画等の議論が非常に重要というご意見をいただいてございました。こちらにつきましては、総合型協議会は、指定後速やかに設置をしたいというふうに考えております。詳細については、「3.国立公園指定後の取組の進め方」において、ご説明させていただきます。
続きまして、国定公園と違うメリットがあるかというご質問につきましては、地域の方には、国立公園にというような思いが非常にあると伺っております。日本の陸域で最大の国立公園が誕生するということは、自然環境保全の面でも非常に大きなことと考えているところです。また、現地に配置する職員がおりますので、地域の期待をしっかり聞きながら対応していきたいと考えております。
続きまして、次のスライドに移りますが、利用者についての考え方というところでご質問いただいておりました。こちらにつきましては、本公園の特性上、山岳部は一般的な利用が想定される場所が少なく保全が中心となりますが、一部の一般的な利用が可能な場所では、公園区域の周辺地域や観光施設とも連携しながら、質の高い自然体験活動を促進し、滞在型の周遊観光に繋げてまいります。
続きまして、アイヌの文化という観点の位置づけ。指定範囲ではないところのアイヌ文化とどういう連携やつながりを考えているかというようなご質問につきましては、こちらについては、公益財団法人のアイヌ民族文化財団等といった方々と情報交換しながら考えていきたいと考えております。幌尻岳や襟裳岬、十勝幌尻岳についてはアイヌの物語・伝承、祈りの場である景勝地であり、国指定名勝の「ピリカノカ」にも指定されている場所です。自然と寄り添って生きてきたアイヌの生活や文化に触れられる場所としての発信を心がけながら、地域と相談しつつ区域外のアイヌ文化施設等との連携も検討していきたいと考えております。
続きまして、南部の空白地域が空白に公園区域外となっている理由はというものに関しましては、環境省としては国立公園としての資質があり、一体的に風景の保護を図ることを考えておりましたが、こちらは土地所有者との調整の結果、現在の案となったものでございます。
最後、公園利用者とヒグマの衝突を少なくするための対策についてもご意見をいただいておりました。こちらは、指定後、登山者団体や警察等と連携・調整を図りながら、事故防止対策を検討してまいりたいと考えております。
続きまして、前回の審議会では、新しい国立公園の名称についてもご議論をいただきました。こちらのスライドは前回の経緯となっておりますが、前回はパブリックコメントにおける名称についてのご意見、日高町村議会議長会からのご要望については口頭でご紹介をした上で、十勝関係6市町村及び日高町村会から要望のあった「日高山脈襟裳十勝国立公園」を名称(案)として提示をしました。
委員からは、この名称(案)のほかに、「日高山脈国立公園」、「日高山脈襟裳岬国立公園」というようなご意見をいただいておりました。
最終的には、お一人ずつ、どの案がよいかというところでご意見をいただきまして、「日高山脈襟裳十勝国立公園」が多数の委員が推した名称案となりました。また、今回、「十勝」を入れることの理由について説明を行うよう、ご意見をいただいておりました。
こちらのスライドが新国立公園の名称を「日高山脈襟裳十勝国立公園」とする理由のご説明となります。少し文字が多くて長くなってしまうのですけれども、読み上げさせていただきます。
新国立公園の面積は、陸域だけでも24万5,668haであり、我が国の陸域最大の国立公園です。新国立公園の区域は日高地方と十勝地方にまたがっており、関係市町村は、日高側が7町、十勝側が6市町村であわせて13市町村となっております。これらの日高地方及び十勝地方双方の関係市町村の協力があり、国定公園の2倍以上の面積となる広大な原生地域を包含する我が国の陸域最大の国立公園の指定を実現しました。国立公園の管理には地域との協働が求められており、この広大な面積の新国立公園の自然環境を将来にわたって保全し、提供していくにあたり、関係市町村との連携は必須であると考えております。
そうした中で、新国立公園の全関係町村長の名前が列記された形で、日高地方及び十勝地方が揃って、「日高山脈襟裳十勝国立公園」の1案で名称に関する提案がありました。また、本名称案は2月の自然環境部会において、多数の委員が推した名称案となっております。
日高山脈という山は主稜線の片側は日高地方であり、もう片側は十勝地方となっておりますが、新国立公園の区域は十勝側の山麓部も含め国定公園の区域から大きく拡大しています。十勝側だけでも、阿蘇くじゅう国立公園全体の面積を超える8万3,715haの広大な地域が指定されることとなっており、名称に十勝を加えるに相当なものと考えられます。さらに、この我が国の陸域最大の国立公園の保全管理は、日高側・十勝側双方の協力によって成り立つものであり、「日高山脈襟裳十勝国立公園」とすることが適当であると考えております。
このため、環境省としましては、この度の新国立公園の指定にあたり、日高側・十勝側双方の地域住民にとって、新国立公園の素晴らしい風景がより身近になり、その価値を改めて認識する機会となり、かけがえのない財産を次世代へ引き継いでいく意識が一層高まることを期待し、当該名称案とするものです。
続きまして、ご説明事項の3番目、国立公園指定後の取組の進め方につきましてご説明をさせていただきます。
本公園を魅力ある国立公園として磨き上げていく上で様々な課題があると考えており、これらの課題に対応していくためには、関係者の連携が不可欠で、そのための体制整備というのが必要と考えております。このため、国立公園の指定後、速やかに総合型協議会の設置を予定しております。現在、北海道及び関係13市町村で構成する関係自治体連絡会議を設置しており、令和3年2月の設立以降、これまで6回の会議を開催してまいりました。この中で、国立公園の指定や指定後の管理のあり方について意見交換等を行ってまいりました。
また、本公園が持つ価値や魅力を抽出するとともに、現状や課題を整理した上で、課題への対応方針や目指すべき方向性を示した国立公園ビジョンの骨子案を作成しています。国立公園指定後は、この関係自治体連絡会議を発展的解消する形で、総合型協議会を設置することとしており、指定後、速やかに設置できるよう、現在準備を進めているところです。
この総合型協議会は、これまでの関係自治体のほか、新たに有識者、国の出先機関、関係団体、こちらには登山者団体、自然保護団体、観光関係団体などを想定しておりますが、これらの皆様にも参画いただく予定です。
また、この総合型協議会の中では、関係自治体連絡会議の中で検討を進めてきた国立公園ビジョンの骨子案を基に、国立公園ビジョンを策定するとともに、ビジョンの実現に向けた管理運営方針及び行動計画を策定してまいります。これらの計画等に基づき、総合型協議会の下で構成員が連携した取組を進めていくこととしております。
続きまして、この総合型協議会の中では、本公園が抱えている様々な課題について協議をしていく予定です。
本公園の特徴というのは、原生的な自然環境とその雰囲気を楽しみながらできる登山が最大の魅力で、それが故に難易度も高く、誰もが登れるわけではないことから、登山者にとってあこがれや目標の対象となっており、公園管理に当たっては、この特徴に留意した管理が必要であると考えております。
また、海から山岳につながる南北140キロに及ぶ長大な山岳景観が本公園の魅力ですが、この景観は周辺の平野部からも楽しむことができるため、平野部の公園内外をセットで利用の在り方を含めた公園管理を考えていく必要があると考えております。
具体的な課題としましては、スライドの図の左上で記載をしております。保全面では、本公園が有する原生的な自然環境の維持やアポイ岳の高山植物群落などの保全に関する課題。隣に行きまして、利用面では、ヒグマや安易な登山による遭難事故の予防などの安全対策をどのように図っていくか。自然環境に負荷を与えない登山を楽しむためのルールやマナーづくりといった登山利用の適正化に関する課題。さらに、図の左下になりますが、本公園の魅力ある資源を持続可能な形で地域の活性化にどう生かしていくか。そして、その隣の持続という観点で、これらの課題に対応していくために、公園内の関係者の連携強化や公園外の地域や関係者とどのように連携をしていくのかといった様々な課題があると考えております。総合型協議会では、様々な関係者と協議をしながら、魅力ある国立公園づくりを進めてまいります。
続きまして、議題(3)日高山脈国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止についてです。
こちらはスライド1枚になりますが、この度の新国立公園の指定に伴い、日高山脈襟裳国定公園については、その全部について国定公園の指定を解除し、公園計画を廃止いたします。
議題(2)、(3)の説明は以上となります。
○武内部会長 はい、どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの議事(2)及び議事(3)の説明について、ご質問、ご意見のある方はお願いをしたいと思います。会場にお集まりの皆様におかれましては、名札を立てていただき、またリモート参加の委員の皆様におかれましては、挙手ボタンで挙手の表示をお願いいたします。いかがでしょうか。
広田委員、どうぞ。
○広田委員 はい。私、前回、ちょっと部会に出席していませんで、たしか投票には参加していなかったかなと思うんですけれども、はい。なので、この名称についてちょっと自分の意見を、多分言える場はここだけかなと思いますので、簡単に申し上げてよろしいでしょうかね。
○武内部会長 はい、どうぞ。
○広田委員 はい。ただいま説明された十勝を入れる理由というのは、従来のこういう複数地域を併記して名称にするという、そういう名前のつけ方からすると新しい観点かなというふうに思います。従来の名称設定の論理からするとちょっと違和感がある理屈かなという気はします。
と申しますのも、北海道でも支笏洞爺とか、阿寒摩周だとか、利尻礼文サロベツとか、あと、私がいる岩手でも十和田八幡平とか、こういう複数の地域を併記した公園名ってたくさんあるんですけれども、共通するのは、それぞれの地域が固有の自然とか風景美、国立公園の用語を使えば、その風景型式というのを持っているわけですよね。それが対等というか、広く国民にもそう認知されているというのがあって、そういう複数地域名を併記するというのが一般的なこれまでの名称の論理だったかなと思うんですけど、今回の日高山脈に十勝を入れるというのは、そういう論理からするとちょっとずれるのかなと。新しい視点というのはそういう意味なんですけども、確かに十勝側は面積は増えるんですが、固有の自然とか風景美とか、いわゆる風景型式というわけではありませんよね。あくまでも日高山脈という従来の非常に原生的な自然が残っている固有の風景型式の一部として面積が広がっているわけですから、そういう意味では、今回、行政区域として確かに十勝側の市町村が入っているというのは、これは意味のあることだと思うんですけれども、国立公園の名称の設定という意味ではちょっと違うのかなというふうに個人的には思います。
既存の国立公園でも、実は固有の自然等を持っている地域がありながら、名前に入ってないというところも結構あります。例えば支笏洞爺は、羊蹄山が公園の区域内に入っていますけど、で、支笏とか洞爺とは違った固有の風景型式を持っていると思うんですけど、名称には入っていませんよね。それから、私がいる十和田八幡平でも、八甲田とか岩手山とか秋田駒ヶ岳というのは、もうそれぞれ固有の独特の風景型式を持っているわけですけど、名称には反映されていないと。さらに言うと、磐梯朝日という福島と山形にまたがる国立公園があるんですけれども、その真ん中に飯豊連峰という百名山にも指定されていて非常に魅力的な山塊があるんですけど、普通であれば、その飯豊という名称が入って全然不思議はないところですけれども、国立公園名には入っていないと。
こういう地域を差し置いて、今回、十勝という名称を入れるというのは、やはり違和感は拭えないと思います。繰り返しになりますが、地域振興の面から十勝側の市町村のエリアが増えるから十勝という名前をつけるという、これは新しい論理だと思うんですけども、それはそれであり得るとは思いますけれども、従来の公園名称の名前のつけ方からすると違和感があります。
例えば、ちょっと例が極端かもしれませんけど、釧路湿原の国立公園、面積的に言うと鶴居村とか標茶町がかなり占めていますけども、じゃあ、釧路湿原鶴居国立公園にするかというと、多くの、多分地元の方も含めて違和感があると思うんですよね。それは、釧路湿原という固有の価値を持った、もう圧倒的にすばらしい自然があって、鶴居村はその一部に入っているんだという、そういう位置づけ、理解があるからだと思って。もちろん釧路湿原に観光客が来れば、鶴居村とか標茶町に来るわけでして、釧路湿原の保全とか利活用のところで連携してやっておられるわけですから。そういうことを考えると、今回、十勝という名前をつけなくても、連携等はできるはずでして、私の個人のこの委員会の委員として意見を聞かれれば、私はもう日高山脈国立公園が一番シンプルで、要するに、固有の自然、風景美、風景型式がもうあるし、多くの方がそれをそのように把握されているわけですから、それが一番自然だと考えます。
もちろんこの部会で多数決で十勝を加える案が承認されれば、それはそれで認めるわけですけれども、私の意見を聞かれれば、以上のような理屈で、やっぱり十勝が入らないほうが自然なのかなというふうに思います。
ちょっと長くなりましたけど以上です。
○武内部会長 それでは、山本委員、お願いします。
○山本委員 はい、ありがとうございます。山本です。
私は前回、意見を申し上げましたので、議事録を見ていただければと思いますけども、今回、名称について部会の多数決の結果と地域の住民の方々の意向が、同じ方向にありました。前回はたまたま多数決になりましたけども、今後のことを考えると、委員会は熟議型で議論をするのか、委員会でどのように議論をしていくのかを考えておく必要があります。また、住民の意向と違う結果になりそうになったら、どのように議論を展開するのか、そのようなことを考えておいたほうが良いと思います。
前回の会議でも、どなたか、触れられていたように思いますが、国立公園の名称は、人が最初にその公園をイメージする大事な入り口でもありますし、長い名称はどうなのか、あるいはたくさん地名が並ぶと理解しづらいという話もあります。国立公園の名称に関する今までの経験がどのように生かせるのか、手順について考えておく必要があると思います。
私の話は意見とさせていただきます。ありがとうございました。
○武内部会長 はい、ありがとうございました。
藤田委員、お願いします。
○藤田委員 はい、ありがとうございます。私も今お二人から出た意見と少し似ているんですけれども、環境省として国立公園の名称のルールはどうなっているのかなということを考えておかないと、今後も同じようなケースはあると思っています。簡単に言うと公平性と統一感ですよね。
例えば、中部山岳国立公園だとか、南アルプス国立公園だとか、瀬戸内海国立公園のように、基本的に国立公園の名称というのは、私は、地理的なものを名称にするのであるのかなというふうに、まずは、一義的にはそうなのかなというふうに理解していました。ただ、既にいろいろ国立公園になっているところをいろいろ見ますと、先ほどもお話が出ていた磐梯朝日であったりとか、利尻礼文サロベツみたいな、幾つかの特徴的な固有の型式を持つ地形のところをまとめて名称にするというケースもありますよね。何か新幹線の駅をつくるときのこことここの市町村をがっちゃんこみたいなのにすごくの似ているような気がしたんですけども、こういうようなケースによって名称のつけ方を変えていらっしゃるのか、あるいは統一感があってつけているのか。今後、例えば地元からいろいろ要望が出てきたときに、三つや四つの地理的な場所の名前をくっつけるということになるのか、そこの環境省としてのネーミングのルールというのは、それこそ1930年代と今では違うのか、今はもっと地域の合意の下で決めるというふうに変えていらっしゃるのかというところをはっきりしておかないと、今後、国立公園を新たにつくるときに同じような問題が起きるというふうに思っています。
私としては、前回、環境省に一任しますというふうに言ったんですけども、その場合の一任しますというのは、環境省のルールはどうなんですかと。それに、そのルールが厳然たるルールがあるのであれば、それに従いますというつもりで一任しますと言ったんであって、投票になるというふうにはちょっと思っていなかったんですけれども、今のようなちょっと質問を踏まえて、環境省としてネーミングについてどういうスタンスを持っていらっしゃるのかということをお聞きできればと思っています。よろしくお願いします。
○武内部会長 ありがとうございました。
愛甲委員、お願いします。
○愛甲委員 私も今まで皆さんがご発言された内容とほぼ同じようなことになりますが、今後も同じようなケースがあった場合に、広田先生は新たな新しい観点というふうにおっしゃいましたけど、こういう考え方で名前をつけるというようなことが今後もあり得るのかどうか。その辺を含めてどういう考え方でいらっしゃるかというのをちょっと伺いたいというのが一つです。
それからもう一つは、名称もそうですが、自然保護団体等で反対されている理由などを伺いますと、観光化されることに対する懸念というのを非常に強く訴えていらっしゃるというのがこれまでの趣旨だったと思います。
そこを考えると、総合型協議会の中に登山者団体や自然保護団体を入れるというようなことも計画されていますので、ビジョンをつくって、管理運営計画をつくるときに、ぜひその辺の懸念が払拭できるような議論をしていただきたいというお願いと、その2点でした。
以上です。
○武内部会長 ありがとうございます。中村委員、どうぞ。
○中村委員 はい、ありがとうございます。私も前回、日高山脈国立公園で行くのがよいと述べた一人なんですが、今、広田さんの話を聞いていて、やっぱり私も広田さんとほぼ同じ意見だなと思いました。
ただ、今回、もう既に決が採られていて、皆さん、やっぱり十勝も含めて入れるべきだという意見だったと思います。今後に向けて考えると、せっかくそういった形で十勝を入れたり、襟裳も入れて、地域全体で頑張っていこうという方向性が決まったので、愛甲さんが言われたような協議会をどうやってつくっていくかとか、あとはやっぱり日高山脈の魅力というのは、それこそ平野部から、十勝から見た残雪の残った日高山脈だと思います。もう本当に見事な景観だと思いますし、そういった景観を楽しみたい人たちも多分たくさんおられるので、そうした利用も掘り起こしていくことが重要だと思います。
中札内の町長さんがおられますけれども、私も何度か中札内に赴いて、あそこは札内川という見事な清流が流れていて、そこには上高地と北海道に隔離分布するケショウヤナギもあるということで、公園へアプローチする段階でも多くの自然が残されているので、それを活かしていただきたいと思います。それから平取町長さんがおられるように、アイヌ文化が見事に沙流川を含めてあると思います。
そういった日高側、十勝側の自治体とのつながりを含めて、この協議会が形成されて、よりよいこの国立公園ができればと思いました。
はい、以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。小泉委員、どうぞ。
○小泉委員 はい、ありがとうございます。私も前回の部会を欠席いたしましたので、この名称の議論に関してちょっと一言申し上げます。
私は、国立公園の名称は、厳然たるルールに基づいて厳格に定められてきたというふうには理解しておりませんでした。したがいまして、今回、十勝の名称が入ったというのは、これからの新しい考え方が盛り込まれたんだというふうに理解しておりました。
違和感があるということは理解できますが、この違和感というのを今後は国立公園の管理の中でポジティブに意識してつくっていっていただくということが、これからの国立公園の管理、名称の考え方でもあるのではないかというふうに考えております。
名称に関しては以上ですが、実は、指定後の取組に関しても一つ申し上げたいことがあったんですけど、よろしいですか。
○武内部会長 はい、どうぞ。
○小泉委員 はい。スライドの12ページですね。国立公園指定後に対応すべき課題の例として挙がっておりますが、今回の国立公園、規模が非常に大きいということ、それから高山域を含めて非常にアプローチが困難であること、そしてヒグマへの対応が必要というようなことがありまして、現地のスタッフに求められるスキルというのがかなり高くなってしまうのではないかというふうに考えております。
ということで、この部分に関して、総合型協議会が定める指針を実際に実行する実行部隊といいますか、そういった組織を地元の要件を満たす人材を発掘して、組織化して、実働部隊として協議会の方向性を実現化させていくというようなことがあっていいのではないかというふうに考えております。その部分がちょっと抜けているな。
形態がちょっと違うんですけれども、具体的な事例としては、世界遺産における知床財団とか、そういったような助言、それから評価、そういったものも含めてできる実働部隊の実現というのをご検討いただきたいなというふうに考えました。
以上です。
○武内部会長 はい、ありがとうございます。
ほかによろしいですか。
、かなり類似のご意見をいただいたように思いますし、前回に皆さんの決を採ったということも踏まえて今後のことを中心にご意見をいただいたと思いますけれども、事務局のほうからいかがでしょうか。
○国立公園課長 はい。国立公園課長の番匠でございます。ご意見をいただきましてありがとうございます。特に名称に関するご意見を多くの先生からいただきました。
前回の議論のときにもお話をさせていただいた部分がありますけれども、これまでの国立公園の名称の決め方、これに何か厳格なルールがあるかというと、そういう形にはなっていないというのが現状となっております。
国立公園、第二次世界大戦の前に指定されたものから最近指定されたものまで様々な時代に指定をされておりまして、地元の意見例えば今回で言う市町村長の意見みたいなものをどれくらい聞くかというのも実は時代によって、社会状況の違いによって変わっておるというのが実態でございます。そうした中でいろいろとこの名称についてご意見をいただいておりまして、我々も前回の審議会でも幾つか名称の案、意見をいただきましたけれども、どちらの案もどの案が駄目とかそういうようなことではないのだろうと思っています。それぞれにそういう名称にすべきという理由があって、その中で我々としては審議会でも一人一人に意見を言っていただくような形で、日高山脈襟裳十勝という名前が多数となったというようなことも受け止めて、今回の理由を作成させていただいたというところになっております。
今後こういった公園指定に当たって名称の話、これは地域によって本当に様々だと思っております。最近の公園の指定においてもほぼ異論なくというか、迷いなく決まった事例というのもございますし、地域の中でも地域の首長さんごとに意見が違って、なかなか最後の最後まで皆さん一致した結論というのが得られずに、最後、部会に決めていただいたというようなこともあったり、いろんなパターンがありますので、一概にこういう形がいいと今私から言えることはないかなと思っておりますけれども、そのプロセスについてはご意見を踏まえつつ、時々に部会長、その他委員の皆さんと相談して、どういうプロセスでというようなことはぜひ取り入れていきたいと考えております。
あと、今後の話というのも様々いただきました。特に協議会のお話をいただいたと思っておりますけれども、我々として、先ほど説明したように速やかに総合型の協議会を立ち上げたいと考えております。ちょっといろいろあったというような状況もあって、地域のいわゆる民間の団体の方との事前の協議会に向けたご相談というのがなかなか現段階でできていない状況もありますので、今いつ立ち上げるということがなかなか明確には言えないところですけれども、速やかに立ち上げられるように我々としては努力をしたいと考えております。
名前のことについては以上のところかなと思っておりますが、何かご説明漏れ等がありましたらご指摘をいただければと考えております。よろしくお願いします。
○武内部会長 それじゃあ、追加で何かご意見、今のご回答を踏まえてございますか。
私としては、名称についてはもう前回、決を採って決めたということでもあり、今回、皆さんにご了承いただいた上で、今後の取組については今回の様々なご意見を十分反映し、同時に、これからの国立公園の名称の在り方についてももう一度環境省のほうで整理していただくということでお認めいただくということができないかなということでお諮りしたいと思います。
それでは、新たな国立公園の指定に関して、諮問に添付された指定書、計画書及び変更書のとおりとすることにご異議はございませんでしょうか。
(異議なし)
○武内部会長 それでは、異議なしということでございますので、本件については妥当と認めることとさせていただきます。
なお、本日は、平取町の遠藤町長、芽室町の手島町長、中札内村の森田村長が傍聴にお越しいただいております。それぞれ順に一言ずつご発言いただければと思います。遠藤町長からお願いいたします。
○平取町長 発言の機会をいただき、ありがとうございます。私から、一言、国立公園化に期待するというところで発言させていただきます。
中村先生からもお話がございましたけれども、日高山脈とその周辺は北海道の中でもアイヌ文化が色濃く残る地域の一つでもありまして、アイヌ語地名や伝説、慣習などがまだ多く残っている地域でもございます。国立公園化という地域のブランドイメージが高まるということで、こういったアイヌ文化をさらに多くの方々に知っていただく機会が増え、理解につながることを期待しているところでございます。
簡単ですけども、以上です。
○武内部会長 ありがとうございます。
それでは、芽室町の手島町長、お願いします。
○芽室町長 発言の機会をいただきましてありがとうございます。
私からは名称に関してはあまりコメントするつもりは正直なかったわけですが、要望させていただいた首長の一人として少し心苦しくも思っているところでございますが、私は、国立公園化を見据えて、十勝で日高山脈観光連携協議会という6自治体の協議会をつくっておりまして、横にいらっしゃる森田村長も入っておりますけれども、今後、日高側ともさらなる連携を模索しながら、ナショナルパークとしての資源というものをしっかり大切にして、もちろん自然保護の観点も持ちつつ、例えば区域外であっても中村先生におっしゃっていただいた景観ですとか食、そういったものも生かして魅力発信ができるよう、また、地域の振興や活性化にも向けた取組を、しっかり加速化していきたいと思います。関係団体と連携しながらしっかりやらせていただきますので、その点のご理解もよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○武内部会長 ありがとうございました。
それでは、中札内村の森田村長、よろしくお願いします。
○中札内村長 中札内村村長の森田でございます。
日高山脈が国立公園へ指定の流れとなったということで非常にうれしく思っております。先ほど中村委員からもお話がありましたとおり、日高山脈の景観、豊かで穏やかな暮らしの象徴と言えるこの日高山脈がこのような流れになったということで、我々としてはまちづくり、地域活性化に向けた大きな追い風をいただいたというふうに思っております。
ただ、先ほど小泉委員からもお話がありましたとおり、これは本当に、スタートラインに立ったにすぎないと思っております。これから地域住民に、いかにこの誇るべき日高山脈のすばらしさを理解していただくか、特に子どもたちに、これから守るべき自然、自分たちの村の地域の誇りを感じていただけるような取組に全力で邁進してまいりたいと思っておりますので、今後ともご指導いただきますようよろしくお願いいたします。
○武内部会長 どうもありがとうございました。お三人の町長、村長の皆様、大変ありがとうございました。こちらでご退席をお願いしたいと思います。
(平取町長、芽室町長、中札内村長退席)
○武内部会長 それでは、次の諮問事項である議事4、上信越高原国立公園苗場地域の公園計画の変更(再検討)に移らせていただきます。事務局より説明をお願いいたします。
○事務局(国立公園課) それでは、議題4、上信越高原国立公園苗場地域の公園計画の変更(再検討)に移ります。こちらについては資料4-2が説明資料となっておりますので、こちらを使って説明させていただきます。
本日のご説明の流れです。上信越高原国立公園苗場地域の概要について、今回の変更内容、パブリックコメントへの対応についてという順番でご説明をさせていただきます。
まず、地域の概要についてです。
上信越高原国立公園は、群馬県、新潟県、長野県にまたがる位置にあり、苗場地域、谷川地域、志賀高原地域、須坂・高山地域、草津・万座・浅間地域の5地域に分かれております。本公園は、大岸壁がそびえる谷川岳や火山である浅間山、草津白根山などの日本百名山にも数えられる名峰を多く有しており、変化に富んだ山岳景観が形成されております。また、それら山々の山腹から山麓にかけては冷涼な高原が広がっており、湖沼や湿原なども多く見られます。さらに、登山やスキーのフィールド、夏の保養地、温泉地など、様々な形で自然を楽しむことができるところが魅力となっております。
今回、公園計画の変更の対象となる苗場地域は本公園の北側に位置しており、巨大な溶岩台地である苗場山一帯と、氷食による断崖・岩壁や蛇紋岩植生が見られる谷川連峰などの非火山性構造山地を含んだ場所となっております。
続いて、苗場地域の公園計画の変更の経緯についてです。
昭和24年に上信越高原国立公園が指定され、昭和27年に苗場地域における特別地域の指定及び利用施設計画の決定が行われました。さらに、昭和44年には特別保護地区の指定がされ、今回の変更までの間には、公園計画の一部変更を行っていたものの全般的な見直しは実施しておりませんでした。今回、公園の指定以来、初めての全般的な見直し、つまり再検討を行うものになります。
なお、本公園の再検討は、平成19年から各地域で順次対応しており、苗場地域の見直しで、本公園の再検討は完了いたします。
スライド5ページ目をご覧ください。こちらでは再検討についてご説明いたします。
再検討とは、昭和48年11月以前に指定された公園について、公園指定後の自然的・社会的条件の変化に対応するために行う当初の公園計画の見直し作業のことです。再検討は昭和48年に発出した自然環境局長通知に基づいて行うこととされており、今回も通知に定められた基本方針に基づき区域線の変更は行わず、現行の地種区分から保護強化と良質な利用を促進するための見直しを行っております。
また、苗場地域においては、現行では第1種から第3種まで分けられている特別地域が分けられていない状態であったため、この問題点の解消も併せて行っております。
続きまして、苗場地域の自然環境等の概要について、ご説明いたします。
苗場地域の中央部には、信濃川支流である清津川が南北に流れており、その西側には苗場山などの複数の山が連なっており、東側には谷川連峰が位置しております。西側の苗場山は溶岩台地で高層湿原が広がっており、ミヤマホタルイ等の湿原植物が分布し、さらに佐武流山にかけては典型的な日本海側のブナ林が成立しております。一方、東側の非火山性構造山地である谷川連峰では雪食凹地などの積雪により地形が形成されているほか、ホソバヒナウスユキソウ等の蛇紋岩植生が見られる点が特徴的です。
苗場地域の利用形態は、上質な雪質を利用したスキーや多くの登山利用であり、全国の公園の中でも利用に重きが置かれた公園管理がされております。また、本地域の中央部を通る三国街道沿いには、江戸時代に宿場町としてにぎわった面影が残り、自然の中にある赤湯温泉や日本三大渓谷の一つである清津峡の渓谷美も特徴的な文化景観です。
ここからは今回の変更内容についてご説明いたします。まずは、保護規制計画の変更についてです。
今回の見直しでは大幅な保護強化を実施しています。左側が現行の保護規制計画の図となっておりまして、右の図が変更案となっておりますが、このうち現況の水色の部分の普通地域8,618haを、ピンク、紫、緑色の特別地域に大きく変更しております。また、地種区分が未定だった特別地域については第1種特別地域から第3種特別地域まで振り分け、特に第1種特別地域においては6,040haの増加となっております。
スライド10ページ目をご覧ください。こちらは本地域の地種区分ごとの特徴となっております。本地域においては、苗場山の溶岩台地状の広大な高層湿原や谷川連峰周辺の蛇紋岩植生が見られる地域については特別保護地区としております。また、第1種特別地域には、苗場山周辺のブナ帯からダケカンバ群落などの亜高山帯までの原生的な状態を保持する地域や、谷川連峰の周囲に広がる風衝草原、清津峡などのような渓谷などを指定しております。さらに、ブナの天然林などの良好な風致を示し、利用上重要な土地については第2種特別地域とし、人工林や二次林を主体として土地利用と調整をしながら、風致の維持を図る必要のある地域については第3種特別地域としております。
スライド11ページ目からは、各地点の具体的な保護規制計画の内容の変更となります。
まず、佐武流山とその周辺については、普通地域及び特別地域未定から第1種特別地域及び第2種特別地域に大幅な保護強化を行っております。本地点では、赤倉山から佐武流山、白砂山にかけての稜線の西側にシラビソートウヒ群落があり、東側にはオオシラビソ群落が形成され、さらに苗場山山麓など佐武流山の周辺にはササの自然草原及び林齢100年を超えるブナなどの広葉樹林が広がっております。
続いて、スライド12ページ目をご覧ください。
こちらでは、苗場山の北部区域であり、特に雁ヶ峰周辺のブナやダケカンバ、オオシラビソの群落や多雪の影響で成立したササ群落、また、日蔭山へ至る尾根沿いの風衝草原、さらに高石尾根北西の亜高山帯広葉樹林、亜高山帯針葉樹林を、普通地域及び特別地域未定から第1種特別地域へ指定しております。
スライド13ページ目に移ります。
谷川連峰の周囲においては、主稜線の西側で平標山から三国山にかけての風衝草原と、三国山から三国峠にかけてゼンテイカやシラネアオイなどの高山植物が広がる地域を、普通地域及び特別地域未定から第1種特別地域と指定しております。
スライド14については細かい地点のご紹介となりますが、ひん岩の柱状節理が分布し、渓谷美を楽しむための眺望対象となっている清津川の右岸や、奇石が分布し亜高山帯針広交交林が成立する大岩山一帯、また、非対称山稜が見られ、ササ自然草原や自然低木群落が広がる武能岳一帯も特別地域から第1種特別地域へ保護強化を行いました。
続いて、スライド15は第2種特別地域への変更となります。
清津川左岸・谷川連峰西麓・七ツ小屋山の区域については、ひん岩の柱状節理や、ブナやミズナラなどから成る落葉広葉樹林、ササの自然草原などの景観を保全するとともに、公園利用者の適正な利用を促す必要があることから、普通地域及び特別地域未定から第2種特別地域へ指定いたします。
続いて、スライド16は第3種特別地域への変更になります。
かぐら・日白山・松手山の区域については、落葉広葉樹林や、一部にシャクナゲやナナカマドといった低木林やササの自然植生が広がっているものの、人工林や二次林を主体としており、土地の利用と調整しながら風致の維持を図る必要がある地域であることから、普通地域及び特別地域未定から第3種特別地域指定をしております。
スライド17に移ります。
これまでの説明のとおり、今回の変更では8,618haを普通地域から特別地域に保護強化を行いました。一方で、規制の適正化のために、65haを特別地域未定から普通地域に変更しております。
公園区域外や普通地域に隣接し、市街地化が顕著な地域や公園利用者が少ない地域、また、人工林や普通共用林野として地域住民の利用がある地域である小出・芝原峠・苗場赤湯林道については、公園としての資質を見直し、特別地域未定から普通地域へ変更をしております。
ここからは利用施設計画の変更に移ります。
今回の変更では、現在の施設整備状況、利用状況、施設の必要性や効果などを考慮し、変更を行っております。この図の中で、追加は赤、削除は青、変更は緑、そして既存で公園計画に位置づけられているものについては黒で示しております。
苗場地域については谷川岳や苗場山といった百名山もあり、夏場は登山利用が多く、また、上質な雪質から、かぐらスキー場をはじめとして本地域の東側を南北に通る三国街道周辺には大規模なスノーリゾートが設置されている利用状況となっております。
まず、単独施設については、既存の4施設はそのままとし新たに7施設を追加、9施設を削除、1施設を変更しております。追加した施設については、スキー場の夏場の利用活性化や登山利用に必要な既存で整備されている宿舎や避難小屋といった施設を計画に落としたものです。また、削除した施設は現在も施設がなく、公園利用上の必要性に乏しいため、今後も整備が見込まれないものを計画から除いております。変更の施設については、スキー場の事業名称の変更を行ったものです。
続いて、道路の変更になります。こちらの図では、車道を赤、歩道を緑とし、さらに追加と変更は実線、削除は点線で示しております。
まず、車道は1路線のみの位置づけであり、これは三国街道である既存の国道17号線を公園計画に位置づけるものとなっておりますが、こちらは同じ上信越高原国立公園の隣の谷川地域の公園計画と、もともと同じ計画に位置づけられていたものを分割して整理するものとなっております。
また、歩道については、既存で計画のある1路線に加えて8路線を追加、4路線を削除、8路線を変更しております。追加路線は、これまで登山利用がある路線や、地域で取組が行われているロングトレイルの利用促進を図るために、既に道があるものを計画に落とすものとなります。一方で、計画書上は記載があるものの、現地での実態が不明となっている路線は削除をしております。
また、変更した路線については、公園計画上で路線位置の重複があるものを整理したり、また、路線上で一部利用実態がない区間を削除したものとなっております。
スライド20では、利用施設計画の変更例として2つご紹介いたします。
まず、地図の中の真ん中辺りのかぐらスキー場については、冬場だけでなく、スキー場内のグリーンシーズンの利用活性化を目的として、既存のスキー場事業に加えて園地や宿舎、野営場、索道運送施設の追加を行っております。
また、地図の中の青色の線で示されているぐんま県境稜線トレイルは、オレンジ色の線で示されているスノーカントリートレイルといった地域の取組によって設置されたロングトレイルであったり登山道利用の高まりを踏まえて、実態に合った歩道や施設の計画として、謙信ゆかりの道線といった歩道計画の追加や、毛渡乗越宿舎を削除して避難小屋に振り替えるといった単独施設の変更を行っております。
最後に、パブリックコメントへの対応となりますが、今年の2月から3月にかけて1か月間実施をしておりまして1件のご意見をいただきましたが、本公園の公園計画に直接影響する内容ではなかったことから反映はしておりません。意見内容は、資料4参考資料をご参照ください。
以上で議事4のご説明となります。
○武内部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、ご質問、ご意見のある方はお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
勢一委員、どうぞ。
○勢一委員 ありがとうございます。勢一です。
ご説明、ありがとうございました。私は制度のほうの専門で、公園計画とその変更についてあまり仕組みを承知していませんので、そもそもの仕組みについて教えていただきたいと思って質問させていただきます。
今回、公園計画の変更ということで、ご提案なんですけれども、この公園計画の変更というのはどのような場合に行われる手続になるのでしょうか。公園計画の変更が検討される契機になるような事実とか、そのときの時期とか、恐らく何らかルールがあるのだと思います。先ほどの国立公園の名称でもやはりルールと手続が明確に分かるというのが重要だと思いますので、少しその辺りを教えていただきたいと思います。
今回の計画に関しては、これは1969年の特別保護地区の指定以降、一部変更などは行われていたけれども全般的な見直しはされていなくて、再検討の手続という中で今回の計画変更の手続となっているんだと思います。かなり長い期間、一部の変更が行われてきたということなんですけれども、それをこれまで経てきて、なぜ今、公園計画の変更の手続になっているのかというところです。長らく地種区分も未了な状態でずっと続いてきたというような中でようやくなのかなというふうに見えてしまいまして、恐らく何らかのルールに基づいてご準備されていたり、そのタイミングで手続ということになったのかなと思いますけれども、私自身が手続として理解できていなくて、教えていただきたいと思います。
特に最近の例ですと、私は報道でしか接していませんが、知床半島に7,000m2の太陽光パネル設置の事業が行われるというような話があります。かなり大規模な開発で、こういうのは公園計画の変更なのではないのかなと素朴に思ったりしたものですから、公園計画の変更の手続について少しご教示をいただければと思います。
以上です。
○武内部会長 いかがでしょうか。
○国立公園課長 ご意見、ありがとうございます。
今回、で諮問をさせていただいている案件については、公園計画の変更の再検討という手続をお願いしています。これが昭和48年以降、順次再検討というのをやってきて、この上信越高原、非常に時間がかかってしまっていますが、まずこの再検討をやった後に、その後、5年ごとに公園計画の点検という作業を行うというような仕組みになっています。
この上信越高原をはじめとして、戦前あるいは戦後すぐに指定をされた国立公園については、当時の地形図の精度の問題等もありまして、公園区域線が今の地形と合っていないようなところがたくさん見られるというような状況もありまして、昭和48年以降、新しいしっかりした公園計画をつくりましょうということでこの再検討を進めてきております。
この上信越高原国立公園で、こんなに時間がかかったのは、当然、我々としても何回も再検討を早く進めたいということでやっておりましたけれども、再検討するからには規制の強化をしっかりしていきたいということで進めておりましたので、何度かそれがなかなか関係者に認められずに断念をしたような経緯があります。そうした中で、この上信越高原は広い国立公園ですので、この公園地域を5つの場所に分けて順次解決していこうということで、今回の苗場地域が5つ目の最後の地域になっております。これでいよいよ上信越高原国立公園の再検討が全域で終わって、ある程度の規制の強化も図ることができたということで、今後の公園計画としては定期的な点検作業というのを行っていきたいと考えております。
今回も、8,000ha以上という大きな面積を特別地域にすることができ、何とか戦前、戦後すぐに指定された国立公園の規制の強化というのを図ることができました。こうしたことも、引き続き取り組んでいきたいと考えております。
ありがとうございます。
○武内部会長 よろしいでしょうか。
○勢一委員 はい。ご説明、ありがとうございました。恐らくいろいろな事情で時間がかかったというところ、理解はいたしますけれども、先ほどのご説明の中でも、特別地域の未定のところが、結局、市街化が顕著に進んでしまって普通地域化せざるを得なかったような部分もあったかと思います。やはりこれからの時代はスピード感も大事だと思いますから、ぜひそうした点も考慮して引き続きご尽力いただければと思います。
以上です。
○国立公園課長 ありがとうございました。
○武内部会長 ありがとうございます。
ほかにございますか。よろしいでしょうか。
それでは、議事4について、諮問に添付された変更書のとおりとすることにご異議はございませんでしょうか。
(異議なし)
○武内部会長 よろしいですね。それでは、本件については適当と認めることといたしたいと思います。
それでは、次の議事に移りたいと思います。今回、3つの報告事項がございますので、それぞれ事務局から続けて説明し、それらの報告をまとめて質疑応答とさせていただきたいと思います。ネイチャーポジティブ経済移行戦略の策定、クマ類による被害防止に向けた対策について、国立公園における滞在体験の魅力向上事業の順番で、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局(生物多様性主流化室) ありがとうございます。資料5-1に基づいて、ネイチャーポジティブ経済移行戦略についてご説明をさせていただきます。生物多様性主流化室長の浜島でございます。よろしくお願いいたします。
まず、1枚目で本戦略の位置づけをご説明しております。生物多様性条約の下、2022年に世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されたわけでございますが、その中で2030年ミッションとしていわゆるネイチャーポジティブが位置づけられているということでございます。そして、この本目標の実施のための生物多様性国家戦略、こちらの5つの柱のうちの3つ目、ネイチャーポジティブ経済の実現というところを企業の立場に立って具体化したというのが今回のネイチャーポジティブ経済移行戦略でございます。
特徴としまして、右上に4省庁の名前が載っております、環境省だけではなくて、生物多様性との関係が特に深い業を所管する三つの省庁とともに策定したというところが一つの特徴でございます。
本戦略の中身でございますが、戦略自体は本文が20ページ強、参考資料が100ページを超えるものがございますが、今回は2ページにまとめたものをお持ちしてございます。
本戦略については、ポイントとしては、企業などにとって生物多様性の取組というのが単なるコストアップではなくて新たな成長につながるチャンスでもあるということを示したいという気持ちから、多数の企業、金融機関の方々のお声を聞いて取りまとめたというものでございます。本日のご出席者でいうと藤田香先生にも研究会にご参加いただいて、そうした学識者の方にもご意見をいただいておりますが、とにかく企業の方のお立場に立って策定したいということで策定したものでございます。
まずは、右上のほうに報告書のスクリーンショットを貼っておりますけれども、まず現状のままでは企業にとってもリスキーなんだということに関して企業の皆様に腹落ちしていただくべく、自然との関わり方によって財務的な損失を被った例というのをご紹介してございます。例えば化学物質の放出により株価が下落した例ですとか、地下水の枯渇の懸念があるような地域で工場を建てようとして住民訴訟が起きてしまって工場建設が大幅に遅れたり、いずれも海外の事例ではございますが実際に生じておりますので、そうしたことをご紹介しております。こうしたリスクも踏まえまして、事業活動を持続可能にするために、一番上のボックスにありますネイチャーポジティブ経営というものへの移行が必要なんじゃないかと。ネイチャーポジティブ経営というのは、自然資本の保全の概念を重要課題、いわゆるマテリアリティーとして位置づけた経営というふうにしてございます。
その上で、真ん中のほうで赤字になってございます三つの要素を整理してございます。
一つ目が、企業の価値創造プロセスとビジネス機会の具体例ということでございます。左下に目を移していただきますと、①というところに最初の要素の説明がございます。企業は事業活動上のリスクとか機会を特定して価値創造につなげるということを日々情報開示で実施しておるわけですけれども、気候変動に関しては既にTCFDなどを軸にこのプロセスというのが進んでいるんですが、自然資本も組み込んでみてはいかがでしょうかと、そしてTNFDなどの情報開示を通じて資金を呼び込むことにつながるんじゃないかと、こうしたことを示してございます。
ビジネス機会について、例えばこちらでは一つの例として環境配慮型の養殖ということを載せてございます。通常、養殖用の餌は魚粉などを使っていて環境負荷等が高いわけですけれども、これを植物由来の原料との配合の餌に変えたりとか、あるいはAIなんかも活用して効率的に給餌して水質への影響も低減させるといったビジネスが進んでおりますので、こうしたことを定量的な市場規模とともにできるだけ示しました。このほか20弱の事例を参考資料のほうで提示してございます。つまり企業の経営の中にネイチャーというものを組み込まないと、上のほうで申し上げたリスキーということ、つまり危なくないですかということ、それから今のようなビジネス事例もあり得るので組み込まないともったいなくないですかと、この両面から書いているということでございます。
2番目、ネイチャーポジティブ経営への移行に当たり企業が押さえるべき要素というところでございます。こちらは、これも企業の方々から国が行動指針のようなものを示してくれると動きやすいんだというお声をいただいて整理したものでございます。五つボックスがあるうち、例えばまずは足元の負荷の低減をというふうにございます。これはどういった声を受けたかというと、せっかくの取組がグリーンウオッシュだなどとして批判されるというリスクをどう回避するかと、こういうご相談を受けて掲げた、いわゆる行動指針のようなものでございます。なぜその批判にさらされ得るかというと、取組の優先順位としてまず植林をしましたということだけをPRしてしまうと恐らく批判にさらされると。植林などの前にまず自社が与えている負の影響を減らすということを考えている企業ですよということをしっかり説明するという、こういった原則を示したものでございます。
例えば、それから下の段に行っていただいて、消費者ニーズの創出・充足と書いてございます。消費者、特に若者のニーズが変わってきているというのを把握すべきというのはもちろんですけれども、消費者というのは市場に選択肢ができて初めて、ああ、自分にはこういうニーズがあったんだというふうに気づく側面もあるので、市場に選択肢を生み出すというところ、創出というところを始めてみませんかということを示しております。環境省のほうでも、それに資するようなマーケティング等のお手伝いをちょっとしていたりしてございます。
次のページ、3ページ目でございます。これらを進めた結果の移行後の絵姿を「自然資本に立脚した、GDPを超えた豊かな社会の礎に」というふうに示してございます。
具体的な指標としましては、大企業の5割はネイチャーポジティブ経営にと。これは経団連様のアンケートで取締役会や経営会議で生物多様性に関する報告、決定がある企業が現状約3割であるというデータがございまして、そこから環境省で推計をしたというものでございます。
また、それだと大企業のみになってしまいますので、裾野を広げるという意味で、ネイチャーポジティブ宣言の団体数を1,000にというふうに掲げてございます。このネイチャーポジティブ宣言というのは、経団連の会長に長いこと会長を務めていただいている産官学のプラットフォームでございまして、このプラットフォームがその宣言の発出を呼びかけているというものでございます。中小企業、自治体等を含めて宣言していただいて、機運の醸成を図りたいというふうに考えてございます。このJ-GBFのほうは、武内先生に会長代理ということで、こちらも長いことお務めいただいてございます。
それから、三つ目の要素として、国の施策によるバックアップということも掲げてございます。企業のその価値創造プロセスの各ステップを各省の施策でどのように進めていくか、支えていくかということでございます。たくさん戦略の中に施策を掲げておるんですが、こちらには例示してございまして、特に太字になっている一部をご紹介いたします。
例えばリスクへの対応というところの一番上でございます、情報開示とか目標設定の動きに対応できるようなワークショップやモデル的支援のようなこと、こちらは環境省で行っていきたいと思っております。
それから、互助・協業プラットフォームの設立、これは1社ではコストがかかってしまうような取組も共同で行うことができるようになったりですとか、あるいは常時ビジネスマッチングのようなことが可能になるようにしたいというふうに考えてございます。
それから、下の段に太字にしてございます、クロスコンプライアンス等と書いてございますが、農水省さんが今年度から実施されるものですが、国が補助などをする先に最低限の環境負荷低減の取組を求めるというものでございます。
それから、すみません、太字にしてございませんが、右上の開示・対話を通じた資金の呼び込みというところ、特に本部会と関連が深いかと思いますので少しご紹介させていただきますと、自然共生サイト、あるいは部会、それからその下の小委員会のほうでご議論いただいて4月に成立いたしました新法の生物多様性増進活動促進法、こちらでの認定された活動、こうしたものに支援がされた場合に、その支援がなされたということ、そしてその支援がしっかり活動に使われているということを証明する支援証明書という制度を今構築中でございまして、その支援証明書もこちらの開示に関しての一つのキーになるかというふうに考えてございます。
下の段でプロセスを支える基盤というものもいろいろ書いてございます。
そして、最後に、今回、戦略をつくるに当たって、先ほど申し上げたように4省の連携でやっておるんですけれども、各4省の副大臣級で構成される会議体も立ち上げましたので、こちらでしっかり連携体制をつくって政府一丸でやっていきたいというふうに考えてございます。
ご報告は以上でございます。
○事務局(鳥獣保護管理室) 鳥獣保護管理室長の宇賀神と申します。よろしくお願いします。
前回の自然環境部会でクマ類の関係をご説明いたしましたが、ちょっと駆け足でございましたので、前回のおさらいも含めて資料を説明させていただきます。
前回ご説明した際には、クマ類につきましては、ご承知のとおり、昨年の秋、東北地方を中心に大量出没し、あるいは人身被害もたくさん出たというところでございますので、四角囲みにございますけれども、令和6年2月に専門家検討会におきまして、科学的知見に基づいて、ここに示させていただいております「クマ類による被害防止に向けた対策方針」というのを2月8日にまとめていただきました。その後すぐに部会でご説明したというところでございます。
考え方につきましては、クマ類が全国的には増えてございますけれども、地域的には絶滅のおそれのある個体群もございますので、クマ類の地域個体群を維持しながら人の生活圏への出没防止、これによって人とクマのすみ分けを図るということでございます。そこに三つの管理というふうに書いてございます。こういったことを実現するということでございます。
中身につきましては、左上の四角囲みでございますけれども、都道府県を中心に捕獲等により集中的かつ広域的に管理する鳥獣、現在はイノシシとシカが指定されてございますけれども、この指定管理鳥獣にクマ類を指定すること、そして都道府県等に技術的あるいは財政的な支援が必要ということ、それと捕獲に偏らない対策としまして調査・モニタリング、出没防止対策、出没時の体制構築、人材育成といったことを提言いただきました。
また、3番目になりますけれども、出没時の対応ということで、特に市街地にクマが出て人の被害が出たということがございますので、市街地等での銃による捕獲、これにつきましては鳥獣保護管理法で規制されてございますので、この改正を含めて対応方針の検討・整理が必要というようなご提言をいただきました。
その後、右下でございますけれども、環境省の主な取組ということでございまして、ご提言にあったような中身の、クマ類の指定管理鳥獣への指定につきましては、絶滅のおそれのある四国の個体群を除く個体群につきましては4月16日に指定管理鳥獣に指定したということで、当日、公布・施行させていただきました。
また、この提言に書かれているような内容の財政的支援をするために、指定管理鳥獣捕獲等事業交付金、これは現在シカとイノシシでございますけれども、こういった交付金にクマ類を追加するという拡充の対応を進めております。
続きまして、2ページ目でございますが、この対策方針を踏まえまして、クマ被害対策施策パッケージというものを指定管理鳥獣の指定の前の日の令和6年4月15日に公表させていただきました。これにつきましては、右肩に書かれておりますように、環境省をはじめ農林水産省、林野庁、国土交通省、警察庁という関係省庁が連携したパッケージということで、こういったことを進めることによってクマ類による被害を抑制し、国民の安全・安心を確保するということでございます。
この中にも各種施策を書いてございますけれども、2ポツの出没時の緊急対応の丸の3番のところにも、鳥獣保護管理法の改正の検討ということで環境省が担当させていただくというようなことが書かれてございます。
3ページ目でございますけれども、そういったところを踏まえまして鳥獣保護管理法改正に向けた検討ということで、先ほど申し上げました、市街地に出没して被害が出ると、鳥獣保護管理法では住居集合地域等、いわゆる市街地等において銃猟、鉄砲で撃つことが禁止されてございますので、そういったことを検討するというところで検討会を開かせていただいてございます。
右下のところに検討スケジュールがございますけれども、第1回が今月9日に開かれまして、関係の方々のヒアリングを進めまして課題整理をしたというところでございます。第2回は、実は明日でございますけれども、対応方針の案を検討させていただき、第3回目の夏頃でございますけれども、対応方針を取りまとめていただくという予定にしております。取りまとめていただいた後には、自然環境部会の小委員会のほうにご報告するという予定にしております。
以上でございます。
○事務局(国立公園課) 最後に、国立公園における滞在体験の魅力向上について、ご報告申し上げます。
本件につきましては、昨年8月の本部会でも報告させていただきました。その後1年間の動きにつきまして、ご報告させていただきます。
環境省では、インバウンド再開を踏まえ、国立公園満喫プロジェクトの更なる展開として、民間活用による国立公園利用拠点の面的な魅力向上に取り組み、美しい自然の中での感動体験を柱とした滞在型・高付加価値観光の推進を図っております。
昨年1月から6月に有識者会議を開催いたしまして、宿舎事業を中心とした国立公園利用拠点の面的魅力向上に向けた取組方針を策定いたしました。この中で、国立公園の利用の高付加価値化につきまして整理をいたしまして、国立公園の魅力的な自然環境を基盤とし、地域の歴史・文化・生活を踏まえた本物の価値に基づく感動や学びの体験を提供し、利用者に自己の内面の変化を起こすこと、また、関係者は持続可能で責任ある観光の姿勢を共有し、保護と利用の好循環を目指すことが重要であると整理したところでございます。
その上で、それらに具体的に取り組む地域として先端モデル事業を選定いたしました。具体的には、ここにございます4つの国立公園を選定しております。十和田八幡平国立公園(十和田湖地域)、中部山岳国立公園(南部地域)、大山隠岐国立公園(大山蒜山地域)、ここまで昨年8月にご報告したところでございますが、その後、やんばる国立公園を追加いたしまして、4つの地域でその後の取組を進めております。
具体的には、4つの国立公園において、該当公園の利用の高付加価値化に向けた基本構想を検討しております。今年の3月には、十和田湖地域において集中的に取り組む利用拠点の第一弾として休屋・休平地区を選定いたしました。今後、具体的な取組をここで加速してまいります。
具体的には、このイメージ図にございますように、今後、選定された休屋・休平地区においてマスタープラン・インタープリテーション計画を策定し、サウンディングを経て宿泊事業者を公募、その後、その事業者や地域と連携しながら国立公園ならではの感動体験を提供する滞在型・高付加価値観光の拠点を再生・創出していくというものでございます。十和田以外にも、中部山岳、大山隠岐、やんばる国立公園についても同様の検討を深め、利用拠点を順次選定していく予定でございます。
また、昨日、報道発表をさせていただきましたが、国立公園ならではの宿泊施設との連携方策の検討会というものを5月31日より開催する予定でございます。本取組のさらなる広がりとして、宿泊施設を通した、より国立公園の滞在体験の魅力向上について引き続き検討してまいります。
以上です。
○武内部会長 3件の報告をしていただきました。それぞれについてご意見、ご質問がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
では、小泉委員、どうぞ。
○小泉委員 ありがとうございます。
ネイチャーポジティブに関しては、質問です、企業の業種間の温度差というのは埋まりつつあるんでしょうか、それとも、例えばこれまで意識高く取り組んできた食品産業が牽引役を務めている、そのほか特定の業種はまだ冷えた感じだということなんでしょうか。教えていただけますか。
それから、すみません、次、クマのほうなんですが、クマのほうに関しては捕獲技術者の育成確保ということが挙げられておりましたけれども、同時にこれらの技術者の受皿となる認定鳥獣捕獲等事業者の育成、技術向上というのも一緒に図っていただきたいなと思います。これはコメントです。
以上です。
○武内部会長 ご意見、ご質問に対する回答は後ほどまとめてそれぞれの報告ごとに説明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、中村委員、お願いします。
○中村委員 私もネイチャーポジティブについての現状をちょっとお聞きしたいんですが、OECMとか、このTNFDとか、そういうのを企業さんから私も相談を受けることがあります。自然資本の評価がすごく大事になってくると感じていて、例えばイングランドの生物多様性ネットゲインみたいな、10%ネットゲインじゃないと開発は認めないといったような、そんな動きもある中で、どうやってそのネイチャーの部分を評価していくのか。それは生物多様性だけじゃなくて大気とか水とか土壌とか、そういったものも入ってくるような気がします。何かその辺の将来的にクレジット化も含めて、要はネイチャーポジティブですからポジティブを説明しなくちゃいけないと思うんですよね。それはスタイルとしてポジティブだからいいということじゃなくて現実にポジティブにならないといけないと思うので、その辺、何か環境省としての取組も含めて情報があれば教えてください。
それから、クマについては今の小泉さんと似ているんですけども、人材育成をちょっと考えていただかないときっとうまくいかないんじゃないかと思っています。各自治体で人材を確保するというのは多分難しいとは思うんですが、その人材をどうやって確保するか。大学も含めて、行政に勤めておられる方の再教育的なものも含めて、何か考えておられることがあったら教えてください。
以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインの藤田委員、お願いします。
○藤田委員 ありがとうございます。質問です。クマの対策のところで、ちょっと不勉強なので教えていただければと思います。
先ほどの地域個体群を維持しながら管理するということは、地域個体群は維持するけど、個体数、生息数を駆除・管理するという意味に捉えてよろしいんでしょうかということと、あと、現在、クマの推定生息数というのは国内でどの程度いるかというふうに環境省としては推定されていて、適正な管理をした後の目標値みたいなものというのはどんなふうに捉えていらっしゃるか、もしあるようでしたら教えてください。よろしくお願いします。
○武内部会長 ありがとうございます。
それでは、深町委員、お願いします。
○深町委員 ありがとうございます。
私は3つ目の国立公園のことに関してなんですけれども、この高付加価値化というようなところで、自然環境を基盤としながらも地域の歴史・文化・生活を踏まえた本物の価値というふうにあって、これはとても大事だなと思うんですけれども、その後のご説明とか具体的な事例をお聞きすると、こういったところをどうやって踏まえて本物の価値というのをどういうふうに判断しているのかなというところが具体的に分からなかったので、せっかく書いてあるこの理念に従ってどういうふうに現場での事業とか取組というのが進んでいるのかというところを、少し具体的なところを含めて教えていただきたいと思います。
○武内部会長 ありがとうございました。
こちらの会場にお越しの関委員、お願いします。
○関委員 ありがとうございます。
私はネイチャーポジティブのところの質問なんですけども、先ほど中村先生がおっしゃったことにも重なることです。ネイチャーポジティブ経営というものにとても期待がかかるところがあるんですけれども、どれぐらいの効果があるのかということを、やっていらっしゃる企業さんもそうなんですけれども、幅広く国民の皆さんに見えるように示されるのかどうか、そういった準備があるのかどうかにつきまして教えていただければと思います。
以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。
ほかにはおられませんか。よろしゅうございますか。
それでは、ご質問、ご意見に対して事務局からご説明をお願いしたいと思います。
○生物多様性主流化室長 1つ目のネイチャーポジティブ経済移行戦略に関してお答えさせていただきます。ご指摘、ありがとうございます。
まず、小泉先生からいただきました業種間の温度差というところでございます。まず、一言で申し上げると、おっしゃっていただいたように食品あるいは飲料系の会社様が今も割とリードを取っていらっしゃるという状況は変わっていないと思います。ただ、ほかがものすごく温度感が低いかというと、私どもはそうは受け止めておりません。例えばTNFDレポートを既に開示しておられる企業さんなんかは、例えば不動産業界とか航空業界もそうですし、あるいはITとかデータ系の会社様ですね、特に先んじて出しておられます。特にこのIT、データ系の会社さんなんかは、生物多様性は、最後のご質問にも関係するんですが、測りづらいというところが課題だと。その図りづらさをオポチュニティに変えてビジネスをやっているというところでものすごくオポチュニティを感じておられて、取り組んでくださっているというふうに認識してございます。
それから、中村先生にいただいたご指摘、ありがとうございます。今のまさに測りづらさのところにも関係するんですが、私どもの取組としましては、説明の中でも少し申し上げましたが、ワークショップなどを行っていて、通称「ツール触ってみようの会」というふうに呼んでいるんですが、生態系の状況を表す、あるいはそこに対して自分の事業活動がどれだけの負荷を生じているかということを表す、計算できるツールというのがものすごくたくさん世の中にございますので、企業としてはそれをどれが自分たちの努力量を適切に反映するのにふさわしいかということを選ばなきゃいけないという状況にあると思っています。そこで、幾つか我々のほうから、これであれば多くの、広い事業者さんに適用可能なんじゃないかというものを体験してみていただくと。生物多様性は測れないに違いないというところで止まるんじゃなくて、体験してみていただくということをやっておりまして、ベーシック編ではIBATとかENCOREとか、あるいはWWFさんが作るWater Risk Filter、こういったものをやったりとか、あとアドバンス編としてはLIMEですとか、エコロジカルフットプリントのような企業の事業による負荷を包括的に図れるようなものを体験いただくということをしてございます。
少しご言及いただきましたクレジット化に関しては、そういうことも踏まえながら、あるいは、さきにご説明した支援証明書なんかの実績も踏まえながら検討していくということになるかなと思っておりますが、例示していただいたイギリスのネットゲイン法の場合は、イギリスの政府の担当者にも直接聞いたんですが、あそこは都市の中心部の地価が上がり過ぎて、ハウジングの需要を満たすために実際に森林を切って家を建てなきゃいけないという状況までなっていると。なので、ネットゲイン法のようなものが必要なんだと、こういう説明でございました。日本の場合は、そういう地域もあるのかもしれませんが、概してJBOなんかを見ると、オーバーユースよりもアンダーユースのほうが問題であると、課題であるというふうなことかなと思いますので、イギリスの動き、あるいは国際的なクレジットを作っていこうというような動きにはしっかり参画をして注視とか意見出しはしておりますが、日本は日本でしっかりアンダーユース型にも対応できるものをということなのかなというふうに考えてございます。
それから、関先生にいただきましたネイチャーポジティブ経営の効果について幅広く国民に示していくような予定があるかということでございます。具体的にいつ、どのようにというのはちょっと申し訳ございません、決め切ってはいないんですが、説明の中で申し上げた副大臣級の会議、それから、こちらでも多分お世話になる生物多様性国家戦略の全体のフォローアップの中で示し方というのを考えていきたいというふうに思ってございます。
以上でございます。
○鳥獣保護管理室長 続きまして、クマでございます。ご質問ありがとうございました。
人材育成につきましては、小泉委員、中村委員からご指摘いただきましたけれども、まさに今回の進め方につきましては、手続論を進めたというところでございまして、現場の対応につきましては、捕獲の部分と、そういった技術的な部分の人材育成が必要だという認識をしてございます。特に既存の指定管理鳥獣の対象種であるシカ、イノシシとクマは全く異なるものでございますし、絶滅のおそれもあるというところもございますので、そういったスペシャリストの育成につきましては、今後技術的、あるいは財政的支援をしながら育成を図っていきたいというふうに考えてございます。今後検討させていただきたいというふうに考えてございます。
また、藤田委員からご指摘のあった個体群、個体数ということでございます。先ほど説明の中で申し上げましたが、四国の絶滅のおそれのある個体群等がございますので、個体群につきましては維持するという方針を提言いただいてございます。一方、個体数につきましては、特に被害を及ぼすクマにつきましては、人の生活圏に近いところにいるクマについて対応するというところが必要なのかなと思っておりますので、そこにつきましては、地域の都道府県を中心とした中で特定鳥獣管理計画というところの中で見ていただきたいというふうに考えております。全国的なクマの個体数につきましては、現在国としては推計してございませんが、今年度の予算でそういった各都道府県のデータ等をいただきながら推計方法の検討を進めていきたいというふうに考えてございます。
はい、以上でございます。
○国立公園課課長補佐 最後、国立公園の滞在体験の魅力向上につきましてです。
深町委員から高付加価値化、本物の価値というのについて、どのように判断するのか、具体的にはどうやっているのかというご質問をいただきました。ここにつきましては、価値あるものや魅力というものは、それぞれの地域にあるものというふうに理解をしておりまして、特に地域の方々はそこをよくご存じであると考えております。ただ、気づいていないような場合もよくございますので、そういうときには外部の目というのが非常に重要になると考えております。
それをどのようにみんなで共有していくかということでございますが、十和田湖の場合、スライド2枚目に書かせていただいたように、十和田湖1000年会議というものを何回も開催いたしまして、みんなで議論をしていく中でそれを共有していくというような作業をやりました。それを経て基本構想を作成いたしまして、その文章やコンセプトにし、みんなで共有していくといったような作業をやっております。今後、具体的なマスタープランや、インタープリテーション計画の作成という手順がございまして、その中で誰をターゲットにどのように伝えていくことで感動や学びにつながるかというところをしっかり計画を立てていきたいと思いますので、それらを通して本物の価値がしっかり伝わっていくということを考えております。
以上でございます。
○武内部会長 はい、どうもありがとうございました。
それでは、追加でのご質問、ご意見、あるいは、さらにお気づきの点がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、特段ないようでございますので、本日の審議はこれで終了とさせていただきたいと思います。
進行を事務局にお返しいたします。
○司会 武内部会長、議事進行ありがとうございました。
委員の皆様におかれましても、長時間にわたり、ご審議をいただきましてありがとうございました。
閉会に当たり、白石自然環境局長より一言ご挨拶申し上げます。
○自然環境局長 本日は長時間にわたりまして、ご審議いただきましてありがとうございました。特に国立公園に関しましては、前回の部会でもご議論いただきましたけれども、今回正式な諮問ということで、活発なご意見をありがとうございます。
ご説明に拙いところがあったり、あるいは、いろいろ方向性にご納得いただけない、特に名称なんかに関して言えば、やはり違和感があるというご審議、ご意見も受け止めました。完全に払拭するということは難しいかなとは思っておりますが、今後の取組の中で地域の様々なステークホルダー、自治体の皆さん、それから環境保護にご貢献いただいている皆さん、そういった方と協議会を早期に開催し、地域の声を踏まえて運用する中で、そういった違和感をなるべく解消していけるように、我々としても取組を一層進めていく覚悟でございます。
本日のご審議をいただいて、今後、日高山脈襟裳十勝国立公園という名前で、新しい国立公園の指定を行っていくということになります。平成29年3月7日の奄美群島国立公園以来、35番目の国立公園、7年ぶりの国立公園の指定になるわけでございまして、日本最大の国立公園の誕生ということになります。この国立公園が我が国の豊かな生態系でありますとか豊かな自然、こういったものの保全に寄与しつつ、日本のその特有の自然環境の価値というものを、厳しい自然環境でありますけれども、そういう厳しい自然環境に寄り添った利用の仕方というものを模索しながら、その価値を多くの国民、それからインバウンドの皆さんによく認識していただく、その場になるよう、環境省としても鋭意努力をしてまいりたいというふうに考えております。
それから、もう1つご審議をいただきました南極地域の環境の保全に関する小委員会(仮称)の設置について、こちらも今後作業を進めて、逐次、また折を見て自然環境部会の皆様にもご報告を申し上げたいと思います。
それ以外のネイチャーポジティブでありますとか、クマでありますとか、国立公園の満喫プロジェクトの話でありますとか、熱心なご審議、ありがとうございました。いただいたご意見を踏まえて着実に進めてまいります。
引き続きまたご指導、ご鞭撻いただければと存じます。本日は長い時間、どうもありがとうございました。
○武内部会長 どうも、ありがとうございました。
○司会 以上をもちまして、本日の部会を終了いたします。どうもありがとうございました。
午後5時11分 閉会
○司会 それでは、定刻となりましたので、ただいまより中央環境審議会自然環境部会を開会いたします。
本日は、お忙しい中、本部会にご出席いただきまして、ありがとうございます。
会議に先立ちまして、本日の出席委員数をご報告いたします。本日は、所属の委員・臨時委員26名のうち、ウェブ会議での参加を含め、16名のご出席をいただいておりますので、本部会は成立いたしております。
続いて、本日の会議運営についてご説明いたします。本部会は公開で行います。会場へお越しの報道機関の皆様のほか、YouTubeチャンネルのライブ配信により傍聴可能となっておりますこと、ご了承ください。
本日、こちらの会場でご参加の委員の皆様におかれましては、ご発言の際は、名札を机の上に立てていただき、部会長からのご指名の後、マイクをオンにしてご発言ください。発言終了後のマイクオフもお忘れないようお願いいたします。
次に、オンラインでご参加の委員の皆様にお願いです。差し支えない範囲で結構ですので、常時ビデオボタンをオンにし、お顔が見える状態にしてください。また、マイク機能は常時ミュートに設定いただき、各自ご発言の際、オンにしてください。なお、ご発言の際は、ウェブ画面上で参加者リストのご自身のお名前の横に表示されている挙手ボタンをクリックしてお知らせください。部会長からのご指名の後、マイクのミュートを解除の上、お名前をおっしゃってからご発言をお願いいたします。議事記録のため、どうぞご協力をお願いいたします。
本日の資料は、事前に委員の皆様へお送りしておりますが、事務局が画面上に資料を投影しながら進行いたしますので、お送りした資料は、必要に応じお手元でご参照ください。
最後になりますが、本日の資料を環境省ホームページ、自然環境部会のページに掲載しております。傍聴されている方は、どうぞそちらをご確認ください。
それでは、自然環境局長の白石からご挨拶申し上げます。
○自然環境局長 自然環境局長の白石でございます。
本日は、お忙しい中、中央環境審議会の自然環境部会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
初めに、大変残念なお知らせがございます。本部会所属の佐藤哲也委員が3月6日にご逝去をされたと伺いました。佐藤委員におかれましては、令和3年6月より本部会にご参画いただきまして、野生生物保護に関する深いご見識と保護活動の実践を踏まえた幅広いご経験を踏まえて、ご意見を頂戴してまいりました。
これまでのご貢献に深く感謝申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈りいたします。
さて、本日の議題といたしましては、審議事項が1つ、諮問事項が3つ、報告事項が3つございます。
まず、南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置についてご審議をいただきます。次に、国立公園関係の議題といたしまして、日高山脈襟裳十勝国立公園(仮称)の指定及び公園計画の決定についてと、それから、その国立公園の指定に伴いまして、日高山脈襟裳国定公園への指定の解除及び公園計画の廃止についてお諮りさせていただくほか、上信越高原国立公園苗場地域の公園計画の変更(再検討)についても諮問させていただきます。
さらに、報告事項といたしまして、ネイチャーポジティブ経済移行戦略の策定について、クマ類による被害防止に向けた対策について、及び、国立公園における滞在体験の魅力向上事業についてのご報告を関係課室より行わせていただきます。
また、新たな国立公園の指定の審議の際には、関係自治体の首長の皆様にお声がけをしておりまして、本日は、平取町の遠藤町長、芽室町の手島町長、中札内村の森田村長に会場にお越しいただいております。ご多忙のところありがとうございます。
限られた時間でございますけれども、本日は忌憚のないご意見を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
○司会 報道関係者の方へのお願いです。撮影はここまでとさせていただきます。
ここからの議事進行につきましては、武内部会長にお願いいたします。武内部会長、どうぞよろしくお願いいたします。
○武内部会長 それでは、私のほうで議事進行を務めさせていただきたいと思います。冒頭に先ほど局長からもご挨拶がございましたとおり、2年にわたり本部会の臨時委員をお務めいただいた佐藤委員が今年3月にお亡くなりになりました。本部会を代表いたしまして、生前のご厚情に深く感謝いたしますとともに、ご逝去を悼み、心よりお悔やみを申し上げます。
さて、本日の審議会でございますけれども、前回の審議会での議論の中心であった、日高山脈襟裳十勝国立公園(仮称)の最終的な諮問を含めて4つの議題がございます。前回、覚えておられるとは思いますけれども、多数の名称候補について、異例にも皆さん方一人一人のご意見を伺い、その結果を取りまとめをいたしたところでございます。私のほうからは、特に十勝を入れるということについて、もう少し突っ込んだ理由づけを事務局にお願いしたいと申し上げておりまして、本日、その結果が報告されるということになっておりますので、皆様方には、その点をご確認いただければと思います。
今日は大変たくさんの方がオンラインでご参加でございますので、事務局のサポートを得て、予定の時間内に終了させられるよう、どうぞご協力をよろしくお願いいたします。
それでは、本日の議事の進行に移ります。
本日の部会は、YouTubeチャンネルにおいてライブ配信しておりますので、報道関係者や一般の方もご覧になっておられます。会議録は、後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員の皆様のご了承をいただいた上で公開をすることになります。
議事要旨につきましては、事務局で作成したものを、私、部会長が了承した上で公開することになっておりますので、何卒ご了承をいただきたくお願い申し上げます。また、会議資料につきましても公開となっております。
なお、本日は審議時間が限られていることから、時間内にご発言いただけなかった質問等につきましては、後日、文書での質問・回答とさせていただく場合がございますことをあらかじめご了承ください。
それでは、早速、最初の議事、南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局(自然環境計画課) 自然環境計画課長の則久でございます。
議事の1番目、南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置について、資料1-1から1-4を用いてご説明したいと思います。
資料1-1で、今年5月17日に環境大臣から中央環境審議会に対して、環境保護に関する南極条約議定書附属書Ⅵの締結に向けた担保措置について(諮問)がなされております。この附属書Ⅵ、合計6つあるんですが、そのうちⅠからⅤまでは、もう既に締結済みということになりますけども、このⅥについてどういう措置が必要かということについての諮問でございます。
これを行うために資料1-2で付議がされまして、1-3で今回新たにこの自然環境部会の下に、南極地域の環境の保護に関する小委員会の設置についてお諮りをしたいと思っております。この小委員会におきましては、1番から4番までの規定でご決定いただければと思っております。人選等につきましては、決定された後に部会長とご相談の上で、こちら小委員会の委員のほうを人選させていただければと思っております。
ちなみに、この附属書Ⅵでございますが、何かといいますと、環境上の緊急事態から生じる責任ということに対しての内容でございまして、これにつきましては、課長補佐の石川から資料1-4に基づいてご説明をしたいと思います。
○事務局(自然環境計画課) それでは、資料1-4についてご説明いたします。
2ページ目をご覧ください。
まず、南極条約でございますけれども、1959年に日本を含む12か国によって採択をされまして、1961年に発効がなされております。現在の締約国は56、日本は原署名国というふうになっております。
2ポツ目でございますけれども、南極地域の平和的目的の利用ですとか、科学的調査の自由と国際協力の促進、そういったところを内容に掲げておりまして、特に締約国の中でも、南極に基地を設けるなど積極的に科学的調査に活動を実施してきている(29か国)は、南極条約協議国というふうに称されまして、定期的に、基本的に年に1回でございますけれども、南極条約協議国会議が開催されております。
下のほうでございますけれども、その議定書というものが同じく採択、発効されておりまして、日本は1997年に締結をしております。その国内の担保法として、いわゆる南極環境保護法、環境省の所管でございますけれども、が制定をされております。この法において、特定の活動を除いて、南極での全ての活動について環境大臣に確認を受けることなどが義務づけられております。
先ほど則久からも説明がありましたけれども、六つの附属書というものが採択をされておりまして、一番下の附属書Ⅵのみが未発効になっているという状況でございます。
3ページ目をご覧ください。南極条約協議国会議でございます。先ほど申し上げたとおり、1年に1回、協議国が持ち回りで開催をしておりまして、3ポツ目を見ていただきますと、最近の主な論点としては、近年活発になっている観光活動への対応ですとか、気候変動が南極地域に与える影響などが議論をされております。ちょうど今、第46回の協議国会議が、今週からインドで開催をされておりまして、環境省からも担当官が参加をしております。
そして一番下のところですけれども、2026年、2年後ですけれども、第48回の会議は日本で、広島で開催することが決定しているという状況でございます。
4ページ目をご覧ください。今回の小委員会でご審議いただく附属書Ⅵの概要でございますけれども、上から3ポツ目を見ていただきますと、南極条約地域、南緯60度以南の地域でございますけれども、ここにおける環境上の緊急事態に対応するために必要な措置を定めるということでございます。先ほど申し上げたとおり、近年、観光利用が活発になってきておりますので、そういったことに対応するための措置を定めるということでございます。
締結の必要性のところで、観光客の数を整理しておりますけれども、1960年代頃までは大体6,000人から7,000人ぐらいだったんですけれども、だんだん上昇傾向にありまして、コロナ前の2019年辺りは5万人を超えたと。一旦コロナで減少しましたが、また回復の兆しがあるということで、今後も増加傾向にあるだろうということでございます。
そして、日本は、この附属書Ⅵの締結に当たって、南極保護法の改正で国内担保をする方向で検討を進めてきているという状況でございます。
5ページ目をご覧ください。附属書Ⅵの概要の2番目でございますけれども、ポイントのみご説明差し上げます。上から3番目の環境上の緊急事態の範囲の想定ということで、どういったことかというと、例えば観光船からの油、要は観光船が事故を起こしてしまってそこから油が流出するとか、そういったところを基本的には想定をしておりまして、そのために必要な「予防的な取組の方法」ですとか、「緊急時の計画の作成」、そういったものを義務付けるということにしております。
それから、対応措置をとらない南極地域活動の主宰者の責任とありますけれども、主宰者、要は実施主体が緊急事態を引き起こしたんですけれども、その者が対応措置をとれない場合に日本はどうするのか、世界のそのほかの締約国が対応してくれた場合に、その実施主体はどうするべきか、そういった責任的なところをいろいろと措置を講ずるということが定められているという状況でございます。
一番最後の保険については、何かを起こしてしまったときに、保険で何らかのものが担保されるという仕組みが必要じゃないかということが義務づけられると、そういった内容のものでございます。
6ページ目をご覧ください。附属書Ⅵの締結に向けた検討経緯ということで、採択前、採択後も、検討を実施してきたんですけれども、しばらくは日本の法体系になかなか馴染まないのではないかといった声もあって、困難な状況が続いていました。契機となったのが、日本と同じ法体系のドイツが法的な担保をしたということで、そこから少し検討が具体的に進んできたと。2021年度から検討会を再開しまして、3年間の検討を経て、昨年度、国内担保の方向性についてある程度とりまとめを行ったと。検討会のメンバーの先生方のお名前を記載しておりますけれども、これらの先生方にお知恵をいただいて、とりまとめを行ったということでございます。座長は中環審の会長の高村先生でございます。
7ページ目、最後でございます。これはもう参考ですけれども、昨年度の検討会において取りまとめていただいた内容をベースに、南極法の改正も含めて、新たな小委員会において、附属書Ⅵの担保措置をご審議いただきたいというふうに考えております。
私からの説明は以上でございます。
○武内部会長 はい、ありがとうございました。
それでは、このご説明に対して、ご意見、ご質問のある方はお願いしたいと思います。会場にお集まりの委員の皆様におかれましては、名札を立ててご発言いただきたいと思います。また、リモート参加の委員の皆様におかれましては、挙手ボタンにて挙手の表示をお願いしたいと思います。それではいかがでしょうか。
オンラインでご参加の山本委員どうぞ。
○山本委員 はい、ありがとうございます。どのように責任を取るのか、細かいところはこれから詰めると思いますけども、私の質問は1点ありまして、簡単な質問です。
それは、観光とそれ以外の利用の区別ができるのか、峻別できるのかということです。南極調査に関わったことがないので知らないことばかりですけども、例えば海外に行くときには渡航申請し、その時に把握できると思いますが、この件ではどのように区別ができるのか教えてください。よろしくお願いします。
○武内部会長 それでは、事務局からご回答をお願いいたします。
○自然環境計画課課長補佐 はい、お答えいたします。ご質問ありがとうございます。
基本的には、環境省で南極保護法に基づいて南極エリアに立ち入る場合に届出というものを出していただくことになっておりまして、例えばですけれども、令和5年度も449件、観光で南極に入りますという日本人の方からの届出を頂いています。実際は、日本の旅行会社が南極のツアーを企画しているということはなく、基本的には海外のツアー会社が実施するツアーに日本人の方が参加する形態がほとんどなんですけれども、それでも各日本人に対して、南極に入る場合は、その目的も含めて届出をしていただいているということで、環境省として実態は把握できているという状況になります。
○武内部会長 よろしいですか。
○山本委員 はい、ありがとうございます。
○武内部会長 ほかにございますでしょうか。
それでは、質疑応答は以上とさせていただきまして、お諮りをさせていただきたいと思います。
南極地域の環境の保護に関する小委員会(仮称)の設置について、案のとおり、自然環境部会として決定することについてご異議はございませんでしょうか。
(異議なし)
○武内部会長 どうも、ありがとうございました。
それでは、本件については、適当と認めることにいたしたいと思います。
次に進めさせていただきます。議事(2)日高山脈襟裳十勝国立公園(仮称)の指定及び公園計画の決定について及び議事(3)日高山脈襟裳国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止についてでございます。この2つはお互いに関連しておりますので、2つまとめてご審議いただきたいと思います。
また、本議題は、前回の自然環境部会において事務局から中間報告を行っていただき、その際に新たな国立公園の名称の決を採って、日高山脈襟裳十勝国立公園が賛成多数の意見となりました。一方で、十勝を入れた名称とすることの理由の追加的説明を私から事務局に求めておりましたことから、今回は、新たな国立公園の概要と合わせてご説明をしていただきたいと思います。
それでは、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局(国立公園課) はい。国立公園課の藤井です。
議題(2)及び(3)につきまして、資料2-2に沿ってご説明をさせていただきます。
本議題につきましては、前回2月の第48回自然環境部会を実質的な審議の場としてご議論をいただき、本日が正式な諮問の場となっております。前回の部会で指定に至る経緯、自然環境の概要、区域(案)及び公園計画案の詳細についてご説明をさせていただきました。前回提示した指定書及び公園計画書からの大きな変更はございませんので、本公園の区域(案)や計画案については要点を絞った説明にとどめさせていただき、次に、前回部会において委員よりいただいたご意見とそれに対する対応方針、最後に、国立公園指定後の取組の進め方の順でご説明をさせていただきます。
まず、国立公園の位置になります。国立公園指定の対象となる日高山脈は、北海道中央南部に位置しており、南北におよそ140キロ、東西30キロの大起伏山地となっております。稜線部にはカール、ホルン、アレートといった氷食地形と高山植物や氷雪とが織りなす山岳景観が見られます。
スライドの左側の図においては水色、右下の図ではオレンジ色で着色した範囲が今回の指定の対象となっている範囲です。このようにちょうど山脈が中央に走っておりまして、山脈の東側が十勝側、西側が日高側となっております。
関係市町村は、こちらに記載をしておりますとおり、十勝側が6市町村、日高側が7町で、合わせて13市町村にまたがっております。
続きまして、国立公園の指定理由です。本国立公園は、地殻変動を受けて形成された非火山性連峰を基盤に、山地を核として育まれた深く原生的な自然林生態系が広がる風景を風景型式としております。当該風景型式の中でも、日本列島の形成過程を反映した山脈が内陸部から海まで延々と連なる雄大さと、その山脈が原生性を有する自然状態のまま我が国最大規模のまとまりを持って存在する点において我が国を代表するに足りる傑出した自然の風景地であると考えております。
続きまして、公園区域案のご説明になります。スライド中の図で色をつけて表示をしている範囲が国立公園の区域案となります。赤線で表示をしているのが現在の国定公園の区域となっております。今回、区域面積は、陸域が24万5,668ha、海域が6,510haとなります。これは、国定公園の面積からは2.24倍になり、我が国の陸域最大の国立公園が誕生することとなります。
国定公園区域と比較しますと、山麓の良好な森林地域について大幅に拡張をしております。拡張により日高側北部ではリビラ山や於曽牛山などの山系と接続をし、南部地域は国定公園の区域では飛び位置となっており、連続していなかったアポイ岳地域、襟裳岬地域と連続した区域となっており、山脈から海までのつながりを確保しております。
保護規制計画について、日高山脈の主稜線やその周辺地域が指定されていた国定公園の区域は、ほぼ特別保護地区と第一種特別地域となり、特別保護地区の面積は、国定公園の3.78倍となっております。
続きまして、利用面の計画になります。本国立公園の利用に関する基本方針につきまして、山脈の核心部では、主に経験者を想定した当該地域の原生的な自然環境の中での登山体験の機会を提供しつつ、山麓部では、豊かな自然を活かした学びや体験の場をより広い利用者層に向けて提供することにより、来訪者の満足感の向上を目指してまいります。また、本公園は広大な面積を有することから、公園区域の周辺地域や観光施設との連携を通じて、その価値や質の高い自然体験活動を発信し、滞在型の周遊観光につながるよう広域連携を図ります。
利用施設計画につきましては、車道については、既に現在利用がなされており、登山口などの利用地点に到達するための道路など10路線を計画しております。歩道については、18路線中15路線は経験と技術、体力と装備を有する公園利用者を想定し、自然環境の保全と適正利用の観点からの必要最小限の整備を実施する登山道として計画をしております。単独施設は20施設を計画しており、避難小屋6か所や北日高、札内川、アポイ岳、襟裳岬といった山麓部の利用拠点について、各施設を計画しております。今回、計画をしている単独施設については、いずれも既存施設があり、指定後も現在の施設設置者が維持管理を行っていく予定です。
続きまして、2月22日に開催されました前回の第48回自然環境部会において、委員よりいただきましたご意見とその対応方針についてご説明をさせていただきます。
前回、部会でご回答した内容から一部追記をしているものがございます。
まず1点目、総点検事業による候補地はより広いが、今後、拡張を考える余地があるか。こちらの対応としましては、指定後の公園計画の点検の際に引き続き検討をしてまいります。また、平成22年の総点検事業において、日高山脈とあわせて候補地となっていた夕張山地につきましては、資源調査の結果、両地域間の関係性が低いと認められる検討課題があったことから、今回の指定作業の対象区域には含めておりません。現在夕張山地は富良野芦別道立公園に位置していることから、今後の方針については北海道とも調整してまいります。
続きまして、登山利用について、具体的にどのような整備を考えているか。歩道が計画されている場所というのも、どういった考えで今回設定されているのか。こちらにつきましては、今後設置をする総合型協議会の中で登山者団体等のご意見もいただきながら、どのような整備をしていくのかというところを検討してまいります。整備に当たっては、日高山脈の原生性が失われることがないよう配慮する必要があると認識しております。また、計画の考え方につきましては、公園計画作成要領に基づいて、事業執行の見込みがありうる歩道を選定しております。
続きまして、協議会と、そこでの管理運営計画等の議論が非常に重要というご意見をいただいてございました。こちらにつきましては、総合型協議会は、指定後速やかに設置をしたいというふうに考えております。詳細については、「3.国立公園指定後の取組の進め方」において、ご説明させていただきます。
続きまして、国定公園と違うメリットがあるかというご質問につきましては、地域の方には、国立公園にというような思いが非常にあると伺っております。日本の陸域で最大の国立公園が誕生するということは、自然環境保全の面でも非常に大きなことと考えているところです。また、現地に配置する職員がおりますので、地域の期待をしっかり聞きながら対応していきたいと考えております。
続きまして、次のスライドに移りますが、利用者についての考え方というところでご質問いただいておりました。こちらにつきましては、本公園の特性上、山岳部は一般的な利用が想定される場所が少なく保全が中心となりますが、一部の一般的な利用が可能な場所では、公園区域の周辺地域や観光施設とも連携しながら、質の高い自然体験活動を促進し、滞在型の周遊観光に繋げてまいります。
続きまして、アイヌの文化という観点の位置づけ。指定範囲ではないところのアイヌ文化とどういう連携やつながりを考えているかというようなご質問につきましては、こちらについては、公益財団法人のアイヌ民族文化財団等といった方々と情報交換しながら考えていきたいと考えております。幌尻岳や襟裳岬、十勝幌尻岳についてはアイヌの物語・伝承、祈りの場である景勝地であり、国指定名勝の「ピリカノカ」にも指定されている場所です。自然と寄り添って生きてきたアイヌの生活や文化に触れられる場所としての発信を心がけながら、地域と相談しつつ区域外のアイヌ文化施設等との連携も検討していきたいと考えております。
続きまして、南部の空白地域が空白に公園区域外となっている理由はというものに関しましては、環境省としては国立公園としての資質があり、一体的に風景の保護を図ることを考えておりましたが、こちらは土地所有者との調整の結果、現在の案となったものでございます。
最後、公園利用者とヒグマの衝突を少なくするための対策についてもご意見をいただいておりました。こちらは、指定後、登山者団体や警察等と連携・調整を図りながら、事故防止対策を検討してまいりたいと考えております。
続きまして、前回の審議会では、新しい国立公園の名称についてもご議論をいただきました。こちらのスライドは前回の経緯となっておりますが、前回はパブリックコメントにおける名称についてのご意見、日高町村議会議長会からのご要望については口頭でご紹介をした上で、十勝関係6市町村及び日高町村会から要望のあった「日高山脈襟裳十勝国立公園」を名称(案)として提示をしました。
委員からは、この名称(案)のほかに、「日高山脈国立公園」、「日高山脈襟裳岬国立公園」というようなご意見をいただいておりました。
最終的には、お一人ずつ、どの案がよいかというところでご意見をいただきまして、「日高山脈襟裳十勝国立公園」が多数の委員が推した名称案となりました。また、今回、「十勝」を入れることの理由について説明を行うよう、ご意見をいただいておりました。
こちらのスライドが新国立公園の名称を「日高山脈襟裳十勝国立公園」とする理由のご説明となります。少し文字が多くて長くなってしまうのですけれども、読み上げさせていただきます。
新国立公園の面積は、陸域だけでも24万5,668haであり、我が国の陸域最大の国立公園です。新国立公園の区域は日高地方と十勝地方にまたがっており、関係市町村は、日高側が7町、十勝側が6市町村であわせて13市町村となっております。これらの日高地方及び十勝地方双方の関係市町村の協力があり、国定公園の2倍以上の面積となる広大な原生地域を包含する我が国の陸域最大の国立公園の指定を実現しました。国立公園の管理には地域との協働が求められており、この広大な面積の新国立公園の自然環境を将来にわたって保全し、提供していくにあたり、関係市町村との連携は必須であると考えております。
そうした中で、新国立公園の全関係町村長の名前が列記された形で、日高地方及び十勝地方が揃って、「日高山脈襟裳十勝国立公園」の1案で名称に関する提案がありました。また、本名称案は2月の自然環境部会において、多数の委員が推した名称案となっております。
日高山脈という山は主稜線の片側は日高地方であり、もう片側は十勝地方となっておりますが、新国立公園の区域は十勝側の山麓部も含め国定公園の区域から大きく拡大しています。十勝側だけでも、阿蘇くじゅう国立公園全体の面積を超える8万3,715haの広大な地域が指定されることとなっており、名称に十勝を加えるに相当なものと考えられます。さらに、この我が国の陸域最大の国立公園の保全管理は、日高側・十勝側双方の協力によって成り立つものであり、「日高山脈襟裳十勝国立公園」とすることが適当であると考えております。
このため、環境省としましては、この度の新国立公園の指定にあたり、日高側・十勝側双方の地域住民にとって、新国立公園の素晴らしい風景がより身近になり、その価値を改めて認識する機会となり、かけがえのない財産を次世代へ引き継いでいく意識が一層高まることを期待し、当該名称案とするものです。
続きまして、ご説明事項の3番目、国立公園指定後の取組の進め方につきましてご説明をさせていただきます。
本公園を魅力ある国立公園として磨き上げていく上で様々な課題があると考えており、これらの課題に対応していくためには、関係者の連携が不可欠で、そのための体制整備というのが必要と考えております。このため、国立公園の指定後、速やかに総合型協議会の設置を予定しております。現在、北海道及び関係13市町村で構成する関係自治体連絡会議を設置しており、令和3年2月の設立以降、これまで6回の会議を開催してまいりました。この中で、国立公園の指定や指定後の管理のあり方について意見交換等を行ってまいりました。
また、本公園が持つ価値や魅力を抽出するとともに、現状や課題を整理した上で、課題への対応方針や目指すべき方向性を示した国立公園ビジョンの骨子案を作成しています。国立公園指定後は、この関係自治体連絡会議を発展的解消する形で、総合型協議会を設置することとしており、指定後、速やかに設置できるよう、現在準備を進めているところです。
この総合型協議会は、これまでの関係自治体のほか、新たに有識者、国の出先機関、関係団体、こちらには登山者団体、自然保護団体、観光関係団体などを想定しておりますが、これらの皆様にも参画いただく予定です。
また、この総合型協議会の中では、関係自治体連絡会議の中で検討を進めてきた国立公園ビジョンの骨子案を基に、国立公園ビジョンを策定するとともに、ビジョンの実現に向けた管理運営方針及び行動計画を策定してまいります。これらの計画等に基づき、総合型協議会の下で構成員が連携した取組を進めていくこととしております。
続きまして、この総合型協議会の中では、本公園が抱えている様々な課題について協議をしていく予定です。
本公園の特徴というのは、原生的な自然環境とその雰囲気を楽しみながらできる登山が最大の魅力で、それが故に難易度も高く、誰もが登れるわけではないことから、登山者にとってあこがれや目標の対象となっており、公園管理に当たっては、この特徴に留意した管理が必要であると考えております。
また、海から山岳につながる南北140キロに及ぶ長大な山岳景観が本公園の魅力ですが、この景観は周辺の平野部からも楽しむことができるため、平野部の公園内外をセットで利用の在り方を含めた公園管理を考えていく必要があると考えております。
具体的な課題としましては、スライドの図の左上で記載をしております。保全面では、本公園が有する原生的な自然環境の維持やアポイ岳の高山植物群落などの保全に関する課題。隣に行きまして、利用面では、ヒグマや安易な登山による遭難事故の予防などの安全対策をどのように図っていくか。自然環境に負荷を与えない登山を楽しむためのルールやマナーづくりといった登山利用の適正化に関する課題。さらに、図の左下になりますが、本公園の魅力ある資源を持続可能な形で地域の活性化にどう生かしていくか。そして、その隣の持続という観点で、これらの課題に対応していくために、公園内の関係者の連携強化や公園外の地域や関係者とどのように連携をしていくのかといった様々な課題があると考えております。総合型協議会では、様々な関係者と協議をしながら、魅力ある国立公園づくりを進めてまいります。
続きまして、議題(3)日高山脈国定公園の指定の解除及び公園計画の廃止についてです。
こちらはスライド1枚になりますが、この度の新国立公園の指定に伴い、日高山脈襟裳国定公園については、その全部について国定公園の指定を解除し、公園計画を廃止いたします。
議題(2)、(3)の説明は以上となります。
○武内部会長 はい、どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの議事(2)及び議事(3)の説明について、ご質問、ご意見のある方はお願いをしたいと思います。会場にお集まりの皆様におかれましては、名札を立てていただき、またリモート参加の委員の皆様におかれましては、挙手ボタンで挙手の表示をお願いいたします。いかがでしょうか。
広田委員、どうぞ。
○広田委員 はい。私、前回、ちょっと部会に出席していませんで、たしか投票には参加していなかったかなと思うんですけれども、はい。なので、この名称についてちょっと自分の意見を、多分言える場はここだけかなと思いますので、簡単に申し上げてよろしいでしょうかね。
○武内部会長 はい、どうぞ。
○広田委員 はい。ただいま説明された十勝を入れる理由というのは、従来のこういう複数地域を併記して名称にするという、そういう名前のつけ方からすると新しい観点かなというふうに思います。従来の名称設定の論理からするとちょっと違和感がある理屈かなという気はします。
と申しますのも、北海道でも支笏洞爺とか、阿寒摩周だとか、利尻礼文サロベツとか、あと、私がいる岩手でも十和田八幡平とか、こういう複数の地域を併記した公園名ってたくさんあるんですけれども、共通するのは、それぞれの地域が固有の自然とか風景美、国立公園の用語を使えば、その風景型式というのを持っているわけですよね。それが対等というか、広く国民にもそう認知されているというのがあって、そういう複数地域名を併記するというのが一般的なこれまでの名称の論理だったかなと思うんですけど、今回の日高山脈に十勝を入れるというのは、そういう論理からするとちょっとずれるのかなと。新しい視点というのはそういう意味なんですけども、確かに十勝側は面積は増えるんですが、固有の自然とか風景美とか、いわゆる風景型式というわけではありませんよね。あくまでも日高山脈という従来の非常に原生的な自然が残っている固有の風景型式の一部として面積が広がっているわけですから、そういう意味では、今回、行政区域として確かに十勝側の市町村が入っているというのは、これは意味のあることだと思うんですけれども、国立公園の名称の設定という意味ではちょっと違うのかなというふうに個人的には思います。
既存の国立公園でも、実は固有の自然等を持っている地域がありながら、名前に入ってないというところも結構あります。例えば支笏洞爺は、羊蹄山が公園の区域内に入っていますけど、で、支笏とか洞爺とは違った固有の風景型式を持っていると思うんですけど、名称には入っていませんよね。それから、私がいる十和田八幡平でも、八甲田とか岩手山とか秋田駒ヶ岳というのは、もうそれぞれ固有の独特の風景型式を持っているわけですけど、名称には反映されていないと。さらに言うと、磐梯朝日という福島と山形にまたがる国立公園があるんですけれども、その真ん中に飯豊連峰という百名山にも指定されていて非常に魅力的な山塊があるんですけど、普通であれば、その飯豊という名称が入って全然不思議はないところですけれども、国立公園名には入っていないと。
こういう地域を差し置いて、今回、十勝という名称を入れるというのは、やはり違和感は拭えないと思います。繰り返しになりますが、地域振興の面から十勝側の市町村のエリアが増えるから十勝という名前をつけるという、これは新しい論理だと思うんですけども、それはそれであり得るとは思いますけれども、従来の公園名称の名前のつけ方からすると違和感があります。
例えば、ちょっと例が極端かもしれませんけど、釧路湿原の国立公園、面積的に言うと鶴居村とか標茶町がかなり占めていますけども、じゃあ、釧路湿原鶴居国立公園にするかというと、多くの、多分地元の方も含めて違和感があると思うんですよね。それは、釧路湿原という固有の価値を持った、もう圧倒的にすばらしい自然があって、鶴居村はその一部に入っているんだという、そういう位置づけ、理解があるからだと思って。もちろん釧路湿原に観光客が来れば、鶴居村とか標茶町に来るわけでして、釧路湿原の保全とか利活用のところで連携してやっておられるわけですから。そういうことを考えると、今回、十勝という名前をつけなくても、連携等はできるはずでして、私の個人のこの委員会の委員として意見を聞かれれば、私はもう日高山脈国立公園が一番シンプルで、要するに、固有の自然、風景美、風景型式がもうあるし、多くの方がそれをそのように把握されているわけですから、それが一番自然だと考えます。
もちろんこの部会で多数決で十勝を加える案が承認されれば、それはそれで認めるわけですけれども、私の意見を聞かれれば、以上のような理屈で、やっぱり十勝が入らないほうが自然なのかなというふうに思います。
ちょっと長くなりましたけど以上です。
○武内部会長 それでは、山本委員、お願いします。
○山本委員 はい、ありがとうございます。山本です。
私は前回、意見を申し上げましたので、議事録を見ていただければと思いますけども、今回、名称について部会の多数決の結果と地域の住民の方々の意向が、同じ方向にありました。前回はたまたま多数決になりましたけども、今後のことを考えると、委員会は熟議型で議論をするのか、委員会でどのように議論をしていくのかを考えておく必要があります。また、住民の意向と違う結果になりそうになったら、どのように議論を展開するのか、そのようなことを考えておいたほうが良いと思います。
前回の会議でも、どなたか、触れられていたように思いますが、国立公園の名称は、人が最初にその公園をイメージする大事な入り口でもありますし、長い名称はどうなのか、あるいはたくさん地名が並ぶと理解しづらいという話もあります。国立公園の名称に関する今までの経験がどのように生かせるのか、手順について考えておく必要があると思います。
私の話は意見とさせていただきます。ありがとうございました。
○武内部会長 はい、ありがとうございました。
藤田委員、お願いします。
○藤田委員 はい、ありがとうございます。私も今お二人から出た意見と少し似ているんですけれども、環境省として国立公園の名称のルールはどうなっているのかなということを考えておかないと、今後も同じようなケースはあると思っています。簡単に言うと公平性と統一感ですよね。
例えば、中部山岳国立公園だとか、南アルプス国立公園だとか、瀬戸内海国立公園のように、基本的に国立公園の名称というのは、私は、地理的なものを名称にするのであるのかなというふうに、まずは、一義的にはそうなのかなというふうに理解していました。ただ、既にいろいろ国立公園になっているところをいろいろ見ますと、先ほどもお話が出ていた磐梯朝日であったりとか、利尻礼文サロベツみたいな、幾つかの特徴的な固有の型式を持つ地形のところをまとめて名称にするというケースもありますよね。何か新幹線の駅をつくるときのこことここの市町村をがっちゃんこみたいなのにすごくの似ているような気がしたんですけども、こういうようなケースによって名称のつけ方を変えていらっしゃるのか、あるいは統一感があってつけているのか。今後、例えば地元からいろいろ要望が出てきたときに、三つや四つの地理的な場所の名前をくっつけるということになるのか、そこの環境省としてのネーミングのルールというのは、それこそ1930年代と今では違うのか、今はもっと地域の合意の下で決めるというふうに変えていらっしゃるのかというところをはっきりしておかないと、今後、国立公園を新たにつくるときに同じような問題が起きるというふうに思っています。
私としては、前回、環境省に一任しますというふうに言ったんですけども、その場合の一任しますというのは、環境省のルールはどうなんですかと。それに、そのルールが厳然たるルールがあるのであれば、それに従いますというつもりで一任しますと言ったんであって、投票になるというふうにはちょっと思っていなかったんですけれども、今のようなちょっと質問を踏まえて、環境省としてネーミングについてどういうスタンスを持っていらっしゃるのかということをお聞きできればと思っています。よろしくお願いします。
○武内部会長 ありがとうございました。
愛甲委員、お願いします。
○愛甲委員 私も今まで皆さんがご発言された内容とほぼ同じようなことになりますが、今後も同じようなケースがあった場合に、広田先生は新たな新しい観点というふうにおっしゃいましたけど、こういう考え方で名前をつけるというようなことが今後もあり得るのかどうか。その辺を含めてどういう考え方でいらっしゃるかというのをちょっと伺いたいというのが一つです。
それからもう一つは、名称もそうですが、自然保護団体等で反対されている理由などを伺いますと、観光化されることに対する懸念というのを非常に強く訴えていらっしゃるというのがこれまでの趣旨だったと思います。
そこを考えると、総合型協議会の中に登山者団体や自然保護団体を入れるというようなことも計画されていますので、ビジョンをつくって、管理運営計画をつくるときに、ぜひその辺の懸念が払拭できるような議論をしていただきたいというお願いと、その2点でした。
以上です。
○武内部会長 ありがとうございます。中村委員、どうぞ。
○中村委員 はい、ありがとうございます。私も前回、日高山脈国立公園で行くのがよいと述べた一人なんですが、今、広田さんの話を聞いていて、やっぱり私も広田さんとほぼ同じ意見だなと思いました。
ただ、今回、もう既に決が採られていて、皆さん、やっぱり十勝も含めて入れるべきだという意見だったと思います。今後に向けて考えると、せっかくそういった形で十勝を入れたり、襟裳も入れて、地域全体で頑張っていこうという方向性が決まったので、愛甲さんが言われたような協議会をどうやってつくっていくかとか、あとはやっぱり日高山脈の魅力というのは、それこそ平野部から、十勝から見た残雪の残った日高山脈だと思います。もう本当に見事な景観だと思いますし、そういった景観を楽しみたい人たちも多分たくさんおられるので、そうした利用も掘り起こしていくことが重要だと思います。
中札内の町長さんがおられますけれども、私も何度か中札内に赴いて、あそこは札内川という見事な清流が流れていて、そこには上高地と北海道に隔離分布するケショウヤナギもあるということで、公園へアプローチする段階でも多くの自然が残されているので、それを活かしていただきたいと思います。それから平取町長さんがおられるように、アイヌ文化が見事に沙流川を含めてあると思います。
そういった日高側、十勝側の自治体とのつながりを含めて、この協議会が形成されて、よりよいこの国立公園ができればと思いました。
はい、以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。小泉委員、どうぞ。
○小泉委員 はい、ありがとうございます。私も前回の部会を欠席いたしましたので、この名称の議論に関してちょっと一言申し上げます。
私は、国立公園の名称は、厳然たるルールに基づいて厳格に定められてきたというふうには理解しておりませんでした。したがいまして、今回、十勝の名称が入ったというのは、これからの新しい考え方が盛り込まれたんだというふうに理解しておりました。
違和感があるということは理解できますが、この違和感というのを今後は国立公園の管理の中でポジティブに意識してつくっていっていただくということが、これからの国立公園の管理、名称の考え方でもあるのではないかというふうに考えております。
名称に関しては以上ですが、実は、指定後の取組に関しても一つ申し上げたいことがあったんですけど、よろしいですか。
○武内部会長 はい、どうぞ。
○小泉委員 はい。スライドの12ページですね。国立公園指定後に対応すべき課題の例として挙がっておりますが、今回の国立公園、規模が非常に大きいということ、それから高山域を含めて非常にアプローチが困難であること、そしてヒグマへの対応が必要というようなことがありまして、現地のスタッフに求められるスキルというのがかなり高くなってしまうのではないかというふうに考えております。
ということで、この部分に関して、総合型協議会が定める指針を実際に実行する実行部隊といいますか、そういった組織を地元の要件を満たす人材を発掘して、組織化して、実働部隊として協議会の方向性を実現化させていくというようなことがあっていいのではないかというふうに考えております。その部分がちょっと抜けているな。
形態がちょっと違うんですけれども、具体的な事例としては、世界遺産における知床財団とか、そういったような助言、それから評価、そういったものも含めてできる実働部隊の実現というのをご検討いただきたいなというふうに考えました。
以上です。
○武内部会長 はい、ありがとうございます。
ほかによろしいですか。
、かなり類似のご意見をいただいたように思いますし、前回に皆さんの決を採ったということも踏まえて今後のことを中心にご意見をいただいたと思いますけれども、事務局のほうからいかがでしょうか。
○国立公園課長 はい。国立公園課長の番匠でございます。ご意見をいただきましてありがとうございます。特に名称に関するご意見を多くの先生からいただきました。
前回の議論のときにもお話をさせていただいた部分がありますけれども、これまでの国立公園の名称の決め方、これに何か厳格なルールがあるかというと、そういう形にはなっていないというのが現状となっております。
国立公園、第二次世界大戦の前に指定されたものから最近指定されたものまで様々な時代に指定をされておりまして、地元の意見例えば今回で言う市町村長の意見みたいなものをどれくらい聞くかというのも実は時代によって、社会状況の違いによって変わっておるというのが実態でございます。そうした中でいろいろとこの名称についてご意見をいただいておりまして、我々も前回の審議会でも幾つか名称の案、意見をいただきましたけれども、どちらの案もどの案が駄目とかそういうようなことではないのだろうと思っています。それぞれにそういう名称にすべきという理由があって、その中で我々としては審議会でも一人一人に意見を言っていただくような形で、日高山脈襟裳十勝という名前が多数となったというようなことも受け止めて、今回の理由を作成させていただいたというところになっております。
今後こういった公園指定に当たって名称の話、これは地域によって本当に様々だと思っております。最近の公園の指定においてもほぼ異論なくというか、迷いなく決まった事例というのもございますし、地域の中でも地域の首長さんごとに意見が違って、なかなか最後の最後まで皆さん一致した結論というのが得られずに、最後、部会に決めていただいたというようなこともあったり、いろんなパターンがありますので、一概にこういう形がいいと今私から言えることはないかなと思っておりますけれども、そのプロセスについてはご意見を踏まえつつ、時々に部会長、その他委員の皆さんと相談して、どういうプロセスでというようなことはぜひ取り入れていきたいと考えております。
あと、今後の話というのも様々いただきました。特に協議会のお話をいただいたと思っておりますけれども、我々として、先ほど説明したように速やかに総合型の協議会を立ち上げたいと考えております。ちょっといろいろあったというような状況もあって、地域のいわゆる民間の団体の方との事前の協議会に向けたご相談というのがなかなか現段階でできていない状況もありますので、今いつ立ち上げるということがなかなか明確には言えないところですけれども、速やかに立ち上げられるように我々としては努力をしたいと考えております。
名前のことについては以上のところかなと思っておりますが、何かご説明漏れ等がありましたらご指摘をいただければと考えております。よろしくお願いします。
○武内部会長 それじゃあ、追加で何かご意見、今のご回答を踏まえてございますか。
私としては、名称についてはもう前回、決を採って決めたということでもあり、今回、皆さんにご了承いただいた上で、今後の取組については今回の様々なご意見を十分反映し、同時に、これからの国立公園の名称の在り方についてももう一度環境省のほうで整理していただくということでお認めいただくということができないかなということでお諮りしたいと思います。
それでは、新たな国立公園の指定に関して、諮問に添付された指定書、計画書及び変更書のとおりとすることにご異議はございませんでしょうか。
(異議なし)
○武内部会長 それでは、異議なしということでございますので、本件については妥当と認めることとさせていただきます。
なお、本日は、平取町の遠藤町長、芽室町の手島町長、中札内村の森田村長が傍聴にお越しいただいております。それぞれ順に一言ずつご発言いただければと思います。遠藤町長からお願いいたします。
○平取町長 発言の機会をいただき、ありがとうございます。私から、一言、国立公園化に期待するというところで発言させていただきます。
中村先生からもお話がございましたけれども、日高山脈とその周辺は北海道の中でもアイヌ文化が色濃く残る地域の一つでもありまして、アイヌ語地名や伝説、慣習などがまだ多く残っている地域でもございます。国立公園化という地域のブランドイメージが高まるということで、こういったアイヌ文化をさらに多くの方々に知っていただく機会が増え、理解につながることを期待しているところでございます。
簡単ですけども、以上です。
○武内部会長 ありがとうございます。
それでは、芽室町の手島町長、お願いします。
○芽室町長 発言の機会をいただきましてありがとうございます。
私からは名称に関してはあまりコメントするつもりは正直なかったわけですが、要望させていただいた首長の一人として少し心苦しくも思っているところでございますが、私は、国立公園化を見据えて、十勝で日高山脈観光連携協議会という6自治体の協議会をつくっておりまして、横にいらっしゃる森田村長も入っておりますけれども、今後、日高側ともさらなる連携を模索しながら、ナショナルパークとしての資源というものをしっかり大切にして、もちろん自然保護の観点も持ちつつ、例えば区域外であっても中村先生におっしゃっていただいた景観ですとか食、そういったものも生かして魅力発信ができるよう、また、地域の振興や活性化にも向けた取組を、しっかり加速化していきたいと思います。関係団体と連携しながらしっかりやらせていただきますので、その点のご理解もよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○武内部会長 ありがとうございました。
それでは、中札内村の森田村長、よろしくお願いします。
○中札内村長 中札内村村長の森田でございます。
日高山脈が国立公園へ指定の流れとなったということで非常にうれしく思っております。先ほど中村委員からもお話がありましたとおり、日高山脈の景観、豊かで穏やかな暮らしの象徴と言えるこの日高山脈がこのような流れになったということで、我々としてはまちづくり、地域活性化に向けた大きな追い風をいただいたというふうに思っております。
ただ、先ほど小泉委員からもお話がありましたとおり、これは本当に、スタートラインに立ったにすぎないと思っております。これから地域住民に、いかにこの誇るべき日高山脈のすばらしさを理解していただくか、特に子どもたちに、これから守るべき自然、自分たちの村の地域の誇りを感じていただけるような取組に全力で邁進してまいりたいと思っておりますので、今後ともご指導いただきますようよろしくお願いいたします。
○武内部会長 どうもありがとうございました。お三人の町長、村長の皆様、大変ありがとうございました。こちらでご退席をお願いしたいと思います。
(平取町長、芽室町長、中札内村長退席)
○武内部会長 それでは、次の諮問事項である議事4、上信越高原国立公園苗場地域の公園計画の変更(再検討)に移らせていただきます。事務局より説明をお願いいたします。
○事務局(国立公園課) それでは、議題4、上信越高原国立公園苗場地域の公園計画の変更(再検討)に移ります。こちらについては資料4-2が説明資料となっておりますので、こちらを使って説明させていただきます。
本日のご説明の流れです。上信越高原国立公園苗場地域の概要について、今回の変更内容、パブリックコメントへの対応についてという順番でご説明をさせていただきます。
まず、地域の概要についてです。
上信越高原国立公園は、群馬県、新潟県、長野県にまたがる位置にあり、苗場地域、谷川地域、志賀高原地域、須坂・高山地域、草津・万座・浅間地域の5地域に分かれております。本公園は、大岸壁がそびえる谷川岳や火山である浅間山、草津白根山などの日本百名山にも数えられる名峰を多く有しており、変化に富んだ山岳景観が形成されております。また、それら山々の山腹から山麓にかけては冷涼な高原が広がっており、湖沼や湿原なども多く見られます。さらに、登山やスキーのフィールド、夏の保養地、温泉地など、様々な形で自然を楽しむことができるところが魅力となっております。
今回、公園計画の変更の対象となる苗場地域は本公園の北側に位置しており、巨大な溶岩台地である苗場山一帯と、氷食による断崖・岩壁や蛇紋岩植生が見られる谷川連峰などの非火山性構造山地を含んだ場所となっております。
続いて、苗場地域の公園計画の変更の経緯についてです。
昭和24年に上信越高原国立公園が指定され、昭和27年に苗場地域における特別地域の指定及び利用施設計画の決定が行われました。さらに、昭和44年には特別保護地区の指定がされ、今回の変更までの間には、公園計画の一部変更を行っていたものの全般的な見直しは実施しておりませんでした。今回、公園の指定以来、初めての全般的な見直し、つまり再検討を行うものになります。
なお、本公園の再検討は、平成19年から各地域で順次対応しており、苗場地域の見直しで、本公園の再検討は完了いたします。
スライド5ページ目をご覧ください。こちらでは再検討についてご説明いたします。
再検討とは、昭和48年11月以前に指定された公園について、公園指定後の自然的・社会的条件の変化に対応するために行う当初の公園計画の見直し作業のことです。再検討は昭和48年に発出した自然環境局長通知に基づいて行うこととされており、今回も通知に定められた基本方針に基づき区域線の変更は行わず、現行の地種区分から保護強化と良質な利用を促進するための見直しを行っております。
また、苗場地域においては、現行では第1種から第3種まで分けられている特別地域が分けられていない状態であったため、この問題点の解消も併せて行っております。
続きまして、苗場地域の自然環境等の概要について、ご説明いたします。
苗場地域の中央部には、信濃川支流である清津川が南北に流れており、その西側には苗場山などの複数の山が連なっており、東側には谷川連峰が位置しております。西側の苗場山は溶岩台地で高層湿原が広がっており、ミヤマホタルイ等の湿原植物が分布し、さらに佐武流山にかけては典型的な日本海側のブナ林が成立しております。一方、東側の非火山性構造山地である谷川連峰では雪食凹地などの積雪により地形が形成されているほか、ホソバヒナウスユキソウ等の蛇紋岩植生が見られる点が特徴的です。
苗場地域の利用形態は、上質な雪質を利用したスキーや多くの登山利用であり、全国の公園の中でも利用に重きが置かれた公園管理がされております。また、本地域の中央部を通る三国街道沿いには、江戸時代に宿場町としてにぎわった面影が残り、自然の中にある赤湯温泉や日本三大渓谷の一つである清津峡の渓谷美も特徴的な文化景観です。
ここからは今回の変更内容についてご説明いたします。まずは、保護規制計画の変更についてです。
今回の見直しでは大幅な保護強化を実施しています。左側が現行の保護規制計画の図となっておりまして、右の図が変更案となっておりますが、このうち現況の水色の部分の普通地域8,618haを、ピンク、紫、緑色の特別地域に大きく変更しております。また、地種区分が未定だった特別地域については第1種特別地域から第3種特別地域まで振り分け、特に第1種特別地域においては6,040haの増加となっております。
スライド10ページ目をご覧ください。こちらは本地域の地種区分ごとの特徴となっております。本地域においては、苗場山の溶岩台地状の広大な高層湿原や谷川連峰周辺の蛇紋岩植生が見られる地域については特別保護地区としております。また、第1種特別地域には、苗場山周辺のブナ帯からダケカンバ群落などの亜高山帯までの原生的な状態を保持する地域や、谷川連峰の周囲に広がる風衝草原、清津峡などのような渓谷などを指定しております。さらに、ブナの天然林などの良好な風致を示し、利用上重要な土地については第2種特別地域とし、人工林や二次林を主体として土地利用と調整をしながら、風致の維持を図る必要のある地域については第3種特別地域としております。
スライド11ページ目からは、各地点の具体的な保護規制計画の内容の変更となります。
まず、佐武流山とその周辺については、普通地域及び特別地域未定から第1種特別地域及び第2種特別地域に大幅な保護強化を行っております。本地点では、赤倉山から佐武流山、白砂山にかけての稜線の西側にシラビソートウヒ群落があり、東側にはオオシラビソ群落が形成され、さらに苗場山山麓など佐武流山の周辺にはササの自然草原及び林齢100年を超えるブナなどの広葉樹林が広がっております。
続いて、スライド12ページ目をご覧ください。
こちらでは、苗場山の北部区域であり、特に雁ヶ峰周辺のブナやダケカンバ、オオシラビソの群落や多雪の影響で成立したササ群落、また、日蔭山へ至る尾根沿いの風衝草原、さらに高石尾根北西の亜高山帯広葉樹林、亜高山帯針葉樹林を、普通地域及び特別地域未定から第1種特別地域へ指定しております。
スライド13ページ目に移ります。
谷川連峰の周囲においては、主稜線の西側で平標山から三国山にかけての風衝草原と、三国山から三国峠にかけてゼンテイカやシラネアオイなどの高山植物が広がる地域を、普通地域及び特別地域未定から第1種特別地域と指定しております。
スライド14については細かい地点のご紹介となりますが、ひん岩の柱状節理が分布し、渓谷美を楽しむための眺望対象となっている清津川の右岸や、奇石が分布し亜高山帯針広交交林が成立する大岩山一帯、また、非対称山稜が見られ、ササ自然草原や自然低木群落が広がる武能岳一帯も特別地域から第1種特別地域へ保護強化を行いました。
続いて、スライド15は第2種特別地域への変更となります。
清津川左岸・谷川連峰西麓・七ツ小屋山の区域については、ひん岩の柱状節理や、ブナやミズナラなどから成る落葉広葉樹林、ササの自然草原などの景観を保全するとともに、公園利用者の適正な利用を促す必要があることから、普通地域及び特別地域未定から第2種特別地域へ指定いたします。
続いて、スライド16は第3種特別地域への変更になります。
かぐら・日白山・松手山の区域については、落葉広葉樹林や、一部にシャクナゲやナナカマドといった低木林やササの自然植生が広がっているものの、人工林や二次林を主体としており、土地の利用と調整しながら風致の維持を図る必要がある地域であることから、普通地域及び特別地域未定から第3種特別地域指定をしております。
スライド17に移ります。
これまでの説明のとおり、今回の変更では8,618haを普通地域から特別地域に保護強化を行いました。一方で、規制の適正化のために、65haを特別地域未定から普通地域に変更しております。
公園区域外や普通地域に隣接し、市街地化が顕著な地域や公園利用者が少ない地域、また、人工林や普通共用林野として地域住民の利用がある地域である小出・芝原峠・苗場赤湯林道については、公園としての資質を見直し、特別地域未定から普通地域へ変更をしております。
ここからは利用施設計画の変更に移ります。
今回の変更では、現在の施設整備状況、利用状況、施設の必要性や効果などを考慮し、変更を行っております。この図の中で、追加は赤、削除は青、変更は緑、そして既存で公園計画に位置づけられているものについては黒で示しております。
苗場地域については谷川岳や苗場山といった百名山もあり、夏場は登山利用が多く、また、上質な雪質から、かぐらスキー場をはじめとして本地域の東側を南北に通る三国街道周辺には大規模なスノーリゾートが設置されている利用状況となっております。
まず、単独施設については、既存の4施設はそのままとし新たに7施設を追加、9施設を削除、1施設を変更しております。追加した施設については、スキー場の夏場の利用活性化や登山利用に必要な既存で整備されている宿舎や避難小屋といった施設を計画に落としたものです。また、削除した施設は現在も施設がなく、公園利用上の必要性に乏しいため、今後も整備が見込まれないものを計画から除いております。変更の施設については、スキー場の事業名称の変更を行ったものです。
続いて、道路の変更になります。こちらの図では、車道を赤、歩道を緑とし、さらに追加と変更は実線、削除は点線で示しております。
まず、車道は1路線のみの位置づけであり、これは三国街道である既存の国道17号線を公園計画に位置づけるものとなっておりますが、こちらは同じ上信越高原国立公園の隣の谷川地域の公園計画と、もともと同じ計画に位置づけられていたものを分割して整理するものとなっております。
また、歩道については、既存で計画のある1路線に加えて8路線を追加、4路線を削除、8路線を変更しております。追加路線は、これまで登山利用がある路線や、地域で取組が行われているロングトレイルの利用促進を図るために、既に道があるものを計画に落とすものとなります。一方で、計画書上は記載があるものの、現地での実態が不明となっている路線は削除をしております。
また、変更した路線については、公園計画上で路線位置の重複があるものを整理したり、また、路線上で一部利用実態がない区間を削除したものとなっております。
スライド20では、利用施設計画の変更例として2つご紹介いたします。
まず、地図の中の真ん中辺りのかぐらスキー場については、冬場だけでなく、スキー場内のグリーンシーズンの利用活性化を目的として、既存のスキー場事業に加えて園地や宿舎、野営場、索道運送施設の追加を行っております。
また、地図の中の青色の線で示されているぐんま県境稜線トレイルは、オレンジ色の線で示されているスノーカントリートレイルといった地域の取組によって設置されたロングトレイルであったり登山道利用の高まりを踏まえて、実態に合った歩道や施設の計画として、謙信ゆかりの道線といった歩道計画の追加や、毛渡乗越宿舎を削除して避難小屋に振り替えるといった単独施設の変更を行っております。
最後に、パブリックコメントへの対応となりますが、今年の2月から3月にかけて1か月間実施をしておりまして1件のご意見をいただきましたが、本公園の公園計画に直接影響する内容ではなかったことから反映はしておりません。意見内容は、資料4参考資料をご参照ください。
以上で議事4のご説明となります。
○武内部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局の説明につきまして、ご質問、ご意見のある方はお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
勢一委員、どうぞ。
○勢一委員 ありがとうございます。勢一です。
ご説明、ありがとうございました。私は制度のほうの専門で、公園計画とその変更についてあまり仕組みを承知していませんので、そもそもの仕組みについて教えていただきたいと思って質問させていただきます。
今回、公園計画の変更ということで、ご提案なんですけれども、この公園計画の変更というのはどのような場合に行われる手続になるのでしょうか。公園計画の変更が検討される契機になるような事実とか、そのときの時期とか、恐らく何らかルールがあるのだと思います。先ほどの国立公園の名称でもやはりルールと手続が明確に分かるというのが重要だと思いますので、少しその辺りを教えていただきたいと思います。
今回の計画に関しては、これは1969年の特別保護地区の指定以降、一部変更などは行われていたけれども全般的な見直しはされていなくて、再検討の手続という中で今回の計画変更の手続となっているんだと思います。かなり長い期間、一部の変更が行われてきたということなんですけれども、それをこれまで経てきて、なぜ今、公園計画の変更の手続になっているのかというところです。長らく地種区分も未了な状態でずっと続いてきたというような中でようやくなのかなというふうに見えてしまいまして、恐らく何らかのルールに基づいてご準備されていたり、そのタイミングで手続ということになったのかなと思いますけれども、私自身が手続として理解できていなくて、教えていただきたいと思います。
特に最近の例ですと、私は報道でしか接していませんが、知床半島に7,000m2の太陽光パネル設置の事業が行われるというような話があります。かなり大規模な開発で、こういうのは公園計画の変更なのではないのかなと素朴に思ったりしたものですから、公園計画の変更の手続について少しご教示をいただければと思います。
以上です。
○武内部会長 いかがでしょうか。
○国立公園課長 ご意見、ありがとうございます。
今回、で諮問をさせていただいている案件については、公園計画の変更の再検討という手続をお願いしています。これが昭和48年以降、順次再検討というのをやってきて、この上信越高原、非常に時間がかかってしまっていますが、まずこの再検討をやった後に、その後、5年ごとに公園計画の点検という作業を行うというような仕組みになっています。
この上信越高原をはじめとして、戦前あるいは戦後すぐに指定をされた国立公園については、当時の地形図の精度の問題等もありまして、公園区域線が今の地形と合っていないようなところがたくさん見られるというような状況もありまして、昭和48年以降、新しいしっかりした公園計画をつくりましょうということでこの再検討を進めてきております。
この上信越高原国立公園で、こんなに時間がかかったのは、当然、我々としても何回も再検討を早く進めたいということでやっておりましたけれども、再検討するからには規制の強化をしっかりしていきたいということで進めておりましたので、何度かそれがなかなか関係者に認められずに断念をしたような経緯があります。そうした中で、この上信越高原は広い国立公園ですので、この公園地域を5つの場所に分けて順次解決していこうということで、今回の苗場地域が5つ目の最後の地域になっております。これでいよいよ上信越高原国立公園の再検討が全域で終わって、ある程度の規制の強化も図ることができたということで、今後の公園計画としては定期的な点検作業というのを行っていきたいと考えております。
今回も、8,000ha以上という大きな面積を特別地域にすることができ、何とか戦前、戦後すぐに指定された国立公園の規制の強化というのを図ることができました。こうしたことも、引き続き取り組んでいきたいと考えております。
ありがとうございます。
○武内部会長 よろしいでしょうか。
○勢一委員 はい。ご説明、ありがとうございました。恐らくいろいろな事情で時間がかかったというところ、理解はいたしますけれども、先ほどのご説明の中でも、特別地域の未定のところが、結局、市街化が顕著に進んでしまって普通地域化せざるを得なかったような部分もあったかと思います。やはりこれからの時代はスピード感も大事だと思いますから、ぜひそうした点も考慮して引き続きご尽力いただければと思います。
以上です。
○国立公園課長 ありがとうございました。
○武内部会長 ありがとうございます。
ほかにございますか。よろしいでしょうか。
それでは、議事4について、諮問に添付された変更書のとおりとすることにご異議はございませんでしょうか。
(異議なし)
○武内部会長 よろしいですね。それでは、本件については適当と認めることといたしたいと思います。
それでは、次の議事に移りたいと思います。今回、3つの報告事項がございますので、それぞれ事務局から続けて説明し、それらの報告をまとめて質疑応答とさせていただきたいと思います。ネイチャーポジティブ経済移行戦略の策定、クマ類による被害防止に向けた対策について、国立公園における滞在体験の魅力向上事業の順番で、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局(生物多様性主流化室) ありがとうございます。資料5-1に基づいて、ネイチャーポジティブ経済移行戦略についてご説明をさせていただきます。生物多様性主流化室長の浜島でございます。よろしくお願いいたします。
まず、1枚目で本戦略の位置づけをご説明しております。生物多様性条約の下、2022年に世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されたわけでございますが、その中で2030年ミッションとしていわゆるネイチャーポジティブが位置づけられているということでございます。そして、この本目標の実施のための生物多様性国家戦略、こちらの5つの柱のうちの3つ目、ネイチャーポジティブ経済の実現というところを企業の立場に立って具体化したというのが今回のネイチャーポジティブ経済移行戦略でございます。
特徴としまして、右上に4省庁の名前が載っております、環境省だけではなくて、生物多様性との関係が特に深い業を所管する三つの省庁とともに策定したというところが一つの特徴でございます。
本戦略の中身でございますが、戦略自体は本文が20ページ強、参考資料が100ページを超えるものがございますが、今回は2ページにまとめたものをお持ちしてございます。
本戦略については、ポイントとしては、企業などにとって生物多様性の取組というのが単なるコストアップではなくて新たな成長につながるチャンスでもあるということを示したいという気持ちから、多数の企業、金融機関の方々のお声を聞いて取りまとめたというものでございます。本日のご出席者でいうと藤田香先生にも研究会にご参加いただいて、そうした学識者の方にもご意見をいただいておりますが、とにかく企業の方のお立場に立って策定したいということで策定したものでございます。
まずは、右上のほうに報告書のスクリーンショットを貼っておりますけれども、まず現状のままでは企業にとってもリスキーなんだということに関して企業の皆様に腹落ちしていただくべく、自然との関わり方によって財務的な損失を被った例というのをご紹介してございます。例えば化学物質の放出により株価が下落した例ですとか、地下水の枯渇の懸念があるような地域で工場を建てようとして住民訴訟が起きてしまって工場建設が大幅に遅れたり、いずれも海外の事例ではございますが実際に生じておりますので、そうしたことをご紹介しております。こうしたリスクも踏まえまして、事業活動を持続可能にするために、一番上のボックスにありますネイチャーポジティブ経営というものへの移行が必要なんじゃないかと。ネイチャーポジティブ経営というのは、自然資本の保全の概念を重要課題、いわゆるマテリアリティーとして位置づけた経営というふうにしてございます。
その上で、真ん中のほうで赤字になってございます三つの要素を整理してございます。
一つ目が、企業の価値創造プロセスとビジネス機会の具体例ということでございます。左下に目を移していただきますと、①というところに最初の要素の説明がございます。企業は事業活動上のリスクとか機会を特定して価値創造につなげるということを日々情報開示で実施しておるわけですけれども、気候変動に関しては既にTCFDなどを軸にこのプロセスというのが進んでいるんですが、自然資本も組み込んでみてはいかがでしょうかと、そしてTNFDなどの情報開示を通じて資金を呼び込むことにつながるんじゃないかと、こうしたことを示してございます。
ビジネス機会について、例えばこちらでは一つの例として環境配慮型の養殖ということを載せてございます。通常、養殖用の餌は魚粉などを使っていて環境負荷等が高いわけですけれども、これを植物由来の原料との配合の餌に変えたりとか、あるいはAIなんかも活用して効率的に給餌して水質への影響も低減させるといったビジネスが進んでおりますので、こうしたことを定量的な市場規模とともにできるだけ示しました。このほか20弱の事例を参考資料のほうで提示してございます。つまり企業の経営の中にネイチャーというものを組み込まないと、上のほうで申し上げたリスキーということ、つまり危なくないですかということ、それから今のようなビジネス事例もあり得るので組み込まないともったいなくないですかと、この両面から書いているということでございます。
2番目、ネイチャーポジティブ経営への移行に当たり企業が押さえるべき要素というところでございます。こちらは、これも企業の方々から国が行動指針のようなものを示してくれると動きやすいんだというお声をいただいて整理したものでございます。五つボックスがあるうち、例えばまずは足元の負荷の低減をというふうにございます。これはどういった声を受けたかというと、せっかくの取組がグリーンウオッシュだなどとして批判されるというリスクをどう回避するかと、こういうご相談を受けて掲げた、いわゆる行動指針のようなものでございます。なぜその批判にさらされ得るかというと、取組の優先順位としてまず植林をしましたということだけをPRしてしまうと恐らく批判にさらされると。植林などの前にまず自社が与えている負の影響を減らすということを考えている企業ですよということをしっかり説明するという、こういった原則を示したものでございます。
例えば、それから下の段に行っていただいて、消費者ニーズの創出・充足と書いてございます。消費者、特に若者のニーズが変わってきているというのを把握すべきというのはもちろんですけれども、消費者というのは市場に選択肢ができて初めて、ああ、自分にはこういうニーズがあったんだというふうに気づく側面もあるので、市場に選択肢を生み出すというところ、創出というところを始めてみませんかということを示しております。環境省のほうでも、それに資するようなマーケティング等のお手伝いをちょっとしていたりしてございます。
次のページ、3ページ目でございます。これらを進めた結果の移行後の絵姿を「自然資本に立脚した、GDPを超えた豊かな社会の礎に」というふうに示してございます。
具体的な指標としましては、大企業の5割はネイチャーポジティブ経営にと。これは経団連様のアンケートで取締役会や経営会議で生物多様性に関する報告、決定がある企業が現状約3割であるというデータがございまして、そこから環境省で推計をしたというものでございます。
また、それだと大企業のみになってしまいますので、裾野を広げるという意味で、ネイチャーポジティブ宣言の団体数を1,000にというふうに掲げてございます。このネイチャーポジティブ宣言というのは、経団連の会長に長いこと会長を務めていただいている産官学のプラットフォームでございまして、このプラットフォームがその宣言の発出を呼びかけているというものでございます。中小企業、自治体等を含めて宣言していただいて、機運の醸成を図りたいというふうに考えてございます。このJ-GBFのほうは、武内先生に会長代理ということで、こちらも長いことお務めいただいてございます。
それから、三つ目の要素として、国の施策によるバックアップということも掲げてございます。企業のその価値創造プロセスの各ステップを各省の施策でどのように進めていくか、支えていくかということでございます。たくさん戦略の中に施策を掲げておるんですが、こちらには例示してございまして、特に太字になっている一部をご紹介いたします。
例えばリスクへの対応というところの一番上でございます、情報開示とか目標設定の動きに対応できるようなワークショップやモデル的支援のようなこと、こちらは環境省で行っていきたいと思っております。
それから、互助・協業プラットフォームの設立、これは1社ではコストがかかってしまうような取組も共同で行うことができるようになったりですとか、あるいは常時ビジネスマッチングのようなことが可能になるようにしたいというふうに考えてございます。
それから、下の段に太字にしてございます、クロスコンプライアンス等と書いてございますが、農水省さんが今年度から実施されるものですが、国が補助などをする先に最低限の環境負荷低減の取組を求めるというものでございます。
それから、すみません、太字にしてございませんが、右上の開示・対話を通じた資金の呼び込みというところ、特に本部会と関連が深いかと思いますので少しご紹介させていただきますと、自然共生サイト、あるいは部会、それからその下の小委員会のほうでご議論いただいて4月に成立いたしました新法の生物多様性増進活動促進法、こちらでの認定された活動、こうしたものに支援がされた場合に、その支援がなされたということ、そしてその支援がしっかり活動に使われているということを証明する支援証明書という制度を今構築中でございまして、その支援証明書もこちらの開示に関しての一つのキーになるかというふうに考えてございます。
下の段でプロセスを支える基盤というものもいろいろ書いてございます。
そして、最後に、今回、戦略をつくるに当たって、先ほど申し上げたように4省の連携でやっておるんですけれども、各4省の副大臣級で構成される会議体も立ち上げましたので、こちらでしっかり連携体制をつくって政府一丸でやっていきたいというふうに考えてございます。
ご報告は以上でございます。
○事務局(鳥獣保護管理室) 鳥獣保護管理室長の宇賀神と申します。よろしくお願いします。
前回の自然環境部会でクマ類の関係をご説明いたしましたが、ちょっと駆け足でございましたので、前回のおさらいも含めて資料を説明させていただきます。
前回ご説明した際には、クマ類につきましては、ご承知のとおり、昨年の秋、東北地方を中心に大量出没し、あるいは人身被害もたくさん出たというところでございますので、四角囲みにございますけれども、令和6年2月に専門家検討会におきまして、科学的知見に基づいて、ここに示させていただいております「クマ類による被害防止に向けた対策方針」というのを2月8日にまとめていただきました。その後すぐに部会でご説明したというところでございます。
考え方につきましては、クマ類が全国的には増えてございますけれども、地域的には絶滅のおそれのある個体群もございますので、クマ類の地域個体群を維持しながら人の生活圏への出没防止、これによって人とクマのすみ分けを図るということでございます。そこに三つの管理というふうに書いてございます。こういったことを実現するということでございます。
中身につきましては、左上の四角囲みでございますけれども、都道府県を中心に捕獲等により集中的かつ広域的に管理する鳥獣、現在はイノシシとシカが指定されてございますけれども、この指定管理鳥獣にクマ類を指定すること、そして都道府県等に技術的あるいは財政的な支援が必要ということ、それと捕獲に偏らない対策としまして調査・モニタリング、出没防止対策、出没時の体制構築、人材育成といったことを提言いただきました。
また、3番目になりますけれども、出没時の対応ということで、特に市街地にクマが出て人の被害が出たということがございますので、市街地等での銃による捕獲、これにつきましては鳥獣保護管理法で規制されてございますので、この改正を含めて対応方針の検討・整理が必要というようなご提言をいただきました。
その後、右下でございますけれども、環境省の主な取組ということでございまして、ご提言にあったような中身の、クマ類の指定管理鳥獣への指定につきましては、絶滅のおそれのある四国の個体群を除く個体群につきましては4月16日に指定管理鳥獣に指定したということで、当日、公布・施行させていただきました。
また、この提言に書かれているような内容の財政的支援をするために、指定管理鳥獣捕獲等事業交付金、これは現在シカとイノシシでございますけれども、こういった交付金にクマ類を追加するという拡充の対応を進めております。
続きまして、2ページ目でございますが、この対策方針を踏まえまして、クマ被害対策施策パッケージというものを指定管理鳥獣の指定の前の日の令和6年4月15日に公表させていただきました。これにつきましては、右肩に書かれておりますように、環境省をはじめ農林水産省、林野庁、国土交通省、警察庁という関係省庁が連携したパッケージということで、こういったことを進めることによってクマ類による被害を抑制し、国民の安全・安心を確保するということでございます。
この中にも各種施策を書いてございますけれども、2ポツの出没時の緊急対応の丸の3番のところにも、鳥獣保護管理法の改正の検討ということで環境省が担当させていただくというようなことが書かれてございます。
3ページ目でございますけれども、そういったところを踏まえまして鳥獣保護管理法改正に向けた検討ということで、先ほど申し上げました、市街地に出没して被害が出ると、鳥獣保護管理法では住居集合地域等、いわゆる市街地等において銃猟、鉄砲で撃つことが禁止されてございますので、そういったことを検討するというところで検討会を開かせていただいてございます。
右下のところに検討スケジュールがございますけれども、第1回が今月9日に開かれまして、関係の方々のヒアリングを進めまして課題整理をしたというところでございます。第2回は、実は明日でございますけれども、対応方針の案を検討させていただき、第3回目の夏頃でございますけれども、対応方針を取りまとめていただくという予定にしております。取りまとめていただいた後には、自然環境部会の小委員会のほうにご報告するという予定にしております。
以上でございます。
○事務局(国立公園課) 最後に、国立公園における滞在体験の魅力向上について、ご報告申し上げます。
本件につきましては、昨年8月の本部会でも報告させていただきました。その後1年間の動きにつきまして、ご報告させていただきます。
環境省では、インバウンド再開を踏まえ、国立公園満喫プロジェクトの更なる展開として、民間活用による国立公園利用拠点の面的な魅力向上に取り組み、美しい自然の中での感動体験を柱とした滞在型・高付加価値観光の推進を図っております。
昨年1月から6月に有識者会議を開催いたしまして、宿舎事業を中心とした国立公園利用拠点の面的魅力向上に向けた取組方針を策定いたしました。この中で、国立公園の利用の高付加価値化につきまして整理をいたしまして、国立公園の魅力的な自然環境を基盤とし、地域の歴史・文化・生活を踏まえた本物の価値に基づく感動や学びの体験を提供し、利用者に自己の内面の変化を起こすこと、また、関係者は持続可能で責任ある観光の姿勢を共有し、保護と利用の好循環を目指すことが重要であると整理したところでございます。
その上で、それらに具体的に取り組む地域として先端モデル事業を選定いたしました。具体的には、ここにございます4つの国立公園を選定しております。十和田八幡平国立公園(十和田湖地域)、中部山岳国立公園(南部地域)、大山隠岐国立公園(大山蒜山地域)、ここまで昨年8月にご報告したところでございますが、その後、やんばる国立公園を追加いたしまして、4つの地域でその後の取組を進めております。
具体的には、4つの国立公園において、該当公園の利用の高付加価値化に向けた基本構想を検討しております。今年の3月には、十和田湖地域において集中的に取り組む利用拠点の第一弾として休屋・休平地区を選定いたしました。今後、具体的な取組をここで加速してまいります。
具体的には、このイメージ図にございますように、今後、選定された休屋・休平地区においてマスタープラン・インタープリテーション計画を策定し、サウンディングを経て宿泊事業者を公募、その後、その事業者や地域と連携しながら国立公園ならではの感動体験を提供する滞在型・高付加価値観光の拠点を再生・創出していくというものでございます。十和田以外にも、中部山岳、大山隠岐、やんばる国立公園についても同様の検討を深め、利用拠点を順次選定していく予定でございます。
また、昨日、報道発表をさせていただきましたが、国立公園ならではの宿泊施設との連携方策の検討会というものを5月31日より開催する予定でございます。本取組のさらなる広がりとして、宿泊施設を通した、より国立公園の滞在体験の魅力向上について引き続き検討してまいります。
以上です。
○武内部会長 3件の報告をしていただきました。それぞれについてご意見、ご質問がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
では、小泉委員、どうぞ。
○小泉委員 ありがとうございます。
ネイチャーポジティブに関しては、質問です、企業の業種間の温度差というのは埋まりつつあるんでしょうか、それとも、例えばこれまで意識高く取り組んできた食品産業が牽引役を務めている、そのほか特定の業種はまだ冷えた感じだということなんでしょうか。教えていただけますか。
それから、すみません、次、クマのほうなんですが、クマのほうに関しては捕獲技術者の育成確保ということが挙げられておりましたけれども、同時にこれらの技術者の受皿となる認定鳥獣捕獲等事業者の育成、技術向上というのも一緒に図っていただきたいなと思います。これはコメントです。
以上です。
○武内部会長 ご意見、ご質問に対する回答は後ほどまとめてそれぞれの報告ごとに説明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、中村委員、お願いします。
○中村委員 私もネイチャーポジティブについての現状をちょっとお聞きしたいんですが、OECMとか、このTNFDとか、そういうのを企業さんから私も相談を受けることがあります。自然資本の評価がすごく大事になってくると感じていて、例えばイングランドの生物多様性ネットゲインみたいな、10%ネットゲインじゃないと開発は認めないといったような、そんな動きもある中で、どうやってそのネイチャーの部分を評価していくのか。それは生物多様性だけじゃなくて大気とか水とか土壌とか、そういったものも入ってくるような気がします。何かその辺の将来的にクレジット化も含めて、要はネイチャーポジティブですからポジティブを説明しなくちゃいけないと思うんですよね。それはスタイルとしてポジティブだからいいということじゃなくて現実にポジティブにならないといけないと思うので、その辺、何か環境省としての取組も含めて情報があれば教えてください。
それから、クマについては今の小泉さんと似ているんですけども、人材育成をちょっと考えていただかないときっとうまくいかないんじゃないかと思っています。各自治体で人材を確保するというのは多分難しいとは思うんですが、その人材をどうやって確保するか。大学も含めて、行政に勤めておられる方の再教育的なものも含めて、何か考えておられることがあったら教えてください。
以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。
それでは、オンラインの藤田委員、お願いします。
○藤田委員 ありがとうございます。質問です。クマの対策のところで、ちょっと不勉強なので教えていただければと思います。
先ほどの地域個体群を維持しながら管理するということは、地域個体群は維持するけど、個体数、生息数を駆除・管理するという意味に捉えてよろしいんでしょうかということと、あと、現在、クマの推定生息数というのは国内でどの程度いるかというふうに環境省としては推定されていて、適正な管理をした後の目標値みたいなものというのはどんなふうに捉えていらっしゃるか、もしあるようでしたら教えてください。よろしくお願いします。
○武内部会長 ありがとうございます。
それでは、深町委員、お願いします。
○深町委員 ありがとうございます。
私は3つ目の国立公園のことに関してなんですけれども、この高付加価値化というようなところで、自然環境を基盤としながらも地域の歴史・文化・生活を踏まえた本物の価値というふうにあって、これはとても大事だなと思うんですけれども、その後のご説明とか具体的な事例をお聞きすると、こういったところをどうやって踏まえて本物の価値というのをどういうふうに判断しているのかなというところが具体的に分からなかったので、せっかく書いてあるこの理念に従ってどういうふうに現場での事業とか取組というのが進んでいるのかというところを、少し具体的なところを含めて教えていただきたいと思います。
○武内部会長 ありがとうございました。
こちらの会場にお越しの関委員、お願いします。
○関委員 ありがとうございます。
私はネイチャーポジティブのところの質問なんですけども、先ほど中村先生がおっしゃったことにも重なることです。ネイチャーポジティブ経営というものにとても期待がかかるところがあるんですけれども、どれぐらいの効果があるのかということを、やっていらっしゃる企業さんもそうなんですけれども、幅広く国民の皆さんに見えるように示されるのかどうか、そういった準備があるのかどうかにつきまして教えていただければと思います。
以上です。
○武内部会長 ありがとうございました。
ほかにはおられませんか。よろしゅうございますか。
それでは、ご質問、ご意見に対して事務局からご説明をお願いしたいと思います。
○生物多様性主流化室長 1つ目のネイチャーポジティブ経済移行戦略に関してお答えさせていただきます。ご指摘、ありがとうございます。
まず、小泉先生からいただきました業種間の温度差というところでございます。まず、一言で申し上げると、おっしゃっていただいたように食品あるいは飲料系の会社様が今も割とリードを取っていらっしゃるという状況は変わっていないと思います。ただ、ほかがものすごく温度感が低いかというと、私どもはそうは受け止めておりません。例えばTNFDレポートを既に開示しておられる企業さんなんかは、例えば不動産業界とか航空業界もそうですし、あるいはITとかデータ系の会社様ですね、特に先んじて出しておられます。特にこのIT、データ系の会社さんなんかは、生物多様性は、最後のご質問にも関係するんですが、測りづらいというところが課題だと。その図りづらさをオポチュニティに変えてビジネスをやっているというところでものすごくオポチュニティを感じておられて、取り組んでくださっているというふうに認識してございます。
それから、中村先生にいただいたご指摘、ありがとうございます。今のまさに測りづらさのところにも関係するんですが、私どもの取組としましては、説明の中でも少し申し上げましたが、ワークショップなどを行っていて、通称「ツール触ってみようの会」というふうに呼んでいるんですが、生態系の状況を表す、あるいはそこに対して自分の事業活動がどれだけの負荷を生じているかということを表す、計算できるツールというのがものすごくたくさん世の中にございますので、企業としてはそれをどれが自分たちの努力量を適切に反映するのにふさわしいかということを選ばなきゃいけないという状況にあると思っています。そこで、幾つか我々のほうから、これであれば多くの、広い事業者さんに適用可能なんじゃないかというものを体験してみていただくと。生物多様性は測れないに違いないというところで止まるんじゃなくて、体験してみていただくということをやっておりまして、ベーシック編ではIBATとかENCOREとか、あるいはWWFさんが作るWater Risk Filter、こういったものをやったりとか、あとアドバンス編としてはLIMEですとか、エコロジカルフットプリントのような企業の事業による負荷を包括的に図れるようなものを体験いただくということをしてございます。
少しご言及いただきましたクレジット化に関しては、そういうことも踏まえながら、あるいは、さきにご説明した支援証明書なんかの実績も踏まえながら検討していくということになるかなと思っておりますが、例示していただいたイギリスのネットゲイン法の場合は、イギリスの政府の担当者にも直接聞いたんですが、あそこは都市の中心部の地価が上がり過ぎて、ハウジングの需要を満たすために実際に森林を切って家を建てなきゃいけないという状況までなっていると。なので、ネットゲイン法のようなものが必要なんだと、こういう説明でございました。日本の場合は、そういう地域もあるのかもしれませんが、概してJBOなんかを見ると、オーバーユースよりもアンダーユースのほうが問題であると、課題であるというふうなことかなと思いますので、イギリスの動き、あるいは国際的なクレジットを作っていこうというような動きにはしっかり参画をして注視とか意見出しはしておりますが、日本は日本でしっかりアンダーユース型にも対応できるものをということなのかなというふうに考えてございます。
それから、関先生にいただきましたネイチャーポジティブ経営の効果について幅広く国民に示していくような予定があるかということでございます。具体的にいつ、どのようにというのはちょっと申し訳ございません、決め切ってはいないんですが、説明の中で申し上げた副大臣級の会議、それから、こちらでも多分お世話になる生物多様性国家戦略の全体のフォローアップの中で示し方というのを考えていきたいというふうに思ってございます。
以上でございます。
○鳥獣保護管理室長 続きまして、クマでございます。ご質問ありがとうございました。
人材育成につきましては、小泉委員、中村委員からご指摘いただきましたけれども、まさに今回の進め方につきましては、手続論を進めたというところでございまして、現場の対応につきましては、捕獲の部分と、そういった技術的な部分の人材育成が必要だという認識をしてございます。特に既存の指定管理鳥獣の対象種であるシカ、イノシシとクマは全く異なるものでございますし、絶滅のおそれもあるというところもございますので、そういったスペシャリストの育成につきましては、今後技術的、あるいは財政的支援をしながら育成を図っていきたいというふうに考えてございます。今後検討させていただきたいというふうに考えてございます。
また、藤田委員からご指摘のあった個体群、個体数ということでございます。先ほど説明の中で申し上げましたが、四国の絶滅のおそれのある個体群等がございますので、個体群につきましては維持するという方針を提言いただいてございます。一方、個体数につきましては、特に被害を及ぼすクマにつきましては、人の生活圏に近いところにいるクマについて対応するというところが必要なのかなと思っておりますので、そこにつきましては、地域の都道府県を中心とした中で特定鳥獣管理計画というところの中で見ていただきたいというふうに考えております。全国的なクマの個体数につきましては、現在国としては推計してございませんが、今年度の予算でそういった各都道府県のデータ等をいただきながら推計方法の検討を進めていきたいというふうに考えてございます。
はい、以上でございます。
○国立公園課課長補佐 最後、国立公園の滞在体験の魅力向上につきましてです。
深町委員から高付加価値化、本物の価値というのについて、どのように判断するのか、具体的にはどうやっているのかというご質問をいただきました。ここにつきましては、価値あるものや魅力というものは、それぞれの地域にあるものというふうに理解をしておりまして、特に地域の方々はそこをよくご存じであると考えております。ただ、気づいていないような場合もよくございますので、そういうときには外部の目というのが非常に重要になると考えております。
それをどのようにみんなで共有していくかということでございますが、十和田湖の場合、スライド2枚目に書かせていただいたように、十和田湖1000年会議というものを何回も開催いたしまして、みんなで議論をしていく中でそれを共有していくというような作業をやりました。それを経て基本構想を作成いたしまして、その文章やコンセプトにし、みんなで共有していくといったような作業をやっております。今後、具体的なマスタープランや、インタープリテーション計画の作成という手順がございまして、その中で誰をターゲットにどのように伝えていくことで感動や学びにつながるかというところをしっかり計画を立てていきたいと思いますので、それらを通して本物の価値がしっかり伝わっていくということを考えております。
以上でございます。
○武内部会長 はい、どうもありがとうございました。
それでは、追加でのご質問、ご意見、あるいは、さらにお気づきの点がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、特段ないようでございますので、本日の審議はこれで終了とさせていただきたいと思います。
進行を事務局にお返しいたします。
○司会 武内部会長、議事進行ありがとうございました。
委員の皆様におかれましても、長時間にわたり、ご審議をいただきましてありがとうございました。
閉会に当たり、白石自然環境局長より一言ご挨拶申し上げます。
○自然環境局長 本日は長時間にわたりまして、ご審議いただきましてありがとうございました。特に国立公園に関しましては、前回の部会でもご議論いただきましたけれども、今回正式な諮問ということで、活発なご意見をありがとうございます。
ご説明に拙いところがあったり、あるいは、いろいろ方向性にご納得いただけない、特に名称なんかに関して言えば、やはり違和感があるというご審議、ご意見も受け止めました。完全に払拭するということは難しいかなとは思っておりますが、今後の取組の中で地域の様々なステークホルダー、自治体の皆さん、それから環境保護にご貢献いただいている皆さん、そういった方と協議会を早期に開催し、地域の声を踏まえて運用する中で、そういった違和感をなるべく解消していけるように、我々としても取組を一層進めていく覚悟でございます。
本日のご審議をいただいて、今後、日高山脈襟裳十勝国立公園という名前で、新しい国立公園の指定を行っていくということになります。平成29年3月7日の奄美群島国立公園以来、35番目の国立公園、7年ぶりの国立公園の指定になるわけでございまして、日本最大の国立公園の誕生ということになります。この国立公園が我が国の豊かな生態系でありますとか豊かな自然、こういったものの保全に寄与しつつ、日本のその特有の自然環境の価値というものを、厳しい自然環境でありますけれども、そういう厳しい自然環境に寄り添った利用の仕方というものを模索しながら、その価値を多くの国民、それからインバウンドの皆さんによく認識していただく、その場になるよう、環境省としても鋭意努力をしてまいりたいというふうに考えております。
それから、もう1つご審議をいただきました南極地域の環境の保全に関する小委員会(仮称)の設置について、こちらも今後作業を進めて、逐次、また折を見て自然環境部会の皆様にもご報告を申し上げたいと思います。
それ以外のネイチャーポジティブでありますとか、クマでありますとか、国立公園の満喫プロジェクトの話でありますとか、熱心なご審議、ありがとうございました。いただいたご意見を踏まえて着実に進めてまいります。
引き続きまたご指導、ご鞭撻いただければと存じます。本日は長い時間、どうもありがとうございました。
○武内部会長 どうも、ありがとうございました。
○司会 以上をもちまして、本日の部会を終了いたします。どうもありがとうございました。
午後5時11分 閉会