中央環境審議会 自然環境部会(第35回)議事録

日時

平成30年5月28日(月)10:00~12:00

場所

中央合同庁舎5号館 22階 第1会議室

出席者

武内 和彦  部会長
石 井  実   委員
新美 育文  委員
石井 信夫  臨時委員
磯部 雅彦  臨時委員
江崎 貴久  臨時委員
大沼 あゆみ 臨時委員
尾崎 清明  臨時委員
小泉 武栄  臨時委員
小泉 透   臨時委員
小菅 正夫  臨時委員
柴田 明穂  臨時委員
下村 彰男  臨時委員
白山 義久  臨時委員
高橋 徹   臨時委員
中静 透   臨時委員
二宮 雅也  臨時委員
宮本 旬子  臨時委員
涌井 史郎  臨時委員

議事

午前10時01分 開会

○司会(国立公園課課長補佐 杉山) 失礼いたします。本日は、お忙しい中、先生方におかれましては当審議会にご出席をいただき、ありがとうございます。定刻となりましたので、ただいまより中央環境審議会自然環境部会を開催いたします。

 開議に先立ちまして、本日の出席委員数をご報告いたします。本日は、所属委員、臨時委員26名のうち19名のご出席をいただいておりますので、本部会は成立しております。

 次に、本日、ご説明する資料につきましては、環境負荷削減の観点から審議会のペーパーレス化の取組を推進するため、委員のお手元にございますタブレット端末の中に入っております。画面上、第35回部会資料というアイコンを2回タッチしていただくとフォルダが開くようになっておりますので、ご確認ください。

ただし、一方で、資料2-1、海洋環境を初めとする自然環境の保全につき講ずべき措置についてに係る諮問書につきましては、一部修正のため差しかえを席上ペーパーで配付させていただいておりますことをご了承ください。

そのほか、審議中、資料の不足やタブレット端末の不具合のある方がおられましたら、事務局の担当者にお申しつけください。

そのほか、席上には印刷資料として、やんばる国立公園の公園区域及び公園計画変更書及び第五次環境基本計画の印刷冊子を配付しております。

それでは、自然環境局長の亀澤よりご挨拶を申し上げます。

○自然環境局長(亀澤) 皆さん、おはようございます。本日は、大変お忙しい中、自然環境部会にご出席をいただきまして、大変ありがとうございます。

本日、二つの諮問案件についてご審議いただくほか、最近の動きについて何件かの報告を予定しております。

諮問案件のうち一つ目は、やんばる国立公園の拡張についてでございます。やんばる国立公園は、一昨年の9月に国内33番目の国立公園として誕生いたしましたが、その3カ月後に米軍の北部訓練場の過半が返還されましたので、そのほとんどの区域について、その後の自然環境調査等を踏まえて国立公園に拡張したいというふうに考えているものでございます。今年3月の現地視察には、たくさんの先生方に参加をいただきまして大変ありがとうございました。現地を見ていただいた先生方には、そのときのことも振り返りながら改めてご意見をいただければ幸いでございます。

なお、やんばる地域は奄美大島など、ほかの三つの島とともに、この夏の世界自然遺産登録を目指しておりましたけれども、今月初め諮問機関であるIUCNから延期勧告を受けました。推薦地の連続性という観点で、今回、拡張を考えております返還地が、重要な位置付けにあるにもかかわらず、現状では推薦地に含まれていないということが延期勧告の主な理由でございました。

環境省といたしましては、まずは、この夏に4島の遺産登録を実現した上で、その後、今回拡張を予定している区域を追加登録することを考えておりましたけれども、一括して推薦すべきという勧告でございますので、今回、返還地を国立公園に編入して遺産の推薦地に追加をした上で、できるだけ早期の遺産登録を目指していきたいというふうに考えております。

諮問案件、もう一つは自然環境保全法の改正に関するものでございます。沖合域を中心とした海洋環境を初めとする自然環境の保全について、講ずべき措置についてご審議いただきます。この件につきましては、概ね今年いっぱい審議をいただいた上で、来年2月を目処に答申をいただきたいといったスケジュール感で考えております。

そのほか報告事項として、環境基本計画に関する件、並びに自然局関係で5件を用意しております。特に、トキに関しましては、これまで長年にわたって中国側に要請を続けてまいりました新たな個体の提供が5月9日の日中首脳会談で合意されましたので、そのことについて、今後、実際に提供されるまでの見込みも含めましてご説明をさせていただきます。

本日も限られた時間でございますけれども、忌憚のないご意見をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○司会 続きまして、前回、平成29年6月に開催しました部会から本日までに、異動でかわりました自然環境局の幹部をご紹介させていただきます。

まず、大臣官房政策立案総括審議官の米谷でございます。

○大臣官房政策立案総括審議官 米谷でございます。よろしくお願いいたします。

○司会 国立公園課長の田中でございます。

○国立公園課長 田中でございます。よろしくお願いします。

○司会 野生生物課長の堀上でございます。

○野生生物課長 堀上です。よろしくお願いします。

○司会 自然環境整備課長の池田でございます。

○自然環境整備課長 池田でございます。よろしくお願いします。

○司会 生物多様性主流化室長の長田でございます。

○生物多様性主流化室長 よろしくお願いいたします。

○司会 生物多様性戦略推進室長の中澤でございます。

○生物多様性戦略推進室長 よろしくお願いします。

○司会 鳥獣保護管理室企画官の西山でございます。

○鳥獣保護管理室企画官 西山です。主流化室から調整室に移っております。よろしくお願いします。

○司会 それから、国立公園課国立公園利用推進室長の西村でございます。

○国立公園課国立公園利用推進室長 よろしくお願いいたします。

○司会 それから、総務課長、永島がおりますが、ちょっと所用のため遅れているようでございます。ご了承いただければと思います。

以上で、自然局幹部の紹介を終わらせていただきます。

報道関係者の方は、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。

それでは、これよりの議事進行につきましては、武内部会長にお願いをいたします。武内部会長、よろしくお願いいたします。

○武内部会長 それでは、約1年ぶりの開催ということでございますので、少し私のほうからご挨拶をさせていただきたいと思います。

と申しましても、前回、現地視察にご一緒していただいた委員の方もかなりおられるわけでございますけれども、大変有意義な現地視察であったというふうに思っております。先ほど局長からのお話のように、先に国立公園にしておけばよかったということになるわけですが、それを今日、皆さんにご議論いただくということでございます。そういうことで、今日は大変、いろいろな意味で重要な会議内容でございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

私の環境政策に関する関わりで言うと、この4月に第五次の環境基本計画、これを環境大臣に答申をさせていただき、その後、4月に閣議決定がなされたところでございまして、これから後に、少し担当の方から説明があるかと思いますけれども、一つの非常に大きな要点は、持続可能な開発目標、SDGsを環境基本計画の中に法定計画として初めて取り入れたということでございます。これを入れることによって環境政策が社会や経済の政策にもいい影響を与えるという、その三つの環境、経済、社会の統合的向上を目指すという、こういう考え方を打ち出したというのが非常に大きな特徴でございます。

それから、自然環境政策では、これまで「自然共生圏」という言葉を使って、いわゆる自然資本を生かした地域づくりというものについての提言をしておりましたが、環境基本計画では、それを発展させて脱炭素で資源循環で、かつ自然共生の地域づくりを目指すということで、「地域循環共生圏」というふうなものを今般、提唱し、それに基づいて今後、施策を展開していこうと。これの一つの狙いは、環境政策の統合化というものと同時に、日本のさまざまな課題、特に地方の少子高齢化、それから地方経済のさまざまな課題、こういうものに貢献できるかどうかということを狙いとしてこの概念を提唱し、今後、それを各地域で展開していこうというふうに考えております。

それから、今日の話題ではございませんけれども、いよいよ愛知目標の最終年が2020年ということで迫ってきております。これについて、達成がどうであったのか、満たしているものがどうであるのかというふうなことについての議論をすると同時に、あわせてポスト愛知目標についての議論をそろそろ始めないといけないと。ポスト愛知目標を仮に2021から2030というふうに考えますと、ちょうどSDGsの達成目標年と軌を一にするということになりますので、生物多様性についての目標と、それからSDGsの関係をどういうふうにして整理するかということが問題になるというところでございます。

一見すると両方調和的なように見えますけれども、例えば、強靱なインフラの整備というふうなものが、場合によっては自然環境施策と相矛盾するというふうなことがあり得るものですから、そうでないような、両方が相互に達成できるような、そういうシナジーを発揮するような取組というのが多分、一番重要な観点なのではないかというふうに考えております。こうしたことについては、また、いずれ、この自然環境部会で皆さん方にご議論いただくということになろうかと思いますので、今後は、もうちょっと頻繁に開かれるような形になるのではないかというふうに思います。

ということで、いろいろ、また皆さんにご議論をお願いしたいというふうに思います。特に、今日の議論はこれからの国立公園の将来にとって非常に重要な審議事項でございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

以下、座って司会をやらせていただきたいと思います。

それでは、本日の部会は公開で行いますので、報道関係者や傍聴の方も同席されておられます。会議録は、後ほど事務局で作成し、本日ご出席の委員のご了承をいただいた上で公開をさせていただきます。なお、議事要旨につきましては、事務局で作成したものを私、部会長が了承した上で公開することについてもご了承いただければと思います。また、会議資料につきましても公開となります。

それでは、最初の議題、やんばる国立公園の公園区域及び公園計画の変更について、事務局から説明をお願いいたします。

○国立公園課長 国立公園課長の田中でございます。

本日の審議に当たりましては、環境省の那覇事務所から速水国立公園課長、それから、やんばる事務所から池田保護官にも参加いただいております。

それでは、資料の説明に入らせていただきます。お手元のタブレットの中に第35回部会と書いてあるものがございますので、これをダブルクリック、2回クリックしていただけますでしょうか。そうしますと、五つのフォルダの下に議事1、統合版やんばる国立公園というのがございます。こちらのほうをお開きいただければと思います。

ちょうど最初のページの資料1-1にございますとおり、5月21日付で環境大臣から武内中央環境審議会会長に対して諮問させていただきました、やんばる国立公園の公園区域及び公園計画の変更書につきましては、お手元の机の上に冊子で置かせていただいているところでございますが、その概要につきまして、タブレットでいきますと4ページ目まで横長のパワーポイントのあるページ、それから、こちらのほうにも投影させていただいております、こちらを使ってご説明させていただきたいと思います。

本日のご説明につきましては、1、既存の区域、2、今回の変更までの経緯、3、変更内容、4、中環審のご視察、5、パブリックコメントへの対応、6、世界自然遺産登録についての順でご説明いたします。

まず、平成28年9月に指定しましたやんばる国立公園の既存区域についてのご説明です。沖縄島北部地域の国頭村、大宜味村、東村にまたがる地域をやんばる国立公園に指定いたしております。

5ページ目のような経緯を踏まえまして、本公園は平成28年9月、今から1年半前に指定されました。

本公園は、風景型式として、多くの固有種が集中して分布する国内最大級の亜熱帯照葉樹林の生態系を初め、多様な生態系が複合的に一体となった景観が評価されています。また、「亜熱帯の森やんばる-多様な生命(いのち)育む山と人々の営み」を公園のテーマに指定いたしております。

いくつか、やんばる国立公園を代表するようなスライドをご覧いただきます。まずは、やんばるの風景を代表する亜熱帯照葉樹林です。続きまして、沖縄島の北端、石灰岩がつくり出す大石林山の風景です。続きまして、やんばる国立公園の南端、慶佐次のマングローブ林でございます。やんばる地域には、ノグチゲラを初めとした希少で固有な野生生物が生息しています。

ここで、主要な景観要素をご説明いたします。やんばる地域の地形は、標高400m前後の非石灰石の山地が島の中央部に沿って発達し、脊梁山地を形成しています。植生では、スダジイなどの亜熱帯照葉樹林が広い面積を占めていることが特徴です。先ほどの写真でもご覧いただきましたが、これらの固有で希少な野生生物が生息していることが本公園の特徴の一つであります。

やんばるの森は、単に生き物の生息の場だけではありません。林産業の生産・供給の場でもあり、海と山を一体として捉えた祭祀が集落の伝統として受け継がれています。

やんばる地域の観光の利用者数は、国内の県外客で約40万人程度と予測されます。また、訪問者の7割は日帰り利用となっております。利用のされ方としては、与那覇岳の登山やダム湖を利用したカヌー体験などが挙げられます。

続きまして、今回の変更までの経緯についてご説明いたします。二つ目の黒丸のとおり、平成28年9月にやんばる国立公園は指定されましたが、その直後の12月に北部訓練場の過半の返還を受け、環境省では自然環境調査等を実施したところ、既存の国立公園の区域同様、国立公園の資質があることが認められたことから、今回、主に返還地について国立公園の拡張を諮問させていただいたところでございます。

北部訓練場約8,000haのうち、1年半前の平成28年12月に約4,000haが返還されました。左側の図の中で赤く囲っている範囲がその返還地約4,000haですが、そのうち9割に当たる約3,600haを今回、国立公園に編入する案といたしております。

続きまして、今回の変更の内容をご説明いたします。今回は主に返還地の区域を拡張するので、陸域のみ拡張する案になっております。また、土地所有形態としては、林野庁所管の国有林が大半を占めております。

続いて、保護規制の強さ、ゾーニングを示す地種区分についてです。最も拡大面積が大きいのがダイダイ色で示しております特別保護地区であり、現状から3倍以上の拡大をいたします。

続いて、各地種区分の概要をご説明いたします。赤で囲まれた返還地のうちダイダイ色が特別保護地区を示しておりますが、大きく分けて三つのエリアに分かれます。3月のご視察では2、脊梁山地に位置する佐手の山をご視察いただきましたが、ご覧いただいたとおり、いずれのエリアも樹齢70年生以上の亜熱帯照葉樹林の老齢林が広がっております。

続きまして、赤で囲まれた返還地のうち紫色が第1種特別地域を示しておりますが、こちらも先ほどの特別保護地区に準じて保護を図るべき貴重な森林が広がっていることから、今回、第1種特別保護地区に指定したいと考えております。

最後に、第2種と第3種特別地域です。どちらも特保、1特同様に、土地所有者との調整を踏まえ、この図のようなゾーニングとなっております。第2種特別地域には右の写真のようなダムやその用地を指定し、第3種特別地域には左の写真のような二次林など、引き続き自然環境に配慮しながら地域の生業、生活を維持していく地域を主に指定したいと思います。

続きまして、利用施設計画についてです。今回の変更では、1園地と1路線のみ新規に計画し、他の6路線については既存路線の延長を行うものです。

具体的に、利用施設の計画内容をご覧いただきたいと思います。こちらは、新規で計画する園地一つと路線1本についてです。真ん中の写真のとおり、普久川ダム周辺における園地と、右の写真のとおり、そこにアクセスする旧県道について、今回、公園事業施設として把握いたします。右上に写真のある普久川ダムについては、今後、ダムツーリズムを実施する拠点として園地を整備したり、旧県道については普久川ダムまで接続する路線として位置付け、ダム湖を含めた森林ツーリズムを実施していきたいと考えております。

続きまして、玉辻山に至る路線でございます。3月のご視察の際には、福地ダムにおいて船に乗っていただき、玉辻山への接続を考えているこちらの路線を船上からご覧いただきました。既存の路線を左下の緑色の破線で示しておりますが、ダム湖からのアクセスということを考えて、今回、緑色の実線部分の延長を計画するものです。やんばる地域には五つのダムが公園区域内または隣接することとなっておりますが、県民の上水の6割を賄う日量25から26万tの水がめとして、また洪水調整機能を有することも、このダムツーリズムの中で学んでいただきたいと考えております。

ここからは、既存路線の変更を行う4路線についてです。まず、車道の2路線ですが、今回の区域拡張に伴い、既存の車道を赤の実線のとおり利用施設として位置付けるものです。

こちらも同様に、車道を位置付けるものでございます。

続いて、歩道についてでございます。点線で示している既存の2路線を把握するとともに、中央に縦に延びている緑の実線の部分も、これは右側の写真にございますオキナワウラジロガシの巨木を観察するための枝線として、既存の路線から山頂付近で枝分かれさせて延長させる計画としております。

こちらの路線も、3月のご視察の際に片方のグループにおいてご視察をいただいた国頭村森林公園からの一体的な利用を促進するため、緑の実線のとおり、既存の歩道を計画路線に組み込むという計画でございます。

続きまして、中環審でのご視察についてでございます。3月24から25日の2日間にわたり、17名の委員の先生方にご参加いただきました。天候もよく、亜熱帯照葉樹林の新緑を中心にご視察をいただきました。また、福地ダムではダムツーリズムを体験いただいたほか、やんばる学びの森からは返還地を遠望いただきました。

パブリックコメントについてでございます。今回の変更案に対するご意見をパブリックコメントという形で募集したところ、108件のご意見をいただきました。参考資料1のほうで本件に係る意見については対応方針を記載し公表いたしておりますので、詳細は後ほどご覧いただければと思いますが、ご意見については今後の国立公園の管理の参考とさせていただきたいと、このように考えているところでございます。

○自然環境計画課長(奥田) それでは、続きまして、世界遺産登録との関連についてご説明をしたいと思います。

ご承知のとおり、先ほど局長からのご挨拶の中でも触れましたけれども、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島という推薦で昨年の2月にユネスコに世界自然遺産の登録の推薦をしております。その一つの場所として、今回の国立公園拡張予定の区域が、沖縄島の北部に存在するということでございます。現在の推薦区域の中には、今回拡張する場所というのは当然、含められていなかったわけなんですけれども、そういったこともあって、今年の5月にIUCNが審査をした結果の勧告は、世界遺産登録については審議の延期、これは推薦書を出し直して再度審査を受けなさいという内容でございます。

延期の主な理由としましては、局長のほうからもご紹介しましたけれども、今回拡張する部分、沖縄の北部訓練場返還地が重要な位置付けであるけれども、現段階では推薦地に含まれていないということが一つ。それと、細かい部分ではあるのですけれども、いくつか分断された小規模な区域が含まれているので、その辺を整理するようにということで、それが主な理由となっております。

ただし、評価のポイントとしましては、実際には、そういったところを直せば連続性の観点から区域を修正すればということですけれども、評価基準のⅩⅹ(ローマ数字の10)、生物多様性に関しては該当して、遺産の価値は十分にあり得るだろうということが明確に書かれております。それから、IUCNとしては、推薦地に含める返還地の現地調査をやっていないので評価ができないというような書き方をしておりますので、手続を踏めば、逆に、その辺は評価をきちんとしてもらえるだろうというふうに考えております。そういったこともあって、再推薦を求めるということが勧告の内容となっているわけでございます。

その他の評価としては、北部訓練場の残された返還されていない場所についても、実質的な緩衝地帯として機能している、重要種の生息に貢献しているという評価をされていますけれども、具体的には米軍との調整をしながら、さらに管理の発展をしていくことが必要ということですとか、地元自治体や関係者の参画を求めていたり、私有地の取得、これは奄美のところですけれども、そういったものも要請をされております。

また、一方で、保護管理については、ガバナンス体制は多くの関係者が参画しているということで、世界遺産としての要件を満たしているということできちんと評価をされております。そのほか、外来種対策ですとか観光への影響の対策、そういったものも求められているというのが今回の勧告の内容となっております。

いずれにせよ、今回のやんばる国立公園の拡張というのは、世界遺産にとっても登録に向けた非常に重要なステップとなりますので、我々としては、今回、延期勧告ということで、この6月24日から開催される世界遺産委員会でどういう対応をするかというのは、今、地元の意向も聞きながら検討中ではございますけれども、登録そのものが決してマイナスの評価をされているわけではないと。確かに、地図上では返還されているところが世界遺産の推薦区域の中に含まれていないと、分断されていて地図上でも評価しにくいというのは事実だと思いますので、その辺をどういう形で、確実に登録を実現するということを第一に考えて、その中で最も早いプロセスで登録を実現するのにはどうすればよいかという観点で、現在、地元の自治体の意見も聞きながら政府部内で鋭意検討しているという状況でございますので、まさに今回、ご審議いただくやんばる国立公園の拡張というのは、世界遺産登録を確実にするための重要なステップであるというふうにご理解いただいて、ご審議をいただければありがたいと思っております。

私からの説明は以上でございます。

○武内部会長 それでは、以上につきまして、ご質問、ご意見のある方は私に見えるように札を立てていただければと思いますが、いかがでしょうか。

どうぞ、尾崎委員。

○尾崎委員 この国立公園拡張に関しては大変期待をしております。一つ、確認したいことは、歩道の新設のようなお話が出てきたと思うんですが、遊歩道ですね。具体的にどんな形のものをつくられるか?あるいは、これから具体的になっていくのかもしれませんが、つくる際には、例えば林道をつくったときには環境に対していろいろ問題が起きたりしていますので、この遊歩道をつくったがゆえに何か問題が起きるようなことがないような手だてを、ぜひしていただきたいと思います。

以上です。

○武内部会長 ありがとうございます。

中静委員、お願いします。

○中静委員 特別地域の第3種の特別地域で人間生活と調和した管理をされるということでしたけど、具体的にはどういうことを想定されているのか、ちょっとご説明いただければと思います。

○武内部会長 よろしいですか。

それでは、石井委員、お願いします。

○石井(実)委員 ありがとうございます。それから、3月の現地視察の折は、本当にお世話になりありがとうございました。本当に貴重な体験をさせていただきました。現地の方々、職員の方々のご尽力とか、10年以上にわたってやられているということもよくわかりましたし、現場でのご苦労もよくわかったという思いがいたしました。

私のほうからは、ちょっと現地を見た感じでのご質問をさせていただきたいと思うんですけど、一つは、案外、道路が張りめぐらされていて交通量が多いところもあると。ヤンバルクイナのような鳥がいるわけですけれども、いわゆるロードキルというところですかね、この対策というのはどうなんだろうかと。今回の拡張については、もちろん賛成ですけれども、また道路もできるということですけれども、その辺のロードキル問題ですね。

それから、もう一点は、私の専門の昆虫のほうでいうと、ここは、実はやんばるの森の中に実際に踏み入ったのは僕は初めてだったんですけど、結構、見ると聞くとでは大違いのところがあって、案外アプローチしやすいなという感じですね。中にトレールがいっぱい森の中に切ってあるので、ヤンバルテナガコガネだったりオキナワマルバネクワガタだったり、かなり、見れば、昆虫をやっている人だったら、この木だというのがわかってしまうんですけれども。それで、成虫は夜に行ったらとれる、夜の管理はどうなっているのかというのが一つ。

それから、もう一つは、幼虫は特殊なフレークというんですかね、腐葉土みたいなところで発生するんで、それをごそっと持っていかれたら幼虫ごと持っていかれてしまうというので、密猟対策をどうされるのかというのをお聞きしたいと思います。この2点でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

江崎委員、お願いします。

○江崎委員 最初の説明の中で、土地の種類の中で所有者のところで、所有者が不明な地もあるというふうに説明の中で出ていたんですけれども、その後で、世界遺産の話の中で、これは奄美だとは思うんですが、私有地の取得の推進が要請されていると書かれているので、ほかのところでもそういうことがあるのであれば、不明地というところがどうなのかなというのがちょっと心配になったので、お願いします。

○武内部会長 ありがとうございました。

それでは、小泉透委員。

○小泉(透)委員 ありがとうございます。今、示されています世界遺産登録についてのスライドの後半部分にノネコ、ノイヌを含む侵略的外来種について指摘がございます。既に登録された遺産地域でも、侵略的外来種の問題は継続して大きな問題になっています。やんばるにおけるマングース対策は、私の理解では、大きな成果を得ており、それはIUCNも理解しているのではないかと思いますが、侵略的外来種対策に関して今回特に指摘がありましたら教えていただけますでしょうか。

○武内部会長 ありがとうございます。

小菅委員。

○小菅委員 私も、この前、視察させていただいて、その上での感想なんですけど、今、小泉委員がお話ししたとおり、やっぱり外来種問題をどうするかの中で、特に犬に関しては、パブリックコメントでもありましたけど、狂犬病予防法があるので、これはもう捕獲して処理できるということは法律的にも押さえられているんですけど、問題は猫だと思うんですよね。ヤンバルクイナにとって一番大きな影響は、もちろんマングースを除けばノネコと野良猫だと思うんですよ。この対策をきちんとやることがとても重要なことだと思うんですけれども、なかなか現法制度で猫対策は難しいんじゃないかと思っているんですけど、その辺をどう考えているかを教えてください。

○武内部会長 ありがとうございました。

磯部委員、お願いします。

○磯部委員 ありがとうございます。私も現地を見せていただいて、マングース対策で非常に長距離にわたって柵をつくるとかという努力をされていることを、とても感動しました。国立公園に指定されているからのことですけれども、ここに限られることではなく、外国なんかと比べるとレンジャーの人の数が少なくて、説明がまだまだ十分でないという印象を受けています。今回、先ほどのご説明でも、ダムがあって水資源利用とか防災であるとかということにも使われるということなので、訪問者の方が来たときに、よくわかるように説明ができる体制というのを、できる限りとっていただきたいというふうに希望しています。よろしくお願いします。

○武内部会長 ありがとうございました。

宮本委員、お願いします。

○宮本委員 私も視察に参加させていただきまして、返還地の部分の森が非常によいところがあるということがよくわかりました。あそこなしに国立公園、あるいは世界自然遺産というのは、あり得ないんではないかというふうに感じました。

二つ、質問させていただきたいです。一つ目は、その他の評価のところのcですが、私有地の取得の推進が要請されているということですけれども、これまで国立公園化するに当たって、あるいは世界自然遺産を推薦するに当たって、所有者が不明であるがために除外したという部分がもしあるのであれば、その辺りの状況を教えていただきたいと思います。

それから、もう一点は外来種に関してですが、ノネコ、ノイヌ、マングース等、大型の動物に対してはかなり体制が整っていると思うんですけれども、例えば植物や小型の無脊椎動物の侵入について、初動の対応が非常に重要だと考えております。それに対しての対応とか、現地の地元の方々も含めて、何か体制づくりをお考えかどうかということについて伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○武内部会長 ほかに、よろしいでしょうか。

それでは、事務局から、ただいまのご意見、ご質問に対して、それぞれ回答をお願いしたいと思います。

○国立公園課長 まず、最初に磯部先生からご指摘いただきました現場で解説できるレンジャーが少ないということでございます。アメリカの国立公園に比べて面積当たり5分の1の人数で環境省のレンジャーは頑張っているところでございます。現場のレンジャーにつきましては、2016年に100名、現場というのは地方環境事務所ではなくて、それよりもさらに現場の事務所でございます。2016年の100人から2017年には125人、2018年には150人、それからアクティブレンジャーにつきましても、2017年の122人から処遇の改善等に取り組んでいるところでございます。自然公園指導員約2,600名、それからパークボランティアの約1,500名、これらと全体として協力しながらやっているところでございますが、現場のレンジャーの拡大に向けて、引き続き取り組んでまいりたいと、そのように考えているところでございます。

○事務局 ご質問、ご意見等ありがとうございます。国立公園課の計画係の瀧口でございます。ご視察についても、大変多くの先生方にご参加いただきましてありがとうございました。

まず、尾崎委員からご質問いただきました、まず国立公園に期待をしたいということ、ありがとうございます。また、歩道の新設について、特に、土が流出するとか、新しくつくるときというのは、どうしても配慮が必要だと思うんですけれども、今回、車道については全て県道で、もともとある道路ですので、今回、その道を把握するということです。また、公園の利用上、重要な路線であるということで把握をするということなので、特段、大きな開削とかというのを今回を機にされるということは想定していません。

また、歩道についても、例えばこの玉辻山に向かう路線というものを今回変更しますけれども、例えば既存の路線が、結構人の入り込みが激しくて、洗掘されてしまっているようなところもありますので、そういったところは、適宜、人の数を制限したりですとか、場合によっては通行をとめて回復を待ってと、そういったことも公園事業道路の中でちゃんとやっていくということです。なので、公園計画として歩道を計画するということですが、使っていこうという環境負荷だけではなくて、歩道を適切に守っていこうということも整備の中で考えていくという目的もございます。そういった点で、今後、ご指摘も受けまして、歩道等については適切に管理を行っていきたいというふうに考えております。ありがとうございます。

 また、もう1点目は、中静委員よりいただきました、3特で生業との調和という点が挙げられていますがという点です。これは説明の中でもちょっと省略をさせていただいてしまったんですけども、首里城を建設するときの建材で使われる、その木がやんばるからとっているといった経緯もございまして、そこを結構大きく切り開かないといけないという場合があります。そういったところの公園法、地種区分、ゾーニングとの関係を考えて、3特というふうな設定をしているところもございます。また、国有林のところですね、現状、リュウキュウマツという沖縄の主要な建材の一つですけども、リュウキュウマツが既に生えているところ、そういったところは現状の自然環境をそのまま3特という形で把握をしていくと。そういった調整がなされております。

 続きまして、石井委員からいただきました、案外道路が多いというご指摘、確かに林道も結構あって、そういったご指摘をいただいたのかなと考えております。まず、ロードキルの対策なんですけども、こちらもご視察に行っていただいたときに、例えばロードキル注意しましょうという看板は、企業の力もいただきながら設置をさせていただいているというところがございます。今後とも拡張されますけれども、そこに含めて、道路については県道だったりしますので、県のほうとも調整を図っていくということでございます。また、アプローチしやすいといった点がございます。確かにお示ししている資料の中で、細かく林道を一個一個載せてはおりませんが、かなり網目状に入っていたりします。ただ、こういった点を広く公表してしまうと、それこそ盗掘ですとか、そういったものに使われてしまうという懸念がありますので、地元との調整の中では、そういった細かい林道が一本一本入った図面というのは使わないようにしようということで、まず、そこで抑止をしているといった点がございます。

 また、夜の管理についてということで、すみません、ちょっと現地の課長から一言お願いします。

那覇自然環境事務所 すみません。いつもありがとうございます。那覇自然環境事務所の速水と申します。

 夜の林道については、村営林道と県営林道のほうがございまして、村営林道のほうについては、夜間の通行止めというものをやっていて、入る場合には、事前に登録というか、届け出をしないといけないという形で行っています。また、県営林道についても、今後、夜間通行どめも含めて今検討しようというところで、方針を県のほうが出していますので、そういった形で、よりよい形に進めていけるように、今、環境省としても一緒に連携していきたいというふうに思っています。

 また、林道ですと、環境省のほうで林道パトロールを森林組合さんのほうに出させていただいていまして、そういったところで夜のパトロールのほうもやりつつ、道路という管理のほうもやりつつ、あわせて密猟対策というところでやっていきたいというふうに思っています。

○自然環境計画課長 それでは、世界遺産に関しての若干のご質問もありましたので、今回の勧告書の中で触れられている点だけ簡単にご説明いたします。

 まず、江崎委員のほうからのご質問、多分、世界遺産の関連ということですけれども、具体的には、世界遺産の今回の勧告の中では、「推薦地に統合するために採択された戦略をさらに進める」という文脈の中で、推薦資産の中の私有地を取得していくということが書かれています。実際、現地調査に入ったときも、奄美大島での私有地の取得計画、県と環境省のほうで計画的に取得を進めているということを説明しましたので、それをきちっと進めろというような指示というふうに理解をしております。

 それから、小泉透委員のほうからの侵略的外来種についてどういうような評価をなされているかということでございますけれども、これに関しては、まず保護管理の部分、もしくは脅威の部分で、一定の成果、例えばマングースに関しては、駆除事業により現在撲滅に近づいているということがきちんと書かれております。実は最後の勧告のところも、外来生物の対策について、事業を拡大するようにencourageするというような表現が書かれてあります。その前段として、note with appreciationという言葉を使っておりますけれども、要するにこれまでやってきた管理計画ですとか侵略的外来種の駆除管理の取組に対しては、一定の評価が与えられたということだと思いますので、それをさらに進めて、さらに問題のないようにと。あと、この評価書の中で一つ強調しているのは、モニタリングをきちっとやるようにということで、それは今の段階ではきちっとやられているということを前提に書かれているので、そこの部分については、かなり高い評価が与えられているというふうに理解をしております。

 宮本委員の外来生物のそのほかの種類に対する対策については、担当の外来生物対策室のほうからお答えをしたいと思います。

○外来生物対策室長 外来生物対策室長の曽宮でございます。

 体制づくりについては、私も那覇事務所のほうにおりましたけれども、地元のほうと、たしか協議会なり、ちょっと記憶が細かいところまで定かではございませんけれども、いずれにしろ地元の方々と連携をとりながらやっていっているということと、あと情報、要するに初動が非常に重要だというご指摘は、まさにそのとおりだと思いますので、本省としても、いろんな外来種に対する情報を地方事務所の中に流して、そこから、もし危険なものがあれば、対応をとっていただくように促していきたいというふうに考えています。

○希少種保全推進室長 続いて、後ろから、希少種保全推進室の番匠です。

 小菅委員からいただきましたノネコ・野良猫の問題です。現行法制度では難しいのではというようなご趣旨のご質問がありましたが、私たちとしても、希少種保全という観点で、ノネコ・野良猫対策、取り組んでおりまして、現行法制度では難しいということまでは考えておりません。ただ、例えばマングース対策、順調に進めておりますけれども、こちらのほうでは、当然ながら、殺処分前提でマングース対策を進めているというところですけれども、ノネコ・野良猫の場合は、その部分で非常にご意見、特に反対側のご意見を持つ方が多いということがありまして、行政的・政治的に進めることが、いろいろ抵抗があるというようなところになっております。その辺り、殺処分というところをどうするかということも含めて、ノネコ・野良猫の対策、重要なものと思って取り組んでいかなければいけないというふうに考えておりまして、現在も、やんばる地域でも対策については地元の方と協力をいたしまして、捕獲を進めているという状況にございます。

那覇自然環境事務所(速水企画官) 

 江崎先生のほうから、土地の所有者不明地についてお話がありまして、宮本先生のほうからも同様な話がございました。やんばるの今回の土地不明地というのは、琉球政府等の過去の経緯など、日本本土とは少し違った経緯もありまして、私有地ではありませんが、日本政府と書かれており、でも、日本政府のどの機関が所有しているのか確認できなかったものがございまして、土地不明という形で整理をさせていただきました。

 やんばる国立公園の指定において、土地不明の土地について除外をしたという例はございません。私有地についても、今回の地域において、取得の要請があるかどうかですけれども、現時点で特に環境省として調整を行っている土地はありません。

○自然環境計画課長(奥田課長) 遺産の中で推薦地から外したかというご質問だったと思いますけれども、基本的には、遺産地域の中で、そういう不明地を外したということではなくて、そういったものを含めていた、あえてそれで外したということはないということです。

○国立公園課長 以上でございます。

○武内部会長 以上でございますが、追加的な質問。

 どうぞ。

○小菅委員 ノネコの問題なんですけど、猟期外でノネコを捕獲することができるのかどうかというのが一つですよね。

 それと、ノネコと野良猫と飼い猫との区別ができないということが大きな問題になっていると思うんですけど、一度捕獲したときに、何らかの方法で、マイクロチップでも何でもいいんですけど、マーキングして、再捕獲されたら、これはもう所有者がいないということで殺処分できるということをきちんと明示するということで、積極的に生態系に影響を及ぼす猫については排除していくという考えを示すというのはいかがでしょうか。

○武内部会長 どうぞ。

○鳥獣保護管理室長 鳥獣保護管理室の西山でございます。

 鳥獣保護管理法に基づく狩猟鳥獣ということで言いますと、ノネコは対象になっておりますので、狩猟のできる動物ですけれども、狩猟という方法以外に、鳥獣保護管理法の許可を取っての捕獲というのは、どこでも、通年、(許可の)理屈が通ればできますので、その方法で駆除はできるということになります。

 それと、「法律上、犬と違って、猫は管理できない」ということについては、現状ではそのとおりなんですけども、(「法律」とは別に)市町村の「条例」によって飼い猫を管理しているところがありまして、このやんばる3村についても、かなり早い時期から条例をつくりまして、飼い猫の管理、飼い猫というのは野良猫に、行く行くはノネコにもなり得るものですけれども、しっかり管理して、完全登録制になっていたと思います。

 ちなみに、こういった飼い猫の完全登録制というのは、ほかのところでも例がありまして、小笠原村が一番古かったと思いますけれども、西表島のある竹富町ですとか、あるいは対馬ですとか、北は北海道の羽幌町ですとか、そういったところで条例を持っていて、これは比較的新しいんですけども、奄美大島の市町村でも条例をつくっているところです。私の知る限りでは、こういう条例をつくっているところは、全て希少種というか、在来種の保護のために条例をつくっています。繰り返しになりますが、やんばる3村では、条例をつくって、飼い猫は完全登録制になっていると聞いております。

(※飼い猫管理条例は鳥獣保護管理法ではなく動物愛護管理法に基づくもの。)

○武内部会長 ほかにございますか。

 どうぞ、大沼委員。

○大沼委員 非常に詳細にご説明いただきまして、どういう形でやんばる国立公園を拡充していくかということが、よく理解できました。こうした、新たにやんばる国立公園というものを、区域を変更することでの総合的効果がどのようなものなのか、そういったところをぜひ明らかにしていただけると、我々だけではなくて、国民にとってもわかりやすいんじゃないかと思います。しかも、先ほど武内先生からお話がありましたけれども、第五次環境基本計画では、環境と・経済と社会というのを軸にした環境政策というのを打ち出していくということをおっしゃられましたけども、こうした国立公園の政策の変更ということも、環境だけではなくて、例えば経済とか社会とかにどういった波及効果があるのかというところまで視野に入れてぜひご説明いただけると、非常に統合的な環境政策の中での位置付けというのが理解できるのではないかと思います。○武内部会長 ありがとうございました。

 何か事務局のほうからございますか。

○国立公園課長 今、ちょうど国立公園の満喫プロジェクトというのを開催しているところでございますけれども、国立公園を利用されている国内の方というのは、大体2泊3日、3万円ぐらいの支出を地元で宿泊ですとかお土産ですとか食事とかでされているんですけども、例えば外国人の方ですと、3泊4日で7万円というのが先行8公園の結果でございます。このように、国立公園の利用、一番多かったころからは15%ぐらい全体としては落ちているんですけれども、現在の長く守ってきた自然の保護を大前提にしながら、有効に利用していただくことによって、法目的であるところの保健ですとか教化ですとか、リフレッシュしていただき、そして、そこで利用していただいたことによって、地元に雇用ですとか、それから経済的なメリットができる。そして、できますれば、そのメリットをですね、協力金ですとか、トラストですとか、さまざまな形で地元の保護の活動をする担い手の方への質に充てていただいて、保護と利用の好循環をつくっていきたいと、このように考えております。地域循環共生圏の、あるいは地方創生にも、国立公園というのは重要な役割を果たすと考えておりますので、今後とも地域の皆さん方と協働型の管理というものをしっかりやりながら、適切に保護しながら利用をしていただく好循環をつくっていきたいと、そのように考えております。

○武内部会長 よろしいでしょうか。

 それでは、やんばる国立公園の公園区域及び公園計画の変更についてということについて、諮問に添付された変更書のとおりとすることにご異議はございませんでしょうか。

(異議なし)

○武内部会長 ありがとうございます。

 それでは、本件については適当と認めることにいたします。どうもありがとうございました。

 それでは、次の議題、海洋環境をはじめとする自然環境の保全につき講ずべき措置について、この点について事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 議事の2番をご説明させていただきます。自然環境計画の岡野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、海洋環境をはじめとする自然環境の保全につき講ずべき措置について【諮問】ということでございまして、諮問につきましては、ペーパーのほうでお配りをさせていただいております。

 本件は、海洋環境をはじめとしてということで諮問をさせていただいておりますけれども、背景として二つございます。一つが、平成21年6月に改正され、22年に施行されました自然環境保全法、この法律の中に、一つは海域特別地区という制度を設けていただいております。また、陸域においては、シカ等の食害に対応するための生態系維持回復事業ということを盛り込んでいただいておりまして、それの施行状況を踏まえた検討でございます。もう一つが海洋保護区に関する国際的な目標に対する対応。この二つの背景がございます。

 まず海洋保護区のことについてご説明をさせていただければと思います。

 資料2-4でございます。

 現在、海洋保護区については、いくつかの国際目標がございます。一つが生物多様性条約愛知目標にございますように、2020年までに、沿岸域及び海域の10%を保護地域システム、その他の効果的な地域をベースとする手段を通じて保全されるということが目標に掲げられております。また、SDGs(持続可能な開発目標)におきましても、同様の目標が設定されているところでございます。

 海洋保護区につきましては、原生的な自然環境の保全を図るもののみならず、持続的な自然資源の利用をしていく、そういったことも含めて保護区とされておりまして、こちらの保護区が、今、国際的に設定が進んでいるところでございます。

 3ページでございます。現在の全世界の保護区の設定状況でございますけれども、国家管轄権域の既に14.4%に海洋保護区が設置されておりまして、2020年には23%を超える見込みということでございます。また、近年の特徴としまして、EEZを含む大規模な海洋保護区の設定が各国で進んでいるという状況でございます。

 我が国の海洋保護区の状況でございます。我が国も、生物多様性国家戦略、それから海洋基本計画に10%という目標を書き込んでいるところでございます。また、海洋保護区の定義につきまして、「海洋生態系の健全な構造と機能を支える生物多様性の保全および生態系サービスの持続可能な利用を目的として、

利用形態を考慮し、法律又はその他の効果的な手法により管理される明確に特定された区域。」ということで定義をいたしておりまして、これに基づいて計算したところ、現在、管轄水域の約8.3%が海洋保護区になっているという状況でございます。

 5ページでございます。こちらが現在の設定状況でございます。このうち環境省所管のものは約0.5%、主に水産庁所管のものが8.1%で、多くを水産庁所管の制度によっているところでございます。具体的な制度でございますけれども、一つは自然景観の保護ということで、環境省が所管しております自然公園等がございます。

 それから、もう一つ、自然環境又は生物の生息・生育場の保護等ということで、8ページでございますけれども、自然環境保全地域、鳥獣保護区、生息地等保護区、天然記念物、こういったものも海洋保護区として認められておりますけれども、実際の指定はごくわずかという状況でございます。

 続いて、9ページでございますが、水産動植物の保護培養等を目的とする制度でございまして、こちらは保護水面や共同漁業権区域、こういったものが海洋保護区と認められておりまして、こちらのほうが8.1%を占めるという状況でございます。

 こういった中で、環境省につきましても、海洋保護区の管理の充実ということで海域の適正管理の強化であるとか、自然再生とか、そういった取組を進めておりますけれども、やはり海洋保護区のさらなる拡充が必要ということでございます。

 9ページでございます。そういった状況を踏まえまして、今後の海洋保護区の設定の基礎資料となるべく、重要海域というものを選定させていただいております。こちらは生態学的・生物学的に重要な海域ということで、科学的・客観的な観点からの基礎資料ということでまとめさせていただいてございます。専門家の先生から成る検討会を設置させていただきまして、2016年4月に公表をさせていただいているところでございます。こういった中で、重要海域の中から社会的・経済的・文化的な要因も考慮しつつ海洋保護区の設定を進めていきたいと考えているところでございます。

 11ページでございます。重要海域に選ばれている沿岸域でございます。こちらの定義でございますけれども、領海かつ水深200mより浅い部分を沿岸域というふうに定義をさせていただいております。

 続いて、12ページ、沖合の表層域でございます。こちらは沿岸域を除いた海域で、主に表層部に生物多様性的な重要性があるというふうに評価された場所でございます。

 続いて、13ページでございます。沖合の海底域でございます。こういったところが選ばれているところでございます。

 また、この重要海域につきましては、生物多様性条約事務局におきましても、国際的なEBSAs、重要海域として抽出をしていくという作業が行われておりまして、日本の重要海域の選定もベースにしながら、以下の6海域が重要海域として選定されているという状況でございます。

 今、ご説明させていただきました重要海域が実際に海洋保護区とどれくらい設定されているかというものを分析したものが15ページでございます。沿岸域につきましては、既に7割近くの海域が保護区と設定をされております。一方、沖合の海底域及び表層域については、1割あるいは2割以下という状況でございます。

 こういった状況の中で、今後、海洋保護区の設定を進めていくためには、沖合域という部分がかなり重要ではないかというふうに考えておりまして、15ページでございますけれども、5月に閣議決定されました第3期の海洋基本計画におきまして、10%の海洋保護区の設定を推進することに加え、これまでに設定が進んでいなかった沖合域について、今後の海洋産業による開発・利用という面も考慮しつつ、具体的な設定のあり方について検討を行い、その結果を10%目標の達成に生かしていくということで記述されておりまして、今後、沖合域での海洋保護区の設定に向けた、検討が必要という状況になってございます。

 環境省といたしましても、こういった流れを踏まえまして、沖合域の新たな海洋保護区の設置に向けた調査・研究を進めてきているところでございます。こういった中で、17ページの真ん中でございますけれども、沖合海底域につきましては、特有の生態系、これは海山、熱水噴出域、湧水域、海溝等が存在しておりますので、こういったところ、保護を進めていくというようなことを考えていく必要があるだろうというふうに考えております。

 この中で、今後、保全するために必要な考慮すべき事項でありますとか、新たな海洋保護区をEEZというところに展開するに当たって、どのような課題があるのか、そういったものを検討していく必要があるというふうに考えておりまして、今後、これらの検討を進めながら、海洋保護区の設定を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 資料が前後して恐縮でございますけれども、資料2-3をご覧いただければと思います。

 今ご説明させていただきましたのが海洋保護区の背景でございますけど、もう1点、自然環境保全法の改正の施行状況を勘案した見直しというものが求められてございます。前回の改正のときに、生物多様性の保全というものを目的に加えさせていただいております。また、海域における保全施策の充実ということと、シカの食害等により損なわれた生態系の回復という、そういったものを追加させていただいておりまして、それの取組状況として、その資料の2-3の裏面でございますけれども、これまでの取組状況をお示ししております。

 海のほうにつきましては、先ほどご説明いたしました重要海域の抽出というものを進めてきているところでございますけれども、あわせて、陸域の部分については、シカの食害等の被害状況の把握といったことを進めさせていただいております。現時点においては、生態系維持回復事業を導入する必要性等は確認されてございませんので、今後は、実際の地域の状況を勘案しながら、その対応について検討してまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 それでは、資料2-2のご説明をさせていただければと思います。

 背景につきましては、今ご説明しましたように、海洋保護区、それから自然環境保全法の改正による状況といった、こういった背景がございますというところを、ご説明をさせていただいております。

 今後の検討の進め方でございますけれども、本日、本部会において諮問をさせていただきたいと考えております。その後、沖合域の海洋保護区の設定につきましては、別途、検討会を設けさせていただいて、専門家の皆様と議論をし、案の作成をしていきたいというふうに考えております。一方、陸域につきましては、環境省等による個別のヒアリング等を実施して、施行状況を把握したいというふうに考えております。そういった二つの検討を踏まえまして、10月ごろ、自然環境部会に答申案を提案させていただいて、議論をいただいた後、年末、遅くとも2月には自然環境部会としての答申をいただければというふうに考えておるところでございます。

 なお、検討会につきましては、こちらの先生方に委員をお願いしたいと考えております。中央環境審議会からは大塚委員にお加わりいただいて、また、本部会からは白山委員にお加わりいただいて、議論を進め、その結果をこの部会の中で議論をいただきたいというふうに考えております。

 以上が本諮問に係る説明でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの諮問内容を含むご説明に関して、ご質問、ご意見のある方は、札を立てていただきたいと思います。

 柴田委員、お願いします。

○柴田委員 どうもありがとうございました。

 国際法を専門にしております観点から、今回のご提案、大変興味深く今後の展開を私としてもフォローさせていただきたいと思っております。

 特に、EEZというふうにおっしゃいますが、沖合の海底域の特有な生態系について、日本として、それをどういうふうにまず把握をし、そして、もし貴重な生態系ないしは場所というものが認定されたときに、それをどういうふうに保護ないしは保護しつつ持続可能な利用もしていくのかという、この辺り、これも日本だけの問題ではなくて、現在、先ほどの地図を見てもわかるとおり、日本が設定したすぐその後はもう公海になりますので、つまり、現在国連等で議論がされているBBNJですね、国家管轄権の区域を越えるところでの同じような生態系をどういうふうに保護していくかという、この議論と直結する恐らく作業になると思いますので、ぜひ、先ほどご説明があったとおり、科学的な知見に基づいて、この議論を進めていただきたいというふうに思っております。提案自体は賛成であります。

 以上でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 二宮委員、お願いします。

○二宮委員 海洋政策のあり方の中で、海洋ごみ対策等を推進していくというふうに書かれているんですけれども、現在、プラスチックごみ、マイクロプラスチックの問題というのは、極めて深刻になっていると思うんですけれども、やはり日本の認識と欧米との認識に差があるのではないかなというように感じています。ですから、対策という中で、今、既にとっておられることもあるのかもしれませんが、例えば啓蒙・啓発の策とか、ルールづくりとか、どういったものがこれからとられていくのか。やはり、かなりスピード感を持って全体の雰囲気を変えていかなきゃいけないのかなというふうに思っています。

○武内部会長 ありがとうございました。

 涌井委員、お願いします。

○涌井委員 非常に時宜を得たご提案だと思うんですね。ちょうどこの5月に、スウェーデンのマルメに海洋研究所が設立をされるとか、そういう状況があるんですけども、専門家の先生方のご議論に期待をしたいんですが、そのうち二つの点について、ぜひ検討を深化させていただきたいなという気がいたします。

 それは単なるゾーニングによる、いわばクラシフィケーションによって保護の程度を決めるということのみならず、やっぱりMSC漁業認証、こういうような形でのソフトでの対応策、こういったものについても浸透をぜひ図っていただくことが非常に重要なのではないかなというのが1点。

 それから、二つ目は、もう既にさまざまな学術的な議論があって、ロシア極東地域の森林等に由来する海域の養分が東北太平洋沖合いの海洋水産資源を活性化させているというようなご指摘もあるわけですけれども、環境省も力を入れている、先ほど会長の指摘もあるとおり、森・里・川・海の良好な循環が保たれてこそ、つまり陸域の健全な環境が海洋域の健全性を維持するということについても、少し触れていただくようにしていただきたい。

 以上、ご提案です。

○武内部会長 ありがとうございました。

 大沼委員、お願いします。

○大沼委員 海洋保護区をこのように沖合まで拡大していくときに、管理というものをどのようにしていくかということをお考えなのかということをお聞きしたいと思います。特に、数年前には、沖合の海底資源である希少な宝石サンゴが非常に密漁という被害に遭ったと報じられていますけれども、そういったことも含めて、今後、生物多様性プラス希少資源の管理というものを具体的にどういうふうな形にしていくのかということをぜひご説明いただければと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 磯部委員、お願いします。

○磯部委員 資料2-6を拝見しますと、文献による情報収集は実施済みということでありますけれども、海域では離島が非常に国際的にも大事なところで、ここは文献ではデータが十分にないところが多いかと思います。今回、直接この動きということではないのかもしれませんけれども、やはりその辺の情報を蓄積するシステムづくりであるとか、何かそういう努力というのはぜひしていって、必要なところはこの中に含めていくという努力も同時に必要なのではないかというふうに思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 ほかによろしいでしょうか。

 それでは、事務局のほうからお願いいたします。

○事務局 ありがとうございます。

 今、柴田委員からご指摘いただきましたように、現在、公海におきまして、BBNJの議論が進んでおるところでございますので、そういった動向を見極めながら、連携した取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

 それから、海洋ごみ、プラスチックのごみの問題、これは非常に大きな課題になってございます。環境省におきましても、水・大気局を中心にその対応をとっておりますので、そういったところと連携しながら進めてまいりたいというふうに考えてございます。

 それから、涌井先生からご指摘いただきましたように、MSCなどの資源管理、それから環境に配慮した資源管理との連携ということで、やはり漁業につきましては、なかなか保護区では十分に対応できない部分が多くございます。そういったところを、水産庁の資源管理の取組等と連携を図りながら、生物多様性の保全と持続可能な利用に進めていければと思います。

 それから、陸域との関係につきまして、今回、海洋基本計画の中でも、統合的沿岸管理という考え方の中で、陸域と連携した取組を進めていくようということで議論がございます。その中で、森・里・川・海の取組もご報告等しておりますので、そういったところと連携を進めてまいりたいと思っております。

 それから、大沼委員からご指摘がありました管理のあり方ですね、これが今後の課題かというふうに思っております。なかなか環境省だけの管理は難しいため、他省庁のさまざまな管理システムと統合した形で管理ができるように、今後調整を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 それから、磯部委員からご指摘いただきました資料2-6のところでございますけども、こちらは自然環境保全地域の状況の把握ということで進めさせていただいておりまして、既に保全地域等になっている部分の把握をしているというところでございます。離島につきまして、こちらの自然環境保全地域になっているような部分が、南硫黄島とか、そういったところに限定されてございます。そういったところの部分は情報把握等を進めてございますが、離島全体というところでございますと、なかなか環境省で十分できない部分もございますので、そういったところ、離島のさまざまな施策をやっているところと情報共有が必要なのかなと思っていまして、今後、考えてまいりたいと思ってございます。

 一通り、以上でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 ほかに。

 白山委員、どうぞ。

○白山委員 海洋保護区の設定に向けた検討会のメンバーになることになっておりますので、いろいろ貴重なご意見、ありがとうございます。伺いましたご意見も十分考慮しながら検討を進めさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

○武内部会長 どうぞ、石井信夫委員。

○石井(信)委員 ありがとうございます。

 議題と直接関係がないので、どうしようかなと思っていたんですが、資料2-3に、陸域のほうでシカの食害の被害状況について少し説明がありました。それで、現時点では、事業を導入する必要性が未確認ということですけれども、自然環境保全地域に限ったことなんでしょうが、そういう事業導入の必要が今のところ認められないという結論を出したプロセスと、その理由と、それから、これからどういうことを考えているかということで、もし時間があればで結構ですけども、説明をお願いできればと思います。

○武内部会長 どうぞ。

○事務局 ありがとうございます。

 こちらは、まず、27年度に情報収集業務ということで、コンサルに依頼をしまして、文献等で把握をしたところでございます。各地、実際にシカの影響が出ているというところもございますけれども、まだ事業の導入に至るというところには至ってないというのが当時の結論でございました。

 資料2-6になりますけれども、改めて、いま一度、状況の把握をしたいというふうに考えてございます。陸域における施行状況の管理ということで、実施予定以降でございますけれども、今回は直接担当する事務所あるいは都道府県に対して意見聴取を行いつつ、有識者のヒアリングを行って、その状況について改めて確認をしたいということでございます。これで確認するところは、生態系維持回復事業というものを実施していく必要があるか、ないかとあわせまして、法律の措置として、何か必要な追加すべきものがないかといったものを把握していきたいというふうに考えておるところでございます。

○武内部会長 それでは、海洋環境をはじめとする自然環境の保全につき講ずべき措置について、今後、答申までのスケジュールを踏まえ議論していくということについて、ご異議はございませんでしょうか。

(異議なし)

○武内部会長 ありがとうございます。

 それでは、次の部会開催時までに事務局にて調整をお願いしたいと思います。

 それでは、次の議題、その他において報告事項がございます。これについて、事務局より説明をお願いいたします。

 なお、報告事項全てが終了した後に、ご質問・ご意見をお受けしたいと思います。

 それじゃ、どうぞよろしくお願いします。

○事務局 失礼いたします。大臣官房環境計画課の山田と申します。総合政策部会の事務局をしております。今日はよろしくお願いいたします。

 本日は、先月、閣議決定させていただきました第五次環境基本計画についてご説明させていただきたいと思います。

 タブレットの議事3(統合版)報告事項というものを開いていただければと思います。

 ここのところに環境基本計画関係は全てまとめてございます。自然部会関係では、1月18日に野生生物小委員会、2月22日に自然公園小委員会にて状況報告をさせていただきましたが、今回、自然環境部会に初めてご報告させていただくものでございます。

 この計画の特徴といたしましては、まさに先ほど、武内総合政策部会長から、冒頭ご挨拶で発言されたとおりでございまして、法定計画の中でSDGsを初めて取り入れさせていただいた計画ということでございます。環境政策が経済・社会にもいい影響を与えることがあるということ、ですから、経済・社会側も環境にいいことをしてほしいということのメッセージにしたいと思っております。そういうことで、Win-Winの関係をつくりたい、統合的向上というふうな表現にしておりますが、と考えております。もう一つは、地域に着目ということで、地域循環共生圏についてでございますが、後ほど説明させていただければと思います。

 特に、総合政策部会と自然環境部会は、部会長がともに武内先生ということもありますので、よく連携してまいりたいと考えております。

 それでは、次のページをご覧下さい。今、傍聴者にお配りしている資料には一部落丁等ございますので、こちらのスライドをご覧いただければと思います。

 第五次環境基本計画の全体構成でございますが、この計画は、環境基本法に基づく法定計画でございまして、6年ごとに見直しをしています。第四次計画は24年4月に閣議決定いたしました。そして、29年2月に第五次計画に関する諮問を受けまして、先月17日に閣議決定したものでございます。

4部構成でございまして、第1部が、環境・経済・社会の状況、環境政策の展開の基本的方向ということでございます。

 第2部が、環境政策の具体的な展開ということで、これは分野横断的な六つの重点戦略、経済、国土、地域、暮らし、技術、国際とございます。これらは、それぞれ、地球温暖化ですとか、生物多様性という環境に関する分野ではなく、経済や社会の課題に対応した形の重点戦略ということになっております。その重点戦略の展開に当たっては、パートナーシップは、より重視されるということになります。特に、高い目標を掲げるそのSDGsですとか、そのパリ協定といったものに対応するということからしても、よりみんなで連携してやっていくということが求められております。さらには、地域循環共生圏の創造を目指すということです。二つ目が、環境リスク管理等の環境保全の取組は、「重点戦略を支える環境政策」として揺るぎなく着実に推進ということで、こちらに、その生物多様性、自然共生についても位置付けられております。

 第3部、計画の効果的実施ですが、こちらでフォローアップについて記載させていただいております。PDCAサイクルを意識した形にしております。

 第4部が環境保全施策の体系ということで、全体的な記述となってございます。

 我が国が抱える環境・経済・社会の課題ということで、スライドをご覧いただければと思います。環境の課題、経済の課題、社会の課題、それぞれございますが、例えば社会の課題、少子高齢化、人口減少といったようなものが環境の課題の森林・里地里山の荒廃、野生鳥獣被害、それから、経済の課題の地域経済の疲弊といったようなものにつながるなど、それぞれの課題は独立しているのではなく、相互に連関・複雑化しているということが特に最近言えるのではないかと思っております。ですので、環境だけよくすればいいという環境基本計画ではなく、環境・経済・社会を統合的に向上していくということが求められると考えております。

 世界の動きを見ますと、2015年ですが、SDGsを含みます2030アジェンダ、それから、パリ協定がともに採択された年でございます。これらは、ともに高い目標を掲げて、それに向かって進めていくという動きですので、今までのやり方にとらわれず、大きく考え方を転換(パラダイムシフト)していくことが必要ではないのかと考えております。

 そういう中で第五次環境基本計画の策定となったわけでございますが、目指すべき社会の姿として、先ほど来申し上げておりますとおり地域循環共生圏というものを掲げております。このスライドの右上の図をご覧いただければと思いますが、農山漁村、都市それぞれございます。それぞれが、それぞれの地域資源を持っております。その地域資源を最大限活用していくということが必要です。例えば、現在、各地域のエネルギー収支は、ほぼ赤字の状態といいますか、お金を出して石油などを買っているという状態になっておりますが、それらを自分たちの再生可能エネルギーで、その支出を一部抑えることもできますし、大災害時には、それが非常電源にもなり得る、もしくは、再生可能エネルギーという仕事に対する雇用が地域に生まれてくるといったように、マルチベネフィットを生み出すということが可能になっております。

 さらに、地産地消といったようなことも地域資源の活用ということにも役立つと思います。その上で、それぞれの地域が、それでも余るもの、足らないもの、あると思います。農山漁村からは、自然、資源、生態系サービスということで、食料、水、木材といったようなものが都市に供給されます。ということですので、都市からは資金、人材などを提供するということですので、エコツーリズムのような、まずは体験してみましょうということも含めてやっていくということが重要かなと。それぞれの資源を活用しながら、お互いがお互いを支え合うという自立・分散型の社会の構造というものをつくっていければと思っております。

 ということですので、本計画のアプローチといたしまして、SDGsの考え方も活用し、環境・経済・社会の統合的向上を具体化していく、ということでございます。あらゆる観点からイノベーションを創出し、諸課題の同時解決を図っていくということで、新たな成長につなげていくということでございます。二つ目が、地域資源を持続可能な形で最大限活用し、経済・社会活動を向上させていくと、環境で地方を元気に、ということを訴えていきたいと思います。三つ目は、先ほど申し上げた通り、より幅広い関係者との連携、でございます。

 ということで、先ほども申し上げましたとおり、環境という観点ではなく、その経済や社会の課題も解決するという観点から、経済、国土、地域、暮らし、技術、国際といった六つの重点戦略を策定させていただきました。これらの施策の中には、全て環境施策が入ります。

 そして、重点戦略には、自然環境関係でも関係するものはございまして、例えば、その国土のところですが、スライドには、少ししか記述はございませんが、例えば、自然資本の維持・充実・活用ですとか、森林の整備・保全、生態系ネットワークの構築、海洋環境の保全、健全な水環境の維持または回復、人口減少下における土地の適切な管理と自然環境を保全・再生・活用する国土利用、外来生物対策、さらには、Eco-DRRの推進といったようなところが掲げられております。

 地域づくりという観点でも、国立公園を軸として地方創生、エコツーリズムなど各種ツーリズムの推進、環境保全や持続可能性に着目した地域産業の付加価値向上、抜本的な鳥獣捕獲・強化対策、森・里・川・海をつなぎ、支える取組、都市と農山漁村の共生・対流といったようなものがございます。

 それから、暮らしのところですが、こちらも、ヒントウチ等による健康寿命の延伸、ペットの適正飼育推進による生活の質の向上、それから、自然体験活動、農山漁村体験等の推進など自然環境政策関係でも、重点戦略に関係するものはたくさんあるということですので、自然環境側からも、重点戦略をどんどん進めていくということをやっていっていただければと思っております。また、生物多様性の確保、自然共生をはじめといたします重点戦略を支える環境政策は揺るぎなく着実に推進していきたいと思っております。

 あとの部分は参考資料なので、少し省略をさせていただいた上で、次の資料に移らせていただきます。

 点検の進め方についてということで、4月9日の総合政策部会で議論させていただいたものでございます。こちらの細かい説明は省略させていただきますが、基本的には、自然環境部会をはじめといたします各部会が、最初に点検をいたしまして、それらの結果を総合政策部会に報告していただきます。それを、総合政策部会が全体を見ながら点検をさせていただくという流れにしたいと思っております。その際は、このページの真ん中辺りにもありますけれども、個別計画、自然環境局関係では生物多様性国家戦略だと思いますが、に基づく点検結果を可能な限り活用するということで、各部会の意向を反映するとともに、事務上の作業の省略化を図りたいと思っております。

 こちらのページの上の方にありますとおり、点検のスケジュールといたしましては、2年目と4年目に、各部会による各分野の点検を行いたいと思っております。ですので、来年度から、自然環境部会におかれましても、環境基本計画の点検についてご協力をいただきたいと思っております。

 それから、ヒアリングについてとでございます。こちら、特に総合政策部会についてでございますが、この環境・経済・社会の統合的向上ということについて、一つ一つの施策を見ていくというよりも、もっと機運を盛り上げていきたいということで、優良事例のヒアリングをすることによって、またいろいろな課題も出てくるでしょうし、実は、世の中に環境・経済・社会の統合的向上を目指す取組というのが多くあるということについてもお示ししたいと考えてございます。

 あと、指標についても資料として入れさせていただきました。なかなか、各この重点戦略ですとか、地域循環共生圏といったようなものを指標ではかるのは難しいことでございますが、その中でも、この環境基本計画本文の構成を踏まえて、どのような指標が必要なのかということにつきまして、総合政策部会でたたき台をつくらせていただいたものでございます。これらをもとに、事務局ともご相談をいたしまして、今後、指標をつくり、フォローアップに役立てていきたいと思っております。

 私からは以上でございます。

○国立公園課長 続きまして、統合版でございますと35ページ、資料3-2、国立公園満喫プロジェクトの進捗状況について、ご説明をさせていただきます。

 統合版の36ページでございます。緑のところでございますが、国立公園満喫プロジェクトは、政府の明日の日本を支える観光ビジョンに基づき、青のところに書いてございますとおり、最大の魅力は自然そのものというコンセプトのもと、右端、上のほうでございます、訪日外国人の国内旅行者数を、2015年の490万人から、2020年1,000万人にするという目標に向け、2016年546万人、2017年600万人と取組を進めているところでございます。

 ステップアッププログラムの策定、緑のところに先行8公園を28年7月に選定いたしまして、12月に、公園ごとに地元の皆様と地域協議会をつくって、行動計画であるステップアッププログラムを策定し、取組を進めているところでございます。右の矢印のところにございますように、先行8公園におけるソフト事業を中心とする成果を水平展開する取組を29年の11月から始めておりまして、34公園全体で目標を達成するという考えでございます。その右でございますが、本年は、2020年までの中間年に当たることから、プロジェクト全体の中間評価を行いまして、8月ごろにはアクションプランを策定し、年内にステップアッププログラムの改定をする考えでございます。

 続きまして、37ページから、いくつか代表的な取組を紹介させていただきます。公共施設の民間開放につきましては、伊勢志摩国立公園の英虞湾の景色が一望できる横山展望台について、4月に展望デッキの供用を開始し、8月からは民間カフェをオープンし、英虞湾の美しい海岸を見ながら、ゆっくりとくつろいでいただく取組を進めております。

 また、38ページでございますが、大山寺地区での官民連携の取組として、大山町で廃屋を撤去し、そこにカフェや物販機能を有する参道市場の整備を5月にオープンすることといたしております。

 また、39ページでございますが、エントランス空間の機能分担と再整備ということで、国、県、民間施設が協力しながら、統一的な景観のもとでの学習施設等の充実を図っているところでございます。

 また、その次のページでございます。外国人への効果的な情報発信ということで、阿寒・摩周の川湯エコミュージアムでは、真ん中にございますように、ただ単に日本語を英訳するわけではなく、ネイティブの翻訳によって外国人にわかりやすい解説文を整備する予定となっております。一番下にございますように、2020年までに、先行8公園の主要な利用拠点において同様の取組を進めてまいります。

 また、41ページでございます利用者負担による保全の仕組みでございます。世界最大級の両生類オオサンショウウオについて、研究者に同行する形でのツアーを開始いたしております。ここに協力金をいただいたものを、その、さらに研究に当てるということで、保護と利用の好循環の仕組みの一例でございます。

 また、42ページがコンテンツの磨き上げでございます。外国人の方に参加してもらったファムトリップを受けてコンテンツの磨き上げをして、さらにそれを8万部の広報誌を作って、外国人がよく来るところで見ていただくような取組としております。

 43ページでございますが、SNS、それから日本政府観光局との連携によるグローバルサイト、それから、34のオフィシャルパートナーとの連携によって取組を進めているところでございます。

 今後とも、日本を訪問する多くの方々に、この国立公園のすばらしさを体感していただきまして、自然環境の価値の認識を深め、人と自然が共生する社会の実現に貢献してまいりたいとこのように考えております。

○希少種保全推進室長 引き続きまして、資料3-3で、トキの関係をご説明させていただきます。統合版の資料では44ページになります。

 5月9日の日中首脳会談におきまして、日中両総理間でトキの提供について合意をいただきました。同日、覚書に署名をいただきまして、2羽の提供が11年ぶりに決まったということになります。日本のトキにつきましては、このページの左下のところ、赤のところに5羽提供が書かれておりますが、これらの中国から提供された5羽から増やしてきているというところでございまして、遺伝的多様性を確保するために、新たなトキ提供を要請してきていたところです。今回の提供によりまして、今後の野生復帰がさらに安定的に進むことを期待しております。

 実際にいつ来るかというところですが、こちらは、中国側と協議中でございまして、現在のところ、決まっておりません。ただ、さまざまな手続はございますけれども、早急な提供にお互い努力するということで合意をしております。現在の日本のトキの状況を2ページ目から記載をしております。4月1日現在で、野生下のトキ286羽になっております。飼育下には179羽がおります。現在も繁殖期でございますので、順調にふ化して増えているというような状況になっております。

 次のページが野生復帰の状況です。野生復帰につきましては、放鳥事業を平成20年から10年間やってきておりまして、この10年間で合計289羽を放鳥しております。野生下での繁殖状況、昨年度でいいますと、巣立ち数が77というような状況になっておりまして、順調に増えてきているというような状況になっております。

 ご報告は以上です。

○外来生物対策室長 統合版だと47ページになっているかと思いますけれども、ゲノム編集の概念の整理について、ご報告をさせていただければと思います。

 現行においては、遺伝子改編生物、これは生物多様性に影響を与えるものについては、カルタヘナ法において規制をされているところでございますけれども、最近、非常に簡単に、しかも迅速に遺伝子を改編するゲノム編集技術といったものが急速に発展をとしてきております。これにつきましては、カルタヘナ法に恐らく対象になるであろうといったものと、必ずしもそうではないものと、いろいろな技術が実は混在をしておりまして、それの技術的な整理をしていきたいということでございます。

 現在、この部会の下に遺伝子組換え生物等専門委員会、資料につきましては47から50ページ辺りに書かれてございますけれども、この委員会がございますので、基本的には、この専門委員会で議論をしたいというふうに思ってございますけれども、ただ、かなり技術的な面、検討内容を含むということでございますので、そこの47ページの下のほうに書いてございますとおり、ゲノム編集技術等検討会というものを設けまして、そこで検討をし、それを専門委員会にご報告をし、さらに、この部会にご報告をするとそういう段取りを考えてございます。

 なお、専門委員会でございますけれども、必ずしも一部の委員については、継続のご意思の確認が取れていない先生もいらっしゃいますので、これは、部会長が委員については指名ということになってございますので、またご相談をかける場合もあるかと思います。

 いずれにいたしましても、この検討委員会でございますけれども、10名程度、もう少し現況において増えそうな状況でございますけれども、10名程度の委員において技術的な検討をしていただいて、スケジュールについては、その下のところに書いてございますとおり、6月、7月にかけて専門委員会、それから検討会を実施し、9月から10月を目処に、自然環境部会のほうにご報告をさせていただきたいというふうに考えてございます。

 私からは以上です。

○生物多様性戦略推進室長 続きまして、ポスト愛知目標の検討について、ご報告させていただきます。資料3-5です。統合版ですと52ページからになります。

 初めに、ポスト愛知目標に関するスケジュールについてご説明いたします。

 ご承知のとおり、2010年のCOP10で採択された生物多様性の世界目標である愛知目標は、2020年に中国で開催されるCOP15において見直され、ポスト愛知目標、すなわち次の世界目標として決定されます。現在、生物多様性条約の補助機関会合では、愛知目標達成状況やポスト愛知目標の今後の検討過程等についての議論が徐々に開始されています。本年11月、エジプトで開催されるCOP14ではポスト目標の検討の進め方が議論され、IPBESによる評価、さらには、生物多様性条約事務局による評価も進められている状況でございます。

 次のページ、54ページになります。環境省におきましても、世界的な動向を見ながら、ポスト愛知目標への提案内容の検討を昨年より開始しております。GBOですとかIPBES等の客観的な評価に基づく課題、さらには、普段の業務の中で問題意識を踏まえまして、武内先生を初めとする専門家の方々とも意見交換を進めております。また、昨日は造園学会におきまして、意見交換の機会をいただき、下村先生にも大変お世話になりました。

 その次、スライドの55でございますが、これまでの意見交換等で指摘された主な内容をご説明いたします。生物多様性はローカルな課題であるということを踏まえて、これに適切に対応できるような目標であるとか、その指標を提案していくこと、また、生物多様性の観点からのプラネタリー・バウンダリーの研究、さらには、森・里・川・海のようなアプローチを発信していくと、そういったことが日本からのユニークな提案になるのではないかと、そういったご意見をいただいています。これまでのご指摘を踏まえまして、さらに検討を深めてまいりたいと考えております。

 その次、56ページに参ります。IPBESの評価報告書についてご説明をさせていただきます。生物多様性版IPCCとも呼ばれておりますIPBESにつきましては、生物多様性の世界的な評価を進めているところでございますけれども、こうした報告書は、ポスト愛知目標の検討に必要な科学的な知見を提供するものでもあります。今年の3月に開催されました第6回総会におきましては、世界を4地域に分けました地域別の評価報告書、さらには、土地劣化に関する評価報告書がまとめられております。

 なお、IPBESの専門家パネルの一員といたしまして、東大の橋本先生が、アジア枠の5人の中の1名として選定されております。

 その次、57ページでございます。評価報告書は非常に膨大なものでございますが、ポイントを絞ってご説明をさせていただきますと、アジア・オセアニア地域の評価報告では、特に海洋生態系への危機的状況が強調されております。このままでは2048年までに漁業資源が枯渇する可能性ですとか、サンゴ礁は2050年までに9割が著しく劣化すると、そういったことが指摘されています。一方で、森林につきましては増加傾向にあることが示されております。

 次、58ページに参ります。土地劣化・再生評価の報告書でございます。この報告書につきましては、先進国の大量消費のライフスタイルですとか、途上国の消費拡大が全世界の土地劣化を促進する大きな要因であると。自然資源の利用者が土地劣化の影響を直接受けていないため、行動につながらないと、こういった指摘がされています。対策として、セクター横断の行動計画ですとか有害補助金の排除等、そして、生態系土地利用を全体のバランスを考えた取組の必要性が指摘されています。この指摘につきましては、里山イニシアチブで進められているランドスケープ・アプローチとも軌を一にするものと考えております。

 最後になりますが、59ページ以降、国別報告書についてご説明をさせていただきます。ポスト愛知目標の検討過程では、条約の実施状況の評価、これは非常に重要な資料となります。そのもととなるものが、各締約国から作成する国別報告書でございます。各国とも、年内の条約事務局への提出に向けて準備を進めておるところでございますが、環境省におきましても、現在、専門家、関係学会、関係団体とも意見交換をしながら取りまとめ作業をしております。現在位置でございますけれども、スケジュール表にあるパブリックコメントの前の段階にあります。特に今日は、本日は、第3章の国別目標に向けた進捗の評価について、その作業状況を報告させていただきたいと思います。

 次のページ、60ページには、国別報告書の構成が書いてございます。この構成でございますけれども、全体で7章の構成になっております。この中で、今回の報告書で大きく、これまでの報告書と異なる点は、第Ⅲ章の国別目標の進捗評価についてです。これが、下の枠にございますように、国別の達成状況、進捗状況評価というのを6段階で評価するということが新しく様式として定められております。目標を超えて達成する見込みから、目標から遠ざかっている、さらには不明といった6段階で評価をすると、この六つの中で選んで報告するということが新しい点になります。

 次、61ページになります。この評価、進捗の評価につきまして、手順をご説明させていただきます、日本では、国別目標を13設定しておりますが、それぞれにつきまして、関連指標群を生物多様性国家戦略の中に位置付けております。まず、その評価を関連指標群で行いますが、この一次評価に対して、その業務を通じた所感との照らし合わせをすると、そして、所感との相違があった場合には、指標以外の各種のレビュー等を参考にしまして、二次評価を実施すると、ステップ2のところでございます。それで、国別目標の進捗状況評価案を作成しております。この案につきましては、スライドの62ページ以降にございます。大量にありますので、ポイントを絞って説明させていただきたいと思います。

 62ページから65ページまでが、このⅢ章の評価の部分でございます。この中で、施策の進捗の状況ですとか指標の動向から判断しまして、目標を超えて達成する見込みあるいは目標を達成する見込みと評価しておりますのは、D-3、名古屋議定書の締結と国内措置の実施、それからE-1、国家戦略に基づく施策の推進と、さらには、E-2の科学的基盤の強化等、そういったものについては達成する見込み等としての評価をしています。また、国別目標のB-3につきましては、指標の動向からは大きな変化はなしとしているところでございます。

 これから以外のA-1からB-2、さらにはB-4からD-2の九つの国別目標につきましては、関連指標群の多くに関係が認められるものの、目標達成のためには継続的な取組が必要なこと、さらに、大きな改善が認められていないといったこともございまして、目標に向けて進捗しているが不十分な速度という評価をさせていただいております。

 進捗状況の評価に用いた指標群は、このスライドの終わりのほうに参考資料として提示してございます。今後、各省協議を終えた後に、国別報告書案に対するパブリックコメント案を実施板しまして、英訳を行った上で、期日までに条約事務局へ提出したいと考えております。委員の皆様におかれましても、引き続きご指導をよろしくお願いいたしたいと思います。

 以上でご報告を終わります。

○生物多様性主流化室長 報告事項の最後になりますけれども、数ページ進んでいただきまして、全体の71ページ、資料3-6、生物多様性地域連携保全活動の促進に関する検討会の結果について、ご説明をさせていただきます。

 まず、この法律でございますけれども、多様な主体が、地域における生物多様性保全のための活動を促進していくための法律として、平成23年に施行されております。大きく二つの柱がございまして、①のところにございますが、市町村が地域の活動を活動計画として定めまして、それに基づいて取組を進めるというものがございます。この活動計画に位置付けられた活動につきましては、例えば自然公園法の許可などの一部の規定が適用除外になるという特例措置がございます。もう1点の柱が、地域連携保全活動支援センターというものでございまして、地方公共団体が、活動団体の連携や協力のあっせん、あるいは助言等を行うための施設としてセンターを設置することができるというような規定がございます。この法律の附則の中には、施行後5年を経過した場合において、施行状況について検討を加え、結果に基づき、必要な措置を講ずるという規定がございまして、これを踏まえまして、昨年の10月から12月にかけまして、下村先生を座長とする検討会を集中的に開催しまして、結果を取りまとめたものをこれからご報告させていただきます。

 2ページ目、72ページに、まず現状と取組状況を説明しておりますけれども、下のほうにございますように、この法に基づく活動計画の作成、それから、活動支援センターの設置、いずれも13件にとどまっておりまして、この法律が十分に機能したとは必ずしも言えないという状況にございました。

 3ページ目に、それぞれの課題と、課題に対応する取組というのをまとめてございます。まず、基本的な方向性としましては、各主体、自治体ですとか企業、NGO、市民、そういった主体の特徴を踏まえた連携性を向上していくことが重要だと。それから、2番目に、活動の継続性・持続性を向上させるということで、特に財源の確保、活動自体が収益を生む仕組み等を考えていくこと、あるいは、効果の見える化といったことが重要だということが指摘をされております。3番目に、地域の資源管理や活性化等への貢献ということで、生物多様性以外の諸活動との連携を通じて、地域活性化、あるいは域外の人々との交流などを進めていくということでございます。

 具体的な取組として、課題ごとに取組の推進方策を表の形でまとめているのが3ページの具体的取組という表のところからでございます。

 例えば、1の(2)のところにありますように、計画を作成する労力を軽減するということでいいますと、この法に基づく計画と、他の、例えば生物多様性地域戦略等の他の計画の中に活動計画を内部化していくことが効果的ではないか、制度の周知をはかっていくことが重要でないか。

 2の(1)のところには、支援センターについてでございますが、既存の部署や施設を活用したセンターの設置促進というのも重要ではないかということがございます。1ページ先に進みまして(3)、専門性の確保という意味では、研修制度等を活用していくということ。

 それから、先に進みまして、3ポツの(1)活動資源の確保ということでいいますと、例えば、森里川海プロジェクトの中で進められている資源のブランド化など先行的な取組の紹介、あるいは、地域自然資産法や国立公園における入域料の確保に関する取組の情報提供。さらに、(2)事業者との連携強化というところでは、事業者が取組に参加しやすい条件というのを整理して、これを活動団体等に提示をしていくことの重要性。さらに、(3)ですけれども、他の分野との連携強化ということで、生物多様性と親和性の高いさまざまな政策分野との関連性を整理した上で、そういった取組をしている部局あるいは事業者等との連携を強化していくということ、あるいは、そういった事例の共有を図っていくということが重要であるとの指摘をいただいております。

 また、所有者不明の土地につきましては、これまで外来生物法や種の保存法の改正によって、所有者が判明しない土地において、外来生物の防除等の取組ができるような改正がなされておりますので、こういったことの周知を図っていくことも重要だという指摘を受けております。

 検討会後、ひとまず、さまざまな取組を進めていく中で、例えば、その支援センターの設置や体制構築を進めていくための取組を、既存の交付金の事業メニューに今年度から追加をしております。今後、センターにつきましては、全都道府県での設置というのを目指して、さまざまな形での働きかけをしていきたいと思っておりまして、こういった地域レベルでの活動を進めていくことが、SDGsの考え方に基づく複数課題の同時解決ですとか、地域循環共生圏の構築等にも大きく貢献していくことを目指してまいりたいと考えております。

 駆け足ですけれども、以上でございます。

○武内部会長 はい、どうもありがとうございました。

 検討会の座長をされていた下村委員から、何か追加的な説明はございますか。

○下村委員 もう短く、3回で集中的な議論でしたけれども、大変盛り上がったというか、この制度に対しての期待が各委員から非常に語られまして、生物多様性の保全管理の促進ですとか、あるいは主流化にとって、こうした住民ですとか、企業ですとか、行政だとかの、その地域での連携というのはとても重要であろうというようなことを、ぜひその熱を、この報告書に盛り込んでほしいという意見が随分出ました。

 それでアプローチとして、先ほど来、第五次の環境基本計画に出ていますように、生物多様性保全の問題だけじゃなくて、統合的なアプローチという考え方が重要で、その防災の問題ですとか、観光の問題ですとか、産業の問題とも深く関わっているので、当面は、ですから地域ごとの、地域の特性に応じて柔軟にセンターの設置を急ぐというか、促進することで、具体的に動かしていけるのではないかというようなことの意見交換を行いました。

 以上です。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

 もう時間になっているんですが、もし、ここでご質問・ご意見がありましたら、お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 はい、二宮委員、どうぞ。

○二宮委員 これは質問とかと違いまして、もうお願いです。第五次環境基本計画、冒頭、武内部会長からもお話がありましたけれども、六つの重点戦略においても、やはりSDGsの複数の項目が取り入れられている。あと、環境・経済・社会の統合的向上が求められるというのは、まさしく、もうそのとおりで、今の環境を得たすばらしい計画だと思います。したがいまして、この計画の進捗が、やはり日本のSDGsの推進の重要な役割を果たすんだろうというふうに思います。したがって、政府のSDGsの推進本部においても、環境省が主導的に、関連する各省庁と連携をしていただいて、ぜひ成果につなげていただきたいと。

 それで、この五次の六次の計画が終わる2030年、まさしくSDGsのターゲットイヤーになるわけですから、そのときに環境省主導のもと、こういう成果が出たということを、ぜひ見てみたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 ほかに。

 若干、私が抑制的な方向を誘導したのかもしれませんが、ほかにないようでございましたら、議事(3)その他は、これで終了ということにさせていただきたいと思います。

 これで、全ての議題を終了いたしましたので、進行を事務局にお返ししたいと思います。

○事務局 それでは、武内部会長、どうもありがとうございました。

 委員の皆様におかれましても、長時間にわたりご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。本日、机の上の配付資料につきまして、郵送をご希望の委員の方は、同じく机に置かせていただいております封筒に封入して、置いておいていただければ、事務局から後日、郵送させていただきます。

 本日は、誠にありがとうございました。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

午後0時05分 閉会