自然環境部会自然公園等小委員会・温泉小委員会合同会議(第1回)議事録

午前11時08分 開会

○事務局(清武) それでは、定刻を過ぎておりますので、ただいまより中央環境審議会自然環境部会自然公園等小委員会・温泉小委員会合同会議(第1回)を開会いたします。

 本日、前の会議が遅れました関係で定刻を過ぎてしまい、申し訳ございません。自然公園等小委員会の先生方におかれましては、引き続き、どうぞよろしくお願いいた します。

 会議に先立ちまして、出席委員数の報告です。

 本日は、所属の臨時委員10名のうち、WEBでのリモート参加も含め、10名の方のご出席をいただいておりますので、本委員会は成立しております。

 なお、新型コロナウイルス感染症対策として、中央環境審議会においては、当面の間、WEB会議システムによる参加についても「出席」とみなすこととなっておりますので、ご理解・ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、本日の会議運営につきましてご説明いたします。

 まず、先般、温泉小委員会の改選があり、新しく3人の先生の方にメンバーになっていただきましたので、私のほうからお名前をご紹介させていただきます。

 本日、リモート参加していただいている浅沼宏先生、大海靖治先生、そして本日会場にお越しいただいている安川香澄先生になります。今後のご審議、どうぞよろしくお願いします。

 また、傍聴につきましては、会場での傍聴は行わず、傍聴用のWEB会議システムを用意し、傍聴できるようにしております。本日は、報道機関関係者の方を含め、50名程度の方がWEB会議システムにて会議を傍聴されておりますので、ご承知おきください。

 また本日、ご説明する資料につきましては、会場にお集まりの先生につきましては、お手元のタブレット端末の中に格納し、リモート参加の先生におかれましては、事前にメールにて送付させていただいております。

 なお、リモート参加の先生におかれましては、差し支えない範囲で結構ですので、常時、ビデオボタンをONにして、先生のお顔が見られる状態にしておいていただけますと幸いです。

 それでは、自然環境局長の鳥居からご挨拶申し上げます。

○自然環境局長 どうも、皆さん、こんにちは。鳥居でございます。

 自然公園等小委の先生方におかれましては、引き続きの会議ということで、また、温泉小委の先生方におかれましては、私も初めてお会いすることになる方々も多いかと思いますけども、今回、合同小委員会という形を持たせていただきました。

 ご案内のように、再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースというのが4月27日に開かれまして、この背景は、ご承知のように、昨年の菅総理の2050年カーボンニュートラルというのがあり、また、この春には、2030年までに温室効果ガスを46%削減するというような目標が掲げられたということでございます。これは、もう世界的な脱炭素に向けた大きな流れで、日本が目標を掲げて取り組む、政府一体となって取り組んでいくということでございます。

 ということから、このタスクフォースにおいては、日本地熱協会及びタスクフォースの委員の先生方から、地熱開発促進の観点から、自然公園法と温泉法の運用に関する各種ご要望やご提案をいただいたということ、これを受けまして、地熱開発に関する基準等の概要や、検討の進め方について、この小委員会においてご意見をいただくとともに、別途、有識者の方々から成る検討会を来月立ち上げまして、9月末までの間に、順次結論を得ていきたいというふうに思っております。

 脱炭素に向けた大きな流れの中で、国立公園・国定公園、そして温泉地における地熱開発、その他脱炭素に向けたいろんな取組について、どのように取り扱っていくかということを、先生方のご意見も踏まえながら考えていきたいというふうに思っておりますので、本日は、特に限られた時間ではございますが、ご意見をいただければというふうに思います。

 最後になりますが、そういうお願いをしておきながら、大変心苦しいのでございますけども、私、7月1日で退職ということになってございまして、引き続き、私の後任には、元計画課長のオクダというのが参りますので、この課題につきまして、引き続きご意見をいただきながら、よりよき結論を得ていきたいというふうに思っておりますので、どうかよろしくご検討のほどお願いしたいと思います。

 簡単ではございますが、私のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

○事務局(清武) それでは、今回、合同会議(第1回)になりますので、環境省側の出席者についてご紹介いたします。

 先ほどご挨拶いたしました、鳥居自然環境局長。

○自然環境局長 よろしくお願いいたします。

○事務局(清武) 大森大臣官房審議官。

○大臣官房審議官 よろしくお願いします。

○事務局(清武) 熊倉国立公園課長。

 佐藤自然環境整備課長。

○自然環境整備課長 よろしくお願いします。

○事務局(清武) 岡野温泉地保護利用推進室長。

 以上になります。

 それでは、下村委員長、以降の進行をお願いいたします。

○下村小委員長 皆様、ご参集いただきまして、ありがとうございました。今期、小委員会の進行を務めさせていただきます下村と申します。よろしくお願いいたします。

 先ほど局長のご挨拶の中でありましたとおり、内閣の動きが重大かつ急を要するものでございまして、今回は自然公園小委員会と合同で開催をさせていただくという形になりました。自然公園小委員会の委員の皆様は引き続きになりますが、ご審議のほどよろしくお願いいたします。

 それでは、時間が限られていますので、議事次第に従って進めてまいりたいと思います。

 会議資料につきましては、公開となります。

 また、会議録につきましては、後ほど事務局で作成いたしまして、本日ご出席の委員のご了承をいただいた上で、公開するということになります。

 それで、今日の議事でございますけれども、1点目は、国立・国定公園内における地熱開発に関する許可基準、審査要件の明確化等についてと、それから、議事の2といたしまして、地熱開発に関する温泉法上の掘削許可の判断基準の考え方等についてという2件になります。この二つの議題、まとめて事務局からご説明をいただいた上で、委員からのご質問・ご意見を伺うということにしてまいりたいと思います。

 では、事務局、説明をお願いいたします。

○国立公園課長 国定公園課長の熊倉でございます。よろしくお願いいたします。

 今日、議題になっています自然公園法と温泉法に係る基準の検討につきまして、資料1に沿ってご説明いたします。

 冒頭、局長からお話ありましたように、今、脱炭素に向けて政府全体が動いてございます。昨年10月、菅総理が、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、いわゆるカーボンニュートラルというものを宣言されました。また4月には、2030年の目標として、46%の排出削減をするということを表明されてございます。これに向けて、様々な取組がされていくわけですが、そのうち規制改革などの政策の総動員ということも触れられていますし、それを受けまして、再生可能エネルギーの最大限導入ということが今進められてございます。

 次のページ、ご覧ください。

 こういった政府全体の動きの中で、小泉環境大臣も、今、再生可能エネルギーの促進ということに努められてございますが、今回、テーマになっています自然公園と温泉法については、地熱発電がテーマになってございます。地熱のポテンシャルが公園内に多いということや、温泉法との関係が深いということで、再生可能エネルギーのうちの地熱について、テーマになってございます。

 今日ご議論いただく運用の見直し等の実施に加えまして、さらに環境省自ら率先して行動ということを表明しておりまして、今国会で成立した改正地球温暖化対策推進法に基づく促進区域の指定であるとか、とりわけ温泉事業者など、地域の不安の払拭のための科学データの収集・調査といったものを打ち出してございます。

 大臣からは、リードタイム10年以上かかるところを2年程度短縮する。また、現在稼働している、これは公園外も含めて、小さなものも含めてですけれども、60程度ある現在の地熱施設を倍増すると。これを2030年までに実現するということを表明されてございます。

 次のスライドでございます。

 これは過去の経緯でございます。地熱開発は、国立・国定公園内で長く認めてこなかったわけでございますが、地球温暖化対策の重要性に鑑み、過去2回、大きな規制緩和を行っています。平成24年の規制緩和におきましては、まず、普通地域は個別判断で認めるとし、さらに第2種・第3種特別地域につきまして、小規模なものは認める。小規模でないもの、大規模なものとかについても、優良事例の形成について検証して、真に優良事例としてふさわしいものについては認めると。また、外からの傾斜掘削についても、個別に認めるという緩和をしてございます。

 これに加えて、平成27年におきましては、さらに第1種特別地域について、地表に影響がないことを条件に、地下への傾斜掘削を認めると。さらに、高さの制限につきましても、公共性があるものについては、13mにとらわれずに運用できるという規制緩和を行ってございます。

 次のページは参考ですが、諸外国では、ニュージーランド、アイスランド、アメリカといったところでは、国立公園の中では地熱開発は認めてございませんけれども、日本の地理的状況に鑑み、先ほど申し上げたような一定の条件の下に、日本では地熱開発を認めているというところでございます。

 この次のページをお願いします。

 先ほど申し上げたように、それぞれの地種区分に応じた対応というのを行ってございます。

 次のページをお願いします。

 先ほど申し上げた地熱通知の抜粋でございます。後ほど論点になりますので、触れておきますと、1.の(3)というところで、小規模なもの、要するに支障がないものは認めるというのがあるのと、2.の(1)で、特保・1特は認めないというのとか、あと(2)、第2種・第3種については、1.(3)のものを除き認めないとしつつ、ただし、傾斜掘削については個別判断で認める。また、真に優良事例としてふさわしいものについては認めることができるというような記述になってございます。これが現在の通知でございます。

 優良事例というのがキーワードになってございます。優良事例であれば、2特・3特、個別に認めるとなっております。優良事例というのは大きく四つありまして、一つは地域関係者との合意形成がしっかり図られている。二つ目は自然環境、風致・景観等への影響が最小限である。三つ目は地域への貢献に事業者の方が努力されている。また、様々なモニタリングであるとか、情報を開示・共有していると。こういったものを優良事例と称してございます。

 次のページをお願いします。

 こういった規制緩和を受けまして、公園内でも地熱の開発が進捗してございまして、国立公園で47件、国定公園で15件の案件が今動いてございます。大規模なものですと、国立で9件、国定で8件動いてございます。

 ただ、非常にリードタイムが長いということで、規制緩和からまだ10年もたっておりませんので、大規模なものの操業まではまだ至っておらず、大規模なものですと、今、アセスが国定公園で1件終わっているというものがトップランナーの状況というところでございます。

 次のページですが、地図に落としたものですけれども、現在開発中の大規模案件のうち、黄色いところが国立・国定公園の案件でございまして、全体47か所中の29か所、約6割が公園内で現在進んでございます。

 続いて、温泉についてでございます。

 温泉については、温泉法という法律がございまして、都道府県知事が掘削の許可をするという仕組みでございます。温泉法での地熱発電の取扱いについては、平成24年、地熱発電を推進するため、許可の判断基準の考え方を示すことを目的として、ここにあります温泉資源の保護に関するガイドラインというのを策定して、都道府県に通知をしてございます。

 このガイドラインでは、掘削申請に係る手続の早期化を目的として、温泉資源の影響を判断するために必要な情報や判断方法を地熱開発の各段階ごとに整理をしてございます。

 次のページをお願いします。

 また、本ガイドラインでは、協議会の設置、それから情報公開、モニタリングの実施など、地域の合意形成に向けて有効な取組や事例なども整理して、関係者による密接なパートナーシップの構築を促してございます。

 次、お願いいたします。

 これは今実施されています内閣府の再生可能エネルギータスクフォースの取りまとめ結果でございます。

 局長、冒頭ご挨拶で申し上げましたとおり、ゼロカーボン、カーボンニュートラルを2050年目指すというために、規制改革をする場として、河野大臣主催の下に、内閣府にこのタスクフォースが設けられ、太陽光であるとか、風力であるとか、様々な電源の種類に応じて審議が進んでございます。

 地熱発電については、4月にヒアリング、環境省ございまして、自然公園法と温泉法がメインのテーマでございました。議論の結果、下にありますように取りまとめがされ、今月、規制改革実施計画の一部として閣議決定がされてございます。

 項目は大きく五つございます。左上が目標の設定ということでありまして、先ほど小泉大臣が発表した地熱施設の全国での倍増というのも記述がございます。また、右上でございます。地熱通知の考え方についてでございますけれども、先ほど2特・3特は原則としては認めないというフレーズがあったと思いますが、むしろ優良事例については積極的に容認して、地熱開発の加速化に貢献していくというような趣旨、姿勢が明確になるように考え方を整理せよというものでございます。左の真ん中が許可基準・審査要件の明確化でありまして、どのような立地や設計であれば、自然環境への影響が少なくて容認されるのか、そこがより分かりやすく具体的に伝わるように、明確化をせよというものでございます。右側の真ん中でございます。現在、温泉法という仕組みで温泉の保護・管理をしていますが、さらに、温泉だけではなく、地熱資源全体として管理をするような新しい制度、これを現状把握した上で検討するというものでございます。一番下が温泉法の話で、都道府県において、離隔距離規制とか本数制限というものを行っていますが、これについて点検をして、今後、ガイドラインの中で、検討した結果を反映するというものが規定されています。

 赤字でタイムスケジュールが示されておりますが、令和3年度上期というのが9月、今年の9月末までに検討し、結論し、措置するというものが多くなっております。

 次のページをお願いします。

 今回、合同小委員会にお話ししていますのは、先ほどの検討に当たって、専門家、それから事業者団体等々、様々なご意見を聞いた上で検討するということになっております。特に本日については、以下に述べるような内容について、具体的な内容、また、検討の進め方についてご意見をいただきたいと思ってございます。

 自然公園法に関しては、先ほどのタスクフォースの取りまとめにありましたように、地熱通知の基本的考え方をどうするか、また、許可基準の明確化の観点から、どのような立地、または設計であれば容認するか、優良事例の考え方、こういったものでございます。また、地熱発電は初期調査、調査井の掘削、生産井の掘削、建設といった、各段階がございます。各段階に応じた確認事項というのはどうあるべきかと。また、傾斜掘削という言葉が多かったと思うんですけれども、地表に影響を与えない傾斜掘削というのはどういうものかというところが検討事項かと思ってございます。

 また、次のページですが、温泉法関係ですと、先ほどタスクフォースの取りまとめ結果にありましたように、離隔距離規制とか、本数制限、これについての科学的な在り方、考え方、それから資源としての地熱の管理の新たな制度の必要性、こういったところが論点になると考えてございます。

 次のページ、今後の予定でございます。

 非常に制度に関わる重要な論点ですので、審議会のご意見が必要ということで、本日、キックオフということで、ご意見を聞きたいと思っております。ただ、内容が非常に技術的でございまして、地熱の専門家であるとか、あと利害関係者である事業者団体、そういったところとの意見交換も必要になってまいりますので、そういった方々から成る検討会をつくりたいと思っております。よろしければ、来月にも設置をし、開催し、概ね月1回程度、計3回程度開催をしたいと思っております。その結果については、また9月に、この審議会にご報告して、了承をいただきたいと。その上で、役所としての結論、そして措置をすると。これをできるだけ9月末までにしたいというタイムスケジュールでございます。

 非常に短い時間で恐縮でございますが、ぜひ忌憚のないご意見をよろしくお願い申し上げます。

○下村小委員長 ご説明ありがとうございました。

 それでは、議事の1と2をまとめて、ご質問・ご意見を伺ってまいりたいというふうに思います。

 本日は多くの委員にご参加をいただいていまして、また、ご意見をいただく機会も、今回と、それから先ほど説明がありましたように、9月に、もう一度開かれる合同会議の2回になります。できるだけご意見を伺いたいと思いますけれども、時間に限りがございますので、できるだけ手短に、要点のみのご発言でお願いをしたいと思います。

 それで、合同ではありますけど、まず、温泉小委員会の委員の先生方からご意見を伺って、その後、自然公園小委の先生からご意見を伺うという手順にしてまいりたいと思います。

 会場にお集まりの委員の皆様におかれましては、ご発言がおありの方は、名札を立てていただきまして、それで私のほうから指名をさせていただきます。また、リモート参加の委員の皆様におかれましては、WEB画面上で、参加者リストの自身のお名前の横に挙手ボタンがございますので、その挙手ボタンを押して、挙手の表示をお願いしたいと思います。

 それでは、まずは温泉小委の委員の皆様から何かご意見・ご質問ございますでしょうか。いかがでしょうか。

 それでは、会場にお越しの石川委員、それから前田委員、まずは口火を切っていただきたいと思います。石川委員からどうぞ。

○石川委員 石川です。

 ご承知のとおり、この小委員会、久しぶりなものですから、私も地熱問題と温泉の関係は、非常に、温泉評論家として、また地域学会の会長でずっとやってきて、非常に危惧をしています。これまでも申し上げましたので、基本的な、先ほど課長からご説明のあったカーボンニュートラルと、その中での自然エネルギーの開発の在り方とか、流れについては理解していますが、ちょっとやっぱりこれを、今まで環境省さんは非常に頑張ってこられて、国立公園の保護や温泉の保護ということでやってきたので、それは非常に理解しているんですが、私は、やはり日本が世界でも地熱資源量3位と言っていますけれども、ご承知のとおり、インドネシアや、1位のアメリカもそうですが、やはり地熱開発をしているところは、先ほど説明にもありましたように、国立公園や温泉地自身は避けています。

 私も海外はかなり回って、40年間回っていますけれども、アメリカでも、ご承知のとおり、カリフォルニアのカイザーズの辺り、地溝帯ですよね。当然、イエローストーンで膨大な温泉がそのままあふれさせているわけですが、ここで地熱エネルギーがあるからといって開発をしたわけではありませんね。ニュージーランドでも、最大のロトルアの温泉地では、もちろん開発は、計画はありましたけれども、しないで、ワイラケイの湾中のタウポの付近、そこで開発をしています。イタリアも、ほとんど回りましたけれども、トスカーナ地方、最大の温泉資源があるトスカーナの中でも、南西部のラルレデロですか、周辺地に温泉地はありません。有名な湯滝があったり、本当に地熱のすばらしい噴気地帯から避けたところで開発して、アーバノのほうでも、最初、地熱開発はあったけど、やめていますね。そういうふうな形で、やはり世界の流れはそのようになっています。

 日本で、3位のエネルギーといっても、これはもう極めて古代から、その地熱エネルギーの大半、かなりの多くは、当然、膨大な世界有数の湧出量と、高温湧出泉の、この温泉熱エネルギーという形で利用されてきたわけですから、もちろん、そのことを理解した上で、共存というか、バランスというものを考えていかければいけないんじゃないかと思うんですね。

 でも、現実に、よく地熱の説明の中でキャップロックですね、帽岩の話があって、本当にこのようにうまくなっているんだろうかというふうに思うんですが、現実に、八丁原の大分、それから、昔、日本温泉協会さんと一緒に参加させていただきましたけど、八幡平ですね、秋田の、そこでも、もう数を上げれば、トロコや銭川や東トロコ、それから大沼発電所と地熱の発電所と、澄川ができた以降の、澄川、赤川と。もう、そういう温泉地は全部一軒宿ですけども、なくなっています。八丁原でも、周辺にあった、自然湧出で成り立っていた、小さな、そういう意味では、事業者さんからは、もう目にも触れないようなことかもしれませんけど、温泉地はなくなっています。

 その前に、地表での噴気地帯の自然湧出減少と、噴気地帯ですね、いわゆる地獄と言いますけれども、そういう現象は全部なくなっています。ですから、帽岩で区別されているということではなくて、よく使われる絵にもありますけれども、やはり微妙なバランスの上で、やっぱり熱エネルギー、地熱エネルギーが使われ、そして、細々とした形も含めまして、温泉で利用されているわけですね。

 しかも今、政府も含めまして、ずっとインバウンドで、ご承知のとおり、外国人が2度目に来たいときの日本での利用の3位には温泉が入っているわけですから、こうしたインバウンド。歴史的には、日本の国民にとっての健康資源、そして観光資源、そして歴史文化資産である温泉地というものをどのようにやっぱり尊重しながらバランスを取っていくのかということ、くれぐれもやっぱり考えていただきたいというふうに切に願います。

 それから、これは、もう基本的な考え方として、カーボンニュートラルと言っていますけれども、やはり私は、本来ならば、熱エネルギーと発電量からいっても、むしろ、やはり風力発電の中でも、イギリスは今トップに躍り出てきていますけれども、洋上での浮体を使った風力発電、こうしたことへの技術開発こそが、日本の産業にとっても、新しいやっぱりイノベーションになっていくんじゃないかというふうに考えていますので、やはりそれに比べたら地熱は、事業者さんがどんなに努力されても、最大5万キロワットのやっぱり小さいものを、幾らこれから倍にするといっても、そんなに残念ながらカーボンニュートラルに寄与するとは思えないんですね。そういう意味では、むしろ国家戦略として風力発電、特に洋上での浮体を使った発電、そうしたものへむしろ自然エネルギーの中でも転換を考えていく、戦略的に考えていくべきではないかというふうに思います。

 そして、基本的に地熱の開発というのは、これは、温泉熱エネルギーの開発もそうですけれども、やはりむしろ地域還元型の私は利用ではないのかと。要するに、原発に代わるような形で地方から大都市圏へというような電力利用の形ではなく、地域で開発し、利用していく、還元していくというような、そういう小規模な形がむしろふさわしいのではないかと思いますので、すみません、長くなりましたけれども、なかなか発言の機会がありませんでしたので言わせていただきます。

○下村小委員長 はい。ただ、手短にお願いできればと思います。

 前田委員、どうぞ。

○前田委員 では、手短になるかもしれませんが、やっぱり地熱発電の構造を考えてみると、生産井からくみ出すのは分かるんですけれども、還元井のところがそれより違うところに入れるというようなことで、やっぱり地中の構造は崩れてしまうというような、恐らく、これは確かだろうと。

 地熱開発については、地表部において影響がなくというふうなことを言ってるんですけれども、やっぱりある程度、下のほうから、地中から変わると地表も当然変わってくるということがありますので、その辺の配慮がぜひ必要なんですけれども、いろんなことを書いてあるんですが、例えば還元井を生産井に近づけるというふうに書いてあるんですけれども、冷たくなったそういった水を入れて、そしてまた熱源を得て、そういうことはきっとできないかなと思います。つまり、熱は温かいほうから冷たいほうへ行くので、そういったことを考えるということが一つあります。

 それから、二つ目は、いろんな物質が、蒸気だけを利用するというふうにおっしゃっているんですけども、蒸気のほかにいっぱいあるということで、諸外国というか、日本では硫化水素を中和するとか、そういうふうな考えをお持ちなんでしょうけれども、その他もいっぱいあるということは、それは周知のごとくだと思います。カドミウム、フッ素、調べられるだけでは、らちが明かないぐらいいっぱいあって、それが本当に人間に対していいのかなというような私、医者の立場で言っているんですけど、そんなようなこと放置していいのかなと。また、くみ出した後、一般のところ、川へ流してしまうとか、そういうことは本当に正しいのかというようなことを、ぜひそういったところの検討が人間の住む地域で必要かなというふうには思っております。

 それから、まず、これを開発するのに、3番目は地方自治体に対して補助金とか、そういうのは入ってくるというようなこともお聞きしましたけど、そういうことをすると、やっぱり自然の、我々、学問的なところをやっていますけれども、そういったような補助金と、そちらのほうへ流れるのはやっぱりこれは筋違いだろうというふうには思っております。

 そんなことを意見としては申し上げたいというふうに思います。以上です。

○下村小委員長 ありがとうございました。

 自然公園小委の先生方が、結構、手を挙げられていますので移っていきたいと思いますが、まず安川委員、それから佐藤委員ですね。お二人に伺ってから自然公園小委に行きたいと思います。

 安川委員、どうぞ。

○安川委員 すみません。まず、地熱開発を国内で進めるべきかどうかという点に関して、一つ言いたいんですけれども、やはり自然エネルギーはそれぞれ特徴があり、地熱発電というのは、安定して稼働できるという、それが最大のメリットだと思っています。

 ライフサイクルCO排出量で見ても、原子力より少ないのは、今のところ、地熱と小水力だけというのもありまして、そういった優れた特徴を持つ地熱発電ですので、それをどうやってうまく開発していくかということが一番重要だと思います。

 それで、地熱発電は稼働率が高いことから長く続けていくと発電コストもかなり低くなる発電方法ですけれども、やはり初期段階の調査を行っても開発できるかどうか分からないという、リスクがある中で初期投資を行いますので、そういった面では、政府の援助がないとなかなか難しいというのが関係者一般の認識です。

 実際、私も諸外国の例も見たんですけども、やはり政府の支援があった時期はかなり進むけれども、そうでない時期は停滞するというのが、本当にどこの国でもはっきり表れています。そういった意味では、やはり政府の援助がないと、という点がまず一つあると思います。

 それは資金的なことになるわけですけれども、掘削の補助金、調査の補助金というものがあると、年度内にやるという問題もあるので、限られた時期にしか調査や掘削、いろんなことができないために、何かの問題があるとすぐに1年、2年延びてしまう、そうすると、またコストがかかる。コストが高くなると、結局、国民の税金をそういったところに回さなくちゃいけないということになるので、いかに安く、しかも周りに影響を与えずに安全にできるか、その辺のバランスを取ることが重要だと思っていまして、もちろん環境も重要ですけれども、やはりコストも国民にかかってくることなので、その辺がうまく動くようなルールをつくることが重要と思っています。

 関係者から聞いた話で、例えば傾斜掘削に関しては個別に判断というふうに書かれていますけれども、個別に判断というと担当者のさじ加減がかなりあるといううわさを聞いております。そのために、駄目と言われたのでなかなか先に進めず、1年延ばしになるというようなうわさも聞いておりますので、個別に判断というところがどういう基準なのか、その辺が分かるような新しいルールづくりをしていく必要があると思います。

 以上です。

○下村小委員長 それでは、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 私どものほうから申し上げますと、先ほど、石川先生のほうからお話のありましたとおり、実は、今回、非常に問題になっているのは、特に従来の温泉法との関わりをどうするんだというところがあろうかと思います。

 実は、温泉法そのものについては、皆さんご存じですから細かなことは申し上げませんけども、科研の実施事業案件になっているはずです。そうしたときに、今回の離隔距離規制、それから本数制限の無制限と、こういうことについては、日本温泉協会としましてはあってはならない方法ではないかと。

 なぜなら、いわゆる、これはJOGMECさん、安川さんのセクションと、かなりここ三、四年、日本温泉協会とすれば詰めてきたはずです。そういうことを全部取り払って、じゃあ今、カーボンニュートラルの案件もあって、それを急ごうということ、そのこと自体、分からないわけではありませんけども、従来積み重ねてきた協議会その他の確立とか、そういうことも含めた中で、本当にそれほど急ぐことが、今必要なんだろうかと。必要だというんであれば、それなりの科学的、技術的な中身が確立できるような状況に今なっているんだろうかということが問われて久しいんですよね。

 どういうことなのかといいますと、探査方式と言いますけれども、重力探査その他、いろんな方策ありますよね。MT法とかですね。それから、GDS法とか。でも、これとて、安心・安全な温泉地の湧出湧水、そういうものが確立できるのか、保証できるのかということが本来あってしかるべきなんですね。そういうことを全く棚上げにして、実際、そういうこととは関係なく、国策の一環としてやっていくんだということだけで処理できる問題では、私はなかろうと思います。

 先ほど、石川先生がおっしゃったように、地産地消型であれば、ある程度の地元に対する問題があったにしても、国策の一環としてやるというんであれば、少なくとも国がやっぱり賠償責任その他の減温減水とか、そういう案件が生じたときに、それなりの補償というものが裏にあってしかるべきだと思うんですね。しかし、そういうことはないままに、じゃあ今後、こういう形で強引にやって大丈夫なんだろうかと、ましてや本来、日本のだって国内事情から言えば、もう私は福島県に生きて、ここ10年、原発の後処理を見てきましたけども、本当の意味で、これで大丈夫なんだろうか。今でもそのことに苦しみ、あえぐ人たちが多くいることを、私知っています。

それだけに、そういう裏補償もないままに温泉法の一部見直しみたいな話が公然と出てくるということには、到底耐えがたいです。そのことをとにかく、私ども、今日、特に地熱貯留層、温泉帯水層等々の距離規制をどうするのだという、皆さん、簡単にこれ、絵図では見ますけども、これを決めるのはどうやって誰が決めるのですか。そのことが、もし安心・安全というパイに移行できないということがあったときに、誰がどう補償するのかということが問われて久しいのだろうと思います。

 だからこそ、日本温泉協会とすれば、少なくとも北海道から九州までの単に温泉事業者を守るためだけに申し上げているつもりは、私はありません。そこを真剣になって、やっぱりもう少しお時間をいただく、時間を短くすることについて、私、反対はしません。ですが、中身の不確定な内容があまりにも多過ぎる段階で、そこを決めてしまっていいんだろうかということについては、もっと慎重であるべきだというお願いをしておきたいと、そんなふうに思っております。

○下村小委員長 はい。ありがとうございました。

 それでは、多田委員、それからあと中静委員、江﨑委員に移ってまいりたいと思います。

○多田委員 私の括弧書きが温泉協会の方になっていますけど、もう一つの看板が、全国旅館環境衛生生活同業組合という1万5,000軒の旅館の会員がおる組織の束ねということもやっておりまして、実はこれ、ちょっと今までの論点に加えて、ちょっとどろどろした話ですけれども、実際、生活を営んで、そして多くの国民が利用する温泉地としての営業を行っているところが半分ぐらいございます。そうすると、その会員のやっぱり生活というものを考えなきゃいけないということで発言をさせてもらうのですが、自然公園がこういう形で非常に手が入るというような法案の問題なのですが、我々も密接な営みを行って、先祖からずっと来ているところが結構ございます。

 どうも地熱の問題で一つ悩ましいのが、その地域が開発ということに決まりますと、賛成派と反対派に非常に二分してしまう。これが遺恨を残して田舎の選挙のように、もういまだにあのときの賛成派、反対派、こういうことが分断化というような嫌なしこりが残るということが一番見られます。

 私どもの組織は、厚生労働省ですから、安全・安心ということで、まさにそういうことで国民の健康を守るために病気にさせちゃいけないから衛生管理をしながらやっていくということがもう一つの肩書なんですけども、一つは、商売がちゃんと持続できるということが大変大事でございます。

 そうすると、今回のような二分化しないような形を何とか取れないかというと、将来に対する、やはり営業者の心配する問題、この辺をしっかりと片づけるような形でのきちんとした説明、あるいは裏づけの文言が入った形でワンパッケージを行わないと、反対派というのは絶対になくなりませんし、要するに生活に対する営業の不安、これを払拭しない限りは、大丈夫ですよというだけの説明では絶対納得しないわけです。石川さんも先ほど言われたように、どうもそういう影響が出るということが、もう当たり前のようにみんな知っていますから、そうなった場合、どうするか。あるいは、地域の魅力であるような、そういうフィールドで湯気が出なくなったと、じゃあもう湯気も出しましょうというぐらいの、そういうバックアップがなければ、要するに観光の一つのそういうフィールドで活動する我々としては将来がなくなる、したがって、先ほどあったように、少数ですから、いなくなっちゃう。要するにモチベーションも下がって、やっていったってしようがないよと、声が届かないということでやめてしまうというところが出ます。今回もコロナウイルスで国は大変いろいろ我々のほうにやってはくれておりますが、間違いなく、こういう衝撃の中でなくなる旅館施設が大変多うございます。

 そういう意味合いでは、この本来の営みの元である温泉に影響が出ないなら、出ないとしっかり言えるなら、その辺の安全・安心を、安心のほうをしっかりと文言にしていただく。これが私は必要じゃないかと。ただ、口で安全ですからだけではとてもじゃないけど賛成できない地域が当然出て、二分化して係争の元になると。悲しい結果ですから、カーボンニュートラルは政府が決めていますので、それに抗うということじゃないのですが、一つの、推進するなら安全な方法できちっと文字に入って、補償がされているということで、何かがあっても大丈夫ですよと、こうならないと、なかなか難しいのではないかというふうに思います。

 以上です。

○下村小委員長 ありがとうございました。

 それでは、自然公園小委ですね。中静委員、お願いします。

○中静委員 パリ協定とか、カーボンニュートラル以来、気候変動に対するミティゲーションが大きな国際的な動向となっています。例えば石炭なんかは非常につらい立場になってきているわけですけど、カーボンニュートラルとか気候変動に対するものだけではなくて、最近は、生物多様性とか自然に対するものに対しても非常に厳しくなっている。例えばTCFDというような形で企業がどれだけ二酸化炭素を出しているかというものに対しての情報開示って、すごく求められているわけですけど、同じようにTNFDで自然とか生態系に対して、どれぐらいインパクトをかけているかというのも、これから、厳しく企業には求められるようになってきています。ここで思い切って気候変動だけに舵を切るというのは、将来的にも得ではないと僕は思っているのですね。そういうこともよく考えたほうがよくて、平成24年とか27年の条件というのは、かなりぎりぎりのところで、保護地域を守るというところまで来ていると思うのですね。ほかの例えばエネルギーでも、自然に大きなインパクトをかけた再生可能エネルギーでも、もしかすると買ってもらえないというような事態になる可能性も僕はあると思っています。そういうことを考えると、今の規制をさらに緩めることは企業側にとっても利益にならない可能性があると思います。

 それから、規模を考えると、やっぱり先ほどから出ているように、地域還元型だったり、地域利用型だったりするというのが重要だと思いますし、そういうところで地域住民とのあつれきを生むというのは、非常にマイナスであろうというふうに思いますので、そういうことに対する配慮は最大限必要だというふうに思います。

 以上です。

○下村小委員長 はい。それでは、江﨑委員からご意見いただいて、それから吉田委員、深町委員に参りましょう。

○江﨑委員 ありがとうございます。ふだん、私も国立公園に住んでおりますので、そういう立場も踏まえてなんですけれども、個別のこれからの案件に対して、どういうふうに基準を考えるのかとかというお話かなと思っています。

 今、温泉小委員会の皆さんのお話を聞いていて、本当に切実なご意見とかを聞いていて、私も本当にそうだなと思いますし、実際、各地域の話を聞いているとやっぱり不安が大きかったりとか、どちらかというと、やっぱり国立公園とか観光地では、そういうのをやめたいという意見のほうが多いかなと思っています。

 私も実際のところは、そう思う部分があるんですけれども、これを国全体として進めていくときに、国立公園でどうなのかということを考えると、そもそも国立公園というのは地元の要望があって国立公園に指定されているものかなと思っているんですね。国立公園、地元の要望イコール、国立公園はそもそも保護という観点はもちろんありますが、自然資源を観光利用していくという観点がすごい大きいので、皆さんの意志としては、その地域を観光利用していくという戦略を大きな意志として持っているという、そういう地域の意志がそこに表れているのかなというふうに私はそもそも思うんですね。

 どういうふうに土地利用をしていくのか、資源利用をしていくのかというのは、その地域の戦略に基づいていると思いますので、それと併せて国が判断しているのが、この国立公園というものになっているので、その大きなベースをまず外さないということが一つ大事だと思います。

 自然エネルギーの活用は本当に大事なんですが、正直、国立公園内で自然エネルギーというのは風力であっても洋上であっても温泉のエネルギーであっても、全て大体景観には何らかの影響がありますので、どれを取ってもみんな嫌だという意見が必ず出てくるというのは間違いないかなと一つ思っています。

 それと、ちょっと思ったのが、優良事例という言葉がすごく気になっていまして、優良事例と簡単に一言で言ってしまうと、確かに優良事例なんですが、多分、今言われている優良事例というのは、設計段階での優良事例かなと思うんですけれども、その設計段階というか、計画段階で優良事例とされたものが、何年かたってきているうちに実態はどうなのかとか、やっぱりそこで分かってくることがあると思いますので、一旦、計画段階とか設計段階で優良事例とされたことをモデルケースとして、利用段階でどうなのかという整理に基づいて、影響がないではなくて、今考えられる影響はないけれども、未知の影響はあるはずなので、そこに対してのやっぱり技術、技術革新だとか、そういうことに対して、やっぱり民間事業者が投資していることが多いと思いますので、本来、国とかが事業としてやるならもう少し安心なんですが、民間事業者がやるという部分の不安感もありますし、そこの補填が太陽光発電でも思ったんですけど、やるときはもうどこでもやっちゃうし、できるところ全てに日本中やってしまうという傾向もあるので、やめるときにどうするんですかとか、もっと新しい技術革新をしていくときに、大体民間で問題になるのは、新しい技術革新がなされたときにより効果的だったりとか、もっといいものに変えたくても、逆に投資ができなかったりとかということもあると思うので、そういうやる人たちから技術革新とか、そういうことのために常々基金としてお金を集めておくみたいな仕組みもつくって、そうすると、新しい問題が起きてきたときに、ちゃんとそこからの利潤で投資ができたりとか、あとは、やめたくなって、例えば水蒸気を使うかもしれませんけど、もしもそれが枯渇して、じゃあもうやめますといったときに、その施設、どうするんですかって、民間がもしかしたら放置していく可能性だってあるので、そういう後始末に回せたりとか、やっぱりそういう危機マネジメントのところに使える仕組みというのも考えて、それもちゃんと責任を持って将来の自分の会社とかのリスクに備えるところまで補填した上で参加するというようなことまで考えていただくような基準にしてもらったほうがいいかなというふうに私は思いました。

 以上です。

○下村小委員長 ありがとうございました。

 ちょっと大事な案件ですので、お時間を延長することをご容赦願いたいと思います。ただ、会場もあと30分しかないようですので、それで少なくとも7名の委員が挙手をされていますので、できるだけ手短にご意見を端的にお願いしたいと思います。

 吉田委員、深町委員、広田委員という順で参ります。

 吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 ありがとうございます。非常に手短に説明させていただきます。

 私自身、中静先生のご意見にすごく賛同していて、私が言いたいことを全部、中静先生がおっしゃっていただいた気がしますので、もう一点だけ付け加えさせていただきます。やはり太陽光発電で課題が指摘している部分は十分に検討し直さなければいけないなと。3.11の後に太陽光を増やそうとして、固定価格買取制度とかを実施したのですけれども、その後の全世界的なコスト低減の見通しが若干甘くて、コストをかけ過ぎてしまい、先ほどのご意見にもありましたように、全国各地に太陽光発電のパネルが広がっていったというようなことがありました。

 何が言いたいかと言いますと、地熱発電というのはかなり長い期間がかかりますので、その間に他の再生可能エネルギーを含めて、どの程度のコスト低減がなされるのか、そうしたときに地熱発電は本当に経済的にメリットがあるのか、あるいは地域分散型のエネルギー源として役立つのかという点を慎重に検討していかなければいけないなというふうに考えております。

 その論点の一つとして、自然資源とか温泉資源というのは、多分、不可逆なんですね。一度失われてしまうと、なかなか元に戻しにくいんですけれども、エネルギーというのは特に発電というのはいろんなソースがありますので、代替的なものもあると。そういったこともありますので、そういった点、ぜひ地熱発電を考える上で、我々、気をつけていなければいけないというふうに考えております。

 以上です。

○下村小委員長 はい。深町委員、どうぞ。

○深町委員 国立公園・国定公園というのは、日本を代表する、あるいは都道府県を代表するとっても大切な自然環境であり、景観だということですので、常にどの事例においても、やはり自然公園としての価値と再エネ、自然エネルギーの利用から生み出す価値というのは両立しないといけないんじゃないかというふうに思います。

 そういう意味で、優良事例としての項目、四つ挙げてありますけれども、これら全てが数字にできることもあるし、数字にならなくても実際の世界の中で見えていくものというのがありますので、これらが誰が見ても分かるように公平に丁寧にそういった持続性も考えながらしっかりと環境省、中立な立場で大事な自然公園を引き続いていくというような観点でこれからも臨んでいってほしいなというふうに思います。

 以上です。

○下村小委員長 はい。それでは、広田委員、どうぞ。

○広田委員 はい。こういう事案について、バランスとか両立が重要だということは理解した上でなんですが、どうも景観、風致景観に対する理解、開発側の理解がやっぱり乏しいかなというのが一番の不安です。

 具体的には2点ありまして、ある場所の開発が景観上、評価する際に重要なのは、この場所の持つ性格によってその評価が変わるんだという認識がすごく重要だと思うんです。具体的に言いますと、人工物が全くないような景観のところにそういう開発を行えば、物すごく違和感があるし、規制は物すごく厳しくしなくちゃいけない。その一方で、何か類似した人工物がたくさんあるようなところに一つあるんであれば、そこは両立の余地があるということですよね。

 ですから、自然公園の中に地種区分がされているというのは、そういうこともあるわけですから、何か資料を見ますと、登山道からの見え方について厳し過ぎるじゃないかというのがありましたけれども、そもそも、そういう理解が開発側にあるのかというところがちょっと不安です。それが第1点。

 それから、第2点が、仮に立地を見て回るにしろ、修景の方法についても場所性というのが非常に重要です。資料の中に例えばログハウス風にするみたいな、ありましたけども、そのログハウス風がいいかどうかは、まさにそこの場所性によるわけで、例えば類似する観光施設だとかビジターセンターがログハウス風であれば、それは許容されるんでしょうけども、そうじゃなければ、ログハウス風がいいかどうかというのは何とも言えないわけです。

 その修景については、やっぱり世の中全体が非常に誤解があって、なんか自然環境ならログハウス風みたいな紋切り型の修景の捉え方が非常にあります。そこが非常に懸念されるところで、もうちょっと風景の価値というもの、その性格というのをやっぱり正確に開発側も理解した上で両立を図るというところがないと、やっぱりちょっと一方的な、あるいは紋切り的な対応になってしまうかなという気がしました。

 以上です。

○下村小委員長 はい。それでは、続いて愛甲、中村、苅谷委員の順に参りましょう。

 愛甲委員、どうぞ。

○愛甲委員 はい。愛甲です。

 短く3点、意見を述べさせていただきます。

 一つは、現行の基準もそうですが、特別保護地区と第1種特別地域、それから第2種、第3種特別地域の間に引いている線ですね。このまず設定の仕方自体に問題があるんではないかという意図での発言が1点です。

 そもそも、この区分自体は、国有林と国立公園等の保護規制との関係の中で生まれてきた線引きで、農林業を特別地域の中で認める場合に第2種、第3種特別地域を使うということだったと思います。風致景観上の影響を考えて、拓跋にするか、皆伐を一部認めるかというような基準になっていて、先ほど中静委員とかもご指摘されているような、現在、求められている生物多様性の観点から線引きをきちんとしているわけではないと。なので、そもそもこれを、地熱を認めるか、認めないかというときの基準に使うこと自体が、実はそもそも間違っているというのがまず1点目の指摘です。

 2点目は、そのことも考えると、逆に、これ、国立公園に指定されている場所、それから現行で特別保護地区に指定されている場所等も全て、もともとは土地所有者の意向をかなり反映した形で地種区分がされています。なので、実際には、生物多様性を保全する上で非常に重要な場所が、その守るべき場所に含まれていない可能性も非常に多くて、実際にCOP10のときにやったギャップ分析の結果などでも、公園区域外にもそういった区域があるということが分かっていますので、そういったことを踏まえなければ、公園区域内だから特別保護地区ではないからいいだろうというようなことにもならないというふうに考えていて、きちんと最新のデータを用いた生物多様性を守るということは、これは先日のG7で合意された「Nature Compact」でも言われている観点で非常に重要ですので、そういう意味でも国際的にも求められているところですし、その調整も必要だと思います。

 それからもう一点は、これは実際に起きたことですけど、事前の地表調査等で、これ、実際にニセコであったんですけど、地表調査をした際に、調査をされた業者さんが非常に大きくハイマツ等を刈り込んでしまったという問題が起きて、私もその後の復旧の計画を立てたりするものの少しアドバイスをしたりしましたが、その辺がやっぱりきちんと基準があるのか、ないのかというのもはっきりせず、事前に調査も含めて配慮がかなり必要だというふうに思います。

 その3点です。以上です。

○下村小委員長 それでは、中村委員。

○中村委員 愛甲さんが今おっしゃられたことは、多分、長期の考え方として、すごく重要だと思いますし、私も同意したいです。

 ただ、今回の多分ミッションは、もっと現在ある法律の中でどうやって、この地熱の問題を解決していけばいいかという議論になりそうな気がするので、その観点から述べます。私は今回のターゲットは、第2種、第3種特別保護地区になるのではないかなという感じがしました。間違っていたら、コメントをいただきたいのですけども、事務局のほうから。

 特別保護地区と第1種については、やはり明確な基準があって、第2種、第3種については、それまでの土地利用というか、林野との関係の中で決めてきた歴史があるので、そういう意味では、第2種、第3種で一体何を保全しなくちゃいけないかというのがいま一つ文面からははっきり見えてこないという感じがします。そういう意味では、そこをもう少し具体化するということも必要なのかなという感じがしました。

 それから、現状で考えた優良事例というのが一体どういうものであるのかをちゃんとレビューしていただきたいなと思いました。既に認められている優良事例ということで、それは重要なベースラインになるとは思うので、どんな事例が認められて、どんな事例は認められなかったというのは、導入したい側としても知りたいし、また保全する側としても、そこをある程度はクリアにしていかないとやっぱり解決まで行かないのではないかなという感じがしました。

 最近起こることは、緩和策、いわゆるCOを削減するために、どちらかというと、適応的に重要な自然環境、グリーンインフラとしても重要な自然環境が劣化するという事例が結構見られます。これは、太陽パネル設置のために斜面の森林を伐採して土砂が流出するみたいな例も含めて、今回の地熱の問題についても、やはり少なくとも特別保護地区という形で指定された理由は、自然環境が豊かであるということであると思うので、それをマイナスインパクトを当ててまで地熱開発するというのは、原則避けるべきだと思います。

 要望書の中には原則とその例外を入れ替えてほしいと、つまり、原則を認めて、例外的に認めないといったようなことが書かれているのですけど、それはあまりにも筋違いじゃないかなと思うので、やはりCO削減のために現在の自然環境を壊してしまうということは、トータルとしてのインバウンドであったり、もしくは、先ほどのエネルギーとしての価値であったり、そういうものを下げることになると思うので、その辺はよくよく考えていただきたいなと思いました。

 以上です。

○下村小委員長 はい。あと、挙手が苅谷委員、関委員ですね。お二人。

 苅谷委員、どうぞ。

○苅谷委員 苅谷です。

 地形地質を専門としている立場から一言申し上げたいんですが、今回頂いた資料、あるいは、ご説明の中でやはり火山は災害の巣であるといった観点がかなり欠けるのではないかというふうに感じました。

 火山の災害といいますと、マグマが噴き出て噴火をするといったことをイメージされる方が多いのだと思いますが、実際には、斜面崩壊、あるいは土石流、山体崩壊といった噴火と直接関係のない災害も多発するわけです。特に、地熱地帯ですと、温泉のいわゆる熱水風化といった形で地盤が緩くなっている、また、そういった条件のところに近年増えている雨が、あるいは台風が襲うと一体どういうことになるのか、それによって発電設備が壊滅的なダメージを受けた場合に、どのようなことが起こるのかといった、こういった視点がどうも今日、聞いた限りではないように思われました。ぜひそういった観点で評価をしていただいた上で、国立公園、規制をかけなければいけませんけれども、一方で地熱の利用といったこと、議論をしていただきたいと思います。

 以上です。

○下村小委員長 それでは、関委員、どうぞ。

○関委員 手短に申し上げます。

 先生方、もう既にたくさんおっしゃっていただいていることとかなり重なっているんですけれども、今回のこのお話、私も前提としては2種、3種の利用の中でということをターゲットにしているのかなと考えて読ませていただいているんですが、優良事例です、やはり。最後の四つ目のモニタリング、情報開示というところがありますけれども、やはりこの部分、操業後にも続けていただけるものなのか、そこまで視野に入っているのかというところを確認させていただければと思っています。

 また、今もお話がありましたが、想定外のリスクというのが確実にあるかどうか分からないですけども、そういったものが視野に入っているかどうか、例えば、操業を停止しなければいけないという、その段階の歯止めはどのようにルール化されるのかというところですね。その部分が優良事例に盛り込んでいただけると、読んでいるほうも分かりやすいかなと思いました。

 以上です。

○下村小委員長 はい。ありがとうございました。

 ほかに何か追加のご意見、ご質問ございますか。

 時間を見計らって、チャットでご意見をいただいている委員がございます。ただ、まだ会場、許されると事務局から聞きましたので、簡単にお願いしたいと思います。小泉委員ですね。それから大海委員もですね。

 はい、どうぞ。

○小泉委員 小泉です。ありがとうございます。

 チャットに書きましたように、私、意見、質問、疑問も含めて、事前にお送りしましたので、参考にしていただきたいと思います。

 ちょっと気になっているのは、資料1の13ページに主な検討事項、四つありまして、私、全く基本的な知識がないので傾斜掘削の考え方についてはコメントできませんというふうにしましたけれども、実は、この傾斜掘削というのは非常に大きな重みを持ってくるのではないか、指定地外から掘削が可能であるというようなことで議論になっていくのではないかとちょっと心配をしております。ここについて、検討会できちんと議論し、その内容は小委員会の中で開示されるということを期待したいと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。

○下村小委員長 ありがとうございました。先ほどちょっと失礼しました。浅沼委員ですね。

○浅沼委員 産総研の浅沼でございます。

 チャットでも流したんですけども、私、モニタリング関係の仕事をしておりまして、温泉のモニタリングでありますとか微小地震、あるいは物理探査データの解析等を行っておりますけれども、やはり地熱発電がほかの環境、あるいは温泉等に影響を与えるか、与えないかということはきちんとした科学的データを取って、それを中立的な立場できちんとコンパイルをする。さらに、一番難しいのは、どのレベルに達したら影響があったというのか、あるいは影響があったといった場合に、どういう体制で補償なりを行うのかというところの枠組みをきちんと立てた上で、みんな同じテーブルで、同じデータを見ながら議論ができるようなベースを整えていくということが重要なんじゃないかなというふうに感じております。

 以上です。

○下村小委員長 はい。あと、お二人で切りたいと思いますが、敷田委員、それから宮本委員ですね。

○敷田委員 敷田です。

 皆様からいろんな意見が出ているので、それを前提としてお話をしたいと思いますが、最初に説明をされました優良事例のところは非常に象徴的だと思うんですが、この優良事例の検討は、地元関係者との合意形成ということで、開発側と地元という基本的な対立構造をそのまま残したままということで進めるという設定になっています。ダイレクトに言いますと、開発する人と、それに対して守る人と、開発されるのであれば、それに対する補償をという構造が簡単に出来上がる進め方になっているので、これをどういう視点で開発するのか、先ほどから地元関係者の意志とか意図、希望とかという話が出ているのであれば、この地域関係者の合意形成ではなしに、地域との合意形成という説明になると思います。

 このような点をもう一度整理をしていただきたいということと、一番の懸念は、この開発をした後、うまくいかなかった場合に誰が責任を取るかということがはっきりしていればいいということだと思います。ほとんどの開発行為というのは、うまくいけば文句は出ないですけど、うまくいかなかった場合に非常に大きな禍根を残すので、施設の撤去も含め、開発の預託金の制度をつくるとかという厳格な管理が必要だと思います。

 以上です。

○下村小委員長 宮本委員、お願いします。

○宮本委員 2点だけコメントしたいと思います。

 私、国土審議会の委員もやっているんですけれども、6月21日に出てきた資料で、国土の長期展望専門委員会というところの取りまとめ資料というのを拝見しました。そこで、再エネの利用の適地と需要地が不一致であるので、広域で電力を融通し合うというプレートが出てきていましたので、そういうことを考えますと、先ほど、ほかの委員がおっしゃった地産地消というのではなくて、ほかの地域に電力を供給する場となり得るのかなということをちょっと懸念しています。

 それともう一つは、つくる前からこういうことを言うとなんですけれども、太陽光発電でも、数十年後の廃棄物のことについて懸念があるということが言われておりますので、こういう大規模設備ですと、閉鎖したときにその廃棄のコストですね。それはどのようになっているのかということが気になりましたので、何かの折に教えていただければありがたいと思います。

 以上です。

○下村小委員長 ありがとうございました。様々な観点からご意見をいただきましてありがとうございました。ただ、時間もございますので、ともかくご意見を事務局のほうで承って、検討小委員会のほうでさらに検討して、また、こちらにご報告、ご議論いただく形にするということにしたいと思います。

 事務局のほうで何か今のコメント、ご意見等で何かお答えしていただくことはございますか。

○国立公園課長 国立公園課長でございます。

 非常に貴重なご意見、それぞれのお立場でいただきまして、本当にありがとうございました。今後さらに事業者団体も含めた検討会を開きたいと思っておりまして、技術的な面も含めて検討を深めたいと思いますが、当然、今日いただいたご意見をしっかり受け止めて、それも反映できるような結論に向けて検討していきたいと思っております。

 また、結論の前に、またこの小委員会のほうに状況はしっかりご報告をしてご審議いただこうと思ってございます。今後ともよろしくお願いいたします。

○下村小委員長 どうもいろいろとご意見をいただきましてありがとうございました。特に自然公園小委員会の皆様におきましては、非常に長い会議になりましたこと、議論を続けていただきましたこと、お礼申し上げたいと思います。

 それでは、ここで議論を閉じさせて、終了とさせていだきまして、進行を事務局にお返しいたします。

 皆様、どうもありがとうございました。

○事務局(清武) 下村委員長、ありがとうございました。

 委員の皆様におかれましても長時間にわたりご審議いただきありがとうございました。

 それでは、会議は以上になります。本日はありがとうございました。

午後0時23分 閉会