中央環境審議会 土壌農薬部会土壌環境基準小委員会(第1回)議事録

日時

平成25年12月26日(木)15:00~16:17

場所

イイノホール RoomA1

出席委員

委員長 中杉 修身
委員 大塚  直
臨時委員 浅見 真理   平田 健正
山本 廣基   吉田  緑
専門委員 小林  剛   駒井  武
佐々木裕子   広瀬 明彦
細見 正明

委員以外の出席者

環境省
平岡大臣官房審議官、森下放射性物質汚染対策担当参事官、更田農薬環境管理室長、
柳田土壌環境課課長補佐、市川土壌環境課係員、福地土壌環境課係員

議題

  1. (1) 土壌環境基準等の見直しの進め方について
  2. (2) 1,1-ジクロロエチレンに係る土壌環境基準の見直しについて
  3. (3) その他

配付資料

資料1 中央環境審議会土壌農薬部会土壌環境基準小委員会委員名簿
資料2 土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し等について(諮問)
資料3 土壌環境基準等の見直しの進め方について
資料4 土壌の汚染に係る環境基準の見直しについて(第1次答申)(案)〔1,1-ジクロロエチレン〕
参考資料1 中央環境審議会土壌農薬部会の小委員会の設置について
参考資料2 中央環境審議会土壌農薬部会の運営方針について
参考資料3-1 環境基本法(抜粋)(平成5年法律第91号)
参考資料3-2 土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年環境庁告示46号)
参考資料3-3 水質汚濁に係る環境基準について(抜粋)(昭和46年環境庁告示59号)
参考資料3-4 水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第2次答申)(抜粋)(平成21年9月中央環境審議会)
参考資料4 1,1-ジクロロエチレンに係る土壌汚染対策法に基づく調査結果等について
参考資料5 清涼飲料水評価書 清涼飲料水に係る化学物質の食品健康影響評価について〔1,1-ジクロロエチレン〕(2007年3月食品安全委員会)

議事

【更田室長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから土壌農薬部会土壌環境基準小委員会第1回を開催させていただきます。
 まず、本日の委員の出欠の状況でございます。本日は、全員の委員の皆様にご出席いただいており、小委員会の開催の定足数を満たしておりますことを、まずご報告いたします。
 なお、この土壌環境基準小委員会は、本年10月11日の土壌農薬部会において設置が了承されてから初めての開催となりますので、中杉土壌農薬部会長からご指名いただき、ご所属いただくことになりました委員の皆様について、紹介させていただきます。
 まず、委員長ですけども、土壌農薬部会で、中杉修身委員にご就任いただきますことが決まっております。
 続きまして、名簿の順にご紹介させていただきます。
 早稲田大学の大塚委員でございます。
 国立保健医療科学院の浅見臨時委員でございます。
 和歌山大学の平田臨時委員でございます。
 大学入試センターの山本臨時委員でございます。
 国立医薬品食品衛生研究所の吉田臨時委員でございます。
 横浜国立大学の小林専門委員でございます。
 東北大学の駒井専門委員でございます。
 国立環境研究所の佐々木専門委員でございます。
 国立医薬品食品衛生研究所の広瀬専門委員でございます。
 東京農工大学の細見専門委員でございます。
 続きまして、事務局を紹介させていただきます。
 まず、大臣官房審議官の平岡審議官でございます。
 放射性汚染物質対策担当の森下参事官でございます。
 それから、土壌環境課の柳田課長補佐でございます。
 同じく、土壌環境課の市川でございます。
 土壌環境課の福地でございます。
 私、農薬環境管理室長の更田と申します。よろしくお願いいたします。
 では、議事に先立ちまして、平岡審議官より一言ご挨拶申し上げます。

【平岡審議官】 環境省で水・大気環境局の担当審議官をさせていただいております、平岡でございます。
 今日は、土壌環境基準小委員会第1回ということで、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
 委員の皆様方におかれましては、この委員会の委員をお引き受けいただきまして、また、大変ご多忙のところ、この本当に押し迫った年末の日に会議にご参加いただきまして、お礼を申し上げたいと思います。
 環境基本法に基づく土壌環境基準についての議論をしていただくわけでございますが、皆様、ご案内のとおりかと思いますけど、水環境基準あるいは地下水の環境基準に基づきまして土壌環境基準が設定されております。現在27項目設定されておるわけでございますけども、平成21年以降、水環境基準等の追加、変更が行われており、土壌環境基準について、これを踏まえた速やかな見直しが必要なところでございます。
 ただ、東日本大震災が発生をいたしましたこともありまして、この土壌環境基準の見直しの検討、若干前に進んでいないという状況がございました。これについて、改めて見直し等の着手をしていく必要があると考えまして、この10月に改めて中央環境審議会に、1,1-ジクロロエチレン等の6物質を対象としてご議論していただきたいということで、諮問をさせていただいたという状況でございます。これを受けまして、土壌農薬部会に、今日、開催に至っております環境基準の小委員会と、あわせまして、土壌制度の専門委員会というものを設置していただくということになってございまして、今日は、まず環境基準のほうの小委員会という運びでございます。
 したがいまして、この委員会では、土壌環境基準の見直しについてのご審議をお願いするということでございますので、6物質、まず一つ一つご検討をお願いしていきたいと考えているところでございますので、大変ご多忙のところとは思いますが、ぜひご審議をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございます。

【柳田課長補佐】 それでは、議事に入ります前に、本日の配付資料についてご確認いただきたいと思います。
 まず、資料1といたしまして委員の名簿でございます。資料2といたしまして、土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し等についての諮問、資料3といたしまして、土壌環境基準等の見直しの進め方について、資料4といたしまして、土壌の汚染に係る環境基準の見直しについて(第1次答申)(案)でございます。参考資料といたしまして、中央環境審議会土壌農薬部会の小委員会の設置について、参考資料2といたしまして、中央環境審議会土壌農薬部会の運営方針について、参考資料3-1といたしまして、環境基本法の抜粋、資料3-2といたしまして、土壌の汚染に係る環境基準について、参考資料3-3といたしまして、水質汚濁に係る環境基準についての抜粋、参考資料3-4といたしまして、水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第2次答申)(抜粋)、参考資料4といたしまして、1,1-ジクロロエチレンに係る土壌汚染対策法に基づく調査結果等について、参考資料5といたしまして、清涼飲料水評価書の清涼飲料水に係る化学物質の食品健康影響評価について〔1,1-ジクロロエチレン〕でございます。これについて不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
 それでは、これからは中杉委員長に議事進行をお願いいたします。

【中杉委員長】 自分が指名して、自分が務めるということで、変な形になりますけども、議事進行を務めさせていただきます。
 本日は、皆様、ご多用中のところご出席いただきましてありがとうございます。
 第1回目の委員会でございますので、議事に入らせていただく前に、参考資料1の「中央環境審議会土壌農薬部会土壌環境基準小委員会の設置について」の2.のところをご覧いただきますと、2.に基づきますと、委員長に、私に事故があるときは委員長があらかじめ指名する委員、臨時委員または専門委員がその職務を代理することになっております。私から委員長代理には、恐縮ではございますけれども、細見委員にお願いしたいと思っておりますが、よろしくお願いいたします。

【細見専門委員】 かしこまりました。

【中杉委員長】 それでは、よろしくお願いいたします。
 また、議事に先立ちまして、本日の会議及び資料の公開と議事録の取り扱いについて説明しておきたいと思います。
 参考資料2のところに運営指針、土壌農薬部会の運営方針があります。この中で、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合や、公開することにより特定の者に不当な利益もしくは不利益をもたらすおそれがある場合などは、委員長の判断に基づき、会議及び資料を非公開とすることとされています。
 本日は、いずれもこれに該当しないことから、公開といたしたいと思います。
 また、今回の議事録につきましても、事務局で調整後、発言委員にご確認をいただいた上で、後日、公開させていただきますので、よろしいでしょうか。

(異議なし)

【中杉委員長】 それでは、議事次第に従って進めてまいりたいと思います。
 最初に、1番目で、土壌環境基準の見直しの進め方についてでございます。
 事務局から説明をお願いいたします。

【柳田課長補佐】 それでは、事務局から、資料2及び資料3に基づいて説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料2でございますけれども、これは平成25年10月7日に環境大臣から中央環境審議会の会長に対しての諮問でございます。中身につきましては、土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し等についてということで、具体的には、この記の下のところに書いてありますとおり、「土壌の汚染に係る環境基準について」の見直し。土壌汚染対策法第2条第1項の政令で定める特定有害物質及び土壌汚染対策法第6条第1項第1号の環境省令で定める土壌の特定有害物質による汚染状態に係る基準の見直しや、その他土壌汚染対策法の運用に関し必要な事項。別記の物質というのは、この資料2の裏面になりますけれども、そこに記載されている6物質について、そういったことについて、意見を求めるという形で諮問をさせていただいたところでございます。
 諮問理由は、先ほど審議官からもございましたとおり、現在、土壌環境基準につきましては、27項目について設定されているところでございます。水質汚濁に係る基準や地下水の水質汚濁に係る環境基準等に関しては、平成21年度から23年度にかけて、項目の追加や基準値の改正が行われておりますので、こういった状況を踏まえまして、土壌環境基準や、土壌汚染対策法に基づく特定有害物質や、土壌の特定有害物質による汚染状態に係る基準の見直し等について、意見を求めるといったものでございます。
 これにつきましては、1枚めくっていただきますと、同日付で中央環境審議会から土壌農薬部会に付議するということになっております。そして、先日、10月11日に土壌農薬部会を開催いたしまして、こういった審議を行う際に、特にその基準のほうにつきましては、この土壌環境基準小委員会で審議いただくということとされたところでございます。
 今後の進め方につきましては、資料3をご覧になっていただければと思います。
 現在の土壌に係る環境基準につきましては、参考資料3-2に載っているところでございます。皆様、委員の方、ご専門ということもあって、いろいろ詳しいと思いますので、逐一は説明いたしませんが、こちらに環境基本法の第16条第1項に基づいて、土壌の汚染に係る環境上の条件について、そういった望ましい基準として設定されているといったものでございますが、これを見直していくということでございます。
 まず、平成25年12月26日、本日、土壌環境基準小委員会の第1回目を開催いたしまして、まずこの見直しの進め方についてと、あとは土壌環境基準の見直しについて、後ほどご審議いただきますけれども、1,1-ジクロロエチレンの答申の案についてご議論いただきます。ここで委員のご承諾が得られましたら、それについて、1月上旬から2月上旬ぐらいを目途にパブリックコメントを実施する予定としております。
 もう一つの土壌汚染対策法の特定有害物質に係る基準等の改正につきましては、もう一つの土壌制度専門委員会、こちらのほうでご審議いただく予定としております。これを平成26年2月ごろを目途に開催する予定でございます。ここのところでは、また本日のご議論を踏まえた、1,1-ジクロロエチレンの基準が見直されたといったことを踏まえて、1,1-ジクロロエチレンについて、土対法の特定有害物質に係る基準をどうするかといったことをご審議いただく予定としております。そこでまたご承諾が得られましたら、2月の中下旬から3月の中下旬ぐらいまでを目途にパブリックコメントを実施する予定といったこととしております。
 その専門委員会報告につきましては、その後、中央環境審議会の土壌農薬部会で改めてご審議いただくということになります。これは、一応予定といたしましては、平成26年3月ごろを目途にと考えているところでございます。土壌環境基準の改正についてということと、あとは土壌汚染対策法の特定有害物質に係る基準等の改正についてということで、1,1-ジクロロエチレンについて、報告及び答申案についてご議論いただくといった形になります。
 平成26年度以降につきましては、この土壌環境基準小委員会と土壌制度専門委員会を複数回実施することで、1,1-ジクロロエチレン以外の諮問対象物質について検討を行っていく予定としております。
 以上でございます。

【中杉委員長】 ただいまの説明について、ご質問、ご意見等ございますでしょうか。いかがでございましょう。
 六つあるうち、1,1-ジクロロエチレン、新たに基準を設定する項目でないということと、基準値が厳しくなるという項目でないということで、比較的、議論が少なくて済むのかなということで、先行して議論させていただくということで、今回、できれば合意を得て、答申をしたいということでございます。
 この小委員会は、先ほどの規定にありますように、小委員会で決めますと、土壌農薬部会の決議にかかわらず、もう決定ということになりますので、私が中環審の会長のほうに答申をさせていただくことになります。
 いかがでございましょうか。
 その後は、まだ決まっていないということですね。順次、作業を進めて、なかなか難しい問題がありそうなので、それをクリアしながら、順次ご議論いただく。土壌環境基準だけ独立してぽんとあると、比較的、淡々と決められるところはあるのですが、純粋に独立しているかどうかというところの整理が少し必要なこともありまして、そう淡々と決めるわけにはいかないというところがございます。
 いかがでございましょう。こういう進め方で、とりあえずよろしいでしょうか。

(発言なし)

【中杉委員長】 それでは、今日は1,1-ジクロロエチレンについてということでございます。ご議論をいただこうと思います。
 議題の2番目でございますけども、1,1-ジクロロエチレンに係る土壌環境基準の見直しについてということでございます。
 資料4のほうに第1次答申案がつくられてございます。第1次答申案というのは、1,1-ジクロロエチレンの答申案ということでございます。
 事務局から説明をお願いいたします。

【柳田課長補佐】 それでは、資料4に基づきまして、事務局より説明させていただきます。
 土壌の汚染に係る環境基準の見直しについて(第1次答申)(案)ということで、1,1-ジクロロエチレンについての答申案ということになります。
 1枚めくっていただきますと、目次といたしまして、はじめにと基本的考え方、1,1-ジクロロエチレンについて、土壌環境基準の見直しについて、今後の課題と、別紙、参考といった順番になっております。
 それほど量も多くありませんので、答申案をそのまま読み上げる形でご説明させていただきたいと思います。
 まず、I、はじめに、環境基本法(平成5年法律第91号)第16条第1項に基づく土壌の汚染に係る環境基準(平成3年8月環境庁告示第46号。以下「土壌環境基準」という。)については、既往の知見や関連する諸基準に即して、設定可能なものについて設定するとの考え方に基づき、環境としての土壌が果たしている機能(以下「土壌環境機能」という。)を保全することを念頭に置いて、特に「水質浄化・地下水かん養機能」と「食料を生産する機能」の二つの機能を保全する観点から、現在27項目について定められている。
 平成21年11月30日、1,4-ジオキサン、塩化ビニルモノマー、1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンの4項目について、平成23年10月27日にカドミウムについて、公共用水域の水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準(以下「水質環境基準」という。)及び地下水の水質汚濁に係る環境基準(以下「地下水環境基準」という。)の項目の追加及び基準値の変更が行われた。また、平成23年4月1日に、トリクロロエチレンに係る水道水質基準の基準値の変更が行われた。
 水質浄化・地下水かん養機能を保全する観点から定めている土壌環境基準が公共用水域及び地下水における水質保全と密接な関係を有することを踏まえ、平成25年10月7日、環境大臣は中央環境審議会に対して、これら6物質に係る「土壌の汚染に係る環境基準及び土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の見直し等について」(諮問第362号)諮問した。
 今般、この検討対象6物質のうち、1,1-ジクロロエチレンについて、科学的知見の収集・解析を行い、土壌環境基準の見直しについて以下のとおり結論を取りまとめた。
 II、基本的考え方、1.土壌環境基準設定の基本的考え方、土壌環境基準は、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準であり、土壌の汚染状態の有無を判断する基準として、また、政府の施策を講ずる際の目標となるものである。土壌環境基準は、既往の知見や関連する諸基準に即して、設定可能なものについて設定するとの考え方に基づき、「水質浄化・地下水かん養機能を保全する観点」と、「食料を生産する機能を保全する観点」の二つから設定されている。
 このうち、水質浄化・地下水かん養機能を保全する観点から定めている土壌環境基準については、水質環境基準のうち人の健康の保護に関する環境基準の対象となっている項目について、土壌(重量:g)の10倍量(容量:ml)の水でこれらの項目に係る物質を溶出させ、その溶液中の濃度が、おのおの該当する水質環境基準の値以下とする考え方で環境上の条件を定めてきたところである。(以下このような観点から設定した環境上の基準を「溶出基準」という。)  2.土壌環境基準の見直しについて、平成21年11月、新たな科学的知見等に基づき、1,1-ジクロロエチレン等について水質環境基準及び地下水環境基準の基準値の変更等が行われた。
 このため、今般土壌環境基準のうちの溶出基準について見直しの検討を行うこととした。
 次のページ、3ページ目に入りまして、III、1,1-ジクロロエチレンについて、1.これまでの経緯、1,1-ジクロロエチレンは、平成5年に水道水質基準が設定され、水質環境基準が水道水質基準の検討に際し採用された考え方及び数値を基本として0.02mg/lに設定されたことを踏まえ、平成6年に「検液1Lにつき0.02mg/l以下であること」とする土壌環境基準を設定した。物質情報の詳細については、別紙というのが5ページに載っております。それについては省略させていただきます。
 2.水質環境基準等の基準値の見直し、(1)水道水質基準、平成15年に厚生労働省は清涼飲料水の規格基準の改正に係る食品健康影響評価を食品安全委員会に依頼した。食品安全委員会はWHO飲料水水質ガイドライン第3版、我が国の水質基準見直しの際の評価等に基づき食品健康影響評価を行い、1,1-ジクロロエチレンのTDI(耐容一日摂取量)を46㎍/㎏体重/日と設定する旨の評価結果を平成19年に通知した。
 厚生科学審議会生活環境水道部会ではこの結果を踏まえ、1,1-ジクロロエチレンの評価値を0.mg/lとすることが適切とされ、この場合、超過事案が近年報告されていないことから、水道水基準を廃止し、水道水質管理目標設定項目に変更することが適当とされた。
 この改定の根拠となる食品安全委員会の食品健康影響評価では、「ラットを用いた2年間の飲水投与試験による肝臓への影響で、LOAEL9mg/㎏体重/日が最も鋭敏なエンドポイントである。しかし、NOAELが得られていないことから、WHO飲料水水質ガイドライン第3版第1次追補と同様にNOAELに近い値として導き出されているBMDLを用いることが、最も適当と考える。」とし、具体的には、Quastらのラットを用いた2年間の飲水投与試験による肝臓への影響からBMDL10を4.6mg/㎏体重/日と算定し、不確実係数を100としてTDIを46㎍/㎏体重/日と算定した。
 この食品健康影響評価結果を用い、厚生労働省は平成21年4月1日に1,1-ジクロロエチレンの水道水基準を廃止し、水道水質管理目標設定項目を、水の寄与率10%、体重50㎏、飲用水量2L/dayとして、目標値を0.1mg/lと改定する症例を施行した。
 (2)水質環境基準及び地下水環境基準の改定、このことを踏まえ、平成21年9月中央環境審議会答申「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準等の見直しについて(第2次答申)」において、食品安全委員会の食品健康影響評価であるTDI46㎍/㎏体重/日を根拠として、1,1-ジクロロエチレンの水質環境基準及び地下水環境基準は、旧基準値0.02mg/lから現行の基準値0.1mg/lへ見直すことが適当とされ、平成21年11月30日に基準値が改正された。
 IV、土壌環境基準の見直しについて、1.基本的考え方、1,1-ジクロロエチレンの土壌環境基準(溶出基準)については、平成21年11月30日環境省告示による水質環境基準及び地下水環境基準が見直されたこと、既に測定方法があることを踏まえ、水質環境基準及び地下水環境基準に準拠し、基準値(環境上の条件)を下記の表のとおりとすることが適当である。
 表といたしまして、項目、1,1-ジクロロエチレン、新たな環境上の条件として、検液1Lにつき0.1mg以下であること。現行の環境上の条件は検液1Lにつき0.02mg以下であることでございますが、これを新たな環境上の条件として0.1mg以下であることとしてはどうかということでございます。
 2.対象項目の測定方法、検液の作成方法は、現行どおり平成3年環境庁告示第46号(土壌の汚染に係る環境基準について)付表に掲げる検液の作成方法のとおりとする。
 検液中濃度に係る測定方法は、現行どおり日本工業規格K0125の5.1、5.2または5.3.2に定める方法とする。
 最後のⅤの今後の課題でございますが、以上のとおり1,1-ジクロロエチレンについて土壌環境基準の見直し第一次答申を取りまとめた。
 今後は、他の物質についても、引き続き土壌中の挙動や周辺環境への影響等に関する科学的知見の蓄積に努め、土壌環境基準の見直しに係る検討を進めることとする。
 5ページ目以降が、別紙といたしまして、1,1-ジクロロエチレンの情報ということで、まず1番目といたしまして、物質情報として、名称、化学名、CAS№、元素/分子式、原子量/分子量、構造式、環境中での挙動等や物理的性状といったものを記載しております。
 2番目といたしまして、主な用途及び生産量を記載しております。
 次のページ、6ページ目に参りまして、現行基準等ということで、(1)といたしまして国内基準値等ということで、先ほどから申しましているとおり、水質の環境基準値だとか、地下水の環境基準値、あとは水道水質管理目標値というようなことが、現在は0.1mg/l以下であるといったようなこと等を記載しております。
 (2)といたしまして諸外国基準値等といった形で、WHOの飲料水水質ガイドラインとか、USEPA、EUの基準でございます。
 最後が4番目といたしまして、PRTR制度による全国の届出排出量ということで、公共用水域、大気と合計といったものを載せているところでございます。
 7ページ目が出典ということで、どういったことを参考にしたかといったものをそれぞれ記載しておりまして、8ページ目の途中までが出典でございまして、その後に略語の解説といったものを載せております。
 あと、9ページ目は、この土壌環境小委員会の委員の名簿を載せております。
 ということで、資料4につきましては以上でございますが、参考資料4について、引き続き説明をさせていただきたいと思います。

【福地係員】 それでは、お手元の資料の後ろのほうにあります参考資料4をご覧ください。1,1-ジクロロエチレンに係る土壌汚染対策法に基づく調査結果等についてでございます。
 1番、土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査に関する調査結果についてです。平成3年~平成23年まで、調査事例数が1万3,760件あります。これは土対法対象外の自主的な調査も含めておりますので、法対象外も含んでいます。そのうち、基準不適合事例が、平成22年までで6,079件、合計しますと23年度までで7,022件でございます。主に半分程度は基準超過をしているということです。その内数なんですけれども、1,1-ジクロロエチレンの基準、現在の基準0.02mg/lを超過している事例が、平成22年までで167件、23年度の単年度で37件で、合計で204件となっております。
 2番で、平成25年の12月2日時点で、土対法に基づいて、1,1-ジクロロエチレンにより要措置区域または形質変更時要届出区域に指定されている区域が合計62件ございます。
 これらの区域については、いずれも1,1-ジクロロエチレン単独の基準値超過で区域指定されている区域はなくて、どの区域も1,1-ジクロロエチレン以外の特定有害物質について、区域指定の対象物質となっております。
 排出量については、合計で7万4,843㎏/年でございます。このうち、ほとんどが大気中に排出されておりまして、一部、公共用水域に排出されているんですけども、土壌への排出というのは、排出量の届出というのはありませんでした。
 4番、公共用水域での検出状況なんですけれども、検出が、全測定地点3,497地点中、1地点でございます。そのうち基準超過しているのは0地点です。
 地下水については、概況調査で、全測定地点3,037地点中、検出地点が11地点で、現在の基準値を超過しているのは0地点、旧基準超過も0地点でございます。継続監視調査地点につきましては、全測定地点1,750地点中、115地点で検出しておりまして、このうち、現在の基準を超過しているのが3地点、旧基準を超過しているのが20地点でございます。
 出典等は以下のとおりとなっておりますので、ご覧いただければと思います。
 以上になります。

【中杉委員長】 よろしいですね。
 それでは、資料4について、ご意見、ご質問いただければと思います。
 参考資料4は、直接、土壌環境基準設定について関わるものではございません。土対法の指定基準に関わるほうに直接関連するのですが、全く関連がないと言い切れるかどうかということで、事務局から説明をいただいたものでございます。
 いかがでございましょう。
 この別紙というのは、水質環境基準の見直しのときにつけられた資料そのままでしょうか。ちょっと年次は変えているのかなというふうに思いますけれども。

【更田室長】 データのリバイスはしていますし、食品安全委員会の評価書等に記載されている物質情報も、追加的に記載しております。

【中杉委員長】 ちょっと気になるのは、環境中での挙動というところに、やはり1,1-ジクロロエチレンの地下水、土壌、土壌と地下水は非常に微妙なんですけども、原因が基本的にはトリクロロエチレンあるいはトリクロロエタンからの分解生成物であるという、そう考えていいのだろうと思います、多くの場合。全く全てがそうだとは言えませんけど、そうなると、その部分の記載というのはどこかに入れておく必要があるのではないだろうかと。環境中の挙動というのは、1,1-ジクロロエチレンの挙動ともとれますけども、それが出てくるところも環境中の挙動と言えると思いますので、ちょっとそこの記載を入れておいたほうがよろしいのかなと。そうすると、後でPRTRがどこへ出しているという話が出てきますけども、それだけではないんだということがはっきりしてよろしいのかなと、ちょっと気になりました。

【更田室長】 それはまた文案を考えまして、ご相談させていただきます。

【中杉委員長】 どうぞ。

【山本臨時委員】 今、中杉委員長が言われたこと、ごもっともで、関連の代謝に関係するようなデータもあったほうがいいかなと、この物質情報の中にあったほうがいいかなと思いますのと、もう1件は、これ、土壌中でのその挙動ということですから、データがあるかないかはちょっとわからないですけども、土壌吸着係数のような、文章的には環境中での挙動の一番最後に「土壌吸着性は低く云々」と書いてあるんですけども、データはとっていないかもしれませんけども、これから出てくる物質について、もしそういう情報があるなら、KdもしくはKoc辺りを書いていただければ、より土壌環境基準としては議論しやすいのかなというふうに思います。

【中杉委員長】 ありがとうございます。土壌のということになると、そこら辺が一つ、必要な情報かなと思います。ただ、Kcのときは、相手の土壌は何であるかで数字が物すごく変わるので。

【山本臨時委員】 そうですね。

【中杉委員長】 だから、そこら辺は注意をしていただければと思います。どこか探せば出てくるのだろうというふうに思いますけども。

【更田室長】 そこはまた調べさせていただきまして、検討させていただきます。

【中杉委員長】 ほかはいかがでしょうか。

【細見専門委員】 3ページのリスクの評価のところで、改定の根拠となる食品安全委員会の文章なのか、その4行目ぐらいに「飲料水水質ガイドライン第3版第1次追補と同様に」というところで、このベンチマークの決め方というのは、NOAELに近い値という考え方でいいんでしょうかね。じゃあ、どのぐらい近いのかというのは、どんな情報があってこの文章が出てきたのかなというのが、これはここで議論するわけではないと思うんですが、もし教えていただければありがたいですが。

【広瀬専門委員】 では、広瀬のほうから。ベンチマークドーズを使ってTDI、ADIを決めるというやり方は、この当時はそれほどではなかったんですけど、最近ではほとんどNOAELが求められないときには、ほぼNOAELのかわりに使う。

【細見専門委員】 ところが、この文章はNOAELに近いとして導き出されているというのは、本当にそうなのかというのはちょっと気になったので。

【広瀬専門委員】 一応、過去のいろいろな事例を調査すると、NOAELとベンチマークドーズ値はほぼ近いということはわかっています。ただ、それを受けて、これはこういう表現になっているんですけれども、今はもうほぼ常識的にベンチマークドーズをNOAELのかわりに使ってTDIを計算するというのは主流になりつつあるというふうに私は考えています。

【中杉委員長】 むしろNOAELというのは用量設定に左右されるから、ベンチマークドーズのほうが、より現実的なのかもしれないですね。

【広瀬専門委員】 そうです。NOAEL、LOAELというのは、基本的に実験動物の用量設定で固定されますので、ベンチマークドーズはそれを計算式でフィッティングして用量相関を見て、どこが影響が出なくなる用量かという推定をして出す値ですので。

【細見専門委員】 そのこと自身はわかるんですが、この文章として間違いなければいいと思うので。

【中杉委員長】 ちょっと、ここの文章は。

【更田室長】 この文章は、参考資料5の食品安全委員会の資料の20ページに(2)用量反応評価という記述がありまして、この3行目にも書いておりますけども、この部分を引用させていただいております。

【中杉委員長】 よろしいですか。

【広瀬専門委員】 多分これは引用したからこうなっているのであって、今だとすれば、もう少しNOAELよりはベンチマークドーズ、TDIの設定と根拠とするほうが適切であるというような表現になると思います。

【中杉委員長】 一応引用させていただくほうが、この委員会としてはよろしいのかなというふうに思いますけども、よろしいですか。

【細見専門委員】 はい。

【中杉委員長】 そのほか、いかがでしょうか。
 どうぞ。

【小林専門委員】 少し細かいところですが、6ページの別紙の現行基準のところで、諸外国の基準値等のところを見ますと、ほかの国々で、国際的には、評価したのが古い年だったので、恐らく厳しい数字のままだと思われますが、2011年の第4版だと「検出状況が低いためガイドライン値を設定せず」となっていまして、これがどういう状況だったのか。検出状況が低いというのは、濃度が低いという意味なのか、調査したら検出割合が低いという状況なのか、どういうことでガイドライン値が設定されなかったのか教えていただけますか。

【中杉委員長】 これは浅見委員のほうでおわかりになりますか。多分水道のほうの。

【浅見臨時委員】 資料をご覧になって、説明していただける形のほうが確かですが。

【中杉委員長】 では、そうしましょう。

【福地係員】 では、既存の資料に基づきましてご説明いたします。以前のこのWHO飲料水水質ガイドラインの0.03mg/lについては、TDIは同じ9㎍/㎏体重/日を元にしていますが、体重60㎏の成人、一日2Lとして0.03mg/lという基準値を設定しておりまして、日本の場合は体重50㎏で計算しますので、「9㎍×50÷2=0.0225」になるんですけれども、WHOの場合には体重60㎏として計算しているため0.03になっております。

【中杉委員長】 その後の「検出状況が低いためガイドライン値を設定せず(第4版)」はどういう表現になっているのかという。

【広瀬専門委員】 多分、参考資料5の15ページの下側に、WHOがどう判断したかというのがありまして、WHOは、やはり第3版第1次補追でベンチマークドーズを使って、一応140㎍/Lという値は設定はしたんですが、実態は、通常検出される値はかなり高いというので、もう設定するまでもないと。値として設定するまでもないという意味で、設定せず。日本の場合も、これと同じように、多分今度は検出状況、10%を超える状況がほとんどもうなくなってしまったので、基準値ではなくて、目標設定項目に格下げになったというのが、だから、検出状況が低いというのは、多分、表現的には濃度が低いとかですね、WHOの場合は。

【小林専門委員】 WHOでも新たにガイドライン値を設定するとしたら、日本と同じように少し緩めの数字になるという気がしますがいかがでしょう。

【広瀬専門委員】 そうだと思います。

【細見専門委員】 140㎍/㎏体重/日じゃない、0.14mg/l。

【広瀬専門委員】 0.14mg/lになるはずですけれども、ガイドライン値ではないと。“Health based value”でしたか、そこまでは言い切れない。

【浅見臨時委員】 健康影響値というような。

【中杉委員長】 ここの表現は、「検出状況や検出濃度の低いため」と言ったほうがわかりやすい。そう言っても間違いはないですよね。そうでもないのですか。

【浅見臨時委員】 状況が低いというのはちょっと。

【中杉委員長】 だから、そこの表現を正確にしたほうがいいと。

【浅見臨時委員】 はい。

【中杉委員長】 ちょっと気になったんですけど、その下のUSEPAというのは何なんだということがあるので、これはUSEPAの何の基準か、飲料水基準か、ちょっと書いておかないと、これは現行の基準等という話で、一見、水の基準だけみたいに見えるけど、大気の基準もあるし、いろんなものがありますから、それは正確に書き込む必要があるだろうと思います。アメリカの場合は、これは発がんとみなしているのかどうかはわかりませんが、発がん物質だと閾値なしで全て計算してしまうようなことをやっているから。

【広瀬専門委員】 MCLとか幾つか指標があるので、そのうちのどれかだと、はっきり書いたほうがいいと思います。

【中杉委員長】 そうですね。それを書いておいてください。そうしないと、これだけじゃわからない。
 ほか、いかがでしょうか。

【浅見臨時委員】 申し訳ありません。今のお話が一つあるのは、3ページのところの表現なんですけれども、これは食品安全委員会の資料にも「BMDLの10%のものを用いる」というところまで書いてあるので、引用されるとしたら、そこまで引用するほうがいいのかなと思います。だから、ちょっと細かい点ではあるんですけれども、もともと評価の中でそこまで見て、その値を使っていらっしゃるので、その表現と合わせていただいたほうがいいのかなと思いました。
 注釈のほうも見させていただくと、8ページのところに、BMDL10の略語解説があるんですが、こちら、腫瘍が10%増加する用量とあるんですが、これが多分もとのものとちょっと表現が違うので、細かいところではあるんですけれども、もととなっている値になりますので、ちょっとご覧いただけるとありがたいなと思います。
 あとついでに、8ページの飲料水のガイドラインの第4版の表現が、多分これ、RecommendationのFirst Addendumというのは出ていないと思うので、そこは後で修正いただければと思います。
 それは細かいところなんですけども、もう1点、ちょっと教えていただきたいのが、土壌のグラムから立体に直すところで、今までも水と土壌というのを同じ値で、いろんな物質について、こういう方法で設定をされていらっしゃるようなんですけれども、今回、初めてなので教えていただきたいんですが、土壌の値を決めるときに、こういう試験方法で水の値と同じ値を使うということで、今まで特に支障がなかったのかどうかというのを教えていただければと思います。

【中杉委員長】 基本的に検液の作成方法は決まっていて、それで作成された検液について、同じ水道水というか、水道水の基準と同じというふうなことで設定をしてきた。これまでそれでやってきています。それでどうなんだというのは、そこはある意味では割り切りで、そういうふうな設定の仕方でずっと同様の基準を設定してきたということでございます。

【浅見臨時委員】 そうしますと、参考資料4の土壌汚染対策法の施行状況の値で、今、0.02の不適合事例がありますけれども、これは0.1以上の件数が幾つぐらいで、それが緩くなりますと、どういうことになるのかというのも、ほぼそこで想像できるという理解でよろしいでしょうか。

【中杉委員長】 これもはかり方は同じにしていますから、少なくとも溶出量基準については、多分、土壌制度専門委員会のほうでは、もう少し土壌汚染対策法の溶出量基準を、今度は緩めるというか、0.1に直すという議論をすることになります。そこでは、浅見委員が言われたような、どのぐらいに変わるのかと、もう少し細かい議論になるかと思いますけども。

【浅見臨時委員】 そういうご質問をさせていただきましたのが、水道のほうは地下水を原水とするようなところであっても、こういう状況で検出がほとんどないので、基準から外したという形ではあるんですけれども、今回、これで5倍緩い値になるということで、今までだったらば対策をとっていたような事例がもうしなくていいよということになってしまって、逆に水源の状況が悪くなるようであると、また検出されてしまうようなことがないといいなということを懸念いたしました。
 それからいきますと、今のジクロロエチレン以外の有害物質が出ているところがほとんどで、これが少し緩くなったからといって、大きな問題が生じるということではないということかなとは、資料からは思ったんですけれども、そういう見解でいいかなと。

【中杉委員長】 多分、土壌制度専門委員会で議論になると思いますけども、土壌汚染の対策をやるときに、地下水がどのぐらいまできれいになったら完了するかという地下水基準があります。ここで地下水基準という言葉を使っているのは正確でないので、参考資料4の2ページの「地下水基準値」というのを「地下水環境基準値」としておいてもらったほうがいいと思います。土対法のほうでは「地下水基準」というのを結果として同じ数字を使っていますけども、意味合いが違ってきて、対策をした後、モニタリングをしなさいと。その基準がその値をクリアしたら、浄化をしたものとみなしますよという形になります。土壌制度専門委員会のほうで議論していただきますけれども、そちらのほうでは、溶出量基準とあわせて、その地下水基準というのをどういうふうにするかということで議論になる。その地下水基準というのは、単純にそれを同じように変えてしまうと、浅見委員が言われるように、今よりはどんどん下がっていった緩いところで対策が完了という判断になってくることが起こり得ると。そこをどうするかというのはこれからの議論ですけど、そういう状況に、そういうことになるだろうというふうに思います。土壌環境基準は、そこと直接には関係ございませんけれども、実際にやっていくと、次の段階へ行くと難しい話が出てきてしまって。

【山本臨時委員】 今、浅見委員が言われた話ですが、土壌の基準、土壌中の濃度ということなんですけども、10倍量の水で溶出して出てくる、それが上から浸透していって地下水に行くということですから、それが地下水の濃度にならないようにという基準なんですよね。ですから、地下水のほうでその基準をクリアして健康上問題ないということであれば、こういった取り扱いでいいのかなというふうに思いますけどね。

【中杉委員長】 こういう方法でやりましょう。これは廃棄物のほうのやり方をまた倣ってという形になるので。
 ほかにいかがでしょうか。

【駒井専門委員】 本質的な話ではないんですが、先ほどのLOAELの文章で、ちょっと文章的に違和感がありましたので、できれば修正をお願いしたいんですが、エンドポイントの使い方なんです。「肝臓への影響がエンドポイントであり」と使うのが多分正しいですね。数字がエンドポイントというわけではありませんので、「肝臓への影響がエンドポイントであり、LOAEL9mg/㎏/体重/日となる」というような表現が多分正しいと思います。多分WHOのほうもそうなっていると思います。ご検討ください。
 それと、これも日本語的な話で申し訳ないですが、2ページの一番下なんですけど、「土壌環境基準のうちの溶出基準について見直しをする」という日本語になっていますので、これ、含有量が設定されていませんので。

【中杉委員長】 土壌環境基準というのは、農用地の土壌環境基準がありますので、それは含有量の基準です。これはそうではなくて、溶出のほうだよということを。

【駒井専門委員】 土壌環境基準という言い方でよろしいんですか。

【中杉委員長】 農用地も土壌環境基準です。

【駒井専門委員】 わかりました。じゃあ了解です、そこは。
 以上です。

【中杉委員長】 最初に駒井委員が言われたところは、言葉を直すとすると、肝臓への影響が、エンドポイントは…。

【更田室長】 すみません、これを変えると、引用じゃなくなっちゃいますので。

【中杉委員長】 これは食品安全委員会で、そういうふうになっている。

【更田室長】 はい。20ページの資料をそのまま引用してきますので。

【中杉委員長】 わかりました。それは直すのをやめましょう。
 BMDLは、先ほど浅見委員でしたか、BMDL10、浅見委員じゃなくて、どなたでしたか。BMDL10が二つあって、上のほうはBMDLになっていて、下のほうはBMDL10になっていると。BMDL10ではないかというご指摘でしたか。

【浅見臨時委員】 引用されるときに、この食品安全委員会のほうでBMDL10を用いて、不確実係数を100としてTDIを使っているところまで、食品安全委員会でされていますので、それがわかるようにしたほうがいいのではないかなと。

【中杉委員長】 これも引用だと、そうなっていると。

【更田室長】 この20ページの(2)の1行目から6行目までを引用として載せるということで、よろしいでしょうか。

【浅見臨時委員】 はい。もし注釈で、いつのデータに基づいたかということがわかるようにということで加えられた文章であれば、それはその後に加えていただくといいのかなと思いました。

【更田室長】 了解しました。

【中杉委員長】 そこは引用を正しくしましょう。
 そのほかはいかがでしょうか。

【吉田臨時委員】 マイナーな点になるんですけれども、今の3ページのところ、「具体的には」というところをもう少し具体的に言うのであれば、「肝臓への影響」を2回繰り返されるので、むしろ「肝臓の脂肪変性」という、肝臓への影響はいろいろ出ているようですけど、具体的にならば「脂肪変性」というほうが、よりよいのではないかと思いますが、マイナーな点で。

【中杉委員長】 これは3ページの真ん中辺。

【吉田臨時委員】 はい、そうです。下のほうです。

【山本臨時委員】 具体的には後ろ。

【更田室長】 「脂肪変性に基づき」という表現にさせていただきます。

【中杉委員長】 では、そこはそういうふうに修正をしていただきましょう。
 あとはよろしいでしょうか。
 ちょっと一つだけ、物すごく細かいところなんだけど、これはこういうふうに決めているのですねという確認です。環境基準の場合には、検液1Lのリットルが大文字で、それ以外は全部小文字になっているのは、こういうふうな整理でずっと押していっているんですねという確認です。

【柳田課長補佐】 現在の告示上、参考資料3-2の土壌の環境基準は小文字の「l」という形になっておりまして、水のほうが、参考資料3-3をご覧になっていただきますと、ここは大文字の「L」ということで、大文字のリットルは、小文字の「l」だと見づらいということで、最近大文字の「L」に直した記憶がございます。

【中杉委員長】 検液だけは大文字にして、濃度のほうは小文字にしてあるので。

【柳田課長補佐】 基本的に現行の…。

【中杉委員長】 文章のところはないです。文章のところは全部小文字になっています。

【柳田課長補佐】 実際の記載に合わせた上で確認したいと思います。

【中杉委員長】 少し統一したほうがいいですね。3ページの一番下のところ、旧基準値はというところも大文字になったりしているので、これはどっちかに、「検液1l」というところは、これは大文字にやるんだと決めてしまってもいいかもしれませんけど。

【柳田課長補佐】 では、そこは整理した上で、一定の考え方に基づいて整理したいと思います。

【中杉委員長】 どうぞ。

【佐々木専門委員】 本日は土壌環境基準ということですけれども、土壌汚染対策法の基準と密接に関連すると思います。参考資料4を拝見しますと、2ページ目裏の継続調査の地下水の基準値を緩めると、20地点の超過が3地点になる。1ページ目に戻りますと、62点の形質変更時要届出区域があるということですけれども、これは単独な項目の基準超過ではないと書いてあるので、過剰な規制になっているということはないのかもしれません。ただ、土壌の環境基準が変わり、それがまた次の制度でいろいろ検討されていくと、そういう地点もどの程度あるのかということがおわかりでしたら教えていただきたいんですが。

【市川係員】 ただいまの佐々木先生からのご指摘ですけれども、平成25年12月2日現在で、土対法に基づいて、要措置区域または形質変更時要届出に1,1-ジクロロエチレンの基準不適合として62件区域指定されています。この中で、実際には調査をして値が出ているものと、調査を省略して基準不適合となっているものがあるのですけども、今の基準値から変更するとして0.1mg/lという基準値を当てはめて考えて見ると、基準不適合ではなくなる事例というのは計15件ございます。

【佐々木専門委員】 ただ、その場合であっても、ほかの項目として対象であるということの判断でいいんですよね。

【市川係員】 おっしゃる通り、1,1-ジクロロエチレン単独の基準不適合により区域指定されているものはないので、区域指定の事由がなくなるということはないと考えております。

【佐々木専門委員】 ありがとうございます。

【中杉委員長】 そこら辺のところは、この委員会で議論できない話なので、もう一つの委員会のほうで議論をしていただく、2月の中旬でしたか、そこでもう少し細かい数字を出してもらって、どう扱ったらいいだろうかという議論をすることになるだろうと思いますので。
 どうぞ。

【浅見臨時委員】 先ほど中杉先生が物性のところで、分解によって生じるというところを記載すべきではないかというお話があったんですけれども、これは、このジクロロエチレンの性質として、非常に重要な部分ではないかと思いまして、どちらの法律になるのかはちょっとわからないですけれども、今回の改正によって、もとの物質によって分解して出てきてしまう部分のカバーといいますか、この値にすることによって、それが検知できるかとか、防止できるかという点でいっても、恐らく、今思いつかないので、大丈夫なのではないかなと思うんですけれども、そういう点は何か特別に考慮するという必要はないでしょうか。

【中杉委員長】 土対法の中では、分解生成物も関連物質として調査をすることになっていますから、これが抜けたから、そちらが抜けるということは、多分、超えていれば抜けるということはない。先ほど事務局説明で、1,1-ジクロロエチレンだけで地域の指定がなされていたものについては、今度、その地域が形質変更時要届出区域とか、要措置区域から抜けるということはあり得ますけども、今のところ、それはないだろうというふうにこの場では読むんですけども、またそこら辺は、土壌制度の専門委員会のほうでは、そこら辺の状況も踏まえて議論をさせていただく。どう扱うか、今、対策中のところは、もう対策をやめてもいいという話になるのか、あるいは、地下水のモニタリングをしているときに、まだ0.02は達成していないけど、もう少しで達成できると。だけど、0.1はもう達成できているといったところについては、この次のあれで、地下水基準を変えた途端に、もうそこはオーケーですよという話に多分なるのではないかなというふうに思いますけども、そういう意味では、今よりはリスクに合わせて考えると、対象となる地域が減ってくるということは、当然そうなってしまうだろうと思いますけども。
 いかがでしょうか。
 とりあえずよろしいでしょうか。基本的には文言の多少の修正をというご意見があったのと、資料のほうも含めてご指摘がありました。そこについては、事務局と少し調整をしながら、場合によっては、先生方に確認をいただくことがあるかと思いますけども、私に一任をしていただければと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

【中杉委員長】 それでは、そのような形で、一応修正したものを「(案)」を取って、第1次答申としたいと思います。これは第1次答申ということになりまして、先ほど申しましたように、あと事務局から説明いただくのかな。この扱いについては、どうするのか説明いただきましょう。私が先走って言ってはいけない。

【柳田課長補佐】 本日、いろいろとご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
 本日、ご審議いただきました1,1-ジクロロエチレンに係る土壌環境基準の見直しの答申案、これにつきまして、委員の皆様から、いろいろ表現ぶりだとか、そういった根拠だとか、いろいろご指摘をいただいたところでございましたので、今、委員長からもございましたとおり、事務局と中杉委員長のほうで修正を行った上で、それにつきまして修正した形で、行政手続法の規定に基づいて、今後、パブリックコメントを実施したいというふうに考えております。その結果、さらに大きな修正を求める意見が寄せられた場合につきましては、委員長に、再度、この土壌環境基準小委員会で審議を行うかどうかといったご相談をして、判断をいただくということにしたいと思っております。もし、再審議の必要がない場合には、皆様方にもこういう結果になったということを報告させていただいた上で、部会長の同意と――部会長は中杉委員長でございますけれども、同意を得た上で、中央環境審議会の会長に部会報告といった形を行いまして、会長の同意が得られましたら、環境大臣に答申するといった形になります。今度、環境省としての我々になるんですけれども、その後、その答申を踏まえて、基準の変更という形を行わせていただきまして、告示改正をするという形をとらせていただきたいというふうに考えております。

【中杉委員長】 よろしいでしょうか。
 土対法絡みの話は、この土壌環境基準を変えるというのを受けた形で、土対法のほうで扱いをどうするかという議論を制度専門委員会のほうでしていただくことになると思います。
 その他、本日の審議全体あるいは本小委員会について、何かご意見、ご質問等ございますでしょうか。
 どうぞ。

【山本臨時委員】 一番最初の議題に関してですが、諮問のあった6物質について、これから順次やられるということについてです。この小委員会だけで決められる話じゃなくて、これは委員長、冒頭におっしゃったように、水のほうの基準を決めているところとの関連もあって、今の27項目のうち、例えばこれは幾つかあるんですが、有機燐というのは四つの有機燐系の農薬を指すということでございますね。このうち、EPNはまだ登録はあるんですが、パラチオン、参考資料3-2の基準値一覧表を見て話をしておりますが、パラチオンとか、メチルパラチオン、メチルジメトンについては、もう30数年も前に登録がないわけですよね。これをいつまでモニタリングするのかということが一つあります。
 それから、この参考資料2の右のページの上から四つ目、1,1,1-トリクロロエタン、これ、水質管理目標値、水道のほうの、これからはもう削除されているんですね。これは23年でしたか、そういう文章もどこかにあったかと。
 それから、その下の三つほど下がって、チウラム、シマジン、チオベンカルブ、この農薬が三つだけ入っていると。この農薬三つが入った経緯は中杉先生がご存じかもしれませんが、これについても見直す必要がないのか、この委員会でどうこう言える話じゃないんですが、少なくともチウラムについては、食品安全委員会のほうで、この今の0.006の根拠は2.3㎍/lなんですけども、それが8.4に変更されている、緩和されている。それと同じ考え方でいくと0.02になるというように、諮問されている6物質以外にも、そういったほかの規制との関係で、齟齬のあるものが幾つかあるだろうということがあります。それから、それを今後、水局としてはどう考えていくのかということがあります。
 それから、農薬については、この三つで妥当なのかどうかということについても、どこかで議論されていいのかなというふうにちょっと思いました。

【中杉委員長】 多分、土壌のほうでは動けないというふうに考えています。まず、水の環境基準なり、地下水の基準、水道のほうはいろいろ農薬についてもやられていますけども、そちらのほうが変わらない以上、そういうのが設定されている以上、なかなか難しいだろうと。そういう意味で、今日は水の中で有機燐はもう要監視になりましたよね。だから、それはどうするかという話なのですが、もう一つは、水のほうは、地下水はちょっと別なのですけども、比較的速やかに戻ってしまう。流れてしまって、使わなければという。土壌だとか地下水の場合は、過去のものが残っているというのがあって、それをどう整理していくかというところが、もう一つの問題として残るので、ほかでやっているから、そのまますっというわけには多分いかないだろうと。そこの議論をする必要があるだろうと。
 確かに、農薬については、土壌、地下水というのは本当に問題だろうかという、もう一方での議論はあると思います、それは。それはもちろん、もう一つ、議論として考えていったほうがいいだろうと思いますけどね。地下水のほうも、1,1,2-トリクロロエタンは地下水で基準を超えているところがあるのですよね。

【山本臨時委員】 何がですか。

【中杉委員長】 1,1,2-トリクロロエタン。これも1,1,2-トリクロロエタンなのか、何か別な要素なのかと。1,1,2-トリクロロエタンはそんなに使っているとは思えないので、何かの要素なのだろうと思っていますけども、環境基準として、地下水の環境基準を超えている事例があるので、その動向を見なきゃいけないというところもあります。
 そういう意味では、少しほかも議論をしなきゃいけない部分があるだろうと思いますけど、増やすばかりではなくて、当然そういうのも検討していかなきゃいけないだろうと思います。これはモニタリングするだけで、それだけコストがかかっていますから。
 土壌のほうは、土対法のほうでは、農薬については、例えば一部の検査項目として外してしまって、簡略化しているということはやっていますけれども。一つのご指摘だというふうに、事務局で受け止めていただければと思います。

【更田室長】 貴重なご意見、ありがとうございました。まずは6物質を優先して審議いただきまして、ご指摘につきまして、またその後とさせていただきたいと思います。

【山本臨時委員】 ここで議論できる話じゃないと思うんですけど、中杉委員長がおっしゃるように。もう少し上のところでというか、水のほうのところでご検討いただくような機会があれば、ぜひその考慮をしていただいたらいいのかなと。

【更田室長】 わかりました。

【中杉委員長】 それでは、ほかによろしいでしょうか。

(発言なし)

【中杉委員長】 特にほかにないようでしたら、本日の議事については以上となります。
 進行を事務局のほうにお返しいたします。

【更田室長】 委員の皆様におかれましては、ご多忙の中ご出席いただき、また、本日は熱心にご審議、また、ご指摘を賜りまして、ありがとうございました。
 次回の土壌環境基準小委員会は、冒頭の説明にありましたとおり、来年度に入ってからまた開催したいと考えています。改めて日程調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 以上をもちまして、本日の第1回土壌農薬部会土壌環境基準小委員会を閉会させていただきます。
 本日は大変ありがとうございました。