中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会(第13回) 議事録

日時

平成20年12月9日(火)13:00~15:55

場所

環境省 第1会議室

出席委員

座長
森田 昌敏
臨時委員
上路 雅子 亀若  誠
五箇 公一 中杉 修身
中野 璋代 眞柄 泰基
細見 正明 山本 廣基
渡部 徳子
専門委員
井上 隆信 中村 幸二
根岸 寛光 花井 正博

(欠席は、佐藤委員、白石臨時委員、安藤専門委員、井上(達)専門委員)

委員以外の出席者

環境省
水環境担当審議官、農薬環境管理室長、農薬環境管理室室長補佐、農薬環境管理室室長補佐、農薬環境管理室企画・調査係長、農薬環境管理室主査、農薬環境管理室環境専門員

議題

(1)
水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定について
(2)
水質汚濁に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定について
(3)
その他

配付資料

資料1 中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会委員名簿
資料2 中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会(第10回)議事録(案)
資料3 諮問書(写)及び付議書(写)
資料4 水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定に関する資料
資料5 水質汚濁に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定に関する資料
参考資料1-1 環境省告示第九七号(水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準)
参考資料1-2 環境省告示第九八号(水質汚濁に係る農薬登録保留基準)
参考資料2 中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会(第10回)議事要旨
参考資料3-1 農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件の一部を改正する告示新旧対照条文
参考資料3-2 環境省告示第八十号(農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件の一部を改正する件)
参考資料3-3 特定防除資材(特定農薬)指定のための評価に関する指針(平成18年3月了承版)
参考資料4 農薬評価書1-ナフタレン酢酸(食品安全委員会資料)
参考資料5 農薬評価書クロラントラニリプロール(食品安全委員会資料)
参考資料6-1 水質汚濁に係る農薬登録保留基準に関する安全性評価及び基準値設定の方針(平成20年2月22日土壌農薬部会資料)
参考資料6-2 非食用農作物専用農薬安全性評価検討会開催要領
参考資料6-3 非食用農作物専用農薬安全性評価検討会委員名簿

議事

【農薬環境管理室長】 定刻となりましたので、ただいまから土壌農薬部会農薬小委員会第13回を開催させていただきます。
 議事に入る前に、本委員会で委員をされておりました若林委員が、去る11月23日に御逝去されました。誠に哀悼痛惜の極みでございます。若林委員の御冥福をお祈りし、1分間の黙祷をいたしたいと思います。皆様方、席に座ったままでお願いしたいと思います。それでは、黙祷を始めます。

(黙祷)

【農薬環境管理室長】 ありがとうございました。
 初めに、委員の出席確認をお願いします。

【農薬環境管理室室長補佐】 本日の委員の出席でございますが、佐藤委員、白石臨時委員、安藤専門委員、井上達専門委員より御欠席との連絡をいただいております。また、眞柄委員からは30分ほど遅れますという御連絡をいただいております。また、細見委員がまだのようでございます。少し遅れているようでございます。したがいまして、本日は14名の予定でございましたが、現時点で12名に御参加いただいております。
 また、現時点で、委員、臨時委員総数12名のうち、8名御参加いただいておりまして、小委員会開催要件定足数7を満たしておりますことを御報告申し上げます。

【農薬環境管理室長】 続きまして、本日の配付資料について御確認いただきたいと思います。

【農薬環境管理室企画・調査係長】 議事次第の配布資料一覧に従いまして、資料の確認をお願いいたします。
 まず、資料1として農薬小委員会の委員名簿、資料2として、中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会の第10回議事録、こちらは今回13回ですので、11回と12回の議事録があるのですけれども、農業資材審議会との合同会合の議事録のため、農薬登録保留基準を審議した農薬小委員会としては第10回が前回議事録でございます。
 続きまして、資料3として諮問書の写し及び付議書の写し、資料4が水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定に関する資料、資料5が水質汚濁に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定に関する資料、以上が資料でございまして、そのほかに参考資料として、参考資料1-1、こちらは環境省の告示第九七号として官報の写しでございます。
 続きまして、参考資料1-2についても、環境省告示第九八号として官報の写しでございます。
 続いて、参考資料2が農薬小委員会第10回議事要旨でございます。
 参考資料3-1は、農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件の一部を改正する告示、こちらは本年10月22日に告示を改正しましたときの新旧対照条文でございます。
 資料3-2が改正したときの告示の写しでございます。
 参考資料4が農薬評価書1-ナフタレン酢酸、こちらは食品安全委員会の資料でございます。
 参考資料5が農薬評価書クロラントラニリプロール、こちらについても食品安全委員会の資料でございます。
 参考資料6-1が、水質汚濁に係る農薬登録保留基準に関する安全性評価及び基準値設定の方針で、こちらは平成20年2月22日の土壌農薬部会の資料でございます。
 参考資料6-2が、平成20年度非食用農作物専用農薬安全性評価検討会開催要領、参考資料6-3が、非食用農作物専用農薬安全性評価検討会の委員名簿。
 以上が配布資料でございます。
 そのほかに、委員のお手元には審議会や検討会での報告をとりまとめたピンクか黄色の紙のファイルがございます。こちらは次回以降も使用いたしますので、会議終了後置いていっていただければと思います。
 以上です。

【農薬環境管理室長】 もし、足りないものがございましたら、事務局までお申し出ください。
 議事に入ります前に、先ほど御紹介のありました参考資料1-1、1-2にございますように、前々回小委員会で御審議いただきました水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準14農薬、つきましては11月25日に、それから、前々回小委員会で御審議いただきました水質汚濁に係る農薬登録保留基準1農薬につきましては12月1日に、それぞれ官報掲載となりましたので御報告申し上げます。
 それでは、議事に入らせていただきます。森田委員長、議事進行をよろしくお願いいたします。

【森田委員長】 本日は、皆様、御多用中のところ、御出席いただきまして、ありがとうございました。本日の農薬小委員会は、議事次第にございますように、主に二つの議題に関する審議が予定されています。慎重かつ活発な御議論をお願いいたします。
 それでは、審議に入ります前に、公開の扱いについてお話をしておきたいと思います。土壌農薬部会の運営方針では、審議中な答申、非公開を前提に収集したデータが記載されている資料など、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある資料や、公開することにより特定の者に不当な利益もしくは不利益をもたらすおそれがある資料などは、委員長の判断に基づき非公開とするとされております。今回の農薬小委員会では、申請者から提出された農薬の毒性試験報告書など企業秘密に当たる資料を使用しないことから、非公開の理由には当たらないということで、今回の農薬小委員会については公開とさせていただきたいと思います。
 議事に先立ちまして、前回8月26日に開催した第10回小委員会の議事要旨の確認であります。事務局の方から御説明をお願いいたします。

【農薬環境管理室室長補佐】 承知いたしました。中央環境審議会土壌農薬部会の運営方針では、議事要旨については委員長に了解いただければ公開できるということになっております。本日の参考資料2の内容で、既に環境省ホームページで公開しておりますので、御報告いたします。以上です。

【森田委員長】 よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、前回議事録についてであります。こちらの方は事前にメールで各委員確認済みということでございます。資料2で内容を配付しております。委員の皆様方から、特段の御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
(発言なし)

【森田委員長】 なお、これらにつきましては、土壌農薬部会の運営方針に基づきまして、公開することといたしておりますので、よろしくお願いいたします。
 これから議事に入りますが、初めに農薬小委員会の決議の取り扱いについての御説明をさせていただきたいと思います。中央環境審議会土壌農薬部会の小委員会の設置についての土壌農薬部会決定によりまして、農薬小委員会の決議は部会長の同意を得て土壌農薬部会の決議とすることができることとなっております。したがいまして、この農薬小委員会の後には、農薬登録保留基準設定のための土壌農薬部会は招集せず、土壌農薬部会の松本部会長の了解を得て、部会としての結論としていくことになります。よろしいでしょうか。
(異議なし)

【森田委員長】 それでは、議事次第に従いまして、議事の進行を務めさせていただきたいと思います。
 まず、諮問書の紹介ということになります。「農薬取締法第3条第2項の規定に基づき環境大臣が定める基準の設定について」の件につきましては、11月28日付で環境大臣から諮問があり、土壌農薬部会に付議されております。事務局の方から諮問書についての御紹介をお願いいたします。

【農薬環境管理室企画・調査係長】 それでは、資料3を御覧ください。
 平成20年11月28日付で、諮問第250号により環境大臣より中央環境審議会会長に対して以下のとおり諮問されております。
 環境基本法第41条第2項第2号の規定に基づき次のとおり諮問する。
 「農薬取締法第3条第1項第4号から第7号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件」(昭和46年3月農林省告示第346号)に基づき、
(1)別紙1の農薬に関し、告示第3号の環境大臣が定める基準を設定すること
(2)別紙2の農薬に関し、告示第4号の環境大臣が定める基準を設定すること
について貴審議会の意見を求める。
 1ページめくっていただきますと、裏のページに別紙1が記載されておりまして、こちらが告示第3号の水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準で、10農薬ございます。
 次のページに別紙2がございまして、こちらは水質汚濁に係る農薬登録保留基準で、3農薬ございます。
 別紙2の裏面に付議書がございまして、平成20年12月1日付で、中央環境審議会会長から中央環境審議会土壌農薬部会長に対して、ただいま御説明した諮問事項について付議がなされております。
 以上です。

【森田委員長】 はい、ありがとうございました。
 それでは、本日の議題はこの二つが主な議題でございますが、これを順次御議論いただきたいと思います。
 それでは、議題の1番目に当たります、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定についての審議に入ることになります。
 この件につきましては、農薬小委員会に先立ちまして、水産動植物登録保留基準設定検討会におきまして、基準値設定の根拠となる農薬登録申請者から提出された試験結果や公表文献情報の精査を行うとともに、これらのデータに適用する不確実係数等を設定して、基準値(案)を策定していただいております。それでは、事務局の方から御説明をお願いしたいと思います。

【農薬環境管理室環境専門員】 それでは、資料4に従いまして、個別の農薬について御説明をさせていただきます。
 まず、2枚おめくりいただきまして、1ページ、イソチアニルからです。まず、物質の概要についてですが、こちらに記載のとおりです。
 開発の経緯等ですが、このイソチアニルは構造にイソチアゾール環を持つ殺菌剤です。日本ではまだ登録を取っておらず、現在、登録申請がなされております。
 製剤は粒剤、適用作物は稲として申請がされております。
 次に、各種物性についてですが、水溶解度のみ紹介させていただきますと、500μg/Lという幾分低い値となっております。
 続いて、水産動植物への毒性についてです。まず、コイを用いた魚類急性毒性試験が実施されまして、流水式で行われた結果、973μg/L超となっております。異常な症状及び反応については、観察の結果認められておりませんでした。
 続いて、甲殻類ですが、オオミジンコを用いて急性遊泳阻害試験が実施されまして、48時間のEC50が、こちらも973超となっております。
 次に藻類の生長阻害試験ですが、シュードキルクネリエラを用いた生長阻害試験が実施されておりまして、72時間のErC50が973超となっております。
 続いて、環境中予測濃度です。こちらは粒剤が稲に適用があるので、水田使用農薬として環境中予測濃度を算出しました。表4にありますパラメーターを用いてPECを算出した結果、水田PECによる算出結果は4.5μg/Lとなっております。
 次に総合評価ですが、各生物種の毒性値を魚類と甲殻類については10で除し、それぞれの影響濃度を求め、そのうち最も小さい魚類と甲殻類の急性影響濃度より、登録保留基準値案として97を提案しております。
 リスク評価ですが、環境中予測濃度は水田PECが4.5μg/Lであったことから、登録保留基準値案を下回っておりました。
 6ページは参考資料、検討経緯と申請者から提出されたその他の試験成績となっております。
 以上です。

【森田委員長】 はい、ありがとうございました。
 それでは、これから順番に1剤ずつ御紹介いただくことになります。
 なお、この水産動植物の被害防止に係る検討会ですが、若林先生に委員長を以前務めていただいていましたけれども、御逝去をされまして、委員長は国立環境研の白石寛明先生。本日は白石先生が欠席でございますので、その後の代理を上路先生にお願いしておりますので、上路先生から御説明いただく局面があるかもしれませんので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最初の剤につきまして、御質問、御意見ございませんでしょうか。
 いかがでしょうか。
 だれも発言がないようですが、上路先生、御追加何かございますか。

【上路臨時委員】 私このとき欠席していたので、すみません。特別に、どのデータを見ましても毒性的に問題ないという判断だと思います。特に、その検討会では意見がなかったということを聞いております。

【森田委員長】 ということでございますが、いかがでしょうか。
 原案どおり御承認いただくことでよろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 はい、ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、次の、ジカンバ(MDBA酸)、MDBAカリウム塩、MDBAジメチルアミン塩に移りたいと思います。お願いします。

【農薬環境管理室企画・調査係長】 資料7ページでございます。
 ジカンバ、こちらはISO名でございまして、MDBAというものが農薬登録上の化学物質名でございます。MDBA酸とMDBAカリウム塩とMDBAジメチルアミン塩について御審議いただくこととなります。
 7ページの物質概要については、資料に記載のとおりでございます。
 続きまして、8ページの開発の経緯等ですが、MDBAはオーキシン型の植物ホルモン作用を有する芳香族カルボン酸系の除草剤でございまして、登録状況としましては、まず、[1]MDBA酸については既に登録がございまして、樹木や芝に適用がございます。
 続いて、[2]MDBAカリウム塩についてはまだ未登録で、今回、登録申請されているものでございまして、適用作物は樹木でございます。
 [3]MDBAジメチルアミン塩については、こちらは登録がございまして、飼料作物や樹木、芝等に適用がございます。
 続きまして、3の各種物性ですけれども、これから御説明します各種物性のデータ及び水産動植物の毒性に関する試験データについては、MDBA酸のデータでございます。MDBA酸につきましては、酸体のほかにカリウム塩とジメチルアミン塩の今回三つの剤があるのですけれども、MDBAカリウム塩とジメチルアミン塩については、それぞれ製剤化する際に、MDBA酸とジメチルアミン塩、または、水酸化カリウムを混合する際に存在するという塩の形態ということで、原体として存在するのはMDBA酸でございます。したがいまして、各種物性についてはMDBA酸のデータでございます。
 1ページお戻りいただきまして、9ページの水産動植物への毒性でございます。まず、コイを用いた急性毒性試験の結果でございますけれども、96時間のLC50の結果が8万9,800μg/L超という結果でございました。
 続いて、甲殻類のミジンコを用いた試験ですが、こちらは繁殖試験の結果からEC50を求めておりまして、急性遊泳阻害試験として代替しております。EC50の結果については8万8,600μg/L超という結果でございました。
 続いて、藻類生長阻害試験です。10ページでございますが、シュードキルクネリエラを用いて試験を実施しておりまして、72時間のErC50が23万3,000という結果でございました。
 次のページをめくっていただきまして、11ページの環境中予測濃度でございます。製剤の種類については、3種類がございますので、まず、[1]MDBA酸から、こちらは芝に適用がございますので、非水田使用農薬として環境中予測濃度を算出しております。
 続いて、[2]MDBAカリウム塩ですけれども、こちらも樹木に適用があるということで、非水田使用農薬として環境中予測濃度を算出、[3]MDBAジメチルアミン塩につきましても、同様に、非水田の使用農薬として環境中予測濃度を算出しております。
 算出結果ですけれども、まず、MDBA酸については粒剤を用いた算出結果になっておりますので、地表流出による算出結果が0.02μg/Lという結果でございました。
 続いて、12ページのMDBAカリウム塩の算出結果ですけれども、表5のパラメーターを用いて25%の液剤で算出しておりまして、地表流出と河川ドリフト、それぞれ算出しておりまして、地表流出による算出結果が0.02μg/L、河川ドリフトによる算出結果が0.0023μg/Lでしたので、値の大きい方の地表流出による0.02μg/Lが、MDBAカリウム塩としての算出結果となります。
 続いて、三番目のMDBAジメチルアミン塩でございますが、ページがまたがっておりますが、表6を用いて算出しておりまして、それぞれ地表流出と河川ドリフトによる算出結果が、地表流出による結果が0.0079μg/L、河川ドリフトによる算出結果が0.00093μg/Lでしたので、こちらについても地表流出の方が値が大きいため、0.0079がジメチルアミン塩としての算出結果となります。
 続きまして、14ページの総合評価でございます。MDBAの各生物種のLC50、EC50の結果は以下のとおりでございました。これらの中から急性影響濃度をそれぞれ算出いたしまして、最も小さい甲殻類の急性影響濃度8,860超から、登録保留基準値案としてはMDBA酸の8,800μg/Lを提案しております。
 続いて(2)のリスク評価ですけれども、MDBA酸、MDBAカリウム塩及びMDBAジメチルアミン塩については、環境中予測濃度及びそのMDBA酸に換算したカリウム塩とジメチルアミン塩ですけれども、こちらは括弧内の数字となっております。それぞれ算出した結果、MDBA酸については0.020μg/L、MDBAカリウム塩についても0.020μg/L、ジメチルアミン塩については0.0079μg/Lでしたので、環境中予測濃度はMDBA酸に換算した値で、いずれも登録保留基準値案8,800μg/Lを下回っているという結果になっております。
 15ページは参考資料でございます。
 以上でございます。

【森田委員長】 はい、ありがとうございます。
それでは、この剤につきまして、御質問、御意見はございませんでしょうか。いかがでしょうか。
 登録保留基準値としては8,800μg/Lというような提案されていますが、よろしいでしょうか。
 はい、どうぞ。

【花井専門委員】 カリウム塩、ジメチルアミン塩をMDBA酸で評価していいという理由をもう一度教えていただきたいのですが。

【農薬環境管理室企画・調査係長】 まず、MDBAカリウム塩、ジメチルアミン塩については、酸の解離定数が非常に低いということで、環境中では完全にその酸体と解離して存在するということで、イオン体としてのみ存在するという議論は検討会でございました。
 さらに、15ページにMDBAジメチルアミン塩の製剤を用いた試験成績がございます。こちらについて原体の有効成分に換算した値を出しているのですけれども、こちらの毒性値と原体についての毒性値を比較したところ、同等もしくは原体の方が低いということで、評価できるということで結論づけられております。

【森田委員長】 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(異議なし)

【森田委員長】 それでは、原案どおり御承認いただいたことにしたいと思います。
 引き続きまして、アセキノシルですね。御説明お願いします。

【農薬環境管理室環境専門員】 16ページのアセキノシルです。まず概要ですが、物質概要は記載のあるとおりです。このアセキノシルは、ナフトキノン骨格を持った殺ダニ剤です。国内での初回登録は1999年となっております。
 製剤は水和剤がありまして、適用作物には果樹、野菜、花卉等がございます。
 各種物性についてですが、水溶解度が6.7μg/Lと低くなっております。
 おめくりいただきまして、続いて水産動植物への毒性についてです。まず、コイを用いて急性毒性試験が実施されております。こちらが2濃度区で行われておりますが、高い濃度の方で実測濃度との解離が大きくなっております。この結果、96時間のLC50は2,490μg/L超となっております。
 続いて、ニジマスを用いた急性毒性試験の結果ですが、こちらの96時間のLC50が3万3,000μg/L超となっております。
 続いて、甲殻類ですが、オオミジンコを用いた急性遊泳阻害試験の結果、流水式で行われており、48時間のEC50が3.9μg/Lとなっております。
 続いて、藻類の生長阻害試験が同じくシュードキルクネリエラを用いて実施されておりまして、72時間のErC50が6万8,700μg/L超となっております。
 続いて、環境中予測濃度ですが、この剤については水和剤が果樹に適用がありましたので、非水田使用農薬として環境中予測濃度を算出いたしました。PECが最も高くなる表5にあります使用方法及びパラメーターを用いて算出した結果、地表流出による算出結果が0.0041、河川ドリフトによる算出結果が0.017となりまして、値の大きい河川ドリフトによる算出結果をもって、0.017μg/Lとなりました。
 続いて、総合評価ですが、それぞれのLC50、EC50から急性影響濃度を求めまして、これらから最も小さい甲殻類の急性影響濃度より、登録保留基準値として0.39を提案してございます。
 続いて、リスク評価ですが、環境中予測濃度は非水田PECTier1より0.017となっており、登録保留基準値案を下回っておりました。
 21ページについては参考資料となっております。
 以上です。

【森田委員長】 はい、ありがとうございました。それでは、今の御説明に対しまして、質問はございませんでしょうか。
 はい、どうぞ、中村委員。

【中村専門委員】 先ほどの説明の中にもあったのですけれども、毒性試験のときの試験水の設定濃度と実測濃度のギャップが、先ほどのコイのときだけでなく、全体的にギャップが非常に大きいという結果になっているのですけれども、これ実際は水溶解性が低いということなのですけれども、この実際、実験時にどんな状態だったのかということですね。
 確かに、実測濃度がそうなっているから、そうなのかもしれないのですけれども、結局、試験期間中こういうことだと、果たしてその濃度だったんだろうかということも心配になりますし、その状況がもし分かれば、教えていただければというように思うのですけれども。

【農薬環境管理室環境専門員】 試験水の状況についてですが、コイの試験において、100mg/Lでは試験水調製時から試験水の混濁、着色、試験物質の沈殿及び水面浮遊が認められたという記載がございます。
 また、3mg/Lについても、24時間以降には白濁が認められたと記載がありまして、それらのこともありまして、100mg/Lの試験区については、参考データとして結果の評価から除いたという記載がございます。

【森田委員長】 今、中村委員の方から提示された問題は、設定濃度と実測濃度に大きな開きがあるようなものがあり、それから、助剤のことは先生おっしゃいませんでしたけれども、助剤による原因があるのかどうかということもある。その実験データそのものの信頼性が、少し大丈夫かなということも含めている御質問かなという気もするのですが、その辺りはいかがですか。

【農薬環境管理室環境専門員】 すみません。オオミジンコのデータについては、未溶解物質はなかったというような記載がございました。追加させていただきます。

【五箇臨時委員】 この物質は、分解性を見ていただいたら分かるとおり、非常にその水溶解度は極端に低く、殺虫剤、殺ダニ剤ですので、基本的には脂溶性が薬効の命となる薬でもありますので、水に溶かすこと自体が非常に困難になります。
 だから、この試験水状態はもうほとんど、ある意味、製剤を水で溶かしているような状態を設定してつくっておりますので、この製剤状況ではもう最大2,000μg/Lまでしか溶けないという状態になっていると。その中での生死を見るということしかできなかったという結論になっているということです。
 だから、実際問題としては、本当にどのぐらいの濃度で急性毒性が出るのかということについては、本来のOECDのガイドラインに基づけば、水溶解度以下でしか本当はもう評価できないということになりますので、本当の正確な意味では、きちんと純水だけで溶かせば6.7μg/Lというようになってしまうのですけれども、一応、それでも本来ならばもう全く効かないはずのものだからということで、そういった設定濃度を何とかつくろうとしたというところなのだろうと思います。だから、助剤一つ、あるいは、そういう製剤一つで、こういった実測濃度もまた変動する。この条件では最大2,000μg/Lまでしか溶けていないということになります。

【森田委員長】 よろしいですか。

【上路臨時委員】 前回の検討内容を見ますと、溶解度といわゆる濃度というのが非常に問題になったみたいです。それでもう少し上手に調製すれば、毒性値がもっと高く設定されるのかなというようなコメントも出ています。だけど、今、五箇先生が御指摘のように、こういう事例がここだけではなくてほかの剤にもありまして、実際に溶けにくい場合に助剤をどういう濃度でどういう種類のものというのをよく言われるのですけれども、仕方がないとそこで妥協するのもおかしな話ですけれども、致し方ないという試験方法だと思います。
 それで、今、五箇先生がおっしゃったような、ぎりぎりの線でこの毒性試験をやっているというように御理解いただければと思います。
 先生、何かコメントを追加してください。

【五箇臨時委員】 この問題自体は、実際にこの化審法改正あるいは農取法改正のときでも随分議論しまして、要は水生生物でしか試験できないということで、水溶解度の低いものはどう評価したらいいのかというところは、随分議論もしてきたのですけれども、結局のところ、実際この薬の使用場面自体も畑であって、水中ではないということもあって、本来ならばこの場で議論することではないですが、こういった薬、こういったものに対する評価システムというのは、別に陸域生態影響評価なり何なりで本来すべきことであろうと。水に溶けないけれども、要は油に溶けるというものとしての生態リスクというものをどう評価するかということが、本来、どこかで評価システムがあればいいんだろうというふうに考えられます。
 だから、水中、いわゆるプランクトンなり魚なりといったものでの評価というのは、非常にこのタイプの薬の場合は、現状のシステムでは困難を極めるということが一つの現れになっていると思います。

【中杉臨時委員】 教えてほしいのですけれども、これニジマスの1万4,000μg/Lとか2万9,000μg/Lというのは、これは溶けた状態ですか。溶けて製剤自体が懸濁した状態で測っている。いや、何を見ているのかなって、魚に対してはどういうふうに暴露されるのかなっていう話で考えていく必要があるだろうと思うのですね。実際、魚に暴露されて、水に溶けた形のものが暴露しているのであれば6.7μg/Lだし、直接、これは液剤ではないですよね。粒剤ですからね。

【農薬環境管理室環境専門員】 製剤としては水和剤なので、水に溶かして使うものです。

【中杉臨時委員】 いや、その剤そのものが溶けていない剤でも、どういう状態で存在しているのか。液剤だと直接魚に接触するか、また間違って吸収されるとか、そういうことがあり得るのだろうけれども、どういうように見るのかなというところ。そういう意味でいくと、これ自体は水溶解度が6.7μg/Lだから、6.7μg/Lと仮に考えても、PECより高くはならないだろうと考えられるので、問題ないと考えていいだろうと思うのですけれどもね。そこら辺のところは、これ自体は何だろうという、そういうことをよくよく考えなくてはいけないのではないか、後の方で出てくるのですけれども、ここで考えているAECが水溶解度より高い数字が出てくるものが当然あり得るわけですよね。そういうものは何だということを、少し考えていかないといけないのだろうなというように思いましたので、もしお答えいただければ。

【五箇臨時委員】 事務局の方から、おそらくメーカーの方から出されているそういう状態に関しての説明があると思いますけれども、個人的な経験から言えば、これほとんど懸濁液に近い状態だと思います。どう見ても、この程度の水溶解度のものを、この濃度では溶かすことはまず不可能、どんなに助剤を入れたといっても溶かすことは不可能で、無理やり攪拌して、場合によっては超音波でもかけて分散させているという状態で、無理やり測ってこの数字という状態かと思います。
 端的に言えば、とにかくこの薬は、おそらく本当にその魚に対する影響は非常に低いと考えられる薬で、それを何とか数字的に示したかったのではないかという気もしないでもないんですけれども、実際のところは、物性として水溶解度が6.7μg/Lというところを、本来は、評価軸にするべきなのではないかなというように個人的には思います。

【農薬環境管理室環境専門員】 ニジマスの試験での試験液の状態は、未溶解物質があったという記載がありますので、恐らく懸濁等の状態だったと思います。

【上路臨時委員】 テストガイドラインの中の検討参考資料というところに、水産動植物のテストガイドラインというのですか、農薬が登録申請に係る試験成績の、15ページ以降ですね、試験液の調製についてということですけれども、原液調製には希釈水のみを用いると、有機溶剤は原則としてこの試験に用いない。ただし、今のような難水溶性農薬に関しては、有機溶剤を使用しなければ、試験の成立が困難な場合には必要最小限の量を使用することができるということですので、それに溶かして、溶かしてというのか、懸濁してでも試験をしましょうというようになっているのだと思います。これが試験方法だと思います。

【森田委員長】 少し追加して説明いただきましたが、そもそも何というか、設定濃度と実測濃度が全然パラレルな関係にないような実験というのは、大体評価してよいかどうかというのが、検討委員会で議論にならなかったのでしょうか。

【五箇臨時委員】 議論にはなっていますが、要は直接の登録保留基準において、この魚類のデータそのものは直接影響しないということで、あえて無視してしまった状態になっています。だけど、試験としては実際おっしゃられるとおり、成り立ってはいない、いわゆる濃度勾配が全然できていないという状態ですから、何のためにその設定濃度を設定しているかということに関してから、もう、要するに、試験設計から既に本来的には問題があるということになると思います。

【森田委員長】 今の御説明では、試験設計に問題はあるけれど、とりあえず最後のその登録保留基準値を決定するところには、そこは余り効いてこないので、とりあえずそこは無視して進めていますという、そういう御説明かと思いますが、それで大体、先生方は了解されますか。
 それから、もう一つ、これはついでに私からの質問なのですが、特にこの剤がミジンコに対してかなり強い毒性を示したという。魚に毒性を示さないで、しかも極端に種差で1,000倍ぐらい違ってミジンコに強く現れているのですが、そのことについては検討委員会で何か議論になりませんでしたか。

【五箇臨時委員】 基本的には殺虫剤なり農薬というのは、近年特に選択性を求めて安全性を高めるという傾向で開発されておりまして、この剤も特に農業用の殺ダニ剤としてダニに特異的に効くように開発されております。
 甲殻類も、したがってその種によって代謝のプロセスなり能力に差が出てきます。これは基本的には脊椎動物ですね、魚類も含めて哺乳類に対しても非常に毒性が低く、そのメカニズムとしてはP-450依存性の代謝酵素なり何なりという、代謝活性によって解毒化されて無毒化されるという形をとっていて、それがミジンコについては、分類学的にはダニに近い甲殻類であるミジンコには当然毒性が示される。ただし、ミジンコの中にも代謝活性に対して種差があって、そういう感受性差は出てくるということになります。
 御指摘のとおり、その種差が非常に大きいものについてどう考えるかということですが、これは、それを言ってしまうと、多分この3種の試験だけでやっていていいのかという話で、すべての剤について本当は当てはまるのではないかと思います。特に除草剤なんかでも、最近ではやはり広葉のみに効くもの、あるいは、イネ科の雑草のみに効くものというふうに選択性が求められていて、それは藻類でいくら試験をしても全く毒性は出ないということになります。
 でも、反面それはきっと野外にまけば、様々な自然の植物に対して本当は悪影響を及ぼすかもしれない、そういった種差そのものというものは、これからどんどん農薬が選択性を増すにつれて、かえって評価しにくくなってくる。個人的には専門である、その正に生物対応性多様性というものは、そういった薬剤の感受性においても反映されるもので、そういったものをどうやってこれから総合的に評価するかというのは、すごく大きな問題になってくるのではないかと思います。

【森田委員長】 それでは、とりあえずミジンコに対して非常に毒性が強く出る剤である。しかし、見る限り魚類には毒性が非常に低い。魚類に限らず、代謝酵素分、酸化酵素分みたいなものをたくさん持っているものは相当低いはずであると、そういう認識でよろしいのでしょうか。

【中杉臨時委員】 先ほど私が質問した話に絡むのですけれども、これは2,400μg/Lなのかどうか分からないですよね。だから、そういう意味では、そんなに種差が大きいかどうかというのも分からない。最大考えて水溶解度のところに持ってきたとしても、6.7μg/L、一番低くても6.7だろうというように考えれば、3.9μg/Lよりも上であるから問題ないだろうと、私はそう解釈して、安全性から見てもそう解釈できるので、これでよろしいのではないかなと思いますけれども。

【森田委員長】 比較的低い濃度、2.9μg/Lというところで、異常な症状として嗜眠状態とかは書いてありますけれども、これは余り考えなくていい、考慮しなくてもいいことですか。

【五箇臨時委員】 いや、これもやはり委員会の方では議論になりまして、嗜眠の定義はまず何なのかということで、こちらはミジンコの専門の花里先生の話によれば、15秒以上眠って動かないものは、これは遊泳阻害というように判断されるけれども、眠っているみたいな症状で、少しすれば起きるというのが、どうも嗜眠状態らしいということで、それは影響にはカウントされていないそうなのですね。
 だから、これもやはり個人的には、本来ならば影響に入れるべきで、この濃度がまたさらに本当なら低くなるかも分からないという含みが入っている、非常に評価が難しい薬ということになってしまいます。この症状そのものを実際に目で見てみないことには分からないのですが、嗜眠ということは、明らかに行動そのものはやはり普通ではないということを意味していますので、影響が出ているというふうに本来は見なくてはいけないのですが、定義としてはいわゆる遊泳阻害には当たらないそうです。

【森田委員長】では今までの御議論を聞いていただいて、先生方、いかがでしょうか。原案どおりの基準値の設定でよろしいでしょうか。

【眞柄臨時委員】 ちなみに、人への耐用摂取量はいくらなのですか。これは事務局、分かりますか。

【農薬環境管理室環境専門員】 すみません、事前には調べておりません。

【森田委員長】 情報がない。

【上路臨時委員】 今の、日本でどれぐらい使われているのですか、使用量として。

【農薬環境管理室環境専門員】 アセキノシルについては、要覧にその生産量と輸入量の情報がありませんでした。

【上路臨時委員】 ということは、現実に登録はあるけれども、使用実態、流通実態と言うのは。

【農薬環境管理室環境専門員】 少々お待ちください。製剤の流通量があるかもしれないので、調べて御報告したいと思います。又、ADIについても今調べておりますので、後ほど御説明いたします。

【森田委員長】 それでは、とりあえずそのADIを含めて、それが相当低い数字でなければ、この形でよいということでよろしいですか。結果を待って次へ進みたいと思います。
 どうですか、先生の印象として、この種のものは、何か体内の酸化ストレスを引き起こしそうな感じの分子構造はしているのだけれども、そちらは余り気にしなくていいかな。

【五箇臨時委員】 剤の作用機構そのものは、ミトコンドリアの電子伝達系ですので、実際のところは作用点では種間差はないのですね。要するに注射すれば恐らく人間にでも効くという薬です。そこで選択性を出しているのは、先ほど言いましたように代謝経路によるところです。
 だから、ハダニに本来効く薬ですけれども、ハダニも当然抵抗性を獲得することも可能で、要するに代謝酵素活性の高い系統は、もう抵抗性の系統として既にこの薬は効かないという状態にあるということからも、要するに作用点レベルでは種間差はありません。だから、その点は体内生理としてはどうなのかということについては、僕は専門ではないのですけれども、議論していただけるならば議論していただきたいと思います。

【森田委員長】 それでは、とりあえず、そのADIのデータを見てから次へ進むことにして、次へ行きましょう、時間がもったいないので。

【農薬環境管理室室長補佐】 次の剤でございます。カルバリルでございます。開発の経緯につきましては、カルバリルはカーバメ-ト系の殺虫剤でありまして、本邦での初回登録は1960年ということでございます。
 製剤につきましては、粉剤、粒剤、水和剤、乳剤がございます。
 適用作物につきましては、雑穀、果樹、野菜、芋などでございます。
 原体輸入量は平成16年度から平成18年度までの年度ごとのデータで190トン、90トン、50トンと推移しております。
 各種物性につきましては、土壌吸着係数が183から596、オクタノール/水分配係数が2.36、水溶解度が1.129×105μg/L、分解性につきましては加水分解性としてpH7で半減期が11日から13日、水中光分解性に関しましても、半減期が40時間となっています。
 続きまして、23ページの水産動植物への毒性でございます。まず、コイを用いた魚類急性毒性試験が実施されております。設定濃度につきましては、表1に書いているとおり、938から6万μg/L、この条件で実験を行いまして、96時間のLC50が2万9.000μg/Lということでございます。
 異常な症状及び反応につきましても、活動の低下、長期の底面滞在、腸からの粘液排出などが、見られております。
 そのほかに、環境省の方で文献等から収集した毒性データがございます。二つほどございまして、グッピーを用いたものと、24ページのゼブラダニオを用いたものでございます。ここで欄が1行消えておりまして、追記していただきたいところがございます。23ページの一番下に表2というのがございます。欄が4行ございまして、被験物質、供試生物、暴露方法、暴露時間とあります。24ページに続きますが、24ページの表2の続きの1行目(600、)からという形になっておりますが、この間に実は設定濃度という欄が1行ございまして、申し訳ございません、我々の手違いで消えております。設定濃度を今から申し上げますので、一応そういう条件ということで御了解いただきたいと思います。
 設定濃度につきましては、低い方から順番に、単位はμmol/Lでございます。2.99、5.97、11.94、23.88、47.76といったことで、5段階に振っております。単位がμmol/Lでございまして、それをμg/Lに換算したものが、そこに書いてある600から9,610という五つの数字になるということでございます。
 23ページに戻りまして、グッピーにつきましては、LC502,520μg/Lというようなデータがございました。
 24ページ、ゼブラダニオに関しましては、LC50が9,260μg/Lというデータがございまして、こういった文献データも参考に検討させていただいたということでございます。
 続きまして、甲殻類でございます。オオミジンコを用いまして急性遊泳阻害試験を実施いたしまして、48時間のEC50が16.3μg/Lということでございます。
 25ページには、表4といたしまして実験の条件が書いております。
 次は、藻類に関しましても実験を行いまして、72時間のErC50が1,280μg/Lということでございます。
 続きまして、環境中予測濃度を算出しております。本剤につきましては、水和剤などがございまして、果樹に適用ということですので、非水田使用農薬として環境中予測濃度を算出いたしております。
 算出に当たりましては、表6にございますデータで算出いたしました。それによりますと、地表流出による算出結果が0.034μg/L、河川ドリフトによる算出結果が0.13μg/Lということでございます。こちらの大きな方、河川ドリフトの方を採用いたしまして、PECTier1は0.13μg/Lということで設定いたしました。
 27ページの総合評価になります。(1)番といたしまして、これまで申し上げてきました各生物種のLC50、EC50を整理いたしました。急性影響濃度に関しまして、魚類につきましては252μg/L、甲殻類につきましては1.63μg/L、藻類につきましては1,280μg/Lということで数字がございますので、この中の最小値である甲殻類に対する急性影響濃度1.63μg/Lを登録保留基準値案1,6μg/Lということで設定いたしました。
 次に、リスク評価でございます。先ほどの環境中予測濃度、非水田PECTier1が0.13でございましたので、登録保留基準値案1.6μg/Lを下回っているという結果でございます。
 28ページは参考資料でございます。
 本剤につきましては以上でございます。

【森田委員長】 ありがとうございました。
 カルバリルにつきまして、御質問、御意見ございませんでしょうか。
 いかがでしょうか、上路先生、何か御意見ございますか。

【上路臨時委員】 古い剤で、検討会の内容でも特に甲殻類に効くというのは前から言われていたのですけれども、そのもの、カルバリルプラス分解体、いわゆる、ここのOHが切れているようなナフトール、α-ナフトールなんかが、この毒性の発現に関与してくるのではなかろうかというようなコメントもされています。
 それと、もう一つ、非常に古い試験なので、データ自体が本当にどこまで信頼していいのかというような議論があったようですけれども、多くの濃度区で行われているし、また、環境省からの文献の毒性データも、きちんと評価した上で、これは使えるという形で提示されたものというように思います。

【森田委員長】 いかがでしょうか。
 これは健康項目で基準値というのは当然ありますよね、きっとね。

【上路委員】 健康項目というのは、ありましたか。

【森田委員長】 いや、先ほどの眞柄先生の御指摘の、そのADIの数値とか、そういうものとも若干関係するのだけれども。ADIでも何でもいいですが、それに近い。いや、ADIはもちろんありますよね、こんな古いものでも。 

【農薬環境管理室室長補佐】 ここでは基本的に水産動植物への被害のための保留基準の設定ということで載せておりませんが、適用作物のところを見ていただいて、食用作物に適用があるものは、すべからくADI若しくは何らかの評価があるというように御理解いただければ結構です。別の省なり委員会で御検討いただいています。おそらく眞柄委員は、その魚毒性との関係でコメントいただけるのかなとは思っていますが、今までこういう議論になっていないので、用意しておりませんでした。食品の方は食品の方で必ずやっているというように理解いただければ結構です。

【森田委員長】 いや、もちろんそうなのです。だから、ここでは直接関与はないのですが、ただ参考で、どのようになっているのかを見ておいた方が、総合的な判断の上で、よりいいかなというぐらいの感じではあるのですけれども。

【森田委員長】 いかがでしょうか。この原案でよろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 それでは、先ほどの方は何かデータ来ましたか。

【農薬環境管理室環境専門員】 はい、先ほどのアセキノシルについてですが、まずADIについては、2008年9月に食品安全委員会で評価されておりまして、0.22mg/kg体重/日となってございます。
 また、生産量等については、原体のデータはなかったのですが、フロアブル製剤での生産量の記載が資料にございまして、平成18年の生産量が193トンとなっておりました。

【森田委員長】 とりあえず、そんなに違和感がないということでよろしいでしょうか。
 それでは、先ほどのその前の剤ですけれども、原案どおり御承認していただけますでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 ありがとうございます。
 それでは引き続きまして、次へ行きたいと思います。クロメプロップをお願いします。

【農薬環境管理室企画・調査係長】 資料の29ページでございます。クロメプロップでございます。29ページの物質概要については、記載のとおりでございます。
 クロメプロップはフェノキシ酸系の除草剤でございまして、本邦の初回登録は1988年でございます。
 原体の国内生産量は、18年度で131.4トンでございました。
 各種物性については資料に記載のとおりでございますけれども、水溶解度が35μg/Lと非常に難水溶性の剤でございます。
 続いて、30ページでございます。まず水産動植物への毒性ですが、1番目の魚類の急性毒性試験の結果でございます。コイを用いた試験を実施しておりまして、96時間のLC50が369μg/L超という結果でございました。
 続いて、ミジンコ類の急性遊泳阻害試験の結果でございます。オオミジンコを用いて試験を実施しておりまして、48時間のEC50が496μg/L超という結果でございました。
 1ページめくっていただきまして、藻類の生長阻害試験の結果でございます。シュードキルクネリエラを用いた振とう培養で試験を実施しておりまして、72時間のErC50の結果が246μg/L超という結果でございました。続いて、環境中予測濃度でございます。32ページでございます。本剤は製剤として粒剤ございます。水稲に適用がございますので、水田使用農薬として環境中予測濃度を算出いたしました。
 2PECの算出でございます。表4のパラメーターを用いてPECについて算出しておりまして、算出結果が5.4μg/Lという結果になりました。
 ページめくっていただきまして、総合評価でございます。まず登録保留基準値案でございますけれども、各生物種のLC50、EC50については以下のとおりでございます。これらから急性影響濃度を算出いたしまして、最も小さい値である魚類の36.9μg/Lを登録保留基準値案として、36μg/Lを提案しております。
 リスク評価でございます。環境中予測濃度は水田PECTier1として5.4μg/Lでしたので、登録保留基準値案36μg/Lを下回っているという結果になっております。
 以上でございます。

【森田委員長】 はい、ありがとうございました。この剤につきましての御質問、御意見ございませんでしょうか。
 検討会の方で議論になったことはございませんか。

【上路臨時委員】 検討会の方は何も意見が出ておりません。

【森田委員長】 素朴な質問ですが、除草剤なのにミジンコよりも藻類に影響が出ていない。

【五箇臨時委員】 この薬の作用機構は植物成長ホルモンとして作用するということで、しかも、広葉雑草にのみ効きます。したがって、普通のいわゆるイネ科雑草及び植物プランクトンには一切効きません。だから、藻類に対する毒性は非常に低いという結果になってしまいます。
 これも先ほどからの議論にありますように、同じ除草剤でも、スペクトルが変わってしまうと、こういった被験生物ではもう評価はカバー、カバーという言い方はおかしいのですが、少なくとも被験生物に対しては影響は出ないという結果になるということになります。

【森田委員長】 前のホルモン系の除草剤とも同じような機構であるのですね。
 それでは、一応今の原案どおりでよろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 それでは、引き続きまして、次の剤、チオシクラムの方に移りたいと思います。御説明お願いします。

【農薬環境管理室室長補佐】 チオシクラムシュウ酸塩でございます。物質概要につきましては、冒頭の表に掲げております。
 開発の経緯等でございます。チオシクラムシュウ酸塩、チオシクラムはネライストキシン系の殺虫剤でありまして、本邦での初回登録は1981年ということでございます。
 製剤につきましては、粉剤、水和剤、適用作物は、稲、果樹、野菜、花卉などがございます。
 原体の国内生産量は平成16年度、17年度でそれぞれ66.3トン、94.3トンでございます。
 各種物性でございます。土壌吸着係数は292から739、オクタノール/水分配係数につきましては-0.0706というデータでございます。
 水溶解度につきましても、pH6.8で1.64×107μg/Lということでございます。
 分解性につきましては加水分解性がpH7で半減期が92日、水中光分解性については半減期が56分というデータでございます。
 続きまして、35ページでございます。水産動植物への毒性のデータでございます。魚類急性毒性試験、コイを用いた試験が実施されておりまして、表1のような条件設定で、96時間のLC50が285μg/Lということでございました。
 続きまして、甲殻類でございます。オオミジンコを用いた急性遊泳阻害試験を実施いたしまして、48時間後のEC50が19.4μg/Lということでなっております。
 続きまして、36ページの藻類でございます。シュードキルクネリエラを用いました藻類の生長阻害試験を実施いたしまして、72時間のErC50が2,110μg/Lというデータが出ております。
 続きまして、環境中予測濃度の算定でございます。本剤につきましては、粉剤、水和剤といったものがございます。稲、果樹に適用がありますので、水田使用農薬と非水田使用農薬の別に環境中予測濃度を算出いたしました。
 まず、水田使用時の予測濃度でございます。表4にあるように、本剤ではTier1でなくTier2ということでやや精緻な条件で計算をいたしまして、水田PECによる計算結果1.0μg/Lという算出結果を得ております。
 非水田の方につきましては、Tier1の条件で計算いたしまして、こちらの方からは地表流出の場合の結果が、0.014μg/L、河川ドリフトの場合の結果が0.055μg/Lであり、これらのうち大きい方を採用しまして、0.055μg/Lを、非水田使用時のPECということで算出いたしました。
 環境中予測濃度につきましては、水田使用時と非水田使用時のそれぞれ比べまして最も大きいもの、この場合、水田PECが1.0μg/Lというものを採用いたしております。
 39ページには総合評価を書かせていただいております。各種生物のLC50、EC50から、不確実係数で除した一番小さい値を求めまして、これにつきましては、甲殻類の急性影響濃度から算出いたしました1.9μg/Lというものを、登録保留基準値案として設定いたしました。
 リスク評価、2番目でございます。先ほど求めました水田PECが1.0μg/Lということでございまして、先ほどの登録保留基準値案1.9μg/Lというものを下回っているという結果を得ております。
 40ページにつきましては参考資料でございます。本剤につきましては、以上です。

【森田委員長】 ありがとうございました。それでは、この剤について意見ございますか。

(発言なし)

【森田委員長】 特段御意見がないということですので、引き続きまして、次の剤へ行きたいと思います。フルシトリネートをお願いします。

【農薬環境管理室環境専門員】 フルシトリネート、41ページからになります。
 まず、概要については1番に記載のあるとおりです。
 開発の経緯等についてですが、このフルシトリネートは合成ピレスロイドの殺虫剤で、初回登録は1986年となっております。
 水和剤、乳剤、液剤が、麦、果樹、野菜、豆、芋等に適用がございます。
 次に各種物性ですが、土壌吸着係数Kocが14万から406万ということで、高い値になっております。また、水溶解度は96μg/Lとなってございます。
 次に、水産動植物への毒性ですが、魚類と甲殻類でそれぞれ一つずつ、環境省が文献等から収集した毒性データで信頼性があるものがありましたので入れてございます。
 まず、申請者から提出された試験成績ですが、コイを用いた急性毒性試験の結果、96時間のLC50が0.202μg/Lとなりました。
 異常な症状及び反応のところですが、LC50を超えない濃度においては異常な症状は認められておりませんでした。
 続いて、文献等から収集した毒性データですが、ファッドヘッドミノーを用いて急性毒性試験を行った文献で信頼性があるものがございました。これも流水式で試験が実施されまして、LC50については0.19μg/Lとなりました。
 続いて、甲殻類の試験結果ですが、まず申請者から出された試験成績として、オオミジンコを用いた急性遊泳阻害試験が実施されております。こちらは止水式で行われておりまして、48時間のEC50が1.60μg/Lとなっております。
 続いて、文献等から収集したデータですが、ヨコエビの急性毒性試験の文献がございました。これはヨコエビ類を用いて流水式で行われておりまして、96時間のLC50が求められておりまして、結果が0.055μg/Lとなっております。
 異常な症状及び反応については、文章で記載がありますが、このような症状が認められておりました。
 続いて藻類ですが、こちらは通常の申請者から提出されたものです。シュードキルクネリエラを用いて生長阻害試験が実施されておりまして、72時間のErC50が18.5μg/Lとなってございます。
 おめくりいただきまして、環境中予測濃度です。こちらについては乳剤が果樹に適用がありますので、非水田使用農薬として環境中予測濃度を算出しております。表6の使用方法とパラメーターを用いて算出を行った結果、地表流出による算出結果が0.0008μg/L、河川ドリフトによる算出結果が0.0033μg/Lとなりましたので、値の大きい河川ドリフトによる結果をもって、PECが0.0033μg/Lとなってございます。
 続いて、総合評価ですが、各生物種のLC50、EC50から、魚類と甲殻類についてはそれぞれ10で除して最も小さいものを記載しております。藻類については、そのまま18.5の値を載せておりまして、これらのうち最も小さい甲殻類の急性影響濃度より、登録保留基準値案として0.0055μg/Lを提案してございます。
 最後にリスク評価ですが、環境中予測濃度は、先ほどの非水田PECが0.0033μg/Lであったことから、登録保留基準値案を下回っておりました。
 次のページが検討経緯とその他の試験成績という、参考資料になっております。
 以上です。

【森田委員長】 ありがとうございました。それでは、この剤についての御質問、御意見ございませんでしょうか。
 これはどうでしょうか。五箇委員、何か御意見ございませんか。

【五箇臨時委員】 これも割と長く使われている合成ピレスロイド剤でして、ピレストロイドの特徴としては、やはり様々な動物群に効果が出てしまうということで、非常に毒性が高い物質です。
 で、やはり一番気になるのが、そのPECと登録基準値案が非常に接近してしまっているというところでして、これも先ほどのところで、そのままスルーしていただきましたけれども、チオシクラムについても同じで、これは実際、委員会の方でもかなり議論はしているところです。これだけ近接していって大丈夫かというところですね。言ってみれば、PECの計算方法一つでも、この辺の数字は変わってしまう可能性があるということで、その意味ではかなりトリッキーな部分があるのではないかということが議論されております。

【森田委員長】 いかがでしょうか。ほかには。
 何というか、かなり毒性が強いのですよね。特にそのミジンコはともかく、魚に対して相当強いのだけれども、この辺り、五箇委員、余り気になりませんか。

【五箇臨時委員】 いや、ピレストロイドは概して水生生物に対して非常に高い毒性を、ミジンコに限らず魚類に対しても非常に高い毒性を示す剤です。作用性そのものはナトリウムイオンチャンネル、神経系のナトリウムイオンチャンネルの方に作用するということで、こちらも基本的には作用点そのものに関しては種間差はないものですので、体内に入って到達すれば、やはり効いてしまうと。そういった意味で、その物化性としては魚類に対しても非常に強い影響が出やすい薬であるということになります。
 これはピレストロイド系全般に言えることですので、この系列の薬剤に関しては、特にやはりその水生生物に対する影響というのは注意していかなくてはならないというように考えられます。

【眞柄臨時委員】 実際にこの剤を環境中で測定しようとするときに、0.05ppbを測る試験方法はルーチンラボにあるのですか。

【森田委員長】 試験結果を見ていると、0.03μg/Lは実測されてはいるのですね、きっと。

【五箇臨時委員】 指摘されるのではないかなとどきどきしていたのですが、実はそこもやはり検討会の方では議論があって、これ測れるのかと、こういう濃度設定をして、本当にそれが野外で検出できるのかと。さらにまずいことに、その登録保留基準値とPECが余りにも近いので、要は測ること自体が非現実的であり、影響そのものを評価することも非現実的な状態になってしまっているということになります。
 数字上では、確かにPECは登録保留基準値を下回ってはいるのですが、本当にこれを測って評価できるかと言われると、今の分析技術ではどうなのかというのは、非常に疑問が残るところだというところです。

【森田委員長】 分析の技法というのは。

【上路臨時委員】 たくさんの量を集めてきて、濃縮すればできるのではないですか。

【五箇臨時委員】 検討会ではそういう結論になりました。これは実際に通常のサンプル量では測れないだろう。だけどたくさん集めれば測れないことはないというような話は出ましたですね。

【眞柄臨時委員】 よろしいですか。水産動植物の被害防止に係る登録保留基準ですから、飲み水の場合とは違うかもしれませんが、飲み水の場合には測れないものはリスク管理できないわけですから、測れるところを基準値のような形で設定せざるを得ないわけですよね。しかも、今、濃縮すればいいという話でしたが、環境水の場合、濃縮する場合は、懸濁物質も共存するわけで、水道水のようにほとんど入っていないものだったら1m3でも2m3でも濃縮できますけれども、環境水でしかもこういう用途で使われるとすれば、かなり懸濁物質が存在している状態で、ピレストロイド系ですからそうでもないのかもしれませんが、溶媒使って濃縮するにしても容易ではありませんし、その辺のところはこのマニュアル見てもどうしろというのは書いていないので、今までこのような剤は出てこなかったから困ったなというところです。

【農薬環境管理室室長補佐】 基本的にこの保留基準の考え方ですけれども、事務局はこう考えています。保留基準は登録申請検査を農水省がするために指針を示すと。よって、その評価方法として、この委員会でPECという方法を編み出していただいて、PECで、もう入口の段階、上市される段階から規制するということでコントロールされるのだと思います。
 先生がおっしゃるのは、そのさらに先に検証する手段があるのかどうかということだと思うのですが、普通の方法では相当難しいと思いますが、この物質ですと高性能質量分析機器を使えば不可能ではないと思います。ただ定常的に水道水を分析するようなランニングコストの安い方法では不可能ですけれども、何らかの方法で分析は可能ではないかというように思います。

【森田委員長】 確認ですが、今、分析が可能だという前提で話を進めていいのでしょうか。

【農薬環境管理室長】 先ほどの補佐の方が御説明したとおり、この水産動植物の登録保留基準については、その登録をするかしないかという目安なものですから、分析ができないので基準値がつくれない、よって、登録ができませんというわけにはいかないと思います。基本は、一義的にはやはり、机上の理論になってしまうかもしれないのですけれども、一応、シミュレーションしてAECとPECを比べて、水中での毒性というのは大丈夫だというのを確認するのがまず最初の目的と。本当はそれでモニタリングできるのが一番望ましいのですけれども、こういうような合成ピレスロイド剤みたいな、どうしても毒性が強いものについては、もしかすると非常にモニタリングが難しい剤はあるかもしれないが、それはしようがないなというのが基本スタンスだと思っています。

【森田委員長】 ありがとうございました。ということで、それでよろしいですか。多分、これを高性能質量分析機器を使ってもこれは測れないですね、きっとね。

【眞柄臨時委員】 駄目ですね。この構造では厳しいと思いますよ。

【森田委員長】 駄目ですね。だから、多分無理だろうと。たとえ水を1m3使っても相当苦しい世界で、モニタリングできない状況はあるけれども、しかし、とりあえずその求めた計算の方法で非常に低い値になりますが、基準値が計算され、その基準値は5.5pptという濃度になるということが一つと、それから環境中の予測濃度はそれより下回っているから、使えるのではないだろうかという、それが流れになっているのです。
 中杉先生。

【中杉臨時委員】 基本的に、農薬と農薬以外のものというのは考え方ががらっと変わるのですね。農薬の場合は、もう使い方を限定していて、一応計算上ですけれども、使い方はこういうふうに使えばこれぐらいの濃度になるよ、この剤は非常に登録保留基準値とPECが近いといっても、基準値より下であるということから考えると、これで仕方がない。普通の使い方が限定していないものがもしこういう状態であれば、例えば排水規制をやろうとしても、それは測れないというのは、これはもうコントロールは無駄でそんなものを使うなという議論は十分成り立つと思うのですけれども、農薬については、そういう意味では扱い、管理の仕方が違うので、この使い方でこうなるということを証明できるかどうか、そこのところはもちろん一つの議論としてありますけれども、今はこういうルールで審議しているので、これはこれでしようがないのだろうなというように思いますけれども。

【森田委員長】 よろしいでしょうか。それでは、こういう数値を御承認いただいたということで。

(異議なし)

【森田委員長】 続きまして最後の剤ですけれども、ブロモブチド。

【農薬環境管理室室長補佐】 ブロモブチドでございます。物質の概要は48ページの冒頭の表に書かせていただいております。
 開発の経緯等につきましては、ブロムブチドは酸アミド系の除草剤ということで、本邦での初回登録は1,986年ということでございます。
 製剤に関しましては、粒剤及び水和剤、適用作物は水稲ということでございます。
 原体の国内生産量は平成16年度に243.6トン、また、輸入量につきましては平成17年度、18年度でそれぞれ173トン、497トンというデータがございます。
 物性につきましては、土壌吸着係数が163から306、オクタノール/水分配係数は3.46、水溶解度が3.54×103μg/L、分解性に関しましては、加水分解性について25℃のpH5,7,9という条件で30日間試験を行っても加水分解性は認められませんでした。水中光分解性に関しましても、半減期が約11週というようなデータがございます。
 続きまして49ページ、水産動植物への毒性でございます。魚類に関しましては、コイを用いた急性毒性試験を実施しておりまして、これは限度試験でございますけれども、96時間のLC50が4,850μg/L超というデータを得ております。
 甲殻類に関しましてもオオミジンコを用いまして、こちらも同じく限度試験で、48時間のEC50が4,850μg/L超ということでございます。
 藻類につきましても同じく限度試験で、72時間のErC50が4,850μg/L超というデータを得ているところであります。
 続きまして51ページ、環境中予測濃度でございます。こちらにつきましては水稲に適用がございますので、水田使用農薬としてPECを算出いたしました。表4のようなパラメーターを用いまして算出した結果、水田PECが23μg/Lということでございます。
 続きまして、52ページの総合評価に移ります。先ほど、各種生物についてのLC50、EC50から登録保留基準値案といたしまして、一番小さい480という数字を置きまして、2番のリスク評価、水田PECが23μg/Lでございましたので、先ほどの登録保留基準値案480μg/Lというものを下回っているということで、基準値案といたしましては480という値を設定したということでございます。
 本剤につきましては、以上でございます。

【森田委員長】 説明ありがとうございました。それでは、この剤につきまして、御質問、御意見ございませんでしょうか。いかがでしょうか。特段、目立ったこともないような。

【上路臨時委員】 特に意見は出ませんでした。

【森田委員長】 はい、よろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 それでは、どうもありがとうございました。これも原案どおりの承認ということにしたいと思います。
 それでは、本日、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準値の設定に関しまして、一応、全物質とも原案どおり御承認をいただいたことにしたいと思います。
 なお、途中でいろいろな議論が出ましたけれども、それは議事録に残っているということで了解をしていただきたいと思います。
 それでは、その次の議題に行くのですが、とりあえず、5分ほど休憩をとりまして、42分に再開したいと思いますのでよろしくお願いします。
休憩 14:38
再開 14:44

【森田委員長】 それでは休憩時間を終わりまして、引き続いて、次の議題の方に移りたいと思います。
 議題の2番目ですが、水質汚濁に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定についての審議にこれから入りたいと思います。
 それでは、事務局の方から資料の御説明をお願いします。

【農薬環境管理室室長補佐】 承知いたしました。
 個別の審議の前に、本年10月に水質汚濁に係る農薬登録保留基準の基本的な仕組みが改正されましたので、参考資料をもとに若干簡単に御説明させていただければと考えております。
 参考資料としてお配りした中で、参考資料3-1、3-2というものがありますが、それを用いて簡単に説明させていただきます。
 参考資料3-1、左とじの資料でございますけれども、農薬取締法第三条第二項に基づいて、環境大臣が定める基準というものがございまして、その水質汚濁に係る基準を改正させていただいたものでございます。
 表がありまして、上に改正案、下に現行という欄がございますが、10月に改正したときの当時の資料でございますので、改正案というのが現行であり、今適用されているものでございます。その下の現行というものが、今となっては旧基準でございまして、そこが少しややこしくて申し訳ないのですけれども、そういう表でございます。
 どのように内容が変わったかといいますと、この表で現行と書いてあるのが旧基準でございますが、一、二、三、四とございまして、一、二、三が略、略、略となっております。
 一号につきましては作物残留、二号につきましては土壌残留、三号につきましては水産動植物の被害防止に係る基準であり、これは環境大臣が定める基準ですが、ここは改正がなかったので略と書かせていただいております。
 四号といたしまして、法第二条第二項第三号の事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用した場合に、当該農薬が公共用水域に流出し、又は飛散した場合に水質汚濁の観点から予測される当該公共用水域の水中における当該種類の農薬の成分の濃度(以下「水質汚濁予測濃度」という。)が、当該種類の農薬の毒性及び残留性に関する試験成績に基づき環境大臣が定める基準に適合しない場合は、法第三条第一項第七号に掲げる場合に該当するものとするという規定がございました。これはどういったことかと申しますと、以前、この小委員会にもお諮りさせていただいたことでございますけれども、水質汚濁に係る農薬登録保留基準に関しましては、申請書の記載に従って農薬が一般的に使用される場合を想定いたしまして、その場合の環境中予測濃度と、当該農薬の許容一日摂取量、ADIから算出される公共用水域における基準値を比較するという方法で、登録保留に該当するかどうかを判断しておりまして、さらにこの基準値設定に当たっては、運用上、生物濃縮係数5,000を超える農薬につきましては、魚介類からの農薬の摂取も農薬散布による水質汚染も考慮した形で基準値を設定することとしてきたという経緯がございます。そういう基準が今、先ほど申し上げた四号というものでございましたが、平成18年にシジミへの残留農薬問題を契機に、食品衛生法の方で、こういったシジミなどの魚介類につきましても、非意図的に蓄積される農薬の残留基準というものが設定されてきたことから、こちらの方の基準もそれに対応していくということで、汚濁水により汚染される水産動植物について、食品衛生法の残留基準に適合するよう、水質汚濁に係る農薬登録基準を改正させていただきました。それが改正案と書かれた上の欄でございます。これが現行の基準でございます。
 どう変わったかと申しますと、1枚めくっていただきまして、従来の四号といったものの内容が、イという形で抽出されたということでございまして、こちらにつきましての変更はございません。
 さらに今回、ロ、ハ、ニが付け加わりまして、食品衛生法の規格基準に合致しないものは登録が保留されるということになります。ロにつきましては一般に言われる本基準、ハにつきましては暫定基準、ニにつきましては一律基準といったものです、これら食品衛生法の基準に適合しないものは、登録が保留されるといった基準を設けさせていただいたところでございます。
 参考資料3-2につきましては、その改正を行ったときの官報の写しでございます。
 大まかな改正の内容につきましては、以上でございます。
 では、続きまして、個別の剤について説明させていただきたいと思います。

【農薬環境管理室主査】 それでは、資料5を御覧ください。全部で三つの剤がありますので、一つずつ順番に説明をさせていただきます。
 まず1枚めくっていただきまして、1ページの1-ナフタレン酢酸ナトリウムでございます。物質の概要に関してはお示ししたとおりです。
 開発の経緯等ですけれども、こちらはオーキシン様活性を示す植物成長調整剤であり、現在未登録です。
 なお、こちらの剤に関しては、昔、国内で登録されていたのですが、その後いったん失効しまして、最近になって再度登録申請が出てきたものという位置づけになっております。
 適用作物は、温州みかん、メロン、りんご、日本なしに対する適用が申請されております。
 各種物性に関してもお示ししたとおりですが、1点だけ説明を申し上げますと、右側にオクタノール/水分配係数というものが記載してございます。こちらに関しては3種類の条件で試験をしておりまして、上の二つがpH3の条件で試験をしたもので、試験の実施年度、試験方法がそれぞれ異なります。
 その二つの値に多少違いがあるのですが、ただ、実際の環境中では、pH3という条件はまず想定されませんので、現実的にはその下にある25℃の蒸留水で実験したときの値、-1.03となっておりますが、こちらが一番現実的な値ではないかと考えております。
 それから、2ページの方へ行っていただきまして、II.安全性評価でございますが、こちらに関しては本年の7月24日付けで、食品安全委員会によりADIが設定されております。
 それによりますと、0.15mg/kg体重/日と設定されておりまして、この値はイヌを用いた1年間の慢性毒性試験における無毒性量を、安全係数100で除して設定されております。
 こちらに関しましては、参考資料4の方に食品安全委員会の評価書をつけております。中身に関しましては、時間の関係で省略をさせていただきますが、1点だけ補足しますと、タイトルが1-ナフタレン酢酸となっております。今回、農薬として申請されておりますのはナトリウム塩ですので、若干タイトルの物質の名称が違っているのですが、これにつきましては、食品の方の残留基準が1-ナフタレン酢酸として設定されるため、厚生労働省から食品安全委員会に対して、1-ナフタレン酢酸という形で評価依頼が行われたため、このようになっているものと考えられます。
 ただし、実際の中身を御覧になっていただくと分かるのですが、これはあくまでもナトリウム塩を用いて毒性試験を実施し、ナトリウム塩についてADIを設定しているという形になっておりますので、特段の支障はないかと考えております。
 それでは、資料5の2ページの方へ戻っていただきまして、III.水質汚濁予測濃度のところですが、こちらに関しては非水田使用農薬ですので、その条件におけるPECを計算しております。
 2ページの表にお示ししておりますように、22%の水和剤を使って、温州みかんに適用した場合のPECを計算しました、3ページへ行っていただきまして、水濁PECの算出結果ですが、最終的に0.000095mg/Lとなっております。
 それからIV.の総合評価です。1.登録保留基準値の案ですが、こちらに関しては先ほど水オクタノール/分配係数のところで申し上げましたが、実環境に近いと考えられる蒸留水の条件下におけるlogPowが3.5未満でしたので、生物濃縮性を考慮することなく、以下の算出式により登録保留基準値を算出しております。その結果、0.39mg/Lという値を提案させていただいております。
 それから、4ページへ行っていただきまして、リスク評価ですが、水濁PECの値が0.000095mg/Lであり、登録保留基準値案の0.39mg/Lを下回っております。
 最後の3番に、農薬理論最大摂取量と対ADI比を参考としてお示ししております。まず、食品経由の農薬摂取量ですが、注釈の2番に記載したとおり、食品規格に関しましては、今回の登録申請に伴って、厚生労働省の方で基準値の見直しが行われる予定なのですが、本日現在、薬事・食品衛生審議会における案は示されておりません。ですので、今回この摂取量として記載しているのは、いわゆるポジティブリスト制度の導入時に設定された暫定基準というものを基に、環境省の方で算出した摂取量を示しております。
 なお、先ほど申し上げましたように、食品の基準は1-ナフタレン酢酸として設定されておりますので、ナトリウム塩の質量に換算した値を計算してお示ししております。
 飲料水からの摂取量に関しては、先ほどの基準値をもとに算出しております。
 最終的な対ADI比は合計11.6%、うち水質経由は9.8%となっております。
 以上でございます。

【森田委員長】 今の御説明に御質問、御意見ございませんでしょうか。

【上路臨時委員】 1点教えてください。先ほど食品経由のところ、まだ厚労省の方で計算していないからという形でおっしゃられましたけれども、これはいわゆる0.01ppmという一律基準を適用して、すべての食品群毎の摂取量を掛け合わせ足したということですか。具体的にどういう計算しているのですか。

【農薬環境管理室主査】 一律基準というのは、個別の基準値が設定されていない食品に対して一律基準が適用されますが、それに関しては計算の中に含めていません。
 今回、この資料の中で算出したものは、暫定基準として設定された値を用いたものでございます。これはポジティブリスト制度を導入したときに、直ちに0.01ppmの一律基準を適用してしまうと引っかかってしまう食品がたくさん出てきますので、食品安全委員会の評価を受けていないのですが、暫定的な基準を幾つかの食品に設定しております。それを食品群毎の摂取量ごとに掛け算をして足し合わせたものが、ここにお示ししたものです。

【上路臨時委員】 そうすると、ほかの国でつくっていた基準とかそういうものを合わせて暫定基準があるということですね。

【農薬環境管理室主査】 暫定基準をつくったときは、例えば、昔作物残留の登録保留基準をつくっていましたので、それがありましたものはそれを適用したり、あるいは海外で基準値のあるものは、それを使ったりしております。

【上路臨時委員】 計算し直したのですね。分かりました、ありがとうございました。

【森田委員長】 いかがでしょうか。
 昔使われていて、もう一度、再度復活してきたということで、非常に古典的な物質ではありますね。
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(発言なし)

【森田委員長】委員の先生方、やはりこれがリスクを増すという感想はあまりお持ちでないようですので、とりあえずこの流れでよろしいということのようでございますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 それでは、御承認いただいたことにしたいと思います。
 では引き続きまして、クロラントラニリプロールをお願いいたします。

【農薬環境管理室主査】 それでは、5ページのクロラントラニリプロールについて御説明いたします。
 物質概要についてはお示ししたとおりです。
 開発の経緯等ですが、こちらの剤は鱗翅目や双翅目等に対して殺虫活性を示す殺虫剤でございます。現在、国内では未登録です。
 平成19年の7月に新規の登録申請が出されておりまして、適用作物としては、キャベツ、はくさい、りんご、稲等に対して適用が申請されております。
 各種物性等に関しましては、そちらの表にお示ししたとおりです。
 それから、6ページへ行っていただきまして、II.安全性評価ですが、こちらも食品安全委員会による評価結果が出ておりまして、0.26mg/kg体重/日という値が設定されております。
 なお、この値はマウスを用いた18カ月間の発がん性試験における無毒性量を安全係数100で除して設定されたものでございます。
 食品安全委員会の評価書につきましては、参考資料の5としておつけしております。こちらに関しても時間の関係で内容の説明は省略させていただきますが、適宜御参照をお願いいたします。
 それから、III.水質汚濁予測濃度ですが、こちらの剤につきましては、水田と非水田いずれの場面でも使用されますので、それぞれの使用場面について水濁PECを算出し、両者を合算して計算しております。
 まず、(1)の水田使用時の水濁PECですが、表に示したように1%粒剤を用いて稲に対して、これは育苗箱への施用ですが、この場合における水濁PECを算出いたしました。
 それから7ページへ行っていただきまして、(2)の非水田使用時の水濁PECですが、こちらに関しては10%水和剤を用いて、りんご、おうとう、またはすももといった果樹類に対して適用した場合のPECを算出しております。
 (3)の水濁PEC算出結果ですが、水田使用時、非水田使用時、それぞれ表中にお示ししたような計算値が出ておりまして、最終的な合計は0.0013mg/Lとなっております。
 8ページへ行っていただきまして、IV.総合評価です。1.登録保留基準値の案ですが、こちらの剤につきましてもlogPowが3.5未満であることから、生物濃縮性を考慮せず、以下の算出式により算出をいたしました。その結果、0.69mg/Lという値を提案させていただいております。
 それから、下の方の2リスク評価ですが、水濁PECが0.0013mg/Lであり、登録保留基準値の0.69mg/Lを下回っております。
 それから、9ページへ行っていただきまして、3.農薬理論最大摂取量と対ADI比ですが、まず食品の方に関しましては、今回の登録申請に当たって、まだ厚生労働省の方で基準値が設定されておりませんので、空欄とさせていただいております。
 飲料水からの摂取量は、先ほどの基準値に基づいて1.38mgと算出いたしました。
 その下のADI比のところですが、数字の誤植がありますので訂正をさせていただきます。まず、ADIのところが1.3858mgとなっておりますが、これは13.858mgの間違いです。それに伴って、対ADI比の水質経由の部分も変わりまして、今、99.6となっておりますが、9.9の間違いです。申し訳ありませんが訂正をお願いします。
 こちらの剤につきましての説明は以上です。

【森田委員長】 御説明ありがとうございました。それでは各委員の先生方、御質問、御意見ございませんでしょうか。

【井上(隆)専門委員】 今の訂正後の水質経由の農薬理論最大摂取量の対ADI比は9.9と言われたんですけれども、小数点以下は2けたを切り捨てにするということなのでしょうか。四捨五入すると、これだと10.0になるのですが。

【農薬環境管理室主査】 おそらく9.9の下は、手元の計算ですと5となっているかと思います。3桁まで計算値を出しますと9.96になります。もし2けたで表示するならば、繰り上がって10.0という形になるかと思います。

【森田委員長】 10.0に修正していただくというのでよろしいでしょうか。

【井上(隆)専門委員】 もう1点、これもただ単に書き方だけの問題なのかもしれません。7ページのところで、水田使用時が0.00133mg/Lで、非水田使用時の0.0000142mg/Lを足して、0.00134mg/Lになるということなのですが、3桁目まで足しているからそれでいいです。4桁目まで考えると135になるかもしれないという可能性もあるのですが。

【農薬環境管理室主査】 一応、PECに関しては、最終的に有効数字を2けたとするということで、途中の計算においては3けた目まで出して足し合わせるという計算方法を取っております。

【森田委員長】 いかがでしょうか。

【眞柄臨時委員】 食品安全委員会で評価された結果ですので、それはそれとして受け止めるというのがルールですが、18ヶ月のマウスの発がん性試験だけでエンドポイントが出ていて、なおかつ、雌雄の性差が大きいデータのみで評価をされていらっしゃるので、どうしてなのかなと思ったのですが、そんなに大きい性差があるものを、ADIとして設定するのは、少しきつ過ぎるのではないかなという印象を受けたのですが、こういう場合は食品安全委員会の方に問い合わせることはできないのですよね。いかがなのですか、教えてください。

【森田委員長】 いかがでしょうか。質問ぐらいはできるのかな。

【上路臨時委員】 食品安全委員会の評価ですが、確かに雄雌の差についてもいろいろあるのですけれども、試験項目がたくさんあって、とにかく一番毒性が強くてNOAELが取れるものがエンドポイントになります。
 ですから、雌雄差が確かにあったとしても、雄雌に関係なく、とにかく無毒性量が一番小さいところ、一番毒性の強いところを基本にするというのがADIの決め方になっていますので、安全係数には雄雌の差は関係しないということになります。先ほど眞柄先生がおっしゃったのは、マウスの18ヶ月の発がん性試験の雄の無毒性量が26mg/kg体重/日、雌の無毒性量が1,150mg/kg体重/日というその差だと思いますけれども、無毒性量として一番低いところが基本になっていますので、それはそれでいいということでADIを設定しているということになります。

【眞柄臨時委員】 おっしゃっていることはよく分かります。それで、安全係数100として、係数で10×10を取ってしまっていますけれども、キネティクスとダイナミクスを見ていく場合には、なぜそういうエンドポイントが出たかということの評価が出てくるわけですね。そういうやり方ではないから、これでいいのだろうとは思うのですが、もし、そのキネティクスとダイナミクスを見ていくというようになった場合には、なぜこの試験項目だけがそれだけの性差があって、しかもマウスしか出てこなかったかという御説明をしていただくと分かりやすいのかなと思ったわけです。

【上路臨時委員】 当然毒性の前の代謝の評価のところで、雄雌の性差でどれぐらい代謝物が違うかとか、あるいは、どれぐらいの速度で代謝が行われているのかというようなことも全部追っかけた上でADIが決まっているというように思っています。ですから、今先生がおっしゃられたようなキネティクスの方から評価しているかどうかというのは、私自身十分にこの剤について見ていませんけれども、多分、それは検討されているという前提だと思います。

【森田委員長】 よろしいでしょうか。この議論は結構難しい議論ですけれども、ある局面において質問ぐらいはもしかしたらできるかもしれないというように思っていいのでしょうか。

【眞柄臨時委員】 いやいや、井上先生に迷惑掛けるからいいです。

【森田委員長】 いいですか。今日は井上先生お見えになっていないのですが、とりあえず、算出された一番低いレベルでの影響をベースにしてADIが設定されているので、大きな間違いはないということではあるかもしれませんけれども。
 では、この基準値案でよろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 ありがとうございました。
 それでは引き続きまして、次の剤に移りたいと思います。お願いいたします。

【農薬環境管理室室長補佐】 フルポキサムでございます。こちらにつきましては物質概要は、10ページの冒頭に書いている表のとおりでございます。
 2.開発の経緯等につきましては、フルポキサムはトリアゾール骨格を含有する除草剤でございまして、本邦では現在未登録でございます。平成18年10月に農薬取締法に基づく新規登録申請がなされ、適用作物は日本芝であります。
 3.各種物性等につきましては、土壌吸着係数が1.51×103から1.98×103、オクタノール/水分配係数が3.2、水溶解度が2.42mg/L、土壌残留性につきましては圃場・容器内のいずれにおいても半減期は142、67、144、217といった日数が掛かっております。
 水田には使えませんので、水田の水質汚濁性についての試験はされておりません。
 11ページにまいりまして、安全性評価でございます。こちらの安全性評価に関しまして、今までは食品安全委員会等のADIを用いておりましたが、本剤につきましては食品安全委員会の方でADIが設定されておりません。そうかといって、ADIがないから基準値が設定できないということでは困りますので、平成20年2月22日に中環審の土壌農薬部会で了承いただいた方針というのがございまして、それは参考資料の6-1に書いているものでございます。
 参考資料6-1に、水質汚濁に係る農薬登録保留基準に関する安全性評価及び基準値設定の方針というものがございます。2月22日に土壌農薬部会で了承いただいたものでございます。この中で1枚めくっていただきまして、4.食品安全委員会において安全性評価が行われない農薬に係る基準値設定という項目がございまして、今回の場合これに該当いたします。
 (1)といたしまして、花卉、樹木、芝等の非食用農作物のみに使用される農薬(以下「非食用農作物専用農薬」という。)のように、食品安全委員会において安全性評価が行われない農薬の水濁基準設定にあたっては、環境省において新たに安全性評価を実施し、暫定的なADIを設定することとするということでございます。
 (2)としまして、このため、環境省水・大気環境局長が設置する検討会として、非食用農作物専用農薬安全性評価検討会(仮称。以下、「検討会」という。)を設置するということで、その検討会に関しましては、動物代謝、植物・土壌代謝、各種毒性等の専門家の先生に御協力いただいて、5.に示す手続きに従って、暫定ADIの設定を行うというものでございます。
 5.と言いますものが次のページにございまして、検討会における安全性評価の手続きというところでございます。非食用農作物専用農薬については、農薬の登録申請時に提出が要求される試験成績のうち、慢性経口投与毒性試験、発がん性試験、繁殖毒性試験の提出がないということですから、原則として、以下の(1)から(3)に従い暫定ADIを設定するという方針を取らせていただいております。
 (1)におきましては、これまでの農薬に係る評価文書などを精査いたしまして、暫定ADIをつくるというものです。
 (2)といたしまして、そういったものがない場合は、登録申請者等から提出された亜急性の経口投与毒性試験等の利用可能な試験における無毒性量のうち、最小のものに対して、原則として安全係数1000(種差10×個体差10×毒性試験の一部が不足していることに対する係数10)を使った暫定ADIを設定するというものでございます。
 (3)といたしまして、登録申請者等から慢性経口投与毒性試験等の試験成績が提出された場合は、また、それが信頼に足るというものであれば、それも加味した上で暫定ADIを設定するというもので、このような方針で臨ませていただきました。
 具体的な検討会につきましては、参考資料6-2の開催要領に基づきまして、6-3の表にございます委員の先生方の御協力をいただいて、暫定ADIを設定させていただきました。この小委員会の先生からは、井上先生、上路先生の御協力を賜っております。
 そうしてまとめさせていただいたものが、資料5の方に戻っていただきまして、14ページから続く別紙です。こちらにその検討の結果をとりまとめてございます。
 食品安全委員会等においてADIが設定されてございませんので、この小委員会において、この検討会結果も含めて、暫定ADIを本小委員会で御了承いただいた上で、水質汚濁の基準が決まっていくというプロセスになりますので、まず、この別紙の方から先に説明させていただきたいと思います。
 別紙、水質汚濁に係る農薬登録保留基準の設定に関する安全性評価資料、フルポキサムです。物質の概要は先ほど説明したとおりでございまして、開発の経緯等、各種物性につきましても同じでございます。
 15ページから、申請者から提出された毒性試験の概要を書かせていただいております。まず、動物体内運命試験をまとめさせていただいております。ラットを用いて各種の動物体内運命試験を実施してございます。
単回の経口投与試験を行いまして、3mg/kg体重の低用量群と300mg/kg体重の高用量群で実験を行いました。その中で物質の消失を調べたところ、低用量群で3時間から4時間、高用量群で3時間から21時間といった血漿中濃度半減期が見られてございまして、高用量群の雌において消失が緩やかであったという結果が出ております。主な排泄経路は糞中でございまして、72時間までの糞中排泄率は、低用量群では76から77%TARに達しております。これは放射性標識体を用いて追っかけているため、TARという書き方をしております。高用量群で72から89%TARとなっております。尿中排泄率は低用量群で20から21%TAR、高用量群で17から26%TARという結果が出ております。
 糞中への排泄の大部分は、吸収後の胆汁排泄を介したものでございまして、一部は腸肝循環するという示唆もございました。
 単回経口投与後の組織中濃度に関しまして、消化管における組織中濃度は投与後の120時間までに十分に低下しておりました。加えて、他の臓器にも蓄積は認められなかったということです。以上が、動物体内運命試験の大まかな結果でございます。
 続きまして、2.環境中運命試験です。こちらにつきましては、先ほどの土壌残留性試験とも関係いたしますが、放射性標識体を用いて追跡をいたしました。
 好気的土壌中運命試験で軽埴土を用いた結果、半減期が47日でした。
加水分解運命試験では、50℃で5日間の減衰率が10%以下であり、加水分解に対しては25℃で安定であるということが分かっております。
 16ページは水中光分解運命試験の結果です。
3.土壌残留性試験も行っております。土壌残留につきましては先ほど御説明した内容と同じですので、省略させていただきます。
 4.毒性試験に移ります。一般薬理試験が実施されてございまして、こちら中枢神経系と循環器系に対する影響を観察しており、無作用量、作用量を算出しております。
一般状態については、マウスにつきまして、経口投与で200mg/kg体重を無作用量600mg/kg体重を作用量と判断しております。観察された作用といたしましては、歩行失調や異常姿勢、正向反射の着地異常、低体温、受動性の低下といったものが見られております。
 血圧につきましては、ラットについて2,000mg/kg体重までの投与が行われておりますが、観察された作用はなかったということです。
 心拍数に関しましては、600mg/kg体重で心拍数の減少が見られたということで、600mg/kg体重を無作用量、200mg/kg体重を無作用量とするデータが得られております。
 急性毒性試験も行われておりまして、フルポキサムの原体及び50%の顆粒水和剤について行われていまして、原体の急性経口LD50は5000mg/kg体重超でございました。
 また、フルポキサム原体混在物と代謝物につきましても、PN1からPN18とありますが、試験を行いまして、その多くの急性経口LD50について2000mg/kg体重超というデータを得ております。
 また、眼と皮膚に対する刺激性、皮膚感作性試験も行っておりまして、軽度の眼刺激性が認められましたが、皮膚刺激性と皮膚感作性はなかったという結果が、ウサギ及びモルモットを使った試験で得られてございます。
 亜急性毒性試験に関しましては、ラットを用いた混餌投与による90日間反復経口投与毒性試験を実施しておりまして、こちらにつきましては、肝や甲状腺についていろいろと影響がみられておりまして、こちらにつきまして、無毒性量は雌雄ともに50ppm(雄は3.0mg/kg体重/日、雌は3.5mg/kg体重/日)といった結果を得ております。
 続いて、慢性毒性試験及び発がん性試験のデータでございます。SDラットを用いた混餌投与による2年間反復経口投与毒性/発がん性併合試験を実施しております。こちらにつきましても、甲状腺への影響や肝への影響がいろいろ見られておりまして、無毒性量は雌雄ともに50ppm、体重当たりの摂取量に換算しますと雄が2.4mg/kg体重/日、雌が3.1mg/kg体重/日という結果が出ております。
 催奇形性試験に関しましては、ラットを用いた強制経口投与による試験を実施いたしまして、母動物に関しましては、1,000mg/kg体重/日投与において、脱毛、肛門周囲の汚染被毛の粗剛、脱水、排尿・排便の減少といった所見がみられております。300mg/kg体重/日以上の投与においては、肝絶対重量の増加が認められてでございます。
 他方、胎児に関しましては、1,000mg/kg体重/日投与群において低重量及び血管変異の発現率の上昇が認められ、本試験における無毒性量は、母動物に対しては25mg/kg体重/日、胎児に対しては300mg/kg体重/日と考えられました。催奇形性は認められないという結果が出ております。
 ウサギにつきましても同じような試験をいたしまして、無毒性量は、母動物に対しては15mg/kg体重/日、胎児に対しては35mg/kg体重/日という結果が得られ、催奇形性はこちらも認められなかったということでございます。
 次に、遺伝毒性試験のデータがございまして、原体につきまして細菌を用いた復帰突然変異試験、チャイニーズハムスター肺由来株化細胞(CHL)を用いた染色体異常試験及びICRマウスを用いた小核試験を実施しておりますが、いずれも結果は陰性だったということでございます。
 原体混在物、また代謝分解物につきましても試験を行いまして、結果は全部陰性だったということでございます。
 その他の試験として、90日間反復経口投与毒性試験及び2年間反復経口投与毒性/発がん性併合試験において認められた肝臓及び甲状腺に関する毒性の機序の検討がなされました、ブタの甲状腺のミクロソーム、主に小胞体の分画ですけれども、これを用いて、甲状腺のペルオキシダーゼ活性、酸化反応を触媒する酵素の活性を調べましたが、フルポキサムの添加において、その酵素の活性の低下は認められないということが分かりました。
 また、SDラットを用いまして肝薬物代謝酵素誘導試験を実施しましたところ、350ppm以上投与群において肝比重量の増加及びUDP-GT活性の増加が認められたということでございます。
 こういったことから、甲状腺濾胞腺腫及び濾胞上皮細胞過形成の増加は、本検体の甲状腺に対する直接的な作用ではなく、肝肥大を伴う肝臓のUDP―GT誘導による甲状腺ホルモンの低下に続き、TSHが増加したことによる甲状腺の持続的刺激によるものと考えられました。
 以上のようなことから、III.総合評価を行っております。本検体の投与による影響は主に肝臓、甲状腺及び軽度ながら血液に見られてございます。2年間反復経口投与毒性/発がん性併合試験において、甲状腺濾胞腺腫及び濾胞過形成の増加等が認められました。また、遺伝毒性試験の結果はすべて陰性でありました。
 また、中・長期の毒性試験及び毒性発現機序試験の結果から、甲状腺濾胞腺腫及び濾胞過形成の増加の発生機序は、肝薬物代謝酵素誘導による甲状腺ホルモンの代謝亢進を介した甲状腺の持続的刺激による二次的なものであり、非遺伝毒性メカニズムによるものであると考えられました。催奇形性についても認められませんでした。
 なお、ラットを用いた一般薬理試験において観察された心拍数の減少について、そのメカニズムは必ずしも明らかではありませんでしたが、マウスを用いた試験において中枢神経系に対する抑制作用が見られたことから、中枢性交感神経の抑制による可能性が考えられております。これら神経系及び循環器系への影響に関する詳細な試験は行われていませんが、中枢性交感神経の抑制の可能性を考慮した場合、本検体の投与がラットの拡張期血圧へ影響を及ぼす可能性を否定できないと考えられております。
 各種毒性試験における無毒性量及び最小毒性量を次表に示すということで、今までの結果を表でまとめたものが19ページの下の表になります。この中で無毒性量として一番小さいもの、2年間慢性毒性/発がん性併合試験の雄の2.4mg/kg体重/日を用いまして、フルポキサムの暫定ADIを次のように評価するということでございます。
 安全係数に関しましては、本剤につきましては、繁殖毒性試験の成績が提出をされていないということ、また、慢性毒性試験及び発がん性試験における動物種がそれぞれ1種類ということから、安全係数は300というものが妥当だろうという御指導をいただきまして、設定させていただきました。
 その結果が、暫定ADIとして0.0080mg/kg体重/日であり、設定根拠につきましては、先ほど申しました2年間反復経口投与毒性/発がん性併合試験で、動物種はラット、期間は2年間、投与方法は混餌投与、無毒性量は先ほどの表にありました2.4mg/kg体重/日、安全係数は300ということで設定しております。
 以上のような検討をさせていただきまして、0.008mg/kg体重/日という暫定ADIを決めさせていただきました。
元のところに戻っていただいて11ページでございます。暫定許容一日摂取量(暫定ADI)が0.008mg/kg体重/日でございます。重複しますが、フルポキサムの各種試験成績の評価結果に基づき、フルポキサムの暫定ADIを0.0080mg/kg体重/日と設定しております。
 なお、この値はラットを用いた2年間反復経口投与毒性/発がん性併合試験における無毒性量2.4mg/kg体重/日を安全係数300で除して設定したものでございます。
 注釈といたしまして、本剤は食用農作物への適用が申請されておらず、登録申請に伴う食品安全委員会による食品健康影響評価は行われていないということ。また、本剤は慢性毒性試験、発がん性試験又は繁殖毒性試験の試験成績の一部が提出されていないということで、暫定的なADIとして評価するということでございます。
 長くなりましたが、次に、III.水質汚濁予測濃度(PEC)でございます。非水田農薬として申請がありますので、水濁PECが最も高くなる使用方法について算出するということで、11ページの下の表にあるようなパラメーターを用いて計算したところ、12ページにございますように、使用場面として非水田使用時の地表流出寄与分0.0000509mg/L、河川ドリフト寄与分0.000000175mg/Lでございまして、両者を足し合わせた0.0000510mg/Lを四捨五入いたしまして、0.000051mg/Lという水濁PECを算出いたしました。
 IV.総合評価でございます。こちらにつきましては、logPowが3.5未満であることから、生物濃縮性を考慮せず、以下の算出式により登録保留基準値を算出した。先ほどのADI0.0080mg/Lに平均体重53.3kg、10%の配分を掛けまして、さらに2リットルで除して求めたものが、0.0213mg/Lとなり、さらに有効数字2桁に直して0.021mg/Lでございます。
 13ページ、リスク評価でございます。先ほど求めました水濁PECが0.000051mg/Lでございますので、登録保留基準値案0.021mg/Lを十分下回っているという結果が得られております。
 3.農薬理論最大摂取量と対ADI比です。これは先ほどの剤と同じでございますが、厚生労働省の方で食品経由の摂取量のもととなる基準値も設定されてございませんので、水質経由の摂取量のみを書かせていただいております。計算の結果、水質経由が9.8%となります。
 本剤については以上でございます。

【森田委員長】 ありがとうございました。とりあえず暫定ADIを、井上先生、上路先生の検討会で決めていただいて、それをベースに水の登録基準値を確定したというのが一連の流れでございます。
 各委員の先生方から、御質問、御意見ございますか。

【眞柄臨時委員】 まず、安全係数を300にされている根拠について、この評価の最後のところに、例えば繁殖毒性試験の成績が提出されていない、催奇形性試験は行われているけれども二世代の繁殖試験の結果はとられていない。それから動物種がラットだけであると書いてはあるのですが、このような場合、安全係数でいいのか、不確実係数なのか、安全係数としてもいいですが、どういう理由で300という数字になるのか根拠を教えていただきたい。基本的に、どういうときに300にするのかというルールについて、今までこの委員会で検討されたことはなかったと思いますので、それをまずお示しいただきたい。

【森田委員長】 事務局の方でお答えになりますか。

【農薬環境管理室室長補佐】 その点に関しましては、正に定まったものがなくて、井上先生の検討会において、現時点で得られている試験結果のすべてを見た上で、試験がなされていない項目などを含めて総合的に判断し、300が適切ではないかと決めていただいた経緯がございます。

【上路臨時委員】 私も毒性の方は専門ではないので正確なこと言えないのですけれども、先ほど説明がありました2月22日の土壌農薬部会で了承された安全性評価の指針に記載があります。それによると、種差掛ける個体差、10×10と、それから毒性試験の一部が不足していることに対する係数10をかけて最高1,000が必要であるということなんですけれども、では、300なのか、1,000なのかというところでこの剤について実施された試験が幾らか考慮されていて、繁殖毒性の試験は実施されていないけれども、発がん性試験や慢性毒性試験は必ずしも十分ではないけれども少しやられているので、それで1,000よりも低くなったというように思っています。
 ですから、この試験があれば、あるいは、この試験がなければ、安全係数を幾らにするというような明確な基準というのは、そこまでは決められていなかったというように思います。私自身もよく答えられないのですけれども。

【眞柄臨時委員】 種差の10は分かります。それから個体差の10をかけて、100というのはわかります。そうすると、3というのが、繁殖毒性試験の成績が提出されていないということと、また、1種のみであるということと、どちらの方にかかっているのが3なのか、それとも、これは並列で、こういう場合にはこれからは3にする。そういうふうに理解をしていいのか、あるいは、先ほどの食品安全委員会と一緒で、専門家が3だと言ったからこの委員会は300だというように受け止めて、後の評価をしろというのが、我々の仕事なのか、それはどちらなのですか。

【農薬環境管理室室長補佐】 最後の仕事のところは難しいのですけれども、検討会のときに300に至った経緯について、上路委員からも御説明がありましたが、もう少し詳細に御説明しますと、
土壌農薬部会での了承について、亜急性毒性の結果から暫定ADIを決めるときには、10×10×10が目安ではないかというのを引用されましたが、今回は、2年間慢性毒性/発がん性併合試験が出ています。ただ試験が出ているというのみならず、この試験の内容も含めて検討されました。
 その後、慢性毒性/発がん性以外についても催奇形性の分野や薬理の分野などそれぞれの分野の先生から、追加的なファクターを加える必要があるかどうかという検討をいただいて、最終的に、検討会のメンバーでは300がよかろうということで、小委員会に提出してくださいというようになりました。

【眞柄臨時委員】 だから、我々は300で決まったADIのその後の手続要するに登録保留基準値がこれでいいかどうかを見るのが我々の仕事だという理解ですね。それならそれでいいのです。そういうようにおっしゃっていただいて、我々はこの安全係数なり何なりがどうなのかということを、コミットできないということさえ分かればそれでいいわけです。初めてのケースですから、そこはそうだと、食品安全委員会のやり方と同じように扱ってくださいと事務局からおっしゃっていただければ、我々はそれに従ってやるということですから。

【農薬環境管理室長】 はい。例えばこの繁殖毒性試験、発がん性試験があれば本来10のところを3にするとか、そういうルールを作ったつもりは全然なくて、それは食品安全委員会と同じで、専門家が、これでいいだろうということで決めています。それについて、この委員会でも一応御検討いただいて、それを覆すような何か特別な事情があれば別ですけれども、ないようであればお認めいただきたく、我々は考えております。

【眞柄臨時委員】 ということからすると、「また」ではなくて「及び」と書いていただきたいのです。「また」というと、それぞれ独立したことが二つあったから300にしたということになって、「及び」だと、これとこれと二つのことが不十分だから300にしましたということになるので、表現としては、私は「及び」ではないかなと思います。ただ、その毒性評価の先生方が「また」っていうようにおっしゃったのであれば、「また」だと思います。それは後は事務局にお任せします。
 それから、暫定ADIですよね。今まで環境基準もそうですし、ほかの農薬でもそうだったと思いますが、以前の暫定のADIのときに、暫定ADIを使って出てきた保留基準なり、その環境基準なり何なりの値は、暫定というように括弧つきだったですよね。今回は登録保留基準値を作るときに暫定を外していましたよね、
 だから、その従来の環境基準などを決めていたときの暫定ADIから、水質基準値なり何なり出てきたときには、環境省ではそれは暫定だと言っていたわけですよ。それとこの今回の農薬の場合とは違うと、別物であるというのは、環境省の中できちんと話ついていますね。

【農薬環境管理室長】 はい。まず、「また」の問題ですが、これ「または」ではなくて、英語で言えばインアディションという、多分、追加してということの意味の「また」だと思います。
 ただ、表現として「並びに」という言い方もできますから、そこは井上先生とも相談させていただいて、どちらがいいかというのは検討させていただいて、事務局に委任していただければいいと思います。
 それから、昔の暫定と今回の暫定は当然違うということで、今回は新たにこういう形で、食品安全委員会が取り扱わないもの、当然、食べるものは食品安全委員会が評価する義務ございますけれども、そうでないものはやってくれないものですから、そこは別に環境省がやっていくというふうに考えております。

【眞柄臨時委員】 それでぜひお願いしたいのですが、従来、環境省で化学物質に対して、基準に類するようなものを決めていたときに、不確実係数、安全係数が1,000だったときには暫定という扱いをしていたはずですね。それで、食品安全委員会の評価で、幾つかの化学物質について1,000という安全係数か不確実係数を使ってレポートが出てきているわけです。それについて、今度は環境省の方で環境基準なり農薬の登録保留基準を決めるときに、食品安全委員会は不確実係数1,000を用いてADIを決めるときに、そのADIは暫定だという言葉を括弧で頭につけていないのですよ。それで、我々が、環境行政をやるときに、その食品安全委員会が1,000という安全係数、あるいは、不確実係数をつけて出てきたADIを基に、環境の基準値なり何なりをつくるときに、従来どおり暫定という言葉をつけた性格の基準値等にしていいのか、食品安全委員会がもう1,000と言っているのだから、それはもう暫定ではなくて、直ちに普通の基準値なり何なりにしなければならないのか、どちらなのかというところが、私はよくわからないので、もし環境省で理解をされていらっしゃるのでしたら、そのことについて御説明ください。

【農薬環境管理室長】 この2月に土壌農薬部会にかけたときに、暫定という言葉を使うことについて議論がございました。それは、例えばこのフルポキサムについても、今は芝だけの適用ですけれども、もしかすると稲の適用を突然拡大申請する可能性があります。その場合は食品安全委員会に諮って、再度ADIの検討を行うことになるのですが、そのときに当然向こうのADIはほぼ完璧なデータに基づいて再評価するわけですから、我々のADIと食品安全委員会のADIは違うのだと、そういう意味が暫定という言葉にあります。我々はリスク管理機関であってリスク評価機関ではありません。本来はリスク評価機関がやるべきなのですが、やらないからリスク管理機関である環境省がやっているので、そういう意味において暫定とつけておかないと、普通のADIとの区別ができないのではないかという議論で今回暫定をつけたという経緯がございます。
 ですから、食品安全委員会に不確実係数1,000で上げて、その結果それでADIが決まれば、それは暫定でも何でもなくて本当のADIだというように思っております。

【森田委員長】 眞柄先生に整理していただいて、大変ありがとうございました。
 とりあえず、今の議論は皆さんフォローできたかと思いますので、ほかに何か御意見ございますでしょうか。
 どうでしょうか。最初に二つの毒性試験が足りないかもしれないから300にしたという判断があったのですが、それについては二つ足りないからということを明確にした形で、井上先生と御相談していただいて、それで井上先生がそういう意味であるというように言われるのであれば、その形で300という安全係数を認めるということでよろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 それから、2番目は暫定という言葉ですが、今回初めて暫定ADIが出てきていますので、それについての説明を、今行政の方からしていただきましたけれども、それを含めて、この暫定ADIで進めるということでよろしいでしょうか。
(異議なし)

【森田委員長】 それから、先ほどの暫定ADIに対するこの委員会の立場につきましては、井上先生、それから上路先生も入られた検討会で数値が決定されてきて、それについては一応この委員会としては重みを持って受け取るけれども、その審議の過程で検討会にもう一度考え直してもらうという局面はあり得るということで、本日は大体問題は解決しているので問題ないけれども、原理的にはあり得るということで御了解いただけますでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 はい、ありがとうございました。
 それでは、最後にこの登録保留基準の数字ですが、今提案されている数字というのは、ADIが決まったときにそれを含めて計算する通常の方法に従って計算されており、基準値としては0.021mg/Lという値になっていますが、これについてもよろしいでしょうか。特に御意見はございませんか。
 それでは、これは御承認いただいたということにしたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

(異議なし)

【森田委員長】 はい、ありがとうございました。
 どうも、今日は進行がまずくて、相当時間が掛かってしまいまして遅くなりましたが、本日の議題はこれでほぼ終了でございます。

【眞柄臨時委員】 環境省の方で、登録保留基準が決まっている農薬が、これまでもあるし、今後も出てくるだろうと思いますが、そのときに暫定のADIを使って導いたものについては、印か何かを付けておいていただいた方がいいのではないかなと思うのですね。要するに、登録保留基準値は全部ppmの数字ですが、そのベースが食品安全委員会で評価したADIなのか、環境省で議論して決めた暫定ADIなのかというのが、表になってしまったら区別がつかないですよね。だから、どこかで注釈か何かを入れておいてくださった方が、国民には分かりやすいのでないかなという印象を受けるのですが、いかがでしょうか。
 不必要なら不必要でも結構ですが、ふとそんな気がしました。

【森田委員長】 とりあえず暫定に2種類あるということなのですが、これは行政の方のお考えになります。

【農薬環境管理室室長補佐】 本日御検討いただいているような登録保留基準は、農薬取締法上の検査のために必要な法的措置でございますので、法的措置の部分では色分けはありません。法的に色を分けることは不可能です。
 それで、中身が分かりやすくという御趣旨でございましたが、この非食用の検討会をつくるときの部会の資料にもございますが、例えば海外の評価を使ってもいいとか、例えば今の食品安全委員会ができる前の当時の厚生省所管の調査会が出したADIとかを、現時点でもう既に使っております。
 よって、現段階で色分けをするのも、難しいかなと思いますので、この登録保留基準値を作ったときの資料に当たっていただければ分かるというように御理解いただければよろしいかと思います。

【眞柄臨時委員】 分かりました。

【森田委員長】 では、とりあえず暫定はいつか修正されるということで、ある程度の共通項目で問題を考えていくということだと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。以上で審議を終わりたいと思いますので、今後の予定等につきまして、事務局の方からお願いします。

【農薬環境管理室室長補佐】 それぞれの議題において御了解いただきました農薬の登録保留基準につきましては、行政手続法の規定に基づきまして、今後パブリックコメントを1カ月ほど実施いたします。その結果、もし仮に何か意見が寄せられた場合につきましては、委員長に再度、農薬小委員会で審議を行うかどうかを御相談させていただき、御判断いただくことにしたいと考えております。再審議の必要がない場合につきましては、部会長の同意を得て、部会報告とさせていただきます。さらに、中央環境審議会会長の同意が得られれば、答申という手順を踏んでいきます。そして、答申後、告示として基準値を公布させていただくというスケジュールで考えております。
 以上です。

【森田委員長】 それでは、本日はこれで議題を終わりたいと思いますが、委員の先生方から何か特別に御発言ございますでしょうか。

(発言なし)

【森田委員長】 では、これで閉じさせていただきたいと思います。どうも御協力ありがとうございました。