中央環境審議会土壌農薬部会 土壌制度小委員会(第5回)議事録

日時

平成13年12月20日(木)10:00~12:00

場所

環境省第1会議室(22階)

出席委員

委員長  村岡 浩爾 臨時委員  高橋 滋
 福島 徹二
 中杉 修身
委員  桝井 成夫
 小早川光郎
臨時委員  大塚 直
 河内 哲
 櫻井 治彦
 嶌田 道夫
 鈴木 英夫
専門委員  細見 正明
 柴田 健吉
 大山 智
 菅野 利徳

欠席委員

委員  浅野 直人
 藤井 絢子
臨時委員  中野 璋代
 岸井 隆幸

委員以外の出席者

環境省 環境管理局長、水環境部長、水環境部企画課長、土壌環境課長、農薬環境管理室長、地下水・地盤環境室長、事務局
オブザーバー 国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、総務省、その他
その他 一般傍聴者

議題

(1) 今度の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案について
(2) 中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会「今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案」に関する国民の皆様からの意見募集について
(3) その他

配布資料

資料5-1 中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会委員名簿
資料5-2 中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会(第4回)議事要旨
資料5-3 今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案
資料5-4 今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案に係る説明資料
資料5-5 中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会「今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案」に関する国民の皆様からの意見募集について(お知らせ)

議事

【事務局】 ただいまから中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会の第5回を開催する。
 本日は、浅野委員、藤井委員、中野委員、及び岸井委員から事前に御欠席との御連絡をいただいている。委員総数19名中15名の委員の御出席で、定足数を満たしている。
 まず、配布資料の確認をさせていただく。
 (配布資料の確認がなされた)
 それでは、小委員長に議事進行の方をお願いする。

【小委員長】 それでは、議事次第に沿い議事を進める。今日の議題は今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案についてである。
 それでは資料5-3、5-4について、事務局から御説明いただきたい。

【事務局】 (資料5-3、資料5-4に基づいて説明)

【小委員長】 主として前回議論いただいた問題点についての内容で、資料5-4に沿って説明いただいたが、この資料5-4の内容を踏まえた上で、資料5-3の取りまとめ案について、議論いただきたい。その前に、事務局に確認しておきたいが、パブコメに出すというのは、当然今日議論いただいた結果をもとにして資料を提示するわけであるが、それはこの資料5-3だけか。

【事務局】 資料5-3に、資料5-4と前回の資料4-4をつけるということを考えている。

【小委員長】 そういう認識で議論していただきたい。
 それでは資料5-3の目次案に沿って、これから議論いただくが、最初の背景については、前回までも特段、議論がなかったように思う。もし意見があればいただきたいが、とりあえずこれを飛ばして、対象とする土壌汚染のところから意見をいただきたいと思うがいかがか。この対象とする土壌汚染というのは自然的原因により有害物質が含まれている土壌の存在する土地における人の活動に伴う汚染についてというあたりが、前回、議論の対象になり、それに対して先程の説明があったということである。
 いろいろ、後で思いつかれることもあるかと思うが、とりあえず次に進ませていただく。土壌汚染の把握、土壌汚染の調査の実施主体についての議論はこれまでいただいているし、調査の契機というのをどう考えるかということについても議論いただいているが、そのあたりでいかがか。

【柴田専門委員】 先般もいろいろ話をしているが、特に零細な場合は、事業をやめることが前提になるので、資産がなくなってしまった段階で、契機という形になってくると思う。つまり、事業をあくまでも継承している、またその土地を売らないでいればいいが、売るという一番、お金がない段階になり、実際に調査する費用がないとなると、結局、実行できなくなるのではないかと思う。その辺のところをどう考えるかということが一つ。その契機をもう少し違う形でやれるのか、資産がないときはどうするのかという話や調査の段階などについても少し考えていただきたい。保険か何かを設けるとか。特定事業場であれば、こういうことをやるときには、例えば、保険があって事前に掛けておけば対応できるなど、何かうまくやっていただかないと実行が伴わなくなるのではないか。

【小委員長】 関連した意見、どうぞ。

【菅野専門委員】 支援策のところとも関連するかもしれないが、今、柴田委員が言われた点は、例えば、廃業時に必要となる汚染対策の費用のための準備金積立てを、事業実施期間中に非課税で積めるとか、あるいは支援策として現在の案では、汚染原因者が見つからない場合の土地所有者にだけ基金を活用した助成の仕組みが使えるということになっているが、そういうところをもう少し拡充して、汚染対策の義務を過去に遡及して課すことがあり得るというところとの絡みで、何らかの支援策を考えていただかないといけない。やはり、廃業した中小企業者に対する支援策としては融資ではほとんど利用できず、実効が担保されないという事態が生じるのではないか。
 それと、前回も申し上げたが、中小企業の場合を申し上げると、多分ほとんどの事業場で、居住用の施設と工場が一緒になっているという土地利用形態だと思う。実際、事業をやめた場合に、同じ敷地内に住み続けるケースがかなりの比率であるのではないかと思う。土地税制や相続税などの仕組みでも、このような事業用宅地について、特別扱いをしている。原則は事業をやめたときに調査をしろということであるが、このように中小企業で住居と工場が一体となっているような場合には事業をやめても、例えば上物とか土地を掘り返すなどの利用の変更がない場合は、廃業する以前も、例えば労安法などによって管理がされており、一般の人が立ち入るという状況ではないということで調査をしなくても良いという整理がされているわけであるから、調査を行わなくても良いというようにしていただけると、中小企業者への過重な負担はかなり軽減されると思う。今、柴田委員が言われた中小企業者の不安も随分解消される。事業をやめても家屋を壊すとか、土地を掘り起こすとか、譲渡するとかそういうことをしないで従前どおり住んでいる限りは、調査義務を課さなくてもよしと整理もできるのではないかという気がするので、そこを是非検討いただきたい。

【小委員長】 柴田委員からは中小企業のような場合に、事業を変更するなどといった契機を捉えて調査する段階で、資金が乏しいときにはどうするか、また、菅野委員の居住用の施設と工場が一緒になっている場合で、工場をやめたときについてどうなるのか、事務局の方で、説明の延長とで述べていただくようなことはあるか。

【土壌環境課長】 今、2つの御指摘があったと思う。最初の柴田委員、菅野委員から御指摘のあった支援について、私どももこれは幾つかの観点から検討しているが、1つはここの最初の調査というのは事柄の性格として、まず汚染があるかないかというのをきちんと把握するということであり、最終的に、汚染の範囲を確定して、例えば汚染の土壌量なり、それがさらに地下水まで達しているか確認するものでない。私どもとしてはなるべく最初の調査はコスト的にも安くできるような形で、それからなおかつ、そこのところで次のステップに行くか行かないかを判定するものということに、最小限ということにしたいと思っている。
 もう一つは、いろいろな場合の利用制度である。融資、利子補給などやっているし、それに加えて税制も、今、最後の追い込みをやっているところである。そこの辺りがまず1つ、利用できるような形で進められないかと考えている。それから今、菅野委員からも準備金の話などが出たが、その辺も引き続き、今後、検討する素材とさせていただければと思っている。
 それから後段の方の今回の調査の対象として、例えば居住の場所と、事業の場所が同じ場合どうするかということがあるが、私どもが先程紹介したのは、一応典型的な例ということで、とりあえず考えられる例でさせていただいたが、今御指摘のそういう同じところに引き続き住むという場合、私どもとしても、引き続き同じような形で施設などを管理するということであるので、最終的にそれが対象になるかどうか、引き続き検討したいと思うが、リスクの管理から見て新たにリスクが発生するということでないので、その辺は少し考えていきたいと思っている。

【小委員長】 初めの柴田委員の支援措置と関係するようなことについては、また後ほど支援措置のところで、御議論いただきたい。

【柴田専門委員】 その件と同時に保険みたいなものをやるように、この中でやっていただきたいが、多分保険自体がないのだと思う。これに適用する保険自体ないとすれば、そういうものも作って整理していただきたい。例えば保険を掛けておけば、リスクが違ってくるという話もあると思うので、その辺のところが1つあるということと、それから本音の話をすると、実際に調査して現実に汚れていても飲まないところは手をつけないという話だったら、最初から飲まないとわかっていたら調査する必要はないのではないかという話もあるわけである。調査の契機はわかるが、汚れているのを確認しても手をつけないということがわかっているところだったら、それは最初から調査する必要はないのではないか、事前にわかっているわけだから、調査しようがしまいがそういうことだと考えているが、それはどうなのか。我々の業界では特にその話が出ている。

【小委員長】 保険制度についてはまた後で考えることにしたい。飲んでもいないのにそこを調査する必要があるのか、これについては既に幾らか議論しているが、もう一回それについて中杉委員。

【中杉臨時委員】 ここの議論の中で抜けている部分が1つある。これは前に、一度別な制度で考えましょうという話があったと思うが、土を運び出すという話が1つある。それから重要なのは小さな土地であればあるほど、買う相手が一般の人、個人である場合も出てくるわけで、そういうときに、その土地の安全性をどう担保するか、これは民民の取引の中でやりなさいというわけにはいかない。そういう意味で、そこら辺が抜けるような制度にすべきではない。確かに、調査をどうするかという話は非常に難しい、それもお金がかかる話で、それをどうするかという話があると思うが、この制度の中でそこの部分を抜くのであれば別なもので担保しておかないといけない。そこを書き込むと、すごく細かくいろいろ書き込む話になるが、菅野委員のお話もケースバイケースで言えば幾らでも出てくるだろうと思う。
 それからもう一つ、柴田委員の言われた、一定の機会を捉えてというのは、このときしか調査ができないと必ずしも言っているわけではないと解釈すべきだと思っている。最低限ここまで来たらやりなさいという話だろう。もちろん、一旦調査して、その後に何か汚してしまうようなことが起こるとそれは問題だが、きちんと1回調査して、管理していれば、再度、調査する必要はないということもあり得るわけである。つまり、これは一定の機会を捉えて次の場合に行うことが適当であるということで、そのときにしかやってはいけないというわけではない。むしろ、資力のあるうちにやっていただくのが望ましい。

【柴田専門委員】 今の話だと、実際に今工場をやっているところもその段階で調査しておくことが、健康管理という話であれば、一番中心になるのだろうと思う。やはり終わるときというのは今の話と違って、その手から離れるという意味で調査せよということだと思うが、現実には汚染しているところがあるならば、1回は全部何も関係なく調査するという話だと負担があるという話だと思う。私が一つ言いたかったのは、調査しても飲用として使っていなければ、最初からその状態はわかっているわけだから調査をしなくても良いのではないかということである。

【中杉臨時委員】 これは、例えば、クリーニング屋さんの場合はVOCが中心になるので、そういうお話になるのかもしれないが、やはりそうではない。いろんな場合がある。

【小委員長】 中杉委員の考えでいくと、最終的にはこの取りまとめ案を、どこをどう修正すればいいかという話になると思う。とすると、どのあたりの書き方が不明瞭なのか。

【中杉臨時委員】 これは大筋のことを書いてあるので、個々に細かいケースケースを入れてしまうと、それこそ膨大な報告になって、それをやり始めると大変だろうと思うので、このままで行かざるを得ないと思う。

【小委員長】 今の問題点について、何か説明が必要か。伺ったところによれば、説明資料も同時にパブコメにかかるということであるが。よろしいか。

【中杉臨時委員】 ただ、それも個別のケースがいろいろ出てくるし、今のところ十分な議論はまだできていない。それは次の、実際に細かい制度を決める段階でいろいろ議論していく話ではないかと思う。

【小委員長】 何か今までの意見の中で、関連する意見はあるか。

【大塚臨時委員】 廃止時に基本的に調査をするというのは、廃止時には上物がなくなっている場合が多いということ、また、契約の場合に金銭の授受があるので、そこでそのお金を使って調査をするということを基本的に考えて、廃止時を契機にしているということである。それが原則だと私も考えている。だから、3ページの(1)の[2]にあるような場合ももちろんあるわけで、廃止時だけではない。基本的に廃止時としているのはそういう理由だろうと思っている。
 それから、先程から議論が出ているように、地下水を飲まないのであれば手をつけなくていいかというようなことについては、中杉委員が言われたように直接摂取の問題というのは別にあるということや、あるいは都会の真ん中でも災害用の井戸というのはあちこちにあるため、いざ災害が起きたときに飲むということがある。通常飲んでいないからといって放っておいていいということではないと思う。
 それから、今回のこの法律の制定の1つの趣旨として、円滑な土地取引の基礎を作るということがあって、汚染されている土地、汚染されていない土地がいろいろある場合に、それを地下水を飲んでいるかどうかによって区別して扱うということになると、結局、ババをつかまされてしまう買い主が出てくるということになるので、そういう区別はできるだけ避けるのが基本的な考え方だと考えている。

【小委員長】 それでは、いろいろ後から意見をいただくことも可能だが、次に進みたい。

【小早川委員】 調査のことで、単なる表現の問題だと思うが、説明資料の2ページに「占有者に土地の掘削等に関する権限が付与されている場合もあり得、土地所有者がこのような権原を要しない場合においては」とあるが、多分この真意は、占有者に土地の掘削等に関する権限が付与されていて、土地所有者はそのような権限を有しない場合もあり得、その場合には、ということではないかと思う。それと、権原というのは「原」の字と「限」の字と混ざっているが、この辺は「限」の方がふさわしいのではないか。

【大塚臨時委員】 私も実はそこが少し気になっていて、土地所有者は基本的には掘削の権限はあると思うので、土地所有者がこのような権限を有しない場合というのは書かなくても良いのではないか。「占有者に土地の掘削等に関する権限が付与されている場合もあり得、このような場合においては」とすれば良いのではないか。事務局はどうお考えなのか。

【小早川委員】 もしそうだとすると、私の意見とは違う。どちらでも良いが慎重にお考えいただきたい。

【小委員長】 どう修文するか。それほど深刻なものではないと思うが。

【小委員長】 それではこのあたりの修文をもう少しわかるように誤解のないようにさせていただく。

【大山専門委員】 汚染されているかどうかがわからない段階で調査するわけであるから、土地所有者等がやるということはやむを得ないと思うが、確か中間取りまとめの段階では、土地所有者等が調査をして、汚染があった場合、その調査費用を汚染原因者に求償すべきだというような考え方があったと思う。それが、この取りまとめの段階では欠けているが、やはり汚染原因者にそういう費用を求償する道は残すべきではないか。

【小委員長】 それは私もそのように思う。
 それでは、次に進みたい。土壌汚染による環境リスクの管理について、これはいかがか。

【大塚臨時委員】 今の大山委員の御指摘について、事務局はそれで良いか。

【水環境部長】 中間取りまとめの議論のときに検討すべきであるというお話があった。それで、ここの求償の部分であるが、求償というのは誰かが誰かの義務を代わった場合に求償ということになると思う。それで調査の部分は、そうすると土地所有者が誰かに代わってやっている構造になっているかというと、誰かに代わってやっているという構造になっていないので、その土地所有者が汚染があるのかないのかわからない状態で調査をする。調査を行ってはじめてあるかないかがわかる構造で、その前の段階というのはそういう意味では誰かに代わってやっているという構造ではないので、基本的に求償というような形のものにはならないのではないか。ただ、公法上の世界で申し上げたが、民法上の取引の過程において、あなたから買った土地に、自分が調べてみたら汚染があったから費用を出してくださいというような構造があるかどうかは、それは民事上の整理だと思う。今回は、公法上の制度としての健康リスクの調査という形で考えているので、そういう意味では、ここの調査の部分は誰かに代わってやっているという構造にない。

【小委員長】 少し私も誤解してしまったかもしれないが、大山委員、それでよろしいか。

【大山専門委員】 中間取りまとめの段階でそういう記述があって、それがこういう最終的な段階で抜けており、私としては、本来そうなるべきではないかということから指摘をしたということである。

【小早川委員】 基本的には、これは汚染があるかないかを調べるもので、あることを前提にして汚染者の費用負担を考えるというのは逆だと思うが、ただ、ケースによっては先程話があったが、何か少し汚染があることがわかってしまって、その先を調べるのに莫大な費用がかかるというようなケースがもしあるとすると、これはその所有者としては大変運の悪い話である。そういう場合には先程の水環境部長のお話では民民の、民法の問題かもしれないが、標準的なものは調査義務主体がいるとして、それ以上のものについて汚染者が責任を負うべきケースというのがあり得るのではないか。

【事務局】 先程の部長の説明に1つ補足させていただきたい。中間取りまとめとの関係についてであるが、中間取りまとめの中で土壌汚染の調査として位置づけていたのは、まず汚染を発見するための概況調査というのが1段階目の調査としてある。2段階目の調査として、汚染の範囲を確定するための詳細調査というのを含めて、中間取りまとめでは調査として位置づけていた。今回、審議いただいている制度の中では、まず一定の契機を捉えて義務づけられる調査というのは、汚染を発見するための概況調査ということで整理したい。汚染が発見された場合の、さらにその汚染の範囲を確定するための調査というのはその先の措置の方で、一体として扱うのが適当ではないかと考えている。そういう意味では最初の段階の汚染の発見のための調査は、汚染のあるなしにかかわらず、調査をすることになるので、土地所有者に対して調査を行ってもらう。そこから先の汚染の範囲を確定するための調査というのは、措置の一環として措置と同じような整理でやっていただくという考えでいる。

【小委員長】 よろしいか。他に調査関係であれば、後ほどお聞きしたい。
 それでは、土壌汚染による環境リスクの管理について。この部分で何か意見があればお願いしたい。

【菅野専門委員】 汚染がある場合で、リスク低減措置ということになるが、その調査をした時点の土地利用形態でいけば、低減措置として土壌を被覆をすればいいということで手当てをした。ただ、利用形態というのは動態的変化をするから、ある時点における土地利用形態としてはそれでよかったが、そのうち地主が宅地として譲渡したいので地下まで掘り返して浄化をしてくれという話が生じる懸念もある。この点については、汚染原因者が負うリスク低減措置義務は、1回目の低減措置だけで、その後の土地取引や土地利用形態の変更に伴う追加的な浄化等のコストについては、土地所有者と取引の相手方との、いわゆる経済上の価格評価などで考えていくという整理になると理解して良いのか。参考資料の「汚染原因者をリスク低減措置の義務者とする場合の問題」というところで、実施する必要のある行為のところに、括弧してゴシックで浄化と書いてあるので、結局汚染原因者は最後は浄化まで求めるというケースもあり得るということなのか。必ずしも一義的にそうではないと理解して良いのかどうか。

【小委員長】 これは一旦そのリスク低減措置を講じて、その後でまた重ねてリスク低減措置、別の形態になるかもしれないが、そういうことがあった場合にそういうことがあり得るのかどうか。そして、そのあり得た場合に、それをどう考えるかという問題だと思うが、これに関して、事務局で整理されてきた考え方はどうなっているのか。

【事務局】 これまでの整理は、この本体の方にも入っているように、今、リスク低減措置というのは、いろいろな形で選択し得るという整理をしており、最終的にどこまで措置をするかという、措置の中身の選択ということで考えているので、幅広の選択の中からやっていただいて、リスクの管理上問題ないというのが実施の方の整理である。一方で、どこまで負担が必要になるかについては、これは法的にはここで明記できるかどうかは別として、基本的に、あくまでも健康影響の防止に必要な合理的な範囲というのがあるのではないかと考えている。その範囲でもって最終的には決まってくるのではないかと思っていて、それは必ずしも浄化ということを考えているわけではない。

【柴田専門委員】 関連して意見を申し上げる。1回低減措置をとったら汚染原因者は一切、責任がないのか、汚染原因者というのはどこで責任が切れるかということについての具体的な話がない。今の話でも、住宅に変えたとしても私が汚したということはみんな知っている。そしてこの新しく買った人は自分のところに請求が来る。覆土した、その次は内容を変える。そのときはもう完全に汚染原因者としての第一責任がなくなるのか。どこまでいくのかというのが、菅野委員が言われているのも同じで、浄化までやらなかったら、ずっとその責任があるとしたらどこまで追求されるか。こういう形で議論していること自体がまだ理解できないので、その辺のところは1回低減措置をやったらこれで終わりだと書き込みをしていただかないと、この制度自体は死ぬまでやっていかなければならないという話だし、個人の場合は相続があるので、ここはきちんと整理してほしい。

【高橋臨時委員】 その話は基本的には、一旦措置がされた場合のリスク管理措置はその段階でその現状について終わったと思う。それはそういう制度の仕切りになるのではないかと思う。例えば工場地が住宅地に変わる場合については、これは譲渡の話になるので、その段階では措置が終わったことを前提にして譲渡行為が行われるわけだから、それは住宅地に変えたいというその人がそれを前提にしてきちんと措置を取ることになると思う。そこはそういう仕切りを制度の内在的な話として何も取り立てて明らかにしなくても整理できるのではないかと私自身は理解していたが、そういうことでよいのか。

【中杉臨時委員】 法律的に、多分そういう整理で良いと思う。そういうことになると土地所有者が浄化措置を選択するときに、将来の土地の扱い方の計画を見ながら選択をしていくという、それを求められることになると思う。そういう整理をしておかないと、所有者が売却しようとするときに残った部分を全部やらなければいけないという話になりかねないので、それは土地所有者がその浄化措置をある程度選択できる、一応土地所有者が主体でやるわけだから、そういう形に制度を仕組んでいかないと、後ですごく大きなトラブルが出てくる。それは後で民民で任されてしまうというのか、そこのところ少し議論があるかと思うが。

【小早川委員】 高橋委員、中杉委員が言われたことと、多分同じだと思うが、最初にリスク管理地になって、何らかの措置をとらないといけない場合に、その措置のレベルは、差し当たりその時点で公共に危険を生じているかどうか、人に危害を生ずる状態かどうか、そういうことになるわけである。それはその場で、基本的には土地所有者の責任で対処しなければいけない。しかし、それは、単に覆土だけでも良い場合もあるし、極端には立入禁止の表示だけで良い場合もある。それでもって、その危険が一応コントロールできれば、そこで、公法的には終わるわけである。それは、本当に危険がマネージできたかどうかは、行政がきちんと責任を持って見なければいけないが、その後は、むしろ民民の話になるわけで、従来からの話だと、浄化が完全に終わったらその帳簿からも抹消されるという話であるが、そうではなく管理が続いている間は帳簿には載っていて、データは開示されることになるから、その管理が続いている土地ですねというのは抵当権付きと同じで、土地の値段にはね返ってくる。そこで利害調整はされる。それでも買い主は取引しましょうという話になればそうなるし、そうでなければそうでないということだろうと思うが、どうなのか。

【柴田専門委員】 今の話だと、もうその段階で汚染原因者に遡及をしないと考えて良いわけか。どこかに書くことは難しいのか。それがないと、多分どこかでもめると思う。民民というと声が大きい人と小さい人だったら、それはいつになっても出てくる話だから、やはりこれはやるのであればそういうこともきちんとして、資料でも何でも良いから書いておかないと、必ずその事態が出てきたときに勝てるか勝てないかという話になったときに一番困ることになる。

【中杉臨時委員】 小早川委員の意見で、私は少し違う考えであるが、土地所有者はその浄化措置をどう選択するかというところがまだ明確でないので、今の時点ではこういう措置であるといったときに、あとは民民の話だと。土地所有者と汚染原因者が違う場合は、そこで汚染原因者に請求しておかないと後で請求できない。それは制度としてはそれで良いが、措置をどこまでとるかという話は、きっちり議論しておかないとおかしくなるのではないか。そうすると、それこそ、将来この土地はどうしようと考えているときに、例えば売ろうとしていたときに当然覆土では終わらないわけである。掘削という話になると、そのときにどう考えればいいのかということである。

【小早川委員】 民法の話になると、私は、専門外だが、汚染原因者とその土地所有者というか、今持っていてこれから売ろうという人が違っているというのは、その間で何らかの取引があったのが普通で、そこは所有権が移転しているか何か。そのときに、この土地は本当はすごく汚れているのに、それを隠して売り抜けられてしまったと。一応管理地にしてこれで良いと思っていたが、次に転売するときにはすごく費用をかけないと売れないことが、その場でわかれば、それは最初の取引の瑕疵担保責任の問題になるのではないかと思うが、大塚委員いかがか。

【大塚臨時委員】 そのとおりである。

【柴田専門委員】 時効がないのか。

【大塚臨時委員】 それは民民の間では時効はある。

【柴田専門委員】 永久に責任があることになるのは納得がいかない。

【大塚臨時委員】 それは民法に規定がある。

【柴田専門委員】 その辺のところはきちんとないと、この制度自体で汚染原因者が誰かに売ったと、そのときは知らなくて売ったが、そこに出てきた場合の話が1つある。それについて、何回も遡及されるのであればやってられない。その辺のところをきちんと議論していただいて、それはどこかで切れるなら切れるとしていただかないといけないのではないか。

【中杉臨時委員】 先程、小早川委員に対する意見を言ったので、柴田委員に対する意見を申し上げるのを忘れていたが、民法上のことを公法上で何か制限して免罪をしておくことが、実際許されるのかどうかというのは、少しおかしな話ではないか。

【水環境部長】 小早川委員、大塚委員からも話があったが、今回の制度は健康影響の防止ということで考えているので、健康影響の防止のためのリスクの低減措置として必要な措置が講じられたということになったものと、その時点で既にそこの健康影響の防止を図られたわけであるので、後の措置が必要になれば、その後に措置を行う人が費用負担する。その際に、さらに遡及という言葉が良いのか、原因者に請求できるのかどうかというのは、先程議論もあったように、民事上の話ではないかと考えている。

【小委員長】 部長が言われたような整理でよいか。了解いただけるか。

【鈴木臨時委員】 少し切り口を変えさせていただくが、このペーパーは、実施主体と負担の話が、まだ十分整理されていないのではないか。それで、特に全体通じて言えることは、土地所有者が最終的には責任を負うべきだということが骨子ではないかと思うが、例えば先程意見があったように、この法律もなくて科学的知見もなかったような時代の汚染について、すべてその土地所有者に責任を負わせるようなことになる点については、もう少し議論していただきたい。このペーパーでは、公害防止負担法あるいは水質汚濁防止法でも過去の汚染行為を対象としていると説明資料に書いてあるが、同時にそれらの法律の中にはそういうものに対する負担の軽減ということも書かれている。
 例えばこういうことがあり得ると思う。幾つかケースがあるが、工場が隣接をしていて、隣のA工場の汚染がBという会社に入ってきたとする。土地所有者はBという会社だという場合には、Bがやらざるを得ないとこういうことになるが、当然汚染原因者がそのAという会社だから、Aという会社に請求をすることになる。ところが、Aという会社は、これは法施行以前、要するに科学的知見がなかった時代にやった話だから、責任ないと言う。そうすると、民事で争うとお金は取れないと思う。要するに、責任はないと言われたらそれでおしまいとか、いろいろなケースがあって、そういう意味でやはり国がどこまで負担について支援をするかということについては、負担の表も含めてもう少し検討する必要があるのではないか。例えばあの表の中でも土地所有者と汚染原因者が同じ場合には土地所有者、当然のことながらそういうことになるが、資力について配慮というのは下の方にだけ書いてあるが、土地所有者と汚染原因者も同じで、しかも資力がないという場合もあり得るわけで、そういうことも含めてどのぐらい国が支援をするのかを、もう少し検討すべきではないか。
 基金で補填をするということで、基金数億円という、先程話されたが、一体、数億円でどのくらいのことができるのか。どういうイメージをしておられるのか。国の財政が非常に厳しいことはわかるが、そちらが先に来て、国が支援をすべきところは支援するということが後回しになるというのはまずいのではないか。環境省の予算規模からいっても、この土壌という大変な問題に数億円というのは少な過ぎるのではないかという気もするし、その辺も含めて、国の支援のあり方というのをもう少し細かく検討していただきたい。

【小委員長】 鈴木委員は、これまでもいろいろ詰めるべき課題があるのではないかという意見だったと思うが、今のお話も遡及の及ぶ範囲にかかわる問題かと思う。さらにそれを支援する場合の基金の問題。現実にはやはり詰めないといけない課題もあることは事実だと私も認識している。そういったことでそれに対する反論もあると思うが、1つはパブリックコメントに供するということで、今日はある程度のまとめをいただくわけであるが、一本の意見に絞って、今日の間に議論し終わって出すということは事実上不可能だと思うので、皆さんの同意が得られれば、まだ今後課題があるという点については、この資料の5-3の取りまとめの中でこういう意見があるということを付記した上で、とりあえずは国民の皆さんの意見を聞くということも可能だと思うので、そういう形も含めて議論いただくことにしたい。何もかもここで解決するのは不可能だと思うので、それでいかがか。

【嶌田臨時委員】 今の委員長の提案で結構だと思う。ただ、今まで議論を聞いていて少し気にかかるのは、この制度は何のために作るかという基本のところであるが、国民の健康を守る、また、守らざるを得ないという観点から、この制度を作ろうとするものであって、そのために、ここにも書いているように、最低限の費用で国民の健康を守るということを今やろうとしているわけである。そこがまず一番大事で、言うならば支援措置がなければそれはできないという話ではないだろうと思う。一番基本のところは、まず健康影響を防止するために最低限何をしなければならないかということであって、先程の柴田委員の言われたことについても、まず最低限の措置をした後、次の段階というのはまさしく小早川委員の言われたように抵当権付土地みたいな話になるのだろうと思う。その辺を少しこの制度を何のために作るのかという議論を頭に置かないと、混同するのではないか。

【菅野専門委員】 嶌田委員の言われたのは基本的に私もベースは同じである。ただ最低限のコストでやるということであるが、それすら結構お金がかかる。だから、支援策のところもやはり健康被害を防ぐためということで、早急にやる必要があるという枠組みの中で、それが円滑に行いうるような支援策ということは鈴木委員が言われたように、しっかり考えていく必要があるのではないかと思う。また、先程委員長が言われたように、パブリックコメントで広く意見を聞いて、議論するということでやむを得ないと思うが、この原案だと今の土地利用形態で必要なリスク低減措置を講じて、その後に土地利用を変えるときの追加的対策の費用負担が、汚染原因者のところまではこの制度では及ばないというところが不明確であるので、そこは原案としては第1回目のリスク低減措置で終わりで、後は民法の世界として整理をしたということが、読んだ人がわかるようにクリアーに整理をしてパブリックコメントに付していただいた方がよいのではないか。

【小委員長】 その辺をクリアにして、本文に書き込むか、あるいは説明資料に付記するか、それは可能か事務的にはよろしいか。皆さんの同意があれば。是非その点については説明資料になるかと思うが、書かせていただくことにしたい。

【福島臨時委員】 今のようなその後の土地利用その他ということで、どこまで行くのかという話があるが、実務的に考えると、その後の話であるが、この基準が決まった。対象項目の物質が決まった、いずれ、その新しい科学的知見で、例えば今決めた基準がこれはあまかったので半分にするというような改正が行われる、もしくは新たな物質が土壌汚染の項目として追加されるといった場合に、既に従前の対策できれいになったはずであるが、基準は強化されたことによって、きれいになったはずのところが今度は汚染があるということになる。項目についても当時は対象とされなかったが、仮に、新しく項目になって調べてみたところ、それは超えていた。というような場合にも、前にその汚した者がもう一回浄化するのかというような、自治体でこの法律を実務で扱う場合に、一体どういう形になるのか心配である。

【小委員長】 事務局いかがか。

【農薬環境管理室長】 後から基準項目が追加されたケースということであるが、ここで想定している、例えば舗装や覆土など、有機系の溶媒の中身を飛ばすと、こういう技術はいずれにしてもかなり汎用的で、重金属であれば覆土すればあらゆる項目にも通じるので、今、福島委員が懸念されたような点はあまり心配しなくても良いのではないか。一度講ずれば、それはかなり汎用的な対策になっていると思う。

【福島臨時委員】 当面の措置としてはそれで十分であるが、全部浄化して台帳から抹消されてきれいになったその後に、項目が追加されたとかというような場合は、当面の措置ではなくて、どうなるのか。

【高橋臨時委員】 全体の話で、先程鈴木委員が言われたことに関連して、パブコメに出すのにいろいろな意見の違いを出すということも、当然意見が一致しなければあり得ることだと思うが、ただ嶌田委員も言われたように、制度の基本がやはり健康リスクをなくすこと。要するに、現実化させないのが基本のところは、やはり基本的な一致はあるのではないかと思う、そこのところまで余り違うような形で、制度の全体が崩れるようなものは、今までの議論の筋からいって好ましくないのではないかというのが第一点である。
 それを踏まえて、個々のいろいろな意見の違いについて可能な限り一致点を見出すということも非常に重要なことで、ある意味では先程からいろいろ出ているリスク低減措置がとられた後に、用途変更などで措置をする場合について原因者に行くのかというような話について、これは先程も申し上げたし、小早川委員、大塚委員も言われたが、法制度の中身としては、原因者には新たに行かないということは、既に意見が一致していると思うので、そこは本文にきちんと書いて、その疑念を解消してもいいのではないか。その程度で一致ができれば、そういう形でパブコメにきちんと出すことは十分あり得るのではないかと思う。そういった意味で健康影響の防止に必要なリスク低減措置がされた場合については、さらに用途変更などで新たな措置を行う場合については、当該措置を行う者が費用負担するなどの表現をつけ加えれば、それはそれで良いのではないかというのが私の意見である。

【小委員長】 私もこの制度の基本は嶌田委員が言われたとおりで、それに対する御理解は基本的には皆さんから得られていると考える。今、高橋委員が言われたように、次のステップで考えなければいけない課題は鈴木委員の御意見のようなケースもあるわけで、そういった点についてパブリックコメントの段階で付記することが必要だということについては付記しても良いのではないかと思うし、また説明資料の中でそれが説明されるということでも良いし、高橋委員が言われたように、その本文の中で、ここを訂正すればわかることだという御意見であればそれでも良いと思う。ただ、時間もないので、特に今、高橋委員が言われたような、本文でここを変えれば良いところがあれば、具体的に、この部分で追加文を入れたらどうか、あるいは訂正したらどうかということをある程度言っていただきたい。それから、多分意見の内容は理解できても修文の段階で、結果的には私と事務局との間で行うことになり、間違いのない範囲内でおさめたいので、そういう意見があれば言っていただいた方がより具体的に話が進むのではないかと思う。

【小早川委員】 具体的な、パブリックコメント段階での修文の問題であるが、この本文ではなくて説明資料のリスク低減措置の実施主体と費用負担の考え方の表の正しくつけ加えた備考のところである。先程から触れる話であるが、一番下の欄にだけ基金が登場するが、これは多分そうではないのではないか。そこは正確に書いていただいた方がパブコメ段階で混乱生じないと思うが。

【土壌環境課長】 支援措置のところの関係であるが、この表で申し上げると、実際に起きている案件からして、例えばマンション、あるいは分譲跡地のところでまだ調査が行われていなくて、販売されたような案件の場合、また、なおかついろいろケースを想定すると、対策はなかなか難しいということになる。この最後の下の2つの欄のところ、ここが私どもとしては、やはりいろいろな実態から見て支援すべきものではないかと思い、この2つに整理した。

【小早川委員】 いろいろな立場の方がそれで良いのであれば私は結構である。

【鈴木臨時委員】 先程、御指摘があったが、私は、もちろん、人の健康のためにやるべきことはやるというのを大前提にしている。ただ、そのやり方をもっと効率的、合理的にできないのかということで御意見申し上げている。要するに、その人の健康の被害という大目的を無視して申し上げているわけではないので、その点だけは是非誤解のないようにお願い申し上げる。それで、今のと関連して、例えば下の2つだけということであるが、土地所有者と汚染原因者が同じである場合でも無資力のときは、どうされるのか。人の健康に明日被害が生じるかもしれないが、所有者、汚染原因者ともに全く無資力、そういうときにどうされるのかが、まだ詰まっていないのではないか。国の支援を使うのはそういう場合に使うとかもあり得るのではないか。

【小委員長】 無資力といっても、どういう対象になるかわからないが、そのことについては説明資料のどこかに書いていたように思うが、事務局の方で何か、今のお答えになるような整理の内容。

【水環境部長】 鈴木委員のお話であるが、基本的には公法上の義務などは、この表には、書いてはないが、基本的には命令権者がかけた行政代執行というような手続で担保されることにはなる。そういう意味での書き方はしていないが、義務がかかって緊急の健康被害を防止する必要があるという要件、行政代執行の要件に当たれば行政代執行法で対応するという構造である。

【小委員長】 それでは話を続けていきたいが、土壌汚染による環境リスクの管理ついて、いろいろ意見をいただいているが、時間もないので次に進む。
 土壌汚染によるリスク管理が必要な土地への台帳への登録、公告について、今まで幾つか意見をいただいているが、このまとめ方でよろしいか。
 それでは、意見があればまた伺うが、次の支援措置等について、改めてここで議論いただくことがあればお願いしたい。

【菅野専門委員】 先程、鈴木委員からも指摘があったが、原案で示されている支援策の中で基金しか使えそうなものは、何もない感じである。それで、基金の規模だが、今日は予算の内示の日ということであるが、先程の話だと国から基金への出資は年間で数億円、来年度はどれぐらいになっているのかはわからないが、それで例えば浄化というような措置をどの程度支援できるのか。試算により随分幅があるようであるが、400平米の土地の浄化をやると、数千万円から場合によると数億円というようなコストがかかると言われているときに、数億円の国の予算と、民間からどれぐらい集められるのかわからないが、その程度の支援策で本当にこの制度が円滑にワークすると考えられるのかどうか、私は懐疑的に思う。枠組みは作っても先程鈴木委員が言われたように汚染原因者にも土地所有者にも資力がないというケースも結構あり得るわけだから、そこを関係者の方はどう考えておられるのか、お話を伺いたい。

【土壌環境課長】 基金を含めての支援措置の話であるが、この辺の全体の中でどの程度こういった案件が出てくるか、こういういろいろな見通しも含めて、私どもこれまでのいろいろな案件との、現場の案件もいろいろ解析させていただいているし、その中でそれぞれ、どういう方が土地を所有していて、どういう方々がもともと汚染原因者かと、そういう解析をやらさせていただいている。その中で、こういう案件が生じると、例えばマンション、住宅地で過去の調査がされていないもので、こういうことが起きたという案件については確かになかなか対策が難しいようである。そういう案件は、各地でそんなに多く出ているわけではない。やはり、最も多いのが土地所有者と汚染原因者が一緒で、なおかつそれはそれぞれ対策をきちんとやることができるというのが、圧倒的に多い。そういう中でこういったことが起きてくるわけで、私どもそれなりにそういう全体の想定の中で考えさせていただいていて、また、予算の関係があるので、そこを具体的な数字というのはあるが、昨年度において、先程の数億円というような話である。あと、これは私どもも、数年間というか、ある一定の期間、基金というのはやっていきたいと思っているので、その中でそういう案件が仮に多くなるのか、それとも思ったよりも少ないのかとか、そういうのを見極めながらやっていくことではないか。

【小委員長】 この基金については、現在、事務局としてもまだ検討中である。しかしながら、この制度、適正に運用、展開していくためにはどうしても資金問題があるということで皆さんから意見をいただいているところである。つまり、この問題について今、基金の予算の議論をしても始まらないから、私の案としては、そういう重要な意見がこの場であるということを踏まえ、このまとめ案で支援措置の一番最後に、例えば負担能力のない事業者に対しても支援措置が必要である。さらには基金の額によって、それがどの程度実効性のあるものか検討していく必要があるという意見があったという文言を加えさせていただいて、ひとまずその基金にかかわるそのいろいろな課題を、この段階ではそういう形でおさめさせていただきたいが、いかがか。

【鈴木臨時委員】 基金に対しては説明もあったが、まだ我々納得できるスキームが明らかになっていないと思う。基金自体についても反対意見が相当あるし、ここでは基金ということを言わなければいけないのかどうか。例えば、「関係者が拠出を行い基金を造成し」云々とあるが、この「関係者が拠出を行い基金を造成し」というところはカットをして、土地所有者等に対し、資金的な支援措置を行うことを検討する必要があるなど。まだ今の段階で基金という言葉を出す段階にはなっていないような気がする。もう少し実際のスキームを、披露していただきたい。

【大塚臨時委員】 この制度はもともとPPPとかいう話がかなり強く出ていて、そういう議論はあったが、現在の危険が生じているところは土地から出ていることから、土地所有者を、かなり前面に出した制度になっているわけで、ここで産業界からの基金というのが出てこないと、あるいは関係者からの拠出の基金がないと、非常に片方だけに偏った制度に、土地所有者だけに負担をする制度になってしまうので、これは外さない方が、国民の理解を得やすいと思う。

【河内臨時委員】 この基金の問題は、産業界という表現、これは例えば経団連がどうだとか、産業界全体で支えることは、なかなか今そういうスキームは難しいと思う。それはなぜかと言うと、因果関係がないところに会社自身がそういう金を出すとは思わない。したがって、因果関係があったり、あるいは利害関係があるような業界、そういうところがある対象の目的意識を明確にして基金を募るというようなことは、具体性があると考える。ただ、全体のスキームで、産業界と国の比率が一体どの程度の持ち方をしたら良いかとか、そういう利害関係がある業界がどういう支援をイメージしたら良いのかまだわからない。それと基本的に汚染原因者というのは、直接汚染行為を行った人というものもあるが、間接的な汚染原因者というものもある。例えば昔はここにこういう処理の仕方で埋めなさいという行政指導もあったし、法的にもある時期から前はこういう技術的な処理のやり方で良いということがあった。だから、そういう行政の責任を考えに入れる必要があるのではないか。

【大塚臨時委員】 私も産業界と言ってしまったので、誤解を招いたかもしれないが、関係業界という発言だと受けとっていただきたい。

【水環境部企画課長】 スキームがまだはっきりしていないという発言だったので、少しだけ補足させていただきたいが、かなりエッセンスはこの中に書き込んだつもりではある。やや詳細に構想を申し上げると、スキームの下の図の支援措置等のところであるが、ここにあるように、土地所有者がその実施をするときに都道府県が助成をすることを想定をしている。それで、そこが仮に4分の3の補助であるとすると、この左から二番目にある基金からはそれの3分の2を支援、助成をするというスキームである。したがって、この中でそれぞれの負担を想定しているのは、新たに実施主体となる土地所有者が4分の1、それを都道府県が最終的には4分の1、それで基金が2分の1で、その双方に拠出をする、国とそれから関係業界、産業界に期待しているわけだが、それぞれ1を想定をしている。
 それから規模については、先程、要は因果関係のないところでの拠出という話は私どもわからないわけではない。ただ、このスキームを作るのに当たり、最もまず注目しなければいけないのは、原因者が不明であったり不存在であったり、そういう場合に、それでは実施主体となる土地所有者に対して、どう支援ができるであろうかということだけである。その中で、どの経済主体も完全に自分たちの責任と思っているわけではない。国も思っていないし、もちろん責任を全部否定しているというわけではないが、地方公共団体も思っていない、土地所有者も思っていないという中で、それぞれ関係する者がこの助成に貢献していく姿が良いのではないかと思っているわけである。

【小委員長】 今、事務局から基金、あるいはその支援体制のスキームというのは若干、表にも書かれているが、その肉づけをお話いただいたわけだが、それでも多分、委員の方々は基金の額とか、具体的にどう適用していくかについて、もう少し議論を詰めないといけないという意見が大半だろうと思う。そういう意味で、今、説明いただいた内容については、この場で委員の方々に理解いただいた上で、後日いろいろ論議の対象にすることにさせていただく。そういう内容をパブリックコメントに書くわけにもいかないので、先程私が言ったようなことで、付記事項として基金、あるいはスキームの検討がまだ詰めないといけないところはたくさんあるという意味のことを書かせていただくことにしたい。

【菅野専門委員】 支援措置の中味をもう少し幅広に考えていただく必要がある。資力がない事業者や土地所有者の場合の支援策の必要性を明記する必要がある。原因者の存在が見当たらないときの土地所有者については基金でということになっているが、先程代執行みたいな話も出たが、資力がない汚染原因者や土地所有者についてどうやるのかという点が欠けている。また、中小企業者に対する配慮であるが、原案では配慮をする主体は都道府県だけになっていて、国が落ちている。また配慮事項についても指導助言その他必要な措置というあいまいな書き方でリスク低減措置への助成という点が不明確になっている。先程河内委員からもお話があったように、昔は地中浸透ということが行政で指導されたような経緯もあるわけで、汚染原因者に遡及して義務を負わせるのなら、国の指導に基づいて地中浸透措置がとられた事実もあるわけだから、行政の方も資力がないような場合についての支援は、腰を据えてやっていただかないと、健康被害防止のため、事業者に遡及してでもやってほしいというときの説得材料として乏しいのではないか。都道府県だけではなくて、国の配慮についても明記すべきだと思う。

【桝井委員】 全体的に今言われたように目的は、健康リスクだということで、公法で良いと思うが、あまり公法の中で土地所有者に、つまり、土地所有者なので逃げ場がないということになるが、公法というのは国の責任を含めた部分というのは非常にはっきりしない。それからこの基金の問題も鈴木委員が言われるように、もう少しきちんと整理しないと、何となく漠然とした基金という形で議論が終焉してしまえば、全体のイメージ、パブリックコメントに出しても、ではどうなるのかというところがどうしても大きく残る。ここは、今後、もっと明確なイメージをはっきり出していかなければいけないと思う。

【小委員長】 パブリックコメントというのは国民も知りたいところであるから、この意見を、こういうまとめで国民の意見を聴取する必要性は当然、現段階ではあるのではないかと思う。今、言われた意見についても、付記事項の中でそういうことを適切に書いて、パブリックコメントに供することも可能かと思うので、委員長段階で検討させていただきたい。
 それから、先程菅野委員が言われた遡及のことについても、はっきりしていないところがある。この点についても、もう少し議論が必要だと思うが、例えばどの部分になるか、また後で考えるが、リスク低減の実施主体のところで、その実施の責任の及ぶ次元はどういうことかということもあるので、そのあたりで何か、この制度の制定以前に行われた土壌汚染などについて、もう少し検討する時間が必要ではないかという意見があることを付記させていただいたらどうか。これはまとめ案の本文の中に付記させていただきたいと考えるが、それでよろしいか。

【中杉臨時委員】 そういう意見があることを書いていただくのは良いが、先程、高橋委員からもお話があった。これは他の大気や水の汚染のときの排ガス、排水を排出しているのと土壌の汚染を保有しているのは同じであることは、忘れてはいけない視点だろうと思う。現在、土地所有者が汚染源を抱えていること、これはどういう経緯で抱えたかはともかく、その土地を持っていること自体が他の環境媒体を汚染しているのだと。それは責任があるとは必ずしも言うつもりはないが、それを何とかしなければいけないという観点は必要である。現在、汚染を継続的に出している、それを何とかしなければいけないという視点が、多分過去に遡及するという話になるとそこら辺が抜けてしまうから、気をつけなければいけない。

【小委員長】 その点も、もちろんごもっともな意見であるが、要するにその辺がはっきり議論されていないと捉えて、そういった過去の汚染行為ということについて、もう少し議論が必要ではないかという意見があるとさせていただきたい。

【水環境部長】 先程、高橋委員が言われた、一旦措置がなされたところの部分の表現、それはそういう表現で直すということでよろしいのか。

【大塚臨時委員】 その関係だが、高橋委員が言われたこと、私も基本的には良いと思うが、先程から議論があったように公法上の制度としてはということなので、民法上の話はまた別にあることもにおわせておくような表現にしていただきたい。

【水環境部長】 そうすると、5ページの8行目あたりになるのか。リスクを低減するための措置を講じることが適当であるというのがあるが、その後あたりに、なお公法上の制度としては健康影響の防止に必要なリスク低減措置が既になされた後に、さらに措置を行う場合の費用は、当該措置の実施者が負担することが適当であると、こういうことになるのではないか。

【菅野専門委員】 措置の実施者が負担するというのが、そもそも誰が実施するかが問われている。

【水環境部長】 後の措置の実施者の方はそれが民事だということになるのかもしれない。そういう意味では公法上と入れなくても良いのかもしれないが、一旦された後の措置は、後の措置をする人がその表現では明確にはなろうかと思うが。

【小委員長】 その点について、私の先程の議論の段階での理解は、この本文を変えるということではなくて、説明資料でそれがわかるようにすることで、皆さんの意見があったと理解していたが。その内容や書き方については、私の理解でよろしいか。

【菅野専門委員】 先程の部長のお話で、聞いた内容が不明確だったので確認したいと思うが、一旦リスク低減措置を講じた後の利用状況に基づいて追加の低減措置等が必要な場合に、そのコストは実施者が負担するという書き方をする場合、誰が実施者なのかということ自体を明確にしておくべきだが、二次的な費用負担は、この制度上は過去の汚染原因者には及ばないということがあいまいにならぬよう、もう少し良い表現を考えていただきたい。

【水環境部長】 説明資料の際にはその辺はわかるようにしたい。ただ趣旨としては基本的には改変行為を伴う措置が実施者が負担して、後は民事上の話ということである。

【小委員長】 いろいろ意見をいただいているうちに時間が迫ってきているが、最後に今後の課題であるが、これは私が今日理解して、パブリックコメントに出す準備としての作業として次のようにまとめているが、これでよろしいか。今の部長の意見にあった低減措置を取った後の法的な制度の考え方については、説明資料の適当なところに適当な文言で入れるということ。
 それから、基金について原案としてのスキームはあるが、ここのところを具体的に詰めないとこの制度の実効性がないのではないかという意見がある。その点は本文の支援措置の7ページの6の支援措置等の終わりのところにでも、これは中小企業に対する配慮も関係してくるかと思うので、そういったところに書かせていただく。
 それでもう1つは、過去の汚染行為。これについて、5ページの下あたりに、リスク低減措置の実施主体、ここにこういう意見があるということを付記させていただく。このようにまとめているが、そういう形でパブリックコメントの資料を整理した上で、パブリックコメントに供してよいかどうかお伺いする。なお、このパブリックコメントに出す期限であるが、今日だとうまくいかないと思うので、私と事務局との間でそういう修文等の意見を交わし、その後関連するこれまでの委員の御意見に照らして、委員と詰めなければいけない文言がありそうであれば事務局、あるいは私と交渉させていただくということにしたいので、今日出すということではなくて、できるだけ早い機会にこの準備を終えて、パブリックコメントに出すことにしたい。ただ、パブリックコメントに出す以上、ある一定期間が必要だと思う。大体3~4週間ぐらいと考えているが、それぐらいの期間を置いて、少し短くなるかもしれないが、そういった期間で国民の皆さんの意見を聞くということにさせていただきたい。そういうことでよろしいか。

【菅野専門委員】 中身とパブリックコメントに付すとの点はそういうことで良いと思うが、もう1つ、今後どういうスケジュールで検討を行うのかについて、お考えがあったら示していただく必要があるのではないか。この点に関連して申し上げたいのは、今日もこれだけいろいろな議論があって、必ずしも収束し切れていないし、この小委員会の場での議論自体もまだ一ヶ月ぐらいしか経っていない。それで仄聞するところだと、環境省では法案を予算関連ということで2月の頭にも国会に提出して3月末までにあげなくてはいけないと、こういうスケジュールをお考えになっているようである。また法の施行も再来年の1月というお考えのようであるが、本当に検討している法案が実質的な意味で予算関連なのかどうか私としては疑義がある。予算で基金にお金を出していただくとしても、基金は別に規制措置とリンクしない、リスクコミュニケーションなど制度の周知といったところにも使うわけだから、それはそれで法律が通ったらすぐやらなくてはいけないということにすぎないと思う。そういう意味で、予算の手当がされているということで規制部分の十分な検討がなされないのは困る。法の施行のタイミングなども含めて十分な議論をして次の通常国会に法律を提出するということではないか。なるべく早くということはわかるので、ここでインテンシブに議論をして、その方向で努力をすることは良いが、予め期限を切られていて、あまりにも性急なとりまとめを行うといろいろな問題が起きるのではないか。その点も是非お考えいただきたい。

【小委員長】 ただいまの委員の御発言、そのとおり受けとらせていただく。他に、この際全体的な御意見はいろいろあると思うが、この段階で御意見はあるか。

【大塚臨時委員】 今日の最初のところに調査のことで、準備金のような制度を設けるというようなお話が出ていたと思うが、それを今後の課題や、その他の課題などでそういうことをお書きいただくのは、1つの手ではないかという気がしている。
 違うものと一緒にしてしまって恐縮だが、廃棄物の最終処分場について維持管理金という制度があって、あれは廃棄物の処分場を運営している間はお金が入ってくるが、廃止するときにはお金がない。しかし、周りに汚染が及ぶかどうかという問題はまさに廃止した後も続くことがあるため、そういう維持管理制度があるが、これと同じようなものを、この場合についても検討することは今後必要になってくると思う。今後の課題としてそういうものを考えいただきたい。

【柴田専門委員】 先程の中小企業の零細に云々というのは、書いてあるが、具体的にどういうことを考えているのかを教えていただきたいのと、先程菅野委員からお話があったが、あと何回ぐらいでこの小委員会が終わるのか、その意見はまとめない段階で今回パブリックコメントをやるということだが、パブリックコメントをやること自体は早いと思う。スケジュールでは、この後パブリックコメントをもらって、それをどう反映して何回ぐらいで終わるのか、パブリックコメントをもらって小委員会を1回やって、終わりたいのか。その辺のところを教えていただきたい。

【土壌環境課長】 事務局から説明させていただく。パブリックコメントをいただいた後、その辺の意見の内容を事務局で取りまとめて、それからこちらの議論もあわせて、それらを修練した形で小委員会を1月中下旬にさせていただきたい。そこで、その辺を含め、まとめた上で、土壌農薬部会をその後に開催してまとめたいと思っている。その間、今回もいろいろな御意見をいただいているので、パブリックコメントと並行して、この辺を課題として、それぞれ、どこでどういう形で反映するか、それから残された課題はどうなるかということを必要に応じて個別に委員の方にも相談しつつ、これから1カ月程ではあるが、真剣にやらさせていただきたい。

【小委員長】 それではいろいろ御意見もいただいたが、この辺で審議は終わりにしたい。
 最後に、本日の資料の公開についてだが、委員限りとされているものを除いて公開することとする。
 それでは、これをもって第5回の土壌制度小委員会を終了させていただく。