中央環境審議会水環境部会(第1回)議事録

日時

平成13年9月27日開催

場所

環境省環境管理局水環境部企画課

議事

【福井企画課長】 ただいまから第1回中央環境審議会水環境部会を開催いたします。
 本日は、委員総数29名の方のうち、現在17名の委員が御出席されておられます。定足数を満たしていることを御報告いたします。なお、今日の会議は、今年の1月に中央環境審議会総会で決定された中央環境審議会の運営方針に基づきまして、公開としておりますことを御報告申し上げます。
 会議に先立ちまして、石原水環境部長よりごあいさつ申し上げます。

【石原水環境部長】 水環境部長の石原でございます。本年の1月に中央省庁再編後の新たな中央環境審議会がスタートいたしまして、本日は水環境部が環境行政ということで大気・水を含めました環境管理局水環境部としましての第1回の会合でございます。開会に当たりまして、今後の水環境行政につきまして一言申し上げたいと思います。
 我が国の水環境をめぐりましては、4つの課題、それと水環境部としての土壌を加えまして5つの課題があろうかと考えております。水環境の分野につきましては、第1は、これは伝統的な分野でございますが、水質の保全ということで、河川等の水質汚濁はかなり改善されておるわけでございますが、湖沼、内湾等の閉鎖性水域における有機汚濁が依然としてはかばしくないというのが1点あろうかと思っております。
 2点目は、ダイオキシンを始めといたします新たな化学物質への対応かと思っております。
 それから第3点目が、これは長期の課題になろうかと思いますが、健全な水循環系ということで、昭和の30年代以降の高度成長に伴います水の循環の阻害がございます。そういうことの改善に向けての努力が必要かと思っております。
 それから4点目は、現在の水質保全の指標が水生生物に着目したような形でのものになっておりません。 そういう水生生物に配慮したような形での水質目標も検討するという、新たな領域への取組が必要かというふうに考えております。
 以上、4つの課題に積極的に今後取り組んでまいりたいと思っております。
 本日の部会では、これらの課題の中から陸域の環境基準のあり方、それと東京湾等の海域におけます暫定目標の見直しに関しまして、環境大臣の方からの諮問のほか、あと、水環境部の関係での重要課題に関連いたします最近の取組状況、あるいは、今年のトピック等を御報告させていただきたいと思っております。今後の水環境行政の推進に当たりましては、引き続き委員の皆様方の御意見、御議論をちょうだいしながら進めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 なお、私事で恐縮ですが、今日ちょっと国会の関係がありまして、途中出入りさせていただきますが、御容赦のほどよろしくお願いしたいと思います。簡単ではございますけれども、私のあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【福井企画課長】 それでは、お手元の配付資料の確認をまずお願いをいたします。資料1、中央環境審議会水環境部会委員名簿、資料2が、その運営方針について。資料3、4と2つ諮問の資料がございます。資料5が、専門委員会の設置について(案)でございます。あと1つずつ申し上げませんけれども、その後に、右肩に参考資料として1から8番までの資料がお手元に行っている手配になっておりますので、もし、足りない資料があれば、事務局に教えていただきますようお願いいたします。
 それでは、まず、私どもの方から水環境部会部会長の選任について、御報告いたします。中央環境審議会の審議会令第6条3項によりまして、部会に部会長を置き、会長の指名する委員がこれに当たると定められております。中央環境審議会の森島会長から水環境部会長として村岡浩爾委員が指名を受けておられます。村岡委員は、大阪産業大学人間環境学部教授を務めておられます。また、水環境部会に所属していただく委員の方々につきましては、やはり規定に基づきまして、部会に属すべき委員、臨時委員、専門委員は会長が指名するということになっておりまして、既に会長から指名されております。お手元にあります資料1が全委員の方々のリストです。
 まず、本日第1回会合でございますので、本日御出席の委員の方々をお名前のみ御紹介をさせていただきます。
(各出席委員紹介。)
 それでは、続きまして、環境省側の出席者を御紹介申し上げます。まず、本日、西尾環境管理局長御出席いただいております。ちょっと簡単に一言お願い申し上げます。

【西尾環境管理局長】 環境管理局長の西尾です。石原水環境部長と十分に連携して取り組んでまいりたいと思っておりますので、どうか委員各位の御指導をよろしくお願い申し上げます。

【福井企画課長】(環境省側出席者紹介。)
 それでは、会議の進行を村岡部会長にお願いいたします。

【村岡部会長】 森島会長から御指名をいただきまして、水環境部会長を務めさせていただきます村岡でございます。各委員の先生方には、この審議会、部会を進めるに当たりまして、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。
 それでは、議事に入ります前に、中央環境審議会令第6条第5項において、部会長はあらかじめ部会長代理を指名することとされております。本部会の部会長代理を須藤隆一委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。議題の第1は、中央環境審議会水環境部会及び専門委員会の運営方針についての紹介でございます。部会及び専門委員会の運営方針につきましては、参考資料2をちょっと見ていただきますと、そこにございますように、審議会運営規則第11条第2項及び、中央環境審議会の運営方針について6の規定に基づき、部会長が決定することとされております。そこで、まず、環境省の方から本部会の設置と、それから、所掌についての説明をいただきました後、それぞれの運営方針について、私、部会長のかわりに御説明いただきたいと思いますのでよろしくお願いします。

【福井企画課長】 それでは、参考資料1と参考資料2をまずごらんいただきたいと思います。省庁再編に伴いまして、環境省が発足しまして、審議会も中央環境審議会に統一されました。そこで新しく規則類が決められておりまして、まず、要点だけ御紹介しますと、参考資料1の中央環境審議会の議事運営規則というところで13の部会を置くということで、8番目に水環境部会が設けられております。
 その次のページに、その部会には9条で、部会は必要に応じて専門委員会を置くことができるということがあります。また、小委員会を置くという規定も次にあります。それから、総会の運営その他、11条ですが、審議会の運営に必要な事項は会長が定めるということ、それから、部会の運営に必要な事項は部会長が定めると定められております。
 参考資料2の方で、中央環境審議会の運営方針がございますが、これが今年1月の総会で中央審議会全体の運営方針として決定されたものでございます。
 まず、第一のところで、会議の公開についてでありますが、総会は公開とする。部会については、原則として公開するものとし、公開することによって、そこに書いてございますような支障がある場合には非公開とすることができるということが定められております。それから、代理出席については認めないという原則になっております。
 それから、次のページ、2ページで、会議録でありますが、当該会議出席委員の了承を得るものとする。それから、公開につきましては、公開した会議の議事録は公開するものとする。それから、議事要旨は毎回公開するということになっております。
 それから、最後のその他ということで、3ページでありますが、このほか、総会、部会、小委員会及び専門委員会の公開その他会議の運営に関し必要な事項は、会長または部会長が定めることができるものとするということです。
 以上が、共通のルールで、この共通のルールをもとに水環境部会としての部会長としての運営方針というのが資料2です。表題に、中央環境審議会水環境部会及び専門委員会の運営方針についてということでありますが、追加的にこういうことを部会長として決めるということです。まず、第1の公開については、会議を非公開とするときは、部会長はその理由を明らかにするものとする。これは、会議の冒頭で理由を部会長から明らかにするとか、あるいは議事要旨の作成時に理由を明記するとか、そういう方法があると思います。
 それから、会議録等につきましては、水環境部会としては共通ルールのほかに明示の了解を得ることとするということ。その後、原則として次回の会議において公開するということをうたっております。それから、長期にわたって次回の会議が開催されないことが予想される場合、これは次回の会議を待たずに、明示の了承を得た後に公開するものとすると。事務局としては大体3か月ぐらいを目途と考えております。
 それから、公開する場合には発言者の名前を記載するということです。それから、議事要旨につきましては、[4]のところでありますが、部会長の了承を得て公開をするものとする。最後に、資料の公開についてでありますが、審議中の答申、または意見具申の案文、非公開を前提に収集したデータが記載されている資料、関係者と調整中の資料、その他、ここに書いてあるようなときには、部会長は「委員限り」である旨、明記した上で非公開とすることができる。それ以外の配布資料は部会終了後、公開するということが中央環境審議会水環境部会及び専門委員会の運営方針についての内容です。

【村岡部会長】 ありがとうございました。何か、ただいまの御説明で御質問ございますか。環境省になりまして最初の水環境部会でございますので、こういった取り決めをするということで、御報告させていただいたようなわけでございます。
 特段の御質問がないようでございますので、資料2にあります部会と専門委員会の運営方針として、この内容を部会長決定として確定させていただくことにいたします。どうもありがとうございました。
 それでは、次の議題にまいります。議題2と議題3をあわせて審議したいと思います。この件につきましては、本年の9月25日付で環境大臣から2つの諮問をいただいております。水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準の水域類型の指定の見直しについてと、東京湾、伊勢湾、大阪湾と瀬戸内海の一部の全窒素及び全燐に係る環境基準の暫定目標の改定について、この2件でございまして、当部会に付議されております。
 それでは、まず、それぞれの諮問につきまして、事務局の方から諮問書の紹介と内容についての説明をお願いいたします。

【福井企画課長】 それでは、まず、資料3の方を御説明いたします。1枚目の諮問文でございますけれども、水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準の水域類型の指定の見直しについてです。各公共用水域につきまして、昭和45年度から多くの水域について指定が行われてきました。この水域類型の指定につきましては、水域の利用の態様の変化と事情の変更に伴い、適宜改定することとされており、平成9年に諮問し、これまで6河川水域及び6湖沼水域について、水域類型を見直ししたところです。今回の諮問内容は、今後、必要な水域について引き続き水域類型の見直しを行っていく必要があるということで、審議会の審議をお願いするという諮問です。
 次のページで若干経緯を書いてあります。見直しの実施状況というところですが、対象水域でありますが、河川、湖沼、2つに分けますと、まず河川で、国指定の水域になっているのが全体総計で108水域。この中に類型が問題でないもの、そのままで適切だと思われるものがあるのですが、逆に利水状況が指定類型と整合していない水域というのが平成9年の見直し開始時に大体6水域ありました。うち5水域をこれまでの審議で見直しを行っていただいたわけでございます。
 それから、もう一つの種類としては、現状で上位の類型の環境基準を満足している水域、これについては適宜見直すという観点から、より上位の類型を目標にすることはどうだろうかという観点から検討が行われてきたわけでございます。これについても、14水域に現在候補があると思いますが、うち1水域については見直し済みです。これまで、2回にわたって見直しの検討をしていただいていますが、主に、利水状況が合っていないというのを優先をして審議をしていただいて、その結論を得て必要な改正を行ってきたということです。
 それから、もう一つの湖沼ですが、これは1,000万立法メートル以上の人工湖沼、大体40ぐらいございます。これについても、現在見直す必要があるか検討する必要があるのが20水域程度あるのではないかと。これについて、6水域については既にこれまでの専門委員会の審議で結論を得て、見直しを行っております。
 [2]は進捗でありますが、6河川水域、6湖沼水域については見直しを実施済みです。二番目ですが、これは今後検討いただくに際しての事務局としての案でありますけれども、河川について、平成13年度、14年度、河川と湖沼につきまして、2つに分けて2年間で終了するという計画で御相談をしていきたいと思っております。
 次のページの別表1というところだけ、イメージをつかんでいただくために見ていただきますと、薄い黒で塗ってあるものがこれまでの検討で見直しをしてきた水域です。基本的には、それぞれ利水目的に合わせて類型指定を変えてきたということです。それで、黒で塗ってありますのが、13年度の見直しの対象として考えているものです。それから、その残った白の部分が、基本的に14年度において見直しを行って、河川については基本的に終了をするという案です。
 次のページの湖沼も同様です。説明は省略します。
 資料4が、諮問の第2件目です。東京湾、伊勢湾及び大阪湾と瀬戸内海の一部の全窒素及び全燐に係る環境基準の暫定目標の見直しについて。ここに記載されております海域及び有明海におきましては、全窒素、全燐について、暫定基準を定めております。その海域の部分によっては、まだ環境基準を目指すというのは早過ぎるということで、暫定目標を定めている部分があるわけです。
 諮問理由でありますが、海域の全窒素及び全燐に係る環境基準については、政府が水域を指定すべきものとされております。東京湾、伊勢湾、大阪湾と瀬戸内海の一部及び有明海に関して、順次、水域類型の指定を行ってきたところです。東京湾、伊勢湾、大阪湾と瀬戸内海の一部については、それぞれ11年、13年までの暫定目標が設定されております。ちなみに、有明海は15年が暫定目標年次となっております。したがって、これらのある場合には暫定目標を廃止する、あるいは新たな暫定目標を設定するということについての御審議をお願いしたいというのが諮問です。
 次の参考を見ていただきますと、一番右の欄、それぞれ湾の水域がありますが、それぞれ右の欄に暫定目標達成状況という欄があります。水域と、それと窒素、燐というふうに欄がありますが、この欄の一番右の2つ右の欄で、表示がないのは、暫定目標が設定されていない部分です。暫定目標が達成されているものが○、されてないものが×という表示にしておりまして、一見して明らかなように、既に、設定した暫定目標は1か所を除いてすべて暫定目標を満たしているという状況にあります。
 それでは、環境基準値との関係ではどうかというのが、その左の欄で網かけをしているところでありまして、環境基準も満たしているというのは○で表示し、環境基準まではまだ行っていないというのは×で表示しております。全般に暫定目標は達成されているけれども、環境基準値に達しているかどうかというのは相半ばしているということで、これについてどうするかという御検討をお願いするというのが諮問の内容です。
 それで、資料5は、あわせてこれまでも同じ形式でお願いをしていたところでありますが、中央環境審議会水環境部会の専門委員会の設置についてということでの案ですが、陸域環境基準専門委員会、海域環境基準専門委員会の2つの専門委員会を置く。陸域環境基準専門委員会においては、陸域に係る環境基準の水域類型等の指定に関する専門的事項を調査する。海域環境基準専門委員会においては、海域に係る環境基準の設定及び改定、並びに水域類型等の指定に関する専門的事項を調査する。4としまして、専門委員会に属すべき委員、特別委員及び専門委員は部会長が指名するという水環境部会決定の案が資料5です。
 説明は以上です。

【村岡部会長】 どうもありがとうございます。それでは、この2つの諮問の内容につきまして、何か御質問ございましたらお願いします。

【浅野委員】 これまでの資料4でありますけれども、暫定基準が設けられてきているということは承知はしておったのですが、暫定目標というものが一体水環境政策の中でどういう位置づけであったのか。実を言うと、こういうものをつくっていたというのはかすかに記憶にあるのだけれども、余り確かには記憶していなかったわけです。環境白書でいろいろと全国の水質の状況はどうだといった議論をするときに、環境基準を達成している率が何%という形でしか扱われてこなかったのではないのかと思うのですが、そういうところで、例えば、暫定基準は満たしているがというような注記のような形で取り扱われてきたのか、取り扱われてこなかったのか。それが気になるので。それから公害防止計画をつくるときに暫定基準は一体どう位置づけられてきたのかという点も、気になりますから、もし整理しておられるのだったら教えていただきたいと思います。
 既に暫定基準はあと備讃瀬戸以外はクリアできてしまっていますから、外していいのだろうと思うのですけれども、備讃瀬戸については依然としてまだ暫定基準をクリアできていないという事実がありますので、そこのところをどう評価していくかという今後の施策の展開の中でも考えなくてはいけないと思うので、あえて御質問いたしました。

【村岡部会長】 事務局、どうぞお答え願います。

【福井企画課長】 暫定目標というのは確かに水の分野でも、いわば苦肉の策のような部分があると思います。全ての海域についても望ましい環境基準を満たすのが一番いいわけですが、現実の水質との関係において余りに高い目標を設定すると、どうやって努力していいかもわからないという事態にもなりかねないというところから設けられたものだと理解しております。
 御指摘の資料4のところですが、この箕島地先海域のところだけが窒素について暫定目標の達成ができていない、ほかはすべて達成しているということで、おおむね暫定目標が達成されているという状況ですが、この箕島の地域については暫定目標が1.1と、もともとあまり高い目標が設定できなかった地域です。数値も比較的その近傍を上下しているという状況です。おおむね暫定目標を達成されておりますが、一方でこの基準値の達成はどうかということになりますと、暫定目標にも十分御承知のとおり段階というものが幾つもございまして、ここで基準値達成が達成しているのが半ばしているということをもって直ちに環境基準を目標にしていいかというと、見てみるとすべてがそうでもなさそうだという状況があり、専門委員会で御議論いただければと思っているところです。

【村岡部会長】 ほかに関連した……、どうぞ。

【鈴木委員】 今の浅野委員の発言に関連するのですけれども、結局暫定目標なるものは、その地域を取り上げたときに、そこで使うことができるベストのテクノロジーを使って一生懸命やるところまでは行きますからこの目標にするのですよという、そういうお立場で考えているのか、そうではなくて、現実ははるかに我々が理想とするレベルよりも高いと。何であれ下げなくてはならんから、下げる方向としてこっち向きの数値として、とりあえずは最初のステップはこうやるのかという、その辺の考え方をどう整理されていますのかというふうに浅野さんがお聞きになったように私には感じたのですがいかがですか。

【村岡部会長】 事務局の方、何か御回答ありますか。では、須藤委員、ひとつお願いします。今まで、よくこの問題にかかわってこられましたので。

【須藤委員】 前回の暫定目標を決めさせていただいたときの専門委員会の委員長でございます。もちろん私の独断でいうことではございませんで、今、両先生からお話がございましたのですが、これから5年間の間にどの程度の対策が実行できるだろうかという予測をいたします、まず。例えば、下水道でしたら5%なら5%、農業集落ならこのぐらいとか、実行可能な範囲で予測を立てまして、そして、その削減、負荷の削減量を決めまして、その削減がこのぐらいの量だからということで水質予測のシミュレーションをいたします。水質予測のシミュレーションをやって、大ざっぱに言えば、この暫定目標というのはそのシミュレーションでなる水質の予測値でございます。ですから、今、鈴木先生おっしゃったようなベストではなくて、実行可能な、その周囲の20、これは20都府県の実行可能な部分でございますから、一言で言えば、当然これは達成するのだろうというふうに思いますが、達成しない方がおかしかったのではないかと、こういうものです。ですから、その位置づけというのは実行可能だという、浅野先生も多分いいのですよね。ですから、多分、そういう議論をしたと、清水先生、浅野先生も御一緒でやったと思いますが、そういう意味でございますので、一生懸命やってベストだということでは私はないという、事務局、私が間違ってしまうといけませんのでいいですか、そういう答えで。

【村岡部会長】 ベストではないですが、努力できる範囲で……。

【須藤委員】 もちろん、そうです。もちろん、そうです。一応、各県にお願いをして、このぐらいだということを積み上げている。

【村岡部会長】 そういう意味では単純な、言葉はよくないですが、そのまま延ばしたというよりは、やはり目標ですから上にはなっているのですね。

【須藤委員】 もちろん、そうですよ。減ることはないですね、そういう意味でね。努力は減ることはなくて、その努力は積み重なってこうであるということですから。ただ、そのときの予測値がそうであるということです。そういう意味でございます。

【浅野委員】 つまり、むしろもっと積極的にこういう暫定目標を決めているということを明らかにして、それがどのくらい達成できているのだということを、環境白書の中でもちゃんと書いていかないといけないのではないかなという気がするわけです。というのは、とりようによっては誤解を与えてしまうおそれがあるわけです。同じ環境省の中でも道路の騒音については、要請限度を達成することが目標という状況があり、環境基準完全達成という目標にはとても行かないわけです。それとは大分これは質が違うのだということを明らかにしておかないと、無理だからとりあえずこれでというのとは違う。ステップを踏んでやっていくという目標なのだ。従って、それがちゃんと達成されたなら、次は暫定基準から次の基準に変わるというプロセスをたどるシステムだということを、もうちょっとはっきりできるのではないかなと思うわけです。

【清水委員】 ちょっと一言いいですか。ついでに、あえて申し上げますと、前に専門委員会に入っていた責任みたいなものもあると思うのですね。というのは、要するに環境基準が達成されるのが無理だから暫定目標にしておこうと言ったのにもかかわらず、もう環境基準が達成されてしまった水域があるわけです。それは、そのときの専門委員会で判断が間違っていたのではないかと言われれば、もうそれはそうで、反省せざるを得ないわけですね。ですから、では、なぜそうなったかというところから、実はこれ今度の見直しは出発しなければいけないだろうと。それはいろいろな要素があると思いますので、各県が思っていたよりも負荷を減らしていただいたとか、あるいは逆にいうと、そのシミュレーションがどうだったのかとか、いろいろな要素があるのですけれども、その辺をきちんした上で今度暫定目標を立てるのならば、ちゃんとしたものをつくらないといけないでしょうということで、すみません。 

【村岡部会長】 どうもありがとうございました。暫定目標の現在の立場というのはそういうふうなことである、背景があるということは御理解いただけたのではないかと思います。
 ほかに、諮問に関しまして、御質問ございませんか。

【池田委員】 この中に、昨年の3月に有明海の水域類型の指定が行われているというふうに書かれているのですが、これは、後の方には基準値等は示されていないのですが、これは現在検討中ということの理解でよろしいのでしょうか。

【福井企画課長】 定まっております。地図が入っていないということですか。

【池田委員】 暫定目標ではない……。

【石原水環境部長】 見直していないということです。

【池田委員】 今回はこの表には載っていない。

【福井企画課長】 表には載ってません。

【池田委員】 今のところ、有明は5年間として……。現在、検討中ということですか。

【福井企画課長】 表に入っていないのは暫定目標はあるのですが、今回の見直しのところだけを表示しているものですから、この中には入っていないということですけれども。

【池田委員】 そういうことですか、わかりました。

【福井企画課長】 この表で言いますと、暫定目標を設定しているもので、東京湾、伊勢湾、大阪湾が11年、13年に終期が来ておりまして、その後13年が終期が来ていて、有明については15年が終期ということで、この表には入っていないということでございます。

【村岡部会長】 ほかにございますか。須藤委員、どうぞ。

【須藤委員】 今、池田先生の方から有明のお話もあったのですが、事務局から15年だということで、これをやるときの委員長を務めさせていただいたのですけれども、15年というのはすぐ来るわけで、もう今13年ですぐ来るので、少し後で有明の水質の問題は報告事項であるかと思いますけれども、今回はもちろんこの専門委員会の対象ではないのだけれども、少し早目にいろいろ検討しておいていただいた方が、あそこも暫定目標が幾つかある……、ちょっと私、そらで覚えていませんけれども、あるのは承知しておりますので、その辺のところは十分あらかじめ少し時間をかけて検討していただきたいということだけ事務局にお願いしておきます。

【村岡部会長】 ありがとうございました。
 それでは、皆様方には、この2つの諮問の内容につきましては御理解いただけたものとさせていただきたいと思いますが、この内容はかなり専門的でございますので、別途専門委員会を設置して調査検討を進めるということにさせていただきたいと思いますがよろしゅうございますか。
                 (異議なし)

【村岡部会長】 ありがとうございます。
 それでは、議題の3として挙げております諮問2件につきまして、それぞれ陸域環境基準専門委員会と海域環境基準専門委員会を設置することと決定させていただきます。その内容は、先ほど資料5に手回しよく案としてつくっていただきましたので、この設置についての内容で進めさせていただきたいと思います。
 設置いたしましたこの2つの専門委員会につきまして、部会長から委員長を指名する必要がございます。そこで委員長につきましては、先ほど来、話題にも出ておりましたように、水質部会のときからこの専門委員会ずっと続いておりますので、これまでの委員会で継続的に審議に携わってこられた方の中から陸域の方の専門委員会につきましては松尾委員、海域の方につきましては須藤委員にお願いしたいと思います。両委員、よろしゅうございますか。
 それでは、一言、何かごあいさつがありましたら、松尾委員からどうぞ。

【松尾委員】 松尾でございます。私は、この専門委員会の委員長は初めてなのですが、前回のときには委員として加わらせていただきましたので、そのときの経験もあわせてやらせていただきたいと思います。ちょっとお時間をいただいて、私の感想を言わせていただきます。さっき浅野先生も言われましたけれども、この環境基準に合格したかどうかという、評価のパーセントですね、あれは部長も今言われたけれども、湖沼は特に低いと。しかし、一方でこうやってよくなった水域が増えているということで、グレードアップも進めているわけですね。それで、そのグレードアップされた水域はその後どうなっているのかは、あの数値だけ見ているとわからない。環境省何もやっていないのではないかと思われるけれども、結構進んでいるとも言えるのです。ですから、もうちょっと成果が見れるような表示もあわせてやられたらいいと思います。しかし、環境基準が動き出してから、30数年になるのですから、それの割にはやはりどうしても改善率が悪いというのも実態なのだろうと思うので、そういう意味ではこの見直しのような機会を通じて、少し全体的にもうちょっとスピードアップして、合格率を上がる方向とか、表示の方法もあわせて少し議論させていただいたらとは思っております。若干委員の仕事の範囲を少し超えるかもしれませんが、自由な議論を少しさせていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。

【村岡部会長】 須藤委員、いかがですか。

【須藤委員】 私が担当する海域の部分は、先ほどからお話が出ていますように、東京湾、伊勢湾、大阪湾を含む瀬戸内海ということで、我が国の重要な内湾、内海でございまして、多分、水でいえば終着駅でございます。ですから、汚濁源が一番集積する場所であって、化学物質は特に取り上げるわけではございませんが、窒素と燐ということで、それほど削減が思わしくないという部分でございますので、暫定という意味では、先ほどもお話がございましたように、達成はされてはいるのですが、もう少し勉強させていただいて、本当にそのままの環境基準でよろしいのか、あるいはもう一度その中間ぐらいで暫定を入れなければいけないのか、勉強させていただいた上で決めさせていただきます。専門委員の先生方すべて専門家でございますので、私は進行役として整理をさせていただきたい、こう思っております。どうぞよろしく御指導いただきたいと思います。

【村岡部会長】 ありがとうございました。

【鈴木委員】 よろしいですか。余計なことを一言、今日はどうも余計なこと言う日らしいのですよ。専門委員長がお決まりになったので、お願いなのですが、実はほかの部会、例えば自然環境あるいは野生生物等々、いろいろな部があります。主な部会は、例えば環境保健の部会なわけでありますけれども、そこの中でエコシステムアプローチという、生態系アプローチという考え方がどの領域にも少しずつ少しずつ入ってきているわけですね。環境庁のこれまでの行政の構造は縦割りの構造ですから、なかなかエコシステムアプローチをどこでどう扱っていくのか、全体の中でどうそれを浸透させていったらいいのかに関しては、姿形がまだどうもよく見えないと。だから、生物多様性の議論をしているときにエコシステムアプローチ、結構ですな、そういうアプローチはどうしても要りますなという話にはなっても、そこでおしまいになってしまうと。それではなくて、ぜひ、各専門の委員会でお考えいただくときに、その辺のところまですぐには行かない話だし、行政総体の運営の問題でもありますし、面倒くさいのは重々承知はしているわけですが、物の考え方としてそういう発想がなければこれからやっていけないのではないのですかというのをお願いしておきたいわけです。

【村岡部会長】 どうもありがとうございました。お二人の委員長は、これまでこの問題に関わってこられましたし、ひとつよろしく専門委員会の審議をお導きくださるようお願いいたします。また、あわせて今、鈴木委員から非常に重要な御指摘がございましたので、専門委員会の方にも反映させていただきたいと思います。
 それから、それぞれの専門委員会の委員につきましても、あらかじめ指名させていただいております。後ほど、事務局の方からその資料をお配りいたしますので、どうぞごらんいただきたいと思います。
 それでは、この議題は終わりまして、次に4番目のその他に入ります。その他の議題は、これまでしばらく時間があいていたということもありまして、水環境行政の中で幾つかの重要な事項について、報告を決めた内容がたまっております。6点ばかり参考資料として用意していただいておりますので、まず、事務局から順次この内容について御報告いただきまして、後ほど時間をとってまとめて御質問と意見を述べていただきたいと、こういうふうに考えております。
 それでは、事務局の方から御報告ひとつよろしくお願いいたします。

【福井企画課長】 議事次第にございますように、6項目ほど御用意させていただいております。順次、担当課長から御説明をいたします。
 まず、参考資料の3で水生生物保全水質検討会についてということの、現在の進捗の状況を御報告しておきたいと思います。まず、環境基本計画及び中央環境審議会において、水生生物への影響に留意した環境基準等の目標について、調査検討を一歩進める必要性が指摘されております。これを受けまして、平成11年から12年度にかけて須藤先生に座長をお願いをいたしまして検討会を開いていただきまして、81の化学物質を抽出して、昨年12月に中間報告をまとめていただいたところであります。引き続き本年度から須藤委員長を座長の検討会を設置いたしまして、具体的な目標値がどうあるべきか、あるいは環境中検出状況等の検討を引き続き行っているところです。現在の検討の過程というのを少しイメージを持っていただくためですけれども、具体的な検討内容というところで、2の[2]でありますけれども、候補物質の選定というところを経まして、発生源データ、あるいは環境中データというのを評価する一方で、水生生物保全の観点からの毒性を評価するという作業に着手しているところです。こういうものを経まして、最終的にはガイドラインとかいうことに発展していくということの見通しでおります。少し、参考資料のところを見ていただきますと、水生生物保全の観点からの水質目標設定フローというところで、一番上の枠囲いで、これは昨年12月までにまとめていただいたものですが、81の化学物質について対象物質をとりあえず選定をいたしまして、それに基づいてこれから毒性データによる絞り込み、これは毒性評価分科会を中に設けていただいておりますが、それと、一方で環境中データによる絞り込みというものを経まして、優先的に検討すべき有害化学物質を決めた上で最終的に目標というものを考えていくというところです。今まで、その参考資料の左側のページにありますように、検討会を2回開いていただきまして、毒性評価分科会も3回開いて、精力的に検討いただいているところです。
 第2番目の参考資料の4が、日本の水浴場88選です。これは平成10年に当時環境庁が日本の水浴場55選について発表したわけです。今、お配りしているのは今年の3月に選定を発表した公表資料をそのままお配りしておりますけれども、その選定基準を見直しまして、3月に日本の水浴場88選を選定したものです。この選定に当たりましては、松尾教授に委員長としてお世話になりました。また、岸委員にも御参加いただきましてありがとうございました。昨年12月から今年3月にかけて、4回にわたって検討会を開催いたしまして、各県から推薦のあった146の水浴場から88か所水浴場を選定したということです。公表の後、5月に認定証の交付式を開催しております。また、次回の選定を3年後に行う予定としております。こういうことを通じまして、水浴場が水と人との触れ合いの重要な場であるという考えのもとに、引き続き理解増進の機会として続けていきたいということと、また、自治体が取り組んでいく努力の動機の一部となればと考えているものです。

【仁井水環境管理課長】 私の方からは参考資料5、それから、参考資料6について説明させていただきます。参考資料5は昨年の12月14日にこの審議会からいただいた答申に関することです。ほう素、ふっ素、それから硝酸、亜硝酸性窒素関連について、水質汚濁防止法に基づく規制対象物質にする、それについての規制値を決める等々の答申をいただきましたが、それを今年の6月13日公布という形で政令あるいは省令という形で措置をいたしましたという報告でございます。施行は今年の7月1日からということで、もう動いております。
 それから、参考資料6でございます。これは、ダイオキシン類対策特別措置法に基づきます規制対象の施設についての検討でございますが、ダイオキシン類対策特別措置法に基づく規制対象、これは法律が議員立法で急遽できたということ、あるいはダイオキシンに関しての情報の蓄積というのが、それまでどちらかというと大気系あるいは排ガス系が中心であって、水系のものについての情報が限られていたということもございまして、法を最初にスタートさせる段階におきましては、その当時得られていた水に関する情報から廃棄物関連の排ガスの洗浄施設でありますとか、あるいはパルプ関連の施設でありますとか、アルミの製造の関連の施設でありますとか、その当時得られていた情報に基づいて、動き出したといった経緯がございます。その後、公共用水域でのダイオキシン類に関してのモニタリングが進んでまいりますと、規制対象とされていない工場事業場しかないにもかかわらず、公共用水域で高濃度のダイオキシンが出ているといったような事例が幾つか出てまいりまして、そういう中で原因を探っていく中で、今まで規制対象となっていなかったものの中でも結構ダイオキシン類排出のポテンシャルがあるといったことがわかってまいりました。いわば、事故的なところで見出されたもの、それから、全般的に燃焼系以外の化学反応系でのダイオキシン合成の可能性も含めての検討を横浜国大の浦野先生を座長といたしますダイオキシン類未規制発生源調査検討会で行ってきております。ここの中で、まずはいわば事故的な形で見出されたところについての実際の調査を、経済産業省とも連携いたしまして、幾つかの工場等について行ってまいりました。調査の中でダイオキシン類の排出状況が確認され、当初ダイオキシン類対策特別措置法を施行するに当たって、こちらの審議会から答申をいただいたわけでございますが、この答申での特定施設の考え方、特定施設指定の考え方をもとに、規制対象とすべきと考えられるところについて、資料中の対応というところにございますが、大きく3つほどの業種につきまして特定施設として追加するということで、今、所用の準備を進めております。
 それから、これ以外のものにつきましても、資料の一番下にございますように、調査を進めているといった状況でございます。
 以上です。

【柴垣閉鎖性海域対策室長】 それでは、参考資料の7でございます。閉鎖性海域対策室長の柴垣と申します。有明海のノリ不作をめぐる動向についてということで、有明海をめぐる状況の御報告をさせていただきます。有明海につきましては、先ほどもちょっとお話に出ましたように、昨年の3月に窒素、燐の環境基準の類型当てはめをしているところでございまして、昨年の12月から珪藻赤潮の持続的な発生ということを機にして有明海のノリの深刻な不作という状況が1月、2月、3月ということで続いていたわけでございまして、資料の最初のところにありますように、被害額として140億、それから、生産枚数・金額ともに対前年で6割ということ、特に大牟田沖など福岡県では4割を切るような状況ということでございました。それで、特にマスコミなどでは諫早湾干拓事業などとの因果関係ということも含めて大きな話題になり、また現地での問題になっているということでございます。さらに、アサリなどの二枚貝を始めとする底生生物の長期にわたる減少ということもノリ不作の背景として改めて注目されてきているというところでございます。この問題につきましては、農水省を中心に関係省庁が連携して、環境省も含めて取り組むということでございますけれども、今年の3月に有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会、通称第三者委員会といっておりますけれども、が設置されておりまして、本審議会の部会の委員でもあられます清水委員が委員長に就任され、また、須藤委員なども委員として参画されておるというところでございます。その第三者委員会を中心にノリ不作、さらにはその背景としての有明海の環境悪化の原因の究明、それから対策の調査、そのための調査の提言、さらには対応方策の提言ということが第三者委員会の任務ということで、委員会の検討が進められておりまして、現在まで6回開催されておるというところでございます。
 それで、第三者委員会の提言ということで、添付資料の2というところに、今年の3月の3日に設置されて3回ほど行ったところの提言、それの委員長まとめということで、清水委員長としてのまとめがついてございます。その中で、現状認識ということで、本年度のノリ不作についてというところで、珪藻赤潮は12月初めから発生して永続するという異常な事態の中でノリの必要な栄養源が珪藻に奪われてしまったということが直接の原因で、それをもたらしたものとして11月の異常な降水、それから12月に入ってからの例年より非常に長い日照時間、さらにはこのところ続いている高水温・高塩分などの、いわば異常気象・海象が引き金となって生じたということでありますが、その素因としては有明海の富栄養化もあることが事実であると。それから、富栄養化も要因としてある珪藻赤潮、珪藻の増殖を抑制するために役割を果たしていると考えられる二枚貝などの減少も関係している可能性があるということでありまして、さらに、その素因の部分としての有明海全体の問題として、現状認識の[2]のところで、有明海の富栄養化、それから、有毒赤潮の発生など、従来に比べてかなり有明海全体の環境の変化、悪化があるのではないかと。それが漁業生産の落ち込みや、各種の生物の衰退などにあらわれているのではないかということが言われております。また、潮汐等海洋の流動ということも問題ではないかということでございます。その辺は知見を集める必要があるということで、当面の課題というところでございますけれども、ページをめくっていただきまして、時空間的に、できるだけ広い範囲について情報を収集して、総合的な解析を行う必要があると。必要に応じて現地調査などで情報を補足する必要があると。このような総合的な情報収集解析調査には少なくとも2年程度はかかるけれども、半年、1年など、その時点での提言をまとめて、その後の調査に生かしていく必要があるということでございます。この第三者委員会の提言も受けて、また、全体の調査の流れとしては添付資料の1というところを、ちょっと1枚戻っていただきますが、横長のフローがございまして、その下のところに今申しました第三者委員会がございまして、それと連携してといいますか、その提言を実際に生かして調査を進めるものとして、有明海海域環境調査という部分と、それから有明海における海洋環境の変化が生物生産に及ぼす影響の解明という2つの調査が並行して進められておるところであります。それで、まず、海域環境調査の方ですが、これは環境省も参画しまして、農水省、国土交通省、それから経済産業省ともに共同で取り組んでおるものでして、既存のデータ、それから新たなデータを集め、また、水質とそれから流動などを中心としたモデルを構築して、それでモデルを使って今の現象のメカニズムの分析解析、それから、そういった現象に至る要因の解析、さらにはそれらを踏まえた改善方策の方向性の検討ということで進めております。
 それから、もう1つの生物生産に及ぼす影響の解明という方ですが、これはむしろ生物生産の変化過程の把握と、その変動要因の解明ということで水産庁や大学、それから県の水産試験場などが参画して取り組んでおると。そこは、2つの調査は相互に連携をとりながら適宜第三者委員会に御報告し、また、そこでの議論を踏まえて取り組むということで進められてきております。第三者委員会関係は、さらにこの9月の20日に中間の取りまとめということで、添付資料の3につけてございますが、ノリの今期の漁がまたこの10月から始まるということで、ノリの漁期が始まるのを前にして、今期のノリ作に対する提言ということを主に、さらには今般のノリ不作の背景にある二枚貝漁業の衰退についての要因分析や対策ということもあわせて中間取りまとめがなされておるところでございます。その資料自体は、先ほどの3月の委員長まとめの現状のところをさらにこの半年の情報の収集整理などによって補強するというようなことで、ノリ不作の原因については1の[2]のところにありますように、珪藻の広範なかつ連続的な発生に伴うノリ養殖漁場での栄養塩の低下による著しい色落ちが起こったが、これは、秋期の大量降雨に引き続く晴天の持続に高水温が加わったかなり異常な気象・海象によって発生したと考えられること。現時点でのそういった異常な気象・海象及び珪藻赤潮の発生の確実な予測は難しいこと。難しいけれども、現時点でできることはやって、今期のノリ作に適切に対応していくということで、具体的に[4]のところの対応が示されている。具体的には、関係4県と国が連携してノリ網の減柵などの漁場利用の適正化とか、覆砂・耕耘による漁場環境保全措置、それから、漁場関係のモニタリングと情報伝達の強化、それからまた、酸処理の適正使用というようなことが提言されています。
 それから、ノリ問題の背景としての二枚貝の問題ということで、二枚貝の不漁は昨今ではなくて、70年半ばぐらいを1つのピークに長期的な減少が続いているのではないかということでありまして、また、1枚めくっていただきまして、その要因として底質の泥化、それから、貧酸素水塊の発生など、底層環境の変化が関与しているのではないか。ただ、貝類自体の生理的な状況の違いなどもあり、まだ原因を特定するには至っていないので、引き続き、底層環境の変化の実態の把握や、二枚貝の生理・生態との関係の調査研究が必要であるということでございます。
 それで、そういったことも踏まえて、環境省として環境基準の類型当てはめ、それから、暫定目標の設定などを行って、その以前からのモニタリング調査ということもやってきておるわけですけれども、有明海につきましてはここ数年、環境基準もしくは暫定目標値の前後で横ばいで推移しているということで、今回のこういったノリの不作、それから、二枚貝の不漁問題がそういったモニタリングの結果にあらわれてこないということで、二枚貝の問題等も背景にあるということも踏まえまして、環境省として水質のみならず、底質や底生生物も含めた調査をする必要があるということで、本年の2月に緊急に有明海の調査を実施して、さらにはその結果も踏まえて8月に、特に貧酸素水塊との関係も見るということで同様の調査を行ってきております。その調査のことは添付資料の4でございますがつけてございます。
 ちょっと説明が長くなって申しわけないのですが、その調査の概要だけ簡単に御説明させていただきますと、添付資料の4でございますけれども、これは8月の調査の結果に2月との対比で書いてございますけれども、8月は水温とか塩分に顕著な成層が見られると。特に、成層が湾央から湾奥部、それから諫早湾で顕著であるということでございます。そういったことで、貧酸素水塊が発生しやすいような成層状況になっていると。
 それから、水質のところでございますが、2月の調査ではまさにノリの不作の原因となっていた珪藻プランクトンが広範に増殖して赤潮の状態となっているものを測っているというようなこともありまして、DOの飽和濃度を超えるというように上層、底層でも非常にDOが多かったのですが、今回の8月では特に下層の部分で有明海の佐賀県側や諫早湾の中央部湾口部において貧酸素の状況ということでございました。ただ、下層においても硫化物イオンは定量下限値未満ということでありました。それから無機態栄養塩、これもまさに2月は赤潮の状態を表して、非常に少なくなっていると。植物プランクトンが摂取してしまっている状況ということですが、今回8月は全燐、全窒素の値に比べて特異な値にはなっていないということ、また、クロロフィル-aにつきましては2月は非常に多かったわけですけれども、今回は全体に低くて、2月のような赤潮状態ではないということでした。ただ、植物プランクトンの細胞数は特に上層において冬期同様に多いところも見られたわけですけれども、これについては冬期はリゾソネリアとかかなり大型の珪藻プランクトンで、今回の植物プランクトン自体はかなり小型なものであったということでございます。
 それから、底質につきましては、余り過去からのデータがないわけでして、今回かなり詳しく調べてはみたのですが、有明海の状況として、2月、8月共通として湾奥部、それから諫早湾で粒径が細かくて、そのこともあってか、強熱減量、COD、TOCなどの有機物が非常に高いという状況にあったと。それから、今回、夏の8月の調査においては、粒径とか有機物とも連動して湾奥部、それから諫早湾の中央部で酸化還元電位が低く、酸素が少ない状態、いわゆる還元状態であったと。ただし、硫化物については湾奥部で若干高い値が見られるにとどまっているということで、有機物が多い割には硫化物がそれほど高くないと。これは2月も8月も共通でございます。
 それから、底質のTBTなどの有機スズが第三者審議会の中でも高いところがあるのではないかという懸念が示されたこともありまして、今回有機スズのデータをはかっておりますが、特段の高い値は見られなかったということであります。
 それから、底生生物につきましては、2月も8月も1平方メートルあたりの個体数が1,000を切るような調査地点が20地点中7~8点ということで、かなり見られるということでございます。それから、今回8月は特に貧酸素の問題とも関連して、諫早湾中央部では種類、個体数、湿重量とも少なく、また湾奥部の佐賀県側でも個体数が少ないということでございました。
 それで、全体的なまとめとして、次のページでございますけれども、特に注目されるのが底生生物でありまして、かなり冬季・夏季ともに底生生物の少ない地点が散見されると。それから、過去の72年に一斉調査のような文献がございまして、そういった72年の数字、それが2,000から数万というようなオーダーだったのが、今回は数百から数千という、1オーダー違うような、30年の経過の中でかなり減少があるのではないかということが伺えると。それから、今回の夏場は貧酸素水塊の発生との関係もあり、その貧酸素のところでは底生生物も少ないということがありました。ただ、貧酸素については統計的にも初めて90年代になって夏季にはかなり頻繁に見られるということもいわれているので、この現象が本年度特有のものであるかということは不明であること。いずれにしましても、これがいかなる要因によって起こっているのか、また、ノリ不作との関係はまだ2回の調査では当然明らかではないので、関係省庁共同でやっている総合調査、それから、その結果も踏まえた第三者審議会の検討というところでまたなされるわけですけれども、環境省でも引き続きこういった底質とか底生生物とかという項目にも着目したモニタリングを継続してやっていきたいこと。さらには、水質のみならずそういった底質とか底生生物も含めた、こういった有明海などの、いわゆる生物生産力の豊かな海についての、いわゆる浅海域というか、浅い海についての環境をどのように評価したらいいのかという点も含めて、先ほどのエコシステムアプローチまでにはいかないのですけれども、少なくとも底生生物も含めた評価の手法みたいなものを検討していきたいというふうに考えておるところでございます。
 それで、すみません、ちょっとまた話を戻っていただきまして、資料の2ページにちょっと戻っていただきまして、そういうことで、最後の今後の対応のところで環境省としてもというところでありますけれども、第三者委員会の検討状況も踏まえて、何が問題であって、その解決や軽減のために何が必要でありかつ有効かという観点から適切な対応を今後とも検討していきたいということでございますが、その2ページの上のところ3つ○がついておりますが、周辺情報ではありますがちょっと御説明させていただきますと、1つはノリ不作の原因との関連で諫早湾干拓事業が原因ではないか。そのために排水門を早期に開放すべきではないかといった意見があるわけです。第三者委員会の検討においても、現時点ではノリ不作と諫早湾干拓事業の因果関係については明らかではないということで、まずは現状の分析とそれに伴うノリ不作の原因解明ということで、排水門をあけて海水を入れるということではなくて、その前に調査をすべきだということで、少なくとも1年間は排水門から海水を入れることなく現状把握を行うべきということになっております。ただ、このノリ不作の問題とは別の観点から、諫早湾干拓事業については、時のアセスの再評価第三者委員会の答申を受けて、そこの2つ目の○にあります[1]から[4]の観点からの総合的な事業の見直しということが年末に向けて行われているということでございます。その中で防災機能の十全の発揮や土地の早期の利用とともに、環境への一層の配慮ということが言われております。
 あと、それから、最後にその他のところで、地元の自治体からこのノリ不作の問題に関連して調査の実施とか対策の要望とともに、有明海の再生のための特別措置法の制定ということが言われております。これにつきましては、有明海の漁業者の要望に対する谷津前農水大臣からの発言の中で、瀬戸内法のような法律を環境省、環境大臣の方にお願いしたいと言うことが各県もしくは漁業者が特別立法ということを言い始めた発端だったわけですけれども、実際に瀬戸内法のような工業排水の規制立法がこの問題に必要かどうかというような検討が県でも行われ、今現在の要望としては水産業の振興、それから漁場環境の保全というような観点からの立法措置というような中身になっております。いずれにしても、環境保全上どういうふうに対処するかという点につきましては、このノリ不作等の問題の原因の解明を踏まえて、何が問題で、そのためには何をすべきか。また、何をするのが有効かという観点から検討していく必要があるというふうに考えておりますので、また、今後ともいろいろ御指導を受ける場面があると思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

【小柳地下水・地盤環境室長】 事務局からの報告の最後になりますが、参考資料の8をお手元に御用意いただきたいと思います。硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に係る水質汚染対策マニュアルでございます。このマニュアル策定の背景でございますが、昨年の12月に中央環境審議会より水質汚濁防止法に基づく排出水の排出、地下浸透水の浸透等の規制に係る項目追加等について答申をいただきまして、その一環としまして、先ほど仁井課長から説明しましたように、硝酸性窒素等につきまして、水質汚濁防止法の施行令の規制対象に、有害物質としての規制対象に追加したところでございます。昨年12月にいただきました答申の中で、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の対策としまして、2つの点について御指摘をいただいたところでございます。その1つは、今申し上げましたような水質汚濁防止法等によります全国一律の対策でございますが、これのみでは汚染の解消が図れないと考えられる地域につきましては、この地域の特性に応じた有効な対策を講じることが必要であるということもあわせて御指摘をいただきました。そこで、私どもの方では今年の7月でございますが、各地域の特性に応じた有効な対策が図られるようにという観点から、どのような形で対策を進めていけばよいのかという、都道府県等が対策を策定し、推進する際の参考となるように本マニュアルを定めたものでございまして、今年の7月に周知したところでございます。この内容につきましての御紹介は省略させていただきますが、かいつまんで申し上げますと、調査・対策の手順、それからどのように調査を実施するのかという実施の方法、その実施の結果を踏まえた対策対象地域の範囲の確定、その地域でどのような対策を行うのかという検討と、その検討結果を踏まえた対策の推進、これらの進め方を取りまとめたものでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。

【村岡部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、御意見とか感想をお受けいたしますが、今まで報告いただきましたそれぞれの内容についての検討委員会等でここにいらっしゃる委員の方々も何人か参加しておられますので、そういった委員の方からも追加説明あるいは御感想などいただくことも歓迎したいと思います。いかがでしょうか。

【清水委員】 最初に御説明をいただいた水生生物保全水質検討会の話ですけれども、こういうのは先ほど鈴木先生からもお話がありましたように、最終的には生態系保全というところに結びつくのだろうと思いますので、その方向を頭に入れてぜひ検討をしていただきたいということと、もう一つは、内分泌かく乱物質に関しては、安全課の方で魚類を念頭に置いたリスク評価なんかもされているわけですね。ああいうものとのそごがないようにぜひ環境省として縦割りの弊害が起きないようなことでお考えをいただきたいというふうに思います。

【村岡部会長】 ほかにございますか。

【鈴木委員】 今、清水委員のおっしゃった話に絡むのですけれども、これまでの考え方から言えば、例えば生物はどの生物も同じような内分泌調節機構を持っていて、したがって、あるテスト動物を使えばいろいろなことが全部一様にわかるはずだというような考え方も片方にあったわけですね。それではだめだと。やはり一つ一つの動物、野生生物も含めてもっと丁寧に我々はやらないと、その辺のところがそう簡単にいかないよという、その段階に入ってきたのではないかなと、そう思っています。これはモニタリングは私より詳しいかもしれません。

【村岡部会長】 ほかにございますか。どうぞ。

【三浦委員】 資料の7についてのお尋ねでもよろしいのでしょうか。私は佐賀なものですから、有明海がどうしても気になるのですが、先ほどの御説明で、水質だけでなくて底質の方にもちゃんと監視の目を届くように体制を整えているというふうにお話がありましたので、大変喜んでおります。といいますのは、私どもの懸念はいわゆる、例えば燐なんかそうなのですけれども、水の中に溶けている量は基準値を満たしたとしても、それが底質、泥に吸着されて、そっちの方に負荷が移っているだけではないかという懸念を抱いております。事実、データとしてもそういうのが出ております。しかし、そういうふうにして泥が、底泥が吸着してくれたとしても、そこにもおのずとキャパシティがあるはずで、いつかは限界に達する心配があるわけですね。そういう意味で、やはり底泥の方にもしっかり監視の目を届かせていただければというふうに思う次第です。
 ついでにもう一つお尋ねといいますか、資料8について、ちょっとピントが外れているかもしれませんがお尋ねしたいのは、いわゆる硝酸性の窒素の汚染の話ですけれども、たまたま私ども佐賀の方で、地下水の調査を農村地域でやっておりまして、気がついたのは地下水が結構深いところで、いわゆるWHOの水道水の基準を超えているところがございます。農業関係の調査では全国的にそれが確かに広まっているのだそうでございます。それで、こういった施肥による影響だと感じておるのですが、そういったのは、やはり環境省の方のいわば監視対象とやはりなるのでしょうか。そこをお尋ねしたいと思います。
 以上でございます。

【村岡部会長】 それでは、有明海の方の御質問につきまして、先に。

【柴垣閉鎖性海域対策室長】 今の御質問のとおりでございまして、底質中の窒素、燐が、またそれが溶出したり、それから、またそこに底生生物がいろいろな役割を果たしているということもございまして、窒素、燐、それから有機物の水中、もしくは底質の中での物質の収支、それから物質の循環ですね、その中で底生生物などの果たしている役割などにも着目して、今後の課題としてそういったところにも環境としての評価手法や評価軸みたいなものをつくっていけたらというふうに考えております。

【小柳地下水・地盤環境室長】 2番目の御質問の硝酸性窒素の観点でございますが、私どもの方では地下水の汚染という観点からモニタリングをしておりまして、この硝酸性窒素につきましては平成11年に環境基準を設定しておりますが、ほかの物質に比べますと基準を超える率が非常に高くなっております。今まで平均的には2%ぐらいの基準の超過率だったのですが、この基準を追加することによって5%ぐらいにはね上がっております。それで、先ほど水質汚染対策マニュアルについて御紹介したのですが、このマニュアルを策定したときに同時に、本日御紹介はしませんでしたけれども、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に係る土壌管理指針というものをあわせて策定しまして、これを周知しているところでございます。これにつきましては、特に施肥の観点から非常に密接な関連がございますので、この管理指針を策定する際には農林水産省と十分事前に調整をとりまして、環境省の方からは環境担当部局の方に、農水省の方からは関連の部局の方に御周知いただくという形であわせて決定をしているところでございます。

【村岡部会長】 三浦委員、よろしいですか。三浦委員がおっしゃった深い地下水というのはどれぐらいの深さのことをおっしゃっているのでしょうか。

【三浦委員】 私どもが調査したのは10メートルから20メートルぐらい。もう一つ、別の方が調査されたのでは、100メートル近いところまで及んでおるようです。
 ついででございますが、窒素の影響で土壌の透水性というのでしょうか、化学物質を通す能力が増すというのがメカニズムとしてありそうだということをつかんでおります。
 以上でございます。

【村岡部会長】 ありがとうございました。
 ほかに、須藤委員どうぞ。

【須藤委員】 1つお願いをさせていただきます。有明海の資料なのでございますが、いろいろ御説明いただいたとおりではございますけれども、この問題のお手伝いをさせていただいている、先ほどの環境基準もそうですし、今度のノリ不作の委員会でもそうなのですが、環境省独自でほとんどデータを保持していなかったということに大変私は心配をいたしておりました。なぜかといいますと、例えば、有明海の諫早湾の事業にいたしましても、事業者側は諫早湾に全く環境影響はないということで、貧酸素水塊もないということをおっしゃっておられたわけですが、先ほどお話がございましたように、環境省ではかれば十分にというか、一番低いときは0.8mg/lとか、そういう濃度の貧酸素水塊が見出せるということもございまして、もちろんその時点では農村振興局も、それから水産庁も同じようなデータを発表されているのですけれども、以前はそういうものはなかった、今年初めて起こったとは思えないわけでございますので、やはり有明海、大変難しい水域だと思いますので、今年に限らず先ほどのような調査をずっとというか、要するに先ほどの環境基準の見直しもございますので、しばらくは私は継続をしていただきたいというのがお願いでございます。
 それから、発言のついででございますが、先ほど清水先生がおっしゃった生態系保全の問題でございますが、私も当然この水生生物に対しては生態系保全といいましょうか、生態影響といいましょうか、その観点で対応するべきだとは理想的には思いますけれども、現在の環境基本法からいう、環境基準の枠組みというのが生活環境項目と健康項目で、とりあえずはまず対応としては生活環境項目でということになりますと、主として我々が利用する水産生物とその飼料というか、えさというのですか、植物プランクトンとかあるいはそのほかの無脊椎動物とかですね、そういうことからまずやってみようという時点でございますので、最終的にはそれを目指しますけれども、とりあえずは水産生物の方からアプローチをいたしまして、環境基準まで行かないかもしれませんが、水質目標をそれぞれ決めていきたいということで、現在8項目ですか、それについて検討を進めているという状況でございます。

【村岡部会長】 ありがとうございました。ほかにございますか。森田委員。

【森田委員】 水の環境をどう保全するかという、少し理念的な部分とは若干関係するのですが水質汚濁防止法を始めとして産業汚染、それから、その後に引き続く水の高度利用といったものを中心にして進められてきた水の政策みたいなものが、多分21世紀の新しい環境の理念の中で重要な位置を占めつつ、しかし、そこからあふれてきている部分というのが、国民のサイドに相当あるかなという感じがします。それに対応した形で、新しい概念での水政策というのが多分必要になってきている。例えばですが、生活環境項目の中で、水類域の指定という概念は、多分に利水の観点が非常に強くて、例えば、水産サイドがどんなふうに使うかとか、そういうところに少しこだわりがあるのですけれども、しかし、もう一度振り返って原点に立ちますと、生活環境として国民が非常に快適な環境をエンジョイしたいと、そういったニーズが非常に高まってきている部分に対して、国家目標としてどう設定するかという観点が非常に高まってきているかなと。そこの部分は、鈴木先生がおっしゃったような生態系の保全といったものと密接な関係があるのだろうと思うのですが、個々の部分の最適化を図るということは非常に重要ですが、同時にそれらの全体的なトレンドとしてどういう方向を目指すかということを含めた形でできれば運用していただければというように感じます。

【村岡部会長】 ありがとうございます。何か、関連した御意見ございますか。

【松尾委員】 ちょっと関連しないのもあるのですけれども。

【村岡部会長】 では、別の意見でも結構でございます。

【松尾委員】 関連する点としては、森田さんの御意見に私は賛成でありまして、ぜひ水環境という概念自体が恐らくこうした生態系を含む水環境という概念へ広がってきていると思うのですね。ですから、そういう意味で扱うアメニティの問題から生態系の問題からいろいろなものが水環境にかかわっています、要望が出ていると思うので、ぜひそれをやっていきたいと思います。
 それから、もう一つは、御説明のあった第三者委員会についてです。私はもっと第三者的立場で非常に興味本位の部分もあるのですが、この有明海の問題について、潮受堤防というか、堰の存在が、非常に政治的な形でもって議論され始めていると思うのですけれども、この裏の地図を見ると、有明海は非常に広い領域であって、なぜこの堤防が有明海全体の問題まで及ぶのかというのがもうちょっとよく、何かスケールの感覚からいうとわからないところがあると思うのですが、これでどこに今、一番深刻な被害があって、それがこの諫早湾の埋め立てとの関係で可能性があるのか、何かその辺はちょっとどなたか御説明いただけるでしょうか。あるいは、この場は悪いでしょうか、それも含めてですが。

【清水委員】 余り、いい場ではないと思いますけれども、ごく簡単に申し上げますと、それから、もう一つ申し上げておきますけれども、もう一つというか、冒頭に申し上げておきますけれども、私よく諫早湾の委員会大変ですねと言われるのですね。そのたびに、いえ、あれは諫早湾の委員会ではなくて有明海の委員会ですと申し上げているのですが、今、松尾さんがおっしゃったあそこの締め切りがどのくらいの影響を与えているかということに関して、定量的な解析はこれからです。ただ、いろいろ海洋の方たちが関係の学会で議論をされているのは、やはりあれを締め切ると有明海全体の流動に影響があるのではないかと。実際に、流動、流行が前よりは少し変わってきているらしいと。どのくらいかという定量的な話は10%とか20%とかという話もありまして、まだ決着はついていませんけれども、ということになる。それは、傍証としては、例えば透明度が上がってきているというのは、浮泥が沈下をしているのです。それはやはり流動が減っているのだからと。停滞性が増すということは何を意味をするかといえば、赤潮が発生する引き金にもなりかねない。現実に、有明海全体の赤潮を見ますとふえております。これはきちんと地域的に見ていかないといけないのですが、例えば、佐賀、長崎と言ったところではやはり確実にふえていると思うのです。福岡、熊本に関しては若干問題はあるかもしれません。ですから、そういうふうに有明海の環境が変わってきたことに関して、あそこの潮受堤防全体がやはり何らかの影響を与えているだろうということは随分多くの方が議論されています。委員会として、必ずしもそれに関して結論は出していませんけれども、先ほどお話になった国の方の調査がありますけれども、そちらでもって30年間、かなり長期のデータを集めてそれを解析をして、一体いつごろからどんなふうになってきたか、モデルも使いながら検討をしていくということで、まだ結論は出ていませんけれども、そんなような議論がありますということを申し上げておきます。よろしゅうございますか。

【松尾委員】 余りにも興味本位で議論し過ぎない方がよいと思うのですが、もう少し伺いたいと思います。
 それでね、富栄養化が進むということと、この堤防とどういう関係が……、負荷量自体は減っているのではないかと思うのですが、富栄養化が進むというのは、実際の燐、窒素が暫定目標値はいろいろ変わってきていて、基本的には燐、窒素自体は減る方向に、珪藻が問題だというようなところがあったのかもしれませんが、その辺の様子ですと、もう一つわからないような感じを受けるのですが。

【清水委員】 これもまだ議論があるところで、結論が出ているわけではありませんけれども、議論を御紹介をいたしますと、やはりあそこの締め切られた中に干潟が随分あるわけですね。その干潟の浄化能力がなくなったことは確かですね。ですから、そういう意味では負荷は減る方向ではなくて、ふえているのでしょうという議論があります。

【谷山委員】 有明海に関連してお聞きしたいのですが。

【村岡部会長】 どうぞ。

【谷山委員】 清水先生にお聞きしたいのですが。有明海の干潟の全体面積に比べると、諫早湾の干潟面積は極めて少ないと思いますね。定量的に全然影響なしとは言えないかもしれないけれど、非常に少ないのにノリに影響があるのかという点。それから富栄養化は、有明海に注ぐ負荷は主に筑後川等の河川から出ていて、諫早湾からは少ないのではないかという点。それから、もう1点ですが、富栄養化に関係すると思われるノリ生産の方式です。ノリ生産に、永年にわたり、肥料というか、硫安のようなものを大量にノリ業者が投入してノリの増産を図ってきたこと。さらに、また菌を殺すため、酸処理を行ってきたことです。これが海の汚染に相当な悪影響を与えているのではないですか。もしも諫早湾の堤防が原因とすると、1970年から影響が出るわけはないと思うのですが。1970年からいろいろな影響が蓄積して、ある時点で閾値に達し、高温とあいまって、一気に昨年ですか、そういう被害を与えたのではないかと推測するのが極めて常識的なのではないかなと私は思うのですが。それは科学的にこれから証明されることだと思いますが、そこらあたり、どういう先生の御意見なのか。また、委員会で、そういう議論は出ていないのでしょうか。

【清水委員】 問題が混同されているようなので、少し整理をしたいと思いますけれども、ノリの不作は昨年突然起きた、しかも、その不漁が非常に大きかったのでこういう大きな問題になったわけです。その原因というのは、柴垣さんからも御説明がありましたように、珪藻赤潮がノリの漁期全体を覆ってしまったために、それに栄養源をとられてノリが成長できなくなってああいう不作が起きたと、そういう問題でございます。その珪藻赤潮が起きて、ノリの成長に影響を与えるという現象は、実は毎年起きております。ほとんど毎年起きる。ただし、それがノリの漁期の終わりの方に起きるのが普通なものですから、大体がそれが起きて、その年のノリが終わるというのが例年のことです。それが、実は早く始まって長く続いたために昨年のようなことが起きたと。今、70年代からとおっしゃったのは、これは二枚貝、有明海の漁業というのはその対象の非常に大きな、主な部分というのが二枚貝なのですね。その二枚貝の減少というのは70年代の後半から起きているということでございまして、ノリのお話と、それから二枚貝のお話とはちょっと別でございます。
 それから、干潟のパーセンテージが低いからというのは、それはそういうこともありましょうけれども、これはやってみないとわかりませんし、局所的に何か起きたときに、それがどういうふうに全体に影響が及んでいくかというのは、まだこれは考えてみないとわからないということがあろうかと思います。ですから、私のまとめでも、それから9月にあれした概要でもノリの問題、去年のノリの不作の問題と、それからかなり前から起きている二枚貝の問題というのは区別をして議論をしているということだけちょっと理解をしていただければと思います。

【須藤委員】 今の問題と関係して、干潟の浄化の問題、多少私も携わっておりますので、ちょっと考え方だけ、実測値はそれほど十分ではないのですが、環境省にも諫早湾の流域の窒素と燐の汚濁発生量は計算していただくと1.2トンと0.2トンだったかな、ちょっとはっきり、丸めるとそんなぐらいの数字でございます。干潟の部分が、3,550ヘクタールのうち、1,500ぐらいだったと思います。ちょっと手元に資料がございませんが、間違ったら後で直します、ぐらいの干潟が実はございました。そこに、当然汚濁、ほとんど下水道も不十分だし、工場排水の処理も不十分ですが、そこに本明川を主流として汚濁源が入りますけれども、そこで微生物、それからプランクトン、あるいは無脊椎動物、特に環形動物、軟体動物、これが食物連鎖で摂取をいたします。ですから、諫早湾の干潟より外へ出たときにはかなり水質としては良好な状態になっているというぐらいで、水質のデータを見ればそのようでございます。なぜ、そうなるかというと、先生おっしゃるように、そこで蓄積するのではないかというのですが、あそこでは日本で一番水鳥の来るところです。水鳥は、今の環形動物、軟体動物を連続的に摂取していますので、最高1万羽がどのぐらいとるかというのはちゃんと計算しなくてはわかりませんけれども、水鳥で摂取をして系外に排除していると、こういう浄化。それから、もちろん先生おっしゃるように脱窒というような、そういう問題も当然ございますね。鳥の、今現状は鳥は多分数十羽だったですかね、とにかく1万羽ぐらいのところが、これも数字がすみません、間違ったらごめんなさい、もう本当に勘定するほどしかいないと。こういうことで、水門から今出たところの汚濁負荷量というのは、私はいつもここで指摘しているのですけれども、ちゃんと計算してください、あるいは測ってくださいというので、今度の仕事の中に、水門を開放するというときに、まず汚濁負荷量の計算ですね、要するに川からではなくて水門からどれだけ出るのかということで、先ほどの汚濁負荷量とほとんど同じぐらいが私は出ているのではないかと推定はしているので、そうなってくると、水門の先が富栄養化する、当然富栄養化して、赤潮は多分ずっと私も観察してプランクトンも同定しているのですけれども、結構出るのです。赤潮になるのですね。ですから、確かに全体パーセントは2~3%だけれども、そこが1つの汚濁の、例えば植物プランクトンの発生の場になる可能性というのはあるので、ただ、私は何の証明もしておりません。それが回るという可能性ももちろんなくはないだろうと。ただ、これはまだ学問的でございませんので推定ではございますけれども、とにかく水門を出たところが富栄養化するということだけは多分間違いなかろうと、こう思っております。

【清水委員】 もう一つだけ申し上げることを忘れておりました。ノリの漁民が魚粉などをまいてたくさんやっていたろうという、それは事実ではございません。一部でもって施肥ということをやりますけれども、それは非常に限られたことで、有明の環境基準を決めるときにも随分他府県にも伺いましたけれども、それはございませんので。
 それから、酸処理については、これはなかなか実態が難しいところもありますけれども、今回、その対策にも入っておりますように、非常に厳密にちゃんと決められたものを決められた量だけ使って、しかも捨てないようにというようなことでやるようになっております。

【池田委員】 やはり有明海の件なのですが、私、力学屋ですので、基本的に力学の河川の方をやっているのですが、ちょっと先ほどの話で気になっているのは、流動が変化していると。特に大潮期に10%とか20%ぐらいの変化があるということをおっしゃったと思うのですが、恐らくここは湾内の振動で潮汐差が非常に大きい場所だろうと思うのですね。そこでこういう湾の形状を変えるようなことを行ったときに、どれぐらいの潮汐差があるかというのは、これは力学的な問題ですから、割と簡単にわかるだろうと思うのですね。潮汐による流動が減少しますと、基本的にはやはり成層化、これはリチャードソン数というものがきいてくると思うのですが、成層化が強化されるということで、多分湾内での2%か3%の浄化機能というよりも、むしろ流動の方もかなりきいてきているのではないかなと。潮汐差が少なくなりますと、基本的にはまた有明海とそれから外海との物質の交換が当然減ってきますので、いろいろな面で相乗的にきいているのかなという印象を持ったのですが。こういう力学的な面での検討もなされているのかどうか、そのあたりをちょっとお伺いしたいと思いました。

【清水委員】 先ほど、ちょっと申し上げましたけれども、調査が2つありまして、1つの方は環境がどういうふうに変わってきたかという部分をやっておりますので、そこでモデルなんかもつくりますので、これから定量的な解析は進むと思いますけれども、当然そういうことでございます。
 それから、今、先生から伺ったような議論は海洋の関係の学会で盛んに行われていて、そちらの方でも検討が進んでいると聞いております。

【村岡部会長】 有明海の質疑応答が続いておりますけれども、これは報告事項に関して自由な意見をということで聞いておりますが、余り鋭くなりますと清水先生が何か……、ということで、この辺にさせていただきたいと思います。

【松尾委員】 窒素と燐の総量規制を決めることを、前の部会のときに決めましたよね。あれの進行状況は今どうなっているか、ちょっとお話しいただきたいのですが。実は、私、この間韓国へ行って、何か話せと言われて、決めたのだと言ったのですが、どうもいろいろ聞いてみると、実際まだ動いていないという話のようなので、実際のちょっと状況をお聞かせいただきたいと思うのですが。

【柴垣閉鎖性海域対策室長】 総量規制に窒素と燐を加えるということは、昨年の2月、それから10月の水質部会の答申をいただいておりまして、現在もう最後の詰めといいますか、法制局との法制上の手続といいますか、政令改正の作業が、ちょっといろいろ地名を正確に地図と照合したりというような、非常に事務的なことで長引いておりまして、おくれておりまして、ただもう最終段階に入っておりますので、速やかに政令を改正して、16年目標ということで動かすということは変わっておりませんので、答申どおりやっていきたいと思っております。

【村岡部会長】 ありがとうございました。
 それでは、そろそろ時間も来ておりますので、その他のこの議題につきましての質疑応答、フリーディスカッションはこれぐらいにさせていただきたいと思います。
 つきましては、これで本日予定いたしました議事はすべて終わりました。2つの専門委員会を立ち上げさせていただいたこと、それから報告事項に関する重要な討議を行って、いろいろ貴重な意見もいただきましたので、これを記録に残しましてまた今後の委員会等での内容に審議に反映させていただきたいというふうに思います。
 それでは、次回の水環境部会は事務局の現時点の見込みとしましては、年内をめどに第2回目を開催したいということを聞いております。それで、御案内がいずれ行くと思いますので、その折にはお繰り合わせの上、御出席をお願いしたいと思います。
 それでは、本日は非常に活発な御意見、御質問をいただき、どうもありがとうございました。これで終わらせていただきます。