水銀大気排出対策小委員会(第5回) 議事録

日時

平成26年8月18日(月)10:00~12:00

場所

法曹会館2階 高砂の間

議事次第

1.開会

2.議事

  1. (1)前回までの委員会における指摘事項について
  2. (2)水俣条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策について(答申)骨子案について
  3. (3)その他

3.閉会

配付資料一覧

資料

資料1 委員名簿

資料2 前回までの委員会における指摘事項について

資料3 水俣条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策について(答申)骨子案

資料4 前回の委員会における委員からの主な御意見

議事録

午前10時00分 開会

【是澤大気環境課長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会大気・騒音振動部会第5回水銀大気排出対策小委員会を開催いたします。

 委員の先生方におかれましては、ご多忙中にもかかわらずご出席をいただき、大変ありがとうございます。本日、委員総数20名のうち16名の委員の方にご出席をいただいておりまして、定足数である過半数に達していることをご報告させていただきます。

 次に、配付資料の確認をいたします。議事次第に書いておりますとおり、資料1から4までの資料をお配りしてございます。不足しているもの等ございましたら事務局にお申しつけくださるようお願いいたします。また、委員の先生方の席上には、前回同様、ピンクのファイルに水俣条約の仮訳、原文、大気汚染防止法をとじて置かせていただいております。こちらの資料は、机上資料とさせていただきますので、委員会終了後に回収をさせていただきます。

 マスコミの方におかれましては、恐れ入りますが、カメラ撮影は冒頭のみとさせていただいておりますので、ご協力をお願いいたします。ここまでとさせていただきます。

 それでは、以降の進行を坂本委員長にお願いいたします。

【坂本委員長】 皆さん、おはようございます。

 本日は、ご多忙のところをお集まりいただき、ありがとうございます。今回の小委員会では、これまでの小委員会で、各委員よりご指摘をいただいた点について事務局より回答をいただいた後、水銀大気排出対策にかかる答申の骨子案についてご議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、早速ですが、議事に入ります。

 まず議題1、前回までの委員会における指摘事項についてです。

 事務局から説明をお願いいたします。

【髙林総務課課長補佐】 それでは、資料2の別添1及び別添2に基づきましてご説明申し上げます。

 まず別添1でございますが、米国及びEUにおける水銀大気排出規制の概要ということでございます。タイトルの右肩に1という形で脚注を打たせていただいておりますが、現時点で可能な限りの文献調査の結果を取りまとめたものでございまして、全てを網羅できているかというところはございますが、現時点のということでご報告をさせていただきます。

 まず米国の規制の概要でございますが、米国におきましては、有害大気汚染物質、これがHazardous air pollutionsの略でHAPsというふうに呼ばれておりますが、このHAPsの排出規制ということでClean Air Actの第112条というものがございます。これに基づきまして、後で出てきます廃棄物焼却施設以外は、これに基づいての規制が行われているということでございます。4行目ぐらいにございますが、このSection112に基づきまして、189種類のHAPsが、もうこれは法律でリストとして示されておりまして、その中に水銀も含まれていると。EPAは、排出源カテゴリー、排出施設の分類ごとに、このHAPsについての排出基準を決めまして、この排出基準がNESHAPと呼ばれております。National Emission Standards for Hazardous Air Pollutantsというものでございますけれども、これを設定するというふうになっております。また、そのNESHAPの中では、Maximum Achievable Control Technology、MACTというふうに呼ばれておりますけれども、Maximum Achievableですので、我々のほうでも議論しておりますbest available technologyのBATと同じようなよく似た概念でMACT Standardというものがございまして、これでもって排出基準を決めると、新設と既存とそれぞれについて決めるというふうになっております。

 NESHAPを決めるのが、その大型の施設のmajor sourceというのと、小型のarea sourceがございまして、このmajor sourceについてはこのMACTで決めるということになってございます。水銀に関して、major sourceとして指定されている規制対象といたしましては、以下の5種類ございまして、石炭燃焼発電ユニット、石炭火力発電所というふうに考えていいかと思います。石炭火力発電所、また、次は石炭のボイラー、また、廃棄物の中でも有害廃棄物だけはこちらということになっておりますが、有害廃棄物の焼却施設、セメントの製造施設、最後のものは、もう日本では、この水銀法での製造というのはなされていないかと思いますが、水銀法塩素アルカリ工場というものがございます。

 もう一つ、第129条というのがございまして、こちらで固形廃棄物の焼却施設からの大気排出を規制しているということになってございます。こちらでは、水銀を含む11種類の物質が指定されておりまして、この11種類について、新規と既存についての基準を決めると。また、その基準を決める際には、この1ページ目の一番下でございますが、先ほどご説明させていただきましたSection112と同様のMACT型の、Maximum Achievable Control Technology型のアプローチでもって基準を決めなさいということになってございます。

 1ページおめくりいただきまして、その基準で、実際に水銀についての基準が決められているのが、この2ページ目冒頭の6種類でございます。大小の一般廃棄物焼却施設、産業廃棄物の焼却ユニット、また医療性廃棄物の焼却ユニット、その他というのがございますけれども、及び下水汚泥の焼却ユニットということでございます。これらにつきましては、112のほうも129のほうも両方でございますけれども、排出基準は、いずれも数値基準という形で定められております。その数値ですけれども、具体的には、大方は排ガス中の水銀濃度ということで、mg/dscm、dscmというのは独特の単位ですけれども、これは体積を表すものでございますので、重さ分の体積というような濃度の基準で表されているものが多くございまして、一部、製品の生産量当たりの水銀排出量ですとか、原料から排ガスへの削減率という形で定められているものもございます。

 一方、EUですけれども、EUにおきましては、産業排出指令というEU指令がございまして、これにより産業からの汚染物質の排出が規制されていると。ご案内のとおりかと思いますが、EUにおける指令、directiveというのは1種のEU内の条約でございますが、これ自体が法律ということよりは、自国の法規にそれぞれの国が取り込んで執行しているということでございます。この産業排出指令の中で大気への排出に関しましては、通常の操業状態において、排出ガスがbest available techniquesと、BATに係る排出レベルを超過しないように排出限度値を定めることというふうに求めておりまして、この指令自体には、BATの水準というのがどのぐらいなんだという数字が書かれているわけではないということでございます。

 ただし、EUのほうで、この「BAT参照文書」、Best Available Techniques Reference Document、これをBREFsというふうに呼ばれておりますけれども、BREFsというものも取りまとめております。このBREFsは33種類の産業ごとに作成されておりまして、まず、これがBATですよという技術がBREFsの中で示されまして、あわせて、その技術をその産業で採用した場合には、このぐらいが達成されるはずですねという排出水準が濃度でもって示されています。これがBAT-Associated Emission LevelということでBAT-AELというふうに呼ばれております。ですので、BAT-AELはそのまま排出基準というふうになるわけではございませんが、先ほど見ましたように最終的に排出限度値を決める際には、このBAT-AELを考慮しなさいということになってございます。具体的に33のBREFsの中で、水銀に関してBAT-AELが現在設定されている排出カテゴリーというのは、以下の6種類という形になってございます。

 規制については以上でございます。

 別添2のインベントリーのほうでございます。こちらはちょっと簡単にご説明させていただこうと思います。

 こちらは、米国と英国について調べさせていただきました。1次情報をそれぞれどういうふうに集めているかというところを極力とりたいというふうに思ったんですけれども、なかなかそこまではっきりとしたことはわかりませんで、わかった限りで書かせていただいております。米、英、両方ともなんですが、National Inventoryをつくるに当たりましては、当たり前といえば当たり前なんですけれども、いろんなところから情報を集めてきて、それは強制的にといいますか、法に基づいて強制的に集められるものもれば、自主的に集めているもの、あるいは、その国の役所が自らとってきた情報というものもあるみたいですけれども、それらを統合して一つのインベントリーにしているということでございます。

 例えば、米国につきましては、その内訳がわかっておりまして、2ページ目のほうでカラーの棒グラフを示しておりますが、その量ベースで見てですけれども、一番多い情報源というのは、S/L/Tというのがございますが、これ、State、Local、Trivalということで、州政府、地方政府、あるいは部族政府といいますか、Native Americanの部族政府のほうから集めてきた情報というのが大体半分ぐらいを占めていると。これらの情報をその地方政府がどうやって集めたかというところまではちょっと見られなかったんですけれども、ある程度1次情報を集めてきているのではないかということでございます。また、黄色のEPA EGUというのは、EPAが、まさに水銀についての発電所の規制をするに当たって、事前に集めた情報をインベントリーのほうにも用いているということでございました。そういった形で、米国、英国ともいろんな情報を集めてきて、それらの重複がないように整理をしながら、統合してNational Inventoryをつくっているということでございます。

 簡単でございますが、以上でございます。

【長浜大気環境課課長補佐】 続きまして、資料2の別添3について、黒液由来の水銀の大気排出についてご説明いたします。

 パルプ・製紙製造施設からの水銀の大気排出については、EPAの報告書「Locating and Estimating Air Emissions From Source of Mercury and Mercury Compounds」の総排出係数の値に、国内での黒液燃焼量を掛けて推計いたしました。EPAの報告では、木、それから工程水、水酸化ナトリウムや硫化ナトリウムなどに含まれる薬剤に含まれる水銀が黒液に濃縮されて、その黒液を燃料として燃やすことによって水銀が大気へ排出されるというふうにされております。ただし、国内とアメリカの製造施設を比較した場合に、原料として使用する木質原料、それから製造工程に使用する薬剤の製造方法等が異なることに留意が必要ですということです。

 このほか、前回、ヒアリング対象団体から質問事項に対する回答をいただきましたが、日本鉄鋼連盟からその補足資料をいただいておりますので、別添4として配付させていただいております。こちらは委員限りの資料とさせていただいておりますので、委員会終了後も資料の取り扱いにはご留意いただきますように、よろしくお願いいたします。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 ただいま資料の2につきまして幾つかの別添資料がございますが、それに基づきます説明をさせていただきました。この部分につきまして、ご質問等ございましたらお願いいたします。

 ご質問のございます方は名札を立てていただければ、中杉委員、お願いします。

【中杉委員】 海外の規制対象の話のところなんですが、この排出基準みたいなもの、あるいはBATのレベルというのも決められていて、数字が決まっているわけですね。その根拠、決め方の根拠というのをお聞きしたいんですが。

多分、BATに基づいて技術が達成可能なレベルに設定しているものというのが一つあるのだろうと思うんですが、リスク計算でやっているものというのはあるのかどうか。リスク計算でやった場合に、直接吸入のリスクなのか、今回の条約対象にしているような、海へ行って魚に濃縮してというようなところまで含めた形でのリスク評価に基づいて決めているのか、そこら辺のところの情報がおわかりでしたら教えていただきたいと思います。

【坂本委員長】 事務局、お願いします。

【髙林総務課課長補佐】 すみません、完全に漏れがないという自信がなかなかないものですから、その限りでのお答えということにさせていただきますが、基本的には米国もEUも、テクノロジーベースといいますか、いわゆるBest Availableの考え方で決めているということのようでございます。具体的に申しますと、それぞれで既存の、現存の施設のパフォーマンスというのをデータとして集めてきて、そこから規制値ですとかBREFに書く水準をはじき出すやり方というのは、米国、EU、それぞれのやり方があるようですけれども、大まかなやり方といたしましては、そういうふうにまずはデータを取ってきて、それを参照しながら数字を求めていくという形ですので、それが発電所にも焼却施設にも全部当てはまるかどうかというところが、完全な自信はちょっとそこは持てないんですけれども、基本的にはそういうやり方でなされているということだと思います。

【坂本委員長】 ありがとうございました、よろしいでしょうか。

 はい、どうぞ辰巳委員、お願いします。

【辰巳委員】 ありがとうございます。

 いずれも一般廃棄物等の焼却施設に対してもちゃんと報告の義務があるような感じを受け取ったんですけれども、その一般焼却炉というのは家庭から出るごみなんかが対象ですよね、恐らくね。そうしたときに、どこまで、例えば地方の行政等に対して出てくる数値を、最終的に焼却場から出るだけではなくて、その前に入れるものに対しての規制とか、そういうふうなものがあるのかどうか、ちょっと知りたいなというふうに思ったのですけれども。

【坂本委員長】 事務局、お願いします。

【髙林総務課課長補佐】 例えば、全然違う別体系の法律で決まっていたら、それは、ちょっとまだ追い切れていないんですけれども、今回見させていただきましたそのSection129は、あくまで出口の数字で決めているということでございます。

【辰巳委員】 わかりました。

【坂本委員長】 そのほか、いかがでしょうか。

 稲垣委員、どうぞ。

【稲垣委員】 資料2の別添1のところで少し教えてください。3ページの注書きのところがちょっと気になったんですが、日本の状況がどうなっているか教えてほしい。サブカテゴリーとして云々と書いてありますけれども、日本の、この前説明いただいたインベントリーでは、焼結炉が主体だったと思うんですけれども、製鋼用電気炉がこれ、EUは入っているんですね。この辺、日本の状況というのが、もしわかれば、また教えていただければと思います。

 それともう1点、この屠畜場が入っているというのは、どういうふうに理解したらいいんですかね、これがちょっとわからないのですが。

【坂本委員長】 事務局、お願いします。

【髙林総務課課長補佐】 1点目につきましては、インベントリーで見ているかどうかということですか。

【稲垣委員】 インベントリーに記載されていましたか。

【髙林総務課課長補佐】 すみません、ありがとうございます。

 屠畜場のほうは、ちょっとなぜかなというのはあったんですけれども、ちょっと今回、まずデータとして出させていただきましたので、どういった理由かというのがちょっと、わかりましたら、改めて調べましてご報告させていただきます。

【坂本委員長】 その他、いかがでしょうか。

 高岡委員、お願いします。

【高岡委員】 すみません、資料2の別添1の2ページのところで1点だけ確認させていただきたいんですが、アメリカの規制のところの最後に、いわゆる水銀削減率に関して定められているものもあるとありますが、これは廃棄物なんでしょうか。どうだったか、もし今わかれば教えてください。

【坂本委員長】 事務局、お願いします。

【髙林総務課課長補佐】 廃棄物でも、ちょっとサブカテゴリーごとにいろいろなやり方があって、一概に廃棄物全部というものではないんですけれども、一部の廃棄物で濃度or削減率というような決まり方をしていると。その「or」の意味とかもちょっと、確実にこうですよというのが説明し切れないものですから、ちょっと紙では出させていただいておりませんが、そういった感じでございます。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 どうぞそのほか、ご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。はい、よろしければ、次の議題に移らせていただきたいと思います。

 次は議題2でございますが、水俣条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策について、答申の骨子案についてでございます。事務局から説明をお願いいたします。

【髙林総務課課長補佐】 資料3に基づきましてご説明をさせていただきます。答申の骨子案ということでございます。

 1ページ目に目次を示させていただいておりますが、目次の一番下にちょっと四角囲いで書かせていただいております。本資料は答申の骨子(案)ということなんですけれども、前回の時点で議論の残っている点というのが幾つかございまして、そういった点につきましては、議論の内容が明らかとなるという形で書かせていただいておりますので、そういうことでよろしくお願いいたします。

 早速中身でございます。2ページ目からでございますが、まず最初に「はじめに」ということでございます。

 水銀による地球規模の環境汚染と健康被害を防止するための条約の制定に向け、2010年より、UNEP管理理事会に設置された政府間交渉委員会において国際交渉が行われた結果、昨年10月、熊本市及び水俣市において開催された水銀に関する水俣条約の外交会議において、この「水銀に関する水俣条約」が全会一致で採択され、我が国を含む92カ国・地域が同条約への署名を行ったと。この条約は、水銀が人の健康及び環境に及ぼすリスクを低減するため、水銀に対して、産出、使用、環境への排出、廃棄等そのライフサイクルにわたって包括的な規制を策定する初めての条約であり、大気への排出規制もその内容に含まれているものでございます。我が国は、水俣病の教訓を踏まえ同様の健康被害や環境破壊が二度と繰り返されてはならないという強い決意をもって積極的に交渉に臨んできたものであり、日本の地名を冠するこの条約の早期発効に向けた速やかな締結が求められております。このような状況の中、本年3月、中央環境審議会に「水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀対策について」が諮問されまして、同日、大気部会のほうにも、そのうちの大気排出対策に関する部分が付議されたと。これを受け、まさにこの小委員会において詳細な検討を重ねてきているところでございます。

 続きまして背景でございますが、水銀の特性といたしまして、水銀は、常温で液体である唯一の金属でありまして、揮発性が高く、さまざまな排出源から環境中に排出され、大気、海洋等を通じて長距離を移動し全世界を循環する環境残留性及び長距離移動性を有する物質であります。また、高い生物蓄積性を有し、食物連鎖を通じてマグロなどの高次捕食動物に高濃度に蓄積されやすいという性質も持っております。そうした水銀は、人への毒性が強く、特に発達途上の神経系に有害な影響を及ぼすおそれが指摘されております。また、食物連鎖によりまして野生生物へも影響するおそれがございます。

 水銀の大気排出の状況でございますが、世界におきましては、Global Mercury Assessment、UNEPが2013年に出したものでございますが、これによりますと、年間5,500~8,900トンの排出がなされていて、そのうち人為的排出は約30%と、残りの60%は、一旦放出され、環境中に蓄積されていた水銀が再放出されるもので、最後の10%は地質活動、火山等による自然起源のものでございます。2010年の人為的な大気排出量は約2,000トン、1,960トンと推計されております。排出源の約半分はアジアでございまして、うち中国が3割を占めるなど最大の排出国となっています。日本は約20トンということで、全世界の1%程度でございます。排出部門ごとの割合というのは以下に示させていただいております。

 国内における水銀の大気排出でございます。こちらも数字を具体的に示させていただいておりますが、環境省のほうで取りまとめました水銀大気排出インベントリー、2010年にまずつくりまして、2013年度に更新したものでございますが、これによりますと年間17~21トンと推計されておりまして、主な排出源といたしましては、セメント製造施設が約29%、鉄鋼製造施設、一次・二次を合わせてが約25%、廃棄物焼却施設が約24%、以下、火山、非鉄金属、石炭火力発電所となってございます。

 条約の概要を3ポツで示させていただいております。水俣条約は、水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護することを目的としております。水銀の大気排出に関しましては、主に以下の内容を定めております。まず、附属書Dで掲げられました発生源、石炭火力発電所、産業用石炭燃焼ボイラー、非鉄金属の精錬施設、廃棄物焼却施設、セメントクリンカー製造施設の5種でございますが、これを対象に、水銀及び水銀化合物の大気への排出を規制し、実行可能な場合には削減すると。新規の発生源については、条約発効後5年以内に、利用可能な最良の技術(BAT)及び環境のための最良の慣行(BEP)の利用を義務付けると。また、BATに適合する排出限度値を使用することも可であるということでございます。既存の発生源につきましては、10年以内に①から⑤の5つの措置の中から1つ以上の措置を実施すると。また、できる限り速やかに、遅くとも各締約国での条約発効後5年以内にインベントリーを作成し、これを維持するというふうになっております。

 4ページ目に参りまして、我が国のこれまでの取組でございますが、「水銀及びその化合物」は、大防法の第2章の4に基づく有害大気汚染物質対策における「有害大気汚染物質」に該当する可能性がある物質の一つとされております。このため、大防法の第18条の22に基づきまして、事業者は、水銀及びその化合物の大気中への排出又は飛散の状況を把握するとともに抑制すると、抑制するために必要な措置を講ずるということが責務とされております。また、水銀及びその化合物は、同じその有害大気汚染物質対策の中の優先取組物質としても選定されておりまして、これを受けて指針値が定められております。具体的には、年平均値で0.04μgHg/m3ということでございます。この他、大防法に基づくばい煙規制、あるいは、法に基づくダイオキシン排出規制への対応として、従来からSOx、NOx、ばいじん、またダイオキシン類等の排出抑制のための排ガス処理装置が導入されておりまして、それらについても、水銀の大気排出抑制に一定の効果があると考えられております。また、大防法第22条第1項の規定に基づきまして、平成10年度以降、全国300地点で水銀についてモニタリングを実施しています。直近の測定結果であります平成24年度の全国平均濃度は2.1ngHg/m3でございまして、指針値は40ngHg/m3でございますので、これを下回っておりまして、これまでに指針値を超過した測定地点もないということでございます。

 Ⅲの水銀の大気排出対策の在り方ということで、ここからがまさに本題といいますか、ご議論あるところかと思います。

 まず一つ目、水銀排出規制制度の必要性。水銀につきましては、これは先ほども見ましたところですが、環境中の残留性、長距離移動性、生物蓄積性があり、かつ、人及び野生生物に対し毒性を有するというその特性に照らし、大気への排出を規制し、実行可能な場合には削減するための対策を講ずるということが条約上求められております。また、条約締結の1年前にUNEPのほうでまとめられましたGlobal Mercury Assessmentにおきましても、水銀の人為的排出の削減は、将来的に環境中を循環する水銀量を削減するために極めて重要であるということが指摘されております。

 5ページ目に参りまして、これも先ほどのとおりでございますが、水俣病経験国である我が国といたしましては、水銀条約の趣旨を積極的に捉え、大気排出規制を行う上で十分な担保措置を伴う制度としていくことが重要であると。現行の大防法におきましては、先ほど見ました有害大気汚染物質対策の枠組みで水銀の排出抑制対策が講じられております。しかし、当該制度は「継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質で大気汚染の原因ともなるもの」と定義されている有害大気汚染物質の大気中への排出又は飛散を抑制するためのものであり、また、事業者に対して責務を課してはいるものの、遵守義務や適合命令などが規定されていないということから、この制度では、水銀条約の担保措置としては不十分なのではないかと。このため、今般、水俣条約遵守のための新たな規制措置を設ける必要があるのではないかということでございます。

 2ポツに参りまして、水銀排出規制制度の枠組み。まず、新規施設に係る規制でございます。(a)の規制手法ということで、前提というところで、この後、何カ所か出てまいりますが、この前提という欄では、これ自体がご議論の対象というわけではありませんが、その後の議論の前提として重要なポイントをまとめさせていただいております。

 その前提でございますが、水俣条約の第8条第4項では、新規の発生源に関してBAT及びBEPの利用を義務付けると規定すると同時に、締約国は、BATの適用に適合する排出限度値を使用することができるというふうにもされております。大防法におけるばい煙排出規制及びVOC規制、あるいは水濁法における排水規制、ダイオキシンの排出規制等々、我が国の排出・排水規制は、原則として排出限度値規制によって行われてきたということがございます。設備・構造規制と比較しての排出限度値規制のメリットといたしましては、事業者が自らの事業の実情を踏まえて対策を採ることができること、また、基準の設定及び遵守状況の確認に当たっての行政コストを抑えられるといったことが挙げられます。

 BATの考え方を踏まえた水銀大気排出規制が制度化されております。先ほど見たとおりですが、米国及びEUのいずれにおきましても、EUは一概に数値規制というわけではないかもしれませんが、具体的な規制手法といたしましては、原則的に排出限度値による規制が行われているということでございます。

 で、本論のほうでございますが、規制手法としては、排出限度値規制を採用することが適当ではないかと。その場合、現行の大防法における排出限度値規制の仕組みとしては、濃度基準に適合しないときに直罰が科せられる仕組みとなっているばい煙排出規制ですとか、あるいは、同じように適合しないときに改善命令等を課せられるVOC排出規制がございますが、水俣条約の趣旨、これは、その一瞬、一瞬を捉えてというよりは、その総量として環境中に出ていく水銀の量を減らそうというような趣旨を踏まえまして、排出口からの平均的な排出状況に着目した規制となる仕組みを検討すべきではないかと。一方、廃棄物処理施設等、入口のほうで投入物の水銀の濃度が変動するといった性質を持つ排出源によりましては、焼却する対象物にどのような物質が入っているかを管理することは困難という性質がございます。こういった性質があることから、施設の構造・設備、あるいは行為・管理に関する基準を設けて規制するという考え方もあるが、どうかと。ただし、この場合、その設備・構造で規制をするという場合には、設備の維持管理が確実に行われるようにするための規制、あるいは、その遵守状況を確認するための手続き等、制度の実効性をいかに確保し得るかということについてもあわせて検討が必要であるということになってまいります。また、廃棄物処理施設等の排出源によっては、環境のための最良の慣行、BEPを責務規定に留まらない具体的な規制措置として課すべきという考え方もあるが、どうかということでございます。

 続きまして、具体的な規制水準を設定するに当たっての基本的な考え方でございます。前提のところで、一つ目の丸は、先ほどもございました8条第4項を踏まえまして、排出限度値を定めるに当たっては、水俣条約第2条(b)において定義されております「利用可能な最良の技術」の趣旨を十分に踏まえる必要があると。そのBATの定義規定におきまして、BATについては、「一の締約国又は当該締約国の領域にある一の設備に対する経済的及び技術的考慮を払いつつ、水銀の大気への排出並びに水及び土壌への放出並びにその環境に対する影響を全般的に防止し、又はこれが実行可能でない場合には、当該排出及び放出を削減するための最も効果的な技術をいう」というふうにされておりまして、環境保全上維持されることが望ましい水準との関係で定めるというものではない。いわゆるテクノロジーベースと言ってしまっていいかもしれませんが、そういうものであるということでございます。水俣条約第8条第8項は、締約国会議が、その第一回会合において、このBAT及びBEPに関する手引を採択するということを求めております。

 本論でございます。排出限度値の設定に当たっては、経済的及び技術的考慮を払いつつ、排出源分類ごとの排出状況及び排出抑制技術の状況について十分に調査・検討を行い、これらを勘案した上で、現実的に排出抑制が可能なレベルで定めることが適当ではないかと。具体的な排出基準値については、利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行(BEP)に関する手引を参考としつつ、来年度以降、専門委員会等を設置して検討していくことが適当ではないかということでございます。

 次に、規制の実効性を確保するための措置でございます。前提といたしまして、現行の大防法のばい煙規制、VOC規制、特定粉じん規制等では、それぞれ粉じん規制、特定粉じんも含めまして数値での規制も設けておりますが、それとあわせて、排出規制の履行の確保を図るために、排出規制の対象となった事業者に対して、濃度を測定することですとか、その結果を記録すること等を義務付けております。

 それを踏まえまして、まず測定義務ということで、排出限度値による排出規制を設ける場合には、排出規制の履行の確保を図るためにも、排出規制の対象となった事業者に対し、濃度を測定し、その結果を記録するということを義務付けるのが適当ではないかと思います。また、その測定義務を設けるとした場合の測定方法ですけれども、以下のような点に留意して定めるべきではないかということで、排出状況を適切に代表する試料を測定できる方法及び頻度であること。また、規制の対象となる事業者及び規制を実施する行政双方に対して過度な負担を強いることのない、合理的な方法であることと。また、具体的な測定方法については来年度以降の専門委員会等で検討してはどうかということでございます。なお、測定方法の検討にあたっては、廃棄物焼却施設等の排出源によっては、先ほども述べましたように、焼却する対象物にどのような物質が入っているかを管理することは困難であるという特殊性を踏まえました検討が必要ではないかということでございます。実効性確保のための測定以外のその他の措置ですけれども、排出限度値による排出規制を設ける場合、その規制の実効性を確保するため、測定義務に加えまして、例えば対象施設の設置に関する届出、遵守義務、所要の命令、罰則等所要の制度を設けるのが適当ではないかということでございます。

 8ページに参りまして、規制の実施主体でございます。これまで見ておりますこの規制の実施には、現行の大防法のばい煙規制、あるいはVOC排出規制に係る事務等と同様に、都道府県知事及び、いわゆる大防法に定める政令市の市長が当たるとすることが適当ではないかということでございます。

 (d)「環境のための最良の慣行」(BEP)の利用についてでございます。前提といたしまして、第8条第4項は今まで見てきたとおりでございます。また、現行の大防法のVOC排出規制におきましては、事業者が排出口における排出濃度規制を遵守するだけでなく、排出口以外からのVOCの排出及び飛散を抑制するために必要な措置を講じることも必要であるということに鑑みまして、事業者の責務規定が設けられております。

 BEPの利用を事業者に義務付けるための規定として、例えば、事業者の責務規定を置くということが適当ではないかと。一方、廃棄物処理施設等の排出源によりましては、その特殊性に応じ、排出限度値に加え、「環境のための最良の慣行」(BEP)といたしまして、例えば入口、投入物の対策として分別回収を促進するなどによりまして、投入される水銀含有物をそもそも減らすことや、産業廃棄物についてはマニフェスト等により水銀を含むことを確認し、適切な処理業者に委託するといったことを徹底するなどの具体的な措置を義務付けることによって担保するという考え方もあるが、どうかと。また、※印とさせていただいておりますが、この点につきましては、先ほど見ました規制手法の選択の点と併せまして一体的に検討することが適当であるかと思われます。また、このような具体的な措置につきましては、廃棄物処理法により担保することも含めて検討する必要があるということでございます。

 次に、(2)といたしまして、既存施設に係る規制手法でございます。

 前提でございますが、条約第8条の第5項のほうで、各締約国に対しましては、既存の発生源に関して、次のページの(a)から(e)に掲げます措置のうち一又は二以上の措置を、自国の事情等に考慮の上、実施するということが求められております。新規の発生源とは異なる扱いをするということが認められているということでございます。(a)から(e)はここに書いてあるとおりでございますが、(a)は、削減するための数値化された目標を定めるということ、(b)は、排出限度値を定めるというもの、(c)はBAT及びBEP、(d)は複数の汚染物質の規制に関する戦略、(e)は、それらの代替的な措置ということでございます。現行の国内法でございますけれども、既存の施設につきましては、その種類によっては施設等の大幅な改変が必要な場合など技術的な制約もあるということから、施設の種類に応じ、段階的な対応とするとしている場合がございます。

 本論でございますが、最後に見ました現行の大防法の例を参考にしつつ、また、既存の大気汚染対策の成果も考慮いたしまして、施設の種類に応じ段階的な対応とすることなども検討することが適当ではないかと。この場合、既存施設に係る基準値については暫定措置を活用することが可能ではないかと。一方、既存の大気汚染対策は、上記の(a)から(e)のうちの(d)に掲げられております複数汚染物質規制戦略に該当するということにいたしまして、集塵・脱硫・脱硝装置等の排ガス処理装置を設置している場合は、もうそれでもって条約担保済みとする措置を検討するべきといった考え方ですとか、これに加えまして、有害大気汚染物質としての自主管理を継続することによって条約担保済みとする措置を検討するべきといった考え方もこれまでに示されているところでございますが、どうかということでございます。

 10ページに参りまして、排出規制の対象施設の規模でございます。

 前提のところでございますが、条約第8条第2項の(b)におきまして、締約国は、いずれかの分類に関する基準が当該分類からの排出量の少なくとも七十五パーセントを含む場合に限り、附属書Dに掲げる発生源の分類の対象となる発生源を特定するための基準、いわゆる「裾切り基準」を設けることを定めることができるというふうに規定されております。また、現行の大防法におきましても、いわゆるそうした「裾切り基準」を設けておりまして、一定規模以上の施設のみを対象としております。また、一つ目のポツで見ました条約における裾切りの「基準」につきましては、第8条第9項によりまして、今後、締約国会議が手引を策定すると、採択するということになっております。

 本論でございますが、対象施設は、先ほど見ました条約第8条第2項(b)の規定に則りつつ、また、締約国会議で採択される「基準」も参考としながら、一定規模以上のものに限定することが適当ではないかと。一方で、規制対象の発生源の中には、施設規模に関わらず水銀を確実に扱う施設類型もあることから、そのような施設につきましては、施設規模の大小に関わらず対象とすること、逆に、例えば木くずの焼却施設等のように基本的に水銀を扱わない施設類型につきましては、施設規模に関わらず対象外とすることなど、単に規模だけによらない、規模による裾切りだけに拠るべきではないとの考え方もございましたが、どうかということでございます。

 (4)の対象施設の選定の基本的考え方でございます。

 先ほどから見ております第8条第4項及び第5項の措置の対象とされます「関係する発生源」につきましては、同じく条約第8条第2項の(b)におきまして、「附属書Dに掲げる発生源の分類に一に該当する発生源の分類の一に該当する発生源をいう」というふうに規定されております。

 この前提を踏まえまして、この附属書Dに掲げられております5分類に該当する施設につきましては、排出規制の対象とする必要があろうと。一方で、附属書Dには掲げられていないものの我が国においては水銀大気排出の一定割合を占める排出源の位置づけにつきましては、次ページ、11ページでございますが、国内法制化する以上は不公平な仕組みとならないようにすべきであること、また、水銀は一般環境中に残留し蓄積していくことを踏まえ、我が国としても可能な限り削減するべきであることから、国内の水銀大気排出割合に応じて規制対象を定めるべきといった考えや、一方で、条約を履行するための枠組み作りを目的とし、日本における今までの大気環境対策への取組及びその結果を考慮しつつ、条約対象施設のみを対象とした枠組作りに関する検討を進めるべきであるといった考え方が示されておりますが、これにつきましては、水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀の大気排出対策を検討するというこの小委員会の趣旨を勘案いたしまして、検討することが必要ではないかということでございます。

 (5)の国民による自主的な排出抑制取組の責務でございます。

 前提といたしましては、現行のVOC規制、あるいはダイオキシン規制におきましても、国民に対しても一定の努力を求める規定が設けられているということでございます。

 本論でございますが、国民においても、その日常生活の中で、水銀大気排出の抑制を促進することが可能であると考えられることから、国民に対して一定の努力を求める規定を設けるのが適当ではないと。※印のところでございますが、なお、当該論点は、水俣条約に係る水銀添加製品対策、水銀廃棄物対策に係る担保措置等とも関連いたします。このことから、環境保健部会の下に設けられております小委員会、こちらは産構審のワーキンググループと合同会合ということでございますが、こちらにおいて検討されている措置と連携して検討するべきではないかということでございます。

 大きな3ポツのほうに参りまして、目標、インベントリー等についてということでございます。

 まず、目標の設定でございます。目標の設定につきましては、条約第8条第3項で、「関係する発生源を有する締約国は、排出を規制するための措置をとるものとし、当該措置並びに期待される対象、目標及び結果を定める自国の計画を作成することができる」と、mayの規定でございますが、できるというふうに規定されているところであり、国として目標を作成することも可能となってございます。

 水俣条約におきましては、国として目標を作成するか否かというのは、今言いましたとおり各締約国の判断次第とされているところでございますが、我が国といたしましては、水銀の大気排出抑制を着実に実施するという観点から、目標設定のあり方を検討すべきではないかと。なお、当該論点の検討に当たりましては、条約第20条に基づく実施計画も踏まえる必要があることから、先ほどの保健部会の下に設けられております小委員会において検討されている措置も踏まえつつ検討するべきではないかということでございます。なお、仮に目標を設定する場合には、世界における日本の水銀排出割合は1%程度であるという日本の排出状況ですとか、あるいは、我が国における排出抑制のこれまでの取組の、そういった現状を十分に踏まえまして、検討するべきではないかということでございます。

 次にインベントリーでございますが、先ほども言いましたように、条約第8条第7項で各国にはインベントリー作成が義務付けられていると。環境省では、既に一度、2010年、平成22年度ベースのインベントリーを作成しまして、これを暫定事務局でありますUNEPへの提出も行っているところでございます。また、PRTR制度におきましては、人の健康や生態系に有害なおそれがある化学物質についての把握と届け出が規定されております。PRTR制度の対象物質には「水銀及びその化合物」も含まれておりまして、排出量の把握にこの制度を活用するということも考えられるところでございますが、同法の趣旨は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善の促進にあるということから、同制度における届出データは必ずしも網羅的なインベントリーになっていないということに留意が必要でございます。

 本論でございますが、水俣条約の趣旨を踏まえつつ、インベントリーの精度をいかに確保していくかということにつきましては、我が国の現行他制度におけるインベントリーの策定・更新方法手等も参考にしながら、今後、検討していくことが適当ではないかと。また、水俣条約で求められているインベントリーの策定・維持のためには、水銀の排出業者に対しましてインベントリーとしてどのぐらいの精度を求めるかということに応じまして、排出状況に関する積極的なデータ提供を幅広く求めることが必要となりますと。測定結果の報告を法律上の義務とする場合の対象は規制対象施設にとどまるということを考慮いたしますと、報告の義務付けを法で定める必要はないというふうに考えられるものの、排出事業者による自主的取組として排出状況に関する広範なデータを実効的に収集できるようにすべきではないかということでございます。

 (3)国及び地方公共団体の責務でございます。

 国におきましては、水俣条約の早期発効に向けて、水俣病を経験した我が国が国際的な水銀対策を牽引し、水銀汚染による健康被害や環境破壊の防止を図るため、国民に対する普及啓発等の必要な施策を着実に講じていくことが適当ではないかと。また、開発途上国に対し能力形成、技術援助及び技術移転に関して支援するとともに、我が国としても引き続き、水銀の挙動等に関する研究及び技術開発の取組を進めることが適当ではないかと。地方公共団体におきましては、水銀大気排出対策が適切に講じられるよう規制を適切に実施いただくとともに、インベントリーの整備に関し協力していくことが適当ではないかと。なお、この論点につきましては、大気排出に限定されるものではなく分野横断的であるということもありますので、先ほどの保健部世界の下の小委員会におきましても検討されている措置と連携して検討すべきではないかということでございます。

 最後に、Ⅳの今後の課題でございますが、UNEPにおいては、今後、水銀のほかにも、鉛、カドミウム等について環境リスク削減のための取組が進展する可能性がございます。そうした動きに対して、我が国としても注視しておく必要があります。また、新たな取組が講じられる場合には、どのような対策が適切か、物質の特性を踏まえて検討することが適当ではないかということでございます。

 以上でございます。

【是澤大気環境課長】 ちょっと1点補足をさせていただきます。

 先ほどの稲垣委員からのご質問の関連でございますけれども、ただいまご説明した資料の3ページのところに、国内における水銀の大気排出というのが書いてございます。鉄鋼の製造施設、一次製鉄施設及び二次製鉄施設が約25%とありまして、電気炉も含めて試算をしておるわけでありますけれども、この内訳でいいますと、一次製鉄が年間4.1トン、二次製鉄がそれに対して0.6トンということで、大半は一次製鉄であろうという推計になってございます。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 それでは、今、事務局から説明をいただきましたけれども、資料3は、答申の骨子案として提示していますけれども、前回の小委員会までに議論が尽きていない項目につきましては、再度論点を整理して記載しているところでございます。次回小委員会では、事務局に答申案として提示いただく必要がありますので、本日は、その点も踏まえてご議論いただければと思いますが、よろしくお願いいたします。

 各論点については、前回もご議論いただきましたが、さまざまなご意見があることと思います。したがいまして、まずは各委員のご意見を一通りお聞きし、その後、具体的な議論に入っていきたいと思います。

 それでは、先ほど説明をいただきました資料3のうち、8ページ目の(d)「環境のための最良の慣行」の利用について、ここまでの部分について一通りご意見を頂戴して議論に入り、その後、それ以外の部分についてご意見をいただき議論に入ると、こういう流れで進めさせていただきたいと思います。

 それでは、資料3の8ページ目の(d)「環境のための最良の慣行」の利用について、ここより前の部分ですね、そこについてご意見、質問等がございましたら名札を立てていただければと思います。

 それでは、浅野委員からお願いいたします。

【浅野委員】 4ページの、まず上のほうの4の、我が国のこれまでの取組というこの部分についてですが、この有害大気汚染物質については、前にもお話ししたことがありますが、大防法の中に規制を入れるということにしたときに、どうしてこうなったのかということであります。それは、要するに、対象とする有害大気汚染物質について、リスクの観点からどのレベルで規制をすればいいのかということを明確に確定するのには随分手間がかかる、それを待っていたらどうにもならないので、ともかく、やらなきゃいけないということをはっきり決めようじゃないかというのが一番大きい理由であったわけです。

 その上でもう一つ、そこで対象になる物質が在来型の大防法の枠組みでは処理し切れない、つまり煙突から出てくるとか、施設のどこから出てくるとかと、そういうような形で特定できるものばかりではないので、在来型の規制のやり方だと、一つ一つについてはどうやって規制するのかと、とても決めようがないだろうということが問題でした。さらに、3番目の理由は、それらの物質を扱う事業者が概ね大企業であり、技術力を十分お持ちである、そして自主的に取り組むということにしても十分対応が可能であろうというようなことが考えられましたので、それらもろもろの事情を踏まえて、こういうような措置を講じたということでございます。ですから、ある意味では参考になりますし、ある部分は参考にならないとこういうことになるのではないかと思います。

 そこで、本日のペーパーでは、規制が必要である、本制度では担保措置としては不十分ではないかと書かれている部分ですが、今申しましたように、かつての話は、あのときに対策をたてていただくべき対象の物質を扱っている人が誰かということが大体わかっていたので十分担保できると考えたのですが、今回は、それでは当事者があまりにも広過ぎますので、担保が十分にできないという、この書きぶりについては納得できるものがあると思います。

 そして、特に重要だと思いますのは、規制措置を設ける必要があるのではないかと書かれているのですが、これまでの我が国の大気汚染防止法を初めとするさまざまな環境規制の法律というのは、基準を決めて、それに違反をしたら処罰をするということがそこでいう規制のすべてだというようには考えてないのです。古典的な昭和40年代の発想ではそうであったかもしれないが、その後の制度の発展の中で「規制」という言葉の意味が随分広くなっているわけです。ですから、場合によっては自主的な取組ということを十分に踏まえながら、それをきちっと法の枠組みの中に位置づけるということも規制に含まれると考えていますし、そのほかにもさまざまなやり方がありますので、ここで新たな規制措置を設けるということを、直ちにその従来型の数値を決めて、コントロールのような規制という意味にとってしまうと、またいろいろ議論が出てくると思いますが、そうではないという意味において、何らかのちゃんとした制度的な枠組みをつくっていく必要があるという意味合いでもって、ここに書かれていることを理解するならば、これは確かにそのとおりではないかと考えます。

 ただし、5ページの枠の中に書かれていることについては、ちょっと気になるな、普段講義でしゃべっている内容とはかなり違うことが書かれているなという気がしますので、蛇足ながら意見を申し上げますと、排水や排出規制というものが、事業者が自らの事業の実情を踏まえて対策を採ることができるのでメリットがあると、そのことが最初からあったわけでもないと思うんですね。むしろ、さっきも言いましたように、どこから出てくるかというのがはっきりわかっているので、そこで押さえれば一番手っ取り早いということがむしろ中心ではなかったかと思います。ですから、このほうが柔軟に対応できるというようなことが最初から考えられたと書かれているとすると、それはちょっと疑問で、むしろ後知恵みたいなところがあるかもしれません。私などはむしろ、構造の基準を決めるというようなことのほうが柔軟である場合もあるかもしれないし、いろいろあるわけですね。例えば、石炭なんか積んであるところで、散水でいいですよみたいなことがその例です。どういう方法であれやってくださいというような場合は、そのほうがより柔軟な場合もありますから、これは必ずしもこうでもないんだろうなと思います。むしろどこから出てきて、どうなっているのかということがはっきりわかるものについては出口で押さえるということがより容易であるから行われてきたのではないか。そうすると、それが必ずしも十分にわからないようなものについては、それとは違うやり方でいかざるを得ないので、むしろ構造基準というのは、粉じんについて最初に出てきているわけですけれども、煙突のような物を燃焼して出る、出口のところで押さえればいいというのとは違うものが構造基準でいかざるを得ない、これが大防法の基本的な構造だろうと考えています。

 今回の水銀に関しては、そういう意味では、かなり排出口というものになじみやすいことはなじみやすいのですが、この中に書かれているように、既にこれまでの4回の委員会の中の議論の中でも出てきましたが、特に廃棄物系については、入れるものがどの程度の濃度のものかということが一定してないということがあるので、これについては在来型の排出口基準というものではなかなかうまくいかないだろうということがありますから、この辺りは、従来考えてきた構造基準か排出口基準かというものとは違う発想を水銀では入れなくてはいけないということが出てくるんだろうと思われる。つまり、水銀規制については、いろんな点で、これまでの我が国では経験してこなかった新しい手法を入れなくてはいけないということが多々あるということを十分に認識して議論しなければならないのではないかと考えます。

 この6ページにありますような施設の類型によっては取り扱いを変えなきゃいけないということがあるだろうし、あるいは、その規制についても、平均的な排出量に応じた規制をしなくちゃいけないということがあるだろうと、こういう点は、これまでの規制で培ってきた技術文化みたいなものとは違う文化を新しく開発しなければいけない部分だろうということが適切にここに指摘してあるだろうと思われます。

 そしてまた、6ページの括弧の部分に書かれている点も、このとおりです、つまり、これまで我が国で考えてきた規制とは全く哲学を変えなきゃいけない。リスクのほうから逆算していって、ここまで許されるから、これを規制基準にしましょうというような考えではどうにもならないものがある。ともかく地球全体のリスクをできるだけ抑えていきましょうということが水銀規制の目的だということでありますから、それはちょうど温室効果ガスの対策と似たようなことであって、ある場所に住んでいる方に対する健康上のリスク防止というようなことを前提にして基準をつくるということは、まるっきり違う考え方にならざるを得ないのは当然のことだろうと思います。

【坂本委員長】 指宿委員、お願いします。

【指宿委員】 私のほうからの議論のポイントとしては、例えば、規制をするに当たって、その水準をBATで決めていくということが前提で書かれているわけですけれども、そのBATを我が国で、どういうものであるというのを、どう決めるかというのが、まだこの報告書の中には書き込まれていないように思うんです。それを出していくためには、今の既存の、例えば5分野のところで、どういうその対策がなされていて、それによってどれぐらいの濃度になっていると、そういうことがきちんとベースとしてやられていると、それが世界的な水準から見て、BATとして考えていいのだというような段取りをぜひとっていく必要があるというふうに思います。その辺がまだはっきりと書かれていないので、ひとつわかりにくいということと、あと、BATには、経済的及び技術的考慮というのが非常に重要で、これについて、十分に考えていくということを議論するべきであろうと思います。

 次に水銀の排出量をどういうふうに評価するか、インベントリーに関わると思いますが、測定法をどういうふうに決めるか、これについても、ここに書いてありますが、排出源分類ごとに測定法を選ばなければいけないというのが出てくるのでは。特に廃棄物ですとか――セメントですとか――その辺りについて、どのような測定法を選ぶかというのもとても重要だなと感じておりましたが、ここに書かれてあるようなことでいいかなと思います。特に、その測定法を、排出口からの平均的な排出状況に着目したという、そういうところの、そういうことが出せる測定法をぜひ選ぶべきだと思いますし、それが事業者あるいは行政のほうに大きな負担にならないようにすることになるので、賛成したいと思っております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 稲垣委員。

【稲垣委員】 まず5ページのところですが、先ほど浅野先生も言われましたけれども、箱の中の二つ目のところですけれども、排出基準と構造基準、これ、メリット、デメリットが記載されておりますが、この記述はちょっと違うんじゃないかなという気がします。構造基準でも、やはり事業者自らが事業の実情を踏まえた対策を採るのは大変有効な手段でもあろうと思いますし、行政コストを抑えられると、この記述は、ちょっと言い過ぎかなという気がしております。

 それと、6ページの箱の下の一つ目の丸ですけれども、3行目から、直罰が科せられているばい煙排出規制、改善命令等が課せられているVOC排出規制があるが、これはあくまでも、その直罰とか改善命令という行政措置のことが書いてあって、その下の排出口からの平均的な排出状況というのは、行政措置ではなくて、排出の実態を書いている部分なものですから、並列に書くのはどうかなという気がしております。ですから、ちょっと言葉足らずなのかなという気がしております。

 それともう1点が、その下の廃棄物処理施設等の排出源によって、この考え方はどうかということですけれども、私は、さっき言いましたように設備基準だとか構造基準だとか、ある面では大変有効だと思いますので、こういうものはつくるべきだと思っております。

 それと、7ページの下から二つ目の丸ですけれども、測定方法、確かにこのとおりなんですけれども、なかなか、じゃあどうすればいいんだと、これから専門委員会で議論されることになろうかと思うんですけれども、大変、例えば焼却炉で水銀が排出される時だけ測るとかそんなことはできないと思いますので、なかなかこれは難しいのかなという気がしますので、やはり測定というのは平均的なものをきちっとやっていくというのが必要じゃないかなと思っております。

 それと、さっきちょっと言い忘れましたけれども、罰則が、直罰だとか改善命令がかけられる排出規制というのは、1回でも超えとると即、罰則をかけるというんじゃなくして、やはり施設によっては、工程により多く出るところと出ないところがある場合には、平均的なところで測りなさいというのがJISなんかでも決められているわけですから、その辺を少し整理しないと、平均的な状況という書き方だけではいかがなものかなというふうに思っております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 大塚委員、お願いします。

【大塚委員】 廃棄物の焼却施設に関しては、今までご議論があったように、私もちょっと気になっていますが、8ページの、その(d)の最後の丸で書いてある「一方」というところですけれども、こういう義務付けはできるといいと思うんですけれども、私が気にしているのは、水銀のこの今回の条約との関係では、三つの部会に分かれて、三つの審議会で検討しているものですから、大気のほうでは、これを廃棄物のほうに押しつけるような感じになって、廃棄物のほうでおやりにならないとかということになるとちょっと困るので、その調整はぜひしていただきたいと思っています。ちょっと、この具体的措置の義務付けというのは、私はそんなに簡単ではないと思っているので、やっていただくほうがもちろんいいと思っているんですけれども、どの程度現実的に実効的なことができるかということは、ちょっとよく考えながら検討する必要があるのではないかと思っています。

 それから、6ページの構造規制の問題ですが、上から二つ目の丸とか、その後の※印の辺りがちょっと関係するところですけれども、ちょっと気になっているのは、構造規制というと、構造規制をすると、あと全てうまくいくというふうにちょっと何となく思えるのですが、必ずしもそうではないようで、結局、廃棄物の中に水銀が入っている場合は、幾ら構造規制をしていても、突然、活性炭を大量に入れるとかということをしなくてはいけないようなので、構造規制をしても、あまり、それほど大きなインパクトがあるというわけでは必ずしもないようなので、ちょっとその辺は詳しくは事務局にお話しいただけるとありがたいのですけれども、構造規制にあまり、ちょっと過大な期待をかけると、実際には、必ずしもそういうふうに技術的にはなっていないのではないかというところがございますので、その辺はちょっと事務局からご説明をいただけるとありがたいと思います。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございます。

 続きまして、梶井委員、お願いします。

【梶井委員】 まず4ページの環境基準の話が出てきているんですけれども、そもそもどうしてこの40ngHg/m3という値が出てきたのかという辺りが、自分はすごく気になります。先ほど浅野委員が、全てにおいてリスクを考えてやっている時間もないのでということを理解しつつなんですが、それに対して、現行の平均濃度が2.1ngHg/m3であるということを大きく下回っているというのが事実だと思うんですけれども、そもそもその40ngHg/m3というのはどの程度の根拠を持っている数字なのかというのが気になるところです。

 ちょっと話がそれてしまいますけれども、自分は沖縄の辺戸岬という、そこには発生源がほとんどないところで、かつて水銀をはかったことがあります。そうすると、10ngHg/m3ぐらいびゅっと高濃度になったりするんですね。そういうときの流跡線をたどると必ず大陸のほうから来ている、一酸化炭素も非常に高濃度になるということがありました。そういう、やはり私たちの国ではほとんど1%ぐらいのエミッションであるのに対して、やはり野方図に出しているところをしっかり規制していくということを、私たちも、行動で表すという意味での検討は重要かと思いますけれども、あまりにも国際社会から見て、もう優等生の国なのに、さらにどんどん絞っていくということはどうなのかなというのをちょっと思いまして、できれば国際的な先進国の取組と足並みがそろうような形になるのがよいのではないかなと、自分ではそんなふうに感じている次第でございます。

【坂本委員長】 ありがとうございます。

 崎田委員、お願いします。

【崎田委員】 ありがとうございます。

 今、世界的に見た先進国としての足並みをというご意見がありました。私も、この資料を拝見していて、方向性としては、やはりきちんと新たな規制措置を設ける必要があるというこの5ページのこの方向性は、地球全体で本当に排出を削減していくということを徹底するという意味で大事だと思います。しかしどういうふうにその数値等を出していくかということに関しては、日本の状態というのをきちんとモニタリングやデータ分析を徹底してから、その数値を決めていく等、方向性はしっかり保ちながら、細かいところはきちんと数値を把握して、世界的な動きと連携しながら決めていくという、そのくらいの時間の余裕を持っていってもよいのではないかという気もしております。

 なお、もう一つ、いろいろ意見がありました8ページの真ん中辺のその廃棄物処理施設の問題というのが私も大変気になります。今いろいろとこの文章の中でも、廃棄物の内容に関していろいろと規制することは難しいというような表現もかなり出てきているのですが、全体の統一感としては、その出口で見ていってモニタリングするとか、そういうことでもいいかもしれません。しかし、やはり今回、入口のところの製品規制の部分と、廃棄物のところの規制と、その両方できちんと取り組んでいただくということを全体で見ていくことが大変重要なのではないかと思っております。特に、製品と、その製品に対する表示等の問題や回収システム、全部影響してきますので、そういうことに対してきちんとこちらのほうでも、どういうことが必要かというのを明確に書いていくことが必要だと思います。

 で、これに関しては、この次の後半のテーマの国民に対する呼びかけというところでも、もう一回必要な視点なのではないかというふうに思っておりますので、もう少し身近な話はそちらできちんと発言したいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 高岡委員、お願いします。

【高岡委員】 既に廃棄物のところがかなり議論となっておりますが、私も、廃棄物のところが少し、ほかの発生源とは違うというところで意見を申し上げたいと思います。

 皆さんもご存じのとおり、廃棄物のところは排出濃度が必ずしも一定で出てくるものではないというところから、やはりこの排出限度規制は基本かもしれませんが、なかなかそれだけでは難しいと感じております。さらに廃棄物の中でも、先ほどアメリカの例もありましたが、幾つかのカテゴリーがあり、それぞれに応じて、また水銀の挙動も違うということもあると認識しております。ですので、やはりどれがBATになるのかというようなところも含めて、やはり実態的な調査を行った後に、この排出限度規制等、幾らかは、いわゆる構造・設備規制というようなものも含めて、さらには、廃棄物のほうからの幾つかの努力といいますか、分別等も含めて、やはり総合的に見ていかなければ、なかなかその規制といいますか、排出を抑制していくことにはならないのではないかと思っております。ですので、もう少し、やはり全体的には技術的なものを踏まえて、それぞれのソースに応じた規制を考えていくということが重要ではないかと思っております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 高澤委員、お願いします。

【高澤委員】 私のほうから1点、7ページ目にございます実効性確保のためのその他の措置というようなところで、排出限度値による排出規制を設けた場合には、その規制値を超えたときに直罰だというようなところの観点でございますけれども、私ども産業界は、これまで大気汚染防止のいろんな諸施策を実行しておりまして、当然、その中で水銀も排出を抑制しているというような状況は、もう既に前段階で、運転のところで話が出ておりますけれども、そのような状況におきまして、今現在、まず大気曝露によって人の健康影響にすぐに来るかというのは非常に考えにくい状況、ましてや、新規施設を新たに設置するにおいては、当然BATに準じたような設備をつくって、今まで以上の施設なり何らかの対応をとった設備を設置しているわけでございまして、今回のこの水銀を、SOxとかNOxとか、いわゆる現在のばい煙排出物質と同等に位置付けることは非常に難しいかなというふうに考えております。

 先ほどの話も出ましたとおり、SOxとかNOxと違いまして、原料由来であったり、いろいろと水銀の発生経緯が違いますので、定常的にあるレベルがコンスタントに出ているというものでもございません。あるときにポッと出ても、その後は出ない、非常に振れが大きいようなものに対しまして、基準値を決めて、即それを超えたから罰則だと、行政指導だというのはいかがなものかなというふうに思っております。そういうような意味で、直罰を伴うような規制の枠組みとするということは適当ではないのではないかなと、どちらかといいますと、指定物質抑制基準というような考え方でもって、事業者の自主的抑制に努めていくというようなことが適当であるというふうに考えております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 辰巳委員、お願いします。

【辰巳委員】 すみません、ありがとうございます。

 一つ、まず、いろんな規制に対して、やらなければいけない対象の人は「事業者」という表現で、一つで書かれているんですけれども、もしかして地方行政等の廃棄物の処理施設なんかも対象である場合というか、対象にならないとおかしいと思うんですけれども、事業者という単語だとちょっと勘違いしそうな気がするんですね。だから、そこのところを括弧して、あるいは地方行政の処理施設も含むみたいな言い方をするのか、ちょっとわかりませんけれども、限定的に「事業者」と書いてしまうと誤解するような気がするので、ご検討いただきたいなと私は思っております。

 それから、やっぱりその6ページのその廃棄物処理の話に関してなんですけれども、6ページに非常に限定的に、決まったことのように「廃棄物処理等の排出源によっては、焼却する対象物にどのような物質が入っているかを管理することは困難という」というふうに、もう決めてかかっておりますので、そこのところも、もうちょっと今回考え直す必要があると私は思っていますので、だから、性質を有するというふうに決めてしまわないで、だからこそ投入時の管理が重要であって、「環境のための最良の慣行」を目標とするということに言っておりますので、やっぱりそこのところの先に限定してしまった書き方というのはまずいんじゃないかなと、管理が可能だと、すごく厳密な管理は難しいのかもしれませんけれども、少なくとも産業廃棄物の事業者に頼む場合でも、マニフェストを出しているわけですから、その中にどんなものが入っているかとか、状況によっては可能かと私は思うので、だからそういう、最初からこういうふうに無理ですというふうに書かないでほしいなというふうに思ったことです。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 中杉委員、お願いします。

【中杉委員】 何点かございます。

 一つは、先ほど、ほかの委員の方からのご意見にあった40 ngHg/m3と2.1 ngHg/m3の関連なんですけれども、これは非常に誤解のある話で、今回の規制の目的というのは、40 ngHg/m3を達成することが目的ではないわけですよね。40 ngHg/m3というのは、直接大気を吸入したときに健康影響があるという話であって、この水銀条約はそのリスクを問題としているわけではなくて、さらにということなので、そこの記述の書き込みをしておかないと、この文章だけを読んでいくと、先ほどのご意見のように、先ほどそういうご意見だったのではないと思いますけれども、何もしなくてもいいのではないかという形になるのだろうと、そこら辺のところの説明はしっかりしておかないといけないだろうというふうに思います。ちょっとそこら辺のところはたびたび出てきてしまいますので、しっかり書き込んでもらう必要があるだろうというふうに思います。

 それに関連していくと、そうだからこそ、逆に言うと、今度はリスクベースで排出基準というもの、後ろの話の11ページのところに関連して飛んでしまいますけれども、大気の目標値がつくれなくて、大気の目標値がつくれないと、それに基づいて排出基準値をつくることができない、まだそこは十分解明できていないからということなので、結局、BATでやらざるを得ないということになるんだと思います。そこら辺のことをしっかり書き込んでいただく必要があるんだろうと、そうしないと、ちょっと誤解を受けるんだろうというふうに思います。

 それから、二つ目は、最初の取組のところで、これは大防法の話だけしかしてないんですけれども、化管法も、水銀及びその化合物については対象物質になって、自主的な管理をしていただくことになっています。これは、今のところは非常に不十分であるということはもちろんなんですけれども、これは、今度、化管法の方も、この委員会での検討ではないかもしれませんけれども、化管法のほうでも水銀の、多分はかるということになると、その規制対象施設については届出の義務付けができるようになるだろうというようなことになりますので、そういうところも含めて、現状ではこうやっていますというふうなことで、少し書き込んでいただく必要があるのかというふうに思います。

 それから、7ページのほうの、これは先ほど申し上げました具体的な基準を設定するについては、リスクから淡々と持ってくるわけにはいかないということをもう少し説明をしていただく必要があるだろうというふうに。

 それから、8ページの慣行のところで、先ほど辰巳委員が言われたように、事業者という言葉がちょっとここにも出てくるんですけれども、これも後ろに飛んでしまって、12のところの国民の責務ということに絡んでしまうのですが、一般廃棄物の処理施設云々の話になると、国民の責務というのは非常に重要になってくるわけですね。通常のほかの法律、VOCなんかの場合のように、まあ国民もやってくださいぐらいの意味での責務ではなくて、国民もしっかり、事業者と同じように、排出者の1人として十分果たしてもらう必要があると。これは今廃棄物のほうでどういう議論になっているのかわかりませんけれども、水銀を含む乾電池なんかは、有害廃棄物として分別して集めますよといって、そういう慣行にほとんどなっていますけれども、それが何ら法律の裏づけも何もなしにやっているという形のものだと思うんですね。そこら辺のところをもう少し国民にしっかり見てもらうためには、大気排出というような面からも、国民もしっかり、水銀を含んだものはきっちり分別に協力してもらうということが必要であるという意味合いを、どっちにどういうふうに入れるのかわかりませんけれども、もう少し強く打ち出しておいたほうがいいだろうというふうに思います。

 とりあえず。

【坂本委員長】 はい、ありがとうございました。

 中村委員、お願いします。

【中村委員】 既に出ているかと思うんですけれども、一つは規制手法としての、6ページの1個目の白丸のところなんですけれども、先ほど武林委員もおっしゃいましたけれども、大気汚染防止法の規制というのは、ばい煙とか粉じんとかありますが、一つとしての考え方として、水銀自体が有害大気汚染のカテゴリーにも入っていたということもありますので、有害大気汚染の中では、排出場所が特定されているものについては、ベンゼンとかトリクロロエチレンとかは、抑制基準というものが特定の施設には設定されていますので、それに類似した規制をするというのも手かなというふうに考えております。この有害大気汚染の状況だと、私的には、罰則というよりは、これ改善勧告程度でしかないんですけれども、日本の事業者だと、大体そういう改善勧告とかそういう、あるだけでも、こういう基準があると必ず守るという機能はするのかなと私は考えているので、直罰みたいな強制的な罰則ではなく、もう少し柔軟な指導基準でもいいのかなと考えています。

 また、規制値の設定については、何人かの委員からもおっしゃられたかと思いますけれども、基本的に、今まで大気汚染防止法のいろんな規制の中でいろいろやってきたことの、水銀廃棄物制度もやっていますし、そういうものというのは、ある意味、他国に比べれば進んでいるところもありますので、そういう状況を十分把握して、整理していただいて、過剰な規制とならないような、現実的に対応し得るものを考えていただきたいと思っております。

 以上です。

【坂本委員長】 はい、ありがとうございます。

 松岡委員、お願いします。

【松岡委員】 まず、水銀排出規制に係る新たな規制措置の必要性についてですけれども、現行大防法の有害大気汚染物質対策の枠組みで、水銀の大気排出が現に抑制されているということであり、また、水銀及び水銀化合物の人為的な排出からの、人の健康、環境を保護するという水銀条約の目的とも合致するということでありますので、前にもちょっと申し上げましたが、指定物質抑制基準を基本として、水俣条約の担保をするように検討していくべきではないかと考えております。

 また、新規の施設の規制については、これも前に申し上げましたが、条約の担保措置として排出限度値を採用するということでよいと考えますが、その場合は、現行大防法の指定物質抑制基準を基本として、事業者の自主的な排出の抑制に努める規定とすべきではないかと考えます。

 また、先ほど大塚委員のほうから、構造規制の関係で話がありましたけれども、今、国際的なそのBAT/BEPのガイダンス案の段階ですけれども、その中で、今、日本の石炭火力で対応しているその電気集塵装置、あるいは、それと脱硫・脱硝装置の組み合わせですね、そういうものも一つの候補にされていて、評価されていますそのBATの数値も満たしているというふうなところも聞いておりまして、ちょっと例に出ましたアメリカなんかで活性炭吹き込みとか導入が進んでいるというようなことでありますけれども、これは米国の場合、日本のような、そういった基本的な排ガスのその設備の導入率は低いという中で、補完する意味で、そういう活性炭の導入が進んでいるという状況もありまして、日本とアメリカのそういった背景とか状況も十分考慮してやっていくべきじゃないかということでありまして、必ずしもアメリカと同じような、さらに追加的な、それに加えて追加的なその対応というのは非常に難しい部分があるとそういうふうに考えております。

 私からは以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございます。

 守富委員、お願いします。

【守富委員】 ありがとうございます。

 6ページ、7ページなんですけれども、まず最初に、6ページの一番下にあります、いわゆるBAT/BEPの手引を採択することを求めているというところなんですが、先ほど松岡委員からもあったように、具体的なBATの中身としてのその議論は、まだこれからの議論かとは思うんですけれども、どのタイミングでどのような、日本版のBAT/BEPの中身といいますか、それをどのような技術的なサイドのものを上げていくのか、また、どういう格好で提示するのかというのは、やはりそこは結構、BATという言葉だけが先行していて、中身がなかなか出てきていないというのがあって、その辺は、どのタイミングでというところをあらかた聞いておく必要があるのではないのかなというような思いがします。

 それから、今、お話のあったような、例えばBATの中の具体的な、日本の動いているものは、基本的にはかなり高度な技術を入れておりますので、そうしたものがそのままBATになる可能性も、もちろん国際的にも国内的にもあり得るのかなと思うんですが、そうしたものを、やはりきちんとリスト化する必要もあるのではないかなと。

 原則は自主管理が基本かなと私は個人的には思っているんですけれども、やはりここの7ページにあります、中段にあります測定義務のところなんですが、いろいろピーク的な濃度の出方をする、あるいは連続的に常時出ている等々いろいろあるかとは思いますが、基本的には、インベントリーの絡みから見ても、やはり連続モニタリングというのは、今後、何年か関わったにしても、やはり導入する方向で考えていくべきじゃないのかなという思いがいたしております。

 それからもう1点、最後ですけれども、先ほどの自主的な話とあわせて、ここでは規制の話が多く出ているんですが、この後の既存のものを含めて、従来のNOx、SOxという観点から見た場合に、例えば、石炭火力の場合なんかですとスリーテンといいますか、10ppm、NOx、10ppm、SOx、10μ、SPM等々で、スリーテンの到達というのが常識的になっているかなと思うんですが、そういうのとあわせて、例えば水銀の10μg程度のもの、いわゆるプラス、プラス、プラスで、例えば10ppm、10ppm、10μg、10μgで、計40ぐらい、もうそうしたものを総合的に、例えばそれを50に抑えるとか、規制するにしても、水銀に特化するよりは、そういう複合的な効果で考えて出していったもののほうが、現状の既に技術を持っているところも当然あるわけですから、水銀に特化というよりは、そういう複合的な出し方もあるのではないのかなという気がしております。

 以上です。

【坂本委員長】 はい、ありがとうございました。

 一通り今、ご意見をお伺いしましたけれども、幾つか中に質問があったと思いますので、事務局のほうから、その辺について、今答えられるものはそのようにして、それ以外については、また別途という形でお答えいただければと思います。お願いいたします。

【髙林総務課課長補佐】 最初に、大塚先生からご指摘があった点で、ご質問というか、ちょっと補足ご説明という形かと思いますけれども、構造設備とするか、構造設備基準とするか、数値基準とするかで、ちょっと何をターゲットとするかという議論の整理も必要かなと思いますけれども、例えば、ここで議論になっているのは、そもそも廃棄物の焼却施設でございますが、廃棄物焼却施設から、どのような挙動で水銀が出ているのかというところのデータの確認というのも、これはこれでまた必要なんですけれども、例えば、ベースがどのぐらい出ているかというのもあるんですけれども、ベースを抑えていこうというのと、あと、何か水銀を多く含んでいるものが突発的に入ったときに、突発的に上がってしまうというようなときと、それぞれ対応というか、当然違ってくるんだろうなというふうに考えております。

 で、ベースの部分を抑えるのは、まさにその、どういう設備を導入するかというところでございまして、そういう意味では、その数値でもって基準を決めて、ある程度の設備の導入を促すというのと、具体的に設備をこれというふうに指定して、それを入れなさいというふうにするのと、結果としては、そんなに違ってこないのではないかなというふうに考えています。一方で、これはまさにその廃棄物特有、廃棄物あるいはセメント特有ですけれども、投入物で水銀含有濃度が高いものが入ってきたときにどう対応するかというのは、またちょっと違った話で、まさにご議論いただく必要があるところかなと思います。

 といったところで、まずはよろしいでしょうか。

【大塚委員】 二つ目の、その突発的に水銀が多く入ったものが中に入ってしまったという場合は、多分、数値の基準でも、構造設備基準でも残念ながらあまり変わらないということなのかと思うので、ちょっとそこを説明していただきたかったんですけれども。

【髙林総務課課長補佐】 結局ですね、その最後は構造設備、最後はといいますか、本質的にですけれども、構造設備にせよ、数値基準にせよ、結局、どの水準を規制するかというところで、その規制の強度というのが決まってくるわけでございますが、ここは完全に議論が尽くされていないかもしれませんけれども、突発的に上がるようなマックスの値を、もう一瞬たりとも、その規制基準あるいは規制で求めるレベルを超えないようにするということが今回の条約の求める趣旨ではないのではないかというような議論がこれまで交わされてきているかと思います。ですので、積分値というとあれですけれども、平均的なという言い方を今回の骨子案ではしておりますが、そういったものがきちんと守られているようにするという規制は必要だと思いますけれども、その上で、投入物のほうで入ってきてしまうという事態をどのように認識をして、それに対してどういうふうに対応していくかというのは、必ずしもその構造設備規制を入れるか、数値規制を入れるかという問題ではないのかなというふうに考えております。

【大塚委員】 もう一ついいですか、ちょっとはっきりしていただきたいのは、構造規制をやれば突発的なものに対しても対処できるかのように思うんですけれども、多分、技術的にそれができてないということかと思うんですが、その辺はどうなんですか。

【坂本委員長】 装置として非常に過大な吸着装置は現実的ではないということですよね。

【浅野委員】 要するに、ここで書かれていることは別に構造基準だけを言っているわけではなく、行為基準というのがある。それもあわせて考えていて、柔軟に必要なことを考えましょうと言っているんだというご意見ですね。廃掃法の世界では、本当に行為基準のようなものが山のように並んでいるわけです。それでも、それなりに効果を上げているわけですから、それは一つの参考になると思うので、何もその構造基準で全てを解決できるということをここで書いていると読む必要はないと思います。

【坂本委員長】 であるからこそ、先ほど辰巳委員が言ったような形での考え方をきちんと書き込む必要があるとそういうことであろうかと思います。

 あと、幾つかの質問は、40ngHg/m3の根拠はよろしいですか、先ほどの、もし……。

【長浜大気環境課課長補佐】 私から説明いたします。第1回の小委員会の参考資料2として、「今後の有害大気汚染物質の在り方について」第7次答申の参考資料として配付してございます。そちらに指針値の算出の考え方を載せてございます。簡単に紹介いたしますと、一般大気中の水銀というのは、大部分が水銀蒸気でありますので、水銀蒸気に対する曝露としてリスク評価したものでございます。こちらは慢性毒性による影響で、特に中枢神経に対して、職業曝露における最小毒性値から不確実係数500として算出したものでございます。

 以上でございます。

【坂本委員長】 その点よりは、この会議の冒頭のところで申し上げましたけれども、本来的に大防、この水銀の大気濃度の基準値と、それからここで考えている水俣条約によるものは違うんだということでご理解をいただきたいと思います。

 それから、あともう一つの質問は、多分どのタイミングでBATとBEPについて議論をするかというのが守富委員からあったかと思います。実は、ここは結構難しい問題で、いろんなところに関係するところではあろうかと思います。この後、いろんなものを考えていくときに、やはり具体的に私どもが持っている情報で現状のところがどの程度あるか、それで、これまで各業界からヒアリングをしたときも含めて、できるだけ具体的な数値を、個別のものをこれまで出していただきたいということを申し上げてまいりました。そういう情報が恐らく必要と。それから、現実に使われているものがどの程度かという経済的な部分も含めたものが必要となってくるのではないかというふうに思います。

 これについては、事務局としてはどういうふうに考えているんですか。

【髙林総務課課長補佐】 すみません、委員長のほうでまとめていただきまして、ありがとうございます。ちょっと抽象的なものになってしまうかもしれませんが、これは1回目のときから申し上げているとおりなんですけれども、今年度の小委員会では、法律レベルのその規制の枠、規制といいますか制度の枠組みを決めないといけないと。その上で、例えばですけれども、仮に数値基準だということになれば、当然その数値はどのぐらいだというのが入らないと制度として完結しないわけですが、そこの議論というのは、来年度といいますか、この小委員会の次のステップでご議論いただくということかなというふうに考えております。

 ただ、その仕組みを決めるに当たっても、その数字がないということになってくると、なかなか難しい面もあるんですが、法律との関係もございますので、繰り返しになりますが、その制度の枠組みは今年度の小委員会で決めてしまいたいということでございます。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 それでは、大分時間が押しているような感じはいたしますけれども、場合によっては、10分程度の超過をご容赦いただかなければいけないかなというふうに思いますけれども、後半の部分につきましてのご意見等をいただきたいというふうに思います。また、質問がございましたら、その中でおっしゃっていただければと思います。それでは、また名札を立てていただけばと思います。

 若松委員からお願いします。

【若松委員】 前半の部分にもちょっと関わるかもしれませんが、記載の中で大防法とかVOCの規制との比較が結構出てくるんですけれども、基本的に、水銀とほかの、例えばSOx、NOx、VOCとの違いというのがありまして、SOxとかNOxとかVOCは環境中から除去される物質でして、濃度規制というのが、ある程度の意味があるわけですけれども、例えば、その水銀の場合には、いわゆる一旦出てしまうと変化しないという特性があって、蓄積とか濃縮とかいうことが起こるわけですね。ですから、排出のほうからの濃度規制というのはあまり意味がなくて、例えば、その空気を入れて薄めれば濃度は下がるわけですけれども、総量というか、出る量は、環境中に出る量は同じなわけですので、濃度が半分になっても量が同じということが起こるわけですね。ですから、この数値規制の考え方としては、従来のNOxと、SOxと、VOCと同じラインで濃度として考えるのはやっぱり間違っていると思いますので、そこはちょっと注意して記載していただかないと、環境中に出て、その除去される物質と除去されない物質を、濃度という観点で同じレベルで考えるやり方というのは、ちょっとやっぱりまずいのかなという気がしますので、そこはご注意いただければと思います。

 よろしくお願いします。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 松岡委員、お願いします。

【松岡委員】 既存施設の規制手法についてですけれども、これもちょっと繰り返しになりますけれども、既存の排ガス処理装置が、これまで水銀排出抑制にも寄与しているということが明らかでございますので、既存の、その大気汚染対策は、複数汚染物質規制戦略に該当するとして、集塵・脱硫・脱硝装置等の排ガス処理装置を設置している場合には、条約担保済みとする措置を検討するということと、あと、有害大気汚染物質として自主管理を継続することによって条約を担保するとするべきじゃないかと思います。

 あと、目標についてですけれども、これまで水銀排出抑制で全世界の排出量に占める我が国の比率が1%程度にすぎないという中で、水銀条約の目的を達成するためには、その世界全体で削減することが必要だということだと思います。国家目標の設定については、やっぱり国民負担の妥当性とか、そういった観点も踏まえまして、各国の状況を見ながら検討していくべきであって、この委員会で結論を出すには難しいと考えております。

 また、既に水銀除去効果の高い設備を導入、日本では進んでいるということでありまして、環境を循環する水銀のさらなる削減は、技術的、経済的にも非常に難しいというふうに考えます。そういう中で、日本だけが定量的な目標を掲げて削減に取り組んでいくことについては、これは今後のその産業活動にも大きな影響を与えるということでありまして、これについては、そういう面では反対せざるを得ないと考えております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 中村委員、お願いします。

【中村委員】 まず一つは、10ページから11ページの排出規制の対象施設の選定というところでございます。一番最後にあるインベントリーの中でも、条約の対象施設内の鉄鋼が排出寄与が大きいということで表示されて、25%出ているということになっていますけれども、それは確かに事実かと思っていますし、特段異議はありません。ただ、現実問題として、石炭火力の従前から排出抑制ということをやっています。それは、私、いろんな大気汚染対策をやった結果として、付随して排出抑制をしていたということもあろうかと思っております。第3回の報告会でもご説明しましたように、インベントリーのために自主的な措置でインベントリーの提供等みんなで協力しているという事実もあります。一方、鉄鋼業としては、今、排出を増やしている中国とかアジア諸国に対して、いろんな大気汚染対策の情報の共有化等をして、そういうことを進めていくような活動もしてきているのも事実でございます。

 今日、参考資料として、資料2の別添4で配付させていただきましたけれども、そこにも記載されていますように、日本の排出原単位というのは、非常に世界的な中でもトップレベルの状況にあります。確かに、その表にもありますように、排出量はアジア系が非常に多いというのも事実でございます。日本の鉄鋼業で基本的な競争相手というのはアジア諸国が中心になりますけれども、場合によって、鉄鋼業が国内だけの規制になった場合というのは、それに対する対策費用というのは、前回、第3回でご説明したような排ガス処理施設は、1基150億円程度かかるような設備をしていなきゃいけないということで、非常にコスト負担が大きくなるということがあります。その結果、国際競争力が低下すると、結果的にアジアの諸国に生産が移動していくと、そのために、結果的には水銀の排出量、世界的な排出量が増える可能性というのがあるのではないかと、そういうことも懸念するところでございます。

 今回の条約というのは、基本的に、世界の全体として水銀を減らしていこうという趣旨がメインかと私は思っております。基本的に、日本というのは、この資料で見ますように、世界の中では排出量が1%で、それはいろんな産業がいろいろ排出抑制、大気汚染対策をやってきた結果だということがありますので、そういう点も考慮して、ぜひ今回の排出ということで、条約対象施設を中心に検討していただきたいというふうに考えております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 中杉委員、お願いします。

【中杉委員】 国民の責務と、それから大気排出目標については先ほど申し上げました。もう一つ気になるのは、インベントリーのところの12ページの一番下の丸の二つ目なんですが、測定結果の報告を義務付けしない、これはそれでよろしいのかなとも思うんですが、先ほど申し上げた化管法のほうでどういうふうな検討になるのかというのは一つ関連が出てくるんだろうと思うんですね。あれは測定、多分ダイオキシンなんかは規制対象施設について、測定結果から、排出量を届けて自主的に管理しなさいよというようなことをやっています。今度、化管法の見直しが、そろそろ時期になってきて、今度はどうなるかわかりませんけれども、この規定、ここで書いてしまうことによって、そちらの議論を縛らないかというのがちょっと気になります。直接、測定結果を報告するということではないですけれども、多分、測定結果から排ガス量に、計算して、排出量を届け出てもらう、それを自主的に管理してもらうというような形が一つの方法としてあり得るんだろうと思うんですね。ちょっとそこら辺が、少し舌をかまないようにしておいていただければというふうに思います。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 辰巳委員、お願いします。

【辰巳委員】 ありがとうございます。

 一つは、規模の大小で裾切り云々の話があって、すみません、何ページだったか、裾切りがあり得るのではないかというふうにしていて、その下のほうに丸がついていて、そうじゃなくて、「一方」というふうに書いてある、施設の規模に関わらずと書かれているところなんですけれども、私は、やっぱりこれに同意したいなというふうに思っています。それを一つお伝えしたいということです。

 それから、もう一つは、もう重要な、国民による自主的な排出抑制の取組の責務云々の話なんですけれども、やっぱり先ほどから何度も申しますが、やっぱり国民として、水銀を大気に排出するようなものは、ちゃんと分別して処理してもらえるように出すべきだというのはもう当たり前のことなんですけれども、それをね、なかなか理解するのは難しいんです、国民が。それで、お願いしたいのは、今回、非常に前提のところ、前のところに水銀の特性というふうな書き方できちんと書いてくださっている、こういうふうなことを、やっぱりきちんと国民が理解しないと、分別しなさいだけでは、何ゆえに分別するのかがわからないんですね。ですから、その明確にやっぱり説明する、誰がするかというのは、これはもう製品の場合は事業者であり、それを処理するのであれば地方自治体であり、その全体としては国が説明していくというふうな、やっぱり今回のその水銀、水俣条約が採択されたというのはとってもいい機会なので、やっぱりこの機会を逃さず、きちんと国民に、自分の出すものがどういう影響を及ぼして、そしてひいては自分にも返ってくるんだよということをきちんと、やっぱりいろんな人が説明していかなきゃいけないと私は思っておりまして、そういう書き込み方がちょっと足りないかなというふうに思います。それは、一番最後の13ページのところの国及び地方公共団体の責務のところにも、ぜひそういう言葉を付け加えていただきたいということと、それから、あと、地方公共団体は、もう本当に、目の前でごみを分別して出す私たちに対して説明していただかなきゃいけないわけですから、何ゆえに電池を分けなさいとか、最近は水銀ゼロの電池があるから、それぞれとして蛍光灯を出すときには、なぜ割れるようにしてはいけないかとか、やっぱりそういうのをきちんと説明してほしいなというふうに思っております。

 非常に日本では、国民が賢いと思っておられるのか、説明が少なさ過ぎるなと思っているんですね。私は、直前アメリカにいたんですが、アメリカでね、トイレで手を洗った後に紙を使うんですけれども、今回、びっくりしたのは、紙は、ここは紙しか入れちゃいけませんと、理由をちゃんと書いてあるわけですね。この紙は堆肥化しますと、だからほかのものが入ると、それは困りますというふうなことをちゃんと説明してあって、だから、旅行者にでもわかるような説明がきちんと、その現場、現場にされているわけですね。日本の場合は、多分、ここにほかのものを入れないでくださいみたいな書き方はしてあるけれども、何ゆえにほかのものを入れちゃいけないかという説明が全然足りないなと常に思っておりましたもので、ぜひそこのところをきちんと説明するということで、そういう前提があった上で、国民がきちんとそれに合わせた行動ができるというふうに思っていて、国民にあまり過大な期待をされたら困ると私は思いますもので、やっぱり事業者と、それから国・地方自治体の方がきちんと説明してほしいというふうに思っております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 武林委員、お願いします。

【武林委員】 今の議論にありましたように、指針値等の問題ではなくて、むしろ全体の環境へのインパクトということを考えると、やはりインベントリーの精度というのは、信頼性をどう上げるかということが、いろんな関係者の努力を含めて評価をしていく上では、外から見えた数値としては非常に大きいと思いますので、既に中杉委員からご指摘がありましたが、この12ページの二つの白い丸ポツを見ますと、一つ目では、その精度の重要性ということが書いてありますが、二つ目はかなり具体的な難しさが前面に出てきていますので、今日ご紹介いただいたイギリスとかアメリカの、特にイギリスなどを見ますと、比較的精度の高い大規模な部分と、それから不確実性の高い、低い、小さいもの、PRTRを使うことも含めて、そこをどうやって信頼性とそれから時系列の整合性をとっていくかということについて、もう少し踏み込んで検討する必要があるだろうと思いますし、これはほかの委員会との関係もあろうかと思いますので、そこは十分連携をとっていただいて、このインベントリーの精度をどう上げていくかということは、国際的に見たときに、非常に日本の努力を評価する上で大事だと思いますので、ここについて、もう少し検討していただければというふうに思います。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 高澤委員、お願いします。

【高澤委員】 9ページ目のところの既存施設の排出規制でございますけれども、松岡委員からも話がございましたけれども、現在の産業界のこういう施設は、かなり大気汚染対策をとっております。そういうようなところで、新たな既存施設に基準値を、暫定という表現が今のところではございますけれども、そういうような基準値というのは不適当ではないかなというふうに考えております。鉄鋼のほうで、当然そういう基準値が設けられた場合には何らかの対応をしないといけない。鉄鋼に限らず、日本の産業界、国際競争にさらされた状況におきまして、新たな設備投資等入っていきますと、まさに国際競争力をなくしていくというようなことが見受けられるので、やっぱりそこら辺は、基準値等は不要ではないかなというふうに考えております。

 それから、10ページから11ページ目のところの排出規制対象施設の選定の基本的考え方のところの11ページ目の1行目で、国内法制化する以上は不公平な仕組みとならないようにすべきであるという表現がございますけれども、これは前回の第4回のところで、恐らく鉄鋼業のところを、条約には入ってないけれども、日本の規制については鉄鋼業も考えたらどうだと、その際に、この鉄鋼業が不公平なという話に、公平性を欠くというような表現だったかと思うんですけれども、そもそもその公平・不公平だというのは、どの立場で、どういう人たちが考えるかということでございますけれども、産業界につきましては、鉄鋼業が入ってないことに対する不公平さというのは何も感じておりませんので、であれば、誰が不公平だということかというところもよく考えていただいて、こういうような表現といいますか、鉄もしかり、セメントもしかり、非鉄精錬関係もしかりでございますけれども、日本の産業界は、水銀の排出係数、排出原単位というのは世界の最高水準で、現在操業がもう行われているというようなところを踏まえますと、条約以上のところをさらに考えるというのは、この委員会で議論するのはやはり適当ではないというふうに考えております。

 以上でございます。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 高岡委員、お願いします。

【高岡委員】 ありがとうございます。私のほうは、この排出規制の対象施設の規模のところの白丸の二つ目ですが、廃棄物のところに関しましては、単純な施設規模による裾切りというのは難しいと考えます。さらに、ここでは木くずの焼却施設というものを例として挙げられておりますが、木くずでしたら、もちろん全く問題はないということになると思いますが、やはりごみというのは、必ずしも一定のものではなくて、幾らか混合されるものも想定されるという意味では、かなりきめ細やかに、この大気のところと廃棄物のところとで少しこの裾切りといいますか、どこまでを入れる、どこまでを入れないというのは考えていかなければならないと思います。

 それから、ちょっと本論とは外れるかもしれませんが、13ページの最後、今後の課題のところで、この骨子案としては鉛、カドミウムのところに言及をされていて、ここが今後の課題として書かれることに若干違和感があります。水銀のこの水俣条約への対応においての今後の課題を、もう少し書くべきではないかと思っております。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 続きまして、崎田委員、お願いします。

【崎田委員】 ありがとうございます。排出規制の対象施設に関するこの10ページ、11ページ辺りにいろいろ書いてあるわけですけれども、この対象をどういうふうにするかというところが非常に大事なことだというふうに思っています。私は今回、この委員会が始まるまで、水俣条約が決まってから、この半年間考えていたときに、やはり世界的には、この五つの排出源というのが大変重要で、法対象になりましたけれども、日本の中では、鉄鋼業が2番目に多いというところで、やはり鉄鋼業界がどのようにこの問題に関心を持っていただくかというのがすごく大事なことだというふうに思ってきました。

 私は、国内の目線から見れば、やはりきちんと対象に入っていただくのが公平なのではないかとずっと思っていました。しかし、先ほどのお話で、国内では公平かもしれないけれども、世界的なことで見ると不公平だというようなお話がありまして、そういうような全体的な、地球規模全体に対してどういうふうに責任を持つかということを今後考えるに当たっては、いわゆる排出源の多い国がしっかり取り組むとか、そういうところにどういうふうにこの取り組みを波及させていくかというのがとても重要なことになると思っています。それにはどのようにしたらいいかということは、全体でもう少し考えなくてはならないことだなと思い、考えております。

 それで、私が業界の皆さんにぜひ申し上げたいのは、もし今回、皆さんとの議論の中で、この鉄鋼の皆さんを排出対象、対象施設と、業界として取り入れないという判断をした場合にも、国民は非常にたくさん排出している業界ということで関心を持ちますので、ぜひ自主的にしっかり取り組まれ、そのデータを、対象業界と同じくらいの熱意を持って社会に公表するなど、そういうことをきちんと取り組んでいただくというのが社会の信頼感や安心・安全にとって大変重要なのではないかなというふうに感じております。

 そしてもう1点ですれども、11ページの5番目、国民による自主的な排出抑制取組の責務で、私も国民の1人として参加をさせていただいておりますが、やはり社会全体、国民や社会全体がこういう問題に関心を持つということをしていかなければいけないというふうに常に思っておりますので、かなり強く明記していただくという方向には賛成です。ただし、では具体的にどのようなことが必要かということを考えれば、国民としては、例えば、その商品を選択するとき、そして使用するとき、排出するとき、この三つが大変大きな問題になってくると思います。ですから、そのあたりへの関心が非常に大事だということと、関心を持ったときに、水銀の排出を減らすために国民がどのように行動できるのかということをきちんと示すためにも、例えば、ほかの委員会で検討することになりますけれども、製品の表示であるとか、その製品の回収に関して業界が、まず上流のほうでしっかりと回収の仕組みを検討したらどうかとか、そういうことも関係あると思います。もちろん、廃棄物の排出、捨てるときも産業廃棄物としてのモニタリングや、一般廃棄物であれば、排出に対する分別に関して、ある程度の仕組みづくりとか、そういうことが地方公共団体のほうでの検討の中でも必要になってくるのかもしれないというふうに思っております。そういう全体像にしっかりと、どうしたらいいのかという選択肢を入れるということもしっかりやりながら、国民がきちんとそこに関心を持つ、自主的な取組の責務を持つと書いてあります。これ、「自主的」とわざわざ書かずとも、国民の責務というのでもいいと思いますが、そういうことが必要になってくるのではないかなと思っています。

 なお、私は廃棄物のこともかなり申し上げましたけれども、日本で一番たくさん出すのがセメント業界でということになっておりますが、焼却灰を引き受けて、エコセメントというか、再生のセメント、焼却灰を使ってセメントをつくるなど、循環型社会にも貢献していただいているわけですので、廃棄物の段階で減らすことは、やはり社会全体が取り組まなければいけないのではないかなと感じて発言をさせていただいております。

 よろしくお願いします。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 大塚委員、お願いします。

【大塚委員】 幾つかありますけれども、私自身が重要と思っている話からさせていただきますが、12ページのインベントリーのところで、一番最後のところで「報告の義務付けを法で定める必要はないものの」というふうに書いてあるんですけれども、さっき中杉委員がおっしゃったこととも関係しますが、PRTRのほうで、水銀に関してもう届け出はしていると思いますので、それとの関係をどう考えるかという問題と、あと規制というものを一般的に考えた場合に、さっき浅野先生もおっしゃいましたけれども、手続的規制というのは内容の規制、実態の規制に比べて軽いものというふうに一般的には受け取られてきて、まず手続的な規制を行うという発想で幾つかの制度ができてきたという過去の経緯がありますので、今回、5業種に関しては少なくとも内容の規制、実態の規制をすることになると思いますので、その上で手続的規制をするのが負担になるとかということは、それほど大きな負担にはならないのではないかという気もするんですけれども、ここは何か、すごく遠慮されているような感じがするので、私がちょっと勝手に考えると、報告をされた地方公共団体がお困りになるということかという気もちょっとしないでもないんですけれども、もし、この報告の義務付けを法で定める必要がないとされるのであれば、きっちり理由は書いておいていただかないと、ほかの手続的規制は割とやっていますので、何でここで少し遠慮されているのかというのは、ちょっと理由を書いていただかないと整合性がとれないのではないかというのが多少気になっております。

 それから、ちょっと順番に前に行くことになって恐縮ですが、大気排出対策の目標の設定ですけれども、先ほど量のところが問題で、濃度が問題でないというお話がありまして、私もそのとおりだと思いますが、その点からすると、あと水俣条約という名前からすると、恐らく目標を本当は設定したほうがいいことはいいんだろうとは思います。ただ、ちょっと日本の場合は、目標を設定すると非常に真面目に、やや真面目過ぎる対応をされる可能性も全くないわけではないので、ちょっとそこは危惧していますし、先ほどから国際競争力という話も出ていますので、ちょっと、そんなに強く申し上げるわけにはいかないかなとは思っていますが、水俣条約という名前との関係で言うと、1%であっても目標は設定したほうが望ましいのではないかということはちょっと申し上げておきたいと思います。

 それから、9ページの、ちょっとまた戻ってすみませんが、9ページの最後の丸のところで、複数汚染物質規制戦略に該当するということで、これはこのとおりだと思いまして、このように対応していただければと思うんですけれども、ただ、複数汚染物質規制戦略に該当するとして、この集塵とか、脱硫とか、脱硝装置等というのを設置していらっしゃる場合も、それぞれちょっと種類が、排ガス処理装置について種類が違いますので、それぞれの種類について、どれだけ水銀が除去されているかというのはまさに違うので、これはこれで、もちろん勘案すべきだと思うんですけれども、その上で、どの装置なのかということをきっちり見ていく必要がある、それが水銀に対してどういう影響を与えているかということをきちんと見ていく必要があるのだろうと思います。

 今のところは以上なんですけれども、ちょっとさっきご議論があったので、ちょっとだけ申し上げたいんですけれども、7ページの下から二つ目の丸で、この表現についてはどうかという問題が、ご指摘がございましたが、管理することは困難というのを一般的に言ってしまうのはどうかと私も思いますけれども、これは、やっぱり廃棄物のほうの審議会との関係で見ると、産業廃棄物もマニフェストで見ればある程度出てくるんですけれども、一般廃棄物に関しても、ちょっと完全な回収というのは残念ながら難しいというのが実状ではあるので、私も分別したほうがいいともちろん思ってはいるし、そちらの会議ではそういう発言をしますが、ちょっと廃棄物のほうに任せっきりにはできないということは、これはちょっと幾つかの会議に出させていただいている人間として、ちょっと申し上げておく必要があると思います。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 稲垣委員、お願いします。

【稲垣委員】 いろいろ委員の先生方が言われましたけれども、長い間、地方行政に携わってきた人間として少しコメントさせていただきたいと思います。日本の産業界の防止技術というのは、私が見ても非常に進んでいると思っております。愛知県における石炭火力というのは世界に冠たるものだろうというふうに思っております。そういう面から言って、決して産業界の皆さん方が取り組んでみえるものを否定するわけではありません。

 そういう中で少しお話をさせていただきたいと思いますが、9ページのところの下の段の二つ目で「一方」というところがあります。現に(d)の複数汚染物質の規制戦略、これに該当するようなものをきちっとやっていただいているとは思いますけれども、これだから、やっているから条約担保済みという措置をとるというのはいかがなものかなと、こういうものをやってみれば、そういうものを容認した形の基準をつくるなり何かすれば、それがやはり国際的にも評価されるものではないかなというふうに思っております。従いまして、ここの「一方」のところをもう少し、こういうものを容認した上で、きちっとした基準をつくるというようなものが必要というふうに思っております。

 それと、10ページのところの(3)の二つ目の丸で、一方云々と、この考え方は私は賛成できるところではありますが、ただ、これにもう一つ付け加えていただきたいことは、2行目なんですけれども、「そのような施設については施設規模の大小に関わらず対象とする」というと、水銀をちょっとでも排出している、使っているということになるとみんな、ものすごい小さなものまで規制対象になってしまうというのはちょっとやりすぎではないかと思います。それに、まさに皆さん方が言ってみえるように、国内の水銀の排出割合、こういうものも勘案した上で、ある程度の裾切りをやるというのが必要じゃないかなというふうに思っております。

 それと、これは書き方なんですけれども、11ページの(5)の上の2行なんですけれども、先ほど不公平感が云々という議論もありましたけれども、やはり長い間、地方行政をやってきた人間からすると、排出量が多いのに規制の対象になっていなくて、ちょっとしか排出していないようなところが規制になってしまうというのは、ちょっとどうかなという気がします。決して今まで対策をとってこられたことを否定するわけではありませんけれども、そういうものが必要だろうと。したがって、水銀に関する水俣条約を踏まえた今後の水銀の排出対策を検討するという趣旨を勘案、非常に微妙な、どっちともとれるような文章になっておるものですから、ここ、上のようにも読めるし、下のようにも読めるという部分が、上の点と下の点ですね、読めるようになっていますので、もう少し、将来の議論に任せるのだったら任せるような記述をされたほうがいいのかなという気がしました。

 以上です。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 指宿委員、お願いします。

【指宿委員】 対策の目標の設定とか、そこに関して一つなんですが、この水俣条約の目的が、さっき若松さんがおっしゃっていましたが、水銀のその世界における循環量を減らしていくというところにあるのだろうと思うんですが、それを減らすのに、人為的な発生源から出ている水銀をどれだけ減らしたら、循環量はどれだけの速度で減っていくのかという、そういう数字が出ていないので、その人為的な発生源から、できるだけどんどん減らせばいいんだというような議論に流れることが起こりうると思うんですね。一方で、今、日本がやっているその対策、これが例えばアジアにきちんと普及したときに、どれぐらいの水銀が減るのかという、そういう量の推定ですね、それを推定して、それが世界の水銀循環量にどれぐらい寄与するのかという、そういう何かバックグラウンドになるものがどこかに記述されていないと、なかなか目標設定というのはできないのではないかなと思います。その辺を少し書き込んでいただけたらと思うんですが。

 それに関連して、13ページの(3)の二つ目の丸に、開発途上国に対して云々というふうに、私の感覚からいうとかなり軽く書いてあるのではないかなと思うんですが、まさにこの点が、日本がアジアの中でリーダーシップをとっていくべき一つの大きなところじゃないかなと思います。何かここは、少し書き方、あるいは書く場所を含めて検討をしていただけたらというふうに思います。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 浅野委員、お願いします。

【浅野委員】 11ページの目標の設定ですが、何も無理やり目標を決めなければならないとは思いませんが、もし決めるとすれば、やっぱり現状、我が国はここまでやっているんだから、それよりは、もっとひどくはしませんよということは目標になり得るかもしれないと思います。つまりBATも同じですね、今やっているものはBATとして世界に誇るだけのレベルのことをやっているんだというのであれば、それは今後とも、もう絶対に引き下げはしません、やりますということは十分言えると思うんです。だとすると、対象についても、何も条約で言っているところしか対象にしませんなんてけちなことを言わないで、今やっていることはちゃんとやりますということを見えるようにすると、可視化しておくということは国際的な発言権を強めることになると前回も申し上げたとおりです。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 ただいまいただきましたのは、質問はほとんどなかったかなと思いますが、幾つか重要なことは、この委員会の冒頭でも申し上げましたけれども、今回の水銀の排出抑制というのは、大防法のばい煙とは違って、全体として水銀の地球全体で循環する量をどう抑えて、要するにこれ以上増えないようにしていくかというところの重要性であろうかと思います。そういう意味で、日本がこれまでやってきた取組で、既にやっているものでも水銀の排出抑制に具体的に効果があったものであれば、そういったものもきちんと書き込むような形にして、全くどこの業種については何もやっていませんよとそういうような話ではなくて、そういったものが見えるようにしていくことも必要ではないかというようなご意見もいただいたというふうに思います。

 それから、あと、今日、先ほど指宿委員からお話がありましたけれども、いわば世界全体で減らすという形で考えた場合には、単にある部分の排出抑制だけではなくて、別のところでもっと効果的な排出抑制、もしくは排出量を増やさない方法ができれば、そういったことも十分あり得るわけで、そういったこともきちんと書き込む必要があるのではないかというようなお話でした。

 それから、非常に悩ましいところとしては、廃棄物として入ってくるところについて、やはりきちんと我々が、どういう行為をすることによって水銀の排出量を増やしてしまうのか、もしくはそれを、どういうことをしないことによって排出を減らしていけるのかというようなところも十分説明をして、理由をわかった上で行動してもらうような形にしてもらうようなことも書き込む必要があるという形で、ここでもともと議論していた何業種をどうするかとか、そういったところを超えた形でのご議論をいただいたというふうに思います。

 今日いただきましたご意見を踏まえて、この後やっていく予定でございますけれども、今日は時間を超過いたしましたけれども、今後のものについて少し説明をさせていただきます。

 事務局で、今、申し上げました、今日いただいた意見を使いまして、第6回の小委員会で答申案として提示いただくようお願いしたいと思います。そして、当初、9月末に開催する第6回の小委員会の後に、答申案のパブリックコメントを行う予定としておりましたけれども、ご議論いただく中で、他部会と連携した検討が必要であるというようなことも明らかになってまいりました。そのため、10月末ごろに、他部会の検討状況を踏まえつつ、再度議論をする会を設けてはどうかというふうに思うところでございますが、これはいかがでございましょうか。そういうやり方でやらせていただければありがたいと思います。

(異議なし)

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 それでは、1回追加をするような形で進めさせていただきたいと思います。

 特に、本日のところで皆さんが何か言い忘れたところはございますか。よろしいでしょうか。よろしければ、本日の議論はこれでとどめまして、事務局のほうから連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【是澤大気環境課長】 本日の議事録につきましては、各委員にご確認いただいた上で公開することとさせていただきます。

 次回、第6回の小委員会は、9月26日、金曜日、10時から12時という予定になっております。また、今ほど委員長からご提案いただきました第7回の小委員会につきましては、10月末ごろ開催するということで、改めてご案内を差し上げます。よろしくお願いいたします。

【坂本委員長】 ありがとうございました。

 それでは、10分ほどと申し上げましたけれども、17分ぐらい超過をしてしまいましたが、どうも申し訳ございません。ただし、非常に有益な議論であったと思います。

 それでは、本日の会議はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。