中央環境審議会大気・騒音振動部会 自動車排出ガス専門委員会(第52回)会議録(平成25年3月14日開催)

1.日時

平成25年3月14日(木) 9:58~11:52

2.場所

主婦会館プラザエフ クラルテ

3.出席者

(委員長) 坂本 和彦
(委員) 飯田 訓正岩本 正和
小渕 存草鹿 仁
河野 通方後藤 雄一
大聖 泰弘津江 光洋
土屋 賢次御園生 誠
(事務局) 西本環境省水・大気環境局環境管理技術室長
髙井環境省水・大気環境局環境管理技術室長補佐
加藤環境省水・大気環境局環境管理技術室排ガス係
濱田環境省水・大気環境局環境管理技術室排ガス係

4.議題

  1. (1) 第12次報告の検討事項等について
  2. (2) WLTC検討状況
  3. (3) 排出ガス後処理装置検討会中間報告について

5.検討資料一覧表

・中央環境審議会大気・騒音振動部会自動車排出ガス専門委員会委員名簿

資料52-1 自動車排出ガス専門委員会(第51回)議事要旨
資料52-2 第12次報告の検討事項等について(案)
資料52-3 WLTC検討状況
資料52-4 排出ガス後処理装置検討会中間報告

6.議事

【髙井室長補佐】 それでは、定刻より少し早いですが、委員の先生方皆様おそろいになりましたので、ただいまより中央環境審議会大気・騒音振動部会第52回自動車排出ガス専門委員会を開会いたします。
 まず初めに、今回交代されました委員及び新たに委員に任命されました委員についてご紹介します。産業技術総合研究所の後藤新一委員のご後任の小渕存委員です。また、新任の委員として、早稲田大学の草鹿仁委員です。また、本日は、塩路委員及び牧下委員より欠席のご連絡をいただいております。
 それでは、開催に先立ちまして、水・大気環境局総務課環境管理技術室、西本室長よりご挨拶させていただきます。

【西本室長】 環境省水・大気環境局環境管理技術室の西本でございます。本来であれば、水・大気環境局長、小林が出席をするところですが、本日、急用が入りまして欠席となりましたこと、まずはお詫びを申し上げます。
 本日は、委員の先生方におかれましては、年度末のお忙しい中にお集まりをいただき、ありがとうございます。
 この会議は、前回が昨年6月であり、第11次報告のご審議、取りまとめをいただいたところでございまして、報告については、8月10日の第34回大気環境部会に報告され、第十一次答申として出されたところでございます。
 したがって、今回は第十一次答申が出された後の初めての会議、そして、報道等で御存じかと思いますけれども、中央環境審議会に若干の組織改編がありこの会議の上部に当たる大気環境部会が大気・騒音振動部会として新たに生まれ変わっております。それ以降の初めての会議ともなります。
 したがって、本日、第十二次答申に向けての検討課題の事務局案を、ご提示し、ご審議をいただきたいと考えております。
 また、以前から課題となっておりました、新長期規制適合車のNOx後処理装置の性能低下に対する原因究明と対策つきましては、昨年10月から国土交通省と合同で排出ガス後処理装置検討会を設置して、検討をしてきたところでございますので、本日は、その検討会で取りまとまりました中間報告について、事務局からご報告をしたいと考えております。
 最近、PM2.5が話題となっておりまして、大陸からの越境汚染というのが取り沙汰されておりますけれども、大陸からだけではなく、国内発生源もあるわけで、きちっと対応していかなければならない。自動車の分野では、これまでもPM対策というのは、着実に実施をしてきた分野だと考えておりますので、引き続き確実な対策を実施していくとともに、ある意味、アジア諸国に対する見本になるよう、しっかりとした対策を引き続き進めていきたいと考えているところでございます。
 本日は、委員の先生方には、ぜひとも闊達なご意見をいただきたいと思いますので、ご議論の方、よろしくお願いをいたします。

【髙井室長補佐】 本日の会議は、公開とさせていただき、今回の議事要旨及び議事録については、委員の皆様のご了承を得た後、ホームページにて公開させていただきたいと思います。
 それでは、お手元の資料について確認させていただきます。
 議事次第がございまして、委員名簿、そして資料52-1、前回第51回の議事要旨でございます。こちらについては、本日、説明は割愛させていただきます。そして資料52-2、第12次報告の検討事項等について(案)でございます。そして資料52-3、GRPEにおけるWLTC検討状況でございます。そして資料52-4、こちらが排出ガス後処理装置検討会中間報告でございます。資料の不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
 それでは、本日の議事を進めてまいりたいと思いますが、一つお断りいたしますが、専門委員会委員長について、河野先生の委員の委嘱手続中でありまして、本日は、大気・騒音振動部会長である坂本委員にお願いしております。
 それでは、審議に先立ちまして、坂本委員長にご挨拶をいただくとともに、これからの進行をお願いいたします。

【坂本委員長】 皆さん、おはようございます。お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございました。
先ほど、西本室長のほうからお話がございましたように、昨年の第十一次報告後、初めての自動車排ガス専門委員会ということでございまして、今日は第12次報告に向けての方針について、審議をしていただくということになってございます。
 先ほど、お話ございましたけれども、PM2.5がかなり世の中を騒がせてございますけれども、自動車排ガスにつきましては、非常に急速な形でPMの排出制限をやってきたということ、それから、8都県市による運行規制、そういったこともありまして、相当程度、自動車排ガス測定局と一般局の粒子状物質濃度は低減をしているということでございます。
 しかし、その一方では、最近の文献によりますと、かつては、あまりディーゼル排ガスはそれほどガス量物質反応性は高くないと思われていた訳ですが、一部光化学反応によって粒子化するものもあるというような形の情報も出てございます。そういったことで、今後、状況によっては、そういったものも視野に入れて考えていかなければいないのではないかというふうに思います。
 今日の専門委員会では、近年自動車排出ガス基準の国際調和という視点で審議を重ねてまいりましたけれども、12次報告では、乗用車の世界統一試験サイクル導入ということが論点の一つになってございますけれども、乗用車の国内販売、保有台数等を見た場合に、国内の大気環境への影響のみならず、自動車関連産業の競争力にも大きな影響を与えるというふうに考えられます。
 現在、アベノミクスという形で、三本の矢の一つ、成長戦略でそういう産業競争力を強化するということが重要視されているところでございます。大気汚染への関心の高さ、それから、産業競争力強化等の社会的なニーズ、そういったものも考慮をいたしまして、国内の実態に合った自動車排出ガス低減対策による大気の環境改善を図るのが本専門委員会の使命ではないかというふうに思うところでございます。
 本日も委員の皆様方におかれましては、闊達なご意見を頂戴いたしたいと思います。ご審議に協力のほどよろしくお願いいたします。
それでは、議題に入らせていただきたいと思いますけれども、最初の議題でございますが、第12次報告の検討事項、これにつきまして、事務局のほうから報告をお願いいたします。

【髙井室長補佐】 それでは、資料52-2に基づいて説明してまいりますが、カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、ご承知おきください。
 資料52-2でございますが、第12次専門委員会報告での検討事項等についてでございます。
 まず、一つ目が、乗用車の次期排出ガス規制について、こちらは国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム、UN-ECE/WP29で検討されております世界統一試験サイクルWLTCへの調和が大きな課題の一つとなります。
 現在の検討状況については、次の議題で紹介しますが、国際基準調和のメリットを鑑みてWLTC導入に向けてご審議いただきたいと考えております。
 試験サイクルをWLTCに変更した上で、次期許容限度目標値、適用時期をどうするかという論点に移ります。こちらについては、現行のJC08に基づく新長期あるいはポスト新長期規制の規制値がWLTCではどの程度になるのかという等価規制値を定めまして、その上で環境改善効果、技術開発動向を考慮して、次期許容限度目標値、適用時期についてご審議いただきたいと思います。
 また、燃料蒸発ガス規制の見直しについてもご検討いただきたいと考えております。燃料蒸発ガスに係る現行の試験法では、DBL試験を24時間としまして、1日の駐車時の燃料蒸発ガス量を評価しておりますが、実態としましては、都市部では、自動車が週末しか使用されないようなことも多く、キャニスターが破過して燃料蒸発ガスを多量に排出しているのではないかといった意見もございます。
 このため、次年度に環境省の委託調査で、まずはどのぐらい排出しているのか、そういった実態を把握しまして、対策による効果等を試算してまいりたいと思います。時期的には12次答申に間に合わないかもしれませんが、専門委員会には調査の進捗等を報告してまいりたいと思います。
 次に、排出ガス後処理装置に係る対策について、新長期規制適合車の尿素SCRシステムが使用過程において性能低下している事案に端を発しまして、十一次答申において引き続き検討していく課題とされております。
 本件については、昨年10月に、国土交通省、環境省合同で排出ガス後処理装置検討会を設置しまして、本専門委員会に所属される先生方にも検討委員としてご参加いただき、ご審議いただいております。
 検討会でご審議いただいている内容は、NOx後処理装置の耐久性、信頼性確保のための対策、またNOx後処理装置のシステム温度、作動状態を考慮した対策です。こちらのシステム温度、作動状態を考慮した対策については、昨年度検討しましたオフサイクル対策におきまして、尿素SCRシステムのレイアウト位置の違いにより、触媒活性状態が異なる。また、そもそも尿素水を噴射しない温度まで低下することでNOx浄化性能が大きく異なる実態も発覚しました。これを受けて、対応を検討することとしております。
 本件につきましては、第十一次答申でのオフサイクル対策の扱いと同様に、基本的には検討会で審議することとしまして、専門委員会には結果について報告し、ご了承いただくとともに、専門委員会報告、報告書、答申に内容を盛り込む形としたいと考えております。
 検討会については、次年度まで設置する予定で、本日は本年度に取りまとめました中間保護について、後ほどの議題でご報告申し上げます。
 その他の検討課題として、一つが、二輪車の次期排出ガス規制について、こちらは第十一次答申において、平成28年、2016年の次期規制について、答申いただいたところです。欧州では、2016年からEURO4による規制が開始される予定ですが、その次のEURO5による規制が2020年より予定されております。
 一方で、現在の国際基準、UN-ECE/WP29で策定されるUN-ECE規則が欧州の現行規制にアップデートされていない実態などもありまして、今年1月から国際基準のアップデートや新たに日本あるいは欧州で導入する予定の燃料蒸発ガス規制あるいは車載式故障診断システム(OBD)等の国際基準策定に向け検討が開始されました。これまでの専門委員会の審議でも明らかなように、二輪車の排出ガス規制に係る国際基準調和は、さまざまなメリットがありますので、国内の環境改善も考慮しつつ、最終的には規制値を含めた完全調和というものを目指していくべきであると考えております。したがいまして、当面の間は、国連での活動の進捗について適宜報告するとともに、必要に応じて内容についてご審議いただきたいと考えております。
 また、微小粒子状物質に関する課題として、最近先ほどもお話ありましたとおり、PM2.5への関心が高くなっておりますが、自動車から排出されるPMの大半はPM2.5でありまして、十一次報告においては、従来の答申に基づく対策を着実に実施していくべきとされております。
 また、ブラックカーボンについて、国際的に短期寿命気候汚染物質、地球温暖化と人体の健康の両面に影響がある物質として低減を図っていくといった動きがありますので、そちらの動きを見つつ、必要に応じて今後の対策を検討することとなるかと考えております。
 また、欧州では、EURO6から粒子数に着目した規制を導入しておりまして、どのような背景で導入したのか、導入による効果、また仮に日本で導入する場合の課題等について、検討を進めてまいりたいと考えております。
 スケジュールに関しまして、まず、2の後処理装置の対策に関して検討会の中間報告を取りまとめており、本日報告いたします。4月以降も引き続き検討会で検討を進めるとともに、乗用車の排出ガス低減対策に係る検討を進めてまいります。
 夏ごろに自動車メーカーヒアリングと書いてありますが、これまでの答申に基づき、ディーゼル重量車、二輪車については平成28年から、またディーゼル・特殊については平成26年から順次次期規制が予定されております。また、乗用車についても、このWLTCの結果が着々と進んでいる中で、各社においてもWLTCに対応した車両開発の検討が進められていると推測されます。
 したがって、作業委員会ベースでありますが、各社の最新の技術動向に関し、ヒアリングを行い、これまでに答申された排出ガス低減対策は、着実に準備されているかチェックしまして、必要があれば、そういった対策の内容を修正するというフォローアップを目的としております。
 次の議題で紹介しますが、11月にWLTCが策定される予定ですので、このフィックスを受けまして、WLTCでの等価規制値あるいは次期許容限度目標値の検討を開始したいと思います。
 来年3月には、排出ガス後処理装置検討会の最終報告を取りまとめる予定で、一方で乗用車の次期排出ガス規制に関する審議を、議論を進め、来年中には、第12次専門委員会報告書、取りまとめを行う予定でご審議いただきたいと考えております。
 説明は以上であります。

【坂本委員長】 どうもありがとうございました。
 資料52-2に基づきまして、第12次報告の検討事項等についてという形で説明をいただきました。
 これにつきまして、ご質問、ご意見等ございます方はお願いいたします。
 何かございましたら、名札を立てていただければ、ありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
 検討事項がリストアップしてございまして、そして先ほど、その後におよそ下に書いてあるようなスケジュールで審議をしていきたいということでございます。
 微小粒子状物質というところで、例えば、先ほどブラックカーボン、これは温暖化と健康影響、PM2.5、そういったところに関係するということです。これは環境基本計画の中でも地球温暖化とコベネフィットを考えながら、環境対策を推進していくということにしてございますので、そういう意味からも、こういった項目は両方の点から考えていく必要があるということで、先ほど申し上げたということでございます。
 どうぞ。

【河野委員】 全体的にこれでいいと思うのですが、例えば、微小粒子状物質等に関する課題というようなことで、資料はあるのですか。

【髙井室長補佐】 本日は、用意してございません。

【河野委員】 用意していないけど、どういう議論をここでされるかと、何か報告か何かをされるということですか。

【髙井室長補佐】 PM2.5に関しては、先ほども坂本先生からお話があったとおり、特に2次生成のメカニズムの解明に伴って前駆物質となるNOxあるいはVOCの総合的な対策を行うということになれば、その中でも自動車も削減を図っていくということになると思いますので。現時点では……。

【河野委員】 いや、それで結構ですけど、私ここについてちょっと何か一言つまらないことを申し上げたいと思っていたものですから、そういうチャンスがあるのかなと思ったのですけど。じゃあ、あると考えてよろしいでしょう。

【髙井室長補佐】 はい、設けますので。

【坂本委員長】 ありがとうございました。どうぞ、そのほかいかがでございましょうか。
 もしございませんようでしたら、次へ移らさせていただきますが、よろしいでしょうか。

(なし)

【坂本委員長】 ありがとうございました。
 それでは、議題の2でございますが、WLTCの検討状況についてということで事務局から説明をお願いいたします。

【髙井室長補佐】 資料52-3に基づきまして、GRPEにおける乗用車の排出ガス試験サイクルWLTCの検討状況について説明いたします。
 こちらは昨年5月の第50回専門委員会でも報告しました。その前から継続して検討が行われておりまして、現在はサイクルドラフトがほぼ固まってきた状況であります。
 したがいまして、前回からの進捗を中心にご報告したいと思います。
 WLTCの目的は、世界における典型的な走行条件を代表する全世界共通の軽量車テストサイクルを策定することで、その際、サイクルの策定方法を明確にして、また、各地域での実走行データをもとに適切な重み付けによって策定をしていきます。
 対象地域は、EU、インド、日本、韓国、米国で、策定に必要となる実走行データあるいは自動車走行量統計を提出する必要があります。当初、中国もデータを提出して、中国の実情も反映されたものとする予定でしたが、残念ながらデータは提出されず、中国の実態は反映されておりません。
 2014年以降、欧州をはじめ、加盟国でCO2燃費規制あるいは排出ガス規制にこのWLTP、Pというのは、下に説明がございますが、サイクルに加えてテスト、試験法をより実態を反映した試験法と、中身で検討しておりますが、こちらもあわせて国連で審議しております。このWLTPへの変更を導入する予定でありまして、2013年末までの成立を目指して活動を行っております。
 WLTP作成のプロセスについて、ご参考までに説明しますと、WLTCサイクルを作成するグループ、こちらのグループと調和試験法、DTPと呼んでいますが、を作成するグループに分かれております。このDTPは、さらに五つのサブグループに分かれておりまして、PMあるいは粒子数の試験法の策定、内燃機関車のシャシダイ試験法、電気自動車ハイブリッド車などの試験法の策定、そして、Additional pollutant、追加的な汚染物質の検討、さらに認証試験用燃料性状の検討のグループに分かれております。
 本日は、この左側のWLTCサイクルの検討状況について主に説明いたします。
 プロセスは、各国の実走行データをもとにWLTPのファーストドラフトを作成しまして、Validation testsを経まして、修正し、Confirmation testsを行い、最終的に完成させるという流れになっております。現在は、Validation testsのフェーズ2が終わり、Open Issueの審議を行っている段階であります。
 このWLTPの策定活動には、環境省からValidation testsを交通研に一部について委託しまして参画しているほか、国土交通省、交通研、JARIあるいは自工会から人的、資金的な協力を行っております。
 前回ご報告した昨年5月以降の動きであります。前回お示ししたのは、サイクルのVer.5と呼ばれるものでした。その後の議論ですが、6月に行われた会議で、日本からこのVer.5では、一部の車両がエンジン保護領域に入る頻度が高いということから、一部の加速を緩やかにしたVer.5.1というものを修正提案しました。こちらについては、インドは賛成をしましたが、サイクルのダイナミクス性を重視するヨーロピアンコミッションは、この修正によりダイナミス性が落ちるということから、反対をしました。
 次の会議までの間に、欧州側と協議をした結果、最高速度が120㎞/h未満の車両にVer.5.1を適用することで合意いたしました。なお、インドは、最高速度145㎞/h未満の車まで適用を拡大するように主張したものの、合意は得られませんでした。
 また、サイクルのうち、Ex-Highについて、加盟国の必要に応じ除外することも合意されましたが、こちらについて後ほど説明いたします。
 インドの主張に関しては、最終的に最高速度120㎞/h以上に適用するサイクルについて、1点修正したVer.5.3と呼ばれるものをインドが提案をして、今年1月の会議で合意されました。
 このWLTC自体ですが、Low、middle、High、Ex-High の四つのフェーズから構成されます。サイクルを作成するにあたって、実走行、走行実データのショートトリップを最高速が60キロ以下をLowのデータと、60~80キロのものをmiddle、80~110キロのものをHigh、それ以上をEx-Highのデータとして分けまして、またその閾値により各国での走行実態の中で各フェーズに該当する走行距離、走行時間というものを求めます。
 そして、各国の走り方の違い、例えば、日本に比べて欧州のほうが加減速が大きいといったような違いがありまして、世界統一の速度、加速度頻度分布というものを出す際に、各地域の絶対走行量によって重み付けを行っております。この重み付けに基づきパートごとに国際調和走行実態として速度、加速度頻度分布を導出しまして、それとの乖離が小さくなるようなデータベース中のショートトリップの組み合わせを探して、テストサイクルを作成しました。
 時間配分については、これも国際調和走行実態として、各国トータルの全走行時間でのL、M、H、ExHの比率から、トータルを1,800秒を、Lowについて589秒、middleを433、Highを455、Ex-Highを323秒というふうに分けております。
 これで一通り試験をすることで排ガスのトータルの量、あるいは燃費等を導出することはできますが、日本の走行実態では、このEx-Highというのがほとんどウエートとしてありませんので、各国のニーズに応じてEx-Highについて不適応とすることができるということが合意されました。
 また、L、M、Hに関して、各国においてそれぞれの地域の走行実態を反映するべく、独自のWeighting Factorを設定することについて、現在Open Issueとして引き続き検討しております。
 6ページにありますのが、こちらがWLTCの最高速度120㎞以上の車両に適用されるVer.5.3、それと最高速度120㎞未満の車両に適用されるVer.5.1の速度と加速度の時間推移を示しております。
 青線で示しているのがVer.5.3の速度、そして緑がVer.5.3の加速度の時間推移でありまして、一部、例えばmiddleの値で少し赤いところがあります。赤がVer.5.1の速度、そしてピンクが加速度の時間推移を示しています。
 特にEx-Highのフェーズでは、最高速度は130㎞となっておりまして、ドイツのアウトバーンに代表される欧州の走行実態を考慮した試験サイクルとなっております。
 参考までに7ページは、国内で適用されているJC08モード、また欧州で適用されているNEDCであります。国内のJC08は過渡サイクルとなっていますが、欧州のNEDCは、かくかくとした定常サイクルとなっております。
 8ページですが、これまでVer.5.3と5.1を説明してきました。日本の自動車では、基本的にVer.5.3が適用となりまして、軽自動車の一部についてVer.5.1が適用となります。ただ、インドなどでは、このVer.5.1でも追従できないような低出力車が市場に存在しておりまして、それらの車両向けのサイクルについても、主にインドの走行実態をもとに作成されました。これらの低出力車用サイクルは、パワーマスレシオ、自動車の最高出力を空車重量で割った出力比で、PMRと略しますが、PMRが34kW/t以下の車両に適用されまして、さらに、PMR22kW/t以下とPMRが22~34kW/tをそれぞれClass1、Class2として、それぞれこちらの下にあるサイクルが適用されます。
 PMR34kW/t超えのものはClass3とされまして、Ver.5.3または5.1が適用されますが、このVer.5.1に比べてもこのClass1、2のサイクルは加速度などが小さくなっております。
 9ページですが、WLTP、テストサイクルに加えて、試験時重量など、一部試験法にも及びますので、WLTPとしておりますが、この国内導入に向けた主な論点は、こちらに示しております。
 まず、国内走行実態に対するWLTCのテストサイクルとしての代表性を検証する必要があります。
 検証においては、各フェーズの速度・加速度頻度の国内走行実態との比較、あるいは各フェーズの重み付け係数、日本のWeighting Factorをどのように設定するのかということが論点と考えております。
 このWeighting Factorについては、各国独自のWeighting Factorを導入できるかどうかについても、現在審議中であり、特に欧州は基準調歩の観点から、各国独自で設定することには否定的なスタンスです。ただ、Ex-Highについては、日本などの走行実態を鑑みて、加盟国の必要に応じて採用しないと、そういうことはできるということは合意されております。
 また、その他の論点として、コールド・ホット比率があります。日本の現行の規制では、JC08で25%コールド、そして75%ホットの比率としておりますが、欧州では、NEDCモードでコールドスタートのみと、100%としております。
 コールドスタートでは、低温での排出ガス低減対策を評価しますので、コールド比率が高くなるにつれ、低温時の対策が重要となります。
 また試験時重量について、乗用車では、空車時重量+100㎏+15%積載、100㎏は、ドライバー+手荷物+ずっと搭載をしている荷物などの重量で、15%積載、ここは積載というよりは荷重という表現が適切かもしれませんが、GVWから空車時重量と100㎏を除いた残りの重量の15%としまして、ドライバー以外の同乗者あるいは荷物の平均として15%としております。
 同じように、商用車では、空車時重量+100㎏+28%積載、この28%という値は、欧州の実態と日本、韓国の実態から走行距離で重み付けして導出した比率であります。
 こういった論点について、試験サイクルの代表性検証を今後行っていきたいと考えております。
 10ページで今後の予定ですが、今月下旬に東京でワーキンググループ会合を開催します。各国独自Weighting Factorの扱い、あるいはコールドスタート比率などのOpen Issueについての決着を目指します。
 その後、サイクルの最終確認を目的としたConfirmation testsを実施して、サイクルテスト手順が確定します。その後、各試験ラボ間での再現性を確認するラウンドロビンテストを実施していきますが、こちらの結果は、特にフィードバックはされません。
 11月のAd-hocGRPEというものを開催して、gtrとして承認する予定ですが、この11月に審議するためには、例えば、多言語への翻訳等の準備のために、8月までに国連へ文書を提出しなければいけないと。なお、GRPEの上位機関であるWP29では、来年3月に採択される予定ですが、通例技術的な事項の修正は行われませんので、WLTPは11月に確定すると考えております。
 欧州では、2014年以降、早期のCO2規制強化を目的として、WLTPを導入する見込みであります。今後の国連での審議により内容に変更があった場合には、専門委員会にも随時報告してまいりたいと思います。
 WLTCの検討状況について、説明は以上であります。

【坂本委員長】 ありがとうございました。
 ただいま資料52-3に基づきましてWLTC検討状況について、報告をいただきました。何かご質問、ご意見等ございましたらお願いいたします。どうぞ。

【河野委員】 淡々と説明していただいて、それはそれなりに感動しているのですが、私一番、こういうので気にかかるのは、今までも随分こういうことをやってきた訳ですが、結局日本として非常に厳しい状況にあるところがあるのかないのかとか、あるいは、日本として技術的にはかなりクリアできるんだけど、諸外国がその追従に追いついてきていないので、そこは何か問題になりそうだとか、何かそういうところに絞り込んで、ちょっと紹介してもらうと、どこら辺りになるんでしょうか。

【髙井室長補佐】 二つあると思います。サイクルの代表性が日本の走行実態と合っているかどうかという話と、あともう一つが、技術的に……。結局、サイクルの代表性が仮に合っていない、例えば、加速がよりWLTCのほうは大きいということであれば、それに対応するための技術というのが日本の車にも求められるといった課題があると思います。
 一つ、日本から修正の提案をと行ったというのが、このもとがVer.5というものだったのですが、Ver.5.1という修正の提案を行っています。これは先ほども説明しましたが、軽自動車、軽貨物ですね、がこのVer.5.1を適用することになります。
 現行の平成17年規制の値、規制値でも軽貨物については、規制値を少しほかの車種と比べて一部緩くしたりしておりますので、同じようにほかの車と同じサイクルを適用すると、かなりエンジン保護領域に入る頻度が高くなってしまう。特に国内の実態では、1%程度がエンジン保護領域に入るといった調査もありますが、それに対して、このサイクルでは、もっと高いところまで入ってしまうといった、そういった技術的な背景もありまして、そもそも走行実態に合わせるということを目的に、こういったサイクルの修正の提案とかも行っております。
 したがって、次回もう少し詳細に説明させていただければと思います。

【西本室長】 補足をいたしますと、今申し上げたところは、技術的に難しいというよりも、まさに今もお話しさせていただいたとおり、使い道が違う、したがって、走行実態が違う部分があることであり、そこまで同じものも適用すべきなのかどうかという議論があって、そこは本来そういうものを使い道のものがあるならば、そういったものを殺してしまうのはいけないということを、議論しているということであります。サイクルの議論については、いかに走行実態に合わせるか、国内の走行実態に合っているかを確認するかということが重要であり、技術的に今度どう基準に合わせていくかという点では、サイクルが決まった後、先ほど十二次答申の検討事項の中にもありましたけれども、許容限度目標値をどこにしていくのかという議論になっていく。
 国際調和というのは、モード、基準値、全ての調和が最終の目標であるとしても、まずはモードを統一し、許容限度目標値は状況に応じて、必要があれば、最終目標は調和としても、国内での基準値の設定ということもあり得ると思っていまして、そこはまた今後も引き続きご議論いただければと考えております。

【坂本委員長】 ありがとうございました。では、どうぞ、大聖委員。

【大聖委員】 このWLTCは、一応、日本の立場としては、排出ガスの試験法ということで検討されてきているわけですけども、欧州はCO2も含めてこのサイクルでやろうとしていて、それで急いでいるような面があると思います。日本も排ガスと燃費の測定方法というのを統一していかなきゃいけないという観点がありますので、その辺はどういうふうに考えておられるか伺いたいと思います。

【坂本委員長】 お願いします、事務局。

【髙井室長補佐】 少なくとも排ガスについては、可能な限り、当然、国内の環境改善というのが大前提ではありますけど、その中で可能な限り国際基準に合わせていくという考え方で進めております。
 一方で、燃費について、我々、環境省のサイドで所管していないのもあるので、あまり無責任なことは言えないとは思うのですけれど、当然WLTCの活動に参画するに当たっては、燃費のほうでも用いることも視野に入れて、国交省も参加しているのではないかというふうに考えています。

【坂本委員長】 ありがとうございました。どうぞ、そのほかございますでしょうか。

【後藤委員】 今回ご紹介いただいた、このWLTCの件ですけど、これ本来の趣旨から言えば、できる限り国際的にモードを統一していこうという活動だと理解しています。現実問題としては、各地域における実態を反映しなくてはいけないということから、いろいろバージョンがいっぱい分かれてきて、次のステップとしては、地域によってWeighting Factorをどうするかという、そういう議論にもなりつつあります。
 本来の趣旨から言えば、できるだけモードは統一したいのだけども、その辺のWeighting Factorについて今後、議論になることだと思います。Weighting Factorはできる限り日本に合わせるように持っていって、それで基準を決めていくのか、できる限り国際基準調和にという趣旨を考えて、世の中の、世界の統一モードにするようにしておいて、規制値のほうでその辺を、何というのですか、国の実態に合わせるというふうに持っていくのか。
 大きく考え方が二つぐらいあると思うのですけど、この辺は、今後の議論の中で決めていくことというふうに理解してよろしいんでしょうか。

【坂本委員長】 どうぞ。

【髙井室長補佐】 本日お配りはしておりませんが、国際的な議論がどのような方向になるかというところで、こちら去年の6月の会議の、日本から示した資料でして、こちらがWLTCの速度、加速度頻度分布と。それに対して、各国の走行実態等比較して、そのカイ二乗値で示しています。カイ二乗値、これが大きいほど乖離があると、逆に小さいほど乖離が少ないということで、例えば、EUと日本と比較すると、EUはもう0.510と、それに対して日本は37と、大分違うと。ここの大きな違いというのは、特にEx-Highの部分がですね、日本だとほとんど走行実態としてない、一方で欧州はかなりあるというところが大きな違いなのかなと。
 ですので、逆に言うと、欧州はWLTCの独自Weighting Factorじゃなくて、今の時間割合に基づくWeighting Factorが欧州の走行実態にも合っているということで、日本側に近づけていくというアプローチは非常に難しいのかなと。欧州がなかなかのまないのかなと。
 ただ、先ほど申し上げたように、Ex-Highの部分、ここの部分がなくなることで、このカイ二乗値というのがかなり、1以下になります。したがって、Ex-Highを適用除外とすることができるのであれば、世界統一のWeighting Factorとすることもやむを得ないというところも考えています。
 したがって、そこまで大きくサイクルを乖離しないのかなというところで、規制値についても、欧州と同等レベルで検討していくことは妥当なのではないかと考えています。

【坂本委員長】 よろしいでしょうか。

【後藤委員】 はい。

【坂本委員長】 そのほか、いかがでございましょう。はい、どうぞ。

【河野委員】 何かそういう議論を伺っていますと、何となく今話題になっているTPPとかね、何かああいうことを先取りしているような議論になっていくのではないかなという感じがしてくる訳ですね。
 例えば、関税かける、お互いに、たとえ自動車を輸出、輸入し合うというようなときに、こういうことは関係してくる訳ですよね。そのときに、世界基準みたいなやつがあって、それを守るか守らないかというような議論が多分起こってくるのではないかなというふうに思うのですけど。
 例えば、これはかなりこの場から脱線したような議論になってしまうのですけど、TPPとか、そういうものとこういう規制あるいは国際調和みたいなものというのをどういうふうに捉えたらいいのかなというのが、私はかねがね何か疑問というわけじゃないんですけど、漠然と不安ですかね、を覚えるような感じもありまして。
 何かそこら辺については、事務局のほうでは、どういうふうにお考えかお聞かせいただきたいと思いますけど。

【髙井室長補佐】 EPAとかFTAとか、そういった経済の連携協定というか、関税をなくしていこうという、そういうパートナーシップの動きの中で、関税措置だけじゃなくて、非関税措置も当然、争点となります。したがって、こういった基準が違うというところが、まさに争点の一つとなるという認識はあります。
 最近では、欧州とEPAの交渉を開始するといった動きもある中で、欧州ではこの1958年協定の車両の装置部品の相互承認に係る協定というものに加盟をしていて、この協定下で定められているUN-ECE レギュレーションというものが、欧州では採用されていると。したがって、非関税走行障壁撤廃に向けては、このUN-ECE規則というものを日本も採択する項目をどんどん増やすべきという圧力をかけてくる可能性もあるのではないかと。その中で、この乗用車の排出ガス規制値も含めた基準調和というものも含まれる可能性はあるのではないかと考えております。 
 これまで、十次答申でディーゼル重量車あるいは十一次答申で二輪車の試験法の調和というのを図ってきましたが、国際基準調和することで、自動車メーカーにとっては、開発の共通化あるいは開発に係る期間を短縮すると、あるいは認証コストを削減する、さらなる環境技術の開発といったメリットはあります。
 これまで、主に自動車メーカーの視点に立って、そういったメリットを特に強く言ってきましたけど、ユーザー側にとっても、より安い、適切な価格で環境性能のいい車を購入できます。行政側も、特に審査する側としては、審査作業の効率化のメリットもあります。あるいは、ユーザーが安価な価格で環境性能のいい車を購入できれば、環境にとっても環境改善に寄与する、そういったメリットも当然あるという認識でおります。
 加えて、アジアの振興国にもこの協定に加盟することを働きかけて、アジア域での環境、あるいは安全の改善を図るということも可能になるという意識はあります。
 したがって、国内の環境改善を確保するというのは、大前提ではあるのですが、可能な限り排出ガスに係る国際基準への調和というものを進めていくべきではないかと事務局では考えております。

【河野委員】 そういう判断はですね、こういう専門委員会か作業委員会かわかりませんけど、何か紹介していただいて、我々がそういう認識を持っているというか、もっと積極的に言えば、勉強しておいたほうが本当はいいのではないかなという、これは私の余計なお世話の話ですが、そういう認識は私自身にはあります。

【坂本委員長】 どうもありがとうございました。今の話は、多分いろいろな業界でもそうですけど、国際基準にむしろ日本は積極的につくるほうに参加をしていって、戦略的にやらないと、今のようなことが成果としては生み出せない形になるんのではないかというふうに思います。
 どうぞ、そのほかございますか。

【大聖委員】 国際基準調和のメリットというのは何かというのを、製造者側にも実はあると思います。それから、コストが削減できることや開発の時間が短縮できるというようなこともメリットがある訳ですから、やっぱり総合的な判断が必要だと思っております。
 それから、もう一つ、基準値のことについて申し上げますと、各国独自に低排出ガス車の認定制度というのがありますので、実は決めた基準よりもかなり下回る低排出ガスのものが実際には出回っていますが、それは国土交通省の所管する制度ですから、ぜひ情報交換をして進めていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【坂本委員長】 ありがとうございました。どうぞ。

【西本室長】 補足をさせていただきますと、今ご指摘がありましたとおり、国際基準調和、いろんな面でコストを下げ、そのコストを環境対策に向けることによって、さらに環境対策が進むというメリットがある。これは製造者側、それから当然それを享受するユーザー側にもありますし、実は行政側にもこういった基準をつくる上でのコストも各国がデータを持ち寄り、各国が議論することでより進むというメリットも、国際基準調和の中にあると認識しておりまして、そういった面からも進めていきたいと思っています。
 一方、先ほどのご指摘で、ご心配の部分があったかと思うのですが、あくまで目的は国内の環境改善ですから、国内の環境改善に効果があるのかという検証は必要であるし、それと基準調和のバランスの中で判断し、それが最適あるいは安全側にあるということの確認は、必ずしていかなければいけないとは思っております。

【坂本委員長】 ありがとうございました。
 そのほか、いかがでございましょうか。

(なし)

【坂本委員長】 よろしければ、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 3番目でございますけれども、排出ガス後処理装置検討会中間報告でございます。事務局から説明をお願いします。

【髙井室長補佐】 排出ガス後処理装置検討会の中間報告について、資料52-4に基づいてご報告申し上げます。
 中間報告の構成は、2ページの目次のとおりでございます。
 はじめに、検討の背景、目的・経緯を説明しまして、尿素SCRシステム性能低下対策として、新長期規制適合車の使用過程での排出ガス増加の実態、SCR触媒のHC被毒メカニズムの究明結果と対策の方向性。前段酸化触媒の劣化原因の究明状況。そして、レイアウト位置、低速走行パターンが後処理装置に及ぼす影響と続いていきます。そして、今後の検討課題を最後に記述しております。
 また、報告取りまとめに当たって、検討会による判断の根拠となるものを資料と、そして、例えば、用語集のようなものを参考資料として附属しております。
 3ページで、はじめに、検討の背景でございます。
 現在、適用されているポスト新長期規制の一つ前の新長期規制適合車においてNOx排出量増大が確認されたこと、昨年3月に自排専のほうで未燃HC等による触媒被毒又は触媒の性能低下が原因として考えられると報告されました。
 この自排専での報告を受けて、環境省では、自動車メーカーに対し、使用過程の尿素SCRシステム搭載新長期規制適合車でのHC被毒対策の検討を要請しております。
 また、前年度のオフサイクル検討会で、後処理装置のレイアウト位置によって温度条件が変わり、排出ガス量が大きく異なることが判明しました。
 この新長期規制についての説明を資料1としておりますので、先に22ページに飛びまして、22ページを説明します。
 ディーゼル重量車の新長期規制というのは、平成14年の第五次答申に基づいて新型車の型式ごとの平均値としてNOx2.0g/kWh、生産時のばらつきを考慮した上限値を2.7g/kWhとして規定されております。
 また、使用過程での性能維持方策として、平成10年第三次答申で自動車メーカーに対し、生産段階で耐久走行距離を走行した後においても、良好な排出ガス性能の確保を求めております。
 ディーゼル重量車の耐久走行距離は、GVWが3.5~8トンのものは25万キロ。GVW8トン~12トンのものは45万キロ、そしてGVW12トン超えのものは65万キロとしております。
 これらを踏まえて、道路運送車両法体系で自動車メーカーから申請のあった新型車の耐久性を含む審査を行っております。ただ、ディーゼル重量車の耐久性能は、実際にこの65万キロといった耐久走行距離を走行するには、時間、費用を要しますので、3分の1の走行距離について、特に高速高負荷を中心とするエンジン回転モードで運転をして、耐久走行後の性能を外挿する方法を認めております。この手法は、米国あるいは欧州でも外挿法を用いて性能評価を行っております。
 続きまして、SCRシステム自体の説明をしているのは、32ページになりますので、32ページのほうに飛びます。
 SCRシステムの概要ですが、尿素水を還元剤として、排出ガス中のNOxを窒素と水に還元する選択式還元触媒で、新長期規制適合車に初めて採用され、ポスト新長期規制適合車では、尿素SCRシステムを導入している車種が主流となっております。
 この新長期規制適合車の尿素SCRシステムは、排出ガス中のHC、CO及びNOを酸化する前段酸化触媒(前段DOC)、尿素水添加によりNOとNO2を還元するSCR触媒、余剰のアンモニアを酸化する後段酸化触媒(後段DOC)により構成されており、ポスト新長期規制適合車の尿素SCRシステムでは、前段DOCとSCR触媒の間にPMを捕集し、燃焼除去するDPFが追加されております。SCR触媒では、NOとNO2が適当な比率であるときに還元反応が最も良く行われます。
 33ページには、SCRシステムの前段DOC、SCR触媒、後段DOCでの化学反応を示しており、SCR触媒では、こちらにある赤字の急速SCR反応が最もよく行われます。この反応は、NOとNO2が1対1のモル比で起こりますが、エンジンアウトの排ガスでは、NOの比率が圧倒的に高いので、NOを酸化するのが前段DOCの役割の一つとなっています。
 急速SCR反応だけでなくて、標準SCR反応も行われますが、こちらはNOがアンモニア、酸素と反応することにより起こりますので、SCR触媒に入るガス中のNOとNO2が、必ずしも1対1でなくても、この標準SCR反応による還元反応も行われます。
 続きまして、23ページの資料2をご覧ください。
 新長期規制適合車における排出ガスの実態調査の結果でございます。平成22年度に環境省で実施した調査結果の概要ですが、尿素SCRシステムを搭載しました、使用過程の新長期規制適合車について、シャシダイナモ上での排出ガス試験を実施しましたところ、2回の試験で2回ともNOx排出量は新車時の規制値を超過しておりました。また、N2O、アンモニアNH3も新品のシステム搭載時に比べ、グラフに示しておりますとおり、大幅に増大しております。
 その原因としてと、未燃HC、硫黄、リン、その他金属による触媒の被毒、性能低下が起きていることが考えられております。
 そこで、HC被毒解消のための高温の排出ガスにより、同システムの温度を上げて30分維持して、再び排出ガス試験を実施したところ、NOx排出量は減少しましたが、依然として新車時の規制値を超過しております。また、アンモニア排出量が減る一方で、N2Oが増えるなどの変化もありました。
 この変化はSCR触媒の前段にある前段DOCにHC被毒以外の原因による性能低下が起きていることを示唆しております。
 続いて、24ページで、平成22年度に続いて、23年度にも調査を実施しまして、各車両の諸元と排出ガス試験結果を表としてまとめております。このうちA車については、前のページで説明したデータとなります。いずれもNOx排出量が新車時の規制値を超過していると、昇温後に排出ガス試験を実施した場合でもNOx排出量は下がるものの、依然として新車時の規制値を超過しており、先ほどの事例と同じ傾向でありました。
 続いて、4ページに戻ります。
 本文のほうに戻りまして、新長期規制適合車での尿素SCRシステムの性能低下、後処理装置のレイアウト違いにより、排出ガス性能が異なるといった実態を踏まえまして、昨年8月の第十一次答申及び専門委員会報告におきまして、こちらの検討課題として考えております。一つが触媒のHC被毒を解消するために使用過程車において尿素SCRシステムを定期的に昇温することなどによる対策の実施を検討すること。
 前段DOCがHC被毒以外の原因による性能低下について引き続き調査を上で、性能低下への対策を検討すること。
 耐久試験法について、尿素SCRシステムにとって、より厳しい走行条件を考慮したものへの見直しを行うべきであること。
 後処理装置のレイアウト位置による温度条件の変化を考慮し、試験条件を後処理装置にとって使用実態の中でもより厳しい条件に変更すること。
 これらが今後の検討課題とされております。
 5ページですが、この検討会の目的・経緯につきまして、まず第十一次答申を受けまして、使用過程でのNOx後処理装置性能低下対策、後処理装置のレイアウト等を考慮した排出ガス低減対策を検討するため、昨年10月に国交省及び環境省合同で検討会を設置しまして検討を開始しました。
 検討課題としては、新長期規制適合車、尿素SCRシステムの性能低下の原因究明、耐久走行試験法の見直し、レイアウトを考慮したエンジンベンチ認証試験法の見直しであります。
 今年度は6回の検討会を開催し、自動車メーカーヒアリング及び交通研により、東工大の岩本先生の協力を得まして実測調査等を実施しまして、HC被毒メカニズムの究明と自動車メーカーで検討したHC被毒対策の有効性、そして前段DOCの劣化原因の究明等を進めてきたところであります。
 今般、中間報告として、HC被毒メカニズムの究明及び対策等について取りまとめるとともに、前段DOCの劣化原因について、これまでに得られた知見を中心に報告いたします。
 6ページに移りまして、性能低下対策であります。
 まず、使用過程における排出ガスの実態について、この項では、メーカーによるエンジンベンチ試験、交通研で実施したシャシダイナモ試験の結果を示しています。
 試験結果について、NOxについては、新車の規制値、平均値規制値を大幅に上回っており、実車でも実現し得る昇温運転の後でも、依然として上回っておりますが、NOx排出量は低減しております。
 また、先ほど資料2で説明しましたとおり、環境省が平成22年度に実施した調査においても、アンモニアスリップについて昇温後は減る一方、N2Oの排出量が増大しているということも確認されました。
 ここで資料3、25ページに飛びますが、交通研による使用過程車の排出ガス試験結果、こちらを紹介したいと思います。
 交通研において都市内を走行する尿素SCRシステム搭載の新長期規制適合路線バスについて、排出ガス性能の調査を実施しました。このうち、1台はこれまでも交通研において複数回試験を実施した車両であります。
 26ページは、今回試験を実施した車両の諸元でありまして、尿素SCRシステム搭載で、燃費基準達成、PM10%低減の一つ星車両で、積算走行距離はそれぞれ26万、18万キロとなっています。
 27ページが、シャシダイ試験の結果であります。いずれもNOx排出量が新車規制値を大幅に上回っており、昇温運転後も超過するものの、NOx排出量は低減しております。
 NOx排出量をグラフで示したものが、次のページになりまして、28ページをご覧ください。こちらで①の持込状態では、新車の上限値規制も大幅に上回っていると。380℃、420から500℃と昇温温度を上げていくことで、NOx排出量が低減していることが確認されます。また、PMについても、使用過程では、新長期規制の上限値を超過しており、こちらについても、昇温により低減することが確認されました。
 さらに、CO2についても、昇温運転により改善していることが確認されます。
 一つ前の27ページに戻りまして、アンモニアとN2Oについては、こちらの表をご覧いただきたいんですが、アンモニアについて持込状態では排出濃度が高いものの、昇温後には下がっております。逆に、N2Oについては、このB1では、昇温後に多少増大をしていると、また、B2では、昇温後には低減はしておりますが、地球温暖化ガスとしてCO2比で70%前後とかなり高い排出量になっております。新品の状態ではCO2比2.5あるいは4%と、B2の結果ですが、なっております。
 あと25ページに戻りまして、このB1の車両については、過去にも試験を実施しております。その際にもNOx排出量が増大しておりましたので、昇温運転を実施して、NOx排出量が低減する傾向にあることを確認しております。
 こちらの左のグラフのように、概ね5万キロごとにこれまで排出ガス試験を実施しておりまして、使用過程の状態では、この青のドットがNOx排出率で10万キロ以降では新長期規制値の上限値を大幅に超過している状態でありました。
 この昇温運転を実施したところ、ピンクのドットまで回復しており、実際には排出量としては、このピンクと青の線を結ぶ、ぎざぎざした赤線で推移してきたものと考えられます。
 本文の7ページに戻ります。
 こちらエンジンベンチ試験によるNOx排出量の一覧であります。AからMはトラックでして、Nは交通研で実施したバス、B1のSCRシステム、これを外してエンジンダイナモ試験を実施したものです。青が昇温前、緑が昇温後のものを示しており、一部の車両では昇温試験をせずに、触媒の分析を行っています。
 交通研で実施した、試験した車両については、シャシダイ試験で既に昇温しておりますので、緑の昇温後のデータのみとなります。
 いずれも使用過程では、新型車への規制の平均値規制値を超過しており、昇温によりNOxが低減していることが確認されます。
 8ページで、これらの結果を踏まえまして、環境に与える影響を分析しました。尿素SCRシステム搭載新長期規制適合車は、約6万台使用されております。こちらの下には、ディーゼル重量車の規制別の保有台数を示しておりますが、新長期の53万6,000台中6万台となります。
 一方で、ポスト新長期については、現時点では、走行距離も短いこともありますので、尿素SCRシステムの著しい性能低下事案というのは報告されておりません。
 今回、得られましたデータでも、劣化度合いが車両によって随分異なっております。ただ、得られたデータの中でのワーストケース、全車両が実測データの中で最もNOx排出ガス量が増大したものと同じ率で増大した場合をワーストケースとしてNOx増大量を試算をしたところ、全国で年間1.7万トンと推計されます。
 こちらは環境省推計による全国の自動車からのNOx総排出量66万トンの約2.5%に相当します。
 続いて、9ページ、環境基準の達成状況、こちらは、下のグラフのとおり、一般局では100%達成、自排局でも平成22年度には97.8%と年々改善しております。NO2濃度の年平均値も緩やかな改善傾向にあります。大気中のNO2は光化学反応により生成されますので、本事案で環境基準の達成状況、大気中のNO2濃度にどの程度の影響を与えているのか、定量的な評価というのは困難でありますが、少なくとも規制効果が減少して、NOx排出量が増加していることは確実でありますので、これまでに得られました知見を踏まえて、可能な取組から実施するとともに、引き続き原因究明等を進めることが必要であります。
 10ページですが、性能低下の原因究明状況としまして、詳細については、次の節以降で述べます。
 前年度までの知見として、特に22年度の調査によって、前段DOC、SCR触媒、後段DOCで、未燃のHC、硫黄、リン、その他金属による被毒、触媒の性能低下が想定されておりました。
 従来からの知見と、この検討会で今年度得られた結果から、尿素SCRシステムの性能低下原因として現時点で得られました知見というのは、こちらにあるとおりであります。
 まず、SCR触媒、後段DOCについては、HC被毒が劣化の主な原因であると。触媒昇温により、HCを除去することで、設計性能を回復すると期待できます。
 後段DOCについても、昇温により、NH3排出量が減少しておりまして、設計性能を回復すると期待されます。
 いずれも、硫黄、リン、その他金属による被毒、熱劣化はほぼないと考えられます。
 また、ポスト新長期規制車には、DPFが導入されておりまして、DPF再生で蓄積されたPMの燃焼に伴う昇温によってHC被毒は解消されていると考えられます。
 続いて、11ページの前段DOCに関してですが、まず前段DOCの機能としては、先ほども説明しましたが、HC、COの酸化に加えて、排出ガス中のNOの酸化により、NO とNO2の比率を適切なものとすることが、SCR触媒でNOx還元反応を行い、NOx浄化率を確保するために必要となります。
 これまでの調査で前段DOCは、昇温しても酸化活性が回復しないことが判明しました。したがって、HC被毒による一時的な劣化のみならず、S被毒等による永久的な性能低下が生じている可能性が高いと考えられます。
 しかし、前段DOCへのS化合物の蓄積量と性能劣化の度合いは必ずしも比例しておらず、S化合物が触媒の構造に及ぼす影響、メカニズム、走行パターンとS化合物の蓄積量の関係など、解明すべき課題は多いことから、次年度も引き続き原因究明を進めて、その結果を踏まえ、対策を検討することは必要であります。
 12ページに入りまして、SCR触媒のHC被毒メカニズムの究明結果と対策の方向性について、少し詳細に説明します。
 触媒メーカーの協力によりまして、SCR触媒のテストピースによる活性試験を実施しました。その結果、500℃の昇温で性能回復することが確認されております。
 また、こちらの図は、昇温措置を実施していないSCR触媒のTG/MS分析結果であります。こちらTG/MS分析というのが、この熱重量測定によって試料の温度を一定のプログラムによって変化、または保持させながら、その試料の質量を温度または時間の関数として測定した後に、試料から脱離、または生成した気体を質量分析装置に導入して気体成分を同定する方法です。
 こちらの分析結果ですが、350℃ぐらいからCO2が立ち上がっております、このピンクのラインですが。すなわち、未燃のHCの脱離の開始が確認されます。
 13ページですが、昇温によるSCR触媒の性能回復の可能性について、こちらは先ほども説明しました資料3にありますとおり、交通研で26万㎞走行の路線バスについて、これまで約1年ごとに、計5回シャシダイナモ試験を実施してまいりました。各試験で前回の昇温前での試験と同程度以上にNOx排出量が増大していますので、1年間の運行でHC被毒が進行したと考えられますが、各試験で実施した昇温というのは、繰り返しNOx排出量を低減することも確認されております。
 平成23年度に環境省で実施調査した車両のSCRシステムについても、エンジンダイナモ試験で性能を確認したところ、同じようにHC被毒が進行していることも確認されております。
 14ページで、HC被毒対策の方向性に関する検討の視点ですが、HC被毒には昇温が有効で、350℃程度からHCが脱離を開始し、最終的にほぼ新品程度の性能を回復します。ただし、時間の経過でHC被毒が進行するので、定期的な昇温によりHC被毒解消を図ることが必要となります。また、被毒の進行度合いは車両の使用形態などにより大きく異なると予想されます。具体的な条件等は、精査が必要であります。
 昇温措置について運送事業用で用いられる車両を長期間提出させることは避けるべきでありまして、昇温の頻度、タイミングというのは、個々の事業者の事情を踏まえたものとするべきであります。したがって、具体的な昇温の方法、頻度等について、対策の実施、可能性及び有効性の視点も踏まえて検討することは必要です。
 15ページに中間報告での結論を示しております。
 HC被毒に対し、昇温による被毒解消を図ることが有効です。
 SCRシステムに付着するHCの種類・成分や量は、車両の種類や使用実態により異なるものと予想されますが、これまでに得られたデータに基づく知見として、400~500℃、40分程度の昇温により、HC 被毒解消を図ることが望ましいと判断します。
 昇温は定期的に行う必要がありますが、その頻度については、車両の使用形態などにより異なるものと予想されます。このため、継続検査の機会等を利用し、定期的に昇温することが望ましいと判断します。
 具体的な昇温条件、昇温方法等については、自動車メーカーで検討することが適当であり、検討会ではその有効性を検証していきます。
 続きまして、16ページ、前段DOC劣化原因の究明状況の中間報告について、こちらも触媒メーカーにおいて触媒テストピースによる活性試験、TG/MS分析を実施しました。
 まず、活性試験では、450℃の昇温でも活性が回復しないことは確認されまして、TG/MS分析では600℃超でS化合物の脱離が確認されました。ただ、この温度では、触媒の熱劣化を引き起こす可能性もあります。また、S化合物の蓄積量が同程度の触媒でも酸化活性に違いが確認され、劣化原因についてさらなる分析が必要であります。
 走行パターンによる影響ですが、こちら7ページの試験結果のうち、CあるいはLの車両のように、高速走行主体車での性能低下が顕著であることが確認されました。高速での排ガス温度が300℃程度で、当該温度でSO2からSO3への酸化活性が高くなり、S化合物の蓄積量も高くなるといった分析結果もあります。
 性能低下要因として、S被毒の可能性が考えられますが、S化合物の蓄積メカニズムは不明点も多いので、走行パターンによる影響等について、引き続き調査・検討を行う必要があります。
 18ページですが、レイアウト位置、低速走行パターンが排出ガス後処理装置に及ぼす影響について、まずはレイアウト位置に関して自動車メーカーヒアリングで現状について情報収集しましたところ、同一の型式のエンジンでも車型によりエンジンアウトから後処理装置入り口までの長さが0.3~3.8mに分布しており、また、主にDPF再生時の排ガス温度が低下しないようにすることを目的に、二重管などの保温措置を行っていることが判明しました。
 一方で、現行の認証試験では、排圧が最大となるような条件を指定しており、レイアウトは考慮されておりません。また、次期規制で導入する予定のディーゼル重量車世界統一試験法、WHDCでは、排気管レイアウトについて、実車と同様の条件により試験を実施することが規定されております。実質的に最初のものにより試験を実施することになります。
 このWHDCは、平成22年の第十次答申に基づいて、平成28年末までに導入する予定であります。
 19ページですが、低速走行時の影響であります。こちら昨年度のオフサイクル検討会でのヒアリングで明らかになりましたが、尿素SCRシステムでは、排出ガス温度が一定以下では尿素水を吹かない制御が適用されております。低速を主体とする実走行ではこの制御が多く出現すると考えられるため、低速走行時の排出削減は、排出ガス低減に大きく寄与すると考えられます。
 こちらに関連しまして、29ページの資料4になりますが、特定の走行パターンを有する車両の排出ガス性能評価法等に係る調査について、こちら大聖先生を座長とする検討会を設けて、非公開ですが、平成22年度から今年度まで検討を行ってまいりました。
 内容として、路線バス、宅配車、塵芥車に代表される頻繁に発進・停止を行う低速車両の車種別の排出ガス量、寄与度を推定しております。各車種について走行データを計測し、走行モードを作成して、JE05との比較などを行っております。
 この総走行量の中の割合に比べて、NOx排出量における寄与度が高くなっていると考えられますので、その精査などを中心に検討を行ってまいりました。
 30ページ、こちらは平成22年に作成した路線バスのモードです。こちら実測データに基づきまして、速度、加速度、頻度分布等の最適化を行い作成したものであります。
 ショートトリップスも1,300秒程度で18山ありますので、1,800秒で14山のJE05に比べて停車頻度が非常に高いと。また、JE05に比べて最高速が50キロ前後とかなり低くて、加速時の平均加速度は高くなっております。
 この路線バスモードでは、最近の路線バスには、アイドリングストップを有しているものも多いことから、一部の停車中にアイドリングストップも適用しております。
 この排出ガス試験結果についてですが、NOxはそれほど結果は変わりませんでした。ただ、燃費で見ると実走行のほうが低く、特に今回、注目してもらいたいのは、排気温度がかなり低いという点であります。
 31ページ、こちらが昨年度作成した宅配車モードです。路線バスと同じ方法で作成しようとするとしますと、宅配車モードでは集合住宅等の配達で長時間停車、エンジン停止している場合も長いので、この時間を入れるか否かということで、二パターンモードをつくっております。
 いずれもJE05に比べると最高速度などは低いと、加速時の平均加速度は高くなっておりまして、排出ガス試験結果にNOx排出量が増大して、触媒前の温度が低くなっていることが確認されました。
 今年度、塵芥車について同様にモードを作成して、走行パターンの比較、シャシダイナモ試験結果の比較を実施し、現在報告書を取りまとめているところです。パスや宅配車同様に、触媒前温度が低くなる傾向が確認されております。
 19ページに戻りまして、特定走行パターンを有する低速車では、排気ガス温度が低いことから、低温でも浄化性能有する排出ガス低減技術が導入されることで、実環境での排出ガス低減に大きく寄与すると考えられます。
 次期規制、平成28年からの規制では、コールドスタート試験も評価することから、自動車メーカーでは、尿素SCR触媒として銅ゼオライトの採用を検討しております。この銅ゼオライトは、低温で活性を有することから、その採用により低速走行時の排出ガス低減性能も向上することが期待されます。
 20ページですが、今後の検討課題としまして、自動車メーカーのHC被毒対策の有効性を検証するとともに、前段DOCの劣化原因の究明、さらなる対策の検討を進めまして、平成25年度末までに最終報告として取りまとめる予定です。
 この前段DOCの劣化原因の究明と対策の検討については、劣化要因究明について、まず進めて、来年度早期に結論を得るとともに、その結果を踏まえて対策を検討して取りまとめることとしたいと考えております。
 具体的には、引き続きメーカーと協力をしまして、前段酸化触媒の劣化要因、走行パターンによる影響等を究明します。この過程において得られました知見は、メーカーにおける今後の開発に活用されることが期待されます。
 この前段DOCの劣化、SCR触媒のHC被毒等の原因究明結果を踏まえまして、新型車の認証時の耐久性試験法の見直しを進めていきます。
 さらに、尿素SCRシステムと併せてDPFが搭載されているポスト新長期規制適合車、こちらでも同じような劣化が起こっていないかどうか検証してまいりたいと考えております。
 21ページ、排出ガス試験方法の見直しに関する検討ですが、前のページでも触れました耐久性試験法の見直しを進めます。また、エンジンベンチ試験のレイアウトについての見直しも進めてまいります。
 あとは、少し視点は異なりますが、低速走行主体車では、低温時で尿素水を噴射しない制御、これが通常車よりも高い頻度で出現すると考えられますので、作動状況を確認していくとともに、次期規制での銅ゼオライトの採用を見据えて、銅が排出されないことの確認方法を検討しつつ、開発実用化の基盤整備を図ってまいりたいと、図ることが望ましいと。
 これらの結果を踏まえて、特に国土交通省、交通研において技術基準の見直しを進めてまいります。
 その他として、自動車メーカーでは、今後の技術開発において排出ガス後処理装置の耐久性の一層の確保を図るべきことが求められます。
 本検討会の結果を踏まえて、今後の技術開発で後処理装置の耐久性の一層の確保を図るべきでございます。
 また、自動車排出ガス低減対策に際しては、温室効果ガスであるN2Oの排出抑制にも配慮して、必要な知見の収集を集める必要があります。
 また、ユーザーには、適切な品質の燃料、エンジンオイル、尿素水などの使用が不可欠であることに留意する必要があります。
 次からのページは、ずっと資料でこれまでに説明しておりますので、後ろのほう34ページ、こちらは用語集でして、エンジンベンチ試験、シャシダイナモ試験、触媒活性試験、TG/MS分析について説明しております。
 そして、35ページが、検討会委員、事務局と、36ページ、検討会での検討経緯となります。
 説明は以上であります。

【坂本委員長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの排出ガス後処理装置検討会中間報告について、ご質問、ご意見等ございましたら、名札を立てていただければと思います。いかがでしょうか。

【河野委員】 皆さんがお考えのときにちょっと変な質問をさせていただきますが、今日この委員会が始まる前に、隣の岩本先生と話をしていたんですが。例えば、関連してはですね、21ページとか、それから19ページですが。
 銅ゼオライトを使うと、これがかなり低温で活性化するということで、これは非常に有効なのではないかということに関連して、日本では、そこに21ページありますけど、銅が排出されないという確認方法を検討し、とあるのですが、これが結構厳しいのではないかと思うのですね。銅を使ってはいけないというのは、これは西本室長さんの話だと、昭和48年。

【髙井室長補佐】 47年です。

【河野委員】 47年。そのころ決められたということですけど、これがどうも時代に合ってないのではないかというようなことも含めて、岩本先生からちょっとこの辺のコメントをいただけると。外国では使われて、使ってもいいのではないかと。それから、あとメーカーの方なんかには、銅を使って、例えば銅が一部出たとしても、何かそれに見合うような技術的な何かいいことがあるのではないかというようなことも含めてですね、とりあえずは岩本先生で。とりあえずは事務局から、その次は事務局から何かご意見をいただければと思います。

【岩本委員】 急に話題が回ってきましたけども、銅ゼオライトが低温で活性が高いことは、随分昔から知られております。日本で使えなかったのは、先ほどの通達のためです。これは大聖先生のほうがお詳しいかと思いますけど、欧米では既に実用化されて搭載されておりますので、なぜ日本だけというところは基本的な疑問として残っているということです。
 もう一つは、河野先生がご指摘になっていたように、環境中に銅が排出されないことの確認というのは、私自身はとても難しいだろうと思っております。0.01%も出てきていませんかと言われた場合、そうですと断定することはなかなか非常に難しい作業だと思います。やはり少々出てきてもそれが有害性あるいいは有毒性がないという証明のほうで間に合えばありがたいなと思っております。
 それから、もう一つ、つけ加えますと、私どもが研究していたときに比べますと、銅ゼオライトそのものも、担体ゼオライトのほうが非常に進化しまして、性能がすごく上がりました。その点でも、ぜひ認可していただける方向で議論が進めばありがたいと思っております。

【坂本委員長】 それでは、まず事務局でしょうか。どうしましょう。欧米で使われている実態、もし大聖先生、情報をもう少し追加するところがあれば。

【大聖委員】 実際に使われているという事実があるということです。

【髙井室長補佐】 先ほど、河野先生からもお話がありましたとおり、昭和47年の中環審というか、環境サイドというよりも、運輸技術審議会の答申に基づいて、銅あるいはほかのバナジウムとか、そういうものが排気ガス中に排出されないことという答申が出ておりまして、それに基づいて、これまで運用されております。
 環境省で、銅に対してどのような規制をしているのか少し調べたところ、一応有害汚染物質にはなってはいるのですが、一応モニタリングというか、PRTR法に基づいて、どれぐらい排出されているのかというのを把握をしていると。大体は水のほうに含まれるものが94%とか、かなり多いですけど、一部、大気に排出されているようなものをあると、こういう実態がありまして。空気中に含まれる濃度とかもですね、これもモニタリングをしているといったこともわかりました。
 したがって、例えば、これから議論していかなければいけないとは思うのですが、PRTR法に基づいて、これまでも揮発性物質のモニタリングとか、排出量のインベントリをつくったりしているので、それと同じようなスキームでですね、銅の排出量というのを計測をして、ウォッチをしていく。
 例えば、環境濃度が一気に上がったとか、そういうふうなことがあれば、やはり排出に対する規制を考えるとか、そういうやり方も一つあるのかなというふうに事務局では考えています。こちら、作業委員会等でもご相談させていただきたいと思います。

【河野委員】 すみません。いや特にね、私心配しているのは、さっきTPPとかね、何かああいうところで、外国の触媒には銅が入ったやつが入ってくるとか、そういう話もあり得ますよね。だから、そこら辺も絡めて、ちょっとキャンペーンを張っていただいて、使えるようにすればいいんじゃないかという感じはありますけどね。

【坂本委員長】 どうぞ。

【大聖委員】 既に輸入車でも、そういう銅ゼオライトを使っている車が入ってきているのですけども、銅が出ていないという何らかの証明を提示して、それで許可されているということが実情です。

【西本室長】 今ご指摘がありましたように、これまでも排出されないことの確認をして、既に国内でも入っている実例はありますので。確かに難しいというご指摘もありますけれども、銅が排出されないということの確認というのはどういうことなのかと、きちっと整備をすることによって、結果使われることによって、こういった問題が解決していくというのが目的でございますので、どういった道筋が一番早いのか確実なのかという点は引き続き検討していきたいなと思っております。

【坂本委員長】 ありがとうございました。
 どうぞ、そのほか、いかがでしょう。どうぞ。

【草鹿委員】 幾つかお伺いしたいことがあるのですけれども、7ページのモードの中で、劣化具合を、これは表した図ですけれども、二つ劣化要因があって、SCR触媒そのものが劣化するという今日のお話と、それから、前段酸化触媒が劣化するというお話があって、この結果というのは、その複合作用で劣化しているということですけれども、実はどっちが大きいかというのが、見えてこないのが1点です。
 それからもう1点が、触媒メーカーの協力で、テストピースで被毒の回復を図ったということですけれども、そもそも双方の前段酸化触媒にしても、SCR触媒にしても、劣化しているものからサンプルをくり抜いてきたのかわからないのですけれども、テストピースが、もともとあったものがどのぐらい活性が落ちていたかというのが、わからなかったので、その2点教えていただければと思います。

【坂本委員長】 事務局、お願いします。

【髙井室長補佐】 どちらの回答にもなるとは思うのですけれど、検討会の中では、触媒の浄化性能について、データを見ながらですね、例えば、前段DOCについては、当初の設計目標に対して浄化率が大分低いとかですね、そういった実データを見て確認はしているのですが、どうしてもそれはメーカーさんの機密保持という観点で、こういう公開の会議の場で外に出すことはできないということで、この資料の中には含めておりません。
 どちらのSCR触媒の劣化というか、HC被毒による、起因するのか、あるいは前段DOCの性能低下に起因するのかというところで、そこまで解明できていないと言えばないのですが、前段DOCが劣化することで、このNO2があんまり生成されないと、当初この急速SCR反応が行われないので、もっと排出ガス量は増大するのかなという認識をしていたのですが、意外にこの標準SCR反応が頑張っているというか、それで結構、NOxを下げるということも検討過程でわかりました。

【草鹿委員】 ですから、この場で公開できるかどうかというのは、別ですけれども、そのモードの中でも低速のモードと中速のモードと高速域があって、多分劣化の出てくるNOxの量が新品時と違うところが、際立って違うところというのはあるので、そこを集中的に改善するような技術指針を出したり、あるいは今後どうやってメンテナンスしていくかという話になるのですけれども、できるだけ効果が高いやつを狙って実施していくとよいかなと思います。

【坂本委員長】 ありがとうございました。御園生委員、お願いします。

【御園生委員】 着々と調べられているようで、もう続けられるということなので、その結果に期待したいですけど、私の見た感じでは、やっぱり前段の被毒のほうが問題なのかなというふうにお話を聞いたのですが、前段の触媒は開示されないのか、白金、アルミだけですかね。
 それで、硫黄の被毒ということになると、触媒がどう変わったのかというのを少しよく調べられるといいのではないかと思います。それで、原因としては担体のほうが、やっぱり硫黄でかなり変質するのと、貴金属のほうが被毒するのと、シンタリングが……、まあ、これで大体決まりだと思うのですけれども、それはどうなっているかということで、担体の工夫があれば、貴金属を始めどういうふうにつけておくかということで、かなり改善する、もともと改善されたものを使っているのだとは思いますけど、相当影響は大きいのではないのかというふうに思いまして。
 ここの性能が上がれば、後段にいくハイドロカーボンの量もかなり変わってくるのではないかというふうにも思いますので、この触媒がどうなっているかというのが、非常に重要なように印象を受けたのですが、いかがでしょうか。

【坂本委員長】 委員会に参加していた先生から、どうぞ。岩本先生、お願いします。

【岩本委員】 今、先生がおっしゃったことは、私も100%賛成です。先生がご指摘いただいた方向で、もちろん頑張って解析を進めております。ただ、先ほどもちょっと出ましたけれども、委員会の中にメーカーさんが入っていらっしゃって、この段階で中間報告に上げて報告できるかどうかということは、また別の話になっております。申し訳ございません。

【御園生委員】 いえ、私はここに出してくれと言っているわけじゃなくて。

【岩本委員】 観点としましては、先生がおっしゃってくださった、触媒を改良するという面と、もう一つは、悪くなったものを復活させられないかという二つの方向から何とかできればと思っております。できるかどうかはお約束できませんが、そういう観点からやっております。

【西本室長】 補足をさせてください。今ご指摘をいただいたとおり、まだ、これは中間報告でございまして、引き続き原因究明は続けていきたいと考えております。
 この尿素SCRというのは、これからの車でも確実に使われるであろうシステムでございますので、今後こういったことが起きないように、初めからきちっとチェックできるようにという意味で、試験法に反映したいと思っていまして、そこも今後の課題の一つだと思っております。

【坂本委員長】 ありがとうございました。
 ちょっと私も一つお聞きしたいのですが、14ページのまとめで、上から5行目ぐらい、「最終的にはほぼ新品同様に性能を回復する」とあるのだけれども、これは書き過ぎじゃないのでしょうかね。
 なぜそういうことを申し上げたいかと言うと、27ページのB2の車両やなんかでは、全触媒を交換した場合でも想定される性能をNOxの排出量では出していないのかなという気がしまして。そういう意味で、もともとの要求される性能を、それぞれの触媒が出していなかったということになる。
 かつ、ここで昇温なり何かをした場合に、性能が回復するというのは、そういう形で言える結果なのかなという気がするのですが。

【髙井室長補佐】 坂本先生のご指摘の点ですが、こちらのデータが、シャシダイナモ試験の結果ですので、認証あるいは規制としてかけるときは、エンジンベンチでやっていまして、エンジンベンチに対して、実車を用いたシャシダイナモなので、例えば、タイヤのスリップのロスがあるとか、あるいはそもそも車両緒元が異なる、標準車両緒元で、平均値2.0g/kWh以下という規制に対して、これはあくまでも本当に実車のバスの実際の車でやっていて、特に、路線バスなので、高速で使われることがあんまり想定されませんので、特に高速モードでは、かなりNOx排出量が増えているのではないかということも考えられますので。純粋にこの規制値、シャシダイナモ試験の結果が、規制値を超過しているから、これは何か性能低下しているのではないかとは、事務局としては見ておりません。

【坂本委員長】 ということは、このぐらいの乖離は常にあるというのが普通ということでしょうか。

【髙井室長補佐】 そうですね。規制値がどんどん厳しくなってきていまして、昔だと本当に誤差の範囲だったと思うのですけれど、最近では、もう誤差の範囲では済まされないような、ウエートに、寄与になってしまっているかなと考えております。

【坂本委員長】 そうすると規制値が2で、そして、かついろんな条件での許容範囲が2.7にして、そしてまた実際に、今より実際に近いような形でやった場合には、もっと増えているということで、かなり規制の効果というものを割引いて我々は考えないといけないのかなという気もするのです。

【髙井室長補佐】 そうですね。そういった点について、先ほども紹介しました資料4のほうに、路線バスで実際に使われる走行パターンというのを見て、それをもとにNOxの排出量を推計していくということも一つのやり方として考えられるのではないか。
 JE05モードは、あくまでもトラック、バス、全て含めた走行パターンから平均的なものを出しているので、極端に離れたところにある路線バスとか宅配車、塵芥車、そういった車種は、やはり走行特性に応じて排出ガス量を推計していくのがベターなのではないかと考えております。

【坂本委員長】 ありがとうございます。どうぞ。

【西本室長】 補足しますと、先ほどご指摘いただいたとおり、エンジンベースと車種ベースとの乖離というのは、これは技術的にどうしても生じるのだけれども、エンジンベースで規制として下げていくことによって、当然シャシベースでも下げ幅、下げ率はきちっと確保できていくのかなと。
 ただ、おっしゃるとおり、総量は実態としきちんと把握していかなければいけない部分でありますし、今もここでも出したように、走り方によって違う部分、それからこの報告書の後ろのほうに出てきますけれども、車種によっては後処理装置のレイアウトによっても少しずつ違ってくる、その辺も細かく見ていかないと、正確な総量がわからないのではないかということが、この数年に、一、二年でわかってきたことですので、そこはしっかりと今後見ていきたいと思っています。

【坂本委員長】 ありがとうございます。
 以前にも、検査モードとそれから実走行モードとが非常に乖離していて、実際には、排出量がもっと多かったとか、そういったことがあって、今だんだんテストサイクルというものは改善されてきたんだとは思いますけれども、一部まだそういうような部分も心配しないといけない部分もあるのかなというような気がいたします。
 どうぞ、そのほか、ご質問、意見等ございましたら、お願いいたします。

(なし)

【坂本委員長】 もしよろしければ、今日のところは今、中間報告をお聞かせいただいたということでございまして、この後、最終的な報告案がまとめられるという形で進んでいくということでございます。
 今日、用意させていただきました議題は、この3件でございまして、これで全て終了でございますので、事務局のほうへお返ししたいと思います。

【髙井室長補佐事務局】 坂本委員長、どうもありがとうございました。
 本日は長時間にわたり、ありがとうございました。
 これにて終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。