中央環境審議会 大気・騒音振動部会(第10回)議事録

1.日時

平成28年1月6日(水)10:30~11:47

2.場所

環境省 第一会議室

3.出席委員

部会長  坂本 和彦
委 員  相澤 好治    浅野 直人    大久保規子
     崎田 裕子    高村ゆかり    町田 信夫
臨時委員 飯田 訓正    石田 東生    石濱 正男
     小倉  滋    片谷 教孝    河上  豊
     坂本 慎一    塩路 昌宏    島  正之
     鈴木 規之    谷口 博昭    谷口 靖彦
     中山 寛治    畠山 史郎    三隅 淳一
     矢野  隆    山本 貢平    若松 伸司

4.委員以外の出席者

環境省
  高橋 水・大気環境局長、早水 大臣官房審議官、江口 水・大気環境局総務課長
  瀧口 水・大気環境局大気環境課長、吉川 水・大気環境局総務課国際協力推進室長 他

5.議  題

(1)大気排出基準等専門委員会(仮称)の設置について
(2)報告事項
   ・ 大気汚染対策に関する国際協力について
(3)その他

6.配付資料


委員名簿
資料1     水銀に関する水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の検討の経緯
資料2     水銀に関する水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の実施について(諮問)
資料3     水銀に関する水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の実施について(付議)
資料4     大気排出基準等専門委員会の設置について(案)
資料5     中央環境審議会大気・騒音振動部会の専門委員会の設置について(案)
資料6     中央環境審議会大気・騒音振動部会の小委員会の設置及び運営方針について(案)
資料7     大気汚染対策に関する国際協力について

参考資料1   中央環境審議会関係法令等
参考資料2   水銀に関する水俣条約(第八条抜粋)
参考資料3   水俣条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策について(答申)
          (平成27年1月13日中央環境審議会答申)
参考資料4   大気汚染防止法の一部を改正する法律(平成27年法律第41号)
参考資料5   大気汚染防止法施行令等の一部を改正する政令(平成27年第379号)
参考資料6   第四次環境基本計画の進捗状況・今後の課題について(委員限り)

議 事

【瀧口大気環境課長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第10回中央環境審議会大気・騒音振動部会を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、年初めのご多忙中にもかかわらず、ご出席いただきまして、大変ありがとうございます。本年も引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いいたします。申し遅れましたけれども、私は昨年10月から大気環境課長を務めております瀧口です。重ねてよろしくお願いします。
 まず、本日の出席状況についてですが、委員総数33名のうち、現時点で24名の委員の方にご出席いただいており、定足数に達していることをご報告いたします。
 また、本日の会議は中央環境審議会の運営方針に基づきまして、公開とさせていただきます。
 まず、事務局を代表いたしまして、水・大気環境局長の高橋よりご挨拶を申し上げます。

【高橋水・大気環境局長】 皆様、改めて、明けましておめでとうございます。また、本日は、本当に新年早々でございますけれども、ご出席を賜りましてありがとうございます。引き続き、本年度もご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。
 大気・騒音振動分野はいろいろ課題がございますけれども、今日は水銀に関する水俣条約に対応しました国内の対応ということで、ご議論をいただきたいと思っております。
 ご案内のとおり、水銀に関する水俣条約でございますけれども、平成25年10月に採択をされました。現在、20カ国が締結をしているという状況でございます。我が国も条約の締結に向けまして、昨年、ご議論いただきましたけれども、現在、外務省による手続を行っているところでございます。それを経て、近いうちに条約締結に至るということになるかと思っております。
 大気の関連につきましては、一連の作業の仕上げ段階ということで、対象施設の排出基準値でありますとか、規模を定めるということが必要になってきてございます。このために、この水銀に関する水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の実施につきまして、昨年12月18日に環境大臣から中央環境審議会会長に諮問が行われまして、21日付でこの大気・騒音振動部会に付議をされたというところでございます。
 この具体的な排出抑制対策の検討のために、この部会のもとに専門委員会を設置させていただきまして、専門的な見地からご議論いただきたいと思ってございます。本日は、その設置についてのまずご了解をいただきたいと思っております。
 それから、今日、もう一つの話題といたしまして、これは年末からいろいろ報道されておりますけれども、北京などの中国における大気汚染は、相変わらず非常に深刻な状況でございまして、それに伴いまして、PM2.5の越境大気汚染というものが我が国においても話題になってきてございます。我が国でも、一部濃度が上昇しているというようなことも見られてございます。
 この関連で、大気汚染対策に関する特に国際協力の進展状況について、ご報告をさせていただきまして、また委員の先生方からいろいろとご意見、ご指導を賜れればと思っております。
 そういうことで、今日、議題でございますけれども、何とぞよろしくご議論のほど、お願い申し上げます。

【瀧口大気環境課長】 次に、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。議事次第に配付資料一覧を記載してございます。委員名簿がございまして、資料1~資料7まで用意させていただいております。それから、参考資料として1~5まで配付しておりまして、また、参考資料6として、委員の皆様に第四次環境基本計画の進捗状況・今後の課題についてという資料を配らせていただいております。この第四次環境基本計画の進捗状況・今後の課題については、昨年9月11日のこの部会でご議論いただきまして、大気・騒音振動分野についての点検結果を部会として取りまとめていただきました。9月25日には、中央環境審議会の総合政策部会において、坂本部会長から大気・騒音振動部会における点検結果をご報告いただき、審議されたところです。
 その後、パブリックコメントを行いまして、再度、中央環境審議会の総合政策部会による審議、環境大臣への報告を経て、12月18日に環境大臣から閣議報告されたものです。
 以上が本日の配付資料になりますけれども、もし資料の不足等ございましたら、後ほどでも構いませんので、事務局にお申しつけください。
 それでは、これ以降の進行につきましては、坂本部会長にお願いいたします。

【坂本部会長】 皆さん、おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
 それでは、今日は、時間が1時間半と短うございますので、早速、議題に入らせていただきたいと思います。
 まず、議題(1)でございますけれども、大気排出基準等専門委員会の設置についてということで、事務局から説明をお願いいたします。

【瀧口大気環境課長】 それでは、資料1~6に沿いまして、大気排出基準等専門委員会の設置について、ご説明をいたします。座って説明させていただきます。
 まず、この度、大気排出基準等専門委員会の設置をお諮りすることになった経緯について、ご説明いたします。
 先ほど、局長の高橋より挨拶申し上げたとおり、水銀に関する水俣条約を、現在20カ国が締結しております。我が国としましても、この条約の早期締結に向けて必要な法整備を進めまして、現在、締結に必要な法整備は終えたところですが、外務省による手続を行っているところです。
 まず、資料1を用いまして、水俣条約を踏まえましたこれまでの水銀大気排出対策の検討の経緯について、説明させていただきたいと思います。
 資料1を1枚めくっていただきまして、水俣条約の概要及び大気排出に係る規定ということで記載しております。
 この条約は2013年10月の水俣市、熊本市で開催されました外交会議で採択をされました。その中で、条約第8条におきまして、水銀の大気排出の規制について規定されております。
 その内容ですけれども、この1ページの下の半分になりますが、5種類の発生源の分類に対しまして、水銀の大気排出を規制し、実行可能な場合には削減すること。
 それから、新規施設には、利用可能な最良の技術、これは” best available techniques ”ということで、BATと呼んでおります、及び環境のための最良の慣行、これは英語で” best environmental practices ”、BEPと呼んでおります。
 新規施設には、このBAT及びBEPを義務付け、BATに適合する排出限度値の使用をもってこれらの義務を履行したとみなすことができるという規定がございます。
 それから、既存施設につきましては、5つの措置、排出規制目標、排出限度値、BAT及びBEP、水銀の排出規制に相互に効果のある複数汚染物質の規制戦略、これはほかの大気汚染物質を削減することで、水銀も削減する場合ということであります。また、⑤として、排出削減のための代替的措置、これらから1つ以上の措置を実施するということが規定されております。
 また、さらに、水銀大気排出量に関する国ごとのインベントリーを作成し、それを維持するという条約の内容となっております。
 この条約の構成と、それを日本として実施するための担保措置等の関係は、次の2ページに書いております。その中で、「環境への排出」の上のところで「大気への排出」に関して、先ほど説明しました条約第8条については、大気汚染防止法の一部改正を図り担保措置とすることにしております。
 また、このほかに、水銀による環境の汚染の防止に関する法律、水銀汚染防止法と呼んでおりますが、これも先の国会で成立しておりますし、廃棄物処理法において対応する部分もございます。
 ページをめくっていただきまして、3ページをご覧いただきたいと思います。
 我が国の水銀の大気排出状況ということで、条約対象の5施設、それから条約対象外の施設についての排出量をまとめた表です。
 条約の対象の5施設からの排出量の合計が年間で9.5tから14tで、これは全体の排出量の約6割から7割を占めております。
 また、条約対象外でも、例えば鉄鋼製造施設においては一次製鉄施設から4.1t、二次製鉄施設から0.62t排出されているということになっております。
 こうした状況ですけれども、水俣条約を踏まえた今後の水銀大気排出対策につきましては、この中央環境審議会の大気・騒音振動部会の下に設置されました、水銀大気排出対策小委員会においてご議論いただいたところです。昨年1月23日に答申をいただいております。
 その答申の内容を改めてご紹介させていただきますと、まず、水銀排出規制の制度の枠組みということで、水俣条約に沿った水銀の排出基準というのは、いわゆるばい煙排出規制における排出基準のように、環境基準等の維持達成を目指す観点から設定されるものではなくて、グローバルに水銀の排出を抑制していくという観点から、利用可能な最良の技術に適合した値とすべきだという考え方のもとで、この新規施設に関する規制は排出口における濃度による排出限度値の規制がBAT、利用可能な最良の技術を対象施設に適用させる手法として適当だという内容の答申をいただいております。
 また、この排出基準は、BATの考え方が記載されているわけですが、経済的及び技術的な考慮を払いつつ、排出状況及び排出抑制技術の状況を踏まえ、現実的に排出抑制が可能なレベルで定める、また、排ガス中の水銀濃度には、一定の変動があること及び水俣条約の趣旨を踏まえ、平常時における排出口からの水銀の平均的な排出状況を捉えた規制とすることが必要だという答申をいただいております。
 その他、測定義務、対象施設の設置届出、排出基準の遵守義務等の整備についても答申をいただいておりますし、既存施設に関する規制につきましては、二つ目の四角の後半ですけれども、新規施設とは別に既存施設としてのBATに適合した値を設けることが適当だという内容となっております。
 また、(3)でありますが、この排出規制対象としては、一定規模以上のものに限定をすることが適当だということ。それから、(4)につきまして、対象施設の選定の考え方ということで、条約の対象となる5種の発生源の分類に該当する施設を規制対象とすること。対象外の施設であっても、鉄鋼製造施設のような我が国において規制対象施設と同等に水銀を相当程度排出する施設については、自主管理基準の設定、排出施設の新増設時の水銀除去設備の設置、排出状況の測定等々、積極的な自主的な取組を求めるということの答申をいただいております。
 また、測定方法に関する内容、ページをめくっていただきまして5ページ目に参りますが、大気排出対策の目標につきましては定量的な目標は定めず、排出量はできる限り抑制する観点から、インベントリーを活用した排出量の定量的な把握・評価を定期的に実施すべきだという内容、インベントリー、(3)で国や地方公共団体の責務、(4)で事業者・国民の自主的な排出抑制取組の責務、こうした内容の答申をいただいております。
 これを踏まえまして、政府としまして、大気汚染防止法の一部を改正する法律案を先の通常国会に提出をしまして、国会において審議されて、衆議院、参議院での可決を経て成立、平成27年6月19日に公布されております。
 その内容ですけれども、7ページをご覧ください。この法律の概要、中環審の答申に沿った内容としております。
 1番の「施策等の実施の指針」では、水銀の排出抑制施策は、水銀排出規制と事業者による自主的な取組とを適切に組み合わせて効果的な水銀の排出抑制を図ることを旨として実施するということ、2番で水銀排出施設の設置の届出制度、3番でこの法における水銀の排出基準の遵守の義務を規定しています。そして、8ページ目に参りますが、4番で報告徴収・立入検査・勧告・命令に関する規定、5番で先ほど中環審の答申にもありました、水銀排出施設以外であっても水銀の排出量が相当程度多い施設につきましては、要排出抑制施設として設置者の自主的な取組が必要であること、また、施行期日については、条約が効力を有する日から2年を越えない範囲内で政令で定める日としております。
 9ページ目に参りまして、水銀に関する規定は、大気汚染防止法の中で新たにこの部分を加えたという位置づけになります。
 また、昨年11月にはこの改正大気汚染防止法に沿って、政令も改正しております。
 水銀排出施設の範囲ということで、条約の対象とする5施設とすること、それから、報告徴収及び立入検査に関する詳細、都道府県知事の権限のうちの事務の委任、施行期日について、政令改正をしております。
 11ページをご覧ください。法改正、それから政令改正をしましたところですけれども、今後の主な検討事項としては、排出規制を実施するに当たっての具体的、技術的なところを詰める必要があります。
 まず、排出基準の対象施設の種類及び規模に関する基準。条約の中では、5施設ということで指定されておりますけれども、それを大気汚染防止法の規定に沿った形で定義をしないといけません。また、排出量の75%を含む水準としつつ、法的安定性のあるすそ切りの基準をどうするか。水銀を確実に扱う施設、あるいは扱わない施設についての判断、また、実質的な改修の定義、新規施設・既存施設に対するBAT及びBEPに適合する排出限度値の設定、排ガス中の水銀濃度の測定方法、要排出抑制施設の種類及び自主的取組のフォローアップのあり方、これらについて、さらに詰める必要があるということです。
 最後に、12ページ目に参りまして、水俣条約に関する今後の予定ですが、現時点で20カ国が締結をしております。今年3月10日~15日には、政府間の交渉委員会が開催されまして、この条約は締約国が50カ国に達した時点から90日後に発効することになっております。
 条約暫定事務局によりますと、2016年から2017年にかけて条約の発効が見込まれるということです。
 発効から1年以内に第1回の締約国会議が開催され、また、国内においては2年以内に改正大気汚染防止法の施行ということになっております。
 これが、これまでの水俣条約を踏まえた水銀大気排出対策の検討の経緯ですけれども、今後の主な検討事項につきまして、資料2をご覧ください。
 大気汚染防止法に沿って規制をするに当たって、今後、施設の種類及び規模ごとの具体的な排出基準値、測定方法並びに排出抑制に関する自主的な取組の状況の把握・評価の在り方等について定める必要があるということで、環境大臣から中央環境審議会浅野会長宛てに諮問をしまして、資料3でこの件につきましては、大気・騒音振動部会に付議するということにされております。
 この諮問に基づきまして、固定発生源から排出される水銀等に関する大気排出基準等について、必要な調査を行うことを目的としまして、大気排出基準等専門委員会を設置することについて、本日、お諮りするものです。
 資料4をご覧ください。先ほど申しました状況の中で、3段目の段落になりますけれども、このような状況を踏まえ、大気・騒音振動部会に新たに専門委員会を設置し、固定発生源から排出される水銀等に関する大気排出基準等について必要な調査を行うこととするということで、専門委員会の設置についてお諮りしております。
 また、水銀大気排出対策小委員会がこれまで設置されておりましたが、これについては廃止をして、大気排出基準等については専門委員会において調査をしていくこととするとしております。
 資料5につきまして、専門委員会の設置に伴います修正、それから資料6におきまして、水銀大気排出対策小委員会の廃止につきまして、見え消しで示しているところです。
 事務局からの説明は以上です。

【早水審議官】 私どもの事務局の不手際がございまして、少し修正をさせてください。資料6「大気・騒音振動部会の小委員会の設置及び運営方針」でございますが、昨年6月に開催されました第7回の大気・騒音振動部会におきまして、水・大気環境局の中の他の部会との並びをとる形で、設置及び運営方針が改正されております。それを反映させておりませんでしたので、資料6の一部を修正させていただきたいと思います。
 そのときに、部会の運営方針を併せてこの部会にお諮りをして決めておりまして、小委員会と専門委員会の運営方針につきましては、部会の運営方針の中で「部会に置く小委員会及び専門委員会の運営方針は、上記の部会の運営方針に準ずるものとする。」というふうに決めております。
 このため、そのときに、資料6の「5 会議について」以下、6を5に変えておりますが、その以下の話は全て削除をした形で了解をいただいておりました。それを反映させておりませんで、申し訳ありませんでした。この資料自身が「小委員会の設置について」という形で、平成27年6月9日付で改正されておりまして、今の1~5までの中身に既にスリム化されておりました。それを反映させておりませんでした。失礼しました。それを踏まえて、今回、3を削除して1~4という形にするということでございます。
繰り返しますと、この資料につきましては、「資料6 小委員会の設置について」といたしまして、5以下は部会の運営方針で決められており、既に削除されているということで、「5 会議について」以下は削除させていただきます。内容は変わっておりませんが、それは部会の運営方針に書かれている内容だということで、省略をするということでございます。
 以上の訂正を、大変恐縮ですが、お願いします。

【瀧口大気環境課長】 申し訳ありませんでした。修正した資料を後ほど配付させていただきたいと思います。

【坂本部会長】 ありがとうございました。
 今、お話がありましたように、資料6については、「小委員会の設置について」というタイトルでの資料になるということ。そして、平成27年6月9日に一部修正したものがあって、それに今回の改正が加わる、そういうことでございます。
 それでは、ただいま説明をいただきました、大気排出基準専門委員会の設置、その他の水銀大気排出対策に関係する内容をご説明いただきましたけれども、これにつきまして、ご質問、ご意見等ございます方は、名札を立てていただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは、三隅委員、お願いいたします。

【三隅委員】 日化協の三隅でございます。化学業界としては、現在、排ガス中の水銀の測定等を協力させていただいているところでございます。水俣条約の趣旨を踏まえまして、今後も協力してまいりますけども、資料1の11ページの今後の主な検討事項のところで、要望でございます。
 専門委員会の設置について、とやかく言うものではございませんで、要望でございますけども、1の排出基準の対象施設の種類及び規模、それから排出基準の値ですね。化学業界は大きいものから小さいもの、それから水銀を使うもの使わないものいろいろあって、また混在しているところもございます。この辺につきましては、事業者側が客観的に納得性のあるような検討を、ぜひお願いしたいということでございます。
 以上でございます。

【坂本部会長】 ありがとうございました。
 続きまして、河上委員、お願いします。

【河上委員】 専門委員会の設置に関しまして、2点ございまして、電力業界のほうは、石炭火力発電所の水銀の排出、これが対象になっていくんですけれども、ご存じのとおり、世界におけます日本からの水銀の排出量というのは1%ぐらいですかね。その中で、さらに石炭火力発電所からの国内におきます排出割合というのが5%ということで、排出量の面で石炭火力発電所の現状におきまして、多く排出しているという状況ではないと思っております。
 また、これもご存知のとおり、国内の水銀の大気濃度につきましては、国の指針値を大幅に下回っている状況で、また現状の石炭火力発電所からの排出濃度を見てみますと、大気拡散の計算をしても、大気濃度への寄与は非常に小さいという状況でございます。
 水銀につきましては、長期移動性や環境残留性があるということで減らしていかなくてはならないというのはわかるんですが、石炭火力発電所もまだ古い発電所もございまして、今後、新しい発電所に置きかわってまいるというところで、最新鋭の排ガス処理装置が導入されて、おのずと下がっていくという状況だと思っております。したがって、業界といたしましては、石炭火力発電所の、ご議論いただく排出基準については、現状の濃度レベルを上回って厳しくする必要はないとは思っております。
 今後、いずれにしましても、この専門委員会でご議論いただくんですが、先ほどもご説明がありましたが、答申にも記載されておりますが、あえて読みますと、排出基準は経済的及び技術的考慮を払い、排出源分類ごとの排出状況及び排出抑制技術の状況を勘案するとございますので、このとおり、一つ十分ご勘案の上、ご議論をお願いしたいと思っております。
 なお、我々のほうから既に排出濃度データ等はご提出させていただいていますので、十分、ご活用いただきたいと思っております。
 それから、2点目ですが、完全にこれに関連した話でございますが、今申し上げたように、議論に当たっては、設備実態だとか、排出実態、運用実態ということが十分熟知されていることが必要だと思いますので、ぜひ今後、委員の選出をされると思うのですが、産業界からも参画させていただきますよう、強く要望いたします。よろしくお願いします。以上でございます。

【高村委員】 今回の委員会の設置については、全く異論はございません。議論をしていただく際に、ぜひ3点ほどご留意をいただければと思っております。
 一つは、特に私の専門の観点からいくと、水俣条約、水銀条約を実施するという一連の作業だと理解をしておりますので、まず第1点目は、この実施そのものもグローバルに、全体として水銀リスクを下げていくという基本的な考え方に基づくものとして、位置づけていただきたいというのが一つ目でございます。
 二つ目は、より具体的な点でありますけれども、先ほど瀧口さんからもご紹介がありましたところですが、大気に関して申し上げると、排出基準値は法令にもありますように、BAT、BEPに適合した形のものというのが一つの条件となっております。
 そういう意味では、技術やプラクティスの発展で排出基準は将来に向かっても変わり得るものだと理解しておりまして、その意味で先ほど来のご意見もありましたが、BATを踏まえてどういうふうに基準を設定していくかということとあわせて、今後の技術の進展を踏まえて排出基準をきちんと見直していく仕組みというものを検討いただきたいというのが2点目でございます。
 3点目は、既存の施設についてでありますけれども、今回、委員会の報告書のところでも言及されておりますけれども、他方で、水銀条約の規定では、既存の施設に関して新規の施設と異なる基準を設定すること自身は問題ございませんけれども、同時に既存施設の基準、取組が将来に向かって確実に進展をしていくということが一つの条件になっていると思います。
 その意味では、2点目に関わりますけれども、きちんとした基準値の見直しと同時に、その基準の実施に伴って、どのように進捗がされているかということをきちんと確認ができる仕組みを設けていただきたいと思っております。以上の点を、検討の際にご留意いただければと思います。
 以上です。

【坂本部会長】 ありがとうございました。崎田委員、お願いします。

【崎田委員】 私も、これまでの検討の小委員会に参加させていただいておりますので、これまでの流れと今回、専門委員会を設置するというお話に関しては、そのような流れで取り組んでいただければと思っております。
 なお、2点ほど申し上げたいのですけれども、まず1点に関しては、前回の小委員会での検討の際に、条約の対象外ではありますけれども、日本で分野別に言えば非常に排出量の多い鉄鋼製造施設の皆さんの取組をどういうふうに担保するかということが、かなり議論の話題になりました。
 結果的に、業界の皆さんが率先して自主的に取り組むということを強く強調していただき、それに関する取組を国がきちんと評価させていただく、フォローさせていただくような流れに決まっているわけですが、今回、この内容をそういう意味で非常にそれの両面をきちんと条約対象外の施設であっても、自主管理に関してということで、かなりきちんと書いていただいておりますけれども、今後、これの検討あるいは実施に当たって、この業界の皆さんがともに検討にできるだけ近いところにいていただき、あるいは参加をしていただき、どういうふうな仕組みで評価をしていくかということに関しても、積極的にともに考えていただけるような、そういう中で内容がしっかり決まっていくことを心から期待しております。
 なお、最後の1点なんですけれども、資料1の12ページのところで、世界的に締約国が約50カ国に達した時点で発効ということがあります。まだ1年ぐらいはというようなお話があったと思いますが、EU諸国の検討などが済んで、これがスタートすると考えております。できるだけ、細かい検討などを早目に進めて、実際の実施に関して準備を速めていただければありがたいと思います。
 やはり、日本は水俣条約という名前にして、しっかりと取り組むという、そういうところを世界に今後も示し続けていただけることを期待しております。よろしくお願いします。

【坂本部会長】 ありがとうございました。谷口委員、お願いいたします。

【谷口(靖)委員】 一つは質問で、もう一つは意見です。
 まず、意見のほうを申し上げます。先ほどからもお話がありますように、この水俣条約は日本が主導しており、また、BATにしてもBEPにしても絶対的なものではなくて、相対的なものであると思いますので、日本がつくろうとする基準について、しっかりと、なぜこういう数字になったのかというところが各国に示されるように準備をしておかないといけないだろうと思うわけです。
 ですので、水銀の排出状況は非常に変動が大きいということを考えると、実態がどうなっているのかというところが基本かなと思いますので、そういう情報をしっかりと集め、検討していくことが必要ではないかなと思います。
 次に、質問ですけども、11ページに少なくとも排出量の75%を含む水準と記載されています。これは、要は大気への排出量の75%を大防法でカバーするということだろうと思うのですけども、そうすると、3ページの大気排出状況で言うと、分母が17~21で、分子が9.5~14のうちのいくらかという解釈でしょうか。その辺、ちょっと教えていただければと思います。

【坂本部会長】 2番目の質問のほうについて、事務局のほうからお願いします。

【長濵大気環境課課長補佐】 私からご説明させていただきます。
 今の谷口委員からのご質問でございますけれども、条約の考え方を資料に詳細を記載しておりませんで、誤解を招いてしまい申し訳ございません。これは、日本からの排出量の75%ということではなくて、条約上、五つのカテゴリーからの排出が規制されてございますが、この各カテゴリーからの水銀排出量の少なくとも75%をカバーする場合には、すそ切りを設けてもよいという規定が条約にございますので、各カテゴリーからの排出量の75%ということでございます。

【坂本部会長】 よろしいでしょうか。
 それでは、鈴木委員、お願いします。

【鈴木委員】 これは多分、言わずもがなのご承知のことだと思います。確認だけさせていただきます。
 今回、大気排出対策の目標として、インベントリーを活用して排出量の定量的な把握と抑制ということで置かれるということで、それはよいと思いますが、そうしますとインベントリーの数字自体が非常に大事なものになってまいるかと考えます。
 インベントリーというものは、多分、これはご承知のとおり、直接に大気濃度で捉えれば、ある意味、検証が難しい数字だと私は認識しておりまして、したがいまして、引用されていますインベントリーを構成する際にもデータが足りないと、さまざまな困難があったことを記憶しております。
 ですので、今後、この大気排出対策をしっかりとしたものにしていくために、インベントリーをどのような方法、データに基づいて構成するかということと、その構成したデータや方法が発生源にされる方々と、あるいはデータを使われる方が双方に共有できるような仕組みができるように専門委員会でもって議論していただきたいと思っております。
 以上です。

【坂本部会長】 ありがとうございました。
 ただいま、一通り、ご質問、ご要望等をお聞きいたしましたけれども、専門委員会の設置については、まずご了解をいただいたということでよろしいでしょうか。
 ただし、その場合に、専門委員会の委員について少し要望をいただいたということ、それからまた、その審議についていくつかのご要望をいただいたと理解をしてございます。
 この専門委員会については、部会長が指名するということになってございますので、各種産業界からの意見の聴取の仕方についても、いろいろな形があると思いますので、今後の検討にふさわしい方法を考えて、私が専門委員を決めさせていただきたいと思います。
 その際には、水銀の大気排出基準等の検討に当たって、適任と思われる方々を、今、申し上げましたけれども、事務局と相談の上、決めさせて審議を進めさせていただきたいと思ってございます。
 そして、もう一度、これを申し上げておいたほうがよろしいかなと思いますのは、環境中の大気濃度の基準というものと、それから今回の水俣条約というところは、違う部分があるということをご承知いただきたい。要するに、今後の水銀の大気中だけではなくて、全体での分布の排出濃度を減らす、それから循環する水銀の濃度を減らす、そういったところに本来的な目的があって、今回の水俣条約が設定されているということもご理解をいただきたいと思ってございます。
 そういったものを基本に踏まえながら、専門委員会はメンバーを考え、設置させていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、大気・騒音振動部会のもとに、新たに大気排出基準等専門委員会を設けることについては、ご了解をいただいたということでございます。ありがとうございます。
 それでは、先ほど申し上げましたけれども、この専門委員会の委員長は私が務めさせていただき、専門委員会の委員につきましては、先ほど申し上げましたようなことを考慮いたしまして、事務局とも相談の上、追って連絡をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、本日の2番目でございますけれども、審議事項はこれで終わりまして、報告事項でございます。
 大気汚染対策に関する国際協力についてということで、事務局から説明をお願いします。

【瀧口大気環境課長】 それでは、資料7、パワーポイントの横の資料になりますけれども、これをご覧ください。
 めくっていただきまして、まず、マスコミ等でも報道されておりますが、中国の北京におけるPM2.5の推移ということで、月平均値の推移を示したデータが1ページにあります。
 2015年度がオレンジの少し太い線でありますけれども、これまでと比べて低い値で推移しておりましたが、11月から上昇をしておりまして、12月の値が月平均値で1㎥当たり162㎍という値となっております。これは月平均値ですけれども、日本の環境基準の日平均値が35㎍/㎥ですから、かなり高いという状況はおわかりになるかと思います。
 その状況をもう少し詳しく説明しましたのが、ページ2になります。グラフを書いておりますが、こちらは1時間値の推移をこの11月の末から12月にかけて示したものです。12月1日に464㎍/㎥という高い値を記録しております。このときに、北京市ではオレンジ警報を発令しております。これは北京市では重度、大気汚染の深刻度合いにつきまして、深刻な汚染が予測されるときに、予測の日数に応じまして4段階、深刻な順に赤、オレンジ、黄、青、この4段階の警報を発令するということにしておりまして、11月30日の段階でオレンジ警報が発令されまして、そこから一旦PM2.5の濃度は下がりましたけれども、また12月5日以降、濃度が上がりまして、7日に初めて赤色警報が発令をされております。これは、PM2.5の24時間平均で約150~250㎍/㎥ぐらいの汚染が3日以上続くという状況で発令されるものです。
 北京の日本大使館が撮影した写真が2点掲載しております。かなり深刻な汚染の状況が写真からもわかるかと思います。
 この赤色警報の発令によりまして、北京市の環境保護局は、小中学校及び幼稚園の休校を呼びかけるとともに、強制措置として全市内における自動車のナンバープレートの規制、偶数日には偶数のナンバープレートの末尾の車が走ってよし、奇数日には奇数という規制、それから一部工場の操業停止等を実施しております。
 こうした汚染による日本への影響ですけれども、次の3ページをご覧ください。右の上側に少し小さいカラーの図ですが、九州大学のスプリンター図のシミュレーションの解析結果を載せております。
 これを見ますと、大陸からの汚染の状況が北海道の上半分ぐらいにかかっているのがこの図からおわかりになるのではないかと思います。事実、この12月10日過ぎに、国設の利尻島の測定局におきまして、特に発生源がないところですけれども、濃度の上昇が見られておりまして、札幌でも見られております。
 一方、通常、この大陸からの汚染は九州の北半分で深刻な場合が多いわけですが、五島列島のほうでは特に変化は見られず、一方、同じタイミングで関東地域でも高い濃度が測定されました。
 この濃度の上昇につきまして、私どものほうでも東京都や埼玉県等の協力を得て分析しましたところ、当日、埼玉県のほうでPM2.5の成分分析を行った結果、硝酸イオンや有機炭素が高い濃度で硫酸イオンが低濃度であったということで、これは秋冬の国内発生源によるPM2.5の濃度が高くなる特徴を示していること。
 それから、当日、逆転層が生じていたこと、また、湿度が比較的高くて、硝酸イオンの生成が促進されたと考えられるようなことから、この濃度の上昇は大陸からの影響汚染というよりは、国内の発生源が主たる濃度上昇をもたらしたと考えております。
 このように、国内における排出抑制対策と越境汚染対策、両方を示しておく必要があるわけですが、次の4ページ以降、国際協力につきましてご紹介したいと思います。
 まず、国際協力の軸となるものですが、日中韓の三カ国環境大臣会合、これはTEMMと呼んでおりますけれども、これがこれまで17回開催されております。その中で、大気汚染対策というのは、非常に優先度が高いテーマとして扱われておりまして、このTEMMでの合意に基づきまして、大気汚染に関する三カ国の政策対話を開催することとしておりますし、また、昨年の第17回のTEMMの会合で今後5年間の共同行動計画を策定しております。もう少し後のスライドで詳しく紹介させていただきたいと思います。
 また、三カ国の枠組みのほかに、中国、韓国とのバイでの協力、それから、UNEP等と連携したマルチの取組、こうしたものを進めておりますので、以降のスライドで少し詳しく紹介させていただきたいと思います。
 まず、5ページ目ですけれども、第6回の日中韓の首脳会合サミットが昨年11月1日にソウルで開催されまして、安倍総理も参加されました。その中の共同宣言で、地域における大気汚染対策の重要性を認識しつつ、大気汚染に関する日中韓の3か国政策対話を通じて3か国が大気の質の改善に関するグッド・プラクティス及び努力を共有するよう奨励するということが盛り込まれております。
 また、地域の主要な課題として、黄砂問題の重要性も認識し、この分野における協調の強化も求めたということであります。
 6ページ目に参りまして、TEMMでの合意に基づきまして、大気環境に関する三カ国の政策対話というのを進めております。第1回の政策対話が中国で、第2回が昨年2月に韓国で開催されておりまして、第3回は来月末に日本で開催する予定にしております。
 また、TEMMでの合意を受けまして、2つのワーキンググループが設置されております。ワーキンググループ1につきましては、対策に関する科学的な研究を扱うということで、これまで三カ国の最新の取組や今後の活動計画について議論しておりますし、ワーキンググループの2におきましては、大気のモニタリング技術及び予測手法について扱うということで、これまで情報交換等を行っております。
 次に、7ページ目をご覧ください。こうした国の取組と並行しまして、それぞれ自治体においても大気環境改善のための都市間の連携の協力を進めていただいております。特に、日本の自治体、中国の自治体とそれぞれ姉妹都市の関係を結んでおられるところも多くありますので、そうした関係に基づきまして、自治体レベルでも協力が進んでいるということです。
 協力の方式としましては、訪日研修とか、専門家の派遣、あるいは共同研究をしたりモデル事業を実施したりということですが、こうした自治体の都市間の連携を進めていき、それに対して日中の政府、国がそのプラットホームとして下支えをするという構造になっております。
 8ページ目がそれぞれの日本の自治体が中国のどの自治体とペアを組んで、どんな事業について協力を進めておられるか、これを表しております。
 また、9ページ目に参りまして、日中韓の取組と並行して、日韓ではバイでも二国間でも協力を進めていこうということで、PM2.5の測定や予測、あるいはインベントリーについて情報交換を進めていくということで、これまでの実績のところにありますが、直近の会合、昨年8月に開催された会合では、予測モデルとインベントリーの分野における具体的な共同研究の進め方について議論をしておりまして、今月末に日本で、また日韓での会合を開催することにしております。
 以上が、三カ国、それから二カ国、バイでの取組ですけれども、10ページ以降、多国間、マルチでの取組についてご紹介させていただきます。
 まず、日本の環境省がUNEP国連環境計画と連携して、アジアでの大気汚染対策を進めていこうということで、アジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップという、こういう枠組みを平成26年に設置しております。
 この枠組みのもとでそれぞれ現在におきましても、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)を初めとする地域的な取組があるわけですが、幾つかそうした地域的取組の情報共有、交換を進めようということで、そのプラットホームとしてアジア地域における大気汚染に関する合同フォーラムが設置され、昨年11月にタイ・バンコクで初めての会合が開かれております。
 その中で、それぞれ大気汚染に関する既存の地域的取組の活動状況や、最新の科学的知見に関する情報共有が行われまして、また、地域の評価報告書に関する骨子についても議論がされたところです。
 11ページ目をご覧ください。東アジア酸性雨モニタリングネットワーク、これは日本のイニシアティブで、2001年から本格稼働しておるものですが、その目的としましては、ここに三つ掲げております。
 東アジア地域における酸性雨問題に関する共通理解の形成促進、また、酸性雨防止対策に向けた政策決定に当たっての基礎情報の提供、東アジア地域におけるこの問題に関する国際協力の推進ということで、2001年から本格稼働しておりまして、また、各国のモニタリングデータ等の収集、評価、解析等を行うネットワークセンターとして、日本環境衛生センターのアジア大気汚染研究センターが指定されて、中心的な役割を果たしていただいています。
 13カ国が今、参加しているわけですけれども、最近の動きとして昨年11月に2016年~2020年の次期中期計画が承認されまして、その中ではもう少し活動範囲を広げて、PM2.5及びオゾンのモニタリングの推進、排出インベントリー及び研究活動に関する情報交換の促進等の新規活動が盛り込まれたところです。
 12ページ、13ページは、日中の黄砂の対策に関する取組を示しております。この黄砂に関しても、日中韓のTEMMの枠組みのもとでワーキンググループの1とワーキンググループの2というものを設けて、共同の研究を開始することとしております。
 詳細ですが、13ページ目をご覧ください。2008年以降、毎年、ワーキンググループが開催されておりまして、直近のワーキンググループでは、ワーキンググループの1、これは黄砂のモニタリング・早期警報システムについて議論する場ですが、三カ国で一つの同じ黄砂の発生現象が起きたときに、それぞれ三カ国でどういう状況になるかということに関して詳細なモニタリング結果、黄砂の特性に関する解析結果などについて発表をしております。
 また、ワーキンググループの2、これは発生源対策ですけれども、各国で実施したフィールド調査の結果について発表しておりまして、それぞれのワーキンググループの結果について来月の末に、日本で黄砂共同運営委員会を開催しまして、報告を受けて議論する予定にしております。
 また、14ページ以降でありますけれども、コベネフィット・アプローチを進めておりますので、その紹介をさせていただきます。
 ご承知のように、COP21におきまして、気候変動対策の新たな法的枠組みとなるパリ協定が採択されたところです。先進国、途上国ともに、今後、気候変動対策を進めていくということで、温室効果ガスの削減にもなり、また大気汚染対策にもなるコベネフィット・アプローチというのを中国、モンゴル、それからインドネシアで進めておりますので、その紹介です。
 中国におきましては、この事業の目的でありますけれども、中国の五カ年計画における環境汚染物質の削減目標への貢献を念頭に、環境汚染物質、大気汚染物質と温室効果ガスの同時削減対策の導入に向けて、対策効果の定量的な評価手法の共同研究、事業の実現可能性の調査、人材育成等を行うということにしておりまして、これまで四川省の攀枝花市、それから湖南省の湘潭市において具体的なプロジェクトを実施しておるところです。
 15ページに参りまして、モンゴルにおきましては、特に発電及び暖房のエネルギー源を低品位の自国産の石炭に頼っているということで、この対策の対象として、石炭焚きの熱供給専用ボイラというところに焦点を当てまして、それぞれについての改善施策について定量的な評価をする、あるいはそのためのキャパシティービルディングをするということで、日本が協力して進めております。
 また、インドネシアにおきましては、16ページになりますが、ソーラークーリングシステムということで、天然ガスと太陽熱の吸収冷温水機を使った空調システムを導入し、その大気汚染対策、温室ガス削減のコベネフィット効果の定量評価を行うという、こういうプロジェクトを進めております。
 以上でありますが、17ページ、これまでの取組と今後の方向性ということで、大気環境の改善というのは、アジア各国の共通の利益でありまして、国際協力に相応しいテーマだというふうに考えております。
 これまで、政府間の取組に加えまして、地方自治体間でも連携をしていただき、また、多国間でも取組を進めることで、複層的な協力がなされてきていると思っております。
 また、大気環境改善のための技術、制度、ノウハウを共有することは、日本にとってもメリットがあることです。
 今後の課題としては、バイでの協力とマルチの協力をいかに有機的に結びつけていくか。それから、民間企業におきましても、この大気汚染対策ということで、それぞれが進められておられますけれども、そうした連携をどう図っていくか。また、EANETのような日本のイニシアティブをどのように発展させていくかということが課題としてあると思いますので、本日、委員の皆様方からご意見をいただければと思っております。
 以上です。

【坂本部会長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいま、資料7に基づきまして、大気汚染対策に関する国際協力についてということで、説明をいただきました。これにつきまして、ご質問等ございましたら、お願いいたします。
 浅野委員、お願いします。

【浅野委員】 7ページについて、ご質問をいたします。これまでに自治体が中国側の都市と都市間連携を進めているということについては、ここまで進んだんだなという感慨を持って拝見したわけですが、問題は日本側で連携をしている都市の、それぞれの連携はどうなっているのかという点です。
 多分、これに機能できるのがIGESだろうと思っていますが、IGESはそれぞれの都市が中国との連携をするということについての協力はちゃんとしていると思いますが、日本側の都市間でいろんなノウハウを共有できるための連携とか、こういうアイデアはいいなというふうな情報交換とか、そういうことについてもIGESがきちっと機能を果たしているかどうか、その辺りはどうでしょうか。ご説明がなかったので、お聞きしたいと思います。

【坂本部会長】 事務局、お願いします。

【瀧口大気環境課長】 ありがとうございます。今、浅野先生がご指摘されたことは、非常に重要であります。実は、日本側での参加されている自治体間での連携を進めておりまして、具体的にはIGESが事務局になって、ここに書いてあります自治体に集まっていただいて、それぞれどんな取組をさえているかを情報共有して、また自治体間で共有できることがないかを議論しております。
 そういう中で進めておりますので、中国の自治体との連携を進めるとともに、日本のこれの枠組みに参加していただいている自治体間でも、この情報共有、交換の連携ができるようになっております。

【坂本部会長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 続きまして、大久保委員、お願いいたします。

【大久保委員】 私も質問なんですけれども、最後の17ページで述べられましたように、バイの取組とマルチの協力をいかに有機的に結びつけていくかというのは、大変重要な課題であると思いますが、ASEANでは周知のように、法的な枠組みがあって、それに基づいて地域的取組を行っているということになるわけですけれども、ASEANの地域取組の有効性について、いろいろな意見があると聞いてはおりますが、この地域的な法的なスキームに基づいてやっているASEANの取組の中で、日中韓の三カ国の取組にグッド・プラクティスとして取り入れることができるようなスキームについて、何らかの情報共有あるいは議論の進展が、特に中国との関係であったかということについて、お伺いできれば幸いです。

【坂本部会長】 ありがとうございました。事務局、お願いいたします。

【瀧口大気環境課長】 まだ、実はそこの部分が、日中韓、ASEANも含めたアジア全体でのマルチの取組、そこの連携がまだなかなかできていないというところが課題だと思っております。
 このASEANにつきましては、ASEAN+3ということで、ASEANに日中韓が参加して、環境大臣会合の枠組みがあります。
 そうしたASEAN+3の枠組みも活用しまして、今、大久保委員からご指摘いただいたような点についても、今後、対応していきたいと思っています。

【坂本部会長】 よろしいでしょうか。
 石濱委員、お願いします。

【石濱委員】 資料の最後のページ、「今後の課題として」に民間企業の参画の促進と書いてありますね。調査とか分析の段階から進んで、対策まで持っていくには、どうしても民間企業の参画は欠かせないことだろうと思います。
 今、私、大学の教員をしておりますけど、前、自動車会社で研究をしていたときが、大気汚染の問題について、中国からいろいろと技術供用の依頼が来るんです。これは、人間の生活に関わることですので、こちらも美しい心を持って協力はしたいんですが、技術開発にお金がかかるんですね。
 ですから、技術開発についてのコストの負担をどういうふうにするかということを、ちゃんと考えておかないと、なかなか民間企業の参画が進みにくいかと思うんです。
 特許で守られていればと言う方もいらっしゃるんですが、特許の使用権の交渉というのはすごく時間がかかってしまいますし、あるいは本当に特許を使っているか、使っていないかという、検証自身もなかなか難しいところもありますので、現在、何かお考えがあるのであればお聞かせいただきたいと思います。そうでなければ、ぜひこの辺のコスト負担をどうするかというところを、今後、ご検討いただきたいと思います。

【坂本部会長】 ありがとうございました。今の点は、日本で環境対策をしたときに、どういった企業が環境対策技術について、例えばDPFの話とか、それからVOC対策もあるし、そういったものを紹介したり、場合によっては企業が中国で合弁会社をつくってやろうとしているところもございますので、今、我々が具体的にどこの企業にというよりは、そういう企業の活動の中に取り入れていくということではないかなと思ってございます。
 続きまして、崎田委員、お願いします。

【崎田委員】 2点です。一つは、7ページの都市間連携ということで、これは既に浅野委員が質問されましたので結構ですけれども、私もここで日本側の都市がどういう連携をすると効果が上がったのかという、その効果をきちんと見据えた上での情報共有をするというふうなところ、そこが非常に大事なのではないかと感じました。
 もう1点、質問なんですが、11ページ、東アジア酸性雨モニタリングネットワークの情報がありますけれども、この東アジア全体の大気のことを考えると、ここの図に書いていないインドとか、そういうところの今後の発展というのも、非常に大きな影響がある地域なのではないかと思うんですが、そういう全体的な広がりに関して、今、どういうふうにこの動きが動いているのか、動こうとされているのか、その辺のお話を伺えればと思います。よろしくお願いします。

【坂本部会長】 事務局、お願いします。

【瀧口大気環境課長】 崎田委員からインドというお話がありましたけれども、インドのデリーの大気汚染は、中国よりもひどいということがWHOの報告などにも書いてあります。
 インドはこの東アジアからは外れるわけですけれども、10ページ目にアジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップというところで、昨年、開催しましたこの合同フォーラムにおきまして30カ国が参加しておりますが、この中でインドも含まれております。
 ですから、こうしたマルチの枠組みの中でインドに対しても、大気汚染対策ということで、連携していければと思っています。

【高村委員】 2点、ご質問というよりは今後の大気環境協力に関してご要望を申し上げたいと思います。
 一つ目は、大気環境分野の協力は非常に大事だと思っております。それは、先ほど冒頭に資料の7のご紹介にもありましたけれども、国内の大気汚染対策は非常に大事でありますけれども、同時にアジア地域の排出が日本の大気環境に影響を与えているのは間違いないので、そういう意味で日本の大気環境改善、質を改善するという意味で重要であると同時に、特に温暖化の分野で対策の取組が必要な中国を初めとしたアジア地域において、大気環境改善の取組と、温暖化の対策というのは同じ方向を向いている対策、施策というのが多くあると。中国を初め、そちらには非常に大きな関心を持っているという意味でも、包括的な環境協力を考えたときに大事だと思っております。
 その意味で、COP21のパリ協定の評価はいろいろございますけれども、非常に大事なのは、これを機会に大きな資金、あるいは支援が気候変動分野で動きつつあるように思っておりまして、これまでも行われておりますけれども、コベネフィットのところでご紹介もありましたが、うまく温暖化対策と連携した環境協力を推進していただきたいというのが、1点目でございます。
 2点目は、東アジア地域を見たときに、特に環境協力が抱える難しさ、これは政治的な意味でも非常に難しい条件を伴っていると思っております。
 最後にございましたけど、その意味でも複層的な取組は非常に大事だと思っていまして、今行われているバイラテラル、あるいはトリラテラルな取組というのは、ぜひ推進していただきたいと思いますが、同時に地域のマルチの取組が非常に大事だと思っております。
 今回、アジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップが立ち上がったのは、大変歓迎をしたいと思います。あわせて、EANETの取組もご紹介がありましたが、直近までEANETの会合等と参加させていただくと、3か国でやっていてはなかなか議論ができないところ、あるいは情報も例えば中国などがEANETの取組の中で出てくる、あるいは、そこでいろいろな経験を共有するということが行われていると思っておりまして、特に東南アジアの諸国が、タイですとか、インドネシアがそうですけど、この分野に関心を持っていることを踏まえると、こうしたマルチの取組をうまく使いながら連携をしていっていただきたいと思っております。
 以上です。

【坂本部会長】 ありがとうございました。事務局から、何かあれば。

【瀧口大気環境課長】 今、高村委員のご意見を踏まえて進めていきたいと思います。
【片谷委員】 EANETについてですけれども、私もかつて酸性雨の研究をしていた立場で、この活動についてある程度フォローはしておりますけれども、今日の資料7の11ページでは、次期の中期計画の中にPM2.5とオゾンについても積極的に取り組むような記載がございまして、これはもちろんいいことだと思うのですけれども、EANETがPM2.5やオゾンに重点的に取り組むということになった場合に、ほかのプロジェクトとの、例えば日中韓のPM2.5に関する取組とどのように役割分担をしていくのかなということが気になったものですから、もしその辺について環境省としてのお考えがありましたら、お聞かせいただければと思います。

【坂本部会長】 事務局からお願いします。

【瀧口大気環境課長】 今、委員から指摘いただいた点は重要だと思いますが、まだ具体的にどのようにこのEANETの次期中期計画と、それからほかの日中韓でやっていることと連携させていくかというのは、まだ我々も答えが出ておりません。
 今後、今年からの計画ですから、重複がないように、それぞれの取組が相互に発展できるような形で進めていきたいと思っています。

【坂本部会長】 ありがとうございました。そのほか、どうぞ、浅野委員。

【浅野委員】 思い出した話ですが、昨年3月に経団連がミッションを送って、日中の交流事業ということでPM2.5の問題を取り上げるシンポジウムがありましたので、それに参加したのですが、そのときに感じたことは、中国側には環境技術についてそれを取り扱う企業がきちっとした組織を持っているらしいと感じました。詳しいことはよくわかりませんが、シンポジウムの相手方としての受け皿があるようでした。
 ところが、日本側には残念ながらあまりそういう組織がないように思われる。経産省にも伺ったのですが何かあるような、ないようなという印象を受けました。環境省は、恐らくそういう意味での日本側で環境技術をどこがどのぐらい持っていて、どういう形でそれが使えるのかというあたりのことをどういう組織に照会すればいいのかということを把握しておられるのでしょうか。
 民間企業の参加が必要だといっても、これも一つ一つの企業について何か情報があるところから、個別的に情報をもらって先方に、つなぐというようなことをやっていくとなるとなかなか効果がうまく出ないのではないかという心配があります。
 ですから、日本側も環境技術を持っていて、協力をするときに、どういう企業がどういう技術が提供できて、どういう形になっているのかということを把握できるようなしっかりした組織をつくっておかないと、うまくいかないのではないかなと、そういう感じを持って帰ったんですが、この辺りはぜひ産業界も考えていただければと思っています。

【坂本部会長】 ありがとうございました。
 今の点は、例えば先ほど都市間連携というお話でありましたけれども、IGESとか、中国の場合ですと日中環境友好保全センターに、そういう技術のプラットホームをつくろうという動きもございますので、そういったものを通して、個別に一々やらなくても、そこでわかるような形をつくっていくというようなことも今、進みつつあると思っています。
 ただし、浅野先生がおっしゃったように、環境技術を全て網羅的にやって、そういった組織がつくれれば非常に効率的にそういったことが行えるんではないかと思う次第でございます。ありがとうございました。
 もし、そのほか、ご質問がございませんようでしたら、この報告事項はこれで終わりにさせていただきたいと思います。
 また、いただきました意見は今後の環境省が国際協力等々を進めるときに、さまざまなところで参考にさせていただきたいと思ってございます。ありがとうございました。
 本日、用意をいたしました議題は以上でございますけれども、何か全体を通して、ご質問等ございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 あと、先ほど資料6が配られてございます。小委員会の設置について、こういった形でやらせていただくということでございます。
 もしございませんようでしたら、何か事務局のほうから、連絡等ございましたら、お願いいたします。

【瀧口大気環境課長】 特に事務局からはありません。
 本日は、活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。
 本日、設置を了承いただきました専門委員会につきましては、議論の進捗状況について適宜、大気・騒音振動部会に報告させていただきたいと思います。
 また、本日の議事録につきましては、事務局にて取りまとめを行いまして、委員の皆様にご確認いただいた後、ホームページに掲載させていただきたいと思います。

【坂本部会長】 ありがとうございました。
 それでは、本日の会議は、これで終了したいと思います。
 どうもありがとうございました。