有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会(第6回)議事録

1.日時

令和元年11月13日(水)10:02~11:51

2.場所

中央合同庁舎4号館 全省庁共用1214特別会議室

3.出席者

(委員長)  新田 裕史

(委 員)  青木 康展    内山 巌雄    大久保 規子   片谷 教孝

       上島 通浩    川本 俊弘    鈴木 規之    田邊  潔

       長谷川 就一   山崎  新

4.委員以外の出席者

(事務局)  関谷環境省水・大気環境局総務課 課長

       鈴木環境省水・大気環境局総務課 課長補佐

       田渕環境省水・大気環境局大気課 課長補佐

       西山環境省水・大気環境局総務課 主査      

5.議題

(1)有害大気汚染物質に係る今後の検討の進め方について

(2)塩化メチルに係る健康リスク評価について

(3)アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について

(4)その他

6.配布資料

資料1     中央環境審議会大気・騒音振動部会有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会委員名簿

資料2     今後の検討の進め方について

資料3-1    塩化メチルに係る健康リスク評価について(案)【概要版】

資料3-2    塩化メチルに係る健康リスク評価について(案)【評価書本体】

資料4-1    アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について(案)【概要版】

資料4-2    アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について(案)【評価書本体】

参考資料1   中央環境審議会関係法令等

参考資料2   今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(諮問)

参考資料3   有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会の設置について

参考資料4   中央環境審議会大気・騒音振動部会の専門委員会の設置について

参考資料5-1  有害大気汚染物質対策について(これまでの経緯)

参考資料5-2  優先取組物質の環境目標値の設定状況について

参考資料6-1  「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」

参考資料6-2  「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」に係るフロー図

参考資料7   塩化メチル及びアセトアルデヒドに係る検討経緯について

7.議事

【鈴木課長補佐】 おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会大気・騒音振動部会(第6回)有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会を開催させていただきます。

 委員の皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらず、ご出席いただき大変ありがとうございます。

 開会に当たりまして、関谷水・大気環境局総務課長よりご挨拶申し上げます。

【関谷課長】 皆様、おはようございます。環境省の水・大気環境局総務課長をしております関谷と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、本来ですと、局長の小野がご挨拶申し上げる予定でございましたが、国会対応が急に入りまして、あいにく欠席となりました。申し訳ございません。代理でご挨拶させていただきます。

 今回、ご審議をいただくことになっております有害大気汚染物質につきましては、かねて23物質が優先取組物質ということで指定されておりまして、そのうち14物質につきましては、既に環境目標値としての環境基準、あるいは指針値が設定されてきているところでございます。

 この専門委員会、平成29年の部会で設置をされ、こういった物質についての基準値の設定、あるいは再評価、そしてリストの見直し、そういったことにつきましての専門的、あるいは技術的なご審議をいただいてきたところでございます。

 また昨年、平成30年度におきましては、トリクロロエチレンにつきまして、健康リスク評価の取りまとめもいただいたということでございまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。

 今年度は、これまで化学的知見の収集に当たってまいりました塩化メチル、そしてアセトアルデヒドにつきましての健康リスク評価を、そして、いわゆるガイドライン、今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方についての改定についても、ご審議をいただきたいというふうに考えてございます。

 ご多用のところ、大変恐縮でございますが、どうぞ闊達な議論のほど、よろしくお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【鈴木課長補佐】 課長の関谷ですが、所用により、途中退席させていただきますので、ご承知おきいただけたらと思います。

 また、本日の会議は、中央環境審議会の運営方針に基づきまして、公開とさせていただいています。

 環境省では、審議会等の資料のペーパーレス化に取り組んでいますので、委員の皆様におかれましては、タブレットを使用して閲覧いただきます。ご覧いただいているタブレットの画面で資料が00番から15番まで入っているかと思います。それぞれ資料番号をタイトルに付させていただいています。

 00番の議事次第の2ページ目に資料一覧もございますので、あわせてご覧いただけたらと思います。

 資料としましては、資料1、2と資料3-1、3-2、4-1、4-2が、参考資料としまして、1、2、3、4と5-1、5-2、6-1、6-2、7があります。

 資料を閉じるときは、もう一度タップしていただくと、左上に戻るというボタンの矢印が出ますので、これで戻っていただくと、また一覧表に戻ります。電源が切れるというような不調でありますとか、不具合がございましたら、挙手にて事務局にお申しつけいただけたらと思います。

 傍聴の皆様にも、事前に環境省ホームページに資料の掲載をさせていただきましたので、お手元のノートパソコン、タブレット端末等でご覧いただくなど、ペーパーレス化へのご協力をお願いしているところであります。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

 また、本日の会議では、委員の皆様方へ、ペットボトルなどワンウェイプラスチックを使っての飲み物の提供を控えさせていただいています。近年、プラスチックごみによる海洋汚染が世界中で深刻な問題となっていることを受けまして、環境省を挙げて取り組んでいるところでございます。委員の皆様におかれましては、マイボトルでの飲み物の持参について、ご協力をお願いしているところですが、コップでのお茶のご用意も可能ですので、必要な方はお申しつけください。

 本日の委員会の出席状況をご報告させていただきますと、上田佳代委員、島正之委員、武林亨委員がご欠席でございまして、委員としましては、14人中11人のご出席をいただいているところでございます。

 報道関係者の方におかれましては、恐縮ですが、カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、これ以降のカメラ撮りはご遠慮いただきますよう、ご協力をお願いいたします。

 それでは、これ以降の議事進行につきましては、新田委員長にお願いいたします。

【新田委員長】 新田でございます。おはようございます。

 皆様、ご多忙のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど、関谷総務課長のご挨拶にもありましたように、アセトアルデヒド及び塩化メチルの健康影響評価等について、審議を行ってまいります。よろしくお願いいたします。

 では、まず議題の1でございますが、有害大気汚染物質に係る今後の検討の進め方について、事務局より説明をお願いいたします。

【鈴木課長補佐】 タブレットで02、資料2をお開きいただけたらと思います。今後の検討の進め方についてという1枚の資料でございます。

 専門委員会の報告書(案)の取りまとめにつきましては、本専門委員会での審議結果として、素案をまずまとめていただきまして、パブリックコメントを経て、報告書(案)として取りまとめをいただきたいと考えています。その後、大気・騒音振動部会でご審議いただきまして、承認を得て答申とするというふうに考えています。

 今後のスケジュールでございますけれども、2.に書かせていただいているところでございます。

 本日、第6回でございますが、今ご説明させていただいている検討の進め方についてと、先ほどご紹介させていただいたように、塩化メチルとアセトアルデヒドの健康リスク評価について、ご審議いただきます。

 また、第7回につきましては、塩化メチル、アセトアルデヒドに加えまして、「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方」の改定案についてもご審議いただきたいと思っています。

 第8回では、それぞれ三つの議題について、素案を取りまとめていただきまして、その後、パブリックコメントを経て、最後に、3月下旬に、そのパブリックコメントへの回答と専門委員会の報告書の取りまとめをさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

 ご説明は以上です。

【新田委員長】 ただいま、今後の検討の進め方について事務局より説明いただきました。ご質問、ご意見のある方は、名札を立てていただければと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(な し)

【新田委員長】 今後のということで、年度内という、そういう位置づけですが、ある程度の年度内にまとめをするというスケジュールになっておりますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 特にご質問、ご意見がなければ、このような進め方で、当面、本専門委員会、進行させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、早速ですが、今日の議論のまず本題の一つですが、議題の2の塩化メチルに係る健康リスク評価についてでございます。これについて、事務局から説明をお願いいたします。

【鈴木課長補佐】 塩化メチルに係る資料につきましては、資料3-1と3-2をご用意させていただいています。03となっている3-1が、塩化メチルの健康リスク評価書の概要版というところで、3-2が評価書の本体です。

 本日は基本的に3-1に基づきまして、ご説明をさせていただきたいと考えておりますけれども、ご審議いただきたいのは、3-2の評価書本体と考えています。

 参考資料7のほうでご紹介していますけれども、環境省の委託調査の中で委員会を設置し、評価書の素案をまとめていただきました。その評価書を、今回、事務局としてご説明するために、この3-1、概要版をつくらせていただいているものであります。

 1.の検討経緯でありますけれども、先ほど関谷のご説明にもありましたけれども、優先取組物質につきましては、定量的な評価結果に基づきまして、環境目標値を定めることが適当というふうにされているところでございます。環境目標値が設定されていない9物質について、環境目標値の設定が急務になっているということから、先ほど申し上げましたように、委託業務において、学識経験者会合を設置しまして、これらの健康影響に関する科学的知見の充実を図ってきたところでございます。今後の解明を待つべき課題がまだあるとは考えていますけれども、現時点での塩化メチルの健康影響に関する知見から、ヒトへの健康影響について以下の評価を行ったという位置づけでございます。

 また、2.の健康リスク評価でありますけれども、先ほどの健康リスク評価のあり方について、いわゆるガイドラインということでご紹介をさせていただいていますけれども、そちらに基づきまして、評価算出の具体的手順というものが定められているところでございます。今回、これにのっとって評価を進めてきたところでございます。

 3.の環境中の塩化メチルの環境目標値の概要についてです。代謝及び体内動態についてというところですけれども、ヒトでの塩化メチルの主な曝露経路は吸入曝露でございます。塩化メチルの代謝の大部分につきましては、2ページ目に参りますけれども、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)によることが示唆されているというところで、GSTが介在する代謝経路で生じますメタンチオールというものが神経毒性を有するというところで、中枢神経抑制作用でありますとか小脳顆粒層に対する毒性の原因物質であるというふうに考えられています。また、代謝経路としましては、チトクロムによる代謝の経路の存在も示唆をされているところでございます。

 (2)の種間差・個体差です。グルタチオンS-トランスフェラーゼθの遺伝子多型による酵素活性の差というものによりまして、個人差があるというふうに考えています。また、GSTT1の遺伝子欠損型の出現割合というのが、人種によって異なっているというところでして、人種の差というのは、ここに記載させていただいたとおりでございます。また、GSTT1活性に種間差が認められているというところで、「活性が高い」から「活性を欠く」までの実験結果がございまして、このように、それぞれマウスやラットとの関係で、活性が高い順に記載をさせていただいています。先ほど申し上げたチトクロムの活性につきましても、ヒトで個人差があることで指摘をされています。

 続いて、(3)の発がん性でありますけれども、塩化メチルは、ヒトと実験動物への発がん性の明らかな証拠が得られていないというところでして、IARCが3、U.S.EPAがグループDというところで分類をされています。疫学調査としましては、漁船の冷蔵庫から漏出した場合というものがございまして、全がんとか腎臓がんのハザード比の増加というのが認められていますけれども、交絡因子の調整が不十分だというふうに考えられています。また、塩化メチルを使用したり、生産したりする工場の労働者を対象としたコホート研究でありましては、がんの明らかな過剰死亡は認められていないという状況であります。白血病の死亡リスクの増加を報告した研究もございますけれども、働いている工場で、職種が大分異なっているというところがありまして、その業務には関係ないのではないかというところが結論とされているところでございます。なので、発がん性につきましては、証拠が不十分ということで判断されています。また、実験動物につきましても、慢性毒性実験というものが二つされていますけれども、こちらに記載の理由から、証拠が不十分というふうに判断をされています。遺伝子障害性につきまして、試験が行われていますけれども、遺伝子障害性の誘発は見られていますが、かなり高濃度というところで結果がございます。また、優性致死試験につきましては、陽性の結果が得られていますけれども、二次的な影響ということが考察をされておりまして、塩化メチルが直接作用で遺伝子障害性を誘発するかは明確な結論は出せないと考えています。

 (4)の発がん性以外の有害性のところでありますけれども、ヒトにおきましては、神経系への影響でありますとか、消化管への影響、肝臓、腎臓への影響、錐体外路の障害などが報告をされています。ボランティアの実験もございますが、呼吸性アシドーシスが見られているとか、あと短期的に、先ほどの漁船の船員の曝露を追跡した調査では、心血管系疾患、脳血管疾患等の死亡リスクの増加が見られています。実験動物の曝露試験では、こちらに書いてある肝臓、腎臓、小脳等の影響が見られているところでございます。これらが塩化メチルの標的臓器というふうに考えているところでございます。

 (5)の量-反応関係でございます。発がん性につきましては、先ほども申し上げましたように、明らかな証拠が得られていないということで、量-反応関係の評価を行わないこととしています。発がん性以外の有害性につきましては、疫学で評価を行うことは難しいですけれども、動物に基づいて評価を行うことは可能だというふうに考えています。次のページでありますけれども、疫学では知見が乏しいということがその理由でありまして、実験動物のほうは知見が存在しているというところと、ヒトと実験動物で、代謝メカニズムでありますとか、発がん性以外の有害性、発現メカニズムについて、種間差が認められる明確な知見はないことが、その理由とさせていただいています。実験動物を用いて行う量-反応関係の評価ですけれども、実験動物を用いた吸入曝露実験の中から、評価する上で十分なデータが存在していて、低濃度曝露実験であるLandryら(1985)のマウスの小脳組織への影響の発生に関する知見を用いることとしています。この実験ですけれども、連続11日間曝露実験でございまして、このほかの吸入曝露試験と比べましても、低濃度で行っています。1日中、22時間連続曝露したもので100ppm以上、1日5.5時間の断続曝露条件で、400ppm以上で小脳(顆粒層細胞の変性、萎縮)、肝臓(グリコーゲンの枯渇による肝細胞の大きさの減少)というものが認められています。ほかの影響もありますが、小脳組織の変性が見られているということから、肝臓の影響よりも重大だというふうに考えています。したがいまして、Landryら(1985)の知見を用いまして、量-反応関係の評価を行うことが適当だと考えています。この実験につきましては、先ほど申し上げましたように、22時間と5.5時間で評価をしていますけれども、2.2時間の評価のほうが、NOAELが50ppmというふうに得られていまして、一般環境下の曝露条件により近いということから、22時間の連続曝露の評価のほうを用いたいというふうに考えているところでございます。

 次のページの5ページでありますけれども、4.の環境目標値の提案でございます。

 冒頭は、疫学に基づいて、有害性の評価ができないであるとか、動物実験に基づいて有害性に係る評価値を算出すること、Landryらの知見を用いて評価値を算出するということが中ほどまで書かせていただいています。その下の後半のところにございますけれども、具体的に、どのように評価するかというところにつきましては、小脳の組織への影響というパラに書かせていただいていますけれども、小脳の組織への影響をエンドポイントとしまして、NOAELを50ppmとして、22時間の曝露を24時間に補正をしていまして、さらに、不確実係数としまして、種間差で10、種内差10、曝露期間が11日と短いので、それを考慮しまして10ということで、この不確実係数の積としまして、1,000を用いることが適当というふうに考えています。不確実計数の考え方につきましては、その下のパラからご紹介をしていますけれども、まず、種間差につきましては、人間が実験動物より感受性が高いという仮定のもとに、種間差の不確実係数は、デフォルトが10になっているというところでございます。このパラの下のほうにありますけれども、塩化メチルにつきましては、種間差のTKとTDについて、明らかな知見が得られなかったということを踏まえまして、総合的に考えて、10のデフォルト値を採用することが適当だと考えています。

 また、次のページでありますけれども、種内差のほうでありますけれども、こちらは、平均的な人間集団のNOAELを感受性の高い集団に外挿するためということで、デフォルト10ということとされています。冒頭に申し上げましたように、ヒトではGSTT1遺伝子多型による酵素活性の差によって、個人差があるというふうに考えられていますので、それを踏まえまして10を用いることが適切と考えています。

曝露期間につきましては、指針値は生涯曝露を考慮して慢性影響を指標とすることとされているため、基本的には、慢性曝露実験、あるいは亜慢性曝露実験の知見に基づいて、評価を行うとなっていますが、やむを得ず短期間の曝露を用いて評価を行う場合は、最大10の不確実係数を考慮する必要があるというふうにされています。今回の知見は、11日間と短期間ですので、10を用いることが適切と考えています。

 (2)の環境目標値の提案でありますけれども、発がん性以外の、ここも、先ほどからご紹介をしているLandryらの知見をもとに、連続曝露に換算した上で、不確実係数1,000で除して94が算出されます。発がん性の評価値が算出されなくて、発がん性以外の有害性に係る評価値が算出されましたので、この94を環境目標値として、提案することとしています。

 また、実際の大気濃度の調査結果と比較いたしますと、有害大気汚染物質モニタリング調査が2011年から本格的に実施されていますけれども、そこから2017度までの間に、この目標値を超えて検出された例はないというところでございます。

 モニタリングのところだけ、若干3-2でご紹介をさせていただけたらと思っています。一度3-1を閉じていただいて、3-2をご覧いただけたらと思います。

 3-2の39ページの大気環境モニタリングをご覧ください。

 塩化メチルにつきましては、2010年に優先取組物質が見直された際に新たに優先取組物質に選定をされていまして、それから地方公共団体でモニタリングの常時監視が始められています。それに基づきまして、2017年では334地点で実施をされているところでありますけれども、その結果は表12と図4に示しているとおりでございます。年平均値が1.幾つかというレベルでございまして、最大値でも10μgを下回っている状況でございます。

 このモニタリングの値について、もう少しご紹介をさせていただきますと、次のページ、40ページの一番下の3.4の記載でございますけれども、その次のページで、PRTR制度に基づき、塩化メチルを排出していると報告された事業所にご協力いただきまして、2013年と2018年に環境省が周辺環境において、調査を実施したものがございます。こちらでは、2事業所で、計8地点で測定を行っていますけれども、その地点ごとの平均が、2.5~110μg/m3でございました。先ほどご紹介させていただいた94と比較して、若干高くなっている地点が確認されているところでございます。

 資料3のご説明は以上です。また、資料としましては、環境目標値というところでご紹介をさせていただいていますけれども、事務局としましては、ご審議いただいたものをもとに、指針値で設定させていただきたいというふうに考えているところでございます。

 資料の説明は以上でございます。

【新田委員長】 ありがとうございます。

 ただいまの塩化メチルの健康リスク評価について、主に概要版の資料3-1に基づいて、ご説明をいただきました。この後、資料3-2、曝露評価のところ、若干ご説明いただきましたけれども、その他の部分も含めて、資料3-2、あわせてご意見、ご質問をいただければというふうに思います。

 それでは、ご質問、ご意見のある方は、名札を立てていただければと思いますが。

 大久保委員、どうぞ。

【大久保委員】 ありがとうございます。

 資料3-2の34ページに、定量評価のデータが、各国際機関等によるものが掲げられているんですけれども、一番最初に表中で掲げられているWHOによりますと、指針値が0.018mg/m3になっておりまして、今回の値と比べると、結構差があるように見受けられるんですけれども、この差というものは、どういうふうに理解すればいいのかを教えていただければ幸いです。

【新田委員長】 事務局、どうぞ。

【鈴木課長補佐】 資料3-2に記載しているWHOの評価でございますけれども、ここにありますように、CIIT(1981)という知見に基づいて評価が行われたものでございます。こちらにつきましては、29ページに、具体的に、このCIITの知見につきましてご紹介をさせていただいているのですが、この四角の二つ目でありますけれども、CIITの知見がございます。上から8行目ぐらいに、知見の結果としましては、小脳の病変でありますとか、脊髄神経の軽微~中等度の軸索腫脹という変性が増加したというふうにされていますが、濃度に依存したものではなくて、機能の異常は見られなかったという結論でございました。

 この四角の一番下ですが、U.S.EPAでは、脊髄域の軸索腫脹と変性につきましては、濃度依存性が見られないということと、機能の異常が見られないということから、有意性がないという結論にされているところでございます。

 ですので、今般まとめていただいた有害性評価のほうも、この知見ではなくて、Landryらの知見を用いて評価をしているので、結果的に、有害性、この指針値が異なっているというものでございます。

【新田委員長】 よろしいでしょうか。

【大久保委員】 ありがとうございます。

 短く言うと、WHOはCIITを使って、80年の結果ですけれども、2000年代に、それに有意性がないという結果が出ているので、そちらを用いなかったということで、違いがあるけれども、合理性があると。こっちで、今回採用した数値のほうに合理性があると。そういう理解でよろしいですか。

【鈴木課長補佐】 そうですね、はい。そのようにさせていただいています。

 また、先ほどの34ページ目のWHOの下の枠にもEPAの評価のほうを載せさせていただいていまして、35ページ目の冒頭の「なお」のところにございますけれども、CIITではなくて、Landryらの知見を用いた理由というのも、ここに書かせていただいています。よく管理された試験であることなどを理由として、1から4まで挙げられているところでございます。

【大久保委員】 ありがとうございました。

【新田委員長】 僕もよろしいでしょうか。

 基本的には、WHOが根拠として採用したものよりも、今回、資料3-2のところで、作業部会のほうで、議論した上で選んだLandryらのもののほうが、全体的に定量評価において、適切だろうということで判断をしているということでご理解いただければと思います。

 ほかはいかがでしょうか。

【鈴木委員】 よろしいですか。

【新田委員長】 鈴木委員、どうぞ。

【鈴木委員】 曝露評価のところで、さっきから説明された、まず全体には、固定発生源を含めた値というのは、バックグランドに比較的近い濃度が、大体コンスタントに、大気で検出されている、妥当な結果であると思いますし、平均的には、その状況であるということは、多分、有害大気のモニタリング自体は、平均的な曝露集団を捉えるように設計されていると、私は理解していますので。

 その意味でも、全体的な曝露評価をするのは、この有害大気モニタリングをもとにとられていることは、妥当なことだと思いますが、一部高いのが出たという、2.5と110というのは、これは具体的には、大気の年間平均値とか、あるいは地点の特性等において、どういうような位置づけで解釈されておられる、位置づけておられるかということを聞かせていただければと思います。

【新田委員長】 事務局、大気環境課のほう、よろしいでしょうかね。どうぞ。

【田渕課長補佐】 大気環境課の田渕でございます。

 今、ご指摘いただきましたように、全体的には環境目標値案を十分下回っているという状況ですが、固定発生源の周辺におきましては、一部高いところが見られているといった状況です。周辺環境調査を実施した2事業所につきまして、一つの事業所は、製造原料として塩化メチルを使用している事業所、もう一つは、発泡スチロールの発泡剤として使用している事業所です。110㎍という結果が得られているのが、発泡剤として使用しているところです。なお、この事業所については、この調査後、発泡剤をほかの物質に転換され、既に塩化メチルの使用を停止されているという状況でございます。全国的に見て同様の取り扱いをしている事業所は限られておりまして、そちらについても、経済産業省を通じて確認したところ、塩化メチルの使用を転換する方向で検討が進んでいるということなので、我々としても、地方自治体とともに排出抑制の取組を促進していきたいというふうに考えております。

【新田委員長】 鈴木委員、いかがでしょうか。

【鈴木委員】 わかりました。多分、今後とも近いところは、多分、出ていることはないという見込みのようでありますけども、その点については、十分注意していただくようにお願いいたします。

【新田委員長】 ほかの委員の皆さん、いかがでしょうか。

 大久保委員、どうぞ。

【大久保委員】 今のご説明ありがとうございます。

 大変重要な部分で、一般的なモニタリングのほかに、PRTRの結果と組み合わせて、リスクが高いと思われるところも調べていくという、政策的に大変有効な手法であると思うんですけれども、先ほどのお話で、転換できるものは、そういう意味では、今回の指針値を設定することによって転換が進む、あるいはPRTRデータによって転換が進むということで、このような手法を促進していくことは、大変有意義であると思うんですけども、先ほどのお話で、他の事業所についても転換の方向というのは、これは、やはりそのようなPRTRデータとか、今回のデータに基づいて転換しようという方向なのか、また別の理由なのか、これはどっちが……。

【田渕課長補佐】 塩化メチルにつきましては、既に優先取組物質に選定されております。優先取組物質については、事業者に排出抑制の責務がかけられていますので、恐らくそのことを意識されて、以前は、発泡剤としてもうちょっと使われていたようなんですけども、業界として、有害性を認識されて、他の物質に転換をして使用をやめていこうということで進められていると聞いています。

【新田委員長】 今回の専門委員会で、環境目標値をご議論いただくということですが、その前に、自主的な取組のほうがやや先行しているということかと理解をいたしました。

 ほかはいかがでしょうか。

 長谷川委員、すみません。鈴木委員、先にどうぞ。

【鈴木委員】 ちょっと今のお話では、自分でも既に言ったことですけども、いずれにしても、こういう規制が必要ない範囲かどうかは、引き続き注意して見ていっていただけばと思っております。よろしくお願いします。

【新田委員長】 長谷川委員、どうぞ。失礼しました。

【長谷川委員】 今のお話の点の延長なんですけれども、3-1のところで、国内生産量の経年変化が出ておりまして、さらに、その後の3-2のところの図13ですか、こちらでPRTRの届け出の排出量、大気への排出量の結果が出ているんですけれども。今のご説明は、届出の排出量が減ってきているところが、そういった取組の表れなんだと思うんですけども、国内生産量は横ばいか、ないしは若干、近年、変動の範囲内かもしれませんが、増えているところがあるということは、塩化メチルの使用量というか、生産・使用量は横ばいとか維持されているけれども、大気に対する排出は、そういった形で対応がとられてきて、今後、生産量が横ばいないしは増えることによって、大気への排出量が増えることはあまり考えなくてよいというか、心配ないという、そういった理解で、ここはよろしいでしょうか。

【新田委員長】 事務局、どうぞ。

【田渕課長補佐】 塩化メチルの国内生産は横ばいですが、この物質の使われ方といたしまして、主に、いろんなゴムですとか、シリコンとかの製造の原料として使われているということで、基本的には、閉鎖系の中で使われているということです。引き続き、排ガスの処理等をしっかり行っていただくことで、この状況が維持されるものと考えており、環境省としても、引き続き排出抑制の取組を促進していきたいというふうに考えております。

【新田委員長】 よろしいでしょうか。

 ほかはいかがでしょうか。

 健康リスクのところは、基本的には、定量評価は、動物実験によって定量評価をして、しかも発がん以外の有害性をエンドポイントにという、この評価書のまとめになっておりますが。

 山崎委員、どうぞ。

【山崎委員】 申し訳ないんですけど、環境目標値と指針値の違いについて、ちょっとご説明いただけないでしょうか。

【鈴木課長補佐】 環境目標値と指針値でございますけれども、参考資料6-1のほうに、ガイドラインと呼ばせていただいている、今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方についてをご用意しています。

 ここでの1ページ目、目次の次のページの背景の中にございますけれども、一番上のパラの5行目に、環境目標値とありまして、注釈の1にて、環境目標値というのが環境基準と指針値が定められていますというふうにされているところであります。

 さらに、2、3ページおめくりいただきまして、6ページ目のところに、4.としまして、指針値の性格と機能という項目がございます。

 (1)の指針値の性格のところでございますけれども、環境基準につきましては、環境基本法第16条に基づいて定められているものでありますけれども、指針値は環境基準とは性格と位置づけが異なっているものの、「人の健康に係る被害を未然に防止するという観点から科学的知見を集積し評価した結果として設定されるもの」とされています。

 また、次の、「基本的には、大気からの長期曝露による健康影響を防止する観点から設定する」というところで、不確実係数を見込む等により安全性を考慮して評価値を算出するため、指針値は、短期的に上回る状況がありましても、直ちにヒトの健康に悪影響が現れるものと解するべきではないというふうに考えられているというものであります。

 また、(2)の指針値の機能も、ご紹介をさせていただきますと、冒頭のところで、指針値は科学的知見を集積して、評価した結果として設定されるということでございますけれども、モニタリングの結果の評価でありますとか、事業者の排出抑制努力の指標としての機能を果たすことが期待をされているというところと、また、国、地方公共団体や、事業者の連携による地域主体の自主的な取組を実施する上での指標となるということが期待されているというところでございます。

 指針値については、以上のように考えています。

【山崎委員】 ありがとうございます。

 そうすると、資料3-1の6ページ目最後の段落のところで、環境目標値については、提案と書いてあるところは、これは指針値はというようなことで、理解でよろしいでしょうか。

【鈴木課長補佐】 参考資料6-1のガイドラインの5ページをご覧いただけたらと思います。ここでは、指針値の設定の考え方が書かれているところでありますけれども、この冒頭にありますように、有害性の評価値の算出に係る知見の科学的根拠の確実性について、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに分類されています。この下のところで、Ⅰに該当する知見が得られる場合には、必要に応じて、環境基準の設定について検討される対象となるというふうにされています。

 その下の(2)のところには、ⅠまたはⅡa、Ⅱbに該当する知見が得られる物質というものにつきましては、指針値を設定するとなっています。

先ほどの科学的知見の分類のどこに該当するかと、必要に応じて環境基準にするかどうかというところの判断が要るので、今の段階の健康リスク評価としては、環境基準と指針値のどちらかという意味で環境目標値と表現させていただいています。実際、おまとめいただくときは、環境基準か指針値かのどちらかということになりますが、事務局としましては、指針値ということで、おまとめいただけたらと考えている次第でございます。

 指針値でおまとめいただきたいと考えている点について、説明が不十分で申し訳ありませんでした。

【新田委員長】 今の点、ちょっと重要な点と思います。事務局の提案は、環境目標値のうちの指針値ということで提案いただいているということで、この知見の確実性に関する判断は、今日、それから、この後の次回、その後のご議論をいただいた上で、最終的には、この専門委員会で一定の判断をして、大気・騒音振動部会のほうにご報告するということになろうかと思います。ですから、指針値を決めて議論ということではなくて、議論をした上で、最終的にはというふうに、判断するというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 ほかはいかがでしょうか。

(な し)

【新田委員長】 それでは、健康リスク評価の詳細につきましては、また次回、ご議論いただく時間がございますので、この評価書(案)、資料3-2について、次回まで少し、各委員の先生方におかれましては、ちょっと宿題を申し上げるようで恐縮ですが、詳細に読み込んでいただきまして、次回、もしご指摘の点があれば、議論をして、整理をしていきたいというふうに考えております。

 本日のところで、何かご質問、ご意見よろしいでしょうか。

【鈴木課長代理】 ご指摘・ご意見は事前にいただけますと幸いです。期限等については改めて事務局よりご連絡させていただきます。

【新田委員長】 今、事務局からのご要望ですので、ぜひよろしくお願いいたします。基本的な議論は、先ほど、最初の議題にありましたように、進め方につきましては、ほぼ3回の専門委員会で、一定のまとめをしたいというふうに考えておりますので、細かい内容についての議論は、できましたら、次回で整理して完結させたいというふうに思っております。進行にご協力いただきますように、よろしくお願いいたします。

 それでは、塩化メチルの健康リスク評価に対する本日の議論はここまでとして、次の議題に移らせていただきます。次は議題の3でございます。アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について、事務局から説明をお願いいたします。

【西山主査】 それでは、アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について、ご説明をさせていただきます。

 こちらにつきましても、塩化メチルと同様でございますけれども、資料4-1と4-2の二つをご用意させていただいております。本日、ご説明をさせていただくのは、概要版である4-1をメーンに進めさせていただきたいというふうに考えておりますが、ご審議につきましては、資料4-2につきまして、ご意見をいただけますと幸いです。

 では、資料4-1をお開きいただければと思います。

 こちらは、アセトアルデヒドの健康リスク評価ということで、概要版にさせていただいておりますが、1ポツ目の検討経緯につきましては、塩化メチルと同様、アセトアルデヒドにつきましても、優先取組物質に指定をされておりまして、それを受けて、今回、環境目標値の審議をお願いしているという状況でございますので、省略をさせていただきます。

 2ポツ目、健康リスク評価手法についてのところでございますが、こちらにつきましても、塩化メチル同様、ガイドラインの考え方に従って、環境目標値の案というものを手順で行わさせていただいているところでございます。

 3ポツ目、環境中のアセトアルデヒドの環境目標値の概要についてからご説明をさせていただきます。

 (1)代謝及び体内動態というところでございますけれども、アセトアルデヒドは肺や消化管から吸収されるものでございまして、血液、肝臓、脾臓、心臓、筋肉等に分布をしております。ヒトの主要なアセトアルデヒド代謝酵素といたしましては、ミトコンドリアに局在するアセトアルデヒド脱水素酵素2型、通称ALDH2でございまして、側副路といたしまして、チトクロムを介する代謝経路がございます。

 1枚おめくりいただきまして、2ページ目でございます。(2)種間差・個体差についてでございます。種間差につきましては、ヒト及びラットの鼻腔内における空気の流れとアセトアルデヒドが鼻腔上皮に吸着した後の動態というものをCFD・PBPKモデルというもので検討した結果、ヒトの鼻腔上皮におけるアセトアルデヒドや水素イオンの濃度はラットよりも低いという結果が得られている状況でございます。

 この結果を踏まえまして、ヒトのトキシコキネティクスに関する感受性は実験動物と同じか低いという場合に相当するというふうに考えられまして、また、トキシコダイナミクスにおいては、ヒトとラットで同程度というふうな考え方をさせていただきました。したがって、種間差の不確実係数といたしましては、トキシコキネティクスとダイナミクスの積である2.5が妥当というふうに考えております。

 また、種内差(個体差)につきましては、ヒトではアセトアルデヒド脱水素酵素の遺伝子に多型が存在をいたしまして、ホモ体である(*2/*2)には代謝活性がなく、ヘテロ体である(*1/*2)では代謝活性は有意に低いという状況でございます。このALDH2変異型の保有率には人種差がございまして、特に日本人では約40%に*2/*2または*2/*1が検出されるという知見がございます。ALDH2遺伝子多型による影響の違いにつきましては、ALDH2ノックアウトマウスと野生型のマウスを用いた吸入曝露試験で比較した結果が報告をされているところでございまして、それについては、鼻腔の呼吸上皮への影響の発生率が高く、傷害の程度も大きいということが得られています。ヒトにつきましては、上述のCFD・PBPKモデルを用いて鼻腔におけるアセトアルデヒド代謝によるクリアランスや鼻腔組織での水素イオンの産生を検討した結果、ALDH2の寄与は小さく、ALDH1の経路のほうがアセトアルデヒド代謝における主たる経路というふうに推定をされている状況です。ガイドラインにおきましては、種内差における不確実係数はデフォルトを10というふうにしております。

 今回、CFD・PBPKモデルによる検討結果では、ヒトの鼻腔におけるアセトアルデヒドの代謝によるクリアランスや鼻腔組織での水素イオンの産生に対するALDH2の寄与は小さいと推定はされておりますが、日本人の約40%がアセトアルデヒドの代謝活性が低いと変異型を保有するということでございますし、ALDH2のノックアウトマウスでは野生型と比べて、鼻腔組織への影響の発生率、また傷害の程度が大きいという報告があることから、種内差の不確実係数はデフォルトの10よりも小さくすることは不適切というふうに考えられております。

 (3)発がん性といたしましては、アセトアルデヒドは、職業曝露等によるヒトの発がん性による情報というのは、必ずしも十分ではないものの、以下の理由によって、ヒトの発がん性というものが示唆されている状況でございます。

 3ページ目でございます。大きく四つございまして、上からご説明をさせていただきますと、飲酒者の症例対照研究の結果から、ALDH2変異型アリール保有者では上部消化管の発がんリスクが高まるということが明らかになっております。

 また、二つ目といたしましては、実験動物を用いた吸入曝露実験では、ラット及びマウスにおいて鼻腔の発がんを示す十分な証拠がございます。

 三つ目といたしまして、アセトアルデヒドの主たる酵素は、ヒト、動物ともにALDHであり、その代謝メカニズムや発がん性のメカニズムの違いを示す明確な知見はないという状況でございます。

 四つ目といたしまして、ヒトや動物の真核細胞によるin vivo及びin vitroの変異原性試験においては、遺伝子障害性が示唆されているという状況がございます。

 また、アセトアルデヒドの発がん性の閾値の有無に関する情報といたしましては、以下のとおりでございます。

 原核細胞によるin vitroの研究では、報告数というものが少ないんですけれども、ヒトや動物の真核細胞による変異原性試験では一定程度の遺伝子障害性というものが示唆されているという状況でございます。しかし、動物実験で観察された発がんについては、がんの発生に先立って過形成や化生の有意な発生が認められ、閾値のある発がんメカニズムと推定されているところでございます。また、ALDH2変異型アリール保有者で観察された上部消化管における発がんリスクの上昇につきましては、その発がんメカニズムに関する情報というものは、不十分であるということでございます。

 (4)発がん性以外の有害性ということでございますけども、ヒトの疫学研究等から、アルコール性肝障害やアルコール性心筋症、アルコール関連出生児欠損、胎児性アルコール症候群の原因物質として、アセトアルデヒドが考えられているところでございます。

 実験動物を用いた吸入曝露実験では、主な影響は直接アルデヒドが曝露される部位に限定をされておりまして、特に鼻腔で過形成や化生等の著しい影響というものが認められている状況です。実験動物では、腹腔内投与や全胚培養等の実験を行われておりますが、これらは、ヒトでは非現実的ということで、エンドポイントとしては、採用はしておりません。

 (5)量-反応関係の評価といたしましては、アセトアルデヒドの発がん性については、量-反応関係の評価を行うことは困難というふうに考えております。

 次、4ページ目でございます。しかし、変異原性等の試験で遺伝子障害性が示唆されているため、ヒトの発がん性というものの示唆も受けまして、今後の研究によっては、発がん性に係る量-反応関係の評価を行うことができる新しい知見が集積された場合には、発がん性のリスク評価について、改めて実施をする必要があるというふうに考えております。

 現時点で、発がん性で困難というふうに思っている理由としては、二つございまして、ヒトの疫学では、量-反応関係の知見が乏しいことと、二つ目といたしまして、実験動物を用いた吸入曝露で知見は得られているものの、かなり高濃度の曝露を行った場合に、閾値のある発がんメカニズムは推定されているということで、当該知見をヒトの発がん性に用いる評価としては適当ではないというふうに考えております。

 また、発がん以外の有害性といたしまして、以下の理由によって、ヒト疫学の研究データを基本とした量-反応関係の評価は困難という一方、動物実験のデータを基本とした量-反応関係の評価を行うことは可能であるというふうに考えております。

 一つ目といたしまして、発がん性以外の有害性では、ヒトの疫学では、同じく量-反応関係を示す知見は乏しいこと。二つ目といたしまして、実験動物を用いた吸入曝露実験では、発がん性以外の有害性に関する量-反応関係を示す知見が存在すること。三つ目といたしまして、ヒトと動物のアセトアルデヒド代謝メカニズム及び発がん性以外の有害性に係る発現メカニズムについて、種間差が認められる明確な知見はないことから、動物実験で量-反応関係を評価してまいりたいというふうな状況でございます。

 具体的なデータといたしましては、動物実験の吸入曝露実験を実施しているうち、量-反応関係を示す上で、十分なデータが存在して、かつ低濃度の領域で曝露実験を行っているDormanら(2008)の雄ラットの鼻腔上皮の変性の発生についての知見を用いることというふうにしております。

 こちらの実験では、13週間の曝露実験でございまして、1日6時間、1週間5日で実施をしておりますが、このほかの吸入曝露実験と比べて、低い曝露濃度段階、具体的には50ppmというものを含む実験を行っていただいています。

 その結果、150ppm以上で鼻腔上皮の変性、500ppm以上で呼吸上皮の変性というものが認められていますが、50ppmでは、これらの影響はないという状況でございますので、この50ppm、質量換算にいたしますと90mg/m3をNOAELというふうに評価をいたしまして、そちらで評価値の算出を用い、こちらを評価値の算出に用いるということが、適当と考えております。

 なお、Appelmanら(1986)という実験もございますが、こちらの実験については、4週間というDormanに比べて短いということと、より低い低濃度段階の50ppmをAppelmanのほうは含んでいないということがございます。また、Dormanの実験のほうが鼻腔内の病理組織分析も詳細であるということから、Appelmanに優先して、Dormanら(2008)、5ページ目でございますけれども、が量-反応関係を評価する上で、より適切であるというふうに考えている状況でございます。

 4ポツ目、環境目標値の提案といたしまして、(1)発がん性に係る評価値の算出についてですが、先ほどご説明させていただいたとおり、発がん性についての、からの評価値というのは、現時点では困難というふうに考えておりますので、こちらで算出するのは、今回は行っておりません。

 (2)といたしまして、発がん性以外の有害性に係る評価値の算出といたしまして、先ほど、ご説明させていただいたとおり、動物の実験、吸入曝露実験から算出をさせていただきたいというふうに考えております。

 下の段落に行っていただきまして、NOAELといたしましては、先ほどDormanらの(2008)の実験において示されている50ppm(90mg/m3)をNOAELというふうに設定をさせていただきまして、こちら、一般環境中での慢性曝露を想定して断続曝露から連続曝露への換算をした8.9ppm(16mg/m3)につきまして、不確実係数といたしまして、冒頭説明させていただきました種間差の2.5、種内差の10、そして発がん性自体の指摘があるということから、影響の重大性に関する係数といたしまして、発がん性のおそれを考慮して5、全体これらの積として、125の不確実係数等を用いることが適当というふうに考えております。

 先ほどご説明させていただきましたとおり、種間差につきましては、トキシコキネティクス、ダイナミクスを分けて、それぞれでTKについては1、TDについては2.5、6ページでございますけれども、を設定をさせていただき、また種内差については、CFD・PBPKモデルの検討結果を踏まえ、すみません、についてクリアランスでしたりとか、鼻腔組織での水素イオンの産生に対するALDH2の寄与は小さいというふうに推定をされておりますが、日本人の40%にALDH2の変異型を保有することと、ノックアウトマウスにおいては、より発生率が高く、傷害の程度は大きいということで、種内差としては10を設定させていただきたいというふうに考えております。

 なお、U.S.NRC(2009)によれば、13週間の吸入曝露期間をさらに延長してもNOAELの50では、傷害の発生はないというふうに考えられることから、曝露期間に関する不確実性は不要と考えた説明をされておりますので、こちらでも同様の考え方に従いまして、曝露期間の差による不確実性係数というものは不要というふうに考えております。

 また、先ほどご説明をさせていただきましたが、影響の重大性に関する係数といたしまして、発がん性は示唆されるものの、リスク評価自体の定量的なものというのは、現時点では難しいという状況でございます。

 また、かつ、発がん性に関する動物実験の多くで、鼻腔上皮の変性が過形成や化生を経て腫瘍へと進行することが示されていることから、発がん性のおそれを考慮して設定をすることが適当というふうに考えております。

 (3)環境目標値の提案でございますけれども、先ほどのご説明の中でご紹介させていただきました、Dormanら(2008)の知見をもとに、発がん性以外の有害性といたしまして、一般環境中での慢性曝露を想定したNOAELに換算した上で、不確実性係数で除したものといたしまして、120μg/m3を算出させていただきました。

 具体的には、こちらの120μg/m3を提案させていただきたいという状況でございます。この環境目標値の提案と大気濃度の調査比較をさせていただきますと、有害大気汚染物質のモニタリング調査では、2017年までにこの目標値を超えて検出された例は見当たらないという状況でございます。

 資料が飛んで、大変恐縮なんですけれども、4-2をご覧いただきまして、4-2の21ページに、先ほどご紹介させていただきました大気環境モニタリングの結果をお示しをさせていただきます。

 21ページに、1998年以降のモニタリング結果の平均値と、年の最小値、最大値をお示しさせていただいておりますが、次おめくりいただきまして、22ページの図3でグラフをつけさせていただきました。こちらをご覧いただきますと、大体2.5μg/m3当たりを、経年変化を横ばいにしているという状況でございますので、先ほどご提案としてお示しをさせていただきました120μg/m3と比較しますと、低いという状況でございます。

 資料の4-1に戻りまして、最後6ページ目でございますけれども、なお、この環境目標値につきましては、現時点で収集可能な知見を総合的に判断した結果、提案させていただく値ということでございますので、発がん性を含めた今後の研究の進歩による新しい知見の収集に伴いまして、随時見直すべきものであるというふうに考えている状況です。

 こちら、塩化メチル同様、アセトアルデヒドのこの120μg/m3につきましても、事務局といたしましては、指針値として設定をしていきたいというふうに考えておりますので、そのご観点でご審議をいただければと思います。

 アセトアルデヒドの健康リスク評価につきまして、事務局からの説明は以上でございます。

【新田委員長】 ありがとうございます。

 ただいまのアセトアルデヒドの健康リスク評価について、事務局より説明をいただきました。

 それでは、ご質問、ご意見がある方は名札を立てていただければと思います。

 上島委員、どうぞ。

【上島委員】 ありがとうございました。

 今のお話を伺って、要するに、鼻腔上皮の変性をエンドポイントとして、環境目標値を設定しようというロジックとしては、よく理解できました。ただ、その組み立てについて、ちょっと気になったことが1点ございます。

 というのは、鼻腔上皮は、結局吸入をしたときに、恐らく直接粘膜への刺激ということが、あるいは粘膜での吸収、そして、その局所への影響ということが想定されて、今回種間差の不確実係数をどう見るかというときに、キネティクスは1というふうにしていますよね。それは、げっ歯類とヒトの呼吸の仕方が異なるということを考えての1だと思うのです。

 そうすると、今回の組み立てとしては、局所への、鼻腔という、その、吸入をして、空気中に含まれるアセトアルデヒドは、直接鼻腔粘膜に作用するということを最初から念頭に置いているように聞こえるのです。けれども、こういう毒性の評価をするときに、一つは、局所への影響と同時に全身影響はどうかという視点が、やっぱり必要で、その場合は、肺から吸収されて全身でどうかという視点、そういう意味では、鼻腔のみならず、他の臓器への影響はどうかということも見た上で、実は、鼻腔が一番鋭敏だということだったらわかるのですけど、その説明がない。そういう検討は、多分されていると思うのですけれども、どうなのでしょうか。

【新田委員長】 事務局のほうから、どうぞ。

【西山主査】 すみません。ご説明の順序といたしまして、資料4-1の立てつけで、最初に、恐らく説明の順番といたしまして、種間差と種内差の不確実係数は考え方からのご説明だったので、ちょっとロジックとしては順序が逆になってしまって、大変恐縮なんですけども、今回、まさに発がん性でしたりとか、ほかの部分への影響等も含め、資料4-2のほうで評価をさせていただいた上で、最終的なエンドポイントとしては、委員ご指摘のとおり、鼻腔上皮細胞の変性というところで考えをさせていただきましたので、それに基づいた不確実係数の考え方として、まさにラットやマウスの呼吸のモデルを使った上での評価ということで設定をさせていただいております。

【新田委員長】 それ、資料の4-2でいきますと、発がん性以外の有害性というところが12ページ以降にあるということで、最初は急性毒性、それから、その後、亜慢性、それから慢性毒性に関する知見というのは整理されております。

 事務局の説明は、そういう知見を整理した上で、鼻腔上皮をエンドポイントにしているDormanらの知見を定量評価で採用したと、そういう筋立てかというふうに思いますが、上島委員、いかがでしょう。

【上島委員】 いや、想定されているだろうということは、私も十分理解していますし、また、どちらが鋭敏かといったら、明らかに、やっぱり鼻腔が鋭敏だというふうに、毒性を専門にしている者としてはよく理解しています。

 ただ、4-2の定量評価のところでも、いきなりこの鼻腔、吸入曝露のことが書いてあって、やっぱり全身影響は感度が低い、もっと高用量でないと起きない、みたいな記述が一言あれば、今の私のような質問は多分なくなると思いますので、資料のつくり方でご検討いただければと思います。

【新田委員長】 じゃあ、その点は、事務局のほうで、まとめた知見の鼻腔上皮以外のところの整理を、どこか資料の4-2の評価書の定量評価なりのまとめの部分のどこかにしっかり根拠に基づいて書き込んでいただくということでお願いをいたします。そのようなことでよろしいでしょうか。

【上島委員】 はい、結構です。

【新田委員長】 ほかいかがでしょうか。

 大久保委員、どうぞ。

【大久保委員】 ありがとうございます。

 すみません。4-1の5ページで、今回、発がんのおそれを考慮して、影響の重大性に関する係数が5とされておりますが、基本的に発がん性については、推定されて閾値があるだろうと。ただ、量-反応関係の評価を行うことは困難ということから、この5という数字で出ているんだと思うんですけれども、基本的に影響の重大性に関しては、ガイドラインでは、10以下で設定する場合があり得るということになっておりまして、今回5という数字を採用したということについて、もし今申し上げた以上のご説明がありましたら、お願いできればと。

【新田委員長】 どうですか、事務局。

 じゃあ、この点、青木委員のほう、お願いします。

【青木委員】 そこは非常に重要なご指摘で、ただ、基本的にこれ、IARCのほうで2Aとなっている物質でございますので、物質の公平性という意味も、ある意味大きいんですけれども、確かに、今まで2Aとされているものは、5を使っているものも……。

 ですから、少しエキスパート的な感覚で言いますと、やはり証拠としては、必ずしも強くない、強くないというのは、まずヒトで本当に起こっているかということに関しては、IARCなど評価でされているのは、よくわかるところで。証拠、まず完璧な証拠がそろっていないと思います。そういう観点から見たときに、さすがに、そういう完璧な証拠があるものに関しては、10をとらざるを得ないなと。ただ、それはちょっと弱いので、それを幾つにするかということに関しては、いろいろ議論はあるんでしょうが、特段これを例えば従来、用いられている5から変えるという理由というものは、私自身ちょっと見当たらないので、やはり5というのは妥当なんじゃないかなというふうに思っている次第でございます。

【新田委員長】 今まで不確実係数、特に重要性の評価のところをどうするかというのは、環境目標値に直接関わってくるところですが、ほかの委員の先生、いかがでしょうか。

 山崎委員、どうぞ。

【山崎委員】 すみません。私専門外なので、ちょっとお伺いしたいんですけども、不確実性係数が種間差と種内差で、種間差が2.5で種内差が10というのは、何か専門外なのでよく、私、直観的に何か個体間差のほうが、何か種間差のほうが小さいというのはどうなのかと思って。種間差のほうが大きいほうが、何か受け入れられやすいような気がしたんですけども、専門的な立場からはどうなんでしょうか。

【新田委員長】 これもすみません、青木委員、よろしいでしょうか。

【青木委員】 ご指摘の点、よくわかるんですが、これは、あくまで不確実係数ですので、得られている情報からどの程度差があるかという観点から見ておりますので、そういうことで、こういうこと、つまりTKとTDを分けられるという明確な根拠があったので、不確実係数、差が出るということになると思うんですが。

【新田委員長】 内山委員、どうぞ。

【内山委員】 これは、以前は、もう種間差というのは10がデフォルトで、何か明確な証拠があれば、それよりも低い値をとろうということになっています。その後、WHOがキネティクス(動態)とダイナミクス(反応性)を分けて考えていく、それぞれの値が4と2.5で、それを掛け合わせると10だということになります。今回の場合は、鼻腔に影響するということで、主に人間の鼻と、げっ歯類の鼻の構造が違うということ、鼻腔上皮における濃度がヒトの方が低いことが問題であって、そのほかのところ(ダイナミクス)は、人間とげっ歯類と、感受性の違いは従来通りということで、2.5の最大をとったということです。不確実係数の内容をより厳格に考える、わかるところはそうしましょうということになったので、今回の場合は、標的臓器は鼻腔でしたので、これは明らかに人間と構造は違うということもあり、むしろトキシコカイネティクスに関する差は、人間の感受性は実験動物と同じか低いと考えられるので1、それ以外のところは従来と同じと考えていいんじゃないでしょうかということで、2.5というふうに算定させていただきました。

【新田委員長】 山崎委員、よろしいでしょうか。

 不確実係数に関する私の理解は、言葉どおり、不確実係数なので、確実な情報が加われば、その係数は低くなっていく方向にあるということで、概念的な不確実ということではなくて、データがあるものについては、その係数はどんどん下がっていくと。一方で、確実な情報がないものについては、デフォルト値というようなことで、今回アルデヒドについても、そこで種間差、種内差で差が出てきているというふうに理解をしております。いかがでしょうか。

 鈴木委員、どうぞ。

【鈴木委員】 ありがとうございます。

 曝露評価のところで、これについては、大気以外にいろんな発生源やいろんな曝露源があるというふうに、少し考え方が難しいところがあるかと思うんですけども、私の見たところの私なりの感想、考え方といたしましては、独自の大気関連から検討される指針値に対して、とりあえず1割弱ぐらいは、最大値では結構あるところであるので、指針値、だから、何か環境目標値を設定して、環境管理を継続するということについては、多分、妥当な判断ではないかなと。ほかのものは、全て、さまざまありますが、食品系であったり、アルコールであったり、ちょっと普通の人間には管理できないような、あるいは、環境とは違う場所で管理されている、管理されている可能性はあるものばかりですので、恐らく、法律でどうかという議論もあり得るかもしれないと思いますが、環境側としては、目標値を設定して、管理を進めるということは妥当じゃないかなと、一応思っております。

 ただ、大気についての発生源について、さまざまな議論あるいは意見等があるようですので、これを具体的な対策、何らかの対策に結びつけていく際には、その発生源について、きっちり検討していくことが、引き続き有用なんじゃないかなと思います。

 以上です。

【新田委員長】 その点、一部評価書にも、資料の4-2の曝露評価の最後のほうにも、室内の発生源の状況とか検討、少し簡単には触れられて、大気経由以外の曝露についての記載がございますので、そこは、今鈴木委員のご指摘は、その点、情報が不十分なところもあると思いますけれども、できるだけ、大気経由の曝露のほうの目標値という意味がわかるような形で、少し可能ならば文章を整理していただければと思います。

 ほか、いかがでしょうか。どうぞ。

【鈴木課長補佐】 新田委員長いただいたご指摘に対応していると考えているところがございます。資料4-2の28ページ目のところで、総合評価の章の中で4.6、曝露評価についてと項目立てをさせていただいています。鈴木委員がおっしゃっていただいたように、大気環境、環境大気以外からの曝露としまして、飲酒とか、食事とか、あと室内空気、喫煙を通じたような吸入曝露もあるというところはご紹介させていただいた上で、2パラで、しかし、これらの曝露につきましては、個人の意思決定とか、行動によって、大きく曝露量が変化してしまう、管理がしにくいとおっしゃっていただいた、そのとおりだと思いますけれども、そのことから、環境大気における有害性評価を行う際には、公衆衛生の観点から環境大気の曝露について、評価を行うことが適切であると書かせていただいています。もう少し詳細にというような観点などございましたら、ご指摘いただけますでしょうか。

【新田委員長】 すみません。私、整理が必要だと申し上げたのは、資料の4-2の23ページの本文のほう、23ページ、24ページのところを見て申し上げたので、今の28ページの総合評価のまとめの記載のようなものが必要だという観点で、ちょっと申し上げました。ちょっとここを見落としておりましたので、私としては、こういうまとめがあれば、十分かと思っております。

 ほかの先生、委員の先生、いかがでしょうか。

【片谷委員】 よろしいですか。

【新田委員長】 片谷委員、どうぞ。

【片谷委員】 今事務局からご説明があった趣旨で、私も賛成するところです。一方、大気中の濃度に関しては、やはり固定発生源から直接出てくる以外のものがありますので、その効果、二次生成のやつですね。だから、今後、環境指針値を運用していくに当たっては、その辺の知見をもう少し集めていく必要はあるだろうと思っております。室内云々ということに関しては、もう事務局のご回答に全く異論はございません。

【新田委員長】 片谷委員からご指摘の光化学反応での生成するというようなことに関しての評価書の記述はございますかね。

【鈴木課長補佐】 資料4-2の20ページ目の下ほどに、若干ご掲載をさせていただいているものがございます。こちらで二次生成など、非メタン炭化水素の酸化などで生成することが知られているとか、というようなこととか、冬よりも夏に高いとか、二次生成が原因だとされているというような記載をここでさせていただいています。また、次のページにPRTRによる排出量の推定値、届け出の値と届け出外の推定値も含めた値よりも植物起源や二次生成がかなり大きいというような知見を書かせていただいています。これらが古いので、もうちょっと最新な知見があれば集めたいと思ってはいますが、難しいという現状であります。

【新田委員長】 この今の点について、光化学反応を含めて、この大気中のアセトアルデヒドの生成について、ご専門の立場で、先生、もしコメントとか。

 田邊委員、どうぞ。

【田邊委員】 非常に素朴な発想として、オキシダントの濃度とアセトアルデヒドの濃度の関係をお示しいただくとか、そういったことから、これぐらいのインパクトがあるというようなことを書けるかなと思います。

【新田委員長】 そうしたら、ちょっと定性的なことは、ここに書かれているということで、若干定量的な知見があれば、ご追加をいただくということで、ちょっとご専門の先生に、もし可能であれば、定量的な知見の存在も含めて、少しご助言をいただければと思いますが。

【鈴木委員】 ちょっとよろしいですか。

【新田委員長】 鈴木委員、どうぞ。

【鈴木委員】 田邊先生もあれですけども、多分、非常に確実なことを言うのは、必ずしも容易じゃないと思いますが、恐らく検討しますというふうにしていただいて、できる範囲の知見を集めて考えるということだと思いますが。一方で、光化学反応と、ちょっとある意味違うかもしれないんですけど、光化学だとしても、もとがハイドロカーボンだとすると、ある意味、自然起源と関連しているとも言えるので、それは直接関係はないんですけども、総合的には、こういうことも関係もあるかなと思います。少し、自然に起源のあるものがあるのかどうかという、どの程度あるかというのには、少し案件とする価値は、必要あると思いますので、それは検討していただきたいと思います。

【新田委員長】 そうすると、定性的なところはここに書かれているということで、定量的なもので、評価書に書き込める信頼性というか、もし高いそういうモニタリングの結果等があればということで、少しご検討いただければと思いますが。

【鈴木課長補佐】 また、ご相談をさせていただきます。

【新田委員長】 ここは、どうも片谷委員のご発言のご趣旨も、健康リスク評価書の最後の結論、環境目標値に関わるところではないというふうに思っておりますので、その点、踏まえて、事務局での作業のとき、ご判断いただければと思いますけど。

 ほかいかがでしょうか。

 まだ少し時間がございますが、先ほど塩化メチルのところで、大久保委員がご指摘されたのと同じような観点で、国際機関の評価のところ、資料の4-2の17ページから18ページにかけてのところですが、それを見ますと、概要説明でもありましたように、過去のというか、少し以前の評価ですと、Appelmanを採用しているものが多いということで、最後のドイツの評価では、今ここで評価しようとしているDormanを用いているというようなことで、Appelmanを採用したものとDormanを採用したもので、評価の仕方も異なっているということですので、その点、少し注意して評価書をご検討いただければというふうに思います。

 しかも、Appelmanを採用するか、Dormanを採用するかで、不確実性係数が異なる部分がございます。Dormanのほうが、信頼性が高いということで、基本的には、先ほどちょっと山崎委員からのご指摘のときに申し上げたように、不確実性は確実な知見が加われば、減っていくというようなこともありますので、その観点も含めて、ご確認いただいて、この評価書の全体のまとめのまたどうするというか、適切性等をご判断いただければというふうに思います。

 いかがでしょうか。

 アセトアルデヒドは、先ほど来、議論がありましたように、非常にある意味、人にとって、身近な物質でございますので、環境目標値を大気環境についての目標値を設定するということは、これまでガイドラインに従って進めるということですけれども、いろいろな意味合いで、この環境目標値が引用されるということも想定しなきゃいけないのかなというふうに思っておりますので、その根拠について、十分議論を尽くしたいというふうに思います。

 先ほど、塩化メチルのところで申し上げましたように、次回、少なくとも議論、ご検討いただく時間、また、とる予定にしておりますので、今日のところで何かご意見がございましたら、よろしいでしょうか。

【鈴木委員】 よろしいでしょうか。

【新田委員長】 どうぞ、鈴木委員。

【鈴木委員】 私は、ここは、こうやってみたら、厚労さんの室内の指針値との関係というのは、どう整理されるんでしょう。

【新田委員長】 厚労省の室内の指針値との関係というのは、どうぞ。

【西山主査】 事務局から回答させていただきますが、今厚生労働省のほうで、先ほどの資料4-2でご紹介をさせていただいているとおり、室内の指針値につきまして、48μg/m3というものを設定されております。環境省といたしましては、厚生労働省のほうで設定をされている指針値というものについては、シックハウスの対応ということで、つくられているというふうに承知をしておりまして、環境省といたしましては、まさに屋外である一般大気についての目標値ということで、設定をさせていただくものになります。

 考え方といたしましては、それぞれの対象としているエリアが異なるということで、同じ値にそろえなければならないということは、考えてはいないという状況ではございますけれども、厚生労働省に対しましては、今回、環境省がこのアセトアルデヒドの検討を行うに当たって得られた新しい知見でしたりとか、この有害大気汚染の評価書案につきましては、情報提供させていただいているという状況でございます。

【新田委員長】 一般論として、大気環境基準と室内のこういう指針の関係というのは、国民から見ると、若干わかりにくいというのがあるかなと思いますが、やはり、この有害大気は、一旦、環境大気経由で人が曝露するものについて、目標を立てるというふうに、そもそも論ですけども、スタートラインがそうなっているということで、室内で発生して、室内にとどまっている部分は、この先ほど説明がありましたように、シックハウスのような観点でのものは、違う枠組みということかと思いますが。

 どうぞ。

【鈴木委員】 もちろん、観点はそうだと思うんですけども、私のうろ覚えの記憶では、室内のほうが低いというのは、比較的珍しいケースで、実際に環境大気はこれより低いと、大丈夫なんですけども。それは実験データは多少違うけども、ちょっとこの表を見る限りでは、この鼻腔上皮の影響というのは、強く見られているんですが、多少、何か見方が違うかもしれませんけども、環境大気を室内に導入するだけで、室内の指針値を上回ってしまうという解釈が可能になるような数字の関係は、どういうふうに整理しますかという、そういうふうなことです。

【鈴木課長補佐】 物すごく単純なご回答としましては、もとにしている論文が異なるというのが、ご回答になると思うんですけれども、なぜ異なるかというと、評価した時期が違うからというのが、その大きな原因だと思っています。Dormanらの知見につきましては、2008年に得られた知見ですので、それより前に厚労省が、Appelmanの知見を用いて評価をしていますので、それで値が異なっていて、大気のほうが高くなってしまったという、それは結果だと思っています。

 もう一つ、大気の指針値があって、室内の指針値がある物質というのは現在ございませんで、今回、アセトアルデヒドの大気の目標値ができますと、初めてとなります。

【新田委員長】 いいですか。

【鈴木委員】 ちょっとわかりませんが、ここに関しては、部外者、素人的な観点で言ってるつもりですけども、ただ、そういう疑問を持つ人がいるかもしれない気はしますので、説明は、何かしらの説明はされたほうがいいのかなという気はしました。

【新田委員長】 先ほど、ちょっと申し上げたように、Appelmanの実験から出てくるNOAELは、NOAEL自体は、Dormanの実験よりも高い値がNOAELとして出てきておりますが、不確実性係数が大きいために、そういう目標値なりのところが、今回の提案よりは低くなっているということです。ちょっとやっぱり不確実性係数の扱いというところで差が出ているのかなというふうに理解をしております。

 例えば、NOAEL自体は、今回のDorman、しつこいようですけれども、Dormanのほうが低い値のNOAELを示したものに基づいているということになりますので。

【内山委員】 よろしいですか。

【新田委員長】 内山委員、どうぞ。

【内山委員】 このアセトアルデヒドに関しては、いろいろ室内指針値をつくったときから議論があって、WHOの場合は、いわゆるガイドラインに載ってしまったものは、厚生労働省が行った時間補正、曝露の補正をしていなかったものが、そのまま載ってしまっていたということで、その当時は、WHOも随分混乱していた時期だったと、私は思っています。動物実験の週5日あるいは1日のうちの何時間曝露というものを補正したガイドラインというのもありますし、補正しないで、そのまま載せてしまったガイドラインもあって、決して、アセトアルデヒドだけではないんですね。詳しく調べてみますと。少なくとも、ただアセトアルデヒドの場合は、非常に日本の厚労省の場合が、時間補正をして、同じ実験から出発して、NOAELも同じ150ppmを設定したんだけれども、値が随分違ってしまっているということで、疑問を持たれた方がおられたということですが。その当時、厚生労働省が指針値をつくった当時は、もう時間補正をするというのが一般的になっていましたので、これはこれで正しいと思うんですね。

 有害大気汚染物質も、ずっと前からアセトアルデヒドはあったんですけれども、そこのところが、WHOがどうして、野外で……。ごめんなさい、ガイドラインに、違う300を載せてしまったかというので、いろいろ、こちらからも、直接環境省からも問い合わせをされたんですけども、一向に返事がないということがあったり、それから、そのうちに、もう扱いの見直しはしないと。今度は、インドアのエアラインの、インドアエアの指針値をつくる、ように方向はなって、別につくるということになったんですが、そのときも、アセトアルデヒドもつくる物質には、優先順位は、随分低いほうに入ってしまって、もう新たに、また出てこないだろうということで。こちらも大気の指針値をつくらなければいけないなというときに、この新しい実験が出てきまして、この結果が出てきて、それは、前回のが、前のが4週間の曝露ですけども、今回13週曝露、多少の曝露期間も長くなっていて、1,000近いもので、その扱いはいいんじゃないかということで、計算してみたのが、今回のデータということで。

 環境省からあったように、今までは大気の指針値なり、環境基準ができている物質に関しては、室内の指針値をつくるときに、もうそれはつくらないというのが原則でした。大気に基準、環境基準があったり、あるいは指針値があるものに関しては、室内の指針値はつくらないと。これは、大気環境をその指針値以下に抑えていれば、室内は、それよりは低く、あるいは同等あるいは低くなるというのが一般的な考えで、今まではやってきたんですけれども、住宅事情が変わって、非常に高気密、高断熱のものが出てきて、人の住み方だけでは、なかなか大気と同じ状況に幾ら換気をしても、それ以上の発生源が家の中にあると、人の住まい方だけでは、なかなか大気と同じであるよと、それ以下にできないということで、室内指針値ができてきた経緯があるので、外にあるものに関しては、よほど、中に新たな発生源がない限りは、外にあるものは、外の基準以下にしまして、室内も保ってくださいというのが、原則的な考えでした。

 今回の場合は、もう指針値としてあるものに関して、遅れて、今日の環境目標値を計算しましたので、これは、どういうふうにするかと考えて、少し議論がいるかもしれないと思います。

 ですから、例えば、非常に屋内の発生源が多くて、普通に住んでいる場合には、大気を保てないというのであれば、また室内で、それなりの指針値をつくる可能性はありますし、それから、もっと室内でできるんだったら、それにしましょうという考え方もあると思うので。今までの大気環境基準あるいは環境指針値があった場合と、ちょっと違う考え方が必要になると思います。

 ただ、そうだからといって、今ある指針値に合わせる必要はないので、新たな実験結果を用いて、今の現状の知見で計算すれば、今の考え方によって評価をすれば、この値になるということが正しいと思います。

【新田委員長】 ありがとうございます。

 過去の経緯も含めて、室内と、こういう環境の目標値との経緯を内山委員にご説明をいただきました。

 そのほかの点で、何かご意見、ご質問があれば、お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(な し)

【新田委員長】 それでは、先ほど来、塩化メチルのところで申し上げたことと同じですけれども、アセトアルデヒドのこの健康リスク評価の案につきましても、次回も、引き続き検討を進めたいというふうに思いますので、委員におかれましては、内容等、もう少し細かいところも含めて精査いただき、また次回もご意見をいただければと思っております。

 議題の本日、3につきましては、ここまでにさせていただきますが、よろしいでしょうか。もし持ち越しのところがありましたら、次回議論をさせていただきたいと思いますので、全体を通じてご指摘があった点、資料の1のリスク評価書について、修正が必要なところは、次回の専門委員会でご説明いただければというふうに思います。

 最後に、その他、事務局から何かございますでしょうか。

【鈴木課長補佐】 今、新田委員長からおっしゃっていただいたように、ご覧いただきまして、またご意見を賜ればと思っています。

 ご意見をいただくタイミングにつきましては、またご連絡をさせていただきたいと思いますけれども、例えば、次回の専門委員会の1週間ぐらい前までに何らかの形でいただけますと、大変助かります。またご連絡をさせていただきます。

 本日の資料は、これでホームページに掲載する予定ですが、もし誤植とか、何か直したほうがいいものとかがありましたら、1週間とか、短時間でいただけますと助かりますので、あわせてよろしくお願いいたします。

 冒頭、ご説明させていただきましたが、次回の専門委員会は来月12月11日水曜日の10時から12時を予定しています。場所は、改めて事務局からご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【新田委員長】 本日、予定された議題は終了となりますけれども、全体を通じて、何かご意見、ご質問ございますでしょうか。その他ないようでしたら、進行を事務局にお返しいたします。

【鈴木課長補佐】 本日は、長時間にわたりご審議いただき、ありがとうございました。

 本日の議事録でございますけれども、各委員にご確認いただいた上で公開をいたしますので、後日、議事録案のご確認をお願いさせていただきます。ご協力をお願いいたします。

 本日は、本当にありがとうございました。