中央環境審議会地球環境部会第4回国際環境協力専門委員会議事録

開催日時

 平成17年3月11日(金)14:01~17:05

開催場所

合同庁舎5号館 共用第7会議室

出席委員

(委員長) 浅野 直人
(委員) 青山 俊介  園田 信雄
石田 耕三  高橋 一生
加藤 久和  中村 正久
黒川 祐次  長谷川雅世
小林 悦夫  廣野 良吉
山瀬 一裕
 
 

議題

1. 今後の国際環境協力の取組みの方向について
2. 専門委員会報告骨子(案)の検討
3. 関係団体からのヒアリング
  (1) 独立行政法人国際協力機構:地球環境部長 山口公章氏
  (2) 国際協力銀行:環境審査室長 藤沼敏雄氏
  (3) 特定非営利活動法人「環境・持続社会」研究センター:事務局長 足立治郎氏
    持続可能な開発と援助プログラムコーディネーター 田辺有輝氏
  (4) 財団法人オイスカ:事務局長 廣瀬道男氏
4. その他

配付資料

資料1 今後の国際環境協力の取組みの方向(案)
資料2 専門委員会報告骨子(案)
資料3  関係団体ヒアリング資料:国際協力機構
資料4 関係団体ヒアリング資料:国際協力銀行
資料5  関係団体ヒアリング資料:「環境・持続社会」研究センター
資料6 関係団体ヒアリング資料:オイスカ 

議事録

午後2時01分開会

○浅野委員長 専門委員会の第4回の会合をこれから開催いたします。
 本日は、13名中12名の委員のご出席が予定されております。和気委員は、本日はご欠席ということでございます。
 本日の議事でございますが、今後の国際環境協力の取組みの方向についてと、専門委員会報告骨子(案)の検討となっておりまして、第1の議題は、前回までの議論で積み残しになっております、国際環境協力の実施体制の強化について最初にご議論いただき、それから専門委員会の報告の骨子(案)を事務局からご紹介いただくことにしております。
 しかしながら、本日は関係団体からのヒアリングを予定しておりまして、既にご出席をいただいておりますので、できればそちらに多くの時間を割きたいと思っております。
 本日は2時から5時の予定でございますが、ヒアリングについて、場合によっては時間が延びることもあるかもしれません。つきましては、最初にお願いでございますがヒアリングについて、ご発言の順番が後になっている方で、どうしても5時にはご退席の必要がおありの方がいらっしゃいましたら、お申し出いただきたいと存じます。順序を入れかえることも考えてみたいと思います。質疑が盛り上がれば若干時間が延びるかもしれませんので、その点をあらかじめお許しいただければと存じます。
 それでは、本日ご出席をいただいた関係団体の皆様方のご紹介を、事務局からお願いいたします。

○関谷環境協力室室長補佐 ご紹介させていただきます。
 まず、独立行政法人国際協力機構、地球環境部長の山口様です。
 国際協力銀行、監査審査室長の藤沼様にもおいでいただくことになっておりますが、まだお見えになっておりません。
 続きまして、特定非営利活動法人「環境・持続社会」研究センター、JACSESの事務局長、足立様です。
 同じくJACSESの、持続可能な開発と援助プログラムコーディネーターの田辺様です。
 続きまして、財団法人オイスカ事務局長の廣瀬様です。
 以上4団体から今日はお話を伺うことにしております。

○浅野委員長 続いて、資料の確認をお願いいたします。

○関谷環境協力室室長補佐 議事次第の裏に資料一覧がございますので、これにて確認させていただきます。
 資料1でございますが、「今後の国際環境協力の取組みの方向(案)」でございます。資料2が「専門委員会報告骨子(案)」でございます。資料3でございますが、国際協力機構の説明資料でございます。これにつきましては資料とパンフレットがございます。資料4でございますが、国際協力銀行の説明資料とパンフレットでございます。資料5が、JACSESの説明資料とパンフレットでございます。資料6は、オイスカの説明資料となっております。
 それから、委員の皆様のお手元には、前回の議事録、既にご確認いただいておりますけれども、改めて配らせていただいております。これにつきましては、近日中に環境省のホームページで公開させていただく予定となっております。
 以上です。何か不足のものなどございましたら、お申し出ください。

○浅野委員長 よろしいでしょうか。
 それでは、ただいまから議事に入ります。
 前回に引き続きまして、今後の国際環境協力の取組みの方向ということでございますが、本日は、前回議論を積み残しておりました「4.国際環境協力の実施体制の強化」についてご議論をいただきます。
 資料1に基づいて事務局から説明をお願いいたします。なお、前回もお断りいたしましたが、資料については、まだ、これまでの議論の結果が必ずしも反映された文章になっておりません。部分的には修正をした部分もございますが、まだこれは最終的なものではございませんので、その点はご了承いただきたいと思います。

○関谷環境協力室室長補佐 今、ご説明がございましたとおり、資料1の前回積み残しの部分について、ご説明申し上げます。資料14ページからの国際環境協力の実施体制の強化という部分であります。この部分は、幾つかの切り口でセクションを分けております。
 最初に「新たな国際環境協力のための国内基盤の強化」という題で、情報基盤であるとか人的な基盤、あるいは資金の問題を扱っております。
 まず(1)環境協力に有効な情報基盤の整備につきましては、今後、活動に従事する主体にとって役立つ情報をタイムリーに整備していく、あるいは入手しやすい形で整備、提供していくということで、特に、さまざまな活動のベースとなります環境に関する基礎情報、統計といったもの、あるいは法制度などの政策情報を整理していく。この場合、途上国のものだけではなくて、当然ながら先進国のもの、場合によっては国際機関のものも含まれると思います。また、これは改めて一からデータベースをつくるというよりは、むしろ既存のデータベースの補完をする、あるいはそれぞれの間のネットワークを構築する、そういったことをポイントに置いております。情報発信につきましては、我が国の情報の海外に向けての発信がまだまだ弱いのではないかということで、英語あるいは現地の言葉での発信も必要かと思います。また、国民全般に対しましての情報提供も、協力に対する支持、あるいは参加の裾野を広げるという意味で重要かと思います。さらには、国レベルの情報だけではなくて、地方公共団体あるいはNGO/NPO、企業あるいは大学の有する情報につきまして、利用しやすい形で提供することを考える必要があると思います。
 (2)が、人的基盤の強化でございます。ここにつきましては、人材というものを大きく2つに分けております。1つは、ア.アジア太平洋地域での政策対話や計画づくりのための人材の育成と活用ということで、政策対話やさまざまな実施計画といったものをつくるための人材を育成していく必要があるということでございます。具体的には、例えば若者に焦点を当てて、青年海外協力隊などを含めて、どういったキャリアで活動に携わっていくのかといったパスを確立するであるとか、インターンシップの活用などもありますし、あるいはアソシエート・エキスパートなどの制度を活用したやり方も、さらに検討の余地があるのではないかということでございます。15ページにまいりますと、「人材育成プログラムの作成・実施」とありますけれども、この部分は、こういった人材を育成するために、既にさまざまな研修制度などもございますけれども、これをもう少し、いろいろな機関が協力してネットワーク化してやっていく必要があるのではないか、例えば、在日の国際機関をうまくネットワーク化して、そこでの研修をうまく使っていくことができないかといったことを書いてございます。次に、イ.開発途上国での環境管理プロジェクトに従事する人材の育成です。これは政策づくりの人材に対しまして、実際のプロジェクト、事業に従事する人材の育成ということを書いてございます。これにつきましては、そういった人材の育成のために、国際会議や開発途上国での調査の際に人材を派遣するような仕組み、あるいはNPOやNGOの方、企業の方が行政の体験をできるようなことができないか、さらには、以前の議論で、いわゆるプロフェッショナルでなく、ボランティアの方も含めた人材育成が必要ではないかというご意見もございましたので、そういった裾野の広い人材育成の一環として、環境教育をさらに強化する必要があるのではないかといったことでございます。続いて、ウ.研究者の育成でございます。研究者につきましても、開発途上国の環境管理、あるいはもっと幅広い国際環境協力全般を対象とする研究者を育成していくということで、講座の拡充、あるいは実際に課程を終わられた方の活躍場所の確保といったことを考える必要があるのではないかということでございます。16ページにまいりますと、やはり育成された人材を活用する仕組みの充実が必要ではないか。具体的には、既に環境協力に携わる専門家のデータベースもありますけれども、こういったものをより充実していくとか、実際に協力に携わっていただく方のインセンティブ、あるいはそういった社員、職員の属する企業から見てもインセンティブになるような仕組み、例えば表彰の制度、あるいは広報の強化といったことになるかと思いますけれども、そういったものが必要ではないか。さらに、退職した人材もうまく活用していく必要があるということでございます。
 (3)は、資金の問題でございます。ここにつきましては、まずは国の資金といったことで、ODAを初めとする関連予算の拡充、それからさまざまな資金、基金の戦略的な投入といったことが必要ではないか。2つ目が、NGO/NPO、企業が実施する活動に、国際機関の有する資金、特に我が国が相当程度拠出しているような国際機関の資金、例えばGEFなどが当たるかと思いますけれども、こういった資金を活用できるように政府としても支援をしていくといったことが考えられるのではないか。それから、前回の委員会でもご指摘がございましたが、例えば世銀のカーボンファンドのような仕組みに企業が出資してメリットがあるような支援、例えばカーボンファンドのマネジメントに人を出すような仕組み等が考えられると思いますけれども、そういったことをやっていく必要があるということでございます。「多様な主体による環境協力を支援する資金の強化」では、基金への寄附をさらに働きかける、あるいは税制上の優遇措置の拡大、新たなイニシアティブとして基金の設立の検討などが考えられるかと思います。以上が国内基盤の強化ということでございます。
 17ページが、2つ目の切り口でございますけれども、新たな国際環境協力を進めるための体制強化ということでございます。
 (1)国際機関への人材の戦略的な派遣であります。現在のところ、やはり国際機関への日本人の派遣そのものが、まだまだ数も含めて十分でない、あるいは特に幹部の派遣といったものが十分でないといった状況を踏まえまして、重要な国際機関への人材派遣をしていく必要があるのではないか。例えばUNEP、UNDP、世界銀行、あるいはアジア開発銀行といったところが考えられるかと思います。また、そういった邦人職員の採用を働きかけていくといったことも必要ではないかと思います。それから、実際に働いておられる邦人職員の方への支援といったものも、実際は重要な側面になってくるということでございます。
 (2)政府・関係機関の連携及び体制の強化でございます。さまざまなレベルの連携が考えられますけれども、最初に申し上げますのは、政府レベルの関係機関の連携でございます。1つ目でございますが、環境に関します特定のテーマごとに、関係する省庁、それからJICA、JBICといったODA実施機関の間の連携・調整機関を設置して、協力関係を密接にする。これは個別の案件レベルはもとより、もうちょっと戦略的な、例えば国別の検討をしていく場合なども考えられるかと思います。2つ目でございますが、特に有償、無償あるいは技術協力といったODAのスキームがございますけれども、そういった分野における定期的な意見交換によって環境ODAの案件形成における連携といったものも、現状では、技術協力についてはある程度なされておりますけれども、さらに推進していく必要があるのではないかということでございます。3つ目は、実際にそういったODAが供与される現地における連携強化ということで、既に現時点で、ODA全般に関しましては現地のタスクフォースといったものが関係機関から構成されていると承知していますけれども、環境分野に特化した仕組みも今後は考えられるのではないかということでございます。18ページにまいりまして、環境省の中の体制強化といった問題もございます。現時点では、途上国向けの二国間協力と多国間協力といったものを統括する体制には必ずしもなっていないなどの現状がございますので、そういった体制の強化など、あるいは現場経験を積んだ職員の配置といったことをやっていく必要があるのではないかと考えております。環境省と、その関係機関の連携強化につきましては、環境省と関係ある機関として、ここでは国立環境研究所、あるいはIGES、地球環境センター、OECC、自然環境研究センター等が挙がっておりますけれども、こういった組織との連携の強化が考えられると思います。それから、政府レベル以外も含めまして、地方公共団体、NGO/NPO、企業との対話の場の設置によりまして、相互の連携支援というものも必要かと思われます。
 (3)は、やや違った切り口でございますけれども、我が国がいろいろ実施しておりますさまざまな研修におきまして、必ずしもその研修が、その後、効果を発揮していないのではないかという評価を踏まえまして、研修員を実際に選ぶ際のスクリーニングを強化し、適切な研修員を選定することに我が国も関与し、また、研修後のフォローアップということで、例えば研修を受けた方が自国に帰られてから、さらに研修の講師になっていただくようなことも含めて考えていく必要があるのではないか。19ページにまいりますけれども、今後はさらに、我が国の人材の活用に加えまして、相手国の人材の活用といったことも我が国の環境協力活動のサポートのためには必要なのではないかということでございます。
 (4)地方公共団体・企業・NGO/NPOの協力体制の強化でございます。まず、地方公共団体につきましては、さまざまな助成制度の情報提供などを通じた支援、それから、先ほども出てまいりましたけれども、ODAの実施機関など関係機関とのラウンドテーブルを設置しまして、地方公共団体間の連携、あるいはそれぞれの主体の役割分担などを検討する場としてはどうかということでございます。それから、NGO/NPOの活動の強化につきましては、現地での活動が期待されるNGO向けには助成制度、情報の提供、技術的なサポートのための専門家の派遣といったこと、政策提言を行うことが期待されるNGOにつきましては政府機関からの調査の委託、あるいは国際交渉の経緯などに関する情報提供、スタッフ派遣に対する助成、あるいは研修といったことも考えられるのではないかと思います。また、NGO/NPOの資金づくりについても検討することが必要であろう。それから、NGO/NPOにおきます能力開発、例えばプロジェクト管理、あるいは会計処理といった部分でも能力向上のための取組みができるのではないか。最後になりますが、企業につきましては、例えば、日系企業と途上国の政府や地元企業の間での連携・協力関係の構築といったことを進めていく、あるいはCSRを担当する組織を持つように奨励するといったことが考えられるのではないかと考えております。
 以上でございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 この部分は、既にお配りしております廣野委員会ペーパーを下敷きにしたものが、ほぼそのまま出ているという印象でございます。あまり知恵を出して加筆しているという印象はないのですが。
 まず、この部分について高橋委員に総括的にご感想をお聞かせいただいた後、やや手薄と思われる部分について、企業から来ていらっしゃる3名の委員の方にご発言をいただく。それから、自治体ということで小林委員にご発言をいただいて、その後、なお時間に余裕がありましたら他の委員にもご発言をお願いしたいと思います。黒川委員にも、もちろん後でお願いしようと思います。NGO関係については、今日は後でコメントをいただく団体の方々がいらっしゃいますので、お気づきのことがありましたら、ぜひ後のご発表のときにこの点についてもお願いしたいと思います。

○高橋委員 できるだけ手短にコメント申し上げたいと思います。
 全体の枠組みはこれでいいのではないかと思いますので、その中で幾つか具体的なこと、これからこれを書き込んでいくときに材料として必要だろうと思いますので、それを申し上げたいと思います。
 1つは、15ページの上半分、「人材育成プログラムの作成・実施」でございますが、私は、国連大学の使い勝手がもっとあっていいのではないかという気がしますので、その点に関して一言二言申し上げます。私は週に一度ほど学長の補佐をやっている関係でたまたま知っているわけですが、去年の10月から東京近辺の10大学院の共同講座を始めまして、今、2本走らせております。1つは国連に関すること、もう1つは紛争に関すること。この先あと2つ、来年、再来年とつくっていくことになっておりますが、その1つが環境分野です。その環境分野の大学院の共同講座、これなどは、やはり非常に大事な一つの核になっていくのではないかと思われます。これから始めるところですので、関係の方々がいろいろご参加されるといいのではないかと思います。もう一つ、この10大学院は主にマスターコース用ですが、その上に、マスターが終わった人、あるいはPhD終わった人、あるいは国連機関などに勤めて二、三年仕事をした人を対象に、インターナショナル・コースという特訓の期間がありまして、これが5本、6本走っております。その1つが環境分野ですが、日本の参加者がかなりお粗末ですので、日本の参加者をもっと強化するという視点から、もう少しこれを活用した方がいいのではないかと思います。
 それから、そのページの一番下、ウ.研究者の育成の中に、大学院修了生の活躍場所の確保、斡旋とございます。これは極めて大事なことは言うまでもないわけですが、そのためには視野を日本だけに置かず、世界中いろいろと視野を広げてこの問題を位置づけると、いろいろな可能性があると思いますので、視野を広げてこの問題を扱うといいのではないかと思います。
 それから、16ページの一番上、エ.人材活用のしくみの整備とあります。前のページからのつながりのような面があると思いますが、数年前、私は環境分野・開発分野でこの問題に関していろいろな工夫をしたことがございますが、それをやはり考える必要があるのではないかと思います。どういうことかといいますと、若い人たちを受け入れるコンポーネンツというのは、既存のシステムの中に結構あるものです。そのコンポーネンツを政府、研究機関、国際機関、援助機関、研究所、大学、そういうものを結びつけて、それにできたら企業も参加してもらって、できるだけいろいろな側面の作業に若いうちに、例えば10年くらいの間に当たれるような仕組みをつくる、これが必要なのではないかと思います。人材育成では、25歳から35歳がブラックボックスと言われております。25歳から35歳というのは何かといいますと、修士課程を終わってから10年間ぐらいという意味ですが、その間にどういうトレーニングの機会、自分で努力し、周りが環境設定をすることができるかによって、その個々人あるいはその国の、その後の人材育成の比較優位が非常にはっきりしてくるわけです。それが環境分野でもあり得るのではないかと思います。この人材育成のブラックボックスを埋める仕組みという意味合いで、これを何とかする必要があるのではないかと思います。

○浅野委員長 国連大学のことは私も気づいておりまして、中環審の会長も元副学長ですし、安井至先生も副学長でいらっしゃいますから、1度お呼びしてもいいのではないかともと思っておるくらいであります。
 それでは、企業関係の3人の委員、ご意見ございましたら順次お願いしたいと思います。

○石田委員 資格制度というのをぜひ人材活用の中で取り上げていただければと思います。ここにそれなりの表現はされていると思いますが、こういう国際協力の中での人材のインセンティブ、それから帰国したときのポジションといった意味も含めて、それが一つのキャリアになるような制度が導入されると、もう少しオーナーシップを持って海外に出ていく人材もふえていくのではないかと思います。
 それから、寄附や資金の問題がありますが、企業側から考えたときに、やはり我々としてもそういうものに積極的に協力していく中で、ぜひ直接減税を導入していただきたい。これは非常に大きな話なので、ここで持ち出す話ではないと思いますけれども、日本はそういう制度が非常におくれている。もっともっと、こういうボランティアに対する国の前向きな考え方を税制にも反映していただくと、国が使うよりももっと有効に使える企業がたくさんあると私は信じております。
 もう一つは後ろの方ですが、これは企業がやるかどうかはともかくとして、このCSRというのは、どちらかというと現地の企業のCSRという意味で書かれたと思いますが、できればODAの現地でのオーディット・ファンクション(audit function)とか、そういうものをもう少し現地で経験のある企業の人材を活用してやるということで、国から見たオーディットと現地のオーディットがリンクして、国民に対しても非常に透明性のある実行ができる体制をつくるといいのではないかと思います。

○長谷川委員 16ページの一番下のコラム、「多様な主体による環境協力を支援する資金の強化」の3つ目ですけれども、多くの主体が参画した国際環境協力のための基金の設立を検討すること。この基金の設立を検討されることは、何も反対するものではないですし、結構なことと思いますが、そこに具体例として「政府のイニシアティブにより、経常利益の1%クラブを拡大し」と一般的に書いてありますが、何となく経団連の1%クラブを彷彿とさせるものです。もしそのことを念頭に置かれているのであれば、これは産業界の自主的な取組みであって政府のイニシアティブによって何か基金を集めていただく趣旨のものではないので、ここは、そのような誤解を生まないような書きぶりにしていただけると大変ありがたいと思います。
 また、ラウンドテーブルなど対話の場が大切ということは賛成でございまして、これまでいろいろなセクターのステークホルダーの人たちが集まる、ステークホルダー・ダイアログの場が日本には余りございませんでした。トヨタが独自の試みとしてステークホルダー・ダイアログを実施しておりますが、政府、学術界、NGO、産業界の方々に参加いただいて、大変いい経験をしたと言っていただいております。ぜひとも、ご提案のラウンドテーブルなど対話の場を、実際に活用できるように進めていただければと思います。

○園田委員 20ページの「企業における環境協力推進体制の強化」の中で、企業の中で、現地で何かうまく協力ができるとか、現地とのやりとりをスムーズにやっていただける部分というのが、これから必要になってくると思います。企業がこういうところで協力をするというよりも、企業活動そのもので、ある程度先進性でその地区にかかわっていくことが必要になってくると思います。これは多分、各企業の競争の源泉でもありますし、逆に言えば、それがネックにならないような進め方、何かそういう工夫ができるのであれば、より良いのではないかということだけを今日は申し上げておきます。

○浅野委員長 ニュアンスはよくわかりました。そのあたりは事務局で、長谷川委員のご指摘の点とあわせてよく検討してください。ちょっと工夫をしないと、何となく官主導で動かすというような報告書にしたのでは、この委員会の意味がありません。

○小林委員 地方自治体に関する部分が11ページと19ページに入っておりまして、少し強化していただいた点はありがたいと思っております。ただ、これを見ていて感じるのは、地方公共団体が国際協力をしているインセンティブというのは何かと考えたときに、実は、必然的インセンティブというのは今ないですね。いわゆる首長さんと言われる方のパフォーマンスの中でしかやられていない。趣味の部分であるということです。そういう意味で、地方自治体が国際協力をするためのインセンティブをもう少し与える方法、これは金銭的な問題だけではなくて、何かほしいなという感じがします。検討会報告書の25ページ「地方公共団体における環境協力の実施体制」のところに課題がずっと書いてありますが、この課題の中にその本音がきちっと書いてあるので、これの裏返しになるような答えがこちらにあったらいいなというのが基本的な部分です。例えば、国際協力は地方公共団体の義務的な事務ではないと書いてありますし、内部に専門的な組織を整備するには予算とか人等が非常に難しい状況にあるというようなことが書いてありますし、また、最後のところには、地方公共団体が積極的に国際環境協力を進めたいと考えるほど魅力的ではないと書いてございます。これを裏返すようなものを何か入れていただければなというのが希望でございます。
 それから、文書だけの問題ですが、19ページの(4)は「地方公共団体・企業・NGO/NPOの協力体制の強化」となっているんですが、書いてある内容は「支援」なんですよね。ですから、できたらここは「地方公共団体・企業・NGO/NPOの活動強化への支援」の方が、表題としては正しいのかなと思います。

○浅野委員長 さて、時間が限られてはおりますが、黒川委員、ぜひコメントをお願いいたします。

○黒川委員 17ページの(1)国際機関への人材の戦略的な派遣に関してなんですが、ここに「幹部職員にふさわしい人材」云々とありまして、これを読むと、一般的に若い人、中堅の人を国際機関に送ったり、大使館に送ったりして慣れさせるというような感じだと思いますが、むしろそれを一歩進めて、世界の環境問題を日本がリードする、そのためには10年、20年の長期的な観点で人材を育てる、世界の環境問題をリードするような人を育てることを考える時に来たのではないかと思います。20世紀は、日本は環境に限らずお金で勝負をしてきた。これからは、お金ももちろんですが知恵でも勝負すべきだと思います。ですから、一般的に人材を育てるということだけでなくて、個別の人を育てることも考えていったらいかがでしょうか。端的に言うならば、環境面での緒方貞子さんを育てる、こういうことだと思いますけれども、ある有望な人がいたら、それは環境省でも外務省でも学会でもNGOでもいいのですが、その人に目をつけて、役所に置いたり国際機関に置いたり、大学に置いたり、アメリカで言う回転ドア方式でいろいろな所を回らせて、いろいろステップアップさせていく。そういう人を何人か育てていくということをひとつやられてはどうかと思います。そういうことで、15ページの最後にありますウ.研究者の育成でも、先ほど高橋委員からのお話もありましたように、若い学者をぜひ国際機関に入れて、また戻すとか、そういうことをぜひ考えていただいたらいいかと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 青山委員、どうぞ。

○青山委員 少しまた民間寄りの話になりますけれども、最近、私がお付き合いしている素材産業が中国を初めとしてかなり海外に進出している。また、自ら進出するのではなくて、技術供与という形でネットワーク化しようということも始まっている。大きく分けて、今、その2つの形で動いていると思います。こうした中で、例えば日本の非鉄金属企業が今取り組んでいる3R的な事業展開は、よほど海外の方が価値ある形で進められると思います。
 今、人材の横軸的な広がりでのコーディネーターといいますか、まとめ役的な人を育てるというのが課題であると思いますが、我々のように職を持って動いていく場合には、横軸とは別に縦軸的な人が出てこないと、実際にはうまく動かないだろうと思います。それが不足していると思いますけれども、やっと最近、縦軸も入り始めた。
 今まで我々のようなコンサルタントが出ていくような場面が多かったのですが、民間企業自体が種々の環境に関係するところに出ていっているということがあるので、ぜひその辺をうまく組み込んでいただきたいと思いました。

○浅野委員長 あと現場の声で加藤委員─と言いたいところですが、時間がありませんので、加藤委員には個別にヒアリングをして最終の報告書に反映させることにいたします。
 それでは、大変申しわけございません。まだ議題についてもご意見があろうかと思いますが、あとのヒアリングの都合もございますので、事務局に専門委員会の最終の報告がどういう形になるのか、アウトプットの姿、形を委員のみなさまにご説明いただきたいと思います。

○関谷環境協力室室長補佐 資料2をごらんください。本専門委員会の報告骨子(案)をお示ししております。
 これまでご議論いただきました結果を少し盛り込みつつ、今回お示ししたのは極めて粗い骨組みということで、実際の中身につきましては、次々回の専門委員会で、実際の報告書(案)という形でお目にかけたいと思っております。
 骨子としましては、一番大きな構造としまして、最初に「はじめに」ということで、この国際協力のあり方を、前回審議会から答申をいただいた以降の状況の変化を幾つかの切り口で概略まとめることを考えております。環境面の取組みの進展もありますし、経済のグローバル化を初めとする世界的な潮流、あるいは問題の所在といったものもありますし、それに対応する国際社会の対応、MDGの設定等があるかと思います。それに加えまして、アジア太平洋地域、特に東アジアにおきます経済の成長、あるいはそれに伴う環境の問題といったことについても、この部分でまとめたいと思っております。
 次の固まりが、1.国際環境協力の理念及び基本方針でございます。これも前々回ですか、ご議論いただきまして、そのときにお示ししたものとおおむね設定は変わってはおりませんけれども、いただきましたご意見を踏まえまして、例えば、理念として掲げております「地球環境の保全と持続可能な開発のためのパートナーシップの構築」、あるいは目標のところに掲げております「地球環境の保全と持続可能な開発を考えた環境管理の仕組みの改善:特に東アジアを中心として」のところに説明を加えていきたいと思っております。特に目標の部分につきましては、タイムスケールをどうするべきかという話もございましたが、今後10年の期間を見通しまして、その期間の終わりに達成しているべきものを目標と考えました。次のページ、「特に東アジアを中心として」とついておりますが、その前に、やはり我が国としては世界的な枠組みづくり、あるいはそれに基づきます具体的な協力において、他の先進国あるいは途上国とも協力しながらリーダーシップを発揮するべきだというところを打ち出した上で、重点化する地域としてはアジア太平洋地域、特に東アジアであるということを十分な理由を付して説明したいと思っております。
 (3)基本方針でございます。ここにつきましては、ご議論いただきました際には、今日のペーパーでいきますと(イ)から(オ)までをお示ししましたけれども、それに加えまして、(ア)世界的な枠組みづくりへの積極的な関与といったことを掲げております。重点的な分野ということでございまして、ここのところは、CSDを初めとする国際的な議論を踏まえた重点分野を考慮すべきということでございましたが、前回のご議論で、我が国として比較優位を有する得意分野といった切り口も重要というご意見がございましたので、その観点も含めたいと考えております。
 3ページにまいりまして、配慮事項でございます。ここは成果の重視と効率性でございますけれども、長期間を要するような人材育成についての留意といったものも含めて書きかえてございます。
 次の固まりは、2.国際環境協力の現状と課題でございます。これにつきましては、4ページの3.今後の国際環境協力の取組みの方向の切り口と、基本的には相対するような形で書きたいと思っております。すなわち、最初に枠組みづくりの問題に触れた上で、実際の環境管理の取組みについて記述したいと思っております。その上で、多様な主体による取組みの現状、それから体制の問題というふうに触れていきたいと思っております。
 4ページにまいりまして、今後の取組みの方向につきましては、前回、それから今日ご議論いただきました部分でございます。前回のご議論で、(2)地域における環境協力の枠組みづくりに向けた我が国のイニシアティブというところにつきまして、階層性といいますか、ストーリーといいますか、そういった取組みの流れが見えるように少し構造を修正しております。現在は、この紙にお示ししたように、(ア)から(エ)までの4つの固まりにまとめていきたいと考えております。5ページでございますが、(3)我が国の多様な主体による環境協力の推進。今日はタイトルだけお示ししておりますけれども、前回のご議論を踏まえまして、ここは必ずしも途上国向けの協力のみならず、グローバルな意味での活動の推進といったものも含めて記述したいと考えております。最後、実施体制の強化につきましては、今日のご議論を踏まえまして、今後の取組みにつきまして記述したいと考えております。

○浅野委員長 これもまた、おおむね廣野委員会ペーパーの目次に沿ったものになっておりますが、今、お聞きいただいておわかりのとおり、これまでの当委員会でのご議論を反映して、少し順序を入れ換えるとか、あるいは課題の階層性をはっきりさせるといった工夫が行われております。こういう目次に従って、これまでいただきましたご意見並びに廣野委員会報告をもとに、最終報告の内容を、これから事務局がご準備くださるということでございます。
 本日は、この骨子案の個々の内容については今後さらに素案が出てまいりますので、大きな枠組みとして、このような枠組みで今後、事務局が作業を進めてよろしいかどうかという点をお尋ねするという意味で、この議題を上げております。
 何か特にお気づきの点、ありますでしょうか。

○廣野委員 報告書としてこういう形で書くことについて私はもちろん賛成ですが、ただ、この報告書が出る時期が6月、ちょうどG8が行われる前ですね。せっかくG8がありますので、この報告書の最後のところに「緊急な課題」とか何かそういう形で、G8にアピールするような、例えば世界的枠組みづくりはまさにG8で議論するわけですから、そういうのも入れていただく。
 同時に、我が国の総理は、少なくともG8にはアジアを代表して出るわけですので、やはりアジアにおける日本のリーダーシップをうたえるような、そういうものを「緊急課題」ということでこの報告書の最後のところにつけ加えることが、私は非常に戦略的な報告書の書き方だと思います。

○浅野委員長 その点は十分に局内で検討していただきたいと思います。
 ほかにございませんでしょうか。

○加藤委員 相互に比較していないのですが、大変ご配慮いただいて、ストーリー性というか、一番強調している戦略性が見えるような構造、構成にしていただいたこと、大変ありがたいことで、恐らくは内容を埋めていくに従って非常に読みやすく、ストーリー性のあるものになる予感がいたします。
 ちょっと個別の問題ですが、目標設定で、10年間で達成できるようなものを目標にすること自体はいいと思いますが、10年間でストップするわけではありませんので、その辺は若干幅を持たせて、一応10年間を目途にしてこのような目標を設定するけれども、随時中途段階、あるいは10年を過ぎたあたりでもまた再評価をするというようなことが、どこかに盛り込まれるといいのではないかと思います。
 もう一つは、特にアジア太平洋地域における環境協力の推進を、これまた戦略的に重視するということですと、実はこれも我が国が実施をして始まりました「アジア太平洋環境開発フォーラム」(APFED)がありますが、それが報告書の作成段階に入っていますので、私も精査するつもりでおりますが、それとの整合性にも配慮する。ある程度までこれを反映できるような内容にする必要があるのかなと考えております。これは今後の作業になると思います。

○浅野委員長 ご注意どうもありがとうございました。
 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 これは人によって随分見方があり得ると思いますが、1ページの(2)目標で「特に東アジアを中心として」というのが、私はどうも引っかかりまして、中心ではなかろうと思います。とりあえず、一応そこは何とかしなければいけないけれどもという程度で、やはり我々がやっている問題は、基本的には地球全体のもののはずです。日本では、いつもせいぜいアジアぐらいの話になりますが、ここは非常に引っかかります。あくまでも地球全体のことである。その中で、東アジアでこのダイナミズムがもたらす問題等々やらなくてはならないということだったら、もう少し表現が違っていいのではないかという気がします。

○浅野委員長 わかりました。ここはたびたびご注意をいただいている点で、「中心」とは書いていなくて「重点化」と書いていますが、なお検討させます。
 それでは、骨組みというか、柱立てについては特段ご異論がないようでございますので、以後はこの骨子に沿って、具体的な内容について事務局に準備をさせることにいたします。
 それでは、今日は休憩なしで3時間ぶっ続けということで、大変恐縮でございますけれども、せっかくお越しいただいたゲストの方々と十分に話し合いをしたいと思います。
 それでは、これから4つのグループの代表の方からご意見を伺いたいと思います。
 お願い申し上げておりますように、最初に10分程度ご説明をいただいて、その後20分程度、各委員からの質疑に応じていただくということで進めてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最初に独立行政法人国際協力機構の山口様でございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○山口(国際協力機構) 浅野委員長、環境省の皆様、本日は私どもJICA─国際協力機構が行っております事業についてご説明をさせていただく機会を設けていただくとともに、ご意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 早速ですけれども、お手元に用意いたしました資料に基づきまして、御説明させていただきたいと思います。
 紙には書いてございませんが、皆様方ご存じのとおり、一昨年─平成15年10月1日にJICAは「国際協力事業団」から「国際協力機構」と名が変わっております。そのときに緒方貞子理事長がお出でになりまして、緒方理事長のもと、3つの視点ということでJICA改革を示しております。お手元に配付しましたパンフレットにも「JICAが大切にしている「3つの視点」」と書いてございますが、現場主義、人間の安全保障の視点、効果・効率性と迅速性にポイントを置いてJICAの業務を進めていこうということを示しております。
 それに続きまして昨年─平成16年4月1日より、従来、事業形態別になっておりました組織形態から国別、課題別に対応しようということで、組織を変えました。社会開発協力部、人間開発協力部、地球環境部、農村開発部、経済開発部という5つの部で、従来やっておりました開発調査あるいはプロジェクト方式技術協力といいますか、技術協力プロジェクト事業を担当するというふうに変わっております。そして、今、申し上げました地球環境部の部長を私がしております。
 資料に入らせていただきますが、JICAが環境協力という面から、どういう取組みの方針、あるいは実施体制をとっているのかにつきまして、そこに書かせていただいております。 2004年4月に「JICA環境方針」を定めまして、基本方針として4つのポイントを掲げました。1点目は、国際協力事業を通じた環境対策の推進。2点目が、環境啓発活動の推進、3点目が、JICA自身のオフィスあるいは施設の環境改善です。これに続きまして、昨年11月にISO14001を取得しております。
 実施体制ですけれども、従来3つの事業部で実施しておりました環境分野の事業を一元的に扱うということで、地球環境部を新しくつくりました。それから、環境社会配慮審査室を新しく企画調査部に設置しております。このように実施体制を整えております。
 地球環境部で担当しております、課題としての環境とはどういうものかということにつきましては、2ページをごらんいただきたいと思います。大分類として公害対策、居住環境、自然環境保全、中分類として大気汚染対策とか水質汚染対策、複合汚染等を説明しておりますが、ここで従来の森林資源環境ということ、それから公害対策、それから水資源あるいは防災というところを担当するようにいたしております。
 それから、環境保全に関する取組みの実施状況の1つ目として、JICAはどのように人材育成をしているのか、1つの図と1つの表をご用意いたしました。この図表に書いてございますように、この15年間、1989年からの15年間で、金額ベースで言いますと約100億円が250億円に、人数的に言いましても、研修員受入、青年招聘で言いますと89年は314人の実績でございましたが、2003年度におきましては3,707名とふえております。これが人材育成というところでの数値的、あるいは金額的な実績でございます。
 3ページに入らせていただきますが、近年の傾向としてどういうふうに言えるのかということで、2つ申し上げることができるかと思います。1つは、2004年度で上位を占めるのは防災あるいは上水道・飲料水、森林保全・植林、自然環境管理というところでしたが、最近の要請書等を見ますと、大気汚染対策、環境教育、複合汚染。つまり、ソフトの部分といいますか、環境行政とか管理というところへの途上国からのニーズが増えております。これは図2に示しているとおりです。2つ目の傾向としまして、分野的には防災とか水資源ですが、内容的にソフト案件あるいはセクター横断的な案件、あるいは新しい分野、ここに書きましたが地球温暖化対策の案件、あるいは酸性雨対策、生物多様性エコツーリズム、水源林の保全等々への要請が増えてきております。
 もう先生方よくご存じのとおり、タイ、インドネシア、チリ、中国、メキシコ、エジプトの世界6カ国で環境センターを継続的に実施してきております。そこに環境センター・プロジェクトの事例として、日中友好環境保全センターとインドネシア環境管理センターを比較して、どういうことを目的として、どのぐらいの投入額でしているかをお示しいたしました。
 4ページの後段、環境案件についての評価の実施状況でございますが、DACで示されています評価5項目に基づいて、その妥当性、有効性、効率性等々について、各個別案件あるいは中間段階、終了時段階ということで実施しております。それからもう一つ、相手国と一緒になって合同評価をするということで、従来はJICAだけ、あるいは日本の関係者だけが評価調査団として行っていたのを、今はほぼ全面的に、双方で評価調査団を構成して議論して、評価しております。5ページに入る前に、マレーシアの案件、あるいはホンジュラスの案件を挙げておりますが、これは、その評価をフィードバックするといいますか、プログラム的に実施することによって、その成果が非常に上がっていると評価されている具体的な事例でございます。
 もう一つのポイントですが、環境社会配慮の実施状況です。従来は環境配慮ガイドラインということで、環境への配慮はしてまいったのですけれども、昨今、特に社会配慮について、JICAではこのように対応しております。足かけ2年ほどかけまして、環境社会配慮ガイドラインの改訂をいたしまして、そこの提言から、案件を実施するに当たってどういう影響を与えるかということで、カテゴリーを3段階に分けまして、それぞれのカテゴリーに応じた対応をとらなければいけないということで、開発調査のみならず技術協力プロジェクトの方でも実施しております。そして、先ほど申し上げました企画・評価部の中に室を設置しまして、この審査に当たっているところでございます。
 5ページの後半、説明申し上げる3点目は、環境に関する取組みにおけるさまざまな主体との連携についてでございます。環境省をはじめ、関係省庁、あるいは地方自治体、大学、研究所、NGO、市民団体等々と積極的な連携を図って行っております。一つの例としまして、ここに草の根技術協力事業の概要を載せております。今は「草の根技術協力事業」と呼んでおりますが、その前には地域の人たち、あるいはNGOの方々と一緒になって実施するという趣旨で、「開発福祉事業」だとか「開発パートナー事業」として数年前から実施しております。 6ページに概要だけ書いてありますが、地域提案型、地方公共団体あるいは地方公共団体と連携される姉妹都市だとか友好都市といったところを一つのてこにしまして、当該自治体から専門家を派遣していただく、あるいは研修員を受け入れていただくということで、地域提案型の事業を実施しております。2つ目は、草の根協力支援型ということで、経験の少ないNGOの方々、あるいは大学、公益法人と3年以内、総額1,000万円以内の案件について一緒にやっていくというようなスキームを考えております。3つ目は草の根パートナー型ということで、もうちょっと規模的にも大きな事業─ここには5,000万と書いてありますけれども─についても、経験の豊富なNGOあるいは大学、公益法人と一緒に取り組むというタイプでございます。それぞれの事例をそこに書いておりますが、ブータンでは釧路国際ウエットランドセンター、中国では岩手県環境保健センター、ベトナムでは熊本県国際協会等々ございます。
 最後に、今後の国際協力のあり方に対する意見という項目ですが、ここにいろいろ書きましたが、これをちょっと離れまして、皆様方に私の考えておりますところをご紹介したいと思っております。
それは、実際こういう事業を実施しておりまして、従来、とかく技術移転型ということで、すぐれた日本の技術といいますか、途上国になかった、あるいは弱かった技術を移転することについては割と得意分野といいますか、やりやすいのですが、昨今では社会配慮をしなければいけない。その社会配慮というのは、具体的に申し上げますと、例えば住民移転を伴う問題があります。あるいは、ごみ処理等ですごく多いのですが、もう既に既得権益がある、組織化されている、制度としてなっているところに我々が乗り込んでいって、「より効率的にするにはこういうふうにした方がいい」と言ったところで、抵抗があります。後者が増えているのですけれども、後者については非常に難しい。ゆえにやりがいがあると言えばそうですけれども、そういう状況になっております。
 2点目は、これは釈迦に説法になりますけれども、特に環境協力の特性としまして、途上国の経済状況があります。GDPキャピタルが1,000ドルぐらいいかないと、なかなか難しい。環境も大事だ、開発と調和のとれた環境保全だと言いますが、15年以上前に私が南米に勤めておりましたときに、ブラジルあたりからは「公害も含めて日本から技術移転してほしい」という笑い話にならないような話があった。我々は、やはり環境も大事ですと言うけれども、環境の前に開発を優先する途上国の実態があります。私ども、地球環境部でいろいろな環境案件に取り組んでおりますけれども、そこはなかなか難しいところでございます。
 ちょっと時間過ぎましたが、とりあえず、ご説明とさせていただきます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、時間の制約がございますので、まずご質問、ご意見がありましたら先にお出しをいただいて、その後、まとめてお答えをいただくという進め方にさせていただきます。
 ご意見、ご質問のある方お手をお挙げいただけませんか。あらかじめ数を確認しておきたいと思います。

○廣野委員 どうもありがとうございました。
 新しく独立行政法人になったJICAで、ここにありますように現場主義ということでやっておられますが、特に環境関係の案件で現場主義というのは、途上国政府から、あるいは途上国のNGOとか地方自治体とか、そういうところから出てきた諸々の案件をどう処理しているのか、そこらあたりを現場主義の観点からお聞かせ願えればと思います。

○山瀬委員 山口部長も技術移転型から社会配慮型へとおっしゃいましたが、日本の技術を移転するという発想だけですと本当の意味の協力にならないのではないかと感じております。協力の一つのあり方として、技術なりいろいろなことを教えてやるぞという発想を逆転して、むしろ教えてもらう、例えば日本の子供たちなり青年、もうちょっと言えば、例えばフリーターとかですね、ああいう人たちが途上国に行って、そのマインドに触れるということも必要ではないでしょうか。日本の社会が昔持っていたプリミティブな技術の多くを実は日本は失ってしまっています。現地の人々が持っている場合も多いと思います。特に自然環境、自然との付き合い方みたいなものについては、現地の社会ではしっかり生活に組み入れられています。そういう技術なりマインドをむしろ現地の人に教えてもらうことが必要ではないでしょうか。それから研修も、日本に連れてきて研修するだけではなくて、日本の人たちが現地で研修を受ける、それも講師は現地の人たちにするとか、ちょっと発想の逆転をしてもいいのではないかと思っております。
 JICAでは、まだなかなかそういう発想はないと思いますが、技術移転型だけでは、人材の裾野は広がらないのではないかと思います。先ほど国連大学とか、大学院クラスの人間の養成という話がありましたが、むしろもうちょっと裾野が広がるようなやり方を、JICAをはじめとする様々な機関、それから環境省が取り組めばいいのではないかと思います。そうするとかなり裾野が広がるのではないかというような感想を持ちました。

○高橋委員 極めて一般的なことで、意見にすぎません。2点だけ簡単に申し上げます。
 1つは、国際協力をやっているときに、我々は国際協力の道具として、真剣を使う場合と竹光を使う場合とあるわけですね。マルチの場合には90%竹光、10%真剣、その程度だろうと思います。JICAの場合には、真剣と竹光が多分フィフティ・フィフティぐらいだろうという感じがしております。JBICの場合には真剣90%、竹光10%。
 この真剣と竹光をどういうふうに混ぜるかというのが、1つの国にとって非常に重要なことになると思います。この環境協力の場合に、ODAの分野の中で、JICAが個々の事柄を扱っていくときに、一体扱っていることは、これは真剣の分野─ということは、やりようによって相手もこっちも血が流れるということですが、もう個々の途上国、アフリカの個々の途上国でも、社会には利害関係が密集しているわけですから、ちょっとしたことが真剣になると思いますね。その場合に、意識として真剣のところと竹光のところと、オペレーションとしてかなりはっきりさせる必要が常にあるだろうということが1つ。
 もう一つは、私が数年前にやったリサーチに関してですが、日本の場合、世界の中で非常に比較優位があると思いますのが、JICAの技術協力を通じて、非常に密に技術協力をやっている国との間では文化変容が起こりますね。特定の分野に関して、例えばインドネシアの特定の分野に関して、日本にいろいろ来てもらう、こっちからもいろいろ人を送る。そうすると、その分野に関してお互いの文化変容が起こって、その分野に関して、例えばJBICの大きなプロジェクトを乗せるとうまく動く。大体において開発協力というのはうまくいかないわけですけれども、この文化変容が起こった上に乗っけると非常にうまくいく。インドネシアとタイに関して、現地の人たちにいろいろ意見を書いてもらいましたが、それを分析していきますとそういう結果が出てきました。世界でこれができるのは日本だけだと思いますので、ぜひJICAとJBICで、文化変容を日本でも相手国でも起こしていただきたい。そういう視点が非常に重要だろうと思います。

○小林委員 確認が2点、苦情が1点です。
 まず確認の方ですが、私ども地方でやっています仕事というのは、JICAがやられる研修員の受入事業に対する協力と、草の根事業の2つです。研修員の受け入れという部分については大変うまくいっておりまして、結構いろいろな事業がある。しかしながら、草の根事業の方はなかなかうまくいかないという事情がございます。平成17年度事業についても、結局はゼロになってしまっています。理由を聞きますと、これからJICAは人に頼む委託事業的なものから、できるだけ自主事業の方に移行していきたい、草の根については縮小型であるという説明がありました。そういうことで、あまり効果が大きくなさそうだと思うものは全部切ったというようなご説明をいただいたのですが、本当にそうなのかというが一点目のご質問です。
 もう一点は、現場主義ということについてです。環境に関する現場主義というのは何なのでしょう。例えば、よく言われるのは、現場側、相手国側が要望しないものはしないというお話ですが、そうすると、今お話があったように、経済発展的なものについては結構向こうは要望されるのですが、環境についてはあまり要望が出てこない。しかし、将来のことを考えた場合、やはり日本側としては、環境という向こうが要請しないものを、先を見越した形で採択するということがあってもいいのではないか。そういう意味で、現場主義を少しお考えいただけないか。特に「現場主義」という内容が、実は現地のJICAの事務所の意見がほとんどですね。ところが、私どもが直接相手と話をしますと、どうもJICAの現場事務所の判断とずれがあるということが結構あります。この辺の検証がないまま、逆に言うと、こちらの意見を聞かないまま、現場の事務所の意見だけで採択してしまっておられるというのがありまして……。

○浅野委員長 今のご発言はご質問ではなくて、コメントですね。あと苦情を、とりあえずどうぞ。

○小林委員 苦情ですが、JICAはシステム的に動いているということはいいのですが、相手側との連絡が大変難しい。「直接相手とお話し合い、協議をしないでくれ」とすぐ言われる。県なら県からJICAの事務所、それから本部、相手国のJICA事務所、そして相手国、こう行きますよね。一番の問題点は、その間に時間切れになることがよくあります。そういう意味で、何とかその辺を柔軟にしていただければと思います。

○黒川委員 中国に対する環境協力についてのご印象を伺いたいのですが、中国は、日本の協力をどのように評価しているか。これはJBICとあわせたことだと思いますけれども、特に私が関心あるのは、お金が欲しいから評価しているのか、それともお金がなくても環境技術を日本から学ぶということに関心があるのか、その辺のことをお伺いしたいと思います。

○浅野委員長 いろいろご質問がございました。私の方ではあえて整理申し上げませんので、よろしくお願いいたします。

○山口(国際協力機構) 最初に、廣野委員からございました、特に環境案件についての要請書をどういうふうにJICAの中で検討しているのかということでございます。
 ご存じかと思いますが、正式文書は大使館を通じて外務省の本省に行きます。それからコピーがJICAの方に来ます。これを、JICAには地域部と課題部がございますが、我々課題部の専門員とか、あるいは今、技術審議役として各省から来ていただいていますけれども、技術審議役のコメントあるいは専門員の方々、あるいは我々部内でまず検討します。今、課制をやめましたのでグループ制と呼んでおりますけれども、そのグループの中で検討した後、今度は部の中でもう一回検討する。そのときに専門員にも入っていただく、あるいは他の技術審議役等にも入っていただくというふうに、第1次案としてつくっております。それから、それを地域部の方でまとめまして、外務省に行き、外務省は関係各省との協議ということで、またそこでいろいろ検討し、あるいはコメントのやりとりがございます。もっといろいろあるかと思いますが、とりあえず今、そういう形で実施しております。
 それから、山瀬委員がおっしゃいました、「協力してやる」ではなくて「教えてもらう」ということが必要なのではないかというのは、私どもも常々そう思っております。ある部分について技術を教えてやるというのは非常に狭いし、少なくなってきていると思います。まさにおっしゃったようなところは関係者として心がける必要があるし、また、そういう体制をつくっていかなければいけないと思います。自己反省も含めて申し上げますと、協力隊が帰ってきた、あるいはジュニア専門員ということで年間30名強、将来専門員になる若手ですね、そうそうたる経歴を持った方がジュニア専門員として応募されます。そのジュニア専門員、3年の嘱託契約ですけれども、3年たった後どうなるのか。つまり、申し上げたいのは、人材育成した後、どういうふうに活用するのかというマーケットについて、コンサルタントの方でも、先ほど来出ておりますソフトの部分が重要だ、社会・経済調査の上に立った協力をすべきだ、よって社会調査だとか、あるいは経済調査もそうですけれども、そういう専門的知識を持った人間が欲しいのですが、それがしょっちゅうニーズとして出るかというと出ないですね。そんなものですから、ニワトリが先か卵が先かの部分はありますけれども、人材育成については、今、マーケットというところで、我々も、いろいろな形の協力隊員あるいはジュニア専門員、あるいは各省仕事をやめて専門家になられて2年、3年して帰ってこられた方の再活用をどうするのかというところが、まだやはり足りないと思います。そこはご指摘のとおりといいますか、もうちょっとこの報告書に書かれているような方向をどう広げていくかというところで我々も汗を流さなければいけないと思っております。
 それから、高橋委員の方からございました竹光と真剣の割合の話です。先ほども10分か15分の説明の中でちょっと申し上げましたが、住民移転を伴うだとか、あるいは彼らの伝統、習慣をぶち壊すだとか、あるいは、これは少し違うかもしれませんが、既得権益をどう壊していくかというところについては、ある意味で真剣勝負をかけなければいけない。その点につきましては、先ほど申しましたが、とりあえず環境配慮審査室の方で検討しますが、外部の委員の方々にいろいろな観点から指摘していただく。それをもって、途上国でステークホルダーミーティングを、先ほど申し上げましたA案件ですと都合6回実施しております。
 それと、2点目におっしゃいました、JICAが人と人とのつながりといいますか、文化を影響し合えることを、例えばJBICさんとの連携の中でうまく活用すべきだというご指摘については、全くそのとおりだと思います。そして、実はインドネシア、フィリピンの植林案件、あるいは中国の植林案件、あるいはベトナムもそうですけれども、お互いに人間的な関係ができ、それをベースに、JBICさんとの連携が図れるところではどんどん進めております。まだまだ足りないと言われれば、その部分はあるかと思います。
 それから、小林委員からございました点で、草の根について、効果が薄いからもうそれはやらない方向だというのは間違いです。心苦しいですが、非常に案件が多いのです。私は、これは非常にいいスキームだと思いますが、採択案件が少ないものですから。実は各センター、大阪センターだとか兵庫センターの所長たちが本部に来て「どうせ採択しないんだったら、こんなに大々的にPRするな」と怒るんですね。本当に私もそう思っていますが、ただ他方で、先ほどの説明の中にありませんでしたけれども、もう一つの方向性として、大学とコンサルタント、あるいは自治体と大学、そういうところが一緒になって、ある課題について対応する、3年間、5年間でここまで達成する、あるいはここまで変えるというようなことを、今、やろうとしております。業務実施契約といいますか、法人化契約と私どもは呼んでおりますが、従来コンサルタントさんにだけプロポーザルをいただいていたところに、地方自治体、NGOあるいは大学、あるいは独立行政法人の方々、それぞれが得意分野、大学の先生とコンサルタントがそれぞれ、ここの部分は大学の先生方、ここの部分はコンサルタントの経験というようなところでジョイントしていただくような方向も考えております。
ただ、私どものだれかが申し上げましたような、効果が薄いからというようなことはございません。効果は3年、5年で出るものではない。むしろ3年で3,000万とか言っても、100万でいいから20年ぐらい続けなければいけないというようなことが、特に環境だとか社会配慮しなければいけない案件というのはそうだと思います。そこは説明ぶりが舌足らずといいますか、きちんとしていないのではないかと思いますので、訂正とお詫びをさせていただきたいと思います。
 それから、現場主義とは何なのか、要請しないものについても場合によってはやるべきではないかということにつきましては、この資料の中で、実は、環境案件は待っていてもなかなか要請が出ないものですから、こちらからプロジェクト形成調査ということで行って、15年ぐらい前にかなり積極的に案件形成をしました。というよりも「こういうふうにすれば我々の方で採択しますよ」ということで、積極型案件形成ということでやりました。ところが、先ほど申しましたように協力期間中はいいのですが、協力が終わった後、やはり持続性というところで問題が出てくる。会計検査院からもかなり指摘を受けております。どういうデザインをするのか、どういうふうにフォローしていくか、どうモニタリングしていて、そこにどういう治療をすればいいのか、どう対処方針をつくればいいのかということを現場が考え、現場が我々の方に伝えてくる、あるいはそういうマインドを持った人材が現場にいるということが現場主義だと思っております。
 あと、黒川委員の方からご質問がありました中国の環境の件ですが、これは先般、中国の環境大臣が来られまして、小池大臣と韓国の大臣と3人で環境大臣会合をしております。その後の各種委員会などでも、外務省の経済協力委員会だったでしょうか、結論は、過去の中国への協力、特に環境分野の協力を財産として、今後、継続的に実施するということで、必ずしも私どもJICAの事業につきまして、減らしていくというようなことを考えているとは理解しておりませんし、聞いておりません。具体的には私どもは、環境センター・プロジェクトを実施しております。来年、再来年で終わりますけれども、次のフェーズでどういう協力をするべきか、環境省さんをはじめ、大学の先生方の協力を得ながら議論しております。必要ならば、また個別にご説明させていただきます。
 すみません、1点忘れました。小林委員から話がありました、「先方と直接連絡しないでくれ」とJICAが言っているというところですけれども、これもまた説明が不足していると思われます。そうではなくて、JICAの中でも情報の共有化と言っておりますが、コピーを送っていただくだとか、我々が先方とやりとりしたもののコピーをご連絡差し上げるというようなことで、連絡してはいけないということではないと思いますけれども。

○小林委員 実はこの間、同じことをやりました。するとコピーを受け取ったJICAの事務所の方が「直接送らないでくれ、うちが経由するからうちへ送れ」と指示があったのです。

○浅野委員長 わかりました。では、それはまた後ほどお願いします。山口様、ありがとうございました。
 引き続いて、国際協力銀行の藤沼様、よろしくお願いいたします。

○藤沼(国際協力銀行) ただいまご紹介いただきました、国際協力銀行環境審査室長をいたしております藤沼でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 早速ですが、お手元に配付してございますパワーポイントのコピー、あと私どもの環境報告書2004年度版もあわせてお配りしてあるかと思いますので、時々こちらの方もリファーいたしながら、10分という時間でご説明するようにいたしたいと思います。ページを申し上げるときは、右下に振ってございます番号で呼ぶことにいたします。
 最初に、JBICの環境に関する取組方針あるいは実施体制でございますが、円借款につきまして、ここに簡単にまとめてあります。左側の表、ちょっと見にくいですけれども、これにつきましては、環境報告書4ページの表ですので、これをごらんになっていただくと、よくおわかりかと思います。ポイントといたしまして、右側下、3つにチェックがついておりますが、これは私どもJBIC法の中で、ODA業務につきましては海外経済協力業務実施方針を3カ年ごとに見直してつくることになっております。現在使われておりますのは平成14年度から16年度まででございまして、その中から環境関連についてピックアップしたものでございます。環境保全あるいは改善プロジェクトの支援、さらに2点目といたしまして、地球規模問題、とりわけ温暖化対策あるいは酸性雨プロジェクトへの対応、そして環境社会配慮ガイドラインに基づく環境社会配慮の徹底が基本的な取組方針となっております。
 次に、3ページです。環境ODA案件の実施状況ということで、これも左側にグラフが出ております。まことに見にくいのではないかと思いますが、これも同じく環境報告書の9ページ、大河の写真の下に「海外経済協力業務における実績」ということで同じグラフが出ております。概略的に申し上げますと、これにつきましては上水道あるいはこれを含みます住環境対策、あるいは天然ガスの複合火力発電、地熱発電等々、そういう環境への影響も踏まえまして、私ども環境案件を整理しております。こういう見方からしますと、2003年度につきましてはおおよそ6割が環境案件という実態であると理解しております。
 次に、その具体的な例ですけれども、1つはインドのヤムナ川流域諸都市下水等整備事業でございます。これは単に下水処理施設の整備だけではなく、住民への公衆衛生知識の普及を現地のNGO等と協力いたしまして実施している案件であります。ちなみに、こちらの報告書にも、今、ごらんになっていただいたグラフの向かい側、10ページに文章でもう少し詳しく説明いたしております。
 環境の人材育成関連につきましては、例えばということで、中国の内陸部・人材育成事業ということで、さまざまな省を対象といたしまして、大学レベルでの人材育成に協力いたしております。
 制度構築面につきましては、例えばということで、ベトナムの環境管理体制構築支援借款というものがございます。対象は電力セクターですけれども、ここの環境配慮方針、あるいは個別の発電所における環境管理体制プラス環境の関連の機器、それに、ここには出ておりませんけれども、地方の配電網の整備も含めまして、電力セクターにおける環境負荷の軽減あるいは電力の安定供給をねらったプロジェクトであります。
 次に、環境改善効果というのはどういうものなのか、これも個別にわかりやすい例を持ってまいりました。タイのメーモ火力発電所、これは石炭火力でございますけれども、その排煙脱硫装置の設置事業です。グラフに出ておりますとおり、脱硫装置をつけることによって、その効果が出てきている。さらに、一番下にポイントで書いてございますが、この対象技術には、他の発電所への普及という効果も出ているという状況であります。
 続いて、環境配慮の実施状況です。これにつきましては、2002年4月に制定、2003年10月施行ということで、環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドラインを実施いたしております。そして、異議申立手続も導入しております。もう少し詳しい内容につきましては、同じく環境報告書の15ページから18ページにわたりまして載せてございますので、後でごらんになっていただければと思います。
 次に、様々な主体との連携についてということですが、円借款の分野におきましては、基本的には日本の経験、知見をいかに反映させていくかについて、いろいろ努力を重ねている状況でございます。これは環境セクターに限りませんけれども。左側に写真がございますけれども、インドの上水道の整備事業では、横浜市であるとか大阪、福岡等の地方自治体にもご協力をいただいております。具体的な案件として、これは岡山県との連携の例ですが、ガンジス川流域都市の衛生環境整備事業ということで、これは近々実施される案件ですけれども、それを実施する前に1度ワークショップを開催いたしまして、河川浄化にかかわる経験、教訓を紹介していただいたということでございます。ちなみに、岡山県は国際貢献活動の推進に関する条例というものをつくられていて、非常に積極的に対応していただいております。次の例はNGOとの連携ということで、オイスカに、フィリピンの森林セクターの支援の一環として、コミュニティリーダー候補生のトレーニングにご協力いただいております。
最後に4点目、今後の国際協力のあり方についてということで数点まとめてみました。
 最初は、援助国側の協調と我が国のリーダーシップ。途上国側と協力関係あるいは補完関係といった様々な形で、パートナーシップでやっていくことはもとより、さらに、同じくドナーとして活動している他の援助国とかあるいは国際機関、こういうところとの協調も我々としては考えていかなければいけないだろうと思っております。そして、ODAをてこといたしまして、途上国の環境政策、制度、これにつきましては国際協調の枠組みが現在いろいろでき上がっている最中でありますので、その中でいかに日本としてリーダーシップを発揮していくかということが、非常に重要なポイントだと考えております。
 2点目が、政策対話の重視と技術支援。JBICといたしましても、低利・長期の融資をするだけではなくて、やはり案件を取り上げる、あるいは取り上げた後でもさまざまな形での政策対話を実施していく必要があると考えておりますし、現在、やっております。それからソフト面での協力、これも非常に重要なポイントと認識しておりますので、これについてもいろいろ取り組んでいる最中でございます。関連して、例えば政策対話という次元ですけれども、これは現在、日本のODAの協力態勢が現地に重点を移動しつつあることも踏まえると、まずはこれまでいろいろ枠組みがある現地のODAタスクフォース、こういうものも活用して、相手国側と意見を交換していくことも極めて重要だろうと認識しております。
 3点目が、知的協力を通じた行政能力の向上。それから4点目、併せて申し上げたいと思いますが、地方自治体・NGOとの連携。これに関連して、オペレーションの中でいろいろやりながらフィードバックして学んできていることが多いわけですけれども、環境関連につきまして、一番のポイントとしましては、環境改善・保全に取り組む際、やはり単に施設とか技術を導入することだけではなく、制度、体制といった行政能力、さらに、先ほどもお話が出ましたが、場合によっては人々の生活習慣あるいは意識、こういうものに働きかけていかなければいけないといったことも視野に入れていく必要があるだろうと認識しております。先ほど例に出しましたが、インドのヤムナ川の下水等整備事業も、そのような形で実際に行っていると認識しております。これを案件形成ということから考えていきますと、具体的には日本で、あるいは日本だけでなくて実際に日本から現地に行って活動されている方の知見を、自治体、NGO、NPOの方々と連携して、いろいろなコンポーネントをプロジェクトの中に組み込んでいかなければいけない。あるいはプロジェクトを承認する前にも、多元的な視点で確認していく、そして案件を形成していくことが重要だと思っております。
 その次、5点目ですが、CDM案件の推進。これにつきましては、やはり京都議定書の削減目標を達成する補助的な手段として、CDM等のいわゆる京都メカニズムの活用が考えられておりますので、そのためにもうまくODAを活用していくべきではないかと考えております。
 そして最後に、環境技術のODAによる普及でございます。今後の一つの方向性も示し得る例として、フィリピンのメトロセブで地域整備事業を円借款でずっとやってきていたわけですが、北九州市の方も姉妹都市という関係で、そこで省エネ・省資源あるいは環境負荷の低減が可能な生産プロセス、いわゆるクリーナープロダクション─CPの導入を促進するといったことを考えられていたようで、その調査を協力して実施している。さらに私どもの方は、いわゆる開発金融借款という形で現地の銀行を通じて中小企業に融資をするというスキームもあるということで、これをうまく生かしていくような形でモデル的に導入できたのではないかと思います。
 それから、先ほどちょっと出ていましたけれども、CDM案件の候補としては、現在エジプトでザファラーナの風力発電ということで、これはその方法論についてCDM理事会で、メソ・パネルの方で検討していただいて、そのフィードバックも踏まえて、今、改めて手続を行っている最中というのが現状でございます。
 以上、ちょっと長くなりましたけれども、とりあえずご説明といたします。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 先ほど黒川委員から、中国のことについて印象はどうかというお尋ねがありましたが、何かございますか。

○藤沼(国際協力銀行) 最近の私どもの円借款の対象は、内陸部であり、かつ人材育成と環境関連の案件に移ってきております。これまで環境分野については、環境モデル都市も含めましていろいろ取り組んできておりますけれども、私どもとしましては、協力に対する中国側の評価は高いものと認識しております。

○浅野委員長 それでは、ご質問、ご意見ございましたら。

○廣野委員 ご説明どうもありがとうございました。コメントはたくさんありますけれども、時間がありませんので質問は1つに限定します。
 JBICの活動を見ていると、だんだんソフトの方に入っていっていますね。単に施設をつくるだけではなくて、制度の構築であるとか人材育成であるとか。JICAも、もともと技術協力ですからソフトですよね。そういう意味で、環境案件についてのJICAとJBICの役割分担はどのような方針でやられているのかお聞きしたい。

○高橋委員 環境案件に関して途上国から協力の要請が出てくる際に、途上国の状況によっていろいろ違うと思いますけれども、1つは、政治体制として開発独裁体制のようなものをとっているところと、多少とも民主的な色彩の強いところとで差があるのかどうか。
 2つ目には、一般的に開発のレベルによってかなり違うと言われますが、本当にそうなのかということ。
 3つ目には、市民社会の発達の程度によってかなり違うのかどうかということ。
 4つ目には、地理的に何らかの影響があるのかどうか、そのあたりに関して、国によって違うといったとき、実際は要請してくるときどうなのかということをお聞きしたいと思います。

○浅野委員長 これは極めて細かいご質問になっていますので、後で総括的にお答えいただいて、あとは必要があればペーパーでお願いします。

○加藤委員 時間の関係もありますので、私も1点に限ります。
 先ほどの、この委員会としての報告書の骨子(案)にも出てきましたが、CDM事業についてもう少し、それに参加する側がメリットを感じられるような支援の仕方を考えていく。まだ具体的な内容はわかりませんが、もう既にJBICさんではCDM事業にも乗り出すということで、それ自体は大変結構なことだと思いますけれども、その結果、従来あった省エネ関連だとか新エネルギー、代替エネルギーの開発の事業との整理を多分されているのだろうと思いますけれども、その点はどうなっているのでしょうか。

○石田委員 我々もいろいろな自治体ですとか、そういうところと一緒に仕事をさせていただいていますけれども、ビジネスベースでいくと、現地では最後の資金回収問題がございまして、大体10とか15%が3年とか4年後にしか支払われないといったことが結構起こります。そういうときに民間企業の支援的なことをやっていただくと、もっと我々もフロントで積極的にそういう活動がやりやすくなる。企業としては、リスクを低減しながらそういう活動に積極的に参加できる部分がありますので、その辺お教えいただきたいと思います。

○浅野委員長 いずれもかなり難しい質問ではあるかと思いますが、可能な限りお願いします。

○藤沼(国際協力銀行) 最初に、廣野委員からのご質問でございますけれども、直近の状況をかいつまんで申し上げますと、今、我々は、極めていろいろなプロジェクトのレベルでJICAとの連携ということを常に念頭に置いております。現地サイドでいきますと、先ほど申し上げましたとおり、ODAタスクフォースという形で、いわゆるオールジャパンでどのような取り組みをしていくかということで、アップストリームの段階からどういう形で取り組むのがいいのかという整理はされつつあると思います。他方、直近のものということについては、ある案件で、ここの部分はタイミング等も踏まえてJICAにお願いするのがいいのか、あるいはJBICのいわゆるサフ(SAF)と言われている制度を使うのがいいのか、常に念頭に置きながら、途上国にとって一番喜ばれる形でやろうと考えているところでございます。
 それから、高橋委員のご質問ですけれども、その国の政治体制によって、案件に違いが出てくるのか、これは申しわけないですけれども、ここでは明確にお答えできません。逆に言うと、私自身は、はっきりしたものは必ずしもないのではないかと思っています。ただ、1点言えるのは、この新しい環境ガイドラインの施行等によって、より情報の開示だとか、あるいは住民との対話とかを促進していかなければいけないというメッセージは途上国側にもいろいろな形で伝わっていて、そういう意味での効果は出てきているだろうと理解しております。そして、市民社会の発展の度合いにおいて、環境案件というのはどうなのかということですが、これは、例えばバングラデシュにおいても環境案件は出てきます。それはとりわけライフラインに近いような部分ですけれども。他方、島国みたいな特殊な状況を除いて、ごみの問題はどうなってくるかというと、やはりこれは、すぐ明日にかかるようなものなのか、どの程度の緊迫度なのかによっても違ってきて、ここもやはりライフラインの案件と似たようなことなのかもしれませんけれども、どれだけリードタイムがあるのか、切羽詰まっているかも大きなファクターになっているのではないか。ただ、一般論から言えば、どちらかといえば、やはり廃棄物というのはいろいろな意味で、途上国側の優先度は後ろになりがちという傾向はあるかと思います。
 あと、加藤委員でございますけれども、CDM事業と従来の案件との整理でございます。 今の状況からいきますと、いろいろ案件がある中で、これはCDMの対象となり得るのではないかというものが出てきつつあるような状況です。また、他の案件の優先度が低くなるというような状況ではございません。私どもと致しましても、ODA資金のダイバージョンに関しては、よく注意を払って検討を進めております。
 それから、石田委員からのお話でございますけれども、お伺いしたことにつきましては、我々の勉強課題といたしまして、さらにどういう取り組みがあり得るのか検討していきたいと思います。

○浅野委員長 まだいろいろとご質問を多く差し上げたい領域ではございますが、大変申しわけございません。ありがとうございました。
 引き続きまして、特定非営利活動法人「環境・持続社会」研究センターの足立様、田辺様のお二方にお願いいたします。

○足立(「環境・持続社会」研究センター) JACSESの足立と申します。
 簡単に私どもの団体の説明をさせていただきたいと思いますので、お配りした黄色いパンフレットをごらんください。
 私どもの団体は、92年にあった地球サミットをきっかけに、調査、政策提言、情報発信を行うNGOとして、地球サミットに参加された研究者の方やNGOの方々にお集まりいただいて93年に発足した団体です。その目標は、まさに本日、配られた資料1に、世界的な枠組みづくりに対して日本として戦略的な関与をするといったことがうたわれていますが、我々はNGOとして、国際的なその枠組み、例えばUNCSDであるとかWSSDのようなものに参加しながら、あるいは気候変動枠組条約や生物多様性条約のようなものをフォローアップしていきながら、こういった国際的な枠組みづくりにNGOとしても何らかの貢献をしたいということで、微力ながらも活動を進めております。
 それとともに、日本の中で持続可能な生産消費パターンを実現するために、環境容量等に関する研究を進めて、どのような社会増が今後、必要になっていくかといったことを研究していく。具体的な、そういった国内における生産消費パターンを実現するための制度として、特に我々は資金問題中心にやっていまして、例えば、税財政改革ということで、地方自治体や国レベルの税財政改革に取り組んでいまして、特に、地球温暖化防止に関しましては、気候ネットワークさんやほかの団体と協力しながら、我々は特に環境税の部分に焦点を当てている。ちなみに、今回、JI/CDMというのも一つの焦点になっているかと思います。もちろん環境税とかの使途にもJI/CDMが環境省の検討では入っていますし、JI/CDMをどうするかといった話も我々としてフォローしているということでございます。
 また、貿易と環境に関する相互支持性の確保をどうするかということも検討課題になってございますが、我々もNGOとして、これは非常に難しい問題ですが、それをいかに達成するかということで活動を進めております。
 我々は、持続可能な開発を実現するために開発援助政策をいかに改善するかということで取り組みを進めています。環境に関するODAをどういうふうに進めていくかということも非常に大事ですが、我々は、ODAの環境社会配慮政策をいかに普及させていくかというところに焦点を絞って活動を進めておりますので、本日はそこを中心としながら、我々の活動の紹介とコメントを、持続可能な開発援助プログラム担当の田辺の方から申し上げたいと思います。

○田辺(「環境・持続社会」研究センター) 持続可能な開発援助プログラムのコーディネーターをしております田辺有輝と申します。
 我々のプログラムは、開発援助、開発金融における環境破壊、それから人権侵害をなくす、最小限にするというゴールの下に、以下に挙げた4つの方向性をとっています。
 1つ目は、国際機関─ADBとか世銀であるとか、それから日本政府、日本政府の開発機関、開発援助機関の政策を改善すること。2つ目としましては、実際のプロジェクトにおける環境破壊とか人権侵害をなくしていくということ。3つ目としましては、NGOと政府機関の政策対話を促進していく。4つ目としては、NGO、市民社会のエンパワーメントを行っていく。
 この4つに関して具体的に説明していきたいと思います。まず、開発援助の政策改善に関しましては、「政策」といったときに大きく分けて3つの見方がありますが、1つ目は、どういうカテゴリーのローンやグラントをふやしていくかという方針です。援助方針のようなものをどうするか。それから、環境社会配慮ガイドラインのような最低限の基準をどう上げていくかという話。それから、実際に被害が起こったとき、また問題が起こったときに、その問題を受ける人たちがどう異議申し立てをして問題を解決していくか、主にそういった3つの分野で政策を見ております。具体的には、例えばODA大綱中期政策であるとか、JBIC、JICAのガイドラインであるとか、それから世銀とかADBの環境社会配慮政策とか異議申し立て政策のようなものを具体的に向上・改善させていくというような方向性でやっています。
 プロジェクトのモニタリングに関しては、主に我々は、南アジアを中心に見ております。といいますのも、ほかの日本のNGOの中での役割分担的なところと、それから、特に南アジア、インドの経済発展が最近すごく加熱しておりまして、プロジェクトの案件数も非常に今後増えていくだろうということで南アジアを見ています。実際に現場に行きまして、被害を受けている住民に聞き取り調査を行って、具体的な改善点であるとか、例えば現地の法律に反しているとか、援助機関のガイドラインとか政策に違反している点を見つけてきちっと改善させていくということを政府機関に提言しているというようなプロジェクトを行っています。具体的には、ここに挙げた3つを行っております。そういったときに、現地の調査レポートなども出しております。
 それから、政策対話の推進ですが、我々は、政策対話の場としまして、個別にも協議を行いますが、定期協議のコーディネーター等を受け持ったりもしております。具体的には、財務省の定期協議を97年にスタートしまして、その後、JBICの定期協議や外務省の政策協議にもコーディネーター等を務めさせていただいております。我々には2つの立場がございまして、1つは日本国民として税金を払っている立場から、ODAがきちっと使われているかどうかということと、それから、南の被害を受けている住民の立場として、その人権侵害、環境破壊等が起こらないようにきちっと現状を伝えていくという立場から主に対話を行っています。具体的な成果としましては、意思決定への透明性への確保、認識とか意思決定の変化。例えば、これは世銀のプロジェクトですが、中国のチベット地域を開発するプロジェクトで、NGOの間では世界的に非常に懸念が大きかったものです。これも一応、日本の財務省の方もこれはいかんのではないかということで変化が起こった。それから、担当者ベースでの信頼関係の構築といったものもあります。
 次に、市民社会のエンパワーメントということですが、ただ情報を与えるというような方針ではなくて、きちっと南の住民の方々が、自分たちの持つ権利、例えば知る権利であるとか政治に参加する権利、それから、問題が起こったときに請求する権利とか、そういった権利をきちっと確保できるような情報提供、それから法的な整備、それからサポート、支援をきちっとやっていこうということで、例えばガイドラインとか異議申し立てのワークショップを途上国で行うとか、英語のウェブサイトをつくって日本のポリシーの現状説明をするといったことをやっております。
 ここからは、今後の環境協力のあり方に関する意見ですが、8点ありまして、1つ目は、まずは政策対話を推進させていこうといった方針です。実は、二国間で政策対話を行った場合、非常に内政干渉等々の問題がありまして、例えば南の国で環境アセスメントの法律がきちっと整備されていないとか、住民の移転の法律がきちっと整備されていないとか、また、あったとしてもきちっと守られていないという現状があったときに、二国間できちっと提言、政策対話ができるかというと、やはり難しい部分もあります。こういったことは、やはり国際機関を通してきちっと政策提言を推進していくのがよいのではないか。例えば、ADBには、通常のファンドとは別に、貧困削減日本特別基金といった日本が出資しているファンドがあります。そういった日本の政策対話の推進を、国際機関を通してきちっとやっていくべきだと思います。
 2点目は、多国間開発銀行へ年間2,000億円ぐらい日本政府は出資していますが、結局このペーパーの中には、二国間ODAといった部分が割と包括されておりまして、MDGの環境社会配慮政策といったものを日本政府としてどう改善していくか。日本も世銀で第2位、ADBでアメリカと並んで第1位の出資国なので、その辺をしっかり提言していくことが重要なのではないか。
 3点目は、このところJBIC、JICA、外務省で資金協力ガイドライン等、ガイドラインが非常に整備されてきてはいますが、例えばJETRO調査みたいなものは現在ガイドラインがない状況で、こういった抜け道をつくってはいけないのではないかということ。それから、ODAのほかにも、JBICさん等も国際金融業務等を行っておりまして、経産省の下でやっているNEXIも輸出信用等を行っておるので、この辺の環境社会配慮、もちろんガイドラインは今あるわけですが、実施の面でもきちっとやっていくよう方針の中に書き込むべきではないかと思います。
 4点目。JBIC、NEXIの方ではきちっとしたガイドラインができているわけですが、やはり先進国、OECDの中でも輸出信用のガイドラインが整っていない国がたくさんありまして、そういった国に積極的に働きかけて、各国がきちっとしたガイドラインをつくることによって、こういった輸出信用の抜け穴を防ぐことが重要かと思います。
 それから、これは細かい話ですが、基本的にはプロジェクト融資というのは、サハリンの天然ガスとかオーストラリアの植林等々でもいろいろと問題が起こっておりまして、そういったプロジェクト融資のことは途上国のみではないだろうと思います。
 それから、環境省の役割に関しましては、やはり現実的には非常に難しい部分もあると思いますが、日本の政府、それから日本の関連機関が行っておりますプロジェクトにおける環境のモニタリングを、やはり環境省もきちっとやっていくべきなのではないか。そして政府内部でちゃんと観測するようなシステムがあった方がよいのではないかと思われます。
 それから、これはもちろんのことですが、国会等のODA、OOFに関する行政監査能力もきちっとつくっていくべきではないかと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。ただいまご説明をいただきまして、あまり我々のペーパーの中では考えていなかった部分へのご提案もいただきましたが、なかなか書きづらいなという部分も正直言えばあります。
ご質問、ご意見ありましたらどうぞ。

○廣野委員 政策に関していろいろ提言するNGOが非常に少ない日本で、JACSESのような団体があることは非常に心強い。そういう意味で、まずお仕事に対して感謝いたします。
 特に質問したいのは、こういうお仕事をやっていて、今回もいろいろ提言してくださっていますが、その提言の実現をどう担保するかという点について、ここにはあまり書いていないですね。こちらのペーパーにはかなり詳しく書いてあります。そういう点から考えると、今回、我々は国際環境協力について政府に対して答申しますが、その中で、こういう点やった方がいい、ああいう点やった方がいいというだけではなくて、これをどうやって担保していくか、そこらあたりについて、一例を引いて助言していただけると大変ありがたいと思います。せっかく今日ここへ来ておられますから、皆様方もぜひ聞きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○小林委員 1点目は、普段の活動として、具体的には何をされているのか。こういう提言書をつくられた上で、それに対して何か行動されているのかということです。2点目は、今、廣野委員も言われましたが、実現性と担保についてどうお考えなのか。

○黒川委員 私も非常におもしろいというか、重要な仕事をやっておられるなと感じましたけれども、プロジェクトなり国のいろいろな政策を評価するなり審査するに当たって、どういうクライテリアでやっておられるのか。つまり、先進国のドナーがやっている平均的なところでやっておられるのか、また絶対的な原則のようなものがあるのかということ。
 もう一つは、日本の現在の環境面のODAというのは、全般的に世界的な水準から見てどのあたりにあるのか。まあまあいい線いっているとか、5年前は悪かったが今はトップ幾つぐらいに来ているとか、そんな大雑把な感じで教えていただけたらと思います。

○加藤委員 私も廣野委員同様、これまでJACSESがやってこられた活動、それから重要な貢献に対して敬意を表したいと思います。
 具体的に、今後の取り組みの方向についてご意見、ご提言があるわけですが、多国間開発銀行を通じた政策対話や環境アセスメントを許可するというところに関連して、多国間開発銀行、具体的には世銀だとかADBだと思いますが、こういったところ自体も、実は非常に批判もあるし、問題も抱えている。そのための対応もある程度はなされていると思いますが、こういうところに対してJACSESさんが直接、それこそ先ほどの日本政府機関との政策対話だけではなくて、政策対話のような場があるのかどうか、それに参加されてこられたとしたら、どういう感触をお持ちなのか、さらに強化していくための提言をするような場についてどうお考えなのか、お聞きしたいと思います。

○浅野委員長 我々の方のドラフトの考え方で二国間対話がまず出てくるのは、個別案件がいきなりあるわけではなくて、要するに、先方の国のニーズをちゃんと見ないで一方的にトップダウンを押しつけるようなことはよくないので、そこからきっちりやるべきだというニュアンスをもったということです。だから、具体的な案件になってくればおっしゃるようなことがある。そこはちょっと誤解されているかもしれないので、弁明しておきたいと思います。

○田辺(「環境・持続社会」研究センター) 具体的にどういう成果を上げているのかということですが、成果が上がっていない部分もありますけれども、例えば、政策の場合は、JICA、JBICのガイドライン改訂のときに独立の委員会をつくって、それで何回も会議を行って、ここの規定はこうすべきだとか、例えば住民移転を行う前にちゃんとコンサルテーションを行って、情報公開すべきなのではないかとか、この時点で、例えば環境アセスメントは公開すべきなのではないかとか、そういった細かな日数とか参加のあり方といったガイドラインが、もちろんJBIC、JICAにもありますし、それから世界銀行とかアジア開発銀行等にもあるので、そういったかなり細かい部分を、具体的には一つ一つ提言していく。
 また、プロジェクトの場合は、実際、現状の問題と、それからガイドラインとの差をきちっと現場へ行って見て、違反している部分等をきちっと言っていく。なかなか変わらない部分と、それからきちっと改善されていく部分とありまして、プロジェクトの方よりは、むしろ政策の具体的な日数ベースの話とか参加のあり方とか、そういったところは割と変化の見られる部分です。特にMDG、世界銀行、アジア開発銀行の政策などですと、かなりNGOの意見が取り入れられた政策ポリシーペーパーになって出てくるということがあります。
 それから、普段何をしているのかということですが、基本的にはレポートをつくったり、それから日本のNGO間でのミーティングをしたり、それから現地に行って調べたり、それから、現地の国際会議、国際機関の国際会議等に出席して政策提言をしている。例えば世界銀行の総会のときに合わせて、世界銀行の日本の理事であるとか世界銀行のスタッフとかアジア開発銀行のスタッフ等々とミーティングを持って、それで具体的に、それは定期協議という場ではないですけれども、こちらの問題点とか改善点を伝えていくというような活動をやっております。
 クライテリアのつけ方ということですが、非常に難しいですね。まず、日本のかかわりというのが非常にありまして、世界中に問題のあるプロジェクトはたくさんあって、その中でも、例えばアメリカがやっているプロジェクトとかヨーロッパの国がやっているプロジェクトみたいなものには、なかなかかかわりにくい部分もある。だから日本の政府とか日本の機関が出資しているものの中で、特に被害の大きいものであるとか、現地で問題の声が上がってくるもの、現地のNGOとの連絡等を行っているので、その中で声が大きいものですとか、そういったものを見るようにしています。
 それから、日本の環境ODAの現状は世界的に見てどういう位置にあるのかという話でありますが、日本のODAの体系は、ローンが非常に多いというのが現状です。他国の場合は、ODAの中ではグラントが主流です。具体的に環境ODAといったところでの各国比較というのは承知しておりません。

○足立(「環境・持続社会」研究センター) 我々がやってきたことは、提言の担保という意味からは、実は96年に7カ国の先進国の比較調査みたいなものをやりました。実際日本の政策が、例えば環境社会政策について何があるかといったことです。実は、財務省の定期協議が97年に始まりましたが、これまで我々NGOが行っても全然相手にされなかったのが、こういう比較調査をして、今、広島市長をされている秋葉さんが公開質問してくれて、それで97年に始まって、それからこういう形になった。ただ、提言していることが現実にすぐできるかというと、確かに難しいところもあります。

○加藤委員 もうちょっと具体的に質問を言いかえさせていただきますと、例えば環境の分野では、世銀その他が管理しているGEFというのがありますよね。GEFには評議会があって、NGOもオブザーバーとして参加できる、あるいは意見を言うことができるようになっているわけです。GEFにはポリシーがあって、ポリシー自体は非常によく書かれていると思いますが、運用の実際に非常に問題がある。それから、我が国について言えば、我が国から提案される案件が非常に少ないとか、いろいろありますが、そういった点でJACSESさんが、これまで何か具体的に活動されたことをお聞きできればと思います。

○足立(「環境・持続社会」研究センター) それは本当にやりたいとは思いますが、なかなかできない。我々は、今、まずいプロジェクトがないようにしらみつぶしにしていくことに精一杯です。いいODAを増やしていくのも非常に大事ですけれども、そこについては、まだ動けていないのが正直なところです。

○高橋委員 そちらからのご説明の中に出てくるのではないかなと思っていたらありませんでしたので、ご質問させていただきますが、自分の組織を強化するには、あと何が必要と思われるか。私としてはぜひエールを送りたいのですが、どうしたら具体的に強化されるか、それを教えてください。

○足立(「環境・持続社会」研究センター) 我々の活動費は、アメリカの財団に非常に依拠してきていまして、それが実はテロ以降、ちょっと先細りしてきております。正直言えば、ファンドが何とかあればいいかなと思っております。我々みたいな仕事をして働きたいという方々が非常にいらっしゃいますけれども、そういった方々への機会の提供にも限度があります。もちろん、それとともに私たち自身のキャパシティを高めていかなければいけないということもある。そういう意味ではまだまだ不十分なところがありますが、ただ、国際的にNGOネットワーク等もありまして、あるいは協力していただける日本人の方々もいらっしゃるので、あまり言いたくないですけれども、やはりファンドのところが一番ネックかなと考えております。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりました。大変お待たせいたしましたが、財団法人オイスカ事務局長の廣瀬様にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○廣瀬(オイスカ) オイスカの廣瀬と申します。
 最後になりましたので、ちょっとお疲れかと思いまして写真を多用してまいりましたので、ご了解いただきたいと思います。かなり数がありますので、駆け足で進めさせていただきます。
 オイスカは1961年に発足して、海外での農業協力を中心に活動を進めてきましたけれども、農業協力していく中で、実際に、米が1年に2回も3回も採れていた地域が環境変化の中で1回採れるのがやっとといった現場も出てきて、その周辺を見渡したときに、まさしく山が禿げ山になっているとか、そういう状況の中で、これは森をつくらない限り農業もできなくなるのではないかという現場からの声がもととなって、1980年から海外での森づくり協力を進めてきております。
 もともとは人づくりということで、オイスカは活動を進めてきております。60年代最初に技術員が派遣されたのはインドでした。現在、アジア中心に8カ国、18の研修センターで現地の青年の研修を行っております。その中から一部、毎年100名から150名程度を受け入れて、国内にある4つの研修センターで技術研修を行っています。人づくりを中心に行ってきております。海外の研修センターでは、稲作を中心にさまざまな取り組みをしておりますし、食品加工だとか、より付加価値をつけた形での技術指導等々を行っています。
 そういう中から村づくりを展開しておりますので、2つほど事例をご紹介させていただきます。これはフィリピンのネグロスで行っています養蚕普及プロジェクトでございます。これにつきましては、既に皆さんご承知のように、フィリピンのネグロスというのはサトウキビで有名で、砂糖の島と言われるぐらいの所だったのですが、それだけに頼っているということでいろいろな問題が起こった。そういう中で農業指導に入りましたが、住民が、サトウキビを生産する農業労働者ということで、賃金労働者としての意識から脱皮できない。なかなか自立に向けた取り組みは難しい。そういう中でいかに、日本的に言いますと、農民を育て上げるかということで、住民の意識改革をする上で何が一番いいのかなということで導入されたのが、この養蚕への取り組みです。これは日本の経験で証明されていると思いますけれども、非常に緻密な取り組みが必要だということで、これも十数年の取り組みを経て、ようやく周辺で多くの農民がかかわってくれるようになりまして、参加してくれております。製糸機械等を日本から寄贈していただく中で、こういう糸の生産までできるようになりました。つい先週、このプロジェクトをアロヨ大統領もわざわざ見に来てくださいました。これはパプアニューギニアの研修センターですけれども、こちらは稲作指導を強く要請されて、その協力を行っております。従来、オーストラリアから米を入手しているということですけれども、パプアニューギニアでも米ができるということにかなり前から取り組んで、今、現地での人材育成の拠点として非常に注目されておりまして、ここもパプアニューギニアの首相以下、全閣僚が視察に訪れるというようなことで注目を集めているところです。
 これからが森づくりに入りますけれども、これはフィリピンのルソン島中部に位置するヌエバビスカヤという所ですけれども、このとおり、見渡す限り禿げ山の連続だという中で、日本で研修を受けたOBの1人がこの地域に住んでおりまして、何とかこの地域をぜひ緑にしたいということで、93年からプロジェクトがスタートしました。最初のころ、こういう禿げ山だったんですけれども、今はもう林地はこれ以上になっております。そういう中で、森ができてくることによって林産物を生かした取り組みだとかも、今行っており、シイタケ栽培普及という部分も農民の生活向上のために取り組んでおります。これはタイの東北部、スリン県ですけれども、1980年、初めて緑化を始めたときの状況です。一部塩が吹き出るくらいの、農業もできないような土地であったのが、二十数年取り組んできた中で立派な森に蘇ったと同時に、スリン県で数年前からラブグリーンデーというのを設けて、県知事以下県民が緑化に取り組むなど、そこまでの状況変化ができております。陸地だけではなくて、80年代後半から海岸線でのマングローブ植林にも取り組んできております。マングローブにつきましては、ついせんだってのスマトラ島沖の地震、津波の際も、マングローブの存在している所は被害が軽減されたということはいろいろな報告に出ておりますので、私どもは、これからも引き続きマングローブ植林にも力を入れていきたいと思っております。マングローブの場合、海岸線に緑が戻ってくることによって魚介類が増えてきて、漁民の生活向上につながるということで、これはバングラデシュですけれども、60キロにわたるグリーンベルトができ上がっております。これも93年ごろからスタートしているプロジェクトです。フィジーでは、サンゴの養殖プロジェクトも企業の支援を得て進めております。これはフィリピンのミンダナオです。彼は長年、緑化に取り組んでいる責任者ですけれども、当初こういう禿げ山であった所が、10年近くたって立派な森に蘇った。そして、森が蘇ることによって人々が集まり、村が形成されていくということで、新しくでき上がった村の人たちが少しでも生活向上できるようにということで、林地を利用した紙づくり、あるいはニト製品、ツルを使ったこういう工芸品等々を指導しながら、少しでも現金収入を得る道を探るというような協力もしております。
 十数年取り組んできた中で生まれてきたのが、この「子供の森」計画です。貧困とかそういう問題と非常にかかわりがございますので、途上国で非常にスパンの長い協力というのは難しい面がございます。そういう中で生まれたのが、急がば回れではないですけれども、子供たちに対する環境教育、やはりこれがキーだなということで、1991年から「子供の森」計画をスタートさせております。現在、24の国と地域で3,000近くの学校が参加しているプログラムで、学校単位での森づくりを進めております。非常に子供たちの笑顔がありますけれども、実際、こういう取り組みをすることによって学習効果が高まるとか、非常にいろいろなプラス面の効果が出てきておりますし、実際緑が増える。と同時に、子供がかかわることによって、もちろん先生もかかわってきますけれども、父兄が関心を寄せてくれるということで、地域緑化への広がりを期待したプログラムでもあります。これもフィリピンですけれども、1992年にスタートしたときに参加した子供が、実は10年たったらお母さんになって、また指導するという、あの小さい子が10年後、この右側のお母さんになっているんですけれども、そういう世代間の引き継ぎというか、そういう意味でもいいプログラムだなと自負しております。これはタイですけれども、森をつくる中でさまざまなエコ製品というか、環境教育との絡みの中で、子供たちがいろいろな展開をしてくれているということです。
 もう終わりますけれども、かれこれ25年ほど緑化に関しては取り組んでまいりましたし、9,000ヘクタールほど実績として上がっております。隣の皇居が115ヘクタールほどありますので、その80倍ぐらいかなと思います。
 うちの特色というのは、80年から毎年、大勢の日本の方々に海外に行っていただいて、実際に現場で体験していただくというプログラムを進めてきております。方針とか体制ということですけれども、うちはもともと海外での人つくりに取り組んできておりますので、そういう人たちがまさしく実施主体となって、具体的な協力活動を推進しているということです。うちの場合、もともとそんなに資金があるわけではございませんので、国際機関あるいは政府関係機関、今日もJBICさんとかJICAさんがお見えですけれども、そういうところ、あるいは企業、いろいろなところからの支援を得て進めております。最近ではコスモ石油に、パプアニューギニアのエコテック絡みのプロジェクトにかなりの支援をいただいていますし、東京海上日動では第2期の5カ年計画が2004年度にスタートしておりまして、4カ国で私ども半分のマングローブ植林を受け持って進めています。
 要は、我々は現場型のNGOということで、これまで取り組んできていますし、これからも基本的にはそれで取り組んでいこうと考えておりますので、可能な範囲での協力関係、連携をつくらせていただきながら、アジアを主体に人材、現場の人間はたくさんおりますので、具体的なプログラムをより進めていくことによって、広く地球環境問題に貢献できればと考えております。

○浅野委員長 ありがとうございました。ずっと継続してこられるということがいかに大きな力であるか、よくわかりました。
 それでは、ご質問、ご意見ございましたら。

○廣野委員 こういう現場型の環境NGOが人づくりとか村づくり、森づくりに続いて、貧困の解消をやっているということは、今のMDGの観点から言っても非常にすばらしいことです。質問は、こういう現場型の環境NGOが抱えている最大の問題というのは、何でしょうか。

○加藤委員 今の廣野委員のご質問にも関係しますが、オイスカさんは多方面の活動を行っておられるわけですけれども、特に最近力を入れておられる海外の緑化活動について、これはもう日本ではもちろんのこと、世界でも第一人者的なNGOになっていると思います。
 問題は、我が国にはほかにも緑化活動をやるNGOがたくさんあるわけですが、オイスカさんが培われたノウハウみたいなものを財政の問題も含めて他のNGO団体とうまく共有して、そういった団体も育つように、あるいは別の方面で力をつけるようにという点では、オイスカさんとしては、これまでにもNGO間のネットワークだとかいろいろ参加されておられますけれども、何かその点でご発言をいただければと思います。

○浅野委員長 我が国の国際協力について、ようやく最近になって、最先端の技術をいきなり先方に持っていって移植するというようなことは意味がないと言われるようになってきました。オイスカの活動は、最初からそれをずっと考えておられて、協力はハイテク移転だけではないというあり方を続けてこられて、多くのヒューマンネットワークをつくってこられた。その実績があると思うので、加藤委員のご質問についてもそう単純には答えにくいのだろうという気がいたしますが、今の廣野委員からのご指摘、加藤委員の御質問について、どうぞよろしくご回答をお願いいたします。

○廣瀬(オイスカ) 加藤委員の御質問への回答は、ちょっと難しいかなと思います。
 廣野委員へのお答えは、もう簡単明瞭で、お金と人です。実は、うちの場合、要するに海外に対する協力活動、技術協力ということで認可された法人ではありますが、基本的には、その国の人たちがその国の国づくりに貢献、あるいは発展に寄与していくというのは当然のことです。我々日本からの協力というのは、やはり限界があるだろうということで、まず人づくり、現地の人たちのレベルを高めていくことへの協力を主体に考えてきた。その結果として森づくり等も生まれてきたということです。ですから、これからも人材育成という部分に基本的な柱を置いて、オイスカは取り組んでいきたいと考えております。例えば、この短期間に「子供の森」計画という、今、海外で3,000近い学校が参加してくれているプログラムを実施できましたが、海外に行っている日本人は本当に数少ないです。そういう状況でも、日本で1年ないし2年学んだ日本語のわかる現地の青年たちが、もうアジアに散らばっている。彼らが自分たちの母校あるいは地域社会の学校に行って、こういうプログラムを紹介し、先生たちを説得して進めてきたということで、広がってきたということがございまして、やはり最終的には人だろうなと思っております。

○加藤委員 今のご説明で十分私の質問に対するお答えにもなりました。

○浅野委員長 ありがとうございました。実は福岡にもセンターがあるものですから、つぶさに見ていますので、私も事情はよくわかっております。
 さて、ほかにご質問がございませんようでしたら、今日おいでいただいたほかの方々に対して、さっき質問漏れがあったとか、これをもっと聞いておきたいということがありましたら、まだ若干時間がございますので、お受けできると思います。

○山瀬委員 オイスカさんの現場でいろいろな活動を見せていただいていますけれども、現地に入り込んだ日本人がいますよね。インドネシアだと、もう何十年も入り込んでいる人もいらっしゃいます。フィリピンで私が付き合った人はもう帰られましたが、オイスカの本部か何かで活動されているのですか。それとも、ほかのところへ展開しているのですか。

○廣瀬(オイスカ) いろいろなケースがございます。国内でやっていただいている人もいます。国内の場合は、うちの場合、半分はファンド・レージング(fund raising)でかかわっている人たちですし、それがまさしく民間としては非常に重要なポイントでもあると思います。

○小林委員 オイスカさんが、今、言われていたお金の話ですが、私どもも海外植林、現在、加藤委員にもご協力いただいてやっていますけれども、一番困るのは、やはりお金です。スポンサーを見つけても、大体3年で打ち切られてしまいます。「もういいだろう」とすぐ言われる。その辺、もしノウハウがあったら教えてほしいと思います。

○浅野委員長 持続的にお金を集める方法は何か。それは企業秘密なのかもしれませんが。

○廣野委員 お金の場合やはり2つ、私が日本のNGOに対する資金の回り方を見ていると2つ問題があって、1つは、今、おっしゃったように3年で打ち切りとか、長くても5年で打ち切りとかね、こういう問題がある。
 ところが、どうももう一つ問題がある。それは、資金を出す方は必ずしもすべて税制上の優遇措置を持っていない。そのために、非常に資金が限られている。限られているから、どうしても年間で打ち切らざるを得ない。だから私は、基本的に資金を出すのは民間企業であり個人ですけれども、そういう民間企業なり個人がそういう資金を出すときに、先ほどの我々のペーパーの中にもありますけれども、やはり税制上の問題は避けて通れないですね。やはりこれをきちんとやらないとだめだなと本当に思います。その点、どうも我が国は本当に怠慢だと思います。

○浅野委員長 当専門委員会報告としては、そこはしっかり書き込むことにいたします。環境省が言う分には一向に構わないでしょう。

○中村委員 報告書全体のことで、今日いろいろ伺っていて感想ですけれども、1つは「国際環境協力」というのが、国際協力の中の環境分野という位置づけになるのだろうと思いますが、環境の定義が非常に広いわけですよね。そうすると、これは環境省が所轄している部分をかなり超えている。例えば健康福祉、あるいは自然環境でもどちらかというとかなり自然科学分野の生物多様性等の部分を、どういうふうに位置づけて書き込むか、もうちょっと検討が必要なのかなと思います。非常に幅広い環境分野の、例えば国の他の省庁が所轄している、例えば経済産業省だとか厚生労働省が所轄している部分、あるいは今日の話だと農林水産省とオーバーラップしている部分がたくさん出てくるのではないか。そうすると、この書き込み方にちょっと工夫が必要かなと思います。

○浅野委員長 その点は、前から理念の議論、目標の議論のところでも出てきていますし、今日プレゼンテーションいただいた各組織・団体が持っておられる方針に照らしてみても、今、中村委員がおっしゃったような視点が見られます。さらに、この報告を出しました後、これを環境政策全体の方針として位置づけていく第3次環境基本計画のスタンスの中にも、従来型の環境という枠を超えた視点が要るのではないかという話は既に出てきております。これは高橋委員も含めて、この専門委員会でも随分議論してきたことです。事務局がこれをどこまで文章化できるか、そこは委員長としてまだ十分にはお約束いたしきれませんので、事務局から文章が出てきたところで、また議論したいと思います。

○中村委員 先ほどの、アメリカ等の財団が非常に支援しているというようなことがあったのですけれども、日本が中心的な役割をしていくための仕組みがちょっと弱いので、その辺をどのように書き込むかも非常に重要ではないか。今の廣野委員のお話にもありましたけれども、例えば日本がODAで2位の位置を占めながら、こういう支援部分が非常に弱体な財政基盤にあるということは、非常に問題ではないかと思います。

○浅野委員長 それについても、先ほどからのヒアリングでわかりましたので、どういう表現にするかはともかく、問題点があるということは、この委員会では認識が共有できていると思います。
 それでは、今のようなことも踏まえながら、次にはさらに骨子(案)を出していただき、その後、報告の案文が出てくるというスケジュールになります。恐れ入りますが、あと2分ほど我慢していただいて、事務局から今後の予定についてご連絡をお願いいたします。

○関谷環境協力室室長補佐 ありがとうございました。
 次回は、4月5日の2時半から5時という時間帯で開催を予定いたしております。
 中身としましては、今、委員長からもお話がございましたが、今日も一応お示しした報告書の骨子(案)を改めてお示ししまして、ご議論をいただきたいというのが1点でございます。それから、2時間半の大半を使いまして、ヒアリングの第二弾といたしまして、環境技術に関するヒアリングを予定しております。
 最後に、本日の議事録につきましては、後日事務局で取りまとめの上、委員の皆様にお送りして確認をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○浅野委員長 そういうスケジュールでございます。次回は骨子案についてさらにブラッシュアップをするとともに、ヒアリングを行い、それ以降の会で報告書の案についてのご審議を賜りたい、こういうことでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日は5分超過いたしましたが、ご協力どうもありがとうございました。これで散会いたします。

午後5時05分閉会