中央環境審議会地球環境部会第2回国際環境協力専門委員会議事録
開催日時
平成17年1月27日(木)15:00~16:56
開催場所
経済産業省 別館8階 825会議室
出席委員
(委員長) | 浅野 直人 | ||
(委員) | 青山 俊介 | 和気 洋子 | |
石田 耕三 | 山瀬 一裕 | ||
黒川 祐次 | 廣野 良吉 | ||
小林 悦夫 | 長谷川 雅世 | ||
園田 信雄 |
中村 正久 |
議題
1. | 国際協力の現状と課題について | |
2. | 今後の国際環境協力の理念及び基本方針について | |
3. | その他 |
配布資料
資料1 | 国際協力の現状を評価するに当たっての問題意識/視点 |
資料2-1 | 国際環境協力の現状と課題 |
資料2-2 | 国際環境協力の現状(一覧) |
資料3 | 理念及び基本方針の構成(案) |
資料4 | 理念及び目標(案) |
資料5-1 | 目標(案)係る考え方(1) |
資料5-2 | 目標(案)係る考え方(2) |
資料6 | 今後の国際環境協力の基本方針(案) |
資料7 | 国際環境協力を進める上での配慮すべき事項(案) |
参考資料1-1 | 国際環境協力をめぐる状況の変化と課題(補足分) |
参考資料1-2 | A more secure world: Our shared responsibility_Report of the High-level Panel on Threats, Challenges and Change (Executive |
参考資料1-3 | A Fair Globalization: Creating Opportunities for All(Synopsis) |
参考資料1-4 | 人間の安全保障委員会最終報告書要旨 |
参考資料1-5 | We the Peoples: the Role of the United Nations(Executive Summary) |
参考資料2 | 環境協力に関する主要援助国の取組み |
参考資料3 | 環境協力に関する海外動向の概要 |
参考資料4 | 国際環境協力の戦略性の事例 |
参考資料5 | 主要援助国の二国間ODA等の状況(2003年) |
参考資料6 | 国際環境協力戦略検討会報告書 資料編 |
議事録
午後3時00分開会
○田中環境協力室長 皆様おそろいになりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会国際環境協力専門委員会第2回会合を開催させていただきます。
本日は13名の委員のうち、11名の方にご出席をいただいております。加藤委員、高橋委員につきましては、今回はご欠席とのご連絡をいただいてございます。
今回の会合につきましては事前に浅野委員長にご相談申し上げまして、公開で開催するということにいたしております。本日の議事録につきましては、各委員のご確認の後、公開することになります。
それでは、浅野委員長よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
前回の委員会にご欠席で、本日初めておいでいただいた委員がお二方いらっしゃいますのでご紹介いたします。
まず、園田委員です。
○園田委員 松下電器の園田でございます。よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 もうお一人は和気委員です。
○和気委員 慶應大学の和気でございます。
○浅野委員長 それでは、本日の議事をご紹介いたします。前回、「国際環境協力をめぐる状況の変化と課題」、それから当専門委員会でどういうことを検討するのかということをご審議いただいたわけですが、その際、現状と課題についてはもう少し詰めた方がいいというご意見がございましたので、「国際環境協力の現状と課題」について議論したいと思います。その後、「今後の国際環境協力の理念及び基本方針」について議論したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、事務局から資料の確認をお願いします。
○関谷環境協力室室長補佐 それでは、お手元の資料をごらんいただきたいと思います。まず議事次第がございまして、1枚めくっていただきますと資料の一覧がございます。
まず、資料1でございますが、「国際環境協力の現状を評価するに当たっての問題意識/視点」というタイトルの1枚の紙でございます。
それから資料2-1、2-2、これが「国際環境協力の現状と課題」の資料でございます。
それから資料3、「理念及び基本方針の構成」(案)でございます。
それから資料4は、「理念及び目標」(案)ということで1枚のものでございます。
それから資料5-1と5-2につきましては、目標(案)に関する考え方の説明資料ということになっておりまして、それぞれ「アジア太平洋地域重点」、「東アジアの環境管理システムの改善」というタイトルになっております。
それから資料6でございますが、「今後の国際環境協力の基本方針」(案)でございます。
資料7が「国際環境協力を進める上で配慮すべき事項」(案)でございます。
以下、参考資料になっておりまして、参考資料の1-1から枝番で1-5までございます。これは後ほど簡単にご紹介いたしますが、前回の審議の中で高橋委員からご指摘いただきました国際的な最近の報告書の概要の資料でございます。
それから参考資料2が、「国際環境協力に関する主要援助国の取組み」という資料でございます。
参考資料3が、「環境協力に関する海外動向の概要」でございます。
参考資料4が、「国際環境協力の戦略性の事例」という1枚の資料でございます。
参考資料5が、「主要援助国の二国間ODA等の状況」の資料でございます。
それから参考資料6でございますが、これは前回、廣野委員の方からご紹介をいただきました「国際環境協力戦略検討会報告書」の「資料編」でございます。先日、委員の皆様方にはこれと同じものが入りましたCD-ROMを送らせていただきましたが、本日はこれを印刷・製本してお配りをしてございます。
さらに、委員の皆様のお手元には、先日事前にご確認をいただきました前回第1回の議事録を配布してございます。これにつきましては、もしこれでよろしいということでございましたら、近日中に環境省のホームページの方に掲載をさせていただくことにいたします。
以上でございます。もし、何かご不足のものがありましたら、お申しつけください。
○浅野委員長 それではよろしいでしょうか。
では早速、議事に入りたいと思います。まず、議事の1であります。「国際環境協力の現状と課題について」、事務局から説明をお願いします。
○関谷環境協力室室長補佐 それでは、資料1と資料2-1、2-2を使いましてご説明を申し上げます。まず資料1でございますが、これは本日ご議論をいただくに当たってどういった問題意識あるいは視点で現状を評価していくかというものでございます。資料2-1の方は、そういった問題意識、視点で現状と課題をまとめたもの。資料2-2は、具体的な取組みの事例を表形式でまとめたものになっております。
まず、資料1をごらんいただきたいと思います。今回、現状の評価をしていただくに当りまして、私どもの方で問題意識をいくつかの点でまとめさせていただいております。
まず1点目でございますが、これまでの環境協力は、地球環境保全あるいは持続可能な開発というものをいかに実現していくかということでやってきたと思いますが、これに向けてすべての国が国際的な協調のもとで行動していくという上で、十分に世界的な枠組みというものが形成されてきているのか。あるいはその枠組みが機能しているのかといった点が、最初の問題意識として挙げられるのではないかと考えています。
2点目でございますが、アジア太平洋地域、特に東アジア地域における協力というものはどうかという視点でございます。我が国と密接なつながりのあるアジア太平洋地域、特に東アジアの地域は、まさに今、著しい経済成長を遂げるとともに、環境悪化が問題になってきております。こうした中でさまざまな政策対話あるいは具体的な協力が環境分野でも進んできてはおりますけれども、こういったものは本当に戦略的あるいは効果的に行われているのかどうかという視点が必要かと思います。
3点目でございますが、さまざまな主体による国際環境協力ということで、政府のみならず地方公共団体、企業あるいはNGO、NPOなどの主体の取組みが進んできておりますけれども、同じような分野あるいは同じような国、地域で活動している主体間の連携が十分かどうか。あるいは政府によるそうした活動への支援というものはどうかという視点でございます。
裏にいっていただきますと、4点目の国内の体制でございます。これまで国内の体制ということで協力に携わる専門家の人材育成といったものもなされてきておりますけれども、これらは主にODAの枠組みの中での体制強化といったものが中心ではなかったかと思います。今後のことを考えますと、より幅広い取組み、ODAを超えた取組みをしていく上で、人材の育成あるいは情報、資金といったものが十分かどうかといった視点も必要かと思います。
最後に5番目でございますが、地球環境保全に関連して、これまでリオサミット以降、さまざまな国際的な議論がなされてきましたけれども、例えばWSSDをはじめとして、いくつかの重点分野というものがその中で議論をされてきております。こういった重点的な分野というものが考慮された取組みが我が国としてなされているのかどうか。また国際社会の中で特に問題視された貧困の削減あるいは新たな貿易体制への対応、さらには紛争予防あるいは復興といった領域がどの程度考慮されているのか。こういった視点も重要ではないかと思います。
以上の視点に立ちまして資料2-1の方に移りますけれども、現状と課題をまとめさせていただいております。
1.といたしまして「世界的・地域的な枠組みづくりの現状と課題」というものをざっと見たいと思います。
最初に、世界的な枠組みづくりでございますけれども、近年のグローバル化の進展の中で、いわゆる環境問題というだけではなくて紛争あるいは貧困の増加、エネルギーの枯渇等々の関係で人々の中に不安が広がっている。環境問題もこうした課題との関係が非常に強いものがありますけれども、現在の環境に関する世界的な枠組みに、こうしたさまざまな地球規模の課題に対応するための視点というのがどれほど組み込まれているのか。必ずしも十分ではないのではないかというふうに考えております。
それから、これまで数々の国際環境条約あるいはWSSDなどの実施計画もつくられてきておりますけれども、具体的な行動あるいは具体的な枠組みといったものにまで至っていないというところもあるのではないか。政策的な裏づけがない、あるいは財政的な裏づけがないまま計画がつくられているのもあるのではないかということでございます。なおここで(参考資料6-17)とございますけれども、これは先ほどご紹介いたしました参考資料6の資料編の中で関連する資料があるという意味でございまして、参考資料6の中の17番目の資料がこれに関係するという意味でございます。
さらに国際的な枠組みの関係で、特に今、気候変動に関しましては、京都議定書の発効が目前にひかえておりますけれども、さらに地球規模での対策については将来の枠組みの検討、あるいは温暖化への適応の支援というものはこれからの課題ではないかと思います。
続きまして、環境技術の規格及び技術保護制度といった問題についても、例えば途上国ではISOを利用する国が増えている一方で、我が国のJIS規格がそれと異なる場合には、JIS規格の技術の導入が困難になっているような場面もあるのではないかといった課題でございます。
それから貿易と環境面でいきますと、WTOの交渉が不透明な展開になっているということに加えまして、FTAの締結に向けた動きも我が国に関係したものがだいぶ活発になっている。しかしながら、いわゆる環境協定をめざすような動きにはまだ至っていないという現状にあるかと思います。
2ページ目にいっていただきますと、地域的な枠組みづくりでございます。ここでいう地域はアジア太平洋あるいは東アジアでございますけれども、東アジアの環境を管理する枠組みということでは、ASEANの中では環境協力がかなり取り組まれておりますほか、日本の関係でいいますと、日中あるいは日韓の二国間の協力協定がございます。また協定化はされておりませんけれども、日中間の環境大臣会合あるいは北東アジア地域の各国が参加した協力プログラム、NEASPECといいますけれども、こういったものもございます。しかし、北東アジアについて見ますと、やはり政策対話レベルにとどまっているというのが現状ではないかと思われます。また東アジア共同体の設立というものがこのところ叫ばれておるわけですけれども、この中でも環境保全あるいは持続可能な開発といった問題は、必ずしも主要課題としては取り上げられていない状況だと思います。
アジア太平洋地域全体について見ますと、やはり環境大臣会合がいくつかございまして、政策対話は促進されてきておりますけれども、これを具体的な環境管理にどうつなげていくかといったことが課題になっているかと思います。また、今年は「3Rイニシアティブ」が始まるということでございますので、これをどう地域に展開していくかといった課題もあるかと思います。
2.といたしましてアジア太平洋地域における実際の環境管理の現状はどうかということでございます。これは枠組みといいますよりは具体的な協力の状況という意味でございます。
最初に地域レベルあるいは準地域レベルで、行動計画のようなものがきちんとできているかということでございますが、実際はなかなか実効性のある行動計画にまでは至っていないというふうに言わざるを得ない面があるかと思います。特に北東アジアを見ますと、この地域に関しては包括的な環境の行動計画というものが現状としてはございません。また、ほかの準地域について見ますと、拡大メコン地域などについては、今後の環境戦略の具体化が待たれる状況にございます。
他方で、いわゆる環境の中のいくつかの分野については、アジア太平洋地域での計画といったものが見られるものもございます。例えば都市環境改善、海洋保全、森林といった分野については共通の計画と呼べるようなものができているという状況にございます。生物多様性などの分野ではまだできていない。分野によって差があるという状況でございます。
それから、政策の実施状況の点検・評価。具体的な計画をつくったあとは、その実施状況を点検・評価していくということが必要になってくるわけですけれども、その前提となる環境モニタリングのシステムは未だ十分ではない。さらに政策そのもののレビュー、例えばOECD諸国では環境政策のピアレビューがあるわけですけれども、アジア太平洋地域の途上国に関してはそういったものはほとんど実施されていないのが現状ではないかと思います。それから研究面、共同研究につきましてはさまざまなネットワークは形成されてきておりますけれども、実際に各国の政策立案との連携のとれた研究の推進といった面では、必ずしも十分ではないのではないかと考えております。
4番といたしまして情報・データの整備でございます。我が国もアジア太平洋地域の各国と協力いたしまして、環境モニタリングのネットワークを構築してきております。例えば酸性雨に関しましては東アジア酸性雨モニタリングネットワークを形成しておりますし、近年では黄砂についてもモニタリングネットワークが必要ということで取り組んできております。ただ、その対象あるいはカバーする地域といった点で、これからさらに拡大を図っていくということが課題として挙げられると思います。
4ページ目にいっていただきまして、開発途上国の環境管理能力の状況ということでございます。やはり、開発途上国の環境管理能力、キャパシティの強化というのは課題であろうかと考えられます。我が国も、環境の関係のキャパシティ・ビルディングの取組みはかなり行ってきておりますけれども、地域全体の環境管理システムを改善していくという視点で、いわば各国のレベルをそろえて底上げをしていくという視点に立ったキャパシティ・ビルディングのプログラムづくりなどはまだ行われておりませんし、実施体制といった面でも各国間での連携といったものはとられていない現状にあるかと思います。それから、環境管理能力といった場合に、政府あるいは地方公共団体の能力にとどまらず、途上国の企業なども含んでおります。開発途上国で活動する企業のうち多国籍企業は先進国の規制なりを踏まえて積極的な対策をとっているというところはあるかと思いますけれども、他方で途上国内のみで市場展開をしているような企業については、すべてではもちろんないにしても、かなり環境管理への関心が低いという傾向もあるのではないかというふうに考えています。
6番目としてODA等でございます。ODAに関しましてしは、御承知のとおりいわゆる環境案件、環境分野のODAというものがかなりの割合にのぼっておりまして、すでに大きな実績が上がってきております。それによって、個々の環境分野の技術移転、あるいはインフラ整備といったものが進んできているという現状はあるかと思います。他方で各途上国の政策立案あるいは実施能力の向上といった面につきましては、これまでの案件の中で重点がおかれることは比較的少なかったのではないかというふうに考えております。また、実際に機材供与あるいはインフラ整備をした経験から見まして、途上国自身に受入れ可能、つまり先進国の支援があるうちはいいのですが、それが切れても途上国自身が持続的に使っていけるような対策を支援するという視点がこれまであまり重視されてきていなかったのではないか。それから、環境ODAの評価が必ずしも十分ではないのではないかという問題意識も持っております。また実際のODAの実施の枠組みとしては、個別の環境問題への支援ということで、要請に基づく協力ということでやってきており、相手国の全体的な環境統治とそのための管理能力を向上させるという面で、どこまで効果的であったかという評価が必要ではないかと思っております。そういった視点は、必ずしも十分な位置づけはできていなかったのではないかと考えております。また、最近は国別の援助計画に基づきましてODAを実施するということになっておりますけれども、この中で環境管理の視点というのは、まだ戦略的な組み込みはなされていない現状にあろうかと思います。それから、地域の環境問題についてのODA供与というのがなかなかむずかしい。つまり複数の国にまたがった場合のODA供与というのは、枠組みがなかなか整備されていないという問題があろうかと思います。それから紛争の予防あるいは復興問題についての取組みというのも、今後のODAの中では重要になってくると思いますけれども、この辺も現状としてはまだまだ経験もあまり蓄積されておりませんし、今後の課題ではないかと思います。
3.国際環境協力の実施体制の現状と課題でございます。前回の委員会でもご指摘がございましたけれども、役立つ情報というのがきちんと整えられていない、あるいは更新されていない、使いやすくなっていないという面と、我が国の取組みを外に発信していくといった取組みも十分ではないのではないか。また、我が国の中の国民に対する情報の提供、それは国際環境協力に参加する方の裾野を広げるという意味と、またそういった取組みに対する国民の支持を得るという意味がございますけれども、いずれの面からも情報提供が十分ではないのではないかという認識を持っております。
6ページ目でございますが、人材の育成と活用についての課題でございます。一つは政策対話あるいは計画づくり、国際機関での活動などに携わる人材が必要ということと、それからもう一つは実際の途上国での環境協力の専門家として活躍していただくような人材、さらには国際的な研究に従事する研究者、こういったいくつかの人材のタイプがあると思いますけれども、いずれの人材についても不足しているのが現状ではないかというふうに考えるところでございます。
また、人材の育成と並んで人材の活用面でも、これまでのところ必ずしも十分な取組みがなされていない。例えばデータバンクのようなものを我々もつくってきておりますけれども、そういったものに登録されたあとのアフターケア、例えば最新の情報を逐一提供していくであるとか研修をやっていくとか、あるいは具体的な協力案件の情報提供をして協力を募るとか、そういったアフターケアが十分でないという指摘がございます。また協力に携わる方々の出向元といいますか、元の職場での受入れの問題などもあるかと思います。退職者の活用といった問題もこれから注視していくべきではないかと思っています。
(3)としまして、資金の確保と活用でございます。ODAあるいは研究費、それから、環境省の予算も含めましていろんな行政経費があるわけですけれども、先ほど最初に現状をご紹介いたしました世界的にあるいは地域的な枠組みづくり、具体的な環境管理のプログラムづくりの執行といった面で、予算というものが果たして十分なのか、あるいは戦略的な投入が十分になされているのか。もう少し戦略的な投入ということを考えてもいいのではないかというふうに考えています。
それから我が国は、国際機関に対して多額の資金供与、資金供出をしている現状がありますけれども、それと比較して、国際機関が行うプロジェクトに我が国が関与する、我が国の専門家などが関与するということは極めて少ないという現状があります。この辺も我が国の貢献というものが、外から見ますと十分認識されていない一因になっているのではないかというふうに考えています。
7ページ目といたしまして、環境協力の推進体制でございます。国際機関に日本人が少ないことによって、先ほどの話とつながりますけれども、国際機関におけるプレゼンスあるいは国際機関との取組みとの連携といったものが十分にとれていないのではないか。それから我が国の中での関係機関の連絡調整、例えば関係省庁内での連携、さらには政府と地方公共団体、NPO等との連携が十分とれていないのではないか。それから環境省の中を見ましても、国際協力全般を統括する機能というのが十分に整備されていないというのが現状でございます。
それから、地方公共団体、企業、NPO、NGOの協力体制という面で見ますと、地方公共団体におきましては国際協力自体が必ずしも義務的な事務ではないということもございまして、予算あるいは人員の配置という面ではむずかしい面があるというご指摘がございました。最近は、地方自治体の中にもJICAあるいはJBICのプログラムを活用して、プロジェクトに協力するといったこともなされておりますけれども、これはまだ限定的な内容になっているというのが現状でございます。
NGO、NPOの取組みについて見ますと、やはり国際的にイニシアティブをとれる我が国のNGO、NPOというのは数が限られているというふうにいえるのではないかと思っています。また、環境教育の面での専門家がNGO、NPOの間では十分育っていないということがいえるかと思います。
それから、企業における取組みについて、我々なりに見ますと、自らの環境保全事業の実施あるいはNGOなどへの資金支援というのをかなりやっておられるということではございますけれども、さらに今後は途上国なりの、現地の環境管理の改善にいかに貢献していくかといった面での協力といったものも望まれるのではないかというふうに考えております。
最後に、研修員の受入・途上国におけるサポート体制というのがございますけれども、必ずしも現状やられております途上国の政府、職員等への研修が役立っていないのではないか、帰国後活用されていないのではないかといった指摘もあります。それから実際にプロジェクトを途上国で行うに当たっては、途上国の人材を活用するということが効果的でありますけれども、我が国のプロジェクトに関してはなかなかそういった面が進んでいないということがあるかと思います。
以上、ちょっと長くなりましたが、現状と評価を事務局の方でまとめさせていただいた資料でございます。よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 ありがとうございました。資料の2-2は実際にどういうことが行われているかという、その事実の事例をとりまとめたものですね。
○関谷環境協力室室長補佐 失礼しました、そうでございます。資料2-1の各項目に対応した具体的な取組みの事例をまとめたものでございます。
○浅野委員長 ということです。それではただいまの「国際環境協力の現状と課題」に関しての資料2-1を中心に議論を進めてまいりますが、このペーパーについて、この点は不足ではないかとか、この点の認識はいかがなものかとか、いろいろご意見があろうかと思います。質問のような形ではなくて、むしろ積極的にご意見をお出しいただいてこのペーパーをもうちょっとちゃんとしたものにしていかなければいけないということが我々の専門委員会の役割でございますので、その点をご配慮いただいてご発言をお願いいたします。どうぞ、どなたからでも結構です。ご発言ありましたら挙手をお願いいたします。
では、廣野委員どうぞ。
○廣野委員 枠組みとしてはこれでいいのですが、実際にこれを準備した人間の一人として、反省している点が1つあります。それをちょっと申し上げたいと思います。
昨日、私、カンボジアから帰って来ました。タイとカンボジアへ10日間ばかり行ってきたんです。環境問題を考える上で非常に重要だなと思ったのは、アメリカのUSAIDとかEU、現地の政府なりNGOとも話し合ってきたのですが、環境問題というのはその国の民主主義体制とものすごく関係があります。民主化が行われていないとなかなか環境に対するきちんとした体制は起こり得ないということをいろいろなところで見てまいりました。
一つの例を言うと、こういうことになんです。せっかくオーガニック・ファーミング(organic farming)を一生懸命やっていて、すばらしい成果を上げている国、地域があるのですけれども、それに対して、政府がほかの理由で、そこの土地が必要だからといって取り上げ、大きな建物をつくってしまう。せっかくオーガニック・ファーミングを一生懸命やっているのだけれども、そういうものに対して中央政府は一切無頓着である。民主化されていないから中央政府が勝手にそこで何々の建物をつくると決めてしまって、その人たちを追い出してしまうのです。
そういうことが、1つ、2つではなくて非常に多い。もし、そういう新しい地域開発に対して計画をつくるときに村民が関係していれば、当然そんなことはやってはいけないということを言うわけですね。ところが、村民がそういう地域開発計画に参画していないものですから、勝手に中央政府が決めて押しつけてくる。村民は結局、どこか別のところを探さなければいけないということで、難民キャンプへ入る人もいます。そういうひどい状況が、アジアの各地で起こっているのです。
それからもう1つは、途上国のある国では最近非常に現地の企業の発展が激しく、経済成長も高い。経済が発展することはかまわないのですが、そういう中で、環境というものに全然配慮しないで、いろいろなことが行われている。そのときに、もし地域社会や地方自治体が国家の産業構造の改革の議論に参加することができるならば、当然環境に対する配慮ということをいうわけです。ところがそういうことも行われない。
結局、民主主義というか民主化というものが十分行われていない。どこの国だって完全なところはないのですが、ただそういう問題と環境問題というのはつながっているということを今回10日間ばかり旅行しましてものすごく感じました。そういう問題を、今後の国際環境協力にどう位置づけたらいいのか。資料を見ると、世界的な枠組みづくりとか東アジアの環境管理に対する政策ということで、かなり環境ということに絞って書いてあるのですが、その環境というものを壊す問題がそこにあるので、そういう問題をどういうふうにとらえていったらいいのかという課題がある。
これは私、特に今答えを持っていませんけれども、環境というものは全体の大きな中の1つであるということですね。そこからすると、全体というものに対する取組みをどうするかによって、環境というものに対する取組みが変わってくる。あるいは、全体で変なことをやると環境の面で一生懸命どんなにやっても全部台無しになるという、この問題をどうとらえるか。ちょっと考えた方がいいのではないかなと、これは自分の反省として思っているところです。
○浅野委員長 ありがとうございました。ただいまの廣野委員の反省はよくわかりました。この現状と課題というペーパーに則して考えるときに、今のお話がどんな形で入り込むかというのを考えながらうかがっていたのですが、次の資料に理念があります。その中の東アジアというところに特化しての議論している箇所でも、あるいはあとの方に出てくる配慮事項にも、地域特性をしっかり見なければいけないという書きぶりが見られるのですが、こういうところに、今、委員がおっしゃったような視点をしっかり入れておくということでどうでしょうか。私も準備段階で事務局にもお話をして、あまりにも環境省の問題にしぼって、そこだけで環境を見るという発想はやめた方がいいということは申し上げました。そのことを、多分、廣野委員もお気づきでご発言になったのだろうと思うのですが。
○廣野委員 できましたら、この「世界的・地域的な枠組みづくりの現状と課題」と書いてあるのですが、その一部に入れていただくといいのではないかと思います。
○浅野委員長 環境の問題と様々な政策課題との連続性をしっかり意識しなければいけないということですね。
○廣野委員 そういう視点をどっかに入れていただくといいですね。
○浅野委員長 わかりました。どうぞ、和気委員。
○和気委員 前回、欠席して申しわけございません。何か話をあるいは戻してしまうかもしれません。その辺は申しわけございません。まず資料1の1のところで、この大きな「地球環境の保全と持続可能な開発」という、最初に打ち上げたこのキーワードなのですが、途上国を含む環境協力の問題を議論するときに、地球環境の保全というのが我々共通の課題であるというふうに、途上国のステークホルダーを含めてですけれども、共通認識が持ち得ないところに問題があると思います。つまり、地球環境というときに何を指すのかということです。例えば環境問題といっても、途上国の非常にローカルなミクロの土壌汚染もありますし、川の汚染もあるし、あるいは大気の本当に特定のローカルな問題もあります。
それも実は、ヒューマン・セキュリティーの問題からすればとても重要ですが、それを地球環境とまでは我々は言い切れない。つまり非常にローカルな環境問題で、グローバル・イシュー
(global issue)というわけでもない。ですから、地球環境の保全というふうにボーンと出してしまうと、途上国の人たちは、地球温暖化問題とか生物多様性をイメージするのだろうと思うんですね。そうすると、目の前にある環境問題というイメージが多分薄れてしまうと思われます。地球環境の保全という言葉をまず最初に出すのは、これはどちらかというと先進国サイドのイメージです。もしその辺の曖昧さを排除するのであれば、持続可能な発展という中に地球環境の保全も入っているというふうに私たちは多分イメージしているのではないかなというふうに思ったりもするんですね。地球環境の保全というのを、途上国も含めて共通の課題ということをあえて環境協力、特に日本の政府がやるべき政策・立案の中で出すことは、もう一ランク下のところで、もうちょっと具体的な政策問題意識を出した方がいいのではないかというような気がいたします。
○浅野委員長 わかりました。それはこの後の理念のところで、まったく同じような話が出てくるので、そこで議論しなければいけないのでしょう。
○和気委員 つまりコミュニケーション、地球環境保全が本来の共通の認識だというところにいくまでが大変な話だろうなという気がします。
○浅野委員長 今の点についてコメントすると、ちょっと申しわけないですけれども、これにあまり違和感を覚えなかったのは、環境基本法では「地球環境の保全等」という言葉の中に途上国における環境保全というのを含めているからです。だから、ここで法令の言葉を正確に使い、「地球環境の保全等」と書くと、今のご指摘の点は、全部法令上の表現としては全部含まれますね。多分、書いた人はそういうつもりで書いている面もあると思うので、決して温暖化だけを意識してはいないと思います。しかしこれは法律の上での話ですから、あまり一般受けのすることではありません。書きぶりの工夫は必要ですね。
○和気委員 それから2つ目の○ですが、もう1つの重要な問題意識である「持続可能な開発」のところで、国際的に密接な相互依存関係が国際社会の中に出てきたとあります。これは確かにそうなのですが、今の時代に開発問題を議論するときには、多くの途上国が市場経済化していくわけですね。市場経済のメカニズムが経済発展の重要なモーメントになってきているわけです。市場メカニズムというものが一方であり、かなりの競争原理がある種成立している。しかし、その競争原理だけが主軸になってしまうとさまざまな問題が出てくる。そこで初めて協調とか、市場のガバナンスとか、市場の質とか、そういう問題が途上国の開発問題でも出てくるのではないか。それが、この2つの目の○のもう少しかみくだいた議論ではないかなと思うので、どっかに市場、マーケットというイメージがある言葉があった方がいいのかなという気がしております。
○浅野委員長 わかりました。それは、国際的に密接な相互依存関係というのが何となくふわふわしているということですね。
○和気委員 ふわふわしていますね。
○浅野委員長 もっと現実はそんなことはないということですね。
○和気委員 今の社会は、市場メカニズムを通じた経済発展を指向し始めているわけです。
○浅野委員長 その視点がちょっと欠けていて、ここの表現が何となくユートピア思想みたいになってしまっているというご指摘ですね。
○和気委員 そうです。市場の競争原理がすごくあるのです。でもそれに任せるわけにいかないので、協調とか協力とかコ・ガバナンス(co-governance)とか、政府の役割とかというのを、環境問題が特に強調しなければいけないというところを出した方がいいと思います。
○浅野委員長 はい、ご指摘はよくわかりました。これも何となく環境基本法の条文を写したような印象があるので検討をお願いいたします。では、どうぞ青山委員。
○青山委員 実施体制についてですが、環境協力というときに、結局だれが協力するのかというと、企業が事業活動の一環として参画する、あるいは政府関係者が取り組む、研究者が研究や経験を活かす、あるいはNPOという形で個人あるいは組織として関わっている。そのような行動(協力)に対して、環境協力政策としてどこを支援、後押しするような体制になってきているのかというあたりを深める必要があると思います。環境協力の主体とはだれなのか、具体的には、私は企業、NPOといった主体が伸びていくと思います。今、途上諸国には、多くの企業が進出している。そういう国際的な展開のなかで、自ら企業として環境規格をつくり、途上諸国に進出した際に、どういう環境分野協力や環境行動をとるかということがあると思う。例えば中国ですと、最近はスーパー・コンビニ資本の進出が報道されている。こうした資本がその国で日本の経験を活かしてどう行動し、モデルを示せるか。容器包装材などでの対応を含めてモデル的な展開をする時に、ほんのわずかな資金的な支援がそこにいけば、支出としては非常に小さいものだと思いますが、そうしたモデルを示していくことが必要ではないかと思います。
それとODA事業では、どうも日本がやってきたことは、A市でやったことをB市、C市でもやるといった例が多かった。これはODA資金の活用法としては決して良いことではない。その国でできるモデルを示して、そのモデルを見せながらそこで研修や一緒にその現地化を考えていくという内容のODAにしていかねばならない。
もう1点は、日本の強みというのは産業公害経験と共に、高度経済成長と都市化の中で日本が行ってきたことを通じての経験知見や反省事項を数多く持っていることです。巨大な代謝系インフラをここまでつくって、これから先どう維持するのかをこれから非常に悩まなければならない現実にも直面しています。こうした教訓を活かした相手国側でのシステムづくりということが重要と考えます。
○浅野委員長 わかりました。この点でも原案の文章は、やはり役所の側から見たものになっていますね。できれば、園田委員や長谷川委員に企業の立場でどうなのだろうというようなご発言をいただくともっとよくなると思いますが。
○園田委員 園田ですが、初めて参加いたしました。企業の立場で、今回のお話にどこまでできるかということを考えておりました。私どもは、企業のグローバル化ということで東アジアに出ていっているわけです。そのときに、環境は私どもの会社の一つの大きなビジョンであり、環境への貢献ということを言っておりますから、ビジネスを通じてどのようにそれを実現していくかということを実践しております。その視点から、我々がどんな課題を持っているかということで、どんなご意見を言えるかなと先ほどから考えております。
ここには、技術保護とか規格の統一化ということを出していただいていて、まさにそれはそのとおりですが、もっとそれ以上に何か深い意味での、例えば先ほど廣野委員が言われた民主化の話に近いような、本当に約束事を守るとか、教育の問題とか、そういうレベルのところまである程度視野に入れた政策を考えていかないと実効あるものにならないというのが私の実感です。そんなニュアンスをぜひ、教育も含めて入れるということを考えていただきたいと思います。以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。今日、たまたま別の場所で、森嶌前会長を中心に中国の民法のシンポジウムをやっています。そこでちょっとびっくりしたのですが、中国は国家所有権が私的所有権よりはるかに強くて、無補償で政府が財産を収用することができると中国の方が報告し、これは困ったものだなどということを言っている。中国にしてそうであるなら、先ほどの廣野委員の話もよくわかります。
長谷川委員、関連して何かありましたらどうぞ。
○長谷川委員 やはり企業が本業で出ていくときには、もちろんビジネスということもあるのですけれども、社会貢献の面からも考える必要があると思います。例えば植林などということで現地に出て行くにいたしましても、現地にただただ植林していたら、それが引き上げていったときには続かなくなる。というようなことで、やはりその地元の方々とのパートナーシップが重要ですね。ただ、それを得るためには、やはりそこの国の機関などと協力してということも必要です。今、具体的には、トヨタが中国で植林活動をしていることを念頭におきながら言っているのですけれども。こちら側もノウハウを持った人間が、定期的に現地を訪れて一緒にやっているようでございますから、今、園田委員がおっしゃいましたように、教育ということもそうですが、お金を出すだけでなく、まず同じ土俵で一緒にやっていけるような、そういうことができるように企業も努力することができれば、一歩ずつでもタネがまいていけるのではないかなという気がいたします。
○浅野委員長 ありがとうございました。黒川委員どうぞ。
○黒川委員 資料1、それから資料2でご説明いただいた個々の点については、まったく異存はないのですが、ただ、この全体を見てみますと、これは私だけが感じたのかもしれませんけれども、ある程度進んだ国に対しては、開発がある程度までいったから、これからが環境だという、何となくそういうニュアンスがあるのではないかという気がいたします。
私が前の任地で見ていたところによりますと、環境問題というのは本当に国民所得の低い100ドルレベルの国からもう本当に必要だと思います。それは、先ほど廣野委員がおっしゃったカンボジアとかああいうところで、民主主義と一緒に環境問題をやっていかないといけないということと関連があるのだろうと思いますけれども、本当に食うや食わずのときのその状態から環境問題も一緒に考えてやっていかないといけないということが必要だろうと思います。そういう観点も盛り込んでいただけたらと思います。
それからもう1つは、個別の例で、大した問題ではないのかもしれませんけれども、前任地でブルキナファソという国を兼任してやっていましたが、そこはご承知のように人間開発指数が世界の下から2番目の国です。私がそこへ行っていろんな話を聞きますと、日本のJICAも、それからJICAとは別に当時の環境庁も同じ環境分野、特に砂漠化防止の分野で独自に活動をしている。それから緑資源公団もやっている、農水省もやっているというのですが、お互いがやっていることは全然わかっていないのですね。あそこはご承知のようにサヘル地域で、砂漠化というのは非常に大きな問題です。それが、砂漠化防止について日本全体として見ると、結果としていろんなことをやっていたということで、日本の国内における連携が非常に必要だと感じました。
ブルキナだけではなく、ほかのマリとかセネガルとかニジェールとか、同じサヘル地域でも日本はやっているのですが、これもまた、お互いに連携なくやっていました。そういうのを一つにまとめて、砂漠化防止分野でサヘル地域に対する日本のODA、ないしはODAでないものも含めての協力というようなことで、一つの戦略的なコンセプトを打ち出せば効率的であるし、対外的な広報効果という面でも非常に大きいのではないかと思います。今のところはそういう面が非常に欠落しているように思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。サヘル地域をフィールドにして研究をしている地球環境研究がありますが、聞いてみると、確かにおっしゃるように、そこのフィールドをやっている人はそこのことしか知らなくて、サヘル地域全体に広がっていかないという印象がありました。今おっしゃったことはよくわかります。小林委員どうぞ。
○小林委員 3点あるのですが、1点目は全体的に特にどこが問題というわけではないのですが、国際協力にあたってちょっと感じましたのは、国が戦略的に国際協力をするに当たり、そのための人材をどうするか、情報をどう集めてくるか、それから予算をどう確保するかということがあります。それからもう1つは、地方自治体とかNGOとか企業が主体的に国際協力していく、そういうものに対して、政府としてどういう支援をしていくかということ。例えばお金の問題、人の問題、それから情報提供という問題も含めて。そういう2つの支援があるように思います。その2つが、この中では全部混在して入っているので、それぞれに分けた方がいいのではないかなという感じがしました。
それから内容的に別に問題はないのですが、実際に地方自治体として協力していてすごく感じるのは、この資料2-1の4ページのところに「環境ODA実施の枠組み」の中で出てくるのですが、「ODAはこれまで相手国の要請により実施されてきた」というこの文言です。これは現実にそうなのですが、相手国が環境対策をしなければならないという認識に立ってから協力しても間に合わないので、その認識を持たすための国際協力というのが必要です。ところがこの話は一方通行になっていまして、例えば、JICAにそういうことをしたいという申請を出しても、相手国にそのニーズがないと全部切られてしまいます。これでいいのかという感じをすごく持ちました。その相手国の要請だけではなく、日本側から国際協力、国際需要を持たせるような、積極的というか攻撃的な国際協力というのが要るのではないかと思います。これはここに書いてあるのですが、そこを大きく重点にしてほしい。
それから6ページのところの「資金確保と活用」のところですが、これの2つ目の○のところで「地方公共団体やNGO/NPOの国際協力活動に関して、政府、財団法人、基金などからの補助金があるがあまり増えていない」とあるのですが、実はこれはヨーロッパのそういう国際協力のNPO団体等に行って話を聞いてみますと、企業寄付が大変多いです。その企業寄付の中に、実は日本企業は結構多い。にもかかわらず、国内のNGO、NPO団体に日本国内の企業からの寄付というのはほとんどない。これはなぜなのかなという感じをすごく持ちまして、もしかすると税制とかその辺に問題があるのではないかということで、これは国際協力の問題でないかもわからないのですが、少し重点をおいていただければという感じがしました。
それから一番最後の8ページの研修員の受入のところに出てくるのですが、JICA等で研修コースをやっているのですが、今ここにありますようにアフターケアがほとんどなされていません。なぜなされていないかというと、このアフターケアの方が、費用がかかるわりにほとんど予算がつかない。研修するということには結構予算がつくのですが、アフターケアというのは何か余分なような言い方をされて、実らないというのが結構ありますので、この辺も重点的にお考えいただけたらという感じがいたします。
○浅野委員長 はい、わかりました。多分インフラ整備と同じで、つくるときは金が出るけれども、メンテナンスに金が出ないという構造なのでしょうね。
まだご意見ある方もおりますが、あと理念のところ、目標のところで同じような議論ができると思いますので、ちょっととりあえずここで、次の議事に進みたいと思います。
○廣野委員 ちょっとよろしいですか。先ほど小林さんがおっしゃったことに対してですが、要請ということで確かにODAはやってまいりましたけれども、実際にはこの10年間ぐらい、外務省、その他の各省庁もそうですが、政策協議というのをやっておりますので、政策協議の中で、こちらの方から環境をやったらどうでしょうかといって、環境案件を持ち出すような努力はしてまいりました。
それからもう1つは、2ページの「東アジアにおける環境管理」というところで、いろいろ書いてあるのですが、今回、私がインドシナへ行って来て感じたのは、メコン流域における環境整備の問題です。中国が現在、雲南省の電力の需要、これが経済の発展過程でものすごく高くなっているものですから、水力発電をはじめどんどんダムをつくっている。そうすると、下流の方の水がだんだん足りなくなってくるのです。素晴らしい稲作があったベトナムのメコンデルタですが、今は塩水が上がってきています。その結果、非常に環境破壊が行われている。そういう問題について、例えばベトナムがいくら中国に言ってもだめですね。ラオスが言ってもだめ。中国へ何か言う場合には、ある程度力を持ったところが言わないとだめで、そうなってくると国際的な枠組みがあるとやりやすい。途上国の一部の被害を受けている国が、中国に対してどうこう言ってもなかなか改善してくれないというのが実際あります。ここに、せっかく東アジアの環境管理と書いてありますから、そういうような問題も含めて、日本がもっと積極的に枠組みづくりの中でしっかりとやっていくことも必要であると思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それでは、資料3以下についての説明をお願いします。
○関谷環境協力室室長補佐 最初に資料3に「理念及び基本方針の構成(案)」ということで、「理念」から「目標」、「基本方針」、「配慮事項」というふうに、この基本的な考え方の部分の構造というものを示してございます。これはこの専門委員会に先駆けて検討しました検討会での整理も踏まえておりますけれども、まず上位に位置する理念的な問題を整理した上で、具体的にどういった方針で取り組むかというのをいくつかのレベルで規定していこうということで、この4つを書いてございます。
まず理念は、関係主体が共有する価値観、あるいは普遍的な大命題といったものを規定してはどうかということでございます。目標といいますのは、何に重点をおいてその理念というものを実現していくかということ。基本方針はその目標達成のための行動の基本的な方向ということで位置づけてはどうかと考えています。配慮事項につきましては、具体的な協力を推進する上でいくつか分野横断的に配慮すべき事項があると思いますので、それを規定するというものでございます。
資料4以下に、理念以下の案についての説明がございます。資料4は、理念と目標について考え方を書かせていただいております。まず理念でございますが、先ほどもちょっとご議論がありましたけれども、これは前回の答申の際にも地球環境の保全あるいは持続可能な開発というような文言が出てきておりまして、ある意味それを踏襲する部分ございますけれども、今回さらにそこにパートナーシップの構築といったところを付け加えまして、理念としてはどうかと考えております。
その考え方でございますけれども、こういった地球環境の保全あるいは持続可能な開発といったものを実現していく上で、まずその前提となりますのは、すべての国が自らの課題、それを自らの問題として努力していくオーナーシップが必要であることはいうまでもなくて、それが前提となるわけですけれども、やはりそれだけではうまくいかない部分について共同で取り組んでいくというための国際環境協力ということでございますので、そこのパートナーシップの部分を強調するという理念を掲げたらどうかという案でございます。
裏にいきまして、目標でございますが、この理念を実現していく上で目標とすべきことでございますが、事務局の方からお示しした案は、地球環境保全と持続可能な開発を考えた環境管理システムの改善、特に東アジアを中心としてというものでございます。ここで目標を一応10年程度の期間を見通して、要は10年後にこういったものを達成したいといったものを目標としてはどうかというふうに思っております。
ここで環境管理システムという言葉を使っておりますけれども、これは例えば環境の情報ですとかデータを集め分析をしまして、問題を把握して解決のための対策を立案する。あるいはさまざまな主体との間の参加あるいは協力体制をとって対策を実施していく。そういった全体、総体を環境管理システムということで定義づけておりまして、それを改善していく。すなわちそういった情報を集めたりする能力であるとか、あるいはそういった管理に必要な制度であるとか組織を整備していくということであります。
ここで、特に東アジアを中心としてということで地域の重点をおいております。これは我が国の協力を進める上で限られた資源を有効に、効果的に使っていくという意味もございますし、また我が国のおかれている状況を踏まえてそうしたらいかがということで、これについての説明資料が資料の5-1にございます。
資料の5-1に「目標(案)に係る考え方」といたしまして、アジア太平洋地域、特に東アジアを重点とする背景を書いてございます。簡単にご説明いたしますと、皆様ご承知のとおり、この地域の経済成長が著しいということと、それに伴う環境悪化というものもかなり懸念されている。先ほどからご指摘のありますとおり、我が国とのさまざまな社会、経済あるいは環境面での関係も密接であるということでございます。
こういったものを背景として、特に東アジアというものを重点として打ち出してはどうかと考えています。ただ、ここで申し上げたいことのもう1つは、何もこの地域だけで取組みをすればよいということではなく、東アジアというものを突破口といたしまして、アジア太平洋さらにはそれ以外の地域を含めた世界まで取組みを進めていくという、そういったイメージをもって協力をしていくということではないかと考えております。
それから資料5-2に、「東アジアの環境管理システムの改善」というのは具体的にどういったものをイメージとして進めるのかということを説明しております。これは、ここで掲げます今後10年程度の期間を見通した目標として最終的に達成するものということで目標を設定しているわけですけれども、東アジアということで考えたときには、環境自体が共有されているということと、経済社会の関係から東アジア共同体といったものをめざしての動きが始まっていることを踏まえまして、環境面でも東アジア環境共同体といったものをめざして取組みを進めたらどうかという考え方でございます。ただ、ここでは共同体の構築自体が目標というよりは、それに向けてこの地域の環境管理のシステムをできるところから改善していくことを目標とすべきではないかと考えております。以上が理念及び目標についての考え方でございます。
続きまして資料6をごらんいただきたいと思います。これは基本方針の案として掲げさせていただいております。方針を4つにまとめてございます。
まず1点目は、東アジア諸国とのパートナーシップに基づく協力でございます。これは今の目標の考え方を踏まえまして、東アジアという地域におけるパートナーシップを掲げたものでございます。その際の考え方といたしましては、これまでの先進国対途上国といった関係を乗り越えまして、対等の協力関係を構築していくといったことが重要ではないか。実際に少しずつですが、東アジア諸国の間では政策対話が進んできているという現状を踏まえまして、こういった方針をもって望んではどうかと考えております。現実にこれから取り組むにあたっては、東アジアの環境を改善していくという目標を、東アジアの各国が共有していくといったことが重要なのではないか。ただ、その際にはやはり諸国間のさまざまな能力の違い、あるいは国情の違いといったものを踏まえて、それを尊重しながらやっていく。それからもう1つ重要な点は、やはり日本がリーダーシップを発揮できるような形にしていく。公害経験あるいは技術的な優位性といったものを遺憾なく発揮できるような取組みをやっていく必要があるのではないかということでございます。
それから2点目の基本方針は、2ページになりますが、さまざまな主体の参加の促進あるいは主体間の連携の強化といった点でございます。既にごらんいただきましたとおり、国際的な環境協力を担っている主体は、政府のみならずさまざまな主体に広がってきておりますので、それぞれが求められる役割というものを、ある程度見定めた上でそれらをきちんと発揮していくといったことが必要なのではないかということでございます。さらにはそういった主体間の連携を図りまして、この地域全体での取組みを活発にしていくといったことが必要なのではないか。特に市民社会、先ほどからお話が出ております民主化との関連もございますけれども、市民社会といったものを、いかに意思決定のプロセスに参加させていくかといった取組みもやはり重要なのではないかと考えております。
基本方針の3点目でございますが、必要な国内体制の整備といったことでございます。先ほど現状の評価の中で、これまでは主にODAの中での体制の整備といったものを進めてきたということがありましたけれども、今後はそれを超えて、より幅広い主体の取組みを可能にするような人材の育成あるいは情報や資金の確保といった基盤づくりが必要なのではないかということでございます。
次のページにいきまして4点目の基本方針は、重点分野を考慮した協力でございます。これは先ほど現状を振りかえる中で、いくつかの国際的な議論の結果、重点的な分野というものが指摘されていると申し上げました。ここに掲げておりますのは、例えばミレニアム開発目標の中での重点分野といいますか具体的に挙げられている環境の項目、あるいはWSSD及びその準備過程においてアジア太平洋地域で指摘された重点分野、さらには先頃まとめられたアジア太平洋環境開発フォーラム(APFED)の報告書で指摘されているような重点分野、こういったものを掲げております。
これらを踏まえる、つまり、これらの共通項を探っていくということでございますが、「淡水資源」、それから「エネルギー・気候変動」、「土地劣化と生物多様性」、「都市環境」、それから「教育・キャパシティ・ビルディング」、こういった分野が今後10年間を見通したときに重点として取り組むべき分野ではないかというふうに考えております。さらにこれに加えまして、昨今の状況を踏まえて紛争の予防であるとか、あるいは貧困削減、貿易体制への対応といった面での協力というものも、今後はより重視していく必要があろうかというふうに考えております。
最後に資料7でございますが、国際環境協力を進める上での配慮すべき事項の(案)でございます。これを考えるにあたりましては、国内外でのいろいろな状況の変化、特に国内で例えば政府の政策評価を重視していく動き、法律などもできましたけれども、あるいは情報公開も注目されておりますし、またODAの世界ではODA大綱の改定などもございました。さらには、我々が協力する場合の相手方となる国々の状況は必ずしも一様ではなく、むしろ極めて多様であるといったことであるとか、さまざまな社会のアクターがこの協力を進めていくという現状を踏まえ、成果を重視した取組みを今後していく、あるいは効率性を確保していく、さらには社会的にも公正性を確保していく、それから国や地域の多様性を十分配慮して進めていく、国民各層の広範な参加を確保していく、情報公開などを通じて透明性を確保してステークホルダーとの対話に基づく合意形成を図る、こういったものを配慮事項として掲げてはどうかと考えております。以上でございます。
○浅野委員長 それでは、ただいまご説明をいただきましたが、先ほどからのご議論で、既にいくつか、今の資料4以下の記述を少し修正した方がいいというご意見も出ております。そこは、今後さらに事務局でこの発言の趣旨をどう生かせるかというのを考えながら修正を加えますが、先ほどのご意見以外でこれをごらんになって、こういう点はどうかというようなご意見があろうかと思います。できれば先ほどご発言のなかった方に、まずご発言をいただければと思いますが、中村委員、何かございましたらどうぞ。
○中村委員 戦略的の意味をもう少し深めた方が、この理念を作成する上でいいのではないかというふうに思いました。今、私は、GEFの仕事をやっているのですが、国際機関とかバイラテラル(bilateral)の参加国が、非常に戦略的にいろいろ手を尽くしております。それで、日本として、例えばGEFのプロジェクトの中での戦略的な位置づけが欠かせないなと思います。各国なり各国際機関が、それぞれのフィージビリティ(feasibility)だとか、あるいは外交的な優位性を環境技術協力の中でも非常に重視していますので、その面で、例えば日本の外交政策とこの国際環境協力とのリンケージ(linkage)は十分なのかどうかということが一つあるのかなと思います。
それからもう1つは別の意味で、ちょっと書いてあるのですけれども、成果の重視と効率性の確保というところなのですが、現在の世代というか、我々が考える上での効率的な協力の進め方という面と、それから人材育成を含めて将来的に時間軸を考慮に入れた戦略的な成果の重視、効率性の確保に向けていくためのセットをどうするかということを、ぜひ議論の中に入れて理念の形成にしていただきたいというふうに思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。山瀬委員どうぞ。
○山瀬委員 1番目の「現状と課題」と、今回の切り口といいますかテーマはいいと思います。しかし、先ほど廣野委員の方からも発言ありましたが、それぞれの項目について一律には言えないと思います。それぞれ国の事情が違いますし、エッセンスを抽出するとこの資料のようになりますが、その下には各国とか各地域の事情の違いが歴然とあると思います。例えば、インドネシアでは、今、大学に行く人たちが多くなっています。そのことが環境問題に対して力強いパワーになっており裾野を支えていると思います。それに比べると、現在、私たちはアルゼンチンで仕事をしているのですが、あの国では環境に関わっている人はごくごく少数いるのですが、社会全体が全然ついていっていない。四国ぐらいの大きさの州ですが、環境教育担当の州政府の役人は、四、五人です。皆さん一生懸命走り回っています。大変熱心ですが、だれも手伝わない。それに比べると、インドネシアでは裾野が広がってきています。そのような違いを分析し、抽出した結果が、こういう理念や目標という形になるのだと思います。だから、その理念や目標の下にしっかり支えられたデータなり情報がないと話だけになってしまうのではないかなという気がします。
それからもう1つは、主体の問題です。環境問題の担い手としてNGOやNPO、それから民間企業のことが述べられていますが、その担い手がプロなのかアマなのかということが、あまり区別されず混在して語られていると思います。青山委員の発言にもありましたが、例えばJICAとかJBICとかの仕事で行くというのは、言ってみればプロとして係わるということで、それなりの対応、給与や条件も設定されています。それとは質も内容も違うボランティアに関して、プロと混在して人材育成の論議をすると混乱してしまうのではないでしょうか。日本のサッカーが国際的に対応できるようになったのは、Jリーグとしてプロ化したからだと思います。また、アマチュアの裾野というのがすごく広がっています。サッカーのアマチュアとプロのそういう構造を環境問題でもつくらないといけないと思います。現状は、プロがすごく少数で、さらに国際対応力も低く、かつ裾野が狭すぎる。全体を支えるのは、やはりアマチュアだと思います。アマチュアをどういう形で育てて裾野を広げるのか、それからプロはプロとしてどう育てるのかというきちんとした考えを持っていないと、人材の育成ということだけを言っても答えにならないのではないかという気がします。以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。今お二方のご指摘、特に今の山瀬委員のご指摘を通じて、かなり突っ込んだ議論が出てきたので、それを踏まえてこのペーパーをみるとやっぱり何となく色あせて見える。何となくきれいに描こうという気持ちが強すぎる。環境の問題はそれぞれのフィールドがまず大前提になるはずです。それらが全部消えてしまって、抽象化されて、東アジア全部が共通のクライテリアを持っていてといったトーンでの話がいきなり出てくると、先ほどからのご発言にあったように、どうしてもある程度のところを考えてそれ以外は切り捨てるという発想になる。それから効率性という言葉も、確かに財務省は喜ぶかもしれませんが、先ほど言ったような時間軸を入れて考えるときにちょっと危なっかしいものがある。環境という概念それ自体が、現実に東アジアでもあるレベルの国に行けば、もっと広がりを持った概念でなければいけないという廣野委員の最初のご指摘があります。そういう点がこのペーパーでは見えてきていないので、そこをもっとはっきりわかるような書きぶりに直さなければいけないということが、ほぼ今までのご意見の中から出てきた整理だと思います。
石田委員どうぞ。
○石田委員 1つは目的の整理の仕方として、環境の問題を論議するときに、きちっとしたデータベースは非常に説得力もあるし、政策への反映ということで重要なことで、普遍的な部分があります。その様な普遍的な部分の充実という課題と、先ほどからいろいろ論議されている社会の進展とともに起こってくる問題への環境対応。この2つの内容というのはかなり政策的にも違う手段がとられるのではないかと思います。それを実行するにあたって、そういうところを整理して、目標をさらにより明確に透明性の高いものにしていく。現状は、その2つが一緒になってしまっている部分がある。
それからもう1つは、ODAの中で言えば、例えば、我々が何らかのプラントをつくることに対して、環境問題がついていっているのかどうかとかいうような、個別案件に対する取組みを明確にしていくこと。あとは、やはり日本はいろんな技術がたくさんあるのだから、その技術をうまく反映させるため、個々の民間も含め、最適化を図ったものを出せるかということ。そのときの経済性とか、そういうものとのバランスの中で、ODA予算の位置づけというようなものが検討される場があってもいいのかなというふうに感じております。
○浅野委員長 ありがとうございました。どうぞまだ時間ございます。
○和気委員 全体として、私は理解できるのですが、ちょっと気になることが2点あります。この国際環境協力の会合の記録を英文で世界に発信するかどうかは別として、世界がこの国際環境協力の議論をどう受けとめるかというときに、最初から東アジアという印象が非常に強い。日本的な今の常識から見れば、アジアシフトが非常に強いし、アジア連携が強まるので非常に合理的と思えてしようがないのですが、やはり地球環境保全というのは、あるいは世界全体の環境を保全するというのが日本あるいは先進国、あるいは世界全体としての共通の命題だとすれば、なぜアジアといわずに東アジアというのか、南アジアをなぜ入れないのか。その辺をきちんと言っていかないと、ミスリーディングではないかなという気がします。戦略的にアジア中心なら中心でいいのですが、果たして、この三角形の図だけで世界は納得できるかというのがある。
私はなぜ最初に市場経済と申し上げたかというと、例えば今研究でやっているのですが、日韓や日中がFTAを結んだときに、どのくらい両国あるいは世界に対して環境負荷がプラスの影響になるのか、マイナスになるのかという環境評価です。まず、アセスメントを共通にできるツールがあるのではないか、環境評価がなかったら環境管理もできません。ですから、まずはデータベースも含めて、客観的な知見を積み上げていって、それを使ってどう評価するかということを共有のツールとし、その上でどう管理システムが構築されるかという、オーソドックスですけれども環境問題のきちんとしたステップを環境協力の中でも踏んでいかなければいけないのではないだろうかというふうに思います。2つ目のポイントはその環境管理システムがボーンと出てきてしまうところに大変違和感がありまして、何か共通のインフラをベースにすることがもっと重要なのではないかと思います。最近、デジタルアジアなんていうデータベースを盛んにつくろうとしていますので、そういうものにもうちょっとスポットを当てた整理の仕方の方が具体的かなという気もします。ですから、アジアシフトはアジアシフトでいいのですが、その発信の仕方がもうちょっと工夫が要るのではないかというふうに思います。
○浅野委員長 わかりました。その点はたしかに黒川委員が前回、アフリカも見捨てるなと強くおっしゃいましたね。例えば、先進国の間のパートナーシップという視点を一本入れるだけでもだいぶ違ってくる。だからそこでシェアをしましょうということで、ヨーロッパはアフリカに近いのだからそっちはそっちでやってください、東アジアまでわざわざヨーロッパから来なくたってそれは日本でやる、というようなネットワークが先ほどの逆の箱の円錐形の横にあるのだろうと思います。日本のエゴイズムといわれると困るわけです。問題の点検をしたペーパーに書かれていることと、この資料3以下にくるところのインターフェースがちょっと弱いような気がする。もっとそこを考えてみると、今ご指摘されたことについての答えがあるのかもしれない。日本は国益を考えて東アジアをやる、あとは知らないといっているわけではありません、ちゃんとパートナーシップ、枠組みを構築するということについて、最大限我が国としてこれから努力しますということを言っておかないといけないのだろう。それは、和気委員の言われた最初のポイントだと思います。
それから環境管理について、一応資料5のペーパーがありますが、これがどうも非常に抽象化されていて、環境管理という言葉で全部語ろうとしているのだけれども、割合にいいところ取りみたいな感じになってしまっている。ここをもっと丁寧に、プロセスをきちっと説明していって、どこからどうやらなければいけないのかという、その手順もこの中に示していかないといけない。いきなり環境管理システムでもあるまい、私流に乱暴に言い替えればそういうことです。黒川委員よろしいですか。
○黒川委員 先ほどの東アジアという観点ですが、まさにおっしゃるとおりだと思いまして、この紙を見ますと、東アジアの項目の中で日本のリーダーシップ発揮と書いてありますね。この委員会がどのくらいの年月に耐えるものを用意しようとしているかということにも関係しますけれども、世界のリーダーシップをめざしたっていいのではないかと思います。世界といいますと、いわゆる開発途上国だけでなく、先進国も含めたもので、ODAだけではなくてそのほかも含めて世界のリーダーシップということを、今すぐではなくても中長期的にめざすということがあって決しておかしくない。日本のこれまでのエクスパティーズ(expertise)だとか、お金とか、そういうことから考えたらあり得るのだろうと思う。どういうふうに書くかは別として、そのくらいの気構えがあってもいいのではないかと思います。
○浅野委員長 私もそう思います。何となく、これは財務省に遠慮しているという感じがしてしようがないのですが。どうぞ廣野委員。
○廣野委員 2点あります。1つは弁護的になるのですが。「国際環境協力の現状と課題」というところで、世界的な枠組みづくりに日本が積極的に参加していることは重要だという点がありますので、そういう中で日本はどのような役割をしたらいいかということ、これは当然我が国のこれからの考え方に当然入らなければいけない。これはまったく同感ですね。
それから2番目は、先ほど皆さん方のお話の中で出てきた点ですが、特にアジアの国だけではなく世界全体でそうですが、国によって、ものすごく差があります。我々は国際環境協力を考える場合、国別のアプローチ、ODAでも国別にやっていますけれども、それと同じように国別の環境協力のアプローチをきちんとしていくことが重要かなと思います。十把ひとからげでやりますと、非常に抽象的になってしまい、読んでいる方は何をやっているかわからないということになってしまいますので、かなり国別に具体的にやらなければいけない。
そのときに、先ほど中村さんのおっしゃっていたことが出てくる。それは何かというと、悪い見方をすると、世界銀行やあるいは欧州復興開発銀行、EUその他含めて今行われているのは、それぞれ自分たちがいろいろやってきた地域があるのですが、最近はみんなアジアに出てきている。うがった見方をすると、アジアに出てきて、国際機関を利用しながら、自分たちのいい方向に持っていこうという、そういうとらえ方がかなりある。具体的なケースをたくさん知っていますが、そういうことがあります。
ところが、日本はそれに対して疎い。もうちょっと、日本は戦略的な関心をもってやるべきことはやり、言うべきことは言っていかないと、丸めこまれてしまう。そうしないと、日本がかつてのイラクの第1回の戦争のときに、金をたくさん出しなさいということで13億ドル出したけれども、だれも感謝してくれなかったという、そういうことになります。
だからそういう意味で、欧米が今アジアでやろうとしている事柄というものの本意をしっかりとつかんだ上で、いったい我が国としては、欧米と協力しながら、なおかつアジアの人々のことを考えながらどうしたらいいかということを出していかなくてはいけない。こういうペーパーにどの程度そういうことを書けるかというと、実はなかなか問題ではあります。他の委員会の議論のときにもありましたけれども、そういうことについて頭におきながら、いろんなところで少しずつ厳しいことを言っていくことが必要かなと思います。そういう点が今回のこのペーパーには出ていませんので、何らかの形で出していく必要があるかなということを感じています。
○浅野委員長 どうぞ和気委員。
○和気委員 東アジア環境共同体という言葉が使われておりますが、これを理解するのはなかなかむずかしい。通常、常識的な範囲内でいうと、ヨーロッパ共同体とかあるいは東アジア共同体という言葉は比較的よく使われる。このときに、ある種デリケートな印象として、排他性を持ち得るのではないか。つまり、アジアが他の地域に対して関税とかそういうのを残しながら域内の優先的なところでいくという、他の域外に対する排他性がときどき問題になる。だから、グローバリズムとぶつかる。リージョナリズムとグローバリズムがぶつかるところが経済的にはあるのです。そこにもう1つ環境という、あるいは地球環境というキーワードを入れますと、東アジア共同体が率先して地球環境にプラスの何かシステムを導入すれば、それは排他性を持たずに、むしろ他の地域に対してプラスの外部性を持ち得る。環境共同体ではなく、通常のいわゆる地域経済とか自由貿易とかあるいは投資の自由化とか経済連携を強化するパートナーシップが東アジアの域内で非常に進行している。それがある種の東アジア共同体の方向に向かっている中で、決して排他性を持たずに地球規模で見ても非常にプラスの効果を持ち得るという、そういう方向の方がここでの言い回しはいいのではないかと思います。東アジア環境共同体という言葉を使うのはちょっとどうかなという気がします。つまり、どうみんなが理解するのかなということが気になりまして。
○浅野委員長 おっしゃるとおり、何となく、昔流行った大東亜共栄圏とか……。
○和気委員 東アジアの環境だけが良くなればいいというような、もちろんそんなことはないのですが、どうしても言葉が一人歩きしてしまうというところがありますよね。ですから、共同体という言葉を使うときはとても慎重にしなければいけない。ブロックカットまではいかないまでも、グローバル経済に対する一つのリージョナリズムの差別性的な地域をつくっていくのではないかというような危惧感があり、それに対してヨーロッパがいろんな挑戦をしてくる。ですから、その辺の危惧を考慮するとすれば、環境共同体という言葉は、私にはまだすっきり理解できない。
○浅野委員長 どういう言葉に置き換えたらいいか、今とっさには知恵がわきませんが、これは相当事務局で悩んで頑張ってもらいたい。それか、相当言い訳をつけた文章に直すかいずれかです。はい、青山委員。
○青山委員 1点は環境管理システムという言葉が、私にはよくわからない言葉なんですね。なぜシステムという言葉が出てくるのか。むしろ、英文では的確な言葉なのでしょうが、日本文では体系ぐらいではないでしょうか。例えば、システムのなかで、民間企業が環境協力に参加する、それはシステムの一部であるという、そんな言い方は日本文では馴染まないのでという気がします。
2点目として、国際協力戦略、国別戦略で、欧米の戦略づくりと日本の戦略づくりでは、それを担う主体構成が大きく違うのではないかという気がします。欧米の場合には明らかに民間主体の展開も含めた形で戦略が創られていると思います。日本でも戦略づくりの委員会をつくると、今回のように民間企業の方も入っていることはあるのですが、民間主体での環境分野協力戦略がなかなか表にでてこない。日本の環境協力の中心は、主に下水道をつくるとか、廃棄物処理施設をつくるということでしたが、実際に途上国で動いているのはすべて事業としてなわけです。ですから、事業モデルとして具体化し、事業モデル形成の協力パ-トナ-として日本が評価されて、更に同種の事業展開できる力を持たないと、展開力がないわけですね。欧米諸国は事業としてやってきていることが非常に多い。こうした視点からの戦略づくりができるようにしていく必要があると感じています。
例えば今、中国では郊外でこれから数千戸から1万戸規模の集合住宅団地、日本の多摩ニュータウンのような大規模住宅地が計画されています。価格は700万から1,500万円ぐらいで丁度私たちが就職した1960年代頃の価格です。驚くことに、そこでのごみ処理や下水処理、コミュニティプラントみたいですけれども、その費用はそこに住む人が払う。これはある意味でいえば、民営的な事業として展開されるわけで、そうした事業のなかでごみ・し尿・下水などの施設づくりも進むことが想像されます。こういう計画に対して、日本の例えば集合合併浄化槽をもう少し簡易な仕様にしたものを導入するような事業モデルを示していかなくてはいけないということです。
もう1点だけいいますと、焼津市に食品工業団地がありまして、この工業団地が作られてから35年経っていますが、食品廃棄物や水産加工排水などの処理・資源化を非常にうまいシステムで低コストで運営しています。こうした経験をうまく伝えられるような主体が、民間の中に多くあると思います。民間力ばかり強調して申しわけないのですけれども、ご検討をいただければと思います。
○浅野委員長 では、小林委員どうぞ。
○小林委員 1件は今青山委員が言われたのと同じことですけれども、環境管理システムという言葉の定義がどうもピンとこないので、これは使わない方がいいのではないかと思います。別に使わなくても、文章としては書けるのではないかなという感じがします。それが1点です。
それから資料6のこの基本方針。いわゆる国主導型の環境協力をどう進めていくかという書き方がほとんどされていて、それでこの基本方針はいいというのであれば、私は別にそれをとやかくは言わないのですが、今さっき申し上げたいわゆる地方自治体とかNGOとか企業が主体的に行う環境協力に対して、国はどう支援していくかという視点がほとんどこのストーリーからは読み取れない。それを特記するのか、またはこの方針の(2)(3)のところにそういう切り分けがいるのではないかという感じがしました。
それから3点目は、重点分野のところですが、2つ目の「目標達成における重点分野」のところに書いてある文章の中で、ちょっと気になるのは、1つは海洋沿岸資源のことが抜けてしまっているので、これはいいのかというのが1点。それから2点目は、これから東アジアも含めて化学物質というのが重要な視点になってくるので、それを抜いてしまうことの是非。化学物質はこれから重視していかなければいけないのではないか。それから3つ目の問題は、「土地劣化と生物多様性」と書いてあるのですけれども、土地劣化と生物多様性というのをくっつけている意味がよくわからない。上の方では「土地管理と生物多様性」という言葉があるのですが、土地管理と生物多様性というのはまだ意味がわかりますが、土地劣化と生物多様性というのはちょっと違うのではないかという感じがしました。以上です。
○浅野委員長 資料6の(4)の重点分野の選択のところですね。今ご意見が出たわけですけれども、ここはどうして土地劣化と生物多様性という並びになったのか、事務局の方で説明できますか。意識しているのは、多分、黄土高原とか砂漠化とかそんなこと意識したのだろうと思いますが。
○関谷環境協力室室長補佐 そうですね、実際のシチュエーションからしますと中国なんかのよくあるようなイメージを想像しているわけですけれども。もともとの国際的な議論の中ではたしかに「土地管理」という言葉を使われておりまして、その結果として出てくる現象としての劣化の方に力点をおいて書いたということでございまして、土地劣化を防ぐ意味での土地管理というものを実際としてはやっていくということになるとは思います。おっしゃったように現象だけで並べてしまうとちょっと違和感があるというのは事実だと思います。
○浅野委員長 経過はそういうことですね。この項目を、原案としてこれに絞り込んでいる数の問題とかいうようなことについて、特段事務局としての考えはありましたか。
○関谷環境協力室室長補佐 これを選ぶ過程で、必ずしもここで重点分野をおいたものだけについて、今後議論したいという趣旨では必ずしもございません。実際は幅広い分野についての取組みのレビューや、あるいはその方向を示すということをお願いしたいと思っております。ただ、国際的なこれまでの議論の中ではこういったものを重視していくという、その共通項を抜き出したらこうなるということでお示ししておりまして、そういったものを一応念頭において個々の取組みの方向性を示していただきたいという趣旨でございます。必ずしもこれに限定して進めるという趣旨で書いているわけではございません。
○浅野委員長 そのあたりちょっと誤解のないようにしなければいけない。確かに、これも重要あれも重要といい始めると全部入ってしまうので、どこかで線を引かなければいけないということも事実ではあります。排他的に書いているわけではない、例示であるということがわかるような表現にしておかないと、今のようなお話は、多分パブコメをやれば猛烈に出てくるはずですから。長谷川委員どうぞ。
○長谷川委員 反対しているわけではないのですが、パートナーシップという言葉がいくつもならんでおりまして、これは何となくいいことですが、具体的にどういうパートナーシップを考えてこの言葉を使っているのかというのが、その都度きちんとわかるようにしていきませんと、何となくみんなが一緒にやっていればいいのかというようなことで終わってはよろしくないかと思います。その都度、きちんとした定義とか説明とかをしていく必要があるのではないかと思います。
それからもう1つ、東アジアのことです。やはりグローバルな国際環境協力をしていくという中で、特にアジアとか東アジアはデータがうまく世界に発信できていないことがあると思いますので、そのグローバルな展開をしていくためのデータをきちんと整えるような協力をするということも、少しできていくとよろしいのではないかなと思います。例えば、何かを世界で比較するときに、アジアのものは古いデータしかなかったということがいろいろあったりするかと思いますので、そのあたりも含んだ東アジアへのフォーカスというようなことであれば、非常に日本が協力する意味合いがあるのではないかなという気がいたします。
○浅野委員長 園田委員どうぞ。
○園田委員 同じように東アジアのところですけれども、我々ビジネスからいいますと、もう既に東アジアという枠を全部超えてしまっていて、例えば電器業界ですけれども、化学物質対策の取組みをしています。アジア内で通じている商品に対しても、我々松下電器はすべてヨーロッパ対応と同じハードで対応するということでやっています。域内だけでつくって域内だけに供給する企業も何かあるかのような表現がありますが、私どもは、関連会社にすべてそれを要求していますから、もうそういう会社はほとんど少なくなってきているのではないかなという気がします。したがって、たぶん言葉の問題は、環境を入れるか入れないか、入れるとすれば環境だからこそ最終世界は一つになれますよという表現にもなります。我々のビジネスの世界は、東アジアという枠を超えていますので、どこかで閉じているというような表現はできるだけ避けて、究極は1つだと私は思っています。そういう表現に統一するようにしたらいいのではないかなと思います。よろしくお願いします。
○浅野委員長 ありがとうございます。
○廣野委員 ちょっとよろしいですか。
○浅野委員長 廣野委員どうぞ。
○廣野委員 その点で、私は非常にポジティブにとらえた方がいいかなと思います。どういうことかというと、東アジアに協力を限定するのではなくて、東アジアにいろいろやっていくことによって、それがやがてもっと広がっていくということです。我々は決して東アジアだけに協力すればいいのではなくて、ちょうど積木と同じように、東アジアの方に積木をどんどんやっていくことによって次の積木ができあがってくるという、そういうことで広がりを持ったものにしていくことが重要かなと思います。そういう国際協力でないと、おっしゃるようにだれからもあまり賛辞されませんよね。そういう意味でぜひ、そういう広がりを持った意味での東アジアへの協力ということでとらえることが必要かなと思います。
○浅野委員長 さっき黒川委員がおっしゃったように、全体として10年だけを見るのか、もっと大きな長期的な視野を持ってあることを言っておいて、それから10年という期間の話をするのか。その辺のところの整理の問題もあるのだろうと思います。何となく10年だけ見て議論すると、どうしても東アジアぐらいに特化しておくという話になってしまうのですが、全体はもっと大きな戦略であるということであれば、だいぶ今のような話がわかってくる。そこでの波及効果というのは当然最初からわかっています、考えていますということが大事なのではないのかなと思います。中村委員どうぞ。
○中村委員 さっきの私の発言に戻りますが、先ほどの廣野委員の戦略的なという部分、それから黒川委員のアフリカの話ですが、実際に国際的な枠組みの中で戦略的に動こうとしたときには、ほとんどもうきれいごとで済まないような問題がたくさん出てくるわけです。ですから、非常に現実的に、戦略的にどう位置づけるかという議論と、こういう場での議論とどう切り分けておくか。中身としては、日本としてはグローバルな国際環境問題に対して、どういうふうに戦略的なアプローチをしていくかというときの、非常に現実的な問題というのをどこかで踏まえて議論をしていかないと、絵に描いた餅のまま終わってしまうということが1つ。
それからもう1つは、私は、第一次、第二次のJICAの環境分野別援助研究会に両方参加したのですが、先ほどの東アジアという考え方が、その研究会報告書の内容との間に合理的な矛盾がないように一度しっかり分析しておく必要があるのではないかということです。特に、目標達成における重点分野の中に「淡水資源」と入っていますが、淡水資源で東アジアということになると、要するにモンスーンアジアとかいう話になり、非常にディフェンシブな淡水資源の問題になって、例えば今私が取り組んでいるアフリカの淡水資源問題などというのは吹っ飛んでしまうわけです。ところがグローバルに淡水資源問題と言った途端に、ウォーター・ストレス・エリア(water
stressed area)ということで、中東とかそういうところで水問題にどういうふうにコミットしていくのかという議論になります。やっぱり論理的な矛盾が起こってきてしまうということを、ちょっと事務局の方で整理されて論理方式の概念にしていただければというように思いました。
○浅野委員長 ありがとうございました。今の点は、しっかり検討してください。論理的矛盾があっては困りますので。ほかにございませんか、よろしいですか。
それでは最後に、前回の専門委員会での議論に関連して、事務局から参考資料の説明をお願いします。
○関谷環境協力室室長補佐 それではご紹介させていただきます。
まず一つは、前回ご議論いただいた中で、本日はご欠席でございますけれども、高橋委員からのご意見で、国連などで最近、今後の国連のあり方などを含めていくつか重要な報告書が作成されている、あるいは作成されつつあり、それらの報告書における環境の扱いなどについても配慮して議論すべきだということがございました。これに対応しまして、今回ご用意した資料が参考資料1-1から1-5でございます。
今回、ご紹介しています報告書は4つでございます。ちょっと英語のものが多くて大変恐縮でございますけれども、1つ目が国連の High-level Panel
の報告書で Threats Challenges and Changeというタイトルのものでございます。
それから2つ目がILOの報告書でございまして、 A Fair Globalizationというタイトルのものでございます。
それから3番目が、これだけは日本語の要約を国連が出してございまして、「人間の安全保障委員会報告書」でございます。
それから4番目がこれも国連の文章でございますが、 We the Peoplesというタイトルのものでございます。これはいずれも環境というより、むしろ世界が抱えるより広範な課題についての対応について取り上げている報告書でございます。その中での環境の記述というのは必ずしも多いわけではございませんけれども、それでも例えば最初の資料でいきますと、自然資源の不適切な管理が国家間の紛争の悪化の要因になっている。いくつかのグローバルな課題の間のリンケージについての記述があるといったような状況になっております。これらに加えまして、つい先ごろミレニアム評価報告書というものが報告されておりますので、また次回以降、それらについてもご紹介をしたいと思っております。これらを踏まえて、また本日のご議論と合せて、取りまとめていただきます「在り方」の素地にしていきたいと考えております。これが1点でございます。
それから参考資料の2、3、4、5というのがひとまとまりといいますか、残りの資料でございますけれども、これらは前回、長谷川委員の方から、他の欧米の国々の戦略といったものはいったいどういったものなのだろうかというようなお問いかけがございましたので、必ずしも十分な分析にはなっておりませんけれども、現時点で当方が承知している環境に関する主要国の取組みをまとめたものでございます。
最初の資料は参考資料2でございますが、主な援助国、ODAを出している国のうち、上位の国々の環境に関する方針を示したものでございます。
参考資料3も同じような内容でございますが、より広範な国について書いてございます。
それから参考資料4でございますが、これは環境協力の戦略性の事例ということで、一つの切り口として、自国の産業育成という観点で、ホームページなどの資料からこういったことが言えるのではないかという事例を2つほど出しております。1つは中国における環境モニタリング機器市場での戦略ということで、例えばフランスあるいはドイツがODAあるいはその他の公的資金を用いまして、自国のビジネスの支援をうまく行っているのではないかというような事例でございます。
それから参考資料5でございますが、これは「主要援助国の二国間ODA等の状況」ということで、これは環境分野に限ったことではなく、全ての分野のODAについてのものですけれども、それぞれの国がどういった国・地域にODAを供与しているのかといったものをまとめたものでございます。例えばこれで見ますと、アメリカはサブサハラ・アフリカがもっとも多く、約4分の1を占めておりまして、次いで中東・北アフリカ、中央アジア、さらに中南米というふうに続いております。下のグラフで見ていただきますと、わりとまんべんなくといいますか、各地域に配られている。日本は、アジア、この分類でいいますと、その他のアジア及び大洋州が多い。フランスにつきましては、サブサハラ・アフリカが多い。こういった特徴が若干ですが見てとれるかと思います。
以上簡単でございますが、ご紹介とさせていただきます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。参考ということで、お目通しをいただきたいと思います。
それでは、時間がまいりましたので、本日の専門委員会はこれで終わらせていただきます。事務局から連絡事項があればお願いいたします。
○田中環境協力室長 ありがとうございました。次回につきましては、今後の国際関係協力の取組みの方向の具体的な部分についてご議論をお願いしたいと思います。本日、いろいろご指摘も受けておりますので、そういったことも踏まえて、また委員長ともご相談をさせていただきたいというふうに思います。次回会合につきましては、2月18日、金曜日の2時から4時まで、環境省の第一会議室において開催する予定でございますが、正式には後ほどご連絡を差し上げたいと思います。それから本日の議事録につきましては、事務局の方でとりまとめの上、また後日委員の皆様にその案をお送りさせていただきますので、ご確認をよろしくお願いしたいと思います。
○浅野委員長 よろしいですか。それでは、次回は2月18日の14時から16時までということでお願いいたします。本日はこれで委員会を閉会いたします。
午後4時56分 閉会