中央環境審議会地球環境部会第1回国際環境協力専門委員会議事録
開催日時
平成16年12月10日(金)10:05~12:12
開催場所
ホテルフロラシオン青山「梅」の間
出席委員
(委員長) | 浅野 直人 | ||
(委員) | 青山 俊介 | 高橋 一生 | |
石田 耕三 | 中村 正久 | ||
加藤 久和 | 長谷川 雅世 | ||
黒川 祐次 | 廣野 良吉 | ||
小林 悦夫 |
山瀬 一裕 |
議題
1. | 専門委員会の設置・運営方針について | |
2. | 現行の「国際環境協力のあり方」について | |
3. | 国際環境協力をめぐる状況の変化と課題について | |
4. | 国際環境協力戦略検討会報告書について | |
5. | 専門委員会での検討事項について | |
6. | その他 |
配付資料
資料1-1 | 今後の国際環境協力の在り方について(中央環境審議会への諮問) |
資料1-2 | 今後の国際環境協力の在り方について(地球環境部会への付議) |
資料1-3 | 中央環境審議会地球環境部会への国際環境協力専門委員会の設置について(地球環境部会決定) |
資料1-4 | 地球環境部会の専門委員会の運営方針について(地球環境部会決定) |
資料1-5 | 国際環境協力専門委員会委員名簿 |
資料2 | 今後の審議スケジュール(案) |
資料3 | 現行の「国際環境協力のあり方について」概要 |
資料4 | 国際環境協力をめぐる状況の変化と課題 |
資料5 | 国際環境協力戦略検討会報告書概要 |
資料6 | 新「国際環境協力の在り方」の検討の方向 |
参考資料1 | 国際環境協力のあり方について(平成4年5月中央公害対策審議会・自然環境保全審議会答申) |
参考資料2 | 国際環境協力をめぐる状況の変化と課題 付属資料 |
参考資料3 | 国際環境協力戦略検討会報告書 |
参考資料4 | 第6回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)及び黄砂問題に関する日中韓モンゴル大臣会合の結果について |
議事録
午前10時05分開会
○田中環境協力室長 それでは、ただいまから、中央環境審議会地球環境部会国際環境協力専門委員会第1回会合を開催させていただきます。
私は、環境省地球環境局環境保全対策課環境協力室長の田中でございます。よろしくお願いいたします。それでは会議に先立ちまして、環境省の小島地球環境局長より一言ごあいさつを申し上げます。お願いいたします。
○小島地球環境局長 おはようございます。地球環境局長の小島でございます。委員の皆様には本日お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。
国際環境協力につきましては、平成4年当時の中央公害対策審議会と自然環境保全審議会で審議をされまして、「国際環境協力のあり方について」という答申をいただいております。ちょうどここに出席していただいている加藤先生が環境庁におられたときにとりまとめていただいたものでございます。
しかし、その後10年余りが経過をしておりまして、国内外の状況も大きく変化をしております。国外の状況でいいますと、2002年に開催をされましたWSSDにおいていろんな議論がありました。その前には2000年にミレニアムサミットがあって、目標が示されております。持続可能な開発に向けた途上国のオーナーシップと国際社会のパートナーシップ、この重要性が確認をされております。また日中韓三カ国の環境大臣会合も軌道にのっておりますし、今年はこれにモンゴルの大臣も参加していただきまして、アジア地域での環境協力について、その核が形成をされてきております。さらに開発途上国の状況も、開発途上国と一括りにできないような多様化の現象を示しておりますし、地域紛争への対応、平和の構築ということも大きな課題となってきております。
国内の状況を見ますと、昨年行われましたODA大綱の改定など、ODAのあり方も変わってきておりますし、ODA以外の資金による国際環境協力というのも活発になってきております。さらに地方公共団体、NGO、NPOあるいは企業による独自の活動ということで、ステークホルダーの役割が大きくなってきているという変化も見られております。
こういう内外の状況の変化に対応して、日本として環境協力をこれからどう進めていくかということについて、あらためてご審議をいただくことにいたしました。中央環境審議会に大臣の方から諮問をしていただきまして、今後この専門委員会でそれぞれ皆様専門的な見地からご検討をいただきまして、地球環境の保全と持続可能な開発の実現に向けての戦略の指針となるようなものをお示しいただきたいと考えております。
大臣からは実践的なものになるようにご審議をお願いしたいという指示をいただいております。ぜひとも活発なご議論をお願いしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 それでは、本日は第1回目の会合でございますので、まず委員にご就任いただきました先生方のご紹介をさせていただきたいと思います。お手元にはまず上に座席表がございます。それから名簿が、後ほど資料の確認をいたしますが、資料1-5というところに委員名簿を用意させていただいております。あいうえお順でご紹介をさせていただきたいと思います。
まず、福岡大学法学部教授の浅野先生でございます。後ほどご説明いたしますが、本専門委員会の委員長をお願いしております。
○浅野委員長 浅野でございます。よろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 株式会社エックス都市研究所代表取締役の青山様でございます。
○青山委員 青山でございます。今、海外環境協力センターというところの運営委員長をやっております。よろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 次に、株式会社堀場製作所取締役副社長の石田様でございます。
○石田委員 石田でございます。現在、環境技術協会の方でモニタリングを中心にした組織の会長を務めさせていただいております。よろしくお願いします。
○田中環境協力室長 次に、名古屋大学大学院法学研究科教授の加藤様でございます。
○加藤委員 加藤でございます。先ほど小島局長からご紹介ありましたように、元環境庁の職員でありまして、まさにこの国際環境協力の在り方についての第1回目の、当時はまだ2つの審議会でございましたが、中央公害対策審議会と自然環境保全審議会の合同審議会から答申をいただいたところでございます。今は名古屋大学法学部で教鞭をとっております。どうぞよろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 次に、前在コートジボワール共和国日本国大使の黒川様でございます。
○黒川委員 黒川でございます。先月末でコートジボワール大使を退任して外務省も退任いたしまして、今のところ特に職はありませんけれども、来年の4月から日本大学の国際関係学部で国際関係論等を教えるということになっております。よろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 次に、財団法人ひょうご環境創造協会副理事長の小林様でございます。
○小林委員 小林でございます。よろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 それから次に、今日はご欠席のご連絡をいただいておりますが、松下電器産業株式会社環境本部長の園田様にもご就任をいただいております。
それから今いらっしゃいました国際基督教大学教養学部国際関係学科教授の高橋様でございます。
○高橋委員 高橋でございます。よろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 反対側ですけれども、滋賀県琵琶湖研究所所長の中村様でございます。
○中村委員 中村です。よろしくお願いします。
○田中環境協力室長 次に、トヨタ自動車株式会社環境部渉外グループ担当部長の長谷川様です。
○長谷川委員 長谷川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○田中環境協力室長 成蹊大学名誉教授の廣野様でございます。
○廣野委員 廣野です。今、加藤さんがおっしゃったように、例の審議会からもうそんなに年がたったかなと、私は前回やったものですから驚いています。本当に年を取るにしたがって、月日がどんどん早くたちます。いろいろこれから頑張りますのでよろしくお願いします。
○田中環境協力室長 財団法人自然環境研究センター専務理事の山瀬様です。
○山瀬委員 山瀬です。よろしくお願いします。
○田中環境協力室長 最後に今日はご欠席のご連絡をいただいておりますが、慶應義塾大学商学部教授の和気先生にもご就任のご了承をいただいております。
以上13名の委員会でございまして、今日は11名のご出席をいただいておることをご説明をさせていただきます。
本委員会の委員長でございますけれども、中央環境審議会運営規則第9条第2項の規程に基づきまして、部会長のご指名がありました。中央環境審議会委員の浅野先生に委員長をお願いしておるところでございます。それでは今後の進行につきましては浅野先生の方にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 それでは委員長ということでございます。実は私、地球環境部会長で、部会長が自分を指名するという甚だ変なことになりましたが、色々と事情がございまして、ご了承いただきたいと存じます。
この分野は私は実はそう得意な分野ではございません。廣野先生や加藤先生が長い間、ご努力をなさったそのあとを追っかけてということになると思いますが、やはり時代の状況も変わっておりますし、地球環境部会でも温暖化の議論ばかりやっていますが、本来はそれ以外もっと広く地球環境全体を取り上げなければいけないと思いつつも、なかなか思うようにいかないのが実情でございます。この専門委員会は少し大所高所の立場で、専門的な御立場から皆様方の活発なご意見をいただければと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは本日の配布資料の確認を事務局からお願いいたします。
○田中環境協力室長 それでは、本日の資料を確認させていただきます。お手元の資料をご覧ください。
2枚目だと思いますが、資料一覧という1枚の紙がございます。資料と参考資料と大きく2つございますが、資料の方は1-1「今後の国際環境協力の在り方について」、これは諮問でございます。それから1-2として、この地球環境部会への委員長からの付議がございます。それから1-3の方で「中央環境審議会地球環境部会への国際環境協力専門委員会の設置について」という地球環境部会の決定がございます。1-4、これは「専門委員会の運営方針について」という部会決定でございます。後ほどご説明いたします。1-5が「委員名簿」でございます。
資料2に「今後の審議スケジュール(案)」をつけております。資料3は、現行のあり方の概要でございます。資料4は、国際環境協力をめぐる状況の変化と課題、資料5が、国際環境協力戦略検討会の報告書概要でございます。資料6に新「国際環境協力の在り方」の検討の方向をつけております。以後、参考資料1から4がございますので過不足がございましたら事務局の方にお申しつけいただければと思います。
それから委員の皆様のお手元には次回以降3月までの日程確認のためのシートを置かせていただいております。後日ご記入をいただいて事務局の方にご返送をたまわればというふうに思いますので、どうぞ併せてよろしくお願いいたします。
○浅野委員長 それでは、議事次第に沿ってただいまから進行させていただきたいと思います。最初の議事は、当専門委員会の設置・運営方針についてでございます。事務局から説明をお願いいたします。
○関谷環境協力室長補佐 それでは、専門委員会設置の経緯などについてご説明を申し上げます。資料の1から1-4を使いまして簡単にご説明を申し上げます。
まず、資料1-1にございますとおり、今年の11月8日付で環境大臣より「今後の国際環境協力の在り方について」という諮問が中央環境審議会に対してなされております。この案件につきましては資料1-2にございますとおり地球環境部会に付議がなされております。そして資料1-3にございますが、この問題につきましては専門的な見地から検討をいただくために、中央環境審議会議事運営規則第9条第1項の規程に基づきまして、11月9日の第24回地球環境部会におきまして、この専門委員会の設置が決定されたところでございます。資料1-3が決定文書でございます。
それから資料1-4をご覧いただきますと、「地球環境部会の専門委員会の運営方針について」とございます。これは平成15年8月に部会長決定がなされたものでございますが、これが本専門委員会にも適用されることになります。これによりますと、会議は原則として公開、そして公開した会議の議事録は公開をするということになっております。本専門委員会の議事の公開、非公開につきましては委員長の決定ということになっておりますので、事前に浅野委員長にご相談申し上げましたところ、公開をするということでございましたので、今回公開をさせていただいております。したがいまして、会議録につきましても委員の皆様のご確認をいただいた上で公開をすることといたしております。
以上でございます。
○浅野委員長 それではただいま専門委員会の設置についてご説明がございましたが、よろしゅうございましょうか。
では、今後の審議スケジュールについて事務局からの説明をお願いいたします。
○関谷環境協力室長補佐 それでは引き続きまして資料の2をご覧いただきたいと思います。「今後の審議スケジュール(案)」という紙でございます。
まず本日、12月10日が第1回の専門委員会というふうになっておりますが、本日は国際環境協力をめぐる状況の変化と課題」、それから、本専門委員会での検討事項についてご議論をいただきたいと思っております。その後、4月までおおよそ月1回のペースで専門委員会を開かせていただきたいと考えておりまして、それぞれ国際環境協力の理念ですとか基本方針、後ほど実際に検討していただく事項についてはご議論をいただきたいと思いますが、それに沿って4回ほどの審議を予定しております。4月の第5回の専門委員会におきまして報告書案の検討をしていただきまして、そこでのご議論を踏まえまして、4月下旬までに報告書案の一応の完成をみたいと思っております。その上でパブリックコメントに付しまして、これが約1カ月間でございますが、その上で5月に第6回の専門委員会を開きまして、パブリックコメントも踏まえた上での報告書の決定をしたいと思います。これを6月に地球環境部会に報告をしまして、この部会で答申案を検討いただくということを考えております。
なお、この専門委員会の審議の過程で、例えばNGOですとかいくつか関係する団体などから必要に応じてヒアリングの場も設けることも考えたいと思っております。
以上でございます。
○浅野委員長 ただいまスケジュールについて説明を申し上げました。何となく急いでいるような感じもするかもしれませんが、役所の内部事情を申しますと、6月ぐらいにこういうものは決めておかないと、次の年度の予算になかなか反映しづらいということがあります。夏に大体予算の案ができていきますのでそれに遅れてしまうと、うまく反映しないということがございますから急がなくてはならないという事情と、もう1つは、環境基本計画について新しい第三次計画の準備作業がそろそろ本格化しますので、それまでにこちら側としては準備をしておきませんと、環境基本計画にうまく考え方を反映させることがむずかしいだろうということがございますために、少々厳しいスケジュールではございますが、このようなスケジュールで進めたいということでございます。
何かご質問、ご意見ございますでしょうか。
○青山委員 後日返送する予定表に関してですが、委員会の開催予定日は年内ぐらいには大体決まりそうですか。
○浅野委員長 わかりました。日程に関しては15日までにご返送いただきますようにということでお願いを申し上げておりますので、15日までにきちんと皆さんがお出しいただければ直ちに、四、五日以内には決定をして日程についてはあらかじめご通知申し上げるということにいたします。確かにご指摘のとおり、これを出して1カ月たってからやるぞといわれても、もう予定は埋まっていますということはよくあることで、そういうことにならないように留意いたします。ご指摘ありがとうございました。
ほかに何かございませんでしょうか、よろしゅうございますか。
それでは、このスケジュールで今後の審議を進めさせていただきます。では、続きまして、現在の「国際環境協力のあり方について」の政策方針がどうなっているかということに関して、事務局から説明をお願いします。
○関谷環境協力室長補佐 それでは、資料3をご覧いただきたいと思います。現行の「国際環境協力のあり方について」概要と題しております。この紙は平成4年に中央公害対策審議会・自然環境保全審議会から答申をいただいたものの概要でございます。この平成4年にいただいた答申は、いわゆるリオ・サミットの直前のタイミングでいただいたわけですけれども、地球環境保全が我が国にとって国際社会のために最も貢献できるあるいは貢献すべき分野であるという認識から、協力のあり方というものをまとめたものになっております。
まず、答申の最初のところで、「答申の視点」と題しまして、この答申の中で扱っている国際環境協力のスコープが書かれてございます。主に3点ほどございまして、まず最初に、[1]国際環境協力の推進に当たっての基本的な考え方。それから[2]政府開発援助(ODA)を中心に、政府における国際環境協力の推進方策と実施体制。それから[3]といたしまして、NGO、企業と民間による国際環境協力の推進に対する支援のあり方。以上3点が答申の視点として示されておりまして、これに沿って以下、答申の中身が組み立てられております。
2.に「国際環境協力の基本的な考え方」ということで概略書いてございますが、この基本的な考え方は開発途上国自身がもちろん環境保全に向けての努力をしなければいけないということはあるものの、それに加えましてやはり先進国の支援が不可欠であるという基本的な認識に立って書かれておりまして、したがいまして、環境ODAがやはり中心的な政策手段として位置づけられております。
大きく7つほど基本的な考え方が示されておりまして、まず最初に、国際環境協力の理念といたしまして、協力の相手方となります途上国の持続可能な開発の実現を支援していくというものを理念として位置づけております。それからやはり国際環境協力全体の先導役としては、環境ODAというものが非常に大きな役割を果たすということがその次に書かれておりまして、特に環境ODAを中心とした協力の主な対応すべき事項といたしまして、全地球的な環境問題の対応というものを今後やっていかなければならない。特にODAで支援していく必要があるということが謳われております。
さらに、そうしたODAなどの取組みを進めていくにあたっては環境配慮を徹底していかなければならないということ。あるいは他の援助実施機関との間の調整や役割分担が必要であるということ。さらに現地住民あるいは社会の中のさまざまな主体、特に女性との対話あるいは参加というものが重要であるということ。それから情報公開あるいは環境教育といったものを通じて国民の支持を得るための努力もしなければいけないということ。こういったものが基本的な考え方とされております。
裏にいっていただきまして、3番でございますが、「政府における国際環境協力の推進のために」ということで、いくつか政府による取組みのあり方が書かれてございます。
まず第1が資金協力のあり方ということで、やはり中心的な施策としてODAを位置づけておりまして、先進国はやはり環境保全のためのODAの流れを拡大させていくよう努力する必要があるという立場で書かれてございます。ODAの中には二国間のものあるいは多国間のGEFなどの機関の活用といったものも含めて書いてございます。
それから(2)でございますが、「環境上健全な技術移転のあり方」ということで、やはり途上国に適した技術を開発し、普及・移転させていくことが重要であるということで、例えば中小企業の技術経験の活用であるとか、我が国が得意とする資源・エネルギーの利用効率に関する技術であるとか、そういったものが重要であると。それから技術情報の整備などの基盤整備も必要であるということが書かれてございます。
(3)番は「環境ODAの効果的な実施」ということで、ODAの中で今後やっていくべきこととして環境状況の把握、モニタリングなど、それから基本計画をつくるための政策支援。さらにこのあと中国などでも実際にやられましたけれども、途上国の中での波及効果を期待できるようなモデル事業を実施していくというようなこと。さらには事前、事後のODAの評価を充実させていくべきこと。それからやはりアジア太平洋という地域に着目して環境協力を推進していくべきということで、例えば酸性雨あるいは海洋汚染、渡り鳥といった問題について共同して取り組んでいく必要があるというふうに書かれておりますが、この時点ではこういった地域の環境協力の枠組みあるいはアプローチといったものが、まだ平成4年当時それほど具体化しておりませんでしたので、具体的なものについては言及がなされておりません。
(4)は「環境配慮の充実」ということでございます。これもその後、JICAやあるいは現在のJBICのガイドラインとして充実してきておりますが、この時点では必ずしも十分なものではないということで、ここであえて留意事項が書かれております。
(5)といたしまして、ODA実施のための体制の整備ということで国内の体制あるいは人材の確保といったことが書かれてございます。
最後のパートとしまして、民間による国際環境協力の推進に向けて政府の支援のあり方が書かれておりまして、NGOあるいは民間企業それぞれの取組みに対しての支援のあり方が書かれてございます。
以上が平成4年答申の概略でございます。
○浅野委員長 それでは引き続いて、先ほど小島局長のごあいさつも一部ございましたが、その後の状況の変化と課題ということで、事務局から引き続いて説明をお願いいたします。
○関谷環境協力室長補佐 それでは引き続きまして資料の4でございますが、「国際環境協力をめぐる状況の変化と課題」というものをご説明申し上げます。
いくつかの視点といたしましてこの平成4年以降の変化あるいは課題をまとめてございます。まず最初は、途上国で広範な環境問題の対応が必要になってきているということについて書いてございます。まず途上国によっても地球環境問題の対応が実際求められてきているということが挙げられると思います。例といたしましては、皆様ご承知のとおり二酸化炭素の伸びを見ましても、途上国での伸びは著しいものがございます。これに対応するための国際的な枠組みとして気候変動枠組条約あるいは京都議定書もございますし、ほかの環境問題についてもさまざまな条約がございます。こういったものを締結をしている途上国は、年々増加しておりますし、それに伴いまして締約国には義務がそれなりに発生するという状況でございます。また、92年のリオ・サミット以降は、国別のアジェンダ21の作成と実施というものもなされておりますし、引き続き今後も持続可能な開発に向けた取組みというのは途上国においても大きな課題となっております。
それから経済の面から見ましても、グローバル化の進行によりまして国相互の依存関係がだいぶ強まっていると。あるいは例えば東アジアにおける酸性雨のように環境面でも相互の影響関係が明らかになってきているあるいは増大しているということ。さらには貿易と環境につきましてもWTOあるいはFTAの関係での対応が今後さらに必要になってきているということがあったかと思います。
途上国に目を向けますと、途上国と一口に言いましてもやはりかなりの経済発展を達成した国と貧困がかなり深刻になっている国というふうに、かなり分離が明らかになってきておりますし、発展している国の中でも都市に人口が集中することによっての環境問題の発生などの問題もございます。それから中国のように一つの国の中で大きな所得格差が生じているというような国もございますので、一口に途上国といいましても非常に多様になってきているということもあるかと思います。さらには地域紛争と環境の関連にも注目してよろしいのではないかと思っております。
次のページにいっていただきますと、そういったさまざまな途上国の関わる課題に対応しての取組みを進めていくにあたって、途上国自身が有している人材あるいは体制、知識、資金、そういったものが引き続きある意味、取組みの制限要因になっているということは言えると思います。したがいまして、環境管理能力の向上というものが引き続き課題と言えると思います。
それから3.にございますが、こういった状況を踏まえまして国際環境協力の活動自体についても質的に転換していくことが求められておりまして、また少しずつ転換が図られつつあるのではないかと思っております。まず国内での動きでございますが、ODA大綱が昨年11年ぶりに見直しが行われております。この背景にはやはり我が国のきびしい経済財政状況、あるいはODAに対してより戦略的に、より機動的に透明性や効率性を確保する、あるいは国民参加というものを求める、という声の強まりがあると思います。
改定されたODA大綱の中では、例えば地域でいいますとアジアを重視するということですとか、開発アプローチとしては経済成長を通じた貧困削減あるいは人づくり、制度づくりを重視していくという考え方が打ち出されております。また重点課題といたしましては、これは旧大綱にもございましたが、新たな大綱でも地球的な規模での問題、これは環境問題を含んでいるわけですけれども、これが重点課題として特定をされております。また新たな大綱のもとではこれまでの単純な要請主義から我が国と途上国の間の政策対話を重視していく。その中で戦略的な課題を選択していくというアプローチが強調されているところでございます。
そういったODAの根本となる考え方の変更があったわけですけれども、この10年余りの間の環境ODAの分野の進展は著しいものがございまして、今やODAのかなりの割合を環境ODAが占めているという状況でございます。環境ODAの指針としましては、現在最も新しいものは2002年のヨハネスブルク・サミットの際に策定されましたEcoISDといったものが挙げられると思います。これに基づきまして行動計画がつくられております。
3ページ目にいっていただきますと、こういった環境ODAの取組みの進展と並行いたしまして、やはりこの10年の中では、環境ODAでは十分対応していない領域での多様な取組みの進展といったものが変化として挙げられると思います。まず最初に、環境政策対話の進展・多様化といったものがあると思います。例えばアジア太平洋の環境大臣の非公式な集まりでありますエコ・アジアの開催、あるいは先ほどちょっとご紹介ありましたけれども、日中韓の環境大臣会合の開催、それからより公式なものでいいますと、ESCAPが主催して、5年に一度やっております環境と開発に関する閣僚会合といったものがあると思います。またUNEPなどの国際機関との協力によりましての対話というものもございますし、日中、日韓などの間でも二国間協定に基づく協力も進んできております。
それから環境省などによります個別のワークショップ、セミナーといったものを通じた環境能力の向上の支援といったものも多数行われておりますし、共同研究などを通じて科学的な側面での協力も進展してきております。それから個別の環境問題につきましては、東アジアあるいはアジア地域における環境管理のメカニズムといったものも生まれてきております。例えば酸性雨につきましては東アジア酸性雨モニタリングネットワーク、海洋汚染につきましては北西太平洋地域海行動計画といったものが誕生しております。
それから政府レベルの取組みに加えまして、地方自治体あるいは企業、NGOといったさまざまな主体の環境協力もこの10年で大きく進展をしてきていると思います。こういった進展はあるものの、さらに今後さまざまな環境問題の広がりに伴いまして、政策領域を含んだ形の取組みあるいは東アジア地域での包括的な環境管理のメカニズムなどが今後必要になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。
環境協力の実際のアプローチの中での問題といたしましては、これまで個別の環境問題に対処する、ODAの中でいえば個別案件を積み重ねていくというようなアプローチもございますけれども、さらに今後は国別の援助戦略自体に環境問題をはじめから織り込んでいくというようなアプローチが必要なのではないか。それから政策面での対応といたしましても、規制だけではなくて経済的な手法やその他のさまざまな経済政策手法をミックスしていくということが重要なのではないかということが指摘されております。それから引き続き実際にこういった協力を進めていく上での人材というものは、そのニーズがかなり高まってきているわけですけれども、実際に活躍していただける人材の不足あるいは人材の活用の方法が十分ではないのではないかといった指摘もございます。
最後4.でございますが、国際援助機関の方では開発援助全般をめぐる潮流といったものもこの10年の中で変わってきている、あるいは進展してきているというふうに言えると思います。先ほどもございましたとおり、この2000年前後を境にミレニアム開発目標の設定などがなされておりますし、欧米の援助国ではこれ前後からODAの増額の動きも見えております。また世銀におきましては貧困のない世界の実現というものを目標として設定いたしまして、包括的な開発の枠組みを提唱し、途上国のオーナーシップのもとで戦略的に援助を行っていこうということになってきております。
それから国際的な環境条約も極めて多数生まれてきておりますけれども、その条約の間での連携といったものが必ずしも十分でない。あるいはより効率的な実施に向けたグローバルガバナンスといったものも課題になってきているというふうに言えると思います。それから自然環境などの分野では、NGOがイニシアティブを持って国際条約枠組みの構築に関わってきているというようなことも今後の協力を考える上では重視すべきではないかと考えております。
以上、雑ぱくでございますが、この10年余りの間の国際環境協力をめぐる状況の変化と課題ということでご説明申し上げました。
○田中環境協力室長 委員長、ちょっと若干補足をさせていただきたいと思いますが。
○浅野委員長 はい、どうぞ。
○田中環境協力室長 後ほど今回の議論の検討の方向性というのか、検討のスコープみたいなのをまたご議論いただきたいと思うのですけれども、その前段階として状況の変化と課題ということをご説明させていただきました。ご説明をさせていただきながら、まだ従来の枠がちょっと残っているというような印象を持ちつつ説明をしていたのですけれども、前回の答申ではODAの世界で環境ODAをどう進めていくかということを中心に据えておりました。今回はもちろん、環境ODAは非常に重要なツールではありますけれども、環境ODAも含めてもっと幅広いさまざまなツールを使って、我々が何をこれから目標にやっていくべきなのか。何かのためにこの途上国への協力というのを手段として使っていく。それをいろいろ議論していただきたいということでございます。
その大前提として、途上国という考え方自体がいろいろもう途上国自体が変わってきていますし、多様化してきているということもございますし、もちろん基本法においても途上国の環境問題の対処というのは一つの大きな分野ですけれども、より広範に地球環境問題あるいは地域の環境問題、そのマネジメントのあり方、そういったものも含めてその中で途上国あるいはもう少し広く途上国も含めた諸外国とどういうふうに連携をし、協調していくべきなのか。あるいはそれを行っていく上でODAというのはどういうふうに活用できるか。あるいはODA以外の、例えば環境セクター間のいろんな話し合いですとか、あるいは民間NGO、企業の皆さん、もう今やいろんな方が重要な役割を果たしておられますので、そういうのを全部ひっくるめて何に向かってそういうものを、どういうアプローチで、どういう方向に持っていくべきなのかというような、非常に一般的ではございますけれども、今までの環境のODAをどう進めていくかということではなくて、少し視点を変えて環境面から協力していくために何をすべきか。その中でODAは重要なツールであるというような、少し立ち位置を変えて議論をしてみたいというふうに考えておるところでございます。また後ほどスコープなり議論の土俵の設定の仕方については、ご議論をいただきたいと思います。
○浅野委員長 それではまだ説明が続くのですが、あまり説明が長いとうんざりしますので、ちょっと息抜きにということですが、これから本格的に議論を始めますともうこれで今日の議論は時間切れになりそうなので、とりあえずちょっと事実関係の確認とかいったようなことだけでご発言をいただいて、ご議論はこのあと最後に少し時間をとってまとめてやりたいと思います。今の2つの説明に対する事実関係確認のようなご質問があればお受けいたします。いかがでしょうか。
○石田委員 環境の問題を今まで中心にやってきて、ODA全般の過去のやってきた結果というんですかね、そういうものが結構情報としてまとまって我々に入ってこない部分があります。我々も過去いろいろ経験してみて、そういう中でのODA等の、やっぱりそういう過去の実績とかも踏まえた上での論議というのが、ある程度必要なのかなというように思います。
○浅野委員長 わかりました。ODA大綱の見直しということで少しザクッと書いてありますけれども。
○石田委員 多分かなりデータはあるんだと思いますけれども。
○浅野委員長 はい、これについてはかなりのバッググラウントペーパーがあると思いますから、必要なものを事務局に少し整理をさせて提供するようにいたしましょう。
ほかにございませんか。よろしゅうございますか。
それでは続きまして、国際環境協力検討会報告書についての説明をお願いしたいと思います。この報告書は、社団法人海外環境協力センターに設置されました国際環境協力検討会で、今回の専門委員会における議論の前段階ということで今後の国際環境協力の理念、基本方針、取組みの方向を検討していただいた、その結果のとりまとめということでございます。この報告書のご説明につきましては、今申し上げました検討会の座長をお務めになりました廣野委員にご説明をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○廣野委員 今、環境省の方から全体的な「国際環境協力をめぐる状況の変化と課題」という説明がありましたので、もうこの点は全部省きます。ただ省きますけれども、今先ほど事実関係云々とありましたが、そういう点もちょっと触れながらこの本題に入りたいと思っています。
実はこういうような検討会を設けてやったというのは、やはり今回のこの環境省によるところの諮問というものがやがて出てくるであろうという中で、前段階としてみんなで少しざっくばらんに、ああでもないこうでもないと議論しようじゃないかということで、かなり議論をさせてもらいました。これは何回だったかちょっと忘れてしまったのですが、数カ月にわたって議論をいたしまして、それでようやく報告書が出てきたわけです。
そういう議論の中で3つばかり重要な点をご説明します。今日は、加藤先生もここにおられますし、それからあと中村先生もおられますし、それから山瀬先生もおられますし、それから青山さんも確か何らかの格好で関係していると思いますが、ここにおられるいろんな方もご関係なさいましたので、それぞれまた補足説明があるかと思います。
僕はたまたま座長を受けてやっている中で、最初の日の討論の中でも問題提起という格好でいたしましたけれども、それは今たまたま室長の方からお話があったように、かつて中央公害対策審議会と自然環境審議会の合同審議会で審議した、あの平成4年の答申を見直すということになると、基本的には現状認識、それまでの変化がどういうものであったかを持つ必要がある、これが第1番目です。それから第2番目は、そういう現状の変化を持った上で、それは国際的にも国内的にもあるわけですけれども、日本としてどういうところに比較優位があるかということをある程度検討していく必要があるのではないかということ。それから3番目は、そういう比較優位があったにしても、我が国自身は何らかのビジョンを持つ必要がある、ビジョンなき国際協力なんてあり得ないということで、そのことをかなり我々は検討いたしました。そういう3つのことを問題提起として出しまして、これらをある程度精査した上で、それぞれ個別の問題に入りましょうということにしたわけです。
今回は答申の見直しですが、当然その見直しの中で我々が強調したかった点はいくつかあり、次の3つの点を強調したいと思います。1つは、見直しの根拠になる国外・国内的な変化の問題ですけれども、世界全体の課題というのはどういうものかなということですね。これを精査しようということで、前の国際環境協力の答申の審議でもいろいろ世界全体の問題を議論しましたけれども、その後の大きな変化があるので、そういう変化についてきちんと整理していくということ。
それから2番目は、我が国が存在するのはアジアであり、アジア太平洋地域の課題というものをきちんと精査していく必要があるのではないだろうかということで、そのアジア太平洋地域の課題をきちんと考えていこうということ。
それから3番目に、日本の国際環境協力の課題というのを考えていく。こういうふうな整理をいたしました。
いろんな議論がありましたけれども、皆さん方が集まりあって、十数年前に比べて変化したなというのは、どうもこの地球環境の問題はですね、あるいは国際環境協力の問題を議論するときには、やはりそれぞれの国々の国内の政策、これが非常に重要だということでした。それぞれの国が国内の政策をちゃんとやってくれない限り、単なる……単なるというのは失礼かもしれませんが、いわゆる単なるODAを使って云々という問題ではないということです。そういうことで、世界全体の国々、先進国、途上国、移行経済国、全部含めての国ですけれども、そういうあらゆる国が国内の政策をきちんとやってもらう必要がある。
それから、それぞれの国の中で、先進国の方はそれほど問題はないかもしれませんが、政策の実行能力の問題もあります。その実行能力を高めないと、例えば世銀とかあるいはUNDPとかUNEPとかいろんなところに広げて政策を形成したとしても、実際に実行能力がなかったらどうしようもない。
それから先ほども議論にありましたけれども、最近の途上国の動きあるいは先進国の動きを見ていると、共に非常に地域協力を高めようとしていますね。例えばNAFTA、アメリカ北米自由貿易協定、これも2005年、来年にはメルコスール、南米地域協力と一緒になるんですね。やがて今度は、もっと全体に全米の自由貿易協定をつくろうなどと言っておりますが、ブッシュ大統領も、この前の南米の訪問の中で、しっかりやるなんてことを言っています。そういう格好で、先進国自身もかなりもう意識的に地域協力をどんどん進めていこうと考えている。
EUはご存じのように15カ国が25カ国になってしまったわけですね、10カ国増えて。やがてあと7カ国も参加するでしょうから、そうなるとまた非常に大きくなりますね。EUはほとんど先進国の集まりですけれども、伸ばしたことによって移行経済の国々が入ってきたわけですが、そういう中でどうもアジアだけは何もない。ASEANの地域協力はあるけれども、どうも見ているとあまりそういうような地域協力の動きがないので、ここらあたりは我々も本当に真剣に考えていかなければいけない。そういう中で、別にこれはブロッケードをつくるとかということではなくて、少なくともWTOコンシステント(consistent)な方向で、なおかつ地域の協力を高めようという、こういう動きがものすごく1990年代に入って強くなってきたものですから、やっぱり私たちが見直しをやるときには、こういう問題をしっかりと考えないといけないんじゃないだろうかと思います。
以上が大体私たちが考えた政府レベルの大きな変化です。個々のそれぞれの国の国内の政策の問題、それからそれぞれの国の国内の実施能力の問題。実施能力については主に途上国の問題ですが、先進国でも必ずしも実施能力があったとしても意欲があるかどうか、京都議定書に関して言うと、アメリカの離脱があるということもありますので。それから地域協力、これは政府レベルの問題ですね。こういう問題をしっかりと我々はつかんだ上で、国際環境協力の中にはそういうものをきちんと入れていこうと、これが重要な課題です。
それから、1980年代から始まった、特にレーガン政権になってからの規制緩和。それからITですね、情報通信。こういうものの動きがものすごく活発になってきまして、そういう中でグローバリゼーションがどんどん進んでいった。それから、国連のGATT、WTOを中心とする貿易の自由化の問題、あるいは資本の自由化の問題、IMFを中心とする資本の自由化の問題とか、いろんな国際機関がいわゆるグローバリゼーションの言ってみれば後押しをしてきた。もちろんその中核には多国籍企業があるわけですけれども、政府のいろんな国際協力の後押しがあって、民間企業がどんどん多国籍化していくという、その多国籍化していく中で、民間企業自身がコーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ(corporate social responsibility)といいますか、そういう基本的な観点から、あるいはよくいわれるのは民間企業自身がそれぞれの進出した国においてグッド・コーポレート・シチズン(good corporate citizen)といいますか、そういうようなことをやっていかなくてはいけないということを認識しはじめているなと感じております。
そういう多国籍企業が世界全体では、今既に4兆億ドルの膨大な外国投資をしており、多国籍企業の進展が見られます。それぞれの多国籍企業の中でも、お隣に座っている長谷川さんの所属するトヨタも多国籍企業の一つで、そういう企業はみんな環境問題ということに対して非常に意識をしはじめた。これは特に1980年代の後半からですが、私も実は長い間、ロイヤル・ダッチ・シェルというシェル石油の会社の顧問をやりまして、シェルの環境への保全という問題で一生懸命やったわけですが、そういう民間企業自身もこのように環境問題に対しても関心を持ってきている。
それから最近は先進国のNGOだけではなくて、途上国のNGOもどんどん出てきて、環境ということに対して、国際的なNGOの支援を受けながら途上国なりに一生懸命やり出した。NGOのレベルでもそういうことが行われるようになってきた。そういうことを考えると、我々は民間レベルにおけるところのいろんな過去十数年の変化、これも視野に入れて、これからの国際環境協力を考えていかなくてはいけないのではないかと思います。
そういう意味で政府レベルだけの問題ではなくて民間レベルの問題もあり、と同時に両方のお互いの連携の問題が出てくるわけです。こういうところでうまくいっているところと、うまくいっていないところがあります。そういうものを精査した上で、一体、日本として何ができるかということを考え、皆さん方のお手元にある報告書ができました。ここに、その概要を数ページにまとめた資料がありますが、皆さん方のお手元に報告書そのものがありますので、これを見ていただければより細かにわかります。
概要をまとめた資料の一番最後にある、一覧というところを見ていただきたい。この一覧を見ていただくとおわかりのように、私たちが考えたのは、まず何といっても我々は世界のあらゆる国々が、この環境という面について本当に真剣に考えてもらわなくてはいけない。そのためには世界的な枠組みづくり、こういうものに我が国が戦略的に関与していく必要があるのではないかということです。今までは、いろんな諸外国、特に先進の諸外国、その中でもEUなどがガンガン言っていることを受け入れて、それを後追いで対応してきた。その対応型の日本のやり方ではこれからはだめだなと思います。もっと積極的・戦略的に関与し、我々自身からいろんなことを提案しながら、環境に関する世界の枠組みづくりをしていく必要がある。これは実は言うはやさしいのですが、やることはものすごく難しいですね、人材の問題とかいろいろ出てきますから。ただ方向としてはそういうビジョンを持ってやる必要があるのではないかということです。
これは実は平成4年の答申にはないことなんですね。こういうビジョンを持って世界中の枠組みづくり、環境に関する枠組みづくりをやっていく。もちろんあとから申しますが、できるところからというふうに日本の場合にはなりますけれども、しかし一応ビジョンとしてはそういう方向でやっていきましょうということです。その資料の右側の方に○印がつけてあるようなところが中心かなと思います。
また、「重点分野に係る世界的な枠組みづくり」とあります。読み上げませんけれども、その中でちょっと二、三の例で言いますと、重点分野というのはWSSDでありましたよね、2002年のいわゆるヨハネスブルク・サミットで。そこでも重点分野が出てまいりましたが、実はあの重点分野とアジアの重点分野はうまく重なるんです。そういうことで、我々は、世界の枠組みづくりをやる一方で、他方では地域の枠組みづくりも考えていきましょうということです。そういう重点分野、例えばエネルギーの問題、地球温暖化の問題、あるいは生物多様性の問題、都市環境の問題など、非常に重要な課題がたくさん重点分野としてあるわけですけれども、こういうものについて我々としてはできるだけビジョンを持ってやっていきましょうということです。
それから3番目のところで、「環境技術の移転に関する世界的な枠組みづくり」とありますが、これも私、IGESというところで、「アジア太平洋地域における環境産業の育成」という研究テーマで2年間ばかりやったわけですけれども、環境産業の育成というのはこれから大変重要な課題であると思います。環境省でも環境経済課から、これからの環境産業が世界的にどういうようなスケールになるかということをいろいろ予測しております。こうした枠組みづくりにも積極的に関与していく必要がある。
それから2番目に「東アジア環境共同体」と書いてあります。アジアという中で我々がやる場合に、中央アジアとか南アジアを除去するというつもりはありませんけれども、しかしできるところをやるということになると、まず東アジアということになると思います。昨年の12月に小泉総理がASEANサミットを東京でやりまして、そのときに東アジア共同体というものを今後つくりましょうということで合意いたしました。先週行われたラオスでのASEAN+3のサミットにおいても、東アジア共同体の結成に向けてということで合意され、来年には東アジア共同体サミットが行われることになりました。
東アジアは、我が国として今一番プライオリティーの高い地域ではないだろうかということで、この地域を中心に環境協力に関するものをいろいろやっていきましょうということです。既にいろんな部会も出来始めまして検討をしております。特に、自由貿易を中心に経済に関するもの、投資をはじめいろいろな金融に関するもの、安全保障に関するもの、それから社会に関するものがあります。いろいろある中で環境が抜けておりますが、環境という視点から東アジア共同体の検討をやっていく必要があるのではないかということで、そのことをかなり強く謳っております。
そういうことをやっていく中で、2番目の問題に入りますけれども、こういう戦略的に関与するのはいいのだけれども、実際には包括的な環境管理プログラムを推進しなくてはいけないということで、具体的にそのプログラムをつくっていく必要がある。というのはビジョンがあり、そのビジョンの方向でいろいろ進んでいくためには、最終的には何らかの環境管理プログラムをつくっていかなくてはいけないので、そういうプログラムをどんな面でやったらいいだろうかということで、(1)から(6)までを提示しております。
特にこの中で重要だと思いますのは、先ほどもちょっと議論がありましたが、石田さんの方からお話のあった点は非常に重要な点で、今までやってきたけれども、はたしてどの程度成果があったかなという、そういう評価の問題ですね。こういうことは重要です。それからモニタリングのためのネットワークづくりも重要です。同時に国内での研究あるいは共同研究もこれからますます強化していかなければいけない。また、ここに「環境教育プログラムの開発と実施体制」についても書いておきました。WSSDのの中で小泉総理が「持続可能な開発のための教育の10年」というのを提唱しております。これは日本がNGOと一緒になって提唱したのですけれども、来年の1月1日から、その教育の10年が2014年まで実施されることに国連総会で決議されました。「持続可能な開発のための教育」ということを言っている中で、環境教育も一つの重要な分野ですので、そういう分野で我が国はリーダーシップを発揮していく。我々がWSSDで提唱した結果、国連の決議になったわけですから、当然日本としてもこういうことを本当に真剣に考えていかなくてはいけないのではないかなということです。
それから、この(6)番目のところは、昨年のODA大綱の見直しの中でいろいろ議論されておりますので省きます。
次に、「国際環境協力実施体制の強化」。ビジョンを持ち、プログラムを持っても、実施体制についてはだめだなということで、その実施体制のために、まず第一に国内の基盤整備です。国内の基盤をきちんとやらない限り、絵に描いた餅だということで、ここに書いてありますように、まず情報基盤の整備、これはものすごく重要なことですね。今、インターネット上では、85%が英語であると一般には言われております。英語でのインターネットの情報がたくさん環境省にもあるわけですが、そういうものを日本国民が十分に得るというのはなかなか外国のようにはできないので、そうかといって日本語に全部直す必要もないわけですけれども、しかしやはりできるだけ国民全体で本当に環境の重要性を考えてもらうためには、情報基盤の整備をきちんとやっていく必要があるかなということです。
それから2番目には、何といっても人的な基盤の整備であろうということです。確かに最近環境関係のいろいろな大学院ができたり研究科ができたり、環境関係の教育の面あるいは研究の面、いろんな面で日本もやってきたわけですけれども、我々が見るとどうも先ほど言ったビジョン、それからプログラムということを推進するとなると本当に人材が足りないと感じております。国際的に通用するような人材というものを、本当に我々は真剣に考えていかなかったら当然リーダーシップをとれないと思います。
それから3番目には、そういうことをやるにはやはりお金も必要なんだということです。お金の面では、当然政府自身あるいは地方自治体のそういう資金の問題だけではなくて、先ほど申した民間企業の問題、あるいはまたNGOの問題ですね。そういうところもきちんと自分たちで資金の確保、効果的な活用ということを考えていく必要がある。もちろん、お互いに協力しながらそういうことをやっていくということも必要で、法整備の問題がいろいろ出てくる。税制の改革の問題になるかもしれません。
それから次に、新たな国際環境協力を進めるための体制強化ということで、これは対外的な面で我が国はまだまだ大変残念ながら、私自身も実は国連とかOECDとかアジア開発銀行とか世界銀行とかいろいろなところで働いてきましたけれども、そういう経験の中から見ると、我が国の場合には、やはり国際機関への人材の戦略的な派遣が必ずしも十分に行われていません。そういうものをもっときちんとやる必要がある。特に、ミドルレベル、トップレベルの人材の養成も必要でしょう。
その次に書いてあることも重要ですね、「政府レベルの関係機関の連携・調整機関の設置」。国際環境協力を進めるためには、日本の国内の中で、各政府レベルの関係機関の連携・調整をきちんとやっていかないということです。もちろんここに書いていますように、NGO、NPO、政府、地方自治体、その他そういうものの対話の場も必要でしょう。
それから3番目に、そうは言うものの、結局最後は環境省自身がきちんとやっておらないといけないなということで、若干ここに苦言しております。環境省自身の体制強化をしてほしいということです。ここに書いてありますように、特に「国際環境協力に係る取組み全体を統括する体制強化」と「関係機関との連携の強化」が重要です。この辺について、私はここで何も申し上げる必要はありません、いろいろ皆さんよくおわかりになっているはずですから。たくさんの人材がありますので、こういうことをきちんとやっていかなければいけない。
それから次に、地方公共団体、企業、NGOの協力体制の強化をやっていきましょうということです。最近、ようやくこういう面で環境省も、例えば環境政策に関するNGO、企業の提言をできるだけお願いしましょうということで提言フォーラムを毎年、今年で4回目か5回目になりますが、やっていますけれども。できるだけ国の方もそういうようなNGO、企業の環境政策、提言というのを大いに奨励する。そしてそういういいものを国の環境政策に持っていく。これは国際的な環境協力の政策もまったく同じです。
最後に、我が国の研修体制、こういうものをきちんとやっていく必要がある。これは特に途上国のキャパシティ・ビルディングという点から必要なものです。我が国の国内でやることもあるし、海外でやることもあります。あるいはいろんな国内の大学でやる場合もあるでしょう。
それから、途上国での国際環境協力をサポートする体制、これも必要です。これは、今、様々な途上国において、環境政策の問題、実施体制の強化の問題などに取り組んでいますが、そういうものを側面からサポートするということです。
以上、かなり包括的な方向でやりましたけれども、最後にこの取組みの方向の中で申し上げたいのは、我が国の比較優位というもの、これをきちんと見て、その比較優位の面で貢献するという、そういうものを大いにみんなで探して、それを前面に出して国際環境協力をやるのがいいなということです。というのは、バイラテラル(bilateral)で欧米でもそういうことをやっているし、あるいは途上国自身もそういうことをやっております。最近のASEANを見ても、地域内で国際環境協力ということをやっています。日本として、我々は何が最も得意なものかということをはっきりさせた上でそういうことをやらないと重複するところが出てくる。今の資金とか人材の非常に足りない時代に重複の無駄は避けたいものですから、そういう意味ではこれは私たちの会合の中でもいろいろ議論されましたけれども、何とかして我が国自身の比較優位というものをきちんと精査する。そして世界的な動きの中で、我が国の比較優位をどう位置づけていくかというビジョンを持ち、かつプログラムも持ち、そして国内の実施体制あるいは対外的な実施体制を強化していくということが重要になるということであります。
以上でございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。お金をばらまくだけというそういう比較優位はいい加減に卒業ということだと思いますが、加藤委員、中村委員、山瀬委員が検討会のメンバーでいらっしゃいましたけれども、もしコメントがありましたらどうぞ。
○加藤委員 戦略検討会の座長をしていただいた廣野先生には、戦略的にこの議論の方向を説明していただいたので。何かスリーポイント主義らしいですね、見直しの視点から始まって報告の概要に至るまでスリーポイントで簡潔にご説明いただきました。
それで先生は多分それに触れる時間がなくて省略されたのだと思いますが、実は皆さんのお手元に今日配布されております報告書ですが、報告書をまとめるにあたって、皆さんに読んでいただかなくてはいけないということで、非常に短くまとめたという経緯がありまして、実はこの背景に先ほど石田委員からおたずねのあった実績がどうなのかとか、現状はどうなのか、それをどう評価するのか、その評価の上に立って今後の戦略のあり方を検討しようということで、かなり膨大な資料を集めております。必要に応じてそういった資料もご紹介できるのではないかと思いますが、この報告書を読んでいただくにあたっては、そういった背景にかなりの資料があるということもご紹介しておきたいと思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。では、中村委員何かございますか。
○中村委員 特にありません。
○浅野委員長 山瀬委員はいかがでしょうか。
○山瀬委員 ありません。
○浅野委員長 よろしいですか。それでは、多分関連が深いと思いますので、資料の6に基づいて、いったい環境省はこの専門委員会に何を期待しているのかということをご説明いただいた上で、そのあと、自由に皆さんからご意見をうかがうことにします。
それでは、室長どうぞ。
○田中環境協力室長 それでは資料6でございます。「国際環境協力の在り方」の検討の方向(案)ということで、諮問させていただいた環境省側として中央環境審議会の方でご議論いただきたい方向性をまとめてみました。
まず検討の範囲でございますけれども、先ほど来、廣野先生のお話にもございましたとおり、地球環境問題あるいは地域レベルの環境問題、そういったものを保全するということと、もう1つは、従来からの途上国における環境に係るさまざまな課題を解決する。両方を視野において、そのために我が国が何を念頭に取り組んでいくべきか。そういった中で廣野先生がおっしゃったような我が国としての比較優位というようなことも、もちろん出てくるかと思います。それとこれも廣野先生のお話にもう既にありましたけれども、世界的にあるいは地域的にさまざまな枠組みに積極的に関与していくために、我が国としてどういう基盤整備あるいはその体制をつくっていくべきなのか。もちろん、この中には二国間のさまざまな事業の実施というようなことに対する基盤の整備ということもあると思います。
3番として、そういうものは政府だけがやることではなくて、多様な主体のさまざまな努力を活用してこういうものを進めていく。そのためにどういうふうにしていけばいいかといったような手段にわたるようなことから、あるいはもっと大きくどういうところに向かっていくかというような目標に係るところまでご議論をいただきたいと思いますが、ともかく途上国に対する援助という意味でのODAのあり方だけではなくて、幅広く環境面における国際協力をご議論いただきたいというふうに思っているわけでございます。
2の位置づけでございますけれども、中長期的な方針ということで、ここ一、二年ということではなく、今後政府あるいは民間の方々にもお願いして、中長期的に、どういう方向に、どういう体制で進むべきかということをご議論いただきたいと思っております。
それから、在り方の構成でございますが、これは今後の議論次第でございますが、一応検討会で整理をしたような大きなところから理念があり、基本的な方針があり、それから現状と課題の分析があり、具体的にどういう方向で進むかというような、こういうような構成を念頭においております。
それぞれについて検討項目ということですけれども、理念というのは非常に究極的なというか普遍的な大きな命題でありまして、それに向かっていくために何に重点をおいてその理念の実現を図っていくかということを目標とし、さらにブレークダウンをして、個別具体的な行動のその基本的な方向を示すものとしての基本方針、それから配慮すべき事項ということでまとめてみてはどうかと考えております。これはとりあえず検討会のご議論に沿って、アウトラインをまとめたところでございますけれども、これは今後ご議論をいただきたいというふうに思います。
それから先ほど石田委員の方からご指摘ございました現状がどうなのか、それから現在どういう課題があるのかというようなところも大事な分析材料であると思います。その上で具体的にどういう方向に何を進めていくかというようなことを、またご議論をいただきたいというふうに思います。大きな方向性のところと、それをもう少し具体的に手段として何が必要かというようなところまで少し広範にわたりますけれども、両方のご議論をぜひお願いしたいというふうに思っております。
○浅野委員長 それでは、資料6に「検討項目について」と書いてありますけれども、ここは議論の順番をこの順番でということではなくて、最終成果物の仕上がりの出来ばえがもう既にできていると、こういう感じですね。つまり4の(1)のところは言ってみれば、これだけ切り出しても十分政策的には使える。(2)のところはそれについての言ってみれば背景事情のコメントのようなものである。そしてさらに各論で今後いろいろな政策、施策のヒントになるものを見つけようと思えば(3)を見ればわかる。こういうような仕上がり品を想定しておられて、大体これが廣野委員会のペーパーの線に沿っているという感じもするわけですが、議論をこの順番で進めるということではまったくございませんで、先ほどの今後の審議というところでは、先ほど石田委員がおっしゃったように、今までどうだったのかとかどう変わってきたのかということをまず議論して、それから理念、具体的なものという形で議論をするということになっております。この辺の議論の仕方も今後の議論の流れを見ながら適宜修正をすることもあろうかと思います。
さて、私の方の手元のメモではこれからあと約35分間、40分ぐらい皆さんから自由にご議論をいただくということができると思います。いつもの中央環境審議会地球環境部会ですと発言制限などもしたりして、ひんしゅくを買うのですが、今日はそんな必要はまったくないと思います。できればせっかくおいでいただいて日当をもらう以上は一言はしゃべって帰っていただきたいという気はありますので、特に検討会のメンバーでなかった方に先にご発言をいただいて、あとでそれを検討会の方々の方から受けてコメントをいただくような形で議論をしたらと思います。
高橋委員から早速札が上がりました。あれは部会の流儀でありますので、ここでは必ずしもその流儀を当てはめる必要はないのですが、どうぞ、高橋委員。
○高橋委員 大体何をやるかというのが検討つきました。その背景として二、三非常に重要なことを念頭におかなくてはならないなということを私感じますので、その点を申し上げたいと思います。
1つは、この環境協力の側面が国際社会のアジェンダの中で非常にくすんできている。いわゆるサスティナブル・デベロップメント(sustainable development)ということで内容がほとんど環境だったものが、いろんなものが入ってきて何々のサスティナビリティー(sustain-ability)というのが非常に流行っていますが、環境はその一つに過ぎなくなったという状況がありますので、その現状認識が非常に大事で、かつ見ようによっては由々しきことなんですが、私は環境分野の一つの段階が終わって次の段階に入る、そういう世界状況にあるという認識をすべきだろうというふうに思います。世界の主要な関心事項というのがセキュリティーということに大きく移ってきていますが、そういうことを中心にしてこのところ6つほどの非常に重要な報告書が出てきまして、それをめぐってこれからの国際社会のいろいろな分野に関する協議というのが進んでいくことになりますが、残念ながらそこに環境のものは入っていない。ちょっと指摘いたしますと、1つは、日本がイニシアティブをとった去年の人間の安全保障委員会の報告書。それから、ILOが中心になってつくりました
A fair globalization 、これはグローバリゼーションの社会的側面委員会というのが中心になって出したものですが、それは今年の2月でした。それから、いわゆる市民社会の重要性、これはだれが見てもそうなんですが、いったい何なんだというのがどうもすっきりしないということで、国連の事務総長の諮問に応じた形で、We
the Peoplesという国連憲章の出だしの言葉を使いまして、そのWe the Peoples報告書というのがあります。それから、今月の1日には皆さんご存じのとおり、challenges
and changeという、要するに国際社会の安全保障の問題を徹底的に考えてみよう、ついては安全保障理事会も考え直してみようという、日本ではその安全保障理事会の問題ばっかりが記事になっていますけれども、99ページの中でそれは半ページしかないところで、非常におもしろい報告書が出ました。来年になりますとあと2つ出ます。1つはGPG報告書、global
publics 報告書というのが出ます。それから、先ほどにもありましたMDGsに関して、今のままでいったらろくなことにならない、国際社会のクレディビリティ(credibility)にかかわるということで、それに関する報告書がジェフ・サックスを中心にして発表されます。この6つが、世界は非常に不安定になってきた、セキュリティーとの問題でいろいろ考えなくてはならない、その中でいろいな問題を包括的に見てみようという形でひとかたまりとして出てくるわけです。今後この6つを比較検討しながら国際社会で協議していくことになると思いますが、そこにその環境がくすんできたというのも一つの表現かもしれませんけれども、環境問題がないんですね。こういう状況が非常に私は、これはまずいなという感じがしますので、その中で日本がこの環境協力に関して何かイニシアティブをとっていくときには、ちょっとやそっとのことではだめだと感じております。世界全体を見渡したこの6つの報告書のコンテキストの中でどうなんだということをしないと、何をやっても、今までよく日本であったことですが、唯我独尊、何か自分ではやっていることのつもりにはなっているけれども、全然何の意味もなくなるというようなことになりかねない。そういう状況にあると思います。
2つ目には、それをするに際して、非常に重要である非公式なネットワークに関して、新しいジェネレーションがこれから形成される段階にあるという状況、これが大事だと思います。ここにおられる方、皆さんよくご存じで、かつそのネットワークの中に引き込まれちゃった何人かもいるわけですが、いわゆる国際社会の中で環境協力というのはほとんど人脈で動かされており、これが30年続いていた。それで、その次のジェネレーションのネットワークをつくらなければならない時期に今あると思います。そういう状況で日本がイニシアティブをとるとしたら、これは国際社会の中で今は公式のプロセスというよりも非公式のプロセスの方が数段重要になっている状況ですから、非公式なネットワークをどういうふうに形成していくのかということが、非常に重要になっていく状況にあるなということ、それが2つ目。
それから3つ目には、例えば環境問題に関してのいろいろな意味での環境負荷に関して、どうも分野によってコンセプトの開発段階がちぐはぐだなというのが非常に気になりますので、その点を全体として見渡す必要があるような気がします。具体的には、例えば水の問題ですと、バーチャル・ウォーター(virtual water)というようなコンセプトも使って考えている。環境の問題は、一般的にやはり似たようなことが可能なのではないだろうかと思いますけれども、そういうようなコンセプトの展開がない。
それから例えば部分的には環境問題もクズネッツ曲線が当てはまるのかなというようなことで、技術移転の重要さということの関係で、その問題はある程度議論されているけれども、全然煮詰まっていない。したがって技術移転の重要さというのは何で、どこまで、これが必要なのかということの要素がどうもはっきりしない。それもコンセプチュアル・ディベロップメント(conceptual development)がどうも不徹底だというようなことの1つかと思いますが、そこいらのコンセプトに関したばらつきが非常に多過ぎる。これを最も発達している段階のあたりにどうやってそろえていくかという作業が専門委員会としてはやっぱり必要なのかなという気がします。そういう材料を提供しますと、その後の審議で議論しやすくなるのではないかという気がいたします。今の段階では以上3点だけ述べさせていただきます。
○浅野委員長 ありがとうございました。いずれも大変重い提言でありまして、事務局がどこまでこなしきれるかわかりませんが、さらに詳しく高橋委員の講義を聞きに行っていただいて勉強していただければと思います。
それでは小林委員、どうぞ。順番にお願いいたします。
○小林委員 私自身が兵庫県におり、そのあと今の財団に移って来ておりまして、そういう意味では地方からの国際協力を今までやってきたわけなんですが、やってきてすごく感じることの1つは大変情報が少ないということなんですね。なかなかわからない。わからない中で空回りをしているというのが結構あるというのをものすごく感じたわけです。そういう意味でこの議論をするにあたって、できましたらまず、先ほど加藤先生が言われた集められた資料を、いただけるものは事前に全部送っていただきたい。それを見た上で議論しないと、どうも行き違いとかすれ違いが起こるのではないかという心配をしております。今まで国際協力で行って、もらっている情報がそこの人に話を聞いて帰って来たら、単に何かゾウの耳だけ聞いて帰って来たということが結構あります。それで、次に行ったら話がひっくり返る。私ども実は今、加藤先生にお願いをしてモンゴルへ、もう6年目になるのですが、なかなかうまくいっておりません。行くたびにすれ違いが起こって、もうフウフウ言っているわけですが、一番初めはCDM事業ということで環境省の委託料をいただいてJICAと一緒に協力してやった。ただ、CDMがなかなか制度化されないものですから、結局途中で切れてしまって、それで、現在は県からのお金を一部いただいて、企業からも協力をしていただいたお金で進めているわけなんですが、こちらからやっていることと向こうの期待度にものすごいギャップがあります。
そんなこともありまして、もっと情報をうまく伝達できる、そういう意味では逆にいうと環境協力に関する日本における情報源をどこにもらうのかということなんですね。定期的に私どもでも手に入ってくる情報というのはJICAの情報とそれから国際協力銀行からの情報ぐらいで、それ以外の情報というのはほとんどないんですよね。インターネットを検索しても大した情報が入っていない。いろんな勉強会で海外に何人かで行くのですが、向こうで聞いた話と向こうで聞いて帰って来て、日本人が報告した内容とにずれがある。どうも日本人の報告書というのは自分が行ってこんなことをしたという自慢話が多過ぎるんですね。事実をどうも表していないのではないかというようなこともありまして、できたらこれからどんどん進んでいく地方自治体とかNGOの国際協力に対して、政府がバックアップしていくシステムがほしいと感じております。その辺をぜひご議論いただければと思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。この資料がどんな資料なのか私もちゃんと見ていないのでわかりませんが、できることなら何とか電子媒体に入れてCD-ROMで配ってもらう方がいいですね。もう書斎が溢れてしようがないという人がこの中には多いと思うんです。それからそういうものがある方が、何か何となく使いやすいような気もするんですが、そういうものに馴染む資料かどうかわかりませんが。多分膨大なものであればあるほど紙のファイルをいただくよりもその方がいいかもしれません。そういうことも含めて、どういうものが今後の議論に有用か、事務局でご検討ください。
それでは、黒川委員どうぞ。
○黒川委員 私は先ほど申し上げましたように1カ月ほど前にコートジボワールから帰って来ました。また、その前にもウクライナで大使をしておりました。今回、この委員に委嘱されたということは現場感覚というのがまだ残っているからだろうと、そういうことかなと思っております。
私はその前、15年以上前ですか、外務省の技術協力課長ということをしておりまして、そのときいろいろ技術協力をしていたのですが、その当時では環境という視点はほとんどなかったかと思います。今回、今日のお話をいろいろ聞いていますと、もちろんODAそれ自体も非常にいろんな面で改善していますし、それについては廣野先生など先生方のご指導が非常に貢献されているんだろうと思いますけれども、そのODAの中でも環境という視点が出てきていることに感慨をおぼえます。また、この報告書は非常によくできていて、我々委員がこれに何を付け加えられるのかということで若干不安を感じるほどですが、私としてはその現場の感じをできるだけこの新しい議論の中に持ち込めたらと思っております。
さて、ウクライナでもコートジボワールでもODAという観点で実務をやってきていまして、環境ということで括って眺めたということがなくて、今日ここへ来て初めてそういえば環境案件は何だったっけと思い返しているところです。少し今思いついたことを言いますと、3年間向こうにいまして夏に日本へ帰ってくると、今や日本の方がよほど暑いんですね。それで私は日本の人に避暑はコートジボワールに来てくださいと、こういうことを言っているんです。あそこは赤道直下で本来向こうの方がかなり暑いはずなんですが、今やもう地球温暖化のせいで、夏に関していえば確実に日本の方が暑いという状況になっているということは、いかに環境問題がこれから大事かということの一つの表れではないかと思います。
それからもう1つ、向こうで感じたのは、あそこは熱帯雨林で昔はほとんどの土地が森林で覆われていて、ゾウもたくさんいまして、そのせいで象牙海岸とかコートジボワールだとかアイボリー・コーストと言われていましたが、開発とか乱獲とかいろんなことがありまして、ものすごく森林は減ってしまいまして、ゾウもほとんどいなくなりました。ゾウのいないコートジボワール、コートデレファンではなくて、まさにその骨だけ残ったコートジボワールという感じになってしまいました。それで、私があそこの森林水資源大臣に、日本では開発をしながらも森林は3分の2ぐらい残っていますよと言ったら彼は非常に驚きまして、その後、演説をするたびに日本はあんなに発展しながらも森林をこんなに残していると、我々も見習ってやらなくちゃいかんということを言うようになりました。このように政府の一部、特に環境を担当する部局においては環境に対する関心はだんだん高まっていると思いますが、政府全体、国民全体としての意識はまだかなり低いということで、森林に限らず水の汚染だとかあらゆる面での環境が劣化しています。これはおそらくほかの国でも同様だと思います。
また、先ほどの報告の中にもやはり日本は今後、アジアを中心に考えていくんだということがありまして、それ自体に私は賛成ですが、同時にアジアだけでなくて、日本というのは今やアジアのパワーであるだけでなくて、世界全体のパワーであり、国連の常任理事国も目指そうというわけですから、やはりその目は世界全体に配っていくということだと思いますし、少しのお金でかなり限界効用は高いのではないかというふうにも思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それでは、石田委員どうぞ。
○石田委員 今さっき高橋先生がおっしゃられた環境が霞んでいったという、ここの環境という言葉のですね、やはり私が今日感じたのは、我々は結構狭義に環境というものを考えていて、英語でいう environmentというのはもう少し広い意味があるように思うんですね。我々自体が非常に環境を一側面からの環境というふうに理解し過ぎているんじゃないか。先ほどの安全だとか、もう既にそういうことはいろんなところで組み込まれてきているわけですね。省エネルギーとかもすべての問題がですね、そういうのを含めたところにまず自分の頭を切り換えないといけないのかなというのが、今日の私の一番の印象で、私自身もやっぱりそういう側面でいろいろ少しこう考えさせていただければなというのが一つあります。
それから私もいろいろな意味で結果的に環境関連に近いところで多く仕事をさせていただいてきたわけですけれども、我々の今までの対応の仕方というのはかなり個別最適的な動きでそれも個別最適にもなっていなかった。今のお話も含めてやはり我々としてもう少し環境課題あるいは経済と一緒になった全体最適解がどこにあるのかというふうな視点で、こういう問題を考えてみたいなと、今ちょっと思っております。
それから、弊社もそんな大きな会社ではないのですけれども、約4,000人がいるわけで、その半分以上がもう既に外国人なんですね。で、日本人がマイノリティーというふうな活動をしていまして、いろんなところに環境関係の仕事の拠点も持っていますし、そういう中で先ほどご指摘ありましたが、今、日本の民間企業は多国籍化していますので、そういう中でやはり民間でできることが大変たくさんあるのではないかと思います。そういうところにもう少し視点を向けて、逆に提案をいろいろいただければ我々としても、今までみたいに経済活動を中心とした工業界とか協会の活動ではなくて、もう少し民間のリソースを踏まえた上での活動というものが提案できて、結果的に国益あるいは世界の利益につながるというふうな視点から考えていきたいなと思っております。
先ほどちょっと触れましたデータの話ですけれども、確かに我々調べていくとなかなか本当にないんですね、真実というのがですね。過去にも我々も人も出し、いろんなこともやってきたんですけれども、結果それがどうなったんだろうということですね。それで、そこに出した人材が結果的に日本の社会って結構冷たくて、帰って来たら結構いいポジションがなくなったりするんですよ、現実にですね。何か島流しになって帰って来たというような感じになって、やっぱりそういうふうな人材の受け皿の整備もですね、活動を安心してやっていけるための体制作りということが一番大事だと思いますね。今のいろんな活動の停滞とかは、停滞はしていないかもしれませんけれども、そういうところは一番重要な課題ではないかなというふうに、もちろんこの今回の議論中に大事なポイントとして指摘がございますので、そういう視点も一つ私としては頭において参加させていただきたいと感じております。
○浅野委員長 ありがとうございました。最後におっしゃった点はちょっと盲点みたいなところがあって、言われるとそれはそうだとすぐ分かるんですけれども、なかなか公式のドキュメントに入ってこないポイントだと思います。ありがとうございました。
青山委員どうぞ。
○青山委員 私は今回の討議のなかで、パ-トナ-シップの内実を作っていくことを重視したいと思います。例えば、二国間での種種のパ-トナ-シップを形成する時に政府間だけで進めることにはならないと思うのです。
例えば、海外に進出した企業、当該国では日本の大企業的な立場になり、すぐに糾弾され易いことから、環境リスクや環境対応を重視している。しかし、有害廃棄物などでは、受け皿がないので、自ら資本を出しても受け皿をつくりたいとして、他の外資企業組んでも進めようとする例もみられます。それが一つの端緒となり、都市廃棄物分野にも進出する糸口となるといった可能性もありす。こうした拡がり方も一つの可能性と思います。
OECCでは、今、浄化槽を中国で普及したいと検討を進めていますが、浄化槽設備をもって地方政府に持っていき,導入の端緒を開こうとしてもなかなか進みません。現段階では、「下水道整備が進まないなかで急速に展開され始めている郊外住宅地、集合住宅建設、わが国の多摩ニュ-タウンのような開発を進めている中国資本と連携して参画を図っている」日本企業に協力いただき導入の端緒を開くこと、その為には赤字でもモデル導入をすすめることが必要との見解に至っています。こうした場で活躍している企業、キ-パ-ソンが誰かを探り,やっと本日の午前中に28歳のある商社の方が一番良いとの判断でその方を紹介いただいたところです。この人を探り当てるのに大手ハウスメ-カ-、不動産会社、建設会社などの多くの企業の担当者に情報提供をいただくといった多大な労力が必要でした。この際の実感でも情報過多のなかで活きた情報を得る仕組みを持つことは非常に重要だと思います。
一方、ODAについて言いますと、環境ODAが例えば2000億円/年あると、コンサルタント費用を4%とみると80億円/年となります。そのうち、海外旅費・滞在費や当該国のパ-トナ-企業、各種測定・測量・観測などき費用を除くと40億円ほどがコンサルタント企業の役務対応の収入となります。これが一人当たり1500万円/年とすると日本の環境分野コンサルタント数は250名ほどとなります。環境ODAには都市河川・治水なども入りますので、自然環境,大気・水質・廃棄物・有害物質管理・都市総合環境といった分野に限れば更に少なくなります。しかし、それでも当該国からみると非常に潤沢なお金を使っていることになるわけです。こうした資金で有効な調査を行うには、NGOの方々と連携して進めるといったパ-トナ-シップも必須となります。
国際展開している日本の企業は、当該企業としてISO14001を超える環境規格、、環境経営体系を構築しようとしている例もみられます。その規格の実際に担保する上でも当該国の受け皿(環境情況や環境負荷物の管理・処理体系など)がどうなっているかが非常に重要で、今、日本の企業はこうした点に非常に関心をもっていると思います。
海外環境対応では、政府、NGOがまず念頭に浮かび、企業は最後に出てくるのですが、実際に環境協力,対応を実施する上では企業が大きく関与することになると言えます。日本の資本側からみても日本企業が当該国の環境保全・改善といった分野にどう進出できるか、事業を通じての環境協力が重要な関心事です。
例えば、私が関係の深い環境装置・設備メ-カ-では、やっと去年頃から中国に生産拠点をふくめた本格進出を図り始めたわけですが、これまでは手も足も出なかったという感じでした。タクマさんがボイラ-市場からの環境分野への進出をインドネシアなどで展開している例や三菱重工さんのシンガボ-ルでの廃棄物プロジェクトの展開などもありますが。でもそれ以上のことができていないといった現実があります。ですから、一企業一企業ではなく、当該国と二国間協力戦略を作る時に、当該国に進出している日本企業も当事者としてそのなかに入るといった形で協力のベ-スづくりをしないと実際の環境協力はなかなか動かないと思います。これはNGOとコンサルタント企業との関係、進出企業の関わりを含め、パ-トナ-シップをどのように構築するかが協力の実践的展開に一番重要などころと考えていますので、是非、この視点を中心に発言させていただきたいと思っています。
○浅野委員長 ありがとうございました。それでは、長谷川委員どうぞ。
○長谷川委員 私、ここに参加させていただきましてまことにありがたいのですが、一つにはジェンダーバランスを上げるということですので、どれぐらい貢献できるかはちょっと心配なところがあるのですけれども。
今も言っていただきましたけれども、企業の国際環境協力というときに、やはり本業の部分とそれから社会貢献的な部分があるかと思うんですけれども。まず、その本業のところでいいますとトヨタ自動車もメンバーでありますWBCSD、World Business Council for Sustainable Developmentというところが、サスティナブル・ライブリフッド(sustainable livelyhood)というプロジェクトを今やっておりまして、そこで言っていることが、貧困の解消などをしていくためには、企業が途上国に出て行って、健全なビジネスができてこそであるということです。国際協力、資金援助とかを国ベースでなさることも大事なんだけれども、やはりそこの国が経済的に自立していくためには、ビジネスが入っていける土壌、まさしく今、青山委員がおっしゃいましたように、きちっとパートナーシップが組めて、そこの中でいろいろ企業が動いていけるような、そういうことがどうしたらできていけるのかということを、よく考えていかれなければならないのではないかと思います。
そういうときに、先ほど廣野先生もおっしゃいましたが、日本の比較優位ということと共に、日本の国益ということも考えていかなければできない部分というのがあるのではないか。今までのODAが欧米が非常に戦略的であったのに、日本は戦略性がなかったというのはよく言われることなんですけれども、実は私が不勉強なだけなのかもしれませんが、欧米がどのように戦略的であったのかというのが、実際のところ、私もあまりわかっておりませんで、何が戦略的で、どのようにそれが各国、欧米に国益として戻っていっていたのかというようなことがちょっと分析などがあるようであれば、そこのところも勉強してみたいかなと思います。そのあたりも考えたビジョンということをつくっていければ、大変よろしいのではないかということを思っております。
それからもう1つ、企業の国際環境協力ということでは社会貢献の部分がございますが、トヨタ自動車も今年の環境白書の中で、トヨタ自動車とは謳っていないのですが、弊社がUNEPのグローバル500賞を99年に頂戴しましたあとで、トヨタ環境活動助成プログラムというのを発足させまして、年間約2億円規模で、途上国だけではないのですけれども、環境教育や環境技術のプロジェクトに支援をしてきております。これは弊社内で考えますときに、ただ、ただ粛々とお金を差し上げていたらばいいのか、またはちゃんと日本のトヨタという企業がそういう貢献をしたんだということをもっと分かっていただくようにするべきなのか、まだ社内でも議論があるところなんですけれども、日本のODAに関してもちょっと一緒に言えることかなと思います。陰徳でいいのか顕徳にしていくのか、このあたりもやはり少し念頭におきながら今回の議論を進めていただければと思います。
以上でございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。それでは発言を封じるつもりはなかったのですが、検討会の委員の方には以上のご発言を聞きながら、さらにコメントをいただければと思っておりますので、山瀬委員からどうぞ。
○山瀬委員 前の委員会で議論しましたが、その中で新しい視点も出ていたと思います。黒川委員もおっしゃっていましたし、他の方の発言の中にもあったと思いますが、私たちが相手をしている国の人々やその社会全体の熟成度といいますか、環境に対する関心の度合いというのが国によってずいぶん違っています。私たちはごく一部の関心のある人間と対応していたと思います。全体として少しボトムアップを図る必要があると思います。それがないと、長谷川委員の発言にあったように、企業の健全な活動というようなことが出てこないと思います。
日本のある財団の事業ですが、途上国の学生に奨学金を出しています。先進国に留学させるのではなく、例えばラオスでは月2,000円の奨学金を100人の学生に、インドネシアで月3,000円の奨学金を100人の学生に出しています。将来の自然保護、環境保護の担い手候補ということで学部は限定されていますが。それでもすごくコストパフォーマンスはいいと思います。で、自然系の学部へ行くような大学生が増えてくればおのずと環境に対してとか、自然に対するポテンシャルは高まってくると思います。そういうことを今まであまりやってこなかった。人材育成の話はずいぶんと前の委員会で出ましたが、何かそういうマーシャルプランではないですが、途上国のボトムアップを図るような手立てがあるといいなと思います。
あと室長がちょっとおっしゃっていましたが、立ち位置を変えるということも必要だと思います。自然の場合ですと、現地の人に教えてやるぞというのがあまりなくて、いろんな自然がありますので、現地の人に教えてもらう方が多い場合があります。その辺の視点もあってもいいのではと思います。例えば日本の若者たちがどんどん海外へ飛び出して行く、それも教えてやるぞというのではなくて、教えてもらうような立場で。そうすれば現地の人の収入に繋がったり、勉強する意欲にもなっていくと思います。そういう手立てもあってもいいのではと思います。
○浅野委員長 ありがとうございました。それでは中村委員どうぞ。
○中村委員 1つだけ。人材育成の問題点は非常に重要で、かつ非常にむずかしい問題だと思うんですよね。戦略的に進めていく問題と人材育成の問題というのは非常に関連もしているのですが、一方で戦略的にやろうと思えばいろんなところで濃淡つけてやっていかないといけないということになると、先ほどの裾野を広く人材をボトムアップしていくというところに、どういうふうにうまく整合させていくのか。
例えば、私なんか琵琶湖の問題をやっていますが、非常に多くの市民の方々と一緒にやるのですが、そういう方々に琵琶湖の問題で関心を持っていただくということまではできるんですけれども、そこから先、国際的な環境問題にどういうふうにコミットしていただくかということが非常に大きな課題で、かつ学生さんだとかNGOの方々は非常に関心を持っておられて、機会あるごとに関わっていただくのですが、それを彼らが期待するだけのチャンスだとかキャリア・オポチュニティ(career opportunity)だとかというようなことまで広げてあげられないということが、非常に今心苦しいというか、課題だなと思います。
もう一方で今、イラクの研修生が30名ばかり来ているんですが、彼らと研修を通じていろんな地域社会との関わりを持ってもらうと、市民サイドもそうですし、それから研修生サイドも一気に目からうろこが落ちるというような現象も起こっているわけですよね。そうすると、戦略的にやるときにきめ細かくというか、いろんなところをボトムアップで広くケアしながらやっていく、そのバランスをうまくやっていって、日本のスタイルというか強いところというか、そういうようなところをうまく人材育成に発揮しつつ、戦略的にやっていかないといけない。この辺が私としては課題だなと思っています。
○浅野委員長 ありがとうございました。大体問題点がかなりはっきりしてきたような気もするのですが、加藤委員どうぞ。
○加藤委員 あえて付け加えることはないんですが、ただいまの皆さんのご意見をうかがっていて強く感じますのは、やはり廣野検討会の中でも十分重要性を強調したつもりではあるんですが、新しい委員にここではお加わりいただいて、特に民間レベル、企業もNGO等も含めてのパートナーシップの必要性、あるいはより広いその本業ではない部分の企業としての社会貢献の一環で環境協力をなさったという視点が非常に強調されて、私もなるほどというふうに意を強くしました。ぜひ、そういった新しい新鮮な視点と感覚で、むしろ委員の方々から具体的にご提言いただければというふうに思います。
それからいつものとおり高橋委員からは非常に、もっとグローバルあるいはマクロの背景というか視点をちゃんと踏まえた議論をする必要があるのではないかというご指摘です。まったくそのとおりだと思いますが、確かに環境協力が実績としてあまり進んでいないんじゃないか、あるいは効果を上げていないんじゃないかという、霞んできているという言葉を使われましたが、1つには地球サミット、あるいはその前のブルントラント委員会の持続可能な発展あるいは開発というキャッチワードなどが広く受容されてから、ある意味では環境がその中に埋没してしまった感がある。途上国の実態を見るとまだまだ開発優先というところがあります。そこのギャップをどう埋めていくかというのが非常に大きな作業になるのではないか。
それからセキュリティーの問題ですが、これは例の9.11のテロ事件をきっかけに関心がそこへ急速に移ったような印象がありますが、実はそれ以前に国際社会というか国連でも人間の安全保障とかあるいはその前に環境安全保障という概念が1980年代あたりから使われはじめたわけですが、これもその後の状況を見ると、いかに日本が平和構築だとか戦後経済復興、戦後復興にどう貢献するかというようなことに議論がシフトしていきまして、確かにその部分は、緒方さんの委員会の報告書でも環境面が特に軽視されているわけではないんですが、その中に埋没してしまっているという印象がありますので、これはもう一度我々の委員会でもあえてその中での環境の側面の重視というのを強調していく必要があるのではないかと思います。
それでこれは廣野検討会の成果としましても、持続可能な開発あるいは発展の前に地球環境の保全、「地球環境の保全と持続可能な開発」ということを言っていますので、その点は踏まえてはあると私は考えておりますが、もう少しそこを強調していきたいと思っております。
○浅野委員長 はい、わかりました。要するに人間が生きていくということを中心に考える。緊急の課題としてセキュリティーでしょうけれども、長期的にはやっぱり環境もセキュリティーあり、だからどういう切り口をしてもやっぱり人と人の共生というところにしっかり軸足をおいて考えていって、2000万年後か3000万年後に人類が絶滅したときのことはあまり考えずに、とりあえずもうちょっと絶滅を先に延ばすということを考えなければいかんということであれば、そんなに対立的なことでもないような気もするのですが。 さて、廣野委員に最後に私に代わってとりまとめをしていただければと思います。よろしく。
○廣野委員 とりまとめはできませんけれども、ただご存じのように1994年、UNDPが人間の安全保障という報告を出したんですが、あのときに私もちょっと参画していろいろ議論をしたんですけれども、あのときの議論というのは経済の安全保障、それから社会的な安全保障、それからいわゆる人間のセーフティ、同時に環境の安全保障と言っていましたね。そういう格好で環境問題というのは早くからそういうヒューマン・セキュリティーの一環として議論されており、私は埋没ではなくて、これは人間の安全保障という概念を使うことによって、その相互の連環をできるだけはっきりさせていく、同時に単に環境、環境ではなくて、ほかのいろんな安全保障とかの関係で環境の安全保障がとられるという、そういうことで私は決して埋没ではなくて、言ってみれば正しい見方というのかな、そういう見方で出してきたものと考えております。
ただ、その後の動きを見ると、確かに高橋委員がおっしゃったように9.11以降、特にアメリカあたりはもう急速にいわゆるホームランドセキュリティーの省をつくったりしてね、かなりテロリズムとかそういうことに対する非常に強いものを持ってきたわけですが、もっと長い目で見て、かつ世界のいろんなのを見ていると、例えばEUなんかものすごく環境については熱心でしてね、ああいうEUの環境に対するあの熱心さというのは、ときには今回の京都議定書の中でいろいろこう、確かにちょっとEUのあまりの熱心さに日本が押されてアメリカとの間の橋渡しをするというような、そういう努力も日本もやったわけですが、しかしそういうことで、私は世界的に見ると、私たちのこのテーマである地球環境保全という問題に対しては、先進国が関心を持っているところが大きいと思います。
同時に最近の途上国を見ても、僕はしょっちゅう今中国へ行っているんですけれども、中国に行っていろんな環境関係の、私たまたま地球環境基金の運営委員をやっていて助成委員長をやっているものですから、それとの関係で中国のNGOに対していろんな助成をしてきているわけですね。相当のお金を中国の援助に出してきました。そういう案件は果たしてどういう効果があるのかを見るためにも、私たちはその評価を今やっているわけですが、そういう中で中国も結構最近は環境問題に対してものすごく熱心で、ご存じのように我が国に対するODAの、一昨年の我が国に対する中国のODAの案件で、その申請の中の16件中なんと12件が環境案件なんですよね。そういうことでものすごく中国も環境に対してようやく熱心になりはじめた。これは浅野委員が一生懸命やっておられる地球温暖化との関係で、中国自身も世界の第2位のCO2 排出国になりましたのでね、よけいにそういうことがある。
それからインドも最近はものすごく環境問題に対して熱心になってきている。ブラジルももちろん前から熱心です。ちょっと言葉をはしょって失礼ですが、我々一般にブリックス(BRICs)なんて言っているような国々、ああいう国が本当に最近は途上国の中で、その経済成長を反映し環境の悪化が激しいですね。そういう途上国は、結構最近はこの環境に対して熱心なことが見られます。
ただ途上国は、先ほど皆さん方おっしゃったようにまだまだ経済開発優先だということは事実でして、その開発優先の中にも環境をそこにいれていくという、そういう一種のアジェンダ21でいわれているような、そういうことに対しても単に口先だけでやっているのではなくて、例えば日本に対するODA案件の申請の中にもそういう格好で増えてきたというのは、やはりそれなりの効果があったかなと思う。また、途上国自身も、今度は途上国自身の国内におけるNGOがどんどん拡大してきていって、そういう中で自分の国の政府がやっている環境対策はあまりにも生ぬるいということで、そういうところからも声が上がってきている。そういうことで、私は世界全体では環境に対する声が大きくなってきたかなと思います。
抽象的にこの点を考えると、そういうものを後押しするような格好でやっていけたらいいなと思います。すなわち先進国における環境の熱心さ、これは少なくともエンバイラメンタリスト(environmentalist)といわれる方々との協力ということについて、皆さんいろいろ、懸念するところもあると思いますけれども、少なくとも環境というものを重視した経済の発展、社会の発展は安全保障という点を重視するようなグループ、あるいはまた途上国のそういうような環境に注意する熱心なグループがいろいろ台頭してきておりますので、あるいはそういうグループが台頭している国との協力なんかも前面に出していったらと思います。
幸いアジアではASEANの環境協力の協定もありますし、それから最近は先ほど局長の方からお話のあったとおり、北東アジアでもモンゴルも入れて、単なる日本・中国・韓国だけではなくて、モンゴルも入った格好での北東アジアの環境協力ということも日本の環境省もだんだんと熱心になりつつありますので、いろんなところでそういう地域的な環境協定的なものができつつありますので、そういうものをできるだけ後押しをしていくことによって、実績ができてくるかなと思います。
僕が大事だと思うのは、日本がアジアにおいてちゃんとしたことをやらないと、アメリカもEUも、日本は何をやっているのということになりますよね。自分の地元でもってきちんとやらないと、ほかの国でガァーガァー言ってもしようがないので、地元できちんとやることが重要だと思います。そういう意味では北東アジア含め、あるいは東南アジア、あるいは東アジアという全体の中できちんとやることによって、世界の国もそれなりの評価をしてくる。
それから最後にちょっと申し上げたいのは、民間の企業のことですが、環境産業育成プロジェクトをやって非常にわかったことは、日本の民間企業が途上国の環境産業育成において、どの程度役割を果たしているかということについての十分な把握が、大変残念ながら国民一般にはないということがわかりました。これはアンケートをとってわかったわけですけれども。我が国の環境関係の産業が一生懸命いろいろ国内の技術開発あるいは国内での環境保全をやっていると同時に、最近は途上国、特にアジア諸国にたくさん出ておりまして、そういうところがそれぞれの国の政府の依頼によって、あるいは企業の社会的責任というところから、環境保全に対して一生懸命やっておりますのでそういうことの例ですね、企業のそういうベストプラクティクス的なものを、我々の今回の議論の中で取り上げていただいて、若干のPRをするといいますか、そういうのも必要ではないかなと思います。
NGOについてもかなりいろいろ取り上げられておりますので、もちろんこれもぜひ入れていただく。同時に企業、政府、NGO、地方自治体のお互いの連携の強化。例えば北九州イニシアティブというものもありますが、大いに日本がやっていることに対して自信を持っていただいて、そしてどんどんそれを海外に発信していくということを、今回の国際環境協力の検討の中でも取り上げていただきたい。特に「現状と課題」というのがありますので、そういう中でもそういうことをきちんと精査していただいて、それから、これからというものを考えるということだと思います。
ありがとうございました。
○浅野委員長 ありがとうございました。それでは、資料6で示された今後の検討の方向ということについては、特にご異論もないと思いますので、先ほど私申しましたように4のこの順番でやるというわけではないのですが、最終の仕上がりはこういうようなことが明らかになるようなものをつくるということで、とりあえず委員会としては大方のご同意をいただいているという前提で、今後の作業を進めたいと思います。
それでは本日、ちょっと時間を超過いたしましたがお許しください。議事はこれで終了させていただきます。事務局から連絡がありましたらどうぞ。
○田中環境協力室長 本日はどうもありがとうございました。次回につきましては1月をめどにということで、これから先生方のご日程を確認させていただいた上で、またご連絡をさせていただきたいと思います。方針としてはその理念あるいは基本方針のご議論をお願いしたいとは思いますが、今の委員の先生方のご議論の中で現状、課題といったところの認識もきちっとやる必要があるというようなことでもございますので、ちょっと資料の提供方法とも併せて、また委員長とも相談してやらせていただきたいというふうに思います。それから本日の議事録につきましては、事務局の方でとりまとめの上、後日、委員の皆様にその案を送付をさせていただきたいと思います。以上でございます。
○浅野委員長 それでは、どうもありがとうございました。
午後零時12分閉会