中長期の気候変動対策検討小委員会(産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討WG合同会合)(第2回) 議事録
日時
令和2年12月16日(水)10:00~12:00
場所
WEBによる開催
議題
- 2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動きについて
- 気候変動分野におけるファイナンスについて
- その他
配付資料
議事次第
資料1:中央環境審議会地球環境部会中長期の気候変動対策検討小委員会委員名簿
資料2:産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討WG委員名簿
資料3:2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き
資料4:気候変動分野におけるファイナンスについて
参考資料1:参考資料集
参考資料2:小西委員提出資料
参考資料3:伊藤委員提出資料
参考資料4:杉山委員提出資料
議事録
午前10時00分 開会
〇梶川室長
おはようございます。定刻となりましたので、只今から第2回中央環境審議会地球環境部会中長期の気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討WGの合同会合を開催いたします。
本会合は、環境省、経産省の両省が共同で交互に事務局を担いまして、今回経産省側ということで、事務局を務めさせていただきます環境経済室長の梶川でございます。よろしくお願いいたします。
まず、本日ですけれども、産構審、中環審それぞれの委員の過半数以上に御出席いただいているということで定足数を満たしておりますので、合同会合として成立していることを御報告申し上げます。
また、本日はオンライン、ウェブ開催ということになっています。そのために、皆様にはいろいろと御協力いただくことがあるかと思っています。まず、開催の状況はインターネットで同時配信をして、動画は会議後、議事録の公開までの間はウェブで公開されるということになっています。
また、実際の運営において幾つか御協力をお願いしたいと思っています。通信環境の負荷低減のため、御発言の際を除いてカメラの映像はオフにしていただき、御発言の際のみオンにしていただくということでよろしくお願いいたします。また、ハウリングを防ぐために、発言する際以外はマイクの設定をミュートにしていただきますように御協力をお願いいたします。
まず、会議の開催に当たりまして、経済産業省の長坂経済産業副大臣から御挨拶をさせていただきたいと思います。副大臣、よろしくお願いいたします。
〇長坂経済産業副大臣
おはようございます。経済産業副大臣の長坂康正です。中長期の気候変動対策検討小委員会と地球温暖化対策検討WGの第2回合同会合の開催に当たりまして、一言御挨拶をいたします。
今回は、先の臨時国会の所信表明演説におきまして、菅総理から2050年カーボンニュートラルの実現を目指す旨の宣言があってから初めての会合となります。カーボンニュートラルの実現は簡単なことではなく、日本の総力を挙げての取組が必要であります。高い目標、ビジョンを掲げ、産学官の本気での取組がなければなりません。
2050年カーボンニュートラルへの挑戦は、日本の新たな成長戦略です。この実現のためには、CO2排出の大宗を占めるエネルギー転換部門の変革と製造業等の産業分野の構造転換が不可欠です。地球温暖化対応を経済成長の制約ではなく、新しい時代をリードしていくチャンスと捉え、経済産業省がグリーン成長戦略策定の中心となりましてこれからの分野の変革に挑み、大きな成長につなげてまいります。
このために、カーボンニュートラルを目指す上で不可欠な水素、蓄電池、カーボンリサイクル、洋上風力などの重要分野について具体的な目標年限やターゲット、規制、標準化などの制度整備、社会実装を進めるための支援策などを盛り込んだ実行計画を、年末をめどに取りまとめてまいります。この実行計画を踏まえて、2兆円の基金によりまして、野心的なイノベーションに挑戦する企業を今後10年間継続して支援してまいります。
この2兆円の基金を呼び水といたしまして、民間企業の研究開発、設備投資を誘発し、野心的なイノベーションを生み出してまいります。さらに世界の環境関連資金3,000兆円を呼び込み、日本の国際競争力の強化、将来の所得・雇用の創出につなげてまいります。
また、カーボンニュートラルの実現には、本日御議論をいただきますファイナンスの力が不可欠です。気候変動対策に積極的に取り組む企業にESG資金等の民間投資を呼び込むために、1.投資家と企業との建設的な対話を促すTCFD開示の促進や、2.脱炭素化に向けた技術課題に挑戦する企業をゼロエミ・チャレンジ企業として国内外の投資家に発信することなどの取組を進めてきました。
こうした取組も踏まえ経済産業省といたしましては、環境省と連携し、経済と環境の好循環を生み出してまいります。
今回の合同会合では、様々な分野からお集まりをいただいた皆様に、2050年カーボンニュートラルという新たな目標を踏まえ、2030年の目標の実現に向けた検討を深めていただきたいと思います。
是非忌憚のない御意見、御議論を御期待申し上げ、私の御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
〇梶川室長
ありがとうございます。
続きまして、笹川環境副大臣より御挨拶をいただきます。よろしくお願いいたします。
〇笹川環境副大臣
皆さん、おはようございます。環境省の笹川でございます。
本日は、各分野、業界の最前線で御活躍をいただいております皆様に貴重なお時間を頂きまして、心から感謝申し上げます。
本合同会合の第1回は9月1日に行いました。その後、菅総理が所信表明演説において2050年カーボンニュートラルを宣言いたしました。このことは、議論の前提が大きく変わったことを意味しております。
既に総理の宣言以降、社会の動きは明らかに大きく変化をしております。日々新たな企業の脱炭素の取組が出てきており、総理からも御発言がありましたが、もはや気候変動対策は経済成長の制約ではなく、まさに成長戦略という発想の転換は確実に進んでおります。
小泉大臣も、脱炭素社会、循環経済、分散型社会への3つの移行により経済社会のリデザイン(再設計)に取り組むとしており、日本全体で2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、2030年までに最大限の行動に移すことが重要であります。
このため、国民一人一人のライフスタイルの転換、地域と調和した再エネの最大限の導入、実用化された脱炭素技術の徹底的な導入、新たな技術の開発・導入の加速化などを更に進めていく必要があります。
環境省としては、特に地域での再エネを大幅に増大する2030年再エネ倍増に集中的に取り組む方針であります。その端緒として、再エネ×電動車について3点御紹介申し上げます。1点目、環境省が率先実行します。再エネ導入については、2030年までのRE100を宣言しておりましたが、2030年までにEV100に向けても、取組を進めてまいります。2点目、政府全体でも率先実行します。政府実行計画を見直し、再エネ電力や電動車の調達を含め対策を大幅に強化する予定であります。3点目、民間での普及であります。今回、補正予算には、脱炭素化に不可欠なEV、PHEV、FCVと再エネ調達をセットで導入する場合の集中的な支援を盛り込むこととしております。単に車両の導入にとどまらず、個人向けに再エネ電力とセットで導入する取組を支援することは、我が国にとっては初めての試みであります。
さらに、この地球温暖化対策計画の見直しに向けた議論に加えて、カーボンプライシングの検討を再開し、地球温暖化対策推進法の見直し、国・地方の検討の場の立ち上げ等も合わせて、2050年カーボンニュートラル実現に向けた議論を進めてまいります。
委員の皆様におかれましては、菅総理の宣言によって社会経済が既に大きく動いているということを踏まえ、我が国の今後の気候変動対策について、3月のNDCでも掲げた更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指して、活発な御議論を行っていただければ幸いでございます。今後ともよろしくお願いを申し上げます。
以上であります。
〇梶川室長
ありがとうございました
公務のため、長坂経済産業副大臣と笹川環境副大臣はここで退席をさせていただきます。
本日の会合ですが、あいにく伊藤委員が御欠席ということになっています。また、髙村委員は11時半頃から御参加予定ということになっています。
それでは、以降の議事進行を産構審のWGの山地座長にお願いしたいと思います。山地座長、よろしくお願いいたします。
〇山地座長
今回の進行役を務めます山地です。御協力よろしくお願いします。
本日は、議事次第にあるとおり、「2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動きについて」、2番目として「気候変動分野におけるファイナンスについて」、「その他」となっております。
まず、議題の1番目と2番目について、資料3と資料4に基づいて事務局からまとめて説明していただいた後に議論を行うという形にしたいと思います。
では、まず資料3と4について、事務局から説明をお願いいたします。
〇梶川室長
資料3と4、これは環境省と経産省で一緒になってつくった資料ですけれども、代表して私から御説明をしたいと思います。
まず、資料3をおめくりいただきまして、これは事前に御説明をいたしておりますので、少し要点だけ、時間もありませんのでお話をしたいと思います。まず、1ページ目めくっていただきまして、2050年のカーボンニュートラルに係る国内の動向ということです。今年の10月26日に菅総理より、2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すということが宣言されました。その中で、鍵となるのは革新的なイノベーションだという話があったところです。
この宣言を踏まえまして、国内外から様々な反応があったと。好意的な反応がたくさんあったということだと思っています。海外からは国連のグテーレス事務総長、あとはEUのフォン・デア・ライエン欧州委員長、ジョンソン英首相、このあたりからも評価するというお話がありました。また、国内の経済界からも経団連の中西会長から、我が国の今後のポジションを確立する英断であるという話があったところです。
3ページ目でして、総理の所信表明を受けまして、10月30日に地球温暖化対策推進本部が行われまして、そこで各閣僚に総理指示が下りているということになっています。下へ行っていただきまして、まず2050年のカーボンニュートラルへの挑戦は、日本の新たな成長戦略という位置付けです。その中で梶山経済産業大臣には、成長戦略策定の中心となってやっていくというお話、小泉大臣には、新たな地域の創造や国民のライフスタイルの転換、こういったものに取り組むことと国際的な発信というものが下りています。あと、各閣僚は、それぞれの分野についての取組を促進していくというものが下りています。その上で、少し赤くしていますけれども、成長戦略や国と地方の会議、こういうところで具体的な議論を進めた上で、この審議会で御議論いただく地球温暖化対策計画、また別途、資源エネルギー庁で議論していますけれどもエネルギー基本計画、また、長期目標の改定も含めた長期戦略の見直しというものを加速してほしいという指示があったところです。
4ページ目、これをどういう場で議論しているかというところを整理した図でして、下に大きく6つ箱があります。2050年カーボンニュートラルの成長戦略という文脈での議論は、この真ん中2つの成長戦略会議とグリーンイノベーション戦略推進会議というものがありまして、ここで具体的に議論をしています。年末までに実行計画をまとめるということで作業を進めています。国と地方の場につきましては、下から2番目ですけれども、これも年末に第1回の会合が行われるというふうに認識していますが、ここで具体的な地域の脱炭素化に向けたロードマップとかそういったものを議論するという話があります。また、今年の10月に既に議論を開始していますけれども、総合資源エネルギー調査会でエネルギー基本計画の見直しの議論を進めていると。これらの議論を踏まえて、上から2つ目の本審議会で地球温暖化対策計画の全体の見直しをした上で、最終的に一番上の地球温暖化対策推進本部で議論を決めていくという流れです。
5ページ目、もう一度各国の目標とか中期目標、長期目標の振り返りをしています。本審議会では中期目標の部分がメインの議論となりますけれども、2030年までに26%削減、また、これにとどまらない努力というものを提示しています。位置付けとしましては、2030年は技術制約、コストなどを考慮して裏付けのある対策、施策の積み上げによって実行可能な目標をつくるということで政府部内では整理をしています。長期目標は、閣議決定したものは2050年までに80%削減、今世紀後半のできるだけ早い段階で脱炭素社会ということですけれども、位置付けとしては将来のビジョンであるということで、政策の方向性を示して、将来の予見可能性を高めて、様々な投資を拡大するという理解です。10月26日のカーボンニュートラルの宣言を踏まえて、ここについてもいろいろな見直しを進めていくということだと思っています。
世界各国でカーボンニュートラルにコミットしている国ということで、赤を塗っているところがその国ですけれども、123か国を超えるという状況になってきています。
7ページ目は国会の動きということで、衆参で気候非常事態宣言というものが可決されたという状況をスライドとして追加しています。
8ページ目、地域でも動きが活発になっているということで二酸化炭素排出実質ゼロ表明。ゼロカーボンシティという名前で呼んでおりますけれども、これも191の自治体が表明する、人口を含めてかなり増えているという流れを御説明しています。
9ページ目です。カーボンニュートラルの宣言以降、これもちょっと網羅的ではないのですけれども、経産省の中でそれぞれ確認して、企業がどれぐらい宣言をしているかということで、様々な企業、分野に広がっています。73社ぐらい今確認ができているところです。
10ページ目、世界における脱炭素化への動きということで、EU、英国、中国、米国の動きを記載しています。EUにおきましては、今年の3月に2050までの気候中立達成を目指すという長期戦略を提出されている。加えて2030年についても、野心的な目標を法案として今後提出していくということになっています。また、コロナの復興の関係で、グリーンリカバリーという名前で呼んでいますけれども、様々な資金がグリーンの分野に入ってきているということです。
真ん中、英国は2050年のカーボンニュートラルというものを気候変動法の中で規定するということになっています。中国は、2050というより2060年にカーボンニュートラルを目指すという表明がありました。アメリカは、バイデン候補の公約の中で、2035年の電力脱炭素、2050年以前のネット排出ゼロというものを一応公約としてコミットしているということです。
続いて11ページ目は、御参考までに、各国がグリーンリカバリー、グリーン対策として様々な官民合わせた兆円規模の対策をやっているというものを整理しています。EU、ドイツ、フランス、韓国、米国、英国、今後のテクノロジーの分野に、長期になりますけれども様々な支援をされているというところを整理しています。
12ページ目です。こうした諸外国と総理の発言も踏まえながら、今回12月8日に経済対策が閣議決定をされています。大きな柱でいくとコロナ対策。また、その上でコロナの後、アフターコロナ・ウィズコロナを考えたときにどういうふうに経済構造を変えていくかということで、デジタルとグリーンという二本柱で大きな政策がつくられているところです。下の箱は、その中で2050カーボンニュートラルに向けて革新的なイノベーションが大事だということで、2兆円規模の基金を造成するという仕掛けがつくられています。
次、13ページ目は御参考までで、税のほうでも企業の脱炭素に向けた投資について投資減税をしていくという方針が与党の税制大綱でまとめられています。
14ページ目は、最後御報告ということで、これは12月8日に環境省から発表されていますけれども、2019年度の日本の温室効果ガスの排出量インベントリの速報値が出ておりまして、2019年度の総排出量は12億1,300万トンということで、2013年度比で14%減ということで、2014年度以降6年連続で減少しているということが確認をされています。
最後、15ページ目、これも参考ですけれども、先週末、気候野心サミットというものが開催をされました。パリ協定の採択5周年を記念して、様々な国が国際社会にこの取組の重要性を呼びかけるという目的で開催されていまして、我が国からは菅総理がビデオメッセージを通じて出席ということで、2050年のカーボンニュートラルの話も含めて発信されています。
資料3は以上です。
続いて、資料4をおめくりいただければと思います。本日議論の一つの題材として、ファイナンスの動きがかなり活発にありますので、これの状況を御報告したいと思います。
2ページ目、パリ協定の実現に向けて相当な投資が必要だということでして、IEAからの資料を持ってきておりますけれども、公表政策シナリオ、NDCをベースにしたものと持続可能な開発シナリオ、2℃目標を想定して世界全体でどれぐらい投資額が必要かという整理ですけれども、6,500兆円から7,800兆円ぐらいの投資が必要ということで、莫大な投資をしていく必要があるということです。
3ページ目、その中でいわゆるESG資金投資の残高が増えているというお話でして、2018年の段階では30.7兆ドル、日本円でいくと3,000兆円ぐらいの資金の量になっているということです。代表的なものとしてグリーンボンドの発行額を挙げていますけれども、世界と日本において右肩上がりになっているということが確認できます。
4ページ目が、ESGの投融資というものがどう高まっているかという資料でして、国連の責任投資原則(PRI)、これは2006年になりますけれども、相当な数増えているということです。また、間接金融にもこの流れが入っていまして、国連責任銀行宣言、PRBですけれども、これも昨年9月に発足して185ぐらいの機関、また、日本も6つの機関が参加し始めているということです。
次のページに行っていただきまして、ESGの投資の中で少し新しい動きが出ているという御紹介です。インパクトファイナンスという名前で、ESGの要素を考慮しつつ、明確にこういう資金によってインパクトを出そうという意図がある部分とか、実際それによってどういう効果が出たという測定を行うという、そこが特色でして、新しい動きとして出ています。
6ページ目、中央銀行と金融当局の取組について整理をしています。気候関連のリスクが必ずしも金融システムの中でリスクとして認識されていないのではないか、それをしっかりと見ていこうというためのネットワークでして、NGFS(Network for Greening the Financial System)という名前で2017年12月に設立をされています。日本でいきますと金融庁と日本銀行も参画されて、今申し上げたようなシステムリスクについてどういう形で対応していくのかという、そこのノウハウなり意見交換をしていくというのが主な取組となっています。
国際的な動きでいくと8ページ目です。EUのタクソノミーという動きがあります。これも御案内の方多いと思いますが、サステナブル・ファイナンスというものの中で何がグリーンかというものを、タクソノミーという形でグリーン・リストを決めるという動きです。これによって、一番下に書いてありますけれども、事業会社の売上げにおけるグリーン比率や金融機関の持っているポートフォリオの中でどれぐらいグリーン比率があるかといった、そういうことの開示が義務付けられるということになっています。このグリーンタクソノミーの議論とともに、後ほど御紹介しますけれども、一足飛びではなかなか脱炭素にいけない産業向けのトランジションという議論も、ファイナンスの世界では今議論になっています。
9ページ目がイギリスの動きということで、元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が来年のCOP26の国連気候アクション・ファイナンス特使ということで活躍されていますけれども、その中で、気候変動の開示のフレームワークであるTCFDの義務化というものを推進されているということです。もともと任意のフレームワークでやってきたものをもう少し進めたいということで、こういう議論が進んでいます。
10ページ目は、TCFDの概要を記載したものです。御参考まで。
11ページ目ですけれども、TCFDについては国際的なフレームワークになっている中、日本の企業がかなり積極的に賛同しているというところを時系列で記載をしていまして、2020年12月9日時点で、世界でいきますと日本の賛同数が328、一番多いということになっています。あとは米英が続いているということです。
12ページ目はTCFDの賛同ということで、それの国際的な比較とともに、CDPの評価がここ最近発表されまして、質の評価として、日本の企業がAリストで、アメリカと並んで世界1位になっているという結果も御報告をしておきたいと思います。
13ページ目は、こうしたTCFDの取組ですけれども、官民一体になってやっているという中で、昨年の5月にTCFDコンソーシアムというものができまして、事業会社と金融機関が一緒に入って具体的な議論をする。政府機関は環境省、金融庁、経済産業省がオブザーバーに入り、政策と連動しながらこうした議論を進めています。
14ページ目は、そのTCFDコンソーシアムの取組を御紹介しています。
15ページ目、TCFD開示に関する各国の動向ということでそれぞれの記載をしていまして、EUを中心にフランス、イギリス、中国がこうした義務化をする動きが見られます。義務化という中身も基本的にはComply or Explainということで、ESGなりTCFDの気候変動のリスクがマテリアルである場合については、それをしっかり説明しなさいと。そうではない場合は、それをExplainで説明しろということでして、Comply or Explainベースの議論が最も多いと思います。他方イギリスは、それをもう少し超えて、一定の義務的な開示事項も含めてやっていくという議論もなされているというふうに認識をしています。
16ページ目、日本もそれなりにしっかりと非財務情報の開示についての枠組みが整い始めているという話でして、見直しの議論がこれから進む地球温暖化対策の推進に関する法律においては、一定の排出をする事業者はGHGの算定と報告と開示をするということになっています。また上場企業については、黒字ですけれども、コーポレートガバナンス・コードの中で先ほども申し上げたComply or Explainというものが記載されているということでして、こういった制度的基盤がある中で、よりTCFDを明確化していくという動きが今後出てくるかなと思っています。
17ページ目は、経団連のこういった分野に対しての提言ということで、TCFDを含めた情報開示が大事であるという提言をまとめていただいています。
こういった状況を踏まえて、今後の基本的方向性というのをまとめています。19ページ目、やや拙いポンチ絵ですけれども、縦軸にカーボンニュートラルに向かっていく軸です、横が年限ということでやっていますけれども、EUタクソノミー、EUの脱炭素社会というのが一つの理想郷としてあります。これに向けてみんな頑張るのだということではあるのですけれども、全ての産業がいきなりCO2削減を全体できるわけではないということもありますので、この中で一足飛びに進まないところについては移行をしっかりしていこうではないかと、着実にCO2を削減していくような取組が大事だということで、トランジションという概念があります。日本企業は省エネも含めたトランジション技術と、人工光合成とかカーボンリサイクルといったネガティブエミッションも含めた非連続のイノベーション、この2つが大事だということで、こういった部分にいかに資金供給をしていくかというのが大事だということだと考えています。
20ページ目、経済産業省の研究会に環境省と金融庁に入っていただいてまとめた整理学ですけれども、今申し上げたトランジションの話、引き続きグリーンが大事だということ、あとはネガティブエミッションも含めたイノベーション、こういうTとGとIが大事で、それにしっかり資金供給をしていくTGIFと記載していますけれども、こういった考え方で日本のサステナブル・ファイナンスの取組をしていくという方向性を打ち出しています。
21ページ目が地域です。国内でいくと、中小企業もたくさんいる中で、地域の中でどういうふうにこういった資金を供給していくかということで、ESGの地域への普及展開というものを記載しています。
22ページ目以降は少し詳細になりますけれども、それぞれ御説明をしたいと思います。まず、先ほどのTGIFといった中のトランジションですけれども、トランジションそのものはサステナブル・ファイナンスで不可欠な要素であるという信用がまだできていないということかと思っています。また、グリーンまでいけないからトランジションだという議論もなされる可能性があると思っていまして、いかにグリーン・ウォッシングにならないような形でしっかり記述をしていくか、こういったことが大事かと思っています。
「施策の方向性」というふうに記載していますけれども、右側に国際原則を踏まえたトランジション・ボンドの発行に向けた指針の整備ということで、国際資本市場協会(ICMA)という団体がこのトランジション・ファイナンスの考え方のワーキングを設定して、12月9日にその原則が出ています。こういった国際原則を踏まえながら国内での基準づくりをしていくというのが必要と思っています。
飛んでいただきまして、今申し上げたICMAの基準を25ページ目に掲載をしています。
26ページはG、グリーンの話です。これは環境省が長年ずっとやられてきているところでして、特にグリーンボンドといった市場については、先ほど見たように右肩上がりになっています。その中で、ガイドラインをこまめにしっかり改定すること、実際に発行の支援をしていくということが引き続き重要かと思っています。また、ここ最近、サステナビリティ・リンク・ローンという、横文字ですけれども、事業会社がサステナブルな目標を決めて、それに向けて改善していくことによって資金を供給していくと。それがうまくできれば、例えば金利を少し安くするといったような成果報酬型の資金供給の手法が出てきまして、こういったものもしっかりと金融の中に入れていくというのが大事かと思っています。
27、28ページは、今申し上げたような話を少し詳細に付けた紙です。
29ページは、地域の中での再エネの事業を進めるためのファンドというものも準備をされているということです。
30ページ目はイノベーション、TGIFのIですけれども、イノベーションというところのファイナンスです。これはエネルギー分野に限らず、一般にここへのリスクマネーの供給は難しいということですけれども、特にエネルギー・環境の分野はデジタルと違ってかなりテクノロジーの資金供給をする間が長いというか、実際に社会実装するまでの間が長いということで、なかなかリスクマネーが集まりにくいという状況があるかと思っています。その中で、こうしたイノベーションにチャレンジしている企業を見える化することとか、実際投資家の方とお話をしながら思うのは、なかなかこの分野、何が今後大事になっていくかが見えにくいという話もあるので、具体的な対話の場を設けるとか、こういった取組をしながら官と民でうまくコラボレーションしていく必要があるのではないかということを記載しています。
31ページ目、32ページ目は、今申し上げた話の参考資料です。
33ページ目はTCFDの推進ということで、先ほど申し上げたような義務化の議論もあるのですが、その前に、TCFDは比較的リスクの開示がこれまで多かったのですけれども、リスクだけではなくて機会の開示が大事だということで、機会の開示が大分増えてきています。その中でしっかりと投資家がそういうものを評価できるような見方をつくっていく必要があるのではないかと思っていまして、TCFDコンソーシアムと連携して昨年、TCFDサミットでつくったグリーン投資ガイダンスを少し拡充していくというようなことが考えられないかという話。あと、TCFDの賛同に向けて、まだ多排出産業で業種別のガイダンスがつくられていないといったこともありますので、このあたりをうまく進めていくということを記載しています。
34ページ目です。ESG地域金融の話とインパクトファイナンスということで記載をしています。
35ページ目、大きく3本柱ということでして、最初は金融セクターのESGのコミットと情報開示をしっかりやっていこうという話。②が、地域でのESG金融をしっかり進めていくと。3つ目が、先ほどのインパクトファイナンスを含めたこういった手法を拡大していくという柱です。
36ページ目は、地域のESG金融のための支援の方策を挙げていまして、特に地域金融機関と連携しながら経営の支援をしたり、経営層とダイアログをやったり、勉強会をやったりすることによって、リテラシーとノウハウをしっかりと伝えていくというような取組を環境省が中心にやっていただいています。
37、38ページは、こういう中でESGの金融のハイレベル・パネルというものを開催して、間接金融・直接金融双方の方がノウハウなどをうまく共有しながら次の展開に進んでいくという取組をなされています。
39、40ページは、インパクトファイナンスです。これは金融ハイレベル・パネルの下にタスクフォースが設置されて、具体的にそこの考え方とロードマップをまとめています。
以降は参考資料となります。
私からは以上です。
〇山地座長
どうも説明ありがとうございました
それでは、今の事務局からの説明について、各委員から御意見を頂ければと思っております。中環審・産構審の委員が交互にそれぞれ五十音順で御発言いただければと思っておりますが、前回の第1回では五十音順の先頭から回しましたので、今回は五十音の最後から回して御発言いただければと思っております。多くの委員が参加していただいておりますので、御発言3分以内を厳守ということでお願いしたいと思います。
それでは、まず産構審側から山下委員、お願いいたします。
〇山下委員
ありがとうございます。様々な取組を包括的に説明をいただきありがとうございました。いろいろな動きが早い中、断片的な情報の理解が進みました。大変感謝いたします。
10月26日の菅総理によります2050年までに全体でカーボンニュートラルの宣言がされた後、ほぼ連日、新たな目標あるいは方針の発表が続いています。一方でエネルギー基本計画の見直しはまだ始まったばかりでありますし、再エネとともに重要なクリーンな電源である原子力発電は、今現在稼働しているのは3基のみという状況です。成長戦略として捉える場合に、2050年に全体で、あるいはネットでカーボンニュートラルにすると言いましても、具体的にどの技術、どの分野で対応し、どのようなステップあるいはタイムラインで実現し、そのときのコストはどうなるのかといった道筋がまだまだはっきりしていない中で、立派な目標の発表だけが続くことにはいささかの懸念を抱いています。
全体で、すなわちネットでというキーワードにあるように、再エネと原子力だけでは実現が難しい中、ネガティブエミッションを含むカーボンニュートラル技術をまだこれから手にするわけでありますので、充実した資金の確保は極めて重要だと思います。技術は民間企業が持っており、一般消費者を含む全ての需要家が利用して初めて効果を上げるものです。
本日の説明では、経済産業省がエネルギー消費あるいは排出量の多い一定規模以上の企業へのファイナンス、環境省が地方自治体や主に中小企業のファイナンスを見るというイメージだと理解しました。コロナによる経済への打撃は大きく、その痛手を受けている真っ最中の企業が将来に向けたビジョンを描けるような財政支援が欠かせないと思いますし、エネルギー変革を加速化する中で、まだ手にしていない技術の活用には日本各地の規模の小さな企業も含めた様々な企業が持つ技術を活用できるような工夫、あるいは新たな産業、ビジネスの創造ができるような安定的な財政基盤を確保することの重要性を改めて強調しておきたいと思います。
遠くからヨーロッパのグリーンリカバリーを眺めていた日本が、自らエネルギー変革、さらに大きな構造変革を宣言したわけですから、これからの日本経済の基盤となる産業をしっかり支え、新たな世界で国民が暮らしていけるような社会を再構築していけるようにすることが大切だと思います。これからの産業、技術、経済、社会、具体的にこの姿のイメージを共有できるようにして方向性を持って進めるように、そしてファイナンス、資金確保がきちんとできるように、マクロ的な視点と、上流だけではなくESGのS、社会を含む下流への目配りの利いた戦略にすることが極めて重要だと思います。
世の中はトップダウンの決定だけでは動きません。日々の暮らしに大幅なコストの増加を突きつけるのではなく、技術開発や普及、国際的な連携でコストを引き下げて、どうすれば全ての国民がエネルギー変革後の社会で安全に豊かで健康な暮らしを続けられるようになるのか、そのような視点が大切だと思います。トランジション・ファイナンスの提唱のように国際間の協調を進めつつ、マクロとミクロの両方に目配りをして、環境省と経済産業省が緊密に連携して進められることを期待します。
以上でございます。
〇山地座長
ありがとうございました。
では、続きまして、中環審側から吉高委員お願いいたします。
〇吉高委員
ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私自身、20年以上も環境金融に関わってきて、皆さんが感じている以上に、世界のグリーンファイナンスの動向が早いと感じており、追いつけないほどです。その点では、今回の首相の宣言でやっと世界と同じ土俵に立てたと感じています。昨今、企業の経営者層に呼ばれることが大変増えまして変化を感じております。
前半と後半のご説明について1つずつ申し上げたいと思います。まず1点目は、衆議院の気候非常事態宣言で、脱炭素社会へ向けて我が国の経済社会の再設計への取組を強化し国を挙げて行うとあります。具体策の検討として、グリーン成長戦略、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画はありますが、日本の弱点としての異常災害の増加、少子高齢化が課題だと思うので、これら日本特有の課題と計画等との関係を強化した統合的な政策が必要だと思っています。
エネルギー、地方分散化、カーボンニュートラルの施策と、国土強靱化は別々ではなく統合して再設計していただきたいと思いますが、そのようなシステムの構築の中央の司令塔というのは、もしかして4ページにある中の成長戦略会議なのでしょうか、そこをお聞きしたいと思いました。
2点目はファイナンスに関してです。先日、フィナンシャルタイムズのニューヨークの記者と話しましたが、日本のTCFDに関する動きを大変評価していました。ESG金融に関しては、もちろんソフト面の支援は重要だと思いますが、金融というのは、将来のシグナルで動くと思います。カーボンプライシングも市場へのシグナルですし、インパクト投資の発展も同様だと思います。米国では再エネの資金使途の債券に対して、投資家に対する税制控除などもあります。そして、グリーンリカバリーによる財政出動の政策は市場へのシグナルだと思います。NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)に、これまで入っていなかった米国のFRB(米連邦準備制度理事会)が昨日正式に参加表明しています。このニュースはすごくインパクトがあります。先ほど御説明してくださったTGIFに中央銀行などが議論に加わられるのでしょうか。
地方銀行の再編も菅首相は言及されていますが、地域金融、中小企業への支援など、カーボンニュートラルを実施するにあたり、乗り遅れる方がでないよう(誰一人取り残されないよう)に、うまくトランジションが図られることが望まれます。トランジションがうまく実行できなければ、金融システムの不安定にもつながると思います。また、先ほど言及された、ICMAのトランジション・ファイナンスのガイダンスには、SBTについての開示が言及されていますことは留意が必要です。金融は、あらゆる産業、生活のゲートウェイです。カーボンニュートラル社会への移行に民間資金が導入されるよう、効果的にシグナルでナッジする施策を期待しております。
以上でございます。どうもありがとうございました。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
それでは、今度は産構審側のほうに戻りまして、長谷川委員お願いいたします。
〇長谷川委員
長谷川でございます。御指名ありがとうございます。
菅総理の2050年カーボンニュートラルの宣言につきましては、先ほど梶川室長からも御説明いただいたように経団連としても高く評価しておりまして、12月15日に提言を取りまとめたところでございます。2050年カーボンニュートラル、経団連の提言で“Society 5.0 with Carbon Neutral”と言っておりますけれども、その実現に向けた経済界の決意とアクションと題したものでございます。菅総理の宣言の中で「環境と経済を回しながら」というような発言がございまして、重要なキーワードだと思っているところでございます。
経団連が取りまとめました12月15日の提言では、2050年カーボンニュートラルは極めて困難なチャレンジングな課題だと位置付けた上で、産業のみならず、人類とエネルギーとの関わりでありますとか、あるいは運輸、民生など、社会全体で取り組んでいかなければならない、非常にチャレンジングな課題だと位置付けた上で、そういった社会を実現するためには、まさにイノベーションが重要だということを申し上げています。
こうした中、今政府のほうで、菅総理と梶山大臣の強いイニシアティブだという報道もございましたけれども、2兆円のファンドを設立していただけるとのこと、また、年末には、グリーンイノベーションの実行計画が取りまとめられるとのことで、大きな期待を寄せているところでございます。この2兆円ファンドにつきましては、企業の思い切った取組を後押ししていただけるような運用をぜひお願いできればと思っています。
イノベーションに関しましては、先ほど事務局から御説明ありましたようにファイナンスも非常に重要でございまして、今やっていただいているような取組を是非力強く推進していただくとともに、トランジション・ファイナンスがしっかりと世の中、世界的に認知されていくような取組をしていただければと考えております。
最後に、イノベーションが重要だと申し上げましたけれども、そういった観点から、技術開発の担い手である企業に新たな負担を強いるようなカーボンプライシングといった政策手法については、是非慎重に考えていただきたいと思っている次第でございます。
以上でございます。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
では、次は中環審側に行きまして、山口委員お願いいたします。
〇山口委員
山口です。どうぞよろしくお願いいたします。
2050年までの脱炭素化、これはまさに世界の潮流でありまして、今回の政府の判断は的確な決断だったと思います。問題は、これをどう実現するのかということだと思うのです。私は、この10年で国民的なうねりをつくる必要があると思います。国には、是非2030年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合につきまして大きな目標を掲げていただきたいと思います。小泉環境大臣が昨日、再エネ比率を40%以上に高めるべきだという意向を示しました。経済同友会は40%、JCLPは50%を提言しています。また、ちょうど昨日、再エネの切り札ともされる洋上風力につきましても長期目標が示されました。是非国が再エネ全体でも高い目標を掲げることで、民間が安心して参入できる道筋をつくっていただきたいと思います。
そして、脱炭素化には需要サイドの変化も大切です。人々が脱炭素化を人ごとではなくて自分事として捉えて、ライフスタイルを変えていく必要があると思います。今年はコロナでCO2の排出量が7%ほど減る見通しです。テレワークで無駄な移動を減らすなど、新しい生活様式の良い部分は無理のない範囲で続けて、さらに電気自動車や住宅の断熱化などの普及も大事になると思います。
そして、個人ができる身近な脱炭素といいますと、御家庭の電気を、再エネを多く扱う電力会社と契約することだと思います。実際、私も利用しているのですが、料金はほとんど変わりません。毎月払う電気代がどこに向かうのか。化石燃料主体の電気ですと更なる温暖化につながり、お金は海外に流出します。一方、再エネ主体の電気ですと脱炭素化に貢献でき、地域の再エネを支援することができます。この違いは大きいと思うのです。そして、日本には全電力需要の2.2倍の再エネ資源のポテンシャルがありまして、多くは地方に眠っています。これを地域循環共生圏の考えで活用すれば、地方創生にもつながります。
例えば、今年の2月に北岩手循環共生圏が結成されました。私も現地を見てきましたが、高齢化や人口減少が進む一方で、自然資源が非常に豊富で、再エネの潜在力は横浜市の電力消費量の4倍あるとされています。既に横浜市とエネルギーの連携協定を結んでいて、域内の再エネ電力を横浜市内に供給し始めています。こうした北岩手をはじめとして多くの地方が、もっと多くの再エネをつくって都市部にも供給したいという希望を持っていると思うのです。
こうした地方の再エネを増やすには、送電線改革と同時に再エネ発電所を建設する際の資金面の支援が大事だと思うのです。私がこれまで取材してきました各地域では、どこも初期投資にかかる億単位の資金をどう調達するのかで大変苦労されていました。地域金融から借りやすくなれば、もっと参入する人は増えるはずです。是非地域におけるESG金融を更に使いやすいものになるように後押しをしていただければと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
では、次は産構審側の委員、竹ヶ原委員お願いいたします。
〇竹ヶ原委員
御説明ありがとうございました。私も金融の世界におりますので、ファイナンスに関してコメントしたいと思います。
冒頭の御説明にもありましたESG、あるいは非財務情報に着目した投資が30兆米ドル、3,000兆円残高があるという話ですが、中身はいろいろでありまして、その半分がネガティブスクリーニングと呼ばれる、ある特定のクライテリアに該当しないものは排除する、そういうロジックの投資です。これはどちらかというと、前向きなものを拾い集めていくというよりは後ろ向きに切り捨てていくロジックの投資であり、これが半分近くを占めていることです。今伸びているのは、ESGインテグレーションと呼ばれる、非財務的な価値をしっかり見定めて投資判断に統合し、ポジティブに拾っていこうという考え方です。これをいかに広げていくかが、今後2050年の脱炭素に向けてファイナンスがどう貢献していけるかを決めるのだと考えています。
そういう意味で、先ほど御説明いただいたTGIF、トランジションもグリーンもイノベーションも一体で捉えていこうというコンセプトは、私は非常にすばらしいものだと思っています。というのも、具体的にTとGとIでは、それぞれ金融の関与の仕方が違ってくると考えているからです。グリーンに関しては、先ほども御説明ありましたEUのタクソノミーであれ、環境省が推進しておられるグリーンボンドであれ、対象資金というのは非常にクリアに定義されます。ですから、もう方向は定まりましたので、そこに向けてみんなが一生懸命頑張ってアセットを積み上げていく、プロジェクトを実現していく、そういうことだと思うのです。
難しいのは、トランジションとイノベーションのところだと思います。トランジションに関しては、2050年に一足には飛べないのでマイルストーンを置いて、そこまではまず、今アベイラブルな技術をどんどん投入していって何とかたどり着く、その先に待っているイノベーションを使って2050年にジャンプしていくという、いわば山の裾野から中腹までの上りみたいな話になりますので、見ようによってはウォッシュに見えたりしかねないところがあります。ここをしっかり評価してコミットメントを引き出して、企業を2050年のパスに乗せていく。多分金融として一番汗をかかなきゃいけないのはこの領域だと思っています。
いかにコミットメントを引き出して、対外的にも、この年はウォッシュではなくてきちんとした戦略の下に行われているのだということを代弁していくか。このためには、先ほども御説明ありましたサステナビリティ・リンク・ローンですとか、サステナビリティ・リンク・ボンドでありますとか、企業のコミットメントをちゃんと引き出して評価する金融の機能が役に立つのではないか。先ほど信用の構築というお話もありましたが、そこは使えるのではないかなと思っています。
イノベーションについては、金融だけではカバーできないものを大量に含んでおります。「非連続な」という言葉が冠されるように、本当にビジネス上うまくいくのかどうか分からないものもまだまだたくさん入っています。そういう意味では補助金が活用される領域でもありますので、先ほどのファンドの話ではないのですが、官民できちんと連携して進んでいくということが大事だと思いますし、またもう一つ金融に関して言うと、そういったイノベーションをしっかり進めていく企業をちゃんと応援していくことが必要です。具体的には、R&D、研究開発等でそういった非連続なイノベーションに向けて汗をかいている企業の努力というものを、まさに無形資産の価値として、きちんと評価して投資していく。本当の意味でのESGインテグレーションが多分問われるのだと思うのです。
そういった意味で、今申し上げたようなもろもろの話を一体でTGIFというコンセプトで説明していくというのはすばらしいコンセプトだと個人的には思っています。
以上です。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
次は中環審側、薬師寺委員でございます。よろしくお願いいたします。
ちょっと音声の状態がよろしくないようなので、申し訳ありません、後へ回して次へ進めさせていただいてよろしいでしょうか。
では、また産構審側のほうに戻りますけど、髙村委員がまだ御参加ではないようですので、杉山委員お願いいたします。
〇杉山委員
それでは、御指名ですので意見を申し述べさせていただきます。参考資料4として、書面で事前に意見提出をしております。その要旨を主にお話ししたいと思います。
まず第1に、カーボンニュートラルを目指すに当たっては、経済と科学についてのデータを精査すべきです。国民は誤った情報の氾濫に惑わされています。事務局は、何よりもまずデータを精査し、国民に示すべきです。その上で国民的な議論を仰ぐべきです。小生の整理したデータは、参考資料に「地球温暖化ファクトシート」として添付しましたので、御活用願えれば幸いです。
経済について、RITEの2016年の試算に基づけば、カーボンニュートラルの年間費用は国家予算約100兆円に匹敵することが示唆されています。しかも試算の中身は、いまだ実用化されていない技術ばかりです。つまり、国内だけで2050年にカーボンニュートラルにすることは事実上不可能ということです。
では、科学的知見はこれほど極端な対策を支持するのでしょうか。政策決定に当たっては、統計データこそ重視すべきです。災害が激甚化・頻発化したといったレトリックや、ある台風で災害があったというエピソードだけでは駄目です。統計データでは、温暖化による被害はほとんど確認されていません。台風は増えておらず、強くもなっていません。豪雨や猛暑への地球温暖化の寄与はあったとしても、ごくわずかです。海氷がなくなり絶滅すると言われたシロクマは、むしろ増えています。海面上昇で沈没すると言われたサンゴ礁の島々は、むしろ拡大しています。
大きな被害が出るというシミュレーションはあります。しかし、これには往々にして問題があります。第1に、前提となるCO2排出が多過ぎます。第2に、モデルは気温上昇の結果を見ながらパラメーターをいじっています。第3に、モデルは気温上昇を過大評価しています。第4に、被害の計算は不確かで、悪影響を誇張しています。政策決定に当たっては、シミュレーションは一つ一つその妥当性を検証すべきで、計算結果をうのみにするのは大変危険です。
以上から、国民に莫大な費用を強いる政策を支持するほどの強固な科学的知見は存在しないというのが私の見解です。
ただし、日本政府はCO2を実質でゼロにするとしており、またそれは成長戦略の一環でもあるとしています。これを実現するには、日本国内よりも、むしろ日本の技術によって海外で削減されるCO2こそが重要です。日本には発達した製造業があります。経済成長を図りつつ、温暖化対策に限らず、あらゆる科学・技術全般の振興を図るべきです。安くて性能の良い温暖化対策技術は、イノベーティブな製造業という健全な母体からこそ生れます。これを私は上げ潮シナリオと呼びます。
日本は、LED、バッテリー、太陽電池、ハイブリッド車などの技術で世界に貢献してきました。アフォーダブルな技術さえできれば、世界中でCO2は減ります。日本のCO2排出は世界の3%にすぎません。その程度を日本発の技術で減らすことは可能と思います。政府の役割は基礎研究への投資など多々あります。ただし、日本を高コスト体質にしては逆効果です。製造業が衰退してしまい、イノベーションが起きないからです。電気料金は低く抑えねばなりません。このためには原子力も石炭火力も重要です。
ファイナンスについて、現行のESG投資は大きくバランスを欠いており、是正が必要です。欧州では再エネだけが良いという意見が強く、合理的ではありません。他方で米国では、原子力やCCSも推進するというテクノロジーインクルーシブなアプローチが主流です。日本も米国と連携して、そうすべきです。
また、ESGのSは社会の意味です。人権、経済開発、安全保障といった普遍的な価値こそ重視すべきです。端的に言って今のESG投資は、中国から太陽電池を買うことを促進しているが、人権問題にはお構いなしです。他方で、アジアの自由諸国の経済開発に必要な化石燃料の利用を妨害しています。
温暖化対策によって、ハイテクやレアメタルなどの中国依存が高まらないようにすべきです。分散型の電力設備へのサイバー攻撃への対策も必要です。これは既に米国が先行して対応しており、日本もそうすべきです。
最後に、今日事務局から提出されている参考資料1も見たのですけれども、統計や豪雨などの温暖化の影響に関係する統計データが一切なくて、あるのはシミュレーションばかりです。事務局はなぜ統計データを整理して出さないのでしょうか。統計データを示すべきということは前回も私ははっきり申し上げて、両議長にも賛同していただいています。国民に大きな負担がかかり得る政策をとるということを議論するのであれば、まず国民によく事実を知っていただくべきです。これは民主主義の基本で、ないがしろにしてはいけないと思います。事務局は、私が今日委員意見として提出した書面で統計データをよく確認して、次回の資料には必ず反映していただきたいと思います。
以上です。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
先ほども事務局に対する確認事項等がございましたけれども、一通り委員の皆さんの御発言を伺ってから、後で事務局に対応していただこうと思います。
それでは、先ほど音声の調子が悪かった薬師寺委員、いかがでございましょう。
〇薬師寺委員
横浜市の薬師寺です。大変失礼いたしました。
それでは、国内外の動きに関して2点申し上げます。
総理の宣言以降、革新的イノベーションに注目が集まっているのは非常にすばらしいことだと思いますけれども、例えば市内事業者の方々からは、これまで自分たちが積み上げてきた省エネについてもっと評価してほしいというような御意見が数多く寄せられております。特に2030年に向けてのCO2削減については、まだまだ例えば省エネの重要性があると思いますので、特に私どもも移行の部分に焦点を当てていただけたらと思います。また、大多数の市民や事業者の方にとって脱炭素というのがなかなか我が事にならないという面がございまして、できるだけ大きな国民運動にしていくためにも、脱炭素化に向けての間口を広く設定していただけるとありがたいなというふうに思います。
2点目でございますけれども、ゼロカーボンシティに関してでございます。国のゼロカーボンシティに対する御支援に対しましては、本当にありがとうございます。ゼロカーボンシティの取組については、例えば今の地球温暖化対策計画の中では特段の記述、言及がございませんけれども、改定に当たっては、自治体の取組について取り扱っていただけたらと思います。
それから、ゼロカーボンシティの中でも地域特性がかなりございまして、特に横浜もそうでございますけれども、大都市と言われるカーボンシティは大消費地というだけでなくて、例えばエネルギーであったり製造の拠点になっておりまして、革新的イノベーションが進む中で臨海部の産業や土地利用がどういうふうに変わっていくのかということに関して非常に心配している部分もございます。ですから、ゼロカーボンシティに対する御支援、地域特性を踏まえた支援を是非お願いしたいというふうに考えております。
また、先ほど山口委員から東北連携の御紹介をいただきまして、ありがとうございます。大都市は再エネを外から持ってこないと、なかなか自分のところで製造できませんので、そういった外から持ってくる施策に対する御支援も是非お願いしたいと考えております。
また、最後にファイナンスに関してでございますけれども、これは自治体レベルでも非常に重要と考えておりまして、私どもも来年度、地銀とか信金と連携した脱炭素に向けての市内事業者の支援に力を入れていきたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
先ほど順番が入れ替わったので中環審側が続きますけれども、中環審側の三宅委員お願いいたします。
〇三宅委員
私のほうから、まず最初に、総理の2050年のカーボンニュートラル宣言以降、確実に空気感が変わってきていることを私も肌身で感じております。これまで高い目標設定の必要性を訴えてきた側なのですけれども、それでも実際に設定されたときの社会全体に与える影響力の大きさに驚いているところでございます。宣言をされた総理の英断に心から敬意を表すとともに、だからこそ改めて、菅総理の宣言を実現するために全てのステークホルダーが力を合わせていかなければならないというふうに今感じております。
一方で世界に目を向けると、私は産業側ですので、企業の立場として切実な現実があるというのも事実です。その一つは、例えばグーグルさんですとかアップルさん、消費財の分野でもユニリーバさんのように、サプライチェーン全体での脱炭素化を2050年ではなくてもっと早い段階に、30年とか40年とかいうレベルで達成しようとする動きがあるということです。また、今の段階では宣言が出されたというレベルなのですけれども、2年後、3年後、5年後、果たして日本の企業がこれらグローバル企業のサプライチェーンに残っていられるのかというのはすごく心配です。変な言い方なのですけれども、ある意味日本の大手企業に関しては、対応することもある程度は可能です。資金力で少々のオフセットをしたりですとか、割高な再エネを無理しても購入したりすることも可能です。でも一番困るのは、普通に系統電力を購入することしかできない日本の中小の企業の方々がいるというふうに思っています。
もう一つの流れは、金融界からのプレッシャーです。当社イオンのように日本の中でサプライチェーンに影響を与えることができる企業というところへの国内外の機関投資家からの圧力というのは、年々大きくなってきています。イオンのサプライチェーンに対してもっと働きかけをすべきだと最近よく言われます。ウォルマートでやっているし、と言われます。自社としてイオンがどれだけ努力をしていても、余りそれだけでは投資家からの評価が高いという状態ではないという、そういう世界になってきています。
それでも、欧米諸国と日本では大きく今状況が違っています。中小の取引先さんに対して、高くてもいいから再エネを買ってくれないとイオンのサプライチェーンに入れない、とはなかなか言えません。なぜなら、今、日本で中小の取引先さんは多くの選択肢がないからです。系統電源から電源を買うしかない。だからこそ、このサプライチェーン全体の脱炭素化を考えると、日本全体のエネルギーミックスを考えないわけにはいかないのだというふうに思っています。
世界と比べてまだまだ高い日本の再エネコストを引き下げるためにも、野心的な30年目標の設定が必要だというふうに切に願っております。50年のネットゼロを見てしまうと、なかなか現状の再エネだけでは解決できない問題があるということはもちろん理解をしていますし、それが事実なのだと思います。でも、グローバル社会の中で日本の存在感を維持しながらも2030年を迎えるという視点で言えば、再エネ比率を50%近くまで引き上げることが必要だというふうに思っています。
そして、そこまでは技術的なイノベーションに頼らずとも、十分に既存の技術で可能だとも言われています。ただ、社会の仕組みやルールを変えるという意味での社会的イノベーション、これは必要だし重要だというふうに思っております。2030年50%という野心的な目標を掲げることで日本全体のエネルギー政策が同じベクトルを向いて、結果として再エネのコストもグローバルなレベルに近づけることができて、そうすることで日本の市場、日本全体のマーケットも日本企業の競争力も維持することができるというふうに期待をしているところでございます。ありがとうございます。
〇山地座長
ありがとうございました。
今までおおむね3分程度でお話しいただいているのですが、3分を少し超える平均ペースになっていまして、予定よりも遅れぎみでございます。改めて恐縮でございますけれども、御発言3分以内を厳守ということで御協力をお願いしたいと思います。
今ちょうど髙村委員が御参加されたということでございますので、次は、両方の委員会のメンバーでございます髙村委員に御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〇髙村委員
髙村でございます。ありがとうございます。発言の機会を頂いて恐縮であります。3つほど申し上げたいというふうに思っております。
1つは、本日の資料にもございますけれども、クライメートファイナンスについてです。恐らく本日も金融からの委員の先生方も御出席だと思いますけれども、現在の気候変動、とりわけ企業の行動に与える影響ですとか、あるいは金融自身が気候変動問題を金融システムトータルのリスクとして捉えて取組が進んでいるということについては、2015年に我々が温暖化目標を議論したとき以降の非常に大きな変化だというふうに思います。その意味で、先ほどの委員からも御発言がありましたけれども、こうした金融、そして金融が企業行動に与えているインパクトを考えますと、気候変動対策の取組をうまく進めていくことが日本企業の価値と資本市場での評価を高めるという意味において、グリーン成長あるいはグリーン産業の育成につながってくるという局面に来ているというふうに思います。その意味で、本日の資料にも様々な取組の御紹介がありましたけれども、是非この点については強化をしていただきたいというふうに思っております。
2つ目は、これからのこの委員会での議論に関しての要望を、2点目、3点目ですけれども申し上げたいと思っております。2点目として申し上げたい1点目の要望でございますけれども、今回も様々な気候変動をめぐる、あるいはそれに影響を与えるマクロな情報を出していただいているというふうに思います。とりわけ参考資料等に含まれている情報というのはそういう情報だと思います。温暖化対策計画あるいは目標の検討をしていく際に日本の排出構造を見ますと、エネルギー分野の対策、あるいは今後の方向性がどうなるかということは非常に重要だと理解をしています。御存じのとおり、こちらは既に資源エネルギー庁のところで前々回御紹介もありましたけれども、現在進行中のエネルギー基本計画等への議論においても、とりわけエネルギーの供給側の問題とともに、例えば2050年に向けて需要がどうなっていくのか、あるいはその前提となるような社会や経済の構造がどうなっていくのかといった議論を深める必要があるということも、議論の中で複数の委員から指摘がされております。
その意味でエネルギーに関わるところではありますけれども、しかしながら温暖化対策、気候変動対策に関わるこうした状況というのは、エネルギーにとどまらない大きな社会や経済の将来のあり方、あるいはそれをどういうふうに専門家は見ているかといった情報が非常に重要だと思っております。1つは、資源エネルギー庁で進んでいるエネルギー基本計画に関わるような50年、30年の議論の状況について、この合同会議でも折々共有をしていただきたいというふうに思いますし、同時に先ほど言いましたように、エネルギーの問題だけではない大きな30年、50年の社会像、経済のあり方にも関わるところでございます。したがって、そうした情報を積極的に事務局は是非この議論の俎上に乗せていただきたいというふうに思っております。
最後、3点目でありますけれども、2019年度の温室効果ガスの排出量の速報値が先般発表されました。エネルギーに関しては、先ほどありましたようにまた議論を共有していただくとしても、エネルギー分野以外の例えばハイドロフルオロカーボンのこの間の急速な排出の増等に現れているように、エネルギー分野以外の施策についても、できるだけ早く状況を確認して検討することが必要ではないかというふうに思っております。その意味で広い視点に立って、先ほど言いました30年、50年の社会経済のあり方、あるいはエネルギー需要のあり方といったような点についての情報を出していただきたいと申し上げましたが、エネルギー分野以外のそうした動向についても、この合同会合でできるだけ早く議論ができるような場を設けていただきたいというふうに思っております。
以上でございます。
〇山地座長
ありがとうございました。
それでは、産構審側、小川委員お願いいたします。
〇小川委員
小川でございます。ありがとうございます。私は産業界、製造業に属する者として、幾つか違った視点でコメントさせていただきたいと思います。
1つは、2050年のカーボンニュートラルを実現するという国を挙げての今活動が起こっているわけでありますが、その中でイノベーションが鍵になるというのは、これはコンセンサスになってきたなというふうに思います。産官学の日本の総力を挙げてこの問題に取り組むという上で、私のほうから、イノベーションの特性を是非考慮した政策とか、あるいはファイナンスとか、そういったことを考えていただきたいなというお願いを込めて3点申し上げます。
1つは、イノベーションというのは直線的には進まないという特性があると思っております。これはいろいろな努力を一生懸命するのですけれども、なかなか努力が報われない時間が長い。しかし、そういう活動を諦めずに続けるうちに、ある日突然道が開ける、こういったものがいろいろな過去のイノベーションの中で見られていると思います。これは理由がありまして、新しい大きなイノベーションを起こすとすると、幾つの条件が全部そろったときに初めてそれが実を結ぶというような特性がありますので、あるところまで努力を続けても成果が出ないのですけど、自然とぱっと成果が出る、こういったものがイノベーションの特徴だと思います。
私の懸念しておりますのは、50年にゼロだとすると、現状のところから定規で線を引いて、この線の上に乗っているかどうかをマネージする、こういうことをやりますと、本当にいいことをやって努力をしている人の努力がなかなか評価されないし、あるいはやめてしまったほうがいいのではないかみたいな議論になってしまう。結果としてイノベーションを阻害することになるということで、まず、イノベーションは直線的にいかないことは認識しておくべきかと思います。したがって、直線的に引いてターゲットを設定するというやり方は非常に難しいのではないかというのが1点目でございます。
2つ目は、イノベーションを助ける政策ということはいろいろとあると思うのですけれども、実はイノベーションの進捗のフェーズによって使うべきツールが違うのではないかというふうに思います。1つは、ほぼ実用段階に近い技術があるような場合です。そういう技術でCO2排出が少ないのだけれども、今の経済状況の中では利用されていない技術がある。こういう選択肢がある場合は、いろいろな政策を用いて、FITだとかエコカー減税とか、あるいは燃費の規制とか、こういったいろいろなツールを使うことによって、そういう経済的な優先順位を逆転させて、CO2対策として非常に役に立つものを優先的に使う、こういう政策はもちろん非常に役に立つと思います。
一方で、今我々が50年のゼロエミッションを目指すということに関しましては、まだ代替策がない、アイデア段階の技術を何とか生かしてこれを実現していかなければいけないと、こういった類のものが大半であります。こういう代替策がないイノベーション、これをどうやって進めていくかというのも非常に重要だと思います。
こういうイノベーションにチャレンジする人を増やす。これは一番大事なのはリスクを下げるということになると思いますが、今回政府から出されております2兆円の基金というのは非常にすばらしいと思います。こういった基金を使って、イノベーションにチャレンジする動きをどんどん増やしていくべきだというふうに思いますが、この中で、お金をジャブジャブ入れて無駄に使われたら困るという意見ももちろんありますし、いかに貴重なお金を有効に使っていくかということを是非考えなければいけないと思います。
そのための一つの方策としては、成功をコミットさせるというような意見もございますが、イノベーションの性質からして、もともとリスキーな、ともかく成功するかどうか分からないのだけれどもチャレンジしなきゃいけない、こういう性質がございますので、政策としては、リスクを下げるという方向にぜひ持っていくべきではないかと思います。
したがって、お金の使い方といたしましては、一度に大きな金額をボンと与えるのではなく、イノベーションのステップを幾つか細かく分けて、あるところまで行って、その次のステップに行くときには厳しい評価がある。その評価を受けて関門を潜り抜けた者がさらに次のお金を頂いて、さらに次の実証試験とかテストの次のフェーズに移っていく。今まで頑張った分の成果はみんな出したいですから、こういったマネジメントをすれば、モラルハザードも起こらずにどんどんチャレンジを進めていくということができると思います。
したがって、3つ目は、イノベーションにチャレンジすることはもともとリスキーなので、是非リスクを緩和するような政策、あるいはファイナンスサイドの支援、こういったものをお願いしたいというふうに思います。
私のコメントは以上でございます。
〇山地座長
どうもありがとうございます。
まことに申し訳ない言い方になるのですけど、進行役としてはちょっと時間が心配で、先ほどの髙村委員は6分、今の小川委員は5分強お話しされましたので、できるだけ3分厳守というのをよろしくお願いしたいと思います。
それでは中環審側、増井委員お願いします。
〇増井委員
よろしくお願いいたします。まず、日本も明確に2050年脱炭素社会の実現を目指すということで、自治体であるとか企業も非常にここ数日、本当に多くの動きが見られていて、これは非常に頼もしい状況であるかなと思っております。そういった上で4点ほど指摘をさせていただければと思います。
まず、排出ゼロにするということがどういう意味を持つのか。既にコメントがございましたけれども、一般の方々もきちんと理解できるようなメッセージというのが必要だなと思っております。この合同会議でも、是非、将来世代も納得できるようなロードマップを提示して、全ての国民の方と共有していきたいなと思っております。
8割減のときは多少排出していいということなので、化石燃料の消費も認められますけれども、ゼロの世界では基本、化石燃料を消費するのであればオフセットを準備しないといけないということで、非常に厳しい目標ではあるのですけれども、一方で目標が分かりやすくなったと思います。そういう意味で新たな取組に向けたいろいろな提案等も出てくるのではないかなと期待しております。
今申し上げましたように、排出ゼロというのは非常に厳しい目標であります。今回インベントリの情報も出していただいていますけれども、90年から見ますと2020年というのはちょうど30年で、これから30年の間にゼロを目指さないといけないということで、これまで行ってきた30年の行動と全く違う取組をしていかないといけないということは明らかなので、全ての国民の皆さんに対するメッセージの出し方というのを是非議論していきたいと思っております。
2点目はエネルギーについてなのですけれども、髙村委員からもお話ありましたけれども、供給サイドだけで検討しているというのは限界があって、需要側とセットで行うということが大切だと思っております。もちろん再エネが供給の中心となりますけれども、需要を抑えるということで再エネ導入というのもしやすくなるという面もあります。一方で脱炭素社会というのは、節約だけを目指した社会ではなくて、豊かで希望ある社会でないとなかなか人々はついてきてくれないということになりますので、行動変容を促して、自ら実現したいと思えるような脱炭素社会を目指すビジョンを示すということが非常に重要かと思っております。
特に新しい技術ですとか取組を実現する商品が開発されても、それらが普及しなければ脱炭素社会というのは実現しませんので、脱炭素社会に貢献する企業のモチベーションを維持する上でも、需要サイドの取組というのが非常に重要になるかなと思っております。その意味でも、今回示していただきました金融面での取組というのは非常に重要かなと思っております。
3点目はイノベーションについてなのですけれども、もちろんイノベーションというのは非常に重要で、最後のネットゼロにするという意味では非常に重要なものではあるのですけれども、実際、既存の取組でも意味のあるものは非常に多くありますので、そういう意味で既存の技術をどう普及させるのか。これまでなかなか普及してこなかった阻害要因というのをきちんと明らかにして、それを改善するための方策を検討するということも非常に重要かと思っております。残された期間、時間は非常に限られておりますので、時間軸を踏まえて、どういう手順で新しい技術を導入していくのかということも是非議論していきたいと思っております。
最後に、今回の資料では余り触れられていなかったのですけれども、途上国の支援をどうするのかということで、もちろん日本が脱炭素をした上で途上国を支援するという意味なのですけれども、現在、途上国でも長期戦略の議論が行われていますけれども、今回の資料の中で世界地図が出されておりましたが、アジアの国々というのは比較的脱炭素にまだコミットしていない国が多いということで、いろいろ話を聞いていますと、まだピークアウトさせるというところに議論の中心があるようです。地球規模での1.5℃、あるいは2℃目標というのを考えるのであれば、国内対策だけではなくて途上国の支援というのも非常に重要ではないかなと考えております。
発表は以上です。どうもありがとうございました。
〇山地座長
ありがとうございました。
次は産構審側、井上委員でございます。井上委員、よろしくお願いいたします。
〇井上委員
日商の井上でございます。
カーボンニュートラルを考えるに当たっては、何よりもまず、エネルギー政策の基本である3E+Sをしっかり踏まえるべきだと考えております。カーボンニュートラルに向かう道筋について、特に中小・小規模事業者には、自らのビジネスの環境への影響やどのように対応したらよいのか見当がつかない状況でもあります。日本がどのような経済社会を目指し、ビジネス環境はどう変化していくのか、特に中小企業に理解しやすいように、できるだけ具体的な全体像と道筋を示していただきたいと思います。また、目標が定まっていることから、中小企業が早い段階で行えることをいろいろな取組で実施していったらいいと考えております。
また、「エネルギー安全保障」確保のためにも、様々なエネルギーをバランスよく活用することは極めて重要だと考えております。再生可能エネルギーのみならず安全性を確保した上で、現段階では原子力発電を最大限活用することが不可欠だと考えております。政府が前面に立ち、原発政策を大きく前進させることを期待しております。
また、今後グリーン成長を図るためには、水素・蓄電池・CCS・CCUS等の開発、そして安価な水素とその安定的な供給体制が必要だと考えております。しかし、民間投資だけではこれらの開発を行うのは困難であり、是非とも政府主導の下、官民一体となり、国家プロジェクトとしてグリーンイノベーションの実用化を図っていただきたい。迅速かつ効果的な施策に強く期待をしております。
また、中小企業は、イノベーションを図るには経営者の強い意思、リテラシーを高めないとこういったイノベーションは起きてこないと考えておりますので、色々な制度設計や、経営者の使命感を高めていく取組の推進、インセンティブを持たせることなどお願いしたい。
また、ファイナンスについては、中小企業にとって、気候関連財務情報を詳細に開示することは現段階ではハードルが高いと感じている。気候関連のリスクと機会が企業に及ぼす影響を評価することは、経営の透明性を高め、中小企業にとっても有意義。そのため、TCFDの考え方に基づくレジリエントな企業の戦略の策定が進むよう、バリューチェーン全体を見据えた中小企業版のガイドラインの策定等を通じて、中小企業が容易にTCFDに参画できるような仕組みづくりをお願いしたいと考えております。
以上でございます。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
では次、中環審側にまいりまして下田委員、お願いいたします。
〇下田委員
大阪大学の下田です。
まず、2050年にカーボンニュートラルを宣言されたということにつきましては、野心的な目標を掲げて国際的な潮流に乗ったという点で高く評価したいと思います。ただ、この目標は実現に非常に大きな困難があるということも認識しなければいけません。現在、このムードを良い方向に維持していくということが大事だと思っておりまして、国が脱炭素化に大きく舵を切ったということが国民全体に浸透するような施策を、一部でも具体的に早く展開していただきたいというふうに思っております。こう申しますのは、民生部門ではもちろん時間をかけてイノベーションを生み出すことも大事なのですけれども、建物の寿命の長さということを考えますと、2050年に存在する建物の半分以上が建っているという状況にございますので、現時点で利用可能な脱炭素化を加速するような製品、今日のお話でいわゆるトランジションのところを最大限に普及するような施策を今すぐ始めていただきたいというふうに考えております。
それから資料4の49から50ページのところに、日本企業は気候変動の課題を技術的な機会として成長するポテンシャルが高いということがございまして、家電とか自家用自動車といったような一般消費財を扱う業種がポテンシャルの大きなセクターの一つだというふうに示されております。これらの業種は、家電の高効率化とか自動車の大気汚染対策で既に環境と経済の好循環を実証して、世界のマーケットをリードしてきたという実績がございます。これらの分野を更に成長させていくためには、本日説明いただいたような企業に対する金融だけではなくて、消費者のこれらの製品に対する需要をいかに高めていくかということが重要な課題だと思っております。家計というのは、企業とは異なってコスト分析だけでは動かない主体でございまして、脱炭素社会というのは快適で健康でまた魅力的な暮らしをもたらすということを、日本の英知を結集してデザインしていくということも重要だというふうに考えております。こういうテーマを是非この会議のどこかで取り上げていただければと思っております。
以上です。ありがとうございました。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
この後なのですけれども、本日、産構審側の伊藤委員が御欠席と、私、山地が進行役を務めているということで、後は中環審側の委員が続きますけれども、五十音の逆順で御発言いただきたいと思います。
まず、小西委員お願いいたします。
〇小西委員
よろしくお願いいたします。小西雅子です。
私も皆さんと同じく、菅首相の2050ゼロ宣言は非常に御英断だったと思っております。まさに脱炭素は成長戦略ということで、資料にもありましたように、国連の事務総長をはじめ本当に多くの国からも歓迎されています。ということで、これが本気度を一番問われるのが来年に向けてのNDC、パリ協定への国別削減目標の再提出ということになりますが、どれだけきちっと2050ゼロを可能にするNDCを出せるかどうかというところに、また一番の国際社会の目が注がれていると思います。
その中で、今回参考資料2を出させていただいているので、それを御覧いただければと思うのですが、私たちWWFは、2050年に自然エネルギーで100%というエネルギーシナリオを、2011年から過去3回出させていただいております。今回は特に2030年に焦点を絞って発表させていただきました。まだ先週11日に発表したばかりなのですが、そこから御紹介させていただければと思います。
まず、最もCO2排出量の多い石炭火力なのですが、これは2030年までにゼロにすることが可能であることが分かりました。それの穴埋めとしては、ダイナミックシミュレーションを行ったのですが、それぞれ10電力地域にあります既設のガス火力の稼働率、現状35~50%ぐらいですので、その稼働率を60~70%に上げることで賄えることが分かりました。すなわち、火力発電を新設する必要もないということになります。先ほどから山口委員もJCLPの三宅委員もおっしゃっているのですが、再生可能エネルギーは全国にいろいろ配分するのですけれども、大体電力に対する比率で47.7%が既存の電力システムのインフラ内で可能であることが分かりました。これはアメダスの842地点にあります標準気象データを用いて1時間ごとに太陽光と風力のダイナミックシミュレーションの発電量を行った結果ですので、机上の研究ではありますが、現状の地域間連系線などのインフラ内で可能だということが示されています。
あと、省エネルギーですが、大体2015年比で21.5%可能と分かりまして、政府見通しの大体2倍可能ということが分かっております。このエネミックスを実現することによって、エネルギー起源のCO2の排出量は2013年比で49%、温室効果ガスでは45%削減可能であることが示されました。実は2050年にゼロにしようと思うと、2018年の排出量からリニアに真っ直ぐ線を下ろしていきますと、2030年には45%ぐらいの削減が必要となります。ですので、もしこの45%よりも低い目標だと、いずれ2030年以降により多く削減しないと2050年のゼロは達成できないということになります。ですので、この45%、これはパリ協定のNDCとして、国際社会からもこういった計算は非常によく理解されているので注目を浴びているところですが、それが可能になるようなエネミックスのあり方というものが今回非常に議論になってくるところかなと思います。
事務局に1つ質問したいことは、こうしたエネルギー基本計画のエネルギーミックスというのが温室効果ガスの削減目標、温暖化対策というものに一番直結するものですので、どういうふうに今後連動していかれるかということを是非お聞きしたいと思います。ありがとうございました。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
次ですけど、五十音順ということで中環審側の大塚委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
応答がないようですから、時間の都合もありますので、江守委員のほうに御発言をいただきたいと思います。江守委員、お願いします。
〇江守委員
ありがとうございます。僕からは、前回もちょっと申し上げたのですけれども、市民議会(Citizens’ assembly)ということをもう一回申し上げたいと思います。これは、国際的な動向ということで先ほど御紹介がありませんでしたけれども、非常に注目すべきだと思っていることです。例えばイギリスの議会主催であるとか、フランスでは政府の主催で、無作為抽出された市民100人とか200人の規模で市民が専門家の情報提供を受けて熟議を行う、意見を形成して政策にインプットするということが国政レベルで行われています。他にも、様々自治体レベルでも行われています。これを、実は僕も参加している研究グループで、札幌市で今試行的に実施をしています。是非この知見を役立てていただいて、日本でもこれを広げていきたいなというふうに思っています。
日本でも国政のレベルで気候・エネルギーの問題に関して国民的な議論というのは、一つには2012年の民主党政権のときにかなり本格的に行われたのと、それ以前にも2009年の麻生政権である程度の国民的議論というのは行われていますので、今回、現政権が脱炭素に非常に本気になったということで、現政権下でできないはずはない、むしろ非常にやるべきだというふうに思っておりますので、今回はちょっと強気でそのように主張させていただきたいと思います。是非皆さん御検討いただきたいと思います。
それから、2つ目の資料のファイナンスについては余り詳しくないのですけれども、「トランジション」という言葉がかなり緩い語感で使われているのが少し気になりました。トランジションと言ったときに、まだCO2を出すものをつくってもいいですよねという、そういう感じの説明に聞こえたのですけれども、むしろトランジションというのは、いずれCO2を出すものをつくれなくなるというのが来るということを念頭に置いて、逆算して軟着陸させるという問題なのだろうと思うのです。例えばハイブリッドカーは、あと10年後にも売っていてもいいと思いますけれども、20年後に売っていていいかは非常に怪しいですので、そのときになったら、エンジンの部品を造っている中小企業というのは何か違うビジネスをしていなくちゃいけないので、本当にそういうふうになれるか。どうやったらきちんとそういうふうにまさに移行ができるのか、ビジネスの変革ができるのか。そこにファイナンスが支援をするということではないかなというふうに理解をいたしました。「トランジション」という言葉は、そういったちょっとシビアなニュアンスを持った言葉ではないかと思いますので、是非そういう認識が共有できたらなというふうに思います。
以上です。ありがとうございました。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
大塚委員長、参加できますでしょうか。御反応がないようですね。
それでは、石井委員お願いいたします。
〇石井委員
石井でございます。仕事柄、国際的な議論、動向をフォローする機会が多くありまして、その観点から何点か申し上げたいというふうに思います。
まず、時代認識なのですけれども、非常に最近強く言われているのは、あと10年しかないということでありまして、多くの国が2050年を目標として、GHGのカバーが61%まで来たわけですけれども、2050が非常に大きな目標であるからこそ、実は向こうの10年、2030年までが大事であると。2030年までにきちんとしたことをやっておかないと2050年は絵に描いた餅に終わる、あるいは我々はプロセスへのコントロールを失ってしまうというメッセージを最近非常に多く聞きます。そういう意味で2030年に我々がどこに到達していたいかということを議論することは、2050年の目標を確かなものにする上で極めて重要だというふうに思います。
2点目ですけれども、その観点で重要なのはシナリオ分析だというふうに思っております。どうも最近の議論ですと、電源構成の話と技術革新の話が多くなってきているのですけれども、それはもちろん重要なのですが、それでは2050年にあるべき姿に行くのに我々はどのような道筋を通っていくのだろうかと。気候変動問題というのは、基本的には我々の経済システムと地球システムが衝突するところから起こっているわけですから、そうしますと、我々の経済システムをどういうふうに変えていくと大きな衝突というものが避けられるかということへの答えがきちんと出てこないのだろうというふうに思います。
そういう意味では、既に何人かの先生が御発言されましたけれども、エネルギーのトランジションが重要なのは言うまでもないのですけれども、より幅広い社会システムの転換という点で、例えば都市のあり方はもちろんですが、サーキュラーエコノミーを推進することによって45%ぐらいの必要なGHGが削減されるという計算もありますし、最近ですと自然資本を多く使う特に農業、食のシステム等々、こういうものから3分の1ぐらいのGHGが削減されるという話もあります。そうしますと、エネルギーのトランジションだけではなくて経済システムをどういうふうにサーキュラーにするか。そして、実は非常に大きなGHGの排出源になっております食のシステムをどう考えるか。そして都市や人の動き方をどう考えるか、こういう少し広い社会経済システムの転換のシナリオを書いていくということが大事だと思います。
その中で最近非常に注目されているのが、この5~10年間に起こった実装の話でありまして、かつては全くローカーボンソリューションができないと思っていたセクターですら、最近萌芽が見え始めていると。先週出たあるシンクタンクの分析によりますと、2015年時代にはローカーボンの見通しがほとんど立たなかったセクターですらそういうものが出てきていて、これが2020年の今では、25%の産業においてローカーボンソリューションが見えていると、これが2030年には75%まで行くであろうという話があります。そうすると、どこのマーケット、どこの国が勝つかということになると、それは政策がしっかりしていて、ビジョンがしっかりしていて、企業あるいは消費者、投資家がそれに合わせる行動がとれるということが大事になってきます。世界的な競争がマーケットのティッピングポイントを推し進めるという方向で動いていますので、日本としても国が、企業、都市、市民、消費者、投資家と一緒になってこのビジョンをつくる、そしてそれを揺るがないで進めていくということが重要であると思います。ありがとうございました。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
大塚委員長、お願いいたします。
〇大塚委員長
どうもすみませんでした。3つほど大きく申し上げさせていただきたいと思いますけれども、まず第一に、科学的な対策の必要、目標の設定とその手法について申します。今、世界の気候変動の対策の中心にあるのは、科学に基づいて気候変動対策を行っていくということになっていると思われます。従来、気候変動枠組条約ができた頃は、温暖化の問題というのは科学的不確実性が残されており、予防原則の問題と言われていたのですけれども、今やIPCC第5次報告書で、人為起源の温室効果ガスの排出が、20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的原因であった可能性は95%とされ、温室効果ガスの人為的な排出によって温暖化現象が起きているということに関しては科学的に明確になってきていますので、未然防止原則の段階に移ってきたということでございます。2℃目標やさらに1.5℃目標との関係で未然防止原則を実践していくべきだということが、IPCCの第5次の報告書においても出てきておりますので、それを前提にして考えていくと、今まで以上に対策を厳しくしていく必要があるということになってきていると思います。
さらに大事なのは、累積排出量が問題ですので、2050年にゼロにするといっても、そこまでは待っていていいということではないということがございますし、いろいろ御意見ございましたけれども、我が国は世界での排出割合3%なりに累積排出量をパリ協定に沿った形で下げていくということが極めて重要になっているということだと思います。したがって、地球温暖化対策計画との関係では、最初に両副大臣がおっしゃってくださったように、2050年ゼロを目指して、2030年についても野心的な目標を立てていくということが重要であると考えられます。
このような目標を達成するためには、いろいろ御議論ございましたように革新的なイノベーションが重要になってくるわけでございますけれども、累積排出量が重要だということからすると、革新的イノベーションを待っていればいいということにはなりませんので、先ほど来御議論があるように、トランジションの技術も重要になってまいります。そして、革新的イノベーションを含めトランジションの技術についても、市場においては、その導入が経済的利益にもなることが導入の推進にとって必須になってまいりますので、イノベーションに関するインセンティブが必要ということでございまして、環境省においてもカーボンプライシングの検討が再開されますけれども、そのような方向での検討が非常に重要になってきていると考えられます。
2つ目でございますけれども、先ほど三宅委員とか髙村委員とかが言われたことと関係しますけれども、この計画を考えていく上では、エネルギー基本計画との関係が非常に重要になってきますので、私からもエネルギー基本計画の見直しに関する審議の状況のインプットを、是非この計画の審議に関しても行っていただきたいと思われます。
第3に、ファイナンスとの関係の問題でございます。トランジションに関する環境省、経済産業省、金融庁のお取組はすばらしいと思いますけれども、EUのタクソノミーとか中国のターミノロジーとか、また日本は別に何か考えていくということになりますと、トランジションに関してもグリーンに関しても世界との共通のルールというのは必ずしもすぐにはできないという状況かもしれませんけれども、世界的に共通のルールを目指すことが投資の促進にもつながるのではないかということを申し上げておきたいと思います。
それからTCFDの情報開示に関しての問題ですけれども、義務化をすることを目指す必要はあると思いますけれども、その前に基準だとか項目の検討、さらに国際的なルールづくりについても目指していくことが必要だと思いますので、是非そのような検討を進めていただければと思います。
以上でございます。早口ですみません。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
以上、御出席の委員から一通り御発言いただきました。
時間も限られていますので、最後に私からも少し、委員としてというか一部進行役として申し上げさせていただくと、本日は、2050年カーボンニュートラルとか、あるいは気候変動対策におけるファイナンスとかについて、現状確認をした状態と考えています。どなたかもおっしゃいましたけど、エネルギー基本計画は改定に向けて今作業中ですし、グリーンイノベーション戦略とか成長戦略も実行計画をつくるということで、現在、準備中という段階です。そういう意味では、今ここで何か決めるという段階でないことは、皆さんも御承知いただけるのではないかと思います。そういう意味で事実確認としては、さっき杉山さんがおっしゃいましたけど、私も共感するところはあります。つまり、誰が何を言ったかとか、何をしたいと思っているかということだけではなくて、それも事実なのですけどね、誰が何を言ったということは。それよりも、現在何が起こっているのか、事実として何が発生しているのか、そういう事実を押さえていくということが非常に重要だと思うので、これは私からも事務局のほうにお願いしたいと思います。
ということで、もうあまり時間がないので第2ラウンド、余裕があれば1人当たり1~2分ぐらいで発言していただいてもと思ったのですけど、ちょっと難しそうなので、更に御意見がある場合には、後日事務局に意見を御提出ということで御対応いただきたいと思います。
事務局には、幾つか御注文のような形の質問もありましたので、ここで対応できることがあればお願いいたします。
〇梶川室長
ありがとうございます。幾つか委員の皆様から御質問と御要望ということで承ったと思っています。御発言いただいた順番に少し整理をしますと、まず吉高委員から、2050年カーボンニュートラル含めて様々な議論がある中で、政府全体の司令塔というか、そこはどういうことになっているのだという御指摘があったかと思います。資料でいきますと、最初に資料3というものを御説明した中で4ページ目です。これが政府部内で全体どういう形で議論しているかということでして、成長戦略という文脈に関しましては、まさに経済産業省と環境省分野以外も、農林水産省であるとか国土交通省とか様々な分野をまとめて実行計画をつくっていくということになっていまして、グリーンイノベーション戦略推進会議で具体的な議論をした上で御報告していくという流れになっています。成長戦略の議論以外も含めて政府全体でどういう議論をしていくのかというのは、最後、地球温暖化対策計画は各省に様々な施策を具体的に議論していただいた上でまとめるということで、地球温暖化対策推進本部というところで閣議決定していますので、ここが連携しながらやっていくという御理解をいただければと思います。
次に、杉山委員の御指摘と、今、山地座長からありましたけれども、ファクトの部分につきましては少し足りない部分もあるかと思いますので、環境省側とも調整しながら、頂いた資料も踏まえてしっかりと整備していくということが必要かと思っています。
あとは、幾つかエネルギー基本計画との連動についての御指摘をいただいていると思います、髙村委員、小西委員、また、最後大塚委員。9月1日の第1回のときも、エネルギー関係については資源エネルギー庁から進め方も含めた御説明をさせていただきましたけれども、本合同会合は資源エネルギー庁の人間も入っていますし、また資源エネルギー庁で議論しているものをしっかりと御報告しながら対になってやっていくという理解をしていますので、どのタイミングでというのは、また今後、適切なところで判断していきますけれども、うまく連動しながら、最後、地球温暖化対策計画にしっかりしたものを載せるべきという理解をしています。なので、御指摘いただいたところは、また持ち帰って具体的なタイミングも含めて相談させていただきたいと思います。
以上かと思います。
〇山地座長
どうもありがとうございました。
議題の中には(3)「その他」もありますけど、何かございますか。
〇梶川室長
大丈夫です。
〇山地座長
特にないということですね。
それでは、以上で私の進行役としての役回りは終わりですので、事務局から連絡事項をお願いいたします。
〇梶川室長
本日は、活発な議論ありがとうございました。
本日の議事録につきましては、事務局で作成の上、委員の皆様に御確認いただいた上でホームページに掲載をさせていただきたいと思います。
また、次回日程につきましては未定でございますが、また御調整させていただければと思います。
事務局からは以上です。
〇山地座長
それでは、以上で閉会とさせていただきます。本日は大変ありがとうございました。
午前12時00分 閉会