中長期の気候変動対策検討小委員会(産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討WG合同会合)(第10回) 議事録

日時

令和3年8月18日(水)13:00~15:00

場所

WEBによる開催

議題

1.パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(案)

配付資料

議事次第

資料1:中央環境審議会地球環境部会中長期の気候変動対策検討小委員会委員名簿

資料2:産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討WG委員名簿

資料3:パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(案)

資料4:「長期戦略」における図表や写真の活用

参考資料1:杉山委員提出資料

議事録

午後13時00分 開会

○梶川室長 

 こんにちは。それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第10回中央環境審議会地球環境部会中長期の気候変動対策検討小委員会及び産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討ワーキンググループ合同会合を開催いたします。

 本会合は環境省、経済産業省両省が共同で事務局を務めております。私、経済産業省の環境経済室の梶川と申します。よろしくお願いいたします。今回の事務局でございます。

 本日は中環審、産構審、それぞれの過半数の委員に御出席をいただいておりまして、定足数を満たすということで、合同会合が成立していることをまず御報告いたします。

 次に、ウェブ開催に当たっての御案内ということで、本日の合同会合ですけれども、コロナウイルス感染症対策のため、ウェブにより開催させていただいております。開催の状況はインターネットで同時配信し、動画は会議後、議事録公開までの間、ウェブ上で公開予定でございます。

 ウェブ会議の開催に当たりまして、何点か御協力をお願いいたします。通信環境の負荷低減のため、御発言の際を除いてカメラの映像はオフにしていただき、御発言の際のみオンにしていただきますようお願いいたします。事務局側も発言する場合を除きオフにさせていただきます。

 本日の会合ですけれども、産構審側は杉山委員が御欠席、また伊藤委員が会議途中からの御参加とお伺いしております。

 それでは、以降の議事進行を産構審の山地座長にお願いしたいと思います。山地座長、よろしくお願いいたします。

○山地座長  

 本日の進行役を務めます山地です。聞こえておりますか、事務局。

○梶川室長

 はい、大丈夫でございます。よろしくお願いいたします。映像も見えています。

○山地座長  

 本日、議事次第にありますとおり、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の案を審議するということになっております。

 本合同会合の1回目のときの説明にもありましたように、本合同会合は、長期ビジョンを踏まえつつ、地球温暖化対策計画の見直しを含めた我が国の気候変動対策について議論するものとして設置されたものです。

 本年6月、イギリスで開催されましたG7サミットにおいて、我が国は2050年までのカーボンニュートラルを目指すこと、またこの目標に整合したNDCと長期戦略を本年11月のCOP26までに提出することに同意しております。

 このような状況下におきまして、前回まで議論してきました地球温暖化対策計画と共に、長期戦略につきましても、政府として近々案をまとめるという話でございます。合同会合としても長期戦略に関して、皆さんの御意見を期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議題につきまして、資料3と資料4に基づいて事務局から説明していただき、その後、議論という形にしたいと思います。

 では、事務局から説明をお願いいたします。

○坂口室長  

 それでは、資料3と4につきましては環境省から、環境省脱炭素室長の坂口と申しますけれども、御説明をさせていただければと思います。

 前回、第9回の合同会合におきまして、この長期戦略につきましては、その主な骨格と粗々の方針についてお示しいたしまして、いろいろ御意見もいただいたところでございます。それを踏まえまして、本日はこの長期戦略の本文という形で資料をお示ししているものでございます。

 それでは、中身の御説明に入ろうと思いますけれども、まず最初は目次がついておりますけれども、その後の1ページ、「はじめに」のところを御覧いただければと思います。

 まずこの2行目のところから、「この『パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略』(以下『本戦略』という。)は、我が国政府が、パリ協定の規定に基づく長期低排出発展戦略として策定するものである。」という位置づけを最初に示しております。

 例えば、以下幾つか記載しておりますけれども、20行目です。「今を生きる我々が環境問題の解決を図りながら傷ついた経済を立て直し、将来の世代が豊かに生きていける社会を実現するために、イノベーションによるグリーン成長を加速させる」という記載をしております。また、続きまして、「『脱炭素社会への移行』・『循環経済への移行』・『分散型社会への移行』という3つの移行を加速させることにより、持続可能で強靱な経済社会へのリデザイン(再設計)を強力に進めていく。」と記載しております。さらに続いて、「地方においては、地域循環共生圏の考え方に基づいた新たな地域づくりで3つの移行を具現化し、私たち一人一人のライフスタイルを快適で利便性が高く、かつ、持続可能なライフスタイルに変革していく。」こういった記載を最初にさせていただいております。これが「はじめに」のところでございます。

 以降、中身に入ってまいりますけれども、ここからの御説明は基本的に現行の長期戦略から特に充実したところ、変化したところを中心に、かいつまんで御説明させていただければと思います。

 次に、3ページ、第1章を御覧いただければと思います。この冒頭の部分です。本戦略の策定の趣旨・目的といたしまして、ここに、つい先日発表されましたIPCC第6次評価報告書第1作業部会の報告書も引用しながら、24行目以降でございますけれども、国際社会の一員として、パリ協定に掲げられた1.5度目標の実現に貢献するため、長期戦略を策定し、その実現を通じて得た成果を共有していくといった旨を記載させていただいております。

 それから、同じく3ページの27行目以降でございますが、我が国の長期的ビジョンとしてということで、ここが今回の長期戦略を改定することになった最も肝の部分でございますけれども、昨年10月に総理が発言したとおり、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すということ。また、この2050年カーボンニュートラル目標は、第204回国会で地球温暖化対策の推進に関する法律の改正法案が成立した結果、2050年カーボンニュートラルについて、基本理念として法定化しておりますので、そのことについても記載しております。

 続きまして、4ページの7行目以降でございますけれども、この戦略では、2050年カーボンニュートラル実現に向けたあるべき姿としての長期的なビジョンを分野別に示し、全てのステークホルダーがその実現に向けた可能性を追求するための方向性を共有するとともに、政策の方向性も併せて示すことにより、投資の予見性を高め、我が国における投資を拡大していく大きな基盤とすること等について記載しております。

 また、15行目以降は2050年カーボンニュートラルに向けた6つの視点ということで、まず最初、(1)利用可能な最良の科学に基づく政策運営、同ページ一番下、(2)経済と環境の好循環の実現、次のページの下のほうになりますが、(3)労働力の公正な移行、次のページになりますが、(4)需要サイドの変革、その次のページ、(5)迅速な取組(インフラ分野における取組の強化等)と記載しております。またその次のページですが、(6)世界への貢献といったことを記載しております。前回の合同会合におきまして、この部分については幾つか御意見をいただきましたので、それに応じて少し記述を変えたり充実したりしております。その次に続いて、同じく8ページ目の18行目からでございます。「4.将来に希望の持てる明るい社会に向けて」ということを記載しております。これは現行戦略にもある記載でございまして、これは重要なコンセプトでありますので、引き続き維持させていただきたいと思っております。現行戦略から将来世代にわたる影響が非常に強く懸念されているということ、それから持続可能で強靱な経済社会へのリデザイン、こういったことについて加筆させていただいております。

 それでは、続きまして第2章にまいりたいと思います。11ページを御覧いただければと思います。第2章は、各部門の長期的なビジョンとそれに向けた対策・施策の方向性ということで、各分野ごとの現状認識と目指すべきビジョン、それからビジョンに向けた対策・施策の方向性といったことを記載させていただいております。

 ごくごく簡単に各分野について少し触れますけれども、まず、今出ております1.のエネルギーについてでございます。こちらについては、今並行して改定作業が進んでおりますエネルギー基本計画の案の2050年に向けた部分を包含する形となっておりまして、引き続き、これは最終的な決定までまだ少し、今後パブリックコメント等々あって、記載の変わり得る部分だと思っておりますけれども、基本的にはこの長期戦略において、このエネルギー基本計画の該当部分と連動した形での記載としたいと思っております。

 次ですけれども、19ページから産業について記載しております。産業部門に関しましても、現行の長期戦略から構造自体は大きく変えていないわけですけれども、例えば20ページ、産業界における自主的取組といったところにおいて、経団連で策定されました昨年6月の脱炭素社会の実現に向けたチャレンジ・ゼロですとか、現行戦略が策定されて以降、この2年間の動きを加筆する形としております。

 それから、26ページ、運輸部門でございます。こちらにつきましては、例えば新しい要素としましては、29ページ、目指すべきビジョンの冒頭のところに「2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう、包括的な措置を講じる。」ですとか、その少し後ろに、いわゆる単体対策のみならず、電動化に対応したモビリティー社会の変革を見据えた対応。こういった、先ほどの産業部門もそうなのですけれども、昨年の12月及び今年の6月に策定されましたグリーン成長戦略における記載を生かした形とさせていただいております。

 続きまして、34ページを御覧いただきますと、こちらからが地域・くらしのパートでございます。地域・くらしにつきましては、今年、公表されました地域脱炭素ロードマップ、それから農村地域等々におきましては、みどりの食料システム戦略等の該当する部分を包含する形としております。

 また、39ページなどに住宅・建築物に関する記述もございます。これはつい最近検討会で一定の方向性が見えました住宅・建築物の2050年に向けた在り方検討会の結論等々も踏まえた形で記載を充実させております。特に言葉の定義など、かなり詳細な記載をしているところでございます。

 先ほど御紹介し忘れましたけれども、運輸部門につきましては、運輸部門だけではないですが、国土交通省さんの国土交通グリーンチャレンジの中身もしっかりと反映させていただいております。

 そして、49ページを御覧いただきますと、こちらからが吸収源対策というところでございます。こちらもみどりの食料システム戦略、それから50ページに記載があります森林・林業基本計画、こういったものに基づきまして、記載の充実をさせていただいております。特に森林対策等々。

 それから、この部分には、技術開発の一環ではありますが、51ページに大気中からの二酸化炭素直接回収、いわゆるDirect Air Capture、DACについても紹介させていただいているところでございます。

 続きまして、53ページからが第3章ということで、重点的に取り組む横断的施策というところでございます。こちらは項目、11ございますけれども、この2年間、進展、具体的な進歩が見えたところについて特に記載しております。

 1.のイノベーションの推進に関しましては大幅に記載を改定しておりますけれども、これは53ページの下のほうに技術イノベーションという項に書かれています、昨年1月の革新的環境イノベーション戦略に基づく39テーマといったことも含めて、それからグリーン成長戦略などとも合わせた記載としております。これについては、各分野、具体的な分野についての記載を充実させていただいております。

 それから、少し飛びますけれども、4.の予算のところでございます。77ページについては、グリーンイノベーション基金のことを記載しております。昨年の冬頃から話題になりました、NEDOに設けることになりました2兆円のグリーンイノベーション基金でしっかりと継続的に支援するといったことがありますので、これについての記載をしてございます。

 さらに、少しまた飛びますけれども、83ページから10.ということで、成長に資するカーボンプライシングについて記載しております。これは総理からの指示もありまして、環境、経産両省それぞれで成長に資するカーボンプライシングはどんなことができるかといった検討がなされてきておりまして、これまでの最新の情報に基づく記載としております。といったことで、第3章についてはこの2年間の進歩について記載させていただきました。

 そして、最後に85ページ、長期戦略のレビューと実践というところでございます。これについても、前回明示的にこの文章をお見せしたわけではありませんけれども、幾つか委員からも御指摘をいただいたことも踏まえまして、記載を少し変えておりますが、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、利用可能な最良の科学上の知識に基づき、国土・気候・資源・社会システム等の制約や脱炭素に向けた需要側の変革、気候変動がもたらす成長の機会、コストを含む経済への影響等について、将来の情勢変化に応じて分析を行うこととしております。また、得られた情報を広く提供するとともに、長期的に社会を担う中心となる若者世代を含めたステークホルダーとの連携や対話を通じた参加を進めることにより、2050年カーボンニュートラル実現に向けたさらなる取組を促していく。また、地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画等を踏まえ、本戦略の対策・施策等について、6年程度を目安としつつ情勢を踏まえて柔軟に検討を加えるとともに、必要に応じて本戦略の見直しを行っていくとしております。

 資料3、長期戦略の本体につきましては、ちょっと駆け足で恐縮でしたけれども、以上でございます。

 続きまして、資料4、一枚物でございますが、これについての御説明をいたしたいと思います。こちらは長期戦略の編集方針といいますか、見た目の話にちょっとなってきますけれども、補足として御説明するものであります。この資料にありますとおり、先進各国の長期戦略におきましては、図表や写真が数多く活用されております。この資料にお示ししたフランス、アメリカ、ドイツ、イギリス。大体各ページこんな調子でございまして、やはり見やすさとイメージという点において、こういった方針はありかなと思っております。この2ポツにありますけれども、我が国の長期戦略におきましても、国内外への発信の観点から、図表や写真を活用して視覚的に分かりやすいものにできないかということで、そうしていきたいと思っております。例えば、温室効果ガス排出量の各部門の推移とか、ガス別の排出量の内訳とか、そういった今あるデータをきれいにお示しするということ。さらに、各省の具体的な対策・施策の写真ですとか、イラストイメージですとか、そういったものをちりばめていくということをやっていきたいと思っております。今後行うパブリックコメントにおきましては、この図表とか写真を入れた形で国民から広く意見を募集して、これを経て、COP26までに国連気候変動枠組条約事務局に提出することを目指していきたいと思っております。

 事務局から資料説明は以上でございます。

○山地座長  

 どうもありがとうございました。それでは、今の事務局からの説明につきまして、各委員から御質問も含めて御意見をいただければと思います。

 本合同会合、毎回やっておりますけれども、中環審、産構審の委員が交互に、それぞれ五十音順で御発言していただくということになっております。前回、第9回のときには中環審側の委員から五十音順で頭からということでございました。今回は、したがって産構審側の委員から五十音順で後ろからということで発言をいただければと思います。多くの委員が御参加でございますので、毎回申し上げて恐縮ですけれども、御発言は3分以内厳守ということでお願いいたします。

 ということで、まず、産構審側の委員、山下委員からお願いします。

○山下委員 

 ありがとうございます。聞こえていますでしょうか。

○山地座長 

 はい、大丈夫です。お願いします。

○山下委員 

 よろしくお願いします。御説明ありがとうございました。今回の長期戦略では、第1章の基本的考え方で整理された6つの視点では、2番目の経済と環境の好循環の実現で環境対策を成長戦略に結びつける発想の転換の重要性を訴えて、ほかの視点を含めまして、温暖化対策強化への並々ならぬ決意が述べられていると思います。ただ一方で、国民のコスト負担の増大や経済、産業構造の大きな変化、国際競争や国際的なルール形成から取り残される懸念など、日常生活や経済社会活動への影響に関する危機感についての言及が少なく、理想的な世界の記述に偏っている印象も見受けられます。発想を大転換した長期戦略として前向きであることは結構なのですけれども、プラスだけでなく、経済負担などのマイナスの影響について、国民一人一人が理解をした上で、国民各層が総力を挙げて新たな社会構築を進める必要があると考えます。

 そのためには、脱炭素化に向けたコスト負担を上回るベネフィットや便益があることを政府が定量的に示し、長期的な取組へのコミットメントを示す、それが投資戦略や技術開発、産業構造やライフスタイルの変革への重要なシグナルになると考えます。その道筋は複数の可能性があることをエネルギー基本計画の定量的なシナリオ分析でも示しています。今回の長期戦略は定性的な内容がほとんどですが、今後、長期戦略をレビューする際には、エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画の進捗を活用すること、またさらなるシナリオの具体化や、コストを含めた定量化を進め、これらに基づいた議論を深めることがプロセスとして大切であり、レビューに関する工程として位置づけていただきたいと思います。

 もちろん、エネルギー基本計画の下での取組に加えて、インフラ整備やまちづくり、資源循環、フロン対策、森林を中心とした吸収源対策など、温暖化対策計画で扱う目標についても併せて、遅れている場合は何が足りないのか、どのような新技術があるのか、さらに深掘りするために何が必要なのか、毎年でも具体的な定量的な政策効果を費用と対比してチェックして、政策を見直す工程が必要だと考えます。

 次に、資料4のカラフルな写真や図表を追加する御提案ですけれども、長期戦略の中身がしっかりと書かれていれば、見栄えだけの視点から図表を挿入することで、かえって焦点がぼやけるのではないかということを心配します。国外に立派な戦略をアピールする前に、国内の国民一人一人を含む全てのステークホルダーがそれぞれの立場で戦略を実現していくことができるように、長期戦略への理解を深めることのほうが大切だと思います。

 今回はカーボンニュートラル宣言から1年以内に、2030年目標を含めてエネルギー政策及び温暖化対策をまとめ、さらに長期戦略についても取りまとめをしようとしています。関係者の皆様の多大な御努力の成果だと考えます。長期戦略について、国民の皆様の理解に基づいた行動を促すための国民とのコミュニケーションが重要であることは前回も申し上げました。今後の国民大の議論を深め、腰を据えた議論をするほうが、カラフルな写真や図表を本長期戦略に後から挿入するよりもはるかに重要だと考えます。この点は忘れてはならないと思います。

 最後に、今後のことについて2点質問したいと思います。第4章の長期戦略のレビューと実践では、現行戦略を踏襲し、地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画等を踏まえ、6年後程度を目安として情勢を踏まえて柔軟に検討を加えるとともに、必要に応じて本戦略の見直しを図っていくと書かれています。温暖化対策計画やエネルギー基本計画を参照すること、また若者世代を含めたステークホルダーとの連携や対話をすること、情勢を見つつ、本長期戦略についても柔軟に検討や見直しを行うことが明記されていることは重要です。一方で、2019年に策定された長期戦略で6年後程度と書かれた際には、NDCの2025年の再提出期限を念頭に置いていたと考えます。共通目標年次は未定ですけれども、次回は2040年目標の検討も必要になる可能性があると思います。今回の検討は2021年ですので、次回の検討は6年後の2027年なのか、当初想定していた2025年なのか、どちらと考えればよろしいでしょうか。これが最初の質問です。

 次に、今回温暖化対策計画と長期戦略は本合同会議で検討しましたが、今後はどの会議体で長期戦略の議論をするのでしょうか。今後の見通しがありましたら、御教示いただければと思います。

 以上になります。ありがとうございました。

○山地座長 

 どうもありがとうございました。では、中環審側に移りまして、吉高委員、お願いいたします。

○吉高委員 

 御説明ありがとうございました。基本的な考え方について異存はございません。ビジョンですので、重要なのは今後、設定された課題と進捗のギャップのモニタリングであり、そのギャップをどのように埋めていくかということだと思います。その点では、まず今、山下委員が質問されたことに関連しますけれども、最終ページにございます長期戦略のレビューに関しまして、6年程度で情勢を踏まえて柔軟に検討を加えると書かれておりますが、IPCCの第6次報告書で気温上昇の速度が上がっていることが言われており、6年では不十分ではないかと思っております。2040年までの18年間というIPCCの気温上昇速度を考えると、もう少し短くすることを御検討いただけないのかと思いました。グリーンファイナンスの世界も刻々と情勢が変わっておりますし、エネルギー情勢も同様です。この見直しの頻度、柔軟性についてもう少し検討していただければと思った次第でございます。

 それから、第3章の横断的な政策ですが、2でグリーンファイナンス、4で予算、5で税制、10でカーボンプライシングという順番になっております。これらは広い意味で全てファイナンスに関わるところだと思います。2では主に民間金融機関に対する施策などが含まれております。ただ一方で、事業会社に対しても政策が入っています。また、それらの施策について4、5、10も全て関連してくる施策だと思います。2のグリーンファイナンスの冒頭に、「50年のカーボンニュートラルに向けて、政府資金を呼び水として民間投資を呼び込む」とありますので、官民連携での長期戦略であるとするならば、呼び水となる施策と民間投資の関連の整理が必要かと思います。特に民間金融機関にとってのインセンティブが、資本市場へのシグナルになるわけなのです。そうしますと、まず、国のインセンティブの施策があって、2のグリーンファイナンスの発展が投資を呼び込むという、その戦略を示すのが重要かと思っております。

 例えば2のグリーンファイナンスの内容を見ますと、1のイノベーションの推進のための資金として、10年以上の長期的計画の認定を受けた事業者に対しての長期資金の供給とあります。この10年単位となりますと、予算措置、カーボンプライシングなどと関係してくると思います。また、迅速な取組の項目に、インフラ分野と明記していただいており、大変わかりやすくなったと思っております。これに関連したファイナンスも重要となります。施策の意図の理解のため、記載の順番も重要だと思います。ファイナンスは脱炭素成長に重要な柱だと思います。ついては、国内外の民間金融機関に、将来的に期待が湧くような、戦略として見えるような流れにしていただければと思いました。

 最後に、国際協力の部分です。ビジネス主導という国際協力、つまり公的資金だけでは支援が難しいため、民間資金の活用が重要であるという記載だと思います。ビジネスにとっては国際協力であってもインセンティブが必要です。市場づくりについてはいろいろと言及されていますが、ファイナンス支援と密接に関わると思います。ビジネスへのインセンティブになるようなファイナンスの支援についての記載はどこになるのでしょうか。そして、このような国際協力のファイナンスを進めるのに重要なのは、途上国各国のデータ整備だと思います。各国のデータ整備についてはいかがでしょうか。

資料4については、日本の発信はなかなかうまくできていないと思っておりますので、内容をうまく伝えるために分かりやすい絵図を入れるということですが、ぜひ効果的に入れていただければと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

○山地座長 

 どうもありがとうございました。では、産構審側に戻りまして、長谷川委員、お願いいたします。

○長谷川委員 

 長谷川でございます。聞こえておりますでしょうか。

○山地座長 

 はい、大丈夫です。お願いします。

○長谷川委員 

 全体として、これまでの議論や、エネルギー基本計画等も含む政府内の議論をうまく取りまとめていただいていると思います。基本的な考え方についても、非連続なイノベーションを通じて2050年カーボンニュートラルを実現するという内容で、特にイノベーションは、これまでの検討も踏まえ、より具体的に書かれておりますので、大きな異論はございません。その上で、細かな点も含めて何点か申し上げたいと思います。

 1つは、5ページの「経済と環境の好循環」ということが書かれている部分の一番上の箇所です。何となく、温暖化対策に取り組みさえすれば成長につながるといった書きぶりになっている印象があります。むしろ、能動的にしっかり成長につなげていくのだという意気込みのような表現がないと、成長にはつながらないと思っております。そこで、例えば、ここの書きぶりについては、「積極的な温暖化対策への取組を、産業構造や経済社会の変革を通じた、大きな成長につなげていく。そういった発想の転換が必要」といった表現にしていただければと思います。

 また、15ページの原子力についての記述です。これはエネルギー基本計画に連動した記載であると理解しておりますが、長期戦略はあくまで「ビジョン」という位置づけですので、原発のリプレース・新増設といった選択肢についても記載いただければと思います。

 続いて、77ページでは予算(グリーンイノベーション基金)について書かれています。予算の内容として、10年間で2兆円の規模の基金の創設は非常に高く評価されるべきものだと受け止めておりますが、予算に関する記述がこれだけというのは、欧米が桁違いの取組を行っていることを踏まえると、少し寂しいので、もう少し踏み込んだ記述が必要ではないかと考えております。

 これに関連して、5ページの9行目に、「あらゆる政策を総動員する」と書かれていますが、その後の「特に」という箇所でも、予算の話が抜けております。また、7ページの一番下、活用可能な脱炭素技術は既に存在するという記述ですが、そういった技術が使われていない背景には、経済的理由も大きいのではないかと推測します。これを実装していくためにも、何らかの支援が必要ではないかと思われるところ、財政支援の重要性について、もう少し記述していただければと考えております。

 細かいところですが、34ページに財務省の貿易統計の数字として、2020年の1年間の輸入金額が約11兆円であるという記述は若干唐突であり、意味合いもよく分からないため、再考していただければと思います。

 また、前回の温対計画の審議でも申し上げましたが、途上国あるいは新興国をはじめとするほかの国の野心の向上に、先進国と協調して取り組むべきという記述もどこかに入れていただければと思います。

 山下委員がおっしゃられた国民負担の説明や、レビューの重要性について、私も賛成いたします。

 資料4について、発信力の強化は非常に重要なので、こういったビジュアルな要素を入れていただくことは非常にいいのではないかと思います。

 最後に、17ページにおいて、産業界の自主的な取組について、チャレンジ・ゼロも含めて記載いただきまして、感謝申し上げます。ここについては数字のアップデートがございますので、後ほど事務的に御連絡させていただければと思います。

 また、「低炭素社会実行計画」は「カーボンニュートラル行動計画」に改める予定ですので、これも温対計画同様、脚注でも結構ですので、記載いただければ非常にありがたいと考えております。

 私からは以上です。ありがとうございます。

○山地座長 

 どうもありがとうございました。では、中環審側に戻りまして、山口委員、お願いいたします。

○山口委員 

 どうぞよろしくお願いいたします。今回も取りまとめありがとうございます。

 長期戦略につきまして、大きな流れは正しい方向に向かっていると感じております。「はじめに」の部分で、「地球温暖化に伴い、大雨の発生頻度の増加が見られる。今後、豪雨災害等のさらなる頻発化、激甚化などが予測されており、将来世代にわたる影響が強く懸念されている」と書き込んだ上で、4ページの部分、先日公表されましたIPCCの第6次評価報告書第1作業部会の報告書における「温暖化は人間の影響であることは疑いの余地がない」とされたことを記しています。ここが非常に大事なポイントだと思います。

 というのは、今、世界中で気候危機とも言えるような現状が続いています。私たちはしっかりとそこに向き合って対策を講じていかなくてはいけない、今がまさにそのラストチャンスと言えるのではないかとも私個人的には思っているのです。

 例えば、日本でも先週から今週にかけまして、西日本を中心に各地で線状降水帯が次々に発生するなど、異例の豪雨災害が続いていて、この1週間ほどでおよそ4,500棟もの住宅が被害に遭っています。研究者によりますと日本列島の上空には大量の水蒸気が流れ込む「大気の川」と呼ばれる現象も起きていて、この現象は3年前の西日本豪雨や去年7月の九州豪雨でも見られていたということです。今、温暖化によって大気中の水蒸気量が増していますから、それがこうした経験のないような大雨の降る一因になっているのではないかと分析されています。被災地では今も多くの方々が嘆き悲しんでいることと思います。今のままでいいわけがないわけです。この辺りの部分、さらに強い踏み込みがあってもいいのではないかと思いました。

 だからこそ2050年のカーボンニュートラルを実現させなくてはならないということになるわけですが、そこで鍵を握るのが、徹底した省エネの上で、再生可能エネルギーを主力電源として、最優先の原則で最大限の導入に取り組むということだと思います。具体的に洋上風力、地熱、次世代太陽光の導入などが書かれておりますが、普及に当たっては、やはりサプライチェーンの国産化にこだわって経済波及効果を高めることが、環境と経済の好循環にもつながると思うのです。

 それから、81ページで気候変動対策につきまして、「再生可能エネルギーをはじめとする自立・分散型エネルギーの導入は、緩和策であり、また、地域経済の活性化にもつながると同時に、災害時のエネルギー確保という観点において適応にも資する」と、大事な指摘がされております。日本にはまだまだ生かされていない再生可能エネルギーのポテンシャルがあります。その活用は温暖化対策になり、人口減少の進んでいる地方の活性化になり、エネルギー自給率を高め、災害対策にもつながります。もちろん再エネの拡大に当たっては、自然を破壊することなく自然と共生すること、それからコストの低減を図って国民負担を最大限抑制することが大前提になりますが、こうしたポイントも網羅して書かれているのは大切だと思いました。

 最後に、資料4にありますように、見せ方は大事です。それこそIPCC6次報告書ワーキンググループ1のグラフなども入れてもいいと思うのです。ぜひ広報戦略にこだわって、パブリックコメントの過程などで国民的な関心を高める努力を続けていただければと思いました。

 以上です。

○山地座長 

 どうもありがとうございました。では、産構審側委員に戻りまして、竹ケ原委員、お願いいたします。

○竹ケ原委員 

 御指名ありがとうございます。聞こえますでしょうか。

○山地座長 

 はい、大丈夫です。お願いいたします。

○竹ケ原委員 

 ありがとうございます。今回の取りまとめ、まずお礼を申し上げます。膨大な情報を本当にバランスよくまとめていただいて、非常に体系化されていると思います。やはりコンテンツが非常に多岐にわたる分、項目間の関係性について、もう少し相互参照というかリファーをかけたほうが読み手に対するメッセージ性が強まるかなというのが、一読させていただいた素直な感想です。

 幾つか気がついたところを申し上げますと、例えば、13ページのところで輸送部門のパワートレインの多様化に言及されています。EV、FCVに加えて、非化石燃料といいますか、合成燃料みたいなものも言及されていて、これは役割に応じてパワートレインが多様化されるという前提で書かれているのだろうと思うのでが、その上で、26ページまで飛びますと、21行目から22行目の辺りですか、ガソリン、ディーゼル車から電動車への転換となっています。多分記載されている趣旨は必ずしも違わないと思うのでが、もう少しパワートレインの多様性を前提している点が分かるようにしてもいいのかなと感じました。こういった感じで、それぞれ同じことが記載されているものの、項目間の表現が微妙に違う辺りなどをそろえてもいいのかなという感じです。

 2点目は、イノベーションのところです。皆さんご指摘されているとおり記載が非常に充実しましたし、いろいろな観点が紹介されているので、非常にわかりやすくなったと思います。ただ、個別のイノベーションについて記載されているのですが、どなたかもご指摘されていた通り、これをいかに実装していくか、に関する個社の戦略や、それに対するサポートが非常に重要だと思っています。

 この観点についてどこかに言及があるといいと思うのですが、例えば71ページで経済社会システムのところに若干言及があります。続く、先ほど吉高さんがおっしゃっていたファイナンスのところは、トランジションも含めてしっかりそういう観点が書かれていますので、この部分との接続をもう少し充実すると、より分かりやすくなるかなと感じました。

 また、80ページのところで人材育成が出てきます。これは冒頭で特出しされている公正な移行と不可分一体のテーマですので、やはりイノベーションに向けた人材の育成、あるいはリカレント教育、こういったものが公正な移行につながるのだという観点をもう少し強調したほうがいいのかなと感じたところです。

 最後に1点、これは御検討のお願いですが、38ページのところで脱炭素ドミノで地域にメンションいただいています。これも非常にありがたい話で、温対法の改正によって自治体と地域金融の連携度合いが問われ、これによる地域間競争の側面がある旨を指摘いただいているのだと思います。

 何を地域間で競争するかという話になるのですが、先ほど長谷川さんのお話にも通じると思うのですけれども、脱炭素が一義的な目的だとしても、その結果、その過程で地域資源がきちんと特定・マネタイズされ、そこで生まれた余剰ないし利益がまた地域に再投資されるという流れをちゃんと作れているか、が問われているわけです。これが環境と経済の好循環のイメージだと思いますから、この辺りのニュアンスをもう少し当事者に伝わるような感じで強調していただくと、より長期ビジョンらしくていいかなと感じた次第です。

 以上です。ありがとうございました。

○山地座長 

 ありがとうございました。では、中環審側に戻りまして、薬師寺委員、お願いいたします。

○薬師寺委員 

 御説明ありがとうございました。また、本当に取りまとめお疲れさまでございました。いずれも細かい指摘で恐縮なのですが、何点か質問と意見を述べさせていただきます。

 初めに、地域・くらしの将来ビジョンのところで、35ページの30行目、31行目のところです。地域循環共生圏を創造して、そこでは2050年までにカーボンニュートラル、レジリエント、快適な地域ということになっていますけれども、この目指すべき姿はどちらかというと全国で目指しているビジョンなのかなと感じまして、ちょっと地域循環共生圏との関係を伺いたいと思いました。

 次のページの19行目、20行目で、2050年までに全ての家庭がエネルギーについて自給自足するというのは、ビジョンとしてもなかなか難しいのかなと思いましたけれども、ちょっと確認をさせていただきたいと思いました。

 生活、ライフスタイルのところで、40ページの9行目からの表現なのですけれども、この中で、地域住民は、日常生活を変えることで、社会の変革に携わることができるというような表現になっているのです。むしろ、全ての住民といいますか国民が脱炭素を我がことにしてライフスタイルを変えないと、カーボンニュートラルというのは実現できないのだという基本的なスタンスだったと思いますので、変革に携わることができるというよりもうちょっと強い表現にしたほうがいいのかなと思いました。

 最後はカーボンニュートラルな地域づくりについての表現の部分なのですが、43ページ、都市部のカーボンニュートラルなまちづくりの中で、具体的に申しますと30行目です。環境に配慮した優良な民間都市開発事業への支援という記述がございますけれども、この表現であると、これはずっと都市再生なり、都市づくりでやってきた表現にとどまっておりますので、むしろ脱炭素を先導するとか、カーボンニュートラルを牽引するとか、そういう優良な民間都市開発に対してはより重点的な支援を行って、これからの都市再生を進めていくみたいな、もうちょっと踏み込んだ表現のほうがいいかなと思いました。

 資料4に関連して、温対計画もそうですし、このビジョンもそうなのですけれども、非常に大作で、いろいろなことに言及しなくてはいけないというのがあったのですが、全体を把握するのがなかなか難しい、全体を読み切るのがなかなか大変なものですから、どれもみんな重要な話なのですけれども、これだけの大作になると、やはりある程度メリハリをつけて訴えるみたいな工夫も並行して必要なのかなと感じました。

 以上です。ありがとうございました。

○山地座長 

 ありがとうございました。では、次は産構審側と中環審側両方の委員をお務めの髙村委員、お願いいたします。

○髙村委員 

 ありがとうございます。山地先生、聞こえますでしょうか。

○山地座長 

 はい、大丈夫です。お願いします。

○髙村委員 

 ありがとうございます。今、薬師寺委員からもありましたけれども、超大作で、非常に苦労されて取りまとめをされたことと思います。特に先般の長期戦略から間もないですけれども、しかしながら、非常に大きく政策が動きましたので、基本的にはそれを適切に反映していただいていると思っております。そういう意味で、若干細かなことを申し上げて恐縮なのですが、幾つか具体的な文言に関わって発言させていただいて、御検討いただければと思っております。

 1つは、1ページ目の「はじめに」のところなのですけれども、やはり気候変動問題への取組、あるいは気候変動対策そのものが大きく性格を変えたというメッセージがしっかり入ることが必要ではないかと思っております。

 これは実はエネルギー基本計画の8月4日に議論した素案の「はじめに」のところで非常にうまく書かれている箇所があると思っていまして、今後の気候変動問題への取組というのはやはり産業構造を一変させる可能性を秘めていて、この変化への対応を誤ると産業競争力を失いかねない。一方で、しっかり日本が国際的なルールづくりを先導して、脱炭素技術を世界、とりわけアジアの脱炭素化の課題解決に生かしていくと、新たな成長産業を生み出す契機になるという書き方がされているのです。恐らくそうした趣旨の、ここ2~3年の中でも気候変動問題への取組は大きく性格が変わったのだということをやはり初めに明確に書いていただいたほうがいいかと思います。さっき言いましたように、エネルギー基本計画の中で非常にうまく書かれているので、できればそういう趣旨を盛り込んでいただきたいというのが1点目です。

 2つ目が、4ページのところの我が国の長期的なビジョンのところです。こちらも実は、書いていただきたいのは2050年のカーボンニュートラルという長期戦略と2030年目標との関係については、短くてもその位置づけをやはり書いたほうがいいのではないかと思っております。これも実はさっきのエネルギー基本計画の素案の中に、183パラぐらいだと思いますけれども、エネルギーの文脈ではありますが、2050年と2030年の目標の関係性について書かれているので、例えばそうした文案を見ていただきながら、ここで言っている2050年に向けた長期戦略と2030年の目標との関係を整理して記載いただくというのがよいのではないかと思っております。

 3点目ですけれども、7ページ目のところです。(5)迅速な取組は非常に大事だと思っております。議論をうまく反映していただいていると思うのですけれども、一文、できれば入れていただきたいのは、インフラ分野において、特に新規に整備、回収、投資されるインフラができる限り2050年カーボンニュートラルと整合的なものとなるようにする必要があるということをやはり明記していただいたほうがいいのではないかと思います。だからこそ今行う決定や投資の判断がしっかり行われる必要がある、まさに迅速な取組が行われる必要があると。その特に今申し上げた、とりわけ新規のインフラ投資、インフラ整備について言及いただくほうがいいのではないかと思います。

 4点目でしょうか、エネルギーのところです。先ほど申し上げた「はじめに」と我が国の長期的なビジョンのところで、エネ基の素案を踏まえて書いていただいたらいいのではないかと申し上げたところは、実は今回、多分重複感いろいろあって、理由があると思いますが、エネルギーのところはあまりそこの位置づけが書かれていないように思っていまして、ここはエネ基との整合性の観点からも言及していただいたほうがよいのではないかと思います。

 何点目か忘れてしまいましたが、23ページ目のフロンのところです。こちらは少し内容に踏み込みますが、この2050年のビジョンでちゃんとネットゼロを目指すということは書かれているのです。しかし、その下に書かれている、そこに行く具体的な道筋については、やはり具体性をなお欠いているように思います。そういう意味で、しっかりゼロエミッションにしていく方向性を、キガリ改正ですから、2035年のその先があるはずですし、あるいはそれをどう加速するかということが必要だと思いますので、やはりここはもう少し踏み込んで検討していただいて書いていただきたいということを強く要望したいと思います。

 最後、図表の話がありましたけれども、先ほど薬師寺委員からもありましたように、やはり分かりやすく、まず国民に、そして対外的にも発信するために様々な工夫をしていただければいいと思っていまして、表とか図の活用というのは1つの方法として御検討いただきたいと思います。それから、予定されていると思いますけれども、やはり分かりやすい全体像を示すものを何か工夫していただきたいということもお願いしたいと思います。

 最後の85ページのところに、様々な分析の必要性ということを指摘いただいて、ほかの委員からもありましたけれども、やはり2050年カーボンニュートラルに向けて取り組むに当たって、どういう影響があるか、あるいはどういうオポチュニティーがあるかという分析が求められているということは、まさにそのとおりだと思います。あわせて、やはりこの間、諸外国の長期戦略なり政策文書のところ、それからIEAのネットゼロのレポートでもそうですけれども、単にコストだけでない、ワイダーインプリケーションという形で様々な便益ですとかオポチュニティーについてもしっかり分析がされています。そういう意味では、その分析の中にコスト分析でない、まさに明るい脱炭素社会に行く、そうしたエビデンスが示されるような分析を期待します。恐らくこれは行動しないことのコスト、気候変動の悪影響、リスクの評価も伴わないといけないと思っていますので、今後の課題としてこうした分析をぜひ進めていただく中に、こうした項目についてはぜひ盛り込んでいただきたいと思います。

 以上です。

○山地座長 

 それでは、中環審側の委員に戻りまして、三宅委員、お願いいたします。

○三宅委員 

 取りまとめありがとうございました。前回まで議論していた温対計画には、従来と比べてもこの審議会の議論を反映していただいた結果だと思うのですけれども、2050年のカーボンニュートラルをゴールとしたバックキャストの視点が入っています。なので、結果として温対計画と今回の長期戦略案の2つを読み比べてみると、やはり若干似通っていたりとか重複感を感じている部分が多くなっていると感じています。その中で、では、2つの位置づけみたいなものを考えたときに、恐らく温対計画にはあまり触れられていなくて、今回の長期戦略に含まれる大切な要素の1つがビジョンという概念なのだと私は感じました。

 まず、第1章の2の我が国の長期ビジョンというところがあって、そこの中で2050年のカーボンニュートラルの実現を目指すとあって、長期的なビジョンを分野別に示すと記載されているのですけれども、第1章の4に、その下のところ、将来に希望の持てる明るい社会に向けてという節があります。まさしく、この中身を読むと、ここに書かれている2050年の日本はこんな社会になっているのだというありたい姿が表現されているように私は感じました。この部分が我が国の本当の意味での長期ビジョンなのだということではないのかと。

 企業でもよくビジョンはつくります。皆さんそれぞれの会社でつくられていると思うのです。でも、その際のビジョンは2050年でなくてもいいのですが、長期的にどこかの特定のときにありたい姿を表現したものとなっています。当社でもビジョンは定期的に策定していますが、脱炭素というのがビジョンではなくて、当社がどんな会社になっていて、どう世の中に立っているのかということを表現します。このありたい姿を実現するためにはカーボンニュートラルが必要だという考え方だと私は理解しました。今までの議論でもあったと思うのですけれども、国民に対してカーボンニュートラルが実現できた社会というものがどんな社会なのか、日本はグローバル社会の中でどんな役割を果たして、国民はどう豊かで幸せな生活ができるのかということを描く必要がもうちょっとある。そこにも触れていただけたらと感じました。

 その下、第2章の第1節で各分野ごとのというところに入ってくのだと思うのです。エネルギーのセクションを見ると、ビジョンとしての需給構造を描いていただいていると思うのですけれども、中身をずらずら読んでいくと、不透明性などにより簡単なことではないとか、電化が困難な部門の話、それから二酸化炭素の排出が避けられない分野の存在があって容易ではないという表現がずっと連なっていて、これ自体はもちろん事実でしょうし、大切なことで、共有することを目的として書かれているのだと思うのです。ビジョンとしては、やはりもう少し前向きなところも、さっき髙村先生もおっしゃったように、ベネフィットとか、いいこと、それからオポチュニティーがどこにあるのかということも、どっちかだけではいけないという議論はここでもされていたのは私も賛成です。どっちかだけではだめで両方書いていただきたいのですけれども、ここのセクションを見ると、最後のほうの数行で、「一方で」以下のところに書かれているのですが、経済と環境の好循環とか、世界のカーボンニュートラルをリードするみたいな言葉は若干ちらちら出てくるのですけれども、もう少しここの覚悟みたいなものを強調していただけたらとちょっと感じてしまいました。

 次に、産業のセクションなのですけれども、一言で言うとカーボンニュートラルの実現がビジョンであるとしか読めません。その後の運輸と地方の暮らしのパートでは、脱炭素を実現している社会でどんな2050年の世界観を目指していくのかがもう少し詳しく書かれています。運輸はグリーン成長戦略に描かれているとあるので、両方を読み合わせると分かる形になっていますし、目指す世界観を思い描くことができます。ぜひ産業の分野も、脱炭素社会が描く世界観、そのときにありたい姿みたいなものを書いていただくと、もうちょっと分かりやすいかなと思いました。

 2点目は、第2章の第1節、削減対策の19ページからのところなのですけれども、産業部門の特徴のところで、生産を海外に移転することによるカーボンリーケージの危惧が記載されています。ですが、このカーボンリーケージはもちろん分かっていますし、だからこそ世界的にも国境調整税の考え方ですとか、グローバルバリューチェーンで評価しなければいけないという議論が今、世界では進んでいると理解しています。実際、その下の③のところでグローバルバリューチェーンでの削減にも触れていただいています。

 そういうことを考えれば、現時点でカーボンリーケージの概念をリスクとして海外に主張する必要があるのかというのは若干疑問に感じます。カーボンリーケージとグローバルバリューチェーンでやっていくのだと言っていることが少し矛盾している印象を持ちますし、できない理由を列挙する必要もないかなと思います。

 冒頭でも触れましたとおり、この長期戦略と温対計画の位置づけをいま一度、それぞれの位置づけというのは整理する必要が今後あるとは思うのですけれども、この長期戦略は、パリ協定に基づいて英訳して世界に発信することだけを目的としているのではなくて、国民に対して、やはり2050年の日本はどんな国になっていたいのか、なっていると思っているのかということを指し示すものになっているといいと感じました。

 以上です。

○山地座長 

 ありがとうございました。次は産構審側ですが、あいうえお順でいくと杉山委員なのですが、今日は御欠席で、意見書が参考資料1として提出されておりますので、御参照いただければと思います。ということで、あいうえお順では1つ飛ばしまして、小川委員、お願いいたします。

○小川委員 

 小川でございます。聞こえますでしょうか。

○山地座長 

 はい、大丈夫です。お願いいたします。

○小川委員 

 よろしくお願いします。今回、冒頭の「1、本戦略の策定の趣旨・目的」というところで、「高い志と脱炭素化のための取組を積極的に推進していく姿勢を力強く内外に示す」と書かれております。この点に関して、特に注目を集めやすい導入部分について幾つかコメントしたいと思います。時間の関係上、全体を通した細かい点については、追って書面で意見を提出させていただきたいと思います。

 まず、「はじめに」で何人かほかの委員の方も指摘されていましたが、やはり時節柄、コロナを端緒とする書き方というのは関心を引きやすい話の展開ではあるのですけれども、これから30年かけて実現していく日本の成長戦略を語る文書の書き出しとしてふさわしくないのではないかと思います。むしろ、今回日本が大きな目標を掲げて活動のスピードアップをすることに至った考え方の意義とかそういったものをちゃんと説明して、産業革命以来、近代文明を支えてきた化石燃料から脱却する、こういう非常に困難な問題に対して、強い意思を持って乗り越えていくという日本の決意を示すような文章にしたほうがいいのではないかと思います。

 それから、次に、基本的な考え方に6つの視点を上げていただいておりますが、その中から3点コメントさせていただきます。

 まず一番初めに、利用可能な最良の科学に基づく政策運営が上げられております。この科学に基づくということは、客観的で公正な事実に基づいて進めていくということであり、大いに賛成いたします。ただ、この文章の書きぶりでは、科学イコールIPCCレポートと言っているような印象を与えてしまいます。文中でも取り上げられているように、我が国は、いぶき2号による観測とか、日本の科学技術力の粋を集めて、この科学を支えるためのデータ収集や成果の検証の面でも積極的に世界に貢献していく、こういったことをやろうとしているわけでありますから、こういうことをしっかりアピールすべきではないかと思います。

 2番目に、日本のカーボンニュートラル戦略のもう一つの主目的である経済と環境の好循環の実現が掲げられているというのは妥当であると思います。ただし、先ほど長谷川委員もおっしゃっていましたが、これは苦もなくオートマチックに実現するようなものではないと思います。強い意思を持って、長い期間にわたって努力を続けていって初めて達成できるものであると。温暖化対策は、大きな成長につながるのではなく、大きな成長につなげる、長谷川さんもおっしゃっていましたが、こういう意思を明確に表記して、そのために長期戦略を立てて実行していくのだということを書くべきだと思います。

 また、あらゆる政策を動員する中で、民間資金の活用が強調され過ぎているような感じがあります。抜本的な脱炭素技術を一から開発するといったリスクの高い取組には政府の支援が極めて重要であります。政府として積極的な関与が読み取れないと、外部にも実現性を疑問視されかねないと思います。実際にGI基金など具体的な動きもしております。政府の積極的な支援についても決意を表明していただきたいと思います。

 最後に、三番目の労働力の公正な移行についてですが、欧米のように労働市場の流動性が非常に高い社会では、労働力に主眼を置いた公正な移行が重要な課題でありますが、日本の現状では、事業の撤退、縮小は大きな社会問題となります。カーボンニュートラル実現に向けた施策に伴う痛みの緩和に関しては、地域経済を支える企業に対しても、産業構造転換の支援などの国内施策を実施していくことが重要であると考えます。さらに、日本では国際市場への輸出で活躍する企業も多く、国内のみ突出して厳しい施策が取られた場合など、国際競争力を失うことで雇用や事業の継続に大きな影響を受けるケースがあります。公正な移行を語る上で、企業の国際競争力を維持することの重要性についても書き込んでいただきたいと思います。

 以上です。

○山地座長 

 ありがとうございました。では、中環審側に戻りまして、増井委員、お願いいたします。

○増井委員 

 ありがとうございます。聞こえていますでしょうか。

○山地座長 

 はい、大丈夫です。お願いします。

○増井委員 

 まず、長期戦略の取りまとめ、どうもありがとうございます。短期間でこれだけ取りまとめていただきまして、事務局の方々にまずは御礼申し上げます。

 その上で、3点ほど指摘させていただきたいのですけれども、まず1点目は、温対計画のときに、2050年の長期戦略との関係について記述してほしいと発言させていただきましたが、この長期戦略におきましても、2030年の話、特に温対計画ですとかエネルギー基本計画、こういったところで示されている2030年までの取組、それを受けて2050年、これをどう達成していくのか、実現していくのかというようなことが明記されていてもいいのではないかと思っています。既に指摘といいますかコメントがありましたように、この長期戦略はどちらかというと、ボトムアップの計画ではなくてトップダウンのビジョンであるということは承知しているのですけれども、1.5度目標を実現するためには、着実に2050年排出量実質ゼロというのを実現していかないといけませんので、より具体的にどういった主体がどのように取り組めばいいのかということが分かるように記述していただければと思います。

 特に、2030年と2050年の間をつなぐ2040年、この時点までにどのようなことをしなければならないというようなこと、特にインフラとかというようなことを考えますと、2040年の在り方というのも非常に重要になってきますので、こういう記述もあっていいのかなと思いました。これが1点目です。

 2点目は、資料4ともちょっと関係するのですけれども、先ほど三宅委員からも御指摘がありましたが、2050年に日本がどのような形で国際社会に貢献しているのか、あるいは我々国民がどういう生活を営んでいるのか、あるいはできているのかというようなメッセージとしての日本の姿が明確にされていてもいいのではないかと思いました。特にこの審議会の中でも、若者のグループに意見をいただきましたけれども、若い世代がこれを読んで実現しようとか、あるいは協力しようと思ってもらえるような内容にすることが非常に大切ではないかと思います。そういう意味で、資料4で指摘のありましたような分かりやすい内容は非常に重要かと思います。ただ一方で、次の指摘とも関わるのですけれども、資料4のほうで、説明の中には図表ですとか写真を多用しと記載されているのですが、この計画の中に2050年の排出量の内訳ですとか、エネルギーの状況とか、そういう具体的な数字がないにもかかわらず、どのように排出量の内訳などを提示するのか、その辺りがちょっとイメージしにくいので、環境省、あるいは事務局からもし御意見がありましたら、お聞かせいただければと思います。

 最後、3点目なのですけれども、今申し上げましたデータの話とも関係しますが、2050年における定量的な整合性のチェックが今の計画の中では不十分ではないかと思います。今回いろいろな戦略ですとかビジョン、このようなものを踏まえて記載されている、前回の長期戦略を踏まえて書かれているということで、その点は理解しているのですけれども、例えばエネルギーの基本政策分科会などでも、2050年についてのいろいろな定量的な情報が出されたりしていますので、2050年についての定量的な情報、どのようなところに視点を置いて重点的に取り組めばいいのかとか、あるいは、先ほどから御指摘のありましたコストですとかベネフィット、このようなものがどれだけになるのか、このようなことも含めて、全体的な整合性のチェック、このようなところが今後特に必要になってくるだろうと思います。そういうところが第4章の長期戦略のレビューと実践といったところに大きく関わってくるかと思いますので、これは次回以降の話かと思いますが、ぜひ御検討いただければと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。

○山地座長 

 ありがとうございました。では、産構審側の井上委員、お願いいたします。

○井上委員 

 このたびは取りまとめいただき、ありがとうございました。今回提示されました長期戦略案について、おおむね異論はございません。この長期戦略に基づき、カーボンニュートラルを目指すに当たり、産業界はいろいろな努力をしなければいけない。事業者がいざイノベーションに挑戦しようとした際に、既存の規制がネックになり、思うように事業展開を進めることができないような事態は避けなければいけないと思います。改めてカーボンニュートラル推進の観点から、今ある規制緩和できる部分についてはスピード感を持って進めていただきたいと思っております。

 併せて、カーボンニュートラルに資する現存技術を確実に社会実装していくための強力な支援をお願いしたいと思います。

 また、2030年・2050年に向け、「産・官・学」ではなくて、「政・官・民・学」の連携をもっと強くして、これを重要として考えていっていただきたいと思います。

 とりわけ「学」について申し上げれば、今、いろいろな大学や研究機関での研究費、設備費の資金不足などのお話もよく聞きます。大学などで研究の継続が難しいという声もよく耳にしており、日本は学術分野・研究分野への支援が諸外国と比較してまだまだ不足しているように感じております。政府でも様々な取組を始めていらっしゃいますが、大学等における研究に対する戦略的な、そして長期的な支援という観点もこの長期戦略に盛り込んでいただきたく、御検討をお願いいたします。

 さらに、カーボンニュートラルに向け、各地域における前向きな取組が求められている中、生き残りをかけて様々な活動を展開している地方自治体もある一方、個人的には、都市部の一部の自治体においてはまだまだ意識の低さを感じるところがございます。各自治体が地元の中小企業の自主的取組を後押しするような動きが活発化し、国のみならず地域レベルでの取組も同時並行で進展していくことを期待しております。

 

○山地座長 

 ありがとうございました。では、中環審側に戻りまして、下田委員、お願いいたします。

○下田委員 

 ありがとうございます。今回の長期戦略を拝見して、まず大きく3つ感じたことがございます。

 まず、将来に希望の持てる明るい社会へということがございますけれども、カーボンニュートラルの技術の需要を創出していくためには、魅力ある脱炭素社会の姿を示して、それに対して国民に負担していただくということが大事だと思っています。そのためには、魅力ある脱炭素社会を誰かが責任を持ってデザインする必要があって、またその人材が必要だと思っております。この部分はなかなかこのような計画には書きにくいのですけれども、大事なポイントだと思いました。

 それから、2050年まで29年しかないという時間の短さについて強く認識する必要があると思っております。インフラとか、住宅建築とか、生産設備の多くは2050年において取り残されるおそれがあるわけでございまして、これをどうしていくのか。それから、土地利用では、分散型社会とコンパクトシティという2つの言葉が出てきているのですけれども、これをどう融合させて、どんな国土をつくっていくのかとか、こういうことをしっかりと決めていかないと、迅速に取り組むということができないわけですから、そういうはっきりしない部分を固めていく必要があると思っております。

 3つ目ですけれども、日本では人材育成に大きな課題があると思っています。2050年にステークホルダーになるような人、イノベーションの牽引者となるような人、こういう意識の高い人材を育成していくためには、これだけ産業や社会を大きく変えようという提案をしているわけですから、ここで書かれているような従来の取組の延長線だけではなくて、カリキュラムを変えるくらいの取組が必要ではないかと思っております。

 少し文章の中身について申し上げますと、重要なのは2050年に目指すべきビジョンだと思っているのです。ちょっと三宅委員と反対になってしまうかもわかりませんが、第2章第1節で示されている4つの分野の中で、12ページのエネルギーと21ページの産業は非常に簡潔に分かりやすくまとめていただいているのですけれども、29ページの運輸のところと35ページの地域・くらしのところはいろいろなことをちょっと書き過ぎていて、2050年に何を目指すのかというのがはっきりしないので、ぜひこの4つは書き方を統一していただきたいと思いました。

 最後に、この文書に絵を入れるということも大事なのですけれども、地球温暖化対策計画とか長期戦略について国民に分かりやすく伝えるような、文書ではないかもわかりませんけれども、何らかの手段を用意すべきであると思っておりまして、この後、政府でしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

○山地座長 

 ありがとうございました。次は産構審側で、伊藤委員なのですけれども、伊藤委員は遅れる可能性があるということですけれども、今、私、見ていますと……

○伊藤委員 

 参加しております。

○山地座長 

 では、伊藤委員、お願いいたします。

○伊藤委員 

 よろしくお願いします。遅れましてすみません。

 私は、おおむね成長戦略という部分で見て、どうしても負担に思われがちな脱炭素戦略について、ある程度希望が持てる内容になっているのではないか、非常に分かりやすいと思いながら拝見しておりました。特に地域への記述が割としっかり書かれていて、経済社会的課題と多様な資源が存在する地域こそ脱炭素社会のモデルの実践の場になり得るということ、そして脱炭素と地方創生を同時達成するその姿を全国、海外にも見せていくということを書いてくださっているのは非常にすばらしいと思いました。

 その中であえて付け加えるとすると、地域の現実として、経済的にも、人的資源としても、単独でやっていくというのは非常に難しい部分もあると思うので、これらの地域資源が都市部の大企業にとって、温暖化対策とか成長戦略においてメリットとなると捉えて、積極的に地域に目を向けていただいて、共に取り組んでいく。そして、結局日本全体を見たときに、東京一極集中から分散への流れというのも同時につくり出していくことができるようにしていく、そんな趣旨も加えていただけるとありがたいかなと思いました。

 それから、ちょっと細かくなっていくのですけれども、24ページの地方のモータリゼーションがCO排出増加の要因となっているというのはまさにそのとおりなのですが、その対策として、グリーンスローモビリティーとか、超小型のモビリティーなど、新たなモビリティーサービスの導入というのが書かれています。実際に私が取材した中で、例えば長野県の伊那市では、ドローンによる物流というか配送サービスとか、AIの配車を使ったタクシーの乗合サービスなどを使っているところも実際には出てきていて、ドローンなどは都市部ではなかなか国交省の許可が下りないのですけれども、地方で川の上を飛ぶということだと成り立ったりするので、逆にこういう最先端技術を使った脱炭素政策というのは地方でも先進的にやられているので、こういう取り組みををいろいろな地域に広げていけるように後押しができたらいいのではないかと思いました。

 それから、再生可能エネルギーに関してです。32ページの書きぶりを見ると、後の39ページのほうにはいろいろな種類の再生可能エネルギーというのが出てくるのですけれども、エネルギー基本計画もそうなのですが、やはりちょっと太陽光に偏り過ぎているのではないかという印象を受けてしまいます。太陽光に関しては、地域の中山間地にとっては逆に災害誘発や景観破壊の点でリスクになっているところもありますので、地域ごとに地域の特性に応じた再生可能エネルギーを選択していくという重要性、特にベースロード電源となり得るような小水力発電とか、地熱とか、バイオマスとか、そういうものをもう少し増やしていくというようなことがエネルギー政策と脱炭素を同時に実現していくという視点で大事になってくるのではないかと感じております。

 それから、46ページの森林吸収源対策なのですけれども、森林火災をいかに食い止めるのかという視点も重要になってくるのではないかと思います。一たび大きな火災が起きてしまうと、一生懸命積み上げてきた脱炭素、COの削減というのが一気に相殺されてしまって、COを増やすことになり、それがさらなる気候変動を生むという流れができている。カリフォルニアとか、ギリシャとか、オーストラリアとか、世界的な課題になっているところもあるので、、吸収していく森林を守っていく、この森林火災対策というのも一言触れたらいいのかなと感じます。世界ではいろいろな森林火災に対する防止策とか、消火などはドローンを使うだとか、消火剤で薬用のゲルを混ぜて燃えにくくするとか、そんなことももう始まっているので、そこに対する開発というのも1つ大きな成長戦略になるのではないかと思いましたので、加えさせていただきます。ありがとうございました。

○山地座長 

 ありがとうございました。では、中環審側に戻りまして、小西委員、お願いいたします。

○小西委員 

 ありがとうございます。では、大小取り混ぜて、ページ順にお話しさせていただければと思います。

 まず、「はじめに」の1ページ目なのですが、ここは小川委員に賛同いたします。化石燃料からの脱却ということを長期戦略の目的として明記するというのは非常に明確でいいかなと思っております。ただ、グリーンリカバリーについても、日本、やはりコロナ禍の後で社会を変革する大きな契機も迎えていますので、それはあってもいいかなと思っております。

 3ページ目ですけれども、ここで世界が1.5度を目指す、日本もこの目標に向かってとあるのですが、日本は2050ゼロを言っていながら、1.5度ですかというのがいつも明確ではないところがあるので、ここの24行目の「この目標」というところ、「この1.5度目標」としていただくと、日本もそれを目指していることが明確になるかなと思っております。もちろんこれは英訳されるときのいろいろな機微かもしれないです。

 そして、3ページ目か4ページ目なのですけれども、今回のIPCCの第6次評価報告書でやはり1つの大きなメッセージは、今後10年の行動が1.5度を達成する上で非常にクリティカルになるということだと思っております。やはり本当は、ぜひ4ページのほうには炭素予算の記載をしていただいて、例えば67%以上の確率で1.5度の上昇に抑えるには排出できる炭素量が400ギガトンしか残っていない、すなわち今のままの排出を続けると10年以内に使い切ってしまう。2030年代早期には1.5度を達するか超えていくといったような記述が今回の非常に大きなポイントだと思っておりますので、残り時間が非常に少ないというメッセージもぜひ入れていただきたいと思っております。

 そして、5ページ目、公正な労働力の移行ということが明確に入って、しかも産業構造転換を政府が支援ということが明記されたのは、前回からの意見を反映していただいて、非常にありがたいと思っております。ただ、先ほど竹ケ原委員もおっしゃっていたのですけれども、80ページのほうの人材育成がそのままになっているので、ここもこの労働力の公正な移行に合わせて、脱炭素社会に向けたリスキリングみたいなことで教育、ということも整合性を持って書いていただけたらと思っております。これは非常に重要な今後のポイントになってくると思っております。

 そして、13ページです。2050年にカーボンニュートラルが実現した社会という絵姿が書いてありまして、大体そこに書いてあることは賛同するのですけれども、1つ抜けていると思うのは資源循環が入っていないということです。やはり脱炭素社会は資源循環、サーキュラーエコノミーが1つのキーワードになりますので、ここにぜひ入れていただきたいと思っています。探すと46ページ、地域における資源循環のところに、金属製品やプラ製品は既に存在する重要な資源、あらゆる分野での資源循環を進めることで、資源制約に対応できるだけではなく、温室効果ガス排出削減にも貢献、資源循環による脱炭素化といった記述がもう既にあるので、これは本当に地域の取組だけに限るものではなく、全体のものだと思いますので、ぜひここに都市鉱山とかそういった記述と共に入れていただけたらと思っております。

 あとは、16ページです。火力発電のところで、アンモニアとか水素とかの文脈で火力発電ということは書いてあるのですけれども、恐らく一番求められている火力発電をだんだん削減していくといった計画が全く書かれていない長期戦略というのは、先進主要国の長期戦略の中ではかなり特異な存在になるかなと思っております。COP26のイギリス、ホスト国のジョンソン首相がこの間、4つの分野で求めるといった中に、石炭火力を先進国は2030年までに廃止をということをすごく明確に言っておられるのです。図表の分かりやすさとかももちろんこれからやられていかれるのでしょうけれども、パリ協定でCOP26にこの戦略を提出されたときに日本の中で一番注目されるのは、恐らくここの石炭火力の廃止計画があるか、あるいは少なくとも火力発電に対して、今後、アンモニア、水素、CCUSとかだけではなく、どのようにしていくかという計画だと思いますので、ここは少なくとも記述をお考えいただきたいと思っております。

 そして、22ページなのですけれども、ここは設備の耐用年数が30年、40年で入替えのタイミングに考慮が必要と書いてあります。そのとおりだと思うのですが、そのときにやはり高炭素設備を今から導入したら座礁資産になり得る。それが非常に今後の考慮するべきポイントだと思いますので、そこの記述もぜひ挿入していただけたらと思っております。

 あと2つ。83ページなのですけれども、カーボンプライシング。これは本当に残念ながら、2050年に向かっての戦略で専門的、技術的な議論を進める、ではあまりにも力不足だと思っております。やはり企業さんの投資判断の鍵を握るのは炭素価格の予見可能性だと思います。少なくともその議論はあったので、それについては言及していただきたい。例えばJCLPさん、産業界からの声として導入を求める声があったということも言及していただけたらと思います。

 最後、85ページなのですけれども、今後の見直し。少なくとも6年といったような年数が入って、長期戦略の見直しをしていくということが入ったことは非常にいいことだと思っているのですけれども、やはりまだまだ現状を反映して踏み込めていない部分が多々ありますので、こうして今回のように経産省と環境省の合同部会などで話し合っていける機会が今後も継続されてほしいと思っております。

 以上です。

○山地座長 

 ありがとうございました。この後、中環審側の委員が続きます。あいうえお順の後ろからということで、次は大塚委員長、お願いいたします。

○大塚委員長 

 恐れ入ります。8点ほどございますけれども、簡単に申し上げさせていただきたいと思います。聞こえておりますでしょうか。

○山地座長 

 はい、大丈夫です。聞こえています。

○大塚委員長 

 1つ目に申し上げておきたいのは、8ページだと思いますけれども、明るい希望のある社会へというところでございます。課題解決先進国のところの6行目ぐらいだと思いますけれども、「その際」の後辺りに「将来世代の国民と現代世代の国民との衡平を確保しつつ」というような言葉を入れていただけるとありがたいと思います。これにつきましては、今年の3月にドイツの連邦憲法裁判所の判決などでも将来世代との衡平はかなり重視されていますので、世界的な潮流だと思います。もともと温暖化対策はその観点が重要だったということは国際的に異論がないところだと思いますので、世代間の衡平の話をぜひ書いていただきたいということがございます。

 地中熱に関しまして、全量還元型の地中熱の利用については、既に大阪のうめきたとかで行っていただいておりまして、国家戦略特区にもなっているのですけれども、地盤沈下が起きない全量還元型の地中熱利用というのは進んでいますので、この再生熱との関係で地中熱の利用に関してぜひ記述をしていただけるとありがたいということが2つ目でございます。

 3つ目ですけれども、最後の辺り、科学との関係の記載があると思います。科学技術の充実ということは非常に重要でございますけれども、これは先ほど山口委員もおっしゃっていたことと関係しますが、IPCCの第6次報告書で、人為的な影響で温暖化が起きていることに関しては疑う余地がないということが出てきていますので、ぜひその記述も、最初のほうにも出ていたと思いますが、後ろのほうにも入れていただけるとありがたいということでございます。

 4つ目でございますが、最後の85ページのところです。先ほど髙村委員が言われたこととも関係しますけれども、5行目のところのコストを含む経済への影響ということはありますが、私が前から気にしていたのはむしろ予算の活用に関して、長期的な効果を含むコストとパフォーマンスの関係はできれば検証していただいたほうがいいと思っています。全般的にコストとの関係について言うとすれば、先ほど髙村委員が言われたように、気候変動対策をしないことのマイナス点というのはもちろんあるものですから、大きな意味での便益とかオポチュニティーとの関係をぜひ入れていただく必要があると思います。予算の活用との関係では長期的な効果を含めたパフォーマンスとの関係はできれば検証していただけるとありがたいということがあると思います。

 5点目は、先ほどたくさんの委員がいろいろおっしゃったことと関係しますけれども、2050年のカーボンニュートラルと2030年の温対計画の目標との関係は確かに非常に重要ですので、私もどこかに入れていただければありがたいと思います。

 将来に希望の持てる明るい社会に向けてということに関しては、先ほどたくさんの委員の方がいろいろおっしゃっていただいたように、ここはみんなが、特に若い世代の方が注目されると思いますので、充実した書き方にしていただけると大変ありがたいと思っております。どういうデザインをしていくかということに関しては、前のほうの温対計画とかでは、サツキとメイの社会とか、メイド・イン・ジャパン社会とか、安井先生とかの下で議論していたこともありますけれども、少し具体的に明るい社会が書けるといいかなと思っています。ちょっとここはなかなか大変かもしれませんけれども、重要なところではないかと思っています。

 7点目ですけれども、これは増井委員がおっしゃったことと関係しますけれども、2030と2050の間をどうするかという問題がございますので、その中間点についての記述もどこかに要るかなと思っていまして、2040年辺りをどうするかということもぜひ記載していただけるとありがたいと思います。

 8点目ですけれども、先ほど小西委員が言われた、炭素バジェット、カーボンバジェットの話はIPCCとの関係でも出てきていますので、最初のほうに記載が必要ではないかということがございます。あと、小川委員がおっしゃったこととも関係しますけれども、IPCCだけでなくて、気象庁とかも温暖化の関係の気象の変化についていろいろなことを発表していますし、最近の集中的な豪雨などについても温暖化との関係があることを気象庁は示唆していますので、そういうこともどこかに書き込んでいただけると大変ありがたいと思いました。

 すみません、江守さんの後だと思っていたものですから、申し訳ありません。

○山地座長 

 いやいや、すみません。あいうえお順で行ったものですから。ありがとうございました。では、次、江守委員、お願いいたします。

○江守委員 

 ありがとうございます。まず、全体の取りまとめ、ありがとうございました。

 最初に申し上げたいのは科学についてです。山口委員はじめ多くの委員がおっしゃいましたけれども、IPCCを記述していただいてどうもありがとうございます。それから、大雨等の増加と人間活動の影響です。一般論としてはあるのですけれども、科学的に正確な記述にすることを少し注意する必要はあるかもしれませんが、基本的には妥当な認識であるというように科学的にも思っております。ぜひそのように記述していただきたいと思います。

 次に、ビジョンについてです。三宅委員のおっしゃったことと近いかもしれないのですけれども、基本的にこの戦略の目標というのは脱炭素化と成長の2つであると読めるのですが、一般的に申し上げて、英語でウェルビーイングというのがこういうのを考えるときに目指されるべきなのではないかと思っています。それに相当するような言葉がないような気がしています。例えば幸福であるとか福利であるとか。健康という言葉は2か所だけ出てきますけれども、2か所しか出てこないとかです。それは恐らく、これの前提になっているのは成長すればウェルビーイングになるのだということが仮定されているということなのではないかと思います。でも、それは本当かどうかという議論が必要で、格差とかそういうことを考えると、全ての人にとって恐らくそうはならない。もしこの文書の中でそのように仮定されているのであれば、そのように書いていただいて、本当かどうかという議論はこれから次回の改定に向けてできればいいのかなと思っております。

 それから、世代間の公平性について言及すべきだという大塚委員長の意見に同意いたします。

 あとは、ライフスタイルのところを少し注目して読んだのですけれども、現行計画でライフスタイルのイノベーションというのは経済社会のシステムのイノベーションというのに並んで0.5ページしか書いていない。技術のイノベーションはものすごくたくさん書いてあるのに、非常にバランスが悪いと思っていました。今回見てみると、やはり0.5ページくらいしか書いていない。ただし、中身に相当するものが、地域・くらし部門のライフスタイルの転換、あるいはライフスタイル関連産業の技術のイノベーションとして書かれているということなので、ライフスタイルのイノベーションでちょっとしか書いていないところと、ほかに書いてあるところとの関係を明確にしていただくと、これは中身が薄い項目であるというような誤解を受けないでいいのかなと。あと、もちろんほかに書いてあるところも本来もう少し充実して書くことがあるのかもしれません。

 それから、ライフスタイルの転換の中身なのですけれども、前回申し上げました、例えば肉食の削減であるとか、消費財の長期使用であるとか、そういうことの言及はありません。肉食に関しては日本ではあまり議論が始まっていないかもしれませんけれども、一般的に国際的にはこういう話をするときには必ず出てくるので、全く書いていないのは違和感がありました。現時点で結論、進めるべきとかは書けないかもしれませんけれども、検討するべきとか、議論するべきとか、そういう書き方で言及していただくのはどうかと思います。

 大体以上なのですけれども、最後に、細かいことなのですが、現行計画で環境と成長の好循環と書いてあるところが、今回は経済と環境の好循環という言葉になっているように見えるのです。これは語の選択において何か意図がもしおありでしたら教えていただければと思いました。

 以上です。ありがとうございます。

○山地座長 

 ありがとうございました。中環審側の委員が続きますけれども、次、石井委員、お願いいたします。

○石井委員 

 ありがとうございます。私からは大きく分けて2点お話ししたいと思います。

 1点目は、このペーパーに対するコメントで、2点目は、この内容を今後実装していくためにどういうことが必要かということです。

 まず1点目の、ペーパーに対するコメントですが、特にカーボンニュートラル、2050に向けての6つの視点は非常によくまとめていただいていると思いました。今、江守委員をはじめほかの先生方からもお話のあったサイエンスの重視ということ、あるいは公正な移行が重視されたということも大変よかったと思います。また、国際発信の重要性、分かりやすい発信の重要性にも賛同いたします。

 一方で、もう少しだけ強化していただけたら、あるいは改善の余地があるかどうかと思うのは経済と環境の好循環のところなのです。どうしてもやはり温暖化対策をやることはコストになるのではないかと、それが好循環になると言われても、それが受動的に待っていてなるものではないと、既に長谷川委員をはじめとしていろいろな方がおっしゃいましたけれども、コストになるかもしれない温暖化対策がどのようにしたら機会になるのかというところへの踏み込み。ほかの先生方で覚悟をとおっしゃった方もありましたが、覚悟の問題が、具体的には制度、政策、そして投資計画等々でもう少し積極的に述べられる必要があるのではないかと思います。カーボンプライシングも、カーボンを出すということが高くつく経済システムに変わるということは、それだけで大変大きな経済システム転換になるので、それをやっていくことが回り回ってやはり成長につながるという社会を描くのだというところを、もう少し踏み込んで書かないと、お題目に終わってしまうおそれがあるのではないかと思いました。

 2点目ですが、このバランスの取れてきたプランを今後実装するに当たって何が必要かということなのですけれども、これまで既に何人かの先生がおっしゃいましたが、やはりインディペンデントな定量分析の重要性ということと、それを説明責任を持って実行していく制度的なセットアップが必要なのではないかと思います。その意味で、ほかの先生もそうかと思いますが、私が関心を持って見ているのは、2008年のイギリスのクライメート・チェンジ・アクトに基づいてできたクライメート・チェンジ・コミッティーです。独立な専門家からなる組織で、政府と議会に対してカーボンバジェットのターゲットの設定と政策提言を行うとともに進捗状況をモニタリングしてレポートする。できないところはどうしてかという議論を喚起するシステムになっています。イギリスは政治的にいろいろ不安定なところはありましたけれども、気候変動については一本筋の通った方針を立てているというのは、やはりクライメート・チェンジ・コミッティーとそれの持っている議会と政府に対するアカウンタビリティーの大きさということがあると思います。専門家のレビューを見ても、この機能は非常に高く評価されています。今後、日本が温対法あるいは長期成長戦略を実装していくための1つの仕掛けとして、こうしたインディペンデントな定量分析と、それを政府なり議会なりに実装させるための説明責任を持った仕掛けというものが重要ではないかと思いました。いずれこうした機会にまた御検討いただけるとありがたいと思います。

 私からは以上です。ありがとうございました。

○山地座長 

 どうもありがとうございました。以上で一通りの御発言ということでございます。

 事務局からいただいたシナリオの予定時間を30分ほどオーバーしているのですけれども、私、山地からも委員の一人として発言を簡単にさせていただきたいと思います。

 今回の長期戦略の取りまとめについては、グリーン成長戦略とかエネルギー基本計画素案、それから各省の関連する施策の文書をうまく統合されていて、事務局は大変努力されたと思って、非常に感謝しております。そういう意味では、基本的な内容については私、異論は特にないのです。ただ、長期戦略となると、今日の委員の皆さんの議論の中でもビジョンを定性的に書く部分がやはり多いわけですけれども、そこと事実、ファクトとか現実との間を埋めなければいけない、そういう努力が必要だと思うので、私はこれは個人的な趣味の問題みたいなところはあるけれども、ビジョンといっても、あまり言葉が踊らないほうがいいかなと思って聞いておりました。

 その関連で言うと、図表というか画像を使うという御提案がございました。私は、メッセージを伝えるには非常にいいと思うのだけれども、画像のメッセージ力は強い。ただ、強過ぎる面もあって、非常に単純になって複雑な話がなかなか伝わらない。その間の兼ね合いをうまく、どういう画像を使うのか、表かはもちろんございます。そこを見ながら少し考えさせていただきたいと思っております。

 あと、具体的なところをちょっと言うと、今回も皆さんの意見の中にもあったのだけれども、例えば温対計画のこの前の議論の中で、コストの評価をしなければいけないといういろいろな意見が私を含めてあった。だから費用対効果の精査をするという文言を温対計画の中に入れていただいたわけですけれども、今回の長期戦略の文書の中には、私が検索した限りでは費用対効果という文言は出てこないのです。もちろんビジョンですから、各対策があるわけではないので、個々の対策に関して費用対効果というわけではないのです。ただ、冒頭の第1章の部分、あるいはレビューに関連する最後の部分とかに、やはり費用対効果というのは長期戦略においても非常に重要なことだと思うのです。その辺りを考慮していただければいいのではないかと私は思いました。これは個人的な意見でございます。

 時間が押していまして誠に恐縮ですけれども、委員からいただいた意見の中には質問もございましたし、事務局から御回答をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○梶川室長 

 まず、環境省側から御回答いただいた上で、残りの部分を経産省から説明したいと思います。大丈夫でしょうか。

○山地座長 

 環境省さん、大丈夫ですか、声が聞こえませんが。

○坂口室長 

 環境省事務局でございます。聞こえておりますでしょうか。

○山地座長 

 はい、聞こえております。

○坂口室長 

 恐れ入ります、ちょっとこちらのマイクが不調になっていたこともあり、大変失礼いたしました。

 今日も非常に多岐にわたる御質問をいただきましたので、まず、私から総論的な部分について簡単に答えさせていただいて、その後、各分野についての回答、それから経産省さん等からも補足をいただければと思います。

 今日かなり多くの委員からいただきました御指摘として、まず、2030年との関係についてということでございます。確かに今回の長期戦略では、2030のことについてはあまり大きく触れていないというところでございます。一方、確かに今般の温対計画でも2050年を意識した表現になっておりますので、各個別のそれぞれについて全て2030年について記載するのも分量の関係上ちょっと難しいところではございますが、何らかの工夫ができないか、少し対応してみたいと思います。

 それから、髙村委員からも、一番最初の「はじめに」のところに対策そのものが大きく性格を変えたということがあるべきといった御指摘をいただきました。確かにエネルギー基本計画の冒頭にもそういった表現がありましたので、ちょっと改めてそちらも少し眺めながら、どういう書き方ができるかということを考えてみたいと思っております。

 それと、全体のレビューの在り方、それからコストの在り方、そして、これだけではやはりちょっと全体として伝わらないので、別途分かりやすい発信があるべきではないか。そして、コストのことの他に、いわゆる負の側面についても何らか、あまりバラ色になり過ぎないような記載があるべきではないかといった一方で、やはり明るい社会というのはしっかり強調すべきではないか。様々な方向の御指摘をいただきましたので、ここについては少し受け止めながら、現状、特にレビューのところについては、一番最後の中に、「成長の機会、コストを含む経済の影響等について、将来の情勢変化に応じて分析を行う」というようにしてあるわけですけれども、少しそれがいわゆる費用対効果みたいな話に見えるようにならないか。それから、予算の使い方についてもそういった表現ができないかといった御指摘もありましたので、これはちょっと文面上の工夫でどうにかできないか考えてみたいと思います。

 一方で、やはり大部になっているので、少しブレークダウンしたものが別途用意されるべきではないかといった御指摘だったと思います。これは今般の温対計画についても少し共通する課題だと思いますので、ちょっとこの発信の在り方についてはまた別途、経産省さんとも少し御相談しながら考えていきたいと思っております。

 あと、次の改定のタイミングは2025年なのか、27年なのか、6年というのはこれからなのかというところがありましたけれども、ここについては、ちょっと正直まだ事務局内で意思の統一がされていない状態でございます。現行の長期戦略の6年と書かれていたものを今のところ踏襲する形で書いておりまして、ここは基本としてはあまり頻繁にビジョンをころころ変えるべきではないというのが前回の議論だったと思っておりまして、それに沿ってこのようにしておりますが、また全体の世界の情勢とかそういったことも踏まえて、この6年という年限にあまりこだわりすぎず、必要なタイミングで見直しをしていくということなのだろうと思っております。

 あと、全部お答えできているかどうか分かりませんが、環境と成長の好循環という言葉が経済と環境の好循環に変わっているのはなぜかといった御指摘をいただきました。これについては、事務局としての強い意思といいますよりは、今回、2050年カーボンニュートラルを菅総理が宣言された際のスピーチの中身に経済と環境の好循環という言葉が使われましたので、現行の総理の言葉に合わせて、今回、経済と環境の好循環にしたということでございます。特別意味が変わっているとは我々考えておりません。

 総論的には若干不足もあったかもしれませんが、私からは以上でございます。

 あと、個別の部分についても幾つか御指摘をいただきましたが、少し記述が足りないと言われましたフロン、それからカーボンプライシング等々については、特に担当からは引き続き検討させていただきたいというコメントを受けておりますので、申し添えさせていただきます。

 それでは、地域関係から何か補足があれば。

○飯野課長補佐 

 環境省環境計画課課長補佐の飯野と申します。

 本日は大変ありがとうございました。温対計画の審議のときと同趣旨で、地域における取組の重要性、特に地域の中小を含む企業、それから地域金融機関を巻き込んだフレームをしっかり進めていくことが重要というのが根本的な指摘だと理解しております。

 記載にもございますように、地域脱炭素ロードマップを含めて、関係する幅広い主体がスクラムを組んでいく体制を組んでいくということを記載しておりますし、実行していくということで、現在、来年度概算要求を含めて、しっかり準備を進めているところです。

 また、地域と個人のライフスタイルも密接に関連するところですので、プロシューマーについても御指摘もありましたけれども、住宅環境を含めてしっかりと取り組んでいくようにしたいと考えております。記載についても必要に応じて対応させていただきます。

 以上です。

○坂口室長 

 では、一旦、環境省事務局からは以上とさせていただきまして、経産省さんからお願いします。

○梶川室長 

 経済産業省の環境経済室長です。

 幾つか補足的にお答えをしたほうがいいかなと思うところについて御説明します。

 まず、5ページの経済と環境の好循環の実現のところで、環境対策が大きな成長につながるという表現ではなくて、より能動的につなげていくという意思が必要ではないかという話が長谷川委員、小川委員、あと石井委員からあったと思います。これはまさに我々もこの対策をやるだけではなくて、やはりしっかりとこれを成長につなげるためのパスが大事だと思っていますので、御指摘ごもっともかと思っております。

 あとは、吉高委員から、横断的な施策のところのファイナンスと政府による予算とカーボンプライシングは全て関係するというお話がございました。これはまさにそうだと思っていまして、今少しばらばら記載しているものをどのように、よりメッセージも含めてしっかりとお伝えできるかというところについては、少し工夫をさせていただければと思っております。

 あとは、長谷川委員と小川委員からは、予算のところについては2兆円の基金だけで十分なのか、もう少し踏み込んだ記述も必要ではないかという話があったと思います。これは、今の段階では昨年の補正予算の中で手当てをしたということで、この2兆円の基金について主に記載しているのですけれども、カーボンニュートラルの宣言から今年の2030年の目標値の改定も含めて、各省でいろいろな議論が出てきまして、その上で、今まさにこれから予算要求をしていくということになると思いますので、そういったこれからの予算要求の中でしっかりと明らかになってくるものもあるのかなと思っています。この辺り、現状において記載できるものについては記載させていただいたと思っているところでございます。

 あとは、竹ケ原委員からは、項目間の関係性の部分、先ほど輸送の部分であるとか、様々な部分でうまく整合性を取るべきというお話がありましたけれども、これはしっかりともう一度見直しをして、その辺の整合性を取っていくということをしっかりとやっていきたいと思っております。

 あとはおおむね環境省側からも御回答いただいたところと同じような内容かと思います。

 経産省、エネルギー関係でもしお答えいただけるところがあれば、西田室長、お願いします。

○西田室長 

 資源エネルギー庁・西田です。

 御指摘いろいろありがとうございます。全体、まだ今、エネルギー基本計画のほうの調整もしていますので、それを踏まえまして、今日いただいた御指摘も踏まえて、ちょっと環境省さんとも相談しながら対応を検討していきたいと思います。幾つかいただいた、再エネが太陽光に寄り過ぎではないかというのも、2030年までが太陽光で、その色合いが若干強いというのはあるかと思いますけれども、我々としては2050まで見据えると、やはり風力とか、特に洋上風力を中心にとは思っていますが、いずれにしてもちょっとそこら辺のバランスは考えていきたいと思っています。

 あと、火力のところとかも、2050年に向けて、やはり火力自体も脱炭素化していくということが重要だと思っています。それぞれ各国が置かれた状況を踏まえてやっていくことが大事だと思っていますので、いただいた御指摘などを踏まえながら考えていきたいと思っております。

 エネルギーパートにもありますけれども、環境と成長のところが経済と環境になっているのは、先ほど環境省さんからもコメントがあったとおりでございまして、総理の方針を踏まえてそう書いているというところでございます。

 私からは以上でございます。

○梶川室長 

 ありがとうございます。運輸の部分と森林吸収というか、森林の部分についても御質問があったと思います。ちょっとお時間が過ぎていますけれども、オブザーバーで国交省と農水省からも参加いただいていますが、もし一言ありますようでしたら、よろしくお願いします。国交省さん、いかがでしょうか。

○松本課長補佐 

 国土交通省でございます。

 今いただいたご指摘の点は、関係省庁と調整して、なるべく整合が取れるようにできればと思っております。現時点でのお答えは以上で失礼いたします。

○梶川室長 

 ありがとうございます。農水省さん、いかがでしょうか。林野庁さんも入っておりますけれども、よろしくお願いします。

○保坂森林計画官 

 林野庁でございます。

 森林火災について御質問いただいたところでございますが、森林火災につきまして、海外では非常に大規模なものが近年発生しているところでございます。一方で、国内につきましては、森林火災の面積自体は近年減少しているような状況でございます。また、森林火災の原因も火の不始末などとなっているということが報告されているところでございます。そういった中で、普及啓発活動を森林火災対策の一環として行っているところでございますが、現状としては、国内の森林吸収源対策についてはこのような記述にしております。林野庁からのコメントは以上でございます。

○梶川室長 

 ありがとうございます。以上で役所側からの回答は終わりということなので、山地座長、よろしくお願いいたします。

○山地座長 

 どうもありがとうございました。本日の会合、当初は1時から3時半までという予定で案内があったと思うのですけれども、その後、3時までということになったので、今、実はちょっともう既にオーバーしているのです。委員の皆さんにおかれては、御意見がある場合には後日事務局に御意見を文書で提出してくださいとあります。それも御活用いただきたいのですが、ただいまの事務局サイドからの回答について、この場でぜひ御発言したいという方があれば、チャットボックスないしは画像を出して御発言いただいて結構だと思うのですけれども、いかがでございましょうか。――特によろしゅうございますか。チャットボックスは私、見ていますけれども、特にない。手を挙げるとかそういうのは全部は見られないのですけれども、声は出ていませんので、では、またもし御意見ある方は文書で事務局のほうに御連絡いただくという対応をしていただきたいと思います。

 そうしますと、私が進行する本日の議事は以上でございますので、事務局から何か連絡事項があればお願いいたします。

○梶川室長 

 どうもありがとうございます。委員の皆様、本日は大変活発な御議論をいただきありがとうございます。

 本日御議論いただきました長期戦略につきましては、皆様の意見も踏まえながら政府内での議論を進めていくということでございます。先日、大塚委員長、山地座長に御一任いただきました温対計画と共に、パブリックコメントの手続に進んでいくということになっていきます。これまで活発に御議論いただきまして、誠にありがとうございます。

 あと、本日の議事録につきましては、事務局で作成の上、委員の皆様に確認いただきまして、ホームページに掲載をさせていただきます。

 事務局からは以上でございます。

○山地座長 

 ありがとうございます。ということでございますので、以上で本日の会合は閉会とさせていただきます。本日もどうもありがとうございました。

                             午後15時08分 閉会