長期低炭素ビジョン小委員会(第19回)議事録

日時

 平成29年10月25日(水)15時00分~17時05分

場所

 TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13A

 東京都港区赤坂2-14-27 国際新赤坂ビル東館13階

議事録

午後3時00分 開会

木野低炭素社会推進室長

 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第19回会合を開始いたします。

 本日は、ご到着が遅れている委員もいらっしゃいますが、総数18名中18名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。

 なお、環境省からの報道発表資料におきましては、懇談会としてご案内いたしておりましたが、定足数に達したため、第19回委員会として開催いたします。

 また、既に地球環境部会決定とされております本委員会の運営方針に基づきまして、本日の審議は公開といたしましております。

 では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

浅野委員長

 それでは、議事を進めさせていただきます。

 本日も有識者からのヒアリングということでございます。

 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

木野低炭素社会推進室長

 配付資料でございます。お手元の議事次第の下に配付資料一覧がついてございます。資料1といたしまして、本日のヒアリング資料、その下に参考資料として委員会名簿がございますので、もし不足等ございましたら、お申しつけください。お願いいたします。

浅野委員長

 それでは、議事に入ります。今日のヒアリングについて、事務局からご紹介をいただきたいと思います。

木野低炭素社会推進室長

 先ほど委員長からもございましたが、今回も引き続き関係者へのヒアリングを実施いたしてまいりたいと考えております。本日のヒアリングですけれども、The UK's climate strategyというタイトルで、英国の気候変動委員会副会長であられます、バロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジ様よりご説明いただきます。

 なお、環境省では、11月に開催されるCOP23に向けまして、10月20日から約1週間の間、気候変動関連の会議、シンポジウムとさまざまなステークホルダーとの意見交換を集中的に行う「気候ウィーク2017」を開催いたしております。本審議会も、この気候ウィークの一環として開催しておりまして、この機会に国民の多くの皆様にも、ぜひCOPへの関心を高めていただければと考えているところでございます。

 本日は、貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。委員の皆様におかれましても忌憚のないご議論を、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上です。

浅野委員長

 それでは、ヒアリングに入りたいと思います。

 まず、バロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジさんからご説明をいただいた後、委員の皆様方からの質問をお受けいただくことにしたいと思います。質疑応答については、後でまた申し上げたいと思います。

 それでは、まず英国のclimate strategyについて、バロネスさんからご発表いただきます。よろしくお願いいたします。

バロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジ氏

 まず、私のほうから、英国の気候変動法とそれがいかに運営されているか、そして、それが国の経済と経済成長にどうリンクしているかをお話しいたします。

 では、英国気候変動法ですけど、2008年に通過し、制定されました。そして、その法律のもとでいろいろなことが行われておりますけれども、そのサマリーということで、ここに掲げてあります。

 まず、目標ですけれども、目標といたしましては、1990年比較で2050年の排出量を、少なくとも80%削減する目標を掲げています。その目標を達成する道筋ですけれども、カーボンバジェットを設定していまして、5年間の期間で排出することができる温室効果ガスが定められています。そして、この後、カーボンバジェットを達成するためのツールキットが定義されておりまして、カーボンバジェットを達成するための政策を政府が掲げています。

 そして独立的な立場でモニタリングを行っているのが、気候変動委員会となります。気候変動委員会は二つの役割を果たしていて、まず、毎年、カーボンバジェット達成に向けての進捗状況のモニタリングを行っています。気候変動委員会が果たしている二番目の役割というのは、政府に対して、次の5年間の新しいカーボンバジェットのレベルというのを提言しています。

 気候変動委員会が政府から独立しているということは、非常に重要でありまして、気候変動委員会がカーボンバジェットのレベルを勧告して、それを英国政府が立法化することが期待されていまして、もし英国政府がそれをできない場合には、その理由というのを議会に対して説明しなければならないとされています。

 今まで気候変動委員会のほうで勧告した、行った助言ということについては、英国政府はそれを受け入れていて、5つものカーボンバジェットが立法化されてきました。この2032年のカーボンバジェット、第5次ということになりまして、第1次のカーボンバジェットは2008年のものでした。

 これが、実線で示してあるのが実際の排出量の推移でありまして、点線で示してあるのが2050年の目標を達成するために歩まなければいけない道筋ということで、英国政府に対しては、排出量削減について、最も費用対効果の高い道筋ということを考えています。

 一つ非常に重要な問題なんですけれども、国際航空と海運の関連の排出量につきましては、2050年の目標に関しては含まれておりますけれども、このカーボンバジェットにつきましては、立法化されたカーボンバジェットにつきましては含まれておりません。

 その点に関して皆さんがご関心があるようでしたら、質疑応答のときに質問していただければ答えたいと思いますが、プレゼンでの説明は、この点は以上とさせていただきます。

 それでは、このカーボンバジェットがどうやって設定されているのか説明させていただきますけれども、あくまでもエビデンスをベースにして設定されているということで、実際、気候変動委員会のレピュテーション、名声というのは、まさに我々が提供するエビデンスと分析の質にかかっていると言えるでしょう。

 2050年の目標、ターゲットというのは、2007年時点で入手可能なベストの気候科学に基づいて定められたのですが、我々はこの気候科学の分野の新たなリスクというのは、特にIPCCレポートも含めて、順次大きな変化があるかどうかということを確認しています。しかし、現時点に至るまでは、特に気候科学の進展によって2050年のターゲット、目標を変更する必要は感じていません。

 そしてまた、国際的な動向、EUのほかの国の動向を常に見守っておりまして、英国としてはリーダーシップの役割を果たしたいんですが、しかし、英国経済に対するインパクトを考えると、あまりほかの国よりも先に走っても、逆に有用ではないというふうに感じております。

 2050年の目標というのは、少なくとも80%削減ということですけれども、これを我々としては、2100年までの間に摂氏2.4℃以上に気温が上昇するという確立性というのは、そんなに高くないと思っておりまして、これは2050年時点の予測される英国人口、1人当たりの二酸化炭素排出量2tに相当して考えています。

 このカーボンバジェットを作成する際に、英国経済の全てのセクターを網羅したシナリオに基づいてやっています。我々は複数のシナリオを立てておりまして、例えば第5次のカーボンバジェットの電力部門に関して言えば、英国で原発が発展するかどうかという不確実性がかなりあった、またCCSの技術が発展するかどうか不確実性があった、再生可能エネルギーのコストについても不確実性があったということで、原発が普及する、全くない場合、それからCCSが普及する、あるいはちょっとしかない場合、それから再生可能エネルギーが普及する、やはり全くない場合、そこと想定する複数のシナリオを立てておりまして、その中央に位置するシナリオというのが、最もカーボンバジェットを達成する費用対効果のいいパス、道筋だという考え方をしています。

 カーボンバジェットを設定するときに、全てのセクターに同じパーセントの削減というのを当てはめているわけではありません。最も少ないコストで削減が実行、実施できるのはどこのセクターかということに着目しておりまして、例えば産業部門に期待される削減のパーセント、割合というのは、電力部門の削減に期待されるパーセントより、かなり低い水準で設定してあるというのがカーボンバジェットの仕組みです。

 政府といたしましては、カーボンバジェットのあらゆるインパクトに関心が高いんですけれども、特に、例えば大気質に対するインパクトということに関心が高くなっております。そして、また気候変動法においては、燃料貧困、そしてまた、産業の競争力に対するインパクトに着目しています。

 英国の国民の中で、燃料貧困と定義されている層がありまして、これは所得の中で、例えば住宅の暖房費に費やす割合が高い人たち、これには高齢者が多く、電気による暖房に依存している程度が高いという人たちであります。例えば、発電をグリーンなものにすると、そのコストが割高になることによって、最も影響を受ける人たちです。

 産業の競争力ということで、エネルギー集約型の産業、特に影響が大きく、毎年我々、エネルギー価格とエネルギーの請求書に関してのレポートをまとめておりますけれども、これは家庭における消費者、そしてまた産業における消費者、両方を見ておりまして、カーボンバジェットの関連でグリーン化の措置を講じた場合、どういう影響が出るかということを見ています。

 2015年時点で、我々の委員会で第5次カーボンバジェットを勧告したときに、提言したときに、我々エビデンスを集めて、幅広いコンサルテーションプロセスを経て行いました。例えば、200回ものミーティングを研究者と開いて、技術とかについても話し合いましたし、またそれ以外にも産業界のリーダーであるとか、さまざまなステークホルダーとの話し合いを行いました。

 また実際、パブリックコメント、コールフォーエビデンスというのを行いまして、これに関しては、誰でもエビデンスを提供できるんですけれども。また、ラウンドテーブルも産業界と行いまして、CBIであるとか、あるいはエンジニアの雇用主協会であるとか、またエネルギーUKといってエネルギー関連の団体などにもラウンドテーブルに参加してもらって、雇用主として、また、発電事業者ないしは電力を利用する業界の意見を募りました。

 主要な分野においては、大学や民間研究所に対して新たにリサーチの委託を行ったりもしました。また、事務局内部でモデリングも行いまして、政府の関係省庁が使っているモデル、そしてそれ以外にも外部で使われているモデルを適用してみて、結果の比較なども行いました。委員会といたしましては、少なくとも月に1回の会合を開いて分析について精査しています。

 我々は一般市民とのエンゲージメントも行っておりまして、これはホームページを通じて主に行っております。つまり、我々の委員会のほうで行った会合の議事録、あるいは大臣に対して発したデータ、そして我々が出したレポート、また外部に委託してまとめてもらったレポート、全て公開しています。

 これは委員会のレポートの事例なんですけど、航空部門目標に関してのレポート、バイオエネルギーに関してのレポートなどありまして、我々、考えをまとめるためのリサーチ、どういうものを行っているか。これは第5次のカーボンバジェットを提言したレポートです。これはエネルギー価格とエネルギーの請求書に関しての年次報告書、そしてこれはカーボンバジェットを達成するに当たっての英国政府の進捗状況のモニタリングに関する年次レポート。

 我々は、このような透明かつオープンな形で仕事をしてきたことは、企業のサポートを幅広く担保する上で重要な点でありました。幾つかピックアップしてみますけれども、発電事業者としては、スコティッシュ・アンド・サザン・エナジー、水ではテムズ・ウォーター、セラミックスではセラム、エネルギー集約型の企業の支持も得ています。

 次に、競争力ですけれども、これはエネルギー集約型の産業にとっては、重要な問題で、日本ではさらに重要な問題かもしれません。というのは、日本経済全体で重工業が占めている割合というのは、英国経済と比較して2倍だからです。

 産業界が脱炭素化、そしてまた省エネルギー、エネルギー効率化を我々のシナリオに基づいて、最も費用対効果の高い形で達成してもらうということでは、非常に企業からの支持は重要だと思います。

 カーボンバジェットのパス、道筋として、産業界が炭素の排出量を削減するほうが、より困難かつコストも割高につくと思っていますので、産業が歩むべきパス、道筋としては、より易しいものとしてあります。

 政府は、またカーボンリーケージが起きないよう、つまり産業界がカーボンバジェットに対応するための追加的コストがかかるということでは、80、85%減税するという措置を行っています。例えば、EUにおける排出量取引のスキームとか、そしてまた英国自体のカーボンプライスフロア(炭素の下限価格)スキームの関連で、産業界がかけなければいけなかった追加的なコストということでは、80から85%を政府が補償するということになっています。気候変動委員会の評価に当たっては、政府が十分その補償の金額を払うことができるだけのお金を積み立てているかどうかということも確認しています。

 例えば、英国の製鉄所で、そういった政府からの補償を受けた後の追加的なコスト、電力に対するコストということでは、わずか0.3%、0.4%増にとどまっているということで、非常に小さいインパクトしか受けていない。これは、例えば為替レートとか、国際的なスチールの価格の変化であるとか、あるいは、英国では比較的労働コストが高いことによって、かかる追加コストと比較すると、非常に低い割合の追加コストと言えるでしょう。

 1990年から昨年までの排出量の削減については、この4年間というか、4年間での非常に進捗ということでトップだったのが、電力業界の排出量の削減でありまして、これはカーボンプライスフロア(炭素の下限価格)と関連している部分が大きく、2013年では1トンCO2当たり9ポンドであったのが、2015年には18ポンドになり、現在はその水準で止まっています。その効果として、石炭(火力発電)が電源構成から取り除かれたということです。

 また、廃棄物からの排出量削減も成功していまして、これは埋め立てにかかる税金が引き上げられたことに対する反応です。変化を見ていますと、例えば運輸部門において2006年にかなり大きな削減がありました。これは自動車の排気ガスについてが、かなり目標達成に貢献したと。しかし直近になりましては、実際にその車に関しての排気ガスの改良を上回るペースで車の需要が伸びてしまったことによって、ちょっとブレーキがかかっています。また、建築物の排出削減ということでは、なかなか進捗が進まない状態です。

 このスライドをご覧いただきたいんですけども、これはカーボンプライスフロアの影響ということで、石炭からの発電に関しては、この黒の線で示しております。2013年からは下がってきているんですけれども、2015年になってカーボンプライスフロアが導入されますと、更に低下しています。緑の線を見ていただきたいんですけど、2008年以降は低炭素発電に大幅な伸びが見られます。

 6月時点で進捗状況についての最新の評価を行ったんですけども、政策、50%ぐらいが既に実施済みということで、2032年のカーボンバジェットのレベルを達成するにはギャップがあり新たな政府による政策が必要であると考えております。

 先ほど申し上げましたように、6月時点でさらなる進捗が必要とされていると指摘した主要な分野というのは、まず、より低炭素の発電、それからCCSを普及させるための戦略、ガスによる発電とか。かなりその優先課題としては、2030年に向けて、走行距離1㎞当たりのCO2の排出ということでは、自動車とワゴン車ということに、もっと頑張ってもらわないとならない。2030年時点で新車、新しいワゴン車につきましては、60%が電気自動車ないしは超低炭素自動車である必要があるわけです。

 建築物、ビルにつきましては、今英国の建築物については、ガスの暖房について考えていかなければいけない。2020年代中ごろまでに、どう低炭素化を進めるか。これは新築に限らず、既在の住宅についても、もっとエネルギー効率を考えなければいけません。

 6月時点で我々委員会のほうで(カーボンバジェット達成に)必要な対策について提言しましたが、10日ほど前、英国政府が第5次カーボンバジェットを達成するための計画を発表しました。これは、クリーンな成長を産業戦略に掲げています。来年の1月には、この「クリーン成長戦略」についての正式な評価というのを、我々委員会としてまとめたいと思っていまして、今その戦略に含まれている50の措置についての分析を進めているところです。

 しかし、第一の印象としては、そのトーンというか基調はとてもよかったと。我々は、その戦略が第4次、第5次カーボンバジェットを達成していこうという前向きな意図がトーンとして感じ取られて、喜んでおります。しかし、十分野心的ではないと、十分強力な措置を第5次カーボンバジェットで達成するには講じていないということで、第5次カーボンバジェット達成するにあたり、政府が柔軟性、柔軟な措置を取り入れることが含まれていることに我々、懸念を感じています。

 柔軟性というのは、二つの具体的なことをさしておりまして、まず第一に、英国政府が、そのカーボンバジェット期間の前の期間において、その上限以上の削減、オーバーアチーブメントをした場合、最終年のカーボンバジェットにおいてその余剰分を充てる。

 それから、またもう一つはCDM、Clean Development Mechanismから、国際的にクレジット、割り当てというのを買ってきたいと。しかし、政府でも、そのいずれかをやろうとした場合には、気候変動委員会の助言を求めなければいけないことは分かっており、そして、気候変動委員会は、その二つのいずれもやらないよう強力に助言してくるであろうということを理解しています。

 しかし、そのトーン、基調としては、グリーン低炭素経済を達成するのと同時に、英国の経済成長を駆動していきたい。英国の製品・サービスの低炭素セクターというのは、GDPの3%のシェアまで上昇しておりまして、これは、英国のエネルギー集約型の製造業に匹敵します。

 2007年以来、不況も関係なく、この低炭素セクターは、年4から7%の成長を遂げておりますので、最も急成長を遂げているセクターと言えます。パリ協定を受けて、この低炭素セクターはグローバル経済で急成長しておりまして、我々のリサーチによりますと、主要な英国のセクターとなりつつある。低炭素の自動車産業というのは、2030年まで年25から30%の成長。そしてまた、低炭素の金融サービスは、2030年まで20%、そして低炭素のエネルギーに関しては、2030年まで4から7%ということで、非常に成長が早いセクターとなっています。

 独立リサーチでは、英国にとってこの低炭素というのが非常に大きな機会になるということで、2030年低炭素のセクターというのは、英国経済全体の10%を占めるということで、これは現在の段階で製造業が英国経済に占める割合に匹敵します。

 ですから、これはいい知らせと言えるでしょう。2007年に最初のカーボンバジェットをつくったときに、経済成長と排出削減が分離できるかということは、懐疑的な見方がありました。英国においては、非常に大きな成功をおさめたのです。英国経済は、1990年以来大きく成長を遂げております。G7の平均が61%であるのに対して、英国は67%、そして排出量削減については、同期間、英国が42%の削減を果たしているのに対して、G7は3%の削減にとどまっているということで、そういう意味では、立法化したことで、排出削減と経済成長というのは両立できるんだということを示しています。

 非常によい知らせをもって締めくくりたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。

浅野委員長

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまから委員からご質問をさし上げたいと思います。ご発言、ご質問ご希望の方は、名札をお立てください。私の指名に従って、ご質問をお願いいたします。

 まず半分ぐらいの委員にご質問をいただいて、お答えをいただき、続いて残りの半分の方に、またご質問をいただき、ご回答いただくようにしたいと思います。

 まず、大塚委員からのご質問を、どうぞ。

大塚委員

 大変ご努力をされていて、敬意を表したいと思いますが。たくさん聞きたいんですけど、ちょっと2点お伺いしたいと思います。

 一つは、この気候変動の委員会のメンバーについての任命に関して、政府が関与しているかと思いますけども、ちょっとそのメンバーの任命に関してどういう手続で任命されているかというところをお伺いしたいと思います。独立しているというところが問題なので、そこはどうなっているかということと、あと委員の任期が何年かという辺りも、ちょっとお伺いしたいところでございます。

 それから二つ目ですけども、産業との関係で、追加コストについてコンペンセーションをするというところがございましたが、このコンペンセーションはどういう産業について、どういう条件で、どのぐらいの額のコンペンセーションが考えられているかということと、実際にその例があるかどうかというところを教えていただきたいと思います。

 以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。では、加藤委員、どうぞ。

加藤委員

 どうもありがとうございました。大変すばらしい動きだと思っています。質問は、4ページにカーボンバジェットのインパクトというのが列記されています。ここにエコノミックインパクトとあるんですが、ここは先ほどお話のあったコストアップとか、そういうネガティブインパクトだけではなくて、最後にご説明のあったポジティブインパクトも考慮されたものになっているのかということをお聞きしたかったのと。

 それから二つ目は、10ページのエネルギーミックスのところで、カーボンプライスフロアをアップしたことで、石炭が極端に減ってきたというところなんですが、このローカーボンジェネレーションというのが、逆に伸びていない何か大きな理由があるのかどうかというのをお聞きしたいと思います。お願いします。

浅野委員長

 ありごとうございました。崎田委員、どうぞ。

崎田委員

 ありがとうございます。お話を伺いまして、例えば4ページのご説明のときに、エネルギー価格の変動の大きい市民や企業への対応が必要というようなお話を伺いました。企業への支援策の成果に関してお話を伺いましたけれども、例えばその関係で市民への支援策というのは、どういうふうにしておられるのか教えていただきたいと思います。

 二つ目は、今回のお話の中で消費者市民の役割としては、ローカーボングッズを選択するということを一番強く捉えておられるのか、もう少しお話をいただければ、ありがたいと思います。

浅野委員長

 ありがとうございました。末吉委員、どうぞ。

末吉委員

 たしか2008年の10月だったと思うんですけど、私、たまたまロンドンで当時のデック、環境省を訪問した際に、間もなくエリザベス女王がClimate Change Actに署名をして、法律が成立すると。そうなると、その後英国では政権交代が起ころうとも、首相が変わろうとも、2050、80を一貫を守る義務が出るんだという話を聞いて、びっくりした記憶があります。

 今日お話を伺いますと、その後非常に順調に進んで、非常にサクセスフルストーリーをお聞かせいただきました。ただ、私がちょっとお尋ねしたいのは、当然、相対立する利害があって、その利害の調整をやってこられたんだろうと思います。例えばローカーボンエコノミーは、非常にこれから伸びるとしても、ハイカーボンエコノミーが取り残されるかもしれない、排除されるかもしれない。それで私の質問はですね、伝統的な産業を含め、いわばこの方向に反対するような人たちが勢力を取り戻して、場合によっては政治情勢を変えると。今、下院は、ほとんどこのClimate Change Actに賛成だと聞いておりますけども、そういった政治情勢が変わっていくようなことなんかは、あり得るんでしょうか。その調整をどうされたのかも含めて、お聞かせいただければと思います。

浅野委員長

 では、ブラウンさん、どうぞ、お答えください。

バロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジ氏

 まず、気候変動法に基づいて、気候変動委員会は独立した法定機関となっていて、委員の任期は5年で更新可能。私は、設立以来ずっと委員なんですけれども。そしてまた、任命委員会というのがありまして、任命される場合には、委員長の承認が必要なんですけれども、その委員長ともう一人の委員と、完全外部からの独立した任命委員によって、セミプロフェッショナルの方です外部の、によって構成されていて、それからまた、ビジネス・エネルギー・産業戦略省からの代表もいて、その任命委員会で決めるんですけれども、委員長が最終発言権があります。最終決定に大臣の同意を求めて大臣に送られます。しかし、大臣が反対できるのは、その人物は特定の理由によって望ましくないと言い切れる場合で、それは今まで一度も起きたことはないし、今後やったとしたら、非常に大きな衝撃になるでしょう。

 それからエネルギー集約型の産業に対する補償ですけれども、まずEUのETSに参加している企業は、まずその産業界に対しては、無料の排出枠が割り当てられるというのが一つ。それからもう一つは、英国政府は、カーボンプライスフロア(炭素の下限価格)によって影響を受けた追加的なコストについては、80から85%の補償を行うということです。例えば、鉄鋼業での電力コストの30%程度、これは電力コストの3分の1がグリーン電源によって発生したとすると、その80ないし85%が政府によっての補償の対象になるということです。そうすると、その追加コストとして電気代は0.3%-0.4%増にとどまるわけです。あえて100%の補償にしなかった理由というのは、産業界が低炭素化のためエネルギー効率化に関して、さらに自らの考えるインセンティブを残したかったからであります。

 産業界にとってのコスト自体は上昇していると理解しておりますけれども、経済成長という観点では、追加コストということなんですけれども。で、産業界にとってのコストが上昇したというエビデンスはありますが、省エネも同時に行っており、そして、また新しい産業セクターの急成長も見られます。低炭素自動車、例えば英国に投資している日産がリーフをつくるとか、あとはタタとか、ジャガーのランドローバーとか出てきています。そしてスマートグリッドにも新しく企業が参入していて、また風力発電所ということでは、世界の企業でオフショアの風力発電所、そのサービステクノロジーカンパニーがどんどん出てきているということで、新しいセクターに対する成長というのも見られています。

 石炭発電が下がっているのに、なぜ低炭素化が進んでいないのか。緑のラインを見ていただきますと、上昇してきてはいるんです。Contract For Difference、CFDのオークションを行ったときの風力発電の価格というのを見ていますと、1MWh当たり120ポンドだったのが、大幅に下落して、1MWh当たりの55から70ポンドに下がっています。ですから、このオークションではその割安感、手ごろ感というのが高まっています。太陽発電コストも下がってきている、陸上風力のコストも下がってきている、コンベンショナルガスと同じぐらいになってきているということが言えます。

 燃料貧困の国民に対するサポートのご質問もありました。気候変動委員会では、そういう意味では、この気候変動法いかにかかわらず、この燃料貧困にあえいでいる国民に対しては、政府は何らかの政策をとる必要があるということで、それを口実に、気候変動対策を進めないということはいけないと思います。

 機会といたしましては、ECO、Energy Company Obligationというのがありまして、これは住宅の断熱に対してある程度のサポートをし、影響を受けている低所得層への対策をしています。

 まず、燃料貧困層に対して、「グリーン成長計画」(Green Growth Plan)というのがありまして、低所得層というのは、賃貸で借りている場合が多いわけです、住宅に関して。ですから、そういう意味では、ある程度の基準を満たした最低のエネルギー効率を持った形で賃貸に出さなければいけないということで、そうすれば、テナントのほうでは、あまり高い暖房費、割高に払わなくて良くなり、燃料貧困層に対する支援になります。

 それから、低炭素か高炭素のものを買うかどうかという選択を消費者に与えるということに関して言えば、英国とヨーロッパの規制は大変効果的でありました。白物家電については、高炭素のものは購入してはならない、ですから売らないということで、産業界として省エネ化を図らざるを得ない。それから例えば洗濯機なんかもそういう形になるわけです、電気が割安に。自動車メーカーも低炭素自動車を開発して売らざるを得ない。そして、そういう意味では、選択幅が消費者にとって狭まるようですけれども、消費者にとってより良い状況になっているという意味では、そういった面を規制している法律というのは、効果を発揮したと言えるでしょう。

 気候変動法が確実性をもたらしているということですが、気候変動法案が提出されたときには、下院において全政党の支持を得て可決していて、反対票は1票にとどまったということで、非常に強力な支持があった。また、国民からも強力な支持がありました。気候変動委員会が政府から独立しています。政権が交代しても、気候変動法を改正することが非常に困難であるという意味で、許容性があるわけです。新たな政権が変えようとしても、かなり難しいでしょう。下院においては、2008年当時ほど強力でないにしても、まだ強力な支持がありますし、貴族院においては圧倒的な支持があります。

 産業界のほうでは、電力コストについて不満はあることは真実ですけれども、しかし、補償のスキームがあるということは大きな差です。というのは、補償を受けられるんだなということで、非合理的ではないということを産業界も納得しているのです。投資家、株主のほうでも、産業界の将来ということに関心を持っていて、例えば大手の年金基金などは、投資先の企業に関してエネルギー効率化、排出量削減に志を持っているかということを確認しています。

 ですから政府からシグナルが出ているだけではなく、投資家、そして株主のほうからも、そういうシグナルが出ている。投資先の企業に2030年代、40年代に成功してもらいたいということでは、グローバルな成長産業とされているからです。

 このスライドにアルストムというメーカーの名前が出ておりますけれども、機会が課題を上回っています。例えば洋上風力発電所に新たな製品をおさめるチャンスと受け止めています。

浅野委員長

 すみません。あと4人から、質問があります。

 時間がなくなりつつありますので、申し訳ないのですが、コメントはご遠慮ください。質問は2問にしてください。通訳の人にわかるように、的確に質問が伝わるようお願いいたします。

 髙村委員、どうぞ。

髙村委員

 ありがとうございます。

 一つ目は、スライドの4ですけれども、カーボンバジェットの影響について、エコノミックモデルを使ってらっしゃるのを存じ上げているんですが、財政への影響、経済への影響、競争への影響については、それで出てくると思うんですが、ほかのものについてどういう方法を使って評価をされているかという質問です。

 二つ目は、もっと大きな漠とした質問ですけれども、排出量のコントロール、公的なよりよい管理という意味で、非常にこのカーボンバジェットはうまく機能しているというふうに拝見いたしましたけれども、そのほかに何かベネフィットといいましょうか、よいことがあるか。逆に、それを管理するための課題というのがあるかどうかという質問です。

浅野委員長

 池田さん、どうぞ。

池田説明員

 2点、質問させていただきます。

 第1点、簡潔に申し上げますと、補償スキームにつきまして、財源はどういうふうに手当てをされているのかということについて、お伺いしたいと思います。

 2点目ですけれども、15ページにございます、英国は経済成長と排出量のデカップリングを実現できたということを示していると思いますけれども、この要因については、製造業から金融業とのサービス業への製造構造の転換が大きな要因なのではないかというふうに考えますけれども、どう考えるかと。その場合、輸入品の増加によって、英国の製造段階のCO2というのは減ったかもしれませんけれども、輸入国のCO2が増えている可能性があって、地球規模の課題である気候変動問題の解決という観点から、必ずしもその解決につながってないんではないかという指摘については、どういうふうに考えるかお聞かせいただきたいと思います。

 以上です。

浅野委員長

 廣江委員、どうぞ。

廣江委員

 ありがとうございます。2点、お伺いいたします。

 1点目は、今の池田委員の質問に関連します。英国の場合には、いろいろカーボンリーケージを考えて、コンペンセーションしておられること、よくわかりました。ただ、やはり、先ほども出ました、15ページを見ますと、金融業に代表される英国の誇るべき金融業へ鉄鋼業等々のエネルギー消費産業からシフトしていった結果じゃないかなというふうに考えてしまいます。その場合、先ほどコンペンセーションいろいろしていらっしゃるわけですから、仮にそれが起こったとするならば、それは別にカーボンバジェットの結果ではなく、もっと別の理由があったのではないか。

 翻って我が国を考えますと、日本のある鉄鋼メーカーは、大変な事件を起こしてしまったわけでありますけれども、その結果としまして、世界の500社と取引をしているということを我々は知りました。すなわち、世界の500社に対して大変効率的な安くて、多分CO2の排出量の少ない製品を供給しているんだろうと思います。こういった産業をわざと失うような政策を、我が国はとるべきなのかどうか。それがディールに対する我々の責務なのかどうかというのが1点です。

浅野委員長

 すみません。ご質問を簡潔にお願いいたします。

廣江委員

 2点目は、ドイツと英国の原子力に対する政策の違いです。どちらの国もCO2削減に一生懸命取り組んでおられますが、ドイツはもうこれを間もなく廃止をするとなっていますが、英国はこれから私の知る限りでは10基以上、新規にプラントをつくろうとしていると言われています。この政策の違いの背景を、可能であれば教えてください。

 以上です。

浅野委員長

 増井委員、どうぞ。

増井委員

 はい、ありがとうございます。2ページのところにツールキットという言葉があるんですけれども、これは一体どういうようなものなのか。また公開されているのかどうか、この点を教えてください。

 2点目なんですけれども、14ページのところにローカーボンエコノミーがGDPの2から3%とあるんですけれども、低炭素経済の具体的な定義ですとか、あるいはどういった形でその統計がとられているのかというところについて、教えていただければと思います。

 以上です。

バロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジ氏

 まず、最初のご質問ですけれども、カーボンバジェットのインパクトの評価ということで、気候変動委員会が全ての評価を行わなければいけないというのではなく、また、委員会のほうでは、燃料貧困者と競争力だけを見ていて、年に1回、燃料価格と燃料の請求書に関してのレポートを出している。その面のインパクトの分析を行っています。

 政府は、大気質と健康に関して、以前は注目していなかったのですが、現在注視しています。それからまた、財政的なインパクトということで、燃料税がかなり税収の中で大きな割合を示していて、今後、燃費が良い自動車は、燃料税の税収が減ることになるので、どのようなものが燃料の代替になりうるかということも含めて検討しています。

 政府のほうでは、また、供給の安全保障、エネルギー輸入に関しての安全保障とか、電力構成を考える際に、やはり評価が必要だということで評価してくれています。

 それからですね、カーボンバジェットの恩恵と課題ということですけれども、長期的な目標に向かって一挙に行かなければいけないというのではなくて、中間地点で確認するタイミングというのが幾つかありますので。で、産業界としては、政府の政策の長期的方向性については、政府からシグナルを受けていて、政府は一貫した政策をもってやってくれるという信頼を持っています。強力なシグナルが出ているということで、産業界としても自信を持って投資ができる。洋上風力発電所は、六、七年前は投資していいかどうかの自信が持てなかったけれども、今非常にみんな争うようにして、風力発電、洋上のものに参入しています。というのは、必ずリターンが上がると確信が持てているからです。

 次のご質問は、補償、政府の財源ということで、エネルギー集約型産業に対しての補償。英国は、税金について仮説を立てると、仮定をするということはないので、私の憶測では、恐らく英国の税収が補償の支払いの財源になっていると思っています。

 また、排出削減と経済成長のデカップリングが起こったのは、単に英国経済が製造業から知識集約型経済、金融サービス経済にシフトしたからではないかという点について。無論、ローバリューの製造業は無くなったものもありますけれども、ハイバリューの製造業に関しては逆に成長しています、例えば自動車産業とか航空宇宙産業とか。ですから、もちろんその一部のローバリューの製造業は無くなっていますけれども、それはいずれにせよ、低炭素化に対する取組みにかかわらず無くなったと思います。土地とか労働力の値段が英国は高いので、驚くに値しません。ですから、質問に対する答えはノーです。デカップリングは、製造業を失ったからではなく、主な製造業幾つかについて、非常に英国は更に成長しているからです。

 英国においては、今後続けてやらなければいけないという重要な点としては、その排出というのは完全に封じ込めることはできないので、排出に対してどうやってカウンターバランスをとっていくか、そういう意味では、再植林が重要になってきます。スコットランドで行っています。北部ヨーロッパや日本などでは木造建築がもっとありますが英国では木造のものがあまりない。建築からの排出を相殺する意味では英国も心がけなければいけない。そして、そういった森林を維持することによって、ある意味ではCO2を分離することによって、炭素の吸収も行っていくことができると。そういう意味では、土壌の改良を英国ではピートの改良できる余地というのがあるので、それもやはりカーボンシークエストレーションということで、CO2の吸収源というのを広げていく。こういった重要な活動については、今後とも維持していくことが大事だと思います。

 日本の経済が英国の経済とは違うということは、十分認識しております。恐らく日本の経済に占める製造業の割合というのは、英国における製造業の割合の2倍以上だったと思いますので、そういう意味では、こういう活発な議論、意見交換は望ましいとは思います。英国でやっていることが、青写真としてそのまま日本に当てはめることが可能とは決して思っておりません。日本の国内の事象に合わせた日本独自のプランというのが必要だということは認識しております。

 ドイツと英国の原子力の違いはどこから来るのかというご質問でした。英国においては、原子力発電に対して国民から支持を得ています。クリーンな電源であり、また給与水準も高い産業界として、既存の原発があるコミュニティーからも支持があり、また原発の新規の建設が予定されている用地の周辺のコミュニティーからもサポートがあります。

 しかし、原発の今後ということでは、一つの限界がコストにあると思います。というのは、原発の場合には、1MWh当たり95ポンドが35年間補償されているのに対して風力発電の場合は、1MWh当たり57ポンドになっており、また、期間も15年の補償で済むので、そういう意味では経済的な根拠から考えると、原子力発電は非常に不利で、今後難しくなってくると思います。

 このスライドにありますツールキットについてのご質問ですが。このツールキットというのは、ポリシー、政策なんです。ですから、その政策を集めてツールキットという名前で呼んでいます。

 それから低炭素経済がGDPの二、三%を占めるという推定なんですけども、この中には何が入っているかと言いますと、例えば低炭素に対するコンサルタント会社であるとか、金融企業であるとか、保険会社、気候変動に特化した保険であるとか、あるいは低炭素の自動車、また洋上風力、洋上ケーブルビジネス、そしてまたスマートグリッド関連などが入ります。その推定値を出した、より詳細な計算方法につきましては、気候変動委員会のホームページからPrices and Bill Reportをご覧いただければ、より詳細な計算方法が出ています。

浅野委員長

 どうもありがとうございました。バロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジさん、今日は13時からの会議から続けて、この会議を加えると4時間にわたり、大変熱心にご説明をいただき、また私どもの質問に対しても丁寧にお答えいただきまして、本当にありがとうございました。大変参考になりました。

 どうもありがとうございます。改めて、拍手をしたいと思います。

(拍手)

バロネス・ブラウン・オブ・ケンブリッジ氏

 どうもありがとうございます。

浅野委員長

 それでは、今日の会合はこれで終わりますが、事務局からの報告をお願いいたします。

木野低炭素社会推進室長

 発表者の方、委員の方、熱心なご議論ありがとうございます。次回の日程なんですけれども、12月ごろを予定しておりますが、議題、日程の詳細につきましては、追って連絡をさし上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

浅野委員長

 それでは、本日はこれで閉会いたします。ありがとうございます。

午後5時05分 閉会