長期低炭素ビジョン小委員会(第17回) 議事録

日時

 平成29年9月5日(火)15時00分~17時28分

場所

 全国都市会館 大ホール

 東京都千代田区平河町2-4-2 全国都市会館2階

議事録

午後3時00分 開会

木野低炭素社会推進室長

 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第17回会合を開始いたします。

 本日は、委員総数18名中11名の委員にご出席いただいており、定足数に達しております。なお、何名かの委員については、遅れるというご連絡をいただいております。

 なお、本日ですけれども、ご欠席の電気事業連合会副会長の廣江委員の説明員といたしまして、小川様にお座りいただいておりますので、委員の皆様にはご承知おきくださいますようお願いいたします。

 また、既に地球環境部会決定とされております本委員会の運営方針についてでございますが、原則として会議は公開とされていることから、本日の審議についても公開とさせていただいております。

 では、以降の議事進行について、浅野委員長よりお願いいたします。

浅野委員長

 それでは、17回目の小委員会を開きます。

 事務局から、今日配られている資料の確認をお願いいたします。

木野低炭素社会推進室長

 お手元の資料をご確認ください。

 議事次第の下に資料、4種類ございます。資料1、2として、今回のヒアリングのプレゼンテーション資料。参考資料1が我が国におけるCCS事業というもので、参考資料、もう一つ、本委員会の委員名簿をつけさせていただいてございます。

 なお、前回のこの委員会のヒアリング資料に関しまして、後日追加でいただいたご意見について、委員の皆様の机上に配付させていただいております。

 資料の不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

浅野委員長

 それでは、議事に入りたいと思います。今日は、前回に続きまして、有識者からのヒアリングを行います。

 事務局から今日のヒアリングについてご紹介をいただきます。

木野低炭素社会推進室長

 では、今回の委員会ですけれども、引き続き関係者のヒアリングということで実施してまいりたいと考えております。今日のテーマはCCSになります。

 本日、お二人、海外からスピーカーの方をお招きしております。

 お一人目といたしまして、国際的に実用化されつつある実情について、グローバルCCSインスティテュートのブラッド ペイジ チーフエグゼクティブオフィサーよりご説明いただきます。

 また、お二人目といたしまして、ノルウェーにおける活動の事例ということで、同じくグローバルCCSインスティテュートのイングビット オンブストレット シニアクライアントエンゲージメントリード様よりご説明いただきます。

 お二人の方々には、本日、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます。委員の皆様につきましても、忌憚のないご議論をどうぞよろしくお願いいたします。

浅野委員長

 それでは、ヒアリングに入りたいと思います。

 今日は、お一人ずつ発表いただきまして、その後、委員の皆様方からのご質問にお答えいただくという形にしたいと思います。発言される場合には、お手元のネームプレートを立てていただきまして、指名に従ってご発言をいただきたいと思います。発表者へのご質問につきましては、委員お一人ごとに質問をいただくことといたします。質問はまとめてさせていただいた上で、まとめてご回答をいただくということにいたします。今回は同時通訳ではございませんで、逐次の通訳が入りますので、時間に余裕がございません。大変申し訳ないのですが、お手元に質問用のメモ用紙を置いておりますので、このメモ用紙をご活用いただきまして、ポイントを絞った質問をしていただきますようにお願いいたします。それから、よく、こういうときには、ご発表に対するお礼の言葉などを述べる委員が多いのですが、今回はそのようなことは一切省略させていただきますので、ご発表のお二方には大変申し訳ございませんが、時間を有効に使うためにということで、ご理解をいただければと思います。可能な限り、全ての委員にご質問をいただけるように進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、まず最初にブラッド ペイジさんからご発表をいただきたいと思います。

ブラッド ペイジ氏

 皆様、今日はどうもありがとうございます。このような委員会のほうでお話をする機会をいただきまして、感謝しています。気候変動に対応する中で非常に重要であると我々が考えている要素について、今日はお話をします。できるだけ質問の時間をとるべく、早目に発表のほうは進めていこうと思っているんですけれども、いろいろなCCSの側面について触れてほしいというご要望もいただきましたので、理想的に考えるよりも、少し長目の時間になってしまうかもしれません。

 まず背景なんですけれども、まず、化石燃料の需要といったところから見ていきます。1990年というのは、1次エネルギー需要のまさに81%が化石燃料でした。それが2014年になりますと、やはりここでもまだ1次エネルギー需要の81%、同じ%が化石燃料で賄われていて、再生可能エネルギーはというと1%しか増えなかったんです。ただ、その間に1次エネルギー需要そのものは50%も増えました。それから、IEAの2040年の予測によりますと、やはり化石燃料は2040年になってもなお74%を占めるということになります。そして、このエネルギー需要そのもの、トータルではプラスさらにまた50%ということになります。それから、一つわかっていることは、実は化石燃料というのが足りなくなることはなさそうだということなんです。実際に確認埋蔵量というのは石油換算で6兆バレルとなっておりまして、また、可採年数に関しては、1990年から2010年に至るまで、もう特に変わらず、ずっと75年というふうに言われてきております。ただ、その一方で、気候変動の課題というときには、このままというわけにはいかないわけです。それにも合わない内容となっています。

 一見非常に複雑に見えるこちらのチャートなんですけれども、これはパリの合意内容、これは約束をした内容がどういうものなのかをまず書くというところから始まっています。一番上に線がありますけれども、これはIEAが思うところのギガトンの単位で見たときの排出量、現在の世界の国々の政策に基づくと、これぐらいの量になるという線です。今指しているところ、ここまで下げないと、いわゆる2℃のシナリオは達成できないわけなんです。これもIEAの予測なんですけれども、このページの右のほうにいろんな技術が書いてありますけれども、2℃に上昇を抑えるというシナリオを達成するためには、この右の棒グラフの薄い色のところですね、これ全部、総動員しないといけないということなんです。パリの合意には1.5℃ということも書かれているんですけれども、そこまで行かないまでも、1.75℃の上昇に抑えるためには、じゃあ、さらに何が必要かということなんですが、それを表しているのが、この左のグラフの一番下の部分に描いてある色の部分です。つまり左のグラフで言うと、下のところに濃い色がいろいろあります。これは右側のグラフとも色は同じなんですけれども、濃い色というのは、2℃ではなく1.75℃までにしようと思うと、これだけ追加的に必要ですという意味なんです。このスライドの最後に申し上げたいことは、これ、シンプルな話なんですけれども、2℃というシナリオを達成するためには、IEAは常に、CCSというのはソリューションの14%を占めるということを言ってきました。ですが、2℃ではなくて1.75℃にとどめるということになりますと、その追加的な削減分の32%はCCSが担わなければなりません。

 そして、このためには、排出削減策としてはあらゆるソリューションを動員する必要があるということなんです。これまでは、排出削減というと電力のセクター、特に再生可能エネルギーを使うとか、原子力を活用するとか、効率をアップするということが言われてきましたけれども、このグラフで言いますと、青で描かれているCCS、これも強く必要になります。よく見落としがちなのは、工業の部門で使われるCCSということなんです。といいますのは、工業のところでは、再生可能エネルギーというのはほとんど関係がないというか、使われないわけなんですね。でも、この工業、これではインダストリーとその他のトランスフォーメーションと書いてありますけれども、ここの部分で世界の排出全体の25%が出ています。

 2℃シナリオと1.75℃のシナリオの違いを際立たせているのが、こちらのスライドなんですけれども、CCSでもって削減する量は、このグラフ、右側が1.75℃のほうなんですけれども、かなり追加的に削減が必要だということがわかると思います。CCSによって、その分減らさなければいけません。

 IPCCの第5次報告書のほうですけれども、これは2014年11月に出ているものなんですが、そこで11のシナリオがありまして、その中で特に取り上げているシナリオがあります。そこで考えたのが、2℃に上昇を抑えるということを考えたときに、例えば一つのテクノロジーが使えない状態ということをやっていった場合、一つずつ使えないものが増えていった場合、それぞれどれだけコスト的に影響があるかを見ました。その11のモデルで平均をとってみたところ、まず、原子力が使えない状態になった場合は、この2℃をなし遂げるためのコストというのは7%上昇することがわかりました。それと全く対極にあるものが、CCSが使えない場合ということなんですけれども、その場合はコスト138%増というふうになります。この取り上げた11のモデルあるいはシナリオの中で、七つに関しては、CCSを使わない場合は、そもそも2℃に抑えることはできないという結論が出ています。つまりCCSというのは、技術として単にオプションでやるかやらないという話ではなくて、もっとCCSに注力をしていく必要があります。

 では、今日、CCSの設備はどこに見られるのか、場所を見ていきましょう。今、世界中で合わせますと、大型のCCSで操業中のものが17あります。17のうちの12は北米、つまりアメリカとカナダにあります。それから、ヨーロッパのほうにありますけれども、二つほど、これはノルウェーにありますので、後で私の同僚のイングビットのほうが話をします。それから、もう一つ大事な点としては、GCCにも二つのプロジェクトがあるという点です。また、建設中のものが四つありまして、そのうちの一つは中国で初のCCS設備になります。実際、中国というのは、いろいろな段階のものはありますけれども、八つのプロジェクトがもう既にありまして、そしてCCSのプロジェクトの件数だけで言いますと、もう今、世界で2番目に多いと言えます。私がこの仕事に関わるようになったのが6年前なんですけれども、6年前当時というのは、中国はその他の地域、Rest of Worldというふうに分類されていたんです。

 じゃあ、実際にどこにあって、それらの施設がどれぐらいの期間もう操業しているのかを見ていくことにしますが、このグラフでわかりますように、かなりの大型のものがアメリカ、カナダにあって、しかも結構前から操業していることがわかります。ただ、特にこのチャートで言うとオレンジ色のところなんですけれども、まだこれは未来に属する部分ではありますけれども、かなり将来的には多様な地域でCCSは行われそうです。

 こちらのスライドは、CCSがいかに多様な分野で使えるかということを表したものです。多くの人は、CCSというと石炭火力発電所の関連で使われるものだと思いがちですけれども、実は、完全にCCSがついた形で運転されている火力発電所は二つしかありません。実は、かなりの部分というのは、天然ガスの処理だったり、あるいは石油の精製だったり、水素製造、肥料製造などの分野でCCSが使われています。興味深いのは、特にこの右側のほうに目を向けていきますと、鉄鋼の生産ですとか、化学品の製造、それから、またCoal-to-liquidsということで、石炭から液体、液化をするという、それからまた発電といった分野が見てとれます。これからおわかりいただけますように、幅広くCCSは使えるものであり、さまざまな分野で使われていきます。

 こちらの世界地図なんですけれども、最近のCCSの開発の状況を表しておりまして、一部のプロジェクトは、規模は大きくないまでも、しかしながら、非常に重要な開発案件があります。とりわけ苫小牧で行われている実証のプロジェクト、これは非常に価値の高い取組だと思っておりまして、日本政府、それから日本のCCSの取組を讃えたいと思います。

 現在、39のCCSの施設というものが建設中ないしは操業中、あるいは計画中という形になっておりまして、トータルしますと、6,900万トンのCO2の回収ができるということになります。今、既に運転中のもの、21ありますけれども、これは回収できるCO2としましては37Mtpaということで、これをピンクの丸で今示しております。ですけれども、CCSの回収と貯留、IEAのモデルが求めている内容、あるいはIPCCのモデルの解析に合う内容にしていこうと思うと、こちらの右のほうにたくさん丸が出てきましたけれども、これだけの量が2040年までにCCSの対象にならなければいけません。しかも、この今右側に示したたくさんの丸、これを全部きちんと回収・貯留したとしても、2℃だけにしかなりません。つまり1.75℃に抑えようと思ったら、もっと必要なんです。ということで、このスケールアップをCCSについてはしていくことが喫緊の課題となっています。

 よく聞かれるのが、これだけの二酸化炭素を貯留する場所はあるんでしょうかという質問なんです。短いお答えとしては、もう間違いなくちゃんとありますという答えです。こちらの世界地図、数字が載っていますけれども、これは単位はギガトンです。つまり、これだけの貯蔵の能力がありますということで、十分あります。それから、日本に関しては、かなりの確度、confidence levelをもって、世界中の地質学者、それから日本の地質の調査の結果を見ても、日本の周辺で140ギガトンの貯蔵の能力があると見込まれています。140ギガトンと聞いて、あまり多くないと思われるかもしれませんけれども、この数字は、例えば英国の2倍ですし、それから、ノルウェーのほぼやはり2倍に相当します。しかも、英国やノルウェーというのは、要求されるだけの貯蔵量の、十分に賄うだけのものを自分たちは能力として持っているということをわかっています。

 そうすると、当然出てくる質問が、貯蔵したとして地震の影響は大丈夫なのかということですが、答え方として三つあります。まず、カリフォルニア州というのは、世界でもトップクラスの石油やガスを生産している州です。ですけれども、地震活動も活発です。実際に、カリフォルニアの地質構造というのは、まさにそこに二酸化炭素を注入、圧入していくわけなんですけれども、そこに、同じようなところに石油とかガスがずっと何百万年も今まで眠ってきたわけです。それから、もう一つわかっているのは、石油やガスの生産をしたことがきっかけとなって地震が起こるなんていうことも、今までありませんでした。次の例はカナダのウェイバーンですけれども、こちらは300万トン、年当たりの量として二酸化炭素の注入がなされてきました。そして、この大規模な二酸化炭素のモニタリングも、ここのウェイバーンで行われてきました。そして、地震という観点でのモニタリングをしたんですけれども、二酸化炭素の注入したことによる地震の揺れというのは、検知できないレベルにとどまっています。ということで、これぐらいのレベルでは、貯蔵しているものに対する影響は、ウェイバーンではないし、また、貯蔵されているものが漏れるということ、あるいは地震が誘発されるということもないと考えています。それから皆さんの国、日本なんですけれども、地震があった後もきちんと貯蔵がしっかり担保されているという例があります。長岡のほうですけれども、2003年から2005年にかけて、1日当たり20から40トンの二酸化炭素が地下に圧入され続けました。そして、覚えていらっしゃるように、2004年には大きな地震がありました。これは6.8のマグニチュードでしたけれども、だからといって、貯留槽に何か孔があいたり漏れたりということはありませんで、二酸化炭素はその中にきちんとおさまったままです。ただ、ここで大事なのは、やはり貯留に携わる人というのはプロでなければいけないということ、そして、選ぶ貯留のサイト、場所というのも、非常に構造としてしっかりした場所を選ばなければなりません。決して妥協を許してはいけませんし、質の面でも、細かいところに対する配慮、そういった意味で細心の注意は必要です。

 では、なぜ、じゃあもっとCCSのプロジェクトが今まだないのかといいますと、答えはシンプルです。実際に一般公衆のサポート、例えば助成金の形ですとか、無償の援助だったり、あるいはフィードインタリフ、税の買い取り制度だったりという形で、2006年以降の再生可能エネルギーに対する投入額というのは、米ドルで、もう何十億ドルという規模です。2006年から2016年の間の10年間に、再生可能エネルギーの分野に行われた投資というのは、米ドルで、これは2兆5,000億ドル、それに対してCCSはというと200億ドルだけです。ですが、その一方で、その間も1次エネルギーに占める化石燃料の利用というのは非常に大きかったわけです。80%程度でずっと推移してきました。ですから、これだけの投資を再生可能エネルギーにしてきたにもかかわらず、排出という意味では、ほとんど影響がなかったという感じです。

 我々が思うに、このCCSというのは新しいエネルギー経済の鍵を握ると思っています。再生可能エネルギー、そして原子力、そして効率というところの投資を補完することができます。そして、また、CCSを使うということは、クリーンな化学品やプラスチック、スチール、そして肥料、セメントなどの生産にも資するものになりますし、また、水素の生産をしていくということのチャンスも、これは秘めています。

 では次に、初めてCCSをするときのFirst of a kindと呼ばれる投資額について見ていきます。つまり初めてやる場合ということです。何回も繰り返したn回目というのではありません。ここで申し上げたいのは、通常の工業プロセスの中で、そもそも二酸化炭素を分離するような形のものというのは、CCSをするときのコストが一番安くて済みます。このグラフで言うと左側なんですけれども、三つ、このCCSは1トン当たり大体米ドルで30ドルぐらいで済むというのが、天然ガスの処理だったり、あるいはバイオマスからエタノールを得たり、それから肥料を生産するといったプロセスです。ですけれども、もともと二酸化炭素があまり密度が高くない形で使われているような業種になっていきますと、コストはその分大きくなってしまいます。これは初めてやる場合ということで、First of a kindということではじき出した数字だったんですが、アメリカのエネルギー省がまとめた結果を見ますと、回数を重ねるたびに、そしてまた研究開発が進みますと、このコストは下がってきます。

 こちらのグラフが、エネルギー省がまとめているもので、目指しているところを表しているんですけれども、CCSを火力発電のところで行っていくことを想定したコストの削減の形を示しています。まず、2005年と2012年を比べてみますと、2005年当時、1トン当たり100ドルあまりかかっていたコスト、それが2012年には60ドルほどに下がっています。今、エネルギー省が取り組んでいるのは、そのコストをさらに2020年までには40ドル未満にしようというものです。これは再生可能エネルギーがたどってきた道と似ております。つまり投資が進み、それからまた導入・展開例が増えて研究開発が進めば、その分、コストは下がってきます。

 こちらに三つのプロジェクトの事例が書いてありまして、もう今これは実際に使われているもので、コストについてもわかっているものです。これは初めてのCCSとしてサスカチュワン州で2014年に始まった発電の分野でのバウンダリーダムのケースなんですけれども、これは米ドルでメガワットアワー当たり130ドルの平準化発電コストです。これは本当に初めてのケースということで、これだけの額がかかったんですけれども、サスカチュワンパワー会社、これ、電力会社が言っているのは、次にやるときには、この設備投資、それから運転の部分、合わせても30%のコスト削減ができると考えています。次の例がテキサス州のペトラノバなんですけれども、これは日本のすぐれた技術を応用しておりまして、平準化発電コストというのは、先ほどご紹介したバウンダリーダムよりもかなり下がっております。メガワットアワー当たり117ドルです。この場合も、やはり次のユニットでは、さらに20%の削減ができると見込まれています。最後の例なんですけれども、これはアルバータ州のシェルクエストのCCSですれども、これはスチームのメタンデフォーマーに使っている例です。もともとは1トン当たりカナダドルで120ドルというふうに予測を立てていたのに、実際には1トン当たり90ドルで済んだということです。ということで、もう早速次を今考えていて、次はさらに20%削減ができると思われています。

 たくさんの技術が実は今開発をされていまして、その中の四つをここに掲げておりまして、どれも炭素の回収のコストを下げる方向に働きます。法的、そして規制の部分についても触れてほしいという要望があったので、こちらのスライドは用意したんですけれども、配付資料の中に入っていると思いますのでご覧ください。私がここで説明をすると長く時間がかかりますので。ただ、ここでのポイントは、既に法的及び規制の枠組みというのは、世界のいろいろなところで存在していると。もちろん改善の余地はあるわけなんですけれども、実際に、こういったものをベースにCCSの業界というのはもう動いていますということです。

 また、これもよく出る質問なんですけれども、長期にわたっての責任は誰が担うのかということです。つまり二酸化炭素を貯蔵していくのは何百年という単位なわけですけれども、そこがきちんと漏れなく封入された状態に維持されるための責任は誰が担うのか。これに対しては、一つの答えがあるわけではありません。いろんなアプローチがあって、世界中でも検討されています。ただ、やはり一つはっきりしているのは、究極的には、責任を担うのは政府になるであろうということです。つまり、個々の企業よりも、より確実に長きにわたって存在しているはずなのが政府なわけで、ですから、いずれ社会、コミュニティとして合意をして、長期にわたっての二酸化炭素の貯蔵については、その責任を政府として受け入れなければいけないと思います。ただ、やはりそもそもの管理のあり方がずさんだったり、あるいは安全でない操業がなされるような、そういう施設というのは、コミュニティに押しつけるわけにはいきません。ですから、まずは前提条件といったところをしっかり詰めていかなければなりませんし、まだその作業は今やっているところです。ですので、このテーマ、本当に長く話すこともできるんですけれども、まとめとしましては、いろいろなプロジェクトを経験する中で、さらに責任のあり方についても検討して、これからまだ進展していくものだということでしょう。

 それから、もう一つ説明してほしいと言われたのが、CCS-ready規制です。我々の研究所のほうでも、このCCS-readyについての我々の見解をまとめてはいますけれども、EUと、それから英国のほうで、既にこれに関しては文書が出ています。ただ、恐らく英国のCarbon Capture Readyのガイドライン、ガイダンスというのは、ここに要点をまとめておきましたけれども、これが恐らく最も包括的で、また何をこれは言わんとしているのか、わかりやすい内容ではないかと思います。

 私の最後の言葉なんですけれども、このCCSというのは、安全で実証済みで、そして多様に用いることができるものだと申し上げます。

 この度は、本当にこのような場をいただきまして、ありがとうございました。

浅野委員長

 ブラッド ペイジさん、どうもありがとうございました。

 それでは、委員の皆様方から、ご質問がございましたら、どうぞ名札をお立てください。最初にお願いしましたように、簡潔に質問のポイントだけ、謝辞などは全部省略でお願いいたします。

 ほかにいらっしゃいませんでしょうか。

 それでは順番にお願いいたします。安井委員、どうぞ。

安井委員

 日本という国は、やはり火山があったり地震があったり、いろいろと皆さん心配をしてしまう、CCSが本当に100年で抜けてしまうようなことはないんだろうかと。せっかくためたのに抜けるようなことはないんだろうかということを心配してしまいますし、場合によると、地震を誘発してしまうんじゃないかという方もおられる。そういうことが今どのぐらいの確信度を持って例えば、我々は説明をしたらよろしいのか、アドバイスをいただきたい。

ブラッド ペイジ氏

 ありがとうございます。

 やはり一番最初にそういう場合に言うべきことは、専門の地質学者で、石油とかガスの分野で地下の構造とかで非常に経験豊かな人が関わりますと。それから、また、まず貯留槽に当たる場所についてのキャラクタライゼーション、特性評価ということをしっかりやるということを言います。

 アメリカの場合は、まさに50年、60年の間に、いわゆる石油増進回収法(EOR)をやってきたお陰で、その辺りの知識を大分構築することができました。その中で、地下にCO2を圧入するときに、できること・できないこと、それが大分わかりました。

 今のご質問に対して、最後、二つ申し上げたいんですけれども、必要なのは、まず効果的な形で計測、モニタリング、それから検証をするためのプロトコールをきちんとそのサイトに関してつくっておくということが必要です。それから、万が一漏れがあったときに、早い段階でそれを検知することができるようにしておく。この二つがとても重要です。

浅野委員長

 どうもありがとうございます。

 それでは、小川部長、どうぞ。

小川説明員

 2点お願いします。

 1点目は、操業しているサイトの住民、あるいはその周りの漁業者というのの反応がもしわかれば教えていただきたいと。1点目です。

 2点目は、我々もそうなんですけども、これを運用していくときに、やはり反対された場合、どういうふうに対応したのか。もし計画で断念したようなところがあれば、その背景みたいなものを教えていただけるとありがたいと思います。

 以上です。

ブラッド ペイジ氏

 地元、コミュニティに関わってもらうエンゲージメントというのは、どんなCCSのプロジェクトでもとにかく大事で、かなり我々も、そのメンバーに対して時間とリソースの投資の面で支援をしました。おわかりいただけるように、やはり地元のコミュニティが味方になってくれないと、いわゆる社会的なライセンスを付与してもらえないということで、エンゲージ、つまり彼らに関わってもらうということが、なくてはならない部分です。ただ、これまでの経験は、時間を十分割いて、コミュニティの人たちといろいろと話をする機会を設け、また、いろんなイベントとか、そういったものも催す中で、CCSをやるということがどういうものなのか、そしてまたそれに関わるリスクが何で、それをどのように管理しようとしているのかをきちんと伝えることができれば、コミュニティはCCSについて前向きに支持をする方向に来てくれます。

 一つ例を申し上げたいと思うんですが、私が住んでいるところからそう遠くないビクトリア州のほうなんですけれども、ある研究を、特に貯留に関する研究を行っている施設が、特に乳牛を育てる酪農が盛んな地域で、そういう施設をつくろうと考えたわけなんですね。かなりのエンゲージメント活動ということを地元の酪農家を含めてやりました。その結果、非常に賛同を得ることができまして、その施設ができることによって雇用も生まれるということもあって、地元からの支持が得られました。

 それはいい話のほうなんですけれども、今の二つ目の質問に関するところの答えとして、悪い例として、ドイツで、8年ぐらい前なんですけれども、地元住民がCCS、これは陸上のものでしたけれども、それに対して強く反対をしまして、結果的に、複数のCCSのプロジェクトができなくなってしまいました。ですから、今のご質問は、まさにCCSをやっていく中でのとても重要な部分に関わっていまして、いわゆる効果的な形で地元住民との関わりを持つと、エンゲージメントが重要で、その人たちのサポートなしには、CCSはうまくいきません。

浅野委員長

 どうもありがとうございます。

 根本委員、どうぞ。

根本委員

 二つあるいは三つの質問になります。

 ポリシーパリティとして、14ページに記載がございますが、CCSの導入拡大の支援策として、特に有用なものということでリコメンドがあれば教えていただきたいと。

 今の質問に関連することですが、とりわけ日本において拡大支援策としてどのようにしたらいいか。関連して、日本ではFITにおいて太陽光といえどもコストが下がらずに困ったという経験を有しておりますので、CCSでコストが下がるという保証がないものですから、とりわけ、その点について、コストを下げるという点についてのご助言をいただきたいというのが2点目でございます。

 3番目でございますが、3ページ、6ページ、14ページの表を見ますと、FITよりもCCSを推進しろという示唆に見えましたが、理解として正しいでしょうか。

ブラッド ペイジ氏

 私がコンサルタントだったら、こういうお答えをするとお金がもらえていいなと思うぐらいなんですが。冗談です。

 このポリシーパリティというのは非常に難しくて、というのが、再生可能エネルギーでインセンティブとしてうまくいったポリシーを、CCSで使ったら全部うまくいくかというと、そうとは限りません。ただ、二つはっきりしていることがありまして、まず、いわゆる初めてトライするときのfirst time capital costのペナルティーという、初めてだから非常に高くつくという、そこの部分のコストを下げるということが必要です。それから、もう一つ必要なのは、運転コストの面でのペナルティーを調整するためのメカニズムです。つまり、今、これは発電の分野だけに限って話をしていますけれども、好きなだけ二酸化炭素を出していいという発電所と比べてペナルティーが課されている、そこの部分を調整する仕組みが必要です。

 それに関しては、できることはいろいろあります。日本はこうすべきというふうに私が言う立場にはないとは思っていますが、ただ、CCSをサポートするために日本が続けるべきだと思うのは、それはもう既に日本の環境省が始めたend to endで、コストとメリットと、それからチャンスについての分析、それをぜひ続けていただきたいと思っています。それから、よく、日本の皆さん、一般の人があまり十分認識していないなと思うのは、日本の回収の技術というのは世界でもトップクラスだということです。ですから、やらなければいけないことは、まず、実際に貯留をする場所を見つけて、そこで本当に実証して、やって見せることだと思っています。そうすることによって、貯留ができるということの実証になります。サイトをまず選んでやってみることが大事です。

 短いお答えで恐縮ですが、時間の都合でこれぐらいにさせていただいて、3ページ、6ページ、14ページの関連で言いますと、CCSはもちろんプロモーションしていく必要があるわけなんですけれども、同時にいろんな国がやはり投資をしていくことが求められます。

浅野委員長

 よろしいですか。

 では、崎田委員、どうぞ

崎田委員

 はい。ありがとうございます。

 今、場所を見つけて実証すべきという話がありました。それに関連するんですが、資料、12ページの日本の貯留可能性が140ギガトンとあります。こういう数字を出されるときの条件があると思いますが、その地質の条件と社会的な条件を提示いただきたいと思います。よろしくお願いします。

ブラッド ペイジ氏

 CEOというのは何でも知っていなければいけないけど、実際は知らないというところで、大変申し訳ないんですが、地質学の専門じゃありませんので、ただ、よろしければ、ちょっと持ち帰らせていただいて、後ほど書面でお答えする形でもいいでしょうか。

浅野委員長

 ありがとうございます。

 では、大野委員、どうぞ。

大野委員

 1点だけ質問させてください。

 CCSについては、その重要性はいろいろ指摘していながら、今のお話では、大規模なCCSは世界でまだ17カ所しかないというお話でした。その理由として、自然エネルギー、再生可能エネルギーに投入されたような、公的なサポートがなかったからというご説明でした。これは一面は真実だと思うんですけど、半分、別の側面もあるんじゃないかという気がします。やっぱり自然エネルギーには公的なサポートにもありましたけども、もう一方で、民間企業の中で、民間センターの中で、これを開発し促進しようという非常に強い意欲があって、それをサポートしてここまで大きくなったということだと思います。実際に、その結果として、世界の多くの地域では、公的なサポートの必要がないほどに自然エネルギーの価格は下がっている。最近、経済産業省が。

浅野委員長

 質問を簡潔にお願いします。

大野委員

 下がっています。これに比べて、今までCCSにこういう公的なサポートがなかったということは、それだけ民間企業の中でこれを推進しようという意欲がなかった、あるいは、もっと組織意外に何か問題があった、あるいは困難があって、これによって推進されなかったと、そういう事情があるんじゃないでしょうか。

ブラッド ペイジ氏

 鶏が先か卵が先かという話だと思うんですが、これに関する私の立場はとてもシンプルでして、はっきり言えるのは、ドイツの場合は、もうとにかく太陽光と風力をやるんだと、大規模に導入していくんだという、もうその強い決め打ち状態ですよね。もう絶対やるということが決まって、それこそ、その技術の開発等に何千億ユーロというお金が投じられて、それは額としてはフィードインタリフの形だったり、あるいは設備投資をするときの助成金だったりということで。それから、また中国なんかの場合は、いわゆる需要からのデマンドプルというのが働いてコストが下がってということがありました。これは、我々は感謝する部分があります。というのも、多大な貢献をしてくれて、お陰で、公的なサポートがあったお陰でコストが下がったということです。ですからドイツ、それから、また風力に関してはスペインに負うところが大きいです。

 じゃあ、CCSはというと、かなり回収の技術のところには、日本の会社も含めて大手の企業がかなり取組をしています。ただ、問題はやはり政府の政策のところで、再生可能エネルギーと同様のサポートまでは行っていないということ。だけれども、このままでは、パリで合意した内容、つまり目指す二酸化炭素の排出削減は難しいということではあります。

 やはり一番大事なのはパートナーシップを組むということで、それぞれにやるのではなくて、やはり政府と民間が手を組むことが重要で、その中で、CCSも含めた全てのテクノロジーを活用していくことが求められます。そうすることでエネルギー安全保障、気候変動の問題、それから、またそれをなし遂げるためのコスト削減というものが可能になっていくと考えます。

浅野委員長

 ありがとうございます。

 では手塚さん。もう時間が来ていますので簡潔にお願いいたします。

手塚委員

 8ページの資料を見ますと、ほとんどのCCSはEOR、oil enhancingでやられているということなんですけども、18ページとかに示されているコスト、これの中には、EORによって得られる経済的なベネフィットも入れて計算されているんでしょうか。逆に言いますと、日本はEORのサイトがないんですけども、日本の場合、EORなしで埋めるサイトを見つけてくるべきなのか、あるいは、EORができる国に日本からCO2を持っていって埋めるほうが経済的なのか、この辺、もしサジェスチョンがあったら教えていただければと思います。

浅野委員長

 通訳は前半だけにしてください。時間がないので、後半は省いてくださってかまいません。

ブラッド ペイジ氏

 答えはノーです、入っていません。入っていません。あくまでもこれは発電したもののコストと。発電コストですね。そこで見ていますので、特にEORでもって得たメリットの部分というのは勘案されていません。このバウンダリーダムと二つ目のケースですね。シェルクエストに関しては、これは貯留だけでして、別にEORは関わりがありませんので。

浅野委員長

 どうもありがとうございました。ブラッド ペイジさんには、大変丁寧にお答えをいただきまして感謝いたします。

 それでは、次にイングビット オンブストレットさんにご発表いただきます。

イングビット オンブストレット氏

 ご紹介ありがとうございます。この度はお招きいただきまして、大変光栄です。

 グローバルCCSインスティテュートの観点からなんですけれども、ノルウェーにおけるCCSの活動を今日は説明します。

 ただ、冒頭、お断りしておきたいのは、国営のGassnovaという会社があるんですけれども、そちらがノルウェーでCCSを引っ張っていますが、多くのこれからお見せする資料は、そこからいただいたものがあります。後ろのほうにはバックアップのスライドも用意しておりまして、発表のときには、そこは特に触れませんが、質疑のときに必要であれば、それも見ながらと思っております。それから、できるだけ質疑のときには質問に答えたいと思っていますが、私は専門が法律です。つまり技術の専門家ではないので、そこの部分はお断りしておきますので、ご容赦ください。

 今のがスライド「Agenda」ですので、早速中身に入っていきます。ノルウェーは20年以上CCSをやってきた経験がありまして、SleipnerとSnøhvitのプロジェクトがありました。詳細は後ほどということで、今は次に行きます。実は以前もフルスケールのデモのプロジェクトがありまして、それがキャンセルされたということがありました。じゃあ、なぜ今もっとたくさんのCCSプロジェクトがないのかといったところを少し説明したいと思います。

 まず一つ目、カルストというのがありまして、2005年から2010年にいろいろと検討はしました。なぜ、このカルストのフルスケールデモのプロジェクトがキャンセルされたかというと、もともとCCSをやろうと思ったのは、そこにガスのプラントがあったからなんですが、そのプラント自身がなくなったということで、やる理由がなくなりました。もう一つキャンセルされたのが、モングスタッドです。2013年のことでした。こちらのキャンセルの理由なんですけれども、移転の価値(トランスファーバリュー)がないということと、それから、やはりコスト面での問題でキャンセルになりました。ただ、政府としましては、CCSをやるというコミットメントは強いままでした。ということで、もう一回新たな戦略の練り直しをしました。その新しい戦略が打ち出されたのが2014年で、この年は我々の規制の枠組み、CCSに関する枠組みができたのと同じ年です。そしてまた、このフルスケールのプロジェクトが始まったのが、その翌年ですけれども、それはまた後で説明します。

 こちらのスライドのタイトルがノルウェーのCCS政策となっていますが、これはCCS戦略と言ってもいいかと思います。このノルウェーのCCS戦略は三つの柱から成っていまして、フルスケールのCCSをすることと、研究開発をし、そしてまた実証をするということです。細かくは後ほどそれぞれ説明しますが、今、手短に説明します。

 まず、ノルウェー政府が目指したのは、少なくとも一つのCCSの実証プロジェクトを2022年までに一つはやるということ。これはやはり既存の業界に対して柔軟な貯留のソリューションというものがCCSでは可能だということを示すこと、それを目指しているのと、それから、またフルスケールのCCSはできるんだということを示すこと、この二つの目的があります。二つ目、研究開発なんですが、ここには二つのイニシアチブがありまして、一つはCLIMIT、それからもう一つは、これはFMEと書いてありますけれども、これはCCSの研究のセンターです。先ほど少し触れましたけれども、CLIMITのほうは国営の企業で、CCSをやっているGassnovaがやっておりまして、Gassnovaと、それからノルウェーの研究評議会、Norwegian Research Councilというところが協力をしています。そして、このノルウェーのResearch Council(評議会)のほうは、CCS研究センターのほうにも関わっておりまして、このセンターは民間の業界とも協力をしております。それから、実証の部分なんですけれども、これはTechnology Center Mongstad、これが中心なんですけれども、Gassnovaがやっていて、そこでのパートナーがStatoil、Total、それからShellです。このTCMは世界で最大規模の回収技術のテストを行う施設です。2012年にできました。

 もう一つ、先ほどの三つの柱には書かれていませんでしたけれども、国際的な協力というのもノルウェーの戦略の中で重要です。私自身は、実はこの国際協力に関わっていました。つい先週も、ワシントンDCのほうでアメリカとノルウェーの間の二国間の会議があったばかりです。国際協力フォーラムという形をとっていますけれども、その目的というのは、CCSの研究、それからCCUSの研究を促進することです。それから、ヨーロッパの経済協定(European economical agreement)というものによりまして、ノルウェーはEUとの関係がとても深いので、EUとのコラボレーションもあります。EUとの協定に基づきまして、ノルウェーのほうでもいろいろと資金手当ても行っていまして、また、覚書を結ぶことによって、ノルウェーとEUの加盟国、複数の加盟国との間で研究と、それから教育の分野の協力関係もあります。それ以外にも、Carbon fixation forum、つまり炭素固定化のフォーラムにも関わっていますし、それから、C40とか、その他いろいろな国際的な取組にもノルウェーは関わりを持っています。

 昨年なんですけれども、Sleipnerが20年間安全に貯留をすることができたことのお祝いがなされました。これは天然ガスを処理するというところで行われているものですけれども、排出の少ないローカーボン天然ガスを求めるということがありました。それから、また、排出をオフショアで行うときの炭素税がかかるということもあって、貯留をするということになっています。法的に何が求められているのかは、また後ほど説明します。

 二酸化炭素の貯留ということで言いますと、世界初のデモンストレーションプロジェクトだったのが、このSleipnerです。700万トンほども、ノルウェーの沖の大陸棚のところに貯留をしておりまして、これは本当に世界でも最大規模のものです。同じ場所で、沖合ではありますけれども、二酸化炭素の注入を行っているということで、輸送のニーズというのは最小限に抑えることができています。

 もう一つ、Snøhvitなんですが、ここでの動機づけになったのも、やはり先ほどのSleipnerと似ているんですけれども、かなりの量の二酸化炭素が出てきて、そして、それをストリッピングしなければいけないとか、あるいは炭素税がかかる。それから、また、ヨーロッパのETSの関連のコストの問題があるというようなことでした。このETSに関連するところは、その他の法的な要件とあわせて、後ほど、また説明をします。

 そして、財務的なインセンティブだけではありませんで、CCSをSnøhvitで行うということはオペレーションをするための要件でもありました。Sleipnerと違うのは、一旦、二酸化炭素に関しては陸に運ばれて、そこで処理がされて、そして今度、また圧入されるために海の沖のほうに返されるというふうな移動が必要なことです。今、既に、このプロジェクトで貯留されているCO2の量は400万トンを超えています。そして、このプロジェクトは30年間続く予定なんですが、30年たった段階では1,500から2,000万トンまで貯留されるはずです。

 Gassnovaの話を何回かしましたので、それについての1枚、スライドをお見せしようと思います。このGassnovaというのは国営の企業で、その目的というのはノルウェーの政府のCCSの戦略を実際に行う、つまりは二酸化炭素の貯留を行うということが目的の会社です。

 こちらの図はGassnova社自身がまとめたものなんですけれども、右側の三角形のところ、彼らの責任としてTCM、これはモングスタッドのセンターと、それからフルスケールのデモをやって、そして資金に係るところのCLIMIT、この三つが自分たちの責任範疇だと書いてあります。それから、これに加えまして、GassnovaはCCSに関する事柄についての石油エネルギー省に対して助言をする立場にもありますし、また知識の共有、そしてテクノロジーの開発も責任の範疇に入ります。2015年に始まりましたフルスケールのイニシアチブ、CCSですが、これはGassnovaがプロジェクトマネジャーを務めています。

 このスライドでわかりますように、回収の検討をするために三つの排出源というのがあります。右のほうに三つ出ているんですけれども、一番上、これはノーセムハイデルバーグセメント、つまりセメント工場から出てくる二酸化炭素の回収を行うわけです。

 真ん中にヤラというのが、これはポルシュグランというところにあるんですけれども、アンモニアのプラントでの二酸化炭素の回収なんですが、これはもうビジネスの一環として長年にわたって行われてきました。これまでは二酸化炭素を、じゃあ、どうしていたかというと、炭酸とかの製造だと思うんですが、食品業界のほうに提供していました。それとあわせて、今度はCO2のこのプロジェクトのためにも、それを使うということです。

 一番右下なんですけれども、フォータムという会社、これはエネルギー会社で、いわゆる廃棄物、ごみの発電を行っているところで、オスロにありまして、バイオCCSの実証を行います。

 お気づきのように、この三つのプロジェクト、それぞれに特徴的なフィーチャーがありまして、これをすることによって既存のビジネス、あるいはそういった工業においてCCSが使えることを示すことにつながります。

 ガスコというところが輸送については担っておりまして、さっき説明した二酸化炭素の排出源のところから出てきた二酸化炭素を船で東から西に運ぶということになります。最終的にはスニアハヤというところに貯留されるんですけれども、まず、そこに至るまでに中間貯蔵のサイトまで行って、それは船で、その後はパイプラインで最終的なところまで運ばれます。このガスコというのは、もともとはパイプラインの輸送のほうが専門です。ということで、船で輸送するところに関しては、細かいところを検討するために二つの海運会社と契約を結んでいます。

 貯留サイトに関しては、Statoilが検討することで決まっています。Statoilが報告をしてきたのは、三つの排出源から二酸化炭素を受け取るわけですけれども、実際のキャパシティ全体の1%未満にしかならないということでした。Statoilの話を受けて、Statoilとノルウェー政府の間では、どのように柔軟性を持たせた戦略を打ち出したらいいか、つまり、ほかのノルウェー国内のプロジェクト、ないしはEUのほかのプロジェクトから二酸化炭素を受け入れるということも含めた検討を今しています。

 こちらがスケジュールなんですけれども、タイムラインということでGassnova社が提供してくださいました。実は、この前の2枚のスライドもGassnovaからいただいています。今の状態はといいますと、回収をする、そして輸送をする、また貯留をするというところのそれぞれの担当の会社が、概念のところ、それからフィード、基本設計ですね、そこの部分を行っています。最終の投資の決定というのは、2019年の第二四半期に予定されています。

 今は三つの排出源がプロジェクトに参加していますけれども、実際の建設とか運転という段階まで三つ全てがいくとは限りません。今、技術的なデータ、それから財務的なデータをコンセプトとフィードの段階で集めているわけですけれども、それを受けてノルウェー政府としては、三つあるうちのプロジェクト、どれを次の段階に行かせるのかを決めます。1かもしれないし0かもしれないし、2、3かもしれません。そして、全てが予定どおりにいきますと、操業開始は2022年になります。

 それから、ノルウェー政府の戦略の一環としてCLIMIT、研究開発の部分があります。CLIMITというのは、より新しいプログラムになりまして、過去におけるよりも、より幅広く研究のプロジェクトあるいは資金手当てというものをする内容になっています。以前は、あくまでも技術開発とか、あるいは実証のためだけだったんですけれども、それに加えまして、例えば、基準ですとかガイドラインを開発するとか、あるいは、その他、いろいろな道具になるようなものの開発のプロジェクトも加えられまして、フルスケールのCCSがより導入しやすいように障害を排除することに貢献しています。

 それから、CLIMITを見れば、ノルウェーが非常に国際的な協力に力を入れていることがわかると思います。CLIMITが重視しているのは、プロジェクトが再現可能である、つまり複数のところで展開できるということと、ビジネスとして成り立つことです。さらには、国際的な規模でもってフルスケールの展開ができる、そのための貢献をすることがCLIMITの目指すものです。

 先ほども触れましたけれども、回収の技術のテスト施設としては、TCMと略されますテクノロジーセンターモングスタットが最大です。コストとリスクを、とにかく回収技術に関しては下げていこうということで、世界中のベンダーと協力関係を持っています。そして、操業開始は2012年なんですけれども、Gassnovaが所有していて、またStatoil、Shell、それからSasolも所有しています。パートナーシップが今年の初めにまたちょっと変わりまして、もともと、ですからGassnovaに加えてStatoil、Shell、Sasolだったんですけれども、SasolにかわってフランスのTotalが所有企業になりました。

 TCMというのはノルウェーが国際的なコラボレーションに力を入れていることをよく表しておりまして、国際的ないろいろなパートナーが技術を試験してくれています。それから、また国際的な規模のCCSテストネットワークというのにもTCMは入っています。そもそもネットワークを立ち上げるとき、その資金手当てを自らやったという経緯もあります。

 では、少し規制的なところをノルウェーに関して説明していきます。ただ、その話をする前に、全体として結構、規制の枠組みが複雑であるということを申しておきます。

 ほかの国も同じだと思いますけれども、やはり法的な側面を考えるときにはいろいろな側面で見ていく必要があるということで、まずは国際的な条約とか協定というものがあります。ノルウェーというのはEUとのつながりがありますので、そこで、「地域法」とここで書いてありますけれども、地域のレベルとしてEU関連の部分があります。そして、最後になりますと自国の法的な枠組みということで、ノルウェーの法律です。必ずしも上下関係とか階層関係にあるわけではないので、こういう書き方、つまりピラミッドの絵を描かなかったんですけれども、ギャップをお互いに埋め合うような、そういう関係です。とはいっても、国際的な条約みたいなものが、ガイダンスあるいは基本になるということで、国の当局にそれが影響するという形で、例えばパリ協定なんかは、それに当たります。

 ただ、そうは言っても、枠組みの中で柔軟性を持って、それぞれの加盟国はその要件を満たすことができます。ノルウェーの場合は、非常にEUの枠組みと緊密な関係を持ちながらということになります。ときには、そういったEUの枠組みというのが明確なガイダンスを提供してくれることもありますし、場合によっては、そうではなくてノルウェーならではの独自のやり方をするときもあります。

 細かいことは、このスライドは割愛します。これだけ複雑なシステムで、いろいろな法律がそれぞれのレベルにあるということです。

 ご存じのように、CCSというのは何も単一の活動ではありませんで、いろいろな業界が絡むものです。ですから、CCSに特化した枠組みもあれば、もう少し広く業界に対する規制などがあります。ここで申し上げたいのは、ここにリストアップされているものが全てではありません。CCSに関わりのあるものは、これ以外にもいろいろとあり得ます。例えば、その例なんですけれども、公的調達の規制というものがあります。CCSの場合は、いろいろな形での無償援助、グラントというのがありますし、それから、また、さまざまな形で公的な貢献が求められる取組でもあります。

 EUのほうでは、かなり包括的なCCSに関するフレームワークがありまして、ノルウェーもそれを導入しております。EUの枠組みによりますと、それぞれの加盟国が自分の国の領地において、あるいは領海において、CO2を貯蔵できるかどうかを考えて決めることができます。ただ、実際に、ある加盟国が自分の国で二酸化炭素の貯留をするということを決めた場合には、今度はEUのほうでのCCS指令にのっとった、つまり要件を満たしたやり方をしなければなりません。

 先ほどブラッドさんの発表の資料の中にもありましたけれども、規制というのは、実際にサイトが運転中のとき、それから、また実際にもうクローズしたとき、それから、その後ということと、それから、また移転に関して、責任の、そういったことも含めて法的な、いろいろな決め事があります。

 ノルウェーは三つの法律でもってCCSについてはきちんと管理していこうということで、具体的には石油法、大陸棚法、そして汚染管理法です。実際にCCS指令に書いてある要件を細かく、どう満たしていくのかというのは、今、言った三つの法律の下の、いろいろな、また規制がありますので、そこでしっかりと守ることになります。

 例えば、石油の関連で行われる二酸化炭素の貯留、例えば、SleipnerもSnøhvitもそうですけれども、EORを行うという関連でいいますと、一番上の石油法及びその関連の規制が適用されます。そうではない、ほかの業界の関連でフルスケールのCO2の回収、貯留を行うということになりますと、大陸棚法の管轄ということになります。三つ目の汚染管理法なんですけれども、これは石油法の場合も、それから大陸棚法が該当するケース、両方に関わりがある法律になります。

 CCSがなされるがために新たに設けられたフレームワークは何かというと、特に二酸化炭素の移動、トランスファー、それと貯留に関わるところです。それ以外のものについては、もともと法律があって、それが改定される形をとって対応しています。

 先ほど財務的なインセンティブあるいはその要件について触れますと申し上げましたので、このスライドです。1990年にできた法律に基づいて、ノルウェーでは1991年から炭素税が課せられるようになりました。ただ、これが対象としているのは、大陸棚で行われる石油関連の活動のみです。実際の額というのは法律が決めているのではなくて、あくまでも議会のほうで決められるんですが、今年はノルウェークローネで525、トン当たりというふうになっています。この間、これを米ドルで換算するとどれぐらいかなと確認したら、67ドルでした。

 もう一つ、これは温室効果ガス排出トレーディングアクトということで、取引ですね、EUの取引との関連です。これが最初に実際に施行されましたのが2008年になります。これも先日、確認をしました。EU ETSのもとでは、今、幾らかということで、6ユーロ、米ドルだと7ドルという辺りです。

 ただ、今の炭素税の水準というのは決して高くありません。業界の中には、CCSを本当に広めていきたいのであれば、この10倍ぐらいの炭素税でないといけないかもしれないという話もあります。石油の関連での税金が課せられるということの関連で、例えば、大陸棚に二酸化炭素を注入するということのインセンティブが働いていくと思います。単に、放出しっ放しにするのではなくて。

 こちらのスライドは、ノルウェーでCCSに関わっている関連省庁の名前です。ノルウェーの、まず石油エネルギー省というのが全体をつかさどっていまして、Gassnova社もこの傘下です。実際にいろいろな法律、さっき言った石油法ですとか大陸棚法に関しては、石油エネルギー省が法の改定などをやっています。また、この石油エネルギー省は、調査や開発、注入、そして貯留の許可も出しています。

 それに対して、二つ目のノルウェー気候環境省というのは、直接CCSのオペレーションには関わっていません。これは立法を扱っていますけれども、あくまでも大気汚染法のほうの改正に携わっています。すみません。大気に限った話じゃなくて、汚染管理法はこちらが見ていまして、それから、また気候変動に関する国際条約についても気候環境省が担当ですので、パリの協定に関しては、石油省ではなくて気候環境省が出ていって合意しています。

 創業するためには、創業のための許可だけでなくて、汚染に関する汚染防止のほうの許可も得る必要があります。どちらも必要なんです。その汚染に関するところの許可を出すのが一番下の環境庁ということになりまして、環境庁は影響評価ですとか業界の監視・監督なども行っています。

 まとめですけれども、ノルウェーは、もう20年以上にわたって安全に二酸化炭素の貯留をしてきました。それから、また新しい実証プロジェクトを2022年までに行うということで、業界と政府機関が協力をしてかなりの注力をしております。ノルウェーにおいては、実証だけではなくて、CCSの研究開発をサポートする体制もしっかり確立されています。ノルウェーというのは、これはCCSに限ったことではありませんけれども、全体として国際的な関係構築や協力というものを大変重視しています。

 それから、最後になりますけれども、規制の枠組みというのは、EUのそれをベースにしたものも結構ありますけれども、実は、かなりのところがノルウェー主導でつくったものというのが結構多いです。

以上で発表を終わります。どうも、ご清聴ありがとうございました。お招きも、ありがとうございます。

浅野委員長

 それでは、ただいまのイングビットさんのご発表に対するご質問がある方は、どうぞ名札をお立てください。よろしいでしょうか。では、以上のお申し出のあった方からのご質問をいただくことにさせていただきます。

 それでは、4人の方からのご質問を受けたいと思います。予定の時間は20分くらいしかありませんので、できれば2問ぐらいにとどめていただきたい。それから、いろいろと意見を述べたいという気持ちを起こすこととなりそうなご発表であったわけですが、それはご遠慮ください。

 では、崎田委員、どうぞ。

崎田委員

 ありがとうございます。伺いたいことがあったのは、CCSのために新しくつくった法律は移動に関する法律だけだというふうにおっしゃいました。その法律というのは、どういうところを大事にしている法律なのかを、もう少しご説明いただきたいというふうに。

浅野委員長

 先ほど通訳の方は、移動と翻訳されましたが、輸送ではなかったのではありませんか。

通訳

 輸送ですね。輸送です。失礼しました。輸送です。トランスファーとおっしゃったと思ったので。失礼しました。

 じゃあ、今のはご質問でも、まだ生きているということで。

イングビット オンブストレット氏

 新しい法律というのは、EUのCCS指令に書いてある輸送と、そして回収に関わる項目を満たすためのものなんです。そういう意味では、石油法のほうに書いてある内容と大体同じような要件といいましょうか、要求になっているんですけれども、ただ、石油ではない業界が出す二酸化炭素の輸送、それから貯留というところを主眼としています。

 そして、内容としては、安全に貯留ができる、それから、また環境的にもきちんと満足するようなプロセスでなければならないということ。そして、対象となっているのが操業期間中と、それからクローズした後の要件があります。それから、またライアビリティー、責任ですよね、その部分についても書かれています。それから、また詳細にわたる記述がパーミットを申請するときに関しての要件、それから、また、そのパーミットの中に入れるべき内容についても細かく書いてあります。

浅野委員長

 では、谷口委員、どうぞ。

谷口委員

 2点、ございます。

 まず1点目は、例えば炭素税が10倍になったときというお話がございましたが、このようなCCSのサイトは適地が限られていたりプラントにコストがかかるため、今あるような場所で処理をする量がどんどん増えていくというふうにお考えですか。いろんなところにたくさんできるというよりかは、もう特定のところでどんどん処理していくという形になりそうですか。

 2点目も重ねてということなので。もし、そうであれば、CO2の輸送自体にかなりの量が、CO2を運ぶこと、特定の場所であれば、そこにいろんなところから運ばないといけないですよね。CO2の輸送で、かなりCO2が発生するんですが、そういうことというのは考えられていますか。

 以上、2点でございます。

イングビット オンブストレット氏

 じゃあ、まず炭素税の話から。炭素税の問題というのは非常に複雑で、石油業界が大陸棚に注入をするということ以外で言いますとなかなか難しい。それは、例えば、EUの規制といいましょうか、ETSとか、そういったEUの枠がまずあるということで、そんなに高く勝手にすることもできないと。

谷口委員

 例えばの話で言っただけなので、実際はそうだということはわかっています。

イングビット オンブストレット氏

 いずれにしましても、ちょっとそこは難しいということ。それから、やはり、場合によっては、いわゆるカーボンリーケッジと呼ばれるような、ほかの国に炭素が移されてしまうというようなことも懸念があったりということです。

 ただ、大陸棚に関しては、石油に関連する活動が行われた場合には、炭素税はかけることができました。なぜかというと、海外に移転するわけにもいかないわけで、あくまでも石油があるところにしか、これはできないことだから、大陸棚の石油に関連するところだけはきちんとできましたと。

 実際に税のサイズといいましょうか、レベルを考えますと、これはEU ETSのアローアンスのものよりも大分高いものですから、これが、Statoil社がそのまま放出するのではなくてCCSをやろうと思うことにつながりました。

 二つ目のご質問の輸送に関わる排出に関しては、すみません、検討はしていると思います。ただ、私自身がプロジェクトに特に関わっていないということと、やはり、どうしても輸送に関わるビジネス、商業的な部分というのがいろいろと関わってくる話だとも思いますので、はっきりとしたことは言えません。

 ただ、一つ、最後に申し上げたいのは、輸送で二酸化炭素が排出されたとしても、工業で発生する二酸化炭素がそのまま放出され続けるよりは、ネットのメリットは高いというふうに考えていますから、やはりこれは、やることは意義があるということです。

浅野委員長

 では、手塚委員、どうぞ。

手塚委員

 ご説明ではなかったんですけど、32ページにコストのデータが書かれているんですけれども、ここでオペレーティング・アンド・メンテナンスコストが、39ミリオンユーロから98ミリオンユーロとなっています。これを年間のCO2吸収量で割りますと、オペックス(運転保守費用)だけで75ユーロから100ユーロ/トンCO2の計算になります。これはETSのカーボンクレジットが6ユーロ、あるいはノルウェーのカーボンタックス60ユーロと比べても、劇的に高いです。キャペックス(設備投資)を抜いても、これだけ高いということです。2019年にfinal decisionを行うまでに、このコストを下げることを何か検討されるのか、あるいはタックスを上げるというような形でインセンティブを大きくする方向の何か政策変換みたいなことがあるのでしょうか。どういう形で、これがオペレーショナル(実行可能)になるようにされようとしているのかということを、もしおわかりでしたら教えていただければと思います。

手塚委員

 総額39ミリオンですけれども、それを上の欄にあるCO2セービング40万トンで割ると、CO2削減トン当たり75から100ユーロになるということです。

イングビット オンブストレット氏

 ちょっと私なりに、今の質問について答えてみようと思いますが、検討のとても重要なポイントとしては、とにかくプロジェクトのコストを下げるということで、そのためにもスポンサーとして国が関わっています。これは、オペレーションをする段階に入っても続きます。この概念の検討が今、進められているので、その最新のデータを反映した形で、この32ページに載っている数字も11月の段階で変わります。

 ただ、このスライドで大事なポイントというのは、プロジェクトの数が一つだったものが3になったとしても、コストは3倍にはなっていないと。なぜかというと、これは輸送と貯留のインフラが共通であるということで、三つではなくて一つのインフラで済んでいるということですね。これが、まさにStatoilとノルウェーの政府が今、検討している、例えば、ほかのサイトとか、EUのほかの国からも受け入れるような、ヨーロッパのハブにするというアイデアが出てきたのは、そういったことです。

 それから、もう一つ、船による輸送に関しても、将来的に、より多くの排出源が柔軟な形で関わってこれるような、そういう体制をつくろうと思ってのことです。

 お答えになっていればいいのですけれども。

浅野委員長

 では、根本委員、どうぞ。

根本委員

 今のお答えの点にも関係します。31ページには物理的なCO2の輸送について、越境移動を含むということをお示しいただいているので、あと。

根本委員

 31ページに、CO2の越境移動というものが示唆されているように思いますが、物理的な輸送です。この点について、法的な問題が存在するか、何ら問題なく越境移動もできるというふうにお考えか、教えていただければ幸いです。

イングビット オンブストレット氏

 ロンドン議定書では、これは海洋における廃棄、ダンピング、あるいは、それをするための越境輸送ということを規制しているわけです。二酸化炭素というのは、まさに廃棄物と見なされて、インジェクション、注入というのは、これはダンピング、つまり廃棄とイコールとされます。ただ、2016年に改定がされておりまして、CO2の貯留に関しては認めるということ。それから2009年に、越境移動に関しても、それが二酸化炭素の貯留のためであれば認めるという形での改定がされています。

 ただ、この改正が認められるためには批准が30カ国以上必要でして、今のところはノルウェーとイギリスとオランダしか、まだ批准していません。これは、法的な問題というよりも政治的な問題だと考えています。ただ、やはり意思があれば物事は動くというふうにも考えておりますので、その意思の部分というのは結構、ビジネス面でのインセンティブで変わるものだというふうにも考えています。

浅野委員長

 どうもありがとうございました。

 お二人の方には、今日は大変丁寧にご説明いただきまして、私ども、大変参考になりました。

 それでは、今日はこれで予定の時間になりました。事務局から報告がありましたら、どうぞ。

木野低炭素社会推進室長

 私からも二人の説明者の方にお礼と、あと委員の皆様方にご活発なご議論をいただきまして感謝申し上げます。

 事務局からは次回の日程についてのアナウンスですけれども、次回、9月19日、15時から17時という日程で予定しております。また、引き続き関係者のヒアリングを予定しておりますけれども、対象者の詳細等につきましては追って事務局よりご連絡を差し上げます。よろしくお願いいたします。

 以上です。

浅野委員長

 それでは、次回もよろしくお願いいたします。

 本日は、これで終了いたします。

午後 5時28分 閉会