長期低炭素ビジョン小委員会(第7回) 議事録

日時

平成28年11月2日(水)10時00分~12時30分

場所

TKPガーデンシティ永田町 バンケットホール1A
東京都千代田区平河町2-13-12 東京平河町ビル1階

議事録

午前10時00分 開会

〇低炭素社会推進室長
定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第7回会合を開催いたします。
本日は、ご到着が遅れていらっしゃる委員もいらっしゃいますが、委員総数18名中11名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。また、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針において、原則として、会議は公開とされていることから、本日の審議は公開といたしております。
では、議事進行について、まず浅野委員長からご発言がございます。

〇浅野委員長
風邪を引いて声が出なくなってしまいましたので、誠に申し訳ありませんが、今日の司会は安井委員長代理にお願いをしたいと思いますので、ご了承ください。

〇安井委員(委員長代理)
急に代理になってしまいましたが、ひとつよろしくお願い申し上げます。
それでは、まず、事務局からの配付資料のご説明からお願いします。

〇低炭素社会推進室長
では、配付資料について説明させていただきます。
初めに議事次第がございます。次に、配付資料一覧がございます。資料1としまして、この小委員会の委員名簿がございます。資料2といたしまして、「The Climate Challenge」という、シェルンフーバー所長の資料がございます。資料3としまして、「CLIMATE ACTION PLAN 2050」という、ナイツェルさんの資料がございます。
なお、資料についてですけれども、本日のシェルンフーバー所長のヒアリング資料ですけれども、本日お越しいただいた方には紙で配付用資料としてお渡ししております。資料はウェブページには掲載しないようにというご要望がございましたことによるものです。なお、今後、紙媒体で直接配付する分には問題ないということですので、今後、この配付用資料をご入り用の方は事務局にお問い合わせいただければと存じます。
資料の不足等がございましたら、事務局までお申し付けください。
カメラはここで退席をお願いいたします。

〇安井委員(委員長代理)
それでは、議事に入りたいと思います。
今回も、有識者のヒアリングという一つの議題で進めてまいりたいと思います。
それでは、最初に事務局から、本日のヒアリングにつきましてのご紹介をお願いしたいと思います。
お願いします。

〇低炭素社会推進室長
2回目から実施しておりますが、引き続き今月まで、関係者へのヒアリングを実施してまいりたいと考えております。ヒアリングは、委員の皆様のご議論に資するよう、世界の潮流・海外の動向・長期的戦略の策定状況、科学的知見、技術、温暖化の影響、ライフスタイル、建物、移動、ビジネス、エネルギー供給、都市・地域・地方創生、金融システム、その他の多様な分野について行ってまいりたいと考えております。
本日のヒアリングですが、お一人目として、「The Climate Challenge」について、ドイツ連邦政府地球規模変動に関する諮問委員会共同議長で、ポツダム気候変動研究所のハンス・ヨアヒム・シェルンフーバー所長よりご説明いただきます。
また、お二人目には、「CLIMATE ACTION PLAN 2050」について、ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省のハラルド・ナイツェル課長補佐よりご説明いただきます。
お二人には、本日貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。委員の皆様につきましても、忌憚のないご議論をどうぞよろしくお願いいたします。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。それではヒアリングに入らせていただきたいと思います。
本日は、お二人でございますけども、一人ずつのご発表をいただきまして、その後に皆様からの質疑応答とさせていただきたいと思います。
本日は同時通訳ではございませんで、逐次通訳になりますので、ちょっとやはり時間が足らないという可能性もありまして、それもあって、ちょっと30分ほど延びておりますけれども、質問のやり方はいつものとおりでございますが、言語といたしましては、ぜひ、英語べらべらの委員の方もおられるのは存じておりますけれども、日本語でお願いをしたいと思います。お聞きになっている方に、やはりご配慮をいただければと思う次第でございます。
それでは、シェルンフーバー所長からの最初のご発表をいただきたいと思います。
よろしくお願い申し上げます。

〇シェルンフーバー所長
皆様、おはようございます。本日は、この小委員会にお招きいただきましてありがとうございます。非常に嬉しく思います。本日は、気候の問題に関する科学的な証拠ということで、プレゼンテーションをしたいと思います。
まず、将来、この気候というものがどうなるかということを考えるときには、過去に何が起こったかということを見ていかなければなりません。
まず、次のスライドにありますように、過去10万年にわたって地球の平均気温が、温度がどのぐらい上昇したかということを見ていきたいと思います。今、見ていただいておりますように、最後の氷期におきましては、グローバルな平均気温というのはかなり乱高下いたしました。74000年前に温度が急上昇した後に、大幅に下落をしております。このときは、スマトラ島で非常に大きな火山の大噴火があったときでした。遺伝子分析からわかったことは、わずか数百人しか、そのとき地球上には生き残らなかったということです。
さらに時を進めますと、かなり気温が、このように上下に動いております。しかし、2万年ほど前になりますと、気候が完全に安定化に入っていきます。それがHOLOCENE、完新世と呼ばれる時代です。
それでは、なぜ気候変動というものがそもそも起こるのかということについては、今日は、その推進力となっているものについて理解ができております。今日では、地球に届く日射量が変動することによって気候変動があるというふうに言われております。なぜ日射量が変化をするかというと、例えば地球の公転の軌道の離心率が変化をしたり、あるいは地球の自転軸が時々このように傾斜が変わる、傾斜角が変化をするからです。これがいわゆる1941年に発表されましたミランコビッチ理論です。
もう一つの要因は温室効果でありますけれども、これは大気中の二酸化炭素の濃度に影響を受けます。これが最初に計算されたのが1896年で、スウェーデンのスヴァンテ・アレニウスによって計算されました。
もちろん、地球の軌道を変更することはできないわけですけれども、産業革命以降、CO2は劇的に上昇してまいりまして、それがどのようにして起こったかという経緯をこれからお見せしたいと思います。
今からお見せしますのは、我々の生活の近代化の歴史であります。つまり、1751年以降、化石燃料を利用することによって、過去250年間にわたって、今からお見せする、そのピクセルごとにCO2の発生が進んでいったということを示しております。これは、化石燃料の利用を反映したものであり、まず最初に始まったのは、イギリスにおける石炭の利用からでした。
日本も、見ていただきますと、途中で現れるのがわかるかと思います。日本の場合には、1867年の横浜であったイベント以降ということになりますけれども、特に色分けをしておりますので、その色分けが重要でありまして、色が変わるたびに排出量が10倍増えたということを意味しています。
これから見ていただきますけれども、一番最初のときには、イギリスにしか色がついておりませんでした。ランカシャーで起こった産業革命に端を発しているわけですけれども、その後、蒸気機関など、いろいろな機械が発明されるに至って、だんだん色が進んでいきます。
2番目の産業革命が起こった国はドイツです。その次、3番目がポーランド。そして少し後になってアメリカです。このときには、まだ、残りの地球上は真っ黒になっておりますけれども、その次に大英帝国がインドに進出をしていくことによって、インドが色がついて、1867年からは日本も色がつきます。
今、日本が地図に上がり、次にオーストリア。
重要なのは、どちらが産業大国になるかということで競っていた、ドイツとイギリスということで、ナンバーワンのカーボンパワーになろうという競争がありました。それが、最終的には第一次世界大戦につながるわけですけれども、地球上の支配勢力になろうという試みが背景にありました。
2段階に入っても、また、競争は続いていて、この段階になるとアメリカが主要なカーボンパワーになろうとしています。
今は、グローバル化の時代に入りました。ご覧のように化石燃料の利用が地球上全体に広がりつつあります。今や、カーボンパワーに中国がなりました。たった20年間の間に、中国は、昔のヨーロッパに追いついたわけです。
したがって、これが近代の違った歴史を見る視点ということになります。例えば戦いとか、王様とか、王子とかというような観点から時代を見るのではなくて、産業の代謝、メタボリズムという観点から見たものです。
その結果というのが次の表に表れておりまして、1万年にわたる温度の変化を見ております。最も直近のところで急激に、赤い線で示しているように、地球の平均温度が急上昇したところがあります。
こちらの表が1880年以降の温度の変化を示しておりますけれども、特に直近の3年間、2014年、2015年、2016年のところが全て記録的な年になっております。もし何も変化がなかった静的な時代であったとするならば、このような変化というのは、100万分の1の蓋然性しかないような出来事なんですけれども、このように起こっているということを考えると、いかに人為的な介入があったかということの証拠だと思います。
それでは、この問題に私たちは対応する必要があるわけですけれども、これまで最も重要な対応は何であったかというと、1997年の京都議定書であったというふうに思います。私自身、その場に身を置いておりました。当時、今のメルケル首相がドイツの環境大臣であったときの顧問をしておりました。
昨年はパリ協定を私たちは祝いました。最も重要な成果は何であったかというと、195もの国が、温度上昇を2℃より十分低く抑えるということに合意をしたということです。
それでは、なぜ2℃かということなんですけれども、例えば家族の人たちに、その2℃の理由を説明しようと思った場合に、以下のような比喩を使うことができるというふうに思います。地球の平均気温を自分の体温と思って考えてみてください。例えばこの部屋から外に出ていくと、外の気温のほうが低いわけですけれども、体温は一定です。というのは、体には温度を安定化させるためのメカニズムがあるからです。もし体温が2℃上がってしまったならば、それは発熱ということで病気になっているわけで、もし体温が5℃上がってしまったら、もう死んでしまいます。
もし地球の平均気温がこれほど上昇してしまったならば、非常に多くのシステムが壊れてしまうことになります。こちらに示しているチャートは、私が、2000年ぐらいのときに導入したものなんですけれども、地球上での必須の機能、器官を示しております。これが地球上の生命を維持するために必要となってくる数々の、多くのサブシステムを、このチャート上に描いています。
少し事例を紹介したいと思いますけれども、サンゴ礁についてです。科学者たちによりますと、地球の気温が1.5℃上昇してしまうと、地球上の熱帯地域のサンゴ礁の90%がなくなってしまいます。
大体1.5℃の上昇、厳密にはどこが閾値になるかということはまだはっきりしておりませんけれども、このグリーンランドの氷床についてですけれども、1.5℃ぐらい上がってしまうと、グリーンランドの氷は溶けてしまいます。そうすると、海面の水位が7メートル上昇すると言われています。
また、海流も変わってしまいまして、メキシコ湾流とか黒潮にも変化が表れます。
今日、私たちが手にすることができる化石燃料、化石資源を全て燃焼させるということになると、南極の東部の氷が溶けてしまいます。そうすると、海面が50メートル、水位が上昇してしまうということで、そうなると東京は消えてしまいます。
今お話ししたことが、もうサイエンスフィクション、SFであるかというふうに聞いていらっしゃる方もいるかもしれませんけれども、今申し上げたようなことが起こる、そのような惨劇が起こる道に、私たちは、今まさに乗っかっているということを、今からお見せしたいと思います。
これが、今日お見せするスライドの中で最も重要なスライドの一つです。パリ協定に関する全体像をこれが示しているからです。下半分のところに曲線がありますけれども、それが示しているのが地球の平均気温ということで、2万年前から計測したものです。最後の氷期のときには、産業革命前の温度よりも3℃ないし4℃低かったです。
右のところに書いているのが、2500年に温度がどうなっているかということを、幾つかのシナリオに基づいて示しています。一番下の緑が示しているのが、RCP2.6という、ちょっと技術的な概念を示したシナリオなんですけれども、これはグリーンなシナリオで、このシナリオを進めていくと、温度上昇は2℃を下回ります。
しかし、残念なことに、私たちが進んでいる道というのは、この赤で示しているRCP8.5です。このシナリオを進めていくと、2500年には温度上昇は8℃になります。
グレーの、真ん中にある水平線が、パリ協定の1.5ないし2℃上昇です。
縦軸に、黄色から赤に色が変わる線がありますけれども、我々の行動様式を変えることによって、地球上で必須となる重要なシステムの部分がいかに変化をするかというレンジを示しています。これが、私が呼ぶところのティッピング・エレメントというものであります。もしパリ協定で言っているように温度上昇を2℃未満に維持することができたとしても、いろいろなリスクゾーンに入っているものがあります。例えば、先ほど示しましたようなグリーンランドの氷床についても、氷がもう既に、2℃以下であっても溶けてしまうということで、言い換えるならば、パリの協定は合意するのが遅過ぎたということです。
しかしながら、少なくとも、そのほかのいろいろな環境破壊は回避できる可能性があります。例えばアマゾンの熱帯雨林とか、あるいは、南極の東のほうの氷床などについても、まだ回避はできるけれども、温度上昇が4℃になったら破壊が始まります。したがいまして、パリ協定をきちんと実行するということが本当に肝要です。これが、私たちが必要としていることでありまして、言い換えるならば、2050年までに脱炭素化をしなければならないということです。
これがもう一つの重要なスライドなんですけれども、1950年以降のグローバルな排出量を示しています。1950年には、CO2の排出量は80億トンでしたが、今日、それが400億トンに上昇しています。この青い線が右下のほうを向いて指されておりますけれども、これが、もし私たちが2℃以下にとどまりたいならば、達成しなければならないラインです。言い換えるならば、2050年までに、低炭素社会ではなく、完全な脱炭素社会を達成しなければならないということです。
もちろん、これの意味するところを議論することはできますし、また、何をそのためには達成しなければならないかということも議論できると思います。例えば2020年から2030年においては、燃料としての石炭の利用を完全に止めなければなりませんし、また、2030年までに自動車用の内燃機関の利用を禁止しなければなりません。
日本とかドイツとかアメリカのような、極めて進んだ先進国というのは、パリ協定に基づいて脱炭素化を進めるための気候変動行動計画という新しい計画をつくっていく必要があります。詳細についてはまた後で述べますけれども、ここでちょっとお見せしたいのは、ドイツにおける電力部門における変化です。2011年に、エネルギーヴェンデという、非常に研ぎ澄まされた政策が決定されて、その中でどのように変化をしてきたかというのを示しています。
1990年時点では、緑の線が示しておりますけれども、電力部門における再生可能エネルギーの寄与分は3.6%でした。一方、赤線で示している原子力ですが、27%でした。そして、ここ6年で何が起こったかということを見てください。その6年間で起こったことは、クロスオーバーと言っていることで、立場の逆転がありました。今年は、電力部門における再生可能エネルギーのシェアは30%をはるかに上回るでしょうし、一方、原子力はわずか12%になると思います。ドイツにおきましては、非常にエネルギー転換で長い歴史があるんですけれども、その中で最も決定的だった二つのイベントについてお話をします。
まず第1は、1986年に起こったチェルノブイリです。そのチェルノブイリが発生した後に、連邦環境省が設立されました。
こちらに書いているのが、2010年に出したドイツのエネルギーコンセプトというものですけれども、この中では、気候対応の非常に大胆な行動というのがうたわれておりましたが、この真ん中の部分を見ていただきますと、当時の計画では、原子力を2034年までは利用を延長するというふうにうたっておりました。しかし、2011年の福島の事故を受けまして、原子力の段階的な廃止という計画がつくられました。しかしながら、重要なのは、気候変動に関する私たちの目標を弱める、緩和するということはしませんでした。
もちろん、この委員会におきましても、また、社会全体におきましても議論されると思います。つまり、原子力が低炭素社会を実現する上でどのような貢献をしてくれるかということについて。私の見解では、現代の社会においては、原子力については将来はないと思っています。でも、その理由は原子力事故が起こり得るからということではなくて、ドイツでは地震が発生いたしません。むしろ理由は経済のほうにあります。
これもエネルギー技術について非常に重要なメッセージを示している表なんですが、コストがどのように推移してくるかというのを、三つの技術で示しております。まず、石炭火力電力が黒で示されております。そして原子力。もう一つはソーラーエネルギーです。
もう一つ重要なのは、縦軸のほうが対数目盛になっているということで、ソーラーのほうはコストが指数関数的に減少しています。石炭のほうはほとんど横ばいであるということですので、技術的な寄与というのはないわけです。
一方、原子力のほうのコストは若干上昇しています。しかし、そのコストの中には、廃炉とか、あるいは放射性廃棄物の貯蔵などはコストとして含まれておりません。
それでは、ドイツはエネルギーヴェンデでどのようにやっているのか、原子力を段階的に廃炉にしながらも、気候変動の目標を下げないで達成しようとしているという状況ですが。
まず、ブルーの線が示しているのが、1991年以降のGDPの推移です。グリーンの棒グラフが示しているのが、再生可能エネルギーのシェアです。このように並行して同じように進んでいます。
一方、エネルギーヴェンデとともにドイツからのエネルギー輸出は上昇しています。それと同時に、ドイツにおいては、省エネもかなり進展がありました。この真ん中が示している発電量は若干上昇しているけれども、省エネ効果のほうは大幅に上昇をしていて、そのため、1次エネルギーの消費量は下がっています。したがって、パリ協定のもとでの気候変動行動計画での次の大きなチャレンジというのは、石炭を段階的に廃止をしていくということです。
それにはもう一つの理由があります。というのは、世界で石炭が原因でもって、あまりにも早く何百万人という人たちが死亡してしまっているのです。例えば中国においては、主に化石燃料の利用が原因となって、大気汚染が原因で100万人ぐらいの人が命を落としています。したがいまして、今、ドイツで議論をしているのは、石炭火力をできるだけ廃止して、そのかわりにガス火力に置き換えていくにはどうすればいいかという議論がなされています。
最後に、二つの引用をもって締めたいと思います。我々全員が理解しているように、将来を予測するのはとても難しいです。しかしながら、一般論として、人々はイノベーションの力を過小評価していると思います。10月のことですけれども、オーストラリアのマルコム・ターンブル首相が言いました。今後何十年にもわたって石炭は重要な役割を果たし続けるであろうと。しかしながら、新技術及び大気汚染という問題を考えると、かなり近い段階で石炭は廃止されていくと思います。そうなると、オーストラリアは非常に大きな水素生産国になって、水素を日本に輸出することができるようになるかもしれません。
もう一つ、最後に引用したいのは、非常に大きな歴史上の判断ミスについてお話しします。1925年にダグラス・ヘイグ伯爵が言った言葉ですが、この人は、第一次世界大戦のときの西部戦線において、イギリス海外派遣軍の司令官を務めた人です。飛行機と戦車、そして機関銃というのは、人間や馬にとっては単なる附属品、アクセサリーでしかないと。しかし、将来的には、馬というのは、過去と同じように戦争において重要な役割を果たし続けるだろうと。
1815年のウォータールーの戦いにおける騎馬兵たちを示しているのが上の写真です。近代の戦争というのは、もはや馬ではありません。言い換えるならば、石炭でもってこの気候変動の戦いに勝てるわけではなく、新技術でもって私たちは勝っていくわけです。
ご清聴ありがとうございました。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、ご質問をいただきたいと思いますけれども、ご質問のある方は、例によって札を立てていただけ
るとありがたいと思いますが。
じゃあこちら側から、大野委員から順番にお願いいたします。

〇大野委員
大変すばらしい講演をありがとうございました。気候変動の危機というのは知っているつもりなんですが、改めて、本当に深刻な問題だということを実感いたしました。
二つご質問があります。一つは、脱炭素化の目標の年なんですけども、博士の講演では、2050年までに脱炭素社会に転換しなきゃならないとおっしゃったと思うんですが、これはパリ協定の理解でも、21世紀の後半、つまり2050年から2100年の間に達成すればいいんだという見解もあると思うんですが、その点についての博士のお考えをお教えください。
もう一点は、原子力発電に関してなんですが、これがコストの面から見ても、もはや競争力を失っているということはもう十分私も理解をしているんですけども、一方、気候変動の科学者の中では、例えばアメリカのNASAのハンセン教授のように、気候変動と闘っていくためには原子力が必要なんだということを、環境サイドの方でも言っている方がいると思うんですが、これについての博士のお考えをお聞かせください。
以上2点です。

〇シェルンフーバー所長
非常に重要な質問をどうもありがとうございます。まず第1の質問ですけれども、これは極めて重要な質問であるというふうに思います。パリ協定というのは、整合性に欠いているというふうに思います。私自身もパリに赴きまして、ドイツ代表団のメンバーであったわけですけれども、パリ協定というのは、一方で、2050年から2100年の間に、脱炭素化、あるいはカーボンニュートラリティーを達成するというふうに言っておりますけれども、また、他方で、1.5℃上昇ということをうたっております。これは、科学とは合致しないものであり、整合性を欠いており、間違っていると思います。
我々は科学者として現実を検証しなければならないので、いろいろな計算をするわけですが、その計算によりますと、2℃上昇であったとしても、化石燃料の利用を2050年までに段階的に廃止をする必要がありますし、もし1.5℃上昇であるならば、もっと早く達成する必要があります。
2番目の質問ですけれども、先ほど言及されたアメリカのティム・ハンセン氏は、私にとっても非常に近しい友人であり、彼とは多くの点について意見が一致はしているんですけれども、でも、この問題の経済性というところは理解できていないというふうに思います。多くの主要なエコノミストたちと議論をするときに、このコストが今後下がってくるというふうな分析を見せられるわけですけれども、原子力発電については、あまりにも複雑な技術であって、しかもスケールダウンすることができません。そのコストの検証をするときには、ある一定の大きさ、クリティカルマスが必要ではあります。しかし、システムのコストがあまりにも高いので、将来的には太陽光やバイオエネルギーや地熱などのほうがコスト競争力が上回ってしまう、それに負けてしまうというふうに、原子力については思っています。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。時間もちょっと限られておりますので、できたら質問は一つということで。
それでは、先にお出しいただいた荻本先生からずっとこういう方向に行って、大塚先生に戻りたいと思います。

〇荻本委員
東京大学の荻本です。ご説明ありがとうございました。
私からは、私自身は、再生可能エネルギーがどのくらい導入できるかということを研究している者なんですけれども、やはり太陽光発電とか風力発電は、利用率が20%とか30%ということで、非常にたくさんの設備を導入しないといけないというのが非常に大きな問題になると思っています。
2050年に向けては水素、またはバッテリー、このようなものがあれば解決はするというふうに思うわけなんですけれども、重要なのは、ここから、例えば2030年、これから10年、15年で何ができるかというところだと思います。ドイツ、あるいはヨーロッパで、2030年までに、技術が開発されるのではなくて、実際に実導入がされるというものに関して、何か希望のある技術があれば教えていただきたいと思います。

〇シェルンフーバー所長
とても重要な点です。本当に重要なところを突いてくださったと思いますけれども、同時に、異なるいろいろなタイムスケールで物事を考えていく必要があります。温暖化というのは、累積的な排出量の直接的な帰結であるということで、限定的なカーボンバジェットを持っているということです。あまり多くの人たちは知らないかもしれませんけれども、大気中のCO2の半減期というのは、34000年です。したがって、今、化石燃料を燃やして1トンの排出量を生んでしまったならば、プルトニウムよりも長い間にわたって滞留するわけです。
したがいまして、直ちにできるだけ排出量を回避していく、可能な、1トン当たりも全て回避していくということが直ちに必要になってくると思います。そのためには、明らかに利用できる技術をどんどん使っていくということと、もう一つは省エネです。人々の行動パターンに働きかけて、変化を生んで省エネを進めていくということです。ドイツにおいては、近々、熱のセクターにおきまして、大きなプログラムが導入されることになっております。家庭における給電・給熱に関して省エネルギーを進めていくということで、このヒートセクターにおいての大改革というのを取り組む予定です。
また、日本においては、公共の生活において、断熱とか省エネの分野でまだ改善の余地があると理解しています。しかしながら、同時に、技術開発も進めていく必要があります。例えば交通分野、移動の分野における脱炭素化が必要で、今後は水素や燃料電池、バッテリーを使った自動車への移行とか、もう一つ大きな進捗がなされなければならないのは、蓄電の分野です。
最後のコメントですけれども、ドイツにおきましては、過去50年間において、バッテリーの研究をほとんどやってこなかったということがあります。しかしながら、ここ数年間においては劇的な進展が見られています。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは桜井委員、お願いいたします。

〇桜井委員
それでは、一つだけお願いします。大変印象的な、非常にこれから我々にとっては勉強になるような課題として、原発の問題と、そして再エネ、原発から再エネへの転換という理由は、今、驚きを持って聞いていたのですが、安全性の問題よりもコストの問題だということですね。ちょっと二つになっちゃうので、ここのところはやめますけども、これだけ劇的に再エネ、ソーラーバッテリー、これの比率を上げてきたというのは、当初の目標よりも圧倒的にすごい勢いで上がってきているんですね。2030年までに、たしか20%だと僕は記憶しているんですが、今もう既に30%の比率。このまま行くと、ドイツの方に聞いたことがあるんですが、2030年には50%も可能であると。さあ、この秘訣と言ったらおかしいんですが、何をもってこんなに加速できたのかというのをぜひ教えていただければと思います。

〇シェルンフーバー所長
おっしゃるとおりです。スケジュールよりも早く導入しておりますし、計画よりも早く再生可能エネルギーの設置は普及してきました。でも、秘訣は以下のような点になると思います。これまでドイツの歴史上、最大の官民パートナーシップがとれたということです。
一方で、政府のほうが非常に効果を発揮したFeed-in Tariff、固定価格買い取り制度を新たに導入をしたということ。また、市民社会も、再生可能エネルギーを非常に好んで導入したいという気持ちを持っていて、再生可能エネルギーの支持率は、国民の8割ないし9割に上っております。石炭をサポートしているのは4%、原発に至ってはゼロです。
ここからわかる教訓というのは、日本とかドイツのように、本当に産業革命というのをやってきた国、そして、それをさらに産業の発展を達成したいという国々というのは、政府と現場の人たち、国民と手を携えて進めなくちゃいけないということだと思います。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、続きまして根本委員、お願いします。

〇根本委員
イノベーションがキーになるという非常に重要なメッセージをいただき、非常にありがたく思っております。
最後の質問にも関連するんですけれども、石炭への支持が4%というご説明も、今、ございましたけれども、相変わらず4割以上のエネルギー源を石炭に頼った状態をずっと続けておられる中で、なおかつ、この分野では技術的な進歩はほとんどなかったのだというご説明もございました。その中で、どうやって将来的に石炭をなくす、それも2020年から2030年にはなくさなければいけないというご説明もございましたけれども、そのパスが、いま一つちょっと理解が難しいので、もう一度ご説明をいただけるとありがたいと思います。

〇シェルンフーバー所長
次のスピーカーのほうが、その点についてはまた触れられると思うんですけれども、これまでも多くの主要な政治家、メルケル首相とも、含めて議論をしてきました。確かにおっしゃるとおり発電の40%はまだ石炭に頼っております。無煙炭とか褐炭に頼っています。
しかしながら、先進的なガス発電所ではなく、石炭発電をいまだに使っているのは、二つの理由があります。まず第1の理由は、1万人の雇用ということなんですが、わずか1万人ですけれども、この人たちが直接的に石炭に依存をした仕事をしていると。そして、労働組合がその仕事を守りたい。この点で私が提案したいのは、トランスフォーメーション・ファンドと言っておりまして、転換、変革をするための基金です。職を失った人たちには補償を支払って、そして新しい職を提供すると。
二つ目の理由というのは、欧州のETS、排出権取引が機能していないということです。現在は、褐炭がまだ安いので使われております。効率的なガス発電所よりも使われているわけですけれども、もし排出権取引の、ETSのフロアプライス(最低価格)が設定されれば、明らかに石炭は消えていくと思います。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、続きまして廣江委員からお願いします。

〇廣江委員
ありがとうございます。実は、再生可能エネルギーでたくさんお聞きしたいことがあったんですが、1点でございますので、ドイツとイギリスのエネルギー政策の差のようなものにつきましてお聞きをしたいと思います。
ご承知のように、イギリスも非常にCO2の削減については熱心でありますし、再生可能エネルギーも熱心に取り組んでいると。一方で、軽水炉をこれから大々的に開発するという計画を持っています。目的は、ともに、やはりCO2の削減ということだと思うんですけれども、実際の手段として、ドイツとイギリスはかなり方向は違いますが、この辺り、何が影響しているのか。博士の見解をお聞かせいただければ幸いでございます。

〇シェルンフーバー所長
とても興味深い質問をありがとうございます。私自身、英国に長年住んだ経験がありますし、ドイツ人としては珍しく、イギリスからコマンダー・オブ・ブリティッシュ・エンパイアというナイトの称号ももらっているドイツ人ですので、何が起こっているかというのはよく理解しているつもりです。
ドイツとイギリスは両方とも野心的な目標を掲げた気候変動のアクションをとっている国ではあるんですけれども、違いはどこから発生するかということなんですが、この先ほどのグラフに戻りますと、nuclearと書いているところの右のほうに一つ、赤で十文字がついたところがありますけれども、それは、イギリスで今後新たに開発されるヒンクリー・ポイントの原発を示しております。これは、他の原子力発電所よりもはるかに、よりコストがかかる発電所となります。したがいまして、補助金が必要ということで、25年間にわたって補助金が出されまして、建設は中国とフランスが行うことになっております。はっきり申し上げて、これは経済的には狂気の沙汰であると、マッドネスであるというふうに私は思っております。
でも、本当のところは、イギリスというのは核兵器を保有している国でありまして、そのためには、トライデント潜水艦のためにもプルトニウムを必要としております。一方で、ドイツや日本というのは核兵器を持っていない。これが本当のところの背景事情だと思います。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、大塚先生。もし時間が余ったら、私も短いのを一つ。

〇大塚委員
先ほど、CO2の累積的排出量と気温上昇との関係についてお話しいただきましたけども、これについて比例しているというIPCCの第5次報告書の考え方を推計すると、現在の排出量を世界が続けると、30年分しか、もうもたないと。約30年分ぐらいしかもたないということですが、この考え方についての先生の評価と、それから、パリ協定が、これとの関係で十分なものかどうかということについて、コメントいただけるとありがたいと思います。

〇シェルンフーバー所長
これは、累積的な排出量に関するカーボン・バジェットの話ですけれども、そもそもこれが疑われたのは、他の研究生とも協力しながら、私のかつての博士課程の学生がそれをつくりました。それがIPCCの第5次報告に採用されたわけですけれども、これは、いわゆる不都合な真実の一つだというふうに思います。
ここで示しているのは、ブルーのところですけれども、数学でいうと、積分をしたこの面積のところが、線の下の面積が重要になってくるわけです。排出量をずっと横ばいに保って、2050年までにそれをゼロにすると。どんと落とすということになると、そこでゲームが終わります。しかしながら、物理の考え方をすると、このブルーのラインのように、2050年にわたって急にどんと落とすんではなくて、リニア的に、直線的に、年間3%ずつの削減でやっていかなければなりません。
パリ協定というのは、不整合だというふうに思います。目標2℃以下ということは、正しい目標であるかもしれないし、気候の影響を考えると、これで十分であると言っているわけですけれども、でも、実際にパリ協定が目指しているところを達成しようとするならば、パリ協定でうたっていることよりも、実はもっと野心的になる必要があります。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
私も、30秒でちょっと質問をさせていただきたいと思うんですけど、ドイツを含めて、ヨーロッパは、電力網、パワーグリッドが非常にしっかりしていると。それに対して、日本というのは小さい島国でありながら、中に50ヘルツと60ヘルツの地域が分かれていて、サイズが数百キロぐらいしかない、そのぐらいの国。で、再生可能エネルギーというのは、そういう小さな国には大変不利なんですけども、その辺りについて、何かご知見がありましたらお教えいただきたい。

〇シェルンフーバー所長
確かにグリッド技術というのは非常に大事だというふうに思います。ドイツは、おっしゃるとおり、ヨーロッパのシステムに、系統に組み込まれておりますので、ドイツで日照量が少ないときには、ほかの国から太陽光のエネルギーを持ってくることができるし、また、最近では、風力でも相互接続が進もうとしております。北ドイツのほうでは、ノルウェーからケーブルを引いて、風力電力を持ってくるようになる。こういうことでヨーロッパが相互接続されているので、それも助けにはなっております。
でも、日本においても、日本国内だけではなくて、ほかの国、大陸も含めて、リンクアップすることができるというふうに思いますし、水素技術を使うことも可能であるというふうに思います。
でも、重要なのは、ドイツの場合には、実はこのような電力を輸送するというか、輸出入するというようなことは、実はあまり必要ではないというふうに思っております。重工業に関してだけは必要かもしれないけれども、あまり必要はないと。1次エネルギーの消費量の40%というのは、ドイツの場合には家庭の消費ですので、そうなると、国内、あるいはその地域内で発電したもので十分であって、これほどまでのスーパーグリッドは必要ないかもしれません。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、以上でもってシェルンフーバー所長によるご説明と講演を終わらせていただきたいと思います。

〇シェルンフーバー所長
最後に一言だけ。
こういうふうな議論はドイツでもなされているんですけれども、ここまで劇的な転換をしようとするならば、それは必要なことではあるんですけれども、産業界というのは大体、自分たちが、それからかなり被害を受けるというふうに言います。でも、本当はドイツとか日本のような国にとっては状況は逆だと思うんです。つまり、このような大きな転換をした場合、そして最もイノベーションが進んだ国のほうが受益者であって、柔軟性がない国のほうが実は被害を受けるんだというふうに思いますので、このような大きな変革、転換をするというのは、歴史的にこれまで見たことのないほどの大きな経済的な機会を提供することになると思っています。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。最後に、もう一度拍手で終わりましょう。
それでは、続きまして、ナイツェル課長補佐様からのプレゼンテーションをお願いしたいと思います。ご準備ができましたらお願いをいたします。

〇ナイツェル課長補佐
皆さんこんにちは。浅野教授、シェルンフーバー先生、皆さん、おはようございます。
518日ですけれども、日独の環境大臣が、日独共同声明にサインをいたしました。その中で三つの協力分野が示されておりまして、まず第1は、長期的な気候の戦略に関する協力です。日本側ではIGES、そしてドイツ側ではヴッパータール研究所がそれに含まれています。
2番目の分野というのは、低炭素の環境技術に関する協力です。水素や燃料電池、そしてパワー・ツー・ガスの分野が含まれています。
3番目の分野というのが、都市・地域レベルにおける協力なんですけれども、今回、そのために私は来日いたしました。30名の都市レベルの代表団とともに協力を立ち上げるために参りました。
今回、都市レベルで非常な進捗が、再生可能エネルギーと省エネの分野で進んでいるということを見て、本当に感銘を受けております。ワークショップを京都、横浜、長野、そして東京都、都庁でも開催いたしました。
今日は、お招きいただきましてありがとうございます。それでは、ドイツのCLIMATE ACTION PLAN 2050の説明を始めたいと思いますが、実はこれはアクションプラン、行動計画ではないのです。
これは、ドイツ語におきましては、アクションプランというよりも、計画というよりも、戦略的なドキュメントというふうな位置づけになっております。この戦略的なドキュメントのもとに二つのことが言及されておりまして、まず一つはパリ協定なんですけれども、もう一つは、2013年の連立政権の合意が既にあって、こういったCLIMATE ACTION PLANを策定すべしということが言われました。
もう一つ忘れてはならないのはG7におけるプロセスです。ドイツも日本もG7に入っておりますが、昨年はドイツが議長国でありましたので、そこで議論をされて合意されたことが、2050年までに脱炭素化を目指すということです。そういう観点からも、本日のこのディスカッションは、私にとってもとても興味深いものになると思います。
そして、パリ協定において長期的な戦略の策定ということが義務づけられています。
次に、先ほど申し上げましたように、このプログラムというのは戦略的なドキュメントであるということです。政府内で、こういった戦略的な文書にするのか、あるいはクライメート・プロテクション法、気候保護法というような形にするのかというような議論がなされましたけれども、最終的には、法律ではなくて、戦略的ドキュメントにしたほうが、よりパリ協定のもとで求められていることを達成する上で、柔軟性を確保できるだろうということに至りました。
言い換えるならば、このプランにつきましては、一般的な議会プロセスでの議論はありません。しかし、議員は、インフォーマルな形で、このドキュメントの策定過程には関与をしており、そして、その議員というのは、与党だけでなく野党の人たちも参加しています。
この計画策定に当たりましては、もちろん環境省がその先頭に立っていくわけなんですけれども、だからといって、環境省のみで策定することはできないので、政府全体の取組として策定しますが、もし環境省だけでやっていると、この問題の緊急性というものを、他省庁にはなかなか説得することができないので、政府全体のアプローチのほうがよりよいと思います。
しかし、この重要なメッセージについてコンセンサスを、他のセクターや、他の省庁との間で取りつけていくために、環境省だけに任せきりではなく、首相府のほうも、官邸のほうも非常に協力をしてくれています。
そして、もう一つ重要なのは、ただ単に政府内だけでコンセンサスをつくるということよりももっと重要なのは、社会全体の中であらゆるステークホルダーを巻き込んだ形でコンセンサスをつくるというのが重要です。したがって、この長期目標についても、社会の目標とするというコンセンサスを得ることが重要です。
そして、私たちが直面しているチャレンジ、課題につきましては、先ほど既にシェルンフーバー先生のほうからも説明がありました。
シェルンフーバー先生の最後のほうのコメントにもあったんですけれども、この長期的な気候保護の取組をするということは、これは経済を近代化していく戦略としての位置づけとしてもとても重要であるという発言がありました。つまり、コベネフィットとして、イノベーションや、例えばマーケットの創出とか、持続可能な技術という形でも、とても重要な経済戦略です。
2番目に申し上げたいのが、間違った投資を過去においてもやってきたけれども、将来においては、それを回避していかなければならないということ、いわゆる座礁資産を生まないようにしなければならないということです。そのような資産が、今でも、将来的に温室効果ガスを削減しようとする取組の中でリファイナンスできないような重要なインフラプロジェクトも出てきます。例えば、火力発電所について、その運転期間を延長するために投資をしようとしても、それに対しては政府からのサポートを、もはや得ることができなくなってきています。
また、この計画におきましては、技術上、また経済上の広範な不確実性が存在するということを認識をしているので、5年毎にこれを見直すということがきちんと、このアプローチの中に組み込まれています。
また、このプランにおきましては、例えばクライメート・アクション・プログラム2020というような短中期的な対策を実施するための技術仕様とか、詳細なマスタープランとかアクションプログラムというものは、何ら定義しておりません。
しかし、このクライメート・アクション・プログラム2020に関して言いますと、既に石炭火力の段階的廃止というのは進行中であります。今後、褐炭ベースの石炭火力の12%を廃止する予定です。
欧州レベルの話については、シェルンフーバー先生のほうから説明がありましたので、このスライドはあまり詳しく説明いたしませんけれども、私たちの取組というのは、国際レベル、そしてヨーロッパレベルの取組とも足並みをそろえたものでなければなりません。
しかしながら、現在進行中のいろいろなプログラムと整合性をとるということが大きな課題となっております。排出量を、温室効果ガスを削減するために、幾つかのセクターにおいてプログラムが進行中なんですが、人によっては、そのプログラムの数が多過ぎるという人たちもおります。そういったプログラムの幾つかがこのページにも載っているんですけれども、資源効率を高める戦略とか、また、省エネのためのナショナル・アクション・プランとか、建物のための効率化戦略や、また、運輸の部門では、エレクトロモビリティーという概念も導入しておりますし、また自転車を普及させるとか、窒素戦略などなど、ここには書き切れないぐらいたくさんのものがありますし、それらのプロジェクトをいかに統合していくかというのが今後の課題です。
もう一つ、再生可能エネルギーの普及目標なんですけれども、このプランそのものには、その目標は入っておりませんで、別途、再生可能エネルギー法というのが制定されているので、いろいろな再生可能エネルギーの今後の道筋について、その法律で示されています。
その再生可能エネルギー法の中では、新しい投資を推進していくわけですけれども、その目標値として設定されているのが、陸上風力が2.9ギガワットとか、洋上風力とか、PV、太陽光2.5ギガとか、バイオマス150メガワットというふうに書かれています。
既存のグリッドインフラと整合性をとるために、毎年この取組がレビューされます。政策の中で、こういった目標が達成できているか、あるいは未達であるかというようなことを見て、必要に応じてサポートを出していくメカニズムを持っています。
もう一つ、アンブレラとなるような持続可能な開発戦略というものがあります。その戦略は、アジェンダ2030、SDG目標などと足並みをそろえたものでありまして、これが長期的な政策プロセスになっております。あまりにもたくさんのプログラムが進行中ですので、圧倒されるかもしれないんですけれども、こういった長期的な政策プロセスの中の一つが、クライメート・アクション・プログラムです。
これが現在進んでいる一つのセクターのプログラムですが、詳細には説明いたしません。
次に、参加のプロセスですけれども、なぜこのような長期の気候計画にとっては、参加というのが重要なのか。経済も大転換していくということが、この気候の目標の中で必要とされております。国の経済を根本的に変えていって、また既存の消費パターンや生産パターンを変えていく必要があります。
そのようなことが企業側での計画、事業計画や、また人々のライフスタイルとか、市レベルの政策に影響を及ぼすので、そういう意味で、このような長期計画には合意、コンセンサスを幅広くとる必要があります。
したがって、伝統的な政治メカニズムの中でこういうことを話し合っても不十分です。
したがいまして、この計画の合意を得るために、広範な参加プロセスを導入していくということを決定しました。
重要なメッセージといたしましては、その参加プロセスを始めるに当たって、何かドラフトをつくって、それをたたき台にして議論をするというのではなく、全く白紙の状態から始めて、ステークホルダーの人たちに好きな意見を言ってもらうというプロセスにしました。
そのプロセスをまとめていくために、外部の機関に委託いたしました。皆様も、ここに列挙されている組織、ご存じであると思うんですけれども、例えばヴッパータール研究所とか、フランホーファー研究所などは、特にソーラーエネルギーに熱心なところです。
まず最初に、州、市町村や、そして経済団体などの参加プロセスを進めていくためのプロジェクトチームをまずつくりました。
もう一つは、一般市民に参加をしてもらうためのプロジェクトチームをつくりました。
3番目の部分というのは、専門家たちのチームなんですけれども、出てきた意見をまとめてもらって、この参加プロセスから聞いた意見をもとに提案を出してもらうというプロセスがあります。
ここに出ているのが、参加をしたステークホルダーたちなんですけれども、まず16の連邦州、そして60の選択された市町村、125の経済団体、業界団体や環境団体など。そして472名の一般の人たちで、このような対話プロセスに関心を持っている人たちが参加しました。
このプロセスには非常に多くのステップとか会議とかが含まれているんです。それで、それを全て詳細にわたってここで説明するのはあまり意味がないと思うので、その各ステップについて説明した書類を持ってきましたので、それを参考にしていただきたいと思います。
ここから二つの成果物が出てきたわけですけれども、まず一つは、対応策、対策のメニューというものがあります。こういうふうな参加のプロセスから、96の温室効果ガス削減に関わるような提案、アクションが生まれてきました。
これらの提案を、このプロセスでまとめていくために、五つのセクターに分けていきました。ここに五つの分野というのが載っておりますけれども、日本も同じようなアプローチを使っているんじゃないかと思います。五つというのは、電力、産業、運輸、建物、そして農業です。
これらの対策に関しまして、中長期的にこういうふうな対策をやるべきであるということで、コンセンサスを求めていきました。
2番目の成果物は、このプロセスに参加をした市民の人たちからの提案です。こちらのプロセスには、科学者が付き添いまして、その専門家の人たちが、出てきた提案をまとめました。
次に、教訓ということなんですけれども、このプロセスは非常に成功をおさめて、価値を生んだと思います。
しかしながら、こういうふうなプロセスというのは明確なフレームワークが要るし、ちゃんとしたルールをつくっておく必要があります。そして、もっと重要なのは、ディスカッションするための十分な時間を提供して、十分な柔軟性も提供すると。このような会議のときには常に時間のプレッシャーにさらされてしまうので、それをなくす。
もう一つ重要なのは、もちろん科学的な知見は必要なんですけれども、参加をする科学者というのは、あくまでも提案に対して中立でなければなりません。今後の議論をさらに進めることができるための土台をつくる、そのまとめ役に徹しなければなりません。
こういったプロセスから非常にプラスの効果もありまして、参加をしたステークホルダーたちがほかの人たちの意見や立場を知ることによって、相互理解というのが進んだと思います。
また、参加をした政策決定者たちもたくさんのことを学んで、いい経験だったようです。
しかし、マイナスの経験もあって、まずこのプロセスにはとても時間がかかるということがわかりました。しかしながら、あまりにも重要なことなので、十分な時間を提供することが必要でした。そして、こういうプロセスにはよくありがちなんですけれども、いわゆるバッドガイズと言われるような、ごろつきというか、そういう人がいて、どっちにしても気候保護ということには真っ向から反対する人が参加をしてくるので、このような前向きな、積極的な議論の場において、こういった人たちをどう扱うかというのが課題でした。
そして、ドキュメントを第2段階でつくりまして、環境省においてドラフトをつくり、それを政府内の交渉のために提供いたしました。
正直に今日申し上げますけれども、この政府の交渉の過程において、参加プロセスから生まれた提案の中の幾つかは、受け入れられませんでした。その一つの事例として申し上げたいのが、「聖なる牛」というか、絶対、聖域みたいなところがあって、日本にも聖域があると思うんですけれども、そういうものがありました。
一つの例というのが、自動車の制限速度なんですけれども、これは人々のライフスタイルにも影響するということで、環境省が作ったドラフトにさえも、この提案は入れることができませんでした。別に重要な事例ではないかもしれないんですけれども、率直に説明したかったので、挙げました。
現在、政府内の交渉がなされているんですけれども、当初の予定としては、政府がマラケシュの会合の前に採択する予定だったんですが、今朝、ちょっと聞いたところによると、マラケシュの後まで延期するということになったようです。
このクライメート・アクション・プログラムの構成なんですけれども、三つの側面から成っています。まず最初はミッションステートメントとかビジョンと呼ばれるところであります。ドイツ語では、ライトビルダーと呼んでいます。
ここで言っていることは、総論的なメッセージなんですけれども、方向性を示すという程度のものでして、既に話がありましたように、2050年までに発電部門の脱炭素化を図るとか、そういうことが書かれています。
2番目の側面は、マイルストーンと呼ばれるものであります。ここでは具体的なステップが示されておりまして、この気候目標を達成する取組を始めるに当たって必要な政策、措置などが書かれています。
3番目の部分がアクションと呼ばれるところで、2030年までをカバーしておりますけれども、ここでは、来年から始まる次のクライメート・アクション・プランの議論に向けての準備ということです。
このグラフをシェルンフーバー先生のほうから示されたかどうかわからないんですけれども、ここに示しているのは、ドイツの温室効果ガスの排出量の状態で、その内訳とか推移、あるいは優先順位などが示されています。
ご覧のように、1990年代の排出量の削減の大きな要因というのは、東西ドイツの統一ということがありました。統一によりまして、汚い発電所とか、あるいは重工業などにおいての非効率なところを廃止していきました。
2000年以降は、若干削減が緩やかになっておりますけれども、特にエネルギーセクター、ビルディングセクター、そして産業セクターです。特にこのような削減は、再生可能エネルギーの導入の影響を受けております。既に排出量削減の50%分が再生可能エネルギー、特には電力部門における再生可能エネルギーの導入の貢献があります。
このグラフの中には、今後達成したいロードマップというのも出ておりまして、次のステップとして、2020年までに40%削減、2030年までに55%、2040年に70%、2050年までに8095%を目標として掲げています。
また、エネルギー分野における取組の重要性もありまして、特に発電分野ですけれども、現在、GHGの排出量の40%が依然として発電部門、特には石炭火力を原因としております。無煙炭と褐炭です。
各セクターでのプログラムの進展状況も示しているんですけれども、ちょっと時間がないので詳細に説明をすることはできませんが、一般論としては、予定どおり進んでいるということであります。建物とか産業、そして電力の分野では進んでおりますけれども、今後はモビリティーとかトランスポート、運輸のセクターで減らしていく必要があります。
ディスカッションの時間を残しておくために、次のチャートはまとめて説明したいと思います。
エネルギー部門についてですけれども、これを建物とか運輸のセクターと結びつけております。シェルンフーバー先生がおっしゃったと思いますけれども、この建物や運輸のセクターに電力化をもっと推進させたいというふうに思っており、また、再生可能エネルギーの割合を高めたいと思っています。ということは、これまでよりも3分の1増しの電力が必要になってくるということになります。2030年から2050年にかけて。新しい技術も走らせなければなりません。水素を再生可能エネルギーから生成するとか、また、エレクトロモビリティーとか、また、ビルに対して冷暖房などを電力で提供するということも必要です。
また、効率的な化石燃料の技術も、移行技術として使い続ける必要があります。例えば、ガスとコジェネ、熱電併給とか、また、効率的なガス火力発電を進めるとか。そうしないと再生可能エネルギーで需要を十分満たせないときに電力が足りなくなりますので。
この2030年に向けての対策とか、マイルストーンというのは、議論のときにまた戻ってきてもいいので、今は割愛したいと思います。
次のセクターか建物なんですけれども、日本と違いまして、ドイツの建物は非常に寿命が長いということで、既存の建物の近代化を進める必要があります。2050年までに、この建物セクター全体で脱炭素化を達成するつもりです。新規に建設されるビルについては、政令とか規制、法律などをもって達成することができます。
既存の建物につきましては、サポートしていくメカニズムが必要になってきます。補助金を提供したり、例えば低利の融資を提供することによって、建物の効率性を高めてもらうために、オーナーの努力を進めるためのサポートが必要です。
また、バイオマスエネルギーを使うことによって、建物の暖房・冷房などを、今も進めておりますけれども、さらにそれを拡大していきたいと思います。
次にトランスポートとモビリティーの分野、これが3番目なんですけれども、2050年までに脱炭素化したいというふうに思っております。この分野においても電化を進めていくわけですけれども、主には二つの技術を使ってやっていきます。一つは、エレクトロモビリティー、もう一つは、乗用車とかトラックなどの脱炭素化を進めるために、水素や燃料電池を使っていくということです。
ご存じかもしれませんけれども、今、2030年以降も内燃機関の自動車を許可し続けるべきかどうかという議論が結構物議を呼んでいて、議論が展開されております。そういう意味で、このプランの中には、幾つかの短期及び中期的なチャレンジが含まれております。
省エネと新技術の導入というのが、このエネルギー分野におきまして、排出量の削減をするために使われる手段です。また、廃棄物管理ということも非常に重要で、いわゆる3Rの政策がとても重要になってきます。既にこの廃棄物関連の分野で、リサイクリングを通じて、20%の削減が達成されています。
日本にとってもこれは興味のある分野かもしれませんけれども、ドイツにおきましては、発電所のレベルにおいては、炭素回収・貯蔵については、導入するということはコンセンサスがとれておりません。でも、一方、こういった技術をなかなか温室効果ガスの削減をすることができないでいるセクター、例えば製鉄とかセメント生産の分野において適用しようという動きがあります。
次に、農業の分野なんですけれども、この分野の排出量を削減していくために、肥料の利用の仕方をもっとインテリジェントにしようという動きがあります。
もう一つ重要なメッセージといたしましては、エネルギーをつくるための作物をつくる、その栽培地を拡大しないというコンセンサスがあります。したがいまして、バイオマスとか、バイオ起源の再生可能エネルギーについては、有機的な廃棄物からしか、残渣などを使ってしか生産してはいけないということです。
ドイツも日本も同じアプローチだと思うんですけれども、日本のエネルギー基本計画においても、このバイオマスの役割の重要性がうたわれております。
次に、森林の分野ですけれども、日本も60%が森林に覆われていると聞いておりますし、ドイツにも森林がたくさんありますので、この森林を吸収源として使うことができます。こういう形で、森林の果たす重要な役割をさらに拡大したいと思います。
しかし、私たちは、もう一つのアプローチといたしまして、エネルギー源として木材を利用していく予定です。日本においても、これを資源として使うキャパシティーは非常に大きいと聞いております。
次に、全体的にとられている、網羅するメジャー、対策なんですけれども、びっくりしたのは、1999年から導入されておりますエコロジカル税というのがあるんですが、それの改革をしようと、それを見直そうということのコンセンサスがとれたことです。
2番目が、環境に有害な補助金を削減しようという取組なんですけれども、これは、これまでとは違う政策アプローチです。というのは、多くの補助金を残してほしいと思っている人たちがいるので、それを削減していくということは非常に難しいことです。
次に、連邦政府のほうが最前線に立って、自らの脱炭素化を達成しようと。2030年までにということで掲げておりまして、連邦政府の建物を、省エネを通じて近代化していこうとしております。
次に、その実行及びその見直しについてですが、先ほど申し上げましたように、5年に1回は見直していくということ。
次のプログラム・オブ・アクション、行動計画については、2030年までをカバーするものになりますが、それは、連邦レベルの選挙が終わってから、2018年から取り組むことになります。それと、現在の政党の間で、こういったプロセスについてはコンセンサスがとれておりますので、たとえ政権交代があったとしても、このプロセスは変わりません。
次の点は、今、進行中のプログラムをモニターして、評価をしていくために、新しい独立科学委員会がつくられます。さらに、今後とも広範な参加プロセスは継続していきます。
今後のタイムフレームということで、先ほど申し上げたのですけれども、政府の決定はマラケシュの会合以降にまで持ち越されました(事務局注:実際はマラケシュ会合が開始した11月7日に閣議決定された)。もちろん、それには理由があるんでしょうけれども、政府内でもコンセンサスを得るのはなかなか難しいということで、恐らくは、いろんなセクターを担当している省庁のほうから、なかなか合意が取りつけられないんだと思います。
ご清聴ありがとうございました。ディスカッションの時間が残っているかとは思うんですけれども、ありがとうございました。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、ご質問いただきたいんですけど、例によって時間が限られておりまして、質問を全てしていただいてから、まとめてご回答をいただくということで、すみません、それではこちらから。足立委員から始まって、ずっと一通り流したいと思います。お願いします。

〇足立委員
ナイツェルさん、ありがとうございました。一昨日は京都へ来ていただいて、ケルン市の方々とともに意見交換をさせていただいて、大変参考になりました。
1点、お伺いをします。こういった参加のもとの国家戦略の策定、すばらしいなと思ってお伺いしましたが、地域・自治体の役割、これも大変重要だと思います。国全体での削減目標を、地域にブレークダウンするような、地域ごとの削減目標、あるいは、その削減計画というようなものが、どの程度進められておりますでしょうか。日本では全てが徹底しているとは思いませんが、大きな自治体では、そういったことに取り組んでいますので、教えてください。
以上です。

〇大塚委員
時間もないので、簡単に一つだけお伺いします。
スライド31のところで、エコロジカルタックスのリフォームについて、見直しのコンセンサスがとれたというお話ですが、この点について、どういう見直しかに関して、ちょっと詳しくご説明いただけるとありがたいと思います。さらに、排出枠取引に関してはお話がございませんでしたが、これはEUマターということで、今日はお話しにならなかったんでしょうか。もし何かございましたらお願いします。

〇大野委員
私からは、再生可能エネルギーの開発における州政府と地方自治体の役割についてお聞きしたいんですけども、連邦政府の施策ないし計画の中で、州政府や地方自治体が自然エネルギー、再生可能エネルギー開発に促進するような、何かそういうふうな制度があれば教えてください。

〇安井委員(委員長代理)
では荻本委員、お願いします。

〇荻本委員
東京大学の荻本です。
電力に関することなんですが、再生可能エネルギー、変動する、それから予測が難しいという中で、その難しい影響がどんどん出てきているということで、ECでパブコメをやったり、または、ドイツでもエレクトリシティー・マーケット2.0というような取組が1年前に発表されて、いろんな課題が挙げられているということなんですが、この課題はどんなスケジュールで解けそうか、教えてください。

〇安井委員(委員長代理)
手塚委員、お願いします。

〇手塚委員
日本鉄鋼連盟の手塚と申します。
さまざまな取組を、特に住民、あるいは、さまざまなステークホルダーを巻き込んだ対話でもってプランをつくられていったというのは、非常に敬意を表します。この対話のプロセスの中でどれぐらい、将来、今まで、あるいはこれから発生するであろうコスト、あるいは負担といったものが、定量的に議論されていたのかどうかということを伺いたいんですね。
というのは、シェルンフーバー先生のレポートの中で、再生可能エネルギー30%導入しているプロセスの中でGDPを痛めていないというグラフがございまして、1人当たりのGDP1.8倍に、90年から2015年に増えているんですけども、経済がこれだけ成長している中で、リニューアブルを入れていくというのは、それなりに合理的にできたのかと思うんですが、一方で、2000年から15年の間に1500億ユーロぐらい、社会全体にはコストがかかっているというレポートも出ているやに聞いております。今後、さらにこういう対策を進めていく中で、ステークホルダーの方々がどれぐらいのコストを負担していくのかということに関する、何かディスカッションがあったのか。あるいは、逆に言いますと、経済が成長していく、1人当たりのGDPが成長していくということが大前提となって、こういう対策の議論が行われているかということを伺いたいんですね。
日本の場合は、90年から2014年の1人当たりGDP1.2倍にしか増えていませんので、この中でさまざまな負担を背負いながらエネルギーの改革をやるというのは非常に苦しい道だったわけなんですけれども、その辺、もし見解がありましたら教えていただければと思います。

〇安井委員(委員長代理)
それでは根本委員、お願いします。

〇根本委員
もしかしたら似た質問になってしまうかもしれませんが、18ページのチャートのところで、ここ七、八年ぐらい、ほとんど温室効果ガスの排出量に変化がない中で、今後急激に減らしていくという図があり、他方で、原子力はなくしていくということで、その分を再生可能エネルギーでというご説明もお伺いしたところなんですけど、そうすると、2030年ぐらいのところでも、再生可能エネルギーの効果というのは六、七%ぐらいしか出てこないことになりまして、このターゲットを達成するためのパスがちょっと見えないなというところで、実は20ページのところにも表が、数字が入っていないところがございまして、どういうところで、どういう形でお考えになられているのか、もしよろしければ、ご説明をいただければと思います。

〇安井委員(委員長代理)
以上でございまして、なかなか難しいかもしれませんけど、お願いをしたいと思います。

〇ナイツェル課長補佐
じゃあ最善を尽くして答えます。
まず最初の質問についてですけれども、州レベル、都市のレベルにおいての取組です。そういった地方レベルにおいても独自の気候保護のアクションプランをつくっております。国レベルのアクションプランにおきまして、州とか市に対しまして、自らの目標を策定せよということを義務づけたわけではありませんが、地方レベルで、自らの責任で策定をしております。ご存じのように、主要都市におきましては、全てクライメート・アクション・プログラムをつくっていますし、また独自の目標も設定されております。市でも、州レベルでも、それは同じことです。
全ての州が非常に野心的な目標を、計画をつくっておりますし、中には、非常に風力が強い州においては、2030年までに100%再生可能エネルギーを目指すということを言っている州などもあるぐらいです。
2番目の質問ですけれども、エコロジカルタックスの改革についてですけれども、現在のシステムというのは一貫性がない、整合性に欠いているわけです。化石燃料の中で、幾つかの化石燃料については重要性を置いているものもあります。
しかしながら、80ページに及ぶ、私たちのこのクライメートプランにおきましても、どっちの方向に見直しが進んでいくかということは、具体的に何も言及されていません。
この点については、日本から私たちは学ぶことができるというふうに思っておりまして、日本の炭素税の改革についても学びたいと思っております。その税収の余剰分については、緩和対策にお金を使うことができるということで、今後、日本の取組から学んでいきたいと思います。
次に、排出権取引なんですけれども、欧州レベルのガス税がありますので、それに次ぐ第二の排出権取引のシステムをドイツ内につくりたいというふうには思っておりません。それはドイツレベルでつくるべきだという声があったんですけれども、必死になって、それをつくらせないようにしてきました。
しかしながら、この欧州レベルのETSが本当に将来的に機能するかどうかということは不透明です。例えば、幾つかの欧州の国々について、ポーランドなんかの場合には、石炭を完全に廃止することには、まだ納得していません。これは問題であるというふうに思いまして、もし、そのETSが欧州レベルで機能しないということになると、石炭を廃止していくことに対してプレッシャーをかけるべく、代替案を考えていく必要があります。
都市レベルにおきましても、再生可能エネルギーの普及に大きな役割を果たすことができるというのは、おっしゃるとおりだというふうに思います。東京都とベルリン市においても、再生可能エネルギーを促進させるためのアプローチがとられておりまして、特にソーラー発電に力が注がれておりますが、この両市の間で違いがあっておもしろいと思うんですが、東京都のほうは、ソーラーパネルを導入するために財政的な支援を行っていると。一方、ベルリンのほうは、自らの市庁舎を太陽光発電ができるように設置をしていて、そこをまず取りかかっていきたいと。そして、市レベルにおける市役所の暖房の費用や発電の費用を削減していこうという取組をやっています。
このディスカッションの中で非常におもしろいことを、私、観察いたしました。つまり、何がわかったかというと、太陽光パネル設置のコストが、日本のほうがドイツに比べると3倍高いということなんです。このようにコストが3倍も高いというのは、日独を考えると、似たような経済レベルであるにもかかわらず、これだけ違うというのは、その理由を分析するのは興味深いことだと思います。もしこういうふうなコストを削減することができると、その浮いたお金を使って、ほかの削減対策にお金を回すことができると思います。
ソーラーだけではなくて、原則的に、特に風力のタービンとか、バイオマス発電についても、同じことが言えるというふうに聞きました。
この再生可能エネルギーの普及というのは、グリッドインフラのレベルにも非常に関わっているんですけれども、洋上風力で、例えばたくさん発電をしたとしても、そこで系統がなくて、ドイツの中部や南部に電力を持ってくることができなければ意味がありません。
新しいグリッドをつくっていくということは結構大変なことですし、時間もかかります。住民参加のプロセスということも考えなくちゃいけません。しばしば該当される地域におきましては、送電線がつくられるということに反対の声が上がりまして、その妥協としては、地下に電線を埋めるということがよく言われるんですけれども、そうするとコストが2倍かかってしまいます。
しかしながら、外部コストをいかに評価をするかという方法については、科学者たちの間でも十分コンセンサスがとれていないということを認識しています。
私見なんですけれども、このようなコスト評価というのは、あえて別に私は要らないというふうに思っています。というのは、現在既に気候変動が本当に起こっている、産業革命前から温度が上昇しているということがシグナルとして強く発せられているので、気候変動を示すようないろいろな事象も起こっているので、要らないと思います。このように既に起こっているシグナルについては、シェルンフーバー先生のほうからもご説明があったかと思います。
最後の質問なんですけれども、再生可能エネルギーの普及に関しては、オントラックで予定どおり進んでおります。既に電力ミックスにおける再生可能エネルギーのシェアは33%になっておりまして、今年の夏は80%以上を達成したときもありましたので、オントラックと言えることができると思います。でも、同時に解決しなければならない技術上の課題などもありまして、既存の電力インフラに再生可能エネルギーをいかに接続していくかという問題がありますけれども、これには、思ったよりも時間がかかっているので、忍耐が必要だと思います。
シェルンフーバー先生のほうからも発言があります。

〇シェルンフーバー所長
根本先生のコストに関しての質問なんですけれども、再生可能エネルギーを導入することによって、いかにドイツの経済がそれに対応しているかということです。
以下のようなドイツの状況がありまして、これはとても重要なことであります。再生可能エネルギーというのは、ドイツの経済成長に打撃は受けていなくて、ドイツの経済というのはきちんと成長してきております。でも、いろいろな種類の受益者がいます。重工業なんですけれども、この補助金プログラムから免除されているので、エネルギー価格が下落をして、その安くなったことの恩恵を受けています。今は、補助金をもらっているようなエネルギー関係のアントレプレナーという小規模な事業をしている人たちが100万以上います。しかし、確かにこれは、年間250億ユーロにも上る補助金の受益者たちではあるんですけれども、これは富の再配分ということになるので、全体として見るならば、ドイツ経済は別に被害は受けていません。

〇ナイツェル課長補佐
まだ答えていなかった質問がもう一つ、最後にあったんですけれども、再生可能エネルギーのコストの推移についてです。将来のコストがどうなるかということを示した具体的な表があるんですけれども、そのコストの予測を見ても、それはまだアクセプタブルな、受け入れ可能なレベルである。そして、今年もコストは確かに上昇しました。1ユーロセント上昇したんですけれども、再生可能エネルギーを支援するために、7ユーロセント使われることになりますが、これに対しても、社会的には仕方がないコストということで受け入れられていて、コンセンサスがあると思います。そうしなければ、温室効果ガス削減の計画を達成することができないからです。
既にシェルンフーバー先生からも説明があったように、再生可能エネルギーを普及させることによって、いろいろなコベネフィットや社会・経済全体に、より多くの機会が提供されます。
どうもご清聴ありがとうございました。シェルンフーバー先生にも助けてもらって、お礼を申し上げたいと思います。出していただいた質問には、これで全部お答えできていればと願います。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、シェルンフーバー先生とナイツェル課長補佐様に最後に拍手で感謝を。
大分延びてしまいましたですけども、何か事務局からございますか。

〇低炭素社会推進室長
発表者の皆様におかれましてはご説明を、委員の皆様におかれましては活発なご議論を、ありがとうございました。
次回の日程については、11月11日、金曜日、14時から16時を予定しております。次回においても引き続き関係者へのヒアリングを実施する予定であり、ヒアリング対象者等の詳細につきましては、追って事務局より連絡をさしあげます。よろしくお願い申し上げます。

〇安井委員(委員長代理)
ありがとうございました。
それでは、本日の会議を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

午後 0時43分 閉会