長期低炭素ビジョン小委員会(第1回) 議事録

日時

平成28年7月29日(金)14時00分~16時00分

場所

全国都市会館 2階 大ホール

東京都千代田区平河町2-4-2

議事録

午後2時02分 開会

○低炭素社会推進室長

それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第1回会合を開始いたします。

本委員会の委員名簿は、資料2として配付しております。

今回は第1回目ですので、委員の方々のご紹介をさせていただきます。

まず初めに、福岡大学名誉教授、浅野先生でございます。

京都市地球環境・エネルギー政策監、足立委員でございます。

学習院大学教授、伊藤委員につきましては、本日、欠席との連絡をいただいております。

早稲田大学大学院法務研究科教授、大塚委員でございます。

自然エネルギー財団常務理事、大野委員でございます。

新経済連盟事務局政策統括、小木曽委員でございます。

東京大学生産技術研究所特任教授、荻本委員でございます。

ジャーナリスト・環境カウンセラー、崎田委員でございます。

日本気候リーダーズパートナーシップ代表、桜井委員でございます。

国連環境計画金融イニシアティブ特別顧問、末吉委員でございます。

名古屋大学大学院環境学研究科教授、高村委員でございます。

筑波大学システム情報工学研究科教授、谷口委員でございます。

日本鉄鋼連盟エネルギー技術委員長、手塚委員でございます。

日本経済団体連合会常務理事、根本委員でございます。

電気事業連合会副会長、廣江委員でございます。

国立環境研究所社会環境システム研究センター統合環境経済研究室長、増井委員でございます。

京都大学大学院経済研究科教授、諸富委員でございます。

持続性推進機構理事長、安井委員でございます。

本委員会の委員長につきましては、部会長の指名により定めるとの議事運営規則に基づき、浅野先生にご就任いただいております。

また本日、お集まりの方々につきましては、同規則に基づき、浅野部会長からご指名いただいております。

本日は、委員総数18名中17名の委員にご出席いただいており、定足数に達しております。

また、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針に基づき、原則として会議は公開とされていることから、本日の審議は公開といたしております。

初めに、鎌形地球環境局長よりご挨拶申し上げます。

○地球環境局長

環境省の地球環境局長の鎌形でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日、お忙しいところ、ご参集いただきまして、どうもありがとうございます。第1回の長期低炭素ビジョン小委員会ということでございます。開催に当たりまして、一言、ご挨拶させていただきたいと思います。

昨年末には、気候変動をめぐっての一つの節目として、パリ協定が合意されたところでございます。このパリ協定では、世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ、そして、また世紀末にも温室効果ガス排出をゼロにするといったような、長期的な目標とあわせまして、各国が長期の温室効果ガス低排出開発戦略(長期の戦略)を策定し、提出するということが求められているというところでございます。長期の戦略につきましては、先般のG7伊勢志摩サミットにおきましても、G7として2020年の期限に十分先立って策定するということがコミットされているというところでございます。

長期の戦略の策定に関しましては、ドイツでは本年秋に策定予定ということでございます。また、本年末には米国、カナダなどが策定予定と、こういったことを聞き及んでおります。先進国各国では取組が着々と進んでいるというところでございます。

この委員会は、今後、我が国として必要となる長期戦略の策定につなげていくということで、2050年、そして、それ以降の低炭素社会に向けた長期的なビジョンについてご審議いただくために、設置をお願いしたというところでございます。

我が国では既に、地球温暖化対策計画におきまして、2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すというような長期の目標を位置づけているところでございます。また、環境省では、昨年10月に、気候変動長期戦略懇談会ということを設けまして、今後の長期の大幅削減に向けた提言というものを今年の2月に取りまとめていただいているところでございます。この提言では、社会構造のイノベーションが必要だというような強いメッセージが出されたところでございまして、今後の政府の長期戦略策定に関しての一つの指針になるというふうにも考えているところでございます。

こうしたことを踏まえつつ、この小委員会では、委員の皆様から積極的にご意見を賜って、技術、ライフスタイル、そして経済・社会システムの変革などを含めた、目指すべき社会の絵姿、そして、その実現に向けた方策をお示しいただければというふうに考えております。

誠に勝手ながら、年度内には取りまとめをお願いしたいなというふうに考えてございます。そして、その後、その後の政府の長期戦略策定に向けた議論の土台とするということでお願いできたらと考えております。

意欲的なご審議を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○低炭素社会推進室長

では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

○浅野委員長

それでは、議事を進めさせていただきます。

まず、規定にはないのですが、本小委員会に、委員長代理を置きたいと思います。安井先生に委員長の代理をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

では、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

○低炭素社会推進室長

議事次第の次に、配付資料一覧というのがございます。資料1としまして、長期低炭素ビジョン小委員会の設置についてでございます。資料2といたしまして、先ほどご紹介させていただきました、小委員会委員名簿がございます。資料3といたしまして、小委員会の運営方針についてでございます。資料4としまして、横長のものでございますけれども、低炭素社会の構築に向けた国内外の動向というのがございます。また、資料5-1につきましては、気候変動長期戦略懇談会提言概要でございます。資料5-2が、これが同じ懇談会の提言でございます。それから、資料6が、長期低炭素ビジョン小委員会の進め方についてでございます。また、参考資料としまして、中央環境審議会関係法令等というのがございます。

資料の不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

○浅野委員長

それでは、よろしゅうございましょうか。

では、議事に入りたいと思います。

○低炭素社会推進室長

すみません。カメラにつきましては、ここで終わってください。よろしくお願いします。すみません。

○浅野委員長

本日は議題が一つでございまして、本小委員会の進め方等についてでございます。

今日は、主に資料6にあります、この委員会で今後何を議論するかということについて、皆様方から自由にご発言をいただきたいと思いますが、とりあえず資料1から6までを一括して事務局から説明いただきますので、よろしくお願いいたします。

○低炭素社会推進室長

それでは、資料1から資料6まで、通して説明をさせていただきます。

資料1につきましては、長期低炭素ビジョン小委員会の設置についてというものでございまして、7月15日に、地球環境部会で決定されているというものでございます。部会に小委員会として長期低炭素ビジョン小委員会を置くということ。それから、二つ目としまして、この小委員会は、パリ協定等で2020年までに今世紀半ばの長期的な温室効果ガスの低排出の発展のための戦略を提出することが招請されていること等から、2050年及びそれ以降の低炭素社会に向けた長期的なビジョンについて審議するとなっております。また、3としまして、この小委員会の決議は、地球環境部会長の同意を得て、地球環境部会の決議とすることができるとしております。

資料2は割愛させていただきまして、資料3につきましては、小委員会の運営方針でございます。これも同日、7月15日付で部会長決定されております。一つ目としまして、会議の公開・非公開につきまして書かれておりまして、小委員会は、原則として公開するものとすると。ただ、公開することにより、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある場合または特定な者に不当な利益もしくは不利益をもたらすおそれがある場合には、非公開とすることができるとしております。また、出席者につきましては、代理出席は認めないとなっておりますけれども、小委員長が必要と認めた場合には、欠席する委員等または専門委員の代理の者を説明員として出席させることができるといったような規定がございます。また、3番には、会議録につきまして、会議録の作成、配付、それから(2)としまして、会議録の公開について記載されております。公開した会議の会議録は、公開するものとすると。また、非公開とした会議の会議録であっても、小委員会が認めたときは、公開とすることができるとなっております。

資料3については、以上でございます。

資料4のほうで、国内外の動向というのをまとめております。

めくっていただきまして、目次としまして、科学的知見、二つ目としまして、気候変動に関連する海外・国内の対応、3番目としまして、長期的に温室効果ガス排出の大幅削減に向かう必要性、4番目としまして、長期的な戦略の策定について、5番目としまして、2050年以降に想定される社会の姿というのを書いております。

科学的知見につきましては、3ページ以降でございますけれども、中身については4ページ目でございます。IPCCの第5次評価報告書のポイントというのが書いております。IPCCは、気候変動に関する政府間パネルで、科学者、政府の集まりですけれども、最新の科学的情報を評価して、報告書を取りまとめているということで、最新のものとしまして、2013年から2014年にかけて第5次評価報告書というのを公表しております。ここで、温暖化については疑う余地がないとか、人間活動が温暖化の支配的な原因であった可能性は極めて高いということ、それから、1880年から2012年の間に0.85℃上昇していること、平均海面水位は19cm上昇していることなどが書かれております。

また、5ページのほうに参りまして、今後の動きを、将来の気候変動について予測をしておりますけれども、厳しい温暖化対策をとった場合には0.3から1.7℃上昇、そういった現状を上回るような温暖化対策をとらなかった場合には、2.6℃から4.8℃上昇するといったことが言われております。

めくっていただきまして、6ページ目でございますけれども、IPCCのAR5では、気候変動のリスクにつきまして、五つの懸念材料というのが示されております。左横のほうの図を見ていただきますと、これは左側と右側に目盛が書いておりまして、例えば右側の白いほうの目盛ですと、工業化以前からの世界平均気温の変化というのが書いておりまして、それぞれ五つの懸念材料というのが、どういった可能性が、リスクがあるかということが書かれております。それぞれの懸念材料につきましては、下のほうに1番から5番ということで書いておりまして、固有性が高く脅威にさらされるシステム、生態系とか文化ですとか、北極海氷とかサンゴ礁のシステムが脅かされるリスクとか、2番目では気象の極端現象、熱波とか極端な降水のような極端現象のリスク、3番目では影響の分布ということで、作物生産とか水の利用可能性の減少などの不均一に分布するリスク、4番目では世界全体で総計した影響、世界経済全体のリスク、生物多様性全体のリスクが書かれておりまして、また、5番目では大規模な特異現象というようなことが書かれておりまして、真ん中の右のほうに、1℃上昇の場合には極端現象によるリスクが高くなる、2℃の上昇の場合には北極海氷やサンゴ礁が非常に高いリスクにさらされていること、3℃上昇の場合には大規模かつ不可逆的な氷床の消失により海面が上昇するリスクが高くなることなどが示されているところでございます。

7ページからは、日本の観測事実でございますけれども、7ページに書いておりますのが、日本の100年当たりで1.14℃上昇しているというグラフがございます。

また、8ページにつきましては、日本の降水量につきまして、1時間降水量50mm以上の短期間強雨の観測回数というのが、増加傾向というのが表れているということが書かれております。

また、9ページでございますけれども、我が国における気候変動の将来予測ということで、気温上昇の予測ですとか、降水量の変化予測というのを書いておりまして、降水量などにつきましては、大雨ですとか、短時間強雨の発生頻度の増加ですとか、大雨の降水量の増加、また、逆に無降水日数の増加というようなことも予測されているところでございます。

めくっていただきまして、10ページ目でございますけれども、もう既に起こりつつある気候変動の影響というのを幾つかの分野で書いております。左のほうでは、米とか果樹への影響、それから、上のほうでは異常気象とか災害につきまして、右上のほうのグラフにつきましては、大雨の発生日数が増加傾向にあるというものでございます。また、熱中症ですとか感染症、最近もデング熱とかというのがございますけれども、そういうものの影響について書いております。また、下のほうでは、生態系についても影響が現れてきているというようなことが書かれております。

11ページのところでは、そういったもの、さまざまな影響につきまして、例えば重大性とか、緊急性とか、確信度というので、どういうふうに評価されているかというようなものをまとめて載せております。

また、12ページのところでは、これは世界的な動きでございますけれども、ポツダム気候変動研究所のSchellnhuberさんの研究で、2℃未満に抑えられたとしても、幾つか主要なティッピング・エレメントの損失または変化が生じるというふうにされております。特に、この図の左のほうを見ていただきますと、この帯で書かれた、Paris rangeと書かれておりますけれども、パリ協定で言及された1.5℃とか2℃の範囲でございますけれども、そういうところについても、例えば西南極氷床、グリーンランドの氷、夏季の北極の海氷、山岳氷河、サンゴ礁などには、もう影響が出てくるというようなことが、この図で示されているところでございます。

13ページのところですけれども、こうした影響につきましては、二酸化炭素がどれだけたまっているかというようなことが影響してくるということでございまして、2℃上昇をもたらす累積の排出量としては、約3兆tと言われておりますけれども、既に排出した分として、約2兆tが排出されていると。残り約1兆tということですけれども、ここ数年と同じCO2排出が続くと、あと30年で2℃の上昇をもたらすというようなことが言われております。

めくっていただきまして、14ページ目でございますけれども、温暖化を2℃未満に抑制する緩和経路というものでございまして、これもIPCCのAR5からの抜粋でございますけれども、それぞれ、この図で表されたものが予測、緩和の経路ということで、排出が多いものから少ないものまでさまざまあるということが言われておりまして、ただ、2℃におさめようとすると、今後、数十年にわたって大幅に排出を削減して、21世紀末までには、排出をほぼゼロにするというような必要があると。2050年までには、2010年と比べて40%から70%削減する必要があるといったことが言われているところでございます。

また、実際のCO2の濃度につきましては、15ページ目に載せておりますけれども、「いぶき」、「GOSAT」という衛星で観測をしておりますけれども、この観測の結果、平成27年の12月に始めて400ppmを超過したということが言われております。昔は大気中の二酸化炭素濃度0.03%とかと言われておりましたけれども、今はもう0.04%になっているということでございます。

それから、めくっていただきまして、16ページ目から、気候変動に関連する海外・国内の対応というのがございまして、17ページ目、COP21でございまして、下のほうで、パリ協定で世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも2℃高い水準を十分に下回るものに抑えること、また、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも1.5℃高い水準までのものに制限する努力をすることなどが規定されておりますし、今世紀後半には、温室効果ガスの排出と吸収のバランスを達成するために、急速な削減に取り組むことを目指すというふうにされているところでございます。

めくっていただきまして、18ページ目でございますけれども、政府間の取組としまして、パリ協定における各国の目標として、2020年までに提出・更新をしていくこと、5年ごとに国連に提出をして、それぞれ従来より前進を示すことなどが規定をされておりますし、長期目標の達成に向けて、世界全体の状況を5年ごとに検討していくこと、2020年までに長期戦略を提出することなどが規定されております。

19ページ目で、2015年のG7エルマウサミットでも、IPCC提案の40%から70%の幅の上方の削減とすることをUNFCCCの全締約国と共有することを支持することなどが言われておりますし、2016年のG7の伊勢志摩サミットでも、長期戦略の策定等について記載をされております。

めくっていただきまして、20ページ目でございますけれども、気候変動関連リスクに対する意識としまして、世界経済フォーラムなどでは、下の表に書いてありますような、発生の可能性が高いグローバルリスクの上位5位というようなものを挙げておりますけれども、気候変動に関係したようなものも多く入っているというものでございます。

また、21ページ目ですけれども、気候変動リスクを踏まえた世界の動向としまして、石炭等の化石燃料を「座礁資産」として捉えて、投融資を引き上げる動き(ダイベストメント)ですとか、そういう投融資先企業の取組に影響を及ぼすような動き(エンゲージメント)というのが開始されているところでございます。

22ページ目でございますけれども、同じく世界の動向としまして、左上のほうは、中央銀行とか国際機関における気候変動リスクへの言及ということで、物理的リスクとか、信頼性リスク、移行リスクなどが挙げられております。また、右のほうには、情報開示について、それぞれの組織・プロジェクトで情報開示に関する活動について書かれておりますし、左下のほうでは、社内炭素価格の導入例、恐らくプロジェクト等を進めるときに、投資家も含めた関係者への透明性の観点からだと思いますけれども、それぞれここに挙げられているような会社で、社内で炭素価格というのがついているということが言われております。

また、23ページ目でございますけれども、企業の環境配慮の要素を考慮して投資を行う「ESG投資」というのが世界的に急速に拡大しているというものでございまして、その下の絵の丸の大きさで金額というものの規模感を示しているものでございます。

めくっていただきまして、24ページ目でございますけれども、我が国の削減目標の検討経緯、1998年以降の大きな動きについて記載をしております。

25ページのところでは、長期目標として、第4次環境基本計画で長期目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すということが記載されているということが書かれております。

めくっていただきまして、26ページ目には、地球温暖化対策計画の中で長期目標への記載ぶりを書いております。

27ページ目は、同計画の全体の構成でございます。

それから、めくっていただきまして、28ページ目でございますけれども、Science Based Targetsということで、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトですとか、国連グローバル・コンパクト、WRI、WWFによる共同のイニシアチブとして、2℃未満に抑えるために、企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定することなどを推奨するということにしておりまして、認定されている企業というのが18社あるということで、Coca-Colaですとか、Kelloggですとか、ソニーなどが入っております。

また、29ページ目、再生可能エネルギーを賄う企業組織として、RE100というのが結成されたということが書かれております。

めくっていただきまして、30ページ目でございますけれども、公的年金によるPRI署名ということで、例えば我が国のGPIFが国連責任投資原則(PRI)に署名したというようなことが書かれておりまして、PRIにつきましては、左下のほうに、どういうことをやっているかということを書いておりますし、署名している年金基金というものについては、右下のほうに書いているところでございます。日本以外の国のものもたくさん入っております。

また、次のページ、31ページ目では、「21世紀金融行動原則」ということで、現在、229の金融機関等が署名しているというようなことが書かれております。

32ページでございますけれども、環境省として、「パリ協定から始めるアクション50-80」というのを示しておりますけれども、こういうところでも、長期のビジョンを策定していこうというようなことを書いているところでございます。

33ページ目以降で、長期的に温室効果ガス排出の大幅削減に向かう必要性というのを書いておりますけれども、34ページ目でございまして、IPCCによりまして、緩和努力がなければ、広範囲な将来の気候変動リスクが生じるおそれがあるということで、緩和の必要性、それから、真ん中の四角では、気候変動による主要な八つのリスクとして、海面上昇ですとか、洪水ですとか、極端現象、熱波、干ばつ、水資源不足等々を書いているところでございます。

35ページ目は、我が国の温室効果ガス排出量ということでございますけれども、世界各国の温室効果ガスの排出量について、1990年と2010年のものを書いております。我が国、2010年段階でも、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで、3.0%ですけれども、5位ということになっております。

めくっていただきまして、36ページ目でございますけれども、GDP当たりの温室効果ガス排出量と経済成長の関係について示しております。下の左のほうのグラフを見ていただきますと、右に行くほど温室効果ガスの削減が大きい、上に行くほどGDPの名目の成長率が大きいということになっておりまして、両者に一定の相関関係が認められるのではないかというようなことを記載しております。日本は、その下のほうにございますけれども、3点ほど、2010年のもの、2014年までのものと、一番左にあるのが、これは2012年までのものですけれども、その状況について書いております。

それから、次のページ、37ページでございますけれども、化石燃料への依存ということで、我が国のエネルギー自給率、現在6%でございまして、化石燃料の輸入額16兆円で、GDPの3%を占めているということが書いておりまして、再生可能エネルギーにシフトをすると、この輸入の低減によって、我が国の化石燃料依存の低下につながるのではないかということを記載しております。

めくっていただきまして、38ページ目、我が国の貿易収支でございますけれども、グラフの一番下の青い線が鉱物性燃料でございまして、貿易収支全体が赤色の点線で描いたものでございまして、かなり似た動きをしているというのがわかるかと思います。

また、39ページ目にございますのは、気候変動と安全保障というのが、かなり深い関係にあるのではないかということで、アメリカとかイギリスの動きというのを入れておりますけれども、気候変動が、さまざま自然災害の増加とか難民の流入等により、安全保障に影響を与えるというようなことが言われているということを記載しております。

また、次のページ以降、長期的な戦略の策定についてということで、41ページのところには、国・地域として、EU、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカについて、現在わかっている状況というのを記載しておりまして、2050年の目標とか、策定の根拠ですとか、対策・施策の例というのをまとめているところでございます。

めくっていただきまして、42ページ目、こういう先ほどのようなものを、左のグラフでは1人当たりの温室効果ガス排出量ということで捉え直してみたもの、右のほうはGDP当たりの温室効果ガス排出量に直してみたものでございまして、2010何年までは実績を書いておりまして、そこから2050年の目標というところになるとどういうふうになっているかというのをグラフとして表しているものでございます。

また、こうした2050年に向けた動きというのは、もうさまざまなところで始まっておりまして、43ページ目では、国内企業の2050年に向けた長期的戦略というのがございますけれども、例えば左上のほうの大林組さんですと、2050年までに直接的な貢献で85%削減するとか、その下のトヨタさんでいきますと、2050年までに新車のCO2排出を2010年比で90%低減して、ライフサイクルCO2をゼロにするとか、工場CO2排出を2050年にゼロにするとか、右下のほうのリコーさんでは、年度比で2050年までに87.5%削減するといったようなことを決めていらっしゃるということが書いております。

めくっていただきまして、44ページ目でございますけれども、同じく地方公共団体のほうでも2050年をターゲットとした長期ビジョンを策定しておられるというところがあるということで、例えば左上の長野県さんでは、2050年目標として、温室効果ガスを90年比で80%削減する目標を置いておられるといったようなことを書いております。

また、次のページ、45ページ以降は、2050年以降に想定される社会の姿というのを書いております。

46ページ目でございますけれども、世界の2050年の人口というのが97億人になるのではないか、2015年度比で1.3倍になるのではないかということが言われておりますので、書いております。

また、47ページ、次のページでは、2050年にかけての経済成長ということで、世界全体として、数字で書いておりますのは年平均成長率でございまして、これで2013年から2050年までに実質GDPとして約3倍になるというようなことを記載しております。

また、次のページ、48ページ目、49ページ目でございますけれども、これはIEAの2度シナリオというものですけれども、2050年のどの部門においても化石燃料の割合が大幅に減少して、電力の割合が増加しているということについて書いております。

めくっていただきまして、50ページ目にございますのが、日本の2050年の人口でございまして、これは国立社・人研の出生中位・死亡中位の予測でございますけれども、2050年で9,700万人ぐらいになるのではないかということが言われているところでございます。

また、51ページのところでは、国交省の「国土のグランドデザイン2050」というので、高齢人口ですとか、高齢化率の推移について記載をしているものでございます。

めくっていただきまして、52ページ目でございますけれども、これも同様に国交省さんの「国土のグランドデザイン」で、日本の人口分布がどうなっていくのかというのを記載したものでございます。

それから、53ページ目でございますけれども、日本の2050年の社会資本整備費ということになりますけれども、これは今後20年で、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなる、維持管理とか更新費が増加するおそれがあるというものについて記載をしております。

また、めくっていただきまして、54ページ目ですけれども、日本の2050年の経済ということで、内閣府さんの「選択する未来」というものにおいて、人口規模を1億人程度で安定化させて、生産性を世界トップレベルの水準に引き上がることができれば、長期的には2%ポイント以上の経済成長率を押し上げることも可能であるというふうにしております。

また、55ページ目につきましては、2050年を見据えた技術開発ということで、内閣府のエネルギー環境イノベーション戦略というのが載せられておりまして、「超スマート社会」というものの到来によって、エネルギーシステム全体が最適化されることを前提に、技術についてインパクトの大きな、革新的な技術について特定しているというものでございます。

めくっていただきまして、56ページ目、参考でございますけれども、ここで言う「超スマート社会・Society5.0」というのは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くような社会、変革というのを科学技術イノベーションが先導していくという意味で書いているということを書いております。

57ページ目以降は、参考資料でございますけれども、先ほどご紹介させていただきましたような各国の状況につきまして、こちらのほうで、わかる範囲で載せているものでございますけれども、時間の関係で割愛させていただきます。

また、冒頭申し上げました気候変動長期戦略懇談会の概要につきましては、資料5-1、5-2で書いておりますけれども、大部になりますので、なかなか中身についてはご説明させていただけませんけれども、5-1で提言の概要を見ていただきますと、気候変動の科学的知見と国際社会のコンセンサス、それから、2番目では温室効果ガスの長期の大幅削減の絵姿とその道筋ということで、社会構造のイノベーションが必要であるというようなことが言われておりまして、3番で我が国の経済・社会的課題と解決の方向性ということを挙げまして、それらの同時解決に向けてどうしていくのか、社会構造のイノベーションを起こしていくというようなことが書かれているところでございます。これはまた後で読んでおいていただければと思います。

また、資料6でございますけれども、この委員会の進め方についてというのを記載しております。初めのページに検討の背景というのを書いておりますけれども、先ほどご紹介させていただきましたように、パリ協定等で、世界共通の長期目標として2℃目標の設定で、1.5℃のものに抑える努力の追及ということが言われているということで、そのため、長期の戦略というものの策定とか提出について記載をしております。二つ目のポツでは、5月に閣議決定されました地球温暖化対策計画で長期についてどういうふうに書かれているかというのを、ちょっと長くなりますが、引用させていただいております。三つ目としましては、環境省でやっております、先ほど資料5-1、5-2でご紹介させていただきました、環境大臣の私的懇談会の気候変動長期戦略懇談会を設置して、そこで2月に提言としてまとめているというものを書いておりまして、最後のポツで、このような国際的な情勢、国内の状況を踏まえつつ、技術のみならず、ライフスタイルや経済社会システムの変革をも視野に入れたビジョンを取りまとめて、それを議論の土台として、長期の戦略の策定につなげていくことが必要ではないかということが書いております。

めくっていただきまして、2ページ目、3ページ目に書いておりますのが、ご議論いただきたい点ということで記載をしております。

一つ目のところでは、2050年及びそれ以降に向けた低炭素社会を考慮する上で、関連する経済・社会的課題としてどのような課題があるか、また、今後のトレンドはどうかということで、我が国の経済とか社会的課題の例として、人口減少とか、高齢化社会とか、経済の低成長とか、地方の課題といったようなことがあるということを例として挙げております。

また、2番目としまして、2050年及びそれ以降に向けて、我が国はどのような低炭素社会を目指していくべきかということで、一つ目の丸としましては、低炭素社会実現への取組に向けて持つべき視点は何かということで、視点の例でございますけれども、さまざまな社会的課題を同時解決に資すること、それから、国内投資を促して、国際競争力を高めるような経済発展とか社会の活力につながること、国際的な資源制約の克服に資すること等を挙げております。また、二つ目の丸としまして、このビジョンを広く国民にわかりやすいものとするために、例えば具体的にイメージのしやすい切り口ということからご議論いただけないでしょうかということで、切り口の例として、住宅・建築物とか、移動ですね、人とか物の移動とか、産業とかビジネス活動とかというような切り口が考えられるのではないかということを例として挙げております。また、三つ目の丸では、こうした具体の切り口について、技術、ライフスタイル、経済社会システムといった観点から、どのようなイノベーションが必要かということを書いております。

また、三つ目としまして、3ページの3番でございますけれども、目指すべき社会に向けて、我が国はどのような対策を講じていくべきかということで、一つ目の丸として、国内における対策として、各分野におけるイノベーションを実現するために、各主体の取組として何が必要か。また、そのため国や地方公共団体がとるべき施策はいかにあるべきか。タイムラインについてもどのように考えるべきか。また、二つ目の丸として、国際社会の低炭素化に向けた動向を踏まえて、我が国は何を実施していくべきか。世界全体での温室効果ガス削減への貢献だけにとどまらない、我が国の経済社会に与えるインパクトや我が国の世界における位置づけ等の観点を含めて、ご議論いただけないでしょうかということを書いております。

また、次の4ページ目でございますけれども、今後のスケジュールとしまして、2016年7月29日(本日)でございますけれども、今回、小委員会の設置と国内外の動向というのをご説明させていただきまして、次回については、8月30日に開催をさせていただきまして、関係者へのヒアリング等を、この後、複数回にわたって小委員会でヒアリングを実施していただけないかというふうに考えております。これを11月ぐらいにヒアリングの結果のまとめをしまして、また、並行して、地方ヒアリングというのも実施していきたいというふうに考えております。また、12月以降で、2050年、それ以降を見据えた、あるべき社会像の検討ですとか、そうした社会像の達成方策の検討につきまして複数回、小委員会をさせていただいて、年度内に取りまとめを目指したいと考えております。

また、その下に書いておりますのは、関係者へのヒアリング、第2回目以降のヒアリングとして、こういうさまざまな有識者からヒアリングを実施することを考えておりますということを書いておりますし、一番下のところでは、地球環境部会への報告につきまして、この小委員会で、取りまとめに向けた審議状況については、適宜、中環審の地球環境部会に報告を予定しているということを記載しております。

以上、1から6まで、ちょっと駆け足でご説明させていただきました。

○浅野委員長

それでは、今、一括してご説明いただきましたので、内容がかなり多岐にわたりますが、今日は初回でございますので、ご発言をご希望の方などと言わずに、全員に一言ずつお話しいただくというつもりでおります。まず、荻本委員から途中退席の申し出がありましたので、最初に荻本委員にお願いいたしまして、その後、安井委員から、反時計回りで順にご発言いただきたいと思います。

では、荻本委員、どうぞ。

○荻本委員

ちゃんと意識していなかったので、すみません。

私はエネルギーを研究させていただいている、また電力システムを研究させていただいているという人間ですので、それに関係するところを述べさせていただきます。

過去、地震の後、何年もエネルギー問題、また、それと絡めて二酸化炭素問題というのが議論されてきました。FIT法というのが制定されて、何が起こったのかということを考えることがこのごろよくあります。当時、再生可能エネルギー100%が可能かどうかということが随分議論されましたが、私が思うに、どうやってそれを実現するのかということについては、十分深まっていなかっただろうと思っております。それは、何をやったらどういう結果になるかということを、地震の後だったので、考える時間も不足したということもある中で、いろんなことをやったのですが、例えば太陽光発電に非常に好意的な価格を出した結果、非常にたくさんの設備が導入されて、または申し込まれて、たくさんの費用をかけてしまった。それが大きな国民の負担になっている。または、一部の企業の莫大な利益になっている。その中には海外企業も含まれる。競争をちゃんとやらずに、いろいろ「しまった」ということをやってきたのだろうと思います。また、産業の面からいくと、やはり何十年もかけて育ててきた太陽光発電の産業が、決していい思いをできなかったということもあろうと思います。

こういう中から、我々が、ここから半年、または1年弱議論するに当たって、まず、私が申し上げたいのは、ぜひ、その議論をするときに、by proof、要するにちゃんとした根拠があって、できれば定量的な解釈によって議論が進めてゆくことが必要であると思っております。

これに関して一つ思いつくのは、アメリカの規制機関、FERCというのがあります。FERCが、比較的最近、電力システムまたはエネルギーシステム全体を議論するときには、どうしてもシミュレーションをする必要があるわけですが、そういうときには、こういう原理原則に基づいて品質を維持した解析をしなければいけないと述べたガイドライン(http://www.ferc.gov/legal/staff-reports/2016/modelingwhitepaperAD16-14.pdf)を本年1月に発表しております。米国環境省EPAが出したクリーンパワープランを議論するためのベースに提供されたものです。日本として外国でやられたものを真似をする必要は全くありませんが、いろんな議論というものをby proofでやっていこうということの一つの表れであろうと思いますので、この視点は考え方として非常に重要であろうと思っております。

2番目は、各国が、先ほどの資料にもございましたが、いろいろな検討をやっているということですが、それなりにいろいろな確固たるデータ、またはかなり議論された手法を使って、定量的なものができている状況です。我々、これから限られた時間ではありますけれども、やはり品質の高い定量的な結果を一つ選ぶのではなくて、いろいろ検討して、比較考量できるような検討ができれば、よりよいというふうに思っています。

3番目は、日本の低炭素化の議論というのは、各セクターに分けて過去行われてきました。例えば住宅であるとか、モビリティであるとか、エネルギー供給。今、我々がやらないといけないのは、もうライフスタイルというようなことも出ているように、需要が大きく変わる中で、様々な要素が変化する。ですから、例えば電気自動車が来るのか来ないのかということが、実はエネルギー供給に非常に大きな影響を与える。または、それを再生可能エネルギー導入に非常に大きく役立てることができる。そういうことを、部門の壁を越えてトータルで評価できるような検討を、この短時間の中で定量的にどれだけできるかわかりませんが、ただ、部門別に分けて、その中で一番よかろうというものを出していくと、一番大きな果実、つまり部門を越えて最適化をしたときに得られるものを失ってしまう可能性がありますので、そのようなことにならない部門横断的な検討にはぜひご留意をいただきたいと思います。

最後に、いろいろなイノベーションというものが考えられます。これは不確実なものがたくさん含まれますので、やはりパラメトリックに考えると。これさえあれば何とかなるという話ではなくて、これがあったら、この分だけいいというような組み立てにできればよいかなと思っております。

以上です。

○浅野委員長

ありがとうございました。

では、安井委員から順次ご発言をお願いいたします。

○安井委員

まず、この議論をより効率的に行うためには、やはり何らかのベースが、同じところのベースにのっとって、それでお話をさせていただかないと、なかなか難しいかなという気がしております。

先日、某、私の関係者とちょっと会って、この話をいたしましたら、初めてそういう話をしたんですけど、やっぱりいまだに懐疑論のときに、いろんな方の書いた本をずっと勉強された方で、それで、そこから抜け切れていないという方が結構おられるんですね。それで、それはそうじゃない、どうやって説得しようかなと思っていろいろやったんですけど、なかなかやはり難しいと。その辺をやはり共通、最初から立場が全然違うということであると、なかなか話が難しいなという、そういう気がしておる次第でございます。

例えば、彼が言うには、やっぱり気候感度の問題とか、それから、あるいは2050年の80%削減には根拠がないとか、そういうようなお話でありまして、それで、実際には、気候感度に不確実性があるというのは、後で述べますけど、これはリスクから出てくる気候感度というのは、そういう話なんですけども、リスクというものを考えたときには、不確実性というのは、要するにより安全サイドにとるに決まっているので、だから、それは当たり前なんですよね。だから、そんなことをリスク論というもので話をするという以上、そういうふうになるんだと。

あと、2050年80%削減に科学的根拠がないということに関しましては、COP21というか、パリ協定の、パリ協定って、三つのことを言っているわけですけど、一つはNDC絡みでみんなやろうねというのは、日本の場合ですと、2030年26%削減というのはそうなんですけど、2050年には40ないし70%の高いほうとか、そういうようなことが言われていて、先進国である日本というのを考えると80%ぐらい。これ、一番最初には、第一次安倍内閣で言われた2007年の話なんですけど、割合とピンポイントでいいところを突いているな、えらいものだなという、そういう、やっと科学的根拠ができたなと、こんな感じに見えているものなんですけど、なかなかそういう理解もできないというようなことがあるかと思っておりますので、ぜひ、まず何か共通認識、これは社会全体に対してもそうでありまして、なかなかやはり共通的な認識はまだ広まっていないような気がいたしますので、その辺りはもう少し努力をしなきゃいけないなという気でございます。

それから、あとリスク論、リスクをベースとした議論というのが、やはり望ましいなというふうに思っておりまして、温暖化というか、気候変動のリスクというと、いろいろあり過ぎまして、とにかく複雑怪奇になっちゃって、それで自分の項目が入っていないと、自分の専門が入っていないと怒るという人が結構いるんですけど、リスク論的に言うと、やっぱり海面上昇のリスクが非常に高いと私は思います。あと、それ以外の生物多様性とかというのもあるんですけど、やはり圧倒的に、人類が生存していくということを考えると、やはり海面上昇のリスクというのは一番高いかなと思います。バングラデシュ辺りでは、既にいろんな検討をされていますけど、たった1.5mの海面上昇が起きると、1,700万人の環境難民が出てしまうという、そういう話がございます。この1,700万人、日本が全員引き受けると、1億人がキープできるかもしれないんですけど、そういうことなのかもしれないんですけど、そんな数値でございます。

1.5mというのは一体どういう話かというと、まだ、実を言うとグリーンランドの氷が溶けることを考えていないんですね。それで、大体、それがなしでも、やはり海水面というか、海水の温度の上昇による熱膨張と、山岳氷河の溶融による水の増量、海水の増量だけで行っちゃうんですね。ですから、今世紀末には多分まだ来ないと思いますけど、来世紀の真ん中辺りでは、もう既に危ないという、そういう話になるかと思います。

こういうものを考えて、それに加えて、さっきどこかにティッピング・エレメントの話が書いてございましたけど、もし、ティッピング・エレメントというものを重要だと思えば、本当に重要なんですけど、やはり2.5℃という数値は多分あり得ないんですよね。それで、2.5にしてしまうと、多分、どうしてもグリーンランドの氷が溶け始めて、溶け始めると、止まらないというか、気温を下げる方法論がないので、したがって、どんどん溶けていってしまうということになりますから、そうなってくると、やはり最終的には、多分、温度にもよりますけど、場合によると七、八百年かかるかもしれませんけど、やっぱり7mぐらいのことを考えなきゃいけないと。7mというと、少なくとも江戸川区の区民の方にとっては衝撃の値で、そうじゃなくても、ここ辺りでもだめかもしれないですね。そういうような、少なくとも虎の門の地下鉄の駅はだめでしょうね。そういうようなことになりますので、やっぱり海面上昇辺りがどうもリスクが一番高いなと思うので、その辺りのリスクをやはり基準にして、これ、行くと、こういうリスクがあるよということをもう少し定量的に示すというのが、一つ、やはり将来ビジョンを考える一番の根幹になるかなというのは、そんな気がしておると。そういう次第でございます。ですから、申し上げたいことは、やはり繰り返しになりますけども、やはりベースを同じにして議論をしたいと。

あと、もう一個言うのを忘れましたかね。COP21で、先ほど申し上げましたのは、2050年だったんですけど、COP21で、もう一つ描かれている、言っていることの非常に重要なのは、やっぱりネットゼロエミッションというコンセプトでありまして、このネットゼロエミッションというのは、今世紀末までにと、ほわっとしているんですけど、今世紀末までに、とにかく人間が植林等でCO2を減らす分は出してもいいけれど、それ以外は出しちゃだめよと。そういう話でございますから、要するに化石燃料はゼロにしろと、そういう話ですよね。これは1750年辺りから始まった産業革命の時点まで、我々が戻るということを意味するんですね。化石燃料を使わない。そういうことになったとき、一体、産業ってどうなるんだろうかという、非常に誰が考えてもよくわからない話をやらなきゃいけないということなので、そのぐらいの話が今世紀末に来るとしたら、やっぱりそこをどう見るのか。それはなしとするのか。その辺りのやっぱり前提が、非常に共通点としてもやっぱり難しいところかなと思うわけであります。

もし、このネットゼロエミッションをやるのであれば、もう本当にシナリオシンプルで、要するに化石燃料を使わないんじゃなくて、CCSを全部つけなさいという話になるだけで、あるいは水素をどこかから輸入してきなさいとか、あるいは、自然エネルギー、原子力、そういったものでやりましょうと。それだけの答えぐらいしかないので、誰がどうやっても同じ答えになるんですね、多分。ですから、そういうことを基盤にして、共通認識を持った議論ができるようになるかもしれないなと。そんなことでございます。

ちょっと長くなりました。

○浅野委員長

ありがとうございました。

では、諸富委員、どうぞ。

○諸富委員

資料6で挙げていただいている議論の論点ですね、これは2050年に向けての経済社会の変化をにらみながら、どういう形で低炭素社会の実現とそういった経済社会の変化を整合させていくのかという論点、問題提起をされていると思うんですが、そういうことでいくと、長期的には、どちらかというと化石燃料、脱化石燃料の経済社会に向けて動いていく、少なくとも先進国経済は動いていくのではないかというふうに思います。ですので、それを後押しする、それ自体が環境政策ではなくても、そういった経済社会の変化を促していくことが、結果としてイノベーションを起こして、よりエネルギーが効率的な社会に動いていくというように思うんですね。

現在は非常に不透明な社会で、長期停滞論に代表されるんですね。経済成長率が非常に低い。そして、リーマンショック後のショックを解消すると、経済成長で再び高まるというふうに期待されたんですが、残念ながら、そうなっていない。相当長期の停滞になる可能性があるということですね。

それから、産業構造は非常に転換をしていて、製造業のサービス産業化が始まっている、非常に深いレベルで進行しつつあるということですね。それがIOTとか、それから人工知能とか、こういった話題が非常にホットに議論されておりますけども、そういうものの活用によって、製造業であっても、サービス産業化し、そちらから収益を得るようになっていくという変化が進行しているということですね。その中で、こういったものを活用することによって、非常に社会の効率化が進展するというふうに思います。ですので、エネルギー使用量、省エネという観点からすると、好ましい方向での変化が起きますし、これを推進していくことが、すなわち結果として化石燃料に依存する社会からの脱却を容易にしていくという部分があります。

それから、再エネを中心とする分散型エネルギーシステムへの移行、あるいはエネルギー社会のスマート化、これも否応なく進行するでしょうから、これも後押ししていくことが結果としてイノベーションを起こし、経済社会を変えていくということになると思います。

それで、とりわけ日本にとっての課題ということでいきますと、原発事故があり、そして電力システム改革、それからFIT法の導入ということがあったと思いますし、これらと温暖化対策をどう両立していくのかということだと思います。

原発の事故からしばらくは、原発の依存を低下させるという国民的な課題からどうしても化石燃料を燃料とした発電に対するある種の許容というのがあったと思うんですけれども、パリ合意後の社会において、特に日本にとっての大きなチャレンジは、原発の依存を低減させながらも、しかし同時に化石燃料、電力セクターからの炭素排出をどうやって削減するのかと。結果として、再エネが思わしいスピードで上昇しない場合には、どうしても化石燃料自体をどうするか。特に石炭火力をどうするかということに集約的に表れてこざるを得ないというふうに思うんです。ですので、こちらでもどれだけ石炭火発の問題を議論していくのかは存じ上げませんが、しかし、一つの焦点として石炭火力の非常に大きな増設計画、これをどういうふうに考えていくのかは、大きな課題だというふうに思っております。

とりわけ環境省さんにおいては、環境アセスメントでこれを最終的には一番極端なケースにおいては、きちっと意見を出して、計画を場合によっては見直していただくということもあり得たと思うんですが、私が読んでいる限り、干渉する方向には向かわず、一旦建設を認める。そうすると、このまま行くと、一つの懸念は非常に炭素排出が、石炭火発がどんどん増えると、CO2の排出が増えてしまう。他方で、直近、非常に話題になっておりますように、下手をすると、今度は逆に増え過ぎて、座礁資産になってしまうおそれも出てきていると。この問題をどういうふうに考えるかということです。

少なくとも建設が進んだ後、これが稼働し出したときに、今度は、建設段階でストップしないのであれば、一旦分解した後、排出をどうするか、どうコントロールしていくかということを議論していかなければいけないのではないかと。つまり、石炭火発を含む日本の火力発電所からの排出について、どう議論していくのか。これまでは、電力セクターの皆さんの自主的な取組に任せるということで来ているんだと思うんですが、アメリカの動向などを見ながら、電力セクターに対する規制というものを入れるべきなのかどうかということをご検討いただくべきじゃないかというふうに思います。

アメリカでは具体的に言いますと、EPAによる電力石炭、特に石炭火発に対する規制なんかは念頭にあるんですが、アメリカの場合は2010年ワックスマン・マーキー法が挫折をいたしまして、排出取引制度が導入できなかったために、転換をして大気浄化法改正でEPAに一種のCO2は大気汚染物質であるという最高裁判決を受けての現在の流れがあるわけですが、日本の場合も石炭火力自体が大気汚染物質を出しますし、CO2を一種の大気汚染物質と考えて環境省に規制権限を与えると、一つのイノベーティブな考え方だと思うんですが、いずれにせよ、こういった方向の延長線上に何らかの規制、ないしは規制のための仕組み、枠組み、カーボンプライシングを含めた議論というのを行っていくべきではないかと考えております。

以上でございます。

○浅野委員長

すみません。最初に申し上げなかったんですが、皆さん、ちゃんと算数はできると思って、何も申し上げませんでした。これだけの人数の委員全員に発言をお願いしますと申しました。会議の終了時間は決まっておりますので、ご自分に与えられた時間が何分だということはおわかりだろうと思いました。しかし、以後は算数ができない人がいらっしゃるということを少し意識してご発言をお願いいたします。増井委員どうぞ。

○増井委員

わかりました。初回ということで、総論的なコメントをさせていただきたいと思います。

2008年からこういう議論にずっと参加させていただいておりまして、今回2050年の話ということなんですけれども、やはり、フォアキャスト的な視点ではなくて、バックキャスト的な視点、安井先生のほうかお話がありましたけれども、どういうビジョン、どういう目標というのを明確にして、どういったイノベーションというのが必要になってくるのか、また、それを支えるような制度が必要なのか、そういうことをきちんと発信するということが重要ではないかなと、まずは思っております。全部で5点あるんですけれども、それが1点目です。

2点目につきまして、将来の見通しということも重要になってくるんですけれども、これは私自身の反省なんですけれども、これまでどちらかと言いますと、供給側のサイドに立っていろいろ見通しというのをしてきました。つまり、経済成長率が何%ということで、それを前提に議論してきたわけなんですけれども、具体的な生活の姿、我々が将来どういう生活をしているのかというのがあまり明確ではなかったというところが、私自身、非常に反省点としてあります。

実際、2050年にどういう暮らしをしているのか、そのためにどういうサービスやモノが必要で、それを低炭素という枠組みの中でどう実現していくのか、そういう視点で議論してもいいんじゃないかなということで、経済成長というのは、もちろん必要ではありますけれども、それは目的ではなくて、あくまで手段であるという、そういう視点に立った議論というのが必要ではないかなと思っております。

3点目は、2050年というのはあくまで通過点であって、最終目標ではないということで、これも安井先生からお話がありましたけれども、21世紀の後半にはトータルでGHG排出量ゼロにしないといけません。通過点である2050年までに8割削減ということで、幾つか道筋というのは描けるかと思うんですけれども、ゼロ排出に向けて整合的なもの、経路というものは、どういうものなのかということ、これもあわせて議論しておくことが必要と思います。2050年8割削減達成できたけれども、ゼロにはいかないというのは、それはまずい経路、道筋でありますので、そういう意味で、より、長期を見据えてどういうことが必要なのかということを議論していかないといけないのではないかと思っております。

4番目は、今回も、多分、全国レベルの話になるかと思うんですけれども、実際に対策をとらないといけないのは、家庭であり、事業者でありと、国民全体に関わることと思います。ただ一方で、さまざまな主体の置かれている立場や状況というのは異なっているわけで、ここで議論された内容というのが実感としてわかるような、そういうようなものでないと、せっかく議論してもなかなかそれが実効を伴わないといったことがあるかと思います。今回は京都市さんが委員として参加されておりますけれども、例えば、地域的な課題として見たときに、どういうふうにここで議論したことが展開できるのかというような、そういう一種の応用問題的なところというのも必要になってくるのではないか、そういうことに対する答えというのも我々は準備しておく必要があるのではないかなと思っております。

温暖化対策というのは、瞬間的なブームで終わらせるのではなくて、2050年、あるいはさらに先まで長く取り組める、そういうところもあわせて検討する。そのためにはいろんなパターンというのを考えておく必要があると思っております。

最後の点は、今回の委員会での議論の趣旨と離れるかもしれないんですけれども、2050年以降、社会の主役というのは、今、30代以下の人たちです。委員のうち、多分私も含めて2050年まで生きている方は失礼ながらあまり多くないと正直思っています。

そういう意味で、若い世代、あるいはこれから生まれてくる世代の人たちにどういうメッセージを発信できるのかということも重要でありますので、実際にこの委員会で出された意見、多分また報告書が出されると思うんですけれども、そういうものが、例えば、中学校なり小学校、そういったところでの教材になり得るような、そういうものというのは目指していかないと、ここで議論してきたことというのが次の世代に全く伝りません。それは我々としてももったいないですし、むなしいところでありますので、そういう意味で、ぜひ、中学生にもわかるような内容、それを学校に配って使っていただけるようなものにしていかないといけないと思っております。

以上です。

○浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、廣江委員、どうぞ。

○廣江委員

2点申し上げます。まず、1点目は、これは荻本委員が先ほどおっしゃったことと重なりますが、今後の議論の進め方についてでございます。私ども地球規模での長期的なCO2の削減の取組が、非常に大事であること、は十分に認識をしているつもりでございます。ただ、具体的な議論の進め方に当たりましては、例えば、2050年80%削減ありきといった硬直的なものではなく、また、イノベーションの重要性というのは十分に認識をしているつもりでございますけれども、それに頼り切るということではなく、現実的な制約というものを十分認識した上で、現実的な議論をする必要があるというふうに思っています。

2030年、25~26%の削減という目標を出されました。このときにはエネルギーに限って申しましても、技術的な成立性、あるいは国民負担、さらにはエネルギーの安全保障等の観点からエネルギーミックスの議論が慎重に進められるといった、非常に丁寧な作業が重ねられたと認識をしております。今後、2050年、2060年になりますと、非常に不確かなものがたくさん出てまいりますので、当然ながら幾つかのケースを幅を持って予測するということになると思いますが、いずれにしましても、現時点において、できる限り合理性の高い裏づけの持った議論を、性急にではなく慎重に進めていく必要があると、このように考える次第でございます。これは1点目でございます。

2点目でございますが、少し先走った具体的な議論で申し訳ありませんが、低炭素電源、特に原子力発電のあり方についてでございます。ご承知のように、2030年のエネルギーミックスでは、再生可能エネルギーが22~24%、原子力は22~20%というような数字が出されております。これを2050年、60年に延ばしていきますと、当然、再生可能エネルギーの技術進歩はあると思いますし、CCSにつきましても、一定量の可能性、これは否定するものではありませんが、やはり、その時点においても、原子力発電が相当程度の役割を担っているということにならざるを得ないのではないかと、私どもは考えています。

ただ現在、我が国が保有しています原子力発電所、これが仮に全て60年運転をいたしましても、2050年には半分に減ってしまいますし、2060年には4分の1に減ってしまうという現状があります。繰り返しになりますが、2050年、60年という非常に不確実性の高い時点を考えるわけですから、当然、さまざまなオプションを持つ必要があると思いますし、そのオプションの一つである原子力発電につきましては、現時点で政策的に明確な位置づけはされておりませんが、やはり、リプレースといったようなことも念頭に置いていく必要があるのではないかなと考える次第でございます。

以上でございます。

○浅野委員長

ありがとうございました。

根本委員、どうぞ。

○根本委員

多少重なるところはございますけれども、まず、課題の設定の仕方として、地球規模で物事を考えていただきたいと思います。国内に閉じた考え方では地球温暖化問題の解決にならないことは明らかだと理解しております。経団連は、「低炭素社会実行計画」におきまして、国内での削減はもちろん、省エネ・低炭素型の技術・製品の海外展開を通じた国際貢献、あるいは革新的技術開発にこれまでも取り組んでまいりましたし、これからも取り組んでいく所存です。

今、廣江委員からもご指摘ございました2030年度26%削減という中期目標は、産業部門での削減分については、これまでの実績から「低炭素社会実行計画」を通じて何とか実現できそうという目鼻はついているわけではありますが、家庭部門では、40%削減を一体どうするのか、全く目処が立っていない状況です。まず、このチャレンジングな目標をクリアするところから始めなければならないというのが現状です。

こうした中、2050年80%削減ということ長期目標が出されておりますが、これは安井先生のほうから、いいポイントをついた目標というご指摘がございました。ただ、私どもとしては、納得できるものではございません。なぜならば、東日本大震災後の日本のエネルギー事情の変化を踏まえた検討がなされていないからでございます。

廣江委員からご指摘がございましたとおり、温暖化政策とエネルギー政策は表裏一体の関係でございますので、今後さらに時間をかけてじっくりと慎重な検討が必要だと思いますし、その際に環境と経済の両立という視点を決して忘れてはならないと思うところでございます。

2050年に向かってのキーとなりますのは、革新的な技術開発とその社会実装でございます。すなわち、長期的視点に立てば立つほど、イノベーションがなければ温暖化対策はなし得ないということです。イノベーションに取り組みやすい環境整備をしていくことこそが、長期の温室効果ガス削減のキーになるのではないかというふうに思っているところでございます。目標を定めたからそこからバックキャストすればいいという姿勢では、問題の解決にはならないということを申し上げたいと思います。相当程度に低炭素化の進んだ日本の中では国内排出量取引制度や炭素税をはじめとする規制的な手法は、むしろイノベーションの原資を奪う効果しかないということを強く申し上げたいと思っております。

なお、システム的な対策が必要であるというお話がございました。その意味において、まちづくり政策全体として、どう温暖化対策に取り組むべきかといった観点でのヒアリング対象をつけ加えることをお勧めしたいと思います。

以上でございます。

○浅野委員長

ありがとうございました。

では、手塚委員、どうぞ。

○手塚委員

エネルギー多消費産業の代表ということで意見を述べさせていただきます。既に日本の産業はご存じのとおり、世界最高水準のエネルギー効率を達成している中で、2030年に向けて低炭素社会実行計画のもと、最先端技術の最大導入ということを掲げて取組を進めているところでございます。これは2030年の26%削減に向けて、こういう方策をとっていくということをコミットしているわけなのですけれども、この26%削減のためには、今後14年間で日本社会全体で35%という劇的な効率改善をすることが必要となってまいります。これを実現する方策として長期エネルギー需給見通しの中でも大変野心的な省エネが想定されているわけでして、2030年までに現在手にしているさまざまな最先端技術、トップランナー製品等がほぼ限界まで普及しているということが想定されているわけです。そうしますと、2030年以後にさらに26%を80%まで持っていこうとしますと、非常に大きな深掘りをする必要があるわけですけれども、どういう戦力を使ってやるかという方策が立たなくなってくるわけでございます。つまり現在想定されていないような新たな革新的な技術を導入し、社会のイノベーションを含めた、取組を新たに始める必要が出てくるということでございまして、つまり革新的な技術の開発というのが2050年80%という目標には絶対的に不可欠な条件であるということでございます。

革新的な技術開発ということを考えたときに、今後、どういうことを考えなきゃいけないかという一つの例なのですが、35年先までに革新技術をつくるということは、今から35年前に今日の世界をどう見ていたかということが参考になると思います。35年前、つまり1981年に世界にはインターネットはおろか、パソコンすら存在していなかった。81年にIBMがインテル・マイクロソフト系のパソコンを初めて発表しているのです。その後、アナログレコードに代わってCDが出てきたのが82年、アップルのマックが世の中に出たのは84年、つまり、こういった全くなかったものが初めて出てきて、今日のスマホ、インターネットの世界になっているということで、35年後の世界の技術を現時点から想定するのは非常に難しいということをまず理解する必要があるかと思います。また、81年というのは、実はレーガン大統領が就任した年でございまして、その後、84年にゴルバチョフ大統領が就任し、89年にベルリンの壁が崩壊するということで、この35年間で劇的に世界が変わったわけです。誰も35年後に東欧社会がEUの一員になっていて、中国が世界第2位のGDPの国になるということを想定した人は当時いなかったでしょう。そういうことを念頭に入れた上でこれから35年後の姿を考えていくという必要が、ここの委員会で求められているということだと思います。

一方、エネルギー需要のほうで申し上げますと、実はウオッシュレットが発売されたのが80年、全自動の洗濯乾燥機が導入されたのが87年でございます。つまり家庭部門のエネルギー消費が劇的に伸びてきた背景には、このような便利な機器が消費者に対して新たなサービスの提供をするようになったという事情があるわけです。こういうものも今後新たどんどん出てくる可能性がございます。家庭用のエアコンの普及率は81年43%、1世帯当たり1.4台でした。それが2016年の今日、普及率92.5%、1世帯当たり3.1台ですから、82年にインバータエアコンが初めて導入されてエネルギー効率は劇的に改善しましたけれども、数量は数倍に増えていますので、それを上回る電力需要増、エネルギー需要増が起きているわけです。

今後、温暖化が進みますと、熱波が増えていくというようなことが資料にございましたけれども、温暖化への適応の関係で、こういうエネルギー多消費型のインフラというものが恐らく社会全体でますます求められてくる可能性がございます。例えば、食料生産の高度化にはエネルギーが必要になることが考えられますし、あるいは異常気象に対する国土強靭化といったような、安井先生もお話がありましたけれども、水面上昇といったものに対応するインフラをさらに強化していくという投資も行わなければいけない。こういうものも当然エネルギーの消費を増やしていくということで、排出削減とトレードオフの関係があるということも、恐らく35年先の世界を考えたらば、考慮する必要があるかと思います。

次に、技術開発の促進ということですけれども、経済成長が低成長になるとエネルギーの消費が増えないというのは一つのメリットなのかもしれませんが、一方で、研究開発が停滞するというデメリットもございます。企業は将来の経済が成長し、マーケットが伸びるということを前提にしないと、研究開発投資を行わなくなってくる。そういう意味で、経済が成長していくということが基本的に技術開発を促進する大前提であるということを留意していただく必要があろうかと思います。

さらに、開発するだけではなくて、そうして開発された新技術を社会に普及させなければ80%削減というような数字は実現しません。今日の社会ストックは、過去50年あまりにわたって莫大な化石燃料を使って、莫大なエネルギーを使って投資されてきたビルであるとか、交通インフラであるとか、社会インフラであるとか、都市であるとかいったものの上に成り立っています。これを今後更新していく際に、最も新しい技術のものに入れかえるということを必要とするというのは、先ほどの資料にもあったかと思うのですけれども、それをやっていくためには、莫大な投資資金が必要になります。つまり経済が停滞している社会の中では社会資本のストックの入れかえというのは起きてきませんので、実は最新技術が普及するということが起き得ません。

したがいまして、この80%削減ということを実現しようと思ったら、大前提として持続的かつ継続的な経済成長というものがないといけないということになるわけです。先ほどGDPが伸びているということと排出削減が進んでいるということの間に相関があるということを資料の36ページでお示しいただいたと思いますが、これは温暖化対策が進むからGDPが伸びているのではなくて、GDPが伸びて社会資本ストックの更新が進んでいる、つまり最新の技術への投資が起きているから削減が進んでいるというふうに私は解釈しております。そういう意味で、まず、一番先に持続的な経済成長をいかにして確保していくかということが極めて重要だというふうに思っております。

最後に、この検討に当たっては、削減の数字とエネルギーの供給体制というのは表裏一体の問題でございますので、ぜひとも長期のエネルギー政策との整合性ということも考えてご検討いただければと思います。

以上です。

○浅野委員長

ありがとうございました。

では、谷口委員、どうぞ。

○谷口委員

谷口でございます。私、都市地域計画とか交通計画を専門にしております。ほかの方が多分言わないだろうということだけ1点だけ申し上げようと思います。

一つの私がつくった言葉を提案させていただければと思います。「エコマインドパラドックス」という言葉です。どういうことかというと、今までお話が出たように、いろんな技術革新とか取組が進んでいます。これでやると、こういう機材を導入すると、何%CO2を削減するというお話がいっぱいあります。実際それが普及しているんですけれども、実際その数字の分の効果を発揮しているかというと、全く発揮していません。そこをやっぱり見るべきだと思っております。

それは例えば、私の調査の例ですと、2008年にガソリン価格が非常に高騰いたしました。そのときにドライバーさん何百人捕まえて、運転量を削減しましたかというお尋ねをしたんです。そうすると、エコカーに乗っておられる、もしくは低燃費車に乗っておられる方は6割の方が削減していません。それ以外の普通車に乗っている方は6割の人が削減していますという回答でした。

つまり、人間ってよくできておりまして、私はエコに貢献しているというふうに思うと、どこかでエコに貢献しなくてもいいと思ってしまう、こういう構造になっているんです。こういうところって、いろいろあって、例えば、CO2排出ゼロにしますというまちがドバイ近郊のアラブ首長国連邦でマスダール・シティというのをつくっています。例えば、そこに行くと、人口5万人でそういうまちをつくる、CO2をゼロにする。実は行ってみるとまだ砂漠の状態なんですけれども。そこでどんなすばらしいまちができるのかと思っても、その周りのアブダビとかドバイとか、そういう大規模なまちでホテルに泊まると、部屋の設定温度は18度です。要するに、マスダール・シティをUAEはつくっているんで、だからほかのまちでは適当なことをやってもいいだろう、すみません、UAEの人には悪いですけれども。相殺して考えていて、相殺のバランスがバランスしていない、全然バランスしていないんです。そういう意味で、環境のことをみんな認識しているようになっているように思いつつ、全然認識されていなくて、そういうバランスが欠けている(=エコマインドのパラドクス)ということです。

安井先生が共通認識とおっしゃいましたけれども、私もまさにそうだと思うんですが、安井先生はやさしいので、そのレベルで止めておられるんですけれども、行政の説明責任とかと言われますが、私はそうではなくて、もう市民や関係者に理解責任を求める時代になってきているんだと思っています。それこそが僕は社会構造イノベーションだと思っていて、都市の計画の分野の中でもそういう分野というのがほかにも出てきています。例えば都市のコンパクト化をすると、実は人口密度が倍になると、交通由来のCO2が半分になります。ただ、それは公共交通がうまくセットで入っているということが前提になります。自治体の方の中には、私のまちは、まちの真ん中に高層マンションがいっぱいあります。だからもうコンパクト化しているんですと言われる方もいますが、それは単に理解度が足らないわけです。

あと、都市のスマート化、いろんなところで太陽光電池を入れるという社会実験をされています。けれども、新しいまちで例えば高層マンションに入れても、お互いの電気の融通とかはほとんど意味がないんです。ばらばらの、いろんな方が生活しているばら建ちの都市計画的には悪いような既存のまちにスマートグリッドを入れていったほうが、実はエネルギーの有効活用ができるというふうなことも実証的にはデータで見ればわかっています。そういうこともやっぱり一般人の理解度が足らないということです。取組はあるんだけれども、深い理解がされていないから、いろんなところで進まない。そこが変わるだけで私は80%削減は達成できると思っています。

以上です。

○浅野委員長

ありがとうございました。

高村委員、どうぞ。

○高村委員

ありがとうございます。先ほど、安井先生、荻本先生、おっしゃっておられました点ですけれども、事実、あるいはデータ、科学的なデータに基づく議論をきっちりやるというのがまず基本的な点として非常に大事だと思っております。

その上で内容と言いましょうか、議論の進め方、考え方として二つ、それから議論の具体的な進め方として一つ申し上げたいと思うんですが、一つは、これも安井先生がおっしゃいましたけれども、パリ協定が示した一つの長期の目標、ビジョンというのが非常に重要だというふうに思っております。

他方で、国際交渉を皆さん頑張られたと思うんですけれども、国際交渉を成功に至らせた底流に流れている世界の変化なしでは恐らくCOP21のパリ協定というのはなかったというふうに思ってもおります。そこはある意味では、ちょっと言い方は悪いですが、協定がどうなろうが、恐らく大きく変わることのない変化だというふうに思っておるんですが、その一つはやはりエネルギーの大きな転換が起きているというふうに思います。これが温暖化にとっては世界的にはプラスになる可能性がある。これは今年の3月にIEAが出した速報値ですけれども、エネルギー部門のCO2が14年、15年とフラットになっている。世界的な経済成長は3%プラスで来ていると思いますので、そういう意味では、今までは景気停滞がなければエネルギー部門のCO2は減らなかった傾向に大きな変化が出てきていると思います。二つの主要国であるアメリカ2%、中国が1.5%減っていますので、そこが大きいんですけれども、それを支えているのが、やはり省エネと再エネというふうに分析をしています。新規の発電設備の9割が再エネになっているという点。これは逆に国際再生可能エネルギー機関が太陽光、風力も含めてコストの低下というのが著しいということを、この間出しておりますけれども、そうした大きな世界の変化があるというふうに思います。これははね返ると、先ほど荻本先生の話でありますが、日本でどうしたらいいのかという課題にもこれはなると思っています。

それから、二つ目の大きな変化と思っていますのは、ここでは専門家がいらっしゃるので深入いたしませんけれども、ビジネス、自治体の行動が非常に大きく変わってきたというふうに思います。これは気候変動のリスクの捉え方が、いわゆる物理的な気候変動の悪影響リスクだけではなく、ビジネスに特化すれば、ビジネスへのリスクという捉え方がされてきつつある。これは恐らく金融の変化が大きいのではないかと思うんですが、これは今は指摘するだけに止めておきたいと思います。

二つ目の考え方としてですけれども、今回、資料6に出してくださっている幾つかキーワード、あるいは委員の先生からも出てまいりました変化、変革、あるいはイノベーションというのが非常に重要なキーワードであろうと思います。これは恐らく技術だけの話ではなくて、社会が大きく変わらないと、長期の目標のような削減というのは出てこないということだと思います。

一つ例をとれば、恐らく自動車がガソリンを使わなくなれば、それを支えるエネルギーインフラが変わっていかないといけないといったようなことを考えても、恐らく単体技術だけではない社会の変化というのがイノベーションには必要だというふうに思います。

そのときに、もちろんコストもかかりますし、社会の変化というのが痛みを伴うこともあるんですが、その上では日本にとっては特にエネルギー部門についてプラスの点と言いましょうか、ほかの問題と一緒に解決できる余地があるという点は、中国や恐らくインドなどと違って、化石エネルギー源を国内に持っていないというのは逆の強みになり得る。あるいは問題解決の上ではプラスの効果がある。自給率を上げる。あるいは燃料費の変化について、できるだけ小さくするということは、我々の電気料金にもはね返ってくることだと思います。

そういう意味では、いろんな社会的な問題と一緒に、これは諸富さんがおっしゃった点かもしれませんが、解決する視点というのが非常に大事だというふうに思います。低炭素だけでないいろいろな問題とどうやって一緒に組み合わせて解決するかという視点です。

どうしてもイノベーションは時間がかかる、これは手塚委員がおっしゃった点でありますけれども、特にエネルギーインフラですとか、交通ですとか、そうした点は、建築物もそうですけれども、そういう意味では、だからこそ、今ここでやはり議論をしておくというのが非常に大事だと思っていまして、もちろんいろんな技術、イノベーションによって、今回決めて終わりではないと思うんですが、しかしながら、これは増井先生がおっしゃった若い世代や将来世代にリスクを単に先送りして終わらない議論というのを、ここできちんとしておく必要があるんじゃないかと思います。

最後、具体的なリクエストと言いましょうか、進め方ですが、一つはこれだけ多くの先進国が目標を立てていますので、どういうふうに、どういう考え方で、どういう手続で決めたのか。内容もさることながら、そこをぜひご紹介いただけないかということであります。

二つ目は、先ほど言いましたビジネスが変わってきていると、直感的に思っていて、ここにもビジネスを代表してくださっている皆さんが多くいらっしゃるのですが、日経BPさんの最近の号だと思うんですが、日本はもともと技術のシーズを持っているけれども、商売と言いましょうか、市場に結びついていけないと。これは逆にビジネスのところで先駆けて2050年、あるいはそれを超えた低炭素に向けた取組をされているところが、どういう考え方で、逆にどうイノベーションを起こそうとしているかという話をぜひ伺いたいなというふうに思っております。

以上です。

○浅野委員長

ありがとうございます。

恐れ入ります。小木曽委員が急いでおられるということですので先にご発言ください。

○小木曽委員

順番を先に、申し訳ございません。新経済連盟の小木曽でございます。我々新経済連盟ということで、名前に新経済と書いてあるんですけれども、ニューエコノミーを推進するという団体でございます。その意味では第四次産業革命が、今回のテーマについてどのような影響を与えるのかというような分析をしたほうがいいんだろうなと思っています。成長戦略にもAI、クラウド、 IoT、あるいはシェアリングエコノミーの話というのは書いていますけれども、たとえは、シェアリングエコノミーであれば、遊休資産を徹底的に活用していく、あるいは共有をしていくというところなので、まさに産業構造、社会構造のイノベーションという点があり、環境負荷の削減に大いにつながると思いますけれども、そこら辺について分析を深めていったほうがいいのかと思います。

世界経済フォーラムなどでは、シェアリングエコノミーだけではなくて、もっと広い概念で、新しい経済の概念としてサーキュラーエコノミーという概念も提示されていますので、そういう中でどういうふうに考えていくのかというのは、非常に重要なところかなというふうに思います。

一方で、今まで産業界としては、かなり省エネ努力というのはしてきたというのは、これはまた事実でございまして、また、先ほど荻本先生からありましたけれども、セクター別に解決することが必ずしも合理的かということがございまして、どういうふうにイノベーションを起こしていくかというところについて、非常に横断的に、社会的にいろんなところに影響を及ぼす形でやっていかないと、セクター別だけで削減していくというところだけでは、もう非現実的なものになるんだろうというふうに思っております。

その意味では、先ほど民生部門の問題というのが一つ出ましたけれども、第四次産業革命との関係で、例えばインセンティブを使いながら需要面にどのように影響を与えていくかということが、もう少し革新的なものが出てくるのではないかなという期待も十分に持てるのかなというふうに思います。

諸外国の計画を見ると、諸外国でもそこら辺までまだ立ち入っていないというか、つくったのがそのとき、まだ第四次産業革命とか言われる前だったんだと思うので、そこに目配りはまだ明確にしきれていないと思いますけれども、ある意味では日本が先行して、そこも目配りして議論していくことになるのかもしれませんが、何かチャレンジングな議論ができればなというふうに思っております。

以上です。すみません、順番抜かしまして。

○浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、どうもお待たせして申し訳ありませんでした。末吉委員、どうぞ。

○末吉委員

2点申し上げたいと思います。

一つは、この会議の性格づけを考える上で、非常に重要だと思う点であります。それは国づくりや社会づくり、あるいは経済のあり方を議論する際の設計思想といいますか、座標軸をどこに置くかということであります。私の理解では、パリ協定の第4条が言っている排出ゼロは、明らかにこれまでの路線であった低炭素を否定したんだと思います。かわりに登場したのが脱炭素化だと思います。これは私、言葉の遊びで言っているのではなくて、低炭素化と脱炭素化は、そもそも全く違う話であると。減らせばいい、でも排出が残ってもいいよねという低炭素と最初から、はなから、徹底してCO2を出さない、そういう設計思想で取り組むのは、その過程、ロードマップにおいても、結果においても、大きな天と地ほどの差が出るんじゃないでしょうか。

そういった思いで、今、世界で起きていることを見ますと、例えば、この資料の29ページにあるRE100という企業グループが出ておりますけれども、これは業務用の電力を全て再生可能エネルギーに100%置きかえるという話であります。30%置きかえるとか、50じゃないんです。100%なんですよ。例えば、脱炭素化は、こういったことを要求するんだと思います。あるいは脱炭素化は、そういったことを可能にしていくんだと。このことをよくよく頭に入れておかないと、例えば、今日の資料は全て低炭素を使っていらっしゃいますよね。これは明らかに30年の26%削減までしかカバーしない話です。でも、皆さんは長期長期とおっしゃっています。恐らく2050年の80を前提におっしゃっているんだろうと思いますけれども、それは違うんじゃないでしょうか。

ですから、私は、排出ゼロ、脱炭素化というのは、今やポリティカリーだけじゃなくて、エコノミカリー、あるいはコマーシャリーにコレクトなんですよ。こういったことを前提に置いて最初から設計をつくっていかないと、とりあえずは26%と、これも非常に厳しいと思いますが、今朝からいっぱい出ておりますけれども、26%でいいやという話ではないんじゃないでしょうか。恐らく世界の有力企業、リーディングカンパニーが排出ゼロを前提にした戦略を打ち出す中で、それと単純比較されるような日本の有力企業は、私は国際競争力をうんとそがれると思います。その心配を非常にしております。

それから、それと関連するんですけれども、パリ協定によって、私はビジネスと金融が前面に出てきたんだと思います。会場でもよく見ましたParis means businessですよ。パリ協定はビジネスの話なんだと。こうしたことをもっと頭に叩き込む必要があるんじゃないでしょうか。そのことは明らかに21世紀のビジネスの競争を律していくルールづくりに大きな変化が出始めたと。これは恐らくサプライチェーンやバリューチェーンを通じて、国境をイージーに簡単に飛び越えて日本のマーケット、日本の企業に襲いかかってくるルールづくりだと思います。

例えば、私が当初以来支援しております責任投資原則、これはGPIFが去年署名しましたけれども、もう世界の機関投資家の半分以上が署名しております。彼らが動かしている資産は59兆ドルだということです。6,000兆円ですよ。こんなお金がESGをベースに動いているわけです。あるいは、カーボンプライシングな話が出ておりますけれども、これは社会のシステムとするだけじゃなくて、企業内でも取り組んでいます。今日の資料にも出ておりますけれども、例えばこういった企業内カーボンプライシングをとっている企業との取引を許されるサプライチェーンは一体どういう企業なんでしょうか。そんなことはどうでもいいという企業なんでしょうか。私はそうは思いません。

それから、国際ルールづくりで申し上げれば、例えば、ここにも出ておりますFSB、金融安定委員会がつくったタスクフォースチームがあります。これの座長は、ご存じのとおり、ブルームバーグ前ニューヨーク市長です。一方、アメリカが進めておりますサステナビリティアカウンティングスタンダードボードの座長もブルームバーグさんなんですよ。しかも、それを脇で支えているシャピロさんは、前のSASBの委員長ですよ。こういった方が世界のルールづくりをしている、あるいは、そういう人たちがルールづくりのヘッドになっている。これ、日本はどうなるんでしょうか。

それから、金融がどういった活動ができるかというお話ですけれども、今、世界ではグリーン化に必要なお金を何とか民間の中でもグリーンキャピタルを大きく流していこうという議論が非常に盛んになっております。例えば、クリーントゥレリオンという運動があります。これは1年間に1兆ドル新規投資を増やそうと、こういう議論です。100兆円ですよ。話半分にしても、50兆円の金が動くと思います。こういったお金が世界の金融で始まろうとしています。ちなみに日本の国内銀行の預金は750兆円あります。うち貸し出しに使われているのは475兆円です。つまり、差し引き275兆円が日本の金融機関、銀行は預金として集めていても、自分の貸し出しで運用できていないんです。行き先は国債とか証券投資です。この275兆円のお金のどれほどが例えばグリーン産業に向けば、日本の国際競争力がうんと高まるというのは、誰が考えても、そういうことであります。

ですから、結論的に申し上げますと、我々は今考えなきゃいけないのは、成り行きで、レッセフェールで生まれる将来をどうしようかという話ではないんだと思います。こうしなければならない。我々が手に入れるべき将来は、未来はどういうものだと。未来をつくるという意気込みで私はぜひこの議論をしていただきたいと思っております。

ありがとうございました。

○浅野委員長

ありがとうございました。

桜井委員、どうぞ。

○桜井委員

今、末吉さんが言われた最後の言葉を引き取って、二つぐらいご提案したいと思うんです。

まず、これはビジョン委員会ですから、やはりビジョンというのは、我々企業の経営でも理念があって、ビジョンがある、そして戦略があってという展開です。このビジョンをどういうビジョンにするかというのは、非常に大事なことで、いろいろとお話を聞いていると、もう先のほうにどんどん行って、どういう技術革新が必要なのか、あるいは、どういうような省エネ活動をやるべきなのか、あるいはエネルギーの変革をやるべきなのか、どのぐらいの程度ができることなのかどうなのかということですね。その一番大もとにあるビジョン懇談会で、ビジョンを議論し、どんな国であるべきかということを、やはりしっかりと立てることが大事だというふうに思っております。そうしないと、先ほどもちょっと出ましたけれども、今できることを積み上げていって、そして30年、そして50年、世紀末というふうに、こういうふうにつなげていくという話になるとまずいわけです。やはりCOP21で大変な決断をしまして、世界が2℃以内、あるいは、できれば1.5℃という目標をつくったわけです。これはすなわち低炭素経済社会の実現を目指した大変革が必要だということを意味します。その大変革をを如何に起こすのか、今から一体どこからスタートして、30年、50年にそういう成果を出していくべきなのかということを我々は明らかにしなきゃいけないわけです。という意味で、第一番目に言いたかったのは、それはやれることを、できることを積み上げて、どこまで届くだろうかということじゃなくて、ビジョン委員会では、脱経済社会の実現を図るために、一体今から何をやるべきかを明らかにするという視点に立って、その狙いとなるビジョン、すなわちこの国のあり方またはこの国のかたちの概要を決めることなんだと思います。

それから、この国のかたちを実現するには、やはり具体的な手段は何か。そして今、可能性が見つけられないものについては、どんな手段というものを今後入れ込んでいかなきゃいけないのかというふうに展開すべきだというふうに思っています。

それから、もう一つ、我が国は、今多くの経済・社会的な課題を抱えています。例えば、少子高齢化・人口減少、経済成長の長期停滞、それに伴う社会保障制度の行き詰まり、先進国の中でも異常な国と地方の公的債務の肥大化などなど、足元には解決が急がれる多くの課題を抱えております。この様な経済・社会的な課題の解決と、私たちがこれから取り組まねばならない脱炭素社会の実現というのは、全然相反したことじゃないと、私は思っているんです。同時実現ができる話で、同時実現をいかに図っていくかも、これからのビジョン委員会で議論し、大筋を描いていくことが非常に大事なテーマだと思います。

時間ももうないでしょうから簡単にしますが、もう一つは、先ほど、今の地球の温暖化の問題、や課題、そして解決はどうあるべきなのか、一方で海外ではどう認識しどう取組もうとしているかを、ざっと説明されました。しかし、多くの国民、市民にとっては、このチャートを基にちょっと説明しただけで真の内容が理解されるかといったら難しいに違いありません。やはり国民、市民が建設的な意味で危機感というものを抱いていただかないと、我々がロードマップをつくる、そして我々が行動していく、市民も一緒になって行動していく、そして成果を出していくということには、絶対不可能だと思います。やはり、市民、国民による、低炭素化や脱低炭素化の必要性、私はこれを地球環境感度と言っているんですけれども、みんなが感度の高い人になるということも非常に大事だと思います。

これが全てとは言いませんけれども、2年前、アメリカでの国連気候サミットに参加した時のことですが、ジェームズ・キャメロンと監督製作のエミー賞受賞作品、気候変動ドキュメンタリー"Years"(危険な時代に生きる)を製作関係者から紹介されました。9編で構成された大作でした。今、このまま世界が温暖化を続けていくとどうなるかを、非常にわかりやすく国民に伝える作品でした。これをぜひ日本で放映したいとのことでした。我々は喜んで、日本のマスコミさんに、話してみたところ、NHKが「オーケー、やりましょう」と受けていただき、大変感激しました。しかし残念ながら、今日はNHKの方がいるかどうかは知りませんが、NHKで放送されたのはBS放送で真夜中なんです。真夜中じゃほとんど見ないですよね。錦織プロのテニスだったら、まあまあ見るかもしれないけれども・・・。それだけじゃないですね、英語で書かれた分厚い研究レポートなどもそう簡単に理解できるものではありません。出来る限り簡略化、日本語化、映像化など理解しやすい工夫がもっと必要だと思うんです。そのレベルが上がってくると、地球環境に対する理解も更に進み、環境感度も高くなり、地球環境に対する積極的な取り組みを開始する人々がもっと増えてくるに違いありません。そんなこともぜひ検討したいなと思います。

○浅野委員長

ありがとうございました。私はいつもどの会議でも自分は定刻主義者と言っているのですが、今日は最初ですし、やっぱり公平に会議の運営をしなくてはいけませんので、本日に限り定刻主義者でないことにいたしします。そのかわり当初の会議予定時間を過ぎましたら、次のご用のある方は自由に席をお立ちください。

○崎田委員

ありがとうございます。今、お隣の桜井委員のほうから、市民、国民を巻き込む取組でなければいけないというお話をいただきました。その国民の目線で出席させていただいている者として、やはり、そこをきちんと考えながら参加させていただこうと思っております。特に生活者の視点で環境エネルギー分野、そして環境まちづくりを重視しながら歩んできておりますけれども、その中で普段大事にしているのが、産業界の皆さんの技術力やエネルギーのこと、そして行政の制度設計の力、そして私たち市民の暮らしや仕事でそれを実践する力、そういう全体のパートバーシップです。それと今回は専門性のある方々の知見と合わせ、その全体の総合力でしっかりと今世紀末の脱炭素社会、見据えた、2050年のマイナス80%という、そういう姿にきちんと意見交換をしていければと思っております。

それに関して簡単なことを二つ申し上げます。一つは、やはり、今、国民運動が大事ということで、クールチョイスということで言われていますけれども、環境は大事という認識はあるけれども、製品やサービスなど実際の消費行動とか、ライフスタイルの転換につながっていないということが大きな課題だということが盛んに言われています。そこのことを考えると、実際に取り組んでいる方たちにお話をインタビューすると、必ず出てくるのが、そういうことに関心がなくても、あるいは関心だけある方が、どんな方でも行動に移せるよう社会システムに定着させておくということが非常に大事なのではないかという意見が出ます。そういう意味では私は、今回、具体的な変化につながる社会システムにどういうふうに定着させるのかという辺りを大事にしながら意見交換に参加したいと思っております。

最後の1点なんですけれども、私たちが将来像をどう思うかというときに、先ほどお話にもありましたけれども、今、持続可能な社会ということを考えると、環境分野の課題だけではなく、少子高齢化という地域課題、そして地方創生とか、地域活性化、そういうような課題も非常に顕在化しているわけです。そういうところをちゃんと見据えた上での面的な取組を明確に位置づけていくということも大事だと思っております。

では一体それは具体的にどういうことなんだということですが。私は3年前に視察先のドイツで、軍が使っていた土地を払い下げを受けて38ヘクタールの土地を元にまちづくりしたというドイツの事例を見てきました。1999年の募集でしたので、かなり前の話ではありますけれども、環境にやさしい暮らしをつくるということで、五つの募集要項が出ました。1番は職住接近であること。2番はCO2削減に貢献する。特にCO2は通常の団地の半分にするようにということ。3番目は交通政策をきちんとすること。4番目は自転車でも走れるようなまちにすること。5番目は多様な年代の方が共生するまちであることということでした。実際にそこに伺ってみると、フライブルクから非常に近いところでしたけれども、今、2,000戸で5,300人の方が暮らしておられますが、子どもたちが走り回って、高齢者の方も一緒に暮らしているというような状況ですが、一つおもしろいなと思ったのは、実際に個人住宅だけではなくアパートというかマンションの場合もコンセプトだけ先に決めて、入居者を募集する。その入居者が決まってから、その方たちが住みたい家をみんなで話し合って決めていくという取り組み事例もありました。ですから、そこには高齢の方も赤ちゃんを育てている家も一緒になって楽しく暮らしていけるような状況をつくるという、そういうことが徹底しているというようなやり方をしていました。

そういう意味で、いろいろなものをつくっていくときに、目標を明確にして、それに対していろいろな世代、いろんな方たちがしっかり力を合わせていけば、いろいろな取り組みの可能性はあると感じています。

ですから、これからの私たちが考える将来というのを非常に心豊かに暮らせる社会をどうつくるかという視点を明確にしながら、皆さんとしっかりと話し合いをしていければいいなと思っております。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長

ありがとうございました。

大野委員、どうぞ。

○大野委員

私も遠慮しないで5点ばかり簡潔に申し上げます。

まず第1点は、国がつくられた地球温暖化対策計画ですが、この中には2030年目標と50年目標が入っているわけです。26%、80%。削減カーブをつくるとわかるように、2030年で、がくっと角度が急にならなきゃいけないと、こういうことになるわけです。そうすると、ここで議論をしていくときに、どっちに重きを置いて考えるのかなと、こういうことになると思うんですけれども、恐らく2030年目標というのはどこかの中では見直しということになるのではなかろうかと。というのは2050年目標のほうは日本が勝手につくっている目標じゃなくて、もともと科学的な要請からパリ協定で21世紀末までには脱炭素をすると。先ほど、環境省さんから出された資料、各国の長期的な戦略の策定状況という資料を見ても、ほとんどの国が、先進国が2050年80%目標というのを掲げているわけです。そうすると、こちらの2050年80%をやらなきゃいけないということは、これは恐らく変わらないだろうというふうに思うんです。そうすると、2050年目標の実現方策を議論するときするときにも、2030年までは26%目標ぐらいのところまででやっていて、突然それから対策を強化しようというのではなくて、今から2050年80%を展望するような、それに移行していけるような、そういう議論を今後していく必要があるんじゃないかなというのが第1点です。

第2点なんですけれども、これはイノベーションの話です。これは参考資料で提出していただいた気候変動長期戦略懇談会の提言の中にも書いてあるんですが、イノベーションというと、どうしても技術、革新的技術の開発というところが一番の眼目みたいに言われるんですが、もちろん新しい技術開発も大事であることは私も否定しませんが、同時にその技術をどう普及させるかという社会や政策の仕組みをどう変えていくかという、この部分のイノベーションを本格的に考えないと、これはなかなか実際の削減には結びつかないというふうに思うんです。そのことを示すのが、現在、日本のCO2というのは、この間、あまり減っていないんですけれども、じゃあこれを減らす技術がないのかというと、そうじゃないわけです。これは自然エネルギーにしても、エネルギー効率化にしても、いろいろな技術がある。いろいろな技術があるんだけれども、いろいろな制約要因によって入ってこない。つまり、ここを突破するのは技術開発ではなくて、社会や制度の仕組みを変えることになるわけです。その部分をやはり重視していかないと、幾ら革新的な技術開発をしていっても進まないだろうというのが2点目です。

3点目は、これは先ほど高村先生がおっしゃったところでもありますが、COP21で大方の人々が思っていたよりも思い切った大胆な踏み込んだ目標が出たという背景にあるのは、いろんなビジネスやローカルコミュニティの動きもあるんですが、エネルギー供給の仕組みのほうで言うと、自然エネルギーというのが非常に大幅に拡大してきた、価格も下がってきた、これがあるということだと思います。この点に関しての認識が日本とではかなりギャップがあるので、その点は特によくこの場でも議論し、海外の状況なんかを調べていくことが必要じゃないかなと思います。実際にもう多くの国で、そんなに条件がよくない国も含めて自然エネルギーの供給が、太陽光発電、風力発電が従来の火力発電と比べても、コスト的にも安く供給できる、あるいは少なくとも同等に供給できるという状況になっておりますので、こうした状況をよく踏まえていくことが必要であろうというふうに思います。

4点目ですけれども、本日説明いただいた資料の中で2050年の姿ということで、少子高齢化の話とか、いろんな大事な社会構造変化の話が書いてあるんですが、やはり、もう一つ、産業構造の変化が与える影響というのも、ぜひ検討の素材として挙げていただけないかなというふうに思います。これは日経センター、日本経済研究センターが2年前に出したレポートがあると思うんですが、その中で非製造業中心の産業構造にしていけば、2050年には2010年比でエネルギー消費を40%減らせるんだと、そんなふうなレポートがあります。もちろん、これはいろんな議論があると思うし、そうじゃないという議論もあると思うんですけれども、それも含めてかなり大きなインパクトを与える要素であることは間違いないので、それについてもぜひ検討の素材に挙げていただければと思います。

最後は、これはテクニカルな点なんですけれども、今日の議論の中でも何人かの方から産業分野の削減は進んでいるんだけれども、業務部門とか家庭部門がなかなか減っていないとか、大幅な削減が必要だという議論が出ました。もちろん、これは業務分野、家庭部門の削減が必要なことは間違いなくて、ここに大きなポテンシャルがあることは私もそうだと思います。ただ、注意しなきゃならないと思っているのは、環境省さんのいろんな委員会の資料を見ても、電気の排出量は間接排出方針で計算して、火力発電の排出係数が増えていて、その部分で膨らんでいる分をその場で資料が出ていることが多いんですね。多くの場合、過大に家庭部分や業務部分の排出量が多く見えてしまっている部分があると。現にエネルギー消費統計は、エネ庁の資料なんかを見ますと、過去10年間で比較すると、一番減っているのは業務部門、一番減り方が少ないのが産業部門なんですね。ですから、そういう意味では、これからいろんな資料が出されると思うんですが、間接排出の資料だけを出すんではなくて、エネルギー消費量とか、そういうものを一緒に出していただいて、電力の排出係数の増加部分を差し引いたらどうなるかという辺りもぜひ資料として出していただけるようにお願いしたいと思います。

以上です。

○浅野委員長

ありがとうございました。最後の点は、この二、三年の要因分析ではちゃんとエネルギーの消費で出していますので、既に改善されております。

大塚委員、どうぞ。

○大塚委員

最初に環境省さんにお伺いしておきたいんですけれども、資料の36ページについて、GDP当たりの温室効果ガスの排出量は、以前は日本はかなりよかったんですけれども、改善はしているわけですけれども、この12年、2000年から2012年にかけて相当下がっているわけですが、これに関して何か要因を分析されているのでしたら、理由についてのご認識を教えていただきたいと思います。

○浅野委員長

今すぐ答えられますか。答えられなければ次回でいいですか。

どうぞ続けてください。

○大塚委員

では、私の意見としては4点簡単に申し上げておきたいと思いますけれども、一つは先ほど安井委員がおっしゃったように、CCSという方法はあることはあるわけですけれども、しかし、CCSは適地がそれほど多くないということがございますので、CCSにあまり頼るわけにもいかないということもございますが、2050年80%削減ということに関しては、それほど大きな異論は必ずしも出ていなかったように私は思いましたけれども、これを堅持すべきだとすると、あとはやはり再生可能エネルギーと原子力、原子力をどう考えるか、なかなか人によって意見が違うと思いますけれども、やっていかなくてはいけないということで、再生可能エネルギーに対する期待というのは相当大きいわけで、今回の再生可能エネルギーの特措法の改正がどういう影響を及ぼすか、よくわからないところもございますが、太陽光が増え過ぎたというようなことを言っても、水力以外の再生可能エネルギーは現在まだ3%か4%程度のところにおりますので、今後とも再生可能エネルギーをどんどん拡大していくということは非常に重要なことだということを申し上げておきたいと思います。

それから、二つ目ですけれども、2050年80%削減に向かっていくときに、目標の明確化というのが特に必要だと思います。これは2050年80%削減がすぐにできるわけでは、2040年代になってから考えてもだめなので、毎年どのぐらい減っていくかという観点を入れていく必要があるということだと思います。排出枠取引は、EUにおいては最初は1.74%毎年減らすということがございましたし、その後2.2%減らすということに、毎年減らすということになっていくわけですけれども、こういう目標を明確に打ち出すということは、いろんな面で重要だと思います。それはさまざまな施設に関して、一度つくってしまうと、CO2の排出を止められないというロックインの問題があるので、それを避けるということもございますし、技術開発を促すという面もございますので、目標の明確化は非常に重要だと思います。

それとともに、第3点ですけれども、炭素に価格をつけるということが大事だと思われますが、これはカーボンプライシングの問題でございまして、排出枠取引にせよ、税にせよ、あるいは規制という方法あるかと思いますけれども、ぜひ進めていく必要があると思います。税は家庭部門に対しても影響を及ぼすということで、CO2の削減には貢献すると思われます。

この点に関して、第4点ということになりますけれども、さらに今、日本が抱えている別の政策と同時達成をするという先ほどからご議論がある点も同時に考えていく必要があると思いまして、税にせよ排出枠取引にせよ、得られた収入が出てきた場合に、それをどう使うかという問題がございますけれども、例えば半分は法人税減税に使うとか、あるいは所得税の減税に使うとかということがございますし、あと、社会保険料の引き下げというのは既にヨーロッパでは利潤の配当論で実施していることでございますけれども、こういう方法をとっていくということが重要だと思います。

さらに、将来世代に対しての償還、現在、孫のクレジットカードを使っているという議論も既に出てきていますけれども、ということが日本の場合ございますので、将来世代への償還ということを考えるのであれば、国債の償還に使うということも、半分ぐらいはやっていただいて、あとの半分は温暖化対策のほうに使うということが一つの方法だと思いますし、こういうところを国民の理解を得ながら進めていく必要があると考えております。

以上でございます。

○浅野委員長

ありがとうございました。

それでは足立委員、どうぞ。

○足立委員

4時を回っておりまして、ひしひしとプレッシャーを感じますけれども、一言。自治体として参加させていただきましてありがとうございます。自治体の役割というのは、非常に大きくなってきていると思います。私どもも地球温暖化に特化した条例をつくって、その中で数値目標を条文で書き込んでしまっております。これを見直すか、守るか、どちらかが迫られていると、そんな状況でございます。

将来の80%削減、あるいはその先の100%削減、これを今の26%削減の先を非連続的な目標ということで、イノベーションの必要性、これは皆さん共通だと思いますけれども、やはり、それプラス国民の意識、行動を変えていく、マインドセットごと変革していく、これが非常に重要だなというふうに思います。

その中で、どうすれば国民にこの難しい複雑な話が届くのか。感性と理性、それぞれ両方に訴えていく必要があると思いますが、まず温暖化している、これはみんな暑くなっているので、感じているわけですけれども、京都で言いますと、100年で2度上がっております。おかしいじゃないかということなんですが、実はヒートアイランドの現象もかなり入っております。日本全体の統計数値の中にもその分がかなり入っているんではないかと思いますけれども、実は寄与度がよくわからない。そういうことで、正確に伝わり切っていないという部分もあろうかと思います。

それと、エコが格好いいとか、環境に悪いことをするのは恥ずかしい、ダサいとか、だんだんこういう気持ちを持っていただいている方が増えてきていると思います。こういう心の姿勢みたいな事柄、こういうのを進めていく必要があると思います。ひたすら冷房を我慢するとか、そういう精神論、根性論だけではだめだと思うんですけれども、やはり、そういった姿勢が大事だと思います。そういった意味で、京都の場合、分野が違いますが、ごみを半減する条例をつくって、それに市民公募をして「しまつのこころ条例」という愛称をつけております。そんな精神論を役所が言うなと怒られるかと思ったんですけれども、徐々に定着してきておるということで、やはり、市民ぐるみ、国民ぐるみ、納得していただいて進めていただくということが非常に大事かなというふうに思います。

それと、理性に訴える部分では、出ておりましたけれども、データ、サイエンス、エビデンスベースドといいますか、これは絶対欠かせないと思います。複雑なデータを膨大なパワポの資料で国民に見ていただくということはできませんので、いかにしてこれを簡潔にわかりやすく核心を突いて伝えていくか、行政にとっても永遠のテーマだと思いますけれども、これに国、自治体、それからいろんな関係者の皆さんとともに挑んでいく必要があるかなと思います。

京都市では、今年の3月に自治体としては恐らく初めてだと思うんですけれども、エコロジカル・フットプリントを算定いたしました。そうすると、京都市の面積をはるかに超えてフットプリントを食べてしまっているということで、持続可能性ではないということを自ら吐露したような感じになったんですけれども、そういった本当のことも伝えながら、理解を得ていく必要があるかなと思います。

それから、環境によいエコだけを訴えても、なかなか届かないということで、例えば「経済的にお得ですよ」とか、あるいはヒートショックの問題とかを含めて「安全ですよ」とか、「健康にいいですよ」とか、今、そういうことも全部セットにして広報するように努力をしております。

今日、いろんなデータをいただきましたけれども、何か日本だけが遅れていて、例えばヨーロッパが進んでいる、こんなふうに国民の皆さんが思ってしまいますと、元気も出ませんし、さらに頑張ろうという気力も起こってきませんので、これまで企業や事業者の皆さんがなし遂げてこられた、こういった成果もみんなで十分評価し合うといいますか、その上でさらに次を目指していく、日本全体として、そういうふうになっていけばというふうに思います。

最後ですけれども、そういった意味で、環境教育というのが非常に大事だと思います。私のところも今年の3月、環境基本計画というものを10年ぶりに改訂しましたけれども、結局最後は人づくりだろうと。特に青少年、学校教育、これを柱に据えて、さまざまな形で小学生向け、中学生向けの読本をつくったり、努力をしています。こういったことが5年後、10年後、必ず効いてくると思っておりますので、引き続き取り組んでいきたいというふうに思います。

京都市では、環境職という専門職を特別採用しております。既に50名近くに増えてきたということで、我々自治体が環境行政の専門性を高めていくということも非常に大事だと思っておりますので、引き続き頑張っていきたいと思います。

以上でございます。

○浅野委員長

ありがとうございました。それでは、今日は1回目ということでしたので、ご自由にご発言をいただきました。少し一部の委員の方には発言の制限をしたかのような印象を与えてしまって申し訳なかったのですが、さらに追加のご発言をということは時間的に無理でございますので、今回はご勘弁ください。

それでは、本日はこれで終わりにしたいと思いますが、事務局から連絡がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

○低炭素社会推進室長

委員の皆様におかれましては、活発なご議論をありがとうございました。次回の日程については8月30日、木曜日の14時から16時を予定しております。詳細につきましては追って事務局より連絡を差し上げます。よろしくお願い申し上げます。

○浅野委員長

それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

午後 4時15分 閉会