中央環境審議会 2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会(第8回)議事録
日時
平成24年2月10日 9:00~12:14
場所
全国都市会館 第2会議室
議事次第
- 1 開会
- 2 議題
- (1)
- ヒアリングの総括について
- (2)
- ワーキンググループからの報告について
- (3)
- 複数の選択肢の原案を評価する際の観点について
- (4)
- その他
- 3 閉会
配布資料
資料1 | 第3回から第7回までのヒアリングから得られた観点とヒアリングの概要 |
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資料2 | コミュニケーション・マーケティングWG報告資料 |
資料3 | 2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会における検討方針(案) |
資料4 | 今後のスケジュールについて |
議事
午前 9時00分 開会
地球温暖化対策課長
それでは、定刻でございますので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会の第8回会合を開催いたします。
本日、委員総数23名中、既に過半数の委員にご出席いただいておりまして、定足数に達しております。なお、増井委員については代理の出席となっております。岡川説明員がご出席になっております。宜しくお願いいたします。また、今回より、地球環境部会の委員にも、オブザーバーとして本小委員会にご参加いただくことになっております。また、本日の審議については公開とさせていただいております。では、以降の議事進行について西岡委員長にお願いいたします。
西岡委員長
それでは、議事に入ります。今日は主要な議題といたしまして3件ございます。最初は、これまで、第3回から7回にかけて関係者のヒアリングをやってまいりました。その総括について、事務局から説明をしていただきます。議題2がワーキンググループからの報告ということでございまして、本日は枝廣委員からのコミュニケーション・マーケティングWGの報告を説明いただき、そして、議題3でございますけれども、複数の選択肢の原案を評価する際の観点についてということで、前回も幾らかご審議願いましたけれども、1月30日に開催されました第100回の中央環境審議会地球環境部会の結果も踏まえまして、当委員会の検討方針を議論したいという具合に思っております。
最初に、まず議題1のヒアリングの総括について、事務局より説明をお願いします。
低炭素社会推進室長
それでは、資料1でございます。こちらにつきましては、昨年9月から今年1月までに開催をいたしました当小委員会におきまして、合計8名の方からヒアリングを行っていただきました。そのヒアリングによって得られましたさまざまな観点を1ページ目から3ページ目までに取りまとめたものと、4ページ目以降は具体的な方々の概要がつけてございます。
1ページ目でございますけども、ヒアリングで得られた内容につきまして分類をしているというものになっております。まず、東日本大震災及び原発事故の影響についてということでございまして、この事故については、3Eのすべてを揺るがすもので、今回の事故の埋め合わせをすることは非常に難しいというご指摘もございます。次に、将来の低炭素社会の姿に関してでございますが、低炭素社会としては、バイオマスエネルギー、水素、電化、こういったものを組み合わせということが考えられるというお話、また、低炭素の社会システムということはどういうことかというのを、定量的な技術シナリオというのが必要であるというご指摘もございました。続く、対策の方向性というものに関しましては、現行のエネルギー基本計画から原子力の比率が減少していくということは不可避であるというご指摘、また、最優先の対策としては省エネであるということで、建物の断熱化や鉄のリサイクル率の向上も重要であるというお話もございました。また、節電については、負担のかかり過ぎた一部の対策というのは、昨年夏限りで終わりということ、また一方で、自分たちができる合理的な省エネルギー対策をより一層推進するという必要があるということのお話がございました。エネルギーの供給側としての話としては、再生可能エネルギーを最大限活用していくこと、化石燃料のクリーン利用技術の活用、ガスシフト、CCSの導入、廃熱の利用、コージェネレーション、燃料電池、スマートメーターの導入が重要であるというお話もありました。また、エネルギーの需要側と供給側を情報で繋ぐということで、新しい産業を創出したり、防災への対応、再生可能エネルギーの導入が進むというご指摘もございます。また、需要家側がプロシューマー(供給者かつ需要者)となっていき、エネルギーを上手に使っていくことが重要であるというお話もございます。デマンドマネジメントによってエネルギー消費自体を減らすということと、使う時間帯を変えていく、使う状況を変えるということも考えられるというお話もございます。国際的な観点からいきますと、エネルギーのみならず、水、リサイクル、都市のインフラ基盤、こういったものが環境ビジネスのパッケージとして求められているというご指摘もございました。
続く2ページ目でございますが、施策の方向性というものに関してのご指摘もあります。環境モデル都市などの推進ということでございますけども、地方公共団体の中で、環境部局だけではなくすべての部局が関わるということに加えて、市民、企業を巻き込んでの取組ということで、成功することができたというお話もございました。また、取組を通じて地域コミュニティの修復、社会インフラの一大改革、地域特性を踏まえたエネルギーミックスのまちづくりを通じてということで、さまざまな分野にも波及するというお話もございました。省エネルギーにつきましては、産業分野における省エネ設備の導入、また、改善のためのポテンシャル診断、環境によい製品の優遇ということが重要であるというご指摘、さらに、再生可能エネルギーについては、地域のコミュニティ力を生かせるようにすることが重要であるということで、補助金、FIT、RPSなどという形で適切に補正された上で消費者の選択によって電源構成が決まっていくというのが望ましい姿だというご指摘もございました。また、再生可能エネルギーを普及するということに関しては非常に意義のある政策だということですので、一定のコストを負担してでも普及させるべきだということを正直に国民に説得していくことが必要だということもお話がございました。スマートメーターなどによりきめ細かく計量して、合理的な料金を設定していくということ。最終的には、技術を使った自動制御に繋げていって、これを利用して系統対策のコストを大きく引き下げていくということが重要だというお話もございます。また、電力システムに関しましては、制度改革によって、公正な競争環境を慎重に時間をかけて整備していくということが重要だということと、系統安定性、電力需給調整契約などの検証ということを行っていく必要があるというお話もございます。また、自然エネルギー、省エネルギーについても、中長期の目標を設定していくべきだというご指摘もございました。キャップ&トレードの議論も始めるべきというお話や、低炭素づくりに向けた総合的な施策が必要であるということ。また、政策に関しては、幾つか分類されるというご指摘で、例えば白熱灯の切りかえなど、ピンポイントでやらなければいけないという、分野を指定するタイプ、建物の省エネ基準の義務化など、フローの流れの中で関所のようなものを設けていくタイプ、さらに、工場の省エネのトップランナー制度、炭素制約など、結果の達成のために何をするかということをそれぞれの主体が考えることができるタイプなどが考えられるというご指摘もございました。また、国際貢献のために、日本の高効率製品が海外で使用され、その際にCO2が減ると、そういったことに関して日本の貢献を正しく評価できる指標であるとか、出資をバックアップするということが必要であるというお話もございました。2ページ目、下からでございますが、施策を講じるに当たっての考慮事項ということで、グリーンイノベーションをやるのであれば、日本に価値を生むものが低炭素化によってどういうふうに増えるのかということが重要であるというご指摘、また、3ページ目でございますが、技術で勝てるようになって世界に出ていかないと、グリーンイノベーションというものにはならない。そういった面でいきますと、どこが日本の強みなのかということを把握して伸ばしていかなければいけないというご指摘もございます。省エネルギー・再生エネルギーもどちらも重要であるということですが、一定のコストがかかるということを覚悟すべきであるということ。こういったものへの投資というものについては、内需拡大によって地域経済、また雇用にプラスになるというものであるというお話もございます。あと、低炭素化になっていくということに加えまして、高度防災都市などを目指した環境エネルギー政策が重要であるという話。さらに、供給側だけではなく、需要家側からもベストミックスを見ていくという考え方が重要であるというお話もございます。あと、市民でもエネルギー政策への関心が非常に高まっているということでありますが、具体的に何をすればいいかわからないという人が多いという現状のご指摘もございます。また、働いている方々の意識を変えていくということや、幼少から教育で底上げをしていくということの重要性もうたわれております。あと、具体的に目標を立てるということにより、技術革新であるとか、マインドの変革というものが加速されるという部分もあるというお話。そして、天然ガスに関しまして、シェールガスというのは気候変動以外の環境影響もあるということですので、総合的な議論が必要であるというご指摘もございました。
以上が、1ページ目、3ページ目が概要を抜粋し、分類したものでございますが、4ページ目以降が具体的にお話しいただいた方の名前、またキーワードと、それに関連する具体的な中身を分類したものでございますので、後ほどご覧いただければと思います。以上でございます。
西岡委員長
どうもありがとうございました。これはヒアリングをまとめていただいたというものでございますけども、この件について、何かコメントあるいは追加するべきことはございましょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、次の議題に移りたいと思います。これは議題の2でございます。ワーキンググループからの報告ということで、枝廣委員のほうから、資料2を用いて説明をお願いしたいと思います。宜しくお願いします。
枝廣委員
ありがとうございます。資料2、コミュニケーション・マーケティングWG取りまとめの報告、これを用いて報告をさせていただこうと思います。
コミュニケーション・マーケティングWGというのは、昨年度から立ち上げて、今年2年目の活動をしているのですが、そもそもの立ち上げの問題意識を先にお話をしたいと思います。温暖化対策もそうですし、ほかのさまざまな環境、その他の対策を考えていく上で、よい政策をつくるというのがまず必要なことです。しかし、よい政策をつくっても、国民が、生活者が支持をしないと、それは成り立たないという現実があります。
もう一つ、具体的に何をしたらよいか、さまざまな施策をつくるわけですが、それも実行されなければ意味がないという現状があります。この小委員会の中でも、さまざまなワーキングが、いろいろなデータであるとか、知見であるとか、情報に基づいて、それぞれの分野で何をしたらよいか、何をすべきかという施策はたくさんつくってくださっている。しかし、それを実際に国民に、生活者に伝えて、実行に移していくというところをやらないといけないということで、このワーキングを立ち上げてもらいました。
実は、昨日、エネルギー基本計画をつくり直す資源エネルギー庁の基本問題委員会にも出ていたのですが、同じようにエネルギー問題も、国民がどのように関わっていくか、実行に移すにはどうしたらいいかというところが大きなこれからの課題になっていまして、ここでの手法や知見を生かして、生活者の声を聞くということをエネルギーに関してもやっています。昨日、その発表をしたのですが、エネ調のほうでも是非そういった形でやっていきたいということで、是非、このワーキングもしくは小委員会と連携してやっていきたいと思っています。
今日のご報告では、まず昨年度からの経緯、そして今年やったことをご報告して、大きな方向性であるとか、個別の内容について、是非、委員の皆様からいろいろなご意見、アドバイスをいただいて、少しでもよいものにしていきたいと思っていますので、宜しくお願いいたします。
資料をめくっていただいて、最初が検討体制で、2年目の今年のワーキングのメンバーです。実際に伝えることをやっていらっしゃる自治体の方であるとか、そういったことを研究されている大学の先生等に入っていただいています。
昨年度の検討内容は、5ページ目になります。そもそも家庭からの温室効果ガスが伸びてしまっているということで、さまざまな意識啓発のキャンペーンはしているけれど、なかなかここが減っていかない。もちろん原単位の問題等々いろいろあるわけですが、国民、生活者の意識と行動にも大きく働きかける必要があるということで、ワーキングの設置に至っています。
これまで、いろいろな施策をやっていく上で、これは温暖化対策もそうなんですが、意識啓発をすれば、啓発された生活者は行動を変えるだろうという、極めてシンプルなモデルに従って、意識啓発を一生懸命やってきたんじゃないかと思います。そこで、大きく二つ、課題が出てきていて、では、「どのような形で何を伝えれば意識は啓発されるのか」というのが1点。もう一つは、意識が啓発されたからといって、必ずしも行動にはつながらないという現実があって、では、「行動に繋がるようにするにはどうしたらよいのか」というのが2点目です。実際に昨年度、今から発表しますが、昨年のいろいろな活動をしていて、非常に明らかになってきたのは、意識だけでは越えられない障壁がそれぞれあるんだということです。例えば太陽光発電をつけたほうがいいとか、省エネ行動をしたほうがいいとか、意識はみんな持っていても、そうすべきだと本当に信じていても、それだけでは乗り越えられない壁がさまざまにある。そうしたら、その壁を乗り越えるための施策をつくっていくのが、政府側、政策をつくる側の役割ではないか。その施策をつくるときに、きっとこうだろうとか、こうやったら動くだろうと。ある意味、想像もしくは想定でつくっているところが多いと思うのですが、そうではなくて、やっぱり実際に動いてほしい生活者に聞いてみようということになりました。それは、生活者といっても皆同じではないわけで、「どういう人たちにはどういうアプローチ」、「どういう壁にはどういう施策」ということをきめ細やかにつくっていかないことには、旗だけ振っていても行動にはつながらないというわけです。そこをこのワーキングでやっていきたいと始めたわけです。6ページが、このワーキングの問題意識と方向性ということで、今お話ししたように、生活者の声を十分に聞いて、その上で施策や働きかけをつくっていないのではないかということが一つ、そのあたりを実際にやっていこうと思っています。
具体的には、そういう意識があったので、「コミュニケーション・ワーキング」と、最初、名づけられそうになったのですが、是非マーケティングというのを入れてくださいとお願いして、「コミュニケーション・マーケティング」、つまり、こちらからどう伝えるかだけではなくて、生活者の実情に合った施策をつくるための情報を得る、やりとりをしながらつくっていくという意味で、マーケティングの要素を入れていきたいと思ってつくりました。
この6ページに二つあるように、一つはマーケティングの知見を活用した調査・検討をやっていこう。これが去年、中心でやってきたことです。それに対して今年は、実際に行動変容を促すコミュニケーション、そして、その1回限りではなくて、行動変容を促し続けるコミュニケーションのプラットホームもしくは機能をどうしてつくっていったらいいかということを考えたのが今年度になります。それぞれワーキングには、昨年はマーケティングの知見をお持ちの方に委員になっていただきましたし、今年はコミュニケーションを扱っていらっしゃる方々に委員になっていただいて、それぞれマーケティングの知見、例えばイノベーション普及理論であるとか、こういった知見を得ながら、もしくは、行動経済学の知見を得ながらつくっていきました。今年は意識と行動のギャップ、認知的不協和といったことを勉強しながらつくっていったということになります。
まず、昨年の報告を簡単にさせていただこうと思います。7ページ目になりますが、生活者ヒアリングということで、東京と福井、それぞれさまざまな対象者に、フォーカスグループ方式で、5人に対して私がヒアリングするということで聞き取りをしました。いろいろな関心レベルとか、行動レベル、実際に行動に移っていない障壁は何かなどを聞き取りをしたわけであります。それに基づいて、今度はより多くの1,000人を対象にアンケートを行いました。ヒアリングで得た知見を検証するというのが目的です。このヒアリングとアンケートに加えて、ワークショップを行いました。これは、「では本当に低炭素社会ができたらどういう社会になっているんだろう」という、バックキャスティング的なビジョンを生活者と一緒に描こうというワーキングです。
もう一つ、これはかなり特筆すべきことで、あちこちで注目されている理由だと思うのですが、高校生、大学生によるワークショップというのも行いました。これも先ほどと同じで、「自分たちが大きくなった2030年なり、2050年、どういう社会にこのままだとなっていくか。そうではなくて、どういう社会にしたいのか、そのギャップを埋めるためには何が必要なのか」、そういうことを高校生、大学生に考えてもらって、委員の先生にも出ていただいて、発表を聞いていただくということをしました。
最後のワークショップは企業の担当の方に来ていただいて、低炭素機器の普及の障壁は何か。これは実際に売っていらっしゃる側の声を聞きました。お店でお客様に接している方がたくさんいらっしゃったので、実際にお客様がどのあたりでとまってしまうのかということを聞き取るワークショップをしました。
このような活動の結果、8ページにまとめてありますが、意識は高くなっているというのは、世論調査でも、今回の私たちの調査でも明らかになっています。しかし、十分に行動に移せていないという実態が改めて明らかになりました。その理由はいろいろあります。「意識はあるけれど、本当に腑に落ちていない」とか、もしくは「行動するためのプラス何かが足りない」とか、いろいろそういうことが明らかになってきた。「やらないといけないと思う」という声はたくさん聞いています。ですから、意識は高まっているので、意識啓発のキャンペーンはもう要らないのではないかと思います。だけど、行動に移っていないのはなぜかということです。この右のほうにありますが、買い替えもしたほうがいいというのはみんなわかっている。しかし、実際にやっているのは1割から2割という形で、興味はあるけれど、それ以上は進んでいないという、検討しているけど、それ以上進んでいない。検討を終わって、そのほうがいいと決断したけど、まだそうしていない。そういった方々がたくさんいます。
あと、この買い替えではなくて、心がけ行動、気をつけて省エネ行動をするとか、気をつけてマイバッグを持っていくとか、そういったことにしても、どちらかといえばやっていますという人たちは多いのですが、いつもやっているというわけではない方がたくさんいます。実際に「ライフスタイルを変える」と、皆さん、簡単におっしゃいますが、「ライフスタイルを変える」というのは、具体的にこういうことが変わっていかないといけないわけで、この変化をどうやって後押しするかというのも非常に大きなポイントになってきます。
もう一つは、政策に対して市民の声を取り入れてほしいという要望を、あちこちから私たちのヒアリングでも聞きました。つまり、自分たちに向けての施策になっている気がしないということだと思います。十把一からげに扱われている、もしくは、自分には関係ないような形でその施策がつくられているような気がする。私が動けるための施策という感じがしていない。そういったことだと思います。
福井と東京都で、実際に具体的に5人ずつの方に会って、計40人にお会いしたのですが、こうやって声を聞いてもらうこと自体が凄く大事だと思う、うれしい、それで行動に繋がる気がする、そういった声もあって、実際にヒアリングをして、情報をもらうだけではなくて、ヒアリングのプロセスそのもの、つまり、市民の声を聞くというプロセスそのものが市民のエンパワーメントになると、行動に繋がる大きなきっかけになるということを実感しました。
9ページ目が、この昨年の明らかになったことの続きですが、実際に調査をした結果、また、アンケートに基づいて行った結果、例えば買い替え行動をしましょうということを挙げてみます。低炭素化の積み上げをするときには、なかなか心がけ行動が数字化しない、しにくいので、機器の買い替えを計算するほうがしやすく、どうしても機器の買い替えをメインのターゲットにしやすいわけですが、それにしても、買い替えを妨げる障壁は何なのか、もしくは、買い替えた人は何があったから買い替えたのか、このあたりを詳しく聞くことによって、ここは省エネエアコンの場合を例にとっていますが、採用に至らなかった障壁は何なのか、採用した理由は何なのか、これを幾つか見てみると、経済合理性であるとか、ノンエナジーベネフィット、特に断熱関係はこれが多いのですが、そういったことが出てきています。これまでは、このままだと温暖化しますとか、こうしたらいいという、そういったコミュニケーションが多かったと思うのですが、そうではないところに響くコミュニケーションの仕方、もしくは施策をとっていく必要があるということが明らかになりました。
10ページは、「2020年、25%削減できているとしたら、どんな日本になっているでしょう」ということをいろいろ自由に描いてもらうというワークショップでは、一つは技術に頼って、省エネ機器にどんどん買い替えていって、技術で削減するというシナリオ、もしくは、これは今、非常に大きな流れになっていると思いますが、シェアする暮らしということで、機器そのものの数を減らしていくような生き方、それから農的な暮らし、自給自足、半農半漁に近いような生き方、の三つが挙がりました。これは、こちらから三つ選んでくださいと言ったわけではなくて、皆さんのイメージを大きく分類するとこういう三つで、数字の後づけとして、どのシナリオを選んだとしても、それなりの買い替えやライフスタイルの変化があれば、25%削減に繋がるのではないかということがありました。これまで、政府の施策はシナリオAを推し進めるようなコミュニケーションが多かったし、施策の積み上げが多かったけれど、しかし、少なからず施策のシナリオBとかCを選びたい人もたくさんいる。こういう人に向けての打ち手をどうつくっていくか、どう伝えていくか、これもこれから考えていくことかなと思っております。
11ページは、今、お話ししたことをそれぞれの機器ごとにまとめたものであります。マーケティング的な視点から、それからコミュニケーションの視点から、そして、それを支えていくために、制度等をこちらが、政府側がつくっていく必要があることを皆さんのアンケート、それからヒアリングから出た内容をまとめています。実際には、これに基づいて施策をつくっていくというのが政府の役割だと思いますが、ここまで私たちのワーキングでやってお出ししたということになります。
ここからは今年行った内容の発表になりますが、最初に、3.11がどのように生活者に影響を与えたかということを簡単に取りまとめました。3.11は非常に不幸な出来事だったわけですが、低炭素行動ということに関しても、いろいろな意味での大きな影響を与えています。そこだけに絞って言うと、電力問題、エネルギー問題に関する「ワガコト化」が起こっている。これまでは、エネルギーとか、電気とか、考えたことがなかった人たちが、やはり自分のコンセントの先はどこに繋がっているのか、自分たちはどれぐらい使っているのか、そういったことを意識するようになって、その後の停電、計画停電もあったこともあり、節電行動は非常に広がったと思っています。そういった意味で、価値観やエネルギーに対する考え方が大きく変わったというのは、さまざまな世論調査でも明らかになっています。15ページに書いてありますように、節電に関連する製品も非常に売れていますし、今で言うと、冬の対策で、電気を使わないで暖をとろうと、石油ストーブも売れています。これが温暖化対策的にどうなのかというのは別の観点が必要かと思いますが。このように、3.11で非常に高まった意識もしくは危機意識から、人々の行動が変わっているというのは明らかになっています。
ところが、実際に節電行動を見てみますと、普及はしたのですが、果たして、これで定着したかというと、かなり怪しいかなという調査結果もいろいろ出ています。この夏は、家庭も含め非常に頑張って、みんな節電をしましたが、9月になった途端にそれが戻ってしまっている。前は7月、8月はやっていたことをやらなくなったということもたくさん出てきていて、危機意識だけで行動もしくはライフスタイルを変えるのは無理だということです。もう少ししっかりした継続的な体系的な働きかけが必要だということは、ここからもわかるのではないかと思います。
後半は、今年度の検討内容、マーケティングを中心にした昨年度に比べて、今年度は伝えるというコミュニケーションを中心に活動しました。19ページですが、コミュニケーションにしても、マスコミを使ったコミュニケーションがこれまで多かったけれど、やはりそれではスルーしてしまう人が非常に多い。そうではなくて、生活者に合わせたきめ細やかな働きかけをどのようにしたらよいか、働きかけをしながら、そこでの要望や声をどうくみ上げていくことができるか、これを今年度のメインとして活動してきました。
先ほどお話ししたように、コミュニケーションも効果的にできていないし、マーケティングもできていないということが明らかになり、国からの例えばさまざまな広報であるとか、マスコミを使った広報だけでは伝わっていないということも明らかになったので、では、どうやって伝えていくのかというときに、私たちが、今年、注目をしたのは、実際に各地、各組織で伝える活動をしている「伝え手」の方々です。例えば企業の中で、社員向けに環境の教育をやっていらっしゃる人もいるし、地域でNGOとして地域の人たちの意識啓発に当たっていらっしゃる方もたくさんいます。こういった伝え手の方々が、実際にどのようなところで悩んでいるのか、もしくは、どのようなものがあれば効果的に伝えられるのか、その伝え手を注目して、ここのサポートもしくはてこ入れができないかということで、私たちの活動を始めました。
21ページは、これは非常にラフな数字なので、ここを細かく見ていただく必要はないのですが、では、現在、日本の中で温暖化行動、低炭素行動ということで、伝え手としての活動をしている人はどれぐらい、どういうところにいるのだろうということを、私たちが思いつく限り出したものであります。温暖化防止活動推進員の方がたくさんいらしているし、環境カウンセラーもいるし、NGO、NPOもたくさん、それぞれ地域で活動をしています。自治体、企業、さまざまなところで活動している人がいると思います。実際に、では、こういったところで活動している、例えばNGO、企業の方、自治体で伝える活動をしている人たちが、今どういう現状なんだろうか、どこに悩んで、何が欲しいと思ってるのか、それをお聞きしたいと思って、「特別セッション」という形で行いました。実際に43名、22ページにありますが、企業、NGO、自治体、その他、集まっていただいて、伝える活動をしていて、どういう現状に、今、直面しているか、どこが悩みなのか、何があれば乗り越えられるのか、そういったことを出し合うというグループディスカッション、全体共有というやり方で行いました。ここで、その生活者に働きかける際の障壁として、問題そのものが複雑で、温暖化もそうですし、エネルギーやトレードオフの関係などもあるので、それ自体がなかなか簡単には伝わらない。そのときに「どういうふうに伝えていったらいいか」ということが難しいという点がありました。特に温暖化懐疑論など、こういうふうにあの先生が言っているみたいな、どうしてもあちこちで反発を受けるわけで、そのときにきちっと反論できるものがないと、そこでとまってしまう、もしくは挫折感を味わってしまうという問題が一つです。
もう一つ、大きく出ていたのは、「興味、関心、そのものを持ってもらえない人たちにどう働きかけをするか」ということです。これは、私たちのワーキングでも、この小委員会でも、非常に大切なところかと思います。温暖化の講演会や温暖化の何かといったときに、来てくれる人、関心を持ってくれる人は、もともと関心の高い層で、そんなことには全然関心がないという人たちにどう働きかけるか。これは皆さん、一番悩んでいるところの一つでした。
もう一つは、「行動に結びつかない」という点。それはいろいろな理由づけをすることもあります。私一人やったってという理由づけもあるし、何をやったらいいかわからないという人もいるし、やろうと思ってもコストがかかるしということでとまっている人もいたりします。なかなか行動への結びつけが難しい。その他、いろいろな障壁を出し合っていただきました。では、「何があれば自分たちの伝える活動をさらに効果的に進めていくことができるか」ということで、出てきたのがその右側に書いてあります。見せるということで、もっと見える化できるような、例えば手段であるとか、それから、単に意識を変えるだけではなくて、制度を変えていくところで、人々の行動に繋がることをもっとやってほしいとか、それから、もう一つ出てきたのは、伝え手の人たちがみんな個別で奮闘しているだけなんですね。その伝え手の人たちそのものを支える何かがないと、私もよく地方に行って、その地域でNGOもしくは推進員としてやっていらっしゃる方とお話しするんですが、もう疲弊し切って、もう活動をやめるとか、とめてしまわれている方もいます。一生懸命いい思いで伝えているけれど、その援護が全然ない。もう自分一人で一生懸命やるしかない。そういうときに、例えば温暖化懐疑論とか、違う意見とか、いろいろ言われて、そこでへこんでしまってとまってしまうということもよくあるわけです。そういった意味で、伝え手の活動を阻害する障壁、それから23ページにありますが、伝えていく活動を効果的に行う、そのようなことをやっていかないと、ほとんど国からお金を払っているわけではないので、無償でそれぞれの組織なり地域で、よかれと思ってやっている人たちもたくさんいる。その人たちを何とか支えていかないと、一番前線で生活者に伝える役割の人たちがとまってしまうと、伝わるものも伝わらなくなってしまうと思います。そのような意味で、「伝え手とその活動を支援する何らかの仕組みをつくる必要があるのではないか」というのが、私たちのワーキングでの次の課題となりました。今はそれぞれがばらばらに情報をとって、それを自分でパワーポイントにしたり、プレゼンにしたりして、それぞれ伝えて、そこでうまくいったり、うまくいかなかったりと。そういった閉じられたものですが、そうではなくて、もっとこのあたりを体系的に支援することができるのではないかと思ってつくったのが25ページになります。これを今年つくりつつ、その具体的な施策を一つやってみたということになります。ここをちょっと時間いただいて、説明をしようと思います。
まず左側に、政府、自治体、専門機関、NGO、企業、メディアなどありますが、情報とか施策、政策のつくり手側というのがあります。今、そこから伝え手がそれぞれ勝手に情報をとって、もしくは、とれる範囲で得た情報からどうやって伝えるかというのをそれぞれつくっているわけですが、ここを見える化もしくはいろいろなデザイン等も含めて、効果的な情報ツールをここでつくっていけないかということを考えています。これは特別セッションに出た伝える活動をしていらっしゃる方がよく言うのですが、例えば温暖化の仕組みを説明するとか、何をしたらいいか説明をするときに、みんなが同じような資料をゼロからつくっているんですね。それは1回どこかでつくって、みんなで使えるように、差しかえたりしておけば、もしくは最新情報が出たらどんどんそこがアップデートしてくれれば、自分たちは凄く楽になる。だけど、今、それがなく、それぞれつくったものを共有する仕組みもないので、みんながゼロからつくらないといけない状況です。企業の担当者も、またゼロから勉強して、ゼロからつくる。自治体でも、NGOでも、同じようなことです。ですから、そうではなくて、みんながつくったものを共有できる。もしくは政府やいろいろなIPCCなどの情報を一般の人にこういうふうに伝えたらわかりやすく伝わるという、例えば「見える化」や「イラスト化」するとか、翻訳した情報をプレゼンテーションとして使えるようなキットにして、それぞれ使いたいところを使えるようなものにしていくといった情報ポータルサイトのように、こちらで加工されたものも含めて、情報が使えるようになっていると、伝え手の活動が一つ楽になります。
そのいろいろな情報を使って、右側になりますが、働きかける、生活者に働きかけをします。そのときに、やはりコミュニケーションとマーケティングの基本的な理論もしくはプロセスを知っていただくと、効果的なコミュニケーションができるようになります。今回は、そのためにガイドラインというのをつくりました。「伝え手のためのガイドライン」(ベータ版)というのをつくって、伝えるときの基本的な注意であるとか、どのように伝えるか、その流れをまず自分で作戦会議をするためのシートであるとか、マーケティング的な手法を取り入れるきっかけなどをガイドラインとしてつくり、使ってもらいながら、さらに改善していきます。単にその自分の思いつきとかだけではなくて、これまで、伝え手のための教科書というのはないんですよね。なので、教科書になるかはわかりませんが、ある手法として、伝え手の方が必要あれば参考にできるようなガイドラインを今回はつくりました。そこで、その生活者の声や要望をどう聞き取るかということも入っているので、単に一方的に伝えるだけではなくて、聞いてくるということも、そこでやってもらう。その聞いてきたものを今度は政策、施策をつくる側に伝えていく、そのようなチャンネルもつくっていきたいと思っています。
それと、真ん中にある、伝え手を支え続ける仕組みというのが、先ほど言った、今、孤立無援でそれぞれ奮闘していらっしゃる方々をネットワーク的に、これは非常に緩いネットワークですが、お互いに学び合ったり、励まし合ったり、例えば悩みがあったとき、こんなふうに言われて、突っ込まれて答えられなかったんだけど、どうしたらいいかなと。それだったら、こう答えたらどう、ここに情報があるよみたいな、お互いに支え合うような仕組みを基盤としてつくれないかと思っています。
その後は、今お話ししたことを少しずつ詳しく説明したものなので、ざっと見ていただければいいかと思いますが、生活者にどうやって働きかけをするか、その声をどうやって政策に繋げていくか、伝え手をどのように支え続けたらよいかということを28ページまで、29ページにそれを文字で示してあります。
30ページは、この施策を実際に使うというイメージを幾つか出しております。「うちエコ診断」、それからリースの例で書いてありますが、実際にこういういろいろな働きかけがあるよという中で、「うちエコ診断」という概要を伝え手の人たちにまだほとんど知られていない、残念ながらですね。それを伝え手に知ってもらい、それが役に立つ相手にこれからコミュニケーションしようとするのであれば、その「うちエコ診断」を実際にやってみる。実際にそこからの声をまた「うちエコ診断」の改良・改善に繋げていく。こういったことをあちこちぐるぐる回していけないかなと思っています。
リース制度もそうで、これも基本的には、実際に伝え手もしくは生活者の要望から出たことを制度化した、施策に落とし込んでいったわけですが、こういったことを、単発ではなくて、組織的に、体系的にできるように、繋がりのところをつくっていこうというわけです。単に何か物とか組織をつくろうと提案しているわけではなくて、この結束点となるような繋がりのところを支えるような、機能を支えるような、そういった活動ができないかと思っているわけです。
36ページから、「伝え手のためのガイドライン」ということで、ガイドラインそのものは、今、ベータ版で、実際には皆さんにいろいろとご意見をいただきながら、よりよいものにしていきたいと思っていますが、そのガイドライン全文を読まなくても、シートを使って、改善しながらできるようなものも準備しています。
マーケティングの段階で、38ページでご説明しようと思いますが、伝え手はだれか、何が目的か、そういったところをはっきりさせた後、その伝え手、伝えたい相手の現状はどうなのか、例えば意識がある人なのか、ない人なのか等、年代や性別、バックグラウンドによっても働きかけ方が違いますので、その現状を調べて、対象者と目的を設定する。その後はPDCAを回していくということになります。その目的に対して働きかけの計画を立て、実際にやってみて振り返りを行う。今、伝え手の方々の現状としてはあまり振り返りはしていないんですね。いろいろイベントをやるとか、講演をするとか、計画してやるけれど、やりっ放しで終わっているのがほとんどという声を聞いています。ですから、振り返りをして、それを自分の次の改善に繋げるとともに、ネットワーク全体の改善に繋げられるような、ほかの人の知見にも経験にもなるような、そういった繋がりがつくっていけないかと思っています。このガイドラインの中では、このステップ1から5までを詳しく、どういうふうに考えてやっていったらいいのか、実例を挙げながらやっています。実践シートでこの5つのステップを自分の作戦会議的に、次は例えばこういう人たち向けにこういう場があるとしたら、何をどうやって使ってやっていったらいいかということを考えられるようなものをつくっていっています。こちらについては資料がありますので、見てください。参考資料1というのが「伝え手のためのガイドライン」(ベータ版)になります。内容を詳しく説明する時間はないので、見ていただいて、これはまだベータ版ですので、ここでのご意見、それから部会でのご意見等をいただいて、あとは実際に特別セッションに出てくださった方々にも使ってみていただいて、改善をしていく予定です。ある程度使えるものになったら、広く伝え手の方々にお伝えしていく。パイロット版を幾つかやっていって、その後、実際に使うようなバージョンに仕上げていこうと思っています。
最後、41ページになりますが、まとめということで、今お話をしてきたように、生活者に合わせたきめ細やかな働きかけができていないということで、マーケティングとコミュニケーションをもう少し、場当たり的ではなく、体系的によい施策づくりにも繋がるような形でやっていこう。そのために、今年度は「伝え手」にフォーカスを当てて、「伝え手と伝え手の活動を支えるための仕組み」を検討しました。その結果、「情報を使いやすい形にして使えるように置いておくポータル」、それから、「伝え手を支えるためのネットワーク」、そして、「実際に伝えていくためのコミュニケーションガイドライン」、その3本を上げて、今年はコミュニケーションガイドラインを実際の成果物としてつくってみたというところであります。
今後は、43ページにありますが、この活動を通じて、こういったコミュニケーション・マーケティングの視点からやっていくことは非常に大事だと思っていますし、それは昨日の資源エネルギー庁の会議でもそのような認識がされたのだと思います。実際にどのように加工して情報を提供していったらいいのか。その働きかける力をどうやって高めていくガイドラインを改善していくことができるか。それとともに、伝え手が生活者のいろいろな改善の提案であるとか、現状の声を聞いてきたときに、今、それを施策に反映する場とかプロセスがありません。それをつくっていく必要があります。それから、伝え手自身の能力、モチベーションをアップして、支えていくことも必要です。これは今年度すべてはできなかったわけですが、何が必要かはかなり見えてきましたので、今後、こういったことを順次つくっていく必要があるのではないかと思っています。
以上、説明でした。ありがとうございました。
西岡委員長
どうもありがとうございました。この小委員会のほうでは、各分野にそれぞれ、さまざまなシナリオあるいは技術的なロードマップなどをお願いしておりますが、最終的にそういうものを用いて世の中を動かしていくのは社会全体である。生活者だけではなく企業や産業へのコミュニケーションについても、十分考えなければいけないことかと思います。、このワーキンググループには、計画ができたときに、どうそれを実現させルタ目に伝えてゆくかということで、作業をお願いしている次第です。皆さんのこの作業に対するコメントをいただければと思っております。
森嶌委員
枝廣さんの、といって個人的なワーキンググループではありませんが、中環審のワーキンググループとしてはこういうアプローチは初めてであろうと思いますが、私は大変高く評価いたします。最近私は、中環審の議論は何をやっているんだということをしょっちゅう言っておりますけれど、こういう地の足の着いたアプローチを評価いたします。特に「マーケティング」という言葉は、私は一般的にはあまり好きじゃないですけれども、マーケティングをこういう形で、コミュニケーションと一般の人の購買に結びつけながら人々の行動を変えるという具体的なアプローチを非常に高く評価いたします。
今まで中環審は、こういうものを一般的に環境教育とか、ライフスタイルの変更ということで、概念的に議論していたわけで、そして、具体的に施策としては何をやっていたかというと、環境省がNGOに随意契約というような形で小さな予算を配って、それぞれ工夫してやってもらっていたわけです。伝え手はNGOでした。ところが、ご存知のように随意契約というものをやめることになって多くのNPOが危機に瀕しまして、結果的にはここで言う伝え手がだんだんとエンデンジャード・スピーシーズになってきています。その意味では、このアプローチ、それからこの提案を、私は非常に高く評価しますけれども、今の環境省のやり方は、残念ながらこの提案は動かないと思います。一つは、国あるいは地方公共団体が、伝え手を、これは必ずしも金ではありませんけども、どうサポートするかという仕組みです。やはりここは国の政策を審議する機関ですから、伝え手が頑張れということならば、伝え手が頑張ることができるように、国あるいは地方公共団体の施策として、何をしなければならないかということを考え、そこに重点を置いて議論しなければならないと思います。
それから、さらに伝え手からなかなか聞く耳を持たない人たちに情報が伝わって、その人たちが、私たちはこういうことだから言うことを聞けないんだということを言っているときに、ここに書いてありますが、そうした意見が政策に反映してこない、生活者の声や要望は政策に伝わってこないというのは、これはまた厳然たる事実でありまして、中環審でもほとんど生活者の声が伝わってこない仕組みになっていますね。
実を申しますと、私は、長いこと生活をしてきた名古屋で、いろんな形で三つのNGO活動をやっていますけれども、名古屋でやっていることと、ここで議論していることとはほとんど別のことになってしまうのです。向こうでは何とかしましょうとやっていても、ここへ来るとはね返されてしまいます。私でもはね返されてしまうわけですから、一般の善良なる市民が意見を述べるルートはどこにもないんですね。中環審としては、伝え手をいかに政策としてサポートするかという、これは金だけではありません、どういう仕組みをつくるかということが重要です。それから、伝え手から伝えられたものに対する一般の市民の反応を、さらに伝え手を通ずる必要はありませんけれども、どういうふうに一政策に反映をするかという仕組みを作ることが必要です。それを、枝廣さんのワーキンググループで全部やれということを申すつもりはありませんけれども、ここにアイデアは出ていますので、これを枝廣さんのワーキンググループで是非やっていただきたいと思います。
それから、最近の伝え手は、私のところのNGOでもそうですが、情報の収集や送付にインターネットを使うんです。また、インターネット上の検索を使います。私でも、情報を得るのに最初から政府のホームページを使うことはあまりありません。外のもののほうが、多少不正確でも説明が探しやすくわかりやすい。政府のは正しい情報ですが見つかりにくいしおもしろくないんですね、残念ながら。このガイドラインも、枝廣さん流ですからかなりいいと思いますが、これも多分よっぽどうまく検索でもついていないと、一般の人には届かないのではないでしょうか。そこで、もっとインターネットなどを使うという前提で、こういう情報を出す方法について、世間の方法とコンペティティブに、一般の人たちが、正しい情報といいましょうか得てほしい情報を、伝え手を通じてあるいは伝え手を通じないで、得ることができるか、枝廣さんのほうで考えておられないコミュニケーションルートも含めて、コミュニケーションの仕方をお考えいただければと思います。
今お聞きして、細かい問題はありますけれども、この全体については、まずは高く評価して、中環審としては画期的であると申し上げた上で、今申し上げたことをこれから検討していただければと思います。ありがとうございました。
西岡委員長
それでは、幾つかまとめてお聞きいただいて、対応をお願いしたいと思います。横山委員、お願いします。
横山委員
私も、このコミュニケーション・マーケティングというのを初めて系統だって伺って、大変興味深く、また、核心を突いているなというふうに思いました。このガイドラインを是非発展させて、その伝え手が非常に使いやすいようなものにしていってほしいというふうに思います。それに関連して、2点、意見というか、質問をしたいのですけれど、まず1点目は、政府が「チーム・マイナス6%」とか、あるいは「チャレンジ25キャンペーン」と、国民運動を行っているわけですね。それに対してどんなふうに見られたのか。この報告とはちょっと方向性がずれるかもしれませんけれども、今、国民運動として、一般の人にどうやって温暖化問題を理解してもらって、そのためにどういうふうに行動してほしいかというのを国民運動で展開しているわけですね。それをどうご覧になって、限界がどうだったのかとか、あるいは、今すぐにでも、この報告書をまとめられた以上、こんなふうに改善すればいいんではないかということがあると思うんですね。その辺をお答えいただければと思います。
2番目は、森嶌委員も話していましたが、私も環境教育という問題が根底にあると思うんですね。特に学校という問題を考えると、伝え手が教員というふうにも単純化すればできると思うのですが、その教員も非常に迷っていると。どんなふうに生徒・児童に伝えたらいいのかとか、少し環境教育というくだりで出てきたと思うんですけれども、その辺の論議をどの程度行っていたのか。今後、2030年とか50年のことを考えると、まさに子供たちにいかに環境問題を理解してもらうか、あるいは、理解した上で行動するかということが重要だと思いますので、その辺をどの程度、このワーキンググループでなさったのか、あるいは、これからなさる予定があるのかどうかとか、その辺をお答えいただければと思います。以上です。
枝廣委員
ありがとうございます。政府がやってきたマイナス6%、チャレンジ25%は、ある意味、大規模なローラー的な、お金をたくさん使っていますし、マスコミを使っていますので、その意識啓発を津々浦々までやる試みとしては評価をしています。マイナス6%は、そういった意味でよかったと思うのですが、意識啓発を繰り返しても、もうその先に行かなくなっているというのが私たちの見立てです。その大きくローラー的にやるのではなくて、これからは毛細血管のようにそれぞれのところで、それは組織なり、地域なり、家庭なりで、それを受け取った情報もしくは啓発された意識を行動に変えていくところをきめ細やかにやっていかないといけないと思います。そういった意味でいうと、そのマイナス6%、チャレンジ25%的な一斉認識啓発をし、宣言をしてもらうなりのところでは限界があるかなと思います。もちろんあそこでいろいろな事例もありますし、そういった細かな情報提供をしている試みも評価はするのですが、あそこに出ている事例が自分とどう繋がっているのというところは、やはりそれぞれが読みほどかないといけない、もしくは関連性を自分でつけないと行動につながらないというところがありますので、そういった意味でいうと、先ほど森嶌委員がおっしゃったことでもあるのですが、個人的には、ああいった大きなところに任せるのではなくて、その予算の10分の1でもいいので、NGO、NPO等、それぞれ毛細血管のように、活動している人たちに回す仕組みをつくってほしいなと思っています。
もう一つの環境教育のほうは、実際、今回のワーキングの中では、それほど中心的に議論したわけではありません。ただ、個人的にも、この特別セッションにいらした方、そのほか、いろいろ話を聞いても、今言ってくださったように、学校の教員が環境教育をどうしたらいいかというのは非常に迷っているというのは、そのとおりだと思います。一つ大事なのは、国として、そういった環境教育もしくは低炭素行動に繋がるようなところを、学校教育にどう組み入れていくかということをしっかりやってほしいと思います。これは、おそらく環境省というよりは文部科学省だと思いますが、教育の中にしっかり埋め込んでいく。そのときに、単にその環境教育というコマをとりましょうという話ではなくて、例えば、タイは人口が増え過ぎて、人口政策をとらないといけないということになったときに、学校教育を非常に有効に使って、それを成功に導いたという事例があるのですが、そのときに、単にそれをメインにした教育をしたわけでなくて、算数でも、国語でも、理科でも、社会でも、素材にすべてその問題を扱うということをやったんですね。なので、本当に環境教育もしくは低炭素教育をやっていこうというのであれば、単にそういう環境教育という教科をつくりましょうではなくて、算数とか国語の読み物であるとか、いろいろなところでやっていくことができるし、必要だと思っています。今回の私たちのワーキングもしくはガイドラインのことで言うと、今、あまり環境教育の時間が学校教育の中で重視されない、とりにくくなっている現状の中、それではいけないと、個々奮闘していらっしゃる教員の方々がいらっしゃる。その方々の少しでもお役に立つようなお手伝いができないか。そういった意味で言うと、割と地域で頑張ってらっしゃるNGOと同じように、学校教育の中で一人NGO的に環境教育をやろうとされている先生たちにも使ってもらいたいとは思っていますが、本当は政府として、もっと大きく環境教育をどう位置づけるかということをやっていただきたい。それは、もしかしたら、次の活動になるかもしれませんが、その環境教育もしくは学校教育の現場の方々の声を特別セッションのような形で聞いて、施策に結びつける、フィードバックを繋げていくというところで、私たちのワーキングがお役に立てるかなと、今、聞いていて思いました。ありがとうございます。
及川委員
先ほどの横山委員とほぼ同じなんですけれど、環境教育というのが大事で、そのときの伝え手としては、小学校、中学校、高校の先生方だろうと思うんですね。そして、最近の文部科学省の方針としても、割に環境に配慮し出してきているようなんですけれども、教科書という格好で、環境教育の教科書というのはないと思います。それで、かつて調べたことがあるんですけれども、こういう地球環境に関連することですと、地球温暖化といったような問題ですと物理にちょっと出てくる。それから、生物多様性というと生物に出てくると。しかし、こういう対策をどうしたらいいかというと社会科のほうに出てくるという、ばらばらになっているというのが現状だったんですね。やはり体系的なこの環境教育というのが大事で、やはり文部科学省にその辺をしっかり認識してもらうように、環境省からも何か働きかけをしていただけないかというのが私の考えです。
松岡委員
私ども基礎自治体で、伝え手としての役割も今までやってきたんですけども、最も下手な伝え手でありましたんですけども、私ども、実際に住民の方々と接するに当たって、コミュニケーションを図っていく上で、伝えるということは本当に重要なことだと思うんですけども、何をもって伝えることが効果的なのかということが非常に大事なことだと思っているんです。やはり温暖化対策にしても、日本全体でこれくらいのエネルギーバランスでと言われても、皆さん、ぴんとこなくて、いわゆるローカルデータなり、自分たちに、本当にそのままに自分たちが感じられるようなデータをもって伝えていくということが必要なんだろうと。私ども、実はスマートグリッドなんかで、CEMS、BEMS、HEMSができ上がったんです。今まで議論していた中じゃなくて、現実にものを見てみると、例えばブロック単位でエネルギー行動が全部見えるんです。CEMSのほうで管理するのですが、それが個人個人の方が見られると、これは凄く自分たちの行動がそのままストレートにそこに繋がって見えてくるんですね。だから、今までデータとして、あるものを伝えるだけではなくて、本当に伝えるべき新たなローカルデータ、みんなが感じれるようなデータというものが何があるのかということを考えていく必要があるのではないだろうかなというふうに思います。
それから、この中にありました「シェアする暮らし」というのが、非常に私も、我々も議論の中で最もキーワードとしてやっているんですけども、全体でのシェアだけではなくて、個人の所有物であって、普段は個人が使っていても、それを場合によれば社会に対しても使えるというような、個人戦と団体戦をそれぞれを兼ねるようなシェアというのも、一つの考え方としてあるのではないだろうか。まさに、それがコミュニケーションの共有物だけでやってしまうと、どうしても限られてしまうので、そのあたりの考え方が必要なのではないかと。
それから、あと、伝え手の者なんですけども、いわゆる人というものが本当に非常に大事だと思っているんです。ただ、常にその人たちは接しているわけではないので、例えば環境の機能というものが、やはり街中は、特に低炭素というものは、何も生活者にとっては見えないんですね。したがって、例えばいろんな低炭素機能というものを色で誰でもが視覚でぱっと見えるとか、マークで見えるとか、そういった非常にシンプルな形の中での、それも色なんかも、私どもも、何か街中をそれを示そうと思って、表現が適切かどうかはわかりませんけど、色気プロジェクトと言っているんですけど、やはりここはこうなんだというのがぱっと見えてくると、非常にやっぱり考えなければいけないというのは苦しいんだと思うんですよね、普段の生活の中で。というようなところ、伝え手もそういった色みたいなものもあるのじゃないかなと思います。以上です。
冨田委員
非常にわかりやすく的確なご説明をありがとうございました。枝廣さんの伝え手としての能力に、非常に感銘いたしました。これは枝廣さんへのご質問というよりは、事務局への質問ですけども、例えば25ページに、この生活者である人たちへの働きかけとして、伝え手が非常に大事だという、非常にわかりやすい絵が描かれているのですが、実はこのコンセプトは、温暖化対策推進法の中に既に描かれていると思います。温暖化防止活動推進センターというのを全国につくるというような形で、本来、法律が出来たのは、たしか10年ぐらい前ですので、その中でもう政府としては考えられていたことです。今現在、ほとんどの地方自治体でそのセンターは持っていますけれども、まだこういうことを指摘されてしまうということに関して、政府はどう考えているのかというところを是非お聞きしたいと思います。すなわち、数年前の仕分けでかなり予算の削減をされたところでありますけれども、温対法の中で設置が求められたセンターの役割が、ここでもう一度言われているということに関して、どうお考えになるのかというところをお聞かせいただければと思います。
西岡委員長
それでは、前の二つについては枝廣委員に、後につきましては事務局のほうで。
枝廣委員
ありがとうございます。環境教育については本当におっしゃるとおりで、是非環境省から、もしくは生活者の声ということで、文部科学省、教育をやっているところにも伝えていく一方、それぞれやっていらっしゃる方を今の土俵の中でも支えられる、少しでもお役に立てることをやっていければと思っています。
松岡委員の自治体の現場からのコメント、本当にそのとおりで、やはりCO2は見えないですし、自分がやったことがすぐに、例えば川をきれいにしましょうという活動だと、やって何時間後には成果が見える、やった感というのがあるのですが、低炭素行動というのはなかなかそれがないので、どうやってその小さなPDCA、こうやってみよう、やったらこうだったという小さなPDCAをあちこちに埋め込んでいくかというのが大切だと思っています。そういった意味でいうと、日本全体のCO2量とかエネルギー量というのではなくて、自分たちが感じられるローカルなデータを「見える化」していく。個人の家であれば、太陽光パネルをつけると、発電量と自分の消費量が見えて、それで節電行動にも繋がると、小さなPDCAが回るわけですが、これをもっともっといろいろ埋め込んでいくことと、低炭素機能を「見える化」するというのも非常に大事だと思って聞いていました。
「シェアする暮らし」は本当にそうで、日本だけではなくて、今、世界的にその共有、シェアというのが広がっています。例えば一番進んでいるアメリカ、ヨーロッパなどの例を見ていても、今、ご指摘のとおり、共有物を共有するのではなくて、個人の所有物を時間的に時間貸しするとか、例えばカーシェアリングも、日本ではカーシェアリング会社が車を用意して、それをみんなでシェアするという形をとっていますが、アメリカ、ヨーロッパのほうだと、個人が自分の使っている車を、今週は使わないからとか、今日の午後は使わないからとか、時間貸しでカーシェアリングの会社に貸す。だから、個人の所有を持ちつつ、共有するということが、これはインターネット等の技術の革新もあってできるようになっています。ですから、そういう意味でいうと、その個人の所有物と共有物という区別が非常にあいまいになってくる。所有しつつも共有できる。例えばランドシェアというのも、今、非常に広がっていて、自分の土地を手放すわけではないんだけど、耕すことがなかなかできないとか、一部使っていいよという形で、その土地をシェアします。そして、そこでできた農作物を、土地を貸してくれた人とつくった人が折半するみたいなことをします。これも非常に、今、アメリカ、ヨーロッパでも広がっているところなので、こういった意味でいうと、これまでの施策で、個人の所有物、共有物と、かなりはっきり分けていたと思いますが、これを世の中の実情、動きに合わせてもう少し変えていくことで、新しい施策もできるかなと思っています。
最後の冨田委員のご質問は、私へというよりも、事務局の方にお願いします。
地球温暖化対策課長
それでは、私のほうから申し上げたいと思いますが、予算のことは、あえてもう言わないということにいたしたいと思いますが、やはり温対推進法の中で推進員ができた時代というのは、当時はまだ温暖化ということ自体がそもそも知られていなかった時代で、それをまず教えていくという話だったのではないかと。先ほど、枝廣先生のほうからもお話があったように、やっぱり質が変わってきているのではないかと。ですから、まず私どもは、国のほうでもやっておりましたのは、推進センターの数を増やしていくということでした、一番最初はですね。そもそも都道府県に一つずつつくっていただくということ自体が最初は行われていなかったので、まず数を増やしていくという話をしておりました。ですから、ある意味、量の時代から、今、質の時代に移ってきているのではないかと。先ほどの枝廣先生のこの資料の中でも、啓発普及は終わったのではないか。でも、ある意味、今まではそういう時代だったわけだと思うので、いわゆる各地の推進センターも、そういう啓発普及を中心に今まで頑張っていらしたのではないかと。まさにこれからが、その実際の行動変容に移っていく、そういうところになっているのだと思いますので、その辺は、何というのでしょう、今のその問題点というのは、やはり現時点に出てきたものであって、過去は過去として、普及啓発のステージできちんと役割を果たしてこられたのではないかというふうに思っておりますが、今後は多分その役割がまた変わりつつあるということを前提に、行動を自ら変えていかなければいけないというステージに移っているというふうに理解しております。
森嶌委員
いかにもお役所的な発言に思いますが、こういう委員会ですから、多少失言をなさっても構いませんから、今まで何をやってきたか、素直におっしゃっていただきたい。予算のことはあえておっしゃらないと言ったけども、事実上、これは別に地球環境局がだめだったからというのではなくて、現実に予算が減ってきているんですね。これは先ほど北九州の方がおっしゃったけど、北九州はともかくとして、地方自治体も、今、予算が減っているんですね。私は愛知県の環境審議会の会長もやっていたんですが、国の推進センターの予算が減ってきており、地方自治体の環境予算も減っています。先ほどから出ている環境教育も、実際には、文部科学省の学習要綱はどんどん学習時間が減ってきます。先生も、環境教育を熱心にやる先生は、校長になるチャンスが減るなどと言われ、環境教育などをきちんとやらなくなってきているという話も聞いています。私の地元のNPOの活動の一つは環境教育を進めるもので、出前教育授業を私も出かけていってやっているんですけども、だんだん学校からの注文も少なくなってくるという状態なのです。そこで、さっきも言いましたけども、国として、現実に今まで推進センターで何をやってきたのか。それから、地方自治体との連携では何をやってきたのか。環境省は地方自治体に対してどういうことを国としては進めてきたかということをここでご説明いただきたい。文部科学省に何を言うか、それはそれでちゃんとやっていただきたいと思いますけども、ここは環境省ですから、環境省自ら今まで何をやってきたか。それで、質が変わってきたから、これからだというなら、これから何をしようと考えておられるのか、ここではっきり言っていただきたい。そのうえで、枝廣さんに、フランス革命ではないけど、旗を掲げてもらって、さあ、みんな、これでいこうということを言ってもらって、それをバックに、環境省が自分の施策を進めたらどうでしょうか。今のお答えはお役人の答弁としては立派なんですけれども、ここは国会ではないですから、どうぞもっと有り体に言っていただいたほうが、我々としては議論しやすいのではないかと思います。宜しくお願いします。
西岡委員長
どうもありがとうございます。議事の進行といたしまして、まず、今、このコミュニケーション・マーケティングWGのまずはお話に対するコメントをいただきたい。今のは非常にこの環境行政全般にわたる話でもありますし、後ほど、またお話を聞きたいと思いますけども、次へ移らせてもらいます。
大野委員
私ども、エコドライブの普及活動という観点で、こういう活動をお手伝いさせていただいているので、そういう観点で今日のお話をお伺いしたんですけども、1点目は、頭で理解できるだけではなくて、本当に共感しました。よく言っていただいたというか、全くそのとおりだと思いました。例えばエコドライブというと、昨年度のこの委員会の報告書でも、500万トンとか、800万トンを減らすと、凄く大きい期待をされているんですけど、実感としては何かちっとも盛り上がっていないという感じで、例えば関係4省庁と、我々、民間団体の会議体がございまして、エコドライブ意見交換会というのがあるんですけど、もう5年間開かれていないんですよ。だから、500万トンとかいうのだけ凄い期待で、ちょっとギャップは感じています。
今、枝廣委員がおっしゃったように、担い手がいないわけではなくて、皆さんやっているんですけど、細々と小規模に独立してやっているので、本当に効率が悪いのですよね。ですから、今おっしゃったように、仕組みがあるとありがたいなと、日ごろ思っていましたので、本当にこれ、今すぐでも何か仕組みをつくっていただければ、もっと効率的にどんどんできるんじゃないかなということで、大賛成でございますので、すぐもう着手したらいかがかなという感じがいたします。これが第1点目です。
それから、第2点目なんですけども、最近、エコドライブに関してアンケート調査なんかをやっているんですが、何人かに一人のドライバーがエコドライブをやっていらっしゃるのですが、やっていらっしゃる方で、地球環境のためと答えた方がほとんどいらっしゃらなかったんです。ほとんどの方がお財布のためなんです。ちなみに、エコドライブをやると、事故も半分ぐらいになるんですけども。今、議論しているんですけども、基本的な温暖化対策の環境教育はもちろん必要なんですが、それだけだと、今、枝廣さんがおっしゃったように、実行までなかなかいかないですよね。その後、実行までやらせようとすると、道が二つあるかなと思っていまして、一つは、地球のためにあなたは我慢しなさいという言い方になるんですね。それはなかなか、本当にみんな我慢してくれないと、何で自分だけ我慢するんだという話になってくるし、もう一つは、お財布のためにやっていらっしゃるなら、それでいいじゃないかと。大変儲かりますよということを言って、結局、結果的に温暖化対策ならいいじゃないかという考え方があって、そっちのほうで少しいろいろアピールしようかとかいう話をしていまして、その辺が、枝廣さんがおっしゃったマーケティングのほうの考え方なのかなと思うんですけど、ちょっとその辺、ご意見をお伺いできればと思いました。以上です。
中上委員
オブザーバーで、あまり発言してはいけないかと思って、森嶌先生がいっぱいおっしゃるので、私も一言。
今のご意見にちょっと関連することからいきますと、やはり昨日、イクレイという自治体の国際会議のシンポジウムがありまして、そこでイギリスからお見えになった方が発表された中に非常に象徴的なことがございました。倫理的誘導では限界であると。やはりどうやってもう少し実生活に近い形で訴えていくかという、そこに移行しないとだめだというのが、多分これが大変な大きなバリアだろうと思います。一つは、無駄の排除という言い方をして、無駄だからおやめになったらというので、私が提起したので一番成功したのは待機電力でありますけども、これは一家庭1万円ぐらい待機電力でロスしていますよといった一言がキーワードで効いて、あっという間に日本中で消費者が行動を起こし、メーカーが重い腰を上げて、待機電力をカットしたと。世界で真っ先に待機電力を解決しつつある国というのは日本になっているわけですね。これも倫理的なところから本当はスタートしたんですけども、実際はそっちのほうがはるかに効いたと。だから、そういうものの結びつけが非常に大事だなというふうに思いました。
枝廣さんのようなこういう、私はその分析は非常に重要だと思っておりまして、前々からいろんな審議会で言ってきたのですが、なかなか実現しなかった。これを見事にやっておられるということに際して、私は非常に敬意を表します。というのは、欧米の私の友人たちはみんな、もうこのステージに入っていまして、どちらかというと、エネルギー問題とか、地球環境問題のメインテーマは、文化人類学的な観点から、これをどうやって進めていくかというところに移行しているわけで、当然バックグラウンドには科学者、技術者がついているわけでありますけども、まだ日本は科学者、技術者が先頭に立っていて、文化人類学のところへ落ちていないと。そういうことを申し上げるので、メンバーの方々はそういう方が多いのでしょうが、枝廣さんは間違いなく文化人類学のご専門でありますけど、そういう方々をもっと取り込んでおやりになると、もっと深掘りができるだろうし、いろんなものが見えてくるのではないかと思います。
それから次に、情報のポータルのことなんですけれども、昨日の基本問題委員会でもご一緒したのですが、省庁の縦割りになっているものですから、ここは環境省だから環境省の情報しか出てこないです。だけど、消費者はそうじゃないですよね。農林水産省のデータもあるだろうし、国土交通省のデータもあるだろうし、それから経済産業省のデータもある。そういうものをやっぱり一緒にこの情報ポータルに落とし込まないと、どうも一面的になってしまう。そういったものをやれるのが、やはりNGOとかNPOだろうと思いますので、それを環境省はどういう形でサポートするかという形で見ていただければいいんじゃないかなと思います。
もう1点は、せっかく左側にポータルサイトを書いてありますけども、右側からのフィードバックがどうなっているのかと。これを是非情報ポータルに落とし込んでいただきたい。昨日も「うちエコ診断」の方の発表もお聞きしたのですが、フォローアップがなかなかできない。これは予算のことがあったり、人の問題があったりして、できないのはわかるんですけれども、やった結果がどうなっているか、それをフォローしていく、これが非常に重要でありまして、この幾つかのレポートの中にもありましたけれども、節電というのは瞬間風速として非常によく出たけども、フォローしている、だんだん落ちてきている。なぜ落ちているのか、そこが重要なんですが、そこにはもうなかなか、1回診断したりすると、次の手が打てていないんですね。それがうまくフィードバックできるような仕掛けも、是非この伝え手のところに、さらに情報ポータルに戻していただきたいと思いました。
ローカルデータの重要性という話です。これはまさに松岡さんがおっしゃったとおりでありまして、これもアメリカの例ですけれども、試験的にやられたので、隣近所100件ぐらいのデータを並べて、その使用量をロードカーブで示して、お宅のロードカーブはこうですよ、町全体ではこうですよと書くと、それを見ただけで、我が家はここがどうも遅れているらしい。次の行動に入る。このトライアルのおもしろいところは、グーグルマップと組んでいまして、家一軒ごとにフラッグが立っていまして、多消費型の家は赤いマークがついている。省エネ型のところはグリーンなんですね。これはどうもプライバシーの侵害になるのじゃないかと思うんですけども、拡大するとすぐ家が見えるわけですね。隣はグリーンで、うちが赤だと、これはもうかなり隣近所、けんかが起きるのじゃないかと思ったんですけど、それは一つのトライアルなんですが、確かに、だから、ローカル、自分のデータというふうにして見ることができると、もう行動はいち早く惹起されると思いますので、そんなこともご参考までに。いろいろデータとか、欧米に仲間がいますから、ご紹介しますので、是非、枝廣さん、その海外の人と連絡をとって、これを充実していただければと思います。
永里委員
ありがとうございます。森嶌委員、その他がおっしゃっていますが、この実態にそぐわない概念論に走りがちな中環審にあって、このレポートは画期的でございます。特にマーケティングの視点が入っているから、かくもわかりやすいまとめになってきて、どんどん落とし込んでいって、最後の取りまとめというところで、ちゃんとまとめが出来てきておりますが、その中で一つだけ質問です。例えば22ページに「伝えることが難しい」と。私、伝え手が本当に真に理解していても難しいのだろうかという疑問であり、それで、その回答として、41ページには、「検討の方向性、「伝え手」にフォーカスを当て、伝え手とその活動を支援する何らかの仕組みを検討」となっており、最後に、一番最後のページに、「伝え手の能力やモチベーション向上を図る取組をやるべきだ」というふうに書いてあるのですが、これについて、どういうことを現時点でお考えでしょうかという質問です。
枝廣委員
ありがとうございます。是非、中上先生、いろいろ教えてください。このあたりをもう少し一緒にやっていきたいと思っています。
今のご質問に関して、これからやっていかないといけないと思っていることは、例えば22ページですが、今言ってくださった「伝えることが難しい」というのが、何によって難しさがつくられているかということを少し深く分析しないといけないと思っています。これは、「伝えることが難しい」というのは、割とみんなの言葉として出てきているのですが、何が難しいか、その伝え手によってその障壁はいろいろ違うんですね。例えば温暖化の仕組みそのものを自分が理解していないからわからない。それは知識レベルでどう補うかということになります。もしくは、見せるためのどういったツールをつくったらいいかということであれば、それにあう対策をこちらが打っていくことができます。しかし、今、多くの場合、伝え手の方と話していて思うのは、伝えるのが難しいというのは、単に知識や情報や科学的な何かを伝えるのではなくて、もう少しトレードオフも含めた価値観のところにどうしても入っていくのですね。つまり、行動を促すとしたら、例えば今の目先の便利さと、未来世代への責任と、どう考えますかみたいなところにどうしても入ってしまいます。そうしたときに、伝え手が自分の価値観を話すことはできるけれど、その相手の価値観をやはり聞いた上で、お互いに対話をしていかないといけない。そういう意味でいうと、この伝えるのが難しいと言われている方のある部分は、「対話」をこれまで学んでこなかった。これは私たち日本人、全部そうだと思うのですが、そこが一つあるかなと思います。つまり、IPCCはこう言っていますとか、温暖化はこういう仕組みですとか、今、日本の現状はこうですという知識を与えるという意味では、伝えるのはそれほど難しくないけれど、その先のもう少し価値観とか、生き方とか、ライフスタイルに入っていったときには、自分はこう考えるけど、あなたはどう思っているのかということを聞かないと、「対話」の能力が必要になってくる。そこの「対話」の難しさが伝えるのが難しいという形で、つまり、伝えようと思っても、伝わらないということなんですね。それは伝え方がまずいだけではなくて、その「対話」をする中で伝えるという新しい手法を身につけていかないといけないということだと思います。そこはまだ私たちも十分に掘り下げていませんので、次に、まだワーキングが続くとしたら、是非その伝えることは難しいと言っている多くの人が感じているところの、その伝えにくさをつくっているのは何なのか、それに対してどう手が打てるのか、それは中上先生がおっしゃってくださったように、例えば社会学者、心理学者、文化人類学、たくさんそれぞれの分野には知見があるので、それを上手に繋げながら、施策をつくっていきたいなというふうに思っています。ありがとうございます。
藤井委員
それでは、絶賛型の評価が多かったので、ちょっと意地悪な質問になるかもしれないのですが、ここでは環境なので、ほとんど違和感はないのですが、例えば生活者は、実はまさに生活のいろんな多様な問題に直面しているわけで、なぜ低炭素について、こういった仕組みが要るのかというところがちょっとわかりづらい。例えば増税が要るじゃないかと。あるいは、高齢者対応が要るじゃないか、地域社会の安全性をどうするのかといったいろんな問題についても、こういったものをつくって伝えていったほうがいいのか、あるいは、低炭素は、やはりそうではなくて、もっと次世代を含めたものなので、これが要るんだという、そういうところがちょっともう少しあったほうがいいのではないかなと思うのが1点です。
それから、もう一つは、情報が十分伝わっていないから動かないのか。いや、ある程度、もちろんそんなに細かくはわからないけれども、その温暖化問題の大事さはわかっているけれども、しかし、動かない。つまり、先ほど大野さんが言われたように、エコドライブの問題のように、インセンティブがないので、わかっているけれども、いろんな要素の中で、優先度は必ずしも上にはならないということが、かなり私は大きいのじゃないかと思うんですね。意外と日本人は全体的にレベルは高いですので、理解しているのではないか。ただし、自分に置きかえてみると、確かに一番最初の5ページの表のように、家庭も伸びているんですけれども、全体の比重で言えば、まだ下のほうじゃないか。あるいは、低炭素に配慮することによって、先ほどのように光熱費がカットされて、そして、得をするからやろうというような、そちらのほうにインセンティブを持たせて動かせていくことのほうが、実は、それがセットでしょうけども、伝える仕組みをつくるだけでは、私も情報産業にいたので、人は動かないと思うんですね。そこのところをどのようにやっていくのかということが大事じゃないかなと思います。
それから、教育の部分は、特に中高教育、高校までの教育というのは、私もいろいろ知り合いに聞く限りにおいては、基本的に環境の専門家の先生がいないわけですね、基本的にですね。中には関心を持っておられる先生はたくさんいらっしゃる。この130万というのはほとんど一般教育なわけで、そこに環境教育の専門家の先生を入れていくほうがいいのかどうか。これはもう凄く大問題で、では、税をちゃんと教えれる先生、そういった科目を位置づけていって、専門教員を育てていくほうがいいのか。どなたかが言っておられたように、あらゆる科目に環境というのは絡んでくるので、そういう形で教えていくのか。あるいはまた、これは企業がいろんな形で環境教育にも協力されているわけですけれども、そういう外部の、あるいは森嶌先生のように、大学の専門家の方々が入っていくような仕組みにしていくか、これも文部科学省やれよというだけでは、なかなか実はスムーズにいかない大きな課題があるので、これは、また環境省と文部科学省で一つの具体的な仕組みをつくって、ご議論していただかないと、なかなか学校に放り込むだけでは、学校教育を問うだけでは済まないなという、これは最後は感想ですけども。
則武委員
生活者に伝えるほうのことは、皆さん方からいろんな意見があったので、ちょっと逆に、27ページにあります、生活者の声をという部分なんですけれども、特に障害を取り除くための聞く場だけじゃなくて、それを改善する場が必要じゃないかなと思います。例えば32ページに、このエコリースがありますけれども、このエコリースの例で言ったら、月々7,000円の負担がかかって、何もメリットがないというふうに見えてしまいますけれど、これは、もともとリースという制度でやろうとしていることが無理だと思っているんですけど、もっと簡単にローンとかで組めるようにしてしまったほうが楽だし、こんなリース会社も資産管理が面倒くさい、こういうのを敢えてやりたがらない。製品やサービスを提供する側がやりたがらない制度はどうやっても普及はしないと思うので、もっと積極的に売る方や、サービスを提供する側が積極的にお客様に伝えるような方法にすれば、もっと伝わり易いのじゃないかなと思うので、そういう視点で検討する場が必要じゃないかなというふうに思います。そうすれば、全体的なコストも少なくて済むんじゃないかなと思います。以上です。
藤野委員
ありがとうございます。私も一応委員に入っていまして、文化人類学はやっていないですけれども、参加させていただいた経験も踏まえて、コメントを三つします。
まず、これをやっているときにイメージとして、枝廣さんがアル・ゴアを100人つくれるといいよねとかというような話をしていて、どういうことかというと、アル・ゴア、材料、素材をつくって、その素材をいろんな人が説明できるようになれば、もっと早く効果的に伝わるのじゃないか。それを枝廣さんが100人つくれるような、そういうようなプロセスがつくれたらいいよねということを最初に言っていました。そういう意味で、伝え手というところにフォーカスが当たったかなと思いますけれども、考えてみるに、その伝え手をこうやって養成していくというのは、人材育成の一つになると思います。コーディネーターをつくっていくことにも繋がっていくと思うので、そういったことが、その今の雇用対策とかそういったことにも、実は繋がり得るんだというような副次効果みたいなものもあるでしょうが、一方で、その伝え手の適性というのもあるらしくて、委員で参加されている菊井さんという、全国地球温暖化推進活動推進センターの事務局長の方が、伝え手になりたいけど、コミュニケーション能力がやっぱりないと、適性がなくて、残念ながら、その資格が取れないというのがあるのですが、場合によったら、そういう人は材料をつくるのが得意かもしれませんし、それぞれ得意なところを、場合によったら、コーチングチームというか、やっぱり誰かが、ここにいらっしゃる専門家の先生たちも、そういったコーチングチームというか、伝え手を育成するような能力がおありの方もたくさんいらっしゃると思いますけれども、そういった第三者機関が見ながらやっていくことが必要かなと思います。凄くいいコメントをいろいろいただいて、委員としてもうれしいのですけれども、やっぱりこれを実現するためには、相当なバックアップも必要ですし、成功モデルをまずつくることがとても大事だと思います。どこでつくるかというのも、よくよく考える必要がありますけれども、そこについては、積極的なコメントをされた方は、是非ご支援いただけたらなと思います。
最後ですけれども、「マーケティング」という言葉を、これ、敢えて入れていますが、やっぱりビジネスの経験の組み込みというのをいかに入れていくか。やっぱりビジネスはもうマーケティングはやっていますから、そういった実際にやっている人が、そういう環境教育なり、温暖化なりのマーケティングのところに参加してもらえるような、それが例えば企業のCSR活動みたいなやつで、もし入ったりとか、CSR活動も、単純にその環境にいいことを企業がやるというのもいいんですけれども、企業の持ち味で、そのプロフェッショナリズムをこういった分野に当てはめるとかということも、次に繋がっていくかなということを思っています。以上です。
枝廣委員
ありがとうございます。最初の藤井委員のご質問で、なぜその低炭素でこれをやっているのかという話ですが、それは、たまたま私がこの委員会にいて、たまたまこのワーキングをつくることができたからということです。私たちのワーキングで、この低炭素行動という温暖化対策というのは、一つのテーマとして取り組んではきましたが、ここで考えている考え方、それから、つくったガイドラインは、低炭素行動を推進するためだけではなくて、あらゆることに使えます。あらゆることに使えるようなものをつくってきたつもりです。これを低炭素行動に繋げるように使ってもらえればというのが、この小委員会に向けてのワーキングの出し方ではありますが、昨日の資源エネルギー庁のところでも話があったように、エネルギーでもこういったやり方をやっていく必要があるし、非常に大げさな言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、この国民の生活者の声を聞いて、それに合わせて効果的な施策をつくっていくというのは、ある意味、基本的なことだと思っています。そういった意味でいうと、こういう活動をたまたまこの小委員会から始めさせていただいて、中環審の中で認めていただいて、ゆくゆく、この動きをほかの省庁も見てくださっていると思うので、ほかでも、やはりやっていく必要があるよねということが、今、少しずつ広がっているようには思っています。このような生活者に聞いて、一緒につくっていくということを通じて、少しでも日本が民主的な国に、民主主義の国になっていけばという思いで、実はやっています。ですので、藤井先生の質問に関して言うと、低炭素行動がほかよりも重要だから、これを取り上げたわけではなく、すべてに政府のあり方として、国民との施策のつくり方として、あるべき姿をこの一つのテーマでやってみているというのが、私の個人的な立ち位置です。
実際には、それは、先ほど大野委員がエコドライブのところでもお話しくださったように、低炭素行動とか、温暖化対策のために行動を変えます、もしくは変えましたという人は、本当に一握りで、多分1、2%じゃないかなと思います。私の周りにはそういうことに熱心な方が集まってくると思いますが、それでも、それぐらいの割合だと思います。ですから、私たちが望んでいるのは、結果的に低炭素行動、CO2を減らす、エネルギーを減らすということであって、入り口は何でもいいというのが基本的な私の考え方です。それはお財布に優しいというのでもいいし、今よりも快適ですと、健康にいいです、何でも入り口はよくて、結果的に、その私たちが望んでいる行動に繋がっていくものであればいいというふうに思っています。
そういった意味で、マーケティングの大事な点は、どうやったら温暖化の意識が高まって、温暖化対策としてこの行動をとってもらうかということではなくて、それはあまり考えていなくて、どういう入り口を用意すれば多くの人が動いてくれるかということを探っていくのがマーケティングになります。ですから、儲かる施策であるとか、響く施策をつくるために、まず、生活者の声を聞く、これをやっていきたいと思っています。
私たちは声を聞いて、繋ぐことまではできますが、それを施策にしていくのは政府側です。必ず温暖化の意識を高めてからしか、行動は変わってはいけないというわけではないはずなので、意識が変わらないままでも行動を変える、いろいろな入口がありますから、そちらに向けての施策をつくっていってほしいと思っています。大体の人は経済性、儲かるというのが出てきますが、楽しいとか、快適とか、そこで何か新しいものが得られるとか、、いろんなことがアンケートや調査でも出ていますので、それごとにたくさんのオプションがつくれるんじゃないかなと思っています。
一つだけ気をつけないといけないし、これをどうやってこれからコミュニケーションに考えていったらいいかと、今悩んでいることがあります。それは、エコドライブの場合、自分がエコドライブをすると、すぐにお財布に優しいということがわかる。しかし、低炭素行動の場合は、そのように経済的なメリットがあるものもありますが、どちらかというと、世代間を越えてのメリット、もしくは世代間を越えてのデメリットを減らすための行動を自分がとる。つまり、自分が何らかのコストをかけて行動した結果を自分が受け取るわけではないという、その世代間という問題がどうしても出てきます。そのときに、それを炭素税その他で、「世代間のものだけれども、今の世代ですぐに感じられるように制度を変えていく」というのも大事だし、ある意味、今、どんどんと短期的な視野にみんながなっている。社会がどんどん加速していますので、そういった中で、「世代間という、未来世代ということに思いをはせる」ようなことができるように、それはどう伝えるかというコミュニケーションだけではなくて、もう少し大きく言うと、社会の速度をどう落とすかということにも繋がってくると思いますが、その辺りをどういうふうに考えるか。これはもしかしたら年金とか税金とか、すべて世代間の問題だと思いますので、このあたりはもう少しこれからしっかり考えていく必要があるし、それは私たちのワーキングだけではなくて、全省庁同じ問題を抱えている全国民の問題でもあるので、何らかしっかり考えていくような場が出来ればと思っています。
則武委員がおっしゃったポイントもそのとおりで、障壁を取り除いていくということで、そのときにやる人たちが、例えば、企業がつくりたい、もしくは提供したいと思うようなものをつくっていく必要があると思っています。そのために何が消費者に効くかということをまず調べていく必要があると思っています。例えば、私たちが昨年度やった調査で、太陽光発電をつけたほうがいい、もしくはつけたいと思っているのに、つけていない人たちが、なぜつけていないかという障壁を調べる調査をしました。一番多かったのは、つけても元が取れないということだったんですね。それに関して言うと、固定価格買取制度ができて、余剰買取から始まりましたが、ある程度元が取れるようになりました。障壁が一つ低くなったわけですが、しかし、その次に多かったのが、元は取れるかもしれないけど、初期費用が払えないというものです。これも非常に大きな障壁で、気持ちはあるし、意識はある、元は取れると思っている。だけど、最初の200万円が出せない。こういう方はたくさんいます。それに関しては、飯田市がやっている「おひさま0円システム」ですとか、初期費用の壁をどう取り除くかという施策をつくっていく必要があります。そのほかにも多かったのは、初期費用も出せるけど、メンテナンスが面倒くさいとか、いつまでこの家に住むかわからないとか、引っ越したときどうなるか面倒くさいとか、そういった声もたくさんあって、それに関しては、リース制がいいかどうかは別として、所有と権利は分けるような、もしくは枝野大臣がおっしゃっていたと報道されていましたが、屋根貸しのような仕組みを何らか入れていくと。このような施策に繋がるために、なぜそこで止まっているのかということを丁寧に聞いていく必要があるのではないかと思っています。
最後に、藤野委員が私たちのワーキングの委員をやってくださっている立場からいろいろ言ってくださって、ちらっとおっしゃっていたアル・ゴアという話は、アル・ゴアさんがあのプレゼンテーションをして、映画をつくって、たくさんの人に伝えたわけですが、自分だけだと周れる都市も限られてしまうということで、その後すぐにNGOと組んで、1,000人伝える人を育てるプログラムというのをやったんですね。実際には1,000人以上、もう2,000人か3,000人か育てています。それは2日間のプログラムで、1日目はアル・ゴア氏本人が温暖化の科学、その他について話をします。2日目はNGOのほうがコミュニケーションスキルを教えます。この2日間のプログラムで、参加費は無料なんですね。たくさんの人が応募しますが、そのときに、伝える場をどれぐらい持っているかということでスクリーニングをされます。気持ちだけではなくて、ちゃんと伝える場を持っている人だけを受け入れるというプログラムで、実際に1,000人以上を育てて、そこで育てられた人たちは常にインターネットで繋がっていて、アル・ゴア氏が新しいスライドをつくったり、IPCCの新しい報告が出たりといったときに、そのスライドをセットにして、あっという間にそれをみんなに配る仕組みをつくっています。ですから、どこにいても最新の情報と最新のプレゼンテーションキットで話ができる。もちろんそれぞれ加工して使っていいんですが、そういった仕組みがあって、そういったものを日本でもやる必要があるんじゃないかなと思っています。
最後に一つだけ、先ほどセンターの話が出たんですが、私たちのワーキングの委員に菊井さんという、この温暖化防止活動推進センターの専務理事・事務局長の方にも入っていただいて、センターでやってきたこと、推進員がやってきたこと、そのあたりのお話も聞きましたし、私も各地へ行ってお話しすると、推進員の方によくお会いします。やる気のある一生懸命な方がたくさんいらして、それぞれ活動されているのはよくわかっています。ただ、そこだけでは難しいかなと思っています。今回、そのプラットホームをつくって、ネットワークをつくっていくとしたら、この推進員の方々でやる気のある、活動を続けていきたいという方々がたくさん入ってくださるでしょうし、一緒にやっていくことになると思っているんですが、さっきお話があったように、啓発のところで入ってきているので、実際、もう少しマーケティングとかコミュニケーションとか、行動に繋げるところをもう1回少し学んでもらうことも必要だと思っています。もう一つは、センターの推進員の方々のプロフィールを見ると、私たちが伝えたいと思っている人たちとちょっとずれているところもあります。つまり、年配の方が割と多いんですね。ずっとそのまま平均年齢が上がっていくという、若い人があまり入ってきていないという現状も教えていただきました。そういった方々に伝える場ももちろん必要だけど、若い人たちとか、子育て世代とか、いろんな人たちに伝えていくとしたら、そのあたりの人材としてのバリエーションも広げていく必要があります。それはセンターのほうで広げられるかもしれないし、センターと一緒になって、足りないところを補いつつ、意識して広げていければと思っています。以上です。
植田委員
研究者的で感想的コメントということになると思いますけれども、私、報告を聞いて、途中からだったのですけれども、コミュニケーションの持っている力を感じまして、大変共感を覚えた次第です。つまり、コミュニケーションというもの自体が持っている力があって、それがいろんな意味で人々のマインドセットといいますか、そういうものを変換させる力を持っているという点で、大変興味深いものだと思いました。幾つかコメントがあります。一つは、これは藤野さんもおっしゃられましたけれども、伝えられた生活者が伝え手になるという、その変換過程ですね。これが大変重要な一つのポイントになるかと思います。要するに、伝えられた人が伝えようと思うというふうに変わるということが大変重要な一つの点だし、伝え手が横にネットワーク化するということの意味ですね。これも大事な問題だというふうに思いました。
それから、もう1点は、この伝え手が、あるいは伝えられた人が伝え手になるという、その人の充実感ですか、そういう一種の参加意欲を持ったからこそです。だから、低炭素社会づくりというのは、そういう低炭素社会づくりに参加しようとする意欲を持った人がどれだけ増えるかということが、低炭素社会づくりがどう成功していくかということの一つの尺度という点でとても重要になると思います。これは多分、枝廣さんの研究所の名前と関係していると思いますが、参加することが充実感、ハッピー、そういうふうに思うということと繋がっていて、そういう場と機会がどれだけつくられた社会であるかということ、これは、ブルーノ・フライというスイスの学者がそういう研究をしていて、そういう場があること自体が、社会を評価する重要なファクターですね。そういう面があるというふうに思いました。
それから、もう一つ、知識伝達型と違う、コミュニケーション型ですすめる意味は、私なりの理解では、要するに、正当、正しい答えがない、ないしはわからないけれども、答えを出さないといけないという問題に向き合う場合は、どうしても必要だと思います。正しい答えが確実にわかるものだったらそれをということですが、それが簡単でない場合ですね、そういう場合に必要だということなので、取組自体が実際的な当面の効果を持つだけじゃなくて、そういう問題に答えを出せる社会に変えるという、社会のありようを変えるということと繋がっている。つまり、その低炭素社会づくりは、そういう社会のありようの変化があって初めて可能だし、そういう社会が低炭素社会だというような定義の与え方をする可能性が出てくるという意味で、とても重要だと思います。つまり、ご指摘されたように、世代間問題、あるいはミクロな個人行動と社会ビジョンとの関係とか、あるいはローカルとグローバルというような、本質的に解決しにくい問題を低炭素社会づくり問題は抱えているというところがある。そういう意味で、私はとても重要な意味を持っていて、低炭素社会づくりのコンセプト自体を、枝廣さんのアプローチからもう一度深めるということは、この低炭素社会に取り組む日本における大きな課題が提起されていると、そういう理解をしました。以上です。
森嶌委員
私が発言するのは、こういう審議会という場で、議論を少しでも積極的に進めるためにやっているので、主観的には無駄なことを言っているつもりではありません。たくさん発言すると言われたけれども、そういう趣旨でありまして、今の植田さんの意見について申しますと、研究者として一般論として本に書いて売るつもりならばあれでいいですけれども、今の意見に基づいて枝廣さんがこれから報告書に書き加えようとしたら、何を書くのか。私が植田さんに伺いたいのは、今言われた、伝え手が、次に伝え手になりたいというのならば、どういうことをすれば、伝え手が次の伝え手になりたいということになるのか、それを枝廣さんに提案をして欲しい。それから、低炭素社会がこの解のないところで、転換期にあるということを言いたいのならば、どうすればコミュニケーションによって転換期を乗り越えるようになるのか、それを枝廣さんにちゃんと提案していただきたい。本に書いて儲けるのなら評論的なことや具体性のないことを述べるのでもちっとも構わないけれども、政策を審議するこういう場で発言するときに、これは私、いつも委員に言っているんですけども、人の揚げ足を取ったり、あるいは自分はこういうことを知っているぞとか、評論するのだけでは責任をつくしたことにならない。何のためにこういうところに、委員として来ているか。それぞれの委員はこの審議会の一定の目的のために来ているわけですから、それなりの発言をきちんとする責任があり、義務があるということを考えていただきたい。
本来言いたかったことは、先ほどから、知識があって、後で行動がある。そして、知識を行動に導くのはモチベーションだと言われましたが、その一つが、マーケティングで金だということでした。もう一つのモチベーションが、大ざっぱに言うと愛ということだと思うんですね。キリスト教などで、神に対する愛もありますけれども、今、多くの問題になっているのは、自己愛だと思います。自分、あるいは自分の身の周りの人に対する思いやり。例えば、自分や子供の安全に関わることに皆の関心が集まります。安全とか、快適さとか、中身はともかくとして、子どもたちに関わる、あるいは自分たちの生活に関わる、食料とかそういうものに関わってくると、これはお母さんたちだけではなく、お父さんたちもそうですけれども、お金に関わらなくても、自分たちの安全、子どもたちの安全、それがはるか未来のジェネレーションの安全となるとなかなかわかりにくいのですけれども、それは行動の一つの大きなモチベーションになります。隣にいて、子どもたちにこうなのよと言って伝える。聞いた人が伝え手になる大きな力になると思いますので、私の経験では、こうしたものが手がかりになるように思います。22ページから23ページのところに障害というのがあります。障害だけではなくて、ここで伝え手のモチベーションが下がっているというのがありますけれども、伝えられた人間がどういうモチベーションを持つかというところでは、お金がモチベーションになるということは、かなりこれはもう決定的ですけども、それ以外には、大ざっぱに言えば愛があるわけです。それには、ヨーロッパのように、神とか人類愛とかいうものもあるかもしれませんけれども、多くの日本人は、八百万の神で無神論者が多いので、自分の生活、自分の安全、子どもの安全というようなところがモチベーションになりやすく、そこから入ると話に入りやすいので、是非それをここに組み込んでいただきたいと思います。ありがとうございました。
枝廣委員
ありがとうございます。いろいろなコメントとか、短期的にすぐに改善に繋げられるところと、中長期的に考え続けていきたいところと、両方いただいたと思っています。
伝えられた人が伝え手になるというプロセスは非常に大事で、それをやっていかないと、常にこちらから力をかけて伝え続けないといけない。私たちが目指しているのは、自立的に伝わった人が伝え手になって、どんどん、カスケード的に、こちらで力をかけ続けなくても伝わるような、そういったものを理想と考えています。昨年度研究した中で、イノベーション普及理論であるとか、ティッピングポイントの理論であるとか、こういったところにはそのヒントがいろいろあります。例えば、最初に伝えるのはどういう人に伝えたらいいか。つまり、ハブになっている人たちをどうやって探し出すか。そのときも、伝えるときに、粘るメッセージをどのようにつくり出すか。つまり、粘るメッセージじゃないと次の人に伝わっていかないんですね。ですから、同じようにさらっと大事なことだけ言うのでは伝わっていかない。誰にどういった、その粘るメッセージを上手につくって、伝えたいと思わせるようなメッセージをつくっていくか。そういったことをいろいろ昨年もやりましたので、その辺りはもう少し、伝えられた人が伝え手になっていくあたりの必要なことは何なのか、そのときのモチベーションとか、伝え手になった後に得られている充実感、ハピネス、そういったところも見ていくことが出来たらと思っています。
社会のありようというお話は本当にそうで、これは、今回、例えば単身者、男性で1人で住んでいて働いて、という方々にも、昨年度、フォーカスグループで集まっていただいたんですが、低炭素行動云々の前にもっと大事なことがたくさんあるなということを痛感させられました。本当に仕事が忙しくて、アパートには帰って寝るだけ、3食ほとんどコンビニで食べて、そういう人たちは光熱費もほとんど使っていないので、低炭素行動と言われても、もともと少ないですという話になりますが、じゃあそれでいいのかとも思うわけです。しかし、そういう人たちはたくさんいて、その人たちは、それこそ未来のこととか、世代間のことなどを考える暇もなく、もう毎日毎日目先のことで一生懸命生きていらっしゃる。低炭素行動をその人たちに売り込むのは凄く難しいし、それはそのターゲットではないかもしれませんが、果たしてそういう社会であること自体が本当に持続可能なのかなということです。
今回は低炭素という枠組みの中で私たちのワーキングが位置づけられているので、低炭素行動に繋がるというところをピックアップして活動はしていますが、本当に必要なのは、そういった国民の今の状況を見て、本当にその人たちが幸せに暮らしていくには、もっと未来のことも考えられるようになるにはどうしたらいいんだろうということです。これは環境省だけの範囲ではなくなってくるんですが、そういったこともいろいろと考えさせられましたし、社会のありよう、それから、この低炭素のコンセプト自体、私たちのワーキングでできることと、それを超えるところがありますが、やはり大事なのは、一方的に伝える、どれだけ上手に伝えるかというのも大事ですが、先ほどお話しした「対話」だと思うんですね。やはり解のない問題に対して、ある程度社会として解をつくっていかないといけないというときに、どのようにその「対話の作法」をみんなで共有していくか。そして、「対話」という時間のかかるプロセスも含めて、政策をつくる側がどのようにそういったあり方を受け入れていくか。それはこれから日本にとって大きな課題になってくるかと思っています。ワーキングが続いていくことになれば、先ほどお話ししたような幾つかの点について、続けて研究と実践と、それから、皆さんとのご報告を通じてやりとりを続けていければと思っています。
西岡委員長
どうもありがとうございます。
先ほど宿題になっておりました、環境省側のPR全体について説明下さい。
梶原審議官
すみません。まず初めに、本件の検討につきまして、私どものほう、行政のほうから見て、一つ、コミュニケーションとか対話とか、個々人の行動というものをどういう形で支援すればいいのかという政策をちゃんと考えろという宿題と同時に、一番思ったのは、このコミュニケーションの中でどういった政策をとれば人が変わっていただけるんだろうか。つまり、対話とかコミュニケーションだけではなくて、いろんなほかに政策をいっぱい動かしております。そこにどういう形で、ちゃんと的を射た政策が出来るのかという意味、例えば、公聴という意味だと思うんですが、公聴のプロセスという形でも非常に機能するものだということで聞かせていただいております。大変ありがとうございます。
森嶌先生からご宿題をいただいた、おまえたち、何をやってきたんだというお話なんですが、これは恐らく、今、こんなことをやっていましたというやつを全部トータルで言える人間はなかなかいませんで、準備もないんですが、ただ、ちょっと古くからやっている者として、古くからどんなことを考えながらやっていたかということはお話しできるかと思います。
まず、最初にやったのは、まず、温暖化問題の事象とか危機感とか、そういうものをどういう形でシェアしていただけるんだろうかということから出発していると。これは事実でございます。そのときに、どういう形で効率的に出来るか、あるいはどういう形で効果的に出来るかという観点で、例えば、当時やったのは、ビジュアル化しましょうと。ビジュアルのときは、最も綺麗なものじゃないと、皆さんは見ていただけないということで、例えば、NHKに頼んで、いろんな事象を3分間ずつに切って、3分間掛ける50とかですね、そういったようなテーマのやつをDVDに焼いて全部配ると。これを使って学校でもやってください、NGOの方もやってくださいと、こういったこともやりました。いずれにしても、そういったような危機感とか、そういう醸成から始めております。
それから、センターの話が出ましたが、センターは、まさしく組織と人材という観点でつくっていただいて、それに対する支援ということについては、まず人材育成ということも考えておりました。ただ、人材育成のやり方というのは、例えば、指導員になっていただけた方を呼んで、座学で何日間、ああでもない、こうでもないよと。そのときに、その方々が理解をし、その方々が持って帰って、さらに広めていただくようにキットをつくると。いろんなキットをつくる。このキットというのがやっぱり紙ベースというか、そういうものであったかと思います。
いずれにしても、そういう、私が今からずっとだらだら言っている話は、結果として効果的であったかどうかという批判は物凄くありますが、気持ちはあったということだけの説明になるかもしれません。
それと、あと、行動ということにいいますと、その行動に関して言えば、難しいことをごちゃごちゃ言ってもしようがないだろうということで、できる範囲の話を上げて、あなたはこれをやっていますかという呼びかけ、例えばエコアクションとか、そういったたぐいの話をする。あるいは、わかりやすいキャッチフレーズということで、クールビズとかウォームビズとかをやると。あとは、例えば、地域の行動の話でいきますと、地域の方々、センターでローカルな番組、ローカルな放送局と協力するようなことを支援しましょう。それによってローカルでマスメディアとの連携手法を覚えてくださいとか、あるいはいろんな現場の行動について、褒め合うような形で全国大会をやりましょうとか、そういうこともやってきております。環境教育の面では、要は、先生方が忙しいから、先生方は環境についてよくわからないからということで、副読本を山のようにつくってきました。副読本を山のようにつくってきたというのは、先生用の副読本。先生が使えるような簡潔な副読本と。もう何か、これはもう山のようにできています。配ってありますが、ただ、私が読んでも、こんな分厚いやつが読めるかという感じのものになっています。それはなぜかというと、丁寧にいろんなこと、質問に答えようと思ったら、そうなるので、ある程度しようがないところもありますが、そうだと思います。
あとは、インセンティブ、あるいはモチベーション付与という観点からいきますと、例えばエコポイント制度であるとか、そういったたぐいの制度を入れていると。これについては、結果としてかもしれませんが、単にコンシューマーの方々の行動を変えただけではなく、プロデューサーの方々、商品をつくる方々の行為も変わったのではないかという意味では、新しい一つの大きな成果だったと思っております。
いずれにしましても、やっていることはいろいろ申し上げられるんですが、成果のほどについては、そのご評価をしていただくしかないわけなんですけれども、今回のご議論の中で、私どもが非常に欠けている点、反省すべき点というのを一つ申し上げますと、継続でございます。フォローアップでございます。今申し上げたようなものについては、環境省としては、過去10何年にわたって、各省にはないほどの予算をとってやってきたという自負はございますが、ただ、同じものを3年、5年続けることはなかなか不可能と思います。もう3年やったらいいだろう、5年やったらいいだろうと。これが普通の私どもの世界の、何ていうんですか、メンタリティーといいますか、ルールといいますか、そういう問題であると。それで、ただ、この継続性がないということが非常に弱い。あるいはフォローアップが非常に弱いということで、先ほど枝廣先生のプレゼンテーションの中にもございましたけれども、例えば、パワーポイントをつくって配る。パワーポイントなら常にリビジョン、リバイスできるだろうと。それはそのとおりだと思っておりまして、そういった形のフォローアップ、つまり、電子的にインターネットを使ったフォローアップというのは非常にこれからあるんだろうなと。それは、それほど予算がかからないでやれるのかなという気もいたしておりまして、いろんな形の継続がこれから重要になってくるのかなと思って聞いておりました。森嶌先生に対するお答えになっているかどうかわかりませんが、こんなことでございます。
西岡委員長
どうもありがとうございました。この論議はこのあたりでおしまいにしたいと思います。ちょっと時間が押してきました。今の議論は、本当に非常に本質的な話なんですね。特に横断的にできたということを非常にうれしく思っております。私ども、低炭素社会とか、それから、温暖化防止と言っていますけど、別にそれだけが目的ではなくて、それを契機にして、いい日本をどうつくっていくかという観点で、ここの委員会も論議していただきたいという具合に考えておりまして、そういう面では非常にいいイントロダクションになったのではないかなと考えております。
それから、この議事の進め方でございますが、今日は中央環境審議会の地球環境部会のほうから、オブザーバーとして委員の方にも参加していただく。これはもうどなたも参加していただくということになりまして、今日は、言ってみれば、そのデビューということです。地球部会全体の話もいただいていますが、部会委員それぞれの方のご意見もいただきたいと思っております。部会委員の方々皆さんも十分オブザーバーという立場を理解していただき最初に皆さん、ちょっと遠慮なさっておられました。この小委員会は、やはり小委員会を主体として進めさせていただきますのでそのあたりご理解願いたく存知ます。
それでは、次へ移りまして、これは、複数の選択肢、議題の(3)になります。非常に重要な課題でございまして、複数の選択肢の原案を評価する際の観点ということでの議論に移りたいと思います。ちょっと時間が押しておりますので、全体は短くなりますけれども、もし必要であれば、ちょっと時間を延ばしたいと思っております。
それでは、説明をお願いします。
低炭素社会推進室長
それでは、資料3でございます。2013年以降の対策・施策に関する小委員会における検討方針(案)ということでございまして、前回、小委員会でご議論いただきましたご意見を踏まえ、また、部会のほうでも報告させていただきまして、いただいた意見、こういったものを盛り込んだ修正版をご提示しているというものでございます。
それに先立ちまして、全体の流れをいま一度ご説明したいと思いますので、参考資料の2というもので、ガイドラインの次のところに用意させていただいたものをご覧いただければと思います。資料としては、右肩に資料4というふうに打っておりますけれども、こちらは1月30日の第100回の地球環境部会の資料4ということでございまして、エネルギー・環境会議基本方針に規定された中央環境審議会地球環境部会の役割と検討スケジュールについてという紙でございます。
こちらに関しましては、昨年12月21日にエネルギー・環境会議で決定されました基本方針というものの中で、どのように位置づけられているのかというものをまとめ、また、スケジュールの概略を書いたものでございます。
一番上に黒四角で囲んでありますのが、この基本方針の中で規定されております中央環境審議会の役割というものでございまして、エネルギー・環境会議が定めた基本方針に基づき、中央環境審議会において、来春、これは去年まとめたので来春となっておりますが、春を目途に地球温暖化対策の選択肢の原案を策定するという依頼がなされております。スケジュールからいきますと、一番下でございますが、この夏ぐらいを目処に、エネルギー・環境会議におきまして戦略を取りまとめるということになっておりまして、この戦略の一部といたしまして、2013年以降の地球温暖化対策の計画が入ってくるというものでございます。これは国民的議論を進めた上で、エネルギー・環境会議のほうで決定していくという手順が最終のゴールの部分になっております。それに先立ちまして、春頃と書いておりますけれども、エネルギー・環境会議がエネルギー・環境戦略に関する複数の選択肢を統一的に提示するということになっておりまして、その原案というのを、大きく分けますと、三つの組織でつくるようにということが求められておりまして、その上、中央環境審議会におきましては、地球温暖化対策の選択肢の原案、これを策定して報告するようにということになっておりますし、米印を打っておりますが、一番下、エネルギーミックスに関しましては総合資源エネルギー調査会、原子力政策については原子力委員会のほうで検討し、選択肢の原案を同じくエネルギー・環境会議に提示するという流れになってございます。
中央環境審議会における検討のしつらえというのを、この枠組みの中に書いてございますが、まず、本小委員会でございますが、2013年以降の対策・施策を昨年来ご議論いただいております。それでございますので、地球温暖化対策のうち、国内排出対策についての複数案の選択肢の原案などを議論いただきまして、それを地球環境部会に報告をしていただくということ。地球環境部会におきましては、まず、小委員会の議論を踏まえまして、国内排出削減対策についての検討を行うということとともに、吸収源対策、適応策、二国間オフセット・クレジット制度の活用などを含みます国際的な地球温暖化対策のあり方についても検討をいただくということで、最終的には春頃の選択肢に間に合うように、選択肢の原案を取りまとめていただくというのがスケジュールになってございます。
1枚おめくりいただきまして、その裏に各組織体の関係図を書いてございますけども、エネルギー・環境会議が中ほどにありますが、こちらは国家戦略会議、議長が内閣総理大臣になっておりますけども、その分科会の一つとして、国家戦略担当大臣が議長、経済産業大臣、環境大臣が副議長というしつらえでつくられております。そこに三つの会議体から選択肢の原案を提示するということでございますし、中央環境審議会、そして、総合資源エネルギー調査会で検討いたします温暖化対策、そして、エネルギーミックスが表裏一体での検討という関係性になっておるというものでございます。
これらをご提示しながら、地球環境部会でご議論いただきましたが、次の資料に1枚紙で赤字などで強調しておりますものが、「2013年以降の地球温暖化対策の検討のポイント」という1枚紙がございまして、こちらは同じく先日行われました第100回の地球環境部会において、環境大臣から地球環境部会の委員に依頼をさせていただいたというものでございます。
参考資料3でございます。大きく分けますと、三つのポイントということで、世界で共有されている長期目標を視野に入れるということ、世界に先駆け、未来を先取る低炭素社会の実現を目指すという明確な方向性を示すということ、そして、三つ目といたしまして、世界に先駆け、未来を先取る低炭素社会の実現に必要な施策を明示するということを依頼させていただいたというものでございます。
また、続く資料でございますが、横長のものでございますが、エネルギーミックスの選択肢提示に向けたものということで、参考資料4と振っておるものでございます。
こちらにつきましては、2月1日の日に開催をされました資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会第10回基本問題委員会において配付された資料でございます。エネルギーミックスについて、どのような議論をするのかということをエネルギー庁のほうが示した資料でございまして、おめくりいただきますと、5ページ目にさまざまな議論をする際に重要なポイントといたしまして、まず、別添3と銘打ちまして、マクロ経済想定に関してというものを提示がされております。さまざまな選択肢の原案を議論する際には、ベースとなりますマクロ経済の項目について、どのように設定していくのかということが非常に重要ですので、ここではGDP成長率から始まりまして、人口、世帯数、また主要業種の活動指標、交通需要、原油価格、為替レートなどが項目として挙げられておりますし、その際の根拠の案ということで、現在、政府などで示しておるものを当てはめているというものでございます。当然、エネルギーミックスの検討でも重要でございますが、温暖化対策を検討するに当たりましても、同様の項目について、非常に重要な項目でございますので、こちらにつきましては、経済産業省、資源エネルギー庁と環境省の事務局で、今現在、綿密に打ち合わせをしておるというところでございますし、また、続く6ページ目でございますが、各選択肢がどのような経済影響を与えるのかなどを計算して示すということも非常に重要な問題でございますので、それに関しまして、例えば、どのようなアウトプットを出していただきたいのかというような問題、また、どのような分析戻りを使って検討をすべきなのかということも、これがずれておりますと、後々議論が破綻するおそれがあるということでございますので、こちら、例えば、1ポツのところでも、これまでどのようなモデルが使われてきているのかということをご紹介しつつ、こちらにつきましても、事務局で綿密に連携をさせていただきながら、ベストのあるところは揃えていきたいという作業を今現在行っているというところでございます。
背景の状況につきましては、参考資料を用いまして、以上のとおりでございますが、戻っていただきまして、資料3でございます。こういった中でいきますと、選択肢の原案の中でも、国内対策、削減対策につきまして、本小委員会におきまして選択肢の原案をご議論いただくということでございまして、その検討の方針の案ということでございます。
まず、検討の内容ということでございますが、本小委員会での検討の内容について明確にするためということで、一番最初の文章として「2013年以降の対策・施策については」ということで言葉を補わせていただきました。また、中ほどについて、エネルギー・環境会議の中環審への依頼事項、こういったものをより正確に記述するという意味で、「原発への依存度低減を図る中で」という言葉を補いつつ、エネルギーミックスの選択肢と表裏一体の形で地球温暖化対策に関する複数の選択肢を提示するということが記載されている旨を明示したというものでございます。
あと、一番下の部分でございますけれども、選択肢の原案を評価する際の観点というものを整理したというものでございまして、こちらでは10数個の観点を掲げておりますけれども、その中身がわかりやすいようにということで、先ほどご紹介申し上げました、環境大臣からの依頼のポイントを表題としてつけ加えつつ、まずは「世界で共有されている長期目標を視野に入れる」という表題のもとに、次のページでございますけれども、具体的には黒ポツで三つの観点を記載して、その下に整理をしております。
一つ目の黒ポツでございますけれども、温暖化対策の目的を明確にするということをするために、「地球温暖化を防止することが人類共通の課題となっていることを認識し、」という言葉を補っておるというもの、また、二つ目の観点、黒ポツにつきましては、長期目標、こちらについて、「世界で共有されている」というもの、また「先進国80%削減」ということで表現を補っております。三つ目の観点、黒ポツでございますが、こちらにおいて、持続可能な低炭素社会を目指すというものになっているかどうかという観点でございましたが、そこでの重要な視点といたしまして、「先進国としての能力に応じ、応分の責任を果たしつつ」ということが言われておりますので、それを補い、また、大臣からのお願いにもありますが、明確な方向性を示すものとなっているかどうかということを補わせていただいております。
次の分類といたしましては、世界に先駆けた低炭素社会の実現を目指すという明確な方針になっているかどうかという観点で表題をつけております。その観点からは、ページ下のほうですが、黒ポツとして、必要な対策、そしてその効果がどうなのか、また、対策を促すための施策がきちんとなっているかどうかということを、大臣からの依頼を補いつつ書いておるというものでございます。
三つ目の観点群といたしましては、「世界をリードするグリーン成長国家の実現へ」という題目のもとに整理をさせていただいておりまして、次のページに八つ黒ポツが打っておりますが、観点を整理しておるというものでございます。
一つ目のところは、先ほどご紹介いたしました基本方針の中に明示をされております、原発への依存度低減のシナリオというものがありますので、それの具体化と整合的になっているものかどうか、また、地震などの災害に強く国民の安全・安心に繋がるものかどうか、また、国単位、地方単位でのエネルギーセキュリティを高めるという観点からどうなっているかということでありますけども、エネルギーセキュリティの観点からは、バランスのとれた供給側のエネルギーミックスが重要だということもありますので、それを例示としてつけ加えておりますし、また、エネルギーシステムの多重化というような取組を補っております。さらに、需要サイドだけではなく、供給サイドとの両方向でのセキュリティもあり得るということで、双方のエネルギーセキュリティということも加えてございます。続く五つ目の観点といたしましては、グリーン成長、また、それを通じた国際競争力の確保に繋がっているかどうかの観点、あと、経済活動、国民に及ぼす影響・効果がどうなっているかということで、短期的なものもあり得るということで、その意味が通るように修正してございます。そのほか、地域活性化であるとか、雇用への影響、創出の状況など、あと、良質なストックを引き継ぐものになっているかどうかという観点を書いてございます。
続く、検討する目標年次の部分でございますけれども、2020年、2030年という断面でございますが、検討いただきたい内容といたしまして、国内の温室効果ガスの排出量ということでございますので、その明確化をしたという部分。
続く、選択肢の検討に当たっての考え方のところでございますが、対策・施策につきましては、これまで行ってきたものの進捗の評価分析がまず重要と。その内容を踏まえての今後の検討ということの明確化をしております。あと、ページ下のところですが、低炭素社会を構築するということですが、さらに大きなものとしまして、持続可能な社会を目指しているということでありますので、言葉を補ってございます。
続くページからが具体的な対策ごとに分類をした検討が必要な項目ということでございますが、温暖化対策の面から省エネルギーであるとか、再生可能エネルギーを普及する位置づけ、意味合い、また重要性を明確にするという観点から、省エネルギーにつきましては、CO2の削減に繋がるもの、また、再生可能エネルギーについては、低炭素な電力であるという旨を明記しているという修正をしてございます。
あと、続くページの上でございますけれども、検証すべき内容といたしましては、技術的、経済的な課題の分析というのが重要であるというところではございましたが、経済的な課題というのがどのようなものかというのがわかりやすいように、「国民負担などの」ということで例示を加えておるという修正でございます。
また、次の括りでございます化石燃料のクリーン化の部分でございますが、先ほどと同様、温暖化対策としての化石燃料クリーン化を行う意義を明確にするという意味で、CO2削減というものを加えたという補足になっております。
また、ページの下の部分でございますが、地域からの低炭素社会づくりという面でさまざまな取組が例示をされておりますが、その中でも、地域的に考えていくという面からいきますと、未利用エネルギーの面的利用というのは非常に重要だということで、例示をつけ加えさせていただきました。
ページをおめくりいただきまして、低炭素ビジネスの振興による強靭な産業構造の実現と雇用創出等ということでございまして、こちらにつきましては、財政が厳しい状況の中でいかにまちづくりを進めるのかという観点が非常に重要だということでございますので、そういった観点がきちんと読めるようにということで、新しい民間資金の活用などの施策が必要だということで、その内容を明記したというもの。また、二つ目の丸でございますけれども、低炭素ビジネスに積極的に取り組んでいる企業が評価されるようなということで書いておりましたが、プロジェクトごとの評価というのも考えられますので、その旨が読めるように「事業」ということをつけ加えたというものでございます。
続くページの下の部分でございますけれども、地球環境部会との検討の内容範囲がわかりやすいようにということで、主として地球環境部会において検討する内容ということを明示しておりますが、そこの記載内容をわかりやすくするようにということの文言の内容修正になっております。まずはこの小委員会でのご議論の結果の報告を地球環境部会にし、地球環境部会においては、その報告も受け、国内排出削減についての検討を行うというのが1点目でございます。「また」といたしまして、小委員会での議論と並行いたしまして、部会特有の検討事項といたしまして、吸収源対策、そして適用対策についての深掘りを行うということ。さらに、おめくりいただきまして、国際貢献に関する部分につきましても、地球環境部会で直接ご議論いただきたいということでございまして、二国間オフセット・クレジット制度であるとか、CDMの活用をはじめといたします国際的な地球温暖化対策の取組について検討を行っていただくということで、部会の検討内容についても明示をしたというのが修正部分でございます。
資料3については、以上でございます。
資料の続きでございますが、参考資料5に各委員からいただきました意見の具体的な内容がとじられておりますし、また、その後ろに1枚紙で2月9日付でついておりますが、東京都のほうからも意見という形で書面でいただいているというものをつけております。以上でございます。
西岡委員長
今のお話だと、この参考資料5というのは、地球部会のほうに提出されているということですね。
低炭素社会推進室長
はい。部会の資料4に対して意見をいただいたという具体的な内容でございます。
西岡委員長
今、この資料3につきましては、この参考資料5との関係はどういう具合になっていますか。
低炭素社会推進室長
参考資料5に意見を募集いたしました中央環境審議会地球環境部会で配付しました、この資料4でございますが、この後ろにこの小委員会のものも別添といたしましてつけておりましたので、そちらの別添に関しましても意見をいただいておるというものでございまして、それも見ながら、事務局のほうで修正をさせていただいたというものでございます。
西岡委員長
そういう手順でこの資料3というのはでき上がったようです。先回のこの小委員会で皆さんのご意見をいただきまして、それを部会のほうに添付資料として出し、そして、部会の皆さんからのご意見もいただいて、まとめたのが今の資料3である。そういう理解でよろしいですね。
それでは、皆さんのご意見を順次いただきたいと思っております。赤井さんのほうからこう回ってきますけれども、先ほど申しましたように、時間も十分とりたいところではありますけれども、制限されていますので、ポイントを得たご意見をいただきまして、それをまた後で検討していきたいと思っておりますので、宜しくお願いします。
赤井委員
細かいところは、もう別途申し上げるかもしれませんけど、最初に、この資料のリバイスのところで、大きな観点として、その参考資料3の大臣の示されたポイントに基づいてということなんですけども、若干ちょっと構造が見にくいなという気がします。例えば、1ページの下に、「複数の選択肢の原案等を評価する際の視点」ということで、そこに何もなくて、いきなり「世界で共有されている」というのが、これは大臣のポイント1ですね。それから、その下に小さいブレットで――その前に、ハイフンで三つあって、それよりも段が上のところに小さいブレットで細かい説明が書いてあって、また平文のように見えて「世界に先駆け」という2番目のポイント、それから、その下が今度は1、2、3で、その間にハイフンがあって、「世界に先駆け」というのがまた平文で出てきて、ハイフンの「対策の裏付けとなる」と。またそれよりちょっと段が上がって、小さい小文字のと。最後のその「世界をリードするグリーン成長国家の実現へ」という2ページ目の下から4行目のところは、これは恐らく大臣の資料では、上の1、2、3を全部ひっくるめて「世界をリードするグリーン成長国家の実現」という、これが一番の最大目標だと思うんですけど、そのあたりが、この今のリバイスされた資料3だと、ちょっと文章の構造のつくり方の問題があって、読みにくいなと思うので、そのあたり、是非工夫されたらいかがかと思います。
菅家委員
地球環境部会に細野大臣が出席をされて、お話をされたということで、それが今回の検討方針の中に取り込まれているというご説明でございましたが、直接大臣のお話を伺ったわけではありませんので、少し確認の意味を込めましてお話をさせていただきますが、まず、この大臣の検討のポイント、参考資料3を見ますと、2050年に先進国80%削減でありますので、これがまず2050年の我が日本の目標になるんだよということで、それを前提にして2020年、2030年、それぞれの目標を提示するんだという、そういうことだというふうに理解をするわけでありますけれども、その後に「世界最高水準の」というのが二つほど出てまいりまして、まず省エネについて、世界最高水準を実現するんだよと。あるいは後塵を拝した再エネにつきましても、世界最高水準に引き上げるんだよというふうになっているわけですね。といたしますと、世界最高水準ということになりますと、少なくとも現在あるそれぞれの省エネ、あるいは再エネについて、世界をリードしている国というのが多分あるわけでありまして、そういたしますと、一定程度、数字もある程度想定をできるというふうにも思うわけでありますけれども、そういう理解でよろしいのかどうかということでございます。
それから、この大臣の話とちょっと離れますけれども、この方針の中に幾つか原発への依存度低減のシナリオを具体化するということが表現として入っているわけでありまして、この原発の依存度低減のシナリオを我々としてどういうふうに理解をすればいいのかということについて、意見といいましょうか、お尋ねといいましょうか、確認をさせていただきたいわけでありまして、つまり、そのCO2対策であるとか、あるいは電力の供給量を確保するとか、そういった観点からこの原発への依存度低減のシナリオを考えるのではないというふうに理解をしておりまして、そういたしますと、別途この低減のシナリオというものが、例えば、政治的な目標として出てくるのかどうか、あるいはそういったシナリオが具体的にどこから発信されるのかということについて、お尋ねをしたいというふうに思います。
それと、最後でありますけれども、「カンクン合意の着実な実施」という表現が出てまいりますけれども、この「カンクン合意の着実な実施」の中に、この合意の中で日本政府が目標として掲げた2020年に25%削減というのは入っていたと思うんですけれども、それも含まれるというふうに理解してよろしいのかどうか。以上、確認のための質問でございます。
冨田委員
ありがとうございます。事務局のご説明はよくわかりましたが、この資料3というのは、今後、この資料3単独で使われて、それを読んだ人がこの小委員会はどういうことをやるのか、わかるかどうかがポイントだと思うんですね。しかし、最初にご説明されたように、参考資料2を使って小委員会の役割、部会の役割、それから、エネルギー・環境会議の役割、こういうところを説明されないとわからない。この資料3だけではそこがわからないところが私は気になります。例えば、小委員会の中で検討するのは国内の対策だということですが、検討する目標年次の中にしか出てこないということですね。それから、地球環境部会との関係というのは一番最後ですので、資料3だけ単独で読んで、上から読んでわかるように、組み直しが必要ではないかなと思います。
それから、小委員会で何を検討するかということについて、確認をしたいことがあります。一つは、目標年次ですけれども、細野大臣のご下問は2020年、2030年ということですが、この小委員会、3ページの検討する目標年次のところは、少なくとも2020年、2030年と書いてありますが、この二つの年度以外にも目標年度を定めて検討することを考えていらっしゃるのかどうかということが一つ。それから、その下の選択肢の検討のところで、複数のケースをどのように評価するかについても、あわせて提示するとありますが、地球環境部会にこの小委員会として選択肢を提示するわけですが、基本方針の中にも書かれているいろんな観点について、小委員会としてこういうふうに考えますというところまで提示をするものと私は思っていたのですが、それがあまりどこで読むのかがちょっとわからなくて、小委員会でやる仕事の範囲を確認させていただければと思います。
以上です。
則武委員
まず、資料3の2ページ目の「前提条件なしの2020年、2030年の目標を提示する」という、この前提条件なしという部分が、ちょっと私が理解し切れていない部分がございます。カンクン合意の中で日本の出した前提条件つきの25%削減という、その前提条件のことではなく、真水ということであるかと思いますけれども、そこから、真水でということであるならば、7ページにあります「二国間オフセット・クレジット制度やCDMの活用」というのは、これはこの小委員会ではなく、地球環境部会でというふうになっております。しかし実際には産業界として実施していく場合、この二国間オフセット・クレジット制度は、産業界としても活用するというようなことがある場合には、やはり国の目標との関係がでてきます。その中の産業界の役割というものが関わってくるのかなと思います。完全に切り離して、国内は真水だけで、二国間クレジットは完全に国際的な部分として国の税金でやるとかという話ならあり得るとは思うんですが、かなりそれは無理な話かなと思いますので、何かやはり関連性は考える必要があるのではないかなと思います。
それと、3ページの一番下の「エネルギー需要構造の改革による」というふうな形になっているんですが、その後のところに資源循環の点というのが入っていないように思いますが、エネルギーの需要構造を変えるためには、資源の循環というような政策や技術の導入という部分も必要ではないかなと思いますが、その点についてはどうかということで、2点です。
藤井委員
すみません。幾つか私の提案したものも盛り込んでいただいて、ありがとうございます。それ以外でちょっと気づきましたのが、6ページの「エネルギー需要構造の改革によるCO2・省エネルギー削減の推進」のくだりなんですが、この表題は需要構造ということで、文中では「需給構造」という表現と「需要構造」というのが両方あるわけですが、その需要サイドをメインにやるということでここを言われているように読めるんですが、その前の例えば5ページの「世界をリードするグリーン成長国家の実現へ」のところにおいては、エネルギーシステムの多重化とか、分散型エネルギーシステムへの転換等と、供給側の話も書かれていまして、供給側のところについての提言というのは、ここではあまり重点を置かないということでこういうふうになっているのかどうかのこの説明をちょっといただきたいのと、今日、大塚先生がいらっしゃらないので、キャップ・アンド・トレードについて一切言及がないので、これは選択肢の提示ですので、それは地球環境部会のほうでCDM等と同様に議論していくのならば、そのように書いたほうがいいと思いますので、これまでの経緯からいって、全く触れないというのはどうなのかなというふうに、この2点を思っております。
藤野委員
選択肢をどう評価するかということで、とても大事なペーパーだと思っています。それで、ずっと中長期ロードマップ等をつくっていて、何のためにつくっているかというところで、やはり私としては、そのまず大前提として、衣食住とエネルギー、または気候の安定性というか、安定した気候があることで初めて持続可能な社会のほうに繋がっていく。まず大事なのは、持続可能な低炭素社会というものを目指していく上で、さらにそこにクオリティー・オブ・ライフが高まっていく。魅力的なまちがあったりとか、チャレンジングな仕事ができることだったりとか、さらには安心して子育てができることだったりとか、そういった社会に繋がる選択肢を提示できなければ、幾ら省エネしても、再エネしても、それは絵に描いた餅になってしまうんじゃないかというところで、そういった観点をまずサステナブルでクオリティー・オブ・ライフを高めるということがちゃんと組み込まれたシナリオになっている、選択肢になっているかどうかということをまず打ち立てないといけないのではないかと思います。
次に、セキュリティのところは大分書かれていますけれども、エネルギーの安全保障だったりとか、地域の安全・安心、または人工災害、自然災害、当然、または気候の安全保障というものがあったりとか、また雇用の保障というか、ただし、今のままの雇用の形態で途上国が追いかけてきたら、それは優位性がなくなってしまうので、そこは常にトランジションで変えながらやっていかないといけませんけれども、そういったセキュリティ、何を守るべきかというところについて打ち立てて、それを満たすシナリオになっているかどうかというようなことをやっていかないといけないのではないかと思います。
そして、その次に、スマートというか、その世界最高水準の省エネとか再エネとか、そういったものがありますけれども、ただし、やはりその地域にふさわしい土着の技術とか、そういったものもあり得ますし、必ずしも画一的な技術をつくっていくことがいいのか、または、その画一的な地域をつくっていくことがいいのかということに繋がりますので、そういった観点、多様性といった観点も含めるべきではないかと思います。
そして、そのスマートにもう一つ繋がりますけれども、先ほどのコミュニケーション・マーケティングWGのお話をよく聞いていると、やはり質の高い参加を増やしていくということが、持続可能な低炭素社会をつくっていく上でとても大事なのではないかというような議論がずっとされていたと思うんですけれども、そういった意味で、省エネだったり、再エネだったりとか、そういったものにいろいろな人が関わっていけるような仕組みにきちんとなっているかどうか。再エネもその地域で地域の人たちが投資をしたいとか、技術開発にも携わるような形でつくっていけるような仕組みになっているシナリオというものを、選択肢というものを提示できるのかどうかということが大事なのではないかと思います。
最後、やっぱりトランジションだと思います。今、投資しないことによって、良質なストックに、例えば住宅だったりとか、地域だったりとか、自動車もそうかもしれません。そういったものをやらないことによって、どういうふうなロックインになってしまうのか。今、高い、高いと言われて投資しないことで、どんなインアクションが起こってしまうのかということを具体的に提示していかないと、何のためにやるかということがわかっていきませんので、そちらのほうを定量的にやるとか、難しいところもありますけれども、是非チャレンジして、自分の首を絞めているようなところもあるかもしれませんがあえてもう一度言いますと、当然、その温暖化はかなり大事ですけれども、やはりサステナブルなローカーボン・ソサイエティをつくるというところにちゃんと根差した関係で、それがセキュリティに関わっているかとか、スマートだったりとか、そういうレジリエンスなものになっていくんだろかというような立てつけで、是非、ちょっと今回のペーパーは、どちらかというと、どうやってやるかというところはよく書かれていますけれども、何をもって、どこを大事に考えて選択するかというところがちょっと抜けているかなというのが私のコメントです。以上です。
安井委員
今、マクロフレームWGと、それから技術WG、両方ともコミットしておりまして、その立場から、今つくっている、我々がつくりつつあることが宿題として合っているのかどうかという観点から、ちょっとご質問をしたい。事務局にお答えいただきたいんですけど、それは何かといいますと、この地球温暖化対策の選択肢の原案等云々という、その選択肢の実態なんですね。選択肢、とにかくマクロフレームではどんな社会をつくったらどうなるか、それは社会の選択肢、技術WGではどんな技術を入れるかという選択肢をやっているんですが、実を言いますと、それから先、要するに、それにどのぐらいの投資をするかという選択肢を出せるようにしていないんです、今。それが必要かどうかというのが非常に大きな問題かなと思います。
それから、もう一つ、ある何か投資をする、あるいはある社会をつくるというときに、社会的な規制というものを例えば緩和する、あるいは新たにつくる。それも、実を言うと、検討していないんですよ。それで、実を言うと、宿題を果たせているのかどうかということについて、ちょっとご意見をいただきたいというか、事務局のご見解をいただきたい。
渡邊委員
当小委員会の検討方針案については、昨年、小委員会発足後すぐ議論が始まったと記憶しております。その議論の結果、9月末頃には、ある程度たたき台ができたと思っておりました。しかし、その後検討方針案の議論が途切れ、前回突然がらっと変わったこの検討方針案が出てきたということで、非常に困惑しております。このため、検討方針案については、昨年指摘したことを再度またご指摘させていただくことになってしまいますが、お許しいただきたい。
まず最初に、事務局へ質問をさせていただきます。1ページ目の下のところに「評価する観点」という記述が複数ありますが、この「評価」はこの小委員会でするのか、それとも、部会でするのか。後者の場合、部会での評価に留意しながら選択肢案を小委員会で作成するということなのか。評価はどこでやるのかということを教えていただきたいと思っております。
次に指摘ですが、1ページ目の検討内容に「中長期ロードマップ中間整理を踏まえ」という記載があります。この中間整理には「四つの原則」があり、非常に重要なことが書かれております。震災後の今改めて読んでも、何も変える必要があるものはありません。非常に有効なことが書かれておりますので、是非それをこの検討方針案の中に入れていただきたいと思います。本日お示しいただいているものにも、そのエッセンスはいろいろ散りばめられてはいると思いますけれども、ばらばらにすると、なかなか趣旨が伝わらなかったりするので、まとめて書いていただければと思っております。
2ページに「我が国において先進国としての能力に応じ、応分の責任を果たしつつ」という記載があります。これはまさしく国際公平性について書かれているものと思います。国際公平性については、その指標として「限界削減費用」という概念が重要だとされていますので、その考え方を是非取り入れていただきたいと思っております。
2ページ、「国単位でのエネルギー途絶リスクを軽減しエネルギーセキュリティを高める」「エネルギー消費量の削減」「バランスのとれた供給側のエネルギーミックスの実現」と書かれております。これはまさしくこのとおりであり、この観点からの評価がなければ検討する意味がないと思っております。この「バランスのとれた供給側のエネルギーミックス」の中には、当然、「安全性を徹底的に高めた原子力の活用」が入るべきと考えております。原子力については、今までも3Eに十分貢献してきたと思っておりますし、今後も3Eの観点からも不可欠なものだと考えております。
3ページに「選択肢の検討」があり、その中に「原発への依存度低減のシナリオを具体化する中で検討される省エネ、再生可能エネルギー、化石燃料のクリーン化、需要家が主体となった分散型エネルギーシステムへの転換は温暖化対策として有効である。」と書いてあります。これはエネルギー・環境会議の表現をそのまま持ってきたと思いますが、「有効である」と結論を断定されますと、この小委員会で検討する意味がなくなるのではないかと考えます。その意味で、この記述は削除するか、それとも、どうしてもこれを書くならば、省エネ、再生可能エネルギーなどが温暖化防止に対して、どの程度有効なのかということを検討するという内容に変更するべきだと思います。
最後に、5ページの「化石燃料のクリーン化によるCO2排出削減」の項目に「石炭・重油から天然ガスにシフト」と書かれております。私は、オイルショックを経験した世代なので、今の状況に非常に不安を感じております。当時は石油が日本の一次エネルギー総供給の7割超という時代でしたので、石油価格の高騰は「オイルショック」といわれるほど日本の社会に甚大な影響を与えました。この経験を活かし、脱石油に向け、我々電気事業者は原子力や天然ガス・石炭火力の導入を進めてまいりました。しかし、現在図らずとも、天然ガスシフトが進んでてしまっており、当社で見ると、今年度は天然ガス火力発電で発電する電気の割合が、実は全体の6割を占める状況になっております。さらに、その天然ガスの6割がホルムズ海峡を経由して輸入されているというのが現状です。第3のオイルショックが起こらないことを期待しておりますが、非常に不安視しているところであります。「エネルギーセキュリティの確保を十分に勘案しつつ」と書いてありますが、「エネルギーの途絶」「エネルギー価格の高騰」こういうものを防止する「エネルギーセキュリティの確保が大前提」ということが分かるよう修正していただきたいと思っております。
及川委員
地球温暖化対策の一番基本としまして、気温上昇を2℃以内におさめるということがあるわけですね。ですけれども、基本というのは、2010年の夏でしたね、非常に暑くて我々も非常に困ったわけですけれども、年々の変動が大きくて、なかなか直にどの程度平均として上がってきているのかというのがわかりにくいということがあります。ですけれども、この温暖化をもたらしているのは大気CO2濃度の上昇にあるわけです。そして、この濃度に関しては、非常にばらつきがないわけで、これで温暖化の最も有効な指標であろうと思うんですね。ですから、例えば、この2℃以内におさめるということは、大気CO2濃度を何ppmにおさえるのかといったような表現をしてもらったほうがはるかにわかりやすいというふうに思います。
それで、今後のことですけれども、2050年ですか、先進国は80%削減するというわけですけれども、日本もその中でしょうけれども、いろいろな部門から、製造部門や運輸部門や、あるいは家庭部門、それぞれ出ているわけですけれども、それでは、それぞれ80%削減するんですかと。もうちょっと具体的な内容がないと、非常に考えにくいのではないかというのが私の考えで、やはり大気CO2濃度を幾らにするかというのを目標にするのがいいのではないかというのが私の意見でございます。
永里委員
ありがとうございます。1ページ目の基本的な考え方について、ちょっと懸念というか、質問させてください。基本的な考え方の丸三つ目です。「地球温暖化対策の国内対策は、我が国のエネルギー構造や産業構造、国民生活の現状や長期的な将来のあるべき姿等を踏まえて組み立てていく必要がある」ということなんですが、基本的な考え方なので、ちょっと質問いたします。
我が国は自由主義経済のもとで活動をしており、これは私の意見書のページ29に書いているんですが、計画経済を求めているわけではありません。温暖化対策の観点から、例えば鉄鋼、化学、セメント等のエネルギー多消費産業は、国内での生産活動を縮小すべきというような産業構造の変容を政府が指導すべきではないし、また、個々の企業の生産活動において、CO2等を多く排出する製品を製造すべきではない等の企業の活動を政府が規制すべきではありません。政府の介入は、非効率で望ましいものではなく、すべては市場が決定すべきものだと考えております。市場がよりよく機能するためには、買い手としてのバイヤー、購入者の地球環境問題に関する知のレベルが高くなければならないと。環境教育の重要性、それから、マスコミの啓蒙的発信が求められるわけです。
そこで質問なんですが、政府は、特定の産業構造を目指して、規制等を通じて誘導していくということをやるというのが、この基本的な考えなんでしょうかという質問です。
横山委員
ありがとうございます。選択肢に関して発言したいと思います。部会でも発言しましたので、それとはダブらないようにしたいと思っています。細野大臣のこの検討のポイントを一読したときは、かなり前向きで、中期目標の25%削減でいくんだなというような印象を実は受けました。ただし、政府内とかでは25%なんかあり得ないと、原子力がこういう状況で、あり得ないという声が高まっているというのがいろんなところで耳にします。産業界からも25%はあり得ないという声が高まっているわけです。そういうことを考えると、この選択肢、定義もちょっと難しいところはあるんですが、私が思うに、例えば、この小委員会なり、地球環境部会が中期目標を例えば20%、10%、5%の三つの選択肢を示して、それで、それを政府に上げると。結果的には5%ぐらいに決まっちゃうと、そういうようなことを非常に恐れます。そんな単純にいかないかもわかりませんけれども、そういうことになるのを恐れます。
それで、バックキャスティング的手法で、例えば、中期目標の25%でいくんだと。これでいった場合に、産業部門、民生部門、運輸部門とか、エネルギー転換部門ではどういうことをやるべきだと。そういうものを選択肢として示すということも、ひとつ是非考えていただきたいなと思います。参考資料の5を読むと、西岡委員長も、バックキャスティングという手法でというような、による計画策定も必要だということをお書きになっていますけれども、是非中期目標25%でいくんだという前提での選択肢を示すとか、そういうことを考えていただきたいと思います。以上です。
植田委員
細野大臣は、最終的には世界をリードするグリーン成長国家の実現へと、こういうふうにおっしゃられていました。そのトーンと、後に出てくる文章とがあまりぴたっときていない感じがします。グリーン成長国家の実現というのは簡単なことではない。世界をリードするということですと、当然、技術的なイノベーションというような、積極的な日本からの新しい低炭素技術が生み出されてくるというような、そういうイメージが出てくるようなものでないといけないし、それはどうやったら実現できるんだ、技術面だけ見てもそういう感じがします。
先ほどの枝廣さんの発表や議論とも関係いたしますが、そういう社会づくりみたいな要素をここでは考えるのか、考えないのかというような点も一つあると思いました。技術面の選択に関わる話と、社会面に関わる話と、もう1点は、低炭素を推進するための仕組みの選択の問題がある。何があると進んだことになるのかということで、市場重視型、全部計画でもないし、今よりは市場的要素が強くなるということです。そうすると、エネルギー分野に市場要素を強くするということになると、かなり違った状況が出てくると思う。そこのイメージがわかりにくい。それで、それを表す指標が何かということです。市場重視型になるのかというようなことがあるかと思います。前から言ってきた炭素税や排出量取引制度もあるかと思いますし、もう少し制度的なものもあるかと思います。そういうところがすっきりさせないと、何を選択しようとしているのかがわかりにくいかなと思います。全般の方向は書いてあるのですけれども、何を選択しようとしているのかということについて、もう少しクリアにしないと、国民的議論が難しいというような気がいたしました。
以上です。
西岡委員長
どうもありがとうございました。
それでは、一通りこれでお話をお伺いしました。答えられるところは、事務局のほうに答えていただいて、あと、たくさん出ましたので、これまでの意見をまた集約いたしまして、なるべく方針のほうに反映させていきたいという具合に考えております。どうぞ、事務局のほうから。
低炭素社会推進室長
まず、原発の依存度低減のシナリオということでございますが、こちらは、先ほどご紹介させていただきました、さまざまな政府での会議体で同時並行的に議論が進んでいくということでございまして、今の段階で、いつぐらいにどういう形で出るかというのは、はっきりはしておりませんけれども、議論が進んで形が見えてくるだろうというふうに思っております。当然、温暖化の観点から、どのようにあるべきなのかという話は、当小委員会、また部会でご議論いただく対象かと思いますが、全体像が見えてくるのは、いましばらくかかるのではないかというふうに思っております。
あと、25%のカンクン合意とのお話でございますが、大臣のメッセージの中にもありまして、表題として使わせていただいておりますのは、前提条件なしの2020年、2030年の目標を提示するというところでございますけれども、このメッセージを部会のほうで具体的に大臣が述べたときには、ほかの国の動向によらずに、日本としてどれぐらいの削減をするのかということを是非考えていただきたいということを申しておりまして、そういったものとして幾ら日本として削減できるのかということをご検討いただくというものでございます。
それと関連いたしまして、断面のお話でいきますと、少なくとも2020年、2030年というふうに書いてございますが、2020年につきましては、温暖化の国際的な流れといたしましても、20年、各国とも出しておるということで、非常に重要な年、また、2030年につきましては、表裏一体で検討しておりますエネルギー基本計画の目標年ということでございますので、この二つにつきましては、ご検討いただくということでございますけれども、検討の道筋におきましては、その長期目標との間にも一つ考えるべきだというような話があれば、増える可能性はあるとして「少なくとも」というふうにちょっと断り書きを書いたというものでございまして、今のところ、事務局で念頭に数字があるというわけではございません。
あと、資源循環の視点ということも重要だというご指摘もありまして、ヒアリングの中にも例示としまして、鉄のリサイクル率を上げるなどの省エネ対策も必要だというお話もありましたので、それも射程に入れていきたいというふうに思います。
あと、言葉の使い方として、確かに、ご指摘いただきましたのは「需要」というところと「需給」というところが少し混在しておりますので、中身に応じて整理をさせていただきたいというふうに思っております。
あと、温暖化からの視点というのは、非常に特異な部分もございますので、その視点につきましては、昨年、部会のほうで2月9日にまとめていただきました内容、こちらのほうに明記をしておるということだと思っておりまして、そのそれぞれの積み重ねを踏まえての議論だというふうに思っておりますので、そちらもわかるような形にしていきたいというふうに思っておりますし、また、地域での取組につきましては、各地の総意が生かされるようなものが重要だというご指摘、そのとおりだと思っておりまして、文章の中にはその旨も記載したというふうには思っておりますが、よりわかりやすい表現を考えてみたいと思っております。
あと、マクロフレーム・技術WGなどの検討と、例えば投資金額であるとか、社会的規制緩和のあり方の検討ということでございますけれども、マクロフレーム・技術WGにおかれましては、その長期的な技術の動向、方向性について詳細にご議論いただいているということだと思っておりまして、それをどのように導入していくのかという、例えば、規制のあり方につきましては、住宅をはじめとする個別のワーキンググループのほうで詳細に検討しているということでおりますし、また、投資金額などにつきましては、各ワーキンググループの検討結果をこの小委員会に報告いただき、ご議論いただいた、出そろった際に全体的に定量的な分析をして、事務局、また藤野委員と連携をしながらしていきたいというふうに思っておりまして、それも小委員会でご提示し、ご議論いただきたいというふうに考えております。
あと、選択肢の検討のところで、複数のケースをどのように評価するのかについても提示するという文章でありまして、評価はどこで行うのかというご質問もございました。さまざまな観点、またこちらで検討する際の、例えば省エネルギー、再生可能エネルギーの中で検討すべき項目を上げさせていただいておりますので、これらについて、この小委員会でご議論をいただき、どのような評価になるのかということも、小委員会としての考え方を一度取りまとめていただきまして、それを部会のほうに報告をいただきたいと。部会としては、その報告事項も踏まえながら、最終的に評価をし、部会としての考え方をエネルギー・環境会議のほうにデータ、情報などをあわせて選択肢の原案ということを提示いただくという流れになるというふうに考えてございます。
あと、個別な5ページ目の選択肢の検討の一つ目の丸のところで、ご指摘ありました文章、こちらは確かにエネルギー・環境会議の基本方針の中に書いてあるものをそのまま引用しておりますけれども、こちらの内容がそういったところから出ているということである旨をわかりやすいように書きたいというふうに思ってございます。
あと、2℃、CO2の濃度の上昇ということの重要性、こちらについても、そのとおりでございますが、中身といたしましては、先ほど申し上げました2月9日に部会で取りまとめた中身のところに明記をされているというふうに思っておりますので、それとの関連性がわかるようにしたいというふうに思っております。
また、長期的な将来のあるべき姿についてということでございますが、こちらにつきましても、一番最初の選択肢を検討するに当たっての基本的考え方、こちらにつきましても、エネルギー・環境会議で示された基本方針でございますので、これを踏まえてのご議論ということで、こちらのほうに整理をさせていただいております。今現在、我々として明確な方向性、こういったものにすべきだというふうなものを念頭に置いているわけではございませんけれども、この小委員会の中で議論をいただければというふうに思っておりますし、また、その素材といたしましても、マクロフレームWGなどの報告も非常に重要だというふうに思っておりますので、それをご議論いただいたときに、あわせてご検討いただければというふうに思っております。
あと、大臣メッセージの中では、確かに世界最先端を目指すということが明示されておるということでありまして、イノベーションが重要だというご指摘、そのとおりでございまして、この検討方針の中にも、核心的低炭素技術の開発と実証というところは記載されておりますけれども、そのほか、社会づくり、社会制度システムの重要性というところもございます。その検討といたしましては、4ページ目の観点の中でいきますと、下から一つ目の黒丸のところに、必要な対策とその効果に続きまして、その対策を促すための施策が明示をされているかどうかという視点を挙げさせていただいておりまして、各選択肢の原案を検討いただく際には、どのような施策が必要なのかということもお示しをしながら、ご議論賜ればというふうに考えております。全体的には以上でございます。
西岡委員長
まだ事務局のほうからのお答えが足りないところもあるかと思いますが、今の皆さんのご意見はきちんと議事録に載っておりますし、私のほうもメモをとっておりまして、十分それを考えに入れながら、次の評価の方針、検討方針というのを出させていただきたいと思っております。全体といたしまして、先ほど植田委員のほうからもお話がございましたように、この我々のマンデートは、低炭素社会という言い方よりも、いかに温室効果ガスを少なく排出しながら、いい社会をつくっていくかという観点をいつもいつも外さないようにやっていく必要があると思いますし、また、それは単にエネルギーの技術の話でもなく、多分社会をどうつくっていくか、インフラはどうするか、まちづくりをどうするか、いろんなことが関係してくると思います。そういう観点から、是非皆さんのご議論をいただきたいという具合に考えている次第です。そういうことでよろしゅうございますか。それでは、最後の議題です。
低炭素社会推進室長
資料4でございます。今後の検討スケジュールについてということでございます。すみませんが、はじめに裏側からご説明をさせていただければと思いますが、本日、第8回目ということでご議論いただき、続きまして、2月につきましては、22日、27日ということで、それぞれマクロフレームワーキング、技術ワーキング、低炭素ビジネスワーキング、自動車ワーキングの検討状況につきまして、各ワーキングの座長からご報告いただき、ご議論いただければと思っております。また、3月に入りましてエネルギー供給ワーキング、住宅・建築物ワーキング、地域づくりワーキングということで、残りのワーキングすべて出そろうのが3月7日ということでございます。それ以降、3月15日、28日につきましては、それら全体を統合しながら、ご議論を深めていただければというふうに考えてございます。
表面にお戻りいただきまして、ということでございまして、次回以降、ワーキンググループの報告が続くということでございますが、検討の中身といたしましては、まず、技術ワーキング、マクロフレームワーキングということで、2050年も視野に入れた条件と状況をご報告するということでございますので、80%目標というものを目指した場合に、どのような社会が想定されるのかということもご議論賜ればと思っております。また、それに引き続く各対策に関するワーキンググループの報告ということも踏まえていただきつつ、省エネルギー、また再生可能エネルギーのお話、また、その裏付けとなる施策についてのお話を深めていただきたいというふうに思っております。全体そろったときにおきましては、このグリーン成長国家に繋げていくというところにつきましてもご議論を賜って、最終的な取りまとめに向けてご議論を深めていただければというふうに考えております。以上でございます。
西岡委員長
どうもありがとうございました。何かご質問はございましょうか。よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。それでは事務局のほうに、最後のアナウンスを。
地球温暖化対策課長
委員の皆様におかれましては、活発なご議論を大変ありがとうございました。次回日程につきましては、先ほど説明がありましたように、2月22日の開催を予定しております。詳細につきましては、追って事務局からまたご連絡をさしあげます。また、議事録につきましては、事務局で取りまとめまして、委員の皆様にご確認いただきます後に、ホームページに掲載をさせていただきますので、宜しくお願いいたします。
西岡委員長
それでは、本日の議事はこれで終わります。どうも皆さん、ありがとうございました。
午後 0時14分 閉会