中長期ロードマップ小委員会(第16回)議事録
日時
平成22年11月10日 9:04~12:44
場所
東海大学校友会館 阿蘇の間
議事内容
- 1.開会
- 2.議題
- (1)中長期ロードマップに係る経済影響分析について
- (2)分野別の報告(その1)について
- (3)中長期ロードマップ小委員会のとりまとめに向けた議論について
- (4)その他
- 3.閉会
配付資料
資料1 | 中長期ロードマップに係る経済影響分析について |
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資料2 | 経済モデル分析について(1)増井委員提出資料 |
資料3 | 経済モデル分析について(2)落合副主任研究員提出資料 |
資料4 | 経済モデル分析について(3)有村准教授提出資料 |
資料5 | マクロフレームWG報告資料 |
資料6 | ものづくりWG報告資料 |
資料7 | エネルギー供給WG報告資料 |
資料8 | コミュニケーション・マーケティングWG報告資料 |
資料9 | 中長期ロードマップ小委員会報告書骨子(案) |
参考資料1 | 第15回中長期ロードマップ小委員会事務局提出資料 |
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参考資料2 | AIM経済モデルによる中期目標の試算(第15回増井委員提出資料) |
参考資料3 | 中長期ロードマップ経済試算(第15回伴委員提出資料) |
参考資料4 | マクロフレームWG参考資料 |
参考資料5 | ものづくりWG参考資料 |
参考資料6 | エネルギー供給WG参考資料 |
参考資料7 | コミュニケーション・マーケティングWG参考資料 |
午前9時04分 開会
○低炭素社会推進室長 おはようございます。定刻を過ぎましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会の第16回の会合を開催いたします。
今回は、議題が大きく分けまして、3つございます。
最初に、前回ご議論いただきました経済影響分析につきまして、事務局より、委員の皆様からご指摘いただきました3施策以外の施策の整理、試算の前提条件の相違点の整理についてご説明いたしまして、続きまして増井委員から、前回の議論を踏まえました追加のご報告をいたします。その後、本日お越しいただいております日本経済研究センターの落合様、上智大学の有村先生から2つの国内モデルへのコメントをいただきまして、それらの説明、報告、コメントにつきまして、委員の皆様よりご意見、ご質問をいただきたいと思っております。
次には、分野別の報告について分野ごとのワーキンググループでご議論、ご検討いただいておる内容につきまして各ワーキンググループの座長より、前回の中間報告以降の検討内容も含めまして、現時点での検討状況についてご報告をいただきます。
本日は、マクロフレームワーキンググループ、ものづくりワーキンググループ、エネルギー供給ワーキンググループ、コミュニケーション・マーケティングワーキンググループの4つのワーキンググループからの報告をいただきます。この報告につきまして、委員の皆様よりご意見、ご質問をいただきたいと考えております。
そして最後に、今月末取りまとめ予定の中長期ロードマップ小委員会報告書の骨子案につきまして事務局よりご説明申し上げまして、ご意見、ご質問をいただきたいと考えておりまず。
本日は議題が多岐にわたっておりますけれども、ご議論、ご検討をお願いいたしたいと思います。
本日は、笹之内委員がご欠席ですので、説明員としてトヨタ自動車株式会社環境部担当部長の大野様がご出席いただいております。
以降の議事進行につきましては西岡委員長にお願いいたします。
○西岡委員長 皆さん、おはようございます。
それでは、開会させていただきます。
最初に、例によりまして資料の確認をお願いします。
○低炭素社会推進室長 まず配付資料の確認をさせていただきます。
資料一番上が議事次第でございます。
続きまして、資料1、中長期ロードマップに係る経済影響分析というものでございます。
資料2は国立環境研究所からの補足資料でございます。
資料3が日本経済研究センターからのご意見でございます。
資料4が上智大学の有村先生からのコメントでございます。
資料5以降が、各ワーキンググループからの報告でございまして、資料5がマクロフレームワーキンググループ、資料6がものづくりワーキンググループ、資料7がエネルギー供給ワーキンググループ、資料8がコミュニケーション・マーケティングワーキンググループとなっております。
資料9が、中長期ロードマップ小委員会報告書骨子(案)でございます。
残りの部分が参考資料でございまして、参考資料1から始まりまして、大部になりますが、最後7-1までとなってございます。
なお、参考資料の4から7につきましては、資料が大部ということがございますので、本日は委員限りの配付とさせていただいておりまして、後日環境省のホームページに掲載する予定になってございます。
資料の不足等がございましたらお知らせください。
よろしいでしょうか。それではお願いいたします。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
それでは議事に入っていきます。
今日は12時30分まで予定しておりますが、この間3つの議題、今お話がありましたように経済分析に関する報告、それから分野別の報告、さらには今月末にこの報告書、全体の報告書を取りまとめようという計画でおりますけれども、それの骨子案について皆さんのご意見をいただきたいということで、込んでおります。いつも以上に議事進行にご協力願えればありがたいと思っています。
まず議題の第1でございますけれども、経済影響分析について、最初に資料1に沿って事務局より説明をお願いしたいと思います。
○低炭素社会推進室長 それでは、資料1に基づきまして、中長期ロードマップに係る経済影響分析についてということで、前回ご指摘がございました、前提条件の比較がどのような状況になっているのかということにつきまして、資料をまとめたものでございます。
1枚おめくりいただきまして、2ページ目でございますけれども、まずこの経済影響分析の目的でございますけれども、2020年に1990年比25%削減という中期目標を達成するために、国内の削減分、15%、20%、25%と、この3つのケースにつきまして、それぞれ目標を達成したときにどのような経済影響があるのかということの分析を行いまして、その結果につきまして、できるだけわかりやすく誤解のないように提示することということを目的としてございます。
今回、お示ししましたAIM技術モデル再計算結果、こちらで想定されているさまざまな対策を踏まえまして、2020年時点での経済への影響・効果、こういったものを分析いたしまして、およその傾向を把握するということがこのタスクでございます。その際には、地球温暖化対策基本法案に掲げております国の基本的施策のうち国内排出取引制度、地球温暖化対策のための税、再生可能エネルギーに係る全量固定価格買取制度、この3つの施策の導入につきましてできる限りモデルの中にインプットして分析を実施するということを行っていただいております。
そのインプットの前提条件を3ページ以降にまとめてございます。
まず3ページ[1]といたしまして、地球温暖化対策のための税についての前提条件でございます。表につきましては、各項目が一番左側の欄に書いておりまして、それぞれについて環境省のほうから提示いたしました条件が記載されてございます。
その条件を実際のモデルの中に導入する際にどのような方法をとったかということが、右の欄に、国立環境研究所、また伴教授の欄に記載されてございます。
環境省から提示された条件がそのままのものにつきましては黒字で書いてございまして、若干モデルの中にインプットする際に工夫された場合については赤字でその内容が記載されてございます。
課税対象、税率、非課税対象につきましては、環境省から提示したものをそのまま導入していただいております。
[4]の税収の使途につきましては、環境省からはエネルギー起源CO2の排出抑制対策に充当いただきたいという条件でございました。こちらにつきましては、モデルの特性も踏まえまして、それぞれモデルごとにインプット条件を工夫いただきまして、まず国立環境研究所につきましては、AIM技術モデルで省エネ機器の追加投資額の一部に充当するということで、現実問題としては例えばハイブリッド自動車であるとかヒートポンプ給湯器、こういったものに充当するという形をとっていただいております。
また、伴教授のモデルにつきましては、エコ家電製品、エコ自動車、こういったものへの補助ということを使途と考えていただいておりまして、モデル上はこれらの関連産業への省エネ対策減税という形で組み込んでいただいております。
4ページ目でございますが、全量固定価格買取制度の条件でございます。こちらにつきましてまず対象とする発電につきましては、環境省からは大規模水力を除く再生可能エネルギー電力ということでお願いしておりますが、モデルの特性上、まず国立環境研究所につきましては、太陽光発電について計算をいただいております。残り、風力発電であるとか小水力につきましては、モデルの区分上、大規模水力とともに水力その他の発電という区分になっておりますので、切り分けができないということでございます。
伴教授のモデルにつきましては、太陽光発電、風力発電、小水力発電、バイオマス発電を対象にしていただいております。
価格・期間につきましては中長期ロードマップ小委員会で提示されたもの。ワーキング供給グループの期間としていただいております。
国立環境研究所につきましては、モデル上は電気事業者から需要家に補助金を交付するという仕組みが組み込まれておりませんので、一度政府のほうが介在するという形で太陽光発電を設置する部門に補助金を出すということを仮置きいたしまして、事業用の発電部門に対して買取額と同額になるような間接税を課すということで表現しているというものでございます。
また、大阪大学につきましては、モデル上は同じように補助金を交付するという仕組みがないということでございますので、政府が介在するということで表現しております。
あと、設置量につきましては、AIM技術モデル(再計算)で出てきました数値になるように設定するということをお願いしておりますが、先ほど申し上げましたように対象とする発電部門がそれぞれ異なりますので、モデルごとに値が違うケースになってございます。
続きまして、国内排出量取引制度でございますが、5ページ目でございます。
こちらにつきましては、まず排出枠の設定の対象といたしまして、環境省からは大規模事業者で少なくとも鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント、この素材4業種を対象に含めて計算をお願いしたいということでございました。こちらにつきましては、それぞれインプットをいただいておりますが、ただ、電力部門につきましては間接排出ということが表現し得ないということですので、電力につきましては直接排出という形でインプットをいただいた上で、取引市場につきましては素材4業種のものが1つ、電力のものが1つということで、それぞれ合計しますと2つの市場が想定されるという形でインプットいただいております。
排出枠の設定方法につきましては無償割当ということでございますけれども、それを表現するために、モデル上では一度オークション方式という形にしておきつつ、その収入を排出枠の構成比率ごとに応じまして各部門に補助金として還付するということで表現をしております。
排出枠の数量につきましては、AIM技術モデルで削減ケースごとに出てきました排出量を割り当てるということをお願いしております。それぞれ、ここに書かれましたBAUをベースに、AIM技術モデルで出てきましたこの変化率を参考に設定しているという形でございます。
以上が前提条件でございますが、6ページ目には特に排出枠の設定の部分につきまして、どのような構成になっているかというのをご覧いただきたいと思います。
まず、図の上の部分につきましては、現在検討されております制度のイメージということで、縦の方向に直接排出の部分と電力というふうに分かれておりまして、電力の部分は薄ピンク色で表されております。あと、横方向に産業、業務、家庭、運輸という各部門がありますが、それぞれ直接排出、あと電気の間接排出というものがあるということでございます。
現在想定されております制度につきましては、紫色の点線で囲ってある部分、産業の大規模の部分、あと業務の大規模の部分ということが対象として考えられております。
特に、今回前提条件としてお示ししました素材4業種の部分につきましては、その内数となっておりまして、オレンジ色のところで点線で囲った部分、ここが排出量の該当する部分かと思います。
大規模な産業におきましては、産業部門の全体の9割を占める。また、大規模な業務部門は業務部門全体の5割は占めるということかと思っております。
今回、モデルの制約がそれぞれございますので、実際に計算されているのが下の図でございまして、赤い点線で囲った部分というのが今回のモデルで計算いただいた対象分野となってございます。若干ですので、今現在、検討されております制度の想定している部分から対象になっていないものもモデル上は計算の対象になっているところがあるということでございまして、それが緑のところで書いてございます。特に家庭であるとか業務の部分の間接排出部分というのがモデル上は含まれて計算しているというところにご留意いただきたいと思います。
実際、どれぐらいの排出枠になっているのかというのが7ページ目以降に書いてございますが、素材4業種、直接排出でまずどれぐらいの数量になっているのかということを比較してございます。表の左欄がAIM技術モデルで計算しました値でございまして、括弧の外に出ているものがBAUを100とした場合の値というものになってございます。また、括弧内はそれをもとにCO2の排出量ということで、Mt-CO2という表記になってございます。
それぞれ2つのモデルにつきましてどのような値になっているかというのが右の欄にありますが、国立環境研究所のモデルにつきましては、このモデルのBAUをベースにAIM技術モデルで計算いたしましたこの変化率を参考に設定がされております。伴教授のモデルにつきましては、15%、20%、25%、それぞれの削減ケースごとに、2005年からの変化率、これをAIM技術モデルにおける業種ごとの変化率を参考に設定されておるということでございます。
ただ、この2つのモデルにつきましては、業種ごとのカバレッジが異なっておりますので、その調整が行われているというのが留意点でございます。
また、電力につきましては、同じように8ページ目に表にしておりまして、見方は同じようなものになってございます。
以上が3施策の前提条件でございますけれども、残り3施策以外の対策技術の導入促進につきましては、9ページ目にその前提条件が記載されてございます。
まず、対策強度につきましては、2020年の真水削減目標、この3ケースに達するように、段階的に炭素制約を設定していただくということでございます。それぞれ、それを表現いただいておりますが、国立環境研究所につきましては、まず赤字でございますけれども、実際の炭素価格が上昇しているように設定いただくことによって表現いただいておりますし、伴教授のモデルにつきましては、シャドープライスとして炭素価格が上昇するという設定をとっていただいております。
それらの仮想収入につきましては、[2]でございますけれども、国立環境研究所につきましてはタスクフォースで行われたものと同じように、収入につきましては家計に一括して還流するということをやっておりますし、ナフサ、鉄鋼用の石炭・コークスは規制の対象外という形で設定いただいております。
伴教授のものにつきましては、仮想収入については政府と家計で等分割しているという設定にしていただいておりますし、ナフサ、鉄鋼用の石炭・コークス、セメント用の石炭、農業用のA重油、こういったものは対象外にという設定にしていただいております。
あと、前提条件、最後でございますけれども10ページ目でありますが、真水以外の温室効果ガス削減費用ということで、こちらにつきましては海外でのエコ技術による削減というものが一国モデルでありますので表現できないということがありますので、海外からの購入ということで、それぞれトン当たり10ユーロでの設定という形にしていただいております。
以上が前提条件でございますが、最後に施策、CO2の削減対策と促進施策の関係という形で、11ページに簡単にカバレッジを書いてございます。
運輸部門、業務部門、産業部門、家庭部門とさまざまな部門がございますけれども、それぞれ削減するための具体的な対策というのが図の真ん中のところに書いてございます。これらの対策を導入していくということによって、実際にCO2が削減されるということですが、これを押していくための施策がさまざまあるということでありまして、今回、特に計算いただきましたのが、下のところに主要3施策というものがございます。
まず、真ん中の地球温暖化対策のための税というものは、ピンク色のところでありますけれども、薄く広く全体をカバーするという形で、価格効果と財源効果が発揮されるということかと思います。
またグリーンのところでありますけれども、こちらにつきましては全量固定価格買取制度によりまして、再生エネルギーのところをピンポイントで普及していくという施策だと思っております。あと、紫のところが国内排出量取引制度ということで、こちらにつきましては大規模な業務、産業部門の促進ということでございます。
その他さまざま施策がございますが、それが右の欄に書いておりますが、例えば燃費基準の強化であるとか、建築物の断熱義務化、こういったものがこの主要3施策以外のものとしてそれぞれの分野にあるということだと思っております。
事務局からは以上でございます。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
モデルの計算といいますと、結果だけが時々ひとり歩きいたしますけれども、前提が異なると結果が異なってくるということでございまして、この前提条件を十分踏まえて解釈していただきたいということで、時間をとって説明していただきました。政策の枠であるとか、あるいは政策的に決まる数字が入っていますし、それからモデルの特性によって入れる部分と入れられない部分とあるということを十分ご承知の上、結果についても論議願いたいということでございます。
それでは、資料2に移りまして、増井委員のほうからご説明を願いたいと思っております。
○増井委員 おはようございます。それでは資料2に基づきまして、前回ご報告させていただきましたけれども、それについて幾つかご質問いただきましたので、それに対する回答も含めてコメントさせていただきます。
いただきましたコメント、ご質問をとりまとめておりますのが2ページ目でございます。導入されている対策を明示すべきではないかという話と、2番目として、部門別のCO2排出量というのを提示することができないか。3番目として、国内排出量取引の対象は極めて限られていると。また、その業務部門に対する効果というのはもっと大きいのではないかということで、ある意味感度解析が必要なのではないかというご指摘というふうに踏まえて、幾つか追加の計算を行っております。
あと3施策での足りない部分についてどういう施策が考えられるのかということで、こちらのほうにつきましても感度解析といいますか、追加の試算というふうなものを行っております。
5番目、環境省が提示されている施策とモデルの前提はどの程度合致しているのかというところにつきましては、今、事務局のほうからご説明がありましたけれども、どの程度違うのかというようなことが書いてあります。
あと、大幅な削減にもかかわらずGDPがなぜ落ちないのかというふうな点もご指摘をいただいております。
また、そのほかにもいろいろご質問等あったかと思いますけれども、この場でお答えさせていただくというのはこの6つでございます。
導入されている対策の明示ということで、3枚目、4枚目のスライドに書いてあります。ちょっと順番は逆転してしまうんですけれども、15%~25%削減について、3ページ目ですが、目標を達成するというふうなことにつきましては技術選択モデルで提示されている対策分をそのまま導入しております。地球温暖化対策税、炭素1トン当たり1,000円もしくは2,000円の税を導入するといった場合にどういう技術を考えているのかということにつきましては、先ほども若干説明はありましたけれども、より詳細に具体的に書いていますのがその3枚目のスライドの真ん中あたりです。ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車から始まりまして、高性能ボイラーまでといった、こういった技術に対して追加投資の一部にその税収を充当するというふうな形で計算を行っております。
次、4枚目のスライドに移っていただきまして、税プラス全量固定価格買取制度というふうなところにつきましては、省エネ対策の技術というのは炭素税のケースと同様です。先ほど説明したものと同じです。再生可能エネルギーの導入というふうなところにつきましては、15から25の各ケースに相当する再生可能エネルギーが導入されていると。そのうち、太陽光発電については全量買取ということで想定しております。
一方、その電力価格上昇による追加の対策ということで、より省エネの機械を導入するといったことは想定しておりません。
最後、その炭素税プラス全量固定価格買取制度に加えて国内排出量取引制度を導入した場合というふうなことにつきましては、素材4業種につきましては対策技術の導入というふうなものを想定しております。
再生可能エネルギーの導入量というのは、その上の全量固定価格買取制度を導入した場合のケースと同じでございます。また、電力価格の上昇による追加対策というのはこちらも考慮していないということで、追加的に導入される技術というのは、炭素税の場合に導入されるものだけを想定しているということになります。
次に、部門別の排出量ということで、5枚目のスライドに、若干区分は荒いんですけれども結果を示しております。これは、経済モデルでの部門の定義と、技術モデルあるいはエネルギーバランス表と呼ばれているものでの定義が若干違うということで、必ずしも技術選択モデルで計算されたものと完全に合致しているわけではありませんけれども、概ね一致しているというふうなことが言えるかと思います。
特に違う点というのはそのサービスですね。技術選択モデルのほうでは業務部門という形で取りまとめられております。こちらのほう、経済モデルのほうはいわゆるサービス、運輸を除く第三次産業というような形で表現されておりますし、また運輸につきましても、家庭、いわゆる自家用車からの出てくるCO2の排出量も、本来なら異なるんですけれども、このグラフの中では自家用車から家庭におけるガソリン並びに軽油の消費に関しては、すべてこれは自動車に起因するものというふうに考えまして、運輸部門というふうな形、運輸部門に組み込んで評価しております。
次に、6枚目、7枚目のところなんですけれども、国内排出量取引の排出枠に関するところでして、一種の感度解析というふうなものを行っております。先ほどの技術のところでも説明いたしましたように、こういう排出量取引制度、特に電力について排出量取引制度を行うんですけれども、基本的に電力の原単位というふうなものを改善するというようなところだけが対象であって、そのほかの部門、例えば家庭ですとか業務、そういったところは直接関わりがないという形で計算しておりました。それが6枚目のスライドの赤い棒グラフの、前回の想定となっているところです。
それに対しまして、今回行いました一つの試算というのは、それぞれの対策ケースにおいて想定されております結果として出ております電力部門からの排出量、それを仮に電力部門のキャップというふうにした場合にどうなるのかというふうな試算を行っております。
ただ、この場合には、電力部門につきましては非常に厳しい排出削減になるということですので、この場合につきましては電力を消費する側、需要する側、つまり家計ですとか業務部門、こういったところにつきましても電力消費を抑える技術というようなものを導入すると。これは、技術選択モデルのほうから計算されているものを中心にピックアップしておりますけれども、こういうふうなものが導入され、つまり需要側と供給側が協力して電力部門からのCO2削減を抑えるというふうなことを前提に計算したものでございます。
その結果が7ページのところにございまして、発電部門の排出枠は厳しくなったということで、全体の排出量は当然のことながら下がってくるということで、また経済成長のほうも、若干成長率そのものは少し低下するんですけれども、前回に示しましたような形、年率1.8%以上の経済成長率は確保されているという、これまでと同じような傾向になっております。
次に、8枚目、9枚目のところなんですけれども、3施策で足りない部分をどう補うのかということで、これにつきましては個々の対策というのは技術選択モデルのほうから既にその対策のメニューというのは出ているということで、それをどう実際社会に実装するか、導入させるのかというふうなことが問われているというふうに理解しております。
もちろん、規制でありますとかいろいろ考えられるわけなんですけれども、ここでは一つ炭素価格によるインセンティブということで、これはこのAIMモデルを使いまして、これまで10年以上にわたりまして、ずっと言い続けてきた高額の炭素税を課すのではなくて、比較的低い炭素の税を課して、その税収を温暖化対策の投資に使う、そういうポリシーミックスを考えまして、それを実際実現すると、導入するとどうなるのかというふうなことを試算として行っております。
その結果が9枚目のスライドでして、結果的にGDPの変化率というのは若干上向くといいますか、回復するということで、これは税収をどう使うのか、また対策との関係ということで若干きちんと表現されていないところもありまして、またこれはちょっと仮計算というふうな形でご理解いただければと思うんですけれども、これまでタスクフォース等でも示してきましたように、適切に税収を使うと、温暖化対策に使うということで経済のロスというのが回復するというふうなことを、その傾向を示しております。
最後、10枚目のスライドで、その他のコメントについてということで、どの程度合致しているのか。これは今詳細に事務局のほうからご説明があったとおりでございまして、こちらでは繰り返しませんけれども、概ね成功しているのではないかというふうに思っております。
また、6番目のコメント、ご質問として、大幅な削減にもかかわらず、GDPがなぜ落ちないのかということで、前回の小委員会のほうで伴委員のほうから、生産と付加価値は違うというふうな話もございましたけれども、一つこちらのほうで言えるのは、追加投資というのは産業だけではなくてその家庭部門のほうにも関わってくるということで、またその追加投資も実際その技術モデルのほうで示されておりますのは、固定ケースからどれだけ必要になってくるのかというあたりなんですけれども、実際この経済モデルのほうで評価しておりますのは、レファレンスケースからの差額ということで、そうなりますと必要となる追加投資額も若干減少してくる。また、ここにも書いておりますように、産業部門だけでなくて、家庭部門に対する追加投資というふうなものも考えますと、実際産業部門側が負担する産業業務、エネルギー転換部門、こういった生産部門に関するところが負担するのは大体2兆円から4兆円程度になってくるということで、そういう極めて額的には大きいんですけれども、その一部だけが生産のほうに影響してくるものであるということで、一方、家計に関するものにつきましては、言うなれば消費の内訳が変わるということで、今まで購入していなかったものを購入するようになるということで、その内訳が変わるということだけですので、それほど大きな影響というのが出ていないのではないかというふうに推測しております。
以上です。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。先回、この小委員会のほうで皆さんから提出されましたコメントに対する回答を、一部お話し願いました。
次に、資料3を用いまして、日本経済研究センターの落合様のほうからコメントをお願いしたいと思います。
○落合副主任研究員 日本経済研究センターの落合です。本日はお呼びいただきまして、ありがとうございます。
議題も詰まっていますので、早くいきたいと思います。
本日資料をいただきまして、この資料1を見たところ、説明が詳細になっていまして、あまりコメントがしなくてもいいようなことまでコメントしたかなと思うところがありましたけれども、まず意見としましては、定量的な、GDPが何%動いた、それがどうという話よりも、分析内容の前提条件ですとか分析方法を中心にコメントしたいと。最初ですけれども、前提条件とかモデル全体の話についてお話をして、次に各モデルの個別の設定とか、そういうことにコメントさせていただいて、最後に今後の課題についてコメントしたいと思います。
今回、新たに行われたモデル分析につきましては、今までと違いまして、今までですと炭素税を上げたらばどうなるかとか、排出枠を変えたらばどうGDPが動くという、ある意味大ざっぱな話だったんですが、今回は3つの施策ということで炭素税、全量価格買取制度、国内排出量取引制度が段階的に組み込んだ場合ということで、ある意味政策というものがどう経済に影響するのかというものが具体化されていると。その点については、今後政策を導入する際に参考になると思いますし、分析として重要なものだと評価しています。また、モデルの挙動につきましては前提条件をどう置いたかというのがありますけれども、こういう前提条件のもとに置いて、このような挙動ということであれば経済学的には妥当な動きであろうというふうに判断しております。
ただ、以下の3つなんですけれども、1点目、3施策部分では経済的にプラス、実際にはこの3施策の部分では削減幅が小さいということもありますので、それ以外の部分をまだ追加されていると。3施策、今回お渡ししている意見の部分では、3施策及びそれ以外の施策が枠組みにとどまっているという書き方をしていますが、3つの施策につきましては今日資料1を見たところ、ある程度具体化されているかなと思います。ただ、3つの政策以外の部分につきましては、抽象的に残った部分を炭素価格という形で、今まで過去に行っていた分析と同じような抽象的な手法で改善するという書き方になっていますので、そこの部分はやはり何をどういう形で入れていくのかという形がもう少し明確に欲しいと。それがないと、できるかどうかということはなかなか評価が難しいのではないかと考えています。
あと、今後の課題についてのところで改めて触れますけれども、やはりマクロ指標についての分析にとどまっていますので、国民とか産業寄与への評価ということを考えたときには、限定的な形の影響の評価にもとどまっているかなと考えております。
もう一つは感度分析の話なんですが、もう少しある程度国民に対して、これ以上分析を広げると大変だというのはわかるんですけれども、もう少し幅広な分析があってもよかったのではないかなというのが感想です。
各分析について、これはテクニカルな部分がちょっと入りますけれども、両分析とも今回の分析にかけました経済モデルの分析だけではなくて、AIMの技術積み上げモデルの情報を用いて分析を行っていると。ただ、技術積み上げモデルの問題点としましては、対象とされた産業について、今の経済レベルを維持したまま技術を積み上げて対応できるかという形にしておりますので、それはある意味技術を過剰に積み上げる。つまり、普通であれば経済的なもので調整する部分まで調整しないで、今の経済水準のまま25%できるならばどれだけ積まなければいけないか、15%ならばどれだけかとやっていますので、経済的な調整を無視してやっていますので、その分で言えば過剰な積み上げになっています。
今度、これは難しい話なんですけれども、そのような状態で積み上げますと、実はその経済モデルのほうとしましては、過剰に技術が積み上げられていますので、よりCO2削減がしやすくなってしまうはずなんですね。つまり、必要のないところまで技術が積めるような技術を前提として経済モデルが回っていると。ですので、対策として技術の積み上げに関しては過剰なはずなんですが、もしかすると経済モデルの結果としてはコストが割安に出るという動きになっているのではないか。これは、増井さんのほうに後でお答えいただければと思います。という感想を持っております。
もう一つは、両分析とも以前の分析と比べて限界削減費用が低くなっている。これ、一つの理由としては、今言ったみたいに技術モデルの前提を積み上げたことによってある程度技術が多く積まれていますので、限界削減費用が低くなったのではないかなという気もしているんですが、伴教授のモデルのほうでは、割引率、利回りですと個人や企業が消費や投資をする際に考慮する、3年から5年程度の利用期間を考えた主観的割引率。つまり、人というのはあまり、将来のことを考えて消費・投資を決めませんで、目先のことで判断するという傾向がありまして、例えば保険なんかはなかなか人間きちんと加入しないんですが、地震が起きた後に一生懸命加入するとかこういうことがありまして、そういう意味ではリスクに対して人間というのは意外ときちんと行動しないというのがありますので、そういうところも考えてこの主観的割引率というのは少し短目というか高目に出る傾向にあります。
それに対して、実際に購入してしまうと、人間というのは自動車にしても長く使う、機械にしても長く使うというのがありますので、そういう意味では、実際のコスト面では社会的な割引率といいますか、実際の利用期間を用いた割引率というものが存在しています。
このような修正は理解できるんですが、実はこれは逆の面もありまして、温暖化対策というのは2020年とか2050年という長期にわたった問題になります。そうすると、人間というのは先ほど言ったみたいに、逆に言うと長期のことはあまりはっきりわからない、先送りする傾向がある。もしくは、本当に日本の政府というものはきちんと温暖化に対して取り組むのだろうか、もしかするとまた政策変更が起きて、温暖化対策が中途半端に終わるんじゃないかなんていう不安を持ちますと買わなくなってしまうんですね、逆に。ちょっと待とうと。政府が本気かどうか確かめなければ買えない。そうすると、下手をするとこの主観的割引率が短くなるような可能性もあります。
そういう意味で、伴教授がやられたみたいに、主観的割引率を社会的割引率に変えることによって社会としてのコストを評価するというのはわかるんですけれども、これはある意味、政府がきちんと対応するなどして、人々にきちんと温暖化対策に対応してください、変な話、先ほど地震があると保険に入るというのがありましたけれども、社会の発想が変わったので行動しなければいけないのだと人々に思わせるというような政策がきちんと裏づけにありませんと、なかなか社会的割引率自体が実現しづらいのではないかなということを感じています。
次に、両モデルとも国内排出量取引制度については無償割当という形になっていますけれども、そのためにどうするかというと、まずは排出量取引をしてお金を払ってもらう。払ってもらった上で、そのお金は返しますよというシステムになっています。実際、これは経済学的もしくはモデル分析的にはこれで無償割当になるんですが、前回までの説明を読みますと、その説明を読んだ人間が、お金が返ってくるのであれば企業はコストを気にしないのではないかという考え方をしてしまうのではないかと。つまり、国民に説明する上では、言葉足らずといいますか、もう少しどういうふうに人々が行動するので、こういうふうな設定をしても無償割当と同じ結果になるんですよということをわかりやすく説明したほうがいいのではないかなと、これは感じました。
あとはこの2ですけれども、モデル分析の制約上、この3つの施策以外の部分に関しては炭素価格の上昇としてモデルに組み込まれていると。その結果、3つの施策の中では電力その他CO2排出部門に規制がかかるんですけれども、この3つの施策以外の部分に関してはそこではない部分に、例えば住宅の断熱ですとか、そういった形で規制がかかるはずなんですが、結果としてモデルの分析の中では電力価格が上昇するとか価格の上昇として表現されてしまっていると。ただ、現実にはその規制を行った部門に対しては価格が動いたりとか、逆に言うと、住宅断熱に対して規制をかけると電力の使用量が減る可能性がありますので、電力価格が下がったりする効果もあるはずなんですが、そういった形では出てこないのです。という意味では、これも気をつけませんと、読んだ人たちに、やはりこれは電力価格とかいろいろな生活の価格が上がってしまうのだという誤解をさせる可能性がありますので、その点に関してはもう少し説明を明確化する必要があるのではないか。
あと、これは逆の意味の問題点もありまして、3つの施策以外の施策というのは、基本的には住宅断熱その他とありますけれども、部分的な規制をかけますと経済は非効率になるという面がありますので、実は経済に対する影響に関しては、ある意味低目にちょっと出ているのではないかなという感じはしています。
3つ目ですけれども、今後の課題ですが、必ずしも今回という、これは時間の関係もありますし、今回のモデルはあくまでも3つの対策を入れたときにどのような影響が出るかを中心にしていますので、今回のモデルには無理やり入れてくださいという話ではないんですけれども、一つは技術積み上げモデルと経済モデルの連携については、まだそれがプラスの方向にきく、経済に対して押し上げるか押し下げるのかに関して、入れ方によって影響が両方出てしまいますので、もう少しこの改善をして、よりわかりやすい形にする。
もう一つは、産業ごと、あとは企業ごとによって技術が違いますので、そういった技術に対して、コストが上がったときにどういう技術が取り上げられるか、採用されるかみたいな情報をきちんと組み入れることによって、より現実に近づけた形の分析が行われるのが望まれると思っています。
あとは、3つの施策以外のところですけれども、今回は仮説的に取り上げていますけれども、3つの施策以外の施策については具体的な内容を、先に言ったみたいにもう少し具体的な内容を早目に議論していただいて、その実効性を含めて検証する必要があると。
結局は、何をどの程度行うのかということでして、先ほど環境税に関しまして、資料1のところですか、関連産業への省エネ投資への、そういうところがありましたけれども、それも別段、どこの産業にどの程度のお金をどの程度つけるかというのは、実はこの3施策以外の規制の部分でも関係してくる。そうなってきますと、そこの部分がどうするかによって環境税の使い道も決まってきますので、それをやはり考慮していただきたいと。
あとは、マクロの指標だけしか出ていないんですけれども、温暖化対策のようなものですと、所得水準だけには限りませんで、地域ですね、北海道に住んでいるか沖縄に住んでいるか、東京に住んでいるか、やっぱり影響が違う。あと、資産ですね。家を持っているか持っていないのか、そういうことによってもやはりその人たちの家計に与える影響というのも違ってきます。また、企業に対しても同じ産業に属していても、その産業の中で何を担当しているのかによってやはり影響が違ってくるという面も存在します。
そうすると、やはりマクロ経済的な指標、あとは平均的な家計への構成というのでは、やはり分析には限界があると。ですので、今回に関しては難しいと思いますけれども、どのような指標が国民に対して提示されるべきなのかということに関しては、やはりきちんと議論していただいて、今回のモデルには限らないんですけれども、今後のモデル分析には組み込んでいただきたいと。ニ.としまして、現在の分析はあくまでも現行の制度を前提とした上、それにプラスアルファして施策を入れていくという形になっていますけれども、実際には新しい施策を入れれば、それに伴って過去の、今まである対策が変わってくる。環境税を導入した結果、ほかのエネルギー関連税の税制が見直されたり、あとは環境税の導入と法人税減税ですか、ということが行われたりする。そういうときの効果などの試算というものもきちんと行っていくべきではないだろうかと思っています。
ホ.なんですけれども、これも環境税収の使い道とも関連するんですが、今の段階ですと環境税収の使い道は環境対策ということで、ある意味目的税化されてしまっているわけですが、やはり税の使い道は、ある程度広く取って対応しなければいけない。なぜかといいますと、実は先ほど言ったみたいに地域によって影響が違うということは、地域によって所得補償をしてあげなければいけない。例えば北海道の場合には、温暖化対策のために所得に影響がある。であれば環境税収という、今の場合には1人当たり一律に返すという還付のままモデルになったと思いますけれども、実は地方交付税みたいな形で、ある地域には手厚く、ある地域には薄くするとか、もしくは今やっているみたいに日本全国一律に返す。もしくは地域から取った環境税は地域に返すとか、地域内で限定するとか、そういった形である意味所得補償的な形もありますので、今ですと取った環境税とかそういうものに関しては環境関連の企業に返すとか減税しているという話がありますが、実は個人に対する返し方みたいなものも考えられますので、その点では今みたいなモデル分析だけではなくて、他の環境対策支出に限定しない形での分析を行うということによって構成水準がどうなるのかみたいなものの分析も必要かと思っています。
あと、これは、今回みたいに、環境温暖化に関しましては経済モデルが何回も大変利用されていまして、経済学をやっている身としては大変うれしいと思うんですけれども、あまりこういったことが今まで日本では行われてこない、例えばマクロ経済に対する影響ですとか、あとは個別に関する影響、モデルで分析するということは今までありませんでして、こういったものがこれから先も温暖化対策を実施する過程で、制度が具体的になっていたらば、その後具体的になった制度をモデルに入れてみて事前評価するという手続がある程度きちんと政策決定の中に組み込まれていってほしいというのは、これは今後の大きな話ですけれども感じています。
ちょっと雑多なコメントになりましたけれども、以上になります。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして資料4を用いまして、上智大学の有村先生のほうからお願いします。
○有村准教授 上智大学の有村です。本日はこのような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
私のほうからも、前回の委員会で提示された国立環境研究所のAIMモデルと大阪大学伴先生の伴モデル、これから伴モデルと呼ばせていただきますが、についてコメントさせていただきたいと思います。
伴先生のモデルというのもいろいろ変更はあるでしょうけれども、AIMモデルもいろいろと変更あるんでしょうけれども、これまでかなりそのモデルそのものについては私自身も落合さんと一緒にタスクフォースに参加した中で、かなり議論されておりますので、今回はこの3施策の評価というものをこのモデルで見たときにどうなるかといったことを中心にお話しさせていただきたいと思います。
それから、このスケジュールの間の影響で避けられない事態だとは思うんですけれども、実際にお二人のご報告を伺っているわけではなくて、お二人が出された資料をもとにコメントさせていただいていると。それに関しては、私のほうからも2人に質問させていただいて幾つかご回答はいただいているんですけれども、いずれにしても直接やりとりをしたわけではないので、限定された情報のもとでコメントさせていただいているといったことはご理解いただきたいと思います。
それでは、おめくりいただいて2ページ目にいきますと、両モデルとも温暖化基本法案の3施策、温暖化対策税、排出量取引制度、全量買取制度を初めて総合的に評価したモデルであると。これまでタスクフォースなどでも常に削減目標をどう実施するかというような大きな話を議論してきたわけですけれども、ここではより詳細なモデルを評価されていると、それも3つまとめて評価されているということで、これに関して非常に大変なご苦労であったと思われますので、まず敬意を示したいと思います。
それで、いただいた資料を見た感じの印象から幾つか留意点があるだろうということで申し上げたいと思います。まず1点、その3施策の削減効果がぱっと両モデルとも図を見ますと、15%、20%、25%のどの場合でも比較的低くなっていると。これは見ると、何かこの3施策は効かないのではないのかなという印象を持たれるかもというようなことがあるかと思うんですけれども、これは非常に単純な理由で、温暖化対策税の税率の水準、それから排出量取引制度の排出枠の水準がその程度しか想定していないといったことに依拠するもので、必ずしもこの3施策が有効ではないといったことを示すものではないというふうに思います。
これはもちろん、税率を上昇させるか、あるいは排出量取引制度の排出枠の水準を抑制するかによって効果そのものが変わってくると。削減効果が上昇しますし、同時に費用もそれなりに増えるだろうといったところがあるので、その図を見たときの印象というのが、何か3施策あまり意味がないなというような印象を持たれる方がいたというのが私の周りでもいましたので、一つ申し上げたいと思います。
それで、3ページ目にいきまして、AIM経済モデルの中期目標についてなんですけれども、これのモデルの特徴というのは、先ほど資料1、落合さんもおっしゃられましたけれども本日の資料1というのが非常に丁寧な資料で、これを見るとかなりいろいろなモデルの内容がわかって、これがあるんだったら、我々は来なくてもよかったんじゃないかというような面も多少あるんですけれども、非常に温暖化対策税、特徴としては温暖化対策税の削減補助金に充当しているというのが特徴だと思います。これは、実は伴先生のほうでも税をエコポイントのようなものに使われているということなので、同様のことだと。その効果で、低率の税でも1,000円トンカーボンでも1%、2,000円トンカーボンで2%の効果があると。この前提というのは、政府が集めた税収を効率よく配分できると。つまり、削減費用の低いところからうまく配分できていれば、こういう効率よく低税率で削減できるといったようなことになっているというふうに考えられると思います。
実際には、税の削減効果というのはこれより低目になる可能性があるのではないかと。むしろそうなってくると、排出量取引制度の排出枠の抑制の部分がそこで効いてくるといったような可能性があるのではないかというのがこの5ポツのところですね。それが1つ言えるのではないかというふうに思います。
それから、これはAIMの前回の資料でページ3に増井さんが書かれておりますけれども、今、工学的なモデルという側面が強くて経済モデルではないというようなお話をされていますけれども、CO2削減効果を別にすれば、経済全体への影響というのを考えた場合には、温暖化対策税の導入と法人税減税というのを両方行ったほうが効率的な可能性もあるんだというような考え方もあると思います。
それでは、ページ4に移らせていただきまして、両モデルにおける排出量取引の評価ということについて申し上げたいと思います。
私はここの委員会にいらっしゃる何人かの方と一緒に排出量取引の小委員会のほうに出ておりますので、そこでの議論とここでのモデルの橋渡しというのを少ししたいと思っております。
ここでも、第一に排出量取引がもたらす削減効果というものについてはモデルそのものよりもキャップの推進によって決まるのだというのがまず1ポツであります。したがって、2ポツですが、モデルから予測される削減量が排出量取引の効果を示すというのは少し注意することが必要で、削減枠が厳しくなれば、それだけ削減分が大きくなるといったようなことがまず言えると思います。
それで、3ポツのところなんですけれども、これでシミュレーションの対象が素材4業種と電力の直接排出になっているといったところで、これでちょっと素材4業種ということで、これもやはり一部の業種しか対象にしていないから、このモデルはあまり現実を反映していないのではないかといったような印象を持たれる方もいるかと思いますが、実はかなりカバーしている部分はカバーしているのではないかというのが私の感想です。
本日の資料1の6ページを見ていただきたいんですけれども、これは非常によくわかる、すばらしい、わかりやすい図でして、これは排出量取引小委員会のほうで議論しているオプション、3つオプションABCというのを議論、俎上に上がっているんですけれども、それのオプションBといったようなものに近いものだと思うんですけれども、そこでは排出を、電力からの排出は間接排出として、産業部門がその排出に責任を負うというような形式にしてはどうかといったような形になっていますと。そこで、例えば産業部門ですね、上のほうの図を見ていただくと、産業からは電気による排出の部分と直接部門による排出があると。これを例えば自動車メーカーでしたら自動車メーカーが、電気の部分と自分たちで燃やしている化石燃料の両方に責任を負うというような形式になっています。ところが、モデル上ではこれは応用一般均衡分析ですと、電力の排出係数が変わることなどから、そういったモデルを簡単に表現するのは難しいので、今回、産業部門の化石燃料のところと電力部門のところがカバーされているというのが一つのやり方だというふうに理解しております。
産業部門の化石燃料の、この上の部分のところを、CO2排出量ですとかで見てみますと、この素材4業種から出てくるCO2排出量は非常に大きいんですね。私どもの環境と貿易研究センターでしているシミュレーションなんかででも、この部門での削減ポテンシャルというのは割と高目に出るといったことからすると、この製造業の素材4業種を分析対象にしているということで、かなりその排出量取引のイメージを捕捉している部分があると。一方で、電力に関しては、電気のところと業務のところに加えて、家庭までモデル上含めてしまいますので、ここはちょっと大き目にカバーしている。産業の部分で少な目にカバーして、電気のところで多目にカバーしているということでプラスマイナスになっておりまして、若干家庭の部分のプラスのほうが大きいので、カバーがもしかすると大き目に出ているかもしれないというふうになっておると思います。
このときに、実際の排出量取引の小委員会のほうでは、それぞれの製造業や業務部門の方々が排出枠の保有義務を負うというような形式を考えておりますので、電気の部分も化石燃料の部分も両方責任を持たれるわけですね。そうすると、ここでは2つのマーケットにモデル上はなっておりますが、実際にはこれは2つのマーケットではなくて、1つのマーケットになっているということなので、今、これは別々に扱われているものが、実際には一つのものとして取り扱われることになりますので、このモデルは排出量取引の持っている効率性を若干低目に見積もるというような傾向がある。要するに、本来一つのマーケットで一番効率よく削減されるところが、別々の削減を行っているという可能性があるということではないかというふうに思っております。
いずれにしても、カバーしている範囲という意味では、かなり排出量取引小委員会のオプションBに近いものになっているというような印象を持っております。
それで、ページ5にいきまして、前回いただいた資料の中では、例えば伴先生のAIMモデルもそうなんですけれども、3施策での削減効果が限定的であるとしていて、例えば1990年比15%に削減することは困難であり、3施策でカバーできないさまざまな対策を導入するための施策を評価する必要というようなことが言及されておりまして、これはどういったことをされているのかというのが前回の資料を見たときの素朴な印象でした。モデル上でどう扱われているのか、それから実際の施策としてどういうものを考えられているか、両面でどうやっているのかなという疑問を持っていた次第です。
では、本日いただいた資料で、資料1のページ9ですね。資料1のページ9のところで、国立環境研究所の[1]対策強度のところでは、この赤字のところですが、実際の炭素価格が上昇する設定になっていると。それから、伴先生のモデルですとシャドープライスとしての炭素価格が上昇する設定になっているということですので、これは要するに炭素制約を厳しくしたんだと、モデル上はということなので、結局これはそれなりの炭素税を経済全体にかけているのか、あるいは経済全体をカバーする排出量取引を実施しているというような状況を再現しているというようなことになっているんだなというふうに思いました。
そうすると、じゃ、実際の社会で何が起こるのかといったところが、もう少し詰めたほうがいいのではないかと。ここは、私がここの委員会のこれまでの議論を完全に把握しているわけではございませんので、もしかするとここの委員会ではその部分のこともかなり議論されているのかなというふうに思っているんです。そこが、モデル結果を見たときに一体どうやってこの残りの部分も埋めるのかなというのが、いろいろな技術を積み上げるとかということであれば、結局厳しい炭素税を課しているのと、あるいはそれなりの厳しい水準の排出量取引を導入しているのと同じことなのかなというような印象を割と持ったということです。
それから、ページ6につきましては、最後のページですけれども、これは伴モデルについての質問なんですけれども、電力のところで、自然エネルギー(太陽光、風力)について、ベースラインのシナリオとして設置費用の低減が年率4%と、設置領域の拡大、年率10%が仮定されているというふうになっております。この設置費用の低減に関しては、これはもう技術進歩のところなので、誰もなかなか予測できないところではあると思うんですね。ですので、このような過程を変更した場合にはシミュレーション結果がどうなるのかといったことがあれば、拝見したいなというのが率直なところです。
それから、設置領域の拡大に関しては、これ年率10%で設置領域が拡大するとなっておりますが、実際にそれが可能なのかどうかといったところは、実はこれは国のいろいろな規制にも関わっているところでして、私は今年の初めぐらいに行政刷新会議の規制緩和のところでグリーンイノベーションというところで議論に参加させていただいたんですけれども、そのときに国は再生可能エネルギーを普及しようという一方で、いろいろなところで規制があって、なかなか太陽光が設置できないとか風力が設置できないとかという、あるいは地熱がやりにくいとか、いろいろあるわけですね。それらの施策とのコンフリクトがなくなれば、再生可能エネルギーの設置領域というのもかなり増加していく見込みが上がると思うんですけれども、その辺との整合性というのもあるのではないかなというようなことを思います。
それから最後に、ここにコメントにはないですけれども、ぜひ、落合さんと同じになりますが、環境政策において経済モデルを使って、政策の評価を事前にきちんとして議論するというのは非常に重要なことだと思っておりまして、温暖化施策に関してはそれがかなり実施されているということで、これを是非ほかの領域にも広げていただきたいということと、それからアメリカの政府なんかを見ていますと、政府の中で自分たちのモデルを持っていて、常にいろいろなことに回答できるようになっていたりするというような状況になっておりますので、そういった方向を是非環境省さんでもとられていただければなというふうに思っております。
以上です。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
全体にコメントいただきましたけれども、もう少し政策の具体化、特に3方策以外のところをどういう形でやるのかということについての話、それから国民への説明ぶりをきちんとやれという話もございました。それから、政府の強い意志が非常に重要だという局面もあったかと思います。
これから質疑応答に入りたいと思いますが、これまで事務局も含めまして、事務局、増井委員、それから伴委員、落合さんと、それから有村先生、皆さんのコメントも含めまして、委員の方々からのご意見を求めたいと思います。例によりまして、ご意見お持ちの方は札を立てていただければと思います。
それでは、荻本委員から。
○荻本委員 前回、欠席ですので、ちゃんとわかっていないというところはあるんですが、2つだけコメントさせていただきます。
こういうスタディをやったときに、絶対値はなかなか合いにくいという話はこの数カ月間の議論の中で私もしましたし、ほかの方々も言われてきたことと、ですから感度解析をやろうと。感度解析をいろいろやっていただいた結果を見るときに、じゃ感度解析で出てくるものはそこそこ傾向としてはきっと合っている、合っているというのは申し訳ない言い方ですが、より信頼できる結果だろうと。そういう目で見ると、税が1,000円の場合と2,000円の場合が、今、一生懸命見ていたんですが、数字がほとんど変わっていないと。変わっていないということは、もしかすると何とも言いようがないというようなことになってしまうかなと。
それから、国民所得とかいろいろなパラメーターが出ていますけれども、やはりどうしても目が行くところは絶対値になるんですが、レファレンスに対してどうなったかということは、きっとより信頼性の高い傾向だと思うんですね。そうすると、レファレンスに対して何々は5%落ちているという結果が仮に25%のケースであるとすると、いろいろな絶対値はあり得るんだけれども、それぐらい落ちる可能性はあるという解釈というのは極めて公平な見方なんじゃないかと思うんです。ですから、1,000円、2,000円は、もうちょっと範囲が広がらないかなというのはちょっと思わないでもないんですが、それ以前のケースを増やさないまでの話として、感度解析から素直に見ると何が言えるのかというのを少しチェックしていただいて、それを少し加えていただいたほうがいいかな。どうしても絶対値に目が行ってしまうんですがというところが第1点です。
もう一つは、先ほど技術的な中身を取り込んでというようなご意見があったんですけれども、実際にはその運用がとても難しい。つまり、車をどうやって使うのかとか、発電所をどう運用されるのかということを取り込もうとすると、もうこれは何モデルかよくわからなくなってしまうということがありますから、どうやってどこでいい分担にするかというようなところをご留意いただけるといいかなと思います。
以上です。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。大野説明員。
○大野説明員 私はあまりこの経済モデルの専門家でないものですから、なかなか難しくて、何回か議論を拝聴していきながら少しずつ勉強させていただいて、今日、大分よくわかってきたんですが、一つお願いがございます。それは、この委員会以外に広い国民の方にだんだん広めていくんだと思うんですけれども、もう一つわかりやすくするために、例えば税金だったら、先ほどから規模によるというお話がありましたが、税金だったらトン当たり幾らとか、指標が出ているんですけれども、絶対金額の規模感の数字を直接表していただいたほうが感覚的に理解しやすいんです。例えば、税だったら、1000億円規模なのか1兆円規模なのかという全体のマクロ感ですね。排出量取引にしても全量買取にしてもそうなんですが、全体でどのくらいの規模でやっているんだという指標があまり資料に表れていなくて、トン当たりとかそういう指標が多いものですから、なかなか一般の人はわかりにくくて、ご専門の方は換算すればわかるんでしょうけれども、ちょっとぴんとこないところがありますので、これは今日じゃなくてお願いでございますけれども、そういう指標でできるだけ表現していただいて、それから先生からご意見があったように、それをさらに動かしてパラメータースタディをやればもっといいんでしょうけれども、最低限そういう規模感の表現をお願いしたいということです。
○西岡委員長 屋井委員お願いします。
○屋井委員 資料の1の3ページなんですけれども、これもご質問というよりコメントになってしまうんですが、税収の関係、税収の使途の関係がありまして、先ほども落合さんのほうからコメントがありましたけれども、やはりこれはモデルにおいて、直観的にはモデルにおいてその効果をできるだけ最大限発揮させるためにはやはり補助金なのか減税なのか、直接的に還元するということが効果をもたらすというのは容易に想像できるわけですけれども、ですからそういうことと、メッセージとしてこの税収、税金を取り、それをどう使っていくかという理念に係る部分と全然別次元だと思うので、この辺のメッセージが誤解を与えないようにしていただきたいということなんですけれども、やはり一方で、買い替えもしなくたって別に使わないようにすれば、あるいは自動車を持っていたとしてもほとんど使わなければ、それはそれでCO2削減に最大限貢献をできるわけなんですけれども、そういうものに対しても一定程度の還元がされるような使途、これは本来考えるべきだと思いますし、そういう社会をCO2を削減しながらどういう社会をつくっていくかというのは大変重要な視点なんですけれども、モデルの中にそれを入れるというのはなかなかこれは難しいことは誰でもわかっていますので、ですから、この辺の税収の使途というのがダイレクトにぽんと出てくる場合に、そのあたりに是非一方で配慮するという、何かうまい工夫をしていただけるといいなという気がします。
以上です。
○西岡委員長 影山委員、お願いします。
○影山委員 ありがとうございます。最初の資料1は、この前いろいろご質問させていただいた事項についてわかりやすく解説していただいて、大変だったと思うのですが、非常にわかりやすくなったのでよかったという気がします。
土居室長にご質問したいのですが、最初に経済影響分析の目的というのがありまして、このモデル分析によって経済影響の分析を行うのだということが書かれているのですが、ざっくり経済影響分析といっても、どういうのを具体的に見たかったのか、例えば我々でいうと産業への影響や、あるいは家計への影響等を見たいという思いがあるのですが、環境省としては一体、どういうところを見たくてこの経済影響分析をやられて、それで実際に意図するところがこのモデル分析でわかったのかどうか。そこら辺のところをお教えいただければと思います。
増井委員にお尋ねしたいのですが、前回と同じ質問になるかもしれませんけれども、ここでやっているシミュレーションというのは、多分、15%、20%、25%にしても、CO2は多分所与でやっていると思います。対策を積み上げていますので、CO2の排出量をそこまで下げたところで、経済影響がどうかというのをやっているのだと思うのですが、そのCO2を下げたときに一体どこにどういうショックがあって、何が変わったのかということを、前回教えていただいたんだと思うのですが、もう一遍かいつまんで教えていただけますでしょうか。その経済の影響がどういうふうに具体的になったのかというところがよく理解できていないものですから、そこを教えていただければと思います。
3施策の影響についてはそれほど大きくなくて、それ以外の対策というのが非常に重要だというのはこの前のご指摘のとおりだと思うのですが、経済的な影響としてどうなったのかという、そこら辺のところを教えていただければありがたいと思います。
それから、落合先生と有村先生については、この前落合先生がいらしたときに、モデルを何に使えるのかというご質問をさせていただいて、丁寧な回答をいただいたのですけれども、要は今やっていることが逆だと、目的に対してどういうモデルを使って、どういう前提条件でやるんだということが大事だという、そういうことを書かれていたと思うのですが、先ほど私が申し上げたような、家計への影響とかあるいは産業へのインパクト、こういったものを知りたいというときに、今のこういうモデルを使ってこういうやり方で経済影響を計算していることが、その目的に合致したやり方なのかどうか、家計への影響や産業へのインパクトが分かるようなやり方をしているのか、お尋ねしたいというふうに思います。
落合先生の文章によりますと、数字そのもの、出てきた数値そのものがいいかどうかという、そういうことはモデルでやるべきではなくて、いろいろな感度分析がモデルによってわかるということなんだというお話だった気がしますので、それを踏まえてコメントをいただければと思います。
以上でございます。
○西岡委員長 赤井委員、お願いします。
○赤井委員 ありがとうございます。短期間で本当に大変な資料を用意されて大変だったかと思います。
例えば、温室効果ガスの削減とかモデル分析そのものについてネガティブな意見を申し上げる気はないんですけれども、先ほど有村先生がご発表の中で最後のほうにちらっとおっしゃった、実際の社会で何が起こるのかという、そのあたりがモデルでは絶対に表現できないということをやっぱり、これを外部に公表する際にそのあたりを非常に注意しないといけないという気がします。例えば技術モデルにしても、経済モデルにしても、これは非常に、極端な言い方をすれば人間には冷たくて、人間がどうであろうと技術とお金が最適に配分されるように組み立てられてしまいます。例えば、日本じゃなくて企業に対してこういうモデルを使って経済合理性を追求すれば、恐らく、それと株の支配と企業利益最大という目的関数で動かせば、適当に人は切って人件費を抑えてという答えが非常に冷たく出てきてしまうと。ただ、それは人間の、我々が求める解では決してないわけですけれども、こういうモデル分析というのはそういう意味では数字ですので、実際の社会の人間としての利益をそのまま表現できるものではないということを、やはり外に対してこういう結果を示すときにはきちんと伝えなければいけないのかなというふうに思っております。
それから、特に資料1でいろいろなご説明をいただいて非常におもしろかったんですけれども、どなたかが既におっしゃっているかもしれませんけれども、それだったらもう、環境省さん中心にこういった施策評価をできる、決定版のモデルをきちんと組み立てられるようなことを、それが半年や1年でできるとは思えませんけれども、いろいろな今までの、ここでご紹介いただいたモデルなどの特質、それから環境省との施策、あるいは環境省だけではなくて、日本政府の施策、いろいろなオプションを考えつつ、それが表現できるようなモデルを構築するという一種のプロジェクトがあってもいいのかなというふうに思いました。
それから、もう一つは、人間に対して冷たいと言いましたけれども、逆にモデルで合理的なシナリオとしてこうこうこういうものが提示されると。ただ、それはその合理性が時として政治的であったり、国際的ないろいろなプレッシャーあるいはそういったあまり合理的でない理由の人的介入によって施策そのものが、せっかくこうやれば合理的なシナリオが描けるといったことがゆがめられてしまうことがあると。ですから、このモデルで分析した結果に対してここを絶対に、ここに対して変な政治的介入等があると、全くこういったシナリオが成り立たないのだという面も幾つかあるはずなので、そういったところについても、これは逆に言えば、最初のほうでおっしゃった、ぶれない施策というんですか、先になってしまったらまた、政権がかわってもうCO2削減なんていう話そのものがどこかへ飛んでしまうようなことがあってはいけないとか、そういった極端なものも含めて、モデル分析に対してそういった人的な関与があるとシナリオそのものが成り立たないといったことも注意しておく必要があるかなというふうに思います。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。ちょっと時間が押してまいりました。こちらからいきたいと思いますが、村上委員、お願いします。
○村上委員 ちょっと増井さんに教えていただきたいんですけれども、資料1の11ページでございます。CO2削減対策と促進施策ということで、ちょっと初歩的な質問でございます。例えば、この左側の紫の国内排出量取引ですね、その左下。それと、右の横に、個別部門ごとに考えられる主な施策の例とございます。例えば、そこに建築物の断熱義務化と。これはモデルの中で錬成しているのか、独立に効果が評価されているのか、当然、実際の現象としては非常に関連すると思うのでございますけれども、それ、モデルの中身をちょっと教えてください。
○西岡委員長 冨田委員。
○冨田委員 ありがとうございます。モデル分析の施策評価に使うと、いろいろ課題がある中で非常に大変な取組をされているというふうに思うんですが、個々の課題についていろいろご指摘もあるということは理解したんですけれども、先ほど影山委員のおっしゃったように、そもそもモデルで何を求めたいかということに対して、今の分析で十分なのかどうか、さらにこういうところを加える必要があるのではないかとか、そういうような整理をしていただくと我々素人にはわかりやすいということになろうかなというふうに思います。
それから、資料2で、特に私自身関心の深いのは、排出量取引制度の小委員会にも出ているということもあるわけなんですけれども、排出量取引制度がこのモデルの中でどういうふうな解釈ができるのかというようなところについてお聞きしたいと思うんですけれども、資料2の4ページのところ、炭素税、全量買取と、それにさらに排出量取引制度を加えた場合に、その素材4業種における対策技術の導入という、ここだけに差が出るというような理解でいいのかどうか、もうちょっとご説明いただければなというふうに思います。
それから、モデルに期待する感度分析の一つのやり方というか期待したいことで、例えばその排出量取引制度をやめて同じ効果を温暖化対策税にした場合、どのぐらいの税を掛けると同じような効果が期待できるのか、そんな分析ができるのかどうかわかりませんけれども、そういうことについてコメントをいただければなというふうに思います。
それから、排出量取引制度の議論の中では、枠といいますか、対象となる事業所あるいは事業者に対しての排出総量について、この中期ロードマップの議論を目安とするような、そういう考え方が示されているわけですけれども、例えば今回のこのモデルの中で、どういう部分がその排出量取引制度の総量としての目安になるところになるのかというところについて教えていただければと思います。
以上です。
○西岡委員長 大聖委員。
○大聖委員 運輸部門に関してちょっとコメントさせていただきたいと思います。これは炭素税とかいろいろな効果というのは、運輸部門でどういう影響を持つかというのはちょっと複雑ではないかなというふうに思います。既に燃料費自体に税金がかかっていますし、それの一方で、車の購入ですとか、保有にかかわる税金もかかっているわけですね。それがもう一つ最近は、古い車に対して重課をするというようなことで、税制中の中立を少しでも図ろうという動きもあるわけで、運輸部門に関しては少しそういった税全体の問題を議論しませんと、炭素税だけとかそういう議論ではそれほど単純ではないなと。それから、過去にそういうグリーン税制や何かで買い替えの動向が変化してきているという前例もありますので、そのような動向も考慮しないとそう単純ではないなというふうに思っております。
以上です。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。こちらの説明のほうにいらっしゃる方の中にも委員の方がいらっしゃいますけれども、これでご質問、コメントのほうを打ち切って、お答えのほうに移っていただきたいと思っております。
それでは、どういう順番でいきましょうか。
増井委員のほうからお願いします。
○増井委員 どうもいろいろコメントありがとうございました。順番にお答えしていきます。
まず、落合さんのほうからですけれども、1番目に書かれているのはまさにそのとおりだと思っておりますので、今後も引き続きいろいろ検討していきたいというふうに思っております。
2番目に書かれている点、イ.なんですけれども、これもご指摘のとおりでございまして、CO2をやや削減しやすくなるというふうなところが実際出ております。ただ、技術水準とその活動というふうなもの、いわゆる技術モデルとこの経済モデルとで想定している内容が一致しているかどうかというのをこれきちんとチェックしないといけないんですけれども、まだちょっとそこまでは厳密にしてはおりません。ただ、技術選択モデルのほうでもマクロフレーム変動ケースということで、一旦経済モデルのほうの活動量を反映させたケースというふうなものもやっておりますので、そういう意味ではなるべくこの2つのモデルというようなものを近づける努力はいたしております。
ロ.に関しては、私のほうのモデルには、環境系のモデルにはあまり関係ないんですけれども、やはり長期的なリスクを回避するというふうなこと、そういう施策というものが望まれるというふうに考えております。
ハ.のところなんですけれども、無償配布ということを表現するために、今回のようなモデルの中でのプログラム上もその設定をしたということと、実際それが社会においてどういうようなことに対応しているのかというふうなところはきちんとやっぱり説明する必要があるというふうに考えておりますので、ここももう少しきちんと表現、最終的にはその報告書の中では表現したいというふうに思います。
ニ.のところですけれども、もちろんその説明の明確化というふうなものは必要なんですけれども、やはりいろいろな意味で一般均衡ということで、その価格の波及というふうなものもありますので、出てきたものはその全体の結果ですので、どこがどう波及して、どこがどういう影響をしてというふうなところまでつぶさに個々に評価するということはなかなか難しいですし、またそれをしようとすると非常に専門的になったり、あるいは資料が膨大になったりというふうなこともありますので、このあたり、わかりやすさというふうな点と、正確性というふうな点、これをどうバランスさせるのかというところが課題になってくるのかなというふうに思っております。
今後の課題につきましても、このとおりだと思うんですけれども、特にハ.で示されておりますいろいろな問題点、特に地域的な問題点とかいうふうなことをご指摘いただいております。この辺はまさにそのとおりなんですけれども、モデルではやはり日本全体を対象としているというところもありますので、こういうところは各ワーキングでそれぞれご対応いただくというふうなこともしておりますので、こういうマクロなモデルでの計算結果と各ワーキングでの詳細ないろいろなシナリオ、あるいは試算結果、そういうふうなところを組み合わせて、最終的な報告書の中では示すことになるのかなというふうに思っております。
有村さんのほうからご指摘いただきました点につきましてなんですけれども、3ページ目のところ、2枚目のスライドのところにつきましては、留意点どうもありがとうございました。そこに記載されているとおりでございます。
3枚目のスライドで2つ目のポツ、税プラス補助金の効果がということで、これはまさにそのとおりでございます。
4番目のポツ、この削減効果、補助金が効率的に利用されるという前提なのかというところですけれども、実はこの試算におきましては、必ずしも効率的に利用されるというものではなくて、比較的現状の施策に基づいていろいろな対策メニューというのを設定しているというところがございます。ですから、補助金、その税収の使い方ということによって、実は大きく異なる、このあたりは5ポツのところにも記載していただいておりますけれども、その辺どういう施策を考えるのかというところにも大きく影響してくるというふうに考えております。
6ポツ目のところ、法人税減税等を行ったほうが効率的な可能性もあるのではないかということで、これはまさにご指摘のとおりでして、その可能性は十分にあるというふうに考えております。一応、モデルの中でいろいろな税は取り扱っておりますので、可能であればしたいとは思いますけれども、ただ、ケースが増えますと、本当にそれをどう評価していいのか全くわけがわからなくなってしまうという問題もありますので、このあたりは少し検討しながら考えたいと思います。
4ページ目のところで、特にその4ポツ辺り、これもご指摘のとおりですし、最後のところもキャップが厳しくなれば効果も大きくなるという、これもそのとおりだと思います。
ただ、今回想定しておりますキャップの状況というのは、この小委員会の中でも行いましたヒアリング、そういうふうなところから各部門、各業界で2020年という期間を対象としたときに、比較的実行可能性の高いものというようなことで、そのキャップを設定しているという、いわゆるBAT、Best Available Technologyなどで対応可能なものということですので、その辺ポテンシャルがあるかどうかというふうなことも非常に重要な要素かなと考えております。
5枚目のところなんですけれども、基本的に税率を上げることと、2つ目のところなんですけれども、キャップを強化することとどのように異なるのかということで、この辺はほとんど税率を上げるというふうなことと同じということで、ただ、先ほども言いましたようにどこでキャップを厳しくするのかという問題はあろうかと思います。
最後の点につきましても、先ほど申し上げましたとおり、分析の際、いろいろ3施策、それぞれプログラミングの際に効果を見るということで、実際その計算はしておりますけれども、それらを全部示しますと本当に資料も膨大になってしまいますし、ちょっとそのあたりいろいろこちらとしても考えているというところでございます。
その後、各委員の先生方からもご質問、ご意見をちょうだいいたしました。荻本委員のほうから、感度解析から何が言えるのかということで、15、20、25というのも一つの感度解析だと思いますし、その15の中でのいろいろな技術、対策メニューを組み合わせるというようなことも感度解析かなというふうに考えております。レファレンスに対してどうかというふうな傾向もまさにそのとおりですので、このあたり、どう、こういう結果を使って一つのロードマップとしてのシナリオづくりをしていくのかというところにいろいろ反映していただきたいなというふうに思っております。
また、運用面が非常に難しいということで、やはりそのモデルでは性善説あるいは性悪説に基づいてせざるを得ないというところもありますので、そのあたりはやはり前提条件というふうなものが非常に重要になってくるというふうに思っております。
それで、屋井委員のほうからもご指摘がありました、税収の使途、それは先ほども申し上げましたように、現時点では最も効率的というところ、1,000円、2,000円の炭素税の場合なんですけれども、最も効率的かどうかという視点でその税収を配分しているというのではなくて、比較的現状の制度に近いものをベースにしているというところがありますので、実はその税収をどう使うのかということによってもかなり変わってきます。
影山委員のほうからいただきましたそのシミュレーション、部門別にどういう影響が出てくるのかという点なんですけれども、実はシミュレーションのほうで、これは前回も申し上げたかもしれませんけれども、例えばハイブリッド自動車を導入するといった場合に、その追加費用分をどこに計上するのか。例えば、自動車会社さんのほうに全部計上するのか、あるいは自動車会社というのは単にそれを組み立てているだけなので、モーターとかあるいはバッテリー、そういうふうなところの需要が増えるのかということによって結果が大きく変わってきます。そういう結果を示すというふうなことも考えたんですけれども、実は小委員会の結果の影響の大きさというふうなこととかなり幅があるということで、今現時点では少しどういうふうに結果を示すのかということを検討しておりますので、ちょっとこれ今しばらくお待ちいただきたいというふうに思います。
ただ、全体的な傾向として言えるのは、石油石炭製品をつくる部門、そういうところはもちろん生産額等減少してまいりますし、また発電部門等におきましても、発電電力量の減少・低下等に伴って、レファレンスからは落ちてくるというような結果になっています。また、先ほど申し上げました温暖化対策に寄与するような活動を行っているところの生産額等は増えてくると、そういう一般的な傾向はあるんですけれども、具体的にどの部門がどの程度大きくなるというのは、前提によってかなり答えが違ってくるというところがありますので、そのあたり、もう少しちょっとお時間をいただければというふうに思っております。
あとは、村上委員のほうから、国内排出量取引制度と断熱化等の関係、資料1の11枚目のところについてご質問いただきましたけれども、これも一部反映させているということで、そのすべて既築のものまで断熱化等を反映しているというふうなことではなくて、新築のものについて反映化しているというふうに、一部しか反映させていないというところで、本来ですとこの辺もきちんと具体的に個々にどの程度反映させているのかということも明示しておかないといけないんですけれども、その辺はまた次回までに資料として準備いたしておきます。
あと、資料2の4枚目のところで、追加投資としてその想定は十分なのかどうかというふうなご指摘もいただきましたけれども、もちろん、いろいろと対策はあり得るわけでして、今回示したのは、本当に一つの前提での結果であるということで、必ずしもこうなるというふうなものではないというところはご理解いただければと思います。
以上です。
○西岡委員長 伴委員。
○伴委員 なるべくなら順序どおり、ただし、ランダムにちょっとお答えしたいと思います。
まず、赤井委員のほうからモデルの冷たさというご指摘があったんですが、確かにおっしゃるとおりかと思うんですが、ただ、我々の意図はそういう痛みを伴うところがどこで、その痛さがどの程度かを出すというところが大きな課題。具体的に言うと、鉄鋼とかそういうところが大きな痛みを受けるわけですけれども、そこが、鉄鋼がなくなってしまうのかどうか、そういう具合に考えていらっしゃる人に対しては、そういうふうにはなりませんよ、せいぜい1割減るぐらいですよねというようなことをやっぱり少し教えてあげるということも要るのではないかと。つまり、非常にカタストロフィックなものではなくて、それに対して十分な対応がなされる、そういうこともやはり見てほしい。
だから、最近のTPPの議論もまさにそれで、それで日本の農業はつぶれてしまうと、もう一刀両断におっしゃる方がいますが、やはりそれはモデルの上でどういう形でそれがなっていくのかを示すというのはやはり安心を少しでも与える上では重要ではないかと。ただ、少しでも減ったらそれは悲惨であるとおっしゃれば、それは何とも言いようがないですが、やはりある程度我慢していただくと。その我慢さがどの程度か、許容できるかどうかを議論するための資料を提供するのが我々の役目ではないかという具合に思っています。
それから、共通に出てきたのが、3施策については効果が少ないと。ただ、効果が少ないみたいですけれども、2020年比でいけば7から9%、私のモデルでも、それから90年比でいけば3%から5%を減らす効果はあるということははっきりしておりまして、それは別に国内排出量取引制度だけではなくて、全量買取制度とか温暖化対策税、それぞれについて効果が出ているということであります。
ただ、今回、落合さんと有村さんから言われているもっと高いのを考えるべきではないかというのですが、今回の試算は私個人の試算ではなくて、要望に基づいて行うと、逆に言うと要望以上のことは行ってはいけないというのがありますので。だけれども、考えてみると炭素トン1,000円がどういうものかをやっぱりイメージしていただくのは重要で、ガソリンで言うと1リットル当たり63銭です。円じゃありません、63銭です。炭素トン、私なんかは1万円ぐらいいいと思うんですが、そうするとやっと6円30銭になります。つまり、ガソリンを減らそうとするときに、ガソリンの価格を上げる。そのときの炭素の価格として、トン当たり1万円掛けるとガソリンの価格が6.3円上がるという程度なものなんですね。それがまさに1,000円でやれば63銭しか上がらない。にもかかわらず、やはり削減の方向には向かうということは知っておいていただきたいということですね。
それと、もう一つが3施策を超えた部分をどうするかというお話があって、これはまさに我々、細かな指示は受けてはいませんが、ただ、あまり予断を与えてはいけないということで、計算は公表するのは差し控えていますが、これは委員でいくと大野説明員がご質問されて、もし座長のほうがオーケーを出せば、しますけれども、いわゆる3施策のそれぞれの経済規模は既に出しています。出しているんですが、ここの公表をする段階では差し止めになっておりまして、出ておりません。そういう事情があるんですが、これは座長のご意見、後でお伺いして、もし答えることが望ましいのであれば、答える資料はこの上にございます。
それから、あと技術的な話でいきますと、先の税の使い方とか効率性、これは非常に大きな問題、中立性も含めて大きな問題がありまして、これはもう皆さん方でどんどん議論していただきたいとは思っておりますが、ただ、効率的な使われ方がなされているかどうか、私のモデルの上で考えてみると、あまりそんなことは考えずに、産業ごとに対して一律に減税している。特に自動車とか電気機器に対して一律に減税しておりまして、それが効率的かどうかということを把握するためにはもっと分けないといけないんですが、分けてはいないということはご理解いただきたいという具合に思っております。
それから、非常にテクニカルなことで有村委員のほうから自然エネルギー、太陽光なりそれが10%増加できるかということですが、これは環境省の報告書がございまして、もう十分達成可能であるという前提でやっております。この10%という設置領域というのはある意味で自然エネルギーを拡大させる、ある意味での外生的なファクターになっておりまして、これを上げることで、ここの委員会でいろいろ議論されてきた目標に達するようにしております。
あと、それに対して設置費用の低減というのは、そのコストをどの程度減らすかということでありまして、それを見ながら行っているというのが現実です。
それから、落合委員のほうから限界削減費用の話が出て、有村さんのほうからも別個質問があったんですが、これは誤解のないように言いますと、経済学者が言う割引率と、ここの委員会が使っている割引率は全く異なりまして、主観的割引率なりあるいは社会的割引率というのは、投資の回収年数です。したがって、自動車は5年で償却できる。発電所は、今原子力発電は40年になっていますが10年で打ち切るという、非常に高い投資回収を考えているがゆえに、結局設置費用を投資回収年で割りますので、非常に初期費用が高くなるということなわけですね。だから、よく限界費用、これはここでも何度か言っておりますが、限界費用が日本は何万円する、だから難しいとおっしゃいますが、その何万円の根拠は、原子力発電所は10年でなくなる。車は5年しかもたないという前提でやっている。もちろん、落合さんが指摘されたように、5年で考えるけれども実際には10年で考える、そういう、決断のところに関してはいろいろと問題があるかと思うんですが、やはり社会的な形でどれだけ寿命があるかということを念頭に置いた上で、我々は初期費用、これが限界削減費用に大きく響きますので、やはり見ておいたほうがいいのではないかという具合に思っております。
あと、排出量取引制度については、非常に限定的な形でしているわけですが、それでも構わないかもしれませんが、私個人はもっと広げてもいいのではないだろうか。それから、これはモデルの制約によるわけですが、モデルは先ほどの資料1でもありましたけれども、直接的な排出しか扱っておりません。ところが、国内排出量取引委員会なんかは、多分、間接排出量ということで考えているわけですが、でも現実に我々が電気を選択するときには、電気一本でありまして、はっきり言いまして、この十数年の間で二酸化炭素の排出量が増えた最大の原因というのは石炭火力が増えたことでありまして、それに対する責任をやはり考えたときに、単に電力料金だけというところでやるのはやはり難しい。ならば、例えば原子力発電、それからつまりはっきり言えばエネルギー源ごとに電力会社が価格を設定して、それで需要を決める形でのことがあれば、これは間接排出量でも構わないとは思いますが、今の間接排出量のやり方だと、結局のところ、CO2の削減に向かうかどうかは電力会社あるいは政府の意向に従ってしまう。そういうことで、やはり市場メカニズムをゆがめるということはいかがなものかという具合に思っておりますので、できればそういう、いわゆる間接排出という形ではなくて、直接排出で見るという方向に行かれることを、私は経済モデルをやっている立場からするとお勧めしたいという具合に思っております。
以上です。
○西岡委員長 ありがとうございました。
ちょっとすみません、落合さん、有村先生が退席しなければいけないということなんで、ちょっと早目にお願いします。
○落合副主任研究員 すみません、有村先生、先にやっていただいたほうが。
○有村准教授 多分大丈夫です。
○西岡委員長 大丈夫ですか。それなら。
○落合副主任研究員 影山委員からご質問がありましたけれども、モデル分析の評価という話ですが、この分析でいいのかという話、目的に合致したモデルかという話ですが、私のほうとしては、今後課題としていろいろやってほしいというのは追加してあります。ただ、これは難しいと思います。今回のモデルに関しましては、どうも環境省さんのほうからの委託というか、こういう分析をしてほしいという話があったので、このモデルの内容が正しいかということですが、実は環境省というよりも国民とあと委員の皆様方のほうで足りないというかそういうものが出てきて、分析をより精緻化していくものかなと考えています。
つまり、モデルを分析する上に、やはりデータの制約、あとは何を分析するか、細かいことをやろうとすればやろうとするほど規模が大きくなりまして、時間もかかるようになります。そうなってくるときに、まずは大きな部分をやって、そこから必要であれば細部にいくということがやはり大切になってくるのかなと思っています。
ただ、今回の話に関しましてはあくまでもまず全体として対策を行ったときの、全体としての水準と効果を見るという意味では価値はあると。ただ、今度その上で、これをやったときに例えば先ほども言いましたように地域、北海道と沖縄みたいな地域によってどう影響が違うのか。そうすると、地域によって北海道の方々が光熱費をたくさん使われたりとか、移動のために自動車を使われている量が多くて、それをコストになるのであれば、そのための部分はやはり環境税を取った部分、もしくはほかの取引を行った部分から所得補償をしなければいけない形が出てくるだろうとか、そういったことが出てくれば、それはそれでまた改めて分析していかなければいけない。それは今後の課題として必要になってくるだろうと考えています。
もう一つは、この3施策以外の部分がやはりいまいちわかりづらいところでありまして、ここも有村先生と同じところがあるんですが、結局今の段階では3施策以外の部分は炭素税の上昇として扱われていると。実際は、一番初めの環境税の部分をプラスしてしまって、後ろを減らすということも可能なわけですね。ただ、そういうことが表現上はあくまでも1,000円、2,000円という規模で限定された上で、足りないから後ろでやっているという表現になっていますので、モデル分析、個人的な意見としてはまだ細かいところまでが、先ほど言った地域ですとか、所得水準ですとか、あとはそういうところまで今後分析はしていっていただきたいと。
あとは、この3施策の内容についても具体化していただいて、本当に環境税は1,000円、2,000円で済んで、それプラス規制でちゃんと対応ができて15%、20%、25%ができるのかということに関しては、中の姿が見えませんと、本当にもしかしたらば後ろの3つの施策以外の規制ではできなくて、結果として環境税を増やさなければいけないとか、そういう結果も出てきてしまいますので、それはあくまでも後ろを見るということが重要になるかなと。
あと、ちょっともう一件ありまして、排出権取引の部分なんですが、ここで排出権取引は今、無償割当をすると。無償割当を評価するために1回取引をした上でお金を返すというシステムでこのモデルには取り組まれておりますけれども、実際にはこれはモデル上でありますから、オークションをさせて、各産業に自由に行動させた上で取ったものを返すということが可能ですが、やはり排出権取引の難しいところは、最初の無償割当をそれならどう割り当てるのだということがモデルの中ですから、モデルが勝手に計算してくれまして、割当が事後的というか計算結果として求まりますけれども、現実の政策をする上では、割当量をきちんと決めてあげて調整していくという過程が入ってくると。そうすると、その面でもモデルの分析というのはある意味効率的に行われていてコンフリクトがないという状態になっていますので、そういった部分では理想的な状態だということは評価する上で注意しなければいけないかなというふうに考えています。
○有村准教授 影山委員から、こういったモデルで産業への影響を評価するとかということはどうかということなんですけれども、こういった応用一般均衡分析的なアプローチで産業への影響を見るというのは、割と世界標準的なスタイルだと思います。ただ、より詳細な業種分類にしてより細かに見ていくといったようなやり方はあると思うんですけれども、それはもちろん、これまでに蓄積されたモデル、それの構造がありますので、新たにぱっとすぐに出せるものではないといったような感じだと思います。
家計への影響に関しては、恐らくこういったモデルをスタートにして、いろいろな製品の価格上昇なんかを見て、そこから家計の支出の行動なんかを見るとか、例えば先ほど落合さんから地域別なんていうのがありましたけれども、そういったのは地域別のいろいろあります、家計の調査というのはいろいろな国もやっているのがありますので、そういったものを利用して、また見ていくということは、これはもちろん両先生にお願いするわけではなくて、ほかの方がそういったことをするということも可能だということだと思います。そういった意味では、こういったモデルが非常にスタート地点であると。
それから、こういったモデルはこういった温暖化ガス削減の全体的な評価の視点のまず非常に重要な基礎になるというのは間違いないと、私は世界標準だと思っているんですけれども、こういったモデルが運輸部門に関しては若干弱いのではないか。製造業の部門とか電力部門などに関してきちっと現実を表現しようとしているというのに比べて、運輸部門に関しては若干弱いのではないのかなというのが私の印象です。
恐らく、自動車のことに関していいますのは、屋井先生もいらっしゃいます前で何ですけれども、公共交通機関との関係とか都市との関係とかというのは物すごく重要な要素がいっぱいあって、それから細かい税制の話なんかもあるわけですけれども、こういったモデルはもう経済全体を見ているものですので、そういったことまで表現するのはちょっととてもできないというところは現実としてあると思います。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。事務局のほうから。
○低炭素社会推進室長 まず、今回の出していただきました分析結果の取りまとめの方策につきましては、最後にロードマップ小委員会の報告書のまとめる際に改めて議論いただきたいと思いますが、一つありますのが、ご指摘いただきましたように、わかりやすくしていくということも非常に重要なわけでございますが、この小委員会で中間的な取りまとめをいただいたときにもありましたが、わかりやすくする一方で誤解を招くことのないようにということもございますので、そこの点を非常に注意しながら整理の仕方であるとか表現ぶりについては、モデルの構造であるとかデータの制約を超えたものもしっかり見ていきながら、注意してどこまで表現できるのかという工夫をさせていただきたいと思っております。
また、3施策以外の内容につきましては、経済分析では今回お示ししたような形で表現いただきましたけれども、今日、後半部分で発表いただきます各ワーキンググループの中で、それぞれ詳細にご検討いただいておりますので、そちらの内容を踏まえてのご議論を賜ればというふうに思っております。
あと、今回計算した際の取引制度のキャップのところにつきましては、特に今回の分析についてはNEDOの小委員会でも議論中であるということでございますので、まず計算の前提としましては、本ロードマップのほうで企業等の方々からもヒアリングをさせていただいて、設置化を図ってきましたこのAIM技術モデル再計算の値を仮置きで使って、どれぐらいの影響があるのかという計算をしていただいたという位置づけでございますので、これの妥当性というのは最終的には取引のほうの小委員会でどのような方向性をするかということにかかってくるかと思っております。
あと、タスクフォースを始めといたしまして、数多くの経済モデルの専門家の方々がさまざまなモデルを使ってご検討いただいておるところでございまして、環境省としましては引き続きそのような幅広い方々と連携しながら、どのような環境施策が必要なのかということを今後とも検討していきたいというふうに考えています。
以上でございます。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
屋井委員のほうから、このモデルでやっていることがすなわち直接の施策となっているのかどうかということに対してはっきりしてくれという意味の話があったと思うんですけれども、伴先生のほうからもお話がありましたように、我々としてはこういう政策が出たときに、どういうところにどういう影響があるかということを最初マクロにまず見ていただいて、それから先にどう施策という話に多分、なるんではないかと、これは私の解釈です。
そういうわけで、我々としてはモデルを使ってどういう影響が総合的にあるかということをお示しするのが最初の役目ではないかと。これまでかなりマクロな面からやってきましたけれども、その結果が出てみると、それだったらみんなそれぞれの個別にはどういう影響があるかというのが今日の、いろいろなご要望があったと思います。それに対しても整合性を持った形でお示し、最後の報告書では何かの形で出す必要があると思っております。
伴先生のほうから、計算の結果をまだあるんだけれどもという話がありましたけれども、全体の整合性をとりながら発表していきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
どうも時間が大分押してきました。どうも落合さん、それから有村さん、ありがとうございました。
次の議題に移りたいと思います。2つ目の議題が、各ワーキンググループからの報告でございます。どうしましょうか。大塚委員はいつまでいらっしゃいますか。
○大塚委員 私は大丈夫です。
○西岡委員長 わかりました。じゃ、安井委員のほうからお願いいたします。
15分の予定でございますが、10分ぐらいにしていただくとありがたいです。
○安井座長 ますます厳しくなりました。安井でございます。お手元の資料に基づきまして、マクロフレームワーキンググループの検討の概要をご説明いたします。
最初、2ページ目をご覧いただきますと、マクロフレームのワーキンググループに与えられたミッションとして2つの文章が書いてございます。国際的な近未来の状況を概観して、それで諸相を通して2050年という、その遠い将来を模索するということでございます。
次のページ、3ページ目でございますが、そこに検討の流れが書いてございますが、2050年、80%削減社会を所与としてと書いてあるんですが、この所与という意味は、まあ実現できるだろう、何とかなるだろうと思われると。対策費用は相当かかるかもしれないけれどもと、そういうようなことで直観的に今のところ判断しているにすぎません。
実際に何をやるかといいますと、フリーのディスカッションから、例えば将来起きるであろう危機、日本の危機、世界の危機、国際関係、あるいはそこに書いてございませんが、人々のマインドの変化等々を勘案して、それでどんな社会が描けるかなということでございます。
前回は、ご報告したときには4つだったんでございますが、今はそこの黄色の字で書かれております2050年に想定し得る5つの社会、5つになっております。現状、ここまででございまして、ここでもまだ完全に固まったというわけではございません。中身は後ほど9ページでご説明いたしますが、いまだに名称の変更が2日前に行われている、そんな状況でございます。
4ページ目でございますが、これは特にご説明申し上げることもないのかもしれないんですけれども、一言だけ。どのぐらいの改善速度が必要かといいますと、エネルギーの所要量に関しましては、エネルギー強度と書いてありますが、1973年から90年の改善速度でございます。このときは、73年石油ショックがあって、86年あたりからバブルが始まるまで、日本というのは省エネ、省エネとずっとやっていたわけですから、それに近い省エネレベル。それから、炭素強度、これは再生可能エネルギーとか原子力とかでございますが、それはその同じ時期の4倍ぐらいのスピードで改善しないと間に合わないよと、かなりとんでもないぞという、そういう話でございます。
5ページ、その既往研究としていわゆるローカーボン・ソサイエティズ2050というのがございまして、これがべースになっております。右の下のほうに数値のテーブルがございますが、一応、今5つの社会像というのはぼんやり書いたところでございますが、最終的にはこんな数値を当てはめてみようかというところがゴールになるはすでございます。
6ページ、2050年における危機の想定でございますが、ここがあまり詳しくは説明できませんが、左側に労働力の話、新興国、生産拠点、為替レート、資源制約、それからあとそこの一部、上の4つ目のドットにもございますが、ある意味でマインドの変化みたいなものもあるかもしれないなということで、こういうことを考えていこうと。
7ページ目は、国際社会の何となくの推移が書いてありますが、これまた皆様ご存じのことでございますので今回は省略と。
8ページ目にまいりまして、シナリオのコンセプトでございますが、左側から始まります。先ほど申しましたローカーボン・ソサイエティズ2050のビジョンA、ビジョンBというものを拡張するというようなスタンスでやろうというわけでございまして、考え方としては、危機が何かあるだろうと、それを回避するにはどうしたらどんなシナリオがあり得るんだろうかというようなことで行こうと。一方、それもうまくいかなくて、何か別の道を探らなければいけないというケースもあるんじゃなかろうかということで、何か左のほうに雲みたいなのが書いてございますが、その2つに分けていくと。その線が来ておりますが、上側にグローバル化というのがございますが、そこでは国際関係は良好に保ちつつ経済成長もやっていこうと。
下側はナショナリズムとか、それから場合によってはマインドセットが若干変わってくるようなことも考えていこうということで、最初の分岐点がどのような発展の方向性を志向するかということでございます。経済的な成長を志向するというところにいきますと、またその後に分岐点があって、どこでやるか。製造業でやります。あるいはサービス産業でやります。製造業、さらに分岐点があって、物はどこでつくるか。海外でつくります。国内でつくります。こういうような形で上半分が決まると。
下側は自立性志向、これはある意味でのナショナリズムですから、資源自立、資源、今のレアアースみたいな話になったらどうするんだみたいな、それよりもエネルギーあたりが重要ですが、その資源自立というものを目指すのもあるかもしれない。
それから、一番下はマインドが変わって、余裕志向になり分かち合いの社会みたいなものにいくんじゃないかと、そういうことで5つの設定をしたということになっております。
これだけかと言われるとまだないわけじゃないと思うんですけれども、これに実際には想定される危機というのがかかってきて、本当にそのとおりできないかもしれないなということもあり得るかということでございます。
9ページ目でございますが、そこに2050年に想定し得る社会の一言というのが書いてございまして、一番上は、ものづくりはやるんですけれども、日本国内にはR&Dの中心地、それで海外で実際には生産しているかもしれないと。
2番目のメイドインジャパンは、本当に日本の国内でつくって、それでアジアの中・高所得者層に日本製品を売っているみたいな感じですね。今に近いのかもしれません。
3番目がサービスブランド社会で、日本人の気配りとかそういうことをうまく生かして、それで第三次産業中心でございますという形で、海外でのサービス、あるいは外国人を日本に呼び込んで、それで提供していく。
4番目、これが資源自立社会で、エネルギーや資源、それから食料、これをなるべく自給しようと、厳密には難しいと思いますがそれをやろうと。世界がナショナリズムでも、何とか狭くよろいをしっかり着て生きていくみたいな感じですかね。
それから、分かち合い社会というのは、これは少しマインドが変わってきて、等身大で暮らせる、お互いさま社会みたいな感じです。ゆとりある生活になるんじゃないか。所得は下がるかもしれないけれどもと、こんな格好に一応、説明をしております。
10ページでございますけれども、こういうことを考えるときにいろいろな想定はしているんでありますが、その想定にはやはり未来のことゆえに不確実性というのがあって、それで下のほうに「不確実性:小」、人口の減少とか高齢化とか、この辺は多分かなり確実なんですが、上のほうの産業構造、国際関係、資源制約等々はかなりばらつくんじゃないかというようなことでこういうことになってきて今の5つでどうだろうかということでございます。
11ページ以降は、これを説明するだけで多分15分ぐらいかかると思うので、ここは今日全くゼロにしようかと思っているんですけれども、あと1分ぐらいやりますか。
参考のLCS2050AとBのシナリオにつきまして、GDPはどうなるのと、GDPは星で書いてございます。そのほかのシナリオ、GDP書いてございますが、ものづくり統括拠点のものに関しては、GNIは三つ星と書いてありますが、要するに海外で稼ぎ、日本ブランドでも稼ぎは結構多いかもしれないけれども国内では二つ星かなという形でございます。
それから経済、産業の姿に関しましてはメリットとかデメリットが書いてございます。ちょっと、全部どこを説明するわけにもいかないので、そんなことを考えているということでございます。こういうのを精緻化して最終的には先ほどの数値に落とし込むということの準備段階とお考えいただくのがいいかもしれません。
次の12ページでございますが、日々の暮らしはどうなっているんだろうかというようなこともこんなふうに書いてございます。
とりあえず、まだ検討が全く足りておりませんで、実を言いますとこのワーキンググループのメンバーの方にも多分、ひょっとすると初めてご覧に入れるという状況でございまして、これからこれを詰めていって、やっぱりおかしいんじゃないかとか、そういう議論をやっていかなければいけないということでございます。
13ページ目、ここに低炭素社会の姿と書いてございますが、4事項、4つの軸で書いてございます。経済、左側が省エネ、下はエネルギーもしくは低炭素化、右手がグローバル化と、それぞれこんなふうになるんじゃなかろうかというようなことでございまして、何がいいんでしょうか、例えばメイドインジャパン社会ですと、省エネはなかなかやはり難しいかもしれないなということでございますと、やはりCCSみたいなものを本当に極限まで突っ込んだような社会になるのじゃなかろうかというようなことを考えているということでございます。
14ページにまいりますが、こういったことをそこに書いてございますのは、共通してこんなことがターゲットとしてやっていかなければいけないだろう、1番省エネ、2番技術革新、3番目、資源生産性、4番目、自然との共生、それから価値観の発信と。世界中、日本という国は多分恐らく価値観はなかなか優れた国だと思いますので、そういう価値観を世界にどうやって、やっていくかと。
それで、今後、15ページのことが書いてございますが、最初のドットは別といたしまして、これから国際社会、外部条件、その他どういうふうに考えるか。若干未整理でございますので、このあたりをもう少し検討する。
最後には、これは全体の目的でもございますけれども、皆様からご議論をいただける、その議論のベースになりますような利用像を書いてまいりたいということでございます。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。それでは続きまして、藤井先生のほうから、ものづくりワーキンググループに関しても、やはりできたら10分ぐらいでお願いします。
○藤井座長 ものづくりワーキンググループは、昨年度は全体の中でのご議論でしたので、今回、別建てでということで議論を進めました。
ビジョンとしまして2ページ目に書いております。これはその全体のビジョンということですが、2050年に向けて、世界半減を目指した低炭素社会の構築と、その一方で我が国の社会・経済・文化の持続的な成長を目指す、つまり、低炭素化と経済社会の成長ということの両方に視座を置きました。とりわけ、ものづくり産業については、環境負荷が大きいと同時に、経済成長の柱でもあります。このバランスをどうするのかということが、我々に与えられたミッションでございます。
昨年度のロードマップの中では、ものづくりの分野については国内対策に関する指摘を中心として述べられており、かつ、ものづくりの製造プロセス、メーカー工場のプロセスにおけるイノベーションが中心でした。そこで、我々の議論は、従来の議論も含めますが、それだけではなく、わが国のものづくり産業自体が国内のCO2削減促進に加えて、世界全体の低炭素化に貢献する技術、製品を持っていることを重視し、それをどう評価するのかということを議論しました。同時に、それぞれのものづくり産業が生み出すプロダクト、製品についてのイノベーション力を高めることについても検討しました。
3ページ目はその検討の流れです。これはまず現状分析です。社会経済の現状の大きな変化の流れ、そして既にものづくり産業自体がグローバルに展開しているという現実の中で、日本はものづくり産業を有する課題と強み、この両面を持っているわけですが、それを踏まえて目指すべき方向を検討しました。
ものづくり産業を取り巻く現状とリスクを見て、今後の炭素制約の高まりの中で、ものづくり産業が先ほどの報告の中にもありましたように、素材産業中心として、自らの環境負荷をどうしていくのかということです。同時に、先ほど申しました低炭素化を促す高い技術を持っている。あるいは今後のマーケットにおいても潜在的に大きなものが予想されている。その中から経済全体の成長に繋がるようなものができるのかということがポイントになります。、結果的に、ものづくり分野が有する強みと課題を検討した中で、我々ワーキンググループとしましては、「低炭素型スマートものづくり立国」という方向性と、4つのキーコンセプトを提案しました。
低炭素型スマートものづくりの「スマート」という部分は、わかったようでわからないようなところもありますので、参考資料の5-1をご覧ください。ここの3ページ目(<3>)に私のコメントを載せております。そのコメントの中に「そのための視座として、WGは『低炭素型スマートものづくり』を提唱しました」と書いています。ここでスマートというのは知識集約、技術集約、高付加価値ということと同時に、省エネ型高度ものづくりということです。ですから、スマートと成長が重なります。EU等の他の先進国も、途上国との競争の中で、高付加価値化を目指しています。日本の場合、単に知識集約というだけではなく、それ自体が、我々の捉え方としては省エネ、CO2抑制につながっていく一つの力にもなるという理解です。現状のものづくり産業を、そのまま丸ごと、将来も続けていけるという概念ではなくて、ものづくり自体も低炭素型で、高付加価値型に変わっていくことで競争力を維持し、高めるということでとらえております。そして、そのためのキーコンセプトを、もとの資料6の概要版に4つ提示しております。基本技術とインフラ技術、ビジネス開発のための人と場の創出、あるいは消費サイド、そうしたプロダクトを評価するマーケットも要るということです。そういった低炭素型スマートものづくりを推進する経営を後押しする金融、ファイナンスの面の力も要るでしょう。そして、最後に低炭素技術の戦略的国際展開も必要です。つまり、国の施策としても、戦略的にスマートものづくりを推進する必要があるということです。そしてロードマップを再構築していく必要があります。
4ページ目に、現状分析をあげています。これは前回の報告と同じです。現状このように、すでにものづくりに限らず、非製造業もそうですけれども、海外シフトが進んでいます。
5ページ目、一方で、炭素制約の高まりは産業にとって負荷でもあると同時に、新たなマーケットができるビジネスチャンスでもあるということです。環境省、経産省の試算等も踏まえて、そういったチャンスをものづくり産業はどう捉えていくのか、という課題があります。国内に産業の拠点がないと、そういうチャンスを捉える機会も逸します。
6ページ目に、これも前回も出しましたが、日本の強みと課題を整理しています。強みは左のほうに書いていますように、現状において既に代替エネルギー関連の特許においては、我が国は世界全体の過半を占めています。非常に強い競争力を持っているわけです。ただし、課題としては、個々の企業の競争力の強さと国全体としての戦略的なアプローチが必ずしも一致していない点がある。また、こうした企業の競争力も、グローバル展開の中で次第に途上国に移転していく、あるいはコピーされる、そういうような問題がある。その一方で、そういった国際競争力のある日本の代替エネルギー関連商品に対する需要サイドの認識の低さというか、国内マーケットが十分にそれを捉え切れていない問題もあるということです。
7ページ目は、低炭素型スマートものづくりを実現するための仕組み、取組みを説明しています。要するに課題を克服して、強みに生かす、ということです。けれども、それは言うはやすくして、実行は簡単ではないのですが、その実現のためには先ほど指摘した4つのキーコンセプトをベースにした取り組みが必要となります。具体的に言えば、人材育成がまず欠かせません。これは非常に幅広い人材育成ですの概念です。ですから、ものづくり産業だけのためではなくて、我が国の教育制度全体の改革が必要です。同時に社会基盤の整備です。これは経営基盤もそうですし、政策の基盤あるいは家庭・生活・消費という面での基盤の力を評価するような仕組みも必要だと思います。そうした改革が事業側の変革にも繋がっていく。
供給側のイノベーションは、企業の対応力と同時に、それを後押しするようなマーケットであり金融市場の力が必要です。さらに適正な政策の力もも入ってくる。
8ページ目、そうした構造を図に表しております。図中の軸の部分に、人材育成を置いております。基盤の整備や供給側のイノベーション、需要側の変革においても、人材育成が共通して大事であるということです。
9ページ目は、繰り返しになりますが、持続可能な日本型の発展モデル、つまりスマートものづくり立国を目指すというビジョンです。このゴールに向けて4つのコンセプトを挙げています。こうしたコンセプトを具体的に実現するためには、どのような施策をとっていくのかということで、その主なものをここで挙げております。
10、11ページは、もう少しそれをかみ砕いたもので、これはいろいろ細かく出ておりますので、一つ一つ説明していく時間はありませんが、ご質問があればお答えしたいと思います。
課題は当然ある。ですから、そう簡単にうまくスマート化が図れるのかかという疑問が当然出てきます。しかし、我々の考え方は、それを図れるかどうかではなく、図らざるを得ないのではないかということです。我が国の将来を展望していくうえで、困難な部分も多くある。さらに我が国だけではなくて、先進国に共通の課題がある。かつ温暖化対策を実現する必要性も強い。そのためにも、先進国のものづくり企業、あるいはそれを取り巻く産業力が、省エネ向上と生産力の強化を両面、両建てで実現していくという力がないと、日本だけではなくて地球全体の将来も見えてこない。そうした両建ての実現可能性を高めていくためには、ロードマップで挙げたモデルのすべてが同時並行で一斉にできるわけでもありません。諸施策の有効性等を十分に判断してやることが当然必要になってくる。そして、ゴールを目指すには企業だけの努力ではなくて、政府、消費者、自治体など、いわゆる我が国のステークホルダー全体がこの課題に協力して取り組んでいく必要があります。一方で、膨大な資金力、あるいは情報力等もますますグローバルになっていく流れにありますので、そういうマーケットの力を使う工夫も不可欠です。
一方で、財政はますます厳しくなっています。そのため、政府の直接援助とか税制優遇等の従来型の施策にも限界がみえています。そこで、市場を十分使えるような仕組み、自立的な成長を促す仕組みが求められます。
いろいろ挙げました課題の中では、当然、産業の課題を見つめれば、雇用問題が出てきます。しかし、我々ワーキングのミッションはものづくり産業の将来ということで、雇用問題についてをものづくりの分野だけでは解決できないことを冷静に受け止める必要があります。雇用問題については、別途、総合的な対策が要るということです。
まとめとしては、繰り返しですけれども、何も手を打たなければもっと厳しい状況になるということです。炭素規制が国内で入ると、ものづくり産業あるいは日本の企業は海外流出してしまうという議論があります。けれども、今現在、そうした規制がないのに企業は、産業は、どんどん流出しています。それは温暖化規制よりも、生産性の観点での有利・不利の議論で企業は出ていっているのです。しかし、そうした企業も長期的に考えると、それでハッピーかというと決してそうではない。やはり、安定した競争力のある日本というマザーマーケットを維持できる企業のほうが、明らかに持続可能性が高いと思っております。
時間も限られています。以上でございます。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
それでは、次に進みまして、エネルギーワーキンググループの座長であります大塚委員のほうからお願いいたします。
○大塚座長 では、エネルギー供給ワーキンググループの「現時点でのとりまとめ案」について説明させていただきます。
最初にめくっていただきまして、2ページの図でございますけれども、これは今までも説明させていただいてきたところでございます。再生可能エネルギーの地域エネルギー供給に占める割合を10%以上に2020年に拡大するというのが目指すべき姿でございますし、途中飛ばしますけれども、2050年には再生可能エネルギーがエネルギー供給の主役の一つとなり、これと原子力が電力供給の柱となってゼロカーボン電源が実現しているということを目標としているわけでございます。
3ページ目に移っていただきまして、今回、エネルギー供給ワーキンググループのロードマップの見直しをしております。昨年度のエネルギー供給のロードマップといたしましては、4つの柱立てによる行程表を策定いたしました。最初の3つは再生可能エネルギーに関することでございまして、4つ目のものは化石エネルギー利用と原子力発電に関するものでございます。今回の見直しとの関係で申しますと、エネルギー供給をめぐる今年度の動向といたしまして、2010年6月に新成長戦略エネルギー基本計画が公表されております。その中で、全量買取方式の固定価格買取制度の導入が改めてクローズアップされていますし、またスマートグリッドの導入を始めとする次世代のエネルギー、社会システムの構築の重要性が認識されるようになってきておりまして、これについても我が国でも議論がなされるようになってきております。
こういうことを踏まえて、今回の見直しの視点といたしましては4点を挙げさせていただいております。
1つは、固定価格買取制度の具体的な設計でございます。
2つ目は、再生可能エネルギーの導入の見込量の精査でございます。
3つ目は、再生可能エネルギーのビジネスの普及を拡大すると。どうやって再生可能エネルギーのビジネスを成立させるかという点であります。
4つ目が、電力の系統整備でございます。
これらを踏まえまして、ロードマップの書き直しをしています。
4ページに移っていただきますが、エネルギー供給ワーキンググループにおける検討の優先順位づけでございます。再生可能エネルギーを、今回、メインで検討しているわけでございますが、その理由といたしましては、化石燃料と原子力の利用については技術的に確立されて社会的に定着していると。再生可能エネルギーについても、それと同等のレベルとして新たな社会システムとして定着させていくためには、積極的に政策的に支援していく必要があると、こういう観点から再生可能エネルギーを今回メインで検討したということでございます。現状では、再生可能エネルギーの普及を支える政策というのはヨーロッパに比べて特に遅れているので、これを加速させる必要があるというふうに認識しております。そこで、再生可能エネルギーに焦点を当てて、重点的に検討したということでございます。
5ページに移っていただきますが、導入の見込量について若干の見直しをしています。
まず、太陽光発電に関しまして、全量買取制度、2012年度開始というふうに想定いたしました。これは前、2011年だったんですけれども、そこを変えたということです。
それから、2つ目に太陽熱利用に関しまして、ソーラーエネルギー利用推進フォーラムの導入見通しを踏まえて一定の見直しを行いました。
3つ目に、自動車ワーキンググループの検討を踏まえて、バイオ燃料の導入量を15%、20%削減のケースにつきまして下方修正をしています。2020年の断面に着目しますと、下のグラフにございますように、すべてのケースで一次エネルギーの供給に占める再生可能エネルギーの比率は10%またはそれ以上となっているということになりました。
6ページに移りますが、この表は前にもお示ししたものでございます。目標の10%を達成するためには、固定価格買取制度の買取価格をこのように設定する必要があるということであります。
これらの自家消費分を含めた全量の買取制度を基本とするという考え方を打ち出しております。これは発電した電力の有効利用をするという観点から、全量買取が望ましいという方向を打ち出しています。
既設の電源、これはRPSにつきましては事業化の際に想定していた採算性を確保するための措置、これは契約の継続をするということが望ましいと考えています。
7ページでございますけれども、これも前にご説明したところでございますけれども、再生可能エネルギーの普及拡大がもたらす便益と負担ということであります。経済波及効果とか雇用創出効果とか、あるいは化石燃料の調達に伴う資金流出の抑制効果がこのようにございますので、短期的には負担になるわけですけれども、長期的に見れば負担ではなくて、むしろプラスになるという考え方を示しています。
再生可能電力の固定価格買取による負担でございますけれども、2020年のレベルで、キロワットアワー当たりの負担額は0.7から1.4円というふうに見込んでいます。
8ページでございますけれども、電源構成の低炭素化による発電コストへの影響でございますけれども、今後化石燃料の値段が上がっていくということが見込まれますが、他方で再生可能エネルギーの価格は下がっていくことが見込まれますので、2030年ごろには価格が同じぐらいになるだろうというふうに予想しています。こういうことから、中長期的には再生可能エネルギーを拡大していくことが国民にとってメリットになるというふうに考えております。
9ページでございますけれども、再生可能エネルギーの持つ環境価値の取扱いをどうするかという問題でございます。上のほうは、これは一般電気事業者が固定価格買取制度で買い取るという普通のケースでございまして、真ん中のものはグリーンPPSがこれを買い取ると、一般電気事業者よりも高い価格で買い取るというケースでございます。
グリーンPPSから自発的な負担者が買い取るという、グリーンのものだけを買い取るというのが下の黄色の矢印でございますけれども、矢印は引いていないんですけれども、その自発的負担者の上の通常の負担者というのは、これはPPSからグリーンなものだけでなくて、火力も含めて買うという場合でございます。
こういう2つのケースが考えられるわけですけれども、それ以外にグリーン電力証書だけの売買を認めるかどうかについては現在まだちょっと検討中でございます。環境価値だけの売買を認めるべきかどうかについてはちょっと検討中でございます。
いずれにいたしましても、上の、一般電気事業者が買い取ったものについて通常の負担者が購入するということがございますけれども、さらにグリーンPPSが買ったものについて自発的負担者が高い価格で購入するということになりますと、再生可能エネルギーの発電事業者の設備投資意欲が増大して、再生可能エネルギーの導入量をさらに伸長させるということが考えられるわけでございます。
10ページの図も前にお示ししたとおりでございます。2010年の現状から、早い段階で利用側のエネルギーマネジメント関連インフラの構築を開始する必要があるということを考えております。2020年代の半ば、2030年ごろにはこういうことが実現していくということが、電力系統整備との関係では重要なところでございます。
11ページでございますけれども、地域における再生可能エネルギーのビジネスの作業部会というのをエネルギー供給ワーキンググループの中に設置いたしまして検討しています。この中では、左の下にありますような人的資源の課題とか技術・資源の課題、資金的課題、情報的課題について整理いたしております。
12ページでございますけれども、発電の事業種ごとに課題を整理いたしております。これはちょっと細かいので、説明は今、割愛させていただきます。
13ページでございますけれども、こういう重点課題に関しまして国として整備すべき公的支援策を、骨太施策方針として整理をいたしています。人的な資源につきましては、人材育成プログラムの創設、コーディネーターの育成という点が重要でございます。
技術・資源に関しましては、公的な稼働率の保証制度を創設する必要があるということを打ち出しています。資金につきましては、国等による公的な債務保証を増やすとか、利子補給をする。さらに低炭素の機器のリースに関するインセンティブを付与するというようなことを考えています。情報の部分でございますけれども、ワンストップのところで情報提供する専門の窓口を設置するということを打ち出しています。
14ページでございますけれども、再生可能エネルギー熱につきましては、価格が安いということや導入の環境が既に整っているということがございますので、導入検討の義務化とか導入の義務化をすべきであるということを打ち出しています。
さらに、こちらのほうはあまり十分な検討が進んでいないところもなくはないんでございますけれども、化石エネルギーの利用についての低炭素化のところ、これは海外で貢献していくということですし、さらに原子力につきましては稼働率の向上に向けた取組、必要に応じた更新ということが重要であります。
15ページからロードマップでございますけれども、これも前からお示ししているところですが、今回赤字で書いたところが変更した部分でございます。15ページにつきましては、再生可能エネルギーのビジネスについて、今回検討した点を赤字で加えています。
16ページも同様でございます。
17ページにつきましては、系統に関しての、今回新たに得られた知見をロードマップの中に加えています。
18ページについては特に変更点はございません。
19ページでございますけれども、これまでとは違うスピードで再生可能エネルギーの導入を進める必要があると。固定価格買取制度だけでそれが達成されるわけではないということが、注意すべき点として第一に掲げているところでございます。
固定価格買取制度は、極めて重要な施策でございますけれども、ある程度コストの低減が達成できた段階で、別の施策、例えばRPSに移行していくということを検討する必要があると。我が国の場合、これはちょっと逆にRPSから始めてしまったのがちょっと問題があったということでございますが、固定価格買取制度を今回導入して、ある程度コストが低減した段階で別の施策のほうに、市場がよく使う施策のほうに移行していくということを検討する必要があるということでございます。
あと、電力の系統整備の負担に関しての検討を進める必要があるということとか、一つ飛ばして、地域の特性に応じた再生可能エネルギーのプロジェクトについて人材育成をする必要があるとか、化石燃料利用の低炭素化、原子力利用拡大についても重要であるとかということを留意すべきであると考えております。
最後の20ページのところは、今申し上げたことの検討結果のまとめでございますので、ご参照いただければ幸いでございます。
以上でございます。
○西岡委員長 ありがとうございました。
それでは、続きまして枝廣委員のほうから、コミュニケーション・マーケティングワーキンググループのご報告をお願いします。
○枝廣座長 コミュニケーション・マーケティングのワーキングの発表をします。
私たちのワーキンググループは、ロードマップを達成するために非常に大きな役割を果たすべき家庭部門に正面から取り組んでいます。中間発表から2カ月、一生懸命作業してきましたが、皆さんに良い知らせと悪い知らせがございます。
悪い知らせからいきます。このままでは家庭部門のロードマップの目標は達成できないであろうということがかなり明らかになってきました。
良い知らせは、なぜそれが今のままだとうまくいかないのか、何が障壁になっているのか、乗り越えるためには何をしたらよいか、これらがだんだんわかり始めているということです。そのような内容を発表します。
資料の2ページになりますが、もともとこのワーキングの問題意識として、まず普及段階を考える必要があるということです。さまざまなものを普及しようとしているわけですが、下にありますように、そのイノベーション普及理論でいったときに、今、どの段階にあるか、そしてどこまで持っていかないといけないか。これは実は、対象機器によってさまざま違っています。見ていただくとわかりますように、高効率給湯器は、あまり意識のない、動きの遅い人たちまで対象にしないと今の目標に届きません。それぞれの段階ごと、どういった対象グループ、どういった機器、そのあたりを細やかに意識づけし、もしくは対策を練っていく必要があります。
3ページですが、もう一つの問題意識は、今のロードマップは、数値目標が示されているもので、この下に書いてあるのを見ていただくとわかるように夢もロマンもないもので、生活者との繋がりがないというか、これが「ワガコトだ」と思える生活者はほとんどいないのではないかと思います。
実際に、さまざまな導入なり買い替えをしてもらおうとしたときに、その買い替えや導入そのものを目的にする人というのはおそらくいないでしょう。そうではなくて、それぞれの人が実現したい暮らしのイメージがあって、それに資すると思うから買い替え、もしくは導入するのだと思うと、今のこの数字だけのロードマップでは、なかなか生活者を動かすのは難しいという問題意識がございます。
そのような2つの問題意識から、4ページになりますが、今回のワーキングでは、日本の低炭素社会化を進めていくためにさまざまな調査をしてきました。左のほうに書いてありますが、まずマーケティングというのは、お客様の声を聞くというところから始まりますので、まず生活者ヒアリングということで、5人×2地域×4グループ、計40人に2時間ずつじっくり話を聞くというヒアリングを行いました。そのヒアリングから重要な視点を抽出して、その後、1,000人を対象にインターネットでアンケートを行っています。それと同時に、このヒアリングから「どうも(現在のロードマップは)ピンとこない」「自分は一生懸命削減のためにやっているのに、それがロードマップには入っていない」といった声も多数ありましたので、目標達成時の暮らしのイメージをもう少し描いてみようというワークショップを、これは5人×2グループで、3時間ずつかけて行いました。この内容について、今からご報告をしたいと思います。
6ページになります。対策のそれぞれの機器の普及段階を示したものです。これは先ほど言いました1,000人のアンケートの結果です。地域や年齢など日本の人口分布に合わせた形で1,000人とりましたが、若干、通常よりも導入率が高い傾向がありますので、意識の高い人たちが少し多かったかなとは思います。このグラフが非常に重要なので、説明させていただきたいと思います。
ここで、イノベーターとか、アーリーアドプターとかアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、それぞれ全体の中のパーセントで区分をしています。「実際に買い替えた」という人を見ていただくと、今どこまで行っているかがわかります。これを見ていただくとわかるように、LEDであるとか省エネ型のエアコン。これはアーリーアドプターからアーリーマジョリティへの溝(キャズム)を超えていることがわかります。ここまでいくとかなり広がる可能性があるのではないかということです。一番下を見ていただくと、左のほうから持家の戸建て、持家集合、借家というふうになっています。大体、日本の人口を見たときにこういった形になるんですが、どこまで対策が必要かがわかります。そしてロードマップの25%、20%、15%に★を打ってあります。実際に、エアコンは今かなり普及してアーリーマジョリティーの中ほどまで行っていますが、もしこれがレイトマジョリティまでいかないといけないとすると、借家の人たちにも対策をとってもらう必要がある。その場合はいろいろな課題が出てきます。LEDと省エネエアコンの2つはかなり進んでいるけれども、さらに広げるためには手を打つ必要がある、というものです。一番下に太陽光発電があります。これはまだ導入が少ないんですが、検討中の人たちの割合を見ると、かなり行きたいところまでは行っています。ですから、「検討中の人をどうやって行動に繋げるか」がここでの大きなポイントになってくるかと思います。
それに対して一番大変なのが高効率給湯器です。これは、目達するためにはかなり、レイトマジョリティの半ばぐらいまで行かないといけないという数字になっているわけですが、現在、導入している人、もしくは検討している人は、まだまだそこまで行っていませんので、それをどうやっていくか。下を見ていただくとわかるように、高効率給湯器は、持家、戸建てはまだ導入しやすいんですが、集合住宅もしくは借家の人たちまで導入する必要があることがわかります。こういった場合、借家では自分で導入することはできませんので、アパートのオーナーさんへの働きかけ等、別の働きかけも必要になってくることがわかります。
7ページは、それぞれの障壁となっているものを洗い出したものです。ヒアリングから拾ってきました。東京、福井の2地域でそれぞれ、単身世帯、定年後の世帯、そして子育て中を中心とした既婚の女性、というグループです。
見ていただくとわかるように、「初期費用が高額」というのはおそらくどのグループでも出てくるわけですが、しかし、ほかの障壁となっているのは、かなりグループによって異なってきます。きめ細かなアプローチが必要だということがわかると思います。
その中でも共通してよく出てきたのが、「現状を変えることが面倒くさい」というものです。「わざわざ計算したり、調べたり、それ自体面倒くさい」という方もすごく多かったですし、それから「もったいない」というのも多かったです。まだ使えるのに買い替えるのはいかがなものかという抵抗、もしくは罪悪感が非常に強いということもわかります。
もう一つ、これまであまりロードマップで考えてこなかったことだと思うのですが、時間軸をかなり意識しないといけないということが、今回わかってきました。例えば、借家の方々は、たとえLEDのほうが電気代も安くなっていいとは思っても、「自分がアパートを出るほうが先だろうから、なのでわざわざLEDはしない」と言います。これは一つの時間軸の要素です。もしくは定年後の世帯に太陽光発電の話をしたときに、「確かにそのほうがいいけれども、自分たちがそんなに長くはここにいないだろうから、入れるのはどうか」「家を跡を継ぐ人もいないし」と。こういった時間軸の要素にどう対応していくかがこれからのアプローチの一つの鍵かと思います。
8ページは、今度は障壁を機器ごとに見たものです。これもそれぞれ違うものが出てきているのがわかると思います。共通するものも、もちろんありますが。この障壁を見て、それを乗り越える手だてをマーケティングとして考えれば、ある程度普及を進めることができるかなと思います。たとえば、「知識不足」に対しては、丁寧な説明をする必要があります。LEDの「CO2削減の寄与度の低さ」であれば、見える化を図る等があると思います。
太陽光発電のところでいうと、「初期費用が高額」というのであれば、固定価格買取制度もしくはリースという制度もあるでしょう。もしくは「気象条件への不安」――これは福井などでかなり聞かれた声ですが、これは例えば発電量の保証であるとか、発電できなかったときの保険であるとか、1年間試してもらうとか、これもさまざまな手だてが考えられると思っています。
このように、それぞれの障壁ごとに対策をこれから考えていく必要があると思っています。
右下の「エコアパート」というのは、借家の人たちの話を聞くと、もう手詰まり状況なんですね。自分たちで替えたいと思っても、借家ですから、いろいろな設備を替えることはできないし、エアコンもついていて、それを自分で替えることはできない。せいぜい電球の球ぐらいしか替えられないという、やりたいと思っても替えられないという手詰まり感を非常に感じました。そこで、別の社会インフラとして、エコアパートという形で、そういった設備を完備したものをつくって、「それを選べるとしたら入りますか?」という話を聞きました。こういったところで、家賃との差というのはもちろん鍵ですが、これが解消できるような仕組みができれば、借家の人たちにも対策を「選ぶ」という形でとってもらえるということがわかります。
もう一つ、エコ家電のところ2番目に出ています「もったいない」というジレンマですね。これは繰り返し繰り返し、出てきました。私たち日本が持続可能な社会に向かおうとするときに、長く大切に使おうというのは非常に大切な価値観で、これが人々の間に根づいているというのは本当にすばらしいことだと思います。ですから、今回のロードマップで買い替えを促進するとしても、それに矛盾したメッセージにならないように、どのように伝えるのか、もしくはそういった価値観を大切にした上で、どのような取組ができるか――それを丁寧に出していかないと、このロードマップの数字だけを見て、「まだ使えるものを捨てさせるんですか?それが本当に環境にいいんですか?」という声はたくさんたくさん出てきました。
9ページ目は、これはもう言うまでもないですが、特に設備を変えるといったときには、持家か賃貸かでかなり変わってきますし、太陽光発電も一戸建てか集合住宅かで変わってきます。先ほどの6ページの、「ここまでいかないといけない」という目標達成の数字をここに当てはめてみると、高効率給湯器は、持家戸建だけではなく、持家集合住宅、そしてさらには賃貸の集合住宅まで広げていかないといけない。とすると、今のような自分の意思とお金で替えられるだけの人たちを対象とした施策では足りないということがわかります。一方、太陽光発電はロードマップの目標は、持家戸建のところをカバーできれば十分達成できますので、2020年に向けてはここを対象にすることで対策が進むと思います。
10ページ目は、対策行動の障壁もしくはその行動をとっている理由を、ここでは省エネエアコンを取り上げて、少し細かくご紹介したいと思います。1,000人に尋ねたうち、「省エネエアコンを買っている」人が353人、「買っていない」人が647人でそれぞれの理由を聞いています。ちなみに、アンケートの詳細は参考資料の7-1にあるので、後で詳しく見ていただければと思います。採用に至らない障壁を見ていただくと、まず「タイミングじゃない」。「壊れていないし、引っ越しも別にするわけじゃないし」ということです。もしくは「捨てるのがもったいない」とか、「捨てるときにも大変」とか、あとは「値段」、それから「今後どんどん値段が下がっていくから、今買わないほうがいい」といった意見もだいぶあります。もう一つは、先ほど言った「借家のために自分では替えられない」といった人たちがかなりいます。こういう人々や障壁に対しては、それぞれの打ち手として、どういった仕組みをつくる必要があるか、どういったコミュニケーションをする必要があるか。もしくは例えばエコアパートを認定して、それの市場での評価制度をつくる等、社会インフラとしての仕組みも含めて考えていく必要があります。
採用理由は、見ていただくとわかるように、「経済合理性として元が取れる」といったこともありますが、Non-Energy Benefitとして、「家事が楽になる」ということはだいぶ出てきています。この辺のアプローチも大事だと思います。
このあたりを詳しく見たものが次のページの11ページです。これは機器ごとに共通する障壁を出しています。それぞれの機器ごとの障壁の上位から並べたものです。見ていただくとわかるように「経済性」ですね。「初期費用が高い」という経済性と、「何年で元が取れる」という、その両方の意味合いがあります。「タイミング」については、大体の人は「壊れたら替えるけれども、壊れなかったら替えない」というスタンスを非常に強く持っています。「もったいない」は、先ほど言ったようにその価値観に沿った形のロードマップのイメージを描く必要があるだろうということです。「借家ないし物理的な制約」に関しては制度や仕組みを整えることで乗り越えるしかないだろうと思います。
12ページは、実際に採用した理由ですが、これはそれぞれの項目を見ていただいて、後でNon-Energy Benefitに○をつけてみてください。かなりこれが多いんですね。ですから、どういったことをアプローチのなかで前面に出したらよいかという、大事な点がわかると思います。
13ページは、買い替え促進だけではない暮らしのイメージを描こうということでワークショップを行った結果です。打ち合わせをしたわけではないんですが、先ほどのマクロフレームともかなり近いイメージが出てきました。今のロードマップに、「今の生活を変えないで省エネ化で減らしましょう」という一つの暮らしのイメージがあるとすると、「暮らしそのものを変えていきたい」というものです。ひとつは、「シェアする暮らし」です。例えばグループホームとかシェアハウスとか、キッチンやリビングを共有して、という暮らしで減らしていきたいというイメージもかなりあります。
もうひとつは、「農的な暮らし」で、例えば食料やエネルギーはできるだけ自分のところで自給したい、そういう暮らしの中でどうやって減らしていくかということであります。
ざっくりとですが、私が講演先で200~300人の人に手を挙げて、「どれがいいですか」と聞いてみたところ、省エネ積極買い替えが2割ぐらい、シェアする暮らしが3割ぐらい、農的生活が5割ぐらい、という感じでした。これは聞き方がかなりラフでしたので、もう少しきちんと精査して国民の描いているイメージを明確にした上でそれに沿った形でロードマップの描き方を考えたいと思っています。例えば省エネタイプの冷蔵庫への買い替えは、3つの暮らしのイメージのどれでも出てきます。でも、冷蔵庫の買い替えが目的ではなくて、「こういう暮らしをしたいから、省エネ型にしよう」という描き方が大事ではないかと思っています。
14ページは、口コミで広げてもらうための「情報ネットワーク」についてアンケートで調べました。見ていただくとわかるように、どういったコミュニティに属しているが行動を変えているか、そういったコミュニティにどういった働きかけをすべきかを考えられます。ネット上とかNGO、NPOですね。ごみやリサイクルの場合は、町内会のネットワークが結構効くという研究があるんですが、低炭素化に関しては、町内会はまだそれほど効いていない。としたら、町内会ネットワークにはどういう情報を出す必要があるのかを考えることができます。
最後に、言うまでもないですが、意識と行動は相関があります。ところが今、なかなかその意識が高いと言えない状況である、というのが16ページです。幾つか言葉が拾ってあります。「ピンとこない」とか、「よくわからない」といった答えが非常に多かった。2020年の25%削減を超えて、2050年の80%削減に向けては、こういった人たちも含めたあらゆる層の行動変容が必要とされるとしたら、今のうちからどのような伝え方をしていくか――これも当然考えていく必要があるだろうということです。
最後の2枚は、今お話ししたことのまとめです。きめ細やかな対策とアプローチをつくりながら、2050年に向けての意識啓発のコミュニケーションもしていく必要があると思っています。
以上です。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
それでは、委員の方々のほうから、ご意見、ご質問をいただきたいと思います。
毎度同じことを言っておりますけれども、時間が押してまいりましたので、簡潔にお願いいたします。
どうぞ、どっちからいきましょうか。それでは村上委員からお願いします。
○村上委員 先生方、大変いい報告ありがとうございました。
最初の安井先生と藤井先生にお願いでございます。最近、日本社会の劣化が著しいということがいろいろ言われているわけでございますね。例えば、過剰な規制とか、あるいは一度獲得された既得権がなかなか修正する社会的メカニズムがないとか、あるいは社会の意思決定のスピードが遅いとか、あるいは高価格体質とか、あるいは過剰スペックとか。もうこれから2050年の展望をする場合に、そういう今日本のこの劣化した社会が抱えているバリアを除くことを考えなければ展望が開けないんじゃないか、それはものづくりも同じじゃないかと思いますので、是非そういう視点を今後お考えいただければありがたいと思います。
○西岡委員長 こっちへ行きましょうか、大聖委員。
○大聖委員 ものづくりという視点でいいますと、やはりこれから技術者の育成というのは非常に重要なんですが、前にも言いましたけれども、私どもの大学、今年ぐらい出る学生が、2050年でちょうど定年を迎えるんですよね。ですから、彼らが将来技術者としてちゃんとそれなりの能力を発揮して、ハッピーな定年を迎えられるかどうかというのがかかっているわけですけれども、やっぱりそれには産官学で、そういうものづくりというものの重要性、将来の明るい展望ですね、こういったものを提示しないと、もう将来は身の丈の経済でいいんじゃないのという、そういうメッセージを送ってしまいますと、ものすごくそういう理系の学生がディスカレッジするというふうに思っています。
そんなことで、ちょっとこれは全体的な話になりますが、人材育成の中に、やはりそういう若手の技術者をエンカレッジするような何かメッセージを是非積極的に送っていただきたいということと、あと留学生でも中国とか韓国の学生なんか見ていますと、ものすごく将来に対して意欲があるんですね。それが今の勉学の支えになっているわけで、その点もどこかに織り込んでいただければなと。これは日本の教育全体の問題でもありますので、なかなか難しい面があると思っております。
○西岡委員長 杉山委員、お願いします。
○杉山委員 ありがとうございました。とても参考になりました。
その上で、何点かコメントをさせていただきたいというふうに思っています。最初に安井先生からご説明のあった、この50年、非常に遠い世界なので、説明を聞いていてもなかなかぴんときづらいところが正直あります。ただ、こういう社会像を描いて、そこからバックキャストするということは必要だろうということは十分承知していますので、できれば今から2050年を見るということは多分、そこの社会の主人公になっているのは2020年生まれの人たちだとか、2010年生まれの人たちがなっていくんだろうと。じゃ、その人たちをつくっていくのは、今これからそういう世代を生んでいく人たちなんだろうということになると、今の世の中どうしていくのかということが、やはり一番重要なことになってくるんじゃないかなと。その辺の視点もやはり必要になってくるんじゃないかなというふうに思いました。
そういった意味では、次に藤井先生のほうから出されましたものづくりワーキングの、これは、特に10ページ、11ページなど拝見させていただくと、非常にものづくりに特化という形で提案されておりましたけれども、特に雇用、経済成長等は、なかなかこれだけでは解決できないというご謙遜もあったように思いますが、逆にこれを見させていただくと、2050年までの具体的な道のりが非常に表れているんではないのかなというふうに感じさせていただきました。そういった意味では、ここに書かれている10ページ、11ページをもう少し議論していく中で、今やらなければいけないこと、逆に先ほどの安井先生の50年後の2050年を支える人材をどう今の世代がつくっていくのかというところともリンクするわけですけれども、今やってはいけないことは何なのかというようなところも政策的な面から出てくるのではないのかなというふうに感じました。
そういった意味で、さらに10ページの中で藤井先生の中では日本版低炭素ライフスタイル、価値観の醸成ですとか、日々の暮らしにおけるCO2排出量の見える化促進ですとか、そういったところも踏み込んで書いていただいておりますけれども、例えばここを具体的にどういうやり方をしていくのか、スマートグリッドの活用ですとか、民間にどういう設備を入れていったらいいんだろうかといったところも、少しここに付加していただけると、もっとよい、わかりやすい形になるんではないのかなというふうに思いました。
そういった意味では、最後、枝廣さんのコミュニケーションのところもすべて今のところと関係してくると思っているんですけれども、やはり話を聞いていますと、家計部門の中で初期投資にかかる負担をどうシステム的に回収してあげるのかと、どういう政策手だてをしてあげるんだろうかというところが多分メインになってきたのかなというところがわかりました。そういった意味では、米国、英国、いろいろなところでいろいろな初期投資の軽減策というのが試行されているということもありますし、そういったものが実際に生活者にとって有効なのかどうなのか。もしそういう施策があったら、今回の分析結果はどう動くのか、そういったのもあると今後の施策を選択する上で非常に有効になるんではないかなというふうに思わせていただきました。
あと、枝廣先生に、これ以上また調査をしろというのはなかなか言いづらいところがあるんですが、先ほど2050年の人たち、そこに暮らす人たち、主人公を考えたときに、今いる人たちの収入、就業形態別、その人たちのこの購入に対するものの意識、そこというのも少し見てあげる必要があるのではないかなと。それが、やはり将来を見た中で今現在何をしていかなければいけないのかといったところに、例えば環境、社会、雇用に対する措置、いろいろなものを今やっていかないと、もしかすると2050年に繋がっていかないんじゃないかというようなふうにも思わせていただきました。
少し長くなりましたけれども、以上です。
○西岡委員長 荻本委員お願いします。
○荻本委員 ちょっと似てきてしまうんですけれども、非常に長い期間を考えようとしているので、それを何とかするためにやっぱり人間が主役で頑張らないといけないと。どうして人間のところに負担がかかるかというと、恐らくちょっと古い言葉かもしれないけれども、非連続なことを今やろうとしていると思うんですね。今までは、過去10年見て、今から先10年見ようと。今やろうとしているのは、大分前提が違うことを組んで、50年を考えようとしている。そうすると、もう今までやってきたことが半分ぐらい役に立たないので、やっぱり人間の創造性というか、最後は根性だよという話になってしまう。ただ、その人間というのを分けてみると、物を買う、消費者、使ってくれる人、それから物をつくり出すエンジニア、それから新しい世代を担う学生さんとか子供とかいろいろいると思いますから、そういう人たちにいい環境、いいメッセージ、またはその発信力がないといけないということは重要になるんだと思いました。まず人かなと。
その上で、人に求められる幾つかのものを具体的に考えると、例えば、ものづくりということでいえば、ものをつくって売っていかないといけない。売れるものをつくっていかないといけない。そのためにはどういうものを新しい環境に合わせてつくらないといけないかというところから勉強し直さないといけないと思うんですね。今までエアコンとかいろいろなものをつくってきた、そのクライテリアが恐らくギャップで変わってきてしまう。だから、そこを変われるようなエンジニアも必要になる。または、外でビジネスをやる人たちはどうしても英語の環境が必要になってくるので、あまり物おじしないというのも必要になってくる。そういうものがものづくりとか消費者とかいうところで組み合わされるといいなと思いました。
それから、供給と関係する分野でいくと、かなり先を見通して、例えばインフラですね、インフラを整備していかないと、というところがございますから、これは一人一人では何ともならないところもあります。ですから、なるべく組織的な検討をして将来を見通して、どういうものにしないといけないのかということをまとめていかないといけないかと感じました。
最後に、私自身もエネルギー供給WGにいるんですが、複数のWGがあって、お互いがどうインプット・アウトプットするのかというのがちょっと見えにくいところがあって、恐らくマクロフレームが一番関係すると思いますので、ここから何がインプットとして出てくるのかとか、宿題としてくるのかというような構造をひとつ整理して、報告書というか説明資料にいただいたらよろしいかと思いました。
もう一つ、小さなコメントなんですが、やはり日本はというのか、情報の発信力がとても弱いと。それはどういうことかというと、私も自分であまりよく知らないことを調べようとすると、このごろはどうしてもネットに行きます。ネットに行くと何を感じるかというと、日本のネットは2回ぐらいつつくとおしまいになってしまうんですね。外国は幾らつついても終わらないというか、どんどんいろいろなところにリンクが張ってあって、そこに結構な文書量がある。私は、ネットを最大限に信用するとかいう話ではなくて、ネットに出すということはそこそこ勇気の要る、または情報が整理されないと出せない。やっぱり残りますから。それが出せるということは、ある世界はそこそこ情報が整理されていて、それを堂々と出せるようになっている。日本は後ろめたいわけではないと思いますけれども、どうしても情報量が足りなくて、そのリンクも足らないというところだと、やはり外国からの注目度も落ちてしまうしということもあろうと思います。例で申し上げましたけれども、発信力というのも、国内であれ国外で必要かなと思いました。
○西岡委員長 飯田委員、お願いします。
○飯田委員 できるだけ皆さんと重ならないところでは、まずエネルギーのところは私も委員で入っているんですが、今ちょうど政府全体としても全量買取制度が進んでいる中で、コストベースですね、今、素案としては一律価格というのが出ている中でコストベースが重要であるということをここでロジカルに書かれているというのは非常に重要であろうという、世界各国で行われている固定価格制度、一律価格というのはもう既に失敗していますので、それは政府部内で今後検討していく上での一つの素材になるかなというように思います。
それから、7ページ目にある、いわゆる再生可能エネルギーの普及がもたらす便益と負担の、特に便益がCO2以外にいろいろあるというところも重要な要素で、これに関連すると、前回もちょっと私、村上先生の後で補足をいただいた、先ほど枝廣さんの資料にもあった、ノンエナジーベネフィットですね。これは3段階で考えたほうがいいと思っていまして、ノンCO2ベネフィット、それからノンエナジーベネフィットという3層構造があって、ここをちゃんと切り分けておかないと、CO2、例の一律価格の話もCO2で割ると高いという話で、でもエネルギー全体で見れば実は非常にバランスが合って、さらにノンエナジーまで考えるともっとメリットがあるというふうに3層構造でちゃんと見ておかないと、このCO2のみで見る、いわゆるCO2偏差値主義的なものがかなり物事を歪めているところがあるので、そこのもう1層の切り分けというのが必要で、そのためにはここの資料における数字的なものも含めてここは非常に意味があると。
それから8ページ目のところの、これはもうちょっと、スウェーデンの経済学者のクリスチャン・アザール(Christian Azar)とかも出していますし、ISEPの試算を出していますが、これは2030年じゃなくて、もっと2050年とかもっと引き延ばしてくると、ものすごいメリットが出てくるんですね。時間軸を長くとればとるほど、再生可能エネルギー普及のメリットが出てくるといったものの、第一発目の資料としては非常にいいのかなと。
それから、9ページ目の今の固定価格制の買取の価格の中身は何なのだという意味での環境価値と、回避可能原価とその間に来る、まさに先ほどのノン環境価値ですね、その付加価値が非常に意味があるんだということも今後の議論のたたき台としては非常にいいのではないかというふうに思っております。
それから、枝廣先生のコミュニケーション・マーケティングは非常に今回重要な成果を出されているというふうに思います。これまで、一般の世界というのは何か普及啓発といったところでとどまっていたところを、もう一段踏み込んでいただいたので、今後いろいろ活用できるんじゃないかというふうに思います。
1点だけちょっと、この先の次の課題というか、さらに深彫りしていただきたいのは、この普及曲線が一般的に見ると、どちらかというとよく日本の中で根強い市場の自立化的なストーリーになっているので、これを、枝廣さんももう既に書かれていますが、例えば規制的な手法とかインセンティブ、さまざまな手法によってこのカーブというのは相当に変わってきたり、それこそ税とかであれば、その瞬間にすべてがゼロから100に変わるという、そういう手法もあるわけですから、あるいはソーラーオブリゲーションとか、つまりそういう、このカーブだけに頼り切れないところをどういう手法で埋めていったらいいのかというところをさらにこの次深めていくことができるのかなというふうに受け止めました。
以上です。
○西岡委員長 赤井委員、お願いします。
○赤井委員 ありがとうございます。私はマクロフレームのほうに所属しているんですけれども、マクロフレームワーキング、どちらかというと今ご紹介があったように、2050年の社会云々ということで議論しているんですけれども、そこからのバックキャストということで、ほかのワーキングのいろいろなロードマップあるいはさまざまな目標値とかが設定されてくるのかと思うんですけれども、基本的にはマクロフレーム以外は2020年断面の議論に集中されているように感じるんですけれども、先ほど荻本さんがおっしゃったこととも関係があるんですけれども、2050年の低炭素80%削減社会をにらんで2020年こうだという、そのお題目的に2050年は書かれているんですけれども、その論理的な整合性がどうなっているのか。特に荻本さんもご指摘のあったインフラの問題とか含めて、論理的な整合性がきちんとできているのかというチェックを一度する必要があるかなというふうに思います。
それから、エネルギーのところでこれは質問なんですけれども、7ページに。非常に細かい話なんですけれども、7ページの下に、再生可能電力の固定価格買取による負担というのがあるんですけれども、そこの2つ目のプロット、2020年の需要家負担額、総額7100億円からというのがあって、グラフは2020年までのとなっているんですけれども、これはどちらが正しいんでしょうか。積分量なのか単年の話なのか。
その上の表で、これはコメントなんですけれども、これはこのワーキングでの議論じゃなくて、別のところの報告書を引用されているので、回答は別に要らないんですけれども、確かに今おっしゃったように、いろいろなベネフィットを検討するというのはもちろん大事なんですけれども、例えばここで雇用創出効果に機器の輸入はないものとした。また、国外への機器輸出分を含むと、輸出分は別として、輸入はないものとした。その下には、化石燃料調達に伴う資金流出抑制効果というのがあるんですけれども、これはやっぱり、上では輸入はなしで下では燃料の輸入削減ということを議論しているのは、ちょっとバランスを欠いているのかなという気がします。むしろ、どんどん海外製品が入ってくることによるデメリット、それもグローバルに見ればいいのかもしれませんけれども、その日本という枠組みで見るとデメリットということもあり得るのかなというふうに感じました。
それから、枝廣さんのいろいろな調査、私もおもしろく拝見させていただいたんですけれども、もちろん枝廣さんご自身は百も御承知のことかと思うんですけれども、文章として、やっぱり2050年という、それこそ明日生まれた子供が主役になることを考えると、やっぱり教育というのを何か一言書いていただけるといいかなというふうに思います。
それから、ターゲッテッドアプローチというかコミュニケーションみたいなことを書かれているんですけれども、最近よく思うんですけれども、だんだん新聞みたいなものをじっくり読む時間がなくなって個人的にも反省しているんですけれども、例えば荻本さんのおっしゃったネットで何かを探すというのは能動的に情報を獲得していこうということなので、それはそれで我々みたいな仕事をやっているときは、便利は便利なんですけれども、逆に新聞みたいのを何となく読んでいて、受動的に入ってくる、ランダムに入ってくる情報の重要性というのもかなりあるなと。そういうのがなくて、だんだん自分の教養レベルが落ちてきているなと最近頓に感じているので、そういった、受動的なコミュニケーション手段みたいなものもご専門の立場から少し考えていただければなと思います。
以上です。
○西岡委員長 こちら行きましょう。大野説明員。
○大野説明員 各ワーキングともいろいろ教えていただきまして、ありがとうございました。大変勉強になりました。
3点あるんですが、1点目はエネルギー供給のワーキングに質問させていただきたいんですが、これは質問なんですけれども、一つはエネ庁さんが出されているエネルギー基本計画と、ぱっと見たところそんなに違わないようには見えているんですが、正確に言うとどこが同じでどこが違うのかというのは私としてはちょっと知りたかったところでございます。
それから、もうちょっと細かい点ですが、予測するときに一次エネルギーの構成とか、あるいは石油の価格をどういうふうに見ていらっしゃるかという点も、ちょっと細かいですが、できたら知りたかったところでございます。
それから、2点目ですけれども、これはマーケティング&コミュニケーションの枝廣さんのほうの15ページなんですけれども、意識と行動というところで、意識の差によって採用率に差があるという調査結果が出されておりますが、私も実感として全く同感でございまして、そうだろうということなんですが、ただ、私はこのグラフを拝見したときに、逆に思っていたより差が少ないなというふうにちょっと感じました。その辺が民生の難しいところなのかなと逆に思ったんですが、この辺、もう少しまたこういうことなんだよというのを教えていただければありがたいなと。
3番目に、これはどこのワーキングということではないんですが、全体を通したちょっと感じていることを申し上げますと、例えば自動車業界の場合、2020年というと、例えば今電気自動車なんていうのが話題になっていますけれども、そんなにCO2をがばっと減らすほど電気自動車が普及できるわけがないと思っていて、時間がかかりますから電気自動車は普及しますけれども、増えてきますが、そんなにCO2ががばっと減るほどは減らないというのは、私たちはわかっているわけです。
ところが2050年になると、何が起こるかわからないと、相当道路交通の状況が変わっていると。今とはかなり変わっているだろうと思っています。ということは、10年先と40年先というのは、10年先を4倍すると40年先になるのではなくて、質的に全然違うものだというふうに不連続的に見ております。ほかのセクターも結構そういう事情があるのではないかと思うんですが、あまり各ワーキングとも、どっちかというと私はその連続的に論じているような感じで見ていまして、この辺がちょっと不連続なんだよというところをもしいろいろ表現していただけるとおもしろかったかなと、ちょっとそういう感想を持ちました。
以上です。
○西岡委員長 屋井委員、お願いします。
○屋井委員 どうもありがとうございました。
私から質問は2つのワーキングに対してお願いしたいと思っています。一つはエネルギー供給ワーキングでありまして、12ページのところに非常にきれいにまとめていただいた表があって、大変勉強になりました。再生可能エネルギーを中心にまとめたということで理解しましたけれども、例えば、風力発電等は騒音等の問題もあるということで、これもよく知られているわけでありますけれども、いわゆる地域の合意形成のようなことが課題として書かれているわけですけれども、一方で、太陽光発電や中小の水力発電、こういったものについて、地域的に合意形成するような課題のようなものがあるのかないのか、あるいはそういうところについてもう少し深彫りをされるのかどうか、このあたりをお伺いしたいと思います。
それと関連するんですけれども、16ページにロードマップがありまして、これが3月と同じものかどうか私もちょっとわからないんですが、この中に地域社会の仕組みづくりであるとか、あるいはまちづくりや地域振興のための再生エネルギー活用という、後者については特に、別の目的でこういうものを導入して、それが別の目的というのはまちづくりとか地域振興に役立つのだという、こういう視点で書かれているわけですけれども、この点についても内容的にもう少し検討を進めていかれるのかどうか、お伺いしたいと思います。
それから、もう一つは、コミュニケーション・マーケティングワーキングのほうに対してなんですけれども、これも大変楽しいというか内容のあるおもしろい資料で、勉強になりました。どうもありがとうございました。
質問が若干ありますけれども、太陽光発電について9ページに、これは単身世帯が一番導入率が高いという、これはアンケートからなんですけれども、その辺がちょっと認識と若干違うものですから、そういうことなのかということを確認と、それとも関わりますけれども、今度は、これも大変興味深いのは14ページに同じアンケートでしょうか、どこから情報を得ていますかということがありまして、私がぱっと見たところ非常に興味を持ちましたのは、太陽光発電を採用している人たちがどことコミュニケーションをとっているかについていうと、町内会・自治会とか、NPO、NGOというのは非常に高いんですね。ほかと比べても高いですし、ネット上のコミュニティともそんなに遜色ないということで、意外に捨てたものじゃないなという感じがこの図面からはしまして、ネット社会だと言われるけれども、まだまだそうでもないという、ネットワークなのかコミュニケーションなのか、そういうものが地域単位でもあり得るんだということが感じ取れました。
そういうことで、今回のコミュニケーション、あるいはマーケティングについては、生活者単位ということで、個人単位で普及促進、ディフュージョンやぺネトレーションをどう考えるかという、マーケティング視点ということはわかるんですけれども、コミュニケーションというものをもう少し広くとらえて、地域単位とかコミュニティ単位とか、これも出ていますけれども、その辺りに展開していただくということがやはり重要なことではないかなというふうに思います。
それから、その場合に、経済合理性については書かれているわけですけれども、合理性という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、世界で通用している合理性という言葉は120ぐらいありまして、だから、経済合理性だけが合理性とは言わないんですけれども、だからこそ合理性というものは経済合理性だけを使うのだという立場もあるし、一方でいろいろなものが合理性という考えの中で語られているんだという立場をとるのか、そこら辺、どちらなのかちょっとわからないんですけれども、たまたま経済合理性だけが今日出ているので、それについてもお伺いしたいと思いました。
以上です。
○西岡委員長 ありがとうございました。冨田委員、お願いします。
○冨田委員 ありがとうございます。時間も限られていますので、簡単にしたいと思いますが、それぞれのワーキングの報告ということで、非常に興味深い内容だったというふうに思います。
ただ、今回は、それぞれの分野での研究がもちろん目的ではなくて、この中長期のロードマップの中にどう反映するかというところがポイントなわけですけれども、それぞれの分野のロードマップ、どういう施策をやっていくかというようなところについて、新たな検討が加えられているわけですけれども、結果として起きる20年後の姿というのが現実的かどうかというところに関して、さらに深彫りしていただければなというふうに思います。
2050年、超長期の目標に向けて、バックワードルッキングというか、バックキャスティングしなくてはいけないという考え方は当然あるんだろうと思いますけれども、現実の世界はこれから10年後、どういうふうに積み上げてそこに達成するかというところもあるわけで、そこのギャップがある限り、実際にはなかなかいかないというところがあるわけです。ですから、施策が十分かどうかと、これらの施策によって目標を達成できるのかというところに関しては、特に枝廣委員の分析のところでさらにいろいろなことをやらなくてはいけなそうだというところがわかってきたというのは非常に大事だと思うんですが、2020年の目標に向けての現実性という観点からさらにコメントを加えていただければというふうに思います。
以上です。
○西岡委員長 影山委員、お願いします。
○影山委員 エネルギー供給ワーキングに関する意見ですが、前回申し上げたように、CO2の排出量の割合からいうと、化石燃料の低炭素化、原子力についてもう少し検討していただいたほうが良いのではないかと思いますが、この供給ワーキングの思想として、とにかく新エネを中心にやるんだという思想であれば、これ以上意見をするというよりは、全体の中でまたご意見させていただければと思うのすが、その化石・原子力について今後どうされるのかというところはご意見をいただければと思います。
それから、新エネルギーについては、今後コストが下がるという想定をされていると思うのですが、新エネルギーも、例えば風力はだんだん設置する場所が厳しくなる、それから、送電線への距離が長くなって、コストがかなり膨大になるというような可能性もあるので、できれば、コストごとに導入可能量がどのくらいあるのか、そのようなものを計算していただきたいと思います。太陽光でもそうだと思うのですが、単にパネルの価格が下がるだけではなく、設置する側での厳しさが出てくる可能性があるので、できればコストごとの導入可能量も計算していただきたいと思います。
それから、9ページで環境価値についての話が出ており、一番上のところの固定価格買取制度の環境価値を3つに分けているのですが、固定価格買取制度の中ではこのように分けられていないと思います。このワーキングの中でこのように分けて理解するというのは、それはそういうものなのかもしれませんが、実際にやられていることと、この考えが一致しているわけではないということを書かれておいたほうが良いと思います。
それから、グリーン電力証書については、固定価格買取も含めて、国民の理解というのが非常に大事で、そこを前提にいろいろな制度ができているので、国民がわかりやすい制度を念頭において、いろいろな関係者の意見も聞きながらやっていっていただきたいと思います。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。
それでは、それぞれのワーキンググループのほうからもご回答願いたいんですが、質問が多かったエネルギーのほうからご回答願いたいので、大塚先生のほうに。
○大塚座長 たくさん質問をいただきました。どうもありがとうございました。激励のようなコメントもありましたのは、どうもありがとうございます。
赤井委員のご質問に対する説明でございますけれども、7ページの2020年と書いてあるのは間違いで申し訳ありません。2012年から2020年までの導入量に対する2020年断面の負担ということで、ちょっとミスリーディングだったと思います。2020年断面での負担であるので、そこを書いたんですけれども、2012年から2020年までの導入量に対する負担でございます。
それから、大野説明員に対する回答でございますけれども、エネルギー基本計画との関係ですが、原子力についてはエネルギー基本計画と同じものを使っています。太陽光については、エネルギー基本計画より少し多い値にしています。あとの原油価格とかについては、IEAの想定を参考にしていますけれども、細かい情報については次回にでも申し上げさせていただきたいと思います。
それから、屋井委員だったと思いますが、地域の合意形成との関係でございますけれども、説明資料の参考資料の6-3のスライドの13とか14、15、その辺りをちょっとご覧いただけるとありがたいのですが、先ほどおっしゃっていただいた太陽光との関係では、地域主導のものとしてこの13ページの、オンサイト発電のこのキューデン・エコソルとか、あと14ページのほうのグリーン電力供給サービスのネクストエナジーなどのものが典型的な例としてございます。
さらに、中小水力との関係では、16ページの右のほうにあります農業用水の発電、これは栃木県のものですけれども、こういうものがございますので、そういう地域主導のいい試みというのは出てきていますので、こういうのを支援していく必要があると考えているところでございます。
16ページのロードマップとの関係で、地域のまちづくりとかとの関係もやってもらえるのかということですけれども、これはエネルギー供給との関係ではこちらでさせていただくということですので、まちづくり自体はお任せしますので、よろしくお願いしますけれども、エネルギー供給との関係ではこちらで扱わせていただきたいと思います。
それから、影山委員のご質問ですけれども、先ほどもちょっと途中で申し上げていたように、化石燃料のところとか原子力のところは、あまり実際には深くは扱っていませんので、再生可能エネルギーを中心に扱っているというところがございます。その理由は、4ページのところにも書いておいたように、再生可能エネルギーはまだ原子力とか化石燃料のようなところのレベルまで達していないので、政策的に支援していく必要があるので、これを中心に扱ったという趣旨でございます。
導入の可能量については、ポテンシャルを見て検討していますけれども、ご指摘を踏まえてさらに深めていきたいと思います。
それから9ページのところでございますが、上のこの緑と黄色と青のこの3つを分けたのは、検討の結果出てきたものでございまして、一般的ではないかもしれませんけれども、48円という値段をどういうふうに内容として考えていくかというふうに検討しますと、こういうことになるのではないかということ、こちらから発信したいということで、こういうふうに考えていくべきではないかということを、このワーキンググループとして打ち出したいという趣旨でございます。考え方の説明の問題だと思います。
グリーン電力証書の扱いについては、先ほど申しましたようにちょっと検討中ですので、議論を深めていきたいと考えているところでございます。
以上でございます。
○西岡委員長 枝廣委員のほう、お願いします。
○枝廣委員 ありがとうございます。皆さんから「おもしろそう」「楽しそう」と言われてうれしいです。とても楽しい作業をさせていただいています。本当に楽しいです。
先ほど申し伝えるのを忘れましたが、参考資料の7-1に、障壁の生の言葉を拾ったものを添えてあります。ですから、是非後でご覧いただけると、もう少し生活者の実感が伝わると思います。
杉山委員からの初期投資への政策の手だてというのは本当にその通りで、海外の事例収集も是非したいですし、国内でも飯田市がやっている「おひさま0円システム」など、初期費用の壁を超える仕組みをいろいろやっているところもありますので、具体的な施策に繋げられるような調査をやっていきたいと思っています。
さらにいろいろな分析ということで、これはほかの委員の先生方も、今回のアンケート調査でさらに違う角度で分析できることもあるでしょうし、今回、入っていないこともあると思いますが、「こういう角度で」というインプットを是非事務局経由で結構ですのでいただければ、手持ちのデータもしくは今後の分析を進めたいと思っています。
飯田委員からの普及曲線のことですが、市場のみではだめだということが明らかになったのが今回の一つの成果かなと思っています。意識啓発・市場だけではだめだということがわかったので、規制なりインセンティブなり、どのような手が必要かということをこれから考えていきたいと思っています。
赤井委員の「教育」というのも本当にそのとおりで、ワーキングでもその議論はしておりましたので、最終的な取りまとめにはその観点も入れたいと思っています。
自動的に入ってくる情報は本当に大事で、ヒアリングでも「みんながインターネットをやっているわけじゃないのに情報はそこにしかない」と。「そこに取りに行けと言われる」という声もありましたので、そういった観点も大事に考えていきたいと思っています。
大野さんの意識と行動の差ですが、意識といったときにここでは非常に大きく、「温暖化が問題である」ということでまとめてしまっているので、ほとんどみんな、意識が高い層になってしまって、差が小さかったのかもしれません。ただ、意識といったときに、例えばリスク認知であるとか、責任帰属の認知であるとか、その対策の有効性の認知であるとか、さまざまな意識がありますので、もう少しそこは深く分析をしていきたいと思っています。
ただ、ヒアリングの感触だと、導入した人でも高い意識ではない人も結構いましたので、そういった別の要因もきっと大切なんだろうなと思っています。
屋井委員のソーラーの件ですが、今回は1,000人中3%が太陽光発電の採用者、つまり30人しかサンプルがありませんでしたので、ここで少し違ったイメージが出ているかもしれません。特に単身世帯は人数も少なかったので、所得との関係などもう少し分析してみたいと思っています。
それからネットワークの違いということでは、多分、ほかの機器に比べてソーラー発電というのは外から見えるというのが大きな違いだと思います。高効率給湯器やLEDは、家の中まで行かないとわからないですが。ですから、その付けている人に話を聞いてみたとか、地域でそういうのが広がっている様子がわかるとか、そういった太陽光発電ならではの特性もあるのかなというふうに思っています。
合理性に関しては、ここでの合理性とは経済合理性の話です。というのも、ロードマップでは「何年で元が取れる」という経済合理性で議論を進めようとしているようでしたので。そうではなくて、それぞれの合理性があるんだということが今回わかったのではないかと思います。「たとえ元が取れても、選んだりしている時間がない」というときには、それはその人にとっては合理性だと思うんですね。そういったこともきちんと考えていく必要があると思っています。
冨田委員からの、2020年に向けての現実性。本当にそのとおりだと思っていて、コミュニケーションやインセンティブなど、すぐにできることもありますし、すぐにできる仕組みもあるかもしれない。しかし、時間がかかるものもありますので、そのあたり、少しグラデーションをつけながら対策につなげていければと思っています。ただ、何をするにしても、実際に手を打ってから、それが人々の行動を変えて実績に繋がるまで、どうしても時間的な遅れがありますので、それも勘案した上で2020年の数字をどうやって計算できるか、これからもう少し詰めていきたいと思っています。
以上です。
○西岡委員長 藤井委員、お願いします。
○藤井座長 村上委員からご指摘がありました過剰規制の問題ですが、ものづくりにおいてもそれは該当すると思います。したがって、既存の規制等の整理が必要です。スマート化というのはまさにそういうことであり、あるいは政策、経営においてもそういうことだと思います。そうした整理が競争力の源泉の一つになると思います。
大聖委員からご指摘がありました技術者の育成、これはまさに我々の報告の非常に大事な、ある意味では、一番、核になるところです。日本の将来のためにも、産官学で人の育成ということを重視しなければいけない。
10ページのロードマップのところに、留学生についても人の育成と同時に、「場」を大事にするということを触れています。要するにこれは、日本がそういった人材育成の世界の拠点になる魅力ある国であることを再認識しようということです。今現在、恐らく日本は、外国人も住みやすく、安心・安全で、食事もお寿司もおいしいですし、気候も四季の気候が豊かで、世界的にみても、多分、魅力がある国の一つだと思います。その魅力をさらに高めていく必要がある。そして日本人の優秀な人材を育成するだけではなく、海外からの留学生や技術者については、例えば「カーボンパスポート」と称して、日本に入ってくる優秀な人材には、ビザやワークパーミットなどを優遇する特典を与え、優秀な人材が国を出ていく場合にはむしろ何らかの制限をかけるといった仕組みが考えられないかという案です。日本を優秀な内外の人材の拠点にするということです。もう一つ、人の問題で言えば、定年で退社する企業技術者などの海外流出も大変な問題です。11ページの「日本発の技術の国際普及」のところに、技術流出対策のための人材維持・技術維持の施策として、そっと書いていますが、これは要するに人材流出防止のために何らかの規制をしろということです。アメリカにはそういったセンシティブな技術流出については国によるチェックがあります。わが国にも、そうした制度がやはり要るのではないかと思います。
それから、杉山委員からロードマップのところを褒めていただきありがとうございます。実際にその日本版低炭素ライフスタイル等については、これはコミュニケーション・マーケティングの枝廣さんのところと相当かぶりますので、そちらのご意見を踏まえてやりたいと思います。「もったいない」の話が出ていましたが、これは実は買い替えには確かにバリアになります。ただ、基本的に日本人はそういう意味では、省資源型であるという側面があります。したがって、低炭素型の製品、サービス等が普及すれば、今度はそれが維持されていきやすい環境にあるともいえます。あるいは公共交通機関がこれほど普及している国も少ないと思います。こうした日本、日本人の良さを見直して、より具体的に政策に盛り込んでいければいいなと思います。
それから、先ほども出ましたバックキャスティングですが、ものづくりにおいても一般的には言えますけれども、それではどの産業が2050年にどうなるのか、あるいは新たな産業が2050年にはどうなるのかというのは、なかなかこれは簡単には言えないことです。やはりこれは産業、企業においては、積み上げと競争の中で生み出されていくものだと思います。もちろん目指すビジョンなり展望はそれぞれあると思いますが、実際には、個別の積み上げ方式で企業は淘汰選択されていくのではないかと、思っています。
以上でございます。
○西岡委員長 安井委員、お願いします。
○安井座長 私のところにそれほどダイレクトなご質問はなかったように思いますが、幾つか重要なキーワードをいただいたような気がいたしますので、ちょっとコメントを差し上げたいと思います。
まず村上委員におっしゃっていただいたことで、その社会的な障壁をどう考えるかという問題なんですが、これは多分、我々の2050だと、ないことが前提なので、むしろそれ以前の社会的障壁を別途リストアップする作業をどこかがやるべきじゃないかというように我々からは見えました。
大聖委員の学生の向上心云々でございますが、14ページにたゆみない技術革新というのが書き込んでございますので、是非ご活用いただければと思います。
杉山委員の言葉、いろいろいただいたんですけれども、その中で一番問題かなと思って、我々として考えなければいけないのは、将来の主役はまだ生まれていないのだから、今やってはいけないことというのはやってはいかんというところでございまして、それは一つのバックキャストのメリットだと思っておりますので、後でも申し上げますが、考えさせていただきたいと思います。
荻本委員のご指摘の中では、発信力、これは結構2050年中核をなすかなと、実際考えておりまして、今の話もございましたけれども、日本文化みたいなものと日本の技術というのはカップルしてやっぱり売り出すみたいな話をやらなければだめかななんて思っておりますので、考えさせていただきたいと思います。
赤井委員はマクロフレームで委員でもいらっしゃいますが、まさにさっきおっしゃっていただいた連続性なんかはご自分でおやりいただくようなことになるんじゃないかと、こんなふうに考えております。
それから、大野説明員に関しましては、2050になると、とにかく不連続はある、電気自動車はそうだとおっしゃいました。まさにそのとおりだと思いますので、バックキャストのまさにメリットを生かした形で何かをやっていきたいと思います。
冨田委員のご発言では、その2020年の現実性、それからバックキャストとの関連等々をご指摘いただきましたが、やはりバックキャストというのは現状を全く離れて中空に何かをつくることができます。そうしたときに、先ほど杉山委員のご発言で引用いたしましたが、やっぱり今やってはいけないことというのは、結構重要だと思うんです。例えば、路面電車というのを廃止してしまったわけですけれども、今考えてみると本当によかったのかということになるわけですよね。例えば、冨田委員の絡みで言えば、2050年、家庭にガスの供給はあるのかないのかとか、この辺も本当にゼロベースで考えられるのが2050かなという気がしています。
以上でございます。
○西岡委員長 ありがとうございました。
すみません、時間がずっと超えてしまいました。これで2つ目の議題が終わりまして3つ目の議題ということで、最終的な報告書を今月末ということを一応念頭にございますけれども、どんな形でやっていくか、事務局のほうから資料9で簡単にご説明願います。
○低炭素社会推進室長 それでは資料9でございます。これまでご議論いただきました内容をどのようにまとめていくのかということで、まずページ立てをお示ししております。今日は簡単にご説明いたしまして、後日書面等でこの項目立てについてのご意見を賜ればというふうに思います。
「はじめに」は、簡単に温暖化問題の内容、またこの小委員会の目的を書かせていただければと思います。
2としては、検討の経緯ということでどのようなことをやってきたのかということを簡単にまとめたいと思っております。
3以降が中身でございますが、中長期目標を達成するため、さまざまな対策・施策が必要でありまして、その検討に当たってどのような考え方を持って臨むのかということをまとめるべきだと思っておりまして、ここに3つ書いておりますが、これはあくまでも例示でございますので、これに追加等があれば、ご指摘いただければと思います。
4つ目が具体的な対策・施策の姿ということで、大きく分けますと3つに分かれておりますが、一つは温室効果ガスの現状をきちんと分析するということ、あと4-2といたしましては長期目標達成に向けてのこの80%を実現する場合の姿、4-3といたしまして、中期目標、2020年でございますが、ここは[1]から[3]ということで、まず15%、20%、25%、この3ケースに分けるということと、長期目標へのつなぎということで、2030年での排出の見通しというものを書いてはいかがかというように思います。
あと、おめくりいただきまして4-4といたしましては、今、ご発表いただきました各ワーキンググループのほうでご検討いただいている施策についての取りまとめを記載してはどうかということ。あと、それぞれ、今日もご指摘いただいておりますけれども、達成に向けての総合的な検討においての視点ということで、例えば実現可能性であるとか費用の分析、経済への影響の分析結果、国際的な公平性と長期への繋がりということ、また議論にも出てまいりましたが、温暖化、削減のみならず、副次的な効果、断熱が健康への影響があるなど、こういったものをまとめると。あと、ほかの施策との整合性、こういったものをまとめてはどうかということでございます。
5つ目といたしましては、達成に向けての留意点、今後の検討課題というのをまとめて、最後は「おわり」という章立てではいかがかということで骨子の案を提示させていただいております。
○西岡委員長 どうもありがとうございました。非常に長い間、多くの方々のご意見、お力をいただきまして、非常に大量のといいますか、知的蓄積があるものですから、これをいい形で報告書にまとめたいという具合に考えております。
今日は残念ながら時間がございませんので、皆さんのご意見をお伺いする時間がございません。書面でこの骨子あるいはその報告書の書き方全体で結構でございますので、ご意見をいただきまして、それに基づいて、多分1週間後、11月18日の次回の会合においてさらに深めた議論をお願いしたいという具合に考えている次第であります。よろしくお願いいたします。
それでは、事務局のほうで。
○地球温暖化対策課長 本日も長時間にわたりまして活発なご議論をいただき、ありがとうございました。
次回でございますけれども、11月18日木曜日9時から12時30分、同じくこの霞が関ビルのほうで行います。次回につきましては、残りのワーキングということで、住宅建築物、自動車、地域づくり、農山村を含みますけれども、のグループからご報告いただくということと、今ご説明しました取りまとめについて、引き続きご議論をいただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
○西岡委員長 それでは、本日の議事はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
午後12時44分 閉会