国内排出量取引制度小委員会(第12回)議事録

日時

平成22年9月10日(金)9:00~11:13

場所

全国都市会館 2階 大ホール

議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議題
    1. (1)制度オプション案について[2]
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配付資料

資料1 キャップ・アンド・トレード方式による国内排出量取引制度 制度オプションについて
資料2 委員からの意見
参考資料1 今後の新たな柔軟性メカニズムについて

午前9時00分 開会

○上田市場メカニズム室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会国内排出量取引制度小委員会の第12回会合を開始いたします。
 前回に引き続き、制度オプションについての議論をお願いしたいと考えております。
 本日は、委員総数14名中過半数の委員にご出席いただいておりますので、定足数に達しております。
 また、末吉委員は本日ご欠席、また、笹之内委員はご欠席で、説明員として、トヨタ自動車の飯見様にご参加いただいております。
 本日の審議は公開とさせていただきます。
 以降の議事進行は植田委員長にお願いいたします。

○植田委員長 それでは、早速始めさせていただきます。
 まず、配付資料の確認を事務局にお願いいたします。

○上田市場メカニズム室長 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 お手元に議事次第がありまして、配付資料のリストがあるかと思います。
 本日は、資料の1として、キャップ・アンド・トレード方式による国内排出量取引制度オプションについて、資料2としまして、委員の皆様からいただいたご意見、あと参考資料として、今後の新たな柔軟性メカニズムについてというものを配付させていただいております。
 参考資料1は、本日の審議で使用するものではございませんが、環境省の最近の取組として2国間、多国間の新たな柔軟性メカニズムを提唱し、フィージビリティ・スタディ等を進めておりますので、参考として配付させていただきました。
 以上でございます。

○植田委員長 よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、議事に入ります。
 本日は、制度オプションに関する議論の2回目になりますので、前回委員会でいただいたご意見を踏まえながら、制度オプションの修正案についてご議論いただきたいと思います。
 それでは、事務局から資料の説明をお願いした後、議論をしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○上田市場メカニズム室長 それでは、お手元の資料1をご覧ください。前回の修正点を中心に、ご説明させていただきたいと思います。
 まず、1ページおめくりいただきまして、ページの1でございます。制度オプションの提示についてということで、考え方を提示しております。
 最初の3つの黒の「■」、これにつきましては前回の文言を短くシンプルにした編集上の修正を行っております。新たに追加しましたのは、4つ目の「■」でございます。「各論点の課題の検討結果とオプションの評価を踏まえ、再度、制度の各論点の方向性を確認し、制度全体のあり方を取りまとめることとする」と付け加えまして、今回ご議論いただいたこのペーパーを基に、今後行う作業の次の手順を示させていただいているところでございます。
 資料、2ページでございます。制度上の各論点の整理のイメージということでございます。
 こちらの中身は追って各ページごとに説明したいと思いますが、全体の整理、構成といたしまして、資料の中で下線が引いてある部分、ローマ数字の<1>、<2>、<3>と大きなタイトルがございますが、今般、ローマ数字の<1>の制度検討を進めていく上での基本的な考え方、こちらの部分を新たに立てさせていただいたところでございます。
 こちらにつきましては、前回の資料でいいますとローマ数字の<2>、今後意見の集約が可能と考えられる事項と、ここの1に入っていた導入の意義といった箇所を、ローマ数字<1>の算用数字1、制度が果たすべき役割、こちらの方に位置付けさせていただくとともに、前回、参考として位置付けさせていただきました基本的な考え方の視点、こちらをこの2番の、各論点を検討していく上での視点というところに位置付けさせていただくものでございます。
 また、ローマ数字の<2>と<3>、タイトルもよりわかりやすくなるような表記の修正を行っております。
 あと、排出量の問題としまして、従前、ローマ数字の<2>の算用数字の1、基本的な方向性について意見の集約が可能と考えられる事項、こちらに入っておりました排出枠の総量、これについては十分な意見や議論がまだ必要ではないかという先般のご指摘も踏まえて、算用数字の2の方に移しまして、今回、記述を追加したところでございます。
 あわせて、前回ご指摘をいただきました国と地方の関係、こちらにつきましてもローマ数字<2>の算用数字2のところに書かせていただいたところでございます。
 1ページおめくりください。3ページでございます。こちらに、制度が果たすべき役割ということで、先般、導入意義として書かせていただいたものを記述させていただいております。
 導入意義という形ではなくて、制度が果たすべき役割という形で書かせていただきましたので、そういった視点で書くと、若干まず語尾が変わっているという点が1点ございます。
 加えて、内容の修正でございますが、[4]と[5]のところ。まず[4]のところで、キャップ・アンド・トレード方式ということで、特にそのトレードの効果として、先般は直接、排出削減努力への経済的インセンティブにつながるとしておりましたが、まず、そのトレードの役割を、「柔軟な義務履行を可能とする観点から排出枠の取引(トレード)等を認めるものである」。そして、これにより「価格がつき、事業者にとって排出削減努力への経済的インセンティブにもつながる」、こういった形に書きかえさせていただいているところでございます。
 加えて、[5]でございますが、こちらのところ、制度が果たすべき役割、その制度設計を行う際の配慮事項といたしまして、[5]の1行目でございますが、「経済の成長、雇用の安定等を図りつつ地球温暖化対策を推進するとの観点から」、この1文を、各委員からの意見を踏まえて加えさせていただいたところでございます。
 4ページをご覧ください。こちらは、各論点を検討する上での視点ということで、前回と柱立て、[1]から[6]については変わっておりません。表記については、[5]、[6]をよりわかりやすい形で書いておりますが、中身は同じでございます。
 その上で、まず、[1]から[6]についてグルーピングをしております。制度の役割そのものに係る視点として[1]を、制度がその役割を発揮するために必要な視点として[2]、[3]、[4]を、制度設計に当たりできる限り配慮すべき事項としまして[5]、[6]を位置付けております。
 その上で、皆様からいただいた意見を踏まえ、[5]の中に「・」として、地球規模で見て排出増をもたらすものとならないこと。技術開発・普及の取組を阻害しないこと。国際競争力を損なうものとならないこと。こういった記述を付け加えさせていただいております。
 5ページをご覧ください。こちらからは、ローマ数字の<2>番の1、基本的な方向性について意見の集約が可能と考えられる事項、各事項を列記しております。
 まず、対象期間でございますが、前回の資料から2つ記述があったところを1つに絞らせていただいております。絞らせていただいたその残りの1つ、これは長期のパスのシグナルといった記述ですが、これについては対象期間の中に記述するよりは、追って出てきます排出枠の総量に記述した方がよかろうということで、位置を変更させていただいているところでございます。
 対象ガス。これにつきましては変更をしておりません。
 (2)と(3)の間に、先般であれば排出枠の総量という記述がございましたが、これは後ろのほうに位置をずらさせていただいております。
 (3)、排出枠の設定対象でございます。こちらにつきましては、[2]の適用単位、一部表記を修正するとともに、一部追加をしております。
 追加をした箇所は、1つ目の三角のところのなお書きでございます。「なお、裾切り基準以上の事業所毎に企業の義務を分割するか否かについては、そのメリット・デメリットを評価して検討する」という点。
 「また、」といって、その次に加えている「複数の企業が一つのビルに事業所を設けている場合の取扱いについても検討する」、こちらについても前回の議論を踏まえて追加をさせていただいているところでございます。
 それに伴い、今後の検討課題というところで、2つ目のチェック欄ですが、複数の企業が含まれる事業所の扱い。これも追加させていただいているところでございます。
 7ページをご覧ください。費用緩和措置の欄でございますが、ボローイングのところの記述を若干修正させていただいております。
 1行目、「ボローイングは将来の不遵守リスクが高まることから認めないことが妥当と考えられる」、こちらは修正しておりませんが、ただし書きのところ、前回は、可能となるという形で、事実としてだけ指摘しておりましたが、語尾のところを「可能とするか否か検討する」という形で、検討事項として明記をさせていただいているところでございます。
 あと、すみません。7ページの外部クレジットと国際リンク。こちらは修正をしておりません。
 8ページの[4]、戦略的(費用緩和)リザーブ、こちらにつきましては、前回に比べて表記ぶりをシンプルにしまして、基本的にはリザーブ量の規模や使用要件、こういったものを検討課題として明記をさせていただいたところでございます。
 遵守期間・ルール。(5)でございますが、こちらにつきましては、若干検討と課題と方向性というものを分離して、明確に書かせていただいたところでございます。
 具体的には、1行目のところですけれども、「義務履行状況を毎年チェックするため、単年度とする方向で検討することとするが、義務を遵守する企業の負担の程度や排出量把握方法のあり方とあわせて最終的に整理」する、こう記述を変更したところでございます。
 また、それにあわせて検討課題として2つ目のチェック、遵守のための手続の具体的な内容、これも付け加えさせていただいたところでございます。
 (6)、排出量のモニタリング・算定・報告・公表、第三者検証。こちらにつきましては、1カ所だけ1つ目の三角の2行目、「統一的なルールの下で」の後に「毎年」というのを入れさせていただいたところでございます。これにつきましては、先般の資料では、(5)のところは単年度というものを断定的に書いておりましたので、あえて「毎年」と書く必要がなかったのですが、そこのところは最終的に整理するということで、検討事項を加えましたので、入念的に「毎年」というのを入れたところでございます。
 9ページをご覧ください。登録簿の記述ですが、こちらについては最初の三角の2つ目、こちらを加えさせていただきました。これは先般、今後の検討課題ということで、2つ目の排出枠の取引に関する法的規律のルール化という検討課題が、もう既に記述されていたんですが、それに関する説明というものがなかったところから、記述を追加したというものでございます。
 (8)の適切な市場基盤。こちらにつきましては、基本的には中身は変わっておりません。編集上の修正、わかりやすくというのは変えておりますが、1文を加えております。それは2行目でございますが、従前は「円滑に行われることが前提であり、適切な市場基盤として」とつながっていたんですが、その間に、「いわゆるマネーゲームへの批判・懸念もあることから」ということを、前回の議論も踏まえて追加をさせていただいたところでございます。
 10ページをご覧ください。こちらからは、検討作業の方針について概ね共通認識が得られる事項、となっているところでございます。
 まず、(1)。排出枠の総量というところで、これについては先ほどの<1>のところから、こちらのほうに場所を移させていただいたところございます。
 1つ目の三角は、記述は少し詳しくなっておりますが、前回の資料と中身は同じでございます。
 そして2つ目の三角、こちらを今回新たに整理して提示させていただいたところでございます。内容につきましては、そこにありますように、「排出枠の総量は、中長期ロードマップを始めとする我が国全体における中長期の排出総量の見込みを基本に、各部門における排出削減の取組の結果得られる排出総量の実現を確保するとの観点で設定することとし、この排出総量の値を目安として、事業者の削減ポテンシャルを考慮した排出枠の設定作業を行うものとする」という形で、考え方を示させていただいておりますので、この点についてまたご議論いただければと思います。
 あわせて、こちらの今後の検討課題のところの3つ目のチェック欄に、先ほど一番最初の対象期間のところで後ろにずらしました、その長期のパス、シグナルの記述について、こちらに移させていただいたところでございます。
 11ページのグラフは、前回と同じものを使用させていただいております。
 12ページ、排出枠の設定等に際しての配慮ということで、[1]、国際競争力や炭素リーケージの影響への配慮につきましては、特に前回から修正をしておりません。
 13ページ、国内外への排出削減に貢献する業種・製品への配慮、こちらについても前回と同様の記述としております。
 14ページ、国と地方の関係、こちらにつきましては、前回の議論も踏まえて事務局で案を作成させていただいたところでございます。
 まず、問題として2つあるというふうに位置付けた上で、1つずつ記述をさせていただいております。
 第1に、「法律に基づく国内排出量取引制度を導入する場合、既に地方公共団体が条例に基づき実施している排出量取引制度を、地方公共団体の役割そのままに共存させるには、排出量の算定・報告等の基準について統一的なものを整備することが必要であることから、少なくとも国の制度と併せて当該地方制度の内容を法律に位置付ける必要があると考えられる」、このように一度整理をしました。その上で、「この場合、そもそも対象事業者に過重な負担や混乱が生じないよう二つの制度を位置付けることができるのか、それとも全国で一つの制度とした上で地方の役割を規定すべきなのか、それぞれのメリット・デメリットを評価し、基本的な方向性を定める」ということで、今後の作業の基本的な考え方の手順を示させていただいたところでございます。
 もう一つの課題として、こうした法律の位置付けとその検討結果の内容にかかわらず、「既存の条例に基づく排出量取引制度において削減努力を行った事業者に対して、その先行して行われた削減努力を、新たな法制度の下で適切に評価する方策」、これも検討しなければならないのかと考えております。わかりやすく言えば、先行して取り組まれたところが、その先行して取り組んだことによって却って不利益を被ることのないように、適切に評価をするといったことを考えなくてはならないと認識をして、記述をしたものでございます。
 それぞれの基本的な方向性、作業を検討課題として1行ずつ書かせてもらったのが、その下の四角でございます。
 15ページをご覧ください。こちらは、ポリシーミックスの在り方の記述でございますが、これにつきましては前回と同様のものを書かせていただいております。
 16ページでございます。こちらはローマ数字の修正が、ここは直っておりません、<2>と書いてありますが、表題のところローマ数字の<3>でございます。大きく意見が分かれる事項というところでございます。
 こちらにつきましては、16ページですが、記述はほとんど変更しておりませんが、(2)の[1]のタイトルだけが、今回、「総量方式/原単位方式」ということで、前回は原単位方式しか書いていなかったので、編集上の修正ということで加えさせていただいております。
 17ページ、18ページ、こちらは前回と同じ表を使わせていただいております。
 19ページにつきましても、基本的に前回と同じものを使っておりますが、経済成長との両立の観点というところで、前回の記述を若干一部削除してすっきりさせた形になっております。具体的には総量方式のところに括弧書きで注釈がありましたが、それを削除しているところでございます。
 20ページから、オプションA、B、Cと3つ加えておりますが、基本的には前回の記述を踏襲しておりますが、大きく2点の修正を加えております。
 1つは、オプションA、B、Cのタイトルの下に、わかりやすく括弧書きで、それはどういったものを考えているのかという解説を加えたところでございます。この点につきましては、前回こちらの委員会では議論はなかったのですが、例えばオプションAであれば「電力直接方式+総量方式」といったものが、一般の方にはなかなか理解しにくい、なじみにくいということで、国民また多くの事業者の方にわかりやすい表記となるように、事務局で工夫をして加えたものでございます。
 あと、もう1点の修正は、それぞれの表記、説明のところに、若干評価に関わるような記述も一部混在していたというところで、それぞれのオプションの評価につきましては、本日の議論を踏まえて今後の作業ということで行っていこうと思っておりますので、その点につきましては、ここで一部だけ先取りして書くというのはバランスを失うので、そういったものは削除してシンプルにしたというところでございます。
 こうした視点での修正は、21ページ、22ページ、同じような形で付け加えさせていただいております。今言ったような指摘でやっておりますので、全体として分量が少し少なくなったところでございます。
 最後23ページは、これらオプションの部分に係る検討課題を一括して記述しているところでございます。基本的に前回とほぼ同様でございますが、特に修正をした点、追加をした点というのは、23ページの大括弧が3つありますが、2つ目の括弧の【排出枠の設定方法について】というところの、各方式のトップに1行、「事業者の削減ポテンシャルを考慮した排出枠の設定」、これはそれぞれの方式の中の課題というところを組み合わせれば考えられるのかもしれませんが、入念的に書かせていただいたところでございます。
 以上、修正点を中心に説明をさせていただきました。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に関わりまして、ご意見、ご質問等をお願いしたいと思います。いつものように、お手元のネームプレートを立てていただいてお願いしたいと思います。
 それから、事前に文書でコメントもいただいておりますので、ご発言の際にそれに触れていただくということもよろしくお願いしたいと思います。
 では、いかがでしょうか。
 事前に意見をいただいている方は、特に最初、まずお願いしましょうか。
 では、有村委員からになりますか。では、お願いします。

○有村委員 前回の議論をまた反映させて、この制度オプションについて改めてまとめ直していただきまして、ありがとうございます。
 今回のバージョンは、前回のいろんな議論が非常によくまとめられて反映されているというような印象を持っております。
 それから、それに付加的な意見ということで、私から出させていただいたのが、資料2の1番にあります。私のところでは、特に国際競争力とかリーケージという問題に関して研究をしておりまして、それに関する幾つかご紹介をさせていただくという形で、参考資料として提出させていただきました。
 この内容に簡単に触れさせていただきますと、前回も申し上げましたけれども、国際競争力とかリーケージの問題というのは、まず第一に、排出量取引固有の問題ではなくて、炭素規制すべてに関わる問題であると。排出量取引の中でもその問題は出てくるので、それに対する対処法としては、既に明日香委員も以前にこの委員会でご報告されたと思いますけれども、無償配分を使うようなやり方とかいうのがまず第一にあります、というのがあります。そのときに、私どもの試算もご紹介いただきましたけれども、貿易集約的な産業とかエネルギー集約的な産業に関しては、特にアメリカの法案で提案されているような形で、無償配分を多くするようなことによって、仮に短期的に費用が増えても、例えば5分の1程度に抑えられるのではないか。非常に費用負担が大きいような業種でも、費用がアメリカの方式、EUの方式などを使えばかなり抑えられるというような試算を我々の方で出しております。これが(1)の[1]について書いているところです。
 それで、さらに、もし排出量取引をやって、さらに費用負担が大きいというのであれば、アメリカのワクスマン・マーキー法案に書かれていたような、リベートという方式もありまして、この方式の場合にどのくらいインパクトがあるのかというのもアメリカの研究所である未来資源研究所と、関東学園大学の武田史郎准教授と一緒に試算を行っておりまして、その場合にも企業の生産活動へのインパクトを、試算では、例えば減少率を5分の1に緩和できるんじゃないかという結果が出ております。
 この[1]と[2]に関しましては、実は、最初の6月の委員会で参考資料という形で机上配付になった報告書の方に書かせていただいたんですけども、ここではちょっと発表する機会がなかったんですが、そういった形のリベート方式というのが考えられると。それの試算も一応我々のところで行っております。
 それから、さらに、それでも国際競争力とかリーケージの問題は心配であるということであれば、これは財務省の関税局で出された報告書で、ここの委員会でも机上配付されましたけれども、国境調整措置というのがヨーロッパ、アメリカで議論されていまして、財務省での議論では、WTOにも整合的なやり方でこういうやり方があるんだというようなのが出されております。その場で、その委員会で我々から報告させていただいたんですけれども、日本で国境調整措置を実施した場合に、例えばここでは(1)の[3]のところに書かせていただいておりますけれども、リーケージ率を4%ポイントぐらい低下させるような効果があるんだといったような形で、実は国際競争力とかリーケージに対するいろんな施策というのがあり得るので、制度設計が実際に行われるときにいろんな対処方法があるんだというようなところを、それなりの試算結果もあるんだということをご報告申し上げたいと思います。
 それから、(2)のところは、これもここの場でも何度出していただいたんですけれども、有償方式というのは非常にハードルが高いと思うんですが、昨今法人税の減税というのが非常に重要な課題として出てきていますけれども、その法人税減税の原資に、例えば排出量取引の有償方式の収入を使うという考え方もあるんだと。経済学の理論では、それは経済全体にはプラスになるんだというようなことを書かせていただきました。
 (3)、これは前回言わせていただいた件なんですけれども、電気をどう扱うかというところなんですけれども、今後、電気自動車というのが長期的にかなり普及する可能性もあるので、そういったことを考えると、間接方式というのが一つの考え方ではないかというようなことを書かせていただきました。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、大野委員、お願いできますか。

○大野委員 私の方からも意見のペーパーを出させていただいておりまして、ちょっと長い、7ページあるんですけれども、項目は3点でございまして、1つは国と地方の問題でありまして、それから4ページのところで排出枠の設定方法、企業単位か事業所単位かという話があって、最後が7ページのオプション案、特にオプションCについて触れています。
 国と地方の関係は、前回の記述がございませんでしたので、かなり長く書かせていただいたんですが、事務局の方でご検討をいただきまして、大分記述をしていただきましたので、ここでは中身を繰り返しはしません。
 ちょっと今回の中で1つ気になる点があるので、それは後で申し上げたいと思います。
 ただ、ここでご紹介したいのは、この1番の部分を、一応私の名前で意見を出せていただいておりますが、来年度から東京都に続きまして、キャップ・アンド・トレード型の排出量取引を導入する埼玉県とも調整いたしまして、東京都と埼玉県の共同の意見として記述を出しているということをご紹介しておきたいと思います。
 それから、2番の排出枠の設定方法につきましては、これも大分事務局でご調整いただきまして、大分ここで質疑させていただいた論点を踏まえられた案になっておりますので、だから特にここでは中身は繰り返しません。
 ただ、問題はやはりオプションCでございまして、これは引き続き前回と同じ案が出ているわけでございますけれども、やはり原単位で配分する案というのは、もともと総量削減の保証がないということは、この中にも書いておりますし、基本的な考え方で排出取引制度は総量削減が必要だということをうたっていることと、ちょっと整合しないというふうに考えられます。
 ですから、私としては、オプション案のCをこの委員会の取りまとめに入れるのはふさわしくないんじゃなかろうかと思っていますので、この点は取扱い、ご議論いただければと思っております。
 その上で、あと本日の資料の中で、国と地方の関係の部分でございますが、14ページでございます。この部分で、まず2つ目の星のところで、既に条例に基づいて取り組まれた事業者の方の削減努力を評価する方策を検討と書いていただきましたのは、大変大事なことと思っておりまして、やはり国の制度が入ってきた場合に、先行する事業者の努力が評価されることが大変大事だと思いますので、この点を明確に記述していただいたのは非常にいいかなと思っております。
 それから、その上の方で、やはり国と地方の関係を明確に法律で書いたほうがいいということもそのとおりでございまして、この点も異議がないということでございます。
 ただ、1点ちょっと気になりますのは、一番最初のイントロのところで、国内制度を導入する場合に、地方制度を共存させるためには、地方制度の中身を法律に位置付ける必要があると考えられるという部分でございまして、これは記述をされたほうがいいというふうに私も思うんですが、逆に言うと、記述がないと条例の制度は存続してはならないというふうにも読めなくはないので、これは法律と条例の関係というのはかなり微妙な問題があって、積極的な記述がない場合に、それで条例の制度は、現に現在、東京都は作ったわけですから、ちょっとこの表現は少しこのままでは承服し難いものがあるということを申し上げたいと思います。
 また、ここで言っている国内排出量取引制度の中には、ここではオプションCも入っていますので、当然これはCのようなものも含めて考えられるということだと思いますが、オプションCの場合には、これは私どもの理解からすれば、総量削減制度は考えられませんので、全く扱いが違うかなということふうに考えられますので、そういう意味も含めまして、ちょっとこの表現についてはこのままでは納得し兼ねるということを申し上げたいと思います。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、影山委員、お願いできますか。

○影山委員 資料として意見書をお配りしておりますけれども、一部、資料の中身に反映していただいたのか、あるいはそのふりをしたのかというようなところがございますので、今のご説明に沿って、全体的に発言をさせていただきます。
 基本的に今の資料につきましては、これまで発言しておりました私の意見や、提出した意見書の内容を盛り込んでいただいていないと思いまして、非常に残念に思います。
 私は、排出量取引にはさまざまな課題があることから、排出量取引制度そのものの有効性に疑問があると、制度導入の是非を議論してくださいと訴えてまいりました。この小委員会でいろいろな検討がなされて、ますます懸念が強くなったのではないかと考えております。したがって、こういった議論を尽くさなければ、制度の導入には到底賛成できないと考えております。
 制度導入の是非については、意見が分かれていること、委員会の総意ではないことを書き込んでほしいと申し上げてきたのですが、現状、採用していただけていない状況にあります。
 具体的に申し上げますと、まずは日本の温暖化対策の大枠の議論がなされるべきだろうと。真水で国としてどこまで削減するか設定し、ポリシーミックスで、どのように効率的に達成するかが議論されるべきで、その中で排出量取引の位置付けを議論し、それから制度の内容が議論されるべきだと。こうしたものを並行して議論すべきと申し上げておりまして、単に制度の内容の議論だけでは全く意味がないのではないかと考えております。
 それから、LCAの議論、あるいはリーケージについて制度を入れる中で考慮すると、有村先生もそういうお話だったように思いますけれども、大事なのは温暖化対策、CO2削減なのか、それともいいものか悪いものかわからない排出量取引制度を入れるということなのか、こういったところは大きな疑問があります。
 LCAは温暖化防止のカギを握ると考えておりまして、どれだけよい製品が世の中に出回るかと、それが普及するかというのが、日本のCO2削減の切り札ではないかと思っております。それに悪影響を与える、これと相入れない制度というのは導入すべきではないと考えます。LCAを考えて排出量取引が日本のCO2削減に有効なのかどうかの検討をまず行わなければ、中身だけの検討では、極めて不十分と言わざるを得ません。
 日本のCO2削減にこの排出量取引が有効なのかどうか、あるいは国民負担などを考えて、日本の国民にとっていい制度なのかどうか検討することが必要です。これがよくわからない、不明確のままでは制度の導入に到底賛成することはできないということでございます。
 こうした意見は、私の意見だけではなくて、この委員会の複数の委員の意見でもあると思いますし、ヒアリングした団体からもそういった指摘がたくさんあったと思います。
 委員長も意見を聞くだけではなく、真摯にそれを取り上げると言っていただいたはずなのに、それを資料に盛り込んでいただけていないというのは非常に遺憾に思います。
 したがって、まず、この資料の中に、制度導入の是非について議論があり、地球規模の排出削減のために国内排出量取引が実効性ある対策か否かという点についてまだ委員の共通認識として見解がまとまっていないということをぜひ明記していただきたいというふうに思います。
 あとの個別の議論については、また、もし時間があれば述べさせていただきます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、飯見説明員、お願いできますか。

○飯見説明員(笹之内委員代理) トヨタの飯見です。
 ご提出させていただきましたペーパーに基づいて、ご説明させていただきます。
 全体からしまして、一部部分的に修正いただいたところもありましたが、全体としては、まだ我々の考え方をご理解いただいていないかなというのが印象でございます。
 まず1つ目は、制度が果たすべき役割を、3ページ目についてでございますが、ここに書きしたように、国内経済の低迷や円高、将来的な国内市場の縮小など、日本のものづくりは大変厳しい状況にあります。そこで、経済成長を果たしながら温室効果ガスを減らすという観点は最も重要でありますし、日本の雇用を守るためにも、経済成長を果たしながら温室効果ガスを減らしていくという観点を、制度が果たす最も重要な役割として明確に記載していただきたいということでございます。
 この点からいきまして、次に書きましたキャップ・アンド・トレードと最初からタイトルに書いてありますが、これありきではなくて、これは役割でなくて、これは方法論ではないかなというふうに思います。
 さらに、その下ですが、事業者にとって排出削減の経済的インセンティブにつながるという記述もありましたが、この程度の炭素価格の程度では、インセンティブにならないということで、これは断定できないのではないかと。この辺はまだ、欧州とかの状況を見ても証明されていないということでございます。
 それから、次、2.の各論点を検討する上での視点の4ページ目ですが、いろんな重要な視点ですが、特にここにおいても経済成長を促進するとか、雇用を確保する等の記述が抜けております。特にこの記述におきまして、3番目の中の項目として、「制度設計に当たりできる限り配慮すべき」と、できる限りというふうになっていますが、やっぱりこれはかなり大事な視点で、少なくとも上の「必要な視点」には上げるべきじゃないかというふうに考えます。
 次に、3.の対象期間ですが、5ページ目ですが、2013年からというふうに規定されておりますが、これも中身の議論をして始めて出てくるものかなというふうに思いますので、今後の検討課題にすべきかなというふうに思います。
 次に、4.の適用単位でございますが、企業、我々は特に社内の工場だけでなく連結の子会社等、柔軟に需要変動を応じて機動的に生産場所とか品目を変えて、生産効率を高めるというところで生産をしてきております。その結果が、結果的にCO2の削減にもつながってきておりますので、その実情としましては、企業の決算が連結でありますので、連結とかいう適用も対象に考えられるのかなと思いますし、さらに国内の排出量取引の試行もやっておりますような、業界団体というのも選択肢の1つかなということで、その辺もきちっと検討すべきだというふうに思います。
 それから、1つ飛ばしまして、6.で排出量のモニタリング、8ページ目ですが、企業にとって第三者機関による検証は追加コストになります。こういう検証をしっかりやればやるほど、排出量取引でお金を使うのか、それとも投資で使うのか、検証で使うのか、この辺がだんだんわからなくなって、いろんな企業の投資資金がだんだん減っていくということかなと思いますので、こういった認証に代わる自主的な報告とか、こういったのも取り混ぜながらやっていくべきではないかなというふうに思います。
 それから、次のページ、7.で排出枠の総量ですが、10ページ目ですが、技術的・経済的に削減可能以上の目標を企業に課した場合には、海外等からの排出枠購入による補てん、海外への生産シフトによる国内活動量低下で対応することが容易に考えられることであります。これは、最も重要な経済成長を果たしながらCO2を減らすという点とは相入れないものがありますので、今言いますのはトップダウン的なやり方というのはちょっと十分に議論すべきだというふうに思います。
 さらに、8.ですが、ポリシーミックスのあり方、ページ15ですが。これも、先ほどからご指摘がありますように、ポリシーミックスは、世界・国内のCO2削減に効果が上がるか、国民負担を最小にして費用対効果を高く行うことができるか、国際競争力への影響はどうかということについて、排出量取引でなく他の政策も含めてトータルに検証するということが必要である点を、今後きちっと課題に挙げて、ここでも確認していく必要があるかなというふうに思います。
 主に以上でございます。よろしく願います。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、明日香委員、お願いできますか。

○明日香委員 どうもありがとうございます。
 最初に大きなコメントですが、どこまでの議論に共通認識があるかという話なんですが、私は、基本的にはある程度方向性は決まりつつあるのかなと思っています。
 実際、いろいろ排出量取引制度に対する批判的な議論もあったと思うんですが、具体的にどうすればいいかという、具体的な対案、ポリシーミックスということなんですけれども、このポリシーミックスの中身に関して具体的にこうすればこうなって、より国民、日本全体としてベターだと、かつ確実に25%削減できるというような議論はなかったと思いますので、そういう意味では、ある程度の方向性はできつつあるのかなと認識しています。
 あと、2番目の大きなポイントとして、やはり環境が経済かと、いつも議論が出てくるんですが、多分何回も言うようにトレードオフだと思うんですね。よくこういう議論をされているときに、やはり企業に対する負担という話になるんですけど、企業に対する負担を軽減すれば、その分国民全体の負担は上がるということです。だから単純に言えば、法人税を下げるけど、その分消費税を上げるかどうかという議論をしているんだとは思います。
 それに関しては、というか、そういうふうに考えれば、単純に企業にある程度優遇措置をすることが国全体としての成長につながるかどうかというのは、そう簡単には言えないのかなと思っています。
 3番目に、LCAの話がいつも出てくるんですが、もちろん日本の省エネ技術を世界で普及させて、温暖化対策につなげるというのは重要だと思うんですけれど、やはり仕組みとして考えるのはそう簡単ではないと。例えば日本は省エネ技術を輸入したときには、多分クレジットをあげなきゃいけないでしょうし、日本が効率の悪いものを輸出したときには、その分何らかの責任が生じると思うんですね。そういうものすべて考えると、かなり大幅なアカウンティング方式の変更が必要であって、オーバーオールで日本にとってプラスになるか、メリットに変えようか、悪くなるかというのは簡単ではないかなと思っています。
 それが、すみません、ちょっと大きなものですけど、個別に簡単にお話し。
 まず、3ページのところで、役割というところなんですが、やはり私は2020年に25%という大きな目標があるというのを、数字として入れたほうがいいのかなと思いました。もちろん、国の目標として政治がどうなるかわからないとかいろいろあるとは思うんですが、やはり25%。非常に大きな責任というのを持って、それに対して国全体としてやらなきゃいけないというものを示すためにも、数字があったほうがいいかなと思いました。
 次に、そのリーケージなんですけれど、先ほど有村先生もおっしゃったように、いろんな緩和措置というのはあります。一つちょっと誤解があるかなと思ったのは、幾つか、例えば4ページに地球規模で見て排出増をもたらすという表現があるんですが、一応IPCCの報告書で、いろんなモデルのいろんなリーケージの計算をした平均というのは、15から20%のリーケージ率というふうになっています。
 それというのは、分母が先進国で排出削減をした分、分子が途上国でその分それによって増えた分なんですね。なので、100を超えると地球全体ではプラスになるんですけれど、15か20では地球全体ではプラスにはなっていないということだと思います。なので、もちろんゼロの報告も欲しいですし、スピルオーバーのところがあるとマイナスになるのがもっといいんですけど、少なくとも地球全体で増えるというような計算結果というのはほとんどないということだと思います。
 あと、次に7ページの費用緩和措置で、国際リンクのところなんですが、いつもならまた出てくるんですけど、海外排出枠市場への資金流出などのデメリット、これは多分デメリットと言っちゃうと、そもそも何で排出量取引制度を国際的に入れるんですかということになりますが、そういう意味では国内でほかの企業にクレジットのお金を払うことも企業にとって資金流出になるかもしれないんですね。
 逆にそういう意味では、普通は取引があるということはメリットというふうな認識だと思いますので、そのデメリットという言葉、批判があるのは確かなんですけど、デメリットいう言葉は使わないほうがいいのかとは思います。
 次に、10ページ、スライド10の割当のところなんですが、ここで事業者の削減ポテンシャルを考慮したとあるんですが、もちろん事業者の削減ポテンシャルを考慮したというのも重要なんですけど、これ以外では、多分指標はこれ以外ではないと思いますので、例えば公平性等も、もちろん公平性とは何かという議論は難しいんですけれど、そういうのも入れたほうがいいかなと思います。
 そういう意味では、例えば業界単位のものというのは公平ではないと思いますし、そういう意味で、ちょっとほかの課題というのも入れたほうがいいのかなとは思います。
 もうすぐ終わります。
 17ページの間接・直接排出のところですが、ここで価格転嫁されればとか、されない限りというふうにあるんですが、99.9%価格転嫁されることになると思います。ほかの国での経験によるとということですが。欧州では無償で割り当てても価格転嫁があって、今、電力会社……別に電力会社だけじゃないんですけど、企業はかなり他の利益を得たということになっていますし、それは企業の経済合理的な行動という意味では価格転嫁は当然ですし、ある意味では政府もそれを認めるような形で議論を進めたほうがいいのかなとは思います。
 次に、18ページの割当の方法なんですが、やはり一番オークションのいいところで、かつグランドファザリング、ベンチマークの悪いところというのは、行政コストだと思うんですね。必ずグランドファザリング、ベンチマークの場合は、自分の排出量はこうだとか、自分は特別なんだというロビイングが政府に対して出てきます。それもほかの国の経験からそうでして、そのとき結局何が起きるかというと、声が大きなところは得をして、声が小さいところは損をすると、まさに不公平な状況が出てくるかと思います。そういう意味でオークションが一番公平で、かつ行政コストが低いということは強調されてもいいのかなとは思います。
 19ページの、次の参考4も、先ほど冒頭に申し上げたように、成長というような言葉が幾つか出ているんですが、もうちょっと本当は厳密に使わなきゃいけないんじゃないのかなとは思います。国のGDPなのか、一企業のコスト削減につながるのか、そこら辺は重要なことなんですし、もうちょっと厳密に書いたほうがいいのかなとは思いました。
 以上です。すみません、長くなって恐縮です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、則武委員、お願いできますか。

○則武委員 文書で出した部分につきましては、もう見ていただければと思いますので、追加で若干、前回もお話しした点でちょっと反映されていない部分を追加で。
 まず、オプションのA、Bについてなんですが、前回も話させていただきましたが、なぜ電力が間接か直接かで、総量方式が無償か有償にと決められるのかがちょっと理解できないので、どちらの場合も有償・無償は同じ考え方になるのではないかと。どちらかといいますと、電力間接方式の方が対象事業者が多くなるので、すべて無償割当というのは難しくなるんじゃないかなと思います。
 それから、8ページの排出量のモニタリング・算定・報告・検証のところですが、第三者検証につきまして、やはり検証の負担が大きくなるというのを避けるためにも、現在ある認証制度の活用というようなことも検討すべき内容として追加していただけたらありがたいなと思います。例えばISO14001の認証と同時に審査するようなことも考えられるのではないかと思っております。
 それから、4ページの、制度設計に当たりできる限り配慮すべき事項の、制度対象者におけるコスト負担が著しく大きくならないことということに関しては、この制度だけではなく、ポリシーミックス全体を考えた上で著しく大きな負担とならないというような考えが必要ではないかと思います。この制度では、若干の負担が大きくなっても法人税減税等で緩和されるというようなことも考えられると思いますので、やはりポリシーミックス全体として考えて著しく大きな負担とならないことというふうなことが望ましいのではないかなと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございます。
 それでは、増井委員、お願いします。

○増井委員 どうもありとうございます。
 前回欠席させていただきまして、申し訳ございません。
 私から出させていただいたコメントというのは、前回の資料を見させていただいてのコメントになっております。
 それはそれとして、それとも関連するところが幾つかあるんですけど、今日の3点だけコメントさせていただきます。
 1つは、経済的なインセンティブのところなんですけれども、先ほどのご発言で、安い炭素価格では余りインセンティブにならないのではないかというようなお話もありましたけれども、今回のこういう議論、あるいはこの小委員会の中での業界のヒアリング、そういうふうなところでのいろんな意見を聞いてみますと、やはりコストの削減というものに対し、かなり企業の方々というのは熱心に取り組んでいらっしゃるということで、たとえ仮に値段が安かったとしても、それはかなりのインセンティブになるのではないかというふうに思います。また、それが消費者なりといったところにシグナルとして与えられるという、その意味というのは非常に大きいのではないかというふうに思っております。
 2点目なんですけれども、これも先ほど来、各委員から出ておりますが、制度のオプションのところなんですけれども、本日の資料の10ページ目のところでは、排出枠の総量というふうなことが書かれている一方で、オプションの中では原単位方式ということ、かなり矛盾というふうなものが生じているのではないかなということで、こういう矛盾を内在させた制度そのものは、果たしてどういう意味があるのかなというふうにも受け取られますので、その辺はぜひとも検討していくべきだというふうに思っています。
 また、オプションそのものを、今回その原単位方式も含めて3つ出されておりますけれども、どういった理由、どういった背景で出されたのか。仮に制度の親和性というふうなものがあるということであれば、そういったところもきちんと明記していただきたいというふうに思います。
 最後、3点目なんですけれども、LCAに関するところ、今日の資料1でいいますと、13ページ目のところなんですが、もちろんLCA的な発想、配慮というのは非常に重要であると認識しておりますけれども、先ほど明日香委員からありましたように、輸出・輸入等の問題もありますし、また、仮にLCA的に有効であるというふうなことになりますと、家計部門からのCO2の排出量が削減されてくるということで、全体の排出枠の調整というふうなところで対応することができるのではないかなと考えております。
 仮にそういうふうなところでも、技術開発等が阻害されるというふうなことになりましたら、それはまた別途、技術開発あるいはR&Dといったところで、別途何らかの優遇策等で技術開発、技術革新というふうなものを促進させていくということをしていけばいいのではないかなというふうに考えています。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、諸富委員、お願いできますか。

○諸富委員 私は、意見は特に事前に出してございませんが、委員の皆様のご意見をまずお聞きしてということでの意見なんですけれども、影山委員から出されたご意見です。
 全体、まず大枠の議論をきちっとしてから真水をどうするのかとか、それからポリシーミックスの考え方を排出量取引だけではなく、全体のポリシーミックスを考えながら、その中にちゃんと排出量取引の役を位置付けた上でどうするのかということを考えるべきだということ、そのものはそのとおりだと思います。
 ただ、根本から是非論をこの場でやるべきかどうかということについては、私は少しアジェンダが違っているのではないかなというふうに考えておりまして、整理しておりませんが、温暖化対策基本法の中に3つの政策手段に書かれた中に、重要なものとして排出量取引があるということを念頭に置きながら、排出量取引制度の制度設計を組んでみようではないかということが、まず趣旨であったのではないかなというふうに思います。
 その議論のあり方として、根本論からやるのも一つなんですが、ここでのアジェンダはきちっとまず制度を組んでみて、時間がちょっともうないと思うんですけど、前回もお話をしましたように、本当であれば組んでみた制度についても定量評価をやはりきちっとやってみて、それが正規や雇用に大きな影響を及ぼさないかどうかをチェックした上で、その結果をもう一度メンバーで協議をして、影響がある場合には、その制度設計をさらに変更していくというような作業を本当はすべきなんでしょうけれども、まずはきちっと制度を組んでみるということが課題なのではないか。
 そして、有村先生のご発言にもありましたように、制度の中できちっとご懸念の点を考慮していく仕組みを作っていくことは可能だというふうに思いますし、リーケージについても、かなりの程度それを抑制する初期配分の工夫等によって、それを抑えることは可能であるというようなご発言がございましたが、そういった研究成果をフィードバックしていくことが本当は必要なのではないかなというふうに思います。
 そういう意味では、非常に中心は制度評価というのが、本当はオプション3つ、あるいは2つでもいいんですけれども、についてさらに詳細な制度設計に突っ込んでいくためには必要ではないかなというふうに考えております。
 経済成長とか雇用についての認識というのは、我々皆共有をその意味ではしているというふうに思いますし、この制度が経済成長や雇用について根本的に大きなマイナスになるような制度にしたくないということは、もう共有されているというふうに思います。それを排出量取引の制度設計の中でうまく組むことによって対処しようと考えるのか、そもそもこの制度の是非を考えようではないかという辺りで若干、見解、認識の相違があるのかなというふうに思いました。
 それから、これは岡山説明員の名前を出されている、あるいは笹之内委員、岡山説明員の名前が出されている意見書についてですけれども、適用単位のところで、やはり企業の決算が連結で行われているのを考慮して、連結の適用を検討対象とすべきである。それから、排出量取引の試行実施の結果を踏まえて、業界団体も一つ選択肢としてあるというご意見があるんですが、私はこれは問題ではないかというふうに考えています。
 特に業界団体単位となりますと、そもそも排出量取引制度の利点である企業単位、あるいは少なくとも事業所単位で限界費用を均等化して費用を最小化していくというプロセスが、ほぼ全く働かなくなってしまいますから、これはもうそもそも制度の根本のメリットを一つ大きく失ってしまうということも意味しますし、それから公正取引委員会でも、私もメンバーに加わって排出量取引に関する検討をいたしました結果として、恐らくこれを業界単位で排出量取引制度を始めるということは、独占禁止法上の疑いがあるという見解も示されております。この点も問題となってくるのではないかというふうに思います。
 それから、MRVの適用単位としても、もし業界単位ということになりますとさらに大きな問題になってまいりますので、そういう意味では、業界単位というのは私はあり得ないのではないかなというふうに考えております。むしろ国内統合市場の試行実施の反省点とすべきではないかなというふうに考えております。
 それから、資料の本紙の方で大野委員からご指摘のあった国と地方の関係、こちら書き込んでいただいた14ページですけれども、(3)の国と地方の関係の1つ目の矢印のところで、これは大野委員も触れられた点ですけれども、地方公共団体の役割をそのままに共存させるには、排出量の算定・報告の基準については統一のものを整備する、これはもうそのとおりでしょうと。少なくとも、国の制度と地方の制度を法律に位置付ける必要があるということについて、大野委員は、もしこれが法律に明記されないのであれば、やってはならないということを意味するのであれば、ちょっと問題だというふうにおっしゃいましたが、私もそのとおりだと思いますけれども、もし逆に、国と地方の役割分担をしっかり明記する形でむしろ位置付けるというのは、一つの案ではないかなというふうに思います。
 私自身は、国は直接排出に基づいて排出量取引をやるなら実施すべきだと考えているものですけれども、国がエネルギーの生産側といいますか供給側をコントロールして、地方、特に東京都の実績なども評価しながら、地方はむしろそのエネルギーの需要側、消費側を、より生活に近い部分ですね、こちらをコントロールするという形で役割分担をした上で、両方で排出量取引制度を導入するということは可能ではないかというふうに考えています。
 そうなった場合に、東京都や埼玉県は先行事例としてやっておりますけれども、例えばそのほかの道府県の意見を実際に聞いてみますと、なかなか東京都のようにはやれませんということですので、ここは法律上、地方排出量取引制度というものを法制化し、国と地方の役割分担を明記するというやり方も一つはあるのではないかなというふうに思います。そういう意味での法律上の明記ということもあり得るのではないかなというふうに考えております。
 最後に、その2点目の矢印のところは、恐らく国の制度が東京都の制度と同じような対象者を含むようなケースになっていく場合には、この削減努力を調節する必要があるという点については、そういうふうになるのかなというふうに思いますが、そもそもどういう形で国の制度を組むのかによって、ここの点の重要性が出てくるのかなというふうに思います。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、大塚委員、お願いできますか。

○大塚委員 今、諸富委員が言われたことともちょっと関係しますけれども、政府の対応としては基本法案を維持するという考え方だと思いますので、今回の委員会は、基本的にはその大きな枠の中で検討していると思いますので、方向性を打ち出せればというところが、今回の委員会での最大なポイントではないかと思っています。
 どうしてもその総量削減をするという観点からは、排出量取引しかないというところがございますので、そういう観点からは、できるだけ産業界の委員の方々のご意見も入れながら、制度を作っていくということで議論をしてきたわけでございまして、今回のペーパーは、そういう観点でかなり産業界の方々の意見を取り入れたものになっているのではないかと思っております。
 具体的には、例えば4ページのところで、今回、配慮すべき事項として[5]と[6]というのが大きく取り上げられたのは、そういうところの一つの反映でございまして、私もこれでいいと思っていますが、「できる限り」というのにもしこだわるのであれば、[5]、[6]は著しくとか、わかりやすいとかという話なんで、「できる限り」はなくても私は別にいいかなと思っているんですけれども、もしそういうところも修正できるのであれば、していっていいのではないかと思っています。
 それから、10ページのその総量のところは結構重要なところですけれども、先ほど明日香委員の言われたように、もちろん公平性のことも考えなくてはいけないので、これ以外にも考えることは多々あると思いますが、削減ポテンシャルも考慮するというところが一つの配慮を示しているということではあると思います。
 それから、13ページのLCAについても、追加割当にするのか、オフセットのようなことにするのかというのは、まだ検討事項にはなっておりますが、LCA的なことについても配慮するということで、これは影山委員は、さっき余り考慮されていないというふうに言っていましたけれども、結構考慮しているんじゃないかというふうに、私自身は考えているところでございます。
 そういう、できるだけご配慮しながら、取り入れられるものは取り入れていくというのが、今現実的な方向性として出ているわけで、私はその方向でぜひ取りまとめをしていっていただければと思います。
 諸富委員が言われたところで、私もちょっと気になったんですけれども、さっきの飯見説明員が言われたことに関しては、適用単位を業界にしてしまうというのは、ちょっと競争法上の問題があるものですから、あと排出枠取引というのは、もともと経営者がCO2と温室効果ガスの削減に取り組むというところにポイントがあるものですから、業界単位というのはちょっと受け入れられにくいのではないかということがあると思っております。
 以上、簡単ですが。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、冨田委員、お願いできますか。

○冨田委員 ありがとうございます。
 私も意見書を出しておりますので、それを使いながらご説明させていただきます。
 当該箇所と書いておりますのは、前回の資料に基づいて意見を出しておりますので、ちょっと整合がとれておりませんけども、その点はご容赦いただきたいと思います。
 まず最初に、諸富委員、それから大塚委員もおっしゃいましたけれども、今回の排出量取引制度の議論は、温暖化対策の基本法案をベースに議論がスタートしたということは、皆さんご承知のとおりです。この法案の中で経済の成長、雇用の安定、それからエネルギーの安定的な供給の確保を図りつつ、温暖化対策を推進するということを書いておりますので、今回の国内排出量取引制度の制度設計の前提となるような基本的な考え方として、各委員とも異論がないということをまず確認すべきではないかと思います。
 諸富先生も、経済の成長、雇用の安定、こういうのは異論がないというふうにおっしゃいましたので、制度設計を進めていく上での基本的な考え方の一丁目一番地に、その考え方が示されてしかるべきではないかと思います。
 それから、各論のところですけれども、これまで何回も議論を重ね、今日も皆さんの意見をお聞きしていて、各論点について意見がかなり隔たっていると私は理解をしております。
 事務局のほうで集約が可能と考えられる、あるいは、概ね共通認識が得られると、なぜ判断されたのかよくわからないところですけれども、意見集約はできるだけすべきだと思います。そこで、何が理由で意見がそれだけて分かれているのだろうかというところを考えてみると、私の出した意見書の中の2番目の「○」ですけれども、この制度によってどのような取組を制度対象者に求めるのかということについて、皆さん、委員の方の間で濃淡があるということではないかと思いました。
 ここに書いた例というのは、すべてじゃないかもしれませんけれども、かなりの部分は網羅しているのではないかなというふうに思います。
 本来、求められるのは、一番上に書いてある省エネとか燃料転換、再生可能エネルギーの導入といったような、この制度対象の中での省CO2というのが中心だろうと思いますけれども、現実として、世界あるいは日本でCO2が排出されてしまう行為というのは、ほかにもいろいろあるわけで、どういう行為をこの制度によって企業に求めるのかというところを、まず皆さん意識合わせをする必要があるのではないかと考えます。
 それから、3番目のところですけれども、系統電力の使用に関わる削減効果のところです。今回の資料の中では、23ページ目のところに、一番上の方ですけれども、※印でなお書きということで、「削減効果の評価の考え方については、様々な考え方がある」ということが書かれています。
 前回、この話をしたときに、ある委員の方あるいは傍聴者の方から、「あなた、何を言っているのかよくわからない」ということを言われましたので、少し裏面の方に具体例ということで記載させていただきました。
 細かい中身を説明するつもりはありませんけれども、考え方の差によって、例えばこの例で言えば、70トンの削減になるのか、あるいは40トンの削減になるのかということについての評価が大きく違うというところです。詳しい説明はされませんでしたけれども、影山委員の意見書の中には、この40トンに相当する考え方をとるべきだという考え方が示されております。私は70トンに相当するような効果があると思っております。
 この評価について考え方が決まっていない中で、本来40トンしか効果がないものを排出量取引制度の中で70トンの効果があるような評価にしてしまうのは、やはりおかしいでしょうと。逆に、70トンの削減効果があるにもかかわらず、40トンの効果しか与えられないというのもおかしいのではないでしょうかということです。
 私は、この小委員会の中で何度も申し上げているのは、この小委員会の中でこの問題について結論を出してほしいということではなくて、この問題が国内排出量取引制度の基本に関わる重要な論点であるということを、この小委員会の中で認識すべきだということを何度も申し上げておるつもりでおります。
 それから、裏面の方ですけれども、排出枠の総量、それから個別対象者の排出枠の設定のところですけれども、中長期のロードマップの議論とどう結び付くのかというところがわからないということを何度も申し上げておりますけれども、本来、企業に求められるべきである省エネとか燃料転換とか再生可能エネルギーの導入とか、こういったものについて、どの制度対象者がどのくらいのポテンシャルを持っているかというのは、ロードマップの議論からは出てこない話だと思います。それを超えて義務を与えられた場合に果たす義務履行の手段として、どういうものがきちんと用意されるのかといったようなことについて、是非論を含めて議論をすべきではないかなというふうに思います。
 それから、最後の原単位方式のところですけれども、一昨日、ロードマップの小委員会の中で、ものづくりワーキンググループについての中間の報告がございました。その中で、ものづくりの低炭素化ということについて、非常に大事だという考え方が示されたわけですけれども、ものづくりの低炭素化の評価指標として何か適切でしょうか。私は、原単位というのが一つの有効な指標であるというふうに思いますけれども、そういうことを配慮した制度になっているべきだというふうに考えます。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、新美委員、お願いいたします。

○新美委員 私は、最初にその是非論を論ずべきかということについてですが、これは諸富委員、大塚委員と同じ意見でありまして、基本法案の中でとりあえず一つの制度として設計してみろというのが我々小委員会に課された課題だと思いますので、制度設計の上での問題点というのを洗い出すのが大事であって、是非というのは、むしろ我々の小委員会の課題ではないだろうと。やれるとしたらロードマップ、あるいはもっと上の親委員会の中環審そのものでやるべきだろうと思います。
 それから、もう一つ、国と地方の関係を法に明記するべきかどうかということですが、私は明記したほうが、課題で今後よりよいだろうと思います。法に明記すべきでないということになりますと、確かに地方自治体にフリーハンドを与えるということになるわけですが、今度は逆に、その場合には法による支えがないということになりますと、それをどうディフェンドするか、すべて自治体にディフェンドしてもらうと。二重規制であるということで、全部条例についてチャレンジされたときに、自治体がディフェンドできるのか、そういうことになるかと思いますので、その辺は法で支えられるものなら支えたほうがいいだろうというふうに思います。
 あと、単位を事業単位にするか業界団体にするかという議論ですが、これはモニタリング等の問題を考えるということもさることながら、一番問題なのは、法的な責任を、場合によってはこれ罰則までつけるかもしれないというときに、法主体でないものにどうやって法的な効果を及ぼすのか。事業所単位でやった場合に、事業所で何か問題を起こしたときに誰が責任を取るのか、やっぱり企業じゃないか、事業者ではないのかということになってまいりますので、事業所単位でモニタリングをするということはわかりますけれども、これを法的な主体として取り上げることは非常に困難だろうと思います。
 ましてや排出量の取引をするときに、取引では法主体性がないものとの取引というのは、およそ考えられないと思います。取引を考えたときに、法主体じゃないものと取引をするなんていうのは、およそ考えられない。登録簿には名前を書いたりするんですが、登録簿に何の名前を書くのか。法主体じゃないものを登録したってそれは幽霊みたいなものですので、何の意味もないというふうに思います。ですから、法的効果を及ぼすというつもりであるならば法主体でなければならないというふうに思います。
 それから、業界団体でというご意見も業界の方から出ておりますが、これは、一つは競争法の問題で疑問があるというのは大塚委員がおっしゃったとおりですが、それはさて置くとしても、業界団体は法的な責任をどうやって負うつもりなんでしょうか。これは何かあったときに団体として法的な主体性を帯びるのか、これは合併でもするのか、連帯責任でも負うのかと。その辺を明確にしないまま業界で何とかやりましょうというのは、これは法的な仕組みとしては全然通用しないと、そういうふうに思います。その辺はぜひとも考えていく必要があるだろうと思います。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、武川委員、お願いできますか。

○武川委員 全体として非常によくまとめていただいたんではないかなと思いまして、産業界の方から厳しいご意見もありましたが、さはさりながら、産業界の方のご意見も可能な限り取り込んでいる部分もあるのかなと私自身は思っていまして、よくまとめていただいたんじゃないかなと思っています。
 2点ありまして、1つが、このペーパーなり委員会の位置付けというものをやはりもう少し明確にしたほうがいいかなと思っていまして、諸富先生からもありましたように、真水やポリシーミックスのあり方が決まらないと議論ができないんじゃないかというご意見は、それは私も本当にそのとおりだとは思っています。
 ただ、だからといって今ここで制度の議論はできないか、あるいはすべきでないかというと、それはそういうものではないんだろうと。アジェンダという言葉が先ほど何人かの方からありましたけれども、この委員会は基本法案に基づいて、どういう制度オプションがあるのかを検討しようという、それが目的なのかなということだろうと思いますので、やはり具体的議論をしていくということが大事かなというふうに考えています。
 一方、ちょっとこの中であえて欠けているかもしれないなと思う視点があるとすると、このペーパーを使って、あるいはここでの議論を使って、今後どういうところでどういうふうに何を検討していくのか、あるいはほかで検討されたこととここで検討されたことをどう融合していくのか。同じことなんですが、ここで検討されたことの全体の議論の中での位置付けは何なのか。それこそ、中長期ロードマップであったり、多少地方の検討も含めて、今後どうするのかという辺りを少し、ここのペーパーの中に書くのか、もう少し別のところに書くのかはいろいろあると思うんですが、位置付けることによって、先ほど申し上げたこの委員会での役割というのは、具体的制度の設計にあったんだということを、あるいはここで決められていないことは何で、そこは今後どう決められるのかというところをもう少し明確にする余地はあるかなというふうに思いました。これが1点目です。
 2点目なんですが、全体の視点としては非常によく取り入れられていると思う一方で、一つ、もう少し書いてもいいかなと思うのが、4ページのところなんですが、エネルギー安全保障は、これを入れるかどうか自体が論点だと思うんですが、私はもう少し強調してもいいのかなと思っていまして。基本法案でも、エネルギー安全保障というのは確かに書いてあるんですよね。雇用や成長というのは、ある程度コスト負担が大きくならないというようなところで、この中でもカバーされている気がするんですが、純粋な意味でのエネルギー安全保障というのをどう考えるというのは、これは一つ論点だろうと思っています。
 エネルギー安全保障を重視すると、低炭素ということだけから考えると、ひょっとしたらトレードオフの関係かもしれなくて、だからこそ視点として入れるんなら、ここにやっぱり書いておかないといけないんではないかなというふうに思っています。
 例えばですが、論理必然につながるわけじゃないと思うんですけど、オプションAというのは、エネルギー安全保障というよりも低炭素というのかなり軸に考えていくような、そういう視点なんだろうと。つまり、エネルギーを評価するときには、低炭素であるということを一つの評価の軸として、そこで優劣をつけていくという発想につながりやすい。これは論理必然ではないんですが、つながりやすいと。
 オプションBをとると、電力の事業者への原単位規制のあり方次第ではあるんですが、そうではない要素を考慮する余地もある。例えば、エネルギー安全保障の観点からは、こういうエネルギーミックスが望ましいと、したがって原単位としては、このぐらいの改善なり、このぐらいの水準を目指すんだということを、もう少し取り入れやすいのかなという気もしていまして。
 何が言いたいかというと、この視点がオプションの選択等々にも影響を与える場面というのがあるんではないかというふうに考えていまして、ここはいろんな意見が当然あるとは思うんですが、一方で基本法案に書いてあることを入れないというのも、それはそれでどうなのかなという気もしていて、ここはぜひほかの委員の方のご意見も伺ってみたいところです。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 諸富委員、意見があるようですけども、一巡したので、この時点で。また後ほどご発言をいただくことができると思いますので。
 事務局の方からお願いします。

○上田市場メカニズム室長 今までさまざまなご意見いただきました。中での意見のやりとりというところで、少しクリアなところもありますが、事務局として補足すべきところを、何点かご質問もあったところですので、回答させていただきたいと思います。
 まず、大野委員からいただいだオプションCについての意見ですけれども、これは、実は今、武川委員からの意見にも関係してきますけれども、ちょっと2ページをご覧いただければと思うんですが。
 ローマ数字の<3>で大きく意見が分かれる事項というところで、オプション部分というように分かれて、A、B、Cと書いてあるんですが、そのA、B、Cの上に、一応どうしてA、B、Cというのを作ったかという理由を示しております。これは、総量方式のところの有償・無償というのをひっくり返す場合もあるんじゃないかというご意見にも関係するかと思うんですが、オプションを作るに当たって、環境保全への効果というものをどのぐらい重視するのかというベクトルと、経済活動への配慮というものをどのぐらい維持するのかというベクトルで、A、B、Cというのを作ってみたというふうなとこでございます。
 Aは、その環境保全の効果、例えば補足率とかそういったものを考えて、ないしはいわゆる排出量取引制度の原理原則に従って理想を求めるとどうなるかというものです。他方、Cは、その経済活動への配慮という視点から考えていくと、どこまでが可能なのかというところです。Bはその間ぐらいをとってみたというものでございます。
 そこで、Cについてのご意見をいただいたんですが、ここのCの点につきましては、基本法案の中でも明記をされているということですから、実際にCというか原単位方式ですけれども、それを実際にここの場で十分ご議論をいただいて、これはまだ今回はやっておりませんが、次のステップとして、A、B、C、これらについてメリット・デメリットを十分ご議論いただいて、その結果、どのオプションがいいというふうに絞れるのか、それともなかなかそれでも絞り難いのか、十分ご議論いただくために、議論をしなかったということではなくて議論をしたということが必要と考えておりまして、考えられるあらゆるものを掲載しているわけでございます。
 ただ、このA、B、Cというのが、例えばAはAダッシュの方がいいとか、CはCダッシュの方がいい、そういったご議論があれば、そういったものをベースに、次回以降ご議論させていただければと思っているところでございます。
 また、何人かの委員の方から、そもそもポリシーミックスとか制度の導入の是非、あり方について議論をした上で、詳細な議論をするべきであると。また、そういったものがなければ、そういうことはできないんじゃないかと、濃淡はありますが、そういったご意見もいただいたところであります。
 それにつきましては、これはまた何人かの方からご発言がございましたけれども、本小委員会を4月に第1回を開催した際に、この小委員会では基本法案を踏まえた具体的な制度設計を政府として行う必要があるという、その時点での認識でございますけれども、それに資するような制度のあり方について、専門的な検討、論点、整理を行うことについて確認をいただきたいと、こういうことでスタートさせていただいたところでございます。
 基本法案は廃案ということになりましたが、その基本法案を提出した際の政府の決定というものを変更したわけでもないので、引き続き、我々事務局としてはこの制度のあり方についてご議論をいただきたいと考えております。最初の小委員会をスタートした時点でのお願いは、引き続きこちらの委員会でご議論をいただければということで、中身の議論をしていただければと思います。
 また、先ほどのオプションCとかAとか見ていただくとわかりますように、排出量取引制度といってもここで議論しているものはかなり大きな幅があると、こういうときに、そもそも排出量取引制度を導入するのか否かといったような議論をするときにも、議論の対象とする制度が大きく変わっていると、そこの認識に大きなずれがあると議論もかみ合わないとこういうこともございますから、日本で仮に導入するとした場合、どういう制度がベストのものになるのかといったことについては、議論をいただいた上で、さらに、ここの場ではないかもしれませんけども、導入すべきかどうなのか、また、ないしはその他の施策との関係という観点で見ればどうなのか、そういった議論も、まずはその具体的なイメージが議論をされる方の中で共有されていくということが大切かと思いますので、ぜひとも制度の議論、中身の提案についてご議論いただければと思います。
 その点につきましては、時間があればということで、影山委員からは特に言及はありませんでしたが、ご意見として個別の論点についてもいろいろいただいておりますので、引き続き個別の課題についてもご議論をさせていただければと思います。
 あと、これは冨田委員、何人かの方、また先ほど武川委員からもありましたけれども、基本法案で書かれたものについては、しっかり記述すべきではないかという点ですけれども、それについては、今回の修正ということで、3ページでございますが、基本法案の条項を引きまして、3ページの[5]のところに追加しましたという分ですけれども、「経済の成長、雇用の安定等を図りつつ地球温暖化対策を推進するとの観点から」、これは基本法案の案文の目的のところから引用させていただいたところございます。
 あと、そのほか、リーケージとかLCA、この辺りについていただいた意見につきましては、本日この資料に基づきまして、また今後、検討課題をたくさん列記しておりますので、作業をしていかないといけない、論点ごとに詰めないといけないと思います。とりわけ今回の分類をしているものの中で、ローマ数字の<2>の2番のところにつきましては、作業の方針について、共通認識といっても、作業はこういう方向で作業していきましょうということで、中身についてはまたこれからご議論をいただかないといけないと思っていますので、リーケージ、また排出量の総枠、国と地方の関係、ここら辺についていただいた意見につきましては、本日いただいた意見も踏まえて、次回以降、論点を議論する際に皆さんに整理をしてご議論をいただければと思っているところでございます。
 そのほかにも多く意見をいただいたかと思いますが、もし再度この点は、ということがあれば、まだ時間はあると思いますので、そのとき指摘いただければと思います。
 以上でございます。

○植田委員長 それでは、2巡目というか、また今の説明を受けてということもございますでしょうし、先ほどそれぞれの委員のご発言に対してということもあると思います。
 では、諸富委員からお願いします。○諸富委員 冨田委員への質問という形でもいいでしょうか。
 冨田委員から出していただいたご意見、2枚目のところの排出ケースの考え方ですね、これは非常に理解できるなと思ってお聞きしていたんですが、これは実際には電気を作る際に、電力会社が排出を実際に上下動させる場合には、例えば何らかの形で原子力発電所の操業を停止した場合には、火力発電所を実際には動かして、電力を供給増加させるということで対応するということに見られるように、実際には、火力発電所で調整しているのではないかと。したがって、調整電源が火力なので、火力平均で排出ケースというものを考えていくべきではないかと、そういうお考えですよね。
 これは、この考え方自体がとられるべきであるということはよく理解できるんですが、その中でさらに質問ということになりますが、石炭の場合、石油の場合、天然ガスの場合ってありますよね、火力といいますと。これらの違いはどういうふうに評価されないといけないのか、あるいは火力は火力で一つのカテゴリーで考えればよいというふうに考えられていらっしゃるのか。
 それから、2点目としましては、電力会社間の相違というのは考えなくてよいのかということですね。例えば、天然ガスと石炭火力のミックスの具合は電力会社で違うと思うんですが、そういったことは考えなくてよいのかということですね。
 それから、これは排出量取引制度のそのものではないですが、排出量取引を実施する場合のベースになる、これは温対法上の問題でもあるかと思いますが、こういった考え方で、実際には温対法上は全電源平均、原子力から水力や火力すべて含めた形で、平均で計算されていると思うんですが、なぜ限界電源の考え方が採用されていないのか、何かテクニカルな問題がありとされているのか。これは冨田委員のお考えでも結構なんですが、お教えいただければ思います。
 以上です。

○植田委員長 また後ででも、今、もしさっとお答えできるならお願いします。

○冨田委員 マイクがあれば。

○植田委員長 そうですか。では、お願いします。

○冨田委員 ありがとうございました。
 お答えしますけれども、本来ここの場で議論する話かどうかというところがありますので、簡単にさせていただきたいと思います。
 電気のような間接排出の場合には、系統電力の需要に関わるような温暖化対策によって、実際にCO2の排出量が変わるのは発電所側です。どの発電設備がその対策の影響を受けるのかということを、もう少しきちんと検討する必要があるというのが基本的な考え方です。それが単純に考えれば火力であるし、もう少し細かく見れば火力の中でも別の考え方というのがあるかもしれません。
 ただ、今、温対法の中の排出量の算定報告公表制度の中では、そこについてはさまざまな考え方があるということだけで、排出量の計算には全電源ケースを使ってくださいということしか言っておりません。
 ですから、削減効果については、今の政府の中ではこういう効果が見込めるという統一した考え方はできておらず、統一されていないというのが実態だというふうに理解しています。
 ただ、中長期のロードマップの小沢大臣試案の中では、火力の係数で評価をしますという考え方が書かれていますので、まさにさまざまな考え方があるということだろうと思います。

○植田委員長 それでは、明日香委員、お願いします。

○明日香委員 ちょっと繰り返しになるところもあるかと思いますが、2ページの、先ほど上田室長がおっしゃった、オプションA、B、Cで環境保全の効果と経済活動への配慮の視点から3つのオプションに整理というふうにあったんですが、この前も申し上げたんですが、国全体として25%というのをある程度キープするんでしたら、多分環境保全の効果というのは同じだと思うんですね。
 申し上げたいのは、この経済活動への配慮というのは、多分ある産業界なり企業を保護なり排出量取引制度の制度対象外にするというと、結局それ以外の排出量取引制度の対象、あるいは排出量取引制度に入っていないほかの企業の経済活動に多分マイナスの影響を与えることもあると思うんですね。なので、経済活動への配慮というのも、結局得をするところもあるし、逆にある企業を得にすれば損をする企業も出てくるということは重要かなと思います。
 というのは、今のEUでもアメリカでもそうなんですけど、こういう割当のときに議論になっているのは、特定企業へのタックスペイヤーからのお金の流出をどう防ぐかということが問題になっています。だから、国民のお金をどう企業に、取られるというと変な言い方かもしれないんですけれど、結局オークションなりで、本来だったら国民のお金になったものを企業にあげているんじゃないかという批判が出ています。なので、経済活動への配慮といっても、どの企業のどういう経済活動への配慮、それによってほかの企業がどう経済活動のマイナスの影響を得るかという視点は大事かと思います。
 武川委員からの、オプションA、エネルギー安全保障の件なんですが。私も重要だと思います。多分イメージとしては、オプションBが石炭をたくさん使って、でもそれがエネルギー安全保障につながるかなというようなイメージかなと思うんですが、でも、それは多分短期的に考えるか長期的に考えるかにもよります。
 実際、かつて10年ぐらい前に何か起きたかのかというと、やはり石炭火力発電所にかなり日本ではシフトをしたと。あれは結局、規制がなかったということと価格が安かったことだと思うんですね。それで、エネルギー安全保障が確立したかどうかというと、多分それによって失われたものもあったと思いますので、なかなか難しいところかなと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、影山委員、お願いします。

○影山委員 上田室長からご説明がありましたし、諸富先生それから大塚先生からの話もありましたけれども、制度の議論は別にやるなとは言っていませんし、否定もしていません。私も参加させていただいたつもりでおります。そこはそれで議論し、諸富先生が言うように、何らかのシミュレーションをしたり、影響を考えたりすればいいのではないかと思います。
 ただ、汚い言い方で申し訳ありませんけれども、この排出量取引が日本のCO2削減の邪魔になるんじゃないかということを私は申し上げているのです。これで、本当にCO2削減ができるのかどうか、逆にCO2が増えるのではないかと、そういうことも可能性としてあるだろうと。また、そういう意見があったということを書かずして報告書にはならないだろうと。これに対する有効な反論というのもなかったような気がします。これはぜひ報告書に書いていただきたいと思います。
 もちろん制度の話は書くのがご下命ですから、それはそれで行って、私もそれに参加させていただきます。しかし、それとともに、排出量取引が本当に有効なのかどうかと。それについては非常に疑問があるという意見があり、それも有力な意見だったということをぜひ書いてほしいと、申し上げているところです。
 先ほど、新美先生からのお話があって、ちょっと業界単位が法律的にどうかというのはよくわかりませんが、もしそうだとして、業界単位のほうがCO2削減にいいとなると、この制度は入れるべきではないですよね。ですから、話が逆になっていると思います。CO2削減がメーンでやっているか、それとも何かこの制度を入れることが必須であって、CO2削減はどうでもいいのかと、そういう議論になってはいけないと。ですから、そのためのコメントをきちんとと入れてくれということを申し上げているのでございます。
 それから、個別の議論をしないと、全然参加する気がないのかと言われてしまうので、コメントさせていただきますと、まず、4ページの3つ目のかぎ括弧の「制度設計に当たりできる限り配慮すべき事項」というところは、これはもう「できる限り」ではなく、ここが配慮すべき一番大事なところですので、ここはぜひ削除していただきたいと思います。
 それから、5ページ目の対象期間ですけども、2つに分けるという話については、「当面」と書いてありますから、今後見直しがあり得るということだと思うのですが、例えば技術導入をする場合については、2020年の目標年度の近くにいい技術が一気に入って大きな削減が達成されるという場合があると思います。太陽光などは徐々に普及していくので、2区間に分けて、2015年まではこれだけ、20年はこれだけというのは、一つのやり方かもしれませんが、例えば電力設備は、ある時にどっと入って、どっと原単位が下がるとか、また、それに伴い工場のCO2排出量が下がることがあるわけですから、この2つの期間に分けてやるというのがいいかどうかということについては異論がございます。
 それから、適用単位について、先ほど新美先生の話がありましたが、業界単位でやるということについて、例えば電力業界の場合は、原子力発電の推進を業界を挙げて取り組んでいます。これと、業界内で競い合って原単位を下げるということが、本当にCO2削減に資するのかどうかというのは、もう少し議論が必要だと思います。ここのところは、やはり業界単位も一つの選択肢として残していただければと思います。
 さらに、9ページの適切な市場基盤のところはこのとおりだと思いますが、買い占めや市場の混乱といったものがあっては適切な取引というのはできないと思いますし、効率的なCO2削減に資することはないと思いますので、そこのところはこの市場基盤のところに書いていただくように強くお願いしたいと思います。
 それから、10ページの排出枠の総量は、読んでいてわからないところですが、ここは中長期ロードマップをはじめとする我が国の中長期の排出総量の見込みというのが基本になっているので、例えば25%の削減を、ロードマップで描けば、それに基づいてキャップをはめるということになると、何か違和感があります。ここは、「事業者の削減ポテンシャルを考慮した」というところを、考慮したではなく、事業者の削減ポテンシャルが基本であり、それに基づいて排出枠を設定するというボトムアップ型でやっていただきたいと思います。
 12ページ以降のいろいろな事項につきましては、先ほど申し上げましたように、リーケージ、LCAについては真摯に議論をして、本当に排出量取引が有効なのかどうかというところまで、ぜひ踏み込んでいただきたいと思います。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、飯見説明員。

○飯見説明員(笹之内委員代理) 私からは、先ほどいろいろご指摘いただきましたが、2点、ちょっと意見とご説明をさせていただきます。
 まず、業界の団体参加に関してですが、単純に例えばトヨタ、弊社ですね、トヨタの場合をご説明しますと、このトヨタの車というのはトヨタだけが作っているわけじゃなくて、関係の子会社の何社かに分けて作っていると。さらには、同じ自動車メーカーのダイハツさん、資本関係にありますが、日野さんとも共同して車種を分担して作っていると。それを結局、トヨタ車として売れるということになりますが。問題は、そうしますと、たまたまこちらに割り振った車種が売れた場合、需要ってなかなか読めませんので、その売れた場合にはそちらの排出量がどっと増えると、別のところが減ると、そういうようなのがやっぱり経済活動としては起きてきます。
 そうした場合に、トヨタとしてはボリュームは変わらないんですけど、増えたところからは排出枠というかオーバーすると。減ったところは減りますので、そこでまた排出取引が要るとかいうのは、何か大変、ものづくりに励む我々としては不合理なわけのわからないコストが起きてくるなということを申し上げたいなというふうに思います。だから、そういった柔軟な生産対応がしやすい仕組みというのは、やっぱり考えていただきたいなということでおります。
 これは、トヨタだけじゃなくて、もっと資本関係のないメーカーさんからも、こういったOEMといいますが、車の総合生産というんですが、そういうのをやっておりまして、単純に何かこのブランドがあるから排出枠をかけるとかいうことにはなりませんので、こういったところも十分にご検討いただきたいなというふうに思うところです。
 それから、次にポリシーミックスに関しては、この委員会の役割ではない、スタートしたということですが、実際にやっぱり制度を考えていく場合には、ボリューム感というんですか、どこまでやるか、例えば真水が15%とか20%入れますね、いろいろありますが、そうした場合に、レベルによって大分必要な制度、そんなところ全部、幕の内弁当的に全部そろえてやればいいというものじゃなくて、やっぱり必要な効果のあるものから入れていくということになると思うんですよね。だから、そういう意味ではある程度全体のボリューム感なり、配分なり、役割分担が決まっていなくて、すべて制度をそろえますというのでは、おかしいかなというふうに思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、新美委員、お願いします。

○新美委員 ありがとうございます。
 先ほど、排出量取引そのものがCO2の削減にマイナスになるというご指摘もあったんですが、あくまでも可能性なんですけども、我々はこの小委員会を進めるに当たって、少なくとも諸外国の例で効果ありというリポートをもらったわけで、マイナス効果であるということについてのご説明なり何なりというのは、こういうものがあるというのは伺っていないような気がするんですね。ですから、可能性ありというだけではなくて、こんな例もありますよということをきちんと出していただいた上で議論すべきだろうと思います。
 それから、もう一つは、今、影山委員からもありましたけれども、業界ごとの取引、OEMとかいろんなものがあるからそれも考えろということなんですけれども、取引の現状がさまざまな組み合わせになっているというの、これは承知の上であります。
 しかし、法主体であるということは、その辺を割り切るのが法なんで、割り切らずにやれといったら法律なんか要らないということになります。例えば同じようなことで、PLですね、製造物責任なんか問われたときに、部品はあそこから来ているからトヨタ車であっても責任はとらないなんていうことはあり得ないわけですので、やっぱり法主体であるということは自分の、あるいは自らの経済活動について少なくとも責任を負いますよということを外に明言しているわけで、だから法人という資格が与えられるわけです。
 現実の取引状態をどうするかというのは、まさに経済的なシステムをつくっておけば、それはOEMでやっているところでやればいいと。そのときに非常にコストがかかるということであれば、そのコストがどんなものなのかということを検討する必要はあろうかと思います。それが現状の制度よりもより大きなものが必要になるのかならないのか、そういうことをきちんと議論して、業界団体でいけるのかどうかということを考えておく必要があるかと思います。
 先ほど、私は業界団体では難しいということは、結局、排出量取引は難しいということになるんですが、逆に言うと、そういうことばかり言っていますと取引制度をやるなということに結局はつながってくることになるんで、私はそういう議論をするならば、それなりのきちんとした論拠ないしはデータを示していただいたほうがよろしいんではないかというふうに考えます。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、則武委員、お願いできますか。

○則武委員 議論の進め方としてちょっと具体的にわからないのですが、全体を通しての意見だしをやっていっているんですが、個々のところを詰めていったほうがいいような気がします、そういうふうに進めていただいたほうがいいと思います。
 今の場は、ちょっと気がついたところに対して言わせていただくと。
 6ページの排出枠の設定対象のところの[3]ですが、事業所の新設、閉鎖の取扱いの2つ目の、「事業所閉鎖等の異動時の扱いについても検討」ということがありますが、基本的には事業者単位にして、事業所の閉鎖等は、やっぱり企業としては当然自由度を持たせてやらせていただきたいと。排出削減のためにやっている事業所閉鎖が、閉鎖してしまったために排出枠をもらえなくなるとか、というようなことになるようなこともちょっと疑問を感じますので、やっぱりこれは一定期間内は、事業者に任せるということでいいんではないかなと思います。
 ここについては無償配付前提の議論のようにも思いますが、その辺についても有償の場合はとか、無償の場合はという形で議論を進めたほうがいいんじゃないかなと思います。
 気がついたのはそこだけですが、やはり議論の進め方としても、個々のところについて議論を詰めていっていただいて、いつまでも検討課題はずっとそのまま残す方式じゃないほうがいいと思います。

○植田委員長 その個々のいうのは、もちろん考えてはおるんですけど、差し当たりまずちょっと全体を少し議論させていただいておりますので。
 それでは、続きまして、明日香委員、ネームプレートを下ろしていただけますか。いや、発言される。では、明日香委員、どうぞ。

○明日香委員 すみません、3巡目かもしれないんですが、簡単に。
 私も、今、新美先生がおっしゃった、その排出量取引制度を入れると増えるというのはちょっとわからない。というのは、排出量取引制度、今お話があったように、ほかの国も既にありますし、別にCO2以外ででも、SOxでも鉛でもいろんな物質や希少資源を管理する効率的・効果的な方法として既に確立されていると思います。なので、CO2が最初ではなくて、既にいろんなものに、漁獲量というものにも適用されていますし、その中で逆に増えたというような事例は聞いたことがありません。
 もちろん、そのときのコスト、もちろん制度の中身によってコストがいろいろ違いますし、そういう意味での影響はあると思うんですけれど、削減という効果が達せられなかったという事例はなかったと思いますし、ロジックがわからないです。
 あえて考えるとすると、多分リーケージのことをおっしゃっているのかなとは思うんですが、そのリーケージに関して、これも最近出たペーパーなんですけど、EU―ETSの無償割当の対象になっている企業800社の経営者にインタビューして、実際リーケージに関して、どうあなたの企業活動、企業経営に影響しているかというインタビューをしたところ、例えばリロケーションなり海外に出るというような、排出量取引制度が入ったことによってそういうことになるというようなことを答えた企業はほとんどなかった。もちろん幾つかはあるんですけれど、大部分の企業はそういうことはないと。
 もちろん本音とか建前とかいろいろあるとは思うんですが、少なくともリーケージ、海外への移転という企業活動は、いろんなファクターがあるはずですし、炭素制約だけで海外に出るようなことを考えている企業は、多分一つもないんじゃないかなとは思っています。ある程度、経験的にもそこは証明されつつあるのかなとは思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、有村委員、お願いできますか。

○有村委員 私から、大体3点ぐらい申し上げたいと思うんですけども、1つは、今、明日香委員がおっしゃられたことと同じ話なんですけれども、この制度を導入したとことによって排出量が増えるというのは、経済学者としては非常に違和感を覚えざるを得ないんですね。この制度が効率的かどうかという問題はある、議論はあると思うんですけれども、この制度を、例えばある業界だけここで工場を閉鎖しなさいということでやって、それでその工場と同じ製品を中国で作って効率が悪いということであれば、それは増えるかもしれませんけれども、実際の政策としては、そういうことは考えにくいわけですね。
 あるセクターで全体として削減すると。そうすると、例えば100万トン日本で減らしたものが、実は中国や新興国で15万トン増えていた。だから、実際100万トン減らしたつもりが85万トンしか減っていなかったと、これがリーケージの、実際に起こるとしたらそういうことだと思うんです。経済学のいろんな研究で出ていると。
 そこのところは、この制度によって減らした分より外で増えるというようなことは、ちょっと誤解を招くものではないかなというふうに思います。
 それから、2点目は、先ほど武川委員からありましたけれども、いろんなことに配慮するということを、ここで列記しているわけで、その中で確かにエネルギー安全保障というのは非常に重要な視点で、いろんなことに配慮するわけですから、それも一つ入れておくのは妥当ではないかというふうに思います。
 それから、今後詰めていくことになるという、その排出枠の総量の話ですけれども、ここのところは、やはりいろんな技術水準とか、あと、ほかのポリシーミックスとの兼ね合いで実際どのぐらいのレベルにするのかというのは考えていくべきだろうと。そこのところで、実際決めるときにはそれはすべきだと。
 それと、その際に、実は今回のいろいろなヒアリングもそうですし、委員もそうなんですけれども、学識経験者とか産業界の方がたくさんいらっしゃっていろんなご意見、東京都の方もご意見いただいているんですけれども、割と消費者の方の、消費者団体のヒアリングをした記憶はありますけれども、そこへの影響というのが実は議論されていないというのもありますので、総量のレベルを考えるときには、最初に規制を受けて恐らく苦労をされるのは産業界の方だと思うんですけれども、それが巡り巡ってポリシーミックスとの関係で、消費者にも何らかの影響が出てくるでしょうから、そこのところも総量を決めるときには考えたほうがいいのかなというふうに思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、大塚委員、お願いします。

○大塚委員 今までの議論に関連してちょっと申し上げておきたいと思いますけれども、簡単に5点ございますけども。
 1つは、今も有村委員からもご意見があったように、排出量取引がCO2の削減に邪魔になるというのはちょっと考えにくいので、多分一番おっしゃっているのはそのLCAのことだと思ってはいるんですけれども、技術のあるところが生産をしなくなることによって、結果的にCO2が海外で増えちゃうんじゃないかというようなご指摘はあるかと思いますけれども、そこは、だからLCAについて配慮をするということを今回入れることによって対応していると思いますので、邪魔になるということは多分ないのかなということがございます。
 それから、ちょっと細かい点について一つ一つ若干申し上げますけれども、対象期間について3年や5年という話が短いという話ですが、この3年は、最初は試行期間という、ラーニング・バイ・ドゥーイングの期間ということで短くしているということがあるので、ちょっとこれは例外的に短いということだと思います。その後、10年とかというのだと余りにも長くなってしまうという、ちょっと制度としてどうかということがあるので、5年というのは結構長いのではないかというふうには考えているところで、ちょっとこの辺が相場観としてはいいのではないかと思いますけれども、海外の例を見ても。もっと長くするような案が、やはり必要性があるんだったら、もう少し深い議論をしていただければと思います。
 それから、買占めとか価格操作に関しては、確かに気にしなければいけない問題ですので、これは法的な対応としてぜひしていくべきことだと考えています。
 それから、6ページのところの閉鎖の扱いについて、則武委員からご指摘がございましたが、これは私も前から申し上げていることですけれども、閉鎖をした場合に、その年に関して残りの期間に関しての排出量を召し上げるということになると、閉鎖に対してディスインセンティブを与えますので、それによってCO2が増えるようなことがあっても問題があるものですから、その1年に関しては、少なくとも召し上げはしないというのが基本的な考え方だと思いますので、なかなかこれは検討が必要というのは、いつまで経っても内容が書いていないんですけれども、ぜひお書きいただければと思います。
 次の年に関しては、さすがに閉鎖しているのに割当をするというのは考えにくいので、その辺が基準になるのではないかと思いますけれども、ぜひ、もう少し書き込んでいただいていいのではないかと思っております。
 それから、冨田委員のおっしゃったことに関連して、原単位がいいという話ですけども、これはもともと政府の基本的な考え方のところからあるように、総量の確保ということを考えると、原単位というのはちょっと難しいというのがあると思いますし、さらに別の観点として、原単位がすべての事業あるいは製品について打ち出せるかというと、かなり難しいというのが一般的な感覚だと思うですけれども、これについてはどうなのかということがありますし。さらに、これはそれでもいいとおっしゃるかもしれませんが、景気の悪いときだと、原単位方式だと企業はむしろお困りになるということがあると思いますので、その点も含めて、原単位方式というのはいろんな観点からちょっと問題があるのではないかと思っております。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 冨田委員、お願いします。

○冨田委員 ありがとうございます。
 影山委員がおっしゃった、排出量取引制度が地球規模のCO2削減につながらない可能性だってあるではないかというふうに申し上げたのは、多分極端なところだろうと思います。
 ただ、世界で商品に対するニーズがある限り、どこかの国のどこかの企業が作るというのが多分実態だろうと思います。日本において、この排出量取引制度、あるいは極端な削減目標というのが与えられた結果、日本の企業ではなくて別の国の別の企業が作るということによって、結果として地球全体のCO2の排出量が増えるというケースはあり得るわけで、どこで実際にどれだけ起こるんだということは、なかなか研究結果としては出せないかもしれませんけれども、可能性はあるということは認識すべきだと思います。
 それから、大塚委員から原単位についての話がございましたけれども、原単位については、すべての対象者が原単位で目標設定をすべきだというふうに申し上げているわけではなくて、選択肢として考えるということもあってしかるべきだろうと思います。
 なぜかといえば、また私の意見書の真ん中辺りに書かせていただいた、この制度によって何を求めるのかということにつながるわけですけれども、企業に求めることが省エネだとか、いわゆる省CO2の自分の中での活動ということであるならば、原単位でその評価をすると、取組の努力の評価をするというのも一つの考え方ではないかなということです。
 それから、先ほど武川委員から、この資料に関して、これからどういうふうに扱って、どういうふうなことを考えていらっしゃるのかという質問があったと思いますが、私も同じことを質問させていただきたいと思います。
 この資料のタイトルは、制度オプションについてということになっていますけれども、見方によると、その最後のオプションA、B、C、これだけが議論に残っているかのような、以前の新聞報道なんか、そういうふうな格好で見られてしまったところがあると思いますが、決してそうではなくて、その前の各論点についてもいろんな意見がまだ出ているというところは間違いないわけで、そこをきちんと認識した上で、次にどういうことを行うご予定なのかというのをお聞かせいただければと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 じゃ、武川委員、お願いできますか。

○武川委員 2つございまして、1つが、さっきのエネルギー安全保障なんです。すみません、しつこくて申し訳ないんですが。
 私が申し上げたかったのは、経済性ということだけではなくて、例えば石炭を導入することの意義っていうのは、安いからいいじゃないかという議論もあるんですが、申し上げたかったのは、そこにとどまるものではなくて、例えば石炭の供給可能年数、採掘可能年数が非常に長くて安定しているんじゃないかと、長期的なエネルギー源ともなり得るんではないかとか、あと、産地が非常に分散していて、そういった面からもメリットがあるんじゃないかとか、あるいは、エネルギーが分散していること自体にメリットがあるんじゃないかという、どっちかというと経済性とはまた違う意味も含めた、そういうセキュリティのようなものも考慮に入れるかどうかという、そういう意味で申し上げておりました。そこをまず再度申し上げたいと思います。
 それから、2点目、ちょっとテクニカルな点なんですが、何度かいろんな方が議論されておられるので、6ページの適用単位と事業所の新設、閉鎖の辺りなんですが、適用単位については、最後は法人格のあるものに義務が行くはずであるというのは、それはもうそのとおりで、それ以外は論理的にあり得ないと。
 ただ、整理しておきたいのは、ここで問題になっている適用単位というのは、最後、法人に義務を課すんだけど、そのルートとしていきなり法人にぱっといくのか、それとも事業所の例えば所有者である法人に義務を課すのか、あるいは事業所の運営者、あるいは実際占有している者に義務を課すのかという、そういうどちらのルートをとるかということを称して、事業所ごとにするのか法人にするのかという、こういう議論になっているという理解ですので、そこは念のため整理をしたほうがいいかなと思います。
 その上でなんですが、東京都さんの制度の一つの意味というのは、まさにここをかなり整理しておられるというふうに私は認識しておりまして、事業所に義務を課すというところで所有者に義務を課しているんですが、複数の所有者がいた場合には、基本的に共同、連帯して責任を負うという整理がまずされる一方で、排出枠をどう渡すんだというと、概念的には事業所に排出枠を渡すんですね。ところが、事業所というのは人じゃないですから、どうするかというと、事業所ごとに開設されている口座に排出枠を振り出して、そこからさらに人ごとに開設されている口座に排出枠を移転した段階でようやく取引が可能になるという、こういう仕組みがとられていまして、その意味では新美先生ご指摘の問題点を、今のようなテクニックで解決しているという実例はございます。
 ですから、こういったどういう制度になるかにもよりますが、ぜひ知見も使っていただければなと思います。
 最後なんですが、事業所の新設、閉鎖については、大塚先生と同じなんですが、その年について排出枠を召し上げないで、あげたままにするというのはいいと思うんですが、そもそも算定対象になっていないわけですから、翌年以降はですね。翌年以降は排出量の算定の対象にならないので、そこについても、つまり算定の対象になっていない事業所について、新たな排出枠を渡すというのは、これは論理的にあり得ないんだろうというふうに思っていまして、そういうご趣旨だとは思うんですが、そういうことになるんじゃないかなと私も思っております。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、一通りご意見いただいたので、時間が過ぎておりますけれども、事務局から少しご説明があればお願いします。

○上田市場メカニズム室長 5点ほど、まとめてお答えしたいと思います。
 まず、第1点目は、今後どうするのかというのは、複数の方からご意見がございました。今回お示しさせていただいた資料に基づいて、さまざまな検討課題、また作業方針、オプションという形の進め方、そういったものを提示させていただいておりますので、その結果、これを受けまして事務局の方で作業しまして、個別の論点ごとに、またこの場でご議論いただくということを考えております。それが第1点でございます。
 あと、まずそもそもの見解を書かせてほしいと、場合によってはこれがCO2削減に邪魔をすることもあるんじゃないかとこういう話でございましたが、そういった点については、そもそもこの制度がどういう制度であったらそうなるという評価もまたできようかと思います。そういう具体的な、オプションAから、今示しているCの間でもかなり効果、影響というのは大分違ってくるものだと思いますから、そういったものを絞り込んだ段階で、最終的に今言われたようなご意見というものが、この制度全体の評価としてできるのかなと思っているところでございます。
 あと、総量のボリューム感というお話、幾つかございました。今回のページで言いますと10ページのところですが、なかなかちょっとここの意味がわかりにくいんだがというご意見もございましたけれども、ここについては、基本的にはこの排出量取引制度の性格、制度の果たすべき役割、ここの[4]の記述とも関連してくるんですけれども、総量の設定というものは、さまざまな事業者の取組でありますとか政府の対策、そうしたものを踏まえて長期の目標に照らして、それぞれの部門でどのぐらいの削減がなされるべきかというのを、もちろんフィージビリティなども考えた議論をされると。そこで、こういうふうな目標、このぐらいの総量にしようというものが決まったら、その量を、実施を担保する制度として、この総量を設定してはどうかと。そういったその総量というものを目安として、実際には個々の排出枠の設定作業を進めていくというふうな考え方、そういう性格のものとしての全体の総量というものを提示させていただいたところでございます。
 あと、細かい話になりますが、業界単位とすることについてどうかというような話がございました。これらにつきましては、罰則等もあるので法的責任を問えるのかどうかと、こういうご指摘もあったかと思います。そういう意味でいうと、今回の制度の果たすべき役割というところで、制度に対しては排出量総量の削減を確保するための制度という観点から、業界まで広げた場合に、それをもって排出量取引制度と言っていいのかどうかというようなことも含めて議論を、今後個別の課題の中でしていくことが必要かなというふうに思っております。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 時間ですが、もし何かございましたら。

○影山委員 今の話は、制度の検討をやって、その上で制度の是非というのを議論したらどうかということでしょうか。

○上田市場メカニズム室長 制度の是非というのは、一番最初に、先ほど1巡目で私申しましたけれども、第1回小委員会を開催した際に、この小委員会では具体的な制度設計、これについて検討をお願いしたいというふうにスタートして、それについては現時点でも事務局の意向は変わっていないということでありますから、それについて是非をこの場で議論するのかというのは、当初の予定ではそれはこの委員会で我々としては予定には入っていなかったと。
 ただ、影山委員から、そもそもこのCO2削減には役に立たないんじゃないか、かえって阻害するんじゃないかと、そういったご議論がこの場でありましたので、そういった議論をなされるんであれば、その全体として個別の論点をつぶして、制度としてある程度全体像が見えたところで意見をまた再度述べていただく方が意見がかみ合うのかなと思った次第であります。
 それはどこで言っていただくかというタイミングでありますが、委員会で我々としてお願いをしているのは、まずその制度のあり方、具体的にどういうふうな制度設計をしたらいいのか、これを求めているというところは変わっておりません。

○影山委員 今の話をしっかり書いていただければいいです。要は、制度の議論をするのは、ご下命ですからいいのですが、それとともに、制度そのものの是非について意見があり、それは後で議論をするということを明確に書いていただければ結構です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 今のお話にありましたように、今後、今までかなり議論をしてきたわけですけれども、個別の論点をもう少し深める必要が当然ございますので、それについて検討を進めるということをさせていただきますが、同時に、最初に私自身が小委員長を承ったときの趣旨に立ち戻る必要があると思います。排出量取引制度一般というふうに言うと、大変な悪魔みたいなものが来るんだというような議論から、バラ色のようなものだとこういうような議論まで、ものすごく差があるようになっている。しかし、具体的な制度を明確にしないと、どういう影響があるのかないのかということについて、あるいはどういう効果があるのかについて、具体的な話ができない。
 ですので、制度オプション案という形で、制度を具体的なものに作るとしたらどういう制度になりますかということについて、皆さんのお知恵も借りて、そこにはもちろん一致するところもあると同時に、見解の異なるところもあるということでございますので、具体的な制度としてデザインされた排出量取引制度、そういうものを具体的にするということをオプション案という形で提示させていただくということですが、次は、そ制度オプション案の評価も議論をすると。オプション案についてもいろいろご意見がおありだろうと思いますので、それについても議論をするということです。
 やはり制度オプション案というものについても、もう少しどういう基本的な考え方に基づいてオプション案が出てくるかということについても、もう少し詳しく議論しておいたほうがいいかなと思います。
 個々の提案では、私も十分じゃなかったと思ったのですが、今日ご議論いただいた感じでは、例えばどういうところに影響が出る制度なのかとかいう点でもかなり違います。ですから、公平性に関わる問題だとか、それから排出量の削減について効率的なのかとか。さらに、環境効果の確実性の違いがあるのかもしれないし、そういう内容をもう少し基本的考え方との関係も含めて、オプション案の評価をそれぞれ議論していきたいと考えております。
 定量的な評価という議論がかなり詳しくできればいいのですけども、そこまで踏み込めるかどうか分かりませんけれども、ある程度知見を集めながら、皆さんのお知恵を借りながら制度オプション案の評価も踏まえてオプション案にしていきたいというふうに一応考えております。
 そういうことで、ご協力いただいて、今後、議論を進められたらというふうに思っております。

○影山委員 それはそれで結構ですが、それとともに、制度導入の意義について私は議論をしてくれと申し上げているのです。それをここで議論をするのか、あるいは別のところで議論するならば、そういう議論をするべきと意見があったということは、しっかりと書いておく必要があるということです。

○植田委員長 そこはまたはっきりさせたいと思います。

○明日香委員 すみません。多分これからもリーケージの話はずっと出てくると思いますので、確認をしたいと思うんですけど。
 先ほどのCO2が増える、そういう議論というのは、結局、今の冨田委員からもお話あったように、国際的なリーケージの話だと思うんですね。国際的なリーケージの話は、結局25%がいいかどうかという話になることになると思います。その25%を云々するというのは、ここで議論する話ではないと思います。
 なので、ここは25%を所与として、どういう議論、どういう制度があってという、そういうプロセスなりロジックなり、階層というかロジックツリーで議論するのを確認したほうがいいかなと思う。どうしても25%の是非に戻ってしまうと、堂々めぐりの議論になって余り効率的ではないとは思います。
 以上です。

○植田委員長 今のご意見は大変よくわかりますけれども、多分、数値そのものだけの問題というよりは、排出量取引制度が持っている問題点については、単なる目標数値そのものではない議論もあるのじゃないかと思うので、それはそれで検討すべき点はあるかというふうに思っております。
 少々時間が超過しまして申し訳ございませんでした。これで終わりにしたいと思います。
 では、事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

○上田市場メカニズム室長 ありがとうございました。
 次回以降の小委員会の日程につきましては、追って事務局からご連絡させていただきたいと思います。
 以上でございます。

○植田委員長 本日はありがとうございました。

午前11時13分 閉会