中央環境審議会地球環境部会「国内制度小委員会」(第5回)議事録

日時

平成13年6月8日(金)14:30~16:15

場所

東條インペリアルパレス4F 吹上の間

出席者

(委員長)安原 正
(委員) 青木 保之
浅野 直人
大塚 直
小林 悦夫
佐和 隆光
寺門 良二
福川 伸次
宮本 一
浅岡 美恵
天野 明弘
梶原 康二
猿田 勝美
塩田 澄夫
西岡 秀三
松川 隆志
横山 裕道
(事務局)山田大臣官房審議官
小島大臣官房審議官
山田大臣官房参事官
浜中地球環境局長
寺田地球環境局総務課長
竹内地球温暖化対策課課長
石飛地球温暖化対策課調整官
後藤総合環境政策局調査官
角倉地球温暖化対策課課長補佐

議題

(1)産業部門における取組の現状評価と今後の対策の在り方について
(2)モニタリング等の基盤メカニズムについて
(3)その他

配付資料

資料1-1産業部門における現行施策の評価と今後の削減ポテンシャル
資料1-2産業部門における地球温暖化対策推進大綱に基づく取組の進捗状況の評価について
資料1-3産業部門における今後の主要な追加的施策のあり方について(叩き台)
資料1-4第4回目標達成シナリオ小委員会の産業転換部門の検討で提出された主な意見
資料1-5諸外国における温暖化対策のための国内制度の検討状況(産業部門関連)
資料2モニタリング等の基盤メカニズムり在り方について
資料3EUにおける部門別の温室効果ガス排出削減の経済性評価について(概要版)
参考資料第3回会合議事録
(委員のみの配付。環境省ホームページに同一の内容を掲載済)

議事

午後2時30分開会

○安原委員長 それでは定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会「国内制度小委員会」の第5回会合を開催いたしたいと思います。
 本日は大変ご多忙のところご出席をいただきましてありがとうございました。
 議事に入ります前に、現在、フロン回収破壊法案が国会で審議中でございますので、その法案の関係につきまして、環境省の方から小島審議官のご説明を、まずいただきたいと思います。

○小島大臣官房審議官 現在、衆議院の環境委員会が開催をされておりまして、地球環境局長はそちらの方に立ち会っておりますので、私の方からご説明をさせていただきます。
 議員立法で、かねてから調整が進んでおりましたフロンの回収破壊法がようやくまとまりまして、予定ではきょうの、現在かかっているところ、私、そちらから出てきたんですけれども、少しおくれて開会になりまして、現在、フロン回収破壊法の審議が始まっております。各党ご意見を述べられた上で、委員長提案で、今国会に提案をされるということでございます。
 理事会の様子を聞いておりますと、全党賛成の委員長提案ということでございますので、国会対策的な観点からいきましても、今国会で成立をするということがほぼ確実になっております。きょう、衆議院の委員会を通りまして、来週、衆議院本会議、それから参議院の委員会、こういう運びになっていくと思います。
 対象物質がモントリオール議定書のCFCとHCFC、それから京都議定書のHFCの3つのガスでございます。冷媒に使われておりますこの3つのガスを、法律により回収破壊義務をかけるということでございます。それから大気中の放出についても、みだりに放出してはならないということにつきまして罰則もうたっているという意味で、京都議定書の観点から申しますと、HFCについては規制的手法が整備されるということになります。なお、断熱材等については、まだ技術開発の段階でございますけれども、法律の付則でその技術開発を急いで対策をとるようにということでございます。そちらの方も急いで対応をとっていくということになります。
 そういう意味で国内対策のうちHFCの冷媒については、今国会で規制的措置が講じられるということでございます。
 以上、フロンについての状況をご説明申し上げました。

○安原委員長 ありがとうございました。
 今のご説明に対して質問がございますか。
 なければ、次に資料の確認を事務局の方でお願いしたいと思います。

○事務局(小柴) では、本日の小委員会の配付資料について確認をさせていただきます。
 まず、お手元、資料1-1といたしまして、「産業部門における現行施策の評価と今後の削減ポテンシャル」でございます。資料1-2といたしまして、「産業部門における地球温暖化対策推進大綱に基づく取組の進捗状況の評価について」。1-3といたしまして、「産業部門における今後の主要な追加的施策のあり方について」(叩き台)の資料でございます。同じく資料1-4といたしまして、「第4回目標達成シナリオ小委員会の産業転換部門の検討で提出された主な意見」。資料1-5といたしまして、「諸外国における温暖化対策のための国内制度の検討状況」(産業部門関連)の資料でございます。
 資料2といたしまして、「モニタリング等の基盤メカニズムの在り方について」(叩き台)の資料でございます。
 資料3といたしまして、「EUにおける部門別の温室効果ガス排出削減の経済性評価について」の概要資料でございます。
 参考資料といたしまして、委員の先生方には第3回目の小委員会の会合議事録を配付しております。前回同様、環境省のホームページに同一の内容を既に掲載しておりますので、そちらの方もごらんいただければと思います。
 そのほか、宮本委員の方から提出いただいたご意見について資料を配付させていただいております。
 資料の確認については以上でございますが、本日、委員の先生方には既にご連絡をさせていただいておりますけれども、本会合を16時15分までとさせていただきまして、本会合が終了した後、16時半から18時半まで、この建物の3階、1つ下でございますが、扇の間において「京都議定書をめぐる最近の状況に関する懇談会」を中環審の地球環境部会及び両小委員会合同で開催させていただくことになりましたので、改めてご連絡をさせていただきます。
 なお、前回までと同様に、次回以降の本小委員会の出欠確認票をお配りしておりますので、これについても、お手数ですが出欠をご記入いただきまして、お帰りの際に事務局までご提出いただければと思います。
 以上でございます。

○安原委員長 ありがとうございました。
 もし不足している資料がございましたら、事務局までお申し出いただきたいと思います。
 それでは、本日は、産業部門の取り組みの現状評価と今後の対策のあり方につきまして、それを中心にしましてご審議をいただきたいと思います。
 それでは、まず最初の議題でございます「産業部門における取組の現状評価と今後の対策のあり方について」という資料につきまして、事務局より説明を願います。

○石飛地球温暖化対策課調整官 それでは資料1-1をごらんいただきたいと思います。
 まず1ページ目は排出量の現状と推移で、1998年度の産業部門におけるCO2の排出量は、我が国の総排出量の約40%を占めております。内訳を見ますと、排出量の多い業種は、鉄鋼、化学工業、窯業・土石、金属機械、紙・パルプという順序
になっております。また、90年以降の増減を見ますと3. 2%と、やや減少しております。
 続きまして2ページの図3には、業種別のCO2の排出原単位を示しておりますけれども、一番上の鉄鋼、窯業・土石、紙・パルプ等の業種が原単位の大きい業種ということが言えると思います。
 3ページに参りまして、他部門との関係でございます。図4に示すような関係があるわけですが、特に産業部門は、製品を製造する部門で、中でも燃費のよい自動車や、省エネ性能の優れた家電・OA機器を提供したり、また、代替物質への移行、荷主としての物流の効率化、廃棄物量の削減、こういった取り組みによりまして、他部門との関係で温室効果ガスを削減する、そういう効果のあらわれる取り組みもあるわけであります。
 続きまして、4ページから要因分析に入ります。本日は時間の関係で、要点だけかい摘まんで申し上げたいと思います。まず、業種別の生産額ないし生産量を見ますと、金属機械、化学工業といった業種の生産額が非常に伸びてます。
 それから、5ページに参りまして、CO2の排出原単位を見ますと、近年は横ばい傾向ですが、少し詳しく見ますと、図7にありますように、90年代に入りまして、やや増加傾向にあります。これは省エネの設備投資が停滞しているであるとか、生産量低下に伴う設備の稼働率の低下、また製品の多品種少量生産などが背景にあると思われます。
 6ページに参りまして、生産額の構成の推移が述べられておりまして、金属機械が非常に伸びている一方で、鉄鋼、紙・パルプ、窯業・土石が減少してきており、基礎素材型産業から高付加価値産業へのシフトが生産額を見てわかります。
 また、下のグラフでは、産業構造の変化で、第3次産業が増加するのに伴いまして、第1次から第3次産業の総生産額当たりの排出量が年々低下してきていることがわかります。
 7ページには、生産拠点の海外への移転が進んでいるということを紹介しています。とりわけ輸送機械、電気機械での海外への移出が進んでおりまして、今後、国際競争力を維持し高めるためには、こういった業種にとどまらず、素材型の産業でも海外移転が進む可能性があることを述べております。
 それから8ページは、資源リサイクルによるCO2の削減でございまして、これは循環型社会の形成促進という大きな方向が打ち出されている中で、廃棄物の排出抑制、再使用、再生利用によりまして、一般的には温室効果ガスの削減につながるということで、双方の政策、対策を連携しながら進めていくことが必要であるということです。
 9ページには、情報通信技術の進展によりまして、この産業部門でもさまざまな影響や効果があらわれてくることを述べております。特に工場設備の制御を、こういう情報技術を使って最適化する、また、製品の設計段階でそういう情報技術を活用することによりまして、CO2の排出削減が期待されます。
 一方で、3段落目にございますけれども、通信販売、多頻度小口輸配送が増加していきますと、交通量を増加させるということに伴う温室効果ガスの排出量の増加も予想されますので、こういう両面があることをわきまえて、この情報技術の活用を考えていくべきではないかということを述べております。
 また、下の方には、この情報通信関連の産業が伸びるということは、一般的に言いますと高付加価値型の業種でありますので、産業界全体の排出量を低下させることにつながるという間接的な効果を述べております。
 10ページの図は、この情報通信技術と、それが温室効果ガスの排出の削減もしくは増大にどういう影響をもたらすかということを模式的にあらわしたものでございます。
 11ページに参りまして、産業部門における自家発電であります。これは産業部門全体の電力消費量の25%を占めておりまして、90年に比べますと、28%増加しています。
単位発電量当たりのCO2の排出量を見ますと、下の図12にありますように、増加傾向にございまして、これは主として石炭の割合が増加しているということが寄与しているわけです。
 それから、12ページの中ほどでありますコージェネレーションが産業部門でも導入が進められておりまして、90年に比べて発電容量ベース 2.3倍、また件数で 2.5倍と非常に進んでいることを示しております。
 13ページからが2010年の排出量の予測でございます。まず、計画ケースということで、現状の対策で確実なものを実施していった場合の、2010年の予測結果で、ケース1と2、それぞれで見ますと96%、94%ということで大綱の見積りでは93%でありましたので、若干それには到達しないという結果になっています。
 14ページに大綱の個々の技術との比較表を載せております。若干、大綱の目標量に満たない結果となったものは、1つには産業界では自主行動計画を実施しておりますが、その中で具体的な対策が明記されていなくて、目標値だけ掲げているものについては、計画ケースには含めなかったということ。それから中堅の工場の省エネ対策を、大綱では一定程度見込んでいましたが、これは確実性が必ずしも十分でないということで、計画ケースでは想定しなかった。また、追加的な措置、技術開発のうち、確実に進むであろうというものに絞り込んだために、大綱の目標量との差が出てきたということです。
 そこで、今後、さらに削減を進めていく上での潜在的な可能性を見たものが15ページからでございます。結果から申しますと、この産業部門全体での排出削減のポテンシャルは、我が国の基準年の排出量を100 %とした場合に、 3.1ないし6%に相当する量が見込めることがわかりました。
 この中で業種横断的な技術、コージェネレーションシステムやコンバインド発電の導入による削減のポテンシャルは、 0.4ないし 1.9%、それから高性能の工業炉の導入、廃プラの高炉原料化法等の素材型産業における削減ポテンシャルは、 2.3ないし 3.0%に相当します。
 またエネルギー供給部門の地域熱供給や非製造業の新エネ導入等による削減ポテンシャルが、 0.4ないし 2.1%に相当するということが計算の結果、出てきたわけであります。
 16ページには、今申し上げた各削減ポテンシャルの対策技術ごとのポテンシャルを示しております。詳細は省かせていただきます。
 次に17ページには、それぞれのポテンシャルに対応する技術の導入のための追加的な削減費用がどのぐらいになるかを計算したものです。特に製造業では、初期投資が大きくて回収年数が非常に長い省エネ設備の導入は、昨今の経済情勢の中では非常に困難な状況で、投資回収が通常3年ぐらいでないと投資が進まないという状況にありますので、比較的耐用年数を長くとったもの、例えば13年ないし15年ぐらいでの回収が可能という場合と、耐用年数が3年という非常に厳しい場合のコスト、それぞれを弾いてみたものです。結果としては、やはり耐用年数3年で見ると、費用がマイナスからプラスに転じるものが多く、3年を基準にしますと、それだけではなかなか省エネの投資が進みづらいという状況が、このコスト-ポテンシャル評価でもわかったわけでございます。
 下の表7をごらんいただきまして、ポテンシャルの大きいものをかい摘まんで申し上げますと、高性能の工業炉、コージェネレーションシステム、それから下から2番目にありますけれども、中小事業所における省エネ対策などがポテンシャルとしては大きいわけであります。
 それに対する費用の削減効果はかなり差がありますけれども、ここに載せているような結果になったわけでございます。
 それから、18ページは、この対策・技術導入に当たっての課題と必要な対策手法です。先ほども述べましたように、初期投資が非常に大きいものに対しては、やはり補助なり経済的な支援措置、またESCO事業のような推進対策が必要になるのではないか。それからエネルギーの費用軽減効果だけでなく、大気汚染の防止、防災時の電源としての副次的な効果があるものについては、そういった面での情報提供をして普及啓発を行うことも有効ではないか、ということを述べております。これらを18、19ページにわたって紹介しております。
 20ページからは推計上の課題・留意点です。20ページの後半には産業構造、社会構造がこれから変わっていくということを紹介しております。ただし、これがどのように変わるかということを温暖化対策の面からだけ的確に予測して、、将来のビジョンなりシナリオを示すのは非常に難しいわけでございますので、これにつきましては、今後、2020年までのスパンでの検討は、別途やっていきたいと考えております。
 それから、留意点、課題を書かいておりますが、時間の関係で省略させていただきたいと思います。
 23ページに、今、申し上げたことの要点だけを、まとめという形で述べています。23ページから24ページまで、大体、今申し上げた内容のことでございます。
 25ページには産業部門における対策と効果の関係を簡単な図に示しております。
 それから、27ページからは対策・技術シートでございます。実は前々回、シナリオ小委員会で提示した資料では、この対策・技術シートは、まだ十分な作業が進んでいなかったわけですが、その後作業を進めまして、本日は、かなり充実したものを用意させていただいております。個別のシートの説明は省かせていただきますけれども、それぞれについて削減ポテンシャル、コストの評価をさせていただいております。そして、その結果を、先ほど申し上げたよ
うなコスト-ポテンシャル評価としてまとめさせていただいたものです。
 簡単でございますが、以上で資料1-1の説明を終わらせていただきます。

○竹内地球温暖化対策課課長 引き続きまして資料1-2でございます。「産業部門における地域温暖化対策推進大綱に基づく取組の進捗状況の評価について」でございます。
 まず2ページは、一般に産業部門といいましても、いろいろなとらえ方があるということで、ここでは狭義の産業部門だけではなくて、工業プロセスとか、あるいは貨物とか、産業廃棄物をあわせてもこのくらいのシェアがあるというグラフでございます。
 3ページが大綱策定時の削減の想定でございます。2010年には、BAUケース、対策ケースそれぞれプラス6、マイナス7という目標を目指してやるということになっております。
 それから、4ページでございますが、エネルギー起源CO2の排出の削減の見積もりでございます。自主行動計画に基づく対策、それからさらなる追加対策、エネルギー消費原単位の改善、高性能ボイラーの普及等、それぞれこのくらいの量を削減するという見積もりになっております。
 それから5ページでございますが、ここの上のグラフでございますが、これはシナリオ策定調査検討会での削減ポテンシャルの見通しと、大綱の目標を比べたものでございますが、これは毎回出ておりますけれども、計画ケース1、2と削減ポテンシャルの低位、高位、それから大綱の策定時の目標というものが、右側の5本のグラフで示されております。
 それから、7ページでございますが、先ほどもちょっと出ましたように、大綱におきましては産業部門の施策の全体像としてこのようなものが掲げられておりまして、自主行動計画に基づく対策として目標削減量 41,100万トン、中堅工場等の省エネ対策により 400万トン等々という対策を進めるということになっております。
 そこで、評価でございますが、9ページでございます。まず、地球温暖化対策推進法に基づきます事業者の実行計画の策定ということでございますが、経団連の環境自主行動計画などにおきまして、2010年を目標とした取り組みがされておるわけであります。そこにおきましては、関係の審議会においてフォローアップをされているわけでありますが、まず・でございますが、旧通産省におきます産業界の自主行動計画のフォローアップということで、下に参考で結果概要というのが載っておりますが、CO2の排出量のところを見ていきますと、90年から99年まで、非エネルギー起源CO2を含むものでありますと、 0.1%削減されております。目標は2010年、90年レベル以下という目標が自主行動計画の中で策定されております。
 11ページでございますが、それを温暖化対策推進大綱の目標と比べてみますと、そこの表にございますように、大綱では産業部門、さっきも出てまいりましたが、2010年で90年比でマイナス7%、さらに狭い意味の産業だけでございませんで、真ん中にございますように産業部門と、エネルギー転換部門と、非エネルギー起源CO2、これらを合計いたしますと、大綱の中ではマイナス4%というのが2010年の目標でございます。そこで経団連自主行動計画におきましては、90年度レベル以下という目標でございますので、目標にずれがあるのではないかと。
 それから、下の方でございます。「数値目標の不一致」と書いてございますけれども、業種におきましてCO2排出量とか、CO2排出原単位でございますとか、エネルギー消費量でありますとか、エネルギー消費原単位、いろいろな指標でやられているということでございます。
 それから12ページは、「目標未達成の可能性」という見出しになっておりますけれども、2010年度の排出量目標を示している業種など32業種の目標及びその見通しの合計は、90年比で2.3 %増と。それから、そのほかのところ、電気事業連合会、製粉協会及び非エネルギー起源CO2のそれぞれの削減が求められておりますが、例えば電気事業連合会の2010年の全CO2排出量の見通しは、90年度比23.2%増の3.4 億トンということにされておりますので、経団連の目標とする90年レベル以下の達成は、ちょっと厳しい状況なのではないかというふうに評価できるのではないか。
 それから、13ページは、関連審議会でフォローアップをしているわけですが、データの詳細な分析、評価とか信頼性の検証が十分されていないのではないかとの指摘。
 14ページでは、CO2の削減量は、電力のCO2排出原単位の改善に依存している部分が多いのではないかということでございまして、下の表をごらんになっていただきますと、一番下で産業部門計ということで、左側に90年、98年の排出量が書かれております。右側では電力の排出原単位の改善を見込まない場合ということで、1990年の電力のCO2排出原単位を、ずっと98年も使うというふうにして計算いたしますと、98年の排出量は90年と比べますと、全体で3.6 %の増加ということになります。それを業種別、製造業ですと、上にありますように3.9 %増、農林業で0.3 %増等々ということで、電力の排出原単位の改善に依存している部分があるということでございます。
 それをさらに製造業で見ますと、15ページでございますが、製造業のIIP(鉱工業生産指数)当たりのCO2の排出原単位、あるいはエネルギー消費原単位で見てみますと、下の表の下から2段目で、IIP当たりのCO2排出量原単位、これの電力原単位の90年のものを98年も採用いたしますと、10%の増。それから同じく、下にございますエネルギー消費原単位で見ますと、14.9%の増ということであります。
 さらに、ちょっとそれをまた業種ごとに見てまいりますと、16ページでございますが、まず鉄鋼でございますが、下の表の下から3番目にございますように、CO2の総排出量は90年と98年を比べますと、マイナス2%でございます。それから、90年の原単位を使用したIIP当たりのCO2排出原単位で見ますと、24.5%の増加ということになっております。
 それから、窯業・土石、17ページでございますが、同じように下の表の下から3番目のところで、CO2の排出量を90年の電力CO2原単位と比べますと、98年は2.9 %の増加、IIP原単位も同様に、90年の電力配分後の原単位としましては27.7%の増加。
 次に18ページでございますが、今、申し上げました鉄鋼や窯業・土石を除いた全体の製造業につきましては、同じく下の表の下から3番目でございますが、排出量で見ますと、電力の原単位を固定した場合は4%の増加、IIP原単位も電力の原単位を固定した場合は11.2%の増加ということになります。
 それは経年変化をとってみますと、19ページでございますが、・の上の方のグラフは、90年の電力原単位で固定いたしまして、1965年から99年までのCO2排出原単位を、右にあります業種ごとにとっていきますと、このような傾向がある。下の方は、これは90年の電力原単位、毎年の電力原単位を使ったものというものの傾向でございます。4業種ございまして、製造業計もございます。全部で5つのグラフがございますが、いずれも上の・の方が高いということになります。
 それから20ページは、CO2排出原単位の推移を、今度はIIP(鉱工業生産指数)当たりで見て、全製造業の業種で見たものでございます。上が90年の原単位で固定したもの、下は各年度の電力原単位で見たものということでございまして、少しずつ上の90年の固定化したときの最近の原単位の方が大きいということになります。
 まとめでございますが、21ページでございます。産業部門のCO2排出量は、自主行動計画による削減を求められておりますけれども、現在は電力のCO2排出原単位の改善に大きく依存しているのではないだろうかということでございまして、景気後退下の状況におきましては、投資回収年数の長い省エネ設備への設備投資の停滞、あるいは生産量低下に伴う設備の稼働率の低下、あるいは製品の多品種少量生産の進展などによって、エネルギー効率、あるいはCO2原単位が悪化しているのではないだろうかということでございます。
 それから、経団連のフォローアップの要因分析の中では、業界の自主努力による削減、つまり電力の原単位の改善分を見込まない方法での削減量は2.1 %としておりますが、この数字の根拠は明らかになっていないということでございます。
 それから、参考までに下に表になっておりますのは、諸外国の自主協定と経団連自主行動計画との差ということでありまして、自主行動計画は自主協定ではないわけでございます。一番上にありますように、協定ではないとか、法的拘束力がないとかいうようなことになりますが、ドイツ、イギリス、デンマークなど、次のページもございますが、幾つか協定による措置がなされている。イギリスにおきましては、気候変動税の減免措置をしたり、達成できなかった場合には減免を取り消す、といったような手法も取り入れられているということでございます。
 22ページの表の下の方は、これはほかの省の関係でも自主行動計画のフォローアップがされているということで、旧建設省関係、農水省関係のフォローアップがされておりますということであります。
 あと、参考といたしまして、協定ということですと、OECDのガイドライン、23ページ。それから24ページにはEUのガイドライン、25ページもそうでございますが、ガイドラインというものがあって、それぞれ協定制度を採用するに当たっての留意点などが、そのガイドラインの中に盛り込まれているということでございます。
 それから27ページにおきましては、大綱の中の分類で、そのほかの自主行動計画に基づかない個々の主体による排出削減策でございますが、それの進捗状況であります。改正省エネ法によりまして幾つかの措置が講じられております。とりわけ中規模のエネルギー消費工場、事業所を対象とする第二種エネルギー管理指定工場制度が発足して、6,400 カ所が指定されている。
 それにつきましては、28ページに評価がございます。これまで省エネ法に基づく合理化計画策定の発動といった事例がない。それからエネルギー管理指定工場の名前が公表されていますが、エネルギー使用量等に関する情報は経済産業省、省エネルギーセンターとも公開していないので、情報開示が不十分であり、一層の透明性、実効性の向上が必要ではないだろうかと。
 それから、第二種エネルギー管理指定工場におきましても、進捗が芳しくない場合でも、省エネ法上の措置としては、勧告の実施にとどまっている。
 それから、目標達成の観点からは、中堅工場の省エネ対策で、120 万トン、炭素関連でありますが見込まれておりますが、これについて、どの程度現実のものになるかというのは、今のところ不透明であるといった点。
 それから、高性能ボイラーなどの技術開発についても、大綱の中で盛り込まれておりますが、具体的な削減には結びついていない。
 あと、29ページでありますが、教育・啓発、こういった措置も大綱の中に盛り込まれておりますが、なかなかこういった分野は定量評価することが難しいということでございます。
 全体の評価のまとめといたしましては30ページでありますが、まず個々の主体からの排出総量の管理のための枠組みということでの評価であります。経団連の自主行動計画による削減を求められております目標の設定は、先ほどありましたように、大綱の目標より現状では低い。
 それから、電力のCO2原単位の改善に大きく依存しているところがあるのではないか。それから、自主行動計画による取り組みは、信頼性、透明性、実効性の確保を図る観点から、さらなる追加的な制度、措置が必要ではないだろうか。
 それから、個々の主体による排出削減策につきましては、省エネルギー基準の強化などが引き続き必要であろうと。それから、名前の公表はありますが、情報開示が不十分であるといったような点が指摘できるのではないかというのが、この産業部門におきます取り組みの進捗状況の評価ということであります。
 引き続きまして、資料1-3でございますが、例によりまして、この部門におきます今後の主な追加的な施策のあり方についてということで、ここでは、パターンを2つ用意させていただいております。その概要だけ参ります。
 まず、1つ目でございますが、パターン1。2ページでありますけれども、ほかの分野でもそうでありましたが、まず実行計画の策定義務づけということで、行政の主体、政府、都道府県、市町村は2年前からこれを義務づけて、計画の策定、公表がされておるわけでありますが、同じように、この分野でも、この部門でもやっていったらどうか。
 目標レベルというのは事業者の自主性に委ねられる。対策のメニューも自主性に委ねられるということでございます。
 そこで、京都議定書の目標を達成する上で、どのような措置を一緒に講じたらいいだろうかということで、ここのページでは、ステップ・ということで、排出削減の確実性を高めるための制度ということで、協定制度というものをやってみたらどうかということでございまして、対象事業者は、自主的に協定制度に参加する事業者。実行計画の目標レベル、あるいは対策メニューについて、国・地方公共団体と事業者との間で協定を締結し、当該協定に基づき対策を推進する。
 目標レベルや対策メニューにつきましては、国等と事業者との合意により決定。ただし、一定の要件を満たすものに限り、国等は協定を締結するというような、あるいは批准書の場合もそうですが、批准書など定めるような協定を、この上の実行計画の策定とあわせてやるというのが1つあり得るのではないか。
 それから、右の方の負担、助成等の経済的手法でございますが、この協定への参加事業者をふやすために、税制上の措置、環境税がある場合には環境税の優遇措置、あるいは財政上の措置、補助金、低利融資、またはその他の優遇措置ということをあわせて講ずることによって、参加事業者をふやすという方法もあるのではないかというのがパターン1でございます。
 次に3ページでございますが、パターン2であります。国内排出量取引制度を中心としたポリシーミックスということでありまして、ステップ・は、実行計画の策定の義務づけ、これは先ほどと同じであります。
 これを確実にするための仕組として、下の方のステップ・でございますが、排出量が多く、特にその排出量の管理を図る必要がある事業者を対象として排出量に関する目標、排出枠については国が設定した上で、キャップ&トレード型の国内排出量取引を実施する。それから、それ以外の事業者であっても、一定の要件を満たす事業者については、国内排出量取引制度への自主的な参加を認める。
 目標レベルは、国が排出枠を決定し、または参加事業者間での競争入札により配分する。
 対策メニューは、事業者の自主性に委ねる等々といった制度で削減の確実性を高めるということも考えられる。
 ここにおきましても、同じように右から矢印が行っておりますが、このステップ・の国内排出量取引制度への自主的参加をふやすために、税制上の優遇措置、あるいは財政上の措置といったこともあわせて講ずることができるのではないか、といったパターン2つを、ここでは用意させていただきました。
 あとの資料は、それを補足的に説明している資料でございます。十分なご議論の時間を用意するために、この説明は省略させていただきます。
 引き続きまして、資料1-4でございますが、これは先ほど目標達成シナリオ小委員会での資料にコスト評価の関係をかなり追加いたしましたが、そのシナリオ小委員会での主なこの部門における意見・論点でございます。
 1、検討の枠組みについてということで、計画ケースと削減ポテンシャルの定義を再確認し、各部門のフェイズを合わせることにより、ベースを明確にする。それから情報通信技術とか、リサイクルとか、分散電源などの導入による効果というのは部門別に見るのではなくて、横断的な対策として扱ってはどうか。
 それから、削減ポテンシャルについてでございますが、ITなどで、その分、エネルギー消費がふえますが、液晶画面のパソコン等にすればわずかであるので、それに伴う増加について心配する必要はないのではないだろうか。あるいはITの導入に伴う店舗や倉庫の設置数、紙などの消費の低減、それによる産業構造の変化などについても十分検討して考慮すべきではないだろうか。
 それから、産業部門の横断的な技術としてコンバインドサイクルとか、コージェネレーションとか、幾つか挙げておりましたが、まだほかにもあるんじゃないか。インバータ制御でございますとか、高効率モーターでございますとか、高効率照明なども検討してはどうか。
 工場の排熱についても有効利用することが望ましいのではないかということで、これについては、NEDOなどの研究の蓄積がある。
 コストの評価につきましても、横断的な技術、機器についてのコスト評価をしたわけですが、それだけじゃなくて、地域熱供給に関するコストというのも評価すべきであろうということで、そのためには、地点の特性が多様でありますけれども、一定のモデルを使えばコスト計算ができるのではないか。
 それから、データ、情報の関係でありますが、産業界の自主的取組を促進する意味でも、産業界の協力を得てデータを蓄積して、データベースや環境統計を作成して公開することが重要であろう。とりわけ中小企業に関するデータが不足している。
 それから有効な政策介入といいますか、政策の必要性についてということで、投資回収年数が2、3年以下でないと、省エネ設備への投資が行われないのは有効な政策がとられていないからだ、投資回収期間が長期の省エネ設備についても企業が投資し、導入できる
ようにするよう、政策のあり方について考える必要があろうということでございました。
 引き続きまして、資料1-5でございますが、これは、これまでもまとめて提出させていただいておりましたが、「諸外国における地球温暖化対策のための国内制度の検討状況」、それの産業部門のところを切り抜いて、今、ご用意させていただいております。
 特徴的なのが、さっきもちょっと触れましたが、2ページにございますイギリスの気候変動税協定ということでございまして、ことしの4月から始まっているわけでございます。
 あとは協定の典型的なのが、7ページにありますドイツの連邦政府とドイツ産業界における協定であります。ここでは、第三者の機関であるラインウェストファリア経済研究所が、毎年毎年モニタリングをして評価をしているというのが特徴的だと思われます。
 以上、資料1の枝番の関係のご説明を申し上げました。

○安原委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に対しましてご質問とかご意見がございましたら、どうぞ自由にご発言ください。
 寺門委員、お願いします。

○寺門委員 大分自主行動計画に厳しいあれが出てきていますので、答えなければいけないところがたくさんあるのでしょうけれども、1ページの、少なくとも産業部門では98年では 3.2%減少しているということ、この数字は経団連の数字とほとんど合っているのかどうかわかりませんけれども、少なくも全体としては下がっているということでございます。そして次からの整理のときに常に、IIPという指標がクローズアップされてきて、この90年ごろから非常に悪くなっているという印象を非常に皆さんに与えるようにできているわけですけれども、もともとはIIPというものは、製造業にとりましては、非常に厳しいものでありまして、これは要するに、生産額といいましょうか、金額から資源とか、そういうものを引いたものをいうわけですけれども、そういうものは、日本の製造業というのは国際市場の中で競争していくという状況の中で、非常に厳しい価格競争というものが日本の中に展開されているわけです。そういう意味では出荷額は非常に厳しく下がっていく。生産量とは無関係に下がっていくというものが入るわけでございます。
 特に日本の場合は、高コスト構造が国内の産業に非常にいろいろありますから、そういうものを克服しながら競争するわけでありますから、収益は出ない、しかし、売上高もどんどん下がっていく、そういうトレンドの中で国際競争力を維持してやっている。そういう結果としてのIIPを分母にして、いかにもそれ当たりの排出原単位が悪いというふうに言ってしまえば、すべてのものが、この円高状況の中では日本から退出しなければいけない。それが現実としては、かつて先端だといっていたものまで中国とか、そういうところに出ていかざるを得ない、そういう状況の中でIIPというものを理解していただかないと、これはほんとに一般の方には印象を悪くするだけで、全部日本の産業は撤退しなさいと、そういうことがうたわれるといいましょうか、示唆するような書き方ですね。要するに、日本からは製造業というのは全部撤退した方がいいんじゃないかというふうなとらえ方にならんように、やはりここはそういう生産量をどうやって維持しているか、しかし、それは売上にはなかなかつながらない、そういう状況の中でコストを下げているという結果なんだということを理解していただきたいと思います。
 そういうことが5ページから、これは上がってきたといっても、現実には、原単位というのは生産量当たりの原単位を、皆さんやるわけですね。私はよその産業について知りませんけれども、そういうための原単位はどうかということをやっているわけで、それが価格が下がったから、それを分母にして上がっているというふうな言い方をされれば、これはもう製造業の人はたまったものではない。そういうことをよく理解した上で、すべての数表を見ていただきたいということでございます。
 それから、11ページに、例えば自家発電の原単位が悪化していると。「悪化している」と、こういうふうに書かれますれば当然なんでありますが、少なくともこの中には、従来、いわゆるオイルショック以降、エネルギーの回収を猛烈な勢いでやってきた。しかし、今はネタ切れである。ネタ切れである中で、自家発電をやりながら国際競争力を立てなければならない、そういう結果として回収の比率というものが少しずつ落ちてきている。そういう結果を反映しているのであって、こういうふうに単に全部が悪化しているというふうな印象を与えるデータというのは非常に問題があると思います。これも少なくとも、みずからコストを下げるためにやるわけですが、製造工程におけるエネルギーの回収というものが非常にネタが切れてきている。世界じゅうで日本だけが100 %ぐらい、回収という技術を導入してしまっている、そういう結果として自家発電をさらにやれば、こういうふうに上ってくるんだということを言っているわけであって、印象だけ悪くするように必ずしも示していただきたくはないというふうに思います。そういうこともよく理解していただきたいと思います。
 このデータについては、そういうことを特に理解した上で見ていただきたいなというふうに思います。そういうことについては、口だけではなかなか難しいので、また書面をもってお答えしたいと思いますけれども。
 それから、資料1-2になるわけでありますけれども、ここでは11ページの評価ということになるんでしょうけれども、ここに数字の評価が出ている。経団連の自主行動計画は0%で、こうじゃないじゃないかというのが、私たちに聞かれるのは非常に困るわけでありまして、ここは、なぜ大綱のときにこういう数字が出たのか、7%という数字が出た背景、そういうものを政府の中で議論していただきたいと思います。だから、違うから、経団連は甘いんだというふうに、すぐに印象を受けるような、そういうことではないわけで、これは委員の方がおっしゃるのには結構でありますけれども、環境省の目を通してというのであれば、よくそこは政府の中でやっていただかないと、何か経団連の中が不一致だというふうに受け取られないように、ぜひやっていただきたいなと思います。
 それから、12ページにおいて、自主行動計画において目標未達成というふうな可能性、これは可能性だから可能性かもしれませんけれども、経団連の自主行動計画のフォローアップにおいて2010年を予測するというときに、何をもって予測するかという前提がないわけです。例えば、今、2000年ですけれども、2000年でフォローアップするときに、各事業者から、業界から、あなた方は今のペースでいったら、今年の時点で2010年だったらどうなりますかということを出させているわけですね。そうすると、それは当然放っておいたら上がるんだ、だからこそゼロに向かって、みんなでこの10年を行動するんだよということが自主行動計画の趣旨なわけです。それが上がるということを、だからこそみんなで頑張らないといけないんだと、それが自主行動計画だという趣旨を間違えておられるのではないかと思います。
 要するに、今年はこうだと、それをベースにして、皆さんが今のままの事業活動をしたらどうなりますか、皆さん、そういうことを言っているわけですよ。だから、それがオーバーするというふうに、すぐに言われたら、自主行動計画なんてものは、もともと成り立たないわけです。だから、こういうふうになるからということで、それを削減するように努力するんですよ、努力しましょうね、というのが自主行動計画の趣旨だということを間違えないでいただきたいというふうに思います。
 だから、可能性は、それはゼロとは申しませんから、可能になるように10年かけて努力するというのが自主行動計画だということを、よく理解していただきたいというふうに思います。
 それから、1-3の一番重要な、パターン1とパターン2が書いてありますけれども、パターン1についても、自主的取り組みと、他の国の協定というものを、どういう背景の中で、例に挙がっている国の協定というものは成り立っているかということを、その事情をよく比較対照していただきたいと思います。
 最も典型的なのは、イギリスの例でありましょうけれども、イギリスという国の背景をどういうふうに皆さんがとらえられているか。要するに、イギリスの今回の12.5%でございましたでしょうか、そういう削減目標というのは、イギリスのバーグですね、要するに、放っておいても達成してしまうということをベースにして、そこから始まっているということです。ですから、イギリスには、逆に言ったら、もう他の国、2010年には相当排出量を売れるんだという背景があるわけです。そういう中で、各産業界とかで協定を結んでいるということなんですね。
 そういうことの背景をよく勉強した上で、日本の今の現状というものを、大変厳しい目標に向かってやらなければいけないという現状と、そういうことを十分ににらんで合わせていっていただかないと。彼らの国益なんです。だから、放っておいても売れるんですよ。そういう中で協定を結んでいるということです。そういうことを、よく背景を見せないと、あそこでできるから日本はできないとか、できないのはなぜだとか、そういうふうに非常に短絡的に物事が受けとめられるというのは大変遺憾だと思います。
 きょうは、その中身について特徴点を申し上げても結構ですが、余り最初に私ばかりではいけないので、以上で終わります。

○安原委員長 それでは、引き続き宮本委員。

○宮本委員 これ全体のストーリーというのを考えてみると、まず産業部門において、このままいくと、自主行動計画の中では、大綱に基づくマイナスができない。だから何とかしなければいけない。その分析をしてみると、悪いところがいっぱいある。それをやるためには協定と改正と、全体としては、こういうストーリーなんですね。その中に、今、私はもう一度経団連とか電気事業連合会と、この数字の本末についてすり合わせていただきたいと思うんです。これがまず第一です。要するに、重要なことだと私は思うんですね。非常に表面的な分析に終わっているわけですから、果たしてこれだけで日本経済をこれからどうしようかという非常に重要な問題に入ってくるので、相当な議論が出ると思いますので、この辺をやってもらいたいと思います。
 その上でちょっと、その一、二の例を申し上げますと、実は資料1-1のところで13ページから14ページ、これを読んでみると、14ページに「大綱の個々の技術との比較」とありますね。この中を見てみると、中堅企業は入ってない。それから具体的な対策を明記していないやつはこれから外している。それからさらに、「さらなる追加」とか「高性能ボイラー等の技術」というようなもので確実性がないやつは外してある、こういうことですね。それなら、そういうことを外したから、それと94だというわけですね。この位置が、この3つの中にこれを入れたら入るのか入らないのかというような議論は、まずなかったら、資料として非常にまぎらわしい。私はもうちょっとまじめにやらなければならんと思いますね。日本経済というのはそんな簡単にやっていいのかというところは、寺門さんの言い方をかりますとそうだと思います。
 こういうものの上に立って、これからの議論がなされていかなければならんのですが、その次に、例えば原単位をもとに使ってますね。原単位は何かというと、電力のCO2削減に負うところが大きいとおっしゃっているわけです。私は当然だと思うんです。それを見ていただきますと、90年までは相当下がりましたね。なぜ下がったか。原子力が増えたからです。明確なことです。原子力が入ったからこれ下がったということだと、私は思うんです。90年以降が余り減少とかが入らないで、ジュワッといったから、データの差はこうなっていますということだと思うんですね。この辺をもっとすり合わせていかなければと思うんです。そういうような上に立って、これからの議論を展開する必要があると思うんですが、IIP当たりの原単位が悪なっているとかいうことが議論されているんですけれども、私はこの前も申し上げたとおりでありますが、日本の産業の製造量当たりのCO2の発生量と、外国のイギリスとかドイツと一遍比較したらどうですか。それは物すごく違うと思うんですよ。物すごく高い。そんな組み合わせをやられるのは当たり前のことですよ。世界に金があれば、そういう国に金を回すことによって下げた方がよっぽど効率は高い。コスト及びベネフィットというのは一番高いところはそういうところ。もっと極端に言えば、発展途上国に入れるべきだと思うんですね。その結果がこの間、発展途上国に協力しようということで私はやっていると思うんですね。そういう議論も何もしないで、ここだけで、下がっていないからけしからん、もっとやれ、それが協定だというような、これは非常に産業界から大きな反発を受けるだろうと思うし、私としてはこれはまことに心外だと思うんです。
 もう一言言うたらば、この前のこのストーリーの中で5つのポリシーミックスをつくったはずですね。それがここへ来て、なぜ協定と排出減だけになってしまったんだろう。私はこの辺の論理をきちっと議論してほしいと思うんです。
 いろいろ言いたいことがありますけれども、大体問題を絞って、それだけ申し上げます。

○安原委員長 まずご意見を伺います。ほかにございますか。

○福川委員 これから、この政策を考える場合のスタンスをどこに置くか、あるいは現状をどう見るか、やっぱり私も客観的によく研究した方がいいと思うし、それからもちろん今の全体の経済イメージからいえば、できるだけ市場機能を活用するということが基本ですから、そして市場機能で解決できないなら、何が一番レスワースというか、企業活動に影響を与えないということで行けるか、という手段を考えていくということだと思うんです。
 どうも私、これはいろいろ委員の先生方もどういうふうなご認識かわかりませんが、実は私が非常に気にしておりますのは、日本の製造業の国際競争力が、最近、非常に落ちている。その結果、黒字定着体質が変りつつあるという変化が起こっているわけです。
 1-1の資料の7ページに、海外生産比率がずうっと上ってきておりますけれども、これは99年までしかありませんが、最近、またこれが実は非常に上ってきています。ですから、それを将来、どう展望するかということが実は非常に必要になっていまして、今度の「通商白書」でもそうですが、最近、中国を中心にした製造業の競争力の強化というのが、実は非常に急速なテンポで進んでいて、今でも日本の輸入定着度、特に海外投資から輸
入定着という事態になっていて、一体これから先行きどうかということになるわけです。
 これはもちろんそういう現象が起こったのはいろいろな複合要因で、別に環境問題だけじゃなくて、いろいろな国内の高コスト構造とかいろいろな原因で、みんな海外に出ていってしまっているということなわけです。ここにも、7ページの文章もちょっとよくわからないのは、いろいろ組立産業が海外へ行っちゃったから、素材産業は素材使用量が頭打ちになって稼働率が低下してエネルギー原単位が下げどまり、ないし増加になっているということが、では、一体、それではもっと国内でどんどん物をつくってしまった方がいいということを想定してこういうことを書いていらっしゃるのか、よくわかりませんが、実際に、今、起こっている現象は、組立産業も外へ行って、それに基づいて素材産業も海外へ出ていかざるを得ないという、そういう事態になっているわけであります。
 それからまた、投資回収年数が長い省エネ投資は行いにくい環境になっているというのは、これまたどういう根拠でこういうことが言われているか、というのも1つの問題で、生産設備の稼働率が低下しているから省エネが進まないんだというなら、稼働率をもっと上げて、エネルギーをぼんぼん使えば省エネは進むという論理になるわけで、一体ここら辺をどうするかというので、これは将来、産業構造の展望をどう見るかというところは、これは環境省だけの問題ではなくて、政府全体でよく展望した上でどう対応していくか。環境の目標は達成したが、経済が死んでしまったというのでは、これは政策でも何でもないので、やっぱりそこをいかに両立させるかというところに政策を考えていくという、そういうスタンスで考えていただきたいように思います。
 それから、9ページにITの関係でいろいろ書いてありまして、どうもこの文章を見ると、ITをやっていい面もあるが悪い面もあって、余り省エネあるいはCO2の発生の低下にならないといわんばかりに書いてあるわけですが、これも実は非常に難しい計算をしないといけないので、私どもでも、今、作業をしてみておりますけれども、これも客観的に考えてみないといけない問題だろうと思いますので、これもいろいろなシンクタンクとか関係省庁とも、ぜひ相談をしていただきたいと思います。
 現に最近では、アメリカでもカリフォルニアの停電事故等々があったりして、これはITが伸びたから電力消費が伸びたのだ、ということからくる問題点の指摘がもちろんありますが、一般的にいうと、90年代の後半のアメリカの経済成長は年間4.1 %で、エネルギーの消費は年率で1.5 %、要するに、1.5 %がエネルギー消費で、4%の成長を達成している。アメリカのDOEは、これはいろいろご異論があるかもしれませんが、もちろんその中には産業の海外移転とか、産業構造の変化もあるが、主なものはITの影響だというふうにDOEは解釈をしているように私は聞いていますが、ここもどういうふうな変化があるか、これは私もそう簡単に、ITをやってみても同じだよというふうに、ちょっと決めつけ得るのかどうかは、もっと客観的に検討してみる必要があるのではないかという気がいたします。
 今、実は日本の産業の成長力が非常に減退しつつあるということを、私は非常に懸念しておりまして、これが杞憂であることを本当は願ってはおりますが、今の産業の実態をよく見た上で、その展望を持って、とにかく政策として過剰な介入は必要最小限度にするのだ、という態度で政策を構築すべきではないかと思っております。
 以上です。

○安原委員長 どうもありがとうございました。
 では、浅野委員、どうぞ。

○浅野委員 前回も申し上げたことですが、それぞれの部門別の評価をしてみようということで、一応横並びの評価をしてきているわけです。細かい点について、今、お二方から、福川さんも含めてお三人の委員からコメントがありましたので、そのコメントを当然取り入れて修正すべき点は修正をすればいいと思うわけです。
 ただ、ちょっと議論の論調が、きょうに限って何か産業界だけが悪者だといっているというトーンのお話ですが、それはもう一回、全部束ねてまとめるときに改めて議論することだろうと思いますので、余りそう先入観を持って読むということをしないで、書いてあることのどこが客観性がないのかという議論をしていかないとまずいのではないかな。それは運輸の場合でも民生の場合でもみんな同じでありまして、そのときにもこれだけで切り分けてしまうことに無理があるということを申し上げました。今、福川委員がおっしゃった点について、書き振りがどうも確かによくわからないんですが、民生業務と合わせた全体では排出量を低下させるという記述もありますから、そういう意識が少し出ているわけですが、横につなぎ合わせたときにどうなるかというところで、最後に政策をどうするのだという議論になってくるのだろうと思いますから、きょうのところはパーツの議論をやっているのだということで議論していかないと、ちょっとここだけ妙におかしいということでもないような気がする。もっと、問題があるのは、例えば運輸であるとか、民生、家庭であるとかといろいろ議論になって、そこは非常に問題なんですよね。ただ、なぜそこが悪いのかは、だれも弁護しないものですから、下手すると、そこだけ悪者になってしまう危険性はあるわけです。
 それよりも、先ほどからのご説明の中で、全体のウエートがどのぐらいのウエートを占めるのかさっぱりわからないので議論しづらいんですけれども、産業部門というときに、決して第2次産業の、しかも重工業だけをターゲットにして物を言っているわけではないので、この中では農業とか水産というのが入っているわけですね。水産の原単位というのはめちゃくちゃに高いわけです。
 これはゼロエミッションの研究の中で、実はイカの研究をしている人がいまして、その方のイカ漁業の実態の研究報告を見たんですが、とにかくめちゃくちゃにエネルギーを使うんだという話なんですね。そういうところはウエートが少ないのだから、放っておいていいという議論になるのかどうなのかということを含めてやらないと、確かにバランスを欠いてしまう。
 きょうのペーパーの中では、それも問題なんだということがちらっと書いてあるんですけれども、今後の政策展開の中では、そこで、では、どこまでむだをなくせるのかみたいな議論を、やはり関係省庁でやっていかなければいけないだろうと思うんです。つまりイカ漁がどうしてむだにエネルギーを使っているかというと、物すごい照明を使うので、そこで船の上でともかく発電機を使って、明々と電気を使う、燃料を使うということをやっている。そうしなければ、イカがとれないのかどうか、よく知りませんけれども、どうも明るい方が余計とれるので、競争で明るくするという傾向があるのだという話を聞きましたから、その手の話は全く話題に上ってこないというのは困るわけですし、それからビニールハウスの農業のエネルギーの問題というのは前から言われているわけです。ですから、そういうようなところは一切捨象してしまうような議論にならないような配慮は、ぜひ
とも、この全体の議論のときには注意を払っておかなければいけないと私は思いました。
 それから、自主行動計画の点検についての透明性がない、実効性がないという評価があるわけでありますが、これはもちろん、本当に何もデータを公表してくれないという部門については、その問題があるだろうと思いますけれども、私は日本の今までのやり方とい
うのは、自主行動計画といいながら、半ば政府との、正面切っての協定ではないけれども、事実上は協定に近い、ある種の社会的合意の中で、かなりの団体の自主行動計画というのが位置づけられてきたという評価はしているわけです。それを担保するものとしてフォローアップが行われてきているということも事実なんですが、ただ、残念ながら、この間は3ガスについてのフォローアップをお聞きして、非常に丹念にフォローアップが行われてるいということを認めたんですが、細かい質問が出てくると、それぞれの業界でも、「それはデータが全くわかりません」という答えが返ってきてしまうんですね。つまり、データの集め方について、ある平準化した基準とかいったものがない。そうすると、ここのところをもっと細かく聞きたいなとか、ここはどうなっているのだということを分析をして、そこに追加的に何かやっていただくべきことを考えなければいけないというときには、そこでとまってしまうという問題はあるわけです。
 ですから、化学品の方でのフォローアップでは、今後とも自主行動計画でやっていただくことは大いに結構だけれども、そのときに、まず情報収集のとろからきちんとやっていただくということが必要だということに、最後はなったわけなんですが、そういう目で見て改善すべき点があることは否定しがたいことだろうと思います。
 そして、協定がここに唐突に出てきているというお話はあるわけですけれども、事実上、これまで行われてきたことが、すべての分野で、すべての業界を網羅しているとは申しませんけれども、かなりカバー率が高いところで、しっかりマネジメントができているところは、事実上、協定に近いのだということは事実として認識しておいたらいいわけで、それを今後、どう、もっときちっと制度化していくというのでしょうか、システム化していくかという議論は、一方でやれるはずでありますから、どうしてここで突然、協定かというようなことよりも、1つの選択肢としてこういう議論が出てくるということは大いに評価をしていけばいいのだろうと、私は考えておりますけれども、全部を束ねた議論をやるときに、どういう形でこれを束ねて出すかというのは、これから事務局も大変でしょうけれども、ぜひこれまでばらばらにやってきたことの中で、明らかになったことと、それでははっきりしないことを整理していきませんと、次回以降、また同じような議論をやってはしようがないと思いますから、ちょっと発言させていただきました。

○安原委員長 それでは、梶原委員、どうぞ。

○梶原委員 資料1-2の30ページで、せっかくこれだけの評価のおまとめをされているのでありますから、本当に実効性がある追加的な施策ができるようにと考え、ご提示いただいた、たたき台の案について申し上げます。私はずうっと一貫して申し上げ続けているつもりなんですが、計画のための計画、計画づくりのための計画というのは、ただ仕事をつくるだけでございますので、本当に意味のある計画になってほしいなというふうに思います。
 その意味で申し上げますと、資料1-3の2ページでございますが、「目標レベルは事業者の自主性に委ねる。」「対策メニューは事業者の自主性に委ねる。」何を書いてもいいですよというおつもりはないのだとは思いますが、これで片づけてしまうのは、ちょっと淋しいと思います。
 私ども東京都では、2回目だったかにも申し上げましたが、これと同じ仕組を既に条例でつくっております。昨年の12月に制定いたしまして、その中で、事業者の方々にどんなご努力がいただけるのか、できるだけメニューを特定したい。もちろんさまざまな業種、さまざまな業態がございますから、一律なものがつくれませんけれども、業者の方々とヒアリングをしている中で、大変協力的にご意見をちょうだいしております。メニューはできるだけ特定したいと思いますし、その中で必須的なメニューのようなものに、もし収斂できるものならば、それは大変理想的なことだろうと思います。そういうご努力はぜひお願いしたいと思います。
 さらに、下の方の確実性を高めるための制度の協定のところを見ますと、協定をするためには一定の要件を満たすものに限るというのがございます。これをまさに上の「実効計画の策定の義務付け」の方に持ってくればよろしいわけで、評価の基準が全然ない計画をつくっても評価のしようがない。そういう意味で、ぜひ目標レベル、「対策メニュー」については、この表現ではなくて、もう少し何らかの具体的なものに固めていくような方向性が持てないのかなという気がいたします。
 また、上の方の欄で、「作成・公表・届出」と簡単に書いてありますが、私はこの中の「公表」というところに、ぐるぐると丸をつけたいという感じを持っています。東京都の制度でもそういうふうにいたしましたが、事業者の皆様のご努力が見えなくてはいけない。見えることによって、国民の方がその事業者の努力を評価するわけですから、ぜひ、この公表というところは、仕組の中の大きな柱というふうにご理解をいただけたらと思っております。
 それから、協定についてですが、協定を結ぶことが重要なのではないので、まさにオーソライズをするという意味ならば、形だけになってしまいます。あくまでも先ほど来申し上げていますように、評価ができるようなもの、その目安を示すのは大変難しいということは十分承知でございますけれども、その方向性の議論がなければ、なかなか実効性のあるものにはならないのかなと思います。
 それから、これも前に申し上げましたが、事業者の活動はさまざまですし、また発展して成長すべきものですから、一律の上限を設けることは大変難しい。その意味でも、環境税と申しましょうか、炭素税と申しましょうか、それぞれが一定の負担をしながら、増税減税で中立というやり方もございますし、広く、薄く、努力が報われるような制度としての税の問題が、きょう出てこなかったのかなと、ちょっと疑問に思っているんですが、これは質問という形でお願いしたいんです。

○安原委員長 天野委員、どうぞ。

○天野委員 幾つかありますが、まず資料1-1の5ページに原単位のグラフがありまして、先ほどから、これがいろいろ話題になっておりますが、ここはCO2原単位ですけれども、エネルギーの原単位にしても大体トレンドとしては同じ形のもの出てくると思いますので、原子力を入れたから下がったというのではないと思います。原子力以外にもいろいろな理由があって、エネルギーの原単位ですと、原子力であろうが、化石燃料であろうが同じですから、それでも同じような形になります。ですから、私は、このグラフに重ねて書いてありますけれども、石油価格とか、為替レートとか、そういうものの影響が非常に強いだろうというふうに思います。それが第1点。
 それから、資料1-1の10ページの情報通信技術がどういう影響を与えるかという、こういう図が書かれることからわかりますように、確かにプラス・マイナスの影響が両方出るわけですが、これだけですと、どこにプライオリティーを置くべきかというのはわからないわけです。政策を考えるときには、例えば左側が10であって、右側が2であるというふうな場合と、ちょうど逆転した場合とでは、全く政策のつくり方が違うわけですから、そこまで確定する必要が、少なくともこういう議論をするならあると思います。先ほど、福川委員もおっしゃられましたけれども、米国では、いろいろなところでそういう計測をして、客観的にどうかという話がありまして、私の読んだ範囲では、NGOの方からITというのはエネルギーを食う虫であるという数量的な分析が出まして、それに対して、先ほどのDOEとか、特にEPAが反論をして、全体的には環境に優しいという数量的な結果が非常に強く出てきたという経緯があります。結局、そういうことが論争になっているということが米国の議会でも取り上げられたり、それからニューヨークの科学アカデミーがシンポジウムを開催するというようなことをやっていますけれども、すべて数量ベースの議論をしておりますから、日本でもそういう議論が活発になるというか、先ほど福川委員はシンクタンクとおっしゃいましたが、これは技術に関する情報と、経済的な活動に関する情報と、いろいろな細かい制度に関する情報と、この3つがそろわないと評価ができないんですね。ですから、本当に努力をする気にならないと、なかなか数字というのは出てこないと思います。その数字がないと、政策のプライオリティーの議論ができないということですから、ぜひ、環境省でもそういうことをおやりいただけたらというふうに思います。
 それから、これは質問ですが、資料1-2、20ページ、表の上の方にアンダーラインが引いてありまして、「業界の自己努力による削減を2.1 %としているが、この数値の根拠は必ずしも明らかではない」とあります。これはお確かめになられたのでしょうか、確かめたけれども返事がいただけなかったというのか、その辺はかなり問題になる叙述ですので、確認をとっていただけたらと思います。
 それから、たたき台の話ですが、きょうはパターンの1と2ということで、協定と国内の排出量取引制度、その2つが例に挙がっていますけれども、中身を読んでおりますと、例えば環境税の優遇措置を講じるというようなことがあります。これはもともと環境税が背後にあるという前提になります。英国の制度はそうなっているわけですが、ですから、環境税が排除されているわけでもありませんし、優遇税制であるとか、あるいは規制とか、私たちが前にいろいろな政策パッケージで議論したものが関連してくる可能性は非常に強いと思うんです。
 ただ、その中で特に自主取組を自主協定まで変えていくというふうな考え方、それから国内の排出量取引制度というものを議論の俎上に乗せる、こういう目的が2つはっきりした点は、私は評価できると思います。ただ、これだけで制度が全部できてしまうというふうには、私は思いませんし、今挙げましたようなたくさんの政策がパッケージになって最終的な制度ができ上ってくるのではないか、というふうに思いますので、そういう意味では、論点が絞られ過ぎているというご議論ではなくて、これから、この場で、もっと広いパッケージをつくるのに、このきょうの資料が1つの材料になるというふうにご理解いただくのがいいんじゃないかというふうに思います。
 以上です。

○安原委員長 小林委員、どうぞ。

○小林委員 私の方から、今、産業界の方々の二、三のご意見をいただいたのを聞いていて、少し大きな誤解を招きそうなご発言、と申し上げますのは逆にいうと、地球温暖化防止のためにCO2を含めた温室効果ガスの削減というのが大前提にある。その大前提の温室効果ガスの削減について、いわゆる経済発展、経済安定のために、そこの部分はある程度犠牲にせざるを得ないのではないかというようなご発言に、ややもすると受け取られがちなご発言ではなかったかなと。そこのところを少しご修正をいただきたいな。やはり、いわゆる6%削減という大前提のもとに、これから何をやっていくかということを議論するところにありますので、逆にいいますと、そのために何をするのかということを議論していただければ、いわゆる産業界の問題からいって、この削減はだめですよ、というのかどうかという点は少し議論をいただければと考えます。
 そういう中で、私が大変気になっておりますのは、先ほどからあります、いわゆる経団連の自主行動計画が、なかなか見えないというのが正直なところです。フォローアップ、今さっき浅野委員が言われましたように、産構審のいわゆる3ガスのフォローアップ会議の中でも、私自身も、いわゆる団体としての説明はわかるんですが、では具体的にどうされるんですか、データの公表はされるんですかというと、必ずわけのわからん返事になってしまって答えが見えてこない。
 現実に、フロン等について、「来年は数字を公表されるんですか」と言うたら、「いや、それについては少し検討させてください」というような話になってしまって、よくわからなくなってしまうんです。現実に個別の企業の方々とお話をすると、もっと発表したい、もっと公表したいという方々が多い割に、それが団体になってしまうとよくわからないという部分があって、逆にいいますと、産業界の方々にとると、自主行動計画そのものの策定、いわゆる団体としての計画の策定が企業の環境に対するイメージのマイナス要因になっている、そういう意味では、私自身、産業界にとっては不幸なシナリオではないかなという感じがいたします。逆にこの自主行動計画をもっと明らかにして、もっと進めていただければ、議論をしなくてもうまくいくのではないかな。それがどこかあいまいになってしまって、それはどこにあるのかよくわかりませんが、個別の企業の方々とお話しするとはっきりしていることが、団体になり、経団連になるとよくわからなくなってしまうという問題点がある。ここのところを少し整理する必要があるのではないかなと思っております。
 それからもう一点、最近、電力の配分前後という話がよくあるんですが、やはり産業界にとって電力の原単位を固定したままで、どれだけ削減するかという議論をしていただかないと、電力の削減量が上ったり下がったりしてわけがわからなくなってしまっているというのが現実だと思います。そういう意味では、配分前、配分後ではなくて、電力の原単位を固定してどれだけふえたか、どれだけ減ったかという議論をした方がいいのではないかなという気がいたします。
 それから、さっきの1-3の資料のいわゆるパターン1と2というふうに2つに分けて書いてございますが、私自身、このパターン1と2が併用でもいいのではないかな。何も分けて議論する必要はないので、要するに、ここでいう協定、これは規制でも協定でもいいと思うんですが、これできちっと抑えたものの中で、それの国内取引をするということがあっていいのではないかなと思います。
 それからもう一点、これは以前からこういう問題が気になるんですが、これをやりますと、ある程度大企業がそれを一生懸命やっているために、嫌な部分がすべて中小企業に移されてしまって消えてしまうという問題。それからもう一点は分業化が起こってしまって、わけがわからなくなる。つまりエネルギー部門だけを分業化させてしまって自分の大きな、いわゆるある一定の規模の会社がエネルギーだけを外してしまって、うちは下がりましたという企業がよくあります。この辺を十分注意していただかなければいけないのではないかと私自身、思っております。
 以上です。

○安原委員長 非常に数々の重要なご指摘、あるいは貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。
 今回のペーパーにつきまして、福川委員がおっしゃるように、できるだけ客観的な表現にしていく必要があるというのは、まさにそのとおりだと思います。そういう意味でいろいろ産業界からのご意見もいただきましたが、何しろ短期間で、このまとめをしていく必要がございますので、その作業をできるだけ効率的にやっていく意味で、宮本さんからもすり合わせをするようにというお話もございましたが、できれば、具体的に文書で出していただくことができれば、その調整が効率的にできるのではないかと思います。できるだけそういう形でのご努力をお願いしたいと思います。
 それから、もちろん、今、部門別に切ってやっておりますので、非常に不完全なところがございますので、浅野委員がおっしゃるとおり、最終段階で総合化する過程で、いろいろまた中味については見直す必要があると考えております。またその段階でいろいろご意見をいただきたいと思います。
 それから、きょうはたたき台としてパターン1と2を示しておりますけれども、もちろんポリシーミックスで5つの案があったじゃないかという宮本委員のご指摘がございますし、いろいろまた税のことについてのご発言もございました。確かに、環境税をポリシーミックスに入れた場合の案というのは、今回は挙がっていないわけですが、これは作業が、きょうに間に合うような形でできなかったということでございまして、次回以降、ポリシーミックスの1つとして税制の活用も入れた案もご提示していくように、事務局の方で準備してもらうことになっておりますので、きょうは入っていないということでございます。
 そんなところでございますが、あと……。

○浅岡委員 先ほどご説明は、私の理解は、資料1-2及び3の中には、税の活用というものもイメージしつつ、つくられているパターンであると。前の1から5がそのままこちらに移動しているというようなことではなくて、もう少しそれをミックスしようとしているプロセスではないかと思いました。
 それから、宮本委員のおっしゃるのは、対抗パターンがないではないかということをおっしゃりたかったのかなと思ってお聞きをいたしましたけれども、それはここにいろいろ資料等で示していただいていて、こういう見方じゃないかと、いろいろご指摘がありましたけれども、どのように見ても、全体の40%を超えそうな産業部門において、なかなか削減には現状では至らない、今までの政策措置等を考えていることだけでは足りないじゃないかということについては、これは認知せざるを得ないと思いますし、ですから、どのようにこれから措置を、どこを、どう足していきましょうか、追加的にはどういう措置を考えましょうかということを考えていくのは、ある意味、とても自然なテイハンであるだろうというふうに、私も思いました。だから、そこは、それぞれの国においては、それぞれまたいろいろに自分の国はこのように難しいということが、わかり得ないほどあるんだろう、国によっていろいろまた違いがあるだろうと思いますし、日本においてこういうことは難しいんだという側面もあるのかもしれませんけれども、それは何であっても、この日本の中で、ではどういうふうにしていけば、どこをどうしていけば減らしていけるのかという見本を知るという方向に進めて、作業を進めてくださればいいと思いますし、電力の方でも、やっぱり石炭開発等、本当にこれから2010年までに1,300 キロワットのヒヨウをヨクダスということとか、その稼働率を大変高めていくとか、そういう中で、これから大変、なかなか下がりにくいでしょうというような話が、それは、そう行くんですよ言ってしまうのではなくて、そこは考えていきましょうというふうにするのが、こういう場なのではないかというふうに思います。
 それから、先ほど、天野先生もご質問されたことなんですけれども、やはりここに書いていらっしゃるようにその根拠は産業界はこう言われるけれども、根拠が明らかでない。だから、信頼性、透明性の確保を実行するためにも、もう少しオープンにしてくださいということを、随分各所に書いているわけですけれども、本当に数字が明らかでないというのは、やっぱりいかに問い合わせても明らかにしていただけないというふうに理解していいということなんでしょうか。

○安原委員長 では、今までの発言に対しまして、事務局から、もしコメントがございましたらお願いします。

○竹内地球温暖化対策課課長 税など含めて経済的な手段、あるいはそのほかの手段をしっかりやらせていただきます。
 それから、先ほどの自主行動計画の中の 2.1%、これは問い合わせたといいますか、公表されたものの中では明らかになっていないということでございます。
 以上です。

○寺門委員 自主行動計画の評価のところからの入り口のミスマッチというか、そういうものが前提にあって、ここでは非常に厳しい見方をされた。それで、自主行動計画というものが、今、産業審議会でフォローアップがされているというか、レビューがされている。そのレビューについて、そのレビューが正しくないのだと、その評価は悪くしか評価されていないのだと、そういうことであれば、本当に数字に基づいて評価をしている方たちの意見というものが、そういう人たちは全く間違ったことをやっているのだということになるので、よくそこはすり合わせしてもらわないと、これは大変大きな失礼な評価になるわけでありまして、これは最後だけ申し上げておきますけれども、そんな軽々しいものではないということを申し上げたいと思います。それは委員の先生方によっては、もちろん意見は違うと思いますが、1つ1つは違うことがあるかと思いますが、しかし、現実にやっていることについて、それが非常に不透明というなら、不透明のところを実際にごらんになって、どういうことが不透明なのかということを、逆に審議していただいているというか、レビューしていただいている人にヒアリングすべきだと。そうでなかったら、これは非常に対立的な内容ですから、これはぜひ、そこからスタートを、入り口が間違っているから、話がその先、全然評価が違うわけです。この評価というのは非常に大事で、だから、そこのところは、ぜひ、ここでとどまらないでやってもらわないと、私どものやっている努力が全く報われないということですから、これは非常に大きな前提の違いですので、ぜひ、そこだけは確認していただきたいと思います。

○安原委員長 あと、いろいろまだご意見があるかもしれませんが、あとの会議の予定がございますので、意見がございましたら、文書で事務局の方に出していただきたいと思います。それで、あと残された議題がございますが、ごく簡単に説明だけざっとしていただ
いて、できれば、あと5分ぐらいで終えていただきたいと思います。
 それでは、事務局。

○竹内地球温暖化対策課課長 それでは資料2に基づきまして、「モニタリング等の基盤メカニズムについて(たたき台)」についてご説明申し上げます。
 基盤メカニズムという大げさなタイトルになっていますが、真ん中の1の2つ目の○にございますように、具体的な要素といたしましては、排出量の削減などを行うための計画と、その計画の進捗状況のモニタリングと、それからモニタリング結果を踏まえた対策強化、この3つを一連のフィードバックとしての仕組みを形成するというのが基盤メカニズムというふうにご理解いただきたいと思います。
 そこで、次の2ページでございますが、まだ計画でございます。排出量の削減などを行ための計画ということで、○のところにございますように、「対策メニュー」「実施主体」「対策の目標量」などを国、地方公共団体、事業者、国民それぞれが対策を進めやすいように明確にしていくという必要があろうということでございます。
 そこで計画の内容ということでございますが、種類として国の計画、ここには計画の趣旨、期間、全体及び部門別の目標、対策などを規定する。
 それから、地方公共団体の計画は、国の計画を踏まえ、地域における自然的社会的条件に応じた対策を計画的に推進するための計画を策定することが適当と。その中では、排出量の目標のほか、省エネルギー、交通対策、廃棄物減量などの取り組みの目標なども規定することが必要ではないかというのが計画でございます。
 それから、その計画の進捗状況のモニタリングということでありますが、インベントリによりまして、我が国全体及び部門別の排出量の推移をモニタリングするというのとあわせて、全国及び地域において多様な情報を収集して各排出分野における計画に基づく対策の具体的な進捗状況を適正にモニタリングする仕組みが必要であろう、ということであります。
 次でございますが、とりわけ民生部門、運輸部門について排出量と計画に基づく対策の進捗状況にかかるデータの収集が、現状では不十分でございます。こういった分野について情報収集システムや、統計制度といったものの整備が必要ではないかということであります。
 それからモニタリングの内容でありますが、まず、地方公共団体のモニタリングということで、事業者からは事業者の実行計画、先ほどご説明させていただきました、あるいはこれまで民生分野、交通分野でご説明させていただきましたような実行計画の仕組みを活用して収集するというのとあわせて、民生部門あるいは運輸部門については、みずから把握した排出量や計画に基づく対策の進捗状況にかかるデータを用いてモニタリングを行う。そこでその結果は、地方公共団体の対策の強化、あるいは事業者に対する指導などについての判断をするために用いる。
 それから、国のモニタリングはインベントリあるいは上にありました地方公共団体からのデータを集計して、対策強化を行うべきかどうかの判断のために用いる。
 それから、最後に4番でございますが、このモニタリング結果を踏まえた対策強化を行う仕組みということを整備することが必要だろうということで、これらを図式化いたしますと、4ページでございますが、右の上から計画を国、地方公共団体が策定し、下へ行きまして、対策の実施ということで、自主的取り組み、経済的措置、さまざまな措置がありますが、そういったことに対して実施する。それから、左へ行きまして、これらについての計画の実施条件を、先ほど申し上げましたような、いろいろな手段によりまして把握し、それをチェックする。そこで、その結果に基づいて上に行って、対策強化メカニズムということで、モニタリングの結果を踏まえまして、対策強化などへのフィードバックを行うという、一連のメカニズムを整備すべきではないだろうかという点でございます。
 それから、資料3でございますが、これはEUにおきます温室効果ガスの排出削減の経済性評価についてというものでございます。実は今、もう一つのシナリオを小委員会の方で、我が国のさまざまな対策についての経済性評価、コスト評価をしているものですから、その関係で次回以降、これもあわせてご説明させていただこうと思います。
 以上でございます。

○安原委員長 以上でございますが、予定の時間がもうまいっておりますので、ご質問があるいはあろうかと思いますが、次の会議の関係もございまして、これまでとさせていただいてよろしゅうございますか。
 それでは、きょうの会議はこれで終わりたいと思います。熱心なご討議をいただきましてありがとうございました。
 閉会といたします。

午後4時15分閉会