中央環境審議会地球環境部会(第80回)議事録

1.日時

平成20年11月5日 10:00~12:16

2.場所

三田共用会議所 講堂

3.議事

  • 1.低炭素社会の実現に向けた施策の検討について
  • 2.その他

資料一覧

資料1 低炭素社会の実現に向けた施策の検討について
資料2 低炭素社会実現のための12の方策
資料3 2050日本低炭素社会シナリオ
資料4 低炭素社会に向けた12の方策
資料5 低炭素社会づくりに向けて
資料6 低炭素社会づくり行動計画
参考資料1 中期目標検討委員会の設置について
参考資料2 排出量取引の国内統合市場の試行的実施について
参考資料3 「グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会」の開催について
参考資料4 次期枠組みに関する日本提案

議事録

午前10時00分 開会

○德田温暖化対策課長 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会第80回会合を開催いたします。
 本日は、委員総数41名中、まだお見えになっておられない方もおられますが、25名の先生方にご出席をいただく予定となっております。本日の審議は公開として実施させていただいております。
 まず、議事に入ります前に、新たに地球環境部会の委員に指名されました方をご紹介いたします。臨時委員の小見山満委員です。

○小見山委員 小見山でございます。よろしくお願いいたします。

○德田温暖化対策課長 それでは、鈴木部会長、よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 それでは、中央環境審議会地球環境部会、洞爺湖前の会合以来、久しぶりという感じになりますが、開催させていただきたいと思います。
 本日は、斉藤大臣にご出席いただいておりますので、最初にごあいさつをお願い申し上げます。

○斉藤環境大臣 皆様おはようございます。環境大臣の斉藤鉄夫でございます。今日は地球環境部会、このように開催し、ご出席をいただきまして本当にありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします。
 もう皆様ご承知のように、我が国低炭素社会づくりプランの中で、2050年までに我が国の二酸化炭素排出量を60から80%削減するということを閣議決定し、国の方針となったわけでございます。
 先日、排出量取引の試行ということで、官邸の中にございます地球温暖化問題に関する懇談会、奥田座長がされております懇談会でございますが、その懇談会が開かれまして、その翌日の地球温暖化対策推進本部においてこの試行をスタートするということを決定したわけですが、その懇談会の場で麻生総理は、とにかくできるところからやっていこうということをおっしゃったのと、もう一つは、こういう現下の経済状況の中で、この状況をある意味で逆手にとって、経済と環境の両立、そしてこの条件であるからこそ日本の経済が伸びた、そういう状況をつくり出していこうと、このようなお話をされて、参加されている経済界の方もご納得をいただき、試行がスタートするということになったところでございます。
 これは試行という一つの手段でございますが、今後この60ないし80%削減をどのようにしていくか、いろいろな方策が考えられ、この地球環境部会の先生方にもいろいろご議論をいただき、また国環研でも12の方策等を議論していただいているところでございます。
 私も大臣になる前に、私自身、そして我が党の政策の責任者をしておりまして、その視点でこの長期目標達成のための中期目標ということについて、私の意見を就任当初率直に述べましたら、さる政治の大先輩の方から、自分の考えと政府の責任者になったときの考え方は、発表の仕方は違うべきで当然なので、そこら辺はよく考えて発言しろと注意を受けたところでございますが、私は基本的に考え方を変えておりませんで、この60ないし80%削減をするために、これは科学の要請でございますので、政治は科学の要請に謙虚でなくてはいけないということをその後も総理にも率直に申し上げておりますし、主張し続けているところでございますし、私もその考え方で環境省を引っ張っていきたいと、このように思っております。
 この中期目標に関しましても、できることを積み上げていく、これは当然でございますが、できることを積み上げていったときの値と、それから我々が科学の要請によって地球を救うために達成しなきゃいけない数字と当然ギャップが出てくると思います。そのギャップがあるからこそ逆に、総理が最初おっしゃった日本の技術開発や、日本の立場が明確になるのではないか、そのようにも考えておりまして、そのギャップをどう埋めるかということも背景の中にお考えいただきまして、今後この60ないし80%削減をどのように具体的に達成していくのか、技術開発のみならず、いろいろな分野におきまして、このロードマップをつくっていただきたいということで、地球環境部会の先生方にお願いをしたいと、このように思っているところでございます。皆様にご審議いただいた内容を今後の施策づくりの基礎にしていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。
 話があっちへ行ったりこっちへ行ったりして申しわけありませんでした。そういう趣旨でぜひ皆様にご議論をお願いする次第でございます。よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 どうもありがとうございました。大変心強いお話をいただいたと思います。
 それでは、議事に入ります前に、久しぶりの地球環境部会ということでもありますので、寺田局長から、最近の地球温暖化問題に関するいろいろな状況につきまして簡単にご説明をお願いしたいと思います。

○寺田地球環境局長 7月から地球環境局長を拝命しております、寺田でございます。よろしくお願いいたします。じゃ、説明のほうは座らせていただきます。
 部会長から、洞爺湖以来というお話もございましたけれども、今年の夏からの地球環境問題、特に地球温暖化問題の推移につきまして簡単にご説明させていただきたいと存じます。
 本日は若干の資料も用意しておりまして、議題1が終わった後に、それぞれ担当から詳しく説明させるということになっておりますので、私のほうからあらあら項目だけのような格好ですけれども、最近の状況をお話ししたいと思います。
 先ほど申しました洞爺湖G8サミットでございます。ここで、地球温暖化につきましては、まずG8諸国におきましては、長期目標として、2050年に地球全体で温室効果ガス排出量を少なくとも50%削減するという目標をまず共有したと。さらに中期目標として、数字は挙げておりませんけれども、先進国は野心的な国別の総量目標を持つんだと。それから、G8と並行して開かれました主要経済国会議、これは中国、インド、ブラジル、メキシコ等々も入っておる、MEMと言っておりますものでございますけれども、こちらでは、主要途上国につきましても、いわゆるBAU―Business As Usualから離脱する適切なミティゲーションを講じるんだというようなことを合意したわけでございます。
 こうした洞爺湖サミットを踏まえまして、先ほど大臣のあいさつにもありましたけれども、7月29日、7月末に政府は低炭素社会づくり行動計画、いわゆるアクションプランというものを決定いたしました。ここでは、我が国としての目標として、2050年に60ないし80%の削減というものを掲げた。あるいは、さまざまな技術開発について推進すると。例えば太陽光発電の抜本的な拡充というものなどが例になるかと思いますけれども、そういった技術革新の道筋、あるいは低炭素社会をつくる社会の仕組み、これは先ほどもお話がありましたけれども、例えば排出量取引の試行的実施等々がその場で決定されたわけでございます。
 ただ、このアクションプラン、基本的には福田前総理の福田ビジョンというものを具体化したということでございますけれども、必ずしも2050年までのしっかりとしたロードマップと申しますか、道筋を具体化したものにはやや足りないところがあるという点がございます。こういったことが背景になって、本日ご審議をお願いしているということであろうかと思っております。
 さて、その後、秋でございますけれども、大きな出来事としては3つぐらいあったのかなと思っております。1つは、まず国際交渉の関係でございます。ご存じのとおり、国際交渉、今年の最大の会議というのは、この12月にポーランド、ポズナンで開かれますUNFCCC、枠組み条約のCOP14でございます。そこで、このCOP14はどうなるかということでございますけれども、実は大方の方々がお考えになっているのは、このCOP14でなかなか重要な決定というのは難しいのではなかろうかと、それは交渉の進捗状況もありますし、さらに言えば、ただいま開票真っ盛りだと思いますけれども、海の向こうでまだ政権がどうなるかわからんと、こういうことがあって、1つはアメリカというものが腰が据わらないとなかなか重大な決定ができないということがあるということでございますので、今のところCOP14では、各国がそれぞれ自分たちのしっかりとした主張を提案し、それに基づいて来年の交渉の絵図面と申しましょうか、見取り図と申しましょうか、論点整理をするというようなことが1つの目標となっております。
 これに向けまして、我が国は既に日本の提案というのをしております。それは新聞等でも報道されておりますけれども、先ほど申しました洞爺湖サミットでG8が共有いたしました2050年、地球全体で少なくとも50%削減という目標を世界全体で共有しようという提案、それから先進国の範囲の見直し、あるいは途上国の差異化ということでございまして、やはり途上国の中でも一定の国々にはそれなりの努力をお願いしたいというようなことなど、日本としては自分たちの主張というものを既に堂々と述べたということになっております。中身については後ほどご説明させていただきたいと存じます。
 それから、国内的には、先ほど大臣からもあいさつの中で触れさせていただきましたけれども、排出量取引の国内統合市場の試行的実施というものが既にスタートしております。10月末に受け付けを開始したということでございますので、実はまだ何社というところまで行っておりませんけれども、既にお店を開いて、これからやっていくということでございます。
 また、ほぼ同時期でございますけれども、官邸におきましては、地球温暖化問題に関する懇談会、いわゆる奥田懇談会と言っておりますけれども、この下に中期目標検討委員会というのを設けまして中期目標を検討する。実は、先ほど申しましたアクションプランの中では、政府としては来年のしかるべき時期に中期目標を明らかにすると述べておるところでございますけれども、それに向けて、この中期目標検討会というのは、国民に開かれたオープンな場で科学的、論理的に検討を進め、それぞれの目標について、モデル計算等によりまして、必要なコスト、あるいはベネフィット、あるいはそういうことをしなかった場合のノーアクションのコストと申しましょうか、弊害というものなども含めて総合的な議論をし、複数の選択肢を国民に提示した上で、その後政府が責任を持って決断をするということであります。
 こうした中期目標の検討、中期目標、これは何年とは決めておりませんけれども、恐らく2020から2030、恐らく2020が最も中心的な年次になると思いますけれども、ここに向けての検討がいよいよ始まるということでございます。
 もちろん、2020なり30なりの先には、我が国が既に国際的に明らかにしました2050という目標があるわけでございます。2050までの道筋というものは、当然のことながらこの中期目標にもバックキャスティングと申しましょうか、そういった格好で反映していくということになろうかと思います。こちらの地球環境部会でご審議いただいた内容のほうも、できるだけそういった政府全体での検討の中に反映できればいいなというふうに心得ておるところでございます。
 ということでございまして、これから、国内的な話で言えば、私どもまず1つは、ただいま申し上げました排出量取引の試行をしっかりやっていくということ、あるいは中期目標を検討していくことなどもありますし、同時に、当然のことながら、既に第一約束期間に入っておりますから、京都議定書で課せられました6%削減と、これを何が何でも達成するということは重要な課題になろうかと思います。
 ただ、眼前の京都議定書6%、これは容易ならざることではありますけれども、もう既にその先には、1つは、国際交渉ではポスト京都の次の枠組みづくりの交渉がいよいよ佳境を迎えるということでございます。
 国内的には、先ほど申しましたように、既に2050、我が国では60から80%の削減というものが既に掲げられております。2050年というのは遠いようではありますけれども、現実問題、技術開発等々を考えれば、そんなに遠い未来ではない、むしろ2050というものがどうなるのか、どうしていったらいいのかということをしっかり見据えた上で、今から相当なことをやらなければ2050は間に合わないというようなことであろうかと思います。低炭素社会づくりアクションプランはできましたけれども、まさにこれから、来年が低炭素社会づくりの元年であろうかと考えております。そういったことでございますので、ぜひとも本日もよろしくご審議賜りたいと存じておるところでございます。
 以上でございます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 局長のお話、そして最初の大臣のお話にもございましたように、この地球環境部会のこれからのしばらくの間のミッションは、ロードマップをつくっていく、60から80%削減に向けた具体的なロードマップを作成することです。年度内に何回か会合を開かせていただいて、重要なテーマを取り上げ、その会ごとに議論をさせていただくと、そういうことでまとめられればと思っております。
 それでは、早速議事に入らせていただきたいと思いますが、事務局のほうから、まず配付資料の確認をお願いいたします。

○德田温暖化対策課長 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 一番上に、中央環境審議会地球環境部会第80回、今回の議事次第がございます。その次に、資料1といたしまして、低炭素社会の実現に向けた施策の検討についてという1枚紙がございます。さらに、資料2といたしまして、横刷りでございますが、低炭素社会実現のための12の方策。資料番号を振ってございません、資料3がその次でございますが、2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討という冊子、これを資料3とさせていただきます。その次に、低炭素社会に向けた12の方策、これも冊子でございます。資料番号を振ってございませんが、資料4でございます。続いて、A4の横長になりまして、資料5として、低炭素社会づくりに向けて。資料6が、低炭素社会づくり行動計画。
 以降、参考資料になります。参考資料1が、中期目標検討委員会の設置について。参考資料2、排出量取引の国内統合市場の試行的実施について。参考資料3、「グリーン税制とその経済分析等に関する専門委員会」の開催について。参考資料4、次期枠組みに関する日本提案。そして、これはメーンテーブルだけに置いてございますけれども、低炭素社会に向けた12の方策のパンフレット、緑色のものでございますが、部数の関係でメーンテーブルだけに置かせていただいております。
 以上でございます。不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
 それでは、早速議事に入らせていただきたいと思います。
 本日は、議事として挙がっておりますのが2件ですが、2番目のほうは報告事項でございまして、1番目、低炭素社会の実現に向けた施策の検討について、これが主要な議題となっております。
 6月26日、前々回になりますでしょうか、第78回の中環審におきまして、私のほうから低炭素社会の構築に向けて、本部会での審議につきまして、検討すべき具体的なテーマ及び今後の議論の進め方について提案をいただくことをお願いしてありました。委員の方々からさまざまな意見をいただきまして、このいただいた意見を踏まえて、地球環境部会の今後の審議事項として事務局に整理いただいております。
 そういうことですので、事務局からまず資料の説明、そしてその後、今日おいでいただいておりますが、西岡委員のほうから、先ほど資料2、3、4、5とご紹介いただきましたが、「脱温暖化2050プロジェクト 低炭素社会に向けた12の方策」、この辺のご説明をいただくということを予定しております。
 それではまず、事務局のほうから、資料1につきまして説明をお願いいたします。

○德田温暖化対策課長 それでは、資料1についてご説明申し上げます。低炭素社会の実現に向けた施策の検討についてというものでございます。
 今、座長のほうからもご説明がございましたけれども、6月末の中環審で、委員の皆様方からこういったことを検討すべきではないかというようなご意見をお出しいただきました。その主なものと申しましょうか、大方のご意見は中長期目標の設定に関すること、あるいは目標達成の道筋に関することでございました。
 道筋としては、いろいろな施策があるだろうと。再生可能エネルギーをいろいろ普及させていく施策であるとか、あるいは排出量取引を進める施策であるとか、いろいろあるだろうと。そういったことを検討すべきではないかと、そういうようなご意見が多数でございました。それらを踏まえまして資料1を作成しております。
 背景のところでございますけれども、低炭素社会づくり行動計画というものが7月29日に閣議決定されました。これは、6月に福田ビジョンというものが示されたわけでございますけれども、それをより具体化した行動計画として、閣議で決定をされたものでございます。
 そこでは、低炭素社会を目指して、2050年までに世界全体で温室効果ガス排出量の半減を実現するためには、主要経済国はもちろん、世界のすべての国々がこの問題に取り組む必要があり、日本としても2050年までの長期目標として、現状から60から80%の削減を行うと。また、2050年半減という長期目標を実現するため、世界全体の排出量を、今後10年から20年程度の間にピークアウトさせると。さらに、次期枠組みについて公平かつ公正なルールに関する国際社会の合意形成を目指すとともに、来年のしかるべき時期に我が国の国別総量目標を発表すると。我が国の国別総量目標というのは中期目標というふうに考えられるわけでございますけれども、こういう内容の行動計画が閣議決定をされたわけでございます。
 そして、(2)でございますが、では、低炭素社会の構築に関して、これまでこの地球環境部会あるいは国立環境研究所でどのような検討が行われてきたのかということでございます。
 最初にございますのは、「低炭素社会づくりに向けて」ということでございますが、これは昨年の秋以来ご検討いただき、今年の4月3日にこの地球環境部会で取りまとめをいただいたものでございます。低炭素社会のイメージを示すとともに、それを実現するための大まかな戦略をお示ししていただいたというものでございます。
 そして、[2]でございますが、今日これは西岡委員からご説明をいただく予定になっておりますが、「脱温暖化2050プロジェクト 低炭素社会に向けた12の方策」というものが国立環境研究所などによる研究成果として出ておりますので、それのご紹介、今日西岡委員からご説明をいただきますが、こういったような成果があるわけでございます。
 それから、3つ目に書いてございますのは、官邸における懇談会の分科会として、中期目標検討委員会というものが立ち上がることになったということでございます。地球温暖化問題に関する懇談会、奥田座長のもとでの懇談会というのがございますが、その下に、分科会として中期目標検討委員会を設置することが10月20日に決定されました。中期目標は、この検討委員会で、我が国の削減ポテンシャルとその実現のためのコストなどについて、科学的・総合的な検討を行った上で、国際交渉の状況も踏まえ、来年のしかるべき時期に決定・公表するということでございます。検討に当たっては、産業界、有識者、NGOからのヒアリングや国民へのアンケートなど、広く関係者の意見も聞くということでございます。
 こういう背景がある中で、この地球環境部会においてどういったことをご検討いただくということが、次の2のところでございます。地球環境部会における今後の検討事項についてということでございますが、我が国は、世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して2050年までに半減するという長期目標を提案する一方、我が国の2050年までの長期目標として、現状から60~80%の削減を行うことを決定している。このような社会は、現在のトレンドの延長線上には存在しないと考えられ、制度的なインフラ整備、ハード的インフラ整備、ソフト的インフラ整備等を合わせて行い、あらゆる主体が取組を進めていく必要がある。こうした観点から、地球環境部会においては、我が国の長期目標達成の道筋の選択肢を提示することを目的に検討を行うこととすると。
 具体的に何をしていくかということでございますが、まず先ほどの(2)にございました、これまでの成果、この地球環境部会あるいは国立環境研究所等における研究の成果を踏まえて、長期目標を実現した場合の社会像をイメージするということでございます。これは本日、12の方策について西岡委員からご説明をいただき、社会像をイメージしていただくということでございますが、そして、上に書いてございました各種のインフラ整備には一定の時間を要するということを勘案しながら、大きな削減効果が見込まれる対策を含む主要分野を中心に、施策や制度について具体的に検討していくと。12の方策と、12あるわけでございますけれども、その中でも特に主要な分野をまずは中心に選んで、施策や制度について具体的に検討をしていったらどうかということでございます。
 スケジュールでございますけれども、本日、脱温暖化2050プロジェクト12の方策についてご説明、ご議論いただき、その中の主要な分野と考えられる住宅建築物について11月17日、そして自動車について11月27日に、まずは検討をしていったらどうだろうかと。17日、27日、これは発表していただく先生方のご都合等もございまして、もう既に日程を定めてしまっておりまして、ご都合の合わない先生方には大変申しわけございませんけれども、とりあえず3回まで日程を決めさせていただいております。以降、適宜開催して、主要分野をカバーして、長期目標達成のための道筋の選択肢が年度内に提示できるようにしていきたい、そういうふうに考えているところでございます。
 今の参考資料といたしましては、お手元にございます、既に先生方ご存じのとおりだと思いますけれども、資料5が今年4月3日におまとめいただいた低炭素社会づくりに向けてというものでございますし、それから資料6については、7月29日に閣議決定をした行動計画でございます。
 それから、参考資料1で中期目標検討委員会の設置についての紙がございます。これだけ若干詳し目にご説明いたしますと、参考資料1でございますけれども、中期目標検討委員会の設置といたしまして、趣旨でございますが、COP15を来年末に控えて検討に着手していくという必要があるということが書いてございます。2つ目のパラでは、その際に科学的、理論的に行うべきであるというようなことが書いてございます。そして、3つ目のパラで、中期目標検討委員会を設置すると。4つ目で、中期目標については来年のしかるべき時期に政策的に決定をするということでございます。5つ目のパラで、検討のプロセスにおいては、委員に複数の目標値を仮置きしてもらい、それぞれを実現するための対策に伴うコストや経済的なプラスの効果、対策をとらない場合のコストなどを明確にして、国民に選択肢として提示をするということでございます。
 その次のページになりますけれども、複数の目標値のうち、我が国の中期目標として何を採用するのかということについては、政府において別途判断をすると。こういうようなことで官邸においては検討を行っていくということでございます。したがって、官邸で行うのは、中期目標について、ライフスタイルの転換等の対策を行った場合に、どれだけ削減をすることができて、その結果どういう目標値を置くことができるのか、またそのときのコストはどれぐらいなのかというような検討を行うことになるということでございます。
 他方で、本日以降ご検討いただく地球部会では、長期的な目標というのを視野に置いているということになろうかと思います。2050年までに60から80%の削減を行うということにしておるわけでございまして、そのためにどういった施策を講じていくべきなのかと。どういった施策が可能なのかということのご検討をいただくことになろうかと思います。
 繰り返しになりますけれども、手始めに、12の方策についてまずはご議論いただき、その後主要なものについて、住宅、建築、自動車等についてご議論いただくと、こういう手順でいったらいかがかということでございます。
 以上でございます。

○鈴木部会長 ただいまの德田課長からの説明につきまして、何かご質問、あるいはご意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、飯田委員。

○飯田委員 まず、簡単な事務的な確認なんですが、地球環境部会の11月27というのは、事前には25というふうに伺っていたんですが、これはもう変わったというふうに認識しておいてよろしいんでしょうか。

○德田温暖化対策課長 はい。27日ということで確定をしております。

○鈴木部会長 中期目標検討委員会というのが、なかなか大変なミッションを挙げておられるんですけれども、いわばスターン・レビュー的なものをちゃんと日本でつくらなくては、なかなかこういう議論もしにくいように思うんです。その辺はここでお答えいただくわけにもいかないでしょうから、我々としては注視をしていくということになるんでしょうか。

○德田温暖化対策課長 官邸に関係省庁も集まりますし、また有識者の方々に委員となっていただいて、日本の英知を集めて検討していくということになります。また、ここの分科会での成果も、官邸の検討委員会にインプットすべきものがあれば、適宜インプットしていくということになろうかと思います。

○鈴木部会長 ある種連携をとりながらという形になろうかと思います。またよろしくお願いいたします。
 では、須藤委員。

○須藤委員 今の点でございますが、中期目標のことについては、これからの議論の対象の外に置かれているような印象を受けているんですが、当然、低炭素社会づくりのロードマップなんかの途中では、これが大事になってきますよね。その辺のところは触れてもよろしいということで理解してよろしいんでしょうか。ここはもう余り触れてはいけないということなんでしょうか。そこだけ確認をしたいと思います。

○德田温暖化対策課長 長期目標を達成するための施策というのは、当然、中期的な目標を達成するための施策というものを含むわけでございますので、当然深く関係はしてくるというふうに思いますけれども、ただ、ここで、中期目標として20%であるとか、30%であるとか、40%であるとか、そういう数字を出すものではないということでございます。

○鈴木部会長 よろしいですか。
 横山委員。

○横山委員 前回の6月末の審議会で、環境省の顔が見えないのではないかと、環境省の主張ではなくて、別の考え方によって日本の温暖化対策が進められていくのではないかというようなことがかなり出たと思います。
 今回の排出量取引の試行的実施についても、かなり厳しい意見、これでは日本が削減目標を達成することができないんじゃないか、経済界の主張をそのまま受け入れたんじゃないかというような主張がかなりあると思います。私も、そういう面がこの試行的実施の限界ではないかと思います。
 そういうことについて、環境省はもうこれでいいんだと、これによって進めざるを得ないと判断したのか、環境省としてはちょっと別の考え方があったけれども、全体的には産業界の意向とか経産省の意向を考えて、これで行こう、やむを得ずこれでやるかというお考えになったのか、言いにくいとは重々承知の上での質問ですが、その辺を答えていただければと思います。

○鈴木部会長 では、大臣みずから。

○斉藤環境大臣 横山先生に大変厳しいご質問をいただきました。正直申し上げまして、今回の試行の中身について、我々満足しているわけではございませんし、不満な面はございます。正直言ってそうでございます。
 しかしながら、今回は、1つは、できるだけたくさんの事業者、会社に参加してもらうと。できればもう軒並み、ある一定以上の会社には全部参加してもらうということ。そして、そのことによって、いわゆるマネーゲーム批判と、また今のEU-ETSに対していろいろな片一方で批判がある中で、日本版の、日本の産業構造に適した知見・経験を積み重ねていって、それを将来、世界統合市場をつくるときに日本としてそれを組み込んでいく経験と発言力をつける、そういう2つの目的を考えたときに、まずこういう形でスタートさせる、できるだけたくさんの企業に入ってもらって、スタートさせるということも必要ではないかというぎりぎりの選択があったということもぜひご理解をいただきたいと思います。
 小さく産んで大きく育てるというような基本的な考え方で、これからもしっかり、実際に技術開発を生み出す試行、また実際に世の中を変えていく知恵を生み出す試行、取引制度というものを目指して頑張りたいと思います。その程度しか今のところ答えられませんが。

○鈴木部会長 試行という名前がついておりますように、これがファイナルな形ではないと考えていくことになると思うんですが、キャップがあって初めてトレードが成立するというのが一般的な国際的な常識だと思いますが、キャップレス・トレードという新しい日本独自の仕組みを試みてみる、ただ、やっぱりそういう文化を導入するために、ある種のまさに試行なんでしょうね。この後にぜひ期待をしなければいけないと思っております。
 そのほか、よろしいでしょうか。大聖委員。

○大聖委員 ちょっと細かいことで恐縮ですけれども、資料1の裏側のほうに、制度的なインフラ整備ですとか、ソフト的インフラ整備という言葉が出てくるのですけれども、これは余りなじめない言葉だなという抵抗感がありますが、普通、ハード的なイメージを持ちますよね。

○浅野委員 その表現は、既にこの審議会の4月の提言の中で使われています。

○大聖委員 ですけども、世の中の通念として……

○浅野委員 しかし、この審議会はその言葉を使って報告をまとめているわけで、その段階でのご指摘ならともかく、いまになって、それがおかしいと言われると、自分が自分で言ったことがおかしいということになってしまいます。

○鈴木部会長 改めてご説明を……

○德田温暖化対策課長 今、浅野先生からご指摘いただきましたけれども、資料5に低炭素社会づくりに向けてという、この環境部会で4月3日におまとめいただいたものをご用意しておりますけれども、そこの4ページをめくっていただきますと、制度的なインフラ整備、ソフト的インフラ整備、ハード的インフラ整備といたしまして、制度的なインフラ整備についてはインセンティブの付与ということで、奨励、規制、経済的手法。それから、ソフト的インフラ整備としては、人材育成、教育、見える化、資金。ハード的インフラ整備として、都市構造、交通網、建築物、エネルギー供給、適応というふうにまとめられておるところでございまして、この環境部会で用いた用語で報告書も取りまとめておりますので、そういうことでご理解をいただければと思います。

○大聖委員 環境省用語にならないように、ぜひお願いしたいと思います。

○鈴木部会長 おっしゃるとおりだろうと思います。
 はい、どうぞ。

○飯田委員 さっきは事務的な話でしたが、内容面で一言。資料1に基づいた、今後の地球環境部会のいわばアジェンダを議論できるのは今この瞬間かなと思ったので、改めて発言しておく必要があるかなと思いまして。
 先ほど須藤委員がおっしゃったのと若干かぶるわけですけれども、裏側の2番目の地球環境部会の今後の検討事項というのが2050年というふうになっていると、表でまさにこれから中期目標これから議論するというのは、この中環審からはアジェンダとして取り上げられたというふうに認識すべきなのか、延長線上でという含みの中で、議論を本当はしたいんだけれども、表向きはできないけれどもちゃんとしてほしいんだという含みなのか、そのあたりをもうちょっと明示的にやはりきちんと出していただく必要があるかなと。
 中期目標どころか、最近、速報値が流れておりましたが、足元で8.8%という、そもそも今年から入っている京都の目標すら危ういということで、その延長線上で2020年の議論すら果たしてきちんとできるのかというところもあって、それをすっ飛ばしてさらに2050年というのもかなり縁遠いなというところもありますので、やはり足元の京都議定書の話はこの後どうするんだと、2020年のこの中期目標はもう官邸に任せっ放しで、そこに呼ばれる人たちにお任せしておいていいのかと、ここはかなり遠い話を、とりあえずこういうことがそのうちできればいいよねという話でいいのかということは、ここでアジェンダとしてきちんと出していただいて、まさにこの京都議定書の昨年の暮れまでやっていた合同部会で、繰り返し、繰り返し、ほとんど歯どめのない、いわゆる目達計画で、しかも来年も石炭火力がまだふえて、2000年だけから見ても石炭火力が膨大にふえているわけです。
 その歯どめの措置も一切ない、しかも再生化のエネルギーに関しては、ほとんど普及に関してRPSは失敗をしているといったことを繰り返し指摘しても何ら是正されていない中で、しかも長期目標などをここでのんびりと議論していていいのかということを、非常に私は危機感を覚えますので、アジェンダとして、縁遠い話だけではなくて、足元の話と中期目標、これを事務方としてどういうふうに中環審にボールを投げられるのかということを、もう少し明確にご説明していただきたいというふうに思います。

○浅野委員 このアジェンダは、事務局がどう考えておられるかはこのあとでご説明いただきたいのですが、少なくとも、既にこの部会で、2050年にはかくあるべしというようなことについて、かなり具体的な方策まで含めた議論を行い、それにもとづいて先ほどもご指摘いたしましたが、ビジョンを提言してきています。
 ただ、これまでの議論の中でもはっきりしているように、この4月3日にとりまとめたビジョンというものは、50年先のことを夢物語のように述べているわけではなくて、その途中のプロセスを全部含めた検討の結果を示したものとなっています。ただ、残念ながら、あのペーパーでは、ロードマップ的なものが示されていないし、どこでどういうふうに具体的に政策的に実現すればいいのかという、それぞれの提言内容の実現手法というか、ツールといったものについて必ずしも明瞭に示し切っていないという点で、積み残した課題があるので、それはさらに詰めなくてはいけないということであり、このことは何度か申し上げました。
 その意味では、今回のアジェンダは我々が今まで取り組んできたことの延長線上の議論だと思います。そして既に、2050年に60から80%の削減ということに関しては閣議決定が行われていますから、それはこの部会が出しているこの提言が言わんとしたところが受け入れられたというふうに考えればいいわけで、それに至るロードマップを考えるということは、これまた、50年先のことを途中経過をぬきにと勝手に話をするのではなく、それに至るまでのプロセスはどうすればいいのかだという議論をやっていくことになるわけです。この場合に当然、通過点として、20年目がある、30年目がある、もっと手前のその第二約束期間をどうするんだということは全部通過点としてあるわけですから、ここで妙にどこかに絞り込んだ議論をするよりも、中環審が本来果たすべき役割を考えるならば、他の場所では取り上げられることが少ない、中長期を見通した環境政策全体の中でどう考えたらいいのかということも大事であろうと理解いたします。我々はこれまで余りにも京都議定書目標達成計画を中心にそれだけを議論していたものですから、5年単位の議論に思考が固まり過ぎているかもしれない。
 もちろんそのような議論もやらなくてはいけないことを否定するつもりはありませんが、そればかりやらないで、環境基本計画で示したところ、あるいはさらにそれを超えて50年先の議論をやろうとしているわけですから、その時期までのロードマップをきっちりつくるというプロセスでは、当然、今委員がご指摘になったような目下の問題、足元の問題を議論しなきゃいけませんし、それがどういう形であれ克服されない限り、次の中期目標に行かないだろうとか、ロードマップのこの部分がクリアできないだろうという議論は当然やることになるのではないかと思います。ですから、この提案が、そんなにこの部会の議論が、限定的、禁欲的に、50年先のことだけをふわふわ議論し、当面のことは全部官邸の会議にお任せするというようなことではないと理解しているのですが、このような理解は間違っていますか。

○寺田地球環境局長 基本的にそういうふうにご理解いただきたいと思っております。ちょっと冒頭、私の説明が不足で、若干誤解をされてしまったのかなという気もしますけれども、申し上げたことは、2050年というのは決して空中にふわふわ漂っているものではなくて、実は2050年を考えるとき、それはそんなに遠い将来ではなくて、今からさまざまな施策をしていかなければならない、そういう道筋、ロードマップを書いていただくということでございますから、当然その途中段階、ただいま浅野先生からご指摘がありましたように、2020年ごろにはどうなんだ、2030年ごろにはどうなんだと、こういう話は当然出てくるものだと、出てきて当たり前であるし、それを環境省としても期待しているというところでございます。
 また同時に、一方、これは官邸のほうで、これから発足する中期目標検討委員会がお決めになることでございましょうけれども、一応もう中期目標検討委員会は国民の前にオープンな姿で審議をするということになっておりますから、当然のことながら、中期目標検討会でどのような議論が行われ、どのような資料が出されているかというのも、これもまた適宜、適切な形で皆様方にご報告をすることもできようかと思います。そういったことで情報のやりとりというのができるだろうと。
 ただ、アジェンダという言葉が出ましたけれども、中環審で中期目標の検討をするんだとまでは、これは政府部内の仕切りというものがございますので、まさかこの中環審で中期目標の検討をするんだというふうなことまで書くというわけにはまいらないと存じますけれども、当然のことながら、2050年までのロードマップの検討の中に、中期目標に反映すべきことというものが出てくる可能性は当然あると思いますし、それを期待しますし、必要な範囲で私どもとしても中期目標検討委員会にインプットをしてまいりたいと、かように考えているところでございます。

○斉藤環境大臣 中期目標を検討委員会で決めると言いましたけれども、決めないんですよ。いろいろ検討していただいて、選択肢を国民にオープンで議論していただいて、最終的に決めるのは政府が責任を持って決めるわけですから、今日この場でご議論いただくこと、中期目標検討委員会でご議論いただくこと、それぞれご議論いただいたものを我々が参考にしながら、最終的には政府が責任を持って決めると、こういう理解でいいですね。

○寺田地球環境局長 はい。

○飯田委員 実は、前回の合同部会の冒頭でも私は同じような質問をぶつけて、おととしですが、足元の京都議定書だけをやるのか、その次を見越してやるのかということで、その次を見越しながら仕事をやるんだと言いつつ、事実上、まさに足元のことばかりやって、しかもそれも十分できなかったというトラウマというか―、ありますので、今の寺田局長のお答えで、ここには中期目標の含みはあるけれども、明示的に中期目標をここで検討するとは書けないということもわかりましたけれども、やはりでも、中期目標に反映すべきこととか、あるいは足元のまさに京都議定書達成に対して目達計画からのずれを入れるとか、多少、明示的に入れていただいたほうが、結局はまた、この文章だけが行くと、結局は長期目標のことを中環審はやっているんでしょうという話になって、ここから先のアジェンダも、中環審はそういう含みを持ちつつも、結局、議論の中身に入ると、長期目標の話にずれてしまうのではないかという危惧を覚えますので、若干そのあたりは霞が関文学でも構いませんので、中期目標の含みと足元の京都議定書の含みはもう少し読めるようにしておいていただいたほうがいいかなというふうに思います。

○鈴木部会長 いろいろご心配、あるいはご議論ございましたが、私はむしろ中期目標を長期目標なしに決めることができるのかという、そちらのほうで官邸の議論が一体どういう形でされるのかというところにむしろ心配がありまして、ですから、私たちは4月、あるいは洞爺湖前の段階で、低炭素社会づくりに向けての、ある意味では定性的な議論をしてきたと。これをきっちりとここで定量化して、少なくても現状から60から80%、私は80でも足りないと思っているんですが、私の計算によると85%ぐらい減らさないといけない。それを実現する社会というのは全く違う構造をもった社会です。現状のエクストラポレーションで行くわけがない。
 産構審との合同審議会で京都議定書目標達成計画について議論しているのは、まさに現状からのエクストラポレーションというか、延長上の話しかしていないんですが、2050年には全く違う社会をつくり出さなくてはいけない。これがまさに、例えば今日後でお話を伺う西岡先生のほうでも議論されている中身なわけですけれども、それにきちんと定量的な姿を見せて、そこにどうやって具体的にたどり着くのか、多分、革命的な変化を求められていく。
 そういうときに、中期目標をどうそこに位置づけていくのかというのは大変難しい問題だと思います。しかしながら、一体どういう国をつくっていくのかという、そこがまさに重要なところだろうと思いますので、中環審は中環審としてのミッションをきっちりと認識しながら進めていくということが大事ではないかと思います。
 そういうことで、ここの議論がいろいろと、中期目標を検討なさるところにもインプットされるような、そういう仕組みをつくっておくということが重要な所かなと思います。
 それでは、まだいろいろおありかと思いますが、主要な議題となります、長期目標を実現するための社会あるいは経済の姿をイメージする、こういうようなことで、これまで検討を進めてこられました国立環境研究所の西岡先生、西岡先生が中心となって脱温暖化2050プロジェクトをおやりいただいていたわけですが、その研究成果としての低炭素社会に向けた12の方策、これにつきましてご説明をいただきまして、議論を進めたいと考えております。
 西岡先生、どうぞよろしく。

○西岡委員 西岡でございます。お手元の資料、まずパワーポイントの資料がございますけれども、あとそれから資料2と4といいましょうか、低炭素社会に向けた12の方策、主としてこの2つを使ってお話をしたいと思っています。
 あとそれから、お手元に、2050日本低炭素社会シナリオ、これはもう既に報告したものでございますけれども、前振りとしてある。それからもう一つ、低炭素社会に向けた12の方策、私どもはどうしても研究レポート的に書きますと非常にかた苦しくなってしまうものですから、ちょっとやわらかく、こっちのほうがひょっとしてできがいいのではないかと私は思っておりますけれども、お配りしておりますので、参考にしていただければありがたいと思います。
 それでは、パワーポイントのほうからいきたいと思います。1枚めくっていただきまして、まず最初にめくっていただきますと、「日本低炭素社会のシナリオ」なる本がありまして、これはスポンサーへのお礼ということでございまして、また評価委員の方もたくさんいらっしゃるものですから、こういう成果を出しておりますという報告です。日本低炭素シナリオの研究の前段といたしましては、2050年に70%ぐらい削減する可能性があるということを墨絵で書かれたLow-carbon Societyのところに書いてあります。
 簡単にこの話をさせていただきますけれども、これは大前提といたしまして、1人当たりのGDPを2%、あるいは1%の成長を前提にいたしまして、2050年に想定されるサービス需要を満足しながら、明るさ、高さ、あるいは移動距離等々のサービスは満足させながら、それを少ないエネルギー、あるいはCOの少ないエネルギーでもって充足することが可能であるということを申し上げています。
 ここで、技術的ポテンシャルが存在するというのは逃げを打っておるわけですが、技術的には可能だけれども、社会のほうでそれを受け入れる体制をつくっていただかないと、そうはいきませんよということを言っております。
 どうやってやるかということですが、まず需要側の40ないし45%のエネルギーの消費減。これは、私どもだけではなく、IEA等々の長期見通しも、半分はまずエネルギーを減らそうという方向から攻めていって、そして低炭素エネルギー源の組み合わせで実施する。その要する技術費用は、もう少し詰める必要があるかと思いますが、GDPの約1%。すなわち技術はあるんですけれども、特に当初、20ないし30年、中期目標に関連するところは既存の技術を主体として、それをどう社会に埋めていくかが大切だということです。対策は早目が効果的、これは純粋に経済学でやっておられる方は、遅いほうが技術進歩があっていいんじゃないかということをおっしゃることもあるんですが、我々はいろいろな資源的な制約も考えていくと、やっぱり早目がいいということです。これにつきましては、このプロジェクトで現在、定量的に検討を進めておりますので、今日は申し上げません。
 それから、我々のほうでお願いしたいのは、ぜひ長期の総合計画に基づく産業構造転換、国土インフラの投資、民間投資の誘導を早期からやってほしい。そして国民的目標を共有し、社会・技術イノベーション等々を現実のものにする普及策が要るということで、新しい時代の日本構築のための「Make the rule!」といいましょうか、全体的にそういう仕組みをつくってくださいということを申し上げています。
 今日の話ですけれども、それじゃ一体、どのような手順でそれを実現するのか、一体その個別のやる項目は何なのか、玉は何なのか、仕掛けはどうするんだ、成果はどうするんだ、時間的にはどうなのか、手順はどうする、あるいはそれぞれの主体が何をやるのかと、こういったことをきちんとやらないで言いっ放しは良くないということで、次のステップとして、低炭素社会へ向けた12の方策というのをつくったわけです。
 12がいいのか、11がいいのか、15がいいのか、サッカーファンもあって、ラグビーファンもあって大変だったんですが、一応、12ということで何とかまとまったということであります。
 次へ行きますが、これはCO70%削減のシナリオの典型的なものでございますが、ここにありますように、2000年のエネルギー需要を、需要側で半分ぐらいにまず減らすということを前提にすると。じゃ、どうやって社会的な仕組みをつくっていくかということが必要だろうということであります。
 その次のページは、そのときの最終的な日本の姿といったものを一応書いてございます。例えば、人口を見ますと、1億2,700万人が9,400万人になるというシナリオ、あるいはシナリオB、これはむしろゆったり社会のほうが子供がふえるんじゃないかなんていうことで1億人というふうになっています。例えばこういう具合に絵がかけていると。そういう中で、エネルギーの量あるいはCOを減らすことができていくというわけです。
 次のページをめくっていただきますと、2050年低炭素社会に向けた12の方策の役割ということが書いてあります。私どもの将来のシナリオといいますのは、バックキャスティング、この下の絵にございますけれども、経済活動のところに、排出目標70%削減、何としてもこれを実現するんだという強い意志のもとで、そこから逆算していって、一体これからどういう手順で行ったらいいんだろうか、あるいはそれが幾らかかるんだろうか、そしてだれが何をしなきゃいけないんだろうか、時間がどれだけかかるんだろうか、こういうことを評価するというのがこのバックキャスティングのやり方でございまして、その個別の対策と政策、これを我々は方策という言い方でしているのですが、対策でもない、政策でもない、一緒に合わせて方策という言い方をしておりますが、どうやって成り行きからそれを押さえていくかということを明快にしようということであります。
 次のページに移りますと、私たちは12の方策というのを打ち出しました。この12の方策というのは、先ほど私どもが2050年70%削減に向けたときに使いましたモデルの裏づけがあります。ですから、こういう対策だったらこの辺に効いてくるということがありますので、その真ん中のあたりで、こういう対策を打ちますと民生部門では56から48百万トンカーボンが減りますよという定量的な結果が出るということですが、ちょっとこのあたりは、例えば見える化でどれだけ減るかと言われても、すぐには私どもも答えられないのですが、ほかのところできちんと減らすと。むしろ見える化であるとか、一番下にあります低炭素社会の担い手づくり、これもじわじわと効いてくる方策があります。
 そういう具合に、民生部門、運輸部門、エネルギー転換部門、産業部門でこれだけ減る。じゃ、どういうことをすればいいのかということで、左の上から、例えば快適さを逃がさない住まいとオフィス、これを見ておわかりのように、我々はどこを減らせばいいか、具体的にどこを減らせばいいか、単に税金を入れるとかそういう話じゃなくて、本当に減らすということを念頭に置いた方策を提案しております。
 それから、2番目ですと、まず家庭部門で大切なのはやっぱり断熱なんです。あとはどうやって省エネの機器を入れていくかということで、例えば2番、トップランナー機器をレンタルする暮らしというのがございます。これは、今、中に入れている空調にしても、あるいは冷蔵庫にしても、どんどんトップランナーはよくなっていますけれども、なかなか買いかえが進まないということがあって、買いかえするばかりでは循環型社会から見ると問題があるかもしれませんけれども、それをいつも新しいものでできるように、例えばレンタルできないか。これは金融会社等々がまた考えていただくことだろうと思います。
 それから、農業部門、山林部門です。こういうのは、これから土地が非常に大切になってくるわけですけれども、そういうところも非常に協力してもらえればということで、旬産旬消といった形で農家と市場とをつなぐということもある。それから、森林と市場をどうやってつなぐかといったこと。もちろん、5番目が、ビジネスも頑張ってもらう。
 6番目、右へ行きますけれども、物流におきましては、まず物の量を減らせないか。サプライチェーン・マネジメント等々、それがどうも一番効いてそうだなということです。それから、今度は街づくりですけれども、歩いて暮らせるコンパクトな街づくりということも言っている。
 それから、エネルギーの供給側には、ぜひカーボンミニマム系統電力、あるいは太陽と風の地産地消ということで、再生エネルギーを入れていく等々をやっていく。そして、最後に11、12で、先ほど申し上げました、見える化、それから担い手づくりといったことをやっていこうじゃないかということであります。
 パンフレットのほうを見ていただきますと、12の方策についてまず真ん中、13ページに低炭素社会に向けた12の方策(一覧)というのがございます。
 そして、その次のページを開いていただきますと、快適さを逃がさない住まいとオフィスというのが15ページにあるかと思います。これは3段、4段に書いてございますが、一番上は、目指す将来像。例えば、将来の住まいというのはどういう感じであるべきなのだろう、ということをまず決めます。太陽と風を活かした建築デザインというのは、自然を十分に使って、省エネルギーの建築デザインもあるだろうし、もちろんそれは断熱等々が非常に効いてくるだろうということで、そういうのを念頭に置く。それから、それだけじゃなくて、そのこと自身が自分たちで生活するのに環境にやさしい、得をする。あるいはそれをつくろうと思ったときに、ちゃんと融資がついているといったことも必要だなと。何といっても、一番下ですけれども、そういうきっかけをつくってくれる人がいなければいけない。現在、例えば木でいい住宅をつくろうと思っても、なかなか大工さんが十分いないということがありますから、こういうことを将来に目指していこう。
 しかしながら、それをやっていくにはどうしてもバリアがある。ここに、2番目のところは、一体どんなバリアがあるのだろうかといいますと、やはり今、住宅の問題につきましては、基準をしっかりするだとか、断熱の基準をどうする、それからできるだけ自然エネルギーを取り入れるような形にするだとかいったところが、まず政府等々でやらなきゃいけないことだろうし、あるいは環境性能をラベリングして、このうちを買ったらこれだけ皆さん得しますよということを示す必要があるだろうというようなところがどうもネックになっているんじゃないかということで、ボトルネックを書いてあります。
 そして、最後に工程表ということで、一番下ですけれども、目指す将来像を右に置きまして、左のほうに課題を置きまして、それを一つ一つつぶしていこうじゃないか。省エネ診断士等々の養成という、これは大学でもそういう講座を設けてもらわないといけません。それからラベリング等々をやっていかなければいけないんですけれども、多分こういうことをやっていけば、おのずからそういう形に行くのではないかということでやっております。
 しかし、これはあくまでも例示でございまして、我々まだ業界の個別の話は十分調査できていないところでありますので、それぞれのステークホルダー、それぞれの主体が、それぞれに考えていただきたいということで構成しております。ですから、そういう具合に読んでいただきたい。
 同じく、トップランナー機器をレンタルするとか、それから、どんどん見ていくと同じような形で書いてあります。これについては、詳細についてお話し申し上げるわけにいきませんので、パワーポイントのほうに移りたいと思いますが、パワーポイントの次のページ、9ページ、家庭・オフィスの低炭素化を実現するための方策とありますけれども、これは1を中心に、12のうち10が効いてくるだろうと。大切なことは、1つだけで万能薬はないということです。この10が合わさってこういうことができるのだよということをこの絵で示しております。
 個別の家はしっかりしていないといけないが、系統電力にもしっかり頑張ってもらわなければいけないし、さまざまな自然エネルギーをうまく住宅の中に取り込むことはできるだろうか、そして11番のところ、うちを買う人にきちんとした情報のサービスができるだろうかといったこと、こういうものが全部合わさって、このことができるんですよということであります。
 それから、次へ行きますけれども、次のページでございますけれども、さきほど申しました工程表がここに書かれているということで、工程表も、左にありますように、2050年に70%削減目標に到達するように各方策の工程表を組み合わせて、どういった具体策をいつやらなきゃいけないかということを工程表に落としていこうということで書かれています。
 一例でございますけれども、11ページ、「芦名:2008」と書いてありますが、低炭素な暮らしをしたいという皆さんの願望があったときに、何といっても一番大切なのは、そう思った我々自身をそういう気にさせるということが大切ですが、目標[1]行動・使い方の低炭素化とあります。いろいろな高効率機器が、もちろん皆さん開発してあると思いますけれども、その行動をサポートするためには、行動の見える化が要るだろうし、選択のサポートをするには性能の見える化、それから、機器を買おうとしても、蛍光灯でも今の白熱灯の3倍か4倍の値段がしますから、もう少し何とか安くしてもらわなきゃいけないし、また住宅等々においては融資等々の制度をつくる必要があるだろうということになるかと思います。
 一方、住宅そのものについてはどうするかということで、左の下へ行きますけれども、高断熱住宅を普及させる。そのためには、政策、建設の義務化・規制等々が要る。実際に住宅の建設をするときには、そういう住宅を設計する設計士の人、企業も頑張ってもらうし、融資がなくてはすすみませんということで、どんどんさかのぼっていきまして、最終的に政策のほうにもこういうことをお願いしたいということで、この工程表は書かれているわけです。
 言うまでもないことですけれども、次の12ページに行きますけれども、やはりこの順番が大切です。何でもかんでも目標だ目標だと言っていく感じではなくて、やっぱり一つ一つさかのぼって、そういう土台をつくっていく必要があるわけであります。
 そして、13番目、非常に大切なことなんですが、今日先ほどからの議論でも長期目標という話がありましたけれども、実は、長期目標をつくって、そちらに目がけて個別に打っていくのは今なのです。決して50年先の話じゃなくて、実施には時間を要する。だれでも、今うちを建てたときにすぐ買いかえようとは思わないわけですから、それには50年あるいは30年で、いつ皆さんが買いかえるだろうかということをちゃんと見込んだ手を打っていく必要があります。この時間というのは非常にゆっくりと、しかし確実に、先ほど革命という言葉がありましたように、スローな革命をやっていく必要があるのではないかと思っておりまして、逆算して早目に手を打っていく必要があるかと思います。
 それで、次の14ページ、同じようなことがあって、実はこれは動くパワーポイントで書いたものですから、こんな絵がありますけれども、既にこれはあるからと、どんどん青札を張っていって、我々がやらなきゃいけないことは何だろうかなんていうことをやっている。
 もう一つの例といたしましては、低炭素な移動、我々は車とは言わず移動と言っていますけれども、この道筋を考えるときには、まず2つ大きなポイントがあるだろう。目標[1]というのはモーダルシフト、目標[2]というのは、そういう手段自身を低炭素化してくださいということ。手段自身の低炭素化には、乗用車の電気自動車がある。今は非常に値段が高い。それから電池がまだうまくないというようなことで、これはもう研究開発の導入が要ります。それから、皆さんに買ってもらうためには低炭素化車の優先レーンだとか、いろいろな仕組みが考えられるということでいきます。
 それから、今度は、より低炭素な移動へのシフトという方向、目標[1]のほうに行きますと、やはりこれは、公共交通を優先したようなインフラ整備をやっていく、いろいろな方策があるかと思いますけど、やっていく必要がありますし、さらに大もとは、集約的な土地利用というものをやってコンパクトなまちづくり、周辺地域をどうしていくか、地方だとどうしても今、郊外ショッピングセンター型ですけれども、シャッター街のほうににぎわいを戻すにはどうするかといったことは時間のかかる話ですから、今すぐにそれぞれの町で将来のイメージをつくっていく必要があるだろうということであります。
 そして、16ページも、そこから逆算して考えていきますと、もう2010年から、まず市民参加型のまちづくりを始めて、それが実を結ぶにはやっぱり10年、20年はかかりますから、それをやってくださいと。
 そして、17ページは、すぐにできること。これは身の回りにある情報に気づかせるということで、見える化ということがポイントになるということです。
 以上で、個別の話を申し上げましたが、私のほうは、我々の研究のところのポイントといいますのは23ページになるのですが、一番最後から2番目にまとめてあります。
 私どもの研究のほうは、2050年低炭素社会を実現するために克服すべき障壁・方策・手順、こういったものを具体的に例として幾つか示しました。
 我々が具体的といいますのは、先ほど申しましたように、どこが一番出しているかということを十分見て、二酸化炭素削減に確実につながっている排出主要セクター、場面を想定して、何をやるかということを挙げている。2つ目、定量性。これは2050年モデルと連結しておりますので、どこでどれだけ減らせるかの裏づけがあるということです。
 ちょっと戻っていただきまして、次のページを見ていただきますと、右側にいろいろ挙げました項目あるいは技術が、どういう形で削減に効いてくるかということを一応モデルで計算できるようになっています。私どもが挙げましたこの手順をきちんとやっていただければ、70%削減という、計算上の結果は出ておりまして、さらにこの上に税制、あるいは取引、あるいはポリシーミックス等々をやっていただければ、それがますます確実になっていくかと思います。
 最後のページに戻りまして、もう一つは包括性、あらゆる地域・セクターを一応想定しております。どういう主体、どういう人たちがどう動くかということも考えておりますけれども、その全体の相乗効果が非常に大切だということかと思います。
 これはまだ例示段階で、こういうことを示すことによって、国民各層、地域、特に地域のまちづくり、セクターごとのアイデアをどんどん入れていただきたい。皆さんのご意見を集約してゆきたく、環境省に言っていただければと思っています。経済政策はここには入っておらないと。
 今一番大切なのは、「Make the rule!」とありますが、目標を共有し、共通の社会の方向・ルールを定めて、各人がそれぞれに工夫をする社会、各人が安心して、低炭素社会の中で自分たちはこういうことをやっていくのだということに自信を持つ状況を作っていただきたい。あちこち地域でお話をしますと、必ず個人の方は、自分たちは何をやればいいんだということをおっしいます。あれはできていない、これもできていないとおっしゃるかたもいらっしゃいますので、全体としてはこういう仕組みになっているんだから、皆さんそれぞれの場所で頑張ってくださいというようなことを言うことができれば、いいなと思っています。
 以上でございます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明につきまして、残りの時間、30分ぐらいを議論に充てさせていただきたいと思います。ご意見、ご質問ございます方は、ネームプレートを立てていただけますでしょうか。
 それでは、10名の方が今立っております。じゃ、武内委員から。武内委員、福川委員、高村委員、須藤委員、小林委員、鹿島委員、及川委員、飯田委員、猪野委員、浅岡委員、この順番でお願いします。

○武内委員 今ご説明いただいた、日本の社会を2050年までに70%削減するというふうなことが、非常に大規模な社会の変革を伴って実現可能だということを示されたということは、私は大変、この社会に対して与えた影響は非常に大きかったと思いますので、これについては敬意を表したいと思います。
 さらに、私の関心事から言うと、これまでの産業とか、あるいは民生部門での個々のライフスタイルの変更といった、そういう議論だけではなくて、もう少し国と、それからそういう個々人の生活との間の中間にあるような、都市だとか、農村だとか、そういうふうなもののあり方と絡めながら低炭素社会を議論したという点でも、これは従来の京都議定書の目達計画のような議論から比べると、議論の中身としても飛躍的に進んでいるというふうに理解し、評価しております。
 その上で、やや少し突っ込みが足りないと思いますのは、やはり従来のように、高度経済成長の日本で都市が拡大していく過程の中では、それに対する公的にも民的にも投資余力が相当あった上で、これだけの都市の拡大なり、拡散なり、農村におけるさまざまな基盤整備といったものが行われているわけで、逆の形にこれを、いわば都市を縮退させ、そしてコンパクトシティをつくり、そして地産地消の農村社会を形成しながら低炭素社会に向けてやっていくといったときに、それに係る主要な公共投資も含むさまざまな財源がどのように確保されるかというふうな問題について、この辺はむしろそういうふうなことを専門にやっておられる議論との、いわば議論のがっぷり四つに組んだ話の展開というのがこれからは必要なんじゃないかなというふうに思っております。その点をぜひこういう部会の議論の中で、そういう方々にも来ていただいた上で議論していただければいいのではないかというふうに思っております。
 以上です。

○鈴木部会長 では、福川委員。

○福川委員 大変総合的な研究をなさって、我々としても指針を得たような気がいたしまして、高く評価したいと思います。
 3点お伺いしたいと思いますが、最後のほうのページで、経済政策は入っていないという記述がございまして、これをどう考えるかということなんですが、多分これから考えていくときに、一体この日本の経済運営そのものをどういう考え方で展開していくのか問題です。市場経済というのは、今非常に金融が荒れておりますけれども、どういうふうに日本の経済運営の基礎に置くか。これが温暖化のためなら、むしろ統制的な手段ででもやれということになるのか、あるいは市場経済を原則としながら、今後、経済体制という形で政策ミックスを織り込んでいくかどうかという、経済運営の基本というのは、私は非常に大事だと思います。これから別の審議会などで別の意見が出てきたのでは、これはさっぱりうまくいかないということになりますから、まず1つは、経済運営の基本はどこに置くんだということを明確に我々としては議論をしたほうがいいかというふうに思っております。
 2つ目は、政策手段が幾つかここに書いておられまして、税制だとか補助金だとかありますが、一体この経済政策の有効性と社会意識という問題をどう考えるかという問題があるように思います。この社会意識は政策でも動きますが、同時に教育でも動きますし、また一般の世論という形でも動いてきます。ですので、この有効性を考えるときに、政策手段と社会意識という問題の因果関係をどう考えていくかということを考えるべきではないかというふうに思います。
 3点目は、この12の方策の中で、特に9番、10番、太陽と風の地産地消とか、あるいは次世代エネルギー供給とかいうような問題点が指摘してございまして、私はこのエネルギーの供給サイドのあり方というのも重要な視点で、ここでは水素・バイオ燃料等が書いてありますが、先ほどご議論がありましたように、これから10年、20年、30年とロードマップを考えるとすれば、その間に原子力をどう位置づけていくのか、それから水素をどう位置づけていくのか、幾つか段階的に考えていかなければならないと思うので、エネルギー供給サイドの展開のロードマップも議論の視野の中に入れていくべきではないかと思います。
 以上です。ありがとうございました。

○鈴木部会長 それでは、永里委員。

○永里委員 ありがとうございます。簡単に言います。
 この12の方策を実現するためには、国民といいますか、生活者が賢く振る舞うことが重要だろうと思います。すなわち意識改革が非常に重要になります。そのためには、別の言い方をしますと、この12の方策を支える方策として、教育が非常に重要だろうと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 高村委員。

○高村委員 ありがとうございます。
 まず、この低炭素社会のシナリオの検討で、随分、低炭素社会という言葉自身が社会的にも普及しましたし、当座の短期的な政策課題だけではなくて、持つべき視野というものをきちんと見据えるという意味での意味合いというのは非常に大きかったというふうに思います。
 先ほど来の議論が冒頭ございましたけれども、1つは、2050年に長期の目標に到達するために幾つかの準備過程がかなり必要な、特にハードな意味でのインフラの問題をどういうふうに条件を整えていくかということと同時に、他方で、10年ないし20年で世界的にこの排出量をピークアウトするという中期的な、長期目標達成のために通らなければいけないパスを確実に通っていく政策というのが必要なんだろうというふうに思います。
 私のほうから3点ご質問なんですが、1つは、西岡先生が代表になっていらっしゃるこのシナリオの検討において、2050年70%の技術ポテンシャルがあるということですけれども、この研究のフレームの中で、そのために2020年ないしは30年あたりのタイミングで通らなければならないパスというものが、恐らく幅はあるんだと思いますけれども、ご示唆いただければというのが1つでございます。
 2つ目は、先ほど武内先生がおっしゃいました点でありますけれども、かなり大きなコストというものがその実現に必要だということは、この報告書の中で書かれておりますが、そのコストをどう確保するかという点が1つの重要な課題だと思います。これは、むしろこちらの中での議論ということになるかもしれません。
 3点目でありますけれども、経済が非常に密接にかかわっている中で、幾つかの施策というのが、他国の、あるいは世界全体の排出に影響を与える施策というのがあるんだと思います。例えばバイオ燃料などはこの間議論があるところだと思いますし、日本の排出減が単に低炭素のために外に行けば問題が解決するという問題でもないということからしますと、一定のシナリオをつくっていく段階での対外的なといいますか、国際的な政策の原則といったようなものは必要ではないかというふうに思います。それは、限られた財源を、いかに世界全体の排出を減らすという観点から効率的に使うかという観点からもその点は必要ではないかというふうに思っております。
 以上です。

○鈴木部会長 須藤委員。

○須藤委員 どうもありがとうございます。西岡先生の大変な研究成果、貴重なものをありがとうございました。
 1つは、それぞれ転換をしたり、あるいは新しいものを導入していくときのコストの問題はもともと触れていないとおっしゃったような気もするんですが、その辺のコストの問題をこれからおやりになれるんでしょうかということが1つ。
 それからもう一つは、2050年になりますと、上下水道なんかはほとんど更新をしなくちゃいけなくなると思います。これは莫大な費用もかかりますし、とてつもないエネルギーもかかると思いますので、この辺のところの考慮はこれからどうされるんでしょうかというのが2番目です。
 3番目は、カーボンミニマムの系統電力、これは私は当然必要だと思っているんですが、現在の状況を見ますと、カーボンミニマムではなくて、カーボンマキシマムになっているのではないかと思います。なぜかといいますと、現状でもなお、例えば1例を申し上げますと、小名浜に、石炭火力が新設されるということで、PPSの事業として40万キロワットで228万キロワットの申請があって、その環境影響アセスに携わっているのです。その中で、京都議定書さえ整合性がとれていれば、オーケーだというのが事業者の言い分です。確かに自主行動計画の目標は甘いので、1社が加わっても0.82が原単位だったと思いますが、そのぐらいでも全体のなかでは吸収されてしまします。
 それで、こんなことはなってはならないということを言い続けているんですが、この低炭素社会づくりに反して、大変反対の方向を向いている部分というのが今でもなおかつあるわけです。そういう部分が出てくると、そこだけに限らないと思うんですが、先生の今70%というのは……、基準年は2000年ですよね、1990年ですか。

○西岡委員 エネルギーについては2000年でやっております。

○須藤委員 2000年ですね。というと70%どころじゃなくて、これがうんとふえちゃったら、逆に言うと、これが実現できないこともあり得るのかなと思うので……

○西岡委員 COについては1990年です。

○須藤委員 90年でいいんですか、そうですか。ですから、やっぱりふえるわけですよね、今ふえれば。
 ということで、アセスのことはまず、ここは議論の場ではないんですけれども、要するに世の中全体の中で、一部では、京都議定書の自主行動計画さえ守られればいいんだという雰囲気があるんです。その中で、今の低炭素社会づくり、この行動計画、これから我々が議論することは、無視をするとは言わないんだけれども、無視をしていいかと私は確認をしているんだけれども、社会的責任は京都議定書さえ守ればいいんだと断言をされているので、この問題は後で環境省にお願いをいたしますが、一応そんなこともございまして、ふえた場合の対応というか、先ほど浅野先生も飯田先生もおっしゃっていたんですが、現状からずっと、特に今のところでもう見切り発車をして駆け込みみたいになって、具体的な目標ができる前にどんどんふやしちゃっている部分がなくはないんです。その辺のところを我々は気をつけなくてはいけなのんではないかと、こんなふうに感じております。
 以上、ありがとうございました。

○鈴木部会長 小林委員。

○小林委員 私のほうからお願いしたいことが数点ございます。
 1点は、先ほどお話がございました、いわゆる国民に対する環境学習、環境教育、これをもう少し重点的にやっていただきたい。そのためにも、今回の資料を見せていただいた限り、まだやっぱりよくわからないというか、市民の方がこれを見て、自分が何を行動するかというのが見えてこないという部分がございます。できたら、市民が年次的というか、10年おきぐらいに、こういうふうなことを自分は行動するんだというようなロードマップを示していただくというのが重要ではないかなと。そうしないと、市民はなかなか動きづらいという感がいたします。それが1点です。
 それから2点目は、経済といわゆる生活レベルを2050年までにどういうふうに維持していくのか。維持する言葉はよくないんですが、現レベルを維持するのか、それともどういうレベルに持っていくのかということをある程度明示する必要性があるのではないかと。レベルを下げるということも重要だと思うので、その辺も明示していただいたらどうかなというのが2点目です。
 それから3点目は、この中で機器を買うよりサービスを買うという言葉が出てくるんですが、これは大変重要なんですが、現在の法制度とか税制度というのは、機器を買うことをベースに考えられていて、サービスを買うことは余り前提に置いていないという意味から、ぜひサービスを買うことが優遇されるような税制度、また法制度を考えていただく必要性があるのではないかなと。以前、電気製品のリースを考えたことがあるんですが、これをしますと、その耐用年数で計算すると、リースのほうがはるかに高くなって、だれも利用されないという問題がありました。ぜひこの辺をお考えいただきたい。
 それから、そんな中で市民が選べるようなシナリオ、リースをするにしても、ある程度自己責任を持っていただくようなリースの方法というのはあると思うんです。今のリースというのは、物を借りると、借りた物の問題点は全部貸した側に責任があるという形になっているのでリース料が高くなっているので、ある程度借りた側に責任を持たせるようなリース制度というのがあってもいいのではないかなという気がいたします。
 ということを、ぜひこの辺、具体的に市民が実際に行動するに当たって、何を考えたらいいのかということをもう少し明示していただくと大変いいのではないかということで、ぜひお願いしたいと思います。

○鈴木部会長 鹿島委員。

○鹿島委員 ありがとうございます。私から3点ご質問させていただきたいと思います。
 1点目は、この検討をするときに、ほかの国との関係というのをどういうふうにお考えになられたのか。例えば産業部門ですとか、あるいは、2点目に関係するんですけれども、消費の後の部門等についてどういうふうにお考えになられたんだろうというのが1点目でございます。
 2点目は、ここでは生産サイドで見ていくと、生産、流通、消費というところはカバーされているような気がするんですが、もう一つ、最後といいますか、もとへ戻していくというか、閉じるための、廃棄という名前がよくないのかもしれませんが、そこについてどういうふうにお考えになられたのかということです。
 それから3点目は、今申し上げましたように、生産、流通、消費というのは、いずれも財やサービスの供給サイドの話で、需要サイドについてのお話が十分でなかったような気がするんですけれども、これについてはどういうふうに、最後の教育というのは、そういうことを意識されてそれをすべてまとめられたのかもしれませんが、例えば私なんかの関心事でいきますと、運転免許証制度なんかというのは、割と議論しやすりテーマが欠けているような気がするんですけれども、こういうところについてはどういうふうなご判断をなさったのかということも含めてお話しいただければと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

○鈴木部会長 及川委員。

○及川委員 西岡先生を中心にして、こういった格好でまとめていただきまして、かなりよく見えるようになったと思います。どうもありがとうございました。
 そういった中で、1つお伺いしたいのは、去年、IPCCレポートの第4次報告書が出まして、地球温暖化は確実に進行していると。その原因というのは人間活動の影響であるということが言われているわけです。そういった中で、温暖化の一番中心の大気CO濃度を見てみますと、1990年代は、年間1.3から1.5ppmぐらいの上昇だったわけです。ところが2000年になると、それがぐっとはね上がりまして、2ppmに上がっているという、それが現状ではないかと思うんです。
 それで、ここで論議されている2050年といったような40年後に向けて、地球温暖化がやはりさらに進むのではないか。そして、単に温度が上がるだけではなくて、水の問題、乾燥の問題、去年なんかもオーストラリアで大干ばつが起こって小麦の値段が暴騰するといったようなことで、日本じゃなくても、そういったことが日本の我々の食生活なんかに非常に大きな影響を与えるということがありまして、そういったことは気候変動の非常に予測しにくい部分ですけれども、そういったことがかなり我々のこれからの方策を考える上で、それなりに考慮していく必要があるのではないかなということを感じたわけですけれども、この論議ではその辺はどういうふうに扱われていたんでしょうかということをお尋ねしたいと思います。

○鈴木部会長 飯田委員。

○飯田委員 このシナリオそのものについては部分的に協力させていただいたところもあり、細かい点は幾つかあるんですけれども、それは特に申し上げるつもりはないんですが。むしろ次回からの議論に向けて申し上げたい点として3点ありまして、まさにこういう長期的な2050年に向けてこういうロードマップを書いてという、これを見た瞬間にすぐさま思い浮かぶのは、ポリティカルリアリティとか、政治的な現実との著しいギャップということなんです。
 歩いて暮らせる町づくりであるとか、あるいは森林のところとか、道路計画を実際に変えていくとか、渋滞税を入れていくとか、トランジットモールをつくるとか、あるいは森がちゃんと経営として成り立つように動いていくとか、それから断熱の比率、これも合同部会のときにありましたけれども、新築でもたかだか4割、5割しかなくて、ヨーロッパ水準の100%にはなっていないとか、そういったものが、絵をかいても全く現実に落ちていかないというポリティカルリアリティがあって、そこのところをどういうふうに踏み込んで社会を変えていくんだというところまで追加の議論というのが行かないと、その結果が積み重なって昨年で8.8%というふうになっているわけなので、結局この10年間ほとんど何も進展していないというのがかなり率直な感想で、このまま行くと、2020年になっても恐らくほとんど何も進展せずに行くのではないかという危惧を覚えるわけです。
 そういう意味では、ポリティカルリアリティ、現実をきちんと見据えて、それをいかに機能させるかと、ファンクションさせるかというところまでおりていかないと、政策というものは動いていかないと。政策デザインそのものも問題なんですが、政策デザインをした後のインプリメンテーションも全くなってない。最近、私は横浜市の中へ入って、行政の現場のフロントラインまで行って、いかに動かないかというのを本当に痛感しておりまして、そのあたりまでおりていかないといけないというのが、今のポリティカルリアリティとファンクショナリティーというのが非常に重要だという、これで2つです。
 中でも、とりわけカーボンミニマム電力というのは極めて重要で、とりわけ再生可能エネルギーですね。これはいろいろあるうちの12の1つではなくて、これが目玉中の目玉であって、つい最近言われ始めているのは、グリーンニューディールという言葉です。アメリカでも、あれだけクレジットクランチの中でも、今年、風力発電は去年の1.5倍マーケットが伸びていると。再生可能エネルギー全体が毎年60%の今成長をしていて、昨年で16兆円、今年は20兆円をはるかに超えて、10年以内に自動車産業に並ぶぐらいの規模になると。これを、今ゴアを中心に、恐らく後1時間ぐらいで大統領になるかもしれないブラック・ケネディというオバマになぞらえて、アポロ・アライアンスと。これから10年で月に送ると行ったケネディなぞらえて、これから10年でアメリカの電力を100%再生可能に変えようじゃないかみたいな呼びかけまで起きているわけです。
 EUの再生可能エネルギーというか、EUの気候変動パッケージングも、その前に再生可能エネルギー2020年に20%というものを、これをオブリケーション、義務として決定をした上で気候変動20%があるのであって、これなくして気候変動対策はないと言って、いわばあんこ中のあんこです。そういう意味では、このシナリオはこれでいいんですけれども、やはり再生可能エネルギー政策というものがどうして日本でファンクションしていないのかということまできちんとリアルに落ちないと、中期目標の議論もあるいは足元の8.8%をどうするかという話もずっと絵にかいたもちになってしまうのではないかというふうに危惧を覚えますので、ここから先の議論としては、そのレベルの議論を私としてもしていきたいと思っておりますが、これから2回、出られそうにないので若干心配していますが。
 以上です。

○鈴木部会長 猪野委員。

○猪野委員 2050年に向けてイメージを考えていただいて、非常に大変なご苦労があったと思います。例えばその中でも、何人かの委員の方もおっしゃられておりましたけれども、2050年の時代というのは、例えば社会はどういうような経済社会になっているのか、また、今回のこの検討の中にも産業構造の転換とかありますが、実際の社会というのはどのような産業社会に2050年になってくるのか、そのようなイメージを考えるのは、非常に難しい部分が多分にあると思います。
 例えば、現時点でも、エネルギーの自給率そのものが4%ぐらいしかない、2050年のときにエネルギーはどういう形で、場合によっては輸入できているのか、現に去年の段階でも輸入総額に占めるエネルギー購入額は約3割ぐらい輸入しているわけです。今、2020年に向けて中期目標も政府のほうで検討が始まっていきますが、その中におきましても、やっぱりエネルギーをどう確保していくのかエネルギーセキュリティの非常に大事な部分だろうと思っています。
 それから、ここに乗っかってきております、いろいろな技術を、これから同じように開発していかなければならないのですが、しばらくは既存の技術の展開を一生懸命やっていけば、それはある程度クリアできるんです。ただ、2020年を超えて2050といいますと、これは本当に革新的な技術が開発されてこないといけない。そのために、今から本気でそのロードマップを考えなければいけないと思います。
 ただ、その中に、実際の負担額というのが大体どのくらいになるのかということも一緒に並んでいないと、またそれをだれが負担をしていくのかがはっきりしていないと、直接負担をする関係がないようなイメージになってしまう。どういう形でみんながどう負担をするのか、はっきりさせて、それでどういう形でみんなで負担をしていくのかを示すことも非常に大事なことだと思っています。
 2050年をイメージするというのはなかなか難しいんですが、やっぱり国としてどういう形で成り立っていくのか、社会として、それから産業として、それからまた、今、再生可能エネルギーの、特に電力の話も何人かの委員から出ましたけれども、まさに非化石エネルギーというのは2020年には50%にしようとか、既に発表されております。それをさらにどの程度、再生可能エネルギーであり、もう一つの省エネであるとか、それからもう一つ、原子力をどうやって進めていくか、みんなそれにかかわってくることと思います。
 その意味で、開発した技術が2050年に向けて、どの時期にどういうものがどこまで実現できているかとか、そういう負担のロードマップ的なものも開発にあわせて検討していくのが大事だと思います。
 中環審だけではなくて、ほかのところで検討されている内容も踏まえながら検討していく必要があると思っております。

○鈴木部会長 浅岡委員。

○浅岡委員 こうして低炭素社会のイメージを示していただいて、何度もお話をお聞きする機会もありまして、随分こうしたイメージが広がってきたなと思いまして、とてもいいことだったと思うのですけれども、大きな欠落部分があると思います。
 これは西岡先生も書いておられるように、経済政策は入っていないと。税、取引などのポリシーミックス、規制も具体的には入っていない。といいましても、入っていないわけではなくて、よく見ますと、もとの12の方策の報告の中には、先ほどもお示しいただきましたように、下のほうのロードマップの中には相当のことが書き込まれていますので、よく見るとわかるのですけれども、またこれを前提にしていると思いますが、12の方策の中にそれが見えないわけです。
 それでは、これを実現する道筋にはならなくて、先ほど12がいいか、15がいいか、とおっしゃっていましたけれども、少なくともそうした経済的な手法、取引税等、また規制的な措置を加える必要があります。先の報告では、制度的なインフラという中のルールに関する部分ではこれらを加えているわけでありますが、このことを昨年1年間議論をしかけたのですけれども、全くそれが深まらなかったといいましょうか、そのことを高めることができなかった、させてもらえなかったというのが去年のフラストレーションで、飯田さんがおっしゃったことだと思います。ここにおいて今年も同じことを繰り返すのであれば、私は飯田さんのフラストレーションは正しいことになると思うわけです。
 ここは、斉藤大臣もお越しでいらっしゃいますけれども、まさに「Make the rule」というルールの部分が、残念ながら西岡先生たちのご提示の中では見える形で提示がされていないわけですが、いろいろな制約の中でご配慮された結果と思いますが、今年はそこにしっかり踏み込むということが不可欠だと、需要側で削減していく機運をつくるというのは、教育もとても大事ですけれども、こうした仕組みなしにはできないと思います。
 また、もう1点は、国際的な視野がより必要であろうと思います。ここに示された方策は日本の中でもそうですが、世界的に見ますといいモデルは既にあるわけですから、それを見ながらやりますと身近な感じができると思います。特に大きなルールづくりといたしましては、先ほど飯田さんが言われたように、オバマであれマケインであれ、米国も動き出すでしょう。オバマでは、グリーンニューディールが動き出すでしょうし、取引制度につきましても、アメリカのリーバーマン法案等の中でつくられているものは、排出枠の割り当てや、オークションによる財源を、先ほど言われたお金の対策はどうするんだということを含めて、とても大きなダイナミックな枠組みがもう用意、提案されているわけです。多くの利害関係者がその割り振りを議論してきた経過がもう1年半にわたってあるわけですので、アメリカは大きく動くであろうと思います。
 ヨーロッパも排出枠のオークション化で、そのお金をどう使うのか、これは国際的枠組みの中でも、そういう仕組みで途上国との支援をどうしていくのかというふうに、お金をどこから生み出してどう動かすのか、必要なところにどう割り振るのか、必要なお金はどれぐらいなのかという議論をしています。既にモデルもたくさんあると言えばあるわけでありますので、今回今年の議論にそこが入ってこないというのは、世界の動きにやはり取り残される、ますます距離が大きくなるのではないかと思います。
 政治的な意志が大事だということはもちろんでありますし、それこそが中期の目標等であるわけですが、そこをこの審議会でちゅうちょしながら議論するというようなことでは、日本の政治的な意思を発揮するとならないと思いますので、ここは大胆に我々も意見を言っていかなきゃいけないと思います。
 もう1点、これから低所得者にどうするのかということを本気で考えなきゃいけないということを痛感しています。この12の方策で示されているところは、それなりに自分で豊かさを選択できる層が前提になっているように思います。都市もそうだろうと思いますけれども。来年のコペンハーゲン合意というのも軸としながら、世界はこの一、二年で本当に大きな方向転換をするでありましょうが、日本もそれに間に合うように、今年予定されています議論が貢献するようにと思っております。

○鈴木部会長 大変多岐にわたるご意見いただきました。西岡先生対するご質問というよりは、自説のご開陳というようなことも多かったわけですし、また50年先のことというようなことで、いろいろと基本的な問題、経済体制がどうなっていくのかというような、お答えになれないというか、なりにくい面もあろうかと思うんですが、コストの問題であったり、あるいはエネルギー源の問題であったり、社会的な意識をどう変えていくか、50年の間の不確実性をいろいろ考慮すると、産業構造はどうなるかなんていうのは、まさに産業審議会なんていうのはそういうところにありながら、全く議論されない不思議な審議会です。そういうところの前例を我々はフォローしたりしないように、あるいはこちらからボールを投げていくことが必要なのかもしれません。
 いろいろなご質問、ご意見に関しては、多分、西岡先生はこの2050をおつくりになる段階で、もうすべてほとんど取り込み済みの上で、ある種の仮説を置いてこのプロジェクトをお立てになっていると思いますので、その辺を。

○西岡委員 いろいろご意見ありがとうございます。励ましの言葉もいただきました。
 まず、今のお話なのですけれども、私どもの基本的な線というのは、低炭素社会入りというのは科学の面から見たらもう必須である。どう見てもゼロ・エミッションに将来、100年ぐらいの間にしなきゃいけないという大前提をまず皆さん考えていただきたい。それはもうすべての人の問題でして、みんなここでやれとかいってればすむ問題でなくみなの問題です。そういう大前提が1つある。
 それからもう一つ、じゃ今はどういう段階なんだろうかと考えてみたときに、特に日本なんかで明快にあらわれているのが人口の減少であったり、それからエネルギーはもうこれ以上使えないと。土地も少ないし、これからは環境の時代になるんだけれども、日本が一番国土が少ないところで、どうやって食っていくかという問題がある。高年齢化の問題で、世界でトップを行っている。どういう具合に日本をつくっていくかという大きな革命の時代にある。産業革命はエネルギーを使ってどう便利にするかの時代だったのですけれども、今度はエネルギーをどう使わないで便利にするかということを考えなければいけない大きな転換点にあるのではないかなと思っております。
 そういう面から言うと、幾つか話が出ましたように、非常に大切なのは、やはり国民全体、消費側が、本当に我々は必要な分のエネルギーを使っているんだろうか、必要な効用というのを追求しているのだろうかということを考えるのが非常に大切で、皆さんおっしゃった教育という面も、単にスイッチを切りましょうという話ではなくて、そういった根本のところをぜひ追求していく必要が多分あるのではないかなと思っています。
 私は、これまで供給側は頑張ってやってくれたのですけれども、これからは消費側のほうがどれだけ自分たちの力をちゃんと認識して動くか、選択をするかというところが全体の計画のポイントなんです。ですから、私は45%、40%削減が非常に重要だということを申し上げています。
 2つ目は、供給側の問題がございますけれども、残念ながらデータもなかなか産業界のほうから得られないものでつめがやや甘いところありまして、まだコスト計算までいかずに、いろいろやってみると、原子力シナリオもあればバイオシナリオも、いろいろなことができますよというところで終わっております。ぜひそれぞれの持ち場で将来がどうなるかということを考えていただきたいということが2つ目であります。
 それから、3つ目はコストの問題ですけれども、我々の2050のパンフレットには、コストがGDPの1%ということが書いてあります。いろいろな計算の仕方がありますので、一応1%ということですすませていただきます。1%とは何だろうかというと、これは安定な気候をもらうために、我々が社会を動かすための原動力であったり、摩擦であったりします。決してだれかのところで損した分がどこかへいってしまうのではなくて、努力した人の懐に入る、努力しない人が損するという形で移転していく。それが年間1%ずつゆっくりと改革していくと、50年後には低炭素社会に到達する。そういう指標がコストなんです。だから、コストが高いとかそういう話じゃなくて、どうやって今の社会を新しいものに変えていくかということにみんなが努力してもらいたい。これが私のコストの考え方です。このコストというのは、二酸化炭素の価格で言うと200とか250ドルになる。
 それから、今、福川さんのお話でありましたけれども、やはり統制ということも考えておく必要があるとおもいます。社会全体、世界全体で、安定な気候という貴重な資源、あるいはエネルギーという資源、あるいは土地であるとか、森林であるとかの自然環境資源が逼迫しています。バイオエタノール騒動でわかったように、そうした自然環境資源がみんなリンクしている。もうそういう時代に来ている。
 そうしたときに、やはりみんなが少なく使って、みんながここで安全性を高めていくという協力をやっていこうという方向で考えていく必要がある。ステークホルダーそれぞれが持ち場でいろいろ考えてくださいというメッセージということで、全体のお話をさせていただきました。
 あと、2020年の話は、当然我々のほうでは2050年をバックキャスするために、通過点の計算をしておりますが、中期目標検討委員会のほうでは検討が十分に進んでいませんのでまだ申し上げることはできません。

○鈴木部会長 中上委員札を立てておられますが、何か特に。

○中上委員 せっかく大臣がいらっしゃるので、私の個人的な考えを。私、低炭素社会という言葉は先進国向けであって、途上国型ではないといつも申し上げているんです。来週またベトナムに行くんですが、ベトナムの農村に行きますと、バイオマス、再生可能なエネルギーだけで生活していらっしゃる方がいっぱいいらっしゃるわけです。まさに低炭素社会にどっぷりつかっておられるわけですが、彼らはむしろ炭素社会になりたいと思っているという意味では、低炭素という言葉は先進国向けではないかというふうに私は思っておりますので、これは個人的な意見です。
 それで、1点だけ、今の西岡さんにお話にありました意識改革が重要だという話ですが、私ども昨年、数千サンプル実態調査しましたら、意識の非常に高い人、省エネ型の行動をやっていらっしゃる方と、それから普通の方と、そういうことを一切意識しない方と3タイプに分けてみますと、普通の方を1としますと、省エネ意識の高い方は2割ぐらいエネルギー消費が少ないんです。浪費型の方は3割ぐらい多いんです。だから、要するに意識で倍半分違ってしまう、いいかげんに使っている人と、慎重に使っている人では。2割技術で省エネするといったら物すごく大変なことですから、やっぱり教育というのは非常に大事だということを補足しておきたいと思います。ありがとうございました。

○鈴木部会長 まだいろいろご議論があろうかと思いますが、予定の時間を15分ほどオーバーしておりまして、この後も議題の2ということで、いろいろ最近の動きのご報告をいただくことになっております。よろしいでしょうか。またこういう議論の機会というのはこれからも続いていきますので、そこで深めていければと思っております。
 それでは、議題2として、参考資料の2、3、4、それぞれにつきましてご説明をお願いいたします。

○高橋市場メカニズム室長 では、まず参考資料の2をごらんいただきたいと思います。排出量取引の国内統合市場の試行的実施についてでございます。
 大臣のごあいさつにもございましたとおりでございまして、10月21日の地球温暖化対策推進本部で決定をいたしまして、参加企業の募集を開始したところでございます。
 目的は、ここにございますように、市場メカニズムの活用ということで、低炭素社会づくり行動計画に盛り込まれまして、目的といたしましては、将来、排出量取引を本格導入する場合に必要となる条件あるいは制度設計上の課題を明らかにする、日本の産業に合った制度のあり方を考え、また国際的なルールづくりも発信をしていくということでございます。
 中身につきましては、文章がございますけれども、一番最後のページにポンチ絵がございますので、これでご説明をしたいと思います。一番最後の紙でございますが、排出量取引の試行的実施についてという横長のポンチ絵でございます。
 この絵の中で、まず[1]試行排出量取引スキームという四角がございますが、この部分が今回の試行の一番中心の部分でございまして、これにつきましては、各企業がみずから削減目標を設定していただいて、参加をしていただくと。その達成のために削減をするとともに、排出枠・クレジットの取引をして、それを使うことができるということでございます。
 企業の自主的な目標設定につきましては、基本的には自主行動計画が今の目標になっておりますので、それをベースに、それと整合的な目標を設定していただくということでございますので、総量目標であったり、原単位目標であったり、さまざまなオプションが選択可能であるということで、できるだけ幅広い企業に参加をしていただこうということにしております。
 ただ、この自主目標の設定の妥当性については、政府で一定のチェックを行うということでございまして、例えば、現状において目標を既に達成してしまうというようなところがそのまま参加をいたしますと、安易に排出枠が売れてしまうということがございますので、そういうことがないように、例えば実績よりも厳しい目標で入っていただくというような必要な調整はした上で参加をしていただくと。その結果についても審議会等で評価・検証をしていただくということになってございます。
 また、当然この排出量の算定等がしっかり行われるよう検証もやっていくと。特にこの絵で言いますと、B社のように余った排出枠を売るような場合には、特に厳密な第三者検証をやっていただくというようなこともルールとして入れております。
この部分は一番重要な部分でございまして、ここにできるだけ多くの企業に参加をしていただこうということで、今募集をしているところでございます。
 それに加えまして、右側に国内クレジットというのがございます。これは新しい制度でございまして、[1]に参加するような、主として自主行動計画を策定しているようなところではなくて、自主行動計画を策定していない中小企業でございますとか、農林業、こういうところで追加的な削減を行うと。この場合に、大企業等が中小企業等と協力をして共同事業という形でやることを想定しておりますけれども、そういう削減が行われた場合に、それをここの国内クレジットという形できちんと認証いたしまして、この国内クレジットを左側の[1]の大企業等が目標の達成に使えるという仕組みを新しく導入してございます。
 それに加えて、京都クレジット、これは従来どおりCDM等のクレジットを目標達成に使えるということでございまして、要はこういう形で、[1]に参加された企業がみずから削減することに加えて、さまざまな排出枠あるいはクレジットを活用することによって目標達成をしていくと、そういう仕組みでございます。
 当然今後もこの実施をしながら、いろいろな制度の見直しもしていかなきゃいけませんということで、一番下にございますように、まずは来年、年明け1月から3月にまず一度フォローアップをしたいと。それから、来年秋ごろには排出量も確定をして、それぞれ各社が必要な取引を行い、目標達成を行うという1つのサイクルが終わりますので、その段階でまたフォローアップをしたいと思っております。その時期にはちょうど京都議定書目標達成計画の評価見直しもございますので、そういうものとも連携をして、この試行制度のフォローアップ、必要な見直し等をやっていきたいというふうに思っております。
 今後、全国で関係省庁と協力いたしまして、全国8カ所で説明会も行うなどいたしまして、できるだけ多くの企業の参加を募ってまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。

○小林大臣官房審議官 それでは、続きまして、税制の検討状況についてご報告を申し上げます。参考資料3をごらんいただきたいと思います。
 税制につきましては、従来から専門委員会が設置されておりました。これは部会長ともご相談をいたしまして、今年の検討課題に合わせまして名称を変更し、委員にも一部お代わりいただいて検討をしているものでございます。この経過については8月下旬に文書で各委員にご報告をしたところでございます。
 1の開催趣旨の真ん中辺のところを見ていただきたいのでございますが、いろいろな温暖化対策の進展に伴いまして、まず6月に閣議決定された骨太方針2008、それから7月に閣議決定されました低炭素社会づくり行動計画、この中で、税制につきまして3つの課題が示されております。
 1点目が、道路特定財源の一般財源化に伴いまして、特に税率については、環境問題への国際的な取り組みも踏まえて検討するというふうにされているということが1点でございます。
 それから2点目が、従来からここでも議論をしていただいております環境税の取り扱いの問題。
 それから3点目が、低炭素化促進の観点から税制全般を横断的に見直すということで、もう少し幅広い視野で検討すべしというような課題が与えられているところでございます。
 そういうことを踏まえまして、1の下の段落でございますが、低炭素経済への円滑な移行を果たすというような観点から、特に技術的・専門的な見地から検討をしていただくと、こういうことで進めております。
 裏に名簿がございまして、委員長は引き続き神野先生にお務めいただいているということでございます。
 それから、3枚目に、これまでの専門委員会の開催状況を掲げておりますが、5回にわたりまして、かなり緻密な議論をしていただいております。それで、次回ぐらいから議論の取りまとめに入ろうということで整理をしつつあるところでございます。
 具体的に環境税あるいは関連する税制についての要望を与党などにも出していくことになるわけでございますが、その要望内容につきましては、これは政府で判断をしていくということでございまして、そのもとになるような専門的・技術的な議論をここでおまとめいただこうと、こういうものでございます。
 それで、2枚目のところから、どんなところが論点になっているかということを、ごくかいつまんでご紹介を申し上げますが、まず地球温暖化対策の中でどういう位置づけかということでございまして、京都議定書の約束をいかに達成するかという観点もございますし、また中期目標、長期目標にどう対応していくかという2つの視点を持って検討いただいております。それから、さまざまな対策の中で税制がどういう位置づけであるかということで、特に排出量取引制度なども視野に入れた議論がされておりまして、取りまとめることにしております。
 それから、2番目に最近原油価格が高騰いたしまして、またちょっと今下がっておりますが、かなり状況が昨年などと変わってきております。こういったものを踏まえて、税制がどういう効果を持つかというようなことを検討していただいているというのが2点目でございます。
 それから、2枚目の後ろにまいりまして、国民経済や産業の競争力などへの影響がどうかということも検討しておりまして、特に従来から議論になっている炭素リーケージの問題なども1つの課題でございます。
 それから、最初に申し上げましたように、課題が、税制全般のグリーン化というようなことが大きなテーマになっておりますので、既存のエネルギー関係諸税との関係、特に道路特定財源との関係、また石油石炭税などの関連するエネルギー諸税との関係については、かなりいろいろな議論がされておりまして、1つの焦点でございます。
 それから、5番目に、諸外国の取組につきましても、また改めていろいろな観点で分析をして整理をしているということでございまして、大体こんな骨組みに沿って議論の取りまとめをしていくということを予定しております。これにつきましては、またいろいろな形で各委員の先生方にご報告が行くようにしてまいりたいと思っております。
 以上でございます。

○瀧口国際対策室長 続きまして、参考資料4、次期枠組みに関する日本提案ということで簡単にご説明させていただきたいと思います。
 この国際交渉におきましては、昨年12月のCOP13で、2009年末のCOP15で次期枠組みに関しての合意を得るということで、今交渉が行われているところです。
 それで、今年2008年は、各国の経験や提案を蓄積して、その上で来年本格的な交渉に入るというスケジュールになっておりまして、各国の提案をこの12月のCOP14でまとめて、それを交渉のたたき台にするという予定になっております。そういうスケジュールのもとで、日本政府がこの9月30日に次期枠組みに関する提案というものを出したものが、この参考資料4でございます。
 手短にご説明させていただきますと、まずこの将来枠組みの構造につきましては、今後の法的検討を踏まえて最終的に判断されるものでありますが、すべての国による責任ある行動を実現するためには、新たな1つの議定書の採択によることが望ましいということで、必要な要素が含まれるのであれば、京都議定書の改正でも対応可能だという意見を述べております。
 それから、共有のビジョンとして、G8で合意されました2050年までに世界の温室効果ガス排出量を少なくとも半減するという長期目標を締約国が共有するビジョンとして気候変動枠組条約のもとで採択し、この目標の実現に向けて今後10年から20年後に世界全体での排出量をピークアウトさせることを目指して、革新的技術開発の強化ですとか、あるいは今回議論していただきました、低炭素社会の実現と長期的な観点からの対策を強化するということを述べております。
 そして、具体的なコミットメントに関しまして、2番の緩和、温室効果ガスの削減でありますが、まず先進国の範囲として、現在の附属書I国と申しますのが京都議定書上義務がかかっている国ですが、これは1992年の条約制定時のOECD諸国、それから旧ソ連、東欧ということで、その後かなり情勢は変わっておりますので、その後新たにOECDに加盟した国、あるいはそれに比肩し得ると考えられる国については、先進国ということで義務を負うということを提案しております。OECDに比肩し得るという国については、ここにありますような、1人当たりGDPあるいは1人当たりのGHG排出量、幾つかの指標を用いて検討を行った上で結論を出すということであります。
 続きまして、2ページにまいりまして、先進国の約束または行動の内容ですが、附属書I国は国別総量目標を設定し、これを約束として達成する義務を負うということで、先進国の義務に関しては、京都議定書と同じタイプの約束を負うということです。柔軟性のある措置を補足的に活用できるものとするとありますのは、いわば京都メカニズムのことです。
 それから、この国別総量目標は、2013年から20XX年までの期間に関して、データが入手可能な最新の年を含む複数の年からの削減率、そして排出総量自体で示すと書いてあります。ここはちょっとわかりにくいので説明させていただきますと、まず各国の目標というのは、例えば日本でしたら2013年から2018年、あるいは2022年、幾つか選択肢はあると思いますが、その間の排出総量を何トンにするということで約束を決めて、それが例えば1990年と比較すれば何%減、2005年と比較すれば何%減ということで、この削減率のほうは基準年を複数置いて、リファレンスといいますか、その削減率を見るという提案であります。
 また、この目標設定に当たっては、(c)のところになりますけれども、日本が提案しておりますセクター別アプローチというものを用いまして、各国の比較可能性が確保できるよう、その点の配慮をするということであります。
 それから、途上国につきましても、今、先進国に京都議定書で義務がかかっている以外は途上国につきましては義務はかかっていないわけですが、1992年、条約制定以降大きく状況も変わっております。そこで、日本提案は途上国を3つのグループに分類するということで、(ⅰ)から(ⅲ)、(ⅰ)が経済の発展段階及び対策の能力、世界全体の排出量の影響等から一層の緩和のための行動が必要とされる国ということで、これはいわゆる新興経済国というものを念頭に置いております。こうした国につきましては、次のページになりますけれども、セクター別の効率目標ですとか、あるいは国全体での効率目標を課すということを提案しております。
 また、(ⅱ)の総排出量が極めて少なく気候変動による悪影響に脆弱な国ということにつきましては、このカテゴリーの国につきましては3ページ目のほうになりますけれども、3番の適応のところで、こうした国の適用のための措置を強化するということを提案しております。
 それから、3ページ目の(3)卒業ということですが、こういう中で、各国それぞれ経済発展によりまして、上位の段階に基準に達した場合は、これは条約あるいは議定書の改正を毎回伴うのではなくて、締約国会議での決定により上位の分類に移行するという、そういうメカニズムを設けるべきだということを提案しております。
 以降、4番、技術、それから4ページ目にまいりまして、資金等を提案しております。
 それから、最後、4ページ目の6番、発効要件ということで、これは実効的な枠組みが実現されるためには、先進国、それから途上国双方が参加して地球規模での排出削減に貢献するという、そういう枠組みが必要になりますので、これが実現されるよう発効要件についても検討するということで提案を出しております。
 以上です。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
 それでは、時間が参りました。進行の不手際で予定の終了時間をオーバーしまして申しわけございませんでしたが、最後まで大臣におつき合いいただきました。せっかくの機会ですから、ご感想などを伺えればと。

○斉藤環境大臣 今日は鈴木部会長を中心にご熱心なご討議をいただきまして、本当にありがとうございました。
 当初の予定であれば、今ごろ衆議院は解散をされまして、このバッチも外れて、私も選挙区に帰って一生懸命選挙運動をしなくてはいけないところだったんですが、予定が変わりまして、今日はここに参加させていただき、議論に加えていただいて、本当に勉強になりました。ありがとうございました。
 私、週末は全国を政治活動とかで歩いておりますが、小さいものであれば10人ぐらい、大きなものであれば何千人といういろいろな会合に出て、環境政策について訴えさせていただいておりますが、国民の皆さんの関心は非常に高いということを実感しております。
 産業革命までは280ppm、その後、化石燃料を燃やし続けて、今、三百七、八十。そして、それを450ないし500で安定化させなければ地球は大変なことになる。そのためには半減、そして先進国は60ないし80、こういう話をしますと、本当にそうだと、それを我々やっていかなくてはならない、でもどうしていいかわからないと。このような国民の皆さんの率直な実感を今、私も感じているところでございまして、まさにその方向づけをしていただくのがこの部会での皆様のご議論ということでございまして、これからの日本のあり方、また日本が世界に存在感を示していくあり方をご議論いただけるんだなと。そして国民もそれを待っているということを実感をしております。
 今後、鈴木部会長を初め、皆様方には大変、ご迷惑といいましょうか、大きなお仕事をしていただくことになりますが、どうかよろしくお願いいたします。今日は本当にありがとうございました。

○鈴木部会長 どうもありがとうございました。突然ご挨拶をお願いして申しわけありませんでした。
 それでは、事務局のほうから。

○德田温暖化対策課長 今日はいろいろご意見いただきましてありがとうございました。いただいたご意見は、今後の審議の際の資料づくりに反映させていただきたいと思います。
 なお、今日ご発言できなかったという点がございましたら、11月12日水曜日までに書面で事務局までお送りいただければと思います。
 また、本日の議事概要につきましては、事務局で取りまとめの上、数日中に委員の皆様に案を送付いたします。皆様に送付後1週間で環境省のホームページに掲載をいたします。いろいろな事情で1週間以内にご返事をいただくことができないという場合には、一たん暫定版としてホームページに掲載をさせていただき、後ほど修正があれば差しかえさせていただくということにしたいと存じます。
 次回は、11月17日、10時から12時まで開催したいと考えております。よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 それでは、本日の議事をこれで終了させていただきます。ありがとうございました。

午後12時16分 閉会