中央環境審議会地球環境部会(第74回)議事録

1.日時

平成19年12月21日 13:00~15:00

2.場所

大手町サンケイプラザ 3F 303~304号室

3.出席委員

(部会長代理) 浅野 直人
(委員) 大塚 直 武内 和彦
和気 洋子
(臨時委員) 青木 保之 石坂 匡身
及川 武久 逢見 直人
鹿島 茂 川上 隆朗
木下 寛之 小林 悦夫
塩田 澄夫 須藤 隆一
大聖 泰弘 高橋 一生
永里 善彦 原沢 英夫
福川 伸次 桝井 成夫
横山 裕道

4.議事次第

  1. 気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)の結果について
  2. 低炭素社会づくりに関する論点整理
  3. その他

5.配付資料

資料1 気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)の結果について
資料2 低炭素社会づくりに向けて
資料3 中央環境審議会地球環境部会(低炭素社会検討)の開催日程
参考資料1 「低炭素社会づくりに向けて」への意見募集について
参考資料2 第1回~第7回までのヒアリング概要(発表者別)

6.議事録

午後1時01分 開会

○浅野部会長代理 きょうは23名のご出席予定でございます。

○高橋市場メカニズム室長 では、とりあえず資料の確認をさせていただきます。
 議事次第に基づきまして、資料1といたしまして、COP13(COP/MOP3)の結果についてというのがございます。それから、それに関連しまして、番号はついておりませんが英文で、バリ・アクションプランのディシジョンがございます。それから、資料2といたしまして、低炭素社会づくりに向けてという資料がございます。資料3が、これまでのこの低炭素社会の部会の検討日程でございます。
 それから、参考資料といたしまして、1といたしまして、前回の部会で申し上げましたとおり、前回の部会の直後に、その時点の案でパブコメを始めてございます。そのパブコメのご案内でございます。それから、参考資料の2が、第7回まででございますけれども、懇談会のヒアリングの概要をつけてございます。
 以上でございます。

○浅野部会長代理 それでは、本日の審議は公開としておりますのでご報告申し上げます。
 きょうの議事でございますが、まず、先回のバリでのCOP13についてのご報告を承って、それについてのご質問を受けるということと、前回に引き続いて、低炭素社会づくりに関する論点整理ということでございまして、15時を予定としております。
 それでは早速、到着早々恐縮でございますが、小島地球環境審議官に、COP13の概要と成果についてのご報告を伺いたいと思います。

○小島地球環境審議官 COP13がインドネシアのバリ島で開催をされました。評価と成果はお配りしてあるとおりですけれども、全体の感想を述べさせていただきます。
 まず、COP13では、2013年以降の枠組みに関して「バリ・ロードマップ」が決定をされました。これは、京都議定書に基づく先進国の2013年以降の約束について交渉する、既に設けられているAWG、アドホックワーキンググループと、すべての国が参加して交渉を開始する「新しい場」、新しいAWGとの「2トラック」で、ともに2009年までに交渉を終わらせようというものであります。
 今回のCOP13での特徴は幾つかありまして、まず第一の特徴は、条約の究極目的の達成を意識して、世界全体の温室効果ガスの排出を2050年半減、今後10年から15年でピークアウト、そのためには、先進国は25%から40%の削減が必要というIPCCのレポートが議論されたということであります。
 新聞などでこの数値の扱いがホットな話題となりましたけれども、結論としては、アメリカが入っている条約のもとでの「新たな場」では、IPCCは引用するものの、数値は記載しないこと、しかし、京都議定書のアドホックワーキンググループでは、IPCCを引用して、これらの数値も記載するということになりました。
 日本は、アメリカと一緒になって数値の記載に反対しているというふうに報道をされておりましたけれども、日本の立場は、AWGでの京都議定書のアドホックワーキンググループで数値の記載に合意しているように、IPCCの数値を引用することに反対というものではなくて、条約のもとでの「新たな場」には、アメリカも入ってもらわなければならない、そのためにIPCCの科学的な知見を重視するEUと、数値の記載を拒否するアメリカとの合意点を見出すためには、「IPCCを引用しつつ、数値は記載しない」という妥協点を探っていたからにほかなりません。
 日本は、クールアース50で、2050年半減を既に明らかにしております。国際社会がIPCCの主張を尊重するならば、これはIPCCの第三作業部会のカテゴリーⅠとⅡに該当しますし、世界全体のGHG排出量のピークアウトは、おそくとも2015年もしくは2020年ということになります。ただし、カテゴリーⅠ、カテゴリーⅡの場合での、先進国と途上国との削減の引き受け幅がどうなるかについては、精査が必要だと思います。今後10年ないし15年という期限は、恐らく、次期枠組みの期間内となる可能性が高く、次期枠組みの期間内に世界全体のGHG排出量をピークアウトさせるには、先進国だけでなく、途上国の排出抑制の努力が不可欠だということになります。
 とにもかくにも、COP13での次期枠組みの議論が温室効果ガス濃度安定化、あるいは、50年半減、ピークアウトというコンテクストで議論されたことは、交渉が先進国の率先垂範による温室効果ガス削減の土台づくりという京都議定書の時代から、本格的な削減の時代に入ったという印象を持ちました。
 中国との会談でも、「日本は、2050年半減をどのような手段で達成しようとしているのか」という質問を受けましたし、中国の研究者からは、「仮に、先進国が80%の削減をすれば途上国は20%の削減が必要となるけれども、本当に先進国は80%もの削減ができるのか」という質問も受けました。ことしのハイリゲンダム・サミットでは、「2050年半減」は「スピリチュアルな目標」ということでしたけれども、COP13での議論を聞いておりますと、50年半減というのは「リアリティある目標」へと転換しつつあると、こういう印象を持ちました。
 第二の特徴は、温室効果ガスの削減の緩和策と気候変動の影響への適応策が、関連性を持ちつつ議論をされ始めたことであります。
 既に、世界のCO2濃度はほぼ280PPMとなっていますから、カテゴリーⅠの中間値あたりにいることになります。IPCCのカテゴリーⅠとⅡの幅におさまったとしても、産業革命から2.0℃ないし2.8℃上昇するということになります。
 アジア太平洋地域には、南太平洋やインド洋の島国があり、バングラディシュのような低地国もあります。高緯度地域になる北極と南極とともに、海抜の高さでは第三のポーラー(極)ともいうべきヒマラヤがあります。ヒマラヤの氷河の融解は、ネパールの氷河湖の問題だけではなく、それを水源としてきた流域の国々の大きな変化をもたらします。
 COP13での第三の特徴は、森林減少・劣化によるCO2の排出が正面から取り上げられたことです。世界の森林は、アマゾンとコンゴ盆地を二つの地球の肺とし、インドネシアを第三のホット・スポットとしています。これら3地域での森林減少が顕著であり、温暖化の加速化を促しております。一方、中国・インドでは、森林が回復をしております。森林の扱いは、これまでの吸収源としての扱いだけでなく、次期枠組みでは、温室効果ガス排出源としての対策として組み入れられるということになります。
 最後に、COP13で明らかとなったことは、途上国に排出削減・抑制を求めるならば、先進国には大幅な削減の覚悟が必要であるということであります。途上国は、地球温暖化は先進国が引き起こしたものであり、化石燃料の利用によって富を蓄積した先進国が対策を講じるべきであるとの立場を、このCOP13でも明確にしております。それでも、途上国の幾つかは、「計測可能」、「報告可能」、「評価可能」な方法で、温室効果ガスの排出削減・抑制を行う用意があると表明をいたしました。しかし、これらの国が対策を講じるに当たっても、先進国による大幅な削減と、先進国による途上国への支援が必要だということを述べております。
 日本は、これらCOP13の成果を踏まえて、日本国内の低炭素社会実現の具体的な方策、さらに地球的規模での「低炭素社会の具体的方策」を示すことが求められております。時代は急速に変化をしております。「2050年半減」というのは、次期枠組みにおいては「リアリティのある目標」になりつつあるというふうに思います。この検討会での議論は、ますます重要なものとなっていると思います。COP13の特徴というものを踏まえまして、低炭素社会への期待をあいさつとして述べさせていただきます。
 以上です。

○浅野部会長代理 どうもありがとうございました。資料のご説明はよろしいですか。

○小島地球環境審議官 はい。資料の1。バリ・ロードマップが採択をされたということが最大の成果ということです。交渉は非常に難航いたしました。
 概要のところは、いろんなバイ会談等を通じて、成功に日本が貢献をしたということを書いております。
 2の2013年以降の枠組み、いわゆる条約プロセス、この条約にはアメリカも入っておりますので、先ほど申し上げましたアメリカ、EU、中国など主要排出国が全部入ったプロセスです。ここで今後、長期目標、緩和、それから、先進国による削減の約束または行動、途上国による計測・報告・検証可能な手法での削減行動、それから、適応、革新的技術、技術協力、資金・投資というものが検討されます。これらをブロック、要素と言っております。
 これと京都議定書のもとでの作業部会、これは既に設置されているAWGのことですが、議論になりました数値は、こちらの方には具体的な数値も記載されております。
 それから、途上国問題で適応基金、これをどこに置くかということが議論になっておりましたけれども、事務局として、地球環境ファシリティーに置くということになりまして、ようやく適応基金が動き始めるということになりました。
 技術移転について、この技術移転のための基金をつくる、つくらないという議論がありました。それが戦略プログラムを検討するということで合意に至りました。
 森林については、これからは吸収源ということだけでなく、排出源としての扱いをするということで、その検討を進めるということになりました。
 バイ会談について、中国、アメリカ、その他の国と行いました。特に、バン・ギムン国連事務総長との会談では、G8サミット、つまり国連のプロセスの外での議論を、国連の中でのCOPへの議論へ反映をさせてもらいたいという要請がありました。
 バリ・ロードマップに関するCOP決定のポイントがございます。前文は、温暖化は避けられない。それから、低いレベルの安定化のアクションが遅れれば、低いレベルの安定化は難しくなるということでございます。
 本文のところに先ほどの要素が書いてございます。
 2009年までに作業を完了させる。あとは、いろんな日程が書いてありまして、2月にサブミッション、それから、3月、4月に第1回目の会議を開催する。どんな作業手順であるかということをまず決めるというのが、最初のバリ・ロードマップの作業ということになります。
 その後ろにある概要と評価をお読みいただきたいと思いますが、バリ・ロードマップ、バリ・アクションプランというのが採択をされたものでございます。主に議論になりましたのは、3行目、4行目のIPCCの、前文の3から4のところのIPCCをどう引用するというところと、1のシェアード・ビジョン、それから、Bの1と2、Bの1が先進国、Bの2が途上国ということで、テーブルについて、それぞれが削減ないし抑制を交渉するという、交渉要素が書かれているという評価をしております。
 以上です。

○浅野部会長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの小島審議官のご説明について、ご質問ございましたらどうぞ。
 それでは、まず、桝井委員が最初に挙げられましたので、桝井委員からお願いいたします。

○桝井委員 一つお伺いしたいと思います。この日本語の方はロードマップとなっているやつが、要するに、こちらのデシジョン、COP13、バリ・アクションプランというのとこれは同一なわけですね、基本的に。
 そういう点で、このバリ・アクションプランというのを読んでみますと、これは確かに、日本で報じられた25%であるとか40%削減ということは、確かに消えてはいますけれども、この書きぶりを読みますと、この引用の仕方、入れ方を見ますと、これはかなり重い比重があるなということが、これでよく伺えると思うんです。
 そこでお伺いしたいのは、この種の問題で、どうやらこのIPCC4次報告という、要するに科学的な一つの知見というものが、これまでのこういう会議の中では最も重く置かれたんではないか。あえて言えば、これ非常に政治的な動きと科学の問題という二つの難しい問題があったわけですが、どうもこのIPCCの純然たる科学とは言えないまでも、この知見という形の総合的なものが、これからのこの手の交渉で非常に大きな意味を持ってくるということの理解をしてもよろしいのでしょうか。

○浅野部会長代理 それでは、お答えは後でまとめてお願いします。
 原沢委員。

○原沢委員 今回も新しくAWGができて、既に9条のレビューとか、いろいろな見直しも含めて将来の枠組みの話があったと思うんですが、今後、こういったこれまでの活動と、新たなAWGの活動のコーディネートといいますか、2年後に枠組みの案を出していくという中で、どうコーディネートされていくのかという点を教えていただきたいという質問です。

○浅野部会長代理 高橋委員。

○高橋委員 3点質問がございます。一つは、日本に関して、二つ目は、この全体のプロセスにおける影響力の問題、三つ目は、米国の問題に関して。
 日本に関して、今回のCOP13の日本チームをつくって、そこで事前にどのようなチーム内での協調体制をつくったのだろうかということと、それから、事後にどのようにチーム全体でレビューをされたのだろうかということ。
 それを伺う一つの理由は、この書類を見てみますと、どう見たって、今後、全体のプロセスで非常に重要になってくるだろうと思われるインドとかブラジルとか、そういうところにはバイでのハイレベルでの接触はなかったように思いますので、少なくともそういうふうに書いてありますので、なぜなのかと、不思議だなと思うものですから、そういう準備、手分け、そういうのが戦略的にできていたら、そんなことにならないはずだと思いますので、そのことを聞いているわけです。
 2番目には、こういうメジャーな会議、私、二、三十年ぶりに、全然関係なく、状況がさっぱりわからないので伺うんですが、新聞等ではいろんなことが書いてありますが、この今後のプロセスで、どんな国がどんな影響力をもたらすだろうかと、主要なところはどんなんだろうかという感触を得られたかということ。それから、具体的に何かやはりこういうプロセスが始まると、固有名詞として何の何兵衛がどうしても中心になりがちだということに普通なりますが、それはだれかそういうような人間が出てき始めているだろうかというようなこと。それから、その影響力のことに関しましては、今後、日本のアプローチとして、国別の状況だけではなく、産業別の方でも可能性を探っていこうというようなことであるとしたら、どういう産業分野では、どのような人たちがどんな影響力を持ち得るかどうか、そういうような感触が何か今回あったかどうかというようなこと。
 米国に関しましては、これはもう皆さん、みんな当然のことに前提としていると思いますが、選挙の後、まるっきり変わってしまう可能性が極めて大きい、選挙の後はもしかしたらIPCCの旗振り役になりかねないというようなことも含めて、その前段階としてとにかく入れておくということなんだろうと思うんですが、その先の方の何らかの感触というのは、今回はまるっきり見えなかったかどうかということ、その3点をご質問させていただきます。

○浅野部会長代理 横山委員、どうぞ。

○横山委員 2点お尋ねします。
 1点目は、新たな特別作業部会の方ですね。バリ・ロードマップの方には数値目標が入らなかったということですが、このアメリカに対して数値目標を入れようよというような説得は、日本はどの程度なさったのか。もう説得してもだめだということで、初めから、もうバリ・ロードマップの方には数値目標を入れることはあきらめていたのかという点です。
 それから、二つ目は、新たな特別産業部会と従来からの産業部会の調整というのが、今後どういうふうに続いていくのか。例えば、従来からのあるやつだけを見れば、2013年以降も京都議定書は継続されると。ところが、この新たな特別産業部会の方が全然違う枠組みをつくった場合は、もう京都議定書は2012年でおしまいということになると思うんですが、その辺のつながりをちょっと教えていただけますか。

○浅野部会長代理 福川委員、どうぞ。

○福川委員 2点お尋ねしたいと思います。
 一つは、アメリカ、中国、それから、また外務副大臣が、フランス、アルゼンチン、モルディブ、ナイジェリア、チリ、ツバル、タンザニアとバイの会談をなさったようですが、このバイの会談での先方の反応を、もう少し詳しく教えていただきたいというのが第一です。
 2点目は、この日本の支援についてですが、日本の考え方に賛同する国に対しては、適応緩和支援を検討していくという説明をされたということですが、来年度の予算編成、あるいは、その後の運営について、実際にこの支援方針はどういうふうに具体化されるか、その二つを教えていただきたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 大塚委員。

○大塚委員 1点質問と、1点簡単なコメントですけれども、質問の方は森林に関してでございますが、先ほど地球審議官の方からもおっしゃっていただいた、排出源として森林を見るというふうに、今、新しい方向を打ち出したわけですが、これは従来の吸収源としてその森林を見ているところの話と、排出源として見るところの話との関係が、どういうふうになっていくかというのは、必ずしも4ページとかを見ていても十分にはよくちょっと理解できないものですから、どういうご議論があったか、もう少し詳しく教えていただけるとありがたいと思います。
 コメントについては、その主要な排出国をすべて参加させてもらおうということと、それから、先進国がその目標設定をしていくということは両立すると思いますし、現在のその政府の交渉の仕方について、私は基本的に支持したいと思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 ほかにご質問ございますか。それでは、大聖委員、どうぞ。

○大聖委員 技術移転ですとか、あるいは、それに対するいろいろな支援、途上国に対する支援というのがこれから行われるんだろうと思いますけれども、結局、その技術を持っているのはほとんど産業サイドなんですよね。ですから、知的所有権が画然とあるわけです。ですから、そういう問題をそういう途上国に移転するときに、やはり、それなりの研究開発に資金・人材・時間を投じていますので、それをどういうふうに移転していくかという枠組みというのは、非常に実は悩ましい側面を産業界側から見ても持っているんじゃないかなというふうに思いますので、そのような枠組みづくりというのを、どういうふうに進むのかということを、非常に注目したいと思っております。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。それでは、多数ご質問ございました。どうぞお答えください。

○小島地球環境審議官 新しい場の方は、バリ・アクションプランと書いてあると思うんですけれども、バリ・ロードマップは新しいワーキンググループと、それと既に京都議定書のAWGと、この二つをともに走らせて2009年でともに結論を得る、この全体をバリ・ロードマップとこういうふうに考えている、あるいは、そういうふうに呼んでいるということであります。
 それから、科学的知見に重きを置かれていると。今回は、IPCCがゴア前副大統領と一緒にノーベル平和賞をとった直後でありますし、パチャウリさんは、まずバリに来て、オスロに行って授賞式に出て、またバリに戻ってきて、あるいは、ゴアさんも来たというようなことで、非常にバリの雰囲気は盛り上がっておりました。
 それから、科学的知見を重んずるという意味では、バン・ギムンさんの演説もそうですし、科学者はなすべきことをした、これからは政治家がやるべきことだというようなこともありまして、かなり、IPCCの議論を尊重するという雰囲気でありました。アメリカも変わっておりましたから、IPCCの議論に対してチャレンジをするということは一切ないという状況でございました。
 そういう意味で、IPCCについてどう書くかということ、その数値を表に書くか、あるいは、引用するかというところの問題だったろうというふうに思います。
 アメリカに対して数値を書くべきではないかという説得をしたかということでありますが、アメリカの会談はかなり押し詰まったところで、ようやくセットをできました。状況から見て物すごくかたいというのはもうわかっておりました、その段階は。その問題をどういうふうに解決するかという段階だったので、とにかくまとめると。ほぼ最終日でしたかね。そのときですから、まとめるということで、日本としては、基本方針はEUに対しても説得をし、アメリカに対しても説得をするという、大体、日本が考えていた落としどころに記述が落ちていったと思います。
 そういう意味では、初期の段階であれば、そういう数字を書くように説得をするということもあったかもしれませんが、最後の段階でアメリカとの会談はありましたので、もうまとめの収束プロセスでしたので、そういう説得をしたということであります。それでも、かなりアメリカはかたかったという印象があります。
 それから、この二つのプロセスのシナジーということですけれども、シナジーで一番苦労したのは、AWGは2009年、それから、新しい場は2010年というのが最初の中国案といいますか、途上国案です。つまり、先進国の約束を先に決めて、途上国とか何かはその後だというところから議論が始まったわけでありまして、まず終わりを一緒にするということが重要な交渉事項でありました。これは2009年ということになりました。
 それで、どこかにディクリケーションをしないとか何かって書いてあったのかと思います。ちょっと、にわかに今見つからないんですけれども、そういう明確にはシナジー、あるいはブリッジというところが書けないわけですが、一番大きなのは、終期を一緒にするということが交渉の一番大きな論点で、これは確保できたというふうに思います。
 それから、各国の対応でありますけれども、最後の1日、土曜日のプレナリーの混乱を見れば、何がもめていたかがわかるわけですけれども、事務局の不手際という議論はありますが、その中で最後まで交渉していたのがインド、中国です。最後に出てきたインド案というのを承認をして途上国も乗ったと、こういうことになるわけでありますが、そこからわかるように、非常にインド、中国のポジションはかたいということだと思います。
 それに対して幾つかの国というのは、メジャラブル、リポータブル、ベリファイアブルなコミットをする、コミットといいますか、そういうことをする用意があるといったのは、南アフリカの環境大臣であります。
 プラス5の国で、次の枠組みで途上国も何らかの用意があるということを明確に言った、そのリーダーの国は南アフリカ、一番最後までいろいろ言った国はインドというのが最終日の構図であります。
 それで、日本は決定案で島国が大変だということで、かなり島国に水を向けました。直前にツバルの大統領、首相も来られたということもありまして、そういう島国が、先進国のみならず、途上国の大量排出国に対しても排出削減、抑制を呼びかけるというような傾向は、ようやく見えてきたということでありますが、面と向かって、それではそういうことを要求したかというと、まだそこまでは行っていない。
 日本のクールアース50は、これまでの先進国、途上国の二分法から、先進国、主要排出途上国、その他の途上国、そして脆弱な国と、こういう4分類にしておりまして、日本が出した決定案は、その脆弱な国に、先進国だけでなく主要排出途上国に対しても削減を呼びかけてもらおうという呼びかけをしたわけですが、その端緒は見えたものの、まだ十分ではないというのが現状だろうと思います。
 それから、森林の問題ですけれども、吸収源と排出源というのが、これからどういうふうに展開をするかという事柄で、一番重要な国はブラジルであります。ブラジルが大きく森林の減少をしているということで、次の枠組みにブラジルが入っていただくに当たって、プラス5の国でありますけれども、排出源としての森林をどう扱うかというのが非常に大きな課題というふうに思います。
 アメリカのパフォーマンスは紆余曲折ありますけれども、これまでの国務省のドブリャンスキーさんのほかに、初めてホワイトハウスのコノートンさんも来たわけですけれども、いわゆる各国がどれだけ削減を、これだけ削減をするということを提出して、それぞれいいじゃないかという話もあったわけですが、最後の場面もまたこれごらんになってみるとわかりますが、アメリカの主張といいますか、インド提案に対して、それはのめないとこういうふうに、「We can not accept」と言ったと思いますけれども、そういうところで孤立をする状態で、最後にはインド提案を受け入れるということになりました。また、これはマルチの国際会議ですから、今までアメリカに対する批判の演説が一転してお褒めの演説になると、こういうことが最後の段階であった。アメリカは、国連のプロセスに完全に復帰をしたということを強く印象づけた最後の日だったというふうに思います。
 それから、島国以外にも外務副大臣にはいろんな方々に会っていただいたんですが、なかなかG77プラス中国、この結束を打ち壊すまでにはまだ至っていないと。しかし、それは少しずつ功を奏しつつあるのではないかというふうに思います。
 それから、技術移転の問題は、先ほど言いました技術移転のためのファンドなのか、あるいは、そうじゃないのかというところで、実はその言葉ではじけてしまいまして、今回はもう決定案ができないという状況を、もう一度やってくれということで、ストラテジック・プログラムというような言葉を考案して、途上国、先進国の間の玉虫色という決着をして、何とか技術移転のワーキンググループが存続をすることができたということです。かねてからの途上国の議論であります知的所有権を安く買い上げられるものは買い上げ、あるいは、安く移転するようなファンドをつくれという議論は一貫してあり、これが依然として決裂をしたり、あるいは、衝突をしたりする課題であるということが、また今回も明らかになったということだと思います。

○浅野部会長代理 どうもありがとうございました。私のメモでは全部には答えられていないと思いますが、答えにくい面もあったと思うので勘弁をお願いします。時間がちょっと予定より過ぎておりますので、先へ進ませていただきます。
 それでは、低炭素社会づくりに関する論点整理ということで、引き続きご議論をいただきたいと思いますが、前回、有識者ヒアリング、部会でのご議論を踏まえての低炭素社会づくりに向けての論点整理、たたき台的な資料が事務局から提案されまして、これについていろいろと委員からご意見を承った次第でございました。私も欠席をしておりましたが、まだ未定稿の議事録は拝見いたしましたので、どういうご議論があったかは一応理解しているつもりでございます。
 本日は修正点を中心にご説明をいただきまして、これを踏まえて改めてご意見を承りたいということでございます。
 なお、先に申し上げておきますと、現在、パブコメをとっている最中でございますので、本日、この取りまとめ案を決定するというつもりはございませんので、引き続き、パブコメを受けた後、再度またご議論ということでございますから、今回は修正点について、さらに突っ込んだご意見があれば承りたいということでございます。
 では、事務局からの説明を伺います。

○高橋市場メカニズム室長 はい。それでは、資料2につきましてご説明を申し上げます。
 今ほど浅野先生からお話がございましたように、これはまだ検討途中のものでございまして、前回のこの部会でのご議論を踏まえて、それを可能な範囲で反映したものでございます。引き続き、パブコメ、それから、関係省庁等からのいろんなコメントもこれからいただきまして、また年明け、引き続き議論を深めていただきたいというふうに思っているところでございます。
 前回、ご欠席の先生もいらっしゃるので、変更点を中心にまた全体をざっとご説明したいと思っております。
 まず、表紙をめくっていただきまして、はじめにでございます。これは前回の資料ではございませんでして、前回のご議論の中でも、この検討の位置づけとか前提条件について、少し説明が必要ではないかというご指摘がたくさんございましたので、つけてございます。最初のところの低炭素社会づくりの検討についてというのは、クールアース50を受けて検討しているという位置づけでございます。また、21世紀環境立国戦略との関連ということもご指摘がございました。ごく簡単ではございますけれども、この21世紀環境立国戦略、循環型社会、自然共生社会、それから、低炭素社会と三つを議論しておりますので、それを踏まえて、その低炭素社会という観点から、それをまさに深めるものであるということが書いてございます。
 それから、検討の前提ということでございます。これにつきましても、先般いろいろご指摘がございました。一つは、今ご議論いただいておりますのは、主としては日本を念頭に置いて整理していると。ただ、これの中で諸外国と異なる要素もあるというような考え方でつくっておるというようなことでございます。
 それから、永里委員の方からも、この50年後の2050年という社会は、今からは想像もできないことが起こっているだろうということで、少しその辺を書いておいた方がいいということで、こういうようなことで、2050年というのは今と全く違う社会となっている可能性もございますけれども、現時点でイメージできる範囲内で検討を進めているというようなことを書いてございます。
 それから、多くの委員から2050年におけるGDPとか産業構造、さまざまなパラメーターはどうなっているかというものを示す必要があるんじゃないかというご指摘もございました。これにつきましては、前回もご説明をいたしたわけでございますけれども、今のところこの検討におきましては、そのような定量的なきちっとした前提条件を置いた検討というような形にはなってございませんで、むしろ、そういう数量的なモデル等による検討というよりも、大きな低炭素社会に向けた方向性を描くということを今目指して作業してございます。
 ただ、そういう数量的なシナリオの研究事例ということでは、西岡先生がリードをされております脱温暖化2050プロジェクトというようなものがございますので、そういう成果も、適宜、我々としては活用させていただいておりますけれども、そういう定量的な分析データは、それをごらんいただきたいということで書いてございます。
 それから、2ページ目が目次でございますけれども、ここで若干構成を変えておりますのは、これも前回のご指摘で、どういう順番でこれを書いていくかということでございます。1で基本理念ということで挙げてございまして、2でイメージということで、2050年の低炭素社会をできるだけわかりやすく具体的に、また魅力的に書くというようなことをやってございますけれども、この構成を少し変えまして、まずはまちといいますか、地域に応じた特徴というのを先に書きまして、その後に分野ごとに記述をいたしまして、最後にその全体に関連するものということで、消費者選択というのを書いてございます。
 また、前回は産業ということで一つにまとめておりましたものを、これもご指摘ございましたので、エネルギー供給と産業という形で分けて書いてございます。
 それから、農地・森林のところを、海洋というものも入れて書いているということが主な変更点でございます。
 それから、3ページ目でございますけれども、これも新たにつけ加えてございます。原沢委員、あるいは、桝井委員等から、このIPCCの結果を踏まえて科学的な知見、その危機意識というものをきちんと書く必要があるということで、詳細はご説明を省きますけれども、このIPCCの統合報告書からのエッセンス、地球温暖化の悪影響が深刻であるというようなこと。それから、計画目標の達成のためには、世界全体の排出量を自然界の吸収量と同等レベルまで押さえ込むことが必要であると、そういうことを踏まえて、美しい星50というものを打ち出しているというようなことを書いてございます。
 4ページ目から中身に入りますけれども、まず最初が1ということで、低炭素社会の基本的理念ということでございます。ここは余り大きな変更はございませんけれども、最初の数行でございますけれども、前回、この2050年半減というときに、一つの仮定として、一人当たりの排出量が世界全体で同じになるという場合のことを書いてございましたけれども、先進国で二、三割まで下げるというように書いていたんですけれども、ちょっとその二、三割削減なのか、ちょっと、非常に誤解を招きやすい表現だと思いますから、明確に先進国では排出量を現在から七、八割程度削減すると。途上国では、全体としては平均的に見ると、現状からそれほどふやせないと、そういう厳しい状況であるということを書いてございます。
 それから、一応、三つの理念ということでまとめているわけでございますけれども、社会のあらゆるセクターで、その低炭素を徹底するようなカーボン・ミニマムというようなことを書いてございますけれども、この部分では、これは鈴木部会長からのご指摘で、地球の有限性というようなことを書いてございます。
 それから、2として、豊かさを実感できる簡素な暮らしへの志向というようなこと。それから、3として自然との共生とありますけれども、自然との共生の部分につきましては、塩田委員のご指摘もございまして、海洋というようなものもきちんと位置づけて書いてございます。
 それから、6ページから、低炭素社会の具体的イメージということでございます。先ほど目次のところでご説明しましたとおり、ちょっと構成を変えまして、まず最初にまちということで、大・中都市、小都市、農山漁村という分類で、それぞれの都市構造でございますとか、交通、住宅、エネルギーというようなものにつきましての特徴を書いてございます。
 変更した部分は、一つはそれぞれについて温暖化が進行した場合の適応というような観点で、防災でございますとか、集中豪雨に対応した都市づくりやら農山村ということで、適応についての項目を書いてございます。また、農山漁村については、バイオマスについて少し前回よりも詳しく書いているというようなところが主な変更点でございます。
 それから、8ページが移動ということでございますけれども、この8ページ以降、前回と同様三つに分けて、行動、技術、それから、三つ目は前回ちょっと表現がわかりにくかったので、その行動基盤、技術を支える基盤、Foundationということで、いわゆるインフラ的なもの、そういう三つの区分で書いてございます。
 移動、Behaviorについては、その見える化によって、その環境負荷の小さい手段が選択されるというようなことを書いてございますけれども、ここで自動車利用、都市部における共同、カーシェアリングとかレンタルということを追加で書いてございます。
 技術については、特に前回と変えてはございません。さまざまな単体の技術、あるいは、その行動、道路交通システムというようなことを書いてございます。
 基盤といたしましては、これも前回とほぼ同じでございますけれども、少し加えましたのは、高齢化社会というようなご指摘もございましたので、その歩行者、自転車利用者に加えて、高齢者に優しいコンパクトなまちというようなこと。それから、自転車について、これ坂村先生からのプレゼンにもございましたけれども、今はパリなんかでも非常に高度情報技術を用いた自転車レンタルサービスというのがあるというようなことで、そういうものも具体例として書いてございます。
 次が、9ページ、居住空間・就業空間というところでございます。ここもそれほど大きな変更はしてございませんけれども、行動のところでは、職場、家庭で、その省エネ行動が当然見える化等によりまして徹底をされている。また、高度情報技術によりまして、就業場所も自由度が増してくるというようなことが書いてございます。
 技術といたしましても、さまざまな効率の高い機器というものがございます。一つ追加いたしましたのは、電力、熱につきまして、太陽エネルギーの利用、燃料電池のような住宅建築物において生産されるものと、従来の系統電力等が組み合わさって使用されているというようなことが書いてございます。
 それから、前回、木造住宅云々のことを技術の中で書いておりましたけれども、これは個々の技術を支えるインフラということで基盤の方に移してございます。木造住宅の普及とか、その地域の気候条件に合った住宅、あるいは、その超寿命住宅、エコ改修というふうなことが書いてございます。
 それから、10ページが全く新しく加わった部分でございます。前回、産業ということで一くくりに書いてあったものを、エネルギーと産業に分けたものでございますけれども、エネルギー供給ということで新しく加えてございます。左側のポンチ絵にございますように、CCSのついた石炭火力を初めとする原子力、水力発電、風力、太陽光、それから、超伝導の高効率送電とか高性能電力貯蔵というさまざまな革新的な技術によりまして、その低炭素の電力を供給していく。それから、熱の供給ということで、太陽熱、下水排熱、ごみ焼却熱等の利用。それから、低炭素のエネルギーからつくられた水素エネルギーというようなもの。それから、天然ガス、バイオマス等の低炭素の燃料、そういうものの供給が行われていくということでございますけれども、行動の中では、消費者がそういうさまざまなエネルギーの種類、選択の幅が広がり、また見える化によって、消費者が積極的に環境負荷の低いエネルギーを選択するというようなことで、再生可能なエネルギーの利用が普及していくというようなこと。
 技術としては、今、例示しましたようなさまざまな低炭素のエネルギー供給技術というようなものが開発され、それが適切に組み合わされて利用されていくというようなこと。
 基盤としては、特に変動しやすい再生可能エネルギーが使われやすいような系統制御技術、エネルギー貯蔵技術等が進んでいるというようなことが書いてございます。
 それから、前回、青木委員でしたか、ご指摘があったわけでございますけれども、さまざまな低炭素、新エネルギーが開発されていくわけでございますけれども、それだけで今の需要を賄えるのかと。やはりエネルギーの消費量、需要量そのものを減らすということも必要じゃないか、その辺をわかりやすく書いてほしいというようなことでございまして、とりあえず、ここでは今、公表されておりますさまざまな新エネルギーの導入ポテンシャル、これはかなり、もう物理的に可能なところまで行った場合というようなことも含めて書いてございますけれども、そういうものと、現在のエネルギーの需要というものを比較したものをつけてございます。ちょっと小さくて見にくいんでございますけれども、例えば左側で見ていただきますと、太陽光、風力、原子力とございますけれども、少し固めのポテンシャルで見ていただければ、それらを足しても、なかなか今の発電量を賄うレベルでは到底ないということで、こういう新エネルギーを最大限開発するとともに、その需要側の徹底した省エネ対策も不可欠であるということを書いてございます。
 それから、11ページが産業ということで、製造・建築・サービス業ということでございます。ここはエネルギーの部分を前に持っていったということ以外は、それほど大きな変更はございませんけれども、行動のところで前回、逢見委員からグリーンジョブを推進してというお話がございましたので、この仕事をする際の環境配慮、あるいは、その労働時間の柔軟性とか、それを生かして地域社会に貢献するというような、ちょっと例示がこれで適切かどうか、またご指摘いただきたいと思いますけれども、グリーンジョブの推進ということを一つ書いてございます。
 それから、技術のところでは、前回に加えまして、各製造プロセスにおける徹底した省エネ化、天然ガス、バイオマス等の低炭素の燃料の活用ということを書いてございます。
 それから、12ページが森林・農地、それで今回、海洋を加えております。内容としては、大体前回とそれほど大きく変わってございませんけれども、特に技術の方では、農業だけじゃなくて、林業・水産業も含めて、その経営の強化、あるいは技術の効率化というようなことで、国際競争力を増していくというような話。それから、地域資源の有効活用というようなキーワードも入れさせていただいております。そういうことで、その森林・農地・海洋等における、特に低炭素エネルギーの供給というような貢献を期待しているという部分があるわけでございます。
 それから、最後13ページでございますけれども、消費者選択ということで、これを最後に持ってきてございます。ここでは、一つは原沢委員からもご指摘がございました、ユビキタス等の新しい技術革新の導入というニュアンスを、もう少し加えた方がいいんじゃないかというようなこと。それから、三橋委員から、フローからストックへというようなご指摘もございましたので、Behaviorの最初のところに、そのフローを求めるだけではなくて、そのストックの有効利用というようなことを重視していくというふうなことを、一言加えてございます。
 また、技術、基盤のところでは、そのユビキタス・インフラの充実というようなこと。それから、カーボンオフセットの活用というようなことも文章に加えているというところが、主な変更点でございます。
 それから、14ページからが、今、ご説明した2050年の低炭素社会のイメージ、それを実現させるための戦略ということで、15ページからでございますけれども、15ページは全体の構成でございますけれども、ここでは、政府が講じる手段のところについて具体的なキーワードをまとめて入れているというところでございます。
 それから、コベネフィット、低炭素を目指すことによってCO2の削減、吸収だけではなくて、健康とか高齢化への対応とか、その地域の活性化、新規産業の創出、さまざまなその副次的な便益があるということを加えておるわけでございます。
 16ページからが具体的な中身でございますけれども、まず国民に望まれる行動、この部分については、あらゆる活動において、そのエコというものを徹底していくということが書いてあるわけでございますけれども、一つは、武内先生、あるいは原沢先生からもご指摘があった、地球温暖化に対する科学的な知見の理解というようなことを一つつけ加えております。
 企業に望まれる行動については、特に大きな変更はしてございませんけれども、ここにございますように、低炭素型商品の開発、技術的なイノベーションを日本が引っ張っていく。あるいは、その低炭素社会づくりに貢献する新しいビジネスモデルをどんどんつくっていくというようなこと。それから、企業の環境の取り組みに対する情報のディスクロージャー。それから、さまざまな環境金融商品の開発というような項目で記述をしてございます。
 17ページでございますけれども、次に政府が講じる手段ということで2ページにわたって書いてございますけれども、まず最初が制度的なインフラということで、さまざまなインセンティブを付与していくということで、奨励的手法、経済的手法、規制的手法というようなことが書いてございます。桝井委員のご指摘もありまして、環境税、排出量取引については、例えばというような言葉をとってございますけれども、そういうことが書いてございます。
 それから、ソフト的インフラでございますけれども、ここは浦野委員からもご指摘がございました。教育による意識の変革というものがないと、大変厳しいことになるというようなご指摘がございました。それも含めましてここにございますが、個々人が温暖化について健全な危機意識を持って、常にエコマインドを持って行動するように、環境教育を推進していくというような、充実していくというようなことを書いてございます。
 情報普及のところでも、主として見える化に絡めて、その環境情報というものを大量に提供していくということが書いてあるわけでございますけれども、武内先生からもご指摘ございましたが、その不確実性を含めるような地球温暖化問題についての最新の科学的な知見というのを、いかに社会で共有していくかというようなことが大事だということで、温暖化ナレッジイノベーションというような言葉があるというようなことでございましたので、そういう趣旨をつけ加えてございます。
 それから、18ページが資金、この辺は特に変わってございません。それから、ハード的インフラということで、都市、交通、建築、エネルギーということで、都市の都市計画とか地域開発において、そのCO2の排出量というものを評価していくというような趣旨でいろいろ書いてございますけれども、この辺につきましても、今後また国土交通省さんなどから、いろいろまたインプットいただいて、記述を充実していきたいというふうに思っているところでございます。今回は特に大きな変更はしてございません。
 自然資本の整備でございますけれども、自然環境・生物多様性、農林地等でございますが、これにつきましては温室効果ガスの吸収源となる森林の適切な整備・保全というのが抜けておりましたので、これをちょっとつけ加えております。
 それから、4として世界への発信・国際的な連携ということでございます。20ページに、その前提となる環境立国・日本モデルの創造と発信ということで、日本がこれまで天然資源、国土の制約の中で、エネルギー問題でありますとか、深刻な公害問題等を克服してきたと。また今時点でも、さまざまな温暖化を初めとする問題に直面しているということで、そういうものを日本が課題を解決していく経験を踏まえて、途上国等にも発信をしていくということが大事だということをるる書いてございます。この部分も大きな変更はございませんけれども、若干ですが右側の方に、人口推計については数字を入れるということで、若干、その前提条件が不明確だというところにつきましては、人口については数値を入れるというところでございます。
 それから、最後のページ、21ページでございますが、その世界への発信・連携の具体的な記述でございますけれども、三つに分けて書いてあるわけでございますが、1の途上国への日本モデルの発信というところでございますけれども、ここにつきましては、アジアを中心とする途上国に対して、課題先進国日本の経験を発信していくということで、途上国がその一気に低炭素社会に向かうということを支援していくということでございますけれども、これにつきましては植田先生からのご指摘で、貧困の削減というようなことと、温暖化対策の両立というようなことが大事だというご指摘もございましたので、この三つ目のパラグラフに、汚染の緩和、生活質の向上に加えて、貧困の削減というような、コベネフィットの一つとして加えているというところでございます。
 2は特に変更してございませんが、この低炭素社会に関する情報拠点の整備、あるいは、国際共同研究の推進ということでございます。
 3でございますけれども、低炭素社会に向けた国際的なインセンティブの強化についての提案ということで、炭素の価格づけでございますとか、国際輸送における協力、グリーン購入等の普及、それから、最後のところはちょっと木下委員のご指摘も踏まえまして、国際的な森林の保全への取り組みというような、例示として、違法伐採対策とか持続可能な森林経営の推進という言葉を入れさせていただいております。
 概要と主な変更点は、以上のとおりでございます。

○浅野部会長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまご説明いただきました資料につきまして、ご議論をお願いいたします。須藤委員が早目に退席ということでございますので、須藤委員からお願いいたします。

○須藤委員 どうもありがとうございます。前回、私欠席をしまして、今伺いまして、この低炭素社会全体についての論点整理については、特に異議はございませんが、全体を通して見ますと、何となく日本の中心部分、例えば、関東地方とか関西、要するに、本土の中心部分のところの低炭素社会づくりというような印象を受けておりまして、全国で共通する部分というのはいっぱいあると思うんですけれども、やっぱり地域によって低炭素社会は結構違うんではないかと、その地域性をどういうふうに生かしていくかというところは、少し地域の特性が多分違ってくるだろうと思うし、それから、海洋を入れていただいたのは大変結構だとは思うんですが、同じ田舎、農山漁村と書いてあるんですが、農村と漁村では全然やっぱり違いますよね。そういう部分のところの特徴を、少し入れていただくのがよろしいかなと、こういうふうに思いました。
 それから、今の海のところは、例えば里海とか里浜とか、最近、まちづくりも農山村づくりも、結構、農山村と違った形での進め方をしている部分、あるいは、それを大切にしていきたいという部分がありますので、多分それが低炭素社会につながると思いますので、そういう部分があった方がいいかなというふうに思いました。
 2番目は、今と関係をするんですが、多分、適応策がこんな長い国なんで、随分、またこれも違ってくるだろうと思います。それなんで、適応策を地域に生かして一番効率よくやるというようなことも、多分あり得るんだろうと思うんですね。この適応策の部分なんかも、今の地域性を考えていただければ、あるいは、逆に言うと、こういう部分から少し誘導していただけるような部分がある、例えば、秋田県とか、そういう部分がもしかしたら一番影響は少なく、低炭素社会をやっていく上で、どんどん東京の人が引っ越しをしていくようなことも、あるいはあるのかもしれませんので、そういう部分を少しどこかで書き込んでいただく方が、何となく全国共通ではない部分というところを少し強調しておきたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、小林委員、どうぞ。

○小林委員 恐れ入ります。私も前回欠席しておりましたので、ちょっと前回の議論からいくとピントがずれるかもわかりません。その点はお許しをいただきたいと思います。
 印象だけなんですが、まず1点目が、5ページのところの低炭素社会の基本理念、これの(2)で、豊かさを実感できる簡素な暮らしへの志向という言葉が何かちょっと引っかかるんですよね。というのは、その生活の豊かさというのは今までずっと言ってこられて、そこにまた豊かさを実感するという、その豊かさって何なのというのがよくわかりづらい。最近よく使われるのは、例えば、心の豊かさというような前置きを置くわけですが、生活の豊かさに大意するような、例えば今申し上げたような心の豊かな社会実現とか、何かちょっと前置きがほしいなという気がいたします。それが1点です。
 それから、2点目は7ページの辺から出てくるんですが、いわゆる木材利用のことが繰り返し、要は、建物を木造にするというのが出てくるんですが、これは、これからの動きの中で本当に建物が木造になるんだろうかという、動きから言って何かちょっとここのところ、木質利用ということにこだわり過ぎているんではないか。木質の利用について何も建物だけではないと思うんで、別の視点で書かれた方が、何かここだけちょっと違和感を感じます。それが2点目です。
 3点目は、8ページからイメージがずっと書いてあるんですが、このイメージの中で行動という部分、ここに書いてある部分と、次の戦略ですね、やはりここでも15ページ、16ページにいわゆる国民に望まれる行動、企業に望まれる行動という、行動という言葉がまたここで使われるんですが、ここで使われる行動という意味と、その前の具体的イメージで使われている行動という意味がちょっと違っていると思うんで、ここを何か変えたらどうかなと。特に、イメージのところで行動と書いてあるのが、人の動きのことなのか、ちょっとよくわからないので、ここを何か工夫がいるんではないかなという気がいたしました。
 それから、13ページなんですが、これは消費者選択と書いてあるんですが、これは消費者なんでしょうかね。国民の選択という言葉の方がいいんではないかなという気がいたします。
 それから、もう一つ問題は、その今の行動という言葉につながるんですが、いわゆる国民の意識という部分、意識改革という部分がどこかへ飛んでしまっているような気がいたします。何か、そういうような触れ方の方が、いわゆる、これからやっぱり国民運動とか、人がどう意識を変えていくのかというのが重要になってくると思うんで、やっぱりその意識の改革というところを、もう少し重点を置いてお書きいただけないかなと、これは印象でございます。恐れ入ります。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 行動の英語がBehaviorですから、だから、もうちょっと何か別の言葉が確かにあるかもしれませんね。福岡市の環境宣言ではちなみに振る舞いという言葉を使ったんですが。
 永里委員、どうぞ。

○永里委員 17ページの政府が講じる手段の中に、実は技術移転が容易に行われるインフラ整備みたいなのをつけ加えてほしいと思ったんです。その理由を申し上げます。先ほどのテーマで、大聖委員もおっしゃいましたが、産業界というのは知的所有権に非常に敏感でありまして、契約の概念のない国があります。だまされる方が悪いというような文化のところがありまして、コピーするのが当たり前というような国があります。そこに多大な研究開発費をかけた日本のすぐれた技術を、おいそれとは出せないんです。
 その場合に、企業間同士ちゃんと契約したらいいんじゃないかというのは、これは我々の方の先進国の概念でして、そうではないんです、その国においては。その企業とたとえ結んだとしても、すぐ隣の方で同じようなコピーの工場ができて、その会社は全然違う会社で、そこに全部実は同じものができ上がっていくという、こういう例がありますので、私はここで政府が関与しないと、すなわち、国と国が関与しないと、簡単にはすぐれた日本の技術を移転できないわけです。
 したがって、あえて、この17ページに、技術移転が容易に行われるようなインフラ整備もつけ加えてほしいなと思います。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 原沢委員、どうぞ。

○原沢委員 前回発言した内容について、取りあげていただいてどうもありがとうございました。それを踏まえて幾つか発言をしたいんですが。
 エネルギー供給のところ、新たに入ったということで、よりわかりやすくなったと思うんですけれども、その下にあります導入ポテンシャルのところが、多分、低位とか高位とか、非常に専門的な用語が入っているものですから、わかりづらいのではと、その表現等を工夫していただけたらなというのが1点。
 あと、その上の、電力、熱、水素等々がそれぞれ別々にきているんですが、例えば、コジェネのような、より高効率なものも入っていくだろうと思います。単に電力、熱だけではなくて、両方をうまく使ったようなやつもあると思いますので、工夫をしていただいて入れていただければと思います。
 あと、最後の方で、ちょっと17ページからの政府が講じる手段というようなところで、例えば、環境配慮契約ですとか、その18ページの上の集約型都市構造、多分、その上の方はいろんな協定みたいな話も含めた用語じゃないかと思うんです。あと、集約型都市というのはいわゆるコンパクトシティみたいな話で、どっちが世にはやっているかというと、コンパクトシティも結構最近いろいろ出てきたんで、そういうワーディングの方がよりわかりやすくなるかなという意味で、また検討されるときに用語の話もチェックいただければと思います。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 それでは、川上委員が先にお手を挙げてございます。

○川上委員 私も前2回ちょっと出張で出られなかったんで、若干、発言がこれまでのここでの議論とずれるところがあるかもしれませんけれどもお許しいただいて。まず、世界への発信・国際的な連携のところに一番関係するんだと思うんですけれども、こういう日本を中心とした低炭素社会というものを、2050年ぐらいの状況を頭に置いて、これから議論するという過程において、日本の強みというのがここにも指摘されておりますけれども、それを前提として、環境エネルギー、つまり日本が強いこの分野、私は出なかったこの前の会合で、黒川先生だったと思いますけれども、興味深い資料を出しておられて、そこに日本がやる気があって、かつ、国際社会から期待されているという分野の最たるものとして、この環境エネルギー分野というものを挙げられておられ、私も全く同感なんですけれども、そういう考えを前提に、日本の基本的な姿勢として、今後、この分野を一つの国際貢献の柱と位置づけるというぐらいの基本姿勢が出てきてもいいんではないかというふうに考えます。それはどこに書くかというのはちょっと難しいんですが、これからの戦略というところなのか、あるいは、日本モデルの発信というところあたりに入れ込むのか、すぐにはきちっとした個所が思いつかないんですけれども、そういう基本姿勢があって、それに基づいて日本は行動しているんだというようなことが明確になることが望ましい。日本の国際貢献、ご承知のように、ODAも最近低減してきておりますし、もちろん、ODAと絡まなければ、この環境エネルギーの分野も推進できないわけですが、そういうこともあって、新しいこういう分野が一つの国際貢献の柱になるんではないかと、私は非常に強く感じる次第です。それが1点。
 それから、第2点は、それとも若干関係しますけれども、日本を中心に考えた低炭素社会ということで、ずっと議論してきたわけですが、当然のことながら、巨大排出国である中国を隣国に抱え、かつ、アジアの国には非常に大きな排出国が多いわけですけれども、そういう国と共に歩みながら、日本も美しい星の一員になるんだという姿勢が、もうちょっと出てもいいんじゃないかという感じがいたします。
 したがって、途上国とのもちろん、ミティゲーション、アダプテーションのことを頭に置きながら、今後、長期的な戦略でどういうことをやっていくのかという姿勢が必要なわけですそういう観点から、この資料のどこかに蛙跳びというか、フロッグリーピングの話が出ていますが、しかし、環境問題というのは必ずしもフロッグリーピングだけじゃないんですね。非常に先進的な技術だけじゃなくて、今、日本が四日市の公害を克服したころに戻って、途上国を援助しなくちゃいかん分野というのもたくさんあるわけで、現に地球環境温暖化対策として日本がやっている海岸の護岸対策だとか、間伐だとか、それから、クリーンエネルギーの問題、もちろんミティゲーションの話もあるわけですけれども、そういう分野で今までもずっとやってきたし、これからも大いにやっていくんだという姿勢は、アジアとともに歩むという、先ほど申しましたようなこととの関係でも、もう少しどこかにきちんと出てきていいんじゃないかなと、その出方がちょっと足りないんじゃないかという印象があります。一番最後のページなんかが、もちろん私の頭にあるわけですけれども、その点が第2点。
 それから、第3点は、最後、これは賛成なんですけれども、低炭素社会に関する情報拠点の整備と研究だとか人材育成の推進、これは極めて今申しましたこととの関係でも重要だと思います。ここに書いてありますように、知見が、民間はもちろん、先端技術という意味では確かに民間が中心になりますけれども、民間企業だけではなくて、政府分野でも今までの先ほど申しましたような援助実績なんかもありまして、随分いろんなところに知見が散在しているんですね。それをネットワーク化して、きちっとした拠点に仕上げ、その拠点を中心に発信していくということが、何といっても極めて重要だというふうに考えますので、この点は強く賛成しておきたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 それでは、お手をお挙げになった順番、正確じゃないんですが、武内委員、及川委員、鹿島委員、この順番でお願いいたします。

○武内委員 前回、指摘していた点、取り入れていただいてありがとうございました。
 その上で、そのことに関して追加的に申し上げたいんですが、最初のはじめにのところで、21世紀環境立国戦略の循環型社会、自然共生社会と並んで低炭素社会の実現を追及していくというのは、これは私がお願いしたことの趣旨と少しずれているところがあります。それは、私が申し上げたかったのは、低炭素社会を議論するにしても、循環型社会、自然共生社会との間の相互関係に留意しながら、この低炭素社会の実現を目指していくというふうにすべきだということで、これですと並んで一つがあるから、そのうちの一つだけを取り出してやるんだというふうな形になってしまうと思うんですね。
 例を挙げますと、基本理念として自然との共生、これは自然共生社会との連動というところですが、ここがCO2の吸収源対策にかかわる議論しか出ていないわけですけれども、例えば、最近、新生物多様性国家戦略が公表されましたけれども、その中でも里山イニシアティブというものが言われていて、いわゆる生物多様性における第二の危機というのは、日本の固有の危機ですけれども、これは森林に手が入らないことによって生物多様性が減少しているという、そういう問題なんですね。ですから、この議論で森林に手をかけた方がいい、あるいは、昔、里山でバイオマス利用していたものを、新たにバイオマス資源として活用することができるんじゃないかと、そういう議論と、それから、里山イニシアティブというのがうまくつながってくれば、先方では生物多様性の議論として書くし、当方では自然との共生を通して低炭素社会を実現すると、そういう形になっていくんではないかと思いまして、その辺につながるような、やはり認識を持っていただければいいのではないかというふうに考えております。
 それから、これは私たびたび言っていることですけれども、ヒートアイランド対策と低炭素社会に向けての対策というのは、相共通するものもありますけれども、相違うものもあるわけですね。一番危険なといいますか、ミスリーディングなのは、ヒートアイランド緩和をすると低炭素社会になるというのは、これは極めてミスリーディングでありまして、したがって、その両方が必要なんですけれども、その間の政策をうまく統合することによって、ヒートアイランド対策が低炭素社会につながるんだというふうなところに政策を持っていくことが重要だということを、やはりわかるように書いていただきたいというふうに思います。
 それから、12ページで森林・農地・海洋ということで、ここがハイライトされたということは大変いいことだと思いますけれども、食料・木材自給率については、ここでは、「の向上」というふうにしか書かれていないわけですね。非常に具体的な計画をいろいろとぎちぎち議論していく中では、その飛躍的な食料自給率、木材自給率の向上というのを言うということは、なかなか難しいとは思いますけれども、この2050年を目指して何か大きな取り組みについての構想を発表していこうというようなときに、これだけ見ると、40%を45%にすればいいんじゃないかとも読めるような書き振りにとどまっているということは非常に残念で、仮に数字が出せないにしても、ここは食料・木材自給率の飛躍的な向上というふうな形の言い方をしないとだめなんではないかなというふうに思います。
 それから、18ページの都市、交通、建築等のハードインフラに関してですけれども、これはヒアリングの中で伊藤滋先生が、これからは人口減少時代に都市の人口というのが、急激に減少していくということを言っておられましたけれども、私たちの分野では、最近、逆都市化という言葉を使って、その時代に都市をどうやって維持していくんだということを逆に問題にしているわけですけれども、その際に、その逆都市化というのが、どこでうまく誘導していくかということが非常に重要で、具体的に言うと、郊外部の無秩序な成長を遂げたところを、もう一回緑地帯に戻していくような、そういう構想というのが極めて重要なので、そういう特に肥大化した郊外部の都市の整序の問題とあわせて、やはりそのハードインフラの整備というのを戦略的に進めていくと。たしか国土形成計画の中でも、少しそのような議論がもう既に入っていたと思いますけれども、そのようなことも少し視野に入れながら、書き改めていただけるとありがたいなというふうに思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 及川委員。

○及川委員 いろいろな具体的イメージとか挙げていただいているんですけれども、何か具体的な感じが抱けないというのが正直な感じですね。
 それで、例えば、今、武内委員からもありましたように、森林・農地・海洋、農林水産業という12ページの資料を見ましても、地域の風土・特色に根ざした、多様で「顔の見える」生産・消費活動により、安心・安全な第一次産品を供給していると書いてあるんですけれども、こんなことは自然にはなりはしないわけですね。どういったことでこういうふうにしようとしているのかということが問題だと思います。
 食料自給率は、この間までは40%だったものが、上げたいと言ったのが逆にもう39%に下がっていますし、木材自給率も20%ぐらいなわけですね。ということは、大多数のそういう農産物というのは、外国から輸入しているということなわけですね。日本だけに限るといっても、外国の生産状況がどうなるかというようなことが、そういうのを視野に入れないと、何か具体的なイメージがわいてこないわけですね。来年にも小麦が値上がりすると言っているわけですけれども、これは日本の小麦の生産が落ちたから上がるわけではなくて、オーストラリアの大干ばつで生産が減ったために小麦が上がるわけですよね。だから、そういった国際的なつながりをきちっと考えた上で、こう具体的なイメージにしていただけないかな、というのが私の希望でございます。

○浅野部会長代理 ありがとうございます。
 戦略というところの書き方が必ずしもまだ十分できていなくて、イメージだけが先行しているというご指摘だろうと思います。特に、今の農業のところの戦略を見ると、確かにご指摘のようなところは欠落しているわけで、これから、さらにパブコメなどを受けながら、この辺が埋まっていくんだろうと思います。
 鹿島委員の次は福川委員、それから、高橋委員、大塚委員、この順番でございます。よろしくお願いいたします。

○鹿島委員 ありがとうございます。
 第1点目は、この政府が講じる手段という中で、ここには地域開発マスタープランにおける低炭素計画記載の義務化とか、こういうふうに狭く書いていって、これでもいいのかもしれないんですけれども、できましたら、政府全般のやる施策についても、評価をできるような、あるいは、この中の施策でも結構ですけれども、そういうものをちゃんと評価をする仕組みというのを、できているということが必要じゃないかなと。ここですと、よく言うプラン・ドゥ・シー・チェックとかという中で、プランとドゥはできているんだと思うんですけれども、シーとチェックの部分が欠けているかなというのが第一印象でございます。
 それから、2点目は、エネルギーについて分けていただいたので結構だと思うんですけれども、廃棄物についてはどういうふうに考えられているのかなという、中に若干の記述がございますけれども、今の現状の問題を考えると、きちんと出してもいいようなテーマじゃないかというふうに思います。
 それから、3点目は強化のところでございますけれども、これは私の関係するところで移動のところがございますけれども、これを拝見しますと、実は旅客については、都市間についてどういうイメージになるのかということについての記述が不足しているというような気がいたします。
 それから、貨物については、逆に今度は都市内の移動についての記述がないような気がします。これは例えば、東京と大阪を例にとりますと、具体的に起こっている問題としては、中央リニア新幹線をつくろうと。新幹線をつくると飛行機分がなくなるじゃないかと、これは環境にいいんだと、こういうような主張と、どういうふうに考えていったらいいんだろうか。あるいは、どれをどういうふうな立場で、ここの中は書かれているのかなというようなところがございます。
 それから、貨物についてはご存じだと思いますけれども、営業用の貨物は確かに短期的には今減っているわけですけれども、自家用の貨物につきましては、これは荷物が減っているんで、自分たちが努力しているわけじゃないというふうに私は考えております。自家用のトラックについての将来のビジョンというのも、何か必要なんじゃないかなというふうな気がいたします。それが強化のところです。
 それから、ここにはない、あえて言えば、一番最後の20ページのところですが、もう少し、何かこれまでの知見を丁寧に書かれるというのも、あってもいいような気がいたします。それから、特に私が気にしていることは、これから市民の方とかという、要するに、今までの供給サイドへの施策じゃなくて、言葉は適切ではないかもしれませんけれども、需要サイドへの施策を考えるときには、ある面のいろんな権利を、制限をしていかなきゃいけないようなことが考えられると。私の関係する分野の中で言えば、一番大きいのが都市内で土地の保有をするときには利用が制限されると、この問題があります。これもたかだか100年間でこういうふうなことができてきたわけですけれども、そういうことも少し広めに、いろんな人間が住んでいくために、いろんな知見を集積してきたんだというようなことはあってもいいのかなという感じがしています。
 それから、最後にこれは質問なんですが、ここで書かれているスタンスが、やっぱりちょっとよく理解ができなかったことがございます。例えば一つ例を申し上げますと、最後の18ページの中に幾つかのイメージを書いていただいているんですけれども、例えば、交通のところですが、低密度地域における予約制導入による日常移動の公共交通利用促進と、こういうふうに書かれているわけですけれども、例えば今の物の考え方というのは、私的交通と公共交通とか、あるいは、別の言葉で言えば、自家用・営業用とかという今の枠組みを前提にお考えになっていらっしゃるんでしょうかということです。
 あるいは、自転車と自動車とか、あるいは、さっきちょっと触れました土地利用についても、今までの土地利用というのは、私の個人的見解かもしれませんけれども、住宅を守るためにどんどん分離をしてきたということだと思います。そういうことを前提にお考えになっているのかどうかという、その前提条件がわからないと、そういうことが実は少し、緩めるというとおかしいですけれども、傾向が変わるんだということであれば、中の少し書き方が違ってくるのかなという気がしております。
 以上でございます。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 それでは、福川委員、どうぞ。

○福川委員 11ページの産業のところでございますけれども、この行動のところの下から二つ目の丸のところなんですが、低炭素社会においても企業活動が損なわれることがないようビジネスモデルを常に変革しているということなんですが、企業活動が損なわれることがないようなビジネスモデルと、こういう言い方でもいいのかもしれませんが、むしろ、この低炭素社会でもその企業の持続ができるような、例えば、イノベーションに絶えず挑戦しているというような前向きな表現の方がいいという気がいたします。
 それから、サプライチェーン全体の低炭素化の中に入っているといえば入っているんですが、このやっぱり流通の合理化ということを考えて例示をして出してもいいのかなという気がいたします。
 それから、少し上の方に戻りますが、今よく全要素生産性という概念があるわけですけれども、ここで考えてもらいたいのは、環境負荷に対する生産性を高くするというような概念というのができないものだろうか、環境負荷を考慮した上での最も高い生産性を追及するんだというような行動、そういうことができているようなイメージというのはいいのではないかという気がいたします。
 それから、16ページですけれども、ここもこの企業に望まれる行動の中で、ビジネスモデルの変革ということが書いてありますが、このビジネスモデルの変革ということですと、ただ、変革というと、どっちに向かって変わるかよくわからないので、例えば、環境優先の企業経営システムの確立とかというような、その意味がはっきりわかるようにしてはどうかという気がいたします。
 それで、文章の中に、その社会においてというのは多分、低炭素社会だと思いますが、それで収益拡大が追求できるようなビジネスモデルを模索しと書いてありますけれども、確かに、この企業の持続性から言えば収益拡大が必要だということなんですが、収益拡大が追求できるようなビジネスモデルとあえて言う必要があるかどうか、その上に低炭素社会づくりに貢献できるビジネスモデルを探求していくということで、この収益というのは、むしろ少し収益を切ってでも、この環境負荷の低減に貢献していくということが必要な時代にもあるかとも思うので、あえて、収益拡大とまでここで言わなくてもいいのかという気がいたします。
 それから、もし、ここの中で言うとなるとすれば、この望まれる行動の中に企業の社会的責任というようなことを、明確に言ってはどうかという気がします。
 最後に、そこの一番下の金融商品の開発ですが、これが革新的な環境技術の研究開発などに多くの資金が集まるようにしていくというのは、これまたどうやってこういうふうにしていくということができるかというのが、余りイメージがわいてこないので、もし何か例示があればいいと思います。その場合、もちろん助成策というのは一つ考えられるわけですが、もう一つ、こういう金融商品を開発していくときのその情報公開、どうしてそういう有利な金融商品ができるのか、どういうふうにこのファンドならファンドにお金を出そうとする人が理解するかというために、その金融商品開発の情報公開というのは非常に大事だという気がしますので、ここに少し例示を入れていただくと、もう少しこの戦略がはっきりするかという気がいたします。
 以上です。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 20ページの最後の、日本の強みとそれを活かした日本モデルの創造と発信というところに関して、一つコメントがございます。今、三つここに出ていますが、これはどう見たって、非常に一生懸命努力して創造したようなものではなくて、何かそういうものが言われているというのが並んでいるだけだというふうに思います。
 このテーマというのは、私は極めて重要だと思いますので、ここの部分をもっともっと強化していただきたいというふうに思いますが、その一つの例として、2050年ということですが、これから二、三十年のこと、いろんなことがあるでしょうが、一つ世界の中で日本が非常にユニークな状況になっているに違いないと思いますのは、社会構造が根本的に変革し始めているだろうというふうに思います。
 今までですと、人間は成長プロセスがあって、仕事をして、それでへばっていくという、そういう三つに分けていたわけですが、成長して、社会的にも家庭的にもフルなプロダクティブな時代があり、その後、フルな家庭的にも社会的にもプロダクティブな時代ではないけど、くたばってもいないと。この二、三十年ぐらい、非常に多くの人たちがそこのカテゴリーに入ると、その社会をどういうふうに構成するかということが、世界で最も先に日本が突入する国なんだと思うんですが、そこの人口層が、恐らく、この低炭素社会の重要な担い手になり得る、そういう位置づけがあり得るんじゃないかと私は思います。そのあたりは多少イマジネーションが必要ですが、2050年のことを考える場合には、これは大したイマジネーションでもありませんし、担い手の問題としてそのあたりを特定した書きぶりというのは、この日本の強みとそれを活かした日本モデルの創造というあたりには書き込んでおいていいんじゃないかと思います。その点、1点だけです。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 それでは、大塚委員、お願いします。この後、横山委員が先にお手を挙げになっておりましたので、逢見委員、青木委員の順番になります。

○大塚委員 1点だけ申し上げたいことがございますが、いろんなことが挙げられていて、多分出ていないということを1点だけ申し上げたいと思います。
 17ページの制度的なインフラ整備のところですけれども、ちょっと環境経済学の話に関連する話になってしまうところもありますけれども、現在、国とか自治体が出している補助金とか、あるいは税制優遇措置に関して、その温暖化対策との関係で、むしろ温暖化を進めている場合がかなりあると思いますので、それをチェックして、場合によってはカットするということが、この先極めて必要だと思いますが、なかなか政治的には難しいところがもちろんあると思うんですけれども、2050年に向けて検討するのであれば、そういうことはぜひ入れていただけるとありがたいと思います。
 この問題は、本当は温暖化だけの問題じゃなくて環境一般の問題ですけれども、随分、昔から言われてきていますけれども、日本では余り論じられることが少ないということがありますので、国とか自治体がやっていらっしゃる、その補助金とか税制優遇措置が、むしろ温暖化を進めているというのは、ある意味あるようですので、ぜひ、これをチェックして配慮していくという仕組みを入れていただけるということが、言葉でも入っていただけると大変ありがたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 それでは、横山委員、お願いします。

○横山委員 3点述べたいと思います。
 1点目は、15ページと16ページなんですが、まず15ページは、各主体に望まれる行動と講じるべき手段で、国民と企業しか書いていないんですが、先ほども2050年というのはどういう社会になっているかは全くわからないというのがつけ加わったわけで、NGO、NPOのこともやっぱりどこかには入れないと、国民に代表させたのかわかりませんけれども、違和感を持たれるんではないかと思います。ひょっとすると、NGO、NPOというのが2050年には物すごい存在になっている可能性もあるわけで、その辺をお願いしたいと思います。
 それから、その後の政府が講じる手段のところも、これも2050年に中央政府よりも、ひょっとしたら地方政府の方が重きをなしているかわからないわけで、この書き方だと全部中央政府というような感じなんで、その辺もなんか工夫が必要ではないかと思います。
 2点目は、小林委員が心の豊かさというようなことをお話しなさったと思うんですが、私もどこかにこの5ページのところに、物質的な豊かさではなくて、心の豊かさとかという表現を入れた方がいいような気がします。それから、物質的な意味での生活水準というものは下がるかもわからないというようなことが、どこかにあってしかるべきではないかと思います。
 3点目は、単純な質問ですが、聞き漏らした可能性もありますが、パブコメにかけたのは前回のやつか、それとも、今回のやつか、あるいは、きょうの修正をしたやつをかけるのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。

○浅野部会長代理 前回の分だそうです。
 それでは、逢見委員、どうぞ。

○逢見委員 前回、グリーンジョブの話をしまして、それを入れていただいてありがとうございます。
 低炭素社会づくりの「貢献」という言葉が強く出ているのですが、私は貢献というよりは、もうちょっと強く「責任」という言葉じゃないかという印象があります。貢献ですと、何となくやれるところはやってくださいという感じになって、もうちょっと強い意味合いがないといけないと思います。
 例えば、15ページの戦略の枠組みの最初が、低炭素社会づくりに貢献していくことが望まれるという言い方になっているわけですが、ここはもうちょっと戦略としてはもっと強いものを示す必要があるんではないかと思います。
 それから、13ページの消費者選択でも、例えば、そのBehaviorのところの下から二つ目で、社会貢献意識が低い企業の商品を購入しないとありますけれども、これも社会的責任として、環境負荷が認識されていない企業については購入しないとか、もうちょっと強いものになるんではないかと思います。
 それから、国際的な世界への発信という19ページ以降のところがありますが、ここも国際的な発信・連携ということなんですけれども、やはり低炭素社会に向けた国際的な枠組みづくりといったものが、当然検討されるし、日本も積極的な役割を果たしていかなければいけないと思います。そうした点についても記載をすべきではないかと思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 では、青木委員、どうぞ。

○青木委員 3点ほどですが、一つは、5ページですか、きょうめがねを事務所に置いてきたもので、目がちかちかして字がよく見えません。もしいろいろ書いてあれば失礼なことになるかもしれませんが。自然との共生で、先ほど武内委員がおっしゃったことと同じようなことを考えていたんですけれども、ここは温暖化対策のために自然対策をやるという印象なんですけれども、日本というのは日本の文化、人間の生活というのは自然とともに来ているわけで、その日本で今やはり絶滅危惧が30%ぐらいあるとか、自然が変わってくるということがあるわけなんで、まず、その自然自体を日本人の文化を守っていくというような意味からも、今の自然を守る、絶滅危惧種もちゃんと残していくというような、50年後にはちゃんと残っているという、そういうような社会になってもらいたいわけで、そういったことをやはり文化との関係、私たちの生活との関係で、やっぱり自然をとらえた上で温暖化との関係を書くべきではないかというふうに私は感じます。
 それから、これも武内委員がおっしゃったことと同じですけれども、都市と農村の関係で、この前、伊藤滋先生は、私、農業対策はいろいろ出ているんですけれども、農村部がどうなっていくのかというのがよくわからないんですが、この前も伊藤滋先生も、地方の10万都市を充実して、そこを拠点にして農村対策するのではないかというようなニュアンスのことをおっしゃっていましたが、この辺の都市と農村の関係は、やはり関係省庁にもよく相談をされて、イメージを少し出された方がいいんじゃないかと。それから、都市と農村の境界については、武内委員との考えに全く賛同でございます。
 それから、もう一つ、都市のインフラですけれども、いろいろなものをつくっていくとか、都市計画でいろいろ整備していくというのは結構なんですが、やはり、これから簡素化であるとか、できるだけエネルギーを使わないということでありますから、既存の施設を十分活用して、その活用するノウハウ、これがいわゆるコンパクトシティの中にも入ってくるのかもしれませんけれども、そういった既存の施設を活用したノウハウを開発していくとか、あるいは、その道路ももう既にこの時点になりますと、首都高速道路も高速道路ネットワークもできているでしょうから、いろいろロードプライシングもいろいろ実験されているようなんで、高速道路と一般道路との相互の調整ということも、ロードプライシングでかなりできてくるわけですので、そういったことで自動車交通についてはかなり渋滞が緩和して、自動車交通も渋滞がなくなってくるだろうというような趣旨のことも書かれた方がいいんじゃないかというような気がいたします。
 以上です。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 塩田委員、どうぞ。

○塩田委員 2点申し上げたいと思います。
 1点は、海洋についてはこの中に入れていただいて感謝します。海洋は温暖化ガスの吸収排出という問題もあるうえに、日本の周辺は海洋で取り囲まれているわけですから、50年の単位で考える場合には、もう少し研究も進めていただきたいというのが私の希望です。
 それから、交通に関しては、今、青木委員もおっしゃいましたけれど、8ページのこのイメージのところですけれども、このイメージというのは、要するに上の都市との対応関係において、都市の中の交通というようなイメージが強いように思います。私も、輸送活動量から言えば、大都市を中心に、大都市・中都市の中の輸送活動量というのは圧倒的に多いようですから、こういうようなものでいいのかもしれませんが、考え方としては、今は自動車で動いている人がなるべくバスとか電車、鉄道にシフトしていくということが、これは決定的に温室効果ガスの減少には寄与するわけですから、これはなかなか大変なことですけれども、そういうことを徹底的にねらっていくということではないかと思います。
 そういう観点から言いますと、今、青木委員がご指摘になったことと同じことですが、既存のインフラを全然無視して考えるということは考えられないんで、結局、鉄道の駅とかバスの乗り場とか、そういうところと歩道の関係を利用しやすくするというようなことを、徹底的にやっていくということとか、あるいは、鉄道と道路は立体化をしていくというようなことをしなければ、必ずここに混雑が起こるわけですから、50年の単位で考える場合には、そういうことを目標にしていくということが、一番手っ取り早くて効果が大きいんではないかと思います。
 この輸送のインフラの関係で一番効果が大きいのは、公共交通機関の乗り場の周辺の上下の移動をなるべく減らして、それから、横に動く必要がある場合が多いわけですが、距離が長い場合には、ここを歩く人のために動く歩道をつくるとか、そのようなことをすればお年寄りでもバスや鉄道を利用しやすくなります。
 それで、このページに完全に欠落しているのは、国際輸送です。国際輸送は先ほどもちょっと資料に出ていましたように、京都議定書でカバーされていないというようなことをお考えになったのかもしれません。ただ、旅客輸送、貨物輸送の需要が発生するポイントであるわけですね。その関係で、これからの長距離輸送をどうするかということに関しては、日本が独自に開発しておりますリニアモーターというのは、やはりここに言及がないとおかしいのかなという気がいたします。今、どうやってそれを実現するかということは、これからですけれども、そういうような問題があると思います。
 それから、最後に申し上げたいのは、これは日本のことで、外国に対して発信をしていくという観点から申しますと、日本の輸送のシステムは非常にレベルが高いのはご承知のとおりです。これは新幹線が一番際たるものだと思いますけれども、そういう大量輸送についてのわが国の技術と経験を特に開発途上国に移転を図ることは非常に大事なことだと思います。非常に難しい問題だと思いますけれども、特に人口の大きい開発途上国に対しての政策としては、非常に大事な問題ではないかということを申し上げておきたいと思います。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 それでは、ひとあたりご意見を伺いました。和気委員、ご発言ご希望でいらっしゃいますか。
 それでは、申しわけありません。時間が迫っておりますので、簡潔にお願いします。

○和気委員 今まであんまり議論に貢献せずに、大変恐縮ですが、簡単にコメントをさせていただきます。実際のところ、この低炭素社会への実現には相当な覚悟が必要であると思いますが、その覚悟のほどがどこかにあるのかな、あるいはどのように表現されているのかなと思いつつ読んでみますと、まず2ページの低炭素社会づくりに向けての基本理念の1、2、3が少し気になります。1番目のカーボン・ミニマムについては、すべてのセクターがかかわるというのは、まさに消費者も含めてのことと理解すべきであり、したがって消費者の選択という課題もこの項目に入るのかなと思います。
 そこで、2番目の豊かさが実感できる暮らし、これが相当これから重たい社会的テーマになるのではないかと思っておりまして、その豊かさの指標を新たに開発していくというそういう時代に入ってきて、ヨーロッパでも"Beyond GDP"というような動きが出てきているように、新しいGDPの考え方、少なくともこの低炭素社会づくりに向けてのきっかけに、具体的に取り組んでいかなければならないと思います。したがって、その新しい指標を客観的かつ具体的に開発し、新しい豊かさ指標に基づいて社会運営をしなければならないという部分が、ひとつ大きな理念となるのではないかと思います。
 3番目の自然との共生のところは、他の委員の方々も指摘されているように、低炭素社会へのシフトという大きなハードルを乗り越えるには相当な覚悟がいるということは、循環型的社会システムへの一層のシフトの中で廃棄物負荷も減らさなければならないでしょうし、自然との共生の中で新しい豊かさ、あるいは喜びを感じるような、そういう社会であってほしいと思いますし、そういう意味で、持続的な社会づくりに向けての多様な環境保全の努力における大きなシナジー効果を目指すということだと思います。低炭素社会はこうした全体構想の中で位置づけるという基本理念がここにあるのかなというイメージを考えております。
 さらに、2ページの低炭素インフラの整備の中のソフトインフラについて、たとえば情報の具体例として、環境への負荷を考慮した、いわゆる全要素生産性も含めて、ストック価値を考慮してGDPフローを再評価するような、新しい経済情報、あるいは、環境経済情報を工夫していくという道も、これから10年、50年に向けては必要ではないかと思います。
 以上です。

○浅野部会長代理 ありがとうございました。
 先ほど、鹿島委員からご質問の形で出された点は、多分答えられないだろうと思います。ですから、むしろ、ご意見として聞いておいた方がいいような気がします。何しろ2050年という話をしていて、これはやっぱり今の状態を基礎にして、そこにある情報から積み上げ的に考えているものと、えいやあと書いているものとがごちゃごちゃになっていて、そんなに整然と整理できているわけじゃないから、多分、この部分はこういう前提だけど、この部分はこういう前提だというふうになっているのだろうと思われるのですね。あんまり一律にこうだというふうに答えろと言われても答えようがないだろうと思うのですが、少し乱暴な言い方をすると、2050年であるがゆえに割合自由に物が言えるんではないかということもありそうですから、きょう出された貴重なご意見を踏まえながら、大胆に書けるところは大胆に書くということがあってもいいのだろうと思います。
 例えば、福岡、東京の飛行機便がなくなったら、私は真っ先に困るんですけれども、それにしても近距離航空はやはりやめるということが、諸外国では実施されているようなことが、日本では全く議論できていないですね。しかし、ある程度タブーとされているようなことでも、2050年にはということであれば言えるかもしれないということもありそうです、いろいろ文句を言われたら引っ込めればいいのであって、最初から引っ込めることはない。書けることはともかく書いてみたらというようなこともありそうです。多分、鹿島委員は、そういうような思いを持って発言されたんだと私は理解しております。事務局の方からは、無理に回答なさらなくて結構でございます。
 それでは、まだ、ご発言もあろうかと思いますが、初めに申し上げましたように、この議題は本日打ちどめではございませんで、さらに継続して審議をしていきたいということでもございます。最終的に、いつごろが仕上がりになるのかということは、私もまだ事務局から完全に伺っておりませんが、そんなにゆっくり1年も2年もかける気は毛頭ないわけですが、少なくとも1月中に全部まとめ上げてしまうということになるかどうかも含めて、それほどではない、ということも考えられそうでございますので、なお、お気づきの点ございましたら、パブコメをやっておりますから、委員の先生方からもコメントをさらにいただければ、それも織り込んだ上で、次の段階のペーパーができるということを期待したいと思っております。
 それでは、事務局からご連絡がありましたら、どうぞお願いいたします。

○高橋市場メカニズム室長 どうも活発なご議論、ありがとうございました。きょうのご指摘も踏まえ、また、パブコメ、さまざまな内外の意見も踏まえまして、ブラシュアップいたしまして、1月以降また部会を開催していただきまして、ご議論を深めていただければと思っております。その日程調整は、また引き続き1月以降ということでやらせていただきたいと思います。
 あと、本日の資料は公開とさせていただきますし、会議録につきましては、各委員にご確認いただいた上で公開させていただきたいと思います。
 以上でございます。

○浅野部会長代理 それでは、どうもありがとうございました。
 本日は、これで散会いたします。

午後2時56分 閉会