中央環境審議会第60回地球環境部会・産業構造審議会環境部会第地球環境小委員会合同会合(第19回)議事概要

日時

2007年7月6日(金)15時00分~18時00分

場所

砂防会館 利根

出席委員

茅地地球環境小委員長、鈴木部会長、青木委員、秋元委員、浅岡委員、浅野委員、飯田委員、石坂委員、猪野委員、植田委員、潮田委員、浦野委員、及川委員、大塚委員、角田委員、鹿島委員、勝俣委員、木下委員、黒田委員、河野委員、小林委員、佐和委員、塩田委員、鈴木(正)委員、須藤委員、住委員、関澤委員、高村委員、内藤委員、中上委員、永里委員、長辻委員、新美委員、西岡委員、馬田委員、森嶌委員、原沢委員、山口(光)委員、横山委員、米本委員


1.

エネルギー起源CO2以外の対策、その他の対策

 資料1は経済産業省、資料2及び3は環境省、資料4は農林水産省、資料5は経済産業省及び環境省から説明が行われた。

○茅委員長

  • 資料4について補足したい。資料4は前回会合で委員より質問があり、私が事務局と相談して回答する旨を申し上げたことを背景として、事務局より提出されたものである。二酸化炭素の排出原単位について、電気事業者が京都メカニズムを使ってクレジットを取得し、その原単位を自主行動計画として引き下げること自体は問題ない。しかし、自主行動計画の中で他の電気の原単位に反映されるのはダブルカウントにならないかとの質問があった。これはエネルギーバランス表と同じであり、経団連全体としての自主行動計画の総和を見るときは電力の発生分はカウントせず最終分でカウントするため、当然クレジットの分をカウントしないとトータルが合わなくなる。したがって、各産業の自主行動計画におけるCO2原単位には電気事業連合会のクレジットが反映される。
  • また、この問題を法律的にどう扱うべきか、たとえば、温対法で排出原単位をどう扱うかべきかとの問題がある。これはトータルとして合うか否かとは別問題であり、環境省が説明した結果となる。法律上の問題、統計上の取り扱い、そしてそれに絡む自主行動計画の取り扱い、それぞれが別である。
2.

委員の発言及び質疑

○茅委員長

  • 資料4について補足したい。資料4は前回会合で委員より質問があり、私が事務局と相談して回答する旨を申し上げたことを背景として、事務局より提出されたものである。二酸化炭素の排出原単位について、電気事業者が京都メカニズムを使ってクレジットを取得し、その原単位を自主行動計画として引き下げること自体は問題ない。しかし、自主行動計画の中で他の電気の原単位に反映されるのはダブルカウントにならないかとの質問があった。これはエネルギーバランス表と同じであり、経団連全体としての自主行動計画の総和を見るときは電力の発生分はカウントせず最終分でカウントするため、当然クレジットの分をカウントしないとトータルが合わなくなる。したがって、各産業の自主行動計画におけるCO2原単位には電気事業連合会のクレジットが反映される。
  • また、この問題を法律的にどう扱うべきか、たとえば、温対法で排出原単位をどう扱うかべきかとの問題がある。これはトータルとして合うか否かとは別問題であり、環境省が説明した結果となる。法律上の問題、統計上の取り扱い、そしてそれに絡む自主行動計画の取り扱い、それぞれが別である。
  • 2.委員の発言及び質疑
  • 代替フロン等3ガスについて、この分野は自己の枠内の努力だけで目標を上回る成果を挙げておられるとの印象があるが、ここでも国民の努力という要素が必要である。国民運動の議論はCO2の分野に集中しているが、代替フロン等3ガスについても国民運動に結びつける必要があるということは忘れないでほしい。
  • 廃棄物処理について、循環型社会の基本計画の見直し年に当たっているので、目達計画との連動を考える必要がある。それぞれバラバラに取り組むのは適切ではない。
  • 自主行動計画について、経団連には2008年から2012年まで、毎年の目標を立ててほしいと要求しているのであれば、目達計画についても2010年だけの目標だけでなく、2008年から2012年までにおいて、その進捗が管理出来るような計画にする必要がある。そのためには毎年のデータが速やかに入手できる必要がある。現在は速報値でも頑張って半年、確定値においては2~3年遅れとなっている。賃借評価データについても極めてデータが遅い。それでは毎年の進捗状況を見ながら5年間どうなっているのか評価ができない。早急にデータを入手できるシステムを作ってほしい。中間報告に盛り込むことは困難だと思うが、しっかり検討して最終報告には盛り込んでほしい。
  • バイオ燃料については、上流から下流、最終的な利用のところまで全体にわたって、統一的な戦略を構築していく必要がある。バイオ燃料について、ここで検討されているグレイン系についてウェル・トゥ・ホイールで見てどの程度のCO2削減効果があるのか、あらかじめ評価してから実証事業に入っているのか。資料ではセルロース系は2030年頃に大幅な生産拡大と書かれているが、セルロース系はもう少し早いと思う。いまさらグレイン系の実証事業を行うのはタイムフレーム的に遅いのではないか。
  • エタノールの利用を考えた場合、途上国と日本との関係をにらんだ国際戦略の中で取り組む必要があるが、その点、縦割り的な対応となっていないか。
  • PPSからすれば環境配慮契約法で競争上不利になるということがあり、公共政策上フェアであるかを考える必要がある。現在は独占電力会社に小数の弱小PPSが存在する状態だが、将来的に分割されていった場合、このような仕組みはなじまないのではないか。ヨーロッパで行われているように取引ごとにCO2も含めた電力成分がわかる仕組みに変えていかないといけない。
  • フロン等3ガスについて、優等生のように見えるが、最初の見込みが過大であったと思われる。経産省の資料1の最後に、生産量及び排出量が減っていると書かれているが、過去にどれだけ国内に蓄積されているのか、排出量はどれだけか、回収・破壊された分はどれだけか、それらのマス・フローが十分解明されていない。不明分が結構あると認識しており、これをはっきりさせていく必要がある。どこに取り組めば効果的に削減できるのかを明らかにする必要がある。
  • 3ガスの問題は、途上国、特に中国等での3ガスの問題と日本がどのようにかかわっていくのかも重要な点である。
  • CO2原単位については、電気事業者のCO2排出係数は、電気の消費に伴うCO2排出量の計算に用いられることになるため、その値は消費者の排出量に影響することになる。家庭でもCO2排出量の計算において電気のCO2排出係数が用いられる、これがヒートポンプ等の高効率機器の導入を促すベースとなる数値となる。CO2排出係数は、エネルギー選択、高効率機器の選択に影響し、結果として日本全体の排出量に影響を及ぼす結果となってきている。電気事業連合会としては、この電気の排出係数を低減する目標を掲げ、エネルギーセキュリティに配慮しつつ、京都メカニズムを補完的に活用し、トータルで目標達成を目指しているところである。なお、京都メカニズムは、地球規模でCO2を削減する方策として国際的にも認められた制度であり、日本の目標達成計画にも活用できるものである。したがって、温対法上の電気事業者別排出係数に反映して「見える化」を図り、それを消費者のCO2排出算定に広く活用して、省CO2型エネルギー、省CO2型機器の選択を促していくことが、京都議定書の目標を達成するための効果ある方策になると考えている。
  • CO2原単位について、これだけの努力をしているのに係数に反映させないとのロジックはどこにあるのか。法律を変えるなり解釈を変えるなりして、実態的に努力が報われる形にしてほしい。
  • 代替フロン等3ガスについて、取り組みが進んでいることについては評価するが、目標値が過大になっているのではないか。したがって、更なる削減ができるのではないか。対策の深掘をしながら目標を更に見直していくことが必要である。例えば、発泡剤や断熱材の処理をする段階でのHFC等の回収徹底とか、冷媒使用機材の冷媒充填の漏れ防止を徹底していけば、更なる削減は可能と考える。
  • 廃棄物対策については、まだ廃棄物の減量化の視点が中心となっている。地球温暖化対策という視点がまだ少ない。教育や研修など意識改革を行うことでまだまだ削減効果が出てくるのではないか。
  • CO2原単位については、電気事業者が取得するクレジットの意味・評価について更に検討してほしい。
  • 国産バイオ燃料について、原料の拡大を進めなければならないが、この前宮城県で飼料米を生産すると不利になると聞いたが、法律的にそのようなことがないようにしてほしい。
  • 廃棄物について、資料では取り組みが進んでいないとあるが、これは2004年のデータを使用したためなのか、この点を確認したい。
  • 代替フロン等3ガスについて、目標設定の問題はあったと思うが、近年かなり厳しく掘り下げ、目標設定の引き下げ等を行い、成果も上がっている。基本的には、生産過程で使用しない、代替のあるものは使用しない、排出をしないという問題。製造過程での努力に合わせて、業務分野での目標に代替を使った同等の効率のある、しかし若干コストが高い機器を位置付けるのも一案ではないか。同時に、建築業界における目標の中にも代替物質である発砲・ウレタンフォームの使用について位置付けてもらうことは、効率的に達成する意味でも重要ではないか。
  • 廃棄物について、発生抑制が重要かつ効果的な対策であると考えているが、本日の報告の中ではあまり言及がなかったと思う。補足の説明があれば御願いしたい。
  • 廃棄物について、廃棄物抑制が重要と考えているが、これは国民の生活と密接につながっており、国民運動との関係がどうなっているのか伺いたい。
  • CO2原単位について、計算上のダブルカウントの問題で法律上の問題があることについては理解できた。資料5の2頁で「二酸化炭素排出原単位を1%程度改善」、以前質問した時は2~3%との回答であったが、今回は5%と書いてある。どの数値が正しいのか確認したい。だんだん増えていく理由があれば、教えていただきたい。

○勝山経産省オゾン層保護等推進室長

  • 目標設定については、今般、産構審化学・バイオ部会において透明度高く議論を進めているところであり、ご期待に沿えるような目標設定ができるよう努力したい。
  • 同部会では、誰がどうやって努力すれば良いのかの議論になってきている。ライフサイクル的には製造、使用、廃棄と並ぶが、こういった分野において、誰にどうやって問うていけば効果的かについて、引き続き化学・バイオ部会等において議論していきたい。

○紀村環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課長

  • 現在、循環基本計画の見直しを進めているが、毎年点検等も行っており、その中で、3Rのうちリサイクルは進んでいるが、リデュースとリユースをもっと進める必要があると評価されている。こういった流れの中、計画見直しにおいて発生抑制の取り組みも視野に入れており、またご指摘のあった地球温暖化との有機的なつながりをどのように図っていくかについても視野に入れながら見直しを行っていきたい。昨年改正した容器包装リサイクル法や今国会で大改正した食品リサイクル法でも、発生抑制を徹底させている点では共通である。
  • 国民運動として取り組んでいくとの点については、その通りと考えているが、例えば一般廃棄物処理については有料化ガイドラインをこの6月末に提示しており、国民運動的なものに加えて、有料化等のスキームを使って発生抑制の対策に取り組んでいる。
  • 一般廃棄物業界、産業廃棄物業界には、CO2削減の観点、エネルギー有効利用等の観点からも取組を進めていただきたい。産廃事業者との関係においても、様々な研修会等の場を通じて一層対応して頂くよう普及啓蒙を図っていきたい。
  • 廃棄物の取り組みが進んでいないと見えるのは2004年のデータを用いているからなのかとの質問があったが、まだ2005年のデータは出ていないが、それほど数値は変わらないと思われる。客観的にこのような数字であるということを念頭において、排出抑制を含め徹底した取り組みを進めたいと考えている。

○農水省大臣官房環境政策課長

  • バイオ燃料に関して、グレイン系の今の事業のCO2削減効果についてはご指摘の内容を測った上で事業を進めている。ただし、使う技術をどう組み合わせるかによっていろいろと変わるので、野心的に効率の良いものを使っていこうと思っている。
  • 農作物を作る段階において、食べることを前提としないので、農薬の使い方などが異なることで、新しいことができると期待している。
  • セルロース系については、現在も大阪の事例などを行っており、来年、再来年で実用的なものは進めていきたいと思っているが、実用的かつ大量に作ることを考えると、日本の国土において、グレイン系でも課題があることが分かってきた。技術があることと、大量のエタノールを作ることとの間には、解決しなければならないことがあると考えている。
  • 国際戦略や各省との連携については、今回は農林省から説明したが、農林省の事業遂行には資源エネルギー庁の流通部門の協力なしでは全く進まず、常に協力して進めているところである。バイオマスについては、バイオマスニッポン総合戦略における関係省庁会議もあり、間に落ちないように進めていきたい。
  • 宮城での飼料米の生産について質問があったが、基本的に国の制度でご指摘のようなことはないと認識している。食用の米より安くなるのは仕方がないと思うが、飼料米を作ることが不利になることはない。一点、地域で産地作り交付金という支援策を講じている場合に、地域毎に考えか方が異なる場合はあるかもしれない。もし問題が起こっているようであればご相談頂きたい。

○後藤資エ庁電力基盤整備課長

  • 料金の問題について、クレジットを取得して償却すると税制上、あるいは企業会計基準の取り扱いでは損金算入されて最終的には原価回収されることになる。この手続きに差があるわけではなく、有利・不利という問題は発生しない。
  • クレジットの比率の違いについては、2005年に目達計画を作ったときの需要の伸びと2006年のフォローアップで見直した需要の伸びは異なっており、当然需要の伸びの違いによって出てくる排出量の量も変わってくる。結果として電気事業者の方でクレジットを積み増して目標達成を図っているとの流れになっており、新しい数値の方がより正確になっているということである。

○小川環境省地球温暖化対策課長

  • CO2排出係数に関して、法律、統計、自主行動それぞれの趣旨において整理されており、それぞれの考え方に従っていくことになる。電気の排出係数については、温対法の算定公表制度では、一般の排出者をどう扱うかの問題もあり、全体の整合性をとって整理する必要がある。
  • 目達計画全体の進行管理について、2008年から2012年に進行管理できるようにとのご指摘があったが、今後の課題としたい。どういう形で進行管理するか整理し、ご相談させていただきたい。

○榑林環境省フロン等対策推進室長

  • フロンの回収率の状況についてご質問を頂いたが、実際の回収率は都道府県の数値を集計しないと分からないものの、破壊量のデータについては17年と18年で比較すると14%増加している状況である。

3.その他の論点(国内排出量取引制度、環境税)

  • (1)国内排出量取引制度
  • 資料6に沿って、経産省及び環境省から説明があった。

○浅岡委員

  • 3つの視点を申し上げたい。第一に、排出量取引制度の導入を拒否し続けることは出来ない時期に来ており、具体的にどのように制度設計するのかの議論を始めなければならないこと。第二に、EUのパイロットケースの経験から、排出量取引は望ましくないとの指摘があるが、この点につき回答したいこと。第三としては、具体的な制度設計としてポリシー・ミックス的な観点から議論をしなければならないこと。
  • 第一の点について、温暖化は加速的なため、世界的に温暖化対策を強化し加速させる流れが出てきていると思われる。今回のG8の動きにも現れている。資料にもあるEUの調査、自分も2001年に排出量取引を最初に導入した英国に調査に行ったが、ヨーロッパで導入されたこのような制度が、米国でも東部、西部の主要な経済力を持つ州において具体的な取り組みになってきている。EUと、例えばアメリカ東部の州などとはもう既にリンクさせるということが協議されてきている。日本の中でも東京都が頑張ろうと言っている。EU、アメリカは、日本よりはるかに市場取引についての社会的経験があり、大企業がそれを選択しているということを考えれば、それなりの理由があると思う。これらの国の排出量取引制度の選択は、大幅な排出削減を所与のものとして受け入れることに始まっている。大規模排出事業者はどの国でも比較的少数であるが、そのような産業、発電部門の事業者に対して、単なる規制よりも、取引の自由さ、生産量を増やすことも含めた対応もできるという意味で柔軟性のある選択として実施されているのが現実である。日本においても、このような対策を行っていかなければ、事業者にとっても望ましくなく、今後の国際的な日本の役割においても問題を残すと思う。2013年以降の枠組み交渉において、日本としてきちんとした準備ができるかが重要となる。日本企業も大規模排出事業所の多くはEUに事業所をもち、既にEUの排出量取引制度に参加している。そうした企業の経験を国内に持ち込んで制度設計の議論を始めてほしい。
  • 第二として、EUのパイロットフェーズでは削減効果が上がらなかったとの指摘がある。排出量取引制度が、最小の費用で排出削減できるスキームであることは誰にも共有されていると思うが、目標をどのレベルに置くかによってその効果が決まる。今回のパイロットケースは、最初の導入ということもあり、緩い目標で始められた。そういう中で効果が十分でないのは当たり前である。自主行動計画の目標も、もっと厳しくされたいという要請がなかなか通らないが、排出量取引制度で十分な削減効果を生じさせるには、それに応じた数値目標を設定すれば良い。実際に導入する場合において初期割当をどうすべきかが大きな論点として指摘されている。確かに容易ではないと思うが、だからこそそうした議論を今直ぐに始めなければいけない。日本においては排出量の算定・報告・公表制度が今年から始まるが、実は、経産省は94年から詳細なデータを主要事業所から入手しており、それを活用すれば削減可能性や過去の努力を評価した割当も可能である。その他、いろいろ批判があるが、要するにキャップが嫌だという指摘に聞こえる。好き嫌いではなく、乗り越えていかなければならない問題。
  • 第三として、ポリシー・ミックスの問題については、大塚委員からもご指摘があると思うので譲りたい。

○大塚委員

  • 資料7-2-1について、第1約束期間に目標を達成しないとどういう問題が生じるかについてはスライド2に書かれた通りである。温室効果ガス排出量について2005年度7.8%増という数字が出ているが、目達計画の達成が不確実な情勢になってきている。産業部門のエネ起CO2排出量8.6%減、業務部門については15%増という目標を達成するためには、横断的な施策が必要となっている。
  • 環境政策の実効性・効果性・合理性の観点から、汚染者負担原則が基本となってくる。排出量取引制度がそのための一つの制度となってくるが、我が国では自主参加型排出量取引が環境省において細々と行われているが、世界的には義務的な排出量取引が主流である。
  • EUでは、この排出量取引が費用対効果の高い制度と認識されている。まだ第1フェーズの途中段階だが、2005年度のCO2排出量は配分された排出総量を下回ったという点では、相当な効果があったと言える。
  • 排出量取引についてはいくつかの批判があるが、その点について申し上げたい。第一として、排出量取引といった経済的手法を導入する必要性がどこにあるのかという指摘。第二として、これが統制経済ではないかとの指摘。第三として、初期割当をどうするかとの指摘。第四として、モリタリング・検証コストがかかるのではないかという指摘。
  • 第一の指摘については、政策の費用効果性の観点から必要と言える。また、アナウンスメント効果の観点からも重要である。排出量取引制度が経済的手法の中でも利点があり、一つには目標達成の確実性、二つ目は金融市場の俊敏性を使えること、これにより経済社会全体での達成への動機づけが生まれる点が重要である。三つ目として他の事業者から排出枠を購入すれば、割当量以上の排出が可能であり、規制的措置にはない柔軟性があるということ。目標の達成自体は目達計画との関係で当然必要であり、あとはそのためにどんな手法を使うかというだけの問題と考えていただきたい。また、我が国において排出量取引制度を導入する必要性については、義務的排出量取引制度が欧州や米国で導入されることによって、排出量取引に関する世界市場への我が国企業の参加が遅れるとの不利益が予想される。特に、費用効果性のある取引を喪失する、クリーンテクノロジー開発へのインセンティブが失われるとの問題がある。我が国の国際競争力を維持する観点も重要である。
  • 統制経済や経営の不安定につながるとの批判に対しては、EUではそのような批判はなく、外国からの排出枠やCER等のクレジットを購入できればそのような問題は起こらない。新たな生産費用が追加されたのと同等と考えるのが適切である。価格が上がることの懸念があるのであれば、セーフティ・バルブを準備するとの選択肢もある。
  • 初期割当について、過去の排出量・販売量を基礎とした無償割当が既得権保護になるとの批判があるが、過去の排出量・販売量ではなく、自らの宣言や合意に基づくという方法がある。また、新規参入者に対して不公平との指摘もあるが、あらかじめ排出枠のリザーブ等をして配慮すること、可能な限りベンチマーキングを取り入れる等の考慮をすることで対処できる。個人的な意見としては、自主行動計画のある業界については、自主行動計画の目標を基礎とすることが考えられ、それ以外の業界については、ベンチマーキング方式か、修正されたグランドファザリング方式を使うのが適切であると考えている。更に、初期割当の際に、国際競争力に配慮することも可能である。
  • モニタリングコスト・検証コストの批判については、申請前に第三者の検証人に検証させる、その後は自己申告を基本として、サンプリングで監査することにより、低減化することは可能である。
  • 岡・山口論文について、18頁にフルコストの問題が出てくるが、初期配分がフルコスト価格付けの影響を通じて生産量を増加させる可能性があると指摘しているが、それが限界削減費用の最小化をゆがめるということになるのかは、必ずしも証明できていないと思う。利潤最大化を前提とした企業行動をこの論文では否定的に捉えているが、そうであればそれ以外の企業行動を描写するモデルを提示する必要あると思う。そうでないと、どのような原則で利潤率が決定され、あるいはCO2削減量が決定するかが分からなくなる。それが分からないと、費用最小化の条件が歪められるかどうかということも議論しにくい。二つ目として、そもそもこのフルコストの価格付けモデルが標準的な完全競争モデルと比べて優れているのかという点が必ずしも論証されていない。

○関澤委員

  • 世界の粗鋼生産量は着実に伸びている。特に中国の伸びが著しい。そのような中でエネルギー原単位の各国比較を見ると、同じ鉄を1トン作るのに日本が100のエネルギーを使用するとした場合、EUは110、中国・米国は120である。中国のエネルギー原単位が日本の鉄鋼業並になると、日本のCO2排出量の12%相当が削減される。
  • 資料[3]において、世界の主要鉄鋼メーカーを生産量で並べてCO2の排出制約があるか無いかを色分けしている。アルセロール・ミッタルは日本全体の生産量に相当するが、グローバルに製鉄所を持っているため、EU内での生産量は3分の1であり、したがって排出制約があるのは3分の1である。しかしながら、EU域外との間で生産調整は可能であり、実質的に排出削減義務を負っているのは日本だけともいえる。そのため産業界のイコールフッティングになっているかどうか問題がある。
  • キャップ&トレードを日本に導入した場合の日本鉄鋼業への影響については、日本は世界最高のエネルギー効率を有しているにも拘わらず、自主行動計画達成のため、2800万トンの排出権を購入している。2010年の生産想定を1億トンとしていたところ、現在1億1,700万トンまで増えており、予防的に排出権の手当てを行っている。米国、韓国、中国は、削減義務を負っていない。中国の鉄鋼業は、世界全体の3分の1の生産規模を有しており、更に生産能力を拡大中である。EUの鉄鋼業については、域内排出量取引制度の適用を受けているが、極めて緩いキャップにより排出権を売却して相当大きな利益を得ている。エネルギー効率の高い日本鉄鋼業にキャップ&トレード制度が導入されると、コストアップ、研究開発の遅れ等により、国際競争力の喪失、効率の悪い中国等への生産シフトにつながることになる。国益の観点から問題である。
  • 国際鉄鋼協会では、今年5月7日、ポリシー・ステイトメントを公表しており、2つのことを言っている。一つは鉄鋼業界のコミットメントとして、既存技術を普及していこうということ、技術革新は徹底的に追求していこうということ、グローバルなセクトラル・アプローチを追求していこうということ、2つ目として、同時に政府への要請も挙げており、そこでは、キャップ&トレード制度を、CO2排出面でもっとも効率の良い製鉄企業が発展し最も効率の悪い企業が衰退するような政策に置き換えるべきと述べている。欧米の業界も入ってこのような要請を提示している。
  • 今年のサミットの前に日本EUビジネス・ダイアローグ・ラウンド・テーブルが開催されたが、排出権取引については、キャップ&トレード型の排出権取引制度については、公正かつ公平なキャップを設定することは困難である、また、企業にとっては事業活動を厳しく統制する仕組みであり、長期的視野での技術開発や設備投資が損なわれる恐れがある、更に、生産拠点の途上国への移転を加速させることにもつながり、地球規模での温室効果ガス排出量を増大させる炭素リーケージの危険性もある、従って、キャップ&トレード型排出権取引制度を国際的枠組みとして位置づけることは不適切である、と結論付けた。EU側と全く同意見であり、これを提言書の形で発表し、バローゾ委員長、安倍首相にも提出した。
  • EUの排出権取引制度に関する調査報告書について、金融や仲介者などが主たる市場参加者であり、制度の対象となっている事業者間の取引は稀であるという点は特に指摘しておきたい。
  • まとめとして、一点目として、過去の省エネ努力の成果など、エネルギー効率を反映していない国別キャップの下では、各産業・企業に対するキャップも不公平となる。二点目として、炭素リーケージの可能性が出てくる。三点目として、設備投資や技術革新を停滞させ、成長戦略の障害となる。四点目として、これが一番大きいと思うが、公平なキャップ設定は困難である。五点目として、官僚統制的となる。六点目として、消費者の意識や商品・サービス選択等の行動の変化につながるような効果は期待できない。これらの理由から、排出量取引制度は問題が多く、この制度を我が国にそのまま持ち込んでくるのは不適切であり、キャップ&トレードには反対である。

○山口(光)委員

  • 排出権取引について様々なコメントがあったが、なぜいまの自主的手法でダメなのか分からない。世界において全ての産業を含めて国全体でキャップ&トレードを行っているのはEUだけである。我が国の自主的手法を、このような手法でもできるということを世界に示していくべきである。
  • 排出権取引の本質は総量・個別規制である。効率性について、キャップ&トレードが効率的と言うのであれば、日本の60程度ある対策の効率性になぜ触れないのか。産業部門のキャップ&トレードというが、他の部門の対策もある中、キャップ&トレードをどのように導入していくのか、そのような議論は一度も聞いていない。シンクの問題、京都メカニズムを含め、全体としてどう扱うべきかを議論すべき。
  • 資料の4頁目、5頁目は、EUの例だが、対策コストと削減効果の関係を示しており、このような考え方でEUは対策を進めている。このようなやり方をせずに、ただキャップ&トレードは効率的だというのは狭い議論ではないか。
  • 6頁目は理論面になるが、完全競争であれば、オークションでもグランドファザリングでも効率的になるが、現実には完全競争ではない。ヨーロッパでは最近、この効率性に疑問を持った論文が沢山でている。その中で寡占市場の場合、唯一効率的になるのは、100%オークションか生産量に依存しない1回限りの初期配分の場合のみである。しかし、EUは生産量に依存しており、効率的ではない。
  • 環境効果について、キャップ&トレードを入れないと目標を達成できないとの論理が分からない。目標達成とキャップ&トレードは別である。自主的なものではダメで法律で縛るべきと主張するのであれば話は通じるが、そうであっても例えば日本の自主行動計画は相応の効果が出ており、罰金がなければ実施できないという主張は事実をもって覆されている。日本企業は海外からクレジットを購入しているが、このような行動も短期の利潤極大では説明できない。産業部門対策をもっと強化すべきか否かの議論は別の話である。もし強化するのであれば、業部部門など他部門との関係でどうしたらよいか、国際競争力の観点からどうしたらよいかを検討する必要がある。なお、ヨーロッパの政策のほぼ全てには国際競争力に配慮する旨が書かれている。また、産業界が自主的に強化すると言った場合はどうするのか。
  • 初期配分が可能かという点については、政府は納得感のある配分ができるかが問題となる。初期配分は財産権の配分であり、直接規制よりも困難である。直接規制と比べるのではなくて自主的規制と比べるべきである。ヨーロッパでこれが出来たのは、実績排出量ベースでの配分であり、排出権は恒久的財産ではなかったからである。一番大事なのは、ヨーロッパでは、国全体で産業部門をどうするか、各業種の伸び率をどうするかなどを、PRIMESというみんなが納得するモデルで行っている。日本でそのようなみんなが納得するモデルを用いて行うことができるか。要するに、モデルに対する絶対的な信頼感がなければできない。米国では、ある業種については出来ても、全経済ではできない。
  • 効率性も高くない、環境効果も同じ、衡平性の観点からは初期配分が困難であるのであれば、自主行動計画が納得出来るものであって、その目標が達成できる限り、排出権取引制度の導入は必要ないと考える。

○森嶌委員

  • 排出量取引は、カーボンを使わないことに対して一定の価値を認める、あるいは二酸化炭素を排出するには料金・コストを支払わなければならないというカーボンエコノミーへの動きの中で議論されている。排出量取引に色々な問題があることを分かっており、ヨーロッパの産業界は今でも反対しているが、当初はヨーロッパでは皆反対していたところに英国がロンドン市場で始め、それを大陸に輸出する形でヨーロッパで行われた。なぜそうなったかというと、カーボンエコノミーに金融市場が参入し、投資の対象としてカーボンエコノミーが捉えられたためである。今後は、企業格付けにもカーボン削減能力が基準として使われるのではないか。
  • かつて、ISO9000の規格に対して、日本は優れたJISがあるのでいいではないかと考えたが、ISO9000をクリアしていなかった日本企業はグローバル市場に立ち遅れ、大いに損をした経験がある。グローバライゼーションの世界で、カーボンエコノミーの中で日本の経済が生き残るとすればどうすれば良いかを考える際、何もヨーロッパの排出量取引をそのまま入れるべきということではなく、自主的取組や自主行動計画を高く評価しつつ、それらを使ってカーボンエコノミーの中に組み込む論理を用意することが必要、また、その取組が排出量取引とどこが違い、どこが同じかをカーボンエコノミーの論理で説明することが必要
  • キャップアンドトレードを入れるか入れないかの議論だけでは不十分で、世界はカーボンエコノミーに向かっており、理論武装して本当に真摯に議論しないと、欧米の金融市場にふんだくられることになる。そうならないように本会合でも検討すべき。

○横山委員

  • なぜ排出量取引が必要なのか。それは6%の目標達成が厳しい状況にあるからである。現時点で有効な対策が打ち出されているわけでもない。また、美しい星50で示された地球全体で2050年半減という目標を実現するためには、日本は7割から8割の削減を求められる訳で、容易なことではない。実効性のある対策を今の段階で打ち出す必要がある。このように考えると、ある程度実効性が確認されている炭素税、排出量取引の導入につながるのではないか。温暖化対策は一本の柱を通すことが重要であり、CO2排出をコストとして社会の中に位置づけるため、環境税と排出量取引の早期導入が欠かせない。排出量取引は市場原理を活用して最小コストで温室効果ガスを削減できる、あるいは経済合理的な削減ができることを考えれば、一部で言われている統制経済につながることもないと言える。
  • 排出量取引は企業の文化や考え方を変えて、経営者が自社のCO2排出量を認識してCO2を排出することはお金がかかるということを認識させることもできる。また、既に算定・報告・公表制度が導入されているので、導入コストも低く抑えられると考えられる。
  • なぜ排出量取引が必要かの一つに、この制度が世界の流れになっているということがある。EUでは本格的に実施されている。米国ではシカゴ取引所で民間企業が自主的に参加する市場が動いており、州レベルでも導入されている。また、オーストラリアでも一部の州で導入しているなど、各国で排出量取引の導入に関心が高まっている。一方で、日本では東京都が導入の方針を最近明らかにした。このような状況の中、日本だけが排出量取引制度で取り残されていいのかという点について、真剣に考える必要がある。
  • では、どのような方式を取るべきかについては、EU-ETSのような基本的なキャップ&トレード方式、グランドファザリング、下流割当方式、それから直接排出で行うのが良いのではないか。排出量取引がカバーされない部門、例えば業務部門・家庭部門等には環境税等を組み合わせるのが適当ではないか。また、排出量取引制度によってカバーされる部門は、環境税が導入されれば割り引くということも考えられる。実施しながら改善すべき点を改善していくという考え方に立つべきである。
  • 排出量取引導入には気になる点はある。例えば、EU-ETSでは価格が乱高下した、トレーディングに慣れている金融機関がぼろ儲けしたという批判があるが、温室効果ガスを出している企業が制度に沿って排出削減を行っていけば、次第に市場は安定化し、そのような問題はなくなっていくのではないかと思う。排出枠の割り当ての公平性の点についても、制度運用の中で改善していくと思われる。
  • 一方、排出量取引制度は実態のないマネーゲームであるとの批判を避けるため、必要な規制は行うべきと考える。また、日本の国際競争力が損なわれないように配慮することは当然である。
  • 政府と産業界が排出量取引制度を導入すると決めた場合、国民も一人一日1kg削減しなければならないと思い、国民運動に弾みがつくはず。

(2)環境税

 資料8にそって、環境省から説明があった。

4.委員の発言及び質疑

  • EUでの数年間の経験があるから日本で導入すべきというのは納得できない。EU-ETSの特徴は[1]試行的段階であること、[2]EUという超国家組織が単一の共通市場という名目で新しい権限拡張を図り、EUの権限上環境税がない中で、EUの仕事ができるということで導入したものである。EUの排出量取引がどういう制度であるのか、じっくり研究すべきである。市場が良いかどうか、慎重に考えるべき。
  • EUのキャップ&トレードは産業界に対して行われているが、そのEUの産業界が反対している。その理由は、この制度がCO2排出削減にとって実効ある効果が出ていない、また、甘い排出枠の設定の中で取引内容が金融取引となっているためである。効率の良い会社をより伸ばし、効率の悪い会社は淘汰するとの基本原則に反している。ヨーロッパの鉄鋼会社を見てみると、ヨーロッパ内でCO2を排出する生産工程を止めると言っているところもあるが、結果として他の国でやることになりCO2削減に何ら影響はない。
  • 全ての国が参加した中で、しっかりとした国際ルールに基づくのであれば、選択肢にはなるが、現在の非常に少ない参加国の中で、日本のように非常にエネルギー効率のいい国でキャップ&トレードを行うことは国益にはならない。少なくとも第一約束期間において、キャップ&トレードを行うことは全く意味がない。
  • 日本の効率は圧倒的に良く、効率の悪いEUや米国などが規制や国内排出量取引制度に取り組むのは当たり前である。
  • 政府を挙げて、業務・家庭部門の対策を強化しようとしているが、国内排出量取引制度は、直接的ではないにせよ業務・家庭部門で機能するのか疑問である。また、排出枠の割当について、政府の裁量によって決められる場合、大きな政府になる。また、炭素リンケージの問題もある。
  • このよう問題は、ポスト京都において、少なくとも全ての主要排出国が入って成熟した市場ができるなどの諸種の条件が揃って始めて選択肢の一つとして考えられる。次期枠組みがどうなるか、慎重に見極める必要がある。
  • 6%を決めた時点で国益を損なったと考えるが、地球温暖化の問題は長期的な問題であり、ここで排出量取引や税を入れて上手くいかなくても困るので、もう少し時間をかけて議論を行うべき。また国益を損なうことにならないようにしてほしい。
  • 排出量取引はどうしても大企業にフォーカスが当たってしまう。アナウンスメント効果は指摘されるが、一般国民にとって、大企業に任せておけばいいという状況になることを一番恐れている。自分の専門分野は業務・民生であるが、必ずそのようなリアクションになるのではないかと思うので、是非ともそのようにならないよう、幅広いところで議論を行うべきである。
  • 国際的な流れをみて対応する必要がある。国際的なルール作りは最終的に欧米が握ってしまう。ポスト京都に向けて準備しておくべきである。国際的に再び乾いたタオルを絞ることにならないようにすべき。
  • 環境税については、私は世界のいろいろなところで議論したが、かなり共通的に出てくるのは、これだけエネルギー価格が上がった状況において、環境税を課したから使用が減るということを過大評価すべきでないということ。問題は財源の使途であり、その点を集中的に検討すべきである。日本のエネルギー課税は国際的にも高い水準にある。そこで新たに環境税を課すのではなく、既存の道路財源やその他の財源をどのように使うかを検討することが、国際競争上の観点から言っても当たり前である。
  • ポスト京都に向けて、いろんな選択肢を議論し、交渉の過程で必要な時に日本から提案できるようにしておくことが重要である。
  • 事務局資料6-1で記載されていたメリット、デメリットについて補足したい。メリットの三点目は、言い換えれば、同じコストで削減できる総量が増えるということを意味する。また、CO2排出に伴うコストを内部化する手法であるという点も明確に認識すべきである。
  • 山口委員のプレゼンで指摘する現行予定されている対策の限界削減費用と削減可能量の比較の重要性は全く同感である。特に排出量制度を導入するに当たって比較するとの観点から、事業者間あるいはセクター間で費用にどの程度バラツキがあるかが分からないと費用対効果も分からない。大規模な排出セクターに限っても良いので比較をしてほしい。
  • 2050年半減との大きな道筋が示されたが、IPCCの報告書の中でも、ボランタリー・アグリーメントが少数ではあるが費用対効果の高い方策として言及されている。他方で、5月のIPCCの意見交換では、大幅な削減にはあらゆる可能な政策オプションが検討されなければならないとの指摘もあった。そういう意味では、EUの排出量取引制度を国内で実施していくには時間がかかることを考えれば、目達計画を5年間見直して終わりではなく、途中の見直しの過程が必要と思われる。その上で、もし期待する効果が得られないとすれば、次にどのようなオプションが可能かという具体的なオプションの作り込みもいまから始めておいた方が良い。
  • 企業経営の実態感覚を知って頂きたい。EU-ETSのような制度を導入することが経営者の意識を変えるとの話があったが、日本の場合、それよりも高次元の自主行動計画を進めており、CO2排出量を日常的に把握しているのは勿論、どうすれば自主行動計画を達成できるか躍起になって努力しているところである。日本の省エネは大変な努力と費用をつぎ込んでおり、やり尽くしている。これから更に省エネを進めるには莫大なコストがかかるという意味では、経営においてCO2削減は最重要課題として取り組んでいる。
  • 自主行動計画を行っていればいいという意見もあるが、日本の産業界はグローバルを意識して商売を行っており、世界がどう思うかを念頭において考えた方が良い。自主的に出来るのであれば、なぜ排出権が悪いのかという議論は出てくると予想される。不透明なロジックでは対抗できない。
  • カーボン制約が世界的に広がる中、例えばアメリカやEUが国際的なカーボンマーケットを構築するような場合、日本は今まで通りやっていけるのか。準備をして、先に禍根を残さないようにすべきである。
  • 国内排出量取引であれ、環境税であれ、環境省が及び腰であると思う。今日の議事においてもその他の論点となっており、このような大事なことはちょっとした議論で行うものではない。もう少し早く議論を行うべきであった。環境省のリーダーシップが足りない。
  • 公平な配分ができないとの指摘があるが、水など他の環境規制で公平な配分の経験がある。そのような例を参考にして勉強してほしい。
  • EU-ETSと日本の自主行動計画とでは部門が大体マッチしている。どちらが効果があったのか、明確に評価してもらいたい。排出権取引制度の結論が書かれているが、日本の産業界としては、このような制度を京都議定書の枠内で行ったら必ず失敗するということを言い続けている。
  • これまで合同会合で議論をしてきて、比較的上手く言っている部門とそうでない部門について、ある程度コンセンサスが出来てきているのではないか。業務・家庭部門対策が重要との認識が出来てきて、国民運動に発展させるべきとの議論に踏み込んできた。これまでは産業界だけ叩いていればいいとの議論が緩んで、進歩してきたと思っていたが、またエネ転・産業部門だけ行えばいいという議論に舞い戻っている。
  • 地球温暖化対策という地球危機のレベルの話を経済発展の維持というレベルの話と同列に議論されること自体おかしいと思う。レベルを再確認してもらいたい。
  • 6%削減は京都議定書で決められた大前提であり、これを今更言っても仕方がない。
  • 自主行動計画と国民運動だけでは6%削減は達成できない。確実に削減出来る制度設計が必要である。
  • 国内排出量取引と自主行動計画のメリット、デメリットを再整理してはどうか。国内排出量取引は国際競争力に影響があるとの指摘があるが、自主行動計画を厳格に行っていけば、同じく国際競争力への影響は出てくるはず。そういった点を考えれば、再整理が必要ではないか。
  • 排出量の初期割当の公平性について指摘されているが、より複雑な水のCOD割当の事例もあり比較的に簡単にできるのではないか。
  • 家庭・業務部門の排出量が伸びているが、その責任の一端として、購買意欲を煽った産業部門の責任も認識すべきである。
  • 公開の場でこのような議論を初めて行ったことに意義がある。現実的にものを考えるべきである。抽象的な議論でなく、第一約束期間の5年間にこの排出量取引制度を導入すべきなのか検討すべき。具体的にどのように導入するのか。自主行動計画の深掘・拡大や業務・家庭対策の強化を行おうとしている中で、今導入する方法論があれば示して欲しい。業務・家庭対策として有効なのか、現実的に考えなければならない。
  • ポスト京都の枠組みを作る際にこの制度をどうするかも検討すべき。ポスト京都の枠組みでは、アメリカ、インド、中国を入れることが重要。理論と現実のギャップがある。
  • この議論はどこでどの程度詰めて、いつ頃までに決めるのか。これは政府が決めなければならない。
  • 国内排出量取引や環境税が議論に乗ったという点に意義がある。経済学的にはコストを製品価格に転換できることを前提として市場を通じて全体が調和することを予定している。産業界が製品価格にオンできるのかによって、業務や民生の動きも変わってくる。産業部門だけで済む話ではないという認識を持つべき。価格にコストをオンできるか否かは、市場の状態、産業の競争力によって異なってくる。いかに産業間で公平に行う場を作るか、国際間で公平な場を作るかが大きな課題である。キャップ&トレードは規制になるというが、自主行動計画はある意味自主的にキャップをかけている状態である。コストを減らす方策として排出権取引を行うのであれば、行えばいい。海外からの排出権購入はトレードであり、それと同じことを行うのであれば、第二約束期間で米国、中国、インドを入れて総量規制をやらないと世界的に不公平になる。日本はそのような主張を行うべきである。
  • 世界全体が排出権売買に動いていることに注視しておかないと、日本は乗り遅れることになる。しっかり議論をして、第二約束期間の枠組み議論において、日本は提案していくべきである。排出権取引を市場に任せると不安になるのであれば、政府が介入し、最もコストが安くなるメカニズムを提案していかなければならない。この場でもいいし、他の政府の場でもいいので、徹底的に検討していくべきである。
  • 中長期的にどのようなCO2削減策を講じていくかとの観点だと思うが、その場合、短期的なキャップの設定では運用だけ、金融取引でという傾向になるので、長期的な技術開発等にインセンティブが働かなくなる。革新的な技術開発をいかに進めるべきかが重要であり、その意味で高効率ヒートポンプ、ハイブリットな自動車などの革新的な方策を取っていくことが大事であり、それが国際的にも通用するものである。
  • 国際的問題は重要であり、日本のエネルギーセキュリティ政策上、また環境政策上、中国・インドをいかに巻き込むかが重要なのであって、米・欧に同調するのでなく、そこと組んでいかに国際的な提案をしていくかが求められる。そのためにも省エネ技術がものをいう。
  • 業務用・民生用について、徹底的な省エネを行うことが重要であり、徹底的な電化を図ることが必要であり、そのためには徹底的に原子力を推進していくことが一番有効であることは論を待たない。
  • この議論が開始されたことに意義があると考えており、是非続けてほしい。
  • 山口委員よりなぜ自主行動計画ではダメかとの指摘があったが、現在の自主行動計画は8.6%減を目標としておらず、そもそも目達計画を達成できるとは思えないからである。また、2050年50%削減をベースに考える必要がある。
  • 排出量取引だけを行えば良いと考えているわけではない。経産省が現在考えている国内CDMとか、税とかも検討する必要がある。産業・業務といった大きなところだけで良いのではなく、全ての分野で行うべきであり、大きなところだけを狙うわけではない。
  • 炭素リンケージや国際競争力の問題があるが、自主行動計画でも同様の問題は起きうる。排出量取引特有の問題ではなく、京都議定書自体の問題である。この二つの問題は区別されるべきである。
  • 排出量取引で重要なのはlearning by doing。すぐに始めようとしても慣れるまで時間がかかる。したがって、出来るだけ早く始めた方が良い。
  • 個人的には、セクトラル・アプローチに賛成である。将来枠組みについて、主要排出国が全部入ることは賛成。鉄鋼が国際的に連携して、国の責任から除かれるということは考えるべきこと。
  • 短期のキャップ設定が問題であるという指摘があったが、これは2013年以降の将来枠組みがはっきりしないことが問題なのであって、排出量取引の問題ではない。長期的に排出量取引を行うことが明らかになれば継続的なインセンティブは働くはず。
  • 初期配分については、自主行動計画をベースとして行うこともありうる。
  • 排出量取引も環境税も強力な武器であり、やり方によってはCO2排出量を激減させることは可能である。いずれ具体的検討を行う必要がある。しかし、第一約束期間でこの劇薬を入れるべきかについては時期尚早と考える。国民的に広範な納得を得ていない施策を導入してもなかなか成功しない。世論を見ていると、京都議定書の枠組みで中国やインドが入っていないという問題がある限り、日本が独自に劇薬を入れることに広く国民の納得は得られないと思う。中長期的課題として検討すべきと思うが、短期的課題ではないと思う。
  • 排出総量を大幅に削減していくことが必要で、何が良い方法かという議論をしている方向性は共有されていると考える。したがって、排出権取引だけではなく様々な政策の比較検討が必要である。政策の組み合わせ、すなわちポリシー・ミックスが一つの手段であるが、そのためには一つの評価基準が必要となる。効率性や環境効果も重要な基準であるが、国際的に説得性をもって、国内的にも合意が得られることが大事である。
  • EU-ETSは制度途上であり、評価のベンチマークとしては正確ではないと思う。理論上の利点が現在のEU-ETSでは実現していないからダメというのではなく、現状より良くなるなら良いという議論もできる。企業の行動モデルをどう設定するかが、評価する上で重要。企業の行動原理や、現実の市場がどのようになっているか、価格付けはどのよになっているか、どのようなモデルを採用するかが、評価する上での重要なファクターとなる。例えば企業の価格付けが平均費用によるものであるとの前提についても、最近の研究を必ずしも反映していない面もあるように思われるため、別途きちんと検討しなければならない。
  • 炭素市場をどう評価するかが大きな問題であり、確かに炭素市場はやっかいな問題はあるが、だからと言って市場と付き合わないということは得策ではなく、むしろ炭素市場と付き合ってどうすれば上手くいくかを考えるべき。どうやったら知恵を出せるかという形でルール作りをがんばらなければならない。
  • 経団連としてEU調査に参加したが、理論的にはCO2削減効果があるとするキャップ&トレードについて、いまのところ理論と現実は異なるということが分かった。排出枠の過剰割当が目立っており、実質的な削減にはつながっていなかった。マーケットについては、金融関係の仲介が入っており、余剰枠のために価格が乱高下してしまった。長期的な投資・技術開発につながっているかも議論がある。また、訴訟も多く発生している。企業だけでなく、国もEUを提訴している例もある。したがって、今までのところでは機能しているとは思えない。
  • 米国でも、USキャップなどが議論されていると聞いているが、米国の産業界の多くはキャップ&トレードに反対している。USキャップ推進派はまだ一部である。米国でSOxの削減が排出量取引で有効であったという話があるが、日本では排出量取引によらず、もっと早くにはるかに低いレベルに下げた。
  • 技術開発、自主努力、規制、補助金などを組み合わせていくことが解決につながる。
  • キャップそのものを規制として行うのでなく、自分たちで最大限できるところを決めていきたい。
  • 排出量取引については、learning by doingが重要であり、環境省の自主参加型の排出量取引をもう少し拡充するとか、東京都の取組の知見を集めるなど、そのようなところから行っていってはどうか。
  • 税について、石油・石炭税を見直すべき。日本は僅か180の事業所で全体の約半分のCO2を排出している。産業部門だけを見れば効率的とは言えない。その上、石炭火力は1990年から約2.5倍の1億2千トンであり、天然ガスと価格差が同じくなるよう石炭に重課すべきである。そうすれば約1.5兆円の増税となるが、この点は法人減税等で税収中立にする。思い切った施策で燃料転換図っていってほしい。抽象論の環境税ではなくて、具体的にやれるところをやってほしい。
  • 日本は自然エネルギーで市場が崩落している状況。太陽光ですら、昨年純減している。RPS法ではある程度限界があるので、きちんと普及できる温暖化対策としての自然エネルギー政策に取り組んでほしい。この点、東京都が近々新しい制度を発表するようなので、これをモデル事業として国レベルで進めていくべき。
  • 目標達成計画の中の包括的施策のところに、ポリシー・ミックスの活用という項目があることが重要である。一つ一つの政策、施策のパーツをとりあげて議論するとどうしても欠点が強調されることになる。個々の政策をどうやって上手く組み合わせるかが重要。目標達成計画では、トータルで考えるべきことが述べられている点を忘れないでほしい。
  • 自主行動計画は効果があったと考えるが、そのことについてもう少しきちっと整理する必要がある。もしいまの自主行動計画が本当に自主的に合理的に温室効果ガス総量の削減に直結する形で設定されているのであれば、参加業界はキャップ&トレードをタダでやってあげていることになる。つまりまじめに削減努力をしている事業者が努力を怠っている事業者の分をかぶって当該業界としての目標を達成していることになる。この点も含めて、自主行動計画の排出量取引と比較してのメリット、デメリットがどのように異なるのかも含め、きちっと整理し論理的なまとめをしておく必要がある。最終報告書を作るまでにはこのような点も議論すべき。
  • 自主行動計画でなぜいけないのかとの指摘に対しては、「自主行動計画の目標指標がや数値目標が納得できるものであって、達成される限り」という前提が重要である。業界の「自主」である限り、これが難しいということを議論してきた。自主行動計画の目標指標や目標数値の妥当性を評価するために十分な情報が提示されるべきだが、業界全体の状況しか開示されず、各事業者については明らかにされず、ましてや事業所については不明である。排出量取引は事業所単位で排出枠を設けて行うものであり、経団連自主行動計画とは全く違う仕組みである。この問題は、長期的な視点で、2050年に向けた政策的な議論を行っているのであり、政府も企業の責任者もそのような観点から賢明な選択を行うべき。
  • ポリシー・ミックスの一部として、国の算定・報告・公表制度に加えて、各事業所に対して東京都で取り組んでいるようなことを国としてもやっていくこと、事業所ごとあるいは少なくとも業界ごとに自主行動計画の協定化を図っていくべきことなどを議論していくべき。こうしたプロセスの中で、公正な配分についての議論も進めて、さらに税とその他の問題ともポリシーミックスを議論する場を作っていただきたい。
  • カーボンエコノミーの流れはその通りだと思うが、それがそのまま排出権取引に読み替えられるものではない。脱炭素を進めていかなければならないが、環境のような複雑系に固定的な縛りを持ち込むこと自体が自己矛盾であると考える。排出権取引はどうしても初期配分という問題が避けて通れない。排出権取引の柔軟性は動物園の檻の中での柔軟性であり、檻の中で動けるだけであり、発展的社会においては檻の大小が問題となってくる。現実にEUでも紛争が続発している。市場性においても、産業活動に結びつかない金融制度を作ってもモラルの低下を招くだけであり、実際に金融ブローカーが入ったような世界しかできていないのが、これを実証しているのではないか。
  • ヨーロッパは制度作りが上手であり、制度の中にヨーロッパの国益や戦略をふんだんに盛り込み、その制度を世界に広めていくところにヨーロッパの国益がある。
  • 日本は制度作りは下手だが実地に効果を上げている。この実績が世界に認められるようにしていくこと、日本が守っている得意技を使って日本の産業が元気の出るような政策を進めていくことを御願いしたい。
  • 環境税の問題は、何度も議論されているが、結果的にはエネルギーコストがこれだけ上がりながらエネルギー政策には効果がなかったこと、産業競争力にも影響が出ていることから、あまり新しいアイデアもないのに出していくのは意味がないのではないか。環境対策にとって必要な財源があるのであれば、インセンティブも含めてもっと大きな所から議論すべき。

○鈴木部会長

  • 温暖化が進行していることを否定する方はいないと思う。総理が表明した2050年半減は、地球全体の目標であり、その時期には一人当たりの許容CO2排出量は多く見積もっても0.4トン/年である。現在日本は2.5トン/年排出しており、80%以下に下げなければいけない。80%削減に向けて、長期的に考えていくべき課題は沢山ある。
  • 当面の短期的、そして中長期的に、それぞれポリシー・ミックスをどう考えていくのか、その中で一つの分野としてEU-ETSの話が出たが、これもスタートしてまだ2年あまりであり、初期の段階としてのいろいろな問題点が明らかになり、フェーズ2に向かってどう活かされていくかという段階にある。
  • 税の問題も、道路財源等、国の税を根本的に考えていかなければならない問題である。そこでは低炭素社会、さらにカーボンを巡るマーケットが生まれてくるとして、そこに日本としてどのように対応していくのか。非常に重い課題である。
  • CDMも含めてどのようなポリシー・ミックスを考えていくのか、それをこの場で考えるのか、中環審でやるのか、産構審でやるのか、一回、二回で結論が出る問題でもなく、そういう結論をここで勝手に出すというものでもない。知恵をいろいろと生んでいくということがタスクなのかと思っている。その辺はもう少し検討に時間を頂きたい。

○茅委員長

  • 今後の政策手段に対する議論について、審議会は何かを決める場ではなく提言をする場である。政策手段で合意が取れるものは提言することもあり得るが、意見が大きく分かれる場合は、意見分布を示すことが審議会の役割である。本日、排出権取引の議論を伺って思ったことは、かなり意見が異なっており、この合同会合で一つの意見にまとめることは不可能であろうと思う。その場合は意見分布を示すに止めることが審議会の姿勢であると思う。

○鈴木部会長

  • 当面は中間報告を整理し、秋の段階で再度御議論頂いて、年内に最終報告を行いたい。

○小川環境省地球温暖化対策課長

  • 本日の議論に対して追加のコメントがあれば一週間後の13日(金)までに事務局に提出してほしい。また議事概要は一週間程度で送付させて頂きたい。
  • 次回は7月25日(水)の午後5時から、虎ノ門パストラルで開催し、中間報告について御議論頂く予定である。

(文責:事務局)