中央環境審議会第58回地球環境部会・産業構造審議会環境部会第地球環境小委員会合同会合(第17回)議事概要

日時

2007年6月21日(木)9時00分~12時00分

場所

泉ガーデンギャラリー ホームA

出席委員

茅地地球環境小委員長、鈴木地球環境部会長、青木委員、浅岡委員、石坂委員、猪野委員、及川委員、逢見委員、大塚委員、鹿島委員、勝俣委員、川上委員、河野委員、小林委員、塩田委員、高橋委員、内藤委員、中上委員、永里委員、長辻委員、新美委員、福川委員、桝井委員、山本委員、横山委員、米本委員、


1.

京都議定書目標達成計画の評価・見直しについて

 資料1、3及び4は経済産業省、資料2は国土交通省から説明が行われた。

2.

委員の発言及び質疑

  • 資料1について、業務・家庭の排出が増えているが、活動量も増えている。どちらも床面積が増えているが、どのような活動が増えているのか、どの活動を減らすべきかの議論をすべき。8ページの末尾の図は、それぞれの部門の活動量の変化を示しており、業務も家庭も他の分野よりもはるかに活動量が増えている。排出増加に色々な要素があるが、家庭の世帯数などを含めて、議論して欲しい。
  • トップランナーについて、自動車に関して車両重量別に定めている。以前も述べたが、家電では、テレビなど大型化が進んでおり、買い換え促進、効率のいいものをトップランナーで選んでも、大型化を抑制しないことには減らない。大型化を抑制するため区分を見直す必要がある。照明器具について、蛍光灯と白熱灯をあわせた基準にするとの話があったが、大型化・小型化と基準は異なるものの、望ましい発想である。
  • 事業所毎の対応について、事業所毎のデータ・効率の分布を表示することを検討してほしい。今までも、そのデータを出して欲しいとお願いしているが、まだ分布状況を示していただいていない。
  • 中小企業の対策は重要だが、中小企業には排出枠はなく、自主行動計画もない。個々の事業者のキャップがないまま「自主行動計画の目標達成に活用する」というのはおかしく感じられる。
  • 建物について、新築・既築ともに対策を進めていく必要があるが、現在は省エネ法で対応しているが、建築基準法で対応し、基準化を図る方向で検討することが必要ではないか。現行制度で漏れるところへの対応は、初期投資の負担が若干かかっても、その人達の経済力が零細であればあるほど長期的には全体としての節約にも寄与するような誘導がなされるべき。
  • 新エネについては、価格の急速の低減を期待して導入量を算定しているが、海外での需要拡大頼みが実態。国内で需要を拡大しつつ価格を下げていくのは、今の制度の中では難しいのではないか。国内で今設置しても同じくらい損をしない仕組みをここで入れる必要がある。
  • 国を挙げてCO2を削減するというのは、どんな分野においてもやっていかなければならない。そういう意味で、中小企業対策について、非常に重要と認識しているが、中小企業対策がなかなか進まない原因を深く調べる必要がある。すぐに国産クレジットに結びつけるのではなく、中小企業では省エネ診断のような窓口が少なく対応できない状況もあり、そのような相談窓口を広げていく必要もある。モデル事業を行う場合には、その成功事例が周りに広がっていくことが必要。
  • クレジットを認証していくコストがどのくらいかかるのかが重要で、京都メカニズムの方が安くなりかねない。国産クレジットの全てがいいというのではなく、他の施策も合わせて行う必要があるのではないか。
  • 今回の議題の住宅、業務、中小企業において、現状よりも一歩も二歩も進めて対策を進めないと温室効果ガス削減は進まない。より政策を進めるためにどうしたらいいか考える必要がある。
  • 住宅・建築物について、現行2000m2の線引きが妥当かを検討する必要がある。床面積ではカバーしているとのことだが、2000m2はかなりの規模の建築物・住宅や集合住宅以外は適用されないということであり、この条件は見直す必要がある。また、罰則適用なしとのことだが、建築物は一回建築されると何十年使われるので、基準はきちんと満たす必要がある。そのような意味では罰則も検討する必要がある。
  • 業務に関して、コンビニのフランチャイズ経営は、店舗の作り、商品陳列など、ほとんど同一の規格。そのような中に省エネの基準を取り込むことで、かなり効果が出てくるのではないか。今の省エネ法ではカバーされていない、企業単位、あるいは、フランチャイジーにも適用させるような、今までの視点を超えた省エネ法の見直しが必要ではないか。省エネを誘導する施策として税制は有効だが、エネ革税制が業務部門に活用されていない。業務部門にも活用されるよう内容を見直す必要がある。住宅の改修にも税制優遇措置を適用すべき。
  • 中小企業については、中小企業向け国内CDMの説明があったが、財政措置を使わずに民間資金を使って行うことはもっと前向きに検討すべき。そのための基準は厳格である必要があるが、使い勝手もあり、両方を組み合わせる必要がある。
  • 建築物・住宅について、2000m2基準、既存住宅、罰則などの問題があるが、省エネ法の改正に関係する内容であり、省エネ法改正まで行うのか議論してほしい。企業・グループ単位でサービス業等について規制すべき。国交省の説明は内容が深まってきていると思うが、裾切りをした時にマンパワーが足りないのは大問題であり、問題があるのは認識しているが、例えば第3者機関を活用することは検討しているのか。建築物に関して、費用効果性の説明があったが、建築物の分野だけでなく施策全体の中での費用効果性を考えてほしい。
  • エネルギー転換部門については、前から議論があるが、グリーン電力証書購入について費用を損金化するという問題がある。これは是非御願いしたい。また、電力事業者に対して、風力電力や太陽光を買うことを義務づけることを考えられないか、またグリーン電力証書を購入することを義務づけられないかを検討してほしい。
  • 中小企業の問題については、今回の報告内容は大変結構だと思っており進めてほしいが、ある種の排出量取引であるので、今後審議会でも議論させて頂きたい。ベースラインをどうするかが大問題で、ベースラインがはっきりしていないときちんと削減はできないので、慎重に検討してほしい。中小企業に対しては、財源も重要であり、補助金、税制措置も検討してほしい。
  • 新エネについて、新技術の開発や開発の実証実験を行う際、上手くいかない例もある。税金を使うので、そのようなことがなくなるような工夫が必要。
  • 住宅について、伝統的な環境調和型住宅のイメージが示されているが、都会でこれを実現するのは難しい。都会でこれから起こりそうなのは、1960年代から70年代に郊外に建てられた5階建て集合住宅の建て替え、2つの家から1つの家への改造などである。戸建て住宅でも起こる可能性がある。これから起こりそうなことを念頭に置き、その人達が負担できる費用を考慮に入れて、省エネ・エネルギー消費という面から具体的なモデルプランを示して頂きたい。
  • 東京都が大量のエネルギーを消費する事業者への届け出制を導入したが、大規模商業施設やレジャー施設についても届け出制あるいは、自主計画の策定を課してもよいのではないか。
  • 省エネについて、業務部門・家庭部門・中小企業の取り組みの切り札はヒートポンプを有効に活用することである。1の投入エネルギーで3~6倍の熱エネルギーが得られる画期的な省エネ技術である。空調や給湯に広く適用可能で、日本の総排出量の10%のCO2を削減出来る。本日の配布資料では、このヒートポンプが取り上げられていない。
  • 省エネについて、対策のど真ん中は省エネ技術。思い切ったことをやる必要がある。温暖化問題における住宅対策は今後100年間影響を与える対策。この分野は規制や誘導を入れておかないとダメ。
  • 新エネについて、財源の問題、どういうお金がどこにつぎ込まれているか、有効に使われているのか、明らかにしなければならない。限られたお金をどのように使うか、どのような税制や補助金を新たに要求するのか、大きなビジョンを持って進めてほしい。
  • 環境にいいとなると話が膨らむ。エタノールがいい例。量とコストを考えてほしい。食糧に影響が波及している。複眼的にものを考えてほしい。
  • 業務について、コンビニ、ファーストフード等の小規模店は現在規制がなく、省エネ意識も高くない。チェーン店全体として排出量を把握し、本部のコントロールで管理すれば削減が進むのではないか。コンビニ冷凍機等のフロン対策については、うまくいっている。
  • トップランナー基準の強化はだいぶ進んできており、拡大・強化を御願いしたい。
  • 高効率機器への買い換えについては、買い換えと言いながら新規購入である場合がある。買い換えなのか新規購入なのか、区別する必要がある。また、大型機器へ買い換えた場合、削減効果は出てこない。大型化に対する物品税の導入も検討して良いのではないか。さらに、新規購入と買い換えを区別できるシステムが必要である。下取り、ポイント制が一例。
  • 住宅について、これまでの対策は新設住宅向けがほとんど。既設住宅向けの対策が進んでいない。既設住宅向けのファジーなあまり省エネが進んでいなくても良い対策が必要であり、併せて個別の技術アドバイスができる技術アドバイザー制度を導入してほしい。
  • 中小企業対策は大変遅れており、指導も行き届いていない。国内CDM事業は排出量取引として考えるのであれば、大企業から中小企業に対してだけでなく、排出量取引それ自体を検討してはどうか。また、商取引を使いながら大企業から中小企業への環境指導ができればもう少し進むのではないか。目標達成計画では中小企業の削減量はカウントされている、今回の制度で得たクレジットが大企業に移転するとダブルカウントとなる。この点は調整してほしい。融資の仕組みもお願いしたい。
  • 新エネについて、太陽光発電のメーカーを訪問し話しを伺ったが、フル生産しているとのことであった。ただ、製品はほとんどヨーロッパ向け。その理由の一番は普及のためのシステムが日本は遅れているということ。技術はあるので、普及のためのシステムも考えてほしい。
  • 我々の作業全体に関して、第1次オイルショック時は、大きな変革を行い、国際的にも日本の存在感は大きかった。いまの作業も同じである。環境、特に温暖化との関係で産業システム、社会システムをどれだけ徹底して改革できるから、それにより、21世紀の日本の位置付けが決まる。そのことを各分野で具体的なものとして考えていく必要がある。
  • 住宅について、住宅そのものよりも住環境全体を扱うべきである。都心では庭がなくなってきているが、住環境全体を取り上げて地球温暖化との関係で判断すべき。違った絵となるはずである。税制にも関係した議論となるべきだが、そのような視点がないのは問題。資料2-3に伝統的な環境調和型住宅のイメージが示されていて、夏のクールな配慮は素晴らしいが。冬についても同様に回答が出てくれば、非常にいいモデルができる。また、住環境の専門家は家庭の主婦であるが、主婦の意見は聞いているのか。さらに、行政コストを考えると、住宅対策は、規制よりも誘導型・表彰型で考えることが効果である。
  • 新エネについては、日本の風力発電導入の極端な低さの原因はどこにあるのか、これを乗り越える見通しを教えてほしい。
  • 建築物について、「PAL」、「CEC」基準で省エネ基準が決まっているが、一段の見直し、新しい基準を考えてほしい。
  • 建築のストック対策は、住宅対策よりはやりやすいが、あまり小さな規模だと難しい。ESCO事業には大規模なものが入りはじめたが、まだまだESCOによる改修は進んでおらず、まずは官公庁の建物からESCOを利用して改修を行って範を示してほしい。国交省に宿題として、持ち帰ってもらいたい。
  • 住宅対策については、住宅の省エネ対策は一部の地域では国際水準になってきたが、今後一段と強化するとなると住宅工法、これまでの技術を見直すなどのレビューが必要となる。義務化については、住宅の省エネ基準の強化はCO2削減だけでなく、エネルギー以外のベネフィットもたくさんある点をユーザー側に強調する必要がある。
  • 住宅のストック対策は、既築のものは、ビルと違って小規模だから難しい。セカンドベストな対策である商品改修キットのような部品開発に着目してはどうか。もちろん、新築段階での対策が重要になる。
  • 機器対策は、実効稼働効率を議論すべき時期にきたのではないか。住宅用設備、特に大きなビルにおいて、実行効率がどうなっているかを検証し、実効効率がどうなっているかについて議論しておかないと、今後省エネ化を進めていく際に、思わぬ落とし穴に陥るのではないか。
  • チェーン店対策については、例えばESCO事業でいうとコンビニ一軒一軒では小さくてビジネスにはならないが、チェーン店の本部を押さえればESCOモデルとしても可能となる。ぜひ検討して欲しい。
  • 高効率機器の買い換え、大型化については、ユーザーの行動に左右されるもので、安易な指示はできない。消費者の買い換え行動、機器の普及率だけでなく、機器の大きさ別の普及率を把握し、消費者の行動がどこに向かっているかを精査しておく必要がある。
  • 太陽電池もコストが随分下がってきており、年間7万円くらい浮く。箪笥預金や銀行の定期に預けるよりも利回りがよい。もっと、太陽電池の利回りが高くなるよう努力して欲しい。
  • 省エネ法の改正について、一般に産業競争力を著しく弱める政策には反対であるが、住宅・建築物における2000m2問題、既存住宅・建築物への適用拡大、罰則の適用などは国益に反するものではない。
  • 小売り・サービス業への規制も検討すべき。フランチャイズ店は、マニュアル化されて各店に指示が行くようになっているが、この特徴を利用して省エネを実効あるものにしていくべき。
  • 次世代省エネデバイス技術として、シリコンカーバイドが利用されれば省エネが画期的に進む。原子力発電所の何基分かは稼げる。しかし、この技術は大量生産できないのが問題である。大量生産技術が確立するような仕組みを作って欲しい。
  • 一昨日、温泉施設で起こった爆発事件の原因であるメタンは温室効果の係数が大きい。都内に同様な施設が増えつつあるが、これらを集めるとトータルとして相当な量の温室効果ガスになる。このような隙間の部分について、排出削減の対象となっているのか。
  • トップランナー方式で省エネ技術が進歩したにもかかわらず、何故エネルギーの使用量が増えるのか。総合的に見て足りないところがあるのではないか。その辺の分析をどの程度進めているのか。
  • 資料1の1ページ目の表について、例えば業種別を見た場合、事務所ビル等が多いとあるが、何が基準として多いのか、絶対量なのか、単位面積なのか。エネルギー部門が増加している図について、各業種でどの程度推移しているか、伸び率はどうなっているのか、単位面積当たりどうなっているのか。データがあれば見せて欲しい。
  • 家庭部門について、トップランナー方式の技術が使われていれば、経年的に見たら伸び率は部門によって異なるのではないか、それぞれの用途別のエネルギー消費の推移はどうなっているのか。これまでとられた政策がどの程度きいているのか。
  • 前進はしていると思うが、更に進めるとすれば政策のイノベーションが必要。住宅・建築分野では、省エネ法の改正が是非とも必要である。
  • 目に見える形の省エネビルができないか。目指すべき省エネのモニュメントとなるような、世界に示すことができる省エネビルを建設してほしい。また、フロントランナー方式をビルの中でできないか。
  • 家庭用については、生活者の意識を変えること、また助成策を講ずることが必要。補助金も一つだが、税制上、固定資産税での優遇措置を設け、省エネ住宅には一定の優遇を行っても良いのではないか。その際には、永久に優遇すると取組が進まないので、早く行った場合に特典を与えるサンセット方式で行うべき。また、エコキュートなどを普及させるべきであり、そのための助成も必要。
  • 新エネについて、ソーラーなどは進んでいるが、風力はかなり遅れている。日本の技術力からすればもっと開発できる。技術の開発とともに普及が必要であり、その普及のための助成も必要。一定の新エネルギーでできた電気を買った場合に、若干の助成を考えることも必要。
  • 省エネ・新エネ対策を行っていく際、トータルでエネルギーの節約になっているのか、国民経済的にプラスになっているのかよくわからない。きちんと国民に示してほしい。
  • 中小企業の対策についての説明は興味深かった。なかなか面白いが、基本的な骨格が欠けているのではないか。これだけでは、中小企業対策で細かく色々なことを決めても実効に疑問が残る。お金を出しても中小企業からクレジットを買うようなインセンティブが働くか疑問。一定規模以上の企業の排出権取引を考えて、それに付随してこのような国内版CDMがあれば動くと思うが、この点どのように考えているのか。排出量取引、環境税を含めた色々な税制の問題は避けて通れない議論。
  • 温暖化に関する世界の見方が変わってきている。2010年までに6%削減、「2050年に50%削減」のためには、とにかく思い切った施策が必要。ムードは変わりつつあるが、もっと変えていくことが必要。
  • 新エネについて、太陽光発電は日本がダントツだったが、補助金の廃止でドイツに抜かれてしまった。補助金などの助成策を活用して新エネを増やしていく必要がある。また、固定価格買い取り制度を設け、新エネ政策を抜本的に変える必要がある。
  • 中小企業については、この分野も思い切ったことをやる必要がある。中小企業向けの国内CDMではなく、排出量取引制度を検討してほしい。中小企業CDM、鉄鋼・電力が京メカを利用することと排出量取引制度を導入する場合の関係は議論されていない。どうも排出量取引だけは行わない、また環境税はやらないとのムードがあまりにも強いので、もう少し真剣に議論して欲しい。
  • 住宅・建築分野では、2000m2以下と、既存の住宅・ビルをどうするかが問題。国土交通省の説明を聞くと、真剣に検討するとの話だが、効果が小さいから行わないとの意思表示だと受け取った。思い切ったことをやる必要がある。ぜひ、2000m2以下、既存の住宅・ビルに広げて、もちろん税制優遇措置や助成策もあわせて実現に向けて検討していただきたい。効率が悪いということもわかるが、こういうものも含めて大胆な施策を打ち出す必要がある。
  • 排出権取引について、この時点において、政策ツールとして、世界で行われている排出権取引の現状、パフォーマンス及びコストを中長期的な立場で調べることが重要と考える。

○茅委員長

  • 産業と運輸に関しては目標を達成しそうだが、業務と家庭部門については目標と現状が乖離して課題となっている。今回の事務局の資料をみると、この問題にどう答えるかは示されていない。いままで行ってきたものを若干強化するとの内容では、問題は解決出来ず、抜本的な対策が必要。京都議定書の目標を本当に達成しようと考えているのであれば、いままでの枠を越えた規制的な方式、例えば断熱基準を義務化するなど、役所側が真剣に検討する姿勢がないといけない。この点、どう考えているのか聞きたい。

○小島経済産業省産業技術環境局長

  • 数多くのご指摘をいただきましたが、その中で根本的な議論が幾つかあったので、私の方からお答えしたい。
  • まず、今、茅先生からもご指摘ありましたように、急増している業務家庭部門の対策、それについては、一つは省エネの規制強化であり、それにはいろいろな対策がある。事業所単位ではなくて企業単位でやる、あるいはベストベンチマークを示して規制を強化する、あるいは住宅建築物についての規制の強化、そういう規制の強化の面と、それからそのような省エネ対策にもっていくための誘導措置、補助金であり、優遇税制であり、そういったものを抜本的に強化する必要があるということで、この点は、我々も十分認識している。
  • 京都議定書の6%削減目標を達成するため、あらゆる方策を動員するという中で、今まさにこの検討をしていただいているが、その中で抜本策を講ずることとしている。予算税制措置も含めて、あるいは法改正、規制措置の拡大も含めて検討するということでやっており、今時点でどこまでやるのか、まだそこまで結論が出ていないので、その方向性だけを示した。これから日を経るごとに具体化を図っていく。
  • それから、中小企業の対策については、これまで中小企業の対策は余り効果的にほとんど進んでいなかったということで、中小企業の、いわゆるCDMみたいなものを取り上げた。そしてその中で、この会合では毎回のように出ている排出量取引がまた言及されたわけだが、排出量取引についての政府の考え方は、これまでも述べているように、経済への影響、あるいはそれが本当にワークするかということを総合的に検討するということである。この中小企業の対策が新たなツールとして出てきて、これがうまくいかないのではないかということから議論が始まっている点については一言申し上げたい。これはまさに産業界の方から、産業界の創意工夫の一つとして、産業界の発意で出てきた仕組みであり、大企業からそれに関連する企業、あるいは中小企業の対策の強化のためにこういったものが有効ではないかということで出てきているわけで、はなからこういう仕組みは規制をかけて、あるいはキャップをかけなければ進まないのではないかというのは指摘として当たらないのではないか。あるいは大企業がキャップをかけられていなくても、今自主行動計画で現に削減が進み、設備投資が行われ、2005年ではマイナス5.5%になっているという実績も評価していないのではないか。ということで、その点は事実に反するし、産業界の自発的な行動に対して水を差すものではないかと思う。
  • そういう中で、排出量取引の問題、先ほど、委員からご指摘のあったように、もう少し事実関係なり、調査結果というのを詳しく次回にでも提示すればいいかと思うが、一つは、環境省が音頭をとって、経産省、それから経団連と一緒にヨーロッパに調査団を出している。その中でも明らかになっているが、排出量取引は、やはり前提として規制、割り当てという仕組みである。そういう規制、割り当てを前提とした経済がいいのかというのがまず根本にあり、EUETSの第一期の事例を見ても、当初はその割り当てがどうなるかということで、非常にクレジットの価格が高騰して30ユーロぐらいになっていたが、実際は非常に緩いものだったということがだんだんわかってきて、その過程において乱高下しながら、今は0.1ユーロぐらいになっているかと思うが、そういう状態で、余り削減効果はなかった。数千業者、市場に参加しているようだが、99.9%は金融、あるいは、いわゆるブローカーと言われる人たちで、常時取引をもって参加している業者というのはベリーレアだということもある。
  • ということで、もう少し実態評価、あるいは制度の仕組みというのを検討し、あるいはそれが効果的なのか、あるいは経済にどういう影響を及ぼすのかということを総合的に判断していくべきと思うが、ここで言いたいのは、先に制度ありきではなくて、今欠けているのは何なのかと、産業界の対策が非常に遅れていて、そこにキャップをかけて強制的な規制措置を講じなければ進まないのかということなのか、あるいは業務家庭部門をやるためには、業務家庭にキャップをかけて排出権取引をやる必要があるのかと、そういった原因と方策、原因分析と方策とを的確に判断する必要がある。
  •  あと残りの個別の点については、それぞれ担当からお答えする。

○谷津環境省大臣官房審議官

  • 排出量取引については、若林大臣がEUのディマス環境委員長、イギリスのミリバンド環境大臣とバイ会談を行ったところ、日本でも排出量取引を議論される可能性があり、事実関係を確認したいので日本から調査団を出したいとの要請を出した。私が団長となって、経産省、経団連に参加頂き、4月下旬にブラッッセルとロンドンに行ってきた。その結果として、三者連名のレポートを先週公表した。ファクツファインディングの成果がある点だけ、今回報告させて頂いた。

○鈴木部会長

  • 是非、そのようなレポートはこの合同会合にご紹介頂きたい。

○井内資エ庁省エネ新エネ部政策課長

  • いろいろなご指摘を頂いたが、我々としては新国家エネルギー戦略を昨年5月に策定したが、エネルギーの安全保障もあるが、地球温暖化対策をにらみ中長期的にいろいろな絵を描いた。足下の対策についても中長期的な羅針盤をみながら反映させていくとの作業を続けている。ただ、京都議定書も目標達成のために、それを少し加速させなければならないこともあり、先程も申したが省エネ法の体系を踏まえた省エネ対策の抜本的見直しを行っていこうという状況にある。

○三木資エ庁省エネ新エネ部省エネルギー対策課長

  • 業務・家庭部門のどのような活動が増えているからどのような対策が必要かについては、民生部門はデータの制約があり難しい面もあるが、どういう活動が増えているのか、どこに削減ポテンシャルがあるのか、にらみながら進めていきたい。基本的な考え方として、業務・家庭部門のみならず産業・運輸部門においてもそうであり、全ての分野であらゆる対策を考えていくのが望ましい姿である。省エネ政策は効率改善であり、原単位が向上するということは経済活動、産業活動とも両立する話であり、またユーザー側にとっても光熱費等の削減効果があり、削減ポテンシャルを見て進めていきたい。
  • トップランナー制度については、区分の分け方について、大括りにすべきとの指摘を頂いたが、いつも議論になる論点であり、確かに大括りした方が対象となるプレーヤーが増えるので良い場合があるが、他方きめ細かく分けた方が目標値を高く設定できるという面もある。基本的な考え方としては、なるべく競争が促進されるよう、また省エネ製品を出した企業が評価されるような区分を設ける必要があるとの点を心掛けていきたい。
  • セクター別の業種指標に関連してもっと情報開示をすべきとの指摘に対しては、ご指摘の通りであり、現在のエネルギー管理指定工場制度の中で工場の原単位の改善を御願いしているが、原単位の指標は業種の中でもまちまちであり、生産金額の場合や生産量の場合もあり、なかなか原単位の指標が揃っていないのが現状である。セクター別ベンチマークという考え方でまずは指標を同じ業種で同じものとすることが必要と考えている。
  • コンビニやフランチャイズ店への対策については、本部で統一的に管理するとの動きのなか、省エネ対策をして頂けるとの話も受けており、是非業務部門対策の議論を進めるに当たって、幅広いスコープで進めていきたいと思っている。
  • エネ革税制をもっと活用すべきとの指摘については、これもご指摘の通りであり、今回の省エネ政策の見直しの中で規制と支援の両面から幅広く見直しをすることにしている。エネ革税制は今年見直し年だが、税制は大きなツールであり、検討していきたい。
  • 住宅・建築物については、我々の基本的な考え方は、民生・業務・家庭へ大きく関係のある分野であり、国土交通省とも十分連携を取りながら進めていきたい。難しい面もあるが、ユーザーにもメリットのある話であり、幅広く思い切った発想で行っていきたい。
  • ヒートポンプについては、ご指摘の通り非常に重要な技術であると思っている。エアコンや自動販売機などに利用されており、給湯器への利用には補助を設けている。様々な省エネ技術を組み合わせて省エネ対策を進めていきたい。
  • 大胆なことを行うべきとの指摘には、エールを頂いたと認識している。省内幹部からも柔軟な発想でいろいろ考えるべきとの指示を受けており、思い切った施策にチャレンジしたいと思っている。
  • 実効稼働効率にすべきとの指摘については、トップランナー制度においても、機器の実使用に則した測定方法を目指しており、たとえ阿自動車については今回新燃費を導入した際に、10/15モードから実使用に則したモードを採用した。またエアコンでも、定格のCOPを指標としていたが、一年間の通算の使用を加味した指標を採用した。
  • 大型化の問題については、よく分析をして進めていきたい。
  • シリコンカーバイドの技術については、重要な技術であると認識しており、NEDOの技術開発補助を行っている。省エネ技術戦略については、2030年を目処に革新的なブレークスルーを進めていくことになっている。
  • 事務所ビルのデータについては、業務部門のデータの制約はあるが、最新のデータを用いながら対策を進めたい。
  • より大胆に、フレキシブルに省エネ政策を進めていきたい。

○伊藤国土交通省住宅局住宅生産課建築生産技術企画官

  • 省エネ法について、2000m2未満の議論、罰則の議論は、我々としてはできる限り大胆にやりたいと思っているが、越えるべき課題もあり、それらをどう解決していくかを議論している。
  • 第3者機関の利用に関する指摘については、民間にお金を払うこと、指導・監督の在り方などについて、議論をしなければならない。また、建築基準法で規制を行うべきとの指摘には、建築基準法は国民の生命・健康・財産を守るとの目的で最低基準を定める厳しい法律であり、建築基準法で定めることは法律の性格上ふさわしくないと思っている。現在は住宅・建築物については省エネ法の体系で行っており、省エネ法を中心として、どういう枠組みの中でやっていけばいいか、一番やりやすいかということを考えていきたい。
  • 既存対策は大切な話。日本は新築主義であり、リフォーム市場が育っていない。改修も重要なことと思っており、改修を行うに当たっては、耐震改修の促進に関する法律も作っており、また融資や補助も行っているが、なかなか進まない状況にある。既存対策は枠組みを作っても実効性の確保については難しい面がある。エンドユーザーが省エネ改修したくなるようなインセンティブを考えていきたい。
  • ヒートポンプ等については評価していくことが重要であり、高効率の建築設備、住宅設備が普及することの助けにもなるのではないか。また、空間にあった設備が重要と考えている。「PAL」、「CEC」については、空間と設備の関係等についても評価できる基準を考えていきたい。
  • 既存に対する技術開発に関する指摘は、施工手間がかかるなど大きな課題と認識している。
  • 住環境の評価についての指摘は、我々も重要だと考えている。
  • ストック対策の中で、官公庁がESCOを率先して行うべきという指摘については、ぜひ私どものビルから行いたいと思っている。
  • 環境性能の高いビルについては、その環境性能を可視化し、また、そのビルが市場の中で選ばれるようにしていくように進めていきたい。
  • フロントランナーについては、件数が多く、また注文住宅も多いことから、比較するのが難しいが、可視化を進めることで、取り組んでいきたい。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 中小企業対策について、クレジットに限るべきではない、幅広く行うべきとのご指摘を頂いたが、まさにその通りであり、中小企業補助金、アドバイス事業等を通じて、中小企業の排出削減を進めていきたい。
  • 「中小向け国内CDM事業」については、民間資金の活用がポイントであり、大企業のニーズも自主行動計画を満たしたいと思う企業もあり、またプロジェクト資金が海外に流出しないという面もあり、一石何鳥というメリットがある。
  • 国際CDM並の厳格性と中小企業にとって使いやすい利便性とのバランスをいかに取るかは重要なポイントであり、検討会でも重要な論点となっている。難しい問題であるが、きちんと審議を行えば解決可能な問題であると思っている。なぜならば、国際CDMでもそうだが、今回のシステムは任意であり、プロジェクトを企画する方々とプロジェクトの出口である排出権を購入する方々などの関係者の合意があればよいと考えるからである。局長からも説明があったが、まさにこれは強制措置ではなく、自主行動計画の延長として、民間の方々の創意工夫に基づいた制度と思っており、その点誤解のないよう御願いしたい。
  • コストがどの程度かは、まさに今後、モデル事業を通じて検証していくことにしており、それによって経済性の評価を行っていきたい。
  • 仮に制度化された場合はダブルカウントになるのではとの指摘もあったが、プロジェクトの実施によって本制度がなかった場合と比して追加的な価値は発生すると思われる。いままで見えなかった中小企業の削減分が追加分も含めて顕在化して大企業にカウントされるのであれば整理は可能であると考えている。
  • 大規模企業を中心として、サービス分野で自主行動計画が必要だとの指摘に対しては、これは次回、自主行動計画の議論があるが、まさにご指摘の通りと考えている。

○安藤資エ庁省エネ新エネ部新エネルギー対策課長

  • 太陽光の買い控え、普及の遅れ、固定価格制の導入については、昨年の住宅用で出荷は横ばい状態であるが、住宅業界では導入努力をして頂いている。国内海外比は1対3程度である。我々は他方でRPSにおいて目標量の設定をしており、太陽光の2倍カウントの制度を導入した。
  • 新エネの技術開発失敗の放置があるではないかとの指摘については、いろいろと工夫をしていきたい。
  • 新エネのアロケーションをどこに置くのかについて、新エネは新国家エネルギー戦略ではイノベーションと位置づけており、戦略的に波及効果のあるジェネリックエネルギーを育てていく方針である。
  • 新エネのキャパと原子力の比較については、新エネもここまで来たという点を言いたかったものであり、実稼働力では風力で2%、太陽光では12%であり、原子力とは比べられない。稼働率をどのように上げていくかがポイントであると考えている。
  • 風力については、日本は遅れている状況であるが、系統線の弱いところに風車の適地が存在するとの問題がある。ドイツなどのヨーロッパでは系統線は網の目であり風車を立てやすい。また、電力品質との関係も考えなければならない。対策としては、RPS法の強化により2014年目標で400万キロ超の部分が風力で入るのでないかと期待しており、自然公園については310万キロワットくらいのポテンシャルがあるのではないかと思っている。
  • バイオエタノールについては、決して踊らされているつもりはなく、慎重に前向きに進めていくつもりである。
  • トータルのエネルギーベネフィットはどうなるのかとの指摘は重要であると認識している。

○小川環境省地球温暖化対策課長

  • 規制も含めた抜本的な対策を検討することが必要との指摘については、現在関係省庁の取り組みもこのようにして把握しているところであり、目標達成を確実にするためにどのような対策が必要か、制度的な措置まで必要なのかということを幅広く検討していきたい。また温対法の枠組みで何ができるかも検討したい。
  • 温泉のメタンガス爆発の件については、環境省では温泉法を持っているが資源保護の法律である。関連するデータがあれば示したい。温暖化との関係でインベントリを作成しており、これは様々なデータを利用しているが、天然ガスについては油田やガス田については統計があるが、こういった温泉建物については統計がなくカウントには入っていない。
  • 住宅の問題における税制の活用やグリーン証書の損金算入については、環境省としては税制グリーン化を重点項目と考えており、関係省庁とも連携して進めていきたい。
  • 買い換えにおける問題については、重要な問題であり、国民運動の方法も使いながら取り組んでいきたい。
  • 住宅の関係で主婦の知恵を活用してはどうかとの指摘があったが、住宅に限らず、先般総理が「一人一日1kg」とのご発言があったが、昨日からその意見募集を行っており、幅広いご意見を頂く予定である。

○鈴木部会長

  • 昨日、ハイリンゲンサミットの報告会があったが、「2050年で50%削減」が国民的なコンセンサスになりつつあると思っている。2050年で50%は、日本も50%、途上国も50%と考えている方が多いと思うが、「2050年に世界で50%」との表現が用いられており、現在の世界の総排出量は約72億㌧CO2であり、この半分は約36億㌧CO2であるから、これを2050年の100億人の人口で割ると、一人当たり約0.4トンに削減することになる。2050年で、日本と途上国とで現在のような経済格差があるとは思えず、極端に考えれば日本も一人0.4トンに削減する必要がある、現在は2トン排出しているので、8割削減ということになる。2050年半減の一番極端なケースである。思い切った政策、大胆な政策とのご意見があったが、一貫性、全体としてのバランスが必要であり、この会合でもその点を考える必要がある。

○小川環境省地球温暖化対策課長

  • 本日のご発言に追加するご意見がございましたら6月28日(木)までに書面にて事務局に提出してほしい。
  • 議事概要については、数日中にお送りしますので、ご確認頂いた上でHPに掲載したい。
  • 次回は6月27日(水)9:30から三田共用会議所で予定しており、内容は自主行動計画の状況についてのヒアリングであり、また関係業界からの取り組みの報告も頂く予定である。

(文責:事務局)